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終末世界ロワイアル
1
:
◆87GyKNhZiA
:2020/02/27(木) 20:46:33 ID:eeB4uC2Q0
【ウィザーズブレイン】8/8
○天樹錬/○フィア/○黒沢祐一/○ヴァーミリオン・CD・ヘイズ/○デュアルNo33/○セレスティ・E・クライン/○エドワード・ザイン/○イリュージョンNo17
【Fate/Grand Order】6/6
○藤丸立香/○マシュ・キリエライト/○グラン・カヴァッロ/○カドック・ゼムルプス/○オフェリア・ファムルソローネ/○芥ヒナコ
【トライガン・マキシマム】5/5
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド/○ミリオンズ・ナイブズ/○リヴィオ・ザ・ダブルファング/○雷泥・ザ・ブレード
【Fate/EXTRA Last Encore】5/5
○岸浪ハクノ/○間桐シンジ/○ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ/○ダン・ブラックモア/○ありす
【結城友奈は勇者である】5/5
○結城友奈/○東郷美森/○犬吠崎風/○犬吠崎樹/○三好夏凛
【TEXHNOLYZE】5/5
○櫟士/○蘭/○大西京呉/○吉井一穂/○遠山治彦
【ゴッドイーター(アニメ)】5/5
○空木レンカ/○雨宮リンドウ/○ソーマ・シックザール/○アリサ・イリーニチナ・アミエーラ/○ディアウス・ピター
【CODE VEIN】4/4
○ルイ/○ヤクモ・シノノメ/○ミア・カルンシュタイン/○シュウゾウ・ミドウ
【真・女神転生】3/3
○ザ・ヒーロー/○ロウ・ヒーロー/○カオス・ヒーロー
【虫籠のカガステル】3/3
○キドウ/○イリ/○アハト
【灰燼のカルシェール】2/2
○キリエ/○R・ジュヌヴィエーヴ・ナインス
89
:
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 19:55:55 ID:aNFHvF4g0
東郷美森とキリエで予約し投下します
90
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:01:35 ID:aNFHvF4g0
考えなければならないことはたくさんあった。
支給品……というか端末にインストールされていた勇者システムのアプリを見て、勇者の力が健在ならばこの場所にも神樹の力は及んでいるのだろうか、とか。
この首輪は精霊の加護すら貫通して勇者を殺傷できるほどご都合主義なものなのだろうか、とか。
友奈ちゃんは天の神のタタリで弱っているはずだけど大丈夫なのだろうか、とか。
友奈ちゃんたちを早く見つけたいけど勇者に変身して飛び回っては目立ち過ぎて危険よね、とか。
こんな時に大赦は何をやっているのか、とか。
そもそもここはどこなんだろう、とか。
色んなことが矢継ぎ早に頭の中を流れていって、微妙に関係ないことまで浮かんでいる今の自分はきっと動揺しているんだろうなとどこか頭の隅で変に冷静な私が考えていた。
結局、荷物を纏めて歩き出したのは、ここに飛ばされてから十分ほど経ってからのことだった。
分からないことだらけではあったけど、とにかく動かないことには話は始まらない。
幸いというべきか、これもまた意味不明と受け取るべきか。地図にはわざわざ「讃州中学校」と銘打たれた地名が表示されていて、この場所を目印に他の勇者部メンバーも集まってくるんじゃないかと思えた。
……こんな見ず知らずの場所に、それも見渡す限り廃墟と瓦礫ばかりの土地に、無理やり移転したのか一から作り上げたのかは知らないが、何の変哲もない私達の中学校を建設する意図はまるで分からないけれど。
でももしかすると、廃寺とか遊園地とか教会というのも、私達にとっての中学校と同じように、一定のグループにとっては馴染みの深いものだったりするのだろうか。
なんてことを考えながら歩いている頃だった。
「……誰?」
見つけたのは、大柄な影だった。
黒いコートを羽織った男性。夜目の利く者でも中々見つけられないんじゃないだろうかと思えるほど夜の闇に同化したその人を見つけられたのは、美森が狙撃・探索を主に担当して訓練していたおかげかもしれない。
ともあれ、その男性はぽつんと、崩れた瓦礫の上に座ってぼんやりと上を見上げていた。
なんて無防備な、と思う。心ここに在らずといった様子で、全然微動だにしない。
声をかけようか迷っている間もずっと動くことなく、放っておいたらいつまでもそうしていそうな気配まであった。
どうしようか迷ったが、結局声をかけることにした。敵意や殺意があるとは思えなかったし、むしろ困っているように見えたのだ。
91
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:02:14 ID:aNFHvF4g0
「あの……」
「空が見える」
「……はい?」
「雲の無い空だ。何か小さなものが光っているように見える」
「……」
どうしよう。
何を言ってるのか分からない。
「えっと、星のことを言ってるんですか?」
「ホシ……あの光はホシと呼ぶのか」
「……もしかしてふざけてます?」
「いきなり何を言っているんだ」
それはこっちの台詞だ。
「でも聞き覚えがある。ジュネが言っていた、確かプラネタリウム」
「えっと、まあ、はい。確かに間違ってはないです」
「ところできみは誰だ? 何故ここにいる」
「今更ですか!?」
ついつい大きな声を上げて、でも男の人はきょとんとした顔でこちらを見ている。どうやら素でこういう性格のようだ。
……天然なのね、この人。
軽く諦めを一つ、溜息をついてその人の隣に座る。どうやら悪い人ではなさそうだし。
「私は東郷美森と言います。讃州中学に通っている、中学二年生です」
「トウゴウミモリ」
「東郷でも美森でも構いません。それであなたは……」
「ミモリ、きみは人間か?」
「やっぱり馬鹿にしてますよね!?」
いけない、本当に調子が狂いそう。
不動心、不動心、心頭滅却。心の乱れは大和の英霊にあるまじき醜態である。
……うん、落ち着いてきた。
「それで、あなたのお名前は」
「ミモリ、きみは……」
「あ、な、た、の、な、ま、え、は?」
「……キリエ」
「ではキリエさん。あなたはここに連れてこられた時のことを覚えていますか?」
「……覚えていない。気が付いたらここにいた」
ぽつりぽつりと話して、どうやら彼も私と同じように不本意にここへ連れてこられたことが分かった。
まあ、殺し合いに乗り気な人間に声をかけて承諾済みで連れてこられた、なんてことがなかったのは幸いというべきか。少なくとも、誰彼かまわず殺して回るような危険人物でいっぱい、なんてことは無さそうなのが救いだった。
92
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:03:34 ID:aNFHvF4g0
「それでキリエさん。あなたはこれからどうするんですか?」
「……僕は」
「?」
「ジュネを、探そうと思う」
「ジュネ、というのは」
「僕の大切な"人"だ。この世でただひとりの」
ぼんやりとしていた彼の言動は、そこだけ強い意思で放たれた。そんなふうに聞こえた。
「そうですか……私にも、大切な人がいます」
「ミモリにも?」
「はい。友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんに夏凛ちゃん。みんな等しく大切で、誰一人として失いたくない」
それに、と続ける。
「特に友奈ちゃんは……もう通学路を歩くことさえ辛そうなくらい弱っていて。
悪い人に襲われても抵抗すらできない、禁止エリアにいたら逃げ遅れるかもしれない。
だから私は一刻も早く友奈ちゃんを見つけてあげなきゃいけないんです」
知らず、言葉が溢れていた。
そんなに話すつもりはなかったはずなのに、自然と口から言葉が次々飛び出した。
目の前の彼に縋ったわけではない。ただ単純に、自分のやるべきことを言い聞かせているのだ。
「殺し合いに乗ってしまうべきか、そう考えたこともありました。
でもダメです、友奈ちゃんはそれじゃ救われない。だってあの子は本当の勇者だから。
自分のことより他人のこと、誰かが助かるなら自分なんてどうでもいい。あの子はずっとそればかり。
だから、誰かを犠牲に生き残ってもあの子は絶対喜ばない。私の肩代わりになってまで助けに来てくれた時もそうだった」
結城友奈はずっとそうだった。
勇者の真実を知った美森が壁を壊そうとした時も、世界を維持するため人身御供となった時も、我が身を省みることなくあの子は真っ先に助けに来てくれた。
だから思う。あの子はきっと、誰かの屍の上で生き延びたとて、決して幸せになることはない。
私の願いは、あの子の幸せ。
ならばこそ、美森は他者の犠牲を容認することはできなかった。ただ一人生き延びさせることで幸せな人生を過ごせるというのなら、いくらでもこの身を修羅としただろう。けれどそうではない。仮に美森が殺し合いに乗って友奈を優勝させたところで、あの子は自責の念で自殺してしまいかねない。それくらい心優しく、そして危うい子なのだ。
93
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:03:45 ID:aNFHvF4g0
「それでキリエさん。あなたはこれからどうするんですか?」
「……僕は」
「?」
「ジュネを、探そうと思う」
「ジュネ、というのは」
「僕の大切な"人"だ。この世でただひとりの」
ぼんやりとしていた彼の言動は、そこだけ強い意思で放たれた。そんなふうに聞こえた。
「そうですか……私にも、大切な人がいます」
「ミモリにも?」
