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【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

322小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/18(日) 22:41:08

                 コッ コッ コッ ……

黒いキャペリンハットに洋装の喪服と黒いパンプスという普段着の上に、ラベンダーを思わせる紫色のコートを着て、
夕日に染まる街を歩いている。
いくつかの店を回って買い物を済ませ、やがて帰宅の途に就いた。
街中の賑やかさから離れ、人通りの少ない閑静な通りに足を踏み入れる。

            ……ィ

   ――……?

その時、何か動物の鳴き声が聞こえたような気がした。
思わず足を止めて、その場で振り返る。
しかし、そこには何もいなかった。
聞き間違いだったのだろうか。
そう思い、再び正面に向き直る。

           ……ミィ

その時、また鳴き声が聞こえた。
今度は、先程よりもはっきりと、耳に届いた。
鳴き声に応えるように、おもむろに自身の頭上を仰ぎ見る。

  「――あっ……」

背の高い一本の街路樹。
その枝の上で、一匹の猫が不安げな声で鳴いていた。
自分は、その猫に見覚えがあった。
以前、星見横丁で見かけたことがあったのだ。
その時に一緒にいた少年は、この猫を『あい』と呼んでいたことを覚えている。

おそらくは、木に登った後で下りられなくなってしまったのだろう。
どうすれば無事に下ろしてあげられるのだろう。
夕暮れに照らされた通りに一人佇み、胸中で思案しながら、木の上を見つめている。

323アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/18(日) 22:50:19
>>322
「おねーさんどうしたの?」

少し離れたところから声をかけたのは、金髪碧眼の少女。
清月学園の中等部の制服を身に纏っている。

少女は街路樹のネコに気付いていないらしく、
何やら街路樹の前で空を曲げている女性を怪訝に思ったようだ。

324小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/18(日) 23:27:13
>>323

少女の声を聞き、そちらに顔を向ける。
その表情には、少し困ったような微笑が浮かんでいた。
少女に向かって、軽く頭を下げて挨拶する。

  「あの上に……猫がいるんです……」

  「ただ――自力で下りられなくなっているようなのです」

  「怪我をしない内に、下ろしてあげたいのですが……」

街路樹に猫がいることと、その状況を少女に告げる。
自分だけでは、この猫を下ろしてあげることは難しいだろう。
しかし、この少女も、力では自分と大きな違いはなさそうに思える。

やはり、誰か他に力のありそうな人を呼んでくるべきだろうか。
そんなことを考えながら、猫の様子を見守る。
目の前にいながら、不安そうに鳴いている猫を助けられないことを歯痒く思っていた。

325アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/18(日) 23:43:39
>>324
「え? あっ! ほんとだ!」

目の前の女性の言葉に、金髪碧眼の少女──アンジェは得心する。
確かに、ネコが降りられなくなっている。これは大変だ。

「助けてあげないと……ちょっと待ってね〜……」

事態を認識したアンジェはそう言って、
猫のいる街路樹の下に駆け寄る。
どうやら、ここで助けるつもりらしい。
木でも登る気なのか、と思いきや──

          ズッ

と、少女の身体から乖離するように、
夕焼けのような輝きを秘めた
屈強な肉体を持つ羊角の人型が現れる。
強靭そうな肉体とは裏腹に、その恰好は燕尾服。
何かミスマッチなかみ合わせだった。

    『フゥッ……』  ズオオ

現れた人型スタンド──『シェパーズ・ディライト』は、
一跳びに跳躍すると、猫の腹を両手で挟んで捕獲する。
高速かつ精密な動き……メタ的に言うとス精BBくらいだった。

なお、アンジェはこの間両手を上げて『おいでおいで〜』とやっている。
おそらく、このままスタンドを戻して
『声に反応して降りたネコを抱きかかえました』というポーズにするつもりなのだろう。

326小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 00:05:37
>>325

  「――……!」

まず、街路樹に駆け寄る少女を見た。
続いて、彼女が発現した、角を持つ屈強な人型スタンドを目視した。
予想していなかった光景を目の当たりにして、その表情に驚きの色が現れる。

  「……ありがとうございます」

深く頭を下げると共に、少女に感謝の言葉を述べる。
やがて、少女を見つめる視線が、その傍らに立つ少女のスタンドへ移る。
その様子を見れば、スタンドが見えていることは一目瞭然だろう。

