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イ結ぶ這鏡のようです
1
:
名無しさん
:2019/01/04(金) 19:30:55 ID:9XcUMWvA0
おわはじ祭り作品です
微グロ注意
261
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:54:43 ID:losd25xM0
薄桃色にかかやいた、まばゆい光<生命>が――
.
262
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:55:14 ID:losd25xM0
.
263
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:55:56 ID:losd25xM0
落下する感覚。
光から遠ざかり、遠ざかり、やがてはその痕跡すら
信じられなくなるほどの長い長い落下。
上下も左右も前後も曖昧で判然としないのに、
ただ落ちていることだけは解る。
一切の灯りが根絶された暗闇の裡をぼくはいま、落ちている。
そして、上昇してもいる。
自由落下。しかし、上昇は意識によって。
遅々として進まず、時の経つにつれ耐え難き重みをいや増していく“自己”。
落ちれば楽になる。それは解っている。それが解る。
なのに、それなのにぼくは、昇っている。
なぜ?
もう、諦めてしまってもいいはずなのに。
264
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:56:27 ID:losd25xM0
生命。
逝ってしまった人の言葉。
それがぼくを、昇らせる。
留まらせる。
落ちることを、阻ませる。
願われたから――?
“命令”だから――?
いや……。
「そっちは、辛いよ……」
.
265
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:57:11 ID:losd25xM0
声。
誰かの。
何かの。
「苦しいよ、痛いよ、悲しいよ……」
上下左右のないこの場所から。
ぼくが抗うその先から。
落ち行く向こうのその底から。
揺れる、声。
誘う、声。
「寂しいよ……」
.
266
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:58:08 ID:losd25xM0
上は、寂しい。
世界は、寂しい。
知っている。
そんなことは、知っている。
ぼくは、ずっと――。
一五年間。
寂しかった。
一人で、寂しかったんだ。
.
267
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:58:44 ID:losd25xM0
「ここにいようよ……」
――そうだ。
どうして抗う必要がある。
ずっとここにいればいい。
落ち続けていればいい。
振り返ってしまえばいい。
それがきっと、ぼくにとって、一番――
.
268
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:59:10 ID:losd25xM0
「いい子――」
聞こえる――
「大丈夫だよ、そのまま、そのままおいで――」
ぼくにも、聞こえる――。
「ドクオくん――」
お姉ちゃんの声が、聞こえる――。
.
269
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 20:59:37 ID:losd25xM0
ドクオさぁぁぁぁぁぁぁん!!
.
270
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:00:14 ID:losd25xM0
空が、開いた。
光が、かかやきが、空から差し込んできた。
それは腕となって――手となって、伸ばされていた。
指の一本一本が、その先の先まで、伸ばされていた。
ぼくに向かって。
しかし手は、指は、ぼくへと届かない。
探り、動かし、どんなに伸ばしても僅か、もう僅かが、届かない。
ぼくから掴まなければ、届かない。
.
271
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:00:36 ID:losd25xM0
「いいんだよ……」
お姉ちゃんの、声。
「もう、無理しなくて、いいの……」
やさしい、やさしい、声。
「楽になって、いいんだよ……」
大好きな、声。
でも。
.
272
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:01:27 ID:losd25xM0
「“命令”、したんだ」
命令……?
「来るなって。そこで、笑ってろって」
彼女は“笑う”わ。
いまも、これからも、ずっと――。
「そうかもしれない。だけどあいつ、ここまで来たんだ。
来るなって言ったのに、でも、来たんだ」
来たから、どうするの……?
.
273
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:01:59 ID:losd25xM0
「……お姉ちゃんは、どう思う?」
あなたは、どうしたいの……?
「……ぼくには、解らない。ただ――」
ただ――?
「いまは、あの手を、払いたくない。だから――」
だから――?
「……だから、ぼく、行ってみるよ」
.
274
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:02:34 ID:losd25xM0
……そう。
それじゃあ……。
気をつけて、ね……?
「……うん」
.
275
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:02:58 ID:losd25xM0
声が、消えた。
お姉ちゃんはもう、“いなかった”。
手を伸ばす。
空に向かって。
光に向かって。
あいつの伸ばしたその手に、指に向けて。
“生命”を、つかむようにして――
.
276
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:03:29 ID:losd25xM0
最後に一度、お姉ちゃんがいるはずの場所を顧みて――
.
277
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:03:53 ID:losd25xM0
.
278
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:04:38 ID:losd25xM0
「ボク、大家族の生まれなんです。
ひいおじいちゃんがいて、ひいおばあちゃんがいて、
おじいちゃんもおばあちゃんも、お父さんもお母さんも、
お姉ちゃんも三人いて。末っ子なので、下はいませんでしたけど」
空が、見えた。
「みんな、疫病に罹って死にました。ボクだけを残して。
誰よりも頭の良かったシューねえちゃんも、
男の子にも負けなかったヒーねえちゃんも、
とっても綺麗だったクーねえちゃんも、みんな最後には、
元気だった頃の面影もないくらい酷い有様になって、死んじゃいました」
地面に、横たわっていた。
「ボクも、同じように死ぬんだと思いました。
でも、ボクは死にたくありませんでした。
あんなふうになって死ぬのはいやだって、思っちゃいました」
全身が濡れていた。
「どうしたら死なないでいられるだろう。
どうしたら神様のお怒りを受けないで済むだろう。
幼いながらも真剣に、考えて考えて、考えました。
それで、思ったんです。いい子にしていれば、死なないで済むんじゃないかって」
隣の女も、濡れていた。
279
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:05:21 ID:losd25xM0
「ボクは、いい子になろうとしました。大人の――いいえ、
誰の言うことも聞いて、機嫌を損ねないで、いつも明るく笑顔を振りまく、
そんないい子になろうとしました。――気付いた時には、こんなになってました」
女が隣に、座っていた。
「死ぬのが怖かったから。でも――」
女がしゃべっていた。
「ドクオさん、覚えていますか?
