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本スレに書き込めない職人のための代理投稿依頼スレ

1 魔法少女リリカル名無し :2009/01/08(木) 00:01:53 ID:Qx6d1OZc
「書き込めないの!?これ、書き込めないの!?ねぇ!本スレ!本スレ書き込めない!?」
「あぁ、書き込めないよ」
「本当!?OCN規制なの!?ODNじゃない!?」
「あぁ、OCNだから書き込めないよ」
「そうかぁ!僕OCNだから!OCNだからすぐ規制されるから!」
「そうだね。規制されるね」



捻りが無いとか言うな

2 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:02:37 ID:Qx6d1OZc
ドガン



無機質な金属へと変化した己の腕を確認して慌てて鉄塔内部へと腕を引き戻す。

「まんまと罠にはまったというわけか……」

あくまでも表情を崩さずにザフィーラはこの鉄塔から出る方法を思案することにした。
まず、最初に思いついたのは先程の三人達以外は出たら金属化するという可能性。
これは即座に否定された。
万が一無関係な人間が巻き込まれたらどうする気だったのか?
それに、その前提だった場合はわざわざトリモチで足止めする必要は無い。

「ならば……」

次に考えたのは、最後の一人は出れないという条件だった。
ザフィーラはこの仮説と、先程の三人の動きを照らし合わせてみる。
矛盾は無い。だが、確証も持てないので仲間を使って実験する気も起こらない。
仲間に余計な心配の種を増やして戦闘に集中できなくさせるのも悪いので念話で伝えたりもしない。
八方塞となり仕方がないのでザフィーラは考えるのを止め、魔力の回復に努めることにした。


===


結論から言おう。ザフィーラの推測通り、この鉄塔から外界に出るための条件は他に人が鉄塔内にいることだ。
仗助はトラサルディーから噴上とミキタカに電話をし、鉄塔へと行ってもらい本来の主、鋼田一豊大にコッソリと話をつけたわけだ。
ちなみに一人で十分のはずの鉄塔に、自身の体をカモフラージュできるミキタカの他に噴上裕也まで入れた理由は
ミキタカと共に本体の場所を隠して安全にハイウェイ・スターを操作させるためだった。
スタンド使いの存在を探知できるとはいっても、戦闘中にまでは把握できないだろう。
仗助の読みは見事に的中し、二人の存在は最後の最後まで把握されずに終わったのだった。


===



「で、仗助。この腕の持ち主も追跡するんだろ?」
「あぁ、おそらくこれが無くなると由花子みたいにスタンドを使えなくなるみてぇだからよ〜。
 早いこと何とかしてくれねぇとヤベェ。こういうときほどお前のスタンドが頼りになるときはねぇよ」
「仗助さん。わたしにも何かできることはありませんか?」
「ミキタカ。悪いがお前は康一と億泰のサポートに行ってくれ。
 ハイウェイ・スターが追跡に回って戦力が落ちるのは明らかだからな」

鉄塔から少し離れた場所に仗助は腰を下ろして、今後の役割分担を決める。
息が荒くなりながらも仗助の判断力は依然健在。
自分の腹から生えている腕の衣服の一部をクレイジー・Dの腕力で引きちぎり布の欠片を得る。
普通の衣服とは明らかに異なる丈夫さを持った素材に戸惑いつつも、それを噴上の手に渡した。
噴上は即座に、布切れを鼻に当てて対象者の“臭い”を覚える。
猟犬以上の嗅覚を持った彼にとって、これだけで相手の存在を捉えたも同然。
シグナム、ヴィータとの戦闘中だったハイウェイ・スターを自分の下へとワープさせて新しい対象を探し始める。
今、足跡の形をしたハンターと変身能力を持った宇宙人がそれぞれの目的地へと走り出した。



====

3 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:03:25 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

4 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:04:19 ID:Qx6d1OZc
「いたたたたた、痛いです、本当に痛いですって」

異次元に通じている魔法陣に腕を突っ込みながら、苦痛に顔を歪める女性。
私達は彼女に見覚えがある、いや、彼女の着ている草色の服に見覚えがある。
そう、この金髪で温厚そうな顔をした女性こそが現在仗助を苦しめている犯人、シャマルであった。
鉄塔から離れた橋げたの下、サポート専門の彼女は遠くから戦線にいる仲間を支援していたのだ。
だが、右腕が死ぬほど痛いこと以外になんら問題の無い彼女にもついに年貢の納め時が来た。

クンクンという何かが臭いを嗅いでいるような音。
振り返るシャマル。
無数に存在する黒い“足跡”。

目の前に広がるホラー映画化顔負けの映像に込み上げる悲鳴を抑えながら、残った左手で防壁を張る。
ほぼ同時に飛びついてきた足跡達がシャマルの魔法陣へと貼りついていく。
この場合、見えるのと見えないのではどちらのほうが恐ろしいのだろうか?
少なくとも、現在のシャマルの心の中では得体の知れないものへの恐怖が芽生え始めている。
何時回りこんでくるのか? あれに襲われたらどうするのか?
グッと来る恐怖を仲間への思いが抑える。
しかし、終焉は思ったよりも早く訪れた。
足跡の数枚が偶然障壁の端からシャマルの元へと辿り着くことに成功したのだ。
すると、他の足跡たちも同じルートを辿って障壁を回避するようになった。

「ひいっ!」

目に涙を浮かべながらも、シャマルは手で必死に振り払おうとする。
だが、その程度で引いてくれるほどハイウェイ・スターは生ぬるい能力ではない。
逆にシャマルの左腕にビッシリと食い込んでいき……

「ひぐっ、ああああああああああああああ」

明らかに体からエネルギーが吸収されたのが分かった。
抜けていく左手の力。
その間にも、足跡たちはシャマルの脚、腿、腹、胸、肩、顔を埋め尽くす勢いで付着していく。
一方的な蹂躙に怯えながらシャマルはついに仗助を苦しめていた魔法“旅の鏡”を解除して地面に倒れ伏す。
そうしている間にもじわじわと吸収されていく体力。
妙に気持ち悪い足跡に苦しめられながらも、シャマルはある魔法を使用した。
湿った地面に展開される緑色の魔法陣。
精一杯の力を込めて魔力を込めていくシャマル。
そして、魔法陣は激しく輝いた後に消えた。使用者であるシャマルと共に。

「はぁっ……ここまで来れば……」

無我夢中だったせいでどこに転送されたのかは分からない。
ただ、無事に逃げ切れたという安堵感のみが彼女の心中を暖かく満たしていた。
荒れた息を整えつつ、自身の張った結界に異常が無いか確認する。

「よかった……壊れてたりはしなかったんですね」

二度目の安堵。
そして、彼女は再び仲間の支援をするために“旅の鏡”を発動させようとして………

5 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:05:29 ID:Qx6d1OZc
ズキュン
     
    ズキュン

再びやってきた何かが体に食い込む感覚と、体内のエネルギーが吸い取られていく感触。
無作為にワープしたのに何故ここまで追跡できるのだろうか?
視覚? 聴覚? その二つでは絶対にない。
ならば魔力の追跡? しかし、バリアジャケットなどからは個人が特定できる魔力が出るはず無い。

「つまり……嗅覚ってわけですか」

そうと考えれば全て説明がつく。
が、原因が分かったところですぐに対応できるわけではない。
とは言ったものの分かった事が一つだけあった。
よくよく見れば、さっきまでいた橋は目の前にあるとまでは言わないが一応視界に入っている。
けれども足跡が彼女を見つけるまでには多少のタイムラグがあった。
つまり、鋭い嗅覚にも限界はありある程度離れれば探知できなくなるであるだろうということ。
自分たちの本拠地である東京に帰れば“これ”の追跡は止まる。
ヴォルケンリッターの参謀として考えれば、この状況下で取るべき行動は撤退。
自身だけならともかく、仲間の臭いまで特定されたらマズイ。

『皆さん聞こえますか……? マズイ相手が出てきました。
 詳細は後に伝えますが、各自いつもの場所に撤退してください』

念話でメンバーの三人へと撤退の意思を伝える。

『了解した、隙を作って引くとしよう』
『分かったぜシャマル』

シグナム、ヴィータからはすぐに肯定の返事が返ってきた。
しかし、ザフィーラの返事は意外な物であった。

『すまない……一旦こちらまできてくれないか?』
『……分かりました』

不吉な予感がする。
自分からゆっくりと養分が吸い取られていく中、二度目の転移魔法を行使した。
光に覆われていく自分。一瞬飛びかけた意識。
力を振り絞り完全に発動させてシャマルの姿は――――消えた。

6 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:06:32 ID:Qx6d1OZc
「すまん…」
「ええ、悪いんですが敵の追跡を受けているんで手早く終わらせてください」
「要点だけ言おう。バリアジャケットを解除して民間人の振りをしてくれ……後、悲鳴を上げてくれないか? ありったけの声で」
「分かりました」

シャマルの腕を掴んで、自身は鉄塔の外へと出て行くザフィーラ。
彼の予想通り、彼の肉体が鉄塔の一部と化すことなく、無事に脱出する事ができた。
そして彼女は大きく息を吸い込んで肺に息を溜め……。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」

辺りに響き渡る悲鳴。
急なことだったのにも関わらず彼女の演技は鬼気迫るものだった。
当然、少ししか離れていない仗助にもその声は聞こえていたわけで。

「さぁ、民間人に手を出されたくなくばこちらまで来い!」

ザフィーラの脅迫の信憑性を大きく上げることとなった。
実際は、張られた結界のせいでスタンド使いと魔法使い以外は外に締め出されたのだが彼がその事を知る由はない。
本当に一般の女性が人質にとられたのだと思ってふらつく体を引きずりながら歩いていく。
怒りの炎を瞳に宿しながら。

「よぉ。テメェがここまでゲス野郎だったら鉄塔の一部にしちまった方が世の中のためだったかもしれねぇな」
「……お前からの評価などどうでもいい。貴様がここへ来なくてはこの女が無機質な塊になるぞ?」

予想はしていた無関係の人が死ぬという最悪な事態はまのがれた。
それでも怒りが湧いてきてたまらない。
クレイジー・Dの五指が固められて、力の入れすぎにより震えだす。
しかし、この状況下ではどうやっても倒すことはできない。
無意識の内に下唇を噛み締めていた。
歯によって避けた皮膚から流れ出す血液。
そして仗助は鉄塔内へと歩みだし、見えない檻の中へと入り込んだ。
辛そうな表情にシャマルの心を罪悪感が覆うが仕方がない。

(ごめんなさい……はやてちゃんの為にここで立ち止まっててはいけないの)

心中で謝罪しつつ、シャマルは鉄塔から外に出る。
同時に現れたハイウェイ・スター。
しかし、既に転送魔法の準備はできていた。
足跡が飛び掛ってくるも、そのときは既に二人の存在はこの町から消えていた。
突如消え去った二人の姿に鉄塔内で一人呆然とする仗助。
しばらくして気が付いた。二人はグルであったのだと。
戦闘を終えた億泰と康一が傷だらけで駆け寄ってくる、噴上裕也も気が付けば鉄塔の傍に立っていた。

「俺達の……負けだな」

悔しそうに仗助は呟く。
小さいながらもその場全員に聞こえたであろう声は地面に染み込んでいった。


====

「一分一秒がおしいというのに、一ページ分すら収集できなかった……私達の完敗だ」

何処かのビルの上、苦々しげな表情でシグナムは敗北を口にした。
その声は雲ひとつ無い星空へと吸い込まれていく―――――。


====

7 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:07:19 ID:Qx6d1OZc
〜おまけ〜

本編ではシャマル追跡の際にどこかへ消えた噴上裕也。
一体彼は追跡中に何をやっていたのだろうか? 今から見せるのは彼の孤独な戦いである。


「はぁっ……はぁっ……」

規則的な呼吸をしながら人っ子一人いないアスファルト舗装の道を走る噴上裕也。
こういうとまるでランニングをしているように感じるだろう。
だが、彼の走りは明らかに全力疾走であった。
何故、皆が戦ってる最中に彼は一人走っているのだろうか?
それは彼の能力と大きく密接している。

彼の能力、ハイウェイ・スターには相手の養分を吸収するという強力無比な能力があるが、これには大きな欠陥がある。
以前は岸辺露伴の養分を一瞬にしてほぼ吸い尽くせたのだが、今回はやたらと時間がかかったこともこれに関係している。
ハイウェイ・スターの弱点。それは、自分が健康なときはエネルギーを吸収できないという事にある。
つまり、仗助たちと戦った頃は意識不明の重態だったので、非常に強力な吸引力を見せたが健康になった今では全く効果がない。
だがら噴上は自身の体からエネルギーを奪うために全力疾走を続けているのだ。

頑張れ噴上裕也! 勝利の為にあの星へと走れ!

8 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:11:58 ID:Qx6d1OZc
投下完了です、代理投下をしてくださり本当にありがとうございます

さて、康一と億泰のバトルシーンを完全に省きましたがこれは仕様です
入れるか悩んだんですが、色々とネタが浮かびすぎたりなんだりでこれだけやると今後やばいだろうとなって中止しました
二人の戦闘を楽しみにしていた方には申し訳ありません。
キングクリムゾンされた分もこの二人には頑張ってもらいます。

9 ◆FInR8quS0Y :2009/01/08(木) 00:14:46 ID:Qx6d1OZc
あっ、言い忘れてましたが
スレの容量に気がつかずに前スレとこのスレの二つをまたいで投下してしまい申し訳ありまセンでした

10 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:39:33 ID:A8vW5jpo

お猿さんを喰らいました 以下の内容をお願いします ORZ


「願望を叶える石か、まったくつまらないほどに優れている」

 かつて何度もフェイトはジュエルシードと対峙していた。
 だが、一度としてこれほど圧倒的な差があっただろうか?
 否、否である。
 感じたことがあるとしたら、彼女の母であるプレシア・テスタロッサが次元の壁を破砕し、開放しようとした時のみ。

「もっとも効率よく、そしてもっとも暴走しやすく使うには人の身が使うということだな」

 グンッとスカリエッティは手を上げて。

「――“離れよ”」

 フェイトは離れた。
 己の意思とは無関係に――吹き飛んだ。
 撥ね飛ばされたように吹き飛んで、次の瞬間スカリエッティが手を閃かせた。
 両手の指、合わせて十本。
 魔力のワイヤーがバインド状に彼女を縛り上げる。

「くぅっ!?」

 魔力を放出し、さらにバインドブレイクの術式を脳内で構築開始するが、身体に食い込んだバインドは全く弱まらない。
 彼女の乳房を締め上げて、腰を内臓を圧迫せんと強く拘束し、その太腿は螺旋を描くように入念にワイヤーが張っていた。
 淫らな妖艶さすらも感じれる光景。
 美しい女性を捕らえたその扇情的な光景に、スカリエッティは軽く目を向けながら、パチンと胸元で輝き続ける紅い宝玉を収めてブローチの蓋を閉じて。

「……やれやれ、まだ制御するには危険のようだな。危うく、凄いことになるところだった」

「!?」

 ボソリと呟いたスカリエッティの言葉に、ゾクリとフェイトの背筋に怖気が走った。

「さて、どうするかね。まだ足掻くかね?」

「っ、私は決して諦めない!!」

 フェイトは諦めなかった。
 バインドを振り払おうと努力しながらも、ある準備を開始する。
 最後の切り札を切る覚悟を決めた。
 しかし。

「ふむ、一つ言っておくが君の行なおうとする行為を薦めないぞ」

「?」

「調査は進んでいる。どうせライオット・フォームと言うフルドライブモードがあるんだろう」

「!?」

 看破された。
 フェイトは僅かに表情が揺らぐのを自覚し、汗が額に噴き出す。

11 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:40:15 ID:A8vW5jpo
 
「一つ言っておこう。私は一発で倒れる自信がある」

「……え?」

「そのライオットフォームとやらならば多分私は一発で失神するだろう。一本でも精一杯なのに、二本も繰り出されたらそれは防げないからな」

 スカリエッティは淡々と告げて。

「ただし――君が脱出したとき、大きな犠牲を払うと思いたまえ」

 そう告げて出されたのは何の変哲も無いボタンだった。

「そ、それは?」

「なに、ただのボタンさ」

 カチッと押されると同時にモニターにフェイトの顔と全身が映り出す。
 どうやらフロア内に仕込んでいたらしいカメラからの画像。
 何の意味があるのだ? とフェイトが首を捻った瞬間だった。

「ソニックフォームとやらを使ってみるがいい。ただし」

 スカリエッティは笑って。



「脱げるぞ?」



「……え?」

「バリアジャケットの再構成はこのAMF濃度だと不可能だろう。つまり、スッパだ、全裸だ、破廉恥フォームを通り越して、ヘブン状態だ!」

 断言した。
 スカリエッティは酷く楽しそうな笑みを浮かべて。

「さあ脱出してみるがいい! その場合、ネットを通じて君の全裸姿がミッドチルダ及び次元世界中にお披露目されるのだがね!!」

「えええー!!!?」

 フェイトが絶叫にも似た悲鳴を上げる。
 そんなまさかだった。

「う、嘘。え? でもハッタリだよね。幾らなんでもAMFでバリアジャケットの構築阻害なんて、いやでも、さっきのザンバーが……」

「さて、私は用事があるので失礼するよ?」

「え? ま、まってー!!」

 てってけってーとスカリエッティは白衣の埃を払うと、歩き出した。
 向かう先はモニターの奥に隠されていた転送ポット。
 このままだと逃げられる。
 だがしかし、フェイトは迷っていた。

12 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:40:59 ID:A8vW5jpo
 
「ぜ、全裸……恥女認定? いや、でも……」

 うーん、うーんと迷う。
 己の精神的生命の継続を選択するべきか、それとも背負った願いを叶えるべきか。
 迷い、迷いながらも。

「では、さらだ!」

 転送ポットに入ろうとするスカリエッティを見て。
 彼女は覚悟を決めた。
 覚悟完了。
 さようなら、私の人生と涙を流しながら。

「し、真・ソニックフォーム!!」

 フェイトは叫んだ。
 バリアジャケットの大半を衝撃波に変換し、バインドを振り払う。
 同時に新しいバリアジャケットを構築。
 電光を全身に纏いながら、フェイトは涙を流して音速を超えて疾走し――スカリエッティの背に迫った時だった。

「どりゃー!!!」

 壁をぶち抜いて、それが飛び出したのは。

「え?」

 それは蒼い髪をした女性だった。
 両手に彼女の親友の部下がつけているのと同じデバイス――リボルバーナックルを嵌めて、怒声を張り上げて壁を貫通してきた。
 如何なる威力か。
 如何なる実力か。

「母親を舐めるなー!!」

 そう叫ぶ女性が突き破った壁の勢いのままに飛び出して。

「あ」

「え?」

「おや」

 飛び出したフェイトに、勢いよく撥ねられた。
 前方不注意だった。
 パンを咥えて、てってってどしーん! という出会いから始まる漫画チックな状態とはまるで違って、二人共大きく撥ね飛ばされる。
 片方は音速を超える物体に激突されて、もう片方は速度を追求して防御力の欠けた状態だったから。

「……結果オーライ!」

 指を立てて、スカリエッティは転送ポットに逃げ込んだ。

「あ、いたたた。何よ一体」

 その数分後、むくりと起き上がったのは陸士ジャケットを羽織った女性だった。

「い、いたたた。なんなの?」

 フェイトも起き上がる。
 パチリと目が合った。

13 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:41:31 ID:A8vW5jpo
 
「あら? 管理局の魔導師かしら?」

「え? えっと、貴方は。あ、スカリエッティ!」

「もう逃げられたわよ」

 はぁっと女性がため息を吐いた。

「所属教えてくれる? 状況がさっぱりだから」

「あ、えっと、機動六課のフェイト・T・ハラオウン執務官です」

「機動六課? 名前は聞いたことは無いけど、ミッドチルダUCATのクイント・ナカジマです」

「あ、そうなんで……え?」

 フェイトは一瞬耳を疑った。
 ファミリーネームに聞き覚えがあったからだ。
 そして、よく見れば顔にも見覚えがある。正確にはそれと良く似た顔をみたことがあった。
 誰が知ろうか。
 それは八年前、ジェイル・スカリエッティにカーボンフリーズされていたクイント・ナカジマ。
 それがつい先ほどそれを打ち砕いて、脱出してということをフェイトは知らなかった。

「それにしても、ずいぶんと破廉恥なバリアジャケットね? 流行っているの?」

「え? あ、ああ!」

 全裸!
 まっぱ!
 ヘブン状態!
 その言葉を思い出して、フェイトが慌てて胸を両手で隠した。
 のだが、そこに衣服の感触があった。

「あれ?」

 肩のむき出しになったバリアジャケット、太腿を露出させ、涼しげでもある真・ソニックフォームのバリアジャケットが其処にあった。
 裸などではなかった。

14 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:42:31 ID:A8vW5jpo
 
「だ、騙された」

 ガクッとフェイトが肩を落とした。
 そんな彼女に、クイントは肩を叩いて。

「まあ気を落とさないで。機会はまたあるから」

「は、はい」

 スルリ。
 フェイトが頷いた瞬間、変な音がした。

「え?」

 フェイトが身体を見下ろす。
 ボロボロとバリアジャケットが剥がれ落ちて――肌色が目に飛び込んできた。涼しすぎるほどに。
 そして、モニターに沢山の肌色が踊って。


「いやぁあああああああああああああ!!!!」


 フェイトの絶叫が響き渡った。

 ちなみに、後日フェイトが泣きながらネットを確認したが、一切流れていなかった。

 どうやらブラフだったらしい。





「っ、フェイトの声?」

「急ぎましょう、ヴェロッサ!」

 ずたぼろになりながらも、散らばったガジェットの群れの中を二人の男女が歩いていた。
 スーツは残骸もなく、露出した肩から血を流したヴェロッサとヘソも丸出しに、乳房も切れ込みが入ったかのようにずたぼろのシャッハが支えている。

「ああ」

 息するのも辛いように歩き出しながら、不意にヴェロッサは気付いた。
 地面が揺れている。

「震動?」

「しかも、勢いが強まって……まずい崩落するぞ!?」

 二人が慌てて駆け出そうとした時だった。
 奥から一つの人影が飛び出した。
 正確には一人の女性を背負った女性が。

「っ! フェイトさん! と、誰?」

「いいから早く逃げるわよ!」

 二人にクイントが叫ぶ。
 背中で、「ぅう、お嫁にいけないよぉ、クロノもらってぇ」と呟くフェイトがバリアジャケットを再構築した姿で俯いていた。

15 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:43:02 ID:A8vW5jpo
 
「しかし、どこに!?」

「引き返すにしても道が――」

 その時だった。
 周囲の扉を蹴破り、現れた人影があった。

「こっちだ!」

「き、君たちは!?」

 それは陸士たちだった。
 しかも、途中で行方不明になっていた面子ばかり。

「裏口ルートでなんとかやってきたんだ! それよりも逃げるぞ!!」

『応!!』

 巨大なポットを抱えた陸士たちが頷く。
 四人はそれに続いて走り出した。

 震動は限界まで達しようとしていた。






「さあ始まるぞ」

 嗤う、嗤う、男が一人。

「始めましょう、歴史の改革を」

 語る、語る、女が一人。

「聖王の揺り篭を、起動する!」

 地響きを上げて。

 大地を震撼させて。

 今日この日、世界が震えた。

 白き大いなる翼の復活に。


 さあ、物語を始めよう。

 恐ろしい物語を。

 そのクライマックスを。




 スカリエッティ拿捕大作戦 続行

 聖王の揺り篭攻略戦に移行する   ……世界の命運を頼んだぞ

16 リリカル! 夢境学園 ◆XQrKF.nCNM :2009/01/10(土) 21:44:40 ID:A8vW5jpo
投下完了です。
途中でサル規制にかかりました。本当にすみませんでした ORZ
次回から聖王の揺り篭戦になります。
ミッドチルダUCAT、クライマックス! どうぞお楽しみ下さい。
熱さも燃えも萌えもあります、頑張ります!
代理投下の方、ありがとうございましたー!


