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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』 その2

1『星見町案内板』:2020/06/04(木) 14:10:32
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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96関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/19(日) 01:39:02

        ザザー …

釣竿を湖面に垂らし、待つ少女がいた。
黒い前髪を目にかからない高さで揃えて、
日除け帽子を被り、蔦柄のエプロンを付け、
手元にごく小さな折りたたみテーブルを置き……
その上には餌など小物に加えて、おやつだろうか?
見覚えのないパッケージの『ブドウ糖ラムネ』がある。

そして待っている……お目当てが、掛かってくれるのを。

97???『???』:2020/07/19(日) 13:09:47
>>96

             ――――ピクンッ

やがて、釣竿が反応を示した。
お目当てかどうかは分からないが、『何か』が掛かったらしい。
釣糸の張り具合から見ると、かなりの大物のようだ。

98関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/19(日) 19:53:46
>>97

「ん…………!」

掛かった『魚』に、釣竿を強く握る。

        グイッ

餌を無駄にしないためにも、
慎重に……しかし確実に引き上げたい。
もっとも、それほど上手いわけではないが……

99ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/19(日) 21:51:13
>>98

    グググッ…………

引きは強い。
やはり相当な『大物』だ。
静寂の中、徐々に糸を手繰り寄せていく。

        ザッ
            バァァァ
                   ッ

静かな戦いの末に、『それ』が湖面に姿を現した。
全身が厚い体毛で覆われた『カワウソ』のような生物。
どう見ても『魚』には見えない。

           ミャー
                ミャー

『生物』は、『猫に似た鳴き声』を発している。
海の生活に適応した海棲哺乳類――――『海獣』。
『それ』は一般的に、『ラッコ』と呼ばれている。
何故ここにいるのか、どうやって来たのか。
おそらく、誰にも分からないだろう。
しかし、『ラッコ』が糸の先の餌を掴んでいるのは、
紛れもない『事実』だった。

100関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/20(月) 16:18:15
>>99

「まあっ、とっても大きな……」

       「…………毛玉?」

   ゴシ

「??」

目を擦る。
もう一度見る……毛玉? 違う。
見たことがある。あれは『水族館』で。

「…………ら……………ラッコ」

その『名』を口にはしながらも、
にわかには信じがたい光景だ。
川にアザラシは噂に聞いたことがあるが、
湖にラッコというのは『どう来たのか』。

「ラッコ……ラッコ……??」

「あっ! ちょ、ちょっと、離してくださいよう!
 魚の餌……『虫』なんて、美味しくないですよ……!」

     グイッ

ラッコを当ててしまったとして、どうすればいいのか。
とにかく今は釣り針を離してもらうため、引いてみる。

……引き上げてしまいかねないが、まだそこに思考が至っていない。

101ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/20(月) 19:01:00
>>100

糸を引けば、その先にあるものも同じく引かれる。
それが『自然の摂理』だ。
かくして、ラッコも引っ張られる形で岸に向かう。

  ――――グイッ

寿々芽を真似してか、ラッコの方も糸を引いてくる。
何かの『遊び』だと思ったのかもしれない。
しかし、ラッコよりは人間の方が力は強かった。
それも、また『摂理』だ。
多少の拮抗を経て、ラッコの姿が徐々に近付いてくる。

