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ペルソナTRPGイデアルエナジー避難所

1海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/04/29(火) 01:54:46
ここはペルソナTRPG イデアルエナジーの進行場所兼臨時の避難所です。
現避難所が不安定でアクセスが難しい状況みたいですので
迷子のかたはこの場所に御一報していただけたら嬉しいです。

19海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/04(日) 00:56:18
ついに最後の戦いの火蓋が切って落とされた。
海棠美帆は、サリエルの吸い込まれるような瞳をまるで人間のようと思っていた。

(あ、あの目。もしかしたら私?数ヵ月前の私?)

――この世が終わるのを、じっと見ていたい。

終焉への欲望。

(振り払わなきゃ…)
一つ唾を飲み込む。
しかし絶望を乗り越えることは簡単なことではない。
たが自分は乗り越えつつある。
それは運が良かったのだともいえる。
優しい神部に出会えたこと。
信じてくれるスサノと出会えたこと。
その奇跡のようなことは、生きていたからこそ起きたのだ。

「……もう、私は逃げない」
もともと神様なんていない。
目の前のあれは人類全体の影。
不安。恐怖。欲望。
負の意識が具現化したもの。
それならどうする?
破壊することが不可能なら克服するしかないのではないか。
皆を信じる心で。

「来てっサラスヴァディ!」
別れの定めの女、乙姫は水の女神サラスヴァディへと覚醒している。
豊かな水の星。生と死の循環。
時が満ちればすべては終わる。
だが人は、自ら死を求めるべきではない。
これが海棠の命のこたえ。

【サラスヴァディ:水(氷結)のエナジーを放出】

20海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/04(日) 01:03:03
幼少のころのスサノたちを惑わし、事故の原因をつくった謎の猫。
その実験の失敗により現れしは負のサリエル。
それはスサノ父に分解され、それぞれが封印されたはずだった。
だが現在、仮面党のイデアルエナジーの収集を利用しサリエルは復活を果たしていた。

世界中に氾濫する終末思想にかつて世間を賑わせたノストラダムスの予言。
人は無意識に破滅を求めているとでもいうのか。

「サリエル…」
月見原自身のペルソナもサリエル。
人々にサリエルと呼ばれる意識の形。
かつて大人たちがやっていた実験も皆彼らの夢だったのだろうか。
好奇心は破滅への道。
スサノはそれを自覚したからこそ、自らの体にサリエルを引き込もうとしたのかもしれない。
が、だからこそ、自覚しているからこそサリエルは行き場を失った?
巨大な黒猫はゆったりと戦闘態勢に入っている。

『終わりは必ず訪れる。
だから、今日終わるのも、その未来で終わるのも、変わらない。
そう、未来は変わらないんだ』

黒猫の禍言に胸が痛む月見原。
それは負のサリエルの言葉であり何処かの誰かのほの暗い意識、シャドウでもあるのだ。

「大人たちの夢。それは僕たちの幸せだった。
だから僕は、僕のまま生きることにしたんだ!」

【聖サリエル:聖なるエナジーを放出】

21スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/05/06(火) 20:19:21
【投下乙&了解だ。
ただ根拠は無いけどイヨカン隊員は来てくれるような気がするから
連休明けを最長解釈して今週末まで待たせてもらうぞ!】

22海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/07(水) 00:30:45
了解です。
音信不通の方がおられると
心が揺れ動いてしまうんですよね〜
心配しちゃうというか
面白くないから消えちゃった、なんて焦ってしまって。
また失敗って投げやりになっちゃって悪循環……。
たたみたくなる。

それとジョーカーはゆるくって
ラスボスとしては落第。
覚悟や代償がなくっちゃ
もえあがれなかったみたいです。

神部さんも、お気に召されなくって
不愉快な思いをなされていらしたらすいません。。
神部さんが残ってくださったとき、私は嬉しくおもったものです。
誠実なレスに胸をうたれていました。

23海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/08(木) 01:11:35
『なぜだ…なぜ君たちは……』
巨大な黒猫は嘲笑するかのように言った。それは自嘲的でもあった。
――なんとなく自問自答。
しかし答えはサリエルの意識下にはない。
つまり終焉の象徴でしかないサリエルは永遠にサリエルのまま。
答えがあるとしたら、それはサリエルと対峙する神部やスサノたちの心のなかにしかないのだ。
この場で終焉という答えに反抗する答えのないものは、心の影に飲み込まれてしまうことだろう。

黒猫の両眼が妖しく光る。
刹那、闇を切り裂く咆哮。
通路から現れたのはペルソナ犬「アクエリアス」。
彼のペルソナからは、疾風のエナジーが迸っている。

と、いうことは。

「あのぅ、おれ……。いらなくね?」
中務透はポリポリと頬をかき
苦笑い。
黒猫も静かに笑っている。
そんななか、やはり苛立つのは須藤竜子。

「まったくもうっ!それなら次、はやくしなさい!
サリエルのエナジーの高揚を、あなたたちは感じないの!?」
一同に緊張が走る。
いつのまにか空気が張り詰めている。
周辺の気圧は一気に下がり始めていた。
黒猫の口内からは輝く光。
須藤にはあの光に見覚えがあった。
そう。あれはメギド(万能系攻撃魔法スキル)の光。
人体を跡形もなく蒸発させる白道睡蓮のメギドの数倍のエナジーが黒猫の内部に凝縮しているのだ。