以上の代理投下をお願いします。

17 魔法少女リリカル名無し :2009/01/10(土) 21:59:13 ID:XM2dG1U6
<<代理投下終了。災難だったな…。困ったらまたいつでも行ってくれ>>

18 R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2009/01/12(月) 21:51:34 ID:x7pCFNjk
「リンディ、上!」

アルフの警告。
咄嗟に障壁を展開すると、再度頭上から襲い掛かった砲撃が褐色と緑の壁に弾かれる。
障壁越しに見上げれば、滞空するオートスフィアの群れが視界へと飛び込んだ。
それらは散発的にリニアレールの路線上へと配置され、車両の通過に合わせて砲撃を放つ。
どうやら先程の焔は、あのオートスフィア群の一部を狙ったものらしい。
次々と襲い来る砲撃に、リンディは焦燥を押し隠しつつ鋭く叫んだ。

「アルフ、暫く時間を稼いで!」
「了解!」

結界を解除、ディストーション・フィールドの発動準備に入る。
その作業すらも、膨大な処理能力を誇るユーノと本局データバンクからのバックアップにより、僅か5秒程で発動段階へと到った。
すぐさま、アルフへと声を飛ばす。

「アルフ!」
「はいよ!」

アルフの展開していた障壁が消失すると同時、入れ替わる様に車両上部へと空間歪曲が出現。
可視化した揺らぎが降り注ぐ砲撃を呑み込み、その全てを片端から掻き消してゆく。
高ランク魔導師であるリンディが、更に魔力供給を受けた上で展開したフィールドだ。
新型とはいえオートスフィア程度の砲撃では、万が一にもその防御を抜く事はできない。

その間に周囲では、後方より接近するJF704式に対する迎撃が開始されていた。
直射弾と集束砲撃が薄青色の機体へと襲い掛かり、高出力AMFによってその威力を減じられながらも機体表面を削りゆく。
だが、ヘリは怯まない。
回避行動を取るどころか、更に速度を上げてリニアへと接近してくる。
敵機は飽くまで輸送ヘリであり、AMF以外にこれといった武装を施されてはいない筈だが、しかし危険な事には変わりがない。

攻撃がより一層に激しさを増し、更にシグナムの炎と局員に対してのみ可視化されたヴェロッサの「無限の猟犬」がヘリへと襲い掛かる。
しかし、いずれにしてもAMFの効果範囲内へ侵入すると同時に減衰を始め、決定的な損傷を与えるには至らない。
幾ら高出力とはいえ、余りに異常に過ぎる魔力結合阻害効果。
どうやら汚染によって、安全回路が完全に破壊されているらしい。
今やあのJF704式は、次の瞬間には魔力暴走による爆発を起こすとも知れない、制御できない爆弾の様な存在なのだ。
局員の間に、焦燥を含んだ念話が奔る。

『駄目だ、魔力弾が減衰してしまう! 何か構造的弱点は無いのか!?』
『ヴァイス陸曹、何か知りませんか!?』
『テール・ブーム側面の排気口を破壊できれば、トルクを相殺できずに墜落する筈なんだが・・・誘導操作弾じゃAMF効果域を突破できないだろうしな・・・』
『不味いわ、フィールドが!』

念話が交わされる間にもリニアとヘリの距離は縮み、徐々にAMFの効果がリンディ達にも影響を及ぼし始めた。
そしてあろう事か、ディストーション・フィールドまでもが綻び始める。
空間歪曲の範囲が、明らかに狭まり始めたのだ。
このままでは未だ続くオートスフィア群からの砲撃を、直接的に受ける事となってしまう。
だがそんな中、クアットロからの通信が入った。

『ウーノ姉様、そちらで車両のコントロールを掌握できます?』
『・・・20秒程あれば』
『では、お願いしますね。それと皆さん、何かに掴まっていた方が宜しくてよ?』

その会話の内容に、リンディはスカリエッティ等が座していた方向を見やる。
彼女の視線の先では、ウーノが壁際のコンソール前へと佇んでいた。
信じ難い速さでキーウィンドウ上に踊る指を見つめていると、今度はスカリエッティからの警告が意識へと飛び込む。

『さて、急停車するぞ。そろそろ準備した方が良いのでは?』

19 R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2009/01/12(月) 21:53:03 ID:x7pCFNjk
その瞬間、リンディはフェイトを庇う様にその上へと覆い被さった。
視線だけは頭上へと向けたまま、同じくフェイトへと寄り添ったアルフが再度、障壁を展開する様を視界へと捉える。
直後、鼓膜を劈く金属音と共に車両へと急制動が掛かり、同時に30を超えるデバイスが頭上の空間へと向けられた。

そして、車両が急減速した結果、ヘリは一瞬にしてその上方へと躍り出る。
AMFによる重圧が急激に増すと同時、ヘリの至近距離に展開していたディストーション・フィールドは霧散し、アルフの結界が綻び始めた。
防御手段を奪われれば、後は砲撃の餌食となる以外に道は無い。

だが次の瞬間、轟音と共に頭上のヘリが「潰れた」。
砕け散る緑光の壁、飛び散る魔力光の残滓。
メインローターの一部が捻じ曲がり、既に圧壊していたコックピットが更に小さく押し潰される。
歪んだ機体は其処彼処から大小の破片を零し、亀裂と火花、赤々とした炎が一瞬にして表層を覆い尽くす。
金属が圧壊する巨大な異音が容赦なく鼓膜を叩き、飛び散る無数の破片がAMFにより減衰した障壁へと殺到した。

「まだ・・・!」

だというのに、ヘリはまだ飛んでいた。
減衰していたとはいえ、リニア進路上の空中に展開されたユーノの障壁、強固さでは並ぶ物の無いそれへと高速で突入し、機体各所より炎を噴き上げつつも未だ飛行している。
フレームが歪み十分な安定性すら確保できない状態となっても、メインローターとノーター・システムはその役目を放棄してはいなかった。
しかし、機内のAMFシステムはそうではなかったらしい。
元々が繊細な魔法機器である上に、耐久性を考慮されていない試作品だったのか、フレームの歪みに耐え切れず損壊した様だ。
全身を圧迫していたAMFの重圧が消失し、同時に鋭い念話が局員の間へと奔る。

『撃て!』

連射される直射弾、簡易砲撃。
シグナムの炎が機体を貫き、ヴェロッサの猟犬がテール・ブームを喰い千切る。
メインローターのトルクにより回転を始める機体へと更に大量の直射弾が撃ち込まれ、爆音と共にハッチが弾け飛んだ。
業火を噴きつつ、機体の高度が下がる。
そして、ユーノの警告。

『伏せて!』

視界へと飛び込んだユーノの障壁は、これまでとは異なる形で展開していた。
地表に対して垂直ではなく、水平に展開されていたのだ。
ヘリは回避する事もできずに障壁へと突入、鋼を引き裂く異音と共に機体が上下に分断される。
切断された機体下部は車両を掠めて路線へと接触、高架橋を破壊して市街へと落下した。
残る機体上部は回転運動の激しさを増し、更に路線に沿って建ち並ぶビルの壁面へと接触して大量のガラス片を周囲へと撒き散らす。

『やった!』

誰かが、念話で叫んだ。
ヘリは制御を失い、更に大きく速度を落として車両から離れ始めている。
あの様子からして、数秒後にでも墜落するだろう。
リンディも、そう信じて疑わなかった。
数瞬後、機体切断面より現れたそれを見るまでは。

「な・・・」

反応する間も無かった。
切断面から出現した、巨大な1本の触手。
有機的柔軟さと骨格の強固さを併せ持った赤黒い外観のそれは、車両とヘリの間に存在する40m程の距離を一瞬にして詰め、先端が4つに分かれると其々が天井部を失った車両へと突き立ったのだ。
異様な光景と衝撃に目を見開くリンディ達の眼前で、床面を抉ったそれは徐々に有機的な組織を構造物へと侵食させ始める。
鋭い、悲鳴の様な声が上がった。

「前へ! 逃げて!」

20 R-TYPE Λ ◆xDpYJl.2AA :2009/01/12(月) 21:53:59 ID:x7pCFNjk
それがフェイトの声だと理解した時には、既にリンディはアルフと共に駆け出している。
周囲に展開していた局員やスカリエッティ達も、前部車両との連結部を目指し走っていた。
そして全員が4両目へと移ると共に、ベルカ式の武装局員が自身の槍型デバイスに魔力を纏わせ、連結部を切り裂く。

「これで・・・」

彼が言わんとした言葉を、最後まで聞く事はできなかった。
振動と共に5両目が離れ行く様を見つめる中、破壊された連結部から離れようとしたその武装局員は、天井部を貫いて侵入してきた触手により頭頂部から2つに分たれたのだ。
その惨状に凄まじい悲鳴が上がり、頭上では天井面へと血管状の組織が奔り始める。
だがユーノ達が、その状況を黙って見ている筈がない。
忽ちの内に障壁とバインド、各種結界と炎、無数の猟犬が侵食された天井部を吹き飛ばし、襲い来る異形の姿を露わにする。

「さっきのヘリ・・・あれが!?」
「節操の無い化け物だね、バイドってのは!」

メインローターは未だ回転していた。
機体上部もほぼ原形を保っている。
だが、それは最早ヘリではなかった。

機体下部からは6本もの触手が伸び、内4本が切り離された5両目に、残る2本がこの4両目へと打ち込まれている。
それらを用いて機体を固定する事によって、バイド化したJF704式はトルクに抗っていた。
素人目に見ただけでも触手の総質量は、明らかに機体のそれを超えていると解る。
しかし増殖は未だ止まらず、無数に枝分かれした極小の触手群が、最寄りの局員達へと一斉に襲い掛かった。

「うあ・・・げ、ひ!」
「ぎ、い・・・ぎッ・・・!」
「嫌、嫌・・・! ぎ、う・・・ぅ・・・ッ」
『退がれ、退がるんだ! 巻き込まれる!』

悲鳴に告ぐ悲鳴。
それらが絶叫へと変化する前に、触手の群れは哀れな犠牲者達を津波の如く呑み込んでいた。
縫い針ほどにまで細分化した数千、数万もの触手が銃弾さながらの速度で伸長し、それらの先端が局員の身体を貫いてゆく。
人体を貫通したそれらは更に伸長、先端が床面に達し構造物と同化すると同時に増殖を停止。
植物の根、或いは神経ネットワークの如く張り巡らされた触手の枝の中、全身を貫かれた局員達の影が網状となった赤黒い触手の中に蠢く様は、他の生存者達の正気を乱すには十分に過ぎた。
そして無数の悲鳴が上がる中、更なる狂気じみた事実が発覚する。

『バイタルが・・・バイタルが残ってる!』
『何の事だ!?』
『デバイスのバイタルサインが残っているんだ! 生きてる! 彼等はまだ生きてるぞ!』
『何を馬鹿な・・・!』
『見て!』

局員の1人が、触手の一部を指した。
反射的にその先へと視線を滑らせたリンディの視界に、褐色の制服が映り込む。
数十本もの極小の触手に貫かれた、局員の腕。
僅かずつ滲み出す血液に、褐色の制服が徐々に紅く染まりゆく。
その末端、同じく微細な触手に縫い止められた五本の指が、確かに動いた。
当然の帰結として、その腕の付け根へと視線を移動した結果。

「ッ・・・!?」
「見ちゃ駄目だ、フェイト!」

アルフの叫び。
もう少しそれが発せられる瞬間が遅ければ、叫んでいたのはリンディ自身だったろう。
尤もそれが、果たしてフェイトへの注意であったかは怪しいが。

「何て・・・事・・・」

21 ロックマンゼロ ◆1gwURfmbQU :2009/01/13(火) 00:30:23 ID:mFIQefSw
第四話です。
色々と同人誌方面で立て込んでしまい、投下が遅れてしまいました。
支援してくださった方々は、ありがとうございました。
今週からまたペースを戻していきたいと思います。
3〜4話はロックマンゼロの世界観というよりは、ロックマンゼロという作品に
登場するキャラや、メインヒロインであるシエルについてでした。
考えてみれば、この話からコミケで冊子貰った人も知らない展開なんですね。

それでは、感想等、ありましたらよろしくお願いします!




このあとがきを、誰か代理で。

22 キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2009/01/14(水) 21:52:15 ID:FuN4oaSA
「バリン」

終わりは呆気ないモノ。ガラスが割れるような音が一つ。そこには既にビショップと言う存在が居た証は何も無い。
ゆっくりとルーテシアは立ち上がり、呆気に取られて動けないエリオとキャロへと視線を向ける。

「っ!?」

二人の背筋を駆け抜ける寒気。先程のルーテシアを遥かに越えた違和感。
先程まででも完成していた芸術品を思わせる雰囲気だったが、ソレすらも飛び越えた。
コレは人間なんかじゃない。コレは化け物で、自分達はその獲物 食料に過ぎない。

「あなた達の……」

ルーテシアの口から零れるのは小さな呟き。それだけで世界が変わる。
小さな掌の上に浮かび上がるのはチェックメイトフォーのクイーンである証……と、ソレに寄り添うビショップの紋章。
本来ならばありえないチェックメイトフォーの二席を占める最強のファンガイアの誕生。
それを祝福するように沸き立つ闇が辺りを染め上げ、天空にはいつの間にか輝く真っ赤な満月。


「あなた達の夜が来る」


クイーンとして力と美貌、ビショップから受け継いだ知恵と策略を持つ彼女はキングすら凌ぐかも知れない。
数多ある次元世界で一斉に目覚めたファンガイアたちを纏め、管理局と数百年にわたる闘争を勝ち抜く事になる。
運命に最後まで準じた男が作り上げた存在が、その運命すら越える力を得たのは最大級の皮肉だろうか?

23 キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2009/01/14(水) 21:56:06 ID:FuN4oaSA
「そんな……」

「どうか私が居なくとも……」

「うん、解ってる。私はなるよ? 貴方の為なんかじゃないんだから……私は私の為に」

ビショップは内心で喝采を上げる。『その言葉が聞きたかった!』と。
完璧なクイーンを作り上げるという目標の最終関門、それはビショップ自身へのルーテシアの依存や甘え。
口にも態度にも出さないが、彼の手一つで育てられてきたルーテシアがソレを持たない事は不可能に近いだろう。
しかしその甘えはいずれ足枷になる。冷徹なパニッシャー、キングを宿す揺り篭には相応しくない感情だ。

「そうです……それで良いのです」

何故ビショップはそこまでするのだろうか? 自分の死を持ってまで完璧なクイーンに拘るのだろうか?
彼はこれまで三人のクイーンを見送った。
最強のキングの伴侶を務めながら、人間との愛を選んだ者。彼女は力を奪われ、隠居を強いられ、最後は逆上した息子に殺された。
二人目は人間のルールに縛られ、偽りのキバとの愛情を優先した上でキングに剣を向けた者。ビショップ自ら鉄槌を下している。
三人目はもちろんメガーヌ。もしクイーンとして覚醒させていたら、あんなオモチャに遅れをとり、死ぬ事も無かった。

「これで……貴女は」


それこそがビショップの知恵と運命が告げる見解。
ビショップとはクイーンやキングを育て、失敗と見ればその首を挿げ替える事すら許される存在。
しかし誰よりも知識を持ち、知恵を巡らせるビショップは運命に反抗する事を知らない。どこまでも賢く、同時に愚かなのである。

だから彼はこう考えた。己の運命を受け入れなかった者、逆らった者、知らなかった者。
クイーンとして相応しく無い者には死が運命的に約束されている。もちろんこの先に生まれる全てのクイーンにもそのルールは適用されるだろう。
死したメガーヌの腹から自力で這い出し、生まれた時からビショップはわかっていた。
『この子こそ! メガーヌと二人で決めた名 ルーテシアを冠する我が娘こそが次のクイーンだ』と。

「完璧な……存在に……」

どうしても不幸な目になど遭わせたくは無かった。この愛らしい子が死ぬなんて認められない。
だからクイーンとして育てたのだ。唯のクイーンでは無い。
悠久のファンガイアの歴史においても、類を見ない完璧なクイーン。強く美しく賢く定めに忠実な存在。
その為には父などと言う肉親は不要だ。必要なのは守る騎士であり、育てる師。
その役目が終わったのならば、最後の依存を断ち切るために命を絶つ。最後にどんなザコが相手でも油断は禁物だと言う教訓を教え込んで。

「■□■□」

最後は言葉にならない。だがこれだけは間違いなく言える。
彼は娘であるルーテシアを溺愛していた。死すら娘の為に浪費する事を厭わないほどに。
その形が人間には理解できない形であり、ルーテシアにも一生伝わる事は無いとしても、これは間違いなくビショップの愛だった。

24 キャロとバクラの人 ◆2kYxpqWJ8k :2009/01/14(水) 22:01:22 ID:FuN4oaSA
以上です。現在編と過去編が交差しまくりで解り難かったかしら?
とりあえずルールーが出ているのが現在、ルー母が出ているのが過去だと思っていただければw
それにしてもこれはビショップなのか?という多大な疑問を生みましたね、コレ(他人事

25 レザポ ◆94CKshfbLA :2009/01/18(日) 14:37:21 ID:.7UdPf8Q
以上です、ルーテシア徐々にメルティーナ化って話です。

今思うと、メルティーナが乙女っぽいかもしれないです。

本編まで後一話位だと考えています。


それではまたです。

26 レザポ ◆94CKshfbLA :2009/01/18(日) 14:38:44 ID:.7UdPf8Q
そしてやってしまいました、どなたか御願い致します。

27 レザポ ◆94CKshfbLA :2009/01/18(日) 14:54:18 ID:.7UdPf8Q
代理投下ありがとうございました。

28 367 :2009/01/25(日) 16:29:53 ID:f0XKjpmg
「俺は殺害に加担したんだ。
 そのことを受け入れるために俺は、俺がどんな有用性を持つのか明らかにしなければならない。
 俺もいつか死ぬ。その時が来るまでに俺は見つけ出さなければならない。俺自身の有用性を」
ウフコックの軌道――明確な出発点から目指すべき到達点へと弧を描く――誰にも止められない。
それはボイルドの新たなキャリアの始まりであり、選択でもあった。
どちらもジ・エンドに至るリスクを承知してクリストファーの描く“渦巻き”に飛び込もうという意思を示す。
チャールズの溜め息。
「死を見つめ楽園を去るか……」
《門出を祝ってやろうぜ》
トゥイードルディムが陽気に口を挟む。
チャ−ルズ――仕方ないと言うように微笑み、去っていく。

ウフコックはテーブルを飛び降り、イルカの鼻先と少年の膝に触れる。
「さようなら、トゥイーたち。俺は行くよ」
《さようなら、ウフコック」。また遊びに来てね》
《もし見つかったら会わせてくれよ。お前を必要とする相手ってやつをさ》
「約束するよ、トゥイーたち。お前たちは大切な友人だ」
ボイルドはウフコックを手に乗せ、立ち上がる。
男とネズミは楽園を去った。

      ◆◆◆

襲撃から二日目の朝。
食堂で軽食を受け取り、ロビーへ。
荷物は殆どない。ハザウェイのTシャツやジョーイのラジカセ、ラナのブーツといったものは何もなかった。
食事しながら待つ。誰がクリストファーの選択を選んだのか。
じきにジョーイとハザウェイ。続くようにラナがやって来た。
レイニーとワイズ。クルツと姿の現したオセロット。

介護棟からやって来る二人――イースター博士とウィリアム・ウィスパー。
「ウィスパーの識閾テストをしたんだ。彼もクリストファー教授のプランに賛成した、僕も」
聞かれもしないのに話し出す“お喋り”イースターの肥満体――ヘリウムガスが溜まったような腹。
イースターの押す車椅子の上で虚空を見つめるウィスパー。
脳に損傷を負ったかつてのオードリーの同僚。
脳に埋め込まれたハード/頭皮を覆う金属繊維/直感でコンピューターの操作する“電子世界のシャーマン”。
その結果として、ウィスパーは他者を理解しなくなった。データが精神――ささやきとなったイースターの“体の悪い弟”。

最後に管理棟のドアから姿を現すクリストファー。
「ふむふむ」
くるくると円を指先で描きながら、一人一人を指差す。
「ディムズデイル・ボイルド。
 ウフコック・ペンティーノ。
 ラナ・ヴィンセント。
 ジョーイ・クラム。
 ハザウェイ・レコード。
 レイニー・サンドマン。
 ワイズ・キナード。
 クルツ・エーヴィス。
 オセロット。
 ドクター・イースター。
 ウィリアム・ウィスパー。
 悪運と実力に満ちた九人と二匹のスペシャリストたちよ、よくぞ私のプランに賛同してくれた。心から感謝と歓迎の意を示そう。
 さあ、こちらへ来たまえ。いざ扉は開かれん」

茶番を好むクリストファー――その指にいつの間にか挟まれているカードキー/軽快な歩み/ロビーの扉脇を滑るように通過するカード。
ロックが次々に解除され、ゆっくりと扉が開いていく。
ロータリーには初めて目にする管理局を制服を着た幾人かの男たち。
「いざ“楽園”を出て荒野を渡ろう」
そして“楽園”を出た十人と二匹は新たな戦場へと向かった。

29 367 :2009/01/25(日) 16:30:41 ID:f0XKjpmg
投下終了です。
リリカルなキャラが全く出てませんが次回からでる予定です。
しかしクランチ文章難しい。

30 367 :2009/01/25(日) 17:01:39 ID:f0XKjpmg
>>28の方は投下できてました・・・

31 魔法少女リリカル名無し :2009/01/25(日) 17:07:51 ID:1hMINRAQ
>>29
やっときました

32 367 :2009/01/25(日) 17:53:33 ID:f0XKjpmg
>>31
代理ありがとうございます

33 リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI :2009/01/29(木) 19:42:43 ID:B2fxeMME
サルサン引っかかりましたのでどなたか代理投下お願いできますでしょうか?

スカルサタモンの攻撃に、スバルとティアナは防戦一方であった。
なんとか決定打は貰わずに済んでいるが、いつまでも防ぎきれるわけでは無い。

「チィ、しぶといんだよテメェ等は!」

スカルサタモンは何度攻撃しても倒れない二人にへの苛立ちが限度を超えていた。
完全体デジモンとしての自信と誇り。それが、たった二人の人間を倒せないという事で打ち砕かれた。
許せない、許してはおけない。自分達デジモンに遥かに劣る人間の分際で生意気なのだ。

「ティア……大丈夫?」
「少なくとも……あんたよりは大丈夫じゃないわよ……」

荒く息を吐きながら言葉を交わす二人に余裕はない。
魔力はほぼ空、応援を頼む暇も無い。体力もそろそろ限界と絶望的な状況だ。
どうやってこの状況を切り抜けるか思考を走らせるが思いつかない。

「いい加減にくたば……ん? なんだ!?」

スカルサタモンが杖を振り上げ、いい加減にトドメを刺そうと動こうとした時、それは現れた。
地響きと共にアスファルトを砕き、地中から出現したそれは全身を鋼で覆った竜。
背中に二つの大砲と緑色の液体に満たされたカプセルを背負った竜。全長は軽く15メートルを超えているだろう。
全身を黒みがかった銀色の装甲に覆われ、頭部のみが緑色に変色した竜は自分の足元にいるスカルサタモンへと顔を向ける。

「バ、バイオムゲンドラモン……なんでこんな処に!?」
「悪いね」

バイオムゲンドラモンと呼ばれた竜は、その外見の凶悪さに似合わぬ十代中頃の少女を連想させる声で呟く。

「ドクターからの命令なんだ」

右腕を振り上げ、豪速を持ってスカルサタモンへと叩きつける。
スカルサタモンはそれに反応もできず、鋼鉄の腕に押し潰され消滅。
バイオムゲンドラモンが腕を持ち上げた跡に出来たクレーターに、デジタマへと還元された姿で転がる。

「なっ……何、アイツ……」

突如出現し、スカルサタモンを一撃で倒したバイオムゲンドラモンにスバルとティアナは困惑する。
当の鋼の竜は軽く二人を一瞥すると、興味無さげに視線を外して自身が空けた地面の穴へと戻っていく。
二人は茫然としたまま、ヴィータとはやてが来るまでその場を動けなかった。

34 リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI :2009/01/29(木) 19:44:10 ID:B2fxeMME
登場デジモン解説

シードラモン 成熟期 水棲型 データ種
長い蛇のような姿をした成熟期のデジモン。
高い攻撃力を持つが知性は低く、本能のままに行動する。
海は勿論、湖などにも潜んでおりその長い体を利用した締め付け攻撃は驚異の一言。
必殺技は口から吐き出す氷の矢「アイスアロー」


メガシードラモン 完全体 水棲型 データ種
シードラモンの進化形であり、一回り巨大化した水棲型デジモン。
頭部の外郭から伸びる稲妻形のブレードが武器であり、進化前のそれより硬度が増した兜としても用いられる。
知性や泳ぐスピードも発達し、執念深く相手を追いつめる。
必殺技は稲妻形ブレードから放つ雷撃「サンダージャベリン」


バイオムゲンドラモン 究極体 マシーン型 ウィルス種
100%フルメタルボディを持つ究極体。
一時期デジタルワールド最強の座に君臨していた程の戦闘力を持ち、他のデジモンを圧倒する頭脳とパワーを持つ。
その名の通り無限のパワーと持ち、体はさまざまなサイボーグ型、マシーン型デジモンの優れたパーツで構成される。
本作では人とデジモンの融合体であるバイオデジモンとして登場。
必殺技は背中の大砲から放つ超ド級の破壊エネルギー波「∞(ムゲン)キャノン」

35 リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI :2009/01/29(木) 19:45:18 ID:B2fxeMME
長らくお待たせした上にこんな内容で申し訳ない orz
結局、兄貴と共闘したのライトニングだけだったり、はやてとかヴォルケンズ二人は出番丸ごとカットしたりとホント申し訳ない。
そしてようやく気がつきました……このSS一番のバランスクラッシャーは大だ。戦闘シーン執筆の際、強すぎて使いにくいのなんの。
バイオデジモンも登場……出すかどうか凄く悩んだんですけどね。正体が分かった人はご一報を、好きなデジモン一体差し上げます(何
さて、次回から本作のメインヒロイン(?)がよーやく出てきますといいつつこの辺で。

以上です。どなたかお願いします。

36 魔法少女リリカル名無し :2009/01/29(木) 19:48:53 ID:3giaR4yo
代理投下終了しました。

37 リリカルセイバーズ ◆YSLPVXF4YI :2009/01/29(木) 20:00:09 ID:B2fxeMME
>>36
確認しました。
ありがとうございます。

38 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:10:08 ID:hnehCqd6
 ――あの人を、助けてください……
 惨めな姿で、少女は確かにそう言った。
 プレシアのためではなく、少年のためにそういったのだ。
 プレシアの前で我侭を言うなど、今まで一度たりとも有りはしなかった。
「何故……」
 どうしてあの時、自分は手を止めたのだろう。
 ――次はもっと、がんばります。だから……
 私のことだけ考えていればいい。そう叱るべき筈なのに。
 この状況で、あなたは私にお願いできる立場だというの。そう諭すべき筈なのに。
 頭ではそれがわかっていたはずなのに、プレシアは確かに躊躇した。
「何故……」
 躊躇する理由など、どこにもない筈なのに。
 ――おねがい、します……
 なぜ、そこで完全に手を止めてしまったのだろうか。
 わからない。
「けど……考えても、あまり意味がないわね」
 直後にプレシアは首を横に振り、その疑問を切り捨てた。
 そうだ。こんなことを考えている場合ではない。
 あんなことは、どうせ一度きり。フェイトが自分に我侭を言うことなど、もう二度とないだろう。
 そもそも自分があの少年を保護した理由は、フェイトの頼みによるものではない。
 左手に握るものへと、プレシアは視線を移す。
 鈍い光沢を放つ、二振りの剣。あの少年が持っていたものだ。
 最初はあの少年を追い出すつもりではあった。だが、腰のベルトに差していた『これ』を一目見た瞬間、プレシアは気付いた。
 持ち主の少年からは一切魔力を感じなくとも、『これ』そのものに電子音声機能が搭載されていなくとも……
 それでも『これ』は、デバイスだと。
 フェイト達は気付いていなかったようだが、間違いない。
 少年をフェイトから紹介されたときにもらった少年のデータを見る限り、少年のもといた場所は、おそらく管理局も見つけていない別の次元世界。
「案外と、使えるかもしれない」
 プレシアの両頬が、不気味に吊り上がる。
 フェイトが課した保護条件に、少年は素直に従っている。
 未知の世界から現れた少年。正体不明のデバイス。
 うまく利用すれば、悲願達成の近道になるかもしれない。
 価値が無ければ捨てるもよし。戦力になるのなら、管理局が手を出してきた時はいい駒となるかもしれない。
 プレシアの両肩が自然と震えだし、次第に声が混ざっていく。
 やがて、誰もいない廊下に、誰にも聞こえることのない壊れた笑い声が響き渡った。

