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白蛇ロワイアル2
1
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/06/21(日) 00:28:04 ID:ikhYlBOU0
――持っているものはさらに与えられて豊かになる。
持っていないものは持っているものまでも取り上げられる。
【当企画について】
・スタンド能力をジョジョに登場する以外のキャラが得、バトロワをしたら……という企画です。
・コンペ形式で参加者を募集します。
・初心者から経験者まで誰でも歓迎します。
【コンペについて(終了)】
・コンペ対象作品は締め切りまでに投稿完了された作品となります。
・締め切り期日は募集開始から2ヶ月後を想定していますが、投稿数の増減により多少変動します。
・期日の2週間前までには本スレの方で発表します。
・採用キャラは企画主が選考させていただきます。
・いわゆる、候補話内の『ズガン』については不可とします。
・候補話内での登場スタンドの被りはありです。
【基本ルール】
・全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
・生き残った一人だけが、元の世界へ帰ることができ、また主催者権限の範囲内で願望が成就。
・ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
・ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
・プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。
・結界が貼ってあり、会場からの脱出は不可。
【スタート時の持ち物】
・参加者があらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収(ただし義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない)。
・武器にならない衣服、帽子は持ち込みを許される。
・ゲーム開始直前に参加者は開催側から以下の物を「デイパック」に入れられ支給される。
「地図」「コンパス」「照明器具」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
「地図」→ 大まかな地形の記された地図。禁止エリアを判別するための境界線と座標がひかれている。
「コンパス」→ 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「照明器具」→ 着火器具+携帯ランタン(油は2〜3日分)。
「筆記用具」→ 普通の鉛筆と紙。A4用紙10枚。
「水と食料」→ 通常の飲料と食料。量数は通常の成人男性で二〜三日分。
「名簿」→全プレイヤーの名前が載っている。顔写真はなし。
「時計」→ 普通の時計。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
【スタンド】
・参加者は一人につき一つスタンド能力をDISCを挿入される形で与えられている。
・スタンドの使い方は支給品内のメモに大まかな概要だけ記されている。
・与えられたスタンド能力に必要なものがあれば、それも一緒に支給される(セックス・ピストルズの銃、サーフィスの人形など)。
【放送について】
・放送は六時間ごとに行われる。
・放送毎に、過去六時間の死者の名前、残り人数、次に増える禁止エリアが発表される。
・禁止エリアの増加割合は放送毎に1つ。
【「首輪」と禁止エリアについて】
・このロワに首輪はない。代わりに主催者権限により、脳そのものを爆発できる。
・どのような存在であろうと、爆発されると死亡する。
・爆発すればどのような能力でも修復不可能。
・脳の爆発以外の要因で死亡した場合、以降爆発することはない。誘爆もなし。
・主催者は能力によりプレイヤーの位置を把握可能。ただし会話内容などは把握できない。
・爆発するのは、以下の条件の時である。
●放送で指定した禁止エリア内に、プレイヤーが入った場合(進入後10分経過で爆発)
●24時間で、一人も死者が出なかった場合(全員のものが一斉に爆発)
●参加者が、主催者にとって不利益な行動をとろうとした場合
【制限について】
・全ての参加者はダメージを受け、状況により死亡する(不死の参加者はいない)。
・スタンドは体力・精神力を消費する。
・その他各能力の制限は各自常識の範囲内で。問題があった場合は随時議論を行う。
・全ての登場人物が日本語で思考し、会話し、読み書きすることができる。
まとめwiki:
ttps://wikiwiki.jp/snake_rowa/
220
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/13(金) 23:16:37 ID:ejleChZE0
投下を終了します。
221
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/13(金) 23:17:55 ID:ejleChZE0
また、次の投下を第一回放送にしたいと考えていますのですが、構いませんでしょうか?
一週間待って他の方の投下が無ければエンリコ・プッチで予約したいです。
222
:
名無しさん
:2020/11/13(金) 23:29:50 ID:pWsHu8dA0
投下乙です
アカザ殿がガチでかわいそうになってきた……
223
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 01:42:57 ID:swDK9iME0
投下します
224
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 01:43:56 ID:swDK9iME0
あ、間違えた! すいません!
浅倉透、樋口円香、コラッタ、ブラック・ジャック、伊藤誠予約します!
225
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:41:41 ID:swDK9iME0
小目汚し失礼しました、投下します
226
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:42:27 ID:swDK9iME0
ブラック・ジャックからスタンドの使い方を教わった後、
彼の医療道具の為に病院へと向かうため商店街を歩く三人。
途中休憩を挟んだりもしているので、朝も近い時間の割にまだD-3だ。
「誠。」
「何…ってうわっ!?」
呼ばれて視線を向ければ、分離した右腕を左腕で持つ透に驚かされる誠。
スタンドで外せるのは知ってたが、腕だけがそこにあるとはっきり言って怖い。
「孫の手。結構便利かも。」
言葉通り孫の手感覚で背中に右腕を当てる。
そうは言うものの彼女はアイドル。
レッスンで鍛えられた身体で手が届かない、
なんてことになる身体ではないのであまり意味はなかったりする。
「心臓に悪いって…」
分離した腕を見て気分がいいと言える人はそうはいないだろう。
断面図こそ、謎の空間でよくは見えないのが、少ない救いだ。
色んな意味でぶっ飛んでる彼でも、その辺は人間らしくもある。
「私は遊ぶために教えたんじゃあないんだが?」
二人のやり取りを後目に見ながら先を歩くブラック・ジャック。
命のやり取りと言うこの状況下では自分が一番立ち回れるので、
何かあったときのことを考えて彼が先頭になるのは当然だ。
「スタンドの応用ってことで、ダメですか。」
「スタンドと言うのは私にとっても初めての経験になる。
運動や食事同様、過剰の際に起きるリスクは考えておくことだ。」
医者らしい、至極まっとうな発言。
精神の具現化である以上無暗に使えば疲れてしまう。
これを理解しているわけではないが、ある意味的を射た言葉だ。
「それに、腕を投げるよりもダーツやナイフを投げた方がいいさ。
私はダーツ投げが得意だから、と言うのもあるだろうが。」
「はーい。」
いざと言うときに腕を落としたら大変だしね。
ある意味そうなのだがどこか斜め上な考えと共に、
腕を元の場所へと戻しておく。
「殺し合いと言っても、思ったより何も起きないんだな。」
この道を歩いて長い時間が経過するが、
敵と思しき姿は一切見えてこない状況。
最初こそ死にたくないと焦ってはいたが、
まともに会話できて同行できる相手がいると、
どこか気分が緩み始めてしまう。
「そうだね。」
起きない方がいいのは事実だが、
こうも何も起きないと疑問すら感じてしまう。
「だが警戒しておくに越したことはないさ。
約四十人、凡そ学校の一クラス分以上の人数だ。
クラスメイト全員が問題児ではないクラスも、そうはないだろう。」
問題ありな生徒。
そう言われると誠は心当たりはある。世界がその筆頭だ。
幾ら対応が悪かったとは言え、何も殺しにくることはないだろう。
クラスで孤立することになったし、勝手に子供作るなんて。
病院も紹介したんだからいいのに、意味が分からないとさえ思うも、
問題児はお前だろとは、彼を知ってれば満場一致で言われるだろう。
「君達のような一般人もいるんだ。
優勝してでも生きたいと思うはずだ。
この殺し合いにはあの死神も参加してる以上、
何処から呼んだか分からないようなのがいるかもしれない。」
「し、死神って…」
「名簿ではDr.キリコと書かれてる。奴は私の知り合いになる。
不治の病の人間を安楽死させる医者だが、私からすれば奴はただの人殺しだ。」
名簿にはあのナイチンゲールもいることは気掛かりではあるが、
少なくともキリコがいることについては間違いはないだろう。
ピノ子とかならまだしも、あいつを探して歩き回ったり何かするか、
と言われたら治療に関することでもない限りは基本的にお断りだ。
態々自分の知り合いの名前を偽って書くとは思えないし、
そも此処の三人とも名簿に名前がある。嘘ではないのだろう。
ナイチンゲールは同姓同名なのか、スタンドで蘇らせたのか。
その程度に留めておいて今はさほど興味はない。
227
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:46:36 ID:swDK9iME0
「すごい知り合いがいるんですね。」
曲がりなりにも死神と人殺しと言う、
不穏なワードが聞こえたが浅倉はいつも通りだ。
不安な表情とかをせず、淡々と会話を続けている。
勿論ないわけではないのだが、そんな雰囲気を感じさせない。
それが浅倉透と言う人物でもあった。
「一方であいつは腐っても医者の端くれだ。
この殺し合いにもきっと乗らないから協力は───」
会話の途中、彼の言葉を遮るような謎の音。
「イッツ!?」
「イタッ。」
同時に誠が声と共に手を抑えだす。
何が起きたかなど、言うまでもない。
これは銃声の類にして敵との遭遇の警鐘が鳴り響く。
ブラック・ジャックは敵への警戒を優先としていたので、
咄嗟に浅倉が率先してスタンド能力を行使していく。
即座に近くの店へとジッパーをとりつけて、
向こう側へ続く穴をあけて壁の向こうへ三人は逃げ込む。
浅倉達が逃げ込んだのはレストラン。
テーブルが二つしかないこぢんまりとしているが、
雰囲気が出ている店だ。
「すまないが私は彼を診る。君は敵を探してくれ。」
「分かった。」
ジッパーを少しだけ横に開けて壁の外を窺う。
しかし、壁の外に人の姿は何処にもない。
自分がの壁側にいて誠が撃たれたことから、
道路の向かい側の茂みに隠れてるものだと思うも、
それらしい姿でさえどこにも見られない。
「あれ、どこだろ。」
短時間で逃げられるのか。
注意してたわけではないにしても、
ろくに音もしなかったのに何故。
ある意味当然だ。
相手はそんな小柄なんてものではない。
小動物と呼ぶには憚られるであろう怪物(モンスター)。
