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コンペロリショタバトルロワイアル
「やあ、諸君目は覚めたかな?」
その空間に幼い少年少女が数十人はいた。そのなかで、壇上の上に同じくまだ幼い短パンを履いた緑髪の少年が立っている。
歳は小学生程、その容姿に見合わず聡明そうでありまだ、非常に悪辣な雰囲気を醸し出している。
なにより、少年は明らかに壇上の下の少年少女達を見下し、蔑んでいた。
「僕は、乃亜、海馬乃亜という。実は君たちにあるゲームをして貰いたくて、ここに呼んだんだ。
最後の一人になるまで、殺し合って貰いたい。いわゆるバトルロワイアルさ。勿論ただでとは言わない、優勝者にはどんな願いも叶えてみせる。
例えば……そうだね」
乃亜が指を鳴らした瞬間、爆破音と共に一人の少年の首が血しぶきと共に舞い上がった。
「ルフィィィィィ!!!」
【モンキー・D・ルフィ(幼少期)@ONE PIECE】死亡
ルフィと呼ばれる少年だったモノの元に、彼より少し年が上の少年が駆け寄る。
「……てめえ、よくもルフィを」
「安心すると良い。ポートガス・D・エース、キミの弟はすぐに生き返るよ。ほら―――」
「え、エース……?」
「ルフィ!?」
【モンキー・D・ルフィ(幼少期)@ONE PIECE】復活
エースの足元に転がっていた死体は一瞬にして光に包まれ、分離した首と胴体が繋がった生前の姿そのままで蘇った。
「これで信じて貰えたかな? 僕に不可能はないんだよ。
今の爆発だけど、キミたちには首輪を着けさせて貰っている。これは爆弾で、例え不死の異能者でも確実に殺せる特別なものさ。
もう理解の浅い子供でも、分かっているよね? 僕に逆らった者に命はないということに」
子供たちの中、何人かの眼光は鋭く乃亜を捉え殺意を放っていたが、先ほどの惨状と乃亜が起こした奇跡の蘇生劇を目の当たりにし、その殺意が和らいでいた。
本当にあらゆる願いが叶うならばと、または乃亜を殺めようにも首輪を警戒し様子見に回ったのか。
乃亜はそれを知ってから知らずか眼光の主達に一瞥をくれた。
"
"
「そうそう、殺し合いと言っても、ゲームは公平に行わなければならないからね。キミたちにはランダムにアイテムを支給するよ。
圧倒的強者にはハンデも与えよう。ただ、殺すだけじゃなく戦略も必要になるわけさ」
「ゴムゴムの〜ぴすとる!!」
ぺちんっと、間の抜けた音がした。
腕を精一杯伸ばし拳をぶつけようと狙いを付けたのだろうが、それは乃亜には届かず、その背後の壁を叩いた。
後の四皇といえど、この場に呼ばれた時系列のルフィはまだ手足が伸びる程度の子供でしかない。
海王類すら一撃で仕留め、東の海の覇者、砂の国を牛耳る七武海、空島に君臨する雷神、41歳、ワノ国を支配する最強生物、
数多の猛者を打倒したその拳も、今はまだパンチの打ち方すら知らない未熟な子供の小さな手でしかなかった。
「おいルフィ!」
「だってよ、エースあいつ!!」
だが、何よりも自由を愛するルフィは殺し合いなど容認できる筈もなかった。
「僕も舐められたものだね……。いいかい? 僕はこの世界(ゲーム)の創造主(かみ)なんだよ。
神に逆らった者の末路を教え込んであげないとね」
「おまえの、何処が神なんだッ!!」
「今に分かる」
ボンッ。
再び響く、爆発音。
転がり落ちるのは、エースの生気を失った生首だった。
「え、エースウウウウウ!!? なんでだ、お前、どうしてエースを!!!?」
「フフフ、神罰は罪人に下されるとは限らない。キミたちの命は僕が握っているのさ」
「お前……お前ェ!! ゴムゴムのォォォ!!!」
ルフィが怒りを込め、擦り切れる程に歯を噛み締め腕を伸ばし乃亜へと飛び掛かる。
ボンッ。
爆音に遮られ咆哮は紡がれることはなく、首が亡くなった体は無様に転げる。
とある世界の海を騒がすハズだった大海賊の兄弟は、正しい歴史を外した最悪のもしもの中で凄惨な結末を迎えてしまった。
「せっかく拾った命を無駄にするとはね。僕に尻尾を振るっていれば良いものを」
乃亜はルフィの首を蹴り飛ばし、ビリヤードのようにエースの首に当てた。
「そうだねえ……せっかくだ。キミたちの兄弟愛に題名でも付けてあげようか。
『無様な敗北者達』キミたちにぴったりの名前じゃないか! 無駄死にご苦労様、せいぜいあの世で海賊ごっこに励んでいてくれたまえ!
アッハハハハハハハハハハハハハ!!!」
この悪趣味な光景を目の当たりにした直後、参加者たちの意識が揺らいでいく。
彼らが最後に目の当たりにしたのは、無邪気に笑う全能感に満ちた子供の高笑いだけだった。
【モンキー・D・ルフィ(幼少期)@ONE PIECE】死亡
【ポートガス・D・エース(幼少期)@ONE PIECE】死亡
【主催者】
【海馬乃亜@遊戯王デュエルモンスターズ(乃亜編)】
『ロワルール』
※殺し合いは深夜0時から開始。
※最後の一人まで生き残った者を優勝者とし一つだけどんな願いでも叶えることが可能となる。
※6時間毎に放送で死亡者の名前が読み上げられる
※参加者が所持していた武器は基本的に没収。かわりに支給品がランダムに再配布される。
※一部の参加者には制限が掛けられている。その他にも様々な変化を施されている可能性がある
※参加者によっては様々な制限を掛けられている。制限については各々に支給された説明書に書かれている
※参加者名簿はタブレットから見れる。第一回放送後、観覧可能。
※第一回放送時に禁止エリアの追加と説明がされる。禁止エリアに指定された場合、そのエリアの参加者は一定時間以内に離脱しなければ首輪を爆破する。
『書き手ルール』
※登場候補話を募集、条件はタイトル通りのロリかショタのキャラクター、細かい条件は設けません。
容姿だろうが実年齢だろうが、自分がロリショタだと思うのならOKです。
※施設は自由に出しても大丈夫です。
※一話退場枠もご自由に。
『参加者の初期所持品』
・何でも入る四次元ランドセル(参加者の収納は不可)
・不明支給品1〜3
・マップや参加者名簿を見れるタブレット
・文房具一式
・水と食料
コンペロリショタロワwiki
ttps://w.atwiki.jp/compels/
地図
ttps://w.atwiki.jp/compels/?page=%E5%9C%B0%E5%9B%B3
本日より当企画の登場話を募集させていただきます。
よろしくお願いします。
募集期間としては、4月30日までを締め切りとして予定しております。
是非、気軽にご参加下さい。
それと、候補話を一作投下させていただきます。
「――――のび太や、ドラえもん達がいれば頼りになると思うんだ」
骨川スネ夫は、殺し合いが始まってから出会った同じ参加者達に自分の大雑把な知り合いと、それまでのちょっとした境遇を語っていた。
「へえ、未来から来た猫型ロボットなんて……トランクスさんみたいだなあ」
スネ夫の話を聞いて、感慨深そうにしたのは孫悟飯という少年だった。
10歳前後の体格に見合わぬ逞しい肉体を持っていたが、内面は礼儀正しい真面目な子供だった為、すぐにこの集団に打ち解けた。
「ヤミさんも居たら、力になってくれるかも……居て欲しくはないけど」
髪を頭の上で束た少し大人びた雰囲気の少女、結城美柑も頼りになりそうな人物に友人である黄金の闇の名を上げた。
「未来とか、ロボットとか……何言ってるんだよ……」
一人だけ、ユーイン・エッジバーグという少年はドラえもんを始めとしたスネ夫の話に付いて行けず、困惑していた。
「まあ、私もララさんが居なかったらこんなこと信じなかったと思うし……ユーインくんが信じないのも無理ないよね」
「でもあの乃亜って奴も死んだ奴を……生き返らせてたし……」
「死んだ人でも、生き返らせる事は出来るよ。ドラゴンボールというのがあって、どんな願いも……」
「待って、今なんて言ったの? ドラゴンボール……?」
「え、ど、ドラゴンボールが……どうかしたんですか、ルサルカさん?」
最後にこの中で一番歳が上に見えるルサルカ・シュヴェーゲリンという赤髪の少女が食い気味に悟飯に問いかける。
「いえ、ただ願いが何でも叶うなんて……不思議だなって……何なのそのドラゴンボールって言うのは」
「七つ集めると、神龍ってドラゴンを呼んでなんでも願いが叶うんです……。だから、乃亜ももしかしてドラゴンボールを持ってて、こんな殺し合いを開いたんじゃないかって」
「参考までに聞きたいんだけど、それは例えば不老不死なんかも叶えられるのかしら?」
「う…うん……そうですけど……」
悟飯は怪訝そうな顔をしながらルサルカの問いに答えた。
(なんだろう……この人、なんか凄く嫌な気を感じる)
彼女が口にした不老不死というワードもそうだが、彼女から感知できる気は何か今まで相対した存在とは違う感じがした。
まるで、何人もの人間が内に捕らえられているかのような。
「いやだぁ、そんな怖い顔しないでよ。悟飯くん?」
「あ、いや……」
気のせい、だろうか。
"
"
「あの、みんな……先にスネ夫くんとユーインくんのお友達を探してあげようと思うんだけど……いいかな?」
「え、僕の友達が先で良いの!?」
「ダミアン様達を探してくれるのか!?」
「うん、ヤミさんは強いし……悟飯くんとルサルカさんは、多分ここに連れて来られそうな歳の知り合いはいないんでしょ?
だから、皆が良ければ……だけどね。バラバラになるより、みんな一緒の方がきっと良いよ」
「僕は賛成です。ルサルカさんは?」
ルサルカは年齢を偽っていたが、実年齢は優に100を超える魔女だ。戦闘力も年齢に見合ったモノを誇り、一人でも早々殺し合いで死ぬこともない。
ゆえに、こんな子供の集団に付き合う義理も暇もメリットもなく、今すぐ全員殺してから支給品でも奪って武器を手に入れるのも悪くはない。
(でも、気になるのよね。この悟飯って子が言ってたドラゴンボール……本当に不老不死が叶うのなら……)
「ルサルカさん?」
「いいわ。私も貴方達に付き合ってあげる」
僅かな思考の末、悟飯から情報をもっと引き出すために同行を快諾した。
黄金錬成も捨てきれないが、かの黒円卓の中で策謀を巡らすより、ドラゴンボールという手段で不老不死が手に入るのなら、リスクは少なく魅力のある手段にも見えたからだ。
「……な、なあ、本当に宇宙人っているのか?」
「ユーインくん?」
「宇宙飛行士になるのが夢なんだ……だから、宇宙人がいるんだったら会ってみたいなって。
ナメック星ってところに行ったことがあるって言うから……」
「うん、僕の友達にデンデって宇宙人がいるんだ。今は神様だけど。
この殺し合いから抜け出せたら、紹介するよ。僕もダミアンって人に会ってみたいな」
「そ、そうだろ!? ダミアン様は本当に男らしい人なんだ」
殺し合いと聞いて、悟飯はずっと身構えていたが少しほっとしていた。
少なくともここに居る人たちは悪い人たちじゃない。こうやって話し合って、仲間を増やしていけば、乃亜を倒して殺し合いから脱出することも出来るかもしれないと。
「へえ、僕も仲間に入れて欲しいなあ。ねえ、アンナ?」
「え?」
ルサルカの背筋が凍った。
まるで、最初からそこに居たかのような自然さで、その少年は無邪気な笑みを彼らに向ける。
多少のデザインの差異はあれど、ルサルカと同じ軍服を纏い、右目の眼帯についた十字架を揺らしながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「な…なんだ……こいつ……」
ルサルカに次の驚嘆したのは悟飯だ。
「み…みんな……さ…下がるんだ……!!」
ルサルカに近しい気だ。だが、その禍々しさは比較にすらならない。
あの少年の中身は地獄のようだ。数多の人間が閉じ込められ、未来永劫苦しみ続けている。
それがルサルカの時より、もっとはっきり明確に感じ取れる。
「お…お前……い…一体……」
「おや? なるほどね。面白い技術を身に着けてるようだ。僕達の中を感知しているのかな?」
「しゅ…シュライバー……あ…貴方、どうしてここに?」
「どうしてって、それは僕が聞きたいよ。あの乃亜って子供に聞いて欲しいな。
でも、最初に会えたのがアンナ……キミで良かったよ」
二つの銃口が弾ける。シュライバーが二丁の銃を構え、引き金を引いた。
たったそれだけの動作だが、それが人の域を超えた神速で行われたのだ。それだけの動作で、音をも置いていくほどの超高速。
そして、弾丸もまた魔弾。ルサルカ程度では、まともに何発も喰らえば致命傷を負いかねない程の。
その弾丸は迷いも淀みもなく、ルサルカへと吸い寄せられていった。
この場にいる全員が、呆気に取られる間もなく、ルサルカ本人も全く身動きも取れぬまま、二つの鉛の死は彼女を貫こうとする。
「な…なにを……するんだ……!」
「……へえ」
意外と言いたげな顔で、シュライバーは僅かに眉を潜めた。
誰もが反応できなかったシュライバーの動きを、この悟飯という少年はただ一人、唯一見切っていた。
ルサルカの前で強く固められた拳の中には、確かにシュライバーが放った弾丸が握られていた。
「僕は遊佐司狼に敵討ちをしたいんだよ。だから、アンナが生きていたら駄目だろ? いい? か・た・き・う・ちっ!
