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【場】『 私立清月学園 ―城址学区― 』

1『星見町案内板』:2016/01/24(日) 23:57:56
『H城』の周囲に広がる『城址公園』の敷地を共有する『学び舎』の群れ。
『小中高大一貫』の『清月学園』には4000人を超える生徒が所属し、
『城郭』と共に青春を過ごす彼らにとって、『城址公園』は広大な『校庭』の一つ。

『出世城』とも名高い『H城』は『H湖』と共に『町』の象徴である。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
      ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
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                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
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★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
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968小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 18:36:39

『城址公園』の一角。
木陰に『黒い女』が佇んでいる。
『喪服』を着て、同色のキャペリンハットを被っていた。

  「――……」

足元には一匹の子猫。
事情は分からないが、足の一本に細い針金が絡まっていた。
それを見て、音もなく『右手』を持ち上げる。

             スゥッ

次の瞬間、女の手に『ナイフ』が握られていた。
実体を持たない『精神の刃』。
『スタンド』だ。

969御厨道:2021/02/20(土) 20:54:37
>>968

ニヤニヤとした顔でそれを見ている女がいる。
傍の木に登り、幹に体を預けていた。

「����������」

じぃっ、と貴方の動きを観察している。
何をするでもなく、そこにいる。

「����������ケケケ」

970小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:06:06
>>969

      ――――ドシュッ

頭上の存在には全く気付いていなかった。
そのまま右手を振り下ろし、子猫の足を『断つ』。
豆腐を切るかのような容易さで、『左後ろ足』が切断された。

                「ニャー」

         フワ……

『足』が浮かんでいる。
出血もなく、子猫は至って平然とした様子だ。
足が切り落とされた事で、
絡んでいた針金が『切断面』から抜け落ちた。

971御厨道:2021/02/20(土) 21:21:18
>>970

「……」

一挙手一投足を観察する。
切断された足と元あった場所とナイフを見た。
ひとつひとつを理解するために。

(……この後はくっつくかな?)

何となく予想をつけつつ観察を続ける。

(後から斬撃が定着するタイプってのもあるか……?)

972小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/20(土) 21:38:49
>>971

     ススス……

             ――ピタ

浮遊する『足』が空中を漂い、子猫の胴体に寄り添う。
『切断面同士』が重なり、次の瞬間『切れ目』が消失した。
概ね『予想通り』だったと思っていいだろう。

         「ニャー」

針金が解けた子猫が後ろ足を動かす。
その動作は自然で、『切れる前』と何ら変わりないようだ。
『ナイフ』で切ったものは切り離され、
『切断面』を合わせると元に戻るらしい。

             ……フッ

『右手』から『ナイフ』が消えた。
それから、『黒い女』が地面に手を伸ばす。
また『事故』が起こらないように、落ちていた針金を拾い上げた。

973御厨道:2021/02/20(土) 23:20:46
>>972

974御厨道:2021/02/20(土) 23:25:19
>>972

(やっぱりか……)

ウンウンと頷き、そのまま木から落ちてきた。
べちゃりと地面に叩きつけられたものの受身はとっている。

「よう、お姉さん」

「なかなかいいスタンドじゃねぇか」

「針金、捨てといてやろうか?」

975小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 00:56:06
>>974

  「え……?」

『落下』に驚き、思わず身を引いた。
手の中に針金を握ったまま、その姿を見つめる。
帽子の下で、両の目を軽く見開いていた。

  「『針金』……ですか?」

  「あの――」

       スッ

  「はい、お願いします……」

目の前の出来事に、思考が追い付いていない。
ただ、待たせてしまうのも申し訳ない。
そのような思いから、相手の勢いに押され、
言われるままに『針金』を差し出していた。

976御厨道:2021/02/21(日) 01:10:21
>>975

針金を手に取る。

「ところでさ」

「あんた、スタンド使いだろ?」

さも当然、というふうな言い分だった。

「それ、なんて名前だ?」

ぐにぐにと針金を変形させて遊んでいる。

977小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 01:37:37
>>975

  「ええ……」

          コク……

  「確かに私は――『スタンド使い』です」

どこか不思議な女性だった。
『スタンド』を知っているという事は、
彼女も『スタンド使い』なのだろうか。
外見からは窺い知る事が出来なかった。

  「――『ビー・ハート』」

  「そういう『名前』です……」

決して間違いではない。
ただ、厳密には多少の『違い』があった。
『ビー・ハート』は『第二のスタンド』の名前。
『本来のスタンド』は別にある。
しかし、たった今使ったのは、確かに『第二の刃』だ。

978御厨道:2021/02/21(日) 07:35:12
>>977

ぐり、と体を地面にゆっくりと擦るように寝転んでいる。
着ているジャージはほつれが所々にあった。
しかし本人はそれを気にしている様子もない。

「な・る・ほ・ど」

「そういう名前なんだな」

「切って、またくっつける……って?」

体が起きる。
それでも尻は地面にくっついたまま。

「な・る・ほ・ど」

「……ん、あぁ。申し遅れた。アタシは御厨道(みくりや・たお)って言うんだ」

979小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 19:31:48
>>978

  「御厨さんとおっしゃるのですね……」

  「……『小石川文子』という者です」

           ニャー

名乗り返しながら、丁寧に頭を下げる。
足元の子猫が、その姿を不思議そうに見上げていた。
それから、猫の興味は御厨の方に移ったようだ。

  「ええ――そうです」

  「『傷付けない刃』……そう言われました」

『自傷の刃』と対になる『不殺の刃』。
それを得た時、
これまでの自分には出来なかった事が出来るようになった。
『自分の身体』ではなく、『他者の肉体』を切り離す『第二の刃』。
これを使う度に、『あの事』を思い出す。
『幻の町』と、そこで出会った『人々』の事を。

