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児童文庫ロワイヤル

55◆BrXLNuUpHQ:2024/04/22(月) 00:02:56 ID:???0
 突如として聞こえた声に、3人は耳をすませた。拡声器でも使っているような声。音の反響の仕方からそれなりの距離が離れている。そして方角はおそらく、山道の上り。気になるのはその内容。爆弾とは何なのか。そして。

「馬鹿か。殺し合いってわかってんのか。」

 安永は呆れて言った。爆弾がはったりにせよ本当であったにせよ、あまりに大雑把な手だと、廃工場に立てこもった時に割と似たようなことをした口で言う。むしろ経験者だからこそ言う。相当な用意があっても警察に突入されたらどうしようもなかったのだ。本気で殺しに来る馬鹿がいるなら、マジな危険さだ。

「マズいよ、急いで止めさせないと。」
「待って康一くん、なにかおかしくないかしら。」
「なにかって、どういうことです?」
「いえ……引っかかるのよ、なにか。不自然っていうか……女の勘っていうか……」
「……なら、俺だけで見てきます。」
「宏くん。」
「俺も鷹野さんと同じ考えだけど、このまま森の中を迷ってるぐらいなら罠でもいい。」

 そして同時に、渋る鷹野に何かを感じた。鷹野が言ったのと同じような理屈だが、安永はそれを鷹野に感じていた。
 なにより、安永の仲間はああいう放送にほいほいついて行きそうなやつが何人かいる。そのことは仲間たちもわかっているので、結果的に知り合いと出会える可能性がある。そこまで考えて、安永は仲間が巻き込まれている可能性を考えてげんなりした。自分一人だとある意味不幸中の幸いだが、どうせ巻き込まれているのだろう。

(カッキーとかまた拉致られてるんだろうな。それか、逆にカッキー以外みんな拉致られてるとかか。)

 一人だけ変な風に割りを食ったりする伊達男を思い浮かべて失笑していると、爆音が響いた。方角は、さっきの放送の方向。

「爆発!? さっきの話本当だったのかっ。」
「宏くん、今の聞こえた?」
「わかってます、でもなおさら行きますよ。」
「……そう。幻聴じゃなかったのね。」
「鷹野さん。」
「いえ、ごめんなさい、少し現実感が無くて。」
「ああそうじゃなくて、ぼくも同じです。今度は爆発なんて、まるで幻覚でも見てるみたいだなって思って。」
「そうね……どこまでが現実かわからなくなるわ……宏くん、言っても止めなそうだから言うけど、私はこの道から山を下りようと思うわ。気が変わったら、追いかけてきて。康一くんはどうする?」
「ぼくは……すみません、少し考えていいですか。」

 信じられないが、殺し合いというのなら爆弾の一つも置いてあるのかもしれない。安永は認識を切り替えて、どう森の中を捜索するかを考えつつ、柔軟運動を始めた。康一は安永と鷹野の顔を見比べて考え込んでいる。少し話した感じ、鈍くはなさそうだ。自分と同じように、仲間があの爆発音に近づく可能性を考えたり、罠だと警戒していたりするのだろう。もしかしたら鷹野を一人で行動させることを良しとしていないのかもしれない。その理由は不明だが、今の安永としてはさっさと決めてくれればそれでいい。

(足音だ。複数だな。)
「ぼくは……あの子たちと話してから決めたいと思います。」
「あの子……?」

 首を傾げた鷹野が道の先を見て身構える。こちらに3人の子供が向かってきていた。小学校高学年ほどだろう。一瞬さっきの放送をしていた3人かと思って、1人が女子だったので思い直す。
 向こうも気づいたのだろう。100メートルほど離れた場所で止まり、3人でなにか話しだした。チラチラとこっちを見つつ、時々もと来た道を見返している。少ししてその中の1人が小走りに駆け寄ってきた。

(なんとなく菊地に似た雰囲気だ。)
「野宮球児だ! 殺し合いなんてやる気はない! アンタらは!」
「安永宏! 誰が殺し合いなんかやるかよ!」
「だよな! おーい! 大丈夫そうだぞ!」

 簡単に信用するなよとは思うが、こういう思い切りの良さは好きだ。
 安永はあっという間に6人のパーティーの中にいた。


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