アンナが生きてたらカタキにならないだろォォォ!!」
「何言ってるのよ。シュライバー……どうしてそんな話になってるのよ!!」
これは二人が殺し合いに招かれた時系列の違いに誤差がある為に、話に齟齬が生じている。
シュライバーは遊佐司狼をルサルカの仇討ちで殺す為に、アンナには死んでいて貰わなければならない時系列から。
逆にルサルカはそれとはまったく別の時系列から呼び出されたが為に、話が食い違っていた。もっとも―――。
「みんな、逃げてくれ……こいつは僕が倒す!!」
「僕を、倒す……? フフ、久しぶりだなァ、そんなこと言う相手なんていつぶりだろう。
いいよ。アンナの仇討ちを邪魔するなら、まずはキミから殺そうか!」
聖槍十三騎士団黒円卓第十二位。
ウォルフガング・シュライバー、二つ名はフローズヴィトニル。
狂乱の白騎士。
「形成
Yetzirah―」
18万5731人を殺害したその禍々しき殺人狂に、元より話など通じる筈もないが。
「───Lyngvi Vanargand暴嵐纏う破壊獣」
ドイツの軍用バイク、ZundappKS750。それを素体として、シュライバーが殺戮した者たちの血と怨念により聖遺物に昇華させた血塗られた愛機。
彼の詠唱により出現したそれは血の匂いを充満させ、その咆哮は圧倒的恐怖と狂気を伴い相対者にプレッシャーを与える。
「はあっ!!!」
悟飯の髪が金色へと変化し、黄金のオーラが発生する。
宇宙の帝王すら一方的に圧倒し、屠り去る。宇宙最強の戦士スーパーサイヤ人が降臨した。
拳を握りしめた悟飯がシュライバーの顔面を捉えた。だが、次の瞬間、高速でバイクを後退させ、物理法則を捻じ曲げた動きで回避される。
そのまま前進したシュライバーの突撃が悟飯に直撃し、その衝撃が全身を駆け巡る。
「ぐ、ううう!!」
「やるじゃないか!!」
そのあまりの速さに悟飯は驚嘆し、聖遺物の使徒ですらない純粋な肉体の強度のみで己の加速した一撃を容易く受け止めた相手に、シュライバーは賞賛を送る。
「大したものだよ。エイヴィヒカイトもなしに、生身の肉体でこの僕と最低限戦いを成り立たせるなんてさ!」
縦横無尽に走り回り、バイクによる突撃が、シュライバーの放つ数千を超える弾丸が、その高速移動による衝撃波の刃が。
白の狂獣が引き起こす、殺戮の暴風雨の中心に居ながら、悟飯は黄金の輝きを絶やすことなく、シュライバーへと反撃を放つ。
その反撃は当たりこそしないが、形として戦いにはなっている。
シュライバーの所属する黒円卓でも、こうも攻防をやり取り出来るほどの相手となれば大隊長クラス以上の相手位だろう。
それがまさか、黒円卓はおろかツァラトゥストラでもない。全く異質の力の保持者で存在するとは、シュライバーにしても驚きだった。
「でもね」
シュライバーが銃撃を止める。
「時間を稼ごうと言うのなら、それは無意味だ」
「なっ!?」
シュライバーの視線は悟飯より後方、背を向け逃げ出しているルサルカ達に向けられていた。
銃口をそちらに向け、照準を合わせる。
「分かるさ。キミがここで攻撃に耐えている内に彼らを逃がそうとしたんだろ?
駄目じゃないか? 僕を倒すって言ったのに、僕以外を気に掛けるようじゃさ」
「やめろォ!!」
悟飯は気を高め爆発的に加速する。シュライバーは涼しい顔で回避し射撃を開始する。
掌に気を集め、弾丸に気弾を当て消失させる。だが、シュライバーの銃撃はそれだけに留まらない。
更に引き金を人外の力で連続して引き、たかが二丁の拳銃でマシンガンのような銃弾の弾幕と、それ以上の精密性を以てルサルカ達に襲い掛かる。
「ぁ……!?」
スネ夫の左肩が弾け飛んだ。
「ま、まァ……ァあああああああ!!」
「す、スネ夫くん……?」
恐怖と激痛からパニックに陥ったスネ夫が血だらけになり、地べたで藻掻く。
両手で口を抑え、声にならない悲鳴を上げる美柑、腰を抜かし逃げることも出来なくなるユーイン。
そして焦りながらも、特に何の感情も湧かないままスネ夫を見下ろすルサルカ。
「ふふははははははは!!」
「やめろ……やめてくれェ!!」
これ以上の犠牲を出さない為に、駆け回る悟飯をあざ笑いながらシュライバーはその猛攻を潜り抜けながら、更に銃撃を行う。
「がっ、ごっ!?」
丁寧に残った右腕、左足、右足、全てを魔弾で吹き飛ばしていく。
なるほど、常人なら一撃で肉塊に伏す攻撃が当たり所が良ければ、そこそこには生きられる程度には制限されていると確認していく。
そこで苦しみスネ夫の事など、考えもしない。
「や、だ……ぼ、くちゃん、、まだ……ぶっ」
最後に頭が弾け飛び、胴体だけが血だらけで残された無惨な死体だけが残された。
「あっあぁ……」
スネ夫のその悲惨な末路を目の当たりにし、悟飯の動きは止まった。
目を見開き、口は呻き声を漏らし、体は小刻みに震えていく。
「うわあああああああああッッ!!!!」
そして、世界が揺れた。
「!?」
異変に気付いたシュライバーが止まった。
大気は震え、大地は軋み、海は波立つ。
悟飯の放つ黄金の気が、更に膨大に膨れ上がった。
「――――お前、もう許さないぞ」
爆風が悟飯を中心に巻き起こり、その髪が完全に逆立つ。
金色の光に蒼銀のスパークを纏わせたその姿は、スーパーサイヤ人を更に超えた領域スーパーサイヤ人2。
悟飯はシュライバーを睨む。
「ふーん、良い顔になったじゃないか。さっきよりh「ウスノロ」
眼前に悟飯が迫っていた。
その拳がシュライバーを捉え、目と鼻の先にまで迫る。
形成まで使用したシュライバーですら、その速度に反応することは叶わず、ここまでの接近を許して尚も動くことが出来ない。
いや、動けないのではなく、速すぎて行動が間に合わない。どんなに物理法則を捻じ曲げた動きをしようとも、いまこの魔拳を避ける術がない。
―――避け、いや……負け、死?
その拳はシュライバーに触れる寸前で止まった。
一瞬で飛び退き、シュライバーは悟飯から距離を取る。
「な、なに……なにやってるのよ!! 悟飯!! 早く殺しなさい!!!」
「殺す……? 何を言っているんですか、ふふ……まだ早いよルサルカさん」
「……は?」
「こんな奴は、もっと苦しめてから殺してやらなくちゃ……」
ルサルカは悟飯のことを知らない。だが、少なくとも話していて温厚な人物ではあった。
だからこそ、今の過激な発言に対し、恐怖を覚えた。
いや、良くある話か。力を得たからこそ、その精神が歪められていくというのは。
「馬鹿、相手はシュライバーよ! そんなこと言ってる場合じゃ!」
絶叫しながら、沈黙していたルサルカが悟飯を糾弾した。
その糾弾を聞いて、シュライバーは理解する。自分は今、舐められている。加減されている。泳がされている。遊ばれている。
この、己があんな劣等如きに。
「悟飯、早く! 殺して―――」
「調子に、乗るな。劣等がァ!!!」
ルサルカの表情から焦りが消え、そして恐怖により歪んでいく。
「さらばヴァルハラ 光輝に満ちた世界
Fahr' hin, Waihalls lenchtende Welt」
響き渡る詠唱。
「聳え立つその城も 微塵となって砕けるがいい
Zarfall' in Staub deine stolze Burg」
「……それがお前の本気か。でも」
「さらば 栄華を誇る神々の栄光
Leb' wohl, prangende Gotterpracht
神々の一族も 歓びのうちに滅ぶがいい
End' in Wonne, du ewig Geschlecht」
ただ悟飯はそれを見つめながら不敵に笑みを浮かべる。
「創造
Briah――
死世界・凶獣変生
Niflheimr Fenriswolf」
「勝てんぜ、お前は……」
次の瞬間、悟飯は上空に吹き飛ばされていた。
「がっ……!」
同じく空中に飛んだシュライバーのバイクの車輪に殴打され、今度は地面に殴打される。
さらに突進してくるバイクが直撃し、吹き飛ばされた。
「な、なんだ一体……」
動くだけで、周辺の木々を薙ぎ倒し、大地に亀裂を入れ、巻き上げた衝撃波だけで常人ならば八つ裂きにされる。
形成段階のシュライバーとは、比較にならないパワースピード。
だがそれだけではない。
「ぐっ!!」
完全に動きを見切ったとしても。
確実に先に動けたとしても。
シュライバーは必ず、その先手を打ってくる。打てている。
因果律を捻じ曲げ、何よりも早く動き、如何な攻撃よりも先制する。
それが、シュライバーの創造、死世界・凶獣変生。
「はははははははははッ、泣き叫べ劣等―――」
誰にも触れられたくないという渇望を具現化し、何者をも追いつ着けぬ最速の境地。
「その程度か」
だが、相手もまた規格外の戦士。
幾度となく地球を救い、宇宙の帝王すら下した偉大なる父から最強の名を継ぐ者。
シュライバーの突撃で辺り周辺が焼け野原になったなかで、悟飯はその戦意を保ったまま気を高める。
奴の能力の詳細は分からない。だが、相手より絶対に早く動き先手を打つという事は理解した。
ならばシュライバーの攻撃時、武器として使うバイクを掴み、ありったけの気を溜めた一撃で確実に葬り去る。
通常ならば、シュライバーの突撃を受けた時点で肉体は耐え切れず消し飛ぶが、悟飯ならば耐えきれる。
そして、それだけの肉体強度があれば、銃による射撃ではダメージはろくに通らない。ゆえに、いずれシュライバーは突撃による攻撃を選択する。
「来い、シュライバー!!!」
「図に乗るなよォ劣等ォォ!!!」
黄金の戦士と、白銀の狂犬が激突する。
「た、たすけ……ご、は……だみ、あん、さ……」
小さく、弱弱しい、縋るような声が悟飯の耳に響いた。
血の気が引き、先ほどまでの怒りが消し飛ぶ。
「ユーインくん……?」
それは、全身を八つ裂きにされた血まみれのユーインから放たれたものだった。
どうして、と言いかけて察する。
シュライバーの戦い方は自身の高速移動を活かしたもの。既にこの辺は、その移動による衝撃波で破壊され尽くされている。
「ま…まさか……」
頭に血が上り、悟飯は自分が守るべき人たちの事を失念していた。
こんな戦いにただの子供が巻き込まれれば、命がいくつあっても足りないことを。
それだというのに、シュライバーを殺すことだけを考え、守れたはずの命を取りこぼしてしまった。
「た…戦いの、ま…巻き添えで……」
自分の慢心と驕りが、一人の命を。
友人を紹介すると約束し、そして将来は宇宙飛行士になりたいと言っていた、将来の可能性は潰えた。