          ザ
             バ
                ァ ッ

まもなく、ラッコは『陸揚げ』された。
今、寿々芽の足元にいるのは『野生のラッコ』だ。
ラッコは、折り畳みテーブルの上を興味ありげに見つめる。

102関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/20(月) 23:09:53
>>101

「ど……どうしましょう、どうしましょう〜。 
 ラッコさん、あなたどこから来たんですか?
 ここ、湖ですよう。あなたの家族はいませんよう」

           スッ

しゃがみこんで『それ』を見つめる。
ラッコ……やはり見間違えなどではないようだ。

スマホを取り出す。

「出来れば、帰してあげたいですけど……」

         スッ

まず調べたのは、『ラッコの逃亡情報』だ。
町内に水族館は無いが、『県内』なら『ありえる』。
あるいは輸送中に逃げ出した可能性もあるだろう。

「言葉が通じるわけも、ないですよねえ。
 仮に人間語が分かるとしても、
 日本語は分かりませんよねえ……」

ここが海ならともかく……
湖に『ラッコ』の家族がいる可能性は、絶無だ。

「……」

                 スゥ

思考の傍ら、空いた手を伸ばし、背中の毛を梳くように撫でる。

103ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/20(月) 23:52:07
>>102

スマホで調べても『ラッコが逃亡した』という情報は出てこない。
どこから来たのだろう。
少なくとも、『湖に棲むラッコ』はいない筈だ。

       フ ワ ッ
               フ ワ ッ

ラッコは大人しく撫でられている。
海で出会った『あきは』を思い出していた。
『ミンクより上等』と言われるだけあって、
その手触りは意外な程に心地よい。
『最高級の毛皮』を求めて、
かつては『乱獲の対象』となった事もある。
今は保護されているとはいえ、個体数は激減していた。

          キョロ キョロ

不意に、ラッコが辺りを見回し始めた。
ラッコは、脇の下に『ポケット』を持っている。
そこに入れてあった『お気に入りの石』が、
いつの間にかなくなっている事に気付いたのだった。
テーブルの下を覗き込んだりして、必死に探している。
先程ラッコが上がった岸に、水に濡れた石が一つ落ちていた。

104関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/21(火) 00:38:25
>>103

水族館からではない……という事は、
考えにくいことだが、野良ラッコなのだろう。
 
        フ

「ふっ……」

             ワッ

毛皮のコートには縁遠いが、
それでも良質な毛というのは分かる。
毛皮……きっと高く『売れる』のだろう。
売れるということは『捕まえられる』という事。

……つまり『放っておいていい』存在ではない。
それに、この姿のなんて可愛らしい事だろう?
関の慈愛は……ラッコに、向けられる事になる。

「はぁい。ここですよう、ラッコさん。
 石……ふふ。これ、大事なものなんですよね」

              コト

「好みの石が無いとご飯を食べなくなる、とか?
 本当かどうかは知りませんけど……
 そう思われるくらい、気に入ったらのめり込むって」

「大事なものにこだわるって、ステキだと思うんです」

石を拾ってきて、ラッコの手元に置いてやる。

「…………もし」「もし、ですよう」


      スッ

「もし、家族のもとに帰れないのなら……」

そして目を見つめる。関の表情は、ずっと温和なそれだ。
言葉は通じていない、独り言でしかないだろうが…………

105ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/21(火) 01:06:11
>>104

       「 ! 」

             ――――ゴソ

『お気に入りの石』を確認し、
器用な動きで丁寧に『ポケット』に収める。
ラッコは、霊長類以外で唯一『道具』を使う哺乳類だ。
ただ使うだけでなく、『使う石』は決まっている。
個体によって『気に入った石』があるのだ。
そして、それをずっと使い続ける。

             ミャー

寿々芽を見上げて、ラッコが鳴き声を上げた。
『言葉』が通じない以上、
『感謝』を示しているのかどうかは定かではなかった。
ただ、石が見つかって喜んでいる事だけは間違いない。

            「 ? 」

寿々芽の独り言を耳にしながら、
ラッコは『幼獣時代』を思い出していた。
母親に抱かれて毛繕いしてもらった事を覚えている。
どうして今それを思い出したのかは分からない。
ただ何となく、寿々芽の雰囲気が、
幼い頃の記憶を呼び起こしたのだ。
まるで次の言葉を待っているかのように、
ラッコは寿々芽を見つめ返した。

106関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/21(火) 02:05:10
>>105

「……………………なんて。私ったらぁ。
 家族を増やすなんて、責任がたくさんいるのに!」

            スッ

手を離す。
少女はあくまでも『常識』を持っていた。
愛の輪の中は治外法権だとして、
そこに外から何かを引きずり込む事は躊躇う。

「ふふ……なんでもありませんよう。ラッコさん」

なりたがっていた、としたら。
話は別なのかもしれないが。

「でも……」

「もしあなたも望んでるなら……」

「……………あのう!」

『野生動物』を餌付けするのは、どうなのだろう?
そもそもいますぐどこかに通報すべきなのでは?
どこに? 本当に通報するのが幸せになるのか?
水族館で保護されるなら良いが、『処分』される可能性は?

