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コンペロリショタバトルロワイアル Part2

1 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/03(水) 22:35:12 ezmspDFg0

現在、候補作募集中です。気軽にご参加ください。締め切りは5月14日まで。


『ロワルール』
※殺し合いは深夜から開始。
※最後の一人まで生き残った者を優勝者とし一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。
※6時間毎に放送で死亡者の名前が読み上げられる
※参加者が所持していた武器は基本的に没収。かわりに支給品がランダムに再配布される。
※一部の参加者には制限が掛けられている。その他にも様々な変化を施されている可能性がある
※参加者によっては様々な制限を掛けられている。制限については各々に支給された説明書に書かれている
※参加者名簿はタブレットから見れる。第一回放送後、観覧可能。
※第一回放送時に禁止エリアの追加と説明がされる。禁止エリアに指定された場合、そのエリアの参加者は一定時間以内に離脱しなければ首輪を爆破する。


『書き手ルール』
※登場候補話を募集、条件はタイトル通りのロリかショタのキャラクター、細かい条件は設けません。
 容姿だろうが実年齢だろうが、自分がロリショタだと思うのならOKです。
※施設は自由に出しても大丈夫です。
※一話退場枠もご自由に。


『参加者の初期所持品』

何でも入る四次元ランドセル(参加者及び、死亡した参加者の死体の収納は不可)
不明支給品1〜3
マップや参加者名簿を見れるタブレット
文房具一式
水と食料


"
"
2 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/03(水) 22:46:38 ezmspDFg0
コンペロリショタロワwiki
ttps://w.atwiki.jp/compels/

地図
ttps://w.atwiki.jp/compels/?page=%E5%9C%B0%E5%9B%B3


3 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:09:12 .wKyymkA0
代理投下します


4 : re-install ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:10:21 .wKyymkA0
   殺し合いが行われる地のどこかで、一人の少女が佇んでいた。
 彼女の表情は、どこか困惑しているようで、震えながら自身の両手をじっと見つめている。
 こんな状況に置かれれば誰だって困惑するだろうが、少女が困惑している理由は他の者とは違っていた。

「わたし……生きてる?」

 少女は、自分が生きていることに何よりも驚いていた。
 それも仕方がないだろう、彼女はどう足掻こうと最終的に死ぬ不退転の戦いに巻き込まれ、そして死んだ。死んだはずなのだ。
 少女の名は、本田千鶴。あだ名はチズ。人間の生命を動力に駆動するロボット『ジアース』のパイロットに選ばれた子供たちの一人。
 勝利しても敗北しても逃げ出しても免れない『死』と向き合うことになった、子供たちの一人。

「どう、して……?どうしてっ!?」

 千鶴は虚空に向かって叫ぶ。

「どうして『わたし』なの……?」

 千鶴の他にも、死にたくない奴はいたはずだ。パイロットとして戦い、先に散っていったワク、コダマ、ダイチ、ナカマ。自分の後にパイロットに選ばれるであろう、モジ、キリエ、マチ、マキ、コモ、アンコ、カンジ、ウシロ。そして……チズが自ら殺めてしまった、カコ。
 なのになぜ……『汚れてしまった』私が生かされてるの?

「ここで殺されて……わたしにこの子を二度殺せっていうの!?」

 千鶴は声を震わせながら、自身のお腹を抱く。自分の子供が宿ったお腹を。
 そう、千鶴は彼女の子宮に子を宿している。通っていた中学の教師である畑飼守弘とまぐわい、授かった子。
 
「それとも生きてこの子を産んで……この子に人殺しの子になれっていうの……?」

 千鶴は二度汚れている。一度目は畑飼によって知らない男達に売られた時。滅茶苦茶にされて、その様子を撮影され口止めされた上で、汚された。二度目は……文字通り人を殺した時。殺したのはカコだけではない。ジアースの力で、自分を汚してきた男達を抹殺した。その周囲の人々を巻き込んで。

「ずっと死ぬってことを考えてきたのに……今更、生きろ、なんて……」

 自然と、目から涙が込み上げてくる。
 コエムシによってジアースと契約した時点で、死が確約される。
 だから、殺せたのに。

『人を恨んだら、その途端に自分も不幸になるよ』

 畑飼を殺そうとした時に、尊敬していた姉から言われた言葉が何度も千鶴の脳裏で反復する。
 畑飼を殺して自分も死ぬつもりだったのに。そこにいた姉の言葉で千鶴は殺すことができなかった。
 
「お姉ちゃんの、言う通りだったね。今のわたしって、すごく惨め」

 今の千鶴は、最も恨んでいた相手を殺せなかったのに、人を殺したことのある母親になってしまった。
 復讐者にも綺麗な母親にもなれない中途半端な存在。
 千鶴は、四次元ランドセルの中にある支給品を確認し、その中にあったナイフを取り出す。

「もう、いっそ……」

 そのまま、その刃を首に当てて目を閉じた。

「――やめろっ!!」

 その瞬間、岩陰から大きな影が飛び出し、千鶴の手首を掴み上げた。


5 : re-install ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:10:43 .wKyymkA0
「誰……!?」

 千鶴は目を見開いて、手首を持つ人物を見上げる。
 そこには、殺し合いに集められた少年少女とは程遠い外見をした、まるで仮面をかぶった特撮ヒーロー然とした風体の男が千鶴を見下ろしていた。

「お前に何があったかは知らないよ。けど……それだけはやっちゃダメだ」

 千鶴の手を掴んだ、どこか虫を彷彿とさせるフォルムの男を見て、マキが好みそうな外見だなと思った。
 だが、そんなことよりも。

「……どこから聞いていたんですか?」
「子供がいるってところから……かな」

 男は、頭を掻きながら言った。

「……あなたは?」
「ボクはギャブロ。怪しい者じゃない」
「そんな格好で怪しいと思わない人っているんですか?」
「そっそれは……そうかもしれないけど……それよりも!」

 男――ギャブロは千鶴の手を掴んだまま続ける。

「子供がいるのなら自分から死のうなんて考えちゃダメだ!ママが死んだら……子供が独りぼっちになっちまうじゃないか!」
「……」
「パパもママもいないってな……すごく寂しいんだぞ。心細くって、苦しくって、心に穴が空いたみたいで……そのくせどんなに欲しがっても、どんなに泣いても手に入らない」
「……」
「だから、子供にはママであるお前が必要なんだ。大丈夫、ボクがお前を死なせはしない!だから――」
「――放っておいて」

 ギャブロが話している隙を見て、千鶴はギャブロから自身の手を引き剝がす。

「わたしとこの子のことは、放っておいて」
「お、おい!」

 ギャブロが止めるのを待たず、千鶴はナイフとは別の、杖の形状をした支給品を振るう。
 それは、『バシルーラの杖』。
 その効果は――他者を別の場所に飛ばす呪文『バシルーラ』と同様の効果を振った相手に及ぼすというもの。

「待て――」
「あなたって……言葉を話せる赤ちゃんみたいなこと言うのね」

 ギャブロが千鶴の目の前から消える寸前に、そんな言葉を千鶴はかけた。




§




「変な人。わたしが死ねばこの子も死ぬっていうのに」

 ギャブロが目の前から消えた後、千鶴は言う。
 盗み聞きしていた挙句、こちらもあわや自害していたとはいえ詳しく聞かずに「死ぬな」か。直情が過ぎる。正直、同学年か、あるいはそのさらに下の男子のような”臭い”がして、あまり一緒にいたいと思えるタイプではなかった。
 ただ……彼の言葉には、まるで自分が経験してきたかのような現実味はあったが。
 千鶴の姉であれば、この気持ちも受け止めてくれたのだろうか。

「――分からないよ」

 千鶴は虚空に向かって呟く。
 千鶴だって、お腹の子のことは愛おしく思っている。
 このままジアースとの契約が解け、生き残れる可能性があるというのならこの子のことを守りたい。

 だが、生きるとしてこの殺し合いでどうやって生き残ればいい?殺し合いを否定して綺麗なまま生き残るか?しかし、千鶴は既に同年代を一人、大人を数人手にかけている。
 ならばいっそのこと殺人鬼と化して、参加者を殺していくか?しかし、今の千鶴にはジアースの武力はなく、コエムシを呼んでも出てこない。そこいらの子供と身体能力は変わらない。
 そもそも、この殺し合いで、こんな自分は生きようとしていいのか?それとも惨めに殺されるべきなのか?

 一度は死んだ命。たとえ殺し合いで死のうと、残された人にとっては自分が死んだことには変わりない。
 でも、もし生き残ることができるとしたら?この子が生まれる姿を見れる日が来るとしたら……?
 しかし、生きてお腹の子を産むとして、こんな汚れた自分を親にしてしまってこの子は幸せなのだろうか。
 分からない。分からない。分からない。

「分からないよ……こんな時、私はどうしたらいいの……お姉ちゃん……」

 千鶴は宛てもなく歩き出した。その後ろ姿は魂の抜けた人形のようだった。


"
"
6 : re-install ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:11:06 .wKyymkA0
§



 
 本田千鶴には、二つ失念していたことがあった。
 一つは千鶴の子供もまた、ジアースの契約者に含まれていたこと。
 もう一つは先ほど支給品を確認した際に、明らかに一参加者としては過剰な量の、まるで2人分ともいえる支給品が千鶴の四次元ランドセルに入っていたこと。
 千鶴と彼女の子供は一心同体とはいえ、命としては別カウントだ。
 ならば、この殺し合いにおいてもそれが適用されて不思議ではないのだ。
 そのことを千鶴は、参加者名簿を見たときに知ることになる。



【本田千鶴@ぼくらの(漫画版)】
[状態]:苦悩、妊娠中
[装備]:普段着
[道具]:基本支給品、ナイフ@不明、バシルーラの杖@トルネコの大冒険 不思議のダンジョン(残り回数:2回)、ランダム支給品0〜1(確認済み)、本田千鶴の胎児の分の基本支給品、本田千鶴の胎児の分のランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:分からない。殺し合いに乗るか乗らないか、生きるべきか死ぬべきかも分からない。
1:わたしは生きてこの子を産むべきなの?こんな私が親になっていいの?
[備考]
・原作でジアースのパイロットとして戦い、死亡した後の参戦です。


【本田千鶴の胎児@ぼくらの(漫画版)】
[状態]:胎児、全裸
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:……。
1:……。
[備考]
・参加者名簿には、『本田千鶴の胎児』と本田千鶴が妊娠していることが分かる形で書かれています。
・本田千鶴の胎児の支給品は、本田千鶴の四次元ランドセルに含まれています。
・妊娠何週目かは後続の書き手にお任せします。少なくともつわりが出て、お腹が膨れていない時期です。


・支給品説明

【ナイフ@不明】
千鶴が自害未遂の時に用いたナイフ。現実出典のなんの変哲もないナイフかもしれないし、どこかの世界の特殊な効果の宿ったナイフかもしれない。

【バシルーラの杖@トルネコの大冒険 不思議のダンジョン】
振るった相手を別の部屋へと飛ばす『バシルーラ』の効果の宿った杖。この殺し合いにおいては、会場内のランダムな場所に転移させる効果として現れている。使用回数は3回。


7 : re-install ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:11:34 .wKyymkA0
§



 

 ギャブロは、こんな悪辣な催しを行う海馬乃亜に対して激怒していた。
 罪のない人々を殺し合わせることもそうだが、何より幼い少年少女たちにそれをさせるということが何よりも許せなかったのだ。
 参加させられた子供たちには家族がいるはずだろう。
 そんな子供たちを家族と離れ離れにさせて殺し合わせるなど、残酷にも程がある。
 ここで死んでしまった子供たちは永遠に家族と離れ離れになってしまう。
 それがどれほど辛いことかは、同じ悲しみを味わったギャブロにはよくわかる。

 そして、ギャブロは海馬乃亜と同じような過ちを犯していた。
 かつて暗黒魔術師ダークが暗黒魔法で生み出した、六魔将の一人だった頃のギャブロは、副官のソニアと共にいる時を除けばずっと独りぼっちだった。自分だけ家族がいないことの理不尽を呪うあまり、家族のいる人間から子供だけを引き離し、自身の拠点に連れ去っていたのだ。
 だから猶更、過去の自分を重ねてしまい、子供だけを連れ去った海馬乃亜を許すことができなかった。

「クソッ、油断した……!」

 ギャブロはバシルーラの杖によって転移させられた先で、焦っていた。
 言うまでもなく、先ほど出会った少女、本田千鶴のことである。
 この殺し合いに参加させられた子供たちを家族のもとに返す、と決意した矢先のこれである。

「まさか、子供だけでなく親子まで来ているなんてな……!」

 ギャブロは千鶴のことを案じながら、持ち前の身体能力で殺し合いの会場を駆ける。
 千鶴が死んでしまえば、彼女の子供はどうなる?親がいない状態で生まれるなんてかつての自分と同じではないか。
 その子には絶対に同じ悲しみを背負ってほしくない。千鶴というお母さんがいる暖かさの中で、育ってほしい。

「絶対に、絶対に親と子を離れ離れになんてさせてたまるか!」

 かつての自分に家族がいなかったからこそ、同じ苦しみを味わう人が出るのは絶対に嫌だ。

「ボクは一度死んだ……けど、ここに呼ばれて生きていることには絶対に意味がある」

 そしてギャブロもまた、本田千鶴と同じく死んだ身であった。
 殺し合いに呼ばれたのは、暴走するダークの魔力を封じ込めるために自らの身を犠牲にして、仲間を、世界を救った直後のことだった。
 ギャブロの命を呼び寄せた場所が、子供たちを殺し合わせる蟲毒だからこそ、ギャブロの心は燃え上がる。

「待ってろよみんな、それにあの子も……ボクと同じ思いはさせないからな!」

 幼き正義の味方は、征く。

 ……余談ではあるが、ギャブロは人間はお腹の中で子を宿し、宿主である親が死ねば子も死ぬことを、実は知らない。
 ギャブロは元々、魔王ギャブ・ファーの卵から生まれた上、生まれてから時間も経っていない。言動から分かるように、身体こそ急成長しているが精神の根の部分は子供のままである。つまるところ、人間とは違う種の子供でしかないギャブロに、人間の性についての知識はなかったのである。




【ギャブロ@大貝獣物語2】
[状態]:健康、焦り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに巻き込まれた子供たちを家族の元へ返す。
1:子供たちを家族の元へ返すために死なせない。
2:あの子(本田千鶴)とあの子の子供(本田千鶴の胎児)のことが心配
[備考]
・原作のラストで死亡した後の参戦です。
・人間についての性知識は乏しいです。


8 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/07(日) 19:11:47 .wKyymkA0
投下終了します


9 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:11:29 C3SXsf/g0
投下します


10 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:12:06 C3SXsf/g0
メキシコ生まれの少女、ソフィア・トレビマンサネーロは殺し合いに巻き込まれていた。

乃亜に巻き込まれたこの催しではなく、ここに連れてこられる前からだ。

『シークレットゲーム』。配られた端末に記されたお題をクリアしなければ首輪を爆発させられるという、この殺し合いに酷似したゲーム。

彼女はそのゲームにおいて、最初は条件が競合していなかったこともあり、四人の男女とチームを組んだ。

崎村貴真。
三島英吾。
藤堂悠奈。
薪岡彰。

最初こそは険悪だったものの、彰を中心として交流を深めるうちに次第に自分含めた五人の仲が深まり、信頼し合うようになれた。
食事を共に取るのはもちろん、軽い相談を持ち掛けたり、互いに気を遣りあったりなんてこともあり。
警戒しあったままではできないことをできるようになったあの空気はとても暖かかった。
だが。
死亡者が出たことをキッカケにゲームの条件は変更され、チームは瓦解。ソフィアの条件も『関わった者全てが死亡する』というものに変わった為、もう誰とも組むことなどできなくなってしまった。
だからソフィアはゲームに乗った。あれだけ親切にしてくれた彰や悠奈に殺意と銃を向けて己の命を優先した。

そして彰達との交戦を終え、身を潜めていた矢先に巻き込まれたのがこの殺し合いだ。
しかも、シークレットゲームとは違い、最初から誰かと手を組むことなんてできない条件を開示された上でだ。

「......」

支給されたランドセルに手を入れ、取り出したのはナイフ。

———ドクン。

心臓が跳ねる。

ソフィアの心はもう決まっていた。
迷うことは無い。出会った参加者をこのナイフで屠り、食糧を、武器を、己の命を勝ち取る。

命のやり取りも。そのための武器の扱いも。
殺し合いより前に、生まれ故郷のあの貧困の中で既に経験している。

必要なのだ。
自分が生き残るためには、金が。食糧が。己の手を汚すことが。

生き残る席が一つだけなら、手を取り合って共に座るなんて無理だ。
だからソフィアはもう誰とも手を組もうだなんて思わなかった。
信じるものは自分の手足だけ、そうすることに決めた。

決意と共に森の中で待ち伏せること幾ばくか。
カサ、カサ、と落ち葉を踏みしめる音が耳に届く。

ソフィアはその機を見逃さない。
木の陰に身を潜め、息を止め足音が近づくのをじっと待つ。

ガサ、ガサ、ガサ。

近づいてい来る足音に身体は緊張し、自然とゴクリと喉を鳴らしてしまう。

一撃で仕留める。そうすれば大した労力もなく食料も武器も手に入れられるから。


11 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:12:40 C3SXsf/g0
三歩。二歩。一歩...

「———っ」

間合いに入った瞬間、ソフィアは木陰から飛び出し標的に斬りかかる。

「っ!?」

胴体目掛けて振り抜いたナイフは、しかし薄皮一枚を切るだけに留まり、ダメージは与えられず。
標的がソフィアの襲撃よりも一瞬早く察知し、足を止めたのだ。

「くっ...!」
「ッ!」

標的は白い袴に身を包んだ少年だった。
その少女にも見える細く華奢な出で立ちに、ソフィアはほんの僅かにだけ彰の面影を重ねるが、しかしそれで殺意が鈍ることは無い。
殺さねば死ぬ。
それがいまのソフィアの世界なのだから。

「ひっ...!」

少年はそう情けない声を漏らすと、一目散にソフィアに背を向けて駆け出す。
抵抗すらない全力の逃亡。

「待てッ!」

その背中をソフィアは追いかける。
ここで臨戦態勢を取らないことから、少年は確実に丸腰。更には戦闘経験のない人間だとソフィアは判断した。
だからこそ追う。己に危害を加えずとも、食糧は手に入るだろうし、なにより彼を逃したことで自分がゲームに乗ったことを周知させられるのも防ぎたい。

ここで仕留める。

ソフィアは木を躱し、落ち葉を踏みしめ、少年の背へと距離を詰めていく。
あと数メートルといったところで、少年は跳躍し、向こう岸の崖へと跳び移る。

ソフィアもそれに倣い、跳躍し着地する。

が。

ズルリ。

「えっ」

思わず声が漏れる。
ソフィアの着地した地面はひどくぬかるんでいた。
そんな地面に思い切り着地すれば転倒は免れない。
それだけならばまだいい。
だが彼女にとっての不運は、そこが崖であったこと。
転倒したことで衝撃が伝わり、地面の一部が崩れてしまった結果、彼女の下半身は崖っぷちに晒されてしまう。


12 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:13:02 C3SXsf/g0
しくじった。
少年が軽々と跳躍したことから、自分も問題なく行けると判断を誤った。
そう理解するのももう遅い。
這い上がろうにもぬかるんだ地面のせいで、ついた手は滑り、脆くなっている地面は容赦なく彼女の上半身をも崖に投げ出す。

「ひっ」

残った左腕で必死に地面を掴むが、しかしぬかるみで滑るのに加え、なん十キロもあるソフィア自身の体重を支えることは叶わず。
ぷるぷると痙攣する左腕は、あえなく力を失ってしまう。

(イヤ)

宙に投げ出される中、ソフィアは漠然と思う。
死にたくない。
ただその一念のまま、手を伸ばす。

だが、その手がなにを掴むでもなく、彼女の身体は落下していく———

ガシリ。

掴んだ。
ソフィアの掌ではなく、彼女の左腕に伸ばされる誰かの腕が。

「はあっ、はあっ」

ソフィアの頭上から荒い息遣いが聞こえる。
恐る恐る見上げてみると、そこには先の少年の、真赤な顔。

「つか、まってください!」

自分が殺そうとした少年は、なぜか必死な形相でこちらの腕を掴んでいた。

「ぐっ、うぅっ!」

ズルリ、ズルリ、と少年の身体もソフィアの体重に吊られて引きずられていく。
ぬかるんだ地面のせいで、彼の身体も踏ん張りが効かなくなっているのだ。

「オマエ、なにしてる」

必死な形相で引き上げようとする彼を見上げながら、ソフィアは思わず問いかける。

「ソフィア、オマエ殺そうした。なのに、なんでたすける」
「だって、このままだと、貴女が落ちてしまうから」

返ってきた言葉に、ソフィアはますます困惑する。
放っておけば、危害を加えるソフィアは消え、脅威は減るし支給品もゲットできるかもしれない。
なのに彼は自らを危険に晒してまでソフィアを助けようとしている。
意味が解らない。
こんなの、まるで———

『ソフィアさん』

脳裏に声が過る。
自らの命が危機に晒されている中で、ずっと自分を気にかけてくれてくれた、ソフィアに人と関わる温もりを教えてくれたあの少年の声が。

「アキ、ラ...?」


13 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:13:32 C3SXsf/g0





少年———妖術師、白念は力が欲しかった。

平和を維持するための力。

何者にも脅かされぬ絶対なる力。

誰しもを護れるほどの圧倒的な力。

そんな力を手に入れられれば、人間も妖も護れると思った。
そんな力を手に入れるためならば、どんな試練も乗り越えるつもりでいた。

そんな彼の願いに応えるかのように差し出されたのは、蟲毒の壺。
壺の中で生きる妖魔を殺し、その霊力を我が物にするという術式だった。

『多を救うために少の犠牲を受け入れるのは大義の為に必要である』

蟲毒の主が掲げる信念であり、彼も何度もそんな場面に直面させられた。

けれど。
彼は受け入れることが出来なかった。
人も。妖魔も。
誰かの命を選別することなんて彼にはできなかった。

それはこの地でも同じこと。
自分の願いを叶える為に、誰かを犠牲にすることなどできやしなかった。

だから、彼は自分を殺そうと追ってくる彼女が落下しそうになるのを見過ごすことができなかった。
彼女を助けてどうなるか、それを考えるよりも早く彼は彼女の腕を掴んでいた。

「死なせない...」

彼は決して自分が全てを護れる超人だなどと思っていない。
それどころか、己を弱者だと認識し卑下している。
この殺し合いだってみんなで犠牲なく終わらせたいと願えど、そのやり方も全く思いついていない。
それでも彼は願い続ける。
どうか誰も失いませんようにと。
どうか誰も悲しみませんようにと。

「私は、誰も、死なせない...!」

大切なものを、全部守れますようにと。

だが現実は非情である。
白念は妖魔からの『逃げ』に特化した鍛錬を重ねてきたため、脚力はあれど、モノを持ち上げる腕力は特筆したものはない。
そんな彼の力では、不安定な体勢と足場、しかも泥で濡れた腕を掴みながら人ひとりを持ち上げ救出するなどという芸当はできやしない。

それでも彼は諦めない。
滑る腕と身体をどうにか踏ん張らせようと必死に足掻く。
駄目だという諦めの心が過っても、それから目を逸らすようにソフィアを救うことだけに没頭する。

そんな彼だからこそ。

「大丈夫かきみたちッ!」

その姿を支えようと、力を貸してくれる者も現れるのだ。


14 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:14:30 C3SXsf/g0


ジョナサン・ジョースターは怒っていた。
新しく養子として家族になったディオ・ブランドーという少年に。
この殺し合いを開いた乃亜という少年に。

まず第一にディオ。
彼は養子として迎えられてから、ずっとジョナサンを貶めるようなことばかりしてきた。
それだけならばまだ耐えられた。だが、こともあろうにディオはジョナサンの恋人のエリナ・ペンドルトンを襲い、無理やりその唇を奪った。
許せなかった。彼女が侮辱されたことが。これまで自分にされてきたことの何十倍も耐えがたきことだった。
だから彼はディオをぶちのめそうと拳を固めて自宅へと戻ってきた。



そして乃亜。
ディオをぶちのめそうとしていた矢先にこんなものに連れてこられたのもそうだが、あの命を命と思わない非情且つ残酷な振る舞いは、彼の英国紳士としての矜持が耐えられるものではなかった。
散った二人は知らない少年だったが、しかしあの二人の互いに思いやる姿や想ってくれる家族がいると思うと、彼らを愚弄した乃亜に対して怒りを覚えずにはいられなかった。

そんな怒りの念に囚われていた彼が、輝く月を睨みつけていたその時だった。
森を駆ける二つの足音を聞いたのは。

ただ同行しているにしてはあわただしく、明らかに先を急ぐ音。
追われている。
そしてこの殺し合いという状況に於いて追われているということは即ち、だ。

(殺し合いはもう始まってしまったのか!)

ジョナサンは自然と己の拳が握りしめられるのを自覚する。
止めなければならない。
英国紳士として、絶対にこんなバカげた催しで犠牲を出すわけにはいかない。

相手は武器をもっているかもしれない。
だがしかし、それでもおめおめと目の前の惨劇を見過ごすわけにはいかない!

己の正義に従い、ジョナサンは駆けていった足音を追って森を駆ける。

その先で見つけたのは、いまにも崖から落ちそうな少女を必死に助けようとする少年の姿。

その姿にジョナサンは

「—————ッ!!」

胸を打たれた!
彼は気づいていた!
追う者と追われる者、つまり敵対している者同士である以上、この状況は存在しえない。
もしも落ちかけている方が追う者であれば、追われる者がああまでして助ける理由はないし、その逆であれば追われていた者は既に崖の下へ真っ逆さまに落ちていなければならないからだ。

だが!見よ!現にこの状況は起きている!
追われる者であった少年は、身を挺してまで追跡者である少女を救おうとしている!!

ジョナサン・ジョースターは、そんな彼の姿に本当の紳士の姿を見たッ!!

(だがあのままでは...)

だが見るからに少年は限界に達しそうであり、状況は予断を許さない。
もしここで向こう岸に跳び、自分までも落ちそうになってしまえば犠牲者が増えるだけだ。
かといって迂回している時間もない。


15 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:14:58 C3SXsf/g0
「そっ、そうだ!僕にもなにか道具が配られていたはずだ!」

そういえば、とジョナサンは支給品の存在を思い出す。
怒りに震えるばかりでここまで支給品の確認にまで気がまわっていなかった。
あの窮地を脱せる道具はないかとランドセルをひっくり返す。

その中で、見つけた。
この状況を打開できる一つのモノを。

「こっ、これはっ...!?」

ジョナサンはそれを見つけるやいなや、説明書を読むとすぐにそれを装着し狙いを定める。

「も...落ちる...」
「待ってくれ、すぐに助ける!」

落ちかける少年に呼びかけ、腰に巻き付けたベルトのボタンを押す。
すると、そのベルトからカギ付きロープが勢いよく飛び出し、白念たちの後ろにある木に引っかかる。

その感触を確かめる間もなく、ジョナサンはロープを手に崖から身を投げ出した。

「いくぞ、『ウソップ!ア〜アア〜!!』」

その支給品の名を叫びながら、ジョナサンは振り子の要領で二人に急接近、そして遂に落ちてしまった白念とソフィア、二人をその逞しい両腕に抱え込んだ。
当然、その先に待っているのは、壁への衝突。

「くっ...なんのこれしきっ!」

両腕にかかる人間二人分の負荷に顔をしかめながらも、白念とソフィアに極力衝撃がかからないよう、壁への衝突のダメージは己の身体で受ける。

「ぐはっ!」

たまらず漏れた悲鳴を噛み殺し、ちらりと小脇に抱えた二人を見やる。
白念は既にバテており、一方でソフィアは疲れてはいるもののまだ比較的に余裕を見せている。


16 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:15:31 C3SXsf/g0

「...きみ、名前は?」
「な、まえ...ソフィア」
「ソフィア、か。僕の名前はジョナサン・ジョースター。すまないが、このロープを伝って先に崖に登っていて欲しい。助けに来ておいて恥ずかしいけど、このままきみと彼を運ぶのは難しそうだ」

もしも10年後の未来、ラグビーで鍛え上げた彼ならばそれでも難なく二人を抱え崖を上れただろう。
だが、今の彼は鍛えられてはいるものの、あくまでも少年時代のボクサーとして程度でしかない。
この状態で人間二人を抱えて崖を昇れるだけの余力は無かった。

「あー...ワカッタ」

ソフィアはジョナサンの言葉に従い、ロープを手繰りながら崖を登っていく。

「すみません...」

ジョナサンに背負われた白念は申し訳なさげに呟く。

「なんできみが謝るんだい?」
「私一人では、彼女を助けることが出来ませんでした。私は...なにもできなかった」

俯き面持ちを暗くする白念に、ジョナサンは一瞬キョトンとした表情になるが、しかしすぐに上を向きながら崖のぼりを再開する。

「...僕の名前はジョナサン・ジョースター。きみは?」
「白念です」
「白念。きみにもなにか複雑な事情があるんだろう。だけど一つ覚えておいてほしい。僕がこんな無茶をできたのはきみの勇姿を見たからだということを」
「......」

未だに納得のいっていない様子の白念に、これ以上かけられる言葉はなく、ジョナサンはロープを頼りに崖を登る。
やがて登り切れば、しかしそこで待っているはずの少女は既に姿を暗ましていた。


17 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:16:34 C3SXsf/g0


ロープで登っている最中。
ソフィアは、チラとジョナサンの方を見下ろせば、曇りなき眼でこちらを見つめている。
もしもソフィアが辿り着いた先でロープを切れば、二人とも崖から落ちてしまうというのに。
それがわからないはずがないだろうに、彼の顔には微塵も恐怖の色など見えやしない。

(どうして、そんなに他人を信用できる?)

白念は今しがた殺そうとした自分を身体を張って助けようとしてくれた。またナイフで刺されるかもしれないのに。
ジョナサンは己の危険を顧みず命を救い、ソフィアが登り切った先でロープを切るかもしれないリスクを負っても構わず先に行かせてくれた。
二人は、見ず知らずの自分に対しても、救おうという行為に微塵も迷いを抱いていなかった。

「......」

崖を登り切った先、ソフィアは握りしめたナイフに力を込めてロープを睨みつける。

ここでコイツを切ってしまえば、二人分の食料と武器が手に入るぞ。
生き残るためには仕方のないことだ。当然のことだ。

『ソフィアさん』

「ッ、アキ、ラ」

まただ。また、彰の声が過ってしまう。ソフィアにとってのヒーローを、白念やジョナサンに重ねてしまう。

(ソフィア、生きる。お金、必要。)

生きたいのに。なによりも自分の身が可愛いのは当たり前なのに。

(...ソフィア、どうして動けない?)

身体はどうしても二人を殺してはくれなかった。
彼女にとって彰のような光の存在は、疎ましく、それ以上に焦がれてしまうものだった。

そして、その光が強ければ強いほど陰も濃くなってしまう。
ソフィアは一度裏切られた。
あんなに仲良くしていた英吾が、貴真を撃ち殺したあの時に抱いた絶望も筆舌に尽くしがたいものだった。

彼らのような光を信じたいと思う反面、また裏切られるのはなお怖い。
だから彼女はその場を後にした。
理不尽なゲームに従わなければ生き残れないならば、せめて彼らのような光は自分の手で消したくはないと願いながら。


【ソフィア・トレビマンサネーロ@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]精神的疲労(中)、疲労(中)
[装備]葉柱ルイのバタフライナイフ@アイシールド21
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。
0:死にたくない。ただそれだけ。
1:ジョナサンや白念から離れる。

[備考]
※参戦時期は彰と悠奈と袂を別ったあと。

【葉柱ルイのバタフライナイフ@アイシールド21】
賊学エース、葉柱ルイの愛用のバタフライナイフ。
彼の強いる恐怖政治の必需品。


18 : ファーストコンタクトは崖っぷちで ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:17:27 C3SXsf/g0

「ここにもいない...」
「はっ、早く探し出してあげないと...!」

姿を暗ましたソフィアを追う二人。
方や紳士の矜持として。
方や妖魔と人間の共存できる世界を目指す修行僧として。
彼らの間で、周囲に怯える少女を助けたいという想いが共通し、共に行動するのに時間は要らなかった。

真っ暗闇の森の中、彼らは進む。
己が光となっていることにも気づかず。
光が故にその身を焼かれる者がいることも知らず。

果たして彼らはこの殺し合いにおいて、希望の光足り得るのだろうか?
それとも吹けば消えるようなか細い蝋燭の火でしかないのだろうか?

その結末は、まだだれにもわからない。





【ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(中)、主催への怒り
[装備]ウソップア〜アア〜@ONE PIECE
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。紳士として乃亜を倒す。
0:ソフィアを追う。
1:白念と共に行動する。
2:もしもディオがいたら絶対にぶちのめす。
[備考]
※参戦時期はエリナがディオに無理やりキスをされたのを知りディオをぶちのめす為にジョースター家に戻った直後。

【ウソップア〜アア〜@ONE PIECE】
ウソップの開発した、ベルトからロープが飛び出る秘密兵器。
安全設計につきロープがベルトに固定されているため、使用者はベルトを外さないと降りられない。
ア〜アア〜という掛け声はジャングルの王者になりきるためのたしなみ。



【白念@三枚のおふだ 鼎 コドクの妖己】
[状態]精神的疲労(大)、疲労(大)
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
0:ソフィアを追う。
1:ジョナサンと行動する。

[備考]
※参戦時期は少なくとも猫将軍にカマを掘られた後。


19 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/07(日) 22:19:43 C3SXsf/g0
投下終了です


20 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/07(日) 23:28:19 ouXCk4iw0
投下ありがとうございます。

>re-install
胎児が参加者は草、その分支給品増えるなどの優遇を見るに、これも一つの児童手当なのでしょうね。
参加者名簿に胎児とか、見た時にどんな反応すれば良いんでしょう……。

>ファーストコンタクトは崖っぷちで
ジョナサン、白念、おまえ達の命がけの行動ッ!ぼくは敬意を表するッ!
ソフィアも戦闘力はあまり高くなさそうな上にまだ迷いもありますからね。
この先生き延びても苦悩が続きそうで、ジョナサンと白念に何とか説得して殺し合いを止めさせて欲しいですが別の殺し合いの経験のせいで、そう上手くも行きそうにないですね。


21 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/08(月) 00:19:43 qu7ve2cg0
投下いたします。


22 : ここから正義の花道 ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/08(月) 00:20:20 qu7ve2cg0
ある運動場の中で、一人の少女が怒りに燃えていた。

「乃亜!アタシは絶対に、あんたの言いなりにはならない!この戦いを止めてみせる!」
「そしてあの少年たちのためにも、アタシは人を護る為に戦い抜いて見せる!」

少女の名前は、南条光。

ヒーローにあこがれ、また人々の笑顔を何よりも愛する少女である。

その彼女が、怒りに燃えていた。

この殺し合いを始めたものに、怒りを燃やしていた。

また今の彼女の姿は普段のジャケットにハーフパンツといったボーイッシュな格好ではなく、Vの字に近いアンテナが付いたヘルメットに翼のようなマントが付いたボディスーツといったヒーロー然とした格好をしていた。

それは彼女に支給された装備だった。

その姿は、ピンチが呼べば空を切り、魔球のごとく現れて、疾風のように去ってゆく正義のヒーローによく似ていた。

彼女の着ているスーツ、それは待ちに待ってた出番が来たヒーロー『逆転イッパツマン』……ではなく、そのニセモノである『逆転サンパツマン』の強化スーツだった。

いま彼女が来ているスーツは本物のヒーローではなく、その敵が作った偽物のスーツだがそんなことはどうでもいい。
今重要なのは彼女が悪と戦うためにそのスーツを着た、ということだ。

そう、力の根源がどうであれその心が炎より熱い正義に燃えていれば、それは本物のヒーローと変わりないのだから。

彼女は戦う覚悟を決めたのだ。
この理不尽な殺し合いを止めるため。
そして、自分が憧れたヒーローになるために。

こうして彼女の戦いは始まり、助けを求める人たちを守るために、そして自分とともに主催者に立ち向かう仲間を集めるために駆け出していくのであった……。


【南条光@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、強化スーツのスイッチをONにしている。
[装備]:逆転サンパツマンの強化スーツ@逆転イッパツマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには絶対に乗らない。主催者に立ち向かう。
1:ともに主催者に立ち向かう仲間を探す。
2:スーツの性能に慣れるまで、スイッチはONにしておく。
3:『逆転イッパツマン』……一体どんなヒーローなんだ?
[備考]
 特撮キャラ及びその出典作品に関する知識を持っています。
 (どの程度の知識があるかは、後の書き手さんに任せます)


『支給品紹介』
【逆転サンパツマンの強化スーツ@逆転イッパツマン】
 南条光に支給。同作の悪役トリオの一人である"コスイネン"がポケットマネーを使って作成した、『逆転イッパツマン』そっくりの強化スーツ。
 腰についているスイッチを押すことでスーツに内蔵されたパワー増幅装置が作動し、着用者の200倍の力を発揮できるようになる。
 しかし本人の運動センスはどうにもならない上にスイッチを壊されると機能停止するという弱点がある。
 なお本ロワにおいては制限により出力が大幅に低下させられ、最大でも10倍の力までしか発揮できないようになっている。


23 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/08(月) 00:21:30 qu7ve2cg0
投下終了です。

先ほどは書き忘れておりましたが、今回の作品は以前、コンペロワ等に投下したものを一部手直ししたものになります。

以上、ありがとうございました。


24 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:48:09 ix183HCQ0
投下します


25 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:50:32 ix183HCQ0
風見雄二は親殺しだ。
母親を助けるために。その一心で『殺してやる』と覚悟を決めて、明確な殺意を持って酒の瓶で父親の頭部を殴打。

『文字を書いたり、箸を持つのは右……。ボールを投げたり、バッターボックスに立つ時は左……。じゃあ、人を殺す時はどっちの手?』

姉の一姫がそんなことまできょういくしていたから、しっかりと右手で。

父親ははっきり言って、クズだ。
天才である姉の一姫ばかりを大切に扱い、雄二に対しては極めて雑に。
彼に与えられたものが食パン1枚だったことを一姫が知ると、それ以降は食事が惣菜パンにグレードアップした。

一姫はブラコンだ。弟の雄二を愛している。
そして一姫は天才で、家族の誰も逆らえない。彼女こそ家計を支える収入源であり、この家で誰よりも優れた存在だ。
雄二は風呂場で性的な悪戯をされたりもしたが、それでも姉の愛は本物で。そして風見一姫がいるから、こんな家庭でもなんとか成り立っていた。そんな姉に恐怖心がないと言えば嘘になるが、雄二も彼女に依存していたのもまた事実。

ゆえに姉の一姫が死んだ時、家庭はすぐに崩壊した。
父親は酒に溺れ、母親と雄二を虐待するように。
あまりにも理不尽な日々を脱するために雄二と母親は家出をした。

それから雄二は母親一人に養われた。
父親が存在しない、安らかな日々。天国のような日常。
だが天国はすぐに崩壊し、父親という悪魔が再びやってきた。彼はいきなり襲来して母親を性的に襲い始めた。

だから風見雄二はこの時、初めて殺人という罪を背負ったのだ。
母親を助けるために、立ち向かった。
それは少年にとって勇気ある一歩である。逃げてばかりじゃ何も変えられないから――だから雄二は立ち向かったのだ。
そして殺人者としての一歩でもあった。どんな動機があるにせよ、殺人は殺人。
たとえゲスな男が相手で、家族のためであっても。風見雄二はその瞬間、自らの手を血で汚してしまったのだから。

『お母さん、逃げよう』

それでも雄二は逃げることを選んだ。
せっかく母親と平和な時間を、手に入れたのだから。

『どこまで逃げればいいんだろうね……。いつまで逃げればいいのかしら……』

それでも母親はもう精神的に限界で。

『ユウちゃん先に逃げなさい……。お母さん、後から行くから』

まだ子供だった雄二には、何もわからなくて。
彼が家を出ると――母親は自殺した。

『ごめんね、ユウちゃん。ごめんなさい』

母親は遺書の中で、必死に雄二に謝っていた。
……こうして彼は父を殺し、母親を自殺へ追い込んでしまった。

それから桐原礼と名乗る男に身元を引き取られた。
女装をさせられ、体を触られ。
雄二はとても女装が似合い、長いウィッグを被ったその姿は皮肉にも姉の一姫に似ていた。

そしてまた殺人を繰り返す。
それを気に入った桐原礼――ヒースオスロは自身が設立したテロリスト養成機関に雄二を通わせた。

そこではオスロのお気に入りということで疎まれ、嫌がらせだって受けた。
それでもマーリンという少女は手を差し伸べてくれた。
ひたすら訓練に励み、卒業試験はマーリンとの殺し合い。
彼女を殴った時――父親のしてきたことを思い出して。彼と同じになりたくなくて。

雄二は負けた。


26 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:51:24 ix183HCQ0

『ごめんなさい……。なんでこんなことになっちゃったんだろうね』

卒業試験が終わった後、マーリンは母親と同じ言葉を口にした。聞きたくない言葉だった。

『人を傷つけないで生きていければ……それが一番いいのにね……』

そしてマーリンは二度と顔を合わせることがなかった。
後から看護師にマーリンが初仕事でミスして死亡したことだけが、伝えられた。

現実はあまりにも残酷だ。
風見雄二という少年はそんな過酷な人生を歩んできた。

マーリンの死亡後、卒業のための課題として彼は暗殺をした。
女装をして、隙を突いての殺害。雄二はたかだか子供と言えども鍛錬を積んできた存在だ。大人相手でも殺せる。

正体すら掴まれることない、見事な暗殺。
このままでは風見雄二は間違いなく最低最悪の殺戮兵器になっていただろう。

――だがオスロの屋敷で日下部麻子に発見。保護されたことで彼の人生は大きく変わる。

『いいか?私がお前を拾う神、神様だ』

神様。
麻子のその言葉は、大袈裟に言っているようでもあるが――あながち間違いではない。
事実。風見雄二という少年に正しき道を歩ませたのは、彼女なのだから。

それから雄二は麻子と、彼女と仲の良いJBによって育てられた。
最初こそ死んだ瞳をしていたが……彼女たちと過ごしていくにつれてその目に光を取り戻してゆく。


27 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:51:48 ix183HCQ0
そして雄二は犬を与えられた。
犬とは人懐っこい生き物だ。当然、雄二にもすぐに懐いた。
ジョンと名付けられたその犬は雄二と共に過ごし、成長する。

麻子に特訓された際に『力だけじゃねえ、頭も使え!使えるものは何でも使え!!』と言われてジョンの名を呼び、噛み付いてもらうことでサポートされたこともあった。
ジョンは雄二にとって大切な家族だ。

だが――ある日、熊から家を襲撃されてジョンを攫われた。
武器を取りに行っている間に――ジョンは首根っこをクマに噛まれ……おそらく、即死していた。
それでも雄二はジョンを取り返そうとして――。
だってジョンは雄二にとって大切な家族だから。

かつての地獄のような日々。そこへ光を齎してくれたのが麻子とJB。そしてジョンだ。
そんな雄二がようやく手に入れた――大切な日常(家族)なのだ。

だから雄二は、クマと戦った。
一度は追い詰められたが――殺害することに躊躇しないというスイッチが入った瞬間。
彼はクマの目を、容赦なくナイフで切り裂いた。

そのまま熊を殺すことも出来た。
後は銃を撃つだけだったが――。

「こいつらに食わせる気だった……。俺の犬を……」

ジョンを殺した熊は親で。
その子供が、雄二の視界に入ってしまったから。

「どうして、俺の犬なんだよ……」

雄二は、熊を撃つことが出来なかった。

だが麻子はそんな雄二を『それでいい。お前はそれでいいんだ』と抱き締めた。

大切な家族を守れなかった雄二は、ジョンの墓の前で誓う。

『麻子のように強くなりたい』

そんな雄二に――麻子は今後、彼の呪いになったともいえる言葉を掛けた。

――お前は私の命令なければ虫や鹿も殺せない。
防衛省が貴様のようなヘタレを一人前にするために、いくら金を使ったと思っている。すべて国民の血税で賄われていることを肝に銘じろ

貴様には、貴様を育てるために支払われた費用に見合う働きをするまでは、勝手に死ぬことすら許可されていない。
一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん
他人のためには迷わず引き金を引ける人間になれ。

――そして。
そんな言葉を胸に刻んで暫くしてから――雄二はこの殺し合いに巻き込まれた。


28 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:52:08 ix183HCQ0




「まさかいきなり、こんなものに巻き込まれるとはな……」

動揺こそしていないが雄二の声には、緊張感が含まれていた。
修羅場は踏んできた。普通の子供とは大きくかけ離れた少年――それが風見雄二だ。
だが。
だがそれでも、なにもかもが唐突過ぎるし、目の前で命を散らされたのだ。
これが成長した後の雄二ならばもっと平常心を保てたが、まだ幼い子供の雄二にはあまりにも辛い現実だった。

こんな状況でも正気を保てるだけでも、子供としてはすごい方だろう。幾度となく死を見てきたから、現実から目を逸らさず。大きく取り乱すこともなく振る舞うことが出来る。

「兄弟愛……」

雄二にとってルフィとエースは赤の他人だし、彼らのことは全くわからない。
しかし乃亜の言葉から察するにあの二人が兄弟だということはわかった。

兄弟。家族。
――雄二はこれまで姉と母親と犬を失い。父親を殺した。
だからそういう言葉に対して無関心というわけじゃない。……兄弟共々、乃亜に殺された敗北者を哀れだと思う。

「……悪趣味なやつだな」

雄二が乃亜に嫌悪感を示す。
別にこういうゲスが珍しいとは言わない。彼は人生で何度もクズを見てきた。
――だからといって彼らを許容する気もない。

「見ていろ、乃亜。お前は俺が倒す――」

雄二の決断は早かった。
優勝特典?そんなものに興味はない。
風見雄二はこの殺し合いで乃亜を打倒し、麻子達の待つ日常へ帰ると決めたのだから。

「あんたはこの世界(ゲーム)の神らしいが、俺にはもう麻子っていう神がいるんだ」

灰色の迷宮から楽園へ至るはずだった少年は――その途中で、殺し合いに身を投じた。


29 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:52:44 ix183HCQ0



「えっ……。今の、なんだったの……?」

条河麻耶は怒りや悲しみという感情を抱かなかった。
というよりも、あまりにも現実離れし過ぎて頭が追い付いてない。

「ゲームっていうには、いくらなんでもやり過ぎじゃね……?ドッキリにしても限度があるぞ……」

マヤはこれまで殺戮や暴力とは無縁の日常を歩んできた。
笑顔溢れる木組みの街で、みんなで楽しく幸せに――。
そんな日常が、素晴らしき日々だなんて。かけがえのないものだなんて思わずに。
いつまでもずっと続くのが当たり前だなんて――。

「おーい!チノ、メグ!!」

あまりにも現実離れして、頭が追い付かないけど。
それでもやっぱり、ちょっぴり不安で。
大切な親友を――チマメ隊の二人の名を呼んだ。
だが返事はない。チマメ隊だけじゃなくて――ココアも、リゼも。
誰もマヤの声に反応しない。

「…………」

ゴクリ、と生唾を飲み込む。
怖い。何も知らない場所にいきなり拉致されて、連れてこられたのだ。恐怖感に襲われるのが当然である。

「ちぇ〜。みんなして私をからかおうとしてるんだな〜!?」

空元気。
そんな言葉が今のマヤにはお似合いだろう。
......はっきり言って怖い。人があっさりと死んだ、あの生々しい光景をドッキリだとか、悪戯だとか。そういう言葉で片付けるなんて無理だ。

それにマヤは自分の友達がそんなことするわけないと信じている。
木組みの街で。優しい世界で育ったみんなは――冗談でもこんなことしない。するはずがない。そういう分別は付くはずだ。


30 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:53:31 ix183HCQ0
それでもあんな現実、受け止められなくて。
怒りや哀しみはあまり湧いてこないが――恐怖感に苛まれる。

もしもこれが本当に殺し合いだったら――。
チマメ隊のみんなや、リゼ達が巻き込まれてたら――。

「――それは違うな」

そんなマヤに、一人の少年が声を掛けた。
彼の名は風見雄二。子供の身でありながら、過酷な人生を送ってきたせいであまりにも『普通の子供』とは掛け離れてしまった存在。

マヤは頭が追い付かず、なによりこんな現実を認めたくなくて。
表面上しか取り繕えなかった滑稽な彼女は――雄二の接近にすら気付けなかった。

「え?それってどういうこと??」

マヤが首を傾げる。
だがその表情に余裕はなくて。本当はこの現実を理解しているということを雄二は察する。

もしも彼女の茶番に付き合えば――もしかしたらマヤはこれ以上、悩まなくて済むかもしれない。天真爛漫な笑顔を振る舞き、現実から目を逸らすことだろう。

――だがその先に待っているものは、間違いなく死だ。
雄二にとって目の前の少女は赤の他人だが――

『一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん』

麻子の言葉があるから。
それにこのまま見捨てた結果、死なれるというのも――少し胸糞が悪いから。

(俺は麻子みたいにはなれない。でも今ここに、救える命があるのなら――)

「これは誰かが仕組んだ悪戯やドッキリじゃない。……正真正銘の殺し合いだ」
「うーん。でもさ、これが本物の殺し合いなんて証拠はないじゃん」
「じゃあ人が死んだあの光景はなんだ?」
「それは……きっと何か手の込んだトリックとかあって……」

そんなふうにあまりにも馬鹿げたことを言い始めたマヤを。雄二は哀れみを含んだ視線で見つめる。
……きっとマヤの反応こそが、子供として当たり前の反応なのだろう。
風見雄二はここに来るまで傷付き過ぎて――だから覚悟を固めるまでも早かった。

だがみんながみんな、雄二みたいに悲惨な人生を歩んでるわけじゃないのだ。……そもそも子供なんて本来、死という概念とは程遠く日常を過ごすものだ。

「マヤ。これが見えるか?」
「銃でしょ?それくらい――」

パン、パン。
マヤが言い終えるより早く雄二は樹木に発砲した。
たったそれだけ。たったそれだけで、ぽっかりと穴が――銃弾の貫いたあとが2つ見える。

「ああ、銃だ。本物の実銃だ」

瞬間――流石にマヤの表情が青ざめた。
バラエティの銃にしては破壊力が高すぎるし、なによりこの子供の技術。そして精神力だ。
彼は当たり前のように銃を撃った。何の躊躇いもなく引き金を引いた。

「これで現実がわかったか?」
「……うん。でも、どうしてそんなことを教えてくれたの?」

純粋な疑問だった。
これほど強いのなら、優勝を目指すのも難しくないようにマヤには思える。

「――俺の名前は風見雄二。この殺し合いで5人を救うのが俺の目的で、偶然にもお前が一人目だったというだけだ」
「それはすげー目標だね!わたしはマヤ。チマメ隊の条河麻耶!」
「……マヤ。お前は何かの特殊部隊だったのか?」
「まあ銃は撃てないけどね」

マヤは素人だ。
そもそもチマメ隊なんて何か特殊な部隊というわけじゃないし、戦うこともない。

「その代わりわたしには、これがあるみたいだけどさ」

マヤは一振の剣を取り出した。
その名も戦雷の聖剣。戦場を照らす光になりたいという渇望により強化される、戦乙女(ヴァルキュリア)の剣。

「ふむ。誇り高き戦乙女の剣、か……」

マヤに支給された支給品の説明を読み、彼女の元気な姿を見る。
……なんとも頼りない姿だが、仲間を守るという気概を感じる。
彼女ならあの時のように――ジョンを失った時のようにならないと思えた。

そして二人の子供は、灰色の迷宮を彷徨う
ちなみにこの際、雄二は支給されたもう1つの武器であるパンプキンを使用していない。今はだたかだか樹木相手に使う必要性を感じなかったのだろう


31 : 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:53:50 ix183HCQ0

【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:グロック17@現実
[道具]:基本支給品、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
1:マヤに同行。保護する
2:パンプキンの性能を知りたい
[備考]
参戦時期は迷宮〜楽園の少年時代からです

【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:チマメ隊やみんなと一緒に戦う
1:バラエティじゃないなら、わたしが戦わなきゃ!
2:雄二って何かリゼみたいなやつだよね。やっぱ強いのかな?
[備考]


32 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/08(月) 01:54:08 ix183HCQ0
投下終了です


33 : この旋律を聴いた者に永遠の呪いあれ ◆s5tC4j7VZY :2023/05/08(月) 05:24:42 A.CXeNCE0
感想ありがとうございます!
投下します。


34 : この旋律を聴いた者に永遠の呪いあれ ◆s5tC4j7VZY :2023/05/08(月) 05:25:07 A.CXeNCE0
「そうか……君たちも心当たりはないんだね」
(関さんに秋月さんもいるのだろうか……)

情報交換をする中、少年はため息をつく。
少年の名は 澄川清志郎
あだ名は鳥居くん。
名前とあだ名が一致していないが、それもそのはず。由来は自宅に鳥居があることから。
小学生同士が名づけるあだ名なんてそんなもんだ。

実家でもある梅の香神社の神楽が無事成功し、舞台裏で戻ったところ、乃亜による殺し合いに巻き込まれた。
そんな彼の心中には、クラスメイトの二人が頭に浮かんでいる。
関織子に秋月真月。
二人はそれぞれ温泉旅館の跡取り。これからの花の湯温泉に欠かせない存在へと成長する。
絶対にここで命を失ってもらうわけにはいかない。自身もその一人で神社の跡取り故に。
もっとも思春期である鳥居にとっては、それだけじゃない。
鳥居には、もう一つの想いを胸に秘めている。
それは、関織子のこと。
転校生の関織子……クラスメイトに”おっこ”と呼ばれる少女に、ほのかな思いを抱く鳥居にとって、この殺し合いに巻き込まれているのかどうか早く把握したいのだ。
気も気がない様子。

「うん。だけど、大丈夫!僕はネットナビだから、接続する場所があれば、ネット経由で何とかできるかも知れないし、悪い参加者はボクが守るから!」

自分にまかせろと胸をドン!と叩くのはロックマン。
それに呼応して少年が手をグーにして振り上げる。

「そうだブー!それに、こっちにはロックマンがいるから鬼に金棒だブー!」

少年の名は富田太郎。
あだ名はブー太郎。
あだ名は彼の語尾が”ブー”だろう。
一見、いじめのようなあだ名だが、本人は気にしていない。
また、周りもそういう意図で呼んではないのだろう。
ブー太郎には、愛する妹であるとみ子がいる。
ここで、死ぬわけにはいかない。
それにロックマンという、ヒーローのような参加者がいるから安心しきっている。

「うん、歩美も負けない!それに、逃げてばっかじゃ勝てないもん!!ぜーったい!!!」

少女も勇ましく声を上げる。
少女の名は吉田歩美。
帝丹小学校の小学一年生にして少年探偵団の一人。
幾度となる殺人事件にかかわった歩美は、乃亜の悪趣味なデモンストレーションに屈しない。
仮面ヤイバ―に負けない正義の心を胸に秘めているのだから。

「それじゃあ、出発しよう!」

「「「おー!!!!」」」

正義の集団が出来上がった!!!!!

☆彡 ☆彡 ☆彡


35 : 輝ける闇 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/08(月) 05:25:48 A.CXeNCE0
「ク……クク……」

口を押えている。
そうしないと、吹き出してしまう。
目の前の哀れな死体に。
しかし、それも限界だった。

「ハーッハハハッ!!!」

笑う嗤う。
のん気な人間に。

「あいつらの顔ときたら……最高だったよ」
ロックマンの足元に転がる3人……それは、先ほど乃亜に対抗すると決めた3人であった。

【澄川清志郎@若おかみは小学生(映画) 死亡】
【富田太郎@ちびまる子ちゃん 死亡】
【吉田歩美@名探偵コナン 死亡】

「さ〜てと、安心しなよ。おまえらの支給品は”オレ”が有効活用してやるから」

邪悪に笑みを浮かべるロックマン。
正確にはロックマンDS(ダークソウル)
ロックマンの闘争心と闇の力が反応して生まれたダークロイド。

「見てろよ、オレさまが全てを手に入れてやるからな!」

【ロックマンDS@ロックマンエグゼ(漫画) 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜12(清志郎、太郎。歩美のも含め)
[思考・状況]基本方針:乃亜の力を手に入れて、全てを闇に帰す
1:ロックマンの振りをして、参加者を闇討ちする。もし、参加者にいれば、悪名を広める
[備考]
ロックマンとの激闘で消滅した後からの参戦です。
コピーロイドに接続された状態で活動しています。
名簿にはロックマンと表記されています。
参加者の憎しみの感情が強いほど、ロックマンDSの力も増します。


36 : 輝ける闇 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/08(月) 05:26:00 A.CXeNCE0
投下終了します。


37 : ◆jiPUB.a8CM :2023/05/08(月) 23:56:07 7iTi/cWY0
投下します


38 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/08(月) 23:57:25 7iTi/cWY0



───何なんですの!!あの女は!!


考え得る限りの悪罵を零しながら。
私、北条沙都子は夜の街を駆けていた。
金の髪を振り乱し、全身から汗をとめどなく流して走る。
狼に追われる羊の様に逃げ惑うその様は、今の私には似つかわしくない、無様な姿だった。



(おかしいですわ!こんなの…何故わたくしが……!!)


今の私は、オヤシロ様──雛見沢の新たなる神なのだから。
体感時間にして百年前。エウア、という正体不明の女神、或いは宇宙人に魅入られ。
私は力を得た。
自分の死をトリガーに時を操り、昭和五十八年六月を延々と繰り返す、その力を。
かつて雛見沢で起きた百年の惨劇。
その全ての脚本を手に入れ、惨劇を思うがままにコントロールできるようになった。
ループの力を活用し、銃の扱いも五十年以上の特訓を経て凄腕のガンマンと並ぶほどになった。
もう、大人であろうと一対一では負けない。そう思えるほどに成長した。


(わたくしには──こんな事をしている暇も…こんな場所で死ぬ訳にはいけませんのに!)


全ては、親友古手梨花を捕らえるため。
大好きな梨花と、永遠に続く昭和五十八年六月を繰り返す事こそ、私の望み。
強情な梨花。頑固な梨花。私に決して屈しようとしない不屈の梨花。
生まれ育った故郷を、私を捨てて、外の世界に出ようとする裏切者の梨花。
逃がさない、決して。絶対に。
貴方は既に、オヤシロ様である私の物なのだから。
オヤシロ様の巫女である貴方は、ずっと私のそばにいればいい。
それこそが終わらない幸せ。
ずっとずっと輪廻(ループ)する幸せを、私は永遠に着飾って。
大好きな箱の中の猫を、慈しみながら過ごすのだ。


39 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/08(月) 23:59:14 7iTi/cWY0



───ここでは君のオヤシロ様の力も制限されている。自殺するのはやめた方がいい。



あの、乃亜という子供に殺し合いをしろと命じられて。
兄弟が死ぬのを無感情に眺めていた私は。
訳の分からないカケラに迷い込んだと思った私は、先ず死のうとした。
とんだ意味不明な傍流に巻き込まれてしまった、そう思って。
そうして、自殺用の武器を探してデイパックの中を漁っていたら見つけたのが、私の制限を示した、乃亜からのメッセージカードだった。
どうやら、エウアさんから賜った能力はこの場所では制限されているらしい。


(つまり、此処で死んでしまえばそれで終わりということ……!!)


だが、焦りは無かった。さっきの兄弟程度の相手ばかりなら、まぁ自分が負ける事は無い。
そう考えていたから。
兄弟の方の片割れは何某かの特殊能力を有していたようだが、あの程度なら抗す術は幾らでもある。
何しろ、雛見沢の百年の惨劇に、人が死ぬバリエーションは事欠かなかったから。
謀殺する手段は、簡単に思いついただろう。
もし本当に参加者があの兄弟程度の力量の持ち主だったなら……


(それなのに……!あんなの!反則ですわ!!)


支給された銃で撃っても、ビクともしなかった。
同じく支給された、私にとって馴染み深い悪魔の薬も、あんな相手では刺す暇がない。
今こうして逃げられているのも、相手が何か明らかにやる気がないからでしかない。
追跡者がその気になれば簡単に私は殺されるだろう。


(銃で撃っても!死なない相手を呼ばないで欲しいですわ!!)


迷いのない、支給された拳銃での頭部への三点制圧射撃(スリーショット・バースト)
見事命中したにも関わらず、相手の反応はケロリとしていた。
そして、その両手から伸びた剣で切りかかってきたのだ。
眼への銃撃と、咄嗟に尻もちつくことで命を拾ったが、追撃されていれば間違いなく死んでいただろう。
それから必死に逃走を開始して、今に至る。


40 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:00:21 6A0aiyQs0


(あの方は──いない!逃げ切れたんですの?)


と、不意に背中から感じていた圧迫感が消えて、振り返り背後を確認する。
先ほど自分が出会った少女は、いなかった。
逃げ切ったのかと、立ち止まって、呼吸を整える。
ここまでずっと走り通しだったため、呼吸が苦しい。
胸を押さえながら深呼吸をして、もう一度走ってきた道を確認する。
そこに人影は無かった。


(どうやら──撒けたようですわね?)


その事を確認して、思わず年相応の少女の様に胸を撫で下ろす。
拳銃も一先ず仕舞い、人心地つく。
どうやら相手は自分を見失った様だが、まだ安心するのは早い。
そう思って、直ぐにここから離れようとした、その時だった。


─────!?!?!?!?


さっきまでいなかった筈の少女が前方に現れ、振り向いた瞬間剣を向けてきたのは。
動くことが、できない。
そうすれば、この少女は私の首を即座に撥ねるだろう。
私は、私が詰んだことをその瞬間に悟った。



(あーあ、ここで負けとは。オヤシロ様も形無しですわね……)



屈辱だった。
少し前までのただの北条沙都子ならともかく。
今の私が、こんな殺し合いに巻き込まれて、為すすべなく早期脱落するのは。
だが、百年惨劇を繰り返してきた私だからこそ分かる。
今の私に、この状況から逆転する手段は無い。
口惜しいが、死ぬのには慣れている。
ここでなお不様を晒すよりは、大人しく断頭の刃を受け入れようと思った。
視線と視線が交わり、少女の瞳を見るその時までは。


41 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:02:04 6A0aiyQs0


「……どうしたんですか、早くおやりなさいな」


……美しい女の子だった。伸ばされた白銀の髪に、妖精の様な整った顔立ち。
けれど、絶望に囚われた目をしていた。
梨花が同じ目をしてくれれば、私は手を叩いて喜んだだろう。
もっとも、梨花でも何でもない子供がそんな目をしていても、嬉しくも何ともないが。
私がさっさと殺すように促しても、当の本人はうわ言のように、何かをぶつぶつと呟いて。
何だか、見ていてイライラしてくる子供だった。
その苛立ちのままに手を伸ばす。
反射的に今度こそ首を絶たれると思ったが、慣れた死という現象は、やってこなかった。
そのまま目の前の少女の顔を両手で掴む。



「……やる気があるんですの!?」



返事は帰ってこなかった。
こうやって顔を触られても、まだ私を見ていない。
視界に入ってはいるが、それだけだ。首筋に剣を当てながらまだぶつぶつとうわ言を呟いている。
オヤシロ様となった私を完膚なきまでに詰ませた力の持ち主なのに。
何だそれは、と思った。
勝者は敗者の悔しがる顔を眺めて、それを踏み躙りながら先へと進むものだろう。
殺されるにしても、こんな夢現な相手に殺されるのはごめんだ。
気づけば、私は静かに、目の前の子供に問いかけていた。


「……貴女、お名前は?」


その言葉に、目の前の少女が初めて反応を見せる。
ぴくりと、肩を震わせて。うわ言ではなく、はっきりと。
彼女は、自分の事をメリュジーヌと名乗った。


42 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:02:39 6A0aiyQs0








その日、私は私の一番愛していた妖精(ヒト)を殺した。







43 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:03:10 6A0aiyQs0



アルビオン。
神の時代が落陽を迎え、人の時代に移り変わろうとしていた頃。
それでもなおブリテンに留まり続けようした紅き竜。
世界の裏側に消えていった同族たちから取り残された、最後の幻想種。
アルビオンは強大だったが、移り変わろうとする時代のうねりには勝てなかった。
神秘の衰退により力尽き、朽ち果てたアルビオンの左腕から生まれたのが私だった。
尤も、誕生した時は人の姿ですらない。
アルビオンの遺骸が眠る昏くて腐った汚濁の中に沈む、ただの肉塊だったけれど。



────私は、オーロラ。貴女、お名前は?



昏くて汚い汚濁の水面で、僕は、妖精(オーロラ)に出会った。
彼女に抱きかかえられた時、肉塊だった私は、妖精の形を得た。
元は龍の遺骸の左腕だった僕が、少女の、妖精の形を取った理由は単純だ。
ただ、彼女(オーロラ)の様になりたい、その一心だった。
僕は、僕を抱きかかえる彼女以上に、美しい物を見た事が無かった。
眼にして、人の形を得た瞬間、瞳から熱いものが流れた。
それほどまでに、僕を救った奇跡(オーロラ)は美しかったのだから。
そして僕は彼女の騎士として生きようと思った。
何があろうと、オーロラを……彼女の笑顔と、七色に光る翅の輝きを守ると誓った。



────貴女は私の王子様だもの。
────何時だって、私が一番欲しいモノを持ってきてくれるのよね?



そうして、僕は、私は。
オーロラの望みを叶え続けた。
『妖精も人間も共存できる世界を目指す。最も優しく慈愛に満ちた妖精』
いつだって彼女はそう見えるようにふるまい続けた。
でも、それは事実とは違っている。


44 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:03:32 6A0aiyQs0

彼女が愛しているのは、自分だけだから。

自分を愛してくれる環境。
自分が一番でいられる世界を大切にしている。
人間よりもずっと強い妖精の中で人間を庇護するのは、人間達からチヤホヤされるため。
妖精たちの旗印になるのは、そうしていれば誰からも尊敬されるから。
優れた指導者の様に見えるのは、彼女が誰とも争わないため。
自分が一番愛される存在でなければならない彼女がこれまで生き残ってきたのは。
彼女が強かったからからじゃない。
ただ、他の指導者の足を引っ張るのが上手かっただけなのだ。



───僕は悪くない、僕が殺したかったんじゃない。
───オーロラ、オーロラ…どうか聞かせてくれ……
───僕は、私は、君がありがとうと言って笑ってくれれば、それだけで……



自分より人気の妖精が出るたびに、“思いつき”で世界を悪い方へと転がしていく。
彼女に悪意はない。
だってそうすることが、彼女にとって生きるという事だから。
そうしなければ、自分より優れた誰かを貶めなければ、一番でなければ。
彼女は、枯れて死んでしまうから。精神のみならず、肉体的にも。
人が、呼吸しなければ死んでしまうのと同じように。
それが彼女の、妖精としての特性だった。
だから本当に、心の底から“自分に邪魔な相手は危険な相手である”。
そう思いつくだけなのだ。
その想い付きで、僕に一つの部族を滅ぼせと命じ。
最後には、彼女の思い付きは女王を…妖精國そのものを滅ぼすに至った。
そして、僕は、そんな彼女の思いつきに、最後まで従い続けた。



───わかってる…わかってる……!
───愛されていないなんて、分かってる……!



あれは奇跡、奇跡だった。
昏い沼の底で蠢くだけだった肉塊が、彼女に抱きかかえられた瞬間、人の形を得た。
人の姿のみならず、心を知った。憧れを知った。
決して揺らぐことのない、振りほどくことのできない愛を知った。
その愛を追いかけて、僕は後戻りのできないところまで進み続けた。


45 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:04:52 6A0aiyQs0



───ブリテンの外!カルデアの人たちから聞いたでしょう!
───こんな、つまらなくなった世界より、きっとずっとマシのはず。
───だって、憐れで汚くて弱弱しい人間達だけの世界なんですもの!
───もっと簡単に、もっと行儀よく、理想の世界が作れるわ!!
───可愛い人。私のメリュジーヌ。今一番貴女を愛しているわ。
───手を出して、私の手を握って、新しい生活を始めましょう?



彼女の暗躍と扇動によって。
ブリテンは…女王モルガンが作り上げた妖精國は地獄絵図となった。
呪詛と殺戮、暴徒が蔓延し、誰の目にも末期であるのは明らかだった。
そんな地獄を創り上げてなお、彼女の関心は既に外の世界へ向いていた。
そして、彼女を、僕は。私は。



───そんなわけ、ないんだよ……!
───君が外の世界で愛されるハズが無いんだ…!君は此処でしか一番になれないんだから……!
───外の世界はこの妖精國程単純じゃないんだ。君が害悪だなんて事は、直ぐに見抜かれる……!
───そんな世界で君が生きていけるとでも!?
───澄んだ水の中でしか生きていけない君が!



僕は、オーロラを刺した。
今迄生きてきた妖精國はもうすぐに滅びる。
かといって、外の世界は彼女にとって終わりのない地獄に他ならないから。
きっとすぐに、彼女の輝く翅も、姿も、色あせて衰えていく。
その事実に誰よりも彼女(オーロラ)自身が耐えられない。
自分を愛せなくなって、絶望する。
そんな地獄の未来に、彼女を連れて行くわけにはいかない。
だから刺した。


46 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:05:39 6A0aiyQs0



例え、彼女が死ねばこの身体がただの肉塊に戻るとしても。
生涯を賭けて守ると誓った、私の愛(すべて)を、喪うとしても。






47 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:06:09 6A0aiyQs0



「……そして、頭の中が真っ白になって……気が付いたら此処にいた」


話を聞いた理由は、反撃の手段を考える時間が欲しかったから。
何故そんな光のない瞳をしているのか、そう尋ねた。
尋ねた瞬間は無言で。十秒後にぽつりぽつりと語り出し、やがて止まらなくなった。
彼女の話を聞いて。
何を言っているかは八割がた分からなかったけれど。
それでも確信できることが、三つだけあった。
まだ、私の悪運は尽きていないということ。
今この、メリュジーヌさんは、空っぽなこと。
そして、この方は私の役に立つ、ということ。


「…なら、貴方がすべきことは一つですわ、メリュジーヌさん」


にぃ、と笑って。今も剣が首筋に添えられているにも関わらず。
私は、北条沙都子は前に進み出た。
抵抗は無いだろうと思って、事実抵抗と呼べる動きは無かった。
私は、メリュジーヌさんの身体を優しく抱きしめる。
そして、耳元で囁いた。


「オーロラさんとやらと、一緒に生きていきたいのでしょう?」
「彼女との最後を、後悔しているのでしょう?」
「愛が欲しいのでしょう?」
「そのために、わたくしを襲ったのでしょう?」


瞳を紅く染めて。
カラメルの様に甘い囁きを、彼女へと届ける。
リンゴを食べろと、嘯いた蛇のように。


「……でも、貴方だけでは駄目ですわ」
「貴女の様に、絶望に囚われた瞳をしていては、勝てる勝負も勝てません」
「絶望と言う運命を乗り越えるには、絶対の意志が必要なのですから」


48 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:06:35 6A0aiyQs0


抱きしめた彼女の唇が、仄かに震える。
その口から、呆然と「絶対の、意志…」と、言葉が漏れる。
そして、彼女とこの瞬間初めて、会話が成立する。


「………大した…自信だね。君に、その絶対の意志があるの?」


問いかけに、「ありますわ」と、即答で答える。
私は私を信じている。
絶対の意志が無ければ、梨花に打ち克つことなど出来はしないのだから。
何百年かかろうと、私は私の望んだ未来へ必ず辿り着く。
だから、こんな所で負けるわけにはいかない。
何を利用してでも、必ず昭和五十八年の雛見沢へと帰って見せる。


「……さっきは僕に殺されようとしてたよね」
「ええ。ですが、結果的に死んでいないでしょう?」
「………」


抱きしめていた体を離し、そっと右手を出す。
もう首筋に剣は当てられていなかった。


「一緒に、優勝を目指しましょう。メリュジーヌさん」
「貴方が信じて居なくとも、わたくしは絶対の意志を信じます」
「貴方はただ、わたくしを利用すればいい。わたくしも貴方を利用します」
「最後に二人残った時、わたくしの首を撥ねればそれで貴方が優勝者です」


その手が握られることは無かった。
けれど彼女はくるりと私に背を向けて。
一言、唸る様に言葉を紡いだ。


「……私は、君の騎士になるつもりはない」
「だけど、私は彼女のために生きる、そう決めた」
「彼女がせめて、もっとマシな最期を迎えられるなら──」
「君の様な者とだって、手を組もう」



───すみませんね。オーロラさん?
───でも貴方、もうメリュジーヌさんは要らないのでしょう?
───だったら、わたくしが代わりに使って差し上げますね?
───私が私の望む未来へと、辿り着くために。


49 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:07:19 6A0aiyQs0







目の前の人間の少女が、邪悪である事は見ただけで分かった。
この子はきっと、オーロラと同じ気質の人間だ。
だけれど、オーロラよりもずっと賢くて…普通の人間ではない事も分かった。
彼女に与すれば、また僕の手は血に染まる事も察せた。
けどそれでも、僕は彼女の誘いを拒絶する事ができなかった。
愛してくれとは言わない。二人で生きていきたいとも願わない。
ただ、せめて。あの終わりを否定できるのなら。
僕の奇跡(オーロラ)の終わりをもっと穏やかなモノにできるのなら。
悪魔に魂を差し出しても、構わなかった。


「……私は、君の騎士になるつもりはない」
「だけど、私は彼女のために生きる、そう決めた」
「彼女がせめて、もっとマシな最期を迎えられるなら──」
「君の様な者とだって、手を組もう」


本当は、優勝を目指すだけなら、彼女の力など必要ない。
人間と最強種の間では、殺し合いなど成立するはずがないのだから。
此処で彼女を斬って捨てて、目についた他の参加者を次々に血の海に沈めて行けばいい。
魔力の問題も、無尽蔵にして超高出力の魔力を生み出せる龍種の心臓ならば問題ない。
けれど、「絶望に囚われていては勝てない」という彼女の言葉は。
皮肉にも、私の胸の奥深くへと突き刺さった。
確かにオーロラを刺した以上、私はいつまで人の形を保っていられるかは分からない。
最後の一人と言う所で、肉塊に戻る可能性もある。
だから、彼女の言う絶対の意志を利用しようと……いや、これは建前だ。
尤もらしい理屈をつけても、本当の理由は単純で。
酷く疲れ切っていた所に、彼女がはっきりと進むべき指針を示してくれたのは有難かった。
だから、私は家族と喧嘩した少女が行きずりの男に身を任せる様な、退廃的な思考で。
北条沙都子と名乗った少女の、甘言に乗ったのだった。


あぁ、僕は、私は。どうあっても君の為にしか生きられないらしい。


50 : 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:07:52 6A0aiyQs0


【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:健康
[装備]:FNブローニング・ハイパワー(10/13発)
[道具]:基本支給品、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、H173入り注射器
[思考・状況]基本方針:優勝し、雛見沢へと帰る。
1:メリュジーヌさんを利用して、優勝を目指す。
2:使えなくなったらボロ雑巾の様に捨てる。
3:願いを叶える…ですか。眉唾ですが本当なら梨花に勝つのに使ってもいいかも?
[備考]
※綿騙し編より参戦です。
※ループ能力は制限されています。

【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、自暴自棄(極大)
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。


【H173@ひぐらしのなく頃に業】
発症すると妄想や幻聴、疑心暗鬼を催す雛見沢症候群を強制発症させる悪魔の薬品。
H173はその促進剤であり注射すれば即座に末期症状まで進行した状態で発症するが、
今ロワでは制限により初期症状の状態で発症する程度に抑えられている。
投薬方法は主に静脈注射だが、綿騙し編では経口摂取によって発症したともとれるため、
飲み物に混ぜるなどでも発症させることができる。


51 : ◆jiPUB.a8CM :2023/05/09(火) 00:08:06 6A0aiyQs0
投下終了です


52 : ただ、それだけが望み ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:13:20 xJcKj7Xs0
投下します。


53 : ただ、それだけが望み ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:14:21 xJcKj7Xs0
「あたしは剣ちゃんの傍にいることが夢だから」

【草鹿やちる@BLEACH 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:剣ちゃんの傍に帰る
1:殺し合いは保留。だけど、優勝しか帰る道が無い場合は……
2:とりあえず、他の参加者と接触を図る
[備考]
千年血戦篇更木剣八の斬魄刀としての真名が判明する前からの参戦です。


54 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:15:13 xJcKj7Xs0
「う……ひくっ……」

めそめそとなくハーフエルフ。
ハーフエルフの名はシルフィエット。
人間とエルフの子。

「ルディ……助けて」

シルフィは想い人の名を口に出す。
乃亜と名乗る少年のデモンストレーションは、シルフィに恐怖を十分に与えた。
それに加え、ルフィとエースの兄弟愛をあざ笑う声と自分たちを見下した眼はいじめっ子にそっくりだった。
自分をいじめた村の子供たちの。

「う……うう……ひっ、ひっく、ルディ……」

無理もない。
それは、周囲から”依存”と指摘されるほどだったのだから。

ルディと離れ離れになって3年の年月が経っていた。
シルフィは、礼儀作法に魔術練習に剣術稽古と励んでいた。
何か、しなくちゃと。
おかげで少しは強くなったのか、いじめっ子の中心人物(ソマル)にも言い返すことができるようになった。
でも、ここで乃亜による殺し合い。
ただでさえ、ルディの行方が分からないのにここで、死んだら二度と出会えなくなる。
シルフィは深淵に一人取り残されている。

「ルディ……やだよ!会いたいよ!!ルディ!!!」

しかし、シルフィの求めに現れない。
現実は非常である。

「……うあぁぁぁぁあああああ〜〜〜〜!!!!!」

泣いた。哭いた。
シルフィには、哭くしかできない。

シルフィはずっと彼に守ってもらうだけなのかい?

まだ、父親からの問いに答えを見つけられないシルフィには。

―――ス

「あああぁぁぁぁああ……え?」

「あー、とりあえずこれで涙をふけって……な?」
「デス♪」

シルフィにハンカチを差し伸べたのは、外見こそチンピラもどきだが、平和主義で真面目な少年。
そして傍にいるのは金髪の少女だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


55 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:15:38 xJcKj7Xs0
「……」

俺は後悔し続ける。
死んでからもずっと。
なのに、急に現実に引き戻されて戸惑っている。

「……」

俺こと竹井和馬は死んだはずだ。
プリズナーゲームで処刑された。
肉が焼けた匂いが鼻孔に。
痛みが感覚として残っている。
なにより―――
こうして今も最後のやり取りが俺の脳に焼き付いている。

「……雪村みことのパパとママを殺した、って」
「―――」
「―――なに、聞こえない」
「―――ぁあ」
「はっきり、言って」
「――――」
「―――俺が、お前の親御さんを、殺した」

どうして、俺は口にしたんだろうか。

―――そうだ、俺が死ぬことでみことの呪いが解けるならば。
俺ごときの命の使い道としては、上等じゃないだろうか、と。
そう思ってしまった。
俺は口に出す言葉を間違えたのだろうか?

―――はっ
何がだろうか?だ。
答えは、はっきりしてるじゃないか。

俺は間違ってた。
現に今の俺の心に張り付いているじゃないか。

笑いながら泣いている、みことの顔が。

俺は、みことに献身の呪いをかけてしまった。
この世で一番強力な、最悪の呪いを。

俺に降り注ぐ雨はいまだ病まない。
踏切の音が病まない。
今後も治ることはないんだろうか。

「……ないか」

乃亜のあの胸糞悪いデモンストレーションからすると、俺は生き返らせられたんだろう。
ったく、死者を呼び戻してやらせるのが殺人遊戯だなんて、ドSかよあのガキ。
俺は悪態つくと同時にポケットを触る。
が、目的の物は入っていなかった。
家のカギ。
もっとも正確にはそれにつけてあるでかいキーホルダー。
カントリードールっぽい女の子のマスコット人形。

「あんときは、没収されなかったんだがな」
(ってことは、あのとき、俺のポケットに入っていたままだったのは、意図があったのか)

確かに、俺にとってあれは勲章だったが、雪村みことにとっては違った。
殺意を抱かせる鍵だった。
ってことは、あのプリズナーゲームを考えやがった監獄長とやらは俺とみことのことを知っていたってわけか?
……まぁ、あれこれ考えてもしょうがないか。
俺は……負けたんだ。
プリズナーゲームに。

「 ラ ラ ラ ラ
   ラララ      」

つい口ずさんでしまう……みことが。彩音先輩が。そして蓮をふと思い出したから。
このメロディを忘れなければ、いつまでも部の皆が傍にいるんじゃないかと思えるから。

「なんだか、もの悲しそうなメロディですネ!」
「うぉっ!!!」

突如、背中越しから声をかけられた俺はネズミが猫に遭遇して後ずさりするかの如く、飛び跳ねた。

「お、お前、誰だ!?」
「ワタシですか?ワタシはハナ・N・フォンテーンスタンドです♪」

俺の目の前に現れたのは、雨が似合わない晴天の金髪少女だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


56 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:16:01 xJcKj7Xs0

「それでハナ……一体”どこから”聞いてた?」
「えーと……”俺は後悔し続ける”からデスかね」
「最初からかよ!つーか、今の全部声に出してたのかよ!」

おいおいおい、いくらさっきまで死んでいたからといって、あの独白を普通に声に出していたなんて、目の前のパツキンガールにアブネー奴認定されてもおかしくない。
竹井和馬=キチ○イ説だなんて、まだアホガキ説の方がましだっての

「あー……とりあえず、アレは聞き流してくれると助かる」
「?……ハイ♪人間だれしも秘密の一つや二つはありマスから」

とりあえず、これ以上の恥の伝聞は阻止することができたみたいだ。
セーフ。
大丈夫、食べものにも3秒ルールがあるから、これはセーフだ。

「それで、ハナ……だっけ。”これ”に巻き込まれる心当たりはあるか?」
「……いいえ。最初はてっきりジャパニーズヤクザに連れ去られたかと思いましたが……」

どうやらハナも乃亜……あのクソガキとの面識はないらしい。
それと話をして分かったことだが、どうやらジャパニーズ大好きガールことハナはヨサコイ踊りが好きで留学しにきたみたいだ。
流石は外人さんだ。俺ら日本人と行動力が違うぜ。
やはり、その血だろうか。黒船で無理やりカイコクシテクダサーイと要求しにくる胆力の。

それと、もう一つ重要なことも。
ハナは俺らとは違う。

ハナとそのヨサコイ部の連中はキラキラ輝く良い子ちゃん。
どうやら、我らが志加田第三高校管弦部には入部できない。
なぜなら入部資格はいたってシンプル

”悪い子”

千鶴の眼にかからねーな。きっと。
まっ、でもハナのようなのが普通なんだろうがな。
……だけど、勝手に審査して落選させるなんて迷惑でしかねーわな
俺がハナについて勝手に評論していると。

「……うあぁぁぁぁあああああ〜〜〜〜!!!!!」

女の子の泣き声が聞こえた。

「っいくぞ!」
「ハイ!」

声が出る前に体が動いた。
しかし、死んでからも自分の馬鹿さ加減は治っていないらしい。
だけど、どうやらバカは一人じゃなさそうだ。
隣に、同じく返事をする前に身体を動かしているやつがいるから。

前言撤回。っても、ハナは管弦部には入部できない。

―――が友人としては合格だ!

☆彡 ☆彡 ☆彡


57 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:16:21 xJcKj7Xs0

「あー、……落ち着いたか?」
「……はい」

無事、泣き声の主を見つけて保護することができた。
俺はホッとした。
殺す殺されるなんて、あのプリズナーゲームでこりごりだ。
しかし、それにしてもこの子、エメラルドグリーンの髪にその耳……これって、所謂アレか?
ドラゴンが火を噴いて、勇者がズバーッとする世界の。
……まさかな。

「ワタシの名前はハナ・N・フォンテーンスタンドデス♪可愛いエルフさん、アナタのお名前聞かせてくだサイ♪」

って、ハナは自己紹介をすると同時にエルフ耳?のロリっ子の名前を尋ねた。

「……シルフィエット」

エルフ耳?のロリっ子の名前はシルフィエットというみたいだ。
名前といい、ますますゲームの世界の住人に見える。

「いい名前デスね♪シルフィちゃんと読んでもイイですか?」
「う……うん」

おいおい、出会ってすぐ呼び名まで決めるとわ。
これが、リア充というやつか。

「ほら!カズマさんも自己紹介しないとダメデスよ!」

っとと、いけない。それもそうだな。
まずは、友好関係を築くことが大切だからな。

「俺は、竹井和馬だ。よろしくな、シルフィ」
「アクマ……?」
「和馬だ!おい、そのエルフ耳は唯の飾りかよ!」
「まぁまぁ、確かにカズマの顔はデビルのように怖いデスよ♪」
「誰がアクマじゃい。こちとら、どこからどうみても唯の男子高校生だろ!」
「そうですよ、それにカズマは、一見アウトロー少年にしか、見えませんが実はショタのような心をもっているのデスから♪」
「ぐおおおお!むやみにムカつくあああああ!!」

なんじゃい、そのフォローは。
つか、俺はもうショタっていわれる年じゃねーぞ。
……ただ、夢に見るガキの俺がいつまでも居座る。
まさか、それがショタ判定なのか?

「ク……」
「ん?」
「クスクス……あっ!ご、ごめんなさい!二人のやり取りが可笑しくてつい」
「……いや、いいじゃねーか」
「え?」
「泣き顔なんかより笑った顔の方がいーぜ」

☆彡 ☆彡 ☆彡


58 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:16:38 xJcKj7Xs0

話を続けると衝撃的なことが判明した。
どうやらシルフィは、人間とエルフのハーフエルフだそうだ。
……まじか。
ここに征四郎がいたら大変なことになってたぜ。

ハーフエルフだって?
ではまず、一本でいいからその髪の毛の毛根。
ああ、それと、このバケツにキミが日々生産しているアンモニアの原料物質を提供してくれないか?

「……」

とりあえず、脳内のヤツを殴っておく。
おいやめろ。軽い冗談じゃないかと声が聞こえた気がするが、たぶん幻聴だろう。

「それで、これからどうしましょう……」

ハナのやつが暗い表情を見せた。

「……」

その顔はハナには似合わない。
晴天が曇るなんて、あってはならない。
その瞬間、全俺議会は、このクソッたれ(殺し合い)に対する議決を決めた。
それは―――

「なぁ、とりあえず勝利条件を決めておかねぇか」
「勝利条件ですか?」

俺の提案にハナとシルフィは首傾げた。

「ああ……このまま、やっぱ殺し合いなしね、なんてなるわけねーだろ?だったらよ……これだけは、ゆずれねぇっていう自分の勝利条件を持っておくってことは、ここで生き残る上で重要じゃねぇかと思うんだ」

ほぼ身内がやらされたプリズナ―ゲームと違い、今度のデスゲームは、あの場を見渡しただけでも人数が違う。シルフィのように出自が違うのも多くいるだろう。
つまり、”必ず血が流れる”それも、多くの。
プリズナーゲームは、やろうと思えば一人の血だけで終わらせられることができるが、(勿論、俺はそんな攻略はお断りだが)今度はそうはいかない。
なら、これだけは譲れねぇ誓いは持っておくべきだろ。
生き残るためにも。

「イイですね♪ワタシの勝利条件は勿論、ヨサコイを踊り続けることです!」
「私はルディに会いたい。ルディと一緒に暮らしたい!」

ハナもシルフィも己の勝利条件をしっかりと持っているようだ。
つーか、シルフィ好きな男子がいるのかよ。
それに一緒にって……できるのか、もうできるのか結婚?……スゲーな異世界。

「それで、カズマさんの勝利条件はなんデス?」

ハナのやつが、キラキラした瞳で俺を見やがる。
俺の勝利条件……ふっ、それは一つしかねぇよな

「俺の勝利条件は、あの生意気なガキンチョにゲンコツした後、電気あんまをくらわせることかな」

【竹井和馬@トガビトノセンリツ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の頭にゲンコツした後、電気あんまを食らわせる
1:ハナとシルフィと行動を共にする
2:勝利条件を達成できる方法を考える
3:ラ ラ ラ ラ ラララ  呪いか……
[備考]
BADENDno.5からの参戦です。
シルフィとの会話から異世界の存在を知りました。

【ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ヨサコイを踊り続ける
1:和馬とシルフィと行動を共にする
2:勝利条件を達成できる方法を考える
3:ラ ラ ラ ラ ラララ  うーん、このメロディでヨサコイを踊ってみたいデスねぇ……
[備考]
原作(最終話)後からの参戦です。
和馬の独白を聴きました。約束もあるためとりあえず、和馬は一度死んでいるとか雪村みこととのやり取りは隅に置いています。
和馬が口ずさんだメロディ(トガビトノセンリツ)を覚えました。躍りに使えないかと時折、練習するために口ずさむことがあります。
シルフィとの会話から異世界の事を知りました。

【シルフィエット@無職転生 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ルディに会う。そして一緒に暮らす
1:和馬とハナと行動を共にする
2:勝利条件を達成できる方法を考える
3:答え……私の答えは…
[備考]
漫画版21.5話の最中、父の問いに対する答えを見つける前からの参戦です。
和馬、ハナとの会話から、異世界の事を知りました。


59 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:16:51 xJcKj7Xs0
投下終了します。


60 : Gonna Fly Now ◆s5tC4j7VZY :2023/05/09(火) 06:19:11 xJcKj7Xs0
あっ!すみません!
征四郎ですが、変換ミスのままでした!
正しくは、征史郎です。
wikiの方で修正いたします。


61 : ◆4u4la75aI. :2023/05/09(火) 09:22:01 0NZ7dbFs0
投下します


62 : 不良と良子 ◆4u4la75aI. :2023/05/09(火) 09:22:40 0NZ7dbFs0
 もしそこを通りかかる一般人が居れば、そのあまりの怒気に恐れ慄くだろう。
 海馬乃亜、殺し合いと言われたこの状況、自分が誘拐され首輪を付けられている事実、最初の会場で起きた惨事。全てが彼女の逆鱗に触れるものだった。

「畜生ッ!」

 メイド服にスカジャンを装った奇抜な格好の少女。名は美甘ネルと言った。

「まんまとやられちまったなぁ…………。チッ、ちょっと落ち着かねえと」

 ネルの性格上、自分だけならまだしも他人の命を弄ばれるとなると、到底許されないものとなる。ましてやルフィとエースという少年に行われた悪趣味極まりない行為。キヴォトスという物騒な世界、その上Cleaning&Clearingのリーダーという荒事には慣れきった立場ではあるものの、命を奪うという行為は何よりも重く、何よりも許されないもの。

「(あの場所にはだいたいあたしと同じ様な背丈の奴しか居なかったな……てことは他のC&Cのメンバーはいないと考えた方がいいな)」

 Cleaning&Clearing。通称C&C、メイド服を装うミレニアムのエージェント集団。メンバー間のコンビネーションから生まれる力は大いなるものだが、それが単独では弱いという事にはならない。

「…………首洗って待ってろ、海馬乃亜」

 ランドセルに入っていた愛銃を天に向け、呟く。荒くれた性格だが、その正義感は確か。海馬乃亜はネルの“掃除”対象となった。
 直後ランドセルを配られていることもチビ扱いされてると感じて蹴り飛ばしかけたがすんでのところで止まった。

「(……しっかし、ここからどうするか)」
 もしそこを通りかかる一般人が居れば、そのあまりの怒気に恐れ慄くだろう。
 海馬乃亜、殺し合いと言われたこの状況、自分が誘拐され首輪を付けられている事実、最初の会場で起きた惨事。全てが彼女の逆鱗に触れるものだった。

「畜生ッ!」

 メイド服にスカジャンを装った奇抜な格好の少女。名は美甘ネルと言った。

「まんまとやられちまったなぁ…………。チッ、ちょっと落ち着かねえと」

 ネルの性格上、自分だけならまだしも他人の命を弄ばれるとなると、到底許されないものとなる。ましてやルフィとエースという少年に行われた悪趣味極まりない行為。キヴォトスという物騒な世界、その上Cleaning&Clearingのリーダーという荒事には慣れきった立場ではあるものの、命を奪うという行為は何よりも重く、何よりも許されないもの。

「(あの場所にはだいたいあたしと同じ様な背丈の奴しか居なかったな……てことは他のC&Cのメンバーはいないと考えた方がいいな)」

 Cleaning&Clearing。通称C&C、メイド服を装うミレニアムのエージェント集団。メンバー間のコンビネーションから生まれる力は大いなるものだが、それが単独では弱いという事にはならない。

「…………首洗って待ってろ、海馬乃亜」

 ランドセルに入っていた愛銃を天に向け、呟く。荒くれた性格だが、その正義感は確か。海馬乃亜はネルの“掃除”対象となった。
 直後ランドセルを配られていることもチビ扱いされてると感じて蹴り飛ばしかけたがすんでのところで止まった。

「(……しっかし、ここからどうするか)」


63 : 不良と良子 ◆4u4la75aI. :2023/05/09(火) 09:23:12 0NZ7dbFs0
 名簿を確認しようとしてみたものの、第一放送まではロックという設定にされている。知り合いが居ようとも知る術はまだ無い。かといってカイバノアへ挑む方法も無し。

「(……取り敢えずここら動き回って、誰か見つけるか)」

 そう思い辺りを見回す。高低差のある地帯。深夜、辺りは暗いものの何か建物がある様子は無い。だが、静か。

「(……ん?)」

 だから微かに聞こえる足音も、聞き逃すことはなかった。
 目を凝らすと、何者かがこちらに近づいているのが見えた。だがこちらの存在に気付いている様子はない。背丈はやはり低く、スカートを装っている。少しコンタクトを取ってみる事にした。

「おい、そこのチビ」

 目を凝らし、様子を見る。少女は少し驚いた様に立ち止まったが、すぐにこちらへ駆けてきた。
 やがて姿がはっきり見えてくる。そこで気付いたが、おそらくキヴォトスの人間ではない。よく考えてみれば海馬乃亜も、ルフィもエースもキヴォトスの人間には見えなかった。恐らくキヴォトス外の人間も多く集められている、むしろ逆にキヴォトスから来た自分が珍しい側だと考えることにした。それにルフィには腕を伸ばすと言う特殊な能力がある所を目撃している。未知なる力を相手にする万が一に備え、銃をいつでも構えれる体勢になるが――

「す、すみませんっ!えっと、お姉……あっ、吉田優子って人を見ませんでしたか!?」

 見た目通りの、幼なさそうな声と、単なる人探しの質問。まず敵意はないものと捉えた。

「ここで会ったのはあんたが初めてだ」
「そ、そうですか……ありがとうございますっ」
「ん、おい待て」

 そのまま立ち去ろうとする少女をネルは引き止める。

「こんな場所なのに1人で行動しようとするな。それに、人探ししてんだろ?」
「え、えっと……はい」
「名前、私は美甘ネルだ。あんたの名前を教えな」
「美甘さん……えっと、良は吉田良子って言います」

 少女、吉田良子はそう名乗り、ぺこりとお辞儀をした。

◇◇◇


64 : 不良と良子 ◆4u4la75aI. :2023/05/09(火) 09:23:40 0NZ7dbFs0

 良子の心は穏やかではなかった。小学生の身にこの状況、当然と言えば当然だが何よりこの殺し合いには最愛の人物が巻き込まれている可能性があるのだ。
 最愛の人物、自らの姉、吉田優子。彼女自身、誘拐され殺し合いを命じられる様な行動は普段からしていないはずだった。だが心当たりがあるといえばあり、それは姉になる。姉は立派なツノを備えた偉大なまぞく。まぞくという性質は多魔市では珍しくはないもののそこらにありふれている存在という訳ではない。悪者に狙われる可能性は存分にある。何せそのまぞくの妹である自分がここに居る以上姉も巻き込まれている可能性が存分にあるのだ。

 だから、名簿も見れない今は姉をひたすら探し回るしかない。あまり居てほしくはないものの、姉の友人である桃さんやミカンさんが居れば心強いし、正直こんな状況小倉さんみたいな親しい人が隣にいて欲しい。しかしその恐怖も姉への感情でなんとか誤魔化し、歩みを進めていた。
 そこでかけられた声。暗闇の中、突然だった為驚きはしたもののこちらに害を与える者がわざわざ声をかけることはないと認識し、姉のことを尋ねた。
 良子にとって、その後のネルの反応は予想外ではあったが。

「こんな状況で姉の心配して話しかけてくるってよ、結構度胸いる事だろ」
「あ……う、えっと」
「まだチビの癖にやるじゃねえか。ははっ、ぜってえ良い妹を持ったって思われてるぜ。あたしも手伝ってやるから、一緒にあんたの姉ちゃん探しに行くぞ」

 笑顔を向けながら、ネルは良子の頭を軽く撫でる。
 ネルはミレニアム最強のエージェント。その名を聞いた者はたちまち怒りっぽい性格と恐ろしいほどの実力に圧倒されるばかり。
 だがただ強いだけの人物ではない。強き心は認め、弱き心は守る。自らが持つ力を、ネルは正しく使う。
 良子にはネルの様な力はない。だがその姉を想う気持ちと勇気をネルは認め、素直に褒めた。護ると決めた。

「……はいっ、ありがとうございます。美甘さん!」
「あー……堅苦しい。ネルって呼びな」
「あっ……じゃあネルさん!」
「おうよ!」

 良子の心も焦燥感から徐々に解放されていく。姉と同じくらいの身長の、姉と同じくらい頼りにできそうな人。そんな人が自分の助けになってくれる安心感。

「良も……出来ることをやります!」
「ははっ、あたしだけで十分……って言いたいところだがその言葉貰っとくぜ」

 まず、姉探し。姉が居たとも居ずとも次には打破。ミレニアムの不良と町角の良い子2人、手を取り合った。


【美甘ネル@ブルーアーカイブ-Blue Archive- 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いの打破
1:良子と行動。良子の姉を探す。
2:首洗って待ってろ、海馬乃亜。
3:キヴォトス外の力に警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくともメインストーリーvol.2『時計じかけの花のパヴァーヌ編』第2章終了後。

【吉田良子@まちカドまぞく】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:無事に帰る。お姉(吉田優子)やみんながいれば勿論一緒に。
1:ネルさんと行動。お姉を一緒に探してもらう。
2:お姉……。
[備考]
※参戦時期は原作6巻終了後。


65 : 不良と良子 ◆4u4la75aI. :2023/05/09(火) 09:24:14 0NZ7dbFs0
投下終了です


66 : ◆bLcnJe0wGs :2023/05/09(火) 18:35:32 HMy8u.Pc0
投下させていただきます。


67 : 私とお人形さん達の為のステージ ◆bLcnJe0wGs :2023/05/09(火) 18:36:51 HMy8u.Pc0
 ─麦わら帽子の少年が首輪を爆破された時、彼は血を噴き出しながら倒れた。
 それからすぐ乃亜によって元通りになったけど、また同じことをされた。
 その少年の兄も同じ様にして倒れた。



◆◆◆


(殺されるの、やっぱ怖いな〜)

 会場内のとある場所。 水色の髪に青白い肌の少女が死を恐れながらもステップを踏みながら移動している。

 彼女は「ゾンビマスター」と呼ばれる少女で、その呼び名通り死者を操り、使役する力を持っている。

 操った死者を敵に襲わせる事も出来れば、それらの生命力を吸い上げたり、何度も蘇らせる事だって可能だ。

(だから、生き延びる為に他のみんなの命、いただいちゃお〜)

 だからこそ、この殺し合いに巻き込まれた彼女は自分の命を守る為、他の参加者の死体を探し、蘇らせて武器や防具、また生命力を吸収する為の駒にする為に動き出したのである。

【本名不明(ゾンビマスター)@エレメンタルストーリー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:自分の命を守る。
 その為に手駒となるお人形(死体)を探す、もし居なければ生者を殺してでもその手駒に加える。
1:まずは移動。
[備考]
※死者の蘇生には時間制限が設けられています。(度合いについては当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)
※制限により、他者の生命力を吸収する能力は連続して使用不可能、吸収可能な量も減少しております。
 1度使用してから再使用する場合は数分程のブランクが必要になります。
※各種スキル及びアビリティの制限については後続の書き手様にお任せします。


68 : ◆bLcnJe0wGs :2023/05/09(火) 18:37:09 HMy8u.Pc0
投下終了させていただきます。


69 : 鬼を継ぐ男 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/09(火) 22:09:36 RjsHj6uI0
投下します


70 : 鬼を継ぐ男 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/09(火) 22:09:53 RjsHj6uI0
「オイオイオイ…冗談じゃねぇぞ」

 無人の繁華街に佇む一つの人影。使い古したジーンズに、同じく使い古した黒いタンクトップ。相当な距離を歩いた事を雄弁に物語るスニーカーに、服や靴と比べれば、比較的新しい方になる帽子を被った赤毛の少年であった。
 全体的に埃を被って薄汚れているのは、徒歩で長い旅をした為か、或いは家亡き浮浪児か。
 顔立ちからするに、歳の頃は10代前半といった所、顔立ちにふさわしく無い、鍛え込まれ発達した筋肉と、全身に走る傷痕が印象に残る少年だった。
 少年の名は範馬刃牙。後に地下格闘技上の王者(チャンピオン)として君臨し、地上最大の格闘技トーナメントを制し、世界各国から訪日した凶悪無無惨な死刑囚たちと戦い、規格外の腕力で法の外に君臨するビスケット・オリバ、白亜紀で恐竜捕食していた原人・ピクル、墓掘り起こして回収した死体から製造されたクローンに、イタコの婆さんがベロチューで魂吹き込んで現代に復ッ活ッ!した宮本武蔵。地上最強の生物で範馬勇次郎と言った、規格外の強者達と戦う事になる少年である。
 とはいえ現時点では、未だ地下闘技場の存在も知らぬ少年である。
 
 「殺しやがったッ!人をッ!オモチャのようにッッ!!」

 刃牙の脳裏に過ぎるのは、父親である範馬勇次郎に惨殺された夜叉猿の姿。
 刃牙との死闘を超え、刃牙との間に確かな友誼を結んだ飛騨の魔猿は、勇次郎に殺され、持ち去られた番の頭骨が帰ってきた事を喜んだのも束の間、勇次郎に襲われ、殺害されて、刃牙を挑発する為に頭部を持ち去られたのだった。
 そしてその頭部は最早何処にも無い。刃牙の眼前で範馬勇次郎に蹴り砕かれたのだ。

 「嫌な事思い出させやがってッッ!」

 燃え盛る怒りが、全身の温度を高め、刃牙の周囲の空気を陽炎の様に歪ませる。
 凄まじい迄の気迫であり、気炎であった。
 飛騨の魔猿・夜叉猿を、日本最強の喧嘩師、神に選ばれし強者、花山薫を、戦場に於いて『絶対』の称号を冠せられる、超軍人・ガイアを。
 齢十三で打倒(たお)してのけたその実力、過酷な鍛錬と苛烈な死闘を経て鍛え上げられた、力強く強靭(タフ)な肉体と精神が生み出す闘気が、全身を覆っている。
地上最強の生物である父・範馬勇次郎をして、この歳で近代格闘技の一流の水準に達していると言わしめる、範馬刃牙の格闘士(グラップラー)としての実力が窺い知れる。

 「海馬乃亜ッッ!テメェは必ずこの俺がブチのめすッッッ!!!」

 地上最強の餓鬼が此処に叛逆の狼煙を上げたのだった。



【範馬刃牙@グラップラー刃牙】
[状態]:健康 激怒
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜をブチのめすッッッ!!!
[備考]参戦時期は北米武者修行中(コラネタとして有名な『ブラジルへ行け』)の辺りです


71 : 鬼を継ぐ男 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/09(火) 22:10:07 RjsHj6uI0
投下を終了します


72 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/09(火) 22:44:14 SfGoC8QU0
投下ありがとうございます!

>ここから正義の花道
そりゃ、この娘のスタンスはこうなりますよね。殺し合いに乗るヒーローなんて居ないですよ。
殺人鬼だったり、平気で嘘吐いたり主役の悪評広めたり邪悪な顔したりなんかしないんです。
強化スーツを着てるので、そこそこ戦えそうですが出力が10倍というのは強いっちゃ強いんでしょうが、少し心もとないですね。

>灰色少年と明るい少女
マヤちゃん、とうとう有力な対主催と合流できましたね。ここまで何回リセマラしたことか……感慨深くなります。
でも、まだ油断できないです。雄二もまだ幼い時期で、大分未熟ですからね。
しかし雄二の人生振り返ると波乱万丈すぎますね……。パパンが娘に養われずにちゃんと働いてればなあ。

>輝ける闇
序盤で集団対主催が出来ると、即刻解体される事が分かる良い例ですね。
名簿上にロックマン表記は本人にクッソ傍迷惑で草。

>壊れるほどに愛しても
沙都子、こいついつも百合百合してんな(歓喜)。
メリュジーヌの境遇は複雑ですね。控えめに言って害悪な性質が、ただ息を吸うように当然でむしろそうしないと生きていけないから、多分指摘して矯正することも出来ない。
板挟みになって最後に殺すのが、そのオーロラの為の救いだというのが悲劇です。でも、その諦めない意思が悲劇を変えられるかもしれないとなれば、他参加者からするとクッソ迷惑ですけど、殺し合いに乗るしかないわけですね。

>ただ、それだけが望み
やちるにしては、かなり穏便な方針ですね。果たして、剣八の元へ帰れるんでしょうか? 帰らないと剣八も大分困っちゃうんですよね。

>Gonna Fly Now
カズマの勝利条件が乃亜にげんこつして、電気あんまという生易しいものなのが、彼の善性を物語っていますね。
シルフィへの対応や、ハナの人柄を評価してるのが良い奴感出てます。これでバッドエンド後参戦というのが驚きですね。
なんかラララのメロディが流行りだしてますが、これ大丈夫なのかなと個人的に勘ぐってしまいますね。そういう怪異なんでしょうか?

>不良と良子
良子良い子ですね……健気で可愛い。
ネルちゃんもヤンクミのような正義の心を持っていて立派です。
これから、色んな奴等に笑われるかもしれません。過酷な対主催になるのかもしれませんけど頑張って欲しいです。

>私とお人形さん達の為のステージ
やべぇ奴現れて草。
これで首輪着いままの死体操って、首輪を誤作動で爆破させれば滅茶苦茶強力じゃないですか。

>鬼を継ぐ男
参ッ戦ッ
範馬刃牙参戦ッ 範馬刃牙参戦ッッ 範馬刃牙参戦ッッ


73 : ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:13:53 teC41zQg0
投下します


74 : 妖精さんとの出会い/Encounter_”GOD”. ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:15:34 teC41zQg0
「……という訳でここまでが私がこの身体になった経緯だが、わかったか?」
「えーと、オティヌスさんは凄い神様で悪い組織のリーダーだったけど、罪を自覚して罰を受けようとしたらその身体になった。って事でいいのですか?」
「凄いざっくりした纏め方だが、概ねその認識で問題ない。しかし、スケールのデカい話をしているがよく理解できたな」
「自慢じゃないですけど、私も色々な争いに巻き込まれた経験がありますので」

 その様な会話を行っているのは、海馬乃亜が宣言した殺し合いの会場の、とある民家の一室。
 シンプルな間取りの部屋の中に滞在しているのは、2人の参加者。

 一人は、明るい緑の髪をツインテールの様にまとめた少女、龍可。
 元々人見知り気味かつ病弱よりの体質だった事に加え、幼い頃にモンスターカードの精霊の声を聴こえる様になった為、人付き合いもあまり行わなかったデュエリストだった。
 しかし、不動遊星との出会いをきっかけとした多くの戦いを経て、人間的にも精神的にも成長を果たした少女である。

 もう一人の参加者の名前は、"魔神"オティヌス。
 ウェーブがかかった長い金髪に片目を眼帯で覆った、露出が多い服を着ている特徴的なビジュアルの少女。
 なにより目を引くのは、その全長。
 身長15センチメートルの手のひらサイズ、文字通り人形と大差変わらない大きさなのであるのだ。
 その様な身体をしていても、オティヌスの首には、龍可と同じ首輪が巻かれている。
 そして、その様なサイズなのでオティヌスは丸形のテーブルの上に堂々と座っている。龍可もオティヌスの目線に合うように、座って会話を行っている。

 この2人が出会って会話を行う経緯を語るのは、そう難しい事ではない。
 龍可のこの殺し合いの最初のスタート地点は、この民家の2階の部分であった。
 争いを好まず、デュエルも積極的には行わない龍可は殺し合いの拒否を選択。
 自身のランドセルを持って1階に降りると、居間にランドセルを持ち上げようとして悪戦苦闘するオティヌスを発見する。
 パッと見た時点では驚いたが、普段からモンスターカードの精霊の声を聞いたり、Dホイールと合体する存在を見たことがあったり、超常的な存在を見るのは初めてではない為、すぐに気を取り戻し話しかける。
 そうして、お互いの自己紹介を行う形で、オティヌスは何故妖精サイズの状態なのかを語った結末が、冒頭の会話に至ったのだ。

「あのー、オティヌスさん?聞きたい事があるのですが」
「なんだ、言ってみろ」
「オティヌスさんは神様みたいな存在だったのですよね?なら、この殺し合いから脱出したり首輪を外したりする方法は―――」
「私がこの身体になった時点で、かつて魔神として振るっていた力は全て失った。今の私には野良猫相手すら勝てるかどうか分からない程に矮小な存在だ。
 ……だからこの殺し合いについても、破綻させる手段も能力も、私は何も持っていない。」
「……そう、ですか」

 龍可は希望的観測だと薄々と理解しつつも、「自分は神様だった」と話したオティヌスに質問を行うが、一蹴される。
 正確には、オティヌスは文字通りの魔神としての権能を失ったわけではない。小規模な魔術ならば使えない事はなかったのだ。
 しかし、海馬乃亜はその様な状態のオティヌスにさらに制限を設け、魔術の行使も出来なくなっていたのだ。
 もっとも、魔術を使えたとしても、身長15センチの体格から放たれる魔術など、殺し合いの場に求められるモノには到底及ばず。
 子供の石投げの方が火力が高い可能性すらある現状では、不要の長物だった可能性がある。


75 : 妖精さんとの出会い/Encounter_”GOD”. ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:17:31 teC41zQg0
「そう気を落とすな、代わりと言っては何だが、私の支給されたカードを渡す。
 並々ならぬ力を感じるが、私には持つことすら精一杯故、お前が持っていた方が良いだろう」
「カード?もしかして……」

 一つの可能性が潰えた事に多少落ち込む龍可を励ますかのように言葉をかけるオティヌス。
 その彼女の言葉から放たれた「カード」という単語に反応して、龍可はテーブルの横に置かれていたオティヌスのランドセルを漁り始める。
「おい、勝手に漁るな」とテーブルに座っている元魔神の言葉を無視してランドセルの中から出てきたのは、一枚のカード。

 それは、龍可がデュエリストとして戦う際の自分の最も信頼できるエースカードにして、幼い頃から精霊世界を通じて傍にいたドラゴン。

「エンシェント・フェアリー・ドラゴン!良かった……!!」
「お前が知っているカードだったのか?しかし、ただのカードにしてはやけに神秘を放っているように感じるが……」

 自分のランドセルの中に入っていなかった為、内心不安になっていたが、早々に再開を果たせたことに喜びを隠さずにカードを握る龍可。
 一方で、ただの紙切れではないと理解しつつも、実際には何も把握していないオティヌスは、龍可の姿は年相応にオモチャを手に入れて喜ぶ子供にしか見えなかった。

 オティヌスの言葉に我を取り戻し、龍可は事情を説明する。
 精霊世界。赤き竜。シグナーの痣。デュエリストとカード。自分が住むネオ童実野シティについて。
 全てを説明するとかなりの時間を要すると思い、ダークシグナ―との戦いまでをかいつまんで話す。
 神様なのにデュエルの事を何も知らない事に不思議に思いつつも、その部分も説明を行う。
 龍可が話を終えると、オティヌスは考え込むように手を顎にあててブツブツと喋り始める。

「……それほどまでに規模と次元を要する存在を、私が知らずに関わるとは……、しかし、この身体になった経緯からして故に全知ではないが……
 それに、争いを鎮める複数の竜。もしや上条当麻の龍となにか関係が……」
「あ、あの?オティヌスさん?」
「あ、ああ、すまない。少し考え事をしていた」

 龍可の呼びかけにハッと我に返り、考え事を止めるオティヌス。


76 : 妖精さんとの出会い/Encounter_”GOD”. ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:19:23 teC41zQg0
「それで、これからはどうしますか?私は人がいそうな所に行こうと思っています。もしかしたら、兄の龍亞もいるかもしれないので」
「私は……、そうだな。お前と同行するとしよう。この身体では他の場所に移動するのにも一苦労するだろうからな」
「ありがとうございます」

 オティヌスの返答に、一旦の感謝を返す龍可。
 身なりこそ人形と変わらないサイズであるが、他者がいる事には喜ばしい。
 そして、龍可が考える事は、生まれた時から一緒にいる双子の兄・龍亞。
 自分がこうして殺し合いの場にいる以上、兄も巻き込まれている可能性も高い。
 何かと騒がしい兄の事だろうから、もしかしたら一緒にいる子供に迷惑をかけているかもしれない。
 もしいるのなら、出来るだけ早くに合流したい。そう思考する龍可。

「それでは、世話になるぞ」
「あッ、キャ!ど、どこに……!」
「フン。一緒に行動するとなるのなら、ここか頭の上に乗るしかないだろう。それともお前は、私をバッグの中に入れて移動しようと考えていたのか?」
「そういう訳ではないですけど、ちょっと気になるかなぁって」

 オティヌスはテーブルからジャンプして、慣れた動作で龍可の左肩に乗る。
 龍可はいきなりの事に慌ててしまうが、ある意味妖精さんみたいなものだろうと思えば慣れたもの。
 すぐに平常心を取り戻し、龍可は左肩に乗っているオティヌスに話しかける。

「それじゃあ外に出ましょうか。ところで、オティヌスさんのバッグはどうしましょうか」
「私はこの身体では流石に持つことは出来ん。荷物を全てお前のバッグの中に移し替えても問題あるまい。同じバッグを持っても手間がかかるだけだからな」
「あー、それならそうさせていただきます」

 その会話と共に、オティヌスのランドセルの中に手を入れる龍可。
 ゴソゴソと身体が揺れているが、オティヌスは龍可の服の首元の襟をつかみ、落ちないようにする。

「オティヌスさん」
「何だ」
「一緒に頑張って生き抜いていきましょうね」
「…………………………………………そうだな」
「……?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 こうして、一緒に同行して、この殺し合いの地を動くことになった龍可とオティヌス。
 しかし、オティヌスは話していない事がいくつかある。
 彼女が語ったのは、自らの姿の成り立ちのみで、魔術や"魔神"についての力や、第3次世界や魔術結社「グレムリン」といった彼女の世界情勢は殆ど語っていない。
 何より、彼女は同行すると決めただけで、この殺し合いに対するスタンスは一切少女には打ち明けていない。

 そもそも、"魔神"オティヌスは最終的に「自分が救われて生きる事」を良しとせず、悩みに悩み、死ぬ事を選んだ身。
 今の手のひらサイズの妖精さながらの状態で生きているのは、他の"魔神"の介入があったから故に生きながらえている姿なのである。
 本人はこの姿を「特殊な刑罰の一種」と納得しているが、彼女が生きたかの世界とこの地は理(コトワリ)が違う未知の場所。

 さらに、"魔神"とは人間とは在り方も価値観も一般常識の物差しでは測れない存在。
 彼女はかつて、世界を創り変える行為を、たった一人の人間(ヒーロー)を追い詰める為に数千億回以上も行った事がある。
 ましてや、彼女はかの北欧神話に名を連ねる主神「オーディン」その"神"物とイコール同一とされているのである。


77 : 妖精さんとの出会い/Encounter_”GOD”. ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:21:12 teC41zQg0
 果たして、オティヌスは今何を思い生き、何を考えて龍可と一緒にいるのか。

 それは、まさに神のみぞ知る事。


【龍可@遊戯王5D's】
[状態]:健康
[装備]:エンシェント・フェアリー・ドラゴン@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:会場からの脱出。首輪を外す。
1:龍亞がいるのなら、探して合流する
2:殺し合いはしたくない

[備考]
※参戦時期は、少なくともWRGP決勝戦以降からの参戦


【オティヌス@新約 とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:?????
1:龍可と同行する

[備考]
※参戦時期は、身長15cmになって総ての力を失った後。(新約12巻以降)
※制限により、魔術の行使は完全に出来ません。
※龍可から、5D's世界の情報(赤き竜やシグナー等)を聞きました。


【エンシェント・フェアリー・ドラゴン@遊戯王5D's】
オティヌスに支給された。
正確には、ドラゴン本体ではなく実体化して戦わせる事が出来るカード。一度使用すると12時間使用不可。
シンクロ・効果モンスター。細かい効果は、OCGのwiki等を参照すべし。
龍可のエースカードだが、アニメ劇中で召喚された回数は他のシグナーの竜と比べて少なく、龍可から召喚されたのは一度のみ。
その為、ファンからは「他力本願竜」の通称をつけられた。


78 : ◆TVO4XqNPDM :2023/05/10(水) 01:22:21 teC41zQg0
投下を終了します


79 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:00:40 WAvEsjcM0
投下します


80 : Trample on “Schatten!!” ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:02:23 WAim3sr.0
前原圭一。
口先の魔術師にして、赤い炎と呼ばれる男。
幾度となく惨劇に巻き込まれ、引き起こし――その末に運命を変えた成長型の英雄(ヒーロー)。

キリト。黒の剣士と呼ばれ、やがて事件を解決することでゲーム内に閉じ込められた人々を救う英雄。

そんな彼らが、刃を交わしている。

「お前、強いな。これが部活だったら、きっとすごく楽しかったんだろうけど……残念だぜ」

部活。
それは前原圭一を構成する大切な要素の一つだ。
彼は雛見沢を救った英雄だが、たった一人では何も出来ない。部活メンバーが居たからこそ、なんとか運命に抗えたのだ。

「……ああ。そういうお前もな。……サチが、みんなが死んでなければ――願いが叶うなんて餌がなければ。俺たちは手を取り合えたのかもしれない」

金属音を鳴り響かせ、二人の剣が刃鳴散らす。
本来の実力ならばキリトの圧勝で終わっていたのだろうが、圭一に支給された剣、緋々色金がこの状況を実現している。
情熱を燃やすほど強くなるというその性質は、圭一と非常に相性が良い。
まだ誰が巻き込まれてるかなんてわからないし、首輪の解除方法もわからない。

自分達は乃亜に対抗する手段が何もないとわかっているのに――諦めない。

絶対的に不利な状況でも。
どうしようもなく可能性が低くても。
それでも心の火を燃やし、抗うのが前原圭一という男である。
それに今の圭一には、部活メンバーじゃないが守るべき存在がいる。


81 : Trample on “Schatten!!” ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:03:28 WAim3sr.0

「圭一さん、がんばってください……!」

水色髪の少女が声援を送る。
香風智乃――それが彼女の名前であり、圭一が守るべき存在だ。

「おう!俺は絶対に――負けねぇ!」

自分が死ねばチノも間違いなく殺されてしまうから。
そんな惨劇、起こしてたまるか。それに圭一はようやく惨劇に打ち勝ち、ハッピーエンドを手にしたのだ。誰もが幸せな世界へ運命を変えたのだ。

――もっとも北条沙都子と古手梨花に関してはその後に色々あるのだが、それはまた別の話。

その後もしばらく、両者の剣がぶつかり合う。
チノにはそれを見守ることしか出来なかった。何故なら彼女は普通の日常を過ごしていただけの少女で、圭一のような精神的強さもない。

「がっ……!」

遂に圭一の肉体が袈裟に斬られ、血が流れ落ちる。
幸いにも傷は浅い。無論、圭一の闘志は燃え尽きない。
だがその姿はチノにとってあまりにも衝撃的で。このままだと圭一が死んでしまいそうで――。

「け、圭一さん……!」
「へっ、ちょっとしくじっちまったな。でもまだまだだぜ。これくらいで倒れる前原圭一じゃねえ!」

圭一は痛みに堪えて、それでもなお闘志を燃え上がらせる。
そして逆にキリトは迷っていた。サチを蘇生させてやりたいが、だからといってこんなデスゲームに優勝して――幾多もの屍を積み上げることが、本当に正しいのだろうか?

『えっと……えっとね、私が言いたいのは、もし私が死んでも、キリトは頑張って生きてね、ってことです』

――サチの言葉が脳裏に蘇る。
果たして彼女はこんなデスゲームの末に生き返って、喜ぶのだろうか?

――キリトと圭一がここまで互角にやれているのは、キリトの心に迷いがあることも大きい。
相手は背教者ニコラスのようなモンスターじゃない。自分と同じ人間なのだ。

クラインのように心底お人好しそうな少年と。サチ以上に無力で、弱そうな少女。
彼らを殺害した上で優勝したとして――サチはどんな気分で毎日を過ごすことになるのだろうか?

「どうした?剣の腕が、さっきより鈍ってるぜ!」

圭一に言われて、自分が迷いで弱体化していることに気付く。

彼は本当にクラインのようなお人好しだ。何故ならこんな状態でも急所を狙わず――キリトには幾つか傷が付いたが、どれもかすり傷程度。

「本気で来いよ、キリト!お前の全力を、ぶつけてこい!!」

圭一が叫ぶ。
心の底から――まるで崖っぷちに追い詰められたキリトを救うかのように。
だろうか?


82 : Trample on “Schatten!!” ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:04:21 WAim3sr.0

『……俺の名前はキリトだ。悪いが、どうしても救いたいやつがいるから……君たちにはここでリタイアしてもらうことになる』

『はっ、やれるならやってみろよ。この前原圭一が居る限り――もう二度と惨劇を起こさせやしねぇ!』

二人の出会いは、そんなやり取りで。
チノを庇うように前に出て剣を構える圭一の姿は、キリトにとって印象的だった。

そして前原圭一は、キリトを救おうとしてる。
罪滅し編でレナと屋上で戦った時のように――互いの全力をぶつけて分かり合おうてしている。
圭一から見て、キリトという少年は根っからの悪人には思えなかった。
それはチノも同じだ。……もしもココアが殺されたら、自分もきっと何らかの迷いが生じるかもしれないから。

『――生きて、この世界の最後を見届けて、この世界が生まれた意味、私みたいな弱虫がここに来ちゃった意味、そして君と私が出会った意味を見つけて下さい。

――それだけが、私の願いです。』

サチの言葉は――間違いなく、自分を殺人者(レッド)に仕立てあげるようなものじゃなくて。
それでも自分のせいで彼女やギルドのメンバーを死なせてしまった罪悪感もあって。
サチを。みんなを助けたくて。救いたくて。
もしも願いが叶うなら――みんなを蘇生したくて。
でも――そんなことサチは望まないと、わかってるから。

「う、おおおおお!!!」

キリトは全力を圭一にぶつけた。
全力といってもヤケクソ気味に放った攻撃で、キリトのポテンシャルを最大限に発揮出来ているわけじゃない。
――ゆえにその一撃は圭一でもなんとか受け止められる。

「やるじゃねえか、キリト!」

圭一が歯を食いしばり、キリトの斬撃を受け止める。
だがキリトというプレイヤーの持ち味は、一撃の強さではなくどちらかと言えば連撃だろう。

「……お前は本当にいいやつだったよ。さよなら、圭一」

初撃が防がれることを想定していたキリトは、迷わずもう一撃を加え――――。

「……そうはさせません!この瞬間、罠カード――くず鉄のかかしを発動します!」

チノがカードを掲げると、くず鉄で出来たかかしがキリトの一撃を食い止めた。
カカシはその脆さゆえにすぐ壊れたが――この一瞬を無駄にはしない。

「ナイスだぜ、チノ!そしてキリト――いい加減に目を覚ましやがれぇぇえええ!!」

――圭一の正拳突きが、キリトを殴り飛ばした。

「この殺し合いに優勝して、復活させた誰かが喜ばないなんて、お前もわかってるんだろ?
それなのに一人で勝手に背負い込んで、復活させようだなんて――ふざけんじゃねぇ!
俺にも大切な奴らは沢山いるけどよ。そいつらはみんな、こんな惨劇の果てに生き返るなんて否定すると俺は信じてるぜ!!」

口先の魔術師。そして赤い炎――前原圭一が黒の剣士に気持ちをぶつける。
キリトは一瞬だけ虚をつかれたような表情になるが――

「……たしかにこんなデスゲームで優勝してもサチは喜ばない。そんなことはわかってる。あいつは最期、俺に生きて欲しいって伝えてきたから。でも……それでも俺はあいつらを死なせてしまった罪を償わなきゃならないんだ」


83 : Trample on “Schatten!!” ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:06:05 WAim3sr.0

罪。
その言葉は、圭一にもよくわかる。
自分も、かつて別の世界線でレナや魅音を――。

「……お前の気持ちはよくわかる。俺も大切な仲間を殺したような記憶があって……別に俺自身が殺したはずじゃないけどさ。でもあいつらは最期まで――俺を恨まなかったんだ。だからキリトが誰かのために他の誰かを殺すなら、意地でも止めてやらァ!」

別の世界(カケラ)の記憶があるからこそ。仲間の大切さ、尊さを知ってるからこそ――キリトに殺人という罪をやらせはしない。
その熱い気持ちはキリトにも伝わったのか、彼は剣をしまった。

「わかったよ、圭一。……こんなことしてもサチが喜ばないのは、薄々気付いてた。俺だって誰かの犠牲で生きるなんて、嫌だからな」
「おう。よろしくな、キリト!」

圭一が手を差し伸べると、キリトは「いや、お前たちとは行動は出来ない」とそっぽを向いた。

「俺はソロだ。……もう誰も巻き込みたくないんだよ、圭一」
「へっ、何をソロなんてカッコつけてんだよ。互いに気持ちをぶつけ合ったなら、もう俺たちは仲間だろ」

圭一の言葉を聞いて、キリトは感情を揺さぶられるが――チラりとチノの方を見る。

「お前が大丈夫でも、あの子が危険だ。……俺にはあの子を守れる自信が無い」

「私も大丈夫ですよ、キリトさん。さっきもこのカード(くず鉄のかかし)でサポートしたじゃないですか」
「それはそうだけど、でも……」

キリトの表情は暗い。
もう誰も巻き込みたくないから――。

「だーっ、もう!チノちゃん本人が大丈夫って言ってるんだからそれでいいだろ。それに俺の仲間にもこれくらいの幼女がいるんだが――意外と幼女ってすごいぞ?」
「圭一さん。私は幼女じゃないです、中学生です」

「「えっ」」

自分達と歳が近いことに驚く二人。
そんなやり取りをしてるうちに仲良くなって――結局、キリトも二人と一緒に行動することになった

――果たしてキリトは今度こそ大切なモノを守ることが出来るのだろうか?


【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:緋々色金@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜の野郎をぶっ倒して、惨劇に抗う
1:チノちゃんは守るぜ
2:キリトやチノちゃんと惨劇に抗う
3:部活メンバーが居たら早めに合流したいな
[備考]

【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:くず鉄のかかし@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生き残りたいです
1:圭一さんやキリトさんと行動しましょう
2:ココアさん達が巻き込まれてないか不安です
[備考]

【キリト@ソードアート・オンライン(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:エリュシデータ@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜を倒す。もう誰も殺させやしない
1:圭一とチノを守る
[備考]
1期の3話「赤鼻のトナカイ」終了直後からの参戦

【くず鉄のかかし@遊戯王5D's】
香風智乃に支給された。

①:相手モンスターの攻撃宣言時に、その攻撃モンスター1体を対象として発動できる。その攻撃を無効にする。発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする

今回のロワでは相手の攻撃を一度だけ無効化出来る。使っても消えないが、一度使うと一定時間使えなくなる。ターンやバトルフェイズという概念がないため『一定時間』という処置を施されたカード


84 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/10(水) 08:06:32 WAim3sr.0
投下終了です


85 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/10(水) 23:49:53 VQxHtAfc0
投下ありがとうございます。私も投下します


86 : 友【ライバル】 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/10(水) 23:52:25 VQxHtAfc0
「あのガキ……!」

うちはサスケは困惑交じりに海馬乃亜への怒りを吐き出していた。
木の葉の里にうちはイタチともう一人の忍びが現れ、それをナルトを狙って来ていたと耳にしたサスケはナルトの救助の為にイタチと再会する。
だが、圧倒的な戦力差に為す術もなく無力化され、イタチの写輪眼により家族が殺される幻覚を見せ続けられた。
その後、意識を失い気付けばこんな妙な殺し合いへと巻き込まれてしまった。

この数年間、イタチを超える為に、あの男を殺す為に鍛錬を積み続けてきた。
実戦も経験し、霧隠れの鬼人桃地再不斬とその相棒である白を始め、様々な強敵とも命のやり取りも繰り返してきた。
強さは身に着けた筈だった。あの頃の、何も出来なかった幼い無力なサスケではなくなっていた筈だった。

「オレは弱い」

以前は自分より弱かったうずまきナルトが、天才である日向ネジを打ち倒し、サスケでも手に負えなかったあの砂瀑の我愛羅を撃破し捕らわれた春野サクラを救出した。
間違いなく急激なスピードで成長している。それこそ、サスケから一気に差をつけるかもしれないほどに。

「おれが強ければ……イタチをあそこで殺せていたんだ。こんな訳の分らねえ殺し合いにも、巻き込まれやしなかった」

強くなる必要がある。いつまでもあの木の葉の里に居る訳にはいかない。

「待てよ。ナルトの奴は、どうなった……」

意識を奪われる前、確かにあの場にはイタチともう一人の大剣を持った男と、その男に牽制されていたナルトが間違いなくいた。
奴等の目的はナルトだと聞いていた。だとしたら、サスケを排除した後、あの二人に拉致された可能性もある。

「オレと一緒にこの殺し合いに呼ばれちまった可能性もあるのか……あのウスラトンカチ、毎度毎度厄介ごとに巻き込まれやがって!」

イタチは無理にしても、あの場に居たナルトも同じく誘拐されてもおかしくはない。ナルトとサスケを揃えるのなら、同じ第七班の春野サクラも巻き込まれた可能性もある。
特にサクラは優秀で成績も良い忍者だが、戦闘に関してはまだ未発展だ。この場に居るのなら、早急に合流して安否を確認する必要がある。
一旦の方針を決めたサスケはランドセルを掴み走り出した。

(まずはサクラを探すか……ナルトの奴は……早々、すぐには死なないだろ。なんならイタチに連れ去れるよりマシかもしれない……。
 ……あいつは、本当に強くなった……今のあいつとオレなら、どっちが……)

友と仲間を想いながらも、心の奥底から湧き上がる力への渇望と焦り。
正しい歴史ではそのままナルトとの決闘へと発展したが、現在は異常事態への対処に気を回しているお陰で、その焦燥感は緩和している。
だが間違いなく、その焦燥感は最も身近にあったライバルであるうずまきナルトへと、強いコンプレックスのような形で向けられ始めてもいた。


【うちはサスケ@NARUTO-少年編-】
[状態]健康、イタチへの憎しみ(極大)、急成長するナルトへの焦り(極大)、サクラが殺し合いに巻き込まれてないかの不安(極大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:イタチを殺せる強さが欲しいが……。
1.サクラ、ナルトとの合流。サクラ優先。
2.ナルトと会ったら……。
[備考]
原作17巻でイタチに幻覚を受けた直後からの参戦です。


87 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/10(水) 23:52:49 VQxHtAfc0
投下終了します。
感想は後ほど投下します。


88 : ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:35:01 bhv08INI0
投下します


89 : エピック・ファイナル? ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:35:50 bhv08INI0
 もう、訳がわからなかった。

「はぁ……っはぁ……っ!」

 突然知らない場所に連れてこられて、男の子が死んじゃって、生き返って、また死んじゃって。
 それだけでもう限界に近かったのに。

「ア゛ァ゛ーーーーッ!!!!死・死・死ねェーーーーッ!!!!」

 バットを持った女の子に、追いかけ回されて。次は私、なんて思っちゃって。怖いけど、もっと怖いことになりたくないから、脚だけは動いて。
 何回も悪い夢だって思った。だけど、砂を踏む感覚に、今までにないくらい動いてる心臓に、何もかもに、これは夢じゃないって言い聞かされて。

「もう、嫌あ……っ」

 ただ、ずっと逃げ回って。もう、助からないって思ってしまって。

「……きゃぁっ!」

 脚がもう、動かなくなった。

「おォ?終わりかいな」

 釘がいっぱいついてるバット、アレで今から、何回も、何回も殴られて。私は――
 そんなバッドエンドは嫌。
 でも、何もかもフツウな私はもう、何も出来ない。

「ほな、ザ・エンドってねエエエエーーーーッ!」

 ああ、終わりなんだ。

 …………でも、聞こえた――


「なるっ!」


 大好きな声が。

「オ゛アァ!?」

 女の子のバットと腕に紫色の茨が絡み付いている。茨の出先、目を向ける。
 ああやっぱり。私の大好きな、親友。

「アタシのなるに……何してんのよっ!」
「ヤヤちゃんっ!」

 いつも。今でも。ヤヤちゃんは私を助けてくれた、王子様だ。


◇◇◇

「(この状況は許せないけれど、なるまで巻き込まれてる以上最初に出会えたのは何よりもいいことよね)」

 笹目ヤヤ、関谷なるの幼馴染であり親友。彼女が殺し合いで最初に遭遇したものは親友が襲われているショッキングな場面。だがそんな場所に遭遇してしまえば殺し合いの場であろうと日常の中であろうとやる事は変わらない。いつも通り、なるを守る。
 幸いにも、ヤヤはこの場で力を手に入れた。『スタンドDISC』。ヤヤ達の住む世界には一切馴染みのない異能力であり、頭にDISCを差し込むなんていう説明書も到底信じられるものではなかった。だが襲われているなるの姿を見つけた瞬間、一切の迷いなくそれを差し込んだ。
 腕から伸びる紫色の茨。 名を『ハーミット・パープル』。ヤヤはその力を元の主と同じ様、友を傷つける悪を縛る正義の茨として扱った。

「こんなもん……ッ」
「駄目よっ」
「うごげがッ!?」

 片腕で引き千切ろうとした様子を見て、ヤヤは少女の全身を縛る。


90 : エピック・ファイナル? ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:37:06 bhv08INI0

「……返答次第では、対応を変えてあげるかも。どうしてなるを傷つけたの?」

 なるの為にヤヤが他人を叱る光景。幼馴染という関係故か、何度も見た光景。その中でも今までに見た事のない表情で怒るヤヤ。だがその顔を見ても恐怖なんてものはなく、ただ安心感が湧いてくるだけ。

「うるせえ゛ェ゛ーーーーッ!!きららが殺し合いすんじゃねええええッ!!!!」
「……訳わかんないけど、言い訳はそれで終わり?」

 叫ぶ少女。ヤヤはそれ見た後、心底うんざりした表情を浮かべ、

「なるを傷つけた事、絶対に許さないっ!!」
「グワーッ!?」
「飛んで行けっ!」
「ウワアアアアアアァァァァァァァ――」

 そのまま遠くへと放り投げた。
 ギャグ漫画の様な挙動で夜の闇へと消えていく少女。姿が見えなくなり、小さくどさりと聞こえたのを確認するとヤヤはなるへとかがみ込む。

「なる、大丈夫?」
「ヤヤちゃん……ヤヤちゃぁんっ!」

 抑えていたものが決壊したのか、なるの目からは涙が流れていく。

「怖かったでしょ……なる。でも、もう大丈夫」

 なるはカワイイ子、泣いている顔ももちろん。それでも、こんな形で流す涙なんて、見たくない。

「アタシがなるを守るから、ね」

 フツウの少女に降りた災難は、ひとまず去っていった。


◇◇◇


 どさり、高低差が激しい砂山。彼女は落ちる。

「イタタ……」

 口では軽くぬかしてみるが、ハンマー投げみたく投げられ地面に叩きつけられた痛みは楽々我慢することはできない。

「ざけんじゃねェ……竹の差し金がァ、きらら使ってまで私をコケにしやがって……」

 『竹』という言葉が示すモノ、それ即ち――竹書房。
 彼女は自分を殺し合いなんてものに参加させるのは竹以外想像つかなかった。
 短略的で暴虐無人。かわいらしい見た目に似合わないその言動。少女の名を、ポプ子。

「覚えてろ……地べたを這い泥水啜ってでも戻ってきてやる……」

 彼女が望むモノは、竹との一騎打ちのみ。それの邪魔になる参加者なぞいつも通りぶっ殺していけば良いはずなのだ。それなのに初戦からこのザマ。言葉ではいくら強いことを言えようが心は簡単に持ってはくれない。

「…………ピピ美ちゃんに会いたいよぉ」

 いくらクソみたいな性格をしていようと、彼女も中学2年生。
 どうすれば良いかわからない時は、愛する相方の名を呼ぶしかなかった。


【ポプ子@ポプテピピック】
[状態]:健康、全身打撲(中)
[装備]:釘バット@ポプテピピック
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:竹書房゛ゥ゛ア゛ァ゛ーーッ!!
1:主催の竹とタイマン。邪魔する奴は殺す。
2:さっきの奴らは絶対ぶち殺す。
3:ピピ美ちゃん……
[備考]
※海馬乃亜の事を竹書房の差し金と考えています。
※声帯は女性です。






ピピ美ちゃんに会いたいよぉ

ピピ美ちゃんに会いたいよぉ

ピピ美ちゃんに会いたいよぉ――――


91 : エピック・ファイナル? ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:38:13 bhv08INI0
◇◇◇




 頭脳明晰、眉目秀麗、美術や音楽だってなんだってできちゃう。そんな完璧な女の子、それが私――なんてことは全然なくて。私は容姿もフツウ、頭もフツウ、美術も体育もなんだってフツウ。そんなフツウだらけのパッとしない14歳の女の子です。
 でもヤヤちゃんは、私にないモノをいっぱい持っていて。頭脳明晰、眉目秀麗――それで、私みたいなフツウの子も守ってくれる、王子様みたいな女の子。

「立てる?結構追いかけ回されてたみたいだし、背負うわよ」
「大丈夫だよ、ありがとうっ」

 小学校で出会えて、ずっと、今も、私の手を引いてくれた。

「そうね……じゃあ、アイツが追いかけてくるかもだし、とりあえずここから離れるわよ。疲れたらいつでも言って良いからね」

 そんな優しいヤヤちゃんのことが、私は――


「ひぁっ」


 何、何が。
 頭が、あつい。

「なるっ……!?なるっ!!」

 あつい、熱い、熱い、痛い、痛い!
 頭に何かがささってる。こわい、痛い、痛い……!

「っ、どうすればっ……!なるっ、なる……!」

 あたまが、考えられない。わからない。嫌だ、怖い。何が。

「やだっ、なるっ!なる!!」

 あああ、あたまが。
 ダメ。
 ヤヤちゃん、ヤヤちゃん……

「たすけ、て……ヤヤちゃ……ぁ……」

 あ、ちがう。
 言いたいこと、そんなんじゃなくて。
 私は、わたしはヤヤちゃんが、だいすき――

 

どさり



「…………や」

 冗談、きついわよ。

「そんなわけ」

 なる、なるが。

「ない、うそ、うそって」

 なるが、死んじゃった。

「嘘!嘘っ!!やだっ!!嫌だっ!!なるっ、なるっ!?起きてっ!!起きてよっ!!!!」


92 : エピック・ファイナル? ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:38:49 bhv08INI0
◇◇◇


「私のポプちゃんに、何してんのよ、ってね」

 笹目ヤヤ達から少し離れた場所、一言呟くと。彼女は立ち去っていく。
 手にする武器はクロスボウ。暗殺等裏社会の義務も嗜む彼女にとって、暗闇の中1人を狙撃するくらいは容易い事であった。
 彼女の名はピピ美。最初から、闇の中全てを見守っていた。ポプ子の活躍、なるの哀れな姿、ヤヤがポプ子を傷つける様子。
 奇妙な力を使いポプ子を投げ飛ばした少女を、ピピ美が許すことはできなかった。ポプ子の敵はピピ美の敵、即ち世界がピピ美の敵。
 どうせ仕返しをするのであれば、その命を奪うより、彼女の愛する者から奪う方がより苦しみを味わえると企んだ。だからなるを殺した。そこに躊躇いなんてもものは一切無し。
 彼女はポプ子しか見ていない。海馬乃亜も、殺し合いも、何もかもどうでも良い。ポプ子が幸せならば、それ以外はどうでも良い。

「ハァー……会えないのは辛いわァ」

 しかし彼女の側に付いて回るとなれば効率が悪い。ポプ子はポプ子で、自分は自分でそこらの人間を殺し回った方が明らかに効率がいい。1秒でも早く、ポプ子にはこんな薄暗い場所から日常へ戻ってもらいたいから。

「怪我も治してあげたいけど、今だけは我慢しててね、ごめんね、ポプちゃん」

 ポプ子への偏愛、側から見ればドス黒い狂気。ピピ美は歩く、ポプ子の幸せを取り戻す為。



【ピピ美@ポプテピピック】
[状態]:健康
[装備]:クロスボウ&矢×11@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:ポプちゃんを日常に返してあげる。
1:皆殺し。ポプちゃんを苦しめた人間は、苦しませた後に殺す。
[備考]
※声帯は女性です。


◇◇◇


 なるはカワイイ子。メルヘンで、子供っぽくて、それなのに引っ込み思案で。
 なるは自分のことフツウとか言うけど。確かに、大きな特徴とか、尖ったモノとかは持ってないかもだけど、アタシはそんななるにずっと惹かれてたのよ。ハナもタミもマチも、みんなアンタに惹かれてるのよ。

「たすけてあげる、たすける、たすけてあげる」

 だからアタシは、アンタを守ってあげる。
 小っ恥ずかしいけど、なるが言うんだったら。アタシはアンタの王子様になるから。

「たすけてあげる、たすけてあげるから、絶対」

 今も、そうよ。絶対、なるを、助けてみせるから。

「なる、たすけてあげるから、まってて、たすけてあげる」

 ああ、昔、アンタがちっちゃい頃。こうやっておぶってあげたっけ。

「たすけて」


【関谷なる@ハナヤマタ 死亡】


【笹目ヤヤ@ハナヤマタ】
[状態]:精神的疲労(極大)、錯乱、関谷なるの死体を背負っている
[装備]:『ハーミット・パープル』のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:???
1:なるを助ける。
[備考]
※参戦時期は原作最終話後です。



【釘バット@ポプテピピック】
ポプ子に支給。
ポプ子がいつも持っている釘バット。

【『ハーミット・パープル』のスタンドDISC@ジョジョ奇妙な冒険】
笹目ヤヤに支給。
ジョセフ・ジョースターが扱うスタンド、『ハーミット・パープル』が内包されたスタンドDISC。頭に差し込むことでスタンドを発現させられる。
スタンドの能力に制限はかかっていない。


93 : ◆4u4la75aI. :2023/05/11(木) 14:39:12 bhv08INI0
投下終了です。


94 : ◆bLcnJe0wGs :2023/05/11(木) 17:42:44 2Rk9xMVk0
投下させていただきます。


95 : 狩りと遊びの半神 ◆bLcnJe0wGs :2023/05/11(木) 17:43:54 2Rk9xMVk0
「割と楽しそうだな〜」

 会場内にある大きな駅の中、長髪の少年の姿をした参加者がそう呟きながら、歩き回っている。

 彼は『アポロン』という名前で、半神(ハーフ)と呼ばれる、ギリシャ神話に登場する同名の神そのものであり、普通の人間よりも長く生き、血液を摂取する事で怪物の姿に『変幻』し、それぞれの特殊能力を扱う事が出来る様になる存在だ。

 アポロンの場合は手から水以外の物質であれば何でも切断可能な刃を放つ『アポロンカッター』で、扱い方次第では建築物をバラバラにして構造ごと作り替えることさえ可能な強力な能力だ。

 嘗て、彼は東京23区改め東京23宮を支配する『宮長』の一員であり、担当した地域は中野区改め中野宮で、街中を丸ごと改造し、他の半神達と共に遊びと称して人間狩りをしていた経緯があった。

 しかし、宮内の同じ半神達も何らかの要員でアポロンカッターの餌食になる事が多々あった為、内心では信頼されていなかった。

 やがては宮長達に反抗する勢力によって力を封じられた際も他の半神達に助けを求めながら逃げ回ったが彼らには隠れられ、誰にも助けられず、そのまま攻撃を受けて消滅し、中野宮も奪還されてしまった。

 それからの彼は乃亜によって召喚、蘇生されてこのゲームに巻き込まれた。

「ま、せっかくだし楽しませて貰おー
 あのシャッフル(地形操作)が出来なくなってのは残念だけど。」

 こうして彼は、能力を制限されつつもこの催しに乗る事にしたのである。

【アポロン@HACHI -東京23宮-】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:このゲームを楽しませてもらう。
1:獲物(他の参加者)を探す。
2:過去に自分を倒した人物(犬神八)もいるならリベンジする。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※アポロンカッターの制限について
•威力及び切れ味が本来よりも低下しております。
•シャッフル(地形操作)は不可能となっています。


96 : ◆bLcnJe0wGs :2023/05/11(木) 17:44:28 2Rk9xMVk0
投下終了させていただきます。


97 : ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:28:39 WR/Cdb3E0
投下します


98 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:29:48 WR/Cdb3E0


「アンタって本ッ当に最低のクズねっ!!」

「う、うるさい!大きな声を出すなよ!誰か来たらどうするんだ!!」


バクバク、バクバク、と。
自分の心臓が五月蠅い位鼓動を速めているのを、僕、藤木茂は感じ取っていた。
最初に言っておこう。僕は殺し合いに乗った。
殺し合いに乗って最初に出会ったのは、男女の二人組だった。
気だるそうな、僕より年上の男子と。
とても可愛い、黒髪を二つ結びにした女の子。
知ってるぞ、あれはツインテールって言うんだ。
まるでアイドルみたいにかわいいその子と、隣の男子を僕は襲った。


「ふ、ふふふ。そんな小さな体で凄んだって怖くないよ。僕にはこの『シルバースキン』と『セト神』のスタンドDISCがあるんだから…!」


今の僕は、まるで仮面ライダーになったかのような気分だった。
身に纏った白い外套は、どんな攻撃を受けてもばっちり守ってくれる。
そして極めつけが僕の影と一つになった超能力──セト神だった。
この二つの力が無ければ、二人相手に勝負を挑もうとは思わなかっただろう。
僕の立てた殺人計画はこうだ。
まず、二人に殺し合いに乗ってないフリをして近づく。
そして、何とか騙して信用してもらった所に、このセト神の力を発動する。
セト神の効き目はバッチリだった。
数秒の内に僕より年上の様だった気だるげな男子は僕より小さくなった。
これが、セト神の能力。
相手を僅かな時間で弱くて小さな子供に変えてしまう超能力。
如何にも弱そうになった所を、お腹を思い切り蹴り飛ばしてやった。
男の子はごろごろと転がって、そのまま動かなくなった。
そして、何が起きているのか分からないといった女の子を尻目にこのシルバースキンを発動して、今に至る。


「アンタがクズの卑怯者以外じゃなかったら何なのよ!
私達を不意打ちで襲うような陰気で根暗な弱虫のくせに!」


99 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:30:33 WR/Cdb3E0

「うっ!うるさぁい!!」


自分が圧倒的有利になった所で殺し合いに乗っている事を明かせば。
きっと怯えて、動けなくなる。所詮は女の子なんだから。
そう思ってまだ何がどうなっているのかつかめていない様子の女の子に話したけれど、失敗だったかもしれない。
むしろ女の子は怒って僕を睨みつけてきた。
何だよ!僕の頭脳戦に引っかかった癖に!僕より小さな子供のくせに!!
僕は、その手に持っていたボウガンを女の子に向けて撃った。
見事に外れた。


「ひ、ひひひ…き、君……逃げるつもりかい?
逃げてもいいけど、そうなれば僕は隣の子を殺すよ!
君を庇って僕に蹴られた彼を!そうなったら実質君が殺すんだよ!」

「なっ!ア…アンタ!どこまで卑怯者なの!!」


何とでも言うがいいさ。悪いのはあの海馬乃亜とかいう男の子なんだから。
僕は殺し合いに巻き込まれた哀れな被害者。
僕だって、できれば仮面ライダーや地球防衛隊に助けてもらいたいさ。
でも、僕だってガキじゃない。
仮面ライダーやヒーロー戦隊が、本当はお芝居だって事も知ってる。
僕を救えるのは僕しかいないんだ。
だから、僕がこの殺し合いで何をしようと僕は悪くない。
そう思いながら矢をつがえて、同時にセト神を発動する。


「あっ!?」


女の子の姿が、見る見るうちに変わっていく。
僕と同じくらいか、年上の見た目から、五歳ほどの見た目に。
これで勝てる。もう安心だ。
逃げたって、今の彼女じゃ僕の足の速さには敵わない。
この二人の命を握っているのは、この僕なんだ。最高にハイって奴だ!!!


100 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:31:31 WR/Cdb3E0


「ひ、ひひひひ……!ぼ、僕より小さくなっちゃたねぇ……!
いや…僕も残念なんだよ、き、君可愛いからさぁ。こんな場所でなければお近づきになりたかったなぁ。梨沙ちゃん!!」


そう言って僕は梨沙ちゃん──的場梨沙と名乗った女の子に笑いかける。
自分でも興奮しているのが分かる。
今なら何でもできる気がした。
もう僕はショッカーの戦闘員Bじゃないんだ。
乃亜から貰ったこの力で、強敵を倒していく戦士──フジキングなんだ。
僕はこの瞬間は、僕に力を与えてくれた乃亜に感謝してすらいた。


「ほんっと…!つくづくサイテーね!アンタ。どーせモテないでしょ!
っていうか、女の子に笑いかけられた事さえないんじゃないの!!
キモい笑い見せないでよ!!目が汚れるわっ!!」


そんな僕の興奮に氷水をぶっかけるような事を、理沙ちゃんは言う。
何だよ何だよ!何で僕を気分良くしないんだよ!
そうしたら、もう少し話をして、生きさせてやってもいいのに!
かっと頭に血が上って、梨沙ちゃんに向けてボウガンを向ける。
そうすれば流石に彼女もびくりと震えて、気分がよかった。
尤も、そのすぐ後に出てきた彼女のセリフは全然気持ちの良い物ではなかったけど。


「本当にパパと同じ男って生き物とは思えないわね…!この最低の卑怯者!!」

「うるさいって言ってるだろ!!君のパパがそんなに凄いなら、何で今も助けに来てくれないんだよ!!」

「そ……それは…………」


梨沙ちゃんが言葉に詰まる。
きっとこれが、彼女の弱い所だ。
古畑任三郎の様にその事を見抜いた僕は考え得る限りの言葉で彼女のパパを馬鹿にする。


101 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:32:06 WR/Cdb3E0


「ふ、ふん…!君のパパなんて所詮その程度の役立たずなんだ。
こうして僕が──君を殺すのも止められないんだから!!」


そう言って、鋭く尖ったボウガンの切っ先を梨沙ちゃんに向ける。
ボウガンなら音もならないし、返り血も浴びないで殺せる。
男の子は気絶しっぱなしだし、僕が負ける要素、依然として無し!!
目の前まで迫った死に、流石の梨沙ちゃんも青ざめる。
そうそう、こういう顔が見たかったのだ!


「ふ…ふひひひひ…僕は優しいからさ。土下座して謝れば許してあげるかもよ?」

「ア…アンタねぇ……!」

「ほら、早くしろよ!!三つ数えるうちにしないと撃っちゃうよ?
そうしたらパパにもう会えなくなるんだよ!!」


また梨沙ちゃんは怒った様な顔をするけど、もう怖くはない。
だって、彼女の弱点はもう分かっているのだから。
案の定、パパの事を引き合いに出すと青かった顔がもっと青ざめる。
最高だ。本当は、もっとこうして遊んでいたい。
でも、こうしている内に誰か来るかもしれない。
その誰かは、僕より強いかもしれない。
だから、ここはさっさと二人を殺して次に行こう。
なぁに、遊び相手はきっとまだまだいるさ。
そう思って、地面に手を付けようとする理沙ちゃんにボウガンの照準を合わせた時だった。


(あ……あれぇ……!?)


身体が、動かないのだ。
まるで金縛りにあったように。
ボウガンの引き金を絞る事すら、できない。


102 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:32:37 WR/Cdb3E0


「ふーっ、任務でもないのに人助けなんて全く面倒臭ぇが…
男が女見捨てて逃げる訳にゃ、流石にいかねーよな……」


その声は、さっき聞いた声だった。
僕が、やっつけたはずの声だった。
?だろう!?死んだふりをしてたのか!?そんなの卑怯だぞ!!
心の中でそう叫ぶ僕を尻目に、梨沙ちゃんが大声でその男子の名前を呼ぶ。


「アンタ──シカマル!!」


名前を呼ばれて。
尖った黒髪を後ろで縛ってまとめた気だるげな男子──奈良シカマルが、僕に向かってニッと笑いかける。
クソックソッ!!何だよそれ!!お前ついさっき僕にやっつけられたはずだろう!!
なのに、何でそんな余裕な顔してるんだ!


「な…何だよこれ!?体が動かない…お前の仕業か!!」

「あぁ、影真似の術つってな、これが効いてるうちはアンタは動けねーよ……」


何だよそれ!!そんな、忍術なんて……ますますずるいじゃないか!!
許せない!体は動かせないけど、僕のセト神なら何とか──!
そうやって僕はスタンドを発動しようとして……できなかった。
な…何で!!


「無駄だ。アンタの仕掛けた術はもう大体察しがついてる。
射程は変質させた影の触れた部分。効果は相手を幼児化させる……だろ?」

「な……何でそれを──」


103 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:33:22 WR/Cdb3E0

「最初に俺にそれを使われた時は分からなかったけどな…
だから気絶したふりをして、隣の女に使う場面を拝ませてもらった。
予備動作が殆どねぇから二度目でも普通なら気づかれないだろうが
…相手が悪かったな。俺も、似たような影を起点にした術を持ってたんだよ」


気絶したふりをして、僕がセト神の力を使うのを待ってただって……!?
そ、それでも…たった二回見ただけで僕の力に気づくなんて……
それだけじゃない。
その上、相手を金縛りにする術なんて……卑怯だ!!


「アンタの術は変化させた影を媒介にしてる。なら話は単純だ。
発動前に影真似の術で捕まえて、変化させない様にしちまえばいい
ま、それができる奴もそうそういねーだろうがな」


そ…それでセト神の能力が使えないのか……
シカマルって男子は、僕もまだ気づいてないセト神の弱点に気づいていた。
でも…落ち着け僕!乃亜が言ってたじゃないか。
人によってはハンデを与えるって!!
じゃあこんな相手を動けなくする能力なんてそう長く使えない筈……!!


「ふ…ふふふ。それで、僕をどうするのかなぁ?
僕にはこのシルバースキンがある。き、君には僕を傷つけられないよ!!」


そうだ。僕にはまだこのシルバースキンがある。
この防護服さえあれば、どんな攻撃だってへっちゃらさ。
焦らずに、この影真似の術とかいう忍法が切れるまで待てばいい。
そして、切れた瞬間またセト神を発動して今度こそ僕に逆らえないくらい子供にしてやるんだ!!


「あ〜…面倒くせーが、確かに大した防御服みてーだな
それにお察しの通り、あと一分もこの術は保たねぇ……だから……こうする!」


104 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:34:11 WR/Cdb3E0


シカマルがそう言った瞬間、信じられない事が起こった。
繋がっていた僕と彼奴の影が、僕に向かって伸びてきたのだ。
丁度、僕の喉元目掛けて。
な…何だよ何だよ何だよこれぇ!!


「───忍法影首縛りの術つってな。これなら物理的な防御力は関係ねぇ
さて、人間は動脈を圧迫されると、短けりゃ大体十秒足らずで失神するらしいが、アンタはどうかな?」


く……苦しい。
こいつ、僕の首を絞めて殺すつもりか!?
殺される。今気絶したら殺される。
嫌だ!死にたくない!!


「ぼ……ぼく、を…殺したら、お前も……人殺しに……」

「あぁ、覚悟の上だ。俺も忍なんでな。さて──勝負と行くか」


殺される。殺される。このままじゃ殺されてしまう。
いやだ、死にたくない。
折角力をもらったのに。こんな所で死ぬなんて嫌だ。
怖くて怖くて仕方ない。何で僕ばっかりこんな目に。
眼から涙があふれて止まらなかった。
気づけば、シルバースキンも解除されてしまっていた。


「う、うわあああああああああああ!!!!!!!」


完全に頭の中はパニックで。
夢中で後ろに向けて駆けだす。
さっきまで動けなかった筈の身体は、火事場のバカ力か、今は動かすことができた。
でも、これ以上シカマルと梨沙の二人と戦おうなんて思えなかった。
今はただただ怖かったから。
だから、シルバースキンの核鉄とボウガンをひっつかんで、慌てて逃げ出した。


「ちぐしょうッ!!僕は……僕はぁ……!!」


情けなかった。
腹立たしかった。
ヒーローが力に目覚めた最初の戦いは勝てると決まっているのに。
違う…違う違う違う!!僕は強いんだ。僕は勝てるんだ。フジキングなんだ。
今回は、ちょっと調子が悪かっただけなんだ。次はもっと慎重に。
次だ。次の相手はちゃんと殺す。
そう決意しながら、流れる涙を拭わずに、僕はシルバースキンを再展開した。


105 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:34:53 WR/Cdb3E0


【藤木茂@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康、号泣、シルバースキンを展開中
[装備]:シルバースキン@武装錬金、セト神のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×12
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る。
1:二人組から逃げる。
2:次はもっとうまくやる。
3:僕は──フジキングなんだ。
[備考]



嵐は去って、近くにあった適当な民家で人心地つく。
全く、任務失敗の傷心から立ち直った所にこれだ。嫌になるぜ。


「アンタ…凄いじゃない!パパの次位には賢いわね!!
あっ、でも絶対こっち見るんじゃないわよ!!」

「そいつはどーも……見ないから安心しろよ………」


身体の様子を確認すると、もう既に元の身体に戻り始めていた。
一時間もすれば、元の身体に戻れるだろう。
奴の術の効果が永続じゃなかったのは救いだな。
でなきゃ、まず体に合ったサイズの服を探すところから始めなきゃ行けなかった。
──さて、こっからどうするかね……
殺し合いなんて面倒臭ぇにも程があるし……優勝なんてガラじゃねぇしなぁ……
考えながら、支給されていたアスマの煙草に火をつけた。
秒でせき込む。


「ねぇちょっとアンタ!!タバコ吸ってるんじゃないでしょーね!!
やめてよ!!このあたしの純白の肺が汚れるじゃない!!」

「はいはい…直ぐにやめますよっと……」


煙草の火を消して、また考える。
と言っても、もう方針は大体決まってたがな。
忍が、後ろの女みたいな民を殺すわけにはいかねぇよな……
それに、任務でもねぇのに男が女を殺すってのも俺的には御免被る。
となりゃ、進むべき道は一つしかねぇ。


───今回の任務は失敗だったね、シカマル。だけど、みんな生きてる。

───はい……次は、もっと上手く…こなして見せます……


まぁ、見ててくれアスマ…それと親父。
この殺し合いをどうにかする展望はまだ全然湧いちゃいねーが……
それでも、やれるだけ、やってみるさ。


106 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:35:29 WR/Cdb3E0



最初は、こんな殺し合いに巻き込まれてのに、緊張感のない奴だと思ってた。
でも、シカマルはあの藤木って奴に勝って見せた。
冷静に考えて、相手の弱点を探って、最後はハッタリで。


───後一分で術が切れるなんて嘘だ。本当は後二十秒も保たなかった。
───だから、奴が臆病だったのは運がよかったよ。
───ツイてたな。アンタも、俺も。


違う。
あれは運がよかっただけじゃなくて。
シカマルって奴は、作戦を立てて、上手くそれを成功させた。偶然じゃない。
私は、何もできずに突っ立てただけだったのに。
私は、アイドルだ。駆け出しだけど、アイドルだ。
どんな時でも、アイドルでいたい。
だから人殺しなんて、したくない。
まだ死にたくない。パパと結婚したい。
他にもやりたい事はいっぱいある。
でも、そんなアイドルの私が、この死と暴力の世界で。
何ができるのかは、まだ分からなかった。


「……ま、お礼、言っとくわ。ありがと」


だから。
だから今はせめて。


「助けてくれたお礼に、私の未来の単独ライブの特等席──取っといてあげる」


アイドルでいる事は、やめないでいようと、そう思った。


「だから、生き残りましょう。お互いに」

「へーへー……面倒くせーけど。それについては賛成だ」


まったく。
子供のくせに、タバコ臭いわね。こいつ。


【奈良シカマル@NARUTO-少年編-】
[状態]健康、幼児化(あと三十分程で完全解除)
[装備]なし
[道具]基本支給品、アスマの煙草、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出する。
1.殺し合いから脱出するための策を練る。
2.梨沙については…面倒臭ぇが、見捨てるわけにもいかねーよな。
[備考]
原作26巻、任務失敗報告直後より参戦です。

【的場梨沙@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]健康、不安(小)、幼児化中(あと三十分程で完全解除)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:シカマルについていく
2:この場所でも、アイドルの的場梨沙として。
[備考]
※参戦時期は少なくとも六話以降。


107 : 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:36:16 WR/Cdb3E0


【『セト神』のスタンドDISC@ジョジョ奇妙な冒険】
藤木茂に支給。
アレッシーが扱うスタンド、『セト神』が内包されたスタンドDISC。
頭に差し込むことでスタンドを発現させられる。
DISC所有者の影と同化し、影が触れた相手を若返らせる能力を持つ。
若返る年齢は影が触れた時間と比例し、一瞬であっても2、3歳は若返り、十数秒も交わっていれば胎児にまで戻ってしまうが、今回のロワでは制限により若返りのスピードが低下し、
赤子まで若返らせることはできない。最大まで若返らせても立つことができる1〜2歳ほどである。
効果発動中は記憶、精神面も幼児退行するが、此方も制限によりその進行スピードが低下している。
一度の発動から一時間ほどで完全に効果が解除される。気絶でも解除されるのは原作通り。
また、所有者が武器を持つことでスタンドである影に武器を持たせて攻撃もできる。


【核鉄『シルバースキン』@武装錬金】
藤木茂に支給された。
防御型の武装錬金。武器はついてない。
非常に防御力が高く、生半可な攻撃では打ち破ることはできない。
原作ではABC兵器もシャットアウトし、5100度の劫火に耐え、宇宙でも活動できる。
特に一度打ち破られても破片がすぐに再生し、元に戻り防御力が回復するのが特徴。
制限があるため原作ほどではないが、高性能な防具と言えるだろう。
バラバラに展開し、裏返して相手に着せることでシルバースキン・リバースとなり、拘束服の効果を持つようになる。


【小型ボウガン@現実】
藤木茂に支給。子供でも使いやすいサイズのボウガン。
殺傷力は低いが、矢には即効性の痺れ薬が塗られていて、相手の行動力を低下させる。
ただし、痺れ薬は本当に痺れる程度。動けなくなるわけではない。効果は30分ほどで切れる。


108 : ◆jiPUB.a8CM :2023/05/12(金) 15:36:38 WR/Cdb3E0
投下終了です


109 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:13:51 yWXxIp6w0
投下ありがとうございます!

>妖精さんとの出会い/Encounter_”GOD”.
オティヌスが上条さんのドラゴンと、シグナ―龍を関連付けて考えるの好きですね。これぞクロスオーバーの醍醐味といった感じです。上条さんってドラゴン族なのか、幻龍族なんでしょうか。
敬意を払いつつ接している龍可とオティヌスのコンビが一見安定しているように見えますが、オティヌスの方針が分からないのが不穏ではありますね。


>Trample on “Schatten!!”
覚醒したSSR圭一来ましたね。キリトを説得しながら魂に語り掛ける姿は、ひぐらしをホラーから熱血部活バトルへと変貌させた罪滅ぼし編を彷彿とさせます。
それでもタイマンではキリトには及ばなかった圭一をチノちゃんのサポートによって逆転したのが、仲間との絆の大事さを認識したあとの圭一らしさがあって良かったです。
トホホ……チノちゃん可愛いのに、ちゃんとサポート役も出来るのエライエライなんだから……。

>エピック・ファイナル?
「ざけんじゃねェ……竹の差し金がァ、きらら使ってまで私をコケにしやがって……」
何いってんだこいつ。
コミカルに見せてかなり邪悪なポプテ勢に対して、ハナヤマタ勢が普通に悲惨過ぎますよ。
どちらも共通してるのは、ヤンレズ化してるってことですけど……なんか温度差で笑っちゃいますね。

>狩りと遊びの半神
このロワも段々危険人物増えてきましたね。半神とか子供相手に用意する戦力じゃなくて草。
大人でも嫌ですよこんな奴を相手すんの。

>「藤木、殺し合いに乗る」の巻
某所のダイアーさんより受け継がれし卑の意思、今ここにそれを受け継ぐ者が現れましたね。流石フジキング……フジキングってなんだよ。
装備面で劣っていた中で、ハッタリと駆け引きで藤木を撃退したシカマルは見事です。やはり天才か…大した奴だ。


『パパと結婚したい。』


うん?


110 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:14:16 yWXxIp6w0
私も投下します


111 : タナトスと魔女 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:15:46 yWXxIp6w0
「沙都子ォ!!!!」

古手梨花の行動は凄まじいほどに迅速だった。
あの海馬乃亜とかいうクソガキに殺し合いを命じられた挙句、兄弟二人を愚弄し惨殺ショーを繰り広げ、気付けばこんな妙な島へと転移させられる。
これらの一連の出来事に戸惑いつつも、彼女は怒りに燃えていた。乃亜もさることながら、あの北条沙都子に。
このカケラに流れ着く前、梨花は沙都子と殺し合いを繰り広げていた。
梨花が進学するのを食い止めようと、身勝手な理由で惨劇を再開した彼女に梨花も怒りを爆発させ、幾度となく殺し合いながら幾つものカケラを巡っていた。
それを、あの乃亜が外部から介入したのだろう。
何にせよ、話は早い。こんな意味不明なカケラ、さっさと自害し退場するだけだ。そして雛見沢に帰還し沙都子をぶっ飛ばす。
支給されたデザートイーグルを咥え、トリガーに指を掛ける。様々なバリエーションで殺された女だ。どうすれば楽で即座に死ねるか、彼女は死に方を熟知していた。

「月明りに照らされて銃を咥えるあどけない少女……なんだかとても芸術的にも、背徳的な光景にも見えるけれど、頭に風穴を開けて喋れなくなる前に答えてくれないかしら?」

白銀の長い髪を、なびかせた少女だった。
派手な髪色を彩るような白い肌と真紅の瞳も妖艶さと無垢な美しさを醸し出す。

「誰? 邪魔をしないで、こっちは忙しいのよ!」
「通りすがりのお姉ちゃんとでも言っておくわ」
「ああ、そう! アンタがお姉ちゃんなら私はお婆ちゃんよ! さようなら!!」
「だから、待ちなさいと言っているでしょう!」

呆れたように少女は梨花に飛び掛かり、銃を握る梨花の腕を拘束する。

「どうせ死ぬなら、最後に死ぬ理由を話してほしいわ」
「アンタに話す理由ある!? どうせ信じないわ」
「理由ならあるわ。気になるからよ。好奇心を満たすのは、人として当然の本能じゃない? それに私は天才なの。
 普段なら、税込み1890円のところを今日だけ出血大サービスで相談を聞いて、無料で天才の名言を授けてあげるわ」

天才なんて自分で言うか普通? そんな風に思いながら、梨花は毒気を抜かれてしまった。
梨花本人に鉛玉を撃ち込むのは良いが、一応は他人を巻き込むのは気も引ける。こんな近距離で銃を撃てば、この少女にも当たるかもしれない。
溜息を吐きながら、梨花は諦めたように腕の力を抜き銃を下ろした。

「梨花よ。古手梨花」
「私は風見一姫、よろしくね」


112 : タナトスと魔女 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:16:09 yWXxIp6w0




一姫は梨花が今まで話した人間のどれにも属さない人種だった。



「――――――――それで、沙都子と私は殺し合っていたの」

「なるほどね。百年もループしてようやく惨劇を回避したけど、今度はお友達がラスボスになってまだループを始めてしまったと?」

「……信じるの?」

「ええ、嘘ではないのでしょう? まあ半信半疑だけれど死に慣れているのなら、あんな迷いなく銃を自分に向けられるのも納得ね」


普通の人間ならば、一度死んだ人間が過去に戻りそれをやり直してきたと語っただけで怪訝な顔をし、話を真に受けないだろう。
だが一姫は梨花の話を遮ることなく、全てを語り終えるまで真摯に耳を傾け続けていた。
余程の変人で物好きなのだろうか、当の梨花が逆に引いていた。


「もういいわね? 私は沙都子と決着を着けなければいけないの……貴女はこんな殺し合いに巻き込まれて災難だけど、私は先にここから退場させてもらうわ」

「その事だけど、やめた方が良いわ」

「……何でよ。理由は話したでしょ」

「ええ、だからこれは好意で言ってあげてるの。乃亜の台詞を、思い返してごらんなさい。
 ゲームは公平に行わなければならない。圧倒的強者には、ハンデを与えると……そう言っていたでしょう?」

「だから、何よ!」

「命を掛けた殺人ゲームの中で、一人だけ死んでもやり直せる……ゲームとして、公平に欠けていると思わない? ハンデを背負わされてもおかしく程に」

一姫が注視したのは、乃亜の言動であった。
少なくとも殺し合いをゲームと比喩し、公平性を語り不死の異能者でも首輪を爆破すれば死ぬと断言していた程だ。
梨花の力も、考えようによっては不死と言って良い。
最初に殺されたルフィの特異な力といい、異能が存在しそれを認識している乃亜が何の対策も講じないとは考え難い。

「それは……でも、この力は羽入のもので……いくら乃亜でも……」

「あの乃亜という子は異常よ。こんな殺し合いを開く能力がという意味でね。いくら警戒しても損はないわ。
 それに、どうせ死に戻れるのであれば、その前に生きている間、この殺し合いの情報を蓄えて、次のループへのアドバンテージにすれば良いじゃない。
 次の雛見沢でも、乃亜が介入しないという確証はないでしょう?」

「……」

梨花は手元の銃を見た。
改めて、今頃になってから少し恐怖を覚えた。

一姫の推測は理に適っている。乃亜の力や素性、性格など梨花は知らない。故に彼が何をどう仕掛けているのか、現状は一切の予想が付かないのは事実だ。
繰り返す者を真の意味で殺す剣が存在するのも、梨花は最近知った。乃亜が同じような力を手にし、梨花に雛見沢へ死に戻れないよう細工をしていると言われたら否定しきれない。
もし、そのような状態で頭を撃ち抜けばどうなっていたか……あまり想像はしたくない。
それに死ぬにしても、現在起きているイレギュラーな事態を出来うる限り把握してから、死んだ方が有意義なのも確かだ。


113 : タナトスと魔女 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:16:39 yWXxIp6w0

「分かったわ……死ぬのはやめる……」
「賢明ね」
「でも……今度は、この首輪を外さないと」

一姫の指摘を受け、最悪の場合を想定し死ぬのは避けると方針を改めたのは良いが、そうなると今度はこの首輪をどうにかしなくてはいけない。
殺し合いを肯定した参加者の襲撃を避けるのも大事だが、この首輪の爆弾がある限り、いずれは起爆され殺されてしまう。
優勝して雛見沢へ帰還するという手段も浮かんだが、乃亜を信じる気にもなれない上に、梨花はそこまで非道ではなく、すぐに却下した。

「首輪なら、私が何とかしてみるわ。頭の中に知識が豊富にあるの、いくつか役に立つかもしれないわ。
 ……既に何人か犠牲者は出ている筈、その子達には悪いけど、その死体から首輪を回収して解析のサンプルにしましょう。
 手伝って貰えるかしら?」
「……分かったわ。人の首は、一つ落とすだけでも大変だものね」
「流石、話が早いわね。死に方の大ベテラン……プロフェッショナルといったところかしら」
「やめて」

一姫にとって、最初に出会えた人物が相応に荒事にも慣れ、人間的にも癇癪持ちだが、まだそれなりに善良な部類である梨花であった事は幸運だった。
天才が一人で世界を回そうと考えれば、必ず痛い目を見てしまう。それを一姫は知っていた。
だから、彼女は梨花の自殺を思い留めさせ、協力を取り付けるよう誘導した。

不本意な殺し合いではあるが、それを打破する為の出だしは悪くないと一姫は考える。ただの一点、一つの懸念事項を除けば。

「一つ聞いていいかしら、貴女……もし北条沙都子も居たら、どうするの? 恐らく、惨劇は彼女を殺せば止まるかもしれないけど」

梨花と沙都子の二人の関係に口を出す気はない。強いて言えば、勉強しろ、姫プ辞めろ、ちゃんと話し合え、色々突っ込みたくなったが……一姫は口にしないようにした。

だが、一線を超えた沙都子の存在までは見過ごせない。梨花が居るのならば、沙都子も同じように殺し合いに呼ばれた可能性がある。
いくら時間を遡りやり直せるとはいえ、仲間すら平気で手に掛ける有様は、既に倫理観が崩壊した危険人物だ。

「……殺さない。馬乗りにして、顔面ボコボコにぶん殴って、計算ドリルの束で殴り飛ばすわ。
 沙都子は……私の……ボクのとても大切な仲間なのですよ。にぱー」

殺し合いに居るのであれば、決して信用することは出来ない。場合によっては排除する必要もあるかもしれない。
そう考える一姫の内心とは真逆の強い決意を梨花は口にしていた。

「ちょっと、百歳超えてその話し方はキツイわね。梨花お婆ちゃん」
「みぃ?」

沙都子という少女が殺し合いに居なければ話はスムーズでいいと、あくまで利己的な理由で考えながら一姫は軽口を返した。


114 : タナトスと魔女 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:16:52 yWXxIp6w0



【古手梨花@ひぐらしのなく頃に卒】
[状態]:健康
[装備]:デザートイーグル@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生還して、沙都子と一緒に聖ルチーア学園に行く。
1:一姫と組んで、首輪のサンプルを探す。
2:沙都子が居ればボコボコにする。
[備考]
※卒14話でドラゴンボールみたいなバトルを始める前からの参戦です。
※ループ能力は制限されています。



【風見一姫@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いから抜け出し、雄二の元へ帰る。
1:梨花と組む。先ずは首輪のサンプルの確保
2:北条沙都子を強く警戒。
[備考]
※参戦時期は楽園、終了後です。
※梨花視点でのひぐらし卒までの世界観を把握しました。


115 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/12(金) 21:17:13 yWXxIp6w0
投下終了です


116 : ◆TVO4XqNPDM :2023/05/12(金) 23:45:01 1f6L1SZk0
感想とwiki収録ありがとうございます
拙作の誤字と脱字の訂正、オティヌスの参戦時期の一部修正(新約12巻以降ではなく、新約10巻・終章以降に変更)を行わせていただきました事を、ここに報告させていただきます


117 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:33:50 QxqiE/2o0
投下します


118 : ツキアカリのミチシルベ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:35:06 QxqiE/2o0
月明りに照らされる夜道。

ふらふら、ふらふらと獣耳の少女、ネコネは彷徨い歩く。

「あにさま...」

口をついて出るのは最愛の兄、オシュトルのこと。

『泣くな、ネコネ。これは仮面の者の定め...悔いはない』

そう言って、自分の頭を撫でながら消えた。
友と自分に後を託して、遺体すら残さず散ってしまった。
そしてその友は兄の意思と力を受け継ぎ、全てを背負い、全てを欺く戦いに臨んでしまった。
だというのに自分はなにもできない。
全ての事情を知り、兄が敗北するキッカケと作ってしまった張本人なのに、見守ることしかできない。
彼———ハクが、ハク自身を殺しオシュトルに成るのを支えることしかできない。
それが、みんなに慕われた彼を奪うことだとわかっているのに。
その無力さと己の罪悪感に押しつぶされそうになる日々。
そんな折に彼女はこの殺し合いに呼ばれたのだった。

「あにさま...」

『最後の一人になるまで、殺し合って貰いたい。いわゆるバトルロワイアルさ。勿論ただでとは言わない、優勝者にはどんな願いも叶えてみせる』

主催の少年の語った言葉がぐるぐると脳内を動き回る。
なんでも叶える。もしもその権利があるならば、ネコネは迷わずオシュトルの蘇生を望む。
普段ならばこんな口約束を信じたりはしないだろう。
全知全能である帝とて、死者の蘇生は成し得ていないのだから。
だが、彼は確かにそれをしてのけた。
仕込みなどなく、ネコネたちの目の前で。
少年がオシュトルを蘇らせられることに、疑う余地などなかった。

(でも、それは...)

願いを叶えられるのは最後まで勝ち抜いたただ一人だけ。
即ちそれは、他者の犠牲を伴うものになる。
もしもこれが何十人ものデコポンポを狩れというだけならさして迷いもしなかっただろう。
だが、この殺し合いに巻き込まれているのがそういった自分に所縁のある悪党だけとは限らない。
自分に縁のある仲間、または無辜の民たちも巻き込まれているかもしれない。

オシュトルは民のために粉骨砕身戦い、努めてきた漢だ。
果たしてそんな彼が、民や仲間の屍の上で蘇らせられて、その手を彼らの血で汚した妹を見て受け入れるだろうか?
いいやそんなことはない。
彼はそんなやり方で再び生を経ても悲しみ嘆くだけだろう。

しかしこの機会をすっぱり切れると問われればそうはいかない。
あの少年の言葉は、ずっとネコネにずるずると纏わりついている。

「あにさま...私は...」

もう何度目になるかわからないほどに兄の名を呼ぶ。


119 : ツキアカリのミチシルベ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:35:44 QxqiE/2o0

「そんなに兄貴に会いてえのかよ」

そんなネコネを嗤うかのように響く声。
ネコネはハッと我にかえり、即座に跳び退こうとする。
が、ガキン、と甲高い音と共に両足が拘束され身動きが取れなくなってしまう。

「そんなに会いてえならよぉ、おれがあの世でご対面させてやるよ物の怪がよぉ〜!!」

ガサガサと脇の茂みから姿を現したのは、白の僧衣に身を包んだ緑髪の少女だった。

「なっ、なんなのですか貴女は!?」
「おうよくぞ聞いた...俺は史上最強の妖魔狩人、超法師の大明海だ〜〜〜!!ヒヒッ、名前くらいは聞いたことがあるだろ?」
「知らないのです!誰なのですか!?」
「俺を知らんとはモグリか貴様...まあいい。対魔師と妖魔が出会ったんだ。ならやることは一つしかないだろうがよぉ〜!」

少女が札を翳すのと同時、ネコネの周囲から火柱が立ち昇る。

「ヒッ、熱っ!」
「この催しでの俺様の記念すべき初モノだ...どう死にたいかは択ばせてやる。焼けて死ぬのがいいか?それとも」

少女が改めて札を翳せば、火柱とは反対側から突風が吹き荒れる。

「イッ...は、肌が...」
「旋風に切り刻まれるか、或いは台風に引きちぎられるがいいか...」

三度札を翳すと、今度はネコネの頭上に氷柱が立ち昇る。

「氷漬けにして芸術品にしてやってもいいなあ!?さあどれがいい?さあ、さあ、さあああ!」

頬を蒸気させながら嗜虐的な笑みを浮かべる少女に、ネコネはギリと歯を噛み締める。

(なんなのですかこいつはいきなり!?)

出会い頭に拘束され、しかも愉し気に死に方を選ばせられて。
それだけではない。
露出の多い肌、下卑た立ち振る舞い。ネコネとしてはもう生理的に嫌悪感を抱くほかなかった。
先ほどまで沈んでいた気持ちはもう少女に粗方塗り替えられてしまっていた。

この少女が何者か。
いまはまだわからないがどう見ても無辜の民とは程遠い。

とにかく反撃しようと錫杖を握り反撃に出ようとする。

「おっ?なにかするつもりだな?させるかぶわぁ〜〜〜かめぇ!」

だが、ネコネが術を発動しようとしたその瞬間、少女がボソボソと呟き札を翳せば、途端にネコネの腕の自由が効かなくなる。


120 : ツキアカリのミチシルベ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:36:16 QxqiE/2o0

「うなぁっ!?」
「ヒヒヒッ、イイ様だなぁ化け物。これが俺様の作った秘蔵の札、三枚のお札よぉ!手足動けなくなった貴様は文字通りダルマにすぎねえわ!」
「ぐぬぬぬ...!」

手も足も出せなくなったネコネは歯噛みする。
こんな奴に一方的に嬲られるこの状況に。
それに甘んじるしかない自分の弱さに。

「おぅおぅ、可愛そうになあ。それもこれもお前が弱すぎるからこうなっちまったんだ...こんな可哀想な生き物は凌辱される前にさっさと殺しちまうのが情けだよなぁ」

弱い。
その少女の煽りがいまのネコネの胸に突き刺さる。
そう。自分が弱いからこうなっている。
兄を信じ切る強さがなかったから肝心要の時に兄の邪魔をし、廻ってその命を奪うことになった。

(そう...私は弱い...)

ネコネは弱い。
自分がいなくても世界は問題なくまわる。
ヤマトに本当に必要なのはオシュトルのような強く、人望もある義侠の漢だ。
彼やハクのように誰の変えの効かない人材だ。

(だからこそ)

だからこそだ。

(兄様とハクさんを取り戻せる可能性があるなら、こんなところで死ぬわけにはいかないのです!)

ネコネは唯一動く頭を動かし袖に顔を入れ、そこにあった葉を口で一枚抜き取る。

「むむっ?なにをするつもりかはわからねえが、抵抗するなら選ぶ権利は与えねえぞ」

少女はネコネの行為を不審に思うと、即座に火柱と氷柱、そして旋風を同時にネコネ目掛けて降り注がせる。

それらが同時にネコネを押しつぶそうとしたその瞬間だ。

彼女の身体が打ち上げられるように空を舞ったのは。

「んあ?」

少女が呆気にとられるのも束の間、ネコネの身体は何処かへと飛び去っていく。

彼女が口にしたのはルーラ草。
ぶつけられた者か、口内に摂取した者を何処かへと飛ばす不思議な薬草である。


121 : ツキアカリのミチシルベ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:37:41 QxqiE/2o0
あっという間に景色が変わり、着地した先でネコネは封じられた手足を解くために藻掻きまわる。

「ふんっぬぬぬぬ...!」

本来は肉体派ではない彼女だが、手足を使った行動が封じられている現状ではこうする他ない。
だが確かに手ごたえはあり、手足を動かそうとする度に縛っている力は弱まっていくのを感じる。

「〜〜〜〜うなあああああああ!」

最後の一押しに全力で藻掻く。
すると、パキィン、という甲高い音と共にネコネの手足の拘束は外れ晴れて自由の身となった。

「つ、疲れたのです...」

なれない運動を余儀なくされたネコネはゼーハーと激しく息を切らしながら仰向けに寝転がる。

「あにさま...」

もう何度目になるかわからないその呼びかけ。
けれどこんどはそれだけではなくて。

「..ハクさん。姉様」

今まで口では言い憚られたが、オシュトルと同程度の信頼を抱いている二人にも呼びかける。

願いを叶えるために無辜の民を犠牲にすることはしたくないと思っていた。

ならば。

もしも他の参加者が先の少女のように平然とヒトを害為せる連中だった場合どうするのか?
それでも愚直に殺し合いに反し続けるのか、それとも彼らの死と引き換えに兄を蘇らせられる権利を手に入れるか。
その答えがわかるまで、彼女は何度も兄たちの名を呼ぶだろう。
だが少なくとも、いまのネコネは優勝して取り戻す道にも心が傾き始めているのは確かだった。

【ネコネ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)、疲労(大)
[装備]錫杖@現実
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いからの脱出...?それとも優勝して兄様を...?
0:ひとまず休憩を。
1:まずは知り合いや無辜の民がいないかを探す。もしも参加者が危険人物ばかりなら...?
2:大明海に警戒
[備考]
※参戦時期はハクがオシュトルに成り替わり始めた後。


122 : ツキアカリのミチシルベ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:38:12 QxqiE/2o0


「だああ、クソッ、しくじった!」

大明海は地団太を踏み殊更に悔しさを滲ませる。
順調だった。
ロクに抵抗させる暇もなく拘束し、あとはトドメを刺すだけだったというのに。
まさか残しておいた口に足もとを掬われることになろうとは。

「まああんなのはいつでも狩れる。それよりも、だ。あの乃亜とかいうクソガキめ...」

逃した獲物への遺恨はさておき、目下彼女が苛立ちを募らせるのは乃亜に対してだった。

彼女が乃亜に苛立っているのは主に二点。
ひとつはこの殺し合いに参加させるにあたって報酬を前もって払わなかったこと。
大明海は対魔師だ。
妖魔との命がけの戦いはそれそのものが仕事であり、手段も択ばぬ殺し合いに今更忌避感は抱かない。
問題は彼が予め報酬を払わなかったことだ。
こちとら仕事で殺し合いをやっているのだ。
優勝すればなんでも叶える、とは言ったものの、結局それは仕事の依頼ではなく有象無象と一緒くたにされた泡沫の夢にすぎない。
仕事として依頼もせずに殺し合いに巻き込んだという事実を、彼女のプライドが許すはずもなかった。

二つ目は乃亜が集めた参加者だ。
セレモニーに出てきた腕の伸びる小僧、その家族と思しき小僧、獣耳の生えた妖魔の小娘...
出会ったのは子供ばかりだ。
そして支給品を入れる入れ物も明らかに子供が扱うような布袋だ。
ここから導き出される答えは一つ。

「俺をガキ扱いしやがってあのクソボケが...お前よりも何倍も長生きしておるっつーの!」

そう。大明海は見た目こそは少女のようにちんまいが、その年齢はとうに還暦を越えた熟女。
そして彼女はその未発達な肉体を気にしている。
そんな彼女をこの子供ばかり集めた殺し合いに巻き込むということは、もはや彼女個人に対しての煽りとしか思えなかった。

「しかし俺がここに呼ばれたということは...ヒヒッ、あの小僧もいる可能性はあるか」

大明海は、小僧———白念の存在を脳裏に浮かべると、ぐにゃりと口角を釣り上げた。
妖魔の巣食うまほろば山。
そこの妖魔共を狩り尽くす為に暗躍した大明海だが、しかしそれは彼に邪魔され計画は潰された。
本人はてんで弱いくせにしつこく、諦めの悪いお人よしの妖魔たらし。
妖魔と人間が共に手を取り合い平和に暮らす、だなんて軟弱な思想を抱いた彼がもしもこの殺し合いに巻き込まれていたらどう動くか———少しばかり気になった。

「まあどう動くかは予想は着くが...小僧、もしもお前がここにいたら、こんな状況でも信念を貫くことはできるのかねぇ?」

ほんのちょっぴりだけ出来たお楽しみにケラケラと笑い声を漏らし、彼女は対魔師として次なる獲物を探しに行くのだった。

【大明海@三枚のおふだ 】
[状態]疲労(小)
[装備]三枚のおふだ@三枚のおふだ、自作のお札(現地製作物)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:生きのこる。手段は択ばない。
0:とりあえず妖魔を殺し首輪なり道具なりを充実させる。
1:さっきの小娘を見つけたら狩る。
2:俺をガキ扱いした乃亜は後でボコる。
3:俺は人間の味方だぜ...ヒヒッ

[備考]
※参戦時期は少なくとも白念に一度敗れた後。

【三枚のおふだ@三枚のおふだ】
大明海が作った三枚のおふだ。それぞれ手・足・口での行為を封じることが出来る力を有している。
使用者の体力の一部を引き換えに使用できる。
発動の際には使用者が拘束する部位を口に出して指定する必要があり、またその拘束も絶対ではなく、時間経過でも消え、藻掻いているうちに解除することも出来る。
三ヵ所同時に拘束することはできず、その時点で速攻で三ヵ所全部解除されてしまう。


123 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/13(土) 00:38:36 QxqiE/2o0
投下終了です


124 : ◆IOg1FjsOH2 :2023/05/13(土) 01:36:52 9gQEq94E0
投下します


125 : 世界を照らす虹のプリズム ◆IOg1FjsOH2 :2023/05/13(土) 01:37:41 9gQEq94E0
「君は……誰?」
「お姉ちゃんは誰?」

殺し合いの宴の儀式が始まったこの舞台で
少女と少年が森の中で出会った。
名前を聞くからにはまず自分が名乗るべきだと考えた少女は先に名を名乗った。

「私は虹ヶ丘(にじがおか)ましろ。貴方のお名前は?」
「……わからない」

ましろの問いに少年は首を振った。

「お姉ちゃん教えて?僕は……誰?」
「もしかして記憶喪失?」

少年は何も覚えていなかった。
どこで暮らしていたのか。
両親は誰なのか。
自分の名前すら知らない状態で殺し合いに参加させられていた。

「ごめんね。私も貴方のこと分からないの」
「お姉ちゃん……僕、家に帰りたい」

少年はまだ小学生ぐらいの年頃である。
何もしらぬまま、一人ぼっちで取り残されたら寂しくなるに決まっている。

「分かった。じゃあ私も貴方がお家に帰れるように協力するよ!」
「いいの!?」
「うん、困っている子を放ってはおけないよ」

ソラちゃんならきっと『いまこそヒーローの出番です!』と言いながら助けるはず。
そう考えたましろは迷うことなく少年を助けようと心に決めた。

「ありがとう!ましろお姉ちゃん!」

少年の顔から笑顔が戻った。
その顔を見て安心したましろだが、すぐにまた暗い表情を浮かべた。

(でもどうしよう……。他の参加者を殺さない限りここから出られないんだよね?)

そうすると生き残ろうとする参加者との戦いがきっと起こる。
自分一人の力で本当に少年を守りきれるのか。
最近まで一般人だったましろは不安に襲われる。

(弱気になっちゃダメダメ!絶対助けて見せるんだから!)

そんな考えを振り払うようにましろは首を振る。
そして決意を新たにして前を見る。

「まずはこの森から出ようね」
「うん!」

ましろと少年は離れ離れにならないように手を繋ぎ。
森の中から出るべく歩き出すのであった。

【虹ヶ丘ましろ@ひろがるスカイ!プリキュア】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:殺し合いを止めて少年を家に帰したい。
2:森を出て協力者を探す。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。

【ソウゴ(仮)@RIDER_TIME_ジオウVSディケイド】
[状態]健康、記憶喪失
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:家に帰りたい。
1:ましろお姉ちゃんに着いていく。
2:自分が誰なのか知りたい。
[備考]
※自分の正体がオーマジオウだと気づいていません。


126 : 名無しさん :2023/05/13(土) 01:37:57 9gQEq94E0
投下終了です


127 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/13(土) 09:39:58 Q0JcJEoc0
投下します


128 : 馬鹿に刃物、おじゃる丸に…… ◆/9rcEdB1QU :2023/05/13(土) 09:41:46 Q0JcJEoc0


バトルロワイアル開始から十五分ほど。
地面にのたうち回り、さめざめと泣き喚いている一つの影があった。


「カジュマァ〜〜〜!!田ボ〜〜何処でおじゃる〜〜!!まろはここでおじゃる〜〜!!」


影の主は坂ノ上おじゃる丸。
ヘイアンチョウで、エンマ大王のシャクをいたずらで奪い、満月ロードを通って現代に着いた。
そしてカズマの家へ居候することになった五歳児である。
おじゃる丸はこの世の理不尽を訴えていた。
なぜやんごとなき雅なお子様である自分がこんな血なまぐさい催しに招かれなければいけないのか。
尺も取り上げられて、カズマも御付の田ボもいない。
これで麻呂にどうしろと言うのか。


「早く来てたも〜〜!まろが不安と寂しさで泣いているでおじゃる〜〜!!」


ごろごろ、ごろごろ。
チラッ、チラッ。


「シャク〜〜シャクも何処でおじゃる〜シャクはもうまろの物でおじゃる〜〜!!」


ゴロゴロゴロゴロ
チラッチラッ。


「…………………」


しかし、誰も現れなかった。


129 : 馬鹿に刃物、おじゃる丸に…… ◆/9rcEdB1QU :2023/05/13(土) 09:42:25 Q0JcJEoc0



「ハァ……どうやら本当に誰もいない様でおじゃるな……
仕方ないでおじゃる…麻呂がカズマや田ボを探すしかあるまい」



そう言ってごそごそとランドセルの中を漁り、ある物を取り出す。
それは、尺が無いか探した時に見つけた物だった。


「こんな物騒な物は本来やんごとなき麻呂には似合わぬが……
しかしシャクの変わりとしては背に腹は変えられないでおじゃる」


それは、一本の竹刀だった。
プリンを食べるためのスプーンと尺以上に重たい物を持たないおじゃる丸でも振るえるほどに軽量化された一本の竹刀だった。
それでいて武器としての威力の中々のもの。護身用としては頼もしい武器と言えるだろう。
それに付随する効果さえなければ。


「しかし……切っ先が触れた相手を豚に変える、か……そう言われると……
試して見たくなるの……!!」


その武器の名はこぶたのしない。
刀身に触れた者を豚に変えるという、人間の尊厳を最底辺まで貶め、屈辱を与える外道の武器である。
だが、その効果はおじゃる丸の好奇心を大いに擽った。
ぶっちゃけ、誰でもいいから豚にしてみたかった。
もし、おじゃる丸を知る者がこの竹刀の効果を知れば真っ先に思う事は一つだろう。



“間違いねぇ…この世で一番その武器を持っちゃいけないのは、おじゃる……お前だ”、と。



【坂ノ上おじゃる丸@おじゃる丸】
[状態]健康
[装備]こぶたのしない
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:カズマの家に帰りたい
1:カズマや田ボを探す。
2:シャクを誰か持ってないか探す。
3:誰でもいいから豚にしてみたいでおじゃる(子供故の好奇心)
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。


【こぶたのしない@FINAL FANTASY4】
おじゃる丸に支給された。
人間の尊厳を最底辺まで貶め、屈辱を与える外道の武器。
この竹刀で攻撃された「参加者」は、数十分〜一時間ほどの間、豚の姿になってしまう。
豚化中は、人語を話すこともままならなくなる(=魔法が使えなくなる)。
ちなみに、竹刀と名がついているが武器としての威力もなかなかのもの。


130 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/13(土) 09:42:45 Q0JcJEoc0
投下終了です


131 : ◆5IjCIYVjCc :2023/05/13(土) 11:32:33 vXD3f50k0
投下します。


132 : おとなはウソつき ◆5IjCIYVjCc :2023/05/13(土) 11:33:51 vXD3f50k0
岸辺露伴の漫画『ピンクダークの少年』が大好きだった。
単行本だって全部集めている。
だけど、岸辺露伴は裏切った。

95巻で遂に登場した「ホットサマー・マーサ」、こいつの描写が明らかにおかしい!
これまで出てきた描写からして、ホットサマー・マーサの丸は3つのはずなんだ。
3つの内の上2つは目のはずなんだ。
だから、丸が4つあるのは絶対にありえないッ!

そのことを露伴に聞きに行っても軽くあしらわれただけで相手にされなかった。
それが、許せなかった。
あいつは、漫画家失格だ!

