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【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

248冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/15(火) 23:56:45
「うーみーは広いな。大きいぃなぁ」

「大きすぎるけど」

砂浜をざくざく歩いている。

249夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/21(月) 21:40:37
>>248

「その歌の続きなんだっけ?」

同年代くらいの少女がフランクに声をかけた。
白いビキニの水着を着て腰にパレオを巻き、サングラスをかけている。
砂浜にパラソルを立て、シートを敷いて寝転がっている。

250冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/21(月) 23:35:50
>>249

「ん?」

「月は昇るし、日が沈むっていうんだよ」

この方向へと振り向いた。
耳には黒いリングのピアス。
右手の中指と左手の人差し指にシルバーの指輪。
長く伸びた黒髪は海風で揺れている。
膝丈の海水パンツに白いシャツを着ており、足元はビーチサンダルだ。

「えっと……君は誰?」

「僕は冷泉咲。咲でも冷泉でも好きなように呼んで?」

251夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 00:47:18
>>250

「――ふんふん、なかなかフーリューじゃないの」

「ありがと」

ウェービーなショートボブが潮風を受けて軽く揺れる。

「じゃ、冷泉くんって呼ぼ。
 私、明日美。夢見ヶ崎明日美。苗字が長いから明日美でいいよ」

サングラスのレンズは色がそれほど濃くないので、奥にある瞳が透けて見える。
黒目がちの大きな瞳。
その視線が、ピアスと指輪に向けられる。

「いいな、そのアクセサリー。私もピアス空けよっかな」

そう言いながら、シートの上をごろりと転がる。

252冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 00:57:20
>>251

「僕の作った曲じゃないし」

「別にお礼なんていいよ。明日見」

サングラスの奥の瞳を見つめて言葉を返す。

「ピアス? あぁ、今道具持ってないな」

「あったら今ここであけたんだけど」

「あ、病院であけたいタイプ?」

253夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 01:20:41
>>252

「え――?」

今ここで、という言葉に少し驚いた。
それと同時に興味も出てきた。
ピアスというより、この少年に。

「ねえ、空ける道具ってどんなの?私、知らないんだ」

「なんかさ、そういうのセンモンの人がやるのかと思ってた」

「やっぱりチクッてする?」

「――ところで、暑くない?ここ、入っていいよ」

寝転がるのをやめて座り、やや横に移動して場所を空ける。

254冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 01:26:36
>>253

「え、ピアッサーって知らない?」

右手の親指と人差し指を広げて二本の指の間隔を広げたり狭めたりする。

「じゃあお邪魔するね」

開けられた場所に座り込んだ。
そしてピアスをつまむ。

「針のついた器具であけるんだよ」

「しっかり殺菌しないとうんじゃうから気を付けないといけなくてさ」

「チクっとはする」

255夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 01:40:07
>>254

「いやー、私って結構世間知らずだから。箱入りっていうの?
 自分で言うのもなんだけど」

そう言って軽く笑った。

「だから、教えてもらえるのは嬉しいな。
 色んなこと知りたいと思ってるから」

「ふんふん」

「へえ……。まーそうだよね。自分の体に穴空けてんだもんね」

「それも自分で空けたの?」

ピアスを指差して言う。

「何かきっかけとかあったの?空けようと思ったことの」

256冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 23:21:40
>>255

「へぇそうなんだ」

箱入り娘。
冗談か本当かは分からない。

「いや、これは両方ともお姉さんに開けてもらったんだ」

「病院じゃないけど自分でも開けてないって感じかな」

それから顎に手を当てる。

「きっかけ……開けてみたらって言われたんだよ。そのお姉さんに」

「痛いけど、放っておけば閉じられるしいいかなって」

257夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/22(火) 23:47:52
>>256

「そう。だから生まれた時から、あんまり外を出歩けなかったんだ。
 最近になって色んな場所に行けるようになってさ」

言葉を続けながらサングラスの位置を直す。

「ふんふん、お姉さん…・・・ねぇ……」

興味の矛先は話に出てきたお姉さんに移った。

「お姉さんってことは姉弟なの?」

「私、一人っ子だから羨ましいな」

258冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/22(火) 23:59:27
>>257

「なるほどぉ」

うんうんとうなずいてみる。
別にだからといって何かをするわけでもない。

