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ダンゲロスSSLove 雑談スレ
1
:
qaz
:2018/11/09(金) 20:24:26
ダンゲロスSSLoveに関連することに使用するスレッドです。
チーム参加希望者のメンバー募集や幕間SSの投稿、単なる雑談などにご活用ください。
2
:
qaz
:2018/11/11(日) 23:01:33
【注意】
このスレに投稿された幕間SSやイラストはwikiに転載予定です。
転載されたくない方はその旨を表記お願いします。
3
:
N.M
:2018/11/12(月) 18:21:41
ま、まさか4時間で募集枠が埋まってしまうとは……
設定思いついたしゆっくりプロローグ書くかと思ってた俺は不憫で先見性がないぜ
4
:
トマト祭
:2018/11/12(月) 20:50:25
>>3
これはラブマゲドン2ですね
時期はバレンタインだ
5
:
N.M
:2018/11/12(月) 20:53:26
>>4
よしそれまで設定温めとこう。
ラブマゲドンのような環境に特化した設定だし似たような機会があれば次こそ……!
6
:
参加者W
:2018/11/12(月) 23:11:17
なんだかまだ今回のキャラクターも公開されていないのに既に裏を開催することを示唆するような発言が飛び交っているぜー!
期待されていないようでハートが痛いけどとりあえずキャンペーン期間中は全力で盛り上げて強い印象を残してやるぜー!!
裏が開催されるにしてもそんじょそこらのアイデア一発勝負が参加していいのか不安になるぐらいのものを作れるように頑張るぜー!!!
(参加に際しての意志表明)
7
:
トマト祭
:2018/11/15(木) 18:37:56
日曜日が遠いですね…ま〜だ〜?
8
:
まひろ
:2018/11/30(金) 18:35:26
ちょっと自分の書いたSSに自信がなくなってきた……。
でももう投稿しちゃったし、今から執筆し直すと掲載順落ちちゃいそうだしどうしようかなって感じです……。
チラ裏すみませんでした。
9
:
トマト祭
:2018/11/30(金) 19:43:22
大丈夫ですよ〜。未だに話のオチをどうつけようか迷ってる人もいますから〜(・v・)ノシ
投稿出来るのかなコレ
10
:
トマト祭
:2018/11/30(金) 19:43:36
大丈夫ですよ〜。未だに話のオチをどうつけようか迷ってる人もいますから〜(・v・)ノシ
投稿出来るのかなコレ
11
:
まひろ
:2018/12/10(月) 19:58:32
朗読ラジオッ!!
12
:
トマト祭
:2018/12/11(火) 21:42:14
文字数多くなっちゃったな〜とか思ってたら割と皆とんでもない文字数で爆笑
読み終えるのクリスマスまでかかる
13
:
はくぐい
:2018/12/12(水) 18:09:43
朗読ラジオかぁー。
今日あたり朗読者が集まれば21時ぐらいからやりたいっすね!
わっふるわっふる。
14
:
調布 浩一
:2018/12/14(金) 11:42:56
幕間SS 勇者ウィル・キャラダインの失敗
【1/2】
----
大の男が、便座の前に跪いて何事かを呟いている。
「シスター。私に懺悔させてください」
ウィル・キャラダインが懺悔室を——少なくとも本人はそう思っている——を見つけたのは、希望崎学園の校舎内であった。
異世界から来たウィルにとって、こちら側の世界は見るもの全てが新しい。さらに言えば文明レベルがまったく違う。そのため、勘違いをしてしまうことがままあるのだった。
今回彼が見つけたのは、男性と女性を模した看板をつけて並んでいるふたつの部屋。扉のないひらけた入り口からは光が漏れている。男女の看板ということは、こちらの世界では懺悔を聞いてくださる方の性別を選べるのだろう。
(神のお言葉が男女で変わるとは思えないが。妻に関する告解ならば、女性に聞いてもらうのが良いか)
ウィルはそう思い、女性の看板がついた方へ入室した。それが大いなる過ちであるとも知らずに……。
「ふむ……清潔だ」
ウィルは感心したように頷く。中に入ればうっすらとピンク色をしたタイルが敷き詰められており、なんらかの香が焚かれているのがわかった。左手には三つの簡素な部屋が並んでいる。この簡素な縦長の直方体を外から覗き見て、ウィルはこの部屋を懺悔室だと判断したのだ。なるほど、異世界の懺悔室は連結しているのかと。
ああ……このとき、彼が男子の方に入っていたならば。奇妙な形の白く艶やかなオブジェがいくつか並んでいるのを見て考えを改めた可能性もあるというのに。
しかし現実として、ウィルは女子の方に入室してしまった。彼は妻を愛するあまり、例えほんの少しでさえ彼女を不安がらせたことを罪と考えていたのだ。そして、神の許しを得なければ顔向けができないと。正常な判断能力を失っていたのかもしれない。
部屋の中でウィルは周囲を見渡す。しかし、これはいったいなんだろう? 彼の横には鏡と謎の金属製品。丸みを帯びた十字形の下には、垂れ下がったように曲がる部品が付いている。まるで魔王軍の動物兵器、ソラトビエレファントの頭部だ。
さらにその下には、壁からせり出す純白の器。見ればうっすらと湿っている。となれば、どこからか水が……?
未知のダンジョンを攻略するのは勇者の必須スキルだ。どこかで決意をし、リスクを負って仕掛けに挑まねばならない。異世界の建物も同じことだ。
(ううむ。触らなければならないのか、このソラトビエレファントを模した頭部に! しかし懺悔室に危険なものなどないはず……まさか邪教の館なのか、ここは?)
おっかなびっくり十字の金属に触れるウィル。確かな手応えを感じてひねると、象の鼻から水が出る。
そう、これはいわゆる蛇口であった。
「おお、水が! なるほど。この鏡と合わせ、顔を清めてから懺悔室に入れば良いのだな!?」
バシャバシャと顔を洗い、布で顔を拭う。さっぱりとした気分のウィルはいよいよ懺悔室に入ろうとしたのだが、ここでも困ったことがあった。
懺悔室が、彼の世界と全然違うのである。
一番手前と真ん中の部屋。半開きの扉を覗けば、中には白い椅子がポツンと置いてあるだけ。脇には筒状になった紙が鈍色の器具に収納されているが、使い道がわからない。
それとも、正面の分厚そうな壁の奥にシスターがいるのだろうか。この先は間取りを考えれば男性懺悔室のはずだが……。
(臆するな勇者ウィル・キャラダイン。無作法でもいい。自らの罪を認め、新たに歩みださねばならぬ!)
