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"傷だらけの手記"
3
:
ライア
:2023/01/21(土) 14:31:29 ID:myyZEdwU0
[Birth of Riar](2)
父は元建築家で税を納めつつも部下達へ過剰労働を強い、優秀な建築家の多くを殺めた罪で堕とされた。
顔立ちの良さから追剥ぎ集団の頭補佐を務め、日々地下街で肥えた者を襲い金品や骨を売り捌いている。
母は元上流貴族として贅の限りを尽くしたが、暗黙の了解を破り亡命を企んだ為に堕とされた。
父の美貌に惚れ子を成すも結局は男遊びに耽り、生まれたばかりのライアは世話する事も無く乳を与えられた事も無かった。
幸い使い潰すにも足りぬ程の人口だった故か、俺は小さな孤児院へ預けられ命を繋ぎとめることとなる。
この町では愛情は無縁で死は隣り合わせ。赤子の頃から、ライアはそれを身を以て学んでいた。
齢4つになった頃。孤児院の同居者である子供達からも邪険にされていたものの、生活にも慣れ少しずつ勉学にも慣れてきた頃合い。
奴隷の如く日々仕事をこなし、たまの休みは地上へ出稼ぎに行く。
安息など許されない生活ではあったが、常に死の危険がある一室よりはまだマシだった。
孤児院、といっても大して衣食住が揃っている訳ではない。
幼子を匿い、寝床を与えるのが精一杯。清掃や洗濯は居住者が宿代の代わりとして行う事になっている。
宿主の爺さんは70近い高齢、それに隻腕のひ弱な人物だったが、物乞いとして得た多くの金や食料を分け与えてくれた。
片目を潰された子、奴隷の烙印を押された子、尊厳を奪われた子、自身と同じ身寄りのないスラムで出来た子....
この孤児院には様々な子がいたが、爺さんは誰一人として見捨てなかった。
一段と暗い雰囲気を孕み、同じ孤児院の者たちにすら認められなかったライアでさえも。
幼子の俺には、その意味が解らなかった。
「じいさん...なんでおれたちたすけてくれるんだよ。...うでもないし...ごはんもおれたちにあげちゃうじゃん。」
何気なく、そう聞いてみた時があった。
何も知らぬ自分には、自分が生きる手段を捨てる理由が理解できていなかった。
「....儂も、この国には散々苦しめられてきおった。
だからお前たちには、辛いことがあろうて...これから先少しでも幸せに生きて欲しいんじゃよ。
いつか、国を出てくれる子がいると信じておる。宿を持つのも、昔からの夢でなぁ....先立つ爺の我儘じゃ。」
この国、このスラムではそんな事はご法度だ。
一人でも亡命者が出れば、様々な裏が露わになり国は一気に瓦解する。
この孤児院が町の隅にある警備の薄い地域でなければ、一言でも伝わった途端王都から焼き討ちのために兵士たちが送られる事だろう。
言葉は完璧に解らないながらも、俺は爺さんの思想を理解した。
この爺さんは自身の命を顧みず、未来ある俺達を助けようとしてくれていた。
国の奴隷として諦め伏すのではなく、陰でこつこつと明かりを灯してくれていた。
それを聞いた途端、俺は涙していた。
爺さんの言葉は、今の自分を創った一部となっているだろう。
この日以来、より一層皆の為に働いた。
頻繁に地上へ出て、仕事の合間に狩りや採取をして皆の腹を満たした。
爺さんに教わりながら、自分が子供達を世話する事が増えた。
地上で観た剣士を見様見真似し、独学で鉈を振り身の守り方を覚えた。
子供達を攫おうとする奴等は、容赦無く刃を向け追い返した。
血に濡れ、尊厳を奪われようとも、一日でも早く皆を此処から解き放てるなら。
爺さんの与えてくれた夢が、いつか実を結ぶように。
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