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表裏バトル・ロワイヤル 2nd Stage
1
:
2丁目にあるのは廃図書館 カギがあるのは天か地か
◆vV5.jnbCYw
:2022/09/18(日) 18:02:54 ID:v421umQ60
[参加者名簿]
2/9【ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス】
○リンク(♧ジャック)/●イリア(♢3)/●ゼルダ(♡クイーン)/〇ミドナ(♤クイーン)/●ダルボス(♢6)/●キングブルブリン(♤3)/●モイ(♤2)/●ガノンドロフ(♤キング)
2/7【ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち】
●アルス(主人公)(♤A)/●マリベル(♡2)/●ガボ(♤6)/〇メルビン(♧2)〇アイラ(♢8)/●シャーク・アイ(♡キング)/●ボトク(♤9)
3/7【ペーパーマリオRPG】
●マリオ(♤7)/●ピーチ姫(♢クイーン)/○クッパ(♧キング)/〇クリスチーヌ(♢9)/●ノコタロウ(♡6)/●ビビアン(♡4)/〇バツガルフ(♤ジャック)
3/7【ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
●東方仗助(♢キング)/●広瀬康一(♡8)/●山岸由香子(♡5)/〇ヌ・ミキタカゾ・ンシ(♧10)/〇川尻早人(♧8)/〇吉良吉影(♧9)/●矢安宮重清(♢4)
3/7【FINAL FANTASY IV】
●セシル・ハーヴィ(♡9)/○カイン・ハイウインド(♡3)/○ローザ・ファレル(♧クイーン)●ヤン・ファン・ライデン(♧7)/●エッジ(♡ジャック)/●ゴルベーザ(♢ジャック)/○ルビカンテ(♢7)/
4/6【新世界より】
●渡辺早季(♡10)/○朝比奈覚(♧5)/○伊東守(♧3)/〇秋月真利亜(♡A)/〇スクィーラ(♤10)/●奇狼丸(♢10)
3/5【無能なナナ】
○柊ナナ(♢2)/○小野寺キョウヤ(♤5)/●犬飼ミチル(♧4)/○佐々木ユウカ(♡7)/●鶴見川レンタロウ(♤4)/
2/5 のび太の魔界大冒険
〇野比のび太(♢A)/●ドラえもん(♧6)/●美夜子(♧A)/●満月博士(♢5)/〇デマオン(♤8)/
計52名 残り22名
【主催側】
ザント@ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス
カゲの女王@ペーパーマリオRPG
メジューサ@ドラえもん のび太の魔界大冒険
まとめ
表裏ロワwiki
348
:
Last battle3 Hopes and Dreams
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:54:22 ID:g4PHLZmo0
「後は、頼んだでござるよ。」
それは、仲間に、自分より若い者達に、先立たれ続けた老兵士のたった一つの答え。
意識が完全に途切れる瞬間、早季とノコタロウ、そして自分を封印から解放してくれた少年の笑顔が浮かんだ。
□
「老いぼれが味なマネを……そんなことをしても無駄というのに……。」
絶望は、まだ終わらない。
女王の桁外れな力のことだけではない。
巨悪に付けられた光の傷が、消え始めていた。
(……そうか……。)
メルビンが生きていれば、もう少し早く気付いたかもしれない。
何しろ彼は、漏れ出す呪力が傷を癒した瞬間を目の当たりにしているからだ。
業魔化した瞬を取り込んだのだ、そうなるのもおかしな話ではない。
もしもの話、まともな精神の持ち主が業魔化したことに気付けば、周囲の親しき者の健康を害さないために、漏れ出す呪力を拒絶するだろう。
だが、悪である女王に、そのようなことを気にする必要はない。
彼女にとって、全てが道具か、征服対象でしかないのだ。
リンクはマスターソードを手に、再び立ち上がる。
だが、敵の懐に飛び込むことが出来なかった。
先ほどはメルビンの犠牲で一命をとりとめたが、今度は復活のチャンスはない。
逆に、女王は回復し続けている。
然るべきタイミングで、渾身の一撃を回復させる暇もないまま与えなければいけない。
盤面は再び、女王のものとなった。
□
だが、この場で戦っているのは、7人だけではない。
女王に取り込まれた者もまた、生きようとしていた。
勝利はまだ遠い。だが、着実に近づいていた。
【メルビン@ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち 死亡】
【残り 8名】
349
:
Last battle3 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:55:18 ID:g4PHLZmo0
夢とも現とも分からない空間の中で、クリスチーヌは目を覚ました。
女王の手に吸い込まれてから、どれほど時間が経ったのか分からない。
「……みんなは!?」
「目が覚めたんだ。でも、覚めない方が良かったかもな。」
聊か高い声を聞いて、クリスチーヌは振り返った。
そこにいたのは、お面を付けた少年だった。
無の空間の中にいた、色の付いた存在だったので、それだけで異様に見えた。
「ここは、どこなの?」
「あの怪物の胎の中というべきかな……。」
「カゲの女王の身体の中っていうこと!?」
少年の言葉を聞いて、ようやくクリスチーヌは思い出した。
自分は、決して叶えてはいけない願いを叶えてしまったことを。
「それが一番近いだろうな。」
「……どうして、私達は死んでいないのよ……。」
「恐らく、世界を越えて生きた僕らの力は、奴にとって重要ってことだ。だからこうして生かされているんだろう。」
彼女は、たとえ無理を通してでも、好きな相手と共にいたいと願ってしまった。
その結果、自分はその願いを女王に利用されてしまった。
出ようにも、簡単に外に出してくれるほど、甘い相手ではないのは知っている。
彼女の頭脳などでは、到底どうにも出来ない。
「そうだ、あなたの力って、カゲの女王が大事にしたがるくらい強いんでしょ?その力でどうにかならないの?」
「無理だ。僕の力をコントロールすることは、僕でさえ不可能なんだ。」
少年、青沼瞬は彼の身に起こったことを説明した。
彼と同じ町に生まれた者の、ほとんどが持っている力がある。
「知っているわよ。サトルと一緒の町なんでしょ?」
「それが分かっているなら話は早い。今の僕は、その呪力を制御することが出来ず、辺りに混沌をばらまくだけになってしまってるんだ。」
「混沌をばらまくって?」
ロジックとデータで生きて来た彼女にとって、瞬の言っていることは今一つ理解が出来なかった。
だが、呪力の暴走を表現するのなら、その言葉が適切だ。
何しろ、万能の力の漏出は、どんな害をもたらすか、どんな景色を見せるのか誰にも分からないからだ。
この場が無の空間だからこそ分かりにくいが、何かある場所ならば、たちまちそれらが異常な風景を作り上げるだろう。
それが自然物だろうと、人工物だろうと、同じことだ。
「どうやったらそれを止められるの?」
「……方法があるとするなら、僕自身が死ぬことだが、これさえもどうしようもない。」
350
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:55:49 ID:g4PHLZmo0
呪力の漏洩は、ほぼ全てにおいて、道理を無視し切っているが、1つだけ一貫していることがある。
それは、熱したやかんに手を触れた際に、脊髄反射で手を放すように、無意識に呪力がその身を守ることだ。
この殺し合いで、瞬と同じ病状を発症した早季が、意識することなく裂傷を癒したように。
瞬は自身の状況を知った際に、大人から渡された毒薬を服用した。だが、毒は全て呪力によって無害なものへ変わってしまった。
今となって、彼を殺せる可能性があるとするなら、早季に降り注いだ隕石の雨のように、呪力をも越える力だが、この場にはそんな力など無い。
「呪力が僕を殺そうとしていない……いや、正確に言おう。僕自身が死にたくないんだ。そう思ってしまったんだ。」
本来なら、彼が14歳の時、早季を逃がした後死ぬはずだった。
だが青沼瞬は、たとえ自殺した人間でさえも願う、ごくありふれた願いが胸の奥にあった。
その結果行くことになったのは、黄泉の国ではなく、次元の狭間だった。
死ぬこともなく、かと言って生きて何をするわけでもなく、無意識のままその場を彷徨っていた。
勿論、そこでも呪力を漏らしながら。
「…………。」
クリスチーヌも、その気持ちは分からなくはない。
何しろ彼女も、目の前の現実を受け入れきれず、マリオと共にいたいと思ってしまったから。
ましてや、いくら他者から死を望まれているからと言って、居るべきではない人間だからと言って、死にたくないと思ってしまうのも無理はないだろう。
「願いを叶えてもらうことって、そんなに悪い事なのかしら……。」
この殺し合いも、願いを叶えてもらうことを餌に、開かれた邪悪な宴だった。
それに釣られ、殺し合いに乗った者は、全て死んでしまった。
自分の理想が、道理で実現できなければ、超越的な力に頼ってしまうのは、そこまで悪い事なのか。
「そうだとは思いたくない。けれど……もうどっちでもいいことだ。」
今の瞬は、その力を女王に利用されるだけの存在。
クリスチーヌもまた同じことだ。
無の空間から出ることも出来ず、自殺することさえできない。
「諦めろって言うの?」
「こんな場所ではいくら考えても無駄だよ。もう助かることは無い。」
その時、激しい衝撃が空間の中を襲った。
女王が魔力を放出したのだろう。他の者達はどうなったのか。
けれど、2人は何も出来ない。
クリスチーヌは、持ち前の知識でマリオや他の仲間を導いてきた。
逆に言うと、力や特別な能力を持つ者がいなければ、その知識は無意味でしかない。
351
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:56:10 ID:g4PHLZmo0
――本当に諦めるのかい?
クリスチーヌの耳に入ったのは、彼女がずっと求め続けていた声だった。
声の方に走る。目の前にいたのは、赤い帽子に髭、団子鼻が印象的な青年。
「マリオ!!どうして?」
あの戦いの果てに、彼が消えた時、ただ一つ残っていたマリオの帽子を持っていたからか。
それとも、これもまた瞬の漏れ出る呪力の影響か。
いずれにせよ、マリオのことを知っている者がこの場にいれば、誰もがマリオと断定する姿だった。
だが、仮に彼女の目の前にいるのがマリオだったとして。
なぜ彼がこのタイミングで現れたのかという疑問が残る。
――気になっただけさ。まだ願いも叶えてないのに、諦めるのかって。
マリオから問われた疑問は、意外なものだった。
自分たちで、願いを無理矢理かなえようとすることを、悪いことだと考えたばかりだというのに。
この期に及んで願いを叶えようとして、余計事態を悪化させるだけではないか。
「で、でも、それは間違った願い……」
――間違っては無いよ。
マリオの言葉は、どこまでも暖かかった。
冷え切った体に染み入る、温泉のようだった。
――君がそう思うのは、絶対に間違いじゃない。
――聞きたいんだけど、君が祈ったことは、本当に叶えたい願いだったのかな?
――それを諦めて、望まない願いで妥協してしまったんじゃないか?
ふいにクリスチーヌが思い出したのは、図書館で戦った秋月真理亜という少女のこと。
彼女もまた、誰かのために戦おうとしたと同時に、他の者達と協力するという道を諦めていた。
そして、ゼルダや重清を死に追いやり、挙句の果てに死んでしまった。
「でも、もう諦めるしかないわよ……」
諦めなかったとしても、力や状況を打開する能力が無ければ、苦しむ時間がいたずらに長くなるだけだ。
頼れる仲間はおらず、この状況を打破する道具もない。
そんな状況で、諦めるなというのが無茶な方だろう。
――本当にそうかな?
「マリオや他の仲間がいないと、何も出来ないよ!私はヒーローじゃないから!」
――じゃあどうして、あの時僕を倒せたんだい?