3つあるのが完璧なんだ。
3つあるのが最も美しいんだ。

そして、3つあるものと言えば、「ジャンケン」だ。
グー、チョキ、パーの3つのシンプルな決まり手によるこの世で最も完璧な勝負。
この「ジャンケン」で、僕は岸辺露伴に勝つつもりだった。
「ジャンケン」はただの確率の問題じゃあない、勝ちたいと思う心の力だ。
「ジャンケン」で勝つということは、「心の力」で勝つことだ。
露伴を「ジャンケン」でコテンパンにやっつければ、僕は露伴に精神で勝ったことになる。
そうして僕は、岸辺露伴を乗り越えるつもりだった。



だけどそれを、あの乃亜とかいう奴がぶち壊しやがった!
殺し合いに巻き込まれたせいで、岸辺露伴の所に行けなくなった!
僕は一刻も早く露伴に勝たなくてはならないのに!

だから僕は、これからこの殺し合いを「ジャンケン」の力で乗り越える。
他の参加者達も、あの乃亜という奴も、全員「ジャンケン」で勝ってやる!
そうすれば、あの岸辺露伴にだって簡単に勝てる!

僕の「ジャンケン」ならば、きっとそこまでできると確信している。
丸4つのホットサマー・マーサなんて絶対に認めない。
漫画家なんて止めさせてやる。
そのために、この殺し合いを勝ち抜いてみせる!
待っていろ…岸辺露伴ッ!!

【大柳賢@岸辺露伴は動かない(ドラマ版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:「ジャンケン」でこの殺し合いの全てを乗り越え、岸辺露伴に勝つ
1:最初の「ジャンケン」の相手を探す。
[備考]
※参戦時期は露伴に「ジャンケン」を挑む直前辺りとします。


133 : ◆5IjCIYVjCc :2023/05/13(土) 11:34:17 vXD3f50k0
投下終了です。


134 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:02:41 6ypN7ZcM0
投下ありがとうございます
私も投下します


135 : さくらと不思議なお手々 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:03:19 6ypN7ZcM0


【石毛(チンゲ)@高校鉄拳伝タフ 死亡】



少年の名は石毛またの名をチンゲ、かつて小柄な体躯の為に虐められていたが、当時はアクションスターを目指していた宮沢熹一ことキー坊と仲良くなったことで虐められなくなったという経緯を持つ少年だった。
そんな彼は当然ながら戦う力など持ち合わせておらず、乃亜の殺戮劇を見せつけられた後、殺し合いの場に転移させられ、困惑したまま悪意ある存在に襲撃を受けてしまった。
その存在は首から下は肥満気味な男の子であったが、首から上の頭部が珍妙だった。
人の両手を付け根の部分で合わせ開いた、まるでカニパンのような造形をしており、その下部に備わった大きく裂けた口が邪さを現しているようだ。
そいつはチンゲを逃げれないよう適度に痛めつけた後、想像を絶する拷問を開始し徹底して嬲り、そのままチン毛を生きながらにして、その大きな口に放り込み捕食を始めた。

「全く、冗談じゃないわよ」

そのカニパンの化け物は女口調であった。拷問野郎、お手々野郎、ハンディ・ハンディ様とも呼ばれる異形の存在。
以前、宮本明達と交戦し敗れた蟲の王という存在から脳を分離させ、誕生した変異種の一体。
主である蟲の王が死しても尚、明達から逃亡を続けていた。その最中だ、突然乃亜と名乗る子供に殺し合いを命じられたのは。

「殺すのは良いけど、殺されるなんて勘弁よ!」

人を生きたまま食べるのは拷問野郎の趣味だ。だから、殺すのは構わないし喜んでやる。
だが乃亜の言動から推察するに、これは全参加者が公平に命を掛けなければならないデスゲーム。
もしかしたら、拷問野郎を簡単に殺せるような。あの宮本明に勝るとも劣らない強者が居るかもしれない。
しかも、現在の拷問野郎の肉体は、非常に弱い肥満体系の子供を乗っ取ったものだ。
せめて、別の参加者の体を乗っ取れればいいものの、どうにも生首だけになろうとすると首輪が起爆する仕組みになっているらしい。
更にはチンゲで試してみたが、変異種も作り出せないようだ。つまり弱体化した状態で人間とほぼ同等の条件で、殺し合えと奴は命じている。

「ひっ……」

掠れた少女の悲鳴が聞こえた。
振り返れば、茶髪で身なりのいい美少女が腰を抜かしていた。

「あら、こんな可愛い娘、珍しいじゃない……あのチンゲ野郎より楽しめそうだわ」

邪悪な笑みを浮かべ、チンゲの返り血だらけの顔を更に歪め拷問野郎はその手にある鉈に力を込めた。

(なんなの、これ……嫌だよ、小狼くん……!)

木之本桜が殺し合いが始まってから真っ先に目にしたのは、拷問野郎がチン毛を踊り食いする場面であった。
しかも、ただ捕食していたのではなく、その周りに肉片や切り落とされた指、削がれた鼻、引き抜かれた歯、様々な人間を構成する部位が散乱していた。
クロウカードを巡る一連の騒動の中心におり、非日常には慣れているさくらだが、こんな血生臭い場面に立ち会ったことは今までにはなかった。
溜まらず、悲鳴を上げてしまい。口を抑えるも、僅かに漏れ出た声が拷問野郎の耳へと届いてしまった。

「本当に可愛くて美しい娘だわ。イヒヒヒヒ、簡単には殺さないわよ……こんな上玉な娘、早々手に入らないもの……ジワジワとゆっくり苦しめて、見るも無残な肉片にしてあげる。
 ゾクゾクしちゃう……」

拷問野郎のいた雅によって占拠された日本には、吸血鬼もそして奴隷のように扱われる人間もみすぼらしいものが多かった。
文明が破壊されたことで、様々なライフラインが断たれ、吸血鬼も人間も揃って生活の水準が一気に下がったからだ。
そこへ、平穏な現代日本で文明を維持した世界から呼ばれたさくらは、拷問野郎にとっては非常に珍しく、とても無垢で奇麗な上質な獲物であったと言える。


136 : さくらと不思議なお手々 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:03:51 6ypN7ZcM0

「い、痛いわァ!!!?」

拷問野郎が鉈を振り上げ、数秒後には、さくらの柔肌に傷が付くだろうと両者ともに予想したその時、砲弾のように飛んできた岩が拷問野郎に減り込んだ。

「な、なにす―――ぶぼっ……」

更に顔面に吸い寄せられた岩を真正面から喰らい拷問野郎は吹き飛んでいった。

「大丈夫ですか!?」

「ほえ?」

さくらに駆け寄ってきたのは、さっきのカニパンみたいな化け物とは反対に非常に顔立ちの整った美少年だった。
目の下の泣きぼくろも、顔の造形美を更に引き立てているようだ。

「僕はルーデウスと言います。立てますか? えーと……」
「あ、さ……さくらです……」
「では、さくらさん。僕の後ろに……あいつはまだ倒せていません」

容姿も整っているなら、その言葉使いも非常に丁寧で礼儀正しい。物腰も穏やかで、さくらはその丁寧さに少し呆気に取られていた。

「アンタ、幼いけどいい男ね。……ついてるわ、私……こんな美少年と美少女を二人も同時に見つけられるだなんて」

拷問野郎は岩の砲弾を2発受けても尚、その身体機能には殆どの支障も来さずルーデウスとさくらを睨みつけていた。

「そりゃ、どうも」

中身は30過ぎのおっさんだけどな。そう内心で付け加え、ルーデウスは杖を振るい魔術を発動する。
拷問野郎とて、普段の相手が宮本明という例外であるせいで、敗走のしがちではあるが、本来は人を超えた捕食者である吸血鬼の更に上位に当たる存在だ。
先ほどは不意を喰らったが、今度はルーデウスの動きを見切り、適切な対処を取りあの生意気な面を歪ませてやる。そう、確固たる確信があった。

「動けないわ!?」

その時、拷問野郎の足場が底なし沼のように沈む。足首が埋まり、急に自由が取れなくなったことで拷問野郎は焦りを口にする。

ルーデウスの操る魔術、それの特異な特徴は無詠唱で発動出来ること。
彼の住む世界において無詠唱の魔術の行使は、優れた魔術師にしか許されぬ高度なスキル。
後の未来において、ルーデウスの通り名にもなる水と土の両系統を混合させた魔術、泥沼を発動し拷問野郎の動きを一時的に封じる。
そして、その隙に初撃で不意を突くのに使用した土の中級魔術、岩砲弾(ストーンキャノン)を更に威力を上げ、数発拷問野郎へと叩き込んだ。

「があああああ! 何なの、この能力は! やめて! 私は乙女なのよ!! レディファーストを知らないの!」

岩の砲弾に打ち付けられながら、拷問野郎の疑問は深まるばかりだ。
てっきり腕力で岩でもぶん投げてきたのかと考えていたが、ルーデウスを見る限り、岩を生成しそれを武器へと変えている様子だった。
更には足元に沼を作って、相手の動きを阻害するなど、これまたトリックの分からない妙な力を使ってくる。
吸血鬼や邪鬼、アマルガムならば、分からなくもないがただの人間がこんな能力を行使するなど、拷問野郎の経験の中では見たことがない。
あの化け物染みた強さを持つ宮本明も、こんな魔法染みた芸当は出来なかった。

「ん、んがああああ!!」

渾身の力で泥沼から足を引き上げ、拷問野郎はその肥満体系の肉体に見合わぬ素早さで逃走を開始した。
更に数発、岩の砲弾が背中を打ち付けるが構わず、足を動かす。

(何なのよ、聞いてないわ! 宮本明以外にも、吸血鬼にも歯向かえる人間がここには居るってコト? ふざけないで頂戴!)

少し、ルーデウスの様子を見たが、深追いをすることはなく、さくらの介抱を選んだ様子だ。
息を荒げながら、拷問野郎はこの場を立ち去って行った。


137 : さくらと不思議なお手々 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:04:24 6ypN7ZcM0





「……そうですか、気付いたらこの殺し合いに巻き込まれてしまったと?」
「はい……ルーデウスさんと同じです」

(この娘……俺が転生する前の日本から来たのか?)

ルーデウス・グレイラットは目の前の異常事態に、既に頭がパンクしそうなほど困惑していた。
殺し合いもそうだが、参加者や乃亜の服装、それに殺し合いの会場にある建物に、自分に支給されているランドセル。
どれを取っても、ルーデウスが転生前に住んでいた現代の日本の物だ。

(どういうことだ……乃亜は異世界に干渉できるのか? もしかしたら、俺が転生してることまで把握して……。
 それに、あのカニパンお手手野郎……日本もだが、ルーデウスとして転生した後の世界でも、あんな生き物は見たことがないぞ)

もしも、自分の正体が把握されていると思うと、あまりいい気分もしない。
更に言えば拷問野郎に対しても、戦闘では優位に立ち冷静に対処してみせたが、内心はかなり動揺もしていた。
魔族や獣族にも見えない。どちらかといえば魔物に近いが、だが魔物でもないように見えた。
ただ分かるのは、ひたすらに邪悪であったという事だけだ。
ルーデウスが深追い出来なかったのも、さくらの事もあったが、正体の知れない未知の存在を強く警戒していたからなのもある。

「ああ、そうだ……僕の支給品には、その星の杖とさくらカードというものはありませんでした。お役に立てず、すいません」
「いえそんな……ルーデウスさんのせいじゃありませんから」

(日本にも魔術があったなんてな……俺が知らないだけで、魔術師も隠れて活動でもしていたんだろうか……)

もっと驚いたことに、さくらは魔術師のような存在らしく、専用の杖とカードがあれば使いこなせるらしい。
確かに改めて確認すれば、魔力は非常に強そうだ。嘘を言っているようにも思えない。

「あの……ルーデウスさん、私も友達や大切な人を探してるんです。だから……一緒に……」

「奇遇ですね。僕からもそれを打診しようと思っていたところです。むしろ、こちらの方こそお力を貸して貰えませんか?
 僕も……ちゃんと家に送り届けてあげないといけない娘が居るんです」

一先ずの同行者が出来た所で、改めてルーデウスは自分の方針を確認する。

(こんな可愛い女の子を、一人で放っておくわけにもいかないだろう。
 彼氏持ちというのが、リア充特有の眩しさがあって少し辛いが……俺もエリスを探さないといけない。人手は多いに越した事はないしな)

優先して行う事はさくらの知り合いである李小狼や、大道寺知世といった彼女の知人とルーデウスの連れであるエリスの探索だ。
子供を集めた殺し合いであることは察していたので、両親やルイジェルド等は候補から外しても大丈夫だろうと判断した。
危ないのはやはり、今最もルーデウスの身近にいる少女であるエリスだろう。

「善は急げです。さっそく、出発しましょう……ただ向こうで、少し待っていてもらえませんか?
 彼の……首輪を回収します。僕らの首輪を外す、サンプルになるかも」

「そ、そうか……首輪も外さなきゃいけないんだ」

「すぐに済みますから」

そう言ってから、さくらを遠ざけルーデウスは目の前に広がった血の海の中に沈む、首輪に手を伸ばした。

(幸い、あのカニパン野郎が猟奇的に殺してくれたお陰で、首を落とす必要はなくなったが……あまり気分のいいものじゃないな)

この血が流れていたであろう人物に少し同情しながら首輪を回収し、水の魔術で軽く血を洗い落とした。


138 : さくらと不思議なお手々 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:05:10 6ypN7ZcM0


【ルーデウス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:傲慢なる水竜王(アクアハーティア)@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出する
1:さくらに同行してエリスを探す。(身内に中で、エリスが一番殺し合いに呼ばれた可能性が高いと推測したので)
2:首輪の解析をする。
3:カニパン野郎(ハンディ・ハンディ)を警戒。
[備考]
※アニメ版21話終了後、22話以前からの参戦です



【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない
1:ルーデウスに同行して小狼君、知世ちゃん、友達や知り合いを探す。
2:杖とさくらカードを探したい。
[備考]
※さくらカード編終了後からの参戦です。



【ハンディ・ハンディ(拷問野郎またはお手々野郎)@彼岸島 48日後…】
[状態]:左吉の体、ダメージ(小)
[装備]:レナの鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品0〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝するわよ。
1:いずれ、ルーデウスとさくらは楽しんで殺してやるわ。
2:ストレス解消にもっと人間を食べたいわね。
[備考]
※蟲の王撃破以降、左吉の肉体を奪って以降からの参戦です。
※生首状態になった場合、胴体から離れる前に首輪が起爆し死亡します。
※変異種は新たに作れないよう制限されています。
※こいつの血を摂取しても、吸血鬼にはならないよう制限されています。


139 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:05:29 6ypN7ZcM0
投下終了です


140 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 19:06:27 6ypN7ZcM0
感想はまた後ほど投下いたします


141 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/13(土) 20:03:44 6ypN7ZcM0
感想投下します

>ツキアカリのミチシルベ
ネコネを容姿だけで即殺す方向に持ってく大明海、絶対誤殺するやつじゃん! 
妖気とか感知するタイプの対魔師ではない? 一応、普通の人間の味方ではあるから、ギリ対主催って感じですかね。
ネコネは他の参加者をこの人基準で考え出すのやめよう! とはいえ、オシュトルの事もありますし、次出会った参加者次第でおかしくなっちゃうかもしれませんね。

>世界を照らす虹のプリズム
オーマジオウとは、段々インフレ進んできましたね。多分、記憶が戻っても仮面ライダーなのでマーダーにはならないのは救いでしょうか?
同行者も正義のヒロインプリキュアですし、子供達を守るために頑張って欲しいですね。

>馬鹿に刃物、おじゃる丸に……
好奇心で人を豚にするな。なんだこのクソガキ!
下手なマーダーよりキルスコア稼ぎそう。流石おじゃる様!!

>おとなはウソつき
ロリショタ界隈の厄介オタク来ましたね。確かに、好きな作品が自分の解釈と違ったりすると、怒りたくなる気持ちは分かります。
僕もジョセフが三部でダービー(兄)に負けた時は何とも言えない気持ちでした。
それはそうと、こいつ全参加者相手にジャンケンで勝とうとしてるのが最高に頭おかしくてすこ。でも、ジャンケン小僧の運命力ならばあるいは……。


142 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:44:35 Re9LV.Xs0
投下します


143 : 疾風のストライカー ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:44:54 Re9LV.Xs0


「く、来んじゃねぇ!」

少年のような少女が野を駈ける。
迫る脅威から必死に逃げようとしている。
殺し合いの舞台、アイドルたちが踊る華やかな場所ではない。
少女――第三芸能課所属アイドルである結城晴は、狂気のえみを浮かべる青年から逃げていた。

「どれだけ逃げようと無駄なこと。」

対して、追いかける青年は悠々自適に追いついてくる。
別に晴が遅いわけではない。趣味のサッカーに勤しんでいた事もあり、足腰自体は強い。
なのに、こうも簡単に追いつかれそうになっているのは、青年が鍛え上げたものの結果である。
詰まるところ、根本の基礎能力が違いすぎる。

「それに、ガキと追いかけっこで遊ぶのも飽きた。」

青年の額、存在するはずのない第三の瞼が開かれ、青年の姿が消える。

「えっ……アガッ!? ……は、離しやがれぇっ!」

晴の正面に、いつの間にか青年の姿。
呆気にとられ、首根っこを掴まれる。
それでも藻掻く当たり心も体もタフなのだろう、と青年は笑み混じりに理解する。

「な、何するつもりなんだよ……お前っ……!」
「簡単な話さ。お前は今から俺の手駒にしてやるんだ。……これが正しく機能するかも兼ねて、な。」
「……っ」

青年が取り出したのは、一本の剣だ。つまりは刃物。
初めて見るであろう本物の『凶器』を前に、思わず晴も怖気づく。

「安心しろ、殺しはしない。この剣は妖毒石という鉱石で出来ていてな。……切られた相手は持ち主に従順に従う魔物に早変わりというやつだ。」
「……まてよ、じゃあオレを」
「そうだな。お前はこの殺し合いにおける、オレの部下第一号になるというわけだ。アーハッハッハッハ!」

高らかに笑う青年の姿は悪党そのもの。
つまるところ結城晴は青年の、魔界に名を馳せる盗賊団たる邪眼師・飛影の実益と享楽に巻き込まれてしまったのだ。

「はな、せ……!」
「素直に諦めろ、何があっても、お前じゃオレに勝てねぇんだからなぁ!」
「この、このぉ!」
「幾ら泣き叫ぼうと助けなんて来ねぇさ! 諦めて魔物となり俺の下僕となるがいい!」
「やめろ、やめてくれぇ――!!」

終わる。結城晴の人生と未来が無為に終わる時が迫る。

(なんで)

走馬灯、記憶のページがリフレインしていく。
フリフリの衣装が嫌で逃げようとしたこと。
上映会を見て、やってみても良いと思ったこと。
舞台の上で、できる限り踊ったこと。
先輩アイドルに「ここまで来たまえ」と言われた事。
そしていつか、みんなで、今度は自分たちの衣装で、意志で、ステージに上る事を誓ったのを。

(なんでだよ、ちくしょう)

全てが終わる。ただの一畜生の魔物として生まれ変わり、結城晴としての存在が終わりを迎える。

(そんなの、そんなの、嫌に決まってるだろ!)

そんなの嫌だ。アイドルなんて、始まりは望んだものでは無かったとしても、あの舞台の上の煌めきを否定なんて出来ない。
もう、みんなと遭えないまま、ただの魔物されて終わるなんて、真っ平御免だ。
その心の叫びは届かない。その願いは敵わない。飛影の言う通り、このまま魔物と成り果て人生が確定させられる。



――しかし、希望せよ。
願いは届かなくとも、助けの手を差し伸べる者はいる。










「どりゃぁぁぁぁ!!!」

飛影の姿が、晴の眼の前から消失した。
掴まれた手から離れ、首を押さえながら晴は唖然と何が起こったのかわからない様子だ。
そう、一陣の風が、飛影を吹き飛ばして、自分を助けたようで。
尻餅をついたまま、動けないままでその光景を見つめるしかなく。

「……誰かしらねぇけれど子供相手にひでェ事しやがって。」

結城晴の前に、同年代頃であろう少女がいる。
だが、自分と違う所があるとすれば、まるで狐のような耳と尻尾
いわゆる、獣人……この場合は、九尾であると言うべきか。
少なくとも、自分に対して敵意がないことだけが、理解できる。

「……えと、立てるか?」
「え、あ、ああ。」

九尾の少女の言葉につられて、手を取って立ち上がった。


144 : 疾風のストライカー ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:45:10 Re9LV.Xs0


「なンつーか、お互い災難だな。」
「……ああ。」

先程の場所より過ごしばかり移動した場所にある学校施設のいち教室内に二人はいた。

「オレだって、まず空の世界だとかそういうのだとかよく分かんねぇけどさ。……流石にみりあがそっちに来てたって聞いてねぇぞ!?」

手始めの自己紹介と情報交換の中で、少なからず晴が受けたカルチャーショックは大きい。というか同業の赤城みりあが空の世界に来ていたというのは吃驚仰天である。
ていうかいつ行ってたんだとかそういう事をここには居ないであろう当人に問い詰めたいところだがそういう余裕なんてこの先無いだろう。

「でも、みりあの仲間というのならグランの仲間も同義だ。安心しろ、晴の事は元の世界に戻れるように守ってやるよ!」

そう胸をポンとしながら野性味溢れそうな笑顔を向ける。赤い眼光が晴の顔を見つめる。
獣人特有の、それとも九尾特有の匂いなのか、もしくはこれは香水の匂いなのか。ツンと鼻に響く匂いには気にも留めず、結城晴は宣言する。

「ありがと。……まあオレだってガキだしさ。こんな所で自分なんて大した事ないんだって思ってさ。」

そう、先程飛影に殺されそうになった時も、まともな抵抗すら出来ず、ヨウが間に合わなければ魔物に成り果てていた。殺し合い、死は蔓延するステージ。

「でもさ、だからさ。オレだって――諦めたくねぇんだよ。」

『ここまで来たまえ』

そう、こんな所で燻っている訳にはいかない。あの時言われた言葉通り、自分たちの意志であの煌めくステージにみんなで登るために、一人だって欠けてはならない。
まだ、何も始まってなんていない。

「……だったらさ、もし元の世界に戻って、オレたちの世界に万が一来てしまった時にでも、そのステージっての、見せてもらってもいいか?」
「ああ。どうなるかわかんねぇけど、命の恩人を無下になんてしないさ!」

そう、まだ何も始まっては居ない。
結城晴の道は、未だ終わってなんて居ない。だから、止まるわけにはいかないのだ。

【ヨウ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.殺し合いには乗らない
1.今は晴の事を守る
2.コウ兄もいるのかな……?
【備考】
殺し合いが破綻しない程度に制限されています

【結城晴@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]:健康、首に手の跡
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.あの場所にたどり着くまで、こんな所で止まってなんていられない。
1.助けてくれてありがとうな、コウ


145 : 疾風のストライカー ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:45:21 Re9LV.Xs0





「……俺様をふっ飛ばしたあのアマ、蔵馬と同じ匂いがした。」

何処からの瓦礫の上で、ぶっきらぼうに立ち上がり瓦礫を吹き飛ばすのは。
先程ヨウに吹き飛ばされた飛影その人。
姿は辛うじて確認できた、黒い毛並みだったが耳と9つの尾っぽ。
間違いなく、蔵馬と同じ九尾ということになる。

「けっ、降魔の剣があって、あのガキに構いすぎたのがダメだったか。」

そして振り返る。少なくとも降魔の剣で一つでも傷を与えれればどうにでもなった。
だが、傷を付ける前にやられたのだ、この有様だ。
それにガキを助けたであろう九尾、蔵馬と同格か、もしくはそれ以上か。

「――九尾がいるってわかった以上、もう油断はしねぇ。」

様子見は終わり。腑抜けた考えは振り切って、考え直す
降魔の剣は健在で、手駒はいつでも集めれる可能性はある。

「ははっ、見てろよ海馬乃亜! ただの人間の分際でふんぞり返ってる貴様に目にもの見せてやる! アーハッハッハッハ!」

盗賊は笑う。もう油断はしない。次にあの九尾にあった時は万全の準備を持って刈り取るか、もしくは己の手駒にするか。
小悪党ともとれる、醜悪な笑い声が荒野に響き渡った

【飛影@幽☆遊☆白書】
[状態]:健康、ヨウに対する苛立ちと危機感
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、降魔の剣@幽☆遊☆白書
[方針]
基本.生き残る為になんでも利用する。
1.降魔の剣がここでも正常に利用できるか確認。利用できるのなら仲間を集める
2.あの九尾、今度は油断しねぇ
[備考]
参戦時期は23話、蛍子を誘拐する前

【降魔の剣@幽☆遊☆白書】
飛影に支給。霊界大秘宝館で飛影が盗んだ闇の三大秘法の一つ。
妖毒石という特殊な鉱石で作られており、切った者を魔物に変化させる力を持り、使い手の意志で様々な魔物を作り出せる。
ただし完全に魔物化する前ならば、柄の中にある解毒剤を飲ませればもとに戻すことが出来る。
この殺し合いにおいては魔物化出来る上限は2名までで、3人目を魔物化した場合一人目が強制的にもとに戻ってしまう


146 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:45:31 Re9LV.Xs0
投下終了します


147 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 21:49:31 Re9LV.Xs0
自作「疾風のストライカー」の状態表に抜けがあったので追記します


【ヨウ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.殺し合いには乗らない
1.今は晴の事を守る
2.コウ兄もいるのかな……?
[備考]
※殺し合いが破綻しない程度に制限されています
※参戦時期は最低でもコウと空っぽ影法師終了後、フェイトエピソード2経験済み

【結城晴@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]:健康、首に手の跡
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.あの場所にたどり着くまで、こんな所で止まってなんていられない。
1.助けてくれてありがとうな、コウ
[備考]
参戦時期はアニメ6話以降


148 : チョキは勝利のVサイン ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:10:25 cBqeXuTU0
感想ありがとうございます!
投下します。


149 : チョキは勝利のVサイン ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:10:41 cBqeXuTU0
「やれやれ……面倒なことに巻き込まれっちゃったなぁ……」

頬をポリポリと掻く仕草をするネットナビ。
名はカットマン。
ネットマフィア【ゴスペル】所属の自立型ナビ。

「副隊長が現場から失踪なんて、降格どころじゃないよ……」

カットマンはアジーナ攻略部隊の副隊長の立場。
そんな立場でありながら任務放棄は降格ではなく処分(デリート)されてもおかしくない。

「……だけど、あの乃亜と名乗る人間の力を手に入れたら、許してもらえるかな?」

カットマンの脳裏に浮かぶは自身が属するボスの姿。
ネットナビなる自分をこうした殺し合いに組み込む技術。
その力はゴスペルに有益だ。
特に人間社会に強い憎しみを抱くボスなら、喉から手が出るはず。
それに自分が属する部隊長は雇われの傭兵。
報酬さえ手に入れれば、多少のアクシデントは目を瞑る筈。

「よーし、そうとわかれば優勝するしかないよね!」

頭のハサミをチョキンチョキンと鳴らし、手は勝利のVサイン。
カットマン、動きます。

【カットマン@ロックマンエグゼ2 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して乃亜の技術を手に入れて帰参する
1:参加者を見つけ次第、斃す
[備考]
ロックマンとバトルする前からの参戦です。


150 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:11:59 cBqeXuTU0
「……」
「……?何か考えごと?」
「ああ、こんなロリっ子をデスゲームに参加させるのは、金持ちの変態と相場が決まっているのだが、まさかショタだとは、世も末だなとおも……」
「い、一応この中で一番わたしが年上だよ!?」
「殴るわよ?」
「おいやめろ」

少年の言葉に青筋立てて手をグーにする少女と顔を真っ赤にして抗議する少女。
少年の名は城本征史郎。
少女たちの名はパンとアリス・カータレット。

☆彡 ☆彡 ☆彡


151 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:12:39 cBqeXuTU0

「それにしても、ショタに明確な定義はないとはいえ、僕は一般的にショタと呼ばれる年齢ではないのだがな」
(う〜ん。確かに同年代に比べたら僕は背が小さいうえに自分でいうのも何だが、小ぎれいな身なりを心がけてはいる。……まさかそれでか?)

変態趣向は人それぞれ。
ショタもそれぞれ。
征史郎はやれやれといった風でため息をつく。

「それを言ったら、わたしもロリじゃないから!」

征史郎に続いてアリスも声を続ける。
アリス・カータレット。
アリスは先日、高校の卒業式を終えたばかり。
一行の中で一番年上である。

「つまり、ノアは単純に年齢で選んでいるわけじゃないってこと?」
「そうだ、アリスは外見はロリだが、自己申告が正しいならロリの定義からは外れる。まぁ、ロリババアという枠もありえるが、年がそこまで離れていないから、それも低いだろう」
「正しいよ!わたしは正真正銘18歳!!高校も先日、卒業したから!!!それと征史郎くん!!!!その発言は女子全員を敵に回す発言だよ!?」
「好意を向けていた女子以外の好感度など、どうでもいいな」

両手を挙げて征史郎の身体をぽかぽか叩きながら涙目で抗議するアリス。
征史郎は涼しげにアリスのぱかぽかを受けている。

「それじゃあ、おじいちゃんもいるかもしれないってことね」

征史郎の言葉にパンは希望を見せる。
おじいちゃんがいるなら何とかなるかもしれない。
だっておじいちゃんは何度も皆を、そして地球を救ってきたのから。

パン。
この中で一番年下の少女。
だが、この中で一番腕っぷしが強いといったらパンだろう。
なぜなら、戦闘民族サイヤ人の血を受け継ぐ父と地球最強の格闘家ミスター・サタンの娘との間に生まれたウォーターなのだから。

「?、ジャムおじさんは確実にショタではない。残念ながらいないと思うが」
「だれよ!それ!」
「も〜〜〜!、失礼だよ征史郎くん。いくら、名前がパンちゃんだからって、おじいちゃんの名前がジャムなわけないよ……」
「そうよ!おじいちゃんの名前はそんな変な名前じゃないわよ!孫悟空っていうのよ!」
「なんと、キミのおじいちゃんは暴れ猿だったのか」
(道教の神がおじいちゃんとは、おそれおおいことだな)
「殴るわよ」
「おいやめろ。君のパンチはアリスと違ってしゃれにならん」
「流石にパンちゃんのパンチはね……って、この流れさっきも見たような……」

☆彡 ☆彡 ☆彡


152 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:13:40 cBqeXuTU0

「ま、でもドラゴンボールさえ手に入れることが出来れば何とかなるわよ」
「願いが叶うというボールか?」
「ええ、ドラゴンボールがあれば、死んだあの兄弟もこの悪趣味に巻き込まれたみんなを助けることはできるわ」
「なんでも叶うんだ……す、すごいね」

アリスは目をパチクリして素直に驚く。
一方、征史郎は……

(まさしく道具に罪はないの究極だな。だが、乃亜がそこらへんの対策を怠っているとは思えないが)

少なくとも、このデスゲームがなければ、自分はパンのいる世界を知ることはなかった。
死者蘇生までやってのけた乃亜の力は明らかにオーバースペック。
そんな人物がジョーカー的存在になりうるドラゴンボールの対策をしていないはずがないと推測している。

(それと、一方的なゲームにならないようにと言っていたからには、僕やアリスでも勝ち残れる武器があちらこちらに支給されているということ)

征史郎は、今回の殺人ゲームも一筋縄いかないことを予見する。
だが、一方、2度目のデスゲーム。
どうせなら楽しみたいと思う自分もいる。

「それと、安心して!超サイヤ人にはなれないけど、こうみえて私もおじいちゃんに負けないぐらい強いから、二人のことは守るわ!」
「う、うん。だけど、パンちゃんだけに戦わせられない。私も怖いけど戦うよ。だって、ここで死んだらシノや皆に会えなくなっちゃうからね」

パンの言葉にアリスも勇気を出して覚悟を決める。
再び、金色な毎日を取り戻すため。

「……」
(確かに、あの”力”なら大抵の参加者に対峙することは可能だろう)

自己紹介をした際に披露されたパンの舞空術に、大岩を砕いたパンチや蹴り。
自分のいた世界ならデコピン一つで、数多の世界記録保持者が吹き飛ばされること必須。
というより、プリズナーゲームをも一瞬で破たんさせられるだろう。
執行人が束になっても適わないし、会場も吹き飛ばせるからだ。
それとパンの話を聞く限り、舞空術は訓練すれば、一般人でも飛べるようになる技術だそうだ。

正直、うらやましいと思ってしまった。

あのとき、僕にもパンのような力があれば、一矢むくいることはできたのだろうか?


153 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:14:08 cBqeXuTU0

―――亮也ぁああああ!!

あのときほど、頭脳担当であることを悔やんでしまった。
好きな女子一人守れないなんて、情けなくて仕方がない。
そう、僕は守れなかった。
だから、好意を”向けてる女子”ではなく、”向けていた女子”
和馬にタイマンのやり方でも教わっておくべきだったか。

征史郎の脳裏に浮かぶのは、プリズナーゲームでの記憶。
亮也の行動で征史郎の頭に”全て”のピースが埋まった。
しかし、一手遅かった。
スタンガンの警棒により気絶されられ目を覚ましたら、全てが終わっていた。
亮也を含めた看守全員が黒焦げ。
プリズナーゲームは亮也のフィナーレで幕となったのだ。

そして約束通り、囚人であった征史郎に雪村、そして雄ヶ原の兄弟と七緒は日常へ返された。
しかし、語り手はいない。

語るまでもない物語だからだ。

だけど、再び語られる。

「……よろし」

パンとアリスは乃亜に立ち向かう意志と覚悟を持ち合わせている。
なら、自分が言うことは何もない。
城本征史郎は干渉しない。

それに―――

「よし、それじゃあ、僕もできることをしようではないか。まずは、このペットボトルにキミたちが日々生産しているアンモニアの原料物質を提供してくれないか? 」
「殴るわよ?」
「おいやめろ。冗談だ」
「も〜〜〜!それって、天丼だよ〜〜〜!」

―――そっちの方が楽しそうだからな

トガビトの物語が再び語られる。


154 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:14:36 cBqeXuTU0

【城本征史郎@トガビトノセンリツ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜に抵抗すると同時に楽しむ
1:パン、アリスと行動を共にする
2:首輪をどうにかするため、情報と道具を探す
[備考]
BADENDno.4からの参戦です。 からの参戦です。
パンとアリスとの情報交換から異世界の存在を理解しました。

【パン@ドラゴンボールGT 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜に抵抗する
1:征史郎、アリスと行動を共にしつつ二人を守る
2:おじいちゃん、いるのかしら?
3:ったく、セイシローはしょうがないわね。それとアリスはワタシが守らなくちゃ!
[備考]
七匹の邪悪龍編が始まる前からの参戦です。
征史郎とアリスとの情報交換から異世界の存在を理解しました。

【アリス・カータレット@映画きんいろモザイク Thank you!! 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜に抵抗する
1:征史郎、パンと行動を共にしつつ自分も闘う
2:パンちゃんに守られるだけは駄目だよね!……それと征史郎くんたら、も〜〜〜!
3:シノ……皆……
[備考]
卒業式を終え、イギリスへ留学する前からの参戦です。
征史郎とパンとの情報交換から異世界の存在を理解しました。


155 : 物語は散った後に ◆s5tC4j7VZY :2023/05/13(土) 22:14:48 cBqeXuTU0
投下終了します。


156 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 23:40:34 Re9LV.Xs0
投下します


157 : オペレーション・ネイキッド・サバイバル ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 23:40:53 Re9LV.Xs0
――転落※※日目

「……はは、ごめん一姫。私、ダメだったみたい。」

広がる荒野に立ち尽くし、乾いたものが吐き出すように周防天音はこの殺し合いの大地で一言呟く。
バス転落事故、食料を切り詰めながらのサバイバル、狂っていく同級生。
そして先生が持ってきた鹿の肉だったのは人間の肉。もはや自分と一姫以外に人間は無く、人の形をした動物だけ。

「せっかく、一姫が逃してくれたってのに。」

そう、一姫が逃してくれた。そんな彼女を見捨てるように逃げた、生きるために。
思うに、一姫は多分惨たらしい死を遂げたのかもしれない。
友達を見捨てて、逃げて、結局。別のサバイバル。殺し合いだ。

「一人だけ生き残ってしまった、私への罰なのかな?」

どうして自分だけ、どうして生き残ってしまったのか。
だから、今更殺し合いをしろと言われて、あの地獄を繰り返すような場所で。
何もやる気なんて出なかった。

「これから、どうしようかな。何もかも諦めて、殺されたほうが良いのかな。……そうすれば一姫やみんなに会えるのかな。」

そうだ、死ねばいいと。そうすれば全て楽になれるのかな、と。
苦しいこととか辛いこととか色々経験して、でも生き残った先は出口の分からない真っ暗闇。

「一姫には怒られちゃうけれど、……仕方ないよね。だって私、もう疲れ――」
「うえぇぇぇん! パパー! ママー! 何処にいるのぉ!?」

ならば全て諦めてしまおうとした最中、目に映るのは、自分よりも小さな女の子が泣きじゃくってる姿。
気に留める必要もなんてない、仮に助けたとして、それはただの自己満足ではないのか。

「……寂しいよぉ、怖いよ……。」
「―――ええと、大丈夫? 独りぼっち?」

やっぱり、見捨てられないと、自嘲気味に周防天音は思った。
今更人助けなんて、それこそ偽善。彼女を助けた所で何になるのか、目に見えている。
それでも。

「……私もね、独りぼっちなんだ。泣き止むまで、私の胸の中で泣いてもいいよ。」

それでも、やはり見捨てられなかった。
見捨ててしまった命を、理由も分からず助けるまでとは言わず、励まそうとした。
せめて、死ぬのは、この子が笑顔で生き残れることを願ってからの方が良いかなと、そう思った。
そして、少女の手を取って――――。









バ  シ  ュ  ウ











「?」

周防天音が着ていた衣服が、少女の手に触れた瞬間、跡形もなく消滅した。


158 : オペレーション・ネイキッド・サバイバル ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 23:41:09 Re9LV.Xs0
「えっ、ちょっ、あれっ、私の、私の服がぁーっ!?」

異常に気づいた瞬間、天音は混乱した。
一体何があって、何が起こったらこうなるのかわからない。
そして少女がすごく申し訳無さそうな顔で、饒舌に語り始める。

「ごめんなさいお姉さん……我が名は吸血鬼任意の対象の衣服を半径10km以内のどこかの地点へ吹き飛ばす。」
「待って!? まず吸血鬼でツッコミたいんだけれど、それ以上に突っ込みどころ多すぎるから!?」

自らを『吸血鬼任意の対象の衣服を半径10km以内のどこかの地点へ吹き飛ばす』と名乗った少女に、天音の困惑と驚愕はダム決壊状態。しかも半ば真実である以上現実逃避すら出来ない始末である。

「私は任意の対象の衣服を半径10km居ないのどこかの地点へ吹き飛ばしてしまうの。」
「なんで真面目な感じで語ってるの!? 情報が、情報がビッグウェーブで襲いかかってきてる!」
「そのせいで、能力が制御できるまでパパとママから誰にも遊ぶなって言われて…」
「可哀想だけどこればっかりはご両親に同意しかねます!!」

キレ気味に突っ込んだ。キャラ崩壊に限りなく近い状況だった。
吸血鬼と人間が共存するポンチ魔都シンヨコハマ。そこにいる吸血鬼は何かと変な能力に目覚めやすい。
主に野球拳だとか、ビキニだとか、Y談しか喋れなくなるとか、強制パジャマパーティー、乳首から電気充電するやつとか。
彼女もまたシンヨコハマの住人。つまりポンチ能力の使い手である。

「お姉さん、着替えとかある? ほら、そのランドセルは持ってなかったから私の能力範囲外みたいだし」
「そうだった! ええっと何か服……服……。」

『吸血鬼任意の対象の衣服を半径10km以内のどこかの地点へ吹き飛ばす』(長ったらしいのでこれ以降、本名である福戸橋十子もとい十子表記にします)の言葉にハッとなり、急いでランドセルから服になりそうなものを探す天音。……そして結果。

「――――――――どうして。」

黒いマイクロビキニしかなかった。それしか選択肢はなかった。
仕方ないので着た。滅茶苦茶恥ずかしくて天音の顔が真っ赤になった。
凍える風が何故か異様に気持ちよく感じた。

「……だ、大丈夫だよお姉さん。私が服の場所を教えてあげるよ。私は吹き飛ばした衣服の場所を探知することができるんだ!」
「いや、あなたのせいだよね!?」

勿論、十子にも悪意があったわけではない。単純に能力が制御出来ないがゆえの事故であり、それで彼女を攻めるのは言いがかりに等しい。

「……ああもう、この格好のままなんて恥ずかしすぎるから! その服がある場所って?」
「こっから南南東に8kmの位置だよ。」
「……意外と遠いんだけど!」

なので覚悟を決めて場所を教えてもらったが、思ったより距離がある始末。
頑張れ天音! 多分あの時サバイバルがましだと思えるトンチキに巻き込まれるかもしれないけれど、頑張れ!!!



【周防天音@グリザイアシリーズ】
[状態]:混乱(大)、マイクロビキニ@吸血鬼すぐ死ぬ一丁
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[方針]
基本.何をしたいだなんて……今の私には
1.服! 兎に角服探す! こんな恥ずかしい格好で歩き回ったら確実に変態扱いされちゃう!
2.……死ねば、楽になれるのかな。でも、この子放っておけないな……どうしてこうなったの
[備考]
※参戦時期は果実、狂った生徒から自分をかばって天音に逃してもらった後からの参戦

【吸血鬼任意の対象の衣服を半径10km以内のどこかの地点へ吹き飛ばす(福戸橋十子)@吸血鬼すぐ死ぬ】
[状態]:健康、ちょっとした罪悪感
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.早くパパとママのもとに帰りたい
1.その、ごめんなさいお姉さん
2.お姉さんの服を探す手伝い
[備考]
参戦時期は辻斬りナギリに出会う前
※吹き飛んだ周防天音の衣服の行方は後続の書き手にお任せします


【マイクロビキニ@吸血鬼すぐ死ぬ】
周防天音に支給。吸血鬼マイクロビキニに噛まれた人間が強制的に着せられるマイクロビキニ
別のこのロワにおいて洗脳能力とかそういうのは無いからただの衣類である


159 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/13(土) 23:41:21 Re9LV.Xs0
投下終了します


160 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 00:15:48 F2QHEtmo0
投下します


161 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 00:16:39 F2QHEtmo0
「このてがみを見ているとき、あたしはしんでいるとおもいます。
 これいじょう生きていても、このゲームに生きのこったとしても、これからがんばろうとはおもえなくなってしまったです。

 あたしの見たせかいは、あたしにはとてもつまらないモノにしかかんじられませんでした。
 まじめな人がバカを見て、わるいやつらがのさぼっている、いやなせかいです。
 だから、あたしがなんとかしなきゃいけないとおもって、たくさんべんきょうをしてきました。

 でも、かいばのあって子がおこなった人ごろしと、ししゃそせいを見て、あたしのこころがポキリとおれたのが、りかいしてしまいました。

 あたしがどんなにがんばっても、これからどんなにせかいをよくしようとしても、わるいやつはみがってにこわしてくるんだろうなと思ってしまったからです。

 本当なら、まきこまれちゃったみんなとがんばってなんとかするのがいちばんなんだと分かっています。
 でも、まじめにがんばる人たちがしんじゃうのをかんがえちゃうと、あたしはたえられません。

 なので、あたしがみんなより先にしぬことにしました。ワガママなあたしでごめんさない。

 ランドセルの中に入っている3つのどうぐは、このてがみを見た人にぜんぶあげます。
 どうやってつかうか分からないモノだし、なによりこれからしぬあたしにはいらないからです。

 このゲームをなんとかしようとおもっている人も、かいばのあの言うことをきいてだれかをころそうとしている人も、あたしの分もがんばって生きてください。

 さいごに、お父さんごめんなさい。お父さんみたいにがんばることは、あたしは出きませんでした。

 さようなら。


 しんじょうしあん」


162 : 遺書と自動殺人人形 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 00:18:07 F2QHEtmo0


--- 


 “金髪の少女”がその死体を見つけたのは、殺し合いの会場に転移してから20分は過ぎた頃であった。
 自分の支給品を素早く確認した“金髪の少女”は、使えそうな武器のみを手元に持ち、行動を開始して間もなく、倒れている赤みがかった髪色をした少女を見つけた。
 罠などと恐れる様子もなく近づいた“金髪の少女”は、倒れている少女の脈と瞳孔、近くに転がっている薬品を確認して、死亡、および自決したと判断した。
 薬品の容器のラベルには「呪印」だの「状態2」だの書かれており、意味は分からなかったが、死因は薬品の過剰摂取(オーバードーズ)か、劇物だった故の毒死だったかと結論づける。
 自分が飲む気は無いが、他者の毒殺には使えそうと判断し、薬品が入った容器を自分のバッグの中に入れる。

 その後死亡した彼女に配布されたランドセルの中身を確認している最中に、手紙を発見。
 『少佐』に文字を教えてもらった為、一応は読み進めて、彼女が死を選んだ理由が一旦は判明した。

「……」

 少女の死の理由と死そのものに、“金髪の少女”は特別向ける感情は、特にない。
 あえて思う事があるのならば、「一人殺す手間が省けた」という程度だろうか。

 死んだ少女のランドセルの中身を自分のランドセルに全て移した“金髪の少女”は、自身に支給された武器である黒色の斧を持ち直し、死体に刃を向ける。
 そして、“金髪の少女”は死体が動かない様に足で踏みつけ、躊躇なく首元目掛けて斧を振り下ろす。

「……」

 ざくり。ざくり。ざくり。

 “金髪の少女”は、返り血が着ていた無骨な軍服にかかっても顔色一つ変えず、淡々と作業を続ける。
 そして、首と胴体が完全に離れてようやく斧を振るのを止め、死体についていた首輪を手にする。
 首輪は血まみれになっていた為、食料と一緒に支給された水を使って、首輪と汚れた両手を洗う。
 
「……」

 “金髪の少女”にとって、「死」はあまりにも身近にあるものだった。何故なら、殆どは少女自身が作ってきたから。
 ―――自分を犯そうとして近づいた大人を殺した。
 ―――反撃してきた軍人を殺した。一人残して、みんな殺した。
 ―――『少佐』が連れ出した場所で、殺せと命じられたら殺した。

 『少佐』に命じられたら、どんな場所でも、どんな相手でも全員殺した。殺すなと言われたら殺さなかった。

「……」

 ただ、海馬乃亜の宣言を聞いても、「殺しあえ」と命じられても、進んで殺し合う気にはなれなかった。
 ―――その命令は、『少佐』の命令ではないから。
 ―――私は『少佐の武器』であって、『海馬乃亜の武器』ではないから。
 ―――『少佐』の命令なら全員殺せるが、『少佐以外』の命令なんて、聞く気はないから。


163 : 遺書と自動殺人人形 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 00:19:43 F2QHEtmo0
「……」

 それでも、“金髪の少女”は、元の世界に帰る為なら、邪魔する相手は誰であろうと殺すつもりではいた。
 それしか、『少佐』以外の相手との接し方なんて分からないから。同い年の子供と一緒にいた事なんて殆ど無いから。私の生きた場所は戦場だけだから。
 そして、“金髪の少女”が殺す相手の中には、主催者である海馬乃亜も微妙なラインで入っていた。
 もし、海馬乃亜が「最後の一人になっても少佐の元に帰さない」と言うのなら、殺す。“金髪の少女”は、そう心の中に決めていた。

「……少佐」

 両手の血を流し終えた“金髪の少女”は、ここで初めて言葉を発した。

「少佐の元に、私は帰ります」

「だから、待ってて下さい」

 そう誰に伝えるという事もなく、“金髪の少女”―――ヴァイオレットは自身の気持ちを口にした。

 海馬乃亜は、子供だけを集めたと言っていた。実際にあの場所に『少佐』の気配は感じなかったから、この殺し合いの場にいないのは分かった。
 ならば、『少佐』の元に帰るために行動を移す。時間はどれだけ掛かるか分からないが、早い方が良い。
 そう考えたヴァイオレットは首輪を自分のランドセルの中にしまい、立ち上がり歩み始める。

 バッグはどういう理屈かは分からないが、見た目に反して収納する事が出来、それでいてアイテムの重さを無視できる様だ。
 この自殺した少女に支給されたアイテムを確認したが、持ち歩くよりもこの中に入れた方が良いだろう。

 ただ、少しがっかりしたのは、『少佐』から頂いたエメラルドのブローチが無かった事くらいだ。
 『少佐』の瞳と同じ色をしたあの石がこの地にあるのかは不明だが、あるのなら取り返したい。
 そう思い、ヴァイオレットは参加者がいそうな場所へと移動を始めた。

 その場に残されたのは、死した少女と空になったランドセル。そして遺書だけになった。


【神条紫杏@パワプロクンポケットシリーズ】死亡
※神条紫杏の遺体(首と胴体が離れている)の傍には、空のランドセルと、神条紫杏の遺書が放置されています。


【ヴァイオレット@ヴァイオレット・エヴァーガーデン(原作小説版)】
[状態]:健康
[装備]:普段着の軍服、ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON
[道具]:基本支給品一式×2、ヴァイオレットのランダム支給品0〜2、神条紫杏のランダム支給品2、醒心丸@NARUTO-少年編-、神条紫杏の首輪
[思考・状況]
基本方針:少佐の元に帰還する。その為の手段は問わない
1:少佐の元に帰る為に邪魔する者は、誰だろうと殺す
2:最後の一人になっても帰れないのなら、乃亜も殺す
3:少佐から頂いたエメラルドのブローチを見つけたら取り戻す

[備考]
※参戦時期は、大陸戦争のインテンス最終戦です。その為、両手は義手ではなく素の肉体です
※エヴァーガーデン家の養子になる前なので、名簿には「ヴァイオレット」と記載されます


【醒心丸@NARUTO-少年編-】
神条紫杏に支給された
呪印の状態をレベル1からレベル2に無理やり覚醒させる事が出来る秘薬。
ただし呪印2になれば、副作用として呪印の急激な浸食の不可に耐え切れず、死亡してしまう。
本編では常人が飲んだ場合どうなるのかの説明はされていないが、今ロワでは死亡するものとする。

【ヘンゼルの手斧@BLACK LAGOON】
ヴァイオレットに支給された。
ヘンゼルが愛用していた武器で、柄が黒い。
切れ味抜群で、ロアナプラの荒くれ達の脳天を普通にカチ割れる。


164 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 00:20:39 F2QHEtmo0
投下を終了します


165 : どらぼっちゃんが征く ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:43:09 xz2hq/.c0
投下します。


166 : どらぼっちゃんが征く ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:43:21 xz2hq/.c0
「おおわるさー以上のわるいやつがいたなんてぼっくん!」

満月輝く深夜。
一人のドラキュラが乃亜の蛮行に怒っている。

ドラキュラの名はドラボ・ルー・ドラキラヤ999世。
通称、どらぼっちゃん。

年齢こそ175歳だが、人間でいうところの10歳。
十分、ショタの範囲内といったところか。

「殺し合いなんて、のるわけないだろぼっくん!」

正義感のつよいどらぼっちゃんは、乃亜に抵抗することを決めた。

「まま、ぱぱ待っててねぼっくん!」

どらぼっちゃん、動きますぼっくん。

【どらぼっちゃん@魔界プリンスどらぼっちゃん 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ノアをやっつけて、ママとパパのもとへ帰るぼっくん
1:仲間を探し、敵を斃すぼっくん
[備考]
おおわるさーを倒し、ママとパパの待つ城へ帰る途中からの参戦です。


167 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:43:54 xz2hq/.c0
―――て

―――助けて!

―――こ、助けて!!

―――おっこ、助けて!!!

☆彡 ☆彡 ☆彡


168 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:44:11 xz2hq/.c0

時は少し遡る。

「おっこ……」

べそべそ泣きながら歩く少年。
少年の名は木瀬翔太。

翔太はごくごく普通の横浜に住む少年。
ある雑誌に掲載された若女将のおっこを一目で気に入り、家族旅行で春の屋を訪れた。
念願適い、おっこに出会うことが出来た翔太は嬉しさでいっぱいだった。

しかし―――

巻き込まれたとはいえ翔太の父が起こしてしまった交通事故。
その交通事故で亡くなったのは、とある父母。
同乗していた一人娘は何とか助かったのだが、その助かった女の子こそ、おっここと関織子だった。
その事実を知った翔太の両親は、春の屋に居づらさを感じ、別の旅館へ手配して移動しようとした。

翔太は嫌がり、おっこに【ここにいていい?】と尋ねたら、おっこは快く受け入れた。
おっこが真の若女将となった瞬間であり、翔太は幸せな時間を過ごせた。

そして、無事に自宅へ帰ったそのとき、翔太は乃亜の殺し合いへ参加する羽目となった。
5歳である翔太は、正直乃亜が言っていたことの半分も理解できていない。
ただ、分かるのはこのままだとパパとママ、そしておっこの顔を二度と見れなくなるということだけ。

「ねぇ、ボク、私が助けてあげようか?」

翔太の背後に聞こえる女の子の声。
おっこではないと思いつつも、翔太にとって救いの手を差し伸べる天使に聞こえた。
翔太が振り返ると―――

「行先はバットエンドだけど―――ね💗」

到底、おっことは似ても似つかない邪悪な笑みを浮かべる少女だった。

☆彡 ☆彡 ☆彡


169 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:44:50 xz2hq/.c0

「はぁ……はぁ……はぁ……」
逃げてはいるとはいえ、5歳児の脚力。
片や少女はあの”伝説の戦士プリキュア”。
バッドエンドハッピーにとっては、無問題。
悠々自適に翔太に追いつく。

「ああ!やっぱり人が苦しむのを見るのは幸せだわ💗」

ハッピーは翔太を嬲る。
嬲る嬲る嬲る。

「あ……う……」
「じゃあ、楽しかったけど、ここで時間を費やすわけにはいかないから」

ハッピーは両手をハートの形にして、翔太へ照準を定める。
翔太をバッドエンドへ贈るアンハッピー。

―――そのとき

「させません!」

言葉と同時にスケボーに乗った少年が横入りする。
そして、翔太を抱くと走り去る。

翔太を救ったのは、円谷光彦。
帝丹小学校1年生。
そして、少年探偵団のメンバーの一人。

☆彡 ☆彡 ☆彡


170 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:45:10 xz2hq/.c0

「お……お兄ちゃんは?」
「僕の名前は円谷光彦です!それより、今は逃げますよ!」

言葉と同時にスケボーのスピードが上がる。
ただのスケボーではない。
ターボエンジン付きのそれは、車に匹敵するほどのスピードを出せる。
主電源は太陽光だが、追加されたソーラーバッテリーにより、夜間でも30分は作動することが出来る。

(コナン君ほど上手に操れはしませんが、今は撒くことができれば……っ!)

光彦の脳裏に浮かぶのは、同じく少年探偵団の一人、江戸川コナン。
同じ小学1年生のはずなのに、その大人顔負けの推理力。
あれれ〜〜とふざけた言動をすることもあるが、頼れる存在であり、恋のライバル。

「アクアタワー!」

突如、地面から噴射される水柱。
水柱はスケボーを持ちあげる。

「う、うわわわわ!!!???」

不意打ちのアクアタワーにより、バランスを崩した光彦と翔太は地面に激突する。

「おーほほほほほほッ!!!!!」

高笑いをしながら近づいてくる。

紫のアイシャドウに手のネイル。
そして、足はハイヒール。
女王様のような風貌をしたネットナビ。

名はロール。

勿論、本来のロールはそうした風体はしていない。
かつて、悪魔チップによって悪落ちした姿。
そして現在は乃亜によって悪魔化されたネットナビ。

「い、いたいよ……」
「だ……大丈夫……です。応急処置ならコ……ナン君から教わっ……てきてますので」

今のあなたは私にとって最高のレスキュー隊員よ

(灰原……さん)

「結局、バッドエンドは避けられなかったわね💗」

とってもきれいだったよ!!

(歩美……ちゃん)

ハッピーも追いついてきた。
万事休す。

「安心しなさい。ネチネチ甚振らず、一思いにあの世へ送ってあげるから」

伝えないと……僕の想いを……男として……悔いが残ります……

ツカツカとハイヒールを鳴らして二人へ近づく。
片手には日本刀を手に。

「灰原さん……歩美ちゃん……ぼ……くは」
「助けて…おっ……・こ」

―――ザン。

【木瀬翔太@若おかみは小学生(映画)  死亡】
【円谷光彦@名探偵コナン  死亡】

☆彡 ☆彡 ☆彡


171 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:46:03 xz2hq/.c0

「うーん、二人同時にバッドエンドだなんてウルトラハッピー♪ねぇ、貴方、とりあえず休戦といかない?」
「いいわよ。”一時”……ね」

翔太と光彦の死体を足蹴に女たちはわらう。
笑う。
嗤う。

【バッドエンドハッピー@スマイルプリキュア 】
[状態]:健康
[装備]:翔太の首輪
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜6(翔太の分も含めて)
[思考・状況]基本方針:優勝して世界を不幸でいっぱいしたい
1:他の参加者を探し、バットエンドを贈る
2:ロールとは一時休戦
[備考]
46話消滅した後からの参戦です。

【ロール@ロックマンエグゼ(アニメ) 】
[状態]:健康
[装備]:アクアタワー@ロックマンエグゼ、村正@名探偵コナン、
      ターボエンジン付きスケートボート@名探偵コナン、光彦の首輪
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(光彦の分も含めて)
[思考・状況]基本方針:優勝して一人気ままに生きる
1:他の参加者を探し、責め殺す
2:バッドエンドハッピーとは一時休戦
3:もしロックマンがいるのならば消去(デリート)する
[備考]
悪魔チップにより悪落ちしています。
コピーロイドに接続された状態で活動しています。
乃亜の手でプログラミングされ、元の姿には戻れません。

【アクアタワー@ ロックマンエグゼ 】
ロールに支給されたバトルチップ。
水柱を地面から出現させることができる。
「ロール様と呼びなさい!!! 」BYロール

【村正@ 名探偵コナン 】
ロールに支給された日本刀。
刃文が表裏よく揃うのが最大の特徴で切れ味抜群の日本刀。
また、徳川を祟る妖刀伝説で有名。
京都での連続殺人事件で服部平次が犯人との立ち合いで使用した。
「あんたが弁慶やったら義経は安宅の関で斬り殺されてんで 」BY諏訪

【ターボエンジン付きスケートボート@ 名探偵コナン 】
円谷光彦に支給されたスケートボート。
阿笠博士が開発した発明品の一つ。
主電源は太陽光で車並のスピードを出せるスケートボート。
ソーラーバッテリーが内蔵されており、夜間でも30分は使用可能である。
「博士からもらった、このスケボーは一味違うぜ!」BYコナン


172 : 女男男女 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 08:46:16 xz2hq/.c0
投下終了します。


173 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 10:03:54 dtTE.9YU0
投下します


174 : 家族(たえ子)のためのHands ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 10:05:22 dtTE.9YU0
「◾︎◾︎◾︎◾︎――!!」

あたし――たえない子は一匹の獣を目の前にしていた。
よくわからない不気味な仮面を付けて、まるでどこかの部族やゲームのモンスターみたいに。

そして――ここに連れてこられてから、たえ子の気配を感じない。
あたしとたえ子は……平たく言えば、二重人格。二人で一つ肉体を共有してる。
あたしとたえ子には二人でコミュニケーションを取るための空間があって――それなのに今はそれ自体が存在しない。

たえ子が消滅えた……?何の理由もなく?
……それはきっと違う。海馬乃亜の仕業だと考えるのが一番自然。

とにかくあたしは乃亜を始末しなければいけない。優勝狙いも考えたけど、あのヤクザ(一郎)のようなレベルが何人も招かれてるとしたら無理があるし……たえ子の家族が拉致られてる可能性もある。
血の繋がりのない、あの子の大切な家族が。

現に今、あたしが敵対してる化け物は――普通の人間の範疇を超えてる。身体能力だけならあたしと同種だ。

でもたったそれだけの話。
まだ輪切りには出来てないけど、腕の一本は切り取った。
悪即BANGの警察やあのバカ(一郎)と戦った時ほどの逆境でもないし、これくらいなら簡単に――。

「小野さん――助けに来たっス!」

唐突にバイクに乗った絵里奈が来て、その車体で化け物にタックル。相手が化け物だから荒事に慣れてない人種でも容赦なく攻撃出来るわけか。
あたしは別に助けなんて必要なかったけど……こいつが死ねばあの子(たえ子)が悲しむ。早々に出会えたのは運が良かったな。

「あたしじゃ力になれないと思うスけど――コロさんが子宮されたので、届けに……がっ、――!」

―――――――――。
死んだ。
殺された。
あの子(たえ子)がまた悲しむようなことが目の前で起きたのに、あたしは何も出来なかった。

……バイクでも致命傷にならない化け物。身体能力はあたし以上。このまま慣れもしない刀で戦ってたら――負けてた可能性も否定出来ない。
あの子のためにもあたしは乃亜を始末しなければならないのに。あの子の日常のピースが、たった今――。

「感謝するわ、絵里奈。そしてゴミクズ――お前は何枚に輪切りにされたい?」

「◾︎◾︎◾︎◾︎!!」


175 : 家族(たえ子)のためのHands ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 10:06:55 dtTE.9YU0




結論から言えば、勝負はたえない子の圧勝だった。
たとえ化け物が人間離れしたフィジカルを持ってたとしても、たえない子だって大概イカれた身体能力をしている。それに加えて戦闘技術も凄まじく、慣れた武器まで手に入れて――負ける理由が何一つない。

だが一つ計算違いがあるとしたら。

「助けて、ママ……」

化け物が輪切りになる直前――仮面が外れてそんな言葉を吐き捨てたこと。
それは間違いなく家族に対する言葉で、化け物だと思ってたソイツは人間の顔をしていた。仮面の下でわからなかったけど、ただの幼稚園児だった。

名は風間トオルだが、彼を殺したたえない子すらもそれを知ることはないだろう。
彼はしんのすけという友達がここに居ると信じて、彼や仲間を助けるために『攻撃力1000アップ』という文章に惹かれて仮面を身に付けてしまった。

(今、あの子が居なくて良かった。……あの子がこんなものを見たら、心に傷を負うはずだ)

たえない子は幼稚園児に対する同情なんて何も無いが、たえ子だったら……。
これから先もこういうことが続くのだろう。

(あたしは負けられない。あたしにも大切な家族が出来たから――)

たえ子が参加者として巻き込まれてなければいいが――彼女の肉体を持つたえない子がこうして参加させられた時点で巻き込まれたも同然だ。

乃亜なら肉体の複製も出来て、たえ子とたえない子が別個に参加しているとたえない子は考えてるが、単純にたえ子の精神が封印されてるだけの可能性もあるのだから。

輪切りにされた幼稚園児の屍なんて気にせず、たえない子は往く。
もしも死体の彼の知人がこんなものを見てしまったら、どう思うだろうか

【江里奈@やったねたえちゃん!  死亡】
【風間トオル@クレヨンしんちゃん  死亡】
※風間トオルの輪切り死体付近に凶暴化の仮面@遊戯王デュエルモンスターズが落ちてます

【たえない子@やったねたえちゃん!】
[状態]:健康
[装備]:コロちゃん@やったねたえちゃん!、日本刀@現実
[道具]:基本支給品、、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜を始末する
1:後で名簿を確認。家族であるたえ子やその擬似家族が巻き込まれていないかチェックする
2:ゴミは幼稚園児だろうが始末する。特に風間トオル(名前未把握)と同じ服を着た参加者に要注意
3:乃亜が肉体を複製してるか、あの子の精神を封じてるか……
[備考]

【凶暴化の仮面@遊戯王OCG】
風間トオルに支給。

装備モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせ守備力を1000ポイントダウンさせる。自分のスタンバイフェイズ毎に1000ライフポイントを払う。払わなければ、このカードを破壊する。
今回のロワではこれを被った参加者は名前通り、凶暴化してしまう


176 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 10:07:38 dtTE.9YU0
投下終了です


177 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 10:58:38 OkNo42Rc0
代理投下します


178 : 珍砲機ジャスタンク ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 10:59:47 OkNo42Rc0
 海馬乃亜の悪趣味な行いの後、バトルロワイアルが行われる場所に転送された、メガネをかけた少女が独り佇んでいた。
 その名を、小仏珍子(こぼとけちんこ)。名前の読みは読み間違いでなく、正真正銘「ちんこ」である。
 親友の一撃弾子と共に、新球川小中一貫校の闘球部復活を掲げて立ち上げた小学生。

「ひらがなで名前呼ばないでください!!」

 ふと、誰かにひらがなで呼ばれた気がして、叫んでみるが、返答は帰ってこない。

「……そうだ。今はなにか使えるものがないか探さないと……!」

 珍子は切迫した様子で、四次元ランドセルを漁って支給品を取り出す。
 気づいたら、こんなバカげた催しに参加させられていた。そして、その直後に惨劇を見せつけられたことで、これが夢でなく現実であることを思い知らされた。
 人として当たり前であるが、珍子は死にたくない。ここで死ぬわけにはいかない。親友の弾子が掲げた闘球部復活の夢。ようやく部員も集まり、闘球部復活が現実になるかもしれないというのに、自分が死んでしまえば弾子の夢を壊してしまうことになる。なによりも、珍子もまた一人の闘球女として見てみたいのだ。父である珍念も所属していた闘球部が復活する時を。
 そのため、自分が扱えそうなものがないか急いで調べていたのだ。

「あった!これは……玉?」

 珍子がランドセルから取り出したのは――玉。それも2つセットだ。真ん丸な玉で、珍子は両手で持ち上げてじっと見つめてみる。
 その玉は――キラキラと金色に光り輝いていた。その艶からして間違いなく純金製。その手の店に持っていけば高値で売れるだろう。
 しかし、金の玉が、2つ。それは俗に言われるアレを嫌でも想像させられてしまう。加えて、それを支給されたのは、珍子。

「馬鹿にしてるんですか!?」

 思わず、珍子は叫んでしまい、怒りのままに2つの金の玉を押し込んだ。

「もう……なにか別の物は――」

 そう言って再びランドセルに手を突っ込むと、何か硬い金属のような物体が手に触れた。手探りで触ってみるが、とてつもなく巨大なようで全体像を掴めない。

「……?」

 仕方なく、珍子はランドセルをひっくり返して、先ほど触れたものが出てくるよう念じてみた。

――ズシン!!


179 : 珍砲機ジャスタンク ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:00:04 OkNo42Rc0
「わあああああっ!?」

 珍子は驚嘆の声を上げる。
 ”それ”は、ランドセルから零れ出るようにして形を作り、そこに降臨した。
 珍子が見上げるそれは、とてつもなく巨大なロボット――否、脚部にキャタピラがついているあたり戦車だろうか。
 しかし、外見はというとお世辞にもかっこいいとは言えない。キャタピラ部分より上は円筒の胴体にドーム状の頭というテキトーにも程があるフォルムな上、アームは木の棒を取って付けたように補足、頭部には死んだように感情の籠っていない目と口が描かれていた。
 まるで図画工作の宿題の出来の悪い作品をそのままロボットにしたかのようだった。

「『ジャスタンク』……?戦車ですか、これ……?」

 共に出てきた説明書を読む限り、この巨大な戦車ロボットはジャスタンクと言うらしい。頭頂部からコックピットに入ることができるとのことだ。また、同梱の拡声器で操作するらしい。……なぜ拡声器がリモコン代わりになっているのか分からなかった。

「……」

 再度珍子はジャスタンクを見上げる。一応武装もあるにはあるらしいが、そのあまりな外見のためにいまいち信用できない。珍子はその性能を試そうと半信半疑でジャスタンクによじ登り、拡声器のボタンを押してコックピットに入る。

「う、動いた!!」

 コックピットに入った珍子が拡声器のボタンで操作すると、ジャスタンクはキャタピラを動かして前進した。

「これでジャスタウェイ投下……ジャスタウェイって何でしょう?」

 説明書にはジャスタンクの武装も載っていたので、珍子は周囲に誰もいないことを確認した上でジャスタンクを動かす。すると、珍子の意思に応じてジャスタンクは口を広げて、ジャスタウェイという小型のジャスタンクの姿をした爆弾――元々はジャスタウェイの方がオリジナルなのだが――を前方に投下した。

「ば、爆発した!?」

 前方に落ちたジャスタウェイは地面に不時着すると同時に爆発し、辺り一帯を吹き飛ばす。
 どうやらこれが兵器であることには間違いはないらしい。金の玉はともかく、このジャスタンクは強い部類の支給品に入ることは確定だろう。

(少なくとも護身はできそうです……となると、後は仲間ですね)

 ちら、と珍子はコックピットの中を横目で見渡す。ジャスタンクの頭部に位置するコックピットには、数人が入るスペースがある。ここに珍子の仲間を匿うことができそうだ。

(こんなところ脱出して生きて帰りますから……待っててね、弾子ちゃん!)

 珍子は当然、この殺し合いに乗るつもりはない。仮に殺し合いの最後の一人になって帰ることができたとして、父の、闘球部の名が汚れてしまう。ならば珍子が目指すのは、この悪魔的な催しからの脱出だ。

「――あれ?もう一つ武装があるんですか?」

 ふと、ジャスタウェイ投下以外にもう一つ主武装があることに気づき、珍子は拡声器を操作してもう一つの武装を試すことにする。
 すると、ジャスタンクはウィーンと音を立てながら、立派な砲塔を露出した……股間に当たる部分から。
 その砲塔の付け根には、一対の玉が配置されており、それはまるで……まるで……。

「ち、ちんこおおおおおおおおおおおおおおっ!?!?!?」

 珍子は外に漏れ出る大声で叫んだ。
 おそらく、ジャスタンクの立派な主砲を見たものは誰しもがその完成度に感嘆の声を上げるだろう。
 その主砲の名は――ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲。


180 : 珍砲機ジャスタンク ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:00:17 OkNo42Rc0
【小仏珍子@炎の闘球女 ドッジ弾子】
[状態]:健康
[装備]:ジャスタンク@銀魂
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1、きんのたま×2@ポケットモンスターシリーズ
[思考・状況] 基本方針:この殺し合いから脱出し、生きて帰る
1:ジャスタンクを駆って、生きて帰るための仲間を探す
2:闘球部部員(一撃弾子、江袋もち子、スーザン・キャノン、音花羽仁衣)が参加している場合は、まずは彼女たちを探す
[備考]
・参戦時期は、少なくとも音花羽仁衣加入(第6話)以降です。

・支給品説明

【きんのたま@ポケットモンスターシリーズ】
作中で入手できる、キラキラと輝く純金製の玉。売ると高値で売られるが、その名前からナニかを想像させられる。シリーズ中では所謂きんのたまおじさんからもらえることで有名。この殺し合いでは2個セットで珍子に支給された。一応、投擲鈍器としても使えなくはない。

【ジャスタンク@銀魂】
アニメ57話で登場した悪の組織『悪の組織』が製造した兵器。巨大なジャスタウェイにキャタピラを付けただけの外見。口に当たる部分からジャスタウェイを投下できる他、主武装として股間部にネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を内臓している。


181 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:00:29 OkNo42Rc0
代理投下終了します


182 : ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:33:07 Pg0mgvAs0
投下します


183 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:33:56 Pg0mgvAs0
誰だって幸せになる権利がある。
難しいのはその享受。

誰だって幸せになる権利がある。
難しいのはその履行。

誰だって幸せになる権利がある。
難しいのはその妥協。


――――――Frederica Bernkastel






「これって思いがけないチャンスってやつなのかしらね。
……それとも、自称神様のお遊び?」


どこかの商店街のような場所で私は独り言ちる。
商店街と言っても周りは閑散としていて、夜間にも関わらず電気が点いているところはない。


「羽入、羽入?……やっぱりいない」


いつも私について回る悲観的な神様の気配がない。
さっきの広間でも乃亜というやつがデモンストレーションをしている間、密かに羽入に呼び掛けていたがその時から羽入の気配はなかった。
考えられるのは、私が山狗はもちろん、羽入の力さえ届かない領域に拉致されたという可能性だ。
ある意味乃亜に命を救われたとも言えるが、それならそれでもう少しタイミングというものがあるだろう。
……それとも、入念にタイミングを図った結果がこれだと言うのならよほどの悪趣味のようだ。


何度も何度も殺され続けた。
何度も何度も諦めそうになった。
けれど私は、私たちはついに昭和五十八年六月に私を殺す犯人を見つけた。
今度こそ仲間と一緒にこの運命を乗り越えるのだと、我ながらかつてないほどに奮起したと思う。


けれど、あと一歩が届かなかった。
山狗の包囲を突破して園崎家に向かおうとした矢先、死を装っていた鷹野の凶弾によって圭一が殺された。
……それからはあっという間に総崩れ。魅音も、詩音も、レナも、そして沙都子も殺された。
部活メンバー全員の団結に、大石という頼れる大人の力を借りてなお及ばないほど鷹野の持つ駒は、私を殺そうという意思は強靭で強固だった。


ならばせめて、どんな責め苦を受けようとも絶対にこの記憶を忘れまいと決めた。
手足を縛られ猿轡をされようと、衆人環視の中着衣を奪われようと、腹を割かれようとも鷹野の顔を忘れまい。
だがそんな決意とは裏腹に、普段着のワンピースを切り裂かれ打ち捨てられ、、パンツに手を伸ばされたと思った直後に奇妙な殺し合いが始まった。


「ああもう、巻き込むなら巻き込むでもう少し早くしてくれたっていいでしょうに……!」


殺し合いのフィールドに飛ばされてまず真っ先に私がしたことは、自由になった両手で胸を隠すことだった。
今の私の格好と言えば上半身裸で靴と靴下もない、パンツ一枚のみときている。
田舎の雛見沢で育ったので裸足で砂利道や道路を歩くことは苦にならないが、さすがにまともな衣服が欲しい。
支給品に期待して、足元に置かれているランドセルを開こうと手を伸ばす。


184 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:34:23 Pg0mgvAs0


パァン


耳をつんざくような、乾いた音とともに私のすぐ傍の地面に何かが当たった。
……いや、何かという婉曲な表現は必要ない。これは銃声で、私は今撃ち殺されかけたのだ……!
努めて冷静に周囲を見回すと、建物の中から拳銃を構えた少女が出てくるのが見えた。
警戒が足りなかったことを痛感する。外ではなく、フィールド内の建物の中に飛ばされた参加者もいたのだ。


「その平べったい顔……あなた、イレブンね?」


「は?イレブン……?っていうか、何よその恰好は?」


自分のことを棚に上げて問い返してしまった私を誰が責められようか。
圭一やレナぐらいの年齢と思しき、見るからに外国人な少女は上半身こそどこかの学校の制服を着ていたが、スカートを履いていない。
丸見えのパンツは股間部分から盛大に濡れており、太ももにも液体が垂れているのが見て取れた。
……さては、さっきの場での少年二人が殺された凄惨な見せしめを見て失禁したのか。
いや、逆に人の死というものに多少なりとて耐性のある私が子供としては異常なのかもしれない。


「口の利き方のなってないイレブンですわね……!」


再びの発砲、運良く弾は外れて私の後ろにある店のガラス窓を破った。
……いや、幸運でもないか。少女は銃を扱い慣れてないのか反動でふらついているし、手が震えまくっている。外したのは必然とも言える。
とはいえ、間違いなく実弾の入った本物の銃だ。迂闊には動けない……。
しばしの硬直。……今更ながら、素の口調を出してしまったことを悔いた。
普段の猫かぶりモードでいれば、油断の一つも誘えただろうに。
息を整え、いくらか冷静さを取り戻したらしい少女は私の下半身に目をやり、何かを思いついたようだった。


「その下着を脱ぎなさい。そして、その支給品も置いて今すぐ立ち去りなさい。
そうすれば今の無礼は許し、この場だけは見逃してあげてもいいわ……!」


……人を殺すのが怖いなら素直にそう言えば良いものを。そう言いたくなるがグッと堪えた。
相手は間違いなく荒事に慣れていない素人。ならばまた銃弾が外れることに期待して飛び掛かってみるか?
恐らく、組みつくまではいけるだろう。しかしここで問題になるのが彼我の体格差だ。
レナと同じぐらいの力と体格であれば、小学六年生としても小柄な部類の私では取っ組み合いで敵うとは思えない……。
羞恥心より支給品の確認を優先するするべきだったと後悔してももう遅い。
羽入がいない今、私が死ぬことでどうなるかわからない以上、命を投げ捨てるようなことはできない。


「……わかったわよ」


……理不尽な要求であろうとこの場は従うしかない。
両手でパンツを脱ぎ下ろし、辛うじて隠されていた尻が、性器が外気に曝される。
両足からパンツを抜き取り、とうとう私は一糸纏わぬ全裸になった。
そのまま少女の様子を伺いつつ、ランドセルの上にパンツを置いて、両手を上げて降参を示しながら少しずつ離れる。
そして、建物を遮蔽物に使える位置にまでじりじりと下がってから、脱兎のごとく走ってその場を後にするのだった……。


185 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:34:47 Pg0mgvAs0





どのぐらい走っただろうか。建物のある商店街の区画を抜けて、開けた平原に出ていた。
ここまで来れば大丈夫だろう。息を整え、自分の身体を見下ろした。
見慣れた自分の裸体だが、生憎とここは自宅の洗面所ではなく誰に見られているとも知れない野外だ。
……いや、「見ている」人物には少なくとも一人思い当たる者がいる。


「どうせどこかで見てるんでしょう、乃亜」


海馬乃亜は言った。これはゲームだと。
ゲームであるからには観客もいるはずだ。
その観客とは誰か?決まっている、乃亜自身に他ならない。
神様を自称するような少年がこれだけ大掛かりなゲームを仕掛けておいて観戦もしていないなんてありえない。
山狗のような監視員でも使っているのか、それとも私には想像できない神様の力でも使っているかはわからないが必ずゲームの様子を見ている。
つまり最低でも乃亜には私の痴態は筒抜けなわけで、本質的に言えば誰にも裸を見られないようにするという行為そのものに意味がない。


ならばと両手を広げて胸を張り、性器を見せつけるように脚を広げた。
……これが今の私に出来る精一杯の乃亜への反抗。
歯向かう者は殺すと彼は態度で示した。だとすれば、叛意を言葉で表すだけでも大きなリスクを伴う。
乃亜が私に期待していることが恐怖に怯え、凌辱に震えることなら、せめて態度だけでも思い通りになどなってはいけない。
怯えてなんてやらない。恥じらってなんてやらない。今こそ私は、百年の魔女をやめて痴女になるのだ。


そうして私は身体を一切隠すことなく駆け出した。
今の私には武器はおろか地図も水も食糧も、着衣すらも全くない。
まずやることはこんな状態の私にも友好的に接してくれて、打倒乃亜を目指す参加者を探すことだ。
特に水や食糧は必須だ。このまま誰にも見つからないよう隠れたところで数時間もすれば飢えと渇きで動きが鈍ってくる。
そうなる前に誰かに分けてもらわなければ。……その過程でこの貧相な身体を使うことになったとしても、だ。


―――私は諦めない。
素直に殺し合いに乗って優勝すれば、鷹野と山狗に殺されてしまった部活メンバーを生き返らせてもらえるかもしれない。
けれど私は知っている。「これしかない」という思い込みで殺人に走った先にハッピーエンドなんてものはないということを。
……もちろん、上手く他の参加者と協力して乃亜を倒せたとして、そのまま雛見沢に帰ったところで皆は死んだままで私もすぐ山狗に殺されるだけだろう。


それなら殺し合いには乗らず、乃亜を倒した上で彼が持っている死者蘇生の力も手に入れて部活メンバーやさっき殺された二人も生き返らせれば良いのだ!
我ながら無謀な考えだとは思う。文字通り裸一貫の小娘がこんなことを言い出せば誰だって正気を疑うに違いない。
だとしても諦めない。だって圭一も、沙都子も、レナも、魅音も詩音も殺されるまで戦った。
乃亜の気まぐれだとしても、まだ生きている私が諦めて良い理由なんて一つもない。
今皆を助けられる可能性を持っているのは私だけなのだから。


186 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:35:11 Pg0mgvAs0


【古手梨花@ひぐらしのなく頃に解】
[状態]:健康、全裸
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]殺し合いには乗らずに乃亜を打倒し、部活メンバーや犠牲者を生き返らせる。
1:友好的な参加者に接触して物資を分けてもらう。
[備考]
皆殺し編で山狗に殺害される直前からの参戦です。



















私の人生で今日ほどの最悪の日はない。
アッシュフォード学園中等部に通うブリタニア人の少女、エカテリーナは心からそう確信していた。


そもそも今日という日の始まりからして最悪だった。
いつものように同級生と登校していた時、ふと学園のクラブハウスから出てくる盲目かつ車椅子の少女を見咎めた。
ナナリー・ランペルージ。どこの庶民か貧乏貴族の子女かは知らないが、学園に居候の身でメイドに「お嬢様」などと呼ばれながら登校とは生意気にもほどがある。
そう思い少しお仕置きをしてやろうとしていた時、どんな手品を使ったのかナナリーの友人のアリスに制服のスカートを抜き取られてしまった。
慌てて人目につかないところに移動していると唐突に意識が遠のき、気づけば乃亜とかいうイレブンらしき子供が開いた殺し合いに巻き込まれていた。


上級貴族の娘として不自由なく育ったエカテリーナにとって、二人の少年が無惨に殺され、噴水のように鮮血を流す有り様はあまりにも恐ろしかった。
自分が失禁していることに気づいたのは乃亜の説明が終わり、どこかの狭苦しい建物に飛ばされた後になってからだった。


「はぁ、はぁ、はぁ……」


思い返しても最悪の幕開けだったが、少しばかり運が向いてきた。
始まって早々ほとんど裸に近い格好の元・日本人、イレブンの少女を見つけた。
エカテリーナは支給されていた拳銃で二度撃ち殺そうと試みたが、実銃の反動は思った以上に大きく当てられる気がしなかった。
そこで少女が唯一身に着けていた着衣であるパンツに目をつけた。体格の違いから少しきつくはなるだろうが私にも穿けなくはないはず。あれを奪ってしまおう。
銃の威力を見せた上での脅迫は上手くいき、まんまと少女の持ち物全てを奪取することに成功した。
これで良い、そもそもこれが当然。自分は貴きブリタニア貴族の娘で相手は敗戦国のナンバーズなのだから、私が全て奪えて当然なのだ。
乃亜が大きな顔をしていられるのも今のうちだけだ。今にブリタニア警察、あるいは軍が救助に来てくれるに違いない。


全裸になって逃げ去っていくイレブンの少女には目もくれず、二人分のランドセルと戦利品の下着を持って近くの小さな商店に入り込んだ。
いい加減濡れた下着や靴下の不快な感触が限界に達していたのだ。
居住スペースと思われる場所に出ると貴族の子女にあるまじき乱暴さで靴を脱ぎ、素早く身に着けていた下着と靴下を脱いだ。
誰の目にもつかない場所で息を整えつつ開放感を味わっていると、ちょうどエカテリーナの全身が映る大きな鏡が目に入った。


187 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:35:38 Pg0mgvAs0


「……酷い格好ね」


下半身裸になった自分の姿を見ると、誰もいないのに羞恥の念に襲われる。
当然こんな格好で外に出ていくわけにはいかないのでイレブンの少女から奪ったパンツに履き替える必要がある。
いや、下着丸出しも十分すぎるほどにはしたないのだが、下半身裸と比べれば遥かにマシである。


「支給品に何かあればいいけど……」


着替える前に、まだイレブンの少女から手に入れた支給品を確認していないことに気づいた。
エカテリーナの支給品には替えの着衣はなかったが、こちらの方には何かないだろうか。
外に出る前に確認するだけしようと中身を開けると、見慣れたアッシュフォード学園中等部の制服が出てきた。


「やった!これなら……!」


武器ではないことに落胆する者はするだろうが、エカテリーナにとってはこの上ない大当たりの支給品だった。
当然のように制服は上下ともに揃っており、靴下も付いていた。
そういえば殺し合いが始まってからだいぶ嫌な汗をかいた気がする。この際だから制服の上も着替えてしまうべきか。
喜び勇んで上着を脱ぎ捨て、ブラジャーだけの姿になる。替えのパンツに手を伸ばした瞬間―――金属音のような、不快な音が聞こえてきた。


「な、何ですの……?この音は……」


咄嗟に着替えの手を止めて銃を手に取り、部屋の中を見渡すがそこには誰もいない。
もしかすると外で何かが起きている?いや、この不快な音は間違いなくすぐ近くから発せられている。
息を吞み、視線を鏡に映して―――心臓が止まりそうになった。
鏡に映るエカテリーナのすぐ傍には長大な杖を持った黄金の戦士が立っていた。


「〜〜〜っ!?」


―――もしここでエカテリーナが咄嗟に鏡を銃撃していたら、結果はまるで違ったものになっていただろう。
だが彼女は常識に則り、鏡に映った襲撃者と思しき黄金の戦士は自分の背後にいると判断した。そう判断してしまった。
後ろを振り返り、銃を撃とうとして―――そこには誰の姿もない。
混乱の極致に達したエカテリーナの肩を、背後から黄金の戦士が掴んだ。
そう、背後からだ。有り得ない事態にエカテリーナが再び鏡を見ると、鏡の中から伸びた戦士の腕に、強い力で掴まれていた。


「ひ、い、嫌あああああ!!!」


死に物狂いで拘束から逃れようとして、エカテリーナの肩を掴んでいた黄金の戦士の腕がズレてブラジャーのホックに掛かる。
凄まじい力でブラジャーが引っ張られていることによる激痛も意に介さず、とにかくこの場から逃れようと藻掻く。
やがてブラジャーが千切れ、成長途上の乳房が露出した。勢いよく引っ張られていたブラジャーが千切れた反動で無様に転倒し、銃も取り落とした。


「た、助けて、助けて……」


更に悪いことに、限界を超えた恐怖で腰が抜けてしまった。
奇しくもイレブンと嘲った少女と同じ、一糸纏わぬ全裸となった彼女は黄金の戦士に背を向け、四つん這いの姿勢となっていた。
乙女の恥部を全て曝け出した格好のエカテリーナに対して動じる様子もなく黄金の戦士が腰のバックルから一枚のカードを引き抜いた。


『ADVENT』


カードを装填された杖から響く電子音声は、さながら死刑宣告だった。
恐る恐る後ろを振り向いたエカテリーナの瞳がさらなる絶望に染め上げられる。
鏡の中から炎を纏った黄金の怪鳥めいた怪物が現れ、獲物を品定めするようにエカテリーナを睨んでいた。


「い、嫌―――」


―――その先は言葉にならなかった。
黄金の怪鳥が唸り声を上げてエカテリーナの頭へ噛みつくと、そのまま鏡の世界へ引きずりこんでいったから。
鏡の世界、ミラーワールドへ生身で連れ込まれた者が助かる術はない。
黄金の戦士こと仮面ライダーオーディンが操る契約モンスター、ゴルトフェニックスの餌として彼女の存在は消化されていった。


【エカテリーナ@コードギアス ナイトメアオブナナリー 死亡】


188 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:36:06 Pg0mgvAs0











誰にだって幸せになる権利がある。私にだって幸せになる権利がある。
でも神様はとても意地悪で理不尽で、私に対してはいつだってサイコロの一の目だけを突きつけてきた。
海馬乃亜、神様を自称する少年は私が定義する神様のイメージに合致する。
首輪を着けて最後の一人になるまで殺し合わせる意地悪さ、わざと運の要素を強めた支給品ルールは私に対する当てつけに思えた。


ならば私は、ありとあらゆる努力を惜しまず絶対に最後の一人になるまで生き残ってみせる。
今までの私の努力は努力と呼ぶには烏滸がましい、あまりに細やかなものだった。……だから、おじいちゃんの研究を文字通りに踏みにじられた。
これが殺し合いなら誰かを蹴落とし、殺すことを躊躇うな。ありとあらゆる手段を使って生き残れ。クールになれ、高野三四。
そうだ、私はもう美代子ではない。おじいちゃんに代わり、おじいちゃんの偉大な研究を世界に認めさせる高野三四だ。





「はぁ、はぁ……まずは、一人」


どこかの商店らしき建物に飛ばされた私が最初にしたことは建物内の安全確認、次いで支給品の確認だった。
この時私は珍しく神様がサイコロの六の目を出したのかと慢心していた。


私に支給されたのはオーディンのデッキと説明書に書かれた、カードデッキだった。
鏡にデッキを翳し、バックルを出現させることで仮面ライダーオーディンなる超人に変身できると記されていた。
これは乃亜の説明にあった、超人的な能力を持つという参加者への対抗策の一環だと考えられる。
一般人の私にも平等に優勝の権利を与えるための、超人的な力を持つ者を圧倒的有利にしないための措置。


早速私はテストのために変身し、全身に漲るパワーを感じながらある実験を行うことにした。
説明によれば、カードデッキで変身した仮面ライダーはミラーワールドという、鏡の中の異世界に潜航することができるという。
無視するにはあまりにも大きすぎる能力を初動のうちに試しておこうと考えたのだ。


全てが反転した鏡の世界を検分し、オーディンの活動限界時間が迫っていることを確認した私はミラーワールドへの侵入に使った、大鏡の前まで戻った。
……そこで自身の慢心を痛感させられた。鏡を覗くと、現実世界の同じ部屋に下半身裸の外国人らしき少女が侵入してきていたのだ!
侵入者の少女は気づいていないようだったが、実はその部屋の中には私のランドセルも置いてあった。
何より、銃を持っていた彼女がもし鏡を銃撃し、破壊していたら私はミラーワールドから戻れず、活動限界を迎え何もできずに消滅していたかもしれなかった……。
オーディンのデッキの説明には、ミラーワールドへの潜航と現実世界への帰還には必ず同じ鏡を使わなければならないという制限があるとされていたからだ。
私は強力な支給品の力に溺れて危うく自滅するところだったのだ……。


189 : 私にだって幸せになる権利がある ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:36:38 Pg0mgvAs0


慢心していたところにいきなりサイコロの一の目を出された私だが、結果として状況は好転したと言える。
仮面ライダーオーディンに付属する契約モンスターであるゴルトフェニックス、人間や同族のモンスターを食らうとされる怪物の腹を満たさせることに成功したのだから。
……正直、不死鳥の名を冠するこの怪物を私は気に入っている。まるで踏み荒らされたおじいちゃんの偉大な研究が何度でも蘇る、不死の存在になると思わせてくれるからだ。
それに、変身が解けた今、大きな運動をしていなかったにも関わらず多少の疲労を感じてしまっている。これも収穫だ。
疲労の原因はオーディンへの変身にあるに違いない。つまり超人的なパワーを得られる代わりに体力を大きく消耗するということ。
初動の段階でこれが判明したのはとても大きい。もし土壇場になってからこのデメリットがわかっていたら取り返しのつかないことになっていたかもしれない……。


しかもモンスターの餌にした少女は荷物を二人分持っていた!
自分の分も含めて三人分。役立つ支給品も必要だが、水と食糧はさらに大事だ。
水と食糧が潤沢なら、人目につかないよう長期間隠れ潜むことだって十分に選択肢になり得る。


「私は絶対に生き残る。生き残って、奪われてきた幸福を全部取り返してやる……!
お父さんとお母さんが生き返って、おじいちゃんの研究が世界中に認められるような、理想の世界を私が作ってやる!!」


【高野三四@ひぐらしのなく頃に解】
[状態]:疲労(小)
[装備]:オーディンのデッキ(再変身可能まで六時間)@仮面ライダー龍騎
[道具]:基本支給品(三人分)、拳銃@コードギアス 反逆のルルーシュ、アッシュフォード学園中等部女子制服@コードギアス 反逆のルルーシュ、
古手梨花のパンツ@ひぐらしのなく頃に解、ランダム支給品2〜6
[思考・状況]
基本方針:最後の一人になり、幸せを手に入れる。
1:他の支給品を確認する。
2:再びオーディンに変身できるようになるまで休息、隠密に撤する。
[備考]
※高野一二三の論文発表会の直後からの参戦です。
※名簿には高野三四の名義で記載されています。



【拳銃@コードギアス 反逆のルルーシュ】
エカテリーナに支給された。
ブリタニア軍で制式採用されている拳銃。


【アッシュフォード学園中等部女子制服@コードギアス 反逆のルルーシュ】
古手梨花に支給された。
主人公であるルルーシュの妹、ナナリーが通うアッシュフォード学園中等部の女子用制服。


【オーディンのデッキ@仮面ライダー龍騎】
仮面ライダーオーディンへの変身を可能とするカードデッキ。
鏡にデッキを翳すことで腰にVバックルが装着され、Vバックルにデッキを装填することで変身が完了する。
オーディンは全てのライダーデッキで最も性能が高く、契約モンスターとしてゴルトフェニックスを従える。
常にサバイブ・無限のカードによってスペックを高められているため、変身に伴う体力消費が通常のデッキよりも激しい。

制限として、変身可能時間は一度につき十分、変身解除後は六時間経過するまで再変身及びモンスターの使役は不可能となる。
タイムベントのカードは予めデッキから抜かれており、瞬間移動はごく短距離のみ、かつ使用する度に変身者の体力を消費する。
ミラーワールドへの潜航も可能だが、ライダーデッキ以外の支給品を持ち込むことはできず、活動限界を超えて滞在すると身体が粒子化して消滅してしまう。
またミラーワールド滞在に関する制限として、ミラーワールドへの潜航に使った鏡以外の鏡から現実世界に戻ることはできない。


190 : ◆tAzjJve9.E :2023/05/14(日) 11:37:19 Pg0mgvAs0
投下終了です


191 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:39:08 OkNo42Rc0
投下します


192 : 良くない航海 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:39:27 OkNo42Rc0


「生憎、そこまでしてそうしたい訳じゃない。」
「へぇ。」

月下の夜、満天の星の下、二人の少年が語り合う。
片や、蛇の如き瞳をギラつかせる少年。――ケルブレム
片や、アクアマリンの瞳、その右目に星状のハイライトを宿した少年。――星野愛久愛海(アクアマリン)

「でもいいのかい? 死んだ母親を蘇らせるチャンスかもしれないんだよ?」
「瞳通り楽園の蛇気取りか? だったら俺じゃなくてルビーの方をおすすめしておく。と言ってもあいつもお前の言葉になんか乗らないだろうがな。」

ケルブレムの言葉、相手を禁忌へと誘うその手口はまるで創世記でイヴをたぶらかして禁断の果実を食わせたサタンの如き手口だ。
だが、相手はイヴのような純粋な誰かではなく、かつて一度殺され、二度目の生を得た転生者である。

産科医・雨宮吾郎。それが星野愛久愛海の前世。
推しであるアイドル、星野アイが世間に隠れて妊娠の為に彼が努めている病院にやってきた。
アイドルとはリスキーな世界だ、しかも当時の星野アイは16歳。16歳のアイドルが出産だなんて大騒ぎにも程があるし、スキャンダルの格好の的だ。
だが、彼女はアイドルも出産もどっちもやり遂げるといった。
そんなワガママで一番星な彼女に、雨宮吾郎は共感し、最大限協力した。
――だがある日の夜、アイを追いかけていたであろうストーカーらしき人物を追いかけ、崖の下に突き落とされて、命を落とし――。
目を覚ましたら、彼は星野アイの出産した双子の兄、星野愛久愛海に転生した。
同じく転生者だった妹、星野瑠美衣(ルビー)と共に、推しのアイドルの子供として、ある意味天国ともいうべき時間を過ごすも、アイがドームライブを目前にしてストーカーに刺されて死んだ。

その時から、二人の運命は分かたれたのだろう。
妹はアイと同じアイドルとなる道を選択した。
そして彼は、星野愛久愛海は復讐の道を選択した。
あのストーカーが何のヒントもなしにアイのいるマンションを探し当てるなんてありえない。
少なくとも、父親が一番怪しく、その父親の行方を探すため、彼は芸能界へと入り込んだ。

「そりゃアイを蘇らせる事が出来るのならそれに越した事は無いのは同意だ。」
「だったら何故だい?」
「俺が復讐する相手はあくまで正体不明の父親だ。巻き込みさえすれど、やつ以外を殺すつもりはない。」

仮に手段を選ばないで蘇らせたとして、あいつが笑顔は二度と戻ってこないかもしれないか。そう付け加えようとして、心の奥にしまった。
蘇らせる事ではなく、あくまで父親への復讐だけを誓った。一度死んだ身で、それ以上望むものはないからだ。
ケルブレムの視線はいつまでも蛇のようで、面白そうな玩具を見つめるように眺めている。
その輝ける星の中に潜む、どす黒い復讐心の炎を愉快そうにしている。

「……ふーん。ちょっと残念だな。君の復讐心が大切な人を取り戻す方向で転んでくれたら面白いとは思ったんだけれど。」
「何度も言わせるな。やつを俺のやり方で追い詰めて、この手で殺す。」

誂うような投げかけに、思わず苛立ち混じりの言葉が返される。
どこまでも蛇みたいな男、嘘で塗りつぶしたアイドル見たく、掴みどころがない少年だ。

「だったらいいよ、無理強いはしないさ。じゃあ餞別代わりっと。」
「……は?」

そう軽く呟いたケルブレムが愛久愛海に対して投げつけたのは、一枚のカード。
一枚の絵と、その下に「The Star」と書かれたカード。

「おい、一体何の真似――」
「君の復讐に幸あらん事を。あと――」

投げつけられたカードの意味を問い掛けようとするも、煙に巻いたようにケルブレムの姿が不明確になり、そして。

「君の復讐は、本当に君自身のものなのかい?」

そう言い残して、『蛇』の消え去った。


193 : 良くない航海 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:40:15 OkNo42Rc0




「……彼、ちょっと面白そうだったかな?」

蛇は――ケルブレムはほくそ笑む。
自分への対話、余りにも理知的というよりも、年齢に似合わない聡明さ。
まるで大人と喋っているような、そういう感覚だ。

「本当に何者だろうね? ……まあそんな事なんてどうでもいいけれど。」

面白そう、ただそれ以上でもそれ以下でもない。
彼に渡したディアボロスタロットが開花するのもよし。
彼の復讐の道程を末路を観客席で嘲笑するのもよし。

「この殺し合いも含めて。どう転んでも面白くなりそうだ。フフッ。」

殺し合いという舞台の中で、悪魔のタロットの担い手たる彼は、静かに微笑んでいた。










アルカナタロットNo.17 『星』
逆位置―――河川の氾濫。大雨。洪水。厭世観。頑固。物事が過度になる。水に流される。働きすぎによる疲労。美貌の衰え。邪推。良くない航海。






【星野愛久愛海@【推しの子】】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、ディアボロスタロット@幻影ヲ駆ける太陽
[方針]
基本.早急に元の世界に帰る
1.もし俺たちの父親がいるのなら、どんな手を使ってでも復讐する
2.あの蛇みたいな男、気持ち悪いやつだ
[備考]
※参戦時期は5歳児時代のアイ死亡後


【ケルブレム@幻影ヲ駆ケル太陽】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[方針]
基本.せっかくなので自由にやらせてもらう
1.彼(愛久愛海)の今後には期待
※参戦時期は第5話以降


・支給品紹介
【ディアボロスタロット@幻影ヲ駆ケル太陽】
ケルブレムに支給、現在は星野愛久愛海が所持。人の運命を弄る目的で作られた、不幸を招くタロットカード。
人間の欲望や心の弱さにつけ込み、人間をダエモニアという化物へと変える。
大タロット22枚分が存在するが、今回はこの一枚しか存在せず、指定されるタロットはランダム。


194 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 11:40:25 OkNo42Rc0
投下終了します


195 : ◆bLcnJe0wGs :2023/05/14(日) 12:52:31 gMDdG4YQ0
投下させていただきます。


196 : この開けた草原の中で ◆bLcnJe0wGs :2023/05/14(日) 12:53:38 gMDdG4YQ0
(ここが…外の世界?)

 見渡しの良い草原地帯。
  ピンク色の長いおかっぱ頭に短い二本角を生やした少女、蔵間マリコが現在おかれている状況に困惑しながらも、周辺を見渡している。

 彼女はディクロニウスをである事を理由に、
 赤子の頃から研究施設の特殊な装置の中に5年もの間体内の何ヶ所かに爆弾を埋め込まれ、拘束された状態で過ごし、
 施設の関係者達の命令によって装置の外に出され、父と共に目的地へ向かった。

 その際に漸く外の世界へ出られたのも束の間、目的の脱走したディクロニウスを発見するも戦闘中に両足をもがれても尚、
 脱走者の角を自身の能力で折って無力化させる事に成功した。

 ─のだが、それと同時にマリコ自身も犠牲になった。

 その上、乃亜によって体内爆弾を全て取り除かれて生き返らせてもらったものの、
 拘束されていた頃からチューブによって栄養補給をしていた為に充分な栄養を摂れず栄養失調によってやつれていた身体と
 長年歩く事さえ許されなかった生活環境から歩行さえ困難な程に弱くなった足腰は治して貰えなかった。

 それもあってか、元々使用していた車椅子は没収されずに済み、今もそれに腰掛けている。

 また、見せしめを目撃した時から自分や父と血の繋がりがないものの、
 父を自分と同じ父親として見ていたもう一人のディクロニウスである7番ことナナの事を思い出していた。

(お父さんも、あの″お姉ちゃん″もここに呼ばれていないといいなぁ…)

 自分の実の父親と、″姉″でもあるナナの事を心配しながらも、マリコは佇んでいる。

 ──しかし、そんな彼女がこの殺し合いに乗るかどうかは、まだわからない。

【蔵間マリコ@エルフェンリート】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:お父さん(彼女の実父)とお姉ちゃん(7番/ナナ)は殺したくない。
1:他に呼ばれている参加者達の情報が欲しい。
 文字も碌に読めないので文字を読む手段も欲しい。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※ベクターは可視化されています。
その他の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。


197 : この開けた草原の中で ◆bLcnJe0wGs :2023/05/14(日) 12:53:59 gMDdG4YQ0
投下終了させていただきます。


198 : この開けた草原の中で ◆bLcnJe0wGs :2023/05/14(日) 12:56:22 gMDdG4YQ0
>>196
失礼します。
状態表に誤りがあった為、修正させていただきます。

【蔵間マリコ@エルフェンリート】
[状態]:栄養失調気味、足腰が弱い
[装備]:車椅子
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:お父さん(彼女の実父)とお姉ちゃん(7番/ナナ)は殺したくない。
1:他に呼ばれている参加者達の情報が欲しい。
 文字も碌に読めないので文字を読む手段も欲しい。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※ベクターは可視化されています。
その他の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
※車椅子は足腰の弱い彼女の移動手段でもある為、没収は免れました。


199 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:19:27 mgcmtoRM0
投下します


200 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:22:05 mgcmtoRM0
 ふと彼女は思った。
 最近の自分は逃げ続ける日々だと。
 人生からと言う意味ではない。敵と言う存在に。
 人に終われ、謎の組織に追われ、別の組織に助けられてからの逃避行。
 そして、今もこうして殺し合いの舞台においても必死に逃げることになる。
 水色の上着を羽織った少女は、必死に草木の生い茂った森林地帯を駆け抜けていた。
 少女、リコはポケモントレーナーだ。フィールドワークが大事なトレーナーにとって、
 立地が決していいとは言えない視界が悪い森の中を駆けまわることは難しいことではない。
 けれど、それは決して彼女が常人よりは優れてるだけであり、それ以上の存在には別だ。
 ペンダントと言う不思議な力は確かにあったけれど、それも今や没収されて関係がない。
 運動神経の優れた、ポケモンとの交流のあるただの少女、と言って差し支えなかった。

「逃げても無駄だと言ってるべ!」

 じゃらじゃらとした音が上空へと響く。
 来る、と分かった瞬間緩めてた速度を上げ、少しでも距離を稼ごうと飛び込む。
 飛んできたのはただのビーズ。女の子ならその煌びやかな色に多少興味を持つが、
 今のリコにとってはあれはビーズなどではない。ただの殺意の塊なのだから。
 飛び込むと同時に、ビーズは全てがその小さな形から想像できぬ爆発を起こす。
 爆竹とかの比ではない。下手をすればグレネードのような威力の代物。

「キャアアアアア!!」

 悲鳴と共に爆風によって吹き飛ばされるが、
 何とかうまいこと軽傷で済ませ、勢いで距離を取る。
 更にそのまま受け身と共に着地を取って、逃走を続けた。
 ロスタイムは少ない。森の中であればうまく撒くこともできるだろう。

「そうはさせねえべ!」

 だからといって、現実は甘くはなかった。
 彼女の前方に空から降り立った男がそれを止める。
 赤いアロハシャツに黄色いマントを羽織った、顔に傷が目立つ男が立ちはだかる。
 少年少女が集まる中としては中々の高身長だが、これでも歴とした中学生だ。

「俺から逃げられるとでも思ってるのか?
 全く、折角かわいい子に出会っても殺し合いとは難儀だなお互い。」

「の、能力って何? ポケモンの技みたいなのを普通に使ってるけど……」

「ああ? 能力も知らねえならそりゃそういう反応になるか。
 だったら簡単に教えてやるべ。神候補生の戦いについてな。」

 男、カール・P・アッチョ、通称カルパッチョは語った。
 彼は元々次の神を、そして神候補生を決める戦いの参加者だと。
 もっとも、彼以上の最強の能力を持った男の存在も相まって、
 組織の参謀に収まって彼を優勝させ、その恩賞の為集ってるのもあるが。

「どうして、殺し合いをするんですか?」

「やってることが似たようなもんだべ。
 誰かを蹴落として上に立つ、そこに何の違いもありゃしねえさ。」

「そんな……!」

 詳しいことは割愛するが、要するにこれは彼にとってやることは変わらない。
 誰かを蹴落とし優勝する。ロベルトがいるのであれば、彼を優勝させるべき。
 そう、何も変わってなどいない。やることは倒すか殺すかの違いでしかないし、
 彼は相手を溶岩に突き落とすことも躊躇しない人間だ。そこに違いはなかった。
 倫理などない。卑劣な手も使う。典型的な悪党といったところになるだろう。

(私が確認できてる武器はこれだけだけど……)

 手にあるのは所謂ハンドガン。
 彼女にとっては当然馴染みのないものだが、
 悲しいことにこの銃には弾丸が入っていない。
 相手を撃つことはかなわない、脅しにしかならなかった。
 一応本来の使い方は確認しているが、荒唐無稽で不安しかない。

「これ以上攻撃するのをやめてください! でないと撃ちます!」

 それでも構えて相手から離れようとする。
 震える手は仮に弾があっても当たるかは不安だ
 できる最善策はそれだけだと判断するが、

「お前、俺が本体だと思っているのか?」

 彼女の脅しなど通用しなかった。
 彼の隣にもう一人カルパッチョが姿を現す。
 地面から生えるように出てきた彼女に当然驚く。

 本来、神候補生となる中学生には一人につき一つの能力を得る。
 ゴミを木に変える、手拭いを鉄に変えると言ったような能力を。
 しかしカルパッチョの能力は『他人の能力をコピーする』と言う能力。
 勿論条件はかなり厳しいが、ロベルトの参謀の立場を利用しクリア。
 傘下にいた人間の能力を一人で保有すると言う無茶苦茶な力を得ていた。
 ビーズを爆弾に変え、マントを翼に変え、口笛はレーザーとなるのがこの男。
 本来は黒影が所持した能力、影を粘土人形(クレイマン)にする力も勿論使役可能だ。


201 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:23:30 mgcmtoRM0
「これで俺が本体かどうかもわからねえべ!!
 さあ、本当に撃つって言うなら、それがてめえの最後だぜ?」

 リコの表情は青ざめる。
 これはつまり、仮に弾丸が出たとしても攻撃が決まらない。
 寧ろ致命的な隙を晒すことになりかねない状況に陥っていた。
 ずっと逃げ続けてきたから、彼がいつ本物からすり替わったかさえ分からない。
 特に彼女の場合は影から作ると言う能力の限定条件を知らない以上仕方ないことだ。
 絶体絶命。勝ち目がない。負けを確信せざるを得なかった。

(それにしても、これはラッキーだ。
 神候補生すらいない可能性もあるなら、優勝も難しくねえべ。)

 神候補生となる人物以外に能力で危害を加えると、
 その人が持っている才を失うと言う大きなリスクがある。
 だがカルパッチョは察した。こんな舞台で能力の使い過ぎで消滅するなんて展開、
 乃亜は望まないと。何となくではあるが彼はロベルト同様の性格をしていると感じた。
 そんな男が、才を全部喪うことで退場をするなんて参加者を望んで呼びはしない。
 だから分かった。この戦いでは才は失わない。能力をいくら行使してもいいのだと。
 となれば無敵だ。才を失うことなく戦える。条件さえ満たせばいかようなこともできる。
 多くの能力は範囲や被害が大きすぎて、一般人に攻撃が当たって才を失いかねない。
 そんなリスクを負うことなくできると言うのであれば、思う存分暴れられる。
 まさに独壇場。ロベルトがいない限り、自分は絶対に負けることはないと。
 一度は敗北した植木耕助であろうとも、もう二度と負けはしないだろう。

「口笛をレーザーに変える力!!」

 口笛の音をかき消すように光線が放たれる。
 咄嗟に光のせいで足がもつれたことで転倒し、運よく回避には成功
 後方にあった樹木は台風にでも見舞われたように圧し折れて倒れた。
 死を確信せざるを得ない状況に、リコは心が折れそうになる。

(此処で、終わり?)

 嫌だ。冒険は始まったばかりだ。
 ニャオハのことだって段々わかるようになってきた。
 ライジングボルテッカーズの皆や色んなポケモンとの交流もしてきた。
 辿り着いた島ではロイと言う少年と交流を得た。形は違えども、
 彼女にとっては逃避行だが旅は始まったばかりのようなものなのだ。

(こんなところで、終わりたくない!!)

 覚悟を決める。
 弾丸はないとは分かっている。
 けれど、この引き金を引くことは何かがあると言うこと。
 恐怖はある。銃とはそういう使い方だ。空であってもそれを頭に向け放つ。

『これをつけて、いつかリコも冒険に行く日が来るんだろうねぇ。』

『来るかな……? 冒険って怖いよね?』

『怖いのは最初の一歩だけ。踏み出せば見たことない景色が広がって、
 怖かったことなんて忘れてしまうのさ。ポケモンと一緒なら大丈夫。』

 祖母が言って言っていた言葉とは大分違う。
 ペンダントは今やなければ、冒険ではなく殺し合い。
 ポケモンとも一緒じゃない。でも、確かに共に戦うそれはいた。

 ポケモントレーナーとは常に『冒険』をするもの。
 同時に、彼女はエクスプローラーズからの『逃走』を願う。
 逃げつつも、前へと進まんとするその叛逆の意志に呼応するように弾は突き抜ける。
 血は出ない。出てきたのは反対側の頭部からガラスのような割れると音と共に、
 ハープを背負った、何処かリコの髪型を彷彿とさせる姿のロボットめいた姿。
 そんな謎の存在が彼女の背後から飛び出してくる。





 我は汝、汝は我。
 我は汝の心の海よりいでし者。
 幽玄の奏者───オルフェウスなり。





 それが何か分かるはずがなかった。
 彼女のトレーナーのような前向きな心と、
 彼女の逃避行を願った心が形となった己の仮面、ペルソナ。
 でもなぜか感じる。これは自分だ。前へ歩まんとする自分だと。
 当然、カルパッチョモそれを知ることはない。

「な、なんだべその能力───」

 言葉を言い切る前にポケモンに指示するように念じた。
 すると背負っていた竪琴を、まるで刀剣類か何かのように横薙ぎに古い吹き飛ばす。
 殴ったカルパッチョは一瞬にして消えた。つまりどちらも言う通り年度人形んなのだと。
 気付いた瞬間リコは走り出す。何方も偽物なら本物は別の所から機会を伺っている。
 走り出すと同時に、先程の場所には木々にも迫る巨大な鍬のような大鎌が振り下ろされた。
 土を大鎌にする能力は、当たれば両断は免れなかったことに冷や汗を掻くが戦いは続く。

「能力を得たからと言っていい気になるんじゃねえぞ!!」


202 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:25:16 mgcmtoRM0
 粘土人形を五人ほど横に並べる。
 並べると同時に口笛からレーザーを放つ。
 本来の使用者、明神と違い威力は低いが殺傷力は本物。
 受ければひとたまりもないものだが、リコだって単なる少女でhない。

「ハッ!」

 ジャンプしながら木の枝へと捕まり、回避。
 ビーズ爆弾と違いレーザーは直線的な攻撃だ。
 だから避けること自体はそう難しくはなく、
 そのままロイと一緒に逃げたように、木の枝を続けてジャンプして逃げていく。
 しかも木の上へ逃げたことで木の葉や暗さが邪魔をするせいで、
 具体的な位置がつかめず、ビーズもレーザーも立て続けに外してしまう。

(クソッ、トマトがありゃ余裕で何とかなってるが……!!)

 カルパッチョの能力は確かにすさまじい。
 だが彼の持つ能力のほぼ全てには条件と言うものが存在する。
 レーザーの為には口笛を、爆弾の為にはビーズが必要なように。
 つまり彼は能力こそ多彩だが持っている支給品に左右されやすい。
 一番有効打となりうるトマトやBB弾がないのは余りにも痛いことだ。
 何よりも、能力が多すぎて適切な攻撃手段を即座に用意できない熟練度の低さだ。
 ビーズを空へばらまいて、お互いの位置を入れ替えれば即座に戦いは終わったのだから。
 だから仕えていたロベルトにも酷評されてしまうのが、彼の弱さでもあるのだが。

「だが! 逃げれるとは限らねえべ!」

 あくまで遠距離攻撃が当てられないだけ。
 マントを翼に変える力で飛翔し、リコを追跡する。
 人間の飛び移る動きなんかよりもずっと素早く、時期に追いつかれるだろう。

(何か、この子のできることって書いてないの!?)

 特殊な力こそ得たが、ポケモンにおける技は分からない。
 どうしたものかと思いながら逃げつつ支給品からそれがないかと調べる。
 探すのだが───

「……へ?」

 出てきたのはもっと別の意味で凄いものだった。
 最早ランドセルをオーバーしたサイズの翼竜が飛び出してきたのだ。
 空を舞うのは、例えるならばプテラノドンと言うべきだろうか。
 いや、彼女の世界で言うならばこれはポケモンのプテラが近いだろう。
 サイズ自体は全長二、三メートル程度と、そこまで巨大ではない。
 翼は骨から青い炎が出てるようにも見える綺麗な飛膜を有しており、
 刺々しい尾や牙は、石のような灰色に染まった姿も合わさり化石のようでもある。 

(え、これポケモン!? さっきからなんなのこれ!?)

 次から次へと未知への体験、
 さながら探求するライジングボルテッカーズの如し。
 理解はできないが、これなら状況の打開ができると思った。

「お願い! 私を掴んで飛んで!」

 このまま走っても追いつかれてしまう。
 今しかないと、木の幹から空中へと身を乗り出す。
 飛び出したリコの肩を両足で掴みながら大空を舞い逃走する。

「逃がさねえって言ってるべ!!」

 無論、飛べるカルパッチョも追走をやめない。
 舞台は森から空への追走劇が始まるが、

「えっと、何とかできる攻撃をお願い!!」

 超絶アバウトすぎるものをオルフェウスへ指示する。
 ただ、その命令で出せる攻撃が一つだけあったりした。
 竪琴を鳴らすと放たれる小さな炎魔法、アギ。下級の攻撃なので、
 決して大きなものではないが、当たれば無視できない攻撃でもある。
 飛んできたそれをカルパッチョはギリギリのところで躱す。

「うお、あぶねえ! だがこれならビーズの……」

 そう、ギリギリだ。
 彼が羽織っていた翼ははかすってしまい、燃え始めていた。

(しまった!!)

 彼の翼はあくまでマントをベースに翼にしているだけだ。
 もし燃え続けてその翼がマントと認識されなくなったら落下は免れない。
 元々この能力を持つカバラは即興で補充したメンバーの一人のもの。
 具体的な能力の云々を細かく聞いてはないので解除の恐れは存在する。
 落下すれば大ダメージは免れないことを察し、飛ぶのはやめて地上へ降り立つ。

「だが攻撃はやめねえべ! 口笛をレーザーに変える力!」

 翼竜は灰色よりで空も暗いが。
 大まかな位置は分かるので最後の一撃だけは決めようとする。
 狙いはうまく決まらなかったものの、翼竜の翼には被弾。

「え!?」


203 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:26:41 mgcmtoRM0
 致命傷ではないにしても、
 バランスを崩した結果、リコたちは墜落していく。
 遠くへと落ちたため、生身のカルパッチョでは追跡は翼をマントにすれば可能だろう。
 だが数が厄介だ。試しに粘土人形を出しているが、数が一度に出せる数が減っている。
 他の能力も恐らく制限されている。流石に自分にだけ有利すぎる環境ではないと気付いた。
 此処は今も使うことができないトマトをマグマに変える力と言った他の能力も、
 どんな制限を去れているかの確認をすることを優先したほうがいいと悟る。

「ああいう奴にはそういう感じでバランスのつり合いとるって訳か。
 植木に負けた以上油断するつもりはなかったが……能力もねえ奴に負けたのは癪に障るべ。」

 目的もないし、試しにリコの落ちていった方向を目指してみる。
 他の参加者と接触し、指輪やトマトなど他の限定条件となる道具を確保しておきたい。
 狡猾、卑劣な参謀は此処でもきっと変わらないだろう。

【カール・P・アッチョ(カルパッチョ)@うえきの法則】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ビーズ@うえきの法則(個数不明)、スーパーマント@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝かロベルトがいたら優勝させる。
1:ロベルトがいたら優勝はロベルトに優先
2:トマト、携帯電話と言った条件の為のアイテムが欲しい
3:あの女(リコ)を追いたいが、能力の制限の確認の優先

[備考]
※参戦時期は植木に敗北後
※名簿にどう記載されるかは採用され次第お任せします
使用できる能力の制限は以下の通り
制限なし       :手拭いを鉄に ビーズを爆弾に 土を大鎌に 竹みつを大鋏に
後続にお任せ     :指輪をロケットに 影を鉄人形に 電気をお砂糖に トマトをマグマに
以下の能力は制限あり
影を粘土人形に    :数は上限あり(後続にお任せだが多くても十体程度)
マントを翼に     :刃は飛ばせない、マントの損耗具合で翼の形状が歪む
口笛をレーザーに   :威力の制限(どれだけ遠くとも1エリア端まで)、威力低下
BB弾を隕石に    :特になし
相手の思考を電子メール:タブレットでは不可能。携帯電話のみ
互いの位置の入れ替え :連続使用不可能
明神の違法で得た『メンコを丸ノコに変える力』は多分知らないので不明
影を粘土人形にする能力でマントや指輪までコピーできるかも後続にお任せします




 あの後、結果的に墜落することになったリコ。
 ただオルフェウスが守り、翼竜も気を遣ってくれた。
 お陰で木々がクッションとなって大怪我だけは免れている。

「なんとかなったー……二人とも、ありがとね。」

 墜落した木の上で二匹(?)の頭を撫でるリコ。
 しかし、こんなポケモンたちは見たことなくて不思議に見やる。

「そういえばポケモン図鑑も支給されてたし、分かるかな。」

 翼竜が飛び出す前にちらりと見えたそれを取り出す。
 手のひらに乗るサイズのそれは、恐らくはポケモン図鑑だ。
 カントー地方のポケモン研究の権威、オーキド博士が使っていたものに似ている。

「えっと、これであなた達の事わかるかな?」

 試しに仲間となる二人について、図鑑でわかるか調べてみる。
 しかし、当然ポケモンではなく出てきた情報は。

「ペルソナに、セルヴァン?」

 ポケモントレーナー、リコ。
 相棒のニャオハはおらず、周りにいるのはポケモンとは別の未知なる存在だった。
 何もかもが分からないままではあるが、彼女の目的は今までともさほど変わらない。
 殺し合いと言う行為から逃げ続け、乃亜の企みを潰す。それだけだ。


204 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:27:05 mgcmtoRM0
【リコ@ポケットモンスター(アニメ)】
[状態]:疲労、ダメージ(中)、ペルソナ使い
[装備]:ポケモン図鑑@ポケットモンスター、召喚器@ペルソナ3、ヴォル@よるのないくに2〜新月の花嫁〜
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:殺し合いはせず、乃亜までたどり着く。
1:知り合いは居ないよね……?
2:あの人(カルパッチョ)のことを誰かに知らせないと。
3:ニャオハもいるのかな……悪い人に支給されてなければいいけど。
[備考]
※参戦時期は四話。服装は水色の上着を羽織った状態
※謎のペンダントはありません。
※オルフェウスの外見は髪型はリコ寄り、身体女主人公寄りの姿です
 現在所持するペルソナは愚者「オルフェウス」のみです
 オルフェウスのスキルは:突撃 アギ タルンダ

【召喚器@ペルソナ3】
リコに支給。ペルソナ3におけるペルソナ召喚の為のアイテム。
自分の頭部に向けて引き金を引くことで、現実でペルソナを召喚可能。
ペルソナ召喚が不安定なリコにはこれがないとうまく召喚できない
なお召喚されたオルフェウスについては雷、闇が弱点で、魔法、物理、補助といろいろできるが、
まあ結局初期ペルソナなのでそんなに強くなかったりする。もしかしたらタナトスとかになるかも

【ヴォル@よるのないくに2〜新月の花嫁〜】
リコに支給。従魔(セルヴァン)と呼ばれる使い魔。
使用者が死亡するまでの間は使用者の命令に従って行動する
ヴォルは突進によるスピードと攻撃力が高く、一対一において強い性能を発揮する翼竜。
また肩を掴んで移動すると言った行動も可能。アルーシェのような存在ではない為意思疎通は不可能。
制限として使用者の近くか、同じエリアにしかいられない。
長い間化石として眠ってたため現代のおしゃれには疎くて、服にも理解が浅い。
因みに究極進化ずみである(飛膜が青いので)

【ビーズ@うえきの法則】
何の変哲もないビーズ。だが鈴子・ジェラードの能力により、
ビーズを爆弾に変える力によって殺傷武器と化している。

【スーパーマント@大乱闘スマッシュブラザーズシリーズ】
カルパッチョに支給。元はスーパーマリオワールドの羽根マリオだが、
性能面の考慮をした結果大乱闘スマッシュブラザーズの方を踏襲とする
マリオの必殺技の一つで、マントを振るえば飛び道具を反射することができる
飛び道具に類するものであれば弓でも電撃でも大概のものは反射可能だが、
本ロワでは制限としてマントのサイズ以上のもの、ビームのような貫通性あるのものは不可能
また、相手にぶつけると相手の向きを入れ替えることもできたりする
多少焦げたが多分使用には問題ない

【ポケモン図鑑@ポケットモンスター】
リコに支給。ポケモントレーナーではお馴染みものもの。カントー地方のタイプ。
本ロワでは主に生物型支給品にのみ適用される。技とかも見れる。
参加者であっても、人でなかったらもしかしたら見れるかもしれない。個人情報漏洩待ったなし


205 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:27:32 mgcmtoRM0
以上で投下終了です


206 : サツバツダイアリー ◆EPyDv9DKJs :2023/05/14(日) 13:32:57 mgcmtoRM0
カルパッチョの状態表に忘れ物ありました
※本ロワでは神候補生以外を能力で攻撃しても才は減りません


207 : ◆7PJBZrstcc :2023/05/14(日) 13:59:42 RPI0zlZQ0
二本投下します


208 : ◆7PJBZrstcc :2023/05/14(日) 14:00:44 RPI0zlZQ0
「ロプロス! ロデム! ポセイドン!」

 子供たちが殺し合うの会場の、海が見えるどこかで学生服の少年が何やら叫んでいる。
 錯乱しているわけでは無い。彼は呼んでいるのだ。彼のしもべを。

 彼の名前は山野浩一。
 元々はごく普通の中学生として生まれ育ってきたが、実は五千年前に時の権力者にバベルの塔を作らせたバビルの力を受け継ぐものである。

 そもそもバビルとは五千年前に地球に不時着した宇宙人だ。
 彼はなんとか故郷に帰る為に権力者に取り入り、仲間に気付いてもらえるよう巨大な塔を作ることにした。
 しかし、当時の地球人には機械の知識がなく、その為に些細なミスから塔は爆発し、崩れてしまった。
 バビルはここで帰還を諦め、一人の地球人と結婚し子を成した。
 そんな彼にはある心配があった。
 彼が持つ技術はオーバーテクノロジー。これを手に入れる者が地球を我が物とするに違いない。
 そこで彼は子孫の中に自分と同じような力を持つ者が現れたなら、その者に全てを受け継いでもらい、自身の二世となってもらおうと考えた。
 その受け継いだ者こそが山野浩一、またの名をバビル二世である。

 そして浩一がさっき叫んで呼んでいるのはバビルのしもべの名前だ。
 いずれもバビルの力を受け継いだ者のみが従えることができるロボットであり、地球のどこであろうと呼んだらすぐに来るはずだ。
 しかし、いくら呼んでもしもべは来ない。
 まあ、こんな大それたことをしている時点でその程度の対策はしているのだろう。
 そうでもなければ、あまりにも殺し合いが彼に有利すぎる。それほどまでにしもべは強いのだ。

 ところで、事情を鑑みれば浩一の行動は妥当ではある。
 しかし、そんなことを知っている者は少ない。知らない方が圧倒的に多いのだ。
 すなわち――

「何やってんのさ!」

 叫んでいる浩一の行動をとがめる者が現れる、ということである。 





「どうして……」

 学ランを着た高校生、武藤遊戯は乃亜の行いに戸惑っていた。
 彼からすれば乃亜は確かに出会ってしばらくは非道な行いに手を染めたものの、最終的には命を張って自分達を爆発する基地から逃がして死んだはずだからだ。
 そんな少年が再び現れ、かつて以上に非道な振る舞いを見せている。
 一体何があったのか、遊戯には理解できない。
 だが必ず止めなければならない、と決意した。

 しかしここで遊戯はあることに気付く。
 彼が肌身離さずいつも持っているはずの千年パズルと、デュエルモンスターズのデッキがなくなっているのだ。
 彼は即座にランドセルを検めるが、中には千年パズルもカードもなかった。
 途方に暮れそうになるが、とりあえず彼は他の参加者と合流しようと出発した。

 するとすぐに何かを叫んでいる少年を見つけた。
 こんな時に危ないと思い、即座に注意したがどうやら錯乱しているわけでは無かった。

 一方、注意された側の浩一は、遊戯の行動と内心を超能力で読み即座に信頼し、場所を変えて情報交換をすることにした。
 その結果分かったことは、彼にとって衝撃だった。

「あの乃亜と遊戯さんは一度戦っていて、なおかつここは現実じゃないバーチャル空間かもしれない……!?」

 遊戯のもたらしたものは浩一にとってとても有益だ。
 TCGという概念すら存在しない1970年代の人間である彼にはデュエルモンスターズがどういうものか今一つ理解しきれていないが、バーチャル空間についてはなんとか理解した。
 伊達に異星人がもたらした超科学に関する知識を受け継いだわけでは無いのだ。

 しかし、当の遊戯は自身の語った内容になぜか懐疑的だった。

「うん。乃亜の体は昔死んでいて、精神だけがバーチャル空間に移されてたんだ」

 だがそのバーチャル空間は、ミサイルで基地が消滅したことで亡くなった筈である。
 だからこそ遊戯はここがバーチャル空間なのか判別できなかった。
 極端な話、あれが乃亜に化けた別人かもしれないし、千年アイテムか何かで現世に蘇った乃亜かもしれないのだから。

 疑問も課題もお互い山ほどあるが、ともかく互いに信頼し合った二人は行動を共にすることにした。
 殺し合いを止め、元の世界に帰る為に。


 なお、浩一にも自分のランドセルを検めてもらったが、千年パズルは影も形もなかった。


209 : 学ランコンビ ◆7PJBZrstcc :2023/05/14(日) 14:01:15 RPI0zlZQ0


【山野浩一@バビル二世(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み。千年パズル@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ はなし)
[思考・状況]基本方針:乃亜を倒し、殺し合いを止める
1:まずは首輪を解除する
2:ここはバーチャル空間……?
[備考]
※参戦時期は第一部終了後です。
※現状では三つのしもべは呼んでも来ません。
※超能力にも制限が掛かっています。詳しい内容は当選した場合、次の書き手氏にお任せします。

【武藤遊戯@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み。千年パズル@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ カード@遊戯王シリーズ はなし)
[思考・状況]基本方針:乃亜を止める
1:浩一君と行動する
2:知人が参加していたら合流したい
3:千年パズルも探したい
[備考]
※参戦時期はバトルシティ編終了後です


210 : サイヤの血筋 ◆7PJBZrstcc :2023/05/14(日) 14:01:50 RPI0zlZQ0
 オレンジの道着を見たツンツンの髪形をした少年、孫悟空は目の前の相手をまじまじと眺めていた。
 彼は最初、殺し合いに連れてこられた時は乃亜の所業を見て憤っていたし、今でも倒すつもりである。
 だがここに来て初めて出会った参加者を見て、悟空は不思議そうにこう言った。

「おめぇオラにそっくりだな、オラに化けた妖怪か?」

 何せ、目の前の相手は自分そっくりなのだ。
 服装も若干違うが同じような道着、髪形も顔、身長もそっくりだ。
 いっそ兄弟なら話は早いが、悟空に兄弟はいない。
 だから彼は、目の前の相手が何者か気になった。

「ぼくは妖怪じゃないやい!」

 一方、勝手に妖怪扱いされた少年、孫悟天としてはたまったものではない。
 確かに自分はサイヤ人と地球人のハーフで、人と違うのは間違いない。
 だからと言って妖怪扱いされる謂れはないので、悟天は目の前の相手に怒った。


 二人は知らない。
 悟空からすれば目の前の妖怪は自分の未来の子供であり、悟天からすれば目の前の少年は産まれる前に死んだ自分の父親の、子供のころの姿だということを。
 すなわち、二人は会ったことも無いのだが、血筋で言うなら親子であるということを。


【孫悟空@ドラゴンボール】
[状態]:健康、疑問
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜っちゅう奴を倒す
1:おめぇ妖怪か?
[備考]
※参戦時期はピッコロ大魔王を倒した後です。

【孫悟天@ドラゴンボール】
[状態]:健康、怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜を倒す
1:ぼくは妖怪じゃないやい!
[備考]
※参戦時期は第25回天下一武道開始前です。


211 : ◆7PJBZrstcc :2023/05/14(日) 14:02:32 RPI0zlZQ0
投下終了です。
抜けてしまいましたが、一レス目も学ランコンビです


212 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/14(日) 14:50:33 JTk.15uY0
投下します


213 : うさぎ好きと妖怪兎 ◆.EKyuDaHEo :2023/05/14(日) 14:50:58 JTk.15uY0
「こ、ここ何処なのかしら…ネネ、お家にいたはずなのに…」

少女、桜田ネネはこの状況に困惑、そして恐怖していた
彼女が目を覚ますとそこは見覚えのない場所で乃亜と名乗る男の子が急に殺し合いをしろと言ってきた
それに反抗した少年二人は悲惨なことに殺されてしまった
ネネも幼稚園児だ、殺し合いというのがどんなものかいまいち良く分からなかったが『殺し』という言葉から嫌な予感がし、その嫌な予感が的中してしまった…

「ネネ、お家に帰りたいよ…」

普段強気で同じメンバーのかすかべ防衛隊の男達からは恐れられている彼女だがそれでも立派な幼稚園児だ…今置かれた状況が怖くて怖くて仕方がなかった
その時…

「え…?」

ネネが泣いていた時、そんな彼女の視界に一瞬ちらっと何かが移った

「うさぎ…さん…?」

それは兎の耳らしきものがあった、しかし何処かおかしい…耳は兎そのものなのだが良くみると…人間の見た目をしていた

(うさぎさんだと思ったけど…見た目は女の子ね…コスプレでもしているのかしら…)

こんな時しんのすけがいたら「バニーガールに憧れてるのかも」と言いそうだなと思いつつ、一人は心細かったので声を掛けてみることにした

「ね、ねぇ…」
「うわっ!びっくりした〜…」
「あ、ごめんなさい、その…一人が心細かったから…」
「まぁ状況が状況だからね…無理もないよ」
「あたしネネっていうの、えっと…」
「あ〜名前ね、私は因幡てゐ、てゐって呼んでくれていいよ」

兎耳の少女は因幡てゐと名乗った

「そういえば、うさぎさんの耳とか尻尾があるけど…」
「あ〜そのことね、まぁ別に隠す必要はないか…実は私、人間じゃないのよ、まぁもっと詳しく言えば妖怪ね」
「え〜!?妖怪!?」

てゐの発言にネネは心底驚いた、妖怪というもの事態は良く本とかで見たことあったが実際に見たのは初めてだった

「驚いたでしょ?恐らくネネの世界では妖怪とかは実在しないのね」
「ね、ネネの世界…ってどういうこと?」
「じゃあ軽く質問ね、ネネの住んでるとこって何処?」
「ネネの住んでるところは埼玉県の春日部よ」
「やっぱりね、私は幻想郷っていうところだけどそんな場所聞いたことないし、ネネの世界にも幻想郷なんてないでしょ?」
「た、確かに」
(となると…あの乃亜って子、色んな世界から参加者を集めてる可能性があるわね…)

ネネを横目にてゐは密かに考察していた

「でもネネ、てゐちゃんに会えて良かった」
「え?」
「うさぎさん大好きだし、てゐちゃんは妖怪なのかもしれないけど、ネネ、てゐちゃんとお友達になりたい!」
「ネネ…」

普通の人間の、純粋な女の子からの率直な感想…てゐは悪い気はしなかった

「ふふっ、嬉しいこと言ってくれるわね、良いわ、これも何かの縁かもしれないしね」
「本当!?」
「ええ、とりあえず一緒に行動しましょう」
「うん!」

こうして二人は共に行動することを決めた


214 : うさぎ好きと妖怪兎 ◆.EKyuDaHEo :2023/05/14(日) 14:51:14 JTk.15uY0
◆◆◆



(とは言ったものの…どうするかな…)

てゐは考えを巡らせていた、最初は生き残るためならどんな方法でも使おうと思った
元の世界に帰る方法があるならそれを試すし、ないなら殺し合いに乗るしかないとも思っていた
しかし…

『うさぎさん大好きだし、てゐちゃんは妖怪なのかもしれないけど、ネネ、てゐちゃんとお友達になりたい!』

横で嬉しそうにしているネネから言われた言葉が引っ掛かって仕方がない…
殺し合いに乗るということは、友達となったネネさえも殺すということ…会ったばかりだからさほど気にしなくてもいいはずなのに、何故かそれだけはやりたくないと思ってしまった

(まぁ…追々決めていけばいいか…)

この先何が起こるかなんて分からない、またその時に考えようと、てゐは方針を頭から振り払った


【桜田ネネ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:お家に帰りたい
1:てゐちゃんと一緒に行動する
2:皆(かすかべ防衛隊のメンバー)を探したい
[備考]
※映画での出来事を経験しています
※殺し合いについてはある程度理解できています

【因幡てゐ@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本行動方針:とりあえず今できることをする、殺し合いに乗るかどうかは今後考える
1:ネネと一緒に行動する
2:色んな世界から参加者を集めてる可能性あるわね…
3:最悪殺し合いに乗ることも視野に入れたいけど…どうするかな…
[備考]
※『人間を幸運にする程度の能力』は制限されています


215 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/14(日) 14:51:34 JTk.15uY0
投下終了します


216 : 摩訶般若波羅蜜多心経 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 18:44:42 xz2hq/.c0
投下します。


217 : 摩訶般若波羅蜜多心経 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 18:44:53 xz2hq/.c0
「仏説摩訶般若波羅蜜多心経 ……」

熱心にお経を唱えるショタ……ならぬショタ坊主。
それは、乃亜に弄ばれた兄弟の魂を安らかに送り出すために。

坊主の名は覚蓮坊。

小坊主ながら乱心した閻魔大王を改心させるため、単身地獄を練り歩き、ついにその仏命を果たした高僧である。

「必ずや、そなたらの無念を晴らすことを誓いもおす」

カッ―――

眼を見開く覚蓮坊。

「仏陀様。私に御仏の加護を!」

覚蓮坊、動きます。

【覚蓮坊@地獄めぐり 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:御仏の力を持って乃亜を討つ
1:迷える参加者を保護しつつ、乃亜の甘言に乗った参加者を討つ
[備考]
閻魔大王に憑りついていた邪悪な獣を滅ぼしたED後からの参戦です。
龍神への変身は一度行うと12時間たたないと変身できません。


218 : 最弱テイマーは殺し合いに巻き込まれました ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 18:45:51 xz2hq/.c0
齢5歳にして、私の人生はどん底に落ちた。
だけど、まさかそれ以上のどん底があるとは、思わなかった……

「……」

足取り重く。
それでも前へ前へ歩く少女。
少女の名はアイビー。
スキル【テイマー】の【星なし】

「……」

どうしてこんなことになってしまったのだろう。
ラトメ村から出て、オトルワ街を目指していたのに、急に眠気がきて私は寝てしまった。
そして目が覚めたら……殺し合いをやる羽目に。
てっきり、ヴェリヴェラ副隊長さんが言っていたやばい人さらいの組織に捕まったのかと思ったけど、違うみたい。
また、私を追いかけてきたラトミ村の人でもなさそう。

「ソラ……」

ソラ。
私が初めてテイルした魔物。
ソラがいなければ、私はずっと独りぼっちだった。
家族に捨てられた私にできた友達。
だが、その友達も今はいない。

星なしなど、この世に存在していいはずがありません。

父の言葉が脳裏に浮かび上がる。
やっぱり、私はこの世に存在してはいけないのだろうか。

―――行くのか?

「ッ!」

―――いい旅を

「わ……」

私は生きたい。
神様のところに行ってたまるか!

顔を上げ、私は深淵を進む。
生きるために。

そう思った瞬間。
私は闇から飛び出てきた獣のような少女に組み伏せられた。

「オマエに恨みはなイ。だけど、こうしないとミカンの元に戻れなイ」

少女は、アイビーを組み伏せると、謝罪の言葉と同時に腕を振りあげる。
アイビーの命を刈るために。

「ッ!!」
(ごめんね……ソラ……そしてアダンタラ)

だめ―――

もう駄目だ。
終わりだとアイビーは目を瞑る。

しかし―――

命を刈り取る爪はアイビーを切り裂かなかった。

「……?」
「オマエ……なぜだが、オマエの匂いを嗅いでいると安心すル」
「え?」

襲撃者の言葉にアイビーはきょとんとする。

「ま、ミカンほどじゃないけどナ」

襲撃者はへへっと鼻をこすると、私から離れた。

☆彡 ☆彡 ☆彡


219 : 最弱テイマーは殺し合いに巻き込まれました ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 18:46:30 xz2hq/.c0

あれから、アイビーと少女は情報交換をした。
そこで、アイビーは襲撃者であった獣少女の名前を知る。
名はウガルル。
魔法少女であるミカンに憑いていた悪魔。

「オレ、どうしてもミカンの元へ帰りたイ。ウガルルはミカンのファミリーの一員だかラ」
「……」
(家族……)

自分とは違い、待つ家族がいる。
悲しむ家族が。
魂がないといっているけど、ミカンさんのことを話すときの顔。
決して、魂がないものとは思えない。
ウガルルの言葉にアイビーは決意する。

「よかったら、私と一緒に抗いませんか?」
「……オマエト?」

アイビーの申し出にウガルルはきょとんとする。
まるで、先ほどの逆バージョン。

「はい。乃亜って子が、このまま約束を守るとは、私は思えません。なら、少しでも帰れる道を探すのも手じゃないかなって」
「……ワカッタ、だけど、優勝しか道はないのだとしたら、オレはそっちを選ぶからナ」
「自分の道は自分で決める。ウガルルさんがそう決めたのなら私は止めない。だけど、私も死ぬつもりはないよ、生きたいから」
「フン。それと、ワタシのことはウガルルでいイ」
「それじゃあ……よろしくね、ウガルル」

こうして、アイビーはウガルルを仮テイルできたのでした。

―――まる。

【アイビー@最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:ウガルルと行動を共にする
2:ウガルルが優勝を選ぶ道を選んだら、生きるために抗う
[備考]
漫画12話冒険者パーティを見かけた直前からの参戦です。

【ウガルル@まちカドまぞく 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:アイビーと行動を共にする(仮契約)
2:優勝しか帰れる道が無いのだとしたら優勝する
[備考]
肉体はウガルル召喚計画で得た依代です。
漫画6巻終了からの参戦です。


220 : 最弱テイマーは殺し合いに巻き込まれました ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 18:46:40 xz2hq/.c0
投下終了します。


221 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:14:57 kMWIRg6g0
投下いたします。

今回は3作品連続で投下させていただきます。


222 : 何かをするために ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:16:23 kMWIRg6g0
「―――率直に言おう、私はこの殺し合いを止めたいと思っているんだ。だから、君さえよければ、私の仲間になってくれないだろうか?」

ここは会場内の廃墟が立ち並んだ場所、そこには女騎士がいた。

竜をイメージした尾に角、そして胸元が開かれた上半身にハイレグというべき下半身といった、やけに露出度の高い恰好をした女騎士だった。

彼女の名前は岸部……もとい『ラ・ピュセル』、この場ではあえて詳細を伏せるものの『剣の大きさを自由に変えられるよ』という能力を持つ魔法少女である。

そんな彼……彼女は、目の前にいるロボットのような生き物と話し合いをしていた。

「うん、ラ・ピュセルさん……ぼくも、こういうことは止めた方がいいって…そう思うから、ついていきたいと思う」

それは妙に頭でっかちで額に巨大なビーム砲のようなものが付いた、どことなくロボットアニメに出てきそうな風貌をしていた。

その少年の名前は『ダブルゼータくん』。常人とは異なったテンポと思考回路を持つが純粋で何事にも真面目に取り組もうとする少年である。
そして彼もまた、彼女と同じようにこの殺し合いを止めたいと、そう思っていた。

「そうか、一緒に戦ってくれるんだね。ありがとう、キミみたいな仲間が出来て心強いよ」
「うぅん……ぼくの方こそ、足を引っ張っちゃうかもしれないけどよろしくお願いします……」
「大丈夫さ、本来ならこんなことに慣れたくはないものだからね。それに困った時はお互い様だよ」

こうして二人は協力しあうことを約束した。

「それで、これからどうするつもりなんですか?」
「そうだね、まずはこの辺りに他の参加者がいないか、探し回ろうか。恐らくだけど、私たち以外にも殺し合いを止める為に動いている人がいるはずだから、その人たちと協力しようと思うからね」

そう言って共に歩き出す二人だったが、その途中でダブルゼータくんはラ・ピュセルにあることを質問した。

「ところでラ・ピュセルお姉さん……それとは別に、一つ聞きたいことがあるんだ」
「ん?なんだい?」

「お姉さんの『ぐもらごもも』って何なの?」
「……?『ぐもらごもも』?」

それはおそらくダブルゼータくんにしか分からない表現で、当然ながら彼女はそれに対し聞き返してしまった。

「ぼくの『ぐもらごもも』は、"好きな人のために生きるための力を手に入れたい"という事なんだ。……だからお姉さんは、どんな『ぐもらごもも』を持っていて、そのために何をしたいのかを知りたかったんだ」

彼女のその疑問に対しダブルゼータくんは答えた。『自分がこれから、将来何をしたいのか』という事を、彼女に伝えたのだ。
そしてそれこそが彼の言う『ぐもらごもも』を表したものだった。

「(なるほど…『ぐもらごもも』って、『将来の夢』のことか……)そうだね……私は、"魔法少女として誰かを救い続けること"……かな?」

ラ・ピュセルは彼のその言葉を聞いて彼が何を伝えたいのかを理解し、自らもまた『これから何をしていきたいのか』を彼に伝えた。

「魔法少女として誰かを救うこと……それがラ・ピュセルお姉さんの『ぐもらごもも』なんだね!」
「そう、これが私の『ぐもらごもも』だよ。そして君も……素晴らしい『ぐもらごもも』を持っているんだね」
「好きな人のために何かをしたい……それはとても素晴らしいことだと、私はそう思っているよ」

そう言って、ラ・ピュセルはダブルゼータくんに笑顔を見せた。

「よしっ!じゃあぼくも頑張るよ、ぼくの『ぐもらごもも』のために!!」
「フッ、頼んだよ。でも無理だけはしないでね……君の大切な人の為にも、生きて帰らないといけないんだからね?」
「うん、分かってるよ!」

そうして笑いあいながら二人は改めて協力することを確認し、共に歩いていくのであった。


223 : 何かをするために ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:16:50 kMWIRg6g0
【ラ・ピュセル(岸部颯太)@魔法少女育成計画(アニメ版)】
[状態]:健康、変身中
[装備]:魔法の剣@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品、マジカルフォン、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:正義の魔法少女として、人々を守るために戦う。
1:まずは、ダブルゼータくんとともに行動する。
2:自分は車に轢かれて死んだはずなのに、一体なぜここにいるんだ?
3:『ダブルゼータ』……?なぜか、昔のロボットアニメで見たことがある気がする。
[備考]
 参戦時期は、クラムベリーに敗北し死亡した後。
 変身アイテムであるマジカルフォンを没収されていない代わりにランダム支給品が減らされています。
 また魔法の剣は魔法少女への変身とともに召喚されるため支給品には含まれません。


【ダブルゼータくん@ダブルゼータくんここにあり】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本行動方針:ぼくの『ぐもらごもも』のために、そしてみんなのために殺し合いを止めたい。
1:ぼくは、ぼくの『気持ちがよくない』という気持ちを大切にしていきたいから、ラ・ピュセルさんとともに戦いを止めたい。
2:どうすれば戦いを止められるのかは分からないけど、人を殺したくないし殺させたくもないから何かをし続ける。
[備考]
 参戦時期は最終回後、『好きな人のために生きるための力』を手に入れるために旅に出た後。
 制限によりハイメガ砲の威力が下げられており、またビームサーベルとミサイルなどの武器もすべて没収されています。
 ラ・ピュセル(岸部颯太)が、本当は男性であることに気づいていません。


『支給品紹介』
【魔法の剣@魔法少女育成計画】
 ラ・ピュセルの変身とともに召喚される剣で、西洋の両手剣の形をしている。
 自由に大きさを変えることにより空中にいる相手を打ち落としたり足場にするなど様々な活躍をしている。
 ……なお、『自由に大きさを変える』部分についてはラ・ピュセル自身の能力であり、実際は只の剣である。


【マジカルフォン@魔法少女育成計画】
 卵のような形をした携帯端末で、魔法少女間の連絡などといった機能を持つ共通の変身アイテム。
 今回は制限により、魔法少女への変身以外に使用することはできない。


224 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:17:36 kMWIRg6g0
投下終了です。

続いて、2つ目の作品を投下いたします。


225 : コレ、トッテモオイシイヨ! ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:18:11 kMWIRg6g0
ここは殺し合いの会場の中にある公園、そこではどことなくバーガー屋のマスコット風の見た目をした少年が迫りくる影から必死に逃げていた。

その少年を追いかけているのは、巨大な肉切り包丁を持ったセーラー服の少女だった。

「カバなヤツ!逃げられると思っていんの?」

そうしてしばらくその少年が逃げていると、閃光と共に突如としてその頭に何かが直撃し、転倒してしまった。

『何が自分の頭に当たったのか?』、少年は痛む頭を押さえながら立ち上がってそれを確認したところ、衝撃的なものを目の当たりにした。

それはなんと、『力任せに引きちぎられ、神経や頸椎がぶら下がったままの人間の生首がランタンのように光り輝いているという得体のしれないナニカ』だった。

少年はおびえ、叫び、そして腰を抜かしてしまったことにより、少女に追いつかれてしまった。

「ハッハッハ!大人しく私のオジキになりなさい!」

そうして少年は捕まり、少女の持つその包丁で切り裂かれていった。

こうして公園中に苦悶の叫び声がこだまする中、少年は”腑分け”されることとなった……。

【ウマイウマイボーイ@ポプテピピック 死亡】

------------
そして先ほどの少女は一通り腑分けを終わらせると、食事を始めていった。

先ほどウマイウマイボーイを襲った少女の名前はロジー。とある魔術師が、魔王を復活させるための生贄として現代から召喚した女子の一人であり、その際に『薬物の原材料を摂取して、体内でそれを合成する』という能力を得たことで薬物中毒となった少女である。
またその能力から薬の材料となるゴブリンたちを食料として襲い、生のまま捕食し続けるなどカニバリズムにも目覚めてしまった、おぞましい怪物でもあった。

「ん〜♪やっぱり肉は生に限るわねぇ♡」

そんな彼女が食しているものは、言わずもがな先ほどまで生きていた人間だ。
彼女は今まさに、自分が殺害した少年を食べているというわけなのだ。

「それにしてもこの子、なかなか美味しいじゃない……♡もっと食べたいわぁ……」

そう言って彼女はさらに別の獲物を求め、その場を去ろうとするが……

「さてと、これも当然持っていかないと……ってなんで入らないのよ!?ムカつくわね!!」

彼女は自分が先ほど腑分けした肉をランドセルに入れようとしたが何故かそれを入れることができなかった。

そう、彼女に支給されているランドセルには『参加者の死体を入れられない』という制限がかかっているがゆえに解体したその肉たちを運ぶことができないのだ。

「……まあいっか、かなりムカつくけど全部を持って帰れないならしょうがないわ。じゃあ代わりにこれだけ持って帰るしかないわね」

そうして悪戦苦闘し続けていると突如として彼女、ロジーはそう言って腑分けした肉の中からほぼそのままの形を残した一本の足を手に取り、それを持って帰ることにした。

そして彼女はそれを屋台の焼き鳥を食らうかのように生のまま丸かじりをし、その公園を後にするのだった。


【ロジー@Lost Ruins】
[状態]:薬物中毒
[装備]:解体包丁@ELDEN RING、ウマイウマイボーイの足の肉
[道具]:基本支給品、ヘリオスの頭@ゴッド・オブ・ウォーIII、ランダム支給品1〜4(ウマイウマイボーイの分の支給品もあり)
[思考・状況]基本行動方針:カバな奴らを殺し、その美味しいお肉をたくさん食う。
1:もっとたくさんの肉を食う。
2:あのキャベツ頭の子供はどんな味がするのか気になる。
3:解体した肉がバッグに入らないの、本当にムカつく。
[備考]
 公園内にウマイウマイボーイの解体された死体と空のランドセルが放置されています。

『支給品紹介』
【解体包丁@ELDEN RING】
 ロジーに支給。鬼女アナスタシアの得物である、人体を奇麗に捌くための大包丁。
 相手の身体を切り裂くことで使用者を回復させる効果を持つ。
 なお、なぜか『大斧』カテゴリーの武器になっている。

【ヘリオスの頭@ゴッド・オブ・ウォーIII】
 ロジーに支給。クレイトスが太陽神ヘリオスの首を引きちぎって入手した生首。
 目と口から強い光を放つのでランタンや懐中電灯のように利用でき、戦闘では敵を目くらましさせたり高熱によるダメージを与えることもできる。
 なお使うたびに彼の絶命時の叫び声があがるので、結構うるさい。


226 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:18:54 kMWIRg6g0
投下終了です。

続いて、3つ目の作品を投下いたします。


227 : 丸尾くん、覚醒するの巻 ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:19:46 kMWIRg6g0
ここは会場内にある学校、誰もいない教室の中。

そこではビン底メガネをかけた少年がなにかを熱弁していた。

彼の名は丸尾末男。学級委員になることには命を懸けておりそのためならば手段を選ばないこともある一方で地道な努力家であり、非常に真面目で成績優秀な少年である。

そんな彼がこんな場所で何を熱弁しているのかというと……

「フフフ……ズバリ、セ〇クスでしょう!」

ズバリ、彼くらいの年齢の子供が大声で言ってはならないことだった。

「諸君……私はズバリ、セ〇クスが大好きでしょう!」
「平原で、街道で、塹壕で、草原で凍土で砂漠で海上で空中で泥中で湿原で、この地上で行われるありとあらゆるセ〇クスが大好きでしょう!」
「フフフ……〇ッッッックス!! セ〇クス! みんなセ〇クスし続けましょう!激しく、もっと激しく!!」
「男性器と女性器をこすり合わせ、〇液と精〇を混ぜ合わせて、肉と肉が蕩け合うまで交わり続けましょう!」

誰もいないにもかかわらず、彼はただそのヒワイな演説を続けていた。それはまさしく狂人のソレであった。

実を言うとこの場にいるのは本来の『丸尾末男』ではなく、とあるネットミームの影響を受けて変容を遂げてしまった存在なのだ。
ゆえに彼の人格は破綻し、そのネットミームの人物と同様に『性行為に関し熱弁をする危険人物』へと変貌を遂げているのだ。

「こんなこともあろうかと、鍛え続けたこの身体!!この素晴らしい肉体をもって会場内の女たちをメス豚に調教してあげましょう!」

そして一通り演説を終えるとともに彼は上半身の服を脱ぎ捨てるとそこには本来の彼とはかけ離れた、アスリート顔負けの筋肉に覆われた強靭な肉体が露わになった。

「この教室にたくさんの女を連れ込み、延々と犯し尽くしましょう!彼女たちの常識では計れない存在がいることを教え込んであげましょう!」
「さぁ皆さんも一緒に、レッツ・セッ〇ス!」

そう叫びながら彼は自らに支給された、男性器そっくりの卑猥な銃火器を股間にくっつけて何かのメタファーのように火炎を噴き出させるのだった……。


【丸尾末男@ちびまる子ちゃん+カミーユ精神崩壊シリーズ】
[状態]:精神崩壊、筋肉モリモリ
[装備]:ラストキャノン@デッドライジング3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:フフフ……ズバリ、セ〇クスでしょう!
1:みんな、セ〇クスし続けましょう!激しく!もっと激しく!!
2:会場中の女達の穴という穴全てに精液を流し込んで、家畜のようによがらせてあげましょう!
3:鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の鴉を殺す嵐のような〇ッッッックス!をこの地に巻き起こしましょう!!
[備考]
 出展作品(というか中の人ネタ)の関係上、とんでもない変態になっています。

『支給品紹介』
【ラストキャノン@デッドライジング3】
 丸尾末男に支給。左右に赤と青の玉が付いた、火炎放射器と冷気放射器の二つの機能を備えた武器。
 なお男性器そっくりの卑猥な形をしており、何故か股間に押し当てた状態じゃないと使えなかったりする。


228 : ◆L9WpoKNfy2 :2023/05/14(日) 20:20:14 kMWIRg6g0
これで今回の投下は終了です。

以上、ありがとうございました。


229 : おもちゃのチャチャチャ ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 20:55:12 xz2hq/.c0
投下します。


230 : おもちゃのチャチャチャ ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 21:09:56 xz2hq/.c0
「一体、どういうこと……?」

顎に手を当て思案する少女。
少女の名前はシュガー。
海賊ドンキホーテ・ドフラミンゴ率いるドンキホーテファミリーのトレーボル軍特別幹部。

「死んだあの子供って、麦わらよね……」

海馬乃亜の手によって命を散らしたルフィと呼ばれた少年。
シュガーが知っている麦わらことモンキー・D・ルフィは子供ではない。

「それにエースって頂上戦争で死んだはず……」

頂上戦争。それは、黒ひげに敗北したエースを公開処刑しようとする海軍とそれを阻止しに現れた白ひげとの戦争のこと。
麦わら並びにインペルダウンの脱獄者も参戦することで、戦争は泥沼化したが、最後は海軍の大将の一人、赤犬の手によりエースは死亡する結末となった。

「どうやら、あの乃亜ってガキが願いを叶えるって話は眉唾ではなさそうね」

どうやったか手段は分からないが、子供の麦わらにエース。さらに海軍に捕縛された自身をこの殺し合いに招いた。
故にシュガーは乃亜の言葉を信じることにした。

「けど、一つ不満があるわ」

シュガーの容姿は10歳の少女だが、実年齢は22歳。
ロリの定義からは外れる。
しかし、この子供ばかりの殺し合いに選ばれた。
ならば、答えは一つしかないとシュガーは推測する。

「やな、感じ…私、弱いと思われてる」

―――ドン!―――

【シュガー@ONE PIECE 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して若様にその権利を譲る
1:まずは、ホビホビの実の能力がどこまで制限されているか確認する。
[備考]
ドレスローザ編終了後からの参戦です。
ホビホビの実の能力は大幅に制限されています。
人形化できるのは最大二人までです。
二人まで人形化したら人形化した参加者が死亡しない限りできません。
契約で自殺等命を捨てさせる行為は不可能。
人形化しても記憶の改竄はされません。(他の参加者に影響は与えません)
人形を合体させての巨大な頭割り人形は作成不可能。


231 : 宝島 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 21:10:23 xz2hq/.c0
「ど、どういうことなんですの!?」

困惑する一人の少女。
少女の名はミーア。
かつて”わがまま姫”と蔑まれた帝国の皇女。

「わたしくしはたしか、静海の森から領地へ退却していたはず……」

紛争【静海の森の戦い】を防ぐため、自ら現場へ出向き、にげたいという”わがまま”をもって、無事兵隊を全員領地に護衛という大義名分でひかせることが出来た。
その矢先に”これ”

「夢では……ありませんわよね」

ルフィとエースの兄弟が首が吹き飛ぶ場面。
あれは、決して夢ではない。
なぜなら、首がなくなるあの冷たい感触は実体験しているのだから。

「というより、首がなくなるのが、ギロチンから首輪にかわっっただけではありませんか!」
ミーアは嘆く。
そもそも、本来の自分は20歳のとき、革命によってギロチンで処刑された。
だが何の因果か、12歳のころの自分にタイムリープした。
それからというもの、革命に繋がる自身の行動を改めつつ、最悪の未来を避けるために日々奮闘していた。

(このような記憶は身に覚えがありません……)

確かに前世の記憶が全て覚えているわけではない。
それでもだ。
海馬乃亜なる少年。そしてこの殺し合い。
経験なんか絶対にしていない。
そもそも、あの頃の自分がこの殺し合いで勝ち残れるはずがないのは自分がよく理解できている。

「ッ!?そうでした。まずは確認しないといけませんわね」

大事なことを思い出したミーアは自身の持ち物をチェックする。
この異常事態。
何か日記に書かれているのではないかと。

「な、ない!?わたくしの血染めの日記が!」

血染めの日記。
それは、生前自身が綴った日記。
ギロチンにかけられる直前まで詳細に綴ってある日記は残念ながら乃亜によって没収されているようだ。

「……やっぱり、どこまでいってもわたくしの未来は変えることはできないのかしら……」

「……?」
(向こうに人影?・わたくしと同じ参加者かしら?)

ミーアの視線の向こうから人影が見えた。
背丈は自分よりも高い。
ミーアの頭に妙案が思いつく。

(そ、そうですわ。まずは、交渉をして、味方を増やせばいいのですわ!)

海馬乃亜のあの自己中心的な物言いに態度。
おそらく、反感を感じている参加者はそう少ないくないはず。
ならば、乃亜の抵抗するレジスタンスを結成し、自分はその旗振り役としていれば安全の筈。
保身上等。自己中最強のポンコツ姫はここでも健在。
身を守る騎士(ナイト)を確保すべく、人影の人物へ走る。
が、直ぐに後悔する。

なぜなら―――

「……む?」

陰険メガネ👓にそっくりな男がそこにはいたのだから。

【ミーア・ルーナ・ティアムーン@ティアムーン帝国物語 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:目の前の陰湿メガネ👓そっくりの男と交渉する
[備考]
漫画26話ヘルマン子爵領に戻った直後からの参戦です。

【守形英四朗@そらのおとしもの 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:目の前の少女と会話する
[備考]
漫画71話カオスの手によって気絶されられた直後からの参戦です。


232 : 宝島 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 21:10:46 xz2hq/.c0
投下終了します。
投下に少し間が空いてしまい申し訳ありませんでした。


233 : ◆0EF5jS/gKA :2023/05/14(日) 21:51:31 BTgTdGI60
投下します。


234 : 物欲の子亀 ◆0EF5jS/gKA :2023/05/14(日) 21:52:32 BTgTdGI60
命のやりとりを強いられる狂気と血染めの世界へ否応なしに誘われたが
その顔は歓喜に、高揚に、希望に笑っていた。

「今度こそ…おたからをてにいれるでちゅ〜〜〜!!」

未来に大魔王クッパと畏怖される強者の幼き姿、
その名はベビイクッパ。

「もう誰にだって邪魔されたくないでちゅ!
お宝は全部ぜ〜〜〜んぶおれちゃまがいただくでちゅ!」

外道侵略者ゲドンコ星人のキノコ王国侵攻のどさくさに紛れ
あの手この手でお宝のコバルトスター我が物にするため
各地を駆けずり回っていた。

はじめはゲドンコ星人どもを鬱陶しがり
カメジェットで応戦したりなどと
マリオ一行と敵対する気はなかったものの
コバルトスターの存在を知ると
ゲドンコなんか知らないと言わんばかりに
お宝集めにに目を奪われてしまった。

そのお宝を何が何でも強奪するためマリオたちと争いに自ら挑んだ。
しかしベビイクッパは何も手にすることができなかった。

最後の最後にお目当ての完成コバルトスターを奪えたが
コバルトスターの正体は元凶のゲドンコ姫の実の姉であり
復活のため本性を隠しつつ集めるように促し
多くの者たちを欺き思うがままに利用した。

コバルトスターの完成と同時に完成コバルトスターは
悍ましき侵略者の真の頂点、ゲドンコ姫(姉)と変貌を遂げた。

直接完成させた当人のベビイクッパは用済み扱いされ、わけもわからないまま
何もできない紫の毒々しいキノコへ身を変えられた。

最終的にはマリオブラザーズとベビイマリオブラザーズの活躍で
ゲドンコ姫(姉)は死闘の末滅び、
ゲドンコ星人たちの最大の弱点も運良くあばかれ
侵略者の野望は砕けちり全ては元に戻った。

元の姿に戻ったベビィクッパは世話役のカメックに
若干うんざりさせられながらもクッパ城に連れられ無念のまま帰還した。

と、おもいきや、かいばのあというへんなちびっこにむりやり収集され現在に至る。

「このしきゅーひんというお宝はとってもすごくてすごいでちゅ!
なんでこういうことになったかわからないけど
どんどんあつめてやるでちゅ!」

はじめはよく分からない場所に勝手に召喚された事実に憤りながらも
ランドセルの中身をのぞいた瞬間不快感は幸福感へと裏返った。
求めてやまないお宝が二つもはいっていたのだ。

一つ目はコバルトスターと同じく蒼い輝きの宝玉。

二つ目はいかにも強いヤツがかぶりそうなトゲと
漆黒の色で彩られコブラの装飾が付けられた甲だった。

「いっぱ〜いお宝をゲットしてやるでちゅ!いろんなお宝まっていろ〜!」

ベビィクッパは物欲の赴くままにお宝を集め尽くそうとするのであった。



「とりあえず…君は殺し合いをしたいというよりはただ宝が欲しいだけなんだね。」

「なんどいわちぇるなでちゅ!お前のおたからをよこちぇと入ったらよこちゅでちゅ!」

ついにギャングスターへ上り詰めたジョルノ(15歳)は
子亀のような奇妙な存在にお宝こと支給品をねだられている。

出会って物言わず突撃してきたので
殺し合いに乗っていると思ったが
お宝お宝と騒いでいるのでどうも真っ正面から乗っているようには見えがたかった。

それどころか幼なさ故に殺し合いの概念を
理解しているとは思えない振る舞いが目立ち、
ジョルノは臨戦態勢を解いてなだめることにした。

この子亀は一応殺し合いに招かれるだけあり
それなりの実力を有しているようだ。

向かってきた際のスピードといい少なくとも身体能力はジョルノを上回っている。


235 : 物欲の子亀 ◆0EF5jS/gKA :2023/05/14(日) 21:52:52 BTgTdGI60
子どもだけのバトルロワイアルという
極めて異常な状況においては味方の戦力は多ければ多いほど良いはず。

それが人間でなくてもだ。
と、言うわけでジョルノのはこの子亀を戦力として丸め込む事にした。
しかし性格はどうもわがままみたいなので、
普通にこの殺し合いを台無しにしようと頼んでも言うことを聞くとは思えない。

「じゃあ、襲いかかってくるわるい奴らや
あの海馬乃亜を一緒に倒してくれたら僕の持っているお宝を君に渡すよ、
あと極力僕の指示には従って欲しい」

ランドセルからいかにも高そうな金色の腕輪を見せた。
これで信用は得られるはずだ。

「本当に!なら話は速いでちゅ!
いやなやつらどいつもこいつもぶっ飛ばしてやるでちゅ!
おまえの言うことだって聞いてやるでちゅ!」

事はジョルノの目論見通りに進みそうだ
お宝をダシにして少なくとも今は味方にする。
ジョルノには支給品として
黄金の腕輪を支給されていたのであった。

子亀が約束を守り戦ってくれた暁にはこれを渡すつもりだ。


【ジョルノ・ジョバァーナ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、おうごんのうでわ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
1:子亀(ベビィクッパ)とともに行動する。
[備考]
5部終了時点から乃参戦です。

支給品解説

おうごんのうでわ@ドラゴンクエストIV 導かれし者たち
進化の秘法完成に必要なじゃあくな腕輪、魔族の王デスピサロが求めている。

【ベビィクッパ@マリオ&ルイージRPG2】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ラオウの甲
[思考・状況]基本方針:お宝が欲しいでちゅ!
1:こいつ(ジョルノ)言うことを聞いておたからげっとでちゅ!
[備考]
本編終了時からの参戦です。

支給品解説

ブルーオーブ@ドラゴンクエストⅢ そして伝説へ
不死鳥ラーミアの生誕に欠かせない美しい蒼の宝玉
後のシリーズにも稀に登場している。

マミヤの村に現われた際にラオウが身につけていた兜@北斗の拳
その名通りにラオウがマミヤの村へ侵攻した時にかぶっていた兜、
ラオウの兜にはいろんなバリエーションがある。


236 : 物欲の子亀 ◆0EF5jS/gKA :2023/05/14(日) 21:53:04 BTgTdGI60
投下は以上となります。


237 : ◆4u4la75aI. :2023/05/14(日) 22:29:03 p2y6Ji4I0
投下します


238 : 一緒に希望を探しに行こう ◆4u4la75aI. :2023/05/14(日) 22:30:41 p2y6Ji4I0
――あれ?ここは?違う世界?

ふーん、殺し合い、かあ。

ここで、僕は――



◇◇◇◇



「条河摩耶、香風智乃……」
「私の親友の2人なんだぁ〜、巻き込まれてなければ良いんだけど……」

 いきなり放りこまれた殺し合い。暁美ほむらと奈津恵は出会った。
 時は少し遡る。その出会いはほむらがメグの後頭部へ銃を突きつけるという物騒なもの。しかしメグの言動を見るに殺し合いに乗る様子、そもそも邪気が一切感じられなかった為ほむらは軽く謝罪し、メグの提案で2人で行動することにした。

 暁美ほむらの思惑、この殺し合いの舞台に鹿目まどかがいればまどかを守るのを最優先に、最悪優勝という選択肢まで取るかもしれないが今この状況では脱出及び海馬乃亜の打破以外の目的が無い。そしてその術も見当たらない。ならば奈津恵という哀れな被害者に付き合う義理もなくはない。彼女も今ここでは、同じく脱出を志す仲間となるのだから。

「(本当に……普通の子ね)」

 ほむらから見て、メグは自分達とはかけ離れた普通の人間。友人を想ったり、誰彼構わず親しく接する姿からは善意しか感じ取ることはできなかった。同時に、一度は銃を突きつけた自分にまでここまで親しく接する姿はその危機管理能力が心配にもなったが。しかしその善人たる姿はまどかとも重なり、ほむらの心も少し穏やかになっていった。

「あ、ほむらちゃん。あそこ、建物があるよっ」
「……そうね、何かないか確かめに行きましょ」

 一先ずは手がかり探し。可能性は低いが、この会場のあらゆる場に脱出の手がかりが隠されているかもしれない。一つ一つ、面倒だが確かめていく方法を今のほむらは優先した。
 メグが指差した小屋、木製の小さな小屋。ほむらはメグを自身の後ろに立たせ、扉を開ける――


「やあ、新鮮な肉が来たね!」


 一言、メグは驚き、ほむらは銃を構えた。
 その見た目は、青色で星形の不可解な生命体、宙に浮いている様はほむらは魔法なんて一言で済ませられるが、メグにとってはおとぎ話から飛び出してきた生き物にしか見えなかった。
 そしてその可愛らしい見た目に似合わない開口一番の発言。ほむらが過ごす日常にも可愛らしい見た目で悪事を働く許せない敵がいるものだ。見た目と中身は関係ない、ほむらは迷わず銃口を向けた。


239 : 一緒に希望を探しに行こう ◆4u4la75aI. :2023/05/14(日) 22:31:37 p2y6Ji4I0

「わっ、ほ、ほむらちゃんっ」
「あなたはそこから動かないで。……さっきの発言は、殺し合いに乗ったという捉え方で良いかしら」
「殺し合い?乗った?僕も最初に抵抗すればよかった?兄弟の様に散らされる?ううん、全ては神様が見守る通り、ここでは自分でも言ってた通りまさしくあの子が神になる!カイバノアが神さ!そして僕は、神に選ばれなかっただけ」
「……何?自殺志願者?」
「……?自分で自分を殺めるのは解放?」

 理解ができない。ほむらとメグ、2人の彼に対する第一印象は一致した。ふよふよと小屋の中を動き回っては何やら不穏な言葉を並べる。

「……それで、結局あなたは何をするつもり?」
「カイバノア、神からの救済を待つだけかな。ここには、いや、世界には希望なんてもののはない。ただ唯一の希望、それは死による解放さ!」

 確かな笑顔で、彼は言い放つ。

「そう、それなら……私が殺してあげようかしら」

 その言葉が、ほむらを刺激した。

「ほ、ほむらちゃん!」
「奈津恵、動かないで。……最後に貴方の知っている情報を全部吐きなさい」
「キャハハっ!情報?何もないさ、あるのは絶望だけ」
「……口を割らないって訳ね?」
「僕は何も持ち合わせてないよ。万屋じゃないんだから」
「……そう」

 何も変わらない笑顔、ほむらはこれ以上の価値はないと判断し、引き金を引こうとし――

「だめだよっ!!」

 メグが、割り込んだ。

「……動かないでって言ったはずだけれど」
「ほむらちゃんっ!この子、何も悪いことしてないでしょ!」
「……」
「……ねえほむらちゃん、私この子とお話ししてみたいな」
「……そうね、恵が話したいなら好きにすれば良いわ」

 止めるメグ、依然銃を手にしたままほむらはその様子を見る。

「止めたの?えー……」
「大丈夫だよ〜、ほらこっち!」

 メグは手を大きく開き、抱き抱える体勢へ。素直にふよふよと胸元へと飛び込んできた彼をメグは抱きしめる。

「わぁっ、不思議な感覚!」
「キャハっ、くすぐったいなあ」

 木組みの街のうさぎ達と同じ様に優しく撫でていく。

「……この世界にはね、楽しいことがいっぱいなんだよ。それこそ、希望だらけ!」
「んー?」
「だから、一緒に希望を探しにいこう!……私が持ってる幸せをあなたにもお裾分けしてあげたいなっ」
「うーん……」
「この場所にも、希望があるかも!」
「えー?そんなのないよ」
「それがありえるかもだよっ!」

 楽観的。そう一蹴出来るメグの言動だが、ほむらはそれを気に入っている。愛と希望が勝つストーリー、それを信じ、何度も繰り返しているのだから。
 そして、それを否定する彼は気に入らない。


240 : 一緒に希望を探しに行こう ◆4u4la75aI. :2023/05/14(日) 22:31:47 p2y6Ji4I0

「(死が希望?ふざけるな)」

 自分は、たった一つの希望を追いかけている。何度も、何度も何度も何度も何度も繰り返し、まどかを救おうとしている。それを簡単に否定されてたまるか。
 とはいえ、頭に血が上りすぎた上に目の前の彼を忌まわしきインキュベーターと同じ扱いで撃とうとしてしまった事は少し反省した。

「私は奈津恵、メグで良いよ〜。あの子はほむらちゃん。あなたの名前を教えて欲しいな」
「んー……まあいいや!僕の名前はルマリー!君たちにとりあえず着いて行くことにするよ」

 彼――ルマリーが付き纏うなんて煩わしい他ないが。

「ありがとうっ!ルマリー!……ほむらちゃんも、良いよね……?」
「…………私はそいつまで守るつもりはないわよ。あなたの好きにしなさい」
「えへっ、ありがとうほむらちゃんっ!じゃあ、行こうルマリー!」
「うん……?うん、行こうー!」

 希望を信じるメグを信じれば、何かが変わるかもしれない。ほむらはそう、感じた。


◇◇◇◇


ここで僕は、何かを見つけられる?

もしそうなら、メグには期待したいなあ。

あ、ほむらに撃たれても、もちろん良かったけどね。




【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康
[装備]:チーストカ@ブルーアーカイブ-Blue Archive-、ほむらのソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:脱出。
1:まどかが居れば最優先で守る。……奈津恵を見捨てる訳じゃないけれど。
2:ルマリーは気に入らない。
3:魔法少女の事はその時が来れば伝えるつもり。
[備考]
※ソウルジェムは支給品扱いではありません。
※参戦時期はアニメ第9話、佐倉杏子死亡後。

【奈津恵@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:みんなで帰るよ!
1:ほむらちゃんとルマリーと行動、脱出の手がかりを見つけるよ!
2:マヤちゃん達が心配。
3:ルマリーに希望を見せてあげたい
[備考]

【ルマリー@ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:カイバノアが授けてくれる死を待つ。
1:とりあえず2人と動こうかあ
2:メグは何かを見せてくれるのかな?
[備考]



【チーストカ@ブルーアーカイブ-Blue Archive-】
暁美ほむらに支給。
連河チェリノの扱うリボルバー拳銃。


241 : ◆4u4la75aI. :2023/05/14(日) 22:34:13 p2y6Ji4I0
投下終了です。

そしてすみません、以前投下した『不良と良子』にて美甘ネルの支給品を表記し忘れていた為wikiにて以下の通り修正させていただきます。

【美甘ネル@ブルーアーカイブ-Blue Archive- 】
[状態]:健康
[装備]:ツイン・ドラゴン@ブルーアーカイブ-Blue Archive-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いの打破
1:良子と行動。良子の姉を探す。
2:首洗って待ってろ、海馬乃亜。
3:キヴォトス外の力に警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくともメインストーリーvol.2『時計じかけの花のパヴァーヌ編』第2章終了後。


242 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 22:43:11 dtTE.9YU0
投下します


243 : 幼き日の太陽と相変わらずの少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 22:44:22 dtTE.9YU0
保登心愛は、人と人を繋ぐ遊星粒子のような存在だ。
彼女が居たから、香風智乃の世界が広がった。リゼと距離が縮められたのも、千夜やシャロと繋がりが出来たのも――ココアのおかげ。

あの栗色の髪をした天真爛漫な少女は、それほどまでに影響力を持つ。
そんなココアは今――殺し合いに参加させられていた。

「……あの人達、大丈夫かな?」

ココアは二人の犠牲者を思い返し、心配そうな表情をしていた。
残虐に殺された挙句、『無様な敗北者達』とまで罵られた彼らの蛮行はココアの胸に強く突き刺さっている。

何故ならココアは四兄妹の末っ子だ。
兄弟愛が理不尽に踏み躙られり様を見て何も感じないわけがないし、そもそも心優しい彼女は無関係の人間であろうが心配してしまう。

――もっともあんなふうにされた時点で生きてる可能性がないことなんて、ココアも心の奥底では理解してしまってるのだが。

「どうしてあのキャベツみたいな頭の人は殺し合いなんてさせるのかわからないけど……そんなご注文は受けられないよっ!」

そしてココアの善性は昔から変わらない。
幼少時代から呼ばれた今でも――彼女は根っからの優しい少女。太陽だ。

「だからあの人にはおまじないをかけてあげない!」

チノの祖母にはうさぎになれるようにおまじないをかけた彼女だが、今回はそうもいかない。それくらい幼女のココアにもわかる。

「あの子たち(エースとルフィ)も、他のみんなも私が助けてあげる。お姉ちゃんもいるかわからないけど――任せなさい!」

支給されたカード――スターダスト・ドラゴンを手に取り、見つめてココアは高らかに宣言した。


244 : 幼き日の太陽と相変わらずの少女 ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 22:44:39 dtTE.9YU0

「それはいい心がけなのよさ!」
「だ、誰!?」
「私の名前は入巣蒔菜!通りすがりのマグロマン信者なのよさ!!」
「ま、マグロマン?そんなの聞いたこともないよ!?」
「それマジ?今時、マグロマンを知らないなんて遅れてるのよ?」

しれっと出てきた少女――入巣蒔菜。
彼女は高校生だが、その幼い見た目から乃亜に目を付けられた。
同一世界の参加者が参加してるかもしれないが、おそらくそれぞれの時間軸が大きくズレる可能性が高いだろう。それはココアも同じことだが。

「とりあえずロリ一人で解決出来る問題じゃねーんだから、まあそう気張んな。蒔菜おねーさんも手伝ってから、安心するのよさ」
「ほんと?ありがとう、蒔菜お姉ちゃん!」

こうして二人は手を組むことになった。
果たしてココアは、ここでも人々を繋ぐ遊星粒子のようになれるのだろうか?

【保登心愛@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:スターダスト・ドラゴン@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:蒔菜お姉ちゃんと一緒にみんなを助ける!
1:お姉ちゃん(モカ)も参加してるのかな?
2:このスターダスト・ドラゴンのカード、がんばって使いこなすよ!
[備考]
※参戦時期は幼女時代。チノ達と面識はありません

【入巣蒔菜@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ココアと一緒にこの問題を解決するのよさ
1:パパやみんなも参加してるのか気になるところなのよさ
[備考]
※参戦時期は楽園終了後


245 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 22:44:57 dtTE.9YU0
投下終了です


246 : ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:48:39 a9641P3c0
投下します


247 : 勇者の資格 ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:50:05 a9641P3c0
(おれは、あの乃亜って子によって生き返させられたのか?)

 辺りを散策している少年、勇者ダイがここに来る前の最後の記憶はキルバーンの発動させた黒の核晶と心中したことであった。
 愛する地上を守り命を散らしたはずの自分が生きてこの場に居ることは、海馬乃亜の力によるものだとダイは考えていた。

(乃亜は「神」を名乗っていたけど、おれ達の世界や竜の騎士を生み出したという神々と関係があるのか? そもそもおれが死んでからどれくらいの年月が経過したんだ? 分からないことが多すぎる……いや、考えても仕方がないか。今は連れてこられた人を守ることを考えないと……)

 ダイは、子供達をこのような殺し合いに巻き込み命を弄ぶ乃亜への怒りと、殺された二人を救うことが出来なった悔しさを抑え込み、人々を守る決意をした。

 しばらく探索を続けると、うずくまっている少女を発見した。
 頭上に天使の輪のようなものが浮いている、髪の長い少女であった。

「君、大丈夫?」

「……ひっ!」

 ダイが話しかけると、少女は怯えたような声を上げた。

「大丈夫だよ。おれは殺し合いには乗っていない。みんなを守りたいんだ。おれの名前はダイ。君は?」
 
 ダイは怖がっている彼女を安心させるために、優しい口調で少女に語りかけた。
 
「……アリスです……もしかして、その格好……」
 
 伸びかけに答え、ダイの方を見た少女アリスは、ダイの格好を見つめていた。
 その姿は、アリスが数々のゲームで見てきた勇者そのものであったからだ。

「おれは勇者なんだ。だからアリスも他のみんなも守ってみせるよ」

「やっぱり勇者……よかった……」

 勇者の姿を見て、アリスは安堵した様子であった。
 ダイは、アリスを落ち着かせられたことに安心するも、次にアリスから発せられた言葉は、ダイの想像とはかけ離れていた。

「勇者ダイさん……アリスを倒してください」

「……え?」

「アリスは、世界を滅ぼす魔王です。だから、勇者の手で滅ぼされなくちゃいけないんです」


248 : 勇者の資格 ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:50:55 a9641P3c0
 ――――つまり、「アリス」。あなたは――この世界を滅ぼすために生まれた「魔王」なのよ。

 ――――この世界に貴方は存在してはいけない。

 アリスは自分が何者なのか分からなかった。
 分かっているのは大切な友人であるモモイに怪我をさせてしまったという事実だけである。
 モモイが今無事なのかは分からない。しかし、アリスの支給品にモモイの銃があったという事実が、モモイの安否に対する嫌な予感をアリスの中に張り巡らされた。
 

「アリスは、勇者になりたかったんです……でも……」

 ――――貴方は己を勇者と読んでいるけど……「勇者」とは、友人に剣を向ける存在かしら?
 
 ――――むしろ、貴方のやったことは悪役(魔王)ではなくて?

「アリスは魔王でした。友人を傷つけてしまいました。次にアリスが暴走したら本当に世界を滅ぼしてしまうかもしれません。だから……!」

 ダイにはアリスの事情を知る由はなかった。しかし、アリスの言っている事が本当であると直感で理解していた。
 なぜなら、アリスの姿がテランにて出自を知ることになった過去の自分と重なっていたからである。

「……アリスの事情を詳しく知っているわけじゃないけどさ、アリスは世界を滅ぼしたいわけじゃないんでしょ?」

「はい。だからアリスは消えてしまうのが正しいのです。大切な人を傷つけたくないから……」

「きっとアリスの大切な人はそんなことを望んでないよ」

「……でもきっとアリスの正体を知ってしまったのでアリスのことを嫌いになってしまったと思います……アリスは友人に嫌われるのが辛いです!」

 ミドリやユズは、アリスを魔王と呼んだリオに反発していた。しかし、世界を滅ぼす存在だと知ったアリスのことを好きで居てくれるのだろうか?
 いや、きっと嫌いになっていくだろう。
 アリスにはそれが耐えられなかった。


249 : 勇者の資格 ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:51:54 a9641P3c0
「おれも、自分が竜の騎士っていう『すべてを滅ぼす者』だと言われた時があったんだ」

「……え?」

「おれは自分が人間じゃなかったら大切な仲間からも嫌われてしまうと思っていたんだ。でも、そんなことはなかった。おれがどんな存在であっても仲間だと思ってくれたんだ。きっと君の友人も同じことを考えていると思うよ」

「……でも……アリスは……魔王で……」

 ――――勇者がなんだ!!? 竜の騎士がどうした!!? おれにとって……ダイはダイだっ!!!!

 ダイはかつての仲間、ポップの言葉によって救われたことを思い出す。
 次はきっと、おれがこの娘を救う番なのだろう、とダイは考えていた。

「どんな存在であろうが、アリスはアリスでしょ?」

「……! でももしアリスが暴走したら……」

「その時はおれがアリスを止めてみせるよ」

「……あなたは本物の勇者なのですね」

 様々な名作ゲームをプレイし数々の勇者を見てきたアリスであるが、アリスにはダイがゲームの勇者達に勝るとも劣らない存在であると感じた。

「おれにはアリスも本物の勇者に見えるよ」

「アリスには勇者を名乗る資格なんて……」

「勇者に資格なんて無いよ。正しい心を持っていて誰かを救えるなら立派な勇者だ」

 少し会話しただけであるが、ダイはアリスの中にある勇者の素質を見抜いていた。
 きっと、これから多くの人々を救ってくれる存在になってくれるだろう。
 だからこそ彼女は魔王にしてはいけない。
 
(アリスに必要なのは心の支えだ。おれでは力不足かもしれないけど、できる限り支えになってあげよう)
 
「アリスも……勇者に……?」

「だから、一緒にこの殺し合いを止めに行こう!」

「……はい」

 ダイについて行けば、自分がこれからどうするべきなのか分かるかもしれない。
 そう感じたアリスは、勇者ダイとともに行動することに決めた。


250 : 勇者の資格 ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:52:29 a9641P3c0
 【天童アリス@ブルーアーカイブ-Blue Archive-】
[状態]:健康、不安(大)
[装備]:ユニーク・アイディア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:誰も傷つけない
1:ダイと行動する
2:モモイ……ミドリ……ユズ……無事なのですか?
[備考]
 参戦時期はメインストーリーvol.2『時計じかけの花のパヴァーヌ編』第2章第10話の後です

  【ダイ@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
[状態]:健康
[装備]:はがねのつるぎ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:勇者として人々を守る。
1:アリスと行動する
2:俺は生き返ったのだろうか?
[備考]
 参戦時期は本編終了後です。

  【ユニーク・アイディア@ブルーアーカイブ-Blue Archive-】
 アリスに支給されたアサルトライフル。
 アリスの名付け親であり親友のモモイが愛用している銃。
 
  【はがねのつるぎ@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
 ダイに支給された剣。
 ダイの大冒険に限らず、ドラクエ本編から外伝に至るまで様々な作品で活躍している。


251 : 勇者の資格 ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:53:27 a9641P3c0
 「王女」よ……あなたは自分の運命から抗うことを選んだのですね。
 しかし、誰も存在理由から逃れることは出来ません。
 「王女」、それが私達が迎える運命です。
 この殺し合いの場は、私の認知領域に存在しない不可解な現象……。
 ですが、奇しくもこの現象は「王女」に存在の目的と本質を理解させるのに相応しいでしょう。
 
 ……「王女」よ、あなたの力は世界を滅ぼすために存在します。
 それでもなお抗い続けるのだとしたら、私が本来あるべき王座に「王女」を導かせていただきます。

  【Key@ブルーアーカイブ-Blue Archive-】
[状態]:???
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]世界を滅ぼす
1:王女(アリス)を導く
[備考]
 アリスの別人格です。
 アリスの肉体や精神にダメージを負った際やアリスが無名の守護者と呼ばれているロボットと接触した際に人格を乗っ取る事ができます。
 人格を乗っ取った場合、アリスの人格を内部データベースの深層部に隔離することで、簡単には表に出てこれないようにすることが出来ます。


252 : ◆1JDIX9a9jU :2023/05/14(日) 22:53:56 a9641P3c0
投下を終了します


253 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:54:34 OkNo42Rc0
代理投下します


254 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:55:11 OkNo42Rc0
爆発。轟音。悲鳴。絶望。怨嗟。断末魔。
『生きていくので精一杯』なんて甘えた言葉すら言えない灰色の世界。
その一日を無事に生きることすら困難なのが紛争というものだ。
ましてやそれが、頼れる親兄弟や友達もいない孤児であったならば如何程のものか。

少年はその命を終えんとしていた。
溢れる血溜まりは、徐々に自分の命が尽きていくのを幼心に感じさせる。
瓦礫に押し潰された手足は、身動きすら許さない。仮に抜け出せたとしてももう使い物にならない。
幼い子供に命を諦めさせるにはあまりにも十分過ぎる状況。
紛争の最中、何度も見てきた光景が、遂に自分の番になっただけ。
助けなんて来ない。死を待つばかりだった。
そう思っていた。

(もう大丈夫だからな!!)

少年はその日の輝きを忘れることはない
いつか自分もああなりたいと思った。


○○○


会場の一角のビル街。
本来は子供連れで賑わっていたであろうその場所で少女が悲鳴を上げていた。

「誰か、助けて!」

源静香こと、通称『しずかちゃん』は逃げていた。
冒険は数多く経験していても、彼女自身に戦闘能力は無い。
小学4年生にとって殺し合いという状況は余りにも非現実的だ。

「逃げても無駄ですわ」

鎖の付いた鉄球を構えた、お嬢様とした風貌の少女が追い詰める。
彼女の名前を『天馬院きりり』という。
その可憐な風貌からは想像出来ないが、死.TVというデスゲームにおいて3度の優勝を果たした少女である。

彼女は、成人男性ですら装備が出来ない程の重さを誇る鎖付きの鉄球を軽々しく扱い、静香へと狙いをつける。 
ハンマー投げのように勢いを付け、破壊力を高まった鉄球が放たれた。
異世界の魔物相手にすら有効打を与える武器から放たれる、女子小学生相手には余りにもオーバーキルな一撃。
当たれば、静香の人生はあっけなくここで潰れて終わる。

当たればだ。

バシュ。

鉄球が静香に当たらない。
当たる直前、一筋の光弾が直撃し矛先が外れた。

「その子から離れろ!」


255 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:55:33 OkNo42Rc0
○○○


褐色肌の少年、『ヘルガ』は殺し合いに反逆した。
やることは、悪をくじき一人でも多くの人の命を救うスパイとして生きる事を決めた日からは変わらない。
それが、紛争で動かなくなった身体をサイボーグとして作り変え、命を救ってくれた組織への恩を返すことだとヘルガは信じている。
救われた人間であるからこそ、その命の価値を理解している。

「ここは僕が相手をする、君は逃げろ!」
「わ、わかったわ!」

その言葉を聞いて、静香は逃げ出した。

「あら、私は子供でも容赦はしませんことよ」
「何故君はこんな殺し合いに乗る!」

それを聞いてきりりは笑う。
恍惚の笑みを浮かべて。

「感じるから。上級に産まれた喜びを……!」

きりりがゲームに乗るのは、この殺し合いを見ているであろう"上級"の方々の為だ。
下流のプレイヤー達を狩り、VIP階級の方々に観て楽しんで頂く。
デスゲームを通じて彼らから受ける感動と声援、そうして感じる”人との繋がり”。
それが彼女にとっての最高の幸せである。

「さぁ、なってくださいな。私の生贄に」

手加減なし。良心の呵責なし。慈悲の心なし。
死.TVに舞い降りた女神。3度制覇のチャンピオン。
それが『鉄球令嬢』、天馬院きりりという少女であった。

(理解できない……)

ヘルガは幼いながらも日本政府の極秘スパイとして生きる身だ。
犯罪者や他人の命をどうとも思わない人種を数多く見てきた。
それでもなお、きりりの姿は恐怖を感じさせる。

「さあ、いきますわよ!」

きりりに支給された『破壊の鉄球』は敵全員を攻撃できるモーニングスター型の武器だ。
相手の大きさや、人数を無視できるほどのリーチを誇る。

ヘルガは足元のジェットを噴射し、飛ぶ。
幸い、ビル街という場所は遮蔽物が多い。
ムチのように振るわれる鉄球の襲撃を、建造物を盾代わりに大回りして直撃を回避していく。
距離を取りつつも徐々に近づいていく。

「ちょこまかとうっとおしいですわね」

だが、その程度の工夫では三度制覇のチャンピオンは通用しない。
肉体、頭脳、判断力すべてを兼ね揃えたからこそのチャンピオンだ。

再び鉄球を構え、今度は野球のピッチャーのように投球する。
回転の加わった鉄球はこれまで以上の速度と威力を誇る。
ビルという遮蔽物も貫通し、直線距離でヘルガへと向かった。

「なっ……」

きりりの投げる球は、すべてに風穴を開ける。
どんな小細工もその力の上では潰される。余りにも出鱈目な威力。
建造物は盾としての役目を果たさず、攻撃を隠す暗幕へと役目を変えてしまった。
意識の外から攻撃は避けきることも叶わない。
ヘルガの目の前へと迫った鉄球はそのまま彼を押しつぶさんとする。


だけど、ヒーローは助けに来る。
当たる直前、一筋の人影が走りヘルガの身体を弾き飛ばした。

「レスキューマン参上!怪我ねぇか?」


256 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:56:03 OkNo42Rc0
○○○


「話は静香ちゃんって子から聞いたぜ、アイツに襲われてんだな」

助けに来た少年、『巴鼓太郎』の胸に光が灯り、ガントレットの形を得る。
それはカタルシスエフェクトと呼ばれる彼の心の力が具現化したものだ。

「あらあら、ザコさんが一匹増えましたわね」 
「ここは危険だ、僕に任せて隠れていてくれ!」

ヘルガはきりりが勝つのが難しい相手だと実感している。
だからこそ民間人を巻き込むわけにはいかなかった。

「隠れてろって、お前まだガキじゃねえか」
「そんなこと言ってる場合じゃない!」
「私は2体1でも構いませんわ。ここで私が勝てば、ますます盛り上がることになりますし」

きりりは視聴者からの"Good"の為なら何でもする。
話題の中心になるならば、戦う相手が強いのは望ましいことだ。

「強がるなよ。レスキューマンは困ってるやつは絶対見捨てねぇ!」

そう言う鼓太郎も、本当は怖い。強がっているだけだ。
それでも人の命を守るために、勇気を振り絞り立ち向かうことを決めた。
絶望的な状況でも活路を見出そうとする目。不屈の闘志。
その目は、その顔は、ヘルガのライバルたる少年の姿によく似ていた。

「……父さんだったらこんなとき逃げたりしねえよな!」

彼はガタイの良い高校三年生の見た目をしているが、実年齢は14歳でしかない。
メビウスという仮想世界で小さな少年が望んだ、誰にも負けないような強くて大きな身体だ。
その身体に見合うだけの勇気をこの瞬間だけは抱いていた。

「『絶対』に逃がしませんわ!」

きりりは再びピッチャーのように構え、鉄球が放たれる。

「最速球!!!」

きりりの全力が込められた最大最速の一撃。
今まで以上のスピードで二人を襲う。
もはや砲弾とそう変わらない。

「絶対逃げるなって言われたらよお……逆いたくなるよなあああああ」

『カリギュラ効果』。
見てはいけないものほど見たくなる、してはいけないものほどしたくなる心理現象である。
言葉にするのなら簡単だが、鼓太郎を動かすのはそんな簡単な理屈ではない。 

「喰らいやがれ、俺の全力全開!」

助走を付け、ガントレットを構え、鉄球へと駆け出した。

「……キャリバーも言ってたっけな、『絶対って言葉はブチ破るためにある』って!」

それは、ヘルガにとって一番ライバルであり友達の口癖。
どんなときも諦めず、人の命を救う事を諦めなかった少年。
鼓太郎の言葉は、彼の言葉を彷彿とさせた。
ヘルガは両手にエネルギーをチャージし、これまで以上に全力で光弾を放った。

「MAXアームブラスター!」

鉄球に向かって、拳と光弾が衝突した。
力は互角、互いに均衡しあっている。

(久しぶりですわね、この感覚)

この状況はきりりは既に知っている。
これは宿命の相手である、まりあとの戦いで起きたことの再現だ。
かつての戦いにおいても、きりりは鉄球を打ち返され敗北した。
ただ、彼女に負けないとトレーニングを積んできた、彼女に同じ手は何度も通用しない。
この程度の力であれば、まだ自分の方が上回る。

仮に打ち返されたとしても、至近距離で放たれたミサイルすら回避出来る動体視力を持つきりりであれば避けるのも容易い。
そのはずだった。

その刹那。ぐらり、と地面が沈んだ。

(地震……?こんな時に!)
 
