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令和ジャンプキャラ・バトルロワイアル

1 ◆UbXiS6g9Mc:2022/01/07(金) 01:27:32 ID:2qPUEb9c0
令和(2019年24号〜)に週刊少年ジャンプにて連載された作品のキャラクターでバトルロワイアルやろうぜ!って企画です。
SSによる匿名リレー方式です。ただし議論などを円滑に行うため、投下する際にはトリップ必須とします。
俺ロワ・トキワ荘に設立した企画ですが、住民一同で話し合い、進行していく企画を目指しています。
皆さまのご参加をお待ちしております。

【まとめウィキ・避難所】
ウィキ:ttps://w.atwiki.jp/rwjbr/
したらば:ttps://jbbs.shitaraba.net/otaku/18370/


【鬼滅の刃】8/8
○竈門炭治郎/○我妻善逸/○栗花落カナヲ/○鬼舞辻無惨/○黒死牟/○童磨/○猗窩座/○獪岳

【呪術廻戦】8/8
○虎杖悠仁/○伏黒恵/○東堂葵/○七海建人/○禪院直哉/○伏黒甚爾/○脹相/○真人

【僕のヒーローアカデミア】8/8
○緑谷出久/○爆豪勝己/○轟焦凍/○エンデヴァー/○死柄木弔/○トガヒミコ/○マスキュラー/○ステイン

【チェンソーマン】6/6
○デンジ/○早川アキ/○パワー/○マキマ/○レゼ/○サムライソード

【アンデッドアンラック】5/5
○出雲風子/○アンディ/○シェン/○リップ/○ファン

【夜桜さんちの大作戦】5/5
○朝野太陽/○夜桜六美/○夜桜凶一郎/○夜桜四怨/○皮下真

【ONE PIECE】5/5
○モンキー・D・ルフィ/○ヴィンスモーク・サンジ/○カイドウ/○ドンキホーテ・ドフラミンゴ/○シャーロット・カタクリ

【あやかしトライアングル】4/4
○風巻祭里/○花奏すず/○香炉木恋緒/○カゲメイ

【Dr.STONE】4/4
○石神千空/○あさぎりゲン/○獅子王司/○氷月

【逃げ上手の若君】3/3
○北条時行/○/小笠原貞宗/○五大院宗繁

【破壊神マグちゃん】3/3
○宮薙流々○マグ=メヌエク/○ナプターク

【SAKAMOTO DAYS】2/2
○坂本太郎/○朝倉シン

61/61

主催:

その他ルールは>>2

640 ◆Il3y9e1bmo:2023/02/04(土) 11:29:36 ID:I1.IDvA60
以上で投下を終了します。

641 ◆Il3y9e1bmo:2023/02/04(土) 11:30:54 ID:I1.IDvA60
タイトルは「イニシエーション・ラブ」でお願いします。
打ち込み忘れたぜ。

642名無しさん:2023/02/04(土) 22:20:50 ID:9QBeta/.0
投下乙です!
二対二の戦いは善逸とレゼに軍配が上がったか……
正直ここでレゼか善逸は落ちることを覚悟していたからまさかの大金星に驚きですね。
支給品や能力の相性、相方との連携が二組の明暗を分けたか。

指摘になりますが、>>612にて課題の報酬について
「課題クリアと黙示録の両方が揃っていないと報酬は発生しない」という話になっています。
よって現段階ではレゼは報酬獲得権利を保持しているだけで、実際にポイントを得るのは黙示録と接触してからにするのが妥当ではないかと。

643 ◆Il3y9e1bmo:2023/02/05(日) 00:34:35 ID:v6KZZ7S60
>>642
本当ですね!すみません、wikiの方をソースにしていたので気づきませんでした……。
下記2箇所の訂正をしたく……。

>ルール追加が可能な25点以上を手に入れたのはレゼだ。

ルール追加が可能な25点以上を手に入れることになったのはレゼだ。

>[状態]:疲労(中)、裂傷(大・回復中)、爆弾の悪魔化
[ポイント]:10
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本方針:デンジに会う。
1:マキマには警戒。
2:ひとまず善逸と行動する。
3:どんなルールを追加しようかな?
[備考]
※善逸の話を聞いて両者の世界が違う世界だと気づきましたが、詳しい情報交換は行っていません。
※走者 カゲメイを討伐したため、黙示録との接触で20ポイントが追加される予定です。


wikiはこちらで修正しておきます。
お手数おかけして申し訳ありませんでした。

644 ◆Il3y9e1bmo:2023/05/14(日) 01:30:05 ID:elq1P9KI0
坂本太郎、マキマ、デンジ、小笠原貞宗、風巻祭里で予約します。

645 ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:40:00 ID:v..8fpRE0
投下します。

646映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:40:58 ID:v..8fpRE0
映画館の一室。
二人の男女が席に並び座り、映画を鑑賞していた。

小太りの男、坂本太郎はポップコーンとコーラを片手に映画をぼんやりと眺めている。
感情の読めない丸眼鏡の奥では、隣でこれまた映画を眺めている謎の美女、マキマへの警戒心を滲ませていた。

館内には映画『呪術廻戦0』の音声以外には、坂本が時たまコーラを啜ったりポップコーンを頬張る音のみが流れていた。

暫くしてエンドクレジットが流れ終わると、マキマは憮然とした様子で立ち上がり、坂本の方へ向き直った。

「うーん、あまりにもエンタメに寄り過ぎてて中盤から終盤にかけて退屈でしたね。テーマもありきたりで演出も派手」

どうやらマキマにはお気に召さなかったようだ。上映中も退屈そうに何度も背伸びをしていた。

「……そうか。俺は娘にも勧められるいい映画だと思ったが」

「ところで先程――映画が始まる前でしたか、ここまでの死亡者の名前が読み上げられました。
 その際、僅かに手が震えていましたが、もしかして知り合いの方が亡くなったとか?」

「…………」

坂本は黙して語らない。

朝倉シン。
ついこの前まで自分を慕ってくれていた青年の死は、長い間殺しの場を離れていた坂本の心に想像以上に深く突き刺さっていた。

「話を戻しましょうか。『呪術廻戦0』についてです。映画の出来はともかく……夏油傑、でしたか。
 彼は我々が死滅跳躍に巻き込まれた際にルール説明を行っていた男と同一人物のようです。坂本さん、ここまではいいですか?」

「……ああ」

坂本は短く頷き、同意を示す。

「なぜあの映画に実在する人物を登場させたのか、今はまだ理由は不明ですが、それ以外にいくつか分かったことがあります」

「……ほう。何だ?」

坂本の問いに対し、マキマは人差し指を口元に当ててにっこりと微笑んだ。

「それはまだ貴方には教えることはできません」

坂本とマキマの間の空気が微かにヒリつく。

「理由を教えましょうか? 私はまだ貴方が信用できない。信用できない人間に易々と情報を渡してもいいことは何一つありませんから」

いけしゃあしゃあと言ってのけるマキマに対し、坂本は彼女のその豪胆さ――いや他人の心に対する無関心さに舌を巻く。
交渉で大切なのは誠実さである、とは言ったものだ。今のところマキマは誠実に交渉に臨んでいるが、それは結局他人の考えに興味が無いためである。

「……なるほど。ではどうすればその"信用"を得ることができる?」

簡単です。私の犬になってください、とマキマは微笑んだままそう言った。

「意味が分からん」

坂本はマキマから危険な匂いを感じ、殺気を滲ませた。
和紙に墨汁を零したかのように、どろりと二人の間の空気が歪んでいく。

647映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:41:31 ID:v..8fpRE0

すると何を考えているのか、急にマキマがグロック19をホルスターから抜き、坂本に突きつけた。
坂本は座ったまま微動だにしない。

「すみません、もうすぐ私の"仲間"がここに入ってきます。彼に場を引っ掻き回されるのも嫌なので、強硬手段に出させてもらいました」

だがやはり坂本は微動だにしない。
呼吸をするたびに頬の肉がぶるんぶるんと揺れてはいるが。

「なるほど。やはりこれでも屈服しませんか。流石ですね」

「……そんなに仲間に来られるのが嫌なら、変えるか? 場所を」

坂本が突如片手に持っていたポップコーンの箱を握りつぶした。
箱に入っていたポップコーンたちは行き場を求め四方八方に散らばる。
それがマキマへの目くらましになった。

坂本はコーラをドリンクホルダーに置くと、瞬時にマキマのハンドガンを解体し、その流れでポケットからサバイバルナイフを取り出して彼女の首元に突きつけた。
あまりに洗練された流麗な一連の動作に、流石のマキマも反応することができない。

だが、悪魔という超常的存在であるマキマにこの程度の攻撃はあまり意味がなかった。
彼女は微笑んだまま、自身から首にナイフを押し当てていった。
大量の血液が飛散し、坂本は思わず身を引いてしまう。

「ええ、そうですね。場所を変えましょうか」

次の瞬間、マキマの姿が二重にブレた。
超高速で移動したマキマは坂本の襟首を掴み、地面に引きずりながら映画館の壁をブチ抜いていく。

最終的に二人がたどり着いたのは映画館の隣に建設された雄英高校グラウンドであった。
周りには身を隠す場所も武器として利用できる道具も存在しない。サバイバルナイフも引きずられた際に取り落としてしまった。

「……少し、話をしましょう」

全身に切り傷や打撲の痕を作った坂本を地面に投げ捨てながら、マキマは話を切り出す。

「私は、死や苦痛の存在しない世界を作りたいんです」

「……?」

坂本は突飛もないことを言い出したマキマに対し、怪訝な表情を浮かべる。
しかし、マキマはあくまで真剣であった。その目は初恋の相手を夢想する少女のようにも見えた。

「突然の話で混乱するのも当たり前ですが、私にはその『力』があります。
 ……この死滅跳躍からから脱出さえできれば、貴方の大切な人さえ生き返らせられるような力が」

ですから私と手を組みましょう、と悪魔は坂本へ語りかける。

「50ポイントを獲得してここから出ましょう。坂本さんのお知り合いだけではなく、この戦いで死んでいった全ての人の『死』をなかったことにすると約束します」

土煙の立ち込める中、マキマの双眸が蠱惑的に輝く。

「いや、熱弁のところ悪いが、俺は『死や苦痛の存在しない世界』なんてものはお断りだ」

坂本はエプロンに付いた埃を払いながらゆっくりと立ち上がった。

648映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:41:56 ID:v..8fpRE0

「……ほう、それまた何故でしょう?」

マキマは納得がいかないといった様子で眉根を寄せた。
そんな考えの人間がこの世に存在するのか、といった面持ちだ。

「俺はアンタが信用できない。信用できない人間に易々と情報を渡してもいいことは何一つない」

坂本は先程マキマが言ったセリフをそのまま引き合いに出してそう答えた。
その表情は丸眼鏡に隠され、上手く読み取ることができない。

「これは一本取られましたね。――では、力で屈服させましょうか」

暫し二人の間に静寂が流れる。
雄英高校の上空を飛行していた一匹の小鳥が羽を散らし、それがゆっくりと地に落ちた時、戦いの火蓋は切って落とされた。

マキマは人差し指を坂本に向け、ぱん、と指鉄砲を撃ち出す。
危険を察知した坂本は咄嗟に地面を蹴りつけその場から逃げる。
やや遅れて、坂本が先程まで立っていた場所の地面が円状に抉れた。

