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天気の子バトルロワイアル【2章】
1
:
◆j7coLoRPl6
:2021/02/19(金) 20:24:29 ID:6aNy1bjk0
―――僕に出来ることはまだあるかい―――
前スレ
天気の子バトルロワイアル
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1609599762/
306
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:15:01 ID:WM3gRdvY0
フラッシュバックーーーーー強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象。
Wikipediaより引用。
1章 沈黙の雨音
「……」
「……」
雨やまぬ東京の土地。
筋肉モリモリマッチョの変態と小学5年生は山中から市外へと目指しながら歩いている。
「……大丈夫か?」
「……はい」
筋肉モリモリ……メイトリックスは黙って後を歩く小学5年生……一条蛍に言葉をかける。
「もうすぐ、市外へ出る。そこで一度休息を取ろう」
「……はい」
メイトリックスの提案に蛍は壊れたテープレコーダーのように生返事を返す。
「そこの斜面は雨で濡れているから、危険だ。……よければ手を貸すぞ?」
ぬかるんだ危険な下り道。
メイトリックスは蛍に向かい、手を差し伸べるが―――
―――ビクッ!!!
「だ……大丈夫ですッ!!こうみえて私、”年の割に大人びてしっかりしている”とよく褒められているので!」
蛍は身体をビクリと震わせ、早口で遠慮する。
「……」
メイトリックスは差し伸べた手を引っ込めると―――
「OK。なら慎重に下るぞ?」
「……はい」
互いにどこか遠慮しているぎこちない会話。
「……」
「……」
再び両者は沈黙のまま歩きだす。
雨音さえも音が止まる空間―――
☆彡 ☆彡 ☆彡
307
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:19:15 ID:WM3gRdvY0
すみません。
冒頭の注意書きが抜けておりました。
注意 本SSにはキャラクターが性的被害に苦しむ描写が描かれています。
そのような描写に不快を感じる方もしく一条蛍が好きな方は読むのを控えていただきますようお願い申し上げます。
308
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:19:28 ID:WM3gRdvY0
2章 振り払われた手
「……」
(……クソッ!)
メイトリックスは苛立ちを隠せない。
もちろん苛立つ相手は蛍ではない。
先ほど取り逃がした糞ガキJAPだ。
メイトリックスには目に入れても痛くない最愛の一人娘ジェニーがいる。
(あの娘はおそらくジェニーと年が近い。そんな子に欲情する獣がこの場に呼ばれているとはなッ!)
―――もし、あの場で襲われていたのがジェニーだったら。
想像するだけで頭の血管が切れそうだ。
(あの糞ガキJAPは次にあのマヌケ面を見せたらその脳天にコイツをぶち込むッ!!!)
メイトリックスはH&K 91A2を固く握ると改めてケツイを深める。
「きゃッ!?」
突如、背後から聞こえる小さな叫び声。
振り向くと、蛍が地面の土に足を掬われ、滑り始めたのだ。
「ッ!危ないッ!!」
―――パシッ!
間一髪!メイトリックスが蛍の手を掴み、事なきをえた。
しかし―――
ドクン……ドクン……
「ほらめくって!脱がして!全部!」
「うひょ〜!待ってましたぁ!」
「い……や……いやぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
蛍の悲痛な叫び。
2人組による蛮行がフラッシュバックされたのだ。
娘に近い娘の悲痛な叫びにメイトリックスは握っている手を思わず緩めてしまった。
―――バッ!
蛍はメイトリックの手を払うと脱兎の如く一人坂道を走り出す。
「待つんだ!」
メイトリックスは追いかけるが、蛍は身軽な体を生かしてメイトリックスを引き離す。
☆彡 ☆彡 ☆彡
309
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:20:56 ID:WM3gRdvY0
3章 一条蛍の苦悩そして慟哭
「はぁ!……はぁ!!……はぁ!!!」
錯乱しながら走る。
(どうして……どうして私はこんなことに巻き込まれたの!?)
涙目を浮かべながら走る。
東京生まれの私は都心の小学校に通っていたが両親の仕事の都合でとある田舎へ引っ越した。
そしてそこにある”旭丘分校”へ通う転校初日。
自己紹介の途中、神子柴と名乗ったおばあちゃんにより私の新しい生活は帆高という男の子を巡る殺し合いへと変貌した。
そして、東京は東京でも山中にいた私は山小屋を見つけ、雨しのげると安堵した。
しかし―――
「お姉さーん!今から俺らとあそばなぁい?」
「さすがタクさん、すげえ美人ゲット♪」
山小屋に入るとそこにいたのは面識がなかった2組の男の人。
雨で服が濡れている私を蛇のような目つきで舐めまわすように見る姿は大好きなお父さんやクラスメイトの男子とは明らかに違った。
「はぁ!……はぁ!!……はぁ!!!」
「では大祐くん、このプリティーガールな蛍ちゃんのためにこれから授業を始めようと思う♪」
「はーい、タクさん先生!何の授業をするんですか〜?」
「それはねぇ〜保健体育の授業でーす!赤ちゃんの作り方を教えてあげよう♪」
―――私の頭の中は白くなった。
ある日の保健体育の授業。保健室に女子だけが集められて保健室の先生が授業を行った。
何でも、私たちぐらいの年齢になると女の子の身体は”赤ちゃん”ができるようになるそうだ。
私は驚いた。だって赤ちゃんは”コウノトリ”が運んでくるとずっと信じていたから。
そして、”赤ちゃん”ができるためには男の子の……が私の身体の中に入ること。
赤ちゃんを作るための方法など”性”に関する授業は進み、先生はこう言って授業を締めくくった。
「面白半分で命を宿すことはいけません。赤ちゃんは”愛する人”と宿すこと」
―――愛する人。私にもそんな人ができるのかな?
私は保健室の先生の言葉を聞きながらそんなことを考えていた。
「はぁ!……はぁ!!……はぁ!!!」
「ほらめくって!脱がして!全部!」
「うひょ〜!待ってましたぁ!」
―――気持ち悪い!キモチワルイ!!きもちわるい!!!
胸を揉まれた私の感想はそれだった。
周りの女の子に比べて私は、胸などの成長の度合いが違うのは転校前の男子の視線から察していた。
そのときは特に気持ち悪いという感情は生まれなかったが、今は違う。
―――とにかく、男の人の存在自体が気持ち悪いと感じるようになってしまったのだ……
310
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:21:10 ID:WM3gRdvY0
「はぁ!……はぁ!!……はぁ!!!」
「その娘を離せ!」
―――筋肉モリモリマッチョさんのメイトリックスさん。
私を救ってくれた”救いのヒーロー”
頭ではメイトリックスさんは私を気遣ってくれていることは理解しているが、やはり”男の人”という性別は私の身体が拒否している。
故に―――
私を助けてくれた大きな手が―――
―――あの2人組の乱暴な手に見えてしまった。
「はぁ!……はぁ!!……うえぇぇぇぇぇ……」
逃げるように走った疲労感と先ほどの光景を思い出した嫌悪感から私は吐いてしまった。
「もう……嫌……」
胃の中を全て吐き出し、フラフラとなる足取り。
―――ズルッ!
「きゃ!?」
不覚にも再び、足を滑らせてしまった。
どんどんと体は滑り落ちると目の前には崖が見えた。
(ああ……私、死ぬの?……ごめんね、パパ・ママ)
死を間近に感じた影響か目の前が真っ暗になってくる。
(でも……”あの子”と仲良くなりたかったな……)
……心残りがあるとすれば、通うはずだった分校のクラスメイトの子達。
特に”にゃんぱすー”と話しかけてきたツインテールの女の子と仲良くなれないことが。
私の身体は崖の下へ放り出され―――
「ホタル!!!!!」
―――バッ!!!!
