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【場】『 歓楽街 ―星見横丁― 』
1
:
『星見町案内板』
:2016/01/25(月) 00:01:26
星見駅南口に降り立てば、星々よりも眩しいネオンの群れ。
パチンコ店やゲームセンター、紳士の社交場も少なくないが、
裏小路には上品なラウンジや、静かな小料理屋も散見出来る。
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ミ三ミz、
┌──┐ ミ三ミz、 【鵺鳴川】
│ │ ┌─┐ ミ三ミz、 ││
│ │ ┌──┘┌┘ ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
└┐┌┘┌─┘ ┌┘ 《 ││
┌───┘└┐│ ┌┘ 》 ☆ ││
└──┐ └┘ ┌─┘┌┐ 十 《 ││
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┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘ 【H城】 .///《//// │┌┘
└─┐ │┌┘│ △ 【商店街】 |│
━━━━┓└┐ └┘┌┘ ////《///.┏━━┿┿━━┓
┗┓└┐┌──┘ ┏━━━━━━━【星見駅】┛ ││ ┗
┗━┿┿━━━━━┛ .: : : :.》.: : :. ┌┘│
[_ _] 【歓楽街】 │┌┘
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└───┐◇ .《. ││
【遠州灘】 └───┐ .》 ││ ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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199
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/05(月) 17:17:17
ガラガラ
三か月ぶりに店を開けた。
200
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/05(月) 22:49:40
>>199
「――こんにちは」
洋装の喪服を身に纏い、黒い帽子を被った色白の女が、軽い会釈と共に静かに店に入ってくる。
特別な理由があった訳ではない。
町を歩いている最中に、ふと目に留まったこの店が、何となく気になったからだ。
軽く店内を見回し、空いている席を見つけて腰を下ろし、そっと帽子を脱ぐ。
お品書きのようなものがあれば見ておきたい。
201
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/06(火) 00:06:54
>>200
「よう、いらっしゃい」
カウンターで新聞を読んでいた、ロックバンドのロゴのプリントされたシャツに腹巻とジーンズ姿の店主が顔を上げた。
『スルメイカのバターソテー』
『伊勢海老のタルタルソース』
『マグロのステーキ 山葵醤油』
『ホタテの塩レモン』
『牡蠣の柚子味噌焼き』★本日の特選
etcetc……
壁には一通り、メニューが張り出されている。
ドリンク類もジュースからアルコール類まで、一通りそろっているようだ。
202
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/06(火) 00:43:50
>>201
「この頃は随分寒くなりましたね」
世間話をしつつ、壁のメニューに視線を巡らせる。
「……『牡蠣の柚子味噌焼き』と――」
「日本酒を一合、上燗でお願いします」
少し考えてから注文を出す。
温まりたいのもあるが、今夜は少々酔いたい気分だった。
注文の品が来るまでは、店主の仕事ぶりを拝見させてもらうことにする。
店内は賑やかなのだろうか?