「なるほど。これに対応しますか。では、次はもう少し早くいきますよ」

マキマは両手を指鉄砲の形にすると、再び坂本に向けて撃ち続けた。二丁拳銃だ。
坂本は一度距離を取って何か武器になる物を調達しようとするが、マキマの左手の銃がそれを許さない。
右手の銃が本命で坂本を狙い、距離を取ったり逆に不用意に近づこうとすれば左手の銃が牽制のように飛んでくる。

(……銃の使い方に慣れている。上手いな)

今のところ、マキマの銃に弾切れは存在しないようだった。
繰り返すが、グラウンド内には身を隠す場所も武器として利用できる道具も存在しない。
現状では、ゲリラ戦に長けた坂本がかなり不利であった。

坂本は体勢を崩しよろめいたフリをして、グラウンドの土を手に握る。

「!」

そしてそのままマキマの顔に向けて投げつけた。

――だが、マキマはその土礫を「見て」から、頭を最小限動かして避けた。
明らかに常人のスピードではない。だが、先程の映画館からの移動といい、事実としてマキマは現実離れした速度で移動する術を手に入れていた。

そう、これは禪院直哉の『投射呪法』である。
マキマは先程の戦闘で屈服させた禪院直哉の生得術式である『投射呪法』を模倣して使用していたのだ。
ただし、マキマには直哉のような天性のコマ打ちセンスは存在しないため使用はあくまで自身のみに限られ、なおかつ重ねがけは難しいようだが。

「ぱん、ぱん」

マキマは執拗に坂本の足を狙って指鉄砲を撃つ。

やがて坂本が演技ではなく、本当に体勢を崩し始めた。
よろめく坂本に対して、マキマは勝利を確信し笑みを浮かべる。

「これが最後通牒です。私の犬になると言いなさい」

地面に腹這いになって肩で息をする小太りの中年男性に、マキマは指を突きつける。
イエスか、ノーか。どちらにせよ配下かポイントが手に入る、そう思った彼女の目論見はあっさりと裏切られた。

「……こんな"怪しいモノ"に頼る気はなかったんだがな」

坂本が懐から取り出したのは怪しげな模様の入った果実だった。
それをそのまま上空に放り投げ、咀嚼。

刹那。何かが大量に燃焼するような音と強烈な熱波がマキマを襲った。

649映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:42:47 ID:v..8fpRE0

「……誰?」

そこに立っていた男を見、思わずマキマはそう呟いてしまう。そう、今まで小太りの愚鈍さを思わせる体型の商店主、坂本太郎はどこにもいなかった。
食べたものに劇的な美容効果と摩擦係数ゼロの能力を与える悪魔の実『スベスベの実』を食し、見違えるように痩せた最強の殺し屋、坂本太郎がそこにいた。

パァン、と弾けるような音が耳に届き、ややあって自身が腹部を殴られたのだと気づくマキマ。
咄嗟に『投射呪法』を使用し、加速。だが、その超反応を以てしても痩せた坂本を捉えきることができない。

「靴、邪魔だな」

ポイと靴を脱いだ坂本は足裏の摩擦をゼロにし、そのままアメフト選手のようにマキマにタックルを食らわせる。
マキマはグラウンドを飛び越え、先程二人がいた映画館の壁に叩きつけられる。今まさに坂本の攻撃の威力は一つひとつを取っても以前の数十倍に達していた。

「戻ってきたか」

坂本はそう言いながら、手首を鳴らす。

マキマは咳き込みながらヨロヨロと立ち上がった。
白シャツには吐血だろうか、大量の血が染みになっている。

「……どうして皆、私の世界を否定しようとするのかな」

これが、マキマがこの戦いにおいて吐露した唯一の正直な心情だったのかもしれない。

「それはたぶん、アンタが他人を支配しようとするからそう思うんじゃないのか」

坂本がマキマの言葉を受け、独りごちるようにぼそりと言った。

その時、一人の青年が館内から現れた。金髪にガラの悪そうな目つきをした青年だ。

「マキマさァん! パワーが死んだことについてとか色々聞きたいことがあるンすけど!
 ……って、めちゃくちゃ怪我してるじゃないっスか!」

飛び出してくるなりハイテンションに騒ぎ立てる。

「テメェがやったんかァ〜〜!」

キッと坂本に敵意を剥き出しにすると、チェンソーの悪魔に憑かれた青年、デンジは胸のスターターロープを引こうとした。

「――――デンジ君」

すると、坂本の言葉を受け、何か考え込むような面持ちになっていたマキマがここで初めてデンジを制した。

「私なら大丈夫。デンジ君、行こっか」

「え? でも――」

困惑するデンジをよそにマキマは駐車してあったバイクの無事を確かめ、それに乗り込む。

「行こう」

マキマは飼い犬をあやすようにバイクのサイドカーをポンポンと叩いた。
ちらりと坂本を見つつデンジはそれに従った。程なくしてバイクは滑るように発進し、地平の彼方に消えていく。

「……ふう」

ひとまず脅威は去ったということか。坂本の全身から力が抜ける。
体が重いような気がし、腹部を探ると、いつの間にか体型が元に戻っていた。

「ぬぅ、あの男一瞬で肥えおったぞ。まさか妖の類か……!?」

「ま、まあそういうこともあるんじゃないかなあ……? いや、やっぱりないかも? でも気配は人間だし……」

それを遠巻きに眺める参加者が二人。
鎌倉時代の武将、小笠原貞宗と元男の忍、風巻祭里である。

二人ともデンジを迂回して映画館に近づこうとしていたところ、謎の巨大な破壊音に驚き、外で様子を伺っていたのである。

「しかし、北条時行が死亡したとはな……。貴様の探し人は生きておるのだろう?」

貞宗は思うところがあるような表情を浮かべ、腕を組む。

650映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:43:05 ID:v..8fpRE0

「ああ、すずなら絶対に無事生き抜いてくれてる。なおさら早く合流しないとな」

決意を新たにする祭里。

「この短時間で12名もが死亡か。全くもって人の業とは恐ろしい」

貞宗は腕を組んだまま嘆息した。そう、ここまで既に12人もの人が命を落としているのだ。
考えたくはないが、そろそろ急いですずを探さなければ最悪の事態もありうる。祭里は身を引き締めた。

「貞宗さん、そういえば映画館だけど――」

「分かっておる。ここまで手酷く壊れてしまったのでは例の"えいが"も見れるか怪しいわな」

ぷいと後ろを向いてしまう貞宗。少々寂しそうなその姿に、楽しみにしてたのか……と自分のせいではないにも関わらず申し訳なくなる祭里だった。

「映画がどうかしたのか?」

「!」

音も気配もなく、いつの間にか坂本が二人の側に立っていた。
動揺し、思わず刀を向けてしまう貞宗と祭里。だが、坂本はそれをいとも簡単にいなし、更に後ろに回り込む。

「……悪い。アンタたちが殺し合いに乗ってないと見込んで話しかけたんだが、驚かせたか」

そんな坂本の様子に二人は武器を下ろす。

「俺の名前は坂本太郎。殺し合いには乗っていない。誰も殺さずにここを出るつもりだ」

「良かった。悪い人かもしれないって思ってたぜ――って、わわっ」

坂本の自己紹介を聞き、ホッとしたからか祭里の腹が鳴ってしまう。
思わず赤面する祭里に、坂本は袋いっぱいのポップコーンを差し出した。

「……俺もさっきめちゃくちゃ不味い実を食ったから口直しにこれを食ってるんだが、二人とも食うか?」

こうして、情報交換の前にモソモソと塩味のポップコーンをつまむ、裏社会に生きる三人組パーティーが誕生したのだった。

651映画館ではお静かに ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:43:26 ID:v..8fpRE0


【D-3/映画館/1日目・早朝】

【マキマ@チェンソーマン】
[状態]:ダメージ(大・回復中)
[ポイント]:5
[装備]:ゴーグル
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品0〜2(禪院直哉)、ランダム支給品1(マキマ)
[思考]
基本:10人殺して『チェンソーマン』と一緒に帰る。
1:???
2:もう一匹犬ができた。ポイントを集めてもらおう。
3:坂本太郎……。
[備考]
※禪院直哉を恐怖心に付け込んで洗脳しました。
※彼にポイントを集めさせて、献上させるルールを作るつもりです。
※『呪術廻戦0』を視聴し、死滅跳躍について何かに気づきました。
※自身の心情について坂本に諭され、思うところがあるようです。


【坂本太郎@SAKAMOTO DAYS】
[状態]:疲労(中)、打撲、切創
[ポイント]:0
[装備]:スベスベの実(食)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1
[思考・状況]
基本方針:誰も殺さずに脱出する。
1:放送を待って映画を見る。
2:仲間を集める。
3:マキマは危険。
[備考]
※参加時期はラボ編終了以降(原作4巻以降)。
※スベスベの実を食べました。持続時間は短いですが、痩せつつ摩擦をゼロにすることができます。


【デンジ@チェンソーマン】
[状態]:ダメージ(中、回復中)、困惑
[ポイント]:0
[装備]:ヘルメット
[道具]:基本支給品一式×2(デンジ、パワー)。ランダム支給品0〜2(デンジ)、ランダム支給品0〜2(パワー、武器ではない)
[思考]
基本:パワーを生き返らせてみんなで帰る。そして……。
0:レゼ、いんの? ここに?
1:パワーを殺したのが、マキマさん……?
2:出来れば悪いヤツを10人殺したい。
3:アキのことは、まあ、心配。
[備考]
※闇の悪魔戦前からの参戦です。


【小笠原貞宗@逃げ上手の若君】
[状態]:健康
[ポイント]:0
[装備]:スピードの弓と矢のセット@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:生きて領地へ帰る。
1:とりあえず諏訪大社へ。
2:花奏すずの捜索を兼ねて人の多そうな施設へ立ち寄る。
3:坂本と情報交換を行う。
4:あの”わたあめ”なる甘味はとても美味であった……。
[備考]
※参戦時期は36話後。
※名簿を確認したため、この場に北条の残党(時行)がいることを把握しました。
※自分の時代より未来の参加者がいることを知りました。
※異能の目により縫い目の坊主(羂索)は身体が死人であること。風巻祭里が男であることを感じましたが、今はそれは、気の迷いだと思っております。
※簡単にですが風巻祭里の祓忍のことや現代の知識を知りました。