「……え?」
私のすぐ側からメイトリックスさんが姿を現して、私の身体を掴んだ。
「……大丈夫か!?」
「メイトリックスさん!?どうしてここに……ッ!?」
「……トリックさ」
答えになったのか、なっていないのかよくわからないが返答が返ってきたが、一つ確かに分かることはメイトリックさんは私を救ってくれていることだ。
―――グググ……
筋肉モリモリパワーでメイトリックスさんは私を抱きかかえた状態のまま片手の筋肉と両足の脚力で崖の上に引き上げた。
「「……」」
互いに無言で見つめ合う。
「あの……メイトリックスさん。私を助けてくれてありがとうございッ!?」
「……無事でよかった」
メイトリックスさんはそう言って私を優しく包み込むように抱いた。
「う……う゛……うぅぅぅわぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜」
私は泣き叫んだ。
―――心の赴くままに。
☆彡 ☆彡 ☆彡
311
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:21:27 ID:WM3gRdvY0
終章 マイ・ボディーガード
2人はあれから当初の目的通り、山中から市内に辿り着き、公園内のベンチに腰掛けて休憩している。
「……ホタルは飲み物は何が好きなんだ?」
「え?そうですね……コーヒーのブラックとかですが……?」
大好きなお父さんの影響からクラシックやブルースなどを聞くだけでなくコーヒーも口にするようになった蛍はメイトリックスからの質問を受け咄嗟にコーヒーのブラックと答えた。
「待ってろ、直ぐに用意する」
蛍の好みを聞いたメイトリックスは歩きだすと自販機の前に立ち―――
ガシィィィィィ!!!!!?????
「え!?」
てっきり、自販機にお金を投入して買うのかと思っていた蛍は虚をつかれた。
「ふんッ!!!!!」
なんと!自販機を持ちあげて!!投げた!!!
地面に激しく叩きつけられた自販機は当然の如く破壊され、中から”これでもか”という量の飲料水の缶という缶がガラガラガラぽぽぽぽーーーーーーん!!!!!!と次々に受け取り口から飛び出てきた。
「……」
その異様な光景を蛍は唖然とした表情で眺める。
―――くすッ
蛍の口元が緩み―――
「きちんとお金を払わないといけないんですよ」
蛍はメイトリックスの行動を嗜める。
しかし、その表情は穏やかだ。
「何、代金はあの婆さんにツケとくさ」
メイトリックは蛍に話すと―――
―――カシュッ!
ゴクッゴク―――
―――コーラを飲んだ。
「……美味いな。飲めるときに飲んだほうがいい。」
―――ビュッ!
コーラを飲みつつメイトリックスは缶コーヒーを蛍へ投げ渡す。
―――パシッ!
「……」
蛍は上手にそれをキャッチするとソレを見つめ―――
―――カシュッ!
ゴクゴク――――
―――缶コーヒーを飲む。
「……美味しいです」
笑顔でメイトリックスを見つめる蛍。
「……それでいい」
「え?」
「子どもは笑顔でいるのが一番だ」
そんな蛍の笑顔を見たメイトリックスは満足そうに頷く。
そう、メイトリックスはわざとパフォーマンスじみた行動を起こしたのだ。
蛍の体内を蝕む腐ったガスを少しでも中和させるため。
依然と蛍の胸中に雨は降り続ける。
性犯罪に巻き込まれた傷は一生癒えることはない。
しかし、暖かくも頼もしい傘が暴風雨に濡らされたハートをこれ以上濡らさせない。
元コマンド―部隊の隊長の名に懸けて。
312
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:24:38 ID:WM3gRdvY0
【B-7/深夜/一日目】
【ジョン・メイトリックス@コマンドー】
[状態]健康、主催者・ゲスな参加者に対する激しい怒り
[装備]H&K 91A2(19/20)
[道具]基本支給品、(ランダム支給品0〜2)
[行動方針]
基本方針:森嶋帆高を救出し、主催者を倒す。
1:一条蛍を保護しながら森嶋帆高を探す。(蛍の身の安全が第一)
2:首輪を解除し脱出手段を探す。
3:大祐とかいう糞ガキは見かけ次第殺す。
4:大祐のようなゲスな参加者は殺す。
※参戦時期は本編終了後です。
【一条蛍@のんのんびより】
[状態]疲労(中)、頬に痣 男性恐怖症(極大) メイトリックスへの信頼(大) 服泥まみれ
[装備]無し
[道具]基本支給品、(ランダム支給品0〜3)
[行動方針]
基本方針:人殺しなんて怖い事はしたくないです。
1:メイトリックスさんと共に行動する。
2:森嶋帆高さんも死んでほしくありません。
3:大祐という男の人とは二度と関わり合いたくない。
4:男の人が怖い……ッ!!!
※参戦時期はアニメ1話旭丘分校で自己紹介をしている最中。
※伊藤大祐、渋井丸拓男の蛮行により極度の”男性恐怖症”に陥っています。現状、ジョン・メイトリックスのみ信用しています。
313
:
マイ・ボディーガード
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/09(土) 15:31:11 ID:WM3gRdvY0
投下終了します。
それと企画主のj7coLoRPl6様にお聞きしたいことがあります。
今回の投下で時間経過を行わずルールにある予約と投下による1か月の猶予は一旦復活となるのでしょうか?
それとも、他の方の予約が来ずに11日がきたらこのまま時間経過となるのでしょうか?
それによって、また予約などを考えていきたいと思っております。
314
:
◆j7coLoRPl6
:2021/10/09(土) 22:27:37 ID:qm3X6fOM0
投下乙です!
ほたるん登場話は私はシブタクと大祐とメイトリックスに笑ってましたが、当事者からすると嫌な記憶でしかないわけで。
傷つき拒絶するほたるんをそれでも娘のように見捨てられないメイトリックス大佐がカッコイイ!
大佐がほたるんを護り続けられるか、大祐をぶちのめせるか、これから先が非常に気になっています。
「何、代金はあの婆さんにツケとくさ」
このセリフが玄田版吹き替えで脳内再生されました。
一か月の猶予は氏が投下してくださったので、再び復活いたします。
本日より一か月予約投下が無ければ時間を進めたいと思います。
狩野京児、炭次郎で予約します
315
:
◆s5tC4j7VZY
:2021/10/10(日) 06:30:54 ID:jKKvG82M0
j7coLoRPl6様。
質問に答えて下さりありがとうございます。
一か月の猶予のこと理解できました。
今後も天気の子ロワを応援していきたいと思います。
感想ありがとうございます。
マイ・ボディーガード
いえいえ、私もメイトリックス大佐が問答無用にシブタクを撃ち殺したところとか”そうそう大佐ならそうするよな”と笑ったりしました。
ですが、話の続きを書くのなら、流石にことがことだけにあっさりと流せないなと思うところもあったので、このような話となりました。
これ以上、ほたるんの心が濡れないよう大佐にはがんばってもらいたいと思っています。
この話をもし玄田版のメイトリックスならなんと翻訳するかな?と考えて書いていたので、脳内再生していただけたのは嬉しい限りです!
316
:
名無しさん
:2021/10/10(日) 07:53:40 ID:j.kaEzYg0
とうか
>>315
317
:
◆j7coLoRPl6
:2021/10/16(土) 23:56:01 ID:GaCv6BEk0
予約を延長します
318
:
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:49:35 ID:87hpYLzE0
投下します
319
:
兄と兄
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:50:07 ID:87hpYLzE0
炭次郎は名簿を見た己の目を疑った。
神子柴の放送の折に配られた参加者名簿。
奴の言葉の通りに雨を通し、その内容を確認。
知った名前があった。
まずは己の名前、竈門炭治郎。そして
鬼舞辻無惨。猗窩座。妓夫太郎。堕姫。
何の冗談か、今まで斃してきた鬼たちが四名も乗せられていた。
死者は蘇らない。ならばこれは同姓同名の他人だろうか?
