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【場】『 湖畔 ―自然公園― 』 その2
1
:
『星見町案内板』
:2020/06/04(木) 14:10:32
『星見駅』からバスで一時間、『H湖』の周囲に広がるレジャーゾーン。
海浜公園やサイクリングロード、ゴルフ場からバーベキューまで様々。
豊富な湿地帯や森林区域など、人の手の届かぬ自然を満喫出来る。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
178
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/08/29(土) 17:29:21
静かな足取りで、『喪服の女』が歩いてくる。
木陰で立ち止まり、白いハンカチを敷いて、
その上に腰を下ろした。
降り注ぐ木漏れ日の下で、女が湖を見つめる。
179
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/02(水) 21:13:23
>>178
「もし、そこの黒い人」
ステテテと小走りで近寄ってきたのは、金髪の幼い女の子。
膝に絆創膏を貼って日に焼けた姿は活発そうな印象を与えるが、
それにしてはブカブカの服と靴で動きにくそうだった。
「トンボ要らんか」
その手に持ったヒモにはトンボが繋がっていた。
180
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/02(水) 21:54:39
>>179
「『トンボ』……ですか?」
軽く首を動かし、キャペリンハットの下の目線を少女に向ける。
相手の姿には、どことなく不思議な印象を抱いた。
しかし、きっと何かの遊びなのだろうと考え、微笑を浮かべる。
「……ええ、お願いします」
「――譲って頂けますか?」
少女からトンボに視線を移す。
トンボに紐を結ぶというのは簡単ではなさそうに思える。
その光景を思い浮かべて、微笑ましいものを感じた。
181
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/02(水) 22:02:56
>>180
「おお、そうか。
赤いやつと黄色いやつ、どちらがよい?」
ヒモで繋がったトンボは、一匹だけかと思ったら二匹いたらしい。
気づかなかったのは、赤い方が飛んでいるのに対して、
黄色い方はプラーンと力なくぶら下がってしまっているからだろう。
「どうじゃ?」
子供がよく見せようと黄色いトンボを手に乗せると、
ちゃんと指にとまったので生きてはいるらしい。
182
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/02(水) 22:28:30
>>181
「そうですね……」
黄色のトンボは元気がなさそうに見えた。
もしかすると、紐で繋がれているせいだろうか。
赤いトンボも今は元気だが、
いずれ同じように元気をなくしてしまうかもしれない。
「……『両方』譲って頂けないでしょうか?」
二匹のトンボを見比べるようにしてから、
気遣うような声色で少女に告げる。
その表情は、静かな湖面のように穏やかだった。
口元には変わらず微笑を湛えている。
183
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/02(水) 22:36:30
>>182
「なんじゃと?
両方……?」
予想外の答えに驚く子供。
だが、その微笑みになんらかの迫力を感じたのか、すぐに納得する。
「それは……うむ。良いが……
安くなったりはせんぞ? 別料金じゃ」
そう言って2匹のトンボを差し出してきた。
184
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/02(水) 22:48:52
>>183
「ええ、分かっています……」
ス……
左手を差し出して、トンボの紐を受け取る。
薬指の指輪が、木漏れ日の中で小さく輝いていた。
飾り気のないシンプルな指輪。
「――お幾らですか?」
尋ねながら、横に置いてあったバッグに右手を伸ばす。
その薬指には指輪がある。
左手にしているものと同じデザインだった。
185
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/02(水) 22:58:05
>>184
「おお……黒き人……なにか……お上品……お金持ちそうじゃな……」
なんとなくそういうオーラを感じたらしい。
「じゃがわしのお店は物々交換。
お金は無意味なんじゃ!」
よくわからない理由で勝ち誇る(?)子供。
結局お代の回答をしていないが、物々交換なので特に決まっていないのだろう。
186
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/02(水) 23:20:43
>>185
「――そうなんですね」
クス……
微笑みながら、少女の様子を見守る。
それから片手でバッグを開けて、中から何かを取り出した。
手の中に収まる程度のサイズだ。
「では、代わりに『これ』を差し上げます」
それは小さな布袋だった。
口の部分が巾着のように留められている。
袋からは芳しい香りが漂う。
「……これは『サシェ』というものです」
「中には『乾燥させたお花』が入っているんですよ」
「『ラベンダー』という種類の花です……」
ス……
「――どうぞ」
自作の『香り袋』を少女に差し出す。
気分を落ち着かせるために常備しているものだった。
幸い、最近は気持ちが乱れる回数は以前よりも減っている。
187
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/02(水) 23:31:15
>>186
「マイドアリじゃ」
両手で袋を受け取り、感触を楽しむように、もにもにと指を動かす。
「さしえ……お花が入っておるのか?
何に使うんじゃ?」
と言いつつ、すでに匂いにつられてくんくん嗅いでいた。
188
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/02(水) 23:55:11
>>187
「ラベンダーには『リラックス』――
気持ちを穏やかにしてくれる効果があります……」
両手で触れると、乾燥した花びららしい手触りが感じ取れた。
鼻を近付けると、小袋から漂う爽やかな香りが鼻腔をくすぐる。
心が穏やかになるような匂いだった。
「もし何か『不安』になった時に、
気分を落ち着かせてくれます……」
「それから……眠る時に側において置くと、よく眠れますよ」
話し終えて、トンボを見つめる。
トンボに紐を結ぶのは難しいだろう。
おそらくは、解くのも――。
189
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/03(木) 00:06:47
>>188
「ほう。寝る時に使うのか。
そういえば今まで交換したものは健康アイテムが多いのう」
と匂いを嗅ぎながら言う。
この子供の交換お店屋さんはたまたま遊びでやっていたわけではなく、
色々な人と物々交換しているらしい。
「ところで黒い人は、なぜそんなに黒いんじゃ?