【風巻祭里@あやかしトライアングル】
[状態]:健康、空腹(小)
[ポイント]:0
[装備]:屠坐魔@呪術廻戦
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:ずすを守り生きて帰る。
1:しばらくは小笠原貞宗と行動を共にする。
2:すずの捜索のため、人の多そうな施設で情報収集。
3:坂本と情報交換を行う。
[備考]
※参戦時期は73話後。
※自分の時代より昔の参加者がいることを知りました。
※自分が男だと言うことを貞宗には話していません。


『支給品紹介』
【スベスベの実@ONE PIECE】
坂本太郎に支給。超人系の悪魔の実。
効果としては、容姿が美しくなる&摩擦抵抗がゼロになるの2つ。
坂本の場合は容姿が美しくなるというより痩せる効果が主に出ているようだ。

652 ◆Il3y9e1bmo:2023/05/15(月) 20:43:46 ID:v..8fpRE0
投下を終了します。

653名無しさん:2023/05/16(火) 21:10:24 ID:kBnnFq1E0
投下乙です
ポップコーンを目くらましに使ったりの環境闘法が坂本らしい戦い方でいいですね
坂本の体型変化に合わせたスベスベの実の支給も面白いし、かなり使い方を広げられる能力だから相性も良さそう
祭里と貞宗とのチームも全員が場慣れしていて互いのフォローもできる安定した集団になれそうですね

654名無しさん:2023/05/24(水) 23:52:34 ID:Pje8Oowc0
投下乙です。
前回の感想も一緒に書かせていただきます。

>>イニシエーション・ラブ
死柄木もカゲメイも地獄のようなバックボーンを持ってますけど、レゼが育った地獄のほうが「戦闘で強い人間」を作るのに向いてた、その差が出た感じ。
レゼも、考えがもうちょっと纏まってたら敵連合入りしててもおかしくない倫理観の持ち主ですし、何気に前話で善逸が若干前向きな気持ちにしてたのが効いた形か。
敗者に運が無かったというより、善逸の運が良かったと言えそうですね。

>>映画館ではお静かに
坂本の環境利用闘法、大好きなんですよね。でも映画館だと利用できるものが思いつかなくて、戦闘になっても普通のステゴロになるかなと思ってました。
読んでてマジで「ポップコーン! その手があったか!」ってなりましたし、ワンアクションでハンドガン解体とナイフで制圧までいくうえ、その直前にコーラ置いてるワンクッション挟まってる。
こういう何気ない描写で原作の「笑えるほど強い」感をすごく捉えてますね。サカモトデイズのこういうとこ好きなんですよ。


我妻善逸
レゼ
予約します

655 ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/25(木) 00:09:26 ID:bYppt.I20
すいませんトリップつけ忘れました

我妻善逸
レゼ
予約します

656 ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 19:42:15 ID:bUUhJnBU0
モンキー・D・ルフィ
朝野太陽
香炉木恋緒
鬼舞辻無惨
予約に追加します

今晩中には投下できるかと思いますので、よろしくお願いします

657 ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:52:32 ID:bUUhJnBU0
投下します

658THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:53:15 ID:bUUhJnBU0
 死滅跳躍には、複数の「悪意の化身」が集められている。
 他者の価値を知らない世界貴族。
 他者へ隷属を強制する支配の悪魔。
 他者を本能のままに殺傷する特級呪霊。
 どれもこれもが息をするように悪を吸い、発する、穢れた性根の権化たち。

 そして、この二人も。

 死柄木弔。個性社会の黒幕によって作られた、魔王の器。
 カゲメイ。三大妖に数えられる、比良坂命依のオモカゲ。
 彼らもまた、人間社会から生まれ落ちた悪意の化身だった。

 そんな二人は今、自らを上回る悪意によって殺し合いの場に集い、そして無惨な屍を朝日に晒している。
 その傍らに、一人の華奢な女が立っていた。
 この死体を作り出した下手人、レゼ。
 その身を「爆弾の悪魔」へと化生する武器人間。紛うことなき、生ける凶器である。

 冷たい表情で死体を見下ろすこの女に、犯してしまった殺人行為に対する後悔の念などは微塵もなかった。
 そも、この二人は殺す気で襲ってきた以上は防衛としての弁は立つが、それをふまえたとてだ。
 これだけ冷たい眼差しで他殺体を見つめる彼女に、正常な倫理観があると期待する者はいまい。
 この冷たい顔こそ、さる大国の非人道的な行いによって生み出された顔。
 ただ標的へ向け投下され、着弾し、炸裂するだけの。
 冷徹無慈悲な鉄仮面。麗しき爆弾の皇帝(ツァーリ・ボンバ)の尊顔。
 彼女もまた、「悪意の化身」と呼べる存在だった。

 もしこの顔を、すぐ近くで眠りこけている少年が目撃していたなら、きっとひどく戸惑い、混乱しただろう。
 先ほどまで楽しく(少なくとも少年の主観では)談笑していたこの女が、他者の死に対して特にこれといった感慨を抱いていない様子であることに。その落差、温度差に。

 志を同じくする仲間を思いやりながら、万象への破壊を渇望することもあろう。
 人類への報復を誓いながら、人間社会の営みを楽しむこともあろう。
 それでも彼ら/彼女らが「悪意の化身」足り得る。何故か。

659THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:54:38 ID:bUUhJnBU0

 その一因として挙げるべきは、悪意の表出に躊躇いが無いこと。
 敵とみれば全霊を持って排除し、都合が悪いとみれば手段を択ばない。
 苛烈な態度で他者を陥れ、非情な振舞いで徹底的に傷つける。
 自己を第一として他を軽んじ、目的遂行のために利用する。

 「悪意の化身」たちは総じて、他者に対する関心が一般人のそれに比べて薄い傾向がある。
 より正確に表現するならば、他者に対しての関心のパラメータが自身にとって"有用か否か"に偏っているのだ。


 そんなレゼであっても、唐突に聞こえてきた不意の声に対しては"有用か否か"の尺度を持ちだす余裕もなく、ただ純粋な驚きの発露を隠せなかった。


リンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴン
 リンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴン


「!?」

 突然聞こえてきたそれは頭上からのもの。
 とっさに見上げたレゼは、自分の上に小さな虫が飛んでいるのを見つけた。
 虫が、リンゴンと喋っている。

 一瞬唖然としたレゼが我に返り、虫を黙らせようと手を伸ばす。
 だが虫はその手をすり抜けるようにレゼの目の前へと降下し、話しかけてきた。

「よぉ、俺はコガネ。走者(プレイヤー)と黙示録(アポカリプス)を繋ぐ窓口さ!!」

 目の前に迫って来た虫を反射的に払おうとしたレゼは、その言葉に振るいかけた腕を止める。

「……窓口?」
「走者(プレイヤー)レゼ! オマエは課題(クエスト)を達成して報酬を受け取る権利を得た!
 だからオマエが望むなら、俺が黙示録(アポカリプス)の元へ案内するぜ!」

 顔の前でくるくると、中空に円を描いて飛ぶコガネ。

 突然現れた物体にあっけにとられているレゼは、それを二周、三周と目で追って――――素早く手を伸ばし、コガネを鷲掴みにした。
 ウゲェッ、と苦しそうな声を上げるコガネだが、それに掛けられるレゼの声は冷たい。

「コガネ、アポカリプス、クエスト……。急に言われても訳がわからない。説明して」
「グ、グゲゲ。ア、ア……――――、【黙示録(アポカリプス)とは、意思を持つ本型の古代遺物(アーティファクト)です。】
 【黙示録は走者に対し課題(クエスト)を提示し、達成者には報酬を与えます。】
 【課題の達成者には式神・コガネが憑き、黙示録の元へナビゲートします】」

 先ほどまでのフランクな口調から一転、機械音声じみた無機質なアナウンス。
 しかしその発言が終われば、コガネの口からは再び苦悶の声が漏れ出した。
 その点についてレゼが問えば、「さっきのは課題システムについて説明するアナウンスだぜ」とコガネの弁。

660THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:58:02 ID:bUUhJnBU0

 語調、内容、振舞い、どれもこちらへの害意は感じられない。
 レゼは少し考えて、コガネを解放することにした。

「私がクリアした課題って、なんのこと?」

 拘束を解かれたコガネは慌てたようにレゼの頭上、手の届かないであろう辺りまで飛び上がる。
 もっとも、レゼの跳躍力であれば届かない距離では無いが、それはともかく。
 わざとらしい咳き込みを何度かして、小さな体を震わせてから、羽虫は再びレゼの目の前へ降りてくる。

「【走者"カゲメイ"の討伐】
 【報酬 追加点20ポイント付与】」

 冷静さを取り戻していたレゼの顔に、再び心底の驚愕が浮かぶ。
 追加点20ポイント。さっきの戦闘で得た10ポイントと合わせれば30ポイント。
 ルール追加が可能な状況。脱出のための50ポイントも現実味を帯びてくる領域。

「どうする? 黙示録の場所へ案内しようか。それとも現在地点だけ教えて、目障りなら消えていようか。
 おまえが報酬を受け取るまでは、呼ばれれば俺はいつでも出てくる。道に迷ったり黙示録が移動すればアナウンスすることもできるぜ」
「……柔軟に対応してくれるんだね」

 ずいぶんと自分に都合の良い話である。
 ここまで都合が良いと、却って素直に信じられなくなるのが人情というものだ。 
 降って湧いた幸運に後先考えず飛びつけるのは、よほど欲に目が眩んでいるか、心が幼すぎる者くらいのもの。
 自分に都合のいい話を鵜呑みにする、そういう輩を純粋とは呼ばない。

 殺し合いの最初に主催の男が語り掛けてきたときと同じ、聞く者を無条件で信じさせるような言霊が、コガネの言葉にも宿っているのを感じたとしても。


「じゃあ、早速案内して」


 だが、レゼはあえてそこから一歩踏み出した。

 周囲に散らばった死者の支給品から手早く目ぼしいアイテムを拾い集め、行動を開始する。
 その直前、一瞬だけ、レゼの視線がある地点で留まった。視線の先には、眠る善逸の顔。

(もし本当に30ポイントも手に入るなら、殺し合いに乗ることの意味は俄然増す。
 そんな私と一緒だと、善逸君にも迷惑だろうし、ね)

661THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:58:30 ID:bUUhJnBU0

 実際のところ、レゼの心に善逸を思いやる気持ちがどれだけあったかと言えば、さほど無い。
 長々と聞かされた自慢話の内容からして、人格の面で扱いにくいのは確かで、正直長く行動を共にしたくはないタイプ。
 とはいえ、本人の善性に対しては率直な好意を持っていた。
 自分を気遣い、守ろうとした善逸に対しての、感謝の念。
 感謝の念があるからこそ、レゼは考える。

 善逸と行動を共にすれば、殺し合いに乗るという選択肢を取りにくくなる。
 まだ心が決まったわけでは無いが、同行者に忖度して行動を縛られることをレゼは嫌った。
 善逸に迷惑がかかるというのも本心ではあるが、有体に言えば、自分の都合を優先したのだ。
 感謝していると言っても、その程度のことだった。




【H-3/市街地/1日目・早朝】

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[状態]:気絶、疲労(中)、複数箇所の打撲(大)
[ポイント]:0
[装備]:アキの刀@チェンソーマン
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:死なない。獪岳に事の真相を確かめ、自分のやるべきことをやる。
1:獪岳のことは自分一人で決着をつける。
2:出来れば炭治郎とカナヲとは合流したい。
3:レゼは放っておけない。
4:無惨、上弦には警戒。
5:れ、レゼちゃんが人を……!?
[備考]
※レゼとの情報交換は一先ず表面的なことに留まっています



・・・

662THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:58:56 ID:bUUhJnBU0
 最初の放送が会場に響く、その少し前。

 鬼ヶ島、ドクロドーム屋上。
 戦闘狂ファンを一蹴する麦わら帽子の青年に、衝撃を受けた太陽と恋緒。
 つかの間の自失から復帰した二人は、何の打ち合わせをすることも無く即座に青年との接触へ動いた。
 目的は、麦わら帽子の青年の脅威査定(スレットアサスメント)。
 二人を相手にあれだけ一方的な暴威を振るったファンが、逆に一方的なまでの実力差で全く相手にされていないような、それほどの戦闘力。
 そんな力の持ち主が、殺し合いに対してどんなスタンスをとっているのか。
 接触に伴う危険を承知で、早急に知る必要があると二人は考えた。

 杞憂、という言葉がある。モンキー・D・ルフィという人物像を知り得る者から見れば、この状況はそれに近いと言えるだろう。
 確かに桁外れの戦闘力を目撃し、その力が無差別に振るわれることを危惧するのは自然な思考だ。
 しかし実際は、二人が承知したと思っている"接触に伴う危険"など、吹けば飛ぶような程度の軽いものでしかない。

 よほど気難しいか鬱屈した性根の者でもない限り、麦わら帽子の青年――ルフィが醸し出す人たらしの雰囲気を前に、緊張感を保ち続けるのは困難なのだから。

 だが。


「ルフィさんも殺し合いに乗っていないなら、一緒に行動しませんか。
 俺たちと仲間を集めて、一緒に殺し合いを止めてください」
「え、いやだ」
「「えぇ!?」」


 短時間の会話でもありありと伝わってくる、気のいいお兄さん感。
 そんな暖かいオーラ全開のルフィに、早くも気を許しつつあった太陽と恋緒だったが。
 てっきり二つ返事で了承されるかと思っていた同行の誘いを拒絶され、二人は驚きの声を上げた。

「おれは鬼ヶ島から離れられねェんだ。ここで待たなきゃいけない奴らがいる」
「待たなきゃいけない奴……?」
「仲間と、敵だ」

 死滅跳躍の場に放り込まれ、仲間と引き離されたとて。
 名簿にその名前があった時点で、"麦わら"のルフィは自身の役割を確信している。


 ――――手ェ組もう!! 「同盟」だ!!
 ――――カイドウの首はおれが貰うぞ!!!


 この場にいない、幼き同盟相手との約束がある。
 目指す山巓がいかに険しかろうと、道中楽しむが信条とはいえど。
 その頂、約束の履行が目の前にあるというのに寄り道が出来るほど、ルフィは人の心がわからない男ではない。

663THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:59:26 ID:bUUhJnBU0

「カイドウはおれが倒す。あいつは放っておけねぇ」
「いや……放っておけないなら尚の事、動くべきなんじゃ?」
「この鬼ヶ島はカイドウが根城にしてた場所だ。
 そんであいつは、縄張りを荒らされて知らんぷりするような海賊じゃねェ。
 カイドウは、ここに戻って来る」

 未踏の地に好奇心が抑えられない質でこそあれ、この場は呪いの箱庭。殺戮儀式の祭壇、死滅跳躍。
 主催によって押し込められた世界は窮屈であると理解していたし、いずれは悪意も企みも本人も、全てまとめてぶっとばすと決めてはいるが。
 先に決めたことを曲げることはしない。20年もの間、時の止まったままの友達(ダチ)の国を、これ以上待たせておけない。

 他にカイドウを探し回るアテが無い以上、考えるより動くが常の海賊は、珍しく"待ち"の選択をする。
 だからこそ、目覚めてから他の場所には目もくれずに鬼ヶ島へ直行。
 空腹にも耐えて、待ち人の到来をこの場で待ち続けていた。

 もっとも、それらをわかりやすく説明が出来るほど、ルフィという人間は口が上手くない。
 百獣海賊団がワノ国にもたらした災禍。
 "麦わらの一味"とワノ国家臣団の友誼。
 五番目の皇帝と四皇がぶつかるという事件の意義。
 そしてなにより、地上最強の生物の危険性と、わずかでもそれと接触できるの確率が高いであろう鬼ヶ島という場所の重要性。
 それらを何一つ知る由もない太陽と恋緒は、ルフィとカイドウという人物の関係が険悪であるということまでしか読み取れない。
 とはいえ、その事柄について口にする眼差しの真摯さを前に、二人の背筋が自然と伸びる。
 焦点のブレない真っすぐな視線は、敵を見据えて離さない。逸らさない。逃がさない。
 生来の陽気さを抑え、持ち前の朗らかさに蓋をする好青年の、覚悟の現れ。 
 これを間近で見てしまえば、両者の因縁は対決失くして解消されることは無いのだという深刻さだけは、わかる。

 それでも、せめて夜桜邸までの道中だけでも同行できはしないかと。
 あれやこれやと言葉を尽くし、なんとか同行してはもらえないかと説得する二人。
 そうこうしてる間に放送が聞こえて、犠牲者の名が読み上げられ、参加者たちへの嘲笑に怒りを煽られて。
 そして放送を聞いたその上で、ルフィが険の増した表情を浮かべつつも頑としてこの場を離れることを譲らなかったことで、太陽と恋緒は説得を諦めたのだった。



・・・



 即戦力の勧誘に失敗した太陽と恋緒は、ドクロドームの屋上から正規のルートで降りていく。
 せめて見送りくらいはすると、ルフィを伴って島の縁へ向かう、その道すがら。

「これから朝男とコーロギはどこ向かうんだ?」
「夜桜邸です。名簿に載ってる夜桜さんたちは皆、太陽さんの知り合いで信用できる人だそうなので、まずはその人たちとの合流を目指して」
「あ、朝男……」

 自分につけられた"あだ名"に居心地の悪さを感じてか、なにかぶつぶつ言ってる太陽の代わりに恋緒が話を進める。

「夜桜んちって島の南東だよな。伏男も図書館の方に行くって言ってたから、ひょっとしたら会えるかもな!」
「伏男?」
「おう」
「……伏黒さん? 伏黒甚爾さんのことですか?」
「いや、伏男は恵だよ」
「???」

 話がどうにも要領を得ない。
 よくよく話を聞けばルフィが出会った伏黒恵は男性であるらしい。
 放送で主催から名指しで煽られていた二人の人物、その一人。
 恵という名前から女性であろうという先入観があったが、どうやら太陽や恋緒と同じ年ごろの少年だそうだ。

「じゃあ、二人の伏黒ってやっぱり親族、なんですかね? ルフィさんはその辺のお話って」
「どーだろな。おれは聞いてねぇや」
「……とりあえず、ルフィさん。伏黒さん二人いますし、伏男ってのはよしといたほうが……」
「あー、そうか?」

664THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 21:59:49 ID:bUUhJnBU0

 ルフィは人の名前を覚えない。
 別に覚えようともしていないわけでもないが、本名を覚えようが間違って覚えようが、結局は自分が呼びやすい名前で勝手に呼ぶ。
 敵だろうと略称で呼ぶし、味方だろうと本名に掠りもしないあだ名をつけてしまう。
 これが敵であれば呼び名などこちらの勝手だが、さすがに味方から苦情がくれば呼び名を改める、その程度は筋を通すのがルフィだ。

「……メグミン?」
「ぶふっ」

 そのあだ名のあまりの気安さに噴き出してしまう恋緒。
 隣で苦笑する太陽は先ほどの朝男ショックから、顔も知らない恵少年への勝手なシンパシーを強めている。
 本人の与り知らぬところで勝手にあだ名をつけられ、勝手に改められている伏黒恵には少し同情するが。
 こうした談笑も束の間に、ドクロドームの外部へ続く扉が見えてくる。
 それを抜ければ、島外へと伸びる橋は目の前だ。

「まぁいいや、じゃあウニ男によろしく言っといてくれ!」
「あだ名そっち選ぶの!?」
「……そういう髪型してるのかな」

 そうして二人と一人は分かれることとなった。
 凶器が放置されていやしないかと立ち寄った鬼ヶ島。
 そこで出会った青年は、二人がこれまで出会った強者の中でも上澄みの上澄み。
 行動を共にすることこそ出来なかったが、共に殺し合いの破壊を志すならば、いつか必ず手を取れる強者。
 その存在を知れたことに、二人は少なくない満足感を持って、扉へと足を進めていた。

 そして、ふと気が付く。
 閉じられた扉の手前に、何かが落ちているのが見えた。
 よくよく目を凝らしてみれば、落とし物ではない。
 ドーム内部の底面がわずかに隆起している。

「太陽さん、あれ」
「待った」

 戦闘を含め、不測の事態への対応に劣る自覚がある恋緒が傍らへ声をかける。
 しかし待ったをかけたのは、踵を返し二人の後ろに追いついたルフィだった。

 地面の隆起は少しずつ、ただし確実に大きさを増している。
 何かが飛び出してくるのは明白。それはそう長くはない未来。
 想定すべきは殺し合いに乗っている危険人物。あるいはそれの息のかかった事象。
 なんにせよ警戒しないわけにはいかない。太陽は恋緒を庇いつつ、己が得物を握り込んで――。



「危ねェ!!」
「うわっ」
「キャアア!?」

 前触れなく、背後の青年に抱え上げられた。
 反転する視界にドクロドームの天井が流れ、ルフィが二人を抱えて後退したことを太陽は悟る。
 その寸前、太陽は視界の端にナニカを捉えていた。

(鎖鎌……?)

