したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

【場】『自由の場』 その1

1『自由の場』:2016/01/18(月) 01:47:01
特定の舞台を用意していない場スレです。
他のスレが埋まっている時など用。
町にありえそうな場所なら、どこでもお好きにどうぞ。

231小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/04(水) 23:36:46

年明けの早朝。
星見町郊外にある神社の境内を一人歩く。
辺りには多くの初詣客が見受けられる。

服装はいつも通りの喪服姿で、その上から黒いコートを羽織っていた。
しかし、洋装ではなく和装になっていて、帽子も被っていない。
どうやら、これが新年の装いのようだ。

一旦コートを脱ぎ、賽銭を投げ入れ、静かに鈴を鳴らす。
それから頭を下げ、手を合わせ、そっと目を閉じた。

  ――『治生さん』……。

  ――去年は大きな事故もなく、こうして無事に一年を終えることができました。

  ――今年も一年を何事もなく過ごし、あなたとの約束を守ることができるよう、どうか見守っていて下さい……。

神様ではなく、死に別れた『彼』に対して、心の中で祈りを捧げる。
それが済むと再び一礼し、参拝を終えてコートを羽織った。

やがて振り向き、境内の方を眺めながら、しばらく立ち止まる。
出店が出ていることもあって、とても賑やかだ。
もしかすると、この中のどこかに見知った顔もいるかもしれないという考えが、不意に頭を掠めた。

232ニュー・エクリプス:2017/01/05(木) 22:33:08
>>231


     ――カラン カランッ カランッ!!

チヤリチャリチャリチャリチャリンッッ!

 パン!! パン!!!

 「神様!今年もいっぱい友達を作るっス! 家族の健康無病息災も祈るっス!!
ニュー・エクリプスにも、いっぱいいっぱい部下を設けるっス!!
 あっ! オムライススターも皆がたくさーん奢ってくれると嬉しいっス!
ひえっチがもっとパワフルになるように祈るっス! 
天津飯の友が親友になるようにも祈るっス!!
 レイヴン・ゼロに、今度は完勝するようにも祈るっス!!!
伝説のメイドガイのサインも欲しいし、えーっと、それにそれに……」

 ポカッ!

ムーさん「欲張りすぎだろ( `ー´)ノ」
エッ子「出たっ! ムーさんの手刀っ。新年一発目だねっ!」
城生 乗「あははは…。まぁ、いっぱい今年の目標があるのって、素敵な事だよね」

 貴方の耳にも、聞こえてくるのは。つい、この間に聞き覚えがあるかも知れない
とても元気な少女の声。そして、三人の馴染みない高学年の女子含む姦しい声だ。

「んー、わかったっス!! じゃあ他の願い事は、また明日にでも祈るっス」

ムーさん「神様も、そんなに沢山お願いする子は無視すると思うぞ?」

「大丈夫っス!! 五円玉も沢山用意したっスからねっ!
 神様も、きっと聞いてくれるっス。
もし、聞き届けられないなら、自分で叶えるっス!! パワフルっス!!」

 さよか、と茶髪の長身の女の子は気怠い様子で返答する。
仲の良い先輩達と、可愛がられている後輩と言った所が。

そんな和気藹々とした集団は、貴方のほうに近づいてくる。声をかける前に
四人の中で一番背丈が低く、それでいて一番活発な娘は貴方を視認すると大声をあげた。

「あ――!! 小石川おねーさんっス!! 
明けましておめでとうっス!! 今年も一年宜しくお願いするっス!!」

  クルクルクル シュッ タン!! シャキーンッッ!!!