203
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/06(火) 01:14:30
>>202
「俺としちゃむしろ願ったりだがね。
冷え込んでからの方が旨いんだ、魚ってやつぁ…」
バキバキ
大ぶりの牡蠣を三つ、慣れた手つきでナイフで殻を剥き、身も一度殻から外して味噌を塗った後、戻して殻ごと鉄板で焼き始める。
仕事ぶりもだが…流暢な日本語が目を(耳を?)惹く。
微かな柚子の匂いと、味噌の焦げる匂いが混じり合った。
「…はいよ、柚子味噌と上燗」
殻ごと皿に盛り、口を塞いだアルミホイルを外した徳利と猪口を添える。
204
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/06(火) 01:56:29
>>203
「鰤も鯖も今が旬ですものね……」
店主の手際の良さからは、料理人として豊富な経験を積んでいることが伺えた。
彼の言葉から察すると、おそらく漁を生業とする人間でもあるのだろう。
改めて見ると、この店主も興味深い人物だ。
そんなことを考えている間に、注文の品が目の前に置かれる。
「いただきます」
箸を使って牡蠣の身を口に運ぶ。
香ばしい香りが鼻腔をくすぐり、否が応でも食欲をそそられた。
一口食べると、何ともいえない滋味が口の中に広がっていく。
目を閉じて、ゆっくりと味わい、一度箸を置いた。
トトトトト……
猪口に日本酒を注ぎ、両手で持って一口飲んだ。
口の中で、牡蠣と上燗の味わいが一つに溶け合うのを感じる。
至福の一時とでも言うべきものが、そこにはあった。
「とても」
「とても、おいしいです」
「なんだか、心まで温かくなるみたいで――」
穏やかな微笑みと共に、心からの感想を述べた。
「このお店は長いんですか?」
店内に目をやりながら、そう尋ねた。
205
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/06(火) 02:24:56
>>204
「有難う。
ちなみにオーダーされればメニューにないものも何とかするぜ。
例えば柚子味噌じゃなくて塩コショウだとか、バター醤油とかな…」
仕込み用の鮭の短冊を鉄板の上で炙りながらウインク。
「そろそろ十年になるな。
ま………一年の半分か三分の一は閉めてるんで実際の営業期間はもっと短いんだがね」
ちなみに店内には、他の客は居ない。
206
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/06(火) 03:01:24
>>205
「まあ、十年も――」
「失礼ですが、漁師さんなんですか?」
「漁のない期間にお店をなさっているんですね」
また牡蠣を一口、そして上燗を一口。
いつの間にか牡蠣は綺麗になくなっていた。
しかし、まだ日本酒は幾らか残っている。
「すみません。『ホタテのバター醤油』をお願いできますか?」
「それから――」
「もしよろしければ、少し店主さんのお話を聞かせていただけませんか?」
先程と変わらない微笑みを浮かべて、そう付け加えた。
207
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/06(火) 03:22:39
>>206
「ん?ああ………。
元々はそっちが本業で、こっちは…まぁ趣味だな」
髭を摩る。
「趣味だが…今はウエイト的には6:4てところか。
海に出たい時は海に出て、陸に上がりたい時は陸に上がる。
儲かってるかとなると微妙だが、食っていけない程でもない………総じて言えば幸せもンだな」
炙った鮭を冷水で締めると、冷蔵庫に仕舞う。
代わりに、殻付きのホタテを出し、牡蠣と同じようにナイフで剥いて鉄板に置く…。
「お話ね……………例えば?
ロシアの密漁船と仲良くなった話とかかい?」
208
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/06(火) 21:52:19
>>207
「色々な経験をしてらっしゃるんですね」
口元に手をやってくすくす笑う。
上がった左手の薬指に、シンプルなデザインの指輪が光っている。
「それも面白そうなお話ですけど――」
「せっかくですから、ご主人のことを聞かせていただきたいです」
「この町には……どういったきっかけで来られたんですか?」
両方の頬には薄っすらと赤みが差している。
遅ればせながら、徐々にアルコールが回ってきたようだ。
209
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/07(水) 00:10:37
>>208
「四十何年も生きてりゃそれなりにな…」
微苦笑すると、冷蔵庫から出した焼酎を燗し始める。
「俺の?
…この街に、か。それは…正直解らん。俺をこの街に連れてきたのは俺の親父でね。小学校を卒業して割とすぐだった。
お袋が死んだのもその辺りだったから…親父には何か理由があったのかも知れん。
が、今となっちゃ………」
首を振った。
バターの欠片を落とし、じりじりと焼けるホタテに醤油を垂らそうとして──
「お客さん、よく焼いたのとミディアムレアとどっちがいい?