茂みから殺意を忍ばせる怪物…コラッタなのだから。
「なんで俺ばっかりこうなるんだよ…!」
何度もめった刺しにされて殺されて、
今度は撃たれる。いったい俺が何をしたって言うんだ。
(悪意はないが、首も斬り落とされたと死体蹴りもあったりするが)
そんな風に嘆きたくなるものの、今度は助けてくれる人がいる。
さっきまで警戒心剥き出しだったのに飛んだ手のひら返しだが、
伊藤誠とはそういう男である。
「撃たれた弾丸は針か。音の割に9mm弾丸未満で、貫通どころか画鋲程度の───」
軽く傷を見ていると、
突然ブラック・ジャックはスティッキィ・フィンガーズを使う。
針の周辺ごとジッパーで分離する形でくりぬいて、
そこから更にジッパーで皮膚を強引につなぎ合わせる。
「イダダダダダ!! いきなり何するんだよ!?」
皮膚どころか肉ごとくりぬかれて、
更に荒すぎる縫合…痛いに決まっている。
本当に医者なのかと疑いたくなってしまう程の荒療治で、
痛みと同時に苦言の一つも言いたくなってしまう。
勿論医療道具もなしに此処までやってくれてるので、
仕方ないし感謝の意がないわけでもないが。
「悪いが、荒っぽい縫合だけをさせて貰う。
本当なら医療費も請求するところだが
今は急いでるから特別にただにしておく。
それよりも、君の方に異変は何かないのか?」
先ほどの銃声は一発だったはずだが、
痛みを訴えたのは誠だけでなく浅倉もだ。
一発でも二人に被害が出る可能性は今此処にある。
「異変? 特に…」
一旦ジッパーを閉じて、自分の身体を見やる。
どこも別段おかしくないように見えていたが、
左手の違和感を感じて見やると、小指だけ液状に溶け出している。
「小指、解けて───イッツ。」
228
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:47:45 ID:swDK9iME0
言葉を紡いでる間に鮮やかな動きで、
誠と同じように小指をジッパーで分離された。
同じようにジッパーによる強引な縫合で止血はしておいたが、
普段何をしててもまともに顔に出てこない浅倉でも、
流石にこれの痛みには顔をしかめざるをえない。
指が切断とか、普通は経験するはずがないのだから。
もっとも切断の時の痛みは殆どないので、
軽い痛みで済んでいる程度だ。
「え、でもなんで透の指が…」
「君のスタンド能力を思い出すんだ…つまりは、そういうことだ。」
これについては単純な話だ。
ドリー・ダガーの反射が偶然浅倉のほうに向いてしまっていたから。
勿論誠もそんなことはわざとやったわけではない。短剣に映ってたのが彼女、
それだけでしかない不慮の事故だが、誠の顔は青ざめてしまう。
間接的にとは言え、人の指を切り落とすきっかけを作ってしまったのだ。
精神的に人を傷つけることについては思慮に欠けに欠けてるが、
こうして目に見えた形で出されると自分が原因だと言う実感がわいてくる。
「いや、ちが、違うって! 俺じゃあない!」
俺のせいなのかと、
二人の視線に戸惑う誠。
「分かってる。」
「不慮の事故だ。今度からは反射を気にしてくれればいいだけだ。」
わざとではないことは分かっている。
二人とも責めるつもりもなければ怒ってもいない。
ブラック・ジャックは元々仏頂面ではあるのでそれは伝わる。
だが浅倉はそれが顔に出ない。何を考えてるかわからず、
場合によっては達観してたりと人に誤解されやすい人物。
怒ってないと言えども、怒ってるように受け取れてしまう。
「だがこれは何らかの毒の類、
それも恐らくはスタンド能力…治療不可能だ。」
都合よくこの短時間で、
塩酸以上の自分でさえ見たことのない毒を用意する。
とてもできるものではなく、スタンドだと暫定できるものだ。
治療不可能と言う言葉を聞いて、誠は浅倉をもう一度見やる。
小指がないアイドルが業界にいられるだろうか? 断じてあり得ない。
アイドル生命さえも自分が断ち切ったことへの責が強くのしかかる。
自分ではなくこんなスタンドを与えたプッチ悪いのだと、
内心責任転嫁をしているが。
「勿論、治せるようなスタンドがあれば別だがね。
その相手を探す余裕もなければ、此処にいるかもわからない。
加えて溶解した指では、神経を繋ぎ合わせた私でも恐らく無理だ。」
小指を失った手を浅倉は眺める。
やはり表情には出ず、何を考えてるか分からない。
アイドル生命を絶たれたことを考えているのだろうか。
それとも元凶となった相手や誠に対して憤りがあるのか。
ただでさえプロデューサーも彼女の理解には難儀してるのだ。
今回が初対面である二人には、全くその感情が見抜けないでいる。
顔には出なくとも、浅倉自身もショックは大きい。
殺し合いに拉致されて、小指を失うなんてフィクションだ。
自分がその対象になっていることは、痛みと共に理解させられる。
小指はいわば手のグリップ。失えば握力も著しく低下してしまう。
痛みもあわせてか、拳を作ろうとすると左手が震えていた。
「荒唐無稽だが、本体を倒せば毒の侵攻が収まる可能性もある。
その場合に指が元に戻せるように尽力は尽くす。指は保存しておくように。」
「可能性って、本当に無茶苦茶すぎるだろ!?」
「どうだろうか?
スタンドは精神エネルギーの具現化と神父は言っていた。
言い換えれば、精神を断ち切る…穏やかな言葉ではないが、
殺すことで精神力の繋がりは消えて、毒も止まる可能性はある。」
確かに精神的な繋がりというものはよくわからない。
今までもよく分からない奇病や相手に立ち向かってきた。
確証を持てたものもなければ、組織委縮症のように治せなかったのもある。
誠の言う通り、そんな曖昧なものでなんとかできるかどうかは怪しい。
もしかしたら毒だけは残留するなんて可能性だってありうるのだから。
「どちらにせよ、此方には本体を倒す以外の選択肢は残されていない。」
これが本当に最適解かどうかは分からないにしても、
問答無用で攻撃を仕掛けてくるような相手。
話し合いどうこうの段階はもうすでに終わっている。
相手は優勝を目さず危険人物。共に脱出は望めないだろう。
本当の殺し合いが始まる事実に、二人は言葉が出ない。
229
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:48:31 ID:swDK9iME0
「余りお守をするつもりはないが、
固まって的を大きくするのも悪手だ。
私が奴の相手をするが、こっちに来る可能性もある…気を付けるんだぞ。」
子供に危険なことをさせるのもあれだからな。
ブラック・ジャックはそう思いながら立ち上がる。
「…分かった。」
「君も、スタンドの取り扱いは気を付けてくれ。」
「わ、わかってるよ。」
釘を刺されたことに動揺する誠を後目に、
今度は自分がジッパーで壁の向こう側へと出ていく。
外は静寂。動いてないのか忍び足かまでは判断がつかないが、
(おそらく相手は動物だな。)
ブラック・ジャックはすでに敵の姿をある程度絞っている。
何故あの一瞬だけで判断できたのか。それは誠が受けた針だ。
針の向きは下から上に向いた状態で手の甲に刺さっていた。
このような当て方をするには、撃つ角度の都合絶対に低くなる。
敵の近くで態々屈んで撃つような狙撃手は普通はいない。
浅倉が人影を見つけられなかったことと撃った角度から、
相手は小柄…それも子供どころではない、小動物の類だと。
動物のスタンド使い…否定できる要素は今のところない。
あると思って警戒に越したことはなく、轟く銃声。
(来たか!)
振り向くと同時に彼へとめがけて飛来する弾丸。
狙いは胴体だが、回避はそう難しいことではない。
医者だが非合法故に修羅場を何度もくぐる彼に、
回避不可能と言うレベルの代物ではなく、転がって避けていく。
弾丸は少し離れた街灯を破壊して周囲を少しばかり暗くする。
街路灯の明かりに照らされながらも動くコラッタの姿を、
微かにだが捉えた。
(相手が鼠とは、ある意味宿命なのかもしれないな。)
人の医療は多くがモルモットなどの動物実験によって発展した。
繁殖力の高さ、成長の速さ、老化の短さ、人と同じ哺乳類が故。
そんな彼らの屍の上に立つ医者と相対するのが鼠。
ある意味この対決は因果なのかもしれないな。
命の危機でもあるのに、少しセンチな気分になる。
…厳密にはポケモンなので違うのだが。
「君達には感謝しなければならないが、
同時に謝罪も必要になるだろうな。
そして、私は医者ではあるが、善人でもないんだ。」
医者である以上人を死なせることはあるが、殺すことは基本的にない。
(あくまで基本的であり、遠因での死亡や正当防衛は数知れず)
だが、母の死因となる連中へと復讐をするための活動もしている。
防衛の必要に追われれば、動物でも人でもそこに変わりはしない。
スティッキィ・フィンガーズを構えて、肉薄を始めた。
「戦ってるのか?」
「みたい。指どうしたの?」
「冷凍庫。何もしないよりは長持ちするだろ?」
「だね。」
壁にジッパーを付けて戦いを覗き見する透。
またドリー・ダガーで反射させては身の危険を感じてか、
誠は音だけで何が起きてるのかを判断するしかない。
できることは、精々店の冷凍庫に透の指を入れて保存するぐらいだ。
戦い方は一方向から見てるだけなのでよくは分からないが、
医者とは思えない優れた動きで躱し続けており、
「やば。」
こっちに弾丸が来た瞬間顔を逸らす。
背後の白い壁へと当たり、ゆっくりと溶け出していく。
やばいの一言じゃすまないだろ、誠には異常に見える光景だ。
「な、なあ透。このまま逃げないか?」
殺されるなんてのはもういやだ。
死ぬ感触を二度と味わいたくない。
殺し合いとの雰囲気から離れていただけに、
叩き落されたことで性欲以上に恐怖がまとわりつく。
元々ブラック・ジャックに大して印象はよくない。
このまま見捨てて安全な場所に逃げたくもあるが、
邪な目的と同時に僅かな道徳もあって彼女も誘う。
「なんで?」
これは『なんでそんなこと言うの?』と言う憤りか、
『なんで逃げなくちゃいけないの?』と言う疑問なのか。
少し首を傾げたので、恐らく後者だと思いながら話を進める。
浅倉の本心としては後者であるので正解だ。
「なんでって…俺達が此処にいたって何もできないだろ!」
230
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:48:55 ID:swDK9iME0
逃げる選択肢がないのか。
こんな状況でも浅倉は変わらない。
容赦なく人を殺そうとするような相手に、
なんでこんなに平静でいられるんだ。
今のは多少判断できた気はしたものの、
理解には程遠い。
「あるよ。」
また清々しい発言。
信じて疑ってないかのような、
謎の自信に満ちているかのような表情。
いったい何を根拠にと内心思っていると、
「今はまだわかんないけど、多分ある。」
心の言葉に答えるかのように返す。
だからその根拠は何処にあるんだよ。
嘆かずにはいられない誠ではあったが、
同時に一人で逃げ出すこともできなかった。
コラッタとブラック・ジャックの戦いは意外と単調だ。
コラッタは物陰からの射撃を行い、そこから移動して逃げる。
元の持ち主の一体が行ってた同じことを戦術としていた。
ブラック・ジャックは射撃を避けた後撃った場所にスタンドで拳を叩きこむ。
とは言えこの暗さと相手の小柄さに、特定できてもその一撃は中々命中しない。
深追いすれば回避できない距離で撃たれる可能性もあって追撃さえできなかった。
擦過傷等であれば治癒力、出血も輸血によってまだ希望はあるだろうが、
スタンドの毒となれば受けた時点で致命傷となりうるだろう。
受けるわけにはいかず、どうしても消極的な動きになる。
確かに暗さと言う時間をコラッタは味方につけてはいる。
だが、本来の持ち主の状況と違って、地の利はかなり厳しいのだ。
道路と言うほぼ平地。遮蔽物は街路樹や植え込みがあれど、
攪乱に至れるものはなし。スタンドのステータスも高くはなく、
精密動作性はEと最低評価を受けるなどの苦難の山盛りとも言うべきか。
だから持ち主であるコラッタ本体に割と左右されているものだ。