野球において、ピッチャーはグラウンドから254ミリ高い位置から球を投げる。
高い位置から投げるからこそ、投手の体重が乗りスピードが増すからだ。

では、その立場が逆転したとき力関係はどうなるか。
投げる側は力は入らないのに、迎え撃つ側には体重が乗っかり威力を増す。
威力は逆転し、体勢の崩れたきりりにもはや回避は不可能。

ドガァンと、鈍い音が響き鉄球は綺麗なホームランを描いた。
打ち返されたその勢いはもう止まることはない。
きりりは握っていた鎖ごと鉄球に引っ張られ、小さな孤を描き地面に激突。
アスファルトを小さく何度かバウンドしたあと、気を失った。


257 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:56:30 OkNo42Rc0
○○○


「……ちょっとは父さんに近づけたかな」

本来の鼓太郎の身体は、同年代の子よりも遥かに小さい。
幼い頃に両親を事故で失い、育ての親には満足な食事すら与えられず、思うようにに成長しない身体をコンプレックスにしている。
それでもなお、彼は亡き父親のような人の命守る立派なレスキュー隊に憧れている。

「まったく、なんて無茶をするんだ……」

ため息を付き、気絶したきりりへと近づく。
殺し合いに乗った人物とはいえ、彼らに人を殺す気はない。
拘束など無力化するだけに済ませるつもりだった。

「う、うう……!!」

カチリ、小さくそんな音がどこかから聞こえた。
その矢先、突如としてヘルガの頭に頭痛が走った。

「なんだこれ……ボクから離れてくれ!」
「あ、おい大丈夫か」

鼓太郎はヘルガを助けようと近づいた。
助けようとしてしまった。

「あ………?」

ビシュムッ。

ぼやけていく視界。赤く染まっていく地面。
どこかから放たれた光線が鼓太郎の胸を貫いた。 

「なんだよ、これ……」

それがヘルガの手から放たれたものだと気づくのに、鼓太郎はそう時間はかからなかった。

「ボクは何を……ううう……!!!」

ヘルガは自らの行為を理解していないように頭を抱えた。
だが、その思いを塗りつぶすように金色の髪が黒く染まっていく。
そうして、しばらく周りを眺めた後、もうこの場に用が無いと言わんばかりに遠くへ飛んでいった。

鼓太郎はヘルガが何処かへ飛んでいくのをただ見ることしか出来なかった。
何が起こったのか分からないまま地面を這い、血を吐き、慟哭は瓦礫の雨に溶けて沈んでいった。

【巴鼓太郎@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ- 死亡】


258 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:56:45 OkNo42Rc0
○○○


ヘルガには彼自身も知らない秘密がある。
彼の身体には組織に送り込まれた工作員の手により洗脳チップが埋め込まれているということ。
一度起動すれば、彼の意識を塗りつぶし究極のサイボーグ兵器として生まれ変わらせてしまう。

そして、その起動するためのスイッチはこの者の手の掌にあった。

「やっとあの女……言いづらいから豚って呼ぶわ。豚が静かになったわ」

源静香は笑った。
厄介な女を追い払い、おまけに優勝の邪魔になる少年達を一掃出来たことに。

この源静香は、一般に知られている源静香ではない。
ネットミームにより歪められた、通称『ブラックしずかちゃん』である。
本物の源静香であれば、ピリカ星での戦いのように勝てなくても敵に立ち向かったであろうが、この静香はそんなことはしない。
非力でか弱い少女を演じて助けを求めたのはただの擬態。
用が無くなればあの少年達にはなんの興味もない。

「じゃあまず震度3からいくわよ」

ブラックしずかはリルルに対してやたら辛辣である。
その目は同様にヒロインの座を脅かすであろう、きりりに対しても向けられる。

「命日にしてやるわ!」

依然として気を失っているきりりに向けて、ドンと拳を打ち付ける。
彼女の支給品であった『グラグラの実』は、とある海軍元帥曰く、「世界を滅ぼす力」を持つ。
食べた者は振動を自由に操る事が出来るようになる。
先程、地震を引き起こし、きりりに隙を作ったのは練習代わりだ。

「4、5、6、7」

さながらピアノを引くように、少しずつ威力を高める。
既に戦闘で脆くなっていたビルは耐えきれるはずもなくガラガラと砕けてゆき、眠ったままのきりりへと降り注いでゆく。

「これ以上痛い目見たくなかったら、ヒロインぶらないことね。」

合わせて近くに居た少年が瓦礫の下敷きとなったが、彼女にとっては知ったことではない。
土埃が舞い、全ては大地の下へと埋まっていった。

「お洋服よごすと しかられるんだけど」

利用した少年達のことはもう頭にない。
支給品のカードを使い、この場から立ち去り次の戦場へ。
優勝し、ヒロインの座を永遠のものにするために。

「あたしにできるかしら なんだかドキドキするわ」

※巴鼓太郎の支給品一式は瓦礫に埋まっています。
ランダム支給品に武器、回復道具の類いはありません。
参戦時期はキャラエピソード終了後からソーン編の間でした。
※ヘルガの洗脳チップを起動するスイッチ@逆襲スパイ Xキャリバーが近くに捨てられていますが発見は困難です。


【ブラックしずかちゃん@写真で一言ボケて(bokete)】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ぶっとび周遊カード(再使用まで数時間)@桃太郎電鉄シリーズ
[思考・状況]
基本方針:優勝し、ヒロインの座を永遠のものにする
1:何を利用しても勝ち残る
[備考]
※bokete仕様のブラックしずかちゃん及びサイコパスしずかです。
※グラグラの実の能力者になりました。
ただし、海に嫌われる事は説明書に書かれていないため知りません。
※名簿上は源静香名義で載っています。

が、もし他に源静香が登場するSSが採用された場合ブラックしずかちゃん名義で載ります。

【ヘルガの洗脳チップを起動するスイッチ@逆襲スパイ Xキャリバー】
ブラックしずかちゃんに支給。
名前の通りヘルガに埋め込まれた洗脳チップを起動させ、心無きロボットに変えるスイッチ。
ヘルガを正気に戻すには強い電力を与えて内部の洗脳チップを破壊する必要がある。

【グラグラの実@ONE PIECE】 
ブラックしずかちゃんに支給。
食べることでグラグラの実の能力者になり、大地や海に振動を引き起こすことが出来る。
なお、支給品説明には能力者が海に嫌われることは書かれていない。
「世界を滅ぼす力を持っているんだ!!!」BYセンゴク

【ぶっとび周遊カード@桃太郎電鉄シリーズ】 
ブラックしずかちゃんに支給。
どこかの物件駅にランダムで飛べるカード。
このロワではランダムな施設に転移する。何度か使うと消滅する。
また、このロワでは再使用には一定時間置く必要がある。
「こうなりゃ ヤケですな! わたくしは どこまでもおともさせて いただきますよ! そーれ!」BY秘書


259 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:57:04 OkNo42Rc0
○○○


全てが終わった後。
瓦礫の下の隙間から起き上がる者がいた。

「ふふふ、今回のザコさん達はなかなかやりますわね」

天馬院きりりは気絶から目を覚ました。
支給された『のんきのおこう』の効果により、幸運にも瓦礫は彼女に直撃せず、無傷で生き残った。

「私に遅れを取らせるなんて、気持ちが収まりませんわ!」

彼女の身体を動かすものは、静かな怒り。
負けたままの無様な姿を見せては"上級"の方々に楽しんで頂けない。
同じ失敗は繰り返さない。
今度は容赦はしないと胸に刻み、死.TV三連覇のチャンピオンは再び立ち上がる。

【天馬院きりり@死.TV】
[状態]:ダメージ(小)、ヘルガと静香への静かな怒り
[装備]:はかいのてっきゅう@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1、のんきのおこう@ポケットモンスター(ゲーム)
[思考・状況]
基本方針:ゲームに勝ち残り、”上級”の方々に観て楽しんで頂く
1:新たな敵と戦う。
2:少年達(ヘルガと静香)は今度見つけたら殺す。
[備考]
※参戦時期は最終3巻、ゲーム終了後からエピローグまでの間。

【はかいのてっきゅう@ドラゴンクエストシリーズ】
天馬院きりりに支給。
DQシリーズにおいて終盤に手に入る武器の一つ。大きくトゲの付いた鉄球の付いたモーニングスター。
伝説の武具に匹敵するほどに攻撃力が高いうえに、敵全体を攻撃出来るほどにリーチが長い。
「ぬわっちょ!!ひょえーこいつはとんでもない重さの武器ですね」BYトルネコ

【のんきのおこう@ポケットモンスター(ゲーム)】
天馬院きりりに支給。
もたせると おこうの ふしぎな かおりが あいてを まどわせて わざが めいちゅう しにくくなる。
ゲーム仕様上は、相手の攻撃命中率が0.9倍になる。
ソーナンスに持たせるとベイビィポケモンであるソーナノのタマゴが作れる。


260 : 命よ 銀に光れ ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:57:21 OkNo42Rc0
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


爆発。轟音。悲鳴。絶望。怨嗟。断末魔。

いつかどこかで、これに似た光景を見た気がする。
わからない。なにも。

目に付いた建物を壊し、瓦礫の雨を浴びる。
目の前が灰色の世界に染まっていく。

わからない。思い出せない。

ボクはなぜこんなことをしているのだろう
わからない。けど、こうしなければいけない。

爆風の勢いでランドセルが開き、風に煽られて一枚のカードが飛び出した。
足元へと落ちたそれを思わず拾う。
どこかで見たような気がしたが思い出せない。

……なんだっけ?コレ?


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【ヘルガ@逆襲スパイ Xキャリバー】
[状態]:サイボーグ兵器化、ダメージ(小)
[装備]:スパイの衣装
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2、ヘルガのB級ライセンス@逆襲スパイ Xキャリバー
[思考・状況]
基本方針:洗脳中
1:この会場を破壊する。
2:すべての敵を抹殺する。
[備考]
※参戦時期は最終3巻、Mission.011の任務終了後、洗脳される前。
※原作で体内に仕掛けられた爆弾は没収されていません。
本人はそのことにまだ気付いていませんし存在も知りません。

【ヘルガのB級ライセンス@逆襲スパイ Xキャリバー】
ヘルガに支給。
スパイとしての今後の活躍を期待し、ヘルガとキャリバーに向けて組織から支給されたライセンス。


261 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 22:57:33 OkNo42Rc0
投下終了します


262 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/14(日) 23:16:54 OhKht5UY0
投下します、登場人物がキャラメイク系のゲーム出典な為、独自解釈や捏造している部分があります。


263 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/14(日) 23:18:01 OhKht5UY0
1度は守れた筈のものを、私は失った。
…年上で立場的には、私たちの雇い主になるけど…友達みたいだと、そう思ってた相手によって…一瞬にしてその殆どを奪われた。

掌の上で転がされてたのにも私は気付けないままで…それに私は…大切な人が、思い詰め続けてたのにも、知らない間に追い込んでしまってた事にも気付けなくて……結局、暴走した彼を私は……私たちは殺す事でしか、止めてあげる事が出来なかった。
彼はずっと、自分の存在意義に悩んでた…私たちに止められた後に、自分なんて生まれてこなければよかったなんて、悲しすぎる言葉を言うくらいには。

「もし…やりなお…せるなら…君と…と…もだち…に…」

彼の…キミの最期の言葉は今でも、私の頭の中から消えずに残ってる。
…私も、なりたかったよ…キミとともだちに。…いや、それ以上にも……キミは私よりも年下だったけど、それでも…もっと早くに気付けてたら、もしかしたら……。
……でも、ごめんね。罪を背負ってでも私は…立ち止まるわけには行かない…から。

だから私は進んだ。私が13班として戦うきっかけになって、ナビをずっと頑張ってくれてた彼女が…ミオが、自身を蝕む病魔に苦しんでるのが通信越しに聞こえてきて……本当は足を止めたかった。すぐにでも引き返して彼女の元へ駆け付けてあげたかった。
でも、彼女自身に止まらないでと言われちゃったから…だから、元凶を倒したらすぐにでも向かうからと急ぐ事にして…通信が途切れた後、私たちは守りたかったものを殆ど奪った元凶だった相手と対峙して……最期は、私自身の手で止めを刺した。

「…我が名はノーデンス、育むもの。よろこびはいま新たなるドラゴンの生まれ出ずる時をして────」

自分の心臓を検体として私たちに託し、第2真竜は討たれた。彼女のやった事は許せないけど…それでも、友達みたいな存在には変わりなくて……。…感情がぐちゃぐちゃになりながらも、急いで戻った私の目に写ったのは……ぐったりと机に倒れ伏して、血を吐いた跡を遺し事切れていたミオの姿。
……間に合わなかった。看取る事さえ、させてもらえなかった…気付いたら涙が溢れて、ずっと耐えてきた色んな感情が爆発して…声にもならない叫びが喉から出ていた。

ひとしきり泣き崩れた後、一周回って落ち着いた私は……13班のみんなと一緒に検体を届けに行って…シン・ドラゴンクロニクルの完成と、統合時に出来る狭間の世界にて、私の意思が第7真竜に打ち勝つ事が出来れば…全ての竜との因果を砕き、世界の再構成が出来ると知った。
そしてドラゴンクロニクルの起動により、宇宙との統合が始まる直前に、意識が暗転した後私は…この殺し合いに巻き込まれた。

----

私よりも年下そうな男の子2人が見せしめになって殺された事には、怒りが湧いた。
…でも私の心はそれよりも優勝すれば願いが叶うと、あの主催者の男の子の言葉の方に興味が行っていたんだ。…死体をいっぱい見ちゃって、自分でも手を汚したせいで…慣れちゃったせいかも知れない。
…何にせよ、私は元の世界に急いで帰る必要がある。このまま狭間の世界に入れないまま時が過ぎれば、何が起こるか分かった物じゃないからね。悠長にしてる時間があまりない事は、とりあえずはわかるもの。
……だからごめん。私は私の世界を再構築して救う為に…他の参加者を皆殺しにしてでも、帰らなきゃいけないんだ…罪を背負ってでも、私は止まれない。進まなくちゃ行けない。
ここで諦めたら……地球上の生き物が殆ど死に絶えたまま、世界が終わっちゃうかもしれない。それじゃ、何のために私は…私はキミを───。
…でも…もし願いが叶うのが本当なら、その時は帰る前にちゃんと…見せしめにされた男の子2人も含めてみんな、生き返らせよう。

そう決意を固めた私はバッグの中身を見る。
中には…見た事が無いけど、デュエリスト用のカードの束と、それとはちょっと違う、機械仕掛けの竜(ドラゴン)が書かれた1枚のカード、それに…アタッシュケースがひとつ。その中には銀色のベルトと、私が元々居た時代の2100年からするととても古いタイプの携帯電話、懐中電灯に…これも古いタイプのデジタルカメラがあった。説明書からするに、アタッシュケース自体がひとつの支給品扱い…なの、かな。
とりあえず、普段使ってるカードより性能がいいものと、1度召喚したら12時間使用不能になるデメリットはあるけど強力そうな、Sin…罪を意味する単語を冠する機械仕掛けの竜のカード。それに…良くも悪くも手札次第で、安定しないデュエリストとしての欠点をある程度補えそうなアタッシュケースの一式…ファイズギア。
うんっ、とりあえずは当たりかな?


264 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/14(日) 23:18:27 OhKht5UY0
----

「じゃあ早速…試してもみたいし誰か探そっと」

少女はそう、悲痛な決意を隠し無理矢理明るく振る舞いながら方針を定めた。
生命の進化の極北である第7真竜セブンスドラゴンに最も近しく、それに至りうる、進化した人類とも言える少女はこうして…殺し合いに乗ってでも、自らの世界を救う為に帰還を目指す。
…もしも彼女なら、ミオなら…少女が知る限り、誰よりも強い心を持っていた彼女ならば、殺し合いに乗る事は決してなく、また自分が優勝を果たしたとしても…決して喜びはしないだろうと、ふと思い浮かんだ考えを……少女は振り払った。

【アリカ(ノーティスタイルA♀)@セブンスドラゴンⅢ code:VFD】
[状態]健康、焦り、決意
[装備]なし
[道具]基本支給品、Vol.X/神道光陣@セブンスドラゴンⅢ code:VFD、Sin サイバー・エンド・ドラゴン@劇場版 遊☆戯☆王 〜超融合!時空(とき)を越えた絆〜、ファイズギア@仮面ライダー555
[思考・状況]基本方針:優勝してでも元の世界へ帰る
0:今は支給品を試すためにも他の参加者を探す。
1:優勝したらそれまでの死者を願いで蘇らせる。
2:もう止まれない。止まったら何のために私は……。
[備考]
※参戦時期はChapter6 此ノ花、咲ク刻/Time has Comeにて、シン・ドラゴンクロニクルにより宇宙と統合される寸前からです。
※ミオの遺体を目撃しています。
※職業はデュエリストです。転身を行ってるかは採用された場合後続にお任せします。またスキルについては習得可能な物は全て習得済みです。
※台詞や一人称などは、女性のボイスタイプGを参考にしています。
※アリカという名前は、公式サイトや動画でのノーティスタイルA♀の名前から来ています。

・支給品説明

【Vol.X/神道光陣@セブンスドラゴンⅢ code:VFD】
デュエリストが自らのMANAを用いて、マモノや罠を実体化して戦う為に使うカードの束。扱いとしては武器になる。本来はDLCクエスト「親愛なる13班へ」にて手に入る、デュエリスト用の武器としては一番性能が高い。

【Sin サイバー・エンド・ドラゴン@劇場版 遊☆戯☆王 〜超融合!時空(とき)を越えた絆〜】
絶望の未来を変えるために行動していたパラドックスが用いる効果モンスターのカード。
星10で闇属性の機械族、攻撃力4000で守備力2800。効果は割愛。
なお本来は通常召喚は不能だが、主催の手により実体化させて戦わせる事が可能となっている。ただし1度召喚するとそこから12時間は使用不能となる。
また本来ならフィールド魔法カードが発動されてないと自壊するが、現所有者のアリカの場合はこれを自らのスキルであるフィールド:火山やフィールド:氷河、フィールド:雷雲によって代替可能になっている。

【ファイズギア@仮面ライダー555】
仮面ライダーファイズへと変身させるアイテム一式。一個のアイテム扱い。
中身はファイズドライバーと光線銃にもなるファイズフォン、クリムゾンスマッシュを放つ際に必要になるファイズポインター、グランインパクトを放つ際に必要になるファイズショットが入っている。
原作では普通の人間には変身できず、進化した人類であるオルフェノクやその記号を埋め込まれた人間のみが変身出来たが、今ロワで普通の人間が変身可能かどうかは採用された場合後続にお任せします。
少なくとも現所有者であるアリカの場合は変身可能とします。


265 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/14(日) 23:19:13 OhKht5UY0
投下終了します。タイトルは
枯れ果てた刻の運命
です。


266 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:33:39 OkNo42Rc0
投下します


267 : ラブライブ・ダークナイト ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:34:17 OkNo42Rc0


「あはははははは、あはははははははっ!!」


月だけが見下ろす荒野の大地の下で、狂ったように少年、風間トオルは笑っていた。


「今日はなんて日だ! まさか、こんな、こんな所で―――ことりと出会うかもしれないチャンスが来るだなんて!」

この風間トオルは、本来の風間トオルではない。
スクフェスというソシャゲにドはまりし、ソシャゲの暗黒面に飲み込まれ外道に落ちたクソガキだ。
その狂気と推しに対する執念は、唯一無二の理解者たる友人を「ラブライブを侮辱した」という理由だけど、唯一心を許すラブライバーの同士と共にリンチして殺害する程にだ。
だが、悪因悪果は訪れる。息子を殺された父親が復讐のために策を練り、報いを受けるかのように他のラブライバー友達同様、因果応報と言わんばかりに殺された。

「あのクソガエルの精液元は恨んでも恨みきれないが、こんなチャンスが訪れたっていうのならほんのちょっとぐらいなら感謝してやってもいいかな?」

自らの罪を省みる事もなく、相手が悪いと言わんばかりに愚痴るその姿はクソガキと言うに相応しく、全く反省の色など無い。

「まあともかくだ。僕がやることは、この殺し合いで何が何でも勝ち残って――ことりちゃんを僕の嫁にする事!」

一度殺され、殺し合いに巻き込まれ、なんでも願いを叶えるという甘味を提示されて。
乗らないわけがない。スマホの画面越しに貢ぐことしか出来なかった理想が、この手に届きそうなのだ。
このチャンスを、何が何でも手に入れる。

「待っててくれ、ことりちゃん! 今度は僕の嫁として君を迎えに行ってやるからな!」

少年とは思える狂気を孕ませ、ソシャゲに狂った外道は高らかに宣言するのであった。

【ラブライバー風間@鬱・マジキチSS】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.どんな手を使ってでも優勝して、ことりちゃんを僕の嫁にする
1.邪魔をするやつは殺す。同じラブライバーがいるならできる限り大切にはしたい
[備考]
※参戦時期はひろしに殺された後


268 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:34:30 OkNo42Rc0
投下終了します


269 : 団地管理人の矜持 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:37:37 xz2hq/.c0
いくつか投下します。


270 : 団地管理人の矜持 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:37:55 xz2hq/.c0
「これは……一体、夢なんだろうか?」

とある一軒家。
鏡に映る自身の身体を眺める少年。
少年の名はヨシダ。とある団地の管理人。

「まだ解決できてないことがたくさんあるのに、アイゼンさんの……おっぱいの温もりが気持ちよすぎて変な夢をみちゃっているとか」

バニシング排斥婦人会とのご近所トラブルから、ペシミズム厭世病院に入院することとなったヨシダ。これを機会に団地で負った体と心の傷を癒そうと思うのもつかの間。
そこには因縁のバニシング排斥婦人会のアイゼンがいたのだ。
ヨシダは始めこそ警戒したが、アイゼンの胸の暖かさに感触……聖母のぬくもりに身を委ねてしまった。
そして眠りから覚めると、身体の怪我が全て治っていることに加えて、乃亜と名乗る少年による殺し合い。
天国からの地獄。
これが夢なのではないかと疑うのも無理はない。
しかし。

「いたい!……ということは、やっぱり夢じゃないか」

試しに自分の頬を強く引っ張ってみた。
すると、痛みが。
ヨシダはこれが、夢でないことを理解する。

「だけど、あの場を見渡した限り、小さい子ばかりに見えたけど……?」

夢でないなら、疑問も生まれる。
ヨシダを含めて集められたあの場にいたのは、幼い子たち……所謂、ショタやロリに属する年齢の子たちばかりであった。
ヨシダは、年齢としてはショタには属さない。
なぜなら高校を卒業しているから。
高校を卒業後、就職に失敗して家に引きこもっていたヨシダだが、団地の管理人であった父が身体を壊したため、代理として管理人に就職した。
しかし、年齢こそショタではなくとも、引きこもっていたのもあって、貧弱かつ童顔。
おそらく、それが決め手として乃亜が集めたショタに属したのだろう。

「まぁ、それは置いておいて。これが、現実なら僕は帰らなきゃならない……あの団地に」

ヨシダの脳裏に浮かぶのは、カタギリさんをはじめとした住人のみんな。
確かに一部の住人の中に変態人妻がいるが、団地やそこに住む善良な住人に罪はない。
今は、オーナーから臨時の管理人を派遣すると聞いてはいるが、その人にずっとお任せするわけにはいかない。

―――変態人妻を見たらすぐ管理人ヨシダへ連絡願います!

だって、僕は団地管理人だから。

「それと、あの子を止めなきゃ」

そう…あの子の心の闇。
学生だった頃、男子女子とイジメられてた苦い思い出があるヨシダだからこそ、乃亜に違和感を感じた。
まるで……何か傷を抱えているようだった。
なら、解ってあげなきゃならない。

―――真の優しい子になってね

そうだよね?母さん。

【ヨシダ@淫獄団地 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:団地の管理人として帰る。それと、できたら乃亜を救ってあげたい
1:他の参加者と接触してこの殺し合いを打破する方法を考える
[備考]
22話、アイゼンの母性で一夜を過ごした直後からの参戦です。
乃亜が何か抱えているのではないかと直感で推測しています。


271 : 終わらない夢 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:38:21 xz2hq/.c0
あるクニ。あるマチに、ドウワずきのアリスというおんなのこがいました。

アリスはドウワのしゅじんこうになって、そのせかいであそぶゆめをよくみていました。

そのひも、いつものようにひるまよんだドウワのせかいであそぶゆめをみていると、ノアとなのるショウネンがあらわれました。

「やあ、諸君目は覚めたかな?」

それまでたのしいをゆめをみていたアリスはうなされ、ゆめのなかのアリスも、どうすることもできずにただふるえることしかできませんでした。

しかし、このままではアリスはにどとドウワのゆめをみることができません。

アリスは、あくむをはらすために、ノアをたいじにでかけるのでした。

【アリス@不思議の夢のアリス 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ノアをたいじして、またドウワのゆめをみるため眠る
1:仲間を探し、敵を斃す
[備考]
ゲームクリア めでたしめでたし後からの参戦です。
アリスはゆめのなかの存在ですが、死は肉体に影響します。


272 : 絶対だよ! ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:38:42 xz2hq/.c0
「おはようママ。あのね、あたしうさぎさんのくにを、わるい女王からすくってあげたのよ!」

それは、嘘のようで本当の話。

「あらそう、よかったわねぇ。さっはやくたべなさい、おくれちゃうでしょ」

なのにママは信じてくれない。

「ママ、ちゃんときいてよ!あのねうさぎさんのくにってね、かがみのなかにあるのよ。それにね、」

あたし、嘘なんかついてないのに……

「ねぇママ、きいてるの・・・?」

心がモヤッとしている中、あたしの意識は失われ、目を覚ますと、今度はノアと名乗る少年がバトルロワイアルっていうのを強要してきた。

ノアは悪い女王よりも悪いことをしている。
ゆすせない!あたしが皆をすくってあげなきゃ!
そうか!うさぎさんのくにの話は子供っぽいから聞いてくれなかったのかな!
そうとわかれば、あたしは動く。

ねぇママ。今度こそ、あたしの話を信じてね!

【アリス@メルヘンメイズ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ノアをやっつけて、この話をママに話す
1:仲間を探し、敵を斃す
[備考]
エンディング THANK YOU ALICE後からの参戦です。


273 : 死んでくれる? ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:39:20 xz2hq/.c0
アリス。

それは永遠の少女。

煌びやかな金髪のロングヘア―。
透き通る蒼眼。

だけど、ここにいるアリスは違った。

あどげない容貌をしているが、底知れぬ呪力を持つ霊。

そして、このアリスは”魔人”であった。

「…しんでくれる?」

【魔人アリス@真・女神転生Ⅴ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜をトモダチにする
1:他の参加者をトモダチにする
[備考]
主人公に仲魔になった後からの参戦です。


274 : ひだまりポカポカ ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:39:45 xz2hq/.c0
「大変なことに巻き込まれましたわ……」

少女は一人、闇の中呟く。
少女の名は四葉アリス。
四葉財閥の令嬢。

「流石にクシャポイすればいい問題ではありませんわ」

四葉財閥の力をもってすれば、たいていの事なら揉みつぶせる。
かつて、親友がプリキュアになった際も正体が隠せるように裏で手を回していたのだから。

あたしを誰だと思ってるの?大貝第一中学校生徒会長、相田マナよ!

まぁ、もっともキングジコチューとの最終決戦は流石に隠すことはできなかったが。
何しろ、全世界に中継されている中での宣言。

「それに、私のこの姿から……どうやら乃亜さんの力は既に人智を超えた力を有しているとみていいですわね……」

その根拠が自分の姿。
ありすは今、キュアロゼッタとして大地に立っているのだから。
本来、プリキュアに変身するためには、パートナーが必要不可欠。
なのに、自分のパートナーであるランスがいないのにキュアロゼッタとしているのは、おそらく乃亜の力によるもの。

「……」
(あまり、いい状況じゃありませんわね。乃亜さんのどんな願いも叶えるといったとき、明らかに殺気めいたのを抱いた参加者が何人かいましたので……)

あの場に集められていた多くはルフィやエースの年齢に見受けられた。
善悪の判断がまだつきにくい年頃だからこそ、願いと言う甘い果実を食するために乗る可能性が高い。
そして、プリキュアは、人を超えた力を有する。
それなのに、プリキュアの姿のままで参加するということは……
つまり、プリキュアの力でもこの殺し合いが成立する支給品があるということ。
血と血が飛び散る絶望の状況。

「ですが……それでも、マナちゃんなら、立ち向かうはずですわ」

ありすが口にするのは幼馴染の一人。
外の世界を知らなかった私を教えてくれた大切な友人。
相田マナなら、この絶望といってもいい状況でも諦めずに助けようと動くはず。
なら、自分も。
相田マナの友人である自分が諦めるわけにはいかない

キュアロゼッタ、動きます。

【四葉ありす(キュアロゼッタ)@ドキドキプリキュア 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の企みを阻止する
1:まずは、他の参加者と接触、力なき参加者は庇護する
[備考]
最終回後からの参戦です。
キュアロゼットに変身中で、そのまま変身が解けることはありません。
外見はキュアロゼッタですが、名簿の表記は四葉ありすとされています、


275 : これが私の戦車道 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:40:17 xz2hq/.c0
「許せない……」

一人、深淵の闇を睨む少女。
少女の名は島田愛里寿。
洗車道島田流家元島田千代の一人娘。

愛里寿の機嫌はすこぶる悪かった。

「あのルフィって子……ボコの眼をしていた」

ボコ。
それは、ボコられグマ。
愛里寿がこよなく愛するキャラクター。

何もしていないのにやられたり、声援を受けても悉く返り討ちに遭う。
だけど、どんな相手を前にしても諦めない。
勇敢に立ち向かう勇気の持ち主。

愛里寿の眼に映ったルフィは、自分よりも遥かに年下。
しかし、勇気の持ち主に見えた。
だけど、乃亜は嘲笑った。
ルフィの勇気を。
兄弟愛を。

「絶対に二人に謝らせる」

故に愛里寿は決意した。
乃亜にルフィとエースの兄弟愛は、決して敗北者ではないと。

「そうと決まれば……」

方針を定めた愛里寿は冷静になる。
このまま普通に反逆すれば、首に装着されている爆弾首輪で処理されるのがオチ。
故に行動は慎重に。
大丈夫。落ち着け。今から行う戦法は得意の筈。
なぜなら、臨機応変に対応した変幻自在の戦術を駆使する戦法こそ島田流の神髄なのだから。

島田愛里寿、動きます。

【島田愛里寿@ガールズ&パンツァ―劇場版 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜に謝らせる
1:まずは、他の参加者と合流する
[備考]
映画終了後からの参戦です。


276 : アイカツそれは最強の4文字 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:40:54 xz2hq/.c0
「どうしたら、いいの?」

心身ともに震えが止まらない少女。
少女の名はアリス・キャロル。
アイドルを目指す少女。

エルザ・フォルテにスカウトされ、ヴィーナスアークに所属していたアリスだが、宣告外通告され、学園を去ることとなった。
その直後にこの殺し合い。
アリスは降りかかる絶望に身体が膝から崩れ落ちていた。

「私……このまま死んで、アイドルになれないのでしょうか……」

乃亜と名乗る少年がいうには、生きて帰るには殺し合いで勝ち残るしかない。
勿論、殺すなんてそんなことできないし、かといって、自分が勝ち残る姿をイメージできない。
アリスはただ泣くことしかできなかった……

そんなとき―――

―――ごきげんよう

アリスの脳裏に聞こえたのは、敬愛したエルザの声。

「そうだ……私には夢がある。……ファンもいる」

ぐぐ……と身体を起き上がる。
足をしっかりと大地に踏みしめる。
膝は震えているけど。
もう倒れるわけにはいかない。

「エルザ……さんに約束したのです!私は、絶対に生きて帰ってアイドルを目指します!」

静寂な大地にアリスは叫んだ。
心をすっきりさせるために。
眼に輝きを取り戻す。
瞳の奥に光が差す。

「……アイカツ」

両手で震える膝を叩く。
そして唱えるあの言葉を。

「アイカツ!アイカツ!!」

それは―――

恐怖を勇気に。
心細さを笑顔に。

「アイカツ!!!アイカツ!!!!」

どんな悲しみも。
どんな苦しさも。

「アイカツ!!!!!」

アイカツ。
その4文字で私は何度も立ち上がる。

【アリス・キャロル@アリススターズ! 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰り、エルザ様に負けないアイドルを目指す
1:まずは、他の参加者と合流する
[備考]
60話後からの参戦です。


277 : 大事件 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:41:19 xz2hq/.c0
「これは、事件も事件。大事件ね!」

乃亜による殺し合いに巻き込まれた少女。
少女の名はアリス。
花屋の一人娘。

「といっても、犯人はもう分かっているけどね」

そう、今回の事件は推理するまでもない。
なぜなら、その犯人は堂々と自己紹介して姿を見せたのだから。

海馬乃亜。
それが、この大事件の犯人。

「そりゃ、ブレメンのコンサートチケットとか私にだって叶えてもらいたい願いはあるけど……」

何でも願いが叶う。
それは、甘い誘惑。
しかし、アリスはそれに負けない。

「負けないんだから!」

【アリス@アリス探偵局 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:まずは、他の参加者と合流する
[備考]
1期26話後27話前からの参戦です。


278 : sos ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:41:53 xz2hq/.c0
アリス。
それは、囚われの少女。

王様の国。恐竜の国。料理の国。さかさの国。サボテンの国。いじわるの国。サラダの国……

幾度となく攫われるも勇敢な4人の少年少女に助けられてきた。
しかし、今度は乃亜によるバトルロワイアルの国。

そこはSOSは通じない。

【アリス@アリスS・O・S 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:まずは、他の参加者と合流する
[備考]
7話後からの参戦です。


279 : 殺しの国のアリス ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:42:32 xz2hq/.c0
「だまらっしゃい」

大きな声で怒りの声を上げるはクイーン。

「だまらない!」

それに負けじと声をはる一人の少女。
クイーンは顔を真っ赤に染め上がる。
その紅き紅きドレスをも焼き払うほどに。

「このむすめの首をちょんぎれ!」

クイーンはありったけの裏声をはる。
しかし、ひとりでも動かない。

「だれが言うこときいて?」

少女はふふんと鼻を鳴らす。
勝利を確信した幼き眼。
そして、敗者を指さす。

「あなたたちみたいなただのトランプ」

せつな、トランプがいっせいに躍り上がり、空から降り注いでくる。

「きゃ!?」

少女はびくつき半分、むかつき半分で打ち払った。
視界がひらけたその瞬間。
少女は宣告される。
その”おさばき”を

「やあ、諸君目は覚めたかな?」

☆彡 ☆彡 ☆彡


280 : 殺しの国のアリス ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:42:48 xz2hq/.c0

「とりあえず最後の一人になればいいのね?」

少女は、腕組みしながら思案していた。
その美しい金髪をなびかせて。
透き通った蒼眼は深淵を見つめる。

少女の名はアリス。

アリスは始めこそ、何がなんだかといったようで頭の中がこんがらがっていた。
しかし、お利口さんなアリスは直ぐに理解した。
自分たちの命はあの少年に握られているのだということを。

「なら、まずは私の支給されたのを確認しなくちゃ」

そう、アリスは優勝するために。・
なぜならアリスはあっきあきしていたから。
木かげで、おねえさまの傍に座っているのも。
何もしないでいるのも。

だからウサギを追いかけた。
心がはっとしたから。

殺し合いなんてイヤに決まっている。
だけど、ノアと名乗る少年は”ゲーム”だといっていた。
なら、ゲームをクリアすれば家に帰れる。
そして、どんな願いも叶えてくれるなら、死んだ人達を蘇らせてもらえばいい。
あのルフィと呼ばれた少年を生き返らせたように。
そうと決まれば、行動あるのみ。

「ふふ。帰ったらあたくしみんなの英雄ね!」

アリスは英雄譚を夢見てる。

不思議の国は消え去った。

【アリス@不思議な国のアリス(原典) 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して死んだ人達を蘇らせてから家に帰る
1:まずは、自分の支給品を確認する。
2:優勝するために頭を働かせる。
[備考]
裁判中、トランプを追い払った直後からの参戦です。


281 : 原点にして頂点 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:43:42 xz2hq/.c0
アリス。

それは永遠の少女。

煌びやかな金髪のロングヘア―。
透き通る蒼眼。

だけど、ここにいるアリスは違った。

黒髪のボブへアにオリエント風な顔立ち。

しかし、彼女は紛れもなくアリスだった。

【アリス・リデル@現実 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:黄金の午後を取り戻す
1:まずは、他の参加者と合流する
[備考]
ルイス・キャロルが即興で聞かせた物語を聞いた後からの参戦です。


282 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:44:09 xz2hq/.c0
「くそ……くそ!くそ!!くそ〜〜〜〜〜!!!」

その声は怒りと悲しみが込められている。
喉を傷めることもいとまないその悲痛な叫びは聞く者の心をも痛ませるだろう。

「ルフィ!!!エース!!!おれは!!!!!」

己を責め続ける。
護れなかったからだ。
弟を。エースを。
二人ともこんなところで死んでいいわけがなかった。
ただ茫然と見ていることしかできなかった。
後悔後に立たず。
少年の状況は正にそれだった。

少年の名はサボ。
ルフィ・エースの兄弟。

☆彡 ☆彡 ☆彡


283 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:44:27 xz2hq/.c0

「弟を守れない兄貴がどこにいるんだ!!!」

盃を交わした。
たとえ血は繋がってなくてもそこには絆があった。

これで俺たちは今日から兄弟だ!!

「オレは……恥ずかしい!!!」

あの場で乃亜に反抗できなかった。
ルフィとエースを見下し、嘲笑いそしてもっとも侮辱な言葉をかけた。

「そうだねえ……せっかくだ。キミたちの兄弟愛に題名でも付けてあげようか。
 『無様な敗北者達』キミたちにぴったりの名前じゃないか! 無駄死にご苦労様、せいぜいあの世で海賊ごっこに励んでいてくれたまえ!
 アッハハハハハハハハハハハハハ!!!」

海賊を……”漢の夢”を虚仮にしやがった。
貴族として生まれたことを恥じたことがあるが、その時以上に自分という存在に恥を感じたことはない。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃとなる。

そんなサボに。

「あの……”これ”食べる?」
「……え?」

手を差し伸べるベレー帽の少女がいた。

☆彡 ☆彡 ☆彡


284 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:45:04 xz2hq/.c0
☆彡 ☆彡 ☆彡

「すごい……キャンバスが無くても描けるなんて」

支給された筆の能力に驚愕している赤いベレー帽の少女。

少女の名はアドレーヌ。
ポップスターで絵の修行中のお絵かきガール。

「あの、乃亜って子がいってた支給品ってこういう意味だったのね」

確かに、このマジックブラシのような能力がある支給品があるなら、自分のような者でも殺し合いで勝利することが出来る可能性がある。

しかし―――

「やっぱり……ねぇ」

アドレーヌは乗り気にはなれなかった。
それも当然。
確かにポップスターでアドレーヌも戦ったことがある。
しかし、それはあくまで一時の対応。
本来の自分は絵かき修行の身。
それだけじゃない。
恐怖がある。
自分もあの兄弟のように無残に殺されるのではないかという恐怖が。
例えるなら、心の中にダークマター。
そんなとき、声が聞こえた。

「ルフィ!!!エース!!!おれは!!!!!」

「……え?」

それは、あの場にいて殺された兄弟の名前。
まさか、兄弟の関係者?
アドレーヌは声に誘われるがまま歩く。
そして、目にしたのは、兄弟を殺され、自分を責め続ける少年の姿。

「……」

慰める言葉が見つからない。
だって、まだ関係を結ぶこともできていないから。

カーくんだったら、どうしているかな。

「うん」

アドレーヌは決心すると、マジックブラシで描く。
ウィスピーウッズのリンゴを。
そして、それを手に声をかける。

「あの……”これ”食べる?」

☆彡 ☆彡 ☆彡


285 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:45:22 xz2hq/.c0

「うまかった……ありがとう」
アドレーヌが用意したリンゴを食べ終えたサボはアドレーヌにお礼を言う。

「ううん。気にしないで!それよりカーくんみたいな食べっぷりでビックリしちゃった」
(はぁ……はぁ……うん。やっぱりいつもより疲労を感じる。きっと、これも制限ね……)

サボの見事な食べっぷりにアドレーヌは感心する。
あれから、アドレーヌはリンゴにトマトなど、様々な食べ物をサボに分け与えた。
あまりにも美味しそうに食べるので、アドレーヌも張り切った。
が、それと同時に自らの能力を発揮すると体力が疲弊することにも気づく。

「後……落ち着いた?」
「ああ……」

アドレーヌの言葉に、サボは帽子で顔を隠しつつ頷く。

「そういえば、アドレーヌの持つ筆、すごいな」

サボは

「これ?う、うん私の支給品の一つ。そういえば、サボくんにもいくつか支給されているはずだよ」
「そうか……よし!調べるか!」

アドレーヌの言葉にサボは自らの支給品をチェックする。
すると、そこには”あった”

「これは……ッ!?」

それは、食すればカナヅチと引き換えに悪魔から能力を得られるといわれている実。

悪魔の実。

「わぁー……何だが炎みたいなメロンだね」

アドレーヌはサボが手にする悪魔の実の一つ”メラメラの実”を眺める。

「……」
(何だ……?何だかよくわからないが、この実を手に取った瞬間。……浮かび上がった……エースの姿が!?)

「サボ……くん?」

「……」
(そうか……許せねぇか。そうだよなエース!!!)

―――シャリ

「……おい、”乃亜”」
「きゃっ!?」

炎が舞い散る。
それは、反逆の炎。

すぅ……大きく息を吸う。
そして、吐いた。

「俺はエースとルフィの兄弟”サボ”だ!!!」

「あいつらは”無様な敗北者”じゃねぇってことをお前の身体に叩き込んでやるから首を洗ってまっていやがれ!!!」

ありったけの怒声。
乃亜に対する革命の轟。
静寂な会場に響き渡る。

「それと……おれが守ってやる!」

アドレーヌに顔を向けるとグッとサムズアップするサボ。
もう、先ほどの孤独なわめき散らかす少年はいない。

「……」

正直、絵を描くことだけの自分は生き残れないだろうなと思っていた。

もう、何も怖くない。
自分よりも幼き少年は革命の宣言をした。
なのに、自分がそんな弱気ではいけない。
大丈夫。心の中を渦巻くダークマターは消え去った。

「ええ。よろしくね!サボくん!」

心地よいハイタッチが軽快に響いた。


286 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:45:41 xz2hq/.c0

【アドレーヌ@星のカービィ】
[状態]:疲労(中)
[装備]:マジックブラシ@マリオサンシャイン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:孫くんと行動を共にする
2:何とか私の力で首輪をどうにかできないかしら……?
[備考]
ゲーム版の出来事(64・スターアライズ・)を体験していますが、口調・性格は漫画版星のカービィデデデでプププな物語が参考となっています。
絵の実体化に制限がかけられています。
絵を実体化させると疲労がたまります。
疲労がたまると絵を実体化させることができません。

【マジックブラシ@マリオサンシャイン 】
アドレーヌに支給された筆型のアイテム。
絵の具をまき散らすことができたり描いた物を実体化することができる。
また使用者姿を変化することもできる。
アドレーヌが知識として知っているものしか具現化できません。
また、使用者の姿はロワ参加者のみで、邂逅した参加者の姿にしか変化することはできません。
また、使用することで疲労がたまります。
「マジックブラシ。これでお絵描きすると願いが叶うんだ! 」BYクッパJr.

【サボ@ONE PIECE 】
[状態]:健康、満腹 メラメラの実の能力者
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:革命を起こして、乃亜にルフィとエースは敗北者ではないことを証明する
1:アドレーヌと行動を共にしつつ守る
2:ルフィ!エース!兄弟の仇はおれがとる!
3:そのためには、メラメラの実の能力を使いこないとな
[備考]
単身、小舟で海を出港する直前からの参戦です。
メラメラの実を食べて能力者になりました。

☆彡 ☆彡 ☆彡


287 : 反逆 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:45:59 xz2hq/.c0

「……ふむ。どうやら、方針の見直しが必要のようだな」

サボとアドレーヌのやり取りを木の上から見下ろす少年。
少年は唯の少年ではない。
国の王。国王の地位に君臨する。
アレウーラ王国、国王。アレウーラ8世。
最も、それにもある秘密があるのだが、ここでは割愛する。

「あの乃亜なる人間よ。大儀である」

始めはさっさと優勝して、乃亜の力を奪い、生命の法をもちいて二つの世界を繋げようと考えていた。
二つの世界の王となる。それが国王の野望。
しかし、アドレーヌの能力に悪魔の実で力を得たサボを見て、国王は当初の計画を大幅に変更することに決めたのだ。

「貴様のお陰で私が数多の世界の王となる道が見えたのだからな」

野望は更なるステージへと進化した。

【こくおう@テイルズオブテンペスト】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:このバトルロワイアルなる儀式を経て数多の世界の王となる
1:ひとまずは様子見。優勝するか否かはその後の状況で判断する
[備考]
本編死後からの参戦
名簿には本名である「ウォールス・ガーナ―」ではなく「こくおう」とだけ記名されています。
数多の世界が存在することを理解しました。


288 : 異世界蘇生 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:46:41 xz2hq/.c0
可愛らしいピンクの麦わら帽子。

サラサラヘアーのボブカット。

純白なワンピース。

そして、手にはバール。

【安藤なつみ@なつみSTEP! 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して■■■■
1:参加者を■す
[備考]
Gi59へ向かう直前からの参戦です。

【@なつみSTEP!】
なつみに支給されたバール。
かつて手にしたことがあるバール。
それを何に使用したかは彼女にしか分からない
「安堂なつみ 7/20/23:36「着」」BY■■■■


289 : 異世界蘇生 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/14(日) 23:47:05 xz2hq/.c0
投下終了します。
最終日にお時間とってしまい、申し訳ありませんでした。


290 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:47:52 OkNo42Rc0
代理投下します


291 : 小便少女 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:48:15 OkNo42Rc0
※注意:このSSは性的描写ならびに特殊性癖を含み、かつフリーエロゲ出身のキャラが登場します。


「一体……なんなんですかあれはっ!?」

 橘ありすは、あまりの突飛な状況に理解が追いつかなかった。
 いきなり海馬乃亜を名乗る子供から殺し合えと言われた挙句、人が無残に殺される様を二度も見せつけられた。

「なんでっ!?どうしてこんなことにっ!!」

 叫ばずにはいられない。
 身体を抱いても震えが止まらない。
 クールな佇まいをしているありすも、こんな状況では年相応な部分が出てしまう。

「死ぬ……?私、死ぬ……?」

 殺し合いということは、自分も殺されるかもしれないということ。
 全く意識をしたこともなかった死の気配が、ありすのすぐ近くに感じられた。
 つい先ほどまで、第三芸能課のメンバーとして、あのキラキラとしていてカッコいいアイドルを目指して、自分達だけの夢のステージを目指していたのに。

「いや……怖い……!」

 死んでしまえば、それも叶わなくなる。第三芸能課の皆の夢が夢と消えてしまう。
 不安と恐怖で、ありすは蹲ったままその場から動くことができなかった。
 そんなありすに、近づいてくる影があった。

「……?」

 ありすはおそるおそる見上げる。
 その影の正体は、少女の姿をした石像の天使であった。


292 : 小便少女 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:48:50 OkNo42Rc0
§




 金髪をした、白い紫羅欄花を思わせる装束を身に纏っている少女が、バトルロワイアルの会場のどこかを歩いていた。
 その表情には、このゲームの主催者への怒りがあったが、同時に困惑を含んでもいた。
 少女――伊予島杏(いよじまあんず)は、死んだはずであった。まるで姉のように慕っていた球子と共に、巨大なサソリ型バーテックスと戦うことを選ぶも――球子の楯が破られると同時に、球子共々サソリの針に貫かれ――今度は姉妹として生まれることを望みながら息絶えたはずだった。
 しかし、杏は息を引き取る最中にあの場所に呼ばれ、勇者装束を身に着けたままこの地に放り出されたのである。

「あんな事……絶対に許されない……!」

 海馬乃亜が行った、ルフィとエースという名の少年の兄弟愛を弄ぶような行為を、杏は許すことができなかった。この地に集められた子供達を殺し合わせる邪悪な催しも。
 海馬乃亜がなぜこんなことをしようとするのか、なぜあの時死んだはずの自分が生きているのかは分からないが、とにかく今は勇者としての務めを果たすことにした。四国に結果を超えて侵入してくるバーテックスを撃退していた時のように。今を生きる人々を守る勇者として。
 また、皮肉なことに、この殺し合いで杏が生きていたことで、ある種の希望も生まれていた。

「タマっち先輩も、もしかしたら……!」

 自分が生きているということは、土居球子も生きていてこの地に招かれていたとしても不思議ではないということだ。非常に希望的な観測ではあるが、球子と共に生きて帰る……なんてことがあるかもしれない。一方で、残された乃木若葉達もまた、この殺し合いに巻き込まれているかもしれないという不安もあるにはあるが。

「――あれって……」

 ふと、杏の視界の端に1対の人影が見えた。片方は、愛らしい見た目をした少女。年は杏よりも2、3歳くらい下で、小学生くらいだろうか。もう片方は、光り輝く翼を背に宙を浮く天使。しかし、天使といっても外見は人間離れしており、その身体の表面はごつごつとした岩のような……まるで、岩で固められた天使の石像だ。少女はポカンとした顔をしながら、天使を見つめていた。
 杏が注視していると、天使の方が先に動き出した。なんと天使は、黄色く濁った水をその身体から放ったのだ。

「っ!!!」

 ただならぬ気配を感じ、杏は少女と天使の元へと急行した。


293 : 小便少女 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:49:08 OkNo42Rc0
§




 それは、突然のことだった。ありすが石像のような天使を見上げていると、天使は独りでに動き出し……ありすに濁った水をぶっかけたのだ。

「わぁっ!?」

 蹲って動けなかったありすは、回避する暇もなくそれにかかってしまう。

「な、何するんですか……!」

 抗議しようとしたありすだったが、目を開けた瞬間、何かがおかしい。
 先ほどは平気だったのに、どこか肌寒い。それに、地面に蹲っていたというのに、妙に視線が高く、見上げていた天使と同じ高さまで上がっている。
 怪訝に思いながら、ありすは自分の身体を見下ろすと同時に、目を見開いた。

「ぁ……ぇ……?」

 なんとありすの衣服はすべて消え去り、問答無用で素っ裸にされていたのだ。
 まだ膨らみかけの胸も、小学生相応の肢体も、絶対に人に見せてはいけないあそこも全て見せつけている。

「っっきゃあああああっ!!」

 頬を真っ赤にして悲鳴を上げながら両手で隠そうとするも、それもできなかった。
 なぜなら、ありすはいつの間にか石でできた台に乗せられ、手足が石になって動かすことができなかったのだから。台の上では、まるで和式便所で小便をする時のような姿勢になったまま動けないありすがいた。

「いやぁっ!!なにこれっ!?なにこれぇぇぇぇっ!!!」

 完全に余裕を失ったありすは、目から涙を溢れさせ、半狂乱で必死に台から降りようとするも、石化した手足は台と接着されており、完全に動けなくされていた。
 それでもありすは髪を振り乱しながらもがくも、まだ石化していない肩とお尻がくねくねと揺れ動くだけで、その動きに応じてありすの股にある柔らかそうなあそこも形を変えていた。股を開いたまま狂ったように暴れる石化されかけた女子小学生の姿は、その手のマニアからすればさぞ煽情的だったに違いない。

「やだぁっ!こんなの嫌ぁぁぁっ!!」

 台というステージの上で、女の子が小便をする姿勢のまま鎮座する全裸のありす。しかし、こんなステージはありすは望んでいない。

「――」

 そんなありすを見て楽しんでいるのか、天使は光る翼をふよふよと揺らしながらありすを見下ろす。

「ひっ……」

 天使を見上げたありすは、直感的に理解する。次、同じように水にかかってしまえば、石になってしまう。
 人が石になってしまう物語は何度か本で読んだことはあるが、まさか自分がそうなるとは思ってもいなかった。石になってしまったらどうなるのだろう。こんな恥ずかしい姿を見せつけたままこのままなのか?
 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやいやいやいやいやいやいやいやそれだけは。

「誰か……!プロデューサーっ!助け――」
「やめなさいっ!」

 そうありすが叫ぶと同時に、そんな声がどこかから聞こえた気がした。
 しかし、運命は残酷である。その声の主は間に合わず、天使から再び濁った水がかけられた。
 その刹那、ありすは恐怖のあまり、秘所から尿を垂れ流した。




§





 間に合わなかった。遅かった。
 とてつもない悔しさに、杏は苛まれていた。
 杏は跪き、「ありすだったもの」を見上げる。

「……」

 ありすの顔は絶望に染まったまま、頭からつま先に至るまで完全に石化していた。
 しかもそれだけではなく、その肢体は全裸のままで、女の子が見せてはいけない恥ずかしい部分も丸出しにしながら、その股間からは黄金色の液体が常に吹き出ていた。
 まるで、永遠に小便をしたまま固められたかのようだった。

「……」
――ちょろろろろろろろろろ……。

 おおよそ、幼さの残る少女が見せていい姿ではなかった。
 その手のマニアが見れば、固められたありすをこう呼ぶだろう。『小便少女』と。

「っ!!」

 杏は、義憤を滾らせた視線を天使のいた場所へと移す。天使はありすを小便少女にしたことを確認すると飛び去ってしまった。それはまるで次の獲物を探しに行くようだった。

「……ごめんね。守ってあげられなくって」

 杏は、小便少女と化してしまったありすに謝罪をする。
 自分は未熟だ。先んじて支給品を確認しておけばとか、もっと早くこの子を庇っていればとか、自分の武器であったボウガンさえ取り上げていなければ、など、既に起こってしまった今からすれば言い訳に過ぎない。
 このままではダメだ。殺し合いをただ止めるではなく、殺し合いに乗った者達から罪のない子達を守れる勇者にならなければ。自分を守ろうとしてくれた球子のように。

「もう、こんなことは二度とさせないから……!」

 杏は天使が去って行った方向を再度睨み、その後を追う。あの天使の正体は分からないが、あんな姿で人を固めようとする行為など絶対に見過ごせない。同じ犠牲者を生まないためにも、勇者・伊予島杏は駆け出した。


294 : 小便少女 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:49:24 OkNo42Rc0
§




 天使――カタメエンジェルは、とある世界のアビスケイブというダンジョンにおける、『カタメベヤ』という部屋にいるモンスターだった。
 アビスケイブは、女性しか入れない上に、内部に存在するモンスターはほとんどが固め――石化はもちろんのこと、黄金化からカボチャランタン、フィギュア化まで、様々なモノに人間を状態変化させ、固めてしまう攻撃を有していた。
 カタメエンジェルは、その中でもありとあらゆる固めの効果を有する攻撃が可能で、ありすに発した『汚れた水』も対象を小便少女に固める効果を有するものであった。

 本来、アビスケイブを『作品名』として知る者からすればカタメベヤは所謂「様々な固めのシーンを鑑賞する回想部屋」なのだが……どういうわけかこの殺し合いに放たれてしまった。
 しかも、カタメエンジェルはそこらのアビスケイブのモンスターに比べて桁違いの硬さを有している。固めるだけで殺せないとはいえ、きわめて厄介なことには変わりないだろう。
 本来であれば、アビスケイブの存在する世界で出回っているレストアの書を所持することによって行使できる『レストア』なる魔法を使えば即時に元通りになれるのだが、それを異なる世界出身のありすや杏には分かるはずがない。

「――」

 カタメエンジェルは、ただ無機質に、次に固める獲物を探して殺し合いの地を行く。 





§





――いや……行かないで……恥ずかしい……助けて……。

 杏は気づいていなかった。小便少女に固められたありすは、まだ生きているということに。
 それに加えて、おぼろげながら意識もあった。
 台というステージに鎮座しながら、アイドルだったありすは延々と放尿し続ける像と化した自分を嘆き続ける。

 ちなみに、制限の影響でカタメエンジェルによる固めの効果は永続ではなく、それなりの時間が経てば途切れ、『レストア』の魔法を使わずとも元の姿に戻れるだろう。
 それがありすにとって幸になるか不幸になるかは知らないが。



【伊予島杏@乃木若葉は勇者である】
[状態]:健康、カタメエンジェルへの怒り、ありすへの罪悪感
[装備]:勇者装束
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況] 基本方針:勇者として、殺し合いを止め、今を生きる人達を守る
1:あの天使の石像(カタメエンジェル)を追う
2:タマっち先輩も生きてる……?
2:もし若葉たちも参加していたら、合流したい
[備考]
※参戦時期は死亡後からです。
※カタメエンジェルが人間を状態変化させる敵であるということを知りました。

【カタメエンジェル@アビスケイブ】
[状態]:損傷なし
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況] 基本方針:目に付いた参加者を様々な種類の固めで固めていく
1:……。
[備考]
※制限により、カタメエンジェルによる石化、小便少女化などの固めは時間経過で解除されます。持続時間は後続の書き手にお任せします。

【橘ありす@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]:全裸、小便少女化、放尿中
[装備]:
[道具]:なし
[思考・状況] 基本方針:死にたくない
1:……。
[備考]
※ありすの四次元ランドセルは、小便少女化したありすの像の近くに落ちています。


295 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/14(日) 23:49:35 OkNo42Rc0
投下終了します


296 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 23:51:56 tt7kzLOU0
投下します


297 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 23:52:52 2rbAm88c0
「支給された武器が重曹だけって何考えてるのよ!!??」

【有馬かな@【推しの子】】
[状態]:健康、困惑
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、重曹@現実
[思考・状況]基本方針:不明
1:重曹でどうやって戦えっていう訳!?!?
[備考]
幼年期時代からの参戦です


298 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/14(日) 23:53:45 GxXDbYgk0
投下終了です
タイトルは「これはバトロワであっても、リアリティードラマではない」です


299 : ◆nyCDT86shY :2023/05/14(日) 23:57:21 XI8qi87M0
投下します


300 : 悶絶開戦 ◆nyCDT86shY :2023/05/14(日) 23:58:26 XI8qi87M0


「あ〜今日も学校楽しかったな。早く(優勝して)帰って宿題しなきゃッッッ!!」


A-1学園、2年3組(体操服の表記は2-3だがここでは便宜上2年3組とさせて頂く)ひでは殺し合いに乗った。
海馬乃亜がなぜ彼をこのネバーランドな殺し合いに招いたかは分からない。
このかなりがっちりした、どう見ても20代後半の男を招いたのは、ぶっちゃけ乃亜の眼が腐ってたんじゃないかと思ってはいけない。
登場から彼はランドセルを背負って登下校しているし、竹刀でしばかれた時に見せる舌打ちや反抗的な呟きはいやいや期の子供そのものである。


「うー☆うー☆」


そして見よ、この自分が小学生だと信じてやまぬクッソ腹立たしい立ち振る舞いを。
本当に自分が小学生だと思っている精神異常者の姿である。
こんなガキ居るはずないだろ。
だが、それでもひでは殺し合いに巻き込まれてしまった。
巻き込まれてしまったんだから仕方ない。
そして、そんな彼が狙う椅子は一つ。
男として生まれたからには誰もが一生のうち一度は夢見る、“バトル・ロワイアル優勝者“。


「僕も(優勝)しゅるしゅる〜〜」


ひでの士気は高い。
彼には、どんな攻撃をも耐えきる鋼の肉体があるのだから。
どいつもこいつも死んじくり〜!そんな思いを込めた獰猛な笑みを浮かべる。
ひでは想像もしていないだろう。
これから自分に襲い来る、様々な悶絶と、虐待の時を。
だからこそ、今は会えてこう言おうッ!!


今迄何処へ行っていたんだこのクソガキッッッ!!
俺達は君を待っていたッッッ!!!
ロリショタバトルロワイアルにひでが登場だ――――――――ッ

  【ひで@真夏の夜の淫夢】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:
[備考]
 参戦時期は虐待おじさんに捕まる前です。


301 : ◆nyCDT86shY :2023/05/14(日) 23:59:11 XI8qi87M0
投下終了です


302 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/14(日) 23:59:17 4lpdXqRM0
投下します


303 : たえ子とブラックローズドラゴン ◆QUsdteUiKY :2023/05/15(月) 00:00:07 37Iad1PM0
小野たえ子は母親――ゴミ同然の毒親と再会し、それでも彼女を許すことで日常に戻った。
たえない子という大切な家族を増やして。
その矢先に最悪の殺し合い。コロちゃんも没収され、たえない子も自分の中に居ない。

「きっとあの子も理由があって、ああなったんだよね。まずは会って話してみなきゃ……」

たえ子は優しい。
そんな彼女を支えてきたのがコロちゃんと、たえない子と、なのはな学園のみんなで。

しかし今のたえ子に支給されたのは――過去に人々を傷付けたブラックローズドラゴン。

『人を傷付けるのはいい子じゃないから、力はいらないです」

そんなたえ子の過去の発言を皮肉るように、ソレは支給されていた。

――もっとも使い方次第では仲間を守る、良きドラゴンなのだが、果たしてどうなることか

【小野たえ子@やったねたえちゃん!】
[状態]:健康
[装備]:ブラックローズドラゴン@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜と話す
1:みんなは無事かな?
[備考]
最終回終了後です


304 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/15(月) 00:00:21 37Iad1PM0
投下終了です


305 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/15(月) 00:16:08 MjSTUwOo0
日付も変わりましたので、当企画のキャラクター登場話の募集を締め切らせて頂きます。

感想の方ですが、最後に一気に作品も集まったしまったのと、名簿の作成やそれに合わせて地図に施設も追加しようと考えておりますし、
他にも様々な作業があるため、大分遅れてしまうと思いますので、先にお詫びさせて頂きます。

それから、本編の開始にあたっていくつかルールの変更や追加をさせて頂きますので、ご了承ください。

今後の予定としまして、本編開始用のOPを投下して、その後に名簿発表と新しく修正したルールを貼って本編のキャラ予約と投下を開始といたします。

一先ずは、理想としては今週の土曜日(5/20)辺りを目安に本編を開始したいかなと考えておりますが、作業進捗もありますので、随時こちらのスレで報告をさせて頂きます。

最後に
3月から始まって、約2か月近くになりましたが 沢山の作品の投下、本当にありがとうございました。


306 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/15(月) 23:26:07 MjSTUwOo0
感想投下します。

>疾風のストライカー
飛影はこんなこと言わない!
みりあが築いた絆が晴を救ったというのは、胸が熱くなる話ですね。グラブルって、頻繁に異世界人来てるから外部作品と交友関係広いんですね。
飛影はお前、ほんま……三下ムーヴ過ぎる。生き残ったら、いつもの飛影になっていくんですかね。

>チョキは勝利のVサイン
自分の不祥事を隠すために人を殺すだなんて……
やっぱ怖いスねネットナビは。

>物語は散った後に
頭脳、武力、ヒロインの三つが集まった隙のないパーティの結成ですね。しかし、バランスは良いけどイマイチ突き抜けきれない印象もあるので、今後の巡り合わせ次第で色々変わっていきそう。
しかもナチュラルにドラゴンボールで生き返れるムーヴ始めてるパンちゃんが危ないですね……。
パンのおじいちゃんでジャムおじさんのネタすこ。

>オペレーション・ネイキッド・サバイバル
衣服と言うか、装備を消して無力化できると考えると滅茶苦茶強くて、非殺傷向け能力な気もしますね。
いう事聞かないマーダーにはマイクロビキニ着せて、心折れば良い訳ですから。これは強対主催の登場ですわ。
この頃の、天音は後に自分がビッチと呼ばれることをまだ知らないのだなあ……。

>遺書と自動殺人人形
悲しいなあ……でも、こんな状況ですし、自殺してもおかしくはないですね。原作バトロワにも居た気がします。
その遺書を受け取るのが、後に手紙に携わるヴァイオレットちゃんなのも皮肉ですね。

>どらぼっちゃんが征く
是非とも、殺し合いを打破して両親に会って欲しいですね。子供が175歳なら、両親いくつなんだ?

>女男男女
光彦……立ち回りはベストを尽くしたのに、相手が悪すぎましたね。
悪落ちヒロインの性癖破壊コンビは流石に荷が重すぎますわ。

>家族(たえ子)のためのHands
風間くん、何人おるんや……。
いくら強くなったとはいえ、あのたえちゃんが人を殺めてしまう姿が胸が痛くなりますね。しかも、やむを得ないとはい、悪人ではなく被害者ですからね。
コブラが見たら何て言うんでしょうか。
あと地味にアクション幼稚園の園児が警戒リスト入ってて草。

>珍砲機ジャスタンク
完成度たけーなオイ。
きんのたまも一緒に支給して更に完成度も上がっていますよ。

>私にだって幸せになる権利がある
梨花ちゃま、早速ヌードを披露してくださるとは、崇めるしかない。
エカテリーナって、描写がしっかりしてるんでどんなキャラかと思いましたけど、モブキャラなんですね……。
そしてロリ鷹野参戦とは意外な切り口、でも確かにこの人なら、どの歳でも幸福の為に全てを捧げるのは納得です。


307 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/15(月) 23:26:28 MjSTUwOo0
>良くない航海
来ましたね。今、話題の推しの子からアクアが待望の参戦です。
復讐者ではありますけど、根が善人で心優しい医者ですからね。復讐に対しても、超えちゃいけない線引きは引いてるって感じです。
それにしても餞別に渡されたのがとんでもないアイテムで草、化け物に変える……人ではなくなる……進化する……究極の……ゲッター……?

>この開けた草原の中で
ようやく見れた外の世界がこんな殺し合いで、マリコも可哀そうです。
父親は間違いなく来ていない筈なんですが、乃亜君ちゃんと説明してなかったせいで余計な心労が……。

>サツバツダイアリー
こんな奴を神にさせちゃいけませんね。しかし、能力のバリエーション豊富で手数が多い実力者なのも厄介です。
リコも早速こんなのに絡まれた災難ですが、支給品は大分当たりの部類ですしこれから頑張っていってほしいですね。

> 学ランコンビ
AIBO!! 原作で小学生に間違えられてしまったせいで、連れて来られたんですね。可哀そうに。
王様もおらず浩一はしもべも呼べない状態で中々きつそうですが、一応AIBOが頭脳要因で浩一が戦闘担当になれるだけマシなのでしょうかね?

>サイヤの血筋
時を超えた親子の出会いですね。バトロワじゃなかったら、これで一本ファミリー映画が作れそう。
悟天も悟空を知らない時期からですし、本当にドラマチックな邂逅で草。

>うさぎ好きと妖怪兎
生き延びましたねネネちゃん。
兎の妖怪と出会えたのは、普段、ボコしてるうさぎのぬいぐるみ繫がりでしょうか。てゐの幸運にする能力がネネちゃんにも働いたのかもしれませんね。

>摩訶般若波羅蜜多心経
なんか凄そうな子呼ばれてて草。

>最弱テイマーは殺し合いに巻き込まれました
優勝も視野に入れるとか、物騒なのが居るなと思ったらまちカドまぞくで草。
二人とも良いコンビなんで、この先決裂しないで欲しいですね。

>何かをするために
お姉さん(♂)とショタ(ロボ)のオネショタコンビ、中々先鋭的なコンビです。
冗談はさておき、こういう明るい対主催は脱出派の士気にも関わりそうですし、曇らないでいってほしいですね。

>コレ、トッテモオイシイヨ!
お菓子の感覚で人の足を齧ってて草。こんなのと深夜に出くわしたら、大人でもビビりますよ。
なまじ死体運べないのがネックで、腹が減る度に参加者襲いに行きそう。

>丸尾くん、覚醒するの巻
それは覚醒ではなく発狂である(キートン山田風)

>おもちゃのチャチャチャ
ワンピース屈指の、チートキャラの一角来ましたね。ドフラミンゴ(41)の計画もほぼすべてこいつに依存してましたからね。
これは質の悪い強マーダーになりそう。

>宝島
守形先輩! 守形先輩じゃないですか!?
首輪解除にはこれ以上ない適任者で一安心ですよ。
陰湿眼鏡呼ばわりは、ちょっと酷いけど。


308 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/15(月) 23:26:46 MjSTUwOo0
>物欲の子亀
流石ジョルノ、どのロワでも安定して知的な行動を取っていますね。
ベビィクッパもジョルノの手玉に取られたお陰で、今は対主催側に居ますし早速大活躍です。

>一緒に希望を探しに行こう
マリオのやべぇ奴じゃん。そらほむらちゃんも、こんな精神異常者見てたら病んじゃいますよ。
メグが光過ぎてピカピカしている……。

>幼き日の太陽と相変わらずの少女
ココアおねーちゃん! と思ったら蒔菜のがお姉さんなのか……。
この二人が光差す道となってくれるといいですね。

>勇者の資格
タイトル通り、ダイの勇者っぷりがこれでもと書かれた一作でした。
勇者に資格などない、まさにその通り……必要なのは正しいハート、胸(ここ)なんです。それを言えるのは、これまでの旅路と頼れる仲間がいたダイだからこそでしょうね。
アリスに勇者だと言ってみせた姿、オレにとっては一番勇者らしく見えるよ。

>命よ 銀に光れ
どっからこういうネタを拾ってくるのか、感心しちゃいますね。ブラックしずかちゃんなんて存在は完全に盲点でした。
しかし、かなりネタよりな出展元に反して、内容は悲惨ですしやってることは極悪すぎる……。グラグラも強すぎて草。

>枯れ果てた刻の運命
優勝を決意したアリカに支給されたのが罪深きSinモンスター、そして戦いという罪を背負う事を決意したオルフェノクが使っていたファイズギアというのが、まるでアリカがこうなることを予見していたかのようです。
人を殺め続けて、アリカの心は耐えられるんでしょうか……。

>ラブライブ・ダークナイト
邪悪なネットミーム多すぎや……ことりちゃんもこんなのに嫁に貰われても大変でしょうに。あと、ことりちゃんよりことりママのが可愛いと思う。
『※参戦時期はひろしに殺された後』
これパワーワード過ぎて好き。

>団地管理人の矜持
世界観狂ってるんですけど、本人は至って真面目だしとても善人なんですよねヨシダは。
地の分の回想に色々突っ込みたくなるけど。
変態人妻見て連絡が行くのなんて、AV男優とヨシダくらいのもんですよ。

>終わらない夢
>絶対だよ!
>死んでくれる?
>ひだまりポカポカ
>これが私の戦車道
>アイカツそれは最強の4文字
>大事件
>sos
>殺しの国のアリス
>原点にして頂点
ここまで、古今東西のアリスをよくぞまあ集めたものだなと思いました。
この数ある中で本家がかなり物騒なのと、モデル元がラスボスみたいな雰囲気出してて面白かったです。


309 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/15(月) 23:27:42 MjSTUwOo0

>反逆
まさしく、反逆の意思を固めた少年のお話でしたね。
エースが手にするはずだったメラメラが、サボの手に渡ったのも必然でしょう。

>異世界蘇生
多分、やべぇ奴なんだろうな……。

>小便少女
こんな子供だらけのロワで、性癖がニッチ過ぎる……。
なんか凄いえらい事になってるのは分かるんですが、全てが終わった後でちょろろろろろと流れる描写が好きな人には溜まらんのでしょうね。
妊婦連れてきたり、ロリをパンツ一枚で拉致したり、乃亜君の性癖おかしな事になってないか?

>これはバトロワであっても、リアリティードラマではない
顔に投げて、目潰ししたり……うーん使い道が浮かばないですね。

>悶絶開戦
ひでしね

>たえ子とブラックローズドラゴン
ブラックローズドラゴン、確かに大勢の人を傷付けてきたドラゴンですね。私のフィールドも散々更地にされました。
でも心優しいたえちゃんの手にあれば、その力も人々を守るためのものに変わるかもしれませんね。


310 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 00:29:27 KyP.qnj60
名簿と地図に施設の追加、OPも書けたので
見直し作業をしてから
5/18(今日)の夕方以降に投下しようかなと思います。
よろしくお願いします!


311 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:18:35 KyP.qnj60
お待たせしました。OP2と名簿を投下します。


312 : 第0回放送 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:19:18 KyP.qnj60
殺し合いが始まってから、早くも1時間が経過した。
訳も分からず、未知の土地へ転送された子供達。
ある一人は殺し合いに乗り、ある一人は殺害されて未来を閉ざし、ある一人は殺し合いに抗う事を決意し、ある一人は力を持つ善人に守護され、短い時間の中でそれぞれの運命を歩んでいた。

だがそんな子供達にも、その運命が交差する瞬間が存在する。

月と星の輝きだけが彩る夜空に一つの人影が映し出される。それはこの惨劇の舞台を作り出し、ゲームと称した存在、海馬乃亜の姿だった。
高度な技術で、実物と遜色ないほどに再現されたソリッドビジョン、更にこの島の全ての者に行き届くよう、何処にあるかも分からないスピーカーから高音質で乃亜の声が響き渡る。


『やあ、諸君……バトルロワイアルを開始してから1時間ほどだが、君たちは実に聞き分けが良いよ。既に10名以上が脱落しているのだからね。
 このペースには僕も驚かされている。ゆえに、臨時ではあるが死亡者の名を読み上げさせてもらおう。一度に何人も読み上げるのも面倒だしね。
 意味があるかは分からないけど、お友達の名前が気になるなら耳を傾けた方が良い。どうせ、今死ぬか後で死ぬかの違いだけれどね。

 ユーイン・エッジバーグ
 骨川スネ夫
 糸見沙耶香
 ヴィータ
 ボーちゃん
 ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵
 中島弘
 割戦隊の五人
 悟心鬼
 石毛
 
 特に、割戦隊の五人が大きかったけど、悪くないペースで殺し合っていてくれるね。
 それにしても、仮にも殺しのプロが五人も居て纏めて殺されるなんて、些か肩透かしだなぁ……。
 フフ……所詮、社会のレールにも乗れなかった、負け犬共の傷の舐め合いだったということかな。


 さて、脱落者の名前を読み上げた所で、いくつか補足させてもらうよ。

 
 まず、この殺し合いに呼ばれた者達の選定条件だ。
 察しのいい者は既に気付いていると思うけど、このバトルロワイアルは子供に当て嵌まる者を集めた殺し合いだ。
 それは容姿でもあり、年齢でもある、それが君達の共通点さ。

 ただ……気付いていない者も何人か居たようだね。

 申し訳ない。最初の内に、言っておくべきだったよ、些か、君達の理解力の浅さを舐めていた。
 だから、これから、殺し合いのルールも改めて説明するとしよう。あの、馬鹿兄弟のせいで、説明の暇もなかったしね。


313 : 第0回放送 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:20:46 KyP.qnj60

 ……と言っても、ルールなんて本当に単純なものさ、相手を殺し生き残る事、最後に一人生き残った者を優勝者とする。これだけだ。
 手段は問わない、騙し討ちでも正々堂々相手を殺めても何でもいい。
 そして、さっきのように、ゲーム開始から6時間ごとに、死亡者の名を放送で読み上げていくとする。次の放送は、5時間後の早朝6時だ。更にその次は、昼の12時といったようにね。
 だから、今回のような臨時放送を除いて、放送は一日の内、四回行う。もしあれば、追加のルールもそこで説明するから、聞き逃さないように。情報も貴重な武器だからね。
 
 ここからが重要な点だが、放送ごとに禁止エリアを追加する。
 
 殺し合いの会場、今、君達がゲームを行っている、その島のエリアを三か所指定し、そのエリアに滞在した参加者の首輪は爆破される。
 つまり、長時間一か所に留まることは許されないのさ。ああ、安心したまえ、ちゃんと移動の時間は与えるよ。……そうだね、二時間もあれば十分かな?
 タブレットのメモ機能を使い、禁止エリアをメモすることをお勧めしておくよ。 マップのアプリには禁止エリアを反映させないからね。

 あとは以前も言ったけど、優勝した者にはどんな願いも叶えよう。
 死者の蘇生でも良いし、時間を遡り歴史を変える事も、全能の力を授ける事も、現実的に分かりやすいものなら国家規模の大金だって与えよう。

 ……ここまでが、このバトルロワイアルのルールだ。タブレットでもルールを見れる、後で確認しておくと良い。
 
 そうそう、今回を第0回放送として、次の第1回放送後、君達も気に掛けているであろう参加者名簿もタブレットに転送しておく。
 お友達が居ないことを祈るんだね。この世界は弱肉強食だ。例えそれが親愛なる仲間であろうと、殺さなくてはならない、この摂理は絶対さ。

 だというのに、未だに現実を受け入れられず、僕に逆らおうとしている者たちが居るようだけど……君らの根拠のない、脱出プランは中々楽しませて貰っているよ。
 好きにやってみるといい。けど、時間は限られていることを忘れない事だね。禁止エリアの追加は、君達の残り時間で寿命でもある。
 時間切れで、全エリアが禁止され、全員無様に首輪が爆発するなんて、つまらない終わり方はやめてくれよ。

 彼らのような存在、このゲームの神である僕という主催に対し反抗する者、そうだね……"対主催"とでも名付けようか。……既に彼らに出会いゲームを破綻させようと唆された者も居るだろう。
 その戯言を信じるのは勝手だが、果たしてそれが本当に実現可能であるか、考え直してみたまえ。
 ああ……もしかしたら、対主催を欺き、人数が減ったところで裏切る算段かもしれないね。フフ……それも立派な戦略だ。

 あとは……殺し合いを肯定する者、そのまま"マーダー"とでもしようか……その真の目論見はともかく、君達には期待しているよ。僕は優秀な者には、相応しい評価を与えるつもりだ。
 
 では、今回の放送はここまでにしておこう。
 
 次の放送を聞けるのは、果たして何人かな?』 



全ての参加者を見下す高慢的な笑みを浮かべ、夜空に映し出された乃亜の姿は消えた。


314 : 参加者名簿 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:21:42 KyP.qnj60
1/6【忍者と極道】
〇輝村照(ガムテ)/●割戦隊(赤)/●割戦隊(青)/●割戦隊(黄)/●割戦隊(緑)/●割戦隊(桃)

3/3【遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's】
〇海馬モクバ/〇インセクター羽蛾/〇龍亞

3/3【NARUTO-少年編-】
〇うずまきナルト/〇奈良シカマル/〇我愛羅

3/3【無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
〇ルーデウス・グレイラット/〇ロキシー・ミグルディア/〇エリス・ボレアス・グレイラット

3/3【名探偵コナン】
〇江戸川コナン/〇小嶋元太/〇灰原哀

3/3【Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ】
〇イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/〇美遊・エーデルフェルト/〇クロエ・フォン・アインツベルン

3/3【Fate/Grand Order】
〇キャプテン・ネモ/〇ジャック・ザ・リッパー/〇メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)

3/3【ちびまる子ちゃん】
〇永沢君男/〇城ヶ崎姫子/〇藤木茂

2/3【クレヨンしんちゃん】
〇野原しんのすけ/〇佐藤マサオ/●ボーちゃん

1/2【ドラえもん】
〇野比のび太/●骨川スネ夫

1/2【サザエさん】
〇磯野カツオ/●中島弘

1/2【SPY×FAMILY】
〇ベッキー・ブラックベル/●ユーイン・エッジバーグ

2/2【ひぐらしのなく頃に 業&卒】
〇古手梨花(卒)/〇北条沙都子(業)

2/2【Dies Irae】
〇ウォルフガング・シュライバー/〇ルサルカ・シュヴェーゲリン

2/2【金色のガッシュ!!】
〇ガッシュ・ベル/〇ゼオン・ベル

2/2【ローゼンメイデン】
〇水銀燈/〇雪華綺晶

2/2【To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
〇結城美柑/〇金色の闇

2/2【BLEACH】
〇日番谷冬獅郎/〇リルトット・ランパード

2/2【BLACK LAGOON】
〇ヘンゼル/〇グレーテル

2/2【ハリー・ポッター シリーズ】
〇ハーマイオニー・グレンジャー(秘密の部屋)/〇ドラコ・マルフォイ(秘密の部屋)


315 : 参加者名簿 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:22:14 KyP.qnj60

1/2【ONE PIECE】
〇シャーロット・リンリン(幼少期)/●ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵

2/2【そらのおとしもの】
〇ニンフ/〇カオス

2/2【アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
〇櫻井桃華/〇的場梨沙

2/2【彼岸島 48日後…】
〇山本勝次/〇ハンディ・ハンディ(拷問野郎またはお手手野郎)

2/2【ドラゴンボールZ&ドラゴンボールGT】
〇孫悟飯(少年期)/〇孫悟空(GT)

2/2【グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
〇風見雄二(少年期)/〇風見一姫

2/2【ジョジョの奇妙な冒険】
〇ディオ・ブランドー/〇マニッシュ・ボーイ

1/1【とある科学の超電磁砲】
〇美山写影

1/1【東方project】
〇フランドール・スカーレット

1/1【鬼滅の刃】
〇鬼舞辻無惨(俊國)

1/1【魔法陣グルグル】
〇勇者ニケ

1/1【HELLSING】
〇アーカード

1/1【ロードス島伝説】
〇魔神王

1/1【NEEDLESS】
〇右天

1/1【葬送のフリーレン】
〇フリーレン

1/1【オーバーロード】
〇シャルティア・ブラッドフォールン

1/1【ハッピーシュガーライフ】
〇神戸しお

1/1【11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
〇リーゼロッテ・ヴェルクマイスター

1/1【エスター】
〇エスター(リーナ・クラマー)

1/1【鋼の錬金術師】
〇セリム・ブラッドレイ(プライド)

1/1【アンデットアンラック】
〇リップ=トリスタン

1/1【その着せ替え人形は恋をする】
〇乾紗寿叶

1/1【お姉さんは女子小学生に興味があります。】
〇鈴原小恋

1/1【血界戦線(アニメ版)】
〇絶望王(ブラック)

1/1【うたわれるもの 二人の白皇】
〇キウル

1/1【ポケットモンスター(アニメ)】
〇サトシ

1/1【アカメが斬る!】
〇ドロテア


316 : 参加者名簿 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:22:29 KyP.qnj60

1/1【ご注文はうさぎですか?】
〇条河麻耶

1/1【カードキャプターさくら】
〇木之本桜

1/1【おじゃる丸】
〇おじゃる丸

1/1【【推しの子】】
〇有馬かな(子役時代)

0/1【犬夜叉】
●悟心鬼

0/1【高校鉄拳伝タフ】
●石毛(チンゲ)

0/1【魔法少女リリカルなのはA's】
●ヴィータ

0/1【刀使ノ巫女】
●糸見沙耶香

80/94


317 : 地図 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:26:32 KyP.qnj60
ttps://w.atwiki.jp/compels/pages/12.html
地図に主要施設を追加しました。
見返すと、結構狭い地図かもしれないので1エリアは結構大きめの扱いで良いかもしれません


318 : 地図 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:27:03 KyP.qnj60
B-3
桜田ジュンの家@ローゼンメイデン
B-4
衛宮邸@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ
B-5
港、図書館
B-6
教会
C-2
温泉
C-3
映画館
D-3
ホグワーツ魔法魔術学校@ハリー・ポッター シリーズ
D-4
I・R・T(アイドル・レイプ・タワー)@彼岸島 48日後…
D-6
火影岩@NARUTO-少年編-
D-7
産屋敷邸@鬼滅の刃
D-8

E-3
モチノキデパート@金色のガッシュ!!
E-5
お菓子の家
病院
E-6
聖ルチーア学園@ひぐらしのなく頃に
E-7
海馬コーポレーション@遊戯王デュエルモンスターズ
G-2

G-3
国会議事堂
G-4
ボレアス・グレイラット邸@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
G-5
小学校
G-7
ホテル
H-3
イーデン校
H-4
ライブ会場、羊の家@ONE PIECE
H-7
アクション幼稚園@クレヨンしんちゃん
I-7
船(サウザンドサニー号@ONE PIECE)
動かして海路を移動することも可能、ただし1時間以上の滞在かまたは地図外に出ようとすると首輪から警告が鳴り、無視すると起爆する。


319 : ロワルール ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:30:07 KyP.qnj60
『ロワルール』

※候補話における作中時間、殺し合いは深夜(0:00)から開始(キャラクター登場候補話は既に募集を終了しました。)
 候補話募集後、本編開始の作中時間は深夜(1:00)より開始。


※最後の一人まで生き残った者を優勝者とし一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。
※6時間毎に放送で死亡者の名前が読み上げられる
※参加者が所持していた武器は基本的に没収。かわりに支給品が最大三つまでランダムに再配布される。
※一部の参加者には制限が掛けられている。その他にも様々な変化を施されている可能性がある
※参加者によっては様々な制限を掛けられている。制限については各々に支給された説明書に書かれている

※参加者名簿はタブレットから見れる。第1回放送後、観覧可能。

※候補話募集後の本編開始時の第0回放送(OP2)にて、禁止エリアの説明を行う。




『参加者の初期所持品について』

何でも入る四次元ランドセル(参加者及び、死亡した参加者の死体の収納は不可)
不明支給品1〜3
マップや参加者名簿を見れるタブレット
文房具一式
水と食料


『放送、禁止エリア、作中時間について』

【放送】
朝(6:00)、日中(12:00)、夜(18:00)、真夜中(0:00)
上記の時間帯に放送を行う。基本は乃亜の姿がソリッドビジョンで上空に映し出され、バトルロワイアルの主催者の声が島中に響き渡る。

【禁止エリア】
放送毎に3エリアずつ禁止エリアとなり、放送から2時間後にそこに踏み入れた参加者の首輪は数十秒の警告音の後に爆破される。
禁止エリアは、原則ゲーム終了まで解除されない。
タブレットのマップには禁止エリアは反映されないので、タブレットのメモ機能を使って指定されたエリアをメモするのが良い。

【作中での時間表記】(候補話は0時スタート、候補話募集後の本編は1時以降からスタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
日中:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24


【状態表】
キャラクターがそのSS内で最終的にどんな状態になったかあらわす表。

〜生存時〜
【現在地/時刻】
【参加者名@作品名】
[状態]:
[装備]:
[道具]:
[思考・行動]
基本方針:
1:
2:
※その他

〜死亡時〜
【参加者名@作品名】死亡


320 : ロワルール ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:31:30 KyP.qnj60



『ランダム支給品について』

当企画に登場するキャラクターたちに最大三つまで、ランダムでアイテムを支給出来ます。
以下のルールを守っていただければ、基本的には何でもいいです。

【バトルロワイアルを破綻させるかもしれないアイテムには制限を掛けること】
強力過ぎるアイテム、死者蘇生、どんな願いも叶えてしまう。
このようなアイテムは、制限を掛けて支給してください。

【作品の把握難易度を下げる為、参加者名簿に表記された参戦作品に登場するアイテムのみを支給可能とします】
本編開始以降、キャラクターが名簿にはない、未参加作品のアイテムは支給禁止とします。

【意思持ち支給品について】
意思を持ったアイテムや、一部の生物を支給品として出せます(限度はあります)。
そこまで厳しく制限することはありませんが、一例として、一部名指しで例を挙げます。参考にしてください。

・支給禁止アイテム(キャラ)
マリィ@Dies irae
ガイモン@ONE PIECE

・要制限アイテム
神鳥の杖@ドラゴンクエストⅧ 空と海と大地と呪われし姫君
ドラクエⅧキャラも居ない為、封じられている暗黒神ラプソーンの復活は重制限とし、企画の進行に伴い制限が解除されるような展開も禁止とします。


・その他、支給品の汎用枠になりそうなもののルール

【遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's】
カードを実体化させて、戦わせたり効果を使用することが可能です。出せるカードはデュエルモンスターズと5D'sを出展とするカードのみ。
一度の使用で、使用不可になる時間が設定されています。
時間制限の基準として、例を貼ってみますので参考にどうぞ。

※神のカード、青眼の白龍(攻撃力3000)などの攻撃力の高いモンスターや、強力な効果を持つモンスター、魔法罠カード等は一度の使用で24時間使用不可。
 青眼の白龍には及ばないものの、ブラック・マジシャン(攻撃力2500)等の高い攻撃力を持つモンスターは一度の使用で12時間使用不可。
 エルフの剣士(攻撃力1400)などの、あまり強くないモンスターは一度の使用で6時間使用不可。

【ジョジョの奇妙な冒険】
弓と矢は支給不可。理由として、オリジナルスタンドを考えるのが大変なため。
スタンドDISCで支給できるスタンドは、原作本編に登場するスタンドで6部までとします。(7部以降や外伝作品に出てくるようなものは禁止)


『参加キャラクター達の制限について』

・バトルロワイアルを破綻させない程度に全員弱体化、能力に制限が掛かっています。
 詳細はそれぞれのキャラの状態表より。


321 : ロワルール ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:32:08 KyP.qnj60


『本編の執筆に関して』

【原則、トリップを必ず付けて作品をご投下下さい】
※トリップとは
酉、鳥とも言います。
名前欄に#を打ち込んだあと適当な文字(トリップキーといいます)を打ち込んでください。
投稿後それがトリップとなり名前欄に表示されます。
忘れないように投稿前にトリップキーをメモしておくのがいいでしょう。
#がなければトリップにはならないので注意。

【代理投下の際は、その代理投稿者様は、必ずその作品の作者様と分かるトリップを書いて下さい】
本編以降は、作品を投下した作者様の識別に必要ですので、お手数ですがご協力お願いします。

【予約について】
キャラ被りを避けたい、安定した執筆期間を取りたいという場合はまず予約スレにて書きたいキャラの予約を行ってください。
予約はトリップを付け、その作品に登場するキャラの名前を書きます。
キャラの名前はフルネームでも苗字だけでも構いません。
あくまでそのキャラだと分かるように書いてください。
自己リレーは、絶対ダメというわけではないので、予約自体が落ち着いてきた時には、自己リレーと予め言っておけばいいと思います(時と場合によるのと、限度はあるので)。
予約なしのゲリラ投下も可能としますが、書きたいキャラが取られて書いた分が無駄になってしまうこともあるので、そこはご了承下さい。

【予約期間について】
予約した日から5日間を期限とさせていただきます。



※一部アニロワwiki様とアニロワIFwiki様より、ロワルールを引用したり参考にさせて頂きました。


322 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:33:35 KyP.qnj60
以上で投下を終了します!
今から、予約解禁とします!


323 : 採用作品一覧 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:36:50 KyP.qnj60
すいません。採用作品一覧を貼るのをわすれていました。

001 後悔 ◆lvwRe7eMQE 孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ、結城美柑@To LOVEる -とらぶる- ダークネス
ユーイン・エッジバーグ@SPY×FAMILY、骨川スネ夫@ドラえもん、
ウォルフガング・シュライバー@Dies Irae
ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae


006 兄弟の絆 ◆lvwRe7eMQE 海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ

007 ともだち ◆.EKyuDaHEo フランドール・スカーレット@東方project、野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん

011 神への儚いレジスタンス ◆lvwRe7eMQE 鬼舞辻無惨(俊國)@鬼滅の刃

018 ある名も無きあいの唄 ◆6eCOyuQMTE 孫悟空@ドラゴンボールGT、キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order、カオス@そらのおとしもの

022 勇者の挑戦 ◆6eCOyuQMTE 勇者ニケ@魔法陣グルグル
クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ ツヴァイ!

032 忍者と極道 ◆6eCOyuQMTE 輝村照(ガムテ)@忍者と極道、うずまきナルト@NARUTO-少年編-

035 悪夢の世界(ナイトメアワールド) ◆IOg1FjsOH2 糸見沙耶香@刀使ノ巫女、佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん
マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険

044 immortal combat ◆q0xcaxBr/A 魔神王@ロードス島伝説、アーカード@HELLSING

055 play with blood ◆/dxfYHmcSQ ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵@ONE PIECE、グレーテル@BLACK LAGOON

049 我を愛する修羅 ◆.HpSqD2lUQ ボーちゃん@クレヨンしんちゃん、我愛羅@NARUTO-少年編-

068 「永沢、殺し合いに乗る」の巻 ◆lvwRe7eMQE 永沢君男@ちびまる子ちゃん、城ヶ崎姫子@ちびまる子ちゃん、中島弘@サザエさん

069 霧と雷 ◆.HpSqD2lUQ ゼオン・ベル@金色のガッシュ!、ジャック・ザ・リッパーFate/Grand Order

085 未知との遭遇 ◆/9rcEdB1QU ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!、フリーレン@葬送のフリーレン
シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード

092 レイプ ◆lvwRe7eMQE 龍亞@遊戯王5D's、山本勝次@彼岸島 48日後…、
割戦隊(赤)@忍者と極道、割戦隊(青)@忍者と極道、割戦隊(黄)@忍者と極道
割戦隊(緑)@忍者と極道、割戦隊(桃)@忍者と極道


324 : 採用作品一覧 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:37:16 KyP.qnj60
094 天使にラブソングを ◆lvwRe7eMQE 水銀燈@ローゼンメイデン(原作)、神戸しお@ハッピーシュガーライフ

096 探偵への挑戦状 ◆lvwRe7eMQE 江戸川コナン@名探偵コナン

106 その魔法、純白トロイメライ ◆s5tC4j7VZY 野比のび太@ドラえもん、ロキシー・ミグルディア @無職転生

108 その魔女は災厄 ◆lvwRe7eMQE インセクター羽蛾@遊戯王デュエルモンスターズ
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-

109 ドラコ・マルフォイと紅い狂犬 ◆diFIzIPAxQ 磯野カツオ@サザエさん、エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッター シリーズ

113 ここから、始めよう ◆/9rcEdB1QU リップ=トリスタン@アンデットアンラック、雪華綺晶@ローゼンメイデン
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

116 取り戻せマイドリーム ◆s5tC4j7VZY サトシ@アニメポケットモンスター

124 年齢詐欺 ◆lvwRe7eMQE エスター(リーナ・クラマー)@エスター、セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師

125 友達 ◆ZBzxr8kFD6 美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ

133 子供隊長 ◆lvwRe7eMQE 小嶋元太@名探偵コナン、乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする、日番谷冬獅郎@BLEACH

136 LOVE OR EAT ◆ytUSxp038U リルトット・ランパード@BLEACH、鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。

137 ハーマイオニー・グレンジャーと呪いの子 ◆5qNTbURcuU ヘンゼル@BLACK LAGOON、ハーマイオニー・グレンジャー@ハリーポッターシリ-ズ

140 fake town baby ◆WWYvo9QXxQ 絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)、灰原哀@名探偵コナン


152 The beginning of darkness~恥辱~ ◆ZbV3TMNKJw ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険、キウル@うたわれるもの 二人の白皇
金色の闇@TOLOVEる ダークネス

154 二分後に君が来なくとも ◆WWYvo9QXxQ ドロテア@アカメが斬る!、美山写影@とある科学の超電磁砲
櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)

161 絶対強者 ◆lvwRe7eMQE シャーロット・リンリン(幼少期)@ONE PIECE、悟心鬼@犬夜叉、ニンフ@そらのおとしもの
ベッキー・ブラックベル@SPY×FAMILY


325 : 採用作品一覧 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:37:35 KyP.qnj60

176 灰色少年と明るい少女 ◆QUsdteUiKY 風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)、条河麻耶@ご注文はうさぎですか?

178 壊れるほどに愛しても ◆jiPUB.a8CM 北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業、メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order


189 「藤木、殺し合いに乗る」の巻 ◆jiPUB.a8CM 藤木茂@ちびまる子ちゃん、奈良シカマル@NARUTO-少年編-
的場梨沙@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)

190 タナトスと魔女 ◆lvwRe7eMQE 古手梨花@ひぐらしのなく頃に卒、風見一姫@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)

193 馬鹿に刃物、おじゃる丸に…… ◆/9rcEdB1QU 坂ノ上おじゃる丸@おじゃる丸

195 さくらと不思議なお手々 ◆lvwRe7eMQE ルーデウス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
木之本桜@カードキャプターさくら
ハンディ・ハンディ(拷問野郎またはお手手野郎)@彼岸島 48日後…
石毛(チンゲ)@高校鉄拳伝タフ

240 これはバトロワであっても、リアリティードラマではない ◆diFIzIPAxQ 有馬かな@【推しの子】


326 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 19:45:11 KyP.qnj60
では、改めて予約も解禁と致します!
それと、シュライバー、日番谷、元太、乾紗寿叶、美遊を予約させていただきます


327 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/18(木) 19:47:22 Vrt90yi.0
OP2と名簿の投下乙です!
雄二、マヤを予約させていただきます


328 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/18(木) 19:58:12 IGEETLTI0
投下お疲れ様です
フランドール・スカーレット、野原しんのすけで予約します


329 : ◆ytUSxp038U :2023/05/18(木) 20:30:54 c8vS8PTo0
OP及び名簿作成お疲れ様です

リルトット・ランパード、鈴原小恋、金色の闇を予約します


330 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/18(木) 20:32:56 6wCDxqIo0
企画始動おめでとうございます

リップ=トリスタン、アーカード
予約します


331 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/18(木) 20:44:33 CK/zM5xo0
OP2及び名簿投下乙です!

右天、美山写影、櫻井桃華、佐藤マサオ、マニッシュ・ボーイで予約します


332 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 20:58:07 KyP.qnj60
すいません。
当選作品一覧に抜けがありました。

046 イッツァ ショータ〜〜イム! ◆2dNHP51a3Y ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's、右天@NEEDLESS


333 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 21:41:17 KyP.qnj60
ご報告します。
地図にあったアクション幼稚園をふたば幼稚園に修正しました。


334 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/18(木) 23:21:17 q7Panbnc0
OP及び名簿作成お疲れ様です

エリス・ボレアス・グレイラット、うずまきナルト、セリム・ブラッドレイ(プライド)
上記3人を予約させていただきます


335 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/18(木) 23:30:51 KyP.qnj60
もう一個報告します。マジでガバガバで申し訳ないのですが、本スレでこのルールを記載するの忘れてました。


【作品の把握難易度を下げる為、参加者名簿に表記された参戦作品に登場するアイテムのみを支給可能とします】
本編開始以降、キャラクターが名簿にはない、未参加作品のアイテムは支給禁止とします。

更に候補話内で一話退場したキャラだけが名簿に表記された、以下の作品からもアイテムの支給は禁止とします。

犬夜叉
高校鉄拳伝タフ
刀使ノ巫女
魔法少女リリカルなのはA's


336 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/19(金) 05:18:47 sfKkB89Y0
本編開始おめでとうございます。
また、コンペ中私を含め皆さんの作品に対する一つひとつの丁寧な感想お疲れさまでした。
感想とても嬉しかったです。
サトシ、インセクター羽蛾で予約します。


337 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:13:35 x1VUDHno0
投下させていただきます。


338 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:14:09 x1VUDHno0
「14人死んだのか……あのガキ……何やってるのか、分かってんのか」

「……信じ、られないわ」

乃亜の放送を聞き終えてから、日番谷冬獅郎は舌打ちをした。
子供ばかりを集めた挙句に、この一時間で二桁も死者を出している。ただの、子供だけの殺し合いならばそうはならない。
つまり、子供の中に殺人を肯定する危険な参加者を潜ませ、殺し合いを促進させている筈だ。
死神である日番谷が子供にカウントされているのであれば、同じように容姿だけが幼く、だが隊長格の死神にに匹敵する猛者がいるのだろう。
そんな連中と、ただの子供が殺し合うなど、ただの蹂躙劇にしかならない。

(あるいは、俺がそういった連中の対抗馬ってことか?)

乃亜の台詞の中に、"対主催を欺き、人数が減ったところで裏切る算段"というものがあった。
奴は殺し合いに肯定的な強者に、その逆の対主催をぶつけることで、弱者でも生き残れるように、この殺し合いをデザインしているのではないか?

「夕闇島の時みてえだなぁ……あの時も、滅茶苦茶人が死んだんだけどよ……でも、一時間だろ? 本当にこんな死んじまうのかよ……」
「元太君、貴方……もしかして、少年兵とかじゃないわよね?」

人の死に対しやけに達観した様子を見せる元太に対し、紗寿叶は訝しげに尋ねる。
もし、そうなら人が死ぬのは日常茶飯事だし、食にがめついのは戦場で食糧危機に扮した経験からなのではと考えたからだ。
当然、元太は首をかしげて「何言ってんだ、姉ちゃん」と本人にその気はなくとも、紗寿叶目線ではとぼけたふりをしてるかの様に返された気がした。

「お前ら、さっきの放送で、知り合いの名前はなかったんだな?」
「おう、探偵団のみんなの名前はなかったぜ」
「私も大丈夫だったわ……日番谷君は?」
「……居ねえな。多分、俺の知り合い自体、早々呼ばれることもねえだろうしな」

日番谷の身内で、この子供だけの殺し合いに呼ばれそうな人物と言えば、かつての十一番隊副隊長、草鹿やちるだが彼女は既に消えてしまった。
あとは、幼馴染の雛森桃も子供の基準を満たすかもしれない。だが、雛森は身長が低い童顔であって、やちる程、幼女と呼べる容姿ではない。
部下の松本乱菊など、子供から最もかけ離れた存在だ。絶対に居る筈がない。

「タブレットのマップで施設が更新されたが、お前ら何処か気になるところはあるか?」
「いや、全然ないぞ」
「……この海馬コーポレーションって、あの乃亜って子の名前に関係あるのかしら」
「乾、俺も同じことを考えてた。奴の手がかりが掴めるかもしれねえ。
 お前らの知り合いを探しながら、ここに向かってみようと思うがいいか?」
「ええ、私も……ただ、ちょっとこのホグワーツっていう所も気になるかも」
「魔法の学校、か……鬼道とは違うのか? 首輪に俺も知らない力が、使われてる可能性もあるかもな……ここも、後で行ってみるか」

「すっげぇ〜!! ホグワーツって、ここからでも見えるあの城みたいな奴だろ? でっけ〜なぁ!」

方針はすぐに纏まった。乃亜の語った禁止エリアの事もある。あまり、時間を掛けている訳にもいかない。三人とも無意識ながらも、それを念頭に置いていたのだろう。
特に反対意見も出ず、準備を整えて行動を開始する。

「――――動くな! お前らッ!!」

その刹那、日番谷が声を荒げ二人を制止する。無数の射撃音と、日番谷が背の太刀を抜刀したのはほぼ同時だった。


339 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:14:26 x1VUDHno0

「霜天に坐せ!! 『氷輪丸』!!!」

日番谷の振るう太刀の動きに合わせ、冷風を伴い大気中の水分が凍結し、それらの微小な氷が集まり竜を現出させる。
五月雨のように降り注ぐ魔弾の全ては、竜の放つ冷気により凍結し、運動エネルギーを相殺され弾き落とされた。

「これは凄いね。冷気の操作……いや、そんな生易しいものじゃない。本調子なら、天候も思いのままに操るとかかな?」

二丁の使い込まれた古臭い拳銃を手にした白髪で眼帯を付けた隻眼の少年。
ナチスの軍服も、少年のレトロな雰囲気に一役買っていた。

「てめぇ、何だ?」

「自分から名乗りなよ。ベイ中尉の言葉を借りれば、戦の作法も知らないのかな?」

「……」

思ってもないことを口にする。初対面の日番谷からして、既に少年の悪印象は最底辺に定義された。
その言葉には意味はなく、ただの気紛れに言い放ったもの。単に高貴な軍人を気取りたい気分であるだけだ。

「護廷十三隊十番隊隊長、日番谷冬獅郎」
「聖槍十三騎士団黒円卓第十二位・大隊長、ウォルフガング・シュライバー=フローズヴィトニル」

「そうだ。お前、うな重持ってねえか!!?」

奴の目的は殺戮そのもの。纏わりついた血と死臭の悪臭、そして内に取り込んだ数多の命の憎悪の悲鳴は、日番谷に霊圧という形で感知されていた。
瞬間、二つの銃口が弾け、竜の冷気が迸る。

「ッッ!!」

弾道を見切り、冷気で魔弾を凍結、即座に防御から攻撃へと転じる。踏み込み間合いを詰める。構えた太刀を横薙ぎに振るう。
それらの動作をコンマ以下の領域で行い、日番谷はシュライバーへと肉薄した。
だが、その切っ先からはシュライバーの姿は消える。

「あっ、はァ――――」

奇抜な笑い声が頭上から響いた。シュライバーは地を蹴り上空へと飛躍していた。
宙を舞い足を天上へ向け兜割の要領で、日番谷の脳天へ、踵をギロチンのように振り落とす。
氷壁を展開し、頭上に氷結の盾を生成する。
一瞬にして氷は砕け散り、一撃は大地に大きく亀裂を刻み込んだ。

「――――その動き、瞬歩でも、響転(ソニード)でもねぇな」

死神の持つ高速走法、瞬歩、死神により差はあれど護廷十三隊隊長の一人である日番谷の瞬歩も、決して鈍足なものではない。
時速数百キロの高速移動を可能にしている。
土煙の中、地面の亀裂の先に日番谷は未だ健在。高速の攻防の中、シュライバーの動きを見切り、瞬歩を用い後方へと瞬時に飛び退いていた。


340 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:14:43 x1VUDHno0

「ああ、それ……走ってるつもりかい?」

だが、狂乱の白騎士を前にして、その絶速と比類するには児遊にも等しい。
日番谷の意識の外、視界の届かぬ背後から息の掛かる程の超至近距離から、憐れむように蔑むように、声を投げかける。

「チッ……!」

振り向きざまに太刀を一閃、しかし既にそこには虚空しかない。
空降りした体制から構えを修正し、周辺に意識を張り巡らせる。恐ろしいほどに何も音がない、あの白き災厄の姿が一片も見えない。
逃げた訳ではない。では、透明になって消えた? 違う。これはもっと簡単で、もっと恐ろしい驚異的事実、文字通り"目にも止まらぬ速さで駆け巡っている"のだ。
仮にも隊長格の死神である日番谷ですら、一切の反応が追い付かず完全な後手に回る程の驚異的速度。

「お前ら、俺から離れるな!!」

「日番y―――」

叫ぶ日番谷に、紗寿叶が無意識に呼びかける。だが、その名が紡がれる前に数百の銃声に上書きされる。
束の間の静寂を破り去り、シュライバーが魔人の域を以て射撃を開始する。
日番谷を取り囲むように、爆風を巻き起こし、衝撃波を発生させ、轟音と共に、この場に存在するありとあらゆる物を粉砕し、破壊し、蹂躙し尽くす。
既に、数十近くの殺人事件に関わったことのある元太と、ただの小柄な女子高生の紗寿叶では、息を吸う事すら奇跡に等しい惨状、。
しかし、まだ二人の命は消え去ってはいない。五体満足、一切の怪我もなく生存するという奇跡を成立させていた。
白き魔性に抗うように、白銀の氷竜が蜷局を巻くように、無辜の命を繋ぎとめる。
氷に鱗が罅割れ砕かれ、その身を粉々にされようとも大気から水分を凍結させ、再生させる。

(埒が明かねえ……!!)

敵の姿は未だ見えず、ただ後に置き去りにされた銃弾と、その絶速に齎される破壊に辛うじて耐えることは出来るが、消耗を続けているだけではいずれ拮抗は崩れる。

「卍解―――ッ!? がっ……!」

故に、切札を今ここで解放する。その寸前、シュライバーが日番谷へと肉薄した。
痺れを切らしたのは日番谷だけではなく、シュライバーもまた同じこと。
腹部に走る衝撃、シュライバーの靴が日番谷の腹に吸い寄せられ、吹き飛ばされていった。
ボールのように民家の外壁に衝突し、家は瓦礫と化し崩れ落ちていった。

「あれ? 何かする気だったのかな。だとしたら、遅過ぎるよ……。つまらないなァ」

「ひ、ひ……つが……や、くん……?」

戦いには無縁の紗寿叶でも分かる。恐ろしいほどのスピードを伴った攻撃は小柄な体躯など関係なく、膨大な破壊力を伴う。
苦悶の表情を浮かべ、張り裂けそうなほどの苦痛で顔を歪ませた日番谷の姿、あんまものを人間から直接受ければ肉片一つ残らず砕け散ってしまう。


341 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:15:04 x1VUDHno0




「大紅蓮氷輪丸」




無数の氷柱が、シュライバーが居た場所を抉った。その僅か数㎝横で、シュライバーは好戦的な笑みを浮かる。
瓦礫を押しのけ、腹を抑えながらも日番谷は生きて、まだその足で立ち上がっていた。

「なるほどね。僕達で言う、創造みたいなものか」

日番谷が従えていた竜は術者と一体化し、その氷の翼を日番谷が受け継ぎ、力を増大化させる。
氷雪系最強の斬魄刀、氷輪丸の真の力を解放した姿。
その域に到達したのであれば、例外なく尸魂界の歴史に名を刻む、死神の奥義にして最大の秘技。卍解。

「減らず口を叩いてる暇があるのか」

「暇すぎて、欠伸が出そうだよォ!!」

己を追尾するように、次々と放たれる鋭利な氷柱を涼しい顔で避けながら、シュライバーはその力を分析する。
二丁の銃口から放った射撃は、桁違いにまで増大した冷気に、いとも容易く弾き落とされる。

「力だけじゃない。規模も射程も、速さも……全てが桁違いに増幅してる」

氷風と魔弾が入り交じり、風音と銃声が木霊し破壊の協奏曲を奏でる。
その中を肉薄した日番谷が振るう冷気を纏った太刀を避け、シュライバーは銃弾を百発叩き込む。背に纏う氷翼が盾となり、銃弾を防ぐ。
更に数百発撃ち込み、氷翼が軋み、追撃を掛け更に数百発着弾し、罅割れ砕け散る。
だが、大気の水分を吸い取り即座に翼は修復される。
死角に回り、横薙ぎに回し蹴りを放つ。だが、体を逸らし避けられる。

「群鳥氷柱」

反撃に数多の氷柱を投擲され、回避しながら銃弾を撃つ。

「良い能力だよ」

放たれた銃弾を太刀を数回振るい、全て弾きシュライバーへと肉薄する。
先ほどは瞬歩でも追い付けなかったシュライバーの動きに、日番谷の反応が追い付いている。
能力そのものは同じだ。ただ卍解以前の、全ての力をそのままに最大値を更新する正当進化を果たした姿なのだろう。
攻守ともに隙がなく。殺戮に於いて優れた才を持つシュライバーを以てしても、創造と形成を封じられては殺し切る手札が切れない。

「でも、きみは未熟だ」

しかし、同時に日番谷もシュライバーを倒し切れていない。圧倒されていた戦況を互角に持ち込んだに過ぎない。
証拠に、日番谷の背後に浮かぶ氷の花が一つ散る。
三つあったそれは、いまや一つにまで減っていた。
時間経過で消滅するそれは、既に相応の時間二人の戦闘が長引いていたことを現す。

「分かりやすい弱点だけど、後ろの花はそれはカウントだろ? 恐らくその卍解とやらの階位を維持するのに、きみの体は追い付いていない」

同時に、日番谷の消耗を具現化した者ともいえる。死神とも破面とも滅却師とも違う、最速の存在に日番谷は従来以上の霊力を消費していた。
その代償は、すぐにでも支払う羽目となる。

「ク、ソ……」

眼前に迫るシュライバー、一切の光沢を発さなくなった錆び付いたルガーP08が、日番谷の額に押し付けられる。
既に日番谷は膝を折り、限界を迎えていた。

「詰み(チェックメイト)だ」

その一撃はシュライバーとして、非常にゆっくりと、だが確実に引き金が引かれ、ただの一発の銃声が鳴り響く。
額を貫き、頭蓋を砕き、脳味噌を掻き分け、弾丸が後頭部から排出される。


342 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:15:36 x1VUDHno0


「てめぇがな」


眼前の日番谷が、打ち込んだ弾痕から罅割れガラス細工のように砕け散る。

「――――!!?」

その瞬間、背後から今目の前で撃ち殺した筈の男の声が響く。

「ようやく背中を取れたな。苦労したぜ」

斬氷人形。
使用者である日番谷本人を再現した氷。
種さえ割れれば何てことない手品だが、初見でさえあれば、殺人に精通し殺害に必要であれば僅かな他者の機微すら見落とさないシュライバーでも、見分けが付かぬほど精巧な分身だ。
卍解を発動する寸前、シュライバーの奇襲を受けたのを利用し、その視界から外れた僅かな合間に分身を作り出し、操作し、同じく冷気も遠隔から放ちあたかも分身を本体と錯覚させていた。

「フ、フフフ……あはははははは!!!」

何てことない。本当になんて事のない。ただの小細工。
振り向きもせず、背後からの一太刀を前方へ跳躍して避ける。宙で体を捻り、日番谷と向き合うように着地する。
ただ、こちらの錯覚を利用し出し抜いたのは見事だが、別にそれだけだ。そこまでして背後に回ったからといって、肝心の不意打ちは掠りもしない。

「残念だったねェ! アイディアは悪く――――」

違う。狙いはこれではない。
コンマにも満たぬ刹那の瞬間に、シュライバーの脳内に思考が巡る。

僅かな違和感、そう、気温が下がっている。僅かではあるが確実に。シュライバーを取り囲むこの空間が冷え出している、

まさか、まさか、奴の狙いは。

「乃亜の言うハンデとやらのせいで、こいつを使うのに少しばかり時間が掛かっちまった」

天候を操り、大気中の水分から無尽蔵に氷を生み出し己の刃へと変える。ならば、その規模を更に拡大することも可能なはずだ。
地球上である限り、大気中に存在する水分が消えることはない以上、実質、無から氷を編み出せることと相違ない。
であれば、相手が同じく地球上の存在である限り、この世界と同じ大気を浴びている限り、奴の射程距離内に補足されている事と何ら変わりはない。

故に、今は距離を取る。爆ぜるように弾け飛び退き、日番谷の射程から脱出を図る。
少なくとも、この島全てを含む攻撃は不可能だ。それは乃亜の言うハンデの対象内にある筈、それらを考慮すれば一定距離以上離れていれば、奴の射程距離から十分離脱出来ている筈。

「千年氷牢」

音速をも超え、ベストコンディションであれば宇宙的速度に匹敵する高速度で走り抜くシュライバーに、冷酷に死刑宣告を放つ。
大気にある全ての水を支配し、氷柱を発生させ、相手を包囲し巨大な氷塊へと囲う。

「く、ぐ―――――」

氷塊の牢獄、その一歩手前だった。その包囲網を抜ける手前で、シュライバーは氷柱により進行を遮られる。

「あと一歩、遅かったな」

シュライバーを囲う無数の氷柱、いかに速かろうと、駆け抜ける先がなければ、それは止まっている事と変わりはない。
逃げ場を失った哀れな狂獣は、氷の墓標の下に埋まる。
目の前の空間一帯を埋める程の氷塊を目の当たりにして、日番谷は敵の殲滅を確信した。


343 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:16:08 x1VUDHno0



「グランシャリオォォォ!!!」



氷の一角に亀裂が走る。連鎖するように、氷塊が軋み、砕け散る。



「……なん……だと……?」


「使わせたね、これを」



氷塊の中から飛び出すは、漆の竜の鎧。
修羅化身グランシャリオ。
ある世界に於いて、危険主と呼ばれる超獣を素材に生成された鎧。
その性質は使用者の身体能力を向上させ、鎧としても高硬度な耐久力を誇る。いわば、パワードスーツに近い。
千年氷牢をグランシャリオの鎧を纏い防ぎ、高まった膂力で氷塊を打ち砕く事で、シュライバーは外界へと再び顕現した。

(クソ、氷塊の層が薄かったか……)

シュライバーの速さに対抗する為、生成速度を優先した。恐らくは千年氷牢の耐久度が落ちていた可能性も高い。
既に日番谷の氷の花は一つのみ。
斬氷人形による搦手は、シュライバー程の相手には二度も通じないだろう。
そして、卍解を維持する日番谷の負担も激しい。氷輪丸を杖のように突きたて、体を預けなければ立てない程に消耗していた。

「はははははははははははッ!!!」

万事休すか。

漆黒の竜の化身が、白の騎士という、この世のありとあらゆる殺意を煮詰めたかのような災厄を伴い、加速し――――膝を地に着けた。


「なん、だ……?」


死をも覚悟した日番谷の口から疑問が零れた。

「……ば、かな、ァ……」

何も消耗していたのは日番谷だけではない。
シュライバーとて、同じこと。
既に、シュライバーはこの殺し合いトップクラスの実力者、孫悟飯との激戦を終えている。
活動階位で並みの聖遺物の使徒なら形成を使われていようと、十分に圧倒するシュライバーが最初から出し惜しみなく形成を発動する程の強敵だ。
創造を出しても尚、その肉体にほぼダメージも通せず、互角に渡り合ったあの少年との戦いが、シュライバーにとって負担にならない筈がない。
更にグランシャリオを纏ったとはいえ、本人にその意識はないが、シュライバーは打たれ弱い。
鎧の防御力は高いとはいえ、そのダメージを完全に殺し切れる代物でもない。本来の所有者であるウェイブも、強力過ぎる攻撃を受けた時は本体にもダメージが通じていた。
乃亜の言うハンデ、制限による影響に加えて、なまじグランシャリオを纏い、"鎧越し"に攻撃を受けた為、自身の体に"触れられた"とは認識せず、キレた者勝ちのご都合主義も起こりえない。

つまり、いくつかの条件と蓄積した疲労と巨大なダメージが積み重なり、今ここに一気に噴き出してしまった。

「……お前ェ……!」

「っ……」

銃を構えようとして、意識に反して腕が持ち上がらない。こんな疲労など、魔人となる以前にまで遡らなければ、経験がない。
殺害について、機械以上に正確で効率的な手順で実行するが、今はその手順すら脳内に展開できない。
状況を完全把握した上で、これ以上の殺戮は続行不可能だと、認識せざるを得ない。

「――――――!!!」

シュライバーは外国語が入り交じり、怒りを込めた奇声を発し、残された僅かな余力で日番谷の前から消え去った。

創造と形成を使えないとはいえ、こんな劣等如きに、劣等に支給された道具すらも使わされ、追い込まれ、それでこの有様。
普段ならば、確実に目の前の獲物を狩り取るまで、殺戮を続けていたが、狂気の中にあった理性は撤退を選択した。
これがバトルロワイアルである以上、皆殺しをする以上、次の戦を考えなければならない。
彼は、狂犬ではあるが、考えなしの馬鹿ではない。
殺戮に優れた彼は、今この場で引き体力の回復と温存を選ぶ事が、トータルで見れば後の殺戮についてより効率的だと判断したのだ。


344 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:16:48 x1VUDHno0

「……退いた、か」

「冬獅郎! 大丈夫かよ! でも、強かったぜ……お前、本当にちり紙だったんだな!!」

「馬鹿、それを言うなら……死神だ……」

恐ろしい相手だった。奴の言葉を信じれば、死神の基準で言う始解すら使わず、隊長格の卍解と張り合ってみせたのだ。
使わなかった理由が乃亜のハンデだとしたら、時間の経過でそれが復活する可能性は高い。
ここで仕留めきれなかったのは痛手であると、日番谷は強く後悔した。
今は元太の能天気な声が、嵐が過ぎだった後の平穏の象徴のようで、少し心地よかった。




――――――――




「なんなのよ……なんなの、これ……」

私は目の前で繰り広げられた戦いに、完全に腰を抜かしてしまっていた。
とても速い銃を使う男の子と、私よりもずっと年下だと思っていた日番谷君の戦いは、私が好んで見ていたアニメのようだった。
でも、アニメで見るそれらとは違って、本物の殺意をぶつけ合う命のやり取りは、アニメと違ってカッコよさとか戦うヒロインの可憐さを演出したような物とは違った。
血生臭くて、憎悪をぶつけあって、相手の首を何時刎ね取ろうか考えてる。

怖い。

何で、私が殺し合いなんかしなくちゃいけないの。本当はこんな暗い夜中に放り出されるのだって、怖くて怖くて仕方ないのに。

あんな、あんな……平気で人に銃を向けて笑ってられるような子とまで、殺し合わなきゃいけないの? 無理だ。私なんかじゃ、どうやったって生き残れる訳がない。

助けて、誰か……。


「……」


「え」


フリルのついたピンクの衣装を着た、小さな女の子だった。
髪を白いリボンで二つに結んであって、ピンクのステッキを持って、空から宙を舞って降ってきた。
魔法としか思えないその芸当に、私は一つだけ心当たりがある。それは魔法、私が幼い頃からよく見ていた魔法少女が操る魔法。

「……素敵」

強い意志を持った真っすぐな瞳。とても整った美しい容姿。
強くて、キラキラして、かっこよくて、フリフリの可愛い服を着ていて、どんなに不幸でも、報われなくても、絶対に負けない希望の魔法少女。
きっと、こんな絶望の中にあっても、その娘は私を助けてくれるんだって。

「ごめんなさい。死んで」

私は、決めつけてしまっていた。

「危ねえぞ、姉ちゃん!!」

元太くんの声で、私はようやく、現実を悟った。女の子のステッキが私に向けられて、その先から光が圧縮されてる。
きっと、あれはそう……あの銃の男の子が向けてくる凶器と同じ意味合いを持ったものだ。だから、私は……。



――――――――


345 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:17:35 x1VUDHno0



「く、そ……! 間に合わ――――」

新たな襲撃者に対し、完全に出遅れてしまった。卍解を解き、失った体力を回復させるために一時的に体の意識を休息に傾けた為に、反応が完全に間に合わず、スタートダッシュで出遅れた。
既にその少女は杖の先から光弾を作り出し、紗寿叶へと放たれていた。
そこへ割り込もうにも、たった僅かな距離が永久に感じるほどに、1秒にも満たない距離が永劫と見紛う程に遠い。

だから、間に合わない。

誰よりも早く、少女の襲撃を察知して、紗寿叶の元に飛び込んだ元太に。

「……げ、んた……く、ん……?」

光弾が触れる前、紗寿叶は強い衝撃を受けて体にのしかかる重さを感じた。
何が起こったか、数秒置いてから、生暖かく感じる大量の血液から、ようやく事の重大さを知る。

「なん、で……」

庇われたのだと。自分よりもずっと年下の男の子に、今、庇われたのだと悟った。

「……ね、えちゃん……大丈夫……か」

少年探偵団として、長い間、色んな殺人事件と関わり、そしてその殺人者たちを数多く見てきた。
だから、紗寿叶の元に現れた少女の顔を見た瞬間、元太は日番谷よりも早く、彼女が殺し合いに乗ることを決意しているのだと、理解してしまった。
先の戦闘の影響で、反応が遅れた日番谷を差し置いて、元太は紗寿叶の危機を直感し彼女を庇い、そして腹部を抉られた。

「霜天に坐せ!! 氷輪丸!!!」

始解を発動し、氷の竜の尾が襲撃者へと振るわれる。

(……この子は消耗してる。今なら、全員殺せる)

美遊・エーデルフェルトは日番谷の攻撃を避けながら、冷静に戦況を分析する。
周辺の破壊跡と、この日番谷の動きを見るにこの場で激戦があったのは確定だ。
なら、その戦闘後の疲弊した状態を狙えば、美遊にとって比較的少ないリスクで三人を殺害し支給品を奪い戦力を整えられる。

「……人、ごろ、しなんて、やめろよ……」

「ッ!?」

今の日番谷なら、まだ戦闘をしていない万全の美遊なら殺すことが出来る。戦況は比較的、美遊が優位だ。
だが、ステッキから放とうとした魔力弾の生成が鈍った。
あの肥満体系の少年の言葉が、小学一年生とは思えない程に、重みのある言葉が美遊に突き刺さる。

「そんな、こと……しても、よ……は、ら……減って……悲しい、だけだ、ぜ……」
「わた、し……は……!!」

それは元太なりに、人生を終わらされてしまった人達と、終わらせてしまった人達を見てきたからこそ、口にしたことだった。
どんな理由がある殺人でも、それが幸福で終わったことなど、ありえなかった。だからそんなことより、腹いっぱい飯でも食った方が良い。
美遊は、迷いを振り払おうとして、いずれ放っておけば死ぬであろう元太にステッキを向ける。


346 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:17:55 x1VUDHno0

「やめ、て……お願い、もう……やめ、てぇ……」

「……っ」

元太の傍らに居る紗寿叶が、震える声で懇願する。

『……素敵』

最初、自分に向けられた紗寿叶の憧れと羨望の眼差しが、跡形も残らず歪んでいた。
あの、光輝いていた目が、今は絶望と恐怖に彩られ、濁っている。自分がそうさせた、他の誰でもない美遊・エーデルフェルトがこの惨劇を創り上げてしまった。
身勝手で独善的な願いの為に。大切な少数の為に、多数を切り捨てる。それがこの惨状だ。

「もう、わたしは……!! ―――ぐっ」

消耗しきったとしても日番谷もまた歴戦の死神、相手の僅かな動揺を見過ごす事はない。
氷輪丸の一太刀を美遊へと浴びせる。
装甲の薄そうな見た目に反し、実際のところは物理的な干渉に対する障壁が貼られていた。斬撃は弾かれるが、また美遊も死神の膂力を受けたことで強い衝撃が全身を襲う。

『美遊さん、撤退しましょう! 無理に戦う必要はないです!』

ルビーの叫びと共に、美遊は高く跳躍し、何もない空中に足場を作り天空を駆ける。

(イリヤ……私は……)

美遊の脳裏には、今しがた殺めた少年と、恐怖に染まった少女の姿が強くこびり付いて離れることはなかった。




――――――――




「……へへ、目の前によ……大量の……うな重が見えるぜ」

「んなもん、何処にも……」

血溜まりの中、日番谷は元太の死を悟り、言いかけた言葉を閉ざした。
傷が深すぎる。氷輪丸で止血したが、血が止まらない。
医療に長けた死神ではない日番谷では、これ以上の処置は取れない。

「これ、食って良いか……?」

「……ああ……好きに食え……全部、俺の驕りだ」

「マジかよ……へへ、こんだけのうな重、食い切れ……る、か、な……」




【小嶋元太@名探偵コナン 死亡】


347 : 壊れた幻想 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:18:31 x1VUDHno0
【G-6/1日目/深夜】

【乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする】
[状態]:健康、殺し合いに対する恐怖(大)、元太を死なせてしまった罪悪感(大)、魔法少女に対する恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:……。
2:妹(178㎝)は居ないと思うけど……。
[備考]
原作4巻終了以降からの参戦です。


【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(中)、卍解不可(日中まで)
[装備]:氷輪丸@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。
0:すまねえ、元太……。
1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。
2:海馬コーポレーションに向かい、乃亜の手がかりを探す。
3:美遊、シュライバーを警戒。次は殺す。
[備考]
ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。
人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。
卍解は一度の使用で12時間使用不可。



【ウォルフガング・シュライバー@Dies Irae】
[状態]:疲労(大)ダメージ(大)、形成使用不可(日中まで)、創造使用不可(真夜中まで)
[装備]:ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae、グランシャリオ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本方針:皆殺し。
1:敵討ちをしたいのでルサルカ(アンナ)を殺す。
2:いずれ、悟飯と決着を着ける。その前に大勢を殺す。
3:忌々しいが、一旦、体力を回復させる。
4:アンナの事、聞くの忘れちゃったじゃないかァ!
[備考]
マリィルートで、ルサルカを殺害して以降からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
形成は一度の使用で12時間使用不可、創造は24時間使用不可
グランシャリオの鎧越しであれば、相手に触れられたとは認識しません。


【グランシャリオ@アカメが斬る!】
「鍵」と呼ばれる剣を手に、その名を叫ぶことで黒の鎧を召喚し、使用者に装着される。
装着者を攻守ともに強化する。他の低具とは違い、奥の手は存在しないが、非常に安定した性能を誇る。




【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、深い悲しみ、覚悟。人を殺めた動揺
[装備]:カレイドステッキ・ルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード(不明)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:イリヤを元に戻すため、殺し合いに優勝する。
0:……今更、引き返せない。
1:ルビーと力を合わせて殺し合いに勝ち残る。
[備考]
※ドライ!!にて人形にされたイリヤを目撃した直後からの参戦です。
※カレイドステッキ・ルビーはイリヤが人形にされたことを知りません。


348 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 11:18:47 x1VUDHno0
投下終了します


349 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/20(土) 13:53:17 RF4dHVEU0
遅ればせながら本編開始おめでとうございます

魔神王、江戸川コナン
予約させて頂きます


350 : 解体し統合せよ ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 14:37:24 90qwFwO20
ゲリラ投下します


351 : 解体し統合せよ ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 14:40:23 90qwFwO20
 海馬モクバは優れた子供である。
 まず海馬コーポレーションにおいて、
 その若さで会社経営の一助になってる時点で相当な手腕や技術を持つ。
 しかし、それでも彼のスペックは決して超人でもないし子供だし舞台は広大。
 全員がそうではないのは分かっている。と言うよりモクバはそういう輩を見ている。
 グールズ、闇バクラ。バトルシティの決勝戦にだって問題の人物は何人かいた。
 寧ろ殺し合いをするのであればより多く参入させるだろう。円滑に進めるために。
 だが死者に思うことはあれど時間は割かない。兄である海馬瀬人のように過去は振り返らない、
 と言うわけではない。と言うよりなんか明らかにおかしい呼ばれ方をした奴に突っ込みたくもある。
 それはそれとして、乃亜にこれ以上暴挙をさせないためにもまずは仲間を集めるのが先決だからだ。
 何よりも人材とは大事だ。海馬が頼りにしている、と言うよりしすぎている磯野がその典型例である。
 では人はどこに集まるか? となればこの舞台において最も優先されるとするのならば───

「やっぱ海馬コーポレーション、だよな。」

 主催者の名前の一部が入った施設であり、
 しかしそれは彼が関係してるのではなく海馬瀬人が経営している会社。
 此処にある理由は謎だ。この舞台がバーチャル空間であり、疑似的に再現している。
 そんな可能性はありうる。と言うより一度経験した身のせいでそっちの方が現実的だ。
 でもあの時と違って電脳空間へ入る過程までの記憶がないので絶対電脳空間とは言い切れない。
 なんせモクバはバーチャルだけでなくオカルトじみたことも散々経験してきているわけだ。
 とんでも能力で現実的に再現しました、なんてことあったとしても不思議ではない。

(となると乃亜も肉体を手に入れたってことになるが、どうなんだろうな。)

 もし今が電脳空間ではなく現実であるとするなら、
 もう電脳空間にしか身体がないはずの乃亜も肉体を得たことになる。
 此処まで行くと何でもありだ。なまじ知識がありすぎるせいで考察しようがない。
 もっとも主催の存在に近しい立場だからこその頭を抱える難題になる。
 一先ず電脳空間、と仮定して動くことにする。乃亜の言う願望の実現も、
 バーチャルであれば再現可能であり、嘘ではないと言ってるようなものだから。
 無論現実ではないので、仮初の願望の成就と言われてしまえばそうなのではあるが。

「というか、なんでよりにもよってインセクター羽蛾なんだよ。」

 名簿をひとしきり読み終えた後、微妙にがっくりと肩を落とす。
 選定条件に子供の体格とかも含まれていると言うのであれば、
 もしかしたら武藤遊戯もいてくれるかもしれないと少しだけ願った。
 けれど乃亜が敗北した相手だからかか不明ではあるが呼ばれてはおらず、
 人物的にも余り評判がいいとは言えないあのインセクター羽蛾だけが唯一の知り合いとは。
 しかも知り合いと言っても直接の面識はない。デュエリストの腕が高いから知ってる程度だ。
 こうなると知り合いで当てになる人物がいない、寧ろ海馬の名を持ったことで余計に狙われる。
 結構な向かい風になりそうだと思っていると、空の暗くなった状況に察して即座にそこを離れた。
 離れると同時に拳が地面にたたきつける一人の少女の構図がそこにあった。

「む、動きは良いのう。」

 着地してきてやってきたのは一人の少女だ。
 同い年ぐらいかと思えば言葉遣いは古めかしい。
 アイドルと超能力者から逃げを選んだ錬金術師、ドロテア。

「お前も殺し合いに乗る奴か!?」

 最悪の事態に備えてポケットに隠しているブルーアイズを召喚できるよう警戒する。
 ブルーアイズは強力なモンスターだ。制約も課せられていることも分かってるが、
 命を落とす状況であるならばそれを使うことも考えなければならないと。

「おお待て待て。今のは少し試しただけじゃ。
 現に今からすることを刮目してから話をしてみると。」

 そう言ってドロテアは手ごろな石を拾い上げ、それを握って砕く。
 とんでもない握力だ。あんなもので殴られればまず命は吹き飛んでいた。
 一撃を避けただけで攻撃を続けてきてもおかしくないのにそれだけだし、
 そもそも最初の一撃が不意打ちにしては余りにもお粗末なやり方だ。
 加減してくれていると言うのはモクバからみても理解できる。

「今妾が殴りかかれば、心臓が後方へ吹き飛んでおった。
 お主なら妾の言っていることは、もう分かるであろう?」

「ああ、分かってるさ。それをしないってことは、
 お前は俺と殺し合いじゃなくて情報交換がしたいんだろ?」


352 : 解体し統合せよ ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 14:43:43 90qwFwO20
 よく見ると自分がいた場所と少し位置が違う場所に拳を叩きつけていた。
 相手が単なる腕試しでやってみたと言うのは嘘ではないだろう。
 その程度で死ぬようなら、利用価値もないとみているのだと。

「聡明で助かるのう。」

 桃華と写影のときのように情報を共有していく。
 流石に開幕から殺し合いをしたことについては伏せたが、
 思わぬ情報にドロテアは少し驚かされていた。

「なんと! あの海馬乃亜の知り合いであったとは!」

 なんて最初はとんでもない情報源に出会えたと思った。
 仮想空間の可能性、デュエルモンスターズ、嘗ての乃亜の行動。
 と最初こそ喜ばしいように見えて微妙な感じだと思わずにはいられなかった。
 乃亜を知る人物を殺し合いに参加させれているのなら、敵味方問わず皆して狙うはず。
 聞けば一度海馬乃亜の企みを阻止したと言う経験を持っている人物ではないか。
 そんな人物を参加させるとなると、はっきり言って役立つかは微妙ではある。
 普通にそういう人物に対する対策は既にしてるのだろう。となると有益性は低い。
 先の二人のアイドルの方のように、処分してしまうのも一つの手かもしれなかった。
 丁度首輪が欲しく、今は周りに人の気配もない。殺そうと思えば簡単に殺せる。

(しかし……)

 この少年は弱い。だが先の少年同様に知識は別物だ。
 ドロテアは錬金術師ではあるが、機械方面にまで優れてるわけではない。
 先の少年の言葉を借りるなら魔術サイドと科学サイドと言ったところだろう。
 Dr.スタイリッシュにも興味はあったが帝都に戻れば死んでいて結果はなし。
 無論単なる知識に留まらない。この先の方針をしっかり見据えている聡明さ。

「ふむ。いい人材に巡り合えたと言える。
 どうじゃ? 妾とお主で協力し合うのは。」

 これは有益だ。情報源抜きにしても人材として優れる。
 優勝は最終手段だ。生き残って若さを保てれば別にどうでもいい。
 人の生き死にはもちろんではあるが、流石に安全面は優先しておきたい。
 開幕は急ぎ足でやりすぎてしまったことを否めないので、此処は穏便に。

「いいけど、お前殺し合いをしてただろ。」

 突然の言葉に呆気にとられそうになるが、
 それをしてしまえば答えを言ってしまうようなもの。

「何をおかしなことを。確かにちょっかいをかけたのはすまぬが、
 あくまでお主が話し合いに応じるだけの人物かどうかのテストよ。
 手加減したとは言ってるだろう。確かにカマのかけかたが済まないとは思うが。。」

「返り血、ついてるぜ。」

「何!?」

 写影との戦いで彼に傷は何度も与えてはいたが、
 返り血に当たる部分が出るほどの大量出血はなかったはず。
 あるはずがなく、咄嗟に服を確認してその意味を気付いた。
 嘘だと。

「……そのカマを掛けた理由は?」

「慣れすぎてんだよ、さっきから反応が。」

 人の死にも、戦いにも慣れていて、
 そも話し合いではなく腕試し感覚で襲ってくる。
 結構な倫理の欠如。ビッグ5と言った会社のダメな奴を散々見てきた。
 ろくでもない奴の審美眼んついては嫌と言う程に鍛えられており、
 彼女もそういう類の人間なのではないかと推察ができた。

「……こんな子供にハメられるとはのう。
 して、どうする? それで妾と交戦するつもりか?」

「その前に聞くぜ。お前、殺し合いに優勝が目的か? 生き残りたいのか?」

「あの手の輩が優勝賞品をまっとうにくれるわけなかろう。
 どうにもならねば優勝でいくが、基本は生存最優先……信じるか?」

「このタイミングで嘘を吐く理由はないから、
 それが真実だってわかるぜ。ならドロテア!
 俺はお前を雇うつもりだ! 給料は『首輪解除と生存の安全圏』でどうだ!」

 思わぬ返事に少しばかりドロテアも面食らう。
 現状判断できる内容から危険人物を雇うなんて発想、普通はできない。
 特に相手は知識はあるだけの子供だ。自衛手段があるのだとしても、
 そんな簡単に言えることではないだろう。

「ほう? 殺し合いをしてた人間を雇うのか?」

「見てのとおり俺は弱い。だがアンタは必要ないなら殺し合いに乗らないんだろ?
 あくまで生きて脱出できればいい。だったら全員が首輪を外しても皆殺しなんて考えない。
 合理的に物事を考えている。なら俺達は仲間と言うより、ビジネスパートナーにはなれるはずだ。
 と言うより、こうしないと俺は此処ですぐに死ぬって言う理由もあるんだけどな。」


353 : 解体し統合せよ ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 14:44:43 90qwFwO20
 ビジネスパートナー。確かにその方がらしいと言える。
 秘密警察ワイルドハントも、犯罪者のろくでなしの集いだ。
 正義ではなくシュラの趣味と己の欲望の為だけに動く警察組織。
 仲間意識はさほどないので、そういう距離感でいてくれるのは助かる。

「だがいいのか? 一応釘を刺してはいるが、
 先の戦った二人は殺し合いに乗ったと吹聴するやもしれぬ。
 ついでに言えば、妾は人の死を何とも思わぬことは行動でもろバレよ。
 そこに海馬の名を持つお主が同行。果たしてどうなるか分かったものではないぞ?」

 とんでもない呪物の出来上がりになる可能性は高い。
 海馬モクバを知る人物はいるにはいるが殆ど面識はない。
 と言うより羽蛾の性格からして信用できるかも怪しい所だ。
 バトルシティで脱落した逆恨みで何かしてくるとさえ考えられる、
 それぐらい人柄に問題があるのだから。

「俺だって海馬コーポレーションの経営に携わってきたんだ。
 兄様のような手腕はないが、状況を見極める必要は迫られる。
 ドロテアに『同行者がいる信用』と『機械関係の技術の知恵』を俺は与え、
 逆にそっちは『俺を護衛できるだけの力』と『オカルト的な知識』を与えてもらう!
 後、殺し合いに乗った敵以外を殺さない条件を飲むって言うなら、味方するつもりだ。」

 此方にとってはメリットの方が十分にありうる要求であることは変わらない。
 首輪のサンプルが確保しづらくなるし、海馬の名を持つのが同行と言う点が、
 何処まで悪影響になるかは定かではないもののドロテアとしては都合がいい。
 イェーガーズのウェイブのような正義感が抜けてるわけではないが、
 ナイトレイドの連中のような、必要なら危険なものも辞さない覚悟を持つ。
 此方としても完璧とは言えない部分を補えるのは重要なところだ。
 特にドロテアは若さを保つために研究に余念がない人物である。
 若さを保てる今後に活かせる可能性があるならば、取り入れておきたい。

「……ふむ、よかろう。先は少し焦って動きすぎた。
 盤面を見誤る程妾も愚かではない。その手に乗ったぞ。」

「けど、約束は守れよな?」

「分かっておる。だが乃亜の口ぶり、
 妾よりやっかいなのがいるのやもしれぬ。
 その時はお主の持ちうる自衛手段を使うのだぞ?」

 魔術と科学が交差し、新たな物語は始まる。
 下手をすれば参加者にとっては呪物のような組み合わせ。
 しかしうまく行けば、これ以上のない主戦力となりうる両極端なペアが。
 目指すは兄の会社、海馬コーポレーション。数多くの人物が目指す、
 そんな可能性のある場所でもしかしたら巻き起こるかもしれない波乱。
 無論、覚悟の上で立ち向かう。兄なら、海馬瀬人ならそんな壁を打ち砕くから。

「あ、そうだ。さっき戦ったって奴の名前は?
 後で出会った時一番揉める相手だし気を付けないと。」

「シャエイとモモカの二名じゃよ。」


【C-2/1日目/深夜】

【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]血液徴収アブゾディック
[道具]基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:とりあえず適当な人間を三人殺して首輪を得るが、モクバとの範疇を超えぬ程度にしておく。
1:妾の悪口を言っていたらあの二人(写影、桃華)は殺すが……少し悩ましいのう。ひっそり殺すか?
2:海馬モクバと協力。意外と強かな奴よ。利用価値は十分あるじゃろう。
3:海馬コーポレーションへと向かう。

[備考]
※参戦時期は11巻。

【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:青眼の白龍@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜0
[思考・状況]基本方針:乃亜を止める。人の心を取り戻させる。
1:殺し合いに乗ってない奴を探すはずが、ちょっと最初からやばいのを仲間にしちまった気がする
2:ドロテアと協力。俺一人でどれだけ抑えられるか分からないが。
3:海馬コーポレーションへ向かう。
[備考]
※参戦時期は少なくともバトルシティ編終了以降です。
※ここを電脳空間を仮説としてますが確証はありません


354 : 解体し統合せよ ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 14:45:37 90qwFwO20
以上で投下終了です
ゲリラ投下ありとのことでしたが問題でしたら破棄でお願いします


355 : 名無しさん :2023/05/20(土) 14:53:06 JBKir.6w0
投下乙です。
ドロテアと対峙して即座に交渉できるモクバ、素のスペックの高さを感じる。
乃亜についての情報を共有されるのは、乃亜も想定済みでしょうけど、どうなるのか…。

内容についてですが、>>319のロワルールで

>※参加者名簿はタブレットから見れる。第1回放送後、観覧可能。

とあります。また「第0回放送」においても、

>そうそう、今回を第0回放送として、次の第1回放送後、君達も気に掛けているであろう参加者名簿もタブレットに転送しておく。

という文があるので、モクバが名簿を確認したことについては訂正が必要かと思いました。


356 : ◆EPyDv9DKJs :2023/05/20(土) 16:25:56 90qwFwO20
>>355
ご指摘ありがとうございます
即興で書きすぎて見落としてお手間をかけたこと、申し訳ありません

修正箇所についてですが

>>351の 「というか、なんでよりにもよってインセクター羽蛾なんだよ。」

からのくだりを

 選定条件に子供の体格とかも含まれていると言うのであれば、
 もしかしたら武藤遊戯もいてくれるかもしれないと少しだけ願いたい。
 けれど乃亜が敗北した相手だからかか不明ではあるが呼ばれてないだろう。
 こうなると知り合いで当てになる人物がいない、寧ろ海馬の名を持ったことで余計に狙われる。
 結構な向かい風になりそうだと思っていると、空の暗くなった状況に察して即座にそこを離れた。
 離れると同時に拳が地面にたたきつける一人の少女の構図がそこにあった。

>>353の とんでもない呪物の出来上がりになる可能性は高い。

からのくだりを

 どちらも、余り評判のいい人物ではないかもしれない可能性が常に付きまとう。
 リスクは十分にある。それはお互い聡明である以上十分に理解できることだ。
 殺し合いを叛逆する奴ら全員敵と認識してくる最悪の可能性すらありうる

と修正させていただきます。
このような形であれば大丈夫かと思いますが、どうでしょうか?


357 : 名無しさん :2023/05/20(土) 17:43:49 JBKir.6w0
>>356
指摘させていただいた者です。
修正内容について、私は問題ないかと思いますので、あとは企画主様の判断にお任せします。
重ねてになりますが、お疲れ様です。


358 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:38:06 YWPHOalo0
投下します


359 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:40:01 YWPHOalo0
投下前に予約にクロエ・フォン・アインツベルンを追加した事をご報告させていただきます


360 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:40:25 YWPHOalo0

BANG!BANG!BANG!
この世界における神、海馬乃亜の放送から十五分後。
既に新たな戦端が、このバトルロワイアルに開かれていた。
踊り手は不死王(ノスフェラトゥ)アーカード。
白い外套を纏った少女の姿でありながら、齢百を超える怪物はその手の二丁拳銃を乱射する。


「どうした、人間(ヒューマン)。逃げてばかりでは私の心臓には届かんぞ」


対する敵手は、眼帯の少年。
否定者狩りの否定者、リップ=トリスタン。
リップからすれば、この戦いは望む開幕ではなかった。
まずは穏便に接触し、目の前の少女が何か情報を持っていないか聞き出した後、襲うか見逃すかを決める筈だった。
だが、アーカードと名乗った少女は、リップが纏う血の気配を見逃さなかった。
彼が、この殺し合いに乗った人間だという事もすぐに見破った。
その結果が、このトリガーハッピーな状況だ。


(こいつ…見た目通りの年じゃないな。不老の否定能力でも持ってるのか?)


リップが選んだのは、先ず自らが持つ古代遺物により飛行し回避に専念したうえで相手の出方を伺う事だった。
何しろ、目の前の敵が扱うのは屈強な成人男性でも取り扱いに苦労しそうな二丁の姉妹拳銃だ。
膂力も相当なものだと予想される。この時点で接近戦の選択肢はない。
今の自分は、情けない事に筋力も相当落ちているのだから。

BANG!!

アーカードの持つ、悪魔殺しの二丁拳銃がリップを捕らえる。
完全に被弾コースだ。今からは躱せない。
命中すれば、リップの幼い体躯に間違いなく風穴を開けるだろう。
だが、彼の顔に焦りはなかった。
静かにその手のマントを、銃弾への楯とする。


「!?」


アーカードの黒い瞳が僅かに歪む。
ひらり。そんな擬音が付きそうな程にあっさりと。
銃弾の軌道が、リップの左右の空間へと逸らされていたからだ。


361 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:40:51 YWPHOalo0


「ハハ、眉唾だと思ったけど、意外と役に立つね」


リップに与えられた、支給品の効果だった。
22世紀のテクノロジーによって作り出された『ひらりマント』は見事弾の軌道を変えていたのだ。
だが、拳銃弾の威力もさるもの。
生半可な攻撃なら相手に跳ね返せるマントも、斜めの角度で弾く事が精いっぱいだった。
それでも、使用感は掴んだ。
要は相棒であるラトラの否定能力のような物だ。ならば、使いこなせる。
マントの陰で笑みを浮かべていると、敵手の少女が煽る様に口火を切って来る。


「走狗よ。逃げてばかりか?浅ましくあの餓鬼に媚びへつらうんじゃあ無かったのかね?
逃げて隠れて尻尾を振るだけしか能のない野良犬では、飼い主も喜ばないだろう」

「言ってろよ自称ブラム・ストーカー女が。お前はその犬っころに負けるんだから」


対するリップも冷徹に言葉を返しながら、タイミングを計る。
あの膂力の持ち主に接近戦を仕掛ければ、攻撃が通ったとしても相打ちになる恐れがある。
それでは奴を殺せても意味がない。
故に今の彼は古代遺物での攻撃を未だ行っていなかった。
ただ飛行とひらりマントによる回避に専念し、機を伺う。
狙うは遠距離攻撃。それも身のこなしで勝る相手を捕らえるための大技だ。
だが筋力の低下と制限により、直ぐには撃てない。
空気を圧縮し、溜める必要があった。
その工程は既に終わったものの、外せば次に撃てるのには更なる時間と、相手の警戒を掻い潜る必要が出てくる。軽はずみには撃てない。
その思考から静かに、冷徹に、スナイパーの様に。リップ=トリスタンは撃発の時を待つ。


(クク、さぁどうする人間(ヒューマン)。どうやってこの吸血鬼の心臓を穿って見せる。
どうやってこの化け物である私を滅ぼそうとする。早く見せて見ろ!!ハリー!ハリー!ハリー!!)


リップが何某かの自分を殺すための策を持っている事は、アーカードも分かっていた。
だから、口では嘲るような言葉を吐きつつ、瞳の色は犬とみなした人間に向けるそれではない。
むしろ、闘争への期待が一秒ごとに膨らんでいる。そんな狂気を滲ませていた。
場のボルテージは膨れ上がり、臨界点を迎える時はもうすぐそこに迫っていた。


362 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:41:12 YWPHOalo0


「──拘束制御術式解放、第三号、第二号、第一号」


瞬間、その時は来る。
このまま銃撃をしていては埒が明かぬと判断したアーカードはその手の拳銃を地面に放った。
無手になった両手で構えを取り、静かに、歌うように。
これまで敵対してきた人間、化け物達を絶望に追いやってきた術式の調べを奏でようとする。
その瞬間の事だった。
キ イ イ イ イ イ 、という風切り音を彼が聞いたのは。


────走刃脚(ブレードランナー)!!


能力使用の解除が終わるまでの僅かな一瞬を、殺人者となる事を選んだ人間が切り込む。
放つは、UMAの身体でさえ滅ぼしうる、固定化された空気の刃。


───フルムーンサルト!!


超高圧縮された必殺の刃が、不死王(ノーライフキング)へと向けて放たれる。
成程、もったいぶっただけの事はある。
この刃が当たれば、人間ならば即死だろう。
アーカードは口の端を下弦の月の様に持ち上げて、そう評した。
ず。と、
能力制限の解放より0.3秒ほど早く、空気の刃が、アーカードを捕らえる。
彼女の胴体が袈裟懸けに両断されたのは、その直後の事だった。
どさっと切り落とされた胴体と、腕が地面に転がる。


「やるじゃあないか───ヒューマン」


アーカードは笑う。
何時も彼はこうしていた。
ヘルシング家が百年以上かけて作り上げた、最強のアンデットとして。
相手の殺意を、まるで恋人の愛撫かの様に受け止めて。
その上で蘇る。傷を瞬時に再生し、立ち上がり、次の殺し手を求める。
私を滅ぼせるものは何処にいる。
人間でいられなかった弱い化け物を殺せる者は何処にいる。
そう──アーサー・ホルムウッド、キンシー・モリス、ジャック・セワード。
そして――エイブラハム・ヴァン・ヘルシングの様な。
人の身で、諦めを踏破した者ども。
それだけを求めて、彼は百年以上化け物として君臨してきた。
そして、今回も。


363 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:41:39 YWPHOalo0


「いいぞ、面白くなってきた。闘争はこれからだ。夜はこれからだ───」


見込み通り。殺し合いに乗ったというこの人間(ヒューマン)は、自分を滅ぼしうる牙を秘めていた。
闘争とはこうでなくてはならない。
さぁ今度は此方の番だ。再生し、立ち上がり、そして此方の能力を開帳する。
喜色を顔中に浮かべて。正しく怪物の形相で彼女は立ち上がろうとした。
そして───できなかった。
再生は一向に始まらない。
切り裂かれた胴体も腕もそのままだ。再生が始まる気配は一向に無かった。
おかしい。先ほど魔人王を名乗る化け物(フリークス)と戦った時は、速度は落ちていたが問題なく再生していた筈だ。


「無駄だよ。お前に付いたその傷は──」


瞠目するアーカードの上空で、ホバリングしながら。
冷たい視線で見下ろし、無駄である、と。リップはそう告げた。
そして、不死王を詰ませるための、一手を放つ。



「────俺が死ぬまで治らない」



U
N
REPAIR───不治───
あらゆる治療行為の一切を禁止する、リップ=トリスタンの能力。
それが、アーカードの再生の一切を『否定』していた。
故に、吸血鬼はその肉体を癒せない。
総身を影とすることも。
霧に変える事も。
蝙蝠に変える事も。
それらは全て、アーカードにとって治療行為に当たるから。
故に、下半身と両手を切断された吸血鬼は、地を這いずる。


364 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:42:18 YWPHOalo0


「何の否定者だったのかは知らないが…攻撃を避けなかったのを見るに、
治すタイプの能力だったらしいな。だがこれで勝負アリだ」


語りながらリップは上空にて周囲を睥睨する。
辺りに近づく者はいないか確認する必要があったからだ。
此処に来る以前、子供の姿になる原因となった戦いで、不死の否定者と彼は戦った。
初撃に成功し、勝利を確信した所で、傍らにいた不運が不死を介錯する事で不治の条件をすり抜け、復活して見せた事がある。
同じ轍は踏まないと、解釈しようとする第三者の姿が無いか確認する。
そんな人間はいなかった。
これで、能力制約外の相手による、介錯からの復活を恐れる心配はない。


「だが、ちんたらしてると誰かお邪魔虫が来るかもしれない。これで決めさせてもらう」


そう言って、リップは再び空へと舞い上がる。
相手の能力が何なのかは分からない。
もしかすれば本当に吸血鬼なのかもしれない。
けれど、それでも不治の刃で全身を切り刻めばそれで事足りるだろう。
そう考え、とどめの一撃を放つべく再び走刃脚に空気を籠める。


「フフ───フハハハハハハ───!」


対するアーカードの浮かべるのは、満面の笑みだった。
侮っていたのは確かだ。
所詮、海馬乃亜に頭を垂れ、服従する事を選んだ臆病者だと。
だが、ここまでの牙を隠していたとは。
評価を改めよう。
目の前の眼帯の子供、リップ=トリスタンは。
紛れもなく、私を倒しうる人間(ヒューマン)だ。
そう、化け物を倒すのは、何時だって人間だ。人間でなくてはならない。


「クロムウェルによる承認認識───眼前敵の完全沈黙までの間能力使用」


365 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:42:43 YWPHOalo0


中断していた詠唱を再開し、これを完遂する。
切断された片腕は、影を変形させる事によってその用途を補う。
喪った腕の変わりにはできないが、印の形を組むだけならば可能だった。
何故なら、これは治療行為ではなく、殺害のための行為。
リップ=トリスタンの言葉が正しいのならば、奴が死ねばこの癒えない傷も解ける。
故に選ぶはクロムウェルによる完全なる制圧。
あの奇妙なマントでも対応できない、純粋な物量で沈黙させる。


「───能力使用限定解除開始……!!」


例え、上半身だけになったとしても。
例え、全身から泉のように血が噴き出したとしても。
例え、芋虫の様に地面を這いずるしかできなくなったとしても───
その程度では、吸血鬼は、死なない!!
アーカードの姿が、変貌を遂げる。
目玉、目玉目玉目玉。蝙蝠、百足、黒狗(ブラック・ドッグ)
夥しく悍ましい黒色の殺意のレギオン。
それは、リップを優に十度は殺して余りある殺意の津波であった。


「……ここまでのモンを隠してたとはね。流石に肝が冷えるな」


リップの頬を、冷たい汗が伝う。
だが、それでもその表情から余裕の二文字は消えていない。
何らかの確信を纏った、そんな表情をしていた。
そして再び、アーカードの耳にキ イ イ イ イ!という風斬り音が伝わる。
それが合図だった。


「オーダーは、見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ」


その号令と共に。
黒色の殺意が、上空の不治(アンリペア)へと殺到する。
制空権を握られていようと影である黒狗達には関係ない。
また、スピードでもこれまでリップが見せた飛行より数段早い。
攻撃を弾く奇妙なマントも、この物量では処理が追い付かないだろう。
殺った。侮りではなく冷静な戦術眼で、アーカードは事実としてそれを判断する。
だが──やはりリップの反応は冷静な物だった。


366 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:43:26 YWPHOalo0


「安心したよ、アンタが“俺を殺しに来てくれて”
そして──お前の負けだ、アーカード」


言葉と共に。
リップを殺そうと迫っていた漆黒の大津波が。
動きを止めた、そうして、霧散する。


「な、に───!?」


これには流石のアーカードも言葉失った。
防御された様にも、無効化されたようにも見えない。
と言うよりも、まるで自分からクロムウェルを解除したかのような現象が起きた。
何故、という疑問符が浮かぶが、吸血鬼が答えを出す暇を、不治は与えなかった。
冷酷に、冷徹に。詰み(チェック)をかける。


───走刃脚(ブレードランナー)


アーカードの敗因は、ごく単純だ。
それは偏に彼が、敵を殺さずにはいられない化け物(フリークス)であったこと。
彼は既に、リップ=トリスタンから不治の傷を受け、解除条件を聞いている。



そして、その状態でリップの殺害を試みれば、それは治療行為に当たる。



故に不治(アンリペア)は、アーカードの攻撃を否定した。
リップが懸念したのは、アーカードという幼女が、自分が敗北を喫した死の否定者の様な精神性だった場合だ。
あの不死(アンデッド)は自己の治療の為ではなく、不運や不動のため、
他者の防衛・献身行為としてリップを撃ち、不治のルールの誤算を弾き出した。
だが、これは非常に困難だ。
仲間を守るという意志よりも、殺害の意志が強ければ不治の縛りは発動するのだから。
尤も、今のアーカードは単騎だった。故に、そんな思考に至れるはずも無かった。
主(インテグラ)も従僕(セラス)もいない、バトルロワイアルと言う環境そのものが。
不死(アンディ)と吸血鬼(アーカード)の命運を分けた。


367 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:43:53 YWPHOalo0


────クレセント!!


そして、断頭の刃は振り下ろされる。
今の上半身だけとなったアーカードなら、心臓ごと、上半身全てを押しつぶす事ができるサイズの刃だった。
ギロチンの様に迫りくる刃を、アーカードは瞬きもせず、ただ見つめて。


「───私が、負ける?」


自分を今一度敗北に至らしめるのは、あのヘルシング卿の様な者だと思っていた。
だがまさか、海馬乃亜の甘言に乗った走狗の徒に負けるとでもいうのか?
だって、化け物を倒すのはいつだって人間だ。素晴らしき人間達ではなければならない。
それが彼の信仰で。
その想いが湧き上がると同時に、激しい既視感を感じる。
あぁ、そうだ。あの時も、きっと私はきっとこう言った───


「私は断じて負けぬ。負ける筈がない。決して────」


それが最後だった。
不治の刃が、白木の杭のように彼の心臓を切り裂いた。
そして、吸血鬼の姿はただ、影に溶けて。
もう、戻らない。
百年以上君臨したその吸血鬼の最期は、遠く忘れていた挫折を経験した、少女の表情をしていた。
……呆れるくらい、単純な話だった。
彼の信仰めいた情念よりも、この場においては純粋な能力の相性。
それによる優劣が、このバトルロワイアルでは優先されただけだった。
不死性を奪われ、己が持つ殺意すら否定された怪物(フリークス)は、眠るしかない。
…実を言えば、“本来の”アーカードが助かる抜け道はもう一つだけあった。
その方法は魂の支配率を操作し、一度他の魂に完全に存在の主権を明け渡すこと。
それができれば、不死と戦神の様に、不治のルールの穴を突く事が理論上可能だった。
だが、そんな方法が実際に行えたかと言えば否だろう。
子供ばかり集めたこの殺し合いで、一時的とはいえ子供の姿以外のカタチを取る事を乃亜が許す筈がないのだから。


368 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:44:43 YWPHOalo0



故に、鮮血の伝承は此処に終わる。
狂気の少佐が率いた第三帝国の戦闘部隊「最後の大隊」でも。
神罰の地上代行者である神父が所属していたバチカン法王庁特務局第13課「イスカリオテ」でも。
倒すことができなかった悪魔(ドラクル)を討ったのは、たった一人の、この世の理の否定者だった。


【アーカード@HELLSING 死亡】


369 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:45:31 YWPHOalo0





戦闘を終えて、一息つく。
ただ者ではないと思っていたが、まさかあれほどまでの怪物とは。
ダメージはこれと言って負っていないが、疲れた。精神的に。


「まさか、俺みたいに年誤魔化してる奴ばっかりじゃないだろうな……」


ぼやきながら、散らばった今しがた殺したアーカードの支給品と、首輪を集める。
奴の死体は無かった。もしかしたら本当に吸血鬼だったのかもしれない。
まぁ、首輪が此処にある以上は死んでるだろうし、殺した今となってはどうでもいいが。
兎も角、急いでここを離れなくては。
放送ではこの一時間でもう十四人も死んでいる。
知り合いはいなかったので感慨はないが、思いのほか競争相手は多いのかもしれない。
ぼさぼさはしていられない。


「さて、と…これでよし───!?」


丁度、散らばった支給品を集め終わった時だった。
背筋に、冷たい物が奔る。
視線だけ動かすと、首筋には冷たい刀剣が当てられていた。
そうして、背後から女の声が響く。


「ハァイ?貴方凄いわね。あれ多分死徒よ?もしかしたら真祖かも。
それをハンデや侮りもあったとはいえ、一人で倒しちゃうなんて」

「……それで、アンタは俺に何の用だ?」


クソッ、しくじった。
一戦終えて油断してしまった。
闘った後なんて一番襲われやすい時だってのに。
落ち着け、兎に角傷さえ作ってしまえば───


「あぁ、言っておくけど、貴方の能力は聞かせてもらったわ。
まぁ尤も、この距離なら私の方が一手早いけどね」


370 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:45:50 YWPHOalo0


心の内で舌打ちする。
この女、さっきの俺の戦いを隠れて見てやがったのか。
つまり不治の能力は既に知られてしまっている。


「……貴女の能力は明確な弱点がある。一対一の戦いなら殆ど無敵だけど…
多対一だと辛いんじゃない?例えばさっきの戦いだって、私があの吸血鬼の女の子を介錯してれば復活してたでしょ?」


女の言う通りだった。
介錯の指摘は勿論、例え一人に傷を負わせても、多人数なら撃ち漏らした者は問題なく俺に攻撃ができる。
当然そんな事俺は答えなかった。応えるメリットがないから当たり前であるが。
だが、沈黙は肯定だと受け取ったのか、背後の女はそのまま続け、本題に入った。
まぁその本題は、女があの吸血鬼を実際に介錯しなかった事から察する事ができたが。


「それでね、提案があるの。私と───」

「組もうっていうんだろ?いいよ。アンタが殺し合いに乗ってるってんなら手を組もう」


女が言い終わる前に。俺は先んじて提案を受けた。


「……まぁそうなんだけど、随分あっさり決めるのね。迷いはないの?」

「迷いも糞も、此処で断ったら俺の首撥ねるつもりだろ、君。
力も身動き一つできない程強いし、何かの能力を持ってるなら戦力に数えられる。
足手まといはいらないが、戦力は俺にとっても欲しいんだ」


ここで突っぱねても殺されるだけだし、俺一人では仮眠を取る事もままならない。
だから、元より適当な優勝狙いの…ノアの言葉を借りるならマーダーと同盟を結ぶ予定は当初からあったのだ。
油断させて後から不治にしてしまうという手もある。
だから、俺は背後の女の申し出を受けた。
不意に、首筋に充てられていた剣が降ろされる。
振り返ると、褐色の肌に桃色の髪の、妙な格好をした女が立っていた。


371 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:46:08 YWPHOalo0


「──まぁいいわ。商談成立ね。私はクロエ・フォン・アインツベルン。
よろしく頼むわ、不治(アンリペア)くん?」

「その前に一つ聞いておきたい事がある。お前どうやって俺達の目を誤魔化した」

「あぁ、それ?それは私に支給されてたマントの力ね、透明マントって言うらしいわ」


得意げに光学迷彩の様なマントを広げて誇って見せるクロエ。
俺はそのマントを撫でて、納得がいった。
確かにこれで接近されれば、気づくのは困難だろう。


「言っておくけど、この距離なら私の方が早いから。妙な気を起こさないでね?
手を組んで早々、殺しあいたくないもの」


俺の脚を指さしながら、彼女はそう告げてくる。
不治の事も知っているなら、勿論走刃脚の事もお見通しという訳らしい。
相当な自信だ。俺よりも早いという言葉もブラフではないだろう。
さっき首筋に剣を当ててきた時、そう感じた。
いずれ敵対する相手としては厄介だが、協力者としては及第点か。
俺としてもとんだ怪物と一戦交えた直後に、やり合いたくはなかった。


「…兎に角、この場を離れるぞ、君みたいなハゲタカ共が寄ってくる前にな」

「あっ!ひど〜い。女の子にそう言う事言う?」

「必要以上になれ合うつもりは無いよ。俺と君の協力体制はあくまで利害の一致だから」


走刃脚で飛び上がり、クロエもそれに続く。
その場を離れながら思うのは、クロエはやはり見込み通り大した身体能力だということ。
この女が何を思い、何を願って殺し合いに臨んでいるのかは知らない。
興味も無い。
ただ俺には俺の目指すべき場所があって、よそ見をしている暇はない。
秋の木漏れ日の中で笑っていた、彼女を救うその日までは。
しかし、アインツベルン、か。
どうやら、お前の道行きはもっと厳しい物になったらしいぞ、イリヤ。


372 : 俺が死ぬまで治らない ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:46:27 YWPHOalo0


【C-7/1日目/深夜】

【リップ=トリスタン@アンデットアンラック】
[状態]:掌に切り傷、右頬へのダメージ(中)、
[装備]:走刃脚(ブレードランナー)、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2〜4(アーカードの物も含む)、エボニー&アイボリー@Devil May Cry、アーカードの首輪。
[思考・状況]
基本方針:優勝し、ラトラの元へと帰る。
1:殺し合いに乗る。ただし、必要以上のリスクは犯さない。
2:クロエと組む。ただし不要になれば切り捨てる。
3:願いを叶える、か…本当かねぇ。
4:もし本当に、イリヤがこの殺し合いを打破する手段を見つけたら…?
[備考]
※参戦時期は6巻、アンデッドアンラック戦終了後、秋(オータム)戦直前です。
※古代遺物(アーティファクト)『ライフ・イズ・ストレンジ』の効果により、子供の姿になっています。

【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ ツヴァイ!】
[状態]:健康、若干自暴自棄気味
[装備]:賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、透明マント@ハリーポッターシリーズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:優勝して、これから先も生きていける身体を願う
1:とりあえず、覚悟を決めたいところね。
2:リップ君と組む。できるだけ序盤は自分の負担を抑えられるようにしたい。
3:魔力供給役の女の子が欲しいわね…殺し合いに乗ってる子でいい子いないかな。
3:ニケ君には…ほんの少しだけ期待してるわ。少しだけね。
[備考]
※ツヴァイ第二巻「それは、つまり」終了直後より参戦です。
※魔力が枯渇すれば消滅します。


373 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/20(土) 18:46:43 YWPHOalo0
投下終了です


374 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 19:59:02 x1VUDHno0
投下ありがとうございます。

>解体し統合せよ
ただ、殺し合いに反抗するんじゃなく、相手を雇うって発想が副社長やってるモクバくんらしい発想と立ち回りで、素晴らしい着眼点だなと思いました。
でも、確かにKCってモクバの経営手腕がないと、実は結構危ないのかもしれませんね。社長の頭がおかしいんで。
ドロテアは正直なとこ、このあと数話で退治される路線かなと思ってましたけど、首輪解析要員としては、間違いなく適材ですし、
モクバというブレインが付いたことで、この先重要キャラになる可能性も出てきて先が気になるところ。

あと、修正の件ですが、修正内容を確認しました。大丈夫だと思うので、wiki収録時に差し替えます。
修正になりましたが、知り合いが羽蛾しか居ない事を愚痴る場面も好きでした。

>俺が死ぬまで治らない
……アーカードの霊圧が……消えた……? 本当、読んでてこんなになってしまいましたよ。
不治を喰らっても、テケテケで復活した時は痛み分けで終わる感じかなと予想してましたが、それに反しアーカードが真っ二つになって終わるとは……。
ロワ外かロワ特有のいつものマーダー路線なら、ここまで練り上げた人間を前に喜んで殺されに闘争に臨みそうですし、その精神性なら治療行為には当たらなかったかもしれませんね。
それかこんなロワ最序盤ではなく、誰かと組んでいてもまた展開は変わったかもと思うと、ギリギリの戦いでしたね。
クロは……お前、魔力補給はやっぱ女がえんか、やっぱりレズじゃないか!(歓喜)


375 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/20(土) 20:49:38 x1VUDHno0
それともう一つ、wiki編集ありがとうございます!


376 : ◆vV5.jnbCYw :2023/05/20(土) 20:49:56 k7vYa0EM0
投下お疲れ様です。
まだ3話だって言うのに、すっげえバトル読ませていただきました!
激しいながらも読みやすいタイマンバトルに、強キャラが早い段階で落ちても相性の悪さという納得のいく結末。
ロワで良く出ているアーカードは勿論、リップというキャラクターをここまで魅力的に書くとはと驚かされました。

>U
N
REPAIR───不治───
あらゆる治療行為の一切を禁止する、リップ=トリスタンの能力。

ここの原作をなぞらえた演出も地味に好きです。


377 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 10:58:45 UYZbSzO20
勝っちゃん、龍亞、重曹ちゃん 予約します


378 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:02:55 UYZbSzO20
投下します


379 : 重曹 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:03:24 UYZbSzO20
「あの野郎ォ……ふざけやがって!!」

乃亜の放送を聞きながら、勝次は怒りを露わにしていた。
14人だ。子供を集めて、一時間で14人も死なさせてしまったのだ。
勝次のいるクソったれの日本も、吸血鬼による悪趣味な催しはいくつもあったが、この殺し合いもそれに勝るとも劣らない。

「……こんなに、人って簡単に殺し合っちゃうのかよ」

命懸けのデュエルはよく聞く話だが、既に先ほど交戦した割戦隊のように、直接相手を害して平気でいるような連中がこんなにも居る事に、龍亞はギャップを感じ始めていた。
理由のない殺人、あった筈の理由すら忘れ、元は手段であった殺人が目的となって狂ってしまった少年達。
龍亞にとって、あまりにも住んでいる世界が違った。
デュエルの有無などではなく、文字り生まれた場所も境遇もあまりにも違い過ぎる。
以前、ジャック・アトラスにも金のない者の何が分かるか、そう怒鳴られた事もあった。今、思うと正論だったと思う。

――――フフ……所詮、社会のレールにも乗れなかった、負け犬共の傷の舐め合いだったということかな。

「オレが殺したあいつらも……生まれとか、何か違ったら……なのに、そこまで言う事ないじゃないかよ」

「龍亞、あんま思い詰めんな」

言いながら勝次も、割戦隊に対し思う所もあった。あの戦隊ごっこも、何か思い入れのある物を真似ていたのだろうか。
殺人鬼に堕ちながらも、心の奥底にあった僅かな良心や元は存在した正義の味方への憧れが、ああした道化を演じさせていたのかもしれない。

「……お前、知り合いは呼ばれてないんだよな」
「うん、友達も妹も誰も、放送で呼ばれなかった。勝次は?」
「俺は……大丈夫だ……きっと、誰も居ねえよ。ガキばっか集めてるってんなら、ハゲや明も居ねえし、ユカ姉ちゃんもネズミもガキじゃねえよ」
「そっか……でも、学校の友達とか……」
「もう、学校なんか閉まったし……」
「あ、いや……ごめん……」

「……」
「……」

気まずくなってしまった。

お互いに、地雷を踏んだ、別に気にしてないが空気を悪くしたと、遠慮と後悔をすることで話が続かなくなる。


「ねぇ、あんた達! 何か、何か……武器持ってない!?」


そんな時、沈黙を破って一人の少女が大声で割り込んできた。


380 : 重曹 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:04:23 UYZbSzO20

有馬かな。
サーヴァントだの、極道だの、真祖の吸血鬼だの、エンジェロイドだの、二―ドレスだの、危険人物てんこ盛りの中に、重曹一つで挑まざるを得なくなった女である。
この一時間の中、14人死んでる中で彼女はとても幸運なことに、誰とも出会わずに生き延びることが出来た。
悪意ある参加者に出会えば、重曹一つでは、確実に死んでいて乃亜に呼ばれた名前が一つ増えていた事だろう。
だが、殺し合いは24時間以上続く中で、そろそろ行動を起こさねば不味いと、幼いかなにも分かっていたことで、勇気を出して辺りを散策したところ、殺し合いには乗ってなさそうな二人を見付けた。

(一人は左手、気持ち悪いけど……贅沢言ってられないわね)

「なんだ? 藪から棒に……武器なんて、みんなに支給されてるだろ」

「……重曹しか、なかったの」

「重曹だァ?」

勝次が間の抜けた声を上げた。
重曹ってあれだ、洗濯で使うやつ、母ちゃんも使ってた気がする。
昔の記憶を掘り下げていくと、そんな懐かしい思い出が蘇るが、とても戦いに役立つとは思えない。

「私は有馬かな、十秒で泣ける天才子役、当然知ってるわよね? 殺し合いなんかしてないわ。だから、守ってちょうだい。
 次の撮影が明日に控えてるんだから、怪我だってするわけにはいかないし、脚本だってちゃんと読み込まなきゃいけないんだから、私早く帰りたいの」

「えぇ……殺し合いなんかオレもやってないけど……すっごい上から目線だなぁ……」

「おい、龍亞、こんな奴放っておいて行こうぜ。泣くだけならヒー坊だって出来るぜ」

「ちょ、待ちなさい! お願いだから、待って!! っていうか、ヒー坊って何? 自分の左腕の出来物に名前付けてるの? キモッ!」

「なんだと、この野郎ォ!! ヒー坊を馬鹿にすんな!」

「いやああああ! 愛着湧いてる!!?」

「龍亞……こいつ、ぶん殴っていいか?」

「か、顔はやめて……って……いやああああああ、何? 何よ、あの血の海はァ……!!」

勝次から庇うように顔を背けた瞬間、視界に入ったのは割戦隊の成れの果て。

「そ、それは……」

龍亞の中で、つい数分前に繰り広げられた血生臭い惨殺劇が思い起こされる。
自分たちの身を守るために仕方なかったとはいえ、自分は既に人を殺めてしまったこと。
勝次だって、同じように手を殺めているのに、自分だけ罪悪感に押し潰されていることが逆に自己中心的な思考なようで、自分が嫌になってくる。

「やっぱ、危険人物じゃない! 来ないでぇ!!」

「馬鹿、騒ぐな! 今、説明を……ゲホッ、重曹を投げんな!」

「……殺したんだ。オレが……あいつら、本気で殺しに来てて……それを楽しんでた。オレも妹がもしここに来てて、あいつらに殺されたらって思ったら……怖くなって殺したんだ」

「龍亞……」

「……」

パニックになって騒いでいたかなが落ち着きを取り戻し一転して静かになった。

「……分かった」

「し、信じるのかよ……? 自分で言うのもなんだけど、俺達、今結構怪しいけど」

「演技じゃないでしょ? あの龍亞って子の言う事も、あんたのあの子を気遣ってる顔も……もし演技なら大した役者よ」

かなは子役として、驕り慢心し天狗になっていたが、演技という仕事に対しては何よりも真摯に携わってきた。
だから、目の前の少年が自分を偽っているわけではないのは、その繊細な機微を見ることで察することが出来た。

「ありがとう……かな」

龍亞の少し憑き物が落ちたような顔を見て、かなもここが本当に殺し合いの場なのだと理解させられる。
自分がここまで生き残れたのは、本当に偶々運が良かっただけだ。もし、先にこの死んでる連中がかなと出会ったら、重曹で戦わなければならなくなっていた。無理だ、死ぬ。
仮に武器を持たされても、今度は目の前の少年みたいに、相手を殺めたという深い傷を負わされる。

「そうだ。あんた達のこと信じるから、名前、教えて」

「……そっか、名前まだ言ってねェな。……俺は―――」



――――――――


381 : 重曹 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:04:46 UYZbSzO20


「吸血鬼……デュエルモンスターズ……? 何それ」

「やっぱり……オレも、星野アイなんて人が殺された事件も知らないし、かなも別のパラレルワールドから来てるのかも」

「話、改めて聞いてみると、年代も全然違うしな」

「やっぱ、アンタ達、私を騙そうと……」

「さっきは演技じゃないって言ってたろ?」

「ぐぬぬ……」

自己紹介を終えてから、三人は改めて、それまでの自分達の殺し合いに巻き込まれる以前の敬意を話し合っていた。

「じゃあ、この首輪も……外すにしても、別の世界の技術を使われてるのかもしれないのよね?」
「だと思う。……だから、これから色んな人達に会って、情報を交換しないといけないんじゃないかな。オレ達だけじゃ、無理だ」
「こっから先は、みんなで協力しなきゃいけないってことだな。かな、お前、協調性を大事にしろよ?」
「う、うるさいわね……」

協調性という言葉が、かなの中で突き刺さった。
かなも子役を続ける中で、普通の子供以上に人生経験を積み重ねてきた。
だから、歳を重ね成長する度、自分の需要が徐々に下がってきている事にも薄々は気付いていた。
今はまだいいが、少なくとも、ピークを過ぎた時、天才子役というブランドが賞味期限を迎えた時にどうなるか。

(でも、稽古はずっと続けてきたし……私は……)

その時、本当に仕事を貰えるほど、周りの人間と信頼関係を築けているのだろうか。

「割戦隊の首輪、5個ある。これを全員で別けて持とう。
 かなと龍亞が2個ずつ、俺が1個だ」

「う、うん」

「もし、誰かやられても……残った誰かが、これを外せる技術を持った人に渡すってこと?」

「そうだ、龍亞」

情報を交換する前、勝次が、かなと龍亞と一緒に物陰へ押しやった後、赤ん坊の泣き声と共に首輪を回収してきた。
かなも龍亞も、言及はしないが、あの死体から首を切断し、首輪を取ってきたのは明らかだった。
これが少し前まで、生きた人の首に嵌められていたと考えると気が滅入ってしまう。


382 : 重曹 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:05:20 UYZbSzO20

「……あくまで、もしもの時の為だ。安心しろ、お前らしぶとそうだしな。そう簡単には死なねェよ」

話は纏まった。出来る限り多くの参加者に接触し、首輪を外せそうな技術者を見つけ出す。殺し合いに逆らう参加者も味方に出来れば心強い。
危険はあるが、禁止エリアの追加を考えると、行動は可能な限り早い方が良い。

「当り前よ。私、こんなところで絶対死なないんだから……重曹舐めたって生き延びるわよ!!」

まだまだ、かなは演技の仕事がしたい。挑戦したい作品だって一杯ある。こんな、訳の分からない殺し合いで死ぬ訳にはいかない。

「へへっ、良い心がけだぜ!」

この、鼻持ちならない高飛車な女に、勝次は明るく笑い返した。
かなには夢がある。龍亞にだって、沢山の可能性の未来だって残されている。
何より、まだまだ二人とも子供だ。

(左吉は子供のまま死んじまった……そんなのは……うんざりだ)

だから、もう……死なせたくない。



【H-2/1日目/深夜】


【山本勝次@彼岸島 48日後…】
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3、割戦隊の首輪×1
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:首輪を外せる参加者を見つけ出す。殺し合いに乗らない奴も味方にしたい。
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's&当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに知りました。


【有馬かな@【推しの子】】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、重曹@現実、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:重曹舐めてでも生き延びる。
1:勝次、龍亞に同行して、首輪を外せる参加者を探す。
[備考]
幼年期時代からの参戦です
遊戯王5D's、彼岸島世界について大まかに知りました。


383 : 重曹 ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:06:05 UYZbSzO20





(……なあ、勝次……どうして、お前だけ首輪、一個なんだよ)

首輪は5個しかない以上、3人で割り切れないのは分かる。だが、龍亞は何故、勝次が1個だけなのか疑問だった。

『誰かやられても……残った誰かが、これを外せる技術を持った人に渡す』

自分で言ったことだが、これは逆を言えば首輪の数が少ない者ほど、危険な立ち回りをして、犠牲になる確率が高くなるという事にもなるのではないか。
生存率が高い者に首輪の数をより多く渡せば、それこそ首輪解析に有力な参加者に首輪が渡る可能性も高い。

もしかして勝次は有事の際に、自分が犠牲になってでも、龍亞とかなを逃がそうとしているのかもしれない。

最も危険な役目を、一人で請け負うつもりなのかもしれない。

それを、勝次に指摘しようとして……かなが傍に居る事で躊躇われた。
少なくとも、かなはいざという時に守らなきゃいけない事は分かっている。
だから、下手に自分の推測を口にして、彼女に引け目を与えてはいけない。

(……お前だって、まだ子供だろ……?)

何故、勝次は自分だけ線引きするんだと、龍亞は声に出せないもどかしさを内に留めた。



【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(日中まで使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。首輪を外せる参加者も探す。
2:勝次が心配。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。


384 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/21(日) 13:06:51 UYZbSzO20
投下終了します


385 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/21(日) 21:15:43 nnu94K320
孫悟空、キャプテンネモ
北条沙都子、メリュジーヌ
孫悟飯、結城美柑
予約します


386 : ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:19:56 qLFVvA7s0
投下します


387 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:22:06 qLFVvA7s0
※この作品にはえっちぃ表現が含まれています。
えっちぃのは嫌いですという方には不快となるかもしれない内容なのでご注意ください。


388 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:23:18 qLFVvA7s0
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(一々煽らなきゃ気が済まねぇのかよあのクソガキ)

放送を聞き終えたばかりのリルが真っ先に思ったのは乃亜への呆れ。
既に数人の脱落者が出た、放送毎に増える禁止エリアの存在、参加者名簿の追加。
説明されたのはどれも重要な情報である。
尊大な口調で参加者を小馬鹿にする茶々をわざわざ入れるという、何の得にもならないおまけ付きだが。
殺し合いを開いた時点で既にお察しだが、アレの性根は相当ロクでもない。
そのような悪ガキに目を付けられた己の不運につい舌打ちが零れるも、現状を良い方向に変える効果は期待出来ない。
今しがた与えられた情報を整理する方が建設的だと切り替える。
箱からドーナツを一つ摘まんで口に放る、あれこれ考えるのに糖分接種は最適だ。
取引で提供された菓子の箱は現在リルが持っており、元々支給された者の承諾も得ている。

禁止エリアが機能するのはまだ先の話。
現段階ではそう深刻に受け止める必要も無い。
開始から一時間足らずで10人以上もの死者が出たのにも、そう大きな驚きは皆無。
殺し合いをさせるならば、当然参加者の排除に積極的な血の気盛んな輩が複数人いるだろう。
死んでいった者達は赤の他人、動揺は無く強いて言えば首輪解除に必要だろう人材が死んでいなければ良いと思った程度。

となれば、特に考えねばならないのは後の一つ。

「おいチビ、お前も一応名簿の確認くらいしとけ」

傍らで不思議そうな顔をしている小恋にそう一声掛ける。
それでもよく分からないと言った表情な為、乃亜の放送の内容も正確に理解していないらしい。
つくづくこんな幼女を参加させる意味が分からず、主催者である少年への呆れが膨らむばかり。
知ってる奴が参加してるかどうか分かると伝えれば、慌てた様子でランドセルを漁り出した。
それに倣ってリルも自身のタブレットを起動させ、名簿を確認する。


389 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:24:49 qLFVvA7s0
予想していた通りジジもキャンディもミニィも、ついでにバンビも不参加。
だが知っている名が一つも無かった訳ではない。
日番谷冬獅郎。護廷十三隊の十番隊隊長。
尸魂界襲撃の前に死神連中の情報は頭に入れておいた為、名前も顔も知っている。
頭に元が付くとはいえ、聖十字騎士団の自分を参加させるくらいだ。
殺し合いが成立するレベルの実力者、隊長クラスの死神や十刃だった破面のような連中の参加には十分納得がいく。
外見か実年齢か、どちらかが年端もいかぬ子供ばかりが集められたのがこの催し。
思い返せば確かに日番谷も条件に当て嵌まる見た目の持ち主。
何ともご愁傷様だと自分のことを棚に上げてほんの少し同情してやった。

(一応共闘は可能か。ジジのやらかしで文句言われるかもしれねぇけど)

護廷十三隊と見えざる帝国は本来ならば決して相容れない。
嘗ての総隊長、山本元柳斎重國が現役の時代からの根深い因縁が両者の間に存在する。
加えて尸魂界侵攻の際にはユーハバッハが元柳斎を殺したのもあり、見えざる帝国の滅却師に良い感情を持つ死神などまずいないだろう。
かく言うリルも二度目の侵攻時には十一番隊隊長の更木剣八を四人掛かりで袋叩きにした挙句、隊士複数人を手に掛けたのは紛れも無い事実。
間一髪のタイミングで黒崎一護が現れ、それ以上の殺戮は阻止されたが。

そのような経緯があっても共闘可能な可能性は非常に高い。
発端はユーハバッハが聖別を発動し、ユーグラム・ハッシュヴァルトと親衛隊の滅却師以外を切り捨てたこと。
自分達を裏切った主に反旗を翻し死神達に協力を申し出た。
残念ながらユーハバッハには一太刀どころか掠り傷すら付けられずに敗北したものの、ハッシュヴァルトの側近に治療されどうにか助かったのは記憶に新しい。
それから間を置かずに起こった四大貴族、綱彌代時灘が引き起こした事件解決の為として京楽春水直々に共闘の申し出を受けた。
リル達には手出し無用を徹底させるという約束を全面的に信じてはいないが、あっさり反故にするような男でもあるまい。
時灘との戦いに日番谷は参加していなかったが事の経緯は聞いているに違いない。
なら見えざる帝国に所属していたからと言って、問答無用で襲ったりはしない筈。
一度ジジの能力でゾンビ化させられたので、こちらへの印象が最悪なのは言い訳出来ないがそこは過去の事と流してもらいたいものである。

(まぁ、チビを連れて歩いてりゃちったぁ話もスムーズになんだろ)

日番谷が一護程のお人好しでは無くとも、無力な子供を守っている姿を見せれば少しは効果があると思う。
打算ありきの保護とはいえ、守ってやってるのは事実なのだから。

「おねえちゃん、どうしよう……」

その小恋はタブレットを見つめながらガタガタ震えていた。
青褪めた顔といいこうも分かり易い反応を見せれば、誰だって何が起きたかは察しが付く。
さっき話していた友達や「コイビト」が参加させられていて、だから一気に不安になった。
そんな所だろうと結論付け、


390 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:25:53 qLFVvA7s0
「かんじがいっぱいでよめない…!」
「……」

返って来た間抜けな答えに暫し沈黙する他無い。
ああそう言えばこいつはガキだもんな、そりゃ平仮名くらいしか読めねぇよなと納得。
難しい顔でタブレットとにらめっこする小恋へ向け、さも面倒くさそうにため息を吐く。
名簿確認という基本的な事すらままならないとは。
仕方なしにもう一度自分のタブレットを起動し、名簿にざっと目を通す。
小恋の恋人である「みのりちゃん」を始め、先程聞いた名前はどこにも記載されていない。
どうやら小恋の知っている者は参加していないと見て良いだろう。
何故わざわざ小恋だけをピンポイントで参加させたのかは謎である。

「良かったなチビ、お前の言ってた奴は一人もここにはいねぇ」
「ほんと?みのりちゃんたちはこわいめにあってない?」

安堵の笑みを浮かべる小恋を尻目に、これからどう動くかを考える。
首輪の解除に脱出ルートの確保、優勝以外で生き延びる為に必要な事は多くリル一人では手が回らない。
小恋を連れて他の参加者と接触し情報を集め、脱出のプランを練るしかあるまい。

尤も、歩き回らなくとも他参加者との接触は叶ったようだ。

「おねえちゃん?」

小恋から掛けられた声に構わず視線は宙に固定したまま。
異変に気付いた小恋もリルに倣い、同じ方向へと目を向ける。
瞳に映るのは星々が輝く夜空。

そこに一点、夜の黒とは別の黒が見えた。


391 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:27:26 qLFVvA7s0
徐々に大きさを増し、二人の前にソレが降り立つ。

「我ながら運が良いですね、新しい供物(おんなのこ)をこんなに早く見つけるなんて♪」

砂金のような美しい髪を靡かせた少女。
身体を隠す黒衣はほんの僅かにずらせば小振りな双丘を曝け出し兼ねない程に、心許ない。
形の良い臍を露わにした腹部、スラリと伸びた太腿と指の一本一本まで均整の整った素足、全てが少女の魅力を引き立てる。
秘部こそ隠してはいても食い込みの激しさ故に、軽く身動ぎしただけで白い桃尻がぷるりと揺れた。

(何だこのガキ、痴女か?)