15
:
調布 浩一
:2018/12/14(金) 11:44:27
【2/2】
----
一度小部屋を出て、改めて部屋を観察する。よく見れば、扉にも金具が付いているではないか! 手前と真ん中の金具の中心には青、一番奥には赤の印が小さく付いている。赤の扉を開けようとする。すると、ひらかない。
「鍵だ! 鍵が閉まっているぞ!」
思わず声を上げてしまい、ハッと口を押さえるウィル。この部屋の中では誰かが懺悔しているはずだ。騒ぐのはよろしくない。
ウィルはもう一度、中央の小部屋に入った。中から鍵を閉められるならば、やはり部屋の中で懺悔ができるということだ。
今度は振り返って扉を内側から見る。そこにはまたも金具。長方形の金属をスライドさせると、同じ形をした輪にピタリとハマった。施錠に成功したのだ。
(やったぞ! なるほど、青からズラすことで赤に変えつつ鍵をかける仕組みなのか。機能的な設備だ! しかし、このあとどうすれば良いのだ? この小部屋だけで懺悔室が完結しているなら、どこか声を届けるところがあるはずだ)
白い椅子に座って考える。しかし、いやに座り心地が悪い。ウィルは顔をしかめて立ち上がり、しげしげと椅子を眺める。見れば、多重の層になっているようだ。
手を伸ばす。触れる。そして……開いた。
「椅子ではないのか、これは!」
その通り、それは便座という。しかしウィルは気づかない……そもそも彼は水洗トイレという概念を知らないのだ。中には湖のような水面を見て、魔法にも造詣が深い勇者ウィル・キャラダインはこう解釈した。
(もしや、水面を使った転写の魔法か! 本来は像を映すためのものだが、音声に転用しているのだな!? 遠隔懺悔……それがこの世界の常識か。しかし、仕掛けが全く分からない。魔法技術では大きく先をいかれているということか)
残念ながら全然違う。彼が異世界の人間でなければ、こんな勘違いは起きなかったはずだ。
聡明なる読者諸君はお気づきであろう。ここは、女子トイレである。
直後。隣室からの蹴りが薄っぺらい壁を突き破り、便器の前でひざまずいていたウィルの側頭部にぶち当たる。泉崎ここね渾身の一撃であった。
winner:泉崎ここね
winning moves:乙女の恥じらいキック
16
:
トマト祭
:2018/12/16(日) 11:11:16
幕間SS 「泉崎兄妹のその後」1/2
東京都内某所、とある病院にて。泉崎ここねは、長椅子に力なく腰かけていた。目の前には、集中治療室の赤いランプが灯っている。兄――泉崎清次郎は今、この中で戦っている。
あの戦闘からおよそ2時間。木下による裁定を受け、そのおかげもあってかここまで持ち堪えてはいる物の、予断を許さない状況が続く。ここねの脳裏に、全身が真っ赤に爛れた棒切れの様な兄の姿が浮かんだ。
「……嫌。嫌よ、兄さん…嫌…」
そんな言葉を呟くしかない自分が、どうしようもなく無力で、情けなかった。その瞬間、彼女の耳に陽気な声が響く。
「良かった、間に合った。まだ、“彼”は中に居るみたいですね。」
顔を上げる。いつの間にか目の前には、白衣を着た小柄な中年の男が居た。更にその後ろには、些か奇妙な風体の者たちが続いている。やや体格のゴツいシスター、にこにこしているサーカスのピエロ、花柄の甲冑とマントを身に着けた誰か、外国の映画俳優の様な逞しい男…これは一体何事なのか。白衣の男が、ここねの顔を見て笑った。
「あっしらは“魔人医師”ですよ。医療に魔人能力を使うのは幾分グレーゾーンな所がありまして、本当はここに居ちゃいけねぇんですが…ま、ここは魔人警察の恩情で見逃して貰いましょ。」
白衣の男がウィンクする。よく見れば、彼女たちの後方には警官が立っていた。だが、今は窓の外を見てわざとらしく口笛を吹いている。こねは尋ねた。
「兄を…助けられますか?」
「祈っといて下さい、それがあっしらの力になりやす。さ!皆さん、お仕事しましょ!」
そう言って、集中治療室に入っていく魔人医師たち。泉崎ここねは、自然と両手を固く握りしめた。
17
:
トマト祭
:2018/12/16(日) 11:11:44
幕間SS 「泉崎兄妹のその後」2/2
集中治療室の中。様々な管に繋がれ、息も絶え絶えな男が1人、部屋中央の寝台で仰向けになっている。その周りを5人の“魔人医師”が囲む。白衣の男が渋い顔で言った。
「こりゃ、また全身イカれてますなぁ。…ちまちましとったら死んでしまいやす、ここはダンの旦那から行って、あっしらはその後から畳みかける感じで。お願いしやす!」
ダン、と呼ばれた映画俳優の様な男は、「任せろ」と良い声で言い切った。そして何やらごそごそすると――己の一物を取り出し、清次郎のアヌスに突き刺す!「宇雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!!」
およそ1.2秒後、男は果てる!と同時に清次郎の弱弱しい心拍数が跳ね上がり、荒い呼吸も収まっていくではないか!これぞ「魔人内科医」スティーリー・ダンの能力、“鋼入りのダン”!!相手の体に直接「精」をぶち込み回復させる無限性交能力!だが今は治療の為に使っている!
「ひょひょひょひょひょ!」突如傍らのピエロが笑い出す。ピエロが清次郎の体を撫でる…すると次の瞬間、彼の骨格全体がバキバキと音を立て回復していくではないか!そう!「魔人整体師」ペドロリーノの能力!“どうじょお好みの体形に”の効果だ!
「朕も征くぞ!」全身花柄の男が、こちらも一物を取り出す!「魔人美容整形外科医」華王(かおう)・カケルの能力、“ぷるぷる美肌精液”!カケルの精液を被るとどんな皮膚疾患も立ちどころに治る!清次郎の赤黒く焦げた皮膚に精液が染み渡る!
「ではあっしも」そして白衣の男、んほぉ!崎 阿片々(あへへ)が薬瓶を取り出す!阿片々はドラッグと逆ドラッグを調合出来る!逆ドラッグを服用した者は、どんな催眠調教や媚薬の効果からも抜け出す事が出来る!退行した知能位すぐに戻せるぞ!