不利を五分へ持ち込めてるのは、ハッサムやエアームドなどよりもある素早さか。
いっそ杉元の時のように近づけば…と言いたいところだが、これまたそうはいかない。
スティッキィ・フィンガーズのスピードはA。杉元のリトル・フィートのスピードを超えており、
破壊力に至ってはAと雲泥の差。あれを避けられる自信が今の彼にはないのだ。
相手を観て相手を聴く。最早鼠が持つ思考からかけ離れた優れた思考能力を持つ。
ではどうやってなんとかするべきか。それは───
「何!?」
油断はしていなかったものの相手の出方を窺う。
少しそれに注意しすぎた結果が予想外な展開を生む。
攻撃を避けられた瞬間、コラッタがついに別の動きを始める。
異常なレベルで速く、スピードA判定のスタンドでさえ捉えられない。
捉えられずカールを巻いたようなしっぽで思い切り顔の側面を叩かれる。
三十センチ程度の小柄では出せないような強烈な一撃は姿勢を崩し、
派手に転ばされてしまう。
ふいうち。相手が攻撃をしていれば先制攻撃が可能なあくタイプの技。
攻撃以外の時のふいうちは失敗するが成長したコラッタにとって、
見極めは容易で不意打ちを失敗する可能性は既にゼロに等しいだろう。
此処で信じるべきはスタンドではなかった。己の肉体だったのだ。
ポケモントレーナーは捕まえなければ使役できない…それはすなわち、
モンスターボールと言う首輪がなければならない程の存在がポケモンだと
考えれば当たり前のことではないか…自分は強い。人間たちよりもずっと。
そんな貧弱な存在にコラッタは追いやられたのか。今思うとより納得がいかない。
コラッタの繁栄…そのためならば何人だろうと殺す。この弱い人間どもを。
ふいうちは文字通り不意打ちだ。受け身を取れるわけなく転ぶブラック・ジャック。
確かに肉体の強さを知った。だが此処でとどめを刺すのはスタンド能力である。
ヤングースに追い込まれたように、毒によって自分も死に追い込まれるがいい。
着地地点にスタンドを出し、着地と同時にぶっ放す。
USBの向きをしっかり正確にしたうえで挿すかのようにピッタリの場所に。
動かない的を狙うなど造作もない───
「あ。」
231
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:50:30 ID:swDK9iME0
何とも間抜けな声が戦場の路上へ響く。
同時に、コラッタは何が起きたか理解できない。
五メートル近くは離れているであろう店を背にした少女。
彼女に今、コラッタは『殴られた』のだ。黒い男と同じスタンドなのに。
同じ見た目で能力が異なる? そんなことがありえるのか。
能力はジッパーをものにつけて開閉できる能力。スタンドの間合いも一、二メートル。
先の少女の使い方と黒い男の立ち回りで、その概念を理解していた筈。
何が起きたかわからないまま、男と同じように吹き飛ばされる。
「…ぶっつけ本番で当たった。」
確かにその認識は間違ってはいない。
この使い方自体がある意味の反則技にあるからだ。
浅倉は何をしたのかと言うと自分の腕を取り外した。
腕を外すとスタンドの腕も外れると言うことに気付き、
ジッパーの歯をワイヤーとしてくっつけて飛ばしたのだ。
スティッキィ・フィンガーズの射程は近距離パワー型特有の短さだが、
これを使うことで四、五メートル近くの相手だろうと殴ることができる。
この応用はかなり特殊で、普通は考えつかないような能力だし当然説明も受けてない。
浅倉は腕を外した後に『なんとなくこういうことができそう』と思ってやってみたものだ。
ぶっつけ本番だし当たるかどうかも分からなかったが、ある意味スタンドの本質である、
できて当然と思うこと、嘗てスタンドの概念を説明した老婆の言葉…それが彼女にあった。
だがやはり本来の持ち主のように慣れ親しんだ操作をできているわけではない。
言ってしまえば生まれたての赤子であり、まだ動きを覚えていく段階である。
ブラック・ジャックからもある程度手ほどきを受けても、彼もなりたてのスタンド使い。
本来の持ち主であれば、この攻撃を当てた時点で相手をバラバラにして戦闘不能にできた。
詰めの甘さと言うよりは、そこまで頭は回っていないだけなのは浅倉らしいと言えばらしいが。
「腕を飛ばすとは、ロボットアニメか何かか?」
「スタンドの応用って、言いました。」
「…少し、君に学ぶべきかもしれないな。」
先ほど腕を取り外したときと同じセリフ。
意趣返しをしながら腕を元に戻していく彼女は、
少なくとも守らなければならない程ひ弱でもない雰囲気がある。
実際はそんなことないのだが、そう思わせてしまうオーラを持つ。
「!」
眩い光が夜の闇に広がっていく。
先ほど鼠を吹き飛ばした方向から広がる光に二人は警戒するように身構えた。
相手の能力を見極めれなかった。
でなければあのような不意打ちは受けない。
プライドも捨てきれなかった。
同じ苦しみを味わえとは、未練にまみれている。
だから人に追われたのだ。反省しなければならない。
小柄と言う有利を捨てる。成長しなければ我らの栄光は…ない!!
光が消えると、そこにコラッタの姿はない。
代わりにあったのは、コラッタの二倍はあるであろう巨躯。
丸みを帯びていてハムスターのような膨れた頬と言う肥満体。
色合いとか目つきに面影はあれど、もはやその姿は別物だ。
ポケモンには進化と言うものが存在する。
個体の中には条件を満たして新たな姿へと変貌していく。
もうこの殺し合いの舞台にコラッタと言う個体は存在しない。
今この場にいるのはコラッタの進化形態『ラッタ』なのだから。
232
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:51:05 ID:swDK9iME0
「まさか、鼠が変態したのか!?」
甲殻類や昆虫類で見受けられる変態。
それを哺乳類である鼠がするとは驚かされる。
ラッタは進化を終え、肥満体とは思えぬ機敏さで逃げる。
見た目はこんなではあるが、素早さは微量ながらコラッタよりも上。
いくら体躯がでかくなったと言えども、姿を見失えば厄介だ。
見た目が変わったことも何かできることが増えた可能性もある。
逃がすわけにはいかずブラック・ジャックが先行するように追うも、
「よっと。」
ジッパーを地面につけて、チャックを掴んで開閉の勢いで滑るように動く。
走るよりも圧倒的ローコストかつ速度も上で、あっという間に追い抜いてしまう。
すぐさまラッタも追い抜きながら回り込んで挟み撃ちの形へと持ち込むことに成功する。
ラッタは歩みを止めてスタンドを展開すると、巨躯のラッタに合わせてサイズも変動。
二倍以上の、小型の戦車のようなビッグサイズへと進化していた。
砲口から撃たれると思って先に地面に潜る形で逃げ込むと同時に放たれる弾丸。
弾丸、とは言うが先程とは違う。注射器レベルの、視認が容易なほどの巨大な弾丸だ。
直感なくしては避けれなかったであろう攻撃はギリギリ潜る形で回避。
回避できたことで難を逃れて、適当な壁に弾丸は当たるが…
「やはり成長しているッ!」
コンクリートでできてるであろう壁は、
まるで時を戻したかのように液状に崩れていく。
さっきまでの速度の緩やかさなら強引な縫合で済ませたが、
今度のはもう当たること自体が一歳許されない。一発の威力が段違いだ。
塩酸やニセクロハツの威力を超えた溶解能力は、当たれば即死だろう。
当たらないように立ち回りを徹底させなければならないかった。
背後から先程の浅倉と同じ要領で拳を飛ばすブラック・ジャック。
拳を飛ばすと言うのは初めてと言うことはあったかもしれないが、
既に一度受けた攻撃。学習したラッタには通用せず避けられてしまう。
(明らかに肥満体なのに動きが鈍くならないのか…!)
ポケモンの生態の多くは、進化すればすべての能力が向上する。
本来ならば衰える部分は全く衰えることがない、奇妙な生き物。
獣医ではなくとも興味はあるが、もうこれは人の手には負えない生物。
プッチからスタンドを得なければこんなことにならなかっただろうに。
怪物へと変わっていくラッタを哀れに思いながら、次の一手を模索する。
(もっとやばくなってるじゃん!!?)
謎の溶解する音が出て、
二人が気になって店から顔を出す誠。
見やれば透の姿はなければ、先程とは桁違いの溶解っぷり。
スタンドと言う超能力だけでも驚きなのに、本体は巨大な鼠。
もう透も放って逃げ出したい。そう思っていても逃げられない。
足がすくんでるのはあるが、何より怖いのはこの先にもいる可能性だ。
あんな怪物が一匹だなんて誰も言ってない。残り他の三十七名の中に、
未知なる存在がいたっておかしくないのだ。
逃げ場なんてありはしない。いつかは出会う。
どこへ逃げても同じだ。いつ来るか分からない恐怖が待つ。
「…鼠って確か…」
誰から聞いたか、何で見たかは忘れた。
だがあの巨大な鼠が鼠であるのなら。
誠は店の厨房へと足を踏み込んだ。
(当たらない!)
何度か同じ攻撃を試したが、明らかに予測されてる。
地面から浅倉が出て地面に引きずり込もうとしても、
これも既に見られたせいでまるで決められない。
先ほどと同じように二人が並び、ラッタと相対する。
「もうこの手もダメかな。」
「恐ろしい鼠だ。スタンドには知能を成長させる効果でもあるのか。」
「でも近づきすぎると…」
「あの砲台を避けることができ───」
会話を遮るような射撃音に二人は散開。
外れた弾丸は別の街路灯をじゅわりと溶かす。
二人とも避けてはいるが、時間が経てばたつほど不利になる。
なぜならば弾丸は毒『当たった』ではなく『触れたら』溶けるのだ。
どんなに弾丸を掴めるような素早いスタンドだろうと、掴むだけで毒が通る。
つまり弾丸を撃たれれば撃たれるほど、触れてはならない箇所が増えてしまう。
そうなったら逃げ場所はどんどん減っていくし、連携も取れなくなる。
二人ともこのことには気づいているが、同時にどうしようもなかった。
「こっちの応用は…!」
ジッパーに地面を取り付けるまでは同じだが、
これを相手まで伸ばして地面と強引に縫合させる。
233
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:52:36 ID:swDK9iME0
しかしこれもジャンプする形で回避と同時に浅倉へ向けての一撃。
地面につける暇はないので自分の身体にジッパーを付けて、
身体を縦真っ二つに分解する形でぎりぎり避けて背後の店を溶かす。
僅かにでも掠ってたらと思うと洒落にならないので、
戻った時の浅倉も冷や汗が見受けられる。
「本当に今のやばかったかも…」
「無理をするな! 危険と思ったら逃げろ!」
逃げろとは言われたが、
二人で何とか拮抗してる中見捨てれば間違いなく彼は死ぬ。
このまま放っておくわけにはいかなかった。
どうするべきか悩んでいると、
「この、やろぉ───!!」
やけくそな声色が商店街に轟く。
透の後方より少し離れた位置から、まさかの誠が姿を見せた。
突然の存在に三者ともに反応と同時に誠は空へと何かを複数投げる。
放物線を描きながら、ラッタの周囲へと飛んでいく。
「どっちでもいいからそれをスタンドで開けてくれ!!」
何の目的があるのか分からないが、
何か考えがあっての行動かもしれない。
彼を信じて浅倉は空の投擲物を狙う。
勿論それを見逃さないラッタは、彼女に向けて弾丸を放つ。
「私も忘れないでくれ。」
その前にブラック・ジャックが拳を飛ばし、それの回避を優先。
一瞬ではあったがその一瞬で浅倉の飛ばした拳がそれに当たる。
今度はジッパーを付けて、中に入っていたゼリーが空から降り注ぐ。
「!?」
降り注いだ瞬間、ラッタはとてつもない悲鳴を上げながら悶絶しだした。
何が起きたのか困惑していると、浅倉は投げたものもついでに回収する。
回収したのは───
「ネズミ駆除?」
誠が投げたのは所謂ネズミ忌避剤のゼリー。
ハッカやワサビ等、鼠が嫌うものが混ざったものだ。
あの後、多くの恐怖や不安に苛まれていた誠だが、
一周回って限界を迎えて、どこか線がぶちぎれてしまった。
(もう、二度も殺されてたまるか…!!)
