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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』 その2

1『星見町案内板』:2020/06/04(木) 14:10:32
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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22村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/09(火) 23:04:41
ザワザワ
            ザワザワ
      ガヤガヤ

「もうじきに『レジャーシーズン』だなあ〜〜〜〜〜〜」

日差しを浴びれば汗ばむほどだが、木陰に入れば意外なほど涼しい。

そんな木陰の芝生に座り込んで、公園で遊ぶ人々に目を向けている。

「・・・『平和』だなァ・・・・・」

23小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 16:39:18
>>22

    ザッ……

ふと、背後から足音が聞こえてくる。
まもなく、一人の女が姿を現した。
『先客』の存在に気付き、足を止めて頭を下げる。

  「すみません――
   誰もいらっしゃらないと思ったものですから……」

『喪服』を着た女だ。
黒いキャペリンハットを被っている。
両手の薬指には『指輪』があった。

  「……ご一緒してもよろしいでしょうか?」

穏やかな声色が、静かに言葉を紡ぐ。
それと共に、遠慮がちな視線が、少年の隣に向けられた。
左手の人差し指には『包帯』が巻かれている。

24村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/10(水) 19:21:37
>>23
    ザッ……

  「ン・・・」

  「オネーサンの場所だったかい。こいつは失礼した。」

腰を上げて、木陰の出来るだけ端のほうに行って座りなおす。
『お気に入りの場所』に誰かがスデにいたときの気持ちはわかるから、村田なりに気を遣っている…というところだ。

  「(『学ラン』でここにいる俺が言えたことじゃあねーケドよぉ〜〜)」
  「(なんつーか、このへんに『似つかわしく』ねーカッコしたヒトだなぁ〜っ)」

25小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 20:12:13
>>24

普通、『喪服』を着て公園に来る人間は少ないだろう。
あるいは、『葬式の帰り』という可能性も考えられる。
ただ、それにしては『着慣れている』雰囲気が漂っていた。

  「……いいえ、私の場所ではありませんよ」

    ニコ……

緩やかに首を振り、女が微笑を浮かべる。
柔らかい笑み。
その表情には、どこか寂しさが見えた。

  「ありがとうございます……」

          ス……

丁寧に一礼し、少年の隣に腰を下ろした。
そして、同じように人々を見つめる。
視線の先には、夫婦か恋人らしき一組の男女がいた。

  「――ここには……よく来られるのですか?」

少年に向き直り、穏やかに問い掛ける。
少し離れた日向では、賑やかな声が飛び交っている。
木陰で区切られた『ここ』だけが、別世界のようだった。

26村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/10(水) 20:28:43
>>25

  「・・・」
                  ヒト
一礼、座る所作…『たおやか』な仕草の女だ、と思った。
なにか芸事でもやっていたか、あるいはどこぞ名のある家のご内儀なのか…『だった』なのか。

  「今日初めて来た・・・なんつーか、そういう気分になって」

  「ちょっと色々あって、気を休めたい気分っつーか」

  「『自主休講』して・・・まァ、サボってるだけだけど・・・」

言いながら、ついほんの少し前に自分に起きた出来事のことを思い出していた。
あまたの非日常との『会合』と、その先にあった『目覚め』を。

  「ああやって遊んでる『家族連れ』なんか見ると、うらやましくなったりしてね・・・」

男の目線の先には、快活に遊ぶ男児と、その二親らしき男女がいた。

27小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 20:55:48
>>26

  「……私も、落ち着きたい時には、よくこの公園に来ています」

  「――同じですね」

微笑みながら、数日前の出来事を思い出す。
森の中で、『空織』という男性に出会ったことを。
彼は自分と『同じ人間』であり、『違う人間』でもあった。

  「『羨ましい』――ですか……」

その言葉につられたように、家族の方に顔を向ける。
羨ましいという感情。
それは、自分の心の中にも存在していた。

  「――……」

その先は、敢えて言わなかった。
『人の心に踏み入る』というのは、
簡単にしていいことではないから。
ただ『話は聞く』という無言の意思表示が、そこにあった。

28村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/10(水) 21:19:14
>>27

ヂ キンッ
        シボッ

  「俺の二親はそろって仕事人間だったもんだから、ああやって遊んでもらった記憶はとんと無くてよぉ〜」

  「そのくせ親面するもんだから、そのたび俺は逆らって、その回数分だけ殴られた。」

    チリ…
スウーッ          フゥー…

        チリ…

煙草に火をつけ、深く煙を吸い込む。
先ほど距離をとったのは、これが理由でもあった。

  「初対面のあんたに聞かせるような話じゃあなかったな。忘れてくれ。」

煙の回った、若干ぼうっとする頭でつぶやく。

  「体に悪いのは承知だが、煙草もそう捨てたもんじゃない。」

  「煙が回ってる間は・・・何も考えずに済む。」

29小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 21:50:11
>>28

途中で口を挟むことなく、ただ黙って耳を傾けていた。
彼が語ってくれた話は、自分にとって身近な内容とは呼べない。
人には、辿って来た『道筋』がある。
それぞれが自分の考えを持って、『今』を生きている。
彼も、そして自分も。
『違う部分』は大きい。
ただ――同時に『同じ部分』も残されている。

  「ええ……」

  「いえ――『お気持ち』は分かります……」

自身の左手に視線を落とす。
『包帯』が巻かれた人差し指。
その下には、『自分自身の手で付けた傷』がある。

  「……『身体に悪い』と分かっていても――」

  「『そうしている間』は――何も考えなくて済む……」

           ソッ……

右手の指先が、『包帯』に触れる。
自分の身体に傷を付ける行為。
それが決して好ましいものではないことは承知している。
彼――『空織』にも指摘されたことだ。
それでも、これが一時的にせよ自分を救ってくれるからこそ、
止めることが出来ない。