「はい。友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんに夏凛ちゃん。みんな等しく大切で、誰一人として失いたくない」
それに、と続ける。
「特に友奈ちゃんは……もう通学路を歩くことさえ辛そうなくらい弱っていて。
悪い人に襲われても抵抗すらできない、禁止エリアにいたら逃げ遅れるかもしれない。
だから私は一刻も早く友奈ちゃんを見つけてあげなきゃいけないんです」
知らず、言葉が溢れていた。
そんなに話すつもりはなかったはずなのに、自然と口から言葉が次々飛び出した。
目の前の彼に縋ったわけではない。ただ単純に、自分のやるべきことを言い聞かせているのだ。
「殺し合いに乗ってしまうべきか、そう考えたこともありました。
でもダメです、友奈ちゃんはそれじゃ救われない。だってあの子は本当の勇者だから。
自分のことより他人のこと、誰かが助かるなら自分なんてどうでもいい。あの子はずっとそればかり。
だから、誰かを犠牲に生き残ってもあの子は絶対喜ばない。私の肩代わりになってまで助けに来てくれた時もそうだった」
結城友奈はずっとそうだった。
勇者の真実を知った美森が壁を壊そうとした時も、世界を維持するため人身御供となった時も、我が身を省みることなくあの子は真っ先に助けに来てくれた。
だから思う。あの子はきっと、誰かの屍の上で生き延びたとて、決して幸せになることはない。
私の願いは、あの子の幸せ。
ならばこそ、美森は他者の犠牲を容認することはできなかった。ただ一人生き延びさせることで幸せな人生を過ごせるというのなら、いくらでもこの身を修羅としただろう。けれどそうではない。仮に美森が殺し合いに乗って友奈を優勝させたところで、あの子は自責の念で自殺してしまいかねない。それくらい心優しく、そして危うい子なのだ。
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:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:03:55 ID:aNFHvF4g0
「それでキリエさん。あなたはこれからどうするんですか?」
「……僕は」
「?」
「ジュネを、探そうと思う」
「ジュネ、というのは」
「僕の大切な"人"だ。この世でただひとりの」
ぼんやりとしていた彼の言動は、そこだけ強い意思で放たれた。そんなふうに聞こえた。
「そうですか……私にも、大切な人がいます」
「ミモリにも?」
「はい。友奈ちゃんや風先輩、樹ちゃんに夏凛ちゃん。みんな等しく大切で、誰一人として失いたくない」
それに、と続ける。
「特に友奈ちゃんは……もう通学路を歩くことさえ辛そうなくらい弱っていて。
悪い人に襲われても抵抗すらできない、禁止エリアにいたら逃げ遅れるかもしれない。
だから私は一刻も早く友奈ちゃんを見つけてあげなきゃいけないんです」
知らず、言葉が溢れていた。
そんなに話すつもりはなかったはずなのに、自然と口から言葉が次々飛び出した。
目の前の彼に縋ったわけではない。ただ単純に、自分のやるべきことを言い聞かせているのだ。
「殺し合いに乗ってしまうべきか、そう考えたこともありました。
でもダメです、友奈ちゃんはそれじゃ救われない。だってあの子は本当の勇者だから。
自分のことより他人のこと、誰かが助かるなら自分なんてどうでもいい。あの子はずっとそればかり。
だから、誰かを犠牲に生き残ってもあの子は絶対喜ばない。私の肩代わりになってまで助けに来てくれた時もそうだった」
結城友奈はずっとそうだった。
勇者の真実を知った美森が壁を壊そうとした時も、世界を維持するため人身御供となった時も、我が身を省みることなくあの子は真っ先に助けに来てくれた。
だから思う。あの子はきっと、誰かの屍の上で生き延びたとて、決して幸せになることはない。
私の願いは、あの子の幸せ。
ならばこそ、美森は他者の犠牲を容認することはできなかった。ただ一人生き延びさせることで幸せな人生を過ごせるというのなら、いくらでもこの身を修羅としただろう。けれどそうではない。仮に美森が殺し合いに乗って友奈を優勝させたところで、あの子は自責の念で自殺してしまいかねない。それくらい心優しく、そして危うい子なのだ。
95
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:04:36 ID:aNFHvF4g0
「ごめんなさい、色々とまくし立ててしまって。
突然すぎましたよね」
「ミモリ、きみは綺麗だね」
「……。
…………はい?」
「それに多分、優しい、と言うのだろう
きみは綺麗で、優しい人だ。"人間"とは恐らく、きみのような者を指すのだと思う」
「えっと、なにを?」
ほわほわとした言葉。ほわほわとした雰囲気。
私よりずっと年上であるはずの彼の顔を見上げる。
───ああ、そっか。
納得するものがあった。キリエと名乗る彼、大柄な偉丈夫の彼。
彼はなんというか、子供っぽいのだ。
だから美森も、言うつもりもなかったことをついつい喋ってしまったのかもしれない。年上の大人の男性ならきっともう少し緊張とかがあったと思うのだけど、彼はよくボランティアで行ってる幼稚園の男児めいた気配があった。
いや、大人の人にこんなことを思ってしまうのは失礼なのかもしれないけど。でも散々調子を崩されたのだからこれくらいいいだろう。
「私は友奈ちゃんたちを探します。見つけて、そしてみんなと一緒にこんなところから出ていきたいと、そう考えています」
「……」
「キリエさんは、どうしますか?」
返事はなかった。
ただ、彼は目を伏せて、何かを考えているようだった。
武骨な彼。表情の少ない、けれど何を考えているのかは分かりやすすぎるくらい顔に表れる彼。
この人はきっと、ジュネという人のことを考えているのだろう。
彼の表情が僅かでも変わるのは、その人のことを考えている時だと、この少ない時間でも理解することができた。
「ジュネさんのことは、私も見つけたら保護したいと思います。
何かあった時は地図にある中学校を目指してください。私か、多分他の勇者部のみんながそこにいると思うので。
こう見えて私もみんなも結構強いので、心配はいりませんし頼ってもらっても大丈夫ですよ」
差し伸べられた手を見つめ、彼は動かない。
表情はない。ただ、口だけを動かして彼は言った。
96
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:05:09 ID:aNFHvF4g0
「……ミモリ。僕はずっと迷っていた。
世界はきっと汚いと思っていたし、ジュネ以外にきみのような人がいるとも思っていなかった」
「……」
「《聖域》を目指すことも、僕はどうでも良かった。けどそこ以外にジュネが安らげる場所がないなら、そこを目指すしかなかった。
《聖域》には生き残った誰かがいると、彼女以外の人間がいるとジュネが言っていた。その人がきみのような者だったなら、きっとそれはとても良いことなんだろうって思える」
けど、と彼は続ける。
「でも僕は、やっぱりジュネのことが大切だから。
きっと、こういう道しか選べないんだって思う」
「……そう」
それだけで、もう言葉はいらなかった。
彼の左手がゆっくりと上げられ、私は後ろ手に携えたアプリを起動する。
彼の気持ちは痛いほど分かっていた。
私もできるならば、そのようにしたかった。
この胸の苦しみも不安も何もかもをぶちまけて、ただ奉仕と愛情の為せるがままに動くことができたら、どれほど楽だったかと思う。
「ごめん」
だから謝らなくていい。
彼の思いにどうしようもなく共感して、
だからこそ、私は彼を止めなければならない。
だってそれは、愛する誰かのために身を捧げようとするその姿は、
どうしようもなく、鏡に映った私自身でしかないのだから。
▼ ▼ ▼
97
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:06:11 ID:aNFHvF4g0
「兵装解放(アルルメント)」
戦闘の開始はそんな声が告げた。
同時に美森の総身は眩いばかりの光に包まれ、キリエの左手は機械が組変わるが如く変形を果たす。
内側より光が溢れ、巫女のような姿となる美森。
内側より金属が食い破り、異形の刃めいた剣呑なカタチへと左手を新生させるキリエ。
神聖と醜悪の対照さながらに、変容を遂げた二人は戦意を胸に対峙していた。
「っ!」
先手を取ったのは美森の側だった。
瞬時に現出させた長銃を以て速射、闇夜に四条の閃光が奔り的確にキリエの四肢を狙い撃つ。
反射的に飛びのいたキリエは音速を凌駕する速度で世界を流れ、同時に一瞬前まで彼のいた空間を巨大な熱量が貫く。
青い燐光を放つ集束光めいた弾丸によって路面を構成するコンクリートが直径数十cmに渡って赤熱、衝撃音を表す空気振動と共に爆発を引き起こした。
数ミリ秒で路地の端から端までを移動したキリエは足を止めることなく中層ビルディングの壁を蹴りつけ、十m近い距離を跳躍し向かいのビルの屋上へと着地、瞬間更なる追撃の銃撃が次々と彼のもとに殺到し、次いで同じく跳躍を果たした美森が屋上へと着地を果たす。
「高速戦闘を開始する」
言葉が紡がれると同時、獣の如き敏捷性を有していた彼の動きが更に研ぎ澄まされた。同じく高速戦闘に対応するため異常強化された勇者の視覚能力すらも振り切って、文字通りの影と消え去った彼は既に美森の眼前で攻撃動作を完了している。
右から振るわれる、回転鋸めいて変形した彼の左腕。
「それで───」
長銃の代わりに現出させた拳銃によるクイックドロウは的確にチェンソーへと命中し、僅かにその軌道をずらす。間隙を縫うように後方へと跳躍し、周囲へ滞空させるように新たな二丁の長銃を召喚、追撃を許さず狙撃する。
今の攻防でキリエの戦闘スタイルは理解した。敏捷性と近接武器を用いた格闘主体、すなわち友奈や風と同じタイプ。ならば対処は慣れているし、模擬戦を通じた戦闘経験も積んでいる。