誰が言ったか。
人は、誰かになれると。
「私はただ……マリオを救いたかったから……。」
――その気持ちが大切なんだ。その気持ちを捨てない限り、何か自分で選んで、前に進むことが出来れば、きっと誰だってヒーローになれる。
――もちろん、本当に望む願いだってかなえられるはずだし、もし出来なくても、きっと誰かが支えてくれるはずさ。
352
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:56:29 ID:g4PHLZmo0
彼女は気づいていただろうか。
カゲに飲まれた勇者を倒したことで、新たなヒーローになっていたのだ。
たとえ勇者が、消えたとしても、闇に堕ちたとしても、死したとしても。
勇者はカゲから蘇るし、もしそれが出来なかったとしても、新たな勇者が現れる。
それはかつて勇者ではなかった者なのかもしれない。
「私の出来ること……。」
話も終わらない内に、マリオは光に包まれて消えてしまった。
何度もキノコ王国を救ったヒーローとは思えないほど、一瞬で、あっけなく。
「え?ちょっと待って!?」
マリオが消えたと思った時、奇跡は起こった。
黒一色で包まれたカゲの世界の中、上空に一筋の光が差した。
(あれは……)
観察眼に優れた彼女なら、小さい光でも見つけることは容易だった。
そして、勇者というのは。足元に転がっている奇跡を見つけ、手繰り寄せられる者のことだ。
表の世界で偽りの安寧を貪ることを良しとせず、裏へのカギを見つけられる者のことだ。
「マリオ……。」
彼女は、今の状況を受け入れた訳ではない。
マリオとずっと居たかった気持ちは変わらないし、罪悪感が消えたわけではない。
「それでも、行くしかないよね。」
彼女の口元が弧を描く。
英雄がくれた言葉は、彼女に勇気を与えていた。
大切な人に託された以上は、命尽きる限り、戦い抜こうと決意した。
「ねえ、シュン。お願いがあるの。」
「何だい?」
「私を、あの光の所まで飛ばすことは出来る?」
「それぐらいなら出来るよ。」
今、この瞬間。
クリスチーヌという、未来を他者に委ねることしか出来なかったクリボーは。
新世界の扉を開く、新しい英雄へと姿を変えた。
353
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:56:44 ID:g4PHLZmo0
□
「う………。」
血だまりの中で、リンクは目を覚ました。
先程まで立つことさえ出来ぬほどの痛みに襲われていたというのに、それはすっかり消えている。
むしろザントとの戦いの後よりも体が軽いぐらいだ。
「緑の騎士よ。よそ見している暇はないぞ。」
すぐ近くに、デマオンが立っていた。
彼自身も傷は粗方消えていたが、ローブが先程よりボロボロになっていたため、あの一撃が幻で無かったのだと察しは付く。
「なあ、一体何があった……うわっ!!」
すぐ近くを、黒い雷が横切った。
あと数センチ左に居れば、黒焦げだったと肝を冷やす。
「あの老兵士の犠牲があったからだ。」
また、誰かの犠牲のもとに生き残ってしまった。
牧童という生まれである以上、生きるためには殺して、その死骸を糧にしなければならないのは良く知っている。
だからといって、その事実を知って、冷静のままではいられない。
雷を凌いだ後も、女王の両手がデマオンとリンクに襲い掛かる。
それらを、マスターソードを炎魔法で撃ち飛ばす。
これ以上女王に、あの大技を撃たせるわけにはいかない。
生き残った6人の中で、誰もが思っていた。
もうメルビンの使ったメガザルのような技が使える者はいない。
今度あの技が来たら、自分だけで守り抜くしか方法が無い。
あるいは、来る前に休む間もないほど徹底的に攻撃し続け、殺される前に殺すか。
黒の衝撃波と、メルビンの犠牲によって、メンバーの統率が乱れていた。
354
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:57:01 ID:g4PHLZmo0
「うおおおおお!」
リンクは女王の雷を躱し、そのまま女王に斬りかかって行く。
女王の吐息を、回転斬り一発で吹き飛ばす。
「待て!早まるな!!」
デマオンの言葉を無視して、リンクはさらに敵の近くに飛び込む。
命を犠牲にして助けてくれたメルビンの分まで戦わねば。そんな思いが彼を無鉄砲にさせた。
――参の奥義 背面斬り
超至近距離まで走り込んだのち、姿勢を低くして転がり込む。
女王の背中を斬りつける。だが、魔力の突風に吹き飛ばされたため、その斬撃は浅い。
「シェル!!」
(くそ……リンクのやつ、あんな遠くに居たら呪力で引き戻せないのに!!)
一方でローザや覚は、攻撃には消極的だった。
黒い衝撃波がいつ来てもいいように、威力を、少しでも抑えるために、回復と守りにばかり気を配っていた。
「立てよ!火柱!!」
魔王の炎が女王を襲う。
しかし、その魔法一発では到底女王を倒すことは出来ない。
先程までに女王にダメージを与えられたのは、リンクやローザのサポートがあったからだ。
女王のカゲの左手だけで、行く手を阻まれてしまう。
(やっぱり……俺が何とかしないと!!)
355
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:57:43 ID:g4PHLZmo0
リンクはしばらく地面を転がって行ったが、それが止まると、すぐに走り出す。
女王の右手が、リンクを叩き潰そうと降ってくる。
――弐の奥義 盾アタック
トルナードの盾を天に掲げ、破壊の塊を押し返す。
風の精霊の力を借りた盾は、敵の攻撃の威力を逸らすことが出来る。
邪魔な両手が無くなるとすぐに、高く跳躍する。
狙うは、女王の頭部。頭を叩き潰せば、いかな怪物だろうと致命傷のはずだ。
――肆の奥義 兜割……
だが、それを甘んじて受ける女王ではない。
口から吐き出される猛毒の突風が、リンクを吹き飛ばす。
一度食らった技を、二度も食らってしまうとは、彼が冷静さを欠いている証拠だろう。
「リンク!」
立とうとしたが、平衡感覚がおかしくなり、立ち上がれなかった。
「大丈夫?エスナ!!」
「無茶も大概にしろ!」
両目の焦点が合ってないことから、混乱の類だと判断したローザは、すぐに治癒魔法をかける。
だが、そこを見逃す女王ではない。
既に復活した両手が、黒い火球を掲げている。
「焼け落ちるが良い。シャドウフレア!!」
「落ちよ!水柱!!」
だが、その炎は落ちる前に、デマオンの水魔法を受ける。
魔王と女王の魔法のぶつかり合いは、女王の方に軍配が上がった。
それでも、炎が小さくなったのは確か。覚の呪力で十分対応できる。
空間から鏡を作り出し、炎を明後日の方向に飛ばした。
「うおおおおおお!!」
リンクは立てるようになると、自分の傷も鑑みずに女王目掛けて突っ走る。
「ええい!見ておれん!!ここからはわしが仕切る!!」
人間達の動きの乱れに、しびれを切らした魔王が、炎の爪を付けて攻め込む。
これまでは個人が個々人の判断で、動き回っていた。
それでも、高揚した士気によって、誰の指示が無くとも女王に有効打を与えられていた。
だが、それが崩されてしまった以上は、そのやり方は通用しない。
なので、自身が司令塔になれば良いという判断だ。
「後ろにいる者共は、左右に散れ!!緑の騎士に合わせて、攻撃をしろ!!」
「しかし……」
「黙ってわしの指示に従え!!」
状況が芳しくないと考えたキョウヤは、意見を出す。
だが、デマオンはそれを一蹴した。彼はメルビンの喪失で動揺しているわけではない。
女王の傷が治りつつあることに、少しでも攻撃を加えねばならないことに気づいているだけだ。
356
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:58:41 ID:g4PHLZmo0
――伍の奥義 居合い
リンクの神速の一撃が、女王の身体を斬りつけようとする。
だが、相手はいくつもの世界を影に飲み込もうとする魔女。
いくら優れた武器を使おうと、卓越した剣術を持っていようと、正面から勝てる相手ではない。
「今だ!緑の騎士にあわせて、武器と魔法を撃ち込め!!」
デマオンは銃後にいるローザ達4人に指示を出す。
だが、そのタイミングが一手遅れた。
「があっ!!」
黒雲を纏った竜巻が、女王の周りに吹き荒れる。
前線を担っていた騎士も、弓矢や弾丸、魔法も全て吹き飛ばされる。
例外で呪力だけは女王に当てることが出来たが、それだけではすぐに回復されてしまう。
「くそ……なぜ思い通りにいかん!!」
デマオンは竜巻の範囲からは離れていたが、結果として彼一人が孤立することになった。
たとえ協力するとしても、彼は魔王。戦いが長引けばそれだけ、人と人ならざる者の間の齟齬が生じやすくなる。
「愚かな。所詮はわらわに怯え、自分より弱き者を責めるだけの僭王か。」
「何!?」
キバをむき出しにし、カゲの中でも光る眼をギラつかせる。
炎の爪と魔法の炎が合わさり、一羽の火の鳥となる。
羽の代わりに火の粉を散らしながら、女王の顔面目掛けて飛来する。
「つまらぬ。その技は見飽きたわ。」
女王の吐息が、デマオンの火の鳥を吹き消す。そして魔王も吹き飛ばした。
威力はそれほどでもない。だが、魔女の邪気が籠ったそれは、触れたものに何かしらの異常を齎す。
それは人間よりはるかに頑丈な魔王とて例外ではない。
「ポイゾナ!!」
ローザの白魔法が、魔王の体内の毒を分解する。
彼女も、あとどこまで魔法を使えるか分からない。
357
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 20:59:48 ID:g4PHLZmo0
「地球人から施しを受けるほど落ちぶれておらぬ。そんな魔力があるなら、地球人共に使え。」
たとえ不死という強みが抜けても、人間が苦しむ毒ぐらい、魔王にはどうということは無い。
地球で君主を目指す者ならば、毒を盛られてその道を手放すことは珍しくない。
だが、魔界星で王を目指す者ならば、猛毒の杯など笑って飲み干さねば笑い物だ。
「しかし……このままじゃ俺達の負けだ……。」
キョウヤの言う通りだ。状況は刻一刻と悪くなっている。
攻めたいところだが、生半可な攻撃では、すぐに回復されてしまう。
もう一度アルテマスパークやギガ・クロススラッシュを撃ち込みたいところだが、そのチャンスを与えてくれる相手でもない。
どうするか考える間もなく、リンクは再び地面を蹴る。
理想的な解答とは到底思えないが、これが最適解でしかないのだ。
「懲りぬ奴よ…その愚かさを死を持って償うがよい……。」
女王が放ったシャドウフレアを、回転斬りで吹き飛ばす。
だが、次の攻撃を受けきれない。
女王の手が、リンクを叩き潰そうとする。
それをローザの矢と、のび太の銃弾が撃ち飛ばした。
だが、当たり前の話だが、手は2つある。もう片方の手が、リンクを握りつぶそうとする。
盾アタックも最早間に合わない。
その時、奇跡は起こった。
一見、小型の隕石に見えた何かが、女王に降り注いだ。
決して強力な一撃ではない。それでも確かに、リンクを守った。
仲間の力を借りた英雄は、この機を逃さず女王に斬りかかる。
黒い雷が、リンクを貫こうとするが、今度遅れたのは女王の方だ。
バック宙で攻撃をかわし、後退する。
「クリスチーヌ!!無事だったのね?」
ローザは彼女の無事を喜ぶ。大きなケガも見えず何よりだ。
これまで頭脳で、物語の主人公たちを支えてきた少女が、そこにいた。
どうやって脱出できたのか、それは誰にも分からない。
けれど、彼女の無事を祝わずにはいられなかった。
