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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』
1
:
『星見町案内板』
:2016/01/25(月) 00:02:24
今世紀に建造された『東海地方』を対象とする集約電波塔。
低層エリアには『博物館』や『ショッピングモール』が並び、
高層エリアの『展望台』からは『星見町』を一望出来る。
---------------------------------------------------------------------------
ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
│ ┌┘┌─┘│ 》 ┌┘│
┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
───────┘└─────┐ .: : : :.》.: :.: ││
└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
└────┐││┌──┘
└┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
---------------------------------------------------------------------------
419
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/12(火) 00:44:05
一つの人影が、音もなくベンチに腰を下ろす。
黒い帽子と喪服を身に纏った細身の女。
手にしたハンドバッグを、おもむろに開く。
「――あっ……」
うっかり手を滑らせ、口の開いたバッグを床に落としてしまった。
細々とした中身が足元に散乱する。
その場から立ち上がり、身を屈めて小物を拾い集める。
420
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/12(火) 01:26:42
>>419
ベンチからやや離れた壁際から・・・
トコ トコ
スッ
「…………小石川サン」
近付いて来て、小物を拾いだしたのは『稗田恋姫』。
「えひ……手伝うぜ」
サッサッ
前に会った時とは違い、全身冬服装備で固めていた。
その手にはゲームセンターのものらしき『景品袋』がある。
421
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/12(火) 01:27:16
>>420
(メール欄消し忘れです)
422
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/12(火) 01:55:10
>>420
声に気付いて、そちらに向き直る。
その顔には見覚えがあった。
何度か出会ったことのある、桜色の瞳の少女。
「稗田さん――」
「ありがとうございます」
穏やかな微笑みと共に、会釈を返す。
元々、それほど物は多くなかった。
それらを拾うのに、長い時間はかからない。
「――……」
ベンチの下に転がっていた包帯を拾い上げ、顔を上げた。
それから、不安げな視線で辺りを見回す。
大事なものが見当たらなかった。
少女は気付くかもしれない。
ベンチの脚の陰に、木製の鞘に収まった果物ナイフが落ちていた。
423
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/12(火) 10:13:38
>>422
「えひ、気にすんなし…………
知り合い……が物落としてたら、
拾うのは常識的に考えて普通だし……ほら」
サッサッ
それなりに手際よく拾い集め、
小石川に渡していく恋姫。
「……ん」
あらかた拾い終えたと思ったのだが……
「なんかまだある感じか……おっ。これじゃない?」
スッ ・・・
「なんだこれ…………?」
ベンチの陰に、もう一つ何かあるようだった。
それを拾って……小石川に渡すために持ち上げる。
「うおっ、ナイフか……!? 事件の予感……!
……なんてな、えひ。これも小石川サンのだろ?
あー、マイ箸とかの流れってやつなのかな……?
鞘に入ってるとか本格的ぃ……名刀っぽいぜ」
「…………はいこれ」
・・・もしあったとしても、その刃の意味を、
小石川の人柄とすぐに結び付けられはしないだろう。
やや疑問符を浮かべながらも、陰気な笑みと共に手渡す。
424
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/12(火) 19:45:54
>>423
持ち上げられたナイフに視線を向ける。
その瞳の奥には、大きな安堵の感情があった。
差し出されるナイフに向かって静かに手を伸ばす。
「ええ、とても大事なものです……」
スッ
「ありがとう――ございます」
果物ナイフを受け取って、バッグの中にしまう。
他には、もう落ちているものはない。
それで最後だったようだ。
「お陰様で助かりました」
「もっとしっかりしないといけませんね」
クス
ベンチに座り直し、少女に笑いかける。
その表情に浮かぶのは、どこか陰の残る微笑み。
ただ、思いがけず知人と出会えたことで、その陰も今は少しばかり薄れていた。
425
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/12(火) 22:52:00
>>424
「あ……そーなの……なんか高そうだもんな」
(…………つーか、銃刀法とか大丈夫なのか?
いや、そんなにデカイわけではないか……でも、
マイナイフ……って、普通持ってるもんなのか?
マイ箸とかですら持つ気しないんだけど……
小石川サン……潔癖症のケあったりすんのかな)
恋姫は『大人』に憧れる気持ちが薄い。
化粧の仕方もなんとなくしか分かっていないし、
カバンに何を入れるべきかも、考えていない。
「えひ、十分しっかりしてそうだけど……
小石川サン、意外と抜けてたりすんの……?