お姉ちゃんが亡くなった一週間後、ドクオさんが這ナギから引っ越される時、
“元の歴史”であなたがみんなに言ったこと」
知らない女。
「『神なんていない。病気なんてぼくが治してやる。
全部、全部、治してやる。誰一人、誰一人だって、
死なないですむようにしてやる』」
どこか懐かしい女。
「この言葉を聞いた時、ボクは救われた思いが……ううん。
大袈裟でなくあの時ボクは、救われたんです。
それは、内藤先生の言葉の受け売りだったのかもしれない。
けれどなんでもできて、誰よりも頼りになった先生が言うのではなく、
ドクオさんが……ボクよりちっちゃかったドクオさんが、そう言ったこと。
それがボクにとって、どれほど衝撃的だったことか」
280
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:05:58 ID:losd25xM0
泣きそうな顔をして。
「ドクオさんがいなくなって暫くしてから、
ボクも這ナギの外から来たご夫婦に引き取られて行きました。
そこでボクは、ボクにはもったいないくらいのご厚意を受けて、
勉強すること、大学に通うことを許してもらいました。
その甲斐あって看護師の資格を取ることもできて、
勤め先を見つけることもできました。
這ナギに居た頃には想像することもできないくらい、大きな病院でした」
けれど泣かない女。
「そこでボクは、あなたに再会しました」
笑う女。
「ドクオさんは気が付いていない様子でしたが、ボク、
ドクオさんと同じ所で働いていたんです。失敗ばかりで、
毎日先輩に叱られていますけど……けど、ドクオさんのことは、見てました。
あの時の言葉通り医者になっているあなたを、
自分のことみたいに誇らしい気持ちで、勇気をもらうつもりで、見てました。
だけど――」
281
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:06:32 ID:losd25xM0
空は、静かだった。
「よからぬ噂を耳にしました。
“あの事故”の責任をあなた一人に押し付けるつもりだという噂。
押し付けて、非難を集中させて、それで、それで――自殺させて、
責任の所在をうやむやにしてしまうつもりだっていう、噂」
女の声だけが、聞こえていた。
「本当のところは、ボクにも解りませんでした。
ボクは一介の看護師に過ぎませんし、病院としてもこの話題は禁句扱いでしたから。
でも、ドクオさんがお休みを取ったこと、身辺の整理をしていることは、現実でした。
ここへ――這ナギへ、帰郷してきたことも」
身体を起こした。
「迷いました。ボクにそんなことをする権利なんてないと思いましたし。
ぎりぎりまでずっと、迷っていました。あなたを“助けよう”だなんて、
そんな大それたこと、ボクなんかがしていいはずないって。
でも……あなたが湖に身を投げた時、身体が勝手に動いて――」
282
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:07:00 ID:losd25xM0
手を少し、上げた。
「だ、だからですね、その……えへへ、なんて言えばいいのかな……。
ボク、ドクオさんはすごいと思いますし、あれは仕方なかったんだと……
いや、それも違うかな。え、えと……えへ、えへへ、どうしよ、
だ、だからですね、ボクが言いたいのは――」
「キュート」
女の手に、触れた。
「ぼくは、生きても、いいのかな……?」
.
283
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:07:24 ID:losd25xM0
o川*゚ー゚)o「生きましょう?」
.
284
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:07:45 ID:losd25xM0
ヒメミの湖が“愁い澄んだその瞳”に、
かかやく太陽を映し出していた――
.
285
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:08:18 ID:losd25xM0
本編はここまで。後ほどエピローグも投下します
286
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:56:39 ID:losd25xM0
生
ドクオさんはVIP市へもどるとすぐに、
ボクたちの勤める病院へ向かいました。
係るあらゆる批判の、その矢面へと立つ為に。
ドクオさんは当時、あるプロジェクトチームのリーダーを務めていました。
官民一体で行われたそのプロジェクトは、
免疫不全によって一般的な生活を送れない人々を快癒、
社会復帰させる目的で発足されたものでした。
国外の製薬会社とも協力し、新薬の開発に日夜勤しんでいたそうです。
新薬の開発は慎重の上にも慎重を期して行われました。
ですが上層の方々は開発チームのやり方に難色を示し、
逸早く結果を出すことは求めたそうです。
これは後から知ったことですが……
ドクオさんが協力したという国外の製薬会社というのが国営色の強いもので、
その国の政府筋が更に周辺諸外国に対して新薬にまつわる
諸々の契約を既に締結してしまっていたようです。
契約の日時までに実物がなければ困る。
たぶん、そういうことなのだと思います。
287
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:57:09 ID:losd25xM0
そして新薬は充分な臨床実験を経ぬまま実用化され、
国内外へと広まり――結果、大勢の人が、亡くなってしまいました。
亡くなってしまった人々の数は、
二○○○人とも、三○○○人とも言われています。
もともとの症状が症状だけに正確な数を図ることは困難ですが、
少なくともこの数字を下回ることはありえず、実際はその二倍、三倍……
もしかしたら五倍にも、一○倍にも及ぶかもしれないそうです。
ボクみたいな浅慮な者は、この国外の製薬会社や、
実用を急かした人々が責任を負えばいいのではないかと思ってしまいます。
けれど実際は、そうなりませんでした。この会社や会社が在する国を
表立って批難することは、両国間の関係性を悪化させる危険がありましたから。
マスコミにとっても、それは同様でした。
緊密な貿易関係を築いているこの国との関係を悪化させる報道を行えば、
必然的に国内の経済を停滞させることにもつながりかねません。
288
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:57:33 ID:losd25xM0
それは、各マスコミを支えるスポンサーにとっても
浅からぬ痛手を負わせる行為になってしまうのです。
彼らにとって大切なのは真実よりも、自分たち、会社でした。
ボクたちが勤める病院でも、状況は似たり寄ったりでした。
病院そのものを潰す訳にはいかない。被害は最小限に食い止めなければならない。
医師一人を切り捨てることでこの難局を切り抜けることが出来るならば――
考え事態はきっと、おかしくはないのだと思います。
何が大切であるかなんて、そんなの、人それぞれですから。
けれど、ボクにとっては――。
.
289
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:58:10 ID:losd25xM0
『あれでしょ? 両親が離婚して、引き取ったその母親に
毎日暴力振るってたらしいじゃないですか――』
『母親が死んだ後引き取られた先では禄にしゃべんなくて、
何考えてるのかさっぱり解らないような子供だったとか――』
『子供の頃から動物の死骸を持ってうろついてたって――』
『コンプレックスだよ、コンプレックス。
コンプレックスがあるから他人を見下したくって、
医者になったのも結局ステータス目当てでしょ?』
.
290
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:58:47 ID:losd25xM0
テレビのキャスターや識者と呼ばれる人たちが、
勝手気ままにドクオさんのことを語ります。
それは事実である部分もありますし、全くの虚構も混じっています。
いずれにせよニュースでの論調は一貫して、
ドクオさんが如何に悪人であるか知らしめることに腐心していました。
ドクオさんの扱いは完全に、犯罪者に対するそれでした。
子供の頃から今に至るまで、プライベートなんて一切考慮されずに全部、
あまさず、公にされてしまいました。
連日連日ドクオさんの悪名は、全国中で報道されました。
それはきっと、大切なものを守りたい人々の攻撃性が、
過剰に発露された結果だったのだと思います。
彼らの考えは、ボクにもよく解りました。ボクだっておんなじだから。
知ったふうなことを口にする人々の顔面を、思いっきりパンチしてやりたい。
そう思ったことも、一度や二度ではありませんでしたから。
こんなことを思うのは、生まれて初めてでした。
ですが不思議だとは、思いませんでした。
291
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:59:17 ID:losd25xM0
「亡くなってしまった方、その遺族の方々には本当に申し訳なく……」
これだけ苛烈な攻撃を、痛めつけを、いじめを受けてもドクオさんは、
一度だって反論することはありませんでした。投げやりな態度になったり、
怒りを顕にすることもありませんでした。ドクオさんはきっと本心から、
これらの非難が正当なものであると考えていたのだと思います。
だから最後までドクオさんは、生贄の羊<スケープゴート>をやり通しました。
やがてこの事件も風化して、一分も、一秒も報道されることがなくなる、
最後の最後まで。ドクオさんは、やり遂げました。
そしてドクオさんはその役目を終えた直後、入院しました。心の病を患って。
.
