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変身ロワイアルその6

83980 YEARS AFTER(4) ◆gry038wOvE:2018/02/20(火) 02:42:32 ID:gooP8PFs0

 何故、二人のプロの探偵が同じようにプロらしからぬ結論に至ったのか。そして、何故依頼人は事情を説明されてそれを納得し、励みとしたのか。
 それがおれにはわからなかったのだが、紐解くうちにおれは事情を察する事になった。

 ――そう、言った通りの『信頼』を向けたとしか考えられなかった。そして、何故『信頼』したのか、が問題だった。

「おそらく、そこで左探偵は、この問題はまず花咲つぼみにしか解決しえない、あるいは彼女が解決すべき問題と確信し、彼女なら果たせると信じたんだろう」
「おばあちゃんが解決すべき問題……?」
「――ああ。だから、左探偵と、それからあとで再調査した佐倉探偵は“自分が関わる問題”としてのその依頼を『終了』し、それでいて“花咲つぼみが解決できていない状況”を『未解決』として、ファイルに綴じたんだよ」
「それが、『中断』ではなく『終了』としていた意味……」
「その通り」

 いつの日か、花咲つぼみがそれを達成したのを知って、ファイルから外して処分するつもりだったのかもしれない。しかし、その日は来る事なく、二人が先に世の中に処分され、謎だけが後の時代に残されてしまったのだ。
 これが、依頼が『中断』されずに『終了』した理由だった。
 何かしらの闇に触れたわけではない。――むしろ、探偵にあるまじき感傷だ。彼らのハーフボイルドが、事件を後から見て不可解な物に見せていたのである。

「おれは、そこまで推理した後で――そういう彼らの感傷から逆算して、探し物のありかもわかってしまった」

 花華は不思議がっているようだった。
 まだ答えは見えていない。いや、現段階で彼女がどれくらい日記に目を通したのかわからないが、たぶんこういえばわかるのだろう。
 おれの答えは、これ以外に考えられなかった。

「きみの曾祖母が生涯かけて……病床につくまでずっと研究していた、管理外の異世界への渡り方と、ある世界の捜索。彼女はきっと、この時には既に、左翔太郎や佐倉杏子に約束していたんだ。そして、二人は花咲つぼみを『信頼』して見守っていた」
「まさか……」

 曾孫である花華には、この言葉でわかったようだった。
 曾祖母の事を愛している彼女にとっては、何度も聞かされた話だろうし、もしかしたら、異世界移動の技術についても必死で学んでいた姿は、何度も目にしていたかもしれない。植物学者としてだけではなく、ある一人の男の友人として。
 それはついに報われなかったのかもしれないが、未解決事件を一つ作り出してしまったのかもしれないが――しかし、彼女の仲間たちも信じるに値するほどまっすぐな努力を積み重ねた、純粋な願いだった。
 響良牙を探しに行く、と書かれた日記。
 おれは、それを目にしてしまった。

「――結論を言う」

 それは、美しく、残酷な答えだった。










「そう――――きみの曾祖母が生涯かけて探した、『変身ロワイアルの世界』こそがその探し物――――きみの曾祖母が失くした骨董品、“オルゴール箱”のありかなんだよ」










 そう――そこからのシナリオは、単純だった。


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