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哲学科生のルサンチマンのようです
1
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:33:30 ID:M/bxL4Bs0
『きっと、世界は五分前に創られたのよ』
思い出の中に居座っているあの子が、お気に入りの仮説を呟いた。
〝世界五分前仮説〟
提唱者はバートランド・ラッセル。これは世界が五分前にできたことを今の科学では否定できないという、トンデモ理論だ。80歳の人は五分前よりも前に存在していたじゃないか、と主張したとしても、その80年間の人生すら、五分前に創られたと言うのだ。 それはまるで、RPGの年老いた村長がプログラミングされた時点から、年老いた村長として存在しているかのように。
現実世界がまるでプログラミングされた世界と同じように扱われているような気がして、僕はあまり好きな仮説ではない。
2
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:36:26 ID:M/bxL4Bs0
思い出の中の僕が彼女に答える。そうだ、僕はその仮説が好きじゃない。
そう、好きじゃないんだ。
『どうかしら。実はこれこそ世界の真理だったりするかもよ』
真理。そんなもの、存在するんだろうか。存在してたとしても見つけられるんだろうか、歴代の哲学者たちが一生かけても見つけられなかったのに。
思い出の中の僕が返答に黙っていると、彼女はか細い声で、しかし、そんなか細い声には似合わない、壮大な夢を呟いたのだ。
『人生の全てをかけて、真理を求めたかったなぁ…』
それが
それが愛しい君の望みなら、僕は
3
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:37:00 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「…求めても求めても見つからないのならば、僕がこの人生賭けてでも」
真理を求めようじゃないか。
4
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:37:35 ID:M/bxL4Bs0
哲学科生のルサンチマンのようです
.
5
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:38:33 ID:M/bxL4Bs0
/ ,' 3「新入生諸君、したらば大学にようこそ。何より、この哲学科へよく来てくれたのう!」
从 ゚∀从「…」
この春、ちょうど偏差値的にも場所的にも一般的な大学にある哲学科、そこに僕は入学した。真理を求めるためには、哲学科で学ぶことが一番手っ取り早い方法だと思ったからだ。
/ ,' 3「早速じゃが、我が哲学科では入学した際、諸君らがどれくらい哲学の知識があるかを知るために哲学史のテストを実施させてもらう」
(;'A`)「うへぇ、テストとかまじかよ」
( ;^ω^)「抜き打ちテストかお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっとちょっと、聞いてないわよ」
テストという言葉に周囲が騒つく。どうせ成績には関わらないだろうから、そんなに気にしなくてもいいだろうに。
6
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:39:08 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「…哲学史のテストに自信がない者は、自分が学びたい哲学者や思想、哲学的な問題として取り上げたい事柄について書くというのでもかまわないですよね、荒巻先生」
/ ,' 3「おぉ、そうじゃの。それもいいのう、流石は哲学科一番人気の教授、盛岡先生じゃのー!」
从 ゚∀从(あれが盛岡デミタス教授かぁ…)
したらば大学哲学科所属の盛岡デミタス教授。したらば大学の顔とも言える、人気のある教授だ。もっとレベルの高い大学からも声がかけられているのに、なぜかしたらば大学で教え続けているちょっと変わった教授だ。
/ ,' 3「じゃあ、どちらか好きな課題を選んで、早速取り掛かって貰おうかのう。哲学史のテストを選ぶ者は、黒板に問題を書くからそれを解くように」
黒板に書かれていく問題を見て、ホッとした。やっぱり実力を測るためだけのテストらしく、簡単な問題だ。
从 ゚∀从(これなら楽勝だな)
7
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:39:42 ID:M/bxL4Bs0
/ ,' 3「…では、そろそろ終わりにして提出してもらおうかのう」
从 ゚∀从「お願いします」
/ ,' 3「ふぉっふぉっふぉっ、お疲れ様じゃの」
こうして、僕は哲学科に入学して、初めてのテストを終えた。とりあえず、筆を止めることなく、さらさらっと解けたし、問題ないだろう。
どうせこれからの大学生活には関係のないテストだけど、問題が解けるのはいい気持ちだ。
(´・_ゝ・`)「……」
8
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:40:30 ID:M/bxL4Bs0
入学式から何日かたち、哲学科に入ってから初めての授業前に、同級生に声をかけられた。
('A`)「隣、空いてる?」
从 ゚∀从「あ、うん。どうぞ」
('A`)「サンキュー!あ、そういやさ、高岡ハインリッヒってお前か?」
从 ゚∀从「そうだけど?」
('A`)「お前、今年度の哲学科生の中で一番頭良いんだってな」
从; ゚∀从「え?」
('A`)「あのデミタス教授が言ってたの、聞いちゃったんだよ。荒巻教授とお前のこと、そう話してたのをさ」
从; ゚∀从「そんなまさか…僕なんかが何で?」
(*'A`)「それは知らないけど、すげーじゃん。あのデミタス教授に褒められるなんて!…あ、そういや俺の名前は鬱田ドクオ、これから4年間よろしくな」
从; ゚∀从「あ、うん、よろしく」
9
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:44:59 ID:M/bxL4Bs0
ガラッ
(´・_ゝ・`)「…ん、みんな座ってるな。じゃあ、さっそく講義を始めるよ」
(´・_ゝ・`)「…えー、僕の実践哲学講義では、座学ではなく、実践的な授業を行いたいと思う」
('A`)「座学じゃない哲学の授業って一体なんだろうな」
从; ゚∀从「さぁ…?」
(´・_ゝ・`)「入学式の後行ったテスト、ほとんどの学生が自分の関心のある特定の哲学者や思想、哲学の問題として取り扱いたい事柄についての課題を選択した」
(´・_ゝ・`)「あの程度の哲学史問題なら、哲学史の問題を解いた方が楽だろうに、哲学史の問題を選択したのは一人だけだった」
('A`)「哲学史の問題解くくらいなら、自分の好きな哲学者とか選ぶよなぁ」
从; ゚∀从「…」
10
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:46:01 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「君たちは、自分の関心のある哲学者や思想についてはある程度の知識は持っているようだが、他の哲学者などの知識が乏しすぎる」
(´・_ゝ・`)「そこで、だ。この講義では、君たちには各々関心のある哲学者や思想を実践して貰いたい」
( ;^ω^)「お?それって、どーいうことですかお?」
(´・_ゝ・`)「簡単に言えば、ナゾナゾのようなものだよ」
从; ゚∀从「ナゾナゾ?」
11
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:46:57 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「まず、僕が生徒をメールで一人、指名する。指名された生徒は一週間、自分が関心のある哲学者や思想に基づいて行動してもらう」
(´・_ゝ・`)「他の学生は、誰が僕に指名されて行動していたのか、そして『どんな哲学者や思想に基づいて行動していたか』を見破ってもらう」
ξ゚⊿゚)ξ「指名された学生が、他の生徒に見破られなかった場合はどうなるんですか?」
(´・_ゝ・`)「見破られなかったら、学年末のレポート免除しよう」
(*'A`)「おおー!いいな、それ!」
(´・_ゝ・`)「見破った生徒にも、何か報酬を与えようかな。レポート免除とまではいかないけど、何か考えておくよ」
( ^ω^)「質問ですお。実践していいのは、哲学者や思想だけですかお?」
(´・_ゝ・`)「哲学的に問題として取り上げたい事柄でも、もちろん構わない」
('A`)「そういうのは見破るの大変そうだなぁ…」
(´・_ゝ・`)「見破るために勉強してもらうのがこの講義の目的だからね」
( *^ω^)「楽しそうだおー!」
(´・_ゝ・`)「今日中に、一人の生徒にメールを送るけど、指名された生徒は他言無用にするように」
(´・_ゝ・`)「…では、諸君。これから知を愛し求め、勉学に励むように。本日の講義は以上だ」
12
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:48:07 ID:M/bxL4Bs0
('A`)「やっぱり変わった教授だよな、デミタス教授」
从; ゚∀从「そうだね。まさか、“実践哲学”がこういうことだとは思わなかったよ」
('A`)「本当になー。まぁ、好きな哲学者とか思想に基づいて行動するなんて楽しそうだからいいけどさ。みんなはどんなことをするのかも楽しみだし」
从 ゚∀从「そうだね」
('A`)「一番優秀な高岡が何するかも楽しみだ、絶対見破ってやるぜ!」
从 ゚∀从「僕も鬱田が指名された時は見破ってあげるよ」
('A`)「なんとか一週間逃げ切ってやるさ」
从 ゚∀从「ふふっ。それにしても、最初は誰になったのかなぁ」
('A`)「さぁ、まぁ、これからの一週間で分かるだろうよ」
「…」
.
