紅の月
――闇に浮かぶ血の瞳
虚空の眼窩より、黒髪の少女が舞い降り立った時
……全てが始まった
空は、荒れ狂い幾千もの雷鳴を轟かせ
地は、大陸を砕かんばかりに震え
海は、数多の島を飲み込んだ
栄えていた国々は、その全ての力をもって抗い
街は崩れ、無数の人命を失いながらも耐え抜いた
――災厄が終わった時
人々は今まで存在しなかったモノを見上げる事となった
大陸と群島を結ぶ海であった筈の場所に忽然と現れた……
巨大な都市と黒き翼の悪魔を
◆ ◆ ◆
紅月映す水面で、少女が微笑う
「――少し、早すぎたかしら?」
瘴気漂う谷の底で、老人が嗤う
「魔女が……バカなことを」
神気満ちる霊峰で、少年が冷笑う
「都合がいいね」
巨大な都市の中央で、地に堕ちた天使が狂笑い続ける
『――― ― ―― !』
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