 後退したルフィに地面へ降ろされ、二人は先ほどまで自分たちがいた地点に振り返る。
 太陽が想起したものと、実際の物は異なった。だが的を得てもいた。
 そこにあったのは、二人が立っていた足元から伸びた二本の触手。
 その先端は、確かに鎌を連想させる刃の鋭利な輝きを放っている。
 明らかに殺傷を目的として生成された、それは確かに肉の鎖鎌。

 そして扉の手前、地面の隆起が爆ぜた。
 砂利を巻き上げ土塊を跳ね上げ現れたのは、二メートルはあろうかという背丈の鎧武者だった。

「っ、なんだアイツ……!?」

 襲撃者を目視し、ルフィが慄く。
 戦慄はあとの二人も同様、あるいはそれ以上か。

665THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 22:00:09 ID:bUUhJnBU0

 鬼の如き形相が象られた面頬に不気味さを感じたこと。
 巨体の鎧武者が地中から現れたという状況への戸惑い。
 そういった常識的な理由は確かにあれど、最も目を引く鎧武者の異常は、具足の隙間から伸びる無数の触手のこと。
 二十はあろうかというそれらは不規則に揺れて空を掻きむしり、風切り音を立てている。
 縦横無尽を体現する凶器の嵐を纏い、鬼の面頬越しに睨みつけてくる眼差しを見つければ。
 それらの切先がこちらへ向けられるのは時間の問題であると、否が応でも理解させられた。

 襲撃者の纏う不穏な雰囲気に対して、真っ当に警戒心を引き上げる太陽と恋緒。
 一方、二人を庇う立ち位置のルフィの胸中には、警戒よりも強い嫌悪感が沸き上がっていた。

 見聞色の覇気。
 生物の感情や意志を読み取りるこの力を修めた者は、周囲の生物の気配を感じ取ることや、相手の行動を先読みすることが可能となる。
 先刻、ドクロドーム屋上にて、拳鬼ファンの攻撃を避け続けることが出来たのも。
 たった今、地中より振るわれた奇襲から、太陽と恋緒を守ることが出来たのも。
 海賊"麦わら"が夢の果てへ至るため身に着けた研鑚の賜物によるものだった。

 その鍛えられた見聞色が、異物を検知した。


「邪魔をするな、山猿。そこの虫けらは私の点だ」

 鬼の面頬の向こう側で、男が語り掛ける。
 それは対面するルフィに対する、理不尽で傲慢な悪意の表明。
 しかし言葉以上に、ルフィの見聞色の覇気は男の精神状況を顕然と読み取る。

 複数の殺気。複数の鼓動。
 ――――留まることを知らない悪意。


「――――っ!」

 鍛えすぎた見聞色は、近い未来さえも見通す。
 音を越えて振るわれた高速の鞭、都合七閃。
 それらに対応できず、首と胴が泣き別れになる少年少女の光景(ヴィジョン)。
 それを認識すると同時、ルフィは二人を即座に担ぎ上げた。
 肩の上から二人の戸惑いが伝わるが無視する。
 この襲撃者はヤバいドクロドームの奥へと駆け出した。



・・・



 襲撃者―――鬼舞辻無惨の怒りは、百万分の一ほどの陰りも見せてはない。
 最初の夜の内に必要数の得点を確保できなかった時点で憤懣の限界を超えていた。
 それでもまずは、目の前の問題を順番に解決しなくてはならない。
 身を滅ぼす日光から逃れるため、屈辱を飲み込んでミミズのように地中へ潜り、また憎き主催の男からの施しである支給品にも手を付ける。
 曰く【不壊】などと誇大な謳い文句の鎧は、無惨本来の体格には合わないものではあったが、内部に潜り込み日の光から身を護るには具合が良かった。
 更に重ねての安全策として地中を潜行。
 これによりひとまずの安息を得た無惨であった。

 そうして次なる標的と安息の地を求めてやってきた鬼ヶ島だったが、ここでも無惨の怒りに油を注ぐ輩が現れる。

 麦わらの男。
 奇襲により無惨の手中に収まるはずだった二つの命を救ってみせ、追撃すれども触手の隙間をスルスルと逃げてゆく様はまるで"心を読まれている"かのようで。
 本来は笑顔を絶やさない好青年が頬をひきつらせているだけ十分に状況は深刻であると、見る者が見ればわかるのだが、無惨の目には眼前を鬱陶しく飛び回る羽虫としか見えていない。

 どいつもこいつも。
 どいつもこいつも、だ。
 この殺し合いに巻き込まれてから、何度目かわからない苛立ち、憤り、激しい怒り。
 いくら暴れても、いくら罵声を浴びせても、状況は一向に前進しない。
 激情のあまり視界が赤く染まる、などという次元はとうに過ぎ去り。
 もはや視界から一切の色が失われつつあるほどの境地。
 透明な世界とは正反対の、暗く滲んだ白黒の中で、無惨はもがき苦しんでいる。

 そうして、何度目かの攻撃が躱され、何度目かの罵声を叫びかけた、その時だった。



リンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴン
 リンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴンリンゴン

666THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 22:00:28 ID:bUUhJnBU0
「え!?」
「なんだァ!?」

 道化の如く底抜けに陽気な声は、前をゆく麦わらの頭上からのもの。
 麦わら本人に加え、抱えられた小娘どももその突然の出来事に戸惑う様子に、怒り心頭の無惨にもわずかばかりの疑問が生じる。

「よぉ、俺はコガネ。走者(プレイヤー)と黙示録(アポカリプス)を繋ぐ窓口さ!!」

 麦わらの頭上に現れた羽虫が口にしたそれは、先ほどの放送でも聞いた謎の単語に纏わる話らしい。

「走者モンキー・D・ルフィ! オマエは課題を達成して報酬を受け取る権利を得た!
 だからオマエが望むなら、俺が黙示録の元へ案内するぜ!」
「……なんだこの虫!」
「ル、ルフィさん気を付けて! こいつ今、主催が言ってた黙示録って……」
「すんげェ〜〜! 喋る虫だァ!」
「ルフィさん!?」

 走る速度は微塵も緩めないものの、我慢続きの好奇心が僅かに漏れた。
 ウソップが見たら喜びそうだなァと、この場にはいない仲間のことが脳裏に浮かんだのもあるかもしれない。
 わずかに表情が明るくなった麦わらが、好奇心のままに羽虫――コガネへと質問を投げかける。
 主催の言っていた課題。それを意図せず達成した人物には、黙示録への案内役があてがわれるのだと言う。

「おれがクリアしたクエストってなんだ?」
「【走者"朝野太陽"の捕獲】
 【報酬 会場全域に"帳"の展開】」
「帳ィ? なんだよそれ」
「"帳"ってのは呪術師が扱う結界のことさ!
 今回の報酬で展開される"帳"の効果は、太陽光を遮断―――」





 見聞色の覇気は、他者の意識や気配を察知する。

 複数の脳と心臓を抱える無惨の気配は常人のそれとは極端に異なっている。
 そして、無惨は紛うことなき悪意の化身であり――生存本能の怪物である。
 常に他者を害する思念が渦巻くその胸の中で、一際黒く輝く原初的な本能に駆られた、いわば発作の如き反射速度でもって。

 その状況を端的に述べるとするならば。
 モンキー・D・ルフィの無意識(好奇心)を、鬼舞辻無惨の無意識(生存本能)が上回った。



・・・



「え?」

 ルフィの頭を挟んで、隣に担がれていた太陽の姿がない。
 その事実を恋緒の脳が受け付けるまで、およそ十秒の時間が必要だった。

 太陽が担がれていたルフィの左肩は、皮膚が剥がれて血が噴き出していた。
 コガネの話に夢中になり、見聞色の集中を緩めたこと。
 攻撃の先読みが適わなかったとしても、未来視を使っていれば回避は出来たであろう状況をルフィは直感で理解。
 それでも、すれ違う直前に攻撃の気配を察知しわずかでも身をよじったおかげで、ルフィの手傷は肩の"かすり傷"に留まっている。
 それでも、ルフィは苦悶の表情で傷口を抑え、前を見る。

 ルフィと恋緒の前方。
 一瞬にして二人を抜き去り、太陽を掠め取った鎧武者――無惨。
 その頭上に、再びコガネが現れたところだった。

「よぉ、俺はコガネ。走者と黙示録を――」
「無駄口を叩くな、疾くと答えろ。この状態でも捕獲状態と見做すのか」
「…………――――。
 【捕獲クエストの原則として、捕獲対象の生存が満たされない場合はクエスト失敗となります】
 【クエスト挑戦者に同化、吸収された場合においても捕獲対象自身の意識があり、かつ可分であれば捕獲状態として認められます】」
「やはり生け捕り限定か、煩わしいことこの上ない……。報酬の履行が確認でき次第喰らってやる」
「あ……がっ……」

 出来の悪い加工が施されたモンタージュ写真のように、その光景はまるで現実味が無かった。
 無惨の纏う鎧の腹部が露出し、その部分に少年――太陽が埋まっている。
 肉が同化する際には凄まじい腐臭がするのだと、恋緒はこの時初めて知った。
 太陽の顔中に浮き出た血管は、彼の身体に尋常ではない負荷がかかっていることを物語っている。
 極めつけに、遠く離れた距離からでもかすかに聞こえる破砕音は、彼の体内の骨が歪められ、今もなお砕かれ続けていることをありありと想像させた。

 捕食、されている。生きたままで。
 しかも、しばらくは食べ残しとして生かされることが確定していた。

667THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 22:04:10 ID:bUUhJnBU0
「コガネ、黙示録の所在を言え」
「【黙示録の現在地点、F-7。図書館の会議室です】」

 F-7。その場所を示され無惨の顔が面頬の奥で歪む。
 そこは無惨が殺し合いの渦中にて、最初に手痛い反撃を喰らった場所であることは、この場において他に知る者はいない。

「この、てめェ……!」

 肩口の激痛に悶えながら、ルフィが咆える。
 かつて毒人間との対戦を経て身に着けた、あらゆる毒物への耐性。
 それは鬼の血液という、ある種の生物毒に対しても有効であったらしい。
 あるいは、すれ違いざまのかすり傷で注入された血液が少量であったことも、不幸中の幸いであったか。
 それでも攻撃直後に神経を蝕む毒の刺激は流石に堪えた。

「口を開くな猿。私にはやることが出来た。私の得点を妨げた報いはそのあとだ」

 憤怒の視線なぞ、それこそ腐るほど浴びてきた。
 あの狂気の集団、鬼狩り共が鬼を見る目と何ら変わらない。
 こちらの命に欠片ほども影響しない視線。何億束ねようと陽光の代わりになるでもなし。