「はははははは!!」
「しま―――」
そして、ユーインに気を取られた悟飯の首元には、バイクのタイヤがギロチンのように吸い寄せられている。
弾けんばかりのシュライバーの笑みが、悟飯を嘲笑うように、脳裏にこびり付く。
「「!?」」
だが次の瞬間、シュライバーの創造は強制的に解除され、悟飯の変身も解ける。
再度能力を発言しようにも、お互いに力が発揮できない。
二人はとっさに飛び退き、相手の様子を視認する。
「……なるほどね。あの乃亜とかいう奴、つまらない真似をしてくれたみたいだね」
「なんだと?」
「忘れたのかい? 圧倒的強者にはハンデも与えるって。
普通に考えたら、僕達とその転がってるキミが見殺しにした彼で、殺し合いなんか成り立たないだろ?」
「……うっ」
確かに自覚する範囲でも、悟飯のパワーは非常に低下していた。それは恐らくシュライバーもだろう。
そして、スーパーサイヤ人や形成、創造といった力も時間制限を設け、常に使用できないようにさせている。
「さて、どうしようか? このままキミと最後までやり合っても良いんだけどね……。
でもやっぱりキミは全力を出させて、僕が殺す。多分時間の経過で力は戻るだろうしね」
「くっ……」
「取り合えず、僕はアンナを探すよ。ほら、僕達が戦っている間に遠くに逃げたみたいだ。
あとは、そうだなあ……。キミの為に屍の城を築いてあげるよ」
「なに!?」
「全員、ただでは死なせない。苦しめて甚振って嬲って、殺す。全部キミのせいさ。
あの拳で僕を殺さなかったこと、後悔させてあげるよ」
「き、貴様……!」
悟飯が拳を振りぬいた時には、既にシュライバーは遥か後方にいた。
「さて、確か……悟飯といったかな? いずれまた雌雄を決しよう。ここに呼ばれた生贄共の骸を踏み越えてね」
もう追いつけない。それは戦った悟飯だからこそ分かったことだ。
一瞬の瞬きに間に、シュライバーは姿を消していた。
「……ご…ごめん、ユーインくん、スネ夫くん。
ほ…ほんとうに……」
惨い姿で死に絶えた二人の遺体を前に、悟飯は簡素ながら気弾で地面に穴を空けて、埋葬した。
「美柑さん……大丈夫ですか」
鼻を付くアンモニア臭。
股の間を濡らし、土が締めりっけを帯び、少し蒸気が沸いている。
彼女は腰を抜かし、失禁していた。
シュライバーの衝撃波に巻き込まれなかったのは、運が良かっただけなのだろう。
そっと、悟飯は手を伸ばす。
「ひっ、来ないでっ……!」
手を叩かれてしまった。
「あ、ちが……悟飯くん……」
「……い、良いんです。僕は……何処か、着替えがある場所を探しましょう。
ルサルカさんも、探してあげないと」
どうしようもない後悔を抱えながら、悟飯は美柑に手を貸し支えながら、ゆっくりと歩き出した。
【ユーイン・エッジバーグ@SPY×FAMILY】死亡
【骨川スネ夫@ドラえもん】死亡
【孫悟飯(少年期)@ドラゴンボールZ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(小)、激しい後悔(極大)、SS(スーパーサイヤ人)、SS2使用不可
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:美柑を連れて安全な場所まで移動する。
2:スネ夫、ユーインの知り合いが居れば探す。ルサルカも探すが、少し警戒。
3:シュライバーは次に会ったら、殺す
[備考]
セル撃破以降、ブウ編開始前からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可
【結城美柑@To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
[状態]:疲労(中)、強い恐怖、失禁
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくない。
1:ヤミさんや知り合いを探す。
[備考]
本編終了以降から参戦です。
【ウォルフガング・シュライバー@Dies Irae】
[状態]:疲労(中)、形成使用不可、創造使用不可
[装備]:ルガーP08@Dies irae、モーゼルC96@Dies irae
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜0
[思考・状況]基本方針:皆殺し。
1:敵討ちをしたいのでルサルカ(アンナ)を殺す。
2:いずれ、悟飯と決着を着ける。その前に大勢を殺す。
[備考]
マリィルートで、ルサルカを殺害して以降からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
形成は一度の使用で12時間使用不可、創造は24時間使用不可
【ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae】
[状態]:健康、シュライバーに対する恐怖
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。悟飯に倒されていて欲しい。無理そうだけど。
2:ドラゴンボールに興味。
[備考]
少なくともマリィルート以外からの参戦です。
以上で投下を終了します。
もう一作投下します。
「俺は……俺は助かったのか……」
赤ん坊が、二足歩行していた。
殺し合いという異常下のなか、ランドセルを引き摺りながら赤ん坊が二足歩行していた。
彼、いや肉体は彼女のようにも見える。しかし、その発声は紛れもなく男性のものだった。それも、さほど若くはない中年のものだ。
「確か、あのベビーシッター達に邪魔されて、俺は……」
元々、この肉体は彼本人のものではない。
かつて人生に絶望したこの男は、それをやり直す為、金持ちの娘の体を乗っ取ろうと画策し黒魔術により悪魔を呼び出した。
悪魔との契約により、元々の肉体の持ち主である高伊りんごという女の子の精神を追放し、この男がこの肉体を奪った。
あとは、赤ん坊の無力な姿を装い、りんごを世話するベビーシッターを一人殺害し、その魂を悪魔の生贄に利用し契約を完遂させるという予定だった。
「クッソ、あの悪魔……タイムリミット踏み倒してきやがって……!! まだ少し、時間は残ってた気がするぞ!」
だが、肝心のベビーシッターの二人の勘が鋭く、男が仕掛けた罠の数々を回避しそれどころか元のりんごの精神が肉体を奪い返したことで、状況が一変する。
肉体を奪取されたことで、逆に男の精神が追放された挙句、契約は果たされぬままその魂を悪魔に連れ去られてしまった。
それ以降は最早、地獄の日々だった。
99004回手足の爪を剥がされ100015回全ての指をもがれ、9765589回串刺しにされ9650回炭化するまで火あぶりにされ、7658736290回腸と膵臓を啄まれ、8766899回性器を輪切りにされた。
つまり、3秒に1回は切り刻まれているという凄まじい計算になる。
そしてこれが、未来永劫続く。永遠に慰みものにされ続ける。
「ありがとう……ありがとうございます……乃亜様……貴方は、神様だっ……!」
殺し合いといえど、そんな永劫の苦痛から引き上げあの憎き赤ん坊の肉体を再び与えてくれた乃亜という少年は、男にとっては神様のように見えた。
「これは、きっと神様が与えてくれたチャンスだ……。優勝したら願いが何でも叶う、俺、断固として闘うぞ。オオオオオ!!」
こんな彼に、殺し合いに乗らないという選択肢はなかった。
もう二度とあの悪魔の慰みものになんかなりたくない。だったら、この場にいる子供達を数十人皆殺しにした方が遥かにマシだ。
幸い、赤ん坊という姿はアドバンテージにもなる。無力な存在を装い、友好的な参加者の庇護下に入りながら優勝を目指すことは難しくないだろう。
「そうだ……いくら体は赤ん坊とはいえ、俺は大人なんだ……ガキなんかに負ける筈がない!
やり直すんだ、親ガチャで失敗した人生、全部やり直すんだ。親ガチャに恵まれただけのガキ共め、俺はそんな不公平を絶対許さない」
強い決意を胸に、男は二度目の人生を手にする為に歩みだした。
【五木曽猛@裏バイト:逃亡禁止】
[状態]:りんごちゃんの肉体、健康、親ガチャに恵まれた子供への憎しみ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝しクソみたいな人生をやり直す。
1:無害な赤ちゃんを装い、友好的な参加者に保護して貰う。
2:もう二度と地獄には戻りたくない。
[備考]
裏バイト:逃亡禁止第89話「ベビーシッター」終了後、契約者の慰みものとなってからの参戦です。
投下終了します
この度は新ロワ投下おめでとうございます。
記念に一作投下させていただきます。
世界は変わった。でも僕は、元に戻ってしまった。
聖剣マスターソードと共に時を超え、魔王ガノンドロフを倒した。
そして現代に戻り、魔王の悪事を事前に告発し、悲劇を未然に防いだ。
魔王は処刑され、未来で巨悪に苦しめられ、殺されるはずだった人を何十人も何百人も守った。
それが僕の勇者としての役割だった。
でも、そんなことは僕にはどうでも良かった。
平和になった世界で、僕は勇者じゃ無くなってしまった。
当然と言えば当然だ。この世界で魔王は悪事を為す前に処刑され、僕が魔王を倒して世界を救った事実も消えたのだから。
ダルニアやルトは僕を認めてくれるかもしれない。
けれどそれは勇者ではなく、友達や恋人、恩人としてだ。
決して、世界を救った勇者としてではない。
平和な現代に戻って数日経った後、相棒のナビィが姿を消していた。
何処を探してもいなかった。数少なく、未来での僕を知っている友だったというのに。
(勇者じゃ無くなった僕は、一体何なんだ?)
数少ない友を探す中、僕は気が付いた。
最初は悪に苦しめられている人を助けたくて勇者として戦おうとしたのに、次第に勇者であるために戦い続けていたことを。
誰でも良かった。
僕のことを、僕の勇者として生きたことを知っている相手を。
そうじゃなければ、何のためにコキリの森を出たのか分からないから。
この殺し合いで人を助け、悪を討てば、再び勇者として見てくれる者が現れるかもしれない。
でも、元の世界に帰れば?
助けられた者達とは、もう会うことは出来ず、ガノンドロフを倒して現代に戻った後と変わらないんじゃないか?