このまま何もせず殺されるぐらいなら、いっそ殺す。
誤解されそうな思考だが、殺し合いに乗ってるとは違うのが救いか。
その結果誠は近くの店から今の状況で使えそうなものを探して、
今のアイテムを持ち込んでいた。
ラッタはねずみではあるが同時にポケモン。
劇的に通じるものではないが、アローラのラッタでは話が別。
通常のラッタと違い、アローラのラッタは嗅覚がかなり発達しているのだ。
食材の鮮度を見極めるためにコラッタやラッタを連れてる人もいる美食家ポケモンであり、
レストランの近くにラッタがいれば、その店は当たりと保証できる目安にすらなる程。
そのため優れた嗅覚が仇となって、刺激臭を嗅がされれば通常の鼠の比ではない。
しかもそれを撃ち落とした結果自分の全身の浴びたようなもので、
呼吸すら辛いものへと至らせていた。
「徹。これ先生に…」
「え?」
気を取られた隙にたまらず逃げ出すラッタ。
目指すは水辺。この状態では参加者を探す嗅覚は死んだも同然。
逃げ足が速いが、このラッタのとくせいはにげあし。
戦闘から離脱する場面では非常に強い性能を発揮する。
この状態では完全な離脱は難しいにしても、十分可能なレベルだ。
「クッ、やはり鼠か…!!」
一足先にジッパーによる追跡をするが、
距離は中々縮まらない状態でいる。
辛うじて終えてるだけあって、この移動方法は非常に便利だ。
彼女の方が余程使いこなせていることが伺えた。
「先生!」
浅倉の叫び声と共にラッタの周囲、
同時にブラック・ジャックの前方へと何かが転がる。
(ナイフ?)
コンクリートに音を響かせながら転がるのは折り畳みナイフ。
これも誠が適当に物色して持ってきたものだ。
誠は別段運動能力が高いわけではないため、
浅倉のスタンドに投げてもらっている。
「得意って言ってたよな、ダーツ投げ!」
234
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:56:03 ID:swDK9iME0
先ほどの何気ない会話での一言。
この状況を意図したわけではないが、
あの人なら活用できる気がして誠は持ってきていた。
尚、ドリー・ダガーは射程距離がCであるため流石に届かない。
「…礼を言わなくてはな。」
余りいい印象はなかった男だが、
此処まで活躍するとは思わなかった。
微笑を浮かべながらナイフを拾い上げ、いつものメスのように投げる。
重量は大分違うが、スタンドでの投擲なのでいつも以上に正確無比。
パワーの高さも相まって、弾丸のようなスピードでラッタを襲う。
逃げることに終始していたラッタはこれに気づけず、
悲痛な叫び声をあげながらナイフに貫かれた。
「先生、無事ですか。」
先にジッパーで移動しながら浅倉が追いつく。
脂肪の確認の為、彼はラッタを診ている。
「未知の生命体だっただけに、興味はあったんだがな。」
「どうにも、できませんよね。」
「ああ。」
息がないことを確認し、目を閉じさせる。
勝ったとはいえ、余り気分はよくない。
それが生きるためにしたことだとしても。
「しかし、まさか彼に助けられるとは思わなかったな。」
この戦いにおいてスタンドを一切使ってないのに、
一番頑張ったのは彼だと言わざるを得ない。
寧ろ使ってないだけに印象はより強いものだ。
手を振りながら追ってくる姿を二人で眺める。
「ネズミは倒せ───」
パリン。
「え?」
何かが割れる音が商店街に響く。
何かガラス片でも踏んだのかと足元を見るも何もない。
気のせいかと思っていたが、
「え、何…これ…」
振っていた右手に何か吹き出物ようなものができていた。
ボゴボゴと熱湯のような音を立てながら指が溶解。
瞬く間に全身が溶け出し、声にもならぬ絶叫を上げる。
「誠!」
異変に気付き、浅倉が走り出す。
腕の溶解程度なら自分と同じ程度でまだ間に合う。
腕を失うのは自分以上に辛いとしても、
ただ見殺しにすることはできなかった。
「近づくな! 反射が残っている上に周りを観ろ!」
ブラック・ジャックの怒声と共にスタンドで引き止められ、
彼に言われて周りに注意を向ければ、そこは地獄絵図だ。
飛んでいた鳥が吐瀉物をまき散らしながら落ちていき、
少し離れていた猫などの生物もドリー・ダガーの反射を受けて同じような症状で横たわる。
あのようなパニックを起こしている中、スタンドを止めるように言っても無理だ。
例えるならば嵐…災厄と言う雨風が吹き荒ぶかのような状況。
「もっと彼から距離を離れるんだ…射程距離の外までだ!
運よく『君には』当たらなかったみたいだが、離れないと巻き添えを喰らうぞッ!」
「だけど…!!」
強引にスタンドで距離を一気に取らされる。
見捨てろと言ってるようなもので反論もしたくなるが、
どこか意味深な言葉に疑問を持ち、彼を見やれば脂汗が酷い。
まさかと思って全身を見れば───ない…右手が。
周囲を見れば遠くのところに、既に骨すら溶け始めた右手があり、、
誰のものなのかは一目瞭然だ。
「一部反射でこの威力だ。
二発、三発受ければ命はもうない。」
「せ、先生、助け…」
距離を取る二人に必死に近づく誠。
だがそれは叶わず遠のいていくばかり。
無意識に。あたりにスタンドで殺戮をばらまくだけだ。
形は歪んでこそいたが前向きな行動ができた少年は、
今もう一度終わりを迎える。
235
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 02:59:55 ID:swDK9iME0
学校で孤立して、
関係を持った女の子からも罵られて距離を置かれて。
その上元恋人に惨殺されると言う顛末を迎えた彼に、
人が離れていく光景を見ながら消えるのはある意味因果応報でもあった───
騒がしかった。人気のない場所、何かあれば容易に気づく。
見つけた。透と堅気じゃない人と、ナイフを持った人の三人。
透に向かって歩いてたのと、射程距離にいた。
理由は…それだけ。すんなりと殺せた。
殺した感想も…その程度でしかない。
「見つけた…」
伊藤誠と言うウイルスの嵐は、災厄を見事にばらまいた。
自分以外の誰かに七割のウイルスをばらまいたおかげで、
ブラック・ジャックを含む多くの生物が被害に遭わされる。
だが三割は残る。殺人ウイルスが一割でもあればアウトだ。
何ら意味はなく、無差別にウイルスをばらまくだけに留まった。
彼が人としての形すらなくなった後、街は静けさを取り戻す。
周囲の生物が一気に死滅した中、声と共に足音が響いた。
頭の中で告げてくる。違う…彼女じゃない。そう現実逃避したくなる警鐘。
嘘だと言ってほしい。だって、
「…なんで?」
目の前で仲間を殺したのは。
余りにも無惨な方法で消し去ったのは。
傍で凶悪な傍に立つ者を従えているのは。
「樋口…?」
殺人と言う道に一歩踏み出してしまったのに、
何食わぬ顔でいた自分の友人だったのだから。
夜明けを迎えつつある空の下。
蟲毒の物語はまだ続く───
【コラッタ/ラッタ@ポケットモンスター サン・ムーン】 死亡
【伊藤誠@SchoolDays】 死亡
【残り 35/41】
【D-3/商店街/一日目・早朝】
【浅倉透@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
[状態]:疲労(中)、左手小指切断(ブラック・ジャックのスタンドによる切断、縫合、止血済み)、困惑
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[スタンド]:スティッキィ・フィンガーズ
[思考・状況]基本行動方針:生きて帰る。(noctchillのメンバー全員を含めて)
1:樋口…?
2:ブラック・ジャックと廃病院へ向かう。
3:noctchillの皆と合流したい。
[備考]
※参戦時期、基プロデュース時期は共通コミュ「ていうか、思い込んでた」中、
日誌に「旅に出ます」と書く前。
※「夢」だと思っていたスプラッタが現実であることを理解した。
名簿を確認して「noctchill」全員がいることを知りました。
※ブラック・ジャックに興味が湧いてます。
※小指がないため左手の握力が落ちてます。
【ブラック・ジャック@ブラック・ジャック】
[状態]:疲労(中)、右手欠損(自分のスタンドで縫合済み)、顔面打撲
[装備]:なし
[道具]:なし
[スタンド]:スティッキィ・フィンガーズ
[思考・状況]基本行動方針:負傷者を(契約書を書かせて)手当てしつつ、脱出を目指す。
1:彼女の知り合いか…?