 直後、鎧武者が跳ね跳ぶ。
 全身の筋肉を動員しての跳躍はルフィたちを跳び越え、ドームの扉前に開いた穴へ飛び込んだ。

 この間、約十秒。

「……コーロギ、追っかけるぞ」
「あっ……」

 ―――そして、ようやく状況が飲み込めた恋緒の頭が動き出す。

「で、でもルフィさん。ここでカイドウを待つって……」
「言ってる場合かよ! 今追っかけなきゃ、朝男殺されるぞ!!」

 このままでは、殺される。
 さっきまで隣にいた人が、殺される。
 目の前に迫った初めての"他人の命の危機"に、恋緒は身震いする。
 この会場のどこかにいる、すずや祭里たちを心配する気持ちは、常に強かったが。
 それとは一線を画す、より一層現実味を帯びた危機感。

 今になって、震えが止まらない。
 それでも、ルフィの身体にしがみつくようにして、体の震えを抑え込む。

「助けに行くぞ!!」
「は、はいっ!」

 肩に担いでいた恋緒を背中に背負い、ルフィは駆け出す。
 ドクロドームの外はすっかり明るくなっていたが、今の二人には限りなく暗い朝日だった。




【G-5/鬼ヶ島/1日目・早朝】

【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:右肩負傷
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いをぶっつぶして元の世界に帰る。
1:朝男(太陽)を助ける。
2:鎧(無惨)の異常な思考や気配に困惑。
3:サンジと合流し、カイドウを倒すため、鬼ヶ島で待つ。
[備考]
※参戦時期は鬼ヶ島突入直前
※肩の傷から注入された無惨の血液は少量だったため、持ち前の抗体で事なきを得ました。
 血液を大量、または継続的に注入された際にも抗体が有効であるかは不明です。
※見聞色でレゼの存在を認識していたかは、以降の書き手さんにお任せします。

【香炉木恋緒@あやかしトライアングル】
[状態]:ダメージ(小)、恐怖
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1、SBB(スーパーボール爆弾)@SAKAMOTO DAYS(残弾3/5)、標準的な内容の工具箱
[思考]
基本:祓忍として、こんな殺し合いは見過ごせない。
1:ルフィさんと一緒に、太陽さんを助けなきゃ……。
2:結界の突破手段を模索する。
3:祭里くんやすずさんが心配。
4:皮下真って人とカゲメイには最大限警戒。
5:太陽さんの為に何かしらの武器は作ってあげる。
6:もしかしたら会場内に私の店があるかもしれない?
[備考]
※太陽とお互いの情報を交換及び共有し、夜桜家や開花等の知識を得ました。

668THE DEVILS AVATAR ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 22:05:12 ID:bUUhJnBU0


【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(中)、激怒、憎悪、ほぼ全裸、腹部同化、コガネ憑き
[ポイント]:10
[装備]:不壊の鎧@アンデッドアンラック
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:10人殺す。願いを叶える。
1:黙示録の報酬"帳"の実態を確認する。
2:袈裟の男(羂索)も殺す。
3:自分にポイントを献上しに来ない配下の鬼共、どうしてくれようか。
4:先ほどの連中(アキ、シン)とあの中華風の男(シェン)は絶対に許さない。
5:鬼ヶ島の麦わらたち(ルフィ、恋緒)は後で殺しに行く。
6:ポイント譲渡のルール追加を行いたい。
[備考]
※産屋敷邸襲撃前より参戦。
※シンはまだ生きていると思っています。
※七海によって身体をバラバラにされ、なんとか形だけは復元しました。
 能力は以前よりかなり劣るようです。
※腹部で太陽と同化しています。
 抵抗を防ぐため骨を折り血を送り込んでいますが、無惨自身がその気になれば健康体にして分離することもできる段階です。
※【走者"朝野太陽"の捕獲】【報酬 会場全域に"帳"の展開】の条件を満たしています。
 黙示録との接触で、会場の全エリアに太陽光を遮断する"帳"が展開されます。

【朝野太陽@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:意識朦朧、ダメージ(大)、骨折(全身の六割)、下半身同化、無惨の血液注入
[装備]:形状不定合金『鬱金』@夜桜さんちの大作戦
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:六美や家族の皆を守り抜いて帰還する。
0:???
1:今は恋緒と共に行動。祭里やすずの事も探しつつ夜桜邸へ。
2:皮下とカゲメイは警戒。
3:凶一郎兄さんは……うん、大丈夫だな!
[備考]
※参戦時期は銀級試験合格後。
※恋緒とお互いの情報を交換及び共有し、祓忍や妖等の知識を得ました。
 ただし恋緒に夜桜家の根幹に関わる秘密は話していません。
※半身を無惨に同化されています。



・・・



 一連の出来事を、レゼは物陰から見ていた。
 自分以外の課題達成者の存在。
 襲われた少年たち。
 異形の鎧武者。
 興味をそそられることこそあれ、いずれの状況においてもレゼが身を乗り出すことはなかった。

 あの危険人物が黙示録と接触するのはリスクが高い。
 懸念すべきは黙示録の独占、下手をすれば破壊され報酬を受け取る機会を永久に失うかもしれない。
 殺し合いに乗るか否かに関わらず、アレとは出来るだけ関わらないか、さもなくば早急に処理すべきだろう。
 
 まずは一路、F-7へ。
 あの麦わらの青年よりも早く、あの鎧武者よりも先に、黙示録と接触を目指す。
 チューカーのピンを抜き、再び爆弾の悪魔へと姿を変えた。


【レゼ@チェンソーマン】
[状態]:疲労(中)、裂傷(大・回復中)、爆弾の悪魔化
[ポイント]:10
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:デンジに会う。
1:黙示録の元へ
2:マキマには警戒
3:ルールの追加か、殺し合いに乗るか
[備考]
※善逸の話を聞いて両者の世界が違う世界だと気づきましたが、詳しい情報交換は行っていません。
※【走者"カゲメイ"の討伐】【報酬 追加点20ポイント付与】の条件を満たしています。
 黙示録との接触で、20ポイントが付与されます。



【支給品紹介】
【不壊の鎧@アンデッドアンラック】
無惨に支給。
否定者【不壊】によって作られた鎧。
2メートルほどの大柄な作りのため着用者を選ぶ。




【黙示録の課題について】
 課題を達成したキャラクターには死滅跳躍の式神「コガネ」が憑きます。
 コガネは課題の達成者に報酬を提示し、黙示録の在処まで案内します。
 課題に関する質問には答えますが、どの程度の内容まで答えるかは不明です。

669 ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 22:08:37 ID:bUUhJnBU0
投下終了です。

670 ◆vV5.jnbCYw:2023/05/31(水) 22:45:17 ID:nWUSROkk0
投下お疲れ様です。
一気に話が動いて、同時に雰囲気がかなり物々しくなりましたね!!
レゼ側とルフィ側、2つの陣営の緊張感を煽るような演出、どちらも好きです!!

日差しが出たら鬼どうすんの?って思ってた所もありましたが、帳を使うとは。
原作の要素を上手く使った良いチョイスだと思います(ルフィは残念でしかないが)

671 ◆7XQw1Mr6P.:2023/05/31(水) 23:03:28 ID:bUUhJnBU0
もう感想が来てる!? ありがとうございます!
個人的な試みとして今まであまり使ったことの無い文体を意識して書いたのですが、とりあえず大失敗ということは無さそうで心底安心しています。

一方で、レゼの状態表の方を失敗してしまいました。
Wiki編集者様にはお手数を書けしますが、以下の修正版に差し替えをお願いします。


【レゼ@チェンソーマン】
[状態]:疲労(中)、裂傷(大・回復中)、爆弾の悪魔化
[ポイント]:10
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1〜2(レゼ)、ランダム支給品1(死柄木弔)、ランダム支給品1〜2(カゲメイ)
[思考・状況]
基本方針:デンジに会う。
1:黙示録の元へ
2:マキマには警戒
3:ルールの追加か、殺し合いに乗るか
[備考]
※善逸の話を聞いて両者の世界が違う世界だと気づきましたが、詳しい情報交換は行っていません。
※【走者"カゲメイ"の討伐】【報酬 追加点20ポイント付与】の条件を満たしています。
 黙示録との接触で、20ポイントが付与されます。

672名無しさん:2023/06/01(木) 22:59:36 ID:itzxaGG.0
投下乙です!
一気に局面が動きましたね……
クエストを上手く話に組み込みながら緊迫感ある展開と文章が続いてワクワクが止まらねぇ〜
連戦が続く無惨ですがやはり戦闘能力は参加者内でも随一だし初見殺し満載の即死技が多すぎてヤバすぎる……
太陽もここまで浸食されてしまうとまともな手段だと復帰するのが難しそうだけどどうなってしまうのか
黙示録の近くにも参加者が集まってる状態だし、レゼの報酬獲得もあるし、一気にポイントが集まって更に状況が動きそうですね

673 ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/13(火) 21:15:11 ID:8xZEslRo0
出雲風子、皮下真を予約します

674 ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/20(火) 20:53:04 ID:/uDd/GPc0
投下します

675諦めたらそこで ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/20(火) 20:53:52 ID:/uDd/GPc0
緑谷出久と別れた出雲風子と皮下真は、島の北西部に位置する病院を目的地として移動をしていた。
しかしその歩みは遅い。その理由は、

「誰かいませんかー!? 私の名前は出雲風子です! 私はここから脱出するための仲間を探していますー!」
「いやー、緊張感がねーなー。どこから”敵”が襲ってくるかわからないのによ」

風子が他の参加者を探すと言って、島の北部へ大きく迂回するルートを選んだからだった。
この殺し合いを打破するため、信頼できる協力者を探すという方針は皮下も賛成していた。
しかし誰に襲われるかわからないというのに大声でそこら中を練り歩くような真似をするのは大馬鹿野郎がすることだと、皮下は怪訝に顔を顰める。
緑谷出久で出会った刀鍛冶の里では風子も声を潜めて慎重に動いていたというのに、いきなりどうしてこんなことをと皮下は呆れた様子で尋ねた。

「えーっとですね、これは私の推論なんですが、そもそもこのあたりには皮下さんの言う”敵”はいないと思うんです」

風子は自分の考えを述べていく。
曰く、ポイントを集めようとする好戦的な参加者は、既に島の中心部や重要な拠点になりうる施設へと移動しているだろう。
これが最後の一人を目指すルールだったならば、余計な戦闘を避けようと考える者は人の少ない僻地に逃げ込むかもしれない。
だが今回の殺し合いのルールだと獲得できるポイントには限りがあり、容易にポイントに換わるだろう弱者ほど序盤に舞台から退場していく。
故に近くに目立った施設もない島の最端部には積極的な参加者は残っておらず、戦闘を避けようとする非好戦的な参加者が逃げ込んでいる可能性のほうが高い――それが風子の論だった。