39 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:10:40 ID:hnehCqd6
 どこまでも、虚しく。どこまでも、狂気的に。

 今のプレシア・テスタロッサに、届く声は……ない。

40 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:14:35 ID:hnehCqd6
               *

「はぁ……」
 公園のベンチに座り、セラは大きく溜息を吐いた。
 時間は既に夕刻。殆ど一日中歩いてディーとジュエルシードを探し続けていたのだが、収穫はなし。
 歩き疲れていると察したのか、合流したなのはと一緒に、ユーノから少し休むよう言われた。
 当のユーノは、なのはの肩に乗って休むとのこと。小動物ならではの方法だと、セラは思った。
 とはいえ、家からは少し遠い。一番近い休憩場所で休み、再び合流してから帰宅することとなった。
 そんなわけで、セラはなのは達から指定されたここ、『海鳴海浜公園』にいる。
 ……やっぱり、言い過ぎたでしょうか?
 ふと、合流直後のなのはとのやり取りを思い出す。
 朝にユーノが聞いてきたことは、なのはの悩みについて。
 ジュエルシードや敵対している魔導師のことで悩み続け、とうとう友人関係にまで影響を与えてしまっている。
 それを聞いた時、少しだけ悩んだ。
 不思議の国のアリスのように、突如この世界に迷い込んでしまった自分。
 ただの部外者である自分が、余計な手を出してもいいのか、と。
 とはいえ、せっかく保護を受けているのだから、その位の相談は引き受けようと思った。
 ユーノには、私に任せてください、とだけ答え、なのはと合流してすぐにお説教を始めた。
 全部話せなくても、肝心な所を伏せたりとか、そういう工夫をしてください……とか。
 手伝って欲しくなくても、せめてアドバイスくらいはもらってください……とか。
 最初はかなり慌てていたなのはだったが、次の言葉を聞くと何故か息を呑んだ。
 ――わたしもユーノさんも、なのはさんの傍にいますから。だから、困った時はちゃんと言ってください。わたしたちは、なのはさんのお友達なんですから。
 思うところがあったのか、なのはは思案するように俯いたままだった。
 その後はなのはの反応を待たずに、自分から先行して捜索を再開したため、なのはからの返事は聞いていない。
 というより、返事が少しだけ怖かったからかもしれない。
 やはり自分は、本来この世界とは無関係なのだから。
「なのはさんとユーノさん、まだでしょうか……」
 さらに、溜息の理由はもう一つある。
 なのは達から場所を聞いてここへ来てみると、I-ブレインが情報制御を探知したのだ。
 微弱ながらも奇妙な『物理法則の乱れ』に、まさかと思って発生源を探してみると、案の定。

41 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:15:43 ID:hnehCqd6
 ……まさか、なのはさん達より先に見つけてしまうなんて……
 自分の座るベンチからは少し離れた、無造作に立っている一本の木へと視線を向ける。
 木の根元には、不気味に明滅を繰り返す、小さな青い宝石。おそらくあれが、話に聞いたジュエルシードなのだろう。
 早く対処するべきなのだろうが、封印方法を知らないし、知ったとしても多分できない。
 さらにいうなら、なのは達との連絡手段も持っていない。
 なのは達の正確な現在位置がわからない以上、迂闊に探すこともできない。
 ジュエルシードの暴走条件も大まかだが聞いており、自分が触れても発動する危険は十分に有り得る。
 せめて、周囲の物体から引き離せば発動が遅れるかもしれないと思い、重力制御で宙に浮かせようとしたのだが、
 ……さっきは、ホントにびっくりしました。
 朝からずっと展開しっぱなしだったD3を近づけただけで、ジュエルシードの頼りない発光が一気に強まったのだ。
 驚いてD3を離すと、それに合わせてジュエルシードの発光は元に戻っていった。
 試しにジュエルシードとD3の距離を調整してみると、それに合わせて発光現象の強弱が変化した。
 どうやら、魔法士の魔法にも反応するらしい。
 魔力や願いにジュエルシードが反応することは聞いていたものの、情報制御にも反応するとは思わなかった。
 とはいえ、情報制御も『願い』や『魔導師の魔法』と同様、脳内で『思考』することによって発現する。
 魔導師の魔力ではなく魔法そのものに反応していたとすれば、ありえないことではない。
 結局、ここでなのはの到着を待つことしか自分にはできない。
 完全に八方ふさがりだった。
「はぁ……」
 再び大きく溜息を吐き、空を見上げる。
 生まれてはじめて見る、茜色の空。
 シティの天井も合成映像で空を映せるのだが、本物の空にはやはり程遠いだろうとセラは思う。
 公園内を見渡せば、木々や草花などの自然が多くあることもわかる。
 シティ内外を問わず、このように緑溢れる場所は存在しない。
 自分の周りを取り囲むものすべてが、セラに一つの事実を告げている。

42 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:17:01 ID:hnehCqd6
 ――この世界に、マザーコアは存在しない。
 情報制御によって、シティに住む一千万人の命を支え続ける『マザーコア』。
 生きた魔法士を培養層に入れ、ロボトミーを行って心を奪い、情報制御でエネルギーを賄い、コアとなった魔法士が使い物にならなくなれば、新しい魔法士と取り替える。
 いわば、魔法士を生贄にして人類を生き長らえさせるシステム。
 生贄という表現をより悪く言うなら、電池が似合うかもしれない。
 誰かの命を犠牲にしなければ、多くの人々の命が一日ともたずに失われてしまう。
 そんなシステムが、この世界には存在しない。
 自分の世界の有りさまだったそれが、この世界には存在しない。
 魔法士の世界で起こっている争いの理由が、この世界には存在しない。
 羨望が無いと言えば嘘になる。
 けれど、自分の本来いるべき世界のようになって欲しいとは欠片も思わない。
 しかし、ふと思う。
 残っている二億人を、この世界に移すことができたら、どんなに楽だろう。
 そうすれば、マザーコアの是非という争いだって行う必要がなくなる。
 少なくともこの世界は、自分の世界の『かつての姿』に限りなく近い。
 生き残った人々で、再スタートを切ることは不可能でもないだろう。
 そこまで考えて、セラはぶんぶんと首を横に振った。
 いくらそんなことを考えようと、所詮は夢幻に過ぎない。
 この世界に自分が来れたのは、きっと偶然。
 行き来する方法が見つかっていない以上、いくら考えても無駄でしかない。
 ――では、今この世界にいる自分はどうなのか?
 不意に浮かんできた疑問に、セラは目を見開く。
 何の関係もない筈の人間。存在しない筈の人間。
 魔法士の世界を見つけるまでの間、この世界における自分は何だというのだろうか。

43 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:18:31 ID:hnehCqd6
「わたしは……」
 なんとなしに、そう呟いた時。
(高密度情報制御感知)
「え?」
 I-ブレインが、凄まじいまでの情報の歪みを感知。
 顔を上げ、ジュエルシードがついている木へと向けば、ちょうどその一帯が青白い光の柱を上げている。
 ……発動、したんですか?
 疑問もそこそこに立ち上がり、一旦この場から離れようと身を翻し、
「封時結界、展開!」
 振り向いた先には、異世界のフェレット。
 言葉とともに、フェレットを中心に空間が『変わって』いくのを、I-ブレインが余すことなく知覚する。
 本来なら自分も結界の外に追い出される筈なのだが、そこはユーノとなのはに必死で頼み込んでおいた。
「セラは、下がっててね!」
「は、はいです!」
 とはいえ、やはりできることは『遠くから見ること』だけ。
 ユーノの指示通り、この場から離れようとして、
「セラちゃん!」
「あ、なのはさん!」
 ユーノの後ろから、遅れてなのはが駆けつける。
 先程会った時とは全く違う出で立ちに内心で戸惑いつつ、セラもなのはのもとへと駆け寄る。
 左手に持っている杖がレイジングハートであり、現在着ている白服がバリアジャケットなのだろう。
「えと、大丈夫?」
 僅かに逡巡したなのはの問いに、怪我はないか、という意味がないことを正確に把握する。
「ちょっと驚きましたけど、平気です!」
 答えた直後に地面が揺れ、二人揃って直立のバランスを崩しかける。
 揺れが納まったかと思うと、今度は聞いたことのない咆哮が空気を震わせる。
 咆哮の主は、すぐに見つかった。
「あれが……」
「うん」
 呆然と『それ』を見るセラの呟きに、毅然とした表情でなのはが頷く。
 どこかの御伽噺の本にでも出てくるような、巨大化した木のお化け。
 そのお化けを中心に、I-ブレインがひっきりなしに異常な情報制御を感知し続けている。
 あれが、ジュエルシードの暴走体。
「ちゃんと隠れてますから、その……うまくは言えないですけど」
 何か言わなければと思い、なのはと向き合う。
「がんばってくださいね、なのはさん」
「……うん!」
 精一杯の笑顔で口に出てきたのは、月並みの励まし。
 それでも、お説教を受けていた時の沈みっぷりはどこへやら、なのはは微笑み、力強く頷いた。
 お説教が、功を奏したらしい。
「それじゃ、行ってくるね!」
 その言葉を最後に、なのはは暴走体へと向かっていく。

44 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:20:14 ID:hnehCqd6
 なのはに手を振ってから、セラは林の中へと走る。
 たどり着いてから振り向くと、なのはが暴走体と対峙している。
 セラは、遠くからそれを見ていることしかできない。
 ……わたしは……
 さっきベンチで一人きりになったのを見計らい、鞄の中に入れた十個のD3を鞄越しに見つめる。
 わかっている。全部わかっている。
 あの化け物を倒すことくらいなら自分だってできるが、ジュエルシードを封印しなければ意味がない。
 むしろ自分の力に反応して、暴走が更に拡大する危険だってある。
 今力を使えば、管理局に目をつけられて実験動物扱いされるかもしれない。
 そうでなくとも、立場的に不利になることは確実だ。
 ――自分が加勢する事に、何等意味は無い。
 そう、自分に言い聞かせて、
(情報制御感知。右方)
 直後、別方向から情報制御を感知する。
 情報制御の発生源へとセラが振り向いた直後、視界を金色の何かが高速で横切っていく。
 物体の正体は、先の尖った金の弾体。おそらく魔力弾。
 複数のそれらが暴走体へと殺到し、突如現れた半透明の半球に遮られる。
 暴走体は攻撃に反応し、魔力弾の射手へと向き直り、吼える。
 セラも振り向いてみると、二つの影。
 一つは、橙色の狼。使い魔だろう。
 そしてもう一つの影は、公園のオブジェの上に立つ、黒衣金髪の少女。
 なのはのバリアジャケットと相反するような、色も肌の露出度も違う服装。
 黒衣とコントラストを成す白い肌。遠目からでもわかる、意志の強そうな赤眼。
 あの少女が、敵対する魔導師――フェイト・テスタロッサ。
 凛としたその佇まいが、しかしセラにはあの『悪魔使い』の少女のように危なっかしく見えた。
 そこまで考えた時、I-ブレインが暴走体の質量の変化を感じ取る。
 暴走体へと向き直れば、木の根に当たる部分が地表に飛び出した瞬間だった。
「ユーノくん、逃げて!」
 なのはの指示通り、ユーノもこちらの方へと避難して来る。
 しかし当のなのはの方は、暴走体から背を向けようとしない。
『Frier Fin』
 レイジングハートの電子音声が聞こえたかと思うと、なのはの両足にピンク色の羽が出現する。
 直後になのはが跳躍し、たたき落とされる『根』をすんでのところで回避する。
「飛んで、レイジングハート! もっと高く!」
『All Right』

45 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:21:13 ID:hnehCqd6
 なのはの言葉にレイジングハートが答え、魔力で作られた羽が力強く羽ばたき、ぐんぐん高度を上げていく。
 と、今度はフェイトの方に情報制御を感知。
 振り向くと、少女のデバイスに著しい変化が起こっていた。
 それまで斧のような形状だったデバイスがいつの間にか鎌の形をとっている。
 形に合わせ、鎌の先端から金の刃が出力される。
「いくよ、レイジングハート!」
 なのはの声に顔を上げると、暴走体にデバイスの先端を向けるなのはの姿。
 レイジングハートも漆黒のデバイスと同様に、その形状を既に変化させている。
 その姿に見入る暇も無く、I-ブレインが新たな質量を探知する。
 振り向くと、フェイトのデバイスから伸びていた魔力製の刃が、くるくると回りながら暴走体へと向かっていくところだった。
 金の刃は、見た目通りの切れ味を持って『根』を次々と切り飛ばしていく。
 しかし、本体の方は先程の魔力弾と同様に障壁で防がれる。
 どうやら、暴走体の身を守る障壁を破らない限り、決定打は出せないようだ。
 目の前の戦況に、思わずセラは唇を噛む。
 一撃。
 自分がほんの一撃入れるだけで、あの障壁は簡単に破ることが出来る。
 それを、セラのI-ブレインが――質量知覚能力が告げている。
 いや、そもそも障壁さえ張らせずに倒すことが出来るかもしれない。
 その一撃すら、セラには許されない。
 今この状況で力を使ったら、真っ先になのは達に勘付かれてしまう。
 口止めするという手もあるが、それではなのは達の負担になるし、時空管理局に保護されれば二度と会えないかもしれない。
 管理局に余計な隠し事をするのは、自分一人だけで十分だ。
(情報制御感知。上方)
 I-ブレインのメッセージに顔を上げると、レイジングハートを四つの論理回路――否、魔法陣が取り巻いている。
「撃ち抜いて!」
 なのはの叫びに、レイジングハートの先端に魔力が集まっていくのを視認する。
 I-ブレインの質量知覚が、見た目よりも質量が小さいことを告げる。
 ユーノから聞いた、非殺傷設定を使っているのだろう。
「ディバイン!」
『Buster』
 掛け声と共に解き放った魔力が、暴走体へと直進していく。
 暴走体は先程と全く同じ障壁で防ぐが、今度は悲鳴をあげてのたうち始める。
 障壁越しにも影響を与えているのだろう。だが、あと一歩足りないようだ。

46 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:22:33 ID:hnehCqd6
 フェイトの方はどうしているかと振り向けば、足元と正面に魔法陣を展開している。
「貫け、豪雷!」
『Thunder Smasher』
 漆黒のデバイスを槍の如く突き出すと、こちらも指向性の高い金の魔力が放出された。
 二方向からの同時砲撃に、暴走体も二つ障壁を張って暫く持ち堪えたものの、最後は苦しげな叫び声をあげながら次第に発光していく。
 その光の中から、ジュエルシードが浮かび上がる。
 直後、
「ジュエルシード、シリアル7!」
「封印!」
 早い者勝ちと言わんばかりに、二人の魔導師は封印を仕掛け、その場が一瞬で光に包まれる。
 セラは思わず両腕を掲げ、目に入る光を遮る。
 閃光が収まると同時に腕を下ろし、I-ブレインの知覚に従ってなのはの方を見上げると、ちょうどフェイトがなのはと同じ高度まで浮かんでいる。
 この距離では流石に会話を聞き取れないものの、あまり良い雰囲気ではなさそうだ。
 おそらく、これから二人は戦闘を始める。
 セラは暗澹たる思いで、二人の対峙を見守り続ける。
 ……わたしは……
 自分が入る余地など、どこにもない。
 これから起こる戦いに、他者の入る余地はないのだ。
(情報制御感知)
「え?」
 意外な方向からの情報制御を探知し、視線を更に上向ける。
 二人の魔導師とほぼ同じ高さで静止したままの、ジュエルシード。
 それが、不可思議な振動を起こしている。
 生物の鼓動ようでいて、しかし本物とは違うと認識させるような、不気味な振動。
 さらに、その振動が大きくなるとともに、ジュエルシードからの情報制御もより大きくなっていく。
 ……もしかして、封印できてないんですか?
 嫌な考えが浮かび、血の気が引く。
 二者の同時封印が互いの効果を相殺したせいで、封印が完了していないのか。
 魔導師の魔法に反応するのであれば、再び発動する危険がある。
 二人の魔導師にいち早く伝えようとして視線を戻し、セラは目を見開く。
 既に二人は接近し、互いに得物を振り下ろさんとしている。
 声を上げても、もう間に合わない。
 それでも伝えなければと、思いっきり叫ぼうとして、

47 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:23:43 ID:hnehCqd6
(高密度情報制御・空間曲率の異常変化を感知)
 その二人の間に、水色に発光する球体が出現した。
「ストップだ――!」
 一瞬でその球体がなくなったところには、一人の人間。
 振り下ろされる二つのデバイスを、片や右手の杖で防ぎ、片や左手一本で掴む、黒衣の少年。
「え?」
 何が起こったのか、セラには一瞬分からなかった。
 光学迷彩も自己領域も無しに、突然人が現れたのだから。
 ……転移魔法、ですか?
 この世界で手に入れた知識が間違っていなければ、それしかない。
 朝の、フェイトによるものと思われる魔法行使もそうだが、あまりの情報制御にI-ブレインが一瞬悲鳴をあげている。
 これ以上大きく情報が歪んだら、I-ブレインそのものが煽りを受けて停止しかねない。
 まあ、もしも停止するのであれば、この世界に自分が転移した時点でI-ブレインが止まっていたのだろうが。
「ここでの戦闘行動は危険過ぎる!」
 驚愕に目を見開く二人の魔導師に、新たに出現した魔導師は交互に視線を向けつつ、名乗る。
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか!」
 その言葉に、セラは目を見開く。
「時空、管理局……」
「まさか、動いたのか?」
 セラに続き、いつの間にか近くの木の枝に登っていたユーノも呟く。
 管理局員が思っていたよりも若いことに、セラは目を瞬かせる。
 肌以外がほぼ全て黒でできた少年の姿が、どこか黒衣の騎士に近い雰囲気を感じさせる。
 セラは一瞬ジュエルシードに目を向けるが、相変わらず不気味な鼓動を続けたまま。
 今のところ、まだ暴走はしていない。
「まずは二人共、武器を引くんだ」
 三人の魔導師は一旦離れ、そのまま真下に降り、ゆっくりと着地する。
「このまま戦闘行動を続けるなら……」
 と、そこまで少年が言いかけたところで、
(情報制御感知)
 I-ブレインのシステムメッセージと同時に、セラは上空を見上げる。
 フェイトが放っていたものとは色違いの弾体が三つ、少年へと降り注いでくる。
 魔力に反応したのであろう、魔導師の少年はすぐさま左手を掲げ、魔法陣でできた円形の障壁を発生させて弾く。
「フェイト、撤退するよ! 離れて!」
 射手は、いつの間にか空に浮かんで再び魔力弾を放とうとしている使い魔の狼。
 呼ばれた少女は、躊躇するような顔で使い魔を見る。

48 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:25:01 ID:hnehCqd6
 だがその表情も一秒でなくなり、迷いを振り切ったかのように真上で浮かんだままの青い石へと飛んでいく。
 その直前から、使い魔は既に主の元いた場所へと魔力弾を放っている。
 取り残された二人の魔導師には当たらない、牽制攻撃。
 その魔力弾が地面に着弾すると同時に、爆発が巻き起こった。
「わっ!」
 爆発するとは思っていなかったセラは、目を白黒させる。
 自分とユーノが隠れている林まで、二人の魔導師が飛行魔法で後退するのを、セラのI-ブレインが淡々と知らせる。
 その間に、フェイトが宝石へと手を伸ばす。
 させじとばかりに、魔導師の少年が多数の魔力弾を放つ。
 なのは達の放ったものよりも、発動から射出までの時間が遥かに速い。
 ジュエルシードまであとほんの数十センチというところで魔力弾の弾幕に捕らわれ、一発がフェイトの左手を直撃する。
 小さく悲鳴を上げて、少女が落ちていく。
「フェイト――!」
「フェイトちゃん――!」
 使い魔となのはの悲鳴にあわせ、セラは一瞬息を呑む。
 このままでは、黒衣の少女が地面に叩きつけられるから……ではない。
 少女の落下地点に使い魔が滑り込み、そのまま背に乗せた時には、既に魔導師の少年が使い魔の手前にいる。
 使い魔が少年に気づいた時には遅く、少年は空中で右手の杖を使い魔に向けている。
 少年の杖先に青い魔力が凝り固まっていき……
「ダメ!」
 使い魔と少年の間になのはが割って入る。
 なのはの無茶ととれる行動に、セラは思わず声を上げそうになる。
 魔導師の少年もこれは予想外だったのか、驚いて動きを止める。
「止めて! 撃たないで――!」
 なのはの叫びにが耳に入ったのか、使い魔の背で気絶していた少女の瞼が僅かに開く。
「逃げるよ、フェイト! しっかり捕まって!」
 使い魔はそれを精神リンクで察知したのか、その場の全員が動きを止めている間に逃げ去っていく。
 直後になのはが振り向き、物憂げに顔を曇らせた。
 その間に、魔導師の少年は地面に着地する。
 表情に険がないところから、攻撃してくるわけではなさそうだ。
 ようやく戦闘が終わったらしい。
 セラは一つ息を吐き、木から下りてきたユーノと一緒に林を出る。
 魔法を使ったのか、ジュエルシードが少年の下へと降りてきている。
 幸い、暴走せずにすんだ様だ。

49 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:26:46 ID:hnehCqd6
「ユーノくん、セラちゃん」
 こちらに気付いたなのはは、先程の曇った表情を一変させ、笑顔を向けてくる。
 ユーノは定位置であるなのはの肩に乗り、セラはなのはの傍へ駆け寄る。
「怪我とかはしてないですか? なのはさん」
「うん、大丈夫」
 ちょうどジュエルシードを手にした少年は、怪訝な表情をセラに向ける。
「民間人?」
 表情はそのまま、少年はなのはに顔を向け、
「まさか、巻き込んだのか?」
「ええっと、それはまあ、いろいろと……」
 途端になのはがしどろもどろで答えた直後、
(情報制御感知)
 海側にミントグリーンの魔法陣が出現し、人の映像が映し出される。
『クロノ、お疲れ様』
 映像に映っている女性が、少年に労いの言葉をかける。
 少年の上司だろうか。
「すみません。片方は逃がしてしまいました」
 一歩前に出て、クロノと呼ばれた少年が報告する。
『ううん。ま、大丈夫よ』
 対してあっけらかんとした口調で、女性は答える。
『でね、ちょっとお話を聞きたいから、そっちの子達をアースラに案内してあげてくれるかしら?』
「了解です、すぐに戻ります」
 直後に魔法陣は縮小して消え、少年がこちらに振り向く。
 完全に取り残されたなのはとセラは、思わず顔を見合わせた。
 展開についていけないのは、恐らくなのはも同じだろう。
 セラだって、こんなに早く時空管理局と接触できるとは思わなかった。
「転移を行うから、そのままじっとして」
「「あ、はい」です!」
 少年の指示に、慌ててなのはと同時に返事をする。
 何を思ったのか、少年は一瞬きょとんとしていたが、すぐに元の無表情を取り戻す。
「じゃあ、始めるよ」
 少年が、何気なくそう言った直後、
(高密度情報制御・空間曲率の異常変化を感知)
「「わ――」」
 セラとなのは、二人の声が再び重なる。
 再び転移を受けることに、セラは反射的に身をすくませる。
 同時に、セラは覚悟を決めた。
 こんなところで、怯えている場合ではない。自分にとっては、これからが大変なのだ。

               *

 本来の役者達は、次々と出でる中。
 魔法士は、未だ表舞台には出でず。
 ――長い一日は、まだ終わらない。

50 LB ◆ErlyzB/5oA :2009/02/09(月) 10:29:10 ID:hnehCqd6
投下終了。
ディーセラがそれぞれ微妙な立場にあることを理解し、
ユーノの立場に嫉妬し(ぇ
セラの葛藤に関してご感想をいただければそれで幸いです。
最新刊読んだ方々は突っ込みを入れるところがあるでしょうが、あれの技術は魔導師の方が遥かに上なので、まあ何とかなるかな……ということで一つ。
以上。



……はい、規制くらうのもそれを予想するのも余裕でした。
どなたか代理投下をお願い致しますorz

51 黒の戦士 :2009/03/05(木) 22:04:13 ID:Qhx2olcM
OCN規制食らったので代理投下願いますorz


投下予告します

タイトル:魔砲戦士ΖガンダムNANOHA
クロス元:テレビ版「機動戦士Ζガンダム」

注意事項
レジアスが原作以上に悪役やっています。レジアス好きはご注意を。
時折R-15レベルの描写が出ます。
余りにも長いので一話を前中後編の3パートに分けます。
今回は前編を投下します。

52 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:06:56 ID:Qhx2olcM
ニュータイプの力と魔法には、共通点がある。
両方とも、高まればその分科学との区別が曖昧になることだ。
―Q・V