その考えはもう過ることすらない。
この会場で最初に出会った堂島瀬里は、一度死んで再び生を承ったと自白していたからだ。
―――許せない。
炭次郎の胸中でぐつぐつと怒りの感情がざわめきたてる。
鬼殺隊の役目は鬼を斬り人を護ることだ。
けれど、神子柴は人ではあるがその庇護対象には含まれない。
こんなふざけた催しの為に命を弄ぶあの老婆は鬼以上に醜い悪鬼だ。
私利私欲で人を食らい鬼にする鬼舞辻無惨となんら変わらない。
―――あの老婆は俺が斬る。
炭次郎は深く決意する。
例え私刑により地獄へ向かうことが確定することになっても。
これ以上、老婆の悪意に晒される人を増やさないために。
この催しで失われる命を出さないために。
瀬里のように奇跡に踊らされ罪を重ねる人を出さない為に。
(とにかく今は堂島さんを探さないと...)
炭次郎は鼻が利く。
ある程度の距離であれば匂いを判別することが出来るしその匂いから感情を読み取ることもできる。
炭次郎の目的を為すには、まずは帆高を探すべきなのだが、生憎と彼の匂いはまだ知らないしどこにいるのかも明確にはわからない。
その為に、まずは帆高を殺しに向かった瀬里を探し出し凶行を止めるのを優先するが...
(くそっ、やっぱりだ。この雨だ!雨のせいで堂島さんの匂いが辿れない!!)
320
:
兄と兄
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:50:29 ID:87hpYLzE0
振り続ける雨は瀬里の匂いを打ち消し追跡を困難にする。
足跡を辿ろうにも地面はコンクリートジャングルど真ん中であり、足跡など残されているはずもない。
近づけば匂いも判別できるだろうが、しかし一本道ではない為にどの方面へ向かったかも曖昧である。
とにかく進まなくては。
どうにか冷静さを保ちつつも、己の決めた方角へ走り始める炭次郎。
ほどなくして、彼の鼻が匂いを探知し顔をしかめる。
何度も嗅いできた、血と臓物に溢れた不吉な匂い。
(まさかもう堂島さんが!?)
ありえない話ではない。
彼女は銃を手にしている。
炭次郎が見失ってまだ数時間も経過していないが、引き金一つあれば死体を作るのは数秒で事足りる。
過る悪寒の従うままに駆けた先で見つけたのは凄惨な場面だった。
至る箇所が傷つき荒れ果てた市街地に、壁に巨大な穴の開いた部屋。
その壁際では毛布を血に染める死体の傍に座る、血の匂いを充満させた金髪の青年。
「どうしたァ坊主。雨宿りでもしにきたかァ?」
あまりの光景に息を呑んでいた炭次郎をおちょくるかのような軽い声音で青年が問いかける。
「なにがあったんですか?」
「ここに死体があって、俺は呑気に休憩中。なら尋ねるまでもねーんじゃねえの?」
青年の言葉は間違っていない。
ここにいたのは青年と一つの遺体。周囲の破壊痕からして、大規模な戦闘があったと推測するのは容易い。
ならばこの遺体を生み出したのは青年である。それが状況検分から最も導きやすい結論だろう。
「いいえ。あなたが殺したならここに留まっている理由はありません」
しかし、炭治郎は疑惑の念もなく、真っすぐに見据えて言う。
彼は頭が固く意固地ではあるが考えなしではない。
家族が皆殺しにされたという精神的に追い詰められた場面ですら「知らない何者かの匂いが紛れていた」「禰豆子が弟を庇うように倒れており手や口に血がついていなかったから下手人ではない」
と冷静に状況を判断する能力にも長けている。
故に、凄惨な場面においても状況を可能な限り正確に把握し、青年が遺体をどうすることもなく留まっていることに違和感を覚えた。
「それに、あなたからは血の匂いはしても悦びは嗅ぎ取れませんでしたから」
加えて、先述の通り炭治郎は人の感情を匂いで嗅ぎ取ることが出来る。
青年からは鬼や狂人のような遺体への喜色の感情は嗅ぎ取れなかった。
けれど、遺体への悲しみだとか同情だとかも嗅ぎ取れなかった。
だから尋ねた。
青年がどういう人物なのか、何を期待して自分を挑発するようなことを言ったのかを知るために。
「...ハハァ、しっかり見てるんだなお前」
相変わらずの軽薄な声音ではあるが、そこに炭次郎を軽んじるような感情は籠っていない。
なにかを懐かしみ回顧するような、そんな感傷だった。
「いいぜ。話してやる。隣、座れよ」
そう言って零した青年の笑みは、どこか嬉しそうに見えた。
321
:
兄と兄
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:50:50 ID:87hpYLzE0
☆
「...はぁ」
狩野京児は放送の後、タブレットを弄り名簿を確認すると小さくため息を吐いた。
己の知る名は自分を除けば二つ。
ひとつは芭藤哲也。
チームドミノと敵対する燦然党の幹部の一人で、京児・七原・善の三人がかりでどうにか勝利をもぎ取れたほどの厄介な相手だ。
互いに深い関係でもないが、出会えば命のやり取りは免れないだろう。
もう一つはオシュトル。
己の目の前で息絶えた、名も知らぬ少女が遺した名だ。
京児は彼の者が巻き込まれているのを憂いた、という訳ではなく、約束を交わした手前、一応は探してやるつもりではあるが、両足を捥がれた今の自分の状態では億劫になってしまっただけだ。
(再生完了まではもうちょい時間がかかる。休んでいる内に調べておきたかったんだがな)
ネコネの首輪を改めて弄りまわす。
首輪に穴や継ぎ目はないため、素手での解体は不可能だった。
より詳しく解析しようにもそういった道具や機器はなく、これ以上の進展は望めず。
結局、触れているだけでは過剰接触には当てはまらない、というルールが判明しただけだった。
ならばもっと解析のしやすい場所へと向かいたいと思うが、しかし今の京児の有様ではロクに動けない。
ロクに身を隠すこともできない。
今できることと言えば、ここにいない面子への想いを馳せることくらいである。
燦然党の決戦を前に自分が消えたことにBOSSは、ドミノはどう思っているだろうか。
七原は。明は。善は。
そんな、おおよそ自分らしくないことを考えている最中だった。
額の痣が目立つ少年が部屋に足を踏み入れてきたのは。
「どうしたァ坊主。雨宿りでもしにきたかァ?」
挑発するような声音で問いかける。
この自分がやったようにしか見えない状況で、少年がどう動くかを見るためだ。
これを好機と見て殺しに来るか、感情任せに糾弾しにくるか。
「なにがあったんですか?」
だが、少年の反応は京児の想定外だった。
彼は怒るでも恐れるでもなく、真っすぐに自分を見つめていた。
「あなたが殺したならここに留まっている理由はありません。それに、あなたからは血の匂いはしても悦びは嗅ぎ取れませんでしたから」
惨状を見ても勘ではなく冷静に事態を見据えられるその胆力。
そして物事の本質を見据えるほどに真っすぐな眼差しに、京児はふと思った。
(似てるな、善のやつに)
そういう奴は嫌いじゃない。
マジメで、おちょくりやすくて、決定的に自分とは違うから。
「いいぜ。話してやる。隣、座れよ」
322
:
兄と兄
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:51:13 ID:87hpYLzE0
【B-5/深夜/一日目】
【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]:頭部負傷
[装備]:鬼殺隊隊服、炭次郎の日輪刀
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:帆高を守り、陽奈を助けて参加者皆で脱出する。
0:京児と話す。
1:帆高を捜索する。
2:瀬里のように帆高を殺そうとする者がいるのなら戦って止める。
3:首輪を何とかできる人を探す。
4:無惨率いる鬼たちを警戒する。
[備考]
※参戦時期は204話後です。
※神子柴はそれぞれ時代が違う人間を呼んだと思っています。
【狩野京児@血と灰の女王】
[状態]疲労(絶大)、両脚再生中、右腕再生中。
[装備]クローステール@アカメが斬る!