とてもじゃないが年頃の少女がするとは思えない格好。
内心の呟きは偶然にも、リルより先に少女と遭遇した少年と同じ内容。
そうとは知らないリルは出会う参加者が揃ってロクでもない女で頭が痛くなりそうだった。
一桁の年齢でレズってるガキに続き、今度は露出趣味の痴女。
こんな女ばかりを集めるとは、大物ぶっておきながら乃亜は単なるエロガキじゃあないのか。
何度目になるか分からない乃亜への呆れもそこそこに、目の前の痴女の一挙一動を冷静に見極める。

「彼への手向けに相応しい、美味しそうな女の子♡」
「おいしそう…?おねえちゃんもおなかすいてるの?じゃあ小恋がドーナツあげる!」
「フフ、ありがとう。でも残念、私が食べたいのはお菓子なんかじゃなくて…」

これがただの露出魔なら適当にあしらって早々に離れるつもりだった。
しかし違う、感知した霊圧からハッキリと分かったのだ。
少女は頭のおかしい変態ではなく、非常に面倒極まりない厄ネタだと。

「えっちぃことに目覚めたあなたたち♡」
「寝言は寝て言えビッチ」

ぐいと引っ張られる感覚。
小恋に理解出来たのはそれだけ。
少女が何かを言った直後にリルも何かを口にし、気が付いたら足が地面から離れている。
一体全体何が起きたか分からず見上げると、相も変わらぬ涼しい顔でリルが少女へ視線をぶつけるのが見えた。
けど何故だろうか、同じ顔でもさっきより少し恐いと感じてしまうのは。


392 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:29:15 qLFVvA7s0
小恋は気付いていない、されどリルは少女の動きを全て捉えた。
頬を赤らめた少女の髪が一瞬で変化し、巨大な手となり小恋を掴もうとしたのを。
少女の髪が手に変わり切るより早く小恋を引っ掴んで後退。
自分が助けてやったと恩着せがましい説明は抜きに、小恋を下ろして淡々と告げる。

「チビ、邪魔だからどっかに隠れてろ」
「おねえちゃん…?えっと…」
「早く行け。めんどいから二度も言わせんじゃねぇよ」

語気を荒げずとも有無を言わさぬ声色。
戸惑いながらも頷き小恋が離れるのを見送らず、少女へ固定した視線は外さない。

「もう、素直に身を委ねた方が気持ち良いのに…」

ぷぅっと頬を風船のように膨らませる、まるで拗ねた子どものような仕草。
それもすぐ楽し気な笑みへと変わった。
抵抗するならそれはそれで良い。
敵わないと体に教えてやり、それから快楽を味合わせてやる。
まだまだ知らないえっちぃことをもっと探求するのに、丁度良い実験台となってもらおう。
さっきの二人と違って男の子じゃないけど、女の子なら「彼」への手向けとして最適だ。

「あなたたちの体で、私にもっとえっちぃことを教えて♡」
「盛りてぇなら自分で慰めてろ色ボケが」

片や淫靡に舌なめずりをし、片やポーカーフェイスで毒を吐く。
生物兵器と滅却師。
金色の闇とリルトット・ランパード。

黒の色欲と白の殺意が交差し、弾丸のように炸裂。
それが戦闘開始の合図だ。


393 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:30:17 qLFVvA7s0



リルとヤミ、両者共通の方針として相手を殺すつもりだ。
ただヤミの方は即座に殺すのではなく、まずはたっぷりとえっちぃことをしてから、改めて命を奪う。
なので初撃はあくまで拘束、変身(トランス)能力で触手に変えた右手を伸ばす。

支給品をディオに奪われ、装備した物と言えば帝具一つのみだが何の問題も無い。
何せヤミにとっては己の肉体こそが最大の武器であり防具。
変身を用いれば全身のあらゆる箇所を刃にも盾にも変えられる。
対するリルはハート型のポシェットを叩き弓を出現。
迫る触手へ照準を合わせ矢を放つも、ヤミの目には無駄な行動としか映らない。
最初に遭遇した少年、キウルも弓矢を使ったが難なく弾き落とせた。
矢を真っ向から蹴散らし触手をリルの元に到達。
後は隠れた幼女共々、更なるえっちぃことへの探求に役立ってもらう。

己の優位を疑わない考えは、触手が射抜かれた現実にあっさり崩れ去った。

リルを絡め取り、服の下へ潜り込ませ、素肌を嬲る筈の触手。
それがたった一本の矢を叩き落とせず千切れたのである。
触手を貫いて尚も矢の勢いは健在。
先端には鏃ではなく鮫に似た歯を剥き出しにした口。

食い千切らんと迫る矢はしかし、ヤミへ傷一つ付けること叶わず斬り落とされた。
金色の長髪を刃に変え防ぐ、キウル相手に取ったのと同じ方法。
違うのは、矢の速度が桁外れに高い事か。
一本防いだかと思えば二本三本四本五本と、次から次へと放たれる。
狙いを定めて弦を引き絞り、手を放したら次の矢を装填とこの繰り返し。
銃とは違い連射不可能な武器であるにも関わらず、マシンガンもかくやという勢いだ。

リルが使うのは現世で知られる弓矢とは違う。
虚を滅ぼす滅却師の霊子兵装、神聖弓(ハイリッヒ・ボーゲン)。
放つのもまた自身の霊子を固めた神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)。
只人の尺度で計れる威力ではない。

何より霊子兵装を扱うリル本人も、星十字騎士団に名を連ねた滅却師の一人。
有する能力は一般の聖兵(ゾルダート)よりも上。
神聖滅矢の猛射くらい訳無い。
容赦も加減も最初(ハナ)から頭には皆無、確実に死ぬまで矢を放つのみ。


394 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:31:14 qLFVvA7s0
「凄い凄い♪」

殺意は十分、されどそれだけで勝てる舞台を乃亜は用意してはいない。
この場において捕食者はリル単独にあらず。
雪のように白い素肌が赤く染まるより早く、矢は全て斬り落とされる。
黄金色の刃はヤミの体に触れる不埒者を認めない、愛撫(セクハラ)が許されるのは結城リトただ一人。

「……」

自身の攻撃が防がれる光景に動揺を見せず、矢の勢いを一段階引き上げる。
連射速度は勿論、一発に籠める霊力も増加。
低級の虚なら十数体は纏めて消し飛ばせる程だ。

「おっと、危ないですね」

言葉とは裏腹に危機感の宿らぬ呑気な声色。
ダークネスになる前、元の自分なら少しは緊張感を滲ませたかもしれない。
今は違う、変わったのはえっちぃことが大好きになっただけではない。
扱う能力全てが爆発的に強化され、滅却師の神聖滅矢だろうと対処は実に簡単。
とはいえ刃一本ではほんの少し手間か。

「まだ増えんのかよ、それ」

ポツリと小さな呟きは誰に聞かれるでも無く描き消えた。
聞かせたくて言ったのでは無いので、別に構わないが。
長髪を変身させた刃を三本増やし、計四本が縦横無尽に振るわれる。
手数の多さはリルだけの専売特許ではない。
むしろ変身能力のレパートリーの豊富さを考えれば、ヤミの方が遥かに上だろう。


395 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:32:22 qLFVvA7s0
このまま矢を放ち続けて消耗を狙うか、別の動きに出るか。
思案するリルが答えを出すのを待たずに、ヤミが先に行動に移る。
棒立ちとなり矢を斬り落とすだけでは時間の無駄。
自分がしたいのは火花を散らす戦闘ではなく、嬌声が響くえっちぃことなのだから。

「そーれっ!」

刃を振るうのはそのままに、リルへと真っ直ぐ突撃。
矢の嵐など何のその、涼しい顔で凌ぎ瞬く間に急接近。
えっちぃことに野蛮な暴力は不要、まずは邪魔な武器を奪う。
赤い爪の生え揃った五指で神聖弓を握りつぶすべく手を伸ばす。
間近に迫ったヤミを前にしてもやはりと言うべきか、リルは無表情。
敵の接近に認識が追い付いていないのではなく、脅威と感じてはいないからだ。
証明するかの如く神聖弓を掴みかけた所でリルの姿が消えた。

「っ!」

敵の消失に驚くのは一瞬に留め、すかさず変身を行使。
シールドに変えた左腕を背後へ翳すと即座に衝撃が来た。
少し遅れて視線を寄越せば蹴りを叩き込んだリルの姿。
硬ぇな、温度を感じさせない呟きを無視し髪を振るう。
未だ刃に変えたままの髪はリルが跳躍し回避した事で、服の端にすら届かない。

死神が瞬歩、破面が響転(ソニード)を使うように滅却師にもまた独自の歩法が存在する。
それが飛廉脚。
足元に霊子の流れを作り高速移動を可能とする高等の技術。
至近距離の相手の背後を取るくらいは、飛廉脚を駆使すれば安易に可能だ。

「へぇ…」

今の速さにはヤミも少しながら感心したと言わんばかりに笑う。
それだけで負けを認めるつもりは微塵も無いが。
頭上から降り注ぐ矢の豪雨を斬り飛ばしながら、こちらも同じく跳躍。
再度リルの眼前へ迫ると顔面狙いで蹴りが飛ぶ。
動血装で強化済みの一撃だ、当たれば美少女と呼ぶに相応しい顔も麩菓子のように砕け散る。
当然そんなのは受け入れられない、長髪を刃から巨大な掌に変えて防御。
防げはしても威力の高さ故に吹き飛ぶ、叩きつけられる前に華麗にターンを決め着地。
足元に作った霊子を蹴ってリルが急加速、動血装を使い振るった弓が剣に変えた右腕と激突。


396 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:33:35 qLFVvA7s0
「顔も髪も女の子の大事な部分なんですよ?」
「なら心臓で勘弁してやるよ。薄っぺらい胸の片方なら安いもんだろ」
「…あなたには言われたくないかなぁ!」

安い挑発と分かっても苛立ちを抱かない訳ではない。
怒りをそのまま刃に乗せて振るえば、飛廉脚で再度背後を取られる。
尤も既に一度見たヤミには驚きも皆無、真後ろに出現した気配へ回し蹴りを繰り出す。
スラリとした脚は変身により分厚い斧と化し、リルの細い腰を容易く両断可能。
しかしヤミが感じた手応えは明らかに人体を切り裂いたのとは別物。
斧はリルの腹部へ命中している、だというのに皮一枚すら傷付けられず止まっているのは何の冗談か。
力を込めても脚はそれ以上動かない、どんな手品か答えを弾き出す前に矢が放たれた。

「おっと」

顔面ど真ん中狙いの矢を軽く捩って躱す。
回避のみに意識を割きはしない。
斧と化した右足を振り上げ、脳天目掛けての踵落としが炸裂。
流石に頭部までは腹部と同じ硬さを保ってはいないだろう。

「遅ぇ」

ヤミが足を上げた時点ですでにリルは飛廉脚を発動。
後方に下がりながら矢を連射。
攻撃が地面を砕くだけに終わり隙を晒したヤミは、射殺すには絶好のチャンスだ。
だが速さに優れるのはヤミも同様。
空振りを完全に理解する間もなく両腕を剣に変化、矢を斬り落とし接近戦を試みる。

「チョロチョロしないでくれると嬉しいから、大人しくしてくれません?」
「知るかよ」

双剣を時には躱し、時には生身の皮膚で防ぐ。
先程斧を防いだ時と仕掛けは同じ、静血装を使い刃も通さぬ防御力を得た。


397 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:34:46 qLFVvA7s0
回避の僅かな合間に矢を発射。
零距離からの殺意にもヤミは冷汗すら掻かずに対処。
顔を逸らして躱しながらも双剣の猛攻は勢いが衰えない。
対するリルも動血装で攻撃力を強化、弓で剣と打ち合い時には威力を高めた矢を射る。
ヤミが数十発目の矢を回避と同時に変身を発動。
但し今度は自分の体ではなく地面に伝達、リルの足元が獣の顎に変わった。
真下からの脅威にリルは地を蹴り脱出を決行、弾丸かと言わんばかりの勢いで正面のヤミに突撃をかます。
もんどり打ったリルは背後でトラバサミのように閉じた顎には目もくれない。
代わりに視界に飛び込んだのは、ほとんど紐同然の布が食い込んだ秘部。
尻もちを付いたヤミの股が丁度近くにあったらしい。

「偶然とはいえこの体勢…結城リト程ではありませんが、あなたにもハレンチの才能が…!?」
「ふざけんなクソビッチ」

辛辣な返しもそこそこに飛び退き矢を発射。
神聖滅矢を髪の毛で斬り落とし、ふとヤミは思う。
これは非常に無駄な戦闘ではないかと。

(むぅ…えっちぃことが全然できてないな…)

ヤミの方針は優勝でも何でもいいから結城リトの元に戻り、彼を自分の手で殺すこと。
しかしその過程で参加者を使ってえっちぃことを探求し、それからリトへの手向けとして殺す。
単に相手を殺すだけでなく、えっちぃことをしてから殺すのが重要なのである。
では今行っているのは一体全体何なのだ、えっちぃこととは無縁の単なる殺し合いじゃないか。
相手の殺意に中てられてついつい殺す気で攻撃したが、えっちぃことの前に殺しては本末転倒もいいところ。
血で血を洗う戦いなんて自分の望みではない。
この無意味な戦いは早急に決着を着けるべき、判断を下しこれまで使わなかった能力を行使する。
飛廉脚で移動しながら矢を放つリルだが、次弾を放つのを唐突に中断し回避に移った。
ヤミがいるのはリルの正面、だというのに攻撃は来たのはリルの真横。
宙にぽっかり穴が開き、中から刃に変えた金髪が突き出されているのが見える。
視線を正面に戻すとヤミの近く、丁度変化させた髪の先端付近に穴が出現していた。

「また面倒くせぇもん使いやがったな」

ボヤキへの返答は言葉ではなく刃。
リルの頭上、足元、背後と次から次に穴が出現し刃が飛び出した。
ダークネスとなったヤミは非常にポテンシャルが高く、元の状態では使えなかった能力も使用可能となる。
自分の体以外、水や地面への変身能力伝達もそう。
そしてリル相手に使っているのはワームホールの生成だ。
空間をも変身させて異なる地点同士を繋げる、異次元空間。
使い勝手が良く、元の世界でも(主にえっちぃ事で)度々用いた能力。
離れた場所にも繋げられるという事はつまり、攻撃以外にも有効的な使い方は多岐に渡って存在する。


398 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:36:51 qLFVvA7s0
「こんな風に、ね★」
「にゃっ!?」
「なっ…」

ワームホールに手を突っ込んだヤミが引っ張り出すと、先程まではいなかった者が現れた。
見覚えのある小さな影は間違いなくリルが最初に出会った参加者。
隠れていた小恋をワームホールで引き摺り出し、腕をロープに変えてあっという間に拘束。
打算ありきとはいえ一応保護している少女を確保され、ヤミへ矢を放つ手が止まる。
悪戯が成功したような意地の悪い笑みを浮かべるヤミが、この隙を逃す筈は無い。

長髪を刃から別の物へと新たに変身。
彩南町で巻き起こるトラブルの中心的人物、結城リトの分身を作った。
計5体のリトがリルに群がり手を伸ばす。
数が増えようと分身程度敵ではないがリトの持つ天性のテクニックもある程度は再現しているのか、無駄のない動きでリルの服に手を掛け脱がしに掛かる。
露わになった素肌に手を、蛇のように伸ばした舌を這わした。

「おねえちゃん!」
「だーめ♡あなたはこっち♪」
「ひゃあっ!?」

人差し指をナイフに変えて振るえば、パラパラと小恋の衣服が切り裂かる。
間違っても素肌に傷は付けないよう加減はしてある。

「それと、これももらいますね」
「あっ!それ小恋の!とっちゃだめだよ!」

可愛らしい抗議もどこ吹く風で小恋からランドセルを剥ぎ取った。
自分に支給されたのは逃走のどさくさでディオに奪われたので、ここいらで代わりを手に入れておく。
中を漁り早速目当ての物を取り出す。
全参加者共通の支給品である飲み水、ペットボトルの口を斬り中身が零れるも通常では有り得ない動きを見せる。
意思を持ったように水がヤミの腕に絡み付いたのは、指に填めた帝具の効果。


399 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:37:57 qLFVvA7s0

ブラックマリンを使うのはこれが二度目だが能力使用に問題は無し。
水というのはえっちぃことをするのに最適だ、嘗てプール場にティアーユや多くの女生徒の嬌声を響かせた経験からも自信を持って言える。
ヤミの意思に従い水が小恋の全身を這い回り出した。

「ひゃんっ!?な、なにこれぇ…」
「クスクス、恐がらなくても大丈夫。すぐに気持ち良くなりますから♡」

変身能力を伝達し、スライムのようにヌルヌルした質感に変える。
凹凸の無い幼女のツルペタボディだろうとえっちぃ事をされて、理性を保つのは不可能。
えっちぃことに年齢は関係無いとヤミが誰に向けてか分からない内容を脳内で力説したのは、小恋には知る由も無い。
というか相手の考えを察せられる程の余裕などとっくに消え失せた。

「やぁっ…こ、これ…なんかへんだよ……」

ペットボトル一本分の水でも小恋の幼い肢体なら、くまなく刺激を与えられる。
あくまでゆっくりと、しかしぬめりを帯びた感触はまるでナメクジが這っているかのよう。
嫌悪感しか齎さない筈だし、実際小恋も気持ち悪さを抱いているのは確か。
だがそれだけではない、「いやなこと」以外のナニカがある。
ツルリとした腋を執拗に舐られ、くすぐったさにも似た感覚が襲う。
小さなヘソにも捻じ込み、お腹がおかしな熱を帯びる。

「もっと敏感な部分にも欲しいでしょう?」

小恋の返答を待つ気は無い。
嫌と言われても聞く耳持たずだ。
膨らみの無い平らな胸、桃色の小さな突起にふぅっと息を吹きかける。
それだけで面白いくらいに幼い体が跳ね、思わずペロリと舌なめずり。


400 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:39:01 qLFVvA7s0
「んっ…!そ、そこ、だめ…」

抗議は聞き入れられてもらえない。
水を操作し、狙いを桃色の突起に定める。
蛇の下のように細くなると、舌先でチロチロ舐めるように弄る。
胸の先端から伝わる電気が走ったかのような刺激、幼い体がより大きく跳ね上がった。

「ひぃんっ!?やっ、あっ、んんっ…!」

反応の一つ一つを楽しみながら、ヤミが操作する手は止まらない。
今のは片方だけ、今度はもう片方も一緒に攻めてやればさぞ良い反応をするだろう。
指先を軽く動かす。

「んあああああああああっ!!」

予想通りだ。
白い幼女の体は性的興奮で色付き、玉のような汗が浮かんでいる。
天真爛漫という言葉が似合う顔には涙が浮かび、口の端からは涎が垂れる始末。
されど頬を染めたその顔は見覚えがあるえっちぃ表情。
愛する彼にえっちぃことをされた女の子達が浮かべるのと同じ、隠し切れない性への興奮だ。
やっぱり思った通り、幼い子供だろうとえっちぃことは大好きに決まってる。
キウルの時のような発見は出来なかったけれど、リトへの手向けとしては十分だろう。
後は絶頂に導き一番の幸福に包まれたタイミングで仕留める。
水は下腹部へと這いずり、未だ触れていない未成熟な性器へと魔の手を伸ばす。

「だ、だめ…もうだめ…」
「どうして?えっちぃことはだめなんかじゃありませんよ?現に気持ち良いでしょう?」

元の自分もそうだけど、どうして皆素直になれないのかヤミには不思議でならない。
小首を傾げ訪ねれば駄々をこねるようにいやいやと首を横に振るわれた。
どんなに否定したって体の方は素直な癖に。


401 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:40:28 qLFVvA7s0
「小恋が…いっぱいスキスキするのは…みのりちゃんと、いっしょのときだけなの…!ちゅーも、デートも、ぜんぶみのりちゃんとだけなの…!えっちなことだって、みのりちゃんとしかしたくないもん…!」
「!?」

未知の快楽に身を苛まれ、呂律が回らないながらも必死に言葉を紡ぐ。
絶頂へと持って行くはずの水は動きを止め、ヤミも目を見開き暫し何も言えずにいた。
幼い少女の真摯な声に胸を打たれたからか?
否、断じて否である。
その程度で止まるくらいなら、正史においてリト達はダークネスを止める決死の作戦なんぞに出ていない。

言われた内容を一字一字咀嚼し、己のナカに溶け込ませる。
小恋は自分にえっちぃことをされるのを嫌がっている、それは何故か。
単に羞恥心があるからだけではなく、彼女には既に心に決めた相手がいるから。
その「みのりちゃん」なる者の手でえっちぃことをされるならまだしも、他の者から与えられた快楽などノーセンキュー。
体は歓喜を露わに、されど心は堕ちていない。
それは、それはなんて、

「最高にえっちぃじゃないですかぁ…♡♡♡」

好きな相手がいるにも関わらず、好きじゃない相手から気持ち良くされる。
心は必死に抵抗しても、体は正直に反応してしまう。
いつも真正面から健全なえっちぃことをしてくれたリトとは違う、背徳的なえっちぃこと。
ヤミ自身はリト以外の相手からのラッキースケベなど断じてお断りだが、他の相手にするのは悪くない。
何せリトを好いている者は多い。
中には素直になれずツンツンした態度を取る少女もいるが、リトへの好意は隠せていない。
そういった者達にリトではなくヤミがえっちぃことをし、絶頂へ導いてやったら?
大好きな彼には触れて貰えずに果てて、命を奪われるとしたら?
あまつさえ、その様子をリトに全て見られてしまったら?

「結城リトの元へ戻ったら、早速実践しないと♪」

まずは練習台として小恋を蹂躙してから、他の参加者にも同じ事をする。
例えば最初に逃げられた二人の少年。
彼らにだって心に決めた相手、或いはあられもないえっちぃ姿を断じて見られたくない存在くらいはいるだろう。
それをダシに弄ってやれば、きっとより素敵な表情を見せてくれるに違いない。


402 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:41:51 qLFVvA7s0
興奮の余り思わず涎を垂らしながら、最初の標的を終わらせに掛かる。
中断された秘部への刺激で以て、10にも満たない青い体を染め上げるのだ。

「絶頂の瞬間にサクッと殺してあげる♡」
「ひっ…」

パチンと指を鳴らすと水は目的地に到達。
瞳を潤わせる小恋へ向ける満面の笑みに宿るのは、色欲では覆い隠せない残虐性。

「たすけて……みのりちゃん……」

鍵のかかった扉をこじ開けるように。
ぴったり閉じた小さな口を強引に開こうとし――






「んなガキ犯すとかマジで終わってんな、クソッタレのアバズレが」






猛烈な悪寒が全身を駆け巡った。

細胞全てが悲鳴を上げるこれは、リトにえっちぃことをされたのとは別の感覚。
銀河の殺し屋として活動していた際に幾度となく味わった、生命の本能による訴え。
このままでは殺されると言う警告。


403 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:42:46 qLFVvA7s0
危機感に押し出されるまま飛び退けば、立っていた場所が大きく削り取られた。
違う、削られたのではなく喰われたのだ。
ヘタクソな落書きのように巨大化させた、リトの分身を5体全て丸ごと飲み込んだ口が。
乱れた衣服を戻しながら立ち上がり、小恋を抱きとめたリルの口がだ。

「なっ…!?」
「クソ甘ぇ。ゲロ吐きそうなくらいに甘いのなんざ初めてだぜ」

文句を言いつつ口を元のサイズに戻し、飛廉脚で少し離れた場所へ移動。
小恋を適当な場所に降ろすとすぐさまヤミへと向き直る。
今は一々声をかけてやる時間すら惜しい。
これまでと同じく神聖滅矢放てば、はっと意識を引き戻したヤミが髪を再び刃に変身。
振るいかけたそのタイミングで見た、自身へ向かって来る矢が触手に変化したのを。

「っ!?」

絡め取る、というよりは絞め殺す勢い。
首へ巻き付く前に全て斬り落とすとリルが至近距離へ接近、蹴りを繰り出す。
ただの蹴りではない、細い脚がハンマーに変化しヤミを叩き潰さんと襲い掛かった。
両手を前に着き出し盾に変身、ダメージこそゼロだが衝撃までは殺し切れない。
後方へ吹き飛ばされるも髪の先を杭に変え地面に突き刺す。

踏み止まったヤミへの追撃は正面からではなく背後から。
飛廉脚で高速移動の後、間髪入れずに矢を連射。
先端の口がヤミを噛み殺す役目は果たせない。
矢は再び形を変え、今度は回転するドリル状の刃と化す。
柔肌を貫き骨を砕く矢、両腕を伸ばした体勢からの回転切りで対処。
放たれた数は10本、しかし7本目を斬り落とした直後に残りの三本が消失。
ヤミが何かしたのではない、矢の方から勝手に消えたのだ。


404 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:43:41 qLFVvA7s0
「――っ!!」

否、宙に出現した穴に吸い込まれたのである。
アレが何を意味するのかヤミが知らない訳が無い。
頭上からヤミ目掛けて振るのは残る三本の矢。
右手を振り回して防ぎダメージゼロで凌ぐも、ヤミの表情は自然と強張る。
リルが今見せた能力の数々が何なのか、ヤミが一番よく知っていた。

「どうしてあなたが変身(トランス)を…?」

星十字騎士団(シュテルンリッター)のメンバーが一般の聖兵と大きく違うのは二つ。
一つは滅却師としての単純な能力の高さ。
もう一つはメンバー全員がユーハバッハから聖文字(シュリフト)を分け与えられている事にある。
聖文字とはアルファベットから連想される特殊能力の総称で、それぞれ異なる力を持つ。
たとえばユーハバッハの側近だったハッシュヴァルトは幸運と不運の操作。
たとえば狩猟部隊(ヤークトアルメー)の隊長を務めたキルゲは脱出不可能な檻の作成。
たとえばリルと腐れ縁のジジは浴びた者をゾンビに変化させる血液。
滅却師の基本能力の他に聖文字を振るい、星十字騎士団は護廷十三隊を幾度も苦戦させた。

リルもまた、星十字騎士団の一人として聖文字を有する。
彼女がユーハバッハより与えられたのは「G」。
「食いしんぼう(ザ・グラタン/The Glutton)」、それがリルの持つ聖文字の能力名。
ザ・グラタンはリトの分身を食らったように、口を巨大化させ飲み込む破壊力に特化した力。
十一番隊の隊士達を纏めて喰い殺したのもこの能力だが、ザ・グラタンはただ敵を喰うだけではない。

この能力の真価は、食らった対象が持つ特有の力を『消化し終えるまでの間だけ』自由自在に使えるというもの。
リトの分身に変身させたとはいえ元々はヤミの髪の毛。
ヤミの一部分を食い千切ったリルはザ・グラタンの効果により、ヤミの持つ変身能力を一時の間のみ使えるようになった。
能力の発動方法も食った時点で本能的に理解する、副次的な効果付きでだ。


405 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:45:13 qLFVvA7s0
「種明かしなんざ期待すんなよ。精々ガキを犯すしかねぇ頭で考えとけ」

聖文字の詳細を誰が馬鹿正直に伝えてやるものか。
ヤミの血肉を全て喰らったならまだしも、髪の毛だけではそう長い時間変身能力は使えない。
地面に伝達させ巨大な柱に変化、そこから更に別の物質へと変える。

「テメェの猿真似だが文句は言うなよ」

大木が枝を生やすように柱からも無数に管が生え、徐々に姿が別の形へと変わっていく。
それは先程ヤミが自分の髪の毛を変身させたのと同じ、何十人もの少年が姿を現わす。
ヤミの最愛の標的(ターゲット)、リトの分身が一斉に襲い掛かった。
但しヤミが生み出した分身がえっちぃこと目的だったのに対し、リルが生み出した分身は数の暴力で相手を殺す目的。
その証拠に服を脱がし素肌へタッチするはずの手は拳を作り、一体残らずヤミを殴り殺さんとする。

少し前に虚圏で一戦交えた破面、ルドボーン・チェルートの能力を参考にし変身能力をこのように使った。
あの時は空っぽの軍隊相手にバンビがビビり散らしていたか。
どうでもいい記憶へ思いを馳せるのは瞬きの間に留め、リトの分身を片っ端から向かわせる。

「は?」

口から出たのはヤミ自身も驚くくらいに低い声。
たった一言、いや一文字には明確な怒りが籠められている。
敵は何をした?そんなもの見れば分かる。
結城リトの分身を大量に作って、自分を殺そうとしているのだ。
瞳に映るそのままの光景、それが無性に腹立たしい。

自分の能力を使っている、それは別に良い。
変身能力は自分のみならず妹(メア)だって使うのだ。
今更別の誰かが使った所で、それは私だけのものだなんて言う気は無い。

でも彼は別だ。

所詮は分身に過ぎないと分かっていても。
自分に襲い来るのは決して本人ではないと理解していても。


406 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:46:39 qLFVvA7s0
彼のことを全く知らない癖に。
彼にえっちぃことを一度もされていない癖に。
彼のことを、大好きな訳でもない癖に。

「あなたなんかが、私の結城リト(モノ)を勝手に作らないで」

ハレンチへの喜びではなく、純粋な怒りによる変身。
髪を両腕に巻き付け巨大な光線銃を二丁作る。
銃口から放たれた閃光は分身を一体残らず焼き払い、分身を生み出した柱をも木端微塵に破壊。
リル本人にも迫るが静血装を使って防御力を強化、比較的軽症で済ませられた。

しかしこの程度でヤミの怒りは収まらない。
リトの事を知りもしない輩が勝手に彼の姿を作り利用した。
彼はの手はえっちぃことをする為にあり決して誰かを傷付けたりなんかしないのに、よりにもよってリトの姿で殺そうとした。
自分の恋路を邪魔どころか唾を吐きかけられた気分だ。
許せない、断じて許しおくものか。

「よく分かりました。あなたは私にとっての敵。ううん、最低の害虫だってことが」
「惚れた野郎の人形作っただけでこれかよ。ソイツに同情するぜ」

淡々とした毒舌だがこれでも相応に危機感は感じているつもりだ。
リルの全身を照らす輝きは、ヤミが掲げた右手によるもの。
天を突き雲を切り裂く勢いの巨大な光剣。
ヤミが使える最大規模の攻撃に、さてどうするかとリルは冷静に思案する。
変身能力は残り僅かな時間だが使える、ならアレと同じ規模の攻撃をこちらも放てる筈。
同等の威力だろうと自分には動血装がある分、攻撃強化で勝負を有利に動かせるだろう。
使い方は考えずとも本能で理解しているのだ、ヤミが光剣を生み出したのと同じ要領で矢を生成し――

「おねえちゃん…」

視界の端に小さな体躯を捉えた。

「……」

自分一人なら、生き残る算段は幾らでも組み立てられる。
強化した矢で相手を殺すだけではない。
こっちが押し負けても飛廉脚を駆使しての回避、静血装を使っての防御。
変身能力やワームホールの生成だって今ならまだ間に合う。


407 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:47:43 qLFVvA7s0
だがこの少女は?

霊圧も一般人並、戦う力は皆無。
ユーハバッハが神で星十字騎士団が首輪を付けられた猛獣なら、こいつは黒蟻。
抗う術を何も持たない虫けら一匹、直接手に掛けなくとも巻き添えを食らえば余りに呆気なく死ぬ。

「……クソうぜぇ」

それは誰に向けての毒だったか。
ヤミか、小恋か、それとも乃亜か。
或いは、こんな反吐が出る程に甘い行動へ走った自分自身へか。
生成した矢を放り投げ、霧散するのを見送らず小恋の方へと駆ける。
飛廉脚を使えば一瞬、抱きかかえられ素っ頓狂な声を上げられても無視。

「逃がすと…」
「思ってねーよ」

逃がしてくれる甘ちゃんなら、そもそも最初から襲って来ない。
ヤミが右手を振り下ろし、だがリルもランドセルから取り出した支給品を振り被る。
巨大な光剣と真っ向からやり合える威力を期待しちゃあいない。
ただ逃げるのには打ってつけの道具だ。
動血装で右腕の腕力を強化、ミニィの聖文字程では無くとも今はこれで十分。

「あばよロリコンクソビッチ。二度とオレらに会わないで勝手にくたばっとけ」

右手で持った団扇を渾身の力で振るい、爆風が巻き起こる。

「なぁああああっ!?」
「ふにゃああああああああっ!?」

光剣を振り下ろし掛けたヤミのみならず、発生させたリル本人も小恋諸共吹き飛ばされる。
それぞれが違う方向へ木の葉のように飛んで行き、夜空には素っ頓狂な悲鳴が木霊するのみ。
あれだけの喧噪が響いた戦場跡に誰も残らず、やがて静けさを取り戻した。


408 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:48:38 qLFVvA7s0
◆◆◆


「――――ぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああっ!!」
「うるせぇ」

最低なお空の移動中ずっと叫んでいた小恋をぴしゃりと黙らせ華麗に着地。
足元に霊子で足場を作り出し激突を防ぐくらい、多少心得のある滅却師でも出来る。
暫く待ってみてもヤミが追いかけてくる気配は無い。
ワームホールを使えばもっと簡単に逃走出来ただろうが、相手だって同じくワームホールで追跡するだろう。
だからヤミを引き離しつつ大きく距離を稼ぐ為に、少々荒っぽい方法を取った。

去り際にヤミへぶつけたのは紛れも無い本心。
面倒な能力と脳内がピンクに染まり切った淫乱な本性、正直言って殺し合い関係なしに関わりたくない。
今後アレと遭遇し殺される参加者は気の毒だが、反対に殺してくれる者がいたら拍手の一つくらいは送ってやらんでもない。
再び自分達と会う可能性も否定できないのが新たな頭痛の種であるが。

「おねえちゃん…」

か細く自分を呼ぶ声に視線を下げる。
最初に会った時が嘘のように暗い顔の小恋へ、まぁ当然かと事情を察する。
自分とヤミの殺し合いを間近で見ただけでなく、凌辱されかけたのだ。
殺し合いをまともに理解していない年齢一桁の幼女だろうと、猛烈な恐怖を感じても不思議ではない。
かく言う自分もあの分身共に服を脱がされかけ、体をまさぐられたのだ。
ゾワゾワとした感触には思わずポーカーフェイスが崩れかかったものの、どうにか危機は脱した。
分身共を食い千切った時に多少の怒りが含まれていたのは、気のせいではあるまい。
静血装で幾らかリトのボディタッチを防げたのが幸いし、再度戦闘に臨めたが。
生憎と自分に慰めの言葉を期待されても困る。何を言うべきか考えた所で、

「小恋…さっきのひとのあかちゃんうんじゃうのかな…?」
「……はぁ?」

斜め上にも程がある質問が飛び出した。


409 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:49:25 qLFVvA7s0
「だ、だって、さっきおっぱいさわられたりして、それですごくぶわーってして…。みのりちゃんはまだおしえてくれなかったけど、もしかしてああするとあかちゃんできるの!?」
「……」
「ど、どうしよう…!小恋はもう、みのりちゃんのあかちゃんうむってやくそくしたのに…!うわきしちゃった……」
「…………」

顔を青くしガクガク震えながらとんでもない事を口走る幼女を見ていると、リルは真面目に考えるのが馬鹿らしくなるばかり。
小恋本人は大真面目だが傍から聞いてれば、さっきの痴女とどっこいどっこいな気がしてならない。
案外、殺し合いに乗ってさえいなければ気が合うのではないだろうか。

「産まれる訳ねぇだろ」
「ほんと!?ほんとにあかちゃんできてない?」

面倒くささ全開で頷くとこれまでの不安はどこへやら。
パァッと花が開いた笑みで胸を撫で下ろす姿は年相応のあどけなさがあるが、恰好がほぼ裸なのはどうしたものか。
ヤミに下着ごと衣服を割かれ、身に着けているのと言えば髪を結うリボン、それにソックスと靴。
後は参加者共通の首輪のみ。
小恋を連れ歩くならどこかで彼女の服の調達が必須。
こんなあられもない姿の幼女を連れ回していたらどんな誤解をされるか分かったもんじゃない。
さっきの痴女の同類と思われるのは勘弁して欲しかった。

短時間でこうもいらん苦労ばかりさせられるなら、やはり早々に他の参加者に押し付けるべきか。
薄情とも取れる事を考えるリルだが、不意に言われた言葉には中断を余儀なくされる。

「おねえちゃん、さっきはたすけてくれてありがとう!」
「……」

さっきとはどれのことだろうか。
最初にヤミの伸ばした手を払い除けた時か。
危うく犯される寸前で阻止した時か。
彼女が巻き添えを食らう可能性を考慮し、戦闘続行ではなく逃走を選んだ時か。
それら全部をひっくるめてか。

「ただの取引だ、礼はいらねぇってさっき言っただろ」

出会った時と何一つ変わらない無愛想な物言い。
それ以上何かを口にする気は無いのか歩き出すリルを、待ってよーと小さな影が追いかけた。


410 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:50:31 qLFVvA7s0
◆◆◆


「ムカつく……」

面白くなさそうな顔でヤミは不満を口にする。
吹き飛ばされた挙句にまんまと逃げられた。
相手の逃走を許してしまったのはこれが二度目だが、一度目と違って苛立ちが大きい。
念の為にワームホールを生成するも、案の定無駄に終わる。

「余計な細工をされたみたいですね…」

キウルとディオに逃げられた時もそうだ。
本来のヤミならワームホールを使えば追い付くのは簡単なのに、殺し合いにおいてはそう上手く事は運ばない。
ワームホールが作れるのは近い距離のみ、離れた場所と繋ぐのは不可能。
間違いなく乃亜が余計な真似をしたに違いない。
少なくとも性懲りも無く自分に飛び掛かった校長(へんたいおやじ)を南極に放り込んだ時のような、長距離移動は無理だろう。

とはいえ収穫はゼロではない。
自分の知らなかったえっちぃ事をまた一つ知れたし、ディオに奪われた代わりの支給品も手に入った。
ランドセルから地図を取り出し現在地と施設を確認。
その最中にチラと自分の指に填められた帝具を見やる。
水を操る能力自体は確かに強力だが、これに水そのものを生み出す力は備わっていない。
十分な水場を確保しなくては宝の持ち腐れ、それがブラックマリンという帝具だ。
ならば大量の水がある場所へ赴き、そこを狩り場とするのも悪くは無いかもしれない。
変身能力だけでなくブラックマリンも合わされば、きっと学校のプールでティアーユ達にした時以上のえっちぃことが実現可能な筈。

「そういえば、名簿も見れるんでしたっけ」

乃亜の言う参加者の選定基準にリトは入っていない為、彼は未参加だろう。
それはそれとして一応中身を確認すべく、タブレットを起動させる。
自分のもの以外で知っている名前は、一つあった。


411 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:51:35 qLFVvA7s0
「……あなたもいるんですね、美柑」

結城美柑。
リトの妹で自分にとっては友人と呼べる少女。
小学生である美柑なら乃亜に参加者として選ばれてしまってもおかしくはない。

「結城リトと離れた場所で死ぬのはあなたも嫌でしょうけど…でも仕方ないですよね?」

リトの元に帰るのに手段を選ぶつもりはない。
殺さなくてはならないなら、残念だが美柑でも殺すしかあるまい。
せめて彼女の友だちとして、目一杯えっちぃことをしてあげてよう。
恐怖を忘れさせるくらいの気持ち良さと共に死ねば、それは美柑にとっても幸福に決まっている。
もしかすると既に殺し合いと言う異常下で、恐ろしい目に遭っているのかもしれない。
それなら余計に自分の手でたっぷりと気持ち良くしてから、この手で美柑を――。

「ころ…す……?美柑を……?」

何故だろうか、自分の行いに疑問が生まれた。
リトの元へ帰る為に、他の誰かに殺される前に自分が美柑を殺す。
そこに何も間違いはないではないか。
なのにどうしてだろう、何となくそれが間違っている様に感じられたのは。

「ちょっと疲れちゃったのかな…?あ〜!そう考えるとさっきの女の子、やっぱりムカつく!」

きっと変身能力の連発で体力を消耗し、疲れて頭が回らないだけだろう。
大丈夫、自分は何も間違っていない。
結城リト恋路は誰にも邪魔させないと言い聞かせた。

正史において、ヤミをダークネスから引き戻した結城リトはこの場にいない。
ダークネス化の切っ掛けになり、ヤミを助ける作戦を思い付いた黒咲芽亜もいない。
救われる道(レール)を外れた金色の闇の行く末は、きっと乃亜にだって知り得ないだろう。


412 : 剥がれ落ちた羽にも気付かずに ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:53:24 qLFVvA7s0
【E-6/1日目/深夜】

【リルトット・ランパード@BLEACH】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、若干の敏感状態
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:脱出優先。殺し合いに乗るかは一旦保留。
1:チビ(小恋)と行動。機を見て適当な参加者に押し付ける。
2:首輪を外せる奴を探す。
3:チビの服も探すねぇとな、めんどくせぇ。
4:十番隊の隊長(日番谷)とは多分手を組めるだろ。
5:あの痴女(ヤミ)には二度と会いたくない、どっかで勝手にくたばっとけ。
[備考]
※参戦時期はノベライズ版『Can't Fear Your Own World』終了後。
※静血装で首輪周辺の皮膚の防御力強化は不可能なようです。

【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:精神的疲労(中)、敏感状態、ほぼ裸
[装備]
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:おねえちゃん(リル)についていく。
1:おねえちゃんといっしょにいる。
2:みのりちゃんたちはいないみたい。
3:さっきの…すごくへんなきもち……。
4:はだかにされちゃった、さむいよぉ…。
[備考]
※参戦時期は原作6巻以降。



【金色の闇@TOLOVEる ダークネス】
[状態]:疲労(中)、興奮、ダークネス状態
[装備]:帝具ブラックマリン@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2(小恋の分)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還したら結城リトをたっぷり愛して殺す
1:えっちぃことを愉しむ。脱出の為には殺しも辞さない。もちろん優勝も。
2:えっちぃのをもっと突き詰める。色んな種類があるんだね...素敵♡
3:さっきの二人(ディオ、キウル)は見つけたらまた楽しんじゃおうかな♪
4:あの女の子(リル)は許せない。次に会ったら殺す。
5:美柑えっちぃことたくさんしてあげてから殺す。これで良い…はず。
6:水が大量にある場所に行くのもありかな?
[備考]
※参戦時期はTOLOVEるダークネス40話〜45話までの間
※ワームホールは制限で近い場所にしか作れません。

【可楽の団扇@鬼滅の刃】
半天狗の分裂体の一体、可楽が使う団扇。
振れば突風を放ち、より強く振れば爆風を発生させる。


413 : ◆ytUSxp038U :2023/05/21(日) 23:54:22 qLFVvA7s0
投下終了です


414 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/22(月) 00:40:38 lrpNn9nk0
投下お疲れ様です!

>剥がれ落ちた羽にも気付かずに
エッッッッ!!
リルの反応が一々的確で、真っ当な内容を毒舌で言ってくれるのが良いですね。
乃亜君やヤミちゃんに対して、悪ガキとエロガキとかビッチとか。ストレートに言うのが読者の代弁をしてくれている。こういうキャラが居るから、話が際立ってくるんですよ。
序盤に於ける達人同士の一歩も譲り合わない、精細な戦闘描写をこれでもかと濃密に盛り込んだバトル! 
これも凄いのに、リルと小恋ちゃんのコミカルな掛け合いや、一気にエロ展開へ突っ込む落差もお見事。戦闘だけじゃなく、えっちぃ描写まで濃密に盛り込んだ欲張りセットですね。
それにしても方向性は違えど、性を解放しぶっ飛びだしているヤミちゃん、純愛(違法)の小恋ちゃん……リル以外全員、狂人説ありますねこれ。

 
そして、もう一つご指摘となってしまうのですが、参加者名簿は第一回放送後にタブレットに転送となっております。
なので、ここだけは訂正が必要となってしまいます。お手数ですが、ご確認お願いします。


415 : ◆ytUSxp038U :2023/05/22(月) 01:25:25 WdMDdq0s0
感想およびご指摘ありがとうございます。

>>388 禁止エリアが機能するのはまだ先の話。
からのくだりを

禁止エリアが機能するのはまだ先の話。
現段階ではそう深刻に受け止める必要も無い。
開始から一時間足らずで10人以上もの死者が出たのにも、そう大きな驚きは皆無。
殺し合いをさせるならば、当然参加者の排除に積極的な血の気盛んな輩が複数人いるだろう。
死んでいった者達は赤の他人、動揺は無く強いて言えば首輪解除に必要だろう人材が死んでいなければ良いと思った程度。
ついでに小恋から聞いた知り合いの名前も、「コイビトのみのりちゃん」を始め呼ばれなかった。
参加者名簿が見れるのも当分先だ。
見れたとしても自分の知る中で参加条件を満たす者はほとんどいない為、無意味かもしれないが。

タブレットを起動しマップを確認するも、知っている施設などは見当たらなかった。
一応小恋にも画面を見せ確認させる。

「おねえちゃん、どうしよう……」

その小恋はタブレットを見つめながらガタガタ震えていた。
青褪めた顔といいこうも分かり易い反応を見せれば、大体は察しが付く。
自分が知っている施設の名前があり、馴染み深い場所が悪いことに巻き込まれて不安になった。
そんな所だろうと結論付け、

「かんじがいっぱいでよめない…!」
「……」

返って来た間抜けな答えに暫し沈黙する他無い。
ああそう言えばこいつはガキだもんな、そりゃ平仮名くらいしか読めねぇよなと納得。
難しい顔でタブレットとにらめっこする小恋へ向け、さも面倒くさそうにため息を吐く。
地図の確認という基本的な事すらままならないとは。
仕方なしに施設の名前を一つ一つ教えてやれば、その全部に首を横に振った。

基本的な確認を終え、これからどう動くかを考える。
首輪の解除に脱出ルートの確保、優勝以外で生き延びる為に必要な事は多くリル一人では手が回らない。
小恋を連れて他の参加者と接触し情報を集め、脱出のプランを練るしかあるまい。

に変更します


416 : ◆ytUSxp038U :2023/05/22(月) 01:29:02 WdMDdq0s0
>>410 「そういえば、名簿も見れるんでしたっけ」
からのくだりを

「そういえば、後で名簿も見れるんでしたっけ」

乃亜の言う参加者の選定基準にリトは入っていない為、恐らく彼は未参加だろう。
だが自分の知る者で参加資格を持つ人間ならばいる。

「……あなたもいるんですか?美柑」

結城美柑。
リトの妹で自分にとっては友人と呼べる少女。
小学生である美柑なら乃亜に参加者として選ばれてしまってもおかしくはない。

「結城リトと離れた場所で死ぬのはあなたも嫌でしょうけど…でも仕方ないですよね?」

リトの元に帰るのに手段を選ぶつもりはない。
もし本当に彼女も参加しているなら、残念だが美柑だろうと殺すしかあるまい。
せめて彼女の友だちとして、目一杯えっちぃことをしてあげてよう。
恐怖を忘れさせるくらいの気持ち良さと共に死ねば、それは美柑にとっても幸福に決まっている。
もしかすると既に殺し合いと言う異常下で、恐ろしい目に遭っているのかもしれない。
それなら余計に自分の手でたっぷりと気持ち良くしてから、この手で美柑を――。

に変更し、三人の状態表を

【リルトット・ランパード@BLEACH】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、若干の敏感状態
[装備]:可楽の団扇@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:脱出優先。殺し合いに乗るかは一旦保留。
1:チビ(小恋)と行動。機を見て適当な参加者に押し付ける。
2:首輪を外せる奴を探す。
3:チビの服も探すねぇとな、めんどくせぇ。
4:ジジ達は流石にいねぇだろ、多分。
5:あの痴女(ヤミ)には二度と会いたくない、どっかで勝手にくたばっとけ。
[備考]
※参戦時期はノベライズ版『Can't Fear Your Own World』終了後。
※静血装で首輪周辺の皮膚の防御力強化は不可能なようです。

【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:精神的疲労(中)、敏感状態、ほぼ裸
[装備]
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:みのりちゃんたちをさがす。
1:おねえちゃん(リル)といっしょにいる。
2:さっきの…すごくへんなきもち……。
3:はだかにされちゃった、さむいよぉ…。
[備考]
※参戦時期は原作6巻以降。



【金色の闇@TOLOVEる ダークネス】
[状態]:疲労(中)、興奮、ダークネス状態
[装備]:帝具ブラックマリン@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2(小恋の分)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還したら結城リトをたっぷり愛して殺す
1:えっちぃことを愉しむ。脱出の為には殺しも辞さない。もちろん優勝も。
2:えっちぃのをもっと突き詰める。色んな種類があるんだね...素敵♡
3:さっきの二人(ディオ、キウル)は見つけたらまた楽しんじゃおうかな♪
4:あの女の子(リル)は許せない。次に会ったら殺す。
5:もしも美柑がいるならえっちぃことたくさんしてあげてから殺す。これで良い…はず。
6:水が大量にある場所に行くのもありかな?
[備考]
※参戦時期はTOLOVEるダークネス40話〜45話までの間
※ワームホールは制限で近い場所にしか作れません。

に変更します


417 : ◆ytUSxp038U :2023/05/22(月) 01:30:07 WdMDdq0s0
以上で修正を終わります
お手数をおかけしてしまい大変申し訳ありませんでした


418 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/22(月) 02:12:13 enJQ.ZAM0
投下します


419 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/22(月) 02:12:27 enJQ.ZAM0
「フランちゃんお空も飛べるんですな〜」
「うん、飛べるよ〜」

そんな事を話しながらしんのすけとフランは道を進んでいた

(自由に飛ぶことはできなさそうだな〜)

フランは自分の飛行能力が前よりも劣っている事を勘づいていた
かといってそこまで不自由はないのでそのことについては別に気にしてはいなかった

「それよりもしんちゃん、これからどうする?」
「うーん、誰かいたらいいんだけど…見る限り誰もいなさそうですな〜」

フランに聞かれたしんのすけは辺りを見回したが人一人見当たらない様子だった

「あの建物の中とかは?」
「ん?」

そう言われたしんのすけはフランの指差す方を見る、そこには映画館があった

「あれは…多分映画館ですな」
「えいがかん?」
「そうだゾ〜、まぁとりあえず誰かいるかもしれないし行ってみますか」
「うん、分かった」

人がいるかもしれないという理由でしんのすけは映画館に行くことを提案し、フランも賛同したため二人は映画館に向かった



◆◆◆



「おじゃましまうま〜」

映画館に着いた二人は早速中に入った
中は映画館とは思えない程静かだった

「誰かいそう?」
「…今のところ誰もいなさそうだゾ」

そのまま二人は中を歩き始めた
客もいなければ店員すらおらずもぬけの殻だった

(この感じ、何だか懐かしいですな〜)

しんのすけは映画館のこの雰囲気を懐かしく感じた
過去にしんのすけは風間君達と共に『カスカベ座』という映画館に来たことがあり、その時は映画館の中に入ってしまったことがあった
そのこともありしんのすけは恐る恐るスクリーン内に入っていった、しかしそこは人もいなければカスカベ座の時みたく映像も流れていなかった

「へぇ、椅子がいっぱいあるね」
「普通は椅子に座って前のところに映像が流れるからそれを見るんだゾ〜、今は流れてないけどね」
「そうなんだ」

初めて映画館に入ったフランはスクリーン内を見渡していた

「人もいないし一旦ここで休憩しますか〜」
「じゃあ私もそうしようかな」

そして二人は椅子に座って休憩しようとした、その時…

『やあ、諸君……』
「「!!」」

突然どこから聞こえてるのかも分からないが放送が流れ始めた

『臨時ではあるが死亡者の名を読み上げさせてもらおう』
(他にも死んじゃった人が…?一体何が起きているんだゾ…)

放送から聞こえる『死亡者』という言葉…異常事態だというのは理解していたが今起きてるバトルロワイアルについて上手く理解できなかったしんのすけからしたら困惑で埋め尽くされていた

『ユーイン・エッジバーグ…骨川スネ夫…』

次々と死亡者の名前が明かされていく…そしてしんのすけは放送を聞いて驚愕することになる

『ボーちゃん…』
「……え?」

しんのすけはその時耳を疑った…放送から自分の良く知る、かすかべ防衛隊の一員であり友達である少年、ボーちゃんの名前が耳に入ってきたからだ

「…しんちゃん?」

フランもしんのすけの異変に気付き声を掛ける
すると次の瞬間、しんのすけの目から涙が出てきた

「どうかしたの?」
「ぼ、ボーちゃんが…オラの大切な友達が…死んじゃった…」

しんのすけは悲しさで溢れていた、ひょっとしたら惑わすための嘘、または似た名前の人が呼ばれただけかもしれないと思った、しかし…何故か涙が止まらなかった
見せしめとして二人の少年が殺された、そしてボーちゃんという名前は自分や仲間がよく本人を呼ぶ際に使っている名前である、この2つのことでボーちゃん本人が殺された可能性が限りなく高かった、今までのボーちゃんとの思い出ともう会えないかもしれないという寂しさで涙は止まらなかった…

「……」

フランはただただ隣で泣くしんのすけを見ていることしかできなかった


420 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/22(月) 02:12:43 enJQ.ZAM0
◆◆◆



「どう?落ち着いた?」
「…うん、何とか…」

あれからしんのすけは数分泣き続けたが、フランの慰めもあり今は少し落ち着いている

「しんちゃん、私から一つ提案なんだけど…」
「…何?」
「もしさっきしんちゃんが言ってたボーちゃんって子が生き返るってなったら…生き返らせたい?」
「…それは…まぁ出来るんだったら…」
「じゃあさ……」





「今ここにいる他の子を皆殺して優勝すれば良いんじゃないかな?」





「…え?」

フランからの提案にしんのすけは衝撃を受けた、さっきまで優しく接してくれたフランからは想像もしなかった発言…それは今ここにいる他の子供、もとい参加者を殺して優勝するというもの…

「で、でも…それじゃあ他の人が…」
「その点に関しては大丈夫じゃないかな、あの乃亜って子は何でも願いを叶えるって言ってたし、見せしめで殺された子も一回生き返ってたでしょ?」
「…」
「だから優勝して、そのボーちゃんって子を生き返らせることもできるし、他の参加者のことも気にしてるんだったらその時に全員生き返らせるように願えば良いと思うよ?私は友達になってくれたしんちゃんに着いていくつもりだからしんちゃんが殺し合いに乗るっていうなら協力するよ?選ぶのはしんちゃんだから私はどっちでもいいよ」

しかし…フランも悪気があって言っているのではない…あくまでもしんのすけのためを思っての提案なのだ
しんのすけは考えた、ボーちゃんの他にも死んだ子はいた…だったら優勝してボーちゃん含む死んでしまった子やこれから死んでしまう子も優勝した時に生き返らせれば…みんなをおたすけできる…しんのすけはそう考えて殺し合いに乗ることを決意…





「いや…ダメだゾ…」





しなかった…

「いいの?ボーちゃんや死んじゃった子、ここにいる子も生き返らせれるかもしれないのに?」
「…確かにその方法を使えば皆おたすけできるかもしれないゾ…でも…オラのお願いだけのために他人を巻き込んだらダメだとオラは思うゾ…」

聞き返すフランに対してしんのすけはそう答えた
しんのすけは過去にも大切な人を失った経験がある…『戦で自分達家族やお姫様を守るために戦い抜いた武士』、『自分の父親と瓜二つなもう一人の父親』…その人達を失った時、しんのすけは悲しんだ…しんのすけだけじゃなくその人達の知り合い、家族は皆悲しんだ…本当に生き返るか保証もないなかで自分の願いのためだけに他の人を悲しませることをするのは良くないとしんのすけは思った

「それに…悪者を倒すのは正義だけど…良い子まで倒すのは正義じゃないから…ボーちゃんもきっとそれは望んでないと思うゾ…」

しんのすけはいつもテレビで正義のヒーローを見ていた、そんな正義のヒーローが自分の私利私欲を言い訳に人々に悲しみを与えてまで願いを叶えようとするのは果たして正義と言えるのか…
無論、言えるわけがない…正義のヒーローは人々を苦しませないため、悲しませないために戦う…その姿を見てきたからこその言葉だった

「じゃあ、しんちゃんはこれからどうしたい?」

そんなしんのすけにフランが質問を投げ掛ける

「オラは…殺し合いに乗らないであの乃亜って子をやっつけて、ボーちゃんの仇を取りたいゾ…!」
「…分かった、しんちゃんがそう言うなら私もこれ以上は何も言わないよ」

そう言いしんのすけの言葉を聞いたフランは頷いた
彼女からしたらしんのすけが殺し合いに乗ろうが乗らないが正直どっちでも良かった

「でも、今はちょっと泣きつかれちゃったからもう少し休むゾ…」
「うん、分かった」

しんのすけは泣きつかれたのもあり再度休憩を提案し、フランは頷いた

(ボーちゃん…おたすけできなくてごめんね…絶対にボーちゃんのこと忘れないゾ…!)

心の中でそう呟きしんのすけは決意を固めた…



◆◆◆



(しんちゃん…優しいんだね)

横で休憩するしんのすけを見ながらフランはそう思った
吸血鬼である自分にも友達だと言って手を差しのべてくれた時の嬉しさは今も残っていた

(でもここには殺し合いに乗ってるやつもいるんだろうな〜…)

しんのすけの友達で恐らく同い年であろうボーちゃんが殺されたとなると殺し合いに乗ってるやつは存在する、それこそ善の振りをして裏切る者もいるかもしれない

(友達になってくれたしんちゃんを誰にも奪わせない…もししんちゃんを殺そうとしてくるやつがいたら…ゼッタイユルサナイ…)

そんなことを思っていたフランの感情の中には何処か黒い感情が混ざっていた…


421 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/22(月) 02:13:07 enJQ.ZAM0
【C-3 映画館内/1日目/深夜】

【フランドール・スカーレット@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:傘@現実、基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:友達になってくれたしんちゃんと一緒に行動、打倒主催
1:初めての…ともだち…
2:しんちゃんはやっぱり優しいんだね…
3:しんちゃんを殺そうとするやつは…ゼッタイユルサナイ
[備考]
※弾幕、能力は制限されて使用できなくなっています
※飛行能力も低下しています
※支給品はまだ確認していません

【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康、悲しみ(大)、決意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜という子をやっつけて、困っている人がいたらおたすけする
1:ボーちゃん…ごめんね…
2:風間君達もいるのかな…
3:とりあえず今は休憩する
[備考]
※殺し合いについて理解しました
※映画での出来事を経験しています
※支給品(傘@現実以外)はまだ確認していません


422 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/22(月) 02:13:54 enJQ.ZAM0
投下終了します
記載し忘れましたが、タイトルは「友よ〜この先もずっと…」です


423 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:38:22 VaCZh14s0
壊れた幻想
シュライバーと日番谷の高度なバトル描写!
読んでいて滾りました!
そして文字通り紗寿叶の幻想は壊されましたね……
「元太君、貴方……もしかして、少年兵とかじゃないわよね?」
↑個人的にめっちゃツボに入りました。好きです。
「そうだ。お前、うな重持ってねえか!!?」
「危ねえぞ、姉ちゃん!!」
「そんな、こと……しても、よ……は、ら……減って……悲しい、だけだ、ぜ……」
↑元太に笑い、元太に惚れ、元太に悲しむ。正に元太の魅力がこれまでかと詰め込まれた作品で感銘しました。

解体し統合せよ
苗字が”海馬”ゆえに名簿配布後は間違いなく参加者の注目をあびるだけに、ここで護衛となるドロテアを雇えたのは大きいですね。
そしてドロテアを雇うことに成功したモクバの交渉力は流石兄様の傍に居続けただけあるな〜。
俺はお前を雇うつもりだ! 給料は『首輪解除と生存の安全圏』でどうだ!」
↑いや〜、このビジネスパート―ナーという関係は比較的マシとはいえ危険人物に変わりないドロテアを味方に引き込む落としどころは、読んでいて非常にしっくりきて感嘆しました。
魔術と科学が交差し、新たな物語は始まる。
↑声に出したい好きな文です。

俺が死ぬまで治らない
うおおおお!!!!!
濃厚で重厚な一対一のバトル!
読んでいて燃えました。
やはりリップの不治は初見殺しに近いですね。ですが、相性が不利とはいえ、格が落ちないアーカードの描写が巧みで凄いです。
しかしリップとクロが手を組むとは、確かにイリヤの道行は厳しくなりますね……
私もvV5.jnbCYw さんと同様に、原作をなぞらえた演出に痺れました!


重曹
人を殺めてしまったことへの罪悪感MAXの龍亞 に思いつめるなと気遣う勝っちゃんに涙。
そして、子役として演技の世界に身を置いているからこそ、龍亜たちのことを信じるかなの描写が見事です。それと良かったね……重曹片手でサバイバルにならなくて。
序盤から超常バトルが起きている中、子供たちのトリオが温かみを感じて良いですね。
(……お前だって、まだ子供だろ……?)
↑勝っちゃん……本当に勝っちゃんの子供らしさを奪ったクソみてェなヤツラが許せないですね。
剥がれ落ちた羽にも気付かずに
えっちいと戦闘の融合が見事に極まった傑作!
本当に敬意を表します!
一桁の年齢でレズってるガキに続き、今度は露出趣味の痴女。
こんな女ばかりを集めるとは、大物ぶっておきながら乃亜は単なるエロガキじゃあないのか。
↑個人的にツボに入りました。いや、確かにそう思われてもしょうがないところがミソですね。大好きです。

「偶然とはいえこの体勢…結城リト程ではありませんが、あなたにもハレンチの才能が…!?」
「ふざけんなクソビッチ」
↑これが結城リトという概念……私の霊圧が笑いすぎて消えますよ本当に。

友よ〜この先もずっと…
開幕から友達の死を伝えられたしんちゃんが可哀想……
しかし、しんのすけも数多くの冒険の経験からフランの”おたすけ”プランを選択しなかった流れはとても自然で美しくおお……っと唸りました。
二人のおたすけに今後に注視です。
そんなことを思っていたフランの感情の中には何処か黒い感情が混ざっていた…
↑と思ったらラストに不穏な気配が!?……果たしてお助けコンビの行く末は如何に


424 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:38:43 VaCZh14s0
投下します。


425 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:39:02 VaCZh14s0
「そっか、危機一髪だったんだな」
「ああ……だけど、逃げきれたようだからひとまずホッとした気分かな」

談笑する二人の男子。
サトシとインセクター羽蛾。

第0回放送を聴いた後、改めて乃亜に対して怒りの炎を燃やしたサトシ。
そして、同時に亡くなった14人の死に心を痛める。
サトシの方針はただ一つ。それは当然対主催。
乃亜に死んでいった人の無念さを。命の重みを分からせるためにも体に叩き込む。
そう決意した矢先、何かから逃げようと必死に走っている羽蛾と出会う。
ひとまず、二人は近くにある座れそうな石に腰を下ろして情報交換を行った。

☆彡 ☆彡 ☆彡


426 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:39:19 VaCZh14s0

「それにしても…ポケモンか。どうやら僕とは違う世界が存在するようだね」
「ああ。だけど、ポケモンがいない世界があるなんて今でも信じられないなぁ」

サトシと羽蛾は情報交換をする中、二人は別々の世界があることを理解した。
デュエルモンスターズにポケモンと互いに聞きなれない単語。
そして何よりサトシの支給品がそれを証明した。

「それで、これが羽蛾のいう、デュエルモンスターズのカードか」
「そう、ブラック・マジシャン・ガール。僕の知り合いのデュエリストのカードだね」

一つ目はデュエルモンスターズのカード。
ブラック・マジシャン・ガール。
デュエルキング武藤遊戯のカード。

「モンスターというけど何だか、人っぽい感じなんだな」
「確かにブラック・マジシャン・ガールのように人型のモンスターもいるけど、デュエルモンスターズは恐竜に魚と多種多様な種族のカードがあるんだ。現に僕が愛用している種族は昆虫族だよ」
「へぇ〜、虫のモンスターならポケモンにもいるぜ!」
「それは本当かい!ぜひとも一度この目で見てみたいなぁ」

和気あいあいと談笑が進む。
これが、殺し合いの場でなければ、最高の時間であったはず。

「羽蛾って、このデュエルモンスターズの全国チャンプなんだろ?凄いじゃないか。オレ、頭使うの苦手だからさ……」
「はは。確かにデュエルモンスターズは駆け引きと読み合いが重要な、高度のカードゲーム。だけど、サトシだって、ポケモンのチャンピオンなんだろ?僕からしたら君も十分すごいと思うけど」
「へへ、サンキュー!。だけどチャンピオンになって気づいたんだ。チャンピオンはゴールじゃない。やっぱりオレの夢の果てはポケモンマスターになることだってことにさ」
「……へぇ、そうなんだ」

☆彡 ☆彡 ☆彡


427 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:39:53 VaCZh14s0

「ところで、へー……これがモンスターボールか」
「ああ!このモンスターボールにポケモンが入ってるんだ。まだ確認してないから何のポケモンが入っているかわからないけど……」

羽蛾が指さすのはサトシに支給されたモンスターボール。
サトシの2つ目の支給品。
まだ、確認をしていないので、中にいるポケモンは不明。

「早速、投げてポケモンを確認してみるか!」
「ちょっと待った。サトシ」
「ん?何だよ羽蛾?」
「できたら、僕に投げさせてほしんだ。ポケモンってのを実際に触れてみたいからね。……駄目かい?」
「ああ!そういうことか。いいぜ!」
「ありがとう、サトシ」

羽蛾の申し出にサトシは心地よく承諾した。
モンスターボールを羽蛾に手渡す。

「だけど、残りの一つのこの石は何だろうね?」
「う〜ん……ほのおのいしに似ているんだけどなぁ」

残りの一つは綺麗な赤い石。
サトシと羽蛾は、石の用途が分からず首を傾げる。

「だけど支給されているってことは、何か意味があるはずだよ」
「だといいんだけどなぁ〜」

☆彡 ☆彡 ☆彡

ひとまず支給品を確認終えた二人。
今後の方針について話し合う。

「羽蛾!オレと一緒に乃亜の企みを阻止しないか?デュエルモンスターズのチャンピオンでもある羽蛾が仲間なら心強いぜ!」
「ああ、もちろんだよ。チャンプ同士が手を組めば怖いものなんかないからね」

サトシの申し出に羽蛾はニコリと微笑むと、両者は握手を交わす。
ここに対主催チャンピオンコンビが誕生した。

……かにおもえたが。

「じゃあ、ちょっと、投げてみていいかい?」
「勿論!思いっきり投げると気持ちいいぜ”キミにきめた!””って」

サトシは赤い石をボールに見立てて投球フォームを披露する。

「ああ、わかったよ。それじゃ……”キミにきめた!”」

先ほどのサトシの真似をする。手渡されたモンスターボールが投げられ、ボールが開く。
そこから現れたポケモン。

それは―――

「これが……ポケモンかい?」
「ああ!このポケモンは……フェローチェだ!」

フェローチェ。
えんびポケモン。

「……!」
きょろきょろと周囲を見渡すフェローチェは、サトシの握っている赤い石に釘付けになる。
キラキラ光る赤い石に。

「アローラ地方で出会ったことがあるんだけど、とても素早さが高いポケモンなんだぜ。たしか……タイプはむし/かくとうだったかな」
「むしのポケモン……」
サトシはアローラ地方での旅を懐かしみながら羽蛾に説明する。
さながら、その姿はベテラントレーナー。

「な!ポケモンっていいだろ?」
(これで羽蛾もポケモンを好きになってくれたかな。なってくれたら嬉しいぜ)
ポケモンを知らない羽蛾がこれで好きになってもらえたら、自分にとって嬉しいことはない。
サトシは期待を込めて羽蛾に同意を求める。

「……ヒョ」
「え?」

「ヒョヒョヒョヒョヒョ〜〜〜〜〜!!!!!」


428 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:40:18 VaCZh14s0
「ど、どうしたんだ!?」
「いや〜、キミがあまりにバカだから笑いを堪えることができなかったんだ」
「何だと!」
(な、何だ!?羽蛾のヤツ。さっきまでの様子と全然違うじゃないか!?)

羽蛾の慇懃無礼な態度にサトシは怒りと同時に困惑する。
先ほどまでの態度がまるで嘘かのような羽蛾の変容に。
しかし、今の態度こそがインセクター羽蛾という男である。

「だって、そうだろ?ポケモンっていうアタリの道具を支給されているのに、あっさりと手渡すなんてありえないだろ。しかも出会ってばかりの他人同然にね」
「!?、ポケモンは道具なんかじゃない!」
「道具じゃないっていうんなら何だよ」
「決まってる!友達さ!」
「おいおい、オレを笑い死にさせようってかぁ〜〜〜!?ヒョヒョヒョ〜〜〜」

ポケモンとはなんだのサトシの答えに羽蛾は腹に手を押えながら笑い転がる。

「ッ!とにかくオレのモンスターボールを返せ!」
(クソ!まさか羽蛾がこんなヤツだったなんて!)

サトシは羽蛾からモンスターボールを取り返そうと飛びかかる。
しかし―――

「女王様」
「ホーチェ!」
「うわあああぁぁぁ!?」

風を斬るかのような、とびひざげり。
サトシは腹に蹴りを受けると、地面を転がる。
何とか、立ち上がろうとするが。

「っう……うぅ!?」

背中に衝撃が。
フェローチェによる踏みつけ。
フェローチェ自身は軽いが、やはりそこはポケモン。
不意打ちのとびひざげりによる腹の痛みもあり、サトシは起き上がることができない。
そして、フェローチェはサトシが握っていた赤い石を奪い、頬を染めながらウットリと眺める。

「ヒョヒョヒョヒョヒョ、どうやらポケモンの方が利口のようだね」

羽蛾はサトシの傍へ近寄るとご機嫌な口調で話しかける。

「ど、どうして……?」

サトシは腹の痛みに顔を歪めさせながら疑問を抱く。
モンスターボールは自分に支給されていたはず。
なら、フェローチェのトレーナーは羽蛾ではなく自分であるとサトシは思っていたために。

「さあね〜。お前よりボクの方がチャンピオンとしての適性が高いってことじゃないか?」
「どういう意味だよ……」

「……」

へへ、サンキュー!。だけどチャンピオンになって気づいたんだ。チャンピオンはゴールじゃない。やっぱりオレの夢の果てはポケモンマスターになることだってことにさ

「いいか、一度しか言わないからよく聞けよ。チャンピオンとは、栄光の称号。なのに、チャンピオンはゴールじゃない?ポケモンマスターだって?ふざけんな!チャンピオンとしての矜持を持ち合わせてないんならとっととその座から降りちまえ」

羽蛾の怒気が込められた言葉。
全国大会を制してチャンピオンとして上り詰めた身として、チャンピオンの重みを理解していないサトシに羽蛾は怒りを抑えきれない。

チャンピオンとは、羨望の眼差しを受け、サインを求められる。そしてサインをして、お礼のレアカードをもらえる正に王様になった気分を味合わせてくれる栄光の称号。
それがチャンピオン。
しかし、チャンピオンには勝ち続ける責任がつきまとう。
自分もだ。
勝つために知恵を働かせ、相手のカードを海へ落とす。デッキにカードを仕込ませるといった盤外戦術を駆使した。
しかし、そうした不断の努力をもってしても負けて失った。
全国大会優勝の箔を。レアカードを。

「ま、安心しなよ。遊戯こそ違うが同じチャンピオン同士。命は取らないでやるからさ」

それは羽蛾なりの餞別。
チャンピオンという立場が同じこそ、姿勢が自分とあまりにも違うサトシへの。

「だけど、向こう見ずな性格じゃ、どの道次の放送で聞くことになるかな〜」

ヒョヒョヒョとサトシを嘲笑う。
羽蛾の見立てじゃ、城之内のような熱血単細胞に近いサトシはおそらく長生きできない。
故に自分の手を汚すまでもないと判断。

「それじゃあ、リーゼロッテちゃんがまだこの近くにいるかもしれないし、さっさとここから離れようとするか女王様」
「ホーチェ」
「ま、待て!」
「待てといわれて待つバカはいないっピョ〜〜♪」

羽蛾の言葉に追随してフェローチェもサトシに向かってアッカンベーをする。
そして、羽蛾をお姫様だっこすると、サトシの前から走り去ろうとする。
羽蛾は14歳の男子にしては小柄で体重も軽い。そのため、フェローチェの速度に微々たる影響。
サトシは羽蛾とフェローチェが目の前から走り去るのをだた悔しそうに見ることしかできなかった……

☆彡 ☆彡 ☆彡


429 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:42:39 VaCZh14s0

「ふぅ……もう大丈夫だろ。ここでいいよ女王様」

羽蛾の言葉にフェローチェは応じると、抱いていた羽蛾を降ろす。
そしてフェローチェは見下ろす。
まるで”価値”を見定めているようだ。

「ふふ……いいね、その自分以外はどうでもいいという態度。女王様はこうじゃなくっちゃ」

フェローチェの視線に羽蛾は臆することなく笑みを浮かべる。
むしろ、そっちの方が都合がいい。
どうせ、自分の世界にポケモンはいない。
生きて帰ったらさよならの関係。
だったら生き延びる道具として、効率よく使役したほうがいい。
それに自分は虫デッキのエキスパート。
ポケモンだろうと虫ならば手綱を握ることなど造作ない。
友情や絆が経典の遊戯達みたいな友情教なんて御免だ。

「なぁ、オレと手を組まないか?ジル」
「?」

羽蛾の言葉にフェローチェは首を傾げる。
それにジルとは何?と眼で尋ねる。

「君は綺麗な物に目がないんだろ?だから君にピッタリの名前を考えたんだ」

日本で一番美しい虫といわれるヤマトタマムシ。
その別名フタスジルリタマムシから着想した命名。
羽蛾はフェローチェがサトシの手に持っていた赤い石に目線を向けていることに気づいた。
その綺麗な赤い石。賢者の石を。

「乃亜は願いを叶える力を持ってる。だったらその力で叶えちまえばいい。オレの指示に従っていればジルの好きなキラキラが大量に手に入るってわけさ。どうだい……オレを認めてくれるかな女王様?」
「ホーチェ♪」

フェローチェはその命名を気に入ったようだ。
かつて、自分のことを【ビューティーちゃん】と呼んだポケモンがいたが、それよりも断然、羽蛾の考えた名の方が華があると。
そして、羽蛾の言葉。
大量のキラキラが手に入る。
なら、あのときに手放した以上のZストーンを手に入れることができるということ。
ジルは羽蛾を自分が従う資格があるトレーナーと認めた。

「ヒョ♪どうやら気にいってくれたようだね。それじゃあ、今後ともヨロシク頼むよ、ジル」

【C-4/1日目/深夜】

【インセクター羽蛾@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:右腕に切り傷(小)
[装備]:モンスターボール(フェローチェ)@アニメポケットモンスター
[道具]:タブレット@コンペLSロワ 賢者の石@ハリーポッターシリーズ
[思考・状況]基本方針:優勝を狙いつつ生き残る。もし優勝したら、願いも叶えたいぜ。
1:利用できそうな参加者を探す
2:ヒョヒョ、まずは矛(ジル)が手に入った。次は盾(参加者)を探すとするか
3;優勝も視野に入れているが、一番は自分の生存。当面は対主催の立場で動く。
4:リーゼロッテちゃんのようなオカルトの力には注意だな
5:せいぜい、死なないよう祈ってやるか…ヒョヒョヒョ
[備考]
参戦時期はKCグランプリ終了以降です
ポケモンについて大まかに知りました。
サトシとの会話から自分とは別の世界があることを理解しました。それと同時にリーゼロッテのオカルは別世界の能力だと推測しました。

【モンスターボール(フェローチェ※ジル)@アニメポケットモンスター】
サトシに支給されたモンスターボール。所持している者にポケモンへの命令権を持つ。
中に入っていたのは、えんびポケモンフェローチェ。
現在のトレーナーは羽蛾。
羽蛾により【ジル】というニックネームが名づけられた。
Zクリスタルに魅かれ各地のトレーナーのZクリスタルを強奪していたが、サトシ達に捕獲され、ウルトラホールに帰された過去を持つ。(SM編114話 )
技の構成は とびひざげり・さきどり・むしのさざめき・ファストガード
「ニャーはもう、あなたなしではいられないニャ〜💗」byニャース

【賢者の石@ハリーポッターシリーズ】
サトシに支給された魔法の力を帯びた綺麗な赤い石。
ニコラス・フラメスが生み出した賢者の石はいかなる金属をも純金に変える力を持ち、飲めば寿命を遥かに延ばす命の水を生み出すことができる。
魔力をもつ者にしか扱うことはできない。なお制限により命の水を生み出すことはできない。
「さて、ワシの計算に間違えがなければ表彰式の飾りつけを変えねばの」byダンブルドア

☆彡 ☆彡 ☆彡


430 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:42:56 VaCZh14s0

「……」

いいか、一度しか言わないからよく聞けよ。チャンピオンとは、栄光の称号。なのに、チャンピオンはゴールじゃない?ポケモンマスターだって?ふざけんな!チャンピオンとしての矜持を持ち合わせてないんならとっととその座から降りちまえ

羽蛾の言葉が頭の中にリフレインする。
ぐるぐると。

「……も」

だけど、向こう見ずな性格じゃ、どの道次の放送で聞くことになるかな〜

「それでもオレは!」

サトシは顔を上げると前へ歩き出す。
前へ前へと。
自分の道を信じて。

負けない逃げない止まない雨はない
涙ぎゅっとこらえて、きしかいせい
踏み出せ、すぐにハレルヤ

【C-5/1日目/深夜】

【サトシ@アニメポケットモンスター】
[状態]:負傷(中)
[装備]:ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]基本方針:対主催として乃亜をぶん殴る
1:それでもオレは乃亜の企みを阻止して、ポケモンマスターを目指す!
2:ピカチュウ……絶対にお前の元へ帰るからな!
3:リーゼロッテに注意する
4:羽蛾に対する複雑な感情
[備考]
アニメ最終話後からの参戦です。
ヂュエルモンスターズについて大まかに知りました。
羽蛾との会話から自分とは違う世界があることを知りました。
羽蛾からリーゼロッテのオカルト(脅威)について把握しました。

【ブラック・マジシャン・ガール@遊戯王デュエルモンスターズ】
闇遊戯の使うデッキのモンスター。
本来のカードには、ブラック・マジシャン」「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数×300アップする効果を持つが、ロワでは特に意味は持たない。
一度の使用で6時間使用不可。
「ブ…ブラック・マジシャン・ガ・ガ・ガ―ルゥゥゥ!」byパンドラ


431 : 表裏一体 ◆s5tC4j7VZY :2023/05/22(月) 05:43:09 VaCZh14s0
投下終了します。


432 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:00:41 pTZ44ZXo0
投下します


433 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:02:22 pTZ44ZXo0
「ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵?割戦隊の五人?石毛(チンゲ)?なんだこの死亡者?ふざけてるのか……?」

――それが読み上げられた死者の名前に対して雄二の正直な感想だった。
まともな名前も幾つかあるが「そんな名前の奴が存在するのか?」と思いたくなるような名前も挙げられては困惑せざるを得ない。

「ボーちゃんも愛称か何かにしか見えないし、なにがなんだかよくわからん。まあ――乃亜の性格的にからかってる可能性もありそうだけど……」

こんな時、麻子なら何か助言をくれたのかもしれない。だがこの場に《育ての親(神)》たる麻子は存在せず、マヤもあまり頼りにならないだろう。
チマメ隊だのなんだの言ってたが、初手で現実逃避に走ってた時点で守るべき対象として見ているところが大きい。

「乃亜の補足を聞く限り、割戦隊の五人は殺しのプロ5人ということまではわかった。でもなんでこいつらだけ名前を纏められたんだ……?」

どうしても死者の名前に対して違和感が拭えない。彼らだけ五人で一人の参加者扱いしてる理由とは……?

「名前だけ聞くとバラエティ番組にしか見えないけど、こいつら本当に参加者なの??」

マヤもイマイチ現実感がない名前に疑問を思い浮かべ、首を傾げる。この質問は流石の雄二も「参加者だろうけど、俺もよくわからん」と言うしかなかった。

「それにしてもこの減り方は……ちょっと危険だな。思った以上に殺人を肯定してる参加者が多そうだ」
「そっか。参加者の減りが早いってことは、誰かが誰かを殺してるってことだもんね……」

「ああ。特に割戦隊の五人を殺した奴には要注意だろうな。ふざけた名前だけど――乃亜の話を信じるなら、殺人のプロが五人まとめて殺されたという可能性が高い。……正直、俺でも手に負えるか不安だ」

割戦隊の五人という妙な名前から得られる情報を参考に――雄二は自分なりの考察を重ねる。彼自身も『殺人のプロ』に該当するような経歴を持つし、そういう人物が五人も殺られたとなると警戒もするというものだ。


434 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:03:16 pTZ44ZXo0

「雄二でも不安ってあるんだっ!」
「当たり前だろ。色々と特殊な経歴があるだけで――俺だってお前と変わらない子供だぞ、一応」

やれやれ――とでも言いたげに呆れる雄二。
麻子と暮らしてる時は子供扱いされ、自分は彼女に保護され面倒を見られている立場だっただけに超人みたいな扱いされてもしっくり来ない。――超人と呼ぶに相応しい姉を知っているから、余計に。

「あはは。そんなことは見りゃわかるんだけどさ――雄二ってすごいやつじゃん!だから不安なんて――」
「俺は何もすごくないよ。それに本当の天才でも――いきなり行方不明になることもある」

風見一姫が、突如として姿を消したように。

(……もしかして何か地雷踏んじゃったかな)

マヤは表向きの態度とは裏腹にそこまで頭が悪いわけじゃない。というよりみんなのためにも元気に振る舞ってるだけで、実際は優しく努力も出来る、察しも悪くない少女だ。
雄二にとってあまり良くないことを言ったと察すると、彼の気持ちを汲むくらいの良心だって当然ある。

「ごめん、雄二。まあチマメ隊の私でも不安になるもんね、ちょっと言い過ぎちゃった!」
「……そのチマメ隊とかいうの、ほんとになんなんだ?」

――と、雄二が聞くとマヤは得意気に「ふふ〜、チマメ隊のことが気になる?気になるのか!?」とか言い始めた。なんとも慣れない愉快さだが、悪い気はしない。

……後の雄二はマヤを更にハイテンションにしたような入巣蒔菜という少女に出会うのだが、この時期の雄二はそんなこと何も知らない。

「とりあえず禁止エリアはちゃんとメモした方が良さそうだな」
「あっ、雄二がチマメ隊談義を無視した!?」
「ガキの話には付き合ってられん」

「雄二も子供じゃん!」
「むっ……。それはそうだが……お前は精神的に俺よりガキだ」
「じゃあ雄二の方が大人でいいから、子供のチマメ隊の話くらい聞いてよ」
「なに!?そこで開き直るのか!?」

マヤは意外と柔軟性もある。油断大敵だ。揚げ足取りとも言うかもしれない。

「それにしても参加者名簿は次の放送までお預けか……。乃亜のやつ、ケチだな〜!」
「……お前が名前を呼んでた『チノ』や『メグ』のことが気になるのか?」
「うん。その二人が私の大切な友達――チマメ隊だからね」

「チノ、マヤ、メグでチマメ隊、とかそんな由来か」
「よくわかったね!やっぱり雄二、すごいじゃん!」
「……これくらい考えたら誰でもわかる。――とりあえずその二人も参加してたら、俺が守ってやるよ」
「え?いいの?」

「ああ。俺の神から、五人救うように言われてるからな。……割戦隊の五人とかいう妙な名前と被る人数なのが何か嫌だけど」

――貴様には、貴様を育てるために支払われた費用に見合う働きをするまでは、勝手に死ぬことすら許可されていない。
一人十衛!!
貴様は国民10人の命を救うことと引き換えに、始めて死を許される。
5人にまけてやる!国民5人を救うまで、野垂れ死にすることは許さん
他人のためには迷わず引き金を引ける人間になれ。


435 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:03:48 pTZ44ZXo0
麻子の言葉は――雄二にとって呪いも同然だ。
例えどんなことがあっても、五人は救う。――事実として風見雄二はこんな殺し合いに巻き込まれず成長した場合でもしっかりと従っている。
それにマヤの友人だというのなら、多少は信用しても良いだろう。

――お友達が居ないことを祈るんだね。この世界は弱肉強食だ。例えそれが親愛なる仲間であろうと、殺さなくてはならない、この摂理は絶対さ。

(――ああ。そんなことはお前に言われなくてもわかってるよ、乃亜)

マーリンがあの『卒業試験』で自分を倒したように。
どんな関係であろうと、人間といううものは襲いかかってくる。世界は弱肉強食。ジョンの件もあるし、そんなことは嫌というほど味わってきた。今更、神を自称する悪趣味な少年に言われるまでもない。

それでも――その上で風見雄二は足掻くことを選んだ。他者を殺して優勝するのではなく、救う道を。――偽りの神が本物(麻子)の言葉を塗り替えられるはずもないのだから。

「ありがとね、雄二!」

雄二の真剣な瞳を見て、マヤはニッコリと微笑んだ。
それは――灰色(グリザイア)の迷宮を突き進む少年にとっては眩しくて。――麻子とはまた違う、なんだか、暖かいものを秘めていて。

「でもその役目を雄二だけには背負わせないよ!私もチノやメグを守りたいからさ――」

日常を歩んできた少女が殺し合いの中で本気で『守りたい』と決意出来るほどチマメ隊は固い絆で結ばれている。
マヤは少しだけ真剣な表情をすると――またニコッと笑う。

「よくわかんないけど、こんなレアアイテムも支給されたことだし!――戦乙女(ヴァルキュリア)のマヤちゃんにも、任せてよ!」
「ふっ――」

ああ――こいつはなんて、馬鹿なんだ。
初っ端から現実逃避してたというのに、今度は急に戦乙女(ヴァルキュリア)だなんて名乗り始めて。……仲間という繋がりのために、そんな貧弱な体で踏ん張ろうとして。

「まったく――お前はバカだな、マヤ」
「えっ!?いきなりバカ呼ばわりは酷くね!?」


436 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:04:28 pTZ44ZXo0



私たちは――チマメ隊はずっと仲良しだ。
乃亜が何か言ってるけど、こんな殺し合いで引き裂かれるもんか!
ゲームを破綻させるのが難しいなんて、無理ゲーに近いなんてわかってるけどさ。それでも私は誰も殺したくないし、誰にも死んでほしくない。もちろん雄二含めてだ。

だってさ――そんな血塗れの手でチマメ隊がまた集まっても、そんなの嫌じゃん。どうせならハッピーエンドを目指そうぜ!

大丈夫。雄二ならきっとこんなクソゲー終わらせてくれるし、私だって今は戦えるはずだし。

「ところでマヤ。乃亜も言ってたが――お前はゲームを破綻させることが出来ると思うか?」
「当たり前じゃん。どんなゲームでも、それがゲームなら攻略法も用意されてるはずじゃね?
それに――」

雄二には笑われるかもしれないけど――言っちゃおうかなっ!

「どんなゲームもラスボス倒せば終わり。だから私と雄二で乃亜をぶっ倒せばいいだけじゃん!」

笑われてもいい。
無理ゲーって言われてもいい。
それでも私はみんなで日常に帰りたいし、みんなを殺して優勝なんて道は意地でも選びたくないから。
……雄二とも仲良くなったから、もう仲間みたいなものだし!

「うむ。お前の言葉も一理あるな」

雄二は――意外と私の言葉を聞いて、ニヤッとした。それは『ゲームに勝つ』って気持ちがなきゃ出来ないような表情で。

「この厄介な首輪も他の参加者次第では外れるかもしれん。それが攻略法かもな」
「じゃあそういう参加者を探さなきゃね。あ、ゲーム風に参加者(プレイヤー)とでも呼ぶ?」

「……ゲームというのは乃亜の言い方で、俺たちまでノッてやる必要もないだろ。それにこんな血なまぐさいものをゲームっていうのは――お前には何か似合わないぞ」
「あはは、それもそうだねっ!」

ゲームっていうのは――たしかにこんなものじゃない。チノやメグと「ゲームしようぜー」って誘うにしても、こんな危険なゲームは絶対に嫌だし。
だってどう見ても殺し合いじゃん、これ。


437 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:04:55 pTZ44ZXo0

「とりあえず、まずはどうする?」

タブレットのマップをザーッて確認しながら、雄二に聞く。対主催チームとして乃亜を倒すために、どんなことをするのがいいかな?

「海馬コーポレーションに向かう――と言いたいところだが、他の参加者も集う可能性がある場所に行くのは危険だろうな」
「え、なんで?仲間や情報を手に入れるチャンスじゃね?」

「俺でも対処出来ないマーダーが他参加者を一網打尽にするためにそこへ向かう可能性がある。人が集まる場所にわざわざ向かうマーダーなんて確実にヤバいやつだと思うからな」
「雄二でも倒せないって……そんなやついるの?」

なんとなく雄二からは強者のオーラ的なものを感じる。それ以上なんて――。

「わからん。だが最悪の想定はしておくべきだろう。初っ端からプロの殺し屋が五人も殺されるような環境だからな」
「それはそうだけど……じゃあチノやメグは……」

「もちろん約束通り救うさ。そのためにもまずは、強くなる必要がある。マヤ――今のお前じゃマーダーに遭遇した時、殺されるリスクが多すぎる」

「それは、私が弱いから?」
「ああ。弱いことが悪いとは言わないが――ここは弱肉強食だ。チノとメグの心配もいいけど、一緒に戦うならまずは戦うための術を身につけてもらう。つまり修行だな」

「修行!いいよ、そういうの一度はやってみたかったんだよね!」

私は雄二の言葉に全力で返す。
たしかにチノやメグを助けるには。雄二と一緒に戦うには、まずは強くならなきゃね!

「お前ならそう言うと思ってた。――手は抜かん、お前を今から自分の身は守れるくらいの戦乙女(ヴァルキュリア)にしてやる」


438 : 迷路の中、僕ら二人、空を目指す ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:06:12 pTZ44ZXo0



雄二はマヤの支給品について一通り説明書を読んでいる。それを見てわかったことは、渇望こそが最も大事だということだ。

そして武器という性質上、その強さは当然ながら使い手に左右される。支給品により身体能力が上がり、異能を得ても技術がなければ宝の持ち腐れだ。

「これから始まる修行は俺とタイマンによる組手だ。いちいち理論を説明する時間はない。お前の肌で感じ、お前自身で技術を磨け。当然、支給品の所持は許可する」

「え?でも刃物は危なくね?」
「安心しろ、俺にも特殊な刃物が支給されている。――俺もこれを使いこなさなきゃな」

グロックとパンプキンはどちらも銃火器だが、残り一つの支給品は前衛でも戦えるような刃物だった。
白い布に包まれたその大剣は、雄二やマヤよりも遥かに大きい。

「――斬月。これがこの刀の名前らしい」

いつも誰かを護るために戦ってきた男――黒崎一護の斬魄刀。それこそが斬月。
使い手こそ参加していないが――五人の存在を救おうとする少年に、その刀は渡った。

「かっけー!でも私の戦雷の聖剣も負けてないよ!」

マヤは目を輝かせると、自身に支給された聖遺物を構えた。

「お前のその剣は――この戦場を照らす光になれる可能性があるらしい。使いこなしてみろ、マヤ」
「うん。――私がみんな、照らしてあげる!」


【B-2/1日目/深夜】
【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:斬月@BLEACH、グロック17@現実
[道具]:基本支給品、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
1:マヤに同行。保護しつつ、共に戦う。まずは修行だ
2:パンプキンの性能を知りたい。だが性質上、戦場でだろうな
3:斬月を使いこなす
4:未熟なマヤのことを考えて海馬コーポレーションにはまだ近付かない
[備考]
※参戦時期は迷宮〜楽園の少年時代からです
※ 割戦隊の五人はマーダー同士の衝突で死亡したと考えてます
※卍解までいきなり出来るのか、成長が必要かなどは後続の書き手に任せます

【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:チマメ隊や雄二、みんなと一緒に戦う
1:バラエティじゃないなら、わたしが戦わなきゃ!
2:雄二って何かリゼみたいなやつだよね。やっぱ強いのかな?
3:雄二と修行して、強くなってやるー!
[備考]
※まだ活動位階にすら達してません
※チノやメグが参加してる可能性があると思ってます


439 : ◆QUsdteUiKY :2023/05/22(月) 09:06:28 pTZ44ZXo0
投下終了です


440 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:08:33 HJUGpmC.0
投下します


441 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:11:27 HJUGpmC.0


ガツ!ガツガツ!
ガツ!ガツガツ!!
バクバクムシャムシャズルズルガツ!ガツガツ!!
時刻は深夜0時半を回った頃、乃亜の放送が始まる三十分ほど前。
深夜のファミリーレストランに、厨房の中でも聞こえてくる程の咀嚼音が響く。


「うんめェ〜〜!!ネモ、これめちゃくちゃうめえぞ〜〜!!」

「よく食べるね君。まるでミズウオみたいだ」


テーブル中に所せましと並べられた料理を吸い込む様に食べる少年、孫悟空。
そんな悟空の様子を、ネモは半ば呆れた様子で見つめていた。
食事でも最低限の魔力の補給になるので彼もサンドイッチをはむはむと食しているものの、食欲は余り沸いていない。
今は殺し合いという非常時なのだから。
だというのに、目の前の少年はそんな事知った事ではないという様子で料理に舌鼓を打っている。
ちなみに、食材はファミレスに何故か常備されていた物をやはり緊急時という事で勝手に拝借した。


「まだまだあるから遠慮せず食べてね〜」
「おう、ごっつぁん!……なぁネモ、あれ誰だ?お前の姉ちゃんか?」
「違うよ、あれは僕の分身みたいなものさ」
「へぇ〜…そういや天津飯も昔四人に増えたりしてたな、そういうもんか」


食べ終わった皿を回収して、新しい料理の皿を持ってくるネモに瓜二つなネモ・ベーカリーも特に気にすることなく、一心不乱に料理を貪る。
その様はもう食べているというより飲んでいる様だった。
エネルギー補給は大事だし、一応命の恩人なのでテーブルに肘を突いてその様を見守っていたネモだったが、そろそろ本題に入らねばならないだろう。
そう思い、今後の動きを切り出す。

「それでね、悟空。これからの事なんだけど…君の言う通り、
首輪のサンプルを手に入れて、何処かに腰を落ち着けて首輪の解析に取り組もうと思う」


442 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:12:18 HJUGpmC.0


ネモ達の立てた、差し当たってのプランは子供でも分かる単純な物だった。
先ず、首輪のサンプルをできれば複数個入手し、どこか拠点を決めて解析に取り組む。
移動するよりも先ほどのカオスの様な殺し合いに乗った参加者…いわばマーダーとの接敵を避けられ、ネモも落ち着いて首輪の解析・解除に専念できる。
後は首輪が首尾よく外れれば悟空の瞬間移動で乃亜の位置を割り出し、直接乗り込んで自分が片を付ける。
それは悟空が提案してプランでもあった。
成程それなら殺し合いの短期決着も望め、生存者もかなり多い人数の脱出が見込める。

だが、問題が三つほどあった。
一つ目は、その腰を据えたエリアが禁止エリアに指定される恐れがあること。
これについてはもう指定されれば爆破されるまでに他のエリアに移るしかない。
二つ目は、腰を据えて移動を制限する事で、情報収集がどうしても滞ってしまうこと。
此方については首輪の解析がスムーズに終わり、乃亜を早い段階で制圧できれば問題は少ないと言える。
しかしもしも首輪の解除が難航し長期戦になった場合、情報戦においては中々厳しい立場に立たされてしまうだろう。
最後に、この方法を行えば例え大量脱出が成功したとしてもその過程で何割かの犠牲が出る事は避けられない、ということ。
そこでネモと悟空が考えたのが、解析・拠点防衛組と、他の参加者の保護組と言う二手に分かれるプランだった。


「悟空、さっき君が感じた…君の息子がいるという話は確かなんだね?」
「あぁ、間違いねぇと思う。ありゃ確かに悟飯の気だった」
「その子の位置は割り出せる?」
「…すまねぇけど、そりゃ無理だ。この島に妙な気が溢れてて位置まで探れねぇ。
まったく、舞空術まで禁止されてるし、オラ窮屈でしょうがねぇぞ」
「他の参加者の探知に、移動の制限、か。君が参加者の中で一番ハンデを科されてるのかもね」


とは言え、自分がもし殺し合いを開いたとすれば同じ処置をするだろうと、ネモは考えた。
悟空の様に強靭な者に殺し合いを阻止するべく動かれれば、殺し合いが成り立たない。
少なくとも、他の参加者との連携が取り難いように取り計らうだろう。
その視点で言えば、彼が使う舞空術という飛行方法の制限と、気の探知という索敵を封じるのは必然と言えた。
尤も、戦闘時は舞空術を使えたので制限も完全ではないのかもしれないが。


443 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:13:14 HJUGpmC.0


「まぁ心配ねぇさ。悟飯の奴が早々死なねぇだろうし、近くに来れば流石にオラも分かる。
そうすりゃオラか悟飯が他の奴らを探して一つの場所に纏めとけばいい。簡単だ。
なんせ悟飯の奴はオラより強かった時期もあるんだぞ」
「それは頼もしいな。上手く行けば…参加者の保護と解析を並行して進められる」


目の前の少年が既に五十を超えて孫までいるというのは信じがたい話だが。
その尻に生えている尻尾と、自分も似たような存在であることに気づいてネモもまぁそういうモノなのだろうと自然と納得がいった。
ともあれ、ネモが死を覚悟したカオスにも圧勝した悟空のお墨付きだ。
彼の息子の悟飯の実力も折り紙つきだろう、そしてきっと、人格面も。
二人が合流すれば、選択肢は大きく広がる。
直接の面識がないネモも漠然とだがそう感じる事ができた。


「君の息子さんの捜索と、首輪のサンプルの入手を基本の方針として動こう」
「おう、でもあと少しだけ待ってくれ、そうすりゃ腹八分目に──」
「いいよ。君のコンディションを最善にしておくのか最優先だ。
多分君には、これからも負担をかけることになる」


殺し合いをしている以上、安穏としている訳にはいかない。
だが、焦って動けばそれこそ乃亜の思うつぼだ。
恐らく、サーヴァントの力すら超えるあのカオスの様な参加者は他にもいるのだろうから。
先ずは負担を強いるであろう悟空の調子を整えて、その上で出発する。
そう決意すると、ネモは今も竜巻の様にテーブルの上の料理を攫う悟空の姿をじっと見て。
一言だけ、興味が抑えきれずに尋ねてしまう。


「……ねぇ悟空。君の息子の悟飯って子は、君みたいな子なのか?」
「ん〜?いや、性格はオラとはあんまり似てねぇぞ。
後、頭の出来もな!オラ似ずにチチが小せぇ頃から勉強勉強って言ってたお陰で今は学者やってて、オラとしてはもっとトレーニングもして欲しい所なんだけど───」


444 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:13:53 HJUGpmC.0






「どうしました、お二人とも。飲まないんですの?
心配しなくても、毒なんて入っていませんわよ」


時刻は深夜1時15分
海馬乃亜の放送から十五分ほど後。
そう言って、北条沙都子はいの一番に、手ずから入れたレモンティーに口をつけた。
同室しているのは二人、黒髪の筋骨隆々な、如何にも強そうな少年。
もう一人はこれまた黒髪の、少年から心なしか顔を逸らしている様子の少女。
少年の方は孫悟飯、少女の方は結城美柑と言った。


「……下着までご用意させて頂いたのに、信用してもらえないのは悲しいですわね」
「あっ!いや、そういう訳じゃ…い、頂きます!」


一向に手を付けない二人の様子に、沙都子は哀し気に目を伏せる。
その様を見て、慌てて悟飯も沙都子に続いてレモンティーに口をつけた。
だが、空気は重いままだ。
狂気の白騎士シュライバーの襲撃、それによる二人の少年の死。
怯えた様子の美柑を見て困り果てている悟飯を見つけたのが、沙都子と二人の出会いだった。
それから腰が抜けて、その上失禁までして上手く歩けない美柑に手を貸して。
適当な民家まで運び、何故か中身が入ったままの洋服箪笥から替えの下着を都合までしてくれたのが二人にとっての沙都子だった。
何しろ悟飯は怯える自分と同じくらいの女の子の扱いなんて分からなかったし、化け物を見る様な目で見られるのは心がずきりと痛んだ。
だから、沙都子が現れてくれたのは悟飯からすると本当にありがたかったのだ。
美柑も年の近い同性に胸襟を緩めたのか、さん付けとはいえ下の名前で呼び合っている。


「美柑さん、すみませんね?本当ならお風呂でも沸かして入れてあげればもっと落ち着いたんでしょうけど……」
「あっ…いえいえ…沙都子さんのお陰で今は大分落ち着いたし……ありがとう」
「心配いりませんわ。こんな状況ですし、助け合わないと」


にっこりと笑う沙都子は、悟飯にとってまるで大人の女性の様だと思った。
気の大きさ的には、間違いなく子供であるのに関わらず、だ。


445 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:14:20 HJUGpmC.0


「……なんだか、沙都子さん。落ち着いてますね」


ふと、そんな事を口にする。
疑っていたわけではない。本当に思ったことをそのまま口に出しただけだ。
ただ、美柑さんと同じ年で、自分の様に幼少期から星の命運を賭けた戦いを経験しているわけでもなさそうなのに。
酷く落ち着いている。そう思った。
それを聞いた沙都子は、どこか不満げに、唇を尖らせて。


「……心外ですわね悟飯さん。わたくしが心臓に毛が生えてるみたいな言い方は。
わたくしだって、勿論怖いんですのよ?」
「あっ!その、ご、ごめんなさい…失礼でした………」
「まぁでも落ち着いて見えるのは──部活の影響でしょうね」


ぐっと握りこぶしを作って。
意気揚々と答える沙都子の顔は、先ほどまでの大人びた雰囲気とは違い、外見相応の少女の様だった。
美柑が「部活?」と呟くと、妙に高いテンションで彼女は語り始める。


「部活とは!雛見沢分校の精鋭メンバーによって行われる命懸けの真剣勝負!
敗者は全ての尊厳を奪われ!勝者は青春の栄光と、何でも敗者に罰ゲームを───」
「そ、そうなんだ」
「それは凄いですね……あはは」


急に怪気炎を上げて部活、という集まりを語る沙都子に、若干引いた様子で二人は愛想笑いを浮かべる。
だが、沙都子が本当にその部活と言う物を愛しているらしいのは伝わってきた。


「…でも、それなら大変ですね。古手梨花さん…でしたっけ。
沙都子さんのお友達も連れてこられてるかもしれないんですよね」
「えぇ…梨花がそう簡単に脱落はしないと思っていますが、それでもやはり心配ですわ」
「………でも何で、その梨花さんもこの島に来てるって分かったんですか?」


446 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:14:56 HJUGpmC.0


自信満々に、古手梨花という少女がいる事が確定事項かのように話す沙都子に、悟飯が疑問の声を上げる。
未だ名簿を確認できる時間ではない。
自分の様に気を感じ取って父の存在を確信したならばともかく、目の前の少女の場合そうでは無いだろう。
であるならば、一応子供という条件は満たしているだろうが、何を根拠に親友の少女がいると思ったのか。


「いるからですわ」


問いかけに対する返答は一言だった。
有無を言わさず、と言った様子で、彼女は断言した。
怪訝な顔を浮かべる二人に、得意げに、陶酔した様な表情で少女は続ける。


「わたくしがこうして殺し合いに参加している以上、梨花もいないはずありませんもの。
そう言うモノなんですの、わたくし達の関係と言うのは」


二人がまた若干引き気味の表情を浮かべるのも構わず、少女は我が世の理を語る。
行ってしまえば根拠など無い当て勘であったが、その言葉には奇妙な説得力があった。
その後にですから、と続け、パン!と沙都子は手を叩く。
そして、二人に告げた。


「もうそろそろ出発しませんと。梨花を早く見つけて差し上げなければいけませんから
美柑さんも、ある程度持ち直したようですし」
「えっ!?もう……?」
「一人じゃ危ないですよ沙都子さん、僕たちと一緒に──」
「言ったでしょう?これでもそれなりに修羅場は潜っていますわ。
勿論、悟飯さんが語ったシュライバーと言う方が逃げた方向とは逆に進路は取ります。
悟飯さんも探し人がいるなら、手分けした方が早いでしょう?」
「でもやっぱり危ないですよ!みんなで一緒にお父さんを──」
「大丈夫です、わたくしよりも、悟飯さんは美柑さんに付いていてあげて下さいな」


447 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:15:29 HJUGpmC.0


引き留めようとする悟飯を尻目に、沙都子は民家の庭に続くガラス戸へと歩く。
ガラス戸を静かに開き、いつの間にか用意していた靴に履き替えた。
不味い、本気で沙都子さんは一人で行くつもりだ。
そう考えた悟飯は飛び出してそれを制止しようとした。
さっきは納得しかけたが、いるかも確定していない少女を求めて徘徊するにはこの島は危険すぎる。
だが、その時だった、靴を履き替えた沙都子を上空から何かが攫ったのは。


「な、何だ!?」
「沙都子さん!?」


慌ててガラス戸の方へと飛び出していく悟飯。
美柑も何が起きたか分からないという顔でそれに続く。
民家の庭に身を乗り出した二人が見たのは、小さな少女に抱えられる、沙都子の姿だった。
銀色の髪をした美しい少女に抱えられて、彼女は静かに微笑を浮かべていた。


「ご心配ご無用。わたくしにはこうして頼りになる騎士様がいますから」
「僕は君の騎士になった覚えはない」
「あぁ、今のセリフはお気になさらず。ともかく、大丈夫ですから。
悟飯さんはきっちり美柑さんがもう少し落ち着いてから行動されては如何でしょう?」

「ま、待っ───」


美柑が沙都子を引き留めようと手を伸ばそうとする。
だが、当然その手が届くはずもない。
仰ぎ見る沙都子の表情は、出会った時と変わらぬ穏やかなもので。
そこに不穏な物を感じ取ることは無かった。



「───では、ごきげんよう、お二人とも」


448 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:16:00 HJUGpmC.0



その言葉を残して。
北条沙都子と、謎の銀髪の少女は、深夜の空へと消えていった。
取り残された二人は、暫く空を見つめていたが。
やがて諦めたように嘆息して、心中を吐露する。


「……もう少し、ゆっくりして言っても……」


本当に、本当に、怖かったのだ。
ララさんがリトの元に来てから、変なことはいっぱいあったし。
世界の命運が掛かった闘いなんて言うのも、できそうな人たちがいつの間にか周りにいるようになったけど。
でも、あそこまでの殺し合いを見たのは初めてだった。
あんな、血なまぐさくて、本気で殺意をぶつけ合って、お互い殺す気で銃で撃ったり殴ったり……
その結果が、スネ夫君と私より小さなユーイン君の死だ。
殺しあった訳じゃない、二人は悟飯君たちの争いの余波で死んでしまったのだ。
こんなの、私が生き残れるわけないじゃない。
ちょっと非日常に触れただけの、タダの子供が、殺し合いに優勝できる訳ないじゃない。
そう思ったら、悟飯君の事も途端に怖く思えた。
だって、彼は適当に暴れるだけで、私をいつでも殺せるのだから。
そんな事、彼は考えていないだろうけど。
でも、ユーイン君とスネ夫君が死んだときも、きっと彼はそんなつもりじゃなかった筈だ。
彼に責任がある訳じゃないのは分かってる、けど……


───ひっ、来ないでっ……!


正直、怖いし、気まずい。
気まずいって言うのは、悟飯君も多分、思ってる気がする。
沙都子さんが私達の目の前に現れて私の面倒を見てくれた時も、ほっとしたような顔をしてたから。
彼女が少しの間でもいてくれた分、また二人か、と思うとほんの少し…気が重くなった。
なんだか沙都子さんのお陰で去っていた頭の中の疲れが、ぶり返してきた気がする。


449 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:16:21 HJUGpmC.0


「沙都子さん……梨花さんに会えるかな」


親友が、大切な人が、この島にいて、殺し合いをさせられている。
その事を想像して真っ先に浮かんでくるのはリトと、ヤミさんの…二人の顔。
リトは…大丈夫だろう。私よりも、悟飯君やスネ夫君たちよりずっと大人だし。でも。


(ヤミさん……ヤミさんは、いないよね?)


そこまで考えて。
何を考えているんだ、私は、と。正気に戻った。
殺し合いになんて、呼ばれてない方がいいに決まっているのに。
今、私、ほんの少しでも、いてくれないかな、と考えなかったか?


「あの……美柑さん」


立ち尽くす私に、悟飯さんが話しかけてくる。
その顔はやっぱり、少し気不味そうだった。


「やっぱり疲れてるみたいですから…もう少し休憩してから出発しましょう」
「でも、悟飯君のお父さんも探さないと……」
「大丈夫です、お父さんはこんな殺し合いで負けたりしません。少しくらい休憩を長くとってもきっと見つけられますよ」
「………うん、ありがとう」


悟飯君の提案に私は頷いて、部屋の中へと踵を返す。
お言葉に甘えて、もう少しだけ休もう。
彼は、やっぱり優しかった。優しくしてくれた。


──殺す……? 何を言っているんですか、ふふ……まだ早いよルサルカさん
───こんな奴は、もっと苦しめてから殺してやらなくちゃ……


そんな彼の優しさに、ぎこちない笑顔でしか返せない私が、
何だか…すごく嫌だった。


450 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:17:02 HJUGpmC.0






「さて、この辺でいいでしょう。降ろしてくださいな、メリュジーヌさん」


乞われるままに、高度を落とし、地面へと降り立つ。
飛行能力も制限されているらしい、とメリュジーヌは乃亜が与えたハンデを認識しつつ、短く尋ねる。
あの二人を、見逃して良かったのか、と。


「悟飯さんは貴方の見立てでも、相当お強いんでしょう?
ならこんな序盤に真っ向から挑むのは得策ではありませんわ
それに、手は打ちました。上手く行けば、自滅して下さるかもしれません」


そう言って沙都子は答えながら、空の注射器をメリュジーヌの足元に放り捨てた。
ころころと転がる注射器を見つめた後、ぐしゃぐしゃになるまで踏み潰す。
確かに、あの黒髪の少年は強かった。
並みの妖精では相手にならない。
メリュジーヌの見立てでも、全力を出し尽くして勝てるか否かという程の力量を感じた。
だが、そんな厄介で強い相手でも。
これまでオーロラの命令で汚れ仕事を行ってきたメリュジーヌでも。
腹の内側にどろりとした苦々しい物を感じた。
あんな年端のいかない少年に、毒を盛ったというのは。


「納得していない顔ですわね?」
「……別に」
「考えなしに戦っていても勝てませんわよ、メリュジーヌさん。これはサバイバルゲーム。戦略が大事なのですから。オーロラさんのために、優勝しませんと、ね?」
「…当然だ」
「そんな顔しないで。戦いたいのなら…そうですわね。
次に会った対主催さん…でしたっけ?それを相手に憂さ晴らしすればいいですわ。
わたくしも貴方の実力が見たいところですし」
「……………」


451 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:17:42 HJUGpmC.0


最後の竜は答えない。
無言のままに、歩むのみだ。
だが、それでも沙都子の歩幅に合わせて歩むその様は、彼女が沙都子に与する意思がある事の何よりの証明だった。
そんな素直になれない同行者の態度に苦笑を浮かべつつ、足元の粉々になった注射器を見やる。
注射器に入っていた薬品の名前は、H173。
雛見沢症候群という奇病を感染・発症させる悪魔の薬品である。
それを沙都子は、悟飯のティーカップに盛った。


「折角一枠しかない虎の子を使ったんですもの──精々上手く踊って下さいね?悟飯さん」


鬼さん此方、手のなる方へ。
どんなに逃げても、捕まえてあげる。
瞳の色を真紅に煌めかせ、悪魔はほほ笑んだ。

【H-4/1日目/深夜】

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:健康
[装備]:FNブローニング・ハイパワー(10/13発)
[道具]:基本支給品、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)
[思考・状況]基本方針:優勝し、雛見沢へと帰る。
1:メリュジーヌさんを利用して、優勝を目指す。
2:使えなくなったらボロ雑巾の様に捨てる。
3:精々頑張って下さいね?悟飯さん
4:願いを叶える…ですか。眉唾ですが本当なら梨花に勝つのに使ってもいいかも?
[備考]
※綿騙し編より参戦です。
※ループ能力は制限されています。
※H173入り注射器は使用後破棄されました。

【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、自暴自棄(極大)
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。


452 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:18:08 HJUGpmC.0






ぎりぎりぎり。ぎりぎりぎり。


命を賭けた戦いは、四歳のころから経験してきた。
ピッコロさんや、皆の足を引っ張っちゃった時もあったけど。
それでもクリリンさんやお父さんは優しかった。
お母さんは僕に戦ってほしくないと、まだ小さい僕がそんな危ない事はしないでと何度も頼んできたけど。
それでもみんなの為に戦うのは辛くなかった。
誰かを傷つけるのはすっごく嫌だし、楽しくなんてないけれど。
それでもお母さんを守りたかったし、お父さんの信頼に応えたかった。
その気持ちの方が、大きかった。
そして、いつの間にか僕はお父さんより強くなってた。
───初めての、経験だった。



───ひっ、来ないでっ……!



助けた人に、化け物を見る目で見られるのは。
仕方がない事だと思う。美柑さんは、殺し合いなんてした事がないと言ってたから。
美柑さんは、悪くない。
でも、それでも、やっぱり……悲しかった。


「お父さん…どこにいますか?」


お父さんの顔が、見たかった。
お父さんが、本当にこの島にいるのかは分からない。
でも、あの時感じた気はお父さんのモノだったと思う。
お父さんに会って、よぉ、悟飯!と笑いかけて貰えたなら。
この悲しい気持ちも、きっと治ると思えた。
でも、今は美柑さんがいる。彼女を守らなきゃいけない。
美柑さんに合わせて動いてあげないといけないだろう。
僕は、彼女よりもずっと強いんだから。
でも、それでもやっぱり。


「……お父さんに、会いたいな」


453 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:19:21 HJUGpmC.0


ぎりぎりぎり。ぎりぎりぎり。


……サイヤ人と言う種族は、地球人などより遥かに強靭だ。
鍛えたサイヤ人は地球人の超能力などの特殊能力を簡単に無効化するほど。
また、毒物に対する耐性も並大抵のものではない。
この殺し合いにも招かれている孫悟空も、幼少期に常人なら即死する劇物である超神水を飲んで生還している。
だがその一方で、タンパク質で構成されている生物として、肉体的な働きかけには抗し得ない一面もあった。
例えば、大猿や超サイヤ人になる事で興奮状態となる性質。
例えば、ウイルス性の心臓病で死に至った孫悟空。
例えば、ベビーというツフル人。
彼の者は戦闘力で言えばサイヤ人達に遥かに劣っていたが、
傷口から体内に侵入し、脳を乗っ取る特異体質で孫悟空とパンを除くサイヤ人全員を洗脳した。


もし、投与されたその薬が何か呪いや特殊能力による精神干渉であればサイヤ人としての能力耐性で跳ねのけただろう。
もし、投与された薬品が青酸カリなどの即効性の毒物であれば、ハンデによる消化器官への制限を加味しても耐えて見せただろう。
だが、その薬品に込められた微生物による奇病が誘発するのは、疑心暗鬼から来る興奮状態、凶暴性の発露。
それは、サイヤ人の凶暴で野蛮な、本来の気質と合致してしまっていた。
故に彼の肉体は、北条沙都子の手によってレモンティーから摂取させられたソレを、毒物と認識できなかった。
幾重にも張り巡らされた、サイヤ人としての強靭な種族耐性のセーフティーネットの穴をすり抜けてしまった。
だが、それでもサイヤ人の耐性が働いたか、それとも乃亜自身が薬品に手を加えたか、
発症にはまだ至っていない。感染に留まっている
これから彼が強いストレスを受けなければ、発症には至らないだろう。
だが、その事を知っているのは。
今はまだ、海馬乃亜、ただ一人。


454 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:19:43 HJUGpmC.0


【I-5/1日目/深夜】

【孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可、雛見沢症候群感染
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:お父さんを探したい。
2:美柑さんを守る。
2:スネ夫、ユーインの知り合いが居れば探す。ルサルカも探すが、少し警戒。
3:シュライバーは次に会ったら、殺す
[備考]
※セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。
※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可
※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。
※雛見沢症候群に感染しました。ただ発症はまだしていないため、特に変調はありません。
発症に至るかどうかは後続の書き手にお任せします。


【結城美柑@To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
[状態]:疲労(小)、強い恐怖
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ヤミさんや知り合いを探す。
2:沙都子さん、大丈夫かな……
3:正直、気まずい。
[備考]
本編終了以降から参戦です。


455 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:20:37 HJUGpmC.0






支給された、巨大拳銃──.454カスール カスタムオートを、腰のホルスターに付ける。
自前の魔力で戦闘はできるが、こんな状況だ、魔力は節約した方がいい。
本職のアーチャー程ではないが、拳銃の扱い方も心得ている。
普通の人間なら持て余すであろうその拳銃も、サーヴァントの膂力ならば問題ない。
悟空も今は完全に復調し、もう既に腕に傷は塞がっていた。
……大したものだ、サイヤ人と言う種族は。


「お〜し!先ずどこから行く?なぁネモ?」
「そうだね、君は君の息子さんがどこに向かいそうか心当たりはある?」


聞いてみたが、悟空にとって見知った建物は無し。
悟飯にとっても同じだろう、と言うのが彼の返答だった。


「あ!でも悟飯の奴なら学校目指すかもな〜!」
「学校…か。じゃあ近くの教会…できれば図書館も調べてから、
聖ルチーアとG-5にある小学校を目指してみようか」
「おう、でも教会と図書館ってのはなんでだ?」
「この辺りで唯一地図に載ってる施設だからね、何かないか調べておきたいんだ
君にとっては寄り道になるけど……いいかい、悟空?」


ネモが尋ねると、悟空はニカッと、快活に笑って頷いた。


「心配すんなって、もう十四人も死んで焦る気持ちも分かるけど、悟飯の奴なら大丈夫だ
彼奴もきっと、オラがこの島にいるのは気づいてるだろうし…直ぐに会えるさ」
「……そうだね、君の息子だし」


456 : さぁ誰かを、ここへ誘いなさい ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:22:06 HJUGpmC.0


朗らかな笑みに、人見知りなネモも思わず微笑み返した。
だが、同時にある種の懸念も胸の奥に沸いてくる。
……三騎士では無いとは言え、それでも人間とは隔絶した能力のサーヴァント。
サーヴァントでも殺しかけた、天使の少女。
そして、その天使の少女に圧勝したのが、目の前の悟空だ。
息子も、それに準ずる実力で、殺し合いに乗るような人格ではないという。


(………何故、乃亜は。そんな二人を一緒に招いた?)


反抗されるのが分かりきっている、親子の実力者。
自分が主催者ならどうするかと考えてしまう。
思考の海に沈みかけた所で、声を掛けられる。


「お〜い!何してんだネモ!置いてくぞ〜!」
「あ…、あぁ、すまない。今行く!」



………父親は未だ、息子に迫る危機を知らない。



【B-7/1日目/深夜】

【孫悟空@ドラゴンボールGT】
[状態]:満腹、腕に裂傷(処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:悟飯を探す。
2:ネモに協力する。
3:カオスの奴は止める。
[備考]
※参戦時期はベビー編終了直後。
※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可。
※SS3、SS4はそもそも制限によりなれません。
※瞬間移動も制限により使用不能です。
※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。


【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING
[道具]:基本支給品、13mm爆裂鉄鋼弾(50発)@HELLSING、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:教会→図書館の順で調べた後、学校に向かう。
2:首輪の解析のためのサンプルが欲しい。
3:カオスは止めたい。
[備考]
※現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
※宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。


457 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/22(月) 19:22:32 HJUGpmC.0
投下終了です


458 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/22(月) 19:44:09 lrpNn9nk0
投下ありがとうございます!

>友よ〜この先もずっと…
五歳児とは思えぬ、高すぎる倫理観、下半身丸出しにする以外は理知的過ぎる……。
経験値が、普通の幼稚園児と違い過ぎすからね。仮にも戦国時代に武将の生き死にを見てきた男だ、面構えが違う。
逆に年齢に反して、フランの精神的な幼さも目立ちますね。出会って、一時間くらいの男の子に大分依存してるのは危険な兆候に見えます。

>表裏一体
HA☆GA、想像通りの卑劣ムーブかましてて草。
早速、ボール強奪するのもそうですが、その強奪したポケモンも乗り気なのサトシが可哀そう。
ただ卑怯なだけじゃなく、チャンプであるサトシの羽蛾との在り方の違いが、対比として面白いですね。
多分、最初は猫被って同行する予定だったのに、チャンピオンの話で地雷踏まれたせいで予定変更したんでしょうかね。
あとポケモンから攻撃喰らっても、ピンピンしてるサトシはやっぱ強いっスね。

>迷路の中、僕ら二人、空を目指す
割戦隊をちゃんとプロの殺人鬼として、それを倒した相手を警戒する雄二、やはり優秀ですね。
ふざけた名前扱いされる石毛に悲しき今……。
それはそうと、前回現実逃避していたとは思えないマヤ、ちゃんと前向きに殺し合いに抗う事を決意してますね。
今現在、斬月を手にして一護のように手の届く範囲で、雄二はちゃんと人を救えてると思うと感慨深いですね。

>さぁ誰かを、ここへ誘いなさい
沙都子、こいつほんま……私の中で羽蛾と並ぶ、正常運転キャラの一人ですね。
てっきり、メリュジーヌと片っ端から殺しまくるのかと思えば、毒を使う頭脳プレイ。
でも、猫被ってる時も時折見せる、梨花ちゃまへのヤンレズ感情が漏れ出しちゃうのが、愛が重すぎますわ。愛さえあれば、何でも許されると思ってんなこいつ。
なんかもう、こんなふざけた爆弾押し付けられるわ、友達は実質レイパーマーダー化するわ、一番可哀そうなの美柑だと思います。
悟空ー!!!!はやくきてくれーっ!!!!


459 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/22(月) 19:54:15 lrpNn9nk0
風見雄二、条河麻耶、おじゃる丸、水銀燈、勇者ニケ
予約します。


460 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:37:10 sYSzTNBE0
投下します


461 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:37:32 sYSzTNBE0

「……なるほどね。」

再び流れた海馬乃亜の放送。その本質と中身が『子供たち』だけの殺し合いだと知った時、右天の頭の中でこの殺し合いに対する認識は一変した。
『子供たち』の該当は年齢であり、外見であり、ともかくそれに当てはまるならば何でも良かったらしい。
詰まるところ、精神年齢=外見年齢ではなく、文字通りの人を超越した長寿も最悪紛れ込んでいる、ということか。
それ以外はおおよそシンプルな内容だ。殺し合い、最後に生き残った者を優勝者として、その者の願いを何でも叶える事ができる。

「海馬乃亜はアニメや漫画で読み飽きたような殺し合いがご所望、ということかな?」

強いて言うならば、子供たちだらけの殺し合いだけど、言い加える。
そういう癖(マニア)の大人がやるのなら納得や理解も行く。だが海馬乃亜という明らかな少年がそれを開いた理由が単なる興味本位か、大人たちのような捻れた願望からなのか。
何を考えているのか予想がつかない、底が知れない、という点では上司でありシメオン社長でアダム・アークライトも同じなのだが、それを考えればまだ海馬乃亜の方が可愛いものだ。

「まあ、少しばかりやり方は考える必要はあるようだね。」

ともあれ、総人数80名の子供だらけの殺し合いだ。
もしかしたら外見が子供ってだけで参加させられているのもいるかもしれない。
女子供だからといって油断をしていたら足元を掬われかねないのは、ブラックスポットでもここでも変わらない。事実、右天もその手に足元を掬われて一度殺された事があるのだから。

右天のニードレス能力『バミューダアスポート』
物体の透明化という、シンプルながら応用力に長けたミッシングリンク級に相応する高位のニードレス能力。
本来人間は情報取得の80%を視覚に頼っており、視覚情報を阻害されるということはそれだけでも戦闘においては致命的となりうる。
反面能力自体に直接的な攻撃力は存在しないため、小手先の手段を用いる事になるのだが。この状況下においては支給品のレヴァンティンを用いることにある程度カバーできている。
何より、蛇腹剣や弓矢等に形状を変化させられるこの武器とは特に相性がいい。透明化に射程が察知されづらい武器というのは鬼に金棒と言っても等しい代物だからだ。
最も自分は魔術師でなくマジシャン、魔法は使えないので使える機能に制限はあるのだが。

で、この状況下において効率よく生き残るにはやはり素性を隠しながらということだろう。
念のために武器にへばり付いた血痕は後々吹いておいたとはいえ、だ。先程の海馬乃亜の放送で、「コソコソ隠れて何かしら企んでいるやつはいる」と遠回しに言われたのは中々に面倒なことになっている。
あんな放送をされれば感のいいヤツは多少なりとも怪しむ。そう簡単にお人好しに出会って上手く事を運ぶ事を、なんて楽観視はしない。
勿論、お互い素性をさらけ出した上でいい関係を築けるのならそれに越したことはないのだが

「……そういえば。」

先程殺した女の支給品。あのハンマーも面白い代物だったが、もっと面白いものが入っていたじゃないか。
それと近くの施設には映画館と来た。
せっかくだ、自分にあのハンマーを使いこなせる気はしないが、内包した魔力は別の用途に使える。
そう、あの『庭』を使う為の魔力はある。

「―――試験運用といこうじゃないか。」

奇術師の少年は、今さっき思いついた企みに、妖しく微笑んだ。


462 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:37:47 sYSzTNBE0

◯ ◯ ◯


所変わって映画館の中。
色鮮やかな絨毯に部屋の隅々まで行き渡るライト、そして人が居ないにも関わらずオートで動く売店の数々。

「うぇえええええええええええん!!」
「ど、どうすればいいのぉ〜〜〜〜???」
「……やってきて早々、騒がしいですわね。」
「でも、まさか赤ちゃんまで参加させられているなんて。」

その中心らしき場所で、泣き喚く赤ちゃんを前に慌てる佐藤マサオの姿と。
映画館に訪れて早々、その光景を目の当たりにする櫻井桃華と美山写影の二人の姿。
あの後、一先ずは安全な場所へ、ということで映画館に移動したマサオであるが、赤ちゃんの方がお腹が減っていたのか唐突に泣き始めて。
ただし、赤ちゃん用のミルクなんてそう都合よく用意されているはずもなく、どうすればいいのかとこっちもこっちで喚く始末。
それで、そんな最中に映画館に桃華と写影の二人が訪れて、今に至る。

「あ、誰か知らないけれどちょうどいい所! この子なんだかお腹減ってるみたいなんだけど、赤ちゃん用のミルクとか食事とかよくわからないし、それに映画館にそういうのってあるのかな〜〜!?」

二人を見かけ思わず、誰なのかすら考えず取り敢えず助けを求める。
ついさっきまでこの赤ちゃんを守ると誓った姿は既に泣き虫おにぎりへと落ちぶれていた。

「……少なくともミルクならあるかもしれない。僕が探すよ。」
「では私は、その赤ちゃんを泣き止ましますわ。このままだとおちおち話も出来なさそうですので。」

見かねた桃華が、マサオが抱いていた赤ちゃんを抱きかかえる。
日本人ではない褐色肌で、現在進行系で泣き喚く赤ちゃん。
どうしてこんな赤ちゃんまで巻き込んだのか、と言う憤りもまた、桃華の中で渦巻いていたが。

「よしよし……泣き止みましょうねぇ……。お姉さんは怖い人じゃないですわ〜。」

「………うふぇ……………」

まるで手慣れてるかのように、本当の母親のように赤ちゃんをあやしている。
慣れた手付きで、子守唄を歌うように優しく語りかける。
そんな彼女にほだされたのか、赤ちゃんもまた泣き止み、年相応の無邪気の笑顔で応えてみせた。

「……せ、聖母だ……!この娘が聖母に見える……!!!」

佐藤マサオには、そんな櫻井桃華の姿が聖母のようにも思えた。なんなら彼女にママになって欲しいと思ってしまった。
もし仮にここに桜田ネネが居たら確実にげんこつだけでは済まないだろう、閑話休題。

「ふふっ。私はただ自然に接しただけですわ、そんな聖母だなんて呼ばれる事はしてませんわよ。」
「で、でもやっぱりすごくお母さんらしかったっていうか……その、ええと……。」

桃華の優しい笑顔での返しに、年頃に顔を真赤にしてマサオが照れた。照れたまま言葉を連ねて。

「……その、結婚を前提にお付き合いを……ってこんな時になんて事言いだしてるのボク!?」

明らかにラインを超えた事を口走ってしまった。発言したマサオ当人は混乱して挙動不審である。
だが、ポカンとしている桃華に「あれ、これちょっとワンチャンあるのでは?」なんて変な希望を抱いて。

「申し訳ないのですが、お断りしますわ。あとちょっと空気を読んでほしいですわね。」
「……デスヨネー。」

至極真っ当な意見を返され、マサオはちょっと項垂れた。
赤ちゃんの方は呆れたものを見るような目でマサオを見つめていた。

「……コホン。妙なコントはここまでにしておいて、一旦移動しながら話をしようか。」

そして、このままだと妙な方向に話が転がりそうということで、なんとか切り上げようとする写影であった。


463 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:38:21 sYSzTNBE0
◯ ◯ ◯

「……うーん、ごめんね。こっちもそういう単語に聞き覚えはないかなぁ。」
「お気にしなくても大丈夫ですわ。私も写影さんの学園都市の話にも聞き覚えがないので、それは何というかお互い様ということで。」
「僕としては、君の言っていた映画の世界に迷い込んだとかの方が、到底信じられない与太話に思えるよ。この状況下だと、思わず本当だと思いたくなる程度には。」

映画館の内部を渡り歩きながら、四人の話は進んだ。
違う世界、違う価値観。少なくともマサオには学園都市やら桃華たちの名前に聞き覚えはなく。
だが、マサオとしてもこういう突飛じみた状況下には色々と覚えがある。
例えば、映画の世界に飛ばされたとか。夢の世界、だとか。
科学と超能力を主とする学園都市の住人である美山写影としては、夢の世界はまだしも映画の世界に飛ばされる、と言うシュミレーションではなく本当に映画の世界に飛ばされたという事実は現実味を離れていた。

「……まあ、こういうのって本当に経験してないと信じてもらえないからねぇ。他の人に話しても、嘘つき扱いされるの目に見えちゃうし。」
「私はマサオさんの話、本当だと思っていますわよ? 少なくとも嘘をついているようには思えませんでしたわ。
「い、いやぁ、桃華ちゃんにそう言ってもらえるだけでも嬉しいよ、エヘヘ……。」
「…………。」

やはりと言うべきか、呼ばれた場所も、常識も。すべてが違っていた。
美山写影がいた世界、櫻井桃華がいた世界、そして佐藤マサオのいた世界。
この事実から考えられるに、誰も彼もが別の世界からそれぞれ呼び出されているという事実。
平行世界論自体は美山写影も理解しているが、本当にそういう事実がまざまざと叩きつけられるとは思わなかった。

「……マサオさん、大丈夫ですの? その、ご友人のこと。私も知り合いの一人が巻き込まれてる以上、あまり楽観も出来ませんが。」
「そうだね。ボーちゃんの事は悲しいけれど、赤ちゃんの事考えるとさ、こんな所で立ち止まってなんて居られないって思ってさ。」
「それにしては泣いてる赤ちゃんにすごく戸惑っているようでしたけれど?」
「そ、それはその……だって赤ちゃんのあやし方だなんて習ってるはずないじゃ〜ん!?」

合流前に流れた放送。死亡者として名前が流れた中の一つにボーちゃんという、佐藤マサオの友人の名があった。
その後に名簿を見てみれば、櫻井桃華の方は的場梨沙、佐藤マサオの方は友達である野原しんのすけの名前。

「……ですが、そのしんのすけってお方と、出会えると良いですわね。」
「大丈夫だよ、しんのすけったら僕たちの知ってるところでも知らないところでも凄い大冒険してきたって言ってたから、今回も大丈夫だと思うよ。桃華ちゃんこそ、その梨沙ちゃんって娘と出会えると良いね。」
「調子の良いことを言っておられますが、一先ずはその言葉だけでも嬉しいですわ。」

二人の会話を眺めながらも、美山写影の注目と警戒は、現在桃華が抱えている謎の赤ちゃんに向いていた。
マサオから聞いた話では、糸見沙耶香という少女と最初は一緒に居て、一旦休息をとろうとした所に煙玉を投げ込まれ、そして何故か沙耶香だけが惨殺されていた、と言う。

(どうして、彼と赤ちゃんだけ生き残った?)

不可解なのはその点だ。佐藤マサオと赤ちゃんが無力だから生かしても問題ないと判断したのだろうか。
だが、隠れながら殺して優勝を狙うというのなら逆に殺しておいたほうが万が一の正体判明も防げるはずだ。
そもそも、二人に気づかれずに誰が煙玉を投げ込んだのか。

(……いや、まさか? だとしたら………)

信じたくないが、この赤ちゃんが一番怪しいと、思ってしまった。
だが見る限り生後十一ヶ月の赤ちゃんに、そこまでの知能があるのか?
もし仮にそれが事実だとしても、「赤ちゃんが殺し合いに乗っている」なんて戯言、信じてもらえるはずがない。
そもそも、殺害手段が何であるかすら把握できていないのだ。


464 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:38:37 sYSzTNBE0


(……どうすれば。)

確証はない。だが考えれば考えるほどに赤ちゃんが怪しくなっていく。
話した所で、主犯が赤ちゃんだなんて簡単に信じてもらえるはずがない、むしろ逆に警戒されかねない。
あの二人みたいに軽く話し合えないな、と自嘲しながら考えることしか出来ない。
考えて、もし間違っていた時が、怖い。
その一歩すら、踏み出すことが出来ない。

そうこうしている間に、一行がたどり着いたのは数あるシアターの一つ。
ずらりと並ぶ黒いシートと真正面のスクリーンを照明が照らしている、至って普通のシアタールーム。

「こういうの見ると、本当にカスカベ座の事思い出しちゃうなぁ。」
「カスカベ座、といえばマサオさんの言っていた映画の世界の事ですわよね?」
「だって映画の世界にいればいるほど元の世界の記憶を思い出せなくなっちゃうからさ。あの時はそういう自覚とか無かったから、今思い返すと滅茶苦茶怖かったなぁって。」

カスカベ座にて映画の世界に閉じ込められた際、佐藤マサオの記憶は「映画の世界の住人」としての新しい記憶に呑まれようとしていた。その時の立ち位置は同じく閉じ込められた桜田ネネの旦那、と言う存外悪くない生活ではあったのだが。
何も知らない者からすれば悪くはない理想の夫婦生活ではあるが、自分という存在を保つ記憶がテセウスの船のごとくすげ替えられるという経験は、思い返せば恐怖となってもおかしくない出来事だっただろう。

「だって記憶がだよ、記憶。自分だった記憶が段々と忘れていくだなんて……今話すことじゃなかったかな?」
「………ねぇ、マサオくん。」

等と軽く話していたマサオに、写影が待ったをかけた。
それは、何か気になる事があると言わんばかりに。

「……写影さん? どうしましたの?」
「美山、くん?」
「………この世界、本当に現実世界?」
「……えっ?」

美山写影は佐藤マサオの言葉で、少しだけ気になる事を思い浮かべた。
住む場所も、世界もバラバラな自分たちを、どうしてこうも一つの世界に呼び込めたのか。
普通なら、現実的にも不可能に等しい。それこそ学園都市の技術を使っても。
だが、物理的に呼び込むことは困難。なら、それ以外の手段で、呼び込んだとしたのなら。

「じゃ、じゃあここが現実世界じゃなくてなんだっていうの!? も、もしかして……。」
「マサオくん。君の言葉で一つ予想ができたかもしれない。でも、あくまでも予想だから当たってるかなんて保証はない。……でも、冗談かもしれないけれど。」


「この世界、現実ではなくて仮想、もしくはマサオくんの言っていた『映画の中の世界』――」
『――へぇ、面白いこと聞いちゃった!!!』

写影が言いかけようとして、シアター内に響き渡る第三者の少年の声。
間違いなく、他の参加者の声。
同時にバタン!と閉じる扉、唐突に消灯するライト。暗闇が三人を包み込む。

「うぇ、え、えええええ!? な、なにこれ、どういうこと!?」
「落ち着いて! ……誰かはわからないけれど、声の主は僕たちを逃してくれる気はなさそうだ。」

慌てるマサオを、写影が抑える。
閉じた扉に、消された照明。

「『ウェザー・リポート』!」

桃華の方もウェザー・リポートを出現させ、備える。
だが、安易に扉を破壊してもそこを狙われる可能性がある。
ほぼ何も見えない暗闇の中で、声しか分からぬ敵への警戒を徐々に高めている。

「マサオさん、離れないほうがよろしいですわ。」
「う、うん……」
「かなり用意周到だね。お相手は一体何を考えているのやら。」

赤ちゃんは手が届く範囲の座席において、なるべく離れないように四人は周囲を確認する。
一体何処から、そしていつ仕掛けてくるか。
写影の方もスペクテッドを装着し、敵の居場所を探ろうとする。


465 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:39:26 sYSzTNBE0

(……暗い場所だけれど、……なんとなく人の輪郭……)

スペクテッドの5つの能力の一つ「透視」。
暗闇の中に薄っすらと見える人の形らしき輪郭。その場所を見つけ、告げた。

「――君の居場所はわかった。一体何が目的だい?」

指を指した場所はスクリーンのすぐ近く、写影たちからは距離は離れているが、それでも居場所がわかっただけでも御の字だ。
桃華もウェザー・リポートを仕掛ける準備はできている、最悪マサオは赤ちゃんだけでも逃せるようにしている。

「……へぇ、僕のバミューダ・アスポートを見抜くなんて。何処までも油断ならないね、この殺し合い。」

パン、と照明が再び付けば、スクリーン前に現れたのは奇術師衣装を身にまとった金髪の少年。
金髪の少年が写影たちを見上げながらも、見定めるように冷静に眺める。数は4人。うち少女一人が背後に大人ほどの大きさのヒト型を連れている。

「あ、あの、もしかして……殺し合いに乗ってる、とか?」
「いきなり大胆だねおにぎり頭くん。まあ、そうといえばそうだけれど、ちょっと違うかもしれないといえばそういう事かな?」
「妙にはぐらかすんだね。実際の所どうなのかな?」
「まあ、あの乃亜ってのが気に要らないのは事実かな。ニードレスでもない人間の癖して勝手に殺し合いに巻き込んでおいてさ。」

少年が語るに、殺し合いへの是非は兎も角、海馬乃亜という少年が気に入らない、というのは事実だろう。
だが、少なくとも彼が、殺し合いに乗らないなんて甘い考えな訳がない。写影たちの警戒は続く。
それにニードレスという単語、「ニードレスでもない人間」。ニードレスが何を示すかは知らないが、少なくとも自分たちの味方でもない、と言うには滲み出ていた。

「でもまあいいよ。……巻き込まれたとはいえ、ここは中々良い遊び場だ。多少の憂さ晴らしにはなる。」

ほぼ確定だった。この少年は殺し合いに乗っている。
しかも単純な暇潰しとストレス解消、そして実益を兼ねた大分厄介なタイプの。

「という訳で、楽しんでおくれよ――――。」
「――桃華!」

少年の言葉を皮切りに、写影が叫ぶ。
なにか仕掛けようとしているのはわかりきっているのだから、先手必勝。
呼びかけに反応した桃華も、ウェザー・リポートを少年に近づかせ殴り掛かる。

「――ボクのマジックショーをね!!」

少年が取り出したのは、周囲に金色の意匠が施された、青紫のオーブのようなもの。
そして地面にいつの間にか置かれた血濡れのハンマー。
ハンマーのほうが輝き、それに反応するようにオーブが輝けば――。

「……ええ!? こ、これは一体……?!」
「桃華さん!? な、こ、これ、は……!」
「す、吸い込まれるぅぅぅ!?」
「うぇえええええええええええええん!?」

殴りかかったウェザー・リポートを機転として、美山写影も、櫻井桃華も、佐藤マサオも、そして赤ん坊も。
その全てがオーブの中に飲み込まれるようにして、消失した。

「さぁさぁ皆様お楽しみください。このトリックルーム、ボクですらドン引きする程度には、醜悪で悪辣らしいですので。――もし仮に脱出できたのなら、改めて相手してあげるよ。多分無理だろうけど。」



【C-3 映画館内/1日目/深夜】
【右天@NEEDLESS】
[状態]:健康
[装備]:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、ヴィータの支給品袋のランダム支給品1、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's、失意の庭@Fate/Grand Order
[方針]
基本.できるだけ早急に元の世界に戻る
1.ただしそう簡単に戻れるとは思ってないので、性能を試すついでに殺し合いを楽しむ
2.くだらないことをしてくれた海馬乃亜は最後に必ず殺す
3.『庭』の性能テスト。出てきた所を殺すか、それともそのまま放置してどっかに行くのもよし。
[備考]
※参戦時期は復活直後です
※神の種(エデンズシード)特有の再生能力に制限が課せられています。


466 : トリックルーム ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:40:07 sYSzTNBE0


妖精國の女王モルガンの保有する礼装。
花の魔術師マーリンを閉じ込めた塔と同類たる『庭』

これはそのうちの一つ『失意(ロストウィル)』
訪れた者の心を削り、無くしていく自傷の責め苦。
あたたかな欺瞞をはがす冷たいガーデン。

最後まで耐えられれば庭から出られると言うが。
その前に心が無くなるようになっている、悪辣にして醜悪な、心を殺すための牢獄。
時間が経てば耐えられると言うが、それまでに彼ら彼女らの心が保つかどうかは、また別の問題である。





【失意の庭・内部 ???】

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]???、疲労(小)、あちこちに擦り傷や切り傷(小)、血が滲んでいる。、赤ちゃん(マニッシュ・ボーイ)に対する警戒(中)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。


【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]???、疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:出来れば、梨沙さんと無事に再開できたら。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:???、赤子への庇護欲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この赤ちゃんは僕が守る!
1:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
2:写影さんや桃華さんと一緒に行動する。
[備考]
※デス13の術によってマニッシュボーイへの庇護欲が湧いています。

【マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:???、健康
[装備]:なし
[道具]:エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×2@スーパーマリオRPG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:マサオを利用して他の参加者を殺害する。
[備考]
※デス13の術によってマサオに庇護欲を植え付けました。
※ねむりだまはエニグマの紙に収納されています。



【支給品紹介】
『失意の庭@Fate/Grand Order』
ヴィータに支給、現在は右天が所持。
対象を地上と星の内海の間の世界に閉じ込める、モルガンが保有する魔術礼装が一つ、理論的にはマーリンが幽閉されている塔とは同じ代物。
この世界の特性は、自分の心の中にある不安や自嘲などのマイナス感情から生まれた幻影に「嘘や妄言のない絶望」を言わせ、訪れた者の心をへし折る大変悪辣な仕組み。
維持時間は使用者の魔力量に依存し、魔力が切れると解放される仕組み。また、現実から礼装を物理的に破壊することでも、中に閉じ込められている人物を開放することが出来る。
右天はグラーフアイゼンに宿る魔力を使用しているため、一応は使用可能。それでも最大持続時間は現実時間で30分ほどである。


467 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 20:40:18 sYSzTNBE0
投下終了します


468 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:10:53 sYSzTNBE0
投下作「トリックルーム」ですが、映画館にしんのすけ&フランと遭遇しなかった理由付けとして以下の文章を付け加えます
(位置としては>>466と状態表の間)

静寂の舞台。奇術師が演出した悪辣な歌劇。
別のシアターで休む5歳児と彼を見守る破壊の吸血鬼は未だ気づかず。
赤ちゃんの鳴き声は聞こえたものの、遠すぎるのと少年が眠っている為、反応はせず。
庭に閉じ込められた4人の心の行く先、神のみぞ知る。

※しんのすけとフランがいる別のシアターとは距離が大きく離れているため、二人は未だ気づいていません。
※おそらく赤ちゃんの鳴き声には反応したかもしれませんが、距離が離れていたかつ、しんのすけ休息中の都合上反応していません


469 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:20:18 sYSzTNBE0
投下作ですが、名簿がまだ公表されていないのに名簿が出た前提で書いてしまった事が判明してしまって申し訳ございません
一部修正させてもらいます


470 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:21:17 sYSzTNBE0
まず>>461を以下のように修正します


「……なるほどね。」

再び流れた海馬乃亜の放送。その本質と中身が『子供たち』だけの殺し合いだと知った時、右天の頭の中でこの殺し合いに対する認識は一変した。
『子供たち』の該当は年齢であり、外見であり、ともかくそれに当てはまるならば何でも良かったらしい。
詰まるところ、精神年齢=外見年齢ではなく、文字通りの人を超越した長寿も最悪紛れ込んでいる、ということか。
それ以外はおおよそシンプルな内容だ。殺し合い、最後に生き残った者を優勝者として、その者の願いを何でも叶える事ができる。

「海馬乃亜はアニメや漫画で読み飽きたような殺し合いがご所望、ということかな?」

強いて言うならば、子供たちだらけの殺し合いだけど、言い加える。
そういう癖(マニア)の大人がやるのなら納得や理解も行く。だが海馬乃亜という明らかな少年がそれを開いた理由が単なる興味本位か、大人たちのような捻れた願望からなのか。
何を考えているのか予想がつかない、底が知れない、という点では上司でありシメオン社長でアダム・アークライトも同じなのだが、それを考えればまだ海馬乃亜の方が可愛いものだ。

「まあ、少しばかりやり方は考える必要はあるようだね。」

ともあれ、子供だらけの殺し合いだ。
もしかしたら外見が子供ってだけで参加させられているのもいるかもしれない。
女子供だからといって油断をしていたら足元を掬われかねないのは、ブラックスポットでもここでも変わらない。事実、右天もその手に足元を掬われて一度殺された事があるのだから。

右天のニードレス能力『バミューダアスポート』
物体の透明化という、シンプルながら応用力に長けたミッシングリンク級に相応する高位のニードレス能力。
本来人間は情報取得の80%を視覚に頼っており、視覚情報を阻害されるということはそれだけでも戦闘においては致命的となりうる。
反面能力自体に直接的な攻撃力は存在しないため、小手先の手段を用いる事になるのだが。この状況下においては支給品のレヴァンティンを用いることにある程度カバーできている。
何より、蛇腹剣や弓矢等に形状を変化させられるこの武器とは特に相性がいい。透明化に射程が察知されづらい武器というのは鬼に金棒と言っても等しい代物だからだ。
最も自分は魔術師でなくマジシャン、魔法は使えないので使える機能に制限はあるのだが。

で、この状況下において効率よく生き残るにはやはり素性を隠しながらということだろう。
念のために武器にへばり付いた血痕は後々吹いておいたとはいえ、だ。先程の海馬乃亜の放送で、「コソコソ隠れて何かしら企んでいるやつはいる」と遠回しに言われたのは中々に面倒なことになっている。
あんな放送をされれば感のいいヤツは多少なりとも怪しむ。そう簡単にお人好しに出会って上手く事を運ぶ事を、なんて楽観視はしない。
勿論、お互い素性をさらけ出した上でいい関係を築けるのならそれに越したことはないのだが

「……そういえば。」

先程殺した女の支給品。あのハンマーも面白い代物だったが、もっと面白いものが入っていたじゃないか。
それと近くの施設には映画館と来た。
せっかくだ、自分にあのハンマーを使いこなせる気はしないが、内包した魔力は別の用途に使える。
そう、あの『庭』を使う為の魔力はある。

「―――試験運用といこうじゃないか。」

奇術師の少年は、今さっき思いついた企みに、妖しく微笑んだ。


471 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:25:09 sYSzTNBE0
そして>>463を以下のように修正します

◯ ◯ ◯

「……うーん、ごめんね。こっちもそういう単語に聞き覚えはないかなぁ。」
「お気にしなくても大丈夫ですわ。私も写影さんの学園都市の話にも聞き覚えがないので、それは何というかお互い様ということで。」
「僕としては、君の言っていた映画の世界に迷い込んだとかの方が、到底信じられない与太話に思えるよ。この状況下だと、思わず本当だと思いたくなる程度には。」

映画館の内部を渡り歩きながら、四人の話は進んだ。
違う世界、違う価値観。少なくともマサオには学園都市やら桃華たちの名前に聞き覚えはなく。
だが、マサオとしてもこういう突飛じみた状況下には色々と覚えがある。
例えば、映画の世界に飛ばされたとか。夢の世界、だとか。
科学と超能力を主とする学園都市の住人である美山写影としては、夢の世界はまだしも映画の世界に飛ばされる、と言うシュミレーションではなく本当に映画の世界に飛ばされたという事実は現実味を離れていた。

「……まあ、こういうのって本当に経験してないと信じてもらえないからねぇ。他の人に話しても、嘘つき扱いされるの目に見えちゃうし。」
「私はマサオさんの話、本当だと思っていますわよ? 少なくとも嘘をついているようには思えませんでしたわ。
「い、いやぁ、桃華ちゃんにそう言ってもらえるだけでも嬉しいよ、エヘヘ……。」
「…………お強いですのね。……その、ボーちゃん、でしたでしょうか。お友達のこと。」
「……確かにボーちゃん死んじゃったのは悲しいよ。話したけれど沙耶香さんの事だって。でも、この子は、この赤ちゃんだけは守りたいって思っちゃったから。」
「………」

やはりと言うべきか、呼ばれた場所も、常識も。すべてが違っていた。
美山写影がいた世界、櫻井桃華がいた世界、そして佐藤マサオのいた世界。
この事実から考えられるに、誰も彼もが別の世界からそれぞれ呼び出されているという事実。
平行世界論自体は美山写影も理解しているが、本当にそういう事実がまざまざと叩きつけられるとは思わなかった。
そして、佐藤マサオとしても放送で流れた親友の死には大分堪えてはいた。糸見沙耶香の死も含めて、だけれど。やはりいま桃華に抱かれて健やかな笑顔でゆったりしている赤ちゃんを見てしまうと、どうにも守らないといけないと思ってしまったのだ。
二人の会話を眺めながらも、美山写影の注目と警戒は、現在桃華が抱えている謎の赤ちゃんに向いていた。
マサオから聞いた話では、糸見沙耶香という少女と最初は一緒に居て、一旦休息をとろうとした所に煙玉を投げ込まれ、そして何故か沙耶香だけが惨殺されていた、と言う。

(どうして、彼と赤ちゃんだけ生き残った?)

不可解なのはその点だ。佐藤マサオと赤ちゃんが無力だから生かしても問題ないと判断したのだろうか。
だが、隠れながら殺して優勝を狙うというのなら逆に殺しておいたほうが万が一の正体判明も防げるはずだ。
そもそも、二人に気づかれずに誰が煙玉を投げ込んだのか。

(……いや、まさか? だとしたら………)

信じたくないが、この赤ちゃんが一番怪しいと、思ってしまった。
だが見る限り生後十一ヶ月の赤ちゃんに、そこまでの知能があるのか?
もし仮にそれが事実だとしても、「赤ちゃんが殺し合いに乗っている」なんて戯言、信じてもらえるはずがない。
そもそも、殺害手段が何であるかすら把握できていないのだ。


472 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:26:03 sYSzTNBE0
最後に>>466の四人の状態表を以下のように修正します

【失意の庭・内部 ???】
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]???、疲労(小)、あちこちに擦り傷や切り傷(小)、血が滲んでいる。
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。


【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]???、疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:???、赤子への庇護欲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この赤ちゃんは僕が守る!
1:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
2:写影さんや桃華さんと一緒に行動する。
[備考]
※デス13の術によってマニッシュボーイへの庇護欲が湧いています。

【マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:???、健康
[装備]:なし
[道具]:エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×2@スーパーマリオRPG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:マサオを利用して他の参加者を殺害する。
[備考]
※デス13の術によってマサオに庇護欲を植え付けました。
※ねむりだまはエニグマの紙に収納されています。


473 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/22(月) 21:26:19 sYSzTNBE0
以上です、何度もお手数おかけして申し訳ございませんでした


474 : ◆RTn9vPakQY :2023/05/22(月) 21:39:12 rTHd2M5o0
皆様投下乙です。
絶望王(ブラック)、灰原哀、奈良シカマル、的場梨沙、ドラコ・マルフォイ
以上、予約します。


475 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/23(火) 00:03:45 I/hkVZAk0
皆さま投下乙です
キウル、ディオ、ドロテア、モクバを予約します


476 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:41:23 HDKJt/Fo0
投下させていただきます


477 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:43:03 HDKJt/Fo0
「そんな危ないヤツからここまで逃げてきたなんて、セリムはよく頑張ったってばよ」
「いえいえ、うずまきさんも聞いてるだけで危ない存在に立ち向かえるなんて、とても立派ですよ」
「うずまきさんなんて何だか恥ずかしいから、せめてナルトさんって呼んで欲しいぜ」

 その様な会話を行っているのは、金髪蒼眼の少年うずまきナルトと、黒髪の子供セリム・ブラッドレイ。
 殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)ガムテと戦い、何とか退けたナルトは、程なくしてこっちに向かってくる子供と出会う事になった。
 ナルトは殺し合いに乗ってない事を子供に伝えると、子供は自分の名と自身が大総統の息子である事、そしてリボンを付けた少女に襲われた事を話し始めた。
 少女に襲われたというのは聞き捨てならず、即座に倒しに行きたくなったナルトだが、まだ年場もいかないセリムを置いていくわけにもいかず。
 この殺し合いが始まってすぐに襲われ、逃げてここまできた為を考えて、近くにあった休める場所に移動してそれそれのこれまでの動向を話し始めた。

(国のリーダー?の子供だってのに、木ノ葉丸と違って全然礼儀がなってる子供だってばよ。)

 セリムが話す「アメストリス国家」という国は全く聞いたことがないが、彼はどうやらその国のリーダーの子供らしい。
 その立場を聞いてナルトが思いつくのは、ナルトを親分として慕う忍の卵・木ノ葉丸。
 ナルトにとっても今ではかわいい弟分であるが、初対面からナマイキな事ばかり言い、自らを火影の孫であることに笠に着る部分もあった。
 しかし、この子供にはそういったワガママな部分が見えなかった。
 親である2人が人格者だったのか、それともセリムが根が良い子で育ってきたのか。
 どういった日常を送っていたのかセリムは話していない為、想像で考えるしかないが、とても殺し合いに乗るような少年には見えなかった。
 それがうずまきナルトの、セリム・ブラッドレイについての評価だ。

「ウッシ!それじゃあセリムを襲った少女はいた方角は―――」
「待ってくださいナルトさん……。誰か来ます」

 右手で作った拳を左手で受け止め、気合を入れて立ち上がるナルトに、セリムが声を掛ける。
 そう言われて気配を探ると、確かに誰かがこちらに向かってくるのを理解できた。
 忍者である自分よりも先に察知したセリムに不思議に思う部分があるが、今はこっちに来る相手に対処するのが優先だ。
 セリムを庇うように前に立ち、向かってきている方向に集中する。

 程なくしてやってきた存在は、旅をする衣装を着た少女であった。
 刀を携えており、真っ赤な髪をした、少し目立つ姿をした年が近そうな少女だ。 

「アナタ達はこの殺し合いに……、乗っている様子ではないわね」
「当ったり前だってばよ!誰があんな奴の言う事を聞くかよ!」
「すみません、お名前を伺ってもよろしいですか?」

 真紅色のロングヘアーをした少女は2人を交互に見ながらこの殺し合いの是非を訪ねてきた。
 高らかに殺し合いの反逆を口にするナルトと、後ろから少女の名前を尋ねるセリム。
 少女は腕を組み、真っ直ぐな目つきで名前を名乗る。

「私は『デッドエンド』のエリスよ。こう見えてもスペルド族だわ」

 後者は嘘である。
 だが、エリスは悪意や騙そうとして嘘をついたのではない。
 エリスの目的は「度胸試し」。
 悪逆非道の行為を行った海馬乃亜に反旗を翻すというなら、スペルド族を名乗る存在にどう対応するか、エリスは知りたかった。


478 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:44:46 HDKJt/Fo0
「デッドエンド……?スペルド族……? 何だよそれは」
「スペルド族を知らないの!?」

 だが、ナルトの反応はエリスにとって全く予期せぬ返しであった。
 デッドエンドは魔大陸に飛ばされ、ルーデウスとルイジェルドの3人で旅をしてから名乗ったチーム名故に、理解されなくても仕方がないとエリスでも分かる。
 しかしスペルド族を知らないと返される事は想定してなかった。 
 なにせスペルド族は、世界全土で恐れられ、どの場所でも忌み嫌われる存在。
 「我が儘ばかりしているとスペルド族が来て食べられる」という子供への躾けの方言が、あらゆる地域で行われてる程だ。
 エリスは魔大陸で出会ったルイジェルドとの交流と、彼が語ったスペルド族の血塗られた悲しき過去―――を聞いたルーデウスからの言葉を受けて恐れる事は止めたが、他人はそうはいかない。
 その為ルーデウスは、魔大陸から帰郷するまでの旅路にて、スペルド族の名誉回復の手段を模索していた。
 
 驚きを隠せないエリスに、ナルトの後ろにいたセリムは前に出て言葉を話す。

「すみません。僕はセリムという者です。それぞれでどうも基本的な部分で嚙み合わない情報がある気がしますので、一旦話し合いたいのですがよろしいですか?」
「……分かったわ」

 幼いながらに丁寧な言葉を発するセリムの提案に、何処か思うところがあるのか、憮然とした表情をしながらも応じる事にしたエリス。
 そして話し合おうとした、その時。


『やあ、諸君』


 時刻は午前1時。唐突に海馬乃亜の放送が始まった。


 ☆ ☆ ☆ 


『―――では、今回の放送はここまでにしておこう。
 次の放送を聞けるのは、果たして何人かな?』

「アイツ、好き勝手言いやがって……!!」
「同感ね!言う事は生意気な事ばかりで、きっとチヤホヤされて育ったんだわ!」
「………」

 乃亞の放送を終えて、ナルトとエリスは怒りの言葉をそれぞれ口にする。
 一方でセリムは何も話さず、俯いて下を向いている。

「おーいセリム?」
「え、ええ。すみません。誰かが死ぬって悲しいですね」
「そりゃそうだってばよ。皆あんな奴のせいで死んだ様なもんだぜ」

 セリムの言葉にナルトはフォローを掛ける。
 ナルトは思い出すのは、一番最初に乃亞に殺されたルフィという少年について。
 あの少年については何も知らないが、あの様な最期を迎えていいとは全く思えず、生きていれば意気投合出来る部分もあったのかもしれない。
 改めて、乃亞への怒りと反抗を心の中で強くする。


479 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:46:17 HDKJt/Fo0
「それじゃあ情報交換ってのをしましょうか」

 そんな思いを抱くナルトを横に、エリスはドカッと胡坐を組んで座り込む。
 なんだかデリカシーが無いなーと思いつつも、ナルトもエリスに向き合う様に座る。
 そしてセリムも座り、3人による情報交換が始まった。

 とは云うものの、この地に降り立ってから1時間。
 それぞれ語れる程多くの情報はなく、参加者とも一人二人くらいしか出会っていない。
 その為、情報交換の主な部分はこの殺し合いについてではなく、自分自身についてや、自分が育った国について話し合っう事になった。

 セリムは話す。総人口5000万超えの軍事国家、アメストリスについて。
 ナルトは話す。隠れ里の中で最も栄えている国、火の国・木ノ葉隠れの里について。
 エリスは話す。中央大陸西部全域を支配するアスラ王国と、危険な魔物が跋扈する魔大陸について。

「……どういう事だってばよ?」

 それぞれの話が終わって、ナルトは首をかしげる。
 どうもズレている事が多すぎる。違和感で済ませていいレベルではない。
 特にエリスの語る魔大陸は、それほど危険な存在がいるのなら、カカシ先生や中忍試験の際に名前が出ても良いのだろうが、そんな情報を聞いた記憶はない。
 
「セリム、お前が放送の前に言った嚙み合わない情報ってこの事だったってばよ?」
「……すみません。僕も忍者の事は知識に殆どなかったので違和感は抱いていたのですが、ここまで違いに剝離があるとは思ってなかったです」
「アスラ王国も魔大陸も知らない国家なんて、この世に存在するのかしら……?」

 三人はそれぞれ思った事を口にする。

「まあ難しい事はルーデウスに任せましょう」

 しかし議論に発展する前に、投げやりな言葉を発して考える事を放棄するエリス。
 確かに現状では確定的な結論が出ない気がするが、いきなり知らない誰かに投げるのはさすがにどうなのかと、ナルトは思った。

「あのー、今口にしたルーデウスさんとはどういった方なのですか?」

 何気ない質問をしたセリムだが、後にこの質問をした事をしくじったと思う事になる。
 質問をされたエリスは、勢いよく立ち上がった。

「ルーデウスは凄いのよ!!」


480 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:48:05 HDKJt/Fo0
「ルーデウスはね、天才と呼ぶに相応しい魔術師なの!何が凄いのかというと、魔術を無詠唱で使う事が出来るのよ!魔術は本来なら言葉を発する事で発動するのだけれど、ルーデウスは言葉を発さなくても魔術を使えるのよ!簡単に聞こえるかもしれないけど、私がこれまで会った事のある魔術師の中で、実際に無詠唱魔術を使えるのはルーデウスだけしか見たことないわ!しかも、ルーデウスがいつ魔術を無詠唱で使える様になったと思う!?本人が言うには2歳よ!?私が2歳の時にはまだ剣も持ったことのないのに、ルーデウスが2歳の時にはもう魔術の本を読み始めて、実際に魔術を使えるようになったのよ!こんなに向上心あるなんて、ルーデウスを天才と呼ばないで誰を呼ぶのかしらね?!
 それに、ルーデウスは凄い勇気があるのよ!さっき私はスペルド族だって言ったけど、普通だったらスペルド族と聞いただけで皆殺されると思いたくなるくらい悪魔の様な存在なのよ!私も生まれて初めてスペルド族と出会った時は食べられて殺されるのだと思ったわ。でも一緒にいたルーデウスは怖がる素振りも見せなかったわ!それどころかスペルド族と話をつけてくれていたの!自分だって不安でたまらなかっただろうに、泣き叫んじゃった私をなだめてもくれていたわ!その時私は、なんて勇気のある人なんだろうと思ったわ!
 でも、私とルーデウスは生まれた時から一緒だったわけではないのよ。ルーデウスの出会いは私が8歳か9歳の時だったわね。ある日突然お父さまが連れてきて、私の家庭教師を務める為にやって来たのよ。最初に見た時は弱弱しく見えたし、年下の家庭教師だなんてバカバカしいと思ったわ。だから一発殴ってやったのよ!上下関係を教え込むには殴るのが最適だからわね!そしたらね、ルーデウスは何をしたと思う?私の頬を殴り返してきたの!こんな経験初めてだったわ!その時の私は気が動転して即座にマウントを取って殴り殺そうとしたけど、今となっては懐かしい思い出だわ。
 ルーデウスは当時から凄い人だったわ。なんでも知っていたし、なんでも出来てたわ。私に剣を教えてくれていたのはギレーヌだけれども、ギレーヌも一緒に学ぶ事が多くあって、ギレーヌも関心する程に沢山の事を教えていたわ。なのにルーデウスは自分自身も学ぼうとする意志があったし、私に家庭教師を行いつつも、獣神語や魔神語を覚えようとしていたわね。
 ルーデウスとの思い出で一番印象に残っているのはやっぱり10歳の誕生日の時ね。5歳と10歳と15歳の誕生日には大規模なパーティーを行うのが貴族の風習で、私は家族や貴族の子供達の前で踊る事になったの。けれども、私はそんな経験は無かったし、やりたくもなかったから何度も練習から逃げたわ。その度にルーデウスは私を連れ戻す為に説得してたし、私が踊れるようになる為に色々な練習を考えてくれていたわ。本番の時もルーデウスは一緒に踊ってくれて、あんなに胸が熱くなる事は初めてだったわ!」

「お、おう」


481 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:50:18 HDKJt/Fo0
 ナルトはエリスは気難しい少女だと思っていたのだが、そんなイメージは思い込みであった。
 ルーデウスという人物を語らせれば自分の右に出る者はいないと言わんばかりに、熱を込めて話し続けた。
 そしてその表情は、これまでのムッとした表情から一転して、恋する乙女のそれであり、内容も褒め倒しであった。
 
「それからルーデウスはね―――」
「あー分かった、分かったってばよ!」

 延々と語り続けるエリスに、質問をしたセリムは面を食らってしまい、代わりにナルトが静止を掛ける。

「つまり?ルーデウスは魔術の天才で凄い子供で?この殺し合いに参加しているって事でいいのかってばよ?」
「そうよ、分かってるじゃない!」

 ナルトのまとめた一言にエリスは納得したようで、ニコニコした笑顔になって再び座り込む。
 程なくして、我を取り戻したセリムはエリスに話しかける。

「しかしエリスさん、よく短い時間でルーデウスさんの所在についての情報を得ましたね」
「いいえ、まだルーデウスの情報は何も手に入れていないわ」
「…? じゃあなんでエリスはソイツが参加していると断言できるってばよ?」
「? そんな事すぐに分かるじゃない。なぜなら私はルーデウスを信じているわ!」

「…………なんでエリスさんはそう信じ込めるのでしょうか」
「……私がいるのだもの。じゃなきゃ、私がいてルーデウスがいないなんで可笑しいわよ」

 そう呟きながら、エリスは再び憮然とした表情になり、眼が細く、そして鋭くなる。
 どうやらエリスの脳内では、ルーデウスの参戦が確定しているようだ。
 海馬乃亜はお友達がいない事を祈ればいいと喋っていたが、真逆の思考をしている事に不思議に思うナルト。
 ナルトからすれば、自身が好意を寄せている春野サクラがここにいるとして、「サスケ君も絶対参加してるわ」と熱を帯びて話す様なものなのだろう。全く面白くない話である。
 ナルトはセリムの方を見ていると、「えー…」といいたげな呆れた表情をしていた。

「まあ、誰がここにいるかどうかは朝の6時になればタブレットとやらに教えてくれるらしいから、そこまで深く考える必要はないってばよ」
「その事について聞きたい事があるのだけれど」

 ナルトは両手を頭の後ろに回しながら話した言葉にエリスは反応し、自分のランドセルに手を入れる。

「多分タブレットってコレなんだろうけど、どうやって使うのかしら」

 そういって見せびらかしたエリスのタブレットは、叩きつけたのか殴ったのか不明だが、フレームが歪な形状をしており画面にはあちこちヒビが入っていた。


 エリス・ナルト・セリム。この3人の住む世界事情に齟齬あれど、共通している部分は少なくとも一つあった。
 それは、コンピューター技術が未開の地である事。
 この片手で持てるサイズの硬くて薄い道具一つが、凄まじいテクノロジーの集合体であると、全く考えていない。
 かの異聞帯と呼ばれる世界を統べ人造の仙人に至った皇帝ですら、この技術と詰め込まれた緻密な機材と技能には驚愕していたのだ。

 ……その後の3人のタブレットの操作の戦いについては割愛させていただく。
 セリムがなんとか動かしながら、他の二人に操作を教えていくという状況になったのだが。
 ナルトとエリスは、戦闘センスは高いが座学はからっきしである為、タブレットの操作も当然すぐに覚えられるものではない。
 操作の難しさにイライラしたエリスが、ドラコ・マルフォイから強奪した無事なタブレットを叩きつけようとするのを、ナルトとセリムが止めるのが何度もあった。とだけ記載させていただく。


482 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:52:23 HDKJt/Fo0

 ☆ ☆ ☆ 

「……それで、これからどうするってばよ?」
「どう、とは?」
「どこに移動するとか、ガムテとかセリムを襲った女の子についてとか?」

 タブレットとの格闘を終えたナルトは、気を取り直すような口調で二人に話しかける。
 返事を返したのはセリムだ。
 エリスは四苦八苦して開いたタブレットの中の地図を見て以降、黙りこんでいる。しかしそれが何故なのかはナルトもセリムのなんとなく理解はしてした。

「俺としてはガムテ野郎を早い段階でブッ飛ばしたいし、セリムを襲ったやつにも対処したいから、取り敢えずこの3人で―――」
「悪いけど、私が一人でソイツ等に会って斬りに行くわ」

 ナルトの言葉を遮る様にエリスが立ち上がり、地面に置いておいたランドセルを背中に背負う。
 数秒前までは物思いに耽っているように見えたその目は、今は闘志に燃えているに錯覚しかける程にギラギラになっていた。

「それにチンタラしてたらルーデウスと会えるのが遅くなるのもしれないわ。動き回って早く再開したいから、そのついでに斬って来るわよ」
「オイオイ、そんなに焦らなくてもいいんじゃねーか?」
「ナルトさん、よしましょう」

 口を動かすよりも身体を動かすタイプであるナルトであっても、エリスの唐突な発言とその決断力の速さに驚きつつ、先走る様な行動にナルトは口をはさむ。
 一方でセリムは冷静にナルトの方を静止させる。
 ナルトはセリムの方を見ると、セリムは目をつぶり首を振っていた。完全にエリスの好きにしろと言いたげな雰囲気をどことなく醸し出している。

「でもよーセリム。俺とエリスが一緒に戦った方がガムテ野郎や他のゲームに乗ったやつに勝てる可能性が高くないか?」
「ナルト。私とアンタが一緒に戦ったとして、誰がセリムを守るっていうの?」
「俺には影分身があるってばよ!」
「その影分身でずっと守り切れる保証はないわ。アイツの言う事なんて鵜呑みにしたくはないけど、ハンデとか何とか言ってたから、何かしらの制限がある可能性があるわ」
「うっ、それは……」
「それに、アンタの戦い方を私は見てないわ。そんな状態で行っても足を引っ張り合う可能性が高いわね。だったら、ハッキリと戦う側と守る側で分けた方がいいと思う」
「エー!それって俺はずっと戦わずにセリムを守るって事になるのかぁ!?」
「ナルトさん……、僕と一緒にいるのは嫌ですか……?」
「イヤ、そーいう訳ではねーけど、まあ任務で護衛とかもやった事はあるし……」
「だったら決まりね!」

 話し合いはもう終わりと言わんばかりに、エリスはナルトとセリムに背中を向けて移動する支度を纏める。
 ナルトは不満げな言葉を口をしようとにするが、これ以上話しても何も変わらないと理解し、代わりの言葉を伝える。

「エリス!! ……死ぬんじゃねーぞ」
「エリスさん、ルーデウスさんが本当にここにいて、僕達が会えたらエリスさんと会った事を伝えておきますね」
「分かったわ!」

 ナルトとセリムの言葉に、エリスは顔だけを向き直して声を返す。そしてすぐに顔を戻して、真っ直ぐに歩き始めた。


483 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:54:14 HDKJt/Fo0


 ☆ ☆ ☆ 


「要はデッドエンドとスペルド族の名前は出しても意味はないって事ね……」

 歩き始めて5分を過ぎて、一人旅を始めたエリスはそう口にする。
 ナルトとセリムが暮らしていた世界と自身の世界の齟齬については、ルーデウスに再開して聞くまで保留。
 だが、実際にスペルド族の悪名を全く知らなかったという事は、スペルド族の名を使った行動は意味をなさないという事。
 これからは、名乗る際は自分の名前のみにしよう。エリスはそう考える。

 次に、この殺し合いに乗った人物について考える。
 セリムと襲った黒髪の少女と、ナルトが戦った少年・ガムテの二人だ。
 黒髪の少女については実際に戦ってどれくらいの実力なのか判断しないといけないが、ガムテについては明確な危険人物だ。
 ナルトによるとかなりのダメージを負わせたそうだが、出来るだけ早めに遭遇して、斬っておきたい所だ。

「それに……、絶対確認しておかないといけない場所が出来たわね」

 エリスは足を止めて、ランドセルに入れておいたタブレットを持つ。
 セリムとナルトと一緒に四苦八苦してなんとか理解した操作方法を思い出しながら、何とか地図を起動させる。
 エリスが見る名前はただ一点。G-4エリアの「ボレアス・グレイラット邸」。
 この存在を知る事が出来たのが、二人と一緒にいて得た最も重要な情報だ。

 名前からして、間違いなく我が家の事を指しているのだろう。
 必ず確認しなければいけない。なんなら、ゲームに乗った参加者を追うよりも、最優先で。
 魔大陸に転移されてからずっと、実家に帰る事を目的として旅を続けてきたのだ。

 しかし一方で、エリスがこの事について違和感、あるいはモヤモヤした気持ちを覚えていた。
 ルーデウス・エリス・ルイジェルドの三人が魔大陸で『デッドエンド』を結成し、旅を始めてからはや1年。
 苦しい事も沢山あったが、それ以上に楽しい事やワクワクした事を経験した旅であった。
 そんな旅の終わりを、「自分の家に戻る」という目的を、こんな殺し合いで済ませてしまっていいのか。そんな考えをエリスは覚えてしまった。

 もちろん、本物そのままの可能性はおそらく低い。イヤ、おそらく間違いなく紛い物だろう。
 それでも、無視できる存在ではない。
 何故なら、私は「エリス・ボレアス・グレイラット」なのだから。
 恐らくこの殺し合いで、その場所に最も縁のある存在なのだから。

「……とにかく、動きましょう」

 エリスは地図を閉じ、タブレットをランドセルの中にしまい、再び歩き始める。
 今は帰郷は雑念。ここは殺し合いの地で、何処に敵がいるのかは分からない。
 ルーデウスと再開する。マーダーは斬る。実家について確認をする。
 やらなきゃいけない事は多い。だが、やらないという選択は無い。
 そして、その為には歩み続けなければいけない。

 その時が来るまで、エリスは心の刃を砥ぐ。


【E-2南東/1日目/深夜】

【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式×2(内タブレットは一つ破壊済)、ランダム支給品0〜2(エリス)、ランダム支給品0〜2(マルフォイ)
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:早くルーデウスと再開したいわね!
4:どうして私の家がここにあるのかしら……。寄る必要があるわね
5:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ

[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)〜ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました


 ☆ ☆ ☆ 


「エリスさん……、やっぱり自分の名前の家がある方にいくんですかね」
「さあな。それにしても、落ち着きってのが全くない女の子だったってばよ。好かれているっぽいルーデウスって奴がどんなのか見てみたいぜ」
「本当にココにいるのか分からないですけどね。それで、ナルトさんはこれからどうしようと思いますか?」
「うーん、俺も一応知っている場所には寄っておきたいからなー」


484 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:58:12 HDKJt/Fo0
「火影岩って……コレ一体何なんですか?」
「火影岩はそのまま火影の岩だってばよ。スゲーでっけー顔でセリムもびっくりする事間違いないぜ!」
「説明になってない気がしますが……。とりあえずそこを目指しましょう。途中に病院があるのも何かの役に立ちそうですので寄りたいですね」
「ヨシ!目的地も決まったし、それじゃあ動くか!」

 一旦の目的とする場所も決まり、立ち上がり移動の準備を始めるナルト。
 ガムテと交戦した際に出来た傷も、セリムやエリスと話し合ったそこそこの時間である程度痛みも引いてきた。
 殺し合いに乗っているのがガムテだげではない事を知った。
 この1時間で多くの子供が亡くなった事も知った。
 なら、これ以上動かない理由はない。元来ナルトも考えるより動いて結果を出す行動派だ。
 海馬乃亜を打倒する為に、早く動いて仕方がないのだ。
 今は年下のセリムが一緒にいる為合わせているが、もし居なかったら自分自身も積極的に動き回っていただろう。

「少しお待ちくださいね、ナルトさん」
「オウオウ、自分のペースで良いってばよ」

 セリムもまた、ナルト同様に支度を始める。
 ナルトは声を掛けて、ペースを合わせて支度を行っていった。
 


(さっきの情報交換、この男と小娘の世界について……、どう考えるのが正しい?)

 セリム―――否、“人造人間(ホムンクルス)・プライド”は考える。
 ナルトとエリスが話した世界について、全く噛み合わない世界情勢について。

(忍者が隠れて国家経営を行っているらしい木ノ葉隠れの里はともかく、アスラ王国や魔大陸とやらは私の知る世界と全く一致がしない……。
 信じられないが、それぞれ別の世界があって、そこから拉致されたと考えれば一旦は説明が着く)

 “賢者の石”から供給されるエネルギーさえあれば、実質的な不老不死として生きるホムンクルスのリーダー格であるプライドは、数百年の時を生きている。
 その為、他国の情報など普段はどうでもいいが、自分の世界の世界情勢にもある程度は知識を持っている為、ナルトとエリスが語った大国の情報から、全く別の世界があるという結論に達した。
 
(わざわざ異なる世界から、それも子供に当て嵌まる存在だけを集めて殺し合いなんて、海馬乃亞は何を考えている……?
 おそらく何らかの実験と考えるのが妥当だろうが、ここまでの情報だけだと何も分からない……)

 海馬乃亜が今回このデスゲームを開いたのは、恐らく単なる娯楽や復讐といったものではない。
 『自分たちがそうしてきた』様に、何か裏があってこの血で血を洗う今回の戦いを画策したのだろう。
 だが、何をしたいのか、その真意へ繋がる情報が全く掴めない。
 しかし、情報が無い事についても理解は出来る。こちらも練丹術という異国の技術についての書物や情報を意図的に排除してきた。
 そうそう簡単に主催者に繋がる情報を手に入れる事は、恐らくないだろう。
 気になるのは地図にあった『海馬コーポレーション』という施設。機会があれば寄りたい所だ。

(……まあいい、まずは鋼の錬金術師がいるかどうかだ。それまではコイツにと一緒に行動して、極力無力な子供を装って動くとしよう)

 だが、プライドが一番求める情報は、主催者・海馬乃亜についてではない。
 計画にとって重要な存在であるエドワード・エルリックが参加しているかどうかだ。
 もし、参加しているのなら彼が死なない様に動かなければならない。しかし、彼の正義感を考えると必ず自分を顧みず無茶をするだろう。そうなっては今までの苦労が無駄になってしまう。


485 : 心の刃 ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 13:59:03 HDKJt/Fo0
(頼みますよ、海馬乃亞……。彼が参加しているかどうかで私のスタンスが決まるのですから)

 幸い、6時の放送で参加者が判明する。
 どうせなら、今回の放送で全員の参加者を前倒しして発表してくれれば良かったのだが、どうもココではあまりホムンクルスの望むがままには事が進まないらしい。
 それまでは、「無力な大総統の息子/セリム・ブラッドレイ」を演じよう。
 これまで何年も、何十年もずっと演じてきたのだ。後5時間弱なら、なんら問題はないだろう。

「用意できました、ナルトさん」
「オー大丈夫か?それじゃあ行くってばよー!」

 “セリム”は支度が整った事をナルトに伝える。
 ナルトは元気よく目的地に移動する為に出発を始め、“セリム”に背中を向ける。疑う素振りは見えない。
 うずまきナルトの実力がどれ程なのかは不明だが、忍者を名乗る以上は全くの無力ではないのだろう。
 
「ナルトさん、改めてよろしくお願いしますね(精々必死こいて私を助けて下さいね……)」
「おう!このうずまきナルトに任せとけ!!」

 “セリム”の心に磨かれる悪意の刃を知らずに、ナルトは気合の入った言葉を掛ける。
 その言葉に顔では笑顔を作り、心で嗤う。


 セリム・ブラッドレイ―――傲慢のホムンクルスの刃が振るわれる刻は、おそらくそう遠くない。



【E-2/1日目/深夜】

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:全身にダメージ(小)、右足に刺し傷(小)、治癒中。
[装備]:
[道具]:基本支給品、煙玉×4@NARUTO、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:一先ずは、『火影岩』を目指して行動する。
3:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。


【セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:もし居れば、鋼の錬金術師の生存を優先する。居なければ……。
1︰6時の放送まで、ナルトを盾に無力を装い情報を集める。
2:具体的な方針は放送まで保留する。
3:余裕があれば海馬コーポレーションに寄りたい。
4:海馬乃亜は何を企んでいる……?
[備考]
※ヨキに轢き逃げされて以降からの参戦です。
※ナルト・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。
※参加者がそれぞれ違う世界から来ていると考えています。


486 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 14:01:14 HDKJt/Fo0
投下を終了します


487 : ◆diFIzIPAxQ :2023/05/23(火) 16:02:41 HDKJt/Fo0
すみません、先ほど投下した「心の刃」にて、一部文章の抜けがありました。
>>483のエリスの状態表が出た後の会話の文章ですが、一部追記させていただきます。
wiki収録の際は、下記の文を使用してください。


「エリスさん……、やっぱり自分の名前の家がある方にいくんですかね」
「さあな。それにしても、落ち着きってのが全くない女の子だったってばよ。好かれているっぽいルーデウスって奴がどんなのか見てみたいぜ」
「本当にココにいるのか分からないですけどね。それで、ナルトさんはこれからどうしようと思いますか?」
「うーん、俺も一応知っている場所には寄っておきたいからなー」

 エリスが去って見えなくなった頃に会話を再開したナルトとセリムは、タブレットを拙いながらも操作して、地図を起動する。
 地図の画像を見て、ナルトはある部分の場所に指をさす。地名の名前は、『火影岩』。


488 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 16:57:11 hM46CBRc0
皆さん投下ありがとうございます!
私も投下します。
感想は後ほど。


489 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 16:59:06 hM46CBRc0
雄二とマヤは修行を行うのに落ち着ける場所として、桜田ジュンの家と命名されていた民家まで移動していた。

「えーーい!!」

斬月を引き摺りながら、雄二はマヤの太刀筋を見切り、その剣撃を受け止める。
既に一時間近く、このような特訓を繰り返し、雄二はマヤに戦闘技術を叩き込んでいた。
マヤの動きは悪くない。テレビで見ただけのCQCを習得できる彼女は、雄二の指導をスポンジのように取り込み、間違いなく一時間前よりは強くなっていた。

(……誤算、だったな)

強いには強い。少なくとも"一般"の同年代の相手なら、多分余程の事がなければ男相手でも勝てるかもしれない。
だが、プロを相手にするには到底心もとないとも、雄二は考える。

(この斬月とは、かなり異質な武器なのか……戦雷の聖剣、思いの他出力が低いぞ)

雄二の当時のプランは、マヤに戦雷の聖剣を最低限使えるようにすることだ。

はっきり言えば、元から剣技の方には期待していない。
予想以上にセンスは良い為、しっかり鍛えれば相応の剣士にもなれたかもしれないが、それを半日にも満たない時間で叩き込むのは無理だ。
だが、異能力を纏う武器であるなら、異能で拙い戦闘技能を補い、自衛程度の力は身に着けられるだろうと考えてしまった。
銃の扱いを教えることも考えたが、むしろ素人に下手に重火器を扱わせるよりは、異能を持つ武器の方が習得難易度も低いと誤認してしまったのだ。

その理由として、まず雄二に支給された斬月が常時開放型の斬魄刀であったことが起因する。通常の斬魄刀と違い、斬月は常に始解の状態を維持している。
その点に注視し乃亜によって斬月のみ、その持ち主の霊気や魔力に値するものを斬撃に変える特質を、誰にでも使用可能とした。
故に異能に縁のない雄二は、初めて触れた異能である斬月を他の異能の武器の基準として想定し、マヤの戦雷の聖剣もコツを掴めば誰にでも使えるような代物だと誤認してしまっていた。

前提として、聖遺物を用いた戦闘方法は汎用性という点においては欠陥品だ。
形成、創造を始めとする異能力の発現はエイヴィヒカイトを始めとした複合魔術を扱うか、
裏技として相手に魂を喰われ、その後捕食者の持つ聖遺物を奪い復活するなど、いくつか方法があるにせよ、共通するのは超人であること、更に使いこなすのに最低でも数日は必要とすること。

その為、これも乃亜によって調整されている。
活動、形成、創造……更にその上など以ての外ではあるが、戦雷の聖剣は単に一つの武器として、多少の身体能力向上、雷を操る力を発現するよう乃亜に調整されて支給されていた。

(多少の電撃は撃てる。身体能力は上がっているが……とても、プロ相手に使えるようなものじゃない)

数年後の雄二なら、まず先に戦雷の聖剣の使い勝手を確認し、マヤの修行を考慮していたのだろうが、まだ未熟な時期の雄二ではそこまでの発想には至れなかった。

「はぁ……はぁ……大分、剣のコツ掴めてきたかも」

武器の性能は引き出してきている。しかし、雄二の想定以上に時間が足りない。
せめて一年でもあれば、話は大分変ってくるが最大でも三日前後の殺し合いでは、どう足掻いても成長が間に合わない。


490 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 16:59:21 hM46CBRc0

(それに、俺も斬月を使ってみて分かったが……やはり重すぎるな。しかも、この一段上の卍解とやらも、俺には使えそうにない)

マヤとの修行程度であれば、斬月を引き摺りながらも応戦は可能だが、実戦ではとても雄二の膂力が追い付かない。
斬月の放つ、月牙天衝も雄二では、集中し力を溜めてようやく放てる程度だ。
その消耗度合いも尋常ではなく、これをメインウェポンとして使用するのは無理がある。

とはいえ持て余すが、常時開放型である以上、始解の姿までは使用できる。
条件さえ揃えば月牙天衝も発動できるが、その更に上、卍解を取得するには斬魄刀から、その名を聞き出せねばならない。
だが、斬月はその出自からして非常に例外に例外を重ねたイレギュラーな存在だ。そもそも、斬月の卍解である天鎖斬月が本当の意味で、卍解であるかも詳細は不明な代物。
その特異性からして、斬月から卍解し天鎖斬月を手に出来るのは、やはり死神代行たる黒崎一護を於いて他には居ない。

元より、斬月に限らず卍解に至るまでの過程は、それぞれの死神の持つ、境遇、能力により様々だ。故に、やはり本来の担い手でなければ、卍解は扱う事は出来ないのだろう。

「マヤ……すまない、俺の認識が甘かった。修行についてだが―――」

誤算を意識した上で、余計な事を引き摺る時間があるなら、それを改善に使う方が有意義であることを雄二は知っている。
雄二はプランを変更し、銃の扱いを教える事に決定した。
あくまで、護身用であることを強調し念頭に置いてだが、マヤの高いセンスを考えれば自衛用には扱えるはずだ。
恐らく使いこなすのは不可能な、聖遺物に拘り続けるよりずっといい。

「銀ちゃん、人がいるでおじゃる!!」

そう、伝えようとして、雄二の言葉は別の第三者の声にかき消された。






――――――――――


491 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 16:59:47 hM46CBRc0
「銀ちゃんは、かわゆいのぉ」

(何なのよ、このガキ)

神戸しおを取り逃がした後、乃亜のガキ染みた放送を聞き苛立ちながら島の中を散策する水銀燈の前に、珍妙な子供が現れ、懐かれてしまった。
その子供の名前こそ、おじゃる丸。この島屈指の危険人物の一人である。

おじゃる丸は水銀燈に一目惚れした。

この世ならざる、尋常ではない至高の美しさ。
触れることすら烏滸がましい神々しさ。

絹のような白銀の髪、雪のように白くさりとて温かみのある柔肌、宝石のように輝く美しい瞳。

おじゃる丸は、この美しい人形のおなごを、是非、持ち帰ろうと決意してしまった。

「ニケ〜揺れないよう歩いてたも〜」

「へーへー」

何で、俺は見ず知らずの子供をおぶっているんだ? こんなことやってる暇ないし、クロの事なんとかしなきゃいけなくね?

そんなことを考えていたのは、おじゃる丸と遭遇したもう一人の少年、それは勇者ニケ。
クロとの一件後、首輪を外す方法やクロの病を治す方法を探さなきゃと色々考え、取りあえず駆け回ってみたところ、おじゃる丸と水銀燈に合流してしまった。
当然だが、そのままの流れで、ニケがおじゃる丸の牛車代わりになったのに、そう時間は掛からなかった。

「ニケ、貴方のそのデュエルボードとかいう乗り物で移動すれば良いじゃない? 貴方達に合わせて移動するだけで、飛べる私からしたら時間の無駄よぉ」
「俺に言うなよ」
「嫌でおじゃる! マロは早いのが苦手でおじゃる!!」
「……チッ」

ニケに支給されたアイテムの一つが、デュエルボードと呼ばれる、スケボーのような乗り物だった。
クロエと別れた後、ランドセルを漁るとこの乗り物が出てきたので、水銀燈達と出会う前はこれを乗りこなしエリアを移動していた。
本来の用途だとカードゲームで使うらしいが、ニケにはよく分からないのでスルーした。カードで遊ぶのに、スケボー乗るっておかしくないか?

「銀ちゃん、人がいるでおじゃる!!」
「うるさいわねぇ」

取り合えず、このおじゃる丸を何処かに放置できる場所。
そして、たまたま水銀燈が見知った施設である桜田ジュンの家が近場にあったことから、三人はここを当面の目的地として移動し、その桜田ジュンの家の前で修行していた雄二とマヤに遭遇した。




――――――――――


492 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:00:40 hM46CBRc0

「へえ、少しでも戦えるように修行をねぇ?」

「うん、私、大分強くなったんだ。この剣から電気も出るようになったし!」

「マヤ、そのことなんだが……」
「そなたら、プリンはないでおじゃるか〜」

雄二とマヤ、水銀燈、ニケ、おじゃる丸、全員が殺し合いには乗っていない意思を確認した上で、改めて情報を交換し素性もある程度明かし合った。
元少年兵だったり、普通の女の子だったり、アリスゲームを宿命付けられた薔薇乙女だったり、勇者だったり、満月ロードから時間移動してきたやんごとなき雅なお子様だったり。
とにかく、全員の話が噛み合わないが、最早この人数全員が嘘を言う筈がない。
更に水銀燈も巻かなかった世界を始め、平行世界知っていたこともあり、平行世界を越え参加者は選定されたのではと、結論付けた。

クロエ・フォン・アインツベルン、神戸しお(水銀燈目線では、名前は不明)、彼女らのような危険人物の情報を交換し、更にそれぞれの殺し合い開幕以降の経緯を話し合っていく
その中で、マヤは自分が雄二と修行していたことを明かした。

「そんなに強いのであれば、マロの前で御前試合をせぬか? ほれニケ、相手をせい」
「え、俺……?」

相手がプリンを持っていないことを確認した後、だらーんとしながら、誰を豚にでもしようかの〜と品定めしていたおじゃる丸が口を開いた。
マヤの自信満々な態度から、興味を惹かれたのだろう。

「うん、私も修行の成果を確認したいし、良いよ! ニケ、やろう!
 ニケは勇者なんでしょ! 私も戦乙女なんだから!!」

「……えぇ」

マヤの様子にニケは少し違和感を覚えていた。
口にした戦乙女という単語が、とてもマヤに釣り合っているようには見えない。
意気揚々と剣を構えるマヤを見ながら、ニケもランドセルから武器を取り出して構える。

「……しかも相手は剣で、俺、丸太か」

自分に支給された武器の一つ、丸太を掴んで溜息を吐く。マヤの持っている剣はかなりの名剣のようにも見える。
こんな丸太で、一応練習試合とはいえ、本体の自分ごと真っ二つになったりしないだろうか。

「待ってくれ、二人とも……マヤ……」

「始めるでおじゃる!」

雄二の声がまたもや掻き消される。
慣れた口調の、おじゃる丸の声を合図にマヤから動き出した。
練習とはいえ、相手は真剣、ニケも気を張りマヤの動きに注視する。
剣からバリッと紫電が迸る。見てて、少し冷や汗を流した。

(か、加減とか……あの娘出来るんだよな……?)

こんな丸太、すぐに焼き切れるのではと心配になる。
しかも、ただでさえ重くて掴み辛い、真剣が万が一にも自分に当たらないよう、より一層掴む手に力を込めて出方を伺う。

「せーのー!!」

確かに、マヤは非常に高いセンスを持っている。
この一時間近くの修行でも、相当な効率で自身の経験値として取り込み、急成長を遂げたのは間違いない。
だが、あくまで一般人の範疇だ。それをモンスターを相手に実戦経験を積んでいる現役の勇者を相手にするには、練度があまりにも足りなかった。

「……あれ」

剣を振ってきたマヤの動きを察知し、右に避ける。確かに速いとニケは感じた。

「よっと」

ただし、一般人の女の子にしてはだ。
そのまま、背後に回り、器用に丸太の先でマヤの背中を軽く小突く。
呆気なく、マヤは前のめりに掌を地に突き、転んでしまった。


493 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:01:04 hM46CBRc0

「お、おかしいな……疲れてるのかな……」

戦雷の聖剣を使っていて、身体能力はある程度上がっているとマヤは認識していた。
ニケは特段、剣技が得意ではない。しかも、武器もこんな丸太だ。
しかも、元々は一般人だと聞いていたので、本気でもなかった。
なのに、マヤは一切の反撃も何も叶わぬまま、ニケに軽くあしらわれてしまった。

「ゆ、雄二……私……」

「なあ、雄二?」

ニケも雄二を見る。
武器の効果でパワーアップ出来る。
だから、その武器の性能を引き出す為の修行をしていたと言っていたが、それは本当に現実味のあるプランなのか疑問に思えた。

「すまないマヤ、俺の斬月と勝手が違うみたいだ……。
 斬月はずっと能力を……始解というらしいが、それが解放されたままみたいだが、マヤのそれは……習得するのに時間がきっと掛かる」

「そ……そんな」

むしろ、マヤの素質は非常に上澄みだと言っても良かっただろう。
乃亜の調整もあれど、多少の電撃と身体能力向上までは引き出せたのだから。
しかし、だからといってこの殺し合いを加速させている強者達に匹敵する程ではない。

「ねぇ、マヤちゃんといったかしらぁ?」

強いショックを受けたマヤに対し、水銀燈が眼前に降り立ち、囁やいた。

「残念だけれど、貴女には戦う力はあまりないわぁ」

「……そ、そんな……こと」

「良いから聞きなさい。その剣を極めるより、もっと現実的な提案をしてあげるわぁ。貴女、私と契約――――」

「おほっ……そなた、てんで弱いの」

私と契約して、マスターになりなさい。そうすれば、きっと雄二君の役に立てるわぁ。
水銀燈がそう言いかけた時、おじゃる丸が口を挟んだ。

「修行と言っておったが、そちは今まで一体何をしておったでおじゃる?」

言うだけならば簡単である。おじゃる丸は特に悪気もなく、思った事をそのまま口にする。

「今のは、調子が悪かっただけだし……」
「おじゃ? 真剣勝負に次はないのう。かわゆいマロを守れなかったら、どうするでおじゃる?」
「こ、の……!」

おじゃる丸の言動に苛立つ。そもそも、何故お前を守る前提なんだと、拳に力が籠る。
胸倉掴んでぶん殴ろうと思い、寸前で留まる。相手はまだ子供で、自分はずっと年上だったからだ。
それでも、奥歯が擦り切れる程に歯を噛みしめ、悔しい思いを表に出さぬよう耐える。


494 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:01:27 hM46CBRc0

「おじゃる丸、お前、何様なんだよ!!?」
「やんごとなき、雅なお子様でおじゃる。当然であろう?」
「こ、このガキ……」

ニケの突っ込みに対し、おじゃる丸はきっぱりと言い放つ。態度は何処吹く風といったところだ。

「……一人にさせて」

しかし、この太々しい子供の言う事にも一理あった。マヤもニケとの先の試合で、完全に実力の差を痛感させられてしまったからだ。
それに一時間程とはいえ、聖遺物に触れ続けていたらこそ分かる。聖遺物の力、乃亜が調整したと言ってもそう易々と使えるものではないと。
ただ、それでも雄二の言葉を信じて、戦雷の聖剣の力を少しでもモノにしようと、覚悟を決めて剣を振るって来ていた。

「マヤ……すまない、俺の判断ミスだ。異能持ちの武器の扱いを、甘く見てしまっていた」

「ごめん、今は何も聞きたくない」

雄二とは目を合わせないよう背中を向け、桜田ジュンの家の中に入っていく。少しでも一人になりたくて、誰にも見られたくはなかった。

雄二が悪くないのは分かっている。むしろ、何の義理もない自分にここまで良くしてくれている。し過ぎているくらいだ。
だからこそ、雄二の力になりたかった。チマメ隊の皆を守れるくらいに、誰も死なせない為に、何処か危ない雰囲気がする雄二に無理をさせない、力になれるように。
なのに……。

『修行と言っておったが、そちは今まで一体何をしておったでおじゃる?』

自分の決意も、覚悟も、雄二のしてきてくれた事を全部否定されたようだった。
弱いから、強くないから……渇望が足りないから。
手にある戦雷の聖剣を見る。未だ、何も応えてくれない戦乙女の剣、自分の想いが足りないからなのか。

「お願いだから、力を貸してよ……」

戦雷の聖剣はやはり、何も応えてはくれなかった。




――――――――――


495 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:02:07 hM46CBRc0

「銀ちゃん、ほれ近うよれ……」

「おじゃる丸くぅん? 私ね、とーっても可愛い妹がいるのぉ。今度、紹介してあげるわぁ……真紅っていうのぉ。
 私より、ずぅぅぅと可愛いからぁ、もう私に付きまとうのはやめなさぁい?」

「おじゃ!? 真紅ちゃんとな?」

水銀燈は苛立ちながら、おじゃる丸をあしらう。出会ってからずっとこの調子で付き纏ってくるのだから、たまったものではない。
殺そうと思ったが、別参加者の目もある。それに優勝狙いに切り替えるには、まだ時期が早すぎる。
なのだが、打ちひしがれたマヤに契約を持ちかけようとした所を邪魔されたりと、どうしてもおじゃる丸に対し、苛立ちが止まらない。

「この……斬月ってやつ……丸太よりデカいし重くて、俺も振るの無理だな……重たっ」

「そうか……役立ててくれるなら、譲ろうと思っていたが」

斬月の性能を確認していた雄二とニケの二人に、水銀燈は視線を移す。
戦闘要員のあの二人とは契約をするのは、あまり好ましくはなかった。
力を貰う事で彼らの戦力の低下もありうる。乃亜の言うハンデを背負わせるほどの強者を相手にする時、少しでも戦力は多目に見積もっておきたい。
だから、戦力として特に換算出来ないマヤは打ってつけの契約対象だったが、その機会もみすみす逃した。

「……俺は、取りあえずホグワーツってとこ行ってみる。魔法とか色々参考になるものもありそうだし、クロの事も何とかできるかも」
「そうか……俺とマヤは……もう少しここに残る」
「なあ……その……ごめんな。ウチの連れが」
「いや、いい……。あのまま実戦に行けば、マヤが死ぬ可能性もあった……」
「そ、そうか……」
「俺も役に立てるか分からないが、クロエって娘の事を何とかできないか調べてみるよ」
「ありがとう……助かる」

ニケとしては、取りあえずこの近くにあるホグワーツへと足を運んでみるつもりだ。クロの不治の病を治せる、都合のいい魔法とかあるかもしれない。

「私も、貴方に同行してあげる」
「銀ちゃん、まろも一緒に行くでおじゃる〜」
「げっ」

雄二と情報交換を終え、そのままこっそり桜田ジュンの家を発つ筈が、先回りしたかのように水銀燈が声を掛け、ニケの足をおじゃる丸が掴んでいた。

「お、お前さ……おじゃる丸と一緒に雄二のとこで……」
「私だけに、このガキを押し付けるだなんてそうはいかないわぁ? それにマヤって娘と、このガキを一緒にしない方がいいでしょ?」
「それは、まあ……そうなんだけど」
「ニケ〜おぶってたも〜」
「ちったぁ、自分で歩けよな!」

溜息を吐きながらおじゃる丸を背負い、ニケは桜田ジュンの家を出発した。

(……あのマヤって娘、大丈夫かな)

ニケは僅かに関わっただけだが、雷の剣を持っていた女の子の事をもう一度だけ思い出し、一度だけ振り返った。


496 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:02:32 hM46CBRc0
【B-3/1日目/深夜】

【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、不安(小)、おじゃる丸をおんぶ中
[装備]:丸太@彼岸島 48日後…
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、龍亞のD・ボード@遊戯王5D's
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
1:とりあえず仲間を集める。でもククリとかジュジュとか…いないといいけど。
2:クロの願いに対しては…どーすんべこれ……取りあえず、ホグワーツ行って都合の良い魔法ないか調べてみるべ。
3:あのマヤって女の子も大丈夫か?
※四大精霊王と契約後より参戦です。


【水銀燈@ローゼンメイデン(原作)】
[状態]健康、めぐ救出への焦り
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2、ヤクルト@現実(本人は未確認)
[思考・状況]基本方針:一刻も早くここから抜け出す
0:一先ずニケと同行する。
1:首輪を外して脱出する方法を探す。どうしても無理そうなら、優勝狙いに切り替える。
2:ハンデを背負わされるほどの、強力な別参加者を警戒。
3:契約できる人間を探す。(おじゃる丸は論外)
4:真紅が居たら、おじゃる丸を押し付ける。
[備考]
※めぐを攫われ、巻かなかった世界に行って以降からの参戦です。
※原作出展なのでロリです。
※Nのフィールドの出入り、契約なしで人間からの力を奪う能力は制限されています。


【坂ノ上おじゃる丸@おじゃる丸】
[状態]健康、ニケに背負われ中
[装備]こぶたのしない
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:カズマの家に帰りたい
1:カズマや田ボを探す。
2:シャクを誰か持ってないか探す。
3:誰でもいいから豚にしてみたいでおじゃる(子供故の好奇心)
4:銀ちゃんはかわゆいのう……絶対持ち帰るでおじゃる。真紅ちゃんも会ってみたいのう。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。

※三人とも、クロとしおを危険人物と認識し、参加者が平行世界から呼ばれていると結論付けました。(おじゃる丸は話半分で聞いてます)


497 : カサブタだらけの情熱を忘れたくない ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:04:50 hM46CBRc0



「……難しいな。人を救うのって」

一人になった雄二はポツリと呟く。早速、大きな失敗をしてしまった。
自分にとっての麻子の偉大さが、居なくなってから身に染みるように分かる。
他人を助け、指導し、育成するのが、こんなにも難しいとは思わなかった。

自分の中で確実性の高い方法を選んだつもりだったが、現実はあの太々しい貴族ぶった子供に一喝されるほどの甘いプランだった。
それを引き摺る気はないが、大いに反省はしなくてはならないし、ここから立て直していかないといけない。

「そう、上手くはいかないか……麻子も何回もこんな思いをしたのか」

もう今は居ない恩人を想い、そして五人を救うというのは大分先が長いなとふと思った。



【B-3 桜田ジュンの家/1日目/深夜】

【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:斬月@BLEACH(破面編以前の始解を常時維持)、グロック17@現実
[道具]:基本支給品、浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
0:マヤの修行プランを考え直す。
1:マヤに同行。保護しつつ、共に戦う。まずは修行だ
2:パンプキンの性能を知りたい。だが性質上、戦場でだろうな
3:この重い斬月を使うのは難しい。工夫する必要がある。
4:未熟なマヤのことを考えて海馬コーポレーションにはまだ近付かない
[備考]
※参戦時期は迷宮〜楽園の少年時代からです
※ 割戦隊の五人はマーダー同士の衝突で死亡したと考えてます
※卍解は使えません。虚化を始めとする一護の能力も使用不可です。
※斬月は重すぎて、思うように振うことが出来ません。一応、凄い集中して膨大な体力を消費して、刀を振り下ろす事が出来れば、月牙天衝は撃てます。


【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康、おじゃる丸に言われた事への強いショック(大)
[装備]:戦雷の聖剣@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:チマメ隊や雄二、みんなと一緒に戦う
0:……私、全然強くなれてないのかな。
1:バラエティじゃないなら、わたしが戦わなきゃ!……だったけど。
2:雄二って何かリゼみたいなやつだよね。やっぱ強いのかな?
[備考]
※あくまで武器として、戦雷の聖剣を扱う事が可能です。多少の身体能力向上と、小規模の電撃を撃てるくらいです。
 エイヴィヒカイトのように聖遺物と霊的に融合するのは不可能です。(つまり、活動、形成、創造、流出等その他諸々は不可)
 一般人にしては、センスは非常に高い方です。ただ、戦闘の達人や超人としての域に至るには、差があり過ぎますし、ロワ内だと鍛錬の時間が足りなさ過ぎます。
※チノやメグが参加してる可能性があると思ってます


※二人とも、クロとしおを危険人物と認識し、参加者が平行世界から呼ばれていると結論付けました。



【支給品紹介】
【龍亞のD・ボード@遊戯王5D's】
不動遊星が龍亞達でもライディングデュエルが出来るよう作ったスケボーのような簡易型のD・ホイール。
モーター内臓なので、当然速い。
イメージ的には、コナンのスケボーにデュエル機能も付いたものと考えて貰えれば分かりやすいかも。


498 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 17:09:52 hM46CBRc0
投下終了します。

あと支給品について、以下のルールも追加させて頂きます。お手数ですがご確認お願いします。

【本来の所有者以外が使用する斬魄刀について@BLEACH】
乃亜によって調整され、始解まで使用可能とします。所有者によって相性が存在し、始解が使えないという展開もあり。
斬月のみ常時開放型なので、始解のまま支給。
卍解に関しては現状では、使用出来ないものとします。


【本来の所有者以外が使用する聖遺物について@Dies irae】
乃亜によって調整され、一つの武器の範疇として使用可能とします。所有者によって相性が存在し、うまく使えないという展開もあり。
聖遺物以外の要因でも普通にぶっ壊れますが、壊れてもその所有者は死にません(一体化してないので)。
現状では聖遺物と、霊的に融合するのは不可能です。(つまり、活動、形成、創造、流出等は不可、その他諸々も全部なし)
ただし、多少の身体能力向上と、一部の能力は使用できるものとします。(戦雷の聖剣なら雷を出して操ったり、緋々色金なら炎を出して操ったりする等)


499 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/23(火) 17:31:33 0NgUS0xI0
皆様投下乙です
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター、野比のび太、ロキシー・ミグルディア
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、雪華綺晶で予約します


500 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 20:15:38 hM46CBRc0
感想投下します!