テレビの向こうから来た男〜ヅダ黙示録〜

クラナガンでその事件は起きた。
昼下がりの市街地で、突如巨大な人型の機械が飛来。
街中に着地し、動きを止めた。
非番のため偶然現場に居合わせていたギンガ・ナカジマ(当時は陸士第108部隊所属。その後特進と同時に同隊を離れ、別の隊の隊長になっている)がその場で対応。
人型の機械はコックピットと思われる部位のハッチを開き、そこから乗員を取り出しそっと地面に降ろした。
驚くべきことに乗員は意識を失っており、この事実からこの機械が自力で動いていたことが後の調査で判明するも、原因自体は不明のまま調査は打ち切り。
保護された乗員はまだ少年であり、保護の際に居合わせた八神はやての証言から「カミーユ・ビダン」であることが判明するも、何故彼女が少年の名を知っているかに関しては未だ不明である。
なお、その時彼女は非常に動揺していたこともここに記しておく。
その後地上本部で行われた事情聴取の際に、カミーユ少年はあの機械の名前が「Ζ(ゼータ)ガンダム」であり、「モビルスーツ」と言う兵器の一種であることを教えてくれた。
また、事情聴取に当たったゲンヤ・ナカジマ三佐の人徳に触れたのか、終始協力的で素直だったとの証言が残っている。
ゲンヤ三佐の提案で行われた試験運転の際、Ζガンダムはその飛行性能と、並外れた機動性を発揮しており、武装を使わずともその力を誇示して見せる。
偶然とはいえ、あの「ガンダム」の名を関しているだけの事はあり、再開された事情聴取でそれを言われたカミーユ少年もどこか嬉しそうだった。
しかし、試験運転の際にΖガンダムの性能を目の当たりにし、意地でもこちら側に加えようとしたレジアス・ゲイズ中将の行動により、事態が一変。
恫喝まがいの方法で無理やりこちら側に加えようとする、中将の態度に反発したカミーユ少年は協力の是非の回答を保留。
その後は激しい罵り合いに発展し、結局カミーユ少年は本人の意思とこの一件を知った教会の干渉によりΖガンダムごと本局側に身柄を預けられることとなるが、それを聞いた本人は大変喜んでいたと言う。
だからあれほど物扱いは慎むようにと注意したのに……。
近年の中将の行動は血縁者である私の目にも余っており、早期の対策が必要と思われる。
ただ、ギンガ・ナカジマの証言に非常に気になる言葉があったので、この報告書の最後にそれを添えておく。
「ゲイズ中将のことに関して、『何か内側に仕舞い込んでいる様に感じた。それも凄く醜い何かを』と言っていました。中将の話にあそこまで拒絶反応を見せたのと、何か関係があるのかもしれません」
――――オーリス・ゲイズ

53 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:08:34 ID:Qhx2olcM
カミーユとレジアスの激しい罵倒合戦から約一ヶ月後、機動六課。
慣れない事務作業を終え、カミーユは一息ついていた。
立ち上げられたばかりの機動六課では、前線に出る者どころか、後方の事務員まで不足しており、前線メンバーが時折事務作業に狩り出されることもある。
特に軍組織に身を置いた経験があり、立場上いつも暇人なカミーユは、多忙なはやてたちの代わりにこなすことが多い。
もっとも、今回だけは自分から買って出たのだが。

「地上本部に持って行く分はこれで全部。後は……」

ミッドチルダに漂流してから約一ヶ月。
結局、「陸に回されるよりははるかにマシだから」と言う理由で臨時採用の特務局員、と言う形で本局側につき、起動六課設立と同時に配属されたカミーユは、これと言った事件に出くわすこともないまま暇な日々を過ごしていた。
無論、Ζガンダムごと。
この決定に反発する声は、驚くほど少なかった。
地上本部に懸念を抱いている者が海に多かったのと、何より「レジアス・ゲイズ相手に罵倒合戦をしてのけた」ことでカミーユ自身が一目置かれてしまったからである。

「あの戦い……、『グリプス戦役』がアニメになっている世界から来た、か……。なんだろう、ずっと前に一度なのはに会った気が……デジャブか?」

メタっぽい呟きを口から出しながらくつろぐカミーユ。
実はミッドチルダでは、何者かの経由で第97管理外世界から「機動戦士ガンダム」が伝わっていたのである。
無論、はやてがカミーユの名を知っていたのも、彼女が「機動戦士Ζガンダム」(こちらはミッドには伝わっていない)を見ていたから。
結局、気は乗らなかったが、渋々自分で持って行くことにした。



「タクシーが迎えに来るまで、後1分くらいか……」

時間を合わせ、隊舎の玄関で待つカミーユ。
同時に、タイミングよくライトニング分隊の訓練が終わったのか、エリオが戻ってきた。
そして、エリオが声をかける。

「カミーユさん、外出ですか?」
「エリオか。向こうの注文の品が出来たから、これから届けに行くところだよ」
「……同伴、しましょうか?」

エリオのその言葉の意味をすぐに理解するカミーユ。
苦笑するしかない。
歓迎会でレジアスとの罵倒合戦の一部始終を嬉々として説明した自分が地上本部へ行くといえば、心配の余りそう言いたくなると分かるから。

「神父憎ければ教会も憎い、と言うけど、レジアスとは違って俺はそこまで落ちぶれちゃいないさ」
「ゲイズ中将に出くわしても、ケンカはしないでくださいね。八神部隊長に迷惑がかかりますから」
「了解。……ちょうどタクシーが来たな。行って来ます」

54 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:10:43 ID:Qhx2olcM
地上本部。
カミーユは、もって来た書類を渡すべき人物を見つけ、その人目掛けて走り出す。
書類を渡すべき相手、それはオーリス・ゲイズであった。

「オーリスさん!」
「カミーユ君、一体どうしたの? 中将のこと、『見たくもない』って言っていたほど嫌っているのに」
「いえ、例のヤツを持って来たんです。それと、レジアスが嫌いな人は地上本部も嫌い、なんて公式は成り立ちませんよ、オーリス・ゲイズさん」

持ってきた封筒をオーリスに手渡すカミーユ。
その封筒に入っている書類、それは「あの時行われたΖガンダムの試験運転データ」である。

「いいの? わざわざ貴重なデータをこっちに渡すなんて」
「オーリスさんは、あの偏屈漢とは違って信頼できる人です。それに、あの時はフルパワーは出さなかったし、操縦も手を抜いていました。書類に書いてある数値もあの時測ったヤツより低くしてあります」
「なるほど……。道理でこちらの難癖に反発しなかったと思ったら。悪い子ね」

試験運転の際にカミーユは、わざと「低く評価されるため」に意図的に手を抜いたのである。
こちらの手の内を完全に明かすのは良くないと判断したからだ(それでも向こうが感心するほどのパワーを発揮してしまったが)。
実はちゃんとデータは採られたものの担当したラッドの独断で、データ自体はカミーユに譲渡され、六課の方に秘匿されたのである。
このデータがわざわざ地上本部へ提出されることになったのは、地上本部がデータの提出を108部隊に強要し、ラッドがバカ正直に「カミーユに渡した」と答えた結果。
1ヶ月も経ってから言い出したのは、ラッド曰く「こっちの偉いのが、中将の怪我でパニックになってたせいでど忘れしたせいかもしれない」とのこと。
直感でレジアスが黒幕と気付いたカミーユは、自らデータをまとめた書類を作成したのだ。
……改ざんしたデータと、レジアスへの嫌がらせの一言を書いた紙切れを向こうに送り付けたいがために。
罵倒合戦の結果、レジアスにかなり悪い印象を抱いてはいるが、彼とは対照的に冷静で空気を読めるオーリスには好意的なカミーユであった。

「それはどうも。後、お父さんへのプレゼントも同梱してありますから」
「……本当に悪い子ね。…………!!??」

呆れた直後、オーリスの視界に、緑のフィルターが付けられたかのような感覚が襲う。
だがそれは、オーリスだけでなく、周りにいた他の局員たち、更にカミーユにまで起きていた。
そして、彼らは見えてしまう。
カミーユのすぐ隣にいる、宙に浮いた不気味な女の姿に。

「貴方は……誰!?」
「私? 彼を、ベン・バーバリーを追ってここまで来ただけの女よ。でも、この子も意外と惹かれるものを持っているようね」

女は、隣にいるカミーユに興味を示したのか、彼の髪にそっと手を添える。

「! カミーユ君、その女……いいえ、その死神から離れるのよ!!」

オーリスの絶叫に我に帰ったカミーユは慌ててその場を飛び退く。
死神は少しだけ残念そうな顔をしながらも、言葉を紡ぐ。

「カミーユ……、素敵な名前ね。お前から感じるわ、死んだ人たちの思いを背負うことで強くなる力を。……その力、何処に行くのかしら?」

そう言い残し、死神が消えるのと同時に、その場にいた全員の視界が元に戻った。
呆然となる一同。
その場の空気を入れ替えるかのごとく、「グランガイツ・クルセイダーズ」と呼ばれる、ギンガ・ナカジマ率いる陸士新生64部隊が報告のためにやって来た。
それもわざわざ隊員総出で。
彼らを見て、瞬時にオーリスは思い出す、「ベン・バーバリー」と言う名前の男を知っていることを。
よりによって、ギンガの部隊の隊員であることを。

「バーバリー二尉、貴方に会いたがっていた人がついさっきまでここにいたわ」
「自分に? 一体誰ですか?」
「死神よ。とーっても綺麗な」

その言葉に、ベンは一気に青ざめる。
そして、腰を抜かして倒れた。
それを見ていたカミーユは、オーリスの耳元で囁く。

「あの死神と面識があったみたいですよ」
「リアクションを見る限り、そうみたいね……」

55 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:12:36 ID:Qhx2olcM
地上本部前。
書類を届け終え、帰りのタクシーを待つカミーユ。
とそこに、携帯電話が鳴る。
液晶を確認してから、カミーユは電話に出た。

「カミーユ・ビダン。どうした? エリオ。帰ってきたら部隊長室に? はやてがΖガンダムの事で話したいことがあるって? わかった」

電話を切り、タクシーを待ちながら考える。
タクシーが来たのはそれから数分後であった。


機動六課隊舎、部隊長室。
はやてとカミーユがいる。
疾風の口から告げられたことは、カミーユにとって驚くべきものであった。

「改造する!? Ζガンダムをデバイスに!?」
「そうや。Ζガンダムはこの世界で言えば質量兵器。今更やけど、このままやと、向こうがうるさいのよ」
「デバイスじゃなくても、エンジンや武器周りを魔力式に換装すれば済むと思うけどな」

もっともなことを言うカミーユ。
だが、はやては首を横に振る。

「カミーユ君にリンカーコアが無かったらそれでいこうと思ったんやけど……」
「……待ってくれよ、あの時の検査じゃ魔力資質は無いって、シャマルさんからお墨付きもらったぞ」
「あん時はな。でも私も妙に気になってたし、最近なのはちゃんが『魔力資質が無いんじゃなくて、目覚めていないだけかもしれない』って言い出したから、こっそりシャマルに調べてもらったんよ」

はやては、シャマルから提出された一枚の紙を、カミーユに手渡す。
その紙に書かれていたデータを見たカミーユは己の眼を疑った。
シャマルがこっそり行った検査は、数日に渡る物であり、日が経つにつれ検出された自分の魔力資質が高くなっていたのだ。

「1週間前はB−、今日に入ってからAAA+!? 異常だ! なのはでもランク一個上げるのにどれほど時間がかかったと……」

感情が高ぶるカミーユ。
しかし、はやてはあくまでも冷静に、落ち着いていた。

「その魔力、Ζガンダムの武器とエンジンを魔力式に変えただけじゃ活用できんし、それ以前にニュータイプの力だけで戦ったら、また押し潰されるかもしれんよ。サイズがサイズやから、改造はここやなくて本局の設備で行う。以上」
「発狂しないためにも魔法の力でもΖガンダムを動かせと言うのかよ。で、いつ行けばいいんだ?」
「……話はつけてあるから、明日になったらΖガンダムごと転送魔法で本局に送るよ」
「了解」

少し疲れを見せながら、了承するカミーユ。
軽く敬礼してから、彼は部隊長室を後にした。
それを見計らい、はやてはシャマルから提出された「もう一枚」に目を通す。
それは、何故か「高町なのは」についてのものであった。

「ひょっとしたらニュータイプ能力が、なのはちゃんの魔力と共鳴したせいかもな、カミーユ君のリンカーコアが覚醒したんは。なのはちゃんの方も……」

その呟きを聞いたのは、はやてのスカートの中に隠れて一部始終を聞いていたリインフォースIIだけであった。

56 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:14:44 ID:Qhx2olcM
夕方。
定時になり、カミーユは一足先に帰宅。
その身を預かっているのはあくまでも本局の方だが、何処に住まわせようか? で揉めてしまい、その場にいたはやての提案でナカジマ家に居候することになったのである。
ゲンヤとギンガは帰らない日が多く、スバルは六課の寮にいるため、必然的に家の守りを任される形になっていた。
そのため自炊する気になれず、食事はもっぱら外食や買ってきた物か、デリバリー任せ
今週は任務の都合上ゲンヤとギンガは帰らないため、一週間同じ店の違う種類のピザで済ませようかと思っていた矢先に携帯電話が鳴る。
液晶には、ゲンヤ・ナカジマの名が映し出されていた。

「もしもし」
「ゲンヤだ。カミーユ、今何処にいる?」
「家に着いたところですけど」

ゲンヤからの電話。
訝しく思うカミーユだが、それをおくびに出さずに応対する。

「ああ、ちょうどギンガと、アイツの部隊の連中と一緒に晩飯食いに行くことになってな。せっかくだからスバルとお前も誘うことにしたんだ。スバルにはもう連絡してある」
「いいんですか?」
「どうせ俺たちが帰ってこないと飯作らないんだろ? いつも出来合いばかりじゃ野菜不足になるぞ。家にタクシー呼ぶからそれに乗れ」

その一言を最後に、ゲンヤからの電話は切れる。
行動パターンがしっかり読まれていることに、少しげんなりするカミーユ。
それと同時に、今日になってようやく気付いた疑問を口にする。

「料理教室にでも行こうかな? そう言えば、試験運転の時、どうしてΖガンダムは前より楽に飛べた上に推進剤が殆ど減らなかったんだ? 本局に行った時にそれも調べてもらうか」

……君のニュータイプの力が、バイオセンサー経由で空気抵抗と燃費を抑えているからだよ、変形しなくても楽に飛べるのと推進剤が中々減らない点に関しては。


都内某所の居酒屋。
ナカジマ親子に新生64部隊、そしてカミーユで店は貸切同然の状態であった。
ギンガとバーバリー副長に、No.3のルイス以外は「バカ」だらけの新生64部隊はとにかくはしゃぐ。
みんないい気分で楽しんでいる時、突如として店の戸が激しく開けられる。
そこにいるのはどこか疲れた顔をした中年の男。

「赤い彗星……、赤い彗星! 俺は赤い彗星のシャアだ! ジオン復興のため、俺は立ち上がる! ジークジオン!! ジオン・ダイクン、ばんざーい!!」

中年はそう叫び、走り去っていく。
後に残された者の内、唖然としていたのはカミーユだけであり、他はみんなどこか達観していた。
ゲンヤはそっと口を開く。

「ガンダムシンドローム。数年前、こっちに『機動戦士ガンダム』が知られてから発見された新種の精神疾患だ。陸と海の確執を見て心が疲れた局員、特に陸所属で『ガンダム』に夢中になったヤツが陥りやすいとさ」
「……嫌な話ですね。今のを本物が見たらなんて言うか……」
「最近のレジアスを見てると、『むしろもっと増えてくれ』って思う俺がいる……。そのたびに自分が嫌になるんだ」

どこか寂しげな顔で酒を飲むゲンヤ。
ギンガやバーバリーたちもやるせない表情になる。
それを見て意を決したカミーユは、焼き鳥の串を手に持ち、ゲンヤの口に突っ込んだ。
驚いたギンガは慌ててカミーユを諌める。

「カミーユさん!」
「……忘れましょう。今の人の事は。今だけは全部忘れて、バカ騒ぎして」

それが合図であった。
お返しとばかりに、ゲンヤはカミーユにヘッドロックをかける。
それを見て騒ぎ出す新生64部隊の連中に、慌てて止めるナカジマ姉妹。
とりあえず、さっきの「ガンダムシンドロームの男」のことを忘れさせることに成功したカミーユではあった。

57 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:15:42 ID:Qhx2olcM
時空管理局本局。
六課で保管されていたΖガンダムごと転送させられたカミーユを、デバイスマイスターたちが総出で出迎えた。
しかも全員が異様に興奮しており、端から見ると不気味以外の言葉が当てられない。
カミーユは愚痴るように呟くが、それを聞いた局員の一人がそっと訳を説明する。

「大げさだな……」
「ガンダムを弄れますからね」
「けどこいつはみんなが知っているRX-78じゃ……」
「それでも、『ガンダム』が実在していたと言う証拠の一つです」

彼らは知らないが、「機動戦士ガンダム」には続編がある(カミーユはちゃんと知っている)。
こちらに来る前のカミーユの活躍を描いた「機動戦士Ζガンダム」、精神疾患が完治するまでに起きた第一次ネオ・ジオン抗争を描いた「機動戦士ガンダムΖΖ」、これから起きる未来の出来事と思われる「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」。
それ以降も第97管理外世界では「ガンダム」の名を冠した作品が多く創られた。
幾つもの歪みと確執、そして「御大」の情念を背負いながら。

「俺は『エンジンと武器を改造するだけでいいんじゃないか?』と言ったんだけど、聞き入れれてもらえなかった」
「ガンダムですからね。エンジンと武器換えた位じゃ向こうは黙りませんよ」
「デバイスに改造しても、レジアスの信者は言い続けると思う」

サラリと流し、カミーユは約一ヶ月前の出来事を思い出す。
忘れもしない、事情聴取が終わり、ゲンヤから「俺たちのところで働かないか?」と誘われた時のことを。

58 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:16:57 ID:Qhx2olcM
事情聴取に立ち会ってくれたギンガとはやても勧めてくれたので、「それもいいかも?」と思い始めていた。
どう答えようかと迷っている時に、いきなり部屋に入って来た威圧的な態度の男の姿が脳裏に鮮明に映し出される。
有無を言わさず、その男、レジアス・ゲイズはいきなり我々の側につけといってきたのだ。
その態度にムッと来たカミーユは、まだ「ゲンヤさんの下でなら働いてもいいかな?」と考えていたため、その時は「考えさせてください」と答えたのである。
が、直後にレジアスは声を荒げ、「質量兵器は禁止されているんだぞ!」と怒鳴ったため、短気なカミーユも一気に声を荒げた。

「うるさいな! それが次元漂流者に接する態度かよ! それでよくゲンヤさんの上司が出来るな!?」
「言わせて置けば……! 質量兵器に乗っていきなり市街地に着陸しておいて権利を主張するんじゃない!」
「こっちはその質量兵器に拉致されたせいで、ここに来てしまったんだぞ! それ以前に、文句をつけたきゃ、まずその性格を矯正しろよ!」

互いにヒートアップしており、もはや他の者の声が聞こえているかも怪しい。
掴み合いになりそうになった瞬間、ゲンヤが慌てて間に入る。

「落ち着いてください、中将! カミーユ、お前も熱くなるんじゃない!」
「上官に逆らう気か貴様!!」
「どいてください! この馬鹿の唾がかかりますよ!!」

流石に見かねたのか、ギンガとはやても二人を止めに入る。
カミーユの方は、ギンガにまで止められたせいか、ようやく大人しくなり始めた。
しかし、はやてが止めに入ったレジアスの方は……。

「犯罪者が正義であるワシに触るな!!」

そう言って、はやてを振り払い、はやては床に倒れた。
更に倒れたはやての顔を蹴ろうとした直後、レジアスは肩を掴まれ、引っ張られる。
肩を掴んだのはカミーユであった。

「お前、自分が何をしかけたのか分かっているのか!? それは『正義』がすることじゃないんだぞ!!」
「貴様、犯罪者を庇う気かー!」

59 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:19:22 ID:Qhx2olcM
レジアスはそう叫び、肩を掴むカミーユに手を振り解く。
そしてその勢いを利用してカミーユの顔を殴る。
それを見たゲンヤはついに怒号を上げた。

「自分が何をしたのか分かっているのですか、あなたは!!」
「犯罪者を庇う奴を殴って何が悪いと言う! あの犯罪者に師と仰がれる貴様は口出しするな!」

ゲンヤも遂にレジアスに意見する。
レジアスの答えは、怒号と鉄拳。
ゲンヤが殴られたのを見たカミーユは完全に、「キレ」た。
レジアスの股間に狙いを定め、一気に蹴り上げる。

「ぐご、が……!?」

悶絶するレジアスに容赦することなく、カミーユは叫ぶ。

「そっちが殴ったからだぞー!!」

渾身の力を込めて、レジアスの顔に強烈な回し蹴りを食らわせるカミーユ。
蹴られた勢いで、レジアスの顔面は見事に壁に叩きつけられる。
そのまま倒れこんだレジアスを、カミーユは踏みつけた。

「俺は『手』を上げてはいないからな!!」

更にもう一撃足で食らわせようとした直後、突然物凄い力で羽交い絞めにされる。
騎士甲冑をまとったはやてがカミーユを羽交い絞めにしているのだ。

「ええかげんにし! やり過ぎや! おちつくんや、ホラ、深呼吸」

はやてに言われ、深呼吸し始めるカミーユ。
気のせいか、少しづつ昂った感情が沈静化していく。
レジアスの方も、秘書であるオーリスに起こされる。
が、なおもカミーユの方を睨み、吠え立てた。

「貴様、よくもワシを蹴ったな!」
「俺だけじゃなくてゲンヤさんまで殴っておいてその言い草かよ! 正当防衛、って言葉を辞書で調べてから言え!!」

片や蹴られたダメージで動けず、片やはやてに羽交い絞めにされて動けない。
当然、また舌戦になる。
結局、この舌戦はレジアスがオーリスに引っ張られる形で退場させられるまで続いた。
この時の罵倒合戦(とケンカ)が原因で、レジアスとカミーユはお互いを徹底的に嫌い合うようになったのである。

60 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:20:32 ID:Qhx2olcM
「カミーユさん、どうしました!? 鬼みたいな顔で明後日の方を睨んで」
「……! ごめん、あのバカとの一件を思い出したら、勝手に怒りがこみ上げてきた……」

呼びかける局員の声で我に帰るカミーユ。
一方、局員の方はカミーユの言葉から、何を思い出したのかを瞬時に悟る。

「……アレですね。ゲイズ中将相手の罵倒合戦。それのせいで、向こうから移ってきた人たちの間じゃ、結構人気者ですよ、カミーユさんは」
「無理やりこっちに移された人たちの間で?」
「……向こうからこっちに移った人材全部が、強引に引き抜かれたわけじゃありませんよ。引き抜きを拒否するケースだって少なからずあります。中には引き抜かれて心底喜ぶ人までいますし」

局員の説明に、呆然となるカミーユ。
引き抜かれて喜ぶ?
目が点になった彼を見て、苦笑しながら職員は続ける。

「最初から引き抜かれるつもりで陸に入る人もいれば、志を持って陸に入ってゲイズ中将の偏屈さに失望して引き抜きに応じる人もいる、ってことですよ」
「後者に当てはまる人たちと一緒に食べるご飯は、とても美味しくなるだろうな」
「ハッキリと言いますね。と、私はこれで持ち場に戻りますね」

そう言って、局員はその場を去る。
カミーユも、Ζガンダムが運ばれていった、工房の方へと向かおうとしたが、直後に携帯電話が鳴る。
液晶を確認すると、「ミゼット・クローベル」と出ていた。

「カミーユ・ビダンです。どうしたんですか? ……そんな理由ですぐに来い? ミゼットさん、ちょっと待って……、切られた」


一時間後、ミゼットの執務室から解放されたカミーユは、ようやく工房にたどり着いた。
工房内では、マイスターたちが一心不乱かつ、異様なまでに手早くΖガンダムを分解し、部品を換えたり、組み込んだりしている。
幾らなんでも手際が良すぎる、と感じたカミーユの後に、いつの間にかミゼットが立っていた。
それに気付き、カミーユは思わず飛び退くが、ミゼットは笑う。

「手際が良すぎる、だろう? ここに流れ着いたガンダムは、Ζ嬢やが初めてだが、モビルスーツ自体はずっと前からこっちに来ていた。今Ζ嬢やをいじっている子達はそれに触れ、知る者達に教えを請うことで知識を得て、それを活かしている」

ミゼットの説明に驚愕するカミーユ。
更にミゼットは、何故今までそれが知られていなかったについても、話し始める。

「ミッドチルダで『機動戦士ガンダム』が知られる以前から、宇宙世紀世界からの漂流者は存在し、MSもまたその姿を現した。もし『MSがある世界』の実在が発覚すれば、MSを欲しがる連中は絶対に出てくる。レジー坊やと最高評議会はその筆頭かも知れない」

ミゼットは、レジアスだけでなく、最高評議会にもある種の不信を抱いているようだ。
カミーユは表情だけでそれを読み取る。

「MSとそれに関わる者達は、この世界における質量兵器禁止の理由も考慮し、『MSの兵器としての攻撃力と汎用性の高さ』という危険性を証明することでこちらの協力を得て、MS諸共自分たちの存在を隠した。後になって『機動戦士ガンダム』を見たときは驚いたよ」
「けれど、Ζガンダムが市街地に降り立った事で、モビルスーツが実在していることを、隠し通せなくなったと?」
「そう。ひょっとしたら、Ζ嬢やはそれが目的だったのかもしれない」
「Ζガンダムに意思がある。その意思がモビルスーツの実在を世論に教えた。怪談ですね。ところで、改造にはどれ位かかるんですか?」

カミーユの問いに、ミゼットは黙って指一本を立てる。
それを見て、カミーユは考える。
一日で終わるなら、「明日には終わる」と言うはずだから。
瞬時に気付く、「一日」では終わりそうに無いことに。

「1週間、ですか。何でそんなにかかるんですか?」
「……複雑すぎるのよ、Ζ嬢やの体は。複製自体は異常なまでに容易だが、変形の仕方と構造が複雑すぎる。更にコストパフォーマンスと整備性も最悪。加えて、あの子たちには他のデバイスの整備や製作の仕事もある。みんな本来の仕事の合間にΖ嬢やを改造しているのさ」

思わず納得するカミーユ。
構造と変形シークエンスが複雑すぎるのと、整備性の劣悪さは、そしてコストパフォーマンスの酷さは設計にかかわりメインパイロットも務めた彼が一番良く知っている。

「一週間という日数は、あの最悪極まるコストパフォーマンスと整備性の改善に必要な時間を入れた分。デバイスに改造するだけなら『2日』で済むわ。それと、その間こっちにいてもらうよ。あの子達は君の意見を欲しがっているからね」

