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【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

744関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 19:16:17

「…………」

小規模な『フリーマーケット』の一角に、
エプロンを付けた少女が席を取っている。
前髪は目の上で揃え、後ろでお団子を作った髪には、
草花を加工したようなアクセサリーが幾つか付いていた。

出品はそれと同じようなアクセサリーがいくつかと、
古着が入ったケース、料理本、調理器具など。
後ろにダンボールが数個あるが、それが在庫だろうか?


『他にも日用品あります 値段応相談』


少なくとも、『他』が充実している様子はないが…………

745百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 19:48:38
>>744

    ザッ

しばらくして、一人の女が足を止めた。
白いパンツスーツを着た背の高い中年の女だ。
煙草を咥えているが、火は付いていない。

「古着にアクセサリー……それと料理の本に料理道具」

「フフ――何だか『家庭的』って感じがするねえ」

腰を落とし、並べられている品物を見下ろす。
少女の前で立ち止まったのは、
特に理由があっての事ではなかった。
強いて言うなら、『勘』のようなものだ。

「そっちのダンボールには『日用品』が入ってるのかい?」

ダンボール箱に視線を向けながら、少女に尋ねる。
多分、別に何でもない事なんだろう。
ただ、何となく『気になった』。

746関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 20:03:42
>>745

「はぁい、いらっしゃいませえ」

        ペコ……

座ったままだが、頭を下げる。
かしこまり過ぎていない、とも言えるだろう。

「ふふ、どれも家庭で使ってたものですので〜。
 古くなったり、使わなくなったので売りますけど、
 まだまだ捨てるのは勿体ない物ばかりですよう」

タバコに一瞬だけ視線が移ったが、
火もつけていないなら注意する理由もないからか、
すぐに笑みを称えた目を、目に合わせた。

「あ、その箱はそうですね〜。
 ここに無いものは、そこにありますよ。
 ええと〜、何か……お探しのものとかありますか?」

「あ、無理にというわけではありませんけど〜。
 こう見えて……品揃えには自信があるんですよう」

箱の大きさは常識的なレベルだが、
果たしてどれほど『揃えられる』ものだろうか?

ともかく、少女の温和な笑みに『ウソ』はまだ無い……

747百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 20:45:05
>>746

「いい事だと思うよ。
 使わなくなった物でも、必要な人の手に渡っていくと、
 その品物にとっても幸せなんじゃないかねぇ」

煙草を咥えているのは、ただの気休めだった。
本当なら、火を付けて煙を味わいたい所だ。
しかし、近頃は喫煙に対する風当たりが強い。
そうでなくとも、こうした場で歩き煙草は『モラル』に反する。
自分から反面教師になるつもりはない。

「いや、何か探し物があるって訳じゃあないんだけどね。
 ただ、こういう場所は掘り出し物があったりするもんだから」

「それで、こうしてブラブラ歩いてるのさ。
 『何かないか』と思ってね」

「面倒かけて悪いんだけど、
 その『箱の中』見せて貰ってもいいかい?」

「もしかすると、アタシの欲しい物があるかもしれないからさ」

少女の後ろに置かれた箱を指差す。
普通、宣伝文句というのは大きくするのが自然だ。
だが、少女は『自信がある』と言い切った。
この小さなフリーマーケットで、
そこまでの品揃えを実現出来るとは考えにくい。
彼女の掲げる『宣伝文句』がどれ程のものか、
確かめてみたくなった。

748関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/26(水) 22:18:57
>>747

「ふふ……そうかもしれませんねえ。
 少なくとも売った私と、
 買った人は幸せなのは間違いないですし」

         ニコ 〜

「それだけでも十分ですのに。
 物も幸せなら、もっといいですね〜」

そう言いながら、指差した先を振り返る。
話題の中心になりつつある『段ボール箱』だ。
過剰に膨らんでいるといった、風でもないが。

「あ、あ〜。これの中をですか?
 あのう……これはお店で言えば『倉庫』で、
 お客さまに探してもらうところじゃないんですよう」

       スッ

小さく手を出して、指先からそれを遮る。
しかしそれは自信の『虚偽』ではなく。

「期待に添えられなくてごめんなさぁい。
 『物』が何か決まってれば、探せるんですけど〜」

「例えば……『ライター』なんかも、
 とっても幅広く、扱ってますけどお……?」

品揃えの自信自体は、嘘ではないようだった……『何』だ?