                   ゴソ

「こ、これ……『淡水魚』ですけど、食べますか?」

クーラーボックスから、小さな魚を取り出す。
心臓が高鳴るのを感じる。これはどこか、『悪いこと』に思える……だが。

107ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/21(火) 02:41:19
>>106

       「 ? 」
                「 ? 」

ラッコは不思議そうな表情をしていた。
哺乳類とはいえ犬や猫ではないので、実際は分かりづらい。
ただ、そんな顔をしていたように見えた。

            ミャー

ラッコは寿々芽の考えを知らない。
何故ならラッコだからだ。
かつては『狩猟対象』であり、今は『保護動物』となった。
しかし、それらは『人間』が決めた事である。
狩られようと守られようと、ラッコはラッコでしかない。

          ミャー   ミャー

そのラッコは、『幸せに暮らしたい』と思っている。
幸い、『流れ着いた場所』は住むのに適していた。
『幸せ』でいられるのなら、それ以上の望みはない。
そして、今のところ『新たな場所』を求めてはいなかった。
『湖』まで来たのも、ちょっと『遠出』したくなったからだ。

       クン クン
             ――――カプッ

魚に近寄って匂いを嗅ぎ、口をつける。
一番好きなのは『ウニ』や『アワビ』だが、魚も好物だ。
この魚は、普段食べているのとは違う味がする。
形は似ているのだが、どこか『海から離れた味』だ。
『遠出している』という感じがして、
何となく満足したような気分になってきた。

108関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/21(火) 03:27:39
>>107

「ふ…………」

            ニコ…

魚を食べるラッコを見つめ、暖かい笑みが浮かんだ。

淡水魚は人が生で食べるにはリスクがあるのだが、
寿々芽は『ラッコなら大丈夫』と考えていた。
実際に大丈夫なのかどうかは、ラッコ次第だろう。

「……あの!」

   スッ

立ち上がった。

「ラッコさん…………ラッコさん。
 私……そろそろ、行きますねえ。
 あなたのこと…………誰にも言いませんよう。
 どこかから逃げてきたわけでも、ないみたいですし」

           ガシャ

「誰かが探してるわけでも、ないみたいですし……」

この可愛らしいものを、どこか遠くへ。
遠くの海にいるかもしれない、家族の元へ。
そう思いもしたが……ここが住処なのだとしたら?

ラッコはどこかに行こうとはしていない。
誰かに縋ろうともしていない。
餌を食べる姿は自然体で、あるがままに見えた。
話せる相手とも、真に理解し合うのは難しい。
ましてや種族の違う相手とは。

「そのお魚は……あなたに、あげますよう。
 お腹いっぱいにはならないかもしれませんけど」

少女は、釣り道具を片付け始める。河岸を変えるために。

109ラッコ『ハッピー・スタッフ』:2020/07/21(火) 14:01:32
>>108

     ムグ ムグ

ラッコは魚を食べている。
道具を片付け始めた寿々芽を見ても、特に反応を示さない。
その姿は、一見何も考えていないように見える。
実際、そのラッコは物事を深く考えない性格だった。
魚を食べ終えたラッコが、『湖』に戻っていく。

           ド ブ ン ッ
                     プ カ ァ …………

お腹を上にした『野生のラッコ』が、湖面に浮かび上がる。
一本の浮き草のように、のんびりと気持ちよさそうに漂う。
その視線が『寿々芽』に向けられた。
何も考えていないような、つぶらな瞳。
『覚えられた』――――のかもしれない。

110関 寿々芽『ペイデイ』:2020/07/21(火) 21:23:13
>>109

「ラッコさん。
 もし、またここで会えたら……
 もしそういう事があったら……すてき、ですね」

         ガシャッ

ラッコにそれ以上干渉はせず、
道具を片付け終えた関はその場を去る。

またここで会えたら……それは『運命』かもしれない。


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