美森は距離を維持したまま、御幣を駆使してビルの隙間を利用し立体的な駆動を実現、円軌道でキリエに射撃の雨を降らせていく。
凄まじい轟音と共に彼が立つビルの一角が急速に削り取られ、猛烈な勢いで土煙が立ち昇る。離脱する影は皆無、すなわちキリエは銃撃の驟雨の只中に取り残されていることを意味していた。
防御は不能、回避も不能。ならばこそ散弾の檻より逃れる術はあるはずもなく。
98
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:06:43 ID:aNFHvF4g0
「……遅い」
だとすれば、この現状は一体何であるというのか。
コンクリートの破片が舞い、千切れ飛んだコートの切れ端が舞い、しかし煙幕の向こうより現れたキリエの体は無傷。
「っ、まだ……!」
「喚くな」
美森は決して遅くない。
銃弾の速度は元より、彼女自身の機動性に射撃速度、決断に位置取りに絡めたフェイントや跳弾までをも利用した弾幕はおよそ尋常なる異能者が躱せる領域を逸脱している。
現に戦闘を開始してから十秒足らずで、今やキリエの立つビルディング屋上の床面は完膚無きまでに破壊し尽くされ、抉れていない地点など欠片も存在していない。
それでも、彼は傷つかない。
あらゆる攻撃を左足を動かす素振りも見せず回避し続ける。
そして、左腕を美森に向けて。
「形態変化」
瞬時に組み変わる。それは刃から砲塔へ、機械の骨組みが切り替わるように。
そして放たれる金属製の弾丸。
発射と共に生成される無数の弾丸は美森へと殺到した。秒間三千発の特殊弾頭は、かつてA国の陸軍兵器開発局で碩学たちが試算したところではおよそ地上のあらゆる物質を破壊し得るという結果が導き出されていた。はず、だが。
しかし、弾頭は美森を穿つことはない。
不可視の障壁めいて展開された精霊の加護が彼女を守る。爆発音と共にキリエの左腕から放たれた数千発の特殊弾頭は、美森の眼前数十センチの地点で速度と威力を失い、地面へ落ちていく。滝だ、弾丸の滝。灼熱した弾頭が、無数に、砕けた地面へと落ちて焼け焦げた異臭を立ち昇らせる。
「速度の割には硬い。装甲型(ブランディ)に匹敵するか」
言葉と同時に更なる変化。砲塔化した左腕の上腕装甲の手首から肘にかけて幾本もの筋が直線に走り、肘部分を基点として跳ね上がる。放射状に展開された装甲板裏を埋め尽くすのは、数十発の、ごく小型の誘導弾だ。肘部分のふくらみの中で生成した化学調合物が詰め込まれた誘導弾は、攻撃対象を爆発の熱と衝撃で破壊する。
装甲展開とほぼ同時に射出していた。
引き金は必要ない。思考が、変異機構を作動させる。
白煙をたなびかせて、数十の誘導弾が美森へと突き立つ。
着弾、着弾、着弾。
直後に立て続けの爆発。悲鳴すら掻き消されて美森の矮躯が吹き飛ばされる。未だその身に致命の傷こそ存在しないが、最早まともに立っていられるような衝撃ではなかった。
しかし。
99
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:07:45 ID:aNFHvF4g0
「……」
キリエの頬を掠める衝撃、僅かに首を傾けることで回避したその弾丸は、正確に彼の頭部を狙撃していた。
視界の向こうに見えるのは、長銃をこちらへ向ける美森の姿。
事ここに至り、最早殺害も辞さないと思考を切り替えたのか。
「これが、最後の警告……今すぐ戦いを止めて、武器を収めて」
「それはできない」
「ジュネって人を助けるため? そのためにあなたは人を殺すというの?」
詰問するかのような美森の言葉。しかしその裏で、彼女はどうしようもない共感を覚える。
大切な人のために、そうして行動したのは美森とて同じことだから。
傷ついてほしくないから世界を壊そうとした。幸せになってほしいから自分が生贄となった。
それは確かに自己犠牲という奴で、覚悟や決意が必要なことで、あるいは尊いと呼ばれるような行いなのかもしれないけれど。
それでも、二度も同じ過ちを犯した先達として、美森はこれだけは言っておかなければならなかった。
「誰かのために、何かのために……そんな誰も否定できない悲壮な覚悟を盾に他者を害するのはとっても楽。
だって自分で考えることを放棄しているんだもの。考えも責任も何もかも、その『大切な誰か』に押しつけて自分はただ暴れ回っていればそれでいい。
……なにそれ、ほんと馬鹿みたい。下手な言い訳に使って大切なものを一番穢しているのは、誰でもない自分自身だっていうのに」
本当に、なんて馬鹿だったのだろう。かつての自分は。
人の気持ちを考えて行動しなさい、なんて。そんなことは子供でも分かる当たり前のことなのに。
何度も間違えて、傷ついて、その度にみんなで泣いて。そうやって美森は此処まで来た。
だから、この人にも分かってほしい。
美森が犯した過ちを、その果てに掴んだものを。
こんなにも簡単な、ありふれた勇気のことを。
「すまない」
返ってきたのは、短く、けれど確固たる意志に基づいた言葉だった。
「その言葉の意味さえ、僕は理解することができない」
「……そう。残念だわ」
100
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:08:41 ID:aNFHvF4g0
返すと同時、美森の銃口が文字通りに火を噴いた。
襲い来る数十の閃光、その全てを最小限の動きで回避し、キリエは左腕を掲げる。
特殊弾頭も小型誘導弾も精霊の加護には打ち勝てなかった。この武装では美森を害することはできない。
だから、彼は新たな変化を己が左腕に命じていた。
向けられた砲塔の先端にあったのは、銃口ではなく透明なレンズだった。望遠鏡の先端に酷似したレンズ機構、光学装置。
既に、肘のあたりに存在していた専用弾丸の無限生産機構が姿を消していた。
代わりに動力機関部らしき膨らみと排気口が現出して。
激しい噴煙が巻き起こる。
直後、光学装置から放たれるものがある。
閃光。周囲一帯を埋め尽くす、何よりも眩い輝き。
あらゆる物理的衝撃を受け流す、勇者を庇護する絶対の加護目掛けて、白色の光が放たれる。
───閃光と衝撃が。
───不可視の障壁を打ち砕く。呆気ないほどに。
「光学兵装(シャイコース)」
そんな彼の呟きが、美森の耳に届くより先に。
視界を、白の光が埋め尽くして───
▼ ▼ ▼
101
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:09:15 ID:aNFHvF4g0
返すと同時、美森の銃口が文字通りに火を噴いた。
襲い来る数十の閃光、その全てを最小限の動きで回避し、キリエは左腕を掲げる。
特殊弾頭も小型誘導弾も精霊の加護には打ち勝てなかった。この武装では美森を害することはできない。
だから、彼は新たな変化を己が左腕に命じていた。
向けられた砲塔の先端にあったのは、銃口ではなく透明なレンズだった。望遠鏡の先端に酷似したレンズ機構、光学装置。
既に、肘のあたりに存在していた専用弾丸の無限生産機構が姿を消していた。
代わりに動力機関部らしき膨らみと排気口が現出して。
激しい噴煙が巻き起こる。
直後、光学装置から放たれるものがある。
閃光。周囲一帯を埋め尽くす、何よりも眩い輝き。
あらゆる物理的衝撃を受け流す、勇者を庇護する絶対の加護目掛けて、白色の光が放たれる。
───閃光と衝撃が。
───不可視の障壁を打ち砕く。呆気ないほどに。
「光学兵装(シャイコース)」
そんな彼の呟きが、美森の耳に届くより先に。
視界を、白の光が埋め尽くして───
▼ ▼ ▼
102
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:10:19 ID:aNFHvF4g0
欠けた夢を見ていた。
二度と戻れない夢の話だ。
晴れ渡る空の下、みんなが笑顔でそこにいる。
笑って手を振っている。誰も欠けることがない、それはあまりに幸せな日々の情景。
私の夢も、私の好意も、全ては一時の揺らぎ。
きっと本来なら、あの日に全て終わっていたはずのこと。
でもね、私、みんなに言わなきゃいけないことがあるの。
ずっと言えなかったこと。
嘆きの壁を越えたから、言えること。
あのね。
わたしは。
わたしの世界で。
あなたの世界で。
わたしとあなたの世界で。
みんなのことが、一番好きよ。
こんなわたしのことを、友達と言ってくれて、ありがとう。
守ってあげられなくて、本当にごめんね。
◆
103
:
滅びの世界で〈花〉と〈機械〉は
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:10:55 ID:aNFHvF4g0
「……ぉ……ぇん……ね……」
既に焦点の合ってない目で虚空を見つめ、彼女は言う。
キリエはただ、それを聞いていた。
ずっとずっと、それを聞いていた。
美森の体は鳩尾のあたりから下を喪失し、残った上半身も黒焦げとなって、そこに横たわっていた。
血も何もない。それすら既に蒸発し、即死だけを免れて彼女は転がっていた。
何かを言っているようだった。
それを、キリエはよく聞き取ることができなかった。
「すまない」
一言だけ謝った。
そんなものに意味などないと、他ならぬ彼自身が一番よく知っていた。
本当は、声を出すことさえ嫌だった。
キリエにとって、話しかける相手はずっとジュネであって、他の誰かに返答した過去の経験は最早記憶領域には残っていない。ジュネでない相手には、本当は、何かを言うのさえ良い心地はしなかった。
それでも、彼は美森と言葉を交わした。
彼女に対して、嘘は一つも言わなかった。
キリエの記憶にあるのは、ジュネを除けば荒廃した大地と死の気配、そして歩き回る機械死人しかない。世界は汚いもので、自分は醜いもので、ジュネだけが唯一の美しいものだとずっと信じていた。