13
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:49:18 ID:BqmVVlDg0
( ^ω^)「哲学科って、少人数制とは聞いてたけどこんな少ないとは思わなかったお」
('A`)「それな」
从 ゚∀从「どの授業受けても、見慣れた顔がいるよね」
ξ゚⊿゚)ξ「ねー。飽き飽きしちゃうわ」
三日ほど経つと、仲の良い友達が鬱田以外にも出来た。
ニコニコ笑顔の内藤ホライゾン、何故か呼び名はブーンと、このグループでは紅一点の津出ツン。津出は可愛いけれど、いかにも女子大生という感じで、ちょっとお化粧が派手めだ。
从 ゚∀从(…あの子は、化粧は濃かっただろうか)
僕の意識の中に彼女は、どんなときだって存在している。何故だか顔だけは思い出せないのだけれども。
どういう訳か、どの思い出の彼女も変わった猫の被り物をしているのだった。
14
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:50:00 ID:M/bxL4Bs0
( ФωФ)『ハインくん。哲学って知ってる?』
高校から、駅までの帰り道。夕陽に照らされる彼女は、黒いセーラー服を靡かせながら僕の数歩前を歩く。僕はいつだって、その姿に見とれていた。
从 ゚∀从(綺麗だなぁ)
( ФωФ)『…ねぇ、ちょっと、聞いてる?』
从 ゚∀从『あぁ、ごめんごめん。哲学の話だっけ?全然わからないよ、そんな難しいこと』
( ФωФ)『難しくなんてないよ、ただ純粋に知を愛し求める学問だよ』
从 ゚∀从『そうなんだ、君が好きそうな学問だね』
( ФωФ)『うん、すごく好きなの。ハインくんも、どう?一緒に哲学学びたいと思わない?』
从 ゚∀从『そうだね、それも良いかもしれないね』
他愛もない会話を彼女と交わすこと、それが僕にとって、本当に幸せな時間だった。
15
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:51:22 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从(こんな大切な思い出なのに、どうして彼女の顔が思い出せないんだろう)
(;'A`)「おーい、高岡。そろそろ移動しないと次の講義間に合わないぞー?」
从; ゚∀从「…えっ!?あ、あれ!?」
('A`)「お前、ボーッとしすぎ。津出もブーンも行っちゃったぞ」
从; ゚∀从「ごめん、鬱田。まっててくれたんだ」
('A`)「置いてくわけに行かないだろ、早く行くぞー」
从; ゚∀从「うん!」
彼女のことになると、僕の中にある、歯車が少し狂ってしまう。でも、この歯車が狂う感覚、僕は嫌いではない。
何故なら、悪戯好きな彼女が僕の中にいて、僕の歯車を悪戯して、狂わせているようなそんな感覚になるから。
僕は、この感覚が好きなのだ。
16
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:52:49 ID:M/bxL4Bs0
('A`)「なぁ、高岡。お前、津出のことどう思う?」
退屈な一般教養の講義が終わると、鬱田が真剣な面持ちで話しかけてきた。
从 ゚∀从「津出?気が強いけど、良い奴ってイメージだね」
('A`;)「す、好きだったりするのか?」
从 ゚∀从「それはないよ。僕、好きな子いるし」
('A`;)「そ、そうなのか!良かった…」
从 ゚∀从「なんだい?鬱田、君、津出のことが好きなのかい?」
('A`*;)「す、好きってわけじゃないけどさ!」
从 ゚∀从「分かりやすいなぁ。一目惚れって奴かい?」
('A`*;)「一目惚れ…。ま、まぁ、そうなるのか、世間では」
鬱田は大人しそうな子が好きそうなのに、津出とは少し驚いた。だが、まぁ、津出は派手めだけど可愛いし、話しやすいから、鬱田も取っつきやすかったのだろう。
17
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:53:36 ID:M/bxL4Bs0
('A`;)「なんかアドバイスとかないか?俺、恋するの実は初めてなんだよ」
鬱田は中々ピュアらしい。普段、クールぶってるから、こういう鬱田は新鮮だ。
从 ゚∀从「アドバイスかぁ、うーん。デートとかすれば良いんじゃない?」
('A`;)「んー、でもなぁ…」
从 ゚∀从「断らないって、津出なら」
('A`)「いや、実は…」
从 ゚∀从「ん?」
('A`*)「デートはすでにしたというか、なんというか…」
从; ゚∀从「え、すごいじゃないか!」
奥手そうに見えるのに、意外だ。初めて恋をした割には手が早い。
18
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:54:32 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「そんなに脈ありなら、アドバイスする必要もないね」
('A`)「それがそうでもなくてさぁ…」
从 ゚∀从「なんか問題があるのかい?」
('A`)「津出のヤツ、他の奴ともデートしてるみたいなんだよ。まぁ、誰かと正式に付き合ってるわけではないみたいだけどさぁ」
从 ゚∀从「あー。津出、社交的だからね。男友達僕らの他にもいてもおかしくないよ」
('A`)「俺もその中の一人のまま終わっちゃうのかなぁ…」
从 ゚∀从「そんなことないさ。諦めずにガンガン行こうよ、まだ大学生活は始まったばかりなんだから」
('A`)「高岡、俺のこと応援してくれるか?」
从 ゚∀从「もちろんだよ」
('A`)「じゃあ、お願いがあるんだけど…」
19
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:56:25 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「…さぐりを入れて欲しい、か」
まぁ、これくらいなら手伝っても良い。代わりに告白してくれ、とかだったらお断りだったが。
ξ゚⊿゚)ξ「あら、高岡だけ?てっきり鬱田もいるのかと」
从 ゚∀从「まぁ、たまには僕と二人で晩御飯とかもいいでしょ?」
ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、高岡もデートしたいの?」
从 ゚∀从「え?いや、デートというわけでは…」
ξ゚⊿゚)ξ「別にいいわよ?デートして楽しかったら、楽しかったと思った分のお金払ってくれれば良いから」
从; ゚∀从「え?」
20
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:58:18 ID:M/bxL4Bs0
ξ゚⊿゚)ξ「私からは別に値段設定しないから安心してね、あなたが楽しかったから払ってもいいなと思う金額で良いから」
从; ゚∀从「ちょ、ちょっと待って?!頭が追いつかないというか…!ぼ、僕はデートがしたいわけじゃなくて…」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうなの?普通に遊びたいってことね、いいわよ。御飯行きましょうか」
从; ゚∀从「…津出、もしかして色んな人と今みたいなデートしてるの?」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ。鬱田ともデートしたわよ」
从; ゚∀从「そ、そうなんだ…」
ξ゚⊿゚)ξ「鬱田、なんか言ってた?」
从; ゚∀从「え、いや、その…」
ξ゚⊿゚)ξ「楽しそうにしてた?私とのデート」
从; ゚∀从「そりゃもちろん…」
ξ*゚⊿゚)ξ「そう、そっか。それならよかったわ」
从; ゚∀从「…?」
21
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:58:56 ID:M/bxL4Bs0
('A`)「おはよ、高岡、津出に昨日探り入れてくれたか?」
从 ゚∀从「…鬱田。君、津出にお金払ってデートしたのか?」
('A`)「うん、気持ちだけでも…ってことで払ったな」
从; ゚∀从「おかしいだろ、それ!」
('A`;)「そうなのか?恋したことないから、デートってそういうものなのかと…」
从; ゚∀从「恋したことなくても、そこはおかしいって気付こうよ…」
('A`)「んー…、まぁ、でも、楽しい気持ち味あわせて貰ったから別に構わないけどなぁ」
22
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 00:59:48 ID:M/bxL4Bs0
从; ゚∀从「聞くの怖いけど、デートで何したの…?」
('A`)「ご飯食べてゲーセンで二人で遊んだり、プリクラ撮って解散したけど?」
从 ゚∀从「……それだけ?」
('A`)「それだけだけど?」
从; ゚∀从「そうなんだ。僕はてっきり最後まで…」
('A`*;)「ば、馬鹿!お前、そんなことするわけないだろ!まだて、ててて手も繋いでないのに!!」
从 ゚∀从「そっか、なら良かったよ」
鬱田が純粋な奴で良かった。
でも、もしかしたら、津出の方は、鬱田とは最後までしてなかったとしても、他の人とは最後までやっているかもしれない。注意した方がいいだろう、友人として
23
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:00:36 ID:M/bxL4Bs0
ξ゚⊿゚)ξ「おはよー、二人とも」
('A`)「おはよ、津出」
从 ゚∀从「…津出、昨日の話だけど、お金貰ってデートするのは良くないと思うよ?」
ξ゚⊿゚)ξ「私とのデートが楽しかったら貰うだけで、お金貰えるからデートするわけじゃないわよ?」
从 ゚∀从「同じことじゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「全然違うわよ。鬱田は私とのデートが楽しかったらお金払ったのよね?」
(*'A`)「お、おう!すごい楽しかったよ」
24
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:01:23 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「津出、他の人とはどんなデートしてるんだい?」
ξ゚⊿゚)ξ「一緒に勉強したり、カフェ行ったり、公園で散歩してお話したりするくらいよ?」
从; ゚∀从「……えーと、聞きにくいけど、身体的な接触とかは?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あるわけないじゃない!私、まだ彼氏できたことないから手も繋いだことないんだからねっ!!」
从; ゚∀从「津出もなのか…。あー、だからデートに関しての考え方がズレてるのかなぁ?」
25
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:02:17 ID:M/bxL4Bs0
ξ゚⊿゚)ξ「みんな楽しそうにしてるなら良いじゃない。良いことしてるなぁって気持ちになれて、私も幸せだし」
从; ゚∀从「良いことって…。どちらかというと悪いことのように感じるんだけどなぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでよ?」
从 ゚∀从「もし津出が誰かと正式に付き合ったとしたら、他のデートしてた人は悲しむだろう?お金を払ったのに、と逆上する人もいるかもしれないし、あんまり危ないことは…」
ξ゚⊿゚)ξ「大丈夫よ。私、誰とも付き合わないから」
(;'A`)「な、何で!?」
ξ゚⊿゚)ξ「だって、高岡の言う通り、誰か一人と付き合ったとしたら、他の人が悲しむでしょう?私はみんなに喜んで貰いたいのよ。たくさんの人が幸せだと、みんなも幸せになるでしょ?」
('A`)「そうか、津出は優しいんだなぁ」
ξ゚⊿゚)ξ「そういうこと。じゃあ、そろそろ次の授業があるから」
('A`)「おう、また後でな」
26
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:03:18 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「…なるほどね」
('A`)「高岡どうした?」
从 ゚∀从「…盛岡先生の授業って明日だよね?」
('A`)「ん?あぁ、そうだな」
从 ゚∀从「ふーん、そっか」
从 ゚∀从「明日が楽しみだね」
.
27
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:03:57 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「はい、みなさん、おはよ。早速だが、今回のナゾナゾは解けたかい?」
( ^ω^)「全く分からなかったお」
('A`)「無理があるよな」
ξ゚⊿゚)ξ「難問よね」
(´・_ゝ・`)「…おや、みんな分からなかったのか」
('A`)「わかるわきゃないっての…」
28
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:04:42 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「どうやら、今回のナゾナゾが解けたのは、高岡君だけだったようだね」
( ;^ω^)「お!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「えっ?」
('A`)「は?」
从 ゚∀从「…」
(´・_ゝ・`)「さぁ、高岡君。答えてもらおうか。誰が僕に指名され、どんな哲学者や思想に基づいて行動したのかを」
.
29
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:06:03 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「…まず、盛岡先生に指名されたのは津出ツン」
ξ;゚⊿゚)ξ「!」
(;'A`)「えぇ!?津出が!?」
( ;^ω^)「気づかなかったお」
(´・_ゝ・`)「どうして彼女だと思ったんだい?」
从 ゚∀从「彼女が特定の人物と付き合うことより、不特定多数の人とデートする方が良いことだと考えて行動していたので、それで気が付きました」
(;'A`)「え、なんで?」
从 ゚∀从「色んな人とデートしてお金を貰ってる割には、お金を稼ぐ気がなさそうだったから。津出は『自分とのデートが楽しかったらお金を払って貰う』という、目に見える形として、ただ自分の論の正しさを証明しようとしてたんじゃないかと思ってね。あの性格なら、この授業が終わり次第、お金も返すつもりだったんじゃないかな」
('A`;)「そ、そうなのか?津出!」
ξ;゚⊿゚)ξ
30
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:08:03 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「そして何より、多くの人の幸せによって、より多くの人も幸せになるという発言…」
【ξ゚⊿゚)ξ『だって、高岡の言う通り、誰か一人と付き合ったとしたら、他の人が悲しむでしょう?私はみんなに喜んで貰いたいのよ。たくさんの人が幸せだと、みんなも幸せになるでしょ?』】
从 ゚∀从「…個人の幸せを足していけば、その分、社会全体の幸せとなる。そして、幸福の数を増やす行動は善であるとする考え方」
从 ゚∀从「まさに、功利主義者ベンサムの『最大多数の最大幸福』」
ξ;゚⊿゚)ξ「!!」
31
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:08:47 ID:M/bxL4Bs0
从 ゚∀从「おそらく、お金をもらったのはベンサムの『快楽計算』のように幸福は量的に計ることができる、ってのを実践してみたかったんじゃないかなぁと思うけど、…どうかな?」
ξ;゚⊿゚)ξ「…」
ξ;゚⊿゚)ξ「はぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ「…まさか、見抜かれるなんてね。絶対にバレないと思ったのに」
从 ゚∀从「ごめんね、レポート免除の邪魔しちゃって」
ξ゚⊿゚)ξ「いいわよ、あんたの番の時、絶対見破ってやるんだから」
32
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:09:29 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「高岡君、大正解だ。おめでとう」
从 ゚∀从「ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「津出君、君も良く頑張ったよ。まぁ、色々勉強不足なところもあるが、これから四年間で功利主義について、色々学んでいきなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「はーい、頑張ります」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、早速、今日の残りの時間は功利主義についての講義をしよう」
( ;^ω^)「なるほど、こういう感じで進んでいく授業なのかお」
(´・_ゝ・`)「そういうことだね。あ、次の指名者については、またこの講義が終わり次第メールするからね。では、功利主義、学んでいこうか」
33
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:12:14 ID:BqmVVlDg0
('A`;)「まさか津出が哲学を実践するためにデートしてたとは思わなかったなぁ…」
ξ゚⊿゚)ξ「楽しかったでしょ?あ、そうそう、お金返すわね」
('A`)「別にいいのに」
从 ゚∀从「しかし、面白いやり方したね」
ξ゚⊿゚)ξ「見破られちゃったけど、楽しかったわ。まぁ、私も色々勉強になったしね、幸せを量的に足すことだけじゃ上手くいかないってのもさっきの講義で分かったし」
( ^ω^)「高岡みたいに僕も格好良く見破りたいおー」
('A`)「俺も頑張って高岡みたいにビシッと見破ってみせるぜ」
从* ゚∀从「ははは。次の指名者が、どんな哲学や思想を実践をするか楽しみだね」
34
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:13:13 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「…高岡ハインリッヒか」
/ ,' 3「どうかしましたかの?」
(´・_ゝ・`)「いえ、今年の新入生の高岡ハインリッヒのことでしてね…」
/ ,' 3「あぁー、あの異例の…」
(´・_ゝ・`)「えぇ。まぁ、これからどう育つか、楽しみですね」
/ ,' 3「そうじゃのう…」
35
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:13:47 ID:M/bxL4Bs0
(´・_ゝ・`)「ああいうタイプが一番苦労するのが、哲学科の面白いところですからね」
.
