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作品投下専用スレッド
1
:
管理人★
:2010/09/03(金) 20:33:01 ID:???0
作品を投下するためのスレッドです。トリップを忘れずに。
732
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:23:45 ID:nO1KUkaA0
船を下りた後、道なりに進んでゆくと、小高い丘の上に、洋館が見えた。
周囲の景色……コンクリートばかりの灰色の景色から浮き立つように、白と緑に彩られた洋館は、
自然の中に佇む富豪の屋敷であるという感覚を木田に抱かせた。
なるほど。集合場所にするには、確かに向いている。拠点とするにも向いているかもしれない。
否が応でも、目が吸い寄せられる。きれいな、場所だった。
近づいてゆく。一歩一歩。傾斜を少しずつ登って。
門前へと、至る。そこには青銅の、大きな扉がある。
左右を取り囲む塀は高く、柵は容易に乗り越えられそうになかった。
どこか要塞然とすらしている。元の住人は閉鎖的だったのだろうか。
そう思いながら、門扉をゆっくりと引く。ぎぃ、という音とともに、ゆっくりと外側へと開いた。
中に見えたのは、豪奢なフラワーガーデンだった。
どこから集めてきたのだろう、様々な花が、風に吹かれてそよいでいる。
ちはやが見れば、思わず声を上げるのではないだろうか。そう考え、ちはやの方を振り向くと――
――手を、振っていた。
――ばいばい、と。
思考が停止した。離れた場所から振られるちはやの手。それは。
声をかける間は、与えられなかった。たたた、と、金属を軽く叩くような音がして、木田は跳ね飛ばされた。
門の内に入ることも叶わず、文字通りの門前払いだった。
全身に、銃弾の穴を残すというおまけつきで。
即死ではなかった。だが、致命傷だった。体が動かず、息さえおぼつかない自分の体から判断した結果だった。
騙されたのだ。浮かび上がってきた事実に、木田は口を「なぜ」の形に動かした。
自分を、必要、だったのでは、ないのか。
仰向けに倒れ、血の花を咲かせる木田を見下ろしたのは、ちはやである。
「ダメなんだよ、それじゃ」
「戦わなきゃ」
「いつも、戦ってなきゃ、ダメなんだよ」
「わたしたちには」
「敵しか、いないんだよ」
733
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:24:08 ID:nO1KUkaA0
失望した声だった。見下した声だった。
期待はずれなものを、見る目だった。
「戦える人だと、思ったのにな。あなたの妹さんとは違って」
恵美梨?
唐突に出てきた妹の名前に、木田の目が見開いた。
どういう意味だ、それは。
手を伸ばす。いや、既に予感していた。
恵美梨は、もう……
伸ばす手は、家族を殺された怒りか。それとも、ただ最低限に生きようとした結果なのか。
分からない。分かるだけの頭を、持っていなかった。……悔しい、と思った。
「だから、わたしはあなたを食べる。食べて、生き延びる。生きて戦う。……お兄ちゃんに、会うために」
ああ、と木田は理解した。
最低限に生きるだけでは、ここでは生きられないのだ。
酔ってはいけなかった。誰かといることに、酔ってはいけなかった。
希薄に生きながらも、誰かを求めていただけの、『最低限の生』だけだった自分は、食われる側だったのだ。
だったら。この女は。香月ちはやは――
「ケモノ、め……」
伸ばした手は、どこにも触れることはなく。
ちはやの鉄パイプによって、叩き潰された。
* * *
「ふむ、結果は上々みたいね。どう久寿川さん、感想は」
「意外と簡単で、驚いています」
澱みなく会話をする二人、柚原春夏と久寿川ささらは、フラワーガーデンを歩いている。
風に乗ってやってくるのは、花の穏やかな香りと、命の残滓である。
「……正直、武器がこれで良かったと思ってます」
「どうして?」
「殺した感触が、少なかったから……」
「そうね。わたしも、そう。テレビの向こうの殺人事件だったわ」
門扉の先では、にこやかに笑う香月ちはやが待ち構えていた。
734
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:24:29 ID:nO1KUkaA0
----- ----- -----
M134のセッティングが終わったころ、彼女は唐突にやってきた。
館の中に侵入し、目ざとく自分達を見つけたちはやは、今と同じく笑っていた。
学校に行く道端で、知り合いを見つけたかのような笑いだった。
そうして、警戒する自分達を見たちはやは、こう言っていた。
『戦えますよね』
その口ぶりは、獣だった。品定めをする猛獣。
手に持った、少し歪んだ鉄パイプは振られる気配はなかった。
ささらと目を見合わせて、まずは春夏が会話した。
人殺しの準備をしている、と。
『良かった』
『なにが良かったのかしら』
『戦える人が、欲しいんです』
『意図が見えないわ』
『……ここには、怪物がいるんです。わたしはそれと戦わなきゃいけない』
『怪物……ね』
『それは人の形をしている。だから、人が殺せなきゃ、戦えなきゃダメなんです』
『協力しろって?』
『危ないですよ、そいつは。油断してなくても、食い殺される』
だから力が必要だ。怪物さえ食い殺す怪物にならなくてはならない。
淡々と語ったちはやは、どこか怯えているようでもあり、だからこそ恐怖を克服できる怪物になろうと、仲間を求めていた。
化け物が怖いあまりに、化け物になろうとしている人間。それがちはやだった。
家族や、大切な人間を守るために修羅であることを望んでいる自分達とは違った。
だが、やろうとしていることは同じだった。ちはやも春夏たちも、潰し合うつもりはなかった。
ちはやは化け物を、春夏たちは敵の排除が目的だったのだから。
『ところで』
『何ですか?』
『どうして私達が、戦える人間だと?』
尋ねたのはささらだった。
『あいつと、少しだけ似てるから』
『あいつ?』
『……岸田洋一。多分、あいつは、化け物だ』
735
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:24:48 ID:nO1KUkaA0
それ以上は、ちはやは何も語らなかった。
肩を竦めたささらに合わせるようにして、春夏も首を振ったのだった。
化け物が怖いが、その恐怖は信じる。なんとも皮肉なものだった。
『化け物呼ばわりされちゃったわね』
『心外です』
『あら奇遇。結構、波長合うかもね』
『……』
それこそ心外だ、という風に表情を険しくしたささらにやれやれと溜息をつきつつ、春夏はちはやと交渉を始めた。
M134を持っている関係上、あまり動きたくはないこと。そしてちはやはまだ完全に信じれる状況ではないこと。
ならば標的を連れてきてみせようというのがちはやの意見だった。
人数が減るのは春夏たちにしても問題はなかったし、ちはやにしてみても連れてくるのは『論外』の人間のようだった。
こっちは待っているだけでいいのだし、撃つだけでいい。明らかに春夏たちに有利なものだったが、ちはやは応じた。
それほど、化け物が怖いらしい。M134があっても一筋縄ではいかなさそうだと、春夏は思った。
----- ----- -----
「あの子、よくもまあやれるわね」
「鉄パイプで殴り殺したことですか」
「気持ち悪くないのかしら、ねえ」
「……そういうあなたこそ」
アレを見ても、平気そうじゃないですか。
少年の死体を指差し、嘲笑したささらに、「そう?」と春夏はとぼけてみせた。
あなたこそ、笑えるくらいには平気そうだけど。その言葉は、飲み込む。
平気なのは、どうしてだろう。平然と人を殺せたのは、どうしてなのだろう。
やれるとは言った。やってみせた。最初に言った通り。
けれども、こうも淡々とやれるとは。
殺した実感が薄いからなのか。
現実感が、ないからなのか。
それとも、本質的に自分が、化け物であるからなのか。
何も言えないから、春夏はとぼけたのだった。
もっともささらには、それは不服そうだったのだが。
「……どうです? 少しは、わたしと戦ってくれる気になりました?」
ちはやの元まで辿りつくと、早速彼女がそう切り出す。
「そうね。少しは」
736
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:25:04 ID:nO1KUkaA0
春夏はそう言い、腕組みをしていたささらの脇腹をつついた。
鬱陶しげに手で振り払われる。嫌われているらしかった。
春夏にしてみれば、ささらの無表情ぶりは気に入らなかったからという話なのではあるが。
「いいんじゃないですか」
「気に入ってなさそうですね……」
「ちはやちゃんはお気に召しているようで」
「鮮やかでしたから」
銃撃のことを言っているのだろう。
まるで容赦なく、瞬時に撃って見せた『戦いぶり』はお眼鏡に適ったらしい。
そばに転がる、先程まで会話だってしていたはずの少年のことなど気にも留めていない。
それも当然か、と春夏は感想を結んだ。食料に感慨を抱くわけもない。
ちはやは、化け物を目指しているのだから。
「ま、80点ってところね。私は」
「厳しいですね」
「一人だったからねー。久寿川さんの点数はもっと低そうだけど」
「……心外です。柚原さんと同じくらいですよ」
「あら。やっぱり波長合うんじゃない?」
「……」
連れないわねぇ、と軽口を叩こうとしたところで、不意に空から、声が聞こえた。
「いいや。今回は50点だな」
「は……!?」
ちはやが、驚愕の表情を露に塀の上を見ていた。
見てみると、そこには不敵な笑みを浮かべた、学生服姿の女が腰掛けていた。
手にはライフル。傍らに下ろしたデイパックには、剣らしきものが突き出ている。
「あら、こんにちは」
「……いつから」
737
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:25:19 ID:nO1KUkaA0
普通に挨拶をしたのは春夏だけで、ささらは不快そうな表情を、ちはやは無言で唇を噛んでいた。
あの狼狽振りからすると、知り合いであるらしい。
女学生は腰までかかる長い黒髪を優雅に揺らしながら「尾行させてもらったよ」と事も無げに話す。
「私は尾行が得意でね。特に可愛らしい少女が相手ならば、な」
「……く」
バカにされたと思ったらしく、ちはやは怒りの視線を含ませた。
風と受け流しながら、「別に遊んでいたわけではないよ」と笑う。
「なに、面白そうだと思ったまでだ。君らが密会しているのを見て、な」
「……どこから聞いてたんです?」
尋ねるのは、無愛想なままの表情のささらである。
春夏もそれは気になった。気配にも気付かなかった。射撃したテラスからも見えなかった。
相当の、手練れだ。
「君らが合流したところから、だな。そのまま撃ち殺しても良かったが、中々姦しい会話を繰り広げていたようなのでね」
くるくると、ライフルを弄ぶ。
ますますバカにされたと思ったらしいちはやは悪態をつく。
ささらは『どうして撃ち殺さなかったのか』に興味が移っているらしく、再び無表情に。
春夏は、快楽主義的人間だと解釈をした。面白そうだという、その理由だけで、殺すのをやめた。
厄介極まりない人間である。なるほど、確かにちはやは『50点』だ。
「連携プレーの相談と見たが……ふむ、おねーさんも、混ぜてはくれまいかな?」
くっくと、笑い、ライフルを弄ぶ少女に、春夏はさてどうするかと頭を悩ませた。
738
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:26:11 ID:nO1KUkaA0
【時間:1日目午後5時30分ごろ】
【場所:H-6 洋館】
久寿川ささら
【持ち物:M134ミニガン&大量の弾薬、水・食料一日分】
【状況:健康】
柚原春夏
【持ち物:M134ミニガン&大量の弾薬、水・食料一日分】
【状況:健康】
※M134は固定式です。携帯してダンジョン探索はできません!