「うっぎゃああああああああああああいでえええええええええええええええええええあばばばばばばばばばんほおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
手術室内に清次郎の悲鳴が響き渡った!知能指数が戻ったからだ!おろおろする人間の看護師!その看護師の肩にそっと手を置き、シスター…「魔人産婦人科医」孕み沢産子(はらみさわ うぶこ)は言った!
「生と死は、エロスと密接な関わりがあるの。彼は必ず生き返るわ。」
「いや、今にも死にそうなんですけど…」
「大丈夫よん。その時は、私が“産み直して”あげるから。」
※ ※ ※
こうして泉崎清次郎は生き返った!精神鑑定の結果無罪となり、贖罪の為自分の能力を生かしてボランティアに励みつつ、今は妹のここねと幸せに暮らしている!ありがとう魔人医師!完!
18
:
糸遊兼雲
:2018/12/16(日) 15:54:21
幕間ss ダーティー・プレイ
1/2
***(track 110/559 杜王町RADIO 菅野祐悟)
『シークレットポーカー』と名付けられたそれは、後輩の平河玲からの提案だった。冬季休暇だと言うのに理科室に呼び出された私たちは、アルコールランプとビーカーで沸かした湯で紅茶をシバきながら紙束をシバいていた。
ゲームのルールは至って簡単。基本ルールはポーカー、ただし、プレイヤーの賭け金は『指定された情報の開示』である。己のシークレットを賭ける、故にシークレットポーカー。今回の親である平河玲にとって、金銭は使い切れないほど口座にあるもので、賭け金としての魅力は、他人の知られたく無い秘密の方が遥かに高いのだろう。
相変わらず最低だな、この後輩。
「まぁまぁ、そう仰らず。本編で泣く泣くカットした部分の、補完をするパートが必要なのですよ、糸遊先輩」
「別に、空き時間で各々が独白としてやったら良かったんじゃない……?なんかもっと、幕間らしいほのぼのしたゆるい日常とかやったらいいじゃあないか。本編では出突っ張りで、疲れているんだよ、こっちは。その2では義手は吹っ飛ぶし、その7ではハラキリされて洗脳されるし」
「泉崎先輩はどう思います?」
「元々はイトーが、経費で全額落ちないのに玲を使ったのが悪い、と思う」
玲って。この二人、いつの間にそんなに仲良くなったのだ。私はまだ、ちゃんと兼雲って呼んでもらえてないのに。
さておき、シンプルに金が無いというのが現状で。実質的な賭け金は無償、勝てば大金が舞い込むというのはとても魅力的だった。なのでホイホイ釣られてゲームに応じてしまったのが、今回の発端である。
「ま、なんでも良いので、ちゃっちゃと始めましょう。幕間は本編ほど尺ないんですから」
親である平河がカードをディールしていく、私、ここね、平河。それぞれ5枚揃った時点で手役を確認する。
❤︎6 ♠︎6 ❤︎A ♣︎A ♦︎A
……勝った、第1ゲーム、初手フルハウス。出来過ぎとも言える、この完璧な引き。やはり神様は見ているのだと確信する。ハルマゲドンにおける影の功労者たる私だが、終結後はヘイトを集めまくりリンチにされ、片腕を失い顔は大火傷。やっと学校に復帰したと思ったら生徒会のワケわからない催しで、平行世界九つ分も仕事で駆けずりまわり。それも終わったと思ったら平河に支払った情報料で一文無し。これじゃあ、あんまりではないか、あまりにも不憫じゃあないか。糸遊兼雲は、報われないじゃあないか。
だが、もうそれも終わる。
「私はチェンジ無しだ」
やっと風が吹いてきた。自分、今回は"勝ち"で良いですか? 良いですよね?
19
:
糸遊兼雲
:2018/12/16(日) 15:59:49
>>18
2/2
(track 59/559 KAIJI〜人生逆転ゲーム〜 菅野祐悟)
「レイズ、糸遊兼雲は二つ情報を開示する」
「レイズ、受けましょう糸遊先輩。情報のレートは一件につき10万円です、40万円でどうでしょう」
「コール、私も四つくらいなら話せるよ」
「レイズ、糸遊兼雲は六つ情報を開示する」
「フォールド、やっぱ降りる」
「強気ですね〜、私はコールで」
オープン。
糸遊兼雲❤︎6 ♠︎6 ❤︎A ♣︎A ♦︎A
平河玲❤︎J ♦︎J 2♠︎ 2♣︎ 3♣︎
危ない、ツーペアを引いてたのか。だが勝ちは勝ち、降りたここねと合わせて100万円、やったぜ!
「ま、取り敢えず泉崎先輩の負け40万円分の情報いただきましょうかね」
「いいよ」
「糸遊先輩の意外な性感帯ってどこですか?」
「ん……?」
あれれれれれ?
これってここねの負け分の情報じゃなかったっけ。おかしくないか、これじゃあ実質……
「ここね?40万円は建て替えてあげるから何も喋っちゃダメだよ?」
ここまで来て、やっと私は理解した、完全にハメられている。何が本編の補完だ、完全に平河の悪趣味の延長戦じゃないか。
「ははは、ダメですよ糸遊先輩。ルール守ってください」
「ちょっと黙れ平河」
「イトーは脇腹とか胸とか太ももとかをいきなりつついても、あんまり反応しないのだけれど……えい」
「ひゃあ!?」
身体がビクンと跳ね上がる、これは元々というより"ここねがそういう風にした"のだけれど。だから悪いのは私ではない。
「このように、右腕をいきなり強く握られると反応がとても可愛い、私はクソマゾスイッチと呼んでいる」
「ここね!?!?!?」
耳まで真っ赤になった私は、椅子から転げ落ちそうなほど気が動転していた。いっそ転げ落ちて奈落の底まで落ちることができたら、よかったのかもしれない。
「あ、やっぱ糸遊先輩がネコなんですね(笑)」
今世紀最低の笑みを浮かべる平河とここねが腕に手を伸ばしてきたのを蚊を払うように跳ね除ける。セクハラ親父か、君たちは。
「イトー、私に乗られてる時が一番可愛いもんね?」
「も、もういいでしょ!?40万円分だってこれは!!!」
仕方ないですねぇ、と第1ゲーム終了。平河にツケてる料金と、私の当面の生活費がかかっているので、まだまだ稼がせて貰わなければならない。
背に腹はかえられぬ。例え、恥辱でこの身が焼け落ちようと、セクハラ親父達には絶対負けられないのだ。
全ては金のために。
---つづく
20
:
糸遊兼雲
:2018/12/16(日) 16:00:04
>>18
2/2
(track 59/559 KAIJI〜人生逆転ゲーム〜 菅野祐悟)
「レイズ、糸遊兼雲は二つ情報を開示する」
「レイズ、受けましょう糸遊先輩。情報のレートは一件につき10万円です、40万円でどうでしょう」
「コール、私も四つくらいなら話せるよ」
「レイズ、糸遊兼雲は六つ情報を開示する」
「フォールド、やっぱ降りる」
「強気ですね〜、私はコールで」
オープン。
糸遊兼雲❤︎6 ♠︎6 ❤︎A ♣︎A ♦︎A
平河玲❤︎J ♦︎J 2♠︎ 2♣︎ 3♣︎
危ない、ツーペアを引いてたのか。だが勝ちは勝ち、降りたここねと合わせて100万円、やったぜ!