けれど、美森は、綺麗な人だった。
外見だけの話ではない。彼女は誰かを想い、涙を流し、勇気を振り絞って戦える人だった。それはキリエにはできないことだ。涙を流そうにも、既に自分の眼窩と眼球は機械に置き換わっているから。美森はキリエの数年足らずの生涯において二度目に出会った美しいものだった。
それでも殺した。
ジュネのために、殺した。
美森の言葉を、キリエは理解する。ジュネのためにと言い訳をして誰かを殺す、それはきっと最低の悪行なのだろう。
構わない。キリエにとって、ジュネは世界の全てだ。
だからただ、東郷美森という自分が殺した相手を忘れないようにと、キリエは記憶領域に彼女のことを留めておく。
「行こう。ジュネのために。彼女が生きていられるどこかへ」
そうして彼は歩き出す。
死んでしまった、世界の果てで。
【東郷美森@結城友奈は勇者である 死亡】
『A-4/崩れた道路/一日目・深夜』
【キリエ@灰燼のカルシェール】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:ジュネを生かす。
1.皆殺し
[備考]
※少なくともロス・アラモス到達前からの参戦
104
:
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:12:25 ID:aNFHvF4g0
投下を終了します
105
:
◆87GyKNhZiA
:2020/03/22(日) 20:12:43 ID:aNFHvF4g0
投下を終了します
106
:
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:47:22 ID:0ZDo7VrE0
申し訳ありませんが、キリエの現在位置および東郷美森死亡地点をA-4からC-4に変更したいと思います
それとありすを予約して投下します
107
:
勿忘の地
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:54:01 ID:0ZDo7VrE0
───ああ
───眩む視界で誰かが笑っている
ノイズと共に頭をよぎる。
その声は、見たことのない記憶を思い起こさせる。
記憶。
顔も思い出せない、誰かの笑み。
記憶。
セピア色の。今も、また、夢見てしまった。もう戻れないのに。
それは、そう。ほんの少し前まで。
今はもう、永遠に離れてしまった温もり。
学生服を着た、わたしに手を差し伸べる、暖かな。
記憶。
切れ切れではっきりとしない。
記憶。
この手を繋いでいられるものだと思っていた。
ずっと傍で、共にいられるのだと。
記憶。
名残惜しむように、手の届かない高みへ上がるあなた。
記憶。
全てが終わってしまったあの時。
「きっと」
「きっと、また戻ってくるから」
108
:
勿忘の地
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:54:51 ID:0ZDo7VrE0
───声が聞こえる。
答えられない。
応えられない。
言葉は出ず、伸ばした腕も届かない。
きっとあの時、わたしはこわれてしまったのだ。
森の中を彷徨い、約束したあなたが帰ってくるまで、ずっと待ち続けて。
きっとあの時、わたしは諦めるべきだったのだ。
死者は生者を掴めない。そんなこと、最初から分かりきっていたはずだったのに。
───千年。
───そう、気付けば。千年が経っていた。このムーンセルで出会って。
───あなたという存在に出会って、千年。
わたしは、あなたに伝えられないまま。
もう、伝える機会は、ない。
『こんにちは。ありす』
───視界の端で道化師が踊っている。
耳元で囁く道化師。黒色の。
いつもは見ないようにしている。道化師は、何故だか悲しさだけを運んでくるから。
でも、えっと。
かなしさって、なんだっけ。
『きみは』
───わたしは。
『何を願う?』
───わたしは。
───わたしの、願いは……
▼ ▼ ▼
109
:
勿忘の地
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:55:38 ID:0ZDo7VrE0
"そこ"は何かを待ち続けるかのように、常闇の領域で昔日の残照を抱いたまま、ただ静かに咲いていた。
一面に広がる白色は無謬の静謐だけを湛え、風に揺れることもなく、月の光の青さを煌々と照らし出している。
都市の残骸がもたらす崩れた穴の底。純白の花畑に佇む少女は泡沫の幻想に過ぎず、横溢するつぎはぎの思念は"彼女"が唯一持っていたかつての残滓に他ならない。
───いかないで。いかないで。わたしを置いていかないで。
声なき声が木霊する。肉なき影が揺れ動く。命なき地に何かが蠢く。
ならばそれは少女の影か。寄る辺なき涜神の地に招かれた、哀れなる盲目の生贄がもたらす嘆きであるのか。
いいや違う。そんなはずがあるものか。
見るがいい、その奇怪なる巨影を。聞くがいい、その肉塊の煽動する不可解なる音を。
身の丈6mを優に超える巨体は人体ではありえず、粘菌の流動するが如き動作は地上の如何なる生物にも該当しない。
湿った腐肉を引きずるような音を響かせ、その影は這いずり穴を昇る。目的もなく、声もなく、ただ垂れ流しの思念を辺り一帯にぶちまけて。
そして、暗い夜の闇だけが充ちる穴の底より、異形の顔が姿を見せて───
◆
110
:
勿忘の地
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:56:23 ID:0ZDo7VrE0
暗い穴から出てきたら、そこには明るい月の光があった。
丸くて大きな月。白? 銀色? それとも青? 大きな丸い輪っかはとても綺麗に光っていて。
でも太陽じゃないわ。あんなふうに暖かな光ではないもの。もっと冷たい、水の底のような光。
ここはどこなのだろう。気付いたらここにいた。わけもわからぬうちに。
お城でも、森でもないわ。花のあしどられた迷路も、ティーカップのお茶会もない。ここはとても寂しいところね、お月様も泣いてるみたい。
……お月様。
月って、あれ、なんだっけ。
ずるりと音を立て、少女であった何かが今度こそ全身を這い出した。
それは、白く巨大で、不定形な肉の塊だった。
腹足動物のような平べったく膨らんだ腹部と脚部を持ち、翼腕めいて突き出された左右の骨格はひらひらと揺れている。異様に長い首の先についた頭部は、カメラのレンズにも酷似したガラス質の単眼のみを湛え、鼻も口もなく無機的に目の前の景色を反射させていた。
花を愛でる少女ではありえない。尋常なる人間でもありえない。
だが、しかし。それでも少女は人だった。
肉体を失くし、意思を失くし、記憶を失くした今もなお。
その願いだけは、人のままであるのだった。
故にこそ、彼女は見惚れていた。眼前の光景に、月の光に。
最早永遠に見られぬはずであったものを前にして、失われた何かを想って。
彼女の目の前に広がる景色は神秘的で、荘厳で、しかし同時に地球上では見られない異様な色彩と言えるだろう。
銀に輝く大輪の満月。常識外の大きさで宇宙の中心に鎮座するそれは吸い込まれるような輝きを放ちながら、星々を慈しみ闇を仄かに照らしていた。
太陽の排斥された空に坐する支配者として、積もる嘆きの数々を優しく包み癒す姿はまるで優しい母のようで……
だからこそ、この地は死界に他ならなかった。
身を焼くような陽光がない。暴れ出すような生命の鼓動がない。
つまり、萌芽する可能性の兆しとやらがここにはどこにも在りはしない。透き通る受容の闇はあらゆる痛みを許す反面、この静けさを乱してしまう数多の熱を拒絶していた。
どうしようもなく、閉じた世界。
それは月の檻と同じくして、人ならざる身に堕した彼女を捉えて離さない。
───いかないで。いかないで。わたしを置いていかないで。
その想いは呪詛のように、無明の深域で静かに木霊していた。
『B-5/流9洲市街・ラフィアの花畑付近/一日目・深夜』
【ありす@Fate/EXTRA Last Encore】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:……
1.会いたい
[備考]
生命を認識した場合無差別に襲いかかります
基本支給品一式と不明支給品×1〜3はB-5に置き去りにされています
111
:
◆87GyKNhZiA
:2020/03/29(日) 20:57:04 ID:0ZDo7VrE0
投下を終了します
112
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/01(水) 19:45:09 ID:xhm7BcS60
えんちょーします
113
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/03(金) 21:45:10 ID:bIh6UlaI0
投下します。
114
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/03(金) 21:46:39 ID:bIh6UlaI0
間桐シンジは天才を自負している。それは自他共に認められるくらいには確固としたものだ。
かつては天才少年だったシンジは、いつしか青年になって、なって――進み続けた。
最初に奪ったのは共に笑った友達だった。その次に奪ったのは、見も知らぬ誰かだった。
奪った代償はある、泥に塗れた天才はその重みを背負うことに決めた。
そして、抗い、負けないことを誓ったはずなのに、いつしか思いは消えて、空を茫洋と見上げるだけになってしまった。
その結果がどうだ、下から上がってきたアイツに逆襲を果たされた、
抗いは無意味に消えた。世界は終わった。自分自身も終わった。
終わって、終わって、全部が藻屑と消え去って。
そうして、それで――?