そんなことを考えながら歩いていると、僕の目の前には知っている人の姿が飛び込んできた。
ハイラル城の中庭で出会った、良く知っている少女だった。
彼女はまだ、僕が勇者だということを知っている数少ない人だ。
僕がナビィを探しにハイラルを発つと言った時に、オカリナを改めて渡してくれた思い出が、ずっと昔のように感じる。
眠っているようだが、起こせばいい。そしてまた彼女を守ろう。
「ゼルダ姫!!」
返事は無かった。
こんな場所に急に閉じ込められれば、気疲れするのも無理はない。
「僕だ。リンクだよ。無事でよかった、僕が……」
気づいてしまった。
いや、信じたくないから、気づかないふりをしていた。
彼女の胸部から脇腹にかけて走った、深い裂傷を。
彼女の腕を握った。
皮膚は爬虫類のように冷たく、脈は無かった。
あっさりと、こともなげに。
僕が守った証が、僕が勇者だという証が、簡単に壊れていた。
「うわああああああああああ!!!!やめろやめろやめろ!!ふざけるな!!!」
辺りに人がいる危険も顧みず、叫んだ。
夢ではない、嘘ではない。
冷たくなった皮膚の感触と、肉の焼け焦げる臭いが、これでもかというほど現実を突き付けてくる。
いや、嘘になってしまった。僕が勇者だったという事実が、嘘になってしまった。
「僕の大切な人を返せ!!でなきゃ誰も彼もぶっ殺してやる!!!!」
涙は止め処なく溢れ、声が枯れるまで叫んだ。
分かっている。それが勇者らしくない言葉だって。
彼女の分まで前を向いて生きると、そう言えればいいって。
でも、僕はこの世界で勇者になって、また元の人間に戻ってしまう事実より、ハイラルで勇者だった事実の方が大事だった。
大切な人も守れず、勇者の名声も失い、僕が積み上げたものは無くなってしまった。
いや、在るとするなら。
――優勝者にはどんな願いも叶えてみせる。
許しがたい悪の誘いに乗るなんて、少し前の僕なら思ってもいなかっただろう。
でも、あの時確かに掴めた理想を、再び掴めるのなら。もう見られないはずの彼女の笑顔を見られるというのなら。
人を殺すことになったとしても、最後の一人になろう。
今までずっと他人のために生きて来た。今ぐらいは自分の願いを叶えるために戦っても良いじゃないか。
は、と冷たい笑みがこぼれた。
何の皮肉か、目的もなく、幽鬼のようにふらふらとしていた僕が、久方ぶりに目的を手にしたのだ。
「さてと、行こうか。」
支給された袋に入っていた、毒々しい色をしたナイフを腰に差し、歩き始めた。
これは、僕という人間が、再び勇者になるまでの物語。
【ゼルダ@ゼルダの伝説 時のオカリナ】死亡
【リンク@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:精神崩壊(大)
[装備]:こあくまのナイフ@DQ8 空と海と大地と呪われし姫君
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝し、勇者だった自分に戻る
[備考]
エンディング後、子供時代への帰還〜ムジュラの仮面開始までのいずれかの時期の参戦です。
ゼルダの死骸があった場所から、1ブロックほど離れた所。
ランドセルを背負った少年が、ゼルダの支給品を開けていた。
その姿は、学校からの忘れ物をしてないか確認している少年そのものだ。
だがぎらついた両目と、歪んだ口元は、殺人者だという証左だった。
(まずは1人…思ったより楽だったがまだ先は長そうだな。)
彼はずっと、一人で家族を求め続けた。
そのために力を手にし、何でも願いを叶えてもらえる禁貨を集めようとした。
この殺し合いは、元の世界にあったバンカーサバイバルとは違うとはすぐに分かったが、彼のやることは変わらない。
今も昔も、アンチョビは家族を取り戻すために、戦い続けるだけだ。
【アンチョビ@コロッケ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜6(ゼルダの分もあり)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝し、家族を取り戻す
[備考]
バンカーサバイバルで、コロッケに敗れた、海岸に打ち上げられた後からの参戦です。
究極体の制限の有無は、後続の書き手にお任せします。
投下終わりました。
新ロワ応援してます。
候補話を投下させていただきます
こちらは以前、決闘ロワコンペに投下したものを修正・加筆したものになります
物事ってのは唐突に起きるものだ。
唐突に親が死ぬこともある。唐突に兄弟がぶん殴ってくることもある。唐突にトラックが突っ込んでくることもある。唐突に異世界に転生することもある。
唐突に別の大陸にいきなり飛ばされることもあれば、唐突に数年ぶりに再開した父親と喧嘩する事もある。
そして、唐突に殺し合いに巻き込まれることも……あるのだろう。
「だからってこんな展開はいつの時代のネット小説の話だよ……」
そう呟きながら、どことない場所で俺は頭を抱えて一人愚痴る。
軽く俺の自己紹介をしておこう。俺の名前はルーデウス・グレイラット。外見年齢は11〜2歳ほどのまあまあな少年だが、実際は精神年齢は3倍以上あるオッサンだ。俺は無職童貞引きこもりのダメダメ尽くしのニートだったが、兄弟に家を追い出されたその日にたまたま目に止まった言い争いしてるカップルに向かってくるトラックを何とかしようとしてそのまま死亡。
そしたら気づいたら日本とはかけ離れた異世界で「ルーデウス・グレイラット」の名前を持って生を受けた訳だ。その後の山あり谷ありの異世界ライフは今は割愛させていただこう。
今重要なのは俺の人生を振り返る事ではない。あの海馬乃亜ってヤツが開いたバトルロワイアルの事だ。
まったく、バトルロワイヤルなんて何十年前のネタを引っ張り出してくるのだろうか。俺からしたら時代遅れとしか言いようがない。
まあ俺はそう脅されてハイワカリマシタと機械的に殺しまわるつもりなどさらさらない。あの原作でも半分以上は殺し合い否定派だった筈だしな。
しかし状況は面倒だ。子供の命をオモチャの様に扱って高笑いなんてしてやかった。俺が転生した異世界では命のやり取りなんてよくある事だが、あそこまでのイカれてる奴はそうはいなかった。流石の子供に甘いルイジェルドでも許せそうな相手ではない。
取り敢えず、今考える重要な事はいくつもある。具体的には、①首輪をどうにかする。 ②脱出方法を探す。 ③エリスやルイジェルドの行方。 ④海馬乃亜の打倒。
しかし実際の所どれもすぐに取り掛かれる事ではない。首輪はいきなり俺の魔術でどうこうするには危なすぎるだろうし、脱出方法も具体的方法はナシ。エリス達も所在は不明だしそもそも参加しているのかも分からなければ、主催者の打倒も今は特に手はない。
つまり、今の俺はただのしかない参加者、哀れな犠牲者だ。まあこういうのは積み重ねが大切だ。開始数時間で首輪も脱出方法も見つけられるような穴だらけなモノを期待するだけ無駄だろう。
「あの〜、すみませ〜ん……」
取り敢えず大ざっばながらにスタンスを決めると、どこからか声が聞こえてきた。
声の方向に向いてみると、俺と同い年くらいに見える麦わら帽子を被った金髪の子が恐る恐るといった表情で、両手をあげて此方を見ていた。
……普通なら、声を掛けられた俺の方が手を上げて無力である事をアピールするのではないのか?
「ボクはイエローという名前です。よかったら話を聞いてもらっていいですか?」
--- --- ---
「……という訳で、ようやく一区切り着いた所で、このバトルロワイアルに巻き込まれてしまった訳です」
「なるほど、よく分かりました」
お互いに軽く自己紹介をした後に、金髪っ子のこの殺し合いに巻き込まれる前の話(と彼の世界についての情報)を聞いていく。
金髪っ子の名前はイエロー。歳はやはり俺(の肉体年齢)と近い11歳の様で、ポケモンという魔物?が存在する世界の住民らしい。
モンスターボールというボール状の道具を使う形で捕獲・収容する事が可能な、ポケットに入れられる事が出来るモンスター。縮めてポケモン。
……何だろう、どこかで聞いたことがある気がする。少なくとも異世界転生してからではない。おそらく元の世界の方だ。
だが俺の知識はすぐに「コレだ!」という情報にたどり着けない。まあ思い出せないという事はすぐに忘れてしまう様なアニメやゲームの類だったのだろう。
しかし、俺の転生した世界とはまた別の異世界か。どうやらこの殺し合いは俺が想像している以上に大規模なモノなのだと思う。まさか、ヒトガミも絡んでいないだろうな?
ともかく彼には彼で住んでた世界で色々あったそうで、ポケモンだけの理想郷を作ろうとした武装集団とドンパチして、なんとか解決した矢先にバトロワに巻き込まれたらしい。災難な子だ。
「ボクはポケモントレーナーだからポケモンがあってこそなんだけど、ボクのバックの中にはモンスターボールも支給されてなかったし、これからどうしようって悩んでたら人影が見つけたから声を掛けてみたんだ」
「その優しさは誇れるものだと思いますけど、ここは殺し合いの場ですのでもっと用心深くした方がいいですよ?」
「うっ……、次からは気を付けます……」
俺の言葉にイエロー君はしゅんとした表情になる。俺の世界では見たことないが、立ち位置にはテイマー的なものだろう。ポケモンってのがいなければただの一般人と大差ない存在なのだと思う。
「とりあえず、僕はまだバックの中身を確認していないので調べてみましょう」
そう言いながら俺は、傍においてあるバッグ(どう見てもランドセルだ。)の中を確認する。
文房具やタブレットらしきもの、水に食料等を出した後にランドセルの中から最初に出てきたのは、杖だ。
「なんだか、魔法とか使えそうな杖ですね」
「僕が使うとしたら魔法じゃなくて魔術の方なんですけどね」
そんな会話をしながら説明書を読む。名は『ドルイドの杖』というらしく、これを作った人はあくまで森を歩くためのステッキとして作ったらしい。ただ魔術に関わる者が使える可能性は高いとも記述されている。
魔力が通るかどうかは試したい所だが、後にしよう。
2番目に出てきたのは、どら焼きだった。
「これは……食べ物ですか?」
「いくつかセットでありますので、後で食べましょう」
これについては言う事はない。そして最後の一つをランドセルの中身から出す。
……このランドセル、見た目と裏腹に想像以上に収納されているな。後で調べておこう。
俺の右手に掴んでいたのは、片手サイズで持てる赤白のボールだった。
「!! それ、確認させてください!」
「え?えぇ、良いですよ?」
テイバッグから取り出したボールを、イエロー君はサッと自分の手に持ち慣れたような手つきでボールを確認する。
ほどなくしてボールの中からモンスターが出てくる。手のひらで持てるサイズのボールに入ってたとは思えない、前歯が特徴のモンスターだ。
なるほど。これがポケモンか。
「ラッちゃんだ!よかったぁ!あの、本当にありがとうございます!」
イエロー君はラッちゃん(おそらくニックネームで種族名とかじゃないだろう)と抱擁して再会を喜び、俺に感謝を伝えてくる。
ラッちゃんと呼ばれたポケモンもどことなく喜んでいる様に見える。人間とポケモンとの良好そうな関係にほほえましくなってくる。エリスがいたら腕を組んでドヤ顔で見ていただろうし、ルイジェルドも彼なりに微笑んでたと思う。
これで、俺のランドセルの中身の確認は終了だ。結果は上々な方だろう。俺は魔術に使えそうな杖を持てた。イエロー君もポケモンが手元に戻った訳なのだから。
「それで、これからどうします?僕は人がいそうな場所に向かおうと思っていますが、イエローさんも一緒にどうですか?」
「そうですね……、レッドさんやグリーンさんがいるなら探したいですし、助けてくれてるばかりで申し訳ないですけど、よろしくお願いしていいですか?」
俺自身の提案に、イエロー君は乗ってくれる。知り合いの捜索か。エリスとルイジェルドの事は何もわからないが、俺から特別心配する必要はないだろう。あの二人は強い。
それよりも俺は首輪の方をどうにかしたい。この首輪がどういう仕掛けで出来ているかは分からないが、魔術的なアプローチがあるなら、俺の異世界で学んだ知識が微力でも役に立つ筈だ。
「僕は問題ないですよ。じゃあこれからよろしくお願いしますね」
「はい!ありがとうございます!」
そういうと、イエロー君は笑顔で右手を差し出して握手を求めてきた。
剣や杖を持って戦う事とは無縁そうなその手は、まるで少女みたいだ。
そしてなぜか一瞬、今だ転移災害に巻き込まれて以降、行方知れずの筈のシルフィの事を思い出した。
いやいやシルフィ、俺は君のことを忘れた訳じゃないよ?
新コンペ応援も兼ねて、短いですが一話投下します
--- --- ---
こうして、俺の異世界ライフから一転してバトロワライフが始まった。
これから先どうなるのかは全くわからない。知り合いが参加されているのか、どんな敵が待ち受けているのか。
しかし、俺はこんな所で死ぬわけにはいかない。でなければ何の為に魔大陸から旅を続けてきて、ようやく中央大陸に戻ってきたんだ。
俺は本気で生きていくのだ。
もう、後悔のない人生を送るために。
全力で、だ。
【ルーデウス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:ドルイドの杖@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品一式、どら焼き(残り5個)@ドラえもん
[思考・状況]
基本方針:本気で生きていく。生き抜いていく。
1:殺し合い反対。首輪をどうにかしたい
2:イエローと行動する
3:杖やランドセルについて少し調べたい
4:エリスやルイジェルドが少し心配だが、あの二人はなんとかするだろう
[備考]
※参戦時期はミリス神聖国を出発して以降シーローン王国到着前(アニメ18話〜19話の間)
※前世の知識は制限対象です。具体的な基準は設けませんが、参加者に関する情報は容易に思いつく事はないです
※イエローの性別を男だと勘違いしてます。
【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:健康
[装備]:モンスターボール(ラッちゃん)@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3(ポケモンに関わる物は無し)
[思考・状況]
基本方針:元の世界に帰る
1:ルーデウスさんと行動する
2:知り合いがいるのなら合流したい
[備考]
※参戦時期は、第ニ章終了後
【ドルイドの杖@Fate/Grand Order】
ルーデウス・グレイラットに支給された。
キャスターのクー・フーリンが魔術を行使するのに使っている杖。支給されたのは本人が使っているそのものではなく、バレンタインデーのお返しで渡された一品。
本人曰く「魔術礼装ではなく、あくまで森を歩くためのステッキ」らしいが、サーヴァントお手製の為、魔術を行使できる人が使えば問題ないと思われる
(実際に使用できるかは、後続の書き手にお任せします)
【モンスターボール(ラッちゃん)@ポケットモンスターSPECIAL】
ルーデウス・グレイラットに支給された。ラッタが入っている。ラッちゃんとはイエローがつけたニックネーム。
イエローが初めて捕まえて自分のポケモン(友達)。コラッタの頃に捕まえ、ラッタに進化した時は進化の事を知らなかった為イエローは大泣きした。
するどい前歯は鋼鉄をたやすく砕くことが出来る。
【どら焼き@ドラえもん】
ルーデウス・グレイラットに支給された。
22世紀からきた猫型ロボット・ドラえもんの大好物。5つセット入り。
投下終了です。
割り込んでしまい申し訳ありません。
改めて投下宣言をします
「チッ……こんなことをしてる場合じゃないってのに」
殺し合いの会場の一角で、一人の白髪に尻尾を生やした少年が毒づく。
彼の名前はハロンオニ。
マルハーゲ帝国という国が世界を征服した世界において、帝国に逆らうものを葬る為の空間、闇の世界において反逆者が集う国、裏マルハーゲ帝国の四天王である。
彼は今、猛烈に苛立っていた。
なぜならば、彼は裏マルハーゲの王から表の人類抹殺を命じられ、表の世界にやって来たばかりだからである。
そんな時にこの殺し合いに巻き込まれれば、命令どころではない。
ただでさえ他の四天王からパシリ扱いされているのに、こんなことを知られれば更に立場は落ち込むだろう。
ならば、さっさと他の参加者を殺し優勝したのち、乃亜を殺すしかない。
いや、乃亜を殺す前に裏マルハーゲ帝国の王であるハイドレート様と、右腕である白狂様、左腕であるベーベベ様を地上へと解き放てるエネルギーをせしめておこう。
そう考えたハロンオニは他の参加者を探すべく、適当に歩く。
しばらく歩いていると、一体の人形に出会った。
一見するとただの可愛らしい女の子の人形だが、首にはハロンオニと同じく参加者の証である首輪が収まっている。
彼が人形を参加者と認識したと同時に、向こうも彼を認識したのか、なんと話しかけてきた。
「わたし、ニャミ」
人形が喋ると言うかなり驚愕の光景だが、ハロンオニは動揺しない。
彼の世界では無機物が意志を持つことなど珍しくないのだ。
しかし次の発言にはさすがに驚かされた。
「人形だけど生きてるけど、食べたいものはお兄ちゃん!」
ニャミがそう叫ぶと、彼女はさっきまでと打って変わり恐ろしい形相で言葉を続けた。
「肉を噛み切り骨を砕き、血を吸わせて死ね!」
ニャミがそう締めくくったと同時に攻撃を仕掛けようとする。
しかし――
ソード闇拳奥義『ビッグ・バン』!!