「あのさ……私のせいでこんなことになってしまったけど……」
「下らぬ申し開きをする必要はない。あの魔女を滅するまで、きさまも戦い抜けばいいだけだ。」
「ありがと。」
魔王は決して、彼女を気遣ったのではない。
ただ、使える道具が1つ増えたというだけだ。
それでも、その態度が彼女にとって嬉しいものだった。
358
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:00:09 ID:g4PHLZmo0
「今更1人くらいがいなくなった所でどうということは無い。纏めて吹き飛ばしてくれよう。」
女王の魔力が溜まり切った。
再び、全てを破壊するカゲの魔力の暴走が襲い来る。
「みんな!!出来るだけ姿勢を低くして!!」
クリスチーヌの一声と共に、それぞれが守りを固める。
ある者は前面に盾を構え、ある者は守りの魔法を使う。
彼女は、リンクが出したトルナードの盾に隠れた。
「消えるが良い!!」
黒い色をした破壊が、辺り一面を薙ぎ払った。
クリスチーヌが生まれるより1000年と少し前、栄えた町を地の底に沈めた技だ。
当然、まともに受ければ、良くて戦えなくなるぐらいで、悪くて死に至ることは間違いないだろう。
「無傷というわけにはいかないか……」
「何?」
だが、全員が五体満足で立ち上がることが出来た。
勿論、誰もが多かれ少なかれ、どこか痛めている。
それでも、一度目の衝撃波に比べれば、格段にダメージは抑えられた。
「みんな、大丈夫?ケアルガ!!」
けれど、それもローザの回復魔法で、和らげることが出来た。
「助かったわ…私が見た女王の攻撃は全て幻だったから、どうなる事かと思ったけど、上手く行ったようね!!」
どんな強力な攻撃でも、来ると分かっていれば、ダメージを幾分かは抑えられる。
ローザの魔法や覚の呪力、そしてデマオンの放った魔法の突風による、全員での防御で耐えきることが出来た。
加えてこのメンバーの中で、クリスチーヌとローザは、闇に堕ちたマリオが似た技を使っていたことを目撃している。
従って、今度は破壊の一撃にも対処することが出来た。
「みんな!あいつの攻撃なら、私は良く知ってるわ!どの攻撃が来るかも分かる!!」
クリスチーヌがカゲの女王を倒したのは、幻の中だけだ。
勿論、そんなものが信用できるわけではない。
だが、女王の攻撃を目の当たりにしてみると、幻想でもあながち信用できるものだと分かって来た。
そして、女王の手に堕ちたマリオとの戦い、そして今の攻撃だけでどのような攻撃をしてくるかは察しがついていた。
「そうか。ならば全員でかかるぞ!!」
今度は打って変わり、全員が女王目掛けて突撃する。
クリスチーヌという、女王を知る者の参戦によって、盤面の角度がまたしても変わった。
359
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:00:55 ID:g4PHLZmo0
「特攻という訳か……随分侮られたものよ…。」
女王の目が光り、戦闘にいたリンクに雷が落ちる。
「リンク!少しだけ左へ避けて!」
さすがにそんな指示だけでは、完全に躱すことは出来ない。
それでも、掠めただけに終わった。
「走るのを止めるな!」
「左手が来るわよ!!」
「あと一歩下がれ!」
「ノビタ君!あいつの右手を撃って!!」
クリスチーヌとデマオン。
敵を知っている者といくつもの戦を経験している者。
2つの司令塔と頭脳が、全員をめまぐるしく動かしていく。
船頭多くして船山に上るという諺があるが、同じ人ならざる者同士の生まれか。
7人の戦士は、カゲの世界を淀みなく動いている。
その柔軟さは、女王の首筋へ噛みつこうとする一匹の蛇。いや、生き物ではなく、未来という海へと流れていく川と言った所か。
「落ちよ雷!!」
「ホーリー!!」
雷と白魔法、金と銀、2つの光が女王を照らす。
否、そこにもう覚が放った雷が一つ。
それも否、キョウヤの撃った爆弾による、赤い光がもう1つ。
――陸の奥義 大・ジャンプ斬り
マスターソードを纏ったリンクの奥義が、女王を縦に切り裂く。
大ジャンプ斬りの強さは、1体しか攻撃できないジャンプ斬りに、衝撃波を纏わせることで、周囲の敵にもダメージを与えられることだ。
光の衝撃波は、女王本体と両手の同時を薙ぎ払う。
「ちょろちょろと動き回るな!!子ネズミ共が!!」
突然、カゲの女王の両手が消えた。
勿論、それで勝ったと思う者は誰もいない。
「来るわ!女王の手が!!」
唯一女王のことを知っているクリスチーヌが呼びかける。
だが、警告の内容がまずかった。
手が消えた相手のことを『手が来る』と言っても、何のことか汲み取ってもらえるはずがない。
360
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:01:16 ID:g4PHLZmo0
突然、辺り一面に大量の黒い手が広がる。
先程の2つの手に比べると、大きさはその5分の1と言った所か。
だが、数が違う。ざっと見積もって、100は下らない。
それが女王の足元から、無の空間から出ているのだ。
「くそっ!」
地面から現れた小さい手は、早速7人を拘束し、女王の下に近づけまいとする。
リンクが回転斬りで幾つか切り裂き、他の者達も得物や魔法で倒していく。
だが、10や20を潰したくらいでは、まだまだ残りがある。
「落ちよ雷!!」
たとえ遠くに居ても当てることの出来る魔法を、女王目掛けて撃つ。
だが、そこからも無数の手が現れる。
女王の手は、妨害だけでなく、防御にも優れている。
そして足元ばかり気にしていると、上から雷が来襲する。
「のび太、危ない!!」
覚の呪力が、のび太を吹き飛ばす。
聊か乱暴なやり方だったが、雷を直接受けるよりかはマシだろう。
だが、それでも女王の人海戦術、もとい手海戦術は続く。
(くそ……一体幾つあるんだよこいつら……。)
覚も、いくらでも湧いて来る小さな手に、苛立ちを募らせていく。
かつて田んぼに潜んでいたバケネズミの大群を焼き払った時のように、地面に火を放とうかと思ったが、他者へのダメージは免れない。
「もう許せぬ!!」
デマオンの両手に、紫色に魔力を宿す。
「おい、まさか?」
先ほど覚が考えたことを、この魔王は実行するのかと思い、背筋を冷やす。
だが、それは違う魔法だった。
361
:
Last battle4 正しさのその先で、君と手を取りたい
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:01:48 ID:g4PHLZmo0
突然7人に触れた手が、次々とおかしなことになって行く。
ある手は爆発し、ある手は炎に包まれ、ある手は風船のように破裂した。
「今のは……俺たちごと焼こうとしたんじゃないのか。」
「たわけが。きさまらを殺すのは早いことぐらいは分かっておるわ。」
デマオンが放ったのは、一種のカウンター魔法のような者。
暗殺からその身を護るため、触れた物に魔法を自動で与える魔術だ。
魔法など、非接触攻撃にはまったく意味を成さないが、相手が物理攻撃も絡めてくるというのならと使った。
吉良との戦いで、邪魔な不浄猫を焼き払うために使ったが、自分以外の者にかけたのは初めてだ。
「来るわよ!みんな、構えて!!」
手は倒したが、女王に攻撃の時間を与えてしまった。
クリスチーヌは、恐らく女王は次に、黒の衝撃波を放つだろうと警戒する。
「分かったわ。シェル!!」
彼女の指示通り、それぞれ魔法と防具を使って、身を固めようとする。
「虫けらの分際であがきおるわ……だが、これでおしまいじゃ……。」
女王が、魔力をその身の中心に集める。
「全てを灰燼に帰すが良い!!闇の流星よ!!!」
それは、黒の衝撃波以上の、今の女王しか使えない破壊だった。
362
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:03:54 ID:g4PHLZmo0
リディアの世界の究極黒魔法、メテオ、そして彼女が右手に持っている星屑のロッド。
それにカゲの女王の魔力を継ぎ足し、最凶で最後の魔法を作りあげた。
光の世界に生きる者達が、異なる世界の力を結び付けて、さらなる力を作り出したというのなら。
カゲの女王もまた、異なる世界の力を組み合わせて、力を得たのだ。
それは魔法ではなく、災害と言った方が正しいかもしれない。
まともに受ければ、7人は塵も残さず消えてしまうだろう。
8の世界を生き抜いてきた者達にとって、その命を吸い取れば代えがたい食料になる。
灰にしてしまえば、その力を喰らうことが出来なくなるため、これまで使わなかった。
天に、何か禍々しい光が見えたと思ったら、隕石が降り始めた。
もしここまで、メルビンが生き残っていれば、ゴルベーザがメテオを使った時の惨状を思い出しただろう。
「何だよ……これ……。」
覚は、今までにない絶望を前に、そんな言葉を口にした。
廃墟と化し、異形が蠢く東京の地下を地獄呼ばわりして、奇狼丸に甘いものだと言われたことがあった。
だが、この場を地獄と呼んでも、怒る者や笑う者はいないだろう。
正気を保てるだけで、称賛を受けても良いぐらいだ。
せめてのび太だけでも呪力で逃がそうかと思ったが、制限されている中で、それも難しそうだ。
「やっぱり……ダメだっていうの?幻想の世界にしかいることを許されないの?」
この技は、クリスチーヌも見たことが無かった。
もしあれば、マリオ達は全滅していただろう。
ビビアンがいれば影に隠れて事なきを得たかもしれないが、無いものねだりをしても意味がない。
辺りを見渡そうにも、安全地帯など到底見つかりそうにない。
いくら頭脳を回転させても、敗北という答えしか見えてこない。
「ホーリー!!」
隕石が覚とのび太を潰そうとした時。
ローザの究極白魔法が、隕石から身を護る盾になった。
何とか九死に一生を得るも、降って来る隕石は1つではない。
紫の炎に包まれた隕石が、次々と空から降り注ぐ。
363
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:04:45 ID:g4PHLZmo0
「ふん。最後の最後で何をするかと思えば、その程度のこけおどしか。」
デマオンは両手を掲げた。右手には巨大な炎が、左手には凄まじい雷が宿る。
魔王の最終奥義、闇の波動ではない。
魔法をある程度学んだものなら人間でも出来る、結界術だ。
デマオンは魔力の大半を、その結界に注ぎ込んだ。
太陽の光の差さぬ天空に、血のように真っ赤な六角形の魔法陣が浮かび上がる。
「デマオン!?」
「あの隕石は地球人共では止められん!!今のうちに奴を倒せ!!」
次々に隕石が降り注ぐが、デマオンの魔法が止める。
魔王の力を、全て込めた結界だった。
最後に使ったのは、不死の術を覚えるより前のことだっただろう。
余り使い慣れた魔法ではないので使ったことは無かったが、隕石だろうと、少しぐらいなら止めることが可能だ。
「みんな!行くわよ!!」
クリスチーヌの言葉に従い、残った全員が攻撃をする。
デマオンの結界は2度は作れずで、ローザは既に魔力が残り少ない。メガザルを使えたメルビンは既に死している。
この攻撃に失敗すれば、たとえ隕石の雨を耐えきったとしても、勝機は完全に無くなる。
タイムリミットはデマオンの結界が壊れるまで。もって30秒と言った所か。
まさに背水の陣だ。
全員が走って行く。今度はデマオンやクリスチーヌの指示に基づいた、機能的な動きではなく、シンプルこの上ない全軍突撃だ。
リンクが、キョウヤが、ローザが、クリスチーヌが、覚が女王へと走って行く。
「デマオン……。」