「なるほどな。それも一理ある。だが逆に、そういう逃げていく弱者を狩ろうって姑息な考えの奴が来てる可能性だってあるだろうよ」
「そのときはそのときです。――それでも私は、戦いたくない人を、逃げ出したいと思っている人を見捨てたくない。
 私も昔、逃げ出したことがあります。誰にも頼れずに引きこもって……誰かが助けてくれないかと、ずっと思ってた」

出雲風子の否定能力である不運。その発動条件は、風子が行為を抱いた人間との物理的接触。
風子が大切に思い、近くにいたいと願う人間ほど不運に見舞われ――彼女のために伸ばされた救いの手を掴み返すことすら許されない、神が与えた残酷な能力。
その能力は風子を孤独にした。誰にも頼れず、近寄れず、ただ時間だけが過ぎていく無為の時間。
唯一の心の支えになってくれていた作品の連載が終わったとき、彼女は自らの命を絶つことに決めた。
あの日、あの時。出雲風子は死ぬはずだった。あの不死(アンデッド)と出会うことがなければ――

「私は助けてもらえました。だから私も助けたい。あの日の私のように一人で我慢して苦しんでいる誰かがいるなら、貴方は一人じゃないって伝えたい。そのために私は声を上げます」
「……ハァ。甘いぜ、甘すぎる。とんだ甘ちゃんの考えだ。だが――そんな嬢ちゃんに使われてやると決めたのも俺だったな。
 いいさ、自分の頭でちゃんと考えて決めたなら、あとは自分の責任でやりたいようにやりな。こんな死にぞこないでよけりゃ、付き合ってやるよ」

風子の瞳の奥に在る火。目的が潰え、熱を喪った皮下には、その火が眩しく映る。
その火がいつまで煌々とした輝きを保てるのか、それをこの目で確かめるのも悪くない。
そう思っていたのも束の間――突如始まった羂索による定時放送。告げられたのは。
出雲風子の熱の始まり。生きる理由。呼ばれるはずがない、死ぬはずがない者の名前。

676諦めたらそこで ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/20(火) 20:54:30 ID:/uDd/GPc0
 ◇

(……さて、さっきからピクリとも動かなくなっちまったわけだが)

羂索による経過報告が終わって十数分。
出雲風子はその場を一歩も動かずに立ち尽くし、皮下真は彼女のそばに黙って立ち続けていた。
幸いにも(?)、皮下の宿敵ともいえる夜桜家の面々の名前が呼ばれることはなかった。
とはいえ、夜桜家が生きていようと死んでいようと皮下にとって関係はない。彼らとの関係はもう終わったもの。
向こうはこちらを警戒しているかもしれないが、こちらとしては面倒なことになるくらいなら顔を合わさず最後まで事を進めたいくらいだ。
よって皮下の興味は別の名前へと移っている。羂索によって告げられた名前の一つ。風子との情報交換でも出てきた名前。

不死者アンディ。
人の寿命を遙かに超えた年月を生き、自らの死に場所を探していた男。
かつて出雲風子を救った男。いずれ出雲風子に殺されるはずだった男。
そしておそらくは、出雲風子にとって誰よりも大切な男。その男の名前が呼ばれたのだ。

(あの男の言葉に嘘はない。本当に死んだんだと、俺たちの魂が理解しちまってる。
 だけど嬢ちゃんはそれを信じられない……いや、信じたくない。
 自分の魂と感情が矛盾を起こして何も考えられなくなってる……ってツラしてやがるな)

皮下の推測通りだった。風子は今、人生において一二を争うほどに混乱していた。
死を否定する能力者、アンディ。死ぬはずがない不死(アンデッド)。
その彼が――死んだという。
最初にその名前が呼ばれたとき、ありえない、と思った。
今までアンディが死ぬような負傷をするところを、何百回と見てきた。
その全てにおいて、彼は死を否定し、風子に向かってニカッと笑ってみせた。
俺を殺せるのは、お前の不運だけだ――そう言って、だから私はアンディの永い人生を終わらせるのは自分なんだと思っていた。

(……アンディが私のいないところで死ぬはずがない)

だけど私の魂は、アンディの死を告げた男の言葉に嘘はないと言ってくる。
私たち参加者と、この殺し合いを開いたあの男との間に結ばれた”縛り”によって、紛れもない真実なのだということを突きつけられる。

「おい、嬢ちゃん。俺には焦る理由もないからいくらでもゆっくりしていいけどよ、アンタはそれでいいのかい?」

皮下の呼びかけに対しても、風子は答えられない。それほどまでにアンディは大きな存在だった。
何よりも、ここで風子がアンディの死まで認めてしまったら、その死の運命は二度と覆すことができなくなってしまうような気がして――
バチン!と、快音が響いた。風子の両掌が彼女の頬を叩いた音だった。
グルグルと渦巻いたままどんどん落ち込んでいきそうになっていた思考を、無理矢理リセットした。
立ち止まる暇なんかない。やらなきゃいけないことしか、今動かないといけないことしか、私にはないんだと風子は息を吐く。

677諦めたらそこで ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/20(火) 20:55:02 ID:/uDd/GPc0
「……皮下さん。今から私が話すこと、聞いててください。突拍子もないことや変なことも言うかもしれないけど。
 今のうちに全部誰かに聞いてもらわないと、私の中に抱えたままだと動けなくなっちゃいそうだから」
「こう見えて聞き上手の皮下さんだ。いいぜ、何でも言ってみな」

「私が知ってるアンディなら、どんなことがあっても絶対に死なない……だからアンディは、何か特別な手段で殺されたんだと思います。
 それがどんな手段なのかはわからない。あのツギハギ頭が言ってた『死なないはずの者も死ぬような制限』が影響しているのかもしれないし、皮下さんのように私が知らない世界の能力を使ったのかもしれない。
 私たちはそんな力を持った人たちと戦わなくちゃいけないかもしれない。……もう、十人以上の人が死んでいます。
 誰かを殺すことを厭わない人が――自分が生き残るために他者を殺す人が、少なからずいる」

風子は拳を握った。力を込める。

「私はそれを許せない。だから、止めます。それが私の、絶対に諦めたくないこの島での目的。
 決めました。言葉にしました。皮下さん、改めてこの私の目的のために、力を貸してください。お願いします」
「……あいよ」

皮下は肩をすくめた。大切な人の死を知った風子は、そこで立ち止まってしまうのではないか――
それがただの杞憂だったことを知る。風子の奥で燃える火は、まだ灯ったままだった。

「そして、これからの方針なんですが。協力者を募る。敵対者を止める。この二つを基本にして――アンディの死体を探す、を追加したいと思います」
「……弔いたい気持ちはわからなくもねぇが、そりゃちょっと感傷的すぎやしないか? 優先度を考えるなら――」
「感傷は――あります。でもそれ以上の理由もあります。アンディの能力は死を否定し、遠ざける。
 だからアンディは、本当なら『死に続けることがない』……『死んでも生き返る』はずなんです。
 アンディの身体は今も復活しようとしているはず。だけどそれを制限によって邪魔されている状態なんじゃないかって。
 だから逆にその制限さえ取り払うことができれば、アンディはまた生き返る。私たちを助けてくれるはずです。
 アンディの身体を見つけ、彼にかけられた制限を解いて、生き返らせる――これが私の三つ目の方針です」
「――なるほど、理屈は通らないこともないな。だけどそのアンディってやつは、マジで死んだことなんてないんだろ?
 その否定能力とやらが一度受け入れた死まで否定してくれるかどうかは、神様でもないとわからないんじゃねえのか?」

本来ならば否定者が死亡した場合、否定能力は喪失し次の器に宿ることになる。それが理(ルール)だった。
だが、否定能力の根幹にあるのは、世界の認識。能力者が世界を、理をどう認識するかによって、能力の定義も範囲も無限大に広がっていく。

「アンディだったら生き返ります。大丈夫。約束しましたから」

アンディが死を受け入れるはずがない。
アンディなら風子以外から与えられた死は、否定し続けるはずだ。風子はそう確信している。

「約束……か。ま、俺が何を言っても野暮か」

観念したように風子の言葉を受け入れる皮下だった。
そもそも彼自身、一度死んだはずの身が生き返ったもの――
ならばアンディがルールをねじ曲げて生き返ることを否定するなど、出来るはずもないのだから。

(それに……この嬢ちゃんにそこまで想われるアンディがどんなヤツなのか、俺も見たくなってきたからな)

「ん? 皮下さん、何か言いました?」
「いーや、なんにも。ほれ、前見て歩きな怪我するぞ」


【A-3/市街地/1日目・早朝】

【出雲風子@アンデッドアンラック】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ナイフ、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:協力者とアンディの肉体を探す。
2:好戦的な参加者は止める。
3:皮下さんにも協力してもらう。死んでほしくはない。
[備考]
※参戦時期は最低でもUNDER側に向かった後
※緑谷出久からヒーロー社会、および敵連合とその個性の内容のことを知りました。
※氷月という殺し合いに乗った者がいることを知りました。


【皮下真@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:必死こいて生きる理由もない。が…
1:とりあえず西側の病院へ向かい、そこを拠点に参加者を集める。
2:死滅跳躍に加担するつもりはない。
3:風子に同行する。アンディとやらが気になる。
4:夜桜の連中は…会いたくねえなー。百パー揉めるもんなー。
[備考]
※死亡後からの参戦です。
※緑谷出久からヒーロー社会、および敵連合とその個性の内容のことを知りました。
※氷月という殺し合いに乗った者がいることを知りました。

678 ◆UbXiS6g9Mc:2023/06/20(火) 20:55:27 ID:/uDd/GPc0
以上で投下終了です

679 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/20(火) 21:59:47 ID:GLCUIMY20
投下乙です。

>>諦めたらそこで
原作を読んでいれば、仮に風子がアンディの死を知らされても簡単には諦めないだろうことは容易に想像が出来ますよね。
でも「不死の否定者が死亡した」ことから考察して「死に続けている要因を解消すれば蘇る」って発想に至れるあたりに、
未知の理を押し付けられる否定者としての戦い方がしっかりと板についてて頼もしい感じがしますね。
平常時のアンディがやる”死に覚え”を、アンディと風子の二人掛かりでやってるようにも思えて、なんだか熱くなっちゃいました。
根っこの部分で風子の”熱”を認めたとはいえ他者への関心が希薄なスタンスが変わったわけでは無い皮下も、
その風子がどでかい矢印向けてるアンディへの関心を強めるって流れも自然で、キャラの転がし方が巧いなぁと感心してしまいました。