61 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:22:22 ID:Qhx2olcM
ミゼットの説明を聞いていたカミーユは、ふとΖガンダムの方に目をやり、異変に気付く。
マイスターたちが作業を止めて一斉にコックピットに群がっていたのだ。
それを見たカミーユとミゼットは、何事かとΖガンダムに近づき、作業中のマイスターたちに話しかける。

「どうした?」
「幕僚長。いえ、さっきデバイス用データを入れたんですが、システム音声だけが書き換えられたんです」
「何だと!?」

驚いて顔を見合わせるカミーユとミゼット。
マイスターの一人が、何故かΖガンダムに入っていたシステム音声を再生する。
≪Set up≫ 二人にとって聞きなれた声が再生された。 

「なのはの声じゃないか……」
「……ひょっとしたら、これはあの子のじゃなくて、Ζ嬢やの声かもしれないよ」


それから時が過ぎ、Ζガンダムのデバイス化は順調に進んでいた。
時に、元々入っているデータやフレームの構造に関してカミーユからの助言を受けながらも、マイスターたちは作業を進める。
作業開始から三日目、デバイス化自体は終わり、コストパフォーマンスと整備性の改善作業に入った。
割り当てられた部屋で、『機動戦士ガンダム』関連の書籍を読んでいたカミーユは、何気なしにテレビのスイッチを入れる。
どうも臨時ニュースをやっているようだ。
カミーユは、映っていた物を見て愕然とする。
「MS-06 ZAKU II」、それがガジェットに攻撃している光景がテレビに映っていたのだ。
更にテロップを見て、目を見開く。

「『これは生中継です』だって!? ミゼットさんに知らせないと!」

慌てて携帯電話を操作し、カミーユはミゼットに電話する。
すぐにミゼットは出た。

「カミーユ・ビダンです! ミゼットさん! ニュースで他のモビルスーツがガジェットと戦っているのが中継されています!」
「さっき政府の方から聞いた!」
「何をやっているんだ! あいつらは!」
「Ζ嬢やのせいで『モビルスーツの実在』が証明され、隠れる理由が無くなった……。今までスカリエッティと水面下で火花を散らしていた彼らは、開き直ってここぞとばかりに大手を振ってきたようだね」

カミーユが電話でミゼットと話す最中も、ザクはガジェットを攻撃する。
電話に集中していたカミーユは気付かなかったが、ザク・マシンガンから飛び出る弾は鮮やかな色をしていた。
見る人によっては、実弾に「魔力素」がコーティングされた特殊弾であることに気付いたはずである。
元の数が少なかったせいか、ガジェットはすぐに全滅、何故かザクは喜び勇んで小躍りしだした。
中継が、ヘリから地上のスタッフに移る。
ザクの足元で危険を顧みず、陸士新生64部隊も一緒に小躍りしている光景が映し出された。
よく見ると、ザクの足元には、ガジェットの残骸が転がっており、総数は明らかにザクが破壊した数を上回っている。

『元ザクハンターとしてどうかと思うが、さすがに今回は感謝するぜ、そこのザク!』

新生64部隊のNo3、パパ・シドニー・ルイスがザクに礼を言う。
ザク(に乗っている奴)の方も嬉しいのか、口元を掻く様な動作をし、さらにマニュピレーターを頭部に置くなど、コミカルな動きを見せる。
『照れるなー』と言う意味のジェスチャーだろう。
更に、ギンガがザクに話しかけている。
やたら大人しく、そのまま新生64部隊に連れられ、ザクが去っていく。

「ザクがギンガの部隊に保護されました」
「こっちも確認した。あのザク坊やのせいで今から緊急会議だ。切るよ」

ミゼットの方から電話が切られる。
カミーユはザクが人間に連れられて歩く姿が中継されているのを見て、不覚にもテレビに映るザクの姿を可愛く感じていたが、同時に市街地の心配もする。

「アレが歩いても道路は大丈夫かな?」

……道路以外にも心配する点が色々あるでしょうが。

62 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話前編 :2009/03/05(木) 22:23:11 ID:Qhx2olcM
作業開始から4日目の朝。
何故かクロノ・ハラオウン提督がいきなり現れた。
フェイトから借りたビデオで『機動戦士Ζガンダム』を見たことがあるクロノは、一目カミーユの姿を見ようとスケジュールの合間を「突いて」わざわざ来たのである。
ちなみに、カミーユはフェイトに見せてもらった写真でクロノを知ってはいた。
カミーユに当てられた部屋に、クロノは入り、とりあえず挨拶する。

「おはよう、カミーユ・ビダン君。よく眠れた……」
「も、もう朝なのか……? 出来ればノックはして欲しかったな」

クロノが目にしたのは、目が充血しながらも、プレイヤー内のDVDを交換しようとしていたカミーユであった。
手にしているDVDのパッケージイラスト見て、クロノは頭痛を覚える。

「一晩かけて『機動戦士ガンダム』を見たのか、君は?」
「いや、これから『めぐりあい・宇宙編』を見ようとしてたところさ」
「……身支度を整えて、朝食をとった後でもいいだろうに。DVDはリアルタイムと違って置いてきぼりにはしないぞ。今日の夜はちゃんと寝ろよ」

そう言い残し、クロノはそっと部屋を出る。
カミーユはプレイヤーとテレビのスイッチを切り、時間を確認。
後30分もすれば食堂は局員たちでごった返すだろう。
とりあえず、歯を磨きシャワーを浴び、着替える。
そこまでが終わったところで、さっき会いに来た男が、フェイトの義兄、クロノ・ハラオウンであることにやっと気付く。

「そういえば、フェイトに写真を見せてもらったな。アレがお兄さんか。……名乗りもしないでいなくなるなんて、少し失礼な人だな」

徹夜のせいで頭が回っていないらしく、普段のようにカッとなることが無かった。


作業終了当日。
工房についたカミーユは、そのまま安置されているΖガンダムに乗り込み、起動させる。
久しぶりにΖガンダムを動かすが、その動きは全く衰えていない。
気のせいだろうか、乗っている間は体が軽くなったような感じに包まれる。
そこに、ミゼットから通信が入った。

「クラナガン市内にガジェット群が出現。六課が迎撃に出た。あの子達以外でアレを圧倒できるのは君とΖ嬢やだけだ。頼めるかい?」
「了解。転送魔法の準備をお願いします!」

カミーユが了承すると同時に、転送魔法が作動。
そのままミッドチルダへと、カミーユを乗せたままΖガンダムは戻っていく。
転送される直前、カミーユは掛け声を出した。

「カミーユ・ビダン、Ζガンダム、行きます!」

63 黒の戦士 :2009/03/05(木) 22:24:14 ID:Qhx2olcM
前編はこれで投下終了。

中編は明日ごろに投下します。

64 黒の戦士 :2009/03/06(金) 19:54:49 ID:i/Shd8pM
投下します

今回は中編です

65 黒の戦士 :2009/03/06(金) 19:56:21 ID:i/Shd8pM
クラナガン上空。
転送されたΖガンダムはそのままウェイブライダーへ変形。
本局から送られたデータに記された、出現位置目掛けて一気に飛ぶ。
既に機動六課が迎撃している。
それを見たカミーユは、変形と同時に叫ぶ。

「Ζガンダム、セットアップ!」 ≪Set up≫

コックピット内のカミーユを光が包む。
カミーユのバリアジャケットは、心なしかクワトロ・バジーナのあの赤い服と、なのはのバリアジャケットの折衷のような衣装であった(さすがに腕の長袖付き&スカートなし)。
しかも二つの白いリボンが巻かれていた。
バリアジャケット装着が完了すると同時に、Ζガンダムが変形しながら輝き始める。
それはまるで、元の色のまま輝きだしたかの様に……。
変形と、稼動携帯への移行が終わったΖガンダムの姿は、まるで全身が元の色のままメッキを施されたかのようであった。
それを見ていたヴィータが呟く。

「本物がエクストラフィニッシュバージョンになった……」

そんなヴィータの呟きなど露知らず、Ζガンダムは魔力式ビームライフルをガジェットの一体に向け、引き金を引く。
カミーユの急速に肥大化する魔力により、更に強力になって放たれたビームは掠っただけでガジェットたちをなぎ払い、直撃した地点にいたガジェットを瞬時に蒸発させる。
直後に、まるでモビルスーツの核融合炉を破壊した時の如き大爆発が起き、巻き込む形で他のガジェットを破壊した。

「非殺傷設定でも、AMFをものともしない威力をもたらすのが俺の魔力か。これならバルカンで十分に対応できる!」

バルカンから、なのはのそれと全く同じ色の魔力弾が雨となって放たれる。
距離を置こうとしたガジェットが瞬く間に蜂の巣にされ、爆発。
それを見て判断した他のガジェットが、接近して足元からの攻撃を試みるが、瞬く間に全部踏み潰される。
別のガジェットは接近を諦め距離を置こうとして離れた瞬間に、バルカンで吹き飛ばされた。

「死角に回り込もうとせずに近づくから簡単に踏み潰される! オマケに人が動かしているわけではないから、退こうとしない。でもスカリエッティの機械なら引き際を判断出来てもいいだろうに! それが出来ないから追撃されるんだぞ!」

叫ぶカミーユ。
傍目にはΖガンダムは呆然と立っているように見える。
とそこに、エネルギー弾がΖガンダムの右足目掛けて飛んできた。
Ζガンダムはそれに気付き、紙一重で足を上げて回避。
直後に起きた激しい爆発でバランスを崩しそうになりながらも片足立ちを維持する。
その威力にカミーユは戦慄を覚え、直感でガジェットではない誰かが撃ったと悟った。

「Ζのビームライフルと同じ威力の砲撃!? ガジェット? 違う! 今のは人が撃った!!」

一方、エネルギー弾を撃った方はチャージしながら、「足を上げる」という方法で自分の一撃を回避したΖガンダムに驚愕する。

「アタシの一撃をあんな方法で避けるなんて……。RX-78の血が流れているから!?」
「今はファーストガンダムは関係ないだろう!」

Ζガンダム越しに、カミーユの声がディエチに放たれる。
それからすぐに、Ζガンダムが再びビームライフルの引き金を引く。
ディエチの方もタイミングよくチャージが完了しており、Ζガンダムより先に引き金を引いた。
イメーノスカノンとビームライフルの撃ち合い。
何の偶然か、カミーユは非殺傷設定でディエチ自身に、ディエチはビームライフルに照準を合わせていた。
二つの軌跡はそのまま衝突、激しいプラズマの四散という形で相殺される。

「相殺!?」
「ディエチ!」

驚くディエチの耳に、ウェンディの声が聞こえた直後、彼女の体はイノーメスカノンごと宙に浮く。
ディエチが視線を移すと、自分の手を掴み、必死でライディングボートを乗りこなすウェンディの姿が見えた。

66 黒の戦士 :2009/03/06(金) 19:57:46 ID:i/Shd8pM
「さ、さすがにイノーメスカノンは重いっス!」
「少しだけ我慢して。もう一発撃つから!」

ディエチは叫ぶと同時に、三発目を撃つ。
Ζガンダムはまた避けようとしたが、回避行動に出る前に、別の誰かが発動させた防御魔法にぶつかったエネルギー弾はそのまま霧散した。
Ζガンダムのコックピットの前に立ち塞がるように、なのはが宙に浮いている。
今の結界はなのはが発動させたものであった。

「今のはなのはが!?」
「にゃはは……余計だった?」
「まさか。おかげで向こうに隙ができた!」

カミーユは答えるのと同時にグレネードランチャーを発射。
ウェンディは発射されたグレネードの機動から、当てずっぽうで撃ったと思い込む。

「ガンダムでも戦闘機人を狙うには腕と集中力がいるっス! そんな撃ち方じゃ落せないっス!」
「生身の人間に当てるつもりはないさ!」

カミーユの狙いは、グレネードランチャーの直撃ではなく、爆風によってライディングボートのバランスを崩すこと。
一緒に乗っているならともかく、ウェンディが片手でイノーメスカノンごとディエチを吊り上げている状態では、近くで爆風がおきただけでも失速に繋がる。
ましてや、飛んできた破片でバランスを崩すこともあるのだ。
当然、廃ビルの壁スレスレで飛んでいたウェンディは、そのビルに命中、爆発したグレネードが起こした爆風と、飛んでくる破片をまともに受けてバランスを崩す。

「これが狙いだったか、あのガンダム!!」
「謀ったなー! っス!!」

物の見事にライディングボートは着地に失敗。
ディエチとウェンディは得物諸共転がりまわる。

「ぺっぺっ! よくも……」
「勝負はまだ……」

戦う意志を捨てていないディエチとウェンディは尚も得物をΖガンダムに向けるが……。
直後に、スバルが背後からディエチの首根っこを掴み、ティアナがクロスミラージュをウェンディのうなじに突きつけた。
それを見ていたカミーユは、Ζガンダム越しに二人に声をかける。
何故かΖガンダムはサムズアップした。

「ナイス不意打ちだ」

カミーユの言葉に、顔を向けることなく、スバルとティアナは空いている手をΖガンダムに向け、Vサインをした。
それからすぐに、ディエチとウェンディはバインドで拘束される。
こうして、ストレージ(?)デバイス、Ζガンダムの初陣は終わった。

67 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 19:59:05 ID:i/Shd8pM
その頃、地上本部にあるレジアスの執務室。
画面にはΖガンダムの戦闘映像が移っていた。
それを見て、レジアスはあっと言う間に表情を強張らせる。

「この映像は何だ? 何故あの質量兵器がガジェットを攻撃している!?」
「先程までの、時空管理局本局古代遺物管理部、機動六課の戦闘映像です。MSの隣にいる女性は、空戦Sの所属魔導師です。MSに関しては、恐らく本局側によって既に動力と武装を魔力式に改造されているかと。搭乗者に関しては、本人が自発的に協力しているとのことです」

淡々と解説するオーリス。
更に一言付け加える。

「ちなみに、4日前に市内に突如迷い込んだザクの搭乗者、『ワイズマン』はある部隊との接触が目的でしたが、その部隊とは他ならぬ機動六課のことです。また、既に接触を果たしており、身柄は向こう側預かりとなっています」
「いつの間に……。それに、地上部隊にSランクの空戦魔導師なぞいたのか?」
「彼女は教導隊所属で、書類上は出向の身ですから。ちなみに名前は高町なのは。もっとも、それ以前に、中将に言えば話がこじれるだけであることを向こうは察知しているものかと」
「第97管理外世界出身の、ガジェットモドキの元半死人か。……機動六課の後見人と部隊長は?」

レジアスのこの一言に、オーリスは仏頂面で端末を操作。
三人の姿が映し出される。
レジアスは服装から、本局と教会の者であることを察した。

「リンディ・ハラオウン総務統括官とその御子息、クロノ・ハラオウン提督、そして聖王教会の教会騎士団所属騎士であるカリム・グラシア女史の計三名です」
「英雄気取りの青二才どもが。特にこの2匹、闇の書の暴走で逃げ遅れて、グレアムに自分の艦ごと消し飛ばされた大間抜けのクライド・ハラオウンの身内ではないか!」
「……何年か前にそのような暴言をクローベル幕僚長の前で言って、大将への昇格が見送られたことをお忘れですか? なお、部隊長は八神はやて二等陸佐。魔導師ランクは総合SS。同隊にはフェイト・T・ハラオウン執務官も所属しています」

オーリスは、若干棘のある言葉で戒めながら続ける
その一言に、レジアスは一気に声を荒げた。

「八神はやてだと!? グレアム共々『闇の書事件』の首謀者ではないか!! それにフェイト・テスタロッサはP・T事件の容疑者の一人だぞ!」
「……グレアム提督はその件で自主退役しており、彼女の方は既に執行猶予を満了しています。それ以前に事件自体、彼女まで首謀者と見なすのはどうか?、という意見も未だにあります。ハラオウン執務官の方は、当の昔に無罪が確定しておりますが」
「犯した罪は消えん! 二匹とも闇の書諸共消滅すればよかったものを! プレシア・テスタロッサの走狗だった出来損ないのクローンの時といい、今回といい、本局と『海』は正義を何だと思っているのだ! あのような犯罪者に隊を任せるとは……」

はやてだけでなく、フェイトのことも罵り始めるレジアス。
「正義」に相応しくない悪辣な口ぶりと表情に、オーリスは表情を変えないまま露骨に嫌悪感を抱いた。
流石に頭に来たのか、それと無く毒が込められた一言で、レジアスに釘を刺す。

「今の椅子と命が惜しかったら公共でそのような発言はしないようにお願いします。中将はここ数年、地上部隊用のAMF対策予算を全て棄却しています。危機意識があるのならまずそれを通してください。無策だから向こうが代わりに行動したと考えるべきです」
「ぬぐ……。オーリス、近く査察しろ。徹底的に粗を探せ。もし見つかったらあの二匹を査問だ」

釘を刺されても尚懲りないレジアス。
「手土産持ってはやてちゃん側に寝返りたくなりそう」と、考えながら、とりあえず従うオーリス。
無論、言葉の毒を残すことも忘れない。

「了解しました。その代わり、AMF対策の予算は通してください。いつまでも地上部隊でガジェットに強いのが『リジーナ』の魔力式改良型を使う陸士新生64部隊だけでは、余りにも格好がつきません」
「ぐぅ……。分かっておる……」

その光景を、死神が嫌悪の感情を露にしながら見ていた。

「醜い……。自分以外の英雄を認めようとしなかった為に、英雄になり損ねた無様な男。その腐った魂、私の方から願い下げ……。オーリスは……良かった、はやての側に乗り換えるかで迷っている。早く寝返ろ、お前の人として堅実な理性も、私の欲する魂♪」

さっきとはうって変わって満面の笑みでオーリスを見つめる死神。
一週間以上前に感じた視(死)線を背後にまた感じたオーリスは振り向くが、既に死神は姿を消していた。

(さっきまで、あの死神がいた……。お父さん……、だけじゃない、私のこと『も』値踏みしていたと言うの……?)

68 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:01:46 ID:i/Shd8pM
一方、ジェイル・スカリエッティのラボ。
潜伏中のナンバー2の報告から、ガジェットを指揮していたディエチとウェンディが捕縛されたことを知り、ジェイル・スカリエッティは荒れていた。
それを、オールバックの女性と、リーゼントの男性が呆れた顔で見ている。

「大将、落ち着けよ。二人捕まっただけだろ」
「二人『も!!』だ! 私の娘が二人も! 捕まったんだぞ!」
「すぐに救出、は勘弁してくれよ。捕まえたのは機動六課だ、地上部隊とは違って傷物にはしないさ」

男の言葉に、女は無言でうなずく。
一方のスカリエッティは、途端に弱気になる。

「ちょっと待ってよ、アリシア君にジェリド君! 貴重な戦力なんだよ!? 君たちの仲間でもあるんだよ!?」
「だから落ち着け。いくらAMFがあっても、カミーユと、あんたが向こうに行った際に余計な手を加えたΖガンダム相手じゃ分が悪いぞ」
「むぅ……」

スカリエッティを黙らせるジェリド・メサ。
一方、それを見ていたアフランシ・アリシア・レビルはそっと口を開く。

「最高評議会とレジアスはあくまでも広告代理店兼スポンサー、それも最低最悪のな。当てにはできぬ。だがこちらは時間がいくらでもある。愛娘たちの口の堅さを信じ、ゆっくりと救出のための策を練るべきぞ」

何処となく偉そうな口ぶりで話すアリシア。
その姿は、かつて闇の書の闇に囚われた時のフェイトを激励したあの時とは完全に違っていた。
ティターンズという道具でアースノイドもスペースノイドも減らそうとした漢、ジャミトフ・ハイマンを髣髴とさせる。

「忘れるな、我々の最終目標は第97両管理外世界と宇宙世紀世界という二つの地球を、『モビルスーツが人間を支配する星』にすることだ。それが『ディム・ティターンズ』の理想であることも、な」

その言葉にそっと頷くスカリエッティ。
しかし内心では、どうやってディエチとウェンディを救出しようかとさり気なく考える。
そこに、外部からの通信が入った。
端末をチェックし、最高評議会からのものと確認する
ジェリドは顔をしかめながら通信に出た。

「スカリエッティ・ラボ」

画像が映し出されると同時に、ジェリドは一応ハキハキとした声を出す。
そこに映っているのは、容器に入れられた3つの脳髄。
ジェリドとアリシアは何度も見たが、決して慣れない、それ以前にその言動と思想に対する嫌悪が脳髄への視覚的嫌悪感を極限まで増幅していた。
そして開口(?)一番に、その脳髄たち、最高評議会は件の戦闘の一件を口にする。

「人形の内、2体が『機動六課』如きに鹵獲されたそうだな。単刀直入に言う。その2体を処理せよ。奴らの口から我々の繋がりが露見する恐れがある」
「何を言うんですか! あの子達はそんな事はしない! 父たる私を裏切るような真似をする可能性があるとでも?」
「裏切らない可能性も『ない』。呪うなら『紛い物』を人間らしくし過ぎた己の才を呪え。これは命令だ」

69 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:02:29 ID:i/Shd8pM
最高評議会はそれだけを言って、一方的に通信を切る。
相変わらずの言い草に、スカリエッティだけでなく、ジェリドとアリシアも怒りを覚えた。
特にスカリエッティの方は、手を握る力が強すぎる余り、爪が掌に食い込み始める。
とそこに、今度はレジアスからの通信が来た。
相変わらず、やたら威圧的で尊大すぎる態度が前面に出ている。
怒りを何とか抑え、スカリエッティは応対した。

「今日はどのようなご用件でしょうか?」
「ふん……。決まっておろう。機動六課とやらに鹵獲された戦闘機人に関してだ。六課ごとでも構わん、2匹とも始末しろ」
「あの子達が、自白するとお思いなのですか?」

予測通り、レジアスもディエチとウェンディの処分を要求してきた。
怒りのボルテージが一気に跳ね上がる。
スカリエッティたちの怒りの上昇など露知らず、レジアスは当然のように続けた。

「違法研究の産物の分際で、妙に人間臭いからな。向こうに懐柔されて、いつ我々のことを洩らすかわからん」
「随分な言い草じゃないですか……。その違法研究の産物を戦力にしたがっている方のお言葉ではありませんね。そんなに疑わしいなら、査察の名目で御息女に様子を見てもらえばいいじゃないですか」
「いいアイディアだな。ちょうど査察させるつもりだったのだ。まあ、あの2匹の命運は、オーリス次第だな。では、そろそろ会議なのでな。これで失礼させてもらおう」

レジアスからの通信が切れる。
その直後、スカリエッティの顔が瞬時に憤怒の形相になったことを、ジェリドとアリシアは見逃さなかった。
すかさず、二人はスカリエッティの背中をそっと押す。

「大将、そろそろ潮時じゃないのか? 向こうの言いなりになるのも……。自分の子供と、わが子を物扱いするスポンサー、どっちをとる気だ?」
「元々奴等の手助け無しでも十分な資金と資材は確保できるだけの力を持っているだろう。今が奴らに思い知らせる時と思うぞ」

その言葉に、スカリエッティの何かが切れた。
ジェリドとアリシアの言うとおりだと気付いたのである。
憤怒の形相のまま、スカリエッティは吼える。

「そうだよ……。お金と物資は既に十分過ぎるほどあるんだ! そうと決まれば、行動あるのみだ! 思い知らせてやるぞ、最高評議会とレジアス・ゲイズ。誰のために指名手配されてあげたと思ってやがんだ!! 後は戦力の更なる充実化だけだ!」

その言葉に、ジェリドとアリシアは笑顔でハイタッチする。
「これで二つの地球は支配したも同然」とばかりの笑顔で。
と、ジェリドは何故か今まで押し込んでいた疑問を、口にしてしまう。

「ところで大将、ディム・ティターンズの『ディム』って何だ?」
「DIMENSIONの最初の三文字をとってDIM(でぃむ)」

70 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:03:40 ID:i/Shd8pM
機動六課、取調室。
スバルとティアナが、ディエチとウェンディを取り調べていたが、二人とも一向に口を割る様子は無かった。
名前を聞いた際に、「ディエチ」、「ウェンディっス。一応ディエチの妹っス」と答えたくらい。
その口の堅さに、スバルとティアナが根を上げかけた頃、様子を見に来たカミーユが入ってきた。

「思っていた以上に、口が堅いようだな」

スバルは、カミーユの方を見ながらこう洩らす。

「茶髪の子がディエチ、赤毛の子の方がすぐ下の妹でウェンディ、という名前なのが分かったぐらいです。読心術か何かで心の中を読めたら楽勝なんですけど……。」
「……ニュータイプでも、そうホイホイと心の中は覗けないし、覗く気にもなれないよ」
「やっぱり……」

ガックリとうな垂れるスバル。
ティアナも頭を抱え始める。
カミーユの方は、少し申し訳無さそうな顔でスバルを見ていた。
この光景を見たディエチたちは、「隙だらけ」と判断する。
実際、3人とも隙だらけ。
ディエチがカミーユたち目掛けて机を蹴り飛ばす。

「二人とも避けろ!」

瞬時にそれを察知して飛び退いたカミーユが叫び、遅れてスバルとティアナが飛んでくる机を避ける
机は紙一重で外れ壁に激突、それを見計らいウェンディがカミーユに肉薄した。
肉弾戦でかなりの強さを見せたスバルとティアナとは違い、カミーユの身体能力はそれほどでもないと判断した結果。
カミーユを人質にして、ここから逃げ出して仲間の所へ戻るつもりなのだろう。
ウェンディ、残念だがカミーユはホモ・アビスと空手のおかげで、体力と腕っ節はかなり付いている方だぞ。
当然、羽交い絞めにしようとして避けられ、逆に右腕と首を掴まれ壁に叩きつけられる。

「今抵抗しても、無意味だってことぐらい、分かれよ! ここが機動六課じゃなかったら、連帯責任云々で姉まで痛い思いをしていたかも知れないんだぞ!」

悲痛な顔で叫ぶカミーユ。
その表情と気迫に、ウェンディはおろかディエチも戦慄する。
カミーユの方は、不意のあの時のことを思い出す。
あの子の声が頭の中に響く、「見つけた、お兄ちゃん!」――――――

