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Fate/thanatology ―逆行冥奥領域― 第3層

48Dragon&Dracula ◆HOMU.DM5Ns:2025/08/15(金) 23:07:03 ID:w6YUILfk0

 ◇


 時は遡る。
 これはまったくの余談であり、しかし未来に関わるかもしれない。
 猫の尾が何本あったのかを見逃してしまうような、些細な分岐点だ。

 
「グハッ……ウオオオオ!?」

 衝撃。壊音。閃光。
 地下通路の洞穴で起きた兇変にフレイザードは身体を回してもんどり打った。
 爆風はない。巨大な何かが通り過ぎ、着弾地はおろか通過した空気をも消滅して生まれた真空が生んだ突風だ。
 
 認識が追いつかない。何が起きたか把握できない。
 白貌のランサーとの戦いに集中して、頭の上から墜ちてくる白滅がフレイザードの目には入らなかった。
 それだけ意識を注がなければならない強敵だった。そうしなければ光が来るより先にたちまち物言わぬ土塊に分解されていたろう。
 そして傾けていたから、直上の砲撃への対応が一手分遅れてしまった。
 もう一手、ランサーの退避を怪訝に思い周囲の警戒を高めていなければ、上半身が消し飛ばされていた。即死しなかっただけでもまだ運がいい方だ。

「ぐ……くそ、何だってんだ───」

 禁呪法生命の頭部に脳は詰まってはない。重要な機関は胸の核(コア)のみ。脳震盪は概念からしてない。
 すぐに混乱から復帰し、状況を把握をしようと立ち上がる。
 立ち上がろうと、した。

「……あ?」

 視座が持ち上がらない。
 待てども体は地面に横たわったまま、フレイザードの意に反して沈黙を貫いている。
 腰から上は自由に動くのだ。胴も指も、そこは肉眼でしっかりと確認できている。
 
「なんだオイ、なんなんだこりゃあ」

 では、土埃が晴れた下半身は。
 
「脚が……俺の両脚がぁあああああ!?」

 我が目を疑う惨状に怪物の大口が裂けんばかりに開く。
 炎と氷の岩石で出来たフレイザードの両脚は、消失している。
 脚の付け根、腿から下をごっそりと抉られ、赤子より短い下肢が晒された。
 
 ……禁呪法生命は痛覚が鈍い。
 外法で造られた贋作の生命の弊害か、戦闘用の兵器として割り切った運用か。
 痛みで判断を間違えない能力は、確かに兵には有用であるように思える。
 しかし感覚の鈍さとは、異常を検知する機能も失わせていることと抱き合わせだ。
 体の不調、状態の故障を把握できないまま行動する。それは生命どころか道具としてすら完全に壊れている。
 そして異常の気づきの遅れとは、得てしてこうした未曾有の事態が起きた際に、続けざまに二次被害を引き起こす。
 
「は、待て、待て待て」
 
 消滅の爆撃は下層の岩盤を穿って大穴を作った。なので外の様子を地下からでも容易に窺える。
 倒れたままのフレイザードでも、それははっきりと目に映った。
 世界の終わりを見せられているような光景。空を切り裂いて走る流星の一条が、この穴の位置に向けて方向転換したのを。
 
「待てよオイィィ!?」
 
 死にかけの魔物に止めを指すべく再び振るわれる銀の鉄槌。
 脚は再生を始めてる。核させあれば魔力で肉体は幾らでも復元できる。
 ───無理だ。間に合わない。損壊箇所は切断や粉砕でなく消滅だ。相当する部位を新しく生産しなければならない。秒単位で終える範囲を超えている。
 唯一取り得る策、全身を分解させて移動できる弾岩爆花散は、広大な面攻撃の前では用をなさない。核も巻き込まれて諸共に抹消だ。


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