  「――良かった……」

まもなく、小さな声で安堵の呟きを発しながら、少女のスタンドによって助けられた猫に視線を移した。
本当に無事で良かった。
思いがけずスタンドを目撃した驚きよりも、今は猫が無事だったことを喜ぶ気持ちの方が大きかった。

327アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 00:15:50
>>326
アンジェはというと気づかれたとは毛頭思っていないようで、
スタンドから渡された猫を抱きかかえたまま、小石川の方へと向き直った。

「うん、ほんとによかったね!
 この子も怪我とかしてないみたいだし!」

破顔一笑して、それからアンジェは気付いた。
目の前の女性の視線が、自分ではなくスタンドに向けられていたことに。
その視線はすぐ助けられた猫の方へと映ったが、まぁ流石に分かる。

「えーと……」

『スタンド使いなんだ?』と聞きたい好奇心はもちろんあるが、
それより先に、まずは猫の方をどうにかせねばなるまい。
つたない頭脳でそう計算を弾き出したアンジェは、
傍らに立つ夕焼け色の屈強な戦士と一緒に小首を傾げた。

「このネコ、お姉さんのネコ?」

328小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 00:36:27
>>327

  「いえ――私の猫ではありません……」

  「野良猫ですが、以前に見かけたことがあるんです」

  「その猫を私よりも前から知っていた私の知人は、『あい』と呼んでいました」

そう言って、少女に対して穏やかな微笑みを向ける。
そして、スタンドに抱き抱えられている猫を見つめた。
猫は、スタンドの腕の中で体を捩っていた。
もしかすると、下ろして欲しいのかもしれない。
木上から助けられた今、このまま離してしまっても問題はないだろう。

  「もう大丈夫なようですね」

  「――下ろしてみていただけますか?」

少女に猫の様子を伝え、猫を地上に下ろすように頼む。
その後は、おそらく自分の居場所へ帰っていくのだろう。
人間に居場所があるように、彼らにも居場所はあるのだろうから。

329アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 00:43:24
>>328
「へぇー……」

野良猫、との言葉にぽけーと頷き、
それから猫を下してやる。
「あいちゃんじゃあねー」なんて言いつつ見送ると、

「──でも、わたしはびっくりしたよ!
 まさかこんなところでスタンド使いと会うなんて!」

言いながら、彼女の身体に溶け込むように、
『シェパーズ・ディライト』は消えていく。

ちなみにアンジェは以前の邂逅で
『ものを運ぶのが苦手なスタンド使いもいる』と
知ったので、目の前の女性もまぁそうなんだろうなと思っている。

330小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/19(月) 02:54:47
>>329

  「――さようなら……」

少女と同じように、立ち去ろうとする猫に別れの言葉を掛ける。
それらの呼び声に反応したのか、猫は一度だけ振り返り、小さな声で鳴いた。
そして、そのまま通りを歩いていく。
明るい夕焼けの中に、しなやかな猫のシルエットが浮かんでいる。
その姿は徐々に小さくなり、やがて見えなくなった。

  「私も驚きました」

  「それに、あんなにも力強いスタンドは見たことがなかったので……」

今しがた目にしたスタンド――『シェパーズ・ディライト』を思い出す。
自分も、それほど多くのスタンドを見てきたわけではない。
それでも、目の前にいる少女のスタンドからは、ほとんど出会ったことがないくらいの力強さを感じた。

  「私の『スーサイド・ライフ』では、あの猫を助けることはできなかったと思います」

  「この場に、あなたがいてくれたことは、本当に幸運でした」

『スーサイド・ライフ』は、自身の肉体を切り離すことによって遠隔操作を可能とするナイフのスタンド。
         パーツ
切り離された『部位』は非力であり、能力を持たない者にも視認できる。
猫をしっかりと捕まえられたかは分からないし、そもそも猫を驚かせてしまう。
助けるどころか、木から転落させてしまうことも考えられる。
そうしたことを考えると、自分のスタンド能力では木から下りられなくなった猫を助けることは難しかっただろう。

331アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/19(月) 23:31:37
>>330
「それほどでもある!」