749百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/26(水) 23:06:19
>>748

「ああ、気にしないでいいよ。無理にとは言わないからね」

「『ライター』も間に合ってるんだ。だから、今は結構」

軽く手を振って、少女の言葉に応じる。
『出してない』のだから、
それを見せないのも不思議ではないのかもしれない。
だが、持ってきているという事は、
『売るつもり』があるという事だ。
そうでなければ持ってこない。
はっきりとは言えないが――何か『奇妙』だった。

「さっきも言ったけどねえ、
 特に『目当ての品』ってのは無いんだよ。
 こういう場所ってのは、
 『気になる物を見かけたら買う』ってのが多いだろ?
 来る前から欲しい物が決まってるってのは、
 あんまりないんじゃないかねぇ」

「いや、別にお嬢ちゃんを責めてる訳じゃないんだよ。
 ただ、『中身』を見せて貰って、
 何か良さそうなのがあったら買おうかと思ってたもんでね」

「もし迷惑じゃなかったら、
 『どんな物が入ってるか』だけ教えてもらえないかい?
 それでピンと来るって事があるかもしれないからねえ」

口元に薄く笑みを浮かべながら、更に問い掛ける。
箱の大きさは、常識的なサイズだ。
そんなに沢山の品物が詰まっているようには見えない。
だから、『決まっていれば探せる』という言い方が気になった。
探すのに苦労するとは思えないからだ。

750関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 09:25:50
>>749

「……『どんな物』ですか、そうですね。
 あの、ちょっと待ってくださいねえ。
 品物を揃えたのは私、自分でじゃないので」

「ええと、今日はぁ……」

細かい嘘を混ぜながら、
立ち上がって箱の中を見る。
そして漁るように手を動かすが。

「『調理器具』……が、揃ってますね〜」

百目鬼ほどの『目の効く』人間なら、
それが『手振りだけ』と見抜けるかもしれない。

「ここに置いてるもの以外でも、
 『調理器具』でしたら色々ありますよ。
 刃物は危ないので扱ってませんけど……
 ピーラーとか、ちょっとしたミキサーとか」

少なくとも『ミキサー』のような、
それなりのサイズのものが詰まっているとは思えない。

「ミキサー、便利ですよ。もうお持ちですか?
 余ったお野菜でジュースが作れて、
 おいしくてヘルシー、と〜っても経済的ですよう」

にも関わらず勧める。関には、『手段』があるからだ。

751百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 15:01:31
>>750

「『調理器具』――――」

『倉庫』といっても、『通信販売の倉庫』ではない。
簡単に中身が分かるなら、
直接見せても大して差はないだろう。
むしろ、客に見せた選んで貰った方が、
手っ取り早く売り上げに繋げられる。
値段は『応相談』と書いてあるし、
見せない理由が見当たらない。
無茶な内容ならともかく、
『客の要望』を拒否するのは余程の事だ。

「そうだねえ……」

腕を組み、思案するように箱と少女を交互に見つめる。
買い物に悩んでいるかのようなポーズ。
だが、実際は『売り子の少女』について考えていた。
本当に調べているのか、それとも形だけかの区別はつく。
そして、これは『後者の方』だ。

「じゃあ、その『ミキサー』を見せてもらうよ」
 
「家にはなかったからね」

『嘘』だった。
いつだったか買ったのが家に置いてある。
結局あまり使う事がなく、しまったままになっているが。

「『保存容器』はあるかい?
 出来るだけ『大容量』で『ガラス製』のヤツが欲しいんだよ」

「最近、『ジュースサーバー』なんてのがあるだろ?
 『ミキサーで作ったジュース』を入れといたら、
 洒落てると思ってね」

思いついたように要望を一つ追加する。
調理器具とは少し違うが、かけ離れてもいないだろう。
『ない』と言われるかもしれないが、それはそれで構わない。
少女の動きを目で追い、一挙手一投足を観察する。
百目鬼小百合は、『白黒ハッキリしている』のが好きだ。

752関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 21:20:45
>>751

「『ミキサー』と『容器』ですねえ!
 もちろん、どちらも『在庫』はありますよ。
 それで……おいくらくらいで買いたいですか?」

笑みを浮かべながら、『値段の相談』を持ちかける。

      ゴソ ゴソ

「実は、『何種類か』在庫があるんです〜」

箱を探る腕の動き――
ランダムではない、規則性がある。

「欲しいお値段で、それに合った品質。
 ふふ。それが一番、無駄のない買い物ですよう。
 ミキサーでしたら『2000円』〜『5000円』」
  
            ゴソ

「あ、それに追加で……
 容器の方は、『100円』からありますねえ。
 値段が決まったらお見せできますけど……」

百目鬼小百合なら観察できるだろう。
箱の中で『なにかを書いている』?