 厚着で、雪の中でも目立つオレンジのコートと、黒いマフラー。白いフワっとした
耳あてをした朝山は、貴方へと元気の良いポージングと共に新年の挨拶をする。

『こんにちはー』

貴方に駆け寄った朝山に続くように、高等部の女の子達も
新年あけましておめでとう御座いますと、社交辞令と共に
各三人とも自己紹介をしつつ挨拶をかわす。

233小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/05(木) 23:39:50
>>232

  「――明けましておめでとう、朝山さん」

図らずも見知った顔と出会い、思わず表情が綻ぶ。
こちらも年始の挨拶を返しながら、深々と頭を下げた。
この元気の良い小柄な少女は知っているが、他の三人とは初対面だ。
先程のやり取りから考えて、同じ学校に通う先輩達なのだろうと思った

  「明けましておめでとうございます――」

そこで言葉を切り、三人の顔を順番に見回す。
そうして間を置いたのち、挨拶を続ける。

  「はじめまして」

  「小石川文子という者です」

  「朝山さんとは以前にもお会いして、楽しくお話させていただきました」

  「もし町でお会いすることがあれば……その時はよろしくお願いしますね」

それが終わると、再び頭を下げて締めくくった。

234ニュー・エクリプス:2017/01/06(金) 19:05:45
>>233(レス遅れましてすみません)

「城生 乗(しろお のり)と言います。清月の高校二年です」ペコッ…

「佐々木 江南(ささき こうなん)でーす! 
みんなからは、エッ子 またはエッちゃんって呼ばれてまーす!」シュパ!

「……比嘉 海霧(ひが かいむ)です。愛称はムーさん
……本日のラッキーカラーはピンクのヒトデ」

名乗る貴方に対し、三人も所作は異なれど同様に名乗り返す。
 簡単に三人の特徴を挙げるなら、城生と言う娘は素朴で清楚な何処にでも
いる17程の女の子だが、何処か芯を秘めてるように見え。
 エッ子と名乗る女の子は、何処か朝山と同じく天真爛漫さが秘めており
ムーさん告げる、四人の中で長身の女の子は。何処か浮世離れした雰囲気と
共に、貴方を眠たげながらも少し観察するように見てたのが印象的だった。

  クルクルクル シュッ タン! シャキーン!!

「そして! 同じく朝山 佐生っス!!」

 ムーさん「言われんでも知ってる(-_-)」

「ふふんっ、ムーさんは甘いっス! こうやって何度も名乗ってこその
印象付けが、後に色んな場所で役立ってくるっス!! イッツ、コミュニティっス!」

エッ子「コミュニティだ――!ヾ(@⌒ー⌒@)ノ」

 エッ子と朝山は、両手を掲げて元気に新年の空に声をこだまさせる。

ムーさんは、その様子に肩を竦めて投げやりに相槌をうち。城生は二人の
ほのぼのした、やりとりを見つめ、気づいたように貴方へ声をかけた。

「あっ、えぇっと……小石川さんは、一人で初詣ですか?
他に付き添いが居なくて、時間も空いてましたら。私達と少し
ご一緒しませんか? 佐生ちゃんも、そのほうが嬉しいでしょうし」

 城生の提案に、エッ子と騒いでいた朝山もパッと貴方に振り向き
名案とばかりにコクコクと上下に激しく首を振って告げる。

 「あっ、それは良いパワフルな思いつきっス!
小石川おねーさんも一緒に、神社を見て周るっス! もしかしたら
他にも知り合いに出逢えるかも知れないっス!! みんなで新年の一日を
パワフルに過ごしてみるといいっス!!」

 シャキーンッ! と、貴方に一緒に時間を過ごす誘いをする……。

235小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/06(金) 23:15:30
>>234

  「よろしく、皆さん……」

それぞれ個性は違えど、互いに和気藹々とした四人の少女たち。
その光り輝くような光景に眩しさを感じて、思わず目を細める。
こうした場面を目の当たりにすると、つい昔のことを思い出してしまう。

  ――初詣……あなたと来たこともありましたね……。

  ――『治生さん』……。

四人のやり取りを見つめている穏やかな表情が、少しずつ変化する。
どこか遠くを眺めるような、やや寂しさを孕んだものに変わっていく。
頭の中では、記憶の断片が浮かんでは消えていった。
それらは『彼』と過ごした幸せな日々の思い出だった。
そして、自分はそれを失ってしまった。
だからこそ、彼女たちには、今の幸せを失わないでいて欲しいと思えた。

  「――え?あ……ごめんなさい。少しぼんやりしてしまって……」

その時、城生の声が耳に届いた。
彼女の呼び掛けによって、意識は再び現実に引き戻される。
一抹の寂しさを漂わせていた表情も、元に戻っていた。

  「ありがとう――」

  「お言葉に甘えて、ご一緒させていただきます」

思いがけず出された提案に、柔らかい微笑みで応じる。

  「もし、お邪魔でなかったら」

最後にそう付け加えて、くすりと笑った。

236ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 11:49:16
>>235(もし、ご迷惑でなければ。再度になりますが
ミッション時と同じく、暫し『治生』の設定をこちらでも使って良いですか?)