2:医療器具類を取得するため、廃病院へ透と向かう。
3:キリコに出会ったら協力を持ちかける(互いに生きて帰るために)
[備考]
※参戦時期は原作からして曖昧なので具体的には決まっていません。
※名簿を確認して「キリコ」が会場にいることを知りました。
※透と同じ「スタンド」であることから、他にも同じ能力のスタンドが支給されている可能性もあると考慮してます。
※透については「アイドル」であることは知りましたが、特に感情は持ち合わせていません
※誠達とも異なる年代の人間であることには気づいていません。
※彼の死亡と同時に浅倉の指の止血も戻ります。
※お互いにジッパーを使った遠距離攻撃、
ジッパーを用いた高速移動、地面に潜るを覚えました
【樋口円香@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
[状態]:疲労(小)、静かな怒り(大)、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[スタンド]:パープル・ヘイズ・ディストーション ※ウイルス入りのカプセル11/12(使用箇所:右手『2』)
[思考・状況]基本行動方針:noctchill以外の参加者全員SK(すべからく狩りつくす)
1:見つけた…透。
2:noctchillの誰か(できたら浅倉)と合流したい。
3:次、英治に出会ったら問答無用に殺す。
4:noctchill以外の参加は躊躇なくSK…たとえ他のアイドルに出会っても。
備考
※サバイバーの影響を受け、行動と思考が過激になってます
※遠野英治の会話から「白井黒子」の名は深く印象に残ってます…SK対象だが
※「殺し合い」に一歩踏み出した
※ウイルス入りのカプセルの回復が一日かどうかは、
後続の書き手にお任せします
236
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 03:00:14 ID:swDK9iME0
※D-3商店街の一部のものが溶解してます。
商店街のトラサルディーの店内に溶解した伊藤誠の肉片、
冷凍庫に浅倉透の小指が入っています、
折り畳みナイフの刺さったラッタの死体、伊藤誠の服、
多数の生物の死骸、未開封のネズミ駆除用ゼリーが数個あります
※コラッタの死亡によってラットの毒を受けた上述の部分、
杉元佐一の毒の侵攻が止まるかどうかは後続の書き手にお任せします
237
:
◆EPyDv9DKJs
:2020/11/16(月) 03:00:59 ID:swDK9iME0
以上で『ポイゾニック・フィールド』投下終了です
話の都合上スタンドを魔改造してしまった形になりますので、
問題であれば破棄と言う扱いでお願いします
238
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/20(金) 21:57:27 ID:NXhjUrek0
一週間経ちましたので改めてエンリコ・プッチで予約したいと思います。
次の投下が第一回放送となります。
239
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/21(土) 00:43:23 ID:DzC79P/20
投下します。
240
:
第一回放送
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/21(土) 00:44:20 ID:DzC79P/20
午前八時。太陽が完全に上りきった会場内に、突如として音楽が流れ始めた。
イギリスの作曲家であるヘンデルが作曲したオラトリオ、メサイアのイントロだ。
イントロを奏で終わると、音楽は音声へと切り替わる。
その声は、ちょうど八時間前に参加者全員が聞いたことのあるものだった。
――エンリコ・プッチ。
そう、あのアルカイックスマイルを浮かべた、浅黒い肌の神父の声だ。
◆ ◆ ◆
――やあ、私だ。
エンリコ・プッチだ。
これより、第一回放送を始める。
まずは、このゲームで尊い犠牲となった者の名前を読み上げよう。
支給品の中にある名簿でも眺めながら聞いてくれたまえ。
伊藤誠
霍青娥
コラッタ
佐々木哲平
フローレンス・ナイチンゲール
鷲巣巌
以上の6名がゲーム開始からこの放送までに脱落したことになる。
――つまり、残りの生存者は35名ということだな。
オイオイ、ちょっと少なすぎるんじゃあないか?
このままじゃいつまでたっても終わらないぞ。
……まあいい、私たちも特にやることはないんだ。
のんびりと見物させてもらうことにするよ。
そして次に、禁止エリアの発表だが、「D-1」を指定することにする。
もし、D-1に誰かいるんだったら即座に退出することをおすすめする。
この放送終了後から十分以上滞在した場合は、八時間前に見たように頭が爆発してしまうからね。
それと最後に一つ、二つ――いや、やっぱり三つほど君たちにこの殺し合いを生き抜くためのヒントを伝えておこうか。
一つ。強さは弱さ、だ。異常なまでの強さを誇るものは、意外な弱点を抱えているという。
たとえば、紫外線に当たりたくなかったり、背中を見られるのを気にしたりと、ね。
二つ。もう既に気づいているものもいるだろうが、同じスタンドを支給されている参加者もいる。
これは決して私が無精して適当に選んだ――というわけではない。理由を探ってみるのも面白かもしれないな。
三つ。さきほどなんとなく天気予報を見たのだが、「にわか雨に注意」とのことだそうだ。
それでは、ここでこの放送を終わりにすることにしよう。
君たちの健闘を祈る。
◆ ◆ ◆
最後にもう一度メサイアのイントロが流れた後、神父による放送は終了した。
周囲には静寂が戻り、再び殺し合いが始まろうとしていた。
【一日目・午前八時】
【残り35人】
【禁止エリア:D-1】
241
:
◆Il3y9e1bmo
:2020/11/21(土) 00:44:38 ID:DzC79P/20
投下を終了します。
242
:
名無しさん
:2020/11/21(土) 10:20:13 ID:dccg76FM0
放送投下乙です
243
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:18:46 ID:IvUiE16s0
上田次郎、村田さん、左在存で予約します。
244
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:27:33 ID:IvUiE16s0
投下します。
245
:
煙か土か食い物 Vapor, Sand or Chocolate
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:28:42 ID:IvUiE16s0
「――それでは、ここでこの放送を終わりにすることにしよう。君たちの健闘を祈る」
放送終了直後。
朝日が差し込む校舎に、沈痛な面持ちの男が二人、向かい合っていた。
「上田さん……」
「ああ、まさかたった八時間で6人もの死者が出るとは……。
やはり君が言っていた『鬼』が一枚噛んでいると考えて問題ないだろう」
上田次郎は村田の口から『鬼』なる存在の情報を伝え聞いていた。
にわかには信じがたい話ではあったが、もう既に信じがたいことは二重三重に起こっている。
また、村田のような純朴な印象を持つ青年が自分を担ごうとはしておるまい。
妙なところで猜疑心を発揮するが、基本的にはお人好しの上田は、そう思って村田を信じることにした。
「ですが、これはチャンスでもあります。
恐らく、プッチの言っていた『意外な弱点』を持つ『紫外線に当たりたくない』ものというのは鬼のことでしょう。
太陽が出ている今なら、鬼たちはA-2の洋館やC-1の廃病院などの限られた場所にしかいられないはずです。
俺が、俺が無惨たちに殺された皆の敵を再び討つんだ……!!」
よく見ると、竹刀を堅く握った村田の手は僅かに震えていた。
「村田くん、そんなに――」
そんなに怖いのなら無理をすることはない、私とここに引きこもって助けを待とうじゃあないか、と喉まで出かかった上田は、村田の目の奥に灯る決意の炎に気づき、言葉を引っ込めた。
怖い。
そうだ、怖いに決まっている。
肉体を自在に変形させ、空気や衝撃を自在に操る化け物だ。
そんなヤツとその手下たちを一人で相手にしようとしているのだ。
怖くないわけがない。
村田は殺し合いに無理やり参加させられた自分の十倍、いや百倍は恐怖を感じているだろう。
だが、彼は闘う気でいる。恐怖を克服し、仲間たちの無念を晴らすために死地に赴こうとしているのだ。
人間は誰でも不安や恐怖を克服して安心を得るために生きる、と悪の帝王は言った。
安心を求めることこそ人間の目的だ、とも。
しかし、村田は違った。
安心だとか人間の目的だとか、そんな一言で片付くような簡単なものではない何かを持っていた。
それは大正時代の人間の気質からか、はたまた鬼殺隊の隊員に由来するものか。
本人にも分からないことではあったが、とにかく上田は村田の瞳に熱いものを感じたのだ。
「なぜベストを尽くさないのか! なぜベストを尽くさないのか! なぜベストを尽くさないのか!」
そして、気がつくと迷いを払いのけるように上田は叫んでいた。
「ちょっ、上田さん!?」
「――ゴホン、失礼。よし、分かった。私も同行しよう」
「お、俺の話聞いてました……? 鬼舞辻無惨と十二鬼月が二体ですよ!? 自殺行為です!!」
きっぱりと言い切った上田に村田が食ってかかる。
「ああ、だが君は一人でその自殺行為とやらを決行するつもりなんだろう?
『赤信号、みんなで渡れば怖くない』……なんて言うがね。君と多少なりとも関わったものとして、私には君についていく権利があるはずだ」
「う、上田さん……!」
「フッ、それに『鬼』だなんてどん超6のネタにぴったりだ。スタンド能力とやらと併せて、ぜひとも調べたいものだね」
「いや、そうじゃなくて……。その、『赤トンボなんちゃら』っていうたとえ、全然分からないです」
「ンググッ!!」
渾身の決め台詞をスカされ、上田は昨日から通算三度目のショックを受けた。
◆ ◆ ◆
246
:
煙か土か食い物 Vapor, Sand or Chocolate
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:29:16 ID:IvUiE16s0
二人が決意を固めてから十数分後。
校門前を集合場所と決め、用を足しにトイレへと行った上田をよそに、村田はデイパックに入っていた携帯用食料で空腹を満たすことにした。
すると、一匹の野良犬が舌を出しながら村田へと近づいてきた。
栄養失調気味なのか、少々痩せている。
「お、どうした? もしかして、これが欲しいのか?」
気のいい村田はオレンジ味のレーションを一欠片、その野良犬にあげることにした。
犬に向かって橙色のレーションを放り投げると、それを上手に空中でキャッチし、もぐもぐと食べ始めた。
犬はまだまだお腹が減っているのか、村田にすり寄ってくる。
「よ〜しよし、かわいいな。しょうがない。もう一切れだけ――」
「村田くん!!」
レーションを直接あげるため犬に近づこうとした村田の耳に、上田のこれまで聞いたことのないような叫び声が飛び込んできた。
思わず動きが止まる村田。見ると上田がものすごい形相でこちらに走ってくる。
すると、村田の頬を何か尖ったものがかすめた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!?」
それは砂で象られた槍であった。
尻もちをついてしまう村田に、上田が駆け寄る。
「村田くん、大丈夫か!?」
「ええ、なんとか……」
「気をつけろ、村田くん。私たちはスタンド攻撃を受けているッ!」
村田は竹刀を構え、周囲を見回す。
だが、他の参加者らしき影は一向に見えない。
「ヒュゥゥゥゥ……」
村田は目を閉じ、神経を研ぎ澄ませた。
鬼殺隊の剣士であれば全員が会得している身体超活性の呼吸法、全集中の呼吸である。
「そこだ!」
次の瞬間、村田は目をカッと見開き、地面に向かって竹刀を振り下ろした。
だが手応えはなく、砂煙がサァッと舞うだけである。
「くっ、逃したか……?」
「い、いや、違うぞ、村田くん。恐らく敵のスタンドは『砂』なんだ。さっき見たときも砂が槍に変化していた。
私の第六感が告げている。間違いない。特定の形を持たない、変幻自在のスタンドに襲われているんだッ!」
「そんな……。じゃあどうやって戦えっていうんですか!?」
「フフフ、いい質問だ! このままジリジリと移動して砂の無い場所へ行くのが一番だが、私という足手まといがいたんじゃあ無理だろう。
ここはあのスタンドを操っている本体を叩くのが一番だ! 問題としては、その本体が一向に見当たらないという点だが……」
上田がしたり顔で考察を語っている間にも、地面から次々と棘が生え、村田を襲う。
「くッ……! このッ! き、キリがない」
「む、そういえばこのレーション、『オレンジ味』か……?」
竹刀を構え、必死の表情の村田を他所に、上田はのんきにも地面に転がっていたレーションの空き箱を拾い上げた。
「そうなんですよー。って、それがどうしたんですか! もしかして上田さんも食べたいんですか!?