『メギドラオン……』
次の瞬間、世界は光に包まれた。
終わった。ここにいるすべての者の命は散った。
そう思っていた。だかしかし――

牛の頭をもつ異形がその身を盾に高熱の玉を抱いている。
それは中務透のペルソナ「クダン」
彼の必死の行動の理由はわからない、が、今この場にいるということは
死んでもよい覚悟があるということだ。
カメラ小僧の特ダネ狙いとしたら、物陰に隠れていたはずである。

※最後は、というかエピローグまで書く予定ですが、
現在参加をして下さっているお二人にお願いしたいと思いますので
申し訳ないのですが中務さんには
噛ませ犬になっていただきました。
あとは個人としては納得ができる感じなのでよろしくです。

24かんべ ◆XquI7kcmMk:2014/05/09(金) 23:15:58
み、みつけた。
海棠さん須佐野さんご迷惑おかけしました!!!
迷子で音信不通になってすみませんでした!よかったあああああ
明日改めて書き込みます!

25スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/05/10(土) 01:56:59
いやあ、良かった良かった!
ここまで続けてくれた事からいっても状況からいっても絶対迷子しか有り得ないとは分かっていたので
99%は見つけてくれるだろうと確信して待ってたんだけどやっぱり万が一見つけられなかったらどうしようと思ったものです

26海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/10(土) 21:18:53
見つけていただいて嬉しいです。
そでふれあうも何かの縁。
一期一会。
出会いとは尊いもの。
一緒に完走できることを嬉しく思います。

本当に嬉しい。

27かんべ ◆XquI7kcmMk:2014/05/11(日) 00:40:42
昨日はスレ発見で興奮しすぎてました失礼をば

改めましてただいま戻りました、神部です。(トリップおかしいですが…
なんというか不必要な心配をさせてしまいましたね、すみません。しかしもう大丈夫です、ちゃんとここをブクマしました。
避難所が失踪するなんてことがあるんですか……。週末しかネット確認できないので、単に人多すぎて弾かれてるんかと思ってました/(^o^)\
しばらくしてなな板のWikipediaを見ても全スレにおいて更新が無いし、万年規制組でうんともすんとも書き込めないし、もう何もかもが泡と消えたのかと\(^o^)/
まだ問題はありますがペルソナTRPG見つけられて本当に良かったです。YOKATTA

≫22
不愉快なんてとんでもないですよ!!!
海棠さんの気転でアクラシエルを動かして貰ったり、突拍子も無く出してしまった浅賀をここまでキーマンにして頂けるなんて本当に光栄です!
今まで見られなかった分、まとめて楽しませてもらってます!こっちこそいつも気をもませてしまって謝罪不可避。

≫21,25
うう、なんてありがたきお言葉。
遅レス常習犯の私をそこまで買って下さるとは……;;私も須佐野さんくらいきっちりできればいいものを
やっぱり謝罪不可避。


前回も似たようなことがあって(その時も私が一番返事が遅かった気がする)、残留メンバーで完走させようと決意したし、約束もしたので
自分の言葉に忠実でありたかった。皆さん本当にいい人達ばかりだし。

とかなんとか言いつつ、今週中には文章追いつかないですごめんなさい!!

28海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/11(日) 01:42:34
了解です。
ご連絡をいただけたら
私はぜんぜん平気です。

と、と、順番はお二人にお任せさせていただくとしまして
レスのほうもゆっくりでいいですので
よろしくお願いいたします。

29神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/05/19(月) 02:19:39
■ ■ ■

>「……かなしいね」
頭上のサリエル、アクラシエルは互いに見つめあう形で近接している。
双の天使は微動をだにせず。一秒、二秒、時は経過する。
地に伏し、天の二柱を仰ぐ。すると何故か…アクラシエルの姿が妙に歪に見えた。
その腹部から、銀色の半月が覗いていたからだ。
それを認めた途端、焼き鏝を押し付けられたかの激痛が衣世の腹部を貫いた。

■ ■ ■ 

あまりの苦痛に意識が途絶えた。しかしいつものように示唆に富んだ『夢』は見なかった。
それほどまでに耐えがたい痛みが、腹部から全身にかけて真っ赤に駆け巡ったのだ。
イタイ。原始的な感情に全てが制圧されそうになり、その痛みがやがて憎悪に変わりかけたところで、衣世は未だ理性的な感情を持ち合わせている。
その要因とは不思議なことに、この痛みを突きつけた月見ヶ原にある。彼が鎌を下したその瞬間の瞳の色が忘れられない。
しかし、月見ヶ原の感情を読み取れるほど今の衣世に余裕はなく、頭蓋骨の中でコトンと軽い音がし、本当に何もかもが真っ暗闇に包まれた。

■ ■ ■

鎌を引き抜かれたアクラシエルはサリエルに対して反撃をすることも無く、中空から全ての出来事を見下ろしている。
半自立型の彼は主の意思の及ばない場でもある程度の行動は可能であるようだ。今、彼は自身が書記官であると心得ている。
人間が行った事、言った事を全て、主たる神部衣世に伝える役割を担っていると。
視界の端に横たわる主を、アクラシエルはどうすることもできなかった。衣世がいつも残念がるように自分に治癒能力はないからだ。
できることは衣世が気絶している間に、衣世がするだろう行為を、衣世の代わりに行い、衣世の目になること。
幸運な事に、この場には浅賀がいる。無意識の大海で眠っていたアクラシエルを起こした張本人が。
彼は既に衣世の腹部に手を翳し治療の準備に入っていた。