物めっちゃ落とすとか……? ギャップだな……」
凶刃の真意にはもちろん気付かないまま、
別の『へんな印象』を抱きつつナイフを返す。
「よいしょ…………」
ドサドサ
同じベンチの、やや離れた位置に腰掛け荷物を下ろす。
「あ、そういえば何してたの…………買い物帰りとか?」
426
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/13(水) 00:08:58
>>425
ナイフを持ち歩く人間は、きっと少ないだろう。
そして、それは良いことではないと思う。
それでも、自分にとってなくてはならないものなのも確かだった。
「時々……散歩の途中で道に迷ってしまうこともあります」
「――失敗するのは珍しくありませんよ……」
……ニコ
「ええ、新しくできたお店に……」
傍らに置いていた小さな紙袋を、軽く持ち上げる。
ロゴの入ったアロマテラピー専門店の袋だった。
そこから、ラベルの貼られた小さな瓶を取り出す。
「――ラベンダーのオイルです」
「私は、この香りが好きなもので……」
「とてもリラックスできますから……」
おもむろに蓋を外すと、芳しい香りが辺りに漂う。
フローラル調の柔らかな芳香。
この香りに包まれていると、気持ちが落ち着く。
「――稗田さんもお買い物ですか?」
まもなく蓋を閉じて、アロマオイルの瓶を袋に戻す。
それから少女の持つ袋に視線を向けた。
それが景品であることまでは分かっていない。
427
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/13(水) 00:33:53
>>426
「へぇ……なんか想像したら面白いな」
ニタ…
「『地図アプリ』とか使っても迷っちゃうの?」
『しっかりした大人』にもおかしな面はある。
それは分かっていても、イメージが繋がらない。
「というか小石川サン、ラベンダー好きだな。
……えひ、まあ、似合うんだけどさ……
このニオイ=小石川サンってイメージになってきた」
ラベンダーの芳香は普段から嗅ぐものではないが、
小石川と遭遇するたびに違う形で嗅いでいる気がする。
「僕も『アロマキャンドル』とか……たまに、買うし。
こういうの、結構好きだ……今日は買い物じゃないけど」
ガサガサ
「…………ゲーセン行ってたんだ」
袋の中にはよく分からない『箱』が入っている。
「プライズ……あー、UFOキャッチャーが、ここは多いから」
「……結構調整はハードなんだけど、
ここにしかないヤツもあるんだよね」
428
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/13(水) 01:22:06
>>427
ゲームセンターという場所には、あまり馴染みがない。
それもあり、やや不思議そうに箱を見つめた。
失礼に当たらないかという考えが浮かび、緩やかに視線を外す。
「稗田さんは、お上手なんですね……」
「――私も小さい頃に挑戦したことがありました」
「……大きなぬいぐるみが欲しかったんです」
クス
「でも……ほんの少し動いただけでした」
幼少期の一幕を思い出す。
あれはデパートの店内だっただろうか。
忙しかった父が、珍しく遠出に連れていってくれたのが嬉しかったことを覚えている。
「――コツがあるのですか……?」
「それを聞いたら……私も上手くなれるでしょうか?」
少しばかり冗談めいた口調で告げる。
口元には穏やかな微笑があった。
それは、知人との会話を心から楽しんでいる表情だった。
429
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/13(水) 03:04:13
>>428
「小さい人形とかは取りやすいんだけど……今日は大物だった」
箱の上面には『アニメキャラ』風の絵が描いていた。
恋姫もそれについて、あえて説明をする気はなさそうだ。
「まあ……僕もプロとかじゃないけど……
ゲーセン通ってたらエンカするの避けて通れないし……
UFOキャッチャーも……素人じゃあないぜ」
ニヤ
「コツは……うーん、取れそうな台探す事だから、
あと課金額? なんというか、もともこも無い訳だけど」
「えひ」
あまり詳しいというわけでもないので、
あいまいなアドバイスだけして袋を閉じた。
「でかいの取れた事たまにあるけど……
なんだろうな、なんか……急にぽろっと取れるんだよな」
「アーム……途中から強くなったりしてるのかもな。
……そういう『都市伝説』もあるくらいなわけだし」
430
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/13(水) 22:49:19
>>429
「……選び方ですか」
「新鮮な野菜にも見分け方があります……」
「――同じですね」
ニコ……
彼女と自分は違う人間であり、歩んできた道筋や生活範囲は異なる。
ただ、その中には共通する部分が垣間見えることもある。
それを見つけられることは、きっと楽しいことなのだと思う。
「私の実家は……トマト農園なんです」
「――ジャムやジュースも作っていますよ」
「私も学生の頃は手伝いを……」
それは、クレーンゲームの記憶よりも少し近い時代の記憶。
自分自身が、隣に座る少女と同じくらいの年齢だった頃のこと。
泥に汚れながら、忙しく立ち働く父の仕事を手伝っていた。
「あ……ごめんなさい」
「私ばかり話してしまいましたね……」
「昔の懐かしいことを思い出してしまったもので……」
431
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/13(水) 23:07:07
>>430
「『収獲』しどきの目利きってやつだな……野菜?