「ま、取り敢えず泉崎先輩の負け40万円分の情報いただきましょうかね」
「いいよ」
「糸遊先輩の意外な性感帯ってどこですか?」
「ん……?」
あれれれれれ?
これってここねの負け分の情報じゃなかったっけ。おかしくないか、これじゃあ実質……
「ここね?40万円は建て替えてあげるから何も喋っちゃダメだよ?」
ここまで来て、やっと私は理解した、完全にハメられている。何が本編の補完だ、完全に平河の悪趣味の延長戦じゃないか。
「ははは、ダメですよ糸遊先輩。ルール守ってください」
「ちょっと黙れ平河」
「イトーは脇腹とか胸とか太ももとかをいきなりつついても、あんまり反応しないのだけれど……えい」
「ひゃあ!?」
身体がビクンと跳ね上がる、これは元々というより"ここねがそういう風にした"のだけれど。だから悪いのは私ではない。
「このように、右腕をいきなり強く握られると反応がとても可愛い、私はクソマゾスイッチと呼んでいる」
「ここね!?!?!?」
耳まで真っ赤になった私は、椅子から転げ落ちそうなほど気が動転していた。いっそ転げ落ちて奈落の底まで落ちることができたら、よかったのかもしれない。
「あ、やっぱ糸遊先輩がネコなんですね(笑)」
今世紀最低の笑みを浮かべる平河とここねが腕に手を伸ばしてきたのを蚊を払うように跳ね除ける。セクハラ親父か、君たちは。
「イトー、私に乗られてる時が一番可愛いもんね?」
「も、もういいでしょ!?40万円分だってこれは!!!」
仕方ないですねぇ、と第1ゲーム終了。平河にツケてる料金と、私の当面の生活費がかかっているので、まだまだ稼がせて貰わなければならない。
背に腹はかえられぬ。例え、恥辱でこの身が焼け落ちようと、セクハラ親父達には絶対負けられないのだ。
全ては金のために。
---つづく
21
:
トマト祭
:2018/12/16(日) 18:01:16
>>16-17
すみません!SSその7のネタバレあります!
思いつきで投稿してすみませんでした!
22
:
その7の人
:2018/12/17(月) 00:13:28
SSその7幕間(含ネタバレ)
追加エンドロール「"僕"と太陽の夢の話」(1/4)
カタン、と小気味良い音が響く。
チェック模様の盤の上。&ruby(ナイト){騎士}が&ruby(キング){王}の前へ躍り出た。
背後を&ruby(ルーク){城壁}に鎖された彼には、もはや逃げる道はない。
"彼女"は王の頭をひとつまみ、静かに息を吐くと──花の笑顔を浮かべた。
「ふふ……私の負けですわ」
「その割に、随分と嬉しそうだ」
「ええ、楽しかったものですから」
僕の前にいる時、彼女はいつもこうして笑顔を浮かべている。
最も、僕の前にいない時の彼女を見た事はないのだけれど。
いや、"見た事はない"と断言すればそれは不正確か。
僕には記憶がない。
ここで目覚めて以来、ずっと傍を離れない少女は、もしかすると古い知己なのかもしれなかった。
あるいは、その甲斐甲斐しさを見れば、恋人や許嫁といった言葉も思い浮かぶ。
「君と僕は、どういう関係だったんだ?」
当然、こういう問いを投げかけた事はあった。
果たして彼女は、「今はまだ、お答えできません」と静かに首を振るばかり。
その答えに全く不満がないわけではなかったが、その時の彼女の笑顔が少し物寂しそうだったので、僕は追及することをやめた。
……何より、不安もあった。
僕には今、何もない。だからこそ、思い出したいと思う。自分が"何者でもないという恐怖"。
しかしそれは同時に、ある日突然"何者かになってしまうという不安"と表裏にある。
前に進むこと。外の世界に出ていくこと。自分自身を確定させること。
それには膨大なエネルギーが必要だ。
目を覚ましてから一ヶ月。僕はまだ、この病院棟の外へ出た事が一度もない。
彼女もまた、それを勧めることはしなかった。
僕の世界は、どこまでも停滞していた。
23
:
その7の人
:2018/12/17(月) 00:14:06
「"僕"と太陽の夢の話」(2/4)
「もう一戦、致しましょうか?」
「……いや、今日はもういいかな」
「そうですね、もう日も沈む頃ですし。お夕飯にしましょう」
彼女は一つずつ丁寧に駒を摘み、ケースの中に仕舞っていく。
纏めて掌に掬った方が、効率が良いだろうに。彼女はいつもこのやり方を選んでいた。
僕はそれを眺めながらふと、今日の朝見た悪夢の事を思い出す。
「ねえ。このゲームで取られたコマは"死ぬ"んだよな」
突然、こうも物騒な言葉を耳にしたからか、彼女は少し驚いたような表情になったが。
片付けていた手を止めて、すぐにまた笑顔に戻った。
「まあ、そのように解釈するのは自然ですわね。戦争を模した遊戯、ですから」
「……僕は、今こうして、"打つ"側にいるけれど」
静かに紡ぐ、暗い微睡みの話。
何も持っていない僕が彼女に語り聞かせられることは、もとより夢の話くらいしかないのだ。
だからこの唐突な仮定の話も、「そういう文脈」と伝わった事だろう。
どんな荒唐無稽な幻の話だって、彼女はいつも興味深そうに聞いて、答えを返してくれた。
「ある朝、僕はいつものように寝返りを打って……転がった先が、戦場なんだ」
「周りは騒々しく、足元にはチェック柄の盤面が広がっている」
「手足は真っ黒に塗られていて、陶器のように冷たくて」
「そうして僕は、歩兵になっていたんだ。盤上を這い回る歩兵に」
……その先がどうなったのか、僕には分からない。
目を覚ました僕はひどい寝汗をかいていて、窓の外はちょうど朝焼けの差す頃だった。
温水に濡らしたタオルで頬を拭いても、身を包むような悪寒は晴れなかった。
ありもしない妄想だ。そんな事は、分かっている。
だけどなぜか、その恐怖は現実感を持って肌に張り付いていた。
「あら、まるでフランツ・カフカの『変身』みたいですわね」
「何だい、それは」
「百年ほど昔の小説です。ある日、目が覚めたら蟲になってしまっていたという──今度、本棚に入れておきましょうか」
病室の隅に置かれた真白いラックは、僕の暇潰しのためにと彼女が持ってきた小説で埋まっている。
その大半は男が女を好くだの、好かないだの、そういう色恋を扱ったやつで、つまらなくはないのだが、いまいち僕にはその良さが分からなかった。