  「『お気持ち』は……分かります」

30村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/10(水) 22:20:06
>>29

遊ぶ家族のほうを見ながら、言葉を続ける。

スゥ―…   ハァ―

  「―――『過去』に『縛』られている―――」

  「この『過去』を克服しなけらばならない。
   前を向いて生きていかなきゃならない。」

  「でも…そう考えて『今』を生きれば生きるほどに…『過去』は首をもたげてくる。」

  「・・・『考えない』ことしか、俺には抗う術がなかった・・・」

言った後、携帯灰皿を取り出し、吸い殻を放り込む。

  「でもそれも・・・『昨日までのこと』だ。」

灰皿をしまい、起ち上る。

31小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 22:49:51
>>30

彼の言葉には、『共感する部分』があった。
『過去に縛られている』という部分。
自分にも、『それ』に近いものがある。

それは『約束』だ。
『彼の分まで生きる』という『誓い』。
ある人は、それを『呪い』だと表現した。
いずれにしても、『それ』が私の心から離れることはない。
時として、『死の誘惑』に心が折れそうになることもある。

ただ、私にとって、『それ』は『縛るもの』とは違う。
『それ』は、『未来』に進むための原動力になってくれるものだ。
何十年か先の未来――この命を全うした後に、
『彼』と再会するという希望。
それが私を『この世界』に留め、
『今』を生きるための力を与えてくれる。
『今』を進んだ『先』――
その先にある『未来』へ向かう力になってくれる。

  「――……」

          フワ……

身じろぎ一つせず、彼の言葉を最後まで聞き届ける。
風が吹き、被っている帽子を僅かに揺らす。
この瞬間、楽しげに過ごす人々の声も、
どこか遠くに聞こえていた――。

32村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/10(水) 23:26:26
>>31

  「考えていたんだ。自分の『これから』・・・
  『未来』を生きるために、俺に何ができるのか。何をすべきなのか・・・」

  「『力』の、『使いみち』を。」

ザァ ッ …

小石川のほうを振り返る。風に揺れた芝が音を立てる。
決意に満ちた若い瞳が、小石川を映す。

  「あんたに話、聞いてもらえてよかったよ。おかげで決心がついた。」

33小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/10(水) 23:42:51
>>32

    ス……

立ち上がった少年を見上げ、女の瞳が少年を見返す。
柔らかい光と仄かな陰の宿る黒い瞳。
その瞳の奥には、『何かを悟ったような色』があった。
それは、単にそう見えただけなのかもしれない。
あるいは、どこかに『同じ部分』があったのか――。

  「……少しでもお役に立てたのなら――」

          コク……

  「私も――嬉しく思います……」

決意に溢れた言葉を受けて、女が小さく頷いた。
そして、それ以上は何も言わなかった。
風は既に止んでいる。
力強く立つ少年と、彼を見上げる黒い女。
それらが、この静かな木陰に存在する全てだった。

34村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/11(木) 00:11:38
>>33
    ニッ!

「いやァ、やっぱり一人でじーっとしてんのは性にあわねぇなあ〜〜〜っ」

小石川に満面の笑みで笑いかけた後、日向に踏み出して身体を伸ばす。
夏の訪れを告げるような、大きな雲と青い空、明るい陽射しが村田を迎える。

「でけぇ雲だなぁ〜〜〜
今は晴れてるけど、じきにザアっと降るかもしれねーなぁ〜っ」

手のひらを太陽にかざし、まぶしそうにつぶやく。
先ほどまでとは一転、気楽そうな声色だ。

「俺はもう帰ろうかと思うけど、あんたはどうする?」

35小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2020/06/11(木) 00:29:56
>>34

  「私は……」

  「もう少し――ここにいることにします……」

        ニコ……

言葉と共に、微笑を送る。
少年とは対照的な、物静かで柔和な笑み。
年齢相応の、もしくはそれ以上の落ち着きがある表情だった。

  「先程も言いましたが……」

  「私は、時々この公園へ来ています……」

  「もし……機会があれば――」

  「――いつかまた、お会いしましょう」

         スゥッ……

別れの挨拶を告げ、丁寧に頭を下げる。
『日向に立つ少年』と『日陰に座る女』。
二者の対比が、鮮やかなコントラストとなって表れている。
『同じ』であり、同時に『違う』。
もし、この場に『力の存在』を『知る者』がいたとすれば、
そのように感じたかもしれない――。

36村田 瑛壱『ディズィー・スティック』:2020/06/11(木) 01:14:29
>>35

  「そうかい。」

  「そんじゃあ、また。
   次に会ったときは、あんたの話、聞かせてくれ。」  

ひらひらと背中ごしに手を振って、日差しの中を歩いていく。
時折雲行きを確認するように、空を見上げながら。


  「・・・なんだか『ワケアリ』っぽかったよなぁ〜〜〜っ
   といって、『ヤケ』になってるとか、そういう風じゃあなかったしなぁ〜〜」
                         ヒト
  「なにかを少し諦めたみたいな・・・悲しい目した女だ・・・」

小石川からずいぶん離れてからぼそりとつぶやく。

  「・・・気のせいならいいんだが・・・」

互いに名乗らなかったが、『また会う気がする』。
確信めいたものを胸に抱えながら、照り返しでゆらめく陽炎の中に消えていった。


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