「ううん。血は繋がってないよ」

「近所に住んでるんだ。お姉さん」

259夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 00:10:54
>>258

「ご近所さんってやつ?」

ピアスの穴を開けることを勧めてくる近所のお姉さん。
興味は、より強くなった。

「その人ってどんな人?」

「スゴイいっぱいアクセサリーつけてたりするの?」

なんとなくパンク風ファッションの女性を想像していた。

260冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 00:48:17
>>259

「そう、ご近所さん」

ご機嫌さんに言葉を返す。

「んー? アクセサリーはいっぱい持ってるけど」

「そんなにつけてないかな。ピアスも耳に三個開けてるだけだし……」

「綺麗な人だよ」

261夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 01:04:24
>>260

「三つ空けてたら結構空けてる方じゃない?」

基準は知らないが、そんなに付けてる人を見たことがないので、そんな気がした。

「外見は分かったけど、内面はどんな人?」

「性格とか趣味とか特技とか」

口には出さないが、何か変わった部分がないかなという期待を込めて質問する。

262冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 01:13:40
>>261

「そうかな。お姉さんの友達にもっと開けてる人いたからなぁ」

感覚が違うのかもしれない。
少なくとも彼にとっての基準はその人達らしい。

「あー」

「実験が好きで、化学の先生になるって言ってたかなぁ」

「色々薬品とか家に置いてあったよ」

「後は色々教えてくれる」

263夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 01:25:20
>>262

「えー、なんかスゴイね。インテリって感じ。白衣とか着てそう」

期待した通りだと内心で思った。

「教えてくれるって何を?化学のこと?」

「モノを溶かしたり爆発させたりとか?」

あまり縁がないからか、化学という言葉にかなり偏見があるらしい。

264冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 02:14:10
>>263

「あぁ、白衣、持ってた」

「着せてもらったことあるよ」

あっけらかんと笑っている。

「爆発はちょっとだけ……水素でこう、ポンとやるくらいなら」

「液体窒素の実験とか面白かったな」

「バナナで釘を打つやつ」

手で釘を打つジェスチャー。

「後は生活に役立つこととか立たない事とか、色々教えてくれるよ」

265夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/23(水) 06:53:13
>>264

「バナナで釘――あ、それなら、この前テレビで見た」

その時の映像を頭の中で思い出した。
そこで、ふと疑問が浮かぶ。

「でも、エキタイチッソとかって家にあるものなの?うちにはないけど」

「ああいうのって、どこかの研究所とかに置いてると思ってた」

「その役立つこととか立たないことって、それも化学系の話なんでしょ?」

「たとえば、どんなの?
 黒豆を煮る時に一緒に古釘を入れると、表面にツヤが出るっていうのは知ってるけど」

生活という言葉から、ちょっとした豆知識みたいな話かなと想像した。

266冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/23(水) 23:49:32
>>265

「さぁ?」

「でも、あの人の家にはあったね。もしかしたらどっかから勝手に持ってきちゃったのかもしれないけど」

それから顎に手を当てて考えたような顔をする。

「酢で十円玉を綺麗にするとか教えてもらったなぁ」

「あとは料理とか、遊びとか色々」

267夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/24(木) 00:33:38
>>266

「えぇ〜?」

(マッドサイエンティストだ!)

大丈夫かなぁと思った。
色々な意味で。

「ところで、冷泉くん。今日は何しに海に来たの?」

「私は夏らしいことしようと思って来たんだけど」

「ヒマだったらさ、一緒にビーチバレーしないかね?」

自分の背後からビーチボールを取り出して見せた。

268冷泉咲『ザ・ケミカル・ブラザーズ』:2017/08/24(木) 20:19:55
>>267

「不思議だよね」

けらけら笑う少年の顔に危機感はない。
少なくとも彼にとってお姉さんがマッドなのかどうかは気にならないところらしい。

「お姉さんと遊ぼうって約束してきたんだけど」

「お姉さん寝坊で遅刻してるんだ」

「昨日寝られなかったからって、酷いよね」

「だから、うん。一緒にしよっか」

ビーチボールを見てそれに触れた。

269夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2017/08/24(木) 22:52:02
>>268

(昨日寝られなかった――夜遅くまで怪しい実験してたんだ!)

少年をよそに、勝手に危ない想像を膨らませる。
反面、そのお姉さんに会ってみたいとも思った。

「よーし、いっくぞー!」

「そりゃっ」

緩やかな放物線を描いてボールが宙を舞う。
夏のある午後のことだった。


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