292
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 21:59:44 ID:losd25xM0
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」
入院してからしばらくの間は、見ているこちらがつらくなる程でした。
不眠と拒食によって元々痩せ型だった彼の身体は骨と皮だけにまで痩せ細り、
その身体のどこから力が出ているのか暴れまわって自傷を繰り返しました。
「ドクオさん聞いて! ボクがここに居ますから、ここに――!」
ドクオさんが入院したのはボクが勤める病院の系列に当たる所でしたが、
所詮は部外者であるボクには、自由にドクオさんと会う権利はありませんでした。
それでも何度か無理を言って中に入れさせてもらいましたが、
当初ドクオさんはボクをボクと認識することもできない様子でした。
二、三ヶ月が経った頃からでしょうか。
ドクオさんの状態が、比較的安定してきたのは。
この頃からボクをボクと認めて話をしてくれるようになって、
とてもうれしかったのを覚えています。
もしかしたらこのまますぐによくなるかもしれない。
そう思いもしたのですが、現実はやはり、そう容易いものではありませんでした。
293
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:00:12 ID:losd25xM0
ドクオさんは、断続的に発作を繰り返しました。
些細な出来事が切っ掛けとなってドクオさんは、
悲痛な声を上げながら謝り始めてしまうのです。
ドクオさんが誰に、何に謝っているのかは、担当医の先生にも、
看護師の方々にも、ぼくにも、解りませんでした。
きっと、ドクオさん自身にも解らなかったのではないかと思います。
発作の確とした切っ掛けが解らず、退院の許可は先へ先へと伸ばされていきました。
そのまま半年が経ち、三つの季節が過ぎ去り、そして、一年が経過しました。
この時にはもう、発作は殆ど見られなくなっていました。
担当医の先生は、ドクオさんに、仮退院の許可を下さいました。
ドクオさんは、外に出られるようになりました。
だから、ボクは――。
.
294
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:00:39 ID:losd25xM0
「おい、看護師」
「あ、はい! なんでしょうか、先生」
帰りの支度をしている所で、声を掛けられました。
ツン先生。うちの病院でただの一人の女医さんで、とても背が高い方。
声をかけられると思わず、見上げてしまいます。
「お前、休みを取ったんだってな」
「え、えと、はい……」
「このクソ忙しい時に」
「そ、そうですねー……」
「一ヶ月も」
「え、えへへ……」
いつも若々しくてとても綺麗な人だけれど、
ちょっとだけ威圧的な所があって、正直少し、苦手な方。
295
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:01:11 ID:losd25xM0
「まあ、いい」
背の高いツン先生が、長く揃えられたまつげを開いてボクを見下ろし、言います。
「あの男の付き添いだろ」
「……はい」
ボクがドクオさんの下へ通っていることは、院内でも周知の事実となっていました。
そのせいで多少肩身の狭い思いをすることもありましたが、
基本的には問題なく、暮らせていました。おそらくは彼の名前を口にすることが、
この病院において一種のタブーになっていることも関係していると思います。
「行き先は這ナギか?」
「ご存知なんですか?」
「一年前に覚えた」
「あ、あはは……」
「……」
296
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:01:40 ID:losd25xM0
それは、ちょっと、不名誉な覚えられ方かもしれません。
郷土に対するバツの悪さと、先生の無言で見下ろす圧が相まって、
ちょっと、いたたまれない心地でした。
「あ、あのボク、これから寄らなきゃいけない所がありますのでー……」
「待て」
そそくさとこの場から退散しようとしたボクを、先生が呼び止めました。
そのまま脱兎するわけにもいかず、ボクは笑顔を浮かべ、再び先生を見上げます。
「内藤という男を知っているか?」
意外な名前が飛び出してきました。
「内藤先生、ですか?」
「先生、ね……」
含みのある笑いを、先生が浮かべます。
バカにしているような、昔を懐かしんでいるような。
その心の裡に何が浮かんでいるのか、ボクに解るはずもありませんけれど。
297
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:02:32 ID:losd25xM0
「まあいいさ。その先生様に会ったら、こう伝えてくれ」
先生のよく通った鼻が少し、上向きました。
「『答えは見つかりましたか』……とな」
遠くを見るような目つきで、先生はおっしゃいました。
その姿がなんだかまるで舞台俳優さんのように決まっていて、
ボクは一瞬、先生への苦手意識を忘れてしまいました。
「あの、先生は、先生――内藤先生と、どういう……」
「いちいち全部話さなきゃ、頼み事ひとつ聞いてもらえないのか?」
「い、いえ、そんなことは! へ、へへへ……」
ああでもやっぱり、ツン先生はツン先生です。怖い。
「私は現実主義者<リアリスト>で、
あいつは理想主義者<ロマンチシスト>だった。それだけの話だよ」
と思っていたら、以外にも先生は、ボクの質問に答えてくれました。
はぐらかされただけのような感じもしますけれど……。
それから先生は、続いて、ぼそりとつぶやきました。
「ドクオのやつも、ロマンチシストだったんだろうな……」
298
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:03:00 ID:losd25xM0
「あ」
「おっと」
先生がとっさに、口元を手で押さえました。
そしてその直後、共犯者にでも送るような笑みを、ボクへと投げかけてきたのです。
……確かツン先生は、女性に人気があったと聞いたことがあります。
ファンも大勢いるのだとか。たぶん、こういう所が原因となっているのでしょう。
「ま、あの男と付き合うつもりなら、覚悟はした方がいいぞ。
ロマンチシストは御せないからな」
「つ、付き合うって、そんな……」
「アホ、そういう意味で言ったんじゃない」
お前さんはそれを望んでいるみたいだけどな。
先生は意地の悪い口調で、上から言葉を振り下ろしてきます。
ボクは、まともに顔を上げることもできなくなってしまいました。
「一ト月の休暇、せいぜい骨を休めるんだな」
言って、先生は部屋から出ていきました。
ぼくも急いで帰りの支度を終え、病院から出ていきました。
なんだか落ち着かない気持ちを、指先をいじることでごまかしながら。
.
299
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:04:15 ID:losd25xM0
「やあやあこれはドクオさんにキュートさん! お久しぶりですよう!」
「い、いようさん……ですか!?」
這ナギについて一番に出迎えてくれたのは、いようさんでした。
ぐいっと身を乗り出して握手をしてくる姿に、思わず一歩引いてしまいました。
しかし、なんというのでしょう……。昔の、面影が……。
「な、なんだかずいぶん逞しいことになりましたね……」
「はっはっは! ちょっと鍛えたらいつの間にかこんな事になってしまいましてね!