「もうお兄ちゃんはお前を殺したくないんだ!」

いきなり訳の分からないことを口にし、錯乱状態になるカミーユ。
危険と判断したティアナが、慌ててカミーユを拘束する。

「わああああああああああああ!!」
「カミーユさん落ち着いて! お願いですから!」

カミーユの悲鳴を聞きつけ、慌てて入ってきたヴィータが、カミーユをそのまま外へと引きずり出す。
ディエチとウェンディは、驚きの余り、動くことが出来なかった。

71 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:06:07 ID:i/Shd8pM
医務室。
ベッドに横たえられているカミーユは、アイマスクをつけられていた。
シャマルは、ヴィータにカミーユの状態を説明する。

「多分、『ロザミィ』ちゃんのことを思い出しちゃったのよ。彼女とウェンディちゃんが重なって、取り乱したようね」
「『妹』以外の共通点が無いのにか!?」
「……それだけ引き摺っているのよ、カミーユ君は。一度自分のニュータイプ能力に押し潰されて、それから立ち直った後も」

ため息をつくシャマルとヴィータ。
そんな二人をよそに、半強制的に鎮静化され、眠りについていたカミーユはうなされていた。
そこに、なのはが入ってくる。

「カミーユ君、大丈夫なの?」
「……取り乱しただけで、起きた時には元に戻っているわ。流石にアレくらいで押し潰されるカミーユ君じゃないわよ」

シャマルの一言に安心するなのは。
ヴィータも安心はしたが、不安は拭いきれなかった。
カミーユがいつ、また、可笑しくなるのかが気がかりで。

「最高のニュータイプ、ってのも、考え物だな……」
「キツイこと言うな。ニュータイプなのは今更否定はしないけど」

いつの間にか目が覚めていたのか、ヴィータの呟きにカミーユはアイマスクをつけたまま返す。
起き上がり、アイマスクを取ったカミーユは、軽く驚く3人の表情を見て思わず微笑む。
シャマルとなのはは呆然とするが、ヴィータは頬を膨らます。
なのはは、ここに来た理由を思い出し、カミーユに告げた。

「そうそう、はやて隊長からの伝言だよ。明日から2日間休むこと、だって」
「……なんで?」
「……今日のアレが原因だと思う。いきなりパニックを起こしたって聞いて、はやてちゃん心配してたよ」

そう言われ、黙り込むカミーユ。
確かに心配はするだろう。
だからって、いきなり休ませるものか? とカミーユは考える
それに感づいたのか、なのはが付け加えた。

「スバルたちも、ちょうど明日から二日間休みになるの。それに合わせたみたい」
「……俺は見張り役かよ」
「見張り役はスバルたちの方だと思うの……」
「ガキ扱いするのかよ」

カミーユのぼやきに苦笑するなのは。
シャマルとヴィータもつられて笑い出す。
カミーユだけが不貞腐れていた。
だからガキ扱いされるのさ。

72 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:07:33 ID:i/Shd8pM
次の日、クラナガン中央公園。
かなりの面積を誇るその公園は、まばらではあるが人が多かった。
スバル、ティアナ、エリオ、キャロらと共にそこに来ていたカミーユは、芝生に座りくつろいでいる。
今ここだけは平和だな、と感じながら。

「俺たちがこうやって和んでいる時でも、どこかでスカリエッティはロクでも無いことを企んでいるんだよな……」
「きゅくるー」

しみじみと呟くカミーユ。
しかしスバルたちは春の陽気に誘われ眠りこけており、聞いていたのはフリードリヒだけであった。
それから10分後、彼女はようやく目覚める。
とりあえず、カミーユたちは集合時間と場所を決め、思い思いに公園を散策することにした。

エリオとキャロは、森の中を進んで行く中である音に、何かを引きずる音に気付く。
木々に遮られているために見えないが、近くから聞こえる。

「すぐ、近くだね……」
「うん……」

木々を掻き分け、音が聞こえる方に急ぐエリオとキャロ。
二人は見つけた。
何かが入ったケースをを手に持ち、それを引きずって歩いていた二人の少女を。
エリオは慌てて、携帯電話でカミーユに連絡する。

その頃、敷地内のかなり大きい池の近くで涼んでいたカミーユは、エリオからの着信に出る。
エリオからの連絡に、カミーユは血相を変えた。

「持っていたケースの中にレリックが入ってた!? 場所は……」

カミーユが場所を聞こうとした直後に、轟音が響く。
空を見上げると、ガジェットに混じってモビルスーツが飛来したところであった。
そのまま一気に着陸するモビルスーツ。
カミーユはその機体が、「ティターンズ」が使っていたものであることに気付く。

「バーザム? 誰が乗っているんだ!? エリオ、ガジェットと一緒に、モビルスーツが来た! キャロと一緒にその子たちを連れて避難するんだ!」

通話を切り、携帯電話をなおすカミーユ。
不意に、バーザムと目が合ったかのような感覚が襲う。
あのバーザムは俺を狙っている、そう確信できる。
バーザムがビームライフルを構える直前に、唐突に池の水面から何かが飛び出す。
その何かは、バーザムをその腕で突き飛ばした。
それも、ビルスーツ。

「ズゴック、セットアップ」
≪Set Up!≫

操縦者の声が出た直後にシステム音声が響き、モビルスーツ、「ズゴック」の目と額に当たる部分に「仮面と角飾り」が付く。
機体色と相まって、「赤い彗星」を髣髴とさせるオプション(?)に、カミーユは何故か感心した。

「凄いセンスだ」

モビルスーツが地面を踏む衝撃により、一帯が軽く揺れた。
だが、市民たちはモビルスーツ同士の対峙に興奮している。
一ヶ月以上も前に突如として飛来したΖガンダム、数日前にガジェット相手に大立ち回りを演じたザク。
そして今度はモビルスーツ同士の対峙である。
逃げるのを忘れてひたすら見入っていた。
無論、カミーユは冷静である。

「何で逃げないんだよ。流れ弾の衝撃だけでも人は死ねるんだぞ!」

73 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:08:46 ID:i/Shd8pM
ビームライフルを使われる前に、赤いズゴックは一気にバーザムに肉薄する。
が、バーザムは人間じみた動きでズゴックを殴り飛ばした。
バーザムのパイロットは思わず舌打ちする。

「ビームライフルを使わせたくないようだな」
「戦闘機人は無益な殺戮が好みのようだな」
「ふん……、そこまで言うなら、貴様はビームライフル抜きで相手をしてやる!」

バーザムは手に持ったビームサーベルを起動、ズゴック目掛けて振り下ろすが、紙一重でズゴックはかわす。
ズゴックのパイロットは、不敵に笑いながら、挑発する。

「見せてもらおうか、ジェイル・スカリエッティの手でパワーアップした、ガンダムMk-IIの量産型の性能を!」
「見せてやろうじゃないか! 『赤い彗星のシャア』!!」

モビルスーツ同士の激しい格闘戦は、普通に歩く以上に激しい揺れを生む。
もはや局地的な地震である。
その激しさ故、同行してきたガジェットたちも揺れに耐えながら静観するしかない。
気のせいだろうか、それともズゴックの爪がヒートクローにでも改造されているのだろうか、ズゴックの爪とバーザムのビームサーベルが鍔迫り合いをしている。
埒が明かない、そうカミーユが考えた直後に、轟音と共に大きな影が飛来。
それは、ウェイブライダーであった。

「……あの時と同じだ。勝手に動いている!」

ウェイブライダーは変形してΖガンダムになり、直後にカミーユの眼前に着地。
コックピットハッチを開け、その手をカミーユに差し出した。
「乗って」という合図と悟り、カミーユは困惑しながらも乗り込む。

「まるで俺の危機に駆けつけたみたいに……。こうなったらなる様になれだ! Ζガンダム、セットアップ!」 ≪Set up≫

「デバイスとしての」稼働モードに入ったΖガンダムを見て、硬直していたガジェットたちは行動を再開。
Ζガンダム目掛けてレーザーを放つも、シールドから発生する防御魔法でことごとく無効化される。
「右」腕に装着したシールドを構えたまま、Ζガンダムは脚部の魔力式ハイブリットエンジンで飛翔、距離を詰めて着地も兼ねて、ガジェットの内の数体を踏み潰す。
そして、空中にいるガジェットに対して、「左」手に持ったビームライフルを構え、発射。
ガジェットたちは瞬く間に撃ち落された。

「こっちより遥かに高い位置にいれば、気兼ねなく撃てる!」

Ζガンダムの姿を確認したバーザムは、ズゴックと距離をとり、ガジェットを盾にしてかく乱。
標的をΖガンダムの方へ変え、急接近する。
ビームサーベルの斬撃を、シールドで防ぎきるΖガンダム。
不意に、バーザムのパイロットからの怒号がコックピットに聞こえてくる。

「さすがだな、ガンダム。妹たちを囚われた悔しみ、その命で晴らさせて貰うぞ!」

パイロットがそう言うのと同時に、バーザムはゼロ距離でビームライフルを発射。
衝撃で後退させはしたが、それでも防ぎ切られてしまう。
それと同時にΖガンダムはバルカンで牽制……するはずが、カミーユの膨れ上がる魔力のせいで強力化していたため、バーザムの装甲に十分な打撃を与えることに成功する。

74 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:09:23 ID:i/Shd8pM
「馬鹿な? ガンダムMk-IIの直系のバーザムが!?」
「ガンダムMk-IIの量産機とは思えない見た目をしているから!」

止めとばかりに、Ζガンダムの鉄拳がバーザムの頭部を直撃する。
その衝撃で、バーザムはいとも簡単に倒れた。
一方、バーザムのコックピットにいる戦闘機人、トーレは舌打ちする。

「単なるメッキバージョン化ではないか……。しかし、貴様のような節操無しに捕まる気は毛頭無い。勝負は預けたぞ、カミーユ・ビダンと機動戦士Ζガンダム!」

トーレが呟いた直後、もう一人の戦闘機人が『潜り』込んできて、彼女に密着。
そのまま『潜行』して行った……。
その頃、やけに静かなのをカミーユが怪しんだ直後、ズゴックが接近し、バーザムのコックピットハッチをもぎ取った。
いるはずの戦闘機人は、いなかった。
ズゴックのモノアイ越しにそれを見た、クワトロ・バジーナは驚愕する。

「どうなっているんだ? 転送魔法でも使えるのか!?」
「クワトロ少佐、これは一体!?」
「……私にも分からん。ところでカミーユ、私は『大尉』だぞ」
「失礼しました。クワトロ・バジーナ『大尉』殿」

突如として消えたパイロットの謎に困惑しつつも、クワトロとカミーユは二人なりに異世界での再会を喜ぶ。
その後は、本当に大変であった。
駆けつけた六課による半壊状態のバーザムの移送に、今回の戦闘と、保護した少女と回収したレリックに関する報告書の作成(避難誘導に専念していたスバルとティアナは別)。
そして、クワトロことシャアに群がるガンオタたちへの応対。
結局、少女たちはそのまま入院、クワトロのズゴックはΖガンダムで運ぶこととなった。

75 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話中編 :2009/03/06(金) 20:10:53 ID:i/Shd8pM
機動六課、格納庫。
はやてとクワトロ、そしてカミーユがいた。
Ζガンダム、ザク、ズゴックの3体が並ぶ光景の中で。
はやての方はズゴックとクワトロの方を何度も見ながら、口を開く。

「幕僚長からもう一人来る、と聞いてましたけど、まさか『シャア・アズナブル』大尉とは思いませんでした」
「はやて、私は『クワトロ・バジーナ』大尉だ。ミゼット幕僚長直々の指名で機動六課に協力することになった。よろしく頼む。ところで、エリオとキャロが保護したという少女たちは?」
「検査のために聖王教会系列の病院に入院させました。あの時来たバーザムとガジェット、多分、あの子達が持ってたレリック目当てやったと思います。けど、何でカミーユ君襲おうとしたんやろ?」

あのときのバーザム飛来の原因を推理するはやて。
レリック回収をそっちのけにしてカミーユを襲おうとした原因が分からず首を捻る。
それと無く、クワトロは一言付け加えた。

「あの時、バーザムに乗っていた戦闘機人は『妹たちを囚われた悔しみ』と言っていた。恐らくカミーユを見て、レリック回収より妹たちが捕まったことへの報復を優先したんだろう。以前遭遇したことがある、眼鏡っ娘とは大違いだ」
「クワトロ大尉が会った事があるメガネに、ディエチとウェンディ、そしてバーザムに乗っていた奴……。後何人いるんだろ? 戦闘機人って。それに女ばかりなのかな?」

カミーユのさり気ない呟きに、クワトロは瞬時に反応する。

「あくまでも勘に過ぎないが、恐らく全員女だろうな。そちらの方が目の泳がせがいもある」
「だといいですねー。はやてもその方が揉みがいがあるだろうし」
「そうやなー。一人くらいロリがいてもええかなー。B地区摘まみ易いのばっかやったら流石に手応えが無いし……」

凄い馬鹿な会話に興じる3人。
このおバカなやり取りは、戻ってくるのが遅いからと、心配して来てみたなのはに怒られるまで続いた。

76 黒の戦士 :2009/03/06(金) 20:13:17 ID:i/Shd8pM
以上で中編の投下は終了。

後編は明日か明後日ごろに投下します。

77 ラッコ男 ◆XgJmEYT2z. :2009/03/07(土) 00:41:26 ID:373iQlew
書けないので、代理お願いします。
****
おまけ……のようなもの

「エックス! どうして!?」
「ス、スバル!? いきなりどうしたんだ?!」

どう言う訳なのか、エックスは涙ぐんだスバルに問い詰められていた。一体何で責められているのか?
エックスはまだ理解できなかった。

「何であんな事したの!? あたし…信じられないよっ!!」
(そうだよな…俺がいきなり乱入して戦ったんだ…信じられないのも…)

エックスはスバルが突然と戦った自分に幻滅した物だと悟った。エックスに助けられる結果になったが、
いきなり破壊行為的な行動を取ったエックスに悲しんでいた―――と言うのがエックスの憶測であった。
今の自分に出来る事と言えば、とにかく彼女に謝る事だけであろう。

「ゴメン、スバル………あの時は―――」



「"スライディング"するのは本家シリーズだけなんだよ!! エックスはXシリーズなんだよ!?」



「―――へ? ……信じられない部分はそこなの?!」

ディスプレイ画面の皆様は、こんなツッコミするなよ!?絶対だぞ!?
と言うか何故スバルがそんな事を知っているのか?有る意味大いなる最大の謎であった……
(おまけのお話は本編と完全にリンクしている訳ではありません…たぶん)


****
以上です。やっぱり間が開いて申し訳ないですorz
今回のエックスの戦闘BGMはX2のOPステージをイメージしてますw

何か誤字、脱字等がありましたらご指摘くださいませー
…次はいつだろう…

78 黒の戦士 :2009/03/08(日) 01:33:23 ID:JjeSILpg
後編を投下します。

前編と中編より長いですorz

79 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:34:19 ID:JjeSILpg
次の日、機動六課のある一室。
フェイトがはやてとなにやら話し込んでいる。
どうやら査察絡みのようだ。

「地上本部からの臨時査察?」
「そや。うちは突っ込み所が多いからな。下手すると査問に進展するかも知れへん」
「……突っ込み所自体、ここ数日で一気に増えたし……。無事に終わりそうにないかも」

深刻そうな表情で話すフェイト。
と、そこに一人の青年が話しかける。

「フェイト執務官、八神部隊長、どうしました? 深刻そうな顔をして」
「あ、バーナード、実はね……」

フェイトから査察の一件を聞いたバーナードは、呆れるようにため息をつく。
何となくではあるが、地上側の意図に気付いた様だ。

「粗探しするヒマがあったら、対AMF予算を通せばいいのに。全く……」
「バーニィ、そんなこと言わんの。レジアス中将も色々考えとるんよ」
「……アレの何処が尊敬できるのさ」

バーナード……バーニィの呆れるような問いかけ。
フェイトも呆れた表情である。
しかし、はやては暖かな微笑を浮かべながらキッパリと答えた。

「ミッドチルダの平和を願う気持ちは本物やし、何より正義感と責任感も強いやん。あんな使命感が強い人、そうおらんよ。正に『地上の正義の守護者』や」
「あんなのが、尊敬してくれてるはやてを『犯罪者』呼ばわりして蹴ろうとしたのが、ねえ……」
「優しすぎるよ、はやて……」

はやてのことが急に不憫に思えてきたフェイトとバーニィであった……。
付き合いきれないとばかりに、バーニィは足を動かす。
それを見たフェイトはどこに行くのかを尋ねた。

「何処に行くの?」
「早朝に向こうからザク・マシンガンのマガジンとSマインの予備弾にザク・バズーカの部品、そして大佐用の新しい機体が届いたんでザクの点検も兼ねてチェックして来ます」

彼はバーナード・ワイズマン。
あの時ギンガたちに保護されたザクの「中身」である。

80 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:35:21 ID:JjeSILpg
その頃、カミーユたちはクワトロの運転する車で、あの二人が入院している病院へと向う。
クワトロの車は結構な大きさのワゴン車であったため、カミーユとなのはだけでなく、スバル、ティアナ、エリオ、キャロも同行した。
まだ休日なので、みんなでお見舞いに行こう、と言うスバルの提案の結果である。
ふと、ティアナはカミーユとなのはの方を見て、あの時のことを思い出す。
無茶な訓練を繰り返し、なのはの教導を無視した挙句、頭を冷やされそうになった瞬間のことを。

「頭冷やそうか……」、なのはが泣きそうな目でそう呟き、攻撃態勢に入った直後にすぐ近くで見学していたカミーユがいきなり割って入った。
庇うように立ちはだかり、なのはを止めた直後にカミーユはティアナの方を振り向き、悲痛な表情で呼びかける。

「みんなを心配させてまで強くなって、何の意味があるんだよ……。そんなやり方でティーダさんが喜ぶのかよ!?」
「……! 何でここで兄の名を出すんですか!」
「……歯を食い縛れ、お前の無茶がどれだけなのはとスバルを悲しませているか、教導してやる!!」

カミーユは叫んだ直後、ティアナの頬に全力で平手を炸裂させる。
その衝撃でティアナは倒れるが、胸倉を掴み、さらに平手打ちを繰り返す。
自分の頬がはたかれる音に混じって、何かが呻く様な音を聞き、更に顔に何か熱いものが落ちる感触が走る。
ティアナは、呻くような音はカミーユの嗚咽であり、顔についた熱いものはカミーユの涙であったことに気付く。

「どうして……? どうして泣いているんですか!?」
「泣くしかないじゃないか……。お兄さんを誇りに思っているティアナ・ランスターが、兄の魔法じゃなくて兄を侮辱したクズの世迷い言の方を信じていると知ったら、泣くしかないだろう!! アア……うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

結局、号泣しながら両襟をつかんでティアナをシェイクするカミーユの方が頭を冷やされ、ドタバタのままその時の訓練は中途半端に終わってしまう。
その一件と、その後でカミーユとシャマルに見せられた「アレ」のせいで、自分が思い詰め過ぎているだけと知り、反省できたのがせめてもの幸運だった気がする、とティアナは思った。

あの時の回想を中断し、ティアナはため息をつく。
心配そうにスバルが話しかけてきた。

「どうしたの?」
「……カミーユさんに泣かれた時のことを思い出したのよ」

ティアナは苦笑しながら答える。
短気で子供っぽいところがある割りに、何が正しいかを考えて物を言う彼。
自分を省みることができるようになる程、彼は激情家だった。

「……ティアって、いい意味で変わったね」
「……カミーユさんに泣かれた上にあんなの見せられたら、『いい意味で』変わった挙句にそれ自覚できるようになるしかないでしょ」

疲れたように呟くティアナを見て、スバルも苦笑してしまう。
二人の会話を聞いていたエリオとキャロもつられて苦笑い。
それを見ていたカミーユだけが首を捻り、なのはは微笑む。
一方のクワトロは、病院にいるシャッハから、とんでもない報告を聞かされていた。

「何だと? 検査の合間を突かれて、二人に逃げられた!?」
「申し訳ありません、ダイクン卿。こちらのミスです」
「そんなものは挽回すればいい。それよりも、私の名字は『バジーナ』だ。ピースにもそう伝えておくように」

この会話を聞き、なのはたちも驚く。
お見舞いのはずが、逃げた二人の捜索劇に出る羽目になり、なのはとクワトロ以外は少しげんなりする。

81 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:36:28 ID:JjeSILpg
クワトロたちが病院に着いた直後、シャッハが大急ぎで近づいてきた。
一帯の封鎖と避難が完了している旨を説明する。
そのことに、なのはとカミーユだけが眉をひそめているのに、クワトロ一人が気付く。
かくして、二人の捜索が始まった。
院内の一角、シャッハがあの二人の詳細を説明しながらクワトロと行動を共にしている。

「魔力はかなりのレベルでしたが、それ以外は普通の子供でした」
「なら、どうしてわざわざこのような厳戒態勢にする? 気付いたのは私だけだったが、カミーユとなのはは怒っていたぞ」

避難が完了しているせいか、院内は無人であり、かなり寂しく感じる。
この厳戒態勢を不審に思ったクワトロは、それと無く毒を放つ。
シャッハもこれには気付いた。

「……検査中だった上、更に人造生命体であることが判明しました。どのような危険性が秘められているか、分かりません」
「だから、見つけた後は検査を再開、危険性の有無に関わらず後は隔離か? 『強過ぎる力は災いしか呼ばない』と考え行動すれば、その強過ぎる力が招いた災いを真っ先に味あわされるぞ。真龍を怒らせた、『ルシエ』とかいうマヌケ部族のようにな」
「……たった一人の友人を復讐のためと称して罠にはめ、更にロリコンでもあるのに人の道を説くのですか!?」

クワトロの言葉にムッとしたのか、シャッハはこの一言で返す。
クワトロはただそれに苦笑するだけであった。
何気なしに窓の方に視線を移し、なのはとカミーユ、そして逃げ出したと思われる二人の少女が中庭にいるところを目撃する。
少し遅れてそれを見たシャッハは、何を考えたのかデバイスを起動させた。

「どうやら、カミーユ君となのは君の大金星のようだな。……シャッハ、何を!?」
「逆巻け、ヴィンデルシャフト!」

82 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:37:00 ID:JjeSILpg
院内の中庭を探していたなのはとカミーユは、運良く逃げ出した少女たちと遭遇する。
一人は金髪のオッドアイ、もう一人は紫色のウェーブのかかった髪であった。
その内、紫の髪の少女はカミーユを見て驚く。
今の姿になる前に、かつてティターンズに「兄」として刷り込まれた彼の姿に。

「お兄ちゃん、……お兄ちゃん!」

その言葉に困惑するカミーユ。
しかし、カミーユは同時にデジャブを感じる。
その仕草、言動、自分を見る目、年齢以外ほぼ同じなのだ、『ロザミア』に。
そしてカミーユはようやく、彼女が『妹』であることに気付く。

「そんな……。どうしてそんなに小さくなったんだ!? ロザミィ!!」
「ええ!?」

この叫びに困惑するなのは。
彼女が「機動戦士Ζガンダム」で見たロザミィは、明らかにカミーユより年上であった。
だが、今目の前にいる「ロザミィ」はカミーユより遥かに年下(5歳児ほどに見える)。
混乱している内に、いつの間にか戦闘態勢のシャッハがロザミィともう一人の少女の前に立ち塞がった。
それを見たなのはとカミーユは、シャッハの肩を掴み、二人から遠ざける。

「シスター・シャッハ、二人を怯えさせてどうするんですか!」
「それでも聖職者なのかよ!」

二人の気迫に押され、シャッハは後ずさる。
それを見たロザミィともう一人は、不思議と安心した。
そして、なのはとカミーユが優しく微笑みながら二人に近づく。

「ごめんね、驚かせた?」
「大丈夫か? ロザミィ」

落ち着いたところを見計らい、なのはは自分の名前を言い、直後にもう一人の少女に名前を尋ねた。

「私は高町なのは。あなたのお名前は?」
「……ヴィヴィオ」
「可愛いお名前だね。ねえ、どうしてヴィヴィオとロザミィは逃げ出したの?」

なのはは穏やかに、一緒に逃げ出した訳を尋ねる。
シャッハから庇ってくれたことで信頼してくれたのか、ヴィヴィオは口を開く。

「ロザミィのお兄ちゃんを、カミーユを一緒に探してたの」
「そうだったの……。もう大丈夫だよ、ロザミィのお兄ちゃん、見つかったから」

なのはにそう言われ、更にカミーユに抱きつくちびロザミィを見る。
そこに、クワトロが駆けつけてきた。
騎士甲冑姿のシャッハと、ヴィヴィオとロザミィをあやす、なのはとカミーユの姿を見て、クワトロはさり気なくシャッハの方に話しかける。

「どうやら、二人を怒らせてしまったようだな」
「放って置いてください……」

83 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:38:45 ID:JjeSILpg
屋内の方で、ヴィヴィオたちを探していた残りの四人は、無事ヴィヴィオとロザミィが保護された光景を窓越しに見て安堵していた。
しかし、同時に局員と思しき連中が大挙して敷地内に乗り込んでくる一部始終も見えてしまう。
しかもなのはたちは気付いていない。
これを見たティアナはスバルたちに耳打ちする。
かくして、フォワード四人の静かなる大立ち回りが始まった。


これで一安心と安堵するクワトロであったが、何重にも響く足音を聞きつけ、いつの間にか手にしていた本型のデバイスを開く。
それを見たシャッハも身構え、なのはもレイジング・ハートを手にする。
なのはとクワトロの声が、同時に響く。

「レイジング・ハート」 「『旧約』夜天の書よ」 『セットアップ!』

なのははおなじみの白いバリアジャケット、クワトロははやてのそれの影響を多分に受けたような意匠の赤い騎士甲冑を身にまとっていた。
なのはは、セットアップの際にクワトロが言った「夜天の書」という言葉に反応し、その赤い騎士甲冑の意匠に軽く驚く。
そして、局員と思しき者たちが包囲するように現れた。
その中の、隊長と思しき下劣そうな男が口を開く。