[道具]基本支給品、ネコネの首輪、ネコネの支給品(錫杖、不明支給品0〜2)、ランダム支給品
[行動方針]
基本方針:殺し合いを愉しみつつゲームを止める(素直に従っていたら生き残れないため)。
0:炭次郎と話す。
1:基本方針に従い好きにやる。
2:妓夫太郎には要警戒する。
3:首輪を解析するための道具が欲しい。
4:ネコネの知り合いのオシュトルを探してやる。
5:森嶋帆高は...まあ、探してやる。
6:人間はなるべく殺さない。
※参戦時期は黒雷習得以降です。
※支給品の、キメラの翼@ドラゴンクエストシリーズ、ウニラ@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズは使用しました。
※ヴァンパイア特有の、夜でないと変身できない、殺しあえない制限が外されました。
※電撃は10メートルを超えた辺りから一気に威力が損なわれます。その為、屋外で電撃を放っただけで水を伝い参加者全員にダメージ、などは不可能です。
323
:
◆j7coLoRPl6
:2021/10/20(水) 23:51:54 ID:87hpYLzE0
投下終了です
324
:
◆EPyDv9DKJs
:2021/10/23(土) 18:33:45 ID:8v7YV.j20
投下します
325
:
◆EPyDv9DKJs
:2021/10/23(土) 18:34:13 ID:8v7YV.j20
あ、すみません間違えました
326
:
◆j7coLoRPl6
:2021/11/21(日) 23:54:00 ID:54s4CUnk0
前回の投下より1か月が経過したので、ルールに則り、まだ出てない参加者を全員予約して無理やり時間を進めたいと思います。
11月29日に投下する予定ですが、それまでに
>>1
含む書き手の予約が入ればそちらを優先します。
327
:
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/24(水) 00:08:45 ID:6W0HPpRI0
遅くなりましたが、投下お疲れ様です!
兄と兄
どちらも長男である炭治郎と京児の邂逅!
言動など誤解を受けやすい京児ですが、人柄や言葉の裏を読み取る炭治郎だからこそ、頭ごなしに京児を否定せず接した炭次郎はやはり長男だなと改めて感じました。
二人の次話がとても気になりました。
堂島瀬里、鹿目まどか、まどか先輩、で予約します。
328
:
名無しさん
:2021/11/24(水) 01:07:05 ID:SjkIhkSY0
うーんちょっと個人的な意見ですが
予約があってもそちらの投下を待ったうえで整合性を取り時間を進めても良いのではないでしょうか
当然各々の書き手様が執筆していただいた作品で話を進めるのが最もベストですが
現在のこの企画はお世辞にも盛況とは言えません
今のこのペースでルールに接触するタイミングで毎回それを中断するというのはこのルールの存在意義がないと思いますし
企画の完結を目指すのであれば現実的な処置とは思えません
329
:
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:28:21 ID:mhf9q5Ho0
投下します。
330
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:29:35 ID:mhf9q5Ho0
You’ll never find a rainbow if you’re looking down.
Charles Chaplin
331
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:30:01 ID:mhf9q5Ho0
1章 虹を追いかける
「……」
「どうしてですか、瀬里さん! あなたからは快楽も怒りも憎しみもその匂いが無かった! あるのは決意だけだった!
脱出するのには帆高君を殺すのが一番簡単だから、その邪魔になる俺を殺す気ですか!?」
そう、私はケツイした。
だから、炭次郎の手を払った。
(次はヘマしないわ……)
先の責めは失敗した。
だから、次はいきなり、頭を狙うのではなく、面積の広い腹を狙わないと。
『残念だよ、瀬里。キミは今、ただの人殺しになった』
うるさい——————————
人殺しだろうがなんだろうが、私は神子柴に縋ることに決めたのよ。
愛する妹を救う為に———————
—————————ザッ
新たな参加者と出会った。
よし、やるわ————————————
グロッグの弾は全然余裕ある。
撃つ
撃たない
→撃つ
撃たない
さぁ、撃つわッッッ!!!
「あの、わたし、鹿目まどかといいます。少し、お話をしませんか?」
屈託のない笑顔。
疑うということを知らない純粋無垢の瞳。
ケツイをもって取り組む覚悟。
いつのまにか—————————
——————私は撃つという選択肢を捨てていた。
☆彡 ☆彡 ☆彡
332
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:31:07 ID:mhf9q5Ho0
2章 雨と涙で虹は見えない
「そう、まどかは帆高を保護しようとするのね」
「はい。彼……帆高君は陽菜さんとの別離という別れで充分、苦しみました。だから、わたしはそれを応援したいんです」
自己紹介を交わし終えた後、今後の運命を左右する禁断の果実の実の味を聞いた。
————————————答えは出た
ああ———————————
この子も帆高を守ることを決意したのね。
炭治郎と同じように——————————
私と真希に救いの手は差し伸べられなかった。
愛した肉親(パパ)でさえも私たちを拒絶した。
どうして——————
どうしてたかだが、この数時間の映像を見ただけで、炭次郎もまどかも帆高に手を差し伸べる道を選ぶのだろう。
私と真希と帆高の違いは何?
東京に降り注ぐ雨の冷たさが心まで冷たくさせる。
この子と私の道は交わらない。
なら————————
—————————取るべき行動は一つのみ
「ねぇ、まどか」
「?何ですか瀬里さ……ッ!!」
——————タァン
「……えっ?」
——————下腹部に感じる違和感。
にじみ、広がる血——————————————
倒れこむまどか。
「せ……り……さん?」
どうして?といった表情と声。
先ほどまでの出会いがガラガラと崩れ落ちていく。
「死んでくれる?」
瀬里は無機質な機械の顔と声で————————
——————タァン!タァン!タァン!
躊躇なくまどかの脳天へ3発の鉛玉を撃ちこむ。
「……」
帆高を探そうと歩きだすと―――――――
「せ……りさん」
まどかは、死んでいなかった。
「……心臓と脳天に鉛玉を受けて、立ち会ったのは貴方が初めてよ。もしかして……まどかって”鬼”なの?」
炭治郎から話を聞いた”鬼”の存在。
もし、そうなら目の前の現象にも納得できる。
「鬼では、ありま……せん。……魔法少女です……」
「……!!」
弱弱しくも鬼ではなく、魔法少女だとまどかは瀬里の疑問に答える。
瀬里はその答えに引き金を引くのを止める。
333
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:31:23 ID:mhf9q5Ho0
「魔法少女ですって……」
「はい……」
そう、鹿目まどかはキュウべえとの契約により”魔法少女”となった。
そして―――――――まどかの世界での魔法少女とは。
魔法の道具と呪文で変身する小さい女児が憧れるような存在ではなく、魂を”ソウルジェムと呼ばれる宝石に変換させ、肉体は抜け殻となる存在。
故に———————
心臓や脳天に鉛玉を受けても、死ぬことはない。
そして、ジェムと魔力さえあれば、肉体を復活させることも可能。
「へぇ、魔法少女って銃弾受けても平気なんだ。まるでおとぎ話に出てくる化け物だわ」
「魔法少女は化け物……なんかでは、ありません」
世和弱しい声だが、はっきりと”化け物扱い”を否定する。
「魔法少女は……夢と希望を与える存在だから……」
撃たれたことに対するショックや化け物扱いの蔑みよりも感じるのはまず”悲しみ”。
鹿目まどかは、堂島瀬里をまっすぐ見据える。
「何よ……夢と希望を与えるって」
「随分と大仰なことをいうけど、貴方も私同様に首輪に繋がれた犬と大差ないのよ」
「そんな、貴方が私達、参加者に夢と希望?……笑わせないでよ」
————————お願い。
——————因果応報
——————因果応報
——————因果応報
——————因果応報
——————因果応報
————————お願い。
『残念だよ、瀬里。キミは今、ただの人殺しになった』
————————お願いだから私が縋りたくなるような希望を持たせないで。
「う……ん。夢見がちだとは思う。でも、私はそう……決めたの魔法少女として」
その道は茨。
それでも進む。
それが、あの映画を観たまどかの答え。
「ッ!!!!!!!!!!!!」
——————だったら、魔法で”私と真希”を救ってみなさいよッッッッッ!!!!!