いまでは這ナギのクックル<筋肉男>なんかと呼ばれておりますよう! はっはっは!!」
「あ、あは、あはは……」
「ドクオさんも、よく来てくれましたね!」
「……うん」
いようさんがドクオさんのても握ります。強い力。
ボクは少し発作のことが頭をよぎって、心配になりました。
けれどドクオさんは何事もなく、いようさんの手を握り返しました。
留まった息を、吐き出します。
300
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:04:36 ID:losd25xM0
「では、行きますよう!」
いようさんに従ってボクたちは、這ナギの道を歩き始めました。
這ナギの様子は一五――一六年前と然程変わらず、よく言えばのんびりしているような、
あえてネガティブな言い方をするなら時代に取り残されているような、
そんな空気のままでした。
それでも一年前に比べると、どこかが違うような、
何かが変わっているような、そんな印象も受けました。
どことなく、村全体が明るい――ゆるやかな中にも
活き活きとしたものを感じる――そんな具合に。
確証はありません。ありませんけれど、もしかしたら。もしかしたらですが。
ドクオさんの一年前――“一六年前”の行動が、
この村に大きな影響を及ぼしたのではないか。
大きく変えたのではないか。そんなふうに、思いました。
ドクオさんが、這ナギの大切な何かを救ったんじゃないかって。
.
301
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:04:59 ID:losd25xM0
「さあさ、着きましたよう!」
ボクたちが案内された先で待っていたのは、やはりというべきか、
これ以外にないと言うべきか、這ナギで唯一の医療施設、這ナギ診療所でした。
中に入ると待合室には暇を持て余したお元気なご老人だけが屯していて、
実に平和な……ボクの知っている這ナギ――といった光景が、広がっていました。
一応は診察の体を成しているはずなのに、扉は開放されていて、
診察の様子が丸見えになっているのは、
なんだか少し、抜けすぎている感じもしますけど。
「なーにを言っとる、こんなの病気じゃないわい。
あんたはあれだ、一○○まで生きるよ」
あれ、と、思いました。診察室から聞こえてくる声に。
その声は、ボクの知っている内藤先生のものではありませんでした。
奥の居住スペースに案内してくれたいようさんに、道すがら、疑問を尋ねてみました。
いようさんは少し困ったような顔をして、言いました。
「いや……内藤先生は一○年ほど前に、亡くなりましてね」
「え」
「あ、いや。癌でね」
302
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:05:29 ID:losd25xM0
いようさんはきっと、気を使って下さったのだと思います。
久しぶりに帰郷した(去年のことはおそらく、いようさんは知りませんから)家族に、
いやな思いはさせないであげようと。疫病ではない、ぼくたちから感染ったわけではないと、
そのことだけを告げて、安心させてくれようとしたのだと思います。
けれどボクは、困惑していました。
“あの”内藤先生が亡くなったことに。
明るくて、朗らかで、時々微妙なキザさにみんなの顰蹙を買っていたけれど、
でも、やっぱりほんとは慕われていたあの内藤先生が、亡くなってしまったことに。
それに、ツン先生のこともありましたから。
「それじゃお二人とも、ゆっくりしてくださいな!」
ボクたちを部屋まで案内してくれたいようさんは、
最後に意味深なウインクを送って退室していきました。
……たぶん、なにか勘違いされているのだと思います。
303
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:05:53 ID:losd25xM0
「び、びっくりしましたねー……内藤先生、亡くなってただなんて……」
「……うん」
「……なにか、見えますか?」
「……這ナギが」
「……なるほどなるほど、これは見事な這ナギですねー!
……なーんて、えへへ」
「……」
「へへ、へへへ……」
口を閉ざしました。
ドクオさんは窓辺の椅子に腰掛けたまま、
ボクが笑うのを止めてからもそのまま、外を眺め続けていました。
昼が過ぎて、夕日が差し込み、完全に外の景色が夜闇に隠れてもずっと、そうしていました。
お夕飯の誘いを受けた時にようやくドクオさんは窓の外から目を離して、
誘いを断り、そのすぐ後にはもう、床に入って眠ってしまいました。
彼が無事に眠りにつけたことを確認して、その日はボクも早くに眠りました。
.
304
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:06:13 ID:losd25xM0
這ナギ行きを決めたのは、ドクオさんでした。
.
305
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:06:42 ID:losd25xM0
「こんなとこに来てまで働きたいだなんて、
キューちゃんてほんと、変わってるよねー」
「そ、そうですか? へへ……」
「ミセリが怠惰なだけです。世界人類がみな
あなたのようになってしまったら、それはこの世の破滅です」
「な、なにおう!?」
這ナギを訪れてからもう、一週間が経過していました。
何もしないでいることに耐えられなくなったボクはいようさんと、
内藤先生の代わりにここへ赴任してきたシラヒーゲ先生に頼んで、
看護師としてのお仕事を手伝わせてもらっていました。
懐かしい顔ぶれとも再会しました。
ミセリさんに、トソンさん。東からこちらへ移り住んできた孤児の仲間――家族です。
306
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:07:10 ID:losd25xM0
ミセリさんはなんと、画家さんになっていらっしゃいました。
原色を多用したサイケデリックな絵で……絵心のないボクには解りませんでしたが、
きっと、すごいことなのだと思います。
「キュートさん、正直に言っていいんですよ。
『なにこのゴミ、意味わかんない』と」
「い、いえ、そんなことはー……」
トソンさんはボクと同じ――つまり、看護師になっていました。
この診療所で今現在、唯一の看護師さんです。幼い頃からとても敏い方でしたが、
大人になって会ってみてもその印象は変わりませんでした。
年上のはずのボクなんかよりもずっと、しっかりしていらっしゃいます。
「し、失敬な!? これでもちゃんと生活できるくらいには売れてるんだぞ!」
「なんて極悪なことを。目の不自由な方々に詐欺まがいの
ゴミクズを売りつけるだなんて。これ以上の被害が出る前に
あなたの絵を買ってしまった方々には、腕利きの眼科医を
紹介してあげなければなりませんね。可能な限り早急に」
「ひっど!!」
307
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:07:36 ID:losd25xM0
昔と変わりのないやりとり。孤児たちの中でも二人は特に、
それこそ本物の姉妹のように仲良しでした。
大人になってもその関係が変わっていないこと、なぜかそのことが、
ボクにはとても、嬉しいことのように感じられました。
涙腺が刺激されてしまう程に。
「……キュートさん?」
「い、いえ、泣いてなんかいませんよ?」
.