>トリックルーム
この歳で近い年代の女の子に母性感じるの。素質を感じますよマサオ君。でも、幼稚園児なら小学生でも大人に見えて当然かもしれませんね。
写影くん、流石の推理力と知力で沙耶香殺害の犯人を絞りこめてはいますけど、それが夢で殺害したという型破りなトリックを見破るには至りませんね。
現在、戦闘中ですしここを切り抜けても、誰か気絶しただけでアウトってのも中々辛い所。
それにしてもマニッシュ・ボーイ君、マサオ残したの絶対人選ミスだろこいつ。


>心の刃
ナルトォ……作中だと名前呼びが多いんで、うずまきって呼ばれるのはなんか新鮮です。
ルフィに想いを寄せるのは、確かにかつてのジャンプの三大看板でしたからね。そりゃ、意気投合するだろうなと。ルフィ、ナルト、一護の三看板だった頃が懐かしい。一護は後に磯兵衛と並ぶんやけどな、ブヘヘヘヘ。
セリムが猫被っているとはいえ、ナルトが兄貴分みたいに接してあげてるの良いですね。
エリス、傍から見るとただのヤンデレの何かの狂信者で草。でも、確かに詠唱破棄は浪漫。
偶然にもヤンレズ沙都子と同じ、想い人センサーが的確に作動してるのも草。セリムからしたら、喉から手が出る程欲しいでしょうね、ニーサンレーダー。
ナルトもセリムが危険ですが、それ以上にエリスも腕に自信があるとはいえ、格上も大分居る中で、積極的に単独行動するのは、中々スリリングですね……。


501 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 20:37:38 hM46CBRc0
一つご報告させて頂きます。

◆2dNHP51a3Y氏に『トリックルーム』に登場する『失意の庭@Fate/Grand Order』について、以下の制限を追加して頂きました。

皆様、ご確認お願いします。


「このロワにおいては魔力もといそれに肩代わりになる力さえあれば誰でも起動可能であるが、対象を閉じ込められる時間は現実時間において最大30分。
 かつ、一度使用した場合、次の使用までに12時間のインターバルを空ける必要がある」


更に以下が上記の説明を追加した、支給品紹介になります。


【支給品紹介】
『失意の庭@Fate/Grand Order』
ヴィータに支給、現在は右天が所持。
対象を地上と星の内海の間の世界に閉じ込める、モルガンが保有する魔術礼装が一つ、理論的にはマーリンが幽閉されている塔とは同じ代物。
この世界の特性は、自分の心の中にある不安や自嘲などのマイナス感情から生まれた幻影に「嘘や妄言のない絶望」を言わせ、訪れた者の心をへし折る大変悪辣な仕組み。
維持時間は使用者の魔力量に依存し、魔力が切れると解放される仕組み。また、現実から礼装を物理的に破壊することでも、中に閉じ込められている人物を開放することが出来る。

このロワにおいては魔力もといそれに肩代わりになる力さえあれば誰でも起動可能であるが、対象を閉じ込められる時間は現実時間において最大30分。
かつ、一度使用した場合、次の使用までに12時間のインターバルを空ける必要がある


502 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/23(火) 20:45:34 hM46CBRc0
それともう一つ。
あとついでにwikiの方で支給品の説明を追加したのと、該当話の右天の状態表に分かりやすく、失意の庭(日中まで使用不可)を追記させて頂きました。
本編の改稿は一切行っておりませんが、事後承諾になってしまいますが、もし問題のある場合はご指摘お願いします。


503 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/23(火) 21:38:01 dTERvdXY0
水銀燈、勇者ニケ、おじゃる丸
予約します


504 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:45:29 k9yRI3nM0
投下します


505 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:45:52 k9yRI3nM0
「14人……14人も…」

 コナンは、俄かには信じられない事実に打ちのめされていた。
 危惧していた、少年探偵団の面々の名こそ呼ばれなかったものの、たった一時間で14人が死んだという事実は、大きく、重く、コナンに伸し掛かる。

 一時間で14人ともなると、相当数の者が殺し合いに乗った。若しくは一度に大勢を殺戮する手段を持つ者が複数居る。この何方かである。
 そしてコナンは、乃亜の言葉から、後者であると推測した。

 ──── 特に、割戦隊の五人が大きかったけど、悪くないペースで殺し合っていてくれるね。
 それにしても、仮にも殺しのプロが五人も居て纏めて殺されるなんて、些か肩透かしだなぁ……。
 フフ……所詮、社会のレールにも乗れなかった、負け犬共の傷の舐め合いだったということかな。

 “仮にも殺しのプロが五人も居て纏めて殺されるなんて”

 子供ばかりを集めておいて、殺しのプロも何も有ったものでは無いと、普通ならば思うだろうが、生憎とコナン自身が、変なクスリで子供の姿になった高校生である。
 年齢詐称の、見た目は子供な連中が跋扈していてもおかしくは無い。
 それに、この世には子供兵士チャイルドソルジャー)という存在が在る。別段に子供ばかりを集めたとしても、その中に暴力や殺人に長じた、果ては慣れ親しんだ者が居ても、何らおかしくは無い。
 問題なのは、その殺しに長じた者が5人も纏めて殺されている事だ。
 五人が誰かに襲われて殺されたのか、誰かを襲って返り討ちにあったかは不明だが、それだけの戦力を持った者が、此の地を徘徊している事は明らかだった。

 (キック力増強シューズをオレに持たせた訳だ)

 急に頼りなく感じられ出したシューズを見下ろし、コナンは短く息を吐く。
 このシューズさえ有れば、少なくとも殺し合いに乗った者に襲われても、最悪でも身を護るくらいは出来ると思っていたが、考えを改めるべきだろう。

 (それにしても、どうやって死亡者数を確認している?)

 コナンは声に出さずに思考する。迂闊に声に出して、乃亜に盗聴されては意味が無いからだ。重要な事柄は、声に出さずに思考するべきだった。
 
 矢張り首輪か?首輪で生体反応をチェックしているのだろうか。
 超小型高性能ドローン等も考えられるが、可能性としては首輪の機能というのが一番妥当だろう。首輪の検証をしない限りは何とも言えないが。そして首輪の検証をする為には首輪を入手する事と、専門知識を持った者が必須だが。
 そしてコナンに、首輪のサンプルを獲得する手段は無いに等しい。
 首輪のサンプルを獲得する為には、誰かを殺した上で頭部を切り離すか、頸部が千切れるのを当然とした上で、無理矢理首輪をもぎ取るかしなければならないのだから。

 「そんな事が出来るかよ…バーロー」

 そしてその様な行為は、江戸川コナンの探偵としての在り方に反する。

  兎に角。今は、仲間を集める事だ。情報を得る事、首輪を外す事、乃亜を捕まえる事も大切だが、最も重要なのは集団の形成による数の威圧だ。
 多人数で行動することにより、殺し合いに乗った者達が無闇と手を出せないようにするのだ。
 
 「まるで回遊魚みたいだけどな」

 集団で泳ぐ事で襲われる事を避ける小魚を連想して、コナンは顔を顰めた。
  
 ────クジラに襲われれば群ごと一呑みだけどな。

 頭を振って、嫌過ぎるイメージを振り払うと、コナンは改めてタブレットを操作して、島全体の地理と、現在位置と、付近の施設を確認する。


506 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:46:52 k9yRI3nM0
「一番近いのは図書館…次が衛宮邸と教会… …」
 近隣に複数の施設が有るが、何処を目指すべきかというと、いまいち判然としない。
 手っ取り早く誰かと会うのならば、怪我をした者が目指しそうな病院。それに何らかの手掛かりが有りそうな海馬コーポレーションだろうか。
 病院ならば、怪我をした者や、誰かを助けようとする者が集まって来るだろう。
 海馬コーポレーションならば、海馬乃亜に関する情報を求める者達。海馬乃亜に反旗を翻す事を決意した『対主催』が集まって来ることだろう。
 反面。集まってくる者達を狙ってやって来る『マーダー』もいると考えられる。
 この場合。多人数を纏めて殺しにやって来るのだから、割戦隊の五人を纏めて仕留めた様な連中の様に、上位に入る実力なり殺戮手段なりを持つ者がやって来ることだろう。
 そんな連中に襲われた時のことを考えて、コナンは気が滅入った。
 尤も、今いる場所から目指すには、山を越えるなり迂回するなりしなければならない。当然、出遅れる。現時点で病院や海馬コーポレーションの近くにいる者との邂逅は、望めないだろう。
 最悪、集まった者達が、強力なマーダーに殺され尽くした後、という事も考えられる。そうなったら只の徒労だ。この二つは後回しにして、人のいそうな場所を目指すべきだろう。

 「となると魔法魔術学校か」

 魔法だの魔術だのといったオカルトに関わる手がかりを求めて、やって来る者がいるかも知れない。先ずは、此処を目指すべきだろう。

 「回り道になるが、衛宮邸と桜田ジュンの家、ついでに映画館に寄っておくか」

 明確に個人と関係が有る施設である、きっと此処に集められた者達の中に、関わる者が居るのだろう。
 名簿が解禁された時に、『衛宮』、『桜田』の名があるかどうかを確認しておくべきだろう。
 もしも、この名の持ち主が殺し合いに乗っているならば、衛宮邸と桜田ジュンの家での探索が、役に立つかも知れないのだから。
 映画館は完全についでだ。態々こんな時に映画館なんぞに立ち入るとは思えないが、集められたのは子供ばかりである。コナンには思いもよらない理由で、映画館を目指すかも知れなかった。

 「というかI・R・T(アイドル・レイプ・タワー)ってなんだよ……」

 どういうセンスの持ち主なんだ。海馬乃亜は。あの歳でこんなふざけた真似をするわ、I・R・T(アイドル・レイプ・タワーなんてトチ狂ったセンスの施設を用意するわ。
 いや、実は何か意味が有って、I・R・T(アイドル・レイプ・タワー)なる怪施設を配している可能性も有る。
 おそらくは関係者が此処に居るであろう、衛宮邸と桜田ジュンの家の様に。
 という事はつまり…。
  
 「マジか……」

 小中学生のアイドルなんて、数こそ少ないが、珍しいものでは無い。コナンは自身の想像に吐きそうになった。
 
 「何が有ったら、あの歳でこうまで歪むんだ…」

 海馬瀬人を知る者ならば、「まぁ海馬だし」で済ませるのだろうが、生憎とコナンは海馬の家の者達とは今日が初対面である。必然として思考は錯綜する。


507 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:47:18 k9yRI3nM0
 「っと、こんなこと考えてる場合じゃねぇ」
 
 コナンは先刻確認した支給品を取り出した。
 どうにも気に入らない名前と効能のアイテムだが、この場所に放り出されて、歩き回る事一時間。誰とも接触できず、無為に一時間を過ごし、その間に14人も死んだとあっては、好き嫌いを云々していられない。
 効果の程を試していないのが気になるが、これは仕方がない。説明書通りならば、使い所を冷静に見極めなければならなかった。
 その使い途が有るとすれば、それは“現在”だろう。
 説明書を読んだ限りでは、気に入らない名前と効能のアイテムだが、此処では有用だ。

 「オレにこんなモン渡すとは、つくづくコケにしてねーか?」

 コナンが取り出したのは、『真実の鏡』。遠く離れた場所のみならず、過去ですら映し出すという魔法の品だ。

 「こんなもん在ったら、探偵なんて不要だっつーの」

 いかなる難事件もコレさえ在れば念じるだけで、全ては白日の元に晒される。
 探偵としての矜持を虚仮にされている様で、コナンは不快だった。
 
 「これ迄の人生を全否定されてる様でムカつくんだが」

 それでも、数多の難事件を解き明かしてきた知性が、この道具の有用性を理解させる。
 過去を映すことは制限によって出来ず、映し出せるのは現在居るエリア内のみ。使用できる時間はたったの三分。そして一度使えば一時間の使用不能期間がある。
 早々に14人もが死んでしまったこの事態。近場に生きている人間が居るならば、そして危険人物で無いのならば、 この道具を使って居場所を探り当て、さっさと出逢うべきだろう。
 衛宮邸に行くとしても、この鏡で得た結果次第では、後回しになる。

 そしてコナンは鏡を用いて、今現在いるエリアを具に見ていき、そして一つの人影を見つけ出した。


508 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:47:59 k9yRI3nM0



 アーカードとの死闘を切り上げ、空を飛んで移動した魔神王は、岩山を越えたところで地へと降り立った。
 魔神王の知識の内にある吸血鬼や、高位の魔術師が転生した不死王(ノーライフキング)とは、まるで異なる吸血鬼。
 アレもまた、自分達の世界である魔界とは異なる物質界の住人なのだろうか。
 あの様な存在が他にもいた場合、戦闘で消耗した魔力を回復させなければ、同様の存在と戦うことになった時に面倒だ。
 それに、武器も欲しい。この剣は強力だが、それだけだ。化け物に対して有効とは言え、それであの吸血鬼をどうにかできるものでも無い。それは、至高神の権能で鍛えられた聖剣を以ってしても、傷の治りが鈍くなるだけでしかなかったこの身が証明している。
 この巨剣は魔神王自身にも有用だが、致命打を与えるには至らない。
 魔神王を滅ぼす為の剣である、魂砕き(ソウルクラッシュ)の様な、あの手の存在を滅ぼす為に造られた武器が欲しかった。
 此処で思い出されるのは海馬乃亜の言葉だ。

 【そうそう、殺し合いと言っても、ゲームは公平に行わなければならないからね。キミたちにはランダムにアイテムを支給するよ。
 圧倒的強者にはハンデも与えよう。ただ、殺すだけじゃなく戦略も必要になるわけさ】

 魔神以外にも巨人や竜を使役していた古代魔法王国(カストゥール)の者達は、使役していた存在が、制御できなくなった時の為に、必ずその対抗策を用意していた。
 魔神王にもその対抗手段は存在し、それが『魔神王の剣』と後の世の伝承(サーガ)に語られる魂砕き(ソウルクラッシュ)である。
 魔神王に対する魂砕き(ソウルクラッシュ)同様に、あの吸血鬼にもまた、何らかの対抗策が有り、そしてその対抗策はこの地に集められた者達の誰かに渡されているのだろう。
 それを入手する事が、あの吸血鬼を滅ぼす確実な方途だろう。
 並行して、魂砕き(ソウルクラッシュ)も探す必要が有った。あの剣さえ手中に収めていれば、魔神王は不滅と呼んでも過言では無いのだから。
 そんな思考を巡らせながら歩いていた魔神王は、地面に転がる死体を見つけて、足を止めた。

 何度も何度も殴打され、何らかの手段で胸を貫かれて死んだ中島弘の死体を、魔神王は無感情に見下ろし、無言で中島の頭を右手で掴んで、骸となった中島を持ち上げると、左手で中島の胸倉を掴んで体を固定し、右手を一捻り。
 それだけで、中島の頸部は捩じ切れ、胴から離れてしまった。正しく人外の、凄まじい、怪力だった。

 無言のまま、魔神王は中島の頭から首輪を外すと、自身のランドセルに入れた。
 魔神王の最終目的は、乃亜を含む皆殺しにある。その為にも、首輪の入手は必須だ。他の者たちは兎も角、乃亜に関しては、首輪を外さなければどうにもならない。
 この首輪は、古代魔法王国(カストゥール)の魔術師達が用いた制約(ギアス)の様なものだ。神代より生きる古竜(エンシェントドラゴン)ですらが、魔術師達に逆らう事ができなかった魔術による縛め。
 この縛を外さなければ、乃亜を殺すどころか、逆らう事すら出来はしない。首輪を入手し、調べ上げる必要が有った。


509 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:48:47 k9yRI3nM0
更に魔神王は、中島の死体からランドセルを外し、服を剥ぎ取るとこれもまたランドセルに入れる。
 全裸になった中島の胴を乱雑に打ち捨てると、右手に持ったままの中島の頭に空いた左手の五指を突き込み、指が頭蓋に完全に埋まったところで勢いよく手を引き抜く
 骨の割れる乾いた音と、皮膚の裂ける湿った音とが同時にし、中島の頭蓋は魔神王の掌サイズの骨と皮膚が剥ぎ取られ、内部に詰まった脳を晒した。
 柔らかい肉を食いちぎり、咀嚼する音。
 魔神王が中島の脳を食っている音だ。
 見る者がいれば、間違い無く恐慌に陥るだろう、悍ましい食事風景が終わるまで、数分の刻を要した。

 ────見られているな。

 中島の脳を喰らいながら、魔神王は自身が何者かに見られている事を感知していた。密かに『逆感知(カウンター・センス)』を用いてみたが、近くにいる事しか分からなかった。これも乃亜の施した制限なのだろう。この分では、次元の扉を開いて覗き見ている者のところへと転移することも叶わないだろう。
 
 「………………」

 僅かに覚えた苛立ちを込めて、覗き見ている何者かへと鮮血色の瞳を向けた直後、それまで感じられていた視線が消滅した。
 魔神王の視線を受けて、慌てて切ったというよりは、何らかの理由で術が解除された様な唐突さだった。
 
 ‘……………」

 構う事なく中島の脳を喰い尽くした魔神王は、中島の頭部を胴体目掛けて投げつけると、火球を放ち、中島の死体を骨も残さず焼き尽くす。

 「磯野カツオ…大空カオリ……やはり姿を変えられぬか」

 中島の脳を食った事で、中島の記憶と知識、それに技能を獲得した魔神王は、中島の記憶にある人物への変身を試みたが、全く姿が変わる事はなかった。
 
 「ふむ…ならばこの姿ならば」

 呟いた魔神王の姿が変化し、ついさっき魔神王の手により肺すら残さず燃え尽きた、中島弘の姿を取った。

 「脳を食った者にしか姿を変えられぬという訳か」

 確かに魔神王とその眷属の持つ変身能力は、脅威の一言に尽きる。魔神戦争に於いて、この変身能力を駆使する鏡像魔神(ドッペルゲンガー)達は、人と入れ替わる事で、ロードス中に不信と不和とを蒔いたものだ。
 賢者と呼ばれた大魔術師も、大地母神の愛娘と呼ばれた聖女も、鏡像魔神(ドッペルゲンガー)の変身を見破る事はできず。只々、鏡像魔神(ドッペルゲンガー)との疑惑を持たれた者を殺す事でしか、その正体を暴くことが出来なかったのだから。
 此処まで強力な能力は、当然の様に制限の対象となってもおかしくは無かった。
 この分では、対象を観察する事で、対象の記憶を読み取る能力も、制限の対象となっている事だろう。
 つくづく不快な話だった。 

 「この人間を殺したのは二人。一人は永沢」

 中島の記憶から得た情報を元に、中島に死を齎した者と、その手段を確認する。
 永沢と、後から現れた少女に呼ばれていた子供が使っていたのは『バット』という、子どもの遊びで用いられる木製の棍棒。
 殴打されて、気絶していた最中に現れ、結果として中島の命を奪った少女が用いたのは、先刻戦った吸血鬼が用いていたのと同類の道具。中島の記憶によると『銃』というらしい、飛び道具。
 男女ともに、二人の戦力を合わせたとしても、魔神王の敵では無い。
 出会えば簡単に殺せる程度の相手、何処に行ったのかも解らない相手を、探して殺し出すのは手間でしか無い。
 放置しておいても害になる事は無い以上、他の者を殺して手間を省いてくれる事を期待しよう。
 それよりも優先すべきは、先ほど覗き見ていた者だろう。中島弘の姿を散っている今現在の状態であれば、脳を貪り食っていた少女と同じ存在だとは気付かれまい。
 元の姿と、今の姿。二つの姿を使い分ければ、この地に集められた人間どもの間に、不和と不信を撒くことも容易い。
 その為にも、覗き見ていた者を殺して口を塞ぐ必要が有った。
 警戒されぬ様に、この姿で近づいて、速やかに殺す。
 当面の方針を決めた魔神王は、中島のランドセルを改める。あの吸血鬼を打倒できる武具か、或いは魂砕き(ソウルクラッシュ)が有る事を期待したのだが、結果は外れ。出て来たのは、透明な瓶に入った血液だけだった。
 付属していた説明書を読んで、魔神王は冷笑した。

 「結局この者は、此処で死ぬ定めだったか」
 
 瓶の中身を三口飲んだ魔神王は、ランドセルに仕舞った中島の服を取り出すと、慣れ親しんだ手付きで服を着はじめた。


510 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:49:16 k9yRI3nM0
【B-5/一日目/深夜】 

【魔神王@ロードス島伝説】
[状態]:健康 (魔力消費・中)
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク(現在はランドセルの中) 魔神顕現デモンズエキス×3@
アカメが斬る!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2 石仮面@ジョジョの奇妙な冒険 魔神顕現デモンズエキス(5/2)@アカメが斬る!
[思考・状況]基本方針:乃亜込みで皆殺し
1:アーカードを滅ぼせる道具が欲しい。
2:魂砕き(ソウルクラッシュ)を手に入れたい
3;覗き見をしていた者を殺す
4:覗き見をしていた者を殺すまでは、中島弘として振る舞う。
[備考]
・自身の再生能力が落ちている事と、魔力消費が激しくなっている事に気付きました。
・中島弘の脳を食べた事により、中島弘の記憶と知識と技能を獲得。中島弘の姿になっている時に、中島弘の技能を使用できる様になりました。
中島ひの記憶により永沢君男及び城ヶ崎姫子の姿を把握しました。城ヶ崎姫子に関しては名前を知りません。
・変身能力は脳を食べた者にしか変身できません。記憶解析能力は完全に使用不能です。

※現在中島弘の姿をしています。

支給品紹介
魔神顕現デモンズエキス@アカメが斬る!
中島弘の支給品。
超危険種の血液をそのまま使用した帝具。効果は血液の主と同じ『無から氷を生成する』という能力を獲得できるというもの。
 なお、この血液を飲んだ者は、血の持つ激烈凄惨な殺戮衝動に自我を破壊され、発狂してしまうが、超強固な自我を持つ者ならば耐えられる。
 ロワでは効果が制限されていて、血を飲んだ者の能力次第で効果は変動するが、誰が飲もうが大城塞や大河を凍結させる様な威力は出せない。
一口飲めば効果を発揮し、中島には五口分支給されていたが、魔神王が三口飲んでしまっている。

※中島弘に支給されたランドセルと、ぶちまけられた基本支給品が、B-5の何処かに転がっています。
※中島弘の死体は燃え尽きてなくなりました。


511 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:51:56 k9yRI3nM0


 江戸川コナンは探偵である。論理(ロジック)という刃で、謎(ミステリー)という縺れた糸を断ち切る存在。それが探偵である。
 その探偵である江戸川コナンは、現在何をしているかというと…。
 

 吐いていた。


 「何だ…アイツ……。人の脳を…………」

 思い出すたびに、腹の底から熱いものが込み上げてくる。
 無理もないと言えば無理もない。
 なにしろ死体をいくら見慣れていると言ったって、バラバラにされた死体を始めとして、惨殺死体にも慣れていると言ったって、人の姿をした者が、人の頭蓋を素手で破壊して、人の脳を喰っている。そんな情景など今まで見た事が無かったにだから。
 しかし、江戸川コナンはそれだけの事で、こうまでにはなりはしない。コナンの心神を打ちのめし、胃の内容物を吐き出させた決定打は、あの脳を喰っていた少女が、明確にこちらの存在に気付いていた事だった。
 あの少女の鮮血色の瞳は、確実にコナンが見ている事を気づいた上で、鏡越しにコナンへと向けられていたのだ。
 少女の底知れない、深淵の様な眼差しは、食人という光景に衝撃を受けていたコナンの精神を打ちのめす決定打となったのだ。
 あそこで制限時間が来なければ、あの少女は鏡を通じてコナンの居る場所へとやってくる。そんな迷信的な恐怖を、コナンはあの少女の眼差しから、受けたのだった。

 (アイツが────来る!!!)

 コナンは確信していた。あの少女は確実に自分を殺しに来ると。此処に留まっていては、自分もあの脳を喰われていた者と同じ運命を辿る事になると。
 
 (逃げ……ないと)

 コナンは立ち上がると、フラつきながら移動を開始した。
 殺されない為にも、立ち直る期間を確保する為にも、今は此処から離れる必要が有った。
 
 

【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:キック力増強シューズ@名探偵コナン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1(本人確認済み) 真実の鏡@ロードス島伝説
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、乃亜を捕まえる
1:仲間達を探す。
2:乃亜や、首輪の情報を集める。(首輪のベースはプラーミャの作成した爆弾だと推測)
3:乃亜の言う異能者に警戒。
4:人喰いの少女(魔神王)に恐怖(大)
5:衛宮邸と桜田ジュンの家を回って情報を集め、映画館に立ち寄った後ボグワーツ魔法魔術学校へと向かう
6:今は兎に角有働する
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。
真実の鏡は一時間使用不能です。

支給品紹介
真実の鏡@ロードス島伝説
江戸川コナンに支給。ロードス島に伝わる『太守の秘宝』の一つ。
遠く離れた場所や、過去さえも望めば映しだす魔法の品
過去を映すことは制限によって出来ず、映し出せるのは現在居るエリア内のみ。使用できる時間はたったの三分。そして一度使えば一時間の使用不能期間がある。


512 : 初めての食事風景 ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/23(火) 21:52:12 k9yRI3nM0
投下を終了します


513 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:48:44 eI1udRb20
投下します


514 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:50:08 eI1udRb20


なぁトマ。勇者パーティーの一人、地味めなマよ。
お前ひょっとして、地味なだけで凄く優秀だったんじゃないか?
それを今、俺は強く強く思っている。


「ニケ〜…ニケはもちっと優しく繊細に運べんか?かわゆいマロが気持ち悪くなったらどうするでおじゃる?」


少なくとも、背中のごく潰しよりは間違いなく役に立ってたよな。
お前はここにいるのか。いたならこのごく潰しを背負う役変わってくれないか?
こうして背負ってやるだけでも結構大変なのに。
カズマと違って雑でおじゃる、だの。
少しは自分で歩けと言えば、殺し合いに巻き込まれた無力なマロにこれ以上何をしろと言うでおじゃる、だの。
殺し合いに巻き込まれたのは俺も一緒だっての。
カズマ君、君はおじゃるを甘やかさない方がいいぞ。


「だーっ!!おじゃる!!お前もさぁ、何か支給品貰ってるんだろ?
武器とかあったら運び賃としてくれよ。やんごとなき雅なお子様なんだろ?
だったら下々のためにたまには何かしてくれたっていいだろォ!?」


こいつを運ぶのはもういいとして、せめて何か見返りが欲しかった。
武器があったら心強い、なんせ今の俺の装備は丸太だ。
なんで丸太なんだよ。ロトの剣とか天空の剣とか用意できねーのか?
やり直しを要求する。乃亜の奴は一発はっ倒してやるから今すぐここに来い。
そう声を高らかににして言いたい心境だった。
だが、どうせ乃亜に言ったところで出てこないだろうし、それよりは目の前のおじゃるを締めあげた方がまだ何か出てくるだろ。
そう思ったのだが、おじゃるの返答は想定通りだった。


「嫌でおじゃる。何故マロがそちにマロの物をあげなければならぬでおじゃる」


515 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:50:42 eI1udRb20


よし、もうこいつ置いていこう。
ばっと後ろで組んでいた手を放して、おじゃるをスルーアウェイ。
さようなら。これで俺の背中は自由だ。
……と思ったら、背中の圧迫感が消えない。
くっ!こいつ意外な握力で背中にしがみついてやがる……!


「HA☆NA☆SE……!大体殺し合いの場でおんぶとかありえないだろ…!
襲われた時両手塞がってるじゃねーか……!」
「嫌でおじゃる……そちはカズマと会うまでのツナギでおじゃる……!」


こんだけしがみついといて繋ぎかよ!
引きはがそうとするが、中々離れない。
見かねたもう一人の同行者、水銀燈がおじゃるに声を掛けた。


「ねぇおじゃる丸くぅん?私としてもニケ君に何かご褒美をあげてもいいと思うわぁ
何か、持ってるわよねぇ?さっきニケが武器渡せって言った時反応してたもの」


そう言う水銀燈の目は、これでもごねる様なら置いていこうという目だった。
あっ、目が合った。うむ、という視線を送る。
言われた張本人であるおじゃるは、水銀燈に頼まれたのと、武器を持ってるというのが図星だったのか、目を泳がせていた。


「お前、何か持ってるのか」
「…………………」
「吐け、こいつゥ〜〜!!!」
「おじゃじゃじゃじゃじゃじゃ……!あっ!思いついたでおじゃる!
そちに相応しい刀をマロは持っていたでおじゃる!!」


516 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:51:07 eI1udRb20


肩を掴んでがくがく揺さぶっていると、ようやくおじゃるはゲロった。
そして俺から飛び降りると、いそいそと背負っていた自分のランドセルから一本の刀を取り出す。
刀を意外と素直に俺に手渡してから説明書の様な物も一緒に取り出して読み始める。
おじゃるはまだ何か隠してる様な気配があったが、今は気にしない。
俺はそれを横目に刀をしげしげと眺めてみる。うん、こいつが出したにしては普通の刀だ。
いや、むしろかっこいいっぽい。中々イカしてる感じがする。
でもこいつ、俺にマヤの相手しろって言った時これ出さなかったの中々ムカつくな…


「その紙はアヌビス神という刀らしくての」
「へー…アヌビス神……」


うん、名前もかっこよくていいじゃん。
正に勇者様って感じの武器!
どれどれ、刀身は……と。
そう思って刀を抜いたのと、おじゃるが言葉を続けたのはほぼ同時だった。




「うむ、何でもその刀を抜いた者は刀に乗っ取られるらしいでおじゃる。
雅で高貴なマロには似合わぬ物よ」




へぇ〜刀が刀を抜いた奴を乗っ取……お前ぇええええええ!!!!



「おいこらふざけんなぁああああああああ!!!!」


517 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:51:31 eI1udRb20


気づいて手放そうとするが、もう遅い。
ぴたっと刀はくっついて、俺の手から離れようとしない。
体の自由も、いつの間にか無くなっていた。
ゆうしゃ ニケ は そうび を はずそうと した!
この そうび は のろわれていて はずせない !


「たっ…助けてくれ水銀燈……!」
「貴女の事は忘れないわぁ。もし貴方が刀に乗っ取られたら誰かを斬る前に介錯してあげるぅ」


もう切り捨てる気満々だった。
俺達、仲間じゃなかったのかよ。


「いやあああああ!!やめてくれ!!乗っ取られたくないいいい!!!」


叫んでいると、如何にも呪いの装備らしく、刀が口を利いてきた。


『やめろだァ?やめるワケね――だろッッ!!このヘニャチン野郎がッッ!!
いやっほォ〜〜!!承太郎の奴にナイル河に沈められて以来のシャバだぜェ〜!!
何か折られた刀身も元に戻ってるし!俺って最高にツイてると思わねぇかァ〜〜!!
先ずはお前を乗っ取って!!それから斬って斬って斬りまくってやるッッッ!!』


何だか無駄に高いテンションで、勝手な事を抜かしてくるアヌビス神。
しかし刀から未だに手は離れてくれない。あぁくそ、ここまでか。
ククリ、すまん。お前の勇者様は此処まで見たいだ。
後は乗っ取られて、この殺し合いを激しくする立場にさせられちまうんだろう。
トマ。来週からお前が主人公やってもいいぞ、キタキタ親父よりはマシだ。
……………………、
……………、
………、


518 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:52:18 eI1udRb20


「『………あれぇ?』」


アヌビス神と俺の声が重なる。


「普通に動けるぞ?」


身体は普通に動けていた。意識もある。
刀が張り付いていたのも最初だけで、今はもう手放すこともできそうだった。
ぽかんとする俺を眺めていた水銀燈が、おもむろにおじゃるの手から支給品の説明書をかすめ取る。
そして、俺達の前で音読した。


「『……なお、肉体の完全な乗っ取りは使用者の同意が必要。
乗っ取った後も、使用者の精神力で解除できる』……ですってぇ」
『にゃッ!にゃにぃ〜〜〜!?!?』


梯子を外されたような、素っ頓狂な声を上げるアヌビス。まぁ無理も無いだろう。
同情する気持ちはこれっぽちも湧かないけどな!!
どうしてくれようかと考えていると、先んじてアヌビスが声を上げた。


『さぁ!勇者殿!これからこのアヌビス!貴方の手の中で存分に力を───』


「なぁ皆!こいつどうしよっか」
「バラバラにして捨てればぁ?殺し合いに乗ってるのに拾われても面倒だしぃ」
「銀ちゃんに海に捨てて来てもらうというのはどうでおじゃる?」
『あっ、あがっ!ま、待て!待ってくれ!!話を聞いてくれ!
さっきのは久々のシャバでついテンションがだなッ!!!』


519 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:52:37 eI1udRb20


聞く耳持たん。
どう考えても、最初に抜いた時のセリフがこいつの本音だろう。
海に捨てるのもバラバラにするのもアリだけど、もっとナイスな処理方法を思いついた。
それは、今までいたエリアの畑みたいなってる場所の脇にあった。


「なぁアヌビス君よ、あそこにあるのは何だと思う?」
『な、何の話だ!?』
「あんなところに丁度都合よく肥溜めがあるみたいなんだ」
『やめろこの糞餓鬼がぁああああああああああああ!!!!テメェに人の心は無いのかぁああああああああ!!!!!』


さっきまで人を斬ろうとしてた奴が何か言ってやがるな。
そう思いながら、足元に落ちていた小石をつめて即席の鼻栓にする。これでよし。
水銀燈とおじゃるも「うわ…」と言う顔で見ていたがこれが一番確実だろ。
血まみれの刀はそれはそれで男心をくすぐるが、誰が悲しくて畑の肥料塗れの刀を握ろうというのか。
これで無力化できる。完璧だ。
俺は確固たる自信と共に、ずんずん歩き出した。
肥溜めに向かって。


『ま、待て!まだ俺達は話し合ってないだろ!?』
「……………………」
『落ち着け!悪かった!俺がもう全面的に悪かった!!』
「…………………………」
『せっ!せめて海に捨ててくれェ〜〜!!そこだけはァ〜〜!!!』
「……………………………………………………」
『ヒィィイイイ〜〜!!!後生だァ〜〜!!!!助けてくれ〜〜!!!!』







520 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:53:02 eI1udRb20



十分後。
俺の手の中に、アヌビスはあった。
何だか犬の様な人間の様な、ひどくげっそりしたビジョンが見えるが気にしない。
俺の交渉により、自発的に俺達に協力してくれることになったからだ。


「じゃあアヌビス君、復唱!」
『私は絶対勝手に人を斬ろうとしません……』
「聞こえんなぁ!!」
『私は絶対勝手に人を斬り殺そうとしません!!』


うむ、ならば良し。
じゃあ右腕だけ体貸すから、これにサインしてくれ。
そう言いながら、俺は俺に支給されたその紙をアヌビスの前に見せる。


『…な、何だよこれは』
「魔法の契約書だよ、お前と口約束で済ませるワケ無いだろうが
いやなら別にいいぞ、まったさっきみたいに───」
『わ、分かった!書く!書くから紙を寄越せ!!』


何に使えるんだこんなもんと思ったが役に立つ場面ってのはあるもんだなぁ。
そう思っている内に、俺の右腕を介してアヌビスが名前を書き終わった。


『なっなんだぁっ』


どうやらギアスってのが上手く発動したらしい。これで一安心だ。
これでやっと言うことができるな。
水銀燈とおじゃる丸が傍らで眺める中、俺はアヌビスを掲げて、そして叫ぶ。
───アヌビス が なかまに なった !


521 : この素晴らしき魔剣と契約を! ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:53:17 eI1udRb20


【B-3/1日目/深夜】

【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、不安(小)
[装備]:アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、龍亞のD・ボード@遊戯王5D's、丸太@彼岸島 48日後…
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
1:とりあえず仲間を集める。でもククリとかジュジュとか…いないといいけど。
2:クロの願いに対しては…どーすんべこれ……取りあえず、ホグワーツ行って都合の良い魔法ないか調べてみるべ。
3:あのマヤって女の子も大丈夫か?
4:取り合えずアヌビスの奴は大人しくさせられそうだな……
※四大精霊王と契約後より参戦です。
※アヌビス神と支給品の自己強制証明により契約を交わしました。条件は以上です。
・ニケに協力する。
・ニケが許可を出さない限り攻撃は峰打ちに留める。
・契約有効期間はニケが生存している間。
※アヌビス神は能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要です。支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されます。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能です。


【水銀燈@ローゼンメイデン(原作)】
[状態]健康、めぐ救出への焦り
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2、ヤクルト@現実(本人は未確認)
[思考・状況]基本方針:一刻も早くここから抜け出す
0:一先ずニケと同行する。
1:首輪を外して脱出する方法を探す。どうしても無理そうなら、優勝狙いに切り替える。
2:ハンデを背負わされるほどの、強力な別参加者を警戒。
3:契約できる人間を探す。(おじゃる丸は論外)
4:真紅が居たら、おじゃる丸を押し付ける。
[備考]
※めぐを攫われ、巻かなかった世界に行って以降からの参戦です。
※原作出展なのでロリです。
※Nのフィールドの出入り、契約なしで人間からの力を奪う能力は制限されています。


【坂ノ上おじゃる丸@おじゃる丸】
[状態]健康、ニケに背負われ中
[装備]こぶたのしない
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:カズマの家に帰りたい
1:カズマや田ボを探す。
2:シャクを誰か持ってないか探す。
3:誰でもいいから豚にしてみたいでおじゃる(子供故の好奇心)
4:銀ちゃんはかわゆいのう……絶対持ち帰るでおじゃる。真紅ちゃんも会ってみたいのう。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。

※三人とも、クロとしおを危険人物と認識し、参加者が平行世界から呼ばれていると結論付けました。(おじゃる丸は話半分で聞いてます)


【支給品紹介】
『自己強制証明(セルフギアス・スクロール)@Fate/Grand Order』
魔術師にとって絶対順守の法であり、その魂さえ縛る非常に強力な術式。
この書に記された契約に同意した場合、それを破ることは如何なる者にも叶わず、効力から逃れる術はない。
ただし、今回のロワでは制限により契約者の片方が死亡した場合、強制的に契約は解除される事となっている。
一回限りの使い切り契約書。


522 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 00:54:10 eI1udRb20
投下終了です


523 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/24(水) 05:51:57 yF1Fs3MM0
皆さん投下お疲れ様です!
また、感想ありがとうございます!

表裏一体
遊戯は違うけど、チャンピオン同士という共通点。
でも戦闘スタイルは互いに違う二人ということで書きました。
せっかくのクロスオーバーということで、羽蛾に合うポケモンはと考えたら虫タイプかつサトシたちによい印象を持たずに別れたフェローチェがピッタリだなと。
最初は猫被って同行する予定だったのに、チャンピオンの話で地雷踏まれたせいで予定変更したんでしょうかね。
↑そうなんです。腐ってもチャンピオンになった男ですので、サトシのチャンピオンに特に固執しない姿勢は地雷だろうなと。
 ですが、羽蛾がいってる台詞は書いておいてなんですが、【おまいう】ですが……
あとポケモンから攻撃喰らっても、ピンピンしてるサトシはやっぱ強いっスね。
↑やはりマサラ人ですので(笑)

磯野カツオで予約します。


524 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/24(水) 17:51:18 bObGwFEA0
投下ありがとうございます!

>初めての食事風景
ヒエッ……中島が食されている……。内容がちゃんと丁寧に描写されているものだから、風景が想像できちゃうんですよね。
他マーダーと違って、完全な人間とは別種の生き物という風に感じますね。だから死体食うのも普通だし、行動も合理的であって猟奇趣味を満たす訳でもない。
そこが話し合いも通じない上に、知性も高いから厄介そう。初戦のライバル枠だったアーカードの脱落は対主催からするとかなりの痛手かも。
バーロー……頑張れ……。

>この素晴らしき魔剣と契約を!
おじゃる丸、これ、主催が課したニケへの制限と言っても過言ではない。
しかも、ケチな上に思いの他クレバー、こいつ本命の竹刀は隠してアヌビス神渡してやがる……。
無駄に支給品が当たりなの、主催からの悪意を感じます。おじゃる本人も意図してないでしょうけど、絶対乃亜から一番期待されてるだろこいつ。
でも、良いテンポの掛け合いを見てると、この三人結構悪くないパーティとも思えてきますね。当人たちは嫌なんでしょうけど。


525 : 名無しさん :2023/05/24(水) 18:46:22 eI1udRb20
右天、美山写影、櫻井桃華、佐藤マサオ、マニッシュ・ボーイ
フランドール・スカーレット、野原しんのすけ、ゼオン・ベル、ジャック・ザ・リッパー
予約します


526 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/24(水) 18:47:57 eI1udRb20
失礼、トリップを忘れていました

右天、美山写影、櫻井桃華、佐藤マサオ、マニッシュ・ボーイ
フランドール・スカーレット、野原しんのすけ、ゼオン・ベル、ジャック・ザ・リッパー
改めて予約します


527 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/24(水) 19:19:11 bObGwFEA0
サトシ、永沢、城ヶ崎さん 予約します


528 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/24(水) 20:57:08 TTRV/Ci.0
グレーテルを予約します


529 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/24(水) 21:18:06 .uXFCiJ.0
皆様投下乙です
鬼舞辻無惨(俊國)を予約させて貰います


530 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/24(水) 21:24:01 ypWQpzRE0
予約にニンフ、ベッキー・ブラックベルを追加します


531 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/24(水) 21:59:31 5a.aZ/h60
藤木茂を予約します


532 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:07:54 raJ2ZaEw0
投下します


533 : ちっぽけな僕は繰り返す ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:08:51 raJ2ZaEw0
「……り、リーゼロッテ……不死身の魔女だって……? 俄かには信じ難いよ……」

「ああ、オレも直接は見てないけど、危険な奴らしいんだ」

中島殺害後、永沢は城ヶ崎と共に南下することとした。その行動に特に理由などなく、ただ何処へでも良く、逃げたかったからだ。
その道中、息を荒げて誰かを探すような素振りをしていた少年、サトシと遭遇した。
身構えた永沢だが、サトシの様子を見るに殺し合いに乗った様子はない。
だが、中島殺害がバレるのを危惧し、避けてやり過ごそうと思ったが、先にサトシに気付かれてしまい、そのまま接触せざるを得なかった。

(何だよそれ……僕の優勝なんて、最初から……不可能じゃないか……)

結果的には、それは正解だったのかもしれない。サトシの話ではこの近辺に、人を爪で引き裂き、不死身のような恐ろしい存在が居るとの事だった。
普段なら笑い飛ばして、皮肉の一つでも言っていたのだろうが、そんな事が出来る精神状態ではない事に加え、乃亜の死者蘇生を目の当たりにしたことで認識を改めざるを得なかった。
むしろ、今までが本当に運が良くて、そんなリーゼロッテ以外にも、人を平気で食らうような化け物とニアミスしていたのかもしれない。
そう考えるだけで、恐ろしくなってくる。

「あと、羽蛾って奴には気を付けてくれ……もし、会ったら信用はしない方が良いと思う。……多分、殺し合いには乗ってないけど」

「……でも、支給品を奪われたんですよね?」

城ヶ崎にしてみれば、サトシの口から語られた羽蛾の印象は最悪だった。内心では、中島を撃った自分も変わらないと思ってもいたが。
その為、羽蛾に対する警戒は呼びかけても、何処かで庇う素振りもサトシに煮え切れないでいた。

「あいつは……」

羽蛾がデュエルモンスターズを語る姿を思い返した。
今にして思えば、あの人当たりの良い態度は全部嘘だったのだろう。でも、デュエルに対する思いだけは真摯で、とても楽しそうだった。
サトシにデュエルの話を聞かせたあの瞬間だけは、絶対嘘ではなかったのだとサトシは信じている。
ただ、その真摯さが時として歪んだ形になってしまうことを、サトシは今までの旅の中で何度か見てきたこともある。
勝つ為に必死で、ポケモンとの絆を蔑ろにしてきたトレーナーだって何人も見てきた。
けど、彼ら全員が最初から非道ではなかった筈だ。きっと最初はポケモンが好きだった筈だ。

羽蛾もきっと同じだ。
負けることの辛さを、サトシは良く知っていた。だから、羽蛾のあの勝利への歪な執念の気持ちも、分からなくはなかった。
ただ違うのは、常にチャレンジャーで在り続けられるサトシと違い、羽蛾は称号に拘り続けてしまう事なのかもしれない。

それに羽蛾の言うように、チャンピオンとしての自覚も薄かったのかもしれない。

「悪い奴だけど……殺しまでは、しないと思う」

サトシも言っていて、自問した。あいつ、必要とあらば手を染めるんじゃないかと。

そもそもの話が、羽蛾がチャンピオンになった後、ファンの少年からレアカードを巻き上げる等の行為や不正行為の連発で、ヘイトを集めたのが落ちぶれた原因の一つだ。
むしろ、エクゾディアのカードを捨てたにしろ、武藤遊戯との王国での一戦はかなりの接戦であり、彼が後のデュエルキングになる事を考えれば、不正さえなければあの遊戯と渡り合った伝説のデュエリストとして名を馳せていたかもしれない。
後に、迷宮兄弟が遊戯とデュエルをして、善戦したというだけでデュエルアカデミアに招かれ、伝説扱いされているのだから、むしろ遊戯との敗戦は恥ではなく、名誉の一戦になった可能性もあるのだ。
もしかしたら十数年後、デュエルキングを目指すE・HERO使いの少年にラッキーカードと称して、ゴキボールを渡す未来も在りえたのかもしれない。

いずれにしろ、羽蛾の顛末はほぼ全て自業自得であるが、サトシはそこまでの事情は知らなかった。
だから、サトシの中で完全な悪人認定するのは、躊躇われた。それに知ってても、やはり人を殺めると断言もしなかっただろう。


534 : ちっぽけな僕は繰り返す ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:09:26 raJ2ZaEw0

「そう、ですか……」

普段の永沢と城ヶ崎なら、間違いなく言及し危険人物だろうと強く主張するだろうが、今の二人にそこまでの大義名分もない。

「二人とも、その……死体を見たばかりで、辛いだろうけど、もう少し歩けるか? 羽蛾の言っていたリーゼロッテとかいうのが、この辺に居るかもしれない。
 ここから出来る限り離れようと思うんだけど、二人ともオレと来ないか?」

「そうだね。僕達もそうさせて貰うよ……」

「う、うん……そう、しましょう」

「よし……そうだ、良ければでいいんだけど、支給品を教えて貰ってもいいか? 万が一の時、それで戦えるかもしれない。
 ……羽蛾の話の後だから、嫌ならいいんだけど……そうだ、オレの支給品はこのカードと石だ」

賢者の石はともかく、ブラック・マジシャン・ガールのカードに関しては召喚して、戦わせる事が出来ると二人に説明した。
それを聞いて、少し間を置いた後、城ヶ崎が自分のランドセルに手を入れた。

「あの、このボール……サトシさんの言う、ポケモンに使うモンスターボールかもって思うんですけど……私、上手く分からないから、サトシさんにあげます」

「お……おい、城ヶ崎、何やってるんだきみは!?」

サトシより先に永沢が声を荒げた。

「ああ……それはきみのだし、オレにもカードがあるから……」
「そうだぞ、城ヶ崎……その、君だって自分の身を守った方が良いじゃないか」
「良いの。これ、サトシさんが持ってて下さい」

城ヶ崎は、半ば押し付けるようにボールを、サトシに手渡した。

(何だろう……この娘、なんか……自分の事を蔑ろにしてるような……)

「そうだ、それから……私、あともう一つ……」

「サトシ君、早く行こう!! 僕達、ここに来る前に眼鏡の人が殺されるところを見たんだ! 
 その殺した奴、顔色が悪くて、唇が紫で歳の割に身長が高い奴だった……僕が見たのに気づいて追いかけてくるかも! 
 だから早く逃げよう!!」

「そ、そうね……凄い怖い顔した、女の子だったわ……!」

「……なんか、変な特徴の奴だな……それに……死体を見てたなんて、さっきは聞いてないぜ?」

この二人の焦り方、焦っているのは間違いないが、何かその焦り方に違和感を覚えた。
殺人者に見られて、逃げないといけないと永沢は主張するが、急な話であり、お人好しのサトシからしても、疑わしく見える。
流石に羽蛾の一件もあったことから、サトシも少しは懲りたのだろう。
この事はもっと追求した方が良いかもしれない。
そう考えて、口を開いたその時、手元のボールが滑って落ちる。地面に当たり数回バウンドして、そこからポケモンが一匹飛び出してきた。

「ピカピー!」

「ピカチュウ!?」

普段見慣れた相棒の姿が飛び込んできた。
黄色い体に黒の模様、雷マークのような尻尾に赤い頬、ネズミのようなそのフォルムは紛れもないピカチュウの姿だ。


535 : ちっぽけな僕は繰り返す ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:10:02 raJ2ZaEw0

「ピカチュウまで、こんなとこに……」

「ピカチユピカっ!チユ ピカピッカピカウカァ ピカピッカピカうチユ ピカピッカピカッ!? ピカピッカピカうゥ ピカピッカピカチュッ!
 ピカウピカカーチユ ピカピッカピカウう ピカチユッ!
 チュチユ ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカチュカァ ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカウピッカ ピカピッカピカチユカァ
 ピカピッカピカチユっ! ピカピッカピカチユゥ ピカピッカピカチユカァ ピカピッカピカ?ぴか ピカピッカピカピカピー ピカチュ!!チュピッカ ピカチュ!!ぴかッ!
 ピカピッカピカウう ピカウピッカチユチユ ピカピッカピカゥ!! ピカピッカピカウピッカ ピカピッカピカチユカァ」

ピカチュウは語る。
サトシが急に消えたので慌てて探し回っていたところ、緑髪のいけ好かない少年が現れたと思えば、急にボールを投げられ抵抗できないままゲットされてしまった事を。
殺し合いの状況は既に理解していて、自分は殺し合いの道具である支給品として参加者に配布される為に、ボールごとランドセルに入れられ支給されたのだと。

「……そうか、ごめんなピカチュウ……オレのせいで、きっと巻き込んでしまった」
「ピカピー! ピカ、ピカピカ……ピカチュウ……」
「ああ、分かってる……ピカチュウが居てくれるなら、百人力だぜ」

この時、ピカチュウとの再会に上書きされる形で、サトシは永沢に対する追求を失念してしまった。

「サトシ君、感動の再会は良いけど早く行こうよ!」
「そうだな……行くぜピカチュウ!」
「ピカ!!」

それに気づかないまま、サトシは急かされる形で出発する。

(なんとか、誤魔化せたね)

サトシの背中を見ながら、永沢はほっと溜息を吐いた。

「城ヶ崎……きみ、銃までサトシ君に渡す気だったろ?」

小声で、横に居る城ヶ崎に語り掛ける。
二人とサトシは距離が離れており、サトシが先導する形でピカチュウを肩に乗せ歩いていた。だから、多少話すだけならサトシには聞こえない。

「……私より、サトシさんの方が、持ってた方が良いわ」
「どうやって身を守る気なんだい? サトシ君が僕達に襲い掛かってきたら、こっちは戦えないじゃないか」
「そういう永沢こそ、急に藤木君に……私が……殺した……あの人のこと……擦り付けようとして……私が女の子って言わなかったら、サトシさん信じてたわよ?」
「いや……あれは……きみが銃を渡そうとするから、話を逸らさなきゃいけなかったんだ」

あの時、何故、咄嗟に藤木茂の特徴が浮かび、それを口にしたのか永沢本人にも分からなかった。

「やっぱり……本当の事……言って……。
 それに……藤木君を巻き込むなんて……それじゃあ、本当に卑怯者じゃない。今更かも、しれないけど」

「……ああ、僕は卑怯者さ……」

クラスメイトに人を殺させた。これ以上の卑怯者はいないと、最早自負すらしていた。

だから、殺し合いに乗りはしない。
ただ、卑怯者らしく生き延び、最後には城ヶ崎を何とか生還させると決意した。その為にはいくらでも卑怯になると。


536 : ちっぽけな僕は繰り返す ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:12:39 raJ2ZaEw0
別に城ヶ崎に好意はない。これは事実で、永沢の好みではない。本来の未来における、中学生以降の永沢を見れば分かるが、彼は城ヶ崎より、野口笑子に好意を抱く。
なんなら、「H・J」という名前でチョコを渡された時、ヒデじいと勘違いし、満更でもない顔をするような男だ。

そんな彼だが、それでも城ヶ崎に引き金を引かせた責任は取らなければならないと、強い使命感に駆られていた。

悪いのは全て自分だ。あの眼鏡の少年を殺したのも自分なのだ。城ヶ崎姫子は何も悪くなく、乃亜の悪辣な殺し合いと永沢の身勝手な行いの被害者に過ぎない。
だから、自分はどうなってもいいが、城ヶ崎だけは何としてでも生還させなくてはならない。

(精々、守ってくれよ……サトシ君……頼むよ)

自分達よりも場慣れしているであろうサトシを見て、それは懇願にも似た思いを抱きながら、永沢はサトシを見つめた。




【C-5/1日目/深夜】


【永沢君男@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、城ヶ崎に人を殺させた事への罪悪感と後悔(極大)
[装備]ジャイアンのバッド@ドラえもん
[道具]基本支給品、ランダム支給品2〜0
[思考・状況]基本方針:手段を択ばず城ヶ崎を生還させる
1:サトシを利用させてもらう。
2:リーゼロッテを始めとする化け物みたいな参加者を警戒する。
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。


【城ヶ崎姫子@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、中島を殺した事へのショック(極大)
[装備]ベレッタ81@現実
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:自分より、他人を優先する。
1:……。
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。
※中島殺害の罪悪感で、自分の優先順位が下がっています。


【サトシ@アニメポケットモンスター】
[状態]:負傷(中)
[装備]:サトシのピカチュウ@アニメポケットモンスター、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]基本方針:対主催として乃亜をぶん殴る
0:永沢達と一緒にこの場を離れて、安全な場所まで移動する。
1:それでもオレは乃亜の企みを阻止して、ポケモンマスターを目指す!
2:リーゼロッテに注意する
3:羽蛾に対する複雑な感情、人を殺すことはないと思いたい。
4:永沢達、少し変だよな……。
5:ピカチュウが巻き込まれたのは複雑だけど……頼もしいぜ。
[備考]
※アニメ最終話後からの参戦です。
※デュエルモンスターズについて大まかに知りました。
※羽蛾との会話から自分とは違う世界があることを知りました。
※羽蛾からリーゼロッテのオカルト(脅威)について把握しました。
※永沢達から、中島(名前は知らない)の殺害者について、藤木の特徴をした女の子だと聞かされました。

※サトシのピカチュウのZワザ、キョダイマックスはそれぞれ一度の使用で12時間使用不可(どちらにせよ、両方とも必要なアイテムがないので現在は使用不可)。
 それと、殺し合いという状況を理解しています。


【支給品紹介】
【サトシのピカチュウ@アニメポケットモンスター】
日本一有名なネズミ。
現在使える技は以下の通り。

「10まんボルト」「でんこうせっか」「アイアンテール」「エレキネット」

Zワザ、キョダイマックスはそれぞれ一度の使用で12時間使用不可。
更にそれぞれの必要アイテムがなければ発動できないものとする。


537 : ちっぽけな僕は繰り返す ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:16:13 raJ2ZaEw0

すいません。一部、ミスりました。
以下のように修正します。


>>534の以下の台詞を修正します。

「二人とも、その……死体を見たばかりで、辛いだろうけど、もう少し歩けるか? 羽蛾の言っていたリーゼロッテとかいうのが、この辺に居るかもしれない。
 ここから出来る限り離れようと思うんだけど、二人ともオレと来ないか?」




「二人とも、もう少し歩けるか? 羽蛾の言っていたリーゼロッテとかいうのが、この辺に居るかもしれない。
 ここから出来る限り離れようと思うんだけど、二人ともオレと来ないか?」


538 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:16:39 raJ2ZaEw0
投下終了します。


539 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/25(木) 00:41:49 raJ2ZaEw0
すいません。またやっちゃいました。サトシは賢者の石持ってないです。
なので、>>534の以下の文を修正します。

「よし……そうだ、良ければでいいんだけど、支給品を教えて貰ってもいいか? 万が一の時、それで戦えるかもしれない。
 ……羽蛾の話の後だから、嫌ならいいんだけど……そうだ、オレの支給品はこのカードと石だ」

賢者の石はともかく、ブラック・マジシャン・ガールのカードに関しては召喚して、戦わせる事が出来ると二人に説明した。
それを聞いて、少し間を置いた後、城ヶ崎が自分のランドセルに手を入れた。



「よし……そうだ、良ければでいいんだけど、支給品を教えて貰ってもいいか? 万が一の時、それで戦えるかもしれない。
 ……羽蛾の話の後だから、嫌ならいいんだけど……そうだ、オレの支給品はこのカードだ」

ブラック・マジシャン・ガールのカードに関して召喚して、戦わせる事が出来ると二人に説明した。
それを聞いて、少し間を置いた後、城ヶ崎が自分のランドセルに手を入れた。


540 : ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:25:25 HRuB4IBw0
投下します。


541 : 臨時放送の意図を考察せよ ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:32:50 HRuB4IBw0
 奈良シカマルは、身体が戻るまでの時間で周囲を探索していた。
 そして海馬乃亜の放送を聞いたタイミングで、民家へと戻ることを決めた。
 民家に戻り居間に入ると、そこには椅子の上で両ひざを抱えた的場梨沙がいた。
 梨沙には明かりは点けないよう指示していたので、室内は暗い。

「よう。体は問題ないか?」
「……ええ、大丈夫よ」
「それじゃあ脱出のための話をするぞ。まずは地図からだ」

 タブレットをテーブルに置いて、地図を開く。液晶画面の光が、室内をほのかに明るくした。
 シカマルにとってタブレットは未知の機械であったが、操作方法は即座に理解できた。

「いいか?オレたちの現在地はここ。南西の方角に港があった。
 地図によると島に港はいくつかあるが、看板を見たから間違いない」

 シカマルは地図のG-2を指差した。
 探索中に見つけた港では、エリアを示す看板を確認している。

「船は調べてねーけど……そもそも、首輪がある限り脱出は現実的じゃない。
 そうなると、まず必要なのは厄介なコレをどうにかする方法だ。それから……」

 さらに話を続けようとしたところで、梨沙の「ちょっと!」という声に制止された。

「アンタ、なんでそんなに冷静でいられるワケ!?さっきの放送、聞いてなかったの!?」
「あん?聞いてたさ、もちろん」
「だったら!もう十人以上も、その……死んだって!
 それに、根拠のない脱出プランとか、時間は限られているとか……!」
「はぁ……めんどくせー」

 目を閉じて溜息をついてから、シカマルは梨沙視線を向けた。
 見るからに動揺している梨沙に、落ち着き払った声で語りかける。

「このゲーム、冷静さを欠いたら負けなんだよ」
「ゲームって……!?」
「いいか?あの放送を信じるなら、もう十人以上殺されてる。
 もちろん、自衛のためにやむなく殺したってこともありえるが……。
 ここは人殺しに躊躇しない奴が何人もいる、危険な場所だと考えていい」

 木の葉隠れの里の任務ランクをつけるなら、異常な状況も加味して、最低でもBランク。
 中忍に昇格してまだ日が浅いシカマルにとっては、荷が勝ちすぎている。
 それでも、やれるだけのことをやると決めたのだ。

「そんな場所で、冷静さを欠いたらどうなると思う?……十中八九、死ぬぜ」

「わかるか?」と問いかけると、先刻を思い出したのか、梨沙はつばを飲みこんで頷いた。
 感情的に否定されなかったことに安堵しながら、シカマルは話を戻した。

「それで、だ。まずは移動して、他の参加者と接触する。
 ここから脱出するには、オレたちだけじゃ力も情報も足りない」

 脱出の策を講じるためには、他者との接触は必要不可欠。
 この民家に閉じこもっているだけでは、協力も情報も得られない。

「アンタ忍者なんでしょ!?忍法でなんとかできたりしないの?」
「あのなぁ、忍法は万能じゃねーんだよ」

 シカマルは呆れた。
 忍者について勘違いしているらしい梨沙が、続けて不安を吐露する。

「でも、さっきの男子みたいに危険な人ばっかりかもしれないわよね」
「……いや。そうでもないと思うぜ」
「え?」

 シカマルは梨沙の不安を否定した。
 殺し合いの参加者は危険人物ばかりではない、と考えていたからだ。

「参加者を殺し合わせるゲームで、バンバン死人が出る。
 ここまではゲームを準備した乃亜にとって想定通りのはず。
 だけど、さっきの放送は奴にとって想定外のことが起きている証拠だ」
「なにが想定外なのよ?」


542 : 臨時放送の意図を考察せよ ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:34:40 HRuB4IBw0
「オレたちさ。乃亜の言葉を借りるなら“対主催”だ」

 首をかしげる梨沙に対して、シカマルは丁寧に説明していく。

「乃亜はさっきの放送を臨時放送と言っていた。本来は想定されていなかったってことだ」
「それが、対主催のせいなの?よくわからないんだけど」
「もし、このゲームの参加者が対主催だけだったらどうなる?」
「それなら殺し合いなんてする必要ないじゃない!」

 何を当然のことを、と言いたげな梨沙に、シカマルは問いを重ねた。

「じゃあ、お前が乃亜の立場だったとする。
 このゲームの参加者が、対主催だけだったらどうする?」
「え?それは……殺し合わせるために……」

 かなり意外な質問だったのか、戸惑う梨沙。
 しばらく間をおいてから、答えをひねり出した。

「……人質を取る、とか?」
「それもアリだ。他には?」
「えー?えーと……」

 梨沙は再びうんうんと頭を抱え始める。
 そしてシカマルがいよいよ口を挟もうとした瞬間。

「簡単なことさ」

 軽やかなハスキーボイスが、シカマルと梨沙の耳朶を打った。

「対主催の不安を煽ればいい。殺さなければ、己が死ぬのだと」
「……っ!」

 シカマルが誰何の声を発するよりも早く、その少年は二人の傍らにいた。
 青いコートのポケットに手を入れて、悠然と佇んでいる。
 どこから現れたのか見当もつかない少年。その異様なプレッシャーに、シカマルは総毛立つ。

(なんだ、コイツの威圧感!?
 そりゃオレには、いの並みの感知能力はないけどよ……。
 こんな接近されるまで全く気付かないなんてこと、ありえるのか!?)

 あの我愛羅にも匹敵する威圧感を放つ少年。
 そんな少年の赤い瞳が、シカマルを流し目で見た。

「どうだ?」
「あ、あぁ……乃亜は放送でしきりに対主催を否定していた。
 一度に死亡者の名を読み上げるのは面倒だから始めたはずの放送でな。
 それも、対主催を不安にさせて殺し合わせるためだったと考えれば説明がつく」

 少年の圧を受けながら、どうにか言葉を紡いでいく。
 実際に、あの放送のせいで梨沙はかなり動揺していた。
 まだ精神の成熟しきっていない子供に、不安を煽る手法は効果てきめんだろう。

「うんうん、それで?」
「本来想定していない臨時放送。その目的は対主催の不安を煽ること。
 つまり、そうした放送をする必要があるほど対主催の数が多いと考えられる」

 梨沙を横目で見ると、こちらは完璧に少年の空気に呑まれていた。
 動くことはおろか、言葉を発することもできない様子で、まさに蛇に睨まれた蛙だ。

「ここからはオレの願望も込みだが……。
 放送の時点で、対主催は四割から六割程度いると予想してる。
 それより少ないなら、臨時放送をする判断は下さないだろうからな」

 数分前、梨沙の言葉を否定したのは、こう予想していたからだ。
 参加者は危険人物ばかりではないという想定のもと、シカマルは続けざまに話した。

「その対主催たちと合流、協力して脱出のための策を練る。
 現時点では、これが数少ない要素から導き出せる最適解だ」

 シカマルは気力を振り絞ると、不敵な笑みで少年へ問いかけた。


543 : 臨時放送の意図を考察せよ ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:36:11 HRuB4IBw0
 この問いは賭けだった。
 ここまでシカマルの話を聞いていた少年を、話が通じる相手と見込んでのものだ。
 影真似の術をはじめとする忍術が、少年に通用するかどうかは未知数。
 賭けに負ければ、狭い室内で梨沙を巻き込む可能性もある。
 汗がタラリと頬を垂れていき、顔から落ちたとき、結果は出た。

「ククク……ハハハハッ!」

 少年は眉を上げて意外そうな表情を作り、そして高らかに笑った。

「殺し合いを止めて仲良くしよう!とは……。
 すばらしい理想論じゃないか!きっとクリスマスには豪華なプレゼントを貰えるぞ!」

 少年は愉快そうに、嘲るように、拍手をしている。
 一方のシカマルはしかめ面をしていた。少年の情緒が理解できない。
 未だ素性も目的も杳として知れない少年を前に、シカマルの緊張の糸は張り詰めていた。
 返答に窮していると、ひとしきり笑い終えた少年から別の問いをかけられる。

「お前、名前は?」
「……シカマルだ。奈良シカマル」
「シカマルか。いつその名前が放送で呼ばれるか、楽しみにしておくよ」

 少年はそう言うと、シカマルにくるりと背を向けた。
 そのまま居間から出て行こうとする少年を、シカマルは呼び留めた。

「待てよ。せめてアンタの名前を教えてくれ」

 その言葉に振り返った少年の赤い瞳で、シカマルは射竦められた。

「俺のことはもう知っているはずさ。ほら、名前を――」
「ブラック。いきなり消えないでくれる?何事かと思ったわ……と」

 そのとき、茶髪の少女がドアを開けて、居間に入ってきた。
 背は梨沙よりも低い。しかしその態度に幼さは感じられない。
 どうやら少年のことを知っているようで、ごく自然に声をかけている。

「……フン」
「ちょうどよかった。貴方たち、人を運ぶのを頼みたいのだけれど」
「おいおい、本当にあのボロ雑巾めいた人間を助ける気なのか?」
「ええ。目の前で死なれたら寝覚めが悪いもの……それとも、貴方が殺す?」
「……好きにしろよ。俺はしばらくぶらついてくるさ」
「そうね、三十分もあれば手当ては終わるわ」

 少年は口笛を吹きながら出て行き、少女はその背中を見送る。
 そして、またシカマルたちに向き直ると、ほんの少しだけ口角を上げて言った。

「挨拶が遅れたわね。私は灰原哀。
 ブラックには命令されて付き従っているの」

 シカマルは眉根を寄せた。とても命令されているようには見えない。

「ねえ、シカマル。どうするの?」
「……そうだな」

 ようやく落ち着いたらしい梨沙に問われたシカマルは、居間の天井を仰ぎ見た。
 いつの間にか、緊張の糸は切れていた。

 その後、シカマルたちは協力して、倒れていた金髪の少年を民家に運び込んだ。
 寝室の明かりを点けて、灰原による顔面の怪我の手当てが始まった。
 鼻骨や前歯の折れた姿は痛々しかったが、灰原は眉一つ動かさずに応急処置を終えた。
 応急処置とはいえ医療忍者さながらの手際の良さに、シカマルは舌を巻いた。

「すごい……アタシには無理ね。哀は誰かに手当てを習ったの?」
「ええ、そんなところ。それより、氷を持ってきてもらえるかしら」

 女子同士の会話を聞き流しながら、シカマルは思考を巡らせる。
 このまま民家に居続けると、対主催との合流は困難だ。しかし、手当てをした少年のこともある。
 少年がすぐに目覚めてくれれば話は早いが、そう都合よくもいかないだろう。

 また、ブラックと灰原に協力を取りつけられるか、という課題もある。
 それについては、まず灰原から詳細な話を聞いてからだ。
 シカマルは思考すべきことの多さに、内心でこう呟いた。

(めんどくせー)


544 : 臨時放送の意図を考察せよ ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:36:58 HRuB4IBw0
【G-2民家/1日目/深夜】

【奈良シカマル@NARUTO-少年編-】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、アスマの煙草、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出する。
0:灰原と会話した後、どこに向かうか、あるいは少年の目覚めを待つか、方針を決める。
1:殺し合いから脱出するための策を練る。そのために対主催と協力する。
2:梨沙については…面倒臭ぇが、見捨てるわけにもいかねーよな。
[備考]
原作26巻、任務失敗報告直後より参戦です。


【的場梨沙@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]健康、不安(小)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:シカマルについていく
2:この場所でも、アイドルの的場梨沙として。
[備考]
※参戦時期は少なくとも六話以降。


【絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗る。
0:しばらく近くをぶらつく。
1:気ままに殺す。
2:気ままに生かす。つまりは好きにやる。誰かが絶望してるところを見たい。
[備考]
ゲームが破綻しない程度に制限がかけられています。
参戦時期はアニメ四話。


【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、救急箱、ランダム支給品×1〜5
[思考・状況]基本方針:コナンや探偵団のみんなを探す。
0:シカマルや梨沙と会話する。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:ブラックについていき、説得できないか試みる。もし困難なら無力化できる方法を探る。
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。


【ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッター シリーズ】
[状態]:気絶、現状の怪我は応急処置済み(鼻骨骨折、前歯があちこち折れている、顔の至る所に殴られた痕)、ボサボサの髪、失禁
[装備]:ホグワーツの制服
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:ゲームに乗り、生き残る。
0:(気絶中)
[備考]
※参戦時期は、「秘密の部屋」新学期開始〜バジリスクによる生徒の石化が始まるまでの間


【救急箱@現実】
灰原哀に支給。
家庭用の救急箱。簡単な傷の手当てであれば充分に可能。薬の種類は風邪薬と胃薬くらい。


【全体備考】
※G-2港には漁船が何艘かあります。
※ドラコ・マルフォイの杖@ハリー・ポッターは破壊された状態で、空のランドセルと一緒にG-2のどこかに放置されています。


545 : ◆RTn9vPakQY :2023/05/26(金) 21:37:11 HRuB4IBw0
投下終了です。


546 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:01:37 DFI2CCu60
投下します


547 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:03:21 DFI2CCu60
『では、今回の放送はここまでにしておこう。次の放送を聞けるのは、果たして何人かな?』 

乃亜の放送が終わると共に静寂が訪れる。

ディオは顔をしかめ舌打ちを漏らしていた。

(あのガキめ、なにが神だ。僕の前で偉そうな能書きを垂れやがって)

彼は一番が好きだ。何事においてもナンバーワンが好きだ。
それをこんな犬ころのような首輪を着けられた挙句に、自分の方が優れているという旨の放送を聞かされれば当然不愉快に思ってしまう。
禁止エリアの発表や6時間毎の放送及び参加者の開示など有益な情報は手に入れられたが、それ以上に乃亜という存在への不快感が勝ってしまう。

(せいぜいふんぞりかえっていろ。僕は絶対にお前をその座から引きずり降ろしてやるからな...!)

煮えたぎるマグマの如き憎悪を募らせる一方で、ディオはタブレットを取り出し操作を確認する。
気に食わないガキからのものとはいえ、情報は大切な武器だ。
先の金髪の痴女のような強者のせいで腕っぷしで一番になれない以上は、これを用いて強かに立ち回るしかない。

「タブレットというのはこいつか...ええと、こうすれば、違うか...こうか。よし、点いた...ファイルというのはなんだ?どうすれば開くんだ?...ああ、触ればいいのか」

付属していた説明書を読み四苦八苦しながらも目当ての情報を手に入れる為、操作を進めていく。

(参加者の名簿は放送の後だと言っていたな。チッ、ジョジョの奴も巻き込まれていればこの機に殺してジョースター家の財産を全て相続できるんだがな)

自分が養子となったジョースター家の一人息子であるジョナサン・ジョースター。
ディオはジョナサンの家での立場を無くし財産を自分に相続させる為に、陰で様々な嫌がらせをしてきた。
もしもこの会場に彼も連れてこられていれば、そんな手間をかけることもなくお人よしの養父ジョージ・ジョースターから財産を受け継ぐことができるだろう。
だがジョナサンも参加しているかどうかがわかるのは5時間後の放送まで待たなければならない。
そのもどかしさを感じつつも、目下すぐにわかる地図のファイルを探し当て目を通す。

「これが地図か...えぇっと...」


548 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:06:31 DFI2CCu60

ディオが情報収集に勤しむ傍らで、キウルはふぅと胸を撫で下ろしていた。

(よかった...私の知っている人はいなかった)

乃亜が参加者の選定条件を語った時、キウルの背筋は凍り付いた。
容姿や年齢が子供に当てはまる者。
キウルの仲間にも合致する者がいる。
ネコネとシノノン。片やキウルに近しい年齢で、片やキウル達よりも幼い少女である。
ネコネは聡明且つ優秀な術師ではあるが腕っぷしが強い訳ではない。
なによりキウルにとって恋焦がれる最愛の少女だ。傷つくことすら許容できるはずもない。
シノノンに至っては戦力などなにもない癒し系非戦闘員だ。
もしもこんな殺し合いに巻き込まれていれば、彼女の養父ヤクトワルトが確実にいないいま、まず間違いなくすぐに殺されてしまう。

(そうだ...もしも彼女たちが巻き込まれていたらさっきの私たちみたいに...!)

そこまで思い至った瞬間、キウルの脳裏に一つのイメージ像が過る。

『うなあっ!?ぬ、ぬるぬるが絡みついて...』
『うふふ、貴女の気持ちいいところはどこかな...ここかな?こ・こ・かなぁ?』
『んっ、むっ、ふにゃあああああああ♡』

「あ、あぅ...」

金色の痴女にあられもない姿に剥かれ快楽に悶えるネコネの姿を幻視し、キウルの顔が瞬く間にゆだっていく。
キウルは色恋に興味があり性欲もある健全な純情男子だ。
そんな彼が自らの淫らな体験に愛しき者の姿を重ねてしまうのも無理はなかった。

「キウルくん、これからの進路を考えたいんだが」
「ふぁっ、はいっ!」
(いっ、いけない!変なことを考えちゃダメだ!ネコネさんでそんなえっちなこと...)

ディオの呼びかけにキウルは我に返り、妄想を振り払う。
だが身体は正直なもので、先の妄想を引きずっており、キウルは前かがみになりながらディオのタブレットを覗き込む。

「どうかしたのかい?」
「あ、いえ、大丈夫ですなんともないです、あはは...」
「...?まあいい、さっき乃亜が言っていた『タブレット』の『アプリ』とやらにあったのだが、こいつを見てくれ」

ディオはぎこちない手つきながらもタブレットに更新されたアプリを開き、地図を画面に表示させる。

「どうやらこれがこの会場のようだが、少しばかり奇妙に感じないかい?」
「え?えっと...施設が沢山ありますが、どれがどれだかよくわからないですね」
「ん?そっちか...まあ、確かにこれじゃあ僕らに有益な施設がわからないな」

キウルの抱いた違和感は地図に記載された施設の詳細がよくわからないことだった。
たとえば『羊の家』。
これは参加者の一人、シャーロット・リンリンが育てられた有名な孤児院だが、キウルにもディオにも馴染みのない施設である。
この羊の家という単語だけ聞いて孤児院だと連想できる者は限られているだろう。
『国会議事堂』や『映画館』などもそうだ。
現代社会においては広く共通認識されている施設だが、ディオやキウルの生きる時代には存在しない施設。
彼らが共通してわかる施設といえば病院と図書館、港くらいのもの。
どのような施設かもわからない以上、今の段階では向かうべき場所がかなり限られる。


549 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:07:19 DFI2CCu60
「僕が気になったのはこの三つだ」

ディオが指差したのは、陸地の端にある三ヵ所の『港』だ。

「港というくらいだから船はあるだろう。だが、この地図を信じるなら港から港に移動するにはぐるりとこの土地を回らなくちゃいけなくなるんだが、果たしてこれを使うメリットはあると思うかい?」
「うーん...それなら陸地を歩いて行った方がいいですよね。逃げ場もありますし、身を潜めることもできますし」
「その通り!船に乗る以上は逃げ場もないし、しかも海沿いのエリアを一マス禁止エリアに指定されればそれだけで船の価値は更に暴落する。そんな船を誰が使うものか。さて、殺し合いにおいてはさほど価値のない施設だとわかったが...ここで一つの疑問が浮かび上がってくるわけだ」
「疑問ですか?」
「ああ。このマップの端のライン。ここを越えたら...どうなるんだろうな?」

ディオの言の意味を理解した時、キウルの背に寒気が走る。
エリアの端から出る―――それは、この会場からの逃亡に他ならない。
だがそんなことをすれば当然首輪が爆破されるはずだ。

「おいおい、そんな顔をするなよキウルくん。僕はなにも自暴自棄になった訳でも考えなしの思い付きで言った訳でもないぜ。どうなるかは見当もつかないが、少なくとも即座に殺されることはないはずさ」
「なんでですか?逃げようとしてるんですよ!?」
「主催側もそんなことは織り込み済みだからさ」

ますます困惑の色を浮かべるキウルに、ディオは得意げに己の自説を述べていく。

「いいか?乃亜は確かに『全員無様に首輪が爆発なんて結末はつまらない』と言っていた。奴はあくまでも僕らに殺し合いの果てに死んでもらいたいのさ。
そんな奴が、これでもかと言わんばかりに港を三つ、エリアの端の近くに船を用意しておいて、エリア外に逃げようとした参加者の爆死なんて結末を望むと思うかい?」
「それは...確かにそうですが...」
「僕の予想では、せいぜいなにかが起きるとしても警告くらいなものだが...問題は船で移動するにしても目立ってしまうことだ。いかんせん調査を進めるにはもう少し協力者が欲しいな」

ディオの知る船とは大型にせよ小型にせよゆったりと動くものである。
そんなものがあの海原で動けばいやでも目立ち、相手によっては格好の的になる。
一度襲撃された手前、さすがにいまそんなリスクを取ろうとは思わなかった。

(だが脱出はできんにせよ、通りがかった船に救助を願うことくらいはできるかもしれん。そうすればやりようはいくらでもある)

無論、助けを請うたところでその場で脱出できるわけではない。ディオもそんなことを期待している訳ではない。
外部にいるジョースター卿にまで連絡が届けば、自分の身の安否だけでなく、犯人についての素性も調べてくれるだろう。
そうすれば自力で脱出した後に乃亜への報復がスムーズに行える。
尤も、己の身を優先する以上はいまのまま行うにはリスクが高すぎるのだが。

「...ディオさん。何者かが近づいてきています。私の後ろに隠れてください」

そんな彼の悩みを聞き入れたかのように、一組の男女が近づいて来る。

一人の少年の名は海馬モクバ。もう一人の少女の名はドロテア。
この遭遇は、彼らにとって思わぬ進展を促すことになる


550 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:08:04 DFI2CCu60


「金髪の痴女、とな」
「ああ。自身の髪の毛や水を自在に操るとんでもない変態だ」

モクバとドロテア。
ディオとキウル。
警戒し警告の意も込めて矢を構えるキウルとそれを迎え撃とうとするドロテア。
一触即発の空気になりかけたところをモクバが先陣切って戦意が無いことを示し、その甲斐あってひと悶着もなく近くの民家に腰を落ち着け、こうして情報交換の席に着くことができた。

「水の方はともかく、髪の毛に関しては妾の知り合いにも似たようなことが出来る者たちがおる。そやつらも指を針のように細くも鋭く尖らせたり、関節を自在に操り鞭のようにしならせることができるのじゃ。中には髭を剣の如き硬さに尖らせる者もいるらしい」
「それは生まれつきの体質かい?」
「いや、弛まぬ鍛錬の果てらしい。その痴女がそやつらと同じような境遇だったかはわからぬが、それくらいなら己が身で出来る者たちもいるということだけは教えておこう」
「なるほど...ありがとう。相手も同じ人間ならば安心だ」

ドロテアから齎された情報はディオに仄かな安心感を与えた。
自身を辱めた闇を殺してやるとは思いつつも、あのような怪物を相手にどうしたものかと悩んでいたのも事実。
だが怪物ではなく人間ならば話は別だ。暴力ではどうにもならなくとも毒殺や銃殺なども充分に通じる手段になるからだ。

尤も、闇はディオたちとの交戦の際に変身(トランス)能力の本領は一切見せていない。
そのため『髪の毛を自在に変化させることができる』程度しかわからず、それを聞かされたドロテアの考えも肉体変化を得意とする『羅刹四鬼』の面々を基にした考察になってしまったのだが。

金髪の痴女こと金色の闇を危険人物と共有し、次の題に進む。

「乃亜の知り合いなんですか!?」

モクバが乃亜と知った仲であると聞かされたキウルとディオの顔が驚愕に染まる。

「彼とはどういった関係なんですか!?」
「奴の弱点は!?武器は!?技は!?」
「ちょっ、ちょっと落ち着いてくれよ二人とも!」
「うるさい、もったいぶりやがって!いいから早く僕の質問に答えるんだッ!」
「おっ、落ち着いてくださいディオさん。そんな乱暴な!」

勢いのままにモクバの胸倉を掴みあげるディオを慌ててなだめるキウル。
先ほどまでの少し和やかでもあった空気が一変、緊迫感すら漂い始める。
当然だ。
共通認識として倒すべき相手である乃亜の身内となれば、相手のことを知る大きな一歩となること間違いなし。
ならば少しでも情報を手に入れようと二人が躍起になるのもまた必然だ。
モクバもある程度は覚悟していたが、予想以上の詰められように流石に面を喰らうしかなかった。


551 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:10:01 DFI2CCu60

「モクバをいくら締め上げても無駄じゃぞー。かつて倒された身内なんていう特大の災厄をわざわざ参加させたのは、そやつ一人では自分に大した害はないと奴が確信しておるからじゃ。そやつから手に入れられる情報はせいぜい乃亜の人となり程度。お主の求める弱点だの武器だのは手に入らんぞ」

そんな彼に助け舟を出したのはドロテア。
その横やりにまで反発すればどうなるかがわからないほどディオは無鉄砲ではなく、小さな舌打ちと共にモクバを解放した。


「ふぅ...助かったよドロテア。ありがとう」
「妾は約束を守る女じゃからの」

どの口が言うんだか、とモクバは思うがそれを表には出さない。
モクバが少しでもドロテアに懐疑心のある言動をすれば、他の参加者に『子供を保護している安全な人間』という立場のはずのドロテアを不審がられる可能性が生まれやすくなる。
そうなれば彼女との同盟条件の一つである『生存の安全圏』の価値が薄れ、同盟を破棄し切り捨てられる下地が徐々に詰みあがってしまう。
故に、他参加者からのドロテアの評価を損ねるようなことは少しでもしてはならない。
それがモクバに嵌められた一つの枷であった。

それから四人は互いの住む世界観についてすり合わせていくがやはり重なるものがほとんどなく。
強いて言うならばディオの生きる時代がモクバの生きる時代よりも100年以上昔と思われる、程度のものであった。

粗方の情報を共有し合い、さてこれからどうしようかという段階に入ったところで、ディオはタブレットを取り出し地図の画面をモクバやドロテアにも見せる。


552 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:10:54 DFI2CCu60

「僕はこの地図の向こう側を調査したいと思っている。もしかしたら外部へのなにかしらのコンタクトもとれるかもしれないからな」
「乃亜がなにも対策しておらんとは思えんがの」
「たぶんここは乃亜の作った空間だし、そもそも外部への助けなんて―――いや待てよ?」

期待できない、と言いかけた言葉を途中で切り、モクバは顎に手をやり考える。

(外部の助けは期待できないにしても、この調査は俺たちの現状を確定できる大きなチャンスなんじゃないか?)

この会場は乃亜の作った電脳空間である、という説はあくまでもモクバが体験から推測したものにすぎない。
その節は確かに可能性は高い。が、もしもそれを前提として脱出への道を構築し、いざ実践といったところで『この会場は電脳空間ではない』という事実が判明し、その策が使えなくなれば目も当てられない。
だから今のうちにこの会場が電脳空間であることを確定するのは決して無駄な作業ではない。

ではどのように確定するのか。
それこそ、ディオの言った『地図の外のエリアの調査』だ。
この土地は周囲を海に囲まれており、土地からさほど離れていない領海がエリアの端だ。
ではそこから外れた際にどのような対処が行われているか?モクバが求めるのはそれだ。

例えば西端であるDー1より更に西に向かった場合。
壁のようなもので先に進めなければ、あるいはDー1の対角側であるD-8に着けば、それはここが電脳空間であることの裏付けとなる。
海の上に聳え立つ見えない壁も、球体のようにまっすぐ進むだけで一周できるという事象も、作られた空間でしかできないことだ。
とくに後者なんかはもしできれば、いまの位置からなら海馬コーポレーションへの近道にもなるし、万が一の事態に際しての逃走経路にもなる。

首輪の警告だけであれば、厄介ではあるがこの空間を電脳空間であると断定はできなくなる。
電脳空間であれば前者二つのような管理の仕方ができるはずなのに、わざわざ乃亜のいう『つまらない死に方』をさせる意味はない。
だが現実世界であれば、そうしなければエリア外に行ってしまった参加者の管理ができないのだ。

「ディオ。その調査に俺たちも噛ませてくれ」
「本当かい?いやあ助かるよ。正直に言って僕らだけでは不安だったからね」

ディオからすれば、船に乗るなんてリスクのある行為はなるべく避けたかった為、調査への協力者が増えるのは渡りに船だ。
それに先ほどの痴女はキウルを女だと思い襲っていた。
奴が求めているのが女であるならば、ドロテアを囮に逃げることもできるだろう。
上辺だけでも礼を繕い、先のモクバへの暴挙の悪印象を薄らげる。


553 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:15:03 DFI2CCu60

「...よいのか?あやつ、妾の同類じゃぞ」

ドロテアはこそりとモクバに耳打ちをする。
彼女とてワイルドハントに所属する程には悪の人間だ。
人を手駒にして操り利益を啜ろうとする類の匂いには敏感な方である。
彼女は、キウルはともかくディオからは自分たちと同類の気配を嗅ぎ取っていた。

「いいさ。あんたと組んでる時点でその辺りは覚悟してる」

モクバとてディオが胡散臭いことには気づいている。
だが綺麗ごとだけでは先に進めないのは痛いほどわかっているし、自分が多少リスクを背負うくらいのことをしなければ乃亜を止められないこともわかっている。
だからモクバはあえてディオの思惑に乗ることにした。

「まあ、お主がわかっておるならなにも言わんがの」

モクバへの耳打ちを止めると、ドロテアはくるりと向き直りキウルに微笑みかける。

「と、いうわけでじゃ。妾たちもしばし同行させてもらう。よしなに頼むぞ」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」

ドロテアに合わせる形ではにかむキウル。
そのピョコピョコと動く獣の耳を眺めながらふと思う。

(...なんじゃろうな。こやつを見ていると血を吸いたくなってくる)

ドロテアがここに連れてこられる前に吸ったタツミの血。
その濃さに少しばかり昂ぶり、草食動物さながらのキウルを『つまみ食い』したくなっていたことは彼女自身自覚してはいなかった。


554 : 水平線の向こう側へ ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:15:43 DFI2CCu60


【D-3/1日目/深夜】


【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]血液徴収アブゾディック
[道具]基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:ひとまず港に向かう。
1:とりあえず適当な人間を三人殺して首輪を得るが、モクバとの範疇を超えぬ程度にしておく。
2:妾の悪口を言っていたらあの二人(写影、桃華)は殺すが……少し悩ましいのう。ひっそり殺すか?
3:海馬モクバと協力。意外と強かな奴よ。利用価値は十分あるじゃろう。
4:海馬コーポレーションへと向かう。
5:...殺さない程度に血を吸うのはセーフじゃよな?
[備考]
※参戦時期は11巻。

【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:青眼の白龍@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜0
[思考・状況]基本方針:乃亜を止める。人の心を取り戻させる。
0:G-2の港に向かい船に乗ってマップの端に向かう。
1:殺し合いに乗ってない奴を探すはずが、ちょっと最初からやばいのを仲間にしちまった気がする
2:ドロテアと協力。俺一人でどれだけ抑えられるか分からないが。
3:海馬コーポレーションへ向かう。
[備考]
※参戦時期は少なくともバトルシティ編終了以降です。
※ここを電脳空間を仮説としてますが確証はありません

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]精神的疲労(中)、疲労(中)、敏感状態、服がビショビショ、怒り
[装備]バシルーラの杖[残り回数4回]@トルネコの大冒険3(キウルの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:ひとまずモクバ達と共に港へ
1:キウルを利用し上手く立ち回る。
2:先ほどの金髪の痴女に警戒。奴は絶対に許さない。
3:ジョジョが巻き込まれていればこの機に殺す。

[備考]
※参戦時期はダニーを殺した後

【キウル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)、疲労(大)、敏感状態、服がビショビショ
[装備]弓矢@現実(ディオの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 闇の基本支給品、闇のランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いからの脱出
0:ひとまずモクバ達と共に港へ
1:ディオを護る。
2:先ほどの金髪の少女に警戒
3:ネコネさんたち、巻き込まれてないといいけれど...
[備考]
※参戦時期は二人の白皇本編終了後


555 : ◆ZbV3TMNKJw :2023/05/27(土) 00:16:07 DFI2CCu60
投下終了します


556 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 14:29:14 bOJ2c/7E0
投下ありがとうございます。感想は後ほど投下させて頂きます。
ルサルカ、ガムテで予約します。


557 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:27:36 nupm3N1E0
ギリギリですが投下します


558 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:28:08 nupm3N1E0

「という訳で、次からその魔法は使い所を考えてください。」
「ご、ごめんなひゃい……。」

見事なたんこぶを頭に作り上げ、涙目ながら野比のび太はロキシーに謝るハメとなっていた。
原因は勿論先程ののび太の「チンカラホイ」。
と言ってもやったことは軽いものを浮かび上がらせた程度だが、浮かび上がったのがロキシーのスカートだったのが大問題。
年頃の少年に純白パンツを見せびらかす羽目になったとなれば、羞恥から思わずのび太の頭を杖で殴打してしまった。勿論衝動的に殴ってしまった事に対しては後で謝罪はしたが。

迅速に殺し合いから脱出し生還したいと言うのに。と思いつつ、やはりこの少年を見捨てるわけにはいかない。
迅速に、と言うが首輪の解除という特大の壁が立ち塞がっている以上はどうにもならないわけで。

「……まあいいです。次に向かう場所はもう決めていますのでそこまで移動しましょう。」
「え、そうなの?」
「と言っても、月並みに目ぼしい資料がありそうな場所に手を付ける、ということですが。」

恥じる赤い頬が未だ冷めぬままだが、ロキシーの中では次の目的地は決まっていた。
自分たちの現在位置はD-6、山岳地帯が近い所に位置する。

「近場だと図書館ですかね、私としてはホグワーツなる魔法魔術学校も気になりますが。」
「図書館は分かるけれど、魔術学校ってとこの方は、ロキシーさんが魔法使いだから?」
「まあ。あなたのそのハレンチな魔法も含めて、別の体系の魔術というのは気になる所です。それに、もしかしたらこの殺し合いに繋がる何かしらのヒントを得られるかもしれません。」

数多の世界の子供たちが呼ばれたこの殺し合い。実年齢が違えど外見か年齢が子供であれば、いや、子供という要素があれば無造作に集めて蠱毒に放り込む。
それで、自分を背の高さだけで子供扱いしてこんな下らない事に巻き込んだ。この少年も含めて。

(何のために?)

まず、あの海馬乃亜という少年が何者か、その点も気になるのだが。
無垢で残虐、幼稚。と言うには、妙な違和感があった。
まるでこの世界全てを箱庭感覚で、庭に放り込まれた虫を観察し俯瞰するような海馬乃亜という少年の瞳。
その根拠は本当に子供特有の全能感だけなのか?

(そもそも、ここが一体、本当に何処なのかすら。)

大前提として、殺し合いのためだけに用意された舞台。というのも不可解。
仮にこの舞台そのものが巨大な魔法陣だとしたならばそれは最悪だ。何せ準備さえ行っていれば天地無用のちゃぶ台返しが可能であるから。
だが、そんな大規模な魔法陣を用意しているというのなら何かしらの塗料が必要なはずだし、そうなれば一部を消されただけで魔法陣は破綻する。そんなヘマをするほど相手が甘いわけがない。

(もし、彼の言っている科学だとかの部類とかになると、私ではお手上げですね。)

魔術は兎も角、のび太の言ってた科学の類となってしまえば、完全にお手上げだ。
なにかの間違いでルーデウスが知っていそう? 等と脳裏によぎったが、居ない人物に縋りついた所で意味はない。

「……ロキシーさん? どうしたの? 具合でも悪いの?」
「いえ、少し考え込んでいただけです。……この会場を、一体誰が用意したのかっていう考察ですね。」

柄にもなく心配されてしまい、思わず意見を尋ねた。
ロキシーとしても科学だとか未来の技術だとか眉唾なものを信じるかどうかは別だが、別の観点からの意見は欲しい。そう思っての意図ではあった。
少し考え込んで、のび太は口を開いた。


559 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:29:57 nupm3N1E0

「無人島を作ったりとか、雲を固めて土地にしたりとかってのは未来の道具で出来るらしいんだけど。少なくともこういう事出来るのってそういう未来の悪人とかじゃないかな?」
「前者は分からなくもないですが、……後者は頭が痛くなりそうです。」

無人島を作る、というのは辛うじて分からなくはない。
ただ雲を固めて土地にするだとか滅茶苦茶な事を言われ、ロキシーとしては思わず頭を抱えたくなる。
だが、この土地が雲の上に作られた浮遊大陸の類であるならば、誰に気づかれず殺し合いの運営を、という点では納得が付く。

「兎も角、この場所は未来の道具とやら、で作られた可能性、と。じゃあそれを行いそうな人物に心当たりは。」
「……うーん。心当たり、あるにはあるんだけれど……そいつは今タイムパトロールに捕まってるからなぁ。」
「この際当たり外れはいいとして、参考に聞かせてもらいます。」
「……前に原始時代に家出した時に、23世紀の未来から世界を歴史を変えて全て支配しようとしたやつが居たんだ。」

のび太が語るのが、友達を巻き込んだ盛大な家出話において。
原始人を支配し、過去を書き換え世界の王となろうとした23世紀の大犯罪者。
亜空間破壊装置で時空乱流を自発的に発生させ、タイムパトロールの干渉を事前に対策した狡猾さを兼ね備えた未来人。

「そいつの名前は、ギガゾンビ。」
「ギガゾンビ、ですか。」

ギガゾンビ。のび太の語り口からしても、碌でもない人物であることは確か。
その彼が関わっているかどうかは兎も角、この場所が何処であるか、海馬乃亜に関与しているのは誰であるかの予想の一つが得られただけでも聞く価値はあった。
最も、『4次元ランドセル』なる、明らかな未来の道具らしきものが支給されている

「……そのギガゾンビとやらが関わってるかは兎も角として、意見としては参考になります。」
「そ、そうかな? だったら僕もちょっと役に立てたのかな……えへへ。」

妙に照れるのび太の顔に、思わずルーデウスの面影を感じたように思えた。
勿論彼とは色々と大違いなのだが、ある意味人並みらしい善性と価値観は、この場においては必要なのかもしれないと、ロキシーとしても無碍には出来なかった。

「照れるのはそこまでにして、まずは図書館に向かうことにします。……私も、科学とやらの知識は必要かもしれないと思ったので。」
「うん、わかった。僕も出来る限りのことは手伝うよ。」

やはり、のび太の話を聞く限り。化学の知識もまた仕入れなければならないと。
ロキシーとしてもまた知識のアップデートは必要だと納得した。
何もかもが未知の場所で、一歩踏み出なければ何も出来ない。
知識もまた、そういうものだ。

「……でも、こういう時にドラえもんがいてくれたらなぁ。」
「ドラえもんとは……ああ、そういえば最初にあった際に話していたネコ型ロボットでしたね」
「うん、ドラえもんはいっつも僕を助けてくれる大切な家族で、大切な友達なんだ。でも、いつまでもドラえもんに頼ってばかりじゃダメっていうのもわかってるけど……。」

ドラえもん。野比のび太にとっての家族であり友達でもある、未来からやってきた猫型ロボット。
話によれば未来の子孫が自分を助けるためにやってきた、とかそういうのらしい。
ロキシーとしてはやはり理解に時間が掛かる内容であったが、それでもそのドラえもんというのが、いい人……もといロボットであるのは、彼の言葉だけでも理解できたのだ。

「でも、こういう時だから、頑張らないとって。」
「……大した魔法も使えないんですから、無茶だけはしないでくださいね。」
「はは、手厳しいや。」

スカートを捲るぐらいしか使いどころのない魔法しか使えないというのに、妙な自信ではある。
だが、少なくとも、一緒にいても不快ではないぐらいには、彼は信頼出来る人物。
やはり、グレイラット家に絆されて、ルーデウスのお陰で自らの思い上がりを直せたからかも。等とロキシーは内心悪くない気分ではあった。


560 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:33:29 nupm3N1E0


「――へぇ。こんな場所で呑気なものね、あなた達。」

何処までも冷たい、声がした。
全身を劈かれるような、剣の嵐のような声がした。

「――!? のび太さん、下がってください。」
「ロキシーさん……?」
「……もしもの時、あなたを無事に逃せる自信は、流石にありません。」

のび太の目からしても、ロキシーの焦りは明白だった。
身の毛のよだつような魔力の、邪悪の気の放流が、声だけでも汗が流れるほどの。
隔絶した絶対者、魔の頂点とも言うべき、何か。

「あら、警戒されちゃったわね。でも、正しい判断ね。……小さな魔術師さん?」
「―――ッ?!」

声の主が、姿を表す。
なんと形容すべきだろう。まさに空想から舞い降りた幻想そのもののような魔女。
陶器人形のような純白の肌で、蒼玉の瞳が暗い輝きを宿らせて見下ろしている。
黒水晶のような少女が、人間をを超えた何かが、二人を眺めているのだ。
多少その身体が血に塗れているようであるが、それが意味するものをは一目瞭然だ。

「あ、あの、その……あ、僕、野比のび太って言います。」

「いや何呑気に自己紹介してるんですか」と思わずロキシーの視線が細くなる。
緊張しながらも流れでなんか挨拶した形となり、一瞬だけ場の空気が緩む。

「……こんな状況で自己紹介だなんて呑気ね。」
「何だか、大魔王デマオンとかそういう怖い感じのを予想してたから、その。」

言っては何だが、のび太としてはもうちょっと怖い相手を予想していたのか、拍子抜けみたいな態度ではあった。
今まで何度も冒険して、時には世界に危機に巻き込まれて、おおよそ怖い相手とは何度も戦ったことはあった。恐ろしい雰囲気を醸し出して出てきたのは思いの外小さな女の子だ。
別に外見に反してという点では過去の該当例ではリルルとかが思い浮かぶが、まるで工芸品のような美しさを秘めた彼女に、思いの外恐怖は感じていなかったのだから。

「のび太さん。確かに彼女は一見すれば普通に少女にも見えるでしょう。でもあれは私達魔術師からしても埒外の存在です。」

そんなのび太に対して、ロキシーの眼の前の少女に対しての警戒は最大だ。
魔術師の、その枠外を遥かに超えた存在。低く見積もっても帝級どころか神級。もしくはそれを遥かに超えかねない怪物が立ち塞がっているのだ。
どうやって逃げるか、逃げられなくともどうやって凌ぐかを並行で考えていた。

「でも……なんだろう。あの人、なんて言えば良いのかな……。」
「何が、です?」

だが、唯一。今にも死を振り撒いてもおかしくない魔女に対し、違う印象というか、そういうのをのび太は感じて。

「私がどうかしたのかしら? 私を前にして余り動じないその図太さだけは褒めてあげるわ。」
「……あなたがどういう人かわからないし、多分悪いことをしようとしているってのは何となくわかります。」
「そうね。……私はすべてを滅ぼす。違う形になったとはいえ、人類鏖殺の手段に近づいたのは事実。このチャンスを見逃すわけにはいかないわね。」

機嫌が良いのか悪いのか、それとも「後ですぐに殺す」という行為の表れなのか魔女はそう告げた。
魔女が告げたのは己の目的、人類鏖殺という、のび太にもロキシーにも分かりやすい、げに恐ろしき行為だ。まさに本当に悪の大魔王が高笑いしながら宣言しそうな目的だと、のび太は思った上で。

「……でも、何だか早く楽になりたいって顔してそうな気がするんだ。」
「――――――――。」

そう、魔女に真正面から言い切った。何の確信もなく、ただ何となく感じた感覚を。
愉しげに目的を語ったように見えて、その実「全然楽しくなさそう」という違和感を。


561 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:34:18 nupm3N1E0

「………ねぇ、あなた。」

空気が、冷えて震えた。
全てが沈黙したかのような錯覚に襲われる時間が過ぎて。
ロキシーもまた、何か悪寒のようなものが過ぎ去るような、嫌な予感を察知して。
魔女の一言が、恐ろしく低く木霊する。

「野比のび太、って言ったわよね?」
「あ、はい。」
「そういえば私の方の紹介がまだだったわね。リーゼロッテ・ヴェルクマイスター。……ああ、覚える必要はないわよ。」

唐突に、饒舌に。己の名前を告げた魔女の言葉が。
野比のび太にもわかりやすく、そして冷たく響いて。

「………のび太さんっ! 伏せてっ!!!」
「えっ――」
「――来たれ冬の精霊 水を重ね悪しき者を押し止めよ!」

ロキシーが叫び、詠唱を唱えて氷の壁を構築した時には、既にリーゼロッテの手のひらは動いていた。
ロキシーに言われるままにのび太が頭を抱えて地面に伏せて、ロキシーの氷壁の後ろに隠れる。
言われるがまま、ロキシーが叫んだ意味を、流した冷や汗と焦りの意味をのび太は理解することとなる。









「死になさい」











放たれた黒炎の球体が、氷壁に直撃し爆炎に包まれるまで、そう時間はかからなかったのだから。


562 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:36:16 nupm3N1E0


のび太は、この場所が殺し合いである、と言う事実を改めて、その身をもって理解させられた。
魔女の、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの撃ち放った黒炎の魔力弾はロキシーが即座に唱えて生み出した氷壁に直撃し、爆発。
たった一発の黒い火球で、周囲の草木は黒い炭となって風に吹かれて散っている。

「……のび太、さん。……なんとか、無事ですね………!」
「ロキシーさん! い、一体何が……あ……!?」

目を開ければ、自分に声を掛けるロキシーの姿。
だが、その姿を確認した瞬間絶句する。
ぽたぽたと、滴る血が火傷らしき傷口から流れ落ちている。
帽子は消し飛んで、服はところどころ無惨に焼け焦げているのだ。
正直な所、ロキシーの氷壁の展開は本当にギリギリのタイミングだ。
それでなんとか、のび太の身だけは守れた。本当に彼だけは守れた、だけだ。

「へぇ、さっきのよく防げたわね。」

二人を見下ろしながら嗤うのは先程の火球を放った魔女リーゼロッテ。
見下すように、虫を眺めるように、嘲り、愉快そうに見ている。
だが、その瞳だけは全く笑っていない。ただ野比のび太だけを見つめている。

「……ひ、ひぃっ!?」
「あら、そんなに怯えて。でも、それが正しい反応よ。――さっさと殺して楽にしてあげるわ。」

嘲笑混じりで、かつ余りにも冷めた言葉。流石ののび太も本気で怯え、恐怖する。
リーゼロッテが正面に手のひらを向ければ出現するのは白い魔法陣。
目に見えて理解できる殺意と死の波濤。そして魔法陣から放たれるのは先程よりは小さいものの、数に物を言わせた火球の流星群。

「雄大なる水の精霊にして……天に上がりし雷帝の王子よ! 勇壮なる氷の剣を彼の者に……叩き落せ!」

迫る火球に対し、ロキシーは再び詠唱。
今度は防壁ではなく、敵の攻撃に対し相殺するように技を放つ。

「『氷霜撃(アイシクルブレイク)!』」

放たれたのは一回り大きめの氷の塊。火傷から多少詠唱が澱んでいたが無事発動はした。
それを何度も放ち、迫りくる火球群を相殺する。それでも中級呪文でないと一発分相殺するだけでもこの有様。

「……思いの外耐えるわね。」

ロキシーの奮闘を、リーゼロッテは軽く眺めている。
幾ら先程の子供との一件で小さくない手傷を負っているとはいえ、中々食らいついてるのは素直に称賛に値する。が、それまでだ。本来ならば魔術師としての手腕は天と地ほどの差。到底敵うはずがない。

「じゃあ、これはどうかしら?」

パチン、と指を鳴らせば。放たれていた火球が虫の姿へと変化する。
と言うよりも、虫が炎そのものになったような挙動でロキシーの放つ氷塊の隙間を軽々と避けて迫っていく。
あのときの寄生虫パラサイドをそれっぽく姿だけ真似て火球の魔力弾として再現してみたのだが、存外上手く行ったようである。
ある程度の指向性を付与し、相手の牽制や防御を掻い潜りながら迫る一種の追尾弾に近い代物。昆虫類特有の不規則な動きも悪くない。

「こ、こんな魔法は……あうっ!?」

分かっていた事ではあるが、炎を虫状かつ不規則な弾道とする未知の魔術、しかもこの状況下で思いつきで再現したという事実に、直後に食い千切られるような焼ける痛みを味わいながらもロキシーは驚くしかなく。
一定の自律性と追尾性を付与した魔力弾なんて巫山戯てるにもほどがある。分かっていたことだが、あの魔女は、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターはロキシーが今まで出会った魔術師の中で、最も最悪とも言うべき怪物だったと改めて実感した。


563 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:37:04 nupm3N1E0


「どうすれば……!」

ロキシーに庇われるように背後に立つしか無く、それでも自分にできることをなんとか頭から捻り出そうとするのび太。
元はと言えば自分が不用意な発言をしたせいでリーゼロッテの機嫌を損ねて、自分を庇ってロキシーがあんな大怪我をして、結果として自分を守るために戦っているようなものだ。

「ええと、何か無いか何か無いか……!」

慌てながらも四次元ランドセルから何が有効打になりそうなアイムを探す。
宛ら秘密道具を手探りするドラえもん状態を心底実感しているようなものだが、そんな事思い返してる余裕なんて無い。

「……あった。あったけど!?」

あったにはあった。最初に見つけたのは変なパソコンみたいなもの。
その他二つも一応探ってみたが、『ラヴMAXグレード』とか書かれた訳のわかんない薬品。
最後の一つに希望を託して取り出してみれば、……なんかよくわからない輪っか。空を飛べるとか武器に使えるとかそういうっぽいが、混乱している頭ではたどり着けず。

「―――これでどうやって戦えば良いの!?」

そのどん詰まりっぷりに、思わず叫んだ。叫ばずにいられなかった。
本当にこれでどうやって戦えば良いんだ、というか戦う以前にこの状況をどうやって乗り切るかどうかの問題でもある。
ロキシーが何とか耐えているが時間の問題。このまま一人逃げてしまうなんて手段もあるが、野比のび太という善人はそんな行為を何よりも自分が許さない。
そう、あの時のように、女の子一人置いて逃げるだなんて、もう懲り懲りだから。
なんて悩んでいれば、ちょっと離れた所にいた草陰がほんの少しだけ揺れた。

「……もうこうなったら!」

思考は一直線だった。一直線というよりももはや後先考えなかっただけだろう。
明らかに誰かいるであろう物陰に隠れている人に、ロキシーを助けてもらうという考え。
小学生らしい愚直で単純な考え。もし隠れているのが殺し合いに乗っている人物だったらどうするのか。
いや、そんな事を考えるとかではなく、野比のび太はロキシーを助けたかった、ただその一心だった。

「あの、すみません! 誰かいたらちょっと助けて欲しい人がいるんです!」

草陰の背後を覗き見れば、自分よりも小さい女の子に、文字通り天使のような青い髪の女の子。
前者は怯えているようにも見えるが、もし仮にあの戦いを目の当たりにしてしまったのなら仕方ないかもしれない、とのび太は一旦置いといて。
もう片方の天使のような女の子の方だが、何故か焦燥している様子。

「……誰よ、あんた?」
「……ぁ。」

そして、その天使のような女の子の背中は、文字通り痛々しいもので。
助けを求めたのび太は、思わず言葉を失うしか無かった。


564 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:37:24 nupm3N1E0



あの二人の戦いを、ニンフとベッキーもまた道中で遭遇し、身を隠しながらも目撃はしていた。
片方の黒い魔女の戦いは、文字通り人智を超越した代物だった。
単純に首輪で制限されているなかで、一定の出力を保ったまま戦えている。しかも手傷を負っているにもかかわらず。
そして、あれ程の化け物もいるのだと理解して、その思考は袋小路までに追い詰められていた。

「……悪いわね。助けてあげたいのはやまやま何だけれど……。」
「……うん、ごめん。」

翼をもがれた天使、と言う表現を、文字通り目の当たりにした。
そして、のび太は思わず謝った。もちろん。ニンフとしても今殺されようとしている人物を見捨てて、なんて非情な真似は望むことではない。
だが、宙ぶらりんの希望すら根こそぎ引き千切られて、優勝を考えてベッキーの顔を見てそんな事できないと再確認して。
どうすればいいのか分からない暗闇の行き止まりの中で。誰かを助けるなんて余裕なんて浮かぶはずがないのだ。

「……あんたは、逃げないの? あんな、勝てる気がしない奴相手に。」

そして、魔女の実力は。間違いなく自分どころかイカロスとアストレア三人で力を合わせて勝てるかどうか、そこに万が一カオスが加わったとしても、だ。
万全ではないからこそ、もうひとりの少女は辛うじて拮抗しているように見えているだけで。
それでも、野比のび太という、愚直にも善性を捨てない彼は。

「正直、怖いよ。怖くって、震えそうで、今にも逃げ出したくて。……僕はドジでのろまでバカで、大したことなんて出来ないけどさ。」

彼は無力だ。ひみつ道具に頼るのと、大したことのない魔法しか使えない彼は。
それでも、優しさだけで世界の危機を乗り越えた野比のび太と言う人物は。

「前にさ、泣いてる女の子一人で置いて逃げるしか無かった事があって。すごく嫌で悲しかったからさ。もうそんな事は、嫌ってだけの、そんな大したことのない事だよ。」

たったそれだけの理由で、死ぬかもしれない戦場から、逃げたくないのだ。
怯え黙ったままのベッキーはいつの間にかのび太の言葉に聞き入っていた。
ニンフはのび太の、図太いのか呑気なのか、それとも本当に馬鹿なのか分からなくて、それでも何となく、何となくだが、ニンフにとって大切な『彼』のことを思い返して。

「……ねぇ。のび太って言ったわよね。」
「う、うん。」
「あのあっちの青い髪の子を助けたいってことで良い? ……あんた、何か考えあるの?」

呆れた顔で、何かしら決めたような顔で、ニンフがのび太に語りかける。
少なくとも、ロキシーを助けてくれそうな流れになったかもしれないと、のび太も言葉を綴る。

「それが思いついてたら苦労はしてないかなぁ。僕の支給品だとパソコンみたいなものとかは入ってたけど。」
「パソコン? ……ちょっとそれ見せなさい。……ってこれって量子変換器じゃない!?」

のび太が取り出したパソコンを見せれば、ニンフは思わず眼を丸くした。
人間を他の物体または別人へとメタモルフォーゼさせる装置。一体どうしてこんなものがここにあるのかは分からないが。

「……量子変換器? 確かそんな事説明書に書いてたような……でも単語がよく分からなかったから。」
「わかりやすく言えば、この装置はなんでも変身できる装置ってこと。」

トモキは毎回碌なことにしか使わなかったけど、とニンフが小言で零しながらも説明。
つまるところシンプルに生物だったり無機物だったりに変身できる装置ということである。

「……変身、装置。……! ……ねぇ、お願いがあるんだけど!」
「えっ、ちょっと……?」

変身できる装置。たったそれだけのことだが、それでも希望を掴んだかのようにのび太は叫ぶ。
そしてその内容を、藁にも縋る思いでニンフに話し始めるのであった。


565 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:37:43 nupm3N1E0



「はぁ……はぁ……うぅ……」

何度身体を引き裂かれた感覚を味わったのか。
何度焼かれる感覚を味わったのか。
何度、あの魔女の攻撃を受けたのか、既にロキシーはそんな事を気にする余裕すら無かった。

(……のび太さんは、いつの間にか逃げたのでしょうか……でも、そうだったら良かったかもしれません)

気にかけるのはいつの間にか姿がいなくなっていた野比のび太のことだ。
変な少年ではあったが、この戦場から無事逃げてくれたというのならほんの少しだけ重荷が軽くなった気がした。

(せめて、大きいのを一発でも食らわせれば、離脱までなら何とか……)

全てが埒外なあの魔女をなんとかするには、手傷を追わせて逃げる余裕を作るなら王級か聖級の魔術を持ち出さないと何とかならない。
だが、問題は魔女がそれを素直に許してくれるかどうか。自分では詠唱か魔法陣が必須であろう魔術を相手は無詠唱で唱えて打ち出してくる。
詠唱短縮やら無詠唱やらはルーデウスが抜きん出ていたと思っていたが、その気になれば王級レベルすら無詠唱でぶっ放しかねない相手にそんな時間を自分一人だけでは稼ぐことは不可能だ。

「もうおしまい?」
「……ッ?!」

だが、魔女リーゼロッテは、そんな思考の余地すら見逃さない。
両手を掲げ、宙に浮かび上がるは巨大な黒い魔力の球体。

(この大きさ……嘘でしょ……!?)

絶句した。このクラス、もはや王級どころか帝級の魔法。
今の自分ではこんなもの食らったら一溜まりもない。氷壁を貼った所で氷細工の如く削り取られ消し飛んでしまう。

(やってやりますよ。こっちだってこんな所で死にたくないですから!!!)

だが、だからと言って諦めるつもりなんて全くない。
だったらやるだけやって生き延びる。もしかしたらルーデウスがいるかも知れないこの地獄の舞台の中で。
そして再び、ルーデウスと再開できるかもしれないその時まで。死ぬわけには行かない。
幸か不幸か、傷が癒えていない影響か、リーゼロッテのあの魔力弾には溜めがいるらしい。だったらぶっつけ本番の一か八か。

「――落ちる雫を散らしめし、世界は水で覆われん。『水蒸(ウォータースプラッシュ)』!」

まず唱えるのは対して威力のないウォータースプラッシュ。
もちろんあの魔女にこんな事でダメージを与えられるなんて考えてないし、あの攻撃を防げるとも考えていない。相手の溜めに時間がかかっているからこその、我武者羅の思いつき。

「天より舞い降りし蒼き女神よ、その錫杖を振るいて世界を凍りつかせん! 『氷結領域(アイシクルフィールド)』!」
「……何を企んでいるかはわからないけれど……これで終わりよ。」

そしてもう一つ。周囲の気温を下げる魔術『氷結領域(アイシクルフィールド)』を間髪入れずに唱えて発動。水滴が数粒でも飛んで残っているのさえあればそれでいい。
その直後に、溜めが終わったであろうリーゼロッテも魔力球も振り下ろされ、ロキシーの、彼女が放った水滴ごと飲み込まんと墜ちてくる。

だが、魔力球が水滴に触れた瞬間。
魔力球がピシピシと音を上げて固まり始めて、そして拒絶するかのように弾け、爆発した。

この時ロキシーが使った魔術の組み合わせは、偶然か必然か。
後の未来にルーデウスがロキシーを助けるために使用した魔術。
『水蒸(ウォータースプラッシュ)』で付着した水滴を、『氷結領域(アイシクルフィールド)』で冷やして、水滴が付着した対象を凍結させる。―――その術の名は『フロストノヴァ』と言う。

「「……!」」

周囲一体に爆煙が立ち込め、ロキシーも、リーゼロッテもそれに呑まれてお互いの姿を見失うのに、そう時間はかからなかった。


566 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:40:23 nupm3N1E0
□ □ □


「………やってくれたわね。」

煙を晴らして、周囲を見渡したのはリーゼロッテ。
爆発の余波で既に草木の類の一部は消し飛んでいる。
元々山岳地帯が近いこの場所で身体を隠せるほどの草原は少ない。
そしてやはり、首輪によって科せられた制限というのは忌々しいものだと思い返す。

「あの土壇場でよく機転が利いたものね。」

魔術を組み合わせの相殺。幾ら手負いかつ、普段とは違って溜めなければいけなかったとはいえ。
それでもあれを防げたというのは素直に称賛もしたくなる。
だが、さっきので相手も消耗したが。こちらは大した消耗ではない。
そして何となく首輪周りの制限のあり方を掴むことが出来た。

制約は基本として出力に科せられる。殺し合いを破綻しかねない、それこそ会場を破壊するレベルの威力は出せないようになっている。
例えれば蛇口が狭ばめられている、ということではある。だが、元から蛇口が大きければ小さくされても一定の出力は見込めるし。出力は抑えられも総魔力量を盛大に減らされているわけではない。
つまるところ、制限さえ見極められれば『幻燈結界(ファンタズマゴリア)』も問題なく使える、ということ。

だが、まずやるべきことはさっきの魔術師を殺すこと。
そしてその次に、機嫌を損ねてくれたのび太というガキを殺す。
当たりを見合わして、魔力の気配らしきものは感じられない。
先の相殺で相手だけ死んだのか? いや、油断は禁物。気を抜いたらあの虫を食らった時の二の舞いになりかねない。
冷静に、警戒を怠らず、目を凝らせば。――映り込むは青い髪の少女。

「……しまっ!?」
「――見つけた。」

杖は持っていない。どうやら何処かで落としたか消し飛んだか。
都合がいい、今度は仕留めると、黒炎を生み出し、投げるように打ち出す。
だが、黒炎がぶつかるかどうかの直前で、小さい少女に突き飛ばされて、回避される。

「……運がいいわね。でも、次はそうは……!?」

少女の姿が、眼鏡の少年へと変化したのだ。

「あ、ありがとうベッキーちゃん……本当に死んだかと思ったよぉ〜」
「わ、私だって怖かったんだから……」

変化した姿は、紛れもなく野比のび太と名乗った少年。
そして片方は、ベッキーと呼ばれたのび太よりも小さな少女。

「……変身魔術ですって?」

見つけた少女がのび太が変身した姿だったことに、リーゼロッテも思わず瞠目した。
いや、そんな事はどうでもいい。ではいま彼女は何処にいる?
見つからないのなら、今優先すべきはと、目の前ののび太と少女に向けて魔力を打ち出そうとするも。




――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!


              「雄大なる水の精霊にして、天に上がりし雷帝の王子よ」



「な、ぁ……!?」

頭に響く煩わしい振動。歌声のごとき音波攻撃。
集中を乱され、構築した魔力は曇る空へと飛んでいく。

「面倒、な……!」

第三者の妨害。だが姿は何処にも見えない。
一体何処から仕掛けてきているのか、だがこの状態ではそれを探すのも困難。

              「我が願いを叶え、凶暴なる恵みをもたらし、矮小なる存在に力を見せつけよ」

「……邪魔を、するなぁ――!」

周囲を焼き尽くさんと、黒い火球が周辺へと降り注ぐ。
巻き込まれそうになるのび太とベッキーを連れ出すように、天使の少女が、有機的な白い翼をはためかせて羽ばたき舞う。

「……ただの輪っかだと思ってたけれど、意外に似合うわ、これ!」

翼を失ったはずのニンフが、別の翼を携えて飛んでいた。
のび太の支給品にあった謎の輪っか。その正体は帝国イェーガーズ所属の帝具使いランの帝具。『万里飛翔「マスティマ」』
円盤状のパーツに翼が付着したこれは、背中につけることで空を自在に飛ぶことが可能となる。
あり方が違う以上演算能力の回復とまではいかないが、翼を喪ったニンフにとっては格好の、第二の翼となりうる代物であった。


567 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:40:38 nupm3N1E0



              「神なる金槌を金床に打ち付けて畏怖を示し、大地を水で埋め尽くせ」


「……良くも舐めた真似を。」

ダメージは全く持って与えられなかったが、先の頭の煩わしさがあの天使だということがわかっただけでも成果はあった。
そして同時に、怒りが湧いた。天使という神の使いが来るのかと。
いくら祈っても、自分を救ってくれなかった神の、その使いが今更になって。
滑稽であり、笑い話であり、腹が立つ。

「―――燃やし尽くしてくれる。」

怒りに塗れ、曇る空すら気にせず魔力を打ち出す。天使は二人を守りながらも避け続ける。

「星をも隠れた曇り空の下で永遠の闇に墜ちなさい―――曇り、空?」

啖呵を切ろうとして、ふと違和感に気づいた
曇り空? いつの間に星が見えづらくなるほどの曇天になった?
それに気づいた時には、既に雨が降っている。

「……あの魔術師は――!」

そうだ、あの青い髪の魔術師の行方。
のび太の変身と天使の妨害で忘れていたが、彼女は一体何を仕込んだ?
もしかすれば、のび太があの彼女に変身していた時点で、既に。


「ああ、雨よ………全てを押し流し、あらゆるものを駆逐せよ」

そして、リーゼロッテは見つける。一心不乱に詠唱する青の魔術師。ロキシーの姿を。
ボロボロの身体ながら、いつの間にか合流したのび太に支えられながら。

「……!!!!!」
「―――キュムロニンバス!」

唱えられた言葉に呼応して、暗雲は集い、轟雷は鳴り響き。
魔女へと向けて、雷光が墜ちた。

「――――!!!!!!」

魔女が何かを叫び、カードのようなものを発動したように見えて。
そのカードが燃え尽きたと同時に、魔女もまた彼方に墜ちた。


568 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:42:05 nupm3N1E0



「確かに隙を作って欲しいとは思っていましたが……それはそれとして命知らず過ぎて冷や汗かきましたよのび太さん!」
「あうっ!」

魔女との激闘は終わり、その最大の功績者たるのび太は。
その生死スレスレの行動をロキシーに咎められていた。

「大体、私のことなんて気にせずあなただけ逃げても良かったはずですのに。どうしてそんな無茶をしてくれるのやら。」
「だ、だってロキシーさんが怪我したのは僕のせいみたいなものだから……。」
「……考え無しなのかよく考えてなのか、いまいち判断しかねます。今後、そんな無茶はしないように。」
「ふぁ、ふぁい……。」

傍から見れば生徒が教師に説教食らっている光景。
杖でコツンと叩かれ伸びているのび太の姿が妙に微笑ましいものだ。

「……その無茶っぷりだけは、一体何処に誰に似たのやら。」
「なんだか、先生に怒られてるアーニャちゃんみたい。」

そんな光景を、呆れながらも眺めるのはニンフとベッキー。
ある意味この二人も先の戦いの功績者だ。量子変換器の使い方をニンフは熟知していた事で、のび太が自分をロキシーに変身させて、リーゼロッテを撹乱した。
その結果死にかけてのはなんというかであるが、実際その点で現在のび太はロキシーの説教を食らっているわけである。
ロキシーは大魔術を唱えるタイミングを見計らっており、その点においてはのび太の無茶は最大のチャンスであった。結果あの魔女に一発食らわすことが出来たのだから。

「……あいつ、何やってんだか。……まあ、でも。」

少しは気が晴れた、とニンフは内心いい気分ではあった。
翼を再び失って、全てが手遅れになりかねない状況下で、多少は前向きになれたのは。
何はともあれあの野比のび太という少年のお陰だ。そこだけは感謝しても良かったと思っている。
翼の事は何も解決していないし、結局間に合わなかったらどうしよう、だなんて思うことはあるけれど。
まだ諦めていないであろうみんなの事を考えて、やはりこんな所で燻ってる訳にはいかないと、そう思ったのだ。

「ニンフちゃん、ちょっと嬉しそう。」
「……かもね。私自身は、問題山積みなんだけど。」

周囲の気分が緩んでか、曇っていたベッキーも心なしか多少の明るさを取り戻してはいた。
それでも、罪悪感だとか、不安だとか、まだ残っているにしても。
それはそれとして、ロキシーの説教はこのままだと長引きそうなので、ニンフがのび太への用事も兼ねて声を掛ける。

「まあまあ、説教そのぐらいにして、早く図書館に移動しなくてもいいの? 何であれ、助かったのこいつのお陰なんだし。」
「……それは、そうですね。失礼しました。助けてくれた事は感謝しますが。兎も角今後これ以上の無茶はしないように。のび太さんは私なんかよりもよっぽど非力なんですからね!」

多少顔が緩んだような捨て台詞じみた言葉で、ロキシーの説教は一旦止む。
これは図書館に付いたら説教の続きが待ち受けていそうだなと思いながら、解放されたのび太の顔をニンフが覗き込む。

「……ありがと、のび太。あんたのお陰で、……ちょっとは立ち直れたから。」
「えっ、あの……立ち直れたって、そんな事、僕はただロキシーさん助けること考えてたし。何というか都合の悪い時に声かけちゃったのちょっと申し訳ないなぁって……あはは。」

素直なお礼。少なくとも、燻ってるよりはマシだとなったのは、間違いなくこののび太という少年のお陰だろう。過程はどうであれ、何だかんだでこうなったのだから、まあ何も問題はない。
そういえば、まだ自分の名前は言ってなかったと思い出して、のび太に自分の名前を教えようとして―――










「え?」
「―――!? 来たれ冬のせいれ―――――」










彼らのもとに、燃え盛る黒い不死鳥が舞い降りて、飲み込んだのは、その直後のこと。


569 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:42:24 nupm3N1E0


□ □ □

「……ええ、本当に。忌々しい舞台ね。」

焼けた肌が、時間が逆転したかのように再生していく。
それでもいつもと比べれば遅い。油断した、格下だと思って慢心していた。
『体力増強剤スーパーZ』――それを使っていなければ致命傷どころの話ではなかった。
だが、油断しきっていたのは相手も同じ。苦し紛れに放った、何となくで不死鳥を模した炎。
これで何人仕留められたかは分からないが、多少は溜飲を下げる事は出来ただろう。

『……でも、何だか早く楽になりたいって顔してそうな気がするんだ。』

だが、今でも反響する。野比のび太という少年の言葉が。

「ええ。何も、何も間違ってはいないわよ。」

図星ではある。そして心の奥底を覗かれたような不快感も同時に感じた。
そうだ、愛しの人が、ヴェラードが死んだあの日から己の虚無は幕を開けた。
真の孤独の中、信頼できる者などいない永遠の不死を、たった独りで生きなければならない。
彼の夢想は、絶望と復讐に塗れたものとして魔女の引き継がれた。

「――だから全て滅ぼすのよ。――私もろとも、全てを。」

彼の望んだ人類鏖殺の為。長きにわたる不死という地獄を終わらせるため。
再燃した復讐の炎は止むことはなく。全てが終われば、愛しき人とまた出会えるのか。
過去も、未来も、償いも贖いも、彼女の奥底に沈み、荼毘へと付して、誰にもわからないまま。

「止めてみるというのなら、止めてみなさい。どうせ無理でしょうけれど。」

そう呟いた、渇ききった言葉に込められた真意を、発言した本人ですら知りもせず、乾いて舞台の風に吹かれて消えていった。

【一日目/深夜/D-6】
【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(極大、再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、ラーの翼神竜@遊戯王デュエルモンスターズ、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
2:野比のび太も見つけ次第殺す。
[備考]
参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
不死性及び、能力に制限が掛かっています。


570 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:42:40 nupm3N1E0



……間に合ったのでしょうか。

多分、詠唱は間に合わなかったはずです。

何とも情けない話ですが、無茶をするなと彼に言った途端にこれですか。

私も、人のことは言えないみたいです。

指一本も動かせないでしょうし、まともに前が見えません。

「ロキシーさん! しっかりして!」

ああもう、仕方ないとは言え泣かないでください。

流石にこればっかりは私の責任です。

全く、らしくもないことはしない方は良いですよ。本当に。

あの青い髪の人は……無事みたいですね。
もう片方は……カード、みたいなものを持って、あれのお陰でしょうか?
でももう、彼女はおそらく。

なんで、こんな事をしてしまったのか。
どうして、彼は私を見捨てなかったのか。
ルーデウスも、もし同じ状況だったのなら、同じことをしていたのでしょうか?



……ああ、こんな時に考え事なんてしちゃダメみたいです。
のび太さん、多分聞こえてるかどうかはわかりませんし、ちゃんと喋れてるかどうかもわかりませんが。
もし、もしルーデウスがいたら、一言お礼を言ってくれると助かります。




……なんて。本当は自分で伝えたかったのに。
死にたくなんてなかったのに。

どうして、こんな事しちゃったのかなぁ。






――ルーデウスさん。私はもうあなたには会えませんが。
あなたが無事でいてくれることを、私は向こう側で願ってますから。
……どうか。自棄にならないでください。
あなたは、やればできる子なんですから。



【ロキシー・ミグルティア@無職転生-異世界行ったら本気だす- 死亡】


571 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:43:00 nupm3N1E0









「……ごめんね、ニンフさん。―――これしか、思いつかなかったから。」









通常罠カード。デストラクト・ポーション。
本来であれば、自分フィールド状に存在するモンスター1体を選択。
選択したモンスターを破壊することで、破壊したモンスターの攻撃力分、自分のライフを回復することができる。
この殺し合いの舞台において、回復させる対象は別に自分でなくても構わない。その代わりに破壊対象に使用者自身を選択することが出来る処置がされている。

魔女の不意打ちに対して、ロキシーはのび太を庇い死亡して。
ニンフとベッキーは両者ともダメージを負った。ニンフは兎も角、ベッキー・ブラックベルは完全な致命傷だった。

悔やんでいたことは一つ。ベッキーが対応に遅れたせいで、あの悪魔みたいな巨大な少女にニンフの翼が毟られてしまったこと。
強い言葉を浴びせられたことを、ベッキーは心残りとしてこびり着いていた。
それがこの選択に至ったのだろう。その結果が、この結末だろう。
デストラクト・ポーションでの破壊対象に、ベッキーは自分と支給品全てを対象とした。
そして回復させる対象にニンフを選択した。
助かる命ではなかった事は自覚していた、だからこんな事をした。
せめて、本当の翼をはためかせて飛ぶニンフの姿を、アーニャと一緒に見たかったなんて、下らない願いを今際の際に思い浮かべて。
ベッキー・ブラックベルの思考は、その生命と共に消えた。たった独りの天使の未来の可能性を繋ぎ止めた、その上で。



【ベッキー・ブラックベル@SPY×FAMILY 死亡】


572 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:45:06 nupm3N1E0
□ □ □



――雨が降っている。
ポツポツと降り注ぐ雨と、焼けた戦場の跡地にイリヤスフィールが訪れていた。
けたたましい轟音と爆音に、いてもたってもいられず訪れてみれば。
そこに残っていたのは凄惨な戦いの結末だった。

「………ロキシーさん。」
「………バカ、そんな事、まだ気になんてして……。なんで、なんでよ……。」

いたのは項垂れた二人。それぞれの死体を見つめて泣き崩れる二人。
死体の片方は黒ずんで、誰だったのかすら見当もつかない。
もう片方の死体は、全身がほぼ焼けただれ、かつその片腕に辛うじて文字が分かるカード。

「……………どうして。」
「……マスター。」

沈痛な雰囲気に、イリヤも、雪華綺晶もそれ以上の言葉が続かなかった
犠牲の上に未来を繋ぎ止めたのび太とニンフの表情は、今にも落ちてきそうな空の如く、悲しみに暮れて。
少し時間が経って、涙を拭って。

「……止めないと、こんな殺し合い。絶対に。」
「そうね。こんな下らないことぶっ潰して、元の世界に帰る。」

二人の言葉が木霊する。
悲しみも怒りも飲み込んで、拭いきれない後悔を背負って。
それでも、止まる訳にはいかないと。

「……ねぇ。殺し合いを止めたいっていうんだったら、私も手伝ってもいいかな?」

そんな二人に、少しだけ安心して。
魔法少女は、二人に声を掛けた。



※周辺に雨が降っています
【一日目/深夜/D-6とD-7の間】
【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康、深い悲しみ、強い決意
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:ロキシーさん……
2:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルから、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています


【ニンフ@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(小)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、深い悲しみ、強い決意
[装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
3:ベッキー……あんた、なんで
[備考]
※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。
※ベッキーの「デストラクト・ポーション」の効果で、翼の方は徐々に回復傾向にあります。ただし完全回復まで12時間経過する必要があります


【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、雪華綺晶と契約。
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:目の間の二人と話してみる。殺し合いを止めるって言ったから協力できるかも
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。


573 : 思い描くは、ひとつの未来 ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:45:19 nupm3N1E0
【支給品紹介】
『量子変換器@そらのおとしもの』
野比のび太に支給。対象を無機物または別の人物に変身させる機能を持った、パソコンみたいな形状の装置。ただし変身対象の精神が不安定になると変身が解けてしまうという欠点がある。
この殺し合いにおいては一定時間経過(30分〜1時間)経過で勝手に変身は解除される

『ラヴMAXグレード@To LOVEる―とらぶる― ダークネス』
野比のび太に支給。極めて効果の高い媚薬作用のある香水。嗅げばあっという間に目の前の相手に欲情する。特に地球人には強く効きすぎてしまう。

『万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る!』
イェーガーズ所属のランが所有する帝具。野比のび太に支給で現在はニンフが所有。
一対の翼がついた円盤状の帝具で、背中に装備することで空を自在に飛ぶことが可能。
高速移動とホバリング可能で、翼で敵を薙ぎ払ったり、羽を発射したり出来る。
円盤パーツを分解して出力を上げ、光の翼で敵の攻撃を跳ね返す「神の羽根」という奥の手が存在する。

ただし長時間の飛行が不可能(30分の飛翔で2時間の休息が必要)だったり、遠距離系の武器とは相性が悪かったりする。


『体力増強剤スーパーZ@遊戯王デュエルモンスターズ』
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターに支給。
自分が一定ダメージを受ける直前に、食らうダメージ分の2倍分の体力を回復する。
本来ならば2000以上の戦闘ダメージを受ける場合に、そのダメージを受ける直前に4000ライフを回復する通常罠。現在は使用済みでもう使用不可。

『デストラクト・ポーション@遊戯王5'ds』
ベッキー・ブラックベルに支給。本来ならば自分の場のモンスターを破壊してその攻撃力分自分のライフを回復する通常罠。
ただしこの殺し合いでは破壊対象に使用者自身を、回復対象に別の人物を指定することが出来る。デュエルモンスターズカード及び意志持ち支給品も破壊対象に選択可能。
ただし、回復指定対象のダメージ次第で回復に時間が掛かる。現在は使用済みでもう使用不可。


574 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 17:45:39 nupm3N1E0
投下終了します
ギリギリになってしまい申し訳ございません


575 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/27(土) 17:48:30 3dlrbHDA0
短いですが投下します


576 : 進め卑怯者 ◆.EKyuDaHEo :2023/05/27(土) 17:48:54 3dlrbHDA0
「くそっ…くそっ!!」

シカマルと梨沙の二人から逃げた藤木は、怒りから壁を殴っていた
何回も殴っていると手の皮は捲れ、血が流れていた…しかし藤木は構わずに壁を殴り続けた、普段の彼なら少しの怪我でも涙を流すことだってあった
しかし、今は痛みすら構わずに殴り続けていた

「どうして…どうしてなんだよォォ!!」

情けなくて、腹立たしかったからだ…
藤木の作戦は間違いなく完璧だった、そして面白いように上手く行った、しかし…ここで早く仕留めれば良かったものの、藤木はつい調子に乗ってしまった…その後シカマルという名の男子にまんまとしてやられ、能力がバレた上に向こうも何かしらの能力を持っていて逆に殺されそうになり情けなくも逃げてしまった
藤木はそんな自分が情けなくて仕方がなかった

(僕はフジキングなんだ…!強いんだ!なのに!なのに!!!)
「はぁ…はぁ…」

暫く壁を殴り続けていた藤木は疲れからか糸が切れたように座り込んだ
その時だった

『やぁ、諸君……』

辺り一帯に主催である乃亜の声が聞こえ始めたのだ



◆◆◆



「もう10人以上も死んじゃったのか…」

藤木は静かに放送を聞いていた、放送を聞いていて分かったことが何個かあった
まず一つ目が死亡者が既に10人以上も出ていること…

(にしても…殺しのプロでも死んじゃうのか…)

乃亜は殺しのプロである割戦隊という5人のことを期待外れとでも言うように煽っていた
しかし藤木からしたら殺しのプロですら殺されるという事実に少し恐怖を覚えてしまったが、そんな考えを振り払い自分にはシルバースキンとセト神があるんだと自分自身を勇気づけた

「ていうか、やっぱり他にも殺し合いに乗ってるやつがいるじゃないか…」

それから藤木が感じたのは何故いつも自分ばっかり責められなくちゃいけないのかという怒りだった
他にも自分と似たようなことをしてるやつがいるというのに何故自分だけを責めるのか理解ができなかった
しかし、いつまでも怒っていてはいけないと思い頭から振り払って次のことを考え始めた

「禁止エリアには気をつけておかないといけないね」

それは禁止エリアのこと
禁止エリアに居続けた場合、首輪が作動し爆発してしまうようで、藤木は禁止エリアの警戒を強めた
そして最後に分かったことが…

「後…ここには子供しかいないようだね」

それはこの殺し合いには子供だけしか参加してないということ、これは藤木にとって重大な情報だった
大人が参加しているとなると能力を持っていようともどうしても大人と子供じゃ力の差が明らかであり、藤木も中々行動できなかっただろう…しかし、子供だけしか参加してないと分かれば能力を持っている藤木からしたら怖いものなどほとんどなかった

(さっきは逃げたけど…あれは僕の考えが甘かっただけだ、ちゃんとやれば僕は誰にも負けない!だって僕はフジキングなんだ!キングは一番強いんだ!)

そう考えていた時に藤木はハッとある可能性が頭をよぎった

「…永沢君や皆もここにいるのかな…」

それは彼のクラスメイトの事だった、自分がここにいるということはクラスメイトがいてもおかしくないと藤木は予想した

『本当に君は卑怯者だね』

もし今の自分を永沢に見られたら絶対こう言われるだろうなと藤木は思った

『この最低の卑怯者!!』

つい先ほどだって卑怯な手を使って梨沙から散々卑怯者と言われた…しかし、藤木は不適な乾いた笑みを浮かべた

「あぁ、そうさ、僕は卑怯者さ…でもそれがなんだっていうんだい?現に今だって死んだ子が何人もいる、自分の身を守るためにはどんな方法でも使わないといけないじゃないか」

藤木は反省するどころか開き直っていた、こんな殺し合いの中で綺麗事なんて言っていられないのだ、綺麗事を言って何か事が変わるのだったら自分だってやっている、だが現実は無情にもそうはいかない

「それに世の中には僕なんかよりもっと最低な人間はいくらでもいるんだよ、それこそ犯罪者とかね…まぁ今の僕も殺人未遂までいっちゃってるかもだけどね
でも、これも仕方がないことなんだ…今のこの殺し合いの中じゃいわば弱肉強食ってやつさ、生き残るためにはどんな方法でも使うしかないのさ」

───どうせこの世など、うらぎりだけの砂漠さ───

もはや今の藤木に迷いなどなかった、それどころかどんな方法でも使って優勝するという覚悟まで決まっていた
普通の生徒だった時は卑怯者、卑怯者と言われて嫌だったが、今の藤木は今までの弱虫な藤木じゃない…いくら卑怯者と言われても最低と言われても痛くも痒くもなかった
何故なら…

───ひきょう、それがオイラのすべてさ───

そして藤木は考えを変えることなく進み始めた


577 : 進め卑怯者 ◆.EKyuDaHEo :2023/05/27(土) 17:49:16 3dlrbHDA0
【G-1/1日目/深夜】
【藤木茂@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康、手の甲からの軽い流血、シルバースキンを展開中
[装備]:シルバースキン@武装錬金、セト神のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×12
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る。
1:次はもっとうまくやる
2:卑怯者だろうと何だろうと、どんな方法でも使う
3:永沢君達もいるのかな…
4:僕は──フジキングなんだ


578 : ◆.EKyuDaHEo :2023/05/27(土) 17:49:37 3dlrbHDA0
投下終了します


579 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 18:43:01 nupm3N1E0
どうもです 自作『思い描くは、ひとつの未来』のリーゼロッテの状態表にミスが有りましたので
収録の際に道具欄の「ラーの翼神竜」の部分を消してくれると助かります

あと乃亜の第0回放送の事を失念していましたので>>572

そんな二人に、少しだけ安心して。
魔法少女は、二人に声を掛けた。

の後に

海馬乃亜の放送が再び流れたのは、その直後だった

を追加してくれると助かります
お手数おかけして申し訳ございません


580 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:41:04 C97lN/oU0
投下します


581 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:42:11 C97lN/oU0



『………び』

『……くびょーがみ』

『疫病神』

『アンタの能力って、未来の人の不幸を見るんでしょ?』

『悪趣味―』

『気持ち悪っ』


───大川内。


『ねぇ、本当の所はどうなの?』

『やっぱりアンタが予知するから不幸が呼びこまれてるんじゃないの?』


───違う。


『アンタさえいなければ、誰も不幸にならずに済むんじゃないの?』


───違う。違う……!それでも、黒子は……!!
───僕の力は誰かを助けるのに役立つって………


『あはっ、出た出たクロコはー、って』

『黒子さんと大勢人を助けた?でも、アンタは予知して伝えただけよね?』

『実際助けるために、アンタ自身は何かできた?』


───それ、は。


『なーんにもできてないなら。それってつまり、さ』

『黒子って人が凄いだけで、アンタ自身は何も変わってないって事じゃないの?』

『ただ、変わった気になってるだけで』

『それが自分の力でもないのにね』


───僕、は。
───僕は………、






582 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:42:50 C97lN/oU0



「───さて、何人いる?」

「うーんと、あしおとのかずでは3人かな。丁度入り口の近くのへやに1人、おくに2人
ねぇねぇ!わたしたちがおくの2人もらってもいい?」

「好きにしろ。魂食いとやらも好きにやって構わん」

「やったーおやつだー。おなかへってたし、ちょうどいいよね」

「魔力はちゃんと与えているだろう」

「それとは、べつばら?だもん」

「……まぁいい。始めろ」

「はーい!それじゃ、いくよー」



───暗黒霧都(ザ・ミスト)。


583 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:43:24 C97lN/oU0




「落ち着いた、しんちゃん?」
「……うん、オラ、もう大丈夫だゾ。
これ以上落ち込んでたら、ボーちゃんに怒られちゃうから……」



友の死を告げる放送から少し後。
直ぐ近くで奇術師のニードレスと子供達が戦っているのも気づかず。
野原しんのすけは喪失の悲しみを癒し、再び友となった少女と立ち上がろうとしていた。


「じゃあそろそろ行こっか、まだ誰かしんちゃんのお友達が来てるかもしれないし…
私もお姉様がもしかしたらいるかもしれないし」
「おお!フランちゃんはお姉さんがいるんですな〜?可愛い?」
「え?う〜ん……どうだろ、多分本人はかっこいいって言われた方が喜びそうだけど」
「ふ〜ん、フランちゃんもあと十五年位したらオラのタイプの大人のお姉さんになりそうだけどな〜」
「私、400年以上この姿なんだけど。成長するのかな?」


悲しみを胸の底に今は押し込んで。
そんな、普段通りのセリフをしんのすけは言い続ける。
ずっと自分が沈んで居たままでは、ボーちゃんももっと悲しむだろうから。
落ち込んでいる暇はない。
ボーちゃんの母ちゃんや父ちゃんに、ボーちゃんがどうなったか伝えるために、帰らないといけない。
そう思って、癒えない傷の痛みを食いしばり、再び歩みだそうとする。
その時の事だった。


「……しんちゃん、口元を抑えて。あんまり息をしないで」
「オ?ど、どうしたんだゾ?フランちゃん」


フランドールが異変を感じ取った。
薄暗い映画館だったため気づきにくかったが。
いつの間にか、部屋には黒い霧の様な物が漂っていたからだ。
吸血鬼のヒトを超えた直感が、言っていた。
これは、私達にとって害のある物だ、と。
それを悟ってからのフランドールの決断に迷いは無かった。
がし、と。吸血鬼の膂力でしんのすけを抱え上げる。


584 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:43:53 C97lN/oU0



「おぉ!?一体どうしたんだゾ?フランちゃん!」
「いいから、口を押えて、走るよしんちゃ───」


言葉が最後まで紡がれることは無かった。
ヒュッ、という風切り音を、フランは感じ取り。
その直後、何かが自分の肉を裂いて突き刺さるずぶ、という鈍い音を聞いた。


「──痛ッ!?」
「フ、フランちゃん!?」


495年間めったに感じてこなかった、刃物が突き刺さる痛烈な痛み。
下手人の狙いは正確だった。
正確に、フランの腱や動脈を狙って投擲されていた。


「随分な挨拶じゃない」


だが、吸血鬼であるフランにとっては、その程度だ。
体中に突き刺さったナイフを引き抜き、飛んできた入り口の方角を見る。
その表情は先ほどの幼げな少女のそれでなく。
気が触れていると称された、吸血鬼のそれであった。


「ふ〜ん、わたしたちのナイフで死なないなんて…あなたもしかしてサーヴァント?」


入り口に立っていたのは、黒のマントを羽織った、白銀の髪の少女。
自分の投げたナイフで標的が死亡しなかったのが意外だったのか、じろじろと此方を覗き込んでくる。


「私は吸血鬼よ。吸血鬼のフランドール・スカーレット」
「ふーん…吸血鬼かぁ。わたしたちは、殺人鬼のジャック・ザ・リッパー」


585 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:45:00 C97lN/oU0


双方名乗りをあげるものの、「よろしく」とは言わなかった。
既にお互いがお互いを敵として認識していたからだ。
剣呑な雰囲気を纏って、フランはジャックに尋ねる。


「霧(コレ)貴方の仕業?今すぐやめなさい。でないと、タダじゃおかないわ」


タダではおかない、とは言ったけれど。
その実殺すことになる事は、フランはほぼ確信していた。
殺人鬼と吸血鬼。
人を殺す物と人を喰らう者。
どこか近しいあり方でありながら、決して相いれない。
故に、ただじゃ置かないと言ったのは、しんのすけに嫌われたくないからだった。
だが、そんなしんのすけの身体がぐらりと揺れる。


「何か…頭痛いゾ………」


突然の頭痛、軽い眩暈、吐き気が、しんのすけを蝕み始めたのだ。
症状は軽いものの、風邪をひいた時の様な、苦しくてだるい感じ。
霧が漂い始めてから、感じ始めた感覚だった。
そんなしんのすけの様を見てから、バッとフランはジャックを睨む。


「これが最後よ、今すぐこの霧を止めなさい」


だが、そんなフランの最後通牒は聞き入れられることは無かった。
にっこりと、ジャックは笑って。


「いーやっ」


フランは次の瞬間走り出していた。
段差になっている映画館特有の床を豹の様に俊敏に駆け抜け、握りこぶしを作る。
弾幕と能力が使えなくなっているが、彼女は吸血鬼。
ただ拳一つあれば、たかだか殺人鬼一人殺すには十分すぎる。


586 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:45:44 C97lN/oU0


「あははっ!かくれんぼしーましょ」


だが、走った勢いをつけた拳は空を切る。
目標が、フランの予想を遥かに超えて俊敏だったからだ。
敵手もまた、人を超えた反英霊。
世界一有名な殺人鬼の名を冠した少女なのだから。
肉体のスペックだけで圧倒するのは至難を極める。
バックターンでくるりとフランの拳を躱すと、そのまま霧が漂う部屋の外へと少女は消えていった。


(どうする?このまましんちゃんを担いで…ううん、それじゃ……
この映画館を出るまでに襲われたら、しんちゃんを守り切れないかもしれない)


何しろ、映画館だ。薄暗くて、部屋も多くて、死角も多い。
そしてここは出入り口から見て一番奥の部屋である。
襲撃されても自分は何とかなる自信があったが、しんのすけはそうもいかない。
考えながら、部屋の中をもう一度見る。
霧は、退きつつあった。半面、部屋の外の霧は濃くなっている。
夜目が効く吸血鬼ですら数メートル先が視認困難なほどだった。
濃霧の中から、声が響く。


「フーラーン!!あーそびましょっ!!」


明らかに誘われていた。
上等だ。フランは決意した。


「いいわ、殺人鬼と吸血鬼、どっちが凄いか決めましょう」
「フ、フランちゃん!」


体調が復調したのか、しんのすけが前の座席の方から入り口に立つ此方を見てくる。
フランドールは、そんなしんのすけに笑いかけた。


「ちょっと懲らしめてくるから、しんちゃんは此処で待ってて。すぐ戻って来るわ」
「オ、オラも!」
「だめ、霧の中でフラフラのしんちゃんを守りながらじゃ戦いにくいもん。
私達友達でしょ?私を、信じて欲しいな」


587 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:46:20 C97lN/oU0

殺してくる、とは言わなかった。
友達の悲しむ顔を、見たくはなかったから。
フランはこれでも冷静に自分を客観視していた。
流れ星を壊すのは簡単だけど、誰かを守る方法は分からない。
だから、これが一番いいという方法を選ぶしかなかった。


「で、でも……」
「私、傘をくれたしんちゃんにお礼がしたいんだ。だから……お願い」


そう言って、再び笑いかける。
すると、まだ表情には逡巡の彩を見せながら…それでもこくり、と、しんのすけは頷いた。


「分かった、フランちゃん。頑張って欲しいゾ!!」
「っ!うん!頑張る!!」


初めての「ともだち」の声援に、胸の奥が熱を持った様な気がした。
自然と薄い笑みが零れて。手足に力がみなぎる。
負ける気はしなかった。
そのままバン!とシアタールームと廊下を繋げる扉を蹴破り、濃霧の中へと飛び込む。
すると、フランが飛び込むと同時にまた霧の奥から声が響いた。

「こっちだよー、こっち」
「──望み通り遊んであげる。ジャック」


ただし、しんちゃんの言う遊びじゃない、私の遊びだけどね。
そう考える彼女の表情はもう無邪気な童女のそれではなく。
伝承で語られる、数百年生きた吸血鬼のそれだった。
……………………
……………
……


588 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:46:45 C97lN/oU0


「フランちゃん、大丈夫かな」


……と、ここまではいつもの、しんのすけの冒険だった。
悪者としんのすけが出会った女の子が戦い、しんのすけを一旦安全な場所に置こうとする。


「……お友達なら、おたすけしなきゃ……!」


そして、悪人と戦う女の子をおたすけしに、しんのすけが駆けつけ、窮地を脱する。
今回も、彼は嵐を呼ぶ五歳児としてそう動こうとしていた。
決意を固めて。胸の前でむんっと握りこぶしを作って、そして叫ぶ。


「しんのすけ、ファイヤー!!」


今行くぞ、フランちゃん。
そう言おうとした、その時だった。
ガツン、と。頭に衝撃が走る。


「え、ぁ……!?」


頭から、どろりとした物が流れた。
振り返ってみると、部屋の外に出たはずの、ジャックという少女が得意げな顔をして立っていた。
その手に、ナイフを握って。


「えへへ、あの子、たぶん殺し合いになれてないよね?
だからこんなカンタンな、とりっくに引っかかっちゃう」


少女の手の中にあったのは、小さなバッジだった。
薄れる意識の中で、しんのすけはそれを呆然と見る。


「すごいよね、探偵バッジって言うんだって!これを使えば遠くとお話できるの!
………でね、これをいろんなところにおけばどうなると思う?」


589 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:47:18 C97lN/oU0


本当に、単純なトリックだった。この場に名探偵がいれば直ぐに見破っていただろう。
ジャックに支給された少年探偵団の探偵バッジは人数分の五つ。
一つはジャックが保持して、残りを映画館の至る場所に仕掛けたとしたら?
フランが外に出たタイミングで探偵バッジに話しかければ、バッジはスピーカーの役目を果たし、
本当は直ぐ近くに潜んでいるのに、部屋の外に出たのだと誤認するのではないか?
ましてや、この濃霧の中。495年引きこもっていた吸血鬼の少女に見抜けるだろうか?
その答えが、今のしんのすけの状態だった。
彼女が悪かったわけではない。
ただ、フランドール・スカーレットは知らなかったのだ。




殺人鬼は、弱い者を狙うという事に。




「まだ、役に立ってね?」


薄れていく意識の中、しんのすけが見たのは、無邪気な少女の笑顔だった。


590 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:47:52 C97lN/oU0







『この、裏切りおにぎり』


──ひ、酷いよしんちゃん!


『友達を売って恥ずかしくないの?』


──風間君だって一緒にしんちゃんを売ったじゃないか!


『マサオくんは、いつも、そう。情けなくて、力を手に入れたら、すぐ、調子に乗る』


──ボーちゃんだって一緒にしんちゃんを売ったでしょ!ボクと何が違うのさ!


『そりゃ私達も売ったけど、喜んでしんちゃんを売って手に入れたお菓子に食いついてたのはアンタだけだったじゃない』


──ネ、ネネちゃんまで……


『ここでもそう、直ぐに女の子に鼻の下伸ばして、アンタ状況分かってんの?
ボーちゃん、死んじゃってるのよ?』


───な、何言ってるのさネネちゃん、ボーちゃんは隣で……


『この際だからハッキリ言いますわね。私、マサオの様な男性の方、嫌いなんです』


───ア、アイちゃん………

───な、何だよ何だよなんだよ!!!みんなしてさ!!!。

───そりゃあ僕はしんちゃんと比べたら情けないさ!意気地なしさ!!



───でも、それってそんなにいけないこと?



───しんちゃんみたいじゃなかったら、生きてちゃいけないの?


591 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:48:35 C97lN/oU0




その異変は失意の庭を使ってから、直ぐにやってきた。


「な……なん、だ……!?」


アダム・アークライトを長とする製薬会社シオメン。シオメン四天王の一人、右天。
ミッシング級ニードレスのクローンにして、現在ではエデンズシードを与えられた聖痕(スティグマ)保持者である。
能力、身体能力、肉体の再生力、どれをとっても人間を超越した実力者であった。
その右天の肉体が、急に不良を訴えたのだ。
それも、単なる不調ではない。
身体の、聖痕が刻まれた左足を除く四肢が、動かないのだ。
疲れによるものではない。単なる疲労に依る者では断じてなかった。
一体自分の体に何が起きているのかと、四肢を見る。


「……っ!?う、うわあああああああッ!!!」


四肢が、腐っていた。少し動かしただけで、指がぼろりと崩れ落ちた。
エデンズシードによる再生で新しい指が生え変わる。腐る。腐り堕ちる、再生する。
腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生。
腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生。
腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生。腐る、腐り堕ちる、再生──
その間絶え間なく激痛が襲い、左足を除く四肢は既に使い物にならなくなっていた。
こうなると、エデンズシードの移植されたのは、彼にとっては不幸以外の何物でも無かったのかもしれない。
彼が単なるニードレスであった右天本人であれば、とっくに死亡できていただろうから。
だが、現実はそうではない。
彼が近い未来で敵と手を結んでまで忌避した、終わらぬ責め苦が、ここに再現されていた。


「く、そ……なん、でだ…一体、何で………」


592 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:49:22 C97lN/oU0


絞り出すような声で呻く右天。
そんな彼の独り言に、応える者がいた。
その声は、右天が今しがた失意の庭に閉じ込めた子供達の物ではなかった。


「何でかは、そんなもんは決まっているだろ」


馬鹿な、さっきまで気配は確かに感じなかった筈。
一体、何時の間にこいつは現れたんだ。
声の方を、首と顔だけを動かして見る。
そこに立っていたのは、白い少年だった。
白髪に、白のマント。背丈は小柄な右天よりもさらに小さい。
だが──纏う雰囲気はただ者ではなかった。
そして、右天のその見立ては正しい。
何故なら、今、彼の目の前に立っているのは──


紫電の眼光。
白銀の髪。
王族に生まれし雷。
少年の名は、ゼオン・ベル。
雷帝ゼオンの異名を持つ、一条の雷であった。


「お前、まさか知らないで手を出したのか?この忌み物に」


ゼオンの足元にあるのは、右天の手からいつの間にか零れ落ちた失意の庭(ロストウィル)のオーブだった。
それはゼオンの目から見ても禍々しく、怖気の走る特級の厄物だった。
ゼオンならば、相手と差し違える覚悟が無ければまず使わないだろう呪物。
そんな呪物に手を出しておいて体の不調に「何故」とはお笑い草だった。
身体を検分するに何某かの異能を備えているのは伺えたが、こうなってしまえばもはやただの人間の子供にすら劣る有様だろう。


「そんな……でも、支給品の説明書には、そんな事は…がッ!?」


満足に動かない体を蹴り飛ばされて、転がる右天。
それに伴い、ランドセルの中身が零れ落ちる。
ゼオンはその中をごそごそと漁り、目当ての支給品の説明書を手に入れた。
それを読み、呆れたような声を上げる。


593 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:50:07 C97lN/oU0


「知識が無くても少しは考えてみろ、発動した瞬間何人もの人間を取り込み、
閉じ込めたうえで心を腐らせる呪物、そんな代物が何のリスクも無く使えると思うか?」


最早ゼオンの右天を見る瞳は人に向けるそれでは無かった。
養鶏場のプロイラーを見る視線だった。


「で、でも……なんで乃亜は……そうと説明書に、」
「お前の様に、素人の癖に手を出すマヌケがいるからだろ。
父や母から教わらなかったか?良く分からない物に手を出してはいけない、と
奇術師の様な格好をしてるが、明日から道化とでも名乗ったらどうだ」


そう言って、ゼオンはその手に持っていた大刀を振るう。
次の瞬間、右天の首がボキゴキと何かがへし折れる音が響いた。
それが大刀によって自身の左半身が削り取られた音だと右天が認識できたのは、十秒は経ってからだった。
床と水平に吹き飛ばされて、壁に激突してやっと止まる。


「お前は後だ」


右天がまだ死んでいない事は分かっている。
だが、奴の状態を見るに、この呪物を既に使用したのは見て取れる。
となれば、此処に閉じ込められたものがいる筈だ。
どうせ右天はあのザマで、今は這う事位しかできはしない。
だったら、先に此方を片付けよう。
それがゼオンの下した決定だった。
足元のオーブに手を翳し、呪文を唱える。


「ザケルガ!」


594 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:50:37 C97lN/oU0


掌から、紫電の光がオーブへと向けて迸る。
説明書によるとこのオーブを破壊すれば中に囚われている者達は出てくるらしい。
まぁ、この中で疲弊した先に自分に襲われるのは運がないとしか言いようがないが。
ゼオンにとって、右天は勿論、この中にいる者達が死ぬことも既に決定した事だった。
オーブが割れる。
閉じ込められていた、中の者達が映画を映すモニターの前に出てくる。
閉じ込められてからまだ十分も経過していないが、出てきた者達は全員ぐったりと横たわっていた。
赤子の手を捻るより全員あっさりと始末できる、ゼオンは獰猛な笑みを浮かべた。
しかし、この瞬間彼も一つのミスをした。
出てきた者達に気を取られ、オーブから一瞬意識を逸らした事だ。


「───な、に───!?」


失意の庭は、魔力切れで取り込まれていた四人を放出した訳ではない。
まだ魔力が残った、起動した状態で破壊されたのだ。
それも、本来この魔術礼装が破壊された時の様に粉々に、ではなく。
まだ原型が残る形で破壊されていた。
彼もまた、この魔術礼装を甘く見ていたのだ。
失意の庭(ロストウィル)。
最高位の魔女モルガンですら禁忌として厳重に保管していた魔術礼装。
まるで最後の置き土産とでも言うように、機能を停止するその一瞬。
その一瞬で、失意の庭の毒牙は自らを破壊したゼオンに剥いた。


彼の視界が白く染まったのは、その直後の事だった。






595 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:51:00 C97lN/oU0



──……これは一体、誰の記憶何でしょう………?


『あたしの心の中には…もう、雨が降る事さえない』


───とても冷たくて、昏い……


『何故俺は生きているんだ……』

『何なんだ!くそ…死ねない……!』


───行き場のない悲しみに満ちている……
───違う、これは私の知っている物じゃ……
───これは、これはもしかして……


『もう一度、話がしたい』

『貴方と、そよ風の中で話がしたい』


───貴方(ウェザー・リポート)の……?


『生き延びるのよ、アンタは“希望“!!』

『来いッ!プッチ神父!』


───誰かが、死んでしまう記憶。
───とても悲しい記憶。
───でも、本当に、それだけ?


596 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:51:19 C97lN/oU0



『ゼオン、お前ではダメだ』


──何故ですか、父上。


『お前の心の内に在る修羅は大きすぎる。バオウを与える事は出来ん』


───です、が……!それならば、王位はこの私に!


『それもダメだ、王位はバオウを持つガッシュに与える』


───何故、だ。何故なのです!父上!!


『王位はバオウを持つ者、当然だろう』


───な、ぜ…!何故だ…何故貴方は…私には何も下さらないのですか!
───貴方にとって私は、憎んでいるだけの子なのですか!
───バオウを受け継いだガッシュがそこまで大切か!?
───自由も無く、バオウも、王位も与えられないのなら……
───それなら、私の人生は一体何のためにあるというのですか!
───答えろォオオオオオオオオオオッッッ!!!


『くだらん話をしているヒマがあったら腕を磨け。力を使うお前の心を鍛えろ』


………………………………………………
………………………………
………………


597 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:51:51 C97lN/oU0




「テメェ……!」


どれほどの時間その場に突っ立っていただろうか。
数秒?数十秒?数分?
そんな事はどうでも良かった。
重要なのは、今の自分の胸の奥からマグマの様なドス黒い感情が湧き上がっていること。
そして、その怒りを噴きあがらせた張本人が、今しがた体の欠損を修復したという事だ。
ギラリ、と。
紫電の眼光で、ゼオンは右天を睨む。


「よくもくだらない物を見せてくれたなぁ……!!」


怒りを通り越して、胸の内に在るのは純然たる殺意だった。
然し無理も無いだろう、今の彼は、自身の胸奥にあるトラウマを、土足で踏み荒らされたに等しいのだから。
その下手人を、生かしておけるはずも無かった。
今は、こんなふざけたものを見せたこの道化を“たたき”にして殺す。
それ以外の事は、頭から飛び出していた。


「………ふ、ふふ……上等だ……!」


憤怒の表情でゆっくりと迫って来る雷帝。
対する右天は、不敵に笑いながらも、臍を噛みたい思いだった。
失意の庭が破壊された影響か、ある程度腐り堕ちていた四肢は動くようになった。
尤も、未だ呪詛が渦巻く肉体はとても戦闘ができるコンディションではなかった。
腕を少し動かすだけで激痛が走り、立ち上がるだけでも目尻から涙が出そうになる。
そんな状態で、目の前の白髪の少年の相手ができるとは思えなかった。
だが、まだ生き残るチャンスはある。彼の能力は逃走に向いているのだから。


───バミューダ・アスポート!!


598 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:52:25 C97lN/oU0


右天の姿が、ゼオンの視界から消える。
彼を選ばれし存在たらしめる能力(フラグメント)、透明化。
憤怒に彩られていたゼオンの表情が、探るような無表情へと変貌する。


「ハハハハハハ!!今度はこっちの番だ!!さっきのお礼をたっぷりさせて貰う!!」


手品師として、能力を活かす研鑽は欠かしていない。
居場所が分からないように、声を反響させるよう叫ぶ。
幸いここは映画館、通常の建物より音が響きやすくなっている。
攻撃する素振りを見せて、撤退する。それしかない。
今の状態では、勝機など無に等しいのだから。
足音を殺して、気づかれない様に出口へと向かう。
二十メートルにも満たないであろうその距離が、今はどうしようもなく遠かった。


「レードディラス・ザケルガ!!」


幼き修羅の叫びが響き渡る。
その叫びに呼応して、巨大な雷の歯車…ヨーヨーが出現した。
ヨーヨーは一直線にシアタールームの天井へと伸び…黒く塗られた地の底の様な天蓋を粉々にした。
右天の表情が、絶望へと彩られる。


(出口が……!)


二つあった出口は、さっきまで天井だった瓦礫で塞がれた。
退路は断たれた。
あと、退路と呼べる物は今しがたヨーヨーによって空いた天井の風穴しかない。
この右足で十メートル以上跳躍できるかは分からない。
だが、逃げ延びるにはやるしかない。
身体の中にある力を、エデンズシードを、脚部に全集中。
大丈夫、左足は聖痕のお陰で健在だ。勝算はある。
そして、彼は跳んだ。
一世一代の大跳躍を為して──気づく。


599 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:53:30 C97lN/oU0


(……これ、は、もしかして)


意図的に、退路を限定されたのではないか?
わざと逃げ道を与える事で、その後のアクションを制約する。
右天も知っている簡単な誘導方だった。


「テオザケル」


そして、その読みは正しかった。
シアターの前にいた筈のゼオンが一瞬にして、跳躍した右天の上空へと現れる。
翳される手。迸る電撃。跳躍中の身体。
躱す事など、できる筈もなかった。


「ぎゃああああああああああああ!!!!!!!」


雷撃によって、腐っていた体が焦げる。焼ける。
能力の維持もできなくなり、その体が露わになりながら落下する。
太陽に近づきすぎて蝋の翼が解けたイカロスの様に。
右天は、地べたを這いずった。



「何処へ行くんだ?」



地面へと縫い付けられた敵手を踏み潰して。
ゼオン・ベルは嗜虐心に満ちた、凄絶な笑みを浮かべた。


600 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:54:36 C97lN/oU0







こんなの、私(わたくし)の手でどうにかなる筈ない───



その時まで、私の胸にあったのは、その想いだけでした。
目が覚めて、隣を見れば写影さんとマサオさんが悪い夢を見ているような表情で横たわっていて。
その隣で赤ちゃんも汗をダラダラと流しながら一緒に並んでいました。
最初は何が起きたかわからず。分かったのは今動けるのはわたくしだけということ。
気絶したふりをしながら、辺りを見回してみれば、私達を不思議な球の中に吸い込んだ男の子が、白い髪の男の子に追い詰められているのが見えました。
偶然……でしょうか、丁度白い髪の男の子を見た時、彼も此方を見て、目が合います。


その瞬間、理解してしまいました。
この子は私達を殺すつもりなんだって。
あんな目で見られたのは生まれて初めてでした。
カタカタと身体が震えて、止まらなくて。
もう駄目なんだって、言われなくても、分かってしまいました。
私達はきっと、此処で終わりだって、信じて疑いませんでした。


───『生き延びるのよ、アンタは“希望“!!』


不思議な場所で、見せられた夢の中の言葉を思い出すまでは。
それは確かに悲しい光景でした。
きっと、ウェザー・リポートという人形さんに、強く関わった人たちの。
一番悲しかったことを見せられたんだと思います。
でも、それは本当に悲しいだけの記憶だったのでしょうか?
思う事は、それだけでは無くて。
もう一つ、思う事がありました。
本当に、今の私にはもうどうにもならない状況何でしょうか?本当に?
いいえ、私は見ました。
辛い光景だったけれど。哀しい景色だったけれど。
その中で、どうやってこの人形(ウェザー・リポート)を動かせばいいのか。
私は、見てきました。だから、知っています。


601 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:55:11 C97lN/oU0


───レードディラス・ザケルガ!!


白い髪の男の子が、天井を壊しました。
私は、もう分かっています。
どれぐらいの強さで風を吹かせば、私と、写影さん達を飛ばせるのか。
奇しくもその時、道は開けたような気がしました。
あの空いた天井の穴から、皆を飛ばすことができなら………
細くて、頼りない、生きるための糸。
それでもできるのは、この櫻井桃華一人だけ。
私だけが、皆さんを助ける事ができる。


───ぎゃあああああああ!!!!!


白い髪の男の子に叩き落されて、マジシャンの男の子が、落ちてきます。
今、白い髪の男の子の注意は、あの手品師の様な男の子に向けられていて。
此方に意識を向けている様子はありません。
きっと、私達なんて、片手間でどうにでもなる。
そう考えておいでなんでしょう。
悔しい、とは思いませんでした。
男の子が、私達なんかよりずっとずっと強い事は、確かめなくても分かりましたもの。
同時に、チャンスだと感じましたわ。
どうせ、一度限りの勝負。侮っていてくれた方が勝ち目はあります。
そうして、頭の中で考えていたことを、実行に移そうとして。


───本当に、できるのでしょうか?


だめ。
だめですわ。桃華。
それだけは考えては、いけない。
考えてしまったら、動けなくなってしまいますもの。
でも、それでも、私の中の冷静な部分が。
幾ら油断していたって。
あの白い男の子の目を掻い潜って天井の穴から飛んでいくのなんて。
無理だ、なんて。考えたら、動けなく。
あ、


602 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:55:44 C97lN/oU0


「……大丈夫、桃華」


そう言って、彼は。
いつの間にか目を醒ましていた写影さんは、私にそう言いました。
私と違って、何を見たのか。
本当に辛そうな、やつれた顔をしていらして。
でも、握られた手は暖かくて、私の手を包み込んでいました。
簡潔に、私は今の写影さんでも理解できるように、やろうとしている事を話しました。


「それなら……一度限りなら、何とかなる。僕が何とかする」


写影さんは、そう言いました。
どうするつもりなのか、聞く必要はありませんでしたわ。
それが実際にできるかどうかは問題ではなくて。
彼が私を信じて命懸けの話に乗ってくれたように、私も彼を信じるだけでしたから。


(ウェザー・リポート…いいえ、ウェスさん)


立てた作戦を決行する前に。
私は心の中で、彼に祈りました。
わたくし愛では、貴方の悲しみを癒すことはできません。
わたくしの愛では、貴方の怒りを理解してあげる事は叶いません。
でも、それでも、
もし貴方が、最後にお友達を救うためにこの力を残したのだとしたら。
あの冷たい夢の空間で、貴方がわたくしの心を守ってくれたのだとしたら。
どうか、これからも力を貸してくださいませ。
スタンドと言う力が。傍に立つ力であり。立ち上がるための力であるのなら。
わたくしに立ち上がるための力を、どうか。


チャンスは一度限り。
この一瞬に、全てを賭ける───!!


603 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:56:16 C97lN/oU0







「……フン」



鼻から短く息を吐いて。
少しは溜飲が下がったと言った表情で。
ゼオン・ベルは今迄怒りをぶつけていた右天の襟を放った。
どしゃり、と。意識を失った様子の右天の身体が崩れ落ちる。
電撃で焼け焦げ、殴打で痣だらけになっていた体は既に修復されつつあった。
とは言え、呪詛を受けた所に散々サンドバッグにされたのだ、もう暫くは目覚めないだろう。
その前に、残ったごみの掃除をするとするか。
そう思った、その瞬間の事だった。


「ウェザー・リポート!!!」


少女の声が響く。
さっき、取るに足らぬと判断した少女が。
一瞥しただけで動けなくなっていた筈の少女が。
声を張り上げて、何かの名前を高らかに呼んだ。
次瞬の事だった。
轟!!!!と。
暴風が、締め切られた映画館の中で発生したのは。


「何、だと───!?」


それは正しく小型の災害(ハリケーン)だった。
ゼオンをしてその風圧の前には飛び込むことも、鮫肌を振るう事もできなかったのだから。
桃華達の身体が浮遊し、打ちあがる。
まるでロケットの発射の様だった。
ゼオンは最初飛び込んで阻止しようとしていたが、押し戻される。
猛烈なハリケーンは桃華達の発射台でありながら、ゼオンの妨害を阻止する防御壁でもあったのだ。


604 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:57:02 C97lN/oU0


「小賢しい真似を──してんじゃねぇぞぉ!!!」


だが、直接の妨害が叶わずとも、ゼオンには呪文があった。
ザケルガ、と唱え、右腕を素早く桃華達の前へと指向する。
タッチの差で、桃華達は間に合わなかった。
身体が飛翔し、天井に空いた穴まで後数十センチと言う所で。
暴風の防御壁を突破し、貫通力に優れた雷の槍が着弾コースで迫る。


「終わりだ」


馬鹿が、と心中でゼオンは毒づく。
誰か一人、それかもう一人くらいであれば間に合ったかもしれないものを。
態々自分から的を大きくしてどうする。
全員助かろうと欲張った結果、全員が死ぬ羽目になったではないか。
そんな事を考えながら、無感情に、ザケルガが四人を貫くのを眺め。
そして───すり抜ける。


「何……!?」


ザケルガが貫いたのは、幻影。
その事を、ゼオンは悟った。
だが、おかしい。


(どうやって──俺が奴らを狙うタイミングを読み切った!?)


タイミングを合わせるのが完璧すぎる。
まるで、最初からどのタイミングで電撃が来るのかが分かっている様だった。
そうでなければ、この幻覚は何の意味もなさないのだから。
早すぎれば違和感に気づかれ、遅ければ発動中のザケルガにぶつかってしまう。
それこそ自身のパートナーであるデュフォーのアンサー・トーカーか、
未来を視たのでもなければ不可能な芸当だった。
そして、ゼオンのその読みは正しい。
実際に、支給品の帝具と、本人自身の能力によって。
迫りくる危機を。未来を見通す能力者が此処にいたのだ。


「チッ……」


ただ一瞬。ただ一手。
その瞬間に限り、少年少女の勇気は、修羅の雷帝を凌駕した。
風が止むと同時にマントを使って飛翔し、天井の穴から逃亡者を追うものの、
既に四人の姿は夜の闇の中に消えていった後であった。


605 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:57:43 C97lN/oU0







映画館を脱出した四人だったが、危機は去っていない。


「だめ……!制御が……できません、わ………!」


最大風速最大風圧。
今の桃華は、大人でも苦労する10トン超のモンスタートラックをアクセル全開で発進させたようなものだ。
そうでなければ四人合わせて百キロ近い重量物を瞬間的に飛ばすのは不可能。
止む得ない判断とは言え、考えるまでもなく無茶だった。
加えて、映画館の脱出に成功して気が緩んだというのもあるかもしれない。


「………ッ!!マサオさん!!」


傍で手を握っていた写影以外の二人が、創り上げた気流の渦からはじき出される。
このままでは、二人は落下死してしまうだろう。
今の桃華達は創り出した暴風の渦にサーフィンの様に乗っている状態であり、瞬間的な方向転換もまず望めない。


(せめて……着地のための気流、を………)


何とか落下していく二人に手を翳して、クッションとなる気流を作り、飛ばす。
これで、何とか二人は助かるだろう。
だが、そこが桃華の限界だった。
気力を使い果たし、最早生み出した飛行用の気流を操作する事も叶わない。
桃華は昔、ハリケーンによって百キロを超す体重の牛が数キロ離れた町に落下した事がある、という話を思い出した。
ぐんぐんと、マサオ達が落下した地点から離れていく。
それに伴い、桃華達の高度も下落していく。


606 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:58:40 C97lN/oU0


「……君のせいじゃない」


桃華はその時、写影の口から慰めの言葉を聞いた。
彼もまた、理解したのだろう。
順当に、自分達は詰んだのだ、と。
少し不思議な力を持っていたって。
この殺し合いで“ふつうのこども”が生き残るなど、土台無理な話だったのだ。
スタンドパワーが切れ、高度が下がっていく。
ぐんぐんと迫って来る地面を見て、二人はぎゅっと目を瞑った。
………………
………
……


「大丈夫?君たち」


言葉と、共に。
さっきまでの風圧に押し上げられていた時とは違う、しっかりとした浮遊感が写影と桃華の二人を包んだ。
目についたのは、空に浮かぶ、白磁の肌に、鋭く尖った長い耳。
此方を興味深そうに見つめる碧眼に、杖を手に浮かぶ少女の姿。
それはお伽噺に出てくるエルフの魔法使いそのものだった。


「た…助けて下さいまし……」


それだけを、何とか伝えて。
がくりと、二人は意識を手放した。


「フリーレン!!」


今しがた二人のエルフを助けた少女、フリーレンは声のした方に目をやる。
そこには、身に着けた紺のマントで飛翔するガッシュの姿があった。
心の底から心配そうに気を失った二人の姿を覗き込むガッシュを見て。
んー…と複雑そうに天を仰いでから、フリーレンは自らの飛行魔法で二人と共に大地に降り立つ。
そして、降り立った先に建つ、立派な屋敷を指さして。


「取り合えず、あの屋敷で何があったか話を聞こうか」


そう、同行者の少年に告げたのだった。


607 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:59:02 C97lN/oU0


【G-4ボレアス・グライラット邸前/1日目/黎明】

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]精神疲労(大)、気絶、疲労(小)あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。

【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(大)、気絶
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。

【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]全身にダメージ(小)
[装備]赤の魔本
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:この者達は……!?
2:フリーレンと、戦えぬ者達を守る。
3:シャルティアは、必ず止める。
[備考]
※クリア・ノートとの最終決戦直前より参戦です。
※魔本がなくとも呪文を唱えられますが、パートナーとなる人間が唱えた方が威力は向上します。
※魔本を燃やしても魔界へ強制送還はできません。

【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:先ずは、落ち着ける場所で何があったか聞こうか
2:ガッシュについてはいったん保留。
3:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。


608 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:59:43 C97lN/oU0






(あ、危なかったァーッ!!あのモモカって子のお陰で助かったぜーッ!!)


I・R・T(アイドル・レイプ・タワー)の屋上にて。
デス13のスタンドを操る赤ん坊、マニッシュ・ボーイは安堵の息を吐いた。
ギリギリだった。本当にギリギリのところで命を拾った。
夢の世界ではかなり無敵のデス13だが、現実世界では無力に等しい。
故に、現実世界でマーダーに狙われれば、彼も相当危うい立場なのだ。


(あの変な悪夢を見せてくるスタンド攻撃はどうにかなったけどさァ〜
あの白髪のガキが現れた時は本当にやばかったぜ)


失意の庭は非常に危険で強力な礼装ではあるが、細工次第で干渉できない事も無い。
事実、正史にてこの失意の庭に取り込まれた予言の子は、その特殊な精神性と、自身の魔術で効果を最低限抑えていた。
乃亜が手を加えていた事と、マニッシュボーイが精神世界を操るスタンドだったこともあり、失意の庭の効果をほとんど受けなかったのだ。
だが、そんなマニッシュ・ボーイも、ゼオン・ベルの乱入によって余裕はなくなった。
このままでは殺される、だが、現実世界では自身のスタンドは無力に等しい。
一か八か、桃華達を殺そうと近づいてきた所を眠り玉で眠らせる。それしかない。
そう思っていたが……そんな彼の予想に反して、桃華と写影という二人は死地からの脱出劇を成し遂げてみせたのだ。
自分達の状況的に、完遂…とまでは至らなかったが。


(チクショオ〜〜!!何でおれの隣にいるのがあの二人じゃなくて、
こんな何の役にも立たねぇおにぎりなんだッッ!!とっとと起きろこのボケッッ!)


心中で苦し気に眠るおにぎり少年を毒づくマニッシュ・ボーイ。
今、襲われれば一巻の終わりだ。
だが、そんな彼の願いも虚しく。
若干五歳の幼稚園児、佐藤マサオは苦し気に呻くのみだった。


609 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 19:59:58 C97lN/oU0


【D- 4 I・R・T屋上/1日目/黎明】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:精神疲労(大)、気絶中、赤子への庇護欲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この赤ちゃんは僕が守る!
1:何だよ皆おにぎりおにぎりって…!
2:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
3:写影さんや桃華さんと一緒に行動する。
[備考]
※デス13の術によってマニッシュボーイへの庇護欲が湧いています。

【マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、マサオに対する苛立ち
[装備]:なし
[道具]:エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×2@スーパーマリオRPG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:マサオを利用して他の参加者を殺害する。
2:……冷静になって考えてみたらこんなガキ役に立つのか?早く起きろ!
[備考]
※デス13の術によってマサオに庇護欲を植え付けました。
※ねむりだまはエニグマの紙に収納されています。


610 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:00:29 C97lN/oU0






「フン…貴様の相手をするのもここまでだな」


此方の狩りは自分が行うから霧はいらない。
そう配下の殺人鬼に告げていたのが裏目に出た形となった。
もしジャックの霧が展開されていれば、逃げ延びるのは不可能だっただろう。
しかし、此方の敵は逃がすつもりは毛頭ない。
映画館の外から、再び館内へと降り立ち。
ゼオン・ベルは再生を終えて此方を睨む奇術師の少年を見据えた。


「調子に…乗るなよ。僕はアークライト様にエデンズシードを頂いた選ばれしニードレス
最も神に近い、全てを手玉に取る奇術師なんだよ!!」


いう事の聞かない四肢を叱咤しながら、力を籠める。
此処までコケにされて、黙って逃げるわけにはいかない。
何より、少しでも隙を作らなければこの身体では逃げるのも難しいだろう。
故に、戦う事を、少年は選んだ。
歯を食いしばり、目を血走らせて。その手のレヴァンティンを振るう。
ただの剣であれば一目で届かないと分かる間合い。しかし彼の持つ剣はただの剣ではない。

『Scalange Form』

少年の持つ剣は、烈火の将シグナムを真の所有者とする魔法のデバイス『レヴァンティン』
内包する魔力カートリッジを消費する事によって形状を変える戦闘用デバイスである。
電子音が響くと同時に、両手剣の形状を取っていた剣が変貌を遂げる。
幾つもの節に別れた、蛇腹剣の形状に。
それだけでは終わらない。


───バミューダ・アスポート!


