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キュトス71姉妹2
420
:
言理の妖精語りて曰く、
:2017/01/24(火) 03:28:22
しかし、幼いコルセスカは、ことここに至っても、決して諦めようとはせず、必死に訴えを続けたのだ。
「いいえ、私が入れたのは、チリソースではありません!」
コルセスカは、大好きなみんなに自分の思いを分かってもらおうと、大きな声で叫んだ。
自分は、決して大事な【姉妹】に嫌がらせをしようとしたのではない。
前世の悪い夢を見た八つ当たりが、したかったのでもない。
自分は、ただ、みんなに、元気になって欲しかったのだ。
辛味は、いつも、自分に元気をくれた。
今朝の辛い夢の記憶でさえ、辛味があったから、乗り越えることが出来た。
コルセスカにとって、辛味こそが元気の源であり、言うなれば、愛そのものでさえあったのだ。
「では、何だと言うのですか?」
だが、それに応えるヘリステラの態度が、あくまで冷静な裁判官のものであることに、その時の少女は、気付くことが出来なかったのだ。
気付いてさえいれば、あるいは、しおらしげな態度をとって、減刑を勝ち取ることが出来たかもしれなかったというのに。
少女は、自分に、物事を分かりやすく客観的に伝える力が、まだ備わっていないことに気付かず、語り続けた。
「私が入れたのは、ハバネロです!みんなに元気になってもらおうと、50万倍濃縮の【ハバネロ姉貴】を【猫の国】から取り寄せて、入れました!」
少女は、胸を張って、そう言った。
自分は、決してチリソース(ふぬけたこうしんりょう)などは入れていない。
誰が、大事な【姉妹】にそんな『手抜き』をするだろうか?
自分は、可能な限りの激辛(あい)を、あの料理に加えたのだ、と。
少女は、【姉妹】たちに自分に思いつく限りで最高のプレゼントを贈りたかったのだ。
自信を持って、自らの行為を誇り高く語った少女。
それはまるで、民衆を救わんと現れた救世の英雄のようであった。
「…………言いたいことは、それだけですか?」
しかし、当然ながら、常人はおろか【姉妹】たちの大半と価値観および味覚を共有しない少女の訴えは、理解されることはなかった。
そして、ヘリステラが、軽く手をふった次の瞬間、星見の塔に、雷が落ちた。
比喩抜きで。
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