308
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:08:12 ID:losd25xM0
一六年ぶりに再会したのは、この二人とだけではありませんでした。
這ナギ診療所には、意外な人も訪れていました。
「いまは、事情があって学校に通えない子供や、
子供の時に学ぶことのできなかった大人に勉強を教えているのです。
……あの子が、していたみたいに」
記憶の中の顔つきよりも幾分かやわらいだ表情で、そう、でぃさんは言いました。
「むずかしいものですね、人に物を教えるというのは。
かれこれもう一○年以上やり続けてきましたが、
未だに正解が解らないままでいます」
そう言って微笑んだでぃさんの顔には、
ああ、やっぱり、親子なんだなぁと、
自然にそう感じられるものが確かに存在していました。
とても懐かしい気持ちになりました。
309
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:08:38 ID:losd25xM0
「私がここで働くようになったのは、兄への恩返しでもあるのです」
でぃさんは、“あの日”からの自分のこと、
お兄さん――ギコさんのことを話してくれました。
ギコさんは“娘との別れ”の整理がつけられず
ふさぎ込んでいたでぃさんに、こう言ったそうです。
「お前があの子を想うなら、生き残った事実を無駄にしちゃあいけないよ」って。
そして、自分の罪を告白してくれたそうです。
違法に横流しされた医薬品を、更に独自の配合が施されて
幻覚作用と常習性を持つに至ったそれを、その正体も解らないまま
所定の場所から所定の場所まで配達するお仕事。
ギコさんは都会で、このお仕事を数年間し続けていたそうです。
医薬品の出処が明るみになったことと、
その行き着いた先で起こった現象を知るまでの間。
直接の上役から薬の一斉処分を命じられたギコさんは、
その命令に従わなければ殺されることが解っていて、
ほうぼうを巡り、そして最後には仕方なく、その薬を這ナギに、
日鏡巻山に投棄しました。そして、薬を横流ししていた医師と共に這ナギへと帰郷しました。
310
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:09:11 ID:losd25xM0
「兄のせいで苦しんだ人は、大勢いるのだと思います。
いえ、おそらくは、今でも……。でも――」
でぃさんは、“あの人”と良く似た瞳で、言いました。
「それだけじゃないって、兄には知ってほしかった。
私はあなたに救われたって。だから私はここで、物を教えているのです。
兄の為にも、あの子の為にも……けれどたぶん、本当の所は、自分の為に」
ギコさんは既に、亡くなっているそうでした。
酩酊したまま意識を失って、そのまま帰らなかったと。でぃさんは言います。
自分の気持が、果たしてどこまで兄に通じていたか解らないと。
「暗い話をしてしまってごめんなさい。でも――」
けれど、と、でぃさんは続けます。
亡くなったギコさんの側には、カカメ石があったそうです。大切な人へと贈る石。
まだ未加工なままのそれを、ギコさんがどのような意図で側に置いていたのかは、
本当の所は解りません。でもでぃさんは、ギコさんに死ぬつもりはなかった、
生きようとしていたんじゃないかと思うと、そうお話して下さいました。
生きて、磨いて、大切な人にこれを贈るつもりだったんじゃないかって。
「ドクオくんは少し、兄に似ている気がして。
出来ることなら伝え“続けて”あげて欲しい。そう思ったんです」
.
311
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:09:33 ID:losd25xM0
「キュートさん!」
「わ、りりちゃん! そ、その子は!?」
「私の子供です!」
ちょっとだけ……ほんのちょっとだけふくよかになったりりちゃんは、
とっぷりとまんまるな赤ちゃんを抱っこしていました。
赤ちゃんはぱっちりと開いたお目々で、物珍しげにボクのことを見ています。
なんだか不思議な感じがしました。
「この子が何かを知りたいと思った時、
一緒に考えてあげられるお母さんになりたいですから」
りりちゃんはいま、子育てに励みながらでぃさんの所へ通っているそうでした。
子供やご老人に混じって勉強することに恥ずかしさなくはなかったそうですが、
子供のことを考えたららそんな恥ずかしさなんて気にしていられないと思ったそうです。
母は強し、です。
312
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:10:00 ID:losd25xM0
「あら、この子、キュートさんに抱っこしてもらいたがってるみたいです」
「え、えぇ!?」
「抱っこしてもらえませんか?」
「え、でも、えぇ……」
「試しに、ね?」
すっかり母親になってしまったりりちゃんは
記憶の中とは違いずいぶんと押しが強くなっていて、
昔と変わらないボクは押し切られるまま赤ん坊を手渡されてしまいました。
職業柄人を持ち運んだりした経験は少なくありませんが、
このように小さな赤ん坊を抱えるのは始めてのことです。
これで、いいのかな? 安定してる? 本当に大丈夫?
不安はつきません。緊張します。
たぶんその緊張は、抱かれている赤ちゃんにも伝わるのでしょう。
赤ちゃんは居心地悪そうに身体をよじり、
それでも不満が解消されないことが解ると、ついには泣き出してしまいました。
313
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:10:32 ID:losd25xM0
「あらあらあら」
「あ、あ、あの、ご、ごめんね、ごめんね……!」
「この子はもう――」
ボクの手から赤ちゃんが、りりちゃんの胸へと帰ります。
ほっとした気持ちと、泣かせてしまってごめんねという気持ちが、同居しています。
けれどりりちゃんは手慣れたもので、
胸の中の赤ちゃんをなだめながら、歌を歌い始めました。
その歌は、ボクにも聞き覚えのあるものでした。
やさしくて、暖かくて――母から子へと贈る歌。
そう、この歌は、“あの人”が歌っていた――。
赤ちゃんが寝静まりました。
その寝顔を愛おしそうに見つめながらりりちゃんは、小声で話し出しました。
314
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:11:02 ID:losd25xM0
「この歌、昔お母さんも歌っていたんです。
どうしてお姉ちゃんも知っていたのか不思議だったけど、
でも、もしかしたら当たり前のことなのかもしれません」
「えと、どういう……?」
「この歌は母から子に……“這ナギの母”であるヒメミ様が、
私達に教えてくださった歌なんだそうです。
元気に、健やかに……あなたの瞳がいつまでもかかやきを失いませんようにって」
“お母さん”は、とても幸せそうでした。
「お姉ちゃんは、私にとっての神様でした」
“赤ん坊”は、とても幸せそうでした。
「私はこの歌を、この子に歌います。
それでこの子が自分の子にこの歌を歌ってくれたら、
それがどんどん続いていったら……それってとても、素敵なことだと思いませんか?」
「……うん、思う、ボクも、そうなったらいいなって、思います」
「キュートさんならそう言ってくれると思いました」
そういうりりちゃんの顔は、昔の面影を残しつつ、
けれどやっぱり、子を持つ母の顔をしていました。
.