小石川の言葉に、アンジェは衒った様子もなく素直に頷いた。
元より謙遜とか気遣いとかができるタイプではないのだ。

「ふふん。わたしの『シェパーズ・ディライト』は力持ちだし
 すばしっこいし起用だしでけっこうなんでもできるんだよね。
 できないことなんて遠くのリモコンを取って来るくらい……」

普段のスタンドの使い方がよく分かるセリフである。

「ただ、あの猫はけっこうギリギリだったかな……。
 距離的に、あと少し高いところにいたら届かなかったかも」

パワーとスピード、そして精密性の代償として、
『シェパーズ・ディライト』は射程がとても短い。
意外とギリギリの勝負だったらしい。

「ちなみに、そんなこと言うお姉さんのスタンド能力ってなんなのさ? 拳銃とか??」

知り合いに拳銃の能力を使うスタンド使い(蓮華)がいるのだ。
とはいえヴィジョンだけで、詳しい能力など知らないのだが――
アンジェにとっては自分以外に知っている唯一のスタンドなので印象が強い。

332小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/20(火) 00:24:43
>>331

  「私のスタンドは、遠くにあるものを持ってくるには、とても便利ですよ」

スタンドの活用について話す少女に対し、帽子の陰でくすりと笑いながら答える。
ただ、実際に遠くのものを持ってくるためだけにスタンドを使うことはしていない。
元々、普段の生活の中ではスタンドを使ってはいなかった。
日常で使う機会がないというのもあるが、できればあまり使いたくないとも思っている。
もし使うことがあるとすれば、それは必要に迫られた時だけだ。

  「――拳銃……ですか……?」

耳慣れない言葉を聞いて、思わず同じ言葉を繰り返してしまった。
普通は、テレビや映画の中くらいでしか目にすることのない道具だろう。
それでも、それがスタンドならば、そういった形のものがあっても不思議ではないと思い直した。

  「私のスタンドは――」

静かに左手を持ち上げて、胸元にかざす。
その手を軽く握り、見えない何かを持つような形を作った。
静かに目を閉じて、意識を集中する。

       スラァァァァァ――――z____

一瞬の間を置いて、先程まで空だった左手の内に、スタンドのヴィジョンが姿を現した。
それは、一振りの『ナイフ』だ。
まもなく、閉じていた目を再び開く。

  「『スーサイド・ライフ』――これが、私のスタンドです……」

燃えるような夕日が、『スーサイド・ライフ』を照らしている。
鋭利な刃は、金属質の鈍い輝きを放っていた。
その輝きからは、切れ味の鋭さが窺い知れるだろう。

333アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/20(火) 00:30:37
>>332
「わっ! きれい!」

突如小石川の手の中に現れたナイフに、アンジェは目を輝かせた。
夕日色を照り返すそれを見ながら、

「やっぱり『スタンド』って道具とか武器とかの方が
 多いのかな〜……? わたしのはなんで人なんだろう」

と、刃に映る自分とにらめっこをするみたいに
まじまじと『スーサイド・ライフ』を見つめていた。
その表情に、鋭利な刃物に対する警戒の色はない。
対抗できる──とかではなく、単純に思考が平和なのだろう。

「なんか、人によって色々な形があるって不思議だよねぇ」

334小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/20(火) 01:06:32
>>333

  「本来、スタンドというのは、人の形をしていることが多いようです」

  「私も、そんなに沢山のスタンドを見ているわけではないので、はっきりとは言えませんが……」

そう言った後で、手の中にある『スーサイド・ライフ』を解除する。
今は特に使う必要もない。
それに、スタンドとはいえ人前で刃物を持ったままでいるというのは礼儀に反する。

  「そうですね……」

  「人がそれぞれ違った姿をしているのと同じように、
   それぞれが違った心を持っているということなのでしょうか……」

  「たとえば――あなたと私がそうであるように……」

『スーサイド・ライフ』の能力は、本体の『自傷』によって発動する。
スタンドが精神の現れであるなら、これほど自分に相応しいものはないと感じる。
私自身が、自傷行為という鎮静剤なしでは生きられない人間なのだから。
ほんの一瞬、表情に暗い陰が入り交じる。
それでも、すぐに気を取り直し、再び口元に微笑を浮かべた。

  「私は、小石川文子という者です」

  「もしよろしければ……出会いの記念に、あなたのお名前を教えていただけませんか?」

335アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/20(火) 23:02:34
>>334
「なるほど……確かに、わたしとアナタは違うね……」