980御厨道:2021/02/21(日) 20:02:30
>>979

「あんたそんな名前なんだな」

「……おー、よしよし。ちちち」

猫をあやすように手を伸ばす。
こちらに来るように猫を誘っているのだ。

「傷付けない刃ねぇ」

確かにそうだという風に頷いている。

「まぁ、こんな話してる時点でお察しのことだとは思うけどよ」

「アタシもそういうのを使うわけなんだがね」

ニヤニヤとした笑いが消えて視線が貴方に向かう。
御厨の中には小石川文子という人物に対する興味があった。

「ツレにいわく、スタンドは精神の発露……ってことは」

「あんたは誰も傷つけられない優しい人なのかね?」

981小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 20:57:40
>>980

  「ええ……」

           トッ トッ

子猫が御厨の方に歩いていく。
そちらに向けた視線を、改めて目の前の女性に注ぐ。
『スタンド』を知る者は、多くの場合『スタンド』を持つ。
自分がそうであるように。
これまで出会ってきた人々が、そうであったように。

  「私は……」

  「誰も傷付かずに済むなら……それが最良だと思っています」

  「もし誰かが傷付けば、『その人を愛する人』が傷付くと……」

  「ですから――」

  「いえ……『分かりません』」

言葉を切り、軽く目を伏せる。
自分が『優しい人間』なのかどうか。
『スーサイド・ライフ』と名付けられた『精神の刃』で、
人を傷付けた事がある。
もしかすると、
誰も傷付けずに済む方法があったのかもしれない。
自分には、それが出来なかった。

982御厨道:2021/02/21(日) 21:39:31
>>981

寄ってきた猫を抱き上げたり撫でたりしている。
この女もかなり動物的なので似通ったところがあるのかもしれない。

「傷つかず、ねぇ」

ニヤニヤと笑う。
何か、思うところがあったようだ。

「ナイフの形しててそりゃあないんじゃねぇかな」

「まぁ、人生いろいろだ。あんたが何を感じていて『ビー・ハート』を手にしてるのか、知らねぇけどさ」

983小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 22:06:25
>>982

  「それは……」

思わず、言葉に詰まる。
核心を突かれたような気がした。
『ナイフ』は人を傷付けるが、『ナイフ』が独りでに動く事はない。
人を傷付けるのは、それを使う『人間』。
そして、『刃』を扱うのは他でもない『自分』なのだ。

  「『矛盾』しているのかも……しれません」

『スーサイド・ライフ』は『自傷の刃』。
『生きなければならない理由』と、
『死を望む衝動』の間で生まれた能力。
だから、『本体』を傷付ける事は出来ない。
その代わり、『他者』を傷付ける事は出来る。
『傷付ける意思』を持って扱えば。

  「自分の事なのに――よく分からなくて……」

  「……おかしいですね」

相手の笑いにつられたように、無意識に微笑んでいた。
陽気な笑みではなく、どこか陰を帯びた笑い方だった。
『ビー・ハート』は『不殺の刃』。
『他者』を傷付ける事は決してない代わりに、
『本体』を傷付ける事が出来る。
『スーサイド・ライフ』には不可能だったが、
しようと思えば、自ら命を断つ事も出来る。

  「――あなたは……?」

984御厨道:2021/02/21(日) 22:50:42
>>983

「そんなこと知らねぇが」

「自分のことがわかってるやつなんて世に何人いるか」

こともなげに言ってのけてまた猫を撫で始める。

「あたし?」

「ないしょ」

985小石川文子『スーサイド・ライフ』&『ビー・ハート』:2021/02/21(日) 23:07:44
>>984

  「……そうですね」

自分の事というのは、分かっているようで分かっていない。
近いようで遠い存在。
そういうものなのかもしれない。

  「自分の事は分からない――」

  「それも『答え』なのかもしれません……」

子猫と戯れる御厨を見つめる。
彼女は自分の事が分かっているのだろうか。
その答えは、彼女自身の心の中にあるのだろう。

  「御厨さん、お話して下さってありがとうございました」

         スッ

  「――失礼します……」

居住まいを正して深々と頭を下げ、再び猫を一瞥した。
その姿を目に留めた後、御厨に目礼する。
静かに歩き始め、徐々に公園から遠ざかっていった。

986御厨道:2021/02/22(月) 19:47:53
>>985

「そうなんじゃなぁい?」

歩いていく小石川を見送っていく。
腕の中で猫がにゃあと鳴いていた。
御厨道は笑っている。

「己のことが分かったやつなんてイカれてやがるか知ったふうになってるだけと相場が決まってるんだよ」

「けけけ……」


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