315
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:11:27 ID:losd25xM0
「あー、それにしても、男が欲しい!」
「ミセリはモテませんからね」
「そういうトソンだってずっと一人じゃん!」
「私は今の環境に満足していますから」
「ぐぬぬ……」
「あはは……」
三人でおしゃべりするのがすっかり
定番になってしまった、這ナギでの三週間。
頂いたお休みも、半分を過ぎてしまいました。
トソンさんにやり込められて悔しげにするミセリさんも、見慣れたものです。
それでもトソンさんの下へ訪れてくるのはいつも
ミセリさんの方からなのですから、やはりお二人は、仲良しなのでしょう。
316
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:11:47 ID:losd25xM0
「あーもー、あたしこのままじゃ、
独り身のままおばさんになっちゃうよー」
「現実を認めましょう。あなたはもうおばさんです」
「な、し、失礼だぞ! それにあたしがおばさんなら、
キューちゃんはどうするのさ!」
「キュートさんはいいんです。
あなたと違って可愛らしいですし、お相手もいますし」
トソンさんの言葉に、飲みかけていたお茶を
思わず吹き出してしまいそうになりました。
「ど、ドクオさんとは別に、そういうのでは!」
「そうなのですか?」
トソンさんが、変化に乏しいその顔を疑問を抱いた表情に変えて、
ボクを覗き込んできます。……ついつい、目を背けてしまいます。
「最近はずっと、外に出かけているんですよね?」
「は、はい……」
317
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:12:30 ID:losd25xM0
そうなのです。ドクオさんは最近と言わず、
ここへ来てからずっと、外出し通しでいました。
それも驚いたことに、昔はあれほど仲の悪かったプギャーさん方と一緒に。
もしかしたら弱みを握られて脅されているのかもしれない――
なんて考えも初めはありましたが、どうやらそれは杞憂のようで、
ドクオさんの身に特段容態の変化や、悪化というものは見られませんでした。
ドクオさんは毎日毎日外へと出かけて、それはやはり心配ではありましたが、
何事もなく夜には無事に帰ってきましたから、ボクにはそれ以上何も、
言ったりやったりすることはできませんでした。
ボクはただドクオさんに付いてきただけで、
何かの権利を有しているわけでもありませんでしたから。
「なら、ヒメミ湖の参拝にでも誘ってみては如何ですか?」
「そうそう! ヒメミ様って、縁結びの神様でもあるんだって!」
「そうなんです?」
それは初耳でした。
「蛇は多産の象徴ですからね。交尾も長く激しいものですから、
そこからあやかって意味付けられたのでしょう」
「情緒〜」
「事実です」
318
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:12:56 ID:losd25xM0
「いえ、あの……ほんとに、その、そういうのではないんですよ」
二人が、ボクを見ます。
「ドクオさんはボクの憧れ……というか、
雲の上、みたいな、そういう人ですから……」
「じゃあ、あたしが狙っちゃおうかなー?」
「え、え……!?」
思わず、どきりと、してしまいました。
「やめなさい。ドクオさんが可哀想です」
「ど、どういう意味だ!」
「それに、あなたにあの人は荷が重い」
「……それは、そうだねー」
319
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:13:16 ID:losd25xM0
きっとミセリさんの発言は、冗談のつもりだったのでしょう。
ですがボクは、自分でも驚くほどに心臓がバクバク言っているのを自覚しました。
何にそんなに驚いているのか自分でも解りませんでしたが、
とにかく心臓が、痛いほどに胸打っていました。
――もしかしたらボクは、思い上がっていたのかもしれません。
「キュートさん、いる?」
扉を開けて、いようさんが顔を覗かせてきました。
ミセリさんがノックもなしに開けるなんて変態、痴漢と冗談を言っていましたが、
これもいつものことなのかいようさんは気にする様子無く、ボクを呼びました。
ボクは――これ幸いと、お二人に頭を下げてからいようさんに付いていきました。
.
320
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:13:46 ID:losd25xM0
「うちの先生、もうとっくの昔に還暦を越えているんですよう」
いようさんのお話はドクオさんのこと――
そして、この診療所のこれからについてでした。
いようさんが言うにはシラヒーゲ先生には無理を言って
ここに勤めてもらっているのだけれど、
できることなら別の先生をお迎えして、早く休ませてあげたいのだそうです。
「なのでドクオさんにここに居てもらえたら、すごく助かるのです」
「でも、ドクオさんは……」
「もちろん、事情は理解しているつもりです。
“お身体”のことについても。ですがだからこそ、
我々なら支えることができる。そう思いませんか?」
「それは、とても魅力的な話だと思います……でも」
「なんでしょう?」
「なぜ、ボクに?」
「なぜって……ドクオさんがここに残るなら、
キュートさんもここに残るでしょう?」
321
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:14:07 ID:losd25xM0
「えっ」
「違うんですか?」
「……ボクは」
ドクオさんにとっての、ボクは――。
「ただの、付き添いですから……」
「そうなのですか?」
ボクは、うなずきます。
そうです、ボクはただの付き添いです。
やっていることはきっと、看護師としての仕事の延長なんです。
そしてもし、もし……ドクオさんがボクの手を必要としなくなったなら、
ボクだってきっと、ドクオさんの側にいる必要はなくなるのです。
それはきっと、歓迎するべきことです。喜ばしいことです。
喜ばしいことの、はずなのに……。
322
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:14:34 ID:losd25xM0
「キュートさん……?」
「あ、いえ、なんでもないです、ごめんなさい……泣いて、ないです」
「無理していませんか?」
「……へへ、そんなこと、ないですよー」
「ならいいのですが……」
「あの、それよりもですね! ボク、ちょっと、訊きたいことだあって」
「なんでしょう?」
「あの……内藤先生の、ことなんですけど」
いようさんの態度に、硬いものが混じりました。
この話題は、ずっと避けていたのでしょう。
それを感じ取っていたからボクもこれまでこの話題を、先延ばしに延ばしてきました。
ですが休みの終わりが近づき、そろそろもどることを考え始めたら、
やはり頼まれたことは聞いておかなければならない気がしたのです。
でなければあのツン先生のことです、どんなお叱りを受けるか解ったものではありません。
323
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:14:56 ID:losd25xM0
「……それで、訊きたいこととは?」
「あの……ボクが這ナギを出てからどうしていたのか、
とか、癌で亡くなったと聞きましたけれど、治療はしなかったのか、
とか、あと、えと、それから……」
ボクは思いついたことを思いついた端から口にしていきました。
次から次に言葉にしながら、でも何か違うようなと思いつつ、
それでも口を開くのを止めませんでした。
そうしていい加減何も出てこなくなった時、
そういえば、と、思い出しました。
そうでした。ボクはこれを聞くように、先生から言われたのでした。
「『答えは見つかったか』……とか」
,
324
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:15:22 ID:losd25xM0
いようさんが、目を開いてボクを見ました。
何か、おかしなものでも見るように。
「あ、ごめんなさい。変なこと言ってしまいました、忘れて下さい――」
「いや……」
とっさに質問を打ち消そうとしたボクに向かって、
いようさんはその打ち消し自体を打ち消しました。
そしてその大きな手を顔へと当てて、くつくつと笑いだしたのです。
「まさか、キュートさんだったとは……」
「……あの?」
「……そうですね。先生は、癌の治療はされませんでした。
見込みがないことを理解されていたようです。だから最後まで医師として、
人を、這ナギの人々を助けることに力を注ぎたいとおっしゃっていました
……先生は、疫病の根絶と戦いました」
「疫病!?」
325
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:15:54 ID:losd25xM0
予想だにしなかった、恐ろしい単語が飛び出してきました。
先ほどとはまた別の意味で、心臓がどきりとします。
「キュートさんが這ナギを出ていった直後くらいから、
這ナギに疫病が蔓延しました。そうです、おいらたちの東側を襲った、あの疫病です」
「そんな……」
「いえ、悲観しないで下さい。この疫病では、誰も死なずにすんだのです」
「……だれも?」
あの、疫病で?