■ ■ ■

衣世が再びじわじわとした痛みを感じ、目を覚ましたのはわずか10分にも満たなかった。
眼前には幼子を安心させるように優しく笑う浅賀がいた。手術が終わって第一に見たの光景も先生の笑顔だったことを、ふと思い出す。

「君の主治医としてはベッドで安静にといいたいんだけれど、」
優しい笑顔はだんだんと困り顔に変わりつつある。浅賀はそっと衣世の背中に手をまわして上体を抱える。
「まあ現実そうも言ってられないんだよね、見て分かるとおり」

彼が顎でしゃくった先には、対峙する月見ヶ原と須佐野の姿があった。
>「格好つけるな! 何で人類全体のために 一人でそんなもの背負わなくちゃならないんだよ!」
>「その子は何にも背負っちゃいないさ」
浅賀は感情の一切を排した声で月見ヶ原をそう断じる。
「仮面をつけなけりゃ戦うこともできない弱虫の子。 救いたいのは人類なんかじゃない。彼が救いたいのは自分自身なんだよ。
……なにが悲しみを終わらせるだ。悲しみから逃げるの間違いじゃないか」

月見ヶ原は目を見開き、浅賀の言葉に傷ついている。仮面に隠れているというのに、衣世にはそう感じられた。

■ ■ ■

30神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/05/19(月) 02:21:00
意識は未だうすぼんやり、灰色の霧に包まれている。サリエルの鎌から放たれた毒気はまだ抜けない。

「……衣世ちゃん。君の逃げ場を無くして、こんな危険な目に合わせたのは、」
浅賀は、腕に抱える彼の患者にだけ、ひっそりとその内を吐露する。
「僕が、あの時、逃げて感じた後悔を…君に背負わせたくなかったからだ」

悲しい昔話を聞いた。
ある青年が女性に恋をする。けれど彼女の目に青年は映らない。
そして悲しい事件がおき、思いを伝えることもなく二人は永遠に離れ離れになってしまった。
それどころか、生き残った青年にも呪いがかかったのだ。
物語を最後まで見届けなければならないという忌まわしい呪いを。

たんたんと語る浅賀は、衣世の目に、暖炉の前に身を縮ませて座り込む老人のような寂寥感を背負って見せた。
(そっか、先生はまだ捕らわれているのだ。)

「傍観者という立場を得て僕は物語の外側に出ようとした。結果がこれさ。
月見ヶ原大夢は暴走し、過去の被験者がまた被害者になろうとしている。どうしても、逃げられないんだ」

この人も月見ヶ原と同じ、弱虫なんだろう。
ただ単に、浅賀は月見ヶ原よりも器用にポーカーフェイスをこなせていたというだけで。いつもの喰えない笑顔は、心の柔らかな部分を見せない為の仮面だ。

「逃げられないなら終わらせればいい」
衣世はぽつんと呟いた。
「え?」
「物語の登場人物なら、ストーリーを捻じ曲げればいい。神様が語り手でも勝手に作り変えてやりましょう。
だから手始めに、いつまでもお話が続くと思っている弱虫の男の子に、分からせてあげてください」

衣世が微笑んだと同時に、海棠の放った鉄砲玉が水晶を打ち抜いた。無数の青白い光がひしめいて、フネの中を駆け巡りやがて外へと消えていった。

>「……ああ。ぼくと母さんの夢が!」
>「終わったんだ!君の夢は」
>「君の母さんは人類の進化なんて願ってなかったぞ!」

普段声を荒げることのない浅賀が、低く言い切る様は迫力があった。月見ヶ原は声を詰まらせ、両腕をだらりと垂らす。
これでやっと月見ヶ原大夢の物語は終わる。

「幕引きに必要なのは幸せな世界だ。魔女も化け物もお呼びじゃないの。だからサリエル、君は最後のページに描かれるべきじゃないの」

浅賀に肩を支えられて立っているのがやっとだというのに衣世は不敵にそう言いきった。

■ ■ ■

31神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/05/19(月) 02:21:24
皆は悪意にぶくぶくと身を太らせた黒猫に対峙している。

>「そう、わかったわ。ド馬鹿女のおばさま。いわゆる合体魔法を使うのね。……でもこの場を仕切るのは私よ。えっと、そうねぇ。決め技の名前はパンデモニウム…。
万魔殿的な意味なんだけどそれって私たちにぴったりじゃない?まさかプリキュアみたく聖なるヒロインぶって決めたいってことはないわよねぇ。
あんたたちなんて世間一般に戻ったら貧乏人のドくずで変態みたいなもんなんだから」

須藤の言葉に衣世はぷくっとふき出した。

「竜子ちゃんって以外に中二病だよね、前々からちょっと夢見がちなとこはあると思ってたけど。いいよ、分かった。パンデモニウム、覚えた覚えた」
笑うのにも痛めた腹筋が辛い。馬鹿にされたと直感した須藤は、顔を真っ赤にしてお嬢様らしからぬ言葉で衣世を罵る。
「まあまあ竜子ちゃん、品位にかける言葉は控えましょう。あなたに比べたら貧乏なのは認めますけど、ドくずで変態なんて言葉は首肯しずらいわ?
だって、あなたったら前科持ちじゃない。例えば美帆さんを縄で縛って暗いところに放置しちゃったりね!」

それに命ちゃんを馬鹿女だなんて言うのも説得力に欠けるわ、だって彼女は月光館だもの!
衣世はけらけら楽しそうに笑う。この方が人の暗部たるサリエルの気に飲み込まれない、そんな気がした。