611 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:01:52 C97lN/oU0


自身の能力、バミューダ・アスポートによって身体とレヴァンティンを透明化させる。
これで接近戦を行うことなく、一方的に相手を甚振れる状態が整ったという訳だ。
───相手が、ゼオン・ベルでなければ。
次瞬、ゼオンの身体が大きくブレる。
残像すら残る速度で、駒回しの様にその手の大刀を振るう。
ド、ドドドドドドド!!!!と。
およそ刀から出ているとは思えない程の轟音が、映画館に響いた。
ゼオンが繰り出したのは、鮫肌に依る突きのラッシュ。
不可視の剣閃を、鋼の連打で以て撃墜したのだ。
そして、当然彼の行動はそれだけに留まらない。


「ラージア・ザケル!!」


広範囲に拡散する電撃のカーテン。
この術がある限り、ゼオンにとって、相手が見えないのは殊更問題ではなかった。
桃華達の時とは違い暴風の防御壁は無く、相手が見えずとも、“当たればいい”のだから。
そして彼の使う術は、初級呪文であってもギガノ級の呪文に真っ向から勝利するだけの威力を有している。


「ぎゃあああああああ!!!!」


声の上がった方角に、目にもとまらぬ速さで疾走。
今度は相手が前方にいる事は分かっている。
故に、術の効果範囲はおおよそ前方に拡散するものであればいい。
ダメ押しとなる、中級呪文が奏でられる。


「テオザケル!!」


「─────!!!!!」


612 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:02:33 C97lN/oU0


声にならぬ悲鳴が、右天の声帯から飛び出した。
ダメージの累積により、バミューダ・アスポートが解除される。
それに構っている暇も、今の右天にはない。
何故なら、既に眼前に死神が迫っているのだから。
咄嗟にレヴァンティンを構える。その形状は既に蛇腹剣ではなくなっていた。
ゼオンの持つ大刀、鮫肌。
霧の忍び刀七人衆の怪人、干柿鬼鮫が保有するこの刀は、他の刀と比べても群を抜いて悪食であった。
レヴァンティンが纏う魔力を、最初に打ち払う際に削り喰らっていたのだから。
だが、これは右天にとってある意味幸運だったのかもしれない。
蛇腹剣のままでは懐に入られた場合、彼の技量では到底扱えなかっただろう。


「死、ねぇ──!!」


ただ、刀身に殺意だけを乗せて。
振り被られる大刀目掛けて、レヴァンティンを跳ね上げる。
二刀の魔剣が激突し、鋼の調べが高らかに鳴り響いた。
拮抗は一瞬。
担い手の技量も、刀の重量も、全てがレヴァンティンは劣っていた。
粉々に、デバイスが砕け散る。


「剣の扱いが素人だな。アークライト様とやらは剣術も教えてくれなかったのか?」
「ぐ──!」


バックステップで後退し、床に置いたままのグラーフアイゼンを手に取ろうとする。
ハンマーなど右天は扱ったことは無いが、無手よりはマシだ。
そして、重量のあるグラーフアイゼンを持ち上げようとした所で、握った手ごと──
ゼオンが振り下ろした鮫肌は、グラーフアイゼンを叩き潰した。


613 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:03:37 C97lN/oU0


「う、ぐ、ぎぃいいいあああああああッッ!!!!」


両手首がちぎれ跳び、激痛にのたうち回る。
ゆっくりととどめを刺すべく歩いてくるゼオンを見て、漏らすのは怨嗟の声だった。


「く、そ。体さえ、いう事を聞いたら───」


お前などに負けなかった。
少なくとも、逃げ切る事は出来たはずだ。
全て、支給品の説明をちゃんと記載しなかった乃亜のせいだ。
子供じみた恨み言を零す右天を見て、ゼオンは嘲りを含んだ笑みを漏らす。
そして、鮫肌を振り被った。


「身の丈を超えた力は身を滅ぼす、次があったら教訓にするんだな」

「クソッ!クソッ!糞ォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」


ドン!!!と砲弾が炸裂したような音が響き。
それが最後だった。
上から頭部と心臓を破壊された右天は、もう二度と再生することは無かった。
人を呪わば穴二つ、という諺がある様に。
ごくありふれた、必然の結末だった。
でも右天は知らなかったのだ。
正史において、どんな人物が失意の庭を使い。
そして、どんな最期を迎えたのか。





一度でも呪術に手を染めた者に、悔いのない死など存在しない。



【右天@NEEDLESS 死亡】


614 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:04:39 C97lN/oU0







「何よ、これ」


絶句していた。
慣れない人間の建てた建物と、そこに立ち込める濃霧。
夜こそ本懐である吸血鬼ですら、惑い、迷い。
その果てに今迄自分が追って来ていたのは、妙なバッジから出た声だったのだ。
やられた。と思うと同時に、脳裏を過るのは一つ。
しんちゃん!
しんちゃんが、初めてのお友達が危ない。
バッと振り返り、最初にいたシアタールームに戻ろうとする。


「こっちだよー!フーラーン!!」


だが、彼女の予想に反して。
最初であった時と同じ笑みで、彼女の眼前にジャックが立っていた。
間違いない。今度は声だけではない。
身体の部分は相変わらず霧に隠れて見えないが、顔はハッキリと見えている。


「もうーフランったらおそいんだもん。だからはんで?あげるね!」


にっこりと笑うジャック。
身体の方は相変わらず霧に遮られてはっきりしないが、
顔だけは霧がかかっておらず、鮮明に見える。
舐められている。直感的に分かった。
だが、怒りはしない。侮りの代償は、命で支払わせる。
2秒でこいつを壊す。
それだけを胸に、フランはジャックに向けて飛び掛かった。
ジャックが笑みを浮かべて飛び退る。
フランはそれを見て、勝利を確信した笑みを浮かべた。
相変わらずのすばしっこさだ。だが、その程度の飛距離では躱しきれない。


615 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:05:15 C97lN/oU0


「―――禁忌レーヴァテイン」


滑らかに、淀みなく、スペルを唱える。
世界を焼き尽くすと言われている紅き剣が、彼女の手に現れる。
突如得物を得た敵手に慌てて後退する速度を上げる殺人鬼、だが、それでは遅い。
人一人分ほど、遅かった。
ずぶり、と。確かな手ごたえを感じる。
確実に、少女の心臓を貫いた。


「私の勝ち───」


勝利を示す鬨の声を上げようとしたところで。
気づいてしまった。
今しがた胸を貫かれたばかりの、殺人鬼の表情に。
───笑っていた。




「ぉ……ぐぉ……フ、ランちゃん………」

「しん……ちゃん?」




レーヴァテインが貫いていたのは、彼女の初めての「おともだち」だった。
ごふりと、少年は口から血の塊を吐き出して。
助からない事は、見ただけで分かった。


「あーあ、でも、近くにいたその子が悪いよね?」


くすくす、と。
嘲るようなジャックの笑みすら、今は耳にも視界にも入らない。
ただ、自分の手で壊してしまった友達を見つめて。


616 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:05:51 C97lN/oU0


「しん、ちゃん」


名前を呼んだ。


「しんちゃん、しんちゃん、しんちゃん……っ!」


そうすれば、最早助からない少年が助かると信じているように。


「ごめん、わたし、ごめん───」


助ける方法なんて分からない。吸血鬼は刺されたくらいで死んだりしないから。
これが冷静だったら、もっと別の方法が考え付いたのかもしれないけど。
でも、今の彼女にそんな余裕はなかった。
ただ、壊してしまった友達に謝る事しかできなかった。


「いいんだ、ゾ………フランちゃん」


死に行くしんのすけが、口を開く。
喋れば死ぬ時間を早めてしまうけど。
それはしんのすけも漠然と理解していたけれど。
それでも、お友達に悲しい顔をして欲しくなかった。


「女の子が、本気で、謝ってる、とき、は……わらって、ゆる、す、のが。
男の、かいしょー、だって、父ちゃんも、言ってた、ゾ………」


ごふり。また赤黒い血の塊が吐き出される。
しんのすけの瞳から、命の灯が消える。
最後の力を振り絞って、しんのすけは続けた。


「フランちゃ、が、おとな、になった、ら、オラと、デート………」


それが、しんのすけの最後の言葉だった。
ふっと、フランの腕の中のしんのすけの手の力が抜けて。
壊れかけだったお友達は、たった今壊れてしまったお友達に変わった。


「………うん、ありがとう。しんちゃん」


光の失ったしんのすけの瞼をゆっくりと降ろして。
フランは、笑った。
けれどそれは狂気に彩られたものではなく、友に向ける優しい笑みだった。
けれど、そんな笑みを浮かべていたのも一瞬で。
しんのすけの亡骸を床に降ろし、向き直る。


617 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:06:26 C97lN/oU0



「壊すわ、貴方の全部」



最高速度、渾身の力で。
目の前の存在を終わらせるべく、疾走を開始する。
意味も理由もいらない。遊びじゃなくて、本気でこいつを終わらせる。
ただ、壊す。
頭の中にあるのは、その一心だった。


「うん、でも───」


対するジャックの態度は涼やかな物だった。
まるでここまで全て計算づく、とでも言うように。
迫って来るフランにも、もう後退すらしない。
ただ、微笑みながら宣言する。


「フランの、まーけっ!」


べきべきべき、と。
左から何かが折れる音が響いて。
直後に、凄まじい圧迫感に襲われる。
下からかちあげられ、フランの矮躯が宙を舞う。
そのまま天井を突き破り、映画館の屋根を突き破り、吹っ飛ばされていく。


「おー、ほーむらん」


吸血鬼と殺人鬼。
夜を制したのは、無垢で狡猾な殺人鬼だった。


618 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:07:26 C97lN/oU0


「……フン、生きているな。あれでは」


上半身と下半身が泣き別れになるはずの一撃だった。
だが、少女の小細工により、それは叶わなかった。
吹き飛ばされたのも、戦力の不利を悟った半ば自主的なものだろう。
そう、今しがた吸血鬼の少女を吹き飛ばした少年、ゼオン・ベルは判断した。


「……食事を終えたら次の獲物を探すぞ、準備しろ」

「はいはーい……うぇっ……これ食べられない…えんがちょ」


ゼオンに下賜された少年は呪詛に浸食されており、水子の亡霊であるジャックでも食べるのが躊躇われる遺体だった。
単なる呪詛程度ならジャックにとってはむしろ栄養価が高い逸品だが、良薬も過ぎれば毒になると言う言葉通り、これは度が過ぎている。
あの吸血鬼の少女の心臓は美味だっただろうか、ジャックは少し切ない気分になった。
今しがた死亡した吸血鬼の友人の心臓を抉り取り、咀嚼する。
余り美味しくなかった。でも文句は言えない。
傍らの自分の仮マスターは非常に気が立っている様子だったから。
次のおやつは悪人がいいなー。そう思いながら、ジャックは野原しんのすけの心臓を嚥下した。


【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん 死亡】


619 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:07:48 C97lN/oU0


【C-3 映画館内/1日目/黎明】
【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]健康、失意の庭を見た事に依る苛立ち、ジャックと契約
[装備]鮫肌@NARUTO、銀色の魔本@金色のガッシュ!!
[道具]基本支給品×3、ランダム支給品4〜6(ヴィータ、右天、しんのすけの支給品)
[思考・状況]基本方針:優勝し、バオウを手に入れる。
1:ジャックを上手く使って殺しまわる。
2:ジャックの反逆には注意しておく。
3:ふざけたものを見せやがって……
[備考]
※ファウード編直前より参戦です。
※瞬間移動は近距離の転移しかできない様に制限されています。
※ジャックと仮契約を結びました。
※魔本がなくとも呪文を唱えられますが、パートナーとなる人間が唱えた方が威力は向上します。
※魔本を燃やしても魔界へ強制送還はできません。

【ジャック・ザ・リッパー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、探偵バッジ×5@名探偵コナン、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して、おかーさんのお腹の中へ還る
1:お兄ちゃんと一緒に殺しまわる。
2:ん〜まだおやつ食べたい……
[備考]
現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。カルデア所属ではありません。
ゼオンと仮契約を結び魔力供給を受けています。
※『暗黒霧都(ザ・ミスト)』の効果は認識阻害を除いた副次的ダメージは一般人の子供であっても軽い頭痛、吐き気、眩暈程度に制限されています。




※グラーフアイゼン、レヴァンティン、失意の庭は破壊されました。残骸が館内に転がっています。


620 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:08:34 C97lN/oU0







「私の敗け……か」


吸血鬼が吹き飛ばされたのは、奇しくも彼女の天敵である場所だった。
人々が神に祈る場所、教会。そのステンドグラスを突き破って、彼女は落下した。
神への祈りを忘れた者が、十字架の上に横たわっている光景は、とても皮肉めいていて。
一瞬の判断だった。
このままでは上半身と下半身が泣き別れになる、そう判断した彼女は迷わずスペルカードを切った。
――禁忌「フォーオブアカインド」
発生した分身たちは全て、背後に迫っていた襲撃者の持つ刀に削り取られてしまったが、
その代わりとして得たほんの僅かな時間により、防御が間に合ったのだ。
でなければ、しんのすけに続く死者として彼女は躯を晒していただろう。

だが、少女にとってそんな事は何の慰めにもならなかった。

495年の生涯で初めて味わったかもしれない敗北の苦渋と。
初めてできた友人の喪失は、彼女にとって実に、実に苦いものだった。


「いやだわ。敗北(これ)」


呆然と呟いて、割れた窓から夜空を仰ぐ。
左腕と左翼を見てみればぐちゃぐちゃに折れ曲がっていた、回復には時間を要するだろう。
だが、今のフランにとってその痛みは忘れてはならない物だった。
何故なら、彼女の記憶は、襲撃者の情報がそこだけ虫食いになったかのように欠落していたから。
どんな相手だったか、外見、年齢、背丈、性別、得物など…ついさっき戦っていた相手の事が思い出せなかった。
背後からの襲撃者も姿は見ていないし、左半身に残る痛みだけが。
皮肉にも初めての友の喪失とその仇の存在を示す、手がかりだったのだ。
友を失った彼女が、この後どんな選択をするのかは分からない。
しかし、確かなことがたった一つだけ。
吹き飛ばされる最中、これだけは手放すまいと片腕で守った傘を掲げて、ぽつりと呟く。


「───これは悲しいのかな。それとも、悔しいのかしら。よく…分からないわ」


吸血鬼の少女と、春日部の嵐を呼ぶ五歳児は……確かに、心を通わせていた、ということ。


621 : 燃えよ失意の夢 ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:08:57 C97lN/oU0


【B-6 教会内/1日目/黎明】

【フランドール・スカーレット@東方project】
[状態]:ダメージ(中)、左腕複雑骨折(治癒中)、左翼損傷(修復中)、精神疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:傘@現実、基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:友達になってくれたしんちゃんと一緒に行動、打倒主催
1:────
2:しんちゃんを殺した奴は…ゼッタイユルサナイ
[備考]
※弾幕、能力は制限されて使用できなくなっています
※飛行能力も低下しています
※一部スペルカードは使用できます。
※支給品はまだ確認していません
※ジャックのスキル『情報抹消』により、ジャックについての情報を覚えていません。


622 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/27(土) 20:09:55 C97lN/oU0
投下終了です
また、事後報告になり申し訳ないですが、ガッシュ・ベルとフリーレンを予約に追加させて頂きました


623 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:15:16 bOJ2c/7E0
投下お疲れ様です
私も投下します


624 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:16:12 bOJ2c/7E0
「嘘でしょ……悟飯君、生きてるの……? シュライバーを相手にして……創造まで使ったのに?」

乃亜の放送を聞き終え、ルサルカは唖然とした。
あのガキ染みた挑発も14人死んだことも、割戦隊なるプロの殺し屋5人が纏めて葬られただの、そんなことはどうでもよかった。
ただ驚愕するのは、あの狂乱の白騎士と相対し、創造まで引き出させ、遊びすら消えたあの化け物にを相手に、あの悟飯が生き残った事だ。
この事実、乃亜がハンデとやらを課したことでシュライバーが弱体化した可能性もあるが、それでも創造を使ったシュライバーに生身の肉体で生き延びる等不可能だ。

「ふ、フフフ……あの子、使えるじゃない……そう言えば、言っていたわね。
 同じくらい強い連中が何人も身近に居たって……孫悟空、ベジータ、トランクス、ピッコロ……そしてヤムチャ……だったかしら
 悟飯君と同じレベルの強者がこれだけの数いれば……私が彼らを掌握すれば、聖槍十三騎士団も滅ぼせるんじゃ……」

男の心を握るなど、数百年生きたルサルカには容易いことだ。
悟飯のような少年なら尚更、自分なら一時間もあれば惚れされる自信がある。
悟飯さえ手に入れれば、その父親の悟空達からもある程度は信頼を築け、いずれは全員を虜に出来る筈だ。

(悟飯の言ってたことが本当なら、この殺し合いの制限がなければ、一人で惑星を簡単に消し飛ばせるのよね。しかもそんな奴らが数人も……)

道理でエイヴィヒカイトを身に着けた魔人である自分達を、こんな殺し合いへと放り込んだわけだと納得する。
他にも、居るのだろう。あの悟飯やシュライバーに、引けを取らぬ者達が。故に殺し合いを開いたのだ。
ヒントはあった。ユーイン、悟飯の語る社会はルサルカの知るそれと大きく異なっていたし、スネ夫、美柑とも一定の文化は同じだが、ルサルカの認識の時代とズレがあった。
つまるところ、パラレルワールドが関係している可能性が非常に高いと、ルサルカは大胆に推理する。
それならば、むしろ全ての説明が付く。あのシュライバーを相手に、生身で拮抗するなど、異界の法則でしかありえない。

(これは、千載一遇のチャンスなのかも……)

異界の存在、あの水銀ですらこれは完全な想定外であり、今ルサルカは永い時の中で初めて、その掌の上から完全に外れているのかもしれない。
であれば、この尽き掛けの僅かな寿命の延命方法も、完全な不老不死も手にすることが出来るかもしれない。
既に、ドラゴンボールという情報は掴んである。実際に、悟飯は不老不死を叶えた存在を、知っていたとも知っていた。
肉体面だけならば、ルサルカも魔道の道を生きた者、いくらでも若さを維持し続けることが可能で、疑似的な不老不死ともいえる。
しかし、その内面、魂に限ってはそうはいかない。

自壊衝動と呼ばれる、彼女の世界に於ける法則の一つ。魂が寿命を迎えてしまう現象を、どうあっても避けられない。

結果的にそれは本人は死を望まぬ筈なのに、本来とは異なる、軽率な行動に出てしまうといった形で発現する。
それどころか、かつて恋焦がれた永遠の刹那を忘却し、本当に追い付きたかった人を忘れながら、ただ生き汚く醜く有様を晒しながら、生だけに執着してしまう。

ルサルカには既に、その兆候が発症し始めていた。

「で、貴方は誰かお仲間が……あぁ、呼ばれたみたいね」

ルカルカは嘲るように、その相対者に呟いた。
顔にガムテープを貼り付けた狂人、輝村照。ガムテとも呼ばれる幼き殺人者に対し、ルサルカは終始余裕を崩さないでいた。
この二人が出会って、即殺し合わなかったの理由は簡単にして単純だ。放送が流れたから。どちらかが言い出したのではなく、お互いに先ずは優先して新たな情報の入手を優先しただけのこと。


625 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:16:34 bOJ2c/7E0

「当てましょうか? 貴方の僅かな反応からして……お友達は割戦隊の五人よね? 乃亜君の煽りから考えても、プロの殺し屋なら貴方と接点があってもおかしくはないわ」

「……」

「なっさけなーい。五人掛かりで、その辺の子供相手に負けちゃうなんてぇ」

あの少年、出会った当初は無駄にハイテンションで狂人を演じていた。だが、本性は冷静(クール)だ。
あくまであれは狂おうとしているだけの、仮面の姿に過ぎない。
何かしら、凄惨な過程はあったのだろうが、むしろ大分理性は保っている方だ。

「……もしかして、自分みたいな子供の味方をする。なんて、救世主(ヒーロー)の真似でもしてるわけ? だとしたら、貴方誰も救ってないし救われてないわね。
 地獄行きの誘導(てつだい)をしてる自覚、ある?」

何も言い返しては来ないが、間違いなく自分の見立ては当たっていると、ルサルカは確信(ビンゴ)を信じていた。

だから、こうして楽しませてもらうとする。

ルサルカとて、ここまでストレスは溜まっていたのだ。少しくらいの発散は、罰が当たらないだろう。

このガムテの少年、顔をガムテープで貼り付けているが、その実かなりの美形だ。
狂人の仮面を、快楽で歪ませたとき、彼はどんな表情をするのだろうか。
恵まれない子供の希望になろうとしている狂気を、耐えられぬ快楽で染め上げ恥辱と絶頂を味合わせ、そして屈服させる。
それを見世物(ショー)にして、ガムテを慕う子供達に更なる甘美な絶望を与えるのも一興だ。

(少しくらい、摘まみ食いしたって良いわよね)

ルサルカは目の前の玩具を前に、既にうずうずしながら、その破壊(あそび)方を考えていた。
たかが、殺しに長けた程度の子供、その手にある木の枝なぞ避けるまでもない。絶対に自分は、あんな程度の枝では傷付かない。

「……お前さぁ」

ルサルカの眼前、息が触れ合い、伸ばせば容易に手が届く程の近距離で、ガムテは心底、退屈(あき)れた顔で呟いた。
腹部に違和感がある、それは痛み、異物が侵入する痛み。刺されたのか、自分が? ルサルカがそう判断し、だが血が出ない事に違和感を持つ。
そして次の瞬間、体中に斑点が浮かび凄まじい苦痛が体中を蝕む。
完全にルサルカは、危機感が麻痺していた。最初に遭遇したのが悟飯とシュライバーであったが故に、自分を殺せる領域の参加者はあの二人の規模であると油断した。
だが忘れてはならない。ここは既に法則の違う、完全な異界であることを。あの水銀の掌から抜け出した、完全な未知の世界であることを。

「慢心(ナメ)過ぎ」

そして相手は、自らに決して引けを取らぬ天才にして超人の一人。
破壊の八極道が一人、殺人の王子様(プリンス・オブ・マーダー)の名を持つ、最凶の割れた子供達(グラス・チルドレン)。
エイヴィヒカイトの鎧による恩恵は完全に消え去った上、ルサルカの使役する使い魔は影を媒介とする。現在の時刻は深夜過ぎ、使い魔達を操るには光源も足りない。
戦闘に於いて、彼女は圧倒的不利である。そんな状況で、あのガムテを相手に嘲笑い、あろうことか遊びを挟むなど、完全なる自殺行為でしかない。

「こ、れ……ど……く、……? この、程度、なら……す、ぐ……」
「いんや、肝臓ズラして末期の肝臓癌と同じにしたから、毒に耐性あっても意味ないよん☆」

極道技巧 疒(ヤマイダレ)。
相手の腹を刺し、肝臓の一部を切り特定の形にズラす。そうすることで、末期の肝臓癌や肝不全を引き起こすガムテの技巧。


626 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:17:20 bOJ2c/7E0

「なっ……?」

例え、常人以上の速度で毒を分解をする聖遺物の使徒であろうと、この症状は技によって引き起こされた現象だ。
つまり、一度刺されて臓器を弄られば、それを元に戻せる高い医療技術がなければ、死に至る。毒性の分解では防げる代物ではない。

「っていうか……なんで回避(さけ)なかった理由(ワケ)?」

この呆気ない、勝負にもなっていなかった先の一戦を振り返り、ガムテは首を傾げながら疑問を投げかける。
実際のところ、この女はかなり面倒な手練れだとガムテは認識していた。相当な警戒もしていた。

ガムテは正しく、相手の脅威を認識していたのだ。
聖槍十三騎士団だの、聖遺物だのは知らない。
ただ、純粋にルサルカという魔性の存在に対し正当な評価を下し、真っ当に自身の中で警鐘を鳴らし確実な勝ち筋を模索していた。
初撃に放った疒も避けられる一撃だろうと考えており、数手先まで出方を想定し、対処法を脳裏に展開していたほどだ。
しかし、結果は予想に反して、怖い程簡単に殺(ヤ)らせてくれた。
慢心にしても、ここまで馬鹿(ナメプ)かます愚者(バカ)は、ガムテの人生の中でも初めての経験だった。

「刀(ポン)か、短刀(ドス)のが良かったけどなぁ〜」

立つことも叶わず、藻掻き苦しんでるルサルカを他所に、ガムテは彼女のランドセルを回収し中を漁っていた。
あったのは、表裏揃った独特の紋様、妖刀村正。
かつて、西の高校生探偵の手に渡り、ある殺人者と死闘を繰り広げた紛れもない名刀である。
短刀と違い、使い勝手は違うが木の枝よりはマシだろうか。
しかし、極道技巧に支障が出る場合もある。ある程度は使用感は、確認しておかねばならない。

「キャハッ☆試し切りしなくっちゃ☆」

当たり前だよなと、ガムテは満面の笑みを浮かべた。

「――――形成(Yetzirah)」

村正の刃がルサルカに触れる寸前、その喉奥から絞り出した声と共に手には一冊の本が握られていた。

「あ?」

ガムテは刀を止め、一気に後方へ飛び退いた。
血だ。溢れんばかりの、血の匂いが鼻腔を刺激する。何かは分からないが、実体ある死が今、姿を現そうとしている。そう強い確信がある。

血の伯爵夫人(エリザベート・バートリー)、名の通りエリザベート・バートリーが獄中で書き記した日記、それが聖遺物へと昇華したもの。

その異能は、日記に記された拷問器具を現界させ、使用するというもの。

「なんか〜遊園地みた〜い☆」

暢気なことを呟きながら、飛んできた車輪を上体を逸らして避ける。
更にいくつかの激しい金属音と共に、ガムテは迫りくる拷問器具を両断する。
なるほど、確かに血生臭い拷問器具を召喚し操るのは厄介な力だが、反面相当脆いなとガムテは分析する。
それを数でカバーしているのだろう。
あとは、この手の村正が年月を重ね、神秘を宿した名刀であったのも幸いした。この程度の拷問器具程度ならば、使い手が一流であれば難なく切り裂く事が出来る。
現にガムテは既に数十以上の拷問器具を、破壊し斬り伏せている。
神秘などの理屈まではガムテも知りえないものの、この名刀を手に出来た事は幸運であった事も自覚していた。

「……はぁ……はぁ……ぐっ……!」

「嘘(マジ)? 治療(なお)ってんの!!?」

拷問器具を相手にしている間、ルサルカは立ち上がっていた。その顔色を見て、ガムテは彼女の容態が回復に向かっている事に気づく。


627 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:18:10 bOJ2c/7E0

(この、豆……助かった……)

ルサルカの手元に握られていたのは二粒の豆、仙豆と呼ばれる特殊な豆だ。一粒食べれば、病などを除けば、如何な傷も治し、満腹にする優れた栄養食である。
疒はあくまで内臓をズラし病状を再現する技であり、毒や病気を引き起こしている訳ではない。傷や怪我に分類されるのなら、仙豆で治療可能だ。
彼女に支給されたのは三粒。それをランドセルではなく自分のポケットに忍ばせ、先ほど一粒食べて回復したのだ。

(勉強になったぞ〜。ここじゃ、疒が決まっても、勝ち確じゃないってコトか)

もっとも、口調程驚いてはいない。むしろ納得すらしていた。
うずまきナルトの放った忍術、分身を始め、あの特異なエネルギーを、螺旋状に圧縮させ叩き付ける大技。明らかにガムテの知る忍者はおろか、極道の技巧でもない。
完全に、自分達の理の外にある特殊能力(バグ)だ。どういう方法や手段かは知らないが、忍者でもなくヤク決めた極道でもない、第三者(チート)が存在すると考えていい。
己が絶対の信用を置く、疒がこうして破られる。
常識など捨て去ったつもりだったが、更にもっと根っこにある常識も捨てねば軽く足元を掬われかねない。
ガムテの初撃を侮り、あっさり死にかけたルサルカが良い手本と言える。

(こんなに暗いと、こっちは創造も使えない……)

ルサルカの創造は影を利用する。故に影がなければ、その効果を発揮できない。
人の気配がある街中なら、灯りは幾らでもある。影など珍しくないが、この島には80人前後しか存在しない。
深夜では、光源があまりにも足りない。

(あんな木の枝で、私にダメージを通して……血の伯爵夫人の拷問器具も、あんな物理攻撃で破壊されてる……これがハンデってこと? 接近戦なんてごめんだわ)

拷問器具を全てガムテの足止めに使いながら、ルサルカは躊躇わず逃げ出した。
使える手駒は幾らでもある。孫悟飯だって、いくらでも言い包めて、シュライバーとも潰し合わせればいい。
もしそれで生き残ったら、それこそ自分の思い通りに利用し、黒円卓の連中を潰すのに使える。
あのガムテも光源を確保し、創造まで使えれば制限を加味しても自分の相手じゃない。

「私は死なない……こんなところで、絶対に……!」


628 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:18:38 bOJ2c/7E0




【G-3/1日目/深夜】

【ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae】
[状態]:ダメージ(小)、シュライバーに対する恐怖
[装備]:血の伯爵夫人@Dies Irae
[道具]:基本支給品、仙豆×2@ドラゴンボールZ、ランダム支給品0
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。可能なら悟飯を利用し潰し合わせる。
2:ドラゴンボールに興味。悟飯の世界に居る、悟空やヤムチャといった強者は生還後も利用できるかも。
3:ガムテからも逃げる。
[備考]
※少なくともマリィルート以外からの参戦です。
※創造は一度の使用で、12時間使用不可。停止能力も一定以上の力で、ゴリ押されると突破されます。
 形成は連発可能ですが物理攻撃でも、拷問器具は破壊可能となっています。
※悟飯からセル編時点でのZ戦士の話を聞いています。


【仙豆@ドラゴンボールZ】
ドラゴンボール作中において、Z戦士の命綱ともいえるキーアイテム。
一粒食べるだけで、怪我であればそれを回復させる。実はこれ一個で10日は飢えを凌げるが、後にその描写は消えた。多分鳥山先生が忘れている。
ただし、乃亜による調整により、仙豆による回復を行っても一定のダメージは残るものとする。


629 : 追い付けない キミはいつでも ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:19:04 bOJ2c/7E0



「あの女ァ〜無駄に逃げ足速過ぎんだろうがァ〜、最初の舐めプはなんだっつーの」


ルサルカが使役した拷問器具の残骸、襲ってきた物を片した時には既に赤髪の女は居なかった。


追うか追わないか。
ただ厄介(めんどう)な女ではあるだろう。見た目こそ、さほど歳は変わらないが中身は狡猾で醜悪、加齢臭(にお)ってくる老婆(ババア)だ。
追いかけて、罠を仕掛けてれば対処は難しい。あの能力を見るに、そういった待ち伏せは得手そうだ。

だが、何にしてもあの赤髪の女はいずれ殺す。だが暫くは野放しでも良いだろう。
あの様子なら、勝手に参加者の数を減らしてもくれそうだ。
それに、やはりもっとこの場の異能力を知りたい。
見れば、東の方向には巨大な氷山が唐突に姿を現し、更に北の方ではナルトとの交戦後、空に向かって青い膨大なエネルギーの濁流が放出されているのをガムテは目撃していた。
ナルトの奇妙な忍術と良い、今まで通りにやれば次の放送で名を呼ばれるのは自分になる。

情報収集も、必要なのかもしれない。どうせ焦っても、一人二人死体が増えるだけだ。
もっと装備も整え、情報も入手し、万全な態勢で臨んでも事は遅くはない。



――――……もしかして、自分みたいな子供の味方をする。なんて、救世主(ヒーロー)の真似でもしてるわけ? だとしたら、貴方誰も救ってないし救われてないわね。

――――フフ……所詮、社会のレールにも乗れなかった、負け犬共の傷の舐め合いだったということかな。



「……」



――――地獄行きの誘導(てつだい)をしてる自覚、ある?


「知ってるよ……」




【G-3/1日目/深夜】


【輝村照(ガムテ)@忍者と極道】
[状態]:全身にダメージ(中)、左腕粉砕骨折、治癒中
[装備]:地獄の回数券×5、妖刀村正@名探偵コナン、木の枝@現地調達
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:村正に慣れる。短刀(ドス)も探す。
2:ノリマキアナゴ(うずまきナルト)は最悪の病気にして殺す。
3:この島にある異能力について情報を集めたい。
[備考]
原作十二話以前より参戦です。
地獄の回数券は一回の服薬で三時間ほど効果があります。
悟空VSカオスのかめはめ波とアポロン、日番谷VSシュライバーの千年氷牢を遠目から目撃しました。


【妖刀村正@名探偵コナン(迷宮の十字路)】

    オレは元々弁慶より義経が好きやった!
      義経になりたかったんや!

服部平次が出展元の劇場版作品にて、犯人との決闘の際に使用した名刀。
名刀に相応しい耐久度を持ち、服部と犯人の激しい決闘にも耐えうる。
余談だが上記の台詞は、一部のみを抜粋しただけで、犯行動機は身勝手だが理解できるものである。


630 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:20:35 bOJ2c/7E0
投下終了です
感想はまだ書けてませんので後ほどになります。


631 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:29:25 bOJ2c/7E0
>>579
感想もまだの状態で、先にご指摘だけして申し訳ないのですが
イリヤ達が声を掛けた後に、乃亜の放送を行うと、厳密にはベッキーとロキシーも呼ばれなくてはならなくなります
ですので、リーゼロッテ戦後に乃亜の放送描写→イリヤ達と合流のが良いかなと思います。
お手数ですが、ご確認お願いします。


632 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/27(土) 20:40:20 nupm3N1E0
>>631
わかりました、では>>572の状態表以外の部分を以下のように修正します

□ □ □


「………ロキシーさん。……スネ夫……。」
「………バカ、そんな事、まだ気になんてして……。なんで、なんでよ……。」

項垂れる二人。それぞれの死体を見つめて泣き崩れる二人。
死体の片方は黒ずんで、誰だったのかすら見当もつかない。
もう片方の死体は、全身がほぼ焼けただれ、かつその片腕に辛うじて文字が分かるカード。
そしてついさっき、海馬乃亜による新しい放送と、これまでに死んだ参加者の名前が告げられた。
ロキシーの死の次に、元の世界の友人たる骨川スネ夫の名前が告げられた。
余りにもぐちゃぐちゃした、悲しみと怒りの感情が渦巻いて、のび太は泣くことすら忘れて呆然としていた
ニンフは再び『誰か』の死を目の当たりにした。友達の次に、友だちになれそうだったかもしれない少女。
どうしようもなく心が壊れない限り、喪失に慣れることはない。それが人間でも、エンジェロイドでも。

――雨が降っている。悲しみが雨となって大地に降り注いでいる
ポツポツと降り注ぐ雨と、焼けた戦場の跡地にイリヤスフィールが訪れていた。
けたたましい轟音と爆音に、いてもたってもいられず訪れてみれば。
そこに残っていたのは凄惨な戦いの結末、遺された二人。

沈痛な雰囲気に、イリヤも、雪華綺晶も沈黙するしか無かった
犠牲の上に未来を繋ぎ止めたのび太とニンフの表情は、今にも落ちてきそうな空の如く、悲しみに暮れて。
少し時間が経って、涙を拭って。

「……止めないと、こんな殺し合い。絶対に。」
「そうね。こんな下らないことぶっ潰して、元の世界に帰る。」

二人の言葉が木霊する。
悲しみも怒りも飲み込んで、拭いきれない後悔を背負って。
それでも、止まる訳にはいかないと。

「……ねぇ。殺し合いを止めたいっていうんだったら、私も手伝ってもいいかな?」

そんな二人に、少しだけ安心して。
魔法少女は、二人に声を掛けた。


633 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:41:24 bOJ2c/7E0
>>631
間違えました。私の指摘内容でも、放送内容変わらないですね。
問題が放送前に、二人が死んだことなんで

リーゼロッテを一時撃退後、放送が始まる描写

→その放送に反応する間もなく、最後の不死鳥の炎の奇襲で2人死亡
  ここで死ねば二人は次の放送にカウントされる

→放送を聞いた後のイリヤ登場

こんな感じのが良いかなと思います


634 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/27(土) 20:45:02 bOJ2c/7E0
>>632
追記、ありがとうございます。大丈夫だと思います。
>>633こちらのレスは忘れてください。


635 : 名無しさん :2023/05/27(土) 21:58:52 DOSPtLJ.0
我愛羅 予約します


636 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/27(土) 22:00:26 DOSPtLJ.0
ごめんなさい、名前を我愛羅


637 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/27(土) 22:01:05 DOSPtLJ.0
ごめんなさい、名前を書くのを忘れてました、改めて、我愛羅を予約します


638 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:13:52 zgyMGkF.0
投下お疲れ様です!
迷路の中、僕ら二人、空を目指す
雄二とマヤのやり取りにほっこりさせられました。
特にコンペでは、様々な未来がありましたので、このコンビに長く幸あれ―――

――偽りの神が本物(麻子)の言葉を塗り替えられるはずもないのだから。
↑いいですね……好きです。

さぁ誰かを、ここへ誘いなさい
このロワにおける筆頭対主催コンビ。
頼もしいぜ!と思ったのもつかの間、悟飯――――!!!
や、やばいよやばいよ(CV出川哲郎)と声が出ちゃいました……

トリックルーム
まず桃華に求婚するマサオに笑いました!
犯人のマニッシュ・ボーイですが、スタンド能力が凶器ですからね……コナン君でも立証が難しい中、疑問を抱くまでの描写は流石でした。
しかし、ラストの失意の庭……これはや、やばいよやばいよ(CV2回目の出川哲郎)
次回の映画館……これは激闘の予感。

心の刃

自分がいるのだからルーデウスも必ずいるという自信。
なるほどなぁ〜と実にエリスだと、読んでいて納得でした。
しかし、猫をかぶるセリム……これは、ある意味時限爆弾を抱えているようなもの。
ナルト、ピンチだってばよ!

「ルーデウスはね、天才と呼ぶに相応しい魔術師なの!何が凄いのかというと、魔術を無詠唱で使う事が出来るのよ!魔術は本来なら言葉を発する事で発動するのだけれど、ルーデウスは言葉を発さなくても魔術を使えるのよ!簡単に聞こえるかもしれないけど、私がこれまで会った事のある魔術師の中で、実際に無詠唱魔術を使えるのはルーデウスだけしか見たことないわ!しかも、ルーデウスがいつ魔術を無詠唱で使える様になったと思う!?本人が言うには2歳よ!?私が2歳の時にはまだ剣も持ったことのないのに、ルーデウスが2歳の時にはもう魔術の本を読み始めて、実際に魔術を使えるようになったのよ!こんなに向上心あるなんて、ルーデウスを天才と呼ばないで誰を呼ぶのかしらね?!
 それに、ルーデウスは凄い勇気があるのよ!さっき私はスペルド族だって言ったけど、普通だったらスペルド族と聞いただけで皆殺されると思いたくなるくらい悪魔の様な存在なのよ!私も生まれて初めてスペルド族と出会った時は食べられて殺されるのだと思ったわ。でも一緒にいたルーデウスは怖がる素振りも見せなかったわ!それどころかスペルド族と話をつけてくれていたの!自分だって不安でたまらなかっただろうに、泣き叫んじゃった私をなだめてもくれていたわ!その時私は、なんて勇気のある人なんだろうと思ったわ!
 でも、私とルーデウスは生まれた時から一緒だったわけではないのよ。ルーデウスの出会いは私が8歳か9歳の時だったわね。ある日突然お父さまが連れてきて、私の家庭教師を務める為にやって来たのよ。最初に見た時は弱弱しく見えたし、年下の家庭教師だなんてバカバカしいと思ったわ。だから一発殴ってやったのよ!上下関係を教え込むには殴るのが最適だからわね!そしたらね、ルーデウスは何をしたと思う?私の頬を殴り返してきたの!こんな経験初めてだったわ!その時の私は気が動転して即座にマウントを取って殴り殺そうとしたけど、今となっては懐かしい思い出だわ。
 ルーデウスは当時から凄い人だったわ。なんでも知っていたし、なんでも出来てたわ。私に剣を教えてくれていたのはギレーヌだけれども、ギレーヌも一緒に学ぶ事が多くあって、ギレーヌも関心する程に沢山の事を教えていたわ。なのにルーデウスは自分自身も学ぼうとする意志があったし、私に家庭教師を行いつつも、獣神語や魔神語を覚えようとしていたわね。
 ルーデウスとの思い出で一番印象に残っているのはやっぱり10歳の誕生日の時ね。5歳と10歳と15歳の誕生日には大規模なパーティーを行うのが貴族の風習で、私は家族や貴族の子供達の前で踊る事になったの。けれども、私はそんな経験は無かったし、やりたくもなかったから何度も練習から逃げたわ。その度にルーデウスは私を連れ戻す為に説得してたし、私が踊れるようになる為に色々な練習を考えてくれていたわ。本番の時もルーデウスは一緒に踊ってくれて、あんなに胸が熱くなる事は初めてだったわ!」
↑いいですね〜……好きです。


639 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:14:14 zgyMGkF.0
カサブタだらけの情熱を忘れたくない

特にコンペでは、様々な未来がありましたので、このコンビに長く幸あれ―――
↑と、感想を書いていたら、まさかの展開。

「おほっ……そなた、てんで弱いの」
「修行と言っておったが、そちは今まで一体何をしておったでおじゃる?」
「おじゃ? 真剣勝負に次はないのう。かわゆいマロを守れなかったら、どうするでおじゃる?」
↑おじゃる……少し黙れ(CVクロロ=ルシルフル)

初めての食事風景

更に魔神王は、中島の死体からランドセルを外し、服を剥ぎ取るとこれもまたランドセルに入れる。
 全裸になった中島の胴を乱雑に打ち捨てると、右手に持ったままの中島の頭に空いた左手の五指を突き込み、指が頭蓋に完全に埋まったところで勢いよく手を引き抜く
 骨の割れる乾いた音と、皮膚の裂ける湿った音とが同時にし、中島の頭蓋は魔神王の掌サイズの骨と皮膚が剥ぎ取られ、内部に詰まった脳を晒した。
 柔らかい肉を食いちぎり、咀嚼する音。
 魔神王が中島の脳を食っている音だ。
 見る者がいれば、間違い無く恐慌に陥るだろう、悍ましい食事風景が終わるまで、数分の刻を要した。
↑はい、死体損壊・遺棄罪。3年以下の懲役です……って、やばいよやばいよ(CV3回目の出川哲郎ってか、ヤバイ展開ばかり続くロリショタに厳しいロワにガタガタブルブルですわ)
果たして、コナン君が魔人王を逮捕する未来が訪れるのか注視します。

この素晴らしき魔剣と契約を!

おじゃるが明らかに重石となってはいるけど、おじゃるが輝いていて、lvwRe7eMQE さんがいっていたとおり、悪くないパーティだと読んでいて思いました!
「じゃあアヌビス君、復唱!」
『私は絶対勝手に人を斬ろうとしません……』
「聞こえんなぁ!!」
『私は絶対勝手に人を斬り殺そうとしません!!』
↑このやり取り、めっちゃ好きです。

ちっぽけな僕は繰り返す

右手にポケモン。左手にデュエルモンスターズと羽蛾によってピンチだったサトシに希望の光が見えましたね。
(精々、守ってくれよ……サトシ君……頼むよ)
↑勿論、発端は長沢ですが、今の長沢の心象にグッと切なさを感じる自分がいます。
「ピカチユピカっ!チユ ピカピッカピカウカァ ピカピッカピカうチユ ピカピッカピカッ!? ピカピッカピカうゥ ピカピッカピカチュッ!
 ピカウピカカーチユ ピカピッカピカウう ピカチユッ!
 チュチユ ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカチュカァ ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカウピッカ ピカピッカピカチユカァ
 ピカピッカピカチユっ! ピカピッカピカチユゥ ピカピッカピカチユカァ ピカピッカピカ?ぴか ピカピッカピカピカピー ピカチュ!!チュピッカ ピカチュ!!ぴかッ!
 ピカピッカピカウう ピカウピッカチユチユ ピカピッカピカゥ!! ピカピッカピカウピッカ ピカピッカピカチユカァ」
↑脳内再生完璧でした!


640 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:14:30 zgyMGkF.0
臨時放送の意図を考察せよ

シカマルの頭脳が冴えわたる、正に技巧な作品で、味わい深いです!

マルフォイ……君の命運はどっちに転がるか……見ものです。

水平線の向こう側へ
別の方向だが、こちらも頭脳が冴えわたる正に巧みな作品で、味わい深いです!
そしてヤミが痴女として醜聞が広がっていっているのに笑いです。

思い描くは、ひとつの未来
「という訳で、次からその魔法は使い所を考えてください。」
「ご、ごめんなひゃい……。」

見事なたんこぶを頭に作り上げ、涙目ながら野比のび太はロキシーに謝るハメとなっていた。
↑いやぁ〜、もう、脳内再生バッチリです!

悪気はないけど、地雷を踏まれたリーゼロッテ。メガネキャラへのヘイトが溜まってきていてやばいよやばいよ(CV私の脳内の出川哲郎が酷使されています!)
ロキシー……ベッキー……
残された者たちに想いは託されましたね。

進め卑怯者
藤木の想いが溢れる描写に正に藤木の物語。
頑張れフジキング

燃えよ失意の夢

言葉が出ないほどの映画館での激闘、執筆本当にお疲れさまでした!

「女の子が、本気で、謝ってる、とき、は……わらって、ゆる、す、のが。
男の、かいしょー、だって、父ちゃんも、言ってた、ゾ………」
↑しんのすけ……漢の生きざまに涙です。

今しがた死亡した吸血鬼の友人の心臓を抉り取り、咀嚼する。
余り美味しくなかった。でも文句は言えない。
傍らの自分の仮マスターは非常に気が立っている様子だったから。
次のおやつは悪人がいいなー。そう思いながら、ジャックは野原しんのすけの心臓を嚥下した。
↑このロワ、死体損傷・遺棄罪を犯すキャラ多いっすね

追い付けないキミはいつでも

ガムテとルサルカのやり取りは、正に忍殺の本編を読んでいるかのようでした。
疒の対処が仙豆という回答に感嘆しました。
これぞクロスオーバーの醍醐味ですね。
「知ってるよ……」
↑ガムテ……


641 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:14:59 zgyMGkF.0
投下します。


642 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:15:32 zgyMGkF.0
僕からのお知らせです。
このお話はカツオお兄ちゃんが女装するだけのお話なんですよ。
興味がない人は、状態表まで読み飛ばしても特に本編には問題はないです。
タラちゃん、一体だれとお話ししているの?今、おやつの用意ができたわよ。早くいらっしゃい。
ハーイ、今いくですー♪

カツオの女装に興味がない書き手・読み手のみなさん↓
残念です……状態表まで飛ばしてください。

カツオの女装に興味がある書き手・読み手のみなさん↓
好き者ですねぇ……お読みください。

☆彡 ☆彡 ☆彡


643 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:15:59 zgyMGkF.0










まず最初は化粧下地。
これをしないと、メイクが崩れやすくまた、素肌との質感に差が生じてしまう。
いきなり、ファンデーションをつけ始めるのはNG。

なので、下地を行う前にしっかりと洗顔をしておかないといけない。
ぬるま湯で顔をすすいだ後、洗顔剤を手でよく泡立てる。
優しくマッサージをするように顔全体を優しく洗う。
額の生え際といった細かい部位の洗顔のすすぎ残しがないように注意。
タオルで拭きとる際は、こすらずにトントンと優しく水分をふき取る。
そしたら化粧水で顔全体をパッキング。
皮膚の引き締め効果が見込まれる。
化粧水で水分を補給した後は、乳液もしくは保温クリームを指で薄く顔全体に延ばして塗る。
保温の付けすぎには注意。
肌への負担がかかり、悪影響やメイク崩れに繋がるから。

次はコンシーラー。
顔のシミやクマ。ニキビ跡といった顔の欠点をピンポイントで隠してくれる。
スティックタイプとリキッドタイプで使い方は違うので、確認しておくべし。
特に女装しようと考えている男性諸君は髭……青髭を隠す重要となるので、必ず用意すること。
そうそう、フェリエも便利。
剃り残した髭や皮膚の奥に潜んだ髭まで簡単に処理できるのでコシローラーと共に用意しておくことが好ましい。
それと、刃の手前側にくるように使うこと。

肌をきめ細かくに見せるには、メイクの王様ファンデーション。
肌を美しく仕上げる。
ファンデーションを塗る際は、右ほおから右額へと片側ずつ仕上げるのがポイント。
スポンジを滑らすようなイメージで馴染ませる。
小鼻などの細かい部位はスポンジを折り曲げると便利。
塗り忘れが無いように気を付けよう。

ベースメイクを終えたら、フェイスパウダー。
ただし塗りすぎには注意。
不自然なメイクの原因はメイク用品の塗りすぎなのだから

続いてはポイントメイク。

まつ毛に行うのはアイブロウ。
眉の形によって顔全体のイメージが変わるからじっくり決めてから描こう。

まぶたに色をつけるアイシャドウ。
そうすることで、立体感を出し、目元に華やかさをプラスできる。
そうそうアイラインを描くアイランナーはできるならペン型が良い。
失敗したとき綿棒でボカシて修正しやすいから。

マスカラでまつ毛を整える。
目元を大きく見せられる。
ブラシの向きを眼のカーブに合わせ、放射状に塗る。
下まつ毛の場合はブラシを立てて使う。
まつ毛一本一本丁寧にブラシで延ばすように塗ることがベスト。

子顔効果に血色のよい健康的な肌に見せるために、ほっぺたに色味を加えるチークはプラス効果。
頬がほんのり色がついてると女の子らしさがアゲアゲ。

口紅は『ん〜』と上下の唇をこすり合わせ、『ぱっ』と開く動作を繰り返す。
これでよく馴染むようになる。
それと色溜まりしやすい輪郭の端を指で軽くなぞる。

〆は香水。
種類によって継続時間はそれぞれ違うから、そこは要注意。
太い血管の上からワンプッシュ振りかければお終い。

☆彡 ☆彡 ☆彡


644 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:16:18 zgyMGkF.0
モチノキデパート。
ここは、モチノキ町にある商業デパート。
飲食店に衣服店など、各階ごとにお店が並び、平日祝日関係なく大勢の客が買い物に訪れる。
また屋上では、子供たちの間で人気なカマキリジョーのヒーローショーが開かれたこともある。
しかし現在、閑散としている。
どの時間帯でも一定数のお客がいるはずなのに。
まるで、開店前か閉店後かの如く。

女性向け化粧品売り場のコーナー。
そこに隣接している更衣室に一人の参加者がいた。
丸刈りの少年。

―――もっとも少年だったのは先ほどまで。

「……僕は一体、何をやってるんだろう」

鏡の前で少女(少年)はため息をつく。

☆彡 ☆彡 ☆彡


645 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:16:36 zgyMGkF.0

「はぁ……はぁ……はぁ……」

カツオはデパートへ入ると、設置してあるベンチに座り、乱れた呼吸を落ち着かせようとする。
しかし、簡単にそうはいかない。
興奮した心臓の音はいまだバクバクと鳴る。
無理もない。カツオが先ほど体験した出来事は、余りにも衝撃的だったのだから。

―――それから……

カツオは、ようやく落ち着きを取り戻すと支給品の中身を確認をした。
すると、予想外な物が入っていた。

「これって……化粧道具かな?」
(なんでよりによって、僕に……嫌がらせかな?だけど……お化粧に疎い僕でも、これは凄いって分かるよ)

カツオの予想は間違っていない。
ただ、この殺し合い。
当然、普通の化粧道具が支給されたのではない。
それは帝具の一つ。
変幻自在ガイアファンデーション。

”どんなものでも変身できる”力を有するが、長らく使いこなせる者がいないため、城のただ保管されていた。
ところがある日、地方の一般家庭で生まれた一人の少女の手に渡ったのは、別のお話。

「……やるしかないか」

説明書を読み終えると、カツオは決心する。
帝具を使用することを。
不適合者が使用すると破滅をもたらすみたいだが、カツオは覚悟を決める。
なぜなら、あの金髪の少年は理解していた。

「お前も見ただろう!マグル達が殺されたり生き返ったりするのを!!
 よくあれを見て反抗しようなんて考えられるな!」

この場で生き残るにはどうするかを。
とはいえ、乃亜の言う通りに人を殺すなんて選択肢は自分にはまだない。
だけど、このままでは自分は死んでしまう。
それは、到底受け入れられない。
中島たちとまだまだ遊びたいし、父さんや母さん。それに姉さんたちとお別れなんて嫌だ。
ならば、生き残るために使えるものは使う。
とはいえ、これから行うことに、やはりどうしてもため息はついてしまう。
だが、やると決めた以上、カツオは行動する。
カツオが変身できるのは、現在二人のみ。
一人は自分を殺そうとした金髪オールバックの外国の少年。
そして、残りの一人は赤い髪のこれまた外国人みたいに綺麗な少女。
しかし、犬か猫かでいったら確実に犬。
それも、いささか先生の犬とは比較対象へとなりえないほどの狂犬。
でも、この殺し合いの場で逞しく生き抜くであろう強さを秘めていた。

「ドラコ・マルフォイか、エリス・ボレアス・グレイラット ……」

説明書に変身できる名前が記載されてる。
カツオがどちらを選択するのは、自明の理である。

☆彡 ☆彡 ☆彡


646 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:17:36 zgyMGkF.0
「だけど、とりあえずはいいかな」

自分でも驚くぐらいの大変身。
やはり、自分に女装の才能があるのではないかと錯覚してしまう。

もっとも、実際に父である波平に気づかれないほどの女装をこなしたことがあるカツオ。
不適合者が使用すると拒絶反応や発狂を起こす帝具を問題なく使用できた。

「よし、しばらくは、この子の姿でいこう」
(……とと、え〜と、あの子の口調は……たしか)

「ふん!しかたがないけど、これでいくわ!」

普段から姉のサザエや父の波平の隠し事を見破るほど人間観察に長けているカツオは、一瞬であったが、あの暴力を振るっていた少女エリスの性格、口調の推測をした。

カツオの当面の指針はこうだ。
エリスとして振る舞いつつ、ガイアファンデーションで変身できる幅を広げる。
カツオは勉強嫌いではあるが、頭の回転は非常に早く、行動力や判断力は高い。
時間はかかったが、もう使い方は理解した。
先ほどみたいに時間をかけずに変身できる自信がある。
幸い、マルフォイもエリスも自分の姿は知っているが、名前は知らないはず。
ならば、これを駆使すれば生き抜くことは可能。

これが吉と出るか凶とでるかは神のみぞ知る。

【E-3/1日目/黎明】

【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:ダメージ(小) エリスに変身中
[装備]:変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2、タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。
1:生き残ることを模索する
2:エリスとして行動しつつ、ガイアファンデーションの幅を広げる
3:ゲームに乗ったマルフォイには注意する
[備考]
ガイアファンデーションの効果でエリスに変身しています。
持ち前の人間観察でマルフォイとエリスの人となり(性格・口調)を推測しました。
じっくり丁寧に変身をしたため、次回以降は素早く変身できるようになりました。
少なくとも、「カツオのための反省室」は経験しています。

【変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る!】
カツオに支給された化粧品型の帝具。
大きさや性別、種別などは問わない為、隠密活動に非常に役立つ。
しかし、制限により変身できるのは本ロワで出会った参加者のみとなる。
その代わり、説明書に変身できる者の名前が浮かび上がり記載される。
「カツオはどうした?お友達が待っているというのに」by波平


647 : hemligheter får män att bli ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 01:17:47 zgyMGkF.0
投下終了します。


648 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/28(日) 13:57:25 YaKahEnA0
投下お疲れ様です。
また感想の前に、ご指摘になってしまうんですが、すいません。

先ず、時間を進めるのは問題ないと思います。
全員、既に候補話で深夜の時間帯を描写されてるので、これを期に他の書き手様もガンガン黎明の話を書いていいと思います。

ただカツオは既に乃亜の放送を聞き、中島の死を知っている筈なので何か反応がないとおかしいかな、と。
ですので、放送後の反応だけ冒頭に入れた方が良いかと思いました。
お手数ですが、ご確認お願いします。

あと、孫悟空、キャプテン・ネモ、神戸しおで予約します。


649 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/28(日) 14:41:14 YaKahEnA0
もう一つ、ご報告させていただきます。
ポケモンの支給について、新しくルールを追加しましたので、ご確認お願いします。


【ポケモンの支給について@アニメポケットモンスター】
遊戯王のカードとは違い、それぞれが明確に意思を持つ存在である為に、登場数にルールを設けます。


『ポケモンの登場は先着五匹まで』

以下が、現在の登場しているポケモンになります。

〇サトシのピカチュウ/〇フェローチェ(SM編第114話に登場した個体)/〇/〇/〇

実質、残り3枠となります。


『2023/5/28以降、ポケモンを支給品として登場させられる書き手様は、当企画に於いて候補話を除き、本編を6話以上書いて頂いた方のみに限定させて頂きます』


『書き手様一人につき、ポケモンを登場させられるのは一匹のみとする』
既にポケモンを支給した以下の書き手様は今後、ポケモンを新しく支給させることは禁止とさせて頂きます。

◆lvwRe7eMQE(私)
◆s5tC4j7VZY様



『伝説のポケモンなど、ロワを破綻させたり、今後の本編執筆に支障をきたすようなポケモンには別途制限を課すこと』
これは参加者、支給品、全てに共通する制限とさせて頂きます。ポケモンも例外ではございません。



ルール設定時に、完全にポケモンの事を失念していたので、後付けルールで公平性に欠けてしまうものとなりました事を、お詫び申し上げます。
◆s5tC4j7VZY様にも事後承諾となってしまいますが、ご了承願います。


650 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 15:26:55 zgyMGkF.0
ご指摘ありがとうございます。
すみません。第0放送で中島の死が伝えられていることを失念しておりました。

無理もない。カツオが先ほど体験した出来事は、余りにも衝撃的だったのだから。
           ←この間に文を追加します。
―――それから……

↓追加する文

「中島……」

カツオは悲しみに打ちひしがれる。
乃亜による放送で、親友の名前が呼ばれたからだ。

おーい磯野ー! 野球しよーぜ!

もう二度と一緒に野球で遊ぶことができない。

中島、大人になっても年賀状を出し合おうな

もう、二度とお互いに年賀状を出し合うことができない。

「なんで……どうして、こんなことにまきまれてしまったんだよぉ!」

静寂なデパート内に少年の慟哭が響き渡る。

また、以下の文を修正します。

中島たちとまだまだ遊びたいし、父さんや母さん。それに姉さんたちとお別れなんて嫌だ。←この文を

父さんや母さん。それに姉さんたちとお別れなんて嫌だし、何よりも中島の死を中島の両親に伝えないといけない。


651 : ◆s5tC4j7VZY :2023/05/28(日) 15:32:08 zgyMGkF.0
最後に状態表ですが、中島の死に合わせて微修正いたします。

【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:ダメージ(小) 悲しみ(大)、エリスに変身中
[装備]:変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2、タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]
基本方針:中島のことを両親に伝えるためにも死にたくない。
1:生き残ることを模索する
2:エリスとして行動しつつ、ガイアファンデーションの幅を広げる
3:ゲームに乗ったマルフォイには注意する
[備考]
ガイアファンデーションの効果でエリスに変身しています。
持ち前の人間観察でマルフォイとエリスの人となり(性格・口調)を推測しました。
じっくり丁寧に変身をしたため、次回以降は素早く変身できるようになりました。
少なくとも、「カツオのための反省室」「早すぎた年賀状」は経験しています。

お手数おかけしました。
それと、ポケモンの支給について承知いたしました。


652 : レース開始ィィィ ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 16:47:08 UypqlJ.Y0
投下します


653 : レース開始ィィィ ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 16:47:21 UypqlJ.Y0
夜闇に流れる少女の歌声。
 殺し合いの舞台には到底相応しくはないが、歌っているの者の名がグレーテルであれば話は別だ。
 つい先程、1人の少年を、人の形を留めぬ程に、嬲り抜いて殺してのけたグレーテルならば、この様な場で歌を口ずさむのも頷ける。
 まるで天使の様な歌声は、哀れな犠牲者を引き寄せる為のものか?否、グレーテルにそんな考えは存在しない。只々、高揚する気分が、歌声となって現れているだけだ。
 血塗れの姿で、笑顔を浮かべながら歩く姿は、背筋が凍り付きそうな程に悍ましいが、幻想画の題材になれそうな程に妖美でもある。
 足取りも軽く、ステップを踏む様な足取りで歩いていたグレーテルは、ふと足を止めた。
 春の陽気に浮かれて、外へと繰り出した者が、玄関の鍵をかけ忘れたのに気づいて、足を止める。ちょうどそんな感じの止まり方をした。

 「ああ、いけない。兄様も此処に居るのだから競争になるわ。証拠を用意しておかないと」

 笑顔を浮かべて、グレーテルは元来た方へと引き返した。



 「えい」

 小さな掛け声と共に振り下ろされた手刀が、ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵の死体へと振り下ろされ、首と胴を切り離した。

 「兄様の斧より良く切れるわ」

 人体でも最も重い頭部を支える為に、太く頑丈に出来ている頸骨すらも容易く切断した手刀に、グレーテルは改めて感心した。
 上機嫌で、鼻歌混じりに切断した頭部を、左耳を掴んで持ち上げると、顎が力なく開き耳元まで切り裂かれ、歯と歯茎が剥き出しになった頬から舌が垂れ下がった。
 
 「これが無ければ、証拠にならないもの」

 此処で行われているゲームは、ハンティング・レース。獲物を見つけ、狩り立て、仕留めたその数を競うもの。全員が狩人で、全員が獲物のデス・ゲーム。
 ヘンゼルも此処にいて、同じく狩りに励んでいる。そうなれば、再開した時にするのは殺した数の較べ合いだ。その時に証拠となる首輪は、持っていっておくべきだろう。

 「本当に便利な能力。首輪を集めるのに困らないわ」

 ────兄様も、首輪を散るのに苦労していないなければ良いけど。
 
 そんな事を考えながら首輪に手を掛けて抜き取ると、用済みになった頭部を乱雑に投げ捨て、再び次の獲物を探そうとして、乃亜の声が聞こえてきた。


654 : レース開始ィィィ ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 16:48:00 UypqlJ.Y0



 「五人ね」

 乃亜の放送を聞いて、グレーテルの感想はこれだけだった。
 殺しのプロが5人纏めて殺されたという情報も、グレーテルにはこの程度のものでしかない。
 室内に居るところに爆弾を投げこむなり、固まって移動している時に機銃掃射を浴びせるなりすれば、5人が10人になっても殺し尽くせる。
 少なくともグレーテルの愛用品であるBARの様な武器が、支給品として用意されていれば、状況次第では幾らでも可能では有る。
 その為、グレーテルは全くこの情報で動揺する事は無かった。
 そんな事よりも重要なのは、誰かは知らないが、この競走で今現在の一位は『五人』。少なくとも更に五人殺さなければ、グレーテルは一位にはなれないという事。
 5人を殺したのがヘンゼルかも知れない以上、グレーテルは悠長に構えていられない。早急に、数を稼ぐ必要が有った。

 「とは言ったところで……そうよ」

 タブレットを取り出すと、島の地図を閲覧する。人が集まりそうな場所は何処か?人が目指しそうな場所は何処か?
 速やかにその場所に移動して、既に人が居れば上手いこと近づいて殺害。居なければ待ち伏せするだけだ。

 「今いる場所はD –7……近くに良い場所が有るじゃない。丁度『コレ』を使えるし』
 
 グレーテルはニンマリと笑うと、腰を屈めて『ある物』を拾い上げると、早速その場所を目指して歩き出した。



 「着いた」

 グレーテルが当面の狩場と定めたのは海馬コーポレーション。海馬乃亜に関係すると考えられるこの施設ならば、乃亜の言っていた『対主催』が集まってくるだろうし、『対主催』を狙って『マーダー』もやってくる筈だ。此処ならば一気に数を稼げるだろう。

 「何かしら、ガーゴイル?」

 正面玄関に設置された二体の巨大な像を見たグレーテルの印象は、変わった形の大きなガーゴイルだった。
 二つの像の間を通り、玄関からエントランスへと入り、物珍しげに周囲を見回す姿は、年相応の子供にしか見えない。
 服が乾いた血で赤黒く染まっていなければ、だが。

 「どうしようかしら?中で待つ?外で待つ?」

 内部で適当な場所に潜んで待ち受けて、やってきた者を襲撃する。若しくは外に隠れておいて、建物内に入った所を襲う。
 前者ならば不意を衝く事が容易だし、内部に罠を仕掛けておく事もできる。後者ならば退路を断てる上に、建物内に入ったところで、入り口付近に火を着ければまず確実に殺せる。

 「うーん」

 グレーテルが悩むのには、理由が有った。

 「何方の玩具で遊ぼうかしら」

 目の前にある二つの支給品。此処で遊ぶのに適した二つの品。
 一つはグレーテルの支給品『ダンジョン・ワーム』。建物の中でしか使えない代わりに、クールタイムが存在しないという特性を持つカード。建物の床下を移動する為に壁などに遮られる事なく、何処までも獲物を追い、捕食する巨大ミミズだ。
 そしてもう一つ、巨大なタンク付き火炎放射器『煉獄招致ルビカンテ』。さっき殺した少年の支給品だった物だ。
 この重量と大きさは、幾らグレーテルでも扱えない。地面に置いて、固定砲台として使うとなると、必然的に外で使う事になる。
 外で待ち伏せして焼き殺す。安全だが面白みに欠ける。
 中で待ち伏せして、モンスターと一緒に殺す。色々と遊べるだろうが、人数次第では逃げられるし、何より危険に身を晒す事になる。

 「中で待ち伏せして後ろから襲えば良いわ。適当な子を捕まえて、残りは燃やしてしまいましょう。まぁそれはそれとして」

 グレーテルは持ってきた少年の首を、海馬コーポレーションの玄関口に聳え立つ、二体のガーゴイルの間に置くと、隠れ場所を求めて建物の内部へと歩いて行った。


655 : レース開始ィィィ ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 16:48:45 UypqlJ.Y0
【E–7@海馬コーポレーション】

【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:江雪@アカメが斬る! スパスパの実@ONE PIECE ダンジョン・ワーム@遊戯王デュエルモンスターズ 煉獄招致ルビカンテ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:兄様と合流したい
2:手に入った能力でイロイロと愉しみたい。
3;此処(海馬コーポレーション)にやって来た子を殺す
4:適当な子を捕まえて遊びたい
[備考]
・海兵で遊びまくったので血塗れです。
・スパスパの実を食べました。
・海馬コーポレーションの内部に潜んでいます

海馬コーポレーションの正面玄関前に、ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵の頭が置いてあります

E–7の何処かにジュエリー・ボニーに子供にされた海兵の頭部の無い惨殺死体と、空のランドセルが放置されています。


『支給品解説』

ダンジョン・ワーム@遊戯王デュエルモンスターズ
星5/地属性/昆虫族/攻1800/守1500
迷路の地下に潜み、上を通る者を大きな口で丸飲みにする。
このロワでは建物内部でしか召喚出来ない。建物内では壁や扉を無視して移動してくる。
グレーテルの支給品

煉獄招致ルビカンテ
火炎放射器型の帝具。重量と大きさの為に、余程の筋力が無いと持って使用することが出来無い。
奥の手のマグマドライブは一度使用すると三時間使用不能


656 : レース開始ィィィ ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 16:49:01 UypqlJ.Y0
投下を終了します


657 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/28(日) 17:42:10 FCCmx0K60
カオス、絶望王(ブラック)
予約します


658 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/28(日) 18:29:44 L2MvbCZ20
シャーロット・リンリン(幼少期)で予約します


659 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/28(日) 19:35:03 L2MvbCZ20
投下します


660 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/28(日) 19:35:55 L2MvbCZ20


「う〜ん、どうして乃亜はあんな事言うんだろぉ?」

いずれ未来における暴君として君臨することになる少女、シャーロット・リンリン。
大地を震わせ進みながらも、先程流れた乃亜の言葉を、彼女なりに考えてはいた。
少なくとも、人死が出ている時点で、リンリンとしてもこの状況下が何なのかであるかは、多少は理解はした。
多少は、ではある。

「みんなと遊びたいだけなら、こんな事しなくてもいいのに……。」

多分、みんなと遊びたかったんだと思う、というのがリンリンの考え。
たった一人でおもちゃ遊びに興じているような、そんな孤独感というか疎外感というか。

「マザーと会えなかったら、おれもああだったのかなぁ?」

自分を時に窘め、時に導いてくれたマザー・カルメル。第二の母親。
少なくとも自分がみんなと仲良くなることが出来たのは彼女あってこそ。
今はどこにもいなくなってしまったが、もしかしたらこの場所にいるかも知れない。
もしかしたら乃亜の所にいるのでは? 等と多少は思い始めていた。
乃亜は、真っ当な親が欲しかったのかもしれない、なんて思った。
正しく導いてくれる人がいなくて、こうなったのかもしれない。

「そうだったら、やっぱり止めないと。」

だったら止めないと、そうリンリンは幼稚な頭ながらに決意した。
こんな事をするぐらいしか満たせない孤独な心。答えはそうなのかは知らないけれど。
どうせなら、乃亜を止めて、お友達になりたいと。
マザーが自分にしてくれたみたいなことを、今度は自分がやるのだと。
そしてみんなで、仲良くテーブルを並んでおやつを食べれればいいな。

「だから、悪い奴はみんなこのおれが懲らしめてやるんだから!」

そうと決まればやることは簡単。考えを共にする他のみんなを集めて協力して。
喧嘩してるなら仲良くさせて、悪いやつは反省させて、元凶の乃亜も反省させて最後にみんなでおやつを食べよう。
幼稚で、世界の真の姿を知らない純真な願いを望む年相応の少女の姿がそこにあった。

「そういえば、この"よじげんらんどせる"ってのに、色々入ってるんだったよね?」

方針を決定した直後に、乃亜によって支給された赤い容れ物、『四次元ランドセル』を思い出して、その中身を手探りに確認する。
そういえば四次元ランドセルの事は説明書以外で全く説明してなかったような気がするが、まあいいやとスルー。
そして取り出してみれば、入っていたのは一枚の紙切れ。

「なにこれぇ?」

紙切れ、というよりは手紙のようなものだとは思った。
説明書には『エリスの置き手紙』と書いているが、気になって広げて見てみることにした。


661 : I wanna be the Friend ◆2dNHP51a3Y :2023/05/28(日) 19:36:15 L2MvbCZ20








『今の私とルーデウスでは釣り合いが取れません。旅に出ます』








「……えぇ……。」

一行ほどの、妙に汚い文字。それでも当人なりに心を込めたというのは何となく理解したが。
その後の説明書の記述で、さらなる事実を知り、リンリンは子供らしからぬ呆れた顔で引いた。
エリスという少女が、ルーデウスと言う少年と釣り合いが取れる女になるために一人旅に出る決意の、それを伝えるための手紙だが。

「いや、ダメでしょ、これ。」

簡潔過ぎて誤解を招きやすい内容だった。
せめて『自分を鍛えるため』とか『自分は未熟だから』とかの一文付け加えればよかっただろうに。
リンリンはまだ顔も素性も知らぬルーデウスという少年に同情した。
EDが何なのか知らないけれど病気のようなものだと勝手に解釈した。
はっきり言ってルーデウス視点で見捨てられた、ということなのだ。リンリンからすればなんかよくわからないうちにマザーや他の子供たちに見捨てられたとかそういう事だ。自分だったら明らかに心が壊れそうになる。

「これは、もし出会えたら、ちょっと説教、かなぁ?」

兎も角、このエリスという少女が、何というか頭足りないっていうか、「ルーデウスって人滅茶苦茶ショック受けてるよ」的なこと伝えないと後々大変になりそう感があった。
まず、そもそもエリスという少女がいるのかどうか全くわからないわけであるが。
まあその時はその時だし、エリスという少女にはちょっと説教しないといけない。マザーもよく自分が変なことしたら色々言ってただろうから。
後はルーデウス、この少年ももしいるかどうか分からないが、万が一出会えたならばちゃんとエリスの真意を伝えてあげなければならない。少なくとも悪意はなさそうだからちゃんと伝えればルーデウスという少年も安心するだろう。

「他にも何か……んん?」

まあエリス、ルーデウスの件は一旦置いといて他にも中身を探る。
今度は、丸い機械のようなもの。球状のガラスらしき表面には、今の位置の自分らしき赤い点。
名称は『首輪探知機』。どうやら首輪をつけている参加者を探すことの出来るアイテムらしい。

「すごい! これがあれば、みんなを見つけられるかも!」

仲間(ともだちになれるひと)を探していたリンリンにとっては正に天からの授かりもののようにも思えた。
これを使えば、他のみんなを見つける事ができる。もしも悪い奴だったら反省させればいいだけだし、それ以上のことは深く考える必要もない。

「さぁて、何処に行こうかなぁ?」

探知機には自分以外の反応はない。どうやらこのエリアには他の参加者はいないらしい。
だが、それはそれとして、何れ暴君となりうる少女は高らかに足取りを進めるのであった。


【一日目/深夜/D-5】
【シャーロット・リンリン(幼少期)@ONE PIECE】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし、
[道具]基本支給品ランダム支給品1、ニンフの羽@そらのおとしもの(現地調達)、エリスの置き手紙@無職転生、首輪探知機@オリジナル
[思考・状況]基本方針:喧嘩(殺し合い)を止める。
1:喧嘩をしてる人を見付けたら仲良くさせる。悪い奴は反省させる
2:他の人を探して仲間(ともだち)にする。
3:出来れば乃亜とも友だちになりたいなぁ。
4:この手紙を書いたエリスって娘にはお説教が必要かなぁ? いるかどうかわからないけど。
5:もしルーデウスって子にあったらちゃんと伝えておかないと、じゃないとちょっと可哀想。こっちもいるかどうかわからないけど。
[備考]
原作86巻でマザー達が消えた直後からの参戦です。
ソルソルの能力は何故か使えます。


【支給品紹介】
『エリスの置き手紙@無職転生』
シャーロット・リンリンに支給。エリスが自らの未熟を悟り、ルーデウスと肩を並べられるようになるために旅に出た際、ルーデウスに対して残しておいた手紙。
ただし、内容が内容だったためにルーデウスはエリスに見捨てられたと勘違いしEDとなった。説明書にはエリスの手紙の真意及びその後のルーデウスの状況も明記されている。

『首輪探知機@オリジナル』
シャーロット・リンリンに支給。自分がいるエリア内にいる生存参加者の首輪を探知することが出来る。
ただしそのエリア内にいるというぐらいしか分からず、死者の首輪には反応しない。


662 : ◆2dNHP51a3Y :2023/05/28(日) 19:36:26 L2MvbCZ20
投下終了します


663 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/28(日) 19:54:10 1GLGvlOk0
すみません、企画主様、少しお願いをよろしいでしょうか?
>>649に書かれているポケモンの制限についてですが
実を言うと私が予約している我愛羅のssでポケモンを使おうと思って予約していたのです。
という訳で、このルールがあると内容を変更しなければいけないという事は分かったのですが
出来ればの話なのですが、そのポケモンの制限がされる前に予約していたssについてはその制限の対象外にして頂けると嬉しいのですがよろしいでしょうか?
もしダメならばポケモンを出す事を潔く諦めます


664 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/05/28(日) 20:31:52 UypqlJ.Y0
グレーテルの状態表に欠落が有りましたので、wiki編集の際に修正しました


665 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:09:42 P9DIKoXE0
短めですが投下します。


666 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:10:24 P9DIKoXE0
(何処だ…何処に居る禰󠄀豆子…禰󠄀豆子はおろか他の参加者にすら出会えぬとは、苛立たせてくれる…!!)

ゲーム開始から1時間が経過しようとしていた現在。俊國こと鬼舞辻無惨は焦り苛立ちを隠せずにいた。
もしかしたら参加させられてるかも知れない、自らの支配から脱し太陽を克服した鬼竈門禰󠄀豆子を探し喰らおうと考えていたのだが、禰󠄀豆子はおろか他参加者にすら出会えぬまま時が過ぎていってたのだ。
支配から脱されている以上、位置の把握や視界のジャックを禰󠄀豆子に使う事は出来ない為本当に参加させられてるのかも分からないので、自らの身一つで探す羽目になっている。
そんな状況とあれば、癇癪持ちである無惨の苛立ちと焦りが高まるのも無理はないだろう。最もそのせいで彼はまだ、自らの支給品を確認する事すら忘れているのだが。

『やあ、諸君……バトルロワイアルを開始してから1時間ほどだが、君たちは実に聞き分けが良いよ。既に10名以上が脱落しているのだからね。』

そんな中、無惨からすれば神を気取る愚かな子供である海馬乃亜の放送が流れ始め…無惨はそれに耳を傾ける事とする。

(神を気取った節穴の貴様の言葉を黙って聞かざるを得ない事は腹立たしいが、禰󠄀豆子の名が呼ばれる可能性もある…聞くしかないだろう)

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667 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:11:12 P9DIKoXE0
放送を聞き終えた無惨は、まず禰󠄀豆子の名が呼ばれていない事にひとまずは安堵していた。

(1000年かけても一向に見つからない青い彼岸花が無くとも、太陽を克服出来る可能性がようやく見つかったのだ…それを摘まれてない事を知れたのは収穫と言えるだろう。……だが……!)

しかし無惨は怒りを見せる。

(『バトルロワイアルは子供に当て嵌まる者を集めた殺し合いだ。それは容姿でもあり、年齢でもある、それが君達の共通点さ。』
…なら尚更何故私を集め巻き込んだ!海馬乃亜ァ!!擬態を解こうとしてた所だというのに!!!先も言ったが何故待てなかった!?!?下らぬガキが!!!!)

察していたとはいえ悪い意味で想定通りに、擬態をしていたが為に乃亜の基準に当てはまってこんな下らない催しに自分が巻き込まれ、更に禰󠄀豆子まで巻き込まれているかも知れない事が判明したという事実に無惨は苛立ちと怒りを再び沸かせる。

(大体、ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵だの割戦隊の五人だの、意味不明で巫山戯た名前の呼び方を…神を気取るだけはある何処までも愚かな下らぬガキのようだな海馬乃亜貴様は…!!
そもそも何故名簿の配布を5時間後、しかも日の出が来ているであろう時間にした!!太陽の光を浴びると死ぬ私への当てつけか!?選定基準からして禰󠄀豆子や、玉壺を討ったあの鬼狩りの柱(時透無一郎)なら巻き込まれている可能性があると云うのにそれを知るには日の出が過ぎるまで待たねばならぬとは…何処までも私を苛立たせる…!!!!
『僕は優秀な者には、相応しい評価を与えるつもりだ。』だと!?貴様の評価など必要ない!!どうなろうと貴様は確実に殺してやるぞ海馬乃亜!!!」

そう内心では怒りが沸騰状態になっており、途中からは思わず声に出ていた無惨だが、一通りキレ散らかしたのもあって思考は多少冷静に戻り、タブレットを操作。メモ機能を使いこなしていく。


668 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:12:00 P9DIKoXE0
(…苛立ちばかり積るが今は情報を整理せねば。
まずは…割戦隊の5人を奴は殺しのプロと呼んでいた。それが纏めて殺されたと言っていたのを信じるならば、この1時間の内にあっさりと皆殺しにされたという事…あの耳飾りの剣士(縁壱)程ではない…と思いたいが、ともかく殺し合いに乗った手強い参加者が居る可能性が高いと考えるべきだろう。
更に時間の経過と共に、禁止エリアとやらを設定すると奴は言った。まさかずっと夜が続くと云う訳でもあるまい。夜が明ければ屋外には出れぬ私にとっては何処までも不利と言えるだろうな…苛立たしくて仕方がない…!!

生き抜くために正体を隠し、他の参加者達の中へ潜伏するにしても…慎重に動かねばならない。身も心もガキならば兎も角、今の擬態している私のように、外見だけが子供な参加者だと…日を浴びると爛れる皮膚病なのだと欺き通せる相手ばかりでは無いだろう。それに必然的に行動範囲も狭くなってしまう……ここまで私に不利な状況だと、あの鬱陶しい異常者共の鬼殺隊や、元締めの産屋敷の介入を疑いたくなるが……。
……それはないな。奴らならば、このような殺し合いに巻き込む前に私を殺しているだろう。頭が狂いでもしない限りはわざわざ生かした上で巻き込む理由が無い筈だが…禰󠄀豆子やあの柱が巻き込まれているか否かが分かるのなら兎も角、異常者の考えは私には想像がつかぬ以上、考慮せざるを得ないか…。)

腐っても1000年間人の中に擬態し紛れ生きて来た無惨からすれば、新しい物を使い順応する事は造作もなかった。
そうしてメモ機能に箇条書きで書き込む無惨であったが、鬼殺隊の事を考えたのもあってここでふと疑問が生じた。


669 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:12:40 P9DIKoXE0
(…喋れない禰󠄀豆子ならば兎も角、万が一あの柱が巻き込まれていた場合……名簿に私の名前がどう載るのかで今後の振る舞いも変わる事になるのではないか?
…俊國とだけ書かれるのならどうにでもなる、だがもし鬼舞辻無惨と書かれるか、或いは俊國としての名前と鬼舞辻無惨としての名前が同時に書かれたりすれば……柱が巻き込まれていると悪評を垂れ流され更に私は不利となる…おのれ海馬乃亜ァ!!何故5時間も待たせる!!!何故待つ必要が……疑心暗鬼にさせ要らぬ心配をかけさせる為という事か!!!神を気取る愚かなガキめ!!!」

ひとりで早合点しまた怒りを抱きながら、思わずタブレットを壊しそうになるも、どうにか抑える無惨。

(…一先ず5時間後の放送までは、殺し合いに乗っていない参加者と遭遇した際はこの擬態の通り、俊國として振る舞うとしよう。
禰󠄀豆子やあの柱が巻き込まれているか、巻き込まれていないか…何方にせよ今は慎重に動くべきだ。
…それに、奴を、海馬乃亜を始末する為にはこの忌々しき首輪をどうにか無力化する必要もある。
青い彼岸花の秘薬を精製する為に研究はしてきたが、分野が違う以上は何処まで通用するか……参加者の死体を見つけた場合は首輪を回収するとする。
…他の参加者を鬼にすれば、とも思うが…首輪がある以上、視界を奪ったり位置を把握したり心を読んだりが正常に動くか怪しい所だ。元より好き好んで増やす気など毛頭ない同族。状況にもよるが基本は殺害に留めておこう)

怒りをゆっくりと落ち着かせようとしながら考えていた無惨はここで、今の今まで確認を忘れ去っていた支給品に考えが及ぶ。


670 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:13:16 P9DIKoXE0
「…海馬乃亜め、私に何を支給したと言うのだ」

ここまで逆風のように自らに降り掛かっている不利な要素を思い毒付きながら、バッグの中身を無惨は確認する。
…その中にあった、一つの日本刀に目が行った。無惨は説明書を見る。

「…捩花か、解号を告げれば槍になる斬魄刀で、志波海燕と言う死神の武器……?」

生まれつきの病弱であり、死産寸前のところで息を吹き返したものの鬼にならねば20歳にすらなれず亡くなる筈だった、生まれついて死が身近だった男であると言えるだろう無惨。
そんな彼からすれば、死神という存在が振るう刀を支給された事は一種、嫌がらせのように思えた。また彼からすると日本刀を支給されたのには、正体を秘匿しながら生き延びたければ自らの命を狙う異常者共である、鬼殺隊の真似事をしろとでも言わんばかりの悪意を感じたのである。

(……腸が煮えくり返る気分だが、私が正体を隠し、襲撃者に対応する為には有用な支給品だろう…この刀で海馬乃亜、貴様の首を切り捨てるのも悪くはない…神を気取る思い上がった貴様に、永劫に生き続ける私が、神罰など有りはしないと思い知らせてやろう!!)

改めて海馬乃亜を殺し、どんな手段を持ってしてでも生き延びると決意した無惨は、タブレットを再び使いマップを確認する。

(温泉や映画館は兎も角、ホグワーツ魔法魔術学校…??何だそれは…)

近くにある建物を確認した上で、鬼舞辻無惨は何処へ向かうかと考える。
彼が放送を迎えれるかどうかは、ここでどの方角へと向かうかの選択が大きく関わってくる…のかもしれない。


671 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:13:53 P9DIKoXE0
【D-2/1日目/深夜】

【鬼舞辻無惨(俊國)@鬼滅の刃】
[状態]:健康、俊國の姿、乃亜に対する激しい怒り。警戒(大)。
[装備]:捩花@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:手段を問わず生還する。
0:まずはどの方向へ向かうか…。
1:もし居れば、禰󠄀豆子を最優先で探索し喰らう。死ぬな、禰󠄀豆子!
2:脱出するにせよ、優勝するにせよ、乃亜は確実に息の根を止めてやる。
3:首輪の解除を試す為にも回収出来るならしておきたい所だ。
4:禰󠄀豆子だけならともかく、柱(無一郎)が居る可能性もあるのでなるべく慎重に動きたい。
5:何にせよ次の放送までは俊國として振る舞う。
6:何故私に不利になりそうな状況ばかりになるのだ…!!
[備考]
参戦時期は原作127話で「よくやった半天狗!!」と言った直後、給仕を殺害する前です。
日光を浴びるとどうなるかは後続にお任せします。無惨当人は浴びると変わら死ぬと考えています。
また鬼化等に制限があるかどうかも後続にお任せします。

【捩花@BLEACH】
志波海燕が振るう斬魄刀。普段は日本刀だが、水天逆巻「捩花」と解号を告げると始解の三叉槍の形へと変わる。
流水系の斬魄刀で、槍撃だけでなく、波濤を引き起こす事も可能。
海馬乃亜によって調整され、本来の持ち主で無くとも始解まで使用可能となっている。
なお卍解はBLEACH本編に未登場な為乃亜の調整やらが無くとも不可能。


672 : ◆8eumUP9W6s :2023/05/28(日) 21:14:31 P9DIKoXE0
投下終了します、タイトルは「命を守るための戦い」です。


673 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/28(日) 22:22:29 YaKahEnA0
>>651
ルール変更の都合、実質無断でポケモン枠を消費させてしまい、申し訳ありませんでした。
お手数をお掛けしますが、今後ともよろしくお願いします。

>>663
出すポケモンは一体だけでしょうか? でしたら、今回のみOKとします。元から後付けのルールですので。
ただ、あまりにも企画の進行に支障に出ると判断した場合、NGになる可能性は少なからずございます。
しかも、その支障も今の時点では想定しきれないので
投下頂けた作品を読んでみない事には、明確にはお答えできません。
それでも、ご了承いただけるでしょうか?


674 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/28(日) 22:44:31 dR12wpZc0
>>673
了解です、出すポケモンは一体だけでございます。
特例を認めていただき、ありがとうございます。
必ず期限内に投下しますので、よろしくお願いいたします


675 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/28(日) 22:49:38 YaKahEnA0
>臨時放送の意図を考察せよ
放送の煽りを真に受けてしまう梨沙と、冷静に乃亜の真意を掴もうとするシカマルに、場数と住んできた世界の違いが表れてますね。
実際にはシカマルの想定は間違ってなく、殺し合いに抗う参加者は多いですから、悪くない判断ではあるんですよね。
その推測をした次に絶望王に出会うのは何て言うか、アレですが……まあ、今のとこがっつり乗ってる訳じゃないですからね。
灰原とも合流出来ましたしね。あと、マルフォイ、早く起きるフォイ。

>水平線の向こう側へ
もう、キウル君の性癖はボロボロ……ディオが頑張ってタブレット使ってるのに、何てことを……。
しかし、ディオが慢心せずに頭を回すのも、かなり新鮮に見えますね。下手にパワーアップしない方が慎重で長生きしそう。
ただモクバ、ドロテアと考察要員と出会えたのは幸先が良いかも。ディオともモクバなら、良好な関係を築いて利用し合えそうですしね。
あとドロテア、自覚はあるんスね。それにキウルとディオまだ敏感状態なのか……あっ(察し)……。

>思い描くは、ひとつの未来
強い(確信)。
相手も一流の魔術師であるロキシーですが、それでも全然余裕で戦うリーゼロッテは、流石年季が違うますね。亀の甲より年の劫とはよく言います。
しかし、ロキシーを始め、のび太もニンフもベッキーも黄金の精神を持っていましたからね。制限と支給品の力はあれど、リーゼロッテを退けたのは凄い。
でも、相手も不死身の魔女、この程度じゃ死なないし死ねないからこその魔女なんですよね……。イリヤときらきーの到着がもう少し早ければ……。
本人もみんな大真面目なんですけど、リーゼロッテの特定キルターゲットが全員眼鏡なの草。

>進め卑怯者
進むな! その先は地獄だぞ!!
あと、お前の作戦そんな完璧かな……。
敗戦の後で、殺しのプロが死んだって聞いてもフジキングは強いと言い張る度胸を対主催側で発揮すれば、ワンチャンあったかもしれないのに。
妙なとこで思い切りが良く、間が悪いのは藤木なんでしょうね。

>燃えよ失意の夢
ジャックちゃん、何だこのクソガキを超えたクソガキは!? 邪悪過ぎんだろ。
ジャック・ザ・リッパーに、平成(もう令和)のホームズの愛用するアイテムが支給され、しんのすけ殺害に悪用されるなんて皮肉も良いとこですね……。
右天君、正直これは可哀想過ぎる。支給品にまともな説明書を入れろよ、なめやがって…! でも、パンドラの箱は開いちゃったんだよね。
何だこのクソ主催を超えたクソ主催は!? 参加者も主催もクソガキしかいねェのかァ!!?
さりげなくゼオンのトラウマも刺激されるし、ろくなアイテムじゃないですねこれ。でも、桃華に黄金の精神を伝えたように人の心で在り方も変えるんでしょうか。
桃華の不安を支えるようにフォローする写影、滅茶苦茶良いっすね。これが、この時点のゼオンにはなくて、知らない力なんですよ。
あとマニッシュ・ボーイ、やっぱお前人選ミスやぞこれ……。マサオで、どう殺し合い切り抜ける気だったんやこいつ。
しんちゃん、こんなクソガキだらけの中で漢だった男……ネタ抜きにフランを許してあげるしんちゃんは良い子過ぎる……。

>hemligheter far man att bli
中島の死を悲しみながら、それを家族に伝える為に生き残ろうとするカツオ。彼も彼なりに戦ってるんでしょうが、女装は発想が斜め上過ぎるんだよなあ。
本人は至って真面目なんでしょうが、エリスに変装してバレた後の考えると、ヤーバイでしょこれ。
バレて今度はエリスに殴られないと良いんですが、バレたらマルフォイ化してもおかしくないですからね。


676 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/28(日) 22:50:27 YaKahEnA0

>レース開始ィィィ
一般参加者はどいてた方がいいぜ! この会社は戦場と化すんだからよ!
モンスター仕込んだり、生首飾ったり、やりたい放題過ぎる。「えい」で首を落すな! 
別に殺人数を競うゲームじゃねえから! 唐突に私ルール作って別ゲー始めだすこの女、今、最もこのロワで自由な女だと考えられる。
それはそれとして、グロ描写を始め、冒頭みたいに、グレーテルの動きをこういう詩的な描写で表す、情景の描写が非常に繊細で上手です。

>I wanna be the Friend
リンリンにすら駄目出しされる女、エリス・ボレアス・グレイラット、今最もロックな女。
思考自体は凄い善良で、洞察力も幼いながらある。乃亜の背景をちゃんと推測してますし、既に人の上に立つ人間としての才覚が発揮はされてるんですよね。
結果的にそれが全部破壊に繋がっちゃう、何処ぞの聖杯みたいな事になっちゃうんですけど。
あと、ルーデウス、こんな支給品のせいで、EDのこと言いふらされるのかこれ……まだ、EDじゃないのに……。しゅ、主催からの嫌がらせが多すぎる……。

>命を守るための戦い
ただ一人、神に抗いし男、無惨様。こいついつもぶちぎれてんな。
思考が声に出ちゃうの、もうやる夫と同レベルなんよ。そんな無惨様ですが、ディオやセリムが悪戦苦闘していたタブレットを使いこなしてるのは流石なんですよ。
本当は頭が良いんです。ただ、怒りやすいだけで。
ロワの進行、何から何まで不利だったり、支給品も悪意あったりで笑うしかないですね。

>>674
楽しみにお待ちしております!


677 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:09:32 V9FVlGIQ0
投下します


678 : この甘い世界嘘になるなら ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:10:43 V9FVlGIQ0


「しお、きみは殺し合いに乗ってしまったんだね」

「……ごめんなさい」

「それがどういう意味か分かってるのかな?」

ネモが重々しい声で、一人の幼女を叱責していた。
その幼女は独特な癖毛が特徴的で、クリっとした愛嬌のある瞳と、時折見える八重歯が幼さを感じさせる。
だが、それ以外は本当に、特になんの特異性もない、普通の女の子だった。

ただ、二点。

全身に浅いとはいえ切り傷を作り、黒い羽だらけになっていることと、その手に銀色の拳銃を握りしめている事以外は。

「……うん」

水銀燈に大敗した神戸しおは、痛む体に呻きながら教会を目指して移動していた。
怪我の治療なら、病院を目指すべきだったのだろうが、山を越えて迂回しなくてはならないので断念した。
教会を目指したのは、運が良ければ絆創膏くらいあるかという希望的観測と、普段から祈りを捧げる習慣から、少し教会に関心があったからかもしれない。
合理的理由ではなかった。
だが、結果として教会を目指していた悟空、ネモと遭遇することとなる。

「その黒い羽が生えた天使のような人形、だったかな? きみは彼女に発砲した」
「うん」
「彼女はきみに反撃し、その怪我を負わせた。
 天使の彼女に非はない。正当防衛だ。先に手を出したきみが悪い」

最初に出会った時、しおは二人に対し、水銀燈が殺し合いに乗っているのだと嘘を吹き込み、利用する算段であった。
しかし、相手は百戦錬磨の戦士、孫悟空とキャプテン・ネモだ。
ネモは、しおの装備品である銃を押収し残弾数を確認、使用した形跡を発見した。
更に悟空は、しおの怪我に殺意が感じられなかったことを指摘。曰く、これだけ羽まみれにする暇があるのなら、既に死んでる筈だと。
恐らく、最初に攻撃を受けて最低限の反撃をしたのではないかと見破った。
憶測とはいえ、そこまで詰められればしおに言い逃れる術はなかった。多少、狂気に染まった程度の8歳前後の幼女に、容姿が幼いだけの二人を言い包める話術は存在しない。

「ごめんなさい……私……死にたくなくて」

だから、全てを白状し二人に事実のみを告げた。
自分は殺し合いに乗った。死にたくはなかった。天使さんには悪いと思ったけど、銃を撃った、そしたらやり返され、そのまま逃げだしたことを全て。

「……ネモ、取りあえずオラ達が、見張っとけばいいんじゃねえか?
 放っといて、死なせるわけにもいかねえしよ。それに一番悪いのは乃亜の奴だろ?」

「……」

悟空はそう提案する。
根本的には殺し合いを強いらせた乃亜に原因がある。
決して、悟空は肯定しないが、生き残るために殺し合いに乗ってしまっても、無理からぬ事ではあるだろう。

「しお、きみの体を調べさせてもらう。……先に言うけど、変な意味じゃない。
 凶器を隠していないか、確認する。あの銃も他の支給品も全てこちらで預かる。
きみには、ランドセルも渡さない。凶器を隠し持つ恐れがある。水や食料も欲しい時は僕達に言ってくれ、地図や今後更新される名簿の確認もだ。
 当然だが、殺し合いにも乗らないこと……今回は多めに見るけど、次はないと思って欲しい。
 この条件を呑めるなら、僕達はきみを保護する。ちゃんと、家に帰れるよう善処もするよ」

「……うん」

本音を言えば、しおに対しネモにも思うところはあった。
だが、少女の行為を咎めつつも、悟空の言うように乃亜の被害者である事も考慮し、最大限のリスク軽減をした上でのネモは妥協した。


679 : この甘い世界嘘になるなら ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:11:20 V9FVlGIQ0

「オラ、向こう行ってるからよ。ネモ頼む」

「……そうなるね」

気は進まないが、悟空とネモならその役割はネモになるだろう、と。諦めたように納得する。

「ありがとう、ネモさん……悟空お兄ちゃん」

「おめえ、もう殺し合いなんかすんじゃねえぞ? はっきり言うが、しおの強さじゃ優勝は出来ねえ。無駄死にするだけだ。
 あと、オラこう見えてお爺ちゃんだ」

ポンと、しおの頭に手を置き、悟空は人懐っこい笑顔を浮かべてから、背を向けネモとしおから距離を取った場所まで移動した。
ネモも同じく、少女体のネモ・ベーカリーにしおを任せると、背を向けた。





―――――――――――




(しおの記憶が読めなかった……。乃亜のガキ、瞬間移動以外にも、面倒な制限しやがったな。神を名乗る癖にセコい野郎だ)

しおの頭に触れた時、悟空はかつてクリリンの頭に触れ記憶を読んだ時と同じように、しおの記憶も読み取ろうとしていた。
だが、ノイズが走ったように妨害が走り、とても記憶など読み取れなかった。

(多分、オラ達が見張っている間はしおも変な気は起こさねえと思うが……あんまりオラ達も余裕はねえからな。
 出来れば記憶を見て、何考えてるか……良い奴か、悪い奴か知りたかったが、無理か……。
 ……位置も場所も誰かも分からねえが、強え奴等の気を感じる……戦ってんだ。
 ち、畜生……こいつら……い、今のオラじゃ、手に余るかもしれねえ。あんまり、しおにばっか気を向けてられねえ、な、何か考えねえとな……)

殺し合いの開幕後、既に2時間前後で各所で激しい交戦が行われている事を感知していた。
難しい事を考えるのはネモに任すとして、戦闘は悟空が引き受けるにしても油断のならない猛者が数多く存在し、制限を抱えながら悟空がその全てに勝利するなど不可能だろう。
ましてや、一度は殺し合いに乗っていたしおが背後に居るのでは、なおさらだ。

(だが……ここには悟飯がいる。し、しかも……あ、あの気はオラの知ってる悟飯の気じゃねえ。
 た、多分タイムマシンで過去の悟飯を……セルゲームの時の悟飯を、連れてきたんだ……。乃亜の奴も、ここにはガキを連れてきたと言っていた。なら、間違いない。
 あの頃の悟飯なら、オラの時代のあんまり修行してねぇ悟飯よりも、ぜ、全然伸びしろはあるんじゃねえか……? へ、へへっ……な、何とかなるかもしれねえぞ……)

少し体を震わせ、僅かに歓喜の籠った笑みを浮かべながら悟空は、かつてのセルとの死闘を思い返していた。

あの当時、間違いなく宇宙最強の存在だったセルを一喝する圧倒的パワーを、悟空は忘れることはない。
現在は悟空とベジータが、あの頃の悟飯を上回っているものの、本来の素質で言えば、悟飯の方が上だ。
セルゲーム時点の戦闘力では、確かに今の悟空のが強いが、反面、悟飯が最も戦闘センスを身に付けていた時期でもある。
老界王神の、あの変な踊りで、多少鍛え直した程度の弱体化した悟飯が、魔人ブウを圧倒するほどになるのだ。
セルゲーム時点の戦闘センスを維持したまま、戦いを重ねれば、悟空などまた一瞬にして追い抜くかもしれない。
制限されているものの、悟空のスーパーサイヤ人4を超える、新たな領域に到達する可能性すらある。

(最初に悟飯と戦ってた奴……あいつもちょっとだけ気を感じたが、強え奴だ……あんなのと戦ってけば、あの頃の悟飯なら、す、すぐに強くなるかもしれねえ……)

いずれ、乃亜の制限すらも超える程の成長を、見せてくれるかもしれない。

(そうだ……悟飯、本当のお前は誰よりも強い……強くなれ、悟飯……!
 お前が乃亜に……あの野郎の誤算を思い知らせてやるんだ)


乃亜の脅威は理解している。した上で、あの傲慢な少年も決して、全能ではない。悟飯の潜在能力には、賭けてみる価値はあると考えていた。
セルゲームの時の悟飯なら、あるいはと期待を掛けるのも、決して間違った判断ではないだろう。
それほどまでの、パワーと可能性を秘めた戦士だった。

孫悟空という男は、時として馬鹿にも見られるが、その実、大局を見て非常に計算高い判断を下すことも多い。
ただ、悟空の計算には一つだけ欠点がある。それは、必ずといって良いほど、彼の認識外で誤算が発生してしまうという点だった。



―――――――――――


680 : この甘い世界嘘になるなら ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:13:03 V9FVlGIQ0



「――――大丈夫、この娘は何も隠し持ってない」

「おう、サンキューなネモ」

気まずそうな顔をするネモと、少し顔を赤らめたしおを前に何食わぬ笑顔を悟空は向ける。
ネモが確認したのなら、しおに脅威は存在しないと信じての顔だった。

「じゃ、当初の予定通り、教会に行くんだな?」
「そうしよう。しおの怪我も軽いものだけど、簡単な手当位はしよう。教会でも傷口を洗って、絆創膏を貼るくらいはできるさ」

「ありがとう……ネモさん、悟空お爺ちゃん」

「おう! 気にすんな、しお! もう、悪いことすんなよ」

少し、影のある顔でぎこちなく笑うしおに、やはり悟空は明るくそう答える。

「……」

そのやり取りを、ネモは訝しげに見ていた。

【B-6 教会の近く/1日目/黎明】

【孫悟空@ドラゴンボールGT】
[状態]:満腹、腕に裂傷(処置済み)、悟飯に対する絶大な信頼と期待とワクワク
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:悟飯を探す。も、もしセルゲームの頃の悟飯なら……へへっ。
2:ネモに協力する。
3:カオスの奴は止める。
4:しおも見張らなきゃいけねえけど、あんま余裕ねえし、色々考えとかねえと。
[備考]
※参戦時期はベビー編終了直後。
※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可。
※SS3、SS4はそもそも制限によりなれません。
※瞬間移動も制限により使用不能です。
※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。
※記憶を読むといった能力も使えません。
※悟飯の参戦時期をセルゲームの頃だと推測しました。



【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、しおに対する警戒心
[装備]:.454カスール カスタムオート(弾:7/7)@HELLSING
[道具]:基本支給品、13mm爆裂鉄鋼弾(50発)@HELLSING、ソード・カトラス@BLACK LAGOON×2、
ランダム支給品1〜2、神戸しおの基本支給品&ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:教会→図書館の順で調べた後、学校に向かう。
2:首輪の解析のためのサンプルが欲しい。
3:カオスは止めたい。
4:しおを警戒しつつも保護はする。今後の扱いも考えていく。
5:教会で、しおの手当もしてあげる。
[備考]
※現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
※宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。


※二人とも、神戸しおが水銀燈(名前は知らない)に発砲したことを聞きました。


681 : この甘い世界嘘になるなら ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:13:31 V9FVlGIQ0





『おめえ、もう殺し合いなんかすんじゃねえぞ? はっきり言うが、しおの強さじゃ優勝は出来ねえ。無駄死にするだけだ』


(たぶん、正しいことを言ってるんだよね)


悟空の言っていた事は、しおにとって、これ以上ないまでの残酷な現実だった。
闘いという面では、悟空はとても強い。しおを見ただけで、水銀燈が本気で殺す気などなかったと見透かしてしまう。
頭の良さなら、ネモも鋭い。しおから武器を調べて、それが使用済みであると即座に見抜いてしまった。
まったく、やる気のなかった水銀燈にすら、銃を使っても勝てない。それどころか、知能面でもネモに歯が立たない。
しおがどんな狂気や愛を内包していようが、これが現実で、どう足掻いても勝ち目なんてない。
所詮は、多少は物騒で治安の悪い平行世界に住むだけの、ただの幼い子供なのだから。

(……でも、私、たたかうってきめたから)

ネモの対応は万全だったが、一つだけ見落としていた事がある。
もっとも、今のネモではどうあっても知りえない事だ。しおがし合いに乗った、その動機までは想定しようがなかった。
出会って、一時間もしない相手の過去を知る術など、通常は存在しない。
母親に捨てられた後、松坂さとうに世間でいう所の誘拐をされるも、その情を深めて愛し合うまでになり
最終的に心中までする寸前であり、その未来を変える為に殺し合いに乗ったと一目で見抜ける名探偵なぞ、居る筈もない。

しかも、それが別の平行世界の出来事であれば、あの江戸川コナンでも無理だろう。

その為に、悟空もネモもしおの言っていた死にたくなかったという言葉から、乃亜による強制が原因で殺し合いに乗ったと判断してしまった。
譲れない望みを託し、殺し合いに臨んでいたとまでは、想像できなかった。

死にたくないのも嘘ではない。さとうを生かして自分も生きて、愛し合いたいのは事実だ。

時として、真実は下手な嘘よりも効果的な欺瞞となる。
嘘とは、一からシナリオを創り上げ、役者として演じなければいけない。その為には演じる技量が必要だ。
しかし、真実は演じる必要はない。そこに技量は存在しない。全てを語らず、黙っている事もまた同じだ。余程の事がなければ、話さない事は嘘ではない。
この幼い少女は、そこまで想定して事を進めた訳ではないのだろう。たまたま、善良な参加者に出会い、嘘も吐けず白状し、殺されなかったに過ぎない。
ただ、偶然にも全てのボタンが歪に掛け合った結果、しおは生き延びて、暫くの身の安全も確保した。

だが、運だろうがまぐれだろうと、しおはこの好機を逃す気はなかった。

(いまは、死なないようにする……乃亜君のいってた、せんりゃく……数が減るまで、待つ……うん、大丈夫、待ってるの慣れてるもん)

かつて、あるマンションの一室で、愛おしい人の帰りを待ち続けたことを思い出す。
学校に行っているさとうを半日待つなんて日常茶飯事だった。だから、待つなんて苦にならない。

(そっか……さとちゃんを……今、私が待たせちゃってるんだね)

むしろ、今、心中しようとしたその瞬間に自分が居なくなって、待たせてしまっているさとうの方が気になった。


【B-6 教会の近く/1日目/黎明】

【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
[状態]ダメージ(中)全身羽と血だらけ
[装備]なし
[道具]なし
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:ネモさん、悟空お爺ちゃんに従い、同行する。参加者の数が減るまで待つ。
2:天使さんに、やられちゃった怪我の治療もした方がいいよね。
[備考]
松坂さとうとマンションの屋上で心中する寸前からの参戦です。


682 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 00:13:51 V9FVlGIQ0
投下終了します


683 : ◆IOg1FjsOH2 :2023/05/29(月) 14:25:50 1x4HHPAQ0
ハンディ・ハンディを予約します


684 : ◆IOg1FjsOH2 :2023/05/29(月) 16:26:52 1x4HHPAQ0
短いですが投下します。


685 : ハンディ×ハンディ ◆IOg1FjsOH2 :2023/05/29(月) 16:27:53 1x4HHPAQ0
「ふ、ふざけんじゃないわよ!!」

E5 病院

そこには怒りに身を任せて机を蹴り飛ばす怪物の姿があった。
机の上に置かれたPCやファイル等が倒れ落ち、床に散乱する。
怪物の名はハンディ・ハンディ、不気味な容姿をしたこの怪物は
先程全てのエリアに放送された主催者の発言を聞いて激怒していた。

「私のどこが子供だって言うのよ!首から下は別人の体よ!本体の私は首から上の部分だけよォッ!!」

本来のハンディ・ハンディはとても子供とは呼べない姿をしている。
だが明との戦いで首を切り落とされたせいで、仕方なく身近にいたガキの肉体を奪って仮のボディにしているに過ぎない。
それだけで子供たちを集めた殺し合いゲームを強制されたのでは溜まったものじゃない。

「クソったれッ!!もう何が何でも絶対に生き残ってあの舐めたガキを嬲り殺しにしなきゃ気が済まないわ!!」

本当はいますぐにでも乃亜というガキを拷問の末に惨殺してやりたい。
しかしこの怒りをその少年にぶつけることは現状不可能。
たどり着くには自分を除く全ての参加者の殺害が条件となっている。
忌々しいが首輪を外す手段が無い以上は乃亜に従い、他の参加者を殺害していくしか方法が無い。

「こうなったらまずは他の参加者を片っ端から殺していくしかないわね……」

放送内容を事実とするならば、吸血鬼達の敵である宮本明はこの殺し合いに呼ばれていないのは事実となる。
その明と一緒に行動しているガキなら呼ばれている可能性もあるが、あのガキだけなら造作もなく殺すことが出来るだろう。

「問題はあいつらね……」

先程、交戦した相手は魔法みたいな術を使っていた。
他にも特殊な力を持った子供たちがいることも想定しなくてはならない。
この殺し合いは吸血鬼によるワンサイドゲームにはなり得ないのだ。

「……だったら手負いの物から殺してあげるわ」

手に持った鉈を月明かりで輝かせながらニヤけつく。
現在、ハンディ・ハンディがいる場所は病院である。
必然的に負傷した参加者が集まる可能性が高い。
そこを待ち伏せして手負いの参加者を殺していけばいい。

「そうと決まれば善は急げよ。手厚い歓迎の準備をしなきゃ。ふふっ……忙しくなりそうね」

ただ無闇矢鱈に参加者を襲ってもまた返り討ちにされる可能性もある。
地の利を活かして襲うべきだ。
まずは「病院内の構造や、何か使えそうな道具が残っているかの把握。
あとは参加者を嵌める罠を用意する必要もあるだろう。

「見てなさいよ人間ども、生き残るべきは私なのよ!」

待ち伏せして獲物を狙い、罠に嵌める。
今のハンディ・ハンディは残虐なる狩人として闇に潜むのであった。

【E-5 病院内1日目/深夜】

【ハンディ・ハンディ(拷問野郎またはお手手野郎)@彼岸島 48日後…】
[状態]:左吉の体、ダメージ(小)
[装備]:レナの鉈@ひぐらしのなく頃に
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品0〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝するわよ。
1:いずれ、ルーデウスとさくらは楽しんで殺してやるわ。
2:ストレス解消にもっと人間を食べたいわね。
3:病院は私の処刑場として有効活用してあげる。
[備考]
※蟲の王撃破以降、左吉の肉体を奪って以降からの参戦です。
※生首状態になった場合、胴体から離れる前に首輪が起爆し死亡します。
※変異種は新たに作れないよう制限されています。
※こいつの血を摂取しても、吸血鬼にはならないよう制限されています。


686 : 名無しさん :2023/05/29(月) 16:28:12 1x4HHPAQ0
投下終了です


687 : ◆RTn9vPakQY :2023/05/29(月) 20:48:53 LRPPiXuA0
皆様投下乙です。拙作への感想、ありがとうございます。
そんな拙作のセリフが抜けていたことに今さら気づいたので、訂正します。

>>542>>543の間に、以下のセリフを追加します。

「……なあ、アンタもどうだ?
 ゲームの支配者気取りで勝ち誇ってるガキの鼻を明かしたくないか?」

以上です。大事なセリフを抜かしていて、恥ずかしい限りです。
Wikiは自分で編集しておきます。


あと、気になったのですが、美遊・エーデルフェルトのランダム支給品が1〜3になっているのは正しいんでしょうか?
登場話の状態表でカレイドステッキ・ルビーとクラスカードを所持していたので、登場アイテムのページを編集するときは何も考えず美遊の支給品として記載したのですが、
よく考えたら美遊の登場話って美遊単独では?となって困惑しています。
美遊の設定的にもともとの装備品扱いとする、等であれば矛盾は生じませんが、私がプリズマイリヤを未把握なこともあり、お聞きしたかったです。


688 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 21:14:05 V9FVlGIQ0
>>687
修正の件、かしこまりました。

あと美遊のご指摘の件ですが、ルビーとクラスカードは支給品として扱うものとします。
なので、ランダム品はあっても残り一つですね。
今までに書かれた展開と矛盾も出ないので、私がwikiの方で直しておきたいと思います。

美遊の登場話である「友達」の状態表にも、手を加えることとなりますが、作者の◆ZBzxr8kFD6さんもご了承下さい。


689 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/29(月) 21:25:37 V9FVlGIQ0
感想投下します

>ハンディ×ハンディ
このお手手野郎、ふざけた見た目の癖して真面目にロワしてやがるからちくしょう!!
左吉のワガママボディなんかを奪っちまったばかり、こんな殺し合いに放り込まれちまって……。
ただ、さっさと皆殺しに舵切るのは、人間じゃねェモンスターの思考ですし、手負いを狙うって言うのも合理的で馬鹿ではないから厄介なとこ。
KCで一波乱ありそうなんで、その後怪我の治療に行った病院でこんな化け物が待ち受けてたら冗談じゃないぜ!


690 : ◆ZBzxr8kFD6 :2023/05/29(月) 21:37:08 Oac7/7TA0
この度はお手を煩わせてしまい申し訳ありません。
支給品の件について了解致しました。


691 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:27:54 JK4lvUz20
投下します


692 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:29:40 JK4lvUz20



口笛を吹いて、空を仰ぐ。
この世界の夜空は、王の街から見える物とは違っていた。
空気は澄んでいて、星の輝きを遮る都市の光も殆どない。
何より、王の街の様に都市を包む無限の霧も、張り巡らされた結界も、何も無いのだ。
無論王の街でも星が見えないと言うことは無い、だが、やはり星の美しさで言えば何もない方がいい。
ここが殺し合いの舞台でさえなければ星見にうってつけな、そんな島だった。


「ま、俺にとっちゃどうでもいい事だがな。
そもそもが全部、似せただけの贋作(イミテーション)だ」


そもそも全てが偽りの星空。
例え本物だったとしても、やはりあの街と比べれば褪せて見えてしまう。
王の求めるモノは、あの街にしかないのだから。
ごちゃごちゃで、出鱈目で、雑多で、毎週世界の危機が訪れる、異常が日常の街。
ヘルサレムズ・ロット。元ニューヨーク。
大崩落と呼ばれる未曽有の大災害によって、現世と異界(ビヨンド)が交錯した魔界都市。
あの街に比べればこの殺し合いの島ですらまだ“秩序だっている”。
多重次元を切り裂く神性存在の半身がある性格破綻者のきまぐれで現れたりしないし。
起動すれば世界を飲み込むブラックホールが内包されたコインがそこら辺の露店で売っていたりしないし。
人智を超えた吸血鬼、血界の眷属(ブラッド・ブリード)が異形や人間に化けてうろついていたりも──いやこれは怪しいか。


───催し自体は興味をそそるが、ユーモアが足りんね。僕ならもっと面白く……閃いた。


王の友人である13王の一人、堕落王であるなら、このゲームをこう評するだろうか。
そしてパンチが足りないだとか言って、クソゲー要素をこれでもかと盛り込んでヘルサレムズ・ロット全体で殺し合いを開催してもおかしくはない。
そしてあの街の住人なら手を叩いて参加して、バカ騒ぎに興じるだろう。
混沌(カオス)であること。それがあの街の掟(ルール)だ。
この島に来て一時間ほどだが、街を離れてそれを強く強く王は意識した。
そんな郷愁の念めいた思いを抱きながら──傍らの少年に尋ねる。


693 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:30:10 JK4lvUz20


「なぁ、どう思う?この殺し合いに──意味はあると思うか?」


ツンツン頭に、青色の道着を着て。
尻から尻尾を揺らす“少年”は、無言で王へと歩を進めた。
王は涼やかな顔で、顔は動かさず紅い視線だけを動かして、そして言った。


「……やるなら別に構わねーが、俺には無駄だ、それ。本当の姿で来い」


言葉を受けて、少年は俄かに動揺したような表情を見せたが。
僅かな沈黙の後、彼のシルエットがブレる。
少年が、少女となり。
現れたのは上履きを抱いた、修道女の幼女だった。
素直に変身を解いた幼女に向けて、王は笑いかけた。


「良い子だ。素直な奴は、無駄や面倒が無くて嫌いじゃない」


言葉と共に、大きな伸びを一つ。
両手を腰にやり、天を仰いで、そして王は叫ぶ。
相手は決まっている。ここではない何処かで、自分達を見守っている神気取りのガキだ。


「おい!今すぐここら一帯の空間を閉じろ。でないと───」




───地図が変わっちまうからな。




王と天使の姿が掻き消えたのは、次の瞬間の事だった。


694 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:31:09 JK4lvUz20



       ★   ★   ★



天を征くその姿は、星の瞬きの様に。
夜空を切り裂くその速度は、流星の様に。
絶望王とカオスは、現在彼らがいるエリアの上空にて戦闘を繰り広げていた。
カオス。
主の元を離れ、地上に降り立った空の女王(ウラヌス・クイーン)の回収を目的として設計された第二世代エンジェロイド。
空の女王を始めとする第一世代エンジェロイドの飛行速度はマッハ24。
そして第二世代エンジェロイドであるカオスの最高速度はその数値すらも超える。
尤も、制限により平時とは見る影もなく零落しているが──それでも並みの戦士が及びつく領域の兵器ではない。


「……成程、天の遣い何て大層な姿をしてるだけはあるな」


対峙するは、異常都市H.Lの顔役。
絶大な力を有した13人の性格破綻者『13王』が一人。
絶望の王の名前を戴いた少年は異次元の戦略兵器を前に、笑っていた。
ぴったりとカオスの速度に対応しながら、生身にて空を駆ける。
駆けながら──ある事に気づいて、苦笑を漏らした。


「…なるほど。これについちゃ制限してねーから。セルフサービスで、ってか。
ちょっと運営としては怠慢じゃねーか?なぁ海馬乃亜」


絡み合うようにカオスとの間合いを測りつつ、柏手を打った。
瞬間、制空権を奪い合うカオスの表情が訝し気なものに変わる。
レーダーに異常はない。攻撃を受けた様子も無い。
だが兵器である筈のカオスですら、生物的な、奇妙な違和感を覚えた。
少年が手を叩くと同時に、周囲の背景が、色だけ切り替わる。
灰色の背景の中で、蒼いコートを纏う少年の姿だけが、異彩を放っていた。


「なに、ちょっと空間を閉じて周りから気づきにくくしただけだ。
それ以外の効果は特にない。お前に何か不利益が出る事はねーよ」


695 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:31:41 JK4lvUz20


薄く笑いながら絶望王は、それだけを伝える。
セルフチェック。レーダー、兵装共に異常なし。
戦闘行為に支障なし。
交戦対象は正体不明機(アンノウン)。兵装・能力ともに未知数。
自身の速度に完璧に追従している事から、先ほど交戦した孫悟空の様な、
空の女王(ウラヌス・クイーン)に匹敵する超高性能機だと仮定。
──作戦目的に支障なし。殲滅を開始する。


「あるてみす…はっしゃ」


放たれるは永久追尾空対空弾「Artemis(アルテミス)」
カオスの周囲に黒色の力場の様な物が形成され、無数の光条が放たれる。
空の女王(ウラヌス・クイーン)の主力兵装でもあるこのレーザーは例え対象が地球の裏側に逃げたとしても命中するまで追尾し続ける絶死の矢だった。
そんな対人戦で使うには不釣り合い窮まる兵器を向けられても、少年は涼やかな顔で。


「おいおい、子供(ガキ)の喧嘩には過多な玩具だろ」


少年の姿が掻き消える。
放たれたアルテミスが抹殺対象を見失い頼りなく宙を掻く。
何処へ──その想いと共に、索敵を開始する。
一秒後、結果は出た。
距離にして三十センチ、カオスの真後ろだった。


「つーわけで、没収だ」


少年のハスキーボイスを耳が捉えるのと同時に。
内側から弾けた卵の様に、アルテミスの力場が崩壊する。
アルテミスは、破壊された。アポロンと同じく修復不能。
完璧なる喪失(ロスト)。
追尾の制御機能を担っていた力場が崩壊すると共に、少年を追尾していたレーザーも、
明後日の方向へと飛んでいく。


「くりゅさおる…!」


アポロンに続き、アルテミスまで喪失した。
だが、カオスの危険度は何ら下がってはいない。
その手に現れるのは超振動光子剣クリュサオル。
エンジェロイドの防御兵装である絶対防御(イージス)すら軽々と切り裂く近距離兵装だ。
それを常人では視認すら困難な速度で振るう。
しかし、再び少年の姿が掻き消えた。


696 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:32:28 JK4lvUz20


「さぁ、今度はこっちの番だ──凌いでみせろ」


カオスの前方五十メートル程の距離に現れた少年は、微笑を浮かべたまま。
ぶらつく前に哀から回収した自身支給品である鍵剣を、滑らかに空間に滑らせる。
その鍵剣の銘を『王の財宝』。
英雄王ギルガメッシュが有する、人類が生み出した至高の武具や道具が収められた、その鍵であった。
ともすればパワーバランスを崩しかねない支給品の一つだったが──その実欠陥品でもああった。
説明書に書かれた説明は『人類が生み出した様々な武具や道具が収められた宝物庫』としか書かれていないからだ。
これでは具体的にどんな武器や道具が入っているか分からない。
それに加えて、乃亜が手を加え入れた制限により、取り出した宝具の数々は取り出した瞬間から自壊を始め、魔力の粒子となって空中に霧散してしまう。
つまり具体的に何が入っているか分からない上に、取り出してもほんの数秒で消えてしまう宝の入った宝物庫の鍵なのだった。
強力に見えて殆どの参加者には外れの支給品でしかなかったが、支給されたのは絶望王だ。


「……っ!?すご……い」


呆然と、カオスが呟きを漏らす。
少年の背後から現れた武具の群れが、その切っ先を此方に向けていた。
対空目標は優に百を超える。


「いーじす!展開!!」


カオスが未だ半壊し、前方しかカバーできない絶対防御(イージス)を展開すると同時に。
爆撃が始まった。
轟音。轟音。轟音轟音轟音──
機銃掃射を遥かに超えるスピードで、宝具の群れがカオスへと殺到する。


「……っぐ!うぅ〜〜!!」


その攻撃の密度に、カオスが呻きを漏らす。
繰り返すが、これは蔵から出した瞬間数秒で霧散する武具の数々を保管しているだけの支給品だ。
弓兵や魔術師のクラスで召喚された本人の担い手の物とは違い、射出機能は存在しない。
だが、絶望王が使えばこの通り。
自壊する前に手当たり次第に取り出して相手目掛けて放り投げる、という。
正しく、英雄王ギルガメッシュが用いる戦闘時の王の財宝の使用法が再現されていた。


697 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:32:53 JK4lvUz20


「うぅ〜〜!!ま、けるもん、か……!」


敗ければ、お兄ちゃんのおうちに帰れない。
敗ければ、いい子になる事ができない。
だから少女は耐える。
人間はおろか並みの英霊ならとっくにひき肉に変わっている爆撃に耐え続ける。
そして──永遠にも感じられたその実僅かな時間で、砲撃が止まった。


「へぱいとす──!!」


砲撃が止まった瞬間、反撃に映る。
指向兵装は超々高熱体圧縮対艦砲「hephaistos(ヘパイストス)」
アポロンとアルテミスを欠いたカオスの持つ、最後の遠距離攻撃兵装だった。
だが、この兵装は広範囲を吹き飛ばせるアポロンや標的を追尾できるアルテミスと違い直線的にしか発射できない。
そんなへパイトスで、先ほどレーダーでも捕捉できない空間転移染みた挙動を見せた標的を補足できるかは厳しい所だったが、やるしかない。
決意と共に、へパイトスを標的に向けて指向しようとした、その時だった。
標的である少年がいない。


「どこ、に──!?」


再び姿をくらました少年を、必死に索敵する。
前回と同じく直ぐに補足する事が出来た。
少年は、カオスの頭上に浮いていた。


「おやすみ」


その時には、すでに遅かったけれど。
王の財宝は彼にとっては見せ札(フェイク)でしかなく。
本命は元より、自身の能力だったのだ。
一秒後、凄まじい圧力がカオスの身体を捕らえて──隕石の様に、カオスは大地へ縫い留められた。


698 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:33:27 JK4lvUz20



★   ★     ★



目を醒ます切欠は、口笛の音だった。
数分か、それとも一時間は機能停止していたか。
再起動した時にカオスがまず感じたのは、少年の背中の感触だった。


「……よう、起きたか兄妹」


意識を引き戻して。
どうやら、今しがた殺しあっていた少年の背中に背中合わせになる様身を投げ出していたのだと、気づいて。
でも、もうカオスも今は殺しあう気になれなかった。
そのまま茫洋と夜空を仰いで、そして、尋ねる。


「ねぇ…おにいちゃんは“何”なの?」


最初に会った悟空も、カオスの知る地蟲(ダウナー)の常識では計れない人間だった。
けれど、生物としてただひたすらに強い。そう言った存在である事は理解できた。
でも、今しがた自分を下した少年は、もっと得体が知れなくて、掴みどころがない。
やっぱり私は頭が悪いなぁ、そんな事を思いながら、零れ出た問いかけ。
はっ、と笑って、天使の問いに、王は答える。


「昔からたまにいるんだよなぁ、この手の種類の人間が。
前に映画にもあっただろ?ガキが超能力を使うやつ。
『シャイニング』なんて呼びたくなる気持ちも、わからなくはないよなあ?」

「?」


王の返事の意図を掴みかねて、小首を傾げる天使。
そんな天使の様子を一瞥もせずに察したのか、苦笑を浮かべて王は言葉を紡ぐ。


「単なる超能力者さ。さっきお前のビームを躱したのは空間転移(テレポーテーション)
お前を地面に叩き付けたのは念動力(サイコキネシス)…どうだ、ありふれてるだろ?」


699 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:33:53 JK4lvUz20


超能力、という物を扱った作品では本当にありふれた力だった。
出力がH.Lという異常都市において、王を名乗る事を許される出力であるだけの話で。
その気になれば百メートルを超えるビルを数十個一度に浮遊させ地図を塗り替え、
隕石を降らせる程度の、ごくごくありふれた、絶望王(かれ)の宿主が持つ能力。
本来の持ち主が扱う王の財宝から宝具を射出したのも、彼の念動力に依るものだった。


「……ころさないの?」

「あぁ、俺も殺し合いに乗ってるんでな。人を代わりに減らしてくれるなら手間が省ける
なに、俺に負けたからって落ち込むことはない。よく言うだろ?
強い奴が生き残るんじゃない、生き残った奴が強いんだ、ってな。
俺も一時間後には、あっさりくたばってるかもしれない」


背中の圧迫感が消える。
振り返ると、少年が立ち上がり伸びをしていた。


「お前の力なら優勝の見込みもあるだろうさ。頑張れよ」


向き直って優しい声色で語り掛けながら、くしゃりと天使の頭を撫でる。
天使は暫く無言で為すがままに撫でられて。
そして、手が離れた頃合いを見計らって、もう一つ尋ねた。


「おにいちゃん…“あい”って、何だと思う?」


なぜ自分がそんな事を尋ねたのか、カオス自身にも分からなかった。
やっぱり私は頭が悪いな、と。
さっき思ったばかりの言葉がまた浮かんで。
その言葉が思考回路に消えるまでの間に、返事は帰ってきた。


「そうだな…そいつのためなら何人死のうと構わない。世界だってブッ壊せる」


700 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:34:12 JK4lvUz20


………そういうもんだろ?と。
少年は最後に皮肉めいた笑みを浮かべ、カオスから離れていく。
だが、最後に何か思い出したような声を上げて、立ち止まった。


「あぁそうだ。俺が何なのかって聞いてたけど……
本来なら、そんなこと聞く必要もないんだぜ?だってお前は───」



───絶望(オレ)をもう、知ってるんだから。



その言葉だけを残し。全てを煙に巻く様に。
王は、天使の前から姿を消した。
狐につままれたような顔で、天使は一人立ち尽くして。
そして、残響の様に脳裏に木霊する王の言葉を反芻する。


「愛(それ)のためなら、世界だって、壊せる……」


うん、できるよ。
“そこ”に帰るためなら、智樹お兄ちゃんの家に帰るためなら。
私は、世界だって滅ぼせる。
きっと、あの青いお兄ちゃんに会ったのは、これを聞くため。


「まず他の子を食べて…かしこくならなくちゃ」


自己進化プログラム『Pandora』
それが自分には搭載されている。
きっとこの会場には自分の知らない未知の能力者がまだまだいる。
能力が無くても、カオスよりきっとずっと賢い参加者もいる筈だ。
それを取り込んで、エンジェロイドの出力でその頭脳と能力を再現する事が出来たなら。
自分が現時点で敗北を喫した二人にもきっと、手が届く。
何方か一人を食べれば、残ったもう一人だって、きっと勝てる。
くすくすくす、くすくすくす。
本人も気づかぬうちに、天使は笑っていた。
そして、再びその姿は不和をまき散らすべく、悟空の物に変貌を遂げる。


──二度の敗北を喫してもなお、その場所に辿り着く事を諦められない。
──太陽に魅入られた蝋翼の天使は、飛び続けるしかないのだ。
──その場所に辿り着くか、蝋の翼が熱に溶けて、地に墜落し眠りにつくまで。


701 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:34:33 JK4lvUz20


【E-3 /1日目/黎明】

【カオス@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、自己修復中、アポロン大破、アルテミス大破、イージス半壊、ヘパイトス、クリュサオル使用制限、悟空の姿
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して、いい子になれるよう願う。
1:悟空お兄ちゃんかネモお兄ちゃんの姿で殺しまわる。
2:沢山食べて、悟空お兄ちゃんや青いお兄ちゃんを超える力を手に入れる。
3:…帰りたい。
[備考]
原作14巻「頭脳!!」終了時より参戦です。
アポロン、アルテミスは大破しました。修復不可能です。
ヘパイトス、クリュサオルは制限により12時間使用不可能です。


702 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:36:00 JK4lvUz20



「この結界…効果は…認識阻害って所か。分かってても対処が難しい。
あの天使のガキみたいに派手に暴れなきゃ、よっぽど勘がするどい奴以外は誤魔化せるだろうな…これなら態々空間を閉じる必要も無かったか?」


場所はG-2とG-3の丁度境目の位置で。
今しがたカオスと戦闘を繰り広げた絶望王は、目の前の丁度エリアを隔てる地点で、展開された不可視の結界を検分していた。
不可視かつ、通り抜ける際も無抵抗の結界に感づけるものはそうはいないだろう。
H.Lの結界の技術に匹敵する、高度な結界だった。
認識阻害の効果を持つ結界の影響で、遠方はおろか隣接したエリアで戦闘が起きても場合によっては気づかない可能性もあるだろう。
干渉は出来ない事も無いが、このエリアの結界を潰しても他のエリアに張られた結界が連動して消えたりはしないはずだ。
また、気づいても特に何の影響もない結界を態々壊すメリットも殆どない。
故に彼は放置する事にした。


「さて、そろそろ我が忠実な従僕(にもつもち)が慈善活動を終えてる頃だろう」


そう、独りごちて。
自分の帰りを待っているであろう灰原哀の元へ戻る事にした。
口笛を吹きながら、子供達の待つ民家へ王は歩みを進める。
彼はこの殺し合いにおいても何も変わらない。
彼の頭にあるのは、いつだって、世界が塗り替わったあの日の光景なのだから。
そう、世界が文字通りひっくり返った、未曽有の災害。
あの美しい大崩落の日の──


【G-2民家前/1日目/黎明】

【絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)
[装備]:王の財宝@Fate/Grand Order
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗る。
0:哀たちの元へ帰る。
1:気ままに殺す。
2:気ままに生かす。つまりは好きにやる。誰かが絶望してるところを見たい。
[備考]
※ゲームが破綻しない程度に制限がかけられています。
※参戦時期はアニメ四話。
※エリアの境界線に認識阻害の結界が展開されているのに気づきました。


703 : 世界と世界のゲーム ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:36:36 JK4lvUz20
【支給品紹介】
【王の財宝@Fate/Grand Order】
英雄王ギルガメッシュが有する人類が有する全ての宝具の原点が入った宝物庫。
ただしあくまで支給されているのは蔵なので、以下の制限が設けられている。
・支給された者にも何が入っているか分からない。
・取り出した瞬間宝具は自壊を始め、武器以外の道具なら出した瞬間、武具であっても数秒で魔力の粒子となって大気中に霧散する。
・事実上中の道具や宝具を使ったり装備するのは不可能
つまり、何が入っているか分からない上に適当に取り出しても道具が数秒で消えてなくなる四次元ポケットである。
故に適当に手を突っ込んで掴んだ武器を投げつけるくらいしかできないが、本来の使用者と違って射出機能はない。
一度使用すると12時間使用不可能になる。


704 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/30(火) 01:36:55 JK4lvUz20
投下終了です


705 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/30(火) 23:08:40 yDH5x3t.0
投下ありがとうございます!

>世界と世界のゲーム
カオス、マーダーというよりチャレンジャーになってしまった女の子。おかしい、強マーダーのはず……?
王の財宝、支給されたのがブラックだからいいですけど、説明がクソ過ぎて草。出した武器は霧散とか使い道がなさすぎでしょ。
強いのだけは分かる絶望王ですが、掴みどころがない。中々居ないスタンスのキャラかもしれないですね。
しかし、ここまでカオスの敗走が多いと、ガタッさんが滅茶苦茶ガタッしてそう。


706 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/31(水) 00:01:59 BTetat9o0
ガッシュ、フリーレン、写影、桃華、梨花ちゃま、一姫、シャルティア
予約します。


707 : ◆/9rcEdB1QU :2023/05/31(水) 00:14:07 5/Vha3rQ0
うずまきナルト、セリム・ブラッドレイ、佐藤マサオ、マニッシュ・ボーイ予約します
佐藤マサオとマニッシュ・ボーイについては自己リレーとなりますので、
◆lvwRe7eMQE氏が問題ありと見なされるのであれば、投下前、投下後問わず予約及び作品を取り下げようと思います


708 : ◆lvwRe7eMQE :2023/05/31(水) 19:55:36 BTetat9o0
>>707
自己リレーに関してですが、OKと致します。その予約も有効とします。


これを機に明確にルールを定めておきます。他の書き手様も、ご確認お願いします。

『自作に登場したキャラを、自己リレーで予約出来るのは三日後とします』
『これはゲリラ投下も一緒で、投下出来るのも三日後です』

なので、今後上記のルールを守って頂ければ、自己リレーで予約して頂いても構いません。


709 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/31(水) 21:03:52 5FxZE8dc0
時間ギリギリになってしまい、申し訳ございません、投下します


710 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/31(水) 21:16:12 5FxZE8dc0
『君達には期待しているよ。僕は優秀な者には、相応しい評価を与えるつもりだ。』

…放送を聞いて、支給品を見て…我愛羅は確信していた
自分は乃亜に大量の血の雨を降らす事を望まれていると
…そして同時に思う、自分の力を低く見ているのか、と
元々自分は殺し続けるつもりだ、たとえ何も支給されなくても
だがここまでお膳立てされると自分の強さを侮られているからここまで支給されているのかと思うと…乃亜にほんの一瞬、他の標的と同じ殺意を向けた



よくよく考えるとどうでもいい事だ、殺し続けるのに道具はあればある程いい
乃亜に殺し合いの為に利用されているとしても…考えてみればどうでもよかった
己の生を感じ続ける事が出来るのに変わりはない

そう考えて、我愛羅は公園のベンチに放送直前に殺した子供の支給品をベンチに並べた
自分の支給品も合わせてだ

まず一つ目は先程から背負っていた砂を入れる為に使っている瓢箪だ
但し砂の量は元々満タンだったはずだが半分に減らされている、砂がある場所で補給する必要があると考え…この公園の砂を血で凝固した部分以外を瓢箪に入れた。3分の2くらいの量になったと把握した
…これだけで自分は普通に多くの人を殺し続ける事が出来ると確信している

だからそれ以外の二つのアイテムは配布されたことに対して先程は侮られていると感じたのだ
一つ目は謎のDISCだ、頭に挿入すると霊波紋という力を使えるようになると説明書には書かれている

そしてその霊波紋の名前は『ザ・フール』

もう一つ目のアイテムは西瓜に似ていてサボテンのような突起物が生えている奇妙な果実、説明書によれば悪魔の実と呼ばれ、特殊能力を身につける事が出来るらしいが、その代わり一生泳げなくなったり、海楼石という物質が使われている武器に弱くなると書かれている。そしてその実の名前は『スナスナの実』

この二つを使う必要があるのか…我愛羅は一瞬考えて、DISCを頭に挿した。

…そして念じて現れたのは四足歩行するロボットみたいな後ろ足が車輪状になった犬だった
砂を操る模型、分解して砂に実際になる事も出来る、更に自分の術より精巧な砂像も作る事が出来る…
繰り返しスタンドを操り実験してみる事で自分の術の補助に使えると確信した

…すると我愛羅は忍術を使う為のエネルギー…チャクラを練り始めた
何故急に?…ヒントはチャクラの特性にある
チャクラは身体エネルギーと精神エネルギーを合わせて出来る
そしてスタンドは精神に変化をもたらしてえる能力
つまり我愛羅はスタンドを得た事でチャクラの変化が起きるのかを、それによっては普段の通りに術を使えなくなる可能性を危惧したのだ、もし術が使えなくなったらDISCは外すことに決めていた
結果は…特に変化は見られなかった、今の所は
ただ、スタンドを召喚させた時にチャクラを使えばもっとスタンドも強くなる気がした

スナスナの実に関しては現状使う必要はないと決めた理由、それもチャクラが理由である
スタンドが精神ならば悪魔の実は身体のエネルギーに影響をもたらすと推測出来る
我愛羅は考えたのだ、この実を食べる事で自分の砂に弱点が出来る可能性を、メリットもあるかもしれないが、それよりデメリットを考慮したのだ
もしかしたらやむを得ず食べる事になるかもしれないが…それまでは必要ない、そう思いランドセルにしまった

…という訳で自分の支給品については終わりだ、次は先ほど殺した参加者の支給品だ


711 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/31(水) 21:17:10 5FxZE8dc0
まず一つは…石が大好きなボーちゃんと縁があったのか?出てきたのは…かみなりのいしと呼ばれる石だった

何でも特定のポケモンを進化させる事が出来るらしい

…もし使えるポケモンがいるなら、ソイツを従わせて進化させて自分の戦力にしてもいい、そう考えランドセルにしまった



そして次は…紅白のボールだった


さて、この殺し合いに巻き込まれた人物の一人であるサトシは『世界最強のトレーナー』と言える男だ
そうなれたのは間違いなく沢山のポケモンと心を通わせてきた事も理由の一つと言えるだろう
だがその中でもこの殺し合いでも奇跡的に遭遇した最初のポケモンであるピカチュウは別格中の別格と言えるだろう。実際私達が知るサトシの結末も彼とピカチュウの二人で締めくくった
となるとあの時の彼の手持ちはピカチュウだけだったのか

…否

その直前にずっと離れていたが改めて手持ちになっていたポケモンがいた

そのポケモンは…

『 ピジョットーーー!!』

飛行タイプのポケモン、ピジョットであった


(…使えるな)

自分は口寄せ動物について知識としては知っているが実際に口寄せは出来ない、だからこそコイツは使える
こちらの指示は聞くのか?と一瞬考えたが、このボールの持ち主に強制的に従うように調整されている…なら無問題だ
説明書には使える技も乗っていた、戦闘にも使えるか…

「お前に命令する、かなり上に飛んで人が多くいる地図のエリアを見つけてこい」

『ピジョッ』

あの子供に遭遇する前にこのエリアはずっと調べていたが人は見つからなかった、つまり自分がいるエリアに人はあの子供以外最初からいなかったと考えていいだろう

これでは母や夜叉丸に血を捧げる事が出来ない。早急に人を見つける必要がある、その為に捜索させることにした…本当はエリア全体の視察もしたかったが、それよりは殺す相手の方を速く知りたい

…ただ、はっきり言ってさっきのようなただの子供より強い者を殺したい
その方が血が美味しいと知っているし、俺もより生を実感出来る
だからそれについての選別は自分でする

『…第三の目 開眼』

ピジョットの頭に砂による目を乗せて…



「30分後に俺の所に戻ってこい…砂が高く飛ばされている場所に俺はいる…いけ」

空高く飛ばせた…自分がいる場所は微量の砂を高く飛ばして示すつもりだ、コイツは目がいいらしいからすぐ分かるだろう

そして砂の目で5分おきに確認すれば多くの人がいる場所も見つかるはずだ…その中にいる強者も

…何故危険人物にサトシのポケモンが従うのか疑問に持つ人もいるだろう、これは乃亜による調整が原因だ、モンスターボールの持ち主に強制的に従うように調整されてしまっている為に…我愛羅に従ってしまっている、もしサトシが知ったら凄いショックを受ける事は間違いない

因みに先程のかみなりのいしを使えないかは試したが使えなかった、かみなり…つまり雷属性のポケモンにしか使えないと推測した。

そして最後の支給品、それは真っ赤な血塗れのナイフであった
我愛羅はその血を先程子供を殺す為に使った赤い砂を使って拭った。わざわざ新しい砂を使うまでもないと考えたからだ
とりあえず万が一の武器として持っておく事にした

ナイフの血を拭き、より赤く染った砂は重くなっていて使いにくい、公園の砂場であの愛と描かれた石と共に置いていく

そして自分の現在の目的地は何処にするか
改めて地図を見ると火影岩という場所があった
自分に関する場所が地図にあるということは…自分の知っていて、見た目や年齢が子供である奴も殺し合いに来ている可能性は高い

だとしたら1番殺したいのは勿論
本当ならここに連れてこられなければ戦うはずだった男

うちはサスケだ

他に考えられるのは油女シノ等の強い奴か?

『お前達は必ず…俺が殺す』

あの時の2人もいるかもな
どの忍者にしても殺す価値はあるな、ソイツらが集まるであろう火影岩に行くのも良いかもしれない

狂気の笑みを浮かべながら…奴らが砂にまみれ恐怖の表情を浮かべながら溺れていき、そしてそれを握りつぶし血の雨が降る様子を想起する、すると益々笑みを深めていく、正にその姿は狂人だった

テマリ、カンクロウ、あの二人も来ているかもな…俺に従うなら付いてきてもいい、だがアイツらは俺の殺しを何度か静止来てくる時がある、そうなったら2人も殺す、憎しみと殺意で繋がるただの肉塊だ、小さい時に俺を助けようともしなかったあの二人もだ

…何れにしてもピジョットで俺の殺したいと思える相手を見つける事が出来るかどうかで考えるか、見つからなったら火影岩に、見つかったら…ソイツの元へ向かおう

そう考えて、支給品を置いていたベンチに座り、第三の目を開いた


712 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/31(水) 21:17:50 5FxZE8dc0
【E-4 公園/1日目/深夜】


【我愛羅@NARUTO-少年編-】
[状態]健康
[装備]砂の瓢箪(中の2/3が砂で満たされている) ザ・フールのスタンドDISC
[道具]基本支給品×2、タブレット×2@コンペLSロワ、サトシのピジョット@アニメ ポケットモンスター めざせポケモンマスター (現在、空を飛行中)、かみなりのいし@アニメポケットモンスター、血まみれだったナイフ@????
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1.出会った敵と闘い、殺す
2.ピジョットを利用し、敵を、特に強い敵を殺す、それの結果によって行動を決める
3.スタンドを理解する為に時間を使ってしまったが、その分殺せば問題はない
4.あのスナスナの実の使用は保留だ
5.俺の知っている忍者がいたら積極的に殺したい、特にうちはサスケは一番殺したい
6.かみなりのいしは使えたらでいい、特に当てにしていない


[備考]
原作13巻、中忍試験のサスケ戦直前での参戦です
守鶴の完全顕現は制限されています。





【支給品紹介】
【モンスターボール(サトシのピジョット)@アニメポケットモンスター】
ボーちゃんに支給されたモンスターボール。所持している者にポケモンへの命令権を持つ。

現在自我を抑えられて、ピジョットのモンスターボールの所持者が解放するOR死亡するなどの条件を満たさない限り目覚める事はない
中に入っていたのは、サトシのポケモンピジョット。
現在のトレーナーは我愛羅
時系列としてはロケット団からピカチュウを救出した瞬間であった
技の構成は つばさでうつ・ふきとばし・でんこうせっか・すてみタックル

【スタンドDISC『ザ・フール』@ジョジョの奇妙な冒険】

我愛羅に支給。砂を操作するスタンド『ザ・フール』が内包されたスタンドDISC。
本来のスタンドの持ち主、イギーの影響か、使い手が人間になっても四つん這いである

【スナスナの実@ONE PIECE】
我愛羅に支給。自然系悪魔の実。身体全体を砂に変える事が出来て、様々な技を使える。

【かみなりのいし@アニメポケットモンスター】
ボーちゃんに支給。特定のポケモンを進化させることが出来る









さて、ここで1つ…まぁ、どうでもいい事を伝えておこうかな、どうでもいい事だからから無視したかったら別に構わないよ?
我愛羅はこのナイフについても説明書は見ていたんだけど…ただのナイフと分かったら説明書見るの放棄しちゃったんだよね
だから代わりに俺が説明するね?見ている人達にもどういうナイフなんだそれって思っただろうから
何と、そのナイフはリョースケというストーカーが完璧で究極のアイドル、星野アイを刺し、死ぬ為のキッカケになったナイフなんだよね、しかも刺したてホヤホヤ、びっくりした?
その女性は死ぬ間際に『本当の愛』を2人に告げて事切れたんだけど、マジ泣けるね
我愛羅の母、加瑠羅と同じく死ぬまで子供を想いながら逝ったのも偶然かな〜
愛をキッカケに絶望し、またそれと同時に本当の愛を伏せられている我愛羅に支給されているのはどこか皮肉を感じるね
まぁ、それをどうにか出来る術は現状ないけど
え?『本当にどうでもいい話じゃん』って?最後まで聞いて欲しいなぁ、本当に『本当にただのどうでもいい話』なのかは聞かなくちゃ分からないよ〜?
そしてそのナイフは砂で血を拭われて、ただのナイフになりましたとs…待て待て待て『はい解散』しないでー!!
気にならない?拭った後の砂がどうなったのか
まぁssでも描かれていたように、砂場に置きっぱなしなんだけど、ここまではどうでもいい話かな
…ここからがただのどうでもいい話ではなくなるポイントだ
あの砂場には全身肉も骨まで潰されて全て血になったボーちゃんの血が固まってる…けど、それに今回星野アイの血も混ざる事になったんだよね
『だから何だ?』『少し血が混じっただけじゃん、殆どの血はボーちゃんじゃん』『そもそも砂場の血が利用されるわけないだろ?』
って言いたいかもしれないけどね
知ってるか?ちっぽけな石でも人は転ぶ事がある、そしてその小さなキッカケで…今後の人生が変わる人もいるという事を
確かに『星野アイの血』なんて少ししかないし、砂に染み込んでるし、この殺し合いで今後意味を持つ確率なんて99.9%ないだろうね
…でも0.1%の確率で『何か』に生きるかもしれないよ?何かはまだ分からないけど♪
まぁ所詮石ころのような存在感だからただの石ころのような価値で終わる可能性の方が高いけどね〜
という訳で以上、『どうでもいい事』を伝えました〜、サラバーイ!!

【血塗れだったナイフ@????→血塗れだったナイフ@推しの子】

ボーちゃんに支給。星野アイを殺す為に使用されたばかりのナイフ、血は拭い取られている
備考
現在公園の砂場ではボーちゃんを圧殺した血で固まっている砂の塊があります。ほんの少しだけ【星野アイ@推しの子】の血も混ざっています


713 : ◆dxXqzZbxPY :2023/05/31(水) 21:20:52 5FxZE8dc0
投下終了しました。タイトルは『たった1つの石ころで人生は大きく変わる』です
因みに最後の星野アイの血が付いているナイフについてですが、もし駄目ならばランダム支給品0〜1に変えて、タイトルも変えます。


714 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/02(金) 21:15:17 N5NiCwds0
>たった1つの石ころで人生は大きく変わる
能力装備全てがサラサラ過ぎる。砂という一見、何の変哲もない存在でも、それを多量に操れると非常に驚異的なんですよね。
この当時の我愛羅が、サスケをロックオンしてるのは分かるんですが、そういえばシノも地味に強キャラでしたね。正直、一瞬誰だっけと思ってしまいました。
ピジョット、最終回に出たばかりに凄い可哀想……。空飛んでると、カオスと鉢合わせしそうだし、強く生きて欲しい。
あと、アイとボーちゃんの血が混じって……アイボーってとこかな……。


それと、すいません。
チンゲ@タフの首輪が分裂しているミスがありました。
これ、ルーデウスに持たせたのが本物です。ハンディ様の私のはミスです。
wikiの方でリレー先の「ハンディ×ハンディ」方も含めて、状態表を修正させて頂きます。
本編内容は一切改稿致しませんので、ご了承願います。


715 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:07:34 .Qdj4hjU0
投下します


716 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:08:24 .Qdj4hjU0


「セリム、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫です。ナルトさんの方こそ、大丈夫ですか?
脚、怪我されているんでしょう?」
「心配すんなって、お前とは鍛え方が違うんだってばよ!こっちの方が早いしな」


エリス・ボレアス・グライラットと別れて少し経った頃。
木の葉隠れの里の下忍、うずまきナルトと傲慢のホムンクルス、プライド/セリム・ブラッドレイは火影岩を目指し進んでいた。
現在位置はE-3エリアを経由してD-4、子供の足のセリムを連れているにしてはそこそこに順調なペースであった。
と言うのも、現在セリムはナルトの背に負ぶわれているからだ。
ガムテの襲撃やセリムを突然襲ったという女の子の存在からナルトが思いついた移動法だった。


「……うん、大丈夫みたいだってばよ。このまま進むぞ」


まず、影分身を一体呼び出し、斥候として先行させ、
安全が確認できた後、セリムを背負った本体のナルトが時間差で進むという方法だ。
影分身との感覚共有こそ、まだ未熟なこのナルトではできないものの、流石に影分身が消えたかどうかは感覚的に分かる。
もしこの殺し合いに乗った人物が、先行した影分身を攻撃すれば、危険人物かどうかを会敵前に判別できるという訳だ。
普段のナルトらしからぬ、中々に慎重な策だった。


(なんせセリムは戦えねーだろうし…俺がしっかり護衛してやらねーとな!!)


勿論、影分身を一体とは言え出し続けるランニングコストは馬鹿にならないが。
それでも自分に支給されたこのファウードの回復液という支給品があれば消耗は自己補完の範疇だと、ナルトはその水筒を頼もしく思った。
味はそこまで良くなかったし、ファウードと呼ばれる生物の体液と言う文句を見て口にするのには抵抗があったが、試しに一口飲むと本当にチャクラが回復した。
元々、チャクラの総量では下忍でありながら上忍のカカシと同等か上回るナルトである。
自前のチャクラ保有量に加えて、この回復液があれば早々チャクラが底をつく事は無いだろう。
それ故に、こう言った影分身を活用した策も躊躇なく打てるのだ。


717 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:09:40 .Qdj4hjU0


「それにしてもナルトさん凄いですね!こんな安全に移動できる方法を考え付くなんて…流石忍者です!!」

「へへん!俺ってば日々成長しているのだ!いつかサスケの野郎に参ったって言わせるために───」


言いかけて、ふとナルトは考えた。
あの乃亜とかいうガキは子供を連れてきたとか何とか言ってたから、カカシ先生はいないだろうけど。
此処に春野サクラやうちはサスケの二人──第七班のメンバーがきていないだろうかと。
その事をふと思った。


(サクラちゃんも此処に連れてこられてたらソッコー助けに行かねぇと!
サスケのバカは…あいつもちょっと様子がおかしかったから、無茶してねーだろうな…)


此処に連れてくる少し前。
自分とライバルであるサスケは病院の屋上で小競り合いというには激しい勝負をしていた。
ナルトの目から見たサスケは、酷く焦っているように見えた。
だが、無理も無いだろうと思う。
病院で勝負を行うさらに少し前に、サスケは復讐目標である実の兄のイタチに、完膚なきまでに敗北を喫していたのだから。
兄弟と言う物に馴染みのないナルトでも、焦るのも無理はないと、そう思えた。
尤も、あの男がその後自分にあそこまで突っかかってくるのは予想外だったが。


(でもあれは──)


平静を欠いた様子で噛みついてくる好敵手を見て、らしくない、とは思ったけど。
自分に勝負を挑んでくるくらい対等に見てくれているのだと知った時は。
下腹の辺りが疼くくらいには高揚を禁じ得なかったのだ。
ここからだ。ここからもっと修業を積んで、強くなる。
サスケももっともっと強くなるだろう。そうして二人で強くなって。
彼奴の兄貴を──イタチを二人でボッコボコにして捕まえる手伝いをしてやってもいい。
そうこの時のナルトは漠然とだが考えていた。
正史であればこの直ぐ後に、うちはサスケとは永く袂を別つことになるのだが、今の彼には知りようもない事だった。


718 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:10:12 .Qdj4hjU0



(っと、その前にまずこの殺し合いを生き残らねーと…気合入れていけ!俺!!)


取り合えず、サクラちゃんもサスケも立派な忍者だ。
連れてこられていたとしても、早々死ぬことは無いだろう。
そして、もし二人が連れてこられていれば自分と同じく火影岩を目指す筈。
ならば自分が先んじて待って居ようではないか。
そう決意を新たに、火影岩に急ごうとした時だった。


「おーい!」

「…?どうしたんだってばよ?」


先行させていた影分身が、戻ってきていた。
話を聞くと、先行した先で、上空から建物の上に降りていく子供を見かけたらしい。
遠目から見た限りでは、片方は赤ん坊、片方は意識のない木ノ葉丸より小さなガキらしく。
どうするか、ナルトは腕を組んで考えてみた。


「セリム。ちょっと見て行っていいか?」

「えぇ、ナルトさんが行きたいのなら僕は構いませんが…」


僅かに逡巡を見せたものの、セリムもナルトが乗り気な以上否やとは言えず。
彼が最初に出会った少女の様に凶暴な手合いでなければ、彼としても他の参加者との接触はやぶさかでも無かったため。
セリムをそのまま背負い、ナルトは先行した影分身にその子供二人が降り立った場所を案内させた。


719 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:10:52 .Qdj4hjU0





辿り着いた先は、何故かそこだけ荒廃した様子の高層マンションだった。
セリムは慣れない視線で見ていたが、ナルトは特に感慨を抱かなかった。
木ノ葉の里は意外に技術が発達している。
ビデオもあるしゲームある。通信機器もそれなりに存在する。
高層マンションも高い建物だなとは感じるが、殊更何か感じることは無かった。


「…よし、取り合えず俺が行ってくるから、セリムはここで影分身と待ってろ」

「え、でもナルトさん本人が行ったら…」

「大丈夫だって。セリム、お前より小さな気を失ってるガキと赤ん坊だろ?
このうずまきナルト様がパパッと助けて来てやるってばよ」

「…でも、気を失ってる子を連れて行くと火影岩に行くのが遅れてしまうんじゃ…
まぁ、放って置く訳にもいかないというのはそうかもしれませんけど…」

「それについてもダイジョーブ!影分身追加でもう一体くらいならどうって事無いってばよ。俺に任せとけ!」


自信満々のナルトを見て、一抹の不安に駆られるセリム。
ナルトは隠れ蓑としては中々の物だった。
チャクラというエネルギーを用いて居るからか、体力や普段の身のこなしは、
ナルトより年上であろう鋼の錬金術師エドワード・エルリックに迫るものがあった。
それでいて調子がよく、煽てれば誘導するのも難しくない。
できるなら、優勝目指すにしても自身の能力がフルに発揮できる昼間までは利用したい。
そう思える程度にはセリムはナルトを評価していた。
だからこそ、慎重に行動してほしかったが…こうなるともう話を聞かないだろう。


「大人しく俺の影分身に従って隠れてろよセリム。んじゃ!行ってくるってばよ!」


止める暇もなく。
ナルトはひょいひょいとベランダの手すりや雨どいのパイプを伝って屋上へと上がっていってしまった。
忍者を自称するだけあって、セリムをして俄かに驚く身体能力だった。


「さ!セリムはこっちで俺と一緒にそこら辺の部屋で待つってばよ」
「えぇ……」


面倒が起こらなければよいが。
ナルトに見えない角度で、傲慢本来の顔を浮かべながら。
セリム・ブラッドレイは影分身のナルトに促されるままに隣接した民家に身を潜めるのだった。


720 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:11:21 .Qdj4hjU0







屋上には一分かからず辿り着いた。
軽業師以上の身軽さといざという時はチャクラを足に集めて壁昇りすら可能な今のナルトにとって、高層マンションの屋上に辿り着くのはその程度の事なのだった。
しゅたり、と、華麗な着地を決めて周囲を警戒しつつ屋上の様子を伺う。
すると、影分身の報告の通り、五歳児ほどの少年が丁度屋上の中央で倒れていた。


「おいっ大丈夫かお前!おいっ!!」


呼吸は問題ない。生きてはいる。
だが、悪夢を見ているかのようにうなされて未だ目覚める気配はない。
どうするか。そう考えるのと同時に、もう一つの影分身からの報告を思い出した。
そう言えば報告によるともう一人、赤ん坊がいたはず──


「……?」


コロコロ、と。
考えるナルトの足元に何かが転がってくる。
横たわる子供の陰に隠れて、彼は気づかず。
そして、炸裂した。


「おわっ!?な、なんじゃこりゃ───!?」


突然前方の視界が煙で満ちて。
咄嗟に口元と鼻を腕で覆うモノの時すでに遅く。
揺れる視界。
猛烈に襲ってくる眠気。
不味い、油断した。眠り毒か。
何とか煙の中から脱出しようとした所で、足がもつれた。


(……ク、ソ。俺としたことが、しくじったぜ……!)


眠り毒の効果は強力だった。
途端に瞼が重くなり。倒れこんでしまえば、もうだめだった。
そのまま、ナルトが立ち上がることは無く。
そのまま彼は、夢の世界へと旅立った。
そんな倒れこむナルトを見て、嘲笑う影が一つ。


721 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:11:40 .Qdj4hjU0



「ウケケーッ!!ヌケ作がよォ〜〜!!こんなおにぎりの心配するからこうなるんだッ!
まぁイキは良いみたいだし、これから俺がたっぷり利用してやるぜーッ!!」


屋上と下の階層を繋ぐ非常口の陰で。
今しがたナルトを眠らせたマニッシュ・ボーイはほくそ笑んだ。
先の白髪の子供の襲撃を受けて。
彼が選んだのは、佐藤マサオから新たな庇護者への、乗り換えだった。
この殺し合いを生き残るのに、庇護者がおにぎり頭では不釣り合いに過ぎる。
もしこの場に新たに現れたガキがさっきの白髪のガキの様に問答無用で襲ってきたら、まず間違いなく二人とも殺されているだろう。
だから、その前に乗り換える。
一度眠らせ、庇護欲を誘う催眠をより強い者にかけなおす。
乃亜の制限により、マニッシュ・ボーイの庇護欲を高める催眠は一人にしか使えない。
ならばこんな愚図なおにぎりに貴重な一枠を使うのもアホらしいという話だった。
本当なら同じスタンド使いと見られるあのお嬢様が良かったが、自分達をこの屋上に着陸させて墜落していった事から現在も生きているか怪しい。
差し当たっての足としては、目の前のオレンジのガキは及第点だった。
おにぎりは用済みだから、ここで玩具にして遊び殺してしまえば良い。


「さァて…上手く眠らせた所で、お楽しみの時間と行くかァーッ!!」



───デス13!



自身の能力に絶対の自信を寄せながら、マニッシュ・ボーイは己のスタンドを発動させた。


722 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:12:53 .Qdj4hjU0






「何だってばよ、ここ……」



ナルトは夢の世界の中で、訝し気に呟いた。
さっきまで自分は倒れていたガキを助けようと建物の屋上にいたはず。
それが何で、こんな所に立ってるんだ?此処は何処なんだ?
流石のナルトも周囲が突然遊園地に変わってしまっては困惑を抑えきれず、その場に立ち尽くしていた。


「ひいぃ〜!!たっ助けてぇ〜〜!!!」


そんなナルトの前に、見覚えのある子どもが走って来る。
その子供は、今しがた自分が出会った、あの屋上に倒れていたおにぎり頭だった。
酷く怯えた様子で、おにぎり頭はナルトを盾にする様にその背に隠れる。


「おっ!おいっ!!?どうしたんだってばよ!?此処は何処なんだ!!」

「ひぃぃ〜!!あいつが、あいつが来るゥゥ〜〜!!!」


ナルトが困惑した様子で尋ねても要領を得ない答えしか返さず。
兎に角何かに酷く怯えた様子でナルトの背に隠れようとするおにぎり頭。
あいつとは誰か尋ねようとしたその時、件の“アイツ”が自分からやってきた。


「ラリホォ〜〜〜!!」


酷く陽気に、しかしその実寒気を覚える様な冷淡さを感じさせる声で。
巨大な鎌を持ったピエロの様な怪人が、二人の前に現れた。
直感的に理解する。今の事態は目の前のこいつが引き起こした事だと。


723 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:13:34 .Qdj4hjU0


「おい!お前!!お前が俺達を此処に連れてきたのか!!
もしそうならさっさとここから出しやがれ!!」

「Exactly(その通りでございます)でも、やっだよ〜ん!!
まぁ安心しろって!お前は生かしてやるからさ〜〜!!」


憤るナルトをおちょくるように怪人はお道け、その手に握った大鎌をマサオの方に向ける。


「乃亜のハンデとやらせいで一々催眠をかけるのに夢の世界に連れ込まなくちゃ行けないのは面倒くさいが…
このデス13様の頭脳にかかればこのとーりよッ!!後はそこのおにぎりをぶっ殺して、お前を暫く足として使ってやるさ!!」


「ひいいいい!!!!た、助けてぇ……!」


マサオの脳裏に蘇るのは数時間前に惨殺された沙耶香という少女の末路。
あんな風にだけは死にたくない。死ぬにしてもあんな風な死に方だけはごめんだ。
直前に失意の庭に放り込まれた影響もあってか、マサオの舌は彼の意思に反して勝手に回り始める。


「助けてよ!僕がこれまで通り君を守るからさ!!だから僕だけは助けて!!」

「お、お前な……」


余りにも見苦しく口走るマサオに、ナルトも閉口してしまう。
だが、そんなことマサオにはどうでも良かった。
兎に角僕は死にたくないのだ。
だったら、僕よりも大きいお兄さんが僕を庇うべきじゃないか。
アクション仮面が此処にいるなら、きっと僕を庇ってくれるさ。
だから助けて、僕を助けて、僕を守って、と。
マサオは無我夢中で訴えた。
それはナルトにでもあり、デス13と名乗ったピエロ本人に対しても訴えていた。
だが、デス13の態度は変わることは無かった。


724 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:14:11 .Qdj4hjU0


「ダァ〜メ……!お前をただ助けるだけじゃ折角使った貴重な眠り玉が無駄になっちまうだろバァ〜カ!!お前は此処でこのデス13様の玩具になって死ぬんだよォ〜!!」


ケラケラと笑いながら、わざとマサオの恐怖を煽るように鎌を誇示するデス13。
その様を見て、ナルトの陰に更に隠れるマサオ。
もうデス13の方へ押し付ける様だった。
ぽりぽりと頭を欠いて、そして憤る。


「俺も何が何だかよく分かってね〜けどさァ……お前ら二人とも胸糞悪ぃ〜や!!
取り合えずテメーは殺し合いに乗ってるみたいだし、ぶっ飛ばす!!」

「ぶっ飛ばすゥ?この夢の世界でデス13様をかァ?やってみろ間抜けガキがァッ!!
ヒャハハハハハハ〜〜!!!」


怒りを笑い飛ばすデス13にナルトももう我慢ならなかった。
ぶっ飛ばす。その一念で拳を握り締め、デス13に正拳を叩き込もうとする。
チャクラを足に込めて、常人ではありえない跳躍を見せ、拳を振り下ろす。
だが、その拳が届くことは無かった。
ふわりと風に煽られた風船のようにデス13は高く舞い上がり、上空に浮かんでしまったからだ。


「ウケケケケケケーッ!!ハズレ〜〜!!やっぱりお前フィジカルは中々みたいだなァ…
ますます俺の馬車役としてこき使ってやりたくなったぜーッ!!」

「ふざけんな!!誰がテメーなんかに使われるかァーッ!!」

「クックックーッ!テメーが何と言おうがこの悪夢世界(ナイトメア・ワールド)で俺に敵う術はねーッ!!そしてこの夢の中の事は起きたらキレーサッパリ忘れてるんだよッ!」


ラリホォ〜!!
デス13が高揚した様子で叫ぶと同時に、ナルトの周囲の草花がげたげたと笑い始め、額に付けていた額当てが突如緩む。
そしてその緩んだ額当てが突然蛇に変わり、ナルトの首を締めあげるではないか。


「が、ぁ…!?こ、これ…幻術……!?」


忍者学校で習った幻術の知識と、目の前の死神が使う能力は酷似していた。
だが、能力の種が分かった所で対応できるかは別問題だ。
何故なら。


(ク、クソォ〜〜!!エロ仙人に幻術返し習っとくんだったってばよォ〜!!)


この時のナルトは未だ、幻術を掛けられた時の対処法を習熟していない。
故に、正攻法でこの術から抜け出すのは困難だ。
だが、このまま黙っている訳にもいかない。
ナルトが諦めればこの情けないおにぎり頭は死ぬだろうし、ナルト自身の安全も怪しくなるからだ。
必死に頭を振り絞って、対処法を思案する。


(取り合えず、この空間を作ってるのはあの鎌ヤローだ。なら……)


725 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:14:54 .Qdj4hjU0


パクパク、と。
首を絞められて苦しそうな顔をしながら(実際苦しい)それでもデス13に向けて口を開閉して見せる。
まるで必死に何かを伝えようとしているかのように。


「えっなにっ?何だァ〜!?聞こえないよォ〜〜!!」


額当ての蛇をどかせば聞こえるというのに、デス13はナルトを煽るためだけに締め上げたまま、降下してくる。
かかった、とナルトは思った。
そのままギラリとデス13を睨み、両手で印を組む。


──影分身の術!!


ボン!と音を立てて影分身の術が発動する。
これにはデス13も流石に瞠目せざるを得なかった。
スタンドを持っていない筈の小僧が、スタンドのような現象を引き起こしたのだから。


「なっ、なんだあッ!!」


慌てて空中に舞い戻り、距離を取ろうとするデス13だが、すでに遅い。
そう来ると見越していたナルトはデス13の上空にも影分身を展開していたのだ。
そのままデス13に絡みつく様に影分身たちは組み付き、行動を封じる。
同時に、ナルトは脇の影分身に手をやり、必殺の術を放つ態勢に既に入っていた。
彼の掌の中で拘束圧縮されるエネルギー。
それを見た時、デス13にも戦慄が走った。


726 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:15:16 .Qdj4hjU0


「バッ!馬鹿なッ!!スタンドを奴は持ち込めていなかったハズッ!!」


眠らせた時、確かに奴がスタンドを発動させている様子は無かった。
それにスタンドの能力は基本一人一つ。
あのエネルギー弾とこの分身能力はどう考えても別の能力だ。
スタンド使いのサガ故か、敵の能力の分析に思考が割かれてしまう。
それがいけなかった。
結果的に一目見ただけで喰らったら不味いと直感する能力を前に、二手遅れる事となった。


「クソッ!!は、離れろ!!このビチグソ共がッッ!!」


悪罵を吐いて、影分身たちを振り払い、空中へ逃れようとする。
だが、ここでデス13は戦略ミスを犯した。
この時の彼が行うべきは、回避ではなく迎撃だったのだから。
そうすれば、鎌のリーチ差で着弾前にナルトを打ち据える事ができただろう。
或いは、悪夢のなんでもありを利用して、迎撃方法は幾らでもあった。
しかし、本人が他のスタンドに出会うことは決してないと豪語するスタンドだ。
それは裏を返せば、近距離でのスタンドバトルにまるで不慣れという事を意味する。
故に、その経験値不足がこのタイミングで現れた。
飛び上がるデス13。だが、もう既に間に合うタイミングは過ぎている。
ナルトはデス13が先ほどと同じく飛んで逃げるのを見越して跳躍していたからだ。
跳躍するナルトの追撃から逃れるには、とっさに飛び上がれる高さでは余りにも不足だった。
むしろ、飛び上がった事で本来着弾しても問題ない胴体部分ではなく、顔の部分が丁度ナルトの放つ術の前に来てしまう。
そして───


───螺旋丸!!


必殺の忍術が、デス13に炸裂した。


727 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:16:00 .Qdj4hjU0







「テ、テメェ〜〜」


怒りを伴った声が、悪夢世界に木霊する。
デス13は、螺旋丸を受けてなお、スタンドを解除していなかった。
この島に来て初めて螺旋丸を撃った相手であるガムテと同じく。
直撃には至らなかったのだ。
デス13の回避行動は悪手ではあったが無駄ではなく。
螺旋丸の直撃を見事阻止していた。
だが、デス13にとってはそんな事嬉しくも何ともない。
顔に奔る痛みが、ナルトに対する憎悪を溢れさせる。


「このデス13様の顔によくも傷をつけてくれたなァーッ!!このクソガキがァーッ!!
もう許さん!!おにぎり頭の代わりにするのは止めだ!!ここでぶっ殺してやるッ!!!」


怒り狂うデス13。
その様は正に、何か思い通りならなかった事があり癇癪を起す子供そのものだった。
元々砂漠の真ん中で、同行者であるジョースター一行を皆殺しにしようとする彼では手傷を負わされて我慢できるはずも無かった。
もう油断はしない。怒りのままにワイヤーを空間に創り出して、ナルトを拘束する。


「クッ!影分身──」

「無駄無駄無駄ァッ!!二度同じ手は食うかよォーッ!!」


印を結ぼうとするナルトの腕を絡み取り、印を組むのを封じる。
更にそこから額当てを再び蛇に替えて締め上げ、声すら上げる事も許さない。
激高する態度とは裏腹に、デス13の行動は冷静かつ的確だった。
空中に浮かび上がり、距離を取ってナルトの様子を観察する。
拘束の甲斐あってか、敵手はワイヤーにがんじがらめにされて、完全に行動不能になっている。
つまり、奴にここから逆転の策は存在しない。
だったら、後は好きに甚振れるというもの。
デス13は獰猛にほほ笑んだ。


728 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:16:26 .Qdj4hjU0


「クソッ!!これほどきやがれ、テメェーッ!!」

「誰がほどくかよクソカス野郎ッ!これから顔の礼をたっぷりしてやる…!
まずは四肢を切り落として膾にしてやるから覚悟しなァーッ!!」


ぎゅう、と鎌を握り締める。
相手に致命的なダメージを与える時だけは、このデス13が直接切り刻んでやらなければならない。
さっき殺した女の子の様に、地獄を見せてやるッ!!
最早頭の中にあるのはそれだけで。デス13はナルト目掛けて急降下を行う。



「勝ったッ!!NARUTO、完ッッ!!!」



高らかに勝鬨を上げて、鎌を振り下ろそうとした。
その瞬間の事だった。


729 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:16:51 .Qdj4hjU0



───オイ。



声が、響いたのは。
本能的に、デス13の動きが止まる。
否、動けなくなる。
動けば次の瞬間死ぬ、と。
身体が理解してしまったから。



───そいつを殺されちゃ困るんだよ。ワシも消えてなくなるからな。



マニッシュ・ボーイのスタンド、デス13には明確な弱点が一つある。
条件さえ満たせば招かれざる客すら、悪夢世界に取り込んでしまうという点だ。
彼が正史において対峙した、花京院典明の法王の緑(ハイエロファント・グリーン)がそうだったように。
そして、うずまきナルトもまた、そうだった。
彼の精神を取り込んだことで、彼の中に封印されし者すら、デス13は取り込んでしまっていたのだ。
マニッシュ・ボーイ/デス13の不運は、ナルトを眠らせる事に成功しても。
ナルトの中に潜むもまた、眠ってはいなかったということだろう。
そして、その招かれざる客に本体に対するデス13の絶対性は存在しない。
取り込んでしまったことに気づいても、追い出したりすることはできない。故に、


───なァ、小僧ォ……!!!


デス13は、その怪物と対峙する羽目となる。
かつて、木ノ葉にて嵐のように荒れ狂い、四代目火影が命と引き換えに封印した怪物。
九尾の妖狐が、そこにいた。


730 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:17:17 .Qdj4hjU0


「なッ!何だこの化け物はァーッ!!!」


デス13は突如現れた怪物を前に、狼狽の声を上げ。


「九尾……」


ナルトもまた、初めて檻越しではないその威容に圧倒されて、呆然と声を漏らす。


「………」


マサオに至っては、一目見ただけで気絶してしまっていた。
悪夢の中であるのに。
そんな三者三葉の反応を見せる子供達を、九尾は冷徹な瞳で見つめて。
そして、それから笑った。



───クク、ク。まぁ、いい。折角の降って湧いた自由だ。
───久方ぶりに血肉を引き裂く感触を味合わせてもらうとしよう。



言葉と共に、九尾はデス13を一瞥する。
それだけで、デス13の心は絶望に浸された。
殺される。死ぬ。どうあっても、この怪物には勝てない。
この俺が、デス13様が、よりによって悪夢世界で?
ありえない。そんな不条理はありえてはいけない。
この世界では俺こそが絶対者なんだ。そうでなくてはいけないんだ。
そうだ、こんな化け物───!!


731 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:17:50 .Qdj4hjU0


「舐めるなッ!!!このドブ狐がァーッッ!!!」


悲鳴のような、罵倒の声を上げて。
デス13は九尾目掛けて突っ込む。
突っ込みながら、その手の鎌を肥大化させて。
九尾にも叩き切れるであろう巨大な刃を創り出す。
形だけならば自身を切り裂いても不思議ではない程の大きさの刃。
しかし、それを見る九尾の視線は実に醒めた物だった。


──フン


ガキン!と音を立てて。
デス13が渾身の力で振るった大鎌は、九尾の尻尾に受け止められていた。
肉にも骨にも、届いていない。
ただの尻尾一本斬り伏せる事すら、デス13には敵わなかったのだ。


「ひっ!ひいいっダメだッ!スタンドパワーが違い過ぎるッ!!」

───当たり前だ。蟷螂の鎌程度でワシが死ぬと思ったか?


当然と言えば、当然の話であった。
ある一人の仙人により、國創りの神より別れ出でたとされ。
手中に収めれば一国を墜とすと謳われた魔獣である九尾を相手に。
暗殺が能の一介のスタンド使いが勝てるはずも無かった。
そのままデス13はもう一本の尻尾で軽く撫でられて。
それだけで、死神のボディは易々と地面へ失墜する。
戦意など、とうにどこかに消え失せていた。



「たっ……たちゅけて……ッ!!」

──お前は命乞いをしてきた相手の言う事を、一度でも聞いた事があるのか?



九尾の態度は、凍り付くほど冷淡で。
目の前の人間の愚かさに辟易している様でもあった。
ナルトは未だ縛られたまま動けない。
敵を殺そうとする九尾を制止する事すらできない。
故に、デス13/マニッシュ・ボーイが助かる術は存在しない。


732 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:18:27 .Qdj4hjU0



「おっ、俺は赤ちゃんなんだぞォッ!!赤ん坊を殺すの──」

───関係ないわ!!赤子の齢で地獄に行け!!



それが最後だった。
デス13のスタンドビジョンが、九尾の尻尾によって叩き潰され。
マニッシュ・ボーイの断末魔が、高らかに響き渡る。
…封印されていた九尾を招いたのは、マニッシュ・ボーイのスタンド、デス13だ。
故にこの事態は、彼自身が引き起こした帰結。
彼のスタンドが最後に手にかけたのは、彼自身だった。
彼自身が導いた、必然の末路。


───フン、感謝するんだな小僧ォ……


悪夢の世界が、崩壊する。
全てが闇に塗りつぶされていく。
その中で、九尾はナルトをただ一瞥して。


───貴様程度にこのワシを封印した四代目に……

「まっ、待ちやがれ!九尾!!」

───この空間ですら、貴様を害そうとするワシを抑え込む四代目の封印に……


それが、全てが闇に包まれる前に。
二人がこの空間で交わした最後の言葉。
だが、交わす言葉に親愛の情はなかった。
何故なら、この時の彼らは。
まだ九尾にとってナルトは“ナルト”ではなく“封印の小僧”であり。
ナルトにとっても九尾は“九喇嘛”ではなく“九尾の妖狐”だったのだから。



───いつか、お前の中の憎しみも何とかしてやりてーと思ってる



彼等が“ナルトと九喇嘛”になるのは、まだずっと未来の話なのだから。


733 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:18:53 .Qdj4hjU0







「…さん」

「……トさん」

「ナルトさん!!」


大声で呼びかける声に、ナルトは意識を覚醒させる。
起き上がってみると、セリムは困惑した表情で傍らから覗き込んでいた。


「お…おぉ、セリム、どうした?」

「どうしたじゃないですよ…全然帰ってこないし、影分身も消えてしまうしで…
心配になって、見に来たんです……何か、あったんですか?」

「あぁ、いや、悪い。起こしに来てくれて、サンキューな」


未だ寝起きの様な態度を見せるナルトにセリムは怪訝な表情で何があったのか尋ねる物の。
ナルトの返答は実に要領の得ない曖昧なものであった。
何があったのかすら、はっきりしない。
とは言え、ナルトの身体に何か異変が起きている様子も無い。
であれば、これ以上の追及は意味が無いだろう。
そう判断したセリムは、新たに切り出すべきことを切り出す。


「そうだ、ナルトさんのすぐ近くに、おにぎり頭の男の子が倒れてたんですけど──」


そこまで切り出して、セリムの言葉が止まる。
その視線は、屋上と下の階層を繋げる非常口に向けられていた。
その非常口に、夢の世界で出会った、おにぎり頭の子供が怯えた表情で立っている。



「あ…お前もちゃんと助かってたのか。よか──」

「ち…近づかないで!この化け物!!」



ナルトの言葉は最後まで紡がれなかった。
化け物。そう呼ばれて足が止まってしまう。
そう、佐藤マサオにとって、デス13は己の命を脅かす怪人だったけれど。
それを容赦なく殺した妖狐を飼っているナルトもまた、化け物でしかなかったのだ。
たたたた、とマサオが下の階へ向けて駆け降りていく。
所詮五歳の足だ。追いつこうと思えば、追いつけただろう。
だけど。


734 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:19:25 .Qdj4hjU0



「……久しぶりだな」



久々に面と向かって言われたことだったから。
ナルトも暫くの間、立ち止まってしまった。
そんなナルトを見て、セリムが心配そうに隣で見上げてくる。


「ナルトさん、大丈夫ですか?」

「……あぁ、大丈夫だ。さ、さっきのおにぎり頭を追うってばよ!」


ニっと、溌溂に笑って。
ナルトはそれでも、自分を化け物と呼んだ子供を見捨てようとはしなかった。
もうおにぎりが階下へ駆け出して行ってから五分以上経つから、追いつけるかは分からないけれど。
それでも子供を見捨てる様な男が火影になれる筈も無いのだ。
だから、ナルトはおにぎり頭を追う事を決めた。


(うずまきナルト……)


そんな彼を、セリムはバレない様に、ホムンクルスの顔で観察しつつ後をついていく。
この屋上に上がってきたとき、セリムの目に入ったのは異様な光景だった。
紅い錬金術の錬成エネルギーの様な物を身に纏い(話に聞くチャクラだろうか)つつ、意識のないナルトと。
その傍らでうなされるおにぎり頭の子供。そして……
恐怖を顔面に張り付けて、体中から血を噴き出して死んでいる、黒人の赤ん坊。
首輪を嵌めてランドセルを背負っている事から、参加者である事は直ぐに分かった。
取り合えずランドセルを回収し、遺体をデバイスに付属していたライトの光源で照らし、自身の影で首輪を除いて捕食してみた。
すると、二つほど興味を惹かれる事を知ることができた。
一つはスタンドという、プライドにとって錬金術とも違う未知の異能を。
もう一つは、ナルトの中に潜む怪物の存在を。
あれは正しく怪物であった。プライドをして昼間でも勝てるか分からぬという領域の。


735 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:19:41 .Qdj4hjU0


(あれが本当に潜んでいるなら、安易に殺そうとしてあれが出てくれば、
返り討ちにされる恐れがある……何より、あの巨大なエネルギーを手にできれば……)


父上の計画も、更なる完成を見るかもしれません。
エドワード・エルリックが此処にいるか分からぬ現状、殺し合いに対してどういうスタンスを取るかは未だ決まっていないが。
それでもナルトに見えない様にプライドが浮かべる表情は、“傲慢”そのものだった。



【マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】



【D- 4 I・R・T屋上/1日目/黎明】

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:右足に刺し傷痕、チャクラ消費(小)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、煙玉×4@NARUTO、ファウードの回復液@金色のガッシュ!!、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
0:さっき逃げて行ったおにぎり頭を探す。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:一先ずは、『火影岩』を目指して行動する。
3:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。


【セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:もし居れば、鋼の錬金術師の生存を優先する。居なければ……。
1:6時の放送まで、ナルトを盾に無力を装い情報を集める。
2:具体的な方針は放送まで保留する。
3:うずまきナルトの中に潜むものに興味。
4:余裕があれば海馬コーポレーションに寄りたい。
5:海馬乃亜は何を企んでいる……?
[備考]
※ヨキに轢き逃げされて以降からの参戦です。
※ナルト・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。
※参加者がそれぞれ違う世界から来ていると考えています。
※マニッシュ・ボーイの遺体を捕食した事によりスタンドの知識とナルトの中の九尾に対する情報を得ました。


736 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:20:10 .Qdj4hjU0



助けて…助けてパパ、ママ…しんちゃん、風間くん、ネネちゃん……


助けてくれるなら、誰でも良かった。
ただ思いつく限りの人間の名前呼びながら、マンションを駆け下りたマサオは夜の街を逃げ惑う。
赤ん坊を守るつもりなんて、もうとっくに頭の中から吹き飛んでいた。
今はただ死にたくないという気持ちだけが、彼の頭の中にあった。
でも、そんな臆病風に吹き飛ばされている彼にも一つだけ揺るがぬ意思があった。


(でも……あのバケモノの事だけは……!みんなに知らせないと……!!)


夢の世界で出会った、馬鹿でかい狐の怪物を従えた少年。
無惨に赤ん坊を殺した少年。
許せなかった。


(マ…マサオ…皆に…伝えてくれ…最後に……俺を殺したガキの事を……!)


そう。
マニッシュ・ボーイはただでは死ななかった。
死の間際、最後の力を振り絞ってマサオの二人に暗示をかけたのだ。
赤ん坊である自分を殺したのはナルトであり、ナルトを追い詰めるように動け、と。
それが実を結ぶかは分からない。
マサオは何処まで行っても泣き虫おにぎりでしかないのだから。
けれど。


「そうだ…!僕だってかすかべ防衛隊の一人なんだ……!
あの赤ちゃんを殺したあのバケモノの男の子を何が何でも追い詰めてやる…!
裏切りおにぎりなんて、誰にも言わせないぞ……!!」


歪んだ正義感を胸に、マサオは必死に地を駆ける。
曲がりなりにも助けてもらった少年の恩など爪の先にも感じずに。
むしろ自分を殺そうとしていた殺人者の手助けをするべく。



「佐藤マサオ!ファイヤー!!」



言葉の通り。
臆病風に吹かれながら、それでも消える事のない火の意志が、彼の胸に宿っていた。


737 : 関係なかった!! ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:20:25 .Qdj4hjU0


【D- 4 /1日目/黎明】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:精神疲労(大)、失意の庭の影響?、ナルトを追い詰めるという確固たる意志。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰りたい。
1:赤ちゃんを殺したあの怪物は許さない、絶対に追い詰める。
2:何だよ皆おにぎりおにぎりって…!
3:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
4:写影さんや桃華さんと一緒に行動する。
[備考]
※デス13の暗示によってマニッシュ・ボーイの下手人であるナルトを追い詰めるという意志が発生しています。
※自分を襲った赤ん坊に与する矛盾には暗示によって気づかない様になっています。


738 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 10:20:46 .Qdj4hjU0
投下終了です


739 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/03(土) 12:01:30 .Qdj4hjU0
セリムの支給品にマニッシュ・ボーイのモノを追加するのを忘れていたため、此方に差し替えます。

【D- 4 I・R・T屋上/1日目/黎明】

【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:右足に刺し傷痕、チャクラ消費(小)
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、煙玉×4@NARUTO、ファウードの回復液@金色のガッシュ!!、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:乃亜の言う事には従わない。
0:さっき逃げて行ったおにぎり頭を探す。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:一先ずは、『火影岩』を目指して行動する。
3:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
※螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
※セリム・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。


【セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品2〜4、エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、
ねむりだま×1@スーパーマリオRPG、マニッシュ・ボーイの首輪
[思考・状況]
基本方針:もし居れば、鋼の錬金術師の生存を優先する。居なければ……。
1:6時の放送まで、ナルトを盾に無力を装い情報を集める。
2:具体的な方針は放送まで保留する。
3:うずまきナルトの中に潜むものに興味。
4:余裕があれば海馬コーポレーションに寄りたい。
5:海馬乃亜は何を企んでいる……?
[備考]
※ヨキに轢き逃げされて以降からの参戦です。
※ナルト・エリスと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました。
※参加者がそれぞれ違う世界から来ていると考えています。
※マニッシュ・ボーイの遺体を捕食した事によりスタンドの知識とナルトの中の九尾に対する情報を得ました。


740 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/03(土) 13:00:12 rImOusII0
皆様投下乙です。
>>687で言及した拙作のミスについて、修正させて頂いたことを報告します。


また、登場アイテムのページを編集していて気づいた点がありました。
『初めての食事風景』で、魔神王の道具欄に石仮面@ジョジョの奇妙な冒険がありますが、魔神王のランダム支給品の数は前の話と変わっておらず、また文中で中島の支給品は「出て来たのは、透明な瓶に入った血液だけだった。」と描写されているので、些細なことですが矛盾しています。
これについては、石仮面を魔神王の支給品とするか、中島の支給品とするか、どちらかで対応可能でしょう。(あるいは支給しなかったことにすることもできますが)
なんにせよ、修正して展開に影響は出ないと思います。


最後に、ハーマイオニー・グレンジャー、ヘンゼル 予約します。


741 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 17:40:24 tntqTJoQ0
投下ありがとうございます。感想は後ほど
すいません、私の予約なんですが、話を纏めるのが難しくなり、シャルティアのみ破棄させて頂きます。


742 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/03(土) 20:38:48 NNsoK/Lg0
野比のび太、ニンフ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、雪華綺晶で予約します


743 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/03(土) 20:45:38 LgDDdZlM0
拙作『初めての食事風景』に関する◆RTn9vPakQY さまのご指摘ですが、完全に自分のミスです
石仮面に関しては支給されていない扱いでお願いします
ご迷惑をおかけしてしまい大変に済みませんでした


744 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:53:21 tntqTJoQ0
投下します


745 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:53:57 tntqTJoQ0

ボレアス・グライラット邸。この館の一室で、複数人の子供達がテーブルの席についていた。

「――――それで、マサオ達を何とか助けた後……」
「お二人に助けられました」

映画館で引き起こされた、失意の庭から始まった奇術師に対する雷帝の一方的な蹂躙劇。
そして、その雷帝から逃亡した、少年少女の決死の行動。
その全てを、美山写影と櫻井桃華は語り終えた。彼らの戦いの裏であった、もう一つの殺人鬼と吸血鬼の戦いと、その為に命を落とした一人の少年の事は知る由もなく。
話を聞き終え、フリーレンは雷帝ゼオンの強さを測っていた。
少なくとも、実力は彼女の横に居るガッシュと同等か、それ以上のもの。更にゼオンは電撃を放つ際に気絶をした様子はなく、一人で戦っていたという。
フリーレンからすれば、ガッシュの完全な上位互換な性能と、魔族らしい冷徹さを感じさせた。

「……ありえぬ。ゼオンが殺し合いに乗るなど……!!」

同じく、話を聞き終えたガッシュが震えた声を絞り出した。
ガッシュにとって、かつては対峙したとはいえ、後に和解しガッシュの家族として、改めて共に暮らす事を約束したただ一人の兄だ。
それだけではなく、冷酷ではあるが王としての器も兼ね備えた、誇り高い魔物だともガッシュは認識していた。
だからこそ、このような馬鹿げた殺し合い乗る筈がない。何より、ゼオンは今、魔界で肉体を失っており参加者として連れ去ることも不可能だ。
だが、写影達の語る雷使いの容姿は、ガッシュと瓜二つの銀髪の子供。これ以上ない程に、あのゼオンの容姿と一致した。

「どうかしら? そのゼオンはガッシュ君の兄なのでしょう? 一時は憎んだけれど、今はそのわだかまりも解けた。
 失った肉体は乃亜によって、復元されたと仮定して……ゼオンはガッシュ君……貴方を生還させようとしているんじゃない?」

そしてもう一組、このボレアス・グライラット邸を訪れる前に、新たに合流した二人の少女の内の一人、風見一姫が口を開いた。

「……信じたくないが、そうかも……しれぬ。
 皆にもさっき話したが、今、魔界は……クリアという者に、消滅されようとしておるのだ。だから、魔界の王を決める戦いで、クリアを王にしてはならぬ。
 ゼオンがそれを知って、私を生き残らせようとしておるのかもしれぬ」

「なんだか、改めて聞くとスケールが大きすぎる話ね……」

一姫の隣に座る古手梨花が、未だに驚嘆を感じえない様子で呟く。

「ええ、でもガッシュの世界も"パラレルワールド"なら、説明が付く。
 並行世界、並行宇宙、並行時空とも言われているけれど、決してSFの世界だけではなく、理論物理学の世界でも、その存在について可能性は語られているの。
 超能力を開発する最先端の科学都市である学園都市や、魔法が発達した……私達からすれば中世の世界、私の頭の中にある知識で、これら全てが矛盾しない答えはこれしかない。
 貴方も同じ意見なのでしょう?」

「マサオの言っていた、映画の世界に迷い込んだとかの話も全部本当だとしたらね」

情報交換の中で、この場に居る全員が乃亜に連れ去られる前の、それまでの経緯を語ってきた。
学園都市、魔法の存在する世界、魔界の王を決める戦い、惨劇と共に延々と繰り返される昭和58年。
強いて同じ世界かもしれないと言えるのは、一姫と桃華くらいのものだった。それでも年代に差はあったが。
それらの、絵空事や妄言と言えるような発言を全て事実と考えるのなら、一姫の中の知識に当て嵌る結論は一つしかない。

「パラレルワールド……一姫はそれに詳しいの?」

「あくまで、美山くんと同じで知っているだけで、専門家ではないわ。
 それに、自分から提唱してなんだけど、可能性の話であって少なくとも私の世界ではパラレルワールドを観測する方法は存在しないし、懐疑的な意見もあるのよ」

「肯定も否定も出来ない。だから、あってもなくても、おかしくない、か」

「だけど、私はあると仮定して事を進めるわ。ここに居る全員が、嘘を吐いているとは思えないもの」

一姫自身も半信半疑ではあるが、最先端の科学都市の住人からも同意を得れた以上、何よりここに居る全員が精神を病んで妄言を吐いていると仮定するのも大体な推理だ。
今は平行世界があると想定するのが、ベストだと判断した。


746 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:54:18 tntqTJoQ0

(あの魔族……確かに今までとは違った)

一姫の仮説を聞きながら、フリーレンはこの場に連れ去れてから、初めて遭遇したあの魔族の事を思い起こす。
非常に俊敏で力も強く、高位の魔法を扱う上位の魔族だった。だが、それ以外に違和感は存在していた。
彼女が扱おうとした魔法が、今までフリーレンが千年近く触れてきた経験の中で、毛色が違うように感じられたのだ。
奇抜な魔法は幾らでも見てきた、原理の分からない呪いと分類されるものもだ。
だが、そういった違和感ではない。痛覚にも刺された時の痛みと、殴られた時の痛みがあるように、同じ括りではあるが、まるで別種のような感覚だった。
何より魔法を扱いながら、自らを欺き油断を誘った不意とはいえ、ゾルトラークに対し一切反応する素振りが、着弾まで見られなかった。
自らに触れて、その効果をようやく知ったような動揺。
フリーレンが七崩賢並と評する程の大魔族が、ゾルトラークも知らないとも考え難い。

(ガッシュも別世界の魔族、か……)

未だ、警戒を緩めないまま一度は死線を共に潜った少年へと視線を向ける。
フリーレンの常識では考えられない話だが、魔物の住む魔界がありその王を決める戦いを何故か人間界で行われており。
人間のパートナーと組むことで、その呪文の詠唱を代理で行わせ、それぞれの魔法を駆使して戦うのだという。
しかも、魔力ではなく心の力を消費するのだという。
魔族が人間を欺く為に考えた嘘にしては、突拍子もない上に信憑性も低い。普通の魔族なら、もっと現実的な嘘を使うだろう。

「さて、話が脱線したわね。
 今、この場で警戒すべき危険人物……フリーレンとガッシュが出会った、ありんすの女。
 ガッシュの兄ゼオン。そのゼオンと交戦していたマジシャン風の少年……でも彼はゼオンに殺害された可能性も高い。
 マサオという子と一緒に居る、赤ん坊」

「……さっきも言ったけど、その赤ちゃんに対しては、本当に何の確証もないんだ。でも……沙耶香という人をバラバラにして殺した相手が、マサオと赤ちゃんだけ見逃したのは違和感がある」

「赤ちゃんに擬態した魔族かもしれない」

「私は喋る赤ちゃんを見たことがあるのだ。クリアのパートナーで口が悪かったのう」

「あとは、最初に私達が襲われたお年寄りのような口調をした方ですわね。……悪評を撒くなと釘を刺されましたが」

「安心なさい。フリーレンと私は大丈夫よ。出会っても、知らないフリか、首輪解析をしている優しい人だって二人から聞いたと言っておくわ。
 ただガッシュと梨花が、上手く誤魔化せるか不安ではあるけれど……」

「う、ウヌ……」

「この子と一緒にしないで……百年間ずっと12歳をやってきたのよ。嘘吐きの年季が違うわ」

「むしろ、百年も12歳やり続ける羽目になっていたから、心配なのよ。分からない?」

「あんた、喧嘩売ってんの?」

もっとも、梨花の立場や、話を聞いただけの一姫はおろか、恐らくは当事者の梨花すら認識できていない出来事や要因も様々ある中で、惨劇に抗い続け、よくやっている方だとは彼女も思ってはいる。
しかし、それはそれとして迂闊な部分が多いというのが、一姫の梨花の評価だった。

「あと……私達もここに居るか確認もしていないけど、貴方達が挙げた参加者と同じくらい危険、いえそれ以上の厄介さかもしれないわね。
 北条沙都子――――彼女には注意が必要よ」

勿体ぶるように、だがそれまで以上に重い声で、一姫はフリーレン達が語った参加者と同列の危険度を強調し、北条沙都子の名を挙げた。

「場合によっては殺害もやむを得ないと思うわ」

「待ちなさい。何を勝手なこと言ってるの!」

予定調和のように叫ぶ梨花を、一姫は面倒そうな顔を浮かべ向き直る。

「沙都子は、あの娘は私が止める!!」
「元の世界に戻ったら、それは好きになさい……。でも、もし殺し合いに居たのなら、もう貴女だけの問題じゃない。私達、全員の問題なの」
「……私に喧嘩を売るなら、いくらでもすればいいわ。だけど、沙都子に手を出すなら……!」

梨花は手を伸ばし、一姫の胸倉を掴み上げる。


747 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:54:52 tntqTJoQ0

「貴女、何回も同じ時間をループしているせいで、命の重さが希薄になっているんじゃない?」

「なにを―――」

「死んでいるの。殺されているの。貴女も、いえ貴女だけじゃない。貴女の言っていた部活の仲間、貴女に良くしてくれた人達も、全く関係のない雛見沢の人達も全て……」

腕を振り上げ、一姫の頬に打ち込もうとしていた梨花の拳が止まった。
一瞬、何を言われたのか理解できないような顔をして、目を見開いていた。

「貴女以外の人間は全員、一度限りの人生なの。それを平気奪い去り、何度も繰り返す女……それが北条沙都子よ。
 ……もっと、分かりやすく言ってあげましょうか? 貴女裏切られてるのよ。一度や二度じゃない。彼女は、何回も裏切り続けているの。貴女を含む部活メンバー全員をね」

「そんな……こと」

「平気で友達を裏切れる相手を、口で説得なんて出来る訳がないし、する気にもなれないわ。
 私は、貴女達の茶番染みた惨劇の犠牲になる気はないの。この子達も、そんなものに巻き込まれる筋合いはない」

「……それ、は」

「あ、あの……お二人とも、少し落ち着いて……」

「桃華の言う通り、喧嘩はやめておこうか」

少したじろぎながら、桃華と依然として表情は変えないままフリーレンが仲裁に入る。

(何年も同じ時間を繰り返して、惨劇を起こす人間か……完全に精神が、人類のそれではなくなっているのか。
 一姫の言う通りなら、排除した方が良い。人の疑心暗鬼を助長する雛見沢症候群とかいう病も厄介だし、被害が広まる前に何とかできればいいけど)

「そうなのだ……沙都子は梨花の友達なのであろう? まだ、話し合えば……」

「ガッシュ、そういう問題じゃないよ。
 話が通じる相手じゃない。きみが善意を見せたら、全力で付け込んでボロ雑巾のようになるまで、利用し尽くすだろうね」

フリーレンの中での警戒度はより高まる。
別世界の人と共存している魔族という前提があるとはいえ、ガッシュよりも先に、早急に対処しなければいけないと考える程に。

「危険人物の共有も終わったところだし、あとは首輪の解除について話しましょうか」

梨花の手を振り払い、何事もなかったかのように一姫は話題を切り替えた。

「いくつか魔法を試したけど、首輪に触れた瞬間打ち消された。私達の世界にも魔法を無効化出来る鉱物は存在するけど、魔法抜きの人類の技術では加工はするのは不可能だよ」
「分からないわ。科学が発達した人類の技術であれば、その鉱物を加工することも可能かもしれない。少なくとも乃亜の力は、科学を基にしていると思うの。
 あの放送も立体映像を利用しているでしょうし、美山君も覚えはない?」
「学園都市にも、ホロモデルを利用した施設はいくつかあったよ」
「なるほど、科学を使って封魔鉱を首輪サイズに加工したのか……純度も調整して、首輪に干渉しない限りは、私の魔法の発動を妨害しない程度にまで、無効範囲を絞ったのかな?」
「あと、爆弾の処理としてベターなのは、液体窒素だけれど……液体窒素を出す魔法はないしら?」
「液体窒素?」
「簡単に言えば、冷やして冷凍させるの。それで起爆を不可能にする」
「冷たいのなら、かき氷を出す魔法ならあるけど」
「シロップは?」
「出ない」
「残念だわ」
「他には――――」


748 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:55:09 tntqTJoQ0

一姫や、写影の話も交えて科学技術の一端を話に聞き、フリーレンは驚嘆していた。
魔法と違い、一度完成させしてしまえば、誰もが鍛錬も前知識も必要なくボタン一つ押すだけで洗濯をさせたり、掃除もしてもらえる。
それだけではなく、何人も乗せ長い距離を高速で移動できる鉄の乗り物。声や手紙を地球の裏側に住む相手に一瞬で届け、やり取りを可能とする通信器具。

(……私の世界と違って、魔法以外の文明が異様に発達しているわけだ。魔法より、汎用性に優れている。量産化もしやすい。
 首輪もこの高精度でも、科学が基であるなら、数十個を一度に作れてもおかしくない)

前準備や手間、いくつかの条件を満たしたり非常に難度の高い計算も必要するなど、しがらみも多い。
だが、それらを満たし改良を重ねることで、最適化され流通しやすいのが科学なのだろう。

「――――あとは、盗聴の可能性もあるわね」

「こんな小さな首輪で、離れた場所から人の声を聞けるんだ?」

「ええ、不可能ではないわ。さっきも言ったけど、電話を始め、声を相手に伝える技術は、かなりの発展を遂げているの。
 今ではどこでも誰もが、通話をすることが出来るわ。
 ただ……こんな会話は想定内でしょうし、乃亜に好きに聞かせとけばいいでしょうけど」

「……凄いね。人の声をこうも簡単に届けることが出来るなんて――――」

私の世界にあれば、もっとヒンメル達の声も聞けたのかな。

そう言おうとして、フリーレンは口を閉ざした。






――――――――


749 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:55:56 tntqTJoQ0
「美山くんに櫻井さん、梨花や私にも、この本は読めるようね」

首輪に関しての一通りの意見交換と考察を終え、あとはガッシュの魔本について確認していた。
本来人間とパートナーとなる筈のシステムで、彼女の世界では人類扱いとはいえどエルフであるフリーレンが本を読めることに違和感があったが、それはすぐに解消された。
一姫や梨花、桃華と写影にも読めたのだ。それどころか、魔本なしでもガッシュが単独で呪文を詠唱することも可能だった。
ゼオンが魔本なしで術を発動していた以上、おかしくはない。しかしガッシュには術を使用する際、一瞬気絶するという致命的な欠点が存在した。

「この魔本はガッシュへの、救済措置なのかもしれないわ」

「う、ウヌ……」

一姫の考えとしては、術の発動条件を緩和しても単独では戦えないガッシュの為に、乃亜が用意した物ではないか。
少なくともガッシュを殺し合いの虐殺される側ではなく、殺し合いを盛り上げる為の戦闘要員として期待している筈だ。それだけ、強力な力を秘めているのは間違いない。
あのシャルティア・ブラッドフォールンを相手に、ほぼ一方的に退ける事が出来る参加者などそうはいないのだから。

「さて、情報交換もこの程度で良いでしょう。これから、役割を分担させて欲しいわ。
 まずマサオという子と赤ちゃんの探索なんだけど、これは私と梨花……あとガッシュにも来て貰えるのなら、こちらで引き受けるけど」

「そんな私が行きますわ。元はと言えば、私がお二人を……」

「貴女と美山君は、少し休んでいた方が良いわね。
 ここで少し体力を回復させてから、フリーレンと一緒に首輪のサンプルの回収と、解析に必要そうな機材と情報も集めて欲しい。頼めるかしら?
 1回放送後、一時間以内にもう一度この館で再合流しましょう。あとは念のため、非常時の別の合流場所も―――」

一姫の言うように写影と桃華は既に、疲労困憊の様子が見て取れた。二人とも支給品の力も借り、特殊な力を身に着けているが、このままマサオ達の救援に向かわせるのは命に関わるだろう。
少なくともゼオンという危険人物が周辺に居るのなら、ガッシュが赴く方が適してはいる。
だが、そこにフリーレンが着いていけば、残された写影達や、ただ死に慣れているだけの梨花達だけでは戦力面が心許ない。
故にガッシュが一姫と梨花を連れてマサオの探索に向かい、フリーレンが写影達の傍に着く事で戦力面を平等に振り分け、それぞれの役割も分担させている。

「ここはお言葉に甘えよう。正直、僕と桃華が行っても…ゼオンという子と会ったら、どうにもならない」
「で、ですが……」
「桃華と写影は良く頑張ったよ。二人はここでお茶でも飲んで、少し休んでいた方が良い」

そう言って、フリーレンは館の中から見つけた二つのティーカップに温かいお茶が出てくる魔法を使う。
カップにお茶が注がれ、それを写影と桃華の二人の前に置いた。
フリーレンも一姫の意図を察しており、この二人にあまり無茶をさせない方が良いと判断した。

「フリーレンの魔法は便利なのだ。そうだ、ブリを生やす魔法はないかの!! 家の前にブリを生やして、一杯食べたいのだ。
 洗濯をする魔法とか、掃除をする魔法とかもあったら、教えて欲しいのう! 清麿の母上殿には沢山お世話になったから、恩返しに覚えて教えてあげたいのだ」

フリーレンの魔法を見て、無邪気にはしゃぐガッシュを冷ややかな目でフリーレンは見つめる。
魔族は生涯で1つの魔法しか研究することはない。こんな民間魔法に興味を持つとは、普通ではありえない。

(こんな魔法にも興味を持つのか…やはり、別世界の魔族だからか……)

これはガッシュが一姫達と行動する前の、最終確認にも近かった。
わざと、ガッシュの前で魔法を披露し反応を伺ったが、フリーレンの知る魔族のそれではない。
断言は出来ないが、フリーレンの世界の魔族とは大分異なるのは、恐らく違いない。

(……やっぱり、分からない)

ガッシュから感じる善性も、偽りではないのかもしれない。そこまで理屈で理解しながら、だがフリーレンはガッシュを信用できない。
やはり、それまで培った経験と、根深い魔族達への憎しみはそう簡単には拭えなかった。


750 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/03(土) 23:59:32 tntqTJoQ0

「それは、また後にしましょう。ガッシュ、梨花……行くわよ」

「……悪いけど、私は一人で行かせて貰う。沙都子を探すわ」

梨花は自分のランドセルを背負い、一姫に背を向けて館から一人で発とうとしていた。
溜息を吐き、一姫はガッシュからひょいと魔本を取り上げ、呟く。

「ザケル」

「う、ぎゃああああああああああああ!!?」

ガッシュの意識が飛び、口から電撃が放たれ梨花を貫いた。

「馬鹿ね。貴女……一人で行っても野垂れ死ぬわよ」
「ヌオオオオ!!? な、何故……ザケルを唱えたのだオヌシ!!」
「大丈夫なんですの!?」

ガッシュと桃華は慌てながら梨花の元へ駆け寄り介抱する。

「安心なさい。心の力を最小限に抑えたわ。ちょっとビリっとした程度よ」
「あ、あんたね……」
「でも、それ以上ふざける素振りを―――」
「びゃあああああああああ!!!!」
「あら?」

再びガッシュの口から電撃を吐かれ、梨花の全身が痺れだす。

(ふざける……ざける…ザケル、これでも呪文を詠唱した判定になるのね)


751 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:00:00 7o3915WA0
「お、オヌシ…本当に大丈夫なのか……?」

「だ、大丈夫だから、本当にどっか行ってあんた…今すぐ後ろを向け、こっちを見ないで」

「分かった? ガッシュみたいな力を持った、悪意ある参加者に会えば、貴女はどうしようもない。北条沙都子を見付ける前に野垂れ死ぬわね。
 だから、私と来なさい。もし私に何かあったら…今度は貴女がこの本を持つの……そして戦って。
 それに、この子の力は電撃…使い方を調整すれば、相手を気絶させる程度で済ませられるわ……。どうしても、北条沙都子を止めるのであれば、悪くはない力でしょう?」

「……わ、分かったわ。だから、もう電撃はやめなさいよ…次やったら、本当に撃つわよ…あんた」

対主催に於ける貴重な戦力であるガッシュ、その力を発揮する為に梨花の同行を促しているのだろう。
二人いれば、どちらかが欠けた時でもガッシュのパートナーを途切れさせずに済む。この電撃の力を失わずに済む。

「ガッシュ…歩きながらで良いわ。貴方のパートナーの高嶺清麿が指示した戦術、戦略、その時の状況……覚えている限りで良い…その全てを教えて、全て頭に叩き込むわ。梨花、貴女も覚えなさい」
「一姫は頭が良いのだろう。自分で考えなくてもよいのか?」
「私の戦い方より……貴方の言う、高嶺清麿という天才が、貴方を王にする為に研鑽し研ぎ澄ませ、その力を最大効率で運用できるよう積み上げた戦い方…それを私は信じるわ」


752 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:00:14 7o3915WA0

ガッシュの覚えている呪文を情報交換の中で、ある程度は確認したが、はっきり言えばザグルゼムまで、決して強いとは思えない性能だったと一姫は感じた。
無駄に色んな性能に手を伸ばし過ぎて、特化した強みがない、典型的な器用貧乏といってもいい。
他の魔物との戦いも掘り下げて聞いてみたが、特に火力面が不足している。
だが、それをパートナーである高嶺清麿が的確な判断を下し、時にはその身を張り、ガッシュの能力を理解し最大効率で運用しながら、数々の激戦を制したのだろう。

決して楽な戦いではなかったはず、数多の困難もあったはずだ。

風見一姫は天才だ。
幼少より優れた才を持ち、親ですら彼女には逆らえず、身の回りの人間を都合の良いように取捨選択し、実質支配していたような、現実離れした存在だ。
その一姫を以てしても、これほどの不利な戦いを全て勝利へと導いた清麿は、天才であると認めざるを得ない。

(……馬鹿な友達と馬鹿な理由で遊びに行って、心の底から馬鹿な事で笑ったり、両親ときちんと親と子として接して卓を囲んで毎日家族と談笑しながら、温かいご飯を食べる。
 そんな当たり前の事を、当然のように素でこなせてしまう……。
 昔の、私には考えられなかったものね)

それだけの偉業を成し遂げた男が、だがガッシュの口から語られたのは何処にでもいそうな平和な日常に溶け込む、ただの男子中学生のようだった。

優れた人種は線引きをする。

必ず、他者と己を線引きし、区分し区別してしまう。一姫も最愛の弟を別にすれば、両親すらその対象だった。
最終的には、弟が救った少女達とその中にいた親友と共に、楽園を創り上げ、悪くのない着地をさせはした。その為の壮大で、馬鹿げた野望を掲げたものだった。
だから、今の一姫には仲間はいる。それでも、かなりの長い道のりではあったし、あくまで弟の風見雄二が築いた仲間達でもある。
だが、清麿はそんな線引きなど何もない。誰よりも優れながら、誰よりもその他者と触れ合い絆を育んでいく。
天才でありながら、孤高でも孤独でもない。仲間という輪の中心に立ち、支配ではなく信頼を築き上げる。対等な仲間を持つことが出来る。しかも、何の打算もなく。

(一度……会ってみたいものだわ、高嶺清麿……もしかしたら、この子に変えて貰ったのかもしれないわね)

信頼し、そして信頼されること。
それは相手を一方的に支配する事よりも、ずっと難しい事なのを彼女は理解していた。

「だから―――貴方も信じなさい。間違いなく、高嶺清麿は貴方にとって、最高のパートナーよ」

自称するのはともかく、他人に天才と呼ばれるのを「馬鹿が自分の事を馬鹿と呼ばれるのを嫌うのと同じ理由」で嫌う一姫が、清麿を天才と呼んだのは、彼女なりの最大の賛辞だったのかもしれない。


「ウヌ! そんなことずっと前から知っておる。清麿は凄いのだ!!」


753 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:01:30 7o3915WA0



【G-4 ボレアス・グレイラット邸/1日目/黎明】


【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]精神疲労(大)、疲労(小)あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
3:一旦休息を取る。
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。


【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(大)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
4:マサオさんが心配ですけど、今はガッシュさん達に任せる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。


【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:写影達の休息が取れたと判断したら、首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:1回放送後、一時間以内にボレアス・グレイラット邸に戻り、ガッシュ達と再合流する。
5:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。


754 : 夜の館で ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:02:36 7o3915WA0



【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]全身にダメージ(小)
[装備]赤の魔本
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:マサオという者と赤ん坊を探すのだ。
2:戦えぬ者達を守る。
3:シャルティアは、必ず止める。
4:ゼオンも止めねばならぬ。
[備考]
※クリア・ノートとの最終決戦直前より参戦です。
※魔本がなくとも呪文を唱えられますが、パートナーとなる人間が唱えた方が威力は向上します。
※魔本を燃やしても魔界へ強制送還はできません。



【古手梨花@ひぐらしのなく頃に卒】
[状態]:健康、髪の毛がチリチリ
[装備]:デザートイーグル@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生還して、沙都子と一緒に聖ルチーア学園に行く。
0:マサオとかいうおにぎり頭と赤ん坊を探す。沙都子も探す。
1:0をしながら首輪のサンプルを探す。
2:沙都子が居ればボコボコにする。
3:でも、沙都子は死なせたくない……。
[備考]
※卒14話でドラゴンボールみたいなバトルを始める前からの参戦です。
※ループ能力は制限されています。



【風見一姫@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いから抜け出し、雄二の元へ帰る。
0:マサオというおにぎり頭と赤ん坊を探す。
1:0をしながらも、首輪のサンプルの確保もする。解析に使えそうな物も探す。
2:北条沙都子を強く警戒。場合によっては、殺害もやむを得ない。
3:1回放送後、一時間以内にボレアス・グレイラット邸に戻りフリーレン達と再合流する。
[備考]
※参戦時期は楽園、終了後です。
※梨花視点でのひぐらし卒までの世界観を把握しました。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。



【全員共通の備考】
※それぞれの出展元作品の世界観について知りました。
※シャルティア(名前不明)、ゼオン、ドロテア(名前不明)、マニッシュボーイ(名前不明)、右天(名前不明)、沙都子について、危険人物(一部その可能性もあり)であると情報交換しました。
※ボレアス・グレイラット邸の他に、非常時の別の合流場所も指定されていますが、それは後続の書き手さんにお任せします。


755 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:03:10 7o3915WA0
投下終了です


756 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:22:34 7o3915WA0
感想投下します。

>関係なかった!!
うーん、やはりマニッシュボーイ君の敗因は人選ミス……。しかし、これを言うのも最後と思うと感慨深いですよね……。
今回は相手が悪かったのもあるんでしょうけどね。
節々から伝わってくるマサオ君の生き汚さ、でも私は嫌いにはなれないとこもありますけどね。
ナルトの影分身を活用してロワ内を移動するのは、実は原作でもかなり頭を使って戦ってますし、好きな描写です。ネジVSナルトの最後の決め手ほんとすこ。
しかし何というか、マサオ君の確固たる決意がクソみたいな方向で固まるの、笑っちゃうんすよね。絶対、滅茶苦茶悪評撒くやつじゃんこれ。
本人死んでも、クッソ迷惑な悪評だけ広まりそう。マニッシュボーイ守るより、気合入れて悪口言いまくりますよこれ。


757 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 00:28:34 7o3915WA0
>>743
該当話にある石仮面の表記をwikiの方で消させて頂きました。
内容は改稿していませんので、ご了承ください。


758 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/04(日) 07:46:39 JaZmylFo0
>>757
お手数をお掛けしました


759 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:21:56 lr68fA3A0
投下します


760 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:22:14 lr68fA3A0
燃え尽きた大地に、土を掘り起こして何かを埋めた跡がある。
その上に、簡素ながらに削り積み上げた石が二つ。

それは、正しく墓石だった。
それは、野比のび太がこのまま放置しておくには可哀想だと思い。
皆の協力の下、残骸だけでも土に埋めて作ったもので。
その残骸は触れた途端に崩れ落ちてしまうほどに脆く、原型を留めることすら出来ず。
それ故に、ロキシー・ミグルディアとベッキー・ブラックベルの首輪が回収された後。
正しく塵と化したその残骸を、二人が生きていた証を土に埋め、丁重に弔った。

この殺し合いにおいて、死体の尊厳は存在しないに等しく。
利用されるか、破壊されるかのほぼ二択で。
そのような地獄の中で、人並みの善性を保つ彼は。
せめて誰にも利用されないようにと、安らかに眠れるようにと。





雨は止んだ。元々ロキシー・ミグルディアの魔法による雨雲は長くは続くこと無く。
術者の死亡から時が経って降り終わり。雲の隙間より差す黎明の輝きが大地を照らしていた。

雨は止んだ。少年少女たちの悲しみを一先ずは流れ落として。
この理不尽な状況、惨酷な殺し合いに抗おうと一歩踏み出した、その始まりのように。



☆ ☆ ☆


エリアD-7、産屋敷邸。
鬼殺隊最高責任者、産屋敷耀哉が住まう邸宅にして鬼殺隊の本部。
百畳敷の大広間から見える庭園は、見るものに安らぎを与えてくれる場所でもある。
そんな大広間に、野比のび太とニンフ、イリヤスフィールと雪華綺晶の4人がそこにいた。

あの後、休息も兼ねて4人が訪れたのがこの産屋敷邸。
先の魔女との戦闘や、ロキシーとベッキーの埋葬の事もあって禄にお互いの話も出来ず。
落ち着ける場所として手軽かつ近場にあったこの邸宅にて改めて自己紹介やお互いの情報の共有を行ったに至る。

「……それで、大体の事は共有できた訳だけど。」

そう口を開いたのはエンジェロイド、ニンフ。
この情報共有会議においての実質的な取りまとめ役の立ち位置に収まった、翼を失った天使。
自分を含めた4人とそれぞれ所有している情報を交換、そして伝達・共有。

野比のび太からは未来世界、及びこの殺し合いに関与している可能性がある未来人の事を。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンからはリップという少年の存在、及び別の世界に飛ばされた際の経験、そしてマジカルサファイアを通しての魔術世界の知識を。
雪華綺晶からは薔薇乙女(ローゼンメイデン)を中心にアリスゲームの知識、及び精神世界の事を。
そしてニンフからはエンジェロイド、そのマスターらがシナプスという浮遊大陸、世界崩壊の危機。そして何より、自らの翼を毟った少女のカタチをした怪物の事を。

4人共、改めて世界の広さを理解する形となった対談。歴史の流れも在り方も何もかもが違う4つの世界。

「僕だって色々経験したことはあるけれどさ……そんな簡単に世界が危機だとか、いくら僕だって驚くよ。」
「いや、平行世界に飛ばされた事には余り驚かないんですね……。」

妙に緊張感の無さそうなのび太の発言。野比のび太としても今までいろんな冒険や繰り広げてきた身である。恐竜蔓延る原始時代、天空の理想郷、遥か彼方の惑星、未来の博物館、兎が住む異説の月、ジャングルの奥地に深海、宝島に南極。
それもあってかそこまで驚いているような表情ではない。つまる所超常慣れである。
イリヤもまたカレイドステッキを手に入れ魔法少女として色々経験している内に荒事には慣れたものの、それでも自分以上に修羅場を潜っているのび太のあっさりした反応には突っ込まざる得なかった。


761 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:22:28 lr68fA3A0

「まあ、ね。でもイリヤちゃんだって凄いよ。箒無しに空を飛べるだなんてさ。」
「え、ええと……それは、何というかその……魔法少女って何か普通に飛んでるじゃない?」

『いいえ、イリヤ様が特別なだけで、魔術師でも普通はそう簡単に飛べません』と突っ込むようにマジカルサファイアが呆れまじりの発言。ただしのび太は大分あっさりと魔術で空中飛行が出来るイリヤに目を輝かせている。

「……普通に、飛ぶ? いや魔法少女だから……?」
「マスター……魔法少女というだけで人が普通に空を飛ぶ認識は少し……」
「あれぇ!? 私がなんかおかしいの!?」

天然とも言うべきイリヤの発言にニンフも雪華綺晶も生暖かい目。
憧れの眼差しと珍しいものを見る瞳に囲まれさしものイリヤも慌てて言葉を返す。

「大丈夫だよ、僕はイリヤの事は凄い魔法少女だって思ってるからさ。」
『ということらしいので、イリヤ様。一先ず話を本筋に戻しましょう。』
「ねぇ!? なんか私がおかしい人みたいな扱いされたままなんだけど!?」

閑話休題。何か勝手に被害者になった魔法少女(イリヤ)は置いといて、サファイアの一言で議題は本題へと戻る。
のび太が若干フォローっぽい発言をつぶやくも、「今褒められてもちょっと嬉しくないかな!?」と赤面状態。実際魔法がてんでダメなのび太としては、カレイドステッキありきとはいえ魔法で色々やれているイリヤに対しちょっと憧れを抱いてしまってるのは素直な感情であるが。

『……まず、この殺し合いに関わる海馬乃亜。そして仮想的であるその協力者に関してです。』

第一に、主催・海馬乃亜。そしてその協力者。
人を玩具としか思わぬ言葉。第0回放送で流れた、アニメやゲームを楽しむような無邪気で期待を寄せるような発言。だが、海馬乃亜にそういう力がある前提とは言え、全てをたった一人で準備できるなど思いづらい。特に、世界崩壊の危機に真っ只中だったニンフがいつの間にかここにいた、というのも不可解。

「あの乃亜ってやつ。対主催とかマーダーとかって言葉って使ってたけど。私達の事をアニメの役者だとかそういうもの扱いなわけ?」

乃亜の発言の一つ。殺し合いに抗う者たち『対主催』。殺し合いを肯定する者たち『マーダー』
まるでドラマの役者が当てはめられる役割のような認識をしている事に、多少は憤りは感じていた。

「……海馬乃亜にとって、私達は善と悪の役割で動いて観客を楽しませる、人形の役割なのでしょうか?」

そう告げたのは雪華綺晶。まるで自分たちを人形に見立てた善悪の人形遊び。
違いはその参加者(にんぎょう)にちゃんとした自我と人生があるぐらいで。その人生すら、乃亜という子供にとって、人形に付加された着せ替え人形の服程度の価値なのか。

「それとも、ただ……。」

孤独を満たしたかったのか。そう言いかけようとしたが、その言葉すら出なかった。
ある意味他人を利用して、奪って、そして愛が欲しかった雪華綺晶という、本来ならば肉体のない第七ドールは。海馬乃亜を見て、自分の過去を眺めているような、そんな感覚に陥りそうになった。
あの眼は、殺し合いという人形劇を愉しんでいるように見えたあの瞳、まるで―――。

「……雪華綺晶?」
「……いえ、少し考え事をしていたえだけです、マスター。」

考え込みてたのを見かね、イリヤが心配して雪華綺晶の顔を覗きんだ。
それに反応し、何か誤魔化すかのように、雪華綺晶は口を開く。

「ですが、あの海馬乃亜と言う人物は、もしかすれば……。」

心当たりがあると、おもむろに言葉を紡ぐ
鳥海皆人、第七ドール雪華綺晶の『マスター』だった人物。
いや、その実態は雪華綺晶がマスターの代わり、「自分だけのお父様」を得たいが為に自ら創った幻影。
自らを実像だと思い込んだ虚像。雪華綺晶は、海馬乃亜が彼みたいなものだと、そう予想した。
勿論の事だが、雪華綺晶は情報共有の際に自分のことを話している。自分の孤独、そして罪と罰、救済された今の事も含めて。


762 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:22:39 lr68fA3A0


「……自分が創造物だって知らないで、ってこと?」
「例えそうでなくとも、彼自身が本当に彼自身であるという保証はない、ということです。」

殺し合いを楽しむ子供という創造物。体の良い繰り人形。勿論そうである保証はなく、あくまで考察でしか過ぎないが。

『……のび太様の言っていた事も含めれば、その可能性も低くはないかと。』
「実際そうよね。あいつの言ってたギガゾンビってやつか、それとも別のやつかはわからないけれど。」

ここで出てくるのがのび太が言っていた『ギガゾンビ』の存在だ。
23世紀出身の時空犯罪者。原始時代を時空乱入で隔離し、自分だけの帝国を作り上げようとした極悪人。
未来には適切な材料さえあれば精巧な人間を作ることだって出来る。ギガゾンビかそれに類する人物もそうしたのだろうか?