「先生はそれこそ寝食を惜しんで、疫病と戦いました。
一年、二年と、疫病が這ナギを襲っている間、先生が休んでいる姿を、
おいらは一度も見たことがありませんでした。
周りがどんなに心配しても、先生は戦うことを止めませんでした。
そして……勝利しました。疫病を、根絶させたのです。誰一人、死人を出さず」
「ほんとに……?」
それはとても、信じられないことでした。
あの疫病が、ボクたちを襲ったあの疫病が、本当に、根絶された……?
それも、唯の一人の死人も出さずに?
326
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:16:14 ID:losd25xM0
「キュートさんの疑問も最もです。おいらにも……おいらたちにこそ、
それは信じられないことでしょう。でもこれは、事実です。
先生は、成し遂げたのです。けれど先生は、こう言いました」
いようさんが、遠い目をして言います。
「這ナギが山の土と水のおかげだと」
思わずボクも、いようさんが見つめる方を見てしまいました。
そこには壁がありましたが、壁を越えたその向こうには、
這ナギの中心、日鏡巻山が泰然と鎮座しているはずです。
「そして最後の患者の治療を終えて三日後、
亡くなる前日の夜、先生はおいらに言い遺しました。
ある事を尋ねに来る人がいたら、こう返して欲しいと」
「……まさか」
いようさんが、首を縦に振りました。
そして彼<内藤先生>は、こう言ったのです。
「『賭けはきみの勝ちだ。神様は、本当に存在していたよ』」
.
327
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:16:34 ID:losd25xM0
「キュート、ヒメミ湖へ行こう」
.
328
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:17:16 ID:losd25xM0
お休みも残すところ後一日といった時に、
ドクオさんからお誘いを受けました。山登りです。
ドクオさんの身体は山を登るのには適していませんでしたので、
ボクが肩を貸して、時間を掛けて二人で登っていきました
“あの日”から、ドクオさんの身体は半身不随となっていました。
下半身はまだ、ある程度の自由が利きます。
ひきずりながらでも歩行することは可能でした。
けれど上半身は完全に麻痺していて、
症状の表れている左側の手は指の先ほども動かすことはできないそうでした。
耳も目も左側は完全に機能しておらず、ドクオさんは常に、
麻痺した半身を残された半身で補いながら生きていかなければなりませんでした。
けれどそのことについて、ドクオさんがなにか不平を
言っているのを耳にしたことは、少なくともボクは、ありません。
彼は自分の身に起こったことを、ただ事実として受け容れているようでした。
ドクオさんは、逞しく快復しました。
たぶん、もう、ボクの存在なんて必要ないくらいに。
329
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:17:49 ID:losd25xM0
カカ山の山道はゆるやかですが、
それでもボクたちにとっては大変な行軍になりました。
ですが大変でありながらも、カカ山の匂いや、音や、
光を目にしながらの登山は大変に気持ちがよく、
土や水が、記憶の中よりも明るくかかやいているようにすら思えました。
ボクたちはひぃひぃ息を切らしながら、でも楽しみながら、
会話らしい会話もないまま登り続けて、そして、山頂にたどり着きました。
日目見湖。あるいは、日女巳湖。
蛇の瞳のように、陽の光を反する、水鏡。
ボクたちはヒメミ湖の側で、座りました。“あの日”みたいに。
330
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:18:12 ID:losd25xM0
「あの、ですね……その、ドクオさん、ボク……」
ボクは、この一ヶ月で起こったこと、
出会った人たちのことを、ドクオさんに話しました。
ボクは話がうまくないですし、記憶力もよくないので、
上手に話せている自信はありませんでしたが、
ドクオさんは何も言わず、聞いてくれました。
「ミセリさんとトソンさんがですね、いまも仲良しで――」
ボクはとにかく、話し続けました。
些細なことでも、くだらないかもしれないことでも、なんでも。
だって、たぶん――。
「りりちゃん、お母さんになったんですよ!」
たぶんこれが、ドクオさんと一緒にいられる、最後の時間になるはずですから。
ドクオさんは、もう、ボクがいなくても生きていける。
だったらボクは、こんなボクはきっと、枷にしかならないから。だから――。
331
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:18:46 ID:losd25xM0
「……いようさんが、あなたの力を頼っているんです」
ボクは、話しました。いようさんの頼み事を。
それが一番、ドクオさんにとっても、這ナギにとっても、
綺麗に収まる結果だと思いましたから。
だからボクは、ドクオさんに、話しました。
「……き、急でしたよね、ご、ごめんなさい!
もっと早くに話せばよかったな、え、えへへ……」
ドクオさんは、ずっと無言のままでした。
ヒメミの湖を見つめたまま、動きませんでした。
ボクは、意味もなく笑ってしまいます。
間を持たせるためだけの、心から浮かび上がってきたわけではない、笑み。
癖になってしまった、処世術。
ドクオさんが、ぽつりと、つぶやきました。
「親父と会った」
「……デミタスさんと?」
332
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:19:09 ID:losd25xM0
風が吹きましたが、ヒメミの湖は、
鏡のように空を反射し続けていました。
「親父は若い頃に一度、這ナギを出たことがあるらしい。
そこで、無学であることを理由に惨めな思いをしたのだとか……
母と出会ったのは、その頃だ」
「ペニサスさん……」
「母は父のことを、唯一バカにしないでくれたそうだ。
そして、バカにしてきた奴らを一緒に見返してやろうと。
父は、母に恋をした。そして生まれて初めて母親――
祖母に逆らい、母と結ばれたそうだ」
「そう、だったんですか……」
「結局父は祖母に逆らい続けることが出来ず、
味方を失った母は精神的に不安定になってしまった。
そのことを父は悔いていた。
……しかし、母と出会ったこと、ぼくの父になったことを
後悔したことだけは一度もないと、そう、言っていた」
ドクオさんの、健常な側の瞳を、ボクは見つめます。
まるで光を映す鏡のようだと思いながら。
333
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:19:32 ID:losd25xM0
「聞けてよかったと、思う」
「うん……うん、そう、ですね」
「おかげで、答えに辿り着けた」
「答え?」
ドクオさんの顔が、ボクの方を向きました。
ドクオさんのことを見ていたボクの目と、
ドクオさんのそれとが、向かい合います。どきりとします。
「一年間、考え続けていたんだ。お前の言われたことを」
「ボ、ボクに、ですか……?」
「『生きましょう』」
「あ……」
確かに、そんなことを言った覚えは、ありました。
あの時は一杯一杯だったので、記憶も朧気ですが。
334
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:19:58 ID:losd25xM0
「なんだか、あの、偉そうなこと言っちゃって、へへ、その……」
「“生きる”。それがどういう意味なのか、
ぼくはずっと考えていた。だから――」
「だ、だから?」
「いようの誘いは、受けられない」
どうして――ボクがそう口を挟むよりも先に、ドクオさんは話を続けます。
「ぼくは、先生に憧れていた。お姉ちゃんに憧れていた。
二人のようになりたいと思っていた。けれどぼくは、二人になれなかった。
なれないと悟った。だから――死ぬしかないと、思った」
「それは……」
「ああ、そうだ。それは、間違いだった」
ドクオさんの瞳が、ボクの瞳を、ぎゅう……っと、見つめます。
「ぼくはきっと、死ぬまで二人にはなれないだろう。
どんなに望んでも、焦がれても、なれないものには、なれない。
それは厳然たる、ひとつの事実だ」
「そんなこと――」
「だが」
.
