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オリロワ2014 part3

119THE END -Somebody To Love- ◆H3bky6/SCY:2019/02/17(日) 23:36:25 ID:yyQSrX5o0
「……………………」

あまりにも早い再会だった。
埋葬ではなく、身なりを整えるだけの簡易的な葬儀で済ませたのは幸いだっただろう。
墓を掘り起こす手間はなく、辿りつくなり対面する事ができた。
まさか、別れを告げたはずの父の前に再びこうして立つことになろうとは思わなかったが。

「…………ユッキー」

背後から心配そうな声がかかった。
ユキの心情を気遣っているのだろう。

「大丈夫。心配しなくても大丈夫だから」

既にさよならは告げた、父の死体を前にしても心に乱れはない。
むしろ、悪党を継ぐと誓った父の前だからこそ恥ずかしい所は見せられなかった。

父の傍らに転がる漆黒の刃を拾い上げる。
腕を象っていた黒い粒子は初期状態(デフォルト)の小さなナイフとなっていた。
本来、悪刀は常人には持ち上げられぬ重量を誇る超高密度の刃である。
だが戦いの果てにその殆どは失われ幸いにもユキの細腕でも持ち運びできる重量となっていた。

今ユキに相応しい小さくなった悪党の名を冠した刃をポケットにしまう。
ポケットの中で指先にかかるその重みを確かめる。
薄まったと言えその重さは鉄よりもはるかに重く、まるで覚悟を問われているようでもあった。

ともかく目的の一つである悪刀の回収は滞りなく完了した。
後は首輪を回収するだけである。

「私がやろうか…………?」

躊躇いがちに背後の九十九がそう提案してきた。
九十九からすれば、その汚れ役を買う為についてきたと言っていい。

死体とはいえ、娘が父の死体の首を落とすなんて悲惨な光景を見たくはない。
そんなものを見るくらいなら他人の自分がやった方がよっぽどマシだ。

二度の目の父殺し。
首を落とし死すらも辱める最低最悪の行為。
だが、それは。

「ううん。違うわ。これ私がやるべき、私の役割なのよ。誰にも譲ってあげない。私がやらなきゃいけないの。
 だから九十九。そこで、待っていて」

ユキは悪党である。
悪党ならば躊躇わず世界に必要な行為を成すだろう。

これは避けるべきことでも、目を背けるべきことでもない。
むしろこうなったのは幸運だった。
悪党としての初めての成果を、他でもない大悪党に捧げられるのだから。

その返答に九十九は驚いたような表情を見せたが、それも一瞬。
黒髪の少女は無言のまま頷きを返すと、祈るように両手を重ねる。
白の少女の為す事を目を背けず見守る事にした。

「だから、見ていてね」

背後で待つ少女にではなく、物言わぬ偉大な先代に対して告げる。
これは別れではなく最初の一歩。
悪党として生きる覚悟の誓い。
透き通るほどに美しい氷の刃が、音もなく振り下ろされた。

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