棋譜や歴史書を眺めている方が性に合っている。あまり口には出さないけれど。
「そういう、誰かが書いた物語の上の話というより、君の考えを聞いてみたい」
「君は、そういう想像をした事はないか?ある日いきなり、自分の日常が終わって」
「安全な場所から──高みから、落っこちたら」
少なくとも今、この部屋の中は安全だ。危険はなく、凍えない程度の温もりと、退屈で死なない程度の娯楽がある。
不自由といえば、週に何度か医師先生の診察を受けなくてはならない程度のこと。
この部屋の他に行く場所など知らないのだから、縛られているという感覚もない。
「好きな場所に行っていい」と言われても、逆に困ってしまうだろう。
24
:
その7の人
:2018/12/17(月) 00:14:44
「"僕"と太陽の夢の話」(3/4)
「ありますわよ」
彼女ははっきりと答えた。
意外と納得の両方があった。彼女は僕よりもずっと、この世界についてよく知っているから。
「私は昔、一人では何もできない小娘でした」
「主人の命令が、私にとっての全てでした」
「私には望みもなく、欲望もなく……ただ、命じられた事を為すだけの存在でした」
「主人、というと……君は、結婚していたのかい」
「いえ、いえ!」
彼女はにわかに頬を染め、ぶんぶんと手を振って否定した。
「……父親です」
「そうなの」
それは僕の知る「父親」のあり方とかなり違っているように聞こえたが、それ以上は訊ねない事にした。
興味はあったけど、彼女がいま伝えたいのは別事のように思えたからだ。
「彼は……私にとっての全てでした。さながら、私という駒の指し手です」
「私が彼の言う通りにするのは、私という存在の、定義そのもの」
「ですから──彼がいなくなった時、私は途方に暮れました」
彼女は笑みを消して、窓の外を見上げた。既に日は落ちて、墨色に染まる空が広がっていた。
昔を思い返すとき、人間は目線を上げるらしい。この前読んだ本に書いてあった事だ。
彼女は今、自分自身の過去を見ている。
「言われるままに生きるとは、楽な事です。少なくとも、かつての私にとってはそうでした」
「決断のための苦悩も、前に進むための気力も、そこには必要ありませんから」
「その手綱がいきなり宙に消えたのです。まさしく、"落っこちた"心地でしたよ」
彼女の言葉は、今の僕が抱いている不安を正しく示していた。
僕は、どのように生きていいか分からない。前に進む気力もなければ、過去と向き合う意志もない。
ただ漠然と、全てを保留したまま生存を続けている。
……本気で食い下がる意思を見せれば、彼女だって僕の過去について教えてくれるかもしれないのに。
「……君は、それから、どうしたんだ。どうやって、自分の意思で、自分のために生きられるようになったんだ」
「それは……」
彼女は僕の方に向き直って、少し困ったような笑みを浮かべた。
「……夢を、見たのです。とても眩しい、太陽の夢を」
「私の心は、その輝きに囚われてしまいました。何としてもあの光を手にしたいと、懸命に手を伸ばしました」
「私も、あのように……多くの人の上に立ち、輝き照らす存在になりたいと」
少女は努力を重ねた。名家の当主として、相応しい人間になろうと。
学問を修め、武芸を身に着け、齢十五にして、亡き父に代わり一族を束ねる身となった。
それでもなお、高みへと手を伸ばした。どこまでも、高く、遠く──。
……そうして、彼女は気づいてしまう事になった。
自分が焦がれ、崇敬していた者の真実を。
「……さりとて、夢は夢。現に非ざる幻──この手で触れれば、掻き消えてしまうのです」
「虚像に過ぎないと、分かってしまったのです」
「ですから、私は……」
25
:
その7の人
:2018/12/17(月) 00:15:11
「"僕"と太陽の夢の話」(4/4)
彼女の言葉は少しづつ震え出して、今にも弾けてしまいそうだった。
僕は迷った。彼女の過去に向けて、何と言葉を返せばいいのか分からなかったのだ。
ただ、彼女のために何かをしなければならないと思って──気が付けば、右手が頬に触れていた。
「あ」
声を漏らしたのは、どちらだったか。指先がほんのりと熱を帯びて、温かい。
彼女の瞳はぱちりと見開かれ、面はほのかに朱に染まっていた。
「……ごめん」
どうして手を伸ばしたのか、自分でもよく分からない。
彼女と目が合い、具合が悪くなって、僕は謝罪の言葉と共に手を引いた。
……いや、引こうとした。その手首を、彼女はぐいと掴んだ。
カタン、と乾いた音がした。机の上にあった駒の一つが、転がって床に落ちたらしい。
そうして僕たちは、言葉もなく見つめ合っていた。彼女の眦には、いつしか涙粒が浮かんでいた。
「すみません……どうかしばらく、このまま」
僕には涙の理由が分からなかったけど、黙って頷いた。
こういう時、あの本棚にあった恋愛小説の意味が分かれば、何か気の利いた事でも言えたのだろうか。
彼女はやはり、僕の恋人だったのだろうか。
……僕はいつか、&ruby(しんじつ){記憶}と向き合えるだろうか。
----
果たして、私の恋は、初めから叶うべくもありませんでした。
貴方は本当に、私などを見てはいなかった。いえ──
射るべき貴方の恋心は、最初から何処にもなかった。
貴方は恋をしない。誰かに愛を抱く事はないと。
木下礼慈の「能力」は、私の夢を醒まし、逃れ得ぬ真実を突きつけました。
……ですから、罪滅ぼしなどと言うつもりはありません。
ましてや、恋ではありません。
恨まれてしまっても、構いません。
これは全て、私の自己満足。
いつか貰ったものを返したいという、私のエゴです。
かつての私と同じ──全てを失って、空っぽになってしまった貴方に。
私は、何かを与えられるでしょうか。
「人間」である事を受け入れられず、心を壊してしまった貴方が。
いつか全てを思い出した時、幸福に生きられるように。
貴方が正しく「人間」としていられるように。
私の撒いた愛は、実るでしょうか。
26
:
qaz
:2018/12/17(月) 00:29:47
>>21
メールの件でしたら「wikiに載せる際に明記したい」というだけなので謝らなくても大丈夫ですよ。
思いつき投稿大歓迎です!
