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第二次二次キャラ聖杯戦争 part4

92発覚 ◆/D9m1nBjFU:2019/06/22(土) 07:04:05 ID:qhlV.xww0




  ◆   ◆   ◆





聖杯戦争とはある意味非常に公平な殺し合いだ。テンカワ・アキトはそう考えてきた。
確かにゴフェルの木片を手にしただけで無作為にマスターとして選出されるその経緯は理不尽であるかもしれない。
しかし逆に言えば全てのマスターが同じ方法で方舟に呼ばれているのは公平、平等と取れなくもない。悪平等とも言うのだろうが。
サーヴァントと令呪にしてもそうだ。性能やクラス等個性に違いはあっても全てのマスターに令呪とサーヴァントが配されるという点では最低限の公平性は確保されている。
だからこそアキトは聖杯戦争という殺し合いにも納得していた。少なくともマスターの誰にとってもスタートラインは同じなのだから。

聖杯戦争には戦いの結果としての死はあっても無人兵器による一方的な虐殺も悪辣なテロ行為もない。
虐殺同然に殺されるマスターがいたとしても、言っては何だがそれは与えられた武器を満足に扱えなかった当人の不備でしかない。
願いがある、あるいは死ねない理由があるのは誰でも同じ。早苗のような戦いを止めるという願いでさえある種のエゴに過ぎない。
誰もがマスターの一人としてサーヴァントと共に最後の一組を目指して戦い抜く。火星の後継者相手に暗闘を繰り返していた頃よりよほど上等な戦いだった。
……ここまでの経緯こそは情けない限りではあったが。

勝ち残り、ユリカを救う。そして火星の後継者を殲滅する。
願いを叶えたいという一点については一度もブレたことはないと自認している。
もう一人の自分。復讐に身を窶しても残り続けていた「自分らしさ」さえも切り捨てて、ただ一つの地点へと走り続けようとしていた。



だからだろうか。敢えて置き去りにした大切なものが、己の願いと反対側の天秤に載せられていたことに気づかなかったのは。



その文字列の羅列と顔写真の画像を見た時の自分は一体どんな顔をしていたかわからない。少なくとも人に見せられるような顔ではなかっただろう。
HALの配下らしいNPCが同じ部屋にいないタイミングで助かった。

ホシノ・ルリ。彼女がアキトと同じくマスターになっていたなど悪辣な偶然にもほどがある。
しかも裏の空間では無敵に近い力を持つHALから随分と警戒されているようだった。やけに詳しくルリの危険性を説くHALのメールからそれは容易に読み取れる。
つまり彼女は今HALに命を狙われている。ハンマーで頭を横殴りにされた気分だ。

大切なものを取り戻したいと願った。相手が火星の後継者どもから自分以外のマスターに代わっただけだと思っていた。
だがそうではなかった、なかったのだ。
最後に生き残るのはただ一組。他のマスターとサーヴァント全てを殺さなければ聖杯に辿り着くことも生還することもない。
アキトとルリが同時に生き残ることは、ない。

聖杯戦争に勝ってユリカを救うということはルリを殺すということで。
ルリを助けるということはユリカの救出と火星の後継者への復讐、己の命を諦めるということ。
吐き気がするような二者択一。これが聖杯戦争を良しとした報いだというのならこんなに効果的な罰もない。



―――嗚呼、全くもって情けないことに。



―――俺という人間はこうなる事態を毛ほども想像していなかったらしい。


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