さっき野良犬が欲しがってたんでほとんどあげちゃいましたよ!」
「むむっ、犬にこのレーションをあげたのかッ!? それはおかしいぞ、村田くん。
このレーションは日持ちをよくするために少々柑橘の匂いがキツい。犬は刺激臭を嫌ってこの手のものは食べないことがほとんどなんだがなあ……」
「ええ……じゃあその犬が実は本物の犬じゃなくて、犬の姿に擬態した参加者だとでもいうんですか? そんな馬鹿なこと……」
「――チッ、今度こそ完璧に化けたと思ったのに、まさかオレンジの匂いがもとで正体がバレちまうとはなあ」
そんなことあるわけないよなあ――と自らの言葉を否定しようとした村田と上田は、声のした方を見て口をつぐんだ。
そこにいたのは、年端も行かない一人の少女だ。不敵な笑みを浮かべたまま木に寄りかかり、オレンジ味のレーションを頬張っている。
「それじゃあ例によってまたまた自己紹介しておこうか。俺は左在存。自由奔放の暗示を持つ『愚者』のスタンドを操る殺人者(マーダー)さ」
「……っ! そっちから姿を現すとはな。悪いがこれ以上俺たちを襲うというのなら、斬らせてもらう……!」
「村田くんとやら。俺を斬るのは至極当然、非常に結構だが、それよりもさっきからお前が巻き上げた土煙の量が異常に多いとは思わねえか?」
「まさか……!」
上田が何かに気づき、口元を歪める。
「おっと、そっちのセンセイは気づいたみたいだな。その土煙には俺のザ・フールが相当量含まれてんだよ。
あんたがそれなりの『剣士』だっていうのは分かったから、『犬歯』の俺は老獪――否、『狼』獪にいかせてもらうさ」
左在存が開いていた手をグッと握る。
それと同時に、村田と上田の周囲を渦巻いていた砂が二人の身体にまとわり付き、身動きもできないほど強く締めつけた。
「ぐあッ!」
たまらず苦痛に声を漏らす上田。
247
:
煙か土か食い物 Vapor, Sand or Chocolate
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:30:42 ID:IvUiE16s0
「さっきも言ったように、ザ・フールは『自由奔放』の暗示を持つ。よって姿かたちも自由自在なんだよ。
さて、前回は遊びすぎてヤバくなりかけたからな。お前ら、知ってることを話せ。
他の参加者やスタンドの情報、このゲームそのものの情報でもいい。そうすればできるだけ苦しまずに殺してやるぜ?」
「念のため聞きますが、上田さんのスタンドって、この状況を打破できるものではないですよね……?」
「ああ、すまないが私のスタンドは『手』を使う。手が動かせない状態では全くもって役に立たない。村田くん、君はどうだ?」
「俺のスタンドは『水』を使うんです。それほど強力なものでもないですし……」
「……ふむ」
上田は何かに納得したような顔をした。
「内緒話は済んだか? それじゃあどっちが話す? どっちも話さないなら犬死だが、話すんだったら殺したあとに弔いくらいはしてやるよ」
「な…………トを…………い……か」
上田がうつむいたまま何かを呟いた。
「ん?」
左在存は上田の呟きを聞き取ろうと、彼に近づく。
「――なぜベストを尽くさないのか! なぜベストを尽くさないのか! なぜベストを尽くさないのか! うおおおおおおおおおおお!!」
上田が突如大声を張り上げた。そして、上田の奇行はそれだけに留まらなかった。なんと、砂の縄に縛られている状態のまま、ズボンとパンツを下ろしたのだ。
そこには上田自慢の、いわゆる『大きい根っこ』がぶら下がっていた。そして、その『根っこ』は徐々に屹立を始めたのである。
「ひ、ひゃっ……!?」
これにはさすがの左在存も面食らった。
年相応の声を上げながら両手で顔を覆い隠し、思わず目をそらしてしまう。
「村田くん、私は!! さっき!! トイレに!! 行った!!」
「は、はい」
今起きている状況が理解できず、とりあえず村田は生返事をした。
「だが、出なかった。これはよくあることだ。異常な状況に置かれた人間は緊張で排尿が上手く行かなくなる」
「はあ……」
「よって、今『出す』!」
上田はフンッと腰に力を入れた。すると根っこからおびただしい量の『水』が発射される。
「村田くん、使いたまえ」
「は、はいッ! ゲブ神ッ!」
阿吽の呼吸で村田がスタンドを出現させた。
村田のスタンド、ゲブ神は自在に形の変化する水のスタンドで、基本は鋭い爪を持つ腕のような姿をしている。
特筆すべきはその切れ味だろう。人の手首や車のタイヤを瞬く間に切断するその破壊力は、あの空条承太郎をも苦しめた。
そして今、上田の供給した水によって、ゲブ神が二人の身体を縛っていた砂の縄を断ち切ったのだ。
「く、クソッ!」
左在存はそう言うが早いか、再びスタンドを出現させる。
今度は砂煙などではない、後ろ足が車輪状になった犬のヴィジョンだ。
すると左在存は、足元に妙な模様が広がっていることに気づいた。
例えるならマス目のような、数学の授業で使う座標の図のような模様だ。
それが上田の足元から放射状に広がっているのだ。
「なんだ、こりゃ?」
「それは私のスタンド、チョコレイト・ディスコだ。能力は――」
そう言いながら、上田は手元のキーボードを操作した。
ガシャンという音とともに、ザ・フールが左在存から数メートル離れた場所に『移動させられていた』。
「砂煙では小さすぎて移動させられなかったが、そのくらいのサイズなら可能なようだ」
「……砂を断ち切る水のスタンドに、位置を強制的に変更するスタンドか」
「フッ、悪いことは言わない。もうやめるんだ。私たちだって君を殺したいわけじゃあない」
上田は格好をつけて、高らかにそう宣言した。
「……へっ、甘いな。仮に俺がここで殺しをやめたとして、これ以降お前らを襲わない保証はどこにある?
犬らしく鎖にでも繋いで連れて歩くか? それとも禁止エリアに放り込むか?
これはなあ、もうそういう段階の話じゃねえんだ。生きるか死ぬかの闘いなんだよ!」
ザ・フールが獣の凶暴さそのままに唸り声を上げ、二人に飛びかかった。
「水の呼吸、壱ノ型」
村田が両腕を交差させ、構えに入る。
「――水面斬り」
水平に竹刀を振るい、発生した斬撃はザ・フールごと左在存を切り裂いた。
「かはっ……」
248
:
煙か土か食い物 Vapor, Sand or Chocolate
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:31:41 ID:IvUiE16s0
ザ・フールは消え、左在存はそのままうつ伏せに倒れる。
「む、村田くん……」
「大丈夫です。ちゃんと峰打ちにしました。この技を人間に使ったのは初めてだけど、たぶん生きてるはずです」
「ふう、良かった」
上田は気が抜けたように息を吐くと、その場に座り込んだ。
「上田さん、とりあえずこの子は起きても暴れられないように縛っておきますね」
「ああ、それがいいかもしれない」
上田は空を仰いだ。西の空には雲が揺らめいている。
「しかし、どうしようなあ。確かにその子が言ったようにこのままっていう訳にもいかないしなあ」
「それは追々考えましょう。俺は……疲れました」
そう言って村田も地面に転がる。
しかし、二人は気づいていなかった。
二人の背後で再び砂のスタンドが蠢き始めていたのだ。
再構築されたザ・フールは、ギャオオーッと吠え、そしてそのまま一直線に突進して『左在存の身体』を貫いた。
「なっ!?」
村田も上田もあっけにとられ、左在存から上がる血飛沫を呆然と眺めている。
「わりいな……。俺はもうこのクソみたいなゲームからは降りさせてもらうぜ……。負けの決まったギャンブルなんざ乗るに値しねえ……。
へっ、なんだよお前ら、揃って間抜け面しやがって。俺はなあ、本当の自由が欲しかったんだ……。今更死ぬのなんか怖くねえよ」
口から血泡を吹きながら左在存は生きることを否定する。
必死に絞り出すように。誰かにそれは違うと言って欲しそうに。
そうして左在存はもう一、二言憎まれ口を叩こうとして、そのまま事切れた。
【左在存@悲鳴伝】 死亡
【残り 34/41】
【C-6/学校/一日目・午前】
【上田次郎@TRICK】
[状態]:疲労(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[スタンド]:チョコレイト・ディスコ
[思考・状況]基本行動方針:なぜベストを尽くさないのか!
