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児童文庫ロワイヤル
386
:
◆BrXLNuUpHQ
:2025/06/04(水) 07:45:13 ID:???0
(なら、今ここで無理して殺す必要はないよな……あと6時間、放送ギリギリまで、こういうバカを集めて、最後にぶっ殺せば──)
「あの……」
「あ?」
エリンに声をかけられて、カツエはスプーンが止まっていることに気づいた。どうやら考え込んでいたらしい。ちょうど小腹も空いていたところに出てきた暖かくて優しい味の飯に、張っていた気が緩んだのは仕方のないことなだろう。これではいかんと出されたお茶をゴクゴクと飲み、飲んでからこれに毒が入っている可能性を考えて、青い顔になるが、何も起きないのでホッとする。当のエリンはというと、凛の横に座って話しかけていた。
(アタシだけかよ……)
「竹井、大丈夫か?」
「……なにが?」
「いや……ほら、手だよ。」
「あぁ……アンタは?」
「俺は……あー、いいパンチだったぜ。」
「あっそ。」
陽人も、無理をしているのが明らかだった。顔は強ばり、じっと監視カメラの映像を見ているかと思えば、落ち着かないように部屋の棚や引き出しを漁ったりしている。そうしてしばらくすると、袋菓子の小袋を1つ開けて、また監視カメラの映像を見始めるのだ。
誰も彼もが疲れた顔をしていた。たった6時間、知り合いの名前が呼ばれた信用できない放送が流れただけで、それまで保っていた連帯が崩れている。カツエはこの3人がまともなグループだった頃を知らないので、やけに辛気臭い奴らに潜り込んでしまったと思った。
(やっべ眠くなってきた……この空気も疲れるし……いやでも、さすがに寝たらやばいか?)
現に今、こうして自分は飯まで食っている。エリンたちはあの戦闘にも関わらず、カツエをパニックになっていただけだと判断してなんと受け入れたのだ。実際問題あの時のカツエは殺られる前に殺ろうと思ったから撃ったので出会い方が違えばもっと表面上は穏便に殺るはずだったのだが、ともかく寝れるときに寝るのはいいかもしれない。自分に気づくぐらいには注意深いのだし、センサー代わりと考えればアリだろう。
「そこのソファー借りるよ。」
これはある意味賭けだ。凛たちが度を越したお人好しならば、利用価値はでかい。なにせ81人の死者だ。カツエが首輪を外すには1人で10人近く殺さなくてはならないかもしれない。その時のために、同じようなお人好しを集めるお人好しホイホイとして、そして肉の盾として使えるか。
「カツエさん、どうぞ。」
「お、あんがと。」
直ぐに立ち上がりパタパタと小走りで棚からタオルを渡してきたエリンを見て、カツエは思う。特にコイツは使える。何人だか知らないけどきっと利用できる。後は、カツエ次第だ。
(せいぜい利用させてもらうよ、エリン。)
(カツエさんはよく見張ってないと。)
そのエリンがカツエを危険視していることに気づかぬまま、彼女は眠りにつく。その緑の瞳の慧眼さは、彼女の予想を超えていた。
エリンはこのグループで、実は放送を真実だと誰よりも思っていた。そして同時に同じぐらいに疑っていた。いわばフラットな中立の視点である。
親が処刑され天涯孤独の身となった彼女を助けた蜂飼いのジョウンから学んだ様々な知識は、この場ではほとんど役に立たない。だがそれでも、人の話というものが、時に自然と、つまり真実を言い表していることもあれば、誤りや過不足があることもあることは、変りなかった。
エリンはツノウサギのことを知らない。死野マギワのことも知らない。彼女たちがどのような立場で、どのような知識を持って、どのような事情で、どのような目的であの放送をしているのか、正しいことは何もわからないのだ。また彼女がリョザ真王国の、大公領の、その中でも異端の霧の民ということも大きいだろう。生まれからして本来なら言葉が通じるかも怪しい異民族の中で、異民族の文化を受けて育ったのだ。必然的に己の見え方が他とは違うことを、環境が教える。たとえ差異が無くてもあることになる。
だからエリンは、竹井カツエという生き物を最初から観察していた。彼女の闘蛇を思わせる殺気立ち方に、なぜそうなったのか気になったのだ。そうして気づいたのは、違和感だ。なにか、なにか思い違いをしているように思えてならない。凛や陽人と同じような、単に殺し合わさせられている子のはずなのに。
緑の瞳は見えないものまでまなざせるのか?
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