ハロンオニが繰り出した身の丈をはるかに超えるほどの巨大な剣がニャミを貫き、更にその衝撃で首輪が作動し爆破したためナントカ倒した・・・
【ニャミ@ファイナルファンタジーS 死亡】
「しまった」
恐ろしい殺意を見せた人形を返り討ちにしたことには一切心もくれず、ハロンオニは後悔を口にする。
「どうせ殺すにしても、殺し合いに乗っているのなら一時的にでも従えておけばよかった」
その内容は、殺し合いの戦略についてだった。
この殺し合いの参加者の人数は知らないが、状況から見るに数十人はいるだろう。
ならば、仮に参加者がとるに足らない小物ばかりでも殺していくのに時間がかかることは容易に想像がつく。
だったら、他に殺し合いに乗っている参加者を見つけたら殺すよりも、従えて一時的に協力させた方がことが早く済む、ということに彼はさっき気付いた。
しかしやってしまったものは仕方ない。
次そういう参加者に出会ったらそうすればいい。
ハロンオニは失敗を特に引きずることなく、また歩を進める。
一刻も早く、主の命を果たす為に。
【ハロンオニ@ボボボーボ・ボーボボ】
[状態]:健康、苛立ち
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜を含め皆殺し
1:殺し合いに乗っている参加者がいたら従えることも視野に入れる
[備考]
参戦時期は本編登場前です
投下終了です
皆さん、投下ありがとうございます!
>どこまでも、自己中心的な僕達
勇者でなくなったリンクが、再び勇者になる為に真逆である殺戮に手を染めるかもしれないのは、皮肉ですね。
アンチョビも現時点では、リンクトニアミス程度で済んだのは幸運かもしれませんが、ある意味強力な優勝争いを生み出してしまったのはこの先辛い所かもしれません。
>ファーストコンタクト
ルーデウスの前世の知識は年代から考えるに、制限もありますが有利に働くかもしれませんね。
主催者が初代遊戯王キャラに、同行者がポケモンキャラというのは彼の世代直撃でしょう。
>闇より出でし絶望
ボーボボってギャグマンガだと思ってたんですが、思いのほか普通に殺してることに驚いています。
ただ殺すのではなく、ちゃんと相手を利用することを考え出すのは、子供だらけのこのロワでは厄介な立ち回りをしそうです。
私も投下します
「なんでだよ乃亜!? なんで、こんな殺し合いなんて開いちまったんだ!!」
ジャケットを着た長髪の少年が叫ぶ。
海馬モクバは、先ほどの惨劇を引き起こした乃亜に対し届かぬ声を上げていた。
「オレたち……色々あったけど、最後には……助けてくれたじゃないか、なのになんでなんだ乃亜……!」
バトルシップ準決勝の最中、突如海底要塞を率い、モクバ達を始めとする海馬や遊戯達を電脳世界に引きずり込み、現実世界への帰還を掛けた命掛けのデュエルを挑んできた黒幕。
確かに、最初は怒りもあった。だが、乃亜と接していく内に乃亜だって本当は根っこからの悪人ではなかったこと。
命を落とし、電脳世界に転生したが故の孤独から、狂気に染まってはいたが、海馬とモクバの兄弟愛や遊戯と仲間達の結束を間近に見てきたことで、乃亜は人の優しさと温かさを取り戻した筈だ。
―――僕は人の心を取り戻すことが出来た。キミのお陰だよ、モクバありがとう……。
「言ってたじゃないか、人の心を取り戻せたって……」
―――そうだねえ……せっかくだ。キミたちの兄弟愛に題名でも付けてあげようか。
『無様な敗北者達』キミたちにぴったりの名前じゃないか! 無駄死にご苦労様、せいぜいあの世で海賊ごっこに励んでいてくれたまえ!
アッハハハハハハハハハハハハハ!!!
「あれじゃ、まるで元の……お前の言ってたこと、嘘だったのかよ。
オレは……乃亜が生きていてくれて、嬉しかったんだぜ? ……それなのに乃亜、どうしてなんだよ。
兄様、オレ……どうしたら……」
瞳に涙を浮かべながら、モクバはランドセルを地面に叩きつけた。
乃亜には、結局何も届かなかった。乃亜は冷徹な心を持ったまま、何も変わることのない機械のままだった。
「え、ブルー、アイズ……?」
モクバが投げつけたランドセルが蓋を開け、中身を散乱させる。筆記用具、タブレット、食糧、飲料、そしてランダムの支給品が散らばっていく。
そのなかに、誇り高き兄が最も信頼を置く僕の姿を見付ける。
―――僕は人間だ。機械なんかじゃない。
そして、思い出す。もう一人の兄弟が残した最期の声を、言葉を、その想いを。
「……嘘なんかじゃ、ない」
その一枚のカードを拾い上げる。勝利を齎すと言われる白き龍のカード。
「ミサイルからオレ達を逃がしてくれた後、お前に何があったかなんて、オレには分からないけど……あの言葉は嘘なんかじゃなかったんだ」
そう、あの時に誓ったはずだ。
乃亜と別れ、決戦の地アルトカラズへと向かう空路のなかで、乃亜の分まで生きると。何時までも兄である海馬瀬人に頼りっきりにはならないと。
「そうだ、今度はオレの番だ。忘れたのは、オレじゃないか……すぐ兄様に頼ろうとして、乃亜の分まで一生懸命生きるって決めただろ……!
だったら、こんなとこで諦めちゃ駄目なんだ! 兄様が、オレを助けようとしてくれた時、一度だって諦めたかよ!」
あの兄が自分と同じ立場なら、こんな場所で嘆いてばかりで諦める事などしたか? いや、そんな訳はない。きっと、最後の最後まで諦めるなんてしないはずだ。
海馬がモクバを救い出すため、乃亜とのデュエルで引き分けを捨て敗北を顧みず青眼の白龍を召喚し、最後の勝負を挑んだ時のように。
いつまでも、助けられるだけの立場じゃない。
「兄様……今だけは兄様のプライド……兄様の魂、オレに貸してほしいぜ……!
乃亜、お前が人の心を忘れちまったんなら……またオレが、何度だって取り戻してやる! オレを助けてくれた兄様みたいに……!」
拳を強く握りしめ、モクバは決意する。
自分のもう一人の兄弟を、それが自分の意思で行っていることなら絶対に止める。もしも、誰かに強制された事なら絶対に助け出す。
その手に兄弟を結ぶ、絆の象徴のカードを握りながら。
【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:健康
[装備]:青眼の白龍@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜0
[思考・状況]基本方針:乃亜を止める。人の心を取り戻させる。
1:殺し合いに乗ってない奴を探す。
[備考]
参戦時期はバトルシティ編終了以降です。
【青眼の白龍@遊戯王デュエルモンスターズ】
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
高い攻撃力を誇る伝説のドラゴン。
どんな相手でも粉砕する、その破壊力は計り知れない。
投下終了します。
投下します
「うーん、これからどうしようかなー」
少女の名はフランドール・スカーレット。
ごく普通の女の子に見えるかもしれないが彼女は妖怪であり吸血鬼だ
彼女は495年も生きているが、ほとんどは地下室に引きこもっていた
そして彼女は『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』というものがあり、能力の他にも弾幕を扱うこともできていた
しかし…
「…やっぱりできない」
普段だったら弾幕を出せるはずなのに何故かそれができなかった
能力は近くの物で試してみたがやはりできなかった
「これじゃあ『遊ぶ』ことができないなー…」
フランはそう言って肩を落とした
ちなみに彼女の『遊び』は、本人はあまり意識してないが生死に関わる程危険なものだ
「はぁー、何もすることないなー…」
が使えないと分かってしまった以上、もはやフランには殺し合いをする気もなかった
「ん?」
そしてフランが周りを見てると視界に人間、もとい子供の姿が映った
見た目は凄く幼そうな少年だった
(…特に何もすることないし、話掛けてみようかな)
遊ぶことはできないが、元々フランは人間がどんな生き物か興味があったためにその少年の所に飛んでいった
「ねぇ、そこのあなた」
「お?」
少年の少し後ろで着地したフランは声を掛けた、声を掛けられた少年はフランの方に振り返った
「…あんた誰?」
「私はフラン、フランドール・スカーレット。あなたのお名前は?」
「ほうほう、フランちゃんですな、オラは野原しんのすけ5歳!オラのことはしんちゃんって呼んでいいゾ!」
そして互いに自己紹介し、その少年は野原しんのすけと名乗った
「しんちゃんね!分かった!ねぇしんちゃん」
「ん?どうしたの?」
「私と何かして遊ばない?」
フランはしんのすけに遊ぶことを提案した、そしてその返答はあっさりと返ってきた
「全然良いゾ!じゃあ…かくれんぼでもしますか!」
「かくれんぼ…?それってどんな遊び?」
「えっとね〜、見つける人を鬼って言うんだけど、まず鬼を決めて、鬼は10秒数える、そんでもって隠れる人はその間に隠れて鬼が10秒数え終わったらもういいかいって聞いて隠れる側はまだだったらまあだだよって言って、大丈夫だったらもういいよって言うの、もういいよって言われたら鬼がその隠れてる人を探して見つけたら鬼を交代するっていう遊びだゾ!」
「面白そう!じゃあそれで遊ぼう!」
「分かったゾ!じゃあ最初はオラが鬼やるからフランちゃん隠れていいゾ!」
「うん!」
そして殺し合いの場とは思えぬ空気でかくれんぼが始まった
「1、2、3、・・・10!もういいかい?」
「もういいよ!」
「よーし!フランちゃんを見つけるゾ!」
そして数え終わったしんのすけはフランを探しはじめた
「どこかな〜、ここかな?…いない、こっちかな?」
(しんちゃん近くまで来た…!)