結局、何も生み出せないまま終わって、満足だったのか。
「んな訳、ないだろ」
その声は嗄れたものだった。
頑張って、疲れて、それでも頑張って、諦めた者にしか出せない臭いがした。
「そんな訳、ないだろ――――っ!」
できることは全てやった。泥しか生まれない世界で黄金を生み出そうと藻掻き続けた。
その果てで、アイツと会って、それから―――。
「ああくそっ、思い出した。思い出してしまったじゃないかよ」
元来、自分は諦めが悪い人間だった。
辛い現実を見続けて大人になったつもりで、斜に構えていた。
どれだけ努力を重ねようとも、成果は実らず。
だから、諦めた。もう無理だって夢を見ることを捨てて、思い出に浸っていた。
「僕は人間が負けることを認めたくなかったんだ」
それでも、残ったものが一つ。
偽りの空を見上げて、右手を伸ばして。
本物の世界が、その先に待っていると信じ続けた。
黄金の奇跡なんてものよりも強く、鋭く。
運命を掴み取る意志の力に、シンジは気づいてしまった。
全部、アイツが悪いのだ。諦観の海に浸ることを許さなかった、かつての友。
終わってしまった世界、夢を、もう一度、と。
115
:
イカロスの翼
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/03(金) 21:48:06 ID:bIh6UlaI0
「それで、いつまでニヤニヤしてるんだよ。ライダー」
「おいおいシンジィ、このアタシが空気を読んで黙っていたっていうのに、自ら潰すのかい」
「さっきから口を挟みたくてウズウズしていた癖に、よく言うよ」
変わらない、歪まない。
相変わらず、自分のサーヴァントはこのクソッタレな女海賊だ。
品の悪い笑い声を上げて、口を釣り上げる彼女をシンジは辟易とした表情であしらった。
「…………まだ、ゲームオーバーじゃない」
「ああ」
「別に、コンティニューできるとは思ってなかったけどさ。
ここまで場を整えられて、席につかないのは情けないよなぁ!」
「良い啖呵だ。覚悟がガンギマリで、アタシが発破をかけることもなさそうだ」
やることなんてもう定まっていた。
安っぽいプライドから始まった物語も、意地を張り続ければ本物だ。
「ライダー。奪うぞ、奇跡」
「当然。眼前のお宝を遠目で眺めるだけ? ハッ、そんな腑抜けなんてまっぴらごめん!
ああ、ああ……奪ってやろうじゃないか、根こそぎねぇ!」
途切れた物語を、最後のやり直しを、今度こそ貫いてみせる。
「僕は――」
泥濡れの右手を握り締め、再び。
「――世界を取り戻す」
喝采なき戦場で、黄金を掴み取る。
『A-4/一日目・深夜』
【間桐シンジ@Fate/EXTRA Last Encore】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:世界を取り戻す。
1.奇跡を奪う為にも、勝つ。
[備考]
ライダー(ドレイク)と契約しています。
死亡後参戦です。
116
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/03(金) 21:49:06 ID:bIh6UlaI0
投下終了です。
117
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/03(金) 23:07:08 ID:bIh6UlaI0
天樹錬、結城友奈、ザ・ヒーローを予約します。
118
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/13(月) 19:31:37 ID:w7xsGJJs0
延長しておきます。
119
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:05:29 ID:COLbxplE0
投下します。
120
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:06:36 ID:COLbxplE0
世界なんて、救わなければよかった。
■
歩く、歩く、歩く、歩く。
世界が変わっても。世界が荒れ果てても。世界が終わっても。
ただ、歩き続ける。足が折れても、心に罅が入っても。
前だけを見据えて棒のようになった足を無理矢理に動かして。
始まりは三人だった。
優等生に不良、凡庸な青年。
性格も生い立ちも違うのに、何故だか知らないが、妙に気が合った。
だから、彼らがいた時はまだ折れずにいられた。
母親を殺した時も、東京が崩壊しても、世界が様変わりしていっても。
三人ならきっと、乗り越えられると信じていたから。
――そんな夢が続くと信じていた。
三人は二人になり、二人は一人になり。
再び三人になった時は、全員が変わっていた。
神の生贄。悪徳の救世主。
世界の均衡を乱す存在となった彼らを前にして、青年は強いられた。
未来の為に等しく鏖殺を。
親友だった彼らを、青年は自ら手放した。
否、手放さざるを得なかった。顔も声も知らぬ大衆の為に、未来という朧気な希望の為に。
運命が彼らと生きることを許さなかった。
それでも、それでも。この手には何かが残っていたはずだ。
例えば、使役した悪魔とか。
例えば、世界が様変わりしても再び出会えた女の子とか。
もっとも、自分には追いつけず死んでしまったけれど。
親友二人を切り捨てた時点で、青年はもう手放すことに躊躇なんてなかったのかもしれない。
大切なものが一つだけあればよかった。
その一つに女の子が入るはずだった。もしかしたら共に戦った悪魔だったかもしれない。
そう、信じていた時もあった。否、信じていたかった。
結局、彼女達も自分が殺したようなものだ。
青年がやったことは殺戮だけである。
悪魔を殺した、天使を殺した。立ち塞がる者は総て鏖殺した。
ああ、そういえば幼馴染を殺したのも自分だったか。
殺さなくては前に進めない。踏破するには全てを終わらせる他なかった。
後々、自らの障害に成り得る可能性は片っ端から潰して回る。
それが一番の近道であり、それ以外に選択肢なんてなかったから。
だから、青年はだくだくと流れ落ちる何かを気にせず、力を振るい続けた。
今は遠き、理想郷。嘗てはくっきりと浮かんだ願いは泡沫へと消えていく。
数え切れぬ程、血を流し、流させた。
手に持った武器は数え切れず。いつしか千変万化とも呼べるくらい、使いこなして――できたのは鏖殺だけ。
殺らなければ、殺られる。もはや、青年の傍には誰もついてこれない。
強く、強く、誰にも害されぬように強くならねばならないのだ。
どんな手段を使ってでも、生き残る。
奪ったものが無価値にならないように、自分が生んだ犠牲が無意味にならないように。
奪うことしか選ばせてくれなかった運命に抗い続けるのだ。
121
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:07:06 ID:COLbxplE0