36
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:14:31 ID:M/bxL4Bs0
第一講義、終わり。
37
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 01:35:59 ID:156rXAVg0
おつ
面白かった
38
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 12:55:17 ID:cQ9HzwBw0
哲学全然知らないから勉強になった
続きが待ちきれない!
39
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 13:55:30 ID:MpuF9nhk0
非常に良い
40
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 18:02:54 ID:yB6pBY/Y0
乙!凄く引き込まれました
わたくしの読み間違いでなければよいのですが女子生徒の配役AAはアレでお間違いないでしょうか……
41
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 19:31:00 ID:avxNjuUw0
題材が新鮮で面白い
42
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 19:39:03 ID:BMhMqohk0
楽しみ
43
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 21:26:33 ID:RXeTeDfk0
おつ
44
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 21:31:47 ID:ey0aMiXA0
いやぁ、これ面白いわ。乙でした。
45
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:53:43 ID:SMG9CKkk0
あの子に好かれたかった。
哲学を学び始めたきっかけは、本当にただそれだけの理由だった。
( ФωФ)『凄いわね、ハイン君。哲学史についてたくさん勉強したのね』
从 ゚∀从『君ほどじゃないけどね』
( ФωФ)『いいえ、私より知識豊富よ。流石ハイン君だわ』
从 ゚∀从『君に褒められると、照れるよ』
( ФωФ)『これなら哲学科の大学、どこへでも行けるわね』
从 ゚∀从『哲学は確かに面白いけど、哲学科に進む気はないよ』
( ФωФ)『あら、勿体無い』
从 ゚∀从『君が哲学科のある大学に行ったら、その大学の他学科には行くかもしれないけれどね』
( ФωФ)『そうなの。勿体無いわね、ハイン君。才能あるのに』
( ФωФ)『…本当、勿体無いわ』
.
46
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:54:25 ID:SMG9CKkk0
从; ゚∀从「っ!!」
( ;^ω^)「おぉん!?」
(;'A`)「ビックリしたー…!いきなり起きるのやめろよ、ハイン!」
从; ゚∀从「あ、あぁ。僕、寝ちゃってたのか…」
( ;^ω^)「本当、ハインって頭良いのに抜けてる奴だおー」
从; ゚∀从「ははっ、ごめんごめん」
47
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:55:04 ID:SMG9CKkk0
哲学科へ入ってから、前にも増して彼女のことを思い出すことが増えた。やはり、彼女が最も愛した学問をやっているからだろうか。
…あぁ、もし僕なんかではなく、君が哲学科へ入学していたとしたら
君は一体、どんな哲学を学びたかったんだろうか
.
48
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:55:40 ID:SMG9CKkk0
哲学科生のルサンチマンのようです
.
49
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:57:01 ID:SMG9CKkk0
('A`)「にしても、良くこの前の見破れたよな、ハイン」
从 ゚∀从「この前のって、茂羅君の?」
( ^ω^)「あんなの見抜けなかったお。茂羅の時も凄かったけど、長岡のを見破ったのも凄かったお。最近名前も聞いたことない哲学者ばっかり連続して、まったく歯が立たないお」
从 ゚∀从「確かに難問だったよね」
('A`)「またまたご謙遜を」
从 ゚∀从「ははは…」
50
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:57:59 ID:SMG9CKkk0
入学してから二ヶ月、僕は実践哲学の講義、全ての指名者を言い当てていた。
見破るのは中々楽しいが、少し不安なこともある。
从 ゚∀从(…もし、僕に指名者の順番が回ってきたら、どうしよう)
哲学科に入学して、二ヶ月。この二ヶ月で、僕は哲学科で、自分がズレている存在なのだということを薄々感じ始めていた。
('A`)「あー、早くみんなと哲学的な談義したいよなぁ」
( ^ω^)「おっおっ、分かるお、その気持ち。でも、実践哲学の時に不利になるから出来ないおー」
('A`)「早く順番まわってこねぇかな、終わっちまえば気兼ねなく哲学の話ができるのに。なぁ、ハイン」
从; ゚∀从「え、あ、そうだね。本当、早く順番まわってくればいいのに」
( ^ω^)「ハインなんて、哲学について語りたいこと沢山あるだろうに…可哀想だおー」
('A`)「なー、早く当ててもらえるといいな」
从 ゚∀从「あぁ、うん…」
51
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 22:58:31 ID:SMG9CKkk0
疎外感。
僕はみんなとは違う、根本なズレがある。僕は別に語りたい哲学的談義なんてない、ただ哲学について、座学で学んでいられれば良い。学んで、学んで、真理を追い求められればそれだけで良い。
こんな疎外感を感じる時、決まって僕は彼女を思い出す。
( ФωФ)『ハイン君って、本当、勿体無いわよね』
勿体無い、勿体無いのか。それはきっと、色んな意味が込められていたのだろう。
彼女から見たら、僕はきっと様々な面で宝の持ち腐れをしていたのだろうから。
52
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:00:37 ID:SMG9CKkk0
ξ゚⊿゚)ξ「はぁ…」
('A`)「あ、ツンだ」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたたち、また一緒にいたの?飽きないわねぇ」
从 ゚∀从「ツン、どうかしたの?元気なさそうだけど」
ξ゚⊿゚)ξ「それがさぁ、電車でスリにあっちゃったのよ」
(;'A`)「スリ!?怪我とかはなかったのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ないわよ、お財布からお金すられたけどね」
( ;^ω^)「おーん、満員電車って怖いお」
ξ゚⊿゚)ξ「本当よね。あーぁ、最近ついてないわ。現実世界って本当最悪。やっぱ二次元最高」
从; ゚∀从「そんなやさぐれないでよ、そのうちいいことあるよ、きっと」
('A`)「そうだぞ。まぁ、二次元最高ってのは分かるが、現実世界だって良いこと絶対あるさ」
53
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:03:57 ID:SMG9CKkk0
ξ゚⊿゚)ξ「…そうよね。みんな慰めてくれてありがと」
( ^ω^)「おっおっ!可哀想なツンの昼飯は、ドクオが奢ってくれるってお」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、本当に?」
('A`)「構わないぞ、奢って進ぜようじゃないか」
ξ*゚⊿゚)ξ「やったー、早速いいことあったわ」
(*'A`)「つ、ツンが幸せそうなら良かった」
54
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:05:19 ID:SMG9CKkk0
( ^ω^)「いい雰囲気だおー。ここは若い二人に任せて、僕たちは外にメシでも食いに行こうかお、ハイン」
从 ゚∀从「そうだね、それがいいね。では、お二方、ごゆるりと」
(;*'A`)「え、ちょっと待てよ、二人とも!」
ξ*゚⊿゚)ξ「全く、なに言ってんだか!」
文句を言いながらも、二人は満更でもなさそうだ。まったく、ドクオも早く好きなら好きと言えばいいのに。
…そう、遅すぎたと後悔する前に。
仲睦まじく話す二人を見ると、心の中に少しだけドロッとしたものが溶け出す。僕も、本来ならあの子とこういう関係を築けただろうと思うと、二人を見ているのが少しだけ、辛いのだ。
55
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:06:16 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从(…本当なら、忘れられれば楽なのかも知れない)
忘れられるわけ、ないけれど。
( ^ω^)「…ハイン、大丈夫かお?」
从 ゚∀从「ん?なにがだい、ブーン」
( ^ω^)「いや、またボーッとしてるから。ラーメンのびちゃうと思ったんだお」
从; ゚∀从「あぁ、いけないいけない!ありがとう、ブーン」
( #^ω^)「本当、ハインはいっつもボーッとしすぎだお!伸びたラーメンなんて食えたもんじゃないのに!」
从; ゚∀从「うぅ、ごめんよ」
56
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:07:10 ID:SMG9CKkk0
( ^ω^)「…でも、前から気になってたけど、いつもどんなこと考えてるんだお?哲学的なことかお?」
从 ゚∀从「…いや、そんな立派な話じゃないんだ。ただ、ふとした時に、高校時代、好きだった女の子のことを考えちゃってね」
( *^ω^)「おー!ハインの恋バナ聞きたいお!どんな子だったんだお?」
从 ゚∀从「どんな子かぁ…長い黒髪で、黒いセーラー服がよく似合う子だったよ。それと、哲学が好きな子だった」
( *^ω^)「いいじゃないかお、顔は美人系かお?それとも可愛い系かお?」
从; ゚∀从「顔は…そのー…」
( ^ω^)「お?」
57
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:08:17 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「実は思い出せないんだ、彼女の顔が」
( ;^ω^)「え、なんでだお?」
从 ゚∀从「わからない。何故か、思い出の中の彼女はすべて、猫の被り物をしていて、素顔が分からないんだ」
( ;^ω^)「意味わかんないお」
(´・_ゝ・`)「ふーん、猫の被り物ねぇ。中々面白いじゃない」
从 ゚∀从「面白いですけど、なんでだかよくわからないんですよね。別に彼女は特別、猫が好きだった訳じゃないのに…」
从; ゚∀从「って、うわっ!?」
( ;^ω^)「で、デミタス先生!?なんでラーメン屋なんかに…!」
(´・_ゝ・`)「僕がラーメン食べちゃいけない法律でもあるのかい?」
( ;^ω^)「そんなことはないですお…」
58
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:09:05 ID:SMG9CKkk0
(´・_ゝ・`)「それにしても、高岡くん。君の甘酸っぱい恋のお話、いいねぇ、もっと詳しく聞かせてくれないかな。僕の知的好奇心はそれを欲しているようだから」
この二か月でわかったことだが、盛岡教授は相当の変わり者だった。哲学者らしいといえば、らしいけれども。
从 ゚∀从「面白い話じゃありませんよ、僕はもう彼女と会っていませんから」
( ^ω^)「なんでだお?」
从 ゚∀从「…彼女は、高校三年生の時、入院してね。しばらくはお見舞いにも行っていたんだけど、ある日を境にお見舞いに行くのをやめてしまったんだ。それ以来、彼女とは会っていないんだよ」
( ;^ω^)「おぉん、どうして行くのをやめちゃったんだお?」
从 ゚∀从「それは秘密」
( ^ω^)「そうかおー…まぁ、色々あるおねぇ」
59
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:10:26 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「まぁ、でも、だからと言ってどうして彼女の顔が思い出せないのかはわからないんだけれどね」
( ^ω^)「うーん、不思議なこともあるもんだお」
(´・_ゝ・`)「え、分かったけど?」
从 ゚∀从「え?」
( ^ω^)「お?」
(´・_ゝ・`)「こんな簡単なこともわからないとは、まだまだ勉強が足りないね、君たち」
从; ゚∀从「分かったって、どういうことですか!?」
(´・_ゝ・`)「知りたい?」
从; ゚∀从「知りたいですよ、そりゃ」
(´・_ゝ・`)「そのうち教えてあげるよ、そのうちね。じゃあ、君たち、明日の実践哲学講義で会おう。今回のナゾナゾも解けるといいね」
そう告げると、盛岡教授は何気なく、僕たち二人分のお会計もすまして、店をそそくさと出て行ってしまった。
60
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:11:33 ID:SMG9CKkk0
( ;^ω^)「デミタス先生凄いお、あの会話だけで謎を解くなんて…」
从; ゚∀从「凄すぎだよ、カウンセラーになれるんじゃないかな、あの人」
( ^ω^)「デミタス先生目指して勉強、頑張ろうお、ハイン。とりあえず、今回の指名者、誰かわかったかお?」
从; ゚∀从「いや、実は今回はまだ分かってないんだ。ブーンは?」
( ^ω^)「ハインがわかってないのに僕が分かってるわけないお」
盛岡教授のことも気になるけど、まずは今回の指名者を見破らなければ。
一体、今回の指名者はどんな実践哲学を行っているのだろうか
61