「それで……どうしますか〜?
 もちろん、買わなければタダ。
 それが一番、倹約にはなるんですけどねえ」

既に察せるはずだ。
この少女の『販売品』は……『今ここに無い』。

つまり『買うことができない』……『店ごっこ』なのか?

753百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 22:08:06
>>752

「なるほど――――『看板通り』だ」

「随分と『品揃え』がいいんだねえ」

        フッ

少女の言葉を聞いて、笑みを浮かべる。
もし自分に娘がいたとしたら、
それ以上に年が離れているであろう少女を慈しむような表情。
その瞳の奥に、真剣さを帯びた『光』があった。

「ただねぇ、『一つだけ』いいかい?」

          ――――ドンッ

傍らに『ライトパス』を発現する。
『白百合の紋章』を肩に持つ人型のスタンド。
右手に持った『警棒』の先端で、
左手の掌を二度三度と軽く叩く。

「アタシは『品物を見ない買い物はしない』主義でね」

       シ ュ
             バ ァ
                   ッ ! !

目にも留まらぬ『超高速』でスタンドを飛ばし、
左手でダンボール箱の縁を掴んで、静かに傾ける。
こちら側に、箱の『中身』が見えるようにだ。
『ガサ入れ』って訳じゃあないが、
買う前に『商品』を見せて貰ったとしても、
バチは当たらないだろう。

754関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/27(木) 22:38:20
>>753

「はあい、大抵のニーズには応えられますよう。
 ただ、高級品……ぜいたく品については、
 デパートとかで買うのが良いと思うますけどねえ」

           ニコ〜


「……? なんでしょう〜?
 他に何か、ご入用な道具でも」

温和な笑みを浮かべて語る少女には、
悪意こそ感じられないが『何か』がある。
百目鬼がそう判断するのは、当然のこと。

「……………わっ!?」

            『パサ』

箱を傾けると、中にあった『それ』が見えた。
ノート……『帳簿』だろうか?
それから、ボールペン。
手元を照らすためか、スマートフォンも。

…………どれも、『実体』はあるようだ。
だが少女の視線は間違いなく、『ライトパス』を追った。

そして、それ以外の実体は何もない。
ミキサーも、容器も、調理器具など何もない。

「……………………あ、あのう」

          チラ

バツが悪そうに、百目鬼の様子を伺う。
それが神速のスタンドを前に遅れて来た行動。

「み、見せられはしないんですよう。
 だってその商品は、ここには『まだ』無いので……」

そして……『申し開き』にしては稚拙な、言葉が続いた。

755百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/27(木) 23:10:48
>>754

「おやおや――――」

       クッ クッ クッ

含み笑いを漏らしながら、箱の中を見た。
案の定だが『商品』はない。
客観的に見ると、
現物もなしに値段の話を持ち掛けた事になる。

「年を取ったせいか、目が悪くなったかねぇ」

    トン

「アタシの見間違いじゃなけりゃあ、
 『帳簿』と『ペン』と『電話』しかないように見えるもんでね」

       トン

「それとも、お嬢ちゃんの扱ってる品ってのは特別あつらえで、
 普通の人間には見えないような代物なのかい?」

           トン

「ところで、『まだ無い』ってのを詳しく聞きたいねえ」

               トン

「――――『いつ』来るんだい?」

                   トン

ライトパスを傍らに戻し、少女に問う。
右手の『警棒』が左手の掌を軽く叩く。
拍子を取るような動作。
悪意のなさそうな少女だが、
人は見かけだけでは判断できない。
例えば、『詐欺』に類するような可能性を疑っていた。