1:とりあえず村田について行く
2:村田とともに鬼を倒す
[備考]
複数の時代から参加者が集められていることに気づきました。
【村田@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(中)、精神消耗(小)
[装備]:竹刀
[道具]:基本支給品(水のみ多め)
[スタンド]:ゲブ神
[思考・状況]基本行動方針:鬼を倒す
1:鬼を探す
2:一人だと心細いので他の参加者とも協力したい
[備考]
名簿に鬼舞辻無惨の名が記されていることを知りました。
複数の時代から参加者が集められていることに気づきました。
249
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/04/08(木) 14:32:00 ID:IvUiE16s0
投下を終了します。
250
:
名無しさん
:2021/04/08(木) 18:19:19 ID:qVguZsAc0
投下乙です
上田さんも村田さんもかっこよかった
ゲブ神の発動方法にはクソ笑ったけどw
251
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:11:11 ID:fTLcuUN.0
白井黒子、ドン・観音寺で予約します。
252
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:16:17 ID:fTLcuUN.0
投下します。
253
:
正義執行中脱走進行中
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:17:18 ID:fTLcuUN.0
赤錆の臭いが漂う廃工場。
その中心の資材がずさんに積み重なった辺りで二人の男女が僅かばかりの睡眠をとっていた。
一人は花も恥じらう女子中学生にして、学園都市の風紀委員(ジャッジメント)である白井黒子。
もう一人は、お茶の間で話題沸騰中の霊能力者にして、英雄(ヒーロー)であるドン・観音寺。
年頃の少女が中年男と同衾するとはけしからん!などと考える方もおられるかもしれないが、二人とも予想外の事態の連続で疲れていたのである。
民間人であるドン・観音寺の前では気丈に振る舞っていた黒子も、わけの分からぬ内に見知らぬ場所に拉致され、殺し合いを強制されたのではずっと起きていろと言う方が無理であろう。
ドン・観音寺はドン・観音寺で、もう年齢のせいで寝付きが早くなってしまっていたので、「見張りは私の務めだよ、マイ2番弟子」などと言いつつ早くも夢の世界へランデブーしてしまっていた。
そうして朝まで二人ともすっかり起きることはなかったのだが、その間に殺し合いに乗った、いわゆるマーダーと呼ばれる存在に見つかることがなかったのは幸運であったといえよう。
朝日が差し込み、鳥たちがチュンチュンと鳴き始めるに至っても白井黒子とドン・観音寺は目を覚まさなかった。
すると、誰かが観音寺の口ひげをグイグイと引っ張るではないか。さすがに痛い。
観音寺はゴフっと咳き込み、そのまま寝台代わりにしていた鉄骨からもんどり打って転がり落ちた。
「ンンン〜?」
辺りを見回す観音寺。すると目の前をコバエのようなカナブンのようなものが飛び回っている。
おやっと思い、老眼鏡の役目も果たす観音寺・グラサンをかけてみると、それは己に支給されたスタンド『セックス・ピストルズ』であった。
「早ク起キロッ! アンタ、死ニテーノカッ!」
ピストルズは観音寺の周りを飛び回りながら何やら必死の様子である。
「ソッチノJCモ起コセッ! ココハ既ニ『禁止エリア』ダゾッ!」
「近視……? ンなァーにを言ってるんだマイ・フェアリー! 私は全くもって老眼なんかじゃあ無いぞ」
「チッゲェーヨ! サッキノ放送デ、コノ『D-1』ガ禁止エリアニ指定サレタンダッ! 早ク出ナイト頭ガ爆発スルゼーッ!」
「ななな、なんと! それは早く言って欲しかったぞ……!」
観音寺の脳裏に、つい8時間前に見た映像が再生される。
「おおおおお、起きるんだ、マイ2番弟子ィィイ!」
観音寺は隣でのんきに寝息をたてている黒子を起こそうとした。
「ん〜? 何ですの〜?」
だが、起きない。寝言は言うが、起きようとはしないのだ。
仕方がないので観音寺は黒子を抱え、必死でD-1エリアから脱出した。
254
:
正義執行中脱走進行中
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:17:53 ID:fTLcuUN.0
◆ ◆ ◆
「……ゼーハ、ゼーゼーハァハァ」
観音寺(と黒子)はとりあえず隣のC-1に移動し、頭と足を休めることにした。
「はへ? ここはどこですの? 私は誰……って私は白井黒子でしたわ……」
そこら辺の石に腰掛けて息を切らせている観音寺をよそに、今頃目を覚ました黒子。
「ンン〜、まずは状況を整理しようか。頼むぞ、マイ・フェアリー」
「何デ、俺タチニ説明サセヨウトスルンダヨーッ!」
「何でって、私たちはその放送とやらを聞けてないからな……」
「グヌヌヌ、ショーガネェナァ〜!」
そんなこんなでピストルズから放送の大まかな説明を受けた二人は、すっかり言葉を失ってしまった。
「まさか、この短時間で6人もの方が亡くなるとは、予想外でしたわ……」
黒子は隣で何やら考え込んでいる観音寺をちらりと見た。
(特に観音寺さんへの精神的負担が心配ですわね……。殺し合いを止められなかったことに落ち込んでいなければいいのですが……)
「フッ、心配は無用だ。マイ2番弟子ッ!」
観音寺は黒子の心を見透かしたかのように答える。
「私は決してこの戦いから逃げない。なぜなら、私はヒーローで、私の活躍を待っている子どもたちがいるのだからな」
「その意気ですわ! さあ、観音寺さん。現在、私たちがいるのがC-1でしたわね? 灯台のあるA-1まで、北に直進ですわ! さあ、行きましょう!」
「ああっ!」
観音寺は無理がたたってふらつく足腰に鞭打って歩き始めた。
255
:
正義執行中脱走進行中
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:22:09 ID:fTLcuUN.0
灯台へは意外と早くに到着した。特に目ぼしいものは見つからなかったが。
「ふー、マイ2番弟子。若いのは結構だが、もう少し、こう何というか、手心というか……」
C-1からA-1まで北におよそ数キロ。観音寺にはかなり堪える距離だ。
「ソウダソウダ! 中年ヲ労レ!」
ピストルズも口々に観音寺に味方する。
そんな中、ピストルズの中で一番お調子者なNo.2が気になることを呟いた。
「観音寺ハ、ミスタヨリモ体力ガ無インダカラヨォーッ!」
「ん? 『ミスタ』? 誰ですの、それ?」
「バッ、馬鹿ッ! No.2ッ!」
No.2は「しまった」というような顔をして、口をつぐんだ。
「イ、イヤ、ソレハ……」
「参加者名簿には『ミスタ』なんて名前は無いようですけど……?」
「私も気になるな。マイ・フェアリーズ、ぜひ教えてくれたまえ」
黒子と観音寺がピストルズに詰め寄る。
「ソレハ言エネエヨォ……。言ッタラ、プッチノ糞ヤロー共ニミスタガ本当ニ殺サレチマウカラヨォーッ!」
「『プッチ』!? あなたたち、何か重要なことを知っていますのね!? 今すぐ話しなさい!!」
黒子は両手でピストルズを握りしめ、自供を促す。
「グギギギ! イ、イヤ、絶対ニ言ワネーッ!」
短気な暴れん坊であるNo.3が手の中でもがき、無謀にも反抗の姿勢を見せる。
「言いなさい! さもなくば、本当に潰してしまいますわよ」
黒子の目つきが鋭くなっていく。風紀委員(ジャッジメント)の本領発揮だ。
「俺タチハ、アンタタチニ不利ナコトハ絶対ニシネエヨォ〜ッ! 信ジテクレヨォ〜! 今ハ話セネエンダヨォ〜ッ!」
ピストルズは必死に懇願するが、黒子はその手を離そうとはしない。
「ま、まあまあ、マイ2番弟子。今は言いたくないということなら、後で話してもらえればいいんじゃあないか……?」
見かねた観音寺が仲裁に入った。
「いいえ、これは私たち、ひいては参加者全員の命に関わる情報ですわ! ふんじばってでも聞き出すべきです!」
だが、黒子も譲ろうとはしない。
「これ以上このスタンドたちを庇い立てするようなら、本体である観音寺さんも要注意人物と見なします」
「お、おお……」
あまりの剣幕に言葉を失う観音寺。
二人と6体の間に生まれた僅かな歪み。
ピストルズは何を知っているのか、そしてドン・観音寺と白井黒子のコンビの行く末は……?
ここは大蛇の胃袋の中。白蛇の白蛇による白蛇のための催しは、まだ始まったばかりだ。
←To Be Continued
【A-1/灯台/一日目・午前】
【ドン・観音寺@BLEACH】
[状態]:疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[スタンド]:セックス・ピストルズ
[思考・状況]基本行動方針:この殺し合いにおいて「ドン・観音寺」であり続ける。
1:黒子と灯台→洋館→謎の施設の順を目指して探索する。
2:うむぅ……マイ2番弟子と一緒にボハハハハ――――するにはどうすれば……。
3:黒子の知り合い(上条と佐天)と合流できたらする。
[備考]
黒子とのやり取りで「ドッキリ」ではないことを理解しました。
黒子のテレポーターを体験して超能力の存在を信じました。
黒子との共闘を結びました。それによって呼び名を変えました。(ツインテール・ガール→マイ2番弟子)
観音寺弾を使用すると体力の消耗をします。
ピストルズが何らかの情報を知っていることに気づきました。(詳細については後続の書き手にお任せします)
【白井黒子@とあるシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:小さな歯車を何個か
[道具]:基本支給品
[スタンド]:ボクのリズムを聴いてくれ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止め、脱出したい。
1:ピストルズから情報を聞き出す。
2:ドン・観音寺と灯台→洋館→謎の施設を目指して探索する。
3:上条、佐天と合流できたらしたい。
4:2番弟子!?というか1番弟子は誰ですの〜〜〜〜!!
[備考]
ドン・観音寺は自覚のない超能力者ではないかと考察。
ドン・観音寺の言うことは「嘘」ではないと思うが、やはり霊能力については半信半疑。
ドン・観音寺より「2番弟子」の称号を得ました。
ピストルズが何らかの情報を知っていることに気づきました。(詳細については後続の書き手にお任せします)
256
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/05/20(木) 01:22:33 ID:fTLcuUN.0
投下を終了します。
257
:
名無しさん
:2021/05/21(金) 09:56:23 ID:IYm4m74o0
投下乙です
自立型スタンドを支給されたのが幸いでしたね
ゆっくり休めたしw、情報入手の機会ができたりと
観音寺と黒子の日常込みの人間模様と、事件解決への意気込みの違いからくる波乱が緩急ついてて読み応えがありました
小さな謎が明かされ新たな謎が浮かぶ展開良しです
ピストルズ(ミスタ)と観音寺の命運はプッチの器次第か……駄目そう
258
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:10:34 ID:OgvesxOY0
めっちゃ長い間放置しててすみませんでした。
ジョジョ6部も始まったので戻ってきました。
これからは半年に1回とは言わずとも2ヶ月に1回は投下したい……。
遠野英治、佐天涙子、チビ太で予約します。
259
:
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:19:03 ID:OgvesxOY0
投下します。
260
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:22:17 ID:OgvesxOY0
ただ執拗に 飾り立てる
切り落とされると知りながら
ただ執拗に 磨き上げる
切り落とされると知りながら
恐ろしいのだ 恐ろしいのだ
切り落とされる その時が
BLEACH29 THE SLASHING OPERA(抜粋)
261
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:22:39 ID:OgvesxOY0
◆ ◆ ◆
「は、はぁっ……! はぁっ……! ぜーっ、ぜーっ!」
佐天涙子は当て所のない逃避行を続けていた。
迷路のように続く商店街のモールを右へ左へ。
逃げども逃げども佐天の心は休まらなかった。
それもこれも、安藤のファックサインを目にしたのが全ての始まりだ。
勘違いから始まった疑心暗鬼は夏の入道雲のように膨らみ、みるみる佐天の心を黒く染めていた。
「疲れた……」
佐天は一息つくべく自販機近くの薄汚れたベンチにより掛かると、デイパックに入っていた時計で時刻を確認した。
今は午前六時前だ。
つまり、安藤と鷲巣の戦闘を目撃してから三時間以上が経過している計算になる。
「え、あたし、三時間も走ってたの!? いやいやいや、これ女子中学生の体力じゃないでしょ……」
自分自身に軽くツッコミを入れつつも、胸に手を当てて息を整える。
「すぅー! はぁーっ! すぅー! はぁー! なんか落ち着いてきた。これってラマーズ法?
なんかそういうのあったよね。腹式呼吸で。っていうかさっきのはなんかの見間違いじゃないかな!