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:12:36 ID:SMG9CKkk0
(;'A`)「お前らどこまで食いに行ってたんだよ」
从 ゚∀从「近くのラーメン屋だけど、盛岡教授と話してたんだ」
( ^ω^)「そっちこそ、どうしたんだお。そのズボン」
(;'A`)「そうなんだよ、聞いてくれよ。スパゲッティをひっくり返しちまってさぁ…」
从; ゚∀从「ツンの前で?格好悪いなぁ…」
(;'A`)「うるせーやいっ!」
僕たちがドクオをからかっていると、見慣れた顔が近づいてきた。
62
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:14:08 ID:SMG9CKkk0
( *・∀・)「あ、鬱田!ここにいたのか、探したぞ!」
('A`)「茂羅じゃないか、どうかしたのか?」
( ・∀・)「昨日さ、ライブのチケット外したって言っただろ?」
('A`)「あぁ、うん。残念だったな」
( *・∀・)「それが今日になって、譲ってくれる人がツイッターで見つかったんだよ!」
(*'A`)「本当かよ、よかったな!」
从 ゚∀从「茂羅君、良かったね」
( ・∀・)「おう!最近、高岡に実践哲学講義で見破られちゃったり散々だったからな、久々に嬉しいことが起きて良かったぜ」
从; ゚∀从「うっ…面目無い」
('A`)「まぁ、でも、本当良かったな、茂羅!」
( ・∀・)「あぁ、鬱田の言うとおり、生きてりゃいいことあるもんだな。お天道さんは見てるんだね」
('A`)「そういうことだな」
63
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:14:44 ID:SMG9CKkk0
ξ*゚⊿゚)ξ「ちょっとみんな聞いてよ!」
从 ゚∀从「ツン、どうかしたの?」
ξ*゚⊿゚)ξ「鞄の中整理してたら、すられたと思ってたお金、入ってたのよ!」
( ^ω^)「お?じゃあスリにあったんじゃなくて、ただ財布の口が開いてたってことかお?」
('A`)「全く、人騒がせだなぁ。でも、良かったな、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「うん、本当良かったわ。あ、お昼奢り損になっちゃったわね、ごめんね、ドクオ 」
('A`)「良いってことよ。でも、言った通りだったろう?二次元も良いけど、この世界も良いもんだってこと」
ξ゚⊿゚)ξ「大袈裟ねぇ。まぁ、そうだけど」
64
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:15:27 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「まぁ、ツンと茂羅君のことは良かったとして、自分のスパゲッティ塗れのズボンに関してはどうなんだい?」
('A`)「なぁに、他の人にかからず、被害が俺だけで済んでよかったよ」
( *^ω^)「ヒュー!ドックンかっくいいおー」
('A`)「よせやい。ただ、これが一番良い結果だったんだなと思っただけさ」
ξ゚⊿゚)ξ「良く不幸な目にあったのに、そんな風に捉えられるわね。ポジティブというか、なんというか…」
(;'A`)「そこはハードボイルドとか、クールとか言って褒めて欲しかったんだけどなぁ…」
( ・∀・)「鬱田の顔で言われてもなぁ」
(;'A`)「顔のことはやめろ、顔のことは!」
从 ゚∀从「…」
65
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:16:16 ID:SMG9CKkk0
みんながドクオを囲んで笑っている。僕だけは遠巻きに見ている、僕も笑えば良いのに。あぁ、また、疎外感を覚えてしまう。
ドクオはなんて、良い奴なんだろう。思えば入学式から、誰とも話さず一人でいた僕に話しかけてくれたのも、きっと彼なりの優しさだったのだろう。
ドクオだけじゃない、僕が実践哲学で見破った茂羅君も長岡君も、もちろん、ツンもブーンも僕にないものを持っている。
哲学科のみんなは、僕にはない、大切なものを持っている。
それなのに、どうして、盛岡教授は、僕を哲学科の中で一番優秀だなんて言っていたのだろうか。
僕は誰よりも、ダメな学生なのに。
.
66
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:16:59 ID:SMG9CKkk0
(´・_ゝ・`)「おはよう、諸君。さぁて、今回は誰が指名者で、どんな実践を行ったかわかったかな?」
( ^ω^)「先生、きっと、今回は誰もわからなかったと思いますお」
(´・_ゝ・`)「どうしてだい?」
( ^ω^)「だって、ハインですら昨日わからないって言ってましたから」
(´・_ゝ・`)「へぇ、珍しいこともあるもんだね、高岡君」
从 ゚∀从「えぇ、まぁ…」
('A`)「ハインでも分からないんだったら、誰も分からないよなぁ」
从 ゚∀从「ははは、そうだね、今回は難問だったよ」
(´・_ゝ・`)「高岡君、嘘は良くないなぁ」
…やっぱり、盛岡教授はカウンセラーに向いている。教授の瞳は、何だって見抜いてしまう。
67
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:17:43 ID:SMG9CKkk0
ξ;゚⊿゚)ξ「まさか、ハイン。今回も見破ったの?」
从 ゚∀从「…」
(´・_ゝ・`)「僕の目は誤魔化せないよ、さぁ、説明してもらおうか。誰が僕に指名され、どんな哲学者や思想に基づいて行動していたのかを」
从 ゚∀从「…わかりました」
できれば今回は、見破りたくなかったなぁ
68
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:18:35 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「…盛岡教授に指名された今回の指名者は、鬱田ドクオ」
(;'A`)「え?俺!?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ドクオが?この一週間、普通にしてたのに…」
从 ゚∀从「それは普段からドクオが優しいから気付きにくかっただけさ」
(´・_ゝ・`)「どうして鬱田君だと思ったのか、説明してもらおうか」
69
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:19:14 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「今回はかなり難しかったですけど、茂羅君とツンのおかげで分かりました」
( ;・∀・)「え、俺と津出のおかげ?」
从 ゚∀从「茂羅君、ライブのチケットを譲ってくれるってツイッターでいった人、おそらくドクオだよ。もちろん、捨て垢だろうけどね」
( ;・∀・)「え?」
从 ゚∀从「それと、ツン。君のお金はきっとスリにあってなくなってるハズだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、でも、鞄の中にちゃんとあったわよ?」
从 ゚∀从「大方、ドクオが入れたんだよ。今回の実践哲学講義のために」
ξ;゚⊿゚)ξ「どういうこと?なんでそんなことを?」
70
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:20:07 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「茂羅君の発言は詳しくは知らないけれど、ツンは僕やドクオの前で、現実世界について文句を言ったよね」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、まぁ、言ったけど…」
从 ゚∀从「茂羅君も、ドクオの前でなんか言ったんじゃないかな?」
( ;・∀・)「確かに言ったような気がするけど…」
从 ゚∀从「ドクオはこの世界が善いものだと二人に言って欲しかったんだろうね。自分の実践が正しいということを実証するために」
ξ;゚⊿゚)ξ「意味わからないわよ、どうしてそれで茂羅にチケット譲ったり、私の盗まれたお金をドクオが肩代わりしたりするのよ」
71
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:20:57 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「例えば、この世界はどんなに嫌なことがあったとしても、嫌なことをなかったことに、もしくは、嫌なことを上回るような良いことが起こるとしたら、世界のことをどう思う?」
( ;・∀・)「そりゃまぁ、なんだかんだ世界って良いもんだなーって思うよ」
从 ゚∀从「そう。もし、そんな世界があるとすれば、まるで世界は最善に出来ていると言えるだろうね」
(;'A`)「…!」
72
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:23:09 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「…でも、現実はそうじゃない。この世界は最善だ、なんて言うのは難しい。だって、現実世界では、善人が不幸に、悪人が幸福になることなんて、ザラにある」
从 ゚∀从「不幸な目にあっても、これが世界にとって最善の選択であった、なんて普通なら言えない。そういうことが言えたとしたら、どんなに辛い目にあっても、それを打ち消すほどの良いことが起きると信じていなければ到底無理な話だ」
从 ゚∀从「ドクオ、きっと君はみんなが幸せになれば良いって思ってたんだろ?だから、可哀想だなと思った茂羅君とツンを選んで、二人の不幸を打ち消して、この世界は最善に出来ていると思って欲しかったんだろ」
('A`)「…さぁな、証拠不十分じゃないか?」
73
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:24:16 ID:SMG9CKkk0
从 ゚∀从「往生際が悪いなぁ。君がスパゲッティでズボンを汚してしまった時に、ポジティブに言ったあの言葉、あれこそ君が指名者だという動かぬ証拠だよ」
【('A`)「よせやい。ただ、これが一番良い結果だったんだなと思っただけさ」】
从 ゚∀从「…この世界は、全知全能の神が創造した世界だとすると、世界は善でなければならない。何故なら、全知全能の神は善であるに決まってるから」
从 ゚∀从「つまり、善として創造されたこの世界で起きるありとあらゆる出来事は、考えられうる可能性の中で、最も良いものが選ばれていると考えるその世界観…」
从 ゚∀从「これぞまさしく『最善世界説』、またの名を『ライプニッツ的オプティミズム』」
(;'A`)「!」
从 ゚∀从「…ドクオ、優しい君らしい、実践方法だったね。危なく見破れないとこだったよ」
('A`)「…ちっくしょー、流石ハイン。お前の目は欺けなかったな」
74
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:25:32 ID:SMG9CKkk0
(´・_ゝ・`)「今回も大正解だったね、高岡君」
从 ゚∀从「ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「ライプニッツ的オプティミズムか、鬱田君も中々面白いのを選んだね。君なら、このライプニッツ的オプティミズムが他人に実践するのが難しいことくらいわかってたんじゃないのかな?」
('A`)「分かった上で、です。この世界が最善に出来ていればいいのになぁと思ってやっただけですから。まぁ、実際はそうもいきませんけど…」
(´・_ゝ・`)「そうだな。では、今回はライプニッツ的オプティミズムについて残りの時間で学んでいこう。今回はライプニッツ的オプティミズムに対して批判している書物、ヴォルテールの『カンディード』という本を使おうかな」
( ;^ω^)「批判してる方からやるとは、流石デミタス先生」
(´・_ゝ・`)「僕は否定派だから。僕はこの世界が最善に出来ているだなんて、そんなの口が裂けても言えないからね」
(;'A`)「厳しいなぁ…」
(´・_ゝ・`)「鬱田君も、今日の講義で考え方変わるかもしれないよ。さぁ、講義を始めよう」
75
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:26:11 ID:SMG9CKkk0
('A`)「うん、考え方改めちゃいそうになったわ…」
( ;^ω^)「おー、あの本、読んでてなんか辛かったお。面白かったけど」
从 ゚∀从「物語形式だから読みやすいけどね」
('A`)「それにしても、まさか見抜かれるとは本当に思ってなかったからビックリしたぜ」
从 ゚∀从「ごめんよ。最善世界説は昔、勉強したことがあったからさ」
('A`)「なんだ、そうだったのか。ハインも好きなのか?」
从 ゚∀从「さぁ、それは秘密ということで。実践哲学講義で出番が終わるまでは哲学談義はしないことにしてるんでね」
('A`)「ちぇっ、早くブーンとハインも順番来るといいな」
( ^ω^)「まったくだおー」
从 ゚∀从「そうだね」
76
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:27:17 ID:SMG9CKkk0
最善世界説、嫌でも彼女のことを思い出してしまう。
広い病室の中、ポツンと置かれたベッドの上で横たわり、哲学を語るのが好きだったあの子。
その語られた哲学談義の中に、もちろん、最善世界説もあって…
( ФωФ)『全知全能の神様が世界を創造したとするなら、この世界で起きることはありとあらゆる可能性の中で、最も最善なものなんでしょうね』
从 ゚∀从『それ、最善世界説のことかい?』
( ФωФ)『どう思う?ハイン君』
从 ゚∀从『僕は好きじゃないかな』
( ФωФ)『ハイン君なら、そういうとおもった』
从 ゚∀从『君の予想は当たったということだね』
( ФωФ)『えぇ、嬉しいわ』
この世界が最善だなんて、そんなこと、言えるわけがないだろう。
だって、そんなことを良しとすれば
( ФωФ)『…どうかしたの?黙っちゃって』
長くは生きられないであろう君の人生すら、世界においては最善の選択だということを認めることになってしまうじゃないか
.