他の者が走って行く中、のび太だけは彼の近くにいた。
「聞いて欲しいんだ。少しだけでいい。」
デマオンは言葉を返さない。聞こえていないのか、返答する余裕さえないのか。それとも地球人の言葉など聞くに値しないとするのか。
「この戦いが終わったらさ、地球に遊びに来なよ。」
デマオンは徹頭徹尾、のび太が言った友情を拒絶した。
自分が友情と言ったものは、全て必要だから仕方なしにやっただけのことだと一蹴した。
だが、のび太はどうにもそうだとは思えなかった。
いや、たとえデマオンの言ったことが正しかったとしても。
どうにかして本当に友達になれないかと思っていた。
「ジャイアンやスネ夫やしずちゃんにも紹介してやるからさ。実は僕の恩人だったって。」
さっさと女王を殺しに行けとでも言われるのかと思いきや、不思議とデマオンは何も言わなかった。
364
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:05:03 ID:g4PHLZmo0
「のび太!そんなこと言ってる場合じゃない!!」
一人だけ走ろうとしないのび太を、覚は案じる。
「だから、一緒に帰ろう!!」
覚の呪力に引っ張られながらも、のび太は魔王に話し続ける。
彼らは結局知らないことだが。ひょっとすればデマオン本人でさえ知らないかもしれないが。
デマオンの表情が、ほんのわずか綻んだ。
「どこまでも、度し難い馬鹿者だ。」
のび太たちが魔王に背を向け、走り出した後。
デマオンはどこか馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
よりによって、侵略者たる自分に、侵略先で友達にならないかと言って来たのだ。
まさかこの期に及んで、ここまで愚直な人間だったのは。
魔界だったら、10になるまでに100回死んでもおつりがくるだろう。
だというのに。
不思議な気持ちよさが、デマオンの胸の内を包み込んだ。
「そこまで言うのなら、是非ともこの場を生き抜いて、わしがその理想を砕いてやろう。」
彼がそう呟いた瞬間、魔法陣に小さなひびが一つ入った。
□
リンクを先頭に、戦士たちは残された時間、決死の攻撃を仕掛ける。
再び女王を守ろうと、大量の小さい手が立ちはだかった。
「どけ!!」
今度は、じっくり倒している時間はない。
最前線にいたリンクは、ザックからPOWブロックを出し、地面にたたきつける。
激しい地震が起こった。
本来とは違った使い方だが、それでも女王の手を動けなくさせることが出来た。
ついでとばかりに、矢が切れたローザに、弓ごと矢を渡した。
今のリンクには、矢は必要ない。マスターソードと、その身を護る盾があれば十分だ。
草でも刈るかのように、地面で怯んでいる手を斬り払い、女王の下にたどり着く。
365
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:05:42 ID:g4PHLZmo0
「そうはさせぬわ!!」
隕石が降り注ぐ中でも、女王は魔法の詠唱を始める。
何度も見た黒い雷が、リンクに襲い掛かる。
今度はクリスチーヌの合図に合わせて躱すことは出来ない。
邪魔な女王の手が、そこら中にあるからだ。
それをキョウヤが割って入り、リンクの盾になる。
バズーカの弾丸が切れた中、出来るのは不死の力を活かした盾ぐらいだ。
「こんな……こと……そんなにするもんじゃ……ないけどな。」
彼のことを慮っている間ではない。
こうしている間にも、デマオンの結界の崩壊は進んでいる。
「リンク!!受け取れ!!」
覚が呪力の炎を、マスターソードに纏わせる。
マスターソードに宿る光が、2つになる。
「愚かな!!」
だが、カゲの女王の紫の吐息が、リンクに吹きかかる。
それ自体に殺傷力はさほどでもない。だが、この場で時間を稼がれるには、この上なく厄介な技だ。
必死で踏ん張り、吹き飛ばされないようにする。
頭上から、ひっきりなしに爆音が鳴り響く。
既にデマオンの張った結界は、半分以上壊れている。
「エスナ!!」
ローザの白魔法によって、混乱の追加効果も防げた。
だが、剣に纏った炎が吹き消されてしまった。
このままでは、例え敵に斬撃を入れたとしても、倒せる可能性は低い。
さらに、女王の両手が現れる。
リンクの回転斬りで巨大な手を一つ切り伏せ、もう片方の手は覚の呪力の炎が燃やす。
それでも一手遅れることになった。
勿論、その一手が、極めて致命的な遅れだとは言うまでもない。
「星よ。雷となり、偽りの女王を打ち砕け。」
そこで攻撃に入ったのは、まさかの魔王だった。
無の空間では、邪精霊降臨術が使えない。
だが、ここで敵が落とした隕石に、邪悪な魔力を宿したのだ。
魔力は結界を張るのに使ってしまったが、まだ魔法の数発は撃てる。
366
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:06:19 ID:g4PHLZmo0
「デマオン!」
覚が声を上げて、彼が結界を張っていた方向を見る。
流星群を全て受けようとした影響か。片目と片方の角が折れ、口からは血を零している。
片手で結界魔法を唱え続けているためか、片手の鋭い爪は、全て剥がれていた。
それでも、結界を維持し続けようとしていた。
「馬鹿者が!!早く奴にとどめを刺しに行くが良い!!」
リンクより少し離れた場所に、小型の隕石が、結界の隙間を縫って落ちて来た。
その破片が、リンクの身体に小さな刺し傷を作る。
だからと言って、今さら立ち止まる訳にはいかない。
マスターソードの刃が、ついに女王に届いた。
後に続いて、クリスチーヌも頭突きを女王に撃ち込もうとする。
「その程度か……蹴散らしてくれる!!」
「ぐわっ!!」
「きゃっ!!」
だが、凄まじい魔力の逆流が、リンクとクリスチーヌを吹き飛ばす。
8の世界を全てのみ込もうとする女王だ。いくらマスターソードと言えども、簡単に倒せる相手ではない。
そして、ついに結界が壊れた。
まずは最初に、天から降り注ぐ炎がデマオンを飲み込む。
隕石の数は大分減ったが、それでも7人を飲み込むぐらいは残っている。
「星よ……いかづちとな……り………ちきゅう人を……まも……れ……。」
魔王は炎に飲まれながらも、隕石の破片に全身を貫かれながらも、最後の精霊術を、降り注ぐ隕石の1つに送った。
367
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:06:38 ID:g4PHLZmo0
それを飛ばし、残った隕石を砕く。
死に瀕してなお、魔法を使い続けることが出来るのは、魔王としての矜持か、生命力か。
「おちよ……みずばしら………。」
地面に落ちる炎を、水魔法で消していく。もう邪精霊降臨術は撃てない。
それでも大分小さくなってしまった水龍が、炎を飲み込んでいく。
隕石を全て壊した瞬間、魔王の視界がかすみ始めた。
魔法を使った時に熱を帯びた手を除いて、全てが冷たくなっていく。
破壊と滅亡のエネルギーと、正面から向かい合ったのだ。
白魔導士の回復魔法では、もはやどうにもならない。
地球征服もしておらず、志半ばで死ぬのだというのに、不思議と死への恐怖心は無かった。
ただ、無事だった戦士たちの背中を見続けていた。
(らしくないことをしたものだ……)
当然の話、人間よりも悪魔と、長く多く生きて来たというのに。
最後に見るのは、不思議なことに2人の地球人の顔だった。
何一つ力を持っていないというのに、自分でさえも倒せなかった男を倒そうとした少年。
そして、元々愚直だとは思っていたが、その愚直さを貫き通した少年。
「応えて見せよ……地球は、わしが征服すべき素晴らしい場所だったと…。」
長い間、デマオンの遠い祖先が地球を求めていた理由は、豊かな資源や食料だと思っていた。
だが、もしかすると。
地球を求めていた理由は、そこに生きていた者達の底知れぬ強さ。そしてその者達との共存ではなかったのかもしれないと。
最も、そんなことを今更考え直してもどうにもならないが。
(……皆で、地球を………。)
たった一人で数百年を生き続けた不死の魔王は。
勇者と共に戦う一人の戦士となり。
永遠の命を捨て、代わりにかけがえのない友を得た。
【デマオン@のび太の魔界大冒険 死亡】
【残り 7名】
「しぶとい奴らめ!!」
「まだ……終わってたまるか!!」
吹き飛ばされたリンクは、なおも斬りかかって行く。
一度は戦い抜くという気持ちを奪われてしまった。だからこそ、命尽きるまで戦おうとする。
「馬鹿め。何度やっても同じこと……。」
368
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:07:02 ID:g4PHLZmo0
再び、魔法で近づく者達を吹き飛ばそうとする。
カゲの女王が違和感を覚えたのは、リンクの手の甲の光だ。
3つに連なった三角形が、3つとも黄金の光を帯びる。
(力が……満ちていく……)
――今こそ、私の力を貴方に譲ります。
――お前に一度だけ力を貸してやろう!!我を破ったというのなら、この程度の影ごとき切り捨ててみせよ!!
勇気、知恵、力。
始まりの勇者の時代を除き、決して交わることの無かった黄金三角形(トライフォース)が、1つになった。
黄金の光は、止め処なく輝いて行き、カゲの世界をも照らす。
「おのれ……おのれ……おのれえええええええ!!!」
全身に焼けるような痛みを覚え、女王は耳をつんざくような悲鳴を上げる。
「これで……終わりだ!!」
今までで一番の力が、リンクの左手に宿る。
右足を踏み出し、それを軸に、一回転。腕だけではない。背筋と遠心力まで味方した上での、回転斬りだ。
これまでの奥義のような、特段素晴らしいものではない。始まりの勇者から、様々な勇気の証の持ち主の間でずっと使われてきた一撃。
リンクはずっと、失ってきたことで悩んできた。
だが、この瞬間、彼の心から迷いは消えた。
黄金の光を纏った一撃が、女王の胴体を切り裂く。
「や……やった!!」
ローザは、思わず声を出してしまった。
だが、その歓声を突き破る轟音が響いた。
女王が蘇った時のような、ごうごうと竜巻が現れた時のような音だ。
「ぐあっ!!」
「ま…だ……じゃ……。」
黒い竜巻でリンクは吹き飛ばされる。
女王はまだ生きていた。
呪力の回復量を大幅に超えるダメージを受けたが、それでも皮一枚つながった。
「わらわは……おわらぬ……カゲですべて……のみこむまで……。」
369
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:07:29 ID:g4PHLZmo0
女王は両手を掲げ、闇の流星群を呼び出そうとする。
あの技をもう一度使われてしまえば、今度こそ全滅は間違いない。
リンクはすぐにもう一度斬りかかろうとするが、もう間に合わない。
ローザの矢では、女王の詠唱を止められるほどの威力を出せない。
「まだよ!!」
「ドカン!!」
のび太が空気砲を打つ音が聞こえる。
放たれたのは空気の弾丸だけではない。
隕石を放った女王の意趣返しであるかのように、クリスチーヌという名の流星が、女王目掛けて飛ぶ。
「受け取ったぜ!のび太!!」
さらにそれは、覚の呪力で加速する。
かつての女王の力の源がスターストーンで在り、同時に敗北のきっかけもスターストーンであったように。
今の女王の力の源も、『異世界の特異点』であると同時に、最大の弱点も特異点たる、クリスチーヌとなったのだ。
だが、女王は既にその攻撃を見抜いた。
闇の流星の詠唱を中断し、雷の魔法で打ち落とそうとする。
その魔法は出なかった。
――クリスチーヌ、覚。女王の動きは止めた。今だ!!