香月ちはや
【持ち物:鉄パイプ、水・食料一日分】
【状況:健康】
来ヶ谷唯湖
【持ち物:FN F2000(29/30)、予備弾×120、バーベキュー用剣(新品)、水・食料一日分】
【状況:アンモニア臭】
木田時紀
【持ち物:フェイファー・ツェリザカ(4/5)、予備弾×50、不明支給品、水・食料一日分】
【状況:死亡】
【時間:1日目午後5時30分ごろ】
【場所:G-7】
春原芽衣
【持ち物:DX星杖おしゃべりRH、水・食料一日分】
【状況:健康】
折原志乃
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:錯乱、精神に極めて深い傷】
739
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/01/30(日) 19:26:40 ID:nO1KUkaA0
投下終了です。
タイトルは『隣人は静かに笑う』です
740
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:01:11 ID:GSOi4XgE0
――――その涙を、私も流す事ができるのだろうか。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
741
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:01:31 ID:GSOi4XgE0
「ふぅ……こんな所でしょうか」
日が落ち始めた時間に、ベナウィは広い病院のロビーにて腰を落ち着かせていた。
六階建てにも及ぶこの病院は二人で探索するには、大分時間がかかってしまった。
誰か自分達以外にも訪れてる人が居る事を少しは期待をしていたのが、その期待も外れてしまっている。
思わず溜息が出てしまうが、ベナウィにとって収穫は無い訳ではなかった。
一つ目は此処まで発展した医療施設がこの島にある事。
二つ目はトゥスクルには存在しないような道具を沢山見つけられた事。
そして、三つ目は……
「あ、あの………………ベナウィさん」
くいくいっと着物の裾を引っ張る短い間に慣れた感触。
聞き取るのも大変な程の小さな声。
振り返って確認するまでもない陰日向のような少女、長谷部彩だった。
3つ目の収穫と言えば、この同行する少女が少しぐらい自分に慣れた事ぐらいだろうか。
「ああ、纏め終わりましたか」
頼りげ無さそうに微笑む彩の手に、一つの手提げ袋がある。
其処には絆創膏や消毒液、包帯などなどの救急セットが入っていた。
ベナウィの知識では解らないので、彩に纏めて貰ったのだ。
ベナウィは彩が集め終わった医療具を一度確認し、
「なら、行きましょ……」
出発を促そうとし、彩の表情を見て言葉を止める。
ひたいには汗が浮かんでいて、疲労の色が残っていた。
よくよく考えれば、一階から六階まで休憩無しに一通り歩いて回ったのだ。
軍人であるベナウィなら兎も角、彩はただの少女でしかない。
付け加えるなら運動とか普段する事が無さそう雰囲気すらだしている。
疲れるのも当然かもしれない。
気が回らなかったと思いながら、
「いえ、一度ここで休みましょうか」
ベナウィは彩に言葉をかける。
彩は少しびくっとして、ベナウィの顔をうかがうように、
「い、いえ……大丈夫です」
ふるふると首を横に振った。
彩にしてみれば、無理に言わせたような感じがして、何処か申し訳そうな顔をする。
ベナウィは溜息をつきながら、あえて厳しく言う。
「いえ、疲れてるのを隠される方が迷惑です。大事な時に、下手な間違いをしかねない」
「……あ……う……」
彩の表情が、どんどん青くなっていき泣きそうな顔になっていく。
そんな様子にベナウィは微笑みながら、出来るだけ優しい声色で喋る。
「だから、休みましょう? アヤも」
「…………はい」
彩はこくんと嬉しそうに笑いながら頷いて、お茶いれてきますねと小さく告げてぱたぱたと歩き出していく。
まるで小動物のようだとベナウィは思いながら、小さく微笑んだ。
やはり、あの笑顔はやすらげるものになっていると思いながら、
そして、同時に自分を縛っているという事は、あえて、隠した。
隠したかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
742
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:01:48 ID:GSOi4XgE0
両手には温かい緑茶が入った湯のみがある。
これはアヤが入れてくれたものだ。
それを私は一口のみながら、アヤの方を見る。
アヤとの距離は何故か妙に離れている。
私は長椅子(ソファーと言うそうだ)の右端に座っていたのだが、アヤはお茶を渡すと何故か左端に座った。
そして、暫く無言のまま、二人してお茶を飲んでいた。
これが、今の妙な距離感だろうか。
まあ、そうなのでしょうね。
実際、私は弱いアヤの庇護者程度しかないかもしれない。
私自身も最初見捨てようとしたのだし。
「…………………………の」
そして、これからもそうなのかもしれない。
まあそんなものでしょう。
「………………あの」
そう思って、私はお茶を啜った。
お茶のいい香りが、随分と私をやすらげてくれた。
「あの!」
「おっと……なんでしょうか?」
どうやら、アヤに呼ばれていたらしい。
全然気付かなかった。
いけない事ですね。
元々小さい声なのですから。
ちゃんと拾ってあげなければなりません。
「……あの、ベナウィさんの国の事聞きたいです」
勇気を振り絞るように尋ねられた事はとても些細な事だった。
そういえば、彼女はトゥスクルの事は知らないのでしたか。
「そうですね……」
それから、私は私が仕える国の事を話した。
ハクオロ皇の事。
彼に統治された国はとても素晴らしい国になっている事。
そして、住んでいる民達は笑顔である事。
それは、とても幸せの象徴のような事である事。
些細な事でも、私はそれを言葉にした。
私自身が国について、話す事は滅多にないのかもしれない。
だから、少し饒舌になってしまった。
けれど、アヤはとても興味深そうに聞いてくれた。
そして、少しずつアヤが此方に近づいていた。
アヤは楽しそうに笑っていた。
「……そうですか。とても素晴らしい国なんですね」
「ええ、私も国を護る為に戦っています。それが武士の私の務めなのですから」
「……戦う?」
「ええ」
そのまま、私は国が成り立った理由を話した。
一揆がおき、戦いが起きた事。
そして、自分達も戦い守るべきものの為に戦った。
それだけではない。
国を護る為に、戦わなければならなかった事。
その為に、自分自身も戦い続けた事。
それを私は誇るように、話した。
けれども。
「……………………アヤ?」
743
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:02:08 ID:GSOi4XgE0
彼女は泣いていた。
彼女の頬には、一筋の涙の跡が流れていた。
何かを耐えるように。
彼女は涙を流していた。
「…………哀しいです」
「…………哀しい?」
何が哀しいのだろうか。
私は国を護る為に戦った事を話しただけなのに。
それこそ、武士の誇りだというのに。
何が哀しいと言うの…………
「沢山の人が――――死んだのですね」
――――ああ。
この子は、ただ、純粋に。
人の死に、涙を流している。
戦って死んだ兵士。
戦火を受けて死んだ民。
沢山の人に純粋に涙を流している。
「ええ……沢山死んでしまいました」
「……そうなのですか」
そして、彼女は、目を閉じ手を組んだ。
祈りを捧げているのだろうか。
気が着けば、彼女との距離も大分近くなっている。
散っていくもの仲間達。
沢山の人の死に、私が涙を流さなくなったのは何時の頃だっただろうか。
それすらも忘れてしまった。
あまりにも、当然のように、沢山の命が散っていく。
私は、いつの間にか涙を流す事を、忘れてしまったのだろうか。
ふと、思ってしまう。
私は家族のように過ごした仲間達。
彼らの死に泣けるのだろうか。
答えは見つかるわけがなかった。
そして、彼女は、アヤは。
とても、平和な国で育ったのだろう。
人の死がとても、とても遠い信じられないような国に。
けれど、それだけではなく。
彼女の心はとても、純粋で白いのだろう。
誰かの、誰かも解らない死に涙を流して、哀しむことが出来る。
それが同情というものでも。
純粋すぎるその想いは、とても輝いて、貴重に思える。
眩しいぐらいの、白さだった。
「ベナウィさん……」
744
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:02:24 ID:GSOi4XgE0
いつの間にか、目を開けて、私の手に自分の手を重ねている。
その手の温かさがとても、心にささっている。
「ベナウィさんも……殺したのですか?」
「………………ええ」
私は静かに頷いた。
頷くしかなかった。
彼女は笑いもせず、けれども哀しみもせず、私だけを見て
「それは…………」
何か言葉を言おうとして、そこで途切れた。
何を伝えたかったのだろうか。
哀しいと伝えたかったのだろうか。
私には解る訳など無かった。
私が誰かを殺す事に何も感じなくなったのは何時だろうか?
