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【場】『自由の場』 その1
1
:
『自由の場』
:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。
304
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/04(木) 02:31:42
一月一日――元旦。
他の地域と同じように、ここ星見町の神社も、新年の初詣をする人々で賑わっていた。
その象徴であるかのように、境内は見目鮮やかな晴れ着姿で溢れている。
ザッ……
色とりどりの雑踏の中で、墨のように黒い着物を纏った女が静々と歩いていた。
近くで見たならば、それが和装の喪服であることが分かるだろう。
最も格式の高い第一礼装であり、失った最愛の相手に特別な想いを伝えるための装いでもある。
――去年は一年、大きな事故や病気もなく、無事に終えることができました。
――どうか、今年も無事に過ごせるよう、私を見守っていて下さい。
――治生さん……。
自分なりの新年の装いに身を包み、心の中で静かに祈りを捧げる。
去年の一年間、彼との約束を守ることができたことに対する感謝を。
そして、今年の一年間も彼との約束を守り続けたいという願いを込めて。
305
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/12(金) 00:03:44
>>304
ふっふっふ。
自分は人の波を見ている。
自然の中に数式が潜むことは多かれど人の波は幾何学模様を描きはしないもの。
だけど自分は観察している。
この経験もきっとどこかでしてるはずだから。
「……さぁ実験をはじめよう」
自分は人を避けていく。
多分こうすれば大丈夫というルートが見えてる。
「あ……」
そうだ。ここで人を見つけるんだ。
喪服を着た女の人。きっと、いつか見た風景。
「ねぇ、あなたと自分って会ったことないよね?」
思い切って喪服のあの人に聞いてみる。
306
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/12(金) 00:52:14
>>305
ちょうど参拝を終えた時、知らない女性に呼びかけられた。
少なくとも、自分には見覚えがない。
もしかすると、向こうは自分を見たことがあるのかもしれない。
しかし、それは会ったことがあるとは言わないだろう。
少し考えたのち、口を開く。
「……そうですね」
「はい――会ったことはありません……」
「あなたは……私をご存知ですか?」
失礼にならない程度に女性の容姿を確認しながら、質問を返す。
自分が忘れているだけで、本当はどこかで会っていただろうか。
もしそうだとしたら、申し訳なく思う。
307
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/13(土) 00:27:56
>>306
んっんー。やっぱりそうかそうか。
デジャヴかそうじゃないか、見切れたな。
うんうん。これは一つの進歩だね。
「そうー。自分も君の事は知らないかなー」
「あ、ああ、ごめんねー。怪しい者ではあってもぉ悪い人じゃない、と思ってくれていいよー?」
普通こーゆーのはヘンナヒトって感じだねぇ。
自分はそう言う目で見られるの慣れてるから別にいんだけどね。
「えぇっとーどうしよっかなー?」
「お姉さんは時間ある? お話しないー?」
308
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/13(土) 00:58:38
>>307
「――はじめまして……」
軽い会釈と共に挨拶する。
どうやら自分が忘れているというわけではなかったらしい。
そのことに対して、ひとまず安心した。
「ええ……私は構いません」
「……あちらに行きましょうか」
そう言ってから、人の少ない一角に向かって歩き出す。
どちらかというと寂しがりな性格ということもあり、人と話すのは好きな方だ。
きっかけは突然ではあっても悪い気はしない。
「私は小石川といいます」
「よろしければ、お名前を聞かせていただけますか?」
309
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/13(土) 01:03:38
>>308
わーお。ちょっと安心ー的な?