「…あ!フランちゃんみっけ!」
「あ〜、見つかっちゃった!」
「どう?結構面白いでしょ?」
「うん!初めてやったけど面白いね!次は私鬼やるからしんちゃん隠れてね!」
「ほーい!」
そして二人はかくれんぼを続けた
◆◆◆
およそ30分ぐらいかくれんぼをやって遊び疲れた二人は横に並んで座っていた
(正直私が思ってた『遊び』とは違ったけど…でも楽しかったな…)
フランは初めて人間と遊んで楽しかった気持ちを噛み締めていた、するとしんのすけが言葉を発した
「これでオラとフランちゃんはともだちですな!」
「…え?」
フランはしんのすけから放たれた言葉に衝撃を受けた
「私と…ともだちになってくれるの…?」
「うん」
「私、吸血鬼だよ?」
「ほうほう、フランちゃんは吸血鬼なんですな〜、でもオラは全然構わないゾ?」
「ほ、本当に?」
「ほんとほんと、だってあんなに楽しく遊べたらそれはもうともだちだゾ」
フランは嬉しいという気持ちが込み上がってきた、今まではずっと地下室に引きこもっていて、ともだちと呼べる存在がいなかった
でも、しんのすけはフランのことをともだちと言ってくれた、初めての、しかも人間のともだちができるとはフランは思ってもいなかった
「私、ずっとともだちがいなかったからそう言ってくれて嬉しい…!」
「それは良かったゾ!そういえばフランちゃんって吸血鬼なんだよね?」
「そうだけど、どうかしたの?」
「ほいこれ」
そしてしんのすけが渡したのは傘だった
「吸血鬼って太陽さんに当たったらダメなんでしょ?だからその傘、フランちゃんにあげるゾ〜」
「え?いいの?」
「いいのいいの、フランちゃんにもしものことがあったらいけないし〜、もし太陽さんが出てきたらこの傘で防ぐといいゾ!」
「ありがとう!しんちゃん!」
「いえいえ〜」
しんのすけはフランに傘を渡すと今後の行動の提案をフランに話した
「そうだ、フランちゃん、オラと一緒に困っている人をおたすけしない?」
「?それはどんな遊び?」
「う〜んとね、遊びかどうかは分からないけど、困っている人がいたらオラ達でその人を助けるっていうやつだゾ!今はばとるろわいある?とかでひょっとしたら困っている人がいるかもしれないから!」
「…よく分からないけど他にすることもないし…いいよ!」
「じゃあ決まりだゾ!」
こうして無邪気な二人のバトルロワイアルは始まった
【フランドール・スカーレット@東方project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:傘@現実、基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ともだちになってくれたしんちゃんと一緒におたすけ?っていう遊びをする
1:初めての…ともだち…
2:弾幕ごっこできないのは残念だな〜…
[備考]
※弾幕、能力が制限されて使用できなくなっています
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:困っている人がいたらおたすけする
1:フランちゃんは吸血鬼なんですな〜
2:ばとるろわいある?って…なに?
[備考]
※殺し合いについてあまり理解できていませんが、異常な事態だというのは薄々気づいてます
※劇場版での出来事を経験しています
【支給品紹介】
【傘@現実】
野原しんのすけに支給。
ごく一般の普通の傘。
投下終了します
投下します
「随分と、面白い真似をしてくれるじゃあない」
くつくつと笑う少女の声が、闇に覆われた森に響き、消えていく。
「人間達を集めて、殺し合わせる。面白い見世物だわぁ。ママや、お姉ちゃんが居たら、もっと面白くなったのに」
顔貌に愉悦を浮かべ、言葉を紡ぐのは、深い気品を漂わせる漆黒のゴシック・ロリータ調のドレスに身を包んだ、10代前半の病的なまでに白い肌と、鮮血色の紅い瞳が特徴的な美少女だ。
全体的に線が細く、壊れそうな程に華奢で儚い。殺し合いの場に放り出されれば、一時間と持たずに絶命する。外見だけで判ずればそうなるだろう。
だが、この少女と相対すれば、否、この少女の姿を見れば、誰もが等しくこの言葉を浮かべるだろう。
曰く、『邪悪』曰く、『怪物』と。
少女は正しく人では無い、誰しもが持つ欲望が人を呑み込み人外魔性へと変じた存在である影魔(エクリプス)。
そのエクリプスの王であった存在が、聖天使に産み落とさせた存在。始原(アルファ)にして終末(オメガ)たる影魔姫。その名はオメガエクリプス。
真正の魔であり、正邪善悪を問わず人間を喰らい、犯し、苛み、玩弄し、その血も肉も骨も精神も魂すらも貪り尽くす暴帝であった。
そんな存在がこの様な場所に居れば、恐怖でも憤怒でもなく愉悦を感じるのも当然と言えるだろう。
愉しげに笑う少女は、どこまでも浮ついた表情でいたが、それが唐突に急変した。
「アイツの言い分じゃあ、ママもお姉ちゃんも呼ばれていない。つまりこの殺し合いを止めて、アイツを斃そうとする正義のヒロインは居ない…。詰まらないなぁ」
公園を訪れた幼児が、遊びたかった遊具が事情により使えなかった。喜び勇んで食卓についた幼児が、夕食のおかずが、食べたいと思っていたものとは違っていた。
そんな些細な理由で癇癪を起こして荒れ狂う様に、影魔姫の感情が激変する。
「美味しくないし、愉しくもない人間(オモチャ)がどれだけ居ても詰まらないだけ」
幼い少女の全身から立ち登る、濃密な魔力。影魔姫の邪性に支えられた瘴気は、影魔姫の周囲の空間を陽炎の如くに歪ませ、触れた木を草を瞬時に萎らせ、枯れ落とす。
「まぁ良いわぁ。取り敢えず、此処にいる人間どもに、これでもかと言う程に絶望を味合わせてやるわ。そんなに美味しくは無いだろうけど、お腹の足しにはなるわ…。その後はぁ……」
何が琴線に触れたのか、再度影魔姫は笑い出す。
「最後はアイツよ。けれどもただじゃぁ殺さない。たっぷり嬲って、いっぱい犯して、殺してあげる」
あの傲慢尊大にこの影魔姫を見下ろしていた顔が、自分が与える悦楽と苦痛でどう歪むのか、考えるだけで愉しくなってくる。
くつくつと笑う影魔姫の影が、影魔姫を中心に円形に広がり、影から無数の生物の特徴を無秩序に混ぜ合わせたかの様な、グロテスクで悍ましい肉蛇が生えてくる。
白濁した粘液に濡れた複数の巨大な肉蛇に囲まれて、少女は口元を歪めた。
【オメガエクリプス@聖天使ユミエルシリーズ】
[状態]:健康 不機嫌
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:全員飽きるまで嬲って犯してから殺す
1:乃亜は絶対に殺す
2:正義のヒロインやヒーローがいたら念入りに嬲り殺す
投下を終了します
投下します
あの日、僕の日常は全て壊された。
お父さんの知り合いを化け物に殺された。
僕とお父さんは逃げようとしたけれど駄目だった。
霧の濃い夜に、車を真っ二つにされて。
握りしめた剣から血を滴らせる化け物と、お父さんは必死に戦った。
銃を撃った。数秒後に殺されるとわかっていても化け物に飛びついた。
僕に逃げろと叫んだ。走れと叫んだ。
叫んだ大きな口を横半分にされて一瞬で殺された。
...父さんは、きっと自分のことが嫌いだった。
父さんはいつも、僕に対して「俺はゴミみたいな人間だ」「お前はちゃんと勉強して俺とは違うマトモな人間になれ」って言っていた。
きっと、世間からしたら褒められた人じゃなかったのは僕でもわかる。
酔いの勢いとはいえ、子供(ぼく)に「俺が殺されたらお前が仇を取るんだぞ」って言葉と一緒にナイフをプレゼントする親なんてそうはいないだろうから。
でも、それでも僕は父さんが好きだった。
僕を見る時の優しい眼が好きだった。
だから、父さんを殺した化け物が憎かった。殺してやりたいと思ってる。
なのに...怖くて震えが止まらなかった。
殺されるかも、死ぬかもしれないって思うだけで涙も震えも止まらない。
いまもそうだ。
見知らぬ二人の少年が殺された。首輪を嵌められて言うことを聞けと脅された。
僕は彼らの死に悲しむでも怒るでもなく、言うことを聞いて生き残ろうと心を殺すのでもなく。
どうにもできない。ただただ情けなく震えて怖がっているだけだ。
あの怪物とは違う迫る『死』に、僕はどうすればいいんだろう。
膝を抱えて震えていたそんな時。
『―――』
歌が聞こえた。
こんな状況には似つかわしくない、可愛らしくて、でも力強い誰かの歌声が。
しばらく聴いていると、なぜだか僕の足は立ち上がっていた。
歌に惹かれるようにそちらへ足を運んでいた。
ほどなくして、歌い手は見つかった。
その人は、瓦礫の上に立っていた。
フリフリとした可愛らしい衣装とはミスマッチの舞台の上で。
観客のいない閑散とした空間の中で。
それでも腐らず、弾けるような笑顔で、彼女は踊り、歌っていた。
僕はそれをただ見つめていた。
食い入るように。死と隣り合わせにあるこの世界を忘れさせるほど輝く彼女に、ただ魅入っていた。
気が付けば、震えも涙も止まっていた。
そして―――気が付けば、僕は彼女に拍手を送っていた。
「応援ありがとう!」
彼女の煌めくような笑顔を向けられると、僕の心臓が思わずドキリと跳ねた。
「ねえねえ、どうだったかな?僕の『恋せよエクスカリバー』!ちゃんと可愛かった!?」
ステージから跳び下りて一気に距離を詰めてくる彼女に僕は思わず戸惑ってしまう。
距離が近すぎとか、明らかに人間が跳べる距離じゃなくないとか、色々とツッコミたいところはあるけれど、それ以上にドキドキと胸が熱くなり言葉が出なくなってしまう。
「あ、あの...可愛かったと思うよ?」
「本当!?よかったぁ!僕、ちゃんと可愛かったんだぁ!」
絞り出したような苦し紛れの僕の返事にも彼女はぱぁっと満面の笑顔になり、オーバーすぎやしないかと思う程、大げさに喜んでいた。
「僕はKRT13のアーサー!きみのお名前は?」
「え?あ...正人...」
「正人くんかぁ!これからよろしくね!」
絶やさない笑顔のまま、僕の手を握りしめて更に顔を寄せてくる彼女に気圧されつつも僕は問いかける。
「あの...アーサーさんは、どうしてこんなことをしているの?」
思わず突いて出た言葉。
けれど疑問に思わないはずがない。
だってここは殺し合いの場だ。
誰かを殺さなくちゃ生き残れないし、それが脅しじゃないのも理解させられている。
そんな中で、こんな人を集めるような真似をするなんて信じられない。
「?そんなの決まってるよ」
僕の問いかけの意味がわからない、と言わんばかりに可愛らしく小首を傾げ疑問符を浮かべる。
「だって僕は『アイドル』だもん」
そして、微塵も躊躇うことなく真っすぐに言い放った。
「いまがどういう状況かはわかってるよ。みんなが落ち込むのも当然だと思う」
その時、初めて彼女から笑顔が消えた。
拳を眼前で握り、目を伏せて、最初に死んでしまった少年たちのことを想っているのだろうか。
「だからこそ...だからこそだよ!」
拳を更に強く握りしめ、眼を見開き顔をあげると再びアーサーさんの笑顔と輝きを取り戻す―――いや、増していく。
「みんなが沈んじゃう時こそ、僕が笑顔にしてあげる!元気にしてあげる!男の子も女の子も関係ない、誰かを感動させたいのが『アイドル』なんだよ!!」
そう、強く語る彼女に僕は、あの人の姿を重ねてしまう。
情けなく泣いていた僕に力強く『君の気持ちがよくわかる。だから殺させない』と言ってくれた。
僕のためにボロボロになってでも化け物と戦ってくれた。
父さんを失った辛さや憎しみを否定せず、僕のナイフを受け取ってくれた。
どこまでも誰かの為に戦える、ヒーローみたいな人―――佐神善さんの姿を。
そして、僕はまた震えてしまう。
「え?ちょ...僕なにかやっちゃいました!?」
そんな僕の様子を気遣い、わたわたと困惑してしまうアーサーさん。
「...違うよ、アーサーさん」
そう、これは恐怖や悲しみの震えじゃない。
「なりたい」
たぶん、一番近い感情は感動と憧れ。
僕もなりたい。
善さんやアーサーさんみたいに誰かの為に戦える人に。
父さんみたいに大切な人を護ろうとできる人に。
「僕も、あなたたちみたいになりたいんだ」
この血と灰色の世界にも負けない彼らのようなヒーローになりたい!
アーサーさんは僕の告白にきょとんとした表情を浮かべ、けれどすぐにあの輝かしい笑顔を取り戻した。
「ええ、なれますよ!」
アーサーさんは最初のように僕の手を取り―――そのまま僕の身体をくるりと横回転させる。
「熱い思いさえあれば誰だってなれる」
僕の背中とアーサーさんの腹部が密着し、右手を自分の腰に添えさせられ、左手をピースサインに象られ、左目あたりに持ってこられる。
「キミも今日からKRT13のメンバーだよ!」
そして、ビシッ☆とでも効果音が付きそうなほどにアイドルのようなポーズを決めさせられ僕は思った。
...あれ、なんか違くない?
☆
うわ〜!やったぁ!やったよプロデューサー!!
早速アイドルになりたいって子と出会えちゃったぁ!
アイドルとして殺し合いなんて許せないし、舞台は変わっちゃったけど、それでも僕はめげないよ!