それは———————
———————————————心の奥底から絞り出された救いを求める言葉。
「瀬里さん……」
その叫びにまどかは声の主の名を小さく呟く。
「ッ!!」
——————————————ダッ!
我を戻した瀬里はまどかに背を向けると、走り去る。
まるで、小さい子が悪い事をしてしまい、とりあえず急いでその場から立ち去るかの如く。
「瀬里さん!!!!!……ッ!?」
去りゆく背中を呼び止めるが、思いは通じず。
後に残ったのは、”痛み”
☆彡 ☆彡 ☆彡
334
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:31:36 ID:mhf9q5Ho0
「はぁ……はぁ……」
乱れた息を整え、休息する瀬里。
「……」
——————だったら、魔法で”私と真希”を救ってみなさいよッッッッッ!!!!!
(なに、センチメンタルなことをいっちゃったのかしら……)
先ほど、まどかに殴りつけた言葉を振り返ると自嘲する。
しかし、これからすぐに起きる新たな出会いに驚愕することとなる。
「……なッ!?」
目を見開く。
そして、同様か戸惑いを隠せない。
無理もない。
なぜなら————————————
「見てたよ〜、姐御。容赦ないそのいい撃ちっぷりはラーメン屋の女将も務められるよ」
先ほど、逃げ出した相手そっくりの人物がいるのだから。
たった今、出会ったまどかにそっくりな参加者が目の前に現れたのだから。
☆彡 ☆彡 ☆彡
335
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:31:53 ID:mhf9q5Ho0
3章 虹を掴むために帆高を殺す
「つまり……まどかであってまどかじゃなないって訳ね」
「そうそう。姐御がヘッドショットをかましたのは、別世界の私。私はマギレコを宣伝するために日夜働いている私!」
どやぁ……と胸をはる、まどか。
—————いや、何ドヤ顔で言ってるのよ。
いや、そもそもマギレコって何よ。
色々と質問してツッコミたい内容だが、グッと喉から出ないように飲み込む。
「……と、とりあえず、貴方のことは”先輩”と呼ぶことにするわ」
(なんか、まどかに会っただけにまどか先輩とは呼びたくないわ……)
名は同じ”まどか”でも、余りのギャップの違いにまどか先輩呼びは抵抗を感じる。
「しょうがないね。まどかBとかにせまどかは御免だし、先輩(まどか)だと入力もめんどくさいだろうからね。そこはなぁなぁにするよ」
私の命名にちんちくりんなまどかは不承不承といった様子だ。
「……」
(頭が痛いわ……)
この現状に頭痛の種に悩まされる。
炭次郎にまどかといった参加者の次に出会ったのが”ソレ”。
(とりあえず、気持ちを切り替えて……普通に拳銃で撃ち殺すのが困難な参加者が他にもいると想定しておくべきね)
まどかに目の前の珍妙なまどかと銃を体に受けただけでは死なない者達に立て続けに出会った私は、この場に呼ばれた参加者は、鬼や魔法少女といった超然した力を持つ者達が多いと理解した。
(……それでも、首輪を狙えば”死”は免れないはず!)
チラリとまどか先輩の首元に視線を向ける。
そう、あの神子柴なる老婆は言った。
「...と、まあ、このように、わしに逆らえば巻かれた首輪が爆発し死ぬことになる。常々心しておくように」
その言葉を信用するのなら、首輪を爆破させれば”死”を免れることも可能のはず。
「え?姐御……もしかして」
「な、何よ……」
(ッ!不味ったかしら?
視線の先に気づかれた瀬里は何とか誤魔化せないかと思案すると―――――――
「私、そっちの道じゃないんで……いくら姐御でもムリなんだ」
ごめんね……といった仕草と表情を見せるまどか先輩。
そんな、まどか先輩に—————————
「……いっておくけど、私も違うわよ」
(……頭痛がさらに酷くなりそうだわ)
瀬里はボヤク。
奇跡に縋るためとはいえ、この生物と本当に組むべきなのか……と
336
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:32:08 ID:mhf9q5Ho0
【B-5/深夜/一日目】
【堂島瀬里@サタノファニ】
[状態]:健康 精神的頭痛(小)
[装備]:メイド服、グロッグ32(10/15)、弾倉×10
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]
基本方針:帆高を殺し、報酬で真希を幸せにする。
1:帆高を探す。
2:とりあえず先輩(まどか)と組む(今のところは……ね)
3:魔法少女……まどか……
4:人外の参加者でも首輪を爆破させれば死ぬ……わよね?
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※神子柴はそれぞれ時代が違う人間を召喚したと思っています。
※人間とは異なる参加者がいることを理解しました。
※人外なる者でも首輪を爆破させれば、死ぬのではと推測しています。
【グロッグ32@現実】
自動拳銃グロック17のコンパクトモデル。
32はリボルバー用の.357マグナム弾同様のポテンシャルをオートマチックで発揮させる.357SIG弾が採用されている。
【まどか先輩@マギア☆レポート】
[状態]:ダメージ(中)瀬里に若干戸惑い(え?姐御って首フェチなの?)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
基本方針:とにかく生還する。
0:とりあえずはゲームに従い帆高くんを確保する方針を取るよ。
1:邪魔するならたとえ別世界のわたしでも...戦争じゃあ...
2:よろしくね、堂島の姐御!(今のところはね)
3:あのお兄さん(後藤)は……ま、縁があったら会えるかもね
4:ごめんね。その愛は受け止められないよ姐御……
☆彡 ☆彡 ☆彡
337
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:32:26 ID:mhf9q5Ho0
終章 虹をつかむために帆高を護る
「はぁ……はぁ……ッ!!」
(ッ!?……痛い…)
撃たれた胸と頭を手で押さえつつも歩みを止めない。
しかし、痛みを感じるのは身体ではなく心。
「……」
——————だったら、魔法で”私と真希”を救ってみなさいよッッッッッ!!!!!
「瀬里さん……ッ」
まどかは、苦虫を噛み潰したような表情だ。
だが、それも無理ない。
出会ったばかりの関係とはいえ、”救い”を求めた人の手を握りしめることができなかったのだから。
(瀬里さん……貴方の憎しみと悲しみは私が受け止める。だから……お願い、最後まで希望を捨てないで!)
まどかは諦めない。悪魔憑きの少女を見捨てない。
なぜなら————————————
涙を流す人にHOPE(希望)を与えるのが、まどかが夢見た魔法少女なのだから。
【B-5/深夜/一日目】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(極小)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
基本方針:犠牲者を出さずにゲームを止める。
0:帆高を保護しつつどうにかして殺し合いを止める。
1:魔法少女として瀬里さんを救いたい
2:知り合いがいるなら合流したい。
※参戦時期は1週目の時間軸です。
※ソウルジェムの濁りが極大状態になると、魔女化するかもしれません。
338
:
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
◆s5tC4j7VZY
:2021/11/29(月) 20:32:42 ID:mhf9q5Ho0
投下終了します。
339
:
◆j7coLoRPl6
:2021/12/04(土) 00:11:06 ID:QLhm6mks0
投下乙です!
炭治郎といいまどかといい優しい子たちに出会って決意がブレそうになるも妹を救うことを諦められず実行できてしまうのが瀬里さん。
そして途方に暮れているところにカオスの権化であるまどか先輩と出会ってしまって感情が破壊されそうになってる瀬里さん不憫。
存在自体がギャグみたいなまどか先輩と果たしてどこまで付き合えるのか気になります
撃たれても己の正義を貫き続けるまどかはやはり善人でありしかし狂気的なものも感じますね!
340
:
◆9fFac98jeI
:2021/12/07(火) 13:29:54 ID:tt3PLL7E0
以上で投下を終了します
マスターが王女だったため、【ロール】の関係者としてゼルダ姫を登場させていただきましたが、問題があれば修正します
341
:
◆9fFac98jeI
:2021/12/07(火) 13:30:51 ID:tt3PLL7E0
>>340
すいません、誤爆しました
342
:
◆s5tC4j7VZY
:2021/12/23(木) 06:17:35 ID:25JoBA5M0
感想ありがとうございます!