77
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:27:51 ID:SMG9CKkk0
(´・_ゝ・`)「んー…」
/ ,' 3「おや、また何かお悩みですかの?」
(´・_ゝ・`)「高岡君は、僕が思っていたより賢い子だったみたいで」
/ ,' 3「ふぉっふぉっ、それはいいことじゃないですか」
(´・_ゝ・`)「えぇ、難しい問題をよく解けています。ですが、一番解かなければいけない大切な問題は解けないみたいです」
/ ,' 3「ほう、でも、解けるでしょう?彼なら」
(´・_ゝ・`)「解けないと困りますよ」
78
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:28:26 ID:SMG9CKkk0
(´・_ゝ・`)「だって、彼のためだけに、実践哲学講義を、ナゾナゾのような講義にしたんですからね」
.
79
:
名無しさん
:2016/03/29(火) 23:31:29 ID:SMG9CKkk0
第二講義、おわり。
80
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 11:33:19 ID:N2QkIJM60
試験科目で政治学を勉強してる俺にはありがたい話だおつ
しかしロマネスクの顔で女の話し方だとロマネス子が
81
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 13:54:27 ID:LRJZHAmc0
よかった、素でロマネス子なのかと思ってた
ネタ潰しになりかねない質問でしたね、以後完結まで黙っときます
82
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:39:35 ID:dysrMlLg0
彼女はリンゴが好きだった。だから、お見舞いにリンゴを持って行って、むいてあげようと思ったのだ。
でも、彼女がどうしても、自分でリンゴをむきたいというから、持ってきた果物ナイフを彼女に渡して、リンゴをむかせてあげた。
( ФωФ)『哲学科に受かったって、本当?』
从 ゚∀从『あぁ』
( ФωФ)『良かった。ハインくんも、学びたい哲学が見つかったのね』
从 ゚∀从『いや、そういうわけじゃないんだ』
( ФωФ)『じゃあ、どうして哲学科なんかに?』
从 ゚∀从『真理を求めようと思って、この世界の』
( ФωФ)『真理』
そう、君が人生をかけて求めたがっていた真理を求めたいんだ。
从 ゚∀从『そのために僕は勉強したくてね。僕は何にも知らないからさ』
( ФωФ)『ハインくんは、きっと哲学科に入学したら誰よりも賢いと言われるわよ』
从 ゚∀从『そんなまさか』
( ФωФ)『だからこそ、私は…』
83
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:40:52 ID:dysrMlLg0
規則正しく、リンゴをむいていた彼女の手が止まった。それと同時に、リンゴが床に落ちてしまった。
从 ゚∀从『大丈夫かい?』
僕は、リンゴを床から拾う。彼女は、
お礼の代わりに、先ほどのセリフの続きを告げる。
( ФωФ)『…………』
僕は、彼女の言葉に動揺して、ただ固まって。
だから、とっさに行動できなかったんだ。
彼女がリンゴをむくために手に持っていた果物ナイフは、果物ナイフは果物ナイフが
.
84
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:41:25 ID:dysrMlLg0
ナースコールを押した後、僕は泣きながら病院を飛び出した。
二度と彼女に会うことはないと思いながら、僕はただひたすらに走ったのだった。
85
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:41:55 ID:dysrMlLg0
哲学科生のルサンチマンのようです
.
86
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:43:06 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从(…久々に思い出したな)
最近、彼女のことをよく思い出すようになったからか、思い出したくもないようなことも思い出してしまう。
最悪の別れだった。
彼女が僕に告げた最後の台詞がどんなものだったかは忘れてしまったが、確か、逃げ出さねばならないほどの台詞だった気がする。
从 ゚∀从「こんなはずじゃなかったのにな…」
( ^ω^)「何がこんなはずじゃなかったんだお?」
从; ゚∀从「あー、えっと…」
知らない間に口から心の声が漏れてしまったらしい。
87
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:43:46 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「…世の中って、難しいなぁって思っただけ」
( ^ω^)「おー、例えば?」
从 ゚∀从「この世界にあるものがすべて、白黒はっきりしてれば良いのに…とかね。なんで世界ってこんなに曖昧なんだろうね」
( ^ω^)「はっきりしてることもあるじゃないかお。生と死とか、曖昧じゃないことなんて沢山あるお」
从 ゚∀从「そうかなぁ」
( ^ω^)「そうだとも、おっおっ」
88
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:45:38 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「…じゃあ、ブーン。今、ここに砂が十粒あるとしよう」
( ;^ω^)「お?」
从 ゚∀从「この砂十粒を、砂山ということは出来るかな?」
( ^ω^)「できるわけないお」
从 ゚∀从「じゃあ、十一粒は?」
( ^ω^)「一粒増えたところで、砂山とは呼べないお」
从 ゚∀从「じゃあ、どれくらいあれば砂山と呼べるかな」
( ;^ω^)「んー…よくわかんないけど、百万粒くらいあれば、砂山できるんじゃないかお?」
从 ゚∀从「百万粒か、そんだけあれば砂山と言えるだろうね」
( ^ω^)「おっ、そうだお」
从 ゚∀从「じゃあ、百万粒から一粒抜いたらどうなる?」
( ;^ω^)「お?どうなるとは?」
从 ゚∀从「砂山は、砂山じゃなくなるのかな?」
( ^ω^)「まさか。一粒抜いても砂山は砂山だお」
从 ゚∀从「じゃあ、さらに十粒抜いたら?」
( ^ω^)「きっとまだ砂山だお」
从 ゚∀从「じゃあ、さらに百粒抜いたとしたら?」
( ;^ω^)「おー、それでもきっと、まだ砂山だと思うお。…あれ、でも、それじゃあ砂山ってどこからが砂山になって、どこから砂山じゃなくなるんだお?」
从 ゚∀从「そう。つまりだね、砂山の例を一つ取り上げただけでも、この世界は曖昧さに満ちている事がわかるんだよ。僕たちはどこからが砂山になり、どこからが砂山じゃなくなるかということすら分からないんだから」
( ;^ω^)「…」
从 ゚∀从「この世界に、明確な境界線なんてないってのを、この『砂山のパラドクス』は提示しているのさ」
89
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:47:28 ID:dysrMlLg0
( ;^ω^)「おー、ハインは本当に物知りだお。哲学科で一番賢いお!」
从 ゚∀从「…そんなことないさ、僕はこの哲学科で一番、不出来な学生だよ」
( ^ω^)「ハインが不出来なら、僕とかドクオはどうすりゃいいんだお」
(´・_ゝ・`)「その通り。内藤君なんて、哲学史のテスト、散々な結果とってて荒巻先生が困ってたくらいだからねぇ」
( ;^ω^)「おぉん!?すいませんお!!」
从; ゚∀从「本当に神出鬼没ですね、盛岡教授」
(´・_ゝ・`)「食堂のご飯も好きなんでね。そういえば、鬱田君と津出君は?君達四人で仲良くしてるのにいないの?」
( ^ω^)「今頃二人は中庭のベンチで仲良くお昼ご飯食べてる頃だと思いますお」
(´・_ゝ・`)「あの二人そういう関係だったのか、知らなかったなぁ」
( ^ω^)「デミタス先生ならなんでもお見通しかと思ってましたお」
(´・_ゝ・`)「哲学的なこと以外はからっきしだよ」
从 ゚∀从「でも、僕の思い出の中にいる彼女が、どうして猫の被り物をしているのかは見抜いたじゃありませんか」
(´・_ゝ・`)「だって、それは哲学的なことだったし」
从; ゚∀从「え…?」
思い出の中の彼女が、猫の被り物をしているのが哲学的なこと?そんな、意味がわからない。
90
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:48:31 ID:dysrMlLg0
( ^ω^)「もったいぶらないで、教えてあげて欲しいですお。ハイン、ずっとそのことで悩んでるみたいだし」
(´・_ゝ・`)「まぁ、教えてあげてもいいけど」
从; ゚∀从「お願いします、教えてください!」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、その代わりに質問ね」
从; ゚∀从「質問…なんでしょうか?」
(´・_ゝ・`)「君、何のために哲学を学んでるの?高岡君、別に哲学好きじゃないでしょ」
从; ゚∀从「えっ…」
91
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:51:12 ID:dysrMlLg0
( ;^ω^)「何言ってるんですかお、デミタス先生。ハインが哲学好きじゃないとか、ありえないですお」
(´・_ゝ・`)「むしろ、見りゃわかるでしょ。高岡君の何処が哲学を楽しんで学んでるのさ」
( ;^ω^)「だって、ハインは誰よりも勉強家だし、知識だってありますお」
(´・_ゝ・`)「確かに高岡君は勉強家だ、成績も誰よりもいい。知識も内藤君や鬱田君や他の学生よりもある。ただ、他の学生にはあるものが、高岡君には足りていない」
( ;^ω^)「一体何が足りてないというんですかお?」
(´・_ゝ・`)「高岡君以外の学生は、自分の学びたい哲学者や思想、哲学的問題として取り扱いたい事柄があって哲学科に入学している。だから、みんな特定の分野については知識はあるが、他の哲学史についての知識はまるっきりない」
( ;^ω^)「ぐうの音もでないですお」
(´・_ゝ・`)「だけど、高岡君。君は様々なことを知っている、僕も驚くほどに。君は確かに優秀だよ、よく勉強している。しかし、君には決定的なものが抜けている、そうだろ?」
从 ゚∀从「…えぇ、盛岡教授の言うとおり、僕には哲学科で学ぶには決定的なものが足りていません」
( ;^ω^)「何が足りないっていうんだお?」
92
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:52:45 ID:dysrMlLg0
僕に足りないもの、それこそ、僕がこの哲学科において、最も不出来な学生だという証。
从 ゚∀从「僕には学びたいと思う特定の哲学者や思想、哲学的な問題として取り扱いたい事柄なんて一つもないのさ」