ラベンダーは知ってたけど……へえ、トマト農家……」
なんだか意外な感じだった。
恋姫的にも『農家』は大事な仕事だと思うが、
小石川のどこか垢抜けたイメージとは違うように思えた。
「前は僕も自分語りした気がするし……
えひ、ここはおあいこってことでひとつ」
他人の人生に深い興味はない。
自分の人生だけでせいいっぱいだ。
だが、聴かせてくれる分には、面白い。
「というか……トマトジュースは分かるけど、
トマトジャムって……『ケチャップ』じゃね」
「えひ、情弱でわるいんだが……
やっぱり……ジャムの方は甘かったりするの?」
「トマトトークもうちょい聞かせてくれよ」
特に農業なんていうのは全く知らない話だし……
動画サイトやネット番組で『ドキュメンタリー』を見るような好奇心はある。
432
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/14(木) 00:06:47
>>431
「――ええ、喜んで……」
クス
「トマトのジャムは甘いんです」
「グラニュー糖やレモン汁を入れるので……」
「酸味があるので普通のジャムとは少し違いますが、美味しいですよ」
どちらかというと、自分は街育ちではなかった。
客観的に比較すると、田舎で育った方なのだろうと思う。
街の暮らしに慣れたのは、今は亡き『彼』の影響が大きい。
「――他には……フルーツトマトも育てています」
「肥料や水分量を減らすと、普通よりも粒の小さなトマトができるんです」
「その代わりに栄養が凝縮されて、イチゴよりも甘いトマトになるんですよ」
普段よりも、いくらか饒舌に言葉を続ける。
農園の娘として生まれたこともあり、何かを育てることは昔から好きだった。
趣味で行うラベンダーの栽培も、幼少期の経験が関わっているのかもしれない。
「何だか……たくさん喋ってしまいました」
ニコ……
「――楽しんでいただけましたか?」
433
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/14(木) 00:33:49
>>432
「へぇ……ちょっと興味出て来たわ。
僕、どっちかというと辛党だけどさ。
……ジャムとかフルーツトマトとか、
甘いトマトってのは面白そうだな……」
(まあ、そこまでして食いたいとは思わんけど……
小石川サン、楽しそうだし……えひ、空気読んどこ)
(…………でも、どんな味なんだ?
もしかして『ダイマ』されちゃったか……)
意外にノリノリな小石川のトマトトークを聴き、
多少なり興味を煽られる恋姫だった。
ちなみに、トマト自体は特別好きでも嫌いでもない。
甘い物……それこそジャムなどは好きではないのだが。
「楽しかったよ……えひ、まじでギャップって感じ。
トマトにめっちゃ詳しい知り合い、他にいないし…………」
「……僕もなんか語りたいとこだけど、今日はこの後用事あるんだよね」
腕時計に視線を向ける。ゲームキャラらしきデザインだ。
「また今度聞かせてやんよ。……まあ、いやじゃなければ……だけどさ」
434
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2019/02/14(木) 01:18:22
>>433
「――はい」
「またお話できる時を楽しみにしていますね……」
ニコ
少女――稗田恋姫とは、これまで何度か顔を合わせてきた。
それらは偶然ではあったけれど、嬉しい偶然だった。
彼女との会話は、いつも楽しいものだったから。
「その時は――景品の取り方を教えてくれますか?」
クス
ほんの少し冗談めかした、やや明るめの微笑を少女に向ける。
そして、立ち去るらしい彼女に合わせてベンチから立ち上がった。
少女を見送るために、深く頭を下げる。
「……ありがとうございました」
「――また、いつか……」
435
:
稗田 恋姫『ブルー・サンシャイン』
:2019/02/14(木) 01:26:48
>>434
「ん…………勉強しとくよ」
ザッ
「取りやすい台とか……色々な」
トコトコ
ベンチから立ち上がり、2歩歩いて振り返る。
「んじゃ、またな……小石川サン」
「……あ」
「……ナイフ、警官が見てるとことかで落とすなよな。えひ」
冗談のつもりでそんなことを言って、恋姫はエレベーターへ去った。
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