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【場】『 星見スカイモール ―展望楼塔― 』

162小石川文子『スーサイド・ライフ』:2016/10/15(土) 22:58:44

――PM21:00――

スカイモール高層エリアの展望台――休日には人も多くなる場所ではあるが、
この時間になると、人影はまばらだ。
その一角に佇み、町を彩る夜景を眺める。
眼前に広がる町の明かりは、星見町という名の通り、夜空に輝く星々の煌めきを連想させた。

  「――いい所でしょう」

懐から写真を取り出し、誰ともなしに語りかける。

  「この町に来て、本当に良かったと思っています」

写真に写っているのは、今は亡き夫である治生だった。
微笑みを浮かべた表情を見ていると、まるで笑いかけてくれているように感じられる。
ふと気付けば、自分も同じような表情になっていた。

  「覚えていますか」

  「今日は――私たちの結婚記念日ですよ」

  「だから、今日はあなたと二人で、この町を歩きたかったんです」

もし、本当に彼と並んで歩くことができるなら、それ以上の幸福はない。
しかし、それは叶わない望みであることは分かっている。
だからこそ、せめて自分の心の中だけでも、今日という日を彼と共に過ごしたかった。
彼の命は、自分の命の中で、今も息づいている。
それを守るために、自分は生きなければならない。
町の光という星々を前にして、胸に秘めた決意を新たにする。
そうして、町を彩る光を彼と共に眺め、やがて静かに背を向けた。

  「帰りましょう。あの町の中へ。私たちの家へ」

最後にそう呟き、展望台を後にした。


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