うんうん。あたしみたいなか弱いJCをいきなり殺し合わせるなんて……ね? 絶対見間違いだよ。これ、ドッキリでしょ。ドッキリ。
どっかにカメラがさ、こういうゴミ山みたいなところなんかに仕込んであったりして――――ふにゃッ!!」
ゴミの山の中に仕込みカメラが隠れていないかと無造作に手を突っ込んだ佐天の肌に、不気味な感触が走る。
恐る恐る手を引き抜いて確認してみると、予想に違わず人のものと思われる毛髪であった。
しかも、長い。長いだけならまあいい。やたらとツヤツヤしているのだ。
ゴキブリを思わせる光沢に佐天は息をつまらせ、それらを手からほどこうと乱暴に振り回した。
しかし、ほどけない。
ゴミ山の奥で髪が絡まっているのか、はたまたその髪の持ち主が埋まっているのか――。
佐天は遺棄死体という可能性を頭から無理やり締め出し、その髪を指で慎重に引き剥がそうとした。
すると、なんとその髪が意思を持っているかのようにウニョウニョと蠢き出したではないか。
「ぎゃああああああああああ!!」
ここまで予想外の事態に連続で見舞われてきた佐天はパニックになって、髪を手に付けたまま振り返り、これまで来た道を逆にダッシュし始めた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
その勢いでゴミ山の中の髪とその持ち主(?)も引っ張られ、困惑するような声とともに雨後の筍のようにニョキッと煮玉子のような頭頂部が姿を表した。
そう、それは、上条当麻に殴り飛ばされてゴミ山にダイブし、そのまま気を失っていたチビ太である。
「なっ、なにしやがんでえ!? バーロー、こんちきしょー!」
状況が飲み込めないまま江戸っ子口調で罵り出すチビ太。
必死でもがきながらゴミ山から這い出ると、そこに立っていたのは――。
「て、天使だ……!」
「ふぇ!?」
21歳のおでん屋は、女子中学生に一目惚れをした。
262
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:23:09 ID:OgvesxOY0
◆ ◆ ◆
「へへへ! 涙子ちゃんよぉ、どんどん食べてくれよな!」
「いふぁれふぁくてもふぃまふよ!!(言われなくてもしますよ!!)」
チビ太は例の屋台で佐天におでんを振る舞っていた。
「いやー、涙子ちゃんは食べっぷりが良いからおいらも見てて気持ちがいいぜ」
チビ太はすっかり鼻の下を伸ばし、おでんを頬張る佐天を見つめる。
「ふぇ、ふぃふぃふぁふぁ、なんふぇふぁんなふぉこにふまってふぁんでふぁ?(ってか、チビ太さん、なんであんなところに埋まってたんですか?)」
それを知ってか知らずか、佐天は微妙に話題をそらした。
「ん……? そりゃまあ、海よりも深く山よりも高いワケがあるんだけどよぉ……」
ゴニョゴニョと誤魔化そうとするチビ太。
それもそのはず、惚れた女の前で自分が倒された話をしたい男がいるわけがない。
「つーか、マジで助かったぜ、こんちくしょー! おいら、あのゴミ山から脱出するためにラブ・デラックスを何度も伸ばしたんだけどよ――」
「あ、大根おかわり下さい」
「はいよ、大根いっちょう! ――まあ、なんつーのかな、こういうのって……。巡り合わせみてーなものを感じちまうんだ」
チビ太は大根を差し出しながらそう言うと、照れ隠しで鼻の下をこすった。
「へえ。君、さてはその女の子に恋してるんですね」
「へっへっへ! いきなりそんなこと言うんじゃねーよ! こんちきしょー!」
おでんの湯気でよく見えないが、いつの間にかもう一人客が来たようだ。
「いいじゃないですか。俺も昔、恋人がいましてねぇ。美しい人だったんだけど、とある船の沈没事故で見殺しにされてしまったんですよ」
「お、おう……」
しだいにその男の声が狂気を帯び始める。
そういう湿っぽい話はヨソでやれってんだ、バーロー! チビ太は内心毒づいた。
「ああ、螢子。苦しかっただろうなあ、辛かっただろうなあ……。だから、この娘にも螢子と同じ苦しみを味わわせるんだ……!」
チビ太が湯気を払い、客席の方を見るとそこにいたのはサバイバルナイフを佐天の首元に押し当てている青年の姿だった。
「おっと、アンタのスタンドは把握しているぞ。髪を操る能力らしいじゃないか。髪が輝いて見えるぜ。
だが、妙な真似をしたら一瞬でこの娘はあの世行きだ。慎重に行動するんだな」
「くっ、テメェ、男の風上にも置けねえ! その娘を離しやがれってんだ! てやんでえ、バーロー、こんちきしょー!」
「だったらアンタが死になよ」
男――遠野英治は冷酷に言い放つ。
「は? 何言ってんだ、テメェおかしいのかよ――」
「聞こえなかったのか? この娘を助けたければ自害しろ。そうしなければ俺がこの娘を殺す」
遠野の背後に小型の円盤のようなヴィジョンがちらり、と光り、消えた。
チビ太はあまりのことに返す言葉もない。
佐天は瞳孔を開いたまま硬直し、かすかに震えている。精神が限界を迎えそうなのだ。
「ああ、そうだ。二つ、聞いておかないといけないことがあったんだ。良かったら答えてくれよ」
遠野は上ずった声で二人に問いかける。
「な、なんだってんだよ……」
「一つ、『白井黒子』という参加者を知らないか?」
「し、らい……?」
その名前に佐天が反応を見せる。
「なんだ、S・Kを知っているのか。今いる場所は? 年齢は? どんなスタンドを持っている?」
「そ、それを知ってどうするつもりなんですか……?」
佐天は精一杯の気力を以って遠野を睨み返す。
「殺す」
遠野はあっさりとそう言い返した。
「なっ、なんでっ……! あなた、白井さんと知り合いなの……?」
「いや? それと俺が白井黒子を殺したいのと、なんの関係があるんだ?」
(こ、こいつ、やべえ……!)
チビ太は改めてこの遠野英治という男の危険性を認識した。
「ああ、そうだ。もう一つ。『カルネアデスの板』って知ってるか?」
「か、カル……? し、知らねえよ! バーロー!」
元ホームレスのチビ太はそういう知識に疎かった。フランス帰りと嘯いていたイヤミなら知っていただろうが。
263
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:23:20 ID:OgvesxOY0
「簡単に説明すると、自分も危険な時に人を見殺しにするのは罪に当たるか、どうか? という問題のことさ」
「そんなの簡単に出せる答えのわけねーだろ!」
「君は?」
はあ、とため息をつくと遠野は佐天の方を見た。
「……こ、言葉を返すようだけど、あなたがその状況になったらどうするつもりなのよ」
佐天は震える声で必死に頭を回転させる。
「ふん、質問に質問で返すなよ。質問文に対して質問文で答えるとテスト0点なの知ってるか?
まあでも、俺だったら考えるなぁ……。二人とも助かる方法を」
264
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:23:36 ID:OgvesxOY0
◆ ◆ ◆
依然として膠着状態が続いているさなか、昇ってきた陽が三人を照らす。
「早く決めなよ、じれったいなあ」
遠野は薄ら笑いを浮かべながらナイフを佐天の首筋に突き立てた。
「……る………………」
「ん? 何だって?」
「お、おいらが身代わりになったら、本当に涙子ちゃんは助けてくれるんだなッ!?」
チビ太は絞り出すような声をあげる。
「ああ、もちろん。絶対に誓うさ」
対する遠野は至って冷静だ。
まるで『母親とゲームは一日一時間の約束をした子供』のように何度も「誓う」と繰り返す。
「そうだなあ。俺はこのナイフを手放したくないし、自分のスタンドでドテッ腹貫いて死ぬっていうのはどうだい?」
「だめッ!! この人はチビ太さんを死なせたらその後にあたしも殺す気よ!」
肉体と精神が摩耗しきった佐天は、かすれる声でチビ太に呼びかける。
「へへっ、心配すんなよ。おいらだって江戸っ子の端くれさ。惚れた女の一人くらい生き残らせてみせらあ」
チビ太は佐天にニッと笑いかけると、自分の顔を見せないように後ろを向いた。
「もう一度言うが、妙な真似をしたらその瞬間にこの娘の命は――」
「野暮なこというんじゃねぇッ!」
チビ太は鳴りそうになる奥歯を噛み締めながら、必死で見得を切る。
「あ、男一人。生まれたときも一人なら、死ぬときも一人よ!」
そう言うが早いか、チビ太は自分の腹部にスタンドを突進させた。
小柄な身体が宙に舞うと、商店の二階の壁に激突してそのまま動かなくなった。
【チビ太@おそ松さん】 死亡
【残り 33/41】
「く、クククククククククククク、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
遠野は壊れたラジカセのように笑い続けた。
そして、はた、と笑うのを止め、輝きの一切無いがらんどうな目で佐天を見た。
「じゃあ、死のうか」
265
:
悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:23:54 ID:OgvesxOY0
◆ ◆ ◆
「君はあの神父の放送を聞いたか聞いていないか知らないが、今までにもう6人の参加者が死んでいるんだぜ?
俺もさっさと行動しないと、他の参加者に殺されちまう。俺の情報を持ってる君を生かして帰す理由なんて最初から無いんだよ」
遠野はさも当然のことのようにそう言った。
「そう、なんだ。……でも、死ぬのはあたしじゃなくて、あなただから」
佐天は漆黒の意志で遠野を直視する。
遠野はその姿に思わずゾッと恐怖を覚えた。
「なっ、まさか長く接触したせいで俺のサバイバーの効果が及んでしまったのか……?」
「『サバイバー』……。サバイバーっていうのね、あなたのスタンド……」
もはや佐天の声に恐怖はなかった。
ただ、目の前の男を殺すという純粋な殺意のみがそこにあった。
「ふっ、ふざけるな! 今、優位を握っているのはこの俺だ! この俺が、俺こそが悲恋湖のジェイソンなんだよッ!」
「サバイバー……。あたしが手に入れた『4枚目』のスタンド……」
激昂した遠野はサバイバルナイフを振り上げた。
だが、それよりも佐天の行動のほうが速かった。
「そしてこれが『1枚目』のスタンド」
佐天が『完成した』折り紙を掲げ、「スモールフェイセズ」と叫ぶと、その背後に深紅の王が姿を現した。
次の瞬間、まるで時間を消し飛ばしたかのように佐天は遠野の背後に回り込んでいた。
「これが『2枚目』のスタンド」
今度は四本の脚に多眼の不気味なスタンドが姿を現す。
佐天が遠野に触れると、遠野の全身から一気に力が抜けていく。
「な、なんだよ! これは……!!」
「――そして、『3枚目』のスタンド」
するすると佐天の髪が伸びると、遠野の身体を万力のような力で締め上げた。
「あなたは生かしてはいけない……。だから、殺す」
遠野の全身の骨が砕け、呼吸をすることもままならなくなった。
「……さようなら」
佐天がグッと力を込めると、ゴキッという嫌な音とともに遠野の首はへし折れた。
【遠英治@金田一少年の事件簿】 死亡
【残り 32/41】
◆ ◆ ◆
「これでよし……っと。上条さん、白井さん、待っててね。あたしたちの邪魔をするやつは全員やっつけちゃんだから!」
チビ太の埋葬を済ませた佐天は、金属バットを手に新たな一歩を踏み出した。
だがその一歩は血に塗れ、漆黒の意志によって舗装されたものだということを、まだ彼女は知る由もない。
266
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悪徳の栄え
◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:24:11 ID:OgvesxOY0
【D-3/商店街/一日目・午前】
【佐天涙子@とあるシリーズ】
[状態]:首の傷、疲労(中)、精神崩壊(大)、漆黒の意志
[装備]:金属バット
[道具]:基本支給品
[スタンド]:スモールフェイセズ
[思考・状況]基本行動方針:この殺し合いから脱出する
1:邪魔者は排除する。
2:知り合い(上条当麻、白井黒子)と合流したい。
3:チビ太さん……。
[備考]
監視カメラの映像で鷲巣巌と安藤の戦闘を目撃しました。
青年(安藤)を危険人物として認識しました。
キング・クリムゾン、ザ・グレイトフル・デッド、ラブ・デラックス、サバイバーの折り紙をゲットし、その能力を理解しました。
サバイバーの能力と精神崩壊によって、マーダー化しました。
267
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◆Il3y9e1bmo
:2021/12/07(火) 01:24:29 ID:OgvesxOY0
投下を終了します。
268
:
名無しさん
:2021/12/07(火) 21:12:19 ID:kbiVCGRU0
投下乙です!
佐天さんがやべえことに……
チビ太が上条さんと接触してることを話していれば、何か変わったんだろうか
269
:
名無し
:2023/09/27(水) 10:19:35 ID:fUTBEZHo0
予定します。
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