これ、断られることも多いんだよねぇ。
ま、しょーがないけどねぇ。
「ありがとーお姉さん」
「ふふっ。ナンパみたいだねぇ」
「えっと、名前。ツクモ。それか、ゲルトかトゥルーデ」
名字とあだ名とあだ名ね。
「よろしくね。小石川のお姉さん」
310
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/13(土) 01:21:18
>>309
「私も、誰かとお話するのは好きですから……」
「それでは……ツクモさんとお呼びします」
目的の場所へ着き、歩みを止める。
境内には多くの人がいるが、二人の周りにいる人の数は少ない。
少なくとも、周囲の話し声で声が聞き取りにくいということはないだろう。
「――先程、会ったことがないかとおっしゃいましたね……」
「何か……訳があるのでしょうか?」
「もし差し支えなければ、教えていただけませんか?」
気にならないといえば嘘になる。
ただ、どうしても聞かなければならないということでもない。
もし彼女の気に障るようなら、これ以上は立ち入るつもりはない。
311
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/13(土) 01:36:25
>>310
「訳。うん、あるよ」
そういって自分は右の耳を触る。
三つのピアス。
それが癖になっている。
「デジャブって知ってる? 見たことがない事を見たことがあるように思うっていうか」
「未経験をすでに経験したことと思うって事」
既視感ともいうその概念。
自分がずっと苛まれる病気でもある。
「自分はデジャブをよく起こすんだ」
「で、なんでかなぁって悩んでる。それと自分の行いが経験したことなのか未経験なのか曖昧になっちゃったの」
「だから、確認ーみたいな?」
交流しないと事実がどうなのか確認が出来ないんだなぁ。
「あ。自分からも聞いていい? お姉さんはなんで喪服?」
312
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/13(土) 01:56:42
>>311
「――そんなことが……」
デジャブというものは知っている。
自分も、時々そういったものを感じることはある。
しかし、そう頻繁に体験するというわけではない。
「不思議……ですね」
ピアスに目をやりながら呟く。
初めて会った者同士が、こうして会話をしていることも、第三者から見れば不思議なことかもしれない。
そう考えてみると、この出会いも何か不思議なもののように感じられた。
「私は……」
「大切な人に……伝えるためです」
「いつも想っている、と……」
おもむろに両手を胸の前に上げて、軽く握る。
左手の薬指と右手の薬指。
その二ヶ所に、同じデザインの銀の指輪が光っていた。
313
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/14(日) 00:31:35
>>312
「不思議だよねぇ」
困ったところだよ。
「んー!」
あらら、想い人ときたかい。
予想外、いや考えたら思いつくのかなぁ。
左右一緒の指に指輪か。
自分も指輪してるけど両の小指だからねぇ。
「いいじゃんねーそういうのも」
314
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/14(日) 01:01:25
>>313
「……ええ、そうです」
呟くように言葉を告げて、自分の指輪に愛おしげな視線を向ける。
左手の指輪は自分のもの、右手は彼の形見だ。
少しして、また静かに両手を下ろして目の前の相手に向き直った。
「デジャブ……私とも、どこかで会ったように感じていらっしゃったのでしょうか……」
「もしよければ、ツクモさんのことをもう少し教えていただけませんか?」
「もしかすると……気付かない内に、どこかで会っていたのかもしれませんから」
町の通りで擦れ違ったとか、たまたま同じ店の中にいたというようなこともあるかもしれない。
ただ、特に解き明かさなければならない問題というわけでもない。
このツクモという不思議な女性のことを、もう少し知りたくなったというのが正直なところだった。
315
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/14(日) 01:33:38
>>314
「そう。どこかで会った気がした」
「というか、この人の波もどこかで見た覚えがあって、どう動けば誰がどう動くかある程度見当ついてたというかー」
勿論、予想の通りに進むとは限らないけどねぇ。
裏返せばある程度は分かったうえで出来るってことかな。
「自分の事? うん、お姉さんがいいなら」
「えっと、何から話そうかな。何かある?」
316
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/14(日) 01:53:28
>>315
「そうですね……」
そっと目を伏せて、少し考える。
何がいいだろうか。
話しやすいものがいいが、あまり踏み込みすぎるのも失礼に当たる。
「――ツクモさんは、何がお好きですか?」
考えた結果、趣味というところに行き着いた。
不思議な雰囲気を漂わせている彼女は、何が好きなのだろう。
「私は……森林浴をするのが好きです」
「それから、庭の花壇でラベンダーの栽培を少し……」
「木の匂いやラベンダーの香りに包まれていると、気分を落ち着かせてくれるので……」
317
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/14(日) 22:57:20
>>316
「好き、好きかー」
「……お姉さん、森林浴するんだね」
自分はそういうことはしないけど。
まぁでもお姉さんはイメージに合ってるかな?