ナプターク
予約します

680 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:24:27 ID:d/QzkOOg0
投下します

681理解から最も遠い感情 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:25:19 ID:d/QzkOOg0





 吾輩はなぜ■■しているのだろうか。



・・・

682理解から最も遠い感情 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:26:15 ID:d/QzkOOg0
 海星(ヒトデ)が、陸を歩く。

 奇怪な光景だった。それは確かに、二本の足で地を歩んでいた。
 歩行に用いられる二足の他、胴の両脇で緩慢ながらもしっかりと振られる左右の足はまるで腕のように見える。
 上に伸びた残る一足は進行方向へ向けられているため、どうやらきちんと前を見て歩いているらしい。
 海星といわれ、海で岩礁にへばりついているイメージを思い浮かべる者にもれなく混乱を与える、そんな光景。

 あるいは、もしや、と思う者がいるかもしれない。
 とある世界においては、己をヒトと信じすぎたために"勢い"でヒトの言語を解するようになったと宣う海星がいる。
 世界で最も偉大な海と呼ばれる海域に生まれ、遥か海の底にある王国で一財築いた奇特な海星。
 "ソレ"の存在を知る者が見れば、さほど不気味な存在でもない、のかもしれない。
 同郷か。同類か。
 同じ理屈か。同じ存在か。
 人は未知を畏れるが、もしやと思う心当たりがあるならば話は違う。

 だが、彼は"ソレ"とは違う。
 生まれた世界が違う。
 種が違う。
 常識が違う。
 魂の位階が違う。
 海星―――ではない。
 その正体は全盛の力を失い矮小な体躯に甘んじる、しかして恐るべき存在。
 ―――それは真に、恐るるべき存在。
 邪神の一柱、『狂乱』のナプタークは独り、森の中を歩いていた。


 短い足を器用に使い、起伏の激しい森の中を進む。
 行く手を塞ぐ倒木を避け、突破が困難な茂みを回り込み。
 視線はただ真っすぐに、前だけを見つめて歩いている。

 ただし実際のところ、ナプタークに目的地があるわけでは無い。
 ただ漫然と足を動かし、夢遊病患者の如く彷徨っているに過ぎなかった。
 行く手を塞ぐ倒木は無意識に避けて。
 突破が困難な茨の茂みを無意味に回り込んで。
 ナプタークの口内に秘められた瞳は行く先を見つめてはおらず、ただ目の前の景色をぼんやりと映すばかり。
 視線の先に見定めるものも無く。
 彼は今、歩くために歩いていた。

683理解から最も遠い感情 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:27:16 ID:d/QzkOOg0

 ナプタークが思いを馳せるのは、ほんの数分前の記憶。
 ただしそれは、先ほど目の当たりにしたトガヒミコによる凶行ではなく。
 その直後に聞こえてきた第一回放送について。
 より正確に言えば、放送内容においてナプタークの関心を引いたのはたった一つ。
 宿敵の死。それのみだった。

「―――……『破滅』のマグ=メヌエクが、死んだ」

 この短い時間に何度も何度もつぶやいてみた言葉を、また口に出してみる。
 まったくもって、塵芥ほどの現実味も無い。

 ナプタークは、あれを「死なないモノ」だと思っていた。

 マグ=メヌエク。
 邪神の第一柱。
 破壊の権化。
 傲岸なる暴君。
 殺しても死なないような、ふてぶてしき不遜の者。
 それがましてや。

「人の手によって、滅ぼされた」

 主催の男の言葉を信じるなら。
 放送の内容を信じるなら。
 そういうことになる。

 その現実を受け止めたナプタークの心は、酷く凪いでいた。
 波風一つ立たない水面のように動きも起伏も微弱で、しかしそれは心の平穏を意味するものでは無い。
 さざなみの一つ、あぶくの一つも起こらないのは、水が濁り切っていているからだ。
 粘っこい感情が満たされた心の器は、外部から刺激を受けたとて目に見える反応を示さない。

 心の器に満ちる、粘性の強い感情の正体。
 それは死者への悼みや、惜しみ、ましてや悲しみなどではなく。
 邪神の胸中、気落ちの原因はその生涯で一度も味わったことの無い感情。


 その感情の名は、失望。
 『狂乱』のナプタークは、『破滅』のマグ=メヌエクに失望を抱いていた。


 その源泉は諦念、諦観からのもの。
 己が執着の落ち着ける場所として、最も心の冷たい領域。
 あるいは決して手放すまいと誓った執念を手放す、かつての自分との矛盾の許容。

 宿敵の打倒の機会を永遠に失ったことを悟ったことで。
 己が存在を相手より上位に持ちあげる行為を"勝利"とするならば、『狂乱』は『破滅』を上回ることが出来ないのだと、受け止めてしまったことで。

 ここに格付けが為された。
 『狂乱』のナプタークは、『破滅』のマグ=メヌエクに勝てない存在なのであると。

684理解から最も遠い感情 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:29:50 ID:d/QzkOOg0
 邪神としての席次ではない。
 それは強いていうならば、魂の位階、ヒエラルキー、名状し難き位置エネルギーの問題。
 尊厳の問題だった。
 魂と誇りについての問題だった。

 長きにわたる敗北の歴史を、ナプタークは後悔していない。
 憎々しき怨敵と見据えども、その存在を軽んじたことなど一度も無い。

 この身よりも高次に位置する存在であると、認めていたからこその挑戦なればこそ。
 手が届かないなればこそ、その存在は眩く光り網膜を焼く。
 この感情に憧憬と名をつけるのは矜持に障る。
 この感情に尊敬と名をつけるのは羞恥が過ぎる。
 相手に劣る己を恥じる現在を認めず。
 相手に勝る己を誇れる未来を求める。
 憧れたからこそ、その存在への超克を己に誓った。宿敵と呼んだ。

 だが、宿敵は滅ぼされた。
 超克の機会を永遠に失われたあと残されたのは、見上げていた星を与り知らぬ間に堕とされた、哀れな『狂乱』だけ。
 己が認めた存在は、打倒を誓った眩き目標は、取るに足らない存在へと貶められた。

 あぁ、そうかと。
 朝日の差し込む森に一人、ナプタークは歩みを止めた。
 木陰の中でうつむく邪神は、孤独に一つの解を得る。
 根本から誤っていたことを知る。
 間違えていたのは最初からだったことを、思い知る。


 邪神、上位存在、混沌の神々、恐るべきもの―――なにするものぞ。




"――――――あぁ、吾輩が信じていたものは、その程度の……"




 ナプタークは足を進める。
 その足取りに、今度は明確な目的があった。
 向かう先は、殺し合いの場へ。
 死臭と殺気が強く匂いたつ殺し合いの渦中へ。
 狂気の沙汰の中へ再び歩いてゆく。

 彼こそは『狂乱』のナプターク。
 人の、人間の、命の、他者の―――


 ―――世界の無価値さを思い出しつつある、恐るべき邪神。



・・・



 吾輩はなぜ失望しているのだろうか。
 ――――――憧れを抱いていたから。




【ナプターク@破壊神マグちゃん】
[状態]:失望
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3 天王寺松衛門@鬼滅の刃
[思考・状況]
基本方針:願い云々に興味はないので早く帰りたい。
0:???
1:『狂乱』は『破滅』に勝てない、金輪際……

685 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 00:34:58 ID:d/QzkOOg0
投下終了です。
投下してみたら思ってた半分の量でビビってます。よろしくお願いします。

あと完全に雑談なんですが、内容に即しつつカッコいいサブタイトルつけるの難しすぎません?
最初「なぜ失望するのか」にしようと思ってたんですけど、「諦めたらそこで」にシビれてなんとか頑張った結果がこれです。

686名無しさん:2023/06/26(月) 14:04:37 ID:vQd7D4GQ0
投下乙です
本来ならありえなかったはずのマグちゃんの死を知るナプタークを書くのってかなりハードルが高いと思うんですが、ナプタークからマグちゃんへの複雑な感情と喪失が見事に書かれてますね
邪神の中でも特に人間に近い精神を持ってるナプタークだからこそ憧れの存在が永遠に失われてしまうことが耐えがたく……
絶対に覆らない"敗北"を刻み込まれたまま生きることになってしまったナプタークが殺し合いの場で足掻く人間を見て何を思うのか
7XQさんは展開と状況をどんどん転がしていく話が上手くて面白くて凄い書き手だと思ってましたが、こういった静かな繋ぎの話も上手いとなるともう最強じゃあないですか!

タイトルつけるのは毎回悩みますよね……自分はだいたい投下の直前にひねり出しています
「諦めたらそこで」もギリギリにつけたタイトルなんですが、投下終了後に「そういえばこのタイトル、前に別の企画で使ったことがあったな……」ということを思い出しました……

687 ◆7XQw1Mr6P.:2023/06/26(月) 22:59:35 ID:d/QzkOOg0
感想ありがとうございます。ベタ褒めしていただいて恐縮です……。

そしてまた投下内容に不備を見つけました。
昨晩投下したssの状態表に現在地等の情報が抜けておりましたので、
Wiki編集者様にはお手数を書けしますが、収録の際は

【B-6/森/1日目・早朝】

の追記をお願いいたします。
毎度毎度申し訳ない……。

688 ◆vV5.jnbCYw:2023/07/02(日) 12:41:02 ID:HzyIjC3c0
遅れましたが投下お疲れ様です。
モノローグうまっ!!
単独予約だったしどうするのかな?烏とやり取りさせるのかな?と思いましたが、
自作のリレーってだけで嬉しいのに、まさかナプターク単体でこんな話を書けるとは驚きました。


>超克の機会を永遠に失われたあと残されたのは、見上げていた星を与り知らぬ間に堕とされた、哀れな『狂乱』だけ。
 己が認めた存在は、打倒を誓った眩き目標は、取るに足らない存在へと貶められた。

ここの表現クッソ好き

ここからは自分語りになります。
先月自ロワの表裏・バトルロワイヤルが完結しました。
そのロワの投下作品の1つである『闇に燃えし篝火は』で参加者の一人がアイスナグーリという装備を捨てる描写がありますが、
それは、7XQw1Mr6Pの作品『感電』で、パパ黒が天乃羽々斬のデメリットを察して捨てた所から得た着想です。
細かい所ですが、自企画の完結のためのインスピレーションをくださってありがとうございました。
氏の次の作品も楽しみにしています。

689 ◆hQjLa2FjA2:2023/12/27(水) 12:07:27 ID:6WI6oESI0
獅子王司、竈門炭治郎、獪岳、虎杖悠仁、ステイン、マスキュラ―で予約させていただきます。
よろしくお願いします。


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