涙を流さなくなったのは何時だろう。
哀しまなくなったのは、苦しまなくなったのは何時だろう。
もう、思い出すことができない。
それぐらい、殺すという事が、身近であった。
だから、私は救われないだろう。
でもそれが、忠義なのだから。
それが、武士なのだから。
私は、彼女の瞳を見た。
何処までも、澄んだ、儚く優しい、瞳だった。
それが、救いを与える目にも、苦しみを与える目にも、見えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
745
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:02:44 ID:GSOi4XgE0
ベナウィさんの顔が、とても近く感じた。
沢山の人を殺したといったベナウィさんの顔が、何故かとても切なく感じられた。
私には、人を殺した事なんか勿論無い。
だから、その苦しみや哀しみなんて、解らない。
けれど、私は彼がとても、弱く感じられてしまう。
何故だか、解らない。
けれども、そう思えて仕方がない。
人の死は、哀しい。
それは、あの日、父を失ったあの時から、変わらない。
苦しくて、切なくて、心が壊れそうになってしまう。
涙が溢れて仕方ない。
きっと、もしこの島で亡くなった人現れてしまうのなら……私は泣いてしまうだろう。
知らない人でも、泣いてしまうかもしれない。
知ってる人達……和樹さん達ならきっと尚更だろう。
涙が止まらなくなってしまうかもしれない。
彼は、もう、涙を流さないだろうか?
人の死に。
殺した事に。
そう思ったら、何故かとても、哀しく感じた。
……ベナウィさんの瞳を見て思う。
彼は、貴方を必要としている人が此処にいると言った。
だから、私、思うんです。
そんな哀しい瞳をした貴方を。
私なりの方法で。
私は……
――――貴方を護る事が出来ますか?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
746
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:03:04 ID:GSOi4XgE0
それから、私達は黙っていた。
アヤは私の隣で、静かにしていた。
これ以上、語る言葉など思いつかなかった。
私は、何か良く解らない想いが巡っている。
アヤの瞳が心に残っている。
とても、白くて、純粋な心が、その瞳が私を射抜いていた。
私は、何故、こんなに迷っているのだろう。
今更ではないか。
とっくの昔に心は決めている。
そして、骨の髄からもう、武士なのだ。
武士として生きる、それが、私の矜持。
なのに、どうしてあの瞳は私を射抜く。
あの微笑が、私を苦しめる。
私は、救われていいわけ…………
「…………ふう、何か考えているのでしょうね、私は」
そこで、変な方向に行こうとした私の思考を打ち切る。
考えては仕方ない事だ。
そう、仕方が無い事だ。
アヤ、貴方は、何を考えてその瞳を向けたのだろう?
私には解らない。
だから、
「アヤ……」
彼女に聞こうとして、気付く。
「すぅ……すぅ……」
アヤは私の肩にもたれかかる様に眠っていた。
道理で静かな訳だった。
緊張感があったのだろう。
疲れがまとめて来たのかも知れない。
私はふぅと溜息をついて外を見る。
もう、日が完全に落ちている。
そろそろ、放送が行われる時間だろう。
だから、その時間までこのまま、眠らせておこうと思った。
私は、そう思って、もう一度、彼女の横顔を見る。
――――哀しいです。
彼女の純粋すぎる白い心が発した、あの言葉。
それが、何故か、頭の中で反芻を繰り返していた。
747
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:03:22 ID:GSOi4XgE0
【時間:一日目 午後5時50分ごろ】
【場所:E-1 病院】
ベナウィ
【持ち物:フランベルジェ、水・食料一日分】
【状況:健康 彩と共に行動】
長谷部彩
【持ち物:藤巻のドス、救急セット、水・食料一日分】
【状況:健康、ベナウィと共に行動】
748
:
天使の羽の白さのように
◆auiI.USnCE
:2011/02/04(金) 02:04:10 ID:GSOi4XgE0
投下終了しました。
この度は延長してしまい申し訳ありません。
749
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:48:06 ID:l52Wmwao0
アムルリネウルカ・クーヤは、黙々と言葉も発さないまま歩き続けている。
その背中を追って歩いている自分もまた、黙ってついていっている。
柊勝平は幾度目かも分からないため息をついていた。
先程の緊迫し、一触即発だった状況から開放され心が緩んだからというのがひとつ。
クーヤについてゆくと明言はしたものの、今の自分を整理しきれていないからというのがひとつだった。
自分達は、既に死んでいる。
日向なる男の発した『死後の世界』とやらが、今になって確かな言葉となり、勝平の中に溶け、染み込んでいた。
『ここ』はある意味で、全てが終わってしまった場所である。
『ここ』は心の整理をつけ、思い残すことがなくなるよう好き勝手ができる場所である。
『ここ』に留まっているのは、未練を恨みとして残し、理不尽な人生を与えてきた神への報復を目論む連中である。
日向の言葉を要約するとそんなところだった。
どこにいるかも分からない神様を探し、復讐を行うためだけに日々を死に続けている。
馬鹿馬鹿しいと吐き捨てたくなるような日向達の主張だったが、理不尽と、報復という言葉が勝平の心に反響していた。
真実がどうあれ、日向という男も、野田という男も決して幸福とは言えない人生を送ってきたのだろう。
そうでなければ「何が分かる」と激情を撒き散らした野田の様子はありえなかったし、
野田の行いに眉ひとつ動かさなかった日向の尋常ならざる姿も頷けはする。
勝平もそんな人生を送ってきた。
全国区を目指せるほどの陸上選手でありながら、骨肉種という病に阻まれ、夢の全てを断ち切られてきた人生。
まだ惨めだったこれまでを見返すこともできないまま、終わってしまうだけだった人生。
勝平は色白な肌に生まれ、容姿も中性さを残しながら育った。
子供のころから、どちらかというと女に近かった容姿だったと覚えている。
だから、虐められた経験もないではなかった。
男女。そんな言葉を始めとして、スカートがお似合いだの、お人形遊びでもしていろ、などとからかわれるのは日常茶飯事だった。
同年代の女の子は同情の視線を寄越してくれたものだったが、そんな自分が気に入らなかった。
男なのに。男子からはからかわれ、女子からは同情の眼差しを送られている。
弱虫と見做され、誰からも下に見られている気がして、勝平は男女と揶揄される自身を嫌い、スポーツに没頭するようになった。
スポーツで男達をリードしていれば、バカにされることはない。子供心にそう考え、周囲をリードして回るようになった。
そうして、周囲を見返す日々が始まった。勝負事には常に勝つように務め、ケンカだってすることもあった。
誰かに負けてしまうことが、下に見られることが許せなかった。
一度敗北者になってしまえば、また惨めな気分になる。昔に戻るのは嫌だった。
750
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:48:28 ID:l52Wmwao0
しかし全ての競技に勝ち続けることができたのは小学生までだった。
中学校ともなれば様々な分野に、様々なアスリートがいた。
野球。テニス。バスケ。水泳。どれもこれもに勝てないことを知った。知ってしまった。
悔しかったが、それが一人の人間の限界だった。しかし同時に、一つの競技には一つの奥深さが潜んでいることも分かった。
その競技を本気でやっている人間にしか分からない喜びや達成感がある。
部活動に熱中している他人を見て、勝平はそれを感じ取っていた。
その他大勢の視線なんて関係ない、同じ種目で戦う好敵手との中だけにある理解や共感があることを。
見下しも見下されもしない、喜びのための勝利を追い求めることに、勝平は惹かれた。
この世界の中にいれば、惨めな自分を感じずに済むのではないかという希望があった。
性別や見た目で物事を判断しない、容姿にコンプレックスを抱かなくともいい人生を始められるのではないかという予感があった。
予感に従って、勝平は陸上という道を選ぶことに決めた。
理由は簡単なもので、走るのが一番得意だったからという理由に過ぎない。
それでも、勝平の感じた通り、アスリートの中の世界は自分を『陸上選手の柊勝平』と認めてくれる人がたくさんいた。
誰よりも早ければ尊敬もされる。感情を共有し、仲間と練習に明け暮れるのも悪くはないと思った。
自分は、自分でいられる。そのことが何よりも嬉しかった。
男女であった、惨めな自分なんて感じなくても良かった。
もう見下すだけの人生を送る必要もなかった。見返すためだけの努力をすることもしなくてよかった。
走り続けてさえいれば、自分は惨めな何者かではなかった。
だが、理不尽にも、神様とやらが勝平の全てを奪っていった。
病気。それも性質の悪い病気で、勝平は陸上選手としての生命を絶たれた。走れなくなったのだ。
冗談かと思ったものだった。新しく始まった人生を、ようやく楽しいと思い始めた人生を、唐突に奪われたのだ。
なぜ。どうして。病室で思ったのはそんなことで、次第に、昔感じていた悔しさが湧き上がってくるのを感じた。
陸上をやっていたときに感じる悔しさではなく、再び惨めな人生に落ちてしまったことへの、憎悪とも呼ぶべき感情だ。
おまけに、自分の余命は残り少ないらしかった。救いといえば救いではあった。
周囲に哀れまれる人生は送らずに済むらしいのだから。