マッチしてるかな? ベストマッチ、かな?
「自分はー実験? と、昼寝と散歩とー」
「可愛い子? 可愛い系は好き? 好き好き。うん、ほんとほんと」
318
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/15(月) 00:56:24
>>317
「散歩は私も好きです」
「自然公園の辺りには、よく……」
自分と共通する部分を見つけて、微笑みを浮かべる。
全く違うタイプのようでいて、実際は気の合う部分もあるのかもしれない。
もちろん、少し会話をしただけだけで、相手の人となりが分かるとも思っていない。
ただ、同じような部分が見つかると、ささやかな喜びはある。
それもまた確かなことだ。
「……実験――」
「なんだか……難しいことをなさっているのですね……」
自分とは縁遠い単語だ。
どんなものなのか、なんとなく想像はできる。
しかし、実際にどんなことをするのかは予想できない。
「可愛い、ですか……」
その言葉を聞いて、少し考える。
何か、そこに力が篭っているような印象を受けた。
「誰か……そういった方が身の回りにいらっしゃるのですか?」
319
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/15(月) 01:33:13
>>318
「いいよねぇ散歩」
「刺激的すぎない刺激ー」
もっとも、自分の場合は今みたいな簡単な実験をするつもりで散歩してたりもするけどね?
「そー実験。昔は先生になりたかったんだぁ」
「ってー今もかな」
諦めきれないとかじゃあないんだけどね。
そうありたい姿ではあるんだよね。
「可愛い……うん。いるよ」
「自分は可愛いものを身の回りに置くのが好きだよ」
「ほら、好きなブランドと近いかな。人間だからブランドってことはないんだけど」
320
:
小石川文子『スーサイド・ライフ』
:2018/01/15(月) 02:12:39
>>319
「ええ、お気持ちは分かります」
自分も、この指輪を肌身離さず身につけている。
この世に二つとない、大切な形見の品だからだ。
形は違えど、大事なものを傍に置きたいという意味では似通った部分もある。
「先生ということは……科学の先生ということでしょうか?」
「そういったことについては心得がないので、私には想像もつきませんが……」
「志を持っておられることは、素敵なことだと思います」
自分には、彼女のように何かになりたいという目標はない。
しいて言うなら、この命を全うすることくらいだ。
自分にとっては大きな困難を伴う願い。
時折、心が折れてしまいそうになることもある。
ただ、それでも成就したいという思いも持ち続けている。
「もし、よければ――」
「少し歩きながら、お話しの続きをしませんか?」
「お互いに散歩が好きな者同士として、一緒にお散歩をさせていただきたいと思うのですが……」
「――いかがでしょうか?」
履いている草履の先を静かに神社の外に向けて、穏やかな微笑と共に誘いの言葉を掛ける。
彼女が承諾してくれたなら、話の続きは歩きながら聞くことになるだろう。
321
:
ゲルトルート『ラスト・ワルツ・リフレイン』
:2018/01/15(月) 23:35:22
>>320
「素敵って言われるとむずがゆいなー」
「ま、ありがっとー」
なれるかな。
なれちゃうのかな。自分。
「一緒にお散歩? いいよー」
「断る理由、ないしね」
うんうん。これもまた経験だ。
これは経験した覚えがないから、一つ未知の道をすすめたね。
自分との関わりの中でこの人も変化したのかな。
そして自分自身も変化出来たのかな?
ま、どっちでも大丈夫だね。
「じゃ、行こっかーお姉さん!」
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