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児童文庫ロワイヤル

54◆BrXLNuUpHQ:2024/04/22(月) 00:01:52 ID:???0



 安永宏にとって拉致されて殺し合わされるという状況は、驚きはしたもののどこか納得がいくものだった。
 中一の夏休みに廃工場に立てこもって以来、ヤクザやらカルトやらと何度もやり合ってきている。数カ月前には実際に拉致られているし、喧嘩の強い安永は直接殴り飛ばすことも多い。早い話が、思い当たるフシが山ほどあるのだ。

(つっても、毒付きの首輪はねえだろ。谷本なら……いや流石に無理か。)

 気がつけばどこともしれない森の中。赤い霧に赤い空、黒い雲に稲光とめちゃくちゃホラーな環境だ。正直こんな外を出歩きたくはないが、今の安永は完全なる迷子。
 自分を拉致った奴は相当俺に頭が来てるんだろうなと考えつつ、少し歩くと小道に出た。
 さて、下りか上りか。緩やかな坂道を降りていこうとして、ふと仲間の相原が言っていたことを思い出す。山で遭難したら登れ、と。
 山ではなく森だが、まあ高いところのほうが色々見渡せるだろうと仲間の助言に従う。その歩きに恐れはない。相原を始め、これまでの安永のピンチには常に仲間たちの助けがあった。今安永がすべきは、その仲間の足を引っ張らないようにクレバーに立ち回り、自分が助ける側になるように動くことだ。

(毒って言うからには、タイマーとかリモコンとかで動くんだろうな。立石じゃ火薬の扱いはできても毒や機械はどうにもなんねえだろうし、相原も菊地もこういうハイテクなのはできねえだろうな。なら、誰か外せる参加者を見つけるしかねえ……あいつはどうだ?)

 犬のように首輪を付けられる趣味など無い。真っ先にこいつをどうにかしてやると思いながらどれだけ歩いただろうか。自然体でありながらもしかし油断無く周囲を警戒していた安永は、霧に紛れた人影を見つけた。即座に足音を忍ばせつつ駆け寄る。明るい髪の色をしたロン毛だ。女だろうか。
 しばらくつける。女は山歩きの心得も度胸もあるのだろう。安永も舌を巻くほどに、軽トラでも走れそうなほど整備されている小道とはいえ山道を歩いていく。油断はしない。ここは殺し合いの場だとはよく覚えているし肝に銘じているが、そうでなくても反骨精神がある。
 そんな安永が女に声をかけようと思ったのは、山道を降りてきた学ランと女が会話を始めたからだった。


「なら、みんな気がついたらこんな森の中にいたんですね。」
「ええ。まあ、森っていえるかはわからないけれど。」
「どういうことです?」
「ほら、この草を見て。これ、造花よ。この木も花も。全部プラスチックでできてるみたい。」
「うわっ! なんだこれ! すり潰してるのに汁も何もでてこないなんて。」
「詳しいんですね。」
「それほどでもないわ。山村の診療所で看護婦をしてるからね、不自然なものは気になるの。」

 出会った女、鷹野三四はそう言いながら一輪の花を手折ろうとして、不自然な弾力をしたそれから手を離した。
 看護婦だと言う鷹野三四と、高校生だと言う小柄な広瀬康一、どちらも首輪を外すことはできないが殺し合いに否定的らしい。肯定的な人間などいないとは思うが、拉致した人間のジョーカーが紛れ込んでいる可能性もあるので心を許しはしない。それでも今すぐに殺し合いにならないだけましだ。

「看護婦さんかぁ。そう言われると優しい雰囲気が──」
『あーあー聞こえるかー! オレ達は殺し合いに乗ってない! みんなも殺し合いなんてやめようよ! LOVE&PIECE! 愛だよ愛! てかさ、いきなり変な森に連れて来られて殺し合うヤツいねえよ! あんな変なウサギっぽいやつに殺し合えって言われてさ、殺し合うなんてさ、こんなんでいいのかよ! だから! 殺し合いなんてやら『お前放送ヘタすぎんだろ変われ!』ちょっと待てジャンケンで勝ったのオレじゃん!『爆弾のこと言わないと』それで! あの、この、灯台『展望台』展望台に、ちがう、展望台の、裏に、爆弾があんのよ! 仕掛けたの! で、あの展望台来るときはこの下の崖みたいな坂の下の方で、合図してほしいのよ! そしたらあの爆弾のスイッチオフにするから、あの、あれ、あれだ、『あのーあれだよ』あの『アレだね』おい全員ド忘れしてんじゃねえか!』


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