27
:
泉崎
:2018/12/17(月) 21:17:29
幕間ss 【BAKED・EGG】
眼を覚ます。
痺れが残っているのか、四肢の自由は効かない。だが、横隔膜は規則正しく肺の空気を循環させ、少し弱々しいけれど、心臓の鼓動は確かにある。意識は明瞭、周りの音は良く聞こえるし、ベットのシーツを触ればちゃんと布を触っている感覚が指先にある。視野は少しボヤけているが、問題ないだろう、そのうち回復する。
生きている。
あぁ、生きているのか。
眼球をゆっくりと動かし、自分が病室にいる事、サラサラとまだ肌寒い風が窓から吹き込んでくるのを感じて、季節が冬だとを、順々に理解していく。
カーテンの陰に、ニット帽を被ったフワフワとした人形のように可愛らしい少女が、やはり人形のように、座ったまま寝ているのを見た。
彼女が誰なのかは、分からないはずなのだけれど。なんだかとても暖かくて懐かしい記憶が、頭の奥で薄ら薄らと泡のように浮かぶ。しかし、それは弾けて消える。
記憶が、無い。
日本刀と、御天道様と、自分が人斬りである事。
それしか覚えていない。
何故人斬りなのか、御天道様が何なのか、分からない。でも、記憶の一番深いところに刻み付けられているから、それだけは自分のアイデンティティとして知覚している。
それにすがりつかなければ、自分は何者でも無くなってしまう。
声が聞こえる。鮮明に、脳の一番奥に突き刺さるように。自分はこの声を待ち焦がれていた。
「……あぁ、兄さん、おはよう」
「……おはよう、でござる」
声を掛けた彼女の方が驚いていた。どうやら拙者は、長いこと気絶と覚醒を繰り返し、意識が無い状態が続いていたらしい(という内容のことを矢継ぎ早に伝えられたので、要約した内容を記しておく)。
それから拙者が彼女、『泉崎ここね』の兄であること。名を『泉崎清次郎』ということ。そして、人斬りとして人間を殺し過ぎた拙者が、異界の英雄や希望崎学園の生徒によって裁かれたこと。
拙者が人斬りとして、人の道を外れた鬼になった原因が誰のせいであるかを、聴かされた。
彼女は謝り続ける。声が枯れて、涙で顔を真っ赤に腫らせて。頭を撫でてやりたかったし、抱きしめてやりたかったが、身体は動いてくれない。
ただ、一言
「ありがとう」
人の道を捨て、修羅と化し、鬼に成り。愚かで見当違いで、ありがた迷惑な愛を注ぎ続けた不出来な兄を、こんなにも思ってくれて。ありがとう。
最後まで守りきれなかった、背負いきれなかった自分を、許してくれてありがとう。
「次に、あたしの前から居なくなったら、絶対に許さないからね」
「……承知したでござる」
御天道様は新たな天命を下す。自分にとって、後にも先にも、最後となる天命を。
焼け爛れて、ミイラの様に痩せ細った手を、柔らかい手は包んでくれる。
今度はきっと、最後まで隣に居よう。
ちょんまげ抜刀斎としてではなく、泉崎清次郎として。
刀ではなく、彼女の手を握って。
28
:
コサジ少将
:2018/12/24(月) 00:30:39
幕間SS 『ハッチ・ポッチ・パッチ』 関連SS 敢えて言うなら全SS
「フーハッハッハッハハハハハハ!!」
講堂に響く木下会長の声。
何が起きたのだと疑問に思う間もなく、ラブマゲドン参加者12名は講堂に転移させられていた。ラブマゲドン開始から二週間が経過し、大多数の生徒は脱出もしくは死亡し、残されたのは生徒会メンバーと12名だけであった。
「よくぞ来た!残された、愛に迷いし子羊諸君!生徒会からの一足早いクリスマスプレゼントだ!互いをよりよく知るため!これから鍋パーティーを開始する!」
&ruby(ごった煮のつぎはぎ){『ハッチ・ポッチ・パッチ』}
「ふむ!全員いるな!流石は鍋焼君!」
残された猛者たちを一か所に集め鍋をさせる。そんな難題を解決したのは生徒会書記、&ruby(なべやきとんぷう){鍋焼東風}の能力、&ruby(てつやなべのジャン!){『徹夜鍋醤!』}である。
対象者を強制的に暴力御法度の鍋パに参加させる、創作界隈に引っ張りだこの能力者だ。参加者の実力と人数に比例して発動までの時間が多く必要になるため遅まきながらの発動になったが、木下会長は気にしない。袋小路に入りかけていた参加者たちの関係性を発展させるには丁度良いタイミングだったとさえ考えている。
殺傷能力皆無、発動までの時間は莫大、それと引き換えに『徹夜鍋醤!』の束縛能力は非常に高い。暴力と理不尽の権化であるちょんまげ抜刀斎すらも、気が付けば席に着き鍋をつつき始めていた。
(鍋とは!まさに!協力行動の結晶!最高の鍋にしてみせる!)
糸遊兼雲の割り切りは早かった。一番ヤバいちょんまげ抜刀斎が抑えられているのなら、会長の言う通りこの鍋パーティーの間は安全が確保されているはず。だったらもう楽しんだ者勝ちだ!