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ないよ。
結果的に炭次郎にまどかと救おうとする者達の手を取らない選択をさせてしまった瀬里さんには申し訳ないと感じつつも書き上げました。
自分で書いておきながらなんですが、まどか先輩とのタッグは危ういかもしれませんね……(瀬里さんの精神的な意味も含めて)
まどかは、参戦時期が魔法少女になった一週目でしたので、魔法少女として己を貫こうとする流れにしました。
343
:
◆s5tC4j7VZY
:2021/12/29(水) 23:46:22 ID:slIXgTiA0
アトゥイ、古手梨花、キャプテン・ネモで予約します。
344
:
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/05(水) 23:09:01 ID:2ZAUyeOc0
すみません、延長をさせていただきます。
345
:
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:44:09 ID:ts7R8xes0
投下します。
346
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:44:53 ID:ts7R8xes0
恋愛は、チャンスではないと思う。
私はそれを意志だと思う。
ー太宰治ー
1章 漫ろ雨に佇む男女
「そうだ、言い忘れていたけど、僕の名を呼ぶ際は”ライダー”で頼むよ」
「……本名を知られるとマズいというわけね」
「そう、理解が早くて助かるよ」
雨降り続ける東京。
契約を終えた二人は雑貨ビル内にいた。
サーヴァントにとって真名は命といっても過言ではない情報だ。
サーヴァントは”英雄”が人々に祀り上げられ英霊化して現世に召喚されし者。
華やかな伝説や畏怖させし偉業は人々を熱狂させる。
しかし、一方で英雄譚には、末路まで語られるため、弱点とされし情報も多々ある。
有名どころでは、アキレウスの踵やジークフリートの背中などだ。
つまり、戦闘機一機分といわれる強さを誇るサーヴァントも足元を掬われることもあり、無敵と言うわけではないということだ。
「なら、私は”マスター”かしらね」
「うん、基本はね。ただ、二人きりのときは梨花と呼んでもいいかい?」
「……どうして?」
訝しがる。
まぁ、それもそうなる。
自分は偽名に近い名なのに、そちらは使い分けるのだから。
「別に他意はないよ。ただ、僕には別にも契約をしているマスターがいるからね。ずっとマスターと呼ぶと、そのマスターが不憫に感じるんだ」
ネモにとって梨花は3人目。
契約が切れたのならともかくなのだが、特に2人目のマスターはネモにとって説明しがたいが好意的に思える人物。
勿論、契約をした以上、梨花も自身にとって大切なマスターにはかわりないが、それとこれは別といった感情を抱いているのだ。
「ふぅん……いいわよ。好きにしなさい」
「わかった。好きにするよ」
互いに呼ぶ名を決め終わると、タイミングよく空から忌むべき声が聞こえ始めてきた。
この特殊なゲームを主催せし者。
神子柴の声だ。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「うん……僕の関係者はいないようだ」
名簿に表記されている名にネモの関係者はいなかった。
(だけど、この”ギルガメッシュ”……もしかしたら、サーヴァントなのかも知れないな)
ただ、憂慮すべき名は記されていた。
ギルガメッシュ。
古代メソポタミア文明におけるウルク第1王朝の王の名。
直接会話をした記憶はないが、マスターと契約しているサーヴァントにその名があったような気がする。
しかし、同じ名だからといって自身と同じとは限らない。
英霊の座には記憶は持ち帰られないからだ。
それの代用というわけではないが、記録は本として読むことはできるが、あくまで記録であって、再召喚されたら同一であり同一ではないということとなる。
英霊召喚システムの長所であり短所でもある。
「……そんな!?沙都子が……!!」
一方、梨花は名簿に記された名に目を見開く。
無理もない。
北条沙都子。
梨花が住む雛見沢の住人の一人。
一度は運命を打開した部活メンバーの一人にしてたった一人の親友。
もし、将来雛見沢から離れ、聖ルチーアへ進学をするなら共にきてほしいと願う程の。
(でも……沙都子はたしか……)
そう、自身が神子柴によりこの冷風が吹く雨やまぬ東京へ誘われる直前の記憶は、L5に発症した圭一にファミレスで撲殺されたこと。
そして、記憶が正しければ沙都子は先に血の海に沈んだはず。
(沙都子も私と殺された直後にここへ……?)
少なくとも沙都子にはやり直す力を持っているはずはない。
とすれば、神子柴による手口しか考えられない。
なぜなら、神子柴は死者蘇生を披露していた。
死者である沙都子をこの場に誘うのは赤子の手をひねるようなものだろう。
「梨花。知り合いがいるのかい?」
長く思案していたのか、声をかけてきた。
「ええ……といっても、ちょっとおかしな点があるのだけど」
ただし、一方の疑問もある。
自分は幾度もなく惨劇を回避するためにやり直しを選択していた。
つまり、自分が諦めた時系列の雛見沢の沙都子の可能性もある。
だがこれ以上、ここで考えても埒が明かない。
沙都子に会えば、直ぐに分かることだ。
いずれにしても、沙都子がいるのなら探しに行きたい。
するとちょうど、またタイミングよく、今度は声ではなく音が聞こえてきた。
ギイィ……
雑貨ビルの一室の扉が開らかれた。
奇しくも梨花とネモがいる部屋、
「なぁなぁ、ウチと少しばかりお話せいへん?」
特徴的な口調の来訪者。
これにより、ボーイとガールだけの空間は終わりを告げる。
☆彡 ☆彡 ☆彡
347
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:45:19 ID:ts7R8xes0
2章 キャプテン・ネモの憂鬱そして怒り
2人は来訪者である少女と会話をしていた。
そして、来訪者の名を知る。
アトゥイというそうだ。
そして、どうやらアトゥイは別の世界の人物の可能性が生まれた。
梨花やネモはシャッホロという国名を。
アトゥイはここ東京という都市名を知らないためだ。
「どうやら、神子柴は、異世界まで手を伸ばしているみたいだね」
「……そのようね」
「はあぁぁ〜、夢のようなはなしやんねぇ」
普通なら異世界なんて到底信じられる話ではないが、この特異なゲームが行われている以上、荒唐無稽と切り捨てるわけにはいかない。
そうした会話を重ねていくうちに、内容が脱線をしていく。
その脱線は結論からいうと、最悪だった。
「うはぁ〜、それにしても細い脚に綺麗な顔やねぇ〜」
うっとりとした顔で品定めするみたいにジロジロとネモを見る。
「あまり、見られるのは好きじゃないんだ。やめてくれないか」
当然の反応。
ジロジロと見られることを好む好き者はそうはいないだろう。
(……なんだか、碌でもないことを言いそうだ……)
直感。
これは直感であるが、ホダカとは別の方向で好きにはなれない。
そう思うと眺める少女、アトゥイが口を開いた。
「なぁなぁ、ウチと殺り合ってみいひん?」
時が止まる。
それもそうだ。
物騒な物言いを笑顔で言ってきたのだから。
(ほら、やっぱりね……)
憂鬱の気分になる。
良くない予感は得てして当たるもののようだ。
「僕たちと君は共にホダカを探す立場だろう。戦うのは特にメリ……ッ!」
しゃべっている最中の槍の突き。
とっさに横に転がり躱す。
続けざまに間合いを詰めてくると槍で突く!突く!突く!。
全ての突きを直撃こそ避けられたが、3回目の突きの際、槍の先端がほんの少しかすり、頬から一筋の血が流れる。
「……ッ!!」
(避けきれなかった!?やっぱり、動きが鈍い……ッ!)