 新年の初詣。どの県 どの地域でも其の日であれば賑わない社のほうが
特殊な場所を除き、少ないであろう。

星見町の神社も、その多いほうに入っており。出店の並ぶ通路では
老若男女様々が冷やかしや、暖かい飲食を求め人の波が作られている。

 「はふっ!(うんっ!) つふふぁはふぁいっふ!!(ツユが美味いっス!!)」

 「ふっぱっ! ひふへふふぁひひふふぁふぁふほふぁへふぁいと
ふぁひぱらふぁひね!(やっぱ! 新年は七草がゆを食べないと始まらないね!)」

「もぅ……二人とも、お行儀悪いよぉ……」

 出店に出ていた星見粥、との銘で炊かれてた七草粥を
美味しそうに口一杯に、朝山とエッ子は頬張りつつ舌鼓を打って感想述べる。
それを、やんわりと諫める城生は少しばかり彼女等の母親のようだ。

 「……」

ムーさんは、彼女ら三人に関心向けるより。貴方のほうに視線を向けていた。
 とは言うものの、貴方を注視してるようでない。貴方の少し横の何もない筈の空間を
どうも、じっ……と静かに見つめていた。 
 
 「んぐんぐ…ごくんっ!
あっ!! 甘酒もあっちで配ってるっス!! よーし!!!
権三郎! さっそく新年の初めの甘酒を頂戴するっス――――!!」

『パウゥッ!』

 「えΣ 何時から、その柴犬居たのっ!?」

ちゃっかりと、朝山の愛犬も気づけば登場して。それに驚きつつ
城生は突っ込む。だが彼女等のパワフルさの勢いに、そのツッコミも雰囲気に呑まれ消える。
 
 人数は大所帯だ。
 更に騒がしさが貴方を包み込む。 自然と貴方の側に暖かい気配が昇っていく。

237小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/07(土) 20:17:15
>>236

  「ふふッ――」

朝山とエッ子を嗜める城生を後ろから見守りながら、思わず小さな笑い声が漏れる。
知らない人から見れば、その姿は付き添いの保護者のように映るかもしれない。
しかし、実際に支えてもらっているのは他でもない自分の方だ。
こうして彼女たちと共に過ごすことで、生きる力を分けてもらっているのだから。
そして、それは今だけに限った話ではない。
また彼女たちと顔を合わせることがあるとしたら、きっとその時もそうなのだろうと思う。

  ――少なくとも……今は一人じゃない……。

  ――そう思っていてもいいんですよね……。

  ――『治生さん』……。

その時、四人の中で一番背の高い少女が、こちらを見つめているらしいことに気が付いた。
しかし、こちらを見ているにしては、少し視線が外れている。
自分もその方向に目を向けてみるが、特に何かがあるということもない。

  「あの……何か……?」

不思議に思い、先程ムーさんと名乗っていた長身の少女に呼び掛ける。
思えば、出会った時から何かを観察しているような様子だった。
そういえば、周囲が賑やかなせいだろうか。
ふと、傍らに温かい気配を感じたような気がする。

238ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 20:49:48
>>237(有難うございます)

 貴方はムーさんに、虚空へ向ける視線の理由を尋ねる。

「いえ……大した事じゃ」

 質問に対し、歯切れ悪く彼女は貴方の隣に視線を固定したまま返答する。
その最中にも、朝山と権三郎、そしてエッ子の元気な声が乱入してきた。

「甘酒持ってきたっス! 全員の分があるっス!!
 みんなでパワフルに乾杯っス! 友達杯を組み交わすっス!」

『パウッ!』 

 「友達さかずきー! あっ、丁度あそこの場所空いてるよ!
座って飲も飲もーっ!」

 近くに設置していた組み立て式の机、そして五人分の椅子が目に付く。
ひゃっほぅ! と権三郎を抱えて朝山は椅子につく。エッ子も続けて勢いよく座り
固定されてないから、倒さないでねと軽く注意して城生も続けて座る。
 貴方も、それに倣うなら椅子に座る事になる。だが、一人だけ様子が異なった。