「クワトロ・バジーナとカミーユ・ビダンだな……。首都航空第13部隊の者だ。恐縮だが地上本部に任意同行願おうか」
「……何の理由があってそれを言うのかね?」
「昨日の、クラナガン中央公園内での質量兵器使用に関してだ。レジアス中将直々の命令でね、悪く思わないでくれたまえ」

呆れ果てた顔で隊長を見るクワトロたち。
Ζガンダムは本局の方で、ズゴックはかなり前に支局でデバイスに改造済みである。
ミゼットのことだから当の昔に伝えてあるはず。
質量兵器と言っていきなり押しかけてきた時点で言いがかりだと暴露しているようなものであり、クワトロも突っ込みを入れてしまう。

「……気に食わないから連行しに来た、と言った方がよっぽど説得力があるぞ」
「黙れ! 自分たちだけ活躍しやがって……」

隊長の口から出た本音に、心底呆れる一同。
しかし、彼に率いられた局員はその言葉に揃って頷いていた。
とうとうシャッハがキツイ一言を口にし、カミーユも相槌を打つ。

「……そちらが活躍できないのは、レジアス中将が頑なに対AMF対策を拒絶しているのも一因です。文句を言う相手を間違えるにも程があります!」
「そうだ、そうだ!」

だがその言葉も届かなかったらしく、隊長は声を荒げる。

「犯罪者がまとめる様な部隊に協力している分際で……。忘れてもらっては困るぞ、魔法を使う手段がないのが3人もいて、殺傷設定の我々を追い払えると思っているのか?」

嫌らしい笑顔を浮かべて言い切る隊長。
局員たちが、バリアジャケットをつけてすらいない、カミーユ、ロザミィ、ヴィヴィオにデバイスを向ける。
カミーユは微動だにしなかったが、ヴィヴィオとロザミィは地上部隊の悪意を敏感に感じ取り、怯えてしまう。

「これがミッドチルダの平和を守る、地上部隊のすることなのかよ」
「黙れ、我々は正義だ! レジアス中将と言う正義の、代行者である我々に異を唱えた奴は全部悪なんだよ!」

余りにもイかれた発言に呆れ果てる余り、クワトロたちは開いた口が塞がらなくなる。
なのはに至っては、あくびをする始末であった。

「ふわわ……。世迷い言はもう終わり?」

84 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:40:06 ID:JjeSILpg
なのはのこの一言に激昂した局員たちが一斉にカミーユたちにデバイスを向ける。
が、カミーユの背後にいた隊員が、デバイスを持っていた方の手を突如として撃たれ、デバイスを落としてしまう。
その隊員は振り向くが、そこには誰もおらず、他の隊員たちも混乱する。
その一瞬の隙を突き、カミーユは振り返るのと同時に構え、正拳突きをその隊員のみぞおちに直撃させた。

「…………!」
「正当防衛だぞ!」

うずくまった所を見計らい、後頭部に追い討ちでかかと落としを食らわせる。
後頭部に掛かった強い衝撃で、その隊員はそのまま失神。
それを見ていた別の二名が慌ててデバイスをカミーユに向けるが、彼らの目の前、否、周囲にティアナの姿をしたものが大量に出現。
隊長が真っ先に驚き、不思議な感覚に陥る。

「な、何だこれは!? しかもどこかで見たような?」

その隙に、なのはとクワトロが残りの二人に肉薄。
なのははレイジング・ハートを片方の顎に突きつけ、クワトロはもう片方の顎に狙いを定めて拳を構える。

「ショートバスター!」 「シュヴァルツェ・ヴィルクング!」

桜色の魔砲と、魔力を帯びた鉄拳が二人の顎に直撃。
その衝撃で彼らは宙に舞い、車田飛びよろしく顔面から地面に叩きつけられる。
それに思わず見とれるカミーユであったが、彼の耳には残りの局員たちが次々と撃破される音も聞こえていた。
カミーユが振り向くと、そこには顔を殴られた痕や、焼け焦げた痕、感電したような痕がついている状態で倒れている局員たちと、隊長を睨みつけているスバル、エリオ、キャロの姿が。
よく見ると、シャッハの足下に棒状のもので殴られた痕が残った状態で倒れている者もいる。
そして2秒ほどしてから、ティアナもその姿を現した。

「フェイク・シルエット、見違えるほど凄くなったな」
「エヘへ……、カミーユさんに泣かれましたから」
「……ティアナはそのネタを引っ張るのが好きみたいだな」

カミーユに褒められ、満更でもないのかティアナは、さり気なく憎まれ口を入れながらも喜ぶ。
カミーユの方も、ティアナの言葉に苦笑する。
一方、偶然にも最後まで無事だった隊長は、カミーユが発した「ティアナ」と言う名前に反応した。
ティアナ……、かつて部下だった男、ティーダ・ランスターの妹の名前。
それを思い出した瞬間、隊長の頭に血が上る。
彼はティーダほどではないが優秀だった。
しかし、殉職したティーダの葬儀の際にティアナがいる前で堂々と「無能」と断じてしまい、「人格に非常に問題あり」とされ内定していた違う隊の隊長就任が取り消されてしまう。
レジアスの狂信者であったため、レジアスの熱心な擁護により降格は免れたが、それでも出世が大幅に遅れたことは事実であった。
今の隊長の地位も、反省したフリをして必死にネコを被り続け、数ヶ月前にやっと手に入れたもの。
そして彼は、未だに「ティーダとその妹のせいで出世が遅れた」と、ランスター兄妹を逆恨みしているのだ。

「また、また俺のジャマをするのか! 貴様ら兄妹は!」

隊長は殺傷設定のまま迷わずティアナの顔面を狙って射撃魔法を放つ!
運良くそれに気付いたカミーユは、ティアナに回避するように言うよりも、こちら側に引っ張って強引に避けさせた方がいいと判断。
ティアナの手を掴み、一気に自分の方へと引っ張った。
いきなり手を掴まれ混乱するティアナであったが、引っ張られたサイに視界が移動し、隊長の構えた姿から「自分目掛けて攻撃魔法を放った」ことに気付く。
カミーユの判断は正解であったが、それでも、殺傷設定の魔法がティアナの首筋を掠め、そこの肉が裂け、血が出る。
しかし、それもお構い無しにティアナは的確かつ俊敏に隊長のデバイスを狙い撃ち、破壊した。

85 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:41:10 ID:JjeSILpg
「……今思い出しました。兄の葬儀の時にお会いしましたね……」

冷たく言い放つティアナ。
片手で首筋を押さえながら、もう片方に持ったクロスミラージュを突きつける。
殺傷設定のまま魔法を放ち、それ以前に兄を侮辱した男に対して慈悲をかける気はない。
そういわんばかりの表情のティアナに、隊長は居直って尚も喚く。

「俺は、俺は悪くないぞ! 人質なんかに配慮した結果殉職するような奴を無能呼ばわりして何がいけないってんだ!!」

風が吹く……。
死神が吹かす、破滅の風が……。
本のページをめくる音が聞こえ、そして……。

「闇に沈め……! ブルーティガードルヒ!!」

余りにも醜い戯言を聞いたクワトロは殺傷設定にしたかったのを堪えつつ、非殺傷設定でブラッディダガーを隊長に放つ。
発音の方はドイツ語の方で。
ブラッディダガーは着弾と同時に爆発。
隊長を物の見事にズタボロにした。

「……この本が蒐集した“魔法”の試し撃ちに付き合ってもらいたいが、他にも貴様を叩きのめしたがっているのが3名いる。口惜しいが私は彼らと交代だ」

クワトロがそう言い放ちその場を引いた直後、今度はスバルが拳を構えた。

「ナックルダスター!」

スバルの鉄拳が、隊長に直撃し、勢い余って壁に叩きつける。
ブラッディダガーとナックルダスターの直撃で満身創痍となった隊長はそのまま壁に寄りかかったまま崩れ落ちた。
しかし、なのはとカミーユは止めとばかりに近づき、仰向けに倒れた隊長を見下ろす。

「……頭冷やそうか。長期入院が必要な程度に」
「そこのチンピラ! ティアナを殺そうとした代償がどれほど大きいかを教導してやるよ!」
「ま、ま、ままま……。ぎゃひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜!!」

なのはの非殺傷設定の攻撃魔法と、カミーユの空手の技の情け無用なコラボレーションが始まった。
流石にヴィヴィオとロザミィが見ないように、二人の前にクワトロが立って視界を遮る。
なのはとカミーユ以外でこの制裁を直視できたのは、クワトロとスバル、ティアナだけ。
この制裁は、クワトロとシャッハが止めるまで続いた。
結局、首都航空隊第13部隊の面子は全員入院、六課側はティアナが首筋を負傷するもキャロの手ですぐに治癒と、なのはたちの圧勝。
クワトロたちは、連中が何をしたかったのか分からないまま、ヴィヴィオとロザミィを連れて六課へと戻っていった。

86 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:42:51 ID:JjeSILpg
帰路にある車内。
カミーユとなのはは連中が来た理由に関して話し合っていた。

「質量兵器使用で聞きたいことがあるとか言ってたけど、結局何がしたかったんだろう?」
「……さあ。レジアス直々の命令で来たらしいから、何となく察しはつくけど……」
「何がしたいのかな? レジアス中将は……」
「レジアス・ゲイズだもん。自分たち地上本部は戦力不足だから、戦力が豊富な本局と『海』は持っているモビルスーツを全部こっちに寄越せ、って考えているんだよ。質量兵器云々を建前にして、魔力で動くように改造してあっても」

レジアスが何をしたいのかがわからず戸惑うなのはと、レジアスのことをバカにし切っているカミーユ。
スバル、エリオ、キャロは複雑な表情であったが、少なくともティアナはレジアスを否定するカミーユの態度に好感を持ち始めていた。
これ以上レジアスのことを思い出すのが嫌なのか、カミーユは気分を切り替えるためにある疑問を思い出し、クワトロに尋ねる。

「クワトロ大尉、少し聞きたいことがあるのですが」
「どうした?」
「……昨日、どうして公園の池から出て来たんですか? ズゴックに乗って」

カミーユの至極もっともな疑問。
実は、クワトロははやてたちに昨日の内に同じことを聞かれ、その時に答えたが、あいにくカミーユはそれを聞かず、いつもの通りナカジマ邸に早々と帰宅。
なのはたちもヴィヴィオとロザミィのことが気がかりで聞くのを忘れていたのだ。
と言うわけで、質問したカミーユだけでなく、なのはたちも興味しんしんでクワトロを見る。
クワトロからの答えは、単純だった。

「六課の近くに転送してもらう直前に、幕僚長から中央公園にガジェットとモビルスーツが出たと聞いて急遽公園の方に変更してもらった。池から出て来たのは、水中に転送してもらい、そこから地上に飛び出したほうがカッコいいかな、と思ったからだ」

茶目っ気を見せ、微笑みながら答えるクワトロ。
カミーユとなのはは「成る程」と素直に納得したが、スバルたちは少し呆れる。
ヴィヴィオとロザミィは我ら関せずとばかりに助手席で熟睡しており、クワトロにはそんな二人が何となく恋人同士に見えた。
その後、車内での話し合いにより、今日はカミーユがロザミィを預かることになり、カミーユも快諾。
ナカジマ邸でカミーユとロザミィを降ろし、クワトロの車は機動六課へと戻って行った。



次の日、機動六課。
一人で留守番させる気になれなかったカミーユは、ロザミィを連れて出勤してきた。
「おはようございますー」と、ロザミィが元気よく挨拶する。
カミーユも挨拶するが、今一声が大きくなかったため、シグナムに笑われてしまう。

「カミーユ、兄ならもう少し大きい声で『おはようございます』と言った方が様になるぞ。それと……、これを今日中に提出するようにと、八神部隊長直々の命令だ」

シグナムは手に持っていた紙、始末書をカミーユに渡すのと同時に、はやてからの伝言を伝える。
カミーユは面食らうが、シグナムはかまわず続けた。

「昨日の、あの一件のやつ?」
「当たり前だ。クローベル幕僚長が手回ししてくれたから、これ一枚で済むのだぞ。ちなみに、スバルとクワトロ、そして高町教導官は昨日の内に提出したぞ」

渡された始末書を見ながら、カミーユはあることに気付く。
いつもなら真っ先に挨拶してくれるあの娘がいないのだ。
ヴィヴィオとロザミィより2歳ほど上程度の容姿をしたあの幼女の姿が見えない。

「あれ? ヴィータは?」
「……クローベル幕僚長の所だ。彼女はヴィータが大のお気に入りでな、大抵ガンプラで釣って逢引に持ち込むのだ。別に昨日の一件で手回ししてもらったから逢引に応じたわけではないぞ」
「……あの人の遊び相手ですか。アイツも大変ですね」

苦笑するカミーユ。
レジアス相手に派手な罵りあいをしてのけたカミーユをいたく気に入ったミゼットは、初めて会って以来何かにつけてカミーユに「小遣い」をあげている。
カミーユ自身、既に社会人のつもりであるせいか、何となく子供扱いされている感じがするので嫌がったが、結局押し切られ受け取ってしまう。
そんなにガキっぽいのかな? と首を捻りながらも苦笑するカミーユであったが、一方のシグナムはどこか哀しげな表情で、一言付け加える。

「……遊びは遊びでも、ベッドをぎしぎし揺らす方の遊びだ」

87 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:43:59 ID:JjeSILpg
クラナガン郊外にある、ミゼットの自宅内の寝室。
既に事を終えたミゼットが、バスローブを着た状態で2枚の書類を見比べている。
それは、地上本部から引き抜かれた局員の数の、去年までの総数を記した紙。
何故か最高評議会が『機密』扱いしているため、入手するのに結構な時間がかかった代物。
地上本部にいる協力者から貰った方に書かれている総数は、入手に時間がかかった方に書かれているものより遥かに多かった。
地上本部から入手した方を見ると、20年前から急激に引き抜きの数が増えていることがわかる。

「ここ最近戦力不足云々が激しいから調べたら、偽装か……。私としたことがこんな茶番を見抜けないとは、もうろくしたかね? にしても、これじゃまるでレジー坊やを暴走させるためとしか思えないね、引き抜き数の多さは。抉ってやろうか、あの3馬鹿とその走狗どもが!」

地の底から響くような呟きに反応したのか、ベッドで(一糸纏わずに)ぐったりしていたヴィータが、ミゼットの方を見る。

「ミゼットばーちゃん、どうした?」
「……ちょっとした調べ物だよ。さて、あいつ等をどうやって潰してやろうか? まあいい。今はお前ともっと愛し合うほうが重要だ」

ミゼットは二枚の紙を机に置き、バスローブを脱ぎ去って、ベッドに横たわるヴィータにまたのしかかる。
第2ラウンドの始まりだ?
衣服? 何それ? おいしいの?


その頃、六課の格納庫。
バーニィが昨日言っていた、クワトロ用の「新しい機体」がシャアズゴの隣に立っている。
その機体は、かの「シャアザク」とそっくりの配色の上、装甲の各所(指揮官機を表す角とか)に金メッキコーティングが施されていた。
カミーユはアングラ雑誌で、なのはは『MSイグルー』で見たことがあるその機体に驚く。
その名は「EMS-10 ZUDAH」!
カミーユが思わずため息を洩らし、クワトロが嬉しげに答える。

「EMS-10じゃないですか」
「奇跡的に残っていた一機が偶然こっちに流れ着いていたらしい」

かくして、赤と金に彩られた「シャア専用ヅダ」が誕生したのである!!
と、それは置いといて……。
『軌道上に幻影は疾る』で、ヅダが空中(?)分解するシーンをしっかりと見ていたなのは、さり気なく注意する。

「これ、フルパワー出すと自壊しますよ」
「それを防ぐための対策は用意してある」

その一言と共に、クワトロは『旧約』夜天の書を取り出す。
ページをめくり、クワトロが空いているほうの手を置くと、彼の隣に一人の少女が現れる。
なのはは彼女の姿を妙に冷静に見つめてしまった。
もしはやてがこの光景を見れば、狂喜乱舞していたであろう。

「リインフォース……!」
「そうだ。リインフォースI(アイン)。この娘はヅダとユニゾンしてもらう!」

かつて消滅したはずの彼女、初代リインフォース。
驚いたなのはが、彼女に何故ここにいるのかを聞いたが、彼女は「気が付いたら彼の側にいた」の一点張り。
クワトロも、「こちらに迷い込んだ時には既に持っていた。いつ手に入れたのかは覚えていない」と答える。
初代リインフォース自身は、自分が生きている事を隠したがっているが、クワトロの方はヴィータが戻り次第はやてたちに教えるつもりである模様。
目が点になっているなのはを尻目に、カミーユは珍しそうに初代リインフォースを見ていた。

88 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:45:10 ID:JjeSILpg
数分後、六課の一画では、はやてとフェイトがまた話し込んでいる。
どうやら、臨時査察の日取りが決まったようだ。
何故か、フェイトの手にはウサギのぬいぐるみが二つ。

「一週間後?」
「そう。急に決まってな。まあ、向こうもこっちに懸念を持ってるから、仕方ないけど」

少し困った表情で言うはやて。
一方のフェイトは、地上本部側の意図に気付いてしまう。
一刻も早く、こちらの粗を探したいことに。

(こちらのことが相当気に入らないみたいね、向こうは。多分、Ζガンダムやヅダの事で相当ねちっこく追及されるわね。ディエチとウェンディからも情報らしい情報は引き出せていないのに……)

唇に指を当て、考えるフェイトであったが、休憩室前の扉に差し掛かった際に、誰かの泣き声が耳に入り、思考が中断される。
何事かと思い入ってみると、そこには、なのはとカミーユに抱きついて泣いているヴィヴィオとロザミィがいた。
どうやら、二人と離れるのを嫌がっているようだ。

(エース・オブ・エースと最高のニュータイプにも勝てへん相手はおるんやね……)

そういえば、今日は機動六課設立の目的云々で、なのはとカミーユ、そしてクワトロと一緒に聖王教会本部に行くことになっていた事を思い出すはやて。
あれこれ考えている内に、両手にぬいぐるみを持ったフェイトがしゃがみ込み、ヴィヴィオとロザミィに挨拶していた。

「こんにちわ。私はフェイト、なのはさんとカミーユ君の大事なお友達。ヴィヴィオ、ロザミィ、どうしたの? なのはさんとカミーユ君の二人と一緒にいたいの?」
『うん』

涙目のまま、頷くヴィヴィオとロザミィ。
フェイトは優しく二人に諭す。

「でも、二人とも大事なご用でお出かけしないといけないのに、ヴィヴィオとロザミィがわがまま言うから、困っちゃってるよ。この子達も」

達人的なオーラを放ちながら、ヴィヴィオとロザミィを上手くあやすフェイト。
使い魔(アルフ)を育て上げ、甥と姪の面倒も見ており、エリオとキャロの小さい頃を知っているフェイトにとって、泣き止まない幼女二人をあやすのはわけないのかも知れない。
フェイトは、こうして見事にヴィヴィオとロザミィをなだめきった。

89 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:46:17 ID:JjeSILpg
数十分後、聖王教会本部。
はやてたちは、カリム・グラシアに案内され、その一室に入る。
そこには既にクロノ・ハラオウンがいた。

「やあ、昨日はちゃんと寝たかい?」
「そっちこそ、ドアをノックする癖はつきましたか?」

憎まれ口をたたきあうクロノとカミーユ。
これにははやてたち、特にフェイトが目を丸くした。

「お兄ちゃんと会ったことがあるの?」
「……Ζガンダムを改造してもらっていた頃かな。寝ずに『機動戦士ガンダム』を見てて、『めぐりあい・宇宙編』を見ようとしていたときにノックもせずにいきなり入ってきた挙句、名乗りもせずに説教垂れていなくなった」

刺々しい言葉で説明するカミーユ。
フェイトは呆れるような表情で、残りは苦笑しながらクロノを見る。
これにはクロノもバツが悪そうだった。
しかし咳払いをして、説明を始める。

「機動六課の設立目的は、迅速なロストギア対策及びガジェット迎撃を可能とすること。表向きはね」

クロノがモニターを操作し、彼とカリム、そしてリンディの写真が表示された。

「僕と騎士カリム、そしてリンディ統括官が六課の後見人。そして非公式だが、『伝説の三提督』と政府も支援を約束してくれた」

モニターに、今度はミゼットたち『伝説の三提督』の写真が表紙される。
なのはとフェイトは『三提督』が協力していることに驚き、クワトロとカミーユはミゼット以外の二人も協力している事を知り納得していた。
そして、カリムが席を立ち、同時に己のレアスキルを発動させる。

「これは、私のレアスキル、『プローフェティン・シュリフテン』。二つの月の魔力が上手く揃った時に初めて発動可能となるため、年に一度しかできませんが、最短で半年、最長で数年先の未来を詩文形式で書き記した預言書を作成することができます」

カリムの周りに、本のページと思しき物が彼女を囲むように集まる。
その内の一枚が、クワトロの元に近づく。
見たことも無い文字だったため、クワトロは読むことができない。
ページの方も元の位置に戻る。
それを見たクロノが説明した。

「……文章は解釈次第でいくらでも意味が変わるほど難解な上、使用文字は全て古代ベルカ語。更に内容もこれから起きる事態をランダムに書き出すだけ。的中率は『割と良く当たる占い』レベルだ」
「……この予言は、教会や本局に航行部隊のトップ、そして政府中枢も予想情報として目は通す。せやけど、地上本部の方は、レジアス中将が大のレアスキル嫌いやから目は通しとらん。まあ、信憑性はそれほど高いわけや無いから仕方ないけど」

少し困ったように説明するはやて。
それを見たクロノは、モニターにレジアスの写真を表示し、呟く。

「もっとも、レジアス中将の場合、自分に魔力資質が無いから、ひがみ半分逆恨み半分でレアスキルを嫌っているだけかもしれないがな」

表示された彼の顔を見て、カミーユとなのはは一気に眉をひそめる。
クロノも、汚いものを見るような目で評した。

「彼を尊敬しているはやての前で言うのもアレだが……。はっきり言って末期だな。真綿で自分の首を絞めているようなものだ」

冷たい表情で吐き捨てるクロノ。
はやての方は哀しげな表情でクロノを睨む。
しかし、クロノは更にダメ出しする。

「はやてが管理局入りした頃から、公の場での舌禍や部下の不祥事擁護などの問題行動を繰り返し、受けた批判と処分の数のワースト記録を更新中だ。魔法資質の無さを帳消しにできるほどのカリスマと超優秀な政治手腕のおかげで今の地位を維持できているに過ぎない」

90 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:48:16 ID:JjeSILpg
クロノの言葉に頷き、「そうだよね」と呟くフェイト。
なのはも「地上の正義の守護者も地に堕ちたねー」とぼやく。
カミーユの方も、ここぞとばかりにレジアスをなじる。

「自分に無い力全てを妬み嫉み毛嫌いする。魔力資質が無いのはゲンヤさんも同じだと言うのに。どうやったらああも人として大きな差が生じるんだ?」
「他人を信じられるか否かの差だ。 信じないから疑い、疑うから他人を悪いと思い始める。 そうやって自分自身を間違わせる。自分だけが英雄になろうとすれば、尚更だ。アレを見る度に他人を信じることの難しさを再認識してしまう」

クワトロもそれに続く。
しかし、みんなはやての表情がどんどん険しくなっていることに気付き、話を予言の方に戻す事にした。
カリムは、ページを手に持ち、内容を静かに読み上げる

「無限の欲望、『次元と大地の子ら』を名乗り、青いヴェールをまとう花嫁となりし、黒い翼なびかせる白と青の巨人と冥王の如き、二つの美しき星を欲する。
守り手達統べる三つの影と、それの威を借る堕ちた『地上の正義の守護者』の罪暴かれ、かの者が牛耳る地上を守りし騎士たち惑わす。
やがて無限の欲望は彼らの罪を理由に、騎士たちが守りし中つ大地を征する事を宣す。
そして、滅びし王の宮殿が中つ大地の法の塔を砕き、次元行く船をも屠らん。
されど三つの影は、古き夜空の風と金の角そびえし幻影を従えた赤い彗星に滅ぼされん。
堕ちたる『地上の正義の守護者』は、写された思い出の源泉たる白い冥王を取り込んだ、黒い翼なびかせる白と青の巨人に討たれ、欠片も残らん。
『次元と大地の子ら』と滅びし王の宮殿に挑みし者達の先頭に立つは、彗星と冥王の牙城なり」

この予言を聞き、クロノとカリム本人以外は驚愕する。
そしてカリムは冷静に、冷静に口を開く。

「……最高評議会とレジアス・ゲイズ中将の醜聞の露見による混乱と、その隙を突かれた地上本部と次元航行部隊の壊滅に伴う管理局システムの崩壊。そして最高評議会とゲイズ中将の討伐……! 解読されたこの予言の内容です」

カリムのこの言葉に、はやては表情を暗くする。
クワトロはお構い無しに、カリムに尋ねた。

「地上本部及び次元航行部隊の壊滅と、管理局システムの崩壊阻止。それが六課設立の真の目的か」
「……場合によっては、最高評議会とゲイズ中将の粛清も視野に入れられています。はやてはゲイズ中将の醜聞に関してだけは極めて懐疑的でしたが」

真剣な表情で答えるカリム。
どこまでが当たりなのかは分からない。
だが、プローフェティン・シュリフテンが未来の事を言い当てているのは事実であった
予言の一説に、クワトロは考えを巡らせる。
自分の異名がバッチリ出てきたのだから致し方ないが。

(古き夜空の風と、金の角そびえし赤い幻影……。リインフォースIと私のヅダか。『割りと良く当たる占い』と言うより、『滅多な事では外れない占い』と言った方が適切だな)

91 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:49:32 ID:JjeSILpg
地上本部の最上階近くのフロア。
相変わらずレジアス・ゲイズがヒーロー物の悪役みたいな態度と目付きで、夕焼けに染まるクラナガン市街を見ている
その後には、オーリスが立っていた。