( ;^ω^)「お?」
从 ゚∀从「僕はただ、人生をかけてこの世の真理を求めたいだけなんだ。この世界を司る真理を、彼女の代わりに…」
(´・_ゝ・`)「…なるほどね。だから、そんな一生懸命勉強してるのか」
从 ゚∀从「はい。全ては真理を求めるために」
(´・_ゝ・`)「真理、真理ねぇ。さっきまで『砂山のパラドクス』を語っていた癖に、明確な真理があると信じているなんて、おかしな話だこと」
全くもってその通りだ。世界は曖昧さに満ちているのなら、確固たる真理なんて存在しないだろう。それなのに、真理を求めるだなんて、馬鹿げている。正常な頭であれば、こんな非効率的なことはしなかっただろう。でも、非効率でも、答えが見つからなかったとしても、僕は真理を求め続けるしかないのだ。それが彼女に対して僕ができる唯一のことなのだ。
93
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:53:40 ID:dysrMlLg0
( ^ω^)「…ハイン」
从 ゚∀从「僕が自分のことを哲学科で、一番不出来な生徒だと思うのはそういう理由さ、ブーン」
( ^ω^)「不出来なんかじゃないお、今は好きな哲学者や思想がなくても、これからの大学生活で見つければ良いんだから!」
(´・_ゝ・`)「まぁ、哲学科以外にも学科なんて沢山あるんだから、学科変えちゃっても良いんじゃない?編入とかで」
( ;^ω^)「なんてこというんですかお」
(´・_ゝ・`)「だって、高岡君。可哀想だから」
从 ゚∀从「別に可哀想なんかでは…」
(´・_ゝ・`)「哲学を学んでいる間は、彼女のこと、嫌でも忘れられないんだよ?本当は忘れたいと思っている癖に」
从; ゚∀从「…」
正論だ。でも、忘れたいと思いつつも、忘れたくないのだ。僕は、とってもわがままだから。
94
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:54:51 ID:dysrMlLg0
(´・_ゝ・`)「まぁ、それでも高岡君が哲学科で勉強したいというなら、いいことを教えてあげよう」
从; ゚∀从「いいこと、ですか?」
(´・_ゝ・`)「あぁ。実は君が学ぶのにピッタリの哲学者がいるのさ。真理を求めたいなら、君はその哲学者を学ぶのが良いだろう」
从; ゚∀从「それは一体誰なんですか!?」
(´・_ゝ・`)「さぁてね。まずは自分で考えなさい、今までの大学生活を振り返ってみれば自ずと答えが出るはずさ」
从; ゚∀从「そんな…」
(´・_ゝ・`)「…今回の実践哲学講義のナゾナゾが解けたら、答え合わせをしてあげよう。だから、頑張って解きなさい。中々難問だろうからね。では、また講義で会おう」
95
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:55:42 ID:dysrMlLg0
( ;^ω^)「行っちゃったお、自由な先生だお」
从 ゚∀从「とりあえず、今回の実践哲学講義の指名者、絶対に当てないと…」
( ^ω^)「目星はついてるのかお?」
从 ゚∀从「全く。まぁ、頑張るさ」
( ^ω^)「おっおっ、頑張れおー」
从 ゚∀从「だけど、盛岡教授が難問だなんていうなんて、余程今回は難しいんだろうなぁ…」
( ^ω^)「お、そういえば、難問といえば、一般教養で取った理数系講義、来週中間テストだおね」
从; ゚∀从「そうだっけ?!参ったなぁ…」
96
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:56:31 ID:dysrMlLg0
('A`;)「ブーン!それとハイン、お前ら食堂にいたのか」
从 ゚∀从「そんなに慌ててどうしたんだい、ドクオ。三限目は休講だよ?」
('A`)「そりゃ知ってるよ。ブーンの噂を聞いて駆け付けたんだよ」
( ^ω^)「僕の噂?」
('A`)「お前、あの難しい一般教養の理数系講義について、分かりやすく解説してるアプリを作ったんだって?」
从; ゚∀从「え、凄い。ブーン、あの講義分かるの?」
( ^ω^)「おっおっ、実は理数系得意なんだお。だから、文系大学の一般教養レベルの問題なら余裕だお」
从 ゚∀从「アプリまで作っちゃうなんて、凄いね」
( ^ω^)「ちょっとした趣味だお」
97
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:57:28 ID:dysrMlLg0
('A`;)「そのアプリ、ダウンロードするからアプリの名前教えてくれよ」
从; ゚∀从「あ、僕にも教えて」
( ^ω^)「いいけど、ダウンロードするのにお金かかるお?」
('A`;)「構わん、幾らだ?」
( ^ω^)「五千円だお」
从; ゚∀从「ご、五千円!」
一人暮らしで貧乏学生をしている僕には大金だ。とてもじゃないけど、払えない。
98
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:58:15 ID:dysrMlLg0
('A`)「五千円か、よし、買った!」
从 ゚∀从「ドクオって前から思ってたけど、お金持ちだよね」
('A`)「そんなことねぇよ、まぁ、親がちょっとばかし偉いだけで」
( ^ω^)「ツン、玉の輿かお、羨ましいおねぇ。…はい、LINEにアプリサイトのURL送ったお」
('A`)「さんきゅー!早速ダウンロードするぜ。あ、ハイン、これ使って俺と一緒に勉強しようぜ」
从 ゚∀从「ドクオ…君って本当、顔以外はイケメンだよね」
('A`)「喧嘩売ってんのか」
99
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:58:53 ID:dysrMlLg0
( ^ω^)「お。もうダウンロードできたんじゃないかお?」
('A`*)「よーし、では、早速…」
('A`;)「って、なんじゃこりゃ!!」
从 ゚∀从「どうしたんだい?」
('A`;)「解説は確かにしてるけど、全部英語で書かれてる」
从; ゚∀从「え!?」
( ^ω^)「僕、実は帰国子女なんだお。だから、英語で説明する方が得意なんだお」
('A`;)「うおおお、ふざけんな!こちとら英語は大の苦手なんだよぉお!」
( ^ω^)「日本語パッチも売ってるお、千円で」
('A`;)「千円か…それで買えるならまぁ、安いか…」
从; ゚∀从「アコギな商売だなぁ…」
100
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 21:59:28 ID:dysrMlLg0
( ;・∀・)「あ、ブーン!ここにいたのか!」
( ^ω^)「今度は茂羅かお。どうしたんだお?」
( ;・∀・)「お前の特製手作りドリンクを売ってくれ!頼む!」
从; ゚∀从「特製手作りドリンク?」
('A`)「なんで男の手作りドリンクなんか売って欲しいんだよ、ホモなのか?」
( ;・∀・)「違うよ、バカ!今、ブーンの特製手作りドリンクを飲むと、眠気覚しになって、テスト前に便利だって噂になってんだよ」
('A`)「つまり、すげぇマズイってことで良いのか?」
( ^ω^)「おっおっ。でも、ちゃんと体にいい成分になってるお」
101
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:00:05 ID:dysrMlLg0
( ;・∀・)「頼むよ、売ってくれ」
( ^ω^)「いいけど、一リットル千円だお」
从; ゚∀从「高っ!!」
( ;・∀・)「貧乏学生の俺には痛すぎる…もうちょい安くならないか?」
( ^ω^)「おっおっ、ビタ一文値下げはしないお」
( ;・∀・)「ぐぬぬ…。仕方ない、単位のためだ、買うよ」
('A`)「俺も買うわ」
( ^ω^)「ハインはどうするお?」
从; ゚∀从「僕はお金無いから…」
( ^ω^)「効率よく勉強できるのに本当にいいのかお?みんなも買ってるのに」
从; ゚∀从「じ、自力で頑張るよ」
( ^ω^)「そうかお、残念だおー」
102
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:00:37 ID:dysrMlLg0
('A`)「そういや四限目って、ハインは空きコマだよな?一緒に勉強しようぜ」
从 ゚∀从「うん。ブーンと茂羅君はどうする?」
( ^ω^)「僕と茂羅は四限目体育なんだお」
( ・∀・)「また明日な、ハインとドクオ」
从 ゚∀从「そっか。体育頑張ってね」
('A`)「また明日なー」
103
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:01:31 ID:dysrMlLg0
('A`;)「それにしても、高い買い物だったなぁ。このアプリ」
从; ゚∀从「日本語パッチ用意してるなら、最初から日本語でアプリ作れただろうにね」
('A`)「それにこの特製手作りドリンクも、一リットル千円だからなぁ。一人暮らしのハインとかには、買いたくても中々買えないよな」
从; ゚∀从「ね、例えみんなが使ってたとしても、貧乏学生の僕にはちょっとね…」
从 ゚∀从「あ」
('A`)「どうかしたか?」
104
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:02:14 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「…そういうことだったのか」
('A`;)「何が?」
確かにこれは難問だ。もし、僕が貧乏学生じゃなかったら、気付けなかったかもしれない。
从 ゚∀从「…ご褒美は頂けそうだよ、ドクオ」
('A`)「はぁ?」
全部の謎を解いてもらいますよ、盛岡教授。
105
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:03:20 ID:dysrMlLg0
(´・_ゝ・`)「おはよう、諸君。今回は難問だったんじゃないかと思うが、ナゾナゾは解けたかな?」
( ・∀・)「今回、なんか変な行動してる奴いたか?」
ξ゚⊿゚)ξ「私にはさっぱり」
('A`)「同じく」
( ^ω^)「ハインは?解けたかお」
从 ゚∀从「あぁ、解けたとも」
('A`)「毎度のことながら、すげぇな」
(´・_ゝ・`)「…へぇ、やるじゃない。じゃあ、早速、誰が僕に指名され、どんな哲学者や思想、または哲学的問題として取り上げたい事柄に基づいて行動したのかな?」
106
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:04:21 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「今回、盛岡教授に指名されたのは内藤ホライゾン」
( ;^ω^)「おっ!?」
从 ゚∀从「まさか一番身近にいたブーンが今回の指名者だなんて、思いもしなかったけどね。僕が貧乏学生だったのもあって、見抜くことができたよ」
(´・_ゝ・`)「ほほう、どうやって見破ったんだい?」
从 ゚∀从「…今回は非常に変則的でした。今までの指名者は、“一人の哲学者”や“一つの思想”だったのに対して、今回は“二つ”の事柄を実践したんです」