――衣世,無駄口は控えよ。サリエル眼前にあり。
はいはい。

一度だけ、すっと目を閉じる。様々な人の顔が目に浮かぶ。父、母、研究員、看護士、友達。
目を開けるとそこには、苦楽を共にしてきた幼馴染の三人、一度絶交してまた絆を取り戻した海棠。
浅賀は隣で、未だに衣世の肩を支えている。目が合う。
17才の少女とは思えぬ毅然として口調で――まるでアクラシエルが乗り移ったかのように――衣世は高らかに宣言した。

「あなた方の物語はここで終わる」

放たれるのは光の鎖とニ挺の長槍。

「『真理の雷』」

【アクラシエル:光と雷のエナジーを放出】

32スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/05/22(木) 00:57:28
>「そう、わかったわ。ド馬鹿女のおばさま。
いわゆる合体魔法を使うのね。
……でもこの場を仕切るのは私よ。
えっと、そうねぇ。決め技の名前はパンデモニウム…。
万魔殿的な意味なんだけどそれって私たちにぴったりじゃない?
まさかプリキュアみたく聖なるヒロインぶって決めたいってことはないわよねぇ。
あんたたちなんて世間一般に戻ったら貧乏人のドくずで変態みたいなもんなんだから」

そのネーミングセンスに、須藤竜子に初めて親近感を覚えた。
須藤竜子といよの他愛もない言い争いに、そんな場合ではないのに思わず笑みが零れる。
もしかしてまた昔みたいに、いや、今度はあの頃よりもっと仲良く出来るのかもしれない、そんな気がした。

「僕はなかなか格好いいと思うぞ。
万魔殿といえば全国の探検部員に聞いた、いつか攻略してみたいダンジョン堂々1位!」

>『無駄だよ。終わりは避けられないんだ…』

>「あ、そっ。でもね。私、だめって言われても諦めないタイプなのよね。
いつもなにかと命懸け。真剣勝負を求めちゃう厄介な性分なのよ。
――いくわよエリスっ!」

最終決戦の火蓋を切って落としたのは須藤竜子のラグナロク――
神話に語られる神々の最終決戦を意味する、これ以上無くこの場にふさわしい名。

>「来てっサラスヴァディ!」

続くカイドーちゃんが放ったのはニヴルヘイム――絶対零度の氷結魔法。
これも紛れもなく豊かな水の星のもう一つの側面。
それは決して終わりの象徴などではない。生命は過酷な氷河期も潜り抜けて来て、今があるのだ。

>『終わりは必ず訪れる。
だから、今日終わるのも、その未来で終わるのも、変わらない。
そう、未来は変わらないんだ』

>「大人たちの夢。それは僕たちの幸せだった。
だから僕は、僕のまま生きることにしたんだ!」

――回転説法。大夢君の聖サリエルが光輝く聖なるエナジーを解放する。
魔の黒猫は、合体魔法の完成を阻止すべく極大の破壊魔法をを放たんとする。

>『メギドラオン……』

33スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/05/22(木) 00:58:14
思わず固く目を瞑る。
終焉を告げる破滅の魔法が炸裂……しなかった。
目を開けてみると、トール君のクダンが身を挺してメギドラオンの発動を止めているのだった。
もしかしたら、これこそが負のサリエルの狙いだったのかもしれない。
風属性なくしては合体魔法が完成しない。
しかし、何と言う巡り合わせだろう、もう一人風属性持ちが駆けつけていたのだった。
トーラスと、疾風纏うペルソナ犬アクエリアスが風のエナジーを放つ。

「――万物流転!」

万物は流転する、この世に永遠なんて存在しない。
終わりは必ず訪れるものかもしれないけど
永遠に時が止まったように変わらない世界なんて、すでに終わっている状態と同じなのではないか。

>「あなた方の物語はここで終わる」
>「真理の雷」

いよが放ったのは、裁きの雷光。
そう、世界を終わらせようとした者の物語は今ここで終わるのだ。
そして僕達の物語は続く。
終わりは必ず訪れるのかもしれないけど、それがいつになるかは僕達次第だ。
10年後かもしれないし、1000年後かもしれないし、もしかしたら半永久的に終わらないのかもしれない。

「全ての物は最後には終わるからどう足掻いても未来は一緒……か。
じゃあ聞くがお前は大好きな漫画が打ち切り最終回になっても平気なのか!?
某少年漫画の作家さんは打ち切り最終回にならないためにアンケートで票を取れるように必死で頑張ってるんだ!
ってなわけで……”死んでくれる?”」

負のサリエルと同じ、破滅を孕む闇の力――それを、相手を破滅させるために解き放つ。
これだけでは同じ穴のむじなかもしれないが、僕には仲間がいる。
闇は生命の輝きと合わさった時、純然たる闇のためにある闇ではなくなる。
生命が持つ光の同じカードの裏側、光をより一層輝かせるための闇となるのだ。
これにて、火炎、水氷、光輝、疾風、雷光、闇黒――全属性のエナジーが合わさった。

「「「「「「パンデモニウム!!!!!!」」」」」」

極彩色のレーザー光が負のサリエルを打ち抜く!