「……? どうしたの、ムーさん」

――海霧は座る事なく、立ったまま渡された甘酒を片手で弄りつつ。変わらず貴方へと
非礼を感じるかも知れないが其の方向を見ていた。何もない空間である小石川の隣を。

城生の不思議そうな問いかけにも返答する事なく、数秒眺めると共に小石川の
テーブルへと甘酒を持った手を伸ばし……。

        コトン     ザッ

 「――どうぞ」


 小石川 文子の隣席……『誰もいない椅子』を軽く引いて
その席の卓上に自分の甘酒を置いて、そして数歩下がった。

 「……ん、あ、はい。遠慮せずに一緒の席に座ってください 
立ってるほうが、どちらかと言えば自分、楽ですんで」

 奇妙な光景は続く。貴方の隣の椅子の後ろに本当に誰かが立ってるかのように
海霧ことムーさんは軽く手を振って、虚空に話しかけてる。

「??? 誰にムーさんは話しかけてるんっスか??」 『パウゥッ??』

 その光景に、当然ながら疑問符を顔中に付け、不思議そうに
ムーさんと貴方の隣の空間を交互に朝山と権三郎は見る。

 「くぅ〜! この一杯が堪らんですなぁーー」

エッ子は、図太いのか鈍感なのか。甘酒の味を堪能し海霧のやってる
奇妙な出来事を視野に入れてない。

 城生 乗だけは、意を得た顔つきになり。恐る恐ると言った調子で
パントマイムのように会話するムーさんへ声をかけた。

 「あの……ムーさん。     ――いるの?」

 その言葉に、ゆっくりと彼女は僅かに首を傾げ向き直り。

「……いるよ
 いま 座ったところ」

 そう   貴方の隣席を指した。

 …………不思議と、真冬であるに関わらず僅かながらも人工的なものでない
春の木漏れ日のような暖かい空気が掠めるような気がした。

239小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/07(土) 22:10:27
>>238

三人に倣い、自分も椅子に腰を下ろす。
しかし、海霧だけは座ろうとせず、まるで誰かがいるかのように話しかけている。
眼前で展開する奇妙な光景の意味を、最初は掴みかねていた。
やがて、心の中で少しずつ理解が生まれ始める。
それと共に瞳の奥に光が宿る。

  ――これは……『あの時』と同じ……?

  ――でも、そんなことが……。

  ――いえ……もしかしたら……。

馬鹿な考えかもしれないが、頭の中に浮かんだ考えを消すことができない。
そう思うのには理由があった。
以前、とある『工場』で似たような経験をした覚えがあったからだ。
その時の情景は未だに胸に焼き付いている。
あれは、自分にとって忘れることができない体験だった。

  「――海霧……さん……?」

確信に近い感覚を抱きかけていた時、海霧の言葉が耳に届いた。
その言葉を確かめるように、彼女に向き直る。
それから、ゆっくりと視線を動かし、誰もいない隣席を見つめる。

そこには――確かに『彼』の気配が感じられた。
優しく懐かしい、忘れえぬ感覚だった。

  「は――」

  「『治生さん』……」

心から愛し、もう会うことのできない相手の名前を、小さく呟いた。
身じろぎ一つすることもなく、空席のままになっている隣席を見つめ続ける。
大きく開かれた両の瞳から、一筋の涙が音もなく零れ落ちた――。

240ニュー・エクリプス:2017/01/07(土) 22:50:04
>>239

 貴方は、『治生』の名を紡ぐ。
その言葉を唱えると、不思議と目前に漂う、冬の冷気にそぐわぬ柔らかな
包まれるような空気は、漠然とながらも何処か水面を揺らす波紋のように揺れる気がした。