黒いと暑くなるとテレビでやっておったぞ。
平気なのか? シオタブレットと冷たいお茶もあるが……」
商機を見出したのか、そんな提案もしてくる。
一方でトンボは一匹づつ別料金と言った件については忘れたらしい。
190
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/03(木) 00:30:54
>>189
「……大丈夫です」
「でも――そうですね……」
自分にとって、『喪服』は『普段着』だった。
しかし、普通は常に着るものではない。
言われてみて、そのことに改めて気付かされた。
「……気を付けないといけませんね」
答えながら、少女に微笑む。
それは、先程までの笑い方とは少し違う。
内側に寂しさを抱えた笑みだった。
「気を付けて下さいね……」
「いつの間にか倒れてしまう方もいらっしゃいますから……」
左手に紐を握りながら、少女に語り掛ける。
もし自分に子供がいたら、
こんな風に過ごす日があったのだろうか。
心の中で、小さな思いが生じていた。
191
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/03(木) 00:44:31
>>190
「うむ。わしは大丈夫じゃ。
今言った通りお茶もある」
と、『虚空から』水筒を出現させ、蓋をカップにしてお茶を飲む。
「……。
大丈夫と言ったが……これはサービスじゃ!
飲むがよいぞ」
自分だけで飲むのが気が引けたのか、お茶のコップを差し出してきた。
氷も入っている。
192
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/03(木) 00:55:51
>>191
「――……」
何もない空間から現れた水筒を見つめる。
驚いた表情だった。
しかし一方で、納得しているような色合いもある。
「……頂きます」
手渡されたお茶を一口飲む。
『どうやって出されたのか』は分かっていた。
しかし、そこに何か危険があるとも思えなかった。
「今のは――」
「どこから……?」
カップを返しながら、少女に尋ねる。
いつの間にか、右手に何かが握られていた。
それは一本の『ナイフ』だった。
193
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/03(木) 01:09:13
>>192
お茶は自家製だろうか。何茶かよくわからない味だった。
味はともかく、氷が入っているのでよく冷えていた。
それだけだ。特に何も起こらない。
「どこから? どこのお茶かは知らぬ。
このお茶は前に交換してもらったやつじゃ」
フタを受け取りながら、微妙にズレた返答。
お茶の正体は知らないらしい。
「ぬ?」
いつのまにか握られたナイフ。その気があれば刺されそうな位置だが、
子供は警戒心の薄い様子で、不思議そうな目で見るだけだった。
194
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/03(木) 01:33:09
>>193
「『交換』で……」
「……そうですか」
『ナイフ』を見る少女の視線を追う。
やはり見えている。
その反応に確信を得た。
シ ュ ッ
右手の『ナイフ』を振る。
素早く精密な動き。
その刃は、二匹のトンボを一瞬で『両断』した。
――ブゥゥゥン
だが――トンボは生きていた。
体を真っ二つにされながらも、平然と飛び続けている。
羽のない下半身も、その場に『浮遊』して留まっていた。
発現した『ビー・ハート』は、『本体以外の生物』を切り離す刃。
紐は生物ではないため、そのまま切断される。
だが、生物であるトンボは無傷のままだ。
紐を解くのは難しいと判断し、
『トンボごと』切り裂いたのだった。
上半身と下半身が接合されると、トンボは飛び去っていった。
195
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/03(木) 01:39:37
>>194
「!
……?
??」
突然の出来事に理解の追い付かない様子で、ナイフとトンボを交互に見る子供。
そしてトンボが飛んでいくのを見送り、空を見上げた。
「トンボ、逃げてしもうた……
なんでじゃ? ええのか?」
動機から実際の動きまで、一連の全てがよくわからなかったのだろう。
トンボを逃がされて怒ったということはない。交換済みだからそこはいいのだろう。
ただ、不思議そうな声だった。
196
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/03(木) 02:06:55
>>195
「ええ――」
「いいんです」
「……きっと」
少女と同じように青い空を見上げ、トンボを見送る。
『ナイフ』は消えていた。
正しいかどうかは分からない。
そもそも『正しさ』があるのかどうかも。
ただ、自分が『そうしたかった』というだけ。
スゥ……
「私は、よくここへ来ています」
「もし見かけたら……その時は、また声を掛けて下さいね」
静かに視線を下ろし、少女に向き直る。
穏やかな表情だった。
そこには、最初に見せたのと同じ柔らかな微笑があった。
寂しそうな色は、今はない。
それは、隣に少女がいるからかもしれなかった。
197
:
ナイ『ベター・ビリーブ・イット』
:2020/09/03(木) 02:16:43
>>196
「?」
微笑む喪服の女性に対し、子供はやはり不思議そうな顔をした。
複雑なその心境は、やはりよくわからなかったのだろう。
「うむ。
わしもマタノゴライテンをお待ちするんじゃ。
ではな!」
そう言って女の子は去っていく。
またトンボを捕まえに行くのかもしれなかった。
198
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』
:2020/09/03(木) 02:33:35
>>197
「ええ、また……」
元気よく立ち去る少女を、笑顔で見送る。
その後姿を微笑ましげに見つめた後、再び空を見上げた。
既にトンボは見えず、
そこには澄み渡る青空だけが広がっていた――。
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