34海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/25(日) 00:11:07
――光。混沌の光。
それはサリエルを貫いた。

「……訪れる終わりを、覆すことなんて、できやしないのに」
貫かれたサリエルの傷口から色彩が生じ、
まるで死を喰らい尽くす微生物のように拡大してゆく。
これが万魔殿、パンデモニウムの力。

「終わりは必ず訪れる。ここで私が消えても何も変わらない」

サリエルの禍言も今の海棠には届かない。
かつて、絶望に囚われていたその心も、憑き物を落としたかのように晴れ晴れとしている。
今、海棠が感じているのは神部の知性溢れる心。
邪(よこしま)を排除し真理だけを見通す理性のエナジー。
海棠にとって神部の精神は良い教本となっていた。

(あのこは私より頭がいいとか、あのこは私より可愛いいし人気者
……とか、そんな嫉妬をするのも私。
だからって私は自分もこの世界も、もう否定しない。
それは真実だからすべてを認めて生きてゆく。
私には私の特別な世界があるんだから……。
いいえ。いろんなものが足りないって自覚してるからこそ、
求めてゆける。特別な世界をつくっていこうって思う)

海棠の瞳に映るサリエルの姿は砂塵のように消滅してゆく。
ほの暗い瞳の少女は、その眼に輝きを取り戻している。
そうだ。今この瞬間、海棠の物語の次の1ページが開かれたのだ。
海棠はたぶんこれからも前を向いて歩いてゆける。
その眼前には、明日出会う自分の姿が、微かに見えた気がしていた。

35海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/25(日) 00:18:59
イン・ラケチ。私はもう一人のあなた。
サリエルの闇を食らい尽くしたパンデモニウムの光は蛍火のような燐光となり
空間を浮遊しながら消滅してゆく。
それを目の当たりにして須藤は歪んだ笑みを浮かべていた。

「なぁにが打ちきり漫画の作者よ〜。
さすがのサリエルも華麗にスルーしてお亡くなりになられたじゃないのよ。
まあそれって低俗な貴女の決め台詞としてはこの上なくふさわしい台詞だったけど。
ま、貴女はそんな風に人を茶化しながら、逆に茶化されながら
死ぬまで生き続けるんでしょうけどね」

スサノミコトはふざけた種族。
人との繋がりを得るために探検部という肩書きがなければ
個人としての関係を構築できない心に闇を抱えている人。
きっとスサノは目に見える形での繋がりに安心を求めているのだろう。
彼女は分かりやすく選別するのが好きなのだ。
善や悪と物事を区切るために自分は好きとか自分は嫌いといったような個人的な感情が存在しない。
いわゆる世間一般論。言い換えれば大衆論を隠れ蓑にして自分を隠している。
そんな自己を恥じらいからか直視もできないスサノは
何もかも茶化し嘲笑し続けている悲しげな道化だ。
そう勝手に想像した須藤は、急におかしくなりお腹を抱えて笑いをこらえている。だが――

「あ〜、でも、死んでくれる?だけは容赦ない貴女の本音だったのかなっ!?
それじゃあやったじゃない、おめでとう。
とうとう邪悪な品性を剥き出しにできたわね!」
須藤はじっとスサノの瞳を見据えていた。
その身に宿るスサノオの真贋を見極めるかのように。

36海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/05/25(日) 00:45:41
中務の頬をアクエリアスがペロペロと嘗めている。
それに気付いた海棠は両手をあわせ祈りのポーズ。

「メディアラハン」
すると針のような極細の光の雨が一同に降り注ぐ。
それは慈愛の雨。海棠の回復の呪法。

「……う」
中務が意識を取り戻す。

「ん?終わったのか?」

「えっと……まあ、そういうことねぇ」
スサノ母が答える。

「ふーん。じゃあ、おれはさっさと帰ろうか」
周囲を見渡したあと、空気を読んだ中務。
彼は片手をあげて颯爽と去ってゆく。
なるほど良い男というものは背中で語るものだ。
その通り、広い肩幅のシルエットに海棠は中務の男性らしさを感じた。が
しかし、次に聞いたのは彼の情けない悲鳴だった。

「な、なんなんだこの化け物はよぉっ!」
中務と対峙しているのは女の顔の胴体をもつ怪鳥。
負のサリエルが消えたとしても、このトリフネが怪異の空間であることに変わりはなかった。
海棠は慌てて彼の救出に向かおうとするが、ハッとして振り返り……

「あ、みんな、ありがとう!
また明日。学校で会いましょう!」
そう言って中務のもとへ駆けてゆく。
それにアクエリアスが弾むように続いていた。

一方で、月見原はたたずんだまま。
その背中を痛切な思いで見つめていた浅賀ではあったが彼は神部に視線を移すと

「彼はもう大丈夫だ。次に君たちと出会う時には、きっとあの優しい笑顔を取り戻しているはずだよ。
だが今は、そっとしておいてあげようか」
神部の肩に手をぽんとおく。

「じゃあ、私たちも帰るとしよう」
トリフネは物語の最後に付き物の大崩壊をすることもなく
無粋に存在を維持し続けている。
須藤もまたスサノに、しっしっと手で払う仕草。
その頃、正気を失った須藤祖父が、警察に確保されたということは言うまでもない。

【言い残したことがあれば吐き出していただけたら嬉しいです。
そしてそろそろエピローグをお願いいたします。
正直名残惜しい気持ちもしますが潮時のような気も……。
エピローグは後日談などでまとめてくださってもOKです】

37神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/06/08(日) 06:11:11
もう少し、お待ちください…!