 厳かになる雰囲気に、朝山も城生も自然と口を噤む。
エッ子だけは、空気をあえて読んでるのか若しくは天性の才か、甘酒の味に没頭している。

海霧だけは、軽く目元の前髪を掻きつつ口を開いた。

「……多分、だけど。貴方に対して微笑んでる。ちょっと、困った感じで」

 「泣かせる気は、無かった。そんな事を、考えてる感じ……」

海霧の説明に対し、朝山は軽く手を挙げて聞く。

「待って欲しいっス! 話が見えてこないっス!
 ムーさんには、幽霊か何かが見えてるっスか? でも、私には目を
皿のようにしても、まーったく見えないっス!!」

 「……視る、見るって言うのとは違う、かな。私 別に霊能者とかじゃないし。
しいて言うのならば…………目の中に入り込んだ映像が脳の中で
輪郭を保っていて。そのイメージを何となく受け取ってる……って言うか」

詳しい説明は、面倒だし複雑だし、無理。と、ムーさんは話半ばで
自分のスピリチュアル方面の説明を放り投げた。そして
再度無人の席にぼんやりと焦点を合わせる。

 「……あぁ、うん」

「こう言ってる と思う。
     ――何処にも僕は行かないよ    ……て」

「ちゃんとしたメッセージとして、耳で聞いてる訳じゃなく
頭の中に伝わってくる全体的なイメージとして私が受け取った者だから
大まかな感じだけど……そう言ってる、と思う」

 海霧の言葉は、悲しき別離を体験した小石川への優しい虚言か。
もしかすれば、本当に『彼』が新年の呼び起こした一つの奇跡として
実体なく、スタンドの目を以てしても見えないかも知れないけれど
魂としての有り体で貴方の側に現れたのかも知れない。
 
 真実は何処にもない、だが この場で大切なのは
何が真実かを追求するでない、何を真実として創るか と言う事だから。

241小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/08(日) 00:19:53
>>240

これは真実なのだろうか。
それとも気遣いから出た優しい嘘かもしれない。
でも――そんなことはどちらでも良かった。
大事なのは自分が確かに『彼』の気配を感じ、それを『魂の触れ合い』だと受け止めていることだ。
たとえ儚い幻影だったとしても構わない。
少なくとも、自分にとっては、それは紛れもなく尊い真実なのだから――。

  「――……!」

何か言おうとするが、胸が詰って言葉が出てこない。
海霧から聞いたイメージが、記憶の中にある過去の思い出を呼び覚ます。
困ったような笑い顔――それは生前の彼がよく見せていた表情だった。
ふと、記憶の中にある彼の姿が、無人の席と重なる。
この時だけは、まるで本当に彼がそこにいてくれているような、そんな気がした。

  「『治生さん』……。ああ……。『治生さん』……!」

  「あなたが傍にいてくれる限り……私も何処にも行きません……!」

  「たとえ引き裂かれようとも、私達は……いつも――どんな時でも……一緒です……!」

祈りを捧げるような形で、胸の前で両手を握る。
指の間では、二つの指輪が小さな煌きを放っている。
それらは、『真実の愛』の証であり、『不滅の愛』の証でもあった。

242ニュー・エクリプス:2017/01/08(日) 20:11:59
>>241(よろしければ、この辺りで〆たいと思います)

 貴方は誓う。神にではなく、いま確かにある形なくも有り続けるものへ。

「……うん、うん」

 海霧は、小石川の挙動に対し反応するでもなく。虚空に対し
僅かに相槌を数度打つと共に、貴方に顔を向け。

 「――ありがとう
それ以外には、貴方に伝えたいものは、彼には無いみたいです。
 ……ん、えぇ、わかってます。
……あと、私達に。よろしく……って」

 バックでは、甘酒を飲み干して今の状況の軽い異変に気付いたエッ子を
意図的に城生が別の屋台へ誘い、場を外していた。

 朝山は、ムーさんの言葉に自分の胸を強めにトンっと叩いて宣言した。

「言われずともっス! 私は誰に命じられずとも小石川おねーさんの
友達を続けるっス!! これからも、よろしくして されての関係を続けるっスよ!」

 魂は不滅。聖書で述べられる言葉であるが、彼を貴方が想う限り
目に見えずとも、その想いは無為にはならない。
 目に見えるものだけが真実ではない。貴方は彼の言葉と共に生きる事を選択して
力『スタンド』を得た。そして、彼の想いを秘めて未来への道を踏みしめた。