「よろしいのですか? 査察を行うのは一週間後で?」
「臨時だからな。その日のためにワシ自らメンバーを選抜した。ミラー一尉以下全員、指揮するお前を満足させるに値する優秀な者達だ。奴等の企みなど知らんが、この地上を守って来たのはワシという正義だ! それを理解できん『海』と教会の好きにさせてなるものか!」

己の言葉に醜く酔いしれながら、レジアスは続ける。
それに吐き気を覚えながらも、オーリスは上辺だけ肯定し、内心では「どこが正義なの?」と毒づいていた。

「何より、私には最高評議会という心強い味方がいる。この父が正義だからだ。そうだろ? オーリス」
「……はい」
「公開陳述会も近い。本局と教会を叩く材料になりそうな物を洗い出せ! 向こうはモビルスーツを抱えている上に、昨日ワシの命令で、あの小僧とシャア・アズナブルに任意同行を求めた首都航空隊第13部隊を襲撃している。楽な仕事になるさ」
「機動六課についてですが、事前調査の結果、かなり巧妙に出来ている事が分かりました」

オーリスはそう言って、モニターを表示させる。
そこに映し出される、はやてとなのはたちの写真。
オーリスが説明を始めた。

「若輩を部隊長にし、主力二名は本局からの貸し出し扱い。部隊長の身内であるヴォルケンリッターと、次元漂流者を除けば、後は新人ばかり。モビルスーツは何れも質量兵器と見なされないように魔力式に改造済み。Ζガンダムとズゴックに至ってはデバイス化されています」

モニターに映し出される新人たちと、カミーユたちの写真。
それだけでなく、Ζガンダム、ザク、シャアズゴの写真まで表示される。

「何より期間限定の部隊、言わば使い捨て扱いです。本局にトラブルが起きても、簡単に切り捨てる事ができる編成になっています」
「小娘は生贄か……。同類とそれを庇う異常者の二匹が主力。身内以外の戦闘メンバーも、人間モドキにあの役立たずのティーダ如きに魔法を学んだ凡人、デッドコピーと己の力を使いこなせぬ出来損ないか。犯罪者にはうってつけだな」

とことん吐き捨てるレジアス。
その態度に嫌気が差しながらも顔には出さずにオーリスは呟く。

「もっとも、これ自体彼女が自分で選んだ道なのでしょう」
「オーリス!?」
「首都航空隊第13部隊に関して、教会系列のある病院から「敷地内に押しかけ、『ゲイズ中将の命令だ』という理由で高町教導官一行を包囲していた」と苦情が来ています。今日の予定は消化済みなので、直接赴いて事情を説明された方がいいかと」
「……ああ」

何事も無かったかのように淡々と語るオーリス。
彼女の心は既に決まった。

92 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:53:28 ID:JjeSILpg
同時刻。
予定よりも早く帰りついたはやてたちは、休憩室で一息つく。
ヴィヴィオはなのはに、ロザミィはカミーユにくっ付いたまま離れようとしない。
ちょうどヴィータも事が終わったのか、戻っていた。
今がチャンスとばかりに、クワトロはヴォルケンリッターの残りを集合させてもらおうとはやてに話しかけようとする。
が、突如として警報が鳴り、モニターに外の様子が映し出された。
映し出されたものを見て、カミーユは声を荒げる

「……ガンダムMk-II! しかも何でティターンズカラーに戻っているんだ!?」

そこに映っているのは、ドダイに乗りこちらに近づくガンダムMk-IIと、それを追うガジェットの群れ、そしてガジェットの指揮機と思しきモビルスーツであった。
既にバーニィのザクと、シャアズゴが出撃してガジェット目掛けて発砲している。
出撃しようとするなのはたちを制し、クワトロは「君たちはヴィヴィオとロザミィをなだめていろ」と言って一人休憩室を出た。



格納庫。
クワトロはヅダに乗り、コックピットに隠してあった旧約夜天の書を取り出す。

「旧約夜天の書よ、セットアップ!」

バリアジャケットを装着し、ヅダを起動させて出撃する。
格納庫から出た直後、ガンダムMk-IIを乗せたドダイがすぐ近くに着地。
コックピットハッチが開くところが視界に入るが、クワトロはそれに構わずエンジンの出力を上げる。
ジール物産製の新型エンジン「新星」の大推力でヅダは飛翔し、クワトロもリインフォースIに命令した。

「ユニゾン・イン・ヅダ!」

この声と共に、ヅダの体が光に包まれる。
装甲の一部に布地のようなものが張り付き、ヅダの頭部に銀色の長い髪の毛が生え、更にピンク色のモノアイが何故か真紅のデュアルアイに変わった。
倍以上に跳ね上がった推力で、ヅダはガジェットの群れに肉薄する。

「魔法を無効化出来ても、衝撃に耐え切られないのなら無意味だぞ!」

ガジェットは構わずレーザーを発射するが、ヅダは大気圏内とは思えないレベルの機動で楽々とかわし、ガジェットたちにすれ違う。
数秒後、超音速で飛ぶヅダの発した衝撃波で吹き飛ばされ、ある機体は味方機のレーザーが当たり、またある機体は複数の味方機にぶつかり道連れにしながら、次々と破壊される。
既に、バーニィのザクとシャアズゴのおかげでかなり減っていたせいか、ガジェットの数は少なかった。
そこに、指揮機と思しき機体に乗っている者からの声が聞こえる。

「……我、現在地の確保に失敗。これにより、奪われたフラッグシップと搭乗者たちの奪還、それ以上に妹たちの救出は絶望的と判断。残存ガジェットは全機、地上の二機に特攻させ、本気はこれよりヅダに突貫する!」

93 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:54:26 ID:JjeSILpg
モビルスーツがいきなりコックピットハッチを開けたかと思うと、中からディエチたちと同じ意匠の服をまとった幼女が出てくる。
右手では入り口の縁を掴み、自分の機体より下の高度にいるヅダ目掛けて手に持った投げナイフを投げた。
ヅダは構わずモビルスーツ目掛けて加速、投げナイフを装甲で弾いた直後、突如として起きた爆発により視界を遮られてしまう。

「爆弾だと!? 何時の間に?」
「先ほどの者が投げた金属片が爆発したのです。恐らく、あのパイロットは何らかの方法で金属片を爆発物に変えたものと思われます」

驚愕するクワトロに、ヅダとユニゾンしたリインフォースIが説明する。
それに納得した直後、クワトロの脳裏に光の筋が走り、敵がこちらに突っ込んで来ていることに気付き、回避動作を取った。
直後、広範囲にわたる爆風を散らしながら円盤状の物体が突進。
すれ違いざまにヅダはその物体に蹴りを入れた。

「避けきっただと!? だが避けるだけでは、このチンクのアッシマーには勝てん!」

チンクが叫んだ直後、アッシマーは再び変形し、モビルスーツ形体に戻る。
アッシマーの緑のモノアイが光り、ヅダを睨む。
これを見たクワトロは、間髪いれずヅダをアッシマー目掛けて体当たりさせる。
左肩のシールドが顔面に直撃し、アッシマーのモノアイ保護用の風防が砕け散ったが、チンクは動揺しなかった。

「……超硬スチール合金程度ではな!」

アッシマーはヅダのコックピットハッチに蹴りを入れ、弾き飛ばす。
ビームライフルを構え、引き金を引く直前に、全く別の方向から飛んできたビームがビームライフルに命中。
驚いたチンクが振り向くと、そこにはビームライフルを構えたガンダムMk-IIの姿あった

「あの男、あの距離から……!?」

右手ごとビームライフルが爆発し、その隙を突きヅダはギリギリまで接近、ゼロ距離で90㎜マシンガンを発砲。

「認めたくはないだろう? 自分の若さゆえの過ちというものは」
「あ、アッシマーが!」

この言葉と共に、アッシマーの頭部が弾丸で砕け散ったかのように破壊された。
しかし、同時にアッシマーのコックピット内に、チンク以外の第三者の声が聞こえる。

「チンク姉!」
「セイン! 何時の間に忍び……」
「ドクターの命令! もしアッシマーがやられた場合に備えて忍び込んでおきなさいって!」

この会話に感づいたクワトロは、急いでコックピットハッチを抉り取り、中を覗く。
すると、セインと思しき少女が、チンクを後から抱きかかえた状態でコックピットから「抜け出す」最中であった。
そのまますぐに姿を消し、数秒後にアッシマーの脇腹から飛び出し、そのまま落下、地面へと「潜行」する。
乗り手を失ったアッシマーはそのまま失速、盛大な水柱をあげながら海に突っ込んだ。
それを見届け、着陸するヅダ。
その視界の先には、セインが潜行した地点を凝視し、顔を見合わせて不思議がっているザクとシャアズゴがいた。

「あの撃ち方と気配……君もこの世界に来たのか? アムロ」

94 魔砲戦士ΖガンダムNANOHA 第1話後編 :2009/03/08(日) 01:55:18 ID:JjeSILpg
その頃、ガンダムMk-IIが着地した地点。
ガンダムMk-II内のコックピット内には、操縦していた青年だけでなく、壮年の女性とその使い魔もいた。
青年が二人に話しかける。

「プレシアさん、リニス、大丈夫か?」
「私とリニスは大丈夫よ……」

プレシアの方は少し気分が悪そうだったが、何とか強がる。
青年が振り向くと、リニスが優しくプレシアの背中を摩っている所が見えた。

「ゼスト・グランガイツの言うとおり、この『機動六課』に本当にフェイト・テスタロッサがいるというのか? シャア、お前が身を寄せている機動六課に……?」
「アムロ・レイ、彼はウソをついているようには見えませんでした」

アムロの呟きに、そっとツッコミを入れるリニス。
アムロは振り返らずに、モニター越しに見えるヅダの姿をずっと見ていた。
夕焼けの中で吹く風が、モビルスーツたちと、アムロたちを保護するために出たフェイトを、撫で回す。




次回


魔砲戦士ΖガンダムNANOHA

ディム・ティターンズの影
〜ニューメロの鼓動〜

カミーユ・ビダンはリリカルなのはの夢を見るか?

95 黒の戦士 :2009/03/08(日) 01:56:05 ID:JjeSILpg
これで第一話は全部投下終了。

本当に長かった……。

96 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw :2009/03/08(日) 21:15:24 ID:QVxyJ8BM
規制をくらってしまいました。申し訳ありませんがこちらに投下しますので代理投下をお願いいたします。


 さて、とりあえずその件の犯罪者の危険性と、相手をしなければならない可能性の高さは頭に叩き込み理解したが、彼女たちの目的はそれだけではない。
 当たり前だ、現地の犯罪者の相手をしに自分たちは派遣されたわけではない。その本当の目的は別のところにある。
 それこそが―――

「―――それじゃあ本題の次元震の原因究明についての捜査だけど」

 その主目的を語り出したなのはに皆の視線が再び集中する。
 本題とも言えるそれは一体どのような手順で行うのか、それをまだ四人は聞かされてはいなかった。

「この手のケースなら順当に考えれば、原因となっているものは・・・・・・ティアナ、何だと思う?」

 急に話を振られても、しかしティアナは慌てる素振りも無くそれこそ学院の講義の際の質問に答えるようにセオリーとなる答えを述べた。

「―――ロストロギア、でしょうか?」

 尤も、それが正解とは限らないので確証も無い答だとは自分でも思っていた。
「うん、それが真っ先に上げられる最も可能性のある答だね」
 故に間違いではない、そうティアナの答を評価しながら頷く。
 そもそも次元そのものに波及的効果を与えられるモノ、などというものは管理局の常識から考えてみてもまず稀少だ。
 遺失世界の遺産、秘めたる力を有するそんなモノ以外で、次元震を起こすことなどそもそも不可能と言ってもいい。
 だからこそ、管理局はロストロギアという存在を決して侮らず、回収する必要性が高いと認知している。
 次元世界そのものに危機を与えるソレを自分たちの手で安全に保守管理しないことには落ち着くことなど出きるはずがないからだ。
 だからこそ、次元震という現象が発生した際には管理局は必ずと言っていいほどロストロギアの関連の有無を調べる。
 そしてこうしたケースならば八割方、ソレが関わってくることがこれまでの管理局の記録からでも判断できる。

「だからこそ、二十二年前と今回・・・・・・後、これはついさっき分かったことだけど、六年前にもこの市街で惨劇が起こっているの。これらの事件に同一のロストロギアが関わっている可能性は無いとは言い切れない。でも―――」

 先程、ジグマールの口よりなのはは六年前に市街地で大規模なアルターによる惨劇が起こったという話を聞いた。
 ロングアーチスタッフに直ぐ様に確認を取ってもらったが、それにも次元震発生の余地が確認されていることが先程連絡されて届いたばかりだった。
 アルターによる被害、ジグマールは確かにそう言っていた。アルター能力についてはまだ詳しい事を把握していないが、それがロストロギアの誤認という可能性も無いとは言い切れない。
 しかし、それには疑念も残る。
 その最大の理由は観測された事件と事件の間の期間の長さだ。二十二年前と六年前、そして六年前と今回。
 規模こそ違えど観測された次元震の特徴はまったく同じモノなのだという。ならばこそ、これらには同一の何らかの原因が共通してあるはずだという推測が成り立つ。
 だが管理局とてロストロギアとは一概には言っても、その性質はバラバラなものばかりで一纏めには出来ない。・・・・・・だがこういったケースを起こす特徴はロストロギアには存在しない。
 一度何らかの原因で発動したロストロギアは外部からの強制介入による沈静化なくしては治まらないケースが多い。代表的な例を挙げるならあのジュエルシードが良い例だ。
 だが今回観測されている次元震は全て、同質であると共に瞬間的に発生して直ぐに治まっているものばかりだ。
 恒常的とも呼べぬ発生期間といい、瞬間観測でしかないという実例。そして管理局がどうして放置を続けてきたか、その理由を推測すればそれは―――

「―――私はそうじゃない、とも考えてるんだ」

 ―――その推測をなのはへと抱かせていた。

97 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw :2009/03/08(日) 21:16:31 ID:QVxyJ8BM
 四人もロストロギアが関わっているとばかり思っていただけに、なのはの突然の言葉にはやはり驚きを隠せていなかった。
「え? ロストロギアじゃないんですか?」
 疑問を口にしたスバルに対し、なのはは頷きながら己の推論を述べる。

「―――以上のことから、私はロストロギアとは別の可能性も考えられると思うの。
 ・・・・・・ジグマール隊長は六年前のその事件がアルターによるものだと言っていた。二十二年前も今回のものも性質は同じモノらしいから次元震の発生の媒介となったものは同じモノである可能性が極めて高い。ならそれは―――」

 ―――ジグマールの言葉通りなら、アルターということになる。

「・・・・・・じゃあ、次元震の原因はこの世界にいる能力者の仕業ってことなんですか?」
 俄かには信じ難い、言外でそう告げていることが分かるティアナがそう疑問に思うのも無理はない。
 なのはのその推論が正しいと言うのならば、ソレは個人か組織かどちらかにしろ、次元震を発生させているのが人間だということになってしまう。
 規模がどれ程のものであれ次元世界そのものに干渉しうる力を人間が持っている・・・・・・魔法ですら不可能なことを信じろと言う方がおかしなものだ。
 それこそ、あの存在し得ない夢物語の世界たる『アルハザード』は実在している、などと言っているようなものである。
 そんなことを出来る人間がいるとするならば、それは人間とは呼ばれない。

 ―――『災害』である。

「・・・・・・私自身でも穴がありすぎる推論だとは思ってる、けれどやっぱり今回の事件に関わってくる謎の中枢にはアルター能力があるとみて間違いないとは思うの」

 彼女の推論でいくならば、次元震を起こした犯人(人ならば)同一人物ということになるが、アルター能力者が生まれるようになったのは二十二年前にロストグラウンドが誕生してからだ。今回と六年前に起こった事件の犯人が共通だとしても、そもそもロストグラウンド誕生の原因そのものとなった事件に関しては矛盾してしまうことにもなる。
 だからこそ確証は無い。故にロストロギアの可能性も捨てきれず平行して調査を続ける。
 それでも彼女は感じていた。

 ―――事件の真相究明への鍵はアルターにある。

 明示できる証拠は無く、自論と直感という説得性には欠けるものだが、それでも全ての事件にはアルター能力が何らかの形で関わっているはずだと思っていた。
 だからこそ、それに関する調査も無限書庫経由で頼んでいたし、自分たちの方からも現地の情報を通じて調べてみようと思っていた。

「取り合えず、ロストロギアとアルター。この両方の線から調査を進めていこうと思ってる。じゃあそれに関する具体的な方針だけど―――」

 そう言ってなのははこれからのこの世界での行動方針を、部下たちへと語り出した。
 恐らくは長丁場となる、そんな確信を抱きながら・・・・・・

98 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw :2009/03/08(日) 21:17:28 ID:QVxyJ8BM
 標高が高いということは、同時に空にも近いと言う事だ。
 だからこそ―――こんなにも星が近くに感じるのだろう。
 高町なのはは空を飛びながらそんなことを考えていた。
 部隊のブリーフィングを終え、これからの行動方針を決め後は明日に備えて一日を終了するだけなのだが・・・・・・。
 何故かこうして空を飛んでいるわけだが、特に目的は無い。理由も無く、空を飛ぶなどという行為はミッドチルダでは許されない。そんな事は管理外世界とて同じなのだが。
 それでも高町なのはは空からこの大地を見下ろしていた。
 本土から切り離され、その大地の中ですら塀の外と内で異なる世界。
 地球には地球の、ミッドチルダにはミッドチルダのルールがあったように、当然ながら、ロストグラウンドにもソレは存在する。
 尤も、此処のルールというものは場所によっては過激や理不尽などと言ったものであるのかもしれないが。
 それでも、となのはは思う。

 この大地で生きている人たちが願っていること、望んでいることとは何なのか。

 独立自治とは聞こえは良い、だが実情は支援なくしてこの大地の住人・・・・・・少なくとも都市に住んでいる者達は生きてはいけないだろうというのは部外者であるなのはの目から見ても明らかだ。
 そして壁の向こう側、未開発地区と称されるむしろロストグラウンドという名そのものの世界はどうであろう。
 実情こそ目にはしていない。けれどインナー(この大地で都市部以外の生活者のことを指すらしい)出身のホーリー隊員の話を聞いてみても、それは酷い有様らしい。
 奪い合い、壊し合い、そして争い合う。
 少なくとも、そこには秩序と呼ばれる人が互いに生きていくために必要とされるルールはない。

 ―――力こそが全て。

 それこそがルールだと言わんばかりが、この大地の実情だった。
 秩序や法という権力に守られている人間などほんの一部、それこそ都市部の人間だけだ。
 この大地に生きる多くの人間は、恐らくは今日を生き抜くことに必死なのだろう。
 ならば何故、彼らはそれからの脱却を望まない。少なくとも、市街に登録をすれば住民になれ職にもありつける。
 少なくとも真っ当な人間としては生きることが出来る。だが、この多くの人間は進んでそれを求めようとはしていないと言うのが実情だ。
 インナーは自らの意志でインナーであることを在り続ける。多くのインナーはそうらしく、市街に登録・・・・・・本土への帰属を望もうとはしていないらしい。
 それが何故か、インナーの実情や思いを未だ知らぬなのはにはそれが分からない。だがそれは彼らにとっては一種の誇りであると言うことだけは察することができる。
 荒れ果てた無法の大地の上で、何が彼らにそれを選ばしているのか。
 平穏と呼べる世界で生まれ、この職に就くまでは同じように平穏な中で生きてきた彼女からは想像もできないものであった。

 だからだろうか、彼女がそれを知りたいなどと考えたのは。

99 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw :2009/03/08(日) 21:18:19 ID:QVxyJ8BM
 ホーリーが・・・・・・否、本土が示す秩序に目を背けても彼らがそれを見出し、そして守ろうとしているのは何なのか。
 恐らくは『彼』もまたそれを守ろうとしているのではなかろうかと勝手ながらに思った。
 ほぼ単独と言っていいほどに何の後ろ盾も無く、個人レベルでの反抗を続けている一人の反逆者。
 アルターという人とは異なる能力を有し、ソレを用いて戦い続けているその人物。
 ホーリーにおいては犯罪者と認定され、自分たちもまたいずれ出会い、戦うことを予感させるその人物。

「・・・・・・NP3228。・・・・・・ううん、違うよね。君の名は―――」

 資料に書かれていた一度捕獲された時に付けられた番号ではなく、彼自身が名乗ったその名前を。
 名字も無く、本名かどうかも怪しい、けれど恐らくは彼が彼であることを表しているその名前を―――

「―――カズマ、君か・・・・・・」

 星空にその身を浮かばせながら、高町なのははその男の名を静かに呟いていた。



 不意に誰かに名を呼ばれた気がした。
 呼ばれたと思い振り返り見た夜空の方角が都市部の方である事に気づき、彼―――カズマは思わず顔を顰めていた。
 またホーリーのクソ野郎共がこっちを倒すためにいけ好かねえ作戦でも立ててやがるのかとも思い、

「―――へ、それともテメエか?・・・・・・劉鳳ッ!」

 打倒を誓い、名を刻んだ宿敵の姿を脳裏へと浮かべ拳を握っていた。
 まぁどちらだっていい、劉鳳だろうとホーリーだろうとちょっかいを出してくる相手には容赦しねえし、必ずぶっ飛ばす。
 単純とも思える思考だが、それがネイティブアルターであるカズマの当たり前のような考えだった。

「・・・・・・にしても、何だか気にいらねえな」

 何故かは分からない、理由は不明だ。
 だが直感的に、今見ている方角から酷く気に入らない視線のようなものを感じずにはいられなかった。
 まさか空の上から誰かがこっちの方を見ているわけでもあるまいし、気のせいに違いないのだが、何故か気になって仕方がない。
 このまま背を向けたら負けなのではなかろうか、などという馬鹿らしいことすら本気で思っていたほどだ。
 だからカズマも睨み返すようにその方角に視線を向けたまま動かない。傍から見れば遠方に眼ツケをしているだけという酷く奇妙な光景だが、当人であるカズマという男はそんなことを気にしない。
 やがてその気に入らない視線のようなものも暫くすれば感じなくなり、カズマも内心で勝ったなどと密かに鼻を鳴らしながら、視線を外して再び進んでいた方角へと背を向け直した。
 実に馬鹿らしいことに時間を浪費してしまった、ということを漸く自覚しながらカズマは目的地―――ねぐらにしている家(廃墟と化している歯科医院)へと急ぐ。

100 魔法少女リリカルなのはs.CRY.ed ◆j1MRf1cSMw :2009/03/08(日) 21:20:42 ID:QVxyJ8BM
「・・・・・・かなみの奴は、もう寝てるだろうな」

 同居している少女の顔をふと脳裏に浮かべながら、恐らくはもう就寝しているだろうことは予想が出来ていた。
 よくあることだ。頻繁に家を空ける自分の帰りが遅い時はいつも先に眠っている。普段からよく寝る娘でもあるし、そもそもカズマ自身も出迎えを期待するような性格ですらない。
 だからそれは問題ない、普段通り当たり前であり考えるまでもないことだ。
 ・・・・・・ならば何故、そんなことをふと思ったのか。
 考えるという行為自体を苦手とする彼はそんな思考も五秒で放棄した。どうでもいいさ、それで良かった。
 帰る場所にはかなみが居る。そんな当たり前のことが分かってさえいればどうでもいいことだ。
 ・・・・・・そう、どうでもいい。そんな当たり前さえ守れるなら。

「・・・・・・まぁ、その代償と思えば安いもんさ」

 右手を持ち上げながら、あのアルターの森での一件以降に進んでしまったアルターによる侵食を見てそんな事を呟いていた。
 だがこのお蔭でシェルブリットはパワーアップした。この力なら、ホーリーの奴らにも何も奪わせないし、劉鳳の野郎だって倒せるはずだ。
 馬鹿で調子者の憎めない相棒や、しっかりものの癖に泣き虫なあの少女だってきっと守れる。

「・・・・・・らしくねえよな、俺としたことが」

 金さえ積めば何だってやる、それがアルター使い“シェルブリット”のカズマであったはずだ。
 そんな自分がどういうわけか、そんな丸くなった思考をしている。・・・・・・まったくもって可笑しい限りだ。
 だがそれも悪くはねえ、そう思っている自分もいた。
 “シェルブリット”のカズマとしての本質は何も変わってはいないという自負がある。
 金さえ貰えば何だってやるし、欲しいものは奪ってでも手に入れる。
 その生き方を変えようとは思わない。
 だから今の考えだって結局同じであり、行き着く先とて同様だとカズマは思ってもいた。
 そう、気に入らねえ奴はぶっ飛ばすし、奪われないように守る。
 そして満足する程の派手なケンカをする。
 カズマが望んでいることは、ただそれだけだった。
 だからこそだろうか、

「なんか、これから派手なケンカが起きそうだ」

 理由も確信も無く、そんなことを思い、期待しているのは。
 だがきっとそれは直ぐに実現する。その相手は劉鳳なのか、或いは別の誰かなのか。
 それはカズマ自身にだって分からない。だがそれでも一つだけハッキリしている事は。

 ―――ソイツが壁となって立ち塞がるなら、この自慢の拳で打ち砕く。

 ただそれだけだった。
 ただそれだけを思いながら、カズマは家路へと着く足を止めることも無く歩き続けた。


 こうして失われた大地に不屈の魔法使いたちは降り立った。
 自身の『正義』という名の信念を貫く男は、彼女たちと出会い戸惑いと予感を覚え。
 未だ出会わぬ反逆者は、その出会いを予感しながら拳を握る。
 その出会いが何を齎し、何を為すのか。
 誰にもそれは分からぬまま、しかしハッキリとしていることがただ一つ。

 物語は、既に始まりもはや止まる事は許されない。
 ただ、それだけのことである。


 次回予告

 第一話 機動六課

 それは何をもっての反逆か
 男は怒りに拳を振り上げ
 女は杖を交わしながら話し合いを望む
 双方、譲れぬ思いを抱きながら最初の邂逅は激闘へと変わる。
 魔法とアルター
 その未知なる力の激突が齎すものとは何なのか・・・・・・



 以上です。初投下で不慣れなので時間を取ってしまいすみません。それと支援してくださった方、ありがとうございました。




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