そこに響くのは、瞬の声。
リンクの一撃によって、意思を取り戻した瞬の呪力が、女王の動きを止めた。
これで、彼女を邪魔する者は誰もいない。
「いっけえええええええええええええええええええ!!」
もう、彼女が幻想でしか生きられないクリボーではない。
英雄の影でしか生きられない弱者でもない。
邪悪な女王を討つ、新たな英雄だ。
今度は仲間を守りたい。
彼女が胸の中で、真に叶えるべき望みを願った。
たとえいなくなったとしても、彼女の胸の中には赤帽子のヒーローがいる。
「カゲの女王よ。消えなさい!!」
それは、紛うこと無き奇跡の一撃。
女王が胎内にいた、消えることの無かった少年は、その一撃を境に消えていく。
如何なる毒や災害でも死ぬことが出来なかった彼は、ついに、消えることが出来た。
「ありがとう、みんな。」
370
:
Last battle final 遥かなる影の彼方へ
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:09:55 ID:g4PHLZmo0
青沼瞬という、一人の少年の優しい声は、クリボーの少女にだけ届いた。
クリスチーヌの攻撃は終わることは無い。
彼女は1人ではない。
8つの世界で生きた勇者の、戦士の、呪力使いの、少年の、少女の、能力者の、スタンド使いの、そして魔王の想いが、彼女についている。
ついに、一匹のクリボーが、世界をカゲに包み込んだ女王を貫いた。
「ああああああああああああぁぁぁぁぁあああああ!!」
凄まじい声が、勇者たちの鼓膜を劈く。
しかし、その声もやがて掠れていった。
「ふたたび……この世によみがえったというのに………。」
その言葉を最後に、炎が、魔女を包み込んだ。
巨悪は完全に消滅した。
【カゲの女王@ペーパーマリオRPG 死亡】
371
:
End of the battle 光の行方
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:10:52 ID:g4PHLZmo0
最初に音が消えた。
そして影が消え、闇が消えた。
辺りに広がっていたのは、カゲの世界ではなく、色や形を取り戻した空間だった。
「……ローザ……みんな、助けてくれたの?」
最初に声を出したのは、女王の依り代とされた女性だった。
それは、女王が完全に消えたことの証左。
「リディア!!」
ローザは涙を流しながら駆け寄る。
身体に傷らしいものは見られない。奇跡だろうか。
「ど、何処か痛くないの?」
「大丈夫よ。それより助けてくれてありがとう。」
のび太と覚に、虚脱感が襲い、同時に尻を付いた。
「もしかして……」
「やったぞ……勝ったあああああああああああああああああ!!!!!」
朝比奈覚は、喉が枯れるのも承知で叫ぶ。
床に大の字になって転がったままなので、なんとも締まりのない有様になってしまった。
「やったんだな……俺達……。」
「イリア……ゼルダ……ルビカンテ……アルス……ミドナ……。終わったよ……。」
いつもは感情を露わにすることの無いキョウヤも、涙ぐんでいた。
リンクは空に向かって、この殺し合いで死した仲間の名前を呟く。
彼らは、勝利したのだ。世界を守ることが出来たのだ。
「そうだ……デマオンは……。」
のび太はすぐに立ち上がり、友になった者の所へ走る。
「目を……開けてよ!!」
人間が友というにはあまりにも強大だった存在は、今はどうしようもなく終わっていた。
闇の炎に包まれたためか、のび太が初めて見た時よりも随分小さくなっていた。
誰がどう見ても、死んでいると分かってしまう。
それでも、少年は声をかけ続けた。
「勝ったんだ!僕達は勝ったんだよ!!地球は守られたんだ!!」
爪の剥がれた手を、のび太は掴む。
焼かれた死体だというのに、酷く冷たかった。
彼がいくら大声を出しても、魔王は応えない。
その手が握り返されることもない。
「だからさ、一緒に帰ろうよ!!」
ぽたりと落ちた熱い雫が、デマオンの身体を濡らした。
「僕さ、ドラえもんや美夜子さんがいなくっても、強くなって……。友達になってさ……」
仲間となった魔王の死骸の前で、泣きじゃくる。
その態度は、巨悪を滅した人間とはとても思えない。いや、小学5年生の子供らしいと言えばらしいのだが。
「お前なんか怖くないって、思いっきり笑ってやるつもりだったのに………!!」
冒険の果ての別れは、慣れているはずだったのに。
しかも相手は、生きていれば敵になるかもしれない魔王だったというのに。
ただただ、胸が苦しかった。
372
:
End of the battle 光の行方
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:11:27 ID:g4PHLZmo0
□
「うわ!」
「た、助かったんですか?私達!?」
無の空間から、突然キーファとミキタカは現れた。
女王が死んだことで、彼女が作ったカゲの檻も消えたということだ。
「ミキタカ!キーファさん!!」
「その様子は……勝ったんだな!!」
その時、激しい振動が辺りを襲った。
秩序を壊された世界が、元に戻ろうとしていたのだ。
死んでいった命を除いて、無かったことになろうとしている。
「お、おい、どうするんだ?これ?」
キーファは早速慌て始める。
折角敵を倒したというのに、世界が壊れてしまえばどうしようもない。
「ボスキャラを倒したら壊れるタイプの建物か…ゲームではよくあったが、本当にあるとはな……。」
「キョウヤさん!感心してる場合じゃないわよ!!」
「と、とにかくここから出よう!!」
何のことかも分からず、キーファの後を追う。
もう動くことは無いデマオンを連れて帰ろうとしたが、そののび太を覚が引っ張る。
部屋を出た所にあったのは、空の棺と、のび太が良く知っている秘密道具だった。
「これは……もしもボックスじゃないか!!」
のび太が魔法世界を冒険し、美夜子や満月博士、デマオンと合うきっかけになった道具。
もしかすると、8つの世界がつながった理由も、これかもしれない。
そう思ったのび太は、急いでボックスの中に入る。
「元の世界に……戻れ!!」
しかし、それは彼のママにゴミ捨て場に捨てられた時と同様、壊れていた。
別世界から女王を復活させた際に、魔力を浴びたことが原因か、地震のあおりを受けたのが原因か。
勿論、のび太の声にも反応しない。
373
:
End of the battle 光の行方
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:11:50 ID:g4PHLZmo0
「いつもドラえもんの道具は、肝心な時に役に立たないんだから!!」
そして、女王が封印された場所も、崩れていく。
カゲの女王と戦った部屋は、もう戻ることは出来ない。
「まだだ!もう少しついて来てくれ!!」
「え?ここのことじゃないの?」
キーファが連れて行った先にあったのは、かつてザントに連れてこられた石板の間だ、
地図など読んでいる余裕など無かったが、奇跡的にたどり着くことが出来た。
「ここは?」
「オレたちはこの石板を通じて、色んな世界に行ったんだ。もしかすると、ここからなら脱出できるかもしれない。」
誰もその場所を知らない。似たような場所を見たこともない。
不思議と、誰もが懐かしい気分になった。
何故かは分からないが、それぞれの帰り道が分かった様な気がした。
「ここも、崩れそうだ……。」
「どうすれば帰れるんだ?お前さん、忘れたとか言わないよな?」
「え、えーと、とにかく、真ん中をのぞき込めばいいんだ!!」
生き残った者達が、それぞれ異なる石板の隣に立つ。
恐らく、全員でいられる時間は、もうあまり残されていない。
「みんな……」
ずっと黙っていたリンクが声を出した
「こんな所で、こんな目に遭って、大切な人を失ったけど……俺、みんなに会えてよかったと思ってる。
ここを出ても、仲間でいて欲しい。」
凛々しい瞳から、涙を流しながらそう言った。
「当たり前だろ!どんなに離れていても、オレたちは親友だ!!」
「また会えるために、ずっと長くいきてなきゃな。早季や他の仲間のためにもな。」
「今度は会う時は、トニオさんって所のレストランでお食事でもいかがですか?」
「バロンに帰ったら、セシルと同じくらい勇敢な戦士がいたってことを伝えるわ。」
「私は、帰ったらあったことをまとめなきゃね。クリフォルニア大学の論文にしようかしら。」
「お前さんたちのことは、ずっと忘れないよう、記録しておくつもりだ。」
「私はあなたたちのことは良く分からない…けど、助けてくれたことだけは忘れないわ。」
「……僕達、色んなことあったよね……色んな人と戦ってさ……友達になってさ……何か上手く言えないけど……ありがとう!!みんな!!」
その言葉を最後に。
皆が自分たちの世界に帰って行く。
生還者
【野比のび太】、【ローザ・ファレル】、【小野寺キョウヤ】、【朝比奈覚】、【クリスチーヌ】、【リンク】、【ヌ・ミキタカゾ・ンシ】
374
:
End of the battle 光の行方
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/02(金) 21:13:56 ID:g4PHLZmo0
投下終了です。表裏バトルロワイヤルを読んでくださった皆様。ありがとうございました。
本編はこれにておしまいですが、実はまだエピローグが1話だけありますので、ここまで読んでくださった方は、もう1話だけお付き合いください。
375
:
◆s5tC4j7VZY
:2023/06/03(土) 09:50:50 ID:.KMi.Slg0
本編完結お疲れ様でした。
このロワで新世界よりをはじめ、多くの作品を知ると同時に触れることができ、学びになりました。
書き手としての力量が足りず、第一放送までしか参加できませんでしたが、読み手として楽しく読ませていただきました。
表裏ロワに携わることができて光栄でした。
エピローグがまだあるとのことですので、楽しみにお待ちしております。
376
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/03(土) 16:40:00 ID:2NekiuIs0
感想ありがたいです。そして本企画に参加して下さって、ありがとうございます。
やはりs5t氏と話したいことは、氏が本企画で最初に投下したデマオンの件ですね。
あいつ原作で大した掘り下げもないし、本編8話でマリオにやられて脱落するはずだったんですよ。
それがまさかあんなキャラになり、捨てようにも捨てたら火力不足で主催戦が詰みそうな感じが否めなかったので、
あんな所まで書くとは企画当時の自分には到底予想出来ていませんでしたわ。
第一放送までしか参加できませんでしたと仰いましたが、デマオンの他にも、クッパのマーダー化やルビカンテのパラディン覚醒など、
氏の作品には様々な影響を受けました。
少なくとも当分はもうパロロワ企画を立てるつもりはありませんが、出来るのならば、またリレーしたりして頂いたりしたい所ですね。
377
:
◆EPyDv9DKJs
:2023/06/03(土) 16:54:45 ID:/Lyds6Vs0
簡潔お疲れ様です
感想はいずれ形にしたいと思いますが、
企画完結の一助になれたのであれば幸いです
378
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/03(土) 17:19:45 ID:2NekiuIs0
ありがとうございます。自分でキャラ選出しておいて言うのもなんですが、
バツガルフもキョウヤも行動方針どうするか悩んでたキャラなので、氏が最初に書いてくれてめっちゃうれしかったです。
個人的にペーパーマリオは昔のゲームで、しかもリメイクも出てないので、最悪私一人で書く覚悟でしたが、書いてくださったおかげで、企画の進行の力になりました。
379
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 18:58:18 ID:Dq3eK40.0
それでは、エピローグを投下します。
380
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 18:59:33 ID:Dq3eK40.0
光を泳ぐ。
勇者たちが、勇者と共に生きた者達が、望んでいたものがそこにある。
渦に乗って、より光が強い所へ泳いでいく。
彼らは、もうすぐ帰るべき所に帰り着く。
☆
視界は暗黒から光に満ちた世界へ、そして、良く知っている世界へ。
少年の目に飛び込んできたのは、物干し竿と物置、それに草ぼうぼうの地面。