(;'A`)「二つ?一体どんなことを実践したんだよ」
107
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:05:19 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「まず、ブーンが作ったあの英語のアプリ…」
从 ゚∀从「あれは情報の格差を哲学的問題として取り上げるために作ったものだったんだ」
( ^ω^)「…!」
ξ;゚⊿゚)ξ「え、なにそれ。どういうことよ。哲学者でも思想でもなんでもないってこと?」
从 ゚∀从「あぁ。それもブーンが他の人とは異なる点だね。でも、思い出して欲しいんだ。一番最初の授業を」
【( ^ω^)「質問ですお。実践していいのは、哲学者や思想だけですかお?」】
从 ゚∀从「ブーンは最初から、特定の哲学者や思想についてやる気なんてなかったのさ」
108
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:06:16 ID:dysrMlLg0
(;'A`)「だとしても、なんで英語のアプリなんて…」
从 ゚∀从「僕たちは、今、インターネットを使えばウェブ上で様々な情報を得ることができる。でも、インターネットを使用できないお年寄りと若者の間に情報格差があるのはわかるかな?」
( ・∀・)「そりゃわかるけど」
从 ゚∀从「でも、実はインターネットを使える僕たちの中でも情報格差は存在しているんだ。何故なら、ウェブ上にある情報の95%は英語によって書かれている。だから、自分が使用できる言語によって情報格差は現れてしまうんだよ」
(;'A`)「なるほど、だから、わざわざ英語のアプリを作ったのか」
从 ゚∀从「そう。インターネットなどの技術が現れるまでは、どこの国で生まれ、育つことによって得られる情報に大きな差が出るなんてことはあまり意識されていなかった。でも、技術の革新によって、得られる情報に差がでるというのが顕在化してしまったのさ」
( ^ω^)「…」
109
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:07:21 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「次に、あのテスト前に飲めば眠気が覚めてテスト勉強に利用できるという特製手作りドリンク」
从 ゚∀从「どっかで聞いたことがあると思ったんだよね、似たような問題がアメリカであったのをさ」
(;'A`)「アメリカで?」
从 ゚∀从「うん、昔アメリカで健常な大学生がテスト前にリタリンという薬を服用するということが起きたんだ。このリタリンという薬は、本来はADHDの子供が服用する薬で、効果としては気持ちが落ち着くという効果を持っていた」
从 ゚∀从「それをテスト前に服用することで、薬を飲んだ学生と飲まなかった学生との間に実際に成績の差がでたんだ。それで、病気を治すための薬を勉強のために飲むのは倫理的に如何なものかということが問題になったんだよ」
从 ゚∀从「これは『スマートドラック問題』。頭が良くなる条件を整える薬、ってことでそう呼ばれているんだ」
110
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:08:38 ID:dysrMlLg0
( ;・∀・)「薬は確かに不味いけど、今回のブーンのお手製ドリンクは別にいいんじゃないか?実際、飲めば眠気覚めて勉強集中できるし」
从 ゚∀从「そうだよね。でも、考えてみて欲しいんだ。全ての人が薬やブーンのお手製ドリンクを飲めるわけではないってことを」
('A`)「あ、そうか。ハインはお金がないから買えなかったもんな」
从 ゚∀从「その通り。手に入れたくても、手に入れられない人だっているんだよ。今まではみんな平等の集中力だったのに、スマートドラックやお手製ドリンクによって、お金がある人とない人の間に、また新しい格差を生むことになってしまうんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「国とか会社とか学校が配給してくれればいいのにね」
从 ゚∀从「それだと、使用しない自由が侵害されてしまうだろうね」
( ;・∀・)「使用しない自由?」
111
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:09:32 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「例えば、スマートドラックみたいな薬に頼らず、自分の実力だけで勉強に励みたいと思ってる人が居たとする。でも、他のみんなが飲んでいるんだから、君も飲むべきだろうと言われると、本当は使いたくないのにもかかわらず、使わざるを負えない環境に追い詰められてしまう」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな大袈裟な…」
从 ゚∀从「そうでもないよ?携帯電話やLINEだって、本当はやりたくないと思っている人は多くいるはずだけど、会社に勤めてたらまず携帯電話を所持しないということは難しいでしょ?社会のみんなが使っていると、使用しない自由ってのは、簡単に侵害されてしまうんだよ」
ξ;゚⊿゚)ξ「なるほどね…」
112
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:10:54 ID:dysrMlLg0
从 ゚∀从「ブーンは今回、『情報格差の問題』と『スマートドラック問題』という二つの事柄を取り上げてた」
从 ゚∀从「…おそらく、ブーンは技術の進歩が決して、良い方向にだけ影響を与えるものではないということを哲学的問題として実践したんだとおもうんだ。技術の進歩は確かに便利だけど、隠れていた格差を顕在化させたり、また新たな格差を生じてしまったりね」
从 ゚∀从「ブーンが実践した二つの問題、これはまさしく『科学哲学』」
( ^ω^)「…おっおっおっ、その通りだお。科学は便利だけれど、世界が実は不平等であることも同時に明らかにしてしまうんだお。僕はそのことを提示したかったんだお」
从 ゚∀从「…世界は不平等、ね」
113
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:11:45 ID:dysrMlLg0
(´・_ゝ・`)「まさか、今回のナゾナゾまで解けるとは思ってもいなかったよ、高岡君」
从 ゚∀从「哲学史ではなかったので、確かに難問でした」
(´・_ゝ・`)「流石だね。しかし、内藤君も科学哲学とは、いいね。これからの科学について、哲学は科学哲学の分野として、向き合わねばならないからね」
( *^ω^)「おっおっ!出来れば科学哲学について、四年間学びたいですお!」
(´・_ゝ・`)「いいだろう。では、今日の残りの時間は、科学哲学問題として、人工知能について学んでいこうか」
( *^ω^)「人工知能!楽しみだおー!」
114
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:13:14 ID:dysrMlLg0
(´・_ゝ・`)「…というわけで、今日の講義は終わり」
('A`)「人工知能ってすげーな」
( *^ω^)「だおだお!フレーム問題とか、本当に楽しいおっ!」
(´・_ゝ・`)「あ、そうそう。高岡君」
从 ゚∀从「はい」
(´・_ゝ・`)「ご褒美に、君が疑問に思っている謎を解こうか」
从 ゚∀从「お願いします」
(´・_ゝ・`)「じゃあ、今週の金曜日の五限後、僕のオフィスに来て」
从 ゚∀从「分かりました」
(´・_ゝ・`)「それまでは、自分でも考えてみなよ。出来れば僕は、答え合わせだけしたいから」
从 ゚∀从「分かりましたけど、何かヒントありませんか?」
(´・_ゝ・`)「ヒント、ヒントねぇ…」
115
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:13:49 ID:dysrMlLg0
(´・_ゝ・`)「…あるとすれば、全てを振り返ってみることだね。疑問に思う様々なこと全てに対しても。そうすれば何故思い出の中の彼女が猫の被り物をしているのか、君が真理を求めるためにはどの哲学者が君に合うのか…といったことも自ずと見えてくるはずさ、きっとね」
.
116
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:14:32 ID:dysrMlLg0
第三講義、おわり。
117
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 22:15:21 ID:dysrMlLg0
次でおわり。
今晩中に投下できたらします。
118
:
名無しさん
:2016/03/30(水) 23:05:46 ID:6W3baMRQ0
乙
興味深い
119
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:14:25 ID:gxMKKYGw0
この前から、世界は不平等だといったブーンの言葉が、頭の中をグルグルまわって離れてくれない。
不平等、世界は不平等。
たしか彼女もそんなことを言っていた気がする。
( ФωФ)『世界は不平等よね。善人でありながら不幸な目にあう人がいれば、悪人でありながら幸福な人生を送る人がいるみたいに』
从 ゚∀从『そうだね』
僕みたいな人生に対して無気力な奴がのうのうと生きているのに、君みたいな人生かけてやりたいことがある子が病院で緩やかに寿命がくるのを待っている。
なんて、世界は不平等なんだろうか。
120
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:15:17 ID:gxMKKYGw0
( ФωФ)『全知全能の神様がいれば、どうして神様は公平で、そして平等でいてくれなかったのかしら』
体が弱っていくにつれ、彼女は最善世界説を唱えることを止めた。当たり前だ、こんな世界が最善であってたまるか。
( ФωФ)『神様がいれば、神様がいれば…』
从 ゚∀从『…』
彼女はあの時、泣いていたのかもしれない。今は猫の被り物で隠れて見えないけれど。
( ФωФ)『…あぁ、そっか』
从 ゚∀从『どうしたんだい?』
( ФωФ)『神様がいると思うから、この世界に期待してしまうのよね。どうしてこんなことに気付かなかったのかしら』
そうだ、思い出した。彼女が最善世界説を捨て、その次に語ったのは…
121
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:16:47 ID:gxMKKYGw0
『もうずっと前に、神様は死んだのよね』
世界のありとあらゆるものの中で一番の価値を持つであろう、“神の死”だったではないか。
122
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:18:43 ID:gxMKKYGw0
哲学科生のルサンチマンのようです
.