「でも、僕の思う中でそういうのが出来そうなのはギガゾンビかなって。恐竜ハンターに協力していたドルマンスタインも未来人だけど、あいつはあくまで面白半分で恐竜狩りしていたし。」

未来人と言っても多種多様。特に時間移動をする時間犯罪者となれば限られてくる。
幾らのび太が多様な冒険を辿ってきたとしても、思い当たる節というのはそう簡単に出てくるものではない。

「他だとそういうの出来そうなのが大魔王デマオンぐらいだけど、みんなで倒したからその線はありえないかなって。」

他の該当例といえば、魔法で死んだ魂を魔族として転生させていた実績のある大魔王デマオンであるが。
彼の場合はまだ生存しているギガゾンビと違い、魔界星と共に消滅した。なので乃亜が何かの間違いで死者を蘇らせる手段がない限りそれはありえない。
そもそも、人間の下に付くという状態を、あのデマオンが受け入れるはずがないだろう。
少なくとも、野比のび太が思い当たる節はそれが限度であった。

「……もしかして……でも、あの状況で……」
「ニンフ?」
「……いや、確証はないんだけれど、他にも出来そうなやつだったら私にも心当たりあるわ。」

だが、その停滞を打つ破ったのはニンフ。
未来に匹敵するであろう、現代を凌駕する高度な超技術を所有する文明。
それを支配する唯一無二の王にして、エンジェロイド開発者の一人。

「新大陸シナプスの王。……私たちエンジェロイドの、元マスターよ。」

苦虫を噛むように、ニンフはその名を告げた。
エンジェロイド開発者であるダイタロスと同じ天才科学者。
最後まで誇りを捨て去ることが出来なかった孤独なる王にして。
退屈を紛らわせ、享楽と未知を望む悪逆の王。

「あいつなら、時間は掛かるとしても四次元ランドセルやこの妙な首輪も作れるはず。それに殺し合いを愉しんだっておかしくない奴だし。」

仮にもあれでシナプスの王であり、優秀な科学者。
乃亜の望み通りのものを拵えることだって可能。彼が素直に乃亜に協力するかと言われると別の話になるが、少なくとも殺し合いを楽しむというのなら彼も同じ趣向を拵えても違和感はない。

「でもニンフさん、確かニンフさんのいた世界って……」
「そうね。世界崩壊真っ只中で、あいつがいつ乃亜と接触していた、っていう疑問点はあるわ。」

その場合、ネックとなるのは石板による世界崩壊の最中で、どうやって空のマスターが海馬乃亜と秘密裏に接触していたのか、ということになる。
その上でこの殺し合いの準備やその為の道具作成、一体いつから仕込んでいたのか。


763 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:22:52 lr68fA3A0


「それもあるけど、もしかしたらこの会場がシナプスみたいに浮遊大陸だなんてのも有り得るわね。」

第二・この会場は一体何なのか、と言う疑問。
その切り口の一つとして、ニンフが予想したのはシナプス同様の浮遊大陸。もしくはここがシナプスそのものであるという可能性。

「確かにそれも可能性として高そうかもしれない。シナプスがどんな所かっていうのはよく分かってないけど、パラダピアみたいな空中都市の事あるからさ。もしかしたら、別の惑星とかってのも……」
「……精神世界。」
「へ?」

ニンフに続くように発したのび太の言葉を遮るように雪華綺晶が発言する。

「もしかしたら、この世界は海馬乃亜の心の世界かもしれません。」
「……心の世界?」

精神、心の世界。「無意識(ディラック)の海」を通じて繋がる個人の領域(フィールド)。
かつての雪華綺晶の場合ならその内部に箱庭を模した水晶の城、雛苺の場合ならマスターである柏葉巴の部屋を模したメルヘンな空間。その当人の精神が形作ったフィールドが、その者の心の世界となる。
雪華綺晶がnのフィールドへの行き来が制限されている事も含めて、ある意味納得出来る内容ではある。
特に、元来なら有機の身体を持たず、精神のみの存在だった彼女だからこそ予想できた事だ。

『つまり、この舞台は海馬乃亜の心象風景そのもの――固有結界のようなものかと?』
「ええ、ここが精神の世界であることを前提として、心象風景というのは些かあっている表現かもしれません。」

精神世界、もとい海馬乃亜の心から生み出された世界なら、バランスよく都合が良くて不都合な、配置されてた建物に一貫性のない舞台。
それがもし、海馬乃亜の殺し合いを望む願いと、彼の中の心象風景が合わさって生まれた産物というのなら、それは正しくマジカルサファイアが言い示した通り『固有結界』。世界を塗り潰すであろう大業だ。

「合否は兎も角として、参考になる話は集まったわね。……どれが答えでも厄介極まりないだろうけれど。」

おおよその意見が集まり、ニンフも一息つく。
考察が合ってようが間違ってようが、少なくとも参考意見としての価値はあった。選択肢が増えすぎるのも良くないと言えば良くないが、こうして違う視点での意見は間違いなく今後の糧となる。

「……じゃあ最後。今後私達はこれから何処へ向かうかって事。」

そして第三。これからの方針、次の目的地について。
方針と言ってもここにいる4人は共通して殺し合いへの反抗という点では共通している。多少の誤差はあれど致命的な誤差にはなり得ない程度。

「首輪の方は並行して調べてるんだけれど、今の私じゃ調べきれないのがね。」

そして、回収した二つの首輪。情報戦に長けたニンフでも把握しきれるものではない。
言ってしまえば翼が無く出力が落ちている今の状態では細部までの解析は不可能。最も万全であろうと未知の技術に包まれたこの首輪は一筋縄では行かないのは道理。

「元々僕はロキシーさんと一緒に図書館かホグワーツの方に行く予定だったんだけど、あっちに戻るにしてもまだあのリーゼロッテって人がいるかも知れないし……。」

首輪の調査を更に進めるには図書館でその手に関わる資料を調べれば、という話にはなるが。
そもそも元々のび太がロキシーの提案でそこに向かおうとして結果あの魔女との遭遇。まだ彼女が周辺でたむろっている可能性も否めない。

「一先ずの目的地としては南にある海馬コーポレーションもしくは聖ルチアーノ学園、後はここから一番近い港かしら?」
『あと、彼女との遭遇を避け図書館に向かう前提なら、北方面から教会を経由してのルートもありけれど……』


764 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:24:48 lr68fA3A0


提示された次の目的地への選択肢は4つ。二つは南にある海馬コーポレーション、或いは聖ルチアーノ学園。
海馬コーポレーションという名前から海馬乃亜との関連性があるかもしれないという意味での調査対象。聖ルチアーノで他の参加者を探すというのも案の一つ。
3つ目に港。産屋敷邸から一番近く、かつ別エリアへの移動手段がある可能性。その為の移動手段の船がどういうものかは不明瞭であるが、他にも二つ港があることを考えるとそこへの移動手段としての船舶が用意されているとの予測。なんなら図書館の近くにも港があるから図書館行きにはそれもありだろう。
そして最後に、マジカルサファイアが提案した、図書館への別ルート。もし仮に港からのルートが使えない時の、北方面から教会を経由しての迂回を前提とした道筋だが。

「……あの子が、リップくんがまだいるかも。」

そうイリヤが零した通り、懸念はリップ=トリスタンの事だ。
明確に殺し合いに乗っているが、殺し合いの走狗とは言いづらい、信念を秘めた少年。
北へから教会を経由するルートの場合、イリヤが最初に居た場所も含め、彼と道中で遭遇するかもしれない。

「……不治の事は頭に叩き込んでるわ。一度でも傷をつけられたら倒す事すら治療行為と見なされて、ってどういうチートしてんのよ。」
『いくら数で上回っていたとしても、はっきり言って全く油断のならない相手です。』

リップの不治の能力に感しては他の三人も共有している。傷の治療行為に対する否定。
間接的に「リップを倒す」という行為すら、治療行為と見なされ、無力化(ひてい)されるのだ。
魔女とはまた別の、別世界の異能力者の厄介極まりない能力。
攻撃を受けた瞬間、不死者でない限り、その時点でほぼ確実に『詰まされる』。何ならリップが誰かと手を組んでいる可能性も無きにしもあらず。
その点で言えば、不治(アンリペア)の能力者リップの事を事前にしれたのは幸運かもしれない。そして逆を言えば、不治を理解してしまったが故に、『「リップの攻撃は食らってはダメ」というのを念頭に置かなければならない』という条件が付き纏う。

「……そうなったら、まず港に向かって、船舶が利用可能かの確認。利用できるのならそのまま海路で図書館まで向かう。使えないなら海馬コーポレーションへ向かって、て事になるわね。」

意見を纏め、おおよその方針が決まる。
港に向かい、船舶の類があるかどうか、かつそれが利用可能かどうかの確認。可能なら海路を経由して図書館、不可能なら海馬コーポレーションへ調査へ向かう。

「特に反対はない?」

ニンフのその言葉に、反対するものは誰もおらず。
短い沈黙と肯定の証明となる頷きだけで、それ以上に語ることはなかった。


765 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:25:15 lr68fA3A0


□ □ □


目的地は決まって、準備を兼ねての小休止。
各々が支給品の確認などの準備をする中で、一人事前に準備を終えたニンフは空を眺めていた。
止んだ雨雲が散らばって消えて、朝の輝きがこの世界に差す光景が妙に神秘的に思えた。

(……なーんか、こういう事になっちゃったわね。)

場の流れにつられてか、それとも智樹を思い浮かべるような少年、のび太に影響されてか。
ニンフもまた悪くない気分なのは確か。……いや、というよりも。



……ごめんね、ニンフさん。―――これしか、思いつかなかったから。



今でも、残響する。彼女の言葉が。
どうして、あいつも彼女も、自分なんか顧みず他人(だれか)のために。
こんな羽無しの欠陥品なんか、見捨てても良かったはずなのに。
そう自嘲めいた、自虐的な感傷に浸りながら、隣で静かに泣いているであろう少年を見つめた。

「……ドラえもん。」

あの時に比べて、やけに弱々しい姿だ。
いや、仕方のないことだ。外見中身揃って子供なのが多い。
あの巨大な女のように倫理観がぶち抜いて壊れていたり、魔女のように中身が大人らしかったりと違って。
野比のび太もまた、端的に言ってしまえばまだ子供なのだ。孤独に震え、恐怖に怯え。――終焉を恐れる、等身大の。
精神構造の差異はあれど、その点においてはのび太もまだ他の強者や狂人、人外と比較しれみれば、ただの子供である。経験だけでは拭いきれない心なのだ。

「ったく、何泣いてんのよのび太……って、私もあんたの事言えた立場じゃないか。」
「……うわっ!? あれ、ニンフさん?」

唐突なニンフの声にのび太は慌ててひっくり返る。
夜と朝の間の輝きに照らされる天使の姿が、不思議と美しく輝いて、翼を失ったというには余りにも凛々しく見えた。

「……その、何というか……」
「情けない所ごめんなさいってでも言いたいの? そういうのは別にいいのよ。私だって弱音の一つぐらい吐きたい時ぐらいはあるわ。」

のび太のそんな申し訳無さそうな言葉を一蹴。何なら弱音ならこっちも吐きたいぐらい。
世界崩壊が迫る中、こんな所に呼び出され、智樹を導くための翼は化け物のような女に引きちぎられて。
本当なら、今でも泣きたい程に。

「けどね。あんたが助けてくれたのよ。あんたの言葉で、ほんの少しだけ、燻ってなんていられないって思えたのよ。……あいつと、トモキと似ていそうな、あんたのお陰で。」

そんな自分に手を差し伸べたのは、あいつと全く違って、似ているような、そんな少年だ。
なんて、思わず小さな笑みを浮かべていたニンフに対し、のび太が何かを思い出したかのように口を開いた。

「……何だかさ、ニンフの事見てるとさ、リルルの事思い出すんだ。」
「リルル? 誰のこと?」

のび太がニンフを見て思い出し話したのは、リルルという一人の、天使のように綺麗なロボット。
ロボットが霊長の頂点に立つメカトピアという惑星で、人類を奴隷にしようと鉄人兵団より送り込まれた少女。敵だったけれど、最後には自分たちと地球を守るために歴史を変えた代償にその存在ごと消え去った、羽ばたく天使。


「……クールでミステリアスで怖かったけど、本当は優しくて、僕たちを守るために、過去に遡って……。」
「何よそれ、本当にエンジェロイドみたいじゃない、それ。」

その話を聞いて、ニンフはそう思った。
ロボット兵団に良いように扱われる女性型ロボット。玩具同然でこき使われたのはエンジェロイドにそっくりで。でもリルルは性格的には感情が芽生えたイカロスみたいなものでは? と多少は思ったりして。


766 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:25:30 lr68fA3A0

その上で、原点を変えた彼女の行為には素直に驚嘆に値するものだ。
やった事が、自分が智樹を石板の元へ送り込もうとしたのと同じことだ。もっともこっちは石板の書き込みさえ出来れば阻止できる世界崩壊だが。リルルの場合は自分という存在を消えることを厭わず、それを為した事だ。
幾ら生まれ変わる可能性があったとして、それがのび太の知っている『リルル』という個と同じものとして生まれるとは限らない。
それは、太陽に近づきすぎたが為に翼を失い海に落ちた神話のイカロスのように。
理想を手にするため、己の身すら顧みなかったのだ。

「最後は自分の意志でってのは、ある意味……」

私達もそうかも知れない。と口ずさむ。
智樹は望まないだろうが、智樹の為になら命令に逆らってまで彼を守ってしまいそうではある。
誰かからの命令を求めてしまう自分は兎も角、もしもの時のイカロスとアストレアは間違いなくそうすると、という根拠のない自信はあった。

「でも、リルルは多分。生まれ変われたんだと思う。侵略者の為の尖兵なんかじゃなくて、とても綺麗な天使に……さ。」
「……夢のある話ね。良いじゃないの、そういうの。」

私みたいに第1世代のエンジェロイドは基本夢は見れないんだけれど、付け加えながら。
そんなロマンの有りそうなのび太の話を心地いい気分で聞いてていた。

「だからさ。イリヤにも、雪華綺晶さんにも、ニンフにも。死なないで欲しいし、無理をしないで欲しいって思ってる。……誰も死なないなんて夢物語だってわかってるけれど。」
「いや、真っ先に無理しそうなあんたがそれ言うの?」
「それは、何というか身体が勝手に動いちゃうと言うか……。ロボットだからってそんな事で差別したくないし、そもそも僕はロボットだからそんなの関係なく友だちになりたいって思ってるからさ。」

そんなのび太の発言に、呆れそうで、やはり彼はトモキと似ていると。
人もロボットも、そして人外すらもそうだからと区別しない。自分の善性に忠実で、真摯で。
それでいて、誰とでも仲良くなってしまいそうなそんなありふれた青年だと。
多分、彼に「もしもの時は命令して」って言っても、素直に受け入れてくれ無さそう性格していそうで。

「多分、この先は地獄よ。私達にとっても、あんたにとっても。」

ここは善性を持つ者にとっての地獄絵図、善意以上に悪意や欲望が渦巻く舞台。
数多の怪物が存在する蠱毒の壺の中だ。
曰く、幼稚な善性を以て蹂躙する生まれながらの破壊者。
曰く、数百年もの間積もった憎悪と愛に塗れた復讐の魔女。
玩具箱の如き混沌の坩堝の中、機械天使に地獄と評される世界の中で、少年は。

「今まで挫けそうな事なんて、何度もあったよ。でも、何度でも起き上がるよ。僕は"だるま"だからさ。」

その簡潔な言葉こそが、答えであった。
何度転んでも、転んでも起き上がるのが、彼の得意なことだから。
それだけで、十分な返答だった。

「それじゃ、根っこごと壊されそうな時はあたしが何とかしてあげるわよ。ま、その時は命令してくれると嬉しいわね。」
「命令だなんて……そんな道具扱いみたいな事は気が引けるなぁ……。」
「ドラえもんに頼ってばっかのあなたがそれいうの?」
「そ、それとこれとは……!ええと……」

悪戯混じりの言葉を投げかければこれである。別に他人を弄る趣味はないが。
少なくとも「命令するのは道具扱いみたいで気が引ける」というのは何とも底抜けのお人好しなのやら、と。
彼がエンジェロイドを手に入れたら良いマスターになれると思う、特にアストレアとは気が合いそうとかニンフはそう思いながら。


767 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:25:57 lr68fA3A0


「でも、命令っていうかお願いになるけど……「死なないで」。ぐらいかな? あはは。」

そんな恥ずかしさ混じりののび太の返答で。本当に甘いというか抜けていると言うか、何というか。
この調子だと肝心な所で失言やらやらかしやしそうだなと多少不安になりながらも。

「本当にそれお願いの部類じゃないの。……ああでも、そういうのもある意味命令よね。」
「……え?」
「そう言われなくとも、こんな所で死んでたまるかってやつ。――私だってね。」

――守りたい人がいるのよ。とのび太には聞こえない声でそう小さく。
少なくとも、何かしらの意図が関わっている可能性がある以上、この殺し合いから脱出する、というだけでは解決しない可能性も出てきた。
何なら、『何でも願いを叶える』と言う根拠に、『石板』が関与している可能性だって。

「あんたはこの中だと一番非力なんだから。無茶だけはしないでよね。……あたしだって、眼の前で奪われるのはもう懲り懲りなんだからさ。」
「僕だって、死なないよ。こんな殺し合いなんて終わらせて、みんなの所へ帰るんだから!」

そんな少年の、だるまの如き転んでは起き上がることが野比のび太の言葉。
4人の中だと一番非力で、心許ない少年だが、そんなポジティブ思考は多分必要なものだと。
ポジティブ寄りというより諦めの悪さならイリヤも大概というのは置いておいて。

「大丈夫。僕もロキシーさんみたいには行かないけれど魔法は使えるんだから、チンカラホイ!」
「あっ」

調子に乗ってか、おもむろにのび太がチンカラホイと唱えてしまった。
「あれ、この流れ……」とニンフが悪寒がよぎった時には時既に遅く。
ふわぁとニンフの下半身の風通しが良くなった感覚がよぎったと思えば。

「……あれ?」

のび太の目の前には、ニンフのパンツらしき物体が宙を浮いている。

「まさか、ちょっとしたものを浮かび上がらせるぐらいしか出来なかったのに……!」

知ってか知らずか、のび太は大はしゃぎ。
指揮者のように、ゆっくりながらもパンツを空中で右往左往出来ている。
ロキシーが遺したものの結果なのか、魔法の扱いという点ではのび太は一歩だけ前進した、のかもしれない。ただし――。

「見てよニンフ! 僕の魔法が、ちょっとだけパワーアップして……あれ?」

そして、当のニンフ本人と言えば。
スカートを抑えて、プルプルと体を震わせながら。顔を赤らめたまま。

「この……バカぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ごふぅっ!?」

見事にのび太に鉄拳を炸裂させ、天井に突き刺さる結果となった。

「何々!? 敵襲ってのび太さぁぁぁん!? なんかパンツが空飛んでるぅ?」

その後、敵襲だと勘違いしたイリヤが駆けつけて、妙ちくりんな光景に頭が混乱する事になったのはまた別の話。


768 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:27:14 lr68fA3A0
※C-7とD-7の間にロキシーとベッキーの墓があります。
※ロキシーとベッキーの四次元ランドセルが回収されたかどうかは後続の書き手におまかせします

【一日目/黎明/D-7 産屋敷邸内】

【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康、強い決意、天井に刺さった状態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
2:みんなには死んでほしくない
3:魔法がちょっとパワーアップした、やった!
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています
※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。

【ニンフ@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、ノーパン
[装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、ベッキー・ブラックベルの首輪、ロキシー・ミグルディアの首輪
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:準備と休息が終わり次第に港へ向かう。船舶での移動手段がついた場合は図書館へ。無かった場合は海馬コーポレーションか聖ルチアーノ学園に向かう。
3:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
4:この殺し合いにもしあいつ(元マスター)関わってるとしたら厄介かも。
5:のび太のそれ、ほとんどお願いじゃないの……。でも、言われなくてもその「命令」は果たす。
6:首輪の解析も進めたいけど、今の状態じゃ調べようにも調べきれないわね。
[備考]
※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。ただし「デストラクト・ポーション」の影響で時間は掛かるも徐々に回復しつつあります
※この殺し合いの背後に空のマスターが関わってるかもしれないと、及びこの会場はシナプスのような浮遊大陸なのでは?と考察しています
※のび太、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました


769 : 君がいてくれるなら ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:27:26 lr68fA3A0
【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……?
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。
※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。
のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、雪華綺晶と契約。
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:みんなと協力する
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました


770 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/04(日) 12:27:37 lr68fA3A0
投下終了します


771 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/04(日) 22:54:18 7o3915WA0
>君がいてくれるなら
ロワ恒例の考察回、各作品の世界観や設定が入り乱れて黒幕候補達も上がってくるの、見ててアガりますね。
しかし、のび太、心当たりがそこいらのバトル作品よりあり過ぎて草。
ニンフもそらおと終盤で、自爆して智樹に道を繋ぎましたからね。のび太がリルルを重ねるのも無理はないです。
二人の会話が切ないですし、本当に今後も地獄になりそうな雰囲気を醸し出していて、何とも言えない。
それをぶち壊す、いつもギャグ……ドラえもんとそらおとのギャグがシリアスを支える。ある意味“最強”だ。
のび太さん、エンジェロイドに殴られて、五体満足なの地味に強くない?


772 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/05(月) 22:51:45 gnNG9oIw0
ルーデウス・グレイラット、木之本桜
自己リレーで乾紗寿叶、日番谷冬獅郎
予約します


773 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/07(水) 00:05:15 6OX8A2ng0
野比のび太、ニンフ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、雪華綺晶
リップ=トリスタン、クロエ・フォンアインツベルン、シャルティア・ブラッドフォールン
予約します


774 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:38:54 5i0OKgWE0
投下します


775 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:39:25 5i0OKgWE0
「日番谷君…刀、借して」
「乾?」
「元太君の首、切らなきゃいけないんでしょ。今の日番谷君……疲れているわ。私が……」

ウォルフガング・シュライバー、美遊・エーデルフェルトの襲撃から十数分が経った。
それは小嶋元太が、この世に亡くなってから刻まれた経過時間でもある。
日番谷君にとっては守り保護すべき無辜の子供、それを目の前で死なせたことに深い後悔を残すが、同時に好機でもあった。
この殺し合いの全参加者に科せられた枷である首輪、それを解析する為のサンプルが、今、元太の遺体には巻かれている。
生きた参加者の首輪で解析を行うより、死者の首輪であれば暴発しても死には直結しない。

「首輪を…外さなきゃいけないんだもの……私がやるわ」

首を落とせば、首輪の回収は行えるだろう。
それこそ、虚なぞ容易く両断せしめる斬魄刀の切れ味なら、紗寿叶のように刀の素人でも簡単に首を切断できる。
戦闘の疲弊から膝を着き、体力を回復させていた日番谷、その目の前に突き刺さった氷輪丸を手にし、紗寿叶は震えた腕とおぼつかない構えで刀を振り上げる。

「馬鹿、やめろ! よせ!」

元太の遺体の首元に刃が振り下ろされる寸前、日番谷が紗寿叶の腕を掴み止めた。
疲弊しているとはいえ、死神の膂力で抑えつけられれば、紗寿叶の力ではどうにもならない。

「俺がやるから、お前は……」
「でも…わたし……元太君……私のせいで、殺されちゃって……どうしたらいいか、わからないの……どう、したら……」

瞳から涙が溢れ、頬を伝う。声にはしゃっくりが混じり、聞き取りづらい。
日番谷に抑えられた腕も、そこからは抵抗する力も伝わらず、刀の切っ先が地面に触れた。

「あの時……不用意に……」

紗寿叶一人が死んだのなら、それはまだ自業自得で済んだ。けれども、現実は違う。事実はより残酷だ。
死なせたのは、全く無関係の男の子だ。自分よりも何歳も年下の子供だ。
紗寿叶が憧れた、魔法少女が殺した。
彼女が焦がれ、好み、見惚れ、憧れた本物の魔法少女が殺した。
紗寿叶が死なせてしまった。
彼女の夢が、一人の少年の命を奪い去ってしまった。


「私が、あの娘に近づいたから……元太君は死んだのよ。だから……私が……」

「もういい。やめろ……あとは俺がやる」


膝から崩れ落ち、地べたに座り込んでしまった紗寿叶に、頭から羽織を被せる。
簡易的に視界を塞ぐ為に。
効果は思いの外効いたらしく、こんな布切れ一枚すら紗寿叶は拭おうとしない。小さく嗚咽が布越しに聞こえてきた。

(元太の霊は見えねえ……尸魂界に行ったのか? いや……)

この空間が特殊過ぎる。霊の有無に関しても、乃亜に何かの干渉がされ、霊自体が発生しないようにされているのだろうか。

(……もしかして、乃亜のせいというより、なんだこの違和感……?)

もっと根本的な部分から、日番谷は違和感を覚えるが、それを論理的に形にする術がなかった。


776 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:39:44 5i0OKgWE0

「……元太、すまない」

一太刀で呆気なく首は切断される。
それから、氷輪丸を解号し氷塊を生成し、地面に打ち付ける。人が、一人入る程の大きさのクレーターが刻まれた。
そこに遺体を安置し、刀を何度か振るい霊圧で土を巻き上げて、遺体へと被せていった。
埋葬と呼ぶには、あまりにも簡素で呆気ない。それでいて、とても死者への敬意も感じられない、効率の良い手際だ。
それは、仮にも死神である日番谷自身がよく分かっていた。だが、あまりにも死者に時間を割ける余裕がない。
いつまた、あのシュライバーが引き返すか、あの魔法少女が奇襲を仕掛けるのかも分からない。
あの二人以外の、乃亜の言う所のマーダーも居るのだろう。そんな連中とまた交戦すれば、日番谷でも捌ききれるかは分からない。
当然、紗寿叶の安全も保障できなかった。

元太の血が付いた首輪を、無造作にランドセルに放り込む。血を拭くだとか、中の物に血が付着するような事は考える余裕はなかった。
そして、元太が所持していたランドセルも回収した。
全ての事を終えて、紗寿叶に被せた羽織を引き剥がし肩に掛ける。氷輪丸を背の鞘に納刀し、タブレットを点けて近くの施設を確認する。

「……一番近いのは小学校か、少しそこで休むぞ」

こんな野ざらしな場所よりは、きっと屋内の方が休むにも適しているだろう。




―――


777 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:40:45 5i0OKgWE0


「14人……か」

「本当に、そんなに死んじゃったんですか……名簿もまだ見れないし……どうして、こんなことするの」

放送で呼ばれた14人の死亡者、いくつか不可解な名があったとはいえ、それは平穏な世界で日常生活送っていたさくらにとっては受け入れがたい事だった。
不幸中の幸いと言ってしまうのも憚られるが、知り合いの名前がなかったことには安堵するも、
乃亜の言う参加者の選定条件を考えると、さくらの友人である大道寺知世や、恋人である李小狼も巻き込まれている可能性は高い。
他にもクロウカード絡みでは無関係とはいえ、佐々木利佳を始めとしたクラスメイトの友人達や、今は帰国したがさくらにとっては大事な友人の李苺鈴だって、巻き込まれているかもしれない。
早く、誰が来て誰が居ないのか確認したいが、参加者名簿を用意しながら、それを数時間後まで解禁しない念の入った嫌がらせには、とても温和なさくらでさえ乃亜に苛立ちを感じさせる程だった。

(多すぎだろ、いくらなんでも)

ルーデウスもまた、死と隣り合わせの世界に転生した為に、人死にの類には慣れていたが、それでも現状の犠牲者の多さには眩暈がしそうだった。
さくらとの会話や、乃亜がルフィ兄弟たちを爆殺した現場に居た子供たちや乃亜自身の服装、この島の施設から恐らくはルーデウスの転生前の日本から多くの参加者を放り込んだのは察しが付く。
その上で、1時間でこんな死人が出るのは異常だ。北野武が主催をしてた映画でも、こんなペースで死ななかっただろと内心で思う。

(銃なんか支給しても、1時間で日本の普通の子供が14人も死なすなんて、考え辛い……)

少し前に遭遇した、あのカニパンの馬鹿みたいな造形をした生き物を思い出す。
容姿のコミカルさに反し、あれの邪悪さはルーデウスが見てきた中でもピカ一の存在だった。
命令しようがしまいが、平気で人を殺し食らい楽しむ和解などできない、別種の生物なのだろう。
首から下は肥満体系の子供のものだが、あれを一応子供に定義するのなら、戦えない無力な子供達に紛れて、あんな化け物を何体もねじ込んでいるのかもしれない。
ルーデウスも、エリスとの旅で培った実戦と経験値がなければ、いくら魔術が使えても、あのカニパンの2人目のおやつになっていてもおかしくなかった。

(……見た目が子供なだけで、中身がオルステッドみたいな化け物も居るんじゃ。それに、ロキシーも乃亜の言う子供の共通点に当て嵌まってないか?)

眩暈を通り越して、頭がパンクを起こして破裂しそうだった。
エリスと合流し守るのは最優先事項だが、ロキシーも居るのなら彼女とも早期に合流したい。
なんなら、ルーデウスの妹達やシルフィエットだって、この殺し合いの参加条件を満たすのだ。知り合いの有無で、不安に陥っているさくらは他人事じゃない。
何より、勘弁してほしいのが見た目だけ子供で、その実力がかつてルーデウスが遭遇したオルステッドに匹敵するような実力者が居た場合、とてもルーデウスだけでは対処しきれない。
幼い容姿のロキシーが、あれだけ優れた魔術師であるのなら、子供の見た目で恐ろしい力を持つ、殺戮者が居ても驚きはない。

「さくらさん、更新されたマップの中で、さくらさん個人に関する施設はありましたか? 桜田ジュンの家とか、個人に関係する施設が多いようなんですが」
「いえ、わたしは……病院とか図書館とかの、公共の施設は分かりますけど……」
「もし良かったら、このボレアス・グレイラット邸に向かっても良いでしょうか? あのカニパンの化け物とも、多分そう鉢合わせないと思いますし、それに……」
「エリスさんが、そこに向かってるかもしれないからですか? ……うん、それなら急いで行きましょう! ロキシーさんって人も、もしかしたら来てるかもしれないですよ!」

ニコっと太陽のような眩しい笑顔を浮かべて、さくらは快諾してくれた。
その笑顔にルーデウスもドキッとしてしまう。

(なんて…なんて良い娘なんだ……さくらちゃん。それに動く度、いい匂いする……げっへっへ……)




―――


778 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:41:57 5i0OKgWE0


「―――シュライバーと、喋る杖を操る女の子…ですか」

ボレアス・グレイラット邸に向かう道中、近くにあった施設である小学校にルーデウスたちは寄ることにした。
人を探しているのはルーデウスだけではなく、さくらもであり、彼女の知人で共通して馴染が深い施設といえば、小学校だったからだ。 
結果として、二人の知人は居なかったものの、同じく殺し合いに巻き込まれながらも、それに反抗する別参加者に出会えたのは、幸いだったのだろう。

「ああ、特にシュライバーの奴は見掛けたら、可能なら逃げろ。あいつは危険すぎる」

日番谷冬獅郎と乾紗寿叶の2人の男女、やはり乃亜の言うように外見は幼いが、日番谷からはルイジェルドやルーデウスの父親のパウロのような、歴戦の戦士のような雰囲気を感じさせられた。

(ただ……ジュジュ様は大分辛そうだな……)

もう一人のロリっ娘クール美少女に目が行くが、いつものセクハラ思考が入る前に、その陰の掛かった落ち込んだ表情が印象に残った。
ここに来るまでの敬意は話に聞いたが、同行者を目の前で殺されたのであれば、普通の女子高生であれば精神的な負担にもなるだろう。ルーデウスも最初はそうだった。
勝手に名付けた渾名が、偶然にも彼女がコスプレイヤーとして活動する際に使用していたものだったが、そんなことも知る由もなく、ルーデウスは少し同情気味な視線を送る。

「……え、と、冬獅郎君は…死神…なんだよね……あの、幽霊とか……」

「その霊圧で、幽霊が苦手なのか? 普段から見えてないとおかしいだろ」

「ほえええええ!?」

(なんだ、霊圧って……魔力じゃなくて? ……剣の流派みたいに、力の使い方も色々な方法や考え方が異なるのだろうか?)

日番谷の語る尸魂界や死神、虚の話等はルーデウスでもすぐには受け入れがたいものだった。
だが、元居た異世界から、更に別の謎の島に拉致られている以上、尸魂界という異世界もまた何処かに存在しているのだろうと納得させるしかなかった。

「ねえ、日番谷君…木之本さんの探してる杖やカード……もしかして、元太君のランドセルに入ってるんじゃないかしら?
 あの子、日番谷君と会う前に支給品の事聞いたら、ソフトクリームとあとは使い物にならない、変なカードの玩具が、どうとか言ってたのよ。
 ……私、てっきり何とか王カードとか、そういうゲームのカードだと思ってしまって……」

「あいつ、食い物以外にも、何か支給されてたのか? なんでそれを―――」

「……」

「いや……すまねえ」

そこまで言いかけて、紗寿叶の顔が俯いているのに気付き、日番谷は最後まで口にはしなかった。
もし、この支給品が身を守るものであったのなら、それを使えていれば元太は死なずに済んだかもしれない。
逆に言えば、支給品の有用さに気付けなかった紗寿叶に、更に元太の死の原因があることにもなる。
責める気はない。それを言い出せば、全員の所有物を確認しなかった日番谷にも非はある。
決して、紗寿叶だけの責任ではない。

「―――これ、そうだ……さくらカードと星の杖……私のです!」

「……そう、良かったわ……」

元太のランドセルを開いた瞬間、強い霊圧を感じるカードと、星を模した可愛らしいデザインのキーホルダーのようなものが、収納されていた。

「封印解除(レリーズ)」

掌に収まる程だった星の杖の柄がステッキ大の長さへと伸び、杖の先の星の装飾もそれに伴い膨張する。
一瞬にして、玩具のようだった玩具が魔法の杖へと変身してしまった。


779 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:42:28 5i0OKgWE0

(……見た目だけじゃ、ただの玩具にしか見えねぇ。元太が見て、使い物にならないと判断しちまうのも当然だ。
 乃亜のやつ、こんなもん説明抜きで使える訳がねえだろ……!)

さくらが手にすることで、星のキーホルダーは杖の姿を取り戻す。恐らくは有益な武器ではあるのだろう。
だが、敢えてかは知らないが、説明書の類が一切付与されていない。そこに乃亜の悪辣さが伺えた。

「ありがとうございます! 杖と少しだけだけど、カードさん達が戻ってきて、安心しました。……まだ、皆探してあげなきゃいけないけど」
「……良いのよ。私が持っていても、しょうがないもの……そうだ、あと……衣装も入っていたわ」
「ほえ?」

もう一つ、元太のランドセルに入っていた支給品にピンクを基調とした、バトルコスチュームも支給されていた。

「知世ちゃんが作ってくれた衣装だ……」

「もしかして、友達が作ってくれたの?」

「はい! 私の友達に知世ちゃんって娘が居て、クロウカードを集める時も一緒に着いてきて支えてくれて……いつも、素敵なコスチュームを作ってくれてたんです。
 ちょっと、着るの恥ずかしい時もあったけど……」

「これを…小学生が? 材料だけでも、とんでもない額…しかも、いつも……? ど…どんな頻度で?」

「ほとんど、毎週……?」

「嘘でしょ!? ……ヤバい娘じゃない」

様々なアニメキャラの衣装を再現し、コスプレイヤーとして着こなしてきた紗寿叶の審美眼をも唸らせるほどだった。
コストパフォーマンス等を考えると、一概に優れているとも言い難いが、先ずは秀でているのは質感だ。
服として、肌触りが非常に良い。さくらの戦闘時の激しさを考え、肌に負担の少ない材料を選んでいるのだろう。通気性も高い。
デザインも星の杖に合わせている色調で、二つ合わさる事でさくらの可憐さを更に際立たせている。それぞれが、別に作成されたとは思えない程だ。
木之本桜という少女の長所も短所も全てを知り尽くし、それら全てを昇華し表現しきった完成されたデザイン。
コスプレという、服に携わった活動をしてきた紗寿叶だからこそ分かる。
コストを差し引いたとしても、こんなものを一つ作り上げるだけでも、燃え尽きる程の情熱が必要な筈なのに、それを毎週作りなど常軌を逸している。

「すごく……想われているのね」

話を聞けば、さくらの友人である大道寺知世は財力のある家柄の娘らしく、コストに関しては実質ほぼ無尽蔵に使えるようだ。
それでも、これだけの衣装を毎回さくらの為に自作するなんて、通常のモチベーションではありえないことだ。
手を抜いている? 否、ありえない。これだけのコスチュームを作る人物が、一着たりとも手など抜くはずがない。絶対に妥協などない。
今、手元にあるこのコスチュームには文字通り、命を懸けた職人としての信念が伝わってくる。
しかも、作り手にありがちな自分の作った衣装を、見せびらかしたいというエゴも一切ない。
デザインも服の生地も、このコスチュームの全てが、ただ一人の少女を彩る為だけに集約されている。


「これは、あなたが持っていた方が良いわ」


これは、さくらという一人の少女を何よりも想い、そして決して届かなくても良い。
ただ、彼女を幸せであるならば、それだけで構わない程の覚悟と愛情を持って作り上げた愛の結晶だ。


780 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:43:09 5i0OKgWE0



「……とても、素敵な―――」



『ごめんなさい。死んで』



「……っ!?」



きっと、とても大切で大事な、そして何よりも尊く奇麗だと思えた衣装を、さくらに手渡そうとして急に金縛りにあったように、動けなくなった。
本当に奇麗で、こんな衣装を作り上げる知世という少女に敬意すら抱く程に、だからちゃんと本来の着用者に返却しなくてはと、そう思っていたのに。


とても、素敵な衣装だと思っていたのに。


手から、衣装が零れ落ちた。


「ぁっ…ち、が……」


さっきまで、輝いて見えた衣装が、自分を庇ってくれた少年の血塗れの姿と重なる。そして、その先に居るさくらが、自分達を本気で殺しに来ていた少女に見えた。
こんな素敵な衣装を土足で踏み歩く床に落とすなんて、早く拾って、埃を払って、謝って……慌てて手を伸ばして、指先が触れる前にまた動けなくなった。
手が届かない。拾えない。触れない。熱くもないのに、良く分からない汗が背筋を伝った気がする。
ただ、純粋な拒否感が、目の前の存在を拒もうとする。


「だ……大丈夫―――」
「やめて……!」


衣装を落とした事なんて、気にもせず。紗寿叶の様子が深刻そうで、心配になったさくらは彼女の肩に手を置こうとした。
でも、その手が、もう片方の腕で大事そうに抱えている星の杖が、今は人を刺し殺す刃のように見える。
さくらにとって親友が作ってくれた大切な衣装に、失礼なことをしたのに。それでも、太陽のような暖かい優しさで接してくれたさくらを強い言葉で拒絶してしまった。

「ごめんなさい……! わたし、放っておいて―――」

「あの……」

こんなこと、言いたい筈じゃないのに。泣き出しそうな声で強く怒鳴り、紗寿叶は近くの教室のドアを開けて、逃げるように飛び込んだ。


781 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:43:35 5i0OKgWE0

(何やってるのよ…私、あの娘の大事な服を……ちゃんと、謝らないと……)

酷いことをしてしまった。あんなにも、大切に相手を想って作ってくれた衣装を無造作に扱ってしまった。
ちゃんと、もう一度謝らないといけない。

(…………だ、駄目……怖い……)

そんなことしないと分かっているのに、あの杖を一振りするだけで次の瞬間には自分が殺される光景が幻視される。
こんなものは妄想だって理解しても、得体のしれない恐怖が自分から離れて行かない。

あんなに、素晴らしい衣装を着たさくらの姿はきっととても素敵な筈なのに。

素敵だと思えば思う程、その足元であの魔法少女に殺された元太の姿が頭に焼き付けられる。

(あんなに……あんなに、素敵な衣装だったのに……今は、凄く…怖い……)

それは、まるで呪いのように。



――――


782 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:44:11 5i0OKgWE0



『私もね、魔法少女になりたかったの……強くてキラキラしてカッコよくて、フリフリの可愛い服を着てて……』

『好きなものになろうとする気持ちは否定しないわ。私も、無理をしてでも作り物でも、夢を叶えようとコスプレをしてるから』



「……俺には良く分からないが、元太を殺した奴が…多分、乾の好きなモノに似てたのかもしれねえ。
 現世で女児が見る、魔法少女って言うのか? そんな感じの服装をした子供だったからな」

「それを、さくらさんに重ねてしまったんですか?」

「どうだろうな……でも、憧れてたものに裏切られた奴を、俺は嫌ってほど間近で見たことがある。……あいつもそうなのかもしれないと思っただけだ」

口では疑問形で尋ねたルーデウスだが、前世は歴戦のエロゲキモオタヒキニートだった男だ。
既に、紗寿叶が魔法少女に対するガチ勢である事は察することができた。
そして察したからこそ、掛ける言葉が見つからない。
架空の存在に夢を見て憧れる気持ちは、形は違うがルーデウスも少なからず共感できる。それが原因で命を脅かされ、同行者が殺されたのであればなおさらだろう。

「紗寿叶さん……」
「……さくらさんのせいじゃありませんよ」

紗寿叶もだが、あんなにも怖がられ、強く拒絶されたさくらも辛いだろうなとルーデウスは思う。

「僕達はこのままボレアス・グレイラット邸に向かいます」

「そうか。……木之本も悪かったな」

今、ここに解決策は存在しない。気にはなるが、長く滞在しない方が良いだろう。
ルーデウスも日番谷も同じ考えで、短く素っ気ないやり取りで済ませた。

「ルーデウスさん……少しだけ待ってて貰えますか?」

さくらは床に落ちた衣装を拾い上げて、それだけ言い残す。
ルーデウスが言葉を返す間もなく、紗寿叶の入っていった教室とは別の方向へ進み、別の教室に入る。
呆気に取られている間に布が擦れる音がして、一瞬ルーデウスの脳内に邪な考えが流れた後、教室の戸が開けた。

「……お待たせしました。ルーデウスさん」

「その、恰好……」

私服をランドセルに仕舞い、さくらは支給品だったバトルコスチュームに身を包んでいた。

「今は……私のこと怖いかもしれないけど……いつかは、きっとまた好きになってくれるかもしれないから……この服で戦おうと思うんです」

この衣装を見ていた時の紗寿叶はとても楽しそうだった。

「だって、知世ちゃんの作ってくれた衣装を、あんなに楽しそうに見てくれた人、初めてだった……。
 きっと衣装を見るのも、作るのも好きなのに……嫌いになっちゃうなんて、そんなの悲し過ぎるよ」

好きという想いを失くしてしまう怖さや悲しさをさくらは知っている。
結果的には丸く収まったが、月(ユエ)との戦いや、「無」のカードを巡る騒動でも、好きという想いを犠牲にしなくてはいけなくなった時は凄く悲しかった。

「もしまた、魔法少女(わたし)を好きになってくれた時、今度はちゃんと仲良しになってほしいから……」

きっと、この先の殺し合いの中でも、そんな辛い出来事が数多くあるのかもしれない。いくら杖と数枚のカードが戻ったからと言って、さくらが全てどうにか出来るなんて事もない。

「魔法は誰かを不幸にする為じゃなくて、幸せにするものだって私、信じてるもん!」

でも、目の前でそんな苦しい思いをしている人が居るのなら、今は届かなくてもやれる限り、手を伸ばし続けてみたいから。


783 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:44:38 5i0OKgWE0


――――



(……情けねえな俺は)



学校を発った二人の子供の背中を見つめながら、自分の未熟さを痛感させられる。
子供一人ろくに守れず、殺し合いを止める目途も立たない不甲斐なさに。



(こういう時、俺よりも松本や志波隊長のが、紗寿叶に気の利いたことでも言えたんだろうけどな……)


トラウマを抱えた女の子に、掛けてあげる言葉すら浮かばなかった。


784 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:45:53 5i0OKgWE0

【G-5 小学校/1日目/黎明】

【ルーデウス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:傲慢なる水竜王(アクアハーティア)@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜
[道具]:基本支給品一式、石毛の首輪、ランダム品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出する
1:さくらに同行してエリスを探す。(身内の中で、エリスが一番殺し合いに呼ばれた可能性が高いと推測したので)
2:首輪の解析をする。
3:カニパン野郎(ハンディ・ハンディ)を警戒。
4:ボレアス・グレイラット邸に行く。
5:ロキシーや滅茶苦茶強いロリババア、ショタジジイの居る可能性も考慮する。
[備考]
※アニメ版21話終了後、22話以前からの参戦です



【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:健康、封印されたカードのバトルコスチューム
[装備]:星の杖&さくらカード×8枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」は確定)@カードキャプターさくら
[道具]:基本支給品一式、ランダム品1〜3(さくらカードなし)、さくらの私服
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない
1:ルーデウスに同行して小狼君、知世ちゃん、友達や知り合いを探す。
2:紗寿叶さんにはもう一度、魔法少女を好きになって欲しい。その時にちゃんと仲良しになりたい。
[備考]
※さくらカード編終了後からの参戦です。


【星の杖&さくらカード×8枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」は確定)@カードキャプターさくら】
杖とカードで1セット。元太に支給。
さくらの星の力を秘めた杖で、さくらカードを使用できる。
説明書は付いていないので、パッと見ただの玩具にしか見えない。

「風」
風を操る能力で主に拘束技に使われる。

「翔」
背中から翼を生やして空を飛べる。長時間の飛行は制限により不可能

「跳」
かかとに小さな羽を生やしジャンプ力を高める。

「剣」
杖を剣に変え、使い手の意思次第で切れ味を変えられる。
ただし、制限により切れ味の上限は決まっているものとする。(ようは何でも切れるような万能さではなくなっている)
更に強力なカードな為、制限を課し一度の使用で24時間再使用不可能。

「盾」
使用者の意思により防御力を増すドーム状の結界を作り出す。
制限により、結界の長時間の持続は不可、更に一度の使用で12時間再使用不可能。


785 : i'm a dreamer ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:46:11 5i0OKgWE0



【乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする】
[状態]:健康、殺し合いに対する恐怖(大)、元太を死なせてしまった罪悪感(大)、魔法少女に対する恐怖(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:……。
2:妹(178㎝)は居ないと思うけど……。
3:さくらさんにはちゃんと謝らないと。
[備考]
原作4巻終了以降からの参戦です。



【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(中)、卍解不可(日中まで)
[装備]:氷輪丸@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2、元太の首輪、ソフトクリーム
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。
0:小学校でしばらく休む。
1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。
2:海馬コーポレーションに向かい、乃亜の手がかりを探す。
3:美遊、シュライバーを警戒。次は殺す。
4:紗寿叶が気掛かりだが……。
[備考]
ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。
人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。
卍解は一度の使用で12時間使用不可。


【全員共通の備考】
※ハンディ・ハンディ、シュライバー、美遊が危険人物であると情報交換しました


786 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 00:46:31 5i0OKgWE0
投下終了です


787 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 19:36:05 5i0OKgWE0
エスター、マサオ君 予約します


788 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:48:48 5i0OKgWE0
投下します


789 : 救いの…… ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:50:25 5i0OKgWE0
「狐の……化け物が居たんですぅ!!! 確か……ナルトって呼ばれてて、変な額当てして…あ、あと! すごい高そうな洋服を着てた男の子もいました!!
 ナルトが狐の化け物を操って……赤ちゃんを殺したんです!!」

佐藤マサオはうずまきナルトから逃げ出し、それから数十分走り続け、ようやく出会えた別の参加者に事の経緯を話した。
もっとも、その内容は起きた事実に反し、非常に歪に改変されたものだ。
マニッシュボーイのデス13については一切触れず、ナルトが内に飼っている化け狐をけしかけて、自分達を襲い赤ちゃんを殺害した。
それが、マサオが語った偽りの事実だった。

「……そう」

その話を聞いた少女はマサオよりも数歳年上で、少なくとも彼からすれば、お姉さんのような頼もしさを感じさせる少女だった。
涙を流しながら、息も絶え絶えに走ってきたマサオを心配し、落ち着かせてくれた彼女に感謝もしており、だからこそナルトの危険性を伝えねばと、正義感から拙い嘘を吐いた。

「マサオ、あなた…赤ちゃんを見殺しにしたのね?」

馬鹿なガキだと、さっきまで優し気に接してくれた少女の表情が冷徹に変貌し、マサオに投げかけてくるようだった。

「み、見殺しなんて……」
「だってそうでしょ? マサオは歩けない赤ちゃんを、置いて逃げたんじゃない」
「違うよぉ! 僕は……!!」
「黙って、騒ぐな!!」

少女は、異議を唱えようと叫ぶマサオの口を手を伸ばし抑えつける。マサオはもがもがと口を動かしながら、掌と口の間から空気を漏らす。
歳の差はあるとはいえ、マサオの顔に掛かった握力の負荷はかなり強い。
殺される。マサオは直感的に恐怖し、無意識の内に叫ぶのをやめていた。
それを確認したのか、少女はマサオから手を離す。

「別に、チクったりはしないわ。何なら、あんたが赤ちゃんを殺したことも、全部ナルトって奴がやったことにしといてあげる」
「……え? ち、ちが……赤ちゃんは僕が殺したんじゃ……」
「あのね。一人じゃ逃げれない赤ん坊を、置いて逃げたのよ。それはもうあなたが殺したのと一緒なの」
「そ…そんなk―――」
「次、騒いだら撃つわ」

流れるように手慣れた手付きで、少女はランドセルから銃を取り出しマサオに向ける。いくら泣き虫のマサオといえど、今度こそ本当に殺される。
涙を瞳から零しながら、両手で口を抑え必死に声を抑えた。

「どうする? あんたが赤ちゃん殺したこと、全部バラしてもいいのよ。きっと…確か乃亜は対主催とか言ってたわね。そいつらに、殺されるんじゃない?」

「え……こ、殺……さ…」

「当り前じゃない。彼らは殺し合いをしない正義の味方なの。人殺しは悪いことなのよ、マサオ……あなたは悪い子よね。
 なんだったかしら…確か、日本の番組で……そう、ウルトラマンよ。あれも、悪い怪獣はヒーローに殺される。当然じゃない」

「そ、そんな……」

マサオが好んで視聴していたアクション仮面や、カンタムロボが悪役を倒す場面が浮かんだ。
ヒーローが悪者をやっつけて、物語はハッピーエンドを迎える。ありきたりでご都合主義で、いつものお約束だ。
そんな展開にマサオは疑問など抱かなかったし、それが楽しみで毎週テレビの電源を入れていた。

「じゃあ、言ってみればいいじゃない。僕は赤ちゃんを見捨てましたって。
 ……これから、対主催の良い子のとこへ一緒に行って、全部私が説明してあげてもいいのよ。きっと悪者としてやっつけられちゃうかもね?」
「だ…だって……どうすれば…よかったのぉ……!」

焦りながら、ふと思い出す。
映画館で出会った、美山写影と櫻井桃華のことを。
あの二人なら、きっと話せば分かってくれる。分かってくれる筈だ。
写影はとても頭が良さそうだったようにマサオには思えたし、特に桃華は聖女のような女の子なのだから。


790 : 救いの…… ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:50:53 5i0OKgWE0


―――この、裏切りおにぎり。

―――この際だからハッキリ言いますわね。私、マサオの様な男性の方、嫌いなんです。


だが、その時に失意の庭で浴びせられた罵声を思い出す。


(駄目だ。あの二人にこんなこと聞かれたら、絶対に防衛隊のみんなみたいに……)


───しんちゃんみたいじゃなかったら、生きてちゃいけないの?


そして、その中で吐き出した本音を思い出す。



いつもそうだ。
しんのすけや防衛隊からの扱いが酷いことも多くて、時々羽目を外したり鬱憤を晴らすと一気に責められる。
以前、しんのすけを売ったことも後から、本当に悪いことをしてしまったと思って、後悔もしてる。
なのに、どうしてここまで言われなきゃいけないのか。やりたくてやったわけじゃない。間が悪かっただけじゃないか。

「……僕じゃ、赤ちゃんを守れないよぉ…! 僕はしんちゃんじゃない……あんな化け物に勝てる訳ないじゃないかぁ……!!
 逃げたって……逃げたってぇ……」

知っている。きっと、野原しんのすけなら逃げないだろうって。
いつも馬鹿な事をやりだして、平気で下半身を露出して、女好きで、下品な下ネタも言い出す変な子供だけど。
何度も色んな冒険を乗り越えて、いつでもどんな絶望的な状況でも決して折れなかった。色んな悪者を、最後にはやっつけてきて、世界だって何度も救ってきたヒーローだ。

「しんちゃんは……凄いよ……いつだって正義の味方で…いつだってカッコよかったよ。でも、僕にはなれないよ……! 僕はしんちゃんみたいには、なれっこないんだ。
 ……助けてよ。しんちゃん、僕…もう……殺されちゃうよぉ……」

既にマサオはの精神は限界だった。
糸見沙耶香の惨殺死体を見せられ、デス13の悪夢を短時間に2度も喰らい、右天の襲撃により失意の庭を見せられ、ナルトの内に潜む九尾の憎悪に触れた。
ただの5歳児が耐えられる限界など超えている。
辛うじて、彼を支えた歪んだ正義感も、目の前の少女に一喝され、完全にへし折られる程に。


791 : 救いの…… ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:51:21 5i0OKgWE0




―――マサオ君は悪くないゾ。



「マサオは悪くないわ」


毎話におけるお約束、アクション仮面のクライマックス。
悪役の元に駆け付けるヒーローのような、とても狙ったかのようなタイミングで、その声は響いてきた。

「しん……ちゃん?」

それは、一瞬だけしんのすけの声に聞こえた。
全く、タイプが別の子供の筈なのに、この一瞬だけ少女の声が、野原しんのすけのものにマサオには聞こえてしまった。

「あなたは悪くない。だけど、対主催やそのナルトって子からきっと虐められてしまうわ。
 だから、そうならないようにしてあげる」

「ど、どういうこと……?」

「助けてあげるって言ってるの」

最初にマサオが出会った時のような、温和な笑みを浮かべて少女は優しくマサオの頭を撫でた。

(ナルトと一緒に居た、高そうな服を着た子供……きっと、あの影を操るあいつだ。丁度いいじゃない、このガキを使ってまとめて悪評をばら撒いてやる)

その少女、エスターは内心で非常に利己的で冷徹に策を張り巡らせていた。
セリムとの交戦後、利用できる参加者を探していたが、誰にも出会えない。
別の殺し合いに乗った参加者に襲撃されなかったのは幸運だが、こうしている間にもセリムに悪評を撒かれればエスターが動きづらくなる。
焦りと苛立ちを募らせていたところに、このマサオとかいう子供が手元に転がってきた。

「あなたが赤ちゃんを殺したこと、黙っていてあげる……。かわりに、その高そうな服を着てる子も、殺し合いに乗っていると話して欲しいの」

「え、でも……」

「分かるでしょう? ナルトと組んで、殺し合いに乗っているのよ。
 きっと、他の対主催を騙して優勝を狙う気だわ。あなたも殺されてしまう。だから先手を打つの」

マサオ単独では、すぐに違和感を覚えるような拙い話術だが。
エスターが補えば、それなりの信憑性は上がるだろう。
仮に、ナルト達への悪評が覆されたとしても、その時は全部このマサオから話を聞いて、自分も騙されたとシラを切り通せばいい。
他にも、何かしらの鉄砲玉や万が一の肉盾にも使えるだろう。

「マサオ……これはあなたを守る為よ。お願い、協力して」

「……うん」

追い込まれた子供の脆さと、駒としての使いやすさを、エスターは誰よりも良く理解していた。


792 : 救いの…… ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:52:28 5i0OKgWE0





【E-4/1日目/黎明】


【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:精神疲労(大)、失意の庭の影響?、ナルトを追い詰めるという確固たる意志。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰りたい。
1:赤ちゃんを殺したあの怪物は許さない、絶対に追い詰める。エスターの言う通りナルトの横に居た子も絶対に追い詰める。
2:何だよ皆おにぎりおにぎりって…!
3:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
4:写影さんや桃華さんには、赤ちゃんを見捨てたこと黙ってないと……。
[備考]
※デス13の暗示によってマニッシュ・ボーイの下手人であるナルトを追い詰めるという意志が発生しています。
※自分を襲った赤ん坊に与する矛盾には暗示によって気づかない様になっています。



【エスター(リーナ・クラマー)@エスター】
[状態]:健康
[装備]:スミス&ウェッソン M36@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る。生還優先。
1?利用できそうな参加者を探す。
2:セリム(名前は知らない)とその操る影を警戒。
3:マサオにセリムの悪評をばら撒かせる。あとはその他諸々利用して捨てる。
[備考]
※湖に沈んだ直後から参戦です。
※日本語が話せることを自覚しています。


793 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/07(水) 20:52:45 5i0OKgWE0
投下終了します


794 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:00:40 CPbjR5y.0
皆様投下乙です。遅れましたが自分も投下します。


795 : YOASOBI ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:05:09 CPbjR5y.0
 イーデン校は創立五百年の名門校である。
 小中高一貫、全校生徒は二千人を超える規模の学校であり、その敷地面積は広大だ。
 当然、座学を行う教室だけでも数十以上あるため、隠れる場所には事欠かない。

 とある教室の隅で、ハーマイオニー・グレンジャーは座り込んでいた。
 少年に襲われてから既に三十分は経つというのに、未だに歯の根が合わない。

(どうして、こんな……震えが止まらない!)

 死を身近に感じたことによる全身の震え。
 両眼をギュッとつぶり、唇を真一文字に結んで、それを耐えようとする。
 それでも耐え切れず、何度目かの弱音をこぼしそうになったとき。

『やあ、諸君……』

 いきなり聞こえてきた声に、ハーマイオニーは一段と大きく身体を震わせた。
 息を殺して放送に耳を傾ける。
 既に何人もの死者が出ているという衝撃的な知らせは、より鼓動を速くさせた。
 しかし数分後、ハーマイオニーの精神は、むしろ落ち着きを取り戻していた。

「子供に当て嵌まる者ってことは、ハリーやロンもいるかもしれないわ」

 脳裏に思い浮かぶのは、二人の親友の顔。
 今現在のハーマイオニーにとって、それは希望だった。
 まだ知り合って間もない頃、危険を顧みずに助けてくれた記憶は、鮮烈に残り続けている。

「考えて。あの二人ならどうする?
 ハリーはきっと、ノアを許せないと思うはずだわ。
 ロンは……ひどく動揺するでしょうね。私が言えたことじゃないけど」

 二人の姿を想像して、ハーマイオニーは口角を上げた。
 いつの間にか、身体の震えはごく小さなものになっていた。
 ハーマイオニーは深く息をはいて、自らを落ち着かせるようにした。

「まずはこの荷物を確認しないと」

 支給されたランドセルを開けて、中身を検めていく。
 ハーマイオニーの理性は、ようやく正常に作動し始めた。





 ヘンゼルは夜道を悠然と歩いていた。
 少女を追跡していたというよりは、人のいそうな高い建物を目指していた。

「あれ?」

 イーデン校の正面玄関にある大階段へ足をかけようとした矢先、ヘンゼルは足を止めた。
 視界の端に捉えたものを、顔を向けて確認する。

「あはは!みいつけた!」

 そしてヘンゼルは愉快そうに笑う。
 視線の先には、窓越しにゆらめく明かりがあった。





796 : YOASOBI ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:11:40 CPbjR5y.0



「ふうん。これで、この島の地図を見られるのね」

 ハーマイオニーはわずか数分で、支給されていたタブレットの操作方法を理解した。
 およそ初めて触れる機械だったものの、さほど難しい操作を要求されなかったのだ。

「それにしても、こんなに薄い板なのに、ずいぶん明るいわ。
 魔法道具だとしてもすごい技術だけど……ううん、眩しい!」

 タブレットの放つ光は、ロウソクのそれよりも明るい。
 闇に慣れている状態で浴びるには、やや刺激が強かった。
 ハーマイオニーはタブレットをランドセルへと戻すと、背中をさすりながら立ち上がる。

「道具も確認し終えたことだし、ホグワーツに向かいましょう。
 もしもハリーやロンがいるなら、絶対にそこを目指すはずだから」

 言い終えてから、ハーマイオニーは「本物のホグワーツとは思えないけど」と付け加えた。
 どことも知れないこの島に、本物のホグワーツ魔法魔術学校があるはずはない。
 それならば、地図の記載がウソなのか?それとも本物なのか?

「……考えてもわからないわ」

 学業の優秀なハーマイオニーも、この問いに答えを出すことはまだできない。





「ダメだよ、光を見せちゃ」

 ゆらめく光から目を離さずに、ヘンゼルは魔力を練り上げていく。
 神鳥の杖による魔法の力。それに身体を慣らす目的で、時間をかけていた。

「野生のオオカミなら火には近づかないけど、僕はそんなもの慣れっこなんだ」

 舞台でオペラを歌うような軽やかさで、ヘンゼルは言葉を紡ぐ。
 そうして数分後、杖の先端をゆっくりと光へと向ける。

「姉様とは競争になるだろうから、手早く済ませないとね」

 言い終えた瞬間、直径一メートルを超える火球がガラス窓を粉砕した。
 火球の威力は相当のもので、ガラガラと音を立てて壁や天井の建材が落ちていく。
 ヘンゼルは眉一つ動かさないまま、その様子を見ていた。





(――かかった!)

 “背後で”響いたガラスの割れる音に反応して、ハーマイオニーは生唾を飲んだ。
 数分前、ハーマイオニーはイーデン校から離れる前に、とある教室にロウソクを立てた。
 そして、炎の呪文・インセンディオを使用して火を点けて、校舎を離れたのだ。

「もしかして、あの銀髪の子かしら……」

 自分を襲撃してきた少年の顔を思い出して、ハーマイオニーは身震いした。
 今回はロウソクの火を囮にすることができたが、次もうまくいくとは限らない。
 小さくなっていた恐怖心が再びくすぶり始めたのを感じて、ハーマイオニーは頭を振る。

「余計なことは考えない方がいいわ。まずはホグワーツへ……!」

 目指すはホグワーツ魔法魔術学校。
 ハーマイオニーは北へとひた走る。


797 : YOASOBI ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:14:23 CPbjR5y.0
【H-3 イーデン校付近/1日目/黎明】
【ハーマイオニー・グレンジャー@ハリー・ポッター シリ-ズ】
[状態]:恐怖(小)、背中にダメージ(小)
[装備]:ハーマイオニーの杖@ハリー・ポッター
[道具]:基本支給品×1、ロウソク×4、ランダム支給品0~1(確認済)
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ホグワーツ魔法魔術学校へと向かう。
2:ハリーやロンがいるなら合流したい。
3:殺し合いするしかないとは思いたくない。
[備考]
参戦時期は秘密の部屋でバジリスクに石にされた直後です。


【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ@現実 神鳥の杖@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:皆殺し
0:あれ?死体がない?
1:姉様と合流したい
2:魔法の力でイロイロと愉しみたい。
[備考]
参戦時期は死亡前です。
神鳥の杖の担い手に選ばれました。暗黒神の精神汚染の影響は現在ありません。

【ロウソク@現実】
ハーマイオニー・グレンジャーに支給。五本セット。


798 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:14:40 CPbjR5y.0
投下終了です。


799 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/08(木) 13:22:31 CPbjR5y.0
すみません、Wiki収録時、最後に以下の文を追記して頂けると助かります。

【備考】
※H-3イーデン校の施設の一部が破壊されました。

以上です。失礼しました。


800 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:23:44 /BEB9rhw0
投下します


801 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:24:32 /BEB9rhw0


声が響く。
冷たい、冷たい声だった。


「全く、大言壮語にも程があるでありんすねぇ──」


語る少女は、シャルティア・ブラッドフォールン。
ナザリック地下大墳墓第一、第二、第三階層の「墳墓」に配置された、序列第一位の階層守護者。
序列第一位の数字が示す通り、彼女は直接戦闘ではナザリックの中でもハイエンドとも呼べるNPCだ。
曰く、ナザリックの階層守護者の中でも総合力最強。
だが、ナザリックの中で最強格だからと言って、このバトルロワイアルでも最強とは限らない。
事実彼女はゲーム開始早々、優しき魔界の王と、魔王討伐者の魔法使いに不覚を取り、
代償として片腕を喪っている。
だがそれは、決して彼女が弱者である事を意味しない。


「片腕のない私ひとりに四人がかりで勝てないお前らが、どうやって私を一切の抵抗も許さず拉致した、海馬乃亜に勝つと?」


一言で言って。
野比のび太、ニンフ、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、雪華綺晶の四人は、運が無かった。
恩讐に塗れた魔女との死闘を切り抜け、僅かな小休止のあと。
有無もわからぬ艦船の類を求め、港を訪れて。
そこで出会ったのがシャルティアだったのだから。

シャルティアにとっては、一日に三度しか使えぬ時間逆行のスキルをすべて使い、金色龍の魔法によるダメージを漸く復調させた直後の事だった。
何しろこの会場では魅了など精神操作や回復系のスキル・魔法が著しく制限されている。
時間逆行を用いても、欠損した右腕には効果が見られなかった。
《リジェネート/生命力持続回復》の魔法は効果こそあったものの、普段なら腕の欠損程度数秒で治してしまう筈の吸血鬼の回復力が、此処では本当に亀の歩みかと思う程遅い。
恐らく純粋なダメージの回復ではない、欠損からの回復は、このバトルロワイアルではより重いペナルティが課せられているのだろう。


802 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:25:27 /BEB9rhw0


(全く乃亜の奴は余計なことをしてくれやがって……クソが)


リジェネ魔法により亡くした腕も回復しつつあるが、以前戦闘には使えないまま。
その上、回復を優先した事によりシャルティアは今迄他の参加者に出会えていない。
これでは敬愛するペペロンチーノから賜りし装備の手がかりを得る事すらできない。
エルフたちの追撃を避けるために大幅に移動したのはいいものの、こんな端のエリアに来る人間はいるものか…
そう考えていた所に現れた一団。
丁度いいジュースが四人歩いてきた。


(態々自分からジュースになりに来るとは…優秀な“ジハンキ”でありんす)


立ち振る舞いは、あの金髪のガキやエルフの魔法使い程戦闘に長けている様には見えない。
金髪のガキの様な鍛え上げた肉体も、エルフの様な戦術眼も無いように思えた。
念のため<<魔力の精髄>>の魔法を用いて魔力の多寡も計ってみたものの…あのエルフより遥かに劣る魔力のゆらぎしか確認できなかった。
とは言え念には念を押して、シャルティアは先ずは穏便に接触する事に決めた。
カルマ値-450を誇る彼女が下等生物に恭しく名乗り、その際に失った片腕をじろじろと見られ、
眼鏡の小僧に憐れまれるような視線を向けられた時は血液が一瞬で沸騰しそうになったものの、何とか堪えた。
その後愚にもつかない雲をつかむ様な乃亜の打倒と、脱出案を聞かされて。
乗るか反るかを答える前に、シャルティアは一つの質問をした。


真紅の鮮血鎧と、スポイトランスと言う槍を知らないか?と。


前提として、シャルティアは馬鹿ではない。
ナザリック総合力最強NPCの称号は、馬鹿には務まる筈もない。
だが、腹芸に慣れているという訳でもなかった。
そんな彼女でも一目でわかるほど、白髪の少女と眼鏡の少年の反応は分かりやすいもので。
その反応を以て、シャルティアは知っていると判断した。



そして───爆発した。


803 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:26:10 /BEB9rhw0


のび太たち一行にとっての不幸は。
シャルティアがゲーム開始早々に交戦したようなガッシュ・ベルの様な──
白兵戦においてシャルティアを止めるに足る戦士がいなかった事だ。
シャルティアは先ず、翼の生えた少女──ニンフを狙った。
理由は単純、スポイトランスの名前を出した瞬間、のび太とイリヤの視線がニンフの方に向いたからだ。
ならば持っているとすればニンフだろう、そうシャルティアは判断した。
残像すら残る速度で、一瞬でシャルティアはニンフに肉薄する。
その五指と人外の膂力で以て、天使の機能を永遠に停止させにかかる。
ニンフは唐突に訪れた死の予感に対して翼を広げるが、既に間合いに入られているため迎撃する事が出来ない。
イリヤも魔法少女の姿に転身するものの、対応には既に間に合わない。
銃の腕と経験値以外はただの人間であるのび太は、反応すらできなかった。


───皆様、下がって下さい!!


そんな中、唯一的確に動くことができたのは、雪華綺晶だった。
媒介(ミーディアム)と契約したローゼンメイデンとして力を全力で行使。
視界が埋まるほどの白き茨をシャルティアに半分巻き付け、もう半分をニンフの眼前に壁の様に生やす。
現在の雪華綺晶が可能な、全力の防御と妨害だった。
しかし、それが完了したからとてシャルティアが止まるとは=で結べない。


「──生っちょろいんだよッッ!!!」


シャルティアが吠える。
常人なら皮が割ける程度では済まない茨の轍を、片腕で引きちぎって。
そして、渾身の力で以て茨の楯に包まれたニンフをぶん殴った。


「が───!?」


もし、戦闘機能を搭載したエンジェロイドであれば。
イカロスやアストレアならば茨によって威力の落ちた拳ならば十分対応できただろう。
だが、電算機能を主体とするエンジェロイドであるニンフにとってシャルティアのその拳は痛打である事に変わりはなかった。
茨の上から鳩尾に拳が突き刺さり、ニンフの華奢な体がガクリと膝を付く。
地面を這いずる羽虫を見る視線で見つめてから、シャルティアは即座にニンフのランドセルを強引にもぎ取った。
粗雑に手を突き入れ、中をまさぐって、金銀財宝を掘り当てた探鉱士のような表情を浮かべる。
にんまりと笑顔を浮かべながら、それを引きずり出す。
ニンフたち四人が誰も振るえぬと死蔵されかけていたそれは、一本の槍だった。
柄の先に宝玉が据え付けられ、そこから青銅色の穂先を伸ばす、突撃槍。
相手のHPを削り取る神器(ゴッズ)アイテム、スポイトランスであった。


804 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:27:11 /BEB9rhw0




「クソ耳長に片腕を吹き飛ばされた時は厄日だと思った物でありんすが…
これもペペロンチーノ様の導き!不肖シャルティア・ブラッドフォールン、
下奴共に奪い取られた、至高の御方より賜ったこの槍、見事取り戻してみせんした!!!」



無駄に高揚したテンションで、取り戻した槍に頬ずりをして。
シャルティアは喜びに浸る。
そして、その数秒後の事だった。


「───さて、汚い手でスポイトランスに触れたお返しをしないと、ね?」


卑劣にも自身から至高の御方より賜った武装をかすめ取っていた下等生物たちの駆除にかかったのは。
シャルティアにとって、何処とも知れぬ馬の骨がこのランスに触れた事は、万死に当たる所業でしかなかった。
未だ鳩尾に突き刺さった痛打から立ち直れぬニンフ目掛けて、ランスを振り下ろす。
それが成されれば、ニンフの頭はザクロの様に弾け、それで終わり。


「斬撃(シュナイデン)!!」


だからその前に、イリヤは絶体絶命のニンフを救う手を打った。
全力で魔力を研ぎ澄ませ、刃の様に振るう、黒化英霊にすら有効打となる一手。
それは見事、シャルティアに命中した。
だが、しかし──


「くだらない」


イリヤの全力の斬撃を、シャルティアは素手で殴ることによって迎撃していた。
まるで、攻撃こそ最大の防御とでもいうかのように。
当然、彼女の拳もただでは済まない。
すまないのは確かだが…薄い切り傷が一文入っただけだった。
それも吸血鬼の高速再生により、早戻しの様に癒着する。
傷が完全に癒着するよりも早く、シャルティアは跳んだ。


805 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:27:51 /BEB9rhw0


『イリヤ様!目の前の相手は死徒!それも正規の英霊、三騎士に匹敵する───』


サファイアの警告が、イリヤの耳朶に響く。
沈着な彼女に似合わぬ、逼迫した様子の警告だった。
そして、それは正しかった。
跳んだシャルティアの速度は、全速力で後方へ後退するイリヤのそれよりも余程俊敏だったのだから。
恐ろしい程に整った目鼻がはっきり見える距離まであっという間に詰められて。
ぞくり、と。
イリヤの身体を、悪寒が包んだ。


「く──砲射(フォイア)!!」

「こんなもん効くか」


苦し紛れに撃った魔砲は、槍の一撃に叩き潰される。
否、それだけに留まらない。
魔砲の一撃を蹴散らしてなお、振り下ろされた槍の一撃の速度は落ちない。
そのままスポイトランスを叩き込まれ───ベキゴキ、と。
自分の身体から鳴ってはいけない音が鳴るのを、イリヤは聞いた。
口から鮮血を噴き零して、吹き飛んでいく。


「マスター!!」


雪華綺晶は悲鳴の様な声を上げて、茨を作成し、後方に吹き飛ばされるイリヤを救う。
だが、それは雪華綺晶本人の意識と、能力をイリヤに割くという事であり。
必然、雪華綺晶本人は無防備な状態となる。


「さっき邪魔したの、お前だよな?」


雪華綺晶の顔に影が差し、影の方向を見てみれば、シャルティアが槍を振り上げていた。


(不味い、力を、でも、もう。間に合わな………)


雪華綺晶よりも大きい槍の一撃を受ければ、簡単にボディは粉砕されるだろう。
だが、今から対応した所で、回避も迎撃も不可能。
スローモーションになった世界の中で、雪華綺晶は死刑執行を司る青銅の処刑槍をただ見つめて。


806 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:28:22 /BEB9rhw0



――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!



突撃槍が雪華綺晶を叩き潰す前のその刹那、音波砲が、シャルティアに命中する。
ここで初めて苦悶を含んだ表情を見せたシャルティアが、音波砲の出所を睨む。


「心配した恩を仇で返してくれたわね…かかって来なさい、化け物!!」


鳩尾のダメージから復帰したニンフが、憤怒を目に込めてシャルティアを見据える。
そして、その背のマスティマを羽ばたかせ、天空へと飛翔する。
シャルティアはそれを無感情に見つめて、周囲を睥睨する。
恐らく仲間に襲い掛からぬようヘイトを集めたのだろう。
空中に飛び上がったのが証拠だ。
ここで敢えて地上の仲間をブチ殺してやるのはいい意趣返しとなるだろうが…


「…その通り。私は残酷で冷酷で非道で――そいで可憐な化物でありんす」


───その誘い、乗ってやる。
自身の飛行スキルを展開。
背に生えた翼で、シャルティアもまた天空へと羽ばたく。
天使を叩き落し、制空権を握るために。


807 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:29:04 /BEB9rhw0







「イリヤ!イリヤ!しっかりして!!」

『イリヤ様、今治癒促進の効果を最大まで引き上げます。動かないで下さい』

「マスター…しっかりして下さい。マスター……」


ニンフがシャルティアを引き付けている間に、のび太たちは吹き飛ばされたイリヤの元へと集っていた。
一様にその表情は暗く、涙を浮かべている。
イリヤの状態は、傍目から見ても劣悪な物だった。
槍の殴打を受けた鎖骨は完全に折れ、この様子だと肋骨も折れて肺に刺さっているかもしれない。
意識はある様だったが目は虚ろで、口の端から血泡を吹いている。
闘う事はおろか、歩く事すら現状ではままならない。
だが、イリヤは猛烈な痛みに苛まれる中で理解していた。


(今…私が倒れてたら……)


間違いなく、全滅する。
ニンフが今は引き付けてくれているが、あとどれほど保つものか。
それに、シャルティアという女がその気になってイリヤ達の方に向かってくれば、それだけで詰む。
状況は、絶望的だった。
故に、少女は決断する。
ごほごほと、血が混じった咳をしながら、サファイアに命じる。


「サファイア…あのカード、使う、から……」

『!?、イリヤ様それは、しかし───』


現状で唯一の希望。
それはシャルティアと出会う前、情報交換の折にニンフが持っていた物を与えられた一枚のクラスカードだった。


『…確かにあれを使えばイリヤ様の状態も、この状況も打破できるかもしれません。ですが……』

「…うん、分かってる。でも…使わなきゃ、どうしようも、ないでしょ?」


強力なカードだ。
戦闘能力で言えば三騎士に勝るか、それすら超えるかもしれない。
だがしかし、他のクラスカードと違い、それの使用にはリスクが伴う。
そしてそのリスクの性質を鑑みれば、乃亜が何らかの調整を行っていても不思議ではなかった。


『……承知しました。イリヤ様。使用しましょう。のび太様たちは、早急な避難をお願いします』

「そんな!ぼ、僕も残るよ。イリヤを置いては──!」

「お願い…のび太さん達がいると、多分巻き込んじゃう、から……」


808 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:29:31 /BEB9rhw0


食い下がるのび太に、文字通り血反吐を吐いてイリヤは懇願する。
その凄絶な表情を見て、のび太も決断せざる得なかった。
多くの冒険を繰り広げてきたのび太だからこそ分かる。
現状では愚図でのろまな自分ができる事は何もない、ということを。
時間はもうほとんど残されていない、これ以上イリヤを困らせる訳にはいかない。
のび太は僅かに顔を伏せた後、決然とした表情で告げた。



「……うん、分かった。ニンフと、雪華綺晶の事は僕に任せて」


その苦渋と決意に満ちた表情を見て。
イリヤは穏やかにほほ笑んだ。
そして、口ずさむ様に言葉を漏らす。



「───ありがとう」







――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!



シナプス謹製のエンジェロイドの音波兵器が夜天を切り裂く。
常人であれば、喰らえば即死は免れない攻撃だ。
だがしかし、相対する者は常人ではない。
もうその技は一度見たと言わんばかりの冷めた表情で。
シャルティア・ブラッドフォールンはひらりと身を躱した。
ニンフにとっては最高速度で空を駆けまわり。
狙いすました一撃を、吸血姫は苦も無く回避してのけた。


809 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:29:54 /BEB9rhw0


「大きな口を叩くなら───」


バカの一つ覚えの様に同じ技を撃って来る所から、あのエルフの様な隠し札はないと判断。
ならばこれ以上時間をかける理由も無い。
その手のスポイトランスに、力を籠めて。
吶喊。
ニンフにとっては瞬きの如き時間で、シャルティアは肉薄する。


「この如何ともしがたい実力の差を!少しは埋めてから叩け!!」


ニンフができた事は、咄嗟に翼を畳んで身を守る事だけだった。
卵の殻で包む様に防御姿勢に入ったニンフを、関係ないとその手の槍を叩きつけた。
轟音と衝撃が、翼を伝ってニンフを襲う。
ただの一撃で、ニンフは地へと隕石の様に叩き落された。


「こ、の……ビチグソ、が……」

「糞はお前らだろ」


乃亜の仕組んだハンデと隻腕の影響で、ニンフへのダメージは致命傷ではなかった。
だが、問題ない。致命傷にならぬ事はすでに織り込み済み。
次で仕留める。その意志の元、シャルティアは地上のニンフの元へ急降下する。
その、瞬間の事だった。



───夢幻召喚(インストール)



突如として、強大な魔力を彼女が感じ取ったのは。
ニンフへの追撃もいったん中断し、其方の方を確認する。
すると、そこに立っていたのは先ほど槍で叩き潰したはずの少女だった。
死にぞこないだった筈の少女は、何らかの回復魔法を使ったのか完全に息を吹き返している様子だった。
いで立ちすら、先ほどまでと大きく変わっている。
猛獣の皮でできていると見られる胸当てに、雄々しい腰巻をスカートの様に優雅に揺らし。
長大な斧剣をその手に握りしめて、シャルティアを射すくめていた。
もし、そのままニンフを貫けば、その時には自分が貴方を粉砕している。
シャルティアをしてそう思わせるだけの風格を、今のイリヤは纏っていた。


810 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:30:21 /BEB9rhw0


「…ふん、少しは骨の在りそうな姿に変わった様でありんすねぇッ」


標的をイリヤへと変更。
その手の突撃槍を、先ほどよりもなお速い速度で振り下ろす。
それは数十秒前までのイリヤならば反応すらできず倒されていたであろう一撃だった。
だが、今回は───


「───!?」


それは武器の衝突と言うよりは、大型車両が正面衝突した時の音に似ていた。
スポイトランスは、受け止められていた。
イリヤが握った斧剣によって。
押し込もうと力を籠める。それも、さきほど魔力砲を打ち破った時と同じだ。
しかし、突撃槍はびくともしない。
隻腕でなければ押し切る事も可能だったかもしれないが…現状では一秒ごとに押し戻される有様だった。
シャルティアが、目を見開いて、この時初めて後退する。



(なるほど…この小娘、<<完璧なる戦士>>の類の魔法を隠し持っていたか)


パーフェクトウォリアーという、彼女の主であるアインズ・ウール・ゴウンも使用した魔法がある。
これは使用中魔法が使えなくなるのと引き換えに、使用者の魔法詠唱者としてのレベルをそっくりそのまま戦士レベルへと移し替える魔法だ。
ついさっき目の前のイリヤとかいう小娘は魔力で作られた砲撃を行ってきた所から、魔法詠唱者(マジックキャスター)と推定できる。
その上で<<完全なる戦士>>に類するスキルを持っていたとするなら、この変貌も説明がついた。
冷静に洞察するシャルティアの前へと、イリヤが急発進する。



「せぇえええええいッッッ!!!」



裂帛の気合を込めて放たれる豪打は、今の隻腕のシャルティアには十分に脅威と成る威力を秘めていた。
そのまま荒れ狂う大河の様に、獲物の喉笛を狙う猛獣の様に、怒涛の連打を放つ。
一打ごとに人間の形をした存在が奏でているとは思えない轟音が響き、空気が揺れる。


811 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:30:45 /BEB9rhw0


「ちっ───!」


シャルティアの攻勢が、完全に止まる。
攻勢から、守勢へと攻守が変わる。
隻腕と言う状況の悪さと、敵手の猛攻により、攻め手に出れない状況に陥った。
やむなく彼女は<<転移>>の魔法を使用。イリヤ達とは大きく距離を取り態勢の立て直しを測る。
結果、開かれた戦端に、僅かな凪の時間が訪れた。
それを利用して、イリヤは背後のニンフに語り掛ける。


「……ニンフさん。立てますか?」

「……えぇ、マスティマにダメージがあるから暫く飛べそうにはないけどね。
でも、アンタのお陰で何とか走る事は出来そう」

「そうですか。じゃあのび太さんを連れて、逃げてください」

「断るって、言いたいところだけど……」


やはり、ニンフにとっても協力者を置いていくのは抵抗があるのか。
二つ返事とはいかなかった。
いかなかったものの…ニンフも状況は理解していた。
イリヤは、自分が渡したクラスカードとやらを使ったのだろう。
狂戦士(バーサーカー)と銘打たれたそのカード。
内包された英霊は、ギリシャ神話最強と呼び声高い大英雄、ヘラクレス。
間違いなく、数あるクラスカードの中でも最強格のカードだった。
だが、何時だって大いなる力には大いなるリスクが伴うもの。
バーサーカーのクラスカードには、『狂化』という爆弾が仕掛けられていた。
使用者の理性を徐々に奪い、見境なく暴れまわる、文字通りの狂戦士に変えてしまうリスクが。


「……っ!お願い…っ!思っテたよリ、狂化するスピードが、早そうなノ…っ!!」


側頭部を抑えて、イリヤが絞り出すように言葉を紡ぐ。
乃亜の手によって、やはり調整が加えられていたらしい。
特に、狂化の浸食速度に対しては。
このままでは、敵味方の区別がつかず見境なく暴れまわる事になる。
それだけは、絶対に避けなければならない事だった。


812 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:31:21 /BEB9rhw0


「ニンフ!行こう!」


横合いから、のび太がニンフの手を取る。
彼は、既に決断した様子だった。
それに導かれるように、ニンフも腹を決める。
イリヤに自分達を襲わせるわけにはいかない。
天使は、駆けだした。


「雪華綺晶、アンタも一緒に───!!」


雪華綺晶も、連れて行こうとニンフは手を伸ばす。
だが、彼女がその手を取ることは無かった。
静かに首を振って、彼女は静かに宣言した。


「私も、マスターと此処に残ります」

「何言ってんの!?此処はイリヤに任せて──」

「そうだよ、雪華綺晶ちゃん!私の事は良いから───っ!?」


当然ニンフとイリヤが食って掛かる。
しかし、そこでイリヤは違和感に気づいた。
先ほどまであった、意識が混濁していく感覚が明確に薄れた。


「狂化が精神的な作用をするなら…マスターと契約している私が抑え込みます」


そう、彼女は薔薇乙女(ローゼン・メイデン)。
それも、少し前まで絶大な力を誇った精神(アストラル)体であった末妹だ。
活動期間は他の姉妹に比べれば短くとも、契約者の精神に彼女ほど精通した者はいない。
その彼女であれば、狂化を一時的に抑え込むことも、可能なのかもしれない。


『…確かに雪華綺晶様の力は、今のイリヤ様に作用している様です』


斧剣と化したサファイアが、現況を正確に伝える。
彼女の視点から言っても、雪華綺晶の能力はイリヤに正しく作用している様子だった。
だが、それはあくまで現況の話。
狂化が進んだ場合、どうなるかは分からない。
現状ではイリヤには、雪華綺晶を守れる自信がない。
それでも。


813 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:31:50 /BEB9rhw0


「マスター…どうか」


譲れない、と言った表情で。
雪華綺晶は訴えかけてくる。
このまま、悩んでいる時間はない。
眼前のシャルティアを睨んだまま、イリヤは静かに雪華綺晶に告げた。


「……分かった、でも、大分後ろまで下がって、隠れてて」

「っ!はい……っ!!」

「……っ!!イリヤ!雪華綺晶!船が使えなかった時の、例の場所で落ち合うわよ!!」


態勢は定まった。
例の場所、というのはニンフたちがあらかじめ決めておいたルートの事だ。
即ち、海馬コーポレーションの近辺。
こうしてどこか具体的な場所を言わなければ、シャルティアに追って来られる心配も無い。
そこを目指してニンフ、のび太、雪華綺晶の三人は、そのままイリヤに背を向けて駆けだす。
だが、それを見逃すシャルティアではなかった。


───《ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星》


ニンフたち三人を五度は殺して余りある業火が、殺意を纏い放たれる。
それは、のび太たちがゲーム開始直後に交戦したリーゼロッテの放つ魔法に勝るとも劣らぬ威力をしていた。
だが、それを見たシャルティアの表情は落胆。


───《マキシマイズマジック/魔法最強化》を使って、これか。


乃亜の課したハンデは、シャルティアを密かに苛立たせる。
彼女はイリヤ達が話している間、指を咥えて待っていたわけではなく。
その間に、自身に魔法の威力を高めるバフをかけていた。
だが、その効力は普段の物と比べると著しく零落しており。
それ故に、敵手も彼女の想定通り対応してきた。


814 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:32:16 /BEB9rhw0


「───ハァッ!!」


先ほどのシャルティアの真似をするかのように。
上段からニンフたちの元へ迫る業火に斧剣を叩きつけて。
そのまま地面に突き刺し、即席の盾とする。
そして、それだけに留まらない。
あろうことか彼女は絶死の業火に向けて斧剣を盾に、突き進み始めたではないか。
当然、無傷では済まない。
至る所に火傷を負うものの、どれも重症には至らず彼女はシャルティアの眼前まで距離を詰めた。


「───やぁああああああッッッ!!!!」


咆哮と共に、斧剣を振り上げる。
下段からの突き上げ、スピードは先ほどよりも早い。
ドン!!!という轟音が、二人の間で響く。
ビリビリと衝撃が伝い、二人はそのまま数拍の間打ちあう。
強い、とイリヤは感じた。
片手にも拘らずこの強さ、驚嘆に値する。
だが、これほどまでの強さがあって、どうして。
イリヤには分からなかった。
鈍く重い音を立てて双方の武器をぶつけ合った後、シャルティアを睨みながらイリヤは尋ねる。


「どうして。どうして、貴方は殺し合いに……私達を殺そうとするの」


確かに、怒りを含んだ問いかけだった。
同時に、淡い期待もそこには込められていた。
もしかしたら、同じ乃亜の被害者同士、分かり合える部分もあるかもしれない。
だが、シャルティアの返答はそんな彼女の期待を打ち砕く残酷な物だった。


「私の忠誠の証に汚い手で触れたからに決まっているでしょう。それに元より……
ナザリックに奉ろわぬ人間なんて、栄養補給の下等生物(ジュース)でしかありんせん。
美味しいジュースって、無意識のうちに何本も飲んでしまうものでしょう?」


815 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:32:38 /BEB9rhw0



くすくす、と。
お前は飲まないのか?と嘲弄を含んだ笑みを、シャルティアは浮かべる。
それを見た瞬間、斧剣を握る手に更に力が籠められる。
シャルティアはのび太達を逃がすつもりは無いだろう。
誰かが、殿を務めきる必要があった。


───マスター、マスター…ご無事ですか?ニンフさん達は既に離れられました。
───私も、力が届くギリギリの距離で、隠れています。


イリヤの脳内に、契約の指輪を通して雪華綺晶の声が響く。
ローゼンメイデン達は全員離れていても契約者と念話が可能なのか。
それとも、少し前まで精神体と言っていた雪華綺晶が特別なのか。
それはイリヤには分からなかったが、三人は既に安全な場所まで離れる事ができたらしい。
思考も今の所クリアだ。見境なく暴れまわるのは避けられるだろう。
つまり、あと残る問題は、目の前のシャルティアを撃退するだけ、ということ。


「──よく、分かった。貴女を、のび太さんたちの所へは行かせない!」

「数分後も同じ言葉を吐けたら、褒めてやる」


言葉と共に、二人の少女が駆けだす。
激突する突撃槍と斧剣。
夜の闇を、星の瞬きの様な閃光が迸ったのは、直後の事だった。


816 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:33:50 /BEB9rhw0


【一日目/黎明/D-8 港内】

【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(大)、右腕欠損、魔力消費(小)
[装備]:スポイトランス@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:真紅の全身鎧を見つけ出し奪還する。
2:汚い手で至高の御方から賜りし槍に触れた奴らを誅伐する。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻し次第、エルフに借りを返す。
[備考]
アインズ戦直後からの参戦です。
魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。

【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……?
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。
※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。
のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身に火傷(治癒中)、夢幻召喚中、雪華綺晶と契約。
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード『バーサーカー』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。目の前のシャルティアからのび太さん達を守る。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:みんなと協力する
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※バーサーカーのクラスカードを夢幻召喚しています。雪華綺晶の能力で狂化の影響を抑え込んでいますが、それがどれほど保つかは後続の書き手にお任せします。


817 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:34:25 /BEB9rhw0







吸血姫と狂戦士と化した少女の衝突。
その身を不可視と化すマントを羽織って、一部始終を見ていた二つの影があった。


「……予想通り別れたわね。さ、逃げた方を追いましょ。リップ君」


褐色の少女、クロエ・フォン・アインツベルンは、魂を分けた片割れの奮戦する様を見て、同行者である眼帯の少年にそう告げた。
眼帯の少年、リップ=トリスタンはそんな彼女の決定に、腑に落ちない表情で尋ねる。


「……いいのか、アレ。君の妹だろ?放って置いて」


リップ自身、何を以ていいのか、と尋ねているのかはっきりしなかったけれど。
それでも、聞いておかなければならない事だと思った。
迷う心で戦えば躊躇が生まれる。そして、躊躇は戦場では命取りを生む。
だから、はっきりさせておきたかった。
そんな思いから湧いた彼の問いかけに、クロは肩を竦めて。



「いいのよ。私が目指すのは優勝だもん。あの子とはどうあっても一緒にいけないし、
………敵のあの子と行くつもりもないわ」



───ただ、元の生活に戻りたい…かな。
この殺し合いに招かれる直前に、イリヤが言った言葉が、クロの脳裏に木霊する。
多分、そんなつもりでは無かったのであろう。ほんの些細な、言葉。
でもそれは、クロエ・フォン・アインツベルンにとって、魂を分けた片割れとの決定的な断絶を象徴する言葉だった。
その言葉の意味するところは、イリヤが魔術の世界と関わって起きた出会いの否定だから。
だから、クロにはその言葉が許せないし、受け入れられない。


「…そうか」


リップはそんな同行者の言葉を憮然とした表情で受け止めて。
それ以上は何も言わなかった。
彼にとっては、クロも最後には殺しあう相手なのだから。
何か言える筈も無かった。

本来の歴史なら、彼女達は母の手によって仲裁され。
そのすぐ後に、姉妹二人の手で引き寄せた奇跡によって和解するはずだった。
だが、このバトル・ロワイアルに彼女達の母がやって来ることは無い。
故に此処に、姉妹は静かに袂を別つ。
…全ては掛け違えた世界の話だった。


818 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:34:53 /BEB9rhw0




「ニ…ニンフ…待ってよぉ〜!!」

「何でアンタさっきまで戦ってた私より足遅いのよ!!」


海馬コーポレーションを目指し、ニンフとのび太は夜の街を走っていた。
……尤も、のび太の体力はお世辞にも多いとは言えない。
エンジェロイドとは言え女の子であるニンフについていくのがやっとの有様だ。
そしてニンフもマスティマがまだ片翼が折れたままだ。飛行するのには使えない。

「だって…僕…かけっこは大抵いつもビリで………」


滝のように汗を流すのび太のその手には拳銃が握られている。
ニンフが護身用にと渡した支給品だった。
だが、その重さも体力のないのび太にとっては過酷なモノで。
結果、彼はぜぇぜぇと肩で息をしていた。
その様を見て、ニンフはイリヤのお陰でシャルティアと距離を取る事は出来た。
少し息を整えるまで休憩しよう…そう考えた矢先の事だった。


「ニンフ、危ないッ!!」


のび太が、血相を変えて、ニンフを突然押し倒したのは。


「うっ!ぐぅ〜〜、い、痛い……!」

「の…のび太!?」


のび太の左肩は、切り裂かれていた。
傷はそう深くない。だが、血が滲んでいる。
呻きながら彼は傷を抑えようとするが、手が傷に触れる直前で停止してしまう。
ニンフは夢中で起き上がり。まさかと動揺した。
この現象には、聞き覚えがあったから。
だとするならば最悪の相手だ。歯噛みしながら、攻撃が飛来したと思われる方を睨む。
するとそこには、想定した通りの少年が立っていた。


819 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:35:10 /BEB9rhw0



「……全く、小さい体だと感覚がつかめないな」


のび太の左肩を見てぼやくのは金髪に、眼帯が特徴的な少年。
不治(アンリペア)の否定者、リップ=トリスタン。
そして、それだけではない。
そして、その傍らに立つ、イリヤに似た、褐色の少女。
だが、その表情はイリヤが浮かべるそれよりも遥かに冷たい物だった。


「悪いけど、ぞろぞろ徒党を組まれても面倒なのよね」


冷たい眼差しと、冷たい声色で、褐色の少女は静かに剣を抜いた。
のび太が、痛みに涙を浮かべながら、その手の拳銃を握り締める。
ニンフが、臨戦態勢を取る。
そんな二人に向けてリップは静かにほほ笑みながら言葉を紡いだ。
彼は悪として、二人の対主催に宣言する。


「イリヤから、話は聞いてるだろ?」


───お前に付けられたその傷は、俺が死ぬまで治らない。


820 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:35:35 /BEB9rhw0


【一日目/黎明/E-8】

【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康、強い決意、疲労(中)、左肩に不治の傷(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
2:みんなには死んでほしくない
3:魔法がちょっとパワーアップした、やった!
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています
※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。
※左肩に不治の傷をつけられました。直ちに命に別状はありませんが時間経過で失血死します。

【ニンフ@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、羽なし(再生中)、羽がないことによる能力低下、マスティマ損傷
[装備]:万里飛翔「マスティマ」@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ベッキー・ブラックベルの首輪、ロキシー・ミグルディアの首輪
[思考・状況]基本方針:殺し合いをぶっ壊して、元の世界に帰る
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:目の前の二人に対処する。
3:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
4:この殺し合いにもしあいつ(元マスター)関わってるとしたら厄介かも。
5:のび太のそれ、ほとんどお願いじゃないの……。でも、言われなくてもその「命令」は果たす。
6:首輪の解析も進めたいけど、今の状態じゃ調べようにも調べきれないわね。
[備考]
※原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
※SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
※制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。ただし「デストラクト・ポーション」の影響で時間は掛かるも徐々に回復しつつあります
※この殺し合いの背後に空のマスターが関わってるかもしれないと、及びこの会場はシナプスのような浮遊大陸なのでは?と考察しています
※のび太、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※シャルティアの攻撃によりマスティマが損傷しています。飛行には使えませんが、攻撃には使用できる程度の損傷具合です。


821 : かけ違えた世界で ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:35:51 /BEB9rhw0


【リップ=トリスタン@アンデッドアンラック】
[状態]:掌に切り傷、右頬へのダメージ(中)、
[装備]:走刃脚(ブレードランナー)、ひらりマント@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品2〜4(アーカードの物も含む)、エボニー&アイボリー@Devil May Cry、アーカードの首輪。
[思考・状況]
基本方針:優勝し、ラトラの元へと帰る。
1:殺し合いに乗る。ただし、必要以上のリスクは犯さない。
2:目の前の二人を殺す。
3:クロエと組む。ただし不要になれば切り捨てる。
4:願いを叶える、か…本当かねぇ。
5:もし本当に、イリヤがこの殺し合いを打破する手段を見つけたら…?
[備考]
※参戦時期は6巻、アンデッドアンラック戦終了後、秋(オータム)戦直前です。
※古代遺物(アーティファクト)『ライフ・イズ・ストレンジ』の効果により、子供の姿になっています。

【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ ツヴァイ!】
[状態]:健康、若干自暴自棄気味
[装備]:賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、透明マント@ハリーポッターシリーズ、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:優勝して、これから先も生きていける身体を願う
1:目の前の二人に死んでもらう。
2:リップ君と組む。できるだけ序盤は自分の負担を抑えられるようにしたい。
3:魔力供給役の女の子が欲しいわね…殺し合いに乗ってる子でいい子いないかな。
3:ニケ君には…ほんの少しだけ期待してるわ。少しだけね。
[備考]
※ツヴァイ第二巻「それは、つまり」終了直後より参戦です。
※魔力が枯渇すれば消滅します。


822 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 00:36:07 /BEB9rhw0
投下終了です


823 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/10(土) 02:35:31 4s0QSCFM0
投下お疲れ様です。

>YOASOBI
ヘンゼル君、ハーたんに付きまとい過ぎて草。まあ私でも追いかけまわしますかね。
流石兄妹と言うべきか、意思疎通無くても競争ゲーム始めてますね。今のとこ、グレーテルが一歩リードしてますけど。
ハーマイオニーがタブレットに驚いてる何だか新鮮ですけど、作中の年代がまだ90年代くらいなんですよね。
そりゃ確かにオーバーテクノロジーにもなりますね。
戦闘力は並以下くらいですが、支給品活用して逃走までの時間稼ぎをしたとり、ちゃんと頭脳プレイを見せるハーマイオニーは流石ですが、ここまで他の対主催と合流出来ないの可哀想ですね。
近くにフリーレンやガッシュ、シカマル達、勝っちゃんもいるんでワンチャンありそうではあるんですけどね。近くの色々な事は目を背けるとして……。


>かけ違えた世界で
やっぱし怖いスね。ナザリック最強は。
最初のガッシュとフリーレンコンビがロワでもトップクラスの実力者だったのと、たまたまフリーレンの戦法がハマっただけで、正面切っての戦法だとほぼ負ける事はないくらいの強さなんでしょうね。
イリヤときらきーとニンフのトリオも普通に強い筈なんですけどね。リーゼロッテの襲撃がなければロキシーも居て、アイテムもあって多少はマシになったのかもしれないですけど。
シャルティア意識して廓言葉使ってるせいで、時々素に戻るのすこ。あくまでモモンガ様達の前ではコミカルであって、基本人類に対しては一方的に搾取する残酷な化け物なんですね。
そんな中、漁夫の利を狙うリップですけど、彼からすると姉妹同士が敵対するのって、結構来るものがありますよね。
しかしニンフ、いくらエンジェロイドといえども2vs1はきつ過ぎますね。なんか、この娘戦いまくってる…電子戦用とは一体……?



あと、参戦した全キャラが登場いたしました。本当にありがとうございます!
これもひとえに、書き手として参加してくださった皆様のお陰です。

これからも是非、当企画をよろしくお願いいたします!


824 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 08:18:13 /BEB9rhw0
感想ありがとう御座います
佐藤マサオ、エスター、シャーロット・リンリン
予約します


825 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/10(土) 08:39:18 /BEB9rhw0
あと申し訳ありません、のび太の状態表に拳銃の記載が抜けていたので此方に修正します。

【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康、強い決意、疲労(中)、左肩に不治の傷(小)
[装備]:ワルサーP38(8/8)予備弾倉×3
[道具]:基本支給品、量子変換器@そらのおとしもの、ラヴMAXグレード@ToLOVEる-ダークネス-
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。生きて帰る
1:もしかしてこの殺し合い、ギガゾンビが関わってる?
2:みんなには死んでほしくない
3:魔法がちょっとパワーアップした、やった!
[備考]
※いくつかの劇場版を経験しています。
※チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
※四次元ランドセルの存在から、この殺し合いに未来人(おそらくギガゾンビ)が関わってると考察しています
※ニンフ、イリヤ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※魔法がちょっとだけ進化しました(パンツ程度の重さのものなら自由に動かせる)。
※左肩に不治の傷をつけられました。直ちに命に別状はありませんが時間経過で失血死します。


826 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/10(土) 15:56:55 4c4pkJ/Q0
美遊・エーデルフェルトで予約します


827 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/10(土) 18:41:54 4s0QSCFM0
ttps://w.atwiki.jp/compels/pages/12.html

地図のページに参加者の現在位置の早見表を作ってみました。
参考にしてください。誰でも追記修正編集OKです。

あと、候補作で脱落したキャラの位置は割と適当です。
中島は作中で触れられたので、魔神王と同じ位置にしてありますけど。


828 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:05:48 CMptNY/20
投下します


829 : 選択 ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:06:03 CMptNY/20
人生とは選択肢の連続だ。
望む望まぬを問わず、生きていく中で選択を迫られる事がある。

美遊・エーデルフェルトもまた、選択した。
殺し合いに乗り、人形に変えられてしまったイリヤを救う、その選択を。
だが、それはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが人形のまま、という前提であり。
もし、その前提を覆すであろう真実を知った時、彼女は次に何を選択するのか。

人生とは選択肢の連続だ。
誰も望まなくとも、選択の時は訪れる。




☆ ☆ ☆


我武者羅に飛んで逃げた記憶しかない。
憧れと羨望の視線が、恐怖と嫌悪に変わっていく瞬間を忘れられない。
あの少年の言葉が耳にこびり付いたまま。

人を殺すというのは、こんな感覚なのだろう。
他人の夢を壊して、御題目(ともだち)のために関係のない命を奪って。
私は、その重さを始めて理解した。
分かっていたはずなのに、今でも手が震えて止まらない。

脳裏に覚えているイリヤの顔が赤く染まっているように錯覚する。
鏡が無くとも分かる。今の私は、恐ろしく酷くて、悲しそうな顔をしている。
消えない。汚れた手にへばり付いている血が消える気がしない。
これからも、私の心の染みとして残り続けるのかも。

誰かを殺すということが何なのか、その重みを、改めて私は理解した。
解りたくなんてなかった。こんなことなら、私は。


830 : 選択 ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:08:15 CMptNY/20
――――

ホテルの個室の一室に、私はいる。
移動で消費した魔力の回復。そして最後の支給品の使用が現状の目的。
ルビーは心配しているけれど、大した疲労でもないから大丈夫。
……大丈夫だと、思う。鏡を見たら恐ろしく汗が流れたけど。

「……魔術関係なく広範囲の情報をリアルタイム確認できるなんて、未来の道具とやらは便利ですね〜!」

タイムテレビ。未来のひみつ道具。というものらしい。
それは様々な場所の過去や未来の情報を映像として見れるもの。
ただ、この殺し合いでは未来の情報の閲覧は禁止されて、有効範囲も狭べられている。
出来ることは、所有者がいるエリア含めた周囲9エリアの内一つの、現在の状況の確認ぐらい。
それでも一度使用したら5時間のインターバルが必要で、便利とまではいかない。
『これがあればイリヤさんの初変身のシーンを何度でも〜』とかルビーが言い出したけど、私だって実は見たいとちょっとは思ったけど今はそんな事してる余裕なんて無い。

スイッチを押して、電源を付ける。
映し出されたのはE-8。D-8にある港らしき光景が遠目で見える海岸沿いのエリア。
映っていたのは男女のペアが二つずつ。

天使のような幼い少女、怪我をしているであろう眼鏡の少年。
そして眼帯を付けてナイフを構えた少年、そしてその隣りにいるのは――

「え、ええ!? クロエさんも巻き込まれていたんですか?」
「……クロ。あなたも……。」

クロエ・フォン・アインツベルン。
元来ならイリヤの小聖杯としての機能と人格であり、数多の奇跡から積み重なって生まれ落ちた、あの娘の『お姉さん』。
まさか、彼女も巻き込まれていただなんて。

状況を見るに、クロの方は眼帯の少年の方と手を組んでいるらしい。
眼鏡の少年に対する少女の対応を見るに、彼女は眼鏡の少年の方を組んでいるようだ。
クロの目的がわからないけど、多分私と同じでイリヤの事を救うため?
でも、まだクロがイリヤが人形になった事を知らない可能性だってある。
眼帯の少年の方は見るからに分かりやすい殺意を二人に向けていた。

分けるなら、少女と眼鏡の少年は『対主催』。
眼帯の少年とクロは……おそらく『マーダー』。
あの様子なら、クロは大丈夫そうだと、そう思って画面を切ろうとして。
眼帯の少年が次に発言した言葉に、思わず目を疑った。




――『イリヤから、話は聞いてるだろ?』
『お前に付けられたその傷は、俺が死ぬまで治らない。』






「美遊さん、これって……!?」
「……う、そ」

『イリヤから、話は聞いてるだろ?』と言う、言葉一つ。
確証なんて無い、だけどはっきりと。
この少年はイリヤと戦った事がある、という事。
そして、少女と眼鏡の少年が、今のイリヤの仲間である、という憶測が浮かび上がる。
その上で、この殺し合いに、イリヤまで巻き込まれてしまった、という。

「……そんな、ことって。」

身体が、震える。喜びと同時に、動揺も。
イリヤが無事だった可能性があるのは嬉しいけれど、私やクロと同じように巻き込まれていたなんて。
もしかして、人形のまま呼び出されて、あの眼鏡の少年が所持している? それなら支給品として何かの手違いで支給されている可能性も無くはない。だとしたらなんでクロが眼帯の方と組んでいる?
余りにも情報が足りない、イリヤがいるという不確定な可能性のせいでどうすればいいのか。


831 : 選択 ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:08:47 CMptNY/20

「どうするんですか美遊さん。これどう見てもクロエさん殺し合いに乗ってる感じの雰囲気してますよ。」
「あの眼帯の少年が良い方からして、あの二人は現状のイリヤの同行者の可能性が高い。……だけど、ルビーの言う通り多分クロは殺し合いに乗ってる。」

そう、そこが問題だ。イリヤの人柄を考えれば眼鏡の少年と天使の少女の仲間という説は濃厚。
イリヤが殺し合いに乗るわけがないから、間違いなくあの眼帯の少年はイリヤとは敵対関係となる。
クロが殺し合いに乗っている理由がわからないけれど、恐らく私と同じでイリヤに関わることであるなら俄然納得は行く。

「――――確かめないと。」

こうしちゃいられない。確証のない憶測が今流れた事実のせいで雁字搦めになっている。
イリヤがあの場にいないの理由を確かめる術がない以上は、直接聞き出すしか無い。
聞き出せればそれでいい。それさえ聞ければ最悪、眼鏡の少年と天使の少女の安否はどうでもいい。
クロにも事情を聞かないと、もしかしたらイリヤを助けるという共通事項で協力できるかも知れないから。
……でも、でももし。本当に、イリヤが本当にいて、会う事になってしまったら。

「行くんですね。」
「……うん。それに、もしもの時は――」
「私としては美遊さんに、あれは使って欲しくないですよ。」

思い返すのは、ホテルに侵入して、魔力のようなものを感知して魔力弾を壁に打ち込んだ時に発見した。
布に包まれた"何か"。『リベリオン』と呼ばれる強化アイテムの類
添付されていた小さな紙には『隠しアイテムゲットおめでとうという』軽い一文だけ。

「私目線からしても明らかにヤバい奴です、あのアイテム。」
「大丈夫、……あれは本当に最後の手段。」

ルビーからしても、間違いなく厄ネタ確定の危険なアイテム。
だから切り時を考えないと酷いしっぺ返しを打つことは明らか。
容易に来れない、文字通りの最後の切り札。

「じゃあ、行こう。」

決めれば一直線、窓から飛び降りて足場を作り跳ぶ。
向かうは戦場、エリアE-8。
確かめないといけない、あの眼鏡の少年と天使の少女がイリヤと何の関係があるのか。
確かめないといけない、クロが殺し合いに乗った理由を。
確かめないといけない、クロがあの眼帯の少年と組んだ理由を。

もしも、イリヤがいるというのなら。
人形じゃなく、無事に生身のイリヤがいたというのなら、私は―――


832 : 選択 ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:09:36 CMptNY/20


否定者を生み出した神"ルナ(LUNA)"
UMAと理を生み出した神"サン(SUN)"

ルナがサンを殺せるようにと作り上げた、三種の心器と称される最上級古代遺物。
その内の一つ、リベリオン。
使用者もしくは使用者が所有する武器に取り憑き、その憎悪を攻撃力として付与するもの。
その攻撃力に上弦は無く、その代償として使用者に死を与える。

美遊・エーデルフェルトは、未だその事実を知らない。
もしも、無垢なる稚児が憎悪を根差した時、その結末がどうなるか。


《狂い哭け、聖杯の稚児よ》

《死で物語を彩って》

《この■に未知を見せてくれ》




【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、深い悲しみ、覚悟。人を殺めた動揺、イリヤが人形から元に戻った状態でいるかも知れないという可能性に対する動揺
[装備]:カレイドステッキ・ルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、タイムテレビ@ドラえもん、クラスカード(不明)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、リベリオン@アンデッドアンラック(現地調達)
[思考・状況]
基本方針:イリヤを元に戻すため、殺し合いに優勝する。
0:……今更、引き返せない。
1:ルビーと力を合わせて殺し合いに勝ち残る。
2:確かめたい事の為に、E-8に向かう。
3:眼鏡の少年と天使の少女からイリヤの事を確認する。その後の生死はどっちでも良い。
4:クロとも確認したいことがある、もしかしたら協力してくれる?
5:眼帯の少年は何者? クロは彼と手を組んでいる?
6:…………イリヤ、私は、もう。
[備考]
※ドライ!!にて人形にされたイリヤを目撃した直後からの参戦です。
※カレイドステッキ・ルビーはイリヤが人形にされたことを知りません。


【タイムテレビ@ドラえもん】
美遊・エーデルフェルトに支給。過去や未来の、どんな場所でも見ることが出来るテレビ。
ただしこの殺し合いにおいては未来の情報の視聴は不可、確認できる情報は使用者がいるエリアとその周囲8マスのエリアから一エリアのみ。
後は一度使用した場合次に使用するまでに5時間のインターバルを必要とする

【リベリオン@アンデッドアンラック】
ルナがサンを殺せるようにと作成した最上位古代遺物"三種の心器"
使用者の所有する武器もしくは使用者に取り憑くことで、使用者の憎悪に応じて無限に上昇する攻撃力を付与する。
ただしその代償として使用者の死亡が確定しており、所有者に明確な憎悪が無ければ事実上のハズレアイテムとしかならないピーキーな代物。
この殺し合いにおいては、会場を破壊しかねない攻撃力上限にまで達した場合強制的に使用者が死亡するように細工されている。
会場に隠されていたのを美遊・エーデルフェルトが発見し所有。
……余談だが、リベリオンに関する説明は敢えて省かれている。


833 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:09:46 CMptNY/20
投下終了します


834 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 19:18:29 CMptNY/20
>>832で現在位置の記載を忘れたので追記しておきます
【一日目/黎明/G-7】


835 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/11(日) 21:57:57 phrQYuDs0
投下ありがとうございます!

>選択
『私だって実は見たいとちょっとは思ったけど』
異常性愛者が多すぎだろこのロワ、子供の教育に悪すぎる……。
しかし内容はずっと真面目でシリアス、元太の殺害は同行者からしてもショックですけど、美遊からしても重すぎますよね。
ルビーがいつも通り振舞ってるのが、気遣いのつもりなんでしょうけど、痛々しい。
名簿がないせいでイリヤの参戦に気付けないの、本当に痛いですよね。最初から名簿が使えれば、絶対に殺し合いに乗らなかっただけに主催の意地の悪さが垣間見える……。
参戦時期や、メンタル的に追い込まれているせいですけど、窮地ののびちゃんとニンフはどうでもいいと切り捨ててしまうイリヤ中心の考えが見ていて、悲しさと寂しさを覚えますね。


それから、申し訳ありませんが、いくつかご指摘させていただきます。

先ず、会場に隠れアイテムを配置するのは、私としては良くないと考えております。

お店から食料品や服、首輪解析に使えそうな工具(現実にある通常の品の範囲で)を調達したりとか、病院から医療品を拝借したとかは全然いいですし、ナイフとか包丁をこっそり民家から持ち出したとかもそれはOKです。
ただ、これだけのパワーアイテムを発見できてしまうのは、不味いです。
そういったギミックに関してはキャラクターの装備と戦力が過剰になってしまい。後続の方の執筆を阻害する要因になりかねないかと考えます。
なので、一定の限度を超えたアイテムに関しては、支給品の回収以外では原則登場は不可能として、SSを修正していただきたいです。


もう一点、【リベリオン@アンデッドアンラック】こちらです。

強力過ぎるアイテムであることに加え、現時点での原作での使用描写が一度のみ。更に詳細もはっきりせず、後の原作の物語にも深く関わる可能性も高いです。
ですので、こちらの描写は削って頂くか、一つ目の指摘を踏まえた上で、別のアイテムに差し替えてはいただけないでしょうか?

お手数ですが、ご確認お願いします。


836 : ◆2dNHP51a3Y :2023/06/11(日) 22:15:59 CMptNY/20
>>835
感想と返答ありがとうございます
>>831と832を以下の内容に変更します

「どうするんですか美遊さん。これどう見てもクロエさん殺し合いに乗ってる感じの雰囲気してますよ。」
「あの眼帯の少年が良い方からして、あの二人は現状のイリヤの同行者の可能性が高い。……だけど、ルビーの言う通り多分クロは殺し合いに乗ってる。」

そう、そこが問題だ。イリヤの人柄を考えれば眼鏡の少年と天使の少女の仲間という説は濃厚。
イリヤが殺し合いに乗るわけがないから、間違いなくあの眼帯の少年はイリヤとは敵対関係となる。
クロが殺し合いに乗っている理由がわからないけれど、恐らく私と同じでイリヤに関わることであるなら俄然納得は行く。

「――――確かめないと。」

こうしちゃいられない。確証のない憶測が今流れた事実のせいで雁字搦めになっている。
イリヤがあの場にいないの理由を確かめる術がない以上は、直接聞き出すしか無い。
聞き出せればそれでいい。それさえ聞ければ最悪、眼鏡の少年と天使の少女の安否はどうでもいい。
クロにも事情を聞かないと、もしかしたらイリヤを助けるという共通事項で協力できるかも知れないから。
……でも、でももし。本当に、イリヤが本当にいて、会う事になってしまったら。

「行くんですね。」
「……うん。」

だとしても、最初から分かっている。
もう既に戻れない、戻ることは出来ない。
私は、選択したのだから。私は多数よりも、たった一人の友だちを選んだ。
友達の命は、どんな世界よりも、私にとっては重いものだから。
二度と手放したくない、始めての友達を。
私なんかと違って、純粋で、ありきたりなハッピーエンドを望むあの娘を。
私はもう、あの娘の日常には二度と戻れない。

もしも、本当にイリヤがいるというのなら。
人形じゃなく、無事に生身のイリヤがいたというのなら、私は―――

「じゃあ、行こう。」

決めれば一直線、窓から飛び降りて足場を作り跳ぶ。
向かうは戦場、エリアE-8。
確かめないといけない、あの眼鏡の少年と天使の少女がイリヤと何の関係があるのか。
確かめないといけない、クロが殺し合いに乗った理由を。
確かめないといけない、クロがあの眼帯の少年と組んだ理由を。


私は選択する。たった一つの為に。
それが、例えあの娘の友達であろうと、家族であろうとも。


《狂い哭け、聖杯の稚児よ》

《死で物語を彩って》

《この■に未知を見せてくれ》



【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、深い悲しみ、覚悟。人を殺めた動揺、イリヤが人形から元に戻った状態でいるかも知れないという可能性に対する動揺
[装備]:カレイドステッキ・ルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、タイムテレビ@ドラえもん、クラスカード(不明)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:イリヤを元に戻すため、殺し合いに優勝する。
0:……今更、引き返せない。
1:ルビーと力を合わせて殺し合いに勝ち残る。
2:確かめたい事の為に、E-8に向かう。
3:眼鏡の少年と天使の少女からイリヤの事を確認する。その後の生死はどっちでも良い。
4:クロとも確認したいことがある、もしかしたら協力してくれる?
5:眼帯の少年は何者? クロは彼と手を組んでいる?
6:…………イリヤ、私は、もう。
[備考]
※ドライ!!にて人形にされたイリヤを目撃した直後からの参戦です。
※カレイドステッキ・ルビーはイリヤが人形にされたことを知りません。


【タイムテレビ@ドラえもん】
美遊・エーデルフェルトに支給。過去や未来の、どんな場所でも見ることが出来るテレビ。
ただしこの殺し合いにおいては未来の情報の視聴は不可、確認できる情報は使用者がいるエリアとその周囲8マスのエリアから一エリアのみ。
後は一度使用した場合次に使用するまでに5時間のインターバルを必要とする


837 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/11(日) 23:52:48 phrQYuDs0
修正ありがとうございます!


838 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:03:17 58/rNDBw0
投下します


839 : バケモンにはバケモンをぶつけるのよ ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:03:55 58/rNDBw0



だけど…信用できないのはうずまきナルトよ。


エスターは出来る限り同情を誘うように、また警戒を促す善良な参加者の様に。
そう、言ってのけた。


「えぇっ……!!そ、それ本当なの……!?」


偽りの事実を聞かされて、エスターの眼前に聳えるピンクの小山が揺れる。
小山の名は、シャーロット・リンリン。
エスターが本当に同じ人間なのかと疑う程の巨体を誇る少女だった。
何しろ彼女は、エスターとマサオが連れ立ってナルトから離れようと歩いている時に出会ったのがリンリンだった。
ずしんずしんと歩くたびに地ならしが鳴り響き、邪魔な建物や街路樹を蹴散らして歩く様はまるで怪獣である。
こんなの連れてくるなと、エスターは頭が痛くなりそうだった
だが、何も悪い事ばかりではない。
話してみるとリンリンは友好的だった。
おれは将来かいぞくになるんだ!だから悪い奴はやっつけてマザーの所に帰る!と彼女は豪語していた。
何故海賊なんかになりたがる奴が殺し合いに反対派なのかさっぱり分からなかったものの。
それでもエスターは使える、と思った。
このデカブツは体に反比例して本当に頭は六歳児並みの少なめの脳みそしかないらしい。
時折頭の回転が速そうなところも伺えたが、それでも自分には及ばない。


「えぇ…あいつらは二人で徒党を組んで殺し合いを楽しんでる。私も襲われたもの。
………人間じゃないの!あいつらは!!一見友好的に見せて赤ん坊も殺す化け物なの」


今度は最初の冷静な語り口とは真逆の、激しい口調で。捲し立てるように。
ナチスの演説もかくやと言った扇動で、エスターはリンリンに訴える。
その傍ら、マサオにちらりと視線を移す。
エスターの一挙手一投足を食い入るように見ていたマサオは、来た、と思った。
そしてエスターと打ち合わせた通り、援護射撃に入る。


「そ、そうなんだよぉ!!ナルトって奴は初めて見た時は明るく見えたけど…
でっかくて怖い狐を飼ってるんだ!!」

「でっかいきつねさん!?素敵!!」


そこじゃねぇよ。
エスターは心中で舌打ちした。
俄かに苛立ちながら、話の焦点を戻す。
話初めの「マサオが言うには」を、しっかりと強調して。


840 : バケモンにはバケモンをぶつけるのよ ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:04:36 58/rNDBw0


「……とにかくマサオが言うには赤ん坊ですら殺せる危険な相手らしいの。
私を襲った男の子も、変な影を出して私を殺そうとしてきた。
きっと化け物同士気が合うんでしょうね」


大仰に首を振って。いいえ、と。さらにエスターは続ける。
例え人間であっても、危険な連中である事だけは確かだ。
二人組への歪んだ知見を述べた後、彼女はリンリンに問いかける。


「ねぇ、リンリン。貴方は許せる?赤ちゃんを殺せる凶悪な奴らを。
この世で最も弱くて、守らないといけない赤ちゃんを無惨に食べちゃった奴らを」

「それは…許せない!やっつけて懲らしめないと!!」


殺せ、とは言わなかった。
どうせこの化け物の言う、やっつけるはイコール殺すことになるだろうから。
そんなことよりも、食いついたと、エスターは心中で笑みを浮かべる。
これまでの話はあくまで前置き、ここからが重要な話だ。


「その二人組はきっと正体を知っている私達を狙ってやって来るわ。
ねぇ、リンリン。お願い…私達を守って。私達が頼れるのは、強くて賢そうな貴女だけよ」


捨てられた子犬の様に、エスターはリンリンに懇願するフリをする。
あの影を使うオスガキに、マサオの言うナルトとかいうバケ狐。そしてリンリン。
此処までくれば間違いはない。この会場には化け物達がうじゃうじゃいる。
エスター自身が力を手に入れるか、誰かの庇護下に入らない限り未来はない。
優勝どころか、生き残る事すらままならない。


(折角あの暗くて冷たい湖から助かったのに…こんな辺鄙な島で終わってたまるか)


エスターの瞳の奥には、燃え滾るような野望の炎が燃えていた。
この島には子供どころか大人すら敵わない化け物がひしめいていて。
自分はそこに放り込まれた哀れな子羊であると認めても、だ。
彼女の心に絶望も諦めも存在しなかった。
この殺し合いに優勝して乃亜に願えば、忌々しい先天性の病気もきっと治り。
かねてよりの夢だった男性とのファックが実現するかもしれないのだから。
諦められるはずもなかった。


(今、この時は大人しくこのピンクデブに従って…機を待つのよ。
乃亜はこれをゲームみたいに見てた。だったら、私の様な一般人がただ殺されていくのを眺めるのは面白みに欠けるはず……)


一般人が優勝や脱出を諦めてゲームを放棄してしまう前に。
乃亜は何らかの救済措置を用意するはずだと、エスターは踏んでいた。
とは言え、それは一般人の子供全員に与えられるものでは無いだろう。
ある程度生き残った参加者、それも殺し合いに貢献した子供が恩恵に預かれるはずだ。
うまくいけば、エスター自身が強力な力を得られるかもしれない。
だからそれまでは、ピンクデブの庇護下に入り、そして密かに殺し合いに貢献する。
ピンクデブを扇動し、間接的にキルスコアを稼げば乃亜もエスターが有益な参加者であると認めざるを得ないだろう。
そうなれば、自分が“一般人への救済措置”をもらえる可能性は向上する。
思考がそこまで行きついた彼女に、リンリンに取り入る迷いはなかった。


841 : バケモンにはバケモンをぶつけるのよ ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:05:09 58/rNDBw0


「………分かった!!おれの子分になるなら守ってあげる。エスター、マサオ!!」


計画通り。
リンリンの返答は、エスターの望むものだった。
後はこの怪物を上手く盾にして、殺し合いに生き残る。
エスターは、その計画に自身の命をBETした。


「それじゃあ、よろしく───」


だが、計画を実行に移すにあたって。
どうしても、やっておかなければならない事がもう一つだけある。
エスターは、親愛の握手でも交わそうと近づくリンリンに向けて、声を張り上げた。


「近づくな!!」


びくり、と
その剣幕にリンリンが一瞬停止する。
これは非常に珍しい事だった。
人の話を基本的に聞かないリンリンが、誰かの癇癪に反応を示すのは。
そんなリンリンに向けて、エスターは自分に都合のいい“設定“を述べる。


「急に大きな声を出してごめんなさい…リンリン。でも、私達、体がとっても弱いの。
貴方位強い子に触れられたら、骨が折れて動けなくなるわ。
そしたら、きっと私達は殺されちゃうでしょうね。そうなったら……
言いにくいけど、リンリンが半分殺したようなものよ。それは嫌でしょう?」

「そ、それはそうだけど……」


わざと強い口調で捲し立てて、会話の主導権を握る。
だが、このピンクデブはどう見てもド低能だ。
今は悩む様なフリをしているが、どうせそれが続くのも一瞬だけ。
直ぐにおれが守るから問題ないよ!とかなんとか言って触れようとしてくるだろう。
歩くだけで木を踏み潰して街を粉砕する破壊神に怪物に触れられるなど冗談ではない。
最悪死ぬ。
だから、先手を打った。
リンリンから見えない様に後ろ手で隠したその支給品を使用する。
ちょきん、と。音が鳴った。


「う〜ん…それじゃあ仕方ないな…気を付けるよ」


残念そうな表情で、リンリンは止まった。
半信半疑であったが、どうやら、うまくいったらしい。
立ち上がりこそ前途多難だったものの、流れが来ているとエスターは感じた。
これで暫くはリンリンからの安全が確保されたのだ。


「…ごめんなさい。貴女の優しさだけ受け取っておくわ、リンリン。
さ、行きましょう。早く他の子達にもうずまきナルトの危険性を伝えないと」

「…うん!それならいい道具、おれ持ってる!首輪タンチキって言って言うやつ!!
それとおれその前に行きたいとこがあって、このお菓子の家ってトコ──」

「…仕方ないわね。貴方は私達の親分なんだもの、好きにしていいわ」


842 : バケモンにはバケモンをぶつけるのよ ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:05:31 58/rNDBw0

慰めると機嫌を直したリンリンは朗らかに笑って。
その笑顔を見てエスターは思うのだ。
うん。
化け物が人間っぽく笑っても悍ましいだけね、と。
それでも、今この醜いピンクのフーセン野郎は自分達の生命線。
本当ならまだうずまきナルト達がうろついているこの近辺は離れたかったけれど。
それでも少しくらい要望を聞いておかなければ土壇場で反旗を翻される恐れがある。
そうならない様にある程度要望は聞き入れて…あとはこの支給品で誘導する。
エスターはその手に握る、『思いきりハサミ』を頼もしく思った。
そして、リンリンの後ろに続いて歩く。


「………どうしたの、マサオ?早く来なさい?」


だが、その時マサオが立ち止まってついて生きていない事に気づく。
マサオは、化け物を見る目で此方を見ていた。
きっと、リンリンについていくのが怖いのだろう。
相変わらず、情けない男だ。そう思いつつも、彼もまた貴重な駒であることは事実。
未だ手放すつもりは無く、ついてくるように呼び掛ける。
だが、マサオは相変わらず歩みを止めたままで。
エスターは少し苛立ちもう一度呼びかけた。


「は や く き な さ い」


ひいぃ、と情けない声を上げて。おにぎり頭が頭を垂れてついてい来る。
そうだ。それでいい。
お前は私の道具なのだから。
満足げに鼻を鳴らして、エスターはマサオと連れ立ってリンリンのあとに続いた。



───マサオは、怖かった。
圧倒的な怪力を誇るリンリンも。
何より、そのリンリンを操ろうとしているように見えるエスターも。
リンリンが自分達に触れようとした時、エスターは明確に何かをリンリンにやった。
後ろ手に持っていたハサミで。
その事は、背後に立っていたマサオだけが知っていた。
でも、それを指摘する事はできなかった。
リンリンの見ていないところで、何をされるか分からないからだ。
歩いていくエスターとリンリンの後ろ姿を見て、マサオは考える。
この二人についていって、本当にいいのだろうか、と。
しんちゃんなら、どうするだろうか、と。


「は や く き な さ い」


そんな、紙切れより薄っぺらな理性は、エスターの視線と言葉で破り捨てられた。
逆らえない。はい、と答えるしかない。
きっと逆らったら殺されてしまうだろうから。
だからおにぎり頭の少年は、自分はひょっとしてとんでもない底なし沼に沈んでいるのではと思いつつも。
沈んでいく事を、止まられない。彼には、止めるだけの意志も力も無かった。
そして、そんな彼を奮い立たせて。
何時だって世界を救う仲間の一人にしてきた少年は。



既に、この島を去っている。永遠に。


843 : バケモンにはバケモンをぶつけるのよ ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:09:55 58/rNDBw0
【一日目/深夜/E-5】

【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:精神疲労(大)、失意の庭の影響?、ナルトを追い詰めるという確固たる意志。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰りたい。
1:赤ちゃんを殺したあの怪物は許さない、絶対に追い詰める。エスターの言う通りナルトの横に居た子も絶対に追い詰める。
2:何だよ皆おにぎりおにぎりって…!
3:桃華さん……せ、聖母だ……!出来たら結婚し(ry
4:写影さんや桃華さんには、赤ちゃんを見捨てたこと黙ってないと……。
[備考]
※デス13の暗示によってマニッシュ・ボーイの下手人であるナルトを追い詰めるという意志が発生しています。
※自分を襲った赤ん坊に与する矛盾には暗示によって気づかない様になっています。

【エスター(リーナ・クラマー)@エスター】
[状態]:健康
[装備]:スミス&ウェッソン M36@現実
[道具]:基本支給品、思いきりハサミ@ドラえもん、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る。生還優先。
1:リンリンを利用して殺し合いを勝ち残る。
2:他にも利用できそうな参加者を探す。
3:セリム(名前は知らない)とその操る影を警戒。
4:マサオにセリムの悪評をばら撒かせる。あとはその他諸々利用して捨てる。
[備考]
※湖に沈んだ直後から参戦です。
※日本語が話せることを自覚しています。

【シャーロット・リンリン(幼少期)@ONE PIECE】
[状態]健康、腹八分目、思いきりハサミの影響。
[装備]なし、
[道具]基本支給品ランダム支給品1、ニンフの羽@そらのおとしもの(現地調達)、エリスの置き手紙@無職転生、首輪探知機@オリジナル
[思考・状況]基本方針:喧嘩(殺し合い)を止める。
1:喧嘩をしてる人を見付けたら仲良くさせる。悪い奴は反省させる
2:他の人を探して仲間(ともだち)にする。エスターとマサオは親分として守ってやる。
3:ナルト本人と、ナルトと共にいた男の子は懲らしめて反省させる。
4:出来れば乃亜とも友だちになりたいなぁ。
5:この手紙を書いたエリスって娘にはお説教が必要かなぁ? いるかどうかわからないけど。
6:もしルーデウスって子にあったらちゃんと伝えておかないと、じゃないとちょっと可哀想。こっちもいるかどうかわからないけど。
[備考]
※原作86巻でマザー達が消えた直後からの参戦です。
※ソルソルの能力は何故か使えます。
※思いきりハサミの影響で、エスター達に一定の距離を取るようになっています。

【思いきりハサミ】
エスターに支給された。
はさみの音を聴いた人間の迷いを断ち切る道具。原作では自分にも他人にも使用している。
制限で持続時間は最後にハサミの音を聴いてから1時間となっている。
原作での使用例
①宿題をしようか迷っていたのび太の迷いを断ち切り、宿題をしない決心をさせてしまう。
②勉強をしようか迷っていたしずかちゃんの悩みを断ち切り、勉強する決心をさせる。
このようにその人の性格や現在の精神状況によって、良いほうにも悪いほうにも
行く可能性がある道具。
当然ながら、迷っていない条件下で迷いを断ち切る事は不可能。
ゲームに乗る意志がない参加者に使っても殺し合いに乗ったりはしない。


844 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:10:16 58/rNDBw0
投下終了です


845 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 01:26:55 58/rNDBw0
すみません、三人状態表の時刻を黎明に変更しておきます

【一日目/黎明/E-5】


846 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/12(月) 17:42:00 vfYOhKZ20
投下ありがとうございます!

>バケモンにはバケモンをぶつけるのよ
全編にわたってエスターのツッコミが光る。ピッカピカですわ。
大人を騙す事には長けていても、子供相手だと異常性で浮きがちなのがエスターですからね。
がっつり子供のリンリンにはそら苛立つでしょうし、デカい狐と聞いて話の軸がズレるリンリンに、そこじゃねぇよとキレるエスターは真面目なんですけどコミカルに見えて面白い。
『かねてよりの夢だった男性とのファックが実現するかもしれないのだから』
字面だけだと、すっごい間抜けな願いなんですけど、エスターの境遇考えると凄い可哀想なんですよね。このロワ数人くらいロリビッチ居ますけど。あくまで真っ当な恋愛を経てって事なんでしょうね。
『マサオは、化け物を見る目で此方を見ていた』
リンリンという物理的な化け物と、エスターっていう人の悪意としての化け物、両方を目の当たりにしてるからこその表現に感じられますね。
マサオ君……あとほんのちょっとでフリーレン達と合流できたはずなのに、とことん不運すぎる男。



孫悟飯、結城美柑 予約します。


847 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/12(月) 18:17:27 58/rNDBw0
感想ありがとうございます
グレーテル、美遊・エーデルフェルト
予約します


848 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/12(月) 18:18:55 wgSMkqsA0
イリヤ、シャルディア
予約します


849 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/13(火) 16:47:32 PVBOCwbo0
リーゼロッテ・ヴェルクマイスター 追加予約します


850 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/13(火) 19:30:15 hZ1I9wiI0
皆様投下乙です。
また、拙作の状態表においてヘンゼルがグレーテルになっていた間違いを、wikiにて訂正して頂き、ありがとうございました。

ドロテア、海馬モクバ、ディオ・ブランドー、キウル、藤木茂
以上、予約します。


851 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:25:47 gM2kksaM0
投下します


852 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:26:32 gM2kksaM0


海馬コーポレーションに陣取ってからはや一時間。
その内人が集まり、舞踏会(ブラッディ・パーティ―)が始まると思ったものの。
驚くほどに、誰も乗ってこなかった。
───作戦を間違えたかしら?
大きな欠伸をしながら、厄種の少女は考えた。

「ここでのんびりしていたら、兄様に差をつけられちゃうかも」

そう言って、想定とずれ始めた計画の軌道修正を考え始める。
他の子羊達は人が集まるこの場所に近づくのを敬遠したのかもしれない。
となれば、このままここで待っていても待ちぼうけを喰うだけであり。
半面、今動けば時間差で此処に来た他の子羊達と入れ違いになるかもしれなかった。
さて、どうしようかしらと掌を顎にやって考える。
数秒後、ぽんといい考えが頭に浮かんだ。
この建物は周囲の家屋などと比べても一際背が高い。
となれば、上から探せば近くに来ている参加者が分かるのではないか?

「そうと決まれば早速探しに行きましょう。煙突を探すサンタみたいに」

妙案にくすりと笑みを浮かべて。ロビーにあるエレベーターへ駆け出す。
黒のドレスをたおやかに揺らし、踊るようにエレベーターの中へ。
押すボタンは屋上。どうせ他の参加者を探すなら、一番高い所がよい。
そのまま待つ事三分。チンと音が鳴って。
高層階のため風が強く肌寒い舞台に、グレーテルは笑みを絶やさず足を踏み入れた。

「……なんだ。安心したわ」

下界を見下ろして早々、グレーテルが抱いたのは安堵だ。
屋上に出た時から、うっすらと、近くのエリアでドンと腹に響く音が聞こえた。
その方に向けて、残っていた支給品である双眼鏡を取り出し、よぉく見てみる。
すると、そこには、火の手が上がっているのが見えた。
今もなお、星の瞬きの様に爆発と爆音が木霊している。

「素敵ね。誕生日のキャンドルみたい」

グレーテルには誕生日を祝われた日なんて遠い昔の記憶だけれど。
それでも、テレビのCMなどで見た知識としてその景色は知っていた。
揺らめく爆炎は正に誕生日のろうそくのひとゆらの様で、ほうと感嘆の溜息を漏らす。
爆炎が上がった方角を注視してみると、今のグレーテルが望む獲物が見えた。
斧剣を担いだ少女と、突撃槍を備えた少女が切り結んでいるのが見えた。
それは正しくアメリカン・コミックの世界の戦いだった。
動きを見る事すら困難、瞬きの間に十メートル以上移動し。
時折爆発と共に宙を舞っている黒い影は港にある船舶だろう。
少なくとも、現状の装備であの二人に真っ向から挑むのは分が悪い。


「でも」


超常の戦徒達の戦いを目の当たりにしても、グレーテルの表情に焦燥も絶望も無い。
むしろ、面白くなってきたという顔だ。
だって、あの二人を今はまだ殺せないだろうけれど。
円環(ネバー・ダイ)を回せる相手は、他にいるのだから。
例えば、そう。
二人の少女の争いから逃げ惑うように離れる眼鏡の少年と翼の生えた少女だとか。
それを追い詰める、眼帯の少年と褐色の少女だとか。


「こうしてはいられないわ。舞踏会(ブラッド・パーティー)に乗り遅れちゃう」


まるで、花畑に花を摘みに行く様な気軽さで、少女は殺戮を決意する。
地上に降り、眼鏡の少年も天使の少女も眼帯の少年も褐色の少女も。
いい所で乱入して殺してしまおう。そう決意してエレベーターの方へ向かおうとして。
最後に周囲に他に人影は無いか確認した所、奇妙な影を見つけた。


「まぁ、ティンカーベルかしら」


853 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:27:03 gM2kksaM0



空中をみえない階段を駆け上がる様にして、此方に接近してくる一人の少女。
双眼鏡を向けて注意深く見てみるが、此方に気づく様子は無い。
何かを探して、酷く焦っているらしい。
この分だとこの海馬コーポレーションの脇を通り抜けそうだ。


「ふふっ…いけないわね。空を飛んでいるからって、周りの注意が疎かだわ」


グレーテルの脳裏に、再び名案が思い浮かぶ。
此処は高いし、風も強いから、きっと燃え移る心配はないわよね。
思いついたからにはそうしよう。そうしましょう。
迷い込んだ妖精(ティンカーベル)を七面鳥(ターキー)に。
妖精を焼いたら、どんな匂いがするのかしら!


「兄様に教えてあげなくちゃ!」


ガコン、と音を立ててディパックからあるものを取り出す。
その正体は、先ほど確認した帝具・煉獄招致ルビカンテ。
ティンカーベルの飛行する軌道の凡その目測をして。
うんしょ、うんしょと燃料ドラムを動かし、ノズルの位置を調整して待つ。
そうして準備している内に、好機はやって来た。
飛行する妖精の位置が、海馬コーポレーションの丁度斜め下の辺りにやって来る。
撃ちおろすには、絶好の位置。
距離こそ離れているものの、逆にこのビルに燃え移る心配が無くて丁度良い。
妖精が此方に気づく気配は未だない。


「だめよ。妖精さん。こんな素敵なパーティーに呼ばれて、周りが見えて無いなんて。
そんなに焦って何処へ行くのかしら?カボチャの馬車は呼んである?
貴方をあの世まで連れて行ってくださる素敵な運び屋!」


少女の不幸は、海馬コーポ―レーションの位置が港や真横のエリアと隣接していた事だ。
あと百メートルほど離れていれば、射程圏外だった。
聳え立つ海馬の塔の天辺で、厄種の少女に地の利を取られる憂き目も避けられた。
未来の道具で、親友の手がかりさえ得ていなければ。
地の利を取られていたとしても、気づけたかもしれない。
けれど、そうはならなかった。ならなかったから。このもしもはこれでお終い。
この世界は、殺すか殺されるかしかないのだから。


「───それじゃあさよなら妖精さん。私の命を増やしてね?」


彼女がそれをやることに、合理的な理由はない。
ただ、殺せそうだったから。そうしたかったから。
それだけの理由で、厄種の少女は無邪気な殺意を空征く少女へと向けて。
そして、引き金を引いた。


火炎放射砲の帝具、煉獄招致ルビカンテ。
その奥の手、岩漿錬成(マグマドライブ)
遠距離砲撃を可能とするその一撃の引き金を躊躇なく引く。
ドゥッ!と言う号砲と共に、その悪魔の火球は放たれる。
その熱を感じる距離に迫ってようやく妖精の少女が気づくものの、すでに遅い。
兎に角、焦っていたのだろう。
───悪魔の舌の様に、爆炎は妖精の少女に着弾し、その身を舐めつくした。


「まぁ……!」


そこで、驚いた声を上げるグレーテル。
少女は、ルビカンテの一撃をうけながら、ボロ炭になっていなかった。
それどころか、原形を保ったまま、港の方へと墜落していく。
これでは生死を確かめることはできない。


854 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:27:30 gM2kksaM0


「う〜ん…まぁいいかしら。それよりも、今度は此方を焼いてみましょう」


グレーテルをして死地になると思わしき港の方へ態々確認する気にはならない。
それよりも、さっき見かけた四人組に遊んでもらう方が有益と言うもの。
威力は確かめられたんだし、ルビカンテで砲撃するのもいいかもしれない。
そう思ってもう一度ルビカンテを指向し、あてずっぽうで引き金を引こうとしたが、もう一度マグマドライブが放たれることは無かった。
どうやら奥の手は本当に奥の手であるらしい。
かといって、普通に火炎放射してもここからでは届かない。つまり、直接出向くしかない。


「そうと決まれば、早く行かないとね」


向かう場所にいるのは四人だが、様子を推察するに猟犬と子羊の二対二の状況。
なら頃合いを見て乱入すれば漁夫の利を狙える見込みは十分ある。
だけれど、急がなければならない。
猟犬が子羊二匹をさっさと食べつくしてしまう前に馳せ参じる必要があった。
ごそごそとランドセルを漁って、虎の子である最後の支給品を取り出す。
紙状の回数券のようなその薬品の名を、地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)と言った。
一舐めするだけで服用者を超人へと変える、悪魔の薬物。
それを一舐めして、瞼の淵にビキビキと黒いラインを刻み。
踊るようにスキップで屋上を駆けて、グレーテルは新たな戦場へと向かった。



【一日目/黎明/E-7 海馬コーポレーション】

【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康、地獄の回数券薬効発動中。
[装備]:江雪@アカメが斬る!、スパスパの実@ONE PIECE、ダンジョン・ワーム@遊戯王デュエルモンスターズ、煉獄招致ルビカンテ@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品×2、双眼鏡@現実、地獄の回数券×3@忍者と極道、
ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵の首輪
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:兄様と合流したい
2:手に入った能力でイロイロと愉しみたい。先ずは双眼鏡で見つけた四人から。
3;殺人競走(レース)に優勝する。港で戦っていた二人は後回しね。
4:差し当たっては次の放送までに5人殺しておく。あの妖精さんは生きてるかしら?
5:殺した証拠(トロフィー)として首輪を集めておく
6:適当な子を捕まえて遊びたい
[備考]
※海兵で遊びまくったので血塗れです。
※スパスパの実を食べました。
※ルビカンテの奥の手は二時間使用できません。


855 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:28:01 gM2kksaM0



イリヤ。イリヤ。イリヤ。
頭の中に浮かぶのはその言葉だけ。
もう、一緒にいることはできないのは分かってる。
もう少し、知るのが早ければと思っても、それはもうありえない仮定でしかない。
でも、それでも会いたかった。
例え一緒にいられなくても。彼女が生身でここにいるなら。
生き残って欲しい、と。ただそれだけを伝えたかった。


「ルビー…何処か分かる!?見つけた?」


タイムテレビで見る事ができたのはおおよそいるエリアのみ。
正確な位置までは割り出せなかった。
近くまで来たら、後は目視で探すしかない。
だが、件の探している二人は見つからなかった。
もしかすると、エリアの端…境界線付近にいるのかもしれない。
そう思って、E-8と移動した場合を考えてE-7もカバーできる位置の上空から探してみる。
すると、クロたちを見つけるよりも早く。
D-8の、港の方で…爆発音が響いた。
自然、其方に視線が吸い寄せられる。
すると……そこに、彼女はいた。
煌々と煌めく炎を背にしていたからか、彼女の姿は一枚の絵画の様だった。



世界から音が消える。
呼吸が止まる。
喉から、掠れた声が、一言漏れた。


「イリ、ヤ………!!」


カレイドライナーとして強化された視力が。
戦塵の中に立つイリヤの姿を捕らえた。
間違いない。あの背丈。あの新雪のような白髪。あの紅い瞳。


「良かった……無事で………!!!」


涙が零れそうだった。
ずっと会いたかった。殺し合いに優勝しなければ会えないと思っていた。
その彼女が、生身の姿でいる。
もう眼鏡の少年も天使の少女もどうでも良かった。
イリヤがあそこにいるならば、自分もいかなければ。
クロの事も気になるけれど、まずはイリヤの元に馳せ参じなければ。
だって、彼女はきっと戦っている。
彼女の前に、突撃槍を構えた少女が立っているのも見えた。
イリヤの事だ、きっとあの敵から眼鏡の少年たちを逃がしたのだろう。
もう一緒にいる事はできないけれど。それでも、イリヤが襲われているのなら。
助けない選択肢は、私には存在しなかった。
両足に力を籠めて、周囲に目もくれず突き進もうとする。


「待ってて…イリヤ」



そう、呟いた瞬間事だった。



『───美遊さん!危ない!!!』


856 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:28:22 gM2kksaM0


───え?
突然、周囲が明るくなって。
横の方向を振り向いたら、真っ赤な轟火球が、私に迫っていた。
その時私は、私の失策を悟った。
イリヤ達に気を取られ過ぎて、周囲への警戒が疎かになりすぎた。
咄嗟に物理保護を全開にするが。できたことはそれだけで。
凄まじい熱と衝撃が、私の身体を包み、吹き飛ばした。







───マスター達は…大丈夫でしょうか。
契約の指輪を十秒ごとに確認して。
祈るような気持ちで、雪華綺晶は港近くにある民家に身を潜めていた。
苦しい戦闘を続けるマスターの支援のため、こうしてここに残って。
契約の指輪から契約者の精神が狂気に沈むことを阻止しているのだ。
マスターは強い。肉体も、魂も。
だがそれでも、不安な気持ちは消えなかった。
ぎゅう、と純白の薔薇を思わせる衣服を握り締めて。


「大丈夫です……私は、マスターを信じています」


敬愛する赤薔薇の姉と同じ瞳をしたあの方なら。
きっと無事に戻って来る。それまで待つことが使命。
そう雪華綺晶が自分に言い聞かせていた時だった。


「………?」


空から此方に向けて、何かが降って来る。
流れ星というには色が奇妙だった。桃色の流れ星など聞いた事も無い。
よくよく注目してみると、それは流星などではなく、人だった。
ぐんぐんと此方に近づき、そして落下してきている。


「い、いけない!」


慌てて民家の外に飛び出して。
このタイミングで媒介(ミーディアム)の力を吸い取らない様、最小限に。
茨を伸ばして、白い薔薇の花弁を集めて受け止める。
数十メートルは離れていたが、何とか茨の先端部分が引っかかかり、キャッチに成功。
白い薔薇の花弁で受け止めたのは、少女の様だった。
それも、全身の至る所に火傷を負い、意識が無い様子の。
呼吸を確認してみる。命に別状はないが、軽傷という訳でもなかった。


『っく!こうなっては仕方ありません!美遊さんはこのルビーちゃんが守ります!!
さぁどっからでもかかってきなさーーーーい!!!』


そんな少女を守る様に、少女の前方に何かが飛び出してくる。
雪華綺晶にはその飛び出してきたモノに見覚えがあった。
だってそれは、今のマスターが握っていたソレに酷似していたから。


「…もしかして、ルビー様でしょうか……?」

『へ?な、何故に貴方がルビーちゃんの事を?あ!も、もしかして──!』


顔が無いので表情は伺えないものの。
リアクションで合点が行った様子を見せるルビーに、雪華綺晶はこくりと頷いた。
そして胸に手を当てて、名乗りを上げる。


「はい…私は、マスターと…イリヤさんと契約した。雪華綺晶と言います。
貴方の妹も…サファイア様の事も、知っています」


857 : 注意一秒死は一瞬 ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:28:42 gM2kksaM0



【一日目/黎明/D-8 港外】

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(中)、全身に火傷(治癒中)、気絶、深い悲しみ、覚悟。人を殺めた動揺、イリヤが人形から元に戻った状態でいるかも知れないという可能性に対する動揺
[装備]:カレイドステッキ・ルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、タイムテレビ@ドラえもん、クラスカード(不明)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:イリヤを元に戻すため、殺し合いに優勝する。
0:……今更、引き返せない。
1:ルビーと力を合わせて殺し合いに勝ち残る。
2:イリヤを守る。イリヤに会いに行く。
3:クロとも確認したいことがある、もしかしたら協力してくれる?
4:眼帯の少年は何者? クロは彼と手を組んでいる?
5:…………イリヤ、私は、もう。
[備考]
※ドライ!!にて人形にされたイリヤを目撃した直後からの参戦です。
※カレイドステッキ・ルビーはイリヤが人形にされたことを知りません。

【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
3:この方々は、マスターのご友人の…?
3:彼(乃亜)は、皆人と同じ……?
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
※乃亜の正体が鳥海皆人のように、誰かに産み落とされた幻像であるかもしれないと予想しています。
※この会場は乃亜の精神世界であると考察しています。
のび太、ニンフ、イリヤとの情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】
の世界観について大まかな情報を共有しました


858 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/14(水) 00:29:22 gM2kksaM0
投下終了です


859 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/14(水) 23:56:41 lqA3E.760
投下ありがとうございます

>注意一秒死は一瞬
待ち伏せしたは良いけど誰も来てくれないグレーテル、うんしょ、うんしょって言って帝具構えたり、場面だけ見るとめっちゃ可愛いのに、やってること極悪すぎるよ。
しかもヤクまで支給されちゃって、悪魔の実と地獄の回数券の二刀流は中々強力ですよ。
そんな最中飛んでたら撃墜された美遊ちゃん、もうとことんツイてないですねこの娘も。
きらきーに出会えたは良いものの、マーダーな訳ですしきらきーもそれを許せるかって話ですからね……。
プリヤ勢、やけにハードっすねぇ……


860 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/15(木) 00:06:09 EsjnyUM60
感想ありがとうございます
フリーレン、美山写影、櫻井桃華、ハーマイオニー・グレンジャー
予約します


861 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:10:20 HAqDVsSI0
投下します


862 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:11:01 HAqDVsSI0
「ご…悟飯君、あの…どこに行く? 私はあまり知った施設がなくて……」

「あ、そうか…え、と」

北条沙都子が去ってから一時間程置いて、そろそろ危険はあるが自分達も動かねばならないと、悟飯も美柑も焦りだした。
少なくとも、美柑は乃亜の言う参加者の選定条件に見合う人物が数人いる。金色の闇を始め、セリーヌや学校のクラスメイトだって連れて来られているかもしれない。スタイルを考えるとナナも危ない。
あまり、じっとしている訳にはいかない。そこまでは思い、だが具体的にどう行動すべきか、明確に定められずにいた。
悟飯も同じく、無理やり定義すれば、セルかピッコロが年齢的に呼ばれなくはないが、やはり無理があるし、流石に赤ん坊のトランクスは居ないだろうと考えており、そういった意味では多少の余裕はあった。
だが、それ以上にシュライバーが、今もどこかで殺戮を続けている事に気が気ではいられない。

(美柑さんさえ、居なければ…今すぐにでも奴を……!! シュライバー、奴は何処に……奴と決着を)

そこまで考えて、ふと我に返る。まるで今、自分はシュライバーとの戦いを望んでいるようだった。

(だ…駄目じゃないか……ぼ…僕はなんてことを……)

戦いは、そこまで好きではない。本音を言えばシュライバーだって殺したい訳じゃない。あんな奴でも、殺さないで済むならその方が良い。
それなのに、今、悟飯はシュライバーとの再会を心の何処かで望んでいた。
きっと、思いっきり戦っていれば何も気にしないで済む。この横に居る少女の慄きを肌で感じなくて済む。

(お…思いっきり戦ってしまったから……ユーイン君まで、ぼ…僕が死なせてしまったんじゃないか……! そ…そんなこと、考えてはいけないんだ)

拳を強く握りしめて、悟飯は心の中で己を叱責する。

「……お父さんが居るとしたら、きっと山ですよ。山で修行してると思うので、そこに向かおうかと」

「あの、さ……山に参加者が集まると思う? そのお父さんも、流石にこんな時に修行するかな」

「そ…それは……」

内面の戦闘欲求を振り払うように、悟飯なりに全力で頭を振り絞って考えた目的地だったが、美柑からはあっさり否定されてしまった。

「ごめん……なんか、私…今の嫌な感じだったね……」

「そ…そんなことは……」

「……」
「……」

美柑も代案を出せる訳でもなく、また二人は何も口にできる言葉が思い浮かばず黙ってしまった。

「し…支給品、支給品を見ましょうか!」

「そうだね……」

苦し紛れに口にしたのは、お互いの所有物の確認だった。美柑もこれ以上の沈黙に耐え切れず、その提案に同意した。


863 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:11:40 HAqDVsSI0




「―――な、なんだこいつ!!?」



悟飯がランドセルを開け、中を検めてると、黄色い奇妙な生命体がいびきをかいて寝っ転がっていた。
羽が生えて、丸い耳が二個頭のてっぺんにくっ付いていて、点みたいな目を閉じてぐーすか寝ている。
困惑しながら悟飯は、その生き物の臀部から生えた尻尾を指先で摘まみ上げる。


「か…可愛いかも……」


(お…女の子はこういうのが好きなのか……?)


取り合えず、この奇妙な生き物に、本当にとても手加減して優しくデコピンをする。
うめき声をあげながら、それは尻尾を持ち上げられた宙づり体制のまま目を見開いた。


「な、なんや!!? 痛いわ! どこのどいつや!?」


「関西弁なんだ……」


美柑は興味津々な様子で、呟いた。



―――


「こ、殺し合いやて……!!? ウ…ウソやろ。こ…こんなことが。こ…こんなことが許されてええんか。
 警察や、警察を呼び! 通報するんや!!」

その生き物はケルベロスと名乗った。

「僕達、訳の分からない島まで拉致されてしまって、外部とも連絡も取れないと思いますよ。取れたって警察が何とか出来るとは……。
 多分、ここの参加者は別の平行世界から連れて来られてると思うんです。色々話したけど、なんだか社会常識が噛み合わなくて」

「平行世界? ……ああ、そんなら無理やな……」

(こ…この人、平行世界に明るいのか?)

クロウカードならぬ、今はさくらカードを見張る封印の獣だの、意味不明な事を言っていたが経緯を聞くと支給品として殺し合いに巻き込まれたらしい。

「ケロちゃんは、ここに来るまでの記憶はないの?」
「その呼び方はカエルみたいやから……まあええわ。うーん、さくらの部屋で徹夜でゲームしとったさかい、ずっとその……眠っててなあ……」

ケルベロスの話では、彼が居候するさくらという少女の部屋で、最新ゲームを徹夜で遊び倒していたところまでは記憶があったが、気付いたらこの島へと連れ去られたようだ。
悟飯がランドセルを開けるまで殺し合いはおろか、シュライバーと悟飯が戦っていた事すらも知らなかった辺り、かなり本気の爆睡であることが伺える。

「話纏めると…乃亜っちゅうクソガキが殺し合いを開いてもうて、それが色んな平行世界を巻き込んだ大規模なもんにまで発展しとる訳か……」

仮にも稀代の魔術師クロウ・リードの創り出した使い魔、封印の獣ケルベロスだ。長年に渡り培った豊富な知識は、間違いなく支給品として有用な部類に入る。
その知識の中には、当然平行世界の概念も存在していた。

「悟飯の言う通り、きっと、平行世界からぎょうさん参加者を集めたんやと思うで…なんの目的で、蟲毒か……?」

ベターなとこだと、蟲毒などの呪術が浮かぶが、そういった魔力の気配は感じない。
だが、悟飯にも気を感知する能力があるらしいが、制限が掛けられているという。支給品のケルベロスにも同じ処置をされている可能性も高い為、断言はしきれないだろう。

「……ケルベロスさん、考えていても始まりません。先ずは何処かに向かって情報を集めませんか?」

「確かになぁ」

「ケロちゃん、私思ったんだけど…そもそも悟飯君のお父さんも本当に居るのかなって、だって…考えたら乃亜は子供しか呼んでないって言うのに……それにセルって人との戦いで死んじゃったっていうんだよ?」

「ん? それはわい初耳やでー」

「ケルベロスさん、もしかしたらお父さんはドラゴンボールで、こっそり生き返ってるのかもしれません。理由は分かりませんけど、容姿もその時に子供まで若返らせた可能性があると思うんです」

「せ、せやな……」

明らかに異常だ。直接話せばいい内容を、会話の経由地点にされている。
知人がいるとかどうとか、ケルベロスを確認する前に済ませておくべきであろう事を、今更になってようやく話し合っているとは。


864 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:12:00 HAqDVsSI0

(こいつら、もしかして二人で話せないんか? な…なんでや……さくらと小僧みたいなんちゃうやろし……美柑が大分怯えてるように見えるんやけど)

気まずい。
すっごい、滅茶苦茶、とっっっっっっっっっても、気まずい。圧倒的陽気さを誇る、ケルベロスを以てしても打ち消せない陰の気。
ちょっと話を聞いてみれば、殺し合いに乗った殺人者に襲撃を受けたらしくそれが原因のようだが、それにしても会話のやりとりすらぎこちないのは、この先が思いやられる。

「……ホグワーツも名前だけ見たら魔法を学べる学校みたいだから、ケロちゃんの知り合いのさくらさんや小狼さんも居るかも。ケロちゃんはどう思う?」

「それは、まあ……そうかもしれへんなぁ」

「海馬コーポレーション…ここは乃亜の苗字と同じですし、何か手掛かりがあるかも。
 ケルベロスさん、どうでしょう?」

(わ、わいが…行先決めろって事なんか……?)

もしかして、とんでもないとこに支給されたんじゃないか、たまらずケルベロスは溜息を吐いた。




―――


「……」
「……」

(なんや、これ……なんやねんこれ……)


ケルベロスは一先ず、海馬コーポレーションに向かう事に決めた。理由は単純で、自分達が居る位置が丁度島の真ん中にあったこと、それでいて微妙に海馬コーポレーションの方が近くに設置されていたから。
まずは海馬コーポレーションを調べて、それから島の中央を横断する形でホグワーツでも行けば良くないか、そう提案し二人は納得してくれた。

「…………ごはんとミカン、なんや二人とも美味しそうな名前やなぁ!」

道中、二人は沈黙、別に隙あらば話せとは言わないが限度があるやろとケルベロスは限界に達した。
二人とも食べ物を連想する名前であることに着目し、ケルベロスは起死回生の一手を放つ。

「……」

「……」

「あはっ、あははは……はは……」

何か突っ込めや、もう何でもええから。
そう悲痛な思いを叫びたかったが、今の二人には届かぬ思いだった。

「み…美柑さん」

「な、なに……? どうし…たの」

「さっき、お父さんが本当に居るかどうかって言ってましたよね」

乾いた笑いを浮かべるケルベロスを無視し、悟飯が意を決したように口を開いた。

「お父さんが死んだのは、僕のせいなんです」

怖がらせるのは分かっていたが、それでもちゃんと伝えておかなければいけないと、悟飯はセルゲームで孫悟空が命を落とすまでの経緯を詳細に話した。
16号の犠牲で悟飯の潜在能力が覚醒し、セルという最強の人造人間と地球の命運を掛けた戦いに臨み、相手を甚振り始めてしまったこと。
それは仲間達を痛めつけられたことと、16号を無惨にも殺害したことによる怒りが爆発し、制裁を加えようとした幼い少年の幼稚な正義感と傲慢だった。
セルは逆上し、最後は地球諸共自爆し、全ての生命を道連れにしようとしたのを、悟空が瞬間移動を使い、別の空間で爆破させ地球と悟飯を救った。そして、代償に悟空は命を落とすこととなる。


865 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:13:23 HAqDVsSI0

「―――ぼ…僕は……頭に血が上ると、いつもこうなってしまって……ユーイン君達を死なせたのも、僕のせいです。
 シュライバーももっと早くに止めをさせていれば、こ…こんなことには」

「悟飯君……」

「た…多分、お父さんも、そんな僕に嫌気がさしてるのかもしれません……。ぼ…僕なんか顔も見たくなかったのかも……だから、ドラゴンボールで生き返った後、子供にまで若返ったのかもしれないんです。
 だけど、本当に頼りになる人で、と…とても……強い人なんですよ。き…きっと、こんな殺し合いなんて何とかしてくれるくらいに……。
 だ…だから……美柑さんも、安心してください……。お父さんの元まで、僕が美柑さんを守ってお連れしますから……その後は、お父さんなら僕なんかよりも――――」

その先に紡がれるであろう言葉を予想して、美柑もそれは言わせてはいけないと察して口を開けて……。

「あの蟲ガキにさっきの連中といい、本当に子供しかいないのね」

二人の会話は、新たな第三者に中断させられた。

黒いドレスを着た銀髪の少女。
最初に反応を見せたのは、他の誰でもないケルベロスだった。

「あの女の魔力……凄腕の魔術師なんてもんやない……あんた、もう人間やめとるやろ。何百年生きとるんや?」

「そんな間抜けな面の割に、怜悧ね。そうか、力を抑えた仮の姿といったところか……大層、高名な魔術師から創られた使い魔とお見受けするわ」

「美柑さん……下がって」

ケルベロスと少女のやり取りの間に、悟飯は身構え、後ろの美柑を庇うように一歩前に出る。
シュライバーから感じた禍々しさとはまた別の、嫌悪すべき邪悪な気を悟飯も感じ取っていた。系統で言うならば、少しルサルカの気に近い。

「あの、女魔術師と天使の女、それに憎たらしい眼鏡の小僧よりは楽しめそうね」

魔女、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの掌が翳され、球状の黒き炎が放たれる。

「魔閃光!!」

炎に瞬時に反応し悟飯は両手を額に重ねた。金色の光が集約し、一気に放出する。
光と炎が衝突、轟音と閃光を巻き上げ相殺した。
後ろに居た美柑が、あまりの眩さに目を閉じたその時、風を切る音共に人の気配を真横に感じる。

「……え」

瞬き一つの間に肉薄し、悟飯の背後にまで回り込んだリーゼロッテは、その指先から伸びた鋭利な魔爪を美柑の愛らしい顔面へと振るう。

「なに?」

だが、その腕は爪が美柑へと到達する寸前で、魔女の華奢な腕は反比例した鍛え抜かれた短い腕に掴まれる。
リーゼロッテが美柑の死を確信した時、また悟飯も既にリーゼロッテの死角へと回っていた。
その膂力たるや、魔女として人の皮膚を割き、肉を切り裂き、臓腑を素手で抉るのを容易とする魔女のそれを容易く抑え込むほど。
その拘束を振り払おうと、魔性の域にまである腕力に物を言わせて振るう筈が、まるで微動だにしないとは。


866 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:13:57 HAqDVsSI0

「この身に堕ちてから、純粋な力負けをするだなんて、そうはなかったわ」

悟飯が掴んだリーゼロッテの腕から、炎が燃え立つ。気を纏った悟飯の肉体すら焼きかねない高温度の炎、それはただの物理的な燃焼の域を超えていた。
炎が燃え移った片腕に気合を込め炎を吹き飛ばし消化する。そして、近くの美柑を抱き抱え跳躍し、リーゼロッテから距離を開けた。

「大丈夫なんか悟飯!?」
「ええ……美柑さんを頼みます」

後れて飛び寄るケルベロスに一瞥し、それから一足に悟飯はリーゼロッテへと踏み込む。
疾風もかくや、音すら置き去りにする爆発的な速度にリーゼロッテも目を見開き驚嘆した。

「―――!?」

更にリーゼロッテの視界が一つの掌に覆われた時、その顔面に光の波が迸る。
口から上の端麗な眼球、整った鼻立ちは一瞬で潰え、粉々の肉片へと姿を変えてしまった。

「……制限か」

シュライバーの時もあった違和感を、悟飯は改めて感じていた。
顔面そのものを完全に吹き飛ばす気だったが、破壊の規模は口より下の部位を残した程度。
今しがた殺害した魔女の骸、頭部を失くし、力なく背中から倒れていくのを見つめ―――そして映像の逆再生と思うような奇抜な動きで、頭部を失くした体がゆらりと起き上がる。

「くっ……!」

黒い一閃が悟飯の視界の中に描かれ、胸元の服を切り割いた。薄く赤い筋が胸板に刻まれ、数滴の血が滴る。
もし、僅かに反応が遅れていれば、胸を抉られ心臓を引き裂かれていたかもしれない。
悟飯は改めてリーゼロッテを睨みつける。この少女もシュライバーと同様、油断のならない危険な相手だ。

「フフ……殺し損ねたわね」

リーゼロッテは自分の指先に付着した悟飯の血を舐めながら、可笑しそうに笑う。

「今の制限されている私なら、首から消し飛ばせば殺せたかもしれないわよ?」

その笑みには、心底残念そうに、相手に対し期待外れであると嘲りが入れ混じっていた。
乃亜の言うハンデと、首輪を外される危険を考慮すれば、首を含めた攻撃であればリーゼロッテが死ぬ可能性は高い。
わざわざ、弱点を口にする大胆さに不気味さを悟飯は覚えた。だが、理屈としては矛盾はない。
狙ってみる価値はあるだろう。

「はあっ!!」

咆哮と共に、悟飯の足元に発生した圧力により亀裂が走り、クレーターを刻み込んだ。
風もなく悟飯の髪が揺らめき、白いオーラを纏うと爆発的な轟音と共にその姿が消える。次の瞬間、その拳がリーゼロッテの頬へと叩き込まれていた。
あまりの威力に人体の耐久を超え、不気味な笑みを浮かべたまま首が捻じれる。だがそれより下の四肢は未だ健在、その両腕を広げ悟飯を掴む。
眉間に皺を寄せながら、逆に悟飯はリーゼロッテの腕を掴み返し、目一杯力の限り肩ごと引き抜いた。


867 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:14:16 HAqDVsSI0

「やっぱり、不死身なのか、こいつ……!?」

栓を開けたように血が噴き出し、両腕を?がれた西洋の少女の姿は猟奇的な美しさをも醸し出す。さらに冒涜的なのは、人であれば生を留めぬ歪な変形を強要されながら、肉体は既に捻じれた首の修復を自動で行っていた事だ。
奪われた腕の代わりに首は元の位置へと再生し、己の血でまみれながら、頬まで裂けそうなまでの笑みで魔女は悟飯に微笑む。
更に血は、液状から硬質化し刃へと変質し、宙を舞い悟飯へと降り注ぐ。

「こんなもの」

手を翳し、気功波で全ての刃を撃ち抜き蒸発させる。
気の波が放出を終え、視界が開けた時、魔女は片腕の再生を終え黒い爪をその喉元へ付き立てんと肉薄していた。
避けるまでもない。魔女の魔手が届くより先に悟飯がリーゼロッテの懐へと迫り、その右拳を首元へと振るう。
リーゼロッテの自己申告を信じる訳ではないが、乃亜が殺し合いを成立させる為に首輪という枷を選んだ以上、それを外す事が可能となる首元への再生は阻害されるはずだ。
この一撃で、この禍々しい災厄の魔女を終わらせ、一人でも多くの犠牲者を減らす。そのような魂胆で放たれた拳から伝わるのは、肉を抉る感触ではなく―――。

「く…口で……」

美柑は信じられないものを見たショックで、声を震わせ思わず口を手で抑え悲鳴を殺した。

「こ、の……!!」

リーゼロッテは腰を屈め、口を大きく開けて悟飯の拳を歯で受け止めたのだ。
上下の歯は圧し折れ、砕け散り、削れ、その口は拳の大きさまで引き千切れ、頬は破れ、顎は外れ人間の開口する可動域を大きく上回る程こじ開けられている。
首の骨も乾いた音と共に罅割れ、だが悟飯の拳を止め、無惨なありさまになった顎の力で、固定してみせていた。
鼻から下は、血だらけのむき出しの骨と肉が露わになるなか、その双眸は悪戯に成功したような、あどけない無邪気さを秘めていた。
そして、再生を終えたもう片方の手と共に、地から這い出た悪霊のように手を伸ばす。

「うおおおおおォォォォォ!!!」

腕に気を集め、悟飯は腕力を底上げし全体重を乗せ、リーゼロッテの顎を殴り千切る。
めきめきと、骨が割れる音と皮と肉が捩れる水っぽい音が響く。下顎を抉られ、リーゼロッテは上顎のボロボロになった赤黒い口内を晒した。
痛みを感じないよう、痛覚が遮断されているのか。だからこそ、あんな苦痛を伴う戦い方を好んで行えるのか。
つまるところ、こちらの反応を楽しんでいるのだろう。己の体の異常性を見せ、それに畏怖をさせることを面白がっている。

「……もういい加減、本気を出したらどうだ」

まるでそれを見越したように、心底つまらなそうに悟飯は言った。

「そうね……まるで驚いてくれないんだもの。からかい甲斐がないわ」

再生を終えた口で、リーゼロッテは言葉を紡ぐ。
どんな猛者も不死の魔女には、相応に反応してくれたものだったが、悟飯のそれは慣れたものだった。
かつて戦った相手の中で、不死身の敵も居たのだろうか。
もし居たのなら、どう殺したのか問い詰めたいものだが、それに答えてくれる雰囲気でもない。
それに、このまま戯れを続けるのも飽いた。

「とても強くて、度胸もあって、勇敢な貴方に敬意を表して―――甘美な絶望に沈めて、殺してあげる」

幻燈結界(ファンタズマゴリア)を試すには丁度いい。
両手を翳し、魔力を込める。
やはり、普段以上に魔術の行使に手間が掛かる。特に幻燈結界には膨大な魔力と、戦闘時には長すぎる溜めが要る。
こうしてわざわざ時間を掛けねばならない為、多用は現実的ではなく、魔力の制限もあり連発も不可能、魔術の行使後に長時間の維持も無理だろう。
だが、悟飯は手を出す様子もなく、ただそれを見つめていた。
余裕のつもりか。この手の命知らずは、何人も見てきた。この少年も、卓越した強さから来る驕りに陥っているのだろう。
実験の鼠には丁度いい。


868 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:15:24 HAqDVsSI0

「か……め……」

対する悟飯は動じない。仁王立ちのまま、必殺の奥義の名を淡々と紡ぐ。
奴が不死身だとしても、再生が追い付かない程の圧倒的なエネルギーを叩き付けてやれば、殺せるはずだ。
セルのように体にコアがあるのなら、全身を破壊し尽くしてやるのも非常に効果的でもある。
大技勝負に持ち込んでくれたのは、悟飯としても望むところだった。

「は……め…」

それにだ。目の前の敵を前にして、大技を打ち合う緊迫感。
少しだけ、心が躍っていた。
この瞬間だけは、少女を守る為に戦うという建前がある。彼女から向けられる恐怖を、戦いで忘れることが出来る。

「なに、ぼさっとしてんねん! はよ逃げるで悟飯!!」

二者の激突に割り込むように、ケルベロスが声を荒げながら飛んできて悟飯を叩いた。

「な…なんですか……?」

「アホンダラ!! あれは黒魔術とかのそっちの系統のアカン魔術や! 分かりやすく言うたら呪いみたいなもんや、ひたすら災いやら不幸やらまき散らす傍迷惑で害悪なもんなんやで!!
 あれの効果が何かまでは知らんが、あんなもん触れんのが一番や!!」

長年魔術に触れてきたケルベロスには、例えそれが平行世界の魔術であっても、リーゼロッテの放つ幻燈結界の悪辣さと危険さを予見できていた。
クロウリードとは違い、あの少女は他社に災いを振り撒くために、誰かを傷付ける為に想像もできない程の膨大な時間を費やし、魔術を修めている。
まず、あんなものは関わるより先に逃げるが勝ちだ。

「……そんな呪いごと、あいつを消し飛ばしてみせますよ。あんな殺し合いに乗る奴がいるから、ユーイン君もスネ夫君も死んだんです……。
 こんな奴は、ここで……奴の必殺技を破ってプライドを粉々にへし折ってから、殺してやる……!!」

数時間前に失くした幼い二人の命、殺し合いを開いた乃亜もだが、やはり許せないのはあんな口車に平気で乗り、人をゴミのように殺す殺人者達だった。
シュライバーに対し、思い返すだけで、爆発しそうな憎しみが沸く。今は目の前の魔女に対してもだ。
そんな奴等には、ありったけの力を解放し徹底的に痛めつけてやらなくてはいけない。

「ドアホウ!! そこまでして喧嘩に勝ちたいんか! 美柑守るのが目的とちゃうんか!! 手段と目的が入れ替わっとるやんけ!」

その小さな腕を全身で動かし、ほぼ突撃に近い体制でケルベロスは悟飯の頬にビンタを食らわした。

「悟飯が良くても、美柑が巻き込まれて酷い目合うゆうてんのや!!」

「―――ッ!?」

特に痛みはない。ただくすぐられたようなこそばゆさを感じ、悟飯は僅かに硬直した。

「……………………くっ」

「ぐえ!」

我に返ったように、ケルベロスを掴みランドセルに放り込む。それから後ろで怯えて震えていた美柑の元まで駆け寄り、承諾も得ないまま彼女を担ぎ上げる。


869 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:15:55 HAqDVsSI0




「馬鹿ね、もう遅いわ―――幻燈結界(ファンタズマゴリア)」

「スピードには自信があるんだ!!」



幻燈結界が完成するその間際、全身の気を爆発的に高め悟飯は美柑を連れ、この場から一気に離脱した。
悟飯が空中に飛び立ち、舞空術を使用する。制限により、ほんの僅かな時間のみの限定的な行使しか許されないが、スタートダッシュにより加速には十分活用できる。


「ちっ……なんて速さ…それに煩わしい制限ね」


幻燈結界の効果範囲が本来の距離より遥かに縮小されている。
その為、ほんの数㎝、僅かに幻燈結界の範囲外にまで離れた事で、悟飯達に幻覚を見せる事は叶わなかった。
既に悟飯達の姿も見えない。本人の言う通り、速さも大したものだ。
あれなら、海を渡るのに乗り物も必要ないわねと、リーゼロッテは苦笑を漏らした。

「効果範囲を見極められただけでも、良しとしましょうか」

特段、急ぐ必要もない。むしろ殺し合いはここからだ。ここから、大勢の子供達が精神を疲弊する。
その方が、幻燈結界も効き目は高い。
一度発動すれば、相手の心を読み、ある時は悪夢を見せ、ある時は理想郷すら幻の中で創り上げる最強の魔術の一つ。
精神を摩耗した参加者を相手に使用すれば、その心を弄び、凌辱し、甚振り、残忍に殺すなど容易い。

だが、行使にはそれだけの重い縛りが課せられていた。

「……あの炎」

適当に夜空を眺めてた時、海馬コーポレーションの方角から炎が迸るのが、小さく死人で来た。
こんな真夜中で、街灯もつかぬ暗闇だ。普段ならば誰も気づかないであろう炎は、今は暗闇の中でやけに目立って見える。

「眼鏡の小僧が居る方向もあの辺だったかしらね」

思い返せば、野比のび太達と一戦交えたエリアと海馬コーポレーションはそれなりに近い。
もしかしたら、のび太達がまたもや誰かと、交戦しているのかもしれない。
万が一、あの少年が生き延びたのなら、それでも精神に大きな傷は負っているに違いない。
その傷を抉るように、幻燈結界の実験がてら、遊んでやってもいいだろう。

「フフ…生きていられたらの話だけど」




【一日目/黎明/H-6】


【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大、再生中)、疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
2:野比のび太も見つけ次第殺す。
[備考]
※参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
※不死性及び、能力に制限が掛かっています。
※幻燈結界の制限について。
 発動までに多量の魔力消費と長時間の溜めが必要、更に効果範囲も縮小されています(本人確認済み)。実質、連発不可。
 発動後、一定時間の経過で強制解除されます(本人未確認)。


870 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:17:50 HAqDVsSI0








「う、ぐ……お、え……げほっ……!」

リーゼロッテから逃げ延びた後、悟飯が周りの安全を確認し美柑を降ろし、そして緊張の糸が切れた瞬間に激しい吐き気に襲われ嘔吐した。
数十分前に飲んだレモンティーと胃液と内容物が入れ混じった液体が吐き出され、その不快な匂いが鼻腔を刺激する。美柑の艶めかしい唇を吐瀉物と唾液が汚していく。
その嘔吐はリーゼロッテに対する生物的な嫌悪感からだった。自らの肉体の損壊を笑みすら浮かべ、楽しんで見せ付けてくるあどけない少女のグロテスク光景に、美柑は嫌悪感を示してしまった。
あの生々しい血飛沫と、肉を突き破って飛び出した白い骨、赤黒く飛び散る血肉の数々。思い起こすだけで、気持ち悪くなってくる。

「しっかりせえ、美柑……」

苦しそうな美柑の背中をケルベロスが小さな手でさする。

「あ…あの…美柑さん……」

狼狽える悟飯に答える余裕もなく、美柑吐き気に悶え返事が出来ない。

(そっか……わたし、リトでもない男の子に…おしっこ漏らしちゃったところも…ゲロ吐くところも見られちゃったんだ……最悪じゃん)

情けなくて、汚くて、臭くて、そんな人に見られてはいけないものを、もう二回も見られてしまった。
そう意識すると、瞳に涙が溢れ視界が歪んで見えてくる。
こんなこと、死んでしまったスネ夫やユーインに比べれば全然マシな方で、それなのに自分勝手に不幸だとか思ってしまう自分自身に嫌悪し、悲しくなって。

「ぅ、ぁ…う、ぅ……」

口からは吐瀉物の代わりに嗚咽が漏れ、頬を涙が伝う。
もう、何かもが嫌だった。
凄く気を遣ってくれている悟飯に、ぎこちない対応しか出来なくて、人が死んでるのに、彼に恥ずかしいところを見られたとか身勝手な事ばかり考える自分も。
平気で人が死んでいく、今の惨状も。
それを嘲笑いながら、楽しんでいる殺戮者たちも。


(わたし、もう分かんないよ……!)


そして、そんな自分をずっと守ってくれる悟飯も。
とても、優しくて礼儀正しくて良い子なのに。戦うと凄く怖い。
さっきも、急に殺してやるなんて言い出して、怒りを露わにしながら、少し戦うのが凄く楽しそうに見えてしまった。
それはきっと気のせいだ。ただ、恐怖の中で美柑の中でバイアスが掛ったから、そう見えてしまっただけで、本当は必死で戦ってくれていたかもしれないのに。

―――た…多分、お父さんも、そんな僕に嫌気がさしてるのかもしれません……。ぼ…僕なんか顔も見たくなかったのかも……

あの時の懺悔の告白には、重すぎる後悔が感じられて嘘ではないと美柑には思えた。

―――こんな奴は、ここで……奴の必殺技を破ってプライドを粉々にへし折ってから、殺してやる……!!