自分の家の庭だった。
「ここは……。」
最初に辺りを、良く知っている場所と確認する。
それから、ポケットに大事に入れていたものを出す。
「のび太!!!」
生まれた時からずっと聞き続けた、ママの声が聞こえる。
1日しか聞いていなかったというのに、酷く懐かしく聞こえた。
「一体全体、どんな格好してるのよ!?服もボロボロじゃない!?」
彼の傷は、覚やキョウヤ、デマオンが庇ってくれたおかげで、他の者より浅かった。
しかし、服そのものはあちこちに裂け目があった。服の形を保っているのが不思議なほどだ。
「ただいま。帰って来たよ。」
「ただいまじゃないわ!!早く着替えなさい……そのおもちゃと、黒い布はどうしたの?」
のび太は殺し合いで支給されたザックに入れず、ポケットに入れていたものと、両手で握り締めていたものがあった。
それは、あの殺し合いに巻き込まれる前から、ずっと友だった者の鈴。
そして、殺し合いを経て、友になった者の服の切れはし。
「…………。」
381
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 18:59:55 ID:Dq3eK40.0
最初はのび太は答えに詰まった。
自分のせいではないとはいえ、旅先でドラえもんが死んでしまったことを、どうママに伝えればいいのか悩んだ。
デマオンのことは話をしても分かってくれないはずだが、ママもパパもドラえもんを家族の一員として扱っていた。
だから、話そうとすると言葉に詰まった。
「ねえのび太、だからこの玩具と雑巾みたいなものは何なの?」
「…ドラえもんの……鈴だよ。」
「え?ドラエモンって?誰よ?」
そこで初めて、のび太は違和感に気付いた。
自分の母親が、ドラえもんのことを知っていないかのような様子に。
「ドラえもんだよ!青い猫型ロボットの……おとといも一緒にご飯食べたでしょ?」
「そんなの知らないわよ!ウチは3人家族よ!?」
ボロボロの服のまま、走り出す。勿論、友の鈴を握り締めたまま。
「ちょっとのび太!待ちなさい!!」
ママの呼び止めも無視して、ダッシュで階段を1段飛ばしで駆け上がる。
勿論、行こうとするのは自分の部屋だ。
急いで自分の勉強机の引き出しを開ける。
見えたのは、タイムマシンの入り口などではない。ただの引き出しだった。
(まさか……)
のび太は、この殺し合いが終わったらしようとしていたことがあった。
タイムマシンで未来に行き、セワシ君やドラミちゃんに相談し、ドラえもんを直してもらうことだ。
その先で会えるのは、昔のことを忘れた、新しいドラえもんかもしれない。
それでも構わなかった。
押入れの中には、スペアポケットも四次元くずかごも無かった。
その後家を出て、ジャイアンやスネ夫、しずかちゃんにもドラえもんのことを聞いてみた。
ついでとばかりに、出木杉にも。
でも、返って来るのは一様に、ドラえもんのことなど知らないという話だった。
別の世界の美夜子や満月博士、そしてデマオンならともかく、ドラえもんのことを知らないというのはおかしな話だ。
(あの世界で死んだ人は、いなかったことになるんじゃ……)
ハッと気づいた。あの世界の消滅と同時に、消えてしまったんじゃないか。
覚えているのは、生き残った者達だけじゃないのか。
考えれば考えるほど、その仮説は理にかなってくる。
もう不思議な道具に頼ることは出来ない。
持っているのは、覚から返してもらった通り抜けフープと、空気砲だけだ。
奇跡を起こすことは、もう不可能なのだ。
「ドラえもーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」
親友を求める嗚咽が、町に木霊した。
382
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:00:23 ID:Dq3eK40.0
帰って来ることは出来た。
カゲの力から地球を守ることが出来た。
しかし、その代償はあまりにも大きかった。
死んだ45人は、誰からも覚えてもらうことなく、あの世界に取り残されたままだ。
◆NYzTZnBoCI
「違うわ。」
白を基調とした城の、城下町一帯が見渡せる場所で、一人の女性が呟いた。
「だからさあ、俺、気が付いたら変な所にいたんだよ!!で、頭の毛がヘビの幽霊に睨まれて、石にされてたんだって!!」
「寝ぼけている場合か!!じゃあお前はどうして今ここにいる!!」
「いや……まあその……気づいたら元の世界にいてさ。」
「それを寝ぼけているというんだ!!バロン初の女王の統治の時代だからって、奇を抜くんじゃないぞ!!」
城内は今日もにぎやかだ。城下町でも、喧噪が途絶えることなく響いている。
あれから、ローザの日常はほとんど変わっていない。
彼女の身分が大きく変わったことを除けば、だが。
「消えるなんてことはないわ。そんなことは許さない。」
あの殺し合いで死んだ者達が、周りからいなかったことにされているのは、帰還後すぐに気づいた。
バロンにはセシルもおらず、カインもいない。
軍事国家なのだから、それを先導すべき強靭な王は必要だが、これがどうしても見つからない。
中には他所の王国から相応しき者を引っ張ってこようとしていた者もいたが、どうやらファブールやエブラーナも継承者不足に見舞われていたようだった。
王位継承者で、目ぼしい者がほとんどいないため、なあなあでローザが女王となった。
全くもって予想していなかったことだが、バロンは亡国にならずに済んでいる。
ダムシアンやトロイア、幻獣界の援助を受け、ローザも女王としての威厳を見せつつある。
「守り抜いて見せるわ。あなたが生きた証を。あなた達が作った未来で。」
そう言った彼女は、下腹部を優しく撫でた。
◆7PJBZrstcc
森の奥の、のどかという言葉を体現したような小さな村。
子供たちが釣りやパチンコで遊ぶ活発な声や、鷹や山羊の声が響く。
たまに蜂に襲われる青年の悲鳴や、カボチャを悪戯された農夫の怒鳴り声も混ざる。
383
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:00:47 ID:Dq3eK40.0
「おーい!リンク!!山羊が逃げ出したんだ!!」
牧場主のファドの助けを聞き、家で道具の整理をしていたリンクは、すぐに現場に駆け付ける。
機嫌が悪いのか、今朝食べた餌がまずかったのか、ヤギがリンク目掛けて走って来た。
「どっ……せい!!」
ガノンドロフやカゲの女王さえ倒した青年にとって、ヤギの1匹くらいどうということはない。
両方の角を受け止め、投げ飛ばす。
「よしよし。ごめんな。もう牧場から脱走したりするんじゃないぞ。」
勿論、暴力だけでは山羊を手懐けることは出来ない。
ぶつけた部分を撫でてあげ、牧場に帰るまで一緒に歩いてあげる。
「リンク。今日もありがとうな。」
「構いません。これぐらいなら。」
村長のボウが、リンクにぺこぺこと頭を下げる。
世界は平和になった。魔王は消え、怪物たちの数はどんどん減っていき、空がカゲに包まれることもない。
ハイラル城の方では、新たな城主をどうするかで日夜騒がしくなっているようだが。
もちろん怪物との戦いも、親しい人との死別もない。
リンクという勇者ではなく、一人の牧童が望んでいた日々だ。
「……一つお尋ねしたいのですが……。」
「何だね?いつも世話になってるんだ。何でも言いなさい。」
「…イリアという人を知りませんか?」
「……知らんな……でも、不思議だ。何か懐かしい響きだ。」
リンクは分かっていた。
ウーリのお腹には、モイと彼女の愛の結晶があったことから、彼らは完全に消えているわけじゃないと。
尤も、当のウーリはモイのことを知らず、処女懐妊か何かのように思っているらしいが。
(みんなの生きた証は、残っているよな……。)
何度もそれを確認した。残っているのは分かっている。分かっているから、誰か一人でも目の前に現れて欲しかった。
一人じゃ無いのだって分かっている。村の子供たちが、剣を教えて馬術を教えてとせがんでくる。
それでも、あの世界の戦いを知った者も、これまでの冒険の思い出を共有できる相手がいないのは、寂しすぎた。
◆EPyDv9DKJs
家に帰ると、手紙が届いていた。
『ハイラルの勇者サマ。』
テルマをリーダーとする、ハイラルのレジスタンスから、お金と食料が大量に届いていた。
メンバーの中には、リンクの戦いを知っている者はいないはず。
384
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:01:07 ID:Dq3eK40.0
自分は関係ないし受け取れない。そう返事を出しても、自分達は分かっていると言って、何度も送って来た。
(そんなことするくらいなら、モイのことを思い出してくれよな……。)
キョウヤからもらった、モイのバズーカをちらりと見ながらそう思う。
実はどこかで生きているだけじゃないか。みんながみんな知らないふりをしているだけじゃないか。
それが違うとは分かっても、何度も何度もそう考えた。
ゴロンとベッドに寝っ転がった瞬間、リンクの支給品袋から振動音が鳴り響いた。
ハイラルではなく、21世紀の日本に生きた人間なら、ほとんどが聞きなれた音だ。
ザックをひっくり返すと、持ち主に返し損ねたピンクの鉄の板だった。
リンクはスマートフォンという、ある世界の文明の利器を知らない。
それでも慣れない手つきで、色々と弄り回し、何とかメールボックスを開けられた。
『リンクへ
お元気ですか?
クリスチーヌです。』
表情に、光が宿る。
『あれから、わたしも元居た世界に無事に帰れました。
ザントやカゲの女王はいない、平和な世界に戻りました。
ですが誰もマリオやノコタロウ、ビビアンのことを知りません。
そちらも、似たようなことになっていますか?』
『前に支給品を見せ合った時に、メール受信器に似た機械を持っていたので、どうにか送れないかと思っていました。
どうして送信先を知っているかはヒミツです。』
彼女のメールはとても長く、全部読むのには一苦労しそうだ。
だが、全く憂鬱ではなく、むしろもっと長くあって欲しかった。
◆OmtW54r7Tc
『クリフォルニア大学の学業がひと段落ついた後、
私はノコタロウやビビアン、他に消えてしまった人たちを探しに、旅に出ました。
あの戦いの影響か、ドカンや旅の扉などで、小さな形で世界がつながっており、何人かには会ってきました。
サトルさんは、カミス66町で、街の復興のリーダーとして指揮を執っています。
なんでもこの殺し合いに巻き込まれる前に起こったことだったとか。
また、バケネズミの残党狩りも兼任しているようです。
私が訪ねた時、バケネズミの新種かと勘違いされ、危うく町の人に殺されそうになりましたが、彼が取り合ってくれてよかったです。
385
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:02:01 ID:Dq3eK40.0
あと、家にも招待されました。
サトルさんの家に飾ってあった、綺麗な花のことを延々と話されました。
何でもその花は、サトルさんの親友のサキさんの遺志を継いだ花だというのです。
人が花になったことなんて、あの冒険を経験した後でもにわかには信じがたい事です。
でも、あの戦いで消えてしまった人たちの証が、少しでも残っていたのは嬉しかったです。
キョウヤさんは、孤島の学校で妹探しを続けています。
日が暮れれば、寮であの冒険を記録していると。いくらノートがあっても足らない、手伝ってくれとせがまれました。
彼は私達とは違い、やらなければいけないことがまだ残っているようです。
尤も、私だって大学の課題やらなんやら、色んなことをしないとならないのですが。
それとキョウヤさんに、テレビゲームを教えてもらいました。
友達になるには、こういうことをするのが一番手っ取り早いとのことです。
なんだか、ゲームに出ている人たちが他人のような気がしませんでしたが、今度はリンクさんも一緒にやってあげてください。
ミキタカさんは、モリオウ町という場所で、気ままに過ごしています。
不思議な人だと思ってましたが、町も不思議な所でした。
合って早速、目玉が本当に飛び出るぐらい美味しいレストランに連れて行ってもらいました。
リンクさんの地元の、トアル山羊のチーズや、トアルカボチャのことを話したら、是非連れて行って欲しいとせがんでいました。
きっと料理に対して熱心な人なのでしょう。
少しメールの内容が逸れてしまいましたが、もっと良い事もありました。
ミキタカさんが、キシベロハンというマンガ家の先生を紹介してくれました。