すばやく『万蕃儿演技大系・手引足抜繙自在鉄之帖』を発動させる。参加者の協力行動を誘導する。
(この宅に用意されているのは豚しゃぶ!ならば根鳥は煮えにくい白菜を投入!麻上は薬味のゴマを擦って!勇者は皿を各人に用意して…)
ウィル・キャラダインは勇者故に、博愛精神に満ちている。兼雲に誘導されるまでもなく、ナベリョウリとやらに対応して参加者皆が楽しめるように動く。
「この肉はキュルケ山脈で暴れていた魔獣、ベゼルボアの肉に似ているね!ならばじっくり煮込まなくては!」
しかし悲しいかな立ちはだかる文化の違い!恋心を解せぬ男が鍋奉行の阿吽など理解できるはずもない!ドバっと、大皿に盛られていた豚が全て鍋に叩きこまれた!
(ほあーーー!?)
「ああもう!何してんすかウィルの旦那!そんないっぺんにぶっこんだら灰汁だらけになっちゃいますよ!」
「む!?悪!?根鳥君、どこに邪な輩がいるのかね!?」
(頭痛い…あっちの卓じゃなくてよかった…)
泉崎ここねにとって、ワイワイ楽しくなんて柄じゃない。甘之川は鍋をじっと見てるけど何考えているかわかんないし、朱場はインスタ映えだか知らないけど許可もとらずに鍋パーティーの様子をバシバシ撮ってるし、平河玲は食事中だってのにマフラー外さないし。
(お肉は嫌いだから海鮮鍋が用意されていたのは良かったけど!でも、ネギがたくさん入っているからやっぱり嫌い!)
実のところ入っているのはネギではなく水菜だったが、泉崎ここねは緑の野菜は大体ネギだと思っていたので見るだけでうんざりしていた。
(もう!どこまで不幸なの!)
(ああー!どこまで不幸なんだ俺は!)
いつものように調布浩一が嘆く。ちょんまげ抜刀斎と嶽内大名と同卓。それだけで不幸極まるのに、牧田ハナレお嬢様に置かれましては
「どうせならスナイパーあたる様もお呼びしたいですわ!」
などと飛んでいってしまった。木下会長が「愛のためなら良し!」などとガバガバな判定を下したからお咎めもなしで。お嬢様は良いだろうけどパンツと侍の卓に残された俺はどうしろというんだ!?
「おい少年、キムチ鍋とはいえスープの素だけでは薄味でござろう?拙者、心根が侍ゆえ、常に味噌を持ち歩いているでござる。ほんの少し入れるだけで味の深みが段違いでござるよ」
「豚をそのまま入れても芸がないのでな!吾輩が事前にネギと一緒にごま油で炒めておいた!このひと手間でコクが違う!」
なんでこういう時は妙に真面目なんだよ!うう…気を許していいのかいけないのか…よく分かんなくなって泣けてきたぜ…。
「むう?後輩よ、若人よ、涙は似合わんぞ?」
嶽内先輩…俺はこの人を誤解していたかもしれない。涙目の俺にやさしくハンカチを差し出して…ってパンティーじゃねえか!
「やっぱり不幸だぜ…」
何気なく呟いた調布いつもの言葉。その言葉は講堂に妙に響き、場を一瞬しんとさせた。
29
:
コサジ少将
:2018/12/24(月) 00:33:31
大真面目な顔で、ちょんまげ抜刀斎と嶽内が調布に詰め寄る。
「いやいやいや、お主、そこまで不幸ではないでござろう?死んでないし。」
「後輩よ!そこまで嘆くことはないだろう!死んでないし。」
(え!何この人たち、こわ!何で急に生き死にの話になってるの!?)
「異世界に飛ばされてないでござろう?」
「逮捕、拘留されてないだろう?」
(そして何この説得力!?妙にリアリティあるし!)
「そうですよ。不幸じゃないですよ。」
「うお!」
気が付けばいつの間にか平河玲が立っていた。
「貴方は生きている。そして人間だ。世の中、そういった常識が足元から崩れることもあるんですよ?」
これまた謎の説得力。
「そうです!いつまでも人間でいられるとは限らないんですよ?人と下着の隔たりなんて薄布一枚なんです!それに調布さん、失恋してないじゃないですか!」
今度は麻上アリサ。
「え?え?麻上さんが?下着?何言ってるんだ?というか失恋?麻上さんが?」
「あら…確かに私、どうして失恋なんて言ったのかしら…何故かそんな可能性があるような気がして…」
自分の言葉に疑問を持つ麻上に根鳥が軽く声をかける。
「お二人さん、固まっちゃってどうしたんだい?おっと、アリサちゃん、口元にお弁当ついてるよ。」
ひょいと、伊達男はなんのてらいもせずに、麻上アリサの口元の米粒を取り除いた。
「あ〜〜!!これだから色男は嫌なんだよなーーー!」
調布、心の底からのシャウト。
「あっちこっちの女の子の唇を奪って!お前、全人類の半分を敵に回したぞ!?イケメンは男の敵!」
「ちょ!ちょっと待て!なんだよ唇を奪うって!そんなことした覚えないぞ!?」
全力で否定する根鳥に対し、甘之川が調布の味方となり追撃をする。
「それは違うぞ調布先輩。あちこちの女の子にキスして、それは女の敵でもある。即ち全人類の敵!」
「んなぁ!?勘弁してくれよグーちゃん!」
「なんだそれは!?いきなりグーちゃんなどと呼ばれる筋合いはなーい!」
講堂は混沌の様相を呈してきた。収集が付かなくなりかけた時、轟音と共に牧田ハナレが戻ってきた。
「お疲れ様です皆さん!あたる様を連れてきました!」
「ちわっす!先輩方お疲れ様っす!自分、生徒会役員やらせてもらってます!スナイパーあたるっす!」
(誰だこいつ)
全員の心の声は奇麗にハモった。
30
:
コサジ少将
:2018/12/24(月) 00:34:44
「いきなりの質問で申し訳ないが・・・君には兄弟がいないかね?」
さすがは勇者。自ら率先して疑問に対して切り込んでいく。
「あ!何で知ってるんすか?確かに兄貴がいるっす!」
続けて朱場。
「背中に翼とか生えてないよね・・・?」
「あはは!いきなりなんなんすか〜!天使じゃあるまいし、翼なんて無いっすよ!」
我慢しきれずに兼雲。
「オイルとか好き?」
「なんすかその質問!?機械じゃあるまいし、オイルとかいらないっすよ!」
絶妙に会話がかみ合わない。妙な違和感が拭えない。講堂には様々な可能性と記憶と未来が絡み合い、ごった煮状態となっていた。
誰もが何をどうしたらいいかよくわからなくなっている中、停滞を打ち破ったのは、パコッ!という、蛤の開く音であった。海鮮鍋の中で煮られていた蛤の口が次々と開き、ぷっくりつやつやとした身を、むせ返るほどの海の香りとともに晒していた。