でも、あの怒りに満ちた言葉も嘘じゃない。

(どっちが……本当の悟飯くんなの……分からなくて、怖いよ……)

あんなに優しく思えた男の子から、どうしてあんな憎悪に塗れた言葉が漏れるのか。
本当に同一人物なのか、ありえないのに美柑は疑ってしまう。


(……もう、無理……助けて、助けてよ……リト…怖いの、お兄ちゃん……)








―――


871 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:18:29 HAqDVsSI0


「あれは、しゃーないわ。わいからしても、あの女にほんまにビビり倒してもうたし、美柑がああなるのは仕方あらへん。
 わいらは、ここで落ち着くの待ったろ。それも優しさや。まだ、悟飯には分からんかもしれんけどな、女の子は繊細なんや。男やし、喧嘩に夢中になるのは分かるが、もうちょい気を遣いや。
 わいなんて、しょっちゅう、さくらに気を遣ってるさかい」

「は…はあ……」

「ええか? あと、魔術師との戦いは何も腕っぷしだけやあらへん。手数が腐る程あるジャンケンみたいなもんなんや、ヤバい時はヤバいと見極めな、何が起こるか分からへんで。
 さっきの女みたいな奴の時は、無理して戦っちゃアカン。分かっとるか?」

ケルベロスの長い小言を聞きながら、悟飯は美柑の怖がり方や怯え方に動揺を隠せなかった。
今回は誰も死ななかった。だから、良かったとは言わないが、そこまで怖がらなくても……。ほんの少しだけ、悟飯はそんな風に思えてしまった。
今まで、悟飯が見てきた女性たちは、力が弱くて怖くても、例えばブルマは強い口調で言い返したり、母親のチチは時々実力行使に出るし、額にキスしてくれたクリリンの元カノのマロンちゃんも自由奔放過ぎた。18号も性格キツそうだし。
とにかく、悟飯の周りには気丈な女しかおらず、悟飯はそれを基準に考えてしまっていた。だからやはり、気遣おうにも美柑に上手く寄り添えない。

(どうしたら、いいんだ……僕の周りに居た女の人、みんな気が強すぎて参考にならないぞ……)

本当に分からない。美柑のような女の子をどう守ればいいのか、地球を守るよりも難しい。
もう、あまり小難しい事を考えたくないくらだい。ずっと戦っていた方が気が楽かもしれない。

また誰か、襲ってこないかな。

そんなことを考えてしまい、悟飯は自分自身に疑問を持つ。
自覚する程に、戦いへの抵抗が薄くなっている。

(ど…どうしたんだ一体……僕は……)

北条沙都子は、特に何の懸念もせず、それまでの雛見沢のようにいつも通り、悟飯にH173を盛った。

だがもしこれが、研究者である鷹野三四ならばこう推測しないだろうか。

雛見沢症候群の感染後のプロセスが、地球人とサイヤ人とで差異があるのでは、と。

人間の視点ではただの食糧でしかない玉ねぎなどは、犬猫からすれば毒であるように。また太古の生物にとって、酸素が本来は毒であったように。
生物の種によって、摂取したものが毒であるか否かは大きく変化する。

地球人、つまり雛見沢の住人たちの発症過程は十分なサンプルデータが揃っており、例外がでることはほぼありえない。
L1からL5+までの症状段階に分けられ、L5+に近づく程に末期症状となり、疑心暗鬼を悪化させ無差別な攻撃行為に出てしまう。
だがサイヤ人という、世界を越えた先の、更に宇宙人となれば、最早予知のしようがない。
そんなサンプルデータは、その世界の何処にも存在しないのだから。

それでも、十分な推理材料があれば予測は出来るだろう。


872 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:20:09 HAqDVsSI0

地球人と子を為せる程、DNA的には地球人に近い種族だが、若さを維持する期間が非常に長い。
上限はあるが死に掛ければ、そこからの回復で戦闘力が飛躍的に上昇する。
尻尾などがあり、条件を満たせば強力な大猿になり、優れた個体はスーパーサイヤ人という強化形態を取得し、ある場合では神の力すら取り込んだ形態を、ある場合では大猿の力を発展させた進化形態を。
共通するのは、サイヤ人という種は個体差も大きいものの、肉体が非常に戦闘という行為に特化し、またその精神性も戦いを非常に好みやすい。
やはり地球人とは異なる種なのだ。

雛見沢症候群は通常、地球人であれば疑心暗鬼を発端とし攻撃的になる。更に戦闘能力も飛躍的上昇しやすい。

高LVの発症者を見ると、身体機能も上昇している例が少なからずある。特に園崎詩音など、一度発症すれば雛見沢に於ける最凶の殺人者として、数多の人間を手に掛ける。
その異常性たるや、鷹野の計画を最も妨害している程だ。
つまり、攻撃性や戦闘機能を増加させるのであれば、戦闘に特化したサイヤ人に雛見沢症候群が干渉した場合、より戦闘に特化した変化を果たすのでは。
例えば戦闘行為を更に積極的に求め、もっと好戦的な思考に偏るといったように。

何なら、半分地球人の悟飯のことだ。従来の雛見沢症候群の症状も併発するかもしれない。

あくまで、もしかしたらの仮説ではあるが。

(シュライバーと戦ってから……き…気のせいか……)

あるいは、全く別の可能性も考えられる。

戦闘民族としての性か、シュライバーとの戦いがきっかけで、悟飯のなかで戦いに対する変化が起きた可能性だ。
今までセルのように格下の相手を圧倒するか、逆にリクーム等の当時の格上相手に圧倒されるかの戦いが主であった。
そんな悟飯にとって、創造を繰り出したシュライバーという、全力を出した上で拮抗して戦える相手は初めてだった。

サイヤ人のDNAを持つ人造人間は、かつてこう言った。「戦いはこうやってある程度実力が近くなくては面白くない」と。

悟飯は生まれて初めて、実力が近い者同士の戦いの面白さを知ってしまったのだとしたら。
それがサイヤ人として、悟飯が辿る筈だった本来の世界線とは異なる、異質の変化を齎している可能性もある。

(しっかり……しないと……。
 いま、戦えるのは……僕しかいないんだ。僕が美柑さんを守ってあげないと……お父さんと合流するまでは)


873 : 不安の種 ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:21:01 HAqDVsSI0



【H-7/1日目/黎明】

【孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可、雛見沢症候群感染、普段より若干好戦的、悟空に対する依存と引け目
[装備]:ケルベロス@カードキャプターさくら
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み、「火」「地」のカードなし)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
0:海馬コーポレーションに向かってみる。それからホグワーツも行ってみる。
1:お父さんを探したい。出会えたら、美柑さんを任せてそれから……。
2:美柑さんを守る。
2:スネ夫、ユーインの知り合いが居れば探す。ルサルカも探すが、少し警戒。
3:シュライバーは次に会ったら、殺す
[備考]
※セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。
※殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
※SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可
※舞空術、気の探知が著しく制限されています。戦闘時を除くと基本使用不能です。
※雛見沢症候群に感染しました。ただ発症はまだしていないため、特に変調はありません。
 発症に至るかどうかは後続の書き手にお任せします。
※原因は不明ですが、若干好戦的になっています。
※悟空はドラゴンボールで復活し、子供の姿になって自分から離れたくて、隠れているのではと推測しています。
※ケルベロスは「火」「地」のカードがないので真の姿になれません。


【結城美柑@To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
[状態]:疲労(小)、強い恐怖、精神的疲労(極大)、リーゼロッテに対する恐怖と嫌悪感(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み、「火」「地」のカードなし)
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
0:海馬コーポレーションに向かってみる。それからホグワーツも行ってみる。
1:ヤミさんや知り合いを探す。
2:沙都子さん、大丈夫かな……
3:正直、気まずい。
4:リト……。
[備考]
※本編終了以降から参戦です。


【ケルベロス@カードキャプターさくら】
孫悟飯に支給。羽があり空を飛んで喋る、小さなぬいぐるみのような生き物。
封印の獣として、稀代の魔術師クロウリードに創り出された存在で、長年大阪にいた影響で原作本編時点では関西弁であり、非常に陽気。
更に天然だが、決して魔術に対する知見は決して低くはなく、真の姿にはなれないが、魔術戦では支給品として所持者に的確なアドバイスが期待……できるかもしれない。


874 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/15(木) 00:21:34 HAqDVsSI0
投下終了します


875 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/17(土) 13:36:16 eoY28QCw0
羽蛾、エリスで予約します


876 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:10:20 il36NITM0
投下します


877 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:10:32 il36NITM0
大型のトラックがアクセル全開で激突した様な重低音は、秒の間を置かず響き続ける。
 振われる突撃槍と岩塊が激突する度に、家一軒四散させられそうなエネルギーが生じ、突撃槍と岩塊を振るう二人の少女の肉体を伝って、二人の踏み締める地面を粉砕していく。
 斬り結ぶ二人は一撃を交わすごとに足首まで地面に埋めながら、それでも尚一層激しく苛烈に得物を振るう。
 顔に焦燥を浮かべ、全身に傷を負ったイリヤが、シャルディアの左腕を狙う軌跡で、剛速で岩塊を振り下ろす。
 押し出される空気だけで、人が木端の様に舞い飛びそうな暴風を生みながら、破壊そのものと言うべき岩塊が左腕に迫るのを、シャルディアは冷静に見極めた。
 イリヤの剣撃に応じたシャルディアは、突撃槍を横に振り払い岩塊を弾き飛ばすと、イリヤの心臓目掛けて突撃槍を突き込む。
 これをイリヤは右手を横薙ぎに振るいながら左半身(ひだりはんみ)になる事で回避。左腕 一本で斧剣を操り、シャルディアの胴に叩き込む。
 直撃すれば、否、直撃を避けたとしても当たって仕舞えば、シャルディアといえども胴が両断されるどころか、粉砕されて血霧と無数の肉片となるであろう一撃。右腕が無く、得物を握る左腕を攻撃に用いたばかりのシャルディアにとっては、防ぐ事は不可能。
 舌打ちをしながらシャルディアは左に跳び、斧剣が自らの身体に到達する迄の時間を僅かに先へと延ばす。そうして作った時間を利用して、突撃槍を斧剣へと突き込む事で生じた反動を用い、イリヤから距離を取った。

 「チィッ…」

 再度の舌打ち。先刻からイリヤの狙いは、スポイトランスを持つ左腕。乃亜に奪われ、そして取り戻した、至高の御方より賜った武具を持つ左腕は、シャルディアが最優先で護らなければならない部位だ。
 狙われれば、当然対処しなければならない。左腕を破壊されてしまえば、シャルディアは当面の間スポイトランスを持つことが出来なくなる。
 その間に、逃げた二人からシャルディアを引き離したいイリヤがスポイトランスを拾って逃走する事は、充分に考えられた。
 そうなれば、シャルディアはイリヤを追跡しなければならなくなる。無力な獲物から引き離される事を理解していても、そうするしか無い。
 だが、左腕にばかり気を取られていると、右腕が欠けた為に、防御が困難な右胴を狙ってくる。
 狡い相手だった。主人であるアインズや、同輩であるデミウルゴスが知れば、シャルディアに参考にする様に言うかも知れない程度には。

 「至高の御方の名を口にしたのは、失敗でありんした」

 至高の御方より賜った武具を奪い返した高揚のままに、敵に情報を与えてしまった事は失策だった。スポイトランスが本来はシャルディアの武具であり、同時に弱みであると知られてしまったのだから。
 この失策が無ければ、こうまで粘られる事は無かっただろう。
 アルベドが知れば、さぞかし嫌味ったらしく詰ることだろう失敗だった。
 だが、それを差し引いても、勝つのは己だとシャルディアは驕りでも慢心に依るものでも無く確信している。


878 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:10:53 il36NITM0
 (あの強化。完璧なる戦士(パーフェクトウォリアー)の同類ならば、魔力が常時減り続ける筈。しかもこの強化率、かなり強力なバフが掛かっている。消耗も大きい筈)

 シャルディアが勝ちを確信したのは、単純にイリヤの異常なまでの強化による。
 シャルディアに課せられた制限を考慮しても、イリヤの強化は凄まじいとしか言いようが無い。
 軽く撫ぜるだけで、原型を留めぬ血肉の塊となる脆弱な人間が、己と真っ向から撃ち合う程にまで強化されたのだ。
 何倍などという強化率では無い。別の存在になったとしか思えない化けっぷり。
 そして、イリヤの魔法詠唱者(マジックキャスター)としてのレベルが、そう高く無いことも加味すれば、自身の力に依らない激烈な強化を用いた事は明らかだ。
 それは、つまり、魔力か体力かあるい両方か、それとも身体そのものかに対する、イリヤの消耗が激しいであろう事を意味する。此処までの強化が何処にも負担とならない訳が無い。
 地力で遥かに勝るシャルディアは、この時点で敗北する可能性は無いと言って良い。
 『現状の』イリヤを打倒できずとも、そう時間を掛けることなく、イリヤは自滅するのだから。
 更に言えば、今のイリヤは只々斧剣を振るうだけだ。戦い方こそ小賢しいが、最初に戦った二人の様な多彩さは無い。耳長の方が発揮した狡猾さも見せてはいない。
 アインズ・ウール・ゴウンがシャルディアを降した時に使用した、多彩な攻め手や、膨大なPvPにより蓄積された戦術や経験は、イリヤは持ち合わせてはいないのだろう。
 つまりは、正奇どちらにせよ、シャルディアが敗北する可能性は低い。

 (腹が立つでありんす)

 にも関わらず、シャルディアの面貌に浮かぶものは苛立ち。
 シャルディアにしてみれば、最早イリヤは、相当くない未来に勝利が確定した相手でしか無い。にも関わらず苛立っているのは、イリヤの持つ斧剣にあった。

 (何であんな岩の塊ひとつ。この至高の御方より授かりし武具が砕けない!!!)

神宝(ゴッズ)級アイテムであるスポイトランスならば、たかが岩でできた斧剣など、容易くへし折り打ち砕く。
 ましてや総合力でナザリック最強のシャルディアの身体能力で扱われるとなれば尚更だ。
 その筈が、二百を超えてなお、斧剣は砕けるどころか折れもせず健在。
 シャルディアにしてみっrば、イリヤよりも余程理解できぬ存在だった。

 シャルディアが疑問に思い、苛立ちを覚えるのも無理はない。この斧剣は、異なる歴史に於いては、剣というカテゴリーに於ける最高位にある聖剣と真っ向から撃ち合って毀れる事すら無く。
 人類の創り出した数多の財を蓄えた蔵。その中から至純の域にある武具を、雨霞の如く撃ち出す事により形成される弾幕。それを打ち払い、薙ぎ払っても、欠ける事すら無かった、理不尽とも言うべき頑強さを誇る岩塊である。
 人外の膂力を以って振われるスポイトランスであっても、そうそう砕く事など出来はしない。

 (嗚呼、腹が立つでありんす)


879 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:11:26 il36NITM0


 
 シャルディアが動きを止めて出来た時間を空費せず、イリヤは大きく息を吸い、吐き出す。
 何度息が出来るかは判らないが、此処は回復に努めるべきだった。
 理解(わか)っていたこよだが、シャルディアは強い。
 白兵戦では三騎士に匹敵し、キャスタークラスを名乗れる魔術の業。然も持つ武器まで超一流。どこにも隙など有りはしない。
 最初こそ不意をついてシャルディアを後退させたものの、仕切り直された後はイリヤの不利は揺るがない。
 シャルディアが口を滑らせてくれたお陰で、スポイトランスを集中して狙い、シャルディアの行動を制限する作戦を取れたが、この僥倖が無ければ戦況は更にイリヤに不利となっただろう。
 イリヤとしては、シャルディアを此処で打倒する必要は無い。シャルディアからのび太とニンフが安全な距離まで離れられればそれで良いのだ。単純に、時間を稼ぐだけでも、イリヤの目的は達成される。
 只の時間稼ぎ────シャルディア・ブラッドフォールンという名の怪物が相手では、それすら叶いそうに無かったが。
 シャルディアの実力抜きにしても、イリヤは継戦能力に難がある。イリヤか雪華綺晶のどちらかの持久力が尽きれば、そこで全ては終わるのだから。
 つまりは、短期決戦。イリヤがこの局面を乗り切るにはそれしか無く。そしてその困難は計り知れなかった。
 打開策を考えるイリヤを前に、シャルディアの唇が動き、詠唱を開始する。
 誘いの手である。これまでに数度、シャルディアは魔法を行使しようとし、空へと飛行しようとした。
 距離を取られての魔術の連打を受ければ、イリヤは為す術無く“詰み”に持っていかれる。
 飛行されてしまえば、尚更だ。地上のイリヤを無視してシャルディアが二人を追うかも知れない。
 その為、イリヤはシャルディアが詠唱を開始する度に、飛行しようとする素振りを見せる度に、無謀と承知で吶喊した。
 そしてその度に、シャルディアから痛打を与えられてきた。
 だが、それでも、乗るしか無い。
 l
 「はあああああああああっっ!!!」

 両手で斧剣を振り上げ、狙うはシャルディアの左腕────と見せかけて首。
 不死殺しの爆発を起こす首輪もまた、シャルディアに取っては無視できぬものだ。

 「ハッ!」

 絶死の一撃を振り下ろしてくるイリヤに嘲笑を浴びせ、横薙ぎに首を狙って迫る斧剣を、シャルディアは身を低くして回避。頭上を斧剣が通過すると同時に立ち上がるのと、イリヤの腹に右の爪先蹴りを入れる事を同時にやってのける。

 「ゴハッ!」

 イリヤの身体が『く』の字に曲がり、後方へとすっ飛んでいく。Cランク以下の攻撃を無効化するバーサーカーの宝具も、素の攻撃力も武具もAランクに到達しているシャルディアには意味を為さない。
 再度紡がれる詠唱。陽動では無い本命の魔法行使。轟音と共に噴き上がる爆炎の中から、炎の赫糸を引きながらイリヤが飛び出す。
 立て直す暇を与えず、シャルディアはイリヤへと侵攻し、スポイトランスを喉首目掛けて突き込む。イリヤが咄嗟に振るった斧剣と激突し、盛大な火花と共に、欠けた岩が飛び散り、不十分ば姿勢で受けたイリヤが、バランスを崩した所へ再度の蹴撃。再び腹を蹴り抜かれ、吐瀉物を吐き散らしながらイリヤの身体が地面と水平に飛んでいき、停めてあった車に激突。ただそれだけで原型を留めなくなった乗用車が、派手な音を立ててひっくり返り、それでも勢いは収まらず、イリヤをめり込ませたまま転がり、二回、上下が入れ替わって漸く底部を上に向けて止まった。ガソリンが漏れ、周囲に悪臭が立ち込める。
 此処でシャルディアが魔法を行使して火球を放ったのは、結果を狙ってのでは無く、純粋にガソリンの臭いを嫌ってのことだった。
 シャルディアの放った炎は当然の如くガソリンに引火。残骸となっていた車体が盛大に爆散し、アスファルトすら融かす高熱の炎が燃え盛り、周囲に黒煙が立ち込めた。
 予想外の事態に、驚いたシャルディアは大きく後ろに飛び退る。その身体が宙に有る最中に、突如として黒煙を突き破り、シャルディアにイリヤが猛襲をかける!!


880 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:12:34 il36NITM0
 「!!!?」

 不意を打たれても、流石は総合力ナザリック最強は伊達ではない。
 突撃槍を斧剣目掛けて突き入れる事で、イリヤの攻勢を止めるのと、反動により間合いを離す事を同時にやってのけ、両足が地面を踏みしめた瞬間に再度跳躍。
 立て直して突貫してきたイリヤの上方を取ると、脳点目掛けて槍を繰り出す。

 「!?」

 響き渡る凄絶な音は、鋼と鋼が激突する轟だ。イリヤが咆哮と共に無理矢理身体の向きを変え、槍の切先を薙ぎ払ったのだ。
 空中で身体を半回転させて背を晒したシャルディアに、イリヤが此処で渾身の力を振り絞っての一剣。
 両者共に、相手を確殺し得る戦力を保有する強者。強き者同士の闘争に於いて、シャルディアの晒した隙はあまりにも致命的で────。
 シャルディアの背中に叩き込まれた斧剣は、シャルディアの背骨を砕いて右肺を潰し、シャルディアの口から噴水の様に肉片混じりの鮮血を噴き出させたのみならず、シャルディアを虚空の彼方へと飛ばしてしまった。





 荒い息を吐きながら、イリヤは地面にへたり込む。
 ここでシャルディアを仕留める事が出来なかったのは痛いが、アレ程の強敵に襲われて誰も死なずに済んだのは快挙と誇って良いだろう、
 だが────。シャルディアが何処へ飛んだのかが判然としないのは憂慮すべき事態だった。
 二人が逃げた先に飛んで行ったら、かなりの深傷を負わせたとはいえ、のび太とニンフの手に負える相手では無い。
 雪華綺晶と合流して、のび太と達の後を追うべきだろう。
 イリヤは三度、深呼吸をすると、シャルディアの飛んでいった方向へと移動を開始した。

【一日目/黎明/D-8 港内】

【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:全身に火傷(治癒中)、夢幻召喚中、雪華綺晶と契約。 疲労(大)
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード『バーサーカー』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。シャルティアからのび太さんたちを守る
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
4:みんなと協力する
5:のび太たちの後を追う
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
のび太、ニンフ、雪華綺晶との情報交換で、【そらのおとしもの、Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ、ローゼンメイデン、ドラえもん】の世界観について大まかな情報を共有しました
※バーサーカーのクラスカードを夢幻召喚しています。雪華綺晶の能力で狂化の影響を抑え込んでいますが、それがどれほど保つかは後続の書き手にお任せします。


881 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:12:58 il36NITM0






 怒りの咆哮を上げながら、シャルディアは流星の如く空を飛ばされていた。
 勝てた筈の戦いを落とした失態が、シャルディアの脳を激しく焼くが、現状では、エルフにもイリヤにも勝てはしない。
 それどころか、イリヤが逃がぢた二人にも、不覚を取るかも知れなかった。
 
 (気に入らない…が、これ以上の失態を重ねる事に比べれば)

 渾身の力を込めて空中で静止したシャルディアが取り出したのは、小瓶に入った赤黒い粉末。
 俗に言う乾燥血漿というものだ。
 
 「……………」

 一瞬。極大の怒りの籠った眼差しで瓶を見つめたシャルディアは、一気に瓶の中身を飲み干した。

 「ああ…」

 全身に力が満ち溢れ、損傷した肉体の回復速度が劇的に向上していくのを感じ、シャルディアは感極まった喘ぎを漏らす。
 暫くすれば、行動に支障が無くなる程度には回復するだろう。
 回復するまで、煩わされない場所を探して辺りを見渡したシャルディアは、見知らぬ二人と対峙する、逃げた二人を目撃し、唇の両端を釣り上げた。

 「あの銀髪の小娘の前に、奴らの首を並べてやるのも面白い」

 身体が回復した後の行動を決めて、シャルディアは地へと降り立った。


【一日目/黎明/E-8】

【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(大)、右腕欠損、背骨粉砕骨折(治療中)、右肺が潰れている(治療中)
[装備]:スポイトランス@オーバーロード 闇の賜物@Dies Irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:真紅の全身鎧を見つけ出し奪還する。
2:汚い手で至高の御方から賜りし槍に触れた奴らを誅伐する。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻し次第、エルフに借りを返す。
5:身体が動くようになったら、あの二人(ニンフとのび太)を殺す
[備考]
アインズ戦直後からの参戦です。
魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。


支給品解説

闇の賜物@Dies Irae


オスマン帝国の兵士達を生きたままに串刺し刑に処し、その大量の死体を荒野へ野晒しにしたことから『串刺公(カズィクル・ベイ)』の異名を持つワラキア領主、ヴラド三世の結晶化した血液が素体。
世界に数ある吸血鬼伝説のモデルとなった人物の血ということで、聖遺物としての特性も非常に吸血鬼然としたものとなっている。

身体能力や、五感の向上は元より、吸血鬼である者が使用すると、吸血鬼としての能力が全般的に向上する。


882 : 勝ち負けは一瞬で決まる ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/17(土) 17:13:13 il36NITM0
投下を終了します


883 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:45:57 zBOdx2A20
投下ありがとうございます

>勝ち負けは一瞬で決まる
シャルティア、変に情報与えちゃったりと、強いのにうっかり屋さん過ぎる。
本領を発揮できる武器でいて、弱点になってしまうというのは面白い着眼点ですね。
ナザリック最強のシャルティアですら砕けない斧剣っていうのは、やはり元祖Fata知ってると熱いですよ。
そりゃバサクレスが強いのなんて当たり前ですもん。―――バーサーカーは強いね。
あと、のび太。ニンフ諸共とはいえシャルティアからロックオンされるし、やべー奴等から一々命狙われ過ぎなんだよなあ。なんか変なフェロモン出してんじゃないの。

投下します


884 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:48:44 zBOdx2A20
「貴方、ルーデウスを見なかった?」

「ルーデウス……」

サトシから支給品を強奪して以降、羽蛾はかなりの駆け足でエリアを南下していた。
リーゼロッテの脅威もそうだが、サトシが自分の悪評を撒くのを恐れて、先にそれが伝わるより前に別参加者と積極的に接触して信用を得たいからだ。
なので出来る限り、サトシから離れ、参加者が集まるかも知れそうな島の中央部に行先を定めた。
最初は病院などに寄ろうとも考えたのだが、賢い参加者なら先にそこで待ち受け、治療目的でやってきた手負いの参加者を襲う為に罠を張る可能性もある。
ポケモンを持っているとはいえ、羽蛾は自分が弱い側の参加者であることは自覚している。単独で突入するには、リスクは高い。
その為、目的地は特に定めないまま、取りあえずは南下を選んだ。実際には、近場にいたナルトやセリムなどとはニアミスをしていたのだが、羽蛾には知る由もない。
I・R・T(アイドル・レイプ・タワー)なんて馬鹿みたいな名称の施設に、人なんか集まるわけないだろと。この施設は完全にノーマークだった。

「……」

その道中、出会ったのは赤髪の少女、エリス・ボレアス・グレイラット。
エリスは後の戦闘の事も考えて、ルーデウスの探索も優先はしたものの、体力は無駄に消耗しないように徒歩で。
逆に羽蛾は比較的、駆け足で息を荒げながら、時にはジルに担がせて移動したせいで、移動距離に差があったにも関わらず、たまたま同エリア内でかちあってしまった。

(なんか、頭に来る女だピョ)

一方的に話してきて、高圧的に情報を要求する態度に、羽蛾のなかで一瞬にしてエリスの心象は最底辺にまで落ちた。
殺し合いには乗っていない。腰の刀も様になっていることから、戦闘にも長けた少女なのは素人の羽蛾でも分かった。利用は出来そうだが、少々カチンと来るのも確かだ。

「そういえば……」

「会ったの!? 何処で!!? 言いなさい!!」

「……何処で会ったっけなぁ?
 もう少しで、思い出せそうなんだけど……うーん、ランドセルと支給品があれば、思い出せそうかなあ」

「こいつ……!」

エリスは羽蛾の話を聞き、心の中で舌打ちした。
だが、当然でもあるかと納得もする。意図せずとはいえ、ルール上は全員敵の殺し合いの場に放り込まれたのだ。
利益がなければ、他人に施しを与える理由などない。ナルトやセリムのような、善良な参加者が珍しいのかもしれない。
長い間に積み重ねた旅の経験が、エリスにいくらかの柔軟性や広い視野を与えてくれた。だから、まだ殴りかかるようなことはしない。

「ヒョヒョー、そうだねえ、ランドセルと支給品をいくつか寄こしな。そうすりゃ、情報もくれてやるよ。食料や飲料も忘れるなよ」

「……いいわ」

ランドセルはマルフォイから奪った。一個なくなっても大した痛手でもない。
その中にある、もう一人分の食糧などもだ。所詮は成り行きで強奪した品、ルーデウスとの合流を考えれば、渡してやっても惜しくない。
どうせ入っていたのも、よく分からない"黒い筒"だったのだから。
特に言い返すこともなく、耳障りな奇抜な笑い声をあげる羽蛾にマルフォイのランドセルを投擲する。

「随分、呆気ないな……」

思いの他、あっさりと承諾したことに羽蛾も拍子抜けした。エリスの様子に注意しつつ、ランドセルを開けて中を確認する。
まさか、中に罠でも仕掛けてるんじゃと警戒するが、そういった様子は見られない。


885 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:50:29 zBOdx2A20

「こちらから報酬は渡したわ。次は貴方の番よ!」

「んー? あぁ……北の方にはルーデウスなんて奴、居なかったピョ。だって、会ったこともないんだからねぇ!!」

プチッと、エリスの中で何かが切れたような音がした気がした。先のマルフォイ以上の敵意と怒りを抱いて、拳を作って羽蛾の頬へとぶち込む。

「ギョエエエエエエエエエエ〜〜〜!!!!」

驚くほど軟な頬に、拳は減り込んだ。顔面に走る激痛と共に羽蛾は地べたに転がっていく。
そこからはもう、いつものエリスのパターンだ。馬乗りになり、相手の顔面を徹底して殴打で破壊し痛め付ける。
あの拳を避けられなかった以上、羽蛾には大した戦闘の技術もない。
だから、剣を抜いて斬り伏せるまでもない。だが、自分を出し抜いて支給品を奪おうとしたのなら、ほぼ殺す手前程度までは殴る。

「覚悟しなさいよ。この蟲眼鏡!!」

痛みに藻掻く羽蛾の上に仁王立ちで跨り、そして胸倉を掴み顔を持ち上げ、再度拳を見舞う。

「!?」

その瞬間、ダァンと、今までに聞いたことの無いような爆音がエリスの鼓膜を伝った。

「ちょっと、可愛いからって調子に乗るなよ」

羽蛾の手の中には、黒光りする奇妙な筒が握られており、その先にある穴から煙が出ていた。

「やっぱりね。きみ、支給品はちゃんと確認しないと駄目じゃないかぁ」

その筒は今度はエリスの胸元に突き付けられていた。

「ヒョヒョヒョヒョヒョ〜。
 これが、どういう意味か分かるよな? まさか、銃を知らないなんてことないだろ」

「なんなのよ、それ」

「ひょ? ……知らないのか、銃を」

脅しているはずの羽蛾が逆に動揺する程に、エリスの反応は予想の斜め上だった。
だが、エリスも動けないでいた。羽蛾の手にある筒が、何かの攻撃手段であることは分かる。しかも魔術で言えば無詠唱で、ほぼノーモーションで攻撃を見切る事も叶わない。
あと何回か観察していれば、もしかすれば対処法や避け方も分かるかもしれないが、この近距離で密着した態勢では危険すぎる。
お互いに硬直しながら、出方を伺い、先に怪訝そうな顔をしていた羽蛾が口を開いた。

「……お前、手を組む気ないか」

「急に何を言ってるのよ」

「いいや、手を組めるね。お互いの短所を埋め合う、メリットの方が大きい」

言ってから、羽蛾はエリスから銃を離して下ろした。
エリスは羽蛾から視線を離さず、だが胸元から手を離し、馬乗りの態勢を維持する。
先の一瞬で、銃を飛び道具と瞬時に見切って、距離を取るのは悪手だと判断した。
つまり現状の距離が最も対応しやすい。
だが、下手に剣に手を置けば、何をされるか分からない。あの筒の効果が不明確過ぎて、行動に移れない。
羽蛾の目的が不明瞭だが、対話を望むのならそれに応じて、今後の対処を考える時間を稼ぐ方が得策だとエリスは考えた。


886 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:51:21 zBOdx2A20

「メリットってなによ」

(乗って来たか、まったくヒヤッとしたぜ)

銃を持つ手とは、逆の方の手に隠し持った収縮されたモンスターボールを指でなぞりながら、羽蛾は安堵する。
もしも、エリスが腰の刀に手を置くような素振りを見せたのなら、ジルを呼び出し攻撃をさせるつもりだった。
しかし、これも大分危ない賭けに近く。ジルが瞬時に状況を判断して、融通を利かせてくれたのならいいが。何なら自分が命じないと、何もしない可能性が高かった。
攻撃というタイムラグを挟めば、下手をすれば、このエリスに居合切りみたいなことをされて、瞬殺されるかもしれない。
使うまでもなくなったことに、自分の幸運には感謝しかないだろう。

「オレは、戦いは素人でね。強い参加者と組みたい。お前は、ルーデウスを探す交渉役が居た方が、話がスムーズで良い。
 お互いに悪いコンビじゃないだろ?」

あとは、どうやってこの狂犬を口説くか。
遊戯や城之内を油断させて、罠に嵌めた羽蛾の本領発揮だ。

「必要ないわ」

「……オレに支給品を渡した時、もっと交渉できたとは思えないか? オレが知らないであろうルーデウスの外見を持ち出して、ひっかけるとかさ。
 オレが知らなくてきみが知っている手札はいくらでも切れたんだ。
 もしも、そいつの外見の特徴を偽って話していれば、オレには知る方法もなかったんだから、簡単にボロを出したぜ。
 きみ、話が自分の中で完結し過ぎなんだよ。会話のキャッチボールをしろよ。
 ルーデウスの居場所を知りたいってのが念頭にありすぎて、相手から聞き出したいのを隠しきれてない。だから、さっきみたいにペースをオレに握られるんだ」

「言って、くれるわね……!」

「ヒョヒョ、相手の手札の分かるババ抜きほど、楽なゲームはないピョ」

この女、直情型ですぐ手が出るタイプで単純明快な女に見えるが、話はむしろ聞くタイプだ。
理屈が通ってさえいれば、素直に話を受け入れる。今もムカついてはいるが、自分の欠点を指摘され、そして納得している。

「それにお前、銃を知らないんだろ? こいつはオレの世界で、最も流通している人殺しの道具さ。
 お前程の剣士でも為す術もなく、オレみたいな素人でも殺すことが出来る。そんなものに対する知識がないままなんて、ちょっと危ないんじゃない? 
 そのルーデウス君ってのも、お前みたいに銃を知らず、危ない奴に手渡してるかもよ」

「……」

「オレはお前の代わりに情報収集、その他の交渉役や知らない知識を提供する。
 お前は戦闘要員として、オレと行動する。今度こそちゃんとした取引だ。
 さっきのは、お前にオレの能力を示す、アピールタイムだと思ってくれよ。……こうやって片っ端からぶん殴って、言う事聞かせるのも効率悪いのも分かるよな?」

この男はムカつく、頭に来る。
だが、言っている事はエリスでも納得せざるを得ない。最初は下手に誰かと組むより、一人のが良いと考えていた。
しかし、セリムやナルトと話が噛み合わないように、この島にはあまりにも未知が多すぎる。
相手の出方を見極めて、行動を起こすには交渉と駆け引きが大事になる。だがエリスは、それらの話術には長けていない。
流石に以前ほど、短絡的に暴力に訴える事はないが、それでも神経を逆撫でされれば分からない。


887 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:52:21 zBOdx2A20

「ルーデウスとの合流を最優先するわ。それが条件よ」

理屈までは分からないが、あの筒の先から何かを射出して、人体を破壊するのが銃の仕組みなのだと、エリスでも推測は出来た。
殺人という行為が先行しているのなら、エリスが馬乗りになった段階で銃という道具でその射出した何かを、エリスに当てればいいだけの話だ。威嚇する必要はなかった。
羽蛾は殺し合いに対し積極的ではない。自分以外、どうでも良いというスタンスだろうが、あくまで必要でなければ無理に殺すタイプではない。
恐らくだが、生存するのが最優先だ。

そして、質は悪いが殺し合いそのものには乗り気ではなく、だが自分を最優先し他人を利用してこようとする狡い輩は間違いなく、少なからずいる。
それはエリスにとって、間違いなく苦手とする相手だ。
腹は立つが、そういった連中相手なら、まだこの羽蛾のが幾分マシに立ち回れるだろう。

一切の信用は出来ないが、利用し合うと割り切るだけならば、いずれ使い捨てると思えば悪い相手じゃない。
力は弱く、銃も対策を練れば対処は出来なくはない。いざという時、実力行使で黙らせられる。

数時間前に魔術師の殺し合いに乗った少年を打ちのめした時、近くに居た丸坊主の少年と違って、ある程度は最低限自分で身を守るように行動してくれそうなのも、ある意味エリスとっては気負わなくていい。
ナルトと別れたのも、セリムを守るのは恐らく自分には向いていないからと判断したからだ。
その点、羽蛾はセリムと違って死んだのなら、別にそれでも良い。人間性の低さは、先ほど思い知ったばかりだ。
だから、同行者として相手の命に責任を持たなくて良いのは、凄く楽だった。

「ヒョヒョ〜交渉成立だねぇ。よろしく頼むピョ―」




―――


888 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:53:33 zBOdx2A20



「ルーデウスは凄いのよ!! ルーデウスは―――」


その後、羽蛾とエリスはお互いに絶対に攻撃するなと牽制し合いながら、武装を解除し改めて情報を交換した。

「―――ルーデウスは―――」

「……」

先ず羽蛾は、相手の世界観の確認をする。サトシとの会話で別世界の可能性に言及したが、更にこれを裏付ける為にエリスからも情報を引き出したかった。
結果としては仮説をより裏付ける結果になった。サトシや羽蛾の世界以上に文明の進歩が遅く、科学より魔術等のオカルトが発展した中世のような世界観。
剣と魔法の世界とでもいうべきか。
そういったハリウッド映画だって、羽蛾は見た覚えもある。銃を知らないのもそれが原因なのだろう。


「―――ルーデウスは―――」


(壁にでも話してろ。会話のソリテイアをしてるんじゃねえよ)

そこまでは良く、ルーデウスの外見や持っている能力や技能を聞き出した瞬間、凄まじく膨大な情報量による暴力を受けた。
その内容は、数時間前にナルトとセリムが聞かされた内容と非常に類似したもの。
仮にもデュエリストである羽蛾は、カードのテキストの説明を受けることが多い。その為、相手の長い言葉の節々から重要な部分のみ取捨選択し、意味を理解することには慣れている。
凄まじく、どうでもいいエリスの惚気話を切り分け、ルーデウスに関する人柄や能力面、容姿などの必要箇所のみを的確に記憶していった。

「……おい、一ついいか?」

「ルーデウスは―――……何よ」

「無詠唱魔術ってのは、そんなに凄いのか?」

「当り前じゃない! そんなこと出来るのルーデウスだk―――」

ルーデウスの使う魔術と、先ほど羽蛾が遭遇したリーゼロッテの使う魔術。
エリスの語るそれに比べれば同じ魔術師の土台で考えると、明らかに規模が違う。
またもや、ルーデウス語りを始めようとするエリスを遮るように羽蛾は口を開いた。

「オレ、見ちゃったんだよねぇ……平気でなんの呪文も唱えないでバンバン魔術使う女をさぁ」
「っ……!?」
「案外、この島の奴等からしたら、当たり前の技術なんじゃないの?」

この殺し合いにも強さの序列があり、ゲームで言えば環境が存在すると羽蛾は考えていた。
無詠唱魔術に関してのエリスの反応を見るに、エリスとそのルーデウスは良くて中の上くらいだと推測する。
自衛できる範囲だが、別参加者とのエンカウント次第では、どうにもならない場合も少なからずあると見ていいだろう。

「ヒョヒョヒョヒョ、お前もルーデウスもそこそこ強い方だろうけど、ここはもっと強い奴等がうじゃうじゃしてるピョ。
 精々死なないように気を付けなぁ〜」

エリスがどうなろうが構わないが、せっかく得た同行者だ。
すぐ死なれるのも、コスパが悪い。羽蛾は少し釘を刺すことにした。

「……分かってるわ」

何か強く言い返そうとして、エリスの中で得体のしれない不安が生まれた。
羽蛾に無詠唱魔術が当たり前なのではと、そしてもっと強い連中が居ると言われた時―――ルーデウスが血だらけの姿で横たわる光景が、エリスの脳裏を過ってしまった。

「気の…せいよ……」

大丈夫、きっと。
だって、ルーデウスは天才なんだもの。

そう言い聞かせ、エリスは羽蛾の承諾も得ないで早足でグレイラット邸へと向かう。

(こいつ、ルーデウスが死んだら急に優勝狙いとかになるんじゃないか? ……その時が面倒だな。早いとこ、別の参加者とも合流したいもんだぜ。
 そもそも、名簿も見れないのに、何を根拠にルーデウスが居ると思ってんだ? 大分好意を持ってるみたいだけど、普通はそんな相手居ない方がマシだろ)

羽蛾もそのエリスの後姿を見ながら、一抹の不安を覚えていた。


889 : 男の子ひとりも知りもしないのに ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:55:00 zBOdx2A20



【G-4/1日目/黎明】


【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康、少しルーデウスに対して不安
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:早くルーデウスと再開したいわね!
4:どうして私の家がここにあるのかしら……。寄る必要があるわね
5:ガムテの少年(ガムテ)とリボンの少女(エスター)は危険人物ね。斬っておきたいわ
6:羽蛾は利用させてもらう。一応戦闘は引き受ける。
[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成(及び、1年以上経過)〜ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
※ナルト、セリムと情報交換しました。それぞれの世界の情報を得ました


【インセクター羽蛾@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:右腕に切り傷(小)疲労(中)
[装備]:モンスターボール(フェローチェ)@アニメポケットモンスター、グロック17L@BLACK LAGOON(マルフォイに支給されたもの)
[道具]:基本支給品一式&ランダム支給品0〜1(マルフォイのランドセルに収納、タブレットは破壊済み)、タブレット@コンペLSロワ 賢者の石@ハリーポッターシリーズ
[思考・状況]基本方針:優勝を狙いつつ生き残る。もし優勝したら、願いも叶えたいぜ。
1:とりあえず、エリスに同行する。エリスが優秀狙いにならないか、警戒もしとく。
2:ほかの参加者とも、色々会っておきたいぜ。
3;優勝も視野に入れているが、一番は自分の生存。当面は対主催の立場で動く。
4:リーゼロッテちゃんのようなオカルトの力には注意だな
5:せいぜい、死なないよう祈ってやるか…ヒョヒョヒョ
6:エリスの代わりに情報収集や、交渉役はしてやる。
[備考]
参戦時期はKCグランプリ終了以降です
ポケモンについて大まかに知りました。
サトシとの会話から自分とは別の世界があることを理解しました。それと同時にリーゼロッテのオカルは別世界の能力だと推測しました。
ルーデウスについて、エリス視点から話を聞かされて無駄に詳しくなりました。
無職転生世界についてエリス視点で知りました。


890 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 03:56:44 zBOdx2A20
投下終了します


891 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/18(日) 18:22:44 zBOdx2A20

予約期限についてですが、登場キャラも一周しましたので、予約の期間を延長できるように新しくルールを追加させて頂きます。

皆様、ご確認お願いします。


予約のルールについて。

・候補作を除き、本編開始から執筆数が2作までの書き手様の予約期限は5日間。2作以上執筆して頂いた書き手様は、5日間の期限に加えて、更に2日延長可能とします。
 つまり、最大7日のキャラの予約が可能となります。


2023/6/18現在、延長期間込みで最大7日間予約できるのは以下の書き手様になります。

・延長可能の書き手様

◆lvwRe7eMQEa(企画主)
◆/9rcEdB1QU様
◆2dNHP51a3Y様
◆/dxfYHmcSQ様
◆.EKyuDaHEo様
◆s5tC4j7VZY様
◆RTn9vPakQY様


・破棄または予約期限を過ぎた場合の、同キャラの再予約は3日後まで禁止とする。
 ゲリラ投下に関しても、万が一に揉め事にならないよう、破棄や予約期限を過ぎた場合は、そのキャラの投下を三日間禁止といたします。

・厳密な予約期限について。
 予約日から、その期限日当日の24時までを期限とします。
 ですので、例えば2023/6/18の17:44に予約した場合、延長も利用したとして、2023/6/25の24:00までが厳密な予約期限になります。 
 当日の17:44を過ぎても、まだ予約期限の超過とはなりません。

・企画の進行に支障が生じていると判断した場合等、企画主としてその書き手様の予約に介入する場合もございます。ご了承願います。
 

上記のルールは今予約されている方も適用されます。


一先ずは、一旦このルールで様子見をしながら、進行していこうと思います。
今後、企画の進行が進むにつれて、状況を見ながらまたルールを変更しますので、その時はまたよろしくお願いします。


892 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/18(日) 19:26:36 syM475uA0
早速ではありますが、予約を延長させてもらいます。


893 : ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/19(月) 00:56:12 u2RTAVX.0
ヘンゼルを予約します


894 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/19(月) 01:44:47 ly8aYh4A0
延長を申請します


895 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:33:38 DFsdLxPQ0
投下します。


896 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:35:33 DFsdLxPQ0
 キウルは漠然とした不安を抱いていた。
 キウルを含めた一行は、G-2の港を目指していた。
 しんと静まり返った薄闇の中、歩を進める。生乾きの服にも慣れてきた。
 先頭を歩くのはモクバ。その後ろにキウルとディオがおり、最後尾はドロテアだ。

「なあ、キウル。それにディオも、休まなくて平気なのか?」
「私は平気ですけど、ディオさんは……」

 振り向いたモクバに尋ねられて、キウルは隣のディオに視線をやった。
 モクバの懸念は、キウル自身もひそかに心配していたところだ。
 これまでの様子を見ても、ディオの肉体は一般人の枠を超えるものではない。
 それに、事実として口数は減っていた。

「……問題ないよ。この程度で音を上げてはいられないさ」

 しかし、ディオの答えは否定。
 額に汗をにじませつつも、平然とした態度を崩そうとしない。
 キウルはそれを聞いて口を噤んだが、反対に口を挟んだ者がいた。

「ふん、ご立派なことじゃ」

 ドロテアである。
 どうやらディオを好ましく思っていないようで、たびたび煽るような発言をしていた。
 そして煽られたディオもまた、ドロテアに対して敵意を抱きつつあるようだった。

「いつまでやせ我慢が続くかのう」
「……ずいぶんとカンにさわる言い方をしてくれるじゃあないか」
「お?なんじゃ小僧、図星だったか?」
「やめろよ、ドロテア!」

 モクバの制止もむなしく、しばし視線をぶつけ合う二人だったが、やがてディオが逸らした。
 むやみに敵対するのは得策ではないと考えたのだろうか。
 フフンと小気味よさそうに笑うドロテアを見て、キウルは溜息をついた。

(得体の知れないお方だ……)

 可憐な見た目とは裏腹に、ドロテアは年不相応の超然とした振る舞いをしていた。
 よく言えば不思議な、悪く言えば不気味なその態度は、気軽に話しかけるのを躊躇うほどだ。

(……ん?)

 そんな雑念に気を取られていたからだろう。
 放たれる殺意を察知するのに、ほんの刹那だけ遅れた。
 遠目に白装束の人物を認めたとき、すでに弩の矢先は、隣のディオへと向けられていた。

「……っ!危ない!」

 咄嗟にディオを押し倒す。それと同時に走る痛み。
 左腕を見ると、矢こそ刺さっていないものの、着物の白い布地は裂けて赤く滲んでいた。

「キウル!大丈夫か!?」
「く……かすり傷です、それより逃げましょう!」

 キウルは声を上げて、モクバたちに逃走を促した。
 一方的に攻撃されることを防ぐために、まずは遮蔽物のある場所へと向かうのが先決。
 そう考えていたキウルは、襲撃者に向かって駆け出したディオに面食らうことになる。

「ディオさん、何を!?」



 ディオ・ブランドーはブチ切れていた。
 押し倒された直後、ディオは背後の地面に突き刺さった矢を見てすぐに理解した。
 狙われたディオのことを、キウルが間一髪のところで救ったのだと。
 しかし、そこで素直に感謝をするディオではない。

(のろまそうなモクバや小娘のドロテアよりも先に狙うとは……このディオを舐めているなッ!)

 むしろ湧き出たのは怒気だった。
 恥辱を与えてきた痴女、神様気取りの乃亜、そして挑発的なドロテア。
 これまでに蓄積されてきた苛立ちが、白装束の襲撃者によって決壊した。
 背負っていたランドセルを放り出して、ディオは駆け出した。

「ディオさん、なにを!?」
「キウル!弓矢で援護しろ!」
「ええっ!?」


897 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:40:06 DFsdLxPQ0
 キウルに端的な指示をして、ディオは拳を握りしめた。
 その拳を、まだ見ぬ襲撃者の顔面に叩き込む光景をイメージする。

(あのタイプの武器は矢を装填するのに時間がかかる!
 それまでに近づいて、するどい一撃を喰らわせてやる!)

 まさか丸腰の相手が突撃してくるとは思わなかったのか、襲撃者は動揺した様子を見せた。
 ディオは口角を上げる。ケンカ慣れしていない相手だ。ゴロツキより簡単に倒せる。

(もらったッ)

 ディオは脳内で叫びながら、矢の装填にもたつく襲撃者の頬を殴り抜いた――

「……なに!?」

 ――はずだった。
 しかし、手応えは皆無。お互いに微動だにしない。
 不自然に思い拳を見れば、襟の部分でピタリと止まっていた。

「馬鹿な!何が起きている……?」

 通常であれば殴った側も痛みを感じるはずが、その痛みすらもない状態だ。
 まるで衝撃自体がいなされたかのような感覚に、ディオは困惑する。
 それでもファイティングポーズは崩さずに、背後のキウルを呼んだ。

「キウル!援護はどうした!?」
「わかりません、身体が、急に、しびれて……」
「かすり傷じゃないのかッ!?」

 背後の弱々しい声に振り向くと、そこには片膝を着いたキウルの姿があった。
 そのかたわらで矢を弄んでいたドロテアが、キウルの様子を観察して言う。

「ふむ……おそらく麻痺薬のようなものじゃろう」
「チッ、矢に塗られていたか……」

 舌打ちとともに襲撃者を見ると、ようやく矢の装填を終えたようだった。
 いずれにせよ、即効性の毒物ではなかっただけマシだと結論づけて、ディオは叫んだ。

「モクバ!手を貸してくれ!」

 バシルーラの杖という有用な支給品の使用回数を、また減らしたくない。
 モクバに借りを作るのは癪ではあるが、踏み倒せばいいだけだ。
 そんな打算を働かせた呼びかけへの返事は、イエスでもノーでもなく疑問符だった。

「あれ……?」
「おや?」
「どうしたんだ、モクバ!ドロテアでもいい!」
「いや、なんか変じゃないか?」
「うむ……」
(なにをグダグダとぬかしているんだ、マヌケども!)

 罵倒の言葉を寸前で飲み込んで、ディオは襲撃者を警戒しながら再び振り向いた。
 そして、モクバたちを視界に収めたとき、違和感を覚えた。
 目線が先程までよりも低い。

(なんだ、この感覚は?まるで……そう!)

 あまりにも荒唐無稽なその答えは、モクバによって叫ばれた。

「見間違いじゃないッ!ディオが……ディオが縮んでる!」
「なにィ〜!?」

 ぶかぶかになった自身のシャツとズボンを見て、ディオは頓狂な声を上げた。



 藤木茂はフフフと笑みを浮かべた。
 隠れて移動している最中に四人組を発見して、襲う計画を立てた。
 ボウガンで一人を狙い撃ち、無力化したところで追い討ちをかける。
 もし反撃を受けても、シルバースキンがあれば問題ない。
 そして誰も無力化できなかったときは、逃げてまたやり直せばいい。

(よし!計画通りだ!)

 狙いを定めたボウガンの矢は、命中こそしなかったものの一人を行動不能にした。
 少年が急接近してきたのは予想外だったが、その拳はシルバースキンの前では無意味。
 そしてお返しとばかりに、影に潜ませたセト神を、少年の影と交わらせる。

「ようやく気づいたかい?ほら、どんどん子供になる!」
「そんなバカなことが……!」

 ディオの身長はゆっくりと、しかし確実に縮んでいった。
 そうして藤木のクラスメイトの誰より小さくなったのを確認して、セト神を解いた。

「なぜだ!?どうして……」
(よし、これで準備完了だ)

 シカマルに痛い目に合わされたことから、藤木は学んでいた。
 抵抗されないように、困惑したままのディオの首に手を回して身体の近くに寄せた。
 さながらドラマで銀行強盗が人質を取るときのような体勢だ。
 そしてボウガンをディオの頭に突きつけると、銀行強盗よろしくモクバたちを脅した。


898 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:42:27 DFsdLxPQ0
「きっ、君たち!
 今すぐランドセルの中身をまとめて、こっちによこすんだ!
 さもないと……ディオ君のことをこのボウガンで撃っちゃうよ!」
「なっ……!」

 うわずった声でも、意図は伝わったらしい。
 緊張で顔をこわばらせたモクバに、ダメ押しのつもりで言葉をかけた。

「そこの……モクバ君だったかな?
 はやくしないとディオ君が死んじゃうよ!」
「クソッ!」

 歯噛みするモクバを前に、藤木はほくそ笑んだ。
 フジキングの最強の計画はトントン拍子で進んでいる。
 このまま支給品を奪い、四人とも殺せればパーフェクトだ。

「えっと、そこの女の子も!人が死ぬのは見たくないだろ?」
「妾は別にかまわんのじゃが」
「ドロテア!ダメに決まってるだろ!」
「まあ、そう言うと思ったがのう……仕方あるまい」

 ドロテアと呼ばれた少女は、しぶしぶといった様子で背負っていたランドセルを肩から外すと。

「そら、くれてやる……のじゃ!」

 十メートル以上離れたところから、それを投げつけてきた。

「うわっ!」

 学校帰りに部屋の床に放り投げるのとはわけが違う。
 ドッジボールの球もかくやという速さに、藤木は思わず目をつぶり、両手を顔の前にかざす。

(あ!シルバースキンがあるんだから、平気だ……)

 その事実に気づいたときは、もう遅かった。
 ランドセルが手に当たって落ちた感触がしたのと同時に、目を開く。
 すると、かざしていた両手の向こう側に、ドロテアが迫ってくるのが見えた。

「ひいっ……!」

 反射的にトリガーを引くも、ぶれた矢は明後日の方向へと飛んで行く。
 ディオ以上のスピードで迫りくるドロテアに、藤木は慌てて次の行動を迷った。
 その隙に、ドロテアはディオの首根っこを掴むと、モクバたちのもとへと跳びすさった。
 一秒にも満たない時間では、セト神を交わらせる間もない。

「ナイスだ!ドロテア!」
「そんな……」

 こうして、あえなく藤木の人質作戦は失敗した。
 代わりに手に入ったのは、少女のランドセルだけだ。
 藤木は呆然と立ち尽くしてしまった。



 海馬モクバは次の手を打つために、頭をフル回転させていた。
 キウルの麻痺は継続しており、弓を引くなどの戦闘に関わる行為は困難のようだ。
 ディオの身体が縮んでいるのも同様。相変わらず服はぶかぶかだ。
 現状で万全に動けるのは、モクバとドロテアのみ。

(さあ、あいつはどう出る?)

 襲撃者は新たな矢を装填し、ドロテアと対峙していた。
 ドロテアにディオを奪還された直後は呆然としていたものの、立ち直ったようだ。
 つまり、まだ諦めてはいないらしい。勝算があるのか、はたまた虚勢や無謀の類か。

(どっちでもありえるけど……)

 ゲームに慣れているモクバでも、そこを読み切るのは難しい。
 これまでの襲撃者の口調や態度から推測すれば、後者に思える。
 しかし、事実として襲撃者の『身体を縮ませる能力』は驚異的だ。

(……いや。どちらにせよ、ここであいつを放置するのは得策じゃない!)

 モクバは脳内に浮かんでいた逃げの一手を、頭を振って否定した。
 そして、キッと襲撃者をにらみつけた。目深にかぶった帽子で表情は見えない。
 この襲撃者を野放しにするのは、他の対主催にとって危険だ。
 モクバはかたわらのドロテアに小声で訊ねた。


899 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:49:42 DFsdLxPQ0
すみません、>>898 を以下に差し替えます。一部変更してあります。

「きっ、君たち!
 今すぐランドセルの中身をまとめて、こっちによこすんだ!
 さもないと……ディオ君のことをこのボウガンで撃っちゃうよ!」
「なっ……!」

 うわずった声でも、意図は伝わったらしい。
 緊張で顔をこわばらせたモクバに、ダメ押しのつもりで言葉をかけた。

「そこの……モクバ君だったかな?
 はやくしないとディオ君が死んじゃうよ!」
「クソッ!」

 歯噛みするモクバを前に、藤木はほくそ笑んだ。
 フジキングの最強の計画はトントン拍子で進んでいる。
 このまま支給品を奪い、四人とも殺せればパーフェクトだ。

「えっと、そこの女の子も!人が死ぬのは見たくないだろ?」
「妾は別にかまわんのじゃが」
「ドロテア!ダメに決まってるだろ!」
「まあ、そう言うと思ったがのう……仕方あるまい」

 ドロテアと呼ばれた少女は、しぶしぶといった様子で背負っていたランドセルを肩から外すと。

「そら、くれてやる……のじゃ!」

 十メートル以上離れたところから、それを投げつけてきた。

「うわっ!」

 学校帰りに部屋の床に放り投げるのとはわけが違う。
 ドッジボールの球もかくやという速さに、藤木は思わず目をつぶり、両手を顔の前にかざす。

(あ!シルバースキンがあるんだから、平気だ……)

 その事実に気づいたときは、もう遅かった。
 ランドセルが手に当たって落ちた感触がしたのと同時に、目を開く。
 すると、かざしていた両手の向こう側に、ドロテアが迫ってくるのが見えた。

「ひいっ……!」

 反射的にトリガーを引くも、ぶれた矢は明後日の方向へと飛んで行く。
 ディオ以上のスピードで迫りくるドロテアに、藤木は慌てて次の行動を迷った。
 その隙に、ドロテアはディオの首根っこを掴むと、モクバたちのもとへと跳びすさった。
 一秒にも満たない時間では、セト神を交わらせる間もない。

「ナイスだ!ドロテア!」
「そんな……」

 こうして、あえなく藤木の人質作戦は失敗した。
 代わりに手に入ったのは、少女のランドセルだけだ。
 藤木は呆然と立ち尽くしてから、ランドセルに跳びついた。



 海馬モクバは次の手を打つために、頭をフル回転させていた。
 キウルの麻痺は継続しており、弓を引くなどの戦闘に関わる行為は困難のようだ。
 ディオの身体が縮んでいるのも同様。相変わらず服はぶかぶかだ。
 現状で万全に動けるのは、モクバとドロテアのみ。

(さあ、あいつはどう出る?)

 襲撃者はドロテアのランドセルの中身を検めていた。
 ドロテアにディオを奪還された直後は呆然としていたものの、立ち直ったようだ。
 つまり、まだ諦めてはいないらしい。勝算があるのか、はたまた虚勢や無謀の類か。

(どっちでもありえるけど……)

 ゲームに慣れているモクバでも、そこを読み切るのは難しい。
 これまでの襲撃者の口調や態度から推測すれば、後者に思える。
 しかし、事実として襲撃者の『身体を縮ませる能力』は驚異的だ。

(……いや。どちらにせよ、ここであいつを放置するのは得策じゃない!)

 モクバは脳内に浮かんでいた逃げの一手を、頭を振って否定した。
 そして、キッと襲撃者をにらみつけた。目深にかぶった帽子で表情は見えない。
 この襲撃者を野放しにするのは、他の対主催にとって危険だ。
 モクバはかたわらのドロテアに小声で訊ねた。


900 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:51:16 DFsdLxPQ0
「ドロテア、あいつを止められるか?」
「いまプレッシャーを与えて止めておるじゃろ。それとも、殺してよいのか?」
「それは……」

 あまりにも自然に殺すという選択肢を出してくるドロテアに、モクバは閉口した。
 ドロテアはフンと鼻を鳴らして、言葉を続けた。

「……どのみち、あの防御性能は一筋縄ではいかなそうじゃ」
「そうか……」

 モクバはドロテアの言葉を受けて、さらに思考を重ねる。
 この場を乗り越えたその先を見据えながら、この場で取るべき最善手を探ろうと。
 そして、ひとつの結論を出した。

「ディオ、あんたはキウルと先に行け」
「なに!?この僕に尻尾を巻いて逃げ出せというのか!」
「そうじゃない。これは作戦だ」
「作戦だと?」
「ああ。俺とドロテアであいつを食い止める。二人は先に目的地に向かってくれ。
 ここで足止めされて、タイムロスをするのは得策じゃない……それはわかるだろ?」

 モクバは言葉を選びながら、説得を試みる。
 プライドの高いところのあるディオに、露骨に逃げろと言うのは躊躇われたのだ。

「それに――」
「それに、動きの鈍い人間は良い“的”じゃ。
 何度も都合よく助けてもらえるとは思わんほうがいいぞ」
(……おい!煽ってどうする!)

 口を挟んできたドロテアの物言いに、モクバは緊張した。
 発言の意図それ自体は、モクバも考慮していた部分ではある。
 モクバたちは人数の上では有利でも、襲撃者に対処できるのはドロテアのみ。
 そのドロテアとて、ディオやキウルに配慮し続けるのは簡単ではないはずだ。
 それも、ディオたちにここから離れることを提案した理由の一つだった。
 しかし伝え方は最悪に近い。モクバは内心で焦りながらディオを見た。

「……わかった。行こう、キウル」

 モクバの予想に反して、ディオは素直に従う姿勢を見せた。
 ぶかぶかのシャツの袖とズボンの裾をまくると、ランドセルを背負い、キウルを促す。

「しかし、いいんですか……?」
「ああ。ここはモクバたちに任せる……僕たちがいても、足手まといだ」

 モクバは選ばなかった言葉を、ディオ自ら口にした。
 その現実を認識させてしまったことに、モクバは申し訳なさを感じた。

「悪い、ディオ」
「……目的を忘れるなよ。あいつは殺しておくべきだ、とだけ伝えておこう」
「……」

 こちらを見上げてくる鋭い視線に、モクバは返答できなかった。
 しばらくして、ディオはモクバたちに背を向けて、小走りに駆け出した。
 キウルもモクバたちに一礼して、ディオの後を追いかけていった。



 ドロテアは獰猛な笑みを浮かべて、襲撃者を見ていた。
 ドロテアがディオたちを遠ざけたかった理由は、足手まといだからというだけではない。

「これで本気を出せるというものじゃ」

 現状のドロテアは、モクバと同行することで『生存の安全圏』を保障されている。
 ディオたちと同行している状態でも、その契約自体は変わらない。
 とはいえ、やたらと凶暴性を曝け出していては、契約も無為に帰してしまうと考えた。
 つまり、惜しみなく凶暴性を出すために、モクバの提案に便乗してディオたちの目を遠ざけたのだ。

(それに……彼奴の能力。非常に興味深いのう)

 若さを保つための研究を重ねてきたドロテアにはわかる。
 あれは身体を縮ませているというより、むしろ若返らせているのだ。
 数多の人物が求めたその能力を、ただの子供が使用しているという事実。
 いち錬金術師として、ドロテアの好奇心はみなぎっていた。

(さて、あとはどう彼奴を倒すかじゃが……)

 ドロテアは白装束の防御をどう突破するか、思案する。
 一本の矢によって開かれた戦端。この均衡状態を崩すのは誰か。


901 : ビギナーズラックの嚆矢 ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:55:21 DFsdLxPQ0
【E-3 北西部/1日目/黎明】

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]精神的疲労(中)、疲労(中)、敏感状態、服は半乾き、怒り、幼児化(あと一時間弱)
[装備]バシルーラの杖[残り回数4回]@トルネコの大冒険3(キウルの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:ひとまず港へ行くor付近の施設で休憩する。
1:キウルを利用し上手く立ち回る。
2:先ほどの金髪の痴女に警戒。奴は絶対に許さない。
3:ジョジョが巻き込まれていればこの機に殺す。
[備考]
※参戦時期はダニーを殺した後


【キウル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)、疲労(大)、敏感状態、服は半乾き、軽い麻痺状態
[装備]弓矢@現実(ディオの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 闇の基本支給品、闇のランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いからの脱出
0:ひとまず港へ行くor付近の施設で休憩する。
1:ディオを護る。
2:先ほどの金髪の少女に警戒
3:ネコネさんたち、巻き込まれてないといいけれど...
[備考]
※参戦時期は二人の白皇本編終了後


【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]健康、高揚感
[装備]血液徴収アブゾディック
[道具]なし
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:襲撃者(藤木)に対処。若返らせる能力に興味。
1:とりあえず適当な人間を三人殺して首輪を得るが、モクバとの範疇を超えぬ程度にしておく。
2:妾の悪口を言っていたらあの二人(写影、桃華)は殺すが……少し悩ましいのう。ひっそり殺すか?
3:海馬モクバと協力。意外と強かな奴よ。利用価値は十分あるじゃろう。
4:海馬コーポレーションへと向かう。
5:...殺さない程度に血を吸うのはセーフじゃよな?
[備考]
※参戦時期は11巻。


【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:青眼の白龍@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜を止める。人の心を取り戻させる。
0:襲撃者(藤木)に対処。殺すのは止めたいが……。
1:G-2の港に向かい船に乗ってマップの端に向かう。
2:殺し合いに乗ってない奴を探すはずが、ちょっと最初からやばいのを仲間にしちまった気がする
3:ドロテアと協力。俺一人でどれだけ抑えられるか分からないが。
4:海馬コーポレーションへ向かう。
[備考]
※参戦時期は少なくともバトルシティ編終了以降です。
※ここを電脳空間を仮説としてますが確証はありません


【藤木茂@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康、手の甲からの軽い流血、シルバースキンを展開中
[装備]:シルバースキン@武装錬金、セト神のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×10、ドロテアのランドセル(基本支給品、ランダム支給品×0〜2)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗る。
0:目の前の二人を……!
1:次はもっとうまくやる
2:卑怯者だろうと何だろうと、どんな方法でも使う
3:永沢君達もいるのかな…
4:僕は──フジキングなんだ


902 : ◆RTn9vPakQY :2023/06/20(火) 20:56:25 DFsdLxPQ0
投下終了です。
誤字脱字・矛盾等、気になる点がありましたらご指摘ください。


903 : 殺人競走(レース)」スタンバイ! ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/20(火) 21:57:26 70e0G8ZY0
投下します


904 : 殺人競走(レース)」スタンバイ! ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/20(火) 21:57:39 70e0G8ZY0
カラカラと、硬く乾いた音が絶え間なく聞こえ続ける。
 ハーマイオニー・グレンシャーを求めて、イーデン校の舎内を彷徨うヘンゼルが引きずる鉄パイプが、床と擦れる音だ。
 時折鉄パイプを振り回して、壁や床を殴打し、ガラスを叩き割りながら、広い校舎の中をヘンゼルは当ても無く歩いて行く。
 途中で行き着いた厨房から、肉切り包丁やナイフといった刃物類を複数入手し、去り際に火を放ってから、適当に火やカマイタチで校舎を破壊しながら探索するも、ハーマイオニーは見つからず、広大な校舎は未だに九割以上無傷のままだ。
 灯火に火球を放ってから十五分。ヘンゼルを欺いて、上手く姿を隠したハーマイオニーとの隠れんぼも、最初こそは愉しかったが、これだけの時間、進展が無ければ飽きてくる。

 「此処には居ないのかな」

 ハーマイオニーに逃げられた事実を漸く受け入れたヘンゼルは、腕組みして考え込む。

 「逃げるとしたら、何処だろう」

 乃亜の話は、歩きながら聞いていた。既に14人が死亡したと聞いても、ヘンゼルは特に思うことは無い。ハーマイオニーに逃げられなければ、丁度15人で区切りが良かった…と思っただけだ、
 それよりも重要なのは、纏めて五人も殺した者が居るという事。未だにこの殺人競争(レース)でスコアが0のヘンゼルは、次の放送までに少なくとも6人殺して首輪(トロフィー)を集めておかなければ、一位になれない。
 
 「現在(いま)の一位は姉様かも知れないしね、そうでなくとも合流した時に0じゃあ、ガッカリされてしまうよ。それにやっぱり勝ちたいしね」

 グレーテルの様な、ヘンゼルと同じ厄種でなければ理解できない内容の独り言。ハーマイオニーが聞けば、理解不能の恐怖に竦み上がった事だろう。

 「お姉さんは何処に行ったんだろう。お姉さんとだけ遊んでいる訳にもいかないのに」

 頬を膨らませてむくれる姿は、歳相応にあどけないが、思考を占めるのは鮮血色の光景だ。ハーマイオニーを追い詰めて、惨殺する。それ以外はヘンゼルの思考のうちに存在し無い。
 
 「コレ(鉄パイプ)で動かなくなるまで殴ろうと思ってたんだ。大丈夫だよ、慣れてるんだ。何処を殴れば死んでしまうか、どう殴れば長く持たせられるか、ちゃんと知ってるんだ」

 過去に何人も積み上げた死体の数が裏打ちする経験。それをフルに活かして長く時間を掛けて殺すという、ハーマイオニーが識れば絶望に囚われそうな処刑宣告は、しかし、唐突に撤回された。

 もう遊んでいる暇は無くなちゃったからね。お姉さん以外にも5人殺さないといけないんだ。…だから、コッチで殺してあげる」

 そう言って、ヘンゼルがランドセルから取り出したのは、黒鞘の日本刀。ヘンゼルが乃亜から与えられた最後の支給品。その名も『死者行軍・八房』。この刀で殺害された者を、刀の持ち主の意のままに動く骸人形に出来る帝具。
 凡そ死者の尊厳など意識の端にすら無く、死体を損壊し、喰らう者どもが跋扈するこの地に相応しい品であった。
 ヘンゼルにしてみれば、骸人形にしてしまえば、首輪(トロフィー)を回収する手間も省けるので一石二鳥でもある。
 
 「姉様に紹介するから、顔は傷をつけないであげる」

 さも良い事をするかの様に、ハーマイオニーに温情をかけるかの様にヘンゼルは言うと、改めてハーマイオニーを探す方法を考え始めた。

 「でもお姉さんは居ないしなぁ。何処に行ったか分かるかな」

 ヘンゼルは支給品のタブレットを取り出すと地図を閲覧する。
 取り立てて当てにはしていない。他に何も思いつかなかっただけだ。
 しかし、この行為が当たり(ビンゴ)を引く事となる。

 「ホグワーツ魔法魔術学校…きっと此処に行ったんだ!だって魔法使いのお姉さんなんだから!!」

 幼さに相応しい無邪気な単純さで、ヘンゼルはハーマイオニーの行き先を断定すると、ハーマイオニーを見つけるべく屋上へと移動を開始した。


905 : 殺人競走(レース)」スタンバイ! ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/20(火) 21:58:00 70e0G8ZY0



 「ホグワーツはあっちだね」

 ヘンゼルが向いているのは北。H–3に有るイーデン校から見て、D–3のホグワーツの位置は北に在る。
 途中に施設が二つ在るが、ヘンゼルは目もくれない。ハーマイオニーの逃亡先と決めつけたホグワーツしか意識に無い。
 神鳥の杖を振り上げると、魔力を練り上げる。
 杖の先に出来た火球が眩く輝き、夜闇を照らしながらその径を増していく。
 数分後、灯火に放った時よりも遥かに大きい、直径にして10mを超える火球を精製すると、ヘンゼルは火球をホグワーツの在る方角へと撃ち放った。
 イーデン校から、真っ直ぐ北へ、夜空に眩く輝く火球は、夜空と地面を照らし出しながら飛翔していき、やがて見えなくなった。

 「うーん。見えなかったな。お姉さん」

 あれだけの灯りで地面を照らし出して尚も姿が見えぬとなれば、かなりの距離を離されたか、若しくはホグワーツを目指さなかったかの何方かだが。

 「いいか。待っていれば、そのうち来るよね。魔法使いなんだし」

 
無邪気な信頼をハーマイオニーに向けて、去り際に屋上に火を放ってから、ヘンゼルはホグワーツへと向かい、移動を開始した。
 ヘンゼルを祝う花火の様に、厨房で大爆発が起きたのは、その直後の事だった。


【ヘンゼル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ@現実 神鳥の杖@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:皆殺し
0:あれ?逃げられた? 魔法学校で待っていればそのうち来るよね。魔法使いなんだし
1:姉様と合流したい
2:魔法の力でイロイロと愉しみたい。 人形でも遊びたい
3:魔法使いのお姉さん(ハーマイオニー)はお人形にする
4:殺した証拠(トロフィー)として首輪を集めておく
[備考]
参戦時期は死亡前です。
神鳥の杖の担い手に選ばれました。暗黒神の精神汚染の影響は現在ありません。

イーデン校の複数箇所に放火しました。屋上と爆発が起きた厨房が特に派手に燃えています


支給品紹介

死者行軍・ハ房@アカメが斬る!
日本刀型の帝具。この刀で殺した者を、人や動物を問わず最大八体まで任意で骸人形とした上で操る事ができる。
骸人形はハ房の持ち主の命令を叶えるべく、生前の技能や術技を活かして自律で動くが意思や意識は存在しない。
頭部を失っても平然と動くが、全身を砕かれたり、バラバラにされるなどすれば流石に止まる。
ロワでは制限が掛かっていて、骸人形に出来るのは参加者のみ、骸人形は生前に習得した技術は使用できるが、異能や魔法の類は使用できない。
更に骸人形は一体だけしか作れない。
だが、骸人形に7人分の人体パーツを接続する事は可能。例えば腕を7人分追加して、八対十六腕とする事も出来る。
接合したいパーツは、接合したい場所に三分間押し当てればくっつく仕様となっている。便利。


906 : 殺人競走(レース)」スタンバイ! ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/20(火) 21:58:15 70e0G8ZY0
投下を終了します


907 : 殺人競走(レース)」スタンバイ! ◆/dxfYHmcSQ :2023/06/20(火) 22:02:18 70e0G8ZY0
ヘンゼルの状態表を修正します

【H-3 イーデン校付近/1日目/黎明】

【ヘンゼル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ@現実 神鳥の杖@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0
[思考・状況]基本方針:皆殺し
0:あれ?逃げられた? 魔法学校で待っていればそのうち来るよね。魔法使いなんだし
1:姉様と合流したい
2:魔法の力でイロイロと愉しみたい。 人形でも遊びたい
3:魔法使いのお姉さん(ハーマイオニー)はお人形にする
4:殺した証拠(トロフィー)として首輪を集めておく
[備考]
参戦時期は死亡前です。
神鳥の杖の担い手に選ばれました。暗黒神の精神汚染の影響は現在ありません。

イーデン校の複数箇所に放火しました。屋上と爆発が起きた厨房が特に派手に燃えています


908 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/21(水) 19:24:03 HoVmeeFE0
投下ありがとうございます!

>ビギナーズラックの嚆矢
ディオ様、このロワ環境でその喧嘩早さは不味いですよ。
キウル君も援護を承諾するんじゃなくて、ちゃんと止めてあげた方が良いと思う。もう少し自分を出した方が良いですね。
そんな想定外の幸運に助けられたとはいえ、藤木君の奇襲自体はそれなりに上手くは行くんですよね。
それをものにできないのが、要領が悪いというべきか、まだ運よく人を殺めてないというべきなのか。
普通に考えると、ドロテアが藤木君に負ける要素あんまりないんですけど、ちょっとスタンド能力見て欲出してるのが危ない兆候っぽいかもですね。
モクバが何処まで手綱を握れるかってところですかね。

>殺人競走(レース)」スタンバイ!
これもうハーマイオニーに対して、恋に落ちてるだろこいつ。
滅茶苦茶付け狙ってて草。姉様に紹介じゃねえよ。
ロンといい、ハーマイオニーはろくでもない男にモテてしまう悲しき性なのかもしれませんね。百合の可能性もあるんですけど。
ちゃんと行先もホグワーツだろってなる辺り、頭も回るし炎で辺り照らしてハーマイオニー探したりと気も回るのが質が悪い。
あと一体しか維持できないのに、ピンポイントで骸人形化タゲられてるハーマイオニーで笑っちゃいますね。


909 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/22(木) 17:20:56 0s/8c3Po0
山本勝次、有馬かな、龍亞、北条沙都子、メリュジーヌ、奈良シカマル、的場梨沙、灰原哀、ドラコ・マルフォイ
予約します。延長もします。


910 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/22(木) 19:34:21 MnH.vpgs0
申し訳ありません、予約を破棄します


911 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:02:30 IF2mB/4g0
フリーレン、美山写影、櫻井桃華、ハーマイオニー・グレンジャー、我愛羅予約して投下します


912 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:03:56 IF2mB/4g0


勇者ヒンメルの死から28年後。
戦闘実験プログラム島。海馬乃亜領。



───厳密には君たちのその技術は魔法とは違う様だから畑違いの意見になるけど…
───魔法の世界ではイメージこそ重要なんだ。魔法の世界ではイメージできないモノは実現できないからね。



伝説の魔法使いフリーレンの口からその言葉を聞いた時。
学園都市の超能力開発と同じだ、と写影は思った。
能力開発において、Personal Reality(自分だけの現実)という概念がある。
学園都市の能力者にとって超能力の源であり、超能力の存在する現実とはズレた世界を観測し、そのミクロな世界を操る力。
これは言う者が言ってしまえば己だけにしか見えない妄想、思い込みであり。
また現実にはあり得ぬ不可能を可能であると、可能性を信じる意志の力だとする者もいる。
尤も、その是非は今の写影にとってどうでも良かった。
重要なのは、フリーレンのそのアドバイスは、自身の能力の向上に通じるモノだった、という事だけ。


───イメージしろ。そして信じるんだ。今重要なのは、精度を上げること。


できると、信じる。
空気を吸って呼吸するように。
HBの鉛筆をべきっとへし折る様に。
出来て当然と、そう思う事だ。
支給された帝具、スペクテッドは自分の演算能力の補助装置。
『身近な範囲の未来の不幸を予知し、それを写真映像として投影する』
この能力は自分が観測する能力であり、他人に観測結果を見せられる能力でもある。
能力を拡大解釈しろ。幅を広げろ。
想起するのはガッシュの兄であるゼオンをやりすごした時の感覚。
電撃に貫かれる未来を予見し、またその映像を投影する事によってあの状況を切り抜けた。
自分にできる事は、“視る”だけだ。だから、その一点を極めぬけ。


───残念だけど、ハッキリ言って付け焼刃の力じゃ戦い慣れている相手には勝てない。
───見習い魔法使いの実戦での死亡率、聞きたい?


確かに、そうなのだろう。
この努力は無駄なのかもしれない。
結局の所自分の力ではこの島に跋扈する強者たちには逆立ちしても勝てなくて。
全てが徒労に終わるのかもしれない。


(でも…例えそうでも、自分は出来るだけの事をやった。そう思いたいじゃないか)


ゼオンはこの島でも強者に位置する子供…だと思う。
そんな彼にも、自分の能力…と言っていいが分からないが、一度は通用したのだ。
もう一度やれと言われてできる自信はないけれども。
それでも、一度通用したなら可能性はあると思いたかった。
だからこそ休息もそこそこに、こうして能力の研鑽を試みている。


(…でもやっぱり、遠視と透視を組み合わせるのは厳しいな…負担も大きい)


スペクテッドを使用し演算を補助したとしても、能力の拡大解釈には限度がある。
能力の負荷で鼻から流れ出る鼻血を袖で拭いながら、それを認識した。
これ以上能力を高めるために能力を使用すれば、実戦時に体力切れの憂き目に遭うかもしれない。それでは本末転倒だ。
根を詰めすぎず、また改めて休息を取ろう。
丁度そう思った、その時だった。


913 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:04:37 IF2mB/4g0
「写影さん。今、少し宜しいですか?」


こんこんと部屋をノックするのは、この島で最初に出会った女の子だった。
どうぞ、と短く返事を待ってから、桃華が入って来る。
その瞬間、写影はさっと視線を逸らした。
理由は単純、発動したままの透視により、色々見えてしまうのではと懸念したからだ。
服の下が見える程度ならいいが、最悪の場合臓物すら見える恐れがある。
そうなる前に、素早く能力の行使を停止し、向き直る。
どうしたのか尋ねる前に、桃華の視線が、写影の顔のある一点に集中している事に気づく。


「写影さん、鼻血が……」


どうやら、拭い残しがあったらしい。
慌ててごしごしともう一度袖で顔を拭おうとするが、桃華はそれを手で制す。
そのままポケットから取り出した一万円以上しそうなハンカチを取り出して、そして言った。


「じっとしてくださいまし」


そっと、繊細なガラス細工を扱うような手つきで優しく血を拭う。
高そうなハンカチが汚れると、写影が指摘する暇もない、迷いのない所作だった。
そして、真面目な視線で、桃華は静かに問いかけた。
何を、なさっていたんですの?と。
写影の瞳が、動揺で僅かに揺れる。
はぐらかすことも、誤魔化すことも後から考えれば幾らでもできた問いかけだった。
でも、桃華の瞳を見ていたら…何故か、正直に答えてしまった。
これから、少しでも生き残れる様に、能力の練習をしていた、と。


「……君の言いたい事は分かる。けど、僕には、これしか無いんだ」


視る事には長けていても、言ってしまえば写影の能力はそれまでだ。
自前の能力と組み合わせれば、雷帝すら欺く事ができても、彼自身に戦闘能力は無い。
頭脳で言っても同い年の少年少女よりも多少は利発で、大人びているけれど。
それでも子供の域を跳びぬけている訳でもない。

視ること以外に、特に何か役立てるスキルがある訳でもない。
あらゆる異能を打ち消せる右手を持っている訳でも。
あらゆる向き(ベクトル)を操る能力を持っている訳でも、ない。
空間転移(テレポーター)の風紀委員の少女ほど荒事の経験を積んでいる訳でも。
何より、彼女の様に何があっても揺るがない正義の心を持っている訳でもない。

怖いし、帰りたいけれど、同時に自分がきっと生きて帰る事ができる可能性は。
きっと、低いだろう。
同年代の子供より多少聡明な客観性を持っているからこそ、そう考えてしまう。


「…ボクみたいなただの子供が生き残ろうと思えば、多少の無茶は通さなきゃいけない」


無理も無茶もしなければ、遠からず写影は骸を晒す。
この世界(バトル・ロワイアル)は、力こそ全てにおいて優先されるのだから。
力のない正義を掲げても、それは余りに儚く脆い。
自分をかつて助けてくれた正義の味方である少女は、「貴方と私は似ている」と言ってくれたけど。
それでもきっと、自分が正義の味方(ヒーロー)になれる時は、きっと来ないと。
写影は信じて疑わなかった。


「…そうかもしれません。わたくし達が生き残るには、多少の無茶もきっと必要ですわ」


桃華の言葉から出たのは、意外にも肯定だった。
それでも無茶はいけないと釘を刺される事を予想していたし、それも真実ではあったから、頷くつもりだったけれど。
続く彼女の言葉は、写影にとって予想していなかった物だった。


914 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:05:11 IF2mB/4g0



「……ですが、視る力以外何もない何て、わたくしは言ってほしくありません。
だって、最初に出会った時も、わたくしが一人で凍り付きそうになっている時も…
写影さんは、もう二度も、わたくしを助けてくれたではないですか」


告げる桃華の視線は、写影への信頼の光を湛えていて。
けれど当の本人である写影にとってその視線は、一言で言って重かった。


「……そんなんじゃない。僕はそんな信頼に足る人間じゃない。能力も、心情も」


買い被りも甚だしい。
雷帝を欺いた未来予知と幻視の合わせ技も、所詮はまぐれだ。
もう一度やれと言われてできる自信は、皆無だと断言してもいい。
そして、自分はそんな高潔な人間でもない事は嫌と言う程分かっている。
だって、桃華を励ましたあの時、自分が考えていたのは。


───アンタが不幸を呼び込んでるんじゃないの?


その言葉を、否定したかった。ただそれだけだったのだから。


「あの時…とても酷い夢を見て……そこで言われたことを認めたくなかった。
僕が不幸を呼び込んでるわけじゃないんだって、そう証明したかった。
君を励ました言葉も、そんな考えから漠然的に出てきたものでしか…ないんだ」


何のことは無い。つまるところ、自分の逃避のためでしかなかったのだ。
全部、自分のためだった。
自分に対する黒い物が、胸の奥から噴きあがって来る。気持ち悪い。
俯いて、視線を上げる事ができない。
もし彼女から向けられる視線が大河内と同じ、嫌悪と侮蔑を含んだものだったら。
話してからその可能性に行きついて、恐怖で半ズボンの裾をぎゅっと握る。


「……それでも、わたくしの言うべきことは前に言った事と、変わることはありません」


対する桃華の言葉は、以前変わりなく穏やかな物だった。
佐藤マサオが彼女に母性を感じ取った様に、まるで失敗した子供を慰める様な声色で。
それでいて決然とした態度で、灰被りの少女は不幸の未来を視る少年に思いを届ける。


「写影さんがあの時何を考えていようと、わたくしは写影さんの言葉に助けられました。
その事実は変わりません。写影さんにだって、それは変えられません。
確かに、写影さんよりずっと立派で、力も強い方がここにはいるのかもしれませんが…」


先ほどまでと違って、反論ができない。
彼女の浮かべるその柔らかな微笑から、目が離せない。
誰もが目を奪われていく、一番星の生まれ変わりだと言われても。
その言葉を信じてしまいそうなほどに、櫻井桃華と言う少女には、人を惹きつける雰囲気を纏っていた。


「───それでも、あの時わたくし達を助けてくれたのは写影さん、貴方です。
貴方がいなければ、わたくしも、マサオさんも、赤ちゃんも、きっと亡くなっていました」


眼は口ほどに物を語る時もある。
貴方がそう思ってくれないのなら、何度でも私はそう言いますわ。
言葉にしなくても、桃華の思いは写影に確かに響いた。


「写影さんが戦えなくても、私や、フリーレンさん、ガッシュさん、一姫さんもいます。
皆さんと助け合いましょう。独りで何でも解決できてしまう方は……
きっとこの島で、首輪をつけられて目覚めてはいませんもの」


915 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:05:41 IF2mB/4g0


力を籠めて、桃華はそう伝えて。
そして、真剣な眼差しで写影の手を握った。
……暖かい手だった。でも、震えていた。
それを認識した時、写影ももう、桃華の言葉を否定する事はできなかった。


「……そう、だね。そうかもしれない」


何に対して肯定したのか、写影にも具体的には何とも言えなかった。
自分が桃華達を助けた事か。それとも助け合おうという提案に対してか。
それとも、独りで全部を解決できてしまう、都合のいいヒーローはきっとこの島にはいない、という事か。

それは分からなかったけれど。それでも、明確に認識した事もある。
桃華は、今でも震えが止まっていない。
彼女は、今もまだ、押しつぶされそうな恐怖に耐えている。
耐えたうえで、こうして自分を立ち上がらせようとしている。
それなのに、自分がいつまでも不貞腐れている訳にはいかない。
これ以上、彼女の優しさに甘える恥知らずにはなりたくなかった。


「───ありがとう。桃華。もう大丈夫」


そう言って、ぎこちなくても笑みを作る。
普段あまり使わない表情筋を総動員して、半ばやせ我慢で作った、オンボロの笑顔。
しかしそれでも、桃華はそれを見て華のように笑い返すのだった。


「……良かった。写影さん。やっと笑ってくれましたわね
これでダメなら、わたくしはアイドルとして才能がないのか疑ってしまいましたわ」

「いや、それは無いよ。君は根っからの…アイドルだと思う」


言葉と共に、もう一度笑い返す。
今度は、さっきよりもマシな笑顔が返せた気がした。
二人で笑い合った後、ところでと話を変えてみる。
さっき自分を呼びに来たのは、何か用があったのでは?と。
「あ」と桃華は忘れていた様な生返事を返して。


「そ…そうでしたわ!フリーレンさんが何か大変な事になっていて…
一緒に来ていただけますか、写影さん!!」

「…………?分かった、けど…」


何があったのかは知らないが、自分が研鑽している間に何かあったらしい。
桃華に促されるままに、フリーレンがいる部屋へと赴く。
何があったのか桃華に聞いてみても、何とも返答に困った様な顔をしていて。
兎に角実際見て欲しいという桃華の要請のままに、写影はフリーレンがいるという部屋に急いだ。






916 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:06:07 IF2mB/4g0




「暗いよ怖いよー!!!」



RPGゲームに出てくる宝箱のような物体から、尻が生えていた。
挟まっている訳でなければ出ればいいだろうと見る者は思うがそんな簡単な話ではない。
何故なら、尻が生えている箱の開閉部分には何故か鋭利な牙が生えている。
鋭利な牙で以て、尻から上の上半身をがっちり固定しているのである。
その割には挟まれている者はお尻をフリフリ振って余裕そうだが……
何これ、と言う顔で写影はその物体を指さし、傍らの桃華に尋ねる。



「……?」

「わたくしも写影さんと同じく休んでいたのですが…フリーレンさんに呼ばれまして。
写影さんも連れてこようとフリーレンさんが仰るので、一緒に呼びに行った途中、
この箱を見つけて…それでフリーレンさんがもしこうなったら、写影さんを呼んで助けて欲しいと…」

「で?こうなったの」

「はい……」


フリーレンが、写影達に語ったことはそう多くはない。
曰く、伝説上の存在であるエルフであること。
曰く、魔法使いであること。
曰く、旅をしていたこと。
曰く、数百歳を超えていること。
そして、これは直接語られた訳ではないが、荒事にも精通していること。
その彼女が、箱に食われて尻を生やしている。
一言で言って、困惑する光景だった。



「遅いよ〜〜早く助けて〜〜…」



フリーレンの催促の言葉に、はっと我に返る。
そうだ、早く助けてあげなければ。
そう思ってフリーレンの片足を掴む。
女性には普段から紳士的である様心がけている写影だったが、今は緊急事態だ。仕方ない。
片足を掴んだ写影を見て、桃華も慌ててもう片方の足を持って引っ張るが。


「いだだだだだ……押して、押してくれる?」


食らいついた宝箱は中々フリーレンを離さない。
そこで彼女の指示通り足を持ってせーので押し込んでみる。
すると宝箱はえづいた犬のようにぺっとフリーレンを吐き出した。
吐き出された瞬間、フリーレンは地面に落ちていた杖を拾い、魔法を放つ。
放たれたのはゾルトラーク。一撃で宝箱の怪物は黒い粒子になって消えて行った。
怪訝な顔で、写影はフリーレンに尋ねる。


「……今のは?」

「ミミックだよ。宝箱のフリをして人を襲う魔物だ。
いやー誰かが襲われる前に退治出来て良かった」

「そんなのがいるなら、先に魔法で倒しておけば……」

「本当に宝箱だったらどうするの?貴重な魔導書が入っているかもしれないんだよ?」

「魔物が他の人を襲わない様にするためじゃなかったの?」


写影は思った。
この人、意外と俗っぽいな、と。
でも口には出さず、彼女が自分と桃華を呼ぼうとしていた理由を尋ねる。


「あぁ、私はちょっと厨房に寄るから、先にさっきガッシュたちと話した部屋で待ってて
待ってる人もいるから。大丈夫、この殺し合いに乗ってる様な子じゃない。多分」


どうやら、自分達が個室で休息をとっている間にフリーレンは色々していたらしい。
その上、他の参加者にも出会っていたという。
写影と桃華は顔を見合わせて、取り合えずその人物に会ってみよう、という事になった。
フリーレンと別れ、先ほどガッシュたちと集まった広間に向かう。
取り合えず、警戒されない様にこんこんとノックをして、「どうぞ」と言われてから扉を開ける。
すると、中で待っていたのは茶の豊かな髪にウェーブをかけた、聡明そうな少女だった。
少女は食事をしていたのかその手のナイフとフォークを置いて、口の端を拭い。
理知的な雰囲気で、写影達に名乗った。


「貴女達が写影に桃華ね。ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしく」


917 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:06:38 IF2mB/4g0






ハーマイオニーが、グレイラッド邸に辿り着けたのは全くの偶然だった。
本来であればさっさとホグワーツに向かう予定だったけれど。
あの銀髪の少年に鉄パイプを投げつけられた背中が痛んだのだ。

せめて、手当てがしたい。それに、このまま直接ホグワーツに向かえば。
さっきの男の子がまた追いかけて、ハリーやロンが襲われるかもしれない。
学年主席の自分だから対応できたものの、ロンなどが襲われれば最悪の事態も予想できる。

だから、一旦落ち着いて体の回復に努めるために。
また、銀髪の少年を撒くためにこのグレイラッド邸に寄った形になる。
参加者が善悪問わず寄り付きやすい地図に載っている施設を目指すという考えは、普段の彼女からすれば些か短慮な物だったが。
それでも、今回はうまい具合に嵌まったと言える。
その結果、フリーレンに会う事が出来たのだから。
そうして、この部屋に通されて、今に至る。


「……という訳よ。拾って手当してくれたフリーレンには感謝してるわ。
屋敷しもべ妖精みたいで驚いたけど、まだ本で読んだことのない妖精種がいたのね」

「……ハーマイオニーさんも、魔法使いなんですの?」

「えぇそう。地図にもあったでしょ?ホグワーツ魔法魔術学校で魔法の勉強をしていたの。
イギリスにあるはずのホグワーツが、何故この島にあるのか分からないけど」


ハーマイオニーとの情報交換は淀みなく進んだ。
ゼオン、奇術師の子供、シャルティア、北条沙都子、銀髪の子供…
双方知りえる危険人物の情報を共有し、次にお互いの事や自分達は並行世界から連れてこられているのではという仮説などを話し合った。
両親が歯医者のマグル出身の家庭であるハーマイオニーにとってマグルと話すことはホグワーツに入学するまで当たり前の事だった。
それ故に、純潔の魔法族と違い偏見や先入観を持たずに話し合えたのだ。
……時折、余りにも常識が違う事に彼女は頭が痛そうにしていたけど。


「取り合えず、ホグワーツに向かうのは日が昇ってからにしようと思うわ。
折角貴女達と会えた事だし、まだ私や貴女達を襲った子が近くにいるかもしれないし」

「うん、それがいいよ。君が魔法使いとしてどれぐらい凄いのかは分からないけど……
フリーレンは、頼りになる人だから」


ハーマイオニーにとって、フリーレン達に会えたのは正に降って湧いた幸運だったと言えるだろう。
彼女は本気で、この会場にヘンゼルの様な人間しかいなければ、殺し合いをするしかないと考えていたのだから。
特にフリーレンには傷の手当だけでなく食事まで振舞ってもらった。
相当な魔法の使い手である事も察せたので、守って貰えるという打算もあったものの。
それでも彼女の近くにいるのは自分にとって大きくプラスだ。彼女は冷静さを取り戻した頭でそう考えた。
そんな時だった、フリーレンが大皿を一つ持って部屋に入ってきたのは。


「はいはい、お待ちどう。今のうちにお腹を膨らませとくと良い」

「まぁ……これ、フリーレンさんが作ったんですの?」


そこに盛られていたのは、ハンバーグだった。
皿一面に、ドンと分厚い肉の塊が湯気を立てて鎮座していた。


「凄いでしょ。材料が丁度厨房にあったから作ってみたんだ。
私の仲間アイゼンから教わった、戦士を労う1kgハンバーグだ。味わって食べなさい」


ムフー、と得意げな顔で、フリーレンは巨大な肉塊を食べるように促す。
幾ら食べ盛りの子供でもこの殺し合いと言う緊張下で、腹に収まるかと不安を覚えた写影だったが。
いただきます。と言ってから一口食べると、それは杞憂に終わった。


「美味しい……!」


濃厚な肉の風味が伝わってきて、口の中一面に滋養が満ちてくる。
分厚い肉の塊なのに、口当たりも軽くて、ぱくぱく食べる事ができる。
同じく自分が作ったハンバーグに舌鼓を打つフリーレンの方を見ると、彼女は得意げな顔でムフーと鼻を鳴らし。


「凄いでしょ。何て言ったって魔法がかけてあるんだ」

「何の魔法?」


魔法というフレーズにハーマイオニーが反応を示すが、フリーレンは思わせぶりに笑って。
秘密、とだけ言ってはぐらかした。
ハーマイオニーは一瞬不服そうな顔をするものの、直ぐにハンバーグに口をつけて顔をほころばせる。
全員こんな殺伐とした場所で、こんな料理を楽しめるとは思っていなかった。
これが、最後の晩餐になるかもしれない場所以外で食べたかったが。
そんな考えが全員に浮かびつつも、桃華が肉を飲み込んでからフリーレンに尋ねる。


「アイゼンさんと言う方から教わったのですか?このハンバーグ」

「うん、アイゼンはドワーフの戦士なんだけど、意外とこういうのが好きでね。
今の仲間の…シュタルクが誕生日になったら作ってあげようと思ってたんだ」

「それは素敵ですわね…!きっと、楽しい旅だったでしょう?」


918 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:07:02 IF2mB/4g0


そう問われたフリーレンは瞳を僅かに揺らし。
少しの間沈黙してしまった。
しまった、何か聞いてはいけない事を聞いてしまったか、と。
桃華の胸が仄かに跳ねる。
だが、彼女のそんな懸念とは裏腹に、フリーレンはいたずらっ子の様に笑って。


「勿論。旅をしている日々は、私の長い人生の中でも一番楽しかった。
私の仲間のヒンメルもね。言ってたんだ。どうせするなら、楽しい旅をしよう。って」


彼女の千年を超える生涯の中で。ほんの瞬きの様な日々だったけれど。
それでも、自分の人生が始まったのは森の中でヒンメルに誘われた瞬間だったと、そう思っている。
あの日々こそ、フリーレンの今を形作っている。
あの日々があったからこそ、彼女はこの殺し合いでもその生きざまを変えることは無い。


「……そうだね。きっと、それがいい」


水の入った木のカップを置いて、独り言ちる様に写影が賛同する。
桃華の言葉と、フリーレンの作ってくれた食事のお陰で。
失意の庭の影響は、彼の中から抜けつつあった。


「ありがとう、フリーレン。本当に、本当に……美味しかった
残りがあったら、ガッシュたちにも食べさせてあげれば喜ぶと思う」

「うん、もう余った残りは詰めてある」


多分今日食べたハンバーグの味は、生涯忘れないだろう。
どうしても、もし生きて帰られたら、という枕詞が付いてしまうが。
そうして、食事はその後何事もなく進み、桃華がフォークとナイフを置いて一息ついてから提案する。


「そうだフリーレンさん、後でわたくしにそのハンバーグのレシピ、教えていただけないでしょうか?」

「そうね。私も知識として知っておきたいわ!」

「うん、勿論いい──」


桃華が提案し、ハーマイオニーがそれに賛同して。
提案をフリーレンが快く受け入れようとした、その時の事だった。
フリーレンの挙動が止まる。
何かを察知したように部屋の天井付近の虚空を見つめて。
そして十秒ほど押し黙った後、全員に静かに指示を出した。


「桃華、荷物は纏めてある?」

「え?えぇ、フリーレンさんに言われた通り、写影さんの分も」

「なら良し。ハーマイオニーも自分の荷物は持ってるね?」

「え、えぇ……どうしたの?」


フリーレンの纏っていた雰囲気は、先ほどまでとは違うモノだった。
冷淡で、感情を感じさせない。氷の様な美貌。
かんばせの唇を滑らかに動かして、直ぐに此処を立つ、と告げて。
西側の窓に駆け寄り、素早く開けた。


「…各々荷物を持って準備をして。あと四十秒で此処を出る」

「えっ?でも、一姫さん達は……」

「一姫には私達がここで何かあった時の行き場所も伝えてある。さぁ行くよ」


919 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:07:49 IF2mB/4g0


怒気こそ孕んでいない物の、冷淡なその声は有無を言わせない。
論理性にこだわり、説明を求めがちなハーマイオニーですら一瞥しただけで床に置いてあった自分のランドセルを引っ掴んだ。
写影と桃華は更にその挙動に淀みがない。
二人とも既にフリーレンの指示に従うことが最も生存確率を上げると理解しているからだ。
この場にいる四人の中で、一番フリーレンが危機に対する嗅覚が効き、対処も的確だ。
その彼女が出る、と言った以上、この屋敷には危機が迫っているのは伺えた。


「準備できましたわ!!」


桃華、写影、フリーレンの三人が部屋に持ち込んでいたランドセルを担いで、足早に開けた窓の前に集合する。
ここまで三十秒程。
フリーレンにとっても素人の子供達にしては全員中々優秀な挙動だった。
全員、子供でありながら一定以上の聡明さがあるからだろう──そう思いつつ、フリーレンは桃華に新たな指示を提示する。


「よし、桃華。桃華と私が出会った時の様に突風を起こして私達を打ち上げられる?」

「え?え、えぇ…打ち上げるだけなら。でも、操作まではまだ……」

「十分だ、初速を付けたら私が飛行魔法で軌道は制御する。
桃華はとにかくここから真っすぐの方角にできるだけ強く打ち出して。急いで」


フリーレンが急かしている。
これは尋常な事態ではない。
桃華は突然振られた責任の重い仕事に僅かに逡巡を見せたものの。
直ぐに力強く頷いて窓の前に向き直った。


「皆さん!わたくしの周りに集まって下さいまし!!」


桃華が叫ぶより前に、桃華の周りにフリーレンと写影が集まり、最後に桃華の力を良く知らないハーマイオニーが続く。
全員の肩がぶつかる距離着た瞬間、桃華はその背にスタンド『ウェザーリポート』を顕現。
そして、数時間前に行使した時と同じように突風を発生させる───!!


「な、なにこれ。貴女、マグルじゃ──?」

「黙ってて、舌を噛むよ!!」


ハーマイオニーが知的好奇心を刺激されて尋ねるものの、応えている時間は無かった。
そのまま全員が突風に攫われて、屋敷の外へと打ち出されて行く。
ジェットコースターを降り始めた時のような凄まじい浮遊感が、写影達三人を包む。
そのままぐんぐんと屋敷から離れた所で──風に揉まれる様な不自由さはなくなった。
フリーレンが、飛行魔法を掛けたのだ。
そのまま一同は隣接していたエリアの一番大きな民家の前に降り立つ。
地面にへたり込み、一息ついた後、一体全体どうしたのかを尋ねた。
まだ事態を飲み込めていない三人対して、フリーレンの返答は簡潔だった。


「簡単だよ。私達に害を持っている可能性が高くて、
強い参加者が屋敷まで来ようとしていた」

「確かなの?」


ハーマイオニーの問いかけに、フリーレンは無言で頷く。
そして、そう思った根拠を述べた。


「ハーマイオニー、君と出会った時、屋敷の外だっただろう?
あの時私は、屋敷の近くに結界を張って帰る途中だったんだ」


920 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:09:31 IF2mB/4g0


旅の中で野営の時に張る、魔族や魔物に反応する結界。それが破壊されたという。
一姫には予め結界を張っていない地点を教えているため、ガッシュも問題なく入れるし。
別の場所でガッシュが結界に触れて反応すれば結界は問題なく機能し、少なくともフリーレンは無事で結界内にいるという目印にもなる。
逆に言えば、本来結界を張っているはずの場所に触れてガッシュに何も反応が起きないのなら、それは結界が破壊されているという事になる。
その場合は屋敷の敷地に近づかず、直ぐにその場を離れ、
事前に打ち合わせた通り、放送の二時間後に隣接したエリアであるH-5の一番大きい民家で落ち合う様、一姫と示し合わせていた。


「…君でも、勝てない相手かい?」


写影が少し目を伏せがちに尋ねる。
見渡してみれば、桃華も、ハーマイオニーも、不安げな表情でフリーレンを見つめていた。
この場にいる全員、フリーレンの力量を実際に目の当たりにしたことはないけれど。
それでもこの場で最も荒事に精通しており、永い時を生きる魔法使いである彼女が真っ先に逃げを打った。
それはこの場にいる少年少女たちが不安を抱くに十分な事態だった。
対するフリーレンは、そんな彼等の問いかけと視線に対して。



「勝つよ。私もまだ死にたくはないし」



一言で、そう断言したのだった。
これは、普段のフリーレンらしからぬ発言だったが、敢えて口にした。
フリーレンは熟達した魔法使いではあるが、無敗の存在ではない。
彼女は人生でこれまで11人の魔法使いに敗北を喫した事がある。
魔族が四人、エルフが一人、人間が六人。
打倒した魔王だって、彼女一人では到底太刀打ちできない存在だった。
この会場にも、フリーレン一人では及ばぬ参加者はきっと複数存在している。
それは理解していたが、三人の手前今ここで悲観的になる訳にもいかない。
彼女はフッと笑みを浮かべて。


「でも、私は強い相手と戦うのは嫌いなんだ。逃げて済むなら逃げた方がいいでしょ」


フリーレンが勝ったとしても、犠牲が出てしまっては意味がない。
逃げられるなら逃げてしまった方がいい。
それがフリーレンの決定だった。


「…うん、そうだね。フリーレンの判断は、正しいと思う」


ある意味消極的とも取れるフリーレンの判断ではあったが、守られる立場である者が反感を抱ける筈もない。
むしろ彼女は他の参加者よりも自分達の安全を優先してくれている。
それが汲み取れない程精神的に幼い者は、この場にはいなかった。


「……でも、心配ですわね。ガッシュさん達。争いに巻き込まれなければいいのですけど」



桃華の言葉に、フリーレンは少しの間答えられなかった。
彼女の永い永い人生において、魔族とは殺す物であり。
その身を案じる様な存在では断固として無かったのだから。
恐らく、自分とガッシュが心を真に通わせることは無いだろう。
フリーレンはその聡明な叡智で以てそれを理解していた。
理由は単純、危険だからだ。主に、生還した後が。
魔族に情けをかける恐れを、ほんの一欠けらでも作ってはいけない。
ガッシュが例え善良な魔族であっても、フリーレンの知る魔族はそうではないのだから。
だから、フリーレンは写影達には直接告げぬままに。
ガッシュとはどうしようもなく心を隔てる壁を作っている。
だがそれでも、彼とは一応の仲間である事もまた確かであり。
フリーレンは冷静にその事実を認めて、桃華達にその言葉を送った。



「………心配ないよ、ガッシュは強いから」



まさか、自分がこんな言葉を吐くとは思わなかった。
全く、人生は何が起こるか分からない。


921 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:09:57 IF2mB/4g0


【H-5/1日目/黎明】

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]精神疲労(小)、疲労(小)あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど
3:一旦休息を取る。
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。


【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
3:……マサオさん
4:マサオさんが心配ですけど、今はガッシュさん達に任せる。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。


【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、戦士の1kgハンバーグ
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:1回放送後、H-5の一番大きな民家(現在居る場所)にて、ガッシュ達と再合流する。
5:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。
※グレイラッド邸が襲撃を受けた場合の措置として隣接するエリアであるH-5の一番大きな民家で落ち合う約束をしています。


922 : 厨房のフリーレン ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:10:20 IF2mB/4g0




「逃げたか……」


フリーレン一行が去り。
もぬけの殻となったグレイラッド邸で、我愛羅は独り言ちた。
ピジョットが見つけた屋敷は、確かについ先ほどまで参加者がいた。
それは間違いない。自分の第三の目で確認を行ったのだから。
先んじて相手を発見した有利を生かし、奇襲する目算だった。
無論真っ向から戦ったとしても、自分は負けないだろうが。
だが、その目論見に誤算が生じた。

屋敷の直ぐ傍に、結界術が張られていたからだ。
単純だが我愛羅の進軍を阻む程度の結界だった。自身の中にいる守鶴に反応したのだろう。
強引にそれを破壊したはいいが、相手に気取られてしまった。
結果、母に捧げる筈だった木偶たちは逃げおおせ、自分は屋敷に独り佇んでいる。


「……まぁいい」


木造りの床に、バリバリと亀裂が入る。
ボゴン!と音を立てて、割れた床から砂が泉の様に湧き出す。
折角得た拠点だ。我愛羅は、待つことにした。
地図には施設として火影岩の記載があった。
まさかあの巨大な岸壁をこの島に持ってきたとしたら信じられない忍術ではあるが、
今は重要な事ではない。
問題はそこに何の意図があるかだ。
我愛羅はそれを参加者通しの交差点にする意図があるのではないかと推察した。
火影岩は例えば木の葉隠れの里の忍者や、自分の様な他国の里の忍びへの誘導地点として。
この屋敷ただでさえ大名の様に立派な建物だ、その上グレイラッド邸と銘打たれ差別化されているなら参加者の中に所縁ある者がいても不思議ではない。
それを抜きにしてもここまで立派な拠点だ。
身を寄せようとする参加者は必ず現れるだろう。
さっきの集団に仲間がいれば、帰って来る可能性もある。


「あぁ……そうだ。鏖だ」


屋敷にやって来たものから血祭りにあげてくれよう。
今はただ、そのために場を整える。
邸宅の構造や間合いを理解する為に歩き回りながら。
殺戮の舞台(キリングフィールド)を構築する。
地下から大量の砂を出現させられるように。
時が解決するはずだった、その憎しみ闇が祓われる気配は、未だない。



【G-4 ボレアス・グレイラット邸/1日目/黎明】

【我愛羅@NARUTO-少年編-】
[状態]健康
[装備]砂の瓢箪(中の2/3が砂で満たされている) ザ・フールのスタンドDISC
[道具]基本支給品×2、タブレット×2@コンペLSロワ、サトシのピジョット@アニメ ポケットモンスター めざせポケモンマスター (現在、空を飛行中)、かみなりのいし@アニメポケットモンスター、血まみれだったナイフ@????
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1.出会った敵と闘い、殺す。一先ずグレイラッド邸で待ち伏せを行う。
2.ピジョットを利用し、敵を、特に強い敵を殺す、それの結果によって行動を決める
3.スタンドを理解する為に時間を使ってしまったが、その分殺せば問題はない
4.あのスナスナの実の使用は保留だ
5.俺の知っている忍者がいたら積極的に殺したい、特にうちはサスケは一番殺したい
6.かみなりのいしは使えたらでいい、特に当てにしていない


[備考]
原作13巻、中忍試験のサスケ戦直前での参戦です
守鶴の完全顕現は制限されています。


923 : ◆/9rcEdB1QU :2023/06/27(火) 23:10:36 IF2mB/4g0
投下終了です


924 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 21:48:40 EmX8GvmU0
投下ありがとうございます!

>厨房のフリーレン
このお婆ちゃん、原作通り変なとこで可愛い。いつもみたいな壁尻ネタから、子供達に料理を振舞ったり頼もしさがマックス過ぎる。
不穏な雰囲気醸し出してるチームが多いなかで、ここは比較的安心してみてられますね。
桃華と写影も登場話からコンビを組んでるだけあって、お互いに支え合ってるのが良き。
ハーたん、ようやくまともに会話してるのを見た気がする……。
こんな和やかなムードをぶち壊す我愛羅、ここがロワだと再認識させる良い演出ですね。後でここに来る人可哀想。


925 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:16:30 EmX8GvmU0
投下します


926 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:17:00 EmX8GvmU0
「アンタの世界、おかしいわよ」

的場梨沙はそう言った。

「そんなことないよ!」

それに対し、緑の髪を後ろに縛った少年、龍亞が反論する。

「おかしいわよ! 大都会の警察の管轄にどうして、西部劇みたいな町があるわけ!? 鉱山送りで奴隷とかあんた何時代の人間よ!!
 どうしてカードゲームするのにバイクに乗るの!! 意味わからない!! どうして犯罪者捕まえるのに、カードゲームしてんのよ!!」

「面倒くせー女」

「何よ! 何か言ったシカマル?」

「…いやなんも」

灰原哀とブラックと呼ばれた少年との邂逅を終え、奈良シカマルは残された灰原との情報交換に臨んでいた。
外見なら梨沙よりも一回りも年下の少女だが、その口調や論理的な思考は梨沙はおろか、中忍以上の大人達にも匹敵する程に高度であった。
的確に情報を伝え、またシカマルから与えた情報も要領良く受け取り、素早く理解する。本音を言えば梨沙を相手にしている時よりも楽であったし、頼もしさもあり、年齢に見合わぬ聡明さに不気味さも少し覚えていた。

「しかし、平行世界とはまた面倒くせーもんが……灰原は覚えはあるか?」
「私も話ぐらいは聞いたことがあるけど」

戦闘はともかくとして、知能面では信頼できる味方が出来、予想以上に情報交換も殺し合いの脱出に関しても、灰原個人とは目的が一致し協力は取り付けられた。
元より、奥で寝かせてある金髪の少年を介抱していたくらいだ。善良さは折り紙付きで、そう心配もしていなかったが。
その名前も素性も不明の少年は、あとで事情を聞き出すとして、あのブラックという少年に対し、どう対話し交渉するか、一手しくじれば即詰まされかねない強大な相手への対処を考えていた時だ。
もう一つ、全く別の新たな頭を悩ませる要素、もといシカマル風に言うならば面倒くさい事柄が追加されてしまった。

「でも、本当に龍亞さんの世界のお話はとても面白いですわね。私、その世界でなら、大統領になれる自信がありますわよ。
 カードで全部決まる世界だなんて、部活で鍛えた腕が鳴りますわ! をーっほっほっほ!!」
「大統領……? 君が?」

(そうか、その世界でアタシがカードで総理大臣倒せば、パパと結婚できるじゃない!)

灰原と情報交換を終えた後、ブラックと入れ替わるように現れた集団。
妙に小生意気なお嬢様言葉を喋る少女、北条沙都子。その彼女曰く、自分の騎士と主張し、本人は否定する鎧を着た少女メリュジーヌ。

「こいつの変な世界も、元を辿れば海馬瀬人とかいう奴に原因があるみたいだし、やっぱ同じ苗字の乃亜の野郎と関係あるんじゃねェか?」
「私、分かったかも……その海馬って奴、きっと変な宗教に憑りつかれてるのよ……。カード打ち上げて宇宙の波動浴びせるとか、頭のおかしい事やってる奴でしょ? 絶対そうよ。殺し合いも、そういうのが理由なんじゃない?」

「なんで……吸血鬼や妖精の居る世界のが、全然おかしいじゃんか……どうしてオレの世界ばっか……」

そして、左腕に奇妙な赤ん坊を生やしている山本勝次。帽子を被った赤髪の少女、有馬かな。梨沙に突っ込まれ続け困惑していた少年、龍亞。
彼らと沙都子達は、シカマル達が仮の拠点に利用していたこの民家に辿り着く前に合流し、お互いに脱出を考えている事を確認し同行を承諾。
そして、人の気配があった民家に足を踏み入れ、シカマル達とも接触することとなった。
忍者などの存在を除けば、比較的文明の進歩は早いシカマルの世界と、ほぼ同一世界の梨沙と灰原との対話では気付けなかったが、この場に呼ばれた参加者達の語る社会背景は多かれ少なかれ差異がある。
妖精や吸血鬼、忍者の存在する世界、更に近しいが年代や細かい歴史が異なる灰原や梨沙、かな、沙都子の世界。
邪神だの、未来人だの、カウボーイなどの単語が飛び出す、B級映画にありがちなジャンルの闇鍋のような意味不明な龍亞の世界。

(ここじゃ、俺の知る知識や忍術の定石は当て嵌まらねえってことか……面倒なことになってきたな)

不安を煽りたくはない為に口にはしないが、別世界の未知の技術が首輪に利用されているとなると、現状のシカマルではとても解析など出来そうにはない。


927 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:17:21 EmX8GvmU0

「なんだかなぁ……オレの世界が変なのはともかく、遊星やジャックまで頭がおかしいみたいな言い方は納得いかないよ!」

「一番最低なのそのジャックって男じゃない!! 毎朝3000円のコーヒー飲んで家計圧迫して、ろくに働きもせず同棲してる友達に全部依存して、仕事はすぐ首になるニートなんて、世界に関係なく酷い男よ!!
 遊星って奴、甘やかしすぎじゃない!!」

「梨沙、何てこと言うんだよ……ジャックは、キングなんだ! いざって時はカッコよくて……」

「そもそもカードオタクって臭いし不潔なのよね」

「臭くないよ! オレ、毎日風呂入ってるもん!」

あまりに辛辣な梨沙の物言いに、龍亞も心を痛めながら言い返す。先ほどから話していて感じた事だが、この女の子とても口が悪い。

「私がそのジャックとかいうダメ男の中で一番気に入らないのは、女を何人もたぶらかしてるとこよねー」

更に便乗するようにかなも言葉を続けた。

「そういう男って本当に嫌いだわ。ちゃんと、誰を選ぶかはっきりさせなさいよ! 大体ね。何人も、女に思わせぶりにたぶらかしといて、全員キープしてるのが腹立つのよ。
 女の気持ち考えた事あるのかしら? その女も女よね……そんなダメ男、自分から捨てなきゃ駄目なんだから! いつまでそんな駄目男に引き摺られているのかしらね。チョロ過ぎるのよ」

「……」

メリュジーヌの視線が少しだけ、かなに注視されていたことに気付いていた者は誰もいなかった。
ただ、制限下の中で不安定になっている能力が、別の可能性の未来を見せたのだろう。そして、それをおいおい話す理由も義理も彼女にはない。

「それはそうね。どっかの探偵さんみたいに、はっきり決めてくれていれば、まだ楽なんだけど」

「かなの言う通りよね。パパみたいに一途で素敵な男性じゃないと」

「なあ、お前のパパってその…そういう……?」

「アンタ、勝次…どういう意味よそれ!!」

「圭一さんも、レナさんや魅音さんに思わせぶりな事をして、痛い目に合うこともありましたもの。やはり殿方は誠実でないと」

(オレ以外の世界じゃ、デュエリストって社会的地位が低いのかな……なんだよ、カードと臭いの関係ないじゃん)

やっぱ、女って集まると面倒臭いな。そう考えながらも、梨沙が元の調子を取り戻しているのを見てシカマルは少しだけ安堵した。
龍亞も、放送でやけに目立った割戦隊との交戦を経たらしく、望まぬ殺人を強いられたせいで初対面の時は表情が優れなかったが、今はそこそこ明るい。
無駄な雑談というのも、時には心を落ち着ける有益な時間だ。

「…そろそろ、本題に移っても良いか?」

だが、その雑談も長く続けていく訳にはいかない。
時間は限られている。それは殺し合いの決着が着くまでのリミットでもあり、あの絶望王(ブラック)が帰還するまでの時間でもある。
早期に最善の一手を打たねば。

「先に言っておくが、ここにブラックというマーダーが戻ってくる。そいつは強い。この中じゃ”誰”も太刀打ち出来ないくらいに」

嘘ではないが、敢えて誇張しシカマルは言葉を紡ぐ。

「幸い、そいつは殺し合いに乗るつもりらしいが、積極的に殺し回ってる訳じゃない。分かりやすく言っちまえば、ようは、ノリで動いてる」

「それって情緒不安定ってコトじゃない!」

かなの叫びにも似た指摘に、シカマルは面倒そうに頷く。


928 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:17:44 EmX8GvmU0

「そうとも言うな。……話を戻すが、灰原とは同行を許可するくらいには関係は良好だ」

「どうかしら……私と彼の関係は、ただの向こうの気紛れだと思うわ。
 今の私は掌の中の蝶と同じ、握りしめれば容易く潰されてしまう。
 あの微笑は仮面よ。仮面の下に、なんの絶望(ウソ)を隠しているのかしらね」

こいつ、急にポエム詠み出すな。面倒そうに聞きながら、シカマルはその意味を紐解いていく。
ようするに、ブラックが何を目的としているか定かではない。そう言いたいのだろう。
同行もあくまで気紛れ、一定の価値はアピールし有益だとは思わせたつもりだが、それを加味しても頭ごなしに良好な関係とは言えない。

「だが、首輪を外して乃亜をとっちめる算段が整えば、そっちに乗る程度には考えてるだろ。でなきゃ灰原を生かす理由もねぇ。絶対生還する為に、優勝しなきゃってタイプじゃない。だから…」

「……協力を取り付けるってこと?」

話を聞いていたかなが続けた。

「面倒くせーけどな。
 だから、奴の帰還を待って交渉をしたい……」

シカマルの中で、勝算は少なからずある交渉相手だと考えていた。同時に内面が未知数であり、失敗は許されない相手であることも。
それを、口にしこの場に居る全員に伝える。

「―――お前たちはどうする? そう聞いて、出方を伺うつもりですのね?」

流れを切るように、沙都子が割り込んだ。

「沙都子…ど、どうしたの……」

「……待て龍亞、なんか変だ。近づくな」

この場の空気が冷え込むように、勝次には感じられた。
こういった感覚には、何度か遭遇したことがある。
宮本明が、それまで何度も対峙してきた雅の息子達を見てきた時のような、本能が危機を知らせるアラートのようなものを告げる感触。
だが、なぜ今それが目の前の少女に対し抱いているのか、勝次自身、困惑を隠しきれない。

「そんなつもりはねえよ。ただ、ここに居ると危ないってのを……」

「違いますわよね? 警告と牽制でしょう? 私達に対し、ここで手を出せば後ろに控えた大物を相手にするぞ、と」

「沙都子、アンタ…急にどうしたのよ」

「梨沙、黙ってろ」

「シカマル?」

「良いから、黙れ!!」

一を言われれば百にして返すだろう梨沙が、切迫したシカマルの言い方に押し黙らされた。
表情は険しく、額に汗まで浮いている。
状況の把握はまるで追い付いていないが、一つだけ言えるのは、今がなにか非常に危うい場面にいるであろうことだ。

「貴方はとても優秀でしたわ。何てことのない顔をして、私の容姿にも油断せず、常に警戒を続けて平静を装い続けた。
 何処で、おかしいと思ったんですの?」

「別に、ほぼ直感だよ」

身のこなしだった。
軍人と呼ばれるほど洗練はされていないが、素人とは呼べぬほどには手慣れている。
懐に隠しているであろう銃に対し、自然体を装いながら常に意識を張り続ける等、常人の技量ではない。
もっとも、シカマルはそれを口にする気はなかったが。

「……メリュジーヌの強さは何となく分かってる。
 その上でお互い、ここでやり合うのは損じゃねえか? ブラックは灰原を大分気に入ってる。こんな最序盤で、奴の怒りを買って消耗するのも面倒くせーだろ? いくらメリュジーヌでも、それなりに苦戦するだろうぜ。
 ここで、さようならってのが…割とベストな落としどころな気がするんだが」
 
既に、シカマルと沙都子の会話の流れから、沙都子が殺し合いに乗っていると察しない者はいない。


929 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:18:01 EmX8GvmU0

「か、数なら…こっちが……」

「的場さん」

灰原が梨沙に重く声を掛ける。
沙都子が敵であるのなら、その彼女に付き従うメリュジーヌも同じくマーダー。
メリュジーヌがその矛先をこちらに向けるのであれば、数の利などあってないようなものだと。

「一応、言っとくが……俺も忍の端くれだ。やりあうなら、負けるにしても時間は稼ぐぜ。ブラックが帰って、鉢合わせしちまう程度にはな」

「……私、仲良くしたかったんですのよ? 本当に。
 少なくとも、殺し合いの途中までは。けれど、駄目ですわね。―――シカマルさん、貴方、賢すぎましたわ」

指を鳴らす乾いた音。

「だから、こう筋書きを考えましたの。ブラックと名乗るマーダーに、私の大切な仲間は全員冷酷に殺され、私は命からがら逃げだした。と」

それと共に、メリュジーヌの二振りの鞘から刃が生成される。

「シカマルさん、一つ誤算でしたわね―――私の騎士は、この場に居る全員数秒以内に殺せますのよ」



―――影真似の術!!



光の粒子を帯びたそれは、同時に身構えたままのメリュジーヌと共に制止する。


「動きを縛る魔術か」

シカマルの足元から伸びる影が、メリュジーヌの影を侵食していた。体の稼働を阻害する圧力は、この影により影響なのだろう。
通常の魔術と違い、印を手で組む必要があるらしいが。メリュジーヌの動きに注視し、宝具発動より先手を取ったのは、純粋な賞賛に値した。

「なっ……!?」

けれど、そこまで。
何の焦りもなければ対策も練らず、ただメリュジーヌは動く。ひたすらに無理矢理力づくで。
シカマルの術中に嵌った相手には、よく見られる無駄な抵抗だ。

(マジかあいつ……!? ブラックが戻るまでにケリを着ける気かよ! それになんだ、この力……こっちはチャクラ全開だってのに、動きを止められねえ……!!)

本来であれば。
それがメリュジーヌでさえなければ。
"無駄な"抵抗で終わる筈だった。

影真似の術は元は鹿の角を捕るために、後に改良なども重ね対人用へより特化されたであろう秘伝の術。
しかし、相手は妖精騎士ランスロット、またの名をメリュジーヌ。そして真の出自は最高位の竜種。
元来、人が戦うべき存在ではない。
人を縛る術では、竜(メリュジーヌ)を留める事はできない。

「逃げろ、みんな―――」

恐らく、時間にして多くて1秒。
それだけメリュジーヌを留められたのは、乃亜によるメリュジーヌへの制限と、シカマルの鍛錬の賜物であろう。
だが、それが限度だ。人間としての限界であり、竜にとっての必然。シカマルの影を容易に振り切り、メリュジーヌは再起動する。


930 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:18:27 EmX8GvmU0

「あの子が!」
「おい、灰原!」

灰原は先ほど手当を済ませ、未だ意識の回復が見られない少年の元へ。
それに気づいた勝次も後を追うように。
二人は奥の部屋へ飛び込む。

「し…シカマ……」

梨沙は理解が追い付かず、咄嗟にシカマルに手を伸ばす。
一瞬でチャクラと体力を大幅に削り取られ、シカマルは膝を床に付き、動く事が出来ない。
逃げるにしても、目の前の少年を置いてなど行けない。

(馬鹿! こっちに来るな!)

シカマルはその光景を見つめる事しかできない。
脳裏には、腐る程に考えが張り巡らされ、どうすべきか、何をすべきか、こちらに向かってくる梨沙の動きすらスローモーションで見えるのに。
体が一切、この刹那の瞬間に対応できない。梨沙に自分に構わず、逃げろと叫ぶことすら叶わない。


「真名──偽装展開」


(く、そ……!)


シカマルの天才的な頭脳を以てして、次なる一手が指せない。


「清廉たる湖面、月光を返す!」


機械的に殺戮を開始する青水色の妖精騎士と、その後ろで妖艶にほほ笑む魔女の笑みを見て、完全に詰まされたと死を悟った。


「集いし願いが新たに輝く星となる」


そのあまりにも遅く写る視界の中で、妖精騎士のものとは違う。新たなる輝きを見出す。


「光差す道となれ! シンクロ召喚!」


影真似の術によって作られた僅かな一秒という時間。
だが、その僅かな時間が明暗を分けた。


「──沈め!」

「――飛翔せよ!」


シグナーの少年が翳したカード。
支給されたもう一枚のシグナー竜を宿したカードより、大いなる翼を広げ疾風を巻き起こし白と青の竜が召喚される。


「今は知らず、無垢なる湖光(イノセンス・アロンダイト)!!」

「スターダスト・ドラゴン!!」


最速の妖精騎士の放つアロンダイトの輝きと、幾度となくサテライトの英雄と共に世界を救った星屑の竜のブレスが激突し、その爆風と光の渦の中に幼き子供達は飲み込まれていった。


931 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:18:54 EmX8GvmU0







―――






G-2にあった民家は消し飛んでいた。
屋内という閉鎖空間で、二つの高エネルギーが衝突し起爆したのだ。ただの建造物では衝撃に耐えられるはずもない。
パラパラと、瓦礫や木片は音を立てて崩れ去っていく。その中央で、メリュジーヌに抱えられた沙都子は辺りを注意深く見渡した。

「大したものですわね」

先ほど放った『今は知らず、無垢なる湖光』、メリュジーヌが言うには、謂わば必殺技のようなものらしいが、元より偽物(かりもの)、威力は低いとのことだった。
更に沙都子も居る密室であったことから、意図的に規模も縮小していたらしい。
それでも、人を殺めるには十分すぎる。あまりにもオーバーな火力に、味方にしている沙都子ですら身震いするほどに。

「それだけに、邪魔ですわねあれ」

『今は知らず、無垢なる湖光』を受けながら、未だ五体満足でいる少年と少女達が。

「―――!!!」

そして子供達を守るように咆哮を轟かせ、まるで盾のように翼を広げる白と青のドラゴン。
邪魔だ。あれさえなければ、あの場に居た全員を皆殺しにし、ブラックとやらに全ての罪を被せる事が出来たものを。
メリュジーヌが沙都子を巻き込まぬよう抑えていたとはいえ、あのドラゴンのブレスが相殺し余波から後ろの少年達を守り抜いたのだ。
そう光景を思い返すだけで、沙都子の中で苛立ちが増す。

「でも、丁度いいかもしれませんわね。
 メリュジーヌさん、憂さ晴らしがしたかったのでしょう?」

「瞬きの間に終わるよ」

その苛立ちを和らげようと、残酷な笑みを浮かべる沙都子に対して、メリュジーヌはつまらなそうに呟く。
そのままメリュジーヌは、民家の破片と土の入れ混じった砂利を踏みしめ、両腕の鞘を構えた。

「……み、みんな…」

全身を強く打ち付けて、手足にも擦り傷が痛ましく刻まれていた。
だが、龍亞の体は五体満足。痛みはあるが、決して致命傷ではない。
きっと自分は比較的軽傷だと判断し、自分達を庇うように翼を広げるスターダストの姿を確認して、辺りを見渡す。

「……かなは? 勝次もみんなも」

有馬かなは目を閉じて、意識を失っている様子だった。一瞬死んでしまったのではと思ったが、華奢な体が呼吸に従い僅かに動いている。

「シカマル…ちょっと、起きなさいよシカマル!!」

梨沙も同じく擦り傷くらいはあるが、意識もあって怪我は殆どないようなものだ。
ただ、傍に居るシカマルが当たり所が悪かったのか、気絶したまま。
影真似の術でメリュジーヌの動きを止め続けたことで、体力も削り過ぎたのもあるだろう。死んだように眠り続けている。

(勝次と灰原と…あのオールバックの男の子がいない……嘘だろ……)

まさか、消し飛んでしまったのでは。最悪の可能性を考えて、頭を振る。それを、考えてどうするのだと。
今、やらなくちゃいけないのは、ここに居る全員を守ってあげなくちゃいけないことだ。
頼りになるシカマルは暫く動けそうにない。梨沙だって強気な女の子だが非力だ。かななんて、まだ10歳にもならない幼い子供だ。

「オレが、何とかしないと。頼む、スターダスト・ドラゴン……!」

自分が守るしかない。
本来の主なき、この星屑のドラゴンと共に、あの未知の強敵に挑むしかない。


932 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:19:28 EmX8GvmU0

「―――シューティング・ソニック!!!」

召喚者の叫びに応え、スターダストの咆哮と共に星のような輝きが集約され、ブレスとして放出される。
赤き竜――別世界の豊穣の神ケツァルコアトル―――の眷属にして、5000年周期に渡り、冥界の王と地縛神との戦いを宿命づけられた人類を守護する竜の一柱。
その高い神格と神秘は、高位の竜種にも相当する。さらには本来の担い手ではないにしろ、同じく赤き竜に選ばれたシグナ―が使役するのであれば、召喚者としての格も十分である。

「ふっ!」

一息で、駆ける。その速度は膨大な魔力を放出することで推進力とし、瞬時にして音速へと到達する。
放たれたブレスへと、自らその身を晒すように突撃した。
鞘の基部が回転し、まるで拳のように叩き付ける。高い推進力は勢いを落とさず、魔力放出により増大した膂力は一撃でブレスの放出を歪ませる。
拮抗は1秒も持たず、莫大な圧力に耐え切れずブレスは、メリュジーヌに触れた個所から先割れ露散していく。
ブレスを拳に見立てた鞘の攻撃で突破したメリュジーヌは、子供達を守ろうと立ちはだかるスターダストの懐に数十発の打撃を見舞った。

「―――!!」

されど、相手も上位の竜種。
その凄まじい打撃の乱打を受けて、なおその闘志を損なう事はない。再度ブレスを吐き出し応戦する。

「温い」

メリュジーヌは軽やかな動きでブレスを鞘で受け止め、角度を傾け受け流す。そのまま肉薄し、更に数十発打撃を叩き込んだ。
耐え切れず、威力のまま後方へ吹き飛んでいくスターダストを見て、メリュジーヌはそれを使役していた少年へと一瞥をくれる。

(本当にただの子供だ)

多少場慣れはしているようだが、戦いの心得などまるでない。騎士として務めるのであれば、剣ではなく手を差し伸べ保護しなくてはならない程の無辜の子供。
汚れ仕事などいくらでもしてきたし、先ほども子供に毒を盛ったのを容認したばかりだ。
今更、躊躇などはない。が、やはり何処かで、紕う想いもあったのかもしれない。

「く―――」

けれども、その迷いも1秒もせずに消える。
メリュジーヌは騎士だ。オーロラの騎士だ。彼女の為だけに存在し、その愛を尽くすと誓ったのだから。
龍亞が何か新たなカードを翳そうとするが、それよりも遥かに速くメリュジーヌが腕を振るう。
龍亞の顔面目掛けて、音をも置き去りにするほどの膂力で、岩をも穿つ程の鈍器が吸い寄せられる。

「―――!!!」

刹那、メリュジーヌを死角から襲撃が襲う。後方へ退けれられたスターダストが低空で翔け、加速しながら突っ込んできたのだ。
鞘が龍亞の顔を潰す寸前で、その突撃を受けスターダストと共にメリュジーヌは吹き飛ばされていく。

「うあああああああああああああ!!!」

だが、その切っ先が右の肩を切り裂いてしまった。血が噴き出し、鋭く切り裂かれた激痛が灼熱のように拡がる。
手で抑えた個所、ドロリと熱を帯びた血液が流れだしてくる感触。体内を巡っていた液体が流れだし異物へと変わる不快感。

「い、いたい……痛いよぉ……う、わぁああ……!」

今まで生きてきた中で、もっとも血を流した瞬間。
まだ小学生の子供を恐怖の絶頂へと誘うには十分すぎる。

「る…龍亞……」

それは、傍観者である少女にとっても同様だった。梨沙は自分とそう歳の違わない男の子が、大量の血を流すという事実に狼狽してしまう。
その痛みと怖さは、想像が付かない。
普段の日常生活の範疇であれば、救急車を呼ぶとか、誰かを呼ぶだとか、取りあえず病院に連れて行こうと落ち着いて判断出来ただろう。
けれども、ここには他に誰もいないのだ。普段は頼りないけど、いざという時は信頼もできるプロデューサーも、大好きなパパだっていない。
自分より、ずっと頭の良いシカマルはまだ起きてくれない。まだ梨沙よりも年下なのに凄くクールでカッコよくて、外人の男の子の治療もこなした灰原もいない。
居るのは、更に年下の気絶した女の子と、平気で人を殺してくる冷酷な女騎士とそれを後ろで眺めて笑みすら浮かべる魔女。
それにたった一人で戦って、体を切られた男の子が一人いるだけだ。


933 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:19:48 EmX8GvmU0

「どうしよう……アタシ……シカマル!!」

呼びかけても、未だシカマルの意識は暗い闇の底にある。
何とか担いでみようと思ったが、相手は子供とはいえ鍛えた忍者だ。筋肉量なども違う。アイドルとして体力に自信はあるが、女の子一人で担げるような重さじゃない。
もう一人、そんな有様で意識を失っているかなを連れて行くのも無理だろう。
仮に何とかなったとしても、今度は龍亞を置いて行っていいのだろうか。

「そうよ、支給品…支給品があるじゃない!」

もう縋るしかない。ランドセルに入っている武器に。
武器で銃なんかが入っていたとしても、あのメリュジーヌをどうにか出来るとは思えないが、全てをこれに賭けるしかない。

「……泣いちゃ、駄目だ。これくらいがなんだよ……勝次はあいつは小4なのに、もっと腕をおかしくされたんだぞ。死んじゃった子だって一杯居るんだ……全然、こんなの…オレはシグナ―じゃないか」

頬を汚す、涙を拭う。
血は流れていて、痛みを感じるが、肩が切断された訳ではない。その先の腕も手も動く。
まだ全ての手足は残されている。カードは残されている。
まだ、戦えるのだ。

「生きている限り、絶望なんて―――」

未来から現れた絶望の番人に、その機械の身に秘めていた希望を取り戻させた時のように。
シグナ―の少年は痛みを捻じ伏せ、目を見開く。

「はぁ……バン・カー!」

「グギャァォオオオ!!」

「スターダスト……」

その瞬間、眼前にはスターダストが地面に打ち付けられていた。
何発も打撃を込められ、甚振られる。
斬撃で全身を切り刻まれ、皮を裂き、肉を抉り、骨を穿つ。高貴であった姿は赤黒く染まりあげられる。
今までに、どんな強敵をも退けて、仲間を守り続けてきた星屑の竜は、完全に星空から引き摺り下ろされていた。

(嘘だろ……スターダスト・ドラゴンが、手も足も出ないなんて……)

悲鳴を上げて、全身を激痛に悶えさせるスターダストを前に、まるでサンドバックのようにメリュジーヌは連撃を放つ。
ある時は鞘を殴打の鈍器として、ある時は魔力を爪へと還元し斬撃の剣として。
全身を切り刻まれようとも、なおも守り抜こうとする竜の意思を完膚なきまでにへし折らんとする。

(どうする……パワーツールとスターダストの他に、まだ何枚かカードは支給されてるけど……あいつに通用するのか)

カードが実体化するのは分かっている。やりようによっては、人を殺すなんて呆気ないほど強力な武器になるのも、割戦隊との戦いで理解した。
それでも、メリュジーヌを倒すイメージが思い浮かばない。
何かある筈だ。起死回生の方法を、メリュジーヌの弱点を何か、何か―――。

「ハイアングルトランスファー!」

「ギャオオオオオオォォォォ!!!」

悲痛なスターダストの悲鳴が耳を轟かす。
ずっとずっと、自分達を守る為にメリュジーヌの猛攻に耐え続けている。
きっと、この場には居ない不動遊星ならば、そうすることを望むであろう事を体現するかのように。
仲間を守る為に。


934 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:20:13 EmX8GvmU0

「龍亞、これ……!!」

「梨沙?」

焦燥に駆られながら思案を巡らせる龍亞の元へ、梨沙が駆け寄った。

「アタシの支給品…なんか、使えない? 変なミニカーと何も書かれてない変なカード、意味わからないけど、アンタなら使い方分かるんじゃないの!?」

梨沙から手渡されたカードを見た時、龍亞の中で1つの勝機が見えてきた。

「こんなものまで……いや、でも」

一枚はミニカーのようなモンスターが描かれたカード、フォーミュラ・シンクロン。
だが、これ単品ではとても使い物にならない。
強さで言えば、デュエルモンスターズ最弱の候補の一角のカードであるクリボー以下だ。とても戦闘向けのカードじゃない。

「ありがとう、梨沙……。
 来てくれ、フォーミラ・シンクロン!!」

だが、このカードの真価を龍亞は知っている。
自分がずっと背中を見て追い続けていた偉大なる決闘者が、このカードを使い何度も絶望を打ち破った姿をその目に焼き付けている。

「スターダスト……お前に、新たな力を与えてやる!!」

ミニカーに手足を生やし、目をくっつけたようなコミカルなモンスター。
フォーミュラ・シンクロンが緑の光となり、機械的な光の輪を生成する。

「クリア…マインドォ……!!」

それは、スターダスト・ドラゴンを高速の世界へと導き、到達させる。

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く!」

梨沙に支給された、もう一枚の白地のカードに真の姿を記す進化への道標。

「光差す道となれ!」

ある世界に於いて、人間以上の力を持つ妖精の中ですら、分類が違うとされ、ただ一人世界観が違うと比喩されるほどの強大な力を持つメリュジーヌ。
その世界に踏み込む方法があるのだとすれば、龍亞の知る中ではこれしかない。

スターダスト・ドラゴンを新たな地平へと導き、進化させる。
アクセルシンクロだ。

(Z-ONEは、未来の人達にクリアマインドを伝えたと言ってた……)

クリアマインドの境地に達した者だけが可能とする、シンクロ召喚を上回ったシンクロ召喚。
更なる進化を果たした、シンクロモンスターを呼び出す。それをアクセルシンクロと呼ぶ。

(だったら、オレにだって出来る筈なんだ……! Z-ONEみたいに手術や人格のコピーで遊星にはなれなくても、オレはずっと遊星の戦いを見てきたんだから)

クリアマインドは選ばれた人間のみが扱える力ではない。
誰であろうと、理論上であれば作り上げることが可能な精神の状態であり極地だ。
それを、元は無銘の科学者でしかないZ-ONEは不動遊星という英雄を依り代にしたとはいえ、ただの一般人にも伝える事に成功していた。
人々の心の欲望や誘惑に捉われた事で、人の心を読み取るモーメントと呼ばれるエネルギーの根幹を為す、永久機関が暴走を始め、人類を滅ぼし始めた破滅の未来で。
何の特殊な力も持たないただの人々に、クリアマインドを伝える事で、それらの暴走を抑制させることまでは成功していたのだ。

つまり、クリアマインドは人間の進化の可能性であり、誰もが到達しうる希望の力だ。
龍亞とて、その可能性は秘められている筈だ。誰よりも近くで、あの不動遊星のデュエルを見続けてきたのだから。
同じ、シグナーなのだから。


935 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:21:07 EmX8GvmU0

「アクセル―――」

「させませんわ」

全ての希望を無に帰す、無慈悲で機械的な銃声が響き渡る。
ともすれば、メリュジーヌ以上の惨劇と絶望の体現者たる魔女が、もう一人この場に居た事を龍亞は失念していた。
沙都子の手にある銃から弾丸が射出され、龍亞の右肩を撃ち抜いた。

「ぐ、わあああ……!」

「をーっほほほほほほ! ごめんあそばせ。相手ターンにダイレクトアタックは反則でしたわね。
 けれど、私、デュエルをするつもりは毛頭ありませんことよ」

煽るような口調でいながら、内心で沙都子は舌打ちしていた。
メリュジーヌには憂さ晴らししろとは言ったが、思いのほか粘られている事に、少し焦りを感じる。
以前あった孫悟飯とは違い、ここの子供たちは自分の相手にならないとメリュジーヌは断言していた。
長くても数秒で確実に葬れると。
だが、蓋を開ければ、恐らくメリュジーヌも未だ自暴自棄で本気ではないとはいえ、こんな連中を相手に殺しきれていないとは。
あまり、手間を掛けるのも面倒だ。一人、ここで確実に殺しておこう。

「龍亞!」

「来ちゃ駄目だ、梨沙!!」

そう考え、沙都子はトリガーに力を籠め、龍亞の死を確信し―――視界の端が光る。

「なんて、しぶとさ―――」

メリュジーヌに嬲られていたスターダストが首だけ向け、沙都子にブレスを放っていたのだ。
邪魔な――そう思う頃には既に、着弾は秒読みだった。そこへ高速でスターダストを蹴り飛ばしたメリュジーヌが割り込み、沙都子を担ぎ上げ跳躍する。
ブレスは虚空を穿ち、消失していった。

「手間を掛けさせないで」
「あのドラゴン相手に、手間取る貴女も悪いのではなくて?」
「思いの他、頑丈なんだ。恐らくは、それなりに高い神格の眷属なんだろう」

だが、トリガーは確実に引いていた。放たれた銃弾はどうなったか。
頭部からはズレたものの、射線は龍亞の元へ描かれていたが外された。

「何、ぼさっとしてるのよ!」

龍亞を押し倒す形で、有馬かなが突っ込んだ事で、弾丸は龍亞に触れずに過ぎていく。

「ごめん、かな……」

気絶から目覚めたかなは辺りを見渡して、メリュジーヌとスターダストが戦っているのを見て驚嘆した。
だが、さっきまで同行していた龍亞が肩から血を流し、更に沙都子に銃を向けられていた事で、逆に現実味のある脅威が彼女に冷静さを取り戻させてくれた。
ことの一部始終を最初から現在に至るまで目撃し、混乱していた梨沙より、目覚めたばかりの、かなのが余計な事を考えずに済んだのもあるだろう。
結果として、咄嗟に取った行動は龍亞の命をなんとか凌ぐ事にはなった。

「行くぞ、アクセルシンクロォ!!!」

(何なんですの、一体……!?)

龍亞は拳を握りしめ、叫ぶ。スターダストを昇華させる希望の力を。
沙都子の中で焦りが大きくなる。
早々、メリュジーヌが負けるとは思わないが、元より彼女は精神的には不調の真っ只中で、その隙間に自分が付け込んで駒にしたようなもの。
万が一にも、彼女が後れを取ってしまうような事態は避けたいが。

「……え」

「なんだ…そんな焦る事、ありませんでしたわね」


だが、何も起こらない。スターダストは痛ましい姿のまま肩で息をして、打ちのめされたまま。
光の輪へと変化したフォーミュラ・シンクロンは元の姿へと戻る。


936 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:21:37 EmX8GvmU0

「アクセルシンクロ! ……アクセルシンクロォ! ……アクセル…シンクロぉ!!」

いくら叫ぼうが、望んだ変化は訪れる事はない。

「どうして……なんで…! 頼む、変わってよぉ!!」

進化は果たされず、スターダストは弱弱しく呻くだけだった。

「駄目なのか…遊星でないと、オレじゃ……クリアマインドは理解できないのかよ」

クリアマインド、明鏡止水の精神を生み出すには龍亞では、まだ未熟過ぎる。
確かに遊星の戦いを目の当たりにし、精神的にも戦術的な面でも成長は遂げたが、クリアマインドを見て理解する域ではない。

「遊星は何を考えて、アクセルシンクロしてたんだ…分からない……何だよ、クリアマインドって……!」

どうすれば、どうしたら、不動遊星になれる。
遊星の考えてたことさえ、分かればクリアマインドも分かる筈なのに。
今までずっとその戦いを見てきて、まるで遊星を理解していない自分に、情けなさすら感じてきた。
ここでアクセルシンクロを成功させないと、大勢が死んでしまう。そんな大事な局面で、失敗する己に失望してしまう。

「何、考えてるかなんて分かるわけないじゃない。アンタは遊星じゃないんだから」

「え?」

「その役そのものに”成り代わる”は無理よ。その演じる相手は、その人だけの人生を生きてきたの。龍亞は龍亞なんだから、どんなに尊敬して憧れても遊星にはなれないわよ」

全く当たり前の事のように、呆れながらも淡々とかなは言葉を紡ぐ。

「やっぱ、これだから素人は駄目よね。役作りで完全に躓いてるじゃない」

「役作りって……」

「役作りでしょ? アンタは今、遊星って役になろうとしている。でも、分からないのよね? 
いざなろうとすると、違和感がある。当然よ。実は遊星の人生の一部しかアンタは見てないんだから。
殆ど同じ人生を歩んだ双子の兄弟でも、その人にはなれないわ。だって所詮は他人じゃない。役には近づけても、その人になれはしない」

「じゃあ…もう、どうにも……」

「忘れたの? あんたの目の前に居るのは、10秒で泣ける天才子役よ」

かなは誇るように自信を持って言い放った。

「そのカード貸して! 遊星って人の事も全部手短に教えなさい!!」

押し切られる形でカードを引っ手繰られる。

「演じるのは私の仕事よ。その遊星(キャラ)は私が演じてみせる!」

そして、言い切ってみせた。この島にはいない不屈の英雄を、ここに表現(さいげん)してみせると。

「―――!!」

呼応するように、スターダストは、傷だらけの体に鞭を打ち、メリュジーヌと再度対峙する。

「まるで母竜だね。性別は雌かな」

メリュジーヌはその在り方に、ただ機械的に魔力を乗せた鞘の殴打で応える。
スターダストは絶対に守り通す意思を曲げぬように、悲鳴と一緒にその身で受け止めた。

(やはり、時間を置かない連発は無理か)

『今は知らず、無垢なる湖光』を使えば、既にあの竜の息の根を止めていた。短時間での連発が不可能になっている。
通常攻撃のような気軽さで放つ宝具が強みであったものの、乃亜のいう所のハンデとして制限を科せたのだろう。

「次で確実に終わらせる」

だが、徐々にだが再使用可能な感触を肌で感じてきていた。
次にその剣を抜いた時、それが全ての決着と終焉の時だ。


937 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:22:00 EmX8GvmU0

「では、こちらも始めましょうか。ドラゴンはドラゴン同士、人は人同士で……。
 私はわざわざ、何かするのを待つ程、お人好しではありませんわ」

不敵に笑い、沙都子は龍亞達に向けて銃を構えた。
相手は3人、だが一番荒事に経験のありそうな龍亞であの程度ならば、難なく全員射殺可能だ。

(アタシが何とか、しないと……銃を持ってるし…藤木みたいに、きっと外す何てことしない……!)

龍亞と、かなを守れるのは自分しかない。
梨沙は後先も考えず、両腕を広げて二人の盾になるように沙都子の前に立ちはだかる。
沙都子は馬鹿にするように、鼻で笑い引き金を―――。

「そりゃ、そーだ。だが…一人カウントをミスってねえか?」
「しま……!」

体に違和感を覚えた瞬間、沙都子は銃を敢えてその手から落とした。
その術に掛けられたメリュジーヌが、ほんの一瞬だけ、術者と同様の動きをしたのを彼女は目撃している。
その光景が脳裏を過っての判断だった。

「影真似の術、成功だ…いい子だから大人しくしとけよ」

タブレットのライトから生まれた僅かな影を、沙都子の影に接触させたシカマルは言い放つ。

「シカマル―――アンタ、ほんとに……」

「悪かったな。少しばっか寝すぎた。お前はあいつらを見ててやれ」

梨沙には余裕を見せながら、シカマルは内心、肝を冷やす思いだった。
意識を取り戻した時には、沙都子が銃を向けていたタイミングだ。
素早くタブレットを起動させ、光を照らして印を組む。
それも間に合うかどうか、相当シビアであったが、滑り込みセーフといったところらしい。

「シカマルさん…私、これ初めてですけど……随分拘束が弱まっているのではなくて? きっと、スタミナ切れなんですのね」

(忍術の概念は知らねえみてーだが、メリュジーヌに相当チャクラと体力持ってかれてんのはバレてるか。
しかも、持ってりゃ今頃頭ぶち抜かせてた銃も手放す辺り、勘も良ければと判断も素早い。嫌なガキだ)

手段はもう一つ残っているが。

「がっ……? が、は…ぁ!?」

影首縛りの術で首を締め上げることだ。
沙都子の体を影の手が走り、首元へと触れる。そのまま首を圧迫させていく。

「こ、こん…が、ぁ……!」
「少なくとも、てめーだけはここで詰みだ」

沙都子が窒息に耐え切れず、苦痛に目を見開きながら膝を崩す。
首を掻き毟るように抑えながら、かつて自分は百年近く引き起こした惨劇の犠牲者達のように、その愛くるしい顔は歪んだまま、少女は息絶えた。

「……女を殺すのは、あんま気が進まねえけどな」

嫌な後味を胸に残しながら、シカマルはチャクラの消費で乱れた息を整え、意識を切り替えた。


―――


938 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:22:23 EmX8GvmU0


クールに見せて、すぐに熱くなる。
口数が少ないが、趣味になるとよく喋る。
機械いじりが得意。

大きな災害があり、それに父親の開発システムが関わっていた。
恐らく、強い負い目があり未だに責任を感じている。だから、好き放題散財するジャックという男にも強く言い聞かせる事が出来ない。
龍亞達や、そのネオドミノシティというのを守っているのも、その強い罪悪感からでは。

「……遊星はそれで――」

龍亞の口から語られる多量の情報を、的確に頭に叩き込み、遊星(やく)を理解していく。


「……」

かなは龍亞の話を聞きながら、自分が噛み砕けるように遊星という人間を要約し、咀嚼し、自分の中に取り込んでいく。
不動遊星という人間の生い立ちとその過程を龍亞から聞き出し、自分の中にあるものが何か理解させていく。
好きなモノ、嫌いなコト、それらを膨らませ抑えていく。

(罪悪感……誰かのために…私もそうだ……お母さんの為に……)

かなも、母親の為に売れ続けなければいけなかった。芸能界で生き残り続けないといけなかった。
自分の母親が、売れているかなにしか関心がないのは、幼い彼女にも分かってきている。
まだ、人気はあるけれど、陰りは見えてきて。だから必死で、頑張って頑張って演じて、今は周りにも合わせるようにしてきている。現場の人に使いやすいように努力している。
それが仕事に繋がると、幼い子供のかなにも分かってきているからだ。
大っ嫌いなピーマンだったが、この世界で生き残るためにピーマン体操を熱唱して、踊り抜いてみせた。

(負けられないんだ…この人……だって、負けたら)

『勝てない不動遊星』に、何の価値もないから。
負けてしまえば、償いきれない罪を負ったただの罪人になってしまう。
勝つ以外に、償う方法が分からないのではないか。

(私も…『売れてる有馬かな』でないと……お母さんは…)

見つかった。新たな倫理観(ルール)が。

「……クリアマインド」

新たな感情のラインを生み出す。

「……!?」

見た目も性別も何もかも違う。
なのに、一瞬龍亞の目は、遊星の姿が幻視してしまった。
絶対に違うと、分かっているのに。声質から何まで違っているはずなのに。
ほんの僅かに、あの安堵感を覚える。どんな逆境も巻き返す、あの不屈の英雄を思い起こさせる。

(凄い、この娘……)

だが、それ以上に衝撃を受けたのは、梨沙だった。
アイドルとして、演技の仕事にも手を出したからこそ分かる。分かってしまう。
溢れんばかりの才能と、それを昇華させた並々ならぬ努力の跡が見て取れる。
どれだけの才を天から恵まれ、どれだけの努力を積み重ねてきたのか。
役者として、圧倒的なまでに格が違うと思い知らされる。

「なん…なの……よ…」

さっきまで、恐怖や焦りで一杯だったのに。今はこんなにも、有馬かなに釘付けになる。
感情が滅茶苦茶にされる。同じ世界に居るものとして、悔しさや嫉妬などが入れ混じっていく。
それでも、魅せられていく。顔を背けようとしても振り向かせられる。目が溶けるように焼き付けられる。
アイドルとして自分が欲しいものを、これからもっと成長させて磨き上げようとしてるものを全て、この娘は、有馬かなは―――。


939 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:22:41 EmX8GvmU0

「……駄目だ、カードが反応してくれない」

「なんでよ!! 何が悪いの!?」

「分かんないけど……」

「監督がこれじゃ、現場が滅茶苦茶よ! とんだキラーパスね!」

確かに、遊星を幻視したが、それでもやはり不動遊星とは違う。
理由は分からないが、龍亞の中で遊星とかなで、噛み合っていないものがある気がした。

(何…何が違うの……? っていうか、普通はどんなカードも、ルール守れば誰でも使えないと駄目じゃない。何なのこのカードゲーム!! クソゲーじゃない!)

駄目出しされるのも、リテイクを喰らうのも初めてじゃない。むしろ、よくある事だ。
演技のロジックを組みなおすべく、かなは内心で愚痴りながら集中する。
龍亞の反応から、話した不動遊星の人間性から、龍亞が求める不動遊星を再現すれば、きっと―――。
思い出せ、そう…以前に出会ったあの子役を。一人前にアクアと芸名を名乗ったあの子役を。自分の自信を粉々に粉砕したあの演技を。
監督の求めた演技を的確に意図を理解し、自分よりも高度に演じたあの少年を。
今の監督は龍亞だ。龍亞に合わせた演技をすれば、その遊星という人間に近づける筈。

(考えるのよ……龍亞の求める不動遊星って人間を…)

「巻き上げる!!」

「ガギャォォォオオオォアアアアァァアアアアア!!!」

「スターダスト・ドラゴン!!?」

スターダストの右腕が切り裂かれ切断される。血飛沫を撒き散らし、ドラゴンの腕が地べたに落ち砕け散るように消失していく。
顔も半分が潰れ、左の翼は引き千切れ、尾は先が消えていた。
対するメリュジーヌは息一つ荒げもせず、いい加減飽き飽きしたといった表情で悶え苦しむスターダストを見つめる。

(あのドラゴン、ヤバいじゃない。早く…早く……)

足りないピースを探す。
まだまだ、自分自身の理解が及んでいない。
もっとある筈だ。自分の中にあるものを正しく分かっていない。

ここでコケたら、全員終わる!

「負けられない…私(オレ)は……」

尋常ではない集中力と、子役として培った演技の技術を多量に投下し、役には近づけている。
普通の現場で言えば、撮影前に急に役を割り振られ台本を渡されて、1分以内に役を作れと言われているようなものだ。
あまりにも少ない時間の中で、これ以上ない程の完成度で仕上げている方だろう。
だが、肝心のクリアマインドの場面が、かなでも遊星に近づく事が困難だ。

「その、相手に合わせた演技止めなさいよ」

それは梨沙にとっての敗北宣言でもあり、彼女のかなに対する願望でもあった。

「は?」
「アンタはもっと好き勝手に、私を見ろって顔してる時のが、輝いてるんじゃないの!!」

そんな、有馬かなは見たくなんてない。もっと引き出せる底があるのに、加減しているのが腹正しい。
ただ、自分を見ろと笑顔を振りまくだけで、人を惹きつけるスター性。

「腹が立つけど、アンタ…天才よ……」

「……天才じゃないわ。私より…上手い役者は」

欲しくても欲しくても、容易に手に入らないそれを、この少女は元より兼ね備えている。しかも極上の仕上がりにまで磨き上げている。
なのに、どうしてそれほどの美しい原石を濁らせるような演技をするのか。
それが、見ていて耐えることが出来ない。


940 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:23:02 EmX8GvmU0

「天才よ、アンタは! アタシだって演技の仕事はした、そこで色んな子役も見たわ! アンタはその中の誰よりも輝いて見える!! ムカつくけど、このアタシよりもよ!
 だから、もっと見せてよ! 悔しいけどアタシ、本気のアンタの演技をもっと見たいって思ったんだから!!」

何より、梨沙にとって許せないのは。
同じ芸能世界に生きるライバルである有馬かなに、この場に居る誰よりも魅了されてしまっていることだ。
だからこそ、許せない。こんな生半可な演技を披露してくる目の前の女に。

「本気…? そんなものとっくに……」

なんだ、このメスガキ。分からせるぞコラ。

きっと芸歴も自分なんかよりもずっと浅い癖に。
周りと上手くやる。それが、有馬かながこの業界(せかい)でやって行く為に覚えた術だ。
大人は演技力なんかいらない、使いやすさを求める。気に食わないことも全部飲み込んで、他人に合わせていれば生き延びられる。

「そう、やっすい本気ね。なら、その遊星(やく)はアタシが貰うわよ! ひっこんでなさい!!」

「……なんですって」

頭に来る女だった。
真っすぐ、自分を見つめてくる目が。凄く真摯に、この演技(しごと)に向き合っている目だから。

「安いのはアンタの挑発じゃない…」

だからこそ、頭に来る。この女は、有馬かなより的場梨沙のが、優れた演技をやってみせると宣言してみたのだ。
何も知らない素人や下手糞の戯言じゃない。アイドルらしいけど、そこいらの顔が良いだけのアイドルとは違う。
本気で役者にも取り組もうとする、プロ意識を持った上で。
お前になんかに負けてたまるかと、そんな無様な有様なら、すぐに蹴落として自分が全ての仕事を奪いつくしてやると。

「でも、良いわ。的場梨沙―――見せてやろうじゃない、有馬かなの本気を」

目を閉じて、もう一度役作りに集中する。

「アンタに見せ付けて、白黒付けてやる」

そこまで言われて、引き下がれはしない。


このメスガキに目にモノ見せてやる。


……どうして、不動遊星はずっとこんな過酷な戦いをしてきたのだろう。
仲間を守りたいとか、罪を償いたいだけだったから? それもあるかもしれない。
でも、それだけならこの変なカードゲームである必要はない。
優秀なメカニックなら、もっと別の手段も選べるだろう。
それだけで、こんなゲーム続けられる筈ない。

(楽しいから…どんなに辛くて、苦しくても‥‥…それが好きだから)

私も演技は楽しいと、かなは思った。
嫌な事だって、一杯ある。
お母さんに気を遣って売れ続けようとするのもしんどい。自分の気に入らない事をやっていて嫌だし。
周りに合わせる演技も、使われる方からしたら便利でも、自分じゃ納得がいかない時も多い。
それでも、役者を続けてきたのは、演技が大好きだったから。

演じるのが、それさえ出来れば―――。

それまでの苦行なんて、無に帰す程に。

楽しいから。それが好きだから。


941 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:23:20 EmX8GvmU0

横に居る生意気なメスガキに一瞥をくれる。急にデカい口叩いてきて、しゃしゃり出てきた女。あの女の言葉が、それを思い起こさせてくれた気がする。
一番最初の、多分人生で一番幸せだったころの。純粋に演技を楽しんでいたあの時の想いを。
これだけは、やっぱり捨てられなくて。挑発と分かっても乗ってしまう。
演技だけは、誰にも負けたくない。例え興味がなくたって、こちらを振り向かせて自分を見せつけてやりたい。
自分一人なら、本当に最悪の場合はコケても良い。死にたくないが、まだマシだ。
だが、今は大勢の人の命も掛かっている。
そんな自分を、見せつけたい観客(なかま)もこんな場所で死なせたくもない。

それだけは何事にも代えられない、揺るがない想いだ。

「赤き竜の痣が? ……オレ達に赤き竜が力を貸してくれるのか」

龍亞の右腕のドラゴンズ・ハートが輝き出す。
これまでに何度も見てきた、遊星がアクセルシンクロをする時に起こる前兆だ。

いつだってそうだった。この竜の神格は、真に困難に立ち向かう人間の想いが集った時、それに答えないことはない。

強い確信を持ち、龍亞は叫ぶ。

「集いし夢の輝きが、新たな進化の扉を照らし出す!!」

本物の遊星の、揺るぎなき境地 クリアマインドには劣るが、赤き竜の光がそれを補うように強く光り輝く。
フォーミラ・シンクロンが光の輪となり、スターダストを導く光の道となる。
死に体のスターダストの目に光が宿り加速した。

「太陽(ひかり)差す道となれ!!」

龍亞の口上の中、かなは目を閉じて、そこに佇んでいるだけだった。
でも、たったそれだけで存在感を放ち、目を焼く程の眩い太陽の様に――。

そして、次の瞬間目を見開き、その何も描かれていない白のカードを天上へと翳す。

「アクセルシンクロォォォォォ!!!」

龍亞の叫びと共に、カードをスキャンするように小さな輝きが迸り、その姿が記されていく。
加速したスターダストがその空気抵抗によりスリップストリームを引き起こし、赤い光を纏う。
メリュジーヌは二つの鞘から魔力の刃を生み出し、スターダストの加速に合わせ一息に両断しようと構えた。

「噛み砕く」

速い。確かにそれは認める事実だ。竜種の中でも最高速の範疇にある。
それでも、まだメリュジーヌには届かない。

「―――消えた?」

ならば、もっと、もっと速く、もっと激しく、時間すら振り切れ。
不可解な現象が発生した。メリュジーヌの視界から、スターダストが消失したのだ。
一切の前触れもなく、最強の妖精騎士の目を以てしても、見切る事すら叶わずに消え去った。

「生来せよ! シューティング・スター・ドラゴン!!」

それは単純にして明快な事実。スターダスト・ドラゴンはその瞬間のみ、光をも超えた。
メリュジーヌの背後から空間を破り、星屑は流星へと進化し、凄まじい煌めきと共に天高く上昇。
その翼はより速く飛行する為、戦闘機に近いフォルムへと変形し、星の粒子がジェット機の様に推進力となる。
シューティング・スターは夜空に降臨し、まるで太陽のように暗闇を照らし出す。


942 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:23:47 EmX8GvmU0

「流星……」

恐らく、ずっとずっと…人類に寄り添い、絆を尊び、人の輝きと在り方を美しいと感じた竜なのだろう。
ただ、諦めない人々の想いに応え続け、限界を超え続けた。
その翼は希望と絆を背負い、幾度となく英雄と共に絶望を退けたのだろう。

「そうだね……空は竜の領域だ」

ならば、その翼を落とすとしよう。
いずれ妖精國(せかい)を焼く、この厄災の機体(つばさ)で。

「そこで朽ちるのなら、君も本望だろう」

愛(オーロラ)の為に、絆(きぼう)を燃やし尽くそう。



―――君が人間の希望を、集いし願いを守りたいように。
   私は生涯を掛けて、彼女を守ると誓ったのだから。


「スターダスト・ミラージュ!!」

シューティング・スターが5つの分身を生み出す。
手足を折りたたみ、より鋭く直線的な姿へと変える。
音速を超える5色の5つの流星が、メリュジーヌへと降り注いだ。

「今は知らず、無垢なる湖光(イノセンス・アロンダイト)」

降り注ぐ流星群目掛け、メリュジーヌは飛び上がる。
かつては、帰り損ねた星に向かうように。その、流星を撃ち落とす為に。



―――影真似の術!!



「お前……!」

「1秒は止められたんでな……こいつも効かない訳じゃねえだろ」

してやったりといった顔で、シカマルは挑発を込めた笑みを、メリュジーヌに向けた。
シューティング・スターの放つ輝き、そこに生まれた影を伸ばしメリュジーヌの影へと触れる。
既に体力はほぼない。メリュジーヌを縛れる時間は、コンマ1秒にも満たないだろう。
その予想通り、メリュジーヌは一瞬で拘束を破り、シカマルは疲労に耐え切れず倒れた。

「―――!!!」

だが、迫りくる流星の突撃の前では、致命的なロスとなる。
影真似の術を振り切り、遅れて発動した宝具の前に一体目の流星が激突する。


943 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:24:02 EmX8GvmU0

「……ぐっ」

外皮から精製したアロンダイトのレプリカで一体目を切り裂く。
だが衝撃を殺し切れず、この戦いのなかで初めて、メリュジーヌの口から呻き声が漏れる。
僅かな時間のロス、だが迎撃を間に合わせる為に発動した宝具は不完全なまま。元より外気に弱いレプリカのアロンダイトは、更に外気へと耐性を失っていた。
二体目、切り裂く。その時、アロンダイトにノイズのような歪みが奔る。
三体目、突撃してきたシューティング・スターに触れ、その頭部に罅を入れた直後、アロンダイトは雲散霧消する。
短時間の維持しかできない代物だ。初撃の勢いを影真似の術で殺され、放った不完全な威力では、五体の流星を切り裂くまで保てない。宝具の消失と共に、四体目の流星が翔ける。

「カットライン! ラーンスロット!」

鞘の基部を回転させる。魔力を二つの鞘の先端に集中させる。
数百を超える超える斬撃と打撃の乱打を叩き込む。一撃一撃が、膨大な魔力の塊を直接打ち込み放出し、体内を貫通する魔拳。
それら全てを受け、四体目の流星は砕け散った。残るは本体、五体目の流星のみ。

「より早く!」

鞘から放出魔力量を更に増加させる。

勢いを乗せ、天空を駆け。
最後の流星に打ち付けた。

「―――落ちろォ!!!」

「結束(きずな)は落ちない! 罠カード、シンクロ・ヘイロー発動!! シューティング・スターの攻撃力を倍にする!!」

シンクロモンスターが相手のモンスターを倒せなかった時、その攻撃力を倍にする罠カード。
スターダストの時では、発動しても恐らくはメリュジーヌには通用しなかった。
だが、今は違う。光速の世界を越え進化したシューティング・スターならば。

「なッ……!!」

メリュジーヌが圧される。
最強の妖精騎士が。
最高位の竜種が。

流星によって堕とされる。

シューティング・スターはソニックブームを発生させ、爆風を巻き上げながら、轟音と共に大地にクレーターを刻み込んだ。


―――


944 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:24:27 EmX8GvmU0


「すごいよ! みんな! オレ、一人じゃアクセルシンクロなんて出来なかった……」

天空に佇むシューティング・スターを見つめて龍亞は明るく声を上げる。
本音を言えば、召喚に成功出来るか、半信半疑で考えていた。
一応、支給品として配った以上は利用価値を付与しているとは思っていたが、みんなの力でこうして召喚出来た事には感慨を覚える。
役として遊星に近づけたかなも、それに発破を掛けた梨沙も、影真似で最後にサポートしてくれたシカマルも。
誰か一人でも欠けていたら、きっとこうはならなかった。

「……今の演技、撮影だったらもう一回撮り直したいくらいよ。全然、駄目じゃない。もっと時間があれば、より仕上げて来れたのに……。
 それよりアンタ、その肩……」
「大丈夫…痛いけど」
「それ、大丈夫じゃない奴よ!」

(なにが、撮り直したいよ……)

梨沙からすれば、謙遜を超えて嫌味にも聞こえてきてしまう。ろくな台本もなく、口頭で人物像を聞いて数分で、あれだけの演技を魅せたのだ。
少なくとも役者としては完敗している。それを示すように、自分はずっと有馬かなだけを見続けてしまっていた。
とても身勝手で、私を見てと押し付けるような、我儘染みたその眩しさに。梨沙は惹かれてしまっていたのだから。
自分もああなりたいと、ずっと思い続けて、努力もレッスンも積んできた。
その理想の形を、あんな太陽のような形で体現されたのだ。

(……負けたわ。こっちのプライドズタズタよ。でも、アタシはこれからよ。
 見てなさい。有馬かな、アンタを必ず超えてやるんだから)

けれども、それが少女が夢を諦める理由にはならなかった。

(アンタを超えてトップアイドルにならないと、アタシが大統領になれないのよ! パパと結婚できないなんで許さないわ。
 いずれ、絶対にアンタよりもアイドルも女優もこなしてみせる。だから―――)

ドンッと、耳が破裂しそうな銃声が響いた。向こうにいたシカマルが、とても焦った顔をしている。
赤い血が出て、素人目からでも絶対に助かりそうにない量が、胸から溢れ出していた。
一言で言えば、三人は勇気をもって最強の妖精騎士に挑んだが、普段は直接的な殺し合いには無縁だ。
だから、確実に息の根を止めたかも確認せずに、相手を倒したと思い込んでしまい、完全に油断しきっていた。

「う…っ…そ…?」
「か…な……? かな!!」
「……っ!」

龍亞の前で、胸から血を流す有馬かなを見て、梨沙は呆然とした。
この三人は目の前の脅威であるメリュジーヌに対してのみ、気を取られ過ぎていた。
そして、真っ先にまだ過ぎ去っていない脅威に対し気付いたシカマルだが、その行動は間に合わない。

「これでもう…アクセルシンクロとやらは、使えませんわね」

満面の笑みで北条沙都子は、その精密な射撃の技術を遺憾なく発揮してみせた。

「あの時、確実に殺したはず―――」

間違いなく、影首縛りで沙都子を絞殺した。死んでいるのも確認し、脈も測った。

「仮死薬かなんかか? だが……いつ薬を」

シカマルの知る中でも、忍者の技術で生きた相手を仮死状態にする術には、心当たりがある。
優れた忍者は針の一刺しで行うことも出来る。
問題は、いつ仮死状態になったかだ。

―――人間は動脈を圧迫されると、短けりゃ大体十秒足らずで失神するらしいが

藤木に数時間前語った知識を、頭の中で改めて繰り返す。


945 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:25:15 EmX8GvmU0

「把握してたのか? 予め、自分が何十秒で意識を失うか……」

意識を失う直前、ある程度余裕のある段階で、大袈裟に演技をしてみせてる事で仕留めたと思わせる。
その後、シカマルが術を解いた後に薬か何かを利用し、仮死状態となり死を偽装した。
それがシカマルの出した結論だ。

「さあ、どうでございましょう。ただの直感ですわ」

沙都子の不審な点に対し、直感で気付いたと、とぼけたシカマルへの意趣返しなのだろう。意地悪そうな顔をしながら、沙都子ははぐらかす。
だが、シカマルの中ではその推測はほぼ確信へと変わる。
何度も己の首を絞めて、その日の体調や状況など検証を重ねれば、理論上は個人差のある失神までの秒数の平均程度なら割り出せる。

(そういう忍者や一族が居ても、おかしくはねえが……普通、首を絞められて何秒で気絶するか…誤差まで計算に入れられるなんて、ありえるか? 
 そんなもん、調べる前に何処かで普通は死ぬだろ?)

シカマルの分析では、沙都子の肉体自体はただの幼女の域を出るものではない。
もし、それらの肉体の生理現象を検証し誤差の範囲まで観測するような一族であれば、それは少なからず表面に出る筈だ。

(何なんだこいつ…見た目とやってることの何もかもが一致しねぇ。こんなに先が読み辛ぇ相手は初めてだ)

どんな人間でも、その表面にそれまで生きてきた情報がある。それなのに、沙都子からは、その表面には釣り合わない内面が後付けのように溢れてくる。
中身と入れ物が違う、そんな印象を受けた。

(ギリギリでしたけれどね。……メリュジーヌさんから、面白い薬を貰っておいて良かったですわ)

沙都子が服薬した薬は、未来の世界で一般に販売されている『葬式ごっこの薬』。
その名の通り、飲んだ人間の脈を止め、体を冷たくし、それを診た医者ですら、死亡したと診断する程の代物だ。

(惨劇を繰り返した雛見沢の中で、こういった殺し方もいくつか試しましたし、そういう死に方もしていますのよ。
 だから、死ぬかどうかのラインは手に取るように分かりますわ)

当然ながら、死ぬリアクションも実体験から演じ再現した。
人の死を間近で何度か見てきているシカマルですら、違和感がない程にそれは真に迫っている。
なにせ、リアリティが違う。とある漫画家が聞きつければ、作品に活かしたいと喉から手が出るだろう程に。

―――私も役者をやれますわね。

血の海で倒れるかなを見下ろして、優越感に浸りながら沙都子はそう思った。

「メリュジーヌさん」

指を鳴らす。
その音を合図にするように、メリュジーヌがクレーターから飛び出し、沙都子の横に並び立つ。

「具合は、どんなものですの?」
「……そう大したものじゃないよ」

鎧に罅は入っているが、五体満足のまま目立った傷もない。
ただ、沙都子はメリュジーヌの体幹が僅かに揺れたのを見て、内心で舌打ちをする。
決定打ではないが、攻撃は通用はしている。このまま戦えば負けないにしても、こちらもただでは済まない程度には、あのドラゴンはこちらの戦力に迫っている。

「あいつ、まだ…戦えるのか……シューティング・スター・ドラゴン!!」

龍亞が叫ぶ。
まだ、召喚したシューティング・スターの現界時間は残されている。
戦闘の態勢に入るシューティング・スターを見て、メリュジーヌも鞘を構えた。


946 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:25:52 EmX8GvmU0

「ふざけないで…アンタ、どうしてこんなことするのよ! この娘はこれからだったのよ!」

その時、誰よりも怒りを露わにして梨沙は叫ぶ。

「きっと、あの娘はもっと……!」

その才能に一番触れたからこそ。
きっと、その未来に於ける有馬かなは、もっと光り輝くのだろうと確信めいていた。

「何を言っているんですの? どうせ子役なんて、成長すれば用済みじゃありませんか」

「なん―――」

「貴女もですわよ。
 アイドルなんて腐る程居るんですもの、売れるのは一握り。
 きっと楽しいのは今だけ、未来は貴女の思い描くような理想通りにはなりませんわ。ええ…輝かしいのは―――今だけ」

悪意に満ちた嘲りではなく、ただありのままの事実を述べるように淡々と言葉が紡がれていく。
まるで、自分はそれを見てきたように。

「やってみないと、分からないじゃないか! 沙都子に未来を決める権利なんてない!!」

「そういえば龍亞さん、貴方さっき絆とか仰っていましたわね。
 数を束ね、相手を潰す。それは絆ではなく、リンチと呼ぶんですのよ」

「そ、そんなこと―――お前、頭おかしいよ!」

「絆とは、そんな薄っぺらで軽いものではありませんわ。
 繰り返す(つみかさねて)、みなが罪(きずな)を築き上げていく。そうではございませんの? だから、私はこれからも友情を深めてくれた惨劇(きぼう)を信じますわ!!
 そして、望まぬ未来(ぜつぼう)を何度も何度も退けてきましたの。この絶対の意思で」

同じ意味を持つ、言葉なのか?

龍亞は息を飲み、唖然とした。
遊星が絆や希望を語るのと、この少女が語る有様は同じようで、全く別の意味合いに聞こえてくる。

「違う……絆は……」

「なら、貴方は貴方の信じる絆(リンチ)を続ければ良いじゃありませんの。
 そういえば、もう割戦隊の5人とも戦って殺したんですのよね? 素晴らしいですわ! とんだ焼け野原ですわね」

「!!?」

血に染まったパワー・ツール・ドラゴンが頭を過る。
龍亞はそれ以上、何も言えなくなってしまった。

「行きましょうか、メリュジーヌさん。流石にこれ以上遊んで、ブラックさんとやらに鉢合わせるのは面倒ですし」

腹正しいが、完全な誤算だった。
乃亜の言うように、これは公平な殺し合い。
支給品の使いようによっては、弱者が強大な参加者に対抗出来うるようにゲームをデザインされている。
格下と侮って、下手に手を出せば痛い目を見る事もあるのだろう。

(逆に言えば、私が最後…メリュジーヌさんを殺す手段を手にする事も可能である。とも言い換えられますわね)

だが、どこまでも固く、その信念を揺るがす事はなく。
絶対の意思を曲げぬまま、だが自分の失態をも次の盤面へと活かそうと策略を巡らせる。

「分かった」

沙都子を抱き上げる。
これからが本番の戦いと身構えただけに、多少拍子抜けしたような様子ではあるが。
やはり、不服そうではあっても、彼女に逆らう事はしない。
甘い魔女の囁きに逆らえず、流されるように妖精騎士は、メリュジーヌは疾走した

「やめとけよ、龍亞…そのドラゴンで追撃しようだなんて……」
「……」
「悔しいのは分かるが、あいつらをこのまま続ける気にさせちまったら……ここにいる全員死んでもおかしくねえ」

最強の竜種であり、最強の妖精騎士を相手を撃退した。
これ以上ない程の戦果であり、幸運であり、偉業を成し遂げた。
それでも、どうしようもない無力感を味わい、三人はただそれを見つめる事しか出来なかった。




―――


947 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:26:15 EmX8GvmU0




「動くんじゃないぞ! お前! マグルの武器というのが気に入らないが、僕だって銃の扱いぐらい分かるんだ!」

「ふざけんじゃねェぞ!」

シカマル達が居た民家から、少し離れた場所でドラコ・マルフォイは灰原哀の首を腕で拘束し、銃を突き付けていた。
その前では、体に所々かすり傷を作りながらも、山本勝次が苛立ちを見せながらも対峙する。
動けば撃つと暗に言われているのだ。自分ならまだしも、灰原に銃口が向けられていては強硬手段も取り難い。

「落ち着きなさい。貴方」
「黙れ! 何なんだ一体、急に爆発したかと思えば……!」

この三人はメリュジーヌのアロンダイトとスターダスト・ドラゴンのブレスの激突の際、奥の部屋に入った為に、その衝撃の余波に煽られながら、シカマル達とは別の方角へと吹き飛ばされてしまっていた。
民家の方角からは轟音が聞こえてきている。恐らくは交戦中だと考えられるが、駆け付けようにも意識を取り戻したマルフォイを対処しなければ、今度は灰原の身が危ない。
焦りを覚えながらも、慎重に勝次はマルフォイの様子を伺う。

「私達は殺し合いには乗っていないわ。貴方は……」

「黙れ!」

(取り返しのつかないミスね…ここまで吹き飛ばされた時に、私のランドセルを奪われるなんて)

ブラックから預かったランドセルは手元にあるが、肝心の自分のランドセルはマルフォイに取られ、中に銃まであったのだから、泣きっ面に蜂とはこのことだ。

「どうするつもりだお前、もし灰原を撃ち殺したらヒー坊でお前を貫くぞ! こいつは槍みたいに鋭い触手を伸ばせんだ!」

「フン! ……くっ」

鼻で笑った後、マルフォイは狼狽する。
幼いとはいえ魔法使い。魔法生物にもマグルよりは明るい。
だから、得体のしれない生物に対して理解もある。
勝次の左腕の気色悪い生物が、本当に攻撃手段を持っている可能性を否定しきれなかった。

「……その灰原の支給品はやるよ。だから、さっさと灰原を解放してどっか行っちまえ」

灰原には悪いが、彼女の命に代えられないこと。
更に言えば、メリュジーヌ達と交戦しているであろう龍亞の身が心配だった。
灰原の安全と、一秒でも早く時間を買えるのなら、支給品くらいは渡しても良いほどに。

「足りねェなら、俺のだってやる」

「うるさい! ……うるさい」

「貴方…本当は殺しなんて、したくないんじゃないの?」

そんな僅かなマルフォイの動揺を突くように、灰原が口を開いた。

「それは正しいことよ。貴方の倫理観は間違ってはいないわ」
「黙れ! 既に一人、襲っているんだ!!」
「その一人は殺したの? そうでなければ、貴方はまだ引き返せる。こんな殺し合い乗る必要なんてないのよ。
 一度犯した罪は、鎖になるわ。それは罪人を逃さない。いくら振り解いても、過去という名の鎖は逃がしてはくれない」

まるで、自分のことのように。
落ち着いた口調でありながら、影を見せる表情で語る灰原にマルフォイは固唾を飲む。

「……どうして、お前達は乃亜に逆らえるんだ?」

「なに言ってんだ?」

「怖くないのか? 奴がその気になれば、こんな首輪いつでも爆破できるんだぞ。
 僕達は奴に命を握られているんだ! どうして、逆らおうなんて思える!?
 どこで会話を聞かれているかも分からない。乃亜の機嫌を損ねた瞬間、僕達は殺されてしまうかもしれないんだぞ!」

「落ち着いて考えろよ。殺し合いに乗るにしたって、さっきの爆発を引き起こした鎧のチビ女を相手にすんだぞ?
 そんな奴と戦うより、一か八か脱出を狙った方がいいだろ?」

「そのチビ女すら、捕まえて言いなりにさせているのが乃亜だろう!! どうやって脱出、出来るというんだ!!」

「クソッ……!」

マルフォイの訴えを聞いて、勝次もその敵意が薄らいでいく。代わりにあるのは同情心だ。
マルフォイも好きで殺しをしたい訳ではない。むしろ恐怖に怯え、自衛の為に必死になって周りが見えなくなっている。


948 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:26:40 EmX8GvmU0

(そりゃ確かに…言われてみれば、こんな爆弾首輪付けられて乃亜の悪口を言いたくないのは分かるけど)

問題は、本人が高慢で人の話を聞かないのと、極端に馬鹿ではなく、事態を飲み込めた上で悲観的な結論を急いでしまっているのが質が悪い。

「女、お前……僕と来るんだ! 帽子のお前、お前はそこにいろ!」
「おい、何考えてんだ!?」

それはマルフォイにとっての苦肉の策だ。
乃亜と敵対するのは、これ以上ない程に恐ろしい。だが、人を殺める勇気もない。
だから、殺し合いに乗るという姿勢は崩さず、だがそれを一先ず引き延ばす。
この場から離れて、作戦や態勢を立て直すという建前で、目の前の少年から逃げる事にした。

「逃げるなら、灰原も置いて行けよ!」

「この女は人質だ! 動くんじゃないぞ!!」

人質とは言ったが、本当の理由は一人になるのが怖かったからだ。
エリスに馬乗りになられ、徹底して甚振られた恐怖がマルフォイが一人になるのを躊躇わせた。
それに先ほどの説得の言葉の重みから、自分達子供とは違う安心感や頼もしさを覚えたのだろう。

(不味いわ…ブラックがもし、私の居ない間に……シカマル達と出会ったら)

また、灰原にも懸念すべきことがある。
仮にも殺し合いに乗ると宣言してみせたブラックのことだ。
取引を成立させたとはいえ、灰原が制御してるとも言えないが、自分の目の離れた場所で別の参加者に何をするのか、不安がない訳ではない。

(いえ、あまり期待はできないけれど)

―――俺の荷物持ちをしている間は生かしてやるよ

あるいは、あの言葉を信じれば。
ブラックは、その荷物を未だ持ち続けている灰原を”生かす理由”が出来るのではないか。
救助に来る必然性が生まれるのではないか?
わざわざ、シカマル達を襲うのではなく、自分の救出を優先するのではないか?
希望的観測も込みだが、それでも自分で言ったことを翻すような男でもなさそうだ。
そう考えて……。

「勝次君―――貴方」

ここは言う通りにしてシカマルと合流し、そしてブラックに自分の荷物を預かっていると伝えて欲しいと、そう言おうとして口を閉ざす。
もし、仮に自分の想定したとおりにブラックが行動してくれたとして、今度はマルフォイはどうなる?
灰原を生かす為に、無慈悲にマルフォイを殺害してしまうのではないか?
ただ、殺し合いに一方的に巻き込まれて、まだ誰も死なせてはいない被害者の子供を死なせてよいのか。

探偵団の仲間達なら、江戸川コナンなら、それを良しとするか?

「……私は平気よ。だから、大人しくしていて……あとブラックには、この事は伝えないで」

死なせてはいけない。まだ、こんな子供を。

「そ、そんなこと言われても……」

マルフォイはそのまま灰原を連れて、ゆっくりとだが勝次から遠ざかっていく。
一瞬、隙を突いてヒー坊を、そう考えたが灰原の安全が保障出来ない。
それに、やはり勝次もマルフォイを死なせたくはなかった。
割戦隊と違って、までこの少年は引き返せる。
やがて、マルフォイと灰原の姿が消えた後、勝次は考える。


949 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:27:01 EmX8GvmU0

(どうする…あの二人を追いかけるか? だけど……)

はぐれた龍亞とかなも気にかかる。

あの鎧のチビ女は、勝次にとっても詳細は分からないが、宮本明ですら手に余る程の実力を兼ね備えているに違いない。
それにもう一人、あのエセお嬢様の沙都子だ。口調は丁寧だが、育ちの悪さが隠しきれていない。
とんだ、ヤバい奴だった。
あんな二人組を相手にさせて、シカマルが居たとしても無事でいるとは思えない。

(あの金髪野郎相手なら、灰原でも何とかなるか…? やっぱり龍亞達の方に)

その時、勝次を照らし出すようにドラゴンが天空へと降臨する。

「なんだ、あのドラゴン…それにあったけェ光だ……」

シューティング・スター・ドラゴンを前にして、あれが今までに見た邪鬼のような異形とは違い、邪悪な存在ではないと直感で判断した。
多分、召喚したのは龍亞なのだろう。前に出したパワーツール・ドラゴンのように、カードを使った可能性が高い。
あのドラゴンが居てくれるなら、あちらは何とかなるか?

「どうする……?」

救出の早さを優先してマルフォイと灰原を追うか、龍亞達と合流を優先するか。
それなら、灰原と同行していたらしいブラックに、救出の協力も取り付けられるかもしれない。

―――あとブラックには、この事は伝えないで

「灰原はブラックって奴が金髪野郎を殺さないか、危惧してんのか? くゥ、どうすりゃいいんだ」


950 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:27:18 EmX8GvmU0


【G-2民家から離れた場所/1日目/黎明】

【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:絶望王の基本支給品、救急箱、絶望王のランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:コナンや探偵団のみんなを探す。
0:マルフォイを説得したい。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:ブラックについていき、説得できないか試みる。もし困難なら無力化できる方法を探る。
3:沙都子とメリュジーヌを警戒する。
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。


【ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッター シリーズ】
[状態]:現状の怪我は応急処置済み(鼻骨骨折、前歯があちこち折れている、顔の至る所に殴られた痕)、ボサボサの髪、失禁
[装備]:ホグワーツの制服、サブマシンガン(灰原に支給)@彼岸島 48日後…
[道具]:灰原の基本支給品、灰原のランダム支給品×0〜1
[思考・状況]
基本方針:ゲームに乗り、生き残る。
0:本当は殺したくない。
1:灰原を連れて逃げる。一人になりたくない。
2:赤い髪の女(エリス)が怖い。
3:着替えが欲しい。
[備考]
※参戦時期は、「秘密の部屋」新学期開始〜バジリスクによる生徒の石化が始まるまでの間


【山本勝次@彼岸島 48日後…】
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3、割戦隊の首輪×1
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
0:民家の方に引き返して龍亞達と合流するか、マルフォイと灰原を追いかけるか……。
1:無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:首輪を外せる参加者を見つけ出す。殺し合いに乗らない奴も味方にしたい。
3:鎧のチビ女とエセお嬢様野郎、あいつらふざけやがって!
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's&当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに知りました。


951 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:28:29 EmX8GvmU0







私は有馬かな。天才子役。
徐々に、人気も下がり始めてるけど……一応まだ天才子役。
でも、まだまだこの業界にしがみ付いて行こうと思ってた。
私よりいい演技をした天才子役アクアも気になるし、最近は周りの大人にも合わせなきゃって考えも改めたし。

(血、すご……)

それが気付いたら、海馬乃亜とか名乗る嫌味ったらしい変なガキに殺し合いを強制されてしまった。
しまいには銃で撃たれて、胸から血が出てきて止まらなくなった。

あまり考えたくないけど、これ死んじゃうんだなって。

凄く胸が痛いし。

どうしよ。私が死んだら、お母さん……悲しんでくれるのかな。

ここで死んだら、行方不明で報道されてお母さんやお父さんが疑われて…絶対帰らなくちゃ。
そう思っても、血と一緒に体から力が抜けていくようだった。

大きくなったら、一途で誠実な素敵な人と付き合いたかったな。

ごめんなさい、お母さんお父さん。
私、死んじゃうかも。

「かな! かな!!」

「アンタ…しっかりしなさいよ! 病院、そうよ…病院で」

龍亞と憎たらしいメスガキ面をした梨沙がこちらを覗き込んできた。
病院行っても、医者が居なきゃどうにもならないでしょうに。

……でも、梨沙のメスガキ面見てると、対抗意識が燃えてきた。
私にあれだけ挑発してきたんだもん。このまま死ぬのも、悔しい。
どうせ死ぬなら、苦しい顔じゃなくて……

誰かの心を奪う、そんな光みたいに。
私を見て貰ってる人達に、有馬かなとしての魅せらるだけの笑顔を。

「龍亞達と、あと…そこの後輩も…頑張んなさいよ……」

色々言いたいこともあったけど、この殺し合いを何とかしようとしてる龍亞とシカマルと、ここには居ないけど勝次と。
それから、この先厳しい世界に喰らい付いて行こうとする生意気な後輩に。
一言で、色々纏められる言葉を。そう思って、あまり捻りのない台詞になってしまった。

でも、笑顔で言い切ってやった。



(こんな私でも、誰かの推しの子になれたのかな……)


最後にそんなことを思って……。
案外、こんな殺し合いに巻き込まれなかったら、私、アイドルやってたのかもしれないわね……。




【有馬かな@【推しの子】 死亡】


952 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:30:10 EmX8GvmU0



「ごめん…かな……オレ…シグナ―なのに、守ってあげられなかった……」

血の中で海の中に浸るシューティング・スター・ドラゴンのカードを龍亞は手に取る。
自分が憧れる不動遊星(ヒーロー)の力を借りても、こんな小さな女の子を一人守ることすら出来なかった。

「く、そ……!」

このカードを思いっきり握りしめて、くしゃくしゃに潰そうとして――それは、駄目だと抑えた。

「……Z-ONEも…同じ気持ちだったのかな」

今なら少しだけ、最後の人類として生き残り続けたもう一人の英雄(ゆうせい)の気持ちが、理解できた。





―――輝かしいのは―――今だけ




「今、だけ……」

梨沙も呆然と佇んでいた。

沙都子の言ったことは戯言だと切り捨てたかったけど、有馬かなの射殺と共に現実を突き付けられたようで。
自分が考えたくなかった考えを、直視させられているようで。

「アタシ…この先も、アイドルでいられるの…?」

考えたくはないけど、もしも、この先死ぬ時が来た時、自分は有馬かなのように笑顔で死ねるのだろうか。
あの少女は最後まで、役者として死んでいった。
じゃあ、的場梨沙は? 
この問いに、梨沙本人は答えることが出来ない。

「あんま気にすんな」

「シカマル?」

「お前はよくやってる……俺なんて、夢が4つあったんだけどよ…早速1つ叶わなくなっちまったし……。
 そんな俺が保証してやる、お前の人生設計は悪くねえ」

「アンタの…夢って何よ?」

「―――もう、忘れちまったよ」

そっか、こいつ慰めてくれてるんだ。

梨沙は少しだけ、顔に覇気を取り戻した。

「……ありがとう」

これから、まだやらなくてはいけないことは沢山ある。
不安が拭えたわけでもなく、かなが目の前で死んだショックも残っているけれど。
シカマルのお陰で、少しだけ前向きになれた。


953 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:30:47 EmX8GvmU0


【G-2民家跡周辺/1日目/黎明】

※民家は消し飛びました。


【奈良シカマル@NARUTO-少年編-】
[状態]健康、疲労(大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、アスマの煙草、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出する。
0:灰原達とも合流したいが、ブラックのことも何とかしねーと。
1:殺し合いから脱出するための策を練る。そのために対主催と協力する。
2:梨沙については…面倒臭ぇが、見捨てるわけにもいかねーよな。
3:沙都子とメリュジーヌを警戒
4:……夢がテキトーに忍者やること。だけど中忍になっちまった…なんて、下らな過ぎて言えねえ。
[備考]
原作26巻、任務失敗報告直後より参戦です。


【的場梨沙@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]健康、不安(小)、有馬かなが死んだショック(極大)、将来への不安(極大)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:シカマルについていく
2:この場所でも、アイドルの的場梨沙として。
3:でも……有馬かなみたいに、アタシも最期までアイドルでいられるのかな。
[備考]
※参戦時期は少なくとも六話以降。


【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]疲労(大)、右肩に切り傷と銃傷、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン&スターダスト・ドラゴン&フォーミュラ・シンクロン(日中まで使用不可)
  シューティング・スター・ドラゴン&シンクロ・ヘイロー(2日目黎明まで使用不可)@遊戯王5D's
[道具]基本支給品、DMカード5枚@遊戯王、ランダム支給品0〜1、割戦隊の首輪×2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
0;かな……。
1:妹の龍可が居れば探す。首輪を外せる参加者も探す。
2:勝次が心配。
3:沙都子とメリュジーヌを警戒
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島、当時のかな目線の【推しの子】世界について、大まかに把握しました。


【支給品紹介】
【スターダスト・ドラゴン@遊戯王5D's】
一度の使用で12時間使用不可

【シンクロ・ヘイロー@遊戯王5D's】
ロワ内の効果として、シンクロモンスターが相手を倒す(殺害か無力化)出来なかった時、発動し攻撃力を倍にする。
アニメオリジナルカード。
一度の使用で24時間使用不可。

【DMカード5枚】
上記2枚と合わせ、セットで1つ扱いで支給。

【フォーミュラ・シンクロン@遊戯王5D's】
的場梨沙に支給、シューティング・スターとセット扱い。
アクセルシンクロを行うのに必要なカード。
一度の使用で12時間使用不可

【シューティング・スター・ドラゴン@遊戯王5D's】
的場梨沙に支給、フォーミュラ・シンクロンとセット扱い。
スターダスト・ドラゴンの進化系。
クリアマインドと呼ばれる精神状態になり、アクセルシンクロすることで呼び出せる。
原作ではバイクに乗っていたが、乗らなくても召喚は可能とする。クリアマインド判定も緩くなってはいる。
一度の使用で24時間使用不可。


954 : 星に願いを ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:31:44 EmX8GvmU0






「沙都子の話を聞いても良いかな」

「どうしたんですの? いきなり」

「あの子達に言ってたじゃないか。絆がどうとか…沙都子の仲間の話を聞いてみたくなったんだ。
 僕は僕の事を話したんだ。君の事を聞いても良いだろう?」

戦闘を終え、沙都子の指示に従いながら移動するなか、メリュジーヌは不意に言った。

何か思惑があるのだろうか。逡巡した沙都子だが、はぐらかして機嫌を損ねても面倒だと考える。
だから、端的に惨劇を語った。
大好きで、憎くて、裏切られて、それでもやっぱり大好きな友達を繋ぎとめる為に。
罪という絆を重ねて、輝かしい今を守る為に。
惨劇を引き起こし、梨花の心を折るために戦い続けた事を。

全てを聞き終えたメリュジーヌは短く「そう」とだけ呟いた。

虚しく、涙を流しそうなほどの顔で。

思えば自分は、罪すら彼女(オーロラ)と共有できなかったな、と。

どんな罪を犯しても、オーロラはそのことを忘れ去ってしまう。
この先、メリュジーヌがオーロラの為に積み重ねる罪すら、彼女は知らずにいるのだろう。
ただ一言「ありがとう」たったその一言すら、言ってはくれずに。

あの、眩いばかりの流星の竜の輝きを思い出す。
あれは、人の想いを継ぐ優しい光だった。

その光が眩しくて、自分の愛を否定されそうで―――

「その愛は本物ですわよ」

その時、狙ったように声が響く。

「貴女も積み重ねているではありませんか。その悲しみ(きずな)は例え、他の誰かが否定しようとも―――それは愛なんですのよ」

痛んだ心に染みるように。
沙都子の甘い声が響く。

「この先、何があろうとも……オーロラさんにすら、忘れ去られようとも―――私だけはその愛を覚え続けてさしあげますわ」

「……なんのつもり?」

「さあ? ……なんでしょう」

人の心の機微には疎いが、何となく、この一言だけは何の打算もない。
そう、メリュジーヌには感じられた。



【G-2民家/1日目/黎明】

【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業】
[状態]:疲労(中)
[装備]:FNブローニング・ハイパワー(7/13発)
[道具]:基本支給品、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、葬式ごっこの薬@ドラえもん×2
[思考・状況]基本方針:優勝し、雛見沢へと帰る。
0:龍亞さん達の抵抗は誤算でしたわね……。特にシカマルさんは確実に殺しておきたい。
1:メリュジーヌさんを利用して、優勝を目指す。
2:使えなくなったらボロ雑巾の様に捨てる。
3:精々頑張って下さいね?悟飯さん
4:願いを叶える…ですか。眉唾ですが本当なら梨花に勝つのに使ってもいいかも?
5:メリュジーヌさんを殺せる武器も探しておきたいですわね。
[備考]
※綿騙し編より参戦です。
※ループ能力は制限されています。
※H173入り注射器は使用後破棄されました。


【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、鎧に罅、自暴自棄(極大)
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。

【葬式ごっこの薬@ドラえもん】
メリュジーヌに支給。
飲むと一定時間仮死状態になる。




【マルフォイ以外の全員共通の備考】
全員の出展元世界と、勝次と龍亞が割戦隊と交戦したのは最低限情報交換し、共有してます。


955 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:32:02 EmX8GvmU0
投下終了します


956 : ◆lvwRe7eMQE :2023/06/28(水) 23:37:43 EmX8GvmU0
新スレ立てましたので、今後はこちらで予約と投下はお願いします。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1687962835/


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