はじめはクリボーの着ぐるみか何かと疑われてしまって、大変な目に遭ったのですが、私が不思議な冒険をしていると分かると、気に入ってくれたようです。
何でもそのマンガ家さんは、気に入った相手の情報を、本のように調べることが出来るようです。
ミキタカさんが本にされると、きちんとあの戦いであった人や、彼の仲間の仗助さんの名前も残っていました。
気になったのは、ロハン先生がその名前を見た時、『なんだこの腹立たしい名前は』と言っていました。
一体昔どんな関係があったのでしょう。もしかすると、それを思い出させるのが、私達の役目かもしれません。
◆s5tC4j7VZY
キーファさんは、ユバール族の守り手として、世界中を放浪しています。
彼の世界では人間の敵である怪物が突然いなくなってしまい、神を復活させる意味が無くなってしまったのではないかと言われています。
そんな中、キーファさんはライラさんお嫁さんを貰い、もうじき子供も生まれるそうです。
いつか、私もステキなクリボーの男性と結婚するのでしょうか。
386
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:02:43 ID:Dq3eK40.0
また話が逸れてしまいましたが、キーファさんは剣だけでなく、トゥーラの腕も上げたようです。
新しく曲を作り、メルビンさんや親友のアルスさん達のことを、永遠に語り継いでいこうと考えているそうです。
みんな、どこかで、あの殺し合いで消えてしまった人たちを、取り戻そうと頑張っているみたいです。
リディアさんが住んでいる幻獣界にも、行くことが出来ました。
あの世界で話をしたのは、ほんの1度だけでしたが、私や他の人達のことはよく覚えていたようです。
『私のせいでクリスチーヌさんの世界まで巻き込んでしまった』と言って、幻獣王という方にも頼んで、あんなことが二度と起こらないように考えているそうです。
また、地上界のローザさんとも定期的に交流を図っているそうです。
ノビタさんは、故郷のお友達と遊んでいました。
ヤキュウという遊びで、幻の世界に閉じ込められた時に、私もしていたそうです。
そんなこと思い出せないんだけどね。
友達と遊んでいるノビタ君は、ミスばっかりして、それでも楽しそうでした。
とてもクッパやキラやカゲの女王と戦っていた時と同じ人物とは思えません。
ですが、これがノビタ君の幸せなのかもしれないわね。
そうそう、ノビタ君もサトルさんと同じで、誰かが生きた証を持っていました。
ほんの小さなネジ。あの殺し合いで死んでしまったという、ドラえもんさんの欠片だそうです。
あと、デマオンさんのローブの切れはしも持って帰っていたそうですが、彼のお母さんに雑巾にされてしまったとのことです。
曰く、かさ張るから使いやすいそうです。
魔王が着ていたものを掃除道具扱いするとは……そんな度胸があるからこそ、ノビタ君が生まれたんでしょうか。
当人が聞いたら、どんな顔をするでしょうね。
◆2zEnKfaCDc
最後に、色々辛いことがあったけど、みんなに出会えて本当に良かったです。
元はと言えば私のせいで、他の世界を巻き込んでしまったのに、そんなことを言われたら怒るかもしれません。
ただ、私はリンクさんや他の方に会えてよかったという気持ちは、どうしても伝えたかったです。
いつか、あなたの世界にも行けることを願っています。
でも、私は思います。
リンクさんにだけどうしても会えなかった理由は、会うべきではないと世界が拒んでいるからかもしれません。
387
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:04:37 ID:Dq3eK40.0
実際に、一度行けた別世界も、すぐに閉じてしまいました。
そこから他の方と一緒に、別の世界を巡ることも、再びその世界に行くことも不可能でした。
元々繋がっていない世界だったので、実は会えない方が良いとも思います。
思い出は思い出のままとっておくのがいいのかもしれません。
どんなに離れていても私達は、あの世界を生き延びた仲間。それだけで十分なのかもしれません。
なので、もしこれから会えなかったのだとしても、悲しまないでください。
あなたの友 クリスチーヌ 』
◆vV5.jnbCYw
「そんなことはないよ。クリスチーヌ。」
メールを全て読み終わった後、誰もいない部屋で、リンクはそう呟いた。
誰かに会いたい、誰かを大切に思う気持ちが、間違っているはずがない。
そう思ったからこそ、そんな人たちとの離別は苦しいものだ。それでも、信じられないほど強い力を出せることも知っている。
いつかきっと、会えるはずだ。
あの殺し合いで生還した者だけじゃない。消えていった者達にも。
そうじゃなかったら、もう光ることの無い2つの三角形の痣だって、消えているはずだから。
早速、家を出ると、愛馬のエポナにまたがる。
「今からちょっと遠出するぞ。その分餌はどっさり食わせてやるからな。」
「ヒヒーン!!」
勢いよく蹄を鳴らし、フィローネの森を疾走する。
勇者リンクの、新たなる冒険が始まる。
ゲルド砂漠の処刑場では、ミドナどころか、影の世界へ行く陰りの鏡さえなかった。
でも、関係はない。
もっと遠くへ。もっと先へ。
勇者は一頭の愛馬と共に行く。
別れた友に再会するために。
壊れた世界に閉じ込められ、消された者を救い出すため。
(ミドナ…ゼルダ……アルスやルビカンテだってそうだ。何年かかってでも助け出してやるさ。)
彼の冒険は終わらない。
表裏バトル・ロワイヤル 完
388
:
エピローグ 想像力こそ、全てを変える
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/15(木) 19:08:11 ID:Dq3eK40.0
これにて、表裏・バトルロワイヤルは完結です。
2年4カ月の間、書いてて実に楽しかったです。
企画の完結に協力してくださった書き手の皆様、その他、この企画に協力してくださった皆様
そして、読み手の皆様方。ありがとうございました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。また、機会がありましたらどこかで。
389
:
◆2zEnKfaCDc
:2023/06/15(木) 22:17:48 ID:lqiZ63fs0
表裏・バトルロワイアル、完結おめでとうございます。
発足当時から、時には見守り、時には微力ながら投下もさせていただいたロワの完結を見届けられたこと、本当に感慨深い限りです。
また氏の作品と出会えるのを楽しみにしています。
改めて、完結おめでとうございます。
390
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/06/16(金) 18:29:35 ID:i4xyofDs0
>>389
ありがとうございます。
企画完結に協力していただき感謝しています。
切望のフリージアを読んだ時の感動は今でも鮮明に覚えてます。
また、どこかで氏の作品をリレーしていただくことを願っています。
391
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:48:41 ID:m/5RgZ620
前スレ982からの続き
89.2丁目にあるのは廃図書館 カギがあるのは天か地か
メルビン……w
そいつは真理亜ぞと言いたくはなるが、陰鬱になってきた後半戦でいつも通りスケベジジイやれてるのは癒やしなのよ。
言ってることは令和じゃ一発アウトなセクハラ発言なのだが……まあ23年前に爺さんだったキャラなので仕方ないよね。
ちゃんと皮肉を使ってメルビンと会話してくれるし、筆談でござると書くだけのお茶目さがあるキョウヤのよき若人感が好き。
首輪や脱出の考察が本格的になってきたけれど、仮死状態にするにはザキだというのは、実物知ってるとちょっとオイオイ待てって思ってしまうw
ザキの呪文としての圧が強すぎるんだよなあ。
DQ7でいえば魂の剣とか魂抜きとか石化なんかがまさに仮死状態それっぽいんだけど、メルビンは魂抜くやつ以外は伝聞でしか知らないはずだし、戻らなくなることがあるから迂闊に採用するほうが怖いよね。
石像に声を吹き込む方法は膝を打った。
確かにメルビンならではの通話方法で、まさに次につながる一手だという感じ。
90.途絶えた影の伝承歌
道を間違えようとしている真理亜を守が身を呈して止めてくれるんだと思っていたのに……。
守が命を投げ打って真理亜を守りミドナに致命傷を与える展開は衝撃で救いがない。
理想の日々を絵に遺すのも美しいというよりはお労しい。
真理亜はラストシーンで早季と一緒になって、自分自身で課した縛りからようやく解放されたのが一抹の救い……かと思いきや、
今度はラストバトルで全員の記憶が消えるので早紀すら忘れたのがさらに救いがない。
真理亜は独善的な面もあったけれど、ミドナの指摘や問いかけが正解なのかというとこれもまたなんか違う気がしてて、
じゃあ何が悪いかというと出身世界とバトルロワイアルの環境が全部悪いとしか言いようがない気がする……。
91.幕間 Twin Lights
部屋を下っていくに連れて目まぐるしく変わっていく景色、キーファの不安を掻き立てるような印象。
実際、敵の領域なのにモンスターすら出てこないエリアって怖いよね。
そして満を持して出てきたのがザントにメジューサとなれば、まあ怖い怖い。
表裏ロワの表裏の意味、ここにようやく理解した。なるほど……。
クロスオーバーのキーアイテムに石板を持ってきたのも腑に落ちる設定だなあ。
地味に知らない色の石板があるの、つながる先が異世界感あって好き。
ザントの勘違いを利用して交渉に持っていくまではよかったけれど、いやごめん、キーファとザントではあまりに役者が違うと思ってしまったわ……。
というか次話のザントの行動を見るに、交渉自体無意味っぽいんだよなあ。
92.Twilight Trail
保護をしてくれていた頼れる大人たちが脱落して、一人ぼっち。
真夜中に見紛う程の暗闇の中で、頼れる大人も亡くし、なじみ深い風景が崩落していたともなれば気落ちするのは必然。
ここで彼の気を取り戻させるのが、仲間ではなく忌まわしい敵であり、破滅への予感だというのが、早人の立ち位置を現してる。
彼は絶対に堕ちない。小さいながらもそこに確かにある黄金の精神が垣間見える。
タイトル的には『夕暮れ時の手がかり』みたいな感じなのだけれど、黄昏=黄金、跡=跡引きという感じで、早人にしっかりと光の跡が残ってる、みたいな印象を抱いてしまった。
392
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:49:07 ID:m/5RgZ620
93.魔王の牙
デマオンに対抗できるのはシアーハートアタックのおかげ、みたいなイメージが……。
この能力ってシンプルだけど使い勝手よすぎるよね、たまにベラベラしゃべってイキりながらすぐにヘタレてる吉良は結構面白い。
>う、うわあああ!!→もっとも闘ったとしてもわたしは誰にも負けんがね→う、うわあああああ!!!
は完全にギャグなのよ。
うわあああレベルが一つ上がってるしw
デマオンはデマオンで、おしゃべりに付き合ってくれるし口上の景気がいいので、本人らの必死さとは別に気楽に読める。
一方でバツガルフの口のまわりっぷりも好き。
煮ても焼いても食えないやつ、こいつ自分を棚に上げて何言ってんだと思うんだけど、それでいて合理的なのが悔しいというか、グーパン握りしめて我慢したくなる心情。
アイラはアイラで騙されるなと早く受け入れて決断しろと、心が二つある。
と、個人個人では見どころいろいろあるんだが、戦闘結果は惨々たるものだなあ。
腹心と化していたアイラに、なんだかんだ魔王軍ではあったナナも脱落して、デマオンが一人残されてしまったのはちょっと気の毒に思える。
たった一手のボタンの掛け違いで連鎖する不運のピラゴラスイッチ。
乱戦とロワの醍醐味であり、あーーっとため息が出てしまう。
最後に勝利をかっさらっていったユウカは見事……なはずだったんだけど、こっちもこっちで最後に油断しちゃって、全員が全員やらかしてるよねえ。
94.見え始めた光明
ローザとの合流がちゃんとできたのはよかったが。
カイン……リンク相手に何やってだこいつはほんとにそう。ローザのジト目が目に浮かぶ。カインどんな気持ち?
まあリンクと再会したときにちゃんと説明してくれる仲間ができたのはよしなんだけれども。
光明というにはまだ遠いけれど、着実に解決に向かっているようなしっかりした繋ぎ。
95.しかし、誰が四枚目のカードになるのか?
一丁目、二丁目、四枚目で三はどれだっけ……?