123
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:19:28 ID:gxMKKYGw0
約束の金曜日の五限後、僕は盛岡教授のオフィスの前にいた。扉にかけられているホワイトボードには、外出中と書かれている。まぁ、すぐに来るだろう。
从 ゚∀从「…それにしても、神は死んだ、か」
思い出の中の彼女が言った言葉、それはフリードリヒ・ニーチェの有名な台詞であった。ニーチェといえば、この箇所ばかり引用されるが、この後に続く台詞も中々過激だ。
从 ゚∀从「俺たちが神を殺したのだ…だったけかな、確か」
よくニーチェを無神論者という人が多いが、殺したとか、死んだ、など言っているということは、元々神は生きていたということになるから、ニーチェを無神論者と言っていいものなのかと僕は前から疑問に思っている。そもそも、ニーチェは牧師の子供なんだし。
124
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:21:43 ID:gxMKKYGw0
从 ゚∀从「もしかして、僕が真理を求めるために学ぶべき哲学者って、ニーチェのことなのかなぁ…」
(´・_ゝ・`)「それが君の答えかい、高岡君」
いつのまに背後にいたのだろう。本当に盛岡教授は神出鬼没だ。
从 ゚∀从「今までを振り返ってみたら、そうなのかなぁと。彼女は最後の方、ニーチェを気に入っていたので」
(´・_ゝ・`)「だとしたら、それは彼女の学びたい哲学であって、君の学びたい哲学ではないだろう」
確かにそうではあるが、彼女のために入学した哲学科だ。彼女が学びたかったものを学ぶべきなのではないだろうか。
(´・_ゝ・`)「まぁ、いいや。とりあえず入ってよ、珈琲くらいは入れてあげるから」
从 ゚∀从「はい、失礼します」
125
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:23:07 ID:gxMKKYGw0
盛岡教授のオフィスは、必要最低限の物だけが置いてあり、綺麗に整理整頓されていた。天井まで届いている大きな本棚には、様々な哲学書が原著で敷き詰められている。
(´・_ゝ・`)「まぁ、狭いけど。どうぞ座ってよ」
从 ゚∀从「ありがとうございます」
(´・_ゝ・`)「それにしても、自分に合う哲学なんて、この大学に入学してから今までを振り返ってわからないものかなぁ」
从; ゚∀从「全くわかりませんよ」
(´・_ゝ・`)「高岡君、君を実践哲学講義で指名したら君はどんな哲学者、思想、または哲学的問題として取り上げたい事柄を実践する?」
从; ゚∀从「それは、その…」
(´・_ゝ・`)「出来ないだろうね、君には」
从; ゚∀从「すみません…」
(´・_ゝ・`)「謝ることじゃないさ。だって、君の学ぶべき哲学は、そういうものなんだもの」
从; ゚∀从「ど、どういうことですか?」
126
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:23:57 ID:gxMKKYGw0
(´・_ゝ・`)「他の学生が実践する時、みんなは自分の信じる哲学者や思想が正しいと思って実践しているはずだ。もしくは、これこそが真理であって欲しいと思いながらね」
从; ゚∀从「まぁ、ほとんどの学生はそうかもしれませんね」
(´・_ゝ・`)「もちろん、否定的だからこそ実践して、みんなに誤っていることを認めさせたいというのも、自分の中に確固たるものがあるからだろう」
从 ゚∀从「そうでしょうね」
(´・_ゝ・`)「でも、君は違う。君には、これこそ真理だと思えるような哲学者や思想はない」
その通りだ。
127
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:24:29 ID:gxMKKYGw0
从 ゚∀从「だからこそ、僕は…」
(´・_ゝ・`)「そう、だからこそ、君は今年の哲学科生の中で一番優秀なんだ」
从; ゚∀从「え?」
128
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:27:03 ID:gxMKKYGw0
(´・_ゝ・`)「率直に答えてくれて構わない。既存の哲学者や思想の中に、真理なんてあると思うか?高岡君」
从; ゚∀从「それは…その…」
(´・_ゝ・`)「あったら大発見だよね。まぁ、研究していけばもしかしたら既存の哲学者や思想こそ、真理だったとなるかもしれないけど」
从; ゚∀从「はぁ…」
(´・_ゝ・`)「つまりだね、高岡君。そのことを他の学生は分かっていないのだよ、盲目的に自分の信じる哲学者や思想を信じているんだ。でも、君だけが分かっている」
从; ゚∀从「僕だけが分かっている…?そんな、僕は何も…」
(´・_ゝ・`)「そう。君は何も知らない。これぞ真理だと、特定の哲学や思想についていうことができない」
(´・_ゝ・`)「…だって、君は知っているから。自分が何も知らないことを」
从; ゚∀从「!!」
129
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:27:54 ID:gxMKKYGw0
そうか、そうだったのか。
だから、盛岡教授は僕が一番賢いと言ってくれたのか。
僕は知っていたんだ、みんなが知らなかったことを
从 ゚∀从「僕は、自分が真理を知らないことを知っている。そう、つまり、“無知“を自覚していた…」
从 ゚∀从「これぞまさしく、ソクラテスの『無知の知』」
(´・_ゝ・`)「…よくできました、正解だよ、高岡君」
130
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:30:51 ID:gxMKKYGw0
(´・_ゝ・`)「知らなくてもいいんじゃないかなぁ。君はそれでなくても、辛い思いで哲学をやっているんだからさ」
从; ゚∀从「別に僕は辛いだなんて…」
(´・_ゝ・`)「…ソクラテスは、無罪で処刑にかかることになったのに、逃げずに自ら毒杯を飲み、死んだ。自分の信じる正義を貫くために」
从 ゚∀从「ソクラテスの話は今関係ないでしょう」
(´・_ゝ・`)「いや、君はソクラテスにそっくりだ。好きでもない哲学を学ぶことによって、彼女への罪を忘れないように、毎日毒杯を少しずつ飲んでいるのさ」
从; ゚∀从「そんなこと」
131
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:31:56 ID:gxMKKYGw0
(´・_ゝ・`)「なぁ、高岡君。どうして思い出の中の彼女が猫の被り物をしているか、本当にわからないのか?」
猫、ネコ、ねこ。
わからない、なんでだろう。彼女は猫より犬の方が好きだったはずなのに。
从; ゚∀从「わかりません」
(´・_ゝ・`)「高岡君、君は入院した彼女と連絡すらとっていないんだろう」
从 ゚∀从「…とってません」
(´・_ゝ・`)「彼女、結構重い病だったんじゃないの?」
彼女の病は、確かに重かった。
でも、それよりも、僕が最後に会った時、彼女は、果物ナイフを、果物ナイフを。
132
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:35:19 ID:gxMKKYGw0
思い出の中で、果物ナイフを持った彼女が、僕に最後の言葉を告げる。それは、僕にとってはまるで、死刑宣告のようだった。
( ФωФ)『ハイン君。私、ニーチェのようにニヒリズムを受け入れて、乗り越えられるような超人にはなれなかった、ただの凡人だったの。だけど、貴方は才能がある、まだ気付いていないけれど』
( ФωФ)『…どうしてかしらね、私の方が哲学が好きなのに。どうして、貴方が哲学科へ入学して、私は病院で命を終えなきゃいけないのかしら』
( ФωФ)『そう、だから私は…』
133
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:36:01 ID:gxMKKYGw0
川д川『哲学科生のあなたへ、ルサンチマンを抱きながら死んでいくのよ』
.
134
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:36:52 ID:gxMKKYGw0
あぁ、思い出してしまった。彼女の素顔も、最後に会った時、彼女が僕に向けて言ったあの台詞も、全て。
そう、彼女は果物ナイフを自分の首に当て、それで僕はナースコールを押して。
僕は血塗れの彼女が怖くて、いや、それよりも、彼女が僕のせいで自殺を図ってしまったのを信じたくなくて。
だから、僕は泣きながら、逃げて、それで。
135
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:38:34 ID:gxMKKYGw0
从 ゚∀从「…そうか、だから、思い出の彼女は、ずっと猫の被り物を」
(´・_ゝ・`)「…」
从 ゚∀从「会わなければ、連絡を取らなければ、彼女が今現在、生きているか死んでいるかわからないままでいられる。僕の中では、彼女は生きていて、かつ、死んでいる状態として存在し続けられる」
こんなことも、わからなかったなんて。
从 ゚∀从「…毒ガスが入った箱の中に、猫を入れたとして、箱を開けなければ猫が死んでいるか生きているか分からない。その状態では、猫は生きていて、かつ、死んでいると言える…」
そう、彼女も一緒。確かめなければ、生きているか死んでいるかわからない。
从 ゚∀从「彼女は僕にとって、『シュレディンガーの猫』だったのか」
こうして、僕の謎は、全て解けたのだった。
.
136
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:40:00 ID:gxMKKYGw0
('A`;)「うわ、なんだよ、この大量の哲学書」
( ;^ω^)「ハイン、せっかく自分が学ぶべき哲学者がわかったっていうのに、まだ他の知識も得ようっていうのかお」
从 ゚∀从「分かったとしても、色んな哲学者について知りたいことに変わりはないからね」
('A`)「お前のどこが哲学好きじゃないのか教えてもらいたいな」
从 ゚∀从「前は好きじゃなかったよ、彼女のために学んでいただけだったし」
( ^ω^)「今は違うのかお?」
从 ゚∀从「…あぁ」
137
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:42:33 ID:gxMKKYGw0
盛岡教授は、君は悪くないのだから哲学から逃げていいと言ってくれたけれど、ソクラテスが正義のために処刑にかかったように、僕は僕自身のために、彼女に対して犯した罪の罰として、哲学を学び続けることにした。
哲学をし続ける限り、僕は彼女から逃れることはできない。
でも、それでも、彼女から与えられたルサンチマンを背負いながら、僕は緩やかな処刑をもたらす毒杯を、これからも飲み続けるのだ。
だって、僕が処刑を受け続けている間は
彼女は永遠に、僕の中で生きていられるのだから。
.
138
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:43:44 ID:gxMKKYGw0
从 ゚∀从哲学科生のルサンチマンのようです
.
139
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:46:28 ID:gxMKKYGw0
第四講義、おわり。
これにて、講義は全て終了。
というわけで、
哲学科生のルサンチマンのようです
おわり。
140
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:49:46 ID:AnDEFYhwO
乙!
そうか、生死が分からないから猫だったのか…
141
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 01:52:21 ID:X.NHy4aI0
乙!!
最後まで哲学とうまいこと絡めてきて、とても良かった
142
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 02:38:02 ID:mdo4KEN60
うわぁスッキリした!乙!
143
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 02:49:33 ID:gxMKKYGw0
大変なミスに気付いてしまいました。
>>130
の前が抜けていました。
从 ゚∀从「知を愛し求めたソクラテスか…。確かに、真理を求めるには学ぶのに相応しい哲学者ですね」
(´・_ゝ・`)「そうだね。さて、答え合せも終わったし、これでめでたしめでたしだね」
从 ゚∀从「ちょっと待ってください」
(´・_ゝ・`)「何?」
从 ゚∀从「まだ、思い出の中の彼女がどうして猫の被り物をしているのかについて、教えてもらってないのですが」
心の目で、追加してください。申し訳ない。
144
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 10:20:15 ID:b6J4xQ8A0
おつ
すげぇ面白かった、読み返してくる
145
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 12:48:34 ID:Xzw7PLhY0
短くスッキリとまとまってとても面白かった
146
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 15:23:42 ID:igmvsQyA0
ああ、無知の知とシュレティンガーの猫か……!
面白かったよ、ありがとう
147
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 17:51:51 ID:JGO/aQSA0
ムチムチソクラテスサンバ!
148
:
名無しさん
:2016/03/31(木) 19:27:49 ID:bNQS8bOg0
無知の知の下りは貫禄すら感じる展開だったわ
面白かった
乙!
149
:
◆mQ0JrMCe2Y
:2016/04/04(月) 01:35:47 ID:/1ZKHF4I0
【連絡事項】
主催より業務連絡です。
只今をもって、こちらの作品の投下を締め切ります。
このレス以降に続きを書いた場合
◆投票開始前の場合:遅刻作品扱い(全票が半分)
◆投票期間中の場合:失格(全票が0点)
となるのでご注意ください。
(投票期間後に続きを投下するのは、問題ありません)
詳細は、こちら
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1456585367/404-405
150
:
名無しさん
:2016/04/06(水) 18:06:51 ID:OXybUDu.0
凄く難しいテーマなのに、キャラの背景を交えてめちゃくちゃ分かりやすく紹介してくれた
一番大きな謎っていうミステリ要素も分かった時の快感が心地良い
面白かったです
生きてると良いなあ
151
:
名無しさん
:2016/04/09(土) 00:55:18 ID:ILEJatcQ0
支援絵
http://boonpict.run.buttobi.net/up/log/boonpic2_2021.jpg
152
:
名無しさん
:2024/03/22(金) 21:13:09 ID:EFdA.g860
乙乙
風で翻るカーテンの先を覗こうとするような、じりじりと興味を満たしてくれる雰囲気が素敵でした。
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