そうして――――“英雄”になってしまった。
自らの名前が滲んで読めなくなるくらいに磨り潰された、バケモノ。
遺した誓いすら、思い出せなくなった無辜の怪物。
その名を、ザ・ヒーローという。
決定的なまでに固定された在り様はもはや、変わらず。
それは、終末が目前となった世界でさえ何の感慨を浮かべはしなかった。
いつも通り、やることは一つだけ。
総てを殺す。奪った分だけ、終わらせる。もう二度と過酷な運命が紡がれないように。
支給されたものを確かめる。数秒で終わる。武器であれば何でも良い。
使いこなせない武器など、ザ・ヒーローには存在しない。
そして、戦いが始まるのはいつだって突然だ。
眼前に映る二人の少年少女。
戦いとは無縁に見える華奢な体に、穏やかな表情を浮かべた二人組。
名前も知らぬ、知るつもりもない誰か。
これから、奪わなくてはならないが、特に感情が揺さぶられることはなかった。
そんな初心はザ・ヒーローから消えてしまったから。
腰にぶら下げた剣を抜刀し、一気に間合いを詰める。
一太刀で終わらせる。事実、少女の方は全く反応をしておらず呆けたままだ。
このまま首を刈り取って死体が二つ、地に伏せる。
ザ・ヒーローはそう、確信していた。
「…………っ」
ザ・ヒーローの口からは無言の驚愕が漏れ出した。
少女を斬り捨てるはずだった剣は寸前で止められている。
横にいた少年が瞬時に短刀を抜き放ち、受け止めたのだ。
なるほど、と。ザ・ヒーローは見た目によらぬ強敵に気を引き締める。
そのまま、続けざまに連撃。全てが致命の一閃であり、避けること叶わぬ鋭さを持っている。
だが、それもまた少年の短刀に防がれた。
迸る斬撃の応酬と共に、ザ・ヒーローと少年は少女から徐々に離れていく。
否、離された。少年が少女を護るべく、距離を稼いでいる。
まるでお姫様を護る騎士のようだ。
王道の物語を好む人間からは拍手喝采が舞い散るだろう。
――――縋られた者の末路はいつだって、残酷だ。
もっとも、ザ・ヒーローのいた世界でそんなものはとっくに消え去った。
世界は青年に優しくなかった。運命は青年に過酷な淘汰を強いた。
「……すごいな」
あんな風に、誰かを護れたら。護ることを諦めていなかったら。
自分達も、運命を呪わずに済んだのだろうか。
力を求め、底に堕ちて死んでいった彼。
理想を求め、高みへと生贄に捧げられた彼。
そして、何も捨てられなかったが故に何もかも捨てられてしまった彼。
確かに掴んでいたはずのものはもうどこにもない。
感傷だ、何も生まない終わってしまった過去を今更思い直しても意味などない。
122
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:07:27 ID:COLbxplE0
「こんな状況である以上、話し合いより殺し合いが先だってことぐらいわかってる」
「当然だね」
「だからといって、殺されてやるつもりはない」
今の最適解は殺すこと。結局、今までと同じ繰り返しだ。
剣を改めて握り直し、ザ・ヒーローは駆ける。
目の前の少年は油断していい相手ではない。
心臓、首筋、と。繰り出すのは全て必殺だ。
少年に余裕を与えてはならない。ザ・ヒーローのこれまでの戦闘経験が言外に告げている。
少女から離された時もそうだ、彼は戦うことに、誰かを護ることに慣れていた。
放った斬撃を全て受け流され、あまつさえこちらに反撃を加えようとする。
だが、届かない。届かせてなるものか。
崩壊していく世界で最後まで戦い続けた
瞬間、少年は反転して一足で距離を取った。
ザ・ヒーローは訝しむ表情を浮かべた瞬間、空気の温度が一気に下がる。
突如、虚空から生み出された氷槍の雨がザ・ヒーローへと降り注ぐ。
氷槍一つが致命の一撃、物理破壊をするのが馬鹿らしいくらいの無数の雨。
だが、どうってことはない。
何の変哲もない、特別な力など使わないただの回避行動。
予め、知っていたかのような挙動で氷槍の雨を全て躱し切る。
あの地獄を見てきた英雄にとって、この程度は致命足り得ない。
「……っ」
少年は驚愕の表情を浮かべるも、すぐに持ち直す。
戦いに慣れているのか、淀みがない。
少なくとも、これらの氷槍がとっておきの切り札という訳ではないらしい。
手数が多いのはそれだけ取れる戦法のヴァリエーションがあるということだ。
――とはいえ、退く訳にはいかない。
後々に残すと厄介な参加者は早めに潰しておきたい。
艱難辛苦を踏み越えてきた経験が告げている。
この少年はここで殺しておくべきだ、と。
必殺の決意を再度充填し、ザ・ヒーローは地面を蹴り砕き、疾走を開始した。
氷槍の回避もあってか、少年との距離は離されている。
多少の手傷を負わせ、隙あらばこのまま離脱しようかと考えているのだろう。
そうはさせない。無傷にてこの氷が降り注ぐ極寒の障害を踏破する。
雨が降る。先程と変わらず、一発でも当たったら氷槍を全て回避し、少年へと迫る。
瞬間、ザ・ヒーローは反射的に跳躍。突如出現し、秒単位で振り抜かれた金属の腕を躱す。
あの少年の手札なのだろう、突然の一撃は姿勢を崩してしまう。
とはいっても、数秒あれば持ち直す程度の空白。
姿勢を戻し、いざ少年の首を狩らんとした時、既に死地は完成していた。
123
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:07:47 ID:COLbxplE0
「…………逃げ場なしか」
ザ・ヒーローが足を止めた数秒間があれば、少年にとって必殺の一撃を生み出すには十分すぎるものだった。
全方位に氷槍が生み出され、檻が完成する。
ここでザ・ヒーローは気づいてしまった。
最初から少年は逃げる気なんてないことに。
自分を殺すべく、入念に場を整えていたことに。
『■■■、諦めるときだ』
視界の端で道化師が踊っている。
現実ではない幻覚――否、幻覚ではない現実か。
青年の英雄譚はここで終わる。漸く、旅路を終えて眠りにつける。
だから、これでいい。もう、いいのだ。
脳裏に浮かぶのは、まだ何も知らなかった頃。幸せな日常が続いていた頃。
母とパスカルと自分と。
満ち足りていたとまではいかないけれど、普通の青年でいられたあの時を。
お前は、何を切り捨てた?
母親は死んだ。悪魔に殺され、その悪魔をお前は殺した。
鏖殺の旅路は自らの居場所を壊す所から始まった。
それでも、まだ残っている願いはあった。
お前は、何を切り捨てた?
自らを犠牲に未来を託した少女を、お前は踏み越えた。
仕方がなかったという言葉でごまかして、その礎の上を走る決意をした。
それでも、まだ残っている願いはあった、はずだ。
お前は、何を切り捨てた?
袂を分かった親友達を、お前は切り捨てた。
ずっと、三人でいたかった。
母親を喪っても、少女を切り捨てても、二人がいたから生きていけた。
困難な状況にも関わらず、自分を見失わずに済んだのだ。
けれど、二人はいなくなった。自分が殺して、終わらせた。
それでも、まだ残っている■■は■■■。
お前は、何を切り捨てた?