とはいえ、それで陸上を失った勝平の心が満たされるものではなかった。壊れた人生の器を直せるものなどどこにもない。
僅かに残った部分に、絶望という名前の液体が注がれているだけの状態に過ぎなかった。
残った人生を、馬鹿にされ続けるだけの人生をどう使うかくらいしか、勝平に考えられることはなかった。
勝平は病院を抜け出した。哀れむ視線を送られるだけなら、いっそ自由になってしまえばいい。
誰の目もなくていい。かわいそうだと言われ、見下される余生だけは送りたくなかった。
751
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:48:45 ID:l52Wmwao0
そして、今はここにいる。
死んでしまったのかは分からないし、生きているのかどうかも分からない。
勝平は動かし続けている足を見た。
痛みもなければ、これといった異常も感じられない。むしろこのまま、どこにだって走り出せそうなくらい調子は良さそうだった。
好き勝手ができる場所。日向の言葉をもう一度思い出した頭が、魅力的じゃないかと言っていた。
そう。日向の言葉を聞いた瞬間、ここならまた、昔の自分に戻れるんじゃないかと思ってしまっていたのだ。
陸上をやっていたころの、誰もが自分を認めていてくれていたころの自分に。
柊勝平という男を男として認識してくれた、あの時代に。
抱きかけた妄想を、しかし「くだらない」と一蹴してくれた少女がいた。
それは目の前を歩き続ける、クーヤだ。
困惑し、澱み、都合のいい夢物語に身を浸そうとした自分ごと、狂っていると言い捨てた。
正論ではあった。反論しようもないことではあったのは、確かだ。
けれども正しいことがいつでもまかり通り、説き伏せることができるわけではない。
正しいなと思い、夢から醒めた気分になった一方で、じゃあ正しさが何になるんだという反発心も生まれていた。
それが自分を救ってくれるのか。惨めでなくしてくれるのか。
生まれた瞬間から見下され、馬鹿にされることを強いられてきた自分とは違い、クーヤは生まれも育ちも高貴な貴族の出だ。
何不自由なく育ち、苦労さえしてこなかったであろう彼女に、一体何が分かるのか。
分かるもんかと反論しようとした矢先、「何が分かるんだよ!」と先に言ったのは野田だった。
ある意味で勝平自身の代弁。同じく理不尽という泥を啜ってきた人間の怒りを、しかしクーヤは風と受け流す。
分かりたくもない。まだ生きている自分には分かってたまるかと。
言葉だけ見れば、それは世間知らずのお姫様の言葉でしかなかった。
だが勝平には――いや、彼女を少しでも知悉している者なら、間違いなく分かるであろう、別の意図が見えていた。
死んでいることを否定したわけではない。別種の生き物だと見る目でもない。
思考の停止を、考えることさえやめてしまうのを心底嫌った言葉だった。
一度でも泥に身を浸していなければ分からない、苦渋を味わった人間の叫びだった。
無理だと思うから、無理になってみせる。クーヤはあの時と同じ目をしていた。
今度こそ、勝平は本当に夢から醒めた気分になった。冷たい水を容赦なく浴びせられたような感覚。
分かっていないのは、自分の方だったのではないか。
クーヤという少女のことを、自分は何も知らない。
どんな生まれで、どんな育ち方をしてきたのか、自分は何も知らない。
それなのにクーヤという人を否定できる権利を……どうして持ち合わせていると言えるのだろう。
何も知らないことだらけじゃないか。
当たり前だ。知ってもいない、知られてもいない人間が理解できるわけがない。
理解してくれるはずもない。自分達はまだ努力さえしていない。
勝平は忘れていたことを思い出した。
惨めなことから逃れようとしたとき。嫌なことを追い払うためにいつも真っ先にやってきたことは、努力じゃないか、と。
だから勝平は去りゆくクーヤの背を追っていた。陸上を始め、まだ早かった先輩選手の後を追うように。
752
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:49:05 ID:l52Wmwao0
勘違いであったとしても、ボクは知りたい。
あの子の送ってきた人生がどんなものであったのかを、知ってみたい。
ボクは、ボク達のような人間は、本当に惨めでしかないのかを、確かめてみたいから……!
そう決意し、一通りの会話を交わしてはみたものの、まだクーヤの背中は遠くに感じていた。
知ってみたいとは考えたものの、どんな風にして聞き出せばいいのか分からないし、
自分のことを話したとしても今は同情しか返ってこないように感じていた。
目的は定まっているのに、その過程が見えてこないもどかしさ。
ゴールは分かっているのに、どのコースを走ればいいのかも分からない歯がゆさといったところだ。
今の自分を整理しきれていないとは、伝える術を持っていないということだった。
案外人間は自らを言葉にできないものだと毒にも薬にもならない教訓を覚えながら、勝平はクーヤの背中を目で追う。
せめて人間観察でもしてみようかと思ったのだった。
今まで気にもしていなかったが、クーヤの背筋はいつでもぴしっと伸びており、
歩き方はモデルを想起させるような、軸のぶれない歩き方だ。教え込まれたのだと分かる。
陸上のフォームにしろ、美しい立ち振る舞いは自然体では不可能だ。
常に意識して、体に染み込ませていなければ出来ようはずがない。
それだけでも、クーヤが形だけでしかない貴族出の人間ではないことは見て取れる。
作法や格式を学び、実践してきた本物の良家の人間なのだろう。
衣装にしてもそうだ。所々に飾られた金箔入りの白コートはどこか軍人然としていて、
彼女の言う『戦国時代』を象徴しているかのようにも感じられる。
だから服装と立ち振る舞いとが相まって、体だけを見れば威風堂々とした大将であるのだが、
肝心の顔つきはどこにでもいるような可愛らしい少女のものであるので、いささか威厳に欠ける。
背伸びしているだけとも感じられなくもない。しかも言葉遣いはやたらと尊大であるのに喜怒哀楽はコロコロ変わるものだから、
尚更子供の背伸びという感覚を強く受けてしまうのだ。
もっとも、クーヤの年齢さえ知らない勝平は本当に年下なのかも分からなかったが……
(それにしても全然喋らないし、なんかピリピリしてるな……仕方のないことなのかな)
753
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:49:20 ID:l52Wmwao0
喋っていたときこそ冷静沈着で、水を打つような声だったクーヤだが、内心穏やかではないのかもしれない。
ここには百二十人もの人間がいる。野田のように考える人間はまだいて、殺し合いを続けているのかもしれない。
現実さえ分かっていない人間。現実を見ようともしない人間に、彼女の心は苛立っているのだろうか。
声をかけるべきだろうかと思い、勝平はかけるべき言葉を探し始めようとした、その時だった。
ぐーっ。
いや、正確にはきゅううう、というような音だったかもしれない。
とにもかくにも、それは可愛らしい音だった。
そして音源は、勝平の目の前の……
「腹が減ったとは思わんか」
くるり、と。
唐突にクーヤが振り向いて言っていた。
「そうか。そうであろう。やはり腹が減っては戦は出来ぬというからな。
だがここで無闇に手持ちの兵糧を浪費してはならん。戦場においても兵站の確保や十分な食料の輸送は重要であるからして……」
「クーヤちゃん、お腹空いたの?」
ピキッ、と。
もっともらしいことを並べ立てていたクーヤの表情が固まる。
「余は問題はない。なに戦場では悪天候で数日、いやひどい時には数ヶ月も輸送が滞ることもある。多少の絶食など余は慣れて」
ぐーーーーーっ。
再び場が凍りつく。
特にクーヤの顔は瞬間冷凍保存されていた。
得意げな顔が眩しい。
「……」
「……」
754
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:49:39 ID:l52Wmwao0
ああ、と勝平は納得していた。
「もしかして、さっきまで黙ってたのってお腹が空いてたのを我慢」
「やかましい!」
勝平の顔にデイパックが投げつけられた。
へぶっ、と情けない声を上げて顔面でデイパックを受け止めたため、勝平の推理は遮断された。
つまりは当たっていたということだった。
デイパックを引き剥がすと、クーヤはひどく赤面していた。
キッ、と悔しそうに勝平の目を睨んでいる。
あーかわいいなーなんて感想が口から零れそうになったが、
言ってしまうともっとクーヤが怒り出す気がしたのでギリギリのところで理性が歯止めを利かせた。
代わりに、もっともらしい言葉で応じる。
「い、いや、別にお腹が空くのは人間として当たり前だしさ、別に恥でもなんでもないよ」
「う……そ、それは、そうなのだが」
「旅の恥は掻き捨てって言うし、気にしなくっていいよ。ボクは気にしない」
さっきと言っていることが矛盾しているような気がした勝平だったが、「そ、そうか?」とクーヤは納得しかけているので、
このまま話を通すことにした。
「いやボクもさ、実はお腹が空いてたんだよね。うんそうだ、どこかで取り合えず食欲を満たそう。
色々さ、考えなくっちゃいけないこともあるけど……でも、こういうことも大事だって思うんだよね」
後半は、半ば自分に言っているような気がしていた。
そうだ。いきなり大切なことを知るのは、双方にとって重いだけだ。
だったら少しずつ知っていけばいい。今であれば、好きな食べ物は何なのか。
どんな食生活だったのか。それ以外にも食事の中で訊けることはいくらだってある。
755
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:50:06 ID:l52Wmwao0
