成体組織には、今まで考えられてきたよりももっとES細胞に近い性質をもった細胞の、不均質な集団が存在する。しかし、成体幹細胞の集団とES細胞のそれとの間には重要な違いがある。その細胞集団はES細胞と共通した多くのタンパク質を発現することを示したが、三胚葉のそれぞれに由来する組織から生じるなら、それは生体外でも生体内でも三胚葉の性質を示す細胞へと分化する能力を持っている。この発見は、多能性培地の状態においてES細胞が同質であるよりはむしろ異質であるという最近の報告と一致する。スフェアの中の別々の細胞は、異なる能力を持つ傾向にある。こうした観察は、未分化のES細胞とこの論文で示された細胞[スフェア細胞]が一定の変動状態a constant state of fluctuationにあることを示唆する。細胞が生育する環境は、それがどのように成長するか、あるいは異質な細胞集団の中のどの細胞が選ばれて成長するかにおける、最も決定的な要因である。[51]