のび太の正義感と先入観を利用しながら狡猾に立ち回る吉良。
ある意味無敵と化して、なりふり構わず仲間を募る早人。
吉良VS早人がのび太とデマオンを巻き込みながら着々と進んでいる。
それにしても早人の胆力すごいなあ。デマオン相手に堂々と啖呵切ってる時点でこいつすごいよ。
たとえデマオンじゃなくても、運命とか心って言葉はふわっとしすぎてて何言ってるんだこいつになりそうな答えだし……。
やってることは交渉というより脅しに近いし、一つ間違えれば不敬罪で処刑されそうな綱渡り。
消耗しているとはいえ、激怒したデマオンを最終的に理性的に説得できたのが奇跡的な気がする。
393
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:49:21 ID:m/5RgZ620
96.赤くて痛くて脆い
アンデッドにはケアル。FFなら基本中の基本だけどこれでバリアを貫通するのがクロスオーバーって感じで好き。
ユウカはちょっと前までイイ感じに立ち回ってたのにルビカンテの誘導に引っかかってミソがついてしまった感じだなあ。
この窮地に気の利いた言い訳が出てこないあたりが修羅場経験の不足を物語ってるような気がしてしまう。
彼女勢いに乗ってるときはイケイケなのに守勢に回ると弱いんかな……。
メルビンとキョウヤは、縁とか性格とかもあってちゃんと全部話して反省すれば命は助けてくれそうなんだけど、
ここぞの二択で読み負けたなーって感じもある。
全体的にユウカに逆風吹いてて吹き飛ばされちゃったイメージのお話だなあ。
そして、メルビンが殺害するというのが一番インパクトあった。
博愛・慈愛の英雄を以ってして、もう救えないんだなというのがこれ以上なく示唆されているのがいい感じでした。
97.闇に燃えし篝火は
そしてこの戦いそのものが表と裏の戦い、表裏ロワという感じがする。
これスマホで見ないと分からなかったんですけど、副題がABCDEFGになってるのね
『E』nd or 『F』ightはしばらく気付かなかったが……
そして、End of Fightじゃない。End or Fightだ! の語り口上はキマりすぎてるでしょ。カッコいい。
まれに出てくる、フィットジムだの階段から落ちてるから大丈夫だののいやそれはおかしいネタには笑っちゃうんだけども。
マーダー全滅、何より三者それぞれの死にざまが際立ってるのもいいなあ。
スクィーラは徹底して裏に潜り、取るに足らない小物を装いながら計略を練るも、最強の技で葬られるべきと判断されるのもよし。
吉良は保身を最後まで崩さず、事故としか言えない最期を迎えて誰の心にも靄を残したままなのもよし。
クッパは最後の最後に『大王』を取り戻して、英雄の前に立ちふさがる大魔王として勇者に倒されたのもよし。
三者三様の最期。まるで異なった最期が互いに互いを強調していて、どのマーダーも印象深い落ち様。
スクィーラを見れば吉良はもっとやれたはずだろととても惜しく思うし、吉良を見れば大魔王を努めきったクッパの生き様にある種の満足感を得られるし、
スクィーラとクッパは将として参謀として、それぞれの分野を最期まで努めきったと思う。
彼らが強大な敵だからこそ、それを迎え撃つ対主催のそれぞれの結束が光るのもいいなあ。
まあやっぱりクッパですよね、溜めに溜めたフラストレーションがこの一話に凝縮された感しかない。
事あるごとにミドリをディスってくるクッパはクッパらしくて好きだし、
アカとミドリのコンビが立ち向かってるのももはや因縁を感じる。
銅像立つくらい堂々とした最期だったし、倒れたとは書いてるけど立ったまま死んでるイメージしかない。
総じて、ラストバトルに相応しいバトルだった。
394
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:49:45 ID:m/5RgZ620
98.第三回放送
メルビンが身を呈して首輪解除の実験台になり、見事に成功するのはまさに希望。
前半・表でそう思わせておいて、後半・裏ではザントこいつどこまで見抜いてるんだという不穏さで希望を覆い隠してくる話。
放送でメルビンを死亡者として伝えてるけど、メジューサの裏切りをも看破した彼がそこに気付かないことがあるのか?
という疑問が最初に出てくるんだもんなあ。
ザント、非道とか外道とか以前に、協力者たちを同志と見てないな。
道具として使って、処分してるだけ。肉食虫のような慈愛のない瞳とはよく言ったもので、言葉を操る話の通じないナニカそのもの。
輝之助の死亡表記がバグってるのも、別の理に移行したような不気味さと得体の知れなさが出てて、『戦慄のとき』が流れてそう。
99.憩いの街角
リンクがカインに剣抜いたのを見て、今さらお前ら何やってるんだよと笑ってしまった。
カインずっと誤解されたまま、よく何事もなく生き延びられたなあ。
しれっと仲間に混じっててリンクがモヤってるのがほんと笑っちゃう。
全員からジト目を向けられるカインとデマオンは同レベル。
テーブルかけは一発ネタのようなものかなあと思ってたのだけれど、この最終局面で結束の宴の演出に使うのはいいなあ。
全員で場を囲って温かい食事を摂る描写は、フード理論でいう仲間の結束描写。
最終決戦前の最後の宴というのがまさに佳境だと感じる。
あと、列車の運転室は完全に予想外だった。てっきり怪しい図書室の地下だと。
100.ドライフラワー
最終決戦前に各地のイベント発生地を回る。
ゲームだとこういうの結構あるのだけれど、それを髣髴とさせる話。
ここに唯一付いてきているのが、人生の辛酸も甘美さも味わってきたであろうメルビンなのがこれまたいい味だしてる。
木の人形は魔物との決戦前に兄が妹に送ったものだけれど、人間である証みたいな意味もあるアイテム。
それを、早紀の象徴となる一輪の花と交換する形で覚が持っていったというのはものすごく示唆に富んでいると思う。
指輪交換みたいな儀式として受け取った。
395
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:50:08 ID:m/5RgZ620
101.いざ、決戦の地へ
のび太、本当に誰とでも友達になれるの才能だよね。
デマオンとのび太はもうこの先何があっても敵対することはないんじゃないかな。
生き残ったら地球侵略だと息巻いていたけれど、ほんとに侵略するのかあ?
一読者としては完全に和解を達成したんじゃないかと思ってしまうのだ。
リンクとカインの因縁の解消シーンの微妙な空気と比べてしまって、ちょっとカインが気の毒になってきた。
図書館の地下扉は優勝者の凱旋門だったのか。
空へと上っていった全生存者たちと、一人地下へと降りていくリンク。
向かう場所は同じなのに、天と地でこうも受け取る印象が違うんだなあ、と感じてしまう。
102.戦慄のとき
憩いの街角があるせいで普通に見流したけどこのBGMはDQ7関係ないじゃないか!
雰囲気自体は戦慄のときそのものなんだけれども……。
ラスボス前のザコ軍団は生物からかけ離れたような不気味なやつらが多いけれど、雰囲気づくり特化という印象だなあ。
というかデマオンに妙に手ごたえのない連中と言われているし……。
ザントはどこまでも底知れない印象。
やっぱり生き残りが侵入していることは分かってるよね。
無限ループと夢幻でハメるのは正しい対処法って感じがするなあ。
リンクに取り戻したい者の名を言えというが、のび太たちの状況を鑑みるに、
その名前を言ったら夢幻に囚われるのでしょ?
そんなのが読者側からはあからさまに見えているので、一撃入れたのは紛うことなき正解だと思う。
103.光は蜜より甘くて
ダーマ編の特技呪文吸い取りシステムがあるのはしっくり来た。
あれも人間から奪ったチカラで魔王を強化するシステムなので、カゲの女王やザントが強くても何も問題ないシステム。
ザントVSリンクは原作通りではあるけれど、疑似名場面ラッシュみたいなことをやってるなあ。
最終決戦で過去のスポットをチェリーピックして取り入れてくるのはうまい展開だと思う。
エピローグにも通じるけど、当時の場面をもう一度思い返せるような粋な演出。
デマオンが野球やるのは違和感というよりもはやギャグの領域なんだわ。
ユニフォーム着てるのかなと思ったけどさすがにそんな描写はなかったw
ただ、ここまでに幻影を何度も使っていて、その決定版としてこの世界を出してきたからこそ、
次話のクリスチーヌの認識阻害もすんなり受け入れられる構成になっているように思う。
396
:
名無しさん
:2023/12/29(金) 23:50:43 ID:m/5RgZ620
104.終わりへの戦い
ザントは文章だけにすると得体の知れない狂人としての度合いだけが積み重なるマジック。
同じことはブンババにも言えて、悪いヨッシーみたいなコミカルな姿が文章だけだと凶悪な面構えのフィジカル系ドラゴンに見えてしまうw
原作の戦いを見てると、ああいう動きなんだろうな……ってなるけれど、初見だとなんだこいつは!? になるザント戦。
それでしっかりカイン殺害してるし、ザントは最後まで悪として格を保ち続けた。
致命傷につながる決定的な一撃も、リンクだからこそ一撃入れられたという感じで、きっちり元凶をつとめ上げたなあと思う。
カゲの女王もまた、なんかイケそうじゃね? みたいなところで、自分を捧げて盤面ひっくり返してきたという感じで、
ついに最終決戦という雰囲気が色濃く表れたいい前座戦だったと思う。
105.Last Battle
ラストバトルだけれどバトル以上にデマオンがアツすぎる。
カゲの女王の甘言を一笑に付して最大出力をぶつけるのは胸がアツくなるし、
> 魔王もまた、勇者という強大な敵の恐怖に打ち勝つ力を持っている
英雄と勇者がいるこの場所で、このナレーションはほんと好き。
ついでに、二回もカゲの女王の欺いてるところも大好き。
純粋なパワーではカゲの女王が上かもしれないけれども、一人の猛者としては格付けが付いたように思うのだよなあ。
侵略先たるはずの地球という星に最大級の賛辞を送りながら、地球の住人たちを守って散るのはあまりにかっこよかった。
ラストシーンのナレーションも、最期のセリフも何もかもかっこいい。
クリスチーヌも女王に屈して心折れた敗北者から、再び立ち上がったのはアツいなあ。
間違ったらやり直せばいい、の体現。
そして、願いを叶えるはパロロワのお約束みたいな感じになってるけれど、
そのうえで彼女の願いは絶対に間違っていないと言い切ってくれるのはいっそ気持ちいい。
地球の侵略者が地球の守護者となり、
幻想の中でしか生きられない弱者がヒーローとなり、攻守のキーポイントで逆転した役割を担って強大な敵を撃ち破るシーンは爽快。
ラストバトルにふさわしい戦いであると同時に、キャラクターの完成回だったと思う。
キーファがキーマンになっているのが、どうしても( ,,`・ω・´)ンンン?ってなるのよw
お前、参加者ですらないのにお前ぇ……ってなってしまうのよw
しかも影世界と会場からの脱出の二回ともキーファがキーを担っていて……。
いやァ、やっぱりキーファは良くも悪くも太々しいやつだよ。
106.エピローグ 想像力こそ、全てを変える
これまでの執筆者の皆さんの名前が挟まっているSpecial Thanksがいかにもエピローグらしくて好き。
一話であっても、確かに企画に参加した人間であるという証明であると同時に、
企画主からの『参加してくれてありがとう』を受け取れるであろうにくい演出だと思う。
読者側としては色々思い出させてくれるエピローグだけど、死んだ参加者の記憶が世界から消え失せているというのはなかなかきつい……。
彼らの生の証だけが残っているのが、その先の旅へと思いを馳せさせてくれる小道具になってる。
この後、リンクやクリスチーヌが彼らの証を取り戻すためにがんばるんだろうなあと想像できる。そうじゃなければ救いがないものね。
元凶の出身世界である二人がエピローグとしてしゃきっと締めてくれていて、後味は悪くないものに仕上がっていると思いました。
大変遅くなりましたが、完結おめでとうございます。
397
:
◆vV5.jnbCYw
:2023/12/30(土) 11:11:45 ID:zi4.kW2s0
最終話まで感想書いてくださり、ありがとうございました。
私がそこまで意図して書いていなかったところまで読んで下さり、嬉しいことこの上ありません。
年内最後に非常に嬉しいサプライズでした。
恐らく新たにロワ企画を立てることは無いと思いますが、現在「オリロワF」という所で書いていますので、そちらもよろしくお願いします。
改めて、最後まで読んでくださってありがとうございました。
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