「この先に街もあるし、そこでなんか食べよう。ボクさ、実は色々なところを放浪してて美味しいものとかも知ってるんだ。
任せてよ。えーっと……おぅるお? だっけ? の期待は裏切らないからさ」
「……ふむ。任せて、いいのだな?」
話を進める間に、クーヤはいつもの微笑を取り戻していた。
照れたり怒ったりする顔も可愛いが、ささやかな花のような笑顔もいい。
そんなことを考えている自分は女好きの素質があるのかもしれないと冗談のように思いながら、
勝平は「ご命令を」と恭しく頭を下げた。
「では、アムルリネウルカ・クーヤが命じる。そなたに兵糧調達を任せよう。よしなに」
どこか穏やかな響き。少しは信頼されているのかもしれない、と勝平は思った。
そして……任せる、という言葉が期待されているようで、嬉しかった。
はっ、と、割と本気の殊勝な返礼をして、勝平は街路の先にある町を見据えたのだった。
【時間:1日目午後5時00分ごろ】
【場所:G-4】
柊勝平
【持ち物:MAC M11 イングラム(30/30)予備マガジン×5、水・食料一日分】
【状況:軽傷】
クーヤ
【持ち物:ハクオロの鉄扇、水・食料一日分】
【状況:軽傷】
756
:
◆Ok1sMSayUQ
:2011/02/14(月) 20:51:04 ID:l52Wmwao0
投下終了です。
タイトルは『I know it』です
757
:
◆g4HD7T2Nls
:2011/02/15(火) 04:36:51 ID:mNJwbvjg0
登りきった太陽が落ちはじめる時間である。
島の影が伸び始める兆しが見え始める。
そんな中で、とある一軒家の中からは男女の話し声が小さく聞こえていた。
「ふむ、栗原女史の話はイマイチ要領を得んが……。
その死んだ世界戦線とやらが悪であると言いたいわけか?」
「そ、それはわかりません……けど……」
「分らないけど?」
「あ、あの人、絶対にマトモじゃないぃ!」
「それはもう何度も聞いたのだが……」
民家の中で、九品仏大志は机に腰掛けた姿勢のまま、すっぱりとした口調で言った。
対して、外に繋がる扉付近に立っている栗原透子はギクリとした調子で口を噤む。
少しでも目の前の男にとって都合の悪いことをすれば殺される。
あの少女のように、理不尽に突然に容赦なく。
そんな圧迫感。
被害妄想だと分っていながら、先ほどの光景がリアルである以上は否定できない恐怖感。
目の前の男が、先ほど透子の目の前で人を殺した少女と同類で無い保証など無い。
そう思うと今すぐにでも逃げ出したい。
けれどまた一人きりになるかと思うと、そうすることも出来ない。
つかず、離れず、距離を置いて、だけど離れない。
そんな都合のいい、失礼な態度をありありと出して、けれど透子には対面を気にする余裕すらなかった。
だからせめて、常に謝って、機嫌を損ねないようにしよう。
そんな事を、透子は考えている。
「ご、ごめんなさぃ……」
大志は特に苛立ちなど滲ませていないし、平然とした体を保っている。
しかし透子は怯えていた。
大志の一挙一動に震え上がり、身体を強張らせる。
玄関に立ちっぱなしであるのも、大志がそうしろと言ったわけではなく。
すぐに逃げられるように、ということだ。
会話する相手にしてみれば失礼かつ面倒極まりない態度であったことだろう。
幸い大志は態度に表さないがその胸中は分らない。
透子は自分のそういう面をよく自覚している。だが自覚したところで改善には結びつかない。
むしろ失敗したという意識がより一層、透子を縮み上がらせる。
「ごめんなさいぃぃ……」
欠点を自覚している故に欠点がより浮き彫りになる。
それは一種の、負の連鎖と言える。
もちろん先ほど透子が見た光景が、この態度の要因になっていることは間違い無い。
とは言え結局、オドオドとした装いの大本は透子自身の性格に起因する。
「まあいい、栗原女史よ。我輩が聞きたいのはどうやって殺したか、ではない。
知りたいのは殺す前だ。殺した少女は殺す前、栗原女史にどう見えていた?
殺気を漲らせて殺したか? 冷徹に殺したか? 我輩はそれが知りたいのだよ」
「ふつう、でしたよぉ……。普通すぎて、だから私ビックリして……。
でも、そ、それになんの意味が……あ、ひぃっ……ご、ごめんなさ……」
余計なことを聞いてしまったと、透子は目に涙を溜めながら数歩下がる。
聞かれた事だけに素直に答えればよかったのだと。
特に大志が怒気を発したわけでも無いのに、一人で勝手に怯えていた。
758
:
◆g4HD7T2Nls
:2011/02/15(火) 04:38:19 ID:mNJwbvjg0
「ふっふっふ……!」
「……っ!」
しかし突然、大志は怪しげな笑みを浮かべる。
透子は肩をビクつかせながら、背後のドアを盗み見た。
「よくぞ、聞いてくれたな!」
しかし透子の懸念とは逆に、大志のテンションは少し上がっていた。
「つまりだ、それを知れば事の真理がわかる」
「真理?」
首を傾げる透子に、しかし大志は眼鏡を少し触りながらニヤリと笑ったきりで、説明する気は無いようだった。
聞かれたことを喜んだわりに、簡素な対応である。
「普通に殺した、か。まあ少々意外な答えではあるが……ふむ。
ともすればその集団は……ふむ。
そこそこ有益な情報に感謝するぞ」
ふむふむ、と一人で納得しながら、大志は机から腰を離す。
そのまま透子を素通りして、民家の外へと踏み出した。
「ど、どこいくんですかっ!?」
慌てて追う透子に、大志は一つ振り返り、言った。
「我輩の行くべき所に、だよ」
そう言って、大志は離れていく。
民家の入り口に立つ透子を残し、すたすたと歩いていく。
はっと忘我から帰った透子は、すぐさま必死の形相で喉を震わせていた。
「ま、待ってっ! 待って待って待ってぇぇっ!!」
先ほどまで大志へと向けていた怯えなど忘却したように、
透子は大志の背にむかって走った。
避け続けていた攻撃圏内に自ら躊躇なく飛び込んだ。
「ん? どうした?」
「私もついて行くッ!」
一人にされる。ここでまた一人にされる。
異常者だらけのこの島で一人にされる。
透子の心境からしてみれば、己の死を告げられるに等しかった。
「我輩にか?」
掛けている眼鏡が飛んで行きそうになるくらい激しく、透子は何度も何度も頷く。
「我輩はいっこうに構わんが……」
大志は少しの間、考え込むような姿勢を取っていた。
指が顎に当てられ、ギザギザ眼鏡のオレンジ色のレンズが景観を映しだし、瞳を隠す。
透子にはその内面を捕らえることなど出来ない。
何を考えているのか、何も考えていないのか。
それすらも知れない。
「ふむ」
より一層、読めない表情を垣間見せた大志であったが、
その口元だけは分りやすい笑みを浮かべていた。
759
:
◆g4HD7T2Nls
:2011/02/15(火) 04:39:39 ID:mNJwbvjg0
「だが、覚悟はあるのか?」
「……ふぇ?」
まるで透子の反応に喜んでいるかのように、
口元を吊り上げている。
「覚悟?」
「そう、覚悟だ。我輩の隣を歩くということは即ち、我輩の野望の礎になるということ。
栗原女史にその覚悟があるのか?」
正直なところ、透子には大志が何を言っているのか分らなかった。
覚悟だの野望だの言っていることは支離滅裂で、普段なら絶対に関りたくないと人物だと断言できる。
しかし、今の透子にとっては、返せる言葉など決まりきっていた。
「ある! ありますッ! 覚悟でも何でもあるからぁ……!」
だから置いていかないで。
そう言うことしか出来ないのだ。
反射的に返された、心の篭らない返答に大志は薄く笑い。
「そうか」
再び歩き始めた。
もう大志は何も言わなかった。
透子も何も知る必要は無かった。
けれど好奇心とは毒である。
透子は隣を歩きながら、おっかなびっくり、思い出したように聞いてしまった。
「あの……それで……野望って……なんなんですか?」
大志は足を止めぬまま。
「ふっ」
今度こそ、嬉しそうに笑い。
「ふははっ! よくぞ聞いてくれた!」
本当に嬉しそうに、笑いながら。
ギラギラした光を、野心に満ちた情熱を、眼鏡の奥に滾らせながら。
活力に満ち溢れた声で。
「 世 界 征 服 だ !」
己の野望を、はっきりと断言した。
「……そ……そう……ですか……」
としか、透子には言うことができなかった。
【時間:1日目午後4時ごろ】
【場所:F-2】
九品仏大志
【持ち物:水・食料一日分】
【状況:健康】
栗原透子
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:軽い恐慌】
760
:
◆g4HD7T2Nls
:2011/02/15(火) 04:40:33 ID:mNJwbvjg0
投下終了です。
タイトルは『be ambitious』です。
761
:
名無しさんだよもん
:2011/02/15(火) 13:56:48 ID:/yg.bKhQ0
すいませんが誤字の指摘です。
Come with Me!!の「強大なエヴェンクルガ族に虐げられて、諦めていたあの頃と。」の箇所について
原作ではエヴェンクルガ族ではなくギリヤギナ族が虐げていたと思うのですが…ページの修正お願いします。
あと、うたわれるもの2の発売が決定したそうです。
762
:
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:57:34 ID:STdJ7ieY0
ミスですね、修正しときます。
それではトウカします
763
:
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:58:00 ID:STdJ7ieY0
――――わたしは、きみが、すき
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
これは一体何なのだろう?