サーヴァントは召喚された土地での知名度が低いと弱体化の補正をかけられてしまう。
神子柴が用意した舞台東京は日本の都市。
そして、残念ながらキャプテンネモの知名度は低いと言わざるをえない。
ましてや不安定な霊基を成立させた幻霊でもある。
よって、ネモはサーヴァントとしての弱体化と神子柴による制限と二重の負荷がかけられている。
腹を狙う繰り出される薙ぎ払いを具現化した法螺貝で防御する。
「?、もしかして、調子悪いん?ちょい手をぬいたほうがええ?」
「冗談はよしてくれ。こんなのセミクジラのヒゲのように心地よい緊張だよ」
いくら、自分からもめ事は好きではないとはいえ、手を抜かれるのはサーヴァントとしても屈辱。
あくまでも余裕綽々だと伝える。
「ライダー!!」
(何なの!?この女……まさかL5!?)
突然の行動に困惑。
世界が違うため、ありえない。
だが、まさかの行動に頭が雛見沢症候群になっているのかとつい考えてしまう。
「マスター!危ないから部屋から出るんだ!」
「……わかったわ」
この場では、邪魔になると判断。
梨花は戦場と化す部屋から飛び出した。
「うふふ〜、2人で楽しようちゅうわけやんねぇ〜」
楽しみに邪魔はいらない。
それを相手の方からしてくれたから、勘違いをしている。
「悪いけど、君との会話は僕の神経が磨り減るだけだ」
見当違いにも程がある発言。
やれやれといったため息が出る。
そして、今度はこちらから攻撃を仕掛ける。
348
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:46:07 ID:ts7R8xes0
「トーリトーン!!!」
両足から波を発生させる。
波は勢いよくアトゥイに降りかかる。
しかし、それをグングニルで薙ぎ払い、突き刺そうとしてきた。
鋭い直線の一撃。
何とか、それを避けると、追撃の薙ぎ払い。
バク転でそれを躱す。
直地すると同時に懐から支給品のM1911で狙い撃つ。
弾はアトゥイの頬をかすり、先ほどのモネ同様に一筋の血が流れる。
アトゥイは頬に指を当てると無言でそれを眺めるとやがて、ペロリと舐めた。
「ええで〜、つまみ食いとおもてたんやけど、こら当たりね」
自分の勘は当たっていた。
それが嬉しくてたまらないといった感じだ。
自身のワクワクを抑えきれない。
「何だか、とっても楽しそうだけど、楽しいかい?」
呆れて尋ねるほどの顔。
自分とは相いれない。
「楽しいよ。飛び散る血しぶき、痛みにゆがむ顔、斬ったり斬られたり、殴ったり殴られたりする……そら、もう楽しくて仕方ないんよ」
「……まったく、外見はランサーだけど、心がバーサーカーとはね」
愚痴りたくなる。
戦闘狂は自分ととことん合わない。
一対一を律儀にする必要はない。
「雷撃!撃て―――ッ!!!」
だから、マリーンズを召喚する。
召喚された3人のネモ・マリーン。
DANGERと書かれた樽をバケツリレーの要領で運び出す。
「はあぁぁ〜〜〜、かいらしい〜〜〜♪なぁなぁ!一人持って帰ってええ?」
予想外すぎる提案。
これから攻撃をされるというのに。
当然、答えはNOだ!
「やるよ〜〜〜!」
樽が爆発する。
煙が部屋に充満する。
「けほっ!けほっ……〜〜〜〜ッ!!」
ネモの蹴りが脳天にヒットする。
ぐらつくアトゥイ。
しかし、そこは戦を愛する姫。
すぐさま体勢を整えると、突きを放つ。
今度も避けようとするネモだが、両足に力を込めた渾身の鋭い突きは衝撃波が生じた。
「頭の痛みのお返しなんよ」
怯んだ好きにアトゥイの蹴り。
「ッ!!げほっ……〜〜〜!!」
女性とはいえ、勢いある蹴りが鳩尾に当たった。
人体の急所の一つ。
サーヴァントの身とはいえ、痛みに悶える。
「こん部屋、狭いしボロボロで戦いん邪魔ね。ちょい広い場所へ移動するんよ」
千里疾走の構え。
移動に次ぐ移動。
アトゥイは目の前から消えてしまった。
「おい、勝手に……ッ!!」
人の了承を聞かずに勝手な行動。
もし、あの女がノーチラス号に搭乗していたら即座にキャプテン権限で”降りろ”と命じるところだ。
素早く後を追いかける。
349
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:46:32 ID:ts7R8xes0
「お嬢ちゃん……そこにいたんやね」
「……ッ!!」
一方、ネモより先に屋上へたどり着いたアトゥイは屋上へ避難していた梨花と邂逅する。互いに対峙。
「……何?」
「……その目。ウチは好かんよぉ」
それは、低い低い声。
あからさまに嫌悪の表情。
「ええか?戦場は、生きるか死ぬんかの一華咲かす場所なんよ。そない死んだような目でいるのは、はっきり言って邪魔よ」
愉しい愉しい闘争。
そこをそんな死んだ魚の目でいられたら迷惑千万。
「目障りやから、ちょいとどいてな」
強烈な回し蹴り。
華奢な体では、踏みとどまることができず。
哀れ、その身は屋上から身を出してしまった。
「力加減を間違えた!?しもたなぁ……」
別に屋上から蹴り落そうとしたわけではない。
あちゃ〜しまった……といった表情をしている。
丁度その時、ネモも屋上へたどり着いた。
「マスタ―――!!!」
とても大きな声。
普段の彼を知る者は驚くであろう声量。
それだけネモにとって出さなきゃならないほどの状況というわけだ。
(死ぬの……? ……まぁ、別にいいわ。あっけない幕切れだけど)
数時間前にも落ちた身。
もう新鮮さも感じることはない。
元々、終えようと思っていた。
沙都子がいることは心残りだが。
……本当にいいのですか?
(ッ!?)
ふと、脳裏に聞こえたのは共に寄り添ってくれていた者の声。
(……幻聴?)
それが梨花にとって幻聴であるかどうかは問題ない。
ただ一つ言えるのは。
(そうよ……責任をとってもらわないと)
よくよく考えたら、これで死ぬなら最初に飛び降りた時に死んだって構わないじゃないか。
それを勝手に助けたんだから、言った約束は守ってもらわないと。
みっともなくとも、生にしがみつく気概がほんの少し生まれた。
350
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:46:52 ID:ts7R8xes0
「――来て。いや――来なさい、ライダァァァアアア!!!!」
魂の声。
その声に応えるのがサーヴァントだ。
そして、その魂の声により令呪の効力が発揮する。
出会い頭の落下こそマリーンズに託したがこの役目だけは、マリーンズにも譲れない。
勿論、僕と彼ら、どちらが上、という立場もない。
だけどだ!これだけは譲れない。
「悪いけど、マスターを殺すのは僕が予約しているんだ」
落ちた梨花をキャッチする
そして安全な階へ下すと、猛スピードでアトゥイの前へ移動する。
「……」
無言。
しかし、それだけで伝わる想いが表情に出ている。
「へぇ……そうなのけ?そら嫉妬してもうなぁ……ウチ」
嫉妬。
それもそうだ、自分の運命の相手となるかもしれない相手は既に他の女にツバをつけられているのだから。
だが、その嫉妬を大きく払いのける想いがネモにはある。
「君の嫉妬なんかどうでもいい。それよりも、君はマスターを危険な目に合わせた。デッキブラシ6時間の刑ではすまさないよ」
それは怒り。
純粋な怒り。
故にネモは発動した。
宝具を。
そして、宝具はそうしたサーヴァントの想いに応えるものだ。
地上であるにも関わらず、何と、巨大な潜水艦が出現した。
「そら、一体なんなん!?」
驚愕する。
無理もない。
なぜならそれは、愛艦「ノーチラス号」そのもの。
ライダーは迅速にそれへ乗り込む。
(こら、ヤバイ!!!)