38海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/06/08(日) 11:20:23
了解です。ごゅっくりどぞ〜

39神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/06/15(日) 20:54:18
――終わりは必ず訪れる。ここで私が消えても何も変わらない――

終わりは必ず訪れる。それは紛れも無い事実である。しかし、サリエルには分からず仕舞いだろう。
”終焉”の価値とは、そこに至るまでの過程で定まるもの。
この時点でサリエルに屈して受け入れる『死』
サリエルに打ち勝ち、日常に帰し、成熟し、そして緩やかに老いて迎える『死』
 この2つの価値は決定的に異なる。

「断言する。……お前の消滅には、一片の価値もないよ」

人類の意識はきっと根の部分で繋がっている。その意識の大海から、悪意のみを掬い上げて生み出され、人格を与えられたもの。
見て見ぬふりをしていた自分の汚い部分が、彼の一部を構成している。
黒猫の形をした悪意は、不可解げな表情を保ったままに、その存在を薄めていった。
(さようなら、きっとまたいつか会う、醜い”私”)

 □ □ □ 

全ての力を使い果たした衣世は脱力気味にその場にへたり込んでいた。力んだせいで体の節々がピキピキする。
海棠が気を使って癒しの雨を降らせる。不思議なことに雨水に打たれても服は濡れない。

>「あ、みんな、ありがとう!また明日。学校で会いましょう!」

彼女は変わった、と思う。素敵な人間になった。固く分厚かった殻を自分の力で破ったのだ。衣世は外側からコツンと控えめにノックした程度の役割に過ぎない。
感慨に耽りつつ手を振り返す。少し名残惜しい気もしたが、彼女の言う通り、明日がある。自分の手で勝ち取った未来が。
学校で他愛も無い会話をしたり、放課後に寄り道したり。これからはそんな日常が、きっと待っている。
 彼女の弾むショートヘアを見送った後、視線を近場に戻せば、
須佐野と須藤の騒々しくも懐かしいやり取りである。好意的に解釈するなら……罵詈雑言の数々は須藤流の人付き合いの仕方なのだろうか?
須藤大臣の所業が明るみに出れば彼女の人生に波乱は必至だ。これまでのように何をしても許されるお嬢様ではいられない。
しかしその方が彼女の人生を豊かにすることを、衣世は確信している。
祖父の庇護と呪縛から開放された竜子は天性の、唯我独尊、とも言える行動力で前へ進み続けるだろう。
何より、この場の誰よりも自ら幸せになる!と竜子自身が宣言したのだから。
 彼女が大方満足したと思われたところで、衣世は控えめに須藤の元へ近づいた。

>「仮入部体験はこれで終わりかな。長いことお世話になりました、隊長…そして副隊長、というか隊長のお母様…?」

引っ込み思案な自分を、補う位置にいた須佐野命。彼女もまた海堂と同じくこの一連の事件に欠かせず、神部衣世の人生を変えるきっかけとなった人物である。
彼女が手を引かなければ自分は一生、自分のルーツを知りえなかった。それはそれで、波乱の無い幸せな人生だったように思う。
ミコトとの再会――喫茶店の前で複数人を相手に大立ち回りをしていたっけ――は、今から思えばそれ自体が将来の波乱を暗示させるものだった。

「部活、楽しかったわ。命ちゃんはまだ活動を続ける?」

彼女の探究心の根源は何か。以前神部は考察したことがあった。母の形見だと豪語していた大剣や目立つ風貌が示唆することとは?
須佐野は冒険を通して未知の世界にいる母親を探していたのでは、と思っていたのだ。
それは彼女の過去が明らかになるにつれて誤った推測であると判明したが、次の仮説…(過去を知るために探検をしていたのではないか?)が新たに浮かぶ。
それすらも判明した今、彼女が探検に望むものとはなんなのだろう。
竜子とはまた違った意味で苛烈な命の生き様を衣世はひっそりと見守っていきたいと思う。

 そして別れの挨拶を最後に残した人物。衣世は近寄る事を躊躇ってしまった。
「・・・・・・」
神部衣世は月見ヶ原大夢を傷つけた。その事実のみを追求するのなら、善悪や正誤はなんの正当性も付与しない。

40神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/06/15(日) 20:56:30
(イデアル――Ideal: 理想の / 申し分ない / 架空の / 観念的な / 崇高な目標 )

その単語の示す通り。イデアルエナジーとは理想の力であったが、それは非力な少年の思い描いた架空の力に過ぎなかった。

「わたし、は」

言葉に詰まる。
理想主義者の崇高な目標を夢物語に止めたのは他ならない自分だと、月見ヶ原を突き落としたのは自分だと、いやでも再確認してしまう。
しかしその罪悪感は同時に衣世の今までの行為を否定することでもあるのだ。

「あなたに謝らない。でも、あなたも私に謝らなくていい」

今は慰める事もできない。自分の思いを伝えるので、やっとだ。

>「彼はもう大丈夫だ。次に君たちと出会う時には、
きっとあの優しい笑顔を取り戻しているはずだよ。だが今は、そっとしておいてあげようか」

そっと置かれた手は、優しく衣世をいたわる。
大丈夫、世界は月見ヶ原が思っているほど儚いものではなく、人はしぶとく、みにくく、強く生き続ける。
彼は透明すぎたのだ。研究室の外で生きることに慣れた神部や須藤と違って、少し不器用だっただけ。
きっといつか、彼も海棠のように殻を割る日が来る。衣世はその時まで、外の世界からノックをし続ける。