いつだって全力でぶつかってみんなを感動させる、キラキラした可愛いソウル!それがアイドルだもん!
プロデューサー、ファンのみんな...僕は殺し合いなんて止めて、ここでKRT13新メンバーに相応しい子を見つけ出す!
そして世界一の男の子アイドルグループを作ってみせるよ!
待っててねファンの皆!プロデューサー!ガウェイン!お義兄ちゃん!
【廃墟】
【血と灰の女王@正人】
[状態]:健康、困惑
[装備]:普段の服
[基本支給品]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:誰かを助けられる人になる。
1:アイドルになるの?ぼく...
2:善さんやアーサーさんみたいなヒーローになりたい
※参戦時期は善にナイフを渡した後
※アーサーを女の子だと思っています
【アーサー・ペンドラゴン@ローゼンガーテン・サーガ】
[状態]:健康
[装備]:アイドルの服
[基本支給品]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 マイクとスピーカー@現実
[思考・状況]
基本方針:アイドルとして殺し合いを止める
1:殺し合いを止めた後、KRT13の新メンバーをスカウトする。もちろん主催の子も参加したいなら歓迎するよ!
2:早速新メンバーが増えたよ!やったねプロデューサー!
※参戦時期は予選終了〜本戦開始直前まで
投下終了です
投下します
「殺し合いのゲーム。バトルロワイアルか……」
シン・ウォルフォードは乃亜の言葉を噛み締める。
悪辣な雰囲気のキャベツのような髪型をしたあの少年は、明らかに普通の人間と比較して一線を画している。
……まあシンはまだあまり人と交流していないので、ここら辺は前世の記憶を頼りに考えたことだが。
そう。シンはまだ肉体こそ幼いが、前世の記憶を持つ転生者――つまり精神年齢的には大人だから理解出来るが、何も知らないうちにここへ連れてこられた時点である意味、自分達は一度敗北しているも同然。
手段は不明だが、何らかの方法で乃亜はシン達を攫い、こんなゲームに参加させた。
ゆえに生殺与奪の権を握られているのは当然であり、ルフィやエースが惨殺されたことに感情こそ動かされたがなんとなくこの結末に察しはついていた。
前世のことを細かく思い出すことは出来ないが――バトルロワイヤルと聞いて、そういう創作のジャンルがあったことを思い出した。
バトロワでは大抵、最初に主催者による説明があり――そこで誰かしら見せしめで殺される。
首輪が爆発した現象については――魔道具でも使った可能性が浮上した。
イメージした魔法をその道具に書き込み、効果を付与するというものだ。
(もしオレの予想通りならなんとかなりそうだけど……)
魔道具とは、言葉によって成立する。
ならば魔道具でその言葉を『書き換える』ことも理論上は可能だ。事実としてここへ呼ばれず、そのままシンが成長していたらアッサリと出来ていたことである。
本来ならばもっと後に思い至った発想をシンは早速、実行し――。
「やっぱり無理か……!」
文字を書き込むための魔道具が、弾かれた。
そんな簡単に首輪のシステムを突破出来るとは思っていないが、やはりラスボス撃破は困難を極める道であるということを思い知らされる。
もっともこの首輪が魔道具の場合は『魔力を無効化する魔道具』でなんとなる可能性もある。未来のシンはそうやって制服を書き換えた。
しかし参加者を制御するための首輪をそう簡単に解除させるわけがないし、可能性は限りなく低いだろう。
「……さて、どうしようかな」
乃亜という少年もかなり強い力を秘めているのだろうが、まずはこの首輪をなんとかしなければ戦うどころじゃない。
ちなみにシンはこの時点でさも当然のように黒幕と戦うことを選んでいる。彼は常識や礼儀こそ欠如しているが、優しい少年だ。
「まずは仲間集めでもやるか……?じいちゃんみたいな人が見つかるかもしれないし」
英雄――マーリン・クロフォード。
かつて破壊神とも呼ばれた男だが、破壊された馬車からシンを拾って以降、彼が育てた。
マーリンのような者に出会えたら、きっと心強いことだろう。
シンには身元もなく、両親すらわからない。マーリンとシンは血の繋がりがないのだから。
だがシンはそれでも良いと思っている。
じいちゃんやみんなが居て、前世なんかよりずっと幸せだから。
そうだ――。
マーリン・クロフォードはシン・クロフォードの命を救ってくれた。
だからシンが殺し合いに巻き込まれた誰かを救うというのも、彼にとって自然なことで――。
「とりあえず索敵魔法で誰か探してみようかな」
索敵魔法。
魔力を薄く広げ、生物が持つ気を感じ取る能力。
(あれ……?)
ここでシンは違和感に気付く。
彼の索敵魔法は森の中の生き物が手に取るようにわかるレベルだが、かなり範囲が狭まっている。
シンが得意とする魔道具に加えて広範囲の索敵魔法まで使えたら強過ぎるので制限されたのだ。情報は戦場では価値となり、既に戦力を有する者がそのアドバンテージまで得られるほどこのゲームは甘くない。
「もしかしてこの首輪が原因か?それともこの空間自体が結界に覆われてるとか?」
理由は不明だが、自分に何らかの制限が課せられていることは理解した。
だがそれはきっと他の参加者も例外じゃないだろう。
「ゲームは公平に。その意味はわかったけど……」
『そうそう、殺し合いと言っても、ゲームは公平に行わなければならないからね。キミたちにはランダムにアイテムを支給するよ。
圧倒的強者にはハンデも与えよう。ただ、殺すだけじゃなく戦略も必要になるわけさ』
乃亜の言葉を思い出し、シンはその意味を理解したが不満がある。
「オレ、圧倒的強者なんかじゃないんだけどなぁ〜」
自分の強さを理解してないのもまた、シンの特徴だ。
周りからその凄さを認められているが、自覚がない。たが周りの人々には感謝している。じいちゃん――マーリン・クロフォードには特に。
「じいちゃん。――オレも他の人を救ってみるよ」
そしてシンは一歩を踏み出した。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう」
――ゾクッ!
「覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」
(うおおおお!なにこの声!?)
「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり」
(聞いてるこっちが恥ずかしいっ!何これ!?)
「万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!」
シンが声がする方を向くと、一人の小柄な少女が杖を手にして小っ恥ずかしい詠唱をしているではないか!精神年齢大人のシンにとってはめちゃくちゃキツい光景だ!
いや相手は子供だが、それでも痛々しい。そもそもシンはこういうのが嫌だから無詠唱にしたのだ。
「これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法――」
しかもやたら長い上に、本人ノリノリ!
何か声を掛けたり、止めるのも気まずいような……別に悪いことをしてるようじゃないので、止める理由もないし。
「――エクスプロージョン!」
そして少女――めぐみんは爆裂魔法を発動した。
遠方の城が無慈悲にも焼き尽くされる。シンは無事だったが、もしも直撃したらどうなっていたかわからない。……まあめちゃくちゃな場所に放ってるから、特に狙いなんて定めてないのだろうが。
「燃え尽きろ、紅蓮の中で!」
めぐみんは満足気にドヤ顔すると、その場に倒れ落ちた……。
「なんだこの急展開……!?よくわからないけど大丈夫!?」
シンが心配してめぐみんに駆け寄る。
状況が意味不明すぎて理解出来ないが、ヘロヘロの少女を放置する気はない。
「はい。気分は最高……ですっ!」
「そんなに厨二病詠唱するのが好きなの?」
「よくわかりませんが……これだけは言えます。ナイス爆裂!」
ビシッとサムズアップするめぐみん。
シンはそんな痛々しい厨二少女を見て目を覆いたくもなったが、なんだか一人だと危なっかしいし悪い人じゃなさそうなので苦笑いしながらサムズアップした。
【シン・ウォルフォード@賢者の孫(漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:人々を救いながらじいちゃん達の元へ帰る
1:オレ、精神年齢はショタじゃないんだけどなぁ
2:この子(めぐみん)に同行する
3:首輪を解除したい
4:オレ、圧倒的強者じゃないのにハンデかけられてる?
[備考]
入学前、マーリンと語り合った後からの参戦です。漫画範囲だと0話〜1話で公式サイトにて無料公開もされてます。アニメ把握でも問題ないと思います。
索敵魔法や魔法の威力などが制限されてます。魔道具は簡単なものなら可能ですが、難しいものは制限によって作り出せないかもしれません
【めぐみん@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:めぐみんの杖@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:我が爆裂魔法で殺し合いも終わらせましょう!
1:誰ですか?この人
2:カズマ達も来てるのでしょうか?
[備考]
爆裂魔法でヘロヘロになっても一定時間で回復します
投下終了です
>ともだち
ナチュラルに強力対主催を、味方に付けたしんのすけは頼もしいですね。
良い意味で、ロワに沿わない優しい雰囲気の二人でした。
>◆/dxfYHmcSQさんのSS
ロリショタロワなのに不味そうな、事案的にヤバそうなのが増えましたね。
この先、幼い正義のヒーローやヒロインが増える事になれば、色んな意味で大変な障害になっていきそうです。
>この儚くも残酷な世界で
正人の必死な思いに反して、アーサーは大分テンションは違いますが、何はともあれ殺し合い否定派としては、悪くない出会いですね。
ヒーローもアイドルも、人に夢を与えるという点では似た者同士なのかもしれません。
『※アーサーを女の子だと思っています』
あっ…(察し)
>また私、何か爆裂(や)っちゃいました?
貴重な異能力方面の首輪解析要員になりそうなシンと、火力担当のめぐみんのコンビ。
特にめぐみんは、当たりさえすれば、エクスプロージョンは強力な武器になりそうなので、シンとコンビを組めたのは幸運ですね
みなさん投下ありがとうございました!!
投下します
「何故、どうして……!? 何故この私が! こんな時に、何故……!!? よりにもよって太陽を克服する、その寸前に……! ふざけるなァ!!!!」
一人の少年が、癇癪を起していた。
「海馬乃亜、貴様……貴様ァ……!! 禰󠄀豆子を食らいさえすれば、私は太陽を克服できたというのに……! 下らぬガキの遊戯に私を巻き込むな!!」
身なりの良い服装、令和という時代から見れば些か時代劇の、例えば大正辺りの衣装にも見えそうだ。
そして背丈も低く顔も幼さが残る。多少、変わった風貌だがただの少年ではあるだろう。
しかし、全身に異常なまでに太い血管を上げ、筋肉が膨張し膨れ上がる。更に、その瞳孔に開き方には加熱なほどの激情が込められており、少年の異常性が伺えた。
「そもそも、何故私なのだ!? 乃亜、お前の目は節穴か貴様!!」
その容姿、俊國という名の少年の外見年齢は10歳程だろう。だが、その正体である鬼舞辻無惨という鬼は千年を超える年月を生きた究極に近い生物だ。
乃亜が集めた参加者達の基準からは大きく外れる。外れていなければおかしい。
「まさか……まさか、この……擬態のせいか? まさか、この俊國(すがた)を使ったからとでもいうのか? ふざけるな!!」
だが、現在の無惨の外見年齢だけでいえばその参加資格は満たしていることになる。
「馬鹿なことを、戻ろうとしていたぞ私は!? 擬態を解き、無惨(わたし)に戻ろうとしていた。
何故、待てぬ!? どうして私を選ぶ!? 別にいるだろう子供など!? いくらでも!」
太陽を克服した鬼である禰󠄀豆子を手に入れる。時間はいくらでもある。この千年の中でもっとも最良で最高の瞬間、意気揚々と産屋敷の元へと乗り込んでみようかとも考えてもいた。
それが一転して、気付けば残酷なまでに最悪な瞬間へと一転した。
―――僕はこの世界(ゲーム)の創造主(かみ)なんだよ。
「……そうか、そういうことか乃亜? 貴様、神を気取り私に神罰を与える気か? そういうことか?」
乃亜の発言から、自らを神という偶像に祀りたて底の浅い全能感に酔いしれる、愚かな子供であったことが見て取れる。
つまるところ、無惨はその当て馬として呼ばれたのだろう。
何千も超える人を殺めながら、神も仏も見なかった無惨に対し、自らが天誅を下すことにより、神としての証明とその矮小な自尊心を肯定する。それが目的なのだろう。
「いいだろう……。貴様が神ならば、私は不滅だ。
私は死なない。永劫に生き続ける。死ぬのは貴様だ。貴様の骸で、神の不在を私が証明してやろう」
手段は問わない。この場から脱出できるのなら、協力し最後には全員皆殺しにし乃亜も殺す。
不可能なら、参加者を皆殺しにし優勝し、乃亜もやはり殺す。
如何な手段を用いても生き延び、そして生還する。ただ、それだけのことだ。
「……もしやとは思うが、禰󠄀豆子が呼ばれていることはないか? あの娘、いくつだ?」
ふと、無惨のように禰󠄀豆子も乃亜に呼び寄せられている可能性を考える。
年齢で言えば、14かそこらだろう。乃亜の参加者の選定基準からは、微妙に外れるかもしれない。
分からない。幼いと言えば幼い、この殺し合いに放り込まれる可能性は否定しきれない。
鬼の位置を感知できる無惨だが、禰󠄀豆子にはそれが働かないために、彼女が参加しているか否か判断が出来ない。
支給されたタブレットを、説明書を一読し優雅に操作し名簿を開くが、現時点では公開されておらず、やはり禰󠄀豆子の名前を確認できない。
「乃亜め、面倒な真似を……。
死ぬな禰󠄀豆子……お前は選ばれし鬼……死んではならない。私が行くまで、必ず生き延びていろ」
【鬼舞辻無惨(俊國)@鬼滅の刃】
[状態]:健康、俊國の姿、乃亜に対する激しい怒り。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:手段を問わず生還する。
1:もし居れば、禰󠄀豆子を最優先で探索し喰らう。死ぬな、禰󠄀豆子!