 数々の其の選び取った道の途中で、貴方は光を得た……これは、きっとそう言う事なのだ。

「……ぁ」

 ムーさんは、小さく声を上げる。朝山がすかさず、どうしたっスか? と聞く。

「いなく、なったな……」

「えーっ? いま、何処にも行かないって告げたばっかじゃないっスか!!」

朝山のあげる声に、眉を顰め海霧は騒ぐ彼女を見下ろす。その目つきは僅かに険しい。

「そう言う訳にもいかないだろ。あっちの存在には、あちらなりのルールもあるんだ
……ただ、簡潔に何処かに行ったって言う表現で纏められるものじゃないし。
言う成れば、その空間一帯に、同調するような変化になったって時もあるし、完全に
何処から知らぬ場所に行ったって時も、私のチャンネルと合わないし。
……あぁ、たくっ 長々と言っても理解出来ないんだって 普通は」

 「私なら解るっス! 天才っスし!!」

「なら、要約しようか? 消えたけど、消えてない まる。以上」

 「ぜーんぜん解んないっス!!!」

貴方を蚊帳の外に、二人は軽く騒ぐ。
 そんな折に、エッ子と城生が屋台で他に買ってきたのだろう。
湯気の立つ飲み物を持ってきたのを二人は見て、朝山は彼女らに近づき口論は止まる。

ムーさんは、三人が離れてる中で良い機会とばかりに貴方へ告げた。

 「……彼は、貴方の傍にいます」

「永く続くかは、私には把握出来ませんが
……ただ、一つだけ確かな事があります。
  ――彼が望んでいる事を、貴方が今も実現し続けている」

 彼女は、その言葉を最後に四人の輪へ収まると
何時もの気怠く、人を余り相容れない空気を保って出店の変わった食べ物を
咀嚼して外部との交流を軽くシャットアウトする。

 この、新年が過ぎても朝山は変わる事なく貴方を見かければ
子犬のように躍り、貴方との付き合いを変わらず続ける。
 城生、佐々木、海霧も同じく同様に貴方を年の離れた友として
出逢う機会あれば接するだろう。

 その幾多の邂逅の中で、光は舞う。きっと、目に見えずとも 光は。

243小石川文子『スーサイド・ライフ』:2017/01/09(月) 09:16:54
>>242

     スッ

海霧の言葉を聴き、自身の指にはまった二つの指輪に視線を落とす。
『真実の愛』とは、滅びることのない『不滅の愛』――自分自身は、そう信じている。
たとえ『死』によって分かたれたとしても、決して打ち消されることのない『永遠の絆』だと。

『彼』は、私に掛け替えのない愛を与えてくれた。
そして、私も『彼』に無償の愛を捧げた。
だからこそ、私は『彼』の想いに報いたい。

『彼』の最後の望み――『彼』の分まで生き続けること。
甘美な死の誘惑が耳元で囁こうとも、それに屈する訳にはいかない。
それが『彼』に対して自分のできる『真実の愛』の証明になるのだから。

  「ありがとう、海霧さん、朝山さん。ありがとう、皆さん……」

顔を上げて、感謝の言葉と共に、四人に微笑みかける。
その後、元気に前を歩く彼女たちに続く。
ふと一人立ち止まり、空を仰ぎ見た。
頭上には、雲一つない真冬の空が広がっている。
軽く深呼吸すると、凛と澄み切った冷たい空気が、心と体に染み渡っていく。
とても安らかで清々しい気分だった。

  ――あなたは今も近くにいてくれている。

  ――だから、私は一人じゃない。

  ――そう思っていてもいいんですね、『治生さん』。

その時、誰かの視線を感じ、後ろを振り向く。
しかし、目を向けた先には誰もいない。
その無人の空間を見て、何かを悟ったかのように、柔らかい微笑みを浮かべた。
やがて正面に向き直り、再び四人に合流する。
その背中に、微かではあるが、確かな光を感じながら――。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板