「え…何コレ…どうしよう…」
困惑する泉崎を甘之川が押しのける。
「オイオイ!煮えちゃっているじゃないか!食べ時を逃すぞ!」
白衣の内側からずらりと調味料を並べていく。
「料理部の腕前御覧じろ…と。」
素材の味を生かすためシンプルに醤油。さっぱり感を際立たせるためにポン酢と小葱。コクを押し出すためバターとパセリ。ベトナム風にニョクマムとレモン果汁とおろしにんにく。オリーブオイルと香味野菜でアクアパッツア風…。手際よく味に変化を加えていく。
「さあ諸君!美味しいものを美味しい時に食べないことほど罪深いことはないぞ!この天才でもよく分からないんだ!とりあえずは目の前の食事に没頭しようじゃあないか!」
(…おそらくはこの現象は鍋焼の能力の暴走…。力のある魔人を大量に巻き込んだ上、戦闘まで封じるなんて因果に逆らうことをした結果、【可能性としてありうる対象者】が全て呼ばれて混ざってしまったのだろう。このパーティーの間だけのかりそめの平和。無暗に騒ぐ必要もない)
甘之川グラムは、答えに大体の見当をつけながらも共有を避けた。数多の可能性が自分の中で混ざり合ったせいだろうか。ひと時の夢のような淡い空間を惜しんだのだ。
「確かにそうだな…美味っ!こんなの食えるならさっきまでの不幸は帳消しかな!?」
「美味しいですわ!あたる様もぜひお食べになって?」
「協力行動というよりソロプレイだけど…美味しいからいいか」
甘之川に促され、それぞれ食事を楽しみ始める。
「酒がないのは気に食わねえが、武士は呑まねどなんとやらでござる」
「吾輩の愛しき者たちも感涙しておる!」
「それキムチ鍋で汗かいてるだけじゃ…どうでもいいけど。あ、ネギはよそわないでよ…」
皆、甘之川と同じような想いがあるのか、疑問を思考の隅に置き食事を再開した。
「ふむ、これら全てがナベリョウリとやらなのだろうか?」
未知の食事を楽しみながらもウィル・キャラダインは困惑する。確かに異世界のものにとって、キムチ鍋と海鮮鍋と豚しゃぶ、味も見た目も違うものを、全て鍋料理と表現されては混乱するのも無理からぬことだろう。
「あ〜、ウィルの旦那、そこまで悩まないでいいんすヨ。色んな食材をまとめて煮るのが鍋なんで」
正確には違うのだが、正しく理解してもらえる自信がなかったので、根鳥はざっくりとした説明をするに留めた。
31
:
コサジ少将
:2018/12/24(月) 00:35:36
「なるほど。様々な食材を選び、まとめて、混沌とした味わいを生む…まるでこの学園のようだな」
「面白い表現しますね。だったら俺は何の食材だろう?」
「調布は白飯だろ」
「鍋だっつってんだろ!じゃあ根鳥お前は豆腐だ!あっちこっちの食材に味をつけてもらいやがって!」
「私は生卵…」
「吾輩はどの食材も邪魔せぬ白菜といったところか…」
(いやお前は主張の強い食材だろ)
「私は何かな?」
「兼雲は肉だな。生卵とまとめてすき焼きだ」
「調布サイテー。さっきの泉崎さんの言葉聞いてたの?二人まとめて食ってやるって?」
「ちげーよ!肉と生卵だけで成り立つくらい良い組み合わせってことだよ!」
それぞれ食材談議に花を咲かせるのを、甘之川グラムが興味深げに眺める。
「この学園が鍋、か。勇者殿の視点は相変わらず面白い。どの食材を選ぶのか、どんな調味料を使うのか。人によって好きな味、調理法は様々だろうねえ。」
例えば、と豚しゃぶを引き上げて砂糖醤油で味付けをする。すっと根鳥と兼雲に差し出す。
「あ、これ俺好きだわ」
「そう?甘すぎない?」
続けてポン酢と大根おろし。
「サッパリしすぎて物足りないんだよなー」
「男の子ってこってりが好きよね。私はあっさりした後味も好きだけど。」
「同じ食材であっても調理する側で味が全く変わってくる。量が多いのが好みの人もいるし、甘いのが好きな人もビターなのが好きな人もいる。だから鍋は楽しい!」
「なるほど。私にもナベリョウリとやらがなんとなく掴めてきたよ。興味本位で聞くが、甘之川君はどの鍋が一番美味しいと思うんだい?」
「確かに美味しさに差はあります。でもさっき言ったとおり、それぞれにそれぞれの味わいがある…どの鍋が一番美味しいか?決めるのは私ではありません」
「なるほど。じゃあ決めるのは誰なんだい?」
にいと、音が聞こえるほどの笑顔。甘之川グラムは天に笑いかけ、静かながらも響く声でつぶやいた。
―――さあ、誰が決めるんでしょうね。
終わり
32
:
津軽あまに
:2018/12/28(金) 23:59:38
幕間SS『SSその13』 関連SS 敢えて言うならSSその7
ttps://docs.google.com/document/d/1QgZlNzaxKr7Wrx-vwDhed4RwVRk0vJFwung4K5IQvY8/edit#
先日公開したエアプレイSSをさらに改稿したものです。
wiki構文対応のタグを反映しています。
厳密に言えば幕間とは言えないかもしれませんので、GK様判断次第で掲載を見送っていただいても構いません。
33
:
qaz
:2018/12/29(土) 14:25:56
>>32
掲載しました。
ただもしかしたらドキュメントが全て読み込みできていないかもしれないため確認お願いします。
また、3000行を超えていたのでひとまずChapter7で改ページさせていただきました。
区切りを変更したい場合はお申し付けください。
34
:
津軽あまに
:2018/12/29(土) 14:33:02
>>33
ご対応ありがとうございました!
まさかの前後編になるとは……。全て内容読み込めていると思います。
改ページも、このままでお願いします。お手数をおかけしました!
35
:
qaz
:2018/12/29(土) 14:34:43
>>34
了解です!
36
:
トマト祭
:2019/01/07(月) 23:42:36
>>32
遅ればせながら先程気付き、一気に読みました。うひょー、幕間SSではないですな確かに!
グラムちゃんと嶽内が幸せそうなだけでぼかぁ嬉しいよ
各エピソードのたとえば―の下りと最後の仕掛けがたまりませんね!真似したいです
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