私は夢をみていたのに。
泡沫の夢を。
私が望んだ夢を。
楽しい、楽しい、私が作った夢を。
私は、私の理想の姿を借りて、
好きなように、楽しんだ。
幻想を歌い、幻想の中で精一杯楽しんで。
その中で、大好きな人にも出逢えた。出逢えたんだよ。
たった一度きりの、最初で最初の私の恋。
初恋が最後の恋になるんだろうけど。
それでも、私は思いっきり楽しんだ。
私が謳った幻想と夢という舞台の中で。
其処で出逢った幻想ではないたった一人の大好きな人と生きていた。
その時間がとても、楽しかった。
楽しかったはずなのに。
けれども、楽しい夢は、私にとってのイレギュラー、世界にとっての創造主にとって破壊された。
それは、私にとって敗北だったのかもしれない。
いや、所詮借り物の世界で、手のひらの上で踊っていただけなのかもしれない。
でも、私はそれでよかった。
大好きな人の為に、大好きな人との願いを叶えられるなら。
例え、彼が私の想いを忘れていたとしても。
繰り返される世界で、何度も何度も死んだとしても私はそれでいい。
だから、私は立ち向かった。
願った、私の思いが届けって。
そして、そんな中。
私はこの島に呼ばれたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
764
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:58:51 ID:STdJ7ieY0
私は草壁優季を連れて南下していた。
とりあえず市街へ。
それに彼女も乗ってくれて、私達は黙って進み続けている。
何か、話してもいいのだけれども、正直混乱していた。
(どういう事……?)
正直、訳が解らない。
私はもう終わっていたはず。
泡沫の夢を見ていただけなのに。
そして、最後の願いの為に抗い続けていたはず。
なのに、この殺し合いというのは、余りに唐突すぎる。
今、一緒に居る彼女だってそうだ。
彼女は普通で、今までの世界に出てくるようなキャラでもない。
生身の人間が私の目の前に居た。
驚いた、ビックリするくらい。
そして、思いっきり自爆した。
…………ああ、そうよ!
自爆したのよっ!……うぅ。
それも、この訳解らない世界のせいだ。
この世界の創造主も、私がいた夢と別物みたいだ。
もしかして、これは本当に現実の世界なのかな?
私は事故に巻き込まれなくて……なんて。
そんな幻想を抱いて、してしまう。
……でも、それは幻想。
所詮夢。
けれど、もし、この世界が夢なんかではなく。
ただの殺し合いの舞台で。
本当に、一人しか生きれないというなら。
その確証が取れたのなら。
取れたなら。
765
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:59:06 ID:STdJ7ieY0
私は、君を生かす為に、闘いたいよ。理樹君。
だって、私は所詮もう終わった命。
そして、私は理樹君が好き。
理樹君にずっとずっと生きて欲しい。
私が終わった分まで、ずっと楽しんで欲しい。
出逢ってくれてありがとう。
君が居たから、楽しかったし強くなれた。
だから、私はきみのため、戦いたい。
例え人を殺す事が不道徳な事でも、構わない。
神の手に踊らされていても、それでも。
私は理樹君の為に戦って、生きて欲しい。
それが、君と出逢って導き出した答え。
止まるつもりなんて無い。
それが、私が「朱鷺戸沙耶」として、理樹君に好かれた人間として。
「あや」という人生を半端に楽しまなかった少女じゃない。
理樹君に愛された少女として。
精一杯、戦う。
何れ消える宿命でも、私は止める理由にはならない。
ねえ、理樹君。
私は君の為なら人殺しになれる。
なってみせる。
哀しみや苦しみ、憎しみにだって耐えられる。
だから、君の為に殺すんだよ。
だって、わたしは、君が好きだから。
――――私、まだ、頑張れるよ。 何度でも、何度でも、頑張ってみせる。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
766
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:59:29 ID:STdJ7ieY0
「そろそろ休憩にしません?」
「そうね、そうしようか」
大分南下した後、草壁優季の提案に乗って私達は休憩する事にした。
彼女には悪いけど……暫く利用させてもらう。
何れ乗るかもしれないけど、一緒に居た方が情報交換などする時にも便利だし。
最悪盾にだってできるし。
……それに私今まともな武器ないし。
とりあえず銃かな。
私はそう思って水を口に含み、名簿にもう一度目を通す。
知り合いなんていないけど、とりあえずざっと誰か居るか把握したい。
そう思って、目を動かした瞬間。
「ぶっごふぁ!?!?」
「わ、水噴いて、どうしたんですか?!」
彼女が心配するけど、気にしない。
だって有り得ない。
どうして、どうして。
私は『朱鷺戸沙耶』であるはずなのに。
なのに。なのに。なのに。
だから、この殺し合いでも、『朱鷺戸沙耶』であるはずなのに。
どうして、どうして、どうして。
私は震える指で、その名前をなぞる。
『長谷部彩』
――――なんで、私の本名があるの!?
767
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/18(金) 23:59:45 ID:STdJ7ieY0
おかしい。おかし過ぎる。
ちゃんと『朱鷺戸沙耶』もある。
うん、ちゃんと書いてある。
なら、これが私だ。
私であるはず。
今のは見間違い。
OKOK。
息を吐いて、もう一度。
ほら……な……っ……あった。
『長谷部彩』
『あや』
それが私の本当の名前。
人生も録に楽しめずに。
恋もせずに、終わるはずの少女の名前。
なんで、そんな名前が、あるの?