ゾクっとした悪寒が生じる。
悪寒だけでない。生命の危険もだ。
獲物のグングニルを前に構える。
そして、その直感は正しかった。
「トリトンエンジン スタート!」
「照準よろし!」
「計算完了」
「オラッ、ブン回すぜ!」
「プリンは良かしら〜」
「「「「許可する」」」」
「マスターの命を危険にさらした者を、僕は許さない。行くぞ!グレートラム・ノーチラス!」
急スピードによる衝角による突撃。
アトゥイはとっさにグングニルを盾替わりにすることで、直撃は免れたが衝突により発生した衝撃波は防ぎきれず、遥か遠くへフッ飛ばされた。
☆彡 ☆彡 ☆彡
351
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:48:43 ID:ts7R8xes0
3章 これも一つの愛
「あい、たたた……」
先の戦闘となったエリアとは別のエリア。
その雑貨ビルの屋上に激突した。
幸い、受け身を取ることはできたため、戦闘不能となる怪我をすることだけは避けられた。
「楽しくなってきたなぁ……うひひひひ」
笑みが零れる。
受け身とはいえ、宝具による一撃の衝撃波は身体の至る所に打ち身の痛みを感じさせる。
だが、それが良い。
これだ。これこそが戦の醍醐味。
殺るか殺られるかの刹那はどんな美酒に勝る。
「だけどもし、オシュトルはん達と合流したら、もうこうした戦いは味わうことはできへんよね……」
先の神子柴による放送で、名簿にオシュトルを始め、何人か仲間の名前があったことを知った。
ライダーと死んだ魚の目をした少女はホダカを保護する立場だった。
つまり、合流以降ははライダーとの殺し合いができなるなるということだ。
「絶対にイヤやぇ……」
せっかく見つけた自身を満たしてくれるかもしれない相手。
これを逃したら二度と味わうことができないだろう。
当初の考えでは、オシュトルを探しつつ戦いを楽しむが指針であった。
しかし、運命の相手というべきライダーとの邂逅と戦いがアトゥイの方針に変更を与える。
(オシュトルはんには悪いけど……ウチ、見つけたんよ!)
高揚した心。
偽れない想い。
一つの恋愛。
「ウチに殺されるまで死ぬんやないで、ライダーはん」
気狂い姫は恋い焦がれる。
【D-6/深夜/一日目】
【アトゥイ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:負傷(中)、疲労(小)、高揚感 モネへの執着 梨花への嫉妬
[装備]:グングニル@BLACK CAT
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:戦いたい。特にライダーと。
0:帆高を探してとりあえず保護し時間を稼ぐ。ただし陽菜と会ってゲームオーバーになるくらいなら殺す。
1:まずは、休息する。
2::オシュトル達と会う前に、帆高を狙う者と戦いたい。強者なら尚良し。今はライダーが最優先。
4:オシュトル達との合流は消極的。出会ってしまったら適当な理由を述べて離れたい。
※梨花・ネモとの情報交換で異世界の存在を知りました。なお、梨花の関係者の名前は知りません。
【グングニル@BLACK CAT】
世界最高最強の金属「オリハルコン」製の槍。
渾身の突きの一撃は衝撃波を発生させるほど鋭い。
☆彡 ☆彡 ☆彡
352
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:49:24 ID:ts7R8xes0
終章 まるで映画のワンシーン
アトゥイを退けた2人は向かい合っていた。
沈黙。
互いに切り出せないからだ。
「……」
「ごめんね。黙っていて」
頭を下げる。
令呪の持つ効力について黙っていたことに。
「そうね。……でも、あの場で知っていたら私は貴方に命じていたわ。私を殺しなさいって」
モネの予想通りだった。
それだけ梨花はヤケクソに近い感情をずっと心中感じていた。
「けど……あの戦闘狂女の蹴りをもらって、屋上から落ちた時、こんな結末はイヤって思ったの……」
自嘲するように語る。
「どうしてかしらね……あれだけ疲れ切っていたのに。もし、旅路の果てを迎えるなら、ライダー……アンタの手でと思ったのよ。私を助けてくれて……ありがとう」
もう、結末は二つしかない。
脱出かライダーの手で死ぬ。
それ以外の死はお断り。
「…いまさら、改まって名乗るのはどうかと思うけど…」
コホンと咳ばらいをする。
だけど、”これ”は重要である。
例え、既に契約を終えていて、令呪を持っていたとしても。出会い当初のとりあえず契約ではなく、きちんと契約しなおしたいと心が求めているからだ。
そう、理屈ではない。心の問題なのだ。
「海神ポセイドンとアンピトリテの子・トリトンにして、潜水艦ノーチラスを駆る”誰でもない者”……」
梨花は口上をまっすぐ見据えながら聴いている。
その瞳には、かつて自分を励まし傍に寄り添ってくれていた者を想起しているのかとても穏やかな表情だ。
「キャプテン・ネモだ。よろしくね、マスター」
モネは言い終えると手を差し出す。
それに対する梨花の行動は勿論。
「ええ、改めてこちらこそよろしくねネモ。私を殺すのは”貴方”だけよ」
握手をする。それしかないだろう。
霧雨降る東京。
互いに肩を寄り添い休息する。
【E-6/深夜/一日目】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]負傷(小)、疲労(小)、ネモと契約
[装備]令呪(二画)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[行動方針]
基本方針:取り敢えずネモの方針に従う
0:もし、脱出できそうになければ、ネモに殺してもらう。
1:鳥居のあるエリアを目指す。
2:モネ以外の参加者には殺されるつもりはない。みっともなくても足掻く。
3:あの戦闘狂女とはもう会いたくないわ……
3:今は休息の一時を過ごす。
※第十五話終了直後より参戦です。
※北条沙都子が参加していることを知りました。ただし、呼ばれた時間列はどこかは分かりません。
※アトゥイとの情報交換で異世界の存在を知りました。なお、アトゥイの関係者の名前は知りません。
【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】
[状態]負傷(小)、魔力消費(中) 疲労(中)
[装備]M1911@鋼の錬金術師
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:脱出し、願いを叶える力を主催から奪取する方法を探る。
0:梨花を護衛しつつ、首輪の解析に取り組む。
1:帆高を捜索しながら、鳥居のあるエリアを目指す。
2:あのバーサーカー(アトゥイ)とはもう、会いたくないね……
3:今は休息の一時を過ごす
※マスター不在でロワ会場に現界しました。
※アトゥイとの情報交換で異世界の存在を知りました。なお、アトゥイの関係者の名前は知りません。
【M1911@鋼の錬金術師】
ハンドキャノンの愛称で呼ばれることもある現実に実在する銃。
作中では、ロイやホークアイが所持していた。
おそらく軍の支給品だろう。
353
:
あめふりこいのこ
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/08(土) 07:49:38 ID:ts7R8xes0
投下終了します。
354
:
名無しさん
:2022/01/08(土) 20:25:36 ID:W4Ketf7o0
投下乙です。
キャプテンの原作の戦闘モーションや召喚時のセリフの拾い方がとても良いと思いました
着地任せた!の様美式なシーンもカッコよくてやっぱり盛り上がりますね
女性関係が殺してくれって言う女と殺してやるって言うのはどっかのチェーンソーの悪魔みたいで笑いますけど
三角関係の明日はどっちだ
355
:
◆s5tC4j7VZY
:2022/01/09(日) 15:11:48 ID:t8M9W4oY0
感想ありがとうございます!
あめふりこいのこ
キャプテンの原作の戦闘モーションや召喚時のセリフの拾い方がとても良いと思いました
↑ありがとうございます!!!
令呪といったらこれだよな〜と個人的に思っていたので、外せない展開としました。
2人の登場話である「ワールドエンド・ボーイ・ミーツ・ガール」がエモ過ぎて大好きだったんです。
ただ正直、この2人の空間と言いますか雰囲気を自分が書くのは難しく頭を悩ませましたが、無事完成出来てホッとしています。
アトゥイにロックオンされたネモと嫉妬を抱かれた梨花には申し訳ないと思いつつのこの三角関係がどうなるか……ですね〜
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