>「じゃあ、私たちも帰るとしよう」

また、記憶がフラッシュバックした。
研究所で迷子になった時。月見ヶ原女史や他の怖い研究員に怒られるぞ、とたっぷり脅した後で、浅賀は子供達の手を引いてくれた。
仕方が無いから一緒に怒られてあげる、と。竜子のふくれっ面に、大夢の申し訳なさそうな顔、命は全く物怖じしてなかったっけ。

「はい、せんせい」

随分子供っぽい、返事をしてしまった。
大切なことを沢山忘れていたんだ。衣世は制服の袖で、乱暴に目元を拭う。
またいつか。またいつか。みんなで笑いたいな。
 そこでもう一つ、思い出した。怒られると聞いて、自分はどうだったかというと……

「浅賀先生、命ちゃん。手、繋ぎましょう」

……一番怯えて、二人に両手を握って貰っていたのだ。
竜子の冷ややかな目も全く気にならず、半ば強引に二人の手を引っ張って神部衣世は歩き始める。
その両眼は潤んではいたものの、弱さや悲しみの色は見られず、普段にない覇気や決意が読み取れた。

もう何も失うものか、忘れるものか。

【エピローグ:神部衣世の場合】

41神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/06/15(日) 20:58:50
(遅れまして、申し訳ありませんでした。そして下げ忘れ…。感想&感謝は終わった後に書きたいと思います)

42スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/06/16(月) 22:57:28
海棠ちゃんが降らせてくれた癒しの雨に打たれながら。
僕はサリエルが消滅した後もしばらく、その場所を放心状態で見つめていた。
その静寂を破ったのは……。

>「なぁにが打ちきり漫画の作者よ〜。
さすがのサリエルも華麗にスルーしてお亡くなりになられたじゃないのよ。
まあそれって低俗な貴女の決め台詞としてはこの上なくふさわしい台詞だったけど。
ま、貴女はそんな風に人を茶化しながら、逆に茶化されながら
死ぬまで生き続けるんでしょうけどね」

いつもと同じ皮肉たっぷりの、だけどどこか安堵が滲み出ている須藤竜子の言葉を聞いてやっと実感する。
僕達は、勝ったんだ――!

>「あ〜、でも、死んでくれる?だけは容赦ない貴女の本音だったのかなっ!?
それじゃあやったじゃない、おめでとう。
とうとう邪悪な品性を剥き出しにできたわね!」

「そりゃどうも。君は少しは邪悪な品性を隠す事を覚えた方がいい。
だって……病弱な可哀想な子という免罪符はもう無いんだから!
まさか契約終了につき返品ってわけにもいかないだろう? おめでとう!」

どんな病気でも治す奇跡の医者、それがサリエルの光の側面。
例え自らの手駒になる事との交換条件だったとしても、野望が潰えた今
それは大夢君から竜子ちゃんへの本当の贈り物になったのだ。

「ん……? 待てよ……。君だって仮面を被っているんじゃないか?
本当は超純情乙女だったりして……」

こちらを見つめてくる竜子ちゃんを見返し、ニヤリと笑う。
彼女もやはり本性を隠すためにわざと嫌味たらたらなキャラクターを作っているのかもしれない。
Persona――仮面/人格/登場人物。
人格とは仮面、所詮演劇の登場人物のようなもの。よく出来た言葉だ。
きっと見たまんまの人間なんてこの世にいない、誰しも仮面を被りこの世界の登場人物を演じている。
だけど、その仮面もまたその人自身の一部なのだろう。
図星だったのか的外れだったのかは分からないが、案の定、竜子ちゃんは超純情乙女というワードに御立腹。
他愛の無い言い争いに突入する。
そのやりとりを逐一書く事は省略するが、特筆するまでもない大体想像される通りのものだ。
それがひと段落するのを見計らったかのように、海棠ちゃんが軽やかに走り去る。

>「あ、みんな、ありがとう!また明日。学校で会いましょう!」

「ああ、また!」

いささかあっさりしすぎているような気もするが、大袈裟な挨拶なんていらない。
明日からまた日常が始まるのだから。
前とほとんど変わらないけど、変わった事があるとすれば、いよ達の事を思い出して、海棠ちゃんと友達になった事。

>「仮入部体験はこれで終わりかな。長いことお世話になりました、隊長…そして副隊長、というか隊長のお母様…?」

「うーむ、それは優秀な探検部員なだけに残念だ」

口ではそう言ったものの、大方予想はついていた。
彼女の探検部でのミッションはコンプリートされたのだ。

43スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/06/16(月) 23:00:04
>「部活、楽しかったわ。命ちゃんはまだ活動を続ける?」

「それが目下の悩みどころかなあ。
そもそも探検部自体が母上によるこのための陰謀だったんだよな……。
謎ルートで情報仕入れてきたり不思議には思ってたんだよ」

駄目元で大夢君を誘ってみるか? 月光館だし。

>「彼はもう大丈夫だ。次に君たちと出会う時には、きっとあの優しい笑顔を取り戻しているはずだよ。
だが今は、そっとしておいてあげようか」

絶妙のタイミングでそう言われ、流石に今は空気を呼んでそっとしておく事にした。
それに向こうは母親が亡くなっているのにこちらは必要以上にピンピンした状態で出て来られて申し訳ない気分になる。
だから、探検部の勧誘はまた今度だ。