私は『沙耶』
理樹君が愛してくれた『朱鷺戸沙耶』だよ。
今更、『あや』に。理樹君が愛してない『長谷部彩』に戻れない。
戻らない。戻りたくないっ。
これが、今度私に与えた試練というのか。
想像主が与えた罰か試練だというのか。
知らない。
知りたくもないっ。
私は『長谷部彩』に戻らない。
理樹君に愛してもらった『朱鷺戸沙耶』のままで。
闘って、闘って。
そして、死にたいよ。
そう、だから。
――――私は『朱鷺戸沙耶』だ。
768
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/19(土) 00:00:08 ID:0TavFFdc0
【時間:1日目午後3時30分ごろ】
【場所:D-6】
草壁優季
【持ち物:不明支給品、水・食料一日分】
【状況:健康】
朱鷺戸沙耶
【持ち物:玩具の拳銃(モデルグロック26)、水・食料一日分】
【状況:……今更、戻れない】
769
:
インモラリスト
◆auiI.USnCE
:2011/02/19(土) 00:00:39 ID:0TavFFdc0
投下終了しました。
770
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:05:30 ID:HgiVeuOw0
「……ノーリアクションはつまらないな」
丘を睥睨するように聳えた洋館の屋根の上でくるくるとアサルトライフルを弄り回しながら、
来ヶ谷唯湖は三人を見下ろしている。
「怯え惑われても興醒めだが、無視されるのも好きではないんだ。
あまり退屈だと欠伸の拍子にうっかりトリガーを引いてしまうかもしれんぞ」
笑みを浮かべながら露骨な恫喝を口にする唯湖に、しかし見下ろされる三人は
それぞれ違う表情を浮かべながら互いに視線を交わし合っている。
久寿川ささらの顔にありありと浮かぶ困惑を受け流すように肩をすくめる柚原春夏。
最初に口を開いたのは、そんな二人を横目に小さく首を振った香月ちはやである。
「先程はどうも、失礼しました」
「これはこれは、ご丁寧に」
ぺこりと頭を下げてみせるちはやに、屋根に据え付けられた出窓の桟に腰掛けたまま、
唯湖が上半身だけで大仰な礼を返す。
「あのとき退いたのは、やはり不利を悟ったからではなかったのですね」
「それはまあ、そうだろう」
涼しい顔で頷いた唯湖が、手にした自動小銃を誇示するようにしながら言う。
「鉄パイプと拳銃を相手に、どうして私が不利だと思う」
「二人がかりの不意打ちでしたから」
「二人が三人でも、同じことさ」
語る間に銃を手に取るでもない三人を見下ろして、唯湖が小さく笑う。
「なら、どうして」
「……それはまあ、ちはやちゃんの目的を確かめたかったんじゃないかしらねえ」
緊張を感じさせない声は、それまで黙っていた柚原春夏である。
指先ひとつで少年を肉塊に変えながら、銃口を前に怯えるでもなく泰然と構える女を
ちらりと見やって、唯湖が頷く。
「まあ、そんなところだ」
「……」
「彼らがブリッジに上がろうとしたとき、君の姿は見当たらなかった」
「木田さんたちのことですね」
言ってちはやの視線が向いた先、兵器本来の射程からすれば至近に等しい館の門側には
赤黒い血溜まりが放射状に広がっている。
感慨もなく目を戻せば、唯湖が首肯しながら言葉を続けている。
771
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:05:51 ID:HgiVeuOw0
「ああ。ならば、君は彼らの一味ではないのだろう。それがほんの僅かのうちに
共闘の態勢を整えている。何か思惑があると思うのが、普通ではないかね」
「危険な殺人犯のことを聞いて、義憤にかられる人だっているかも知れませんよ」
「……」
冗談めいたちはやの返答は、冷笑と共に受け流された。
「最初からの知り合いで、別行動をとっていた可能性だってあるでしょう」
「まさか、本気で言っているわけではないだろう?」
「……」
一笑に付した唯湖が、射線でちはやの顔を囲うように、くるくると銃口を回す。
「あの連中に混ざっていられるような人間が、そんな目をしているはずがないさ」
「……」
「そら、その目だ」
茜色に染まる夕暮れの下に、一瞬の沈黙が落ちる。
高台を吹き抜ける風が、ほんの僅か、温度を下げた。
「……まあ、そう怒らないでくれたまえ。同病相哀れむというやつだよ」
「……」
漂う沈黙の残滓を振り払うように、唯湖が続けた。
「ともあれ……そんな君が、彼を助けるんだ。何か理由があると思うのが自然だろう?」
「根拠も何も、ありませんけど」
「だが正解だった」
「……」
「君たちは哀れな少年を毒牙にかけ……私はこうして、君たちの生殺与奪を握っている」
確かにね、と吹き出す春夏の声は、ひどく空々しく響いた。
気にした風もなく、唯湖を見上げて春夏が言う。
772
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:06:15 ID:HgiVeuOw0
「それにしても、よくそんなところまで上がれたわねえ」
「ふむ……やはり中にはトラップでも仕掛けてあったのかね?」
「塀や壁にもたくさんあるはずなんだけど」
「どうだったかな。奇跡的に避けられたのかもしれないな」
事もなげに言ってのける唯湖に、春夏が肩をすくめる。
「まあ、これに懲りたらせっかく築いた陣地からのこのこと出歩いたりはしないことだ。
君たちに次があればの話だが」
「肝に銘じておくわ。次があれば」
軽い調子で言い返した春夏が横を見やれば、ちはやはまだ険しい顔で唯湖を睨み上げている。
「……そういえば、ちはやちゃんは最初にどうやってあそこまで?
中、上がってきたのよね」
「さあ。奇跡でも起きたんじゃないですか」
「奇跡、ねえ」
にべもない返答に苦笑した春夏が、今度はささらの方へと声をかける。
「ねえ、あの紙、注意事項っていくつ書いてあった?」
「……十や二十では、とてもきかない程度に」
唐突に話題を振られたささらが困惑の表情を浮かべながら、それでも律儀に答える。
「……だって」
呆れたように唯湖とちはやを見たのは春夏である。
「なら……私はまだ死ぬ運命じゃないんですよ。きっと」
視線を唯湖から外さぬまま、ちはやが口の端だけで薄く笑う。
「だから、この場でも死にません」
「あら、それを言うなら私だってそうよ。大丈夫に決まってるわ」
「はっはっは。随分と呑気だな」
奇妙に歪んだ問答を見下ろしながら、唯湖が声音だけで笑う。
表情は、ひどく冷たい。
「三センチ。私の指が三センチほど引かれれば、君たちは仲良く天に召されるのだが」
自動小銃の銃口は、並んだ三人をきっちりと照準に納めている。
773
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:06:30 ID:HgiVeuOw0
「それとも根拠があってそう泰然自若としているのかね。
何か切り札でも用意しているというなら、そろそろ出しておいた方がいいと忠告しておこう」
「切り札? ……まさか」
一瞬、何のことだか分からないという顔をした春夏が、それを受け流す。
「では何故、生を確信する」
「ああ、それは違うわねえ」
何気ない調子で、春夏が小さく笑って、唯湖の言葉を否定する。
小さく、小さく息をつきながら、春夏は唯湖を見上げて、言う。
「生きることなんて、どうだっていいのよ。どうだって」
表情は、変わらない。
どこまでも細く、静かな、笑みに乗せた、しかし、
「私は、死を、認めないだけよ」
それはひどく、冷えきった、声音だった。
「私には、死ねない理由がある。だから、死なない。それはただ、それだけのことだわ」
一語一語を区切るように放たれる、それは詠うような、呪詛と呼ばれるものに程近い、
耳から人を侵し臓腑を掻き混ぜるような音の羅列。
空と風と、辺りに満ちる花の香りを腐らせるような、澱みを招く言の葉。
そういうものが、柚原春夏の口からは漏れ出していた。
「―――」
音という音、色という色が失われたのは、一瞬だった。
「……それにね」
沈黙を打ち消すように、春夏が笑顔を作る。
いつもの明るく、茶目っ気のある笑みだった。
澱みはもう、どこにも見当たらない。
「あなた、楽しそうだから殺さない、って言ったじゃない?