もう、わからない。
少女も、仲魔も、全て消えた。
ユメは終わり、運命は相変わらず真っ直ぐなまま。
真っ直ぐ過ぎて、全部失くしてしまった。
124
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:08:12 ID:COLbxplE0
『■■■、諦めるときだ』
失ったものを取り戻そうとは思わない。
そもそも何を取り戻すべきかもわからない。
だから、せめて終わらせようと誓ったのだ。
世界が今度こそ平和になりますように。
望まぬ運命に強いられた“英雄”が生まれない世界を。
――――――右手を伸ばす。
運命はまだ、“英雄”を見捨てない。
“■■■”は、揺らがない。
氷に覆われた死地を踏破することは運命に定められている。
道化師よ、そこを退け。“英雄”が通る。
地を踏み締め、握り締めた剣は銀色の輝きを増していく。
とん、と。軽い足音と共に、ザ・ヒーローの姿は掻き消える。
そして、少年が次に彼を知覚していた時、氷の檻は既に突き破られていた。
「……っ」
「……遅い」
ほんの少しだけ弾幕が薄い箇所を見極め、突き抜ける。
全方位から穿たれた氷槍の弾幕を全て崩す必要なんてない。
ただ自分に直撃するものだけを、ザ・ヒーローは切り砕く。
勿論、その判別は並大抵の技量ではできない。
圧倒的な経験――死地を潜り抜けなくては身につかないだろう。
常人ならば。ただの戦士ならば。この氷獄にて終りを迎えている。
――なるほど、確かに。常人ならば、何もできないまま殺られてるね。
けれど。どうやら。鋼の“彼”は常人ではない。
少年がその事実に気づいた時にはもう距離は一足一刀の間合いに入っていた。
振るう剣、流す短刀。少年の手札を知ったからにはそう簡単に距離は稼がせない。
ミドルレンジであれば、防戦一方になるのかもしれないが、クロスレンジならば。
ただひたすらに。ザ・ヒーローは愚直なまでに少年との近接戦に挑む。
遠距離から氷槍を飛ばすアウトレンジ系統のバトルスタイルかと思えば、実際はクロスレンジでも戦える。
オールマイティーに戦えるのだろう、ザ・ヒーローの振るう剣に的確に対応してくる。
首筋狙いの突きはしゃがみ込みつつ躱して、あまつさえ反撃の横薙ぎ一閃。
数十合の切り結びが秒単位で行われる。
互いの武器が虚空を縦横無尽に駆け回り、常人から見ると何をしているかさえ把握できないだろう。
125
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:08:36 ID:COLbxplE0
「まだだっ!」
少年が攻め手を変える。
大雑把な振りかぶり、それまでの繊細な斬撃とは打って変わってたものに、ザ・ヒーローは一瞬躊躇する。
とはいえ、一瞬の硬直は傷を負うまではいかず、少年の振るった刃は受け止められた。
受け止められると、すぐさまに少年は次の動作にシフトし、体を縮こませ、足を振り抜いた。
流れるように放たれた蹴撃はザ・ヒーローの腹部に直撃し、大きく吹き飛ばす。
距離が、空く。再び氷槍が飛んでくる。
予測の通り、虚空に生み出された氷槍が視界に入った時、ザ・ヒーローは既に離脱していた。
ザ。ヒーローはジグザグに走りつつ、時に剣で氷槍を撃ち落としながら徐々に距離を狭めていく。
「強いな、君は」
自然と口から漏れ出た言葉は、ザ・ヒーローの心からの称賛だ。
少年は強い。きっと、それは過去の自分よりも。
この齢でこれだけ強いと言うことはこの先、もっと伸びていく。
崩壊後の東京でも自分を曲げずに生きていけるだろう。
すなわち、大切なものの喪失を回避できる力があるということだ。
「僕も君のように強かったら――」
懐かしむように言葉が勝手に漏れ出していく。
郷愁、なのだろうか。こんな終末の箱庭でも善性を失わない少年に対して抱いたのは。
「大切な人達を護れたのかもしれない」
「………………は?」
失ってしまったもの。そして、手に入れたもの。
両者は不等号が成され、比率は片方へと比重している。
「僕は――――世界を選んだから、全部失くしちゃったんだろうな」
ザ・ヒーローは、英雄は、総てを受け入れ、総てを壊した称号である。
126
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:09:15 ID:COLbxplE0
■
「喝采せよ。喝采せよ」
世界のどこかで誰かが囁いている。
運命の夜、夢の始まり、神の終わり。
何回目か数え切れない終末の始まりを、祝福する。
「ああ、ああ、素晴らしきかな。 第一の夜を盲目の英雄が駆けるのだ。
現在時刻を記録せよ。 クロック・クラック・クローム」
駆ける、駆ける、駆ける。
黄金螺旋の果てまで駆ける青年が一人。
それは愚者。それは運命の生贄。それは中庸。
虐殺の英雄。
世界にして終焉の担い手であった英雄。
彼は黄金螺旋の果てまで駆ける。
一歩、一歩踏み締めて。
かつても、今も。
終焉を目指して。いと高き場所にある終焉を求めて。
「世界の望んだ”その時”だ、ムーンセルよ、導くがいい。
黄金螺旋の果てに、我が夢、我が愛のかたちあり」
しかし、頂上にまだ残っているものがあると誰が決めた。
かつてはあった。最後の希望があった。
今はない。何も、何も。
青年が望むものなんて、もうこの世界にはどこにも残っていないのだろう。
■
それは、天樹錬がかつて選ばなかった選択肢。
世界か、少女か。
錬は少女を選んだ。
悩んで、悔やんで、信じて。
フィアの笑顔が自分にとって何よりも大切で尊いものだと気づいたから。
見知らぬ大勢を切り捨てて、少女の幸せを望んだ。
恐怖に揺れる人々を尻目に、たった一人、君を護る為なら、と。
罪業は深い。いつか自分達は裁かれる時が来る。
最後は断頭台に首を落とされるのが定めだ。覚悟はできている。
127
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:09:37 ID:COLbxplE0
「どうして」
そして、眼前の青年は世界を選んだ。見知らぬ大勢の為に大切な人の幸せを諦めた。
見知らぬ大勢の悲嘆をどうしても見過ごすことができなかったのだろう。
その結果、彼はもう後戻りできない領域にまで到達してしまった。
奪ったものが無意味に、無価値に沈まないように。
「どうして」
嗚呼、こんな問いかけに意味なんてないのに。
錬にだってわかっている。問いかけたところで、彼が救われることはない。
最後まで貫いた以上は、彼は止まらないのだ。
致命的なまでに分たれた二人が何を語ろうが、結果は変わらない。
「どうして、だったんだろうな」
「……っ!」
それでも、口からは思いの丈が漏れ出した。
錬は我慢ができなかった。その声を聞いた瞬間、悲痛な表情が抑えきれない。
青年は疲れて、もう歩けないような声で吐き捨てるように呟いた。
それに対して返答をしないということは到底できない。
だって、彼は別の道を進んだ自分だから。人々の営みを壊せなかった、天樹錬だから。
「どうして、そんな顔をしているんですか」
怒りか、悲しみか。彼にこびりついているものが多すぎて絞りきれない。
悲しみ、苦痛、恐怖、後悔、諦め、総てが彼にまとわりついている。
顔中の神経を刺激しているのは何かさえ、錬にはわからない。
そして出来上がるのは、怒りと悲しみが中間にあるような、強張った無表情だった。
128
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:10:05 ID:COLbxplE0
「そんな顔をするまで、戦って」
青年は地を縮めたかのような速度で一気に距離を詰め、必殺の瞬撃を振るう。
錬は矢継ぎ早に放たれる閃光を捌き続ける。
一を捌けば数十に。数十を捌けば数百に。
無限に増えていく斬撃の応酬は、さながら盤面のない陣取りに等しかった。
「そこまで疲れ果てたなら……っ!」
途中まで出かけた言葉は剣劇の音に掻き消える。
だが、消えてよかったのかもしれない。
――世界なんて捨ててしまえばよかったのに。
そんな残酷なこと、彼に対して言えるはずがなかった。
涙を明日の光へと変えたい。
けれど、結局は何も変えれないまま、英雄へと堕ちてしまった。
涙は涙のまま。失った彼自身の明日はもうどこにもない。
「……たぶん、どの選択をとっても、僕は全部失ったと思う。
どれだけ抗ってもこの結末は必然なのかもしれない」
「何を、言って」
「もう、今の僕には何も残っていない。
世界の為に、人々の営みを護る為に……大切だったモノを犠牲にしたんだ。
その犠牲の価値が下がらないように、僕は破綻の一切を終わらせる、
犠牲が無意味にならないように。ただそれだけが、僕の存在意義だ」
「そんなの、間違っている! 殺して! 殺されて! それで戦い続けるんですか!
それなら……あなたは!」
彼自身がどこにもいけないまま、死んでしまう。
無限に積み重ねた屍が彼を永遠に縛り付けるのだ。
青年の末路は“英雄”である、と。
「いつかは終わるさ。敵を皆殺しにすれば戦いは終わる」
喪失に報いる為に永遠に戦い続ける英雄。
数分の邂逅にも関わらず、錬は眼前の青年に酷く共感を覚えていた。
自分もシティ・神戸を存続させる選択を取ったらこうなっていたのかもしれない。
フィアの犠牲が価値なきものにならないように。
大の為に小を捨てる。判断基準に価値は存在しない。
ただ、多くを救えるなら、と。
129
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:10:33 ID:COLbxplE0
「だから、君も世界も運命も総て――――僕が終わらせる。
もう二度と、誰もが間違えることのないように」
「終わらせるもんか!」
その決断がどれだけ重いかなんてわかっている。
他ならぬ錬だからこそ。
世界を犠牲にして一人の少女を生かすことを選んだ自身だからこそ、安易に否定なんてできない。
貫いてしまったからこそ、もう後戻りができない。
それでも、その決断を許容することは錬自身を否定することになる。
自分も選んだから。大切な少女の幸せを奪わせないと誓ったから。
少女を護る為に貫いた過去を無意味にしたくないと願っている。
その願いだけは、誰にも譲らないし奪わせない。
「あの子を犠牲にして世界を救っても、意味がない!」
子供の癇癪だ、こんな言葉。他の人達から見ると失笑ものの言い分かもしれない。
「あなたからすると、僕の言葉なんて到底受け入れられないものだけど!
それでも、僕にとってたった一つの真なんだ! 僕はこの選択を、曲げない!」
けれど、いつだって、どんな時だって。
引き金を引くのは心底の願い――成し遂げたいという強い意志だ。
「…………やっぱり、君は強いな」
青年の口元がほんの少しだけ、緩んだ気がした。
それは錬の見間違えだったのか。どちらにせよ、錬はもう迷わないし、迷えない。
フィアを護る。その為には眼前の“自分”を踏み越えなくてはいけないから。
130
:
サイハテの英雄達
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:10:49 ID:COLbxplE0
「けれど、僕は――英雄だ」
錬も、青年も。互いに選んだ結果に報いる為に生きている。
折れてはいけない、と。半ば強迫観念染みた不屈を胸に、武器を振るう。
「僕も彼女にとっての英雄で在りたい。だから、ここで……!」
「それを理解した上で言う。勝つのは僕だ」
諦めたのは世界か、それとも自分か。
問いかけは、まだ返ってこない。
「行くよ、英雄」
「来なよ、英雄」
自分が夢を妥協できる大人だったら。
世界が本当に悪と汚穢に満ちていたら
きっと、救われたのかもしれない。
『C-6/流9洲市街地/一日目・深夜』
【結城友奈@結城友奈は勇者である】
[状態]:身体にタタリの跡(タタリの症状自体は沈静化している)、精神疲労
[装備]:讃州中学の制服
[道具]:基本支給品一式、勇者システムのアプリ@結城友奈は勇者である、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:みんなと協力し、殺し合いを止める。
1.錬と一緒に讃州中学に向かう。
2.勇者部のメンバーとは一刻も早く合流したい。
3.タタリは……?