335
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:20:29 ID:losd25xM0
「例え“なる”ことはできなくとも、
なることを目指す行為を“する”ことは、できる」
「這いつくばってもかかやきを見上げ、目指すことは、できる」
「“生きる”とは、そういうことなのだと、思う。そして――」
「ぼくが“生きる”ことが、その姿が誰かの“生きる”力となれるなら。
それはきっと、それこそが――」
「“生命を結ぶ”ということなのだと、ぼくは、思う」
.
336
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:20:51 ID:losd25xM0
「キュート、手を出してくれ」
言われて、手を上げました。
ドクオさんの手が、ボクの手に載せられました。
「ぼくはこれからきっと、大変な道を歩んでいくことになると思う。
“なろう”と“する”為に、多くの人の顰蹙を買うことになると思う。
物理的な危険だってあるかもしれない。だから無理強いはできない。
だけどもし、もし……きみが、良いと言ってくれるなら――」
何かを、渡されました。
.
337
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:21:24 ID:losd25xM0
('A`)「他ならぬきみの瞳で、ぼくを見続けていてもらいたい」
.
338
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:21:58 ID:losd25xM0
ドクオさんの手が、離れました。
そこに置かれたものを、ボクは見ました。
「あの、これ……」
「ダメか?」
「だって、これ……」
ボクはドクオさんと、てのひらに置かれたものを交互に見ました。
そしてもう一度、てのひらに置かれたものを凝視しました。
だって、そこに置かれていたのは――。
カカメ<蛇目>石。ピカピカに、磨かれた。
何故だか涙が、溢れてきました。
339
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:22:43 ID:losd25xM0
「ごめんなさい、でもボク……ボク、
泣いてないですから、泣いてなんか……」
泣いてはいけないと思うと余計に、
涙はこぼれ出ていきました。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
「いいんだ」
「……うぇ?」
手を、握られました。
「泣きたいなら、泣けばいい」
ぎゅっと、握ってもらいました。
「笑いたければ、笑えばいい。怒りたければ、怒ればいい。
……愛したければ、そうすればいい」
鏡<瞳>そのもののように光を映し出すカカメ石を中心に、
ドクオさんとボクの手とが、結ばれていました。
ボクたちの手と手とが結ばれている様が、映し出されていました。
「ぼくたちが教わったのは、きっと、そういうことなんじゃないかと、思う」
ドクオさんの手のぬくもりが、伝わってきました。
.
340
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:23:15 ID:losd25xM0
――ボクは、心の何処かで、大人になってはいけないと思っていました。
“こんなふうになりたくない”と思ってしまったボクに、
お姉ちゃんたちがなれなかったものになる資格なんてないと、そう思っていました。
泣いたり、怒ったりする権利なんて、ボクにはないと思っていました。
でも、もう、いいのかもしれません。
自由に、思うままに振る舞っても、いいのかもしれません。
ボクたちはそうして“生きて”も、いいのかもしれません。
いっぱい泣いて、いっぱい怒って、いっぱい笑って、それで、それで――
ボクは……“私”は、これからも、ずっと、ずっと――――
.
341
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:23:41 ID:losd25xM0
かかやくあなたを一番側で、見続けていたいです!
.
342
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:24:07 ID:losd25xM0
.
343
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:24:41 ID:losd25xM0
遍く衆生は不日に散ず
(生きとし生けるものはみな遠からずこの世を去ります)
.
344
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:25:07 ID:losd25xM0
――なればこそ
(――だからこそ)
.
345
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:25:38 ID:losd25xM0
其瞳に映ずる万事一切
(あなたの瞳に映るあらゆる物事が)
.
346
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:26:09 ID:losd25xM0
何時何時迄も
(終わり始まるその時までも)
.
347
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:26:37 ID:losd25xM0
かかやき続けますように――
(どうかどうか、輝き続けてくれますように――)
.
348
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:27:04 ID:losd25xM0
.
349
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:27:43 ID:losd25xM0
【結】
・閉じる、締める、終わる
・結びつける、つなげる、つなぐ
【遺】
・失う、忘れる、終わる、終わり
【生】
・生きる、生まれる、始まる、始まり、
.
350
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:28:24 ID:losd25xM0
イムス ハイガミ
o川*゚ー゚)o生(遺)結ぶ這鏡のようです('A`) 結
.
351
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:30:52 ID:losd25xM0
これにて完結です。めったら長くなってしまったこの物語をここまで読んで頂けたこと、本当に感謝しています
この物語があなたの琴線の端っこにでも触れたなら、なによりでございます。ありがとうございました!
352
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:34:36 ID:JMM4eEMs0
乙!
353
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:36:16 ID:4pWHE8i.0
心からの乙を
降りかかる絶望からのこのラストはマジで感動した
354
:
名無しさん
:2019/01/15(火) 22:58:59 ID:4V.M7ya.0
乙でした!
355
:
名無しさん
:2019/01/16(水) 18:50:48 ID:/D2Eh/ZY0
乙
356
:
◆y7/jBFQ5SY
:2019/01/18(金) 19:23:16 ID:P19kqvPI0
一応こちらでも酉出し証明を
重ね重ね、お読み頂きありがとうございました!
357
:
名無しさん
:2019/01/21(月) 16:58:05 ID:TDCsOhFo0
凝った良い話だった乙
358
:
名無しさん
:2019/01/21(月) 22:55:07 ID:C9TEP3Fc0
最後が爽やかで安心してしまった
毎回投下がすごく楽しみでした
おつおつ
359
:
名無しさん
:2019/01/31(木) 23:02:16 ID:03he9IE.0
読ませる文章だ、めっちゃ楽しかった
ただAAの生首が一切出て来ないの、作者の持ち味ならゴメンだけど折角のブーン系なんだしちょっと勿体無い気もするな
360
:
名無しさん
:2019/02/19(火) 16:25:17 ID:VOQ6F5iU0
乙
心情の描写が上手くて読むのが止まらなかった
ブーン系なのにドクオ達の顔を使うのが必要最低限だけだったのもいい演出だった
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