一応、刺身でもイケるくらいの鮮度なんだがね」
210
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/07(水) 00:50:15
>>209
「――そうですか」
もちろん自分は赤の他人だ。
それでも、彼の父親の行動には共感するものを感じた。
きっと何か理由があったのだろう。
そんな気がする。
「きっと……何かあったんでしょうね……」
誰に言うでもなく、まるで独り言のように、ぽつりと小さく呟く。
酒に酔っているせいか、どこか夢見るような表情だった。
焼き加減を聞かれたことで、その表情が元に戻る。
「それじゃあ――あまり焼いていないものをいただくことにします」
「せっかく新鮮なんですものね」
211
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/07(水) 01:08:06
>>210
「多分な。
親父も漁師で、俺はそんな親父に育てられて……漁師になった。
俺にとっちゃ憧れのスーパーマンだったんだからな、当然の帰結さ。
そんな親父も三年前、オホーツクでカニ漁の最中、足を滑らせて…」
燗した焼酎を湯呑に注ぎ、呷る。
「…それ以来、寒いのはゴメンだと言って、今はハワイでのんびりやってるよ。
スーパーマンも寄る年波にゃかなわんてワケだ」
醤油を垂らし、あさつきを一つまみ散らすと、皿に移して差し出した。
外には火が、中には熱だけが通ったミディアムレアだ。
「はいよ。殻が熱いから気をつけな」
212
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/07(水) 01:41:16
>>211
「――お父さんがお元気なのは何よりですね」
彼の語る話に静かに耳を傾けた後、感慨深げに言った。
てっきり亡くなったのだろうかという想像が頭の中に浮かんでいた。
だから、少し救われたような気がした。
「ありがとうございます」
箸を取り、ホタテを口に運ぶ。
自分は魚介のプロではないが、それが新鮮なのは舌で分かった。
焼き加減も、素材の持つ味を十分に引き出していると感じた。
「本当に新鮮なんですね。とても美味しいです。お酒にも合っていて」
猪口を傾けながら、素直な感想を述べる。
右手の薬指には左手と同じ指輪があった。
213
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/08(木) 00:29:02
>>212
「お陰さんでな。
毎日釣りと女遊びをしてるってよ。俺より若い新しいお袋ができやしないか心配なくらいだ」
鉄板の焦げをヘラで削げ落とす。
「ありがとう、お客さん。
そこの辺りはまあコネと、後は自力で採ってくるワケだからな。ちょっとした売りさ」
指輪が二つ…?
気にはなる、が、喪服という装いもあって、今一つ聞き出しにくい。
「一応、今年は年内は陸の上の予定だ。何時でも来てくんな」
214
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/08(木) 01:25:47
>>213
「ふふっ、随分お若いお父さんなんですね」
思わず声を出して笑ってしまった。
話の愉快さもあるが、アルコールで幾らか気分が上ずっているせいでもある。
酒は嗜む程度で、特に弱い訳ではないが、強くもない。
いつの間にか徳利の中身は空っぽになっていた。
「お酒もなくなりましたし――お勘定をお願いします」
「お陰様で楽しい時間を過ごせました。また寄らせてもらいます」
バッグから財布を出して支払いを済ませる。
「今夜このお店に来て良かったと思っています……。
なんとなく……今日は少し、誰かとお酒を飲みたい気分だったもので……」
「ありがとうございました」
最後にそう言って深く頭を下げる。
「差し支えなければ、ご主人のお名前を聞かせてもらえませんか?」
帰りかけて入り口の前で立ち止まり、最後にそう尋ねた。
215
:
トニー・ウィルキンソン『フィッシャーズ・ホーンパイプ』
:2016/12/09(金) 00:48:35
>>214
「ま…俺も無事大人になったことだし、そうなりゃあ後は親父の人生さ。
世の中に迷惑をかけるんでなきゃ、俺の口出しすることじゃあない。
……正直、俺が嫁さん貰うより先に再婚されるのは悔しいからそれだけは避けたいがね…」
肩をすくめると代金を受け取った。
「ありがとうよ。またの御贔屓に。
──ん?俺かい?
トニーだ。トニー・ウィルキンソン」
216
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2016/12/09(金) 06:07:15
>>215
「それでは……トニーさんと呼ばせていただきますね」
「私は小石川――小石川文子です」
「ご馳走様でした……」
手にしていた帽子を被り直すと、にこりと微笑み、入り口を抜けて立ち去っていく。
外は寒いが、酒と料理のおかげで体は温まっている。
それは、心の中も同じことだった。
「……素敵なお店でしたね」
歩きながら右手の指輪に視線を落とし、ぽつりと呟いた。
その問いかけに対する返事のように、月明かりに照らされた指輪が小さく輝く。
それを確認すると、やがて顔を上げ、静かに夜の闇へ消えていった――。
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