756関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 00:18:36
>>755

「…………わ、私が扱ってるのは『普通の品』です。
 品揃えが豊富なだけで、市販品と同じような物で。
 やましいものを売ったりは、私、してませんよう……!」

拍を取るような動きに関しては、
さほど気にはならなかった。
ここは『人がいない』訳ではないし、
自分の前に立っている人は、一人だけだ。
スタンドによる攻撃はもちろん警戒すべきだが、
攻撃が会話の前提にはならない……そう考えられる。

「……あなたが買うなら、
 今すぐここに『出します』けど」

         スッ

「でも、仮に出すだけ出して『買ってくれない』と、
 それはもったいない……そういう『能力』なんです!」

制されないならペンと帳簿を手に取る。

「つまり、そのう、察せるかもしれませんけど、
 『在庫』は、私のスタンドで確保できるんですよ」
 
「あなたの『それ』と違って、
 こういう商売ごとにしか使えない、
 ささやかな『能力』なんですけどねえ……」

ほとんど嘘は言っていない。
関寿々芽の『ペイデイ』は無限の在庫を持ち、
商売にのみ特化している……『買う側』として。
出す、のではなく『仕入れる』……そこだけは嘘だ。

それと、『ささやか』というのは『謙遜』に過ぎない。
実際には『ペイデイ』は『絶対的』なスタンドと言える。

「だからこそ、私、こういう場所で、
 せっかくの能力を役立てようと思いましてえ……
 ほら、買った美容グッズとかを使わないままずっと、
 埃被らせてるのとか……もったいないじゃないですか」

「それと同じで……もちろん、
 人に迷惑をかけるよつな使い方もしてませんよう」

757百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 01:10:14
>>756

「驚かして悪かったね。でもねぇ、お嬢ちゃん」

一時も目を逸らさず、少女の言葉に耳を傾ける。
それを聞き終えると、『ライトパス』が右手を持ち上げた。
『警棒』の先端で、『問題のダンボール箱』を指し示す。

「『そっちのダンボールには日用品が入ってるのかい?』って聞いたね」

「『そうですね。ここに無いものは、そこにありますよ』」

「アタシは、そう聞いたと思ったんだけどねえ」

「ま…………アンタの『能力』で出すんなら、
 『そこにある』と言えるかもしれないけどねぇ」

「だけどね、お嬢ちゃん――
 アタシは『ハッキリしてる』のが好きなんだ。
 だから、確かめさせて貰ったのさ」

「――――アタシの『この目』でね」

百目鬼小百合は『曖昧』を嫌う。
この世に存在する全てが、
『善』と『悪』の二つで割り切れると信じるほど、若くはない。
だが、『白黒つけられるに越した事はない』とも考えている。

「『人に迷惑を掛けるような遣い方はしてない』って言葉。
 それを聴けて、心底安心したよ」

『ライトパス』が消える。
実の所、完全に疑いを捨てた訳ではなかった。
『スタンドで取り寄せる商品』。
それがどんな代物かは定かではない。
しかし、内心の考えを態度には出さない。
昔であれば表れていたかもしれない。
だが、それを自然に隠せる程度には年を取っている。

「じゃ、せっかくだから何か買わせてもらうよ」

「――――この『アクセサリー』は幾らだい?」

視線を向けたのは、
料理本や調理器具と一緒に並んでいる『アクセサリー』だった。

758関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/28(金) 20:24:22
>>757

「…………いえいえ〜。
 私の方こそごめんなさい。
 騙すわけじゃないにしたって、
 怪しまれるような事をしちゃいまして」

「私、『誠実』じゃなかったかもしれないです〜」

      ペコリ

「……安心してもらえて良かったです。
 あのう……これからは、気をつけますね」

頭を下げる。
関は百目鬼より何回りも『未熟』だが、
内心と言動のギャップを隠すのは、苦手ではない。

「アクセサリーですねえ。
 これはしっかりここにありますから、
 いくら見ていただいても構いませんよう」

それに、改めて客になった相手でもあった。
献身をもって接さない理由は、どこにもない。

「市販品の中古もありますけど……
 私が自分で作ったのもあるんです〜。
 ふふ、手先に自信があるわけじゃないですけど……」

「どれでも一つ『300円』です。いかがですか〜?」

言葉通りプラ製の市販品らしきものもあったが、
多くはやはり草花を加工したような、ハンドメイド品だ。

759百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/28(金) 22:22:12
>>758

「ハハハ、謙遜しなくてもいいさ。
 アタシなんて、とにかく不器用なタチでね」

「こういう細々した手仕事は苦手なんだ。
 昔から人よりガサツなもんでねえ」

自分が、この少女と同じ年頃だった時を思い出す。
父一人子一人だったため、物心ついた時から、
一通りの家事は行っていた。
男手一つで育てられたせいか、
『大雑把』なのは今の今まで直らなかったが。

