したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第二章

153崇月院なゆた ◇uymDMygpKE:2019/01/29(火) 21:41:15
>「戻れ……!クソッ、戻れ!」

明神が何度も何度もスマホの液晶をタップする様子を、なゆたは眉を下げて見遣った。
誰が見ても、バルログは死亡している。あのタイラントに上半身と下半身を真っ二つにされたのだ、当然と言えるだろう。
ゲームのブレモンでは、パートナーは例え死んだとしても教会などで復活させることができる。
しかし、自分たちの今いるアルフヘイムは、ゲームのそれとは似て非なる世界。
ならば――

――死ぬと、復活できないんだ。

当たり前といえば、あまりに当たり前の事実に、なゆたは今更ながらに戦慄した。
今までは、何となくゲームの延長線上のノリで行動している部分が多かった。例え負傷したり、最悪死んでも何とかなるだろうと。
だが、そうではなかった。この世界での死、それはゲームの死なんかではない。
現実世界と何も変わらない、本当の死――。
バルログはそれを教えてくれた。今後は慎重の上に慎重を重ね、安全を確保することを第一に考えて行動しなければならない。

>「あのっ……明神さん。新しいのを捕獲するなら、出来る限りお手伝いしますし、もしもお墓を作るならお手伝いしますから」

メルトが傷心しているであろう明神に気遣わしげに声をかけている。
不謹慎な話だが、今回のクエストにおいてMVPは誰かといえば、それは紛れもなく明神だろう。
もし、明神が自分の保身だけを考え、パーティーに手を貸すことを考えなかったら。バルログを捨て駒にして時間を稼がなかったら。
自分たちは今頃、全員タイラントに葬り去られていたに違いない。
せっかくゲットしたレイドモンスター、バルログを捕獲直後に喪った明神の落胆は、察するに余りある。
となれば、メルトのように明神のため新しいモンスターを捕獲するというのは至極当然のなりゆきであろう。
明神はバルログを捕獲した際、『これで貸し借りはナシ』と言った。
よって、本来は今現在パーティーが明神のために骨を折る義理も義務もない。
とはいえパーティーの強化は図りたいし、何より明神がバルログを喪ったのは仲間たちを助けるためだ。
借りを返すためにも、自分たちは積極的に新たなレイドモンスター狩りを明神に提案しなければならない。
……はず、だったが。

「…………」

なゆたは、バルログの代わりに新しいモンスターを捕まえよう――という言葉を、明神に告げることができなかった。
なゆたが明神に対して言えたのは、

「……ありがとう、明神さん」

という、短い感謝の言葉だけだった。
明神とバルログがマスターとパートナーの関係にあったのは、ごくごく短い時間でしかなかったけれど。
それでも、ふたりの間には絆めいたものがあったのだろうと、なゆたは思う。
真一とグラドのように。自分とポヨリンのように。

『……ぽよ……?』

ポヨリンが不思議そうになゆたを見上げる。
プレイヤーの中には、パートナーモンスターを純粋な戦力、持ち駒としか見做さない者もいる。
いや、そう考える者の方が多いだろう。実際、真一やなゆたのように一体のモンスターに執着する方が少数派に違いない。
従って、なゆたのそんな考えも明神にとっては見当違いの、余計な気遣いでしかないのかもしれない。
けれども、やはり。
なゆたにはどうしても、明神にかける言葉が見つけられなかった。
万が一、自分が明神の立場だったとして。ポヨリンにもしものことがあったとしても。
『死んだから、じゃあ次を見つけよう』なんて。そんな気分には、とてもなれそうになかったから――。

「……なんでもないよ、ポヨリン。……なんでもない」

踵を返すと、なゆたは迷いなくポータルを踏んだ。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板