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英国(第二次世界大戦勃発直前)がファンタジー世界召喚されますた。

280HF/DF ◆e1YVADEXuk:2018/03/24(土) 20:10:57 ID:xcVmLF4g0
既に車は止まり、揺れの止まった車内には日本製エンジンが立てる快調なアイドリング音だけが響いている。周囲の住民たちは相変わらずこちらを遠巻きにして観察するだけで、それ以外の行動を起こすことはない。

「行ってみよう、見れば分かる」
「大丈夫ですかね?」

私の一言に不安げに返答するブラウン、一方ウールトンは黙ったまま後部のガラス窓越しに群衆の様子を仔細に観察していた。
その彼が振り向き、あの落ち着いた口調で話し出す。

「大丈夫、彼らは何もしてきませんよ」
「何か掴んだのか?」

彼は私の問いかけに頷き、再度口を開く。

あの住民たち、ああ見えて実に統制が取れてます、パレード中の近衛連隊並みとまではいきませんけどね。
多分前列の中にちらほら見える強そうな連中、恐らく軍人かそれに相当する役職にある、あるいはあった者たちが抑えているんでしょう。だからここまでの道中でも統制を外れて勝手な行動に出る者が現れなかったんです。
あと年寄りや小さな子供が見当たらないでしょう? 安全のため列の後方か家屋の中に留められているんです、そうに違いない。

そこまで一息に言い切ると最後にこう付け加える。

「彼らは待ってるんですよ、我々が姿を現すのを」

その一言を最後に無言となる私たち、話の途中でブラウンがエンジンを止めた(残り少ない燃料を節約するためだ)ため、先程とは違い車内はしんと静まり返っている。そして私を見つめる二つの視線。
もはや我々はLRDGの一員ではなくもちろん軍人でもないのだが、彼らの心中では決断するのはこの私の役目となってるようだ。
もっとも、これはこれでそう悪い気分ではないのだが。

「では、期待に応えるとしよう」

それだけ言うとドアノブに手を伸ばし、引く。小さな音と共にドアが開き、隙間から外の空気がそよ風となって入ってくる。
砂漠の乾き熱したものとは明らかに違う、水分と草花の香りを多分に含んだそれが私の鼻腔を刺激した。
他の二人も同様にしたようで、狭い車内はたちまちのうちに未知の草花の香りで満ちる。その空気を深く吸い込むと一気にドアを押し開け、車外へと出ると降り注ぐ陽光の暖かさを肌で感じつつ周囲をぐるりと見回す。窓越しに車内から見た光景がより鮮明な形となって目に飛び込んできた。


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