「そのアタシから見れば、十分に立派な出来だよ」

        スッ

「――――なら、『これ』を一つ頂こうかねぇ」

「『デスクの飾り』にでもさせてもらうよ。
 これっぽっちも洒落っ気のない職場でね」

「アタシが『三十年』若けりゃ、自分に使う所なんだけどねえ」

ハンドメイドらしい品を指差し、財布から『千円札』を取り出す。
それを、アクセサリーの隣に置いた。

「ちょうど細かいのがなくてね。釣り銭はあるかい?」

千円札を手に取ってみれば分かるだろう。
その下に一枚の紙がある。
『名刺』だ。

【大門総合警備保障 主任指導官 百目鬼小百合】

そのように記されていた――――。

760関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 11:23:09
>>759

「今でも、きっとお似合いですよう!
 派手なデザインじゃないですし……
 気が向いたら、着けてもみてくださいね」

飾りだけで終わらせるのは、『もったいない』。
口に出しはしないがそのような思いはあった。

「七百円ですね、ありますよ。
 …………!
 ええと、これ、お返ししますね」

       スッ

「ふふ……お返しできる名刺も、持ってませんので〜」

名刺を先にゆっくりと返す。
この女性の名なのかは関には判断しかねたが、
警備保障・主任指導という肩書は『納得』がいく。
関からはとても遠い位置にいる、強い存在。

「お袋、紙袋でいいですか〜?
 ビニール袋もありますけど、
 これ一つ入れるには大きすぎまして……」

         ゴソ

「はあい、これ……
 できたら、長く持っててあげてくださいね〜」

小さな紙袋にそれを入れて、そっと百目鬼に手渡す。

「お買い上げ、ありがとうございました。
 またどこかでお会いしたら、よろしくお願いします〜」

                ペコ〜

お金を受け取り、品を渡す。『買い物』はおしまいだ。
関の目論見は、真の意味では果たせなかったが……これも、悪くはない。

761百目鬼小百合『ライトパス』:2020/08/29(土) 17:09:51
>>760

「『ソレ』はアタシのだよ」

「アタシがアンタに渡したんだ」

「貰っといておくれ」

差し出された名刺を一瞥し、紙袋と釣り銭を受け取る。
少女は、『人に迷惑を掛ける使い方はしない』と言った。
しかし、それが今後も続くとは限らない。
何らかの事情で、いつか破られてしまう可能性もある。
万一そうなった場合に、
『踏み止まる一助』にするために出したのだ。
何の意味もなく出したのではない。
だから、『受け取らない』。

「ハハハ――商売と同じで、褒めるのが上手だね」

「それじゃ、着けて帰る事にするよ」

買ったばかりの『草花のアクセサリー』を襟に付ける。
耳には、スタンドの紋章を思わせる『白百合のイヤリング』。
そちらは凛とした印象であり、
購入した品とは雰囲気が大きく異なる。

       ザッ

「――――ありがとう、お嬢ちゃん」

踵を返し、『売り場』から立ち去る。
百目鬼小百合の信条は、世の『不正』を正す事。
それが起こらなければ、『更に良い』。

762関 寿々芽『ペイデイ』:2020/08/29(土) 23:14:40
>>761

「あ……そうだったんですねえ。
 それじゃあお言葉に甘えて、
 大切に取っておかせていただきます〜」

           スル

『関寿々芽』は一般的に善良な部類の人間だ。
他への献身、慈愛を是とし、
小さな悪事を見逃す事はあっても、
自ら悪事を勧めるようなことはしない。

「ふふふ、やっぱりよ〜くお似合いですよう。
 お耳飾りもお似合いですし、
 きっと『モデル』が良いからなんでしょうね」

             ニコ〜

「どういたしましてえ。ではまたどこかで、お姉さん〜」

それでも――――生きる中で『ままならない』事はある。
それが訪れるとしたなら、百目鬼の姿は、足を止める理由になるだろう。


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