[備考]
参戦時期は勇者の章5話冒頭あたり。
勇者システムのアプリは基本支給品のタブレットにインストールされています。
【天樹錬@ウィザーズ・ブレイン】
[状態]:健康
[装備]:フロストブラッド@CODE VEIN
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:フィアを探し、保護する。
1.フィアの捜索を最優先。けれど友奈も放っておけない。
2.できれば殺し合いはしたくないので友奈の基本方針に協調。
3.ヘイズや祐一とも合流しておきたい。エドも早く保護しないと。
4.もし、仮に、万が一、フィアが死んでしまったら……
[備考]
参戦時期は少なくとも四巻以降。ディーやセラ、イルとの面識の有無は以降の書き手に任せます。
友奈から勇者部メンバーについての簡単な紹介を受けました。
【ザ・ヒーロー@真・女神転生】
[状態]:健康
[装備]:明神切村正@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:総てを殺す。
1.終わらせる。
[備考]
参戦時期はニュートラルルート
131
:
◆5ddd1Yaifw
:2020/04/19(日) 12:11:08 ID:COLbxplE0
投下終了です。
132
:
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:02:40 ID:ZY5UTb/k0
お久しぶりです。突然ですが、名簿の「イリュージョンNo17」を「サクラ」に変更したいと思います。
というわけでサクラを予約して投下します
133
:
夜に駆ける
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:03:28 ID:ZY5UTb/k0
伸ばし掛けた腕を、銃弾が貫く。
飛び散った血と肉片が、視界を赤く染める。
痛みに歯を食いしばり、堪えきれずに膝をつく。
声の限り叫んでも、祈りは届かない。
奇跡は起きない。
神さまなんてどこにもいない。
目の前には、燃え盛る炎と、数えきれないほどの兵士と。
悲しそうな、あの子の笑顔。
▼ ▼ ▼
134
:
夜に駆ける
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:04:49 ID:ZY5UTb/k0
吹き付ける風は、切り裂くような冷気を孕んで、心地よかった。
少女は小さく白い息を吐き、たなびく長い髪を掌で抑えた。
腰かけていた細い手すりの上に立ち、ゆっくりと視線を巡らせる。地表からの高度およそ200m、彼女の立つ場所を外から見たならば、夜闇の只中に聳える漆黒たる城の威容を目にすることができただろう。すなわちそこは『運命の城』。エリアF-4に位置する大型遊園地フォードランド、その中心に聳える西洋建築の城だ。夜に溶けるような黒色の壁から突き出た保守作業用と思しき小さな足場の先、細い尖塔の上からは人気のない広大な廃墟の街と、眼下に広がる場違いなまでに豪奢な人工照明に照らされた遊園地を一望することができる。
「悪趣味なものだ」
呟きには少なからず嫌悪の感情が滲み出ていた。
閉鎖空間での殺し合いを強いておいて、運ばれた先がこのような場所とはずいぶんと皮肉が利いている。装飾用の色とりどりのネオン管も、陽気な曲を奏でる音楽演奏機械も、眩い光と共に回る観覧車やメリーゴーランドも、大小さまざまな看板とそこに描かれたマスコットキャラクターも、何もかもが性質の悪い冗談としか思えない。
こんなものを用意する必要がどこにあるというのだ?
そんな疑問を抱くのも、ある種当然と言えるだろう。
「まあ、文句をつけるような筋ではないが」
再度呟き、風に揺れるスカートの裾を整える。飾り気のないスカートもそれを押さえる手も、闇に溶けてその姿をおぼろげなものとする。
夜を搾って塗り固めたような真っ黒なワンピースに、同じ色の手袋が一揃い。胸の前にかき合わせた長い外套も黒なら、スカートの裾から覗く靴下もその先の靴も黒。
全てが黒づくめのその中で、ただ、手袋の縁から僅かに露出した肌だけがコントラストを為すように白い。
……いっそ、肌に墨でも塗るか。
などと冗談めいて考えたのは何時だったろうか。それを聞く相手も、返す言葉も今は彼女の傍にはなかった。
僅かに緩められていた口元が引き結ばれる。冷たい夜気と同じくして、少女の纏う気配もまた怜悧なものへと変化した。
唐突な異常事態、殺し合いの強制。
それに対する少女の行動は、既に決定されていた。
135
:
夜に駆ける
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:05:15 ID:ZY5UTb/k0
少女の記憶は炎に包まれている。
それは消えない痛みとなって、常に少女と共にある。
最初は、そう。同じ年頃の女の子だった。まだ幼かった頃の少女は、同じく幼い少女と出会い、囚われの身であった彼女を救おうとした。
その結果がどんなものに終わったかなど、詳細を記すまでもないだろう。
自らの無力を悟り、多大な痛苦を味わわされ、交わした約束さえ守ることができなかった。自分の出会ったその少女が、滅び行く人類を瀬戸際で支えるための必要な犠牲であったのだと、理屈の上で理解しても感情が納得することはなかった。
ならばもう後は落ちていくだけ。坂を転がり落ちる雪玉のように、後悔と執念は徐々にその速度と質量を増して、今や止めようのないところまで行き着いてしまった。
生贄となる魔法士たちに救済を。人よ、その過ちを自覚せよ。
ただそれだけを願い、少女は自らを『賢人会議』と名乗った。誰もが保身に目を塞ぐ世界の中で、それはおかしいと声を投げかける賢人たらんと願った。
ならばこそ、少女───サクラの選ぶべき道は決まりきっている。
「私はこの殺し合いに……《願い》を叶える試練に乗る」
死の気配を湛えた男の言に嘘はないと、何故か直感した。そしてそれは、この景色を見ることで完全な確信へと変わった。
《空》が、そこにはあった。
見上げた先には夜空があって、まばらな雲と浮かぶ月と、星々の輝きがあった。それは投影スクリーンに映し出された偽物ではなく、大気組成と光学的な空間識覚によって本物であると判定された。
永遠に失われたはずの空だった。人類が滅亡に差し掛かり、魔法士たちが犠牲にされる最たる所以、それが青空の喪失だった。
ならば、サクラは手に入れなければならないだろう。
今ここには、魔法士たちが死ぬ必要のない世界が広がっている。
それを自分が元いた世界にも適用する。そのためならば、たかが数十の命など省みるべきではない。
既に我が手のひらは、幾百幾千の血で汚れているのだから。
136
:
夜に駆ける
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:05:36 ID:ZY5UTb/k0
「それでも貴方は……貴方達は否と止めるのだろうな」
名簿にはサクラの見知った名前がいくつか存在した。
メルボルン脱出に際しての協力者である黒沢祐一に、彼の連れ人であるデュアルNo33とセレスティ。知り合ってから間もないが、少なからぬ親交を重ねた者たちだ。
彼らとの日々は短くとも濃密で、瞼を閉じれば脳裏にその情景が浮かんでくるほど。
そう、それは変えようのない事実ではあるのだけれど。
「だが、それでも。
それでも私は明日が欲しい。子供たちが殺されることのない、当たり前の幸福を享受できる明日が」
それだけを誓った、既に自らの幸福など擲った我が身はそれだけのためにある。
正しいと信じているのではない。自分に正義がないことなど最初から知っている。それでも私は、あの子の───
───うん、待ってる。
世界のどこかに、必ず、あの子の居場所を作るのだと誓ったのだから。
夜の街を睥睨し、サクラは一歩を踏み出す。
中空へと投げ出された体は、重力に従って自由落下を始めるも、その顔に恐怖の色はない。
魔法士たちの生きる世界のため、サクラは永劫止まらぬ歩みを開始するのだ。
……何故か。
何故か、「人類の」生きる世界のためとは、思うことができなかった。
137
:
夜に駆ける
◆87GyKNhZiA
:2020/07/26(日) 21:06:19 ID:ZY5UTb/k0
『F-4/大型遊園地フォードランド・運命の城/一日目・深夜』
【サクラ@ウィザーズ・ブレイン】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝し、青空を取り戻す。
1.目についた参加者から皆殺し。
2.祐一、ディー、セラと出会った場合には……
[備考]
※5巻、セラにマリアとの繋がりがバレる前より参戦。
138
:
名無しさん
:2020/07/26(日) 21:06:44 ID:ZY5UTb/k0
投下を終了します
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