分かったんだか分かってないんだか、
とりあえず分かった気ではいそうな神妙な面持ちで頷くアンジェ。

「──よろしく文子! わたしはアンジェ!
 アンジェリカ・マームズベリーだよ!」

一瞬小石川に浮かんだ暗い色の表情には気づかず、
アンジェはにっこりと笑って手を差し出した。
握手がしたい……ということなのだろう。

控えめな小石川の態度に対し、アンジェの態度は
かなり遠慮を知らないグイグイっぷりである。
こういうお国柄なのかもしれないが。

336小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/21(水) 01:37:52
>>335

日本人だからという理由だけではなく、自分は元々あまり積極的ではない性格だった。
しかし、表情に困惑の色はない。
この異国の少女は、自分にはない明るさを持っている。
こうした無邪気な輝きに触れることは、自分にとっても好ましいことだと思う。
ふとしたきっかけで悲観的になってしまいがちな自分の心を励まし、勇気付けてもらえる気がするから。

  「アンジェリカさん……ですね」

  「――よろしくお願いします」

アンジェが右手を差し出したのなら右手を、左手を差し出していれば左手で握手に応じる。
どちらの場合でも、共通していることが一つあった。
薬指に光るものがある。
飾り気のないシンプルな銀の指輪だ。
それは通常であれば左手だけにはめられる類のものだが、その指輪は両手の薬指にはめられている。

  「アンジェリカさんは、清月学園に通っていらっしゃるんですか?」

  「その制服を着た生徒さん達を、何度か見かけたことがあったので……」

彼女が身に着けているのは清月学園の制服だ。
しかし、一般の生徒という感じには見えない。
見たところ、留学生なのだろうか。

337アンジェ『シェパーズ・ディライト』:2018/02/22(木) 21:21:49
>>336
「アンジェでいいよ! みんなそう呼ぶし」

やはり全体的に距離感の近い少女である。
ちなみに、握手は左手でしていた。利き手が左なのかもしれない。

(あ……結婚してるんだ)

なので薬指の指輪を見てそう理解するが、
だからといって『既婚者なんですね!』と言うほどアンジェの距離感は近くはなかった。

「うん! あ、ちなみに。わたしは去年の九月から日本に来てね。
 清月学園にはその頃から通い始めたよ。『ムシャシュギョー』中なんだ」

よく分からない説明だが、おおよそ『留学生』という認識で間違いないだろう。
九月という『日本の基準』では中途半端な編入時期は──
おそらく、彼女の故国での新学期に合わせた、という形だと思われる。

「あ、『ムシャシュギョー』って言うのはね。わたしもともと
 ケンシキ? を広めるためにこっちに来たんだけど、
 日本ではそういうのを『ムシャシュギョー』って言うらしくってね〜」

聞かれてもいないことをぺらぺら話し始めた。

338小石川文子『スーサイド・ライフ』:2018/02/22(木) 22:31:20
>>337

  「分かりました。それでは、アンジェさんと呼ばせていただきます」

最初に断りを入れてから、少女に対する呼び方を訂正する。
それでも、控えめな態度は変わらない。
元々の気質であるので、こればかりは変えようがなかった。

  「――見識を……。それは、とても立派なことだと思います」

  「この国での――この町での、あなたの『武者修行』が実りあるものとなるよう、陰ながらお祈りしています」

  「アンジェさんのような行動力を、私も見習わなければいけませんね」

そう言って、くすりと笑う。
慎ましく、穏やかな微笑みだった。
その表情は、この出会いにささやかな喜びを感じていることを裏付けていた。

      スッ

ふと顔を上げると、夕日が沈みかけているのが目に入る。
思いの他、長く話していたようだ。
楽しい時間は早く過ぎるということかもしれない。

  「――ごめんなさい。すっかり話し込んでしまって……」

  「アンジェさん、またどこかでお会いしましょう」

丁寧に頭を下げ、別れの挨拶を告げてから、自宅に向かって通りを歩き始める。
誰にも帰る場所はある。
それは、このアンジェという少女にもあるだろうし、おそらく野良猫のあいにもあるのだろう。
そして、私にも帰るべき場所がある。
たとえ、そこに誰も待っていないとしても、それでもそこは私と『彼』の場所なのだから。


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