だから楽しそうにしてれば大丈夫かなあ、って春夏さん思ったの」
「……」
「……だめ?」
「……はっはっは。―――はっはっは」
乾いた、笑いだった。
眼光も、向けた銃口もそのままに、声だけで笑ってみせた来ヶ谷唯湖が、しかし、
「確かに、君たちは面白いな」
言って、銃口を下げた。
***
774
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:06:52 ID:HgiVeuOw0
「なるほど。君たちにはそれぞれ、保護したい人物がいると」
幾つかの言葉を交わした後、得心したように頷いたのは来ヶ谷唯湖である。
「そういうこと。だから、お互いの目的の邪魔にならない限りは手を組んでおきましょう、ってわけ。
紳士協定ならぬ、淑女協定ってところかしら?」
「淑女かね」
「淑女よ?」
胸を張る春夏に、唯湖が小さく溜息をつく。
「……まあ、いい」
「何かひっかかるわねえ。いいけど。……で、物は相談なのだけれど、えーと、」
「来ヶ谷だ。来ヶ谷唯湖」
「なら、唯湖ちゃん」
「……その呼び方はやめてくれ」
「じゃあ、来ヶ谷ちゃん?」
「……」
緊張感の緩みきったやり取りに、しかし割り込むように声を上げた人物がいる。
「春夏さん」
久寿川ささらであった。
思い詰めたように黙り込んでいたささらが、意を決して口を開いていた。
「この人は危険すぎます。私は反対です」
「あらあら」
「……」
ささらの言葉に、春夏と唯湖が目を見合わせる。
「春夏さん……といったかな。あなたの連れはどうも状況判断が苦手なようだ」
「そうねえ。いい子なんだけど、そういうところ、あるわねえ」
「春夏さん!」
775
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:07:11 ID:HgiVeuOw0
茶化すような二人に、ささらがトーンを上げる。
尚も何かを言い募ろうとしたささらを止めたのは、春夏の眼光である。
笑顔の奥に潜む、何か怖気の立つようなものが、一瞬にしてささらを飲み込んでいた。
「ささらちゃん。真面目な話、私たちいま、絶体絶命」
「……」
「こうして話を聞いてもらってるだけで、大ラッキーなのね」
「……っ」
その言葉に、ささらが唇を噛んで俯く。
確かに自動小銃の銃口は下がっていた。
しかし来ヶ谷唯湖がその気になれば、徒手空拳の三人は一秒を待たず全滅するだろう。
理解していたはずの危機感は、流転する状況の中でいつの間にか薄れつつあった。
それを改めて突きつけられたささらは、顔を上げられずにいる。
そんなささらの肩に手をかけると、春夏がぐっと握り拳を作って続ける。
「……でもね、このまま春夏さんのトークで丸め込めれば、形成大逆転。
淑女協定も一気に戦力倍増よ!」
「聞こえるように言うものではないと思うが」
「大丈夫、それも計算のうちだから」
唯湖が苦笑するのへ、春夏がウインクを飛ばす。
「……まあ、いいさ。では早速、丸め込まれるとしようか」
「え?」
「そろそろ退屈してきたところだ。話を先に進めよう」
「あら、悪いわねえ」
まるで悪びれた様子もなく呟く春夏。
「こう見えて、私にも友人と呼べる存在くらいはいてね」
「本当にサクサク話を進めるのね」
「……続けていいかな」
「どうぞどうぞ」
「……私はこれから、彼らを捜してここへ連れてくる」
「ここって、そこ?」
意味のない問いに唯湖は頷くと、腰掛けた屋根を銃底で小突く。
「君たちは彼ら……そして彼女らを、この館で匿ってくれたまえ」
「そんな、都合のいい……!」
「やめなさいってば」
またも声を上げようとしたささらを、春夏が身振りで制する。
「いいわ。十人でも二十人でも、この春夏さんにどーんと任せなさい!」
「……私はそれほど友人の多い方ではないよ」
唯湖の苦笑と共に、協定は締結された。
***
776
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:07:34 ID:HgiVeuOw0
「……ところで、君」
「何ですか」
さやさやと音をたてる梢の下、来ヶ谷唯湖が少し離れて歩く香月ちはやに声をかける。
闇が忍び寄りつつある林道である。
陽射しは既に傾いて、二人の正面に沈もうとしていた。
足を止めたちはやが、唯湖の方へと向き直る。
「そんなもの、君に扱えるのかね?」
「さあ。ないよりは選択肢が増えるでしょう」
答えたちはやの腰には、可憐なワンピースにはひどく不釣合いなものが括りつけられている。
無骨な革のベルトに差し込まれているのは、黒光りする大振りな拳銃であった。
フェイファー・ツェリザカ。
洋館の門の側に転がった、木田時紀であった肉塊から拾い上げた代物である。
「ロジカルな返答だ。花丸をやろう」
「どうも」
少女らしからぬ凶器を身につけたちはやが、やはり少女らしからぬ無表情で短く答える。
会話を続ける気のない気配がありありと浮かぶ声音だった。
「しかし、あの御仁……柚原春夏といったか。なかなかに食えないな」
「……」
千早の様子などどこ吹く風と、唯湖は楽しそうに言葉を継ぐ。
「一方的な従属に信頼は生まれない。そこのところをよく分かっている」
「……」
「大人は怖いね。女だから尚更だ」
「……連れてきたいご友人って、どなたですか」
放っておけばどこまでも続けそうな唯湖の言葉に耐えかねたように、ちはやが口を開く。
刺のある言葉は、しかし核心を突くように鋭い。
「はっはっは」
声だけで笑った唯湖が、目を細める。
777
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:07:52 ID:HgiVeuOw0
「まあ……誰を連れて戻ろうと、仲良く蜂の巣だろうからね」
当然のように唯湖は協定の無視を口にする。
憤りを覚えた様子もなく、ごく自然な成り行きを告げる口調だった。
「今、丘を下っている最中に撃たれなかったのは、君がいたからだ」
「……」
「君にもそのくらい分かっているだろう。だから親切にそういうことを聞く」
「……厄介払いをしたいだけです」
「やはり優しいね、君は」
「……」
ざあ、と夜を含んで吹く風が、梢を鳴らす。
「余裕、あるんですね」
「人生は楽しむものだよ」
「……言うわりに、楽しんではいなさそうですけど」
「はっはっは」
唯湖が、笑う。
今度の笑い声には、色がついていた。
微かな愉悦の、色。
「なかなかの慧眼だ。お姉さんは少し感心したぞ」
ぽんぽんと、親しげにちはやの肩を叩くと、嫌そうに顔をしかめるその脇を抜けて、
林道の先へと歩を進める。
ややあって足を止めた唯湖が、振り向かないまま、告げる。
「……楽しくはない。楽しくなどないさ。生きることは」
778
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:08:05 ID:HgiVeuOw0
見つめる先には、沈みゆく太陽がある。
その背は黄昏に向かって歩むように、見えた。
「本当に守りたいものなど、どこにもない」
逆光の中の影は、ゆらゆらと揺れているようだった。
夕暮れの茜色と、宵闇の群青と、混じり合った空に溶けるような、曖昧な影。
「きっと私は、殺すだろう。知り合いも、友人も。誰も、彼も」
ゆらゆらと揺れる影が、ゆらゆらと揺れる言葉を紡ぎ出す。
それはひどく虚ろな声で、だからちはやは吐き出しかけた言葉を呑んで、ただ、影を見ていた。
「戯れさ。戯れだよ、この殺し合いも」
それを最後に、黄昏の声が、ふつりと途切れるように、消えた。
「―――さて、見送りはこの辺りで充分だ」
振り返ってそう言った、唯湖の表情はよく見えない。
声音からは、虚ろな響きは消えていた。
きっとまた色のない笑みを浮かべているのだろうと、ちはやは思う。
「さすがにもう射程の外だし、向こうからも見えないだろう」
「……残念です」
何が、とは言わなかった。
唯湖が聞き返すことも、なかった。
代わりに小さく首を振って、唯湖は口を開く。
「壊れ物が寄せ集まっても、きっとろくなことにはならないさ」
「……」
ちはやは、答えなかった。
「まあ、よろしく伝えておいてくれたまえ」
それだけを告げて、軽く片手を上げた唯湖の影が遠ざかっていく。
振り返らず歩むその背を、闇が溶かして消えるまで、ちはやはじっと見守っていた。
***
779
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:08:18 ID:HgiVeuOw0
「戻ってこないでしょうねえ」
「……え?」
夕暮れを望むテラスの上で、あっけらかんと告げた春夏に、ささらが思わず聞き返す。
「たぶん戻ってこないって言ったのよ。あの来ヶ谷って子」
「……」
「下のこと、聞いていかなかったもの。
……それにしても、まだちょっと臭うわねえ。ご飯が美味しくないわ」
「アンモニア臭、でしょうか。……下?」
「トラップ」
支給品のパンを小さくちぎって口に運びながら、春夏が階下を指さして見せる。
「紙がある、ってわざわざささらちゃんに言ったのよ、私」
「……確かに」
「あの子がそれ、聞き逃すわけないわ。だけど……」
「そこを突いてこなかった。つまり、誰かを連れて戻ってくるつもりなどない、と」
「そういうこと。ま、そんな傍証なんてなくたって、あの態度見てればわかるわよ、誰でも」
「……誰でも、ですか」
「そんなんじゃ、将来つまんない男に引っかかって泣くわよ?」
「……でも、それなら後ろから撃ってしまえばよかったのに」
からかうような春夏の仕草に眉根を寄せながら、ささらが言い返す。
「ちはやちゃんが側にいたでしょ。そんなに精密な狙いなんてつけられないわ。それに……」
「それに?」
たっぷりと間を空けて焦らした春夏が、悪戯っぽく笑んで、舌を出す。
「その方が、楽しそうじゃない」
「……悪い病気でも、うつされたんですか」
呆れたように言ったささらが、付き合っていられないとばかりに首を振る。
「どうかしらね」
言った春夏が、くすりと、笑った。
780
:
ヤン・ヴァーツラフ・ヴォジーシェクの地平
◆Sick/MS5Jw
:2011/02/19(土) 02:08:58 ID:HgiVeuOw0
【時間:1日目午後6時前ごろ】
【場所:H-6 洋館】
柚原春夏
【持ち物:M134ミニガン&大量の弾薬、水・食料一日分】
【状況:健康】
久寿川ささら
【持ち物:M134ミニガン&大量の弾薬、水・食料一日分】
【状況:健康】
※M134は固定式です。携帯してダンジョン探索はできません!
【場所:H-5】
香月ちはや
【持ち物:鉄パイプ、フェイファー・ツェリザカ(4/5)、予備弾×50、水・食料一日分】
【状況:健康】
来ヶ谷唯湖
【持ち物:FN F2000(29/30)、予備弾×120、バーベキュー用剣(新品)、水・食料一日分】
【状況:アンモニア臭】
781
:
管理人★
:2011/02/19(土) 12:51:38 ID:???0
容量が肥大化してきたので新スレ立てました。
作品の投下はこちらでお願いします。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14099/1298087314/l100
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