「大夢君、最初の目的が何であろうと竜子ちゃんの病気を治したのは君だ。
少なくとも一人、すでに救ってるじゃないか」

それだけ言って、母上の方に向き直る。

「母上……話は家に帰ってからゆっくり……何ィいいいいい!?」

母上の姿は忽然と消えており、そこには書置きと、一枚のカードだけが残されていた。

【追われている身である故長居は出来ぬ、失礼いたす!
今回の事は序の口に過ぎぬ。
今はまだ言えぬがこの世界にはまだまだあーんな秘密やこーんな真実が隠されているのだ!
探検部副隊長は正体が割れてしまった故近い将来また別の姿を取ってそなたを導くとしよう。
それまでの間暫しさらばじゃ!】

「何故にエセ時代劇口調!?」

結局失踪の真相や大剣の正体はお預けのようだ。
困った事に、壮大すぎる風呂敷に面喰いながらもワクワクしてしまっている自分がいた。
僕はやはり平凡な日常では生きられない星の下に生まれついているのだろう。
残されたカードはタロットの大アルカナのうちの一つ、”0. THE FOOL”。
一人の旅人と一匹の犬。何も持たぬからこその未知への自由と無限の可能性。
でもとりあえず今ぐらいは―― 一面のボスを倒した余韻に浸っても罰はあたらないはずだ。

>「浅賀先生、命ちゃん。手、繋ぎましょう」

差し出されたいよの手を固く握り返す。

「そうそう、長い事お世話になりました、なんて水臭いぞ。
探検部なんて肩書きがなくたってさ……僕達ずっと親友じゃないか。
今も昔もこれからも!」

いよに手を引かれるように、外の光に向かって歩きはじめる。
見とけよ化け猫――お前が打ち切り最終回にしようとした世界の行く末を。
悔しいけど面白いって言わせてやるから!

44海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/06/21(土) 21:37:23
――灰色の空。。
訪れた平穏な日々に、須藤竜子は時々苛立ったりする。
今日の日常は、幸せな人間が、
自分の幸せを守るために作ったどこにでもある日常。
見つめる先、病院の屋上のフェンスは、自殺防止の金網で覆われている。
今でも苦しむ人々は、かごのなかの鳥。
そんなことも知らないで楽しくいきてきる人間を思えば、殺したくもなる。

だが、そんな須藤のこわばった頬を優しく触れる手のひらがあった。
少し冷たいけれど、その芯は
力強くてあたたかい。
月見原の優しい手。
こんな毎日でも、月見原は癒してくれる。
イライラは雨の日。晴れの日は癒しの日。
月見原が傍にいてくれたら、須藤はなんとかましに、生きてゆけると思った。



ある晴れた日の電車の中。
海棠は単語カードをめくりながら英単語を暗記していた。
これは地道な作業だけれども、少しずつだけれども、
自分の成長が感じられて心地よい。
きっと、神部が絵をかくのも同じ気持ちなのではないのか?
一枚目と百枚目なら、何かが変わっているはず。
その積み重ねが自分を目的の場所へと導く。
小さく息を吐いて、そう信じてみる。



一人きりのプールサイド。
まるで笑っているように揺らいでいる水面。

45名無しさん:2014/06/21(土) 23:20:28
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5141640.jpg.html

46海棠 美帆 ◆GiRbJTu4qI:2014/06/22(日) 21:08:58
すいません。
力尽きてました……。

すさのさん、神部さん。ほんとにほんとにありがとうございました。
エピローグを読ませていただいて
お二人の実直なレスに
じわじわと満たされる気持ちが溢れ嬉しく思っております。
なので今はもう、書くこともなくって
ある意味満ち足りたような嬉しい気持ちでいっぱいです。

神部さん、すさのさんと完走できた経験は、
私にとって輝く思い出となることでしょう。
たぶんですが、TRPG では
もう一生ないような尊い経験を体験させていただきました。

それではまた!

47スサノ ◆T0eVR7g5H.:2014/06/23(月) 20:56:24
ついに大団円だね!
思い返せば出だしこそ順調でしたがその後は常に順風満帆というわけではなく
大量FOや度重なる2chの不調や避難所喪失などを乗り越えて本当によく完走したと思う!
スレ主として話の牽引と精神的支柱を担ってくれたカイドーちゃんと
本スレ上で全編通してパートナー的ポジションを務めてくれたヒロインいよのお蔭だ!
本当にありがとう!

カイドーちゃん、素敵な絵をありがとう!
お二人とはまたどこかでご一緒するような気がするのでさよならは言いません
またねノシ

48神部衣世 ◆XquI7kcmMk:2014/06/23(月) 23:42:49
花びらの舞う中で、前を見つめているみんな。綺麗で素敵な絵です。
前回よりももっともっと画力が上がった気がします。(なんか上から目線ですみません)

私は遅レスや誤字脱字の常習犯で、ルーズな参加者でした。
そしてTRPGに限らず、何かをやり遂げることが不得手でいつも中途半端でした。
海棠さんや須佐野さんが粘り強く待ってくれなければ途中でリタイアしていたかもしれない。
でも、当スレに参加したお陰で少しだけ成長できました。この体験は自分の自信に繋がると思います。

海棠さんの文章は、繊細で女性的な言葉選びと心情描写が丁寧でした。こういうのが才能なのかなと頻繁に感心してしまうほどです。
須佐野さんは、ぐんぐんと話を(そして神部の手も!)引っ張っていってくれました。役回り上、辛辣な言葉を浴びせかけられても鷹揚に答えてくれ、ありがたかった。
自分の遅筆を棚において、二人のレスはまだかまだかとワクワクしていたものです。

本当に、またいつか会えるといいですね。
またいつか……!


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