[備考]
参戦時期は原作127話で「よくやった半天狗!!」と言った直後、給仕を殺害する前です。
投下終了です
新企画の開始おめでとうございます。
投下いたします。
許さない、お前らは殺してやる、私を吸血鬼ウイルスに感染させたあのクソ吸血鬼も
私を売り飛ばしたあげく淫売呼ばわりしたあのクソどもも
私を守り切れず地獄から引っ張り出してくれなかった役立たずのクソ親父も
おまえらなんかが生きていることが許せない、そんなおまえらを産んだこの世の中が大嫌い
私の寂しさと絶望を紛らわすのは無邪気でけなげで愛しいあの子たち以外生きるな。
全て残らず一秒でも速くみんな死んでしまえ。
みんな死ね。
◆
才 才 才 才 才 才
幼子どもが殺戮くり広げるであろう命散りゆく舞台で、
緑の帽子をかぶった赤子を見るもおぞましい異形が追い掛けていた。
「アアンアァァアア〜ヤッヤヤアア〜〜!!」
「クラ…ウ…オマエ……」
巨体から想像もつかない速度で異形は駆け抜け幼子を食い殺そうとしている。
逃走中の赤子の名はルイージである。
しかしあのキノコ王国の人気者マリオの弟の
ルイージといってもまだ10どころかおそらく3にも満たないかもしれない赤子だ。
兄と未来の兄、そして未来の自分と共闘し
侵略者ゲドンコ星人と地球の未来を賭けた戦いを完全に終わらせ
平和になった過去の時代へ帰還したはずがいつのまに
黄緑髪の子どもからバトルロワイヤルを命じられてしまった。
この時点で怖がりなベビィルイージには尋常では恐怖だったが
見せしめにされ、哀れにも殺害された二人の子どもを見て恐ろしさのあまり飛び上がった。
そしてどこかに転送されたベビィルイージはどうすればいいのか見当も付かず
恐怖で泣きわめき、パニックに陥りながらせわしなく動き回っていた。
だが一直線に走るのではなく泣きわめいて
あらゆる方向にちょこまか動いていたのは紛れもない幸運であった。
現在追い掛けてくる化け物こと妙子は見上げるほどの巨体だが足音もなく
標的に察知されることなく接近可能なほどの隠密性を有する。
仮に一つの方向へまっすぐに走って入れば背後から迫る妙子に気づかず
ベビィルイージはなにもわからないまま捕食されていたのだ。
そのため全方向にむちゃくちゃに走り回り
偶然にも妙子の姿をベビィルイージの目は
食欲に染まった妙子の瞳を捉えたのは確かに幸運だったのだ。
ゲドンコ星人が操っていた怪物に
負けず劣らずの邪悪さを放つ妙子の危険性を一瞬で見抜き現在に至る。
「ウオオオンオッオッオッホォォォ〜〜ン!!」
助かりたい一心で全力で足を動かし
泣き叫びながら逃げるもそろそろ限界のようだ。
妙子を発見した時点では相当離れた距離であったが
赤子の小さい歩幅では追いつかれるのに掛かる時間は少ない。
「マンマァァ〜〜〜〜〜!!!」
とうとう追いつかれ妙子は触手のような器官を
獲物目がけて伸ばした。
ホースのように伸ばされた捕食器官はUFOキャッチャーの
アームの如く展開しベビィルイージの小さな体を砕こうとした。
小さな小さな異形が捕食器官を目がけて跳び蹴りを見舞ったのはそのときであった。
「オワワワオオ〜〜〜!!」
唐突にとどろいた打撲音に妙子もベビィルイージも驚愕した。
鋭く強烈な力を込められた蹴りをいきなり受けた妙子は蹴られた方に吹っ飛び倒れ伏した。
巨体に擦れられた地面はえぐられ擦ったことで
おびただしい出血を起こした妙子の血によって赤く染まった。
「オウ?」
助けてくれた小さな異形に顔を合わせるも
元々逃げてた方向に一差し指を向けジェスチャーをされた。
まるで「こいつはまだ生きているから速く遠くへ逃げろ」と伝えるように見えた。
「オウイェ!」
間一髪の所を助けてくれたことに感謝しながらベビィルイージは走り去った。
◆
さきほどベビィルイージの命を守った小さな怪物は
17号という人造人間に偽セルジュニアと呼ばれている。
王立自然公園自然保護官の職務についた17号により手なずけられ
以前の性格よりは丸くなった。
そのためいたずらのターゲットにすることはあるが
無軌道に人を殺したり襲うことはしない。
さきほど赤子を守ったのも偽セルジュニアからすれば
使命感や正義感というよりきまぐれの遊びみたいなものだ。
巨大な化け物相手に戦うのは面白いがあんな弱そうなちびがいたら邪魔になる。
「コノチビ…ジャマシヤガッテ……」
食事にありつけず怒り心頭の妙子が戻ってきた。
下半身にびっしりとこびついたネズミの頭部の群れ、
その中央から幼女の顔部の露見し、その顔の眼窩からもネズミ頭部が蠢いていた。
憎悪と怒りの形相がまっすぐに向けられる。
「シネ……シネシネ……」
化け物の激怒面など並の子どもが見れば卒倒者だが
恐れおののくどころかカエルのように跳ね
べろべろばーと挑発して見せた。
こんなでかいだけのウスノロ、死角がいっぱいありそうで片付けるのが余裕綽々なはず。
こいつで気の済むまで遊ぶとしよう、
小型と大型、
姿やサイズは大幅に異なるが怪物という共通点を持つ二匹の逃走が幕を開けた。
【ベビィルイージ@マリオ&ルイージRPG2】
[状態]:健康
[装備]:いつもの服装
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:怖いのは嫌だし殺し合いをどうにかしたい。
1:今は逃げる
[備考]
ゲドンコ星人たちと決着をつけ
過去に帰った後からの参戦です。
【妙子@彼岸島 48日後…】
[状態]:健康、激怒、右半身から擦り傷による出血。
[装備]:[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:何もかも殺してやる
1:このちび(偽セルジュニア)を殺してやる。
[備考]
【偽セルジュニア@ドラゴンボール超(漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:楽しくやりたいが無益や悪事や殺生はしないつもり
1:このでかいのを倒してみよう
[備考]
殺し合いを破綻させない程度に弱体化しています
偽セルジュニアが制限に気づいているかは不明です。
投下を終了します、べビイルイージとセルジュニアをショタ、妙子をロリとして執筆しました。
投下ありがとうございます!
>憎しみ
原作でクソみてェな目に合ったあと、クソみてェなロワに放り込まれて妙子は不遇っすね。この先分からされそう。
ルイージはこのまま逃げ回るままなのか、覚醒してヒーローになるか
そして丸くなったとはいえ、偽セルジュニアがマーダー路線に行くか今回みたいな対主催路線に行くかで、惨劇は減っていきそうです。
投下します。
(どうにかして首輪を解除しないと…
けれど、カイバノアやもしかしたら居るかも知れない彼の協力者何処かでに監視されてるかも知れないわね?
監視カメラや見張り役はいないかしら?
建物には近づかないでおきましょう。)
ランドセルを抱えて主催者側の監視を警戒しながら会場内の市街地を飛び回る、参加者の小さな妖精。
その言葉通り、本当に人間の赤ん坊よりも遥かに小さな妖精である。
実年齢は不明だが、その体格は人間の少女にそっくりだ。
彼女の名前は『クリスタル(krystal)』としよう。
彼女は最初に他の参加者達と共に集められていた場所で目覚めてから間もない時に、この殺し合いを命じられ、その直後にルフィが見せしめとして殺される場面を目撃した。
それもあり、クリスタルは反抗出来ずにいた。
それからも乃亜のゲーム説明は続き、その最中でルフィが何事もなかったかの様に蘇生させられ、彼の兄であるエースと共に反抗しようとしたところで再び殺され、エースも殺され、ルフィの頭部を乃亜に蹴られて兄共々酷く罵られる様子を為す術もなく見聞きしている状況で殺し合いの会場に転送された。
(ルフィ、エース、そして残りのみんな…)
見せしめとして殺された二人を救えなかった後悔の念を抱き、残った参加者達のことを心配しながら飛び回り続ける。
彼女もかつてはまだ少年だったパックマンを導き、いたずらで他種族を困らせるゴーストを退治するヒーローに成長させた経緯を持つ存在。
─だから、残された他の子供達やそれに似た見た目をした参加者のことをどうにかしてして救わなければならないという強い責任感を持っている。
(自分には、残されたあの子達が放っておけないわ。)
その責任感から彼女は他参加者達を導き、主催側からの干渉に警戒しつつ首輪を解除して乃亜や他に存在するかも今は分からない協力者を懲らしめる決意を抱いている。
【クリスタル(フェアリー)@パックンロール】
[状態]:健康、見せしめの2人を救えなかった後悔、他参加者への責任感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催側からの監視や盗聴に警戒しつつ自分を含めた参加者達の首輪を解除し、彼ら彼女らと共に乃亜を懲らしめる。
1:主催側の監視役が居そうな、目立たない場所や監視カメラがありそうな建物は避ける。
2:首輪を解除する方法の模索。犠牲者は出したくない。
3:出来ることなら早く市街地から抜け出したい。
[備考]
※参戦時期は本編終了以降。
※原作日本語版での名称は『フェアリー』ですが、本コンペではキャラ名を英語版の名称である『クリスタル(krystal)』に設定しております。
※飛行能力に何らか制限を設けられている可能性あり(当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
もし設けられている場合は本人把握済み)
投下終了です。
>>64
失礼します。
脱字を発見しましたので修正させていただきます。
修正箇所及び修正内容は>>64 の
『けれど、カイバノアやもしかしたら居るかも知れない彼の協力者何処かでに監視されてるかも知れないわね?』
↓
『けれど、カイバノアやもしかしたら居るかも知れない彼の協力者達に何処かで監視されてるかも知れないわね?』
と、>>65 の※飛行能力に何らか制限を設けられている可能性あり
↓
>>67 続き
※飛行能力に何らかの制限を設けられている可能性あり
となります。
投下ミス失礼しました。
投下します
「やれやれ、随分と物騒なことに巻き込まれたな」
金髪の少年が、やれやれとくたびれた様子でため息をつく。
その様子には、少年らしからぬ大人びた余裕と風格が備わっていた。
彼の名はフィン。
とある世界の神、ロキの眷族であり、ロキを旗印とするファミリア、その団長である。
「あの乃亜という少年、神を名乗っていたが…」
神という存在を知るフィンは、最初の場所に現れた乃亜について考える。
あの少年からは神威のようなものは感じられなかった。
神威を隠していたという可能性も自らが神を名乗っている以上、可能性は低い。
単なる自称か、それとも…
「誰か来たね」
前方に足音を確認したフィンは、支給された槍を構えつつ慎重に歩く。
やがて見えてきたのは、一人の少年の姿。
(!この少年は…)
フィンは軽く驚く。
その少年の見た目は幼く、ファミリア入団直後のアイズと同じくらいかちょっと上くらい。
自分のような小人族ではなくヒューマンのようであるし、フィンの知らない人外でなければ、見た目相応の年齢だと思われる。
しかし、その見た目にそぐわず、その実力は…見ただけで分かる。
(僕と同等…あるいはそれ以上か。彼は…強い)
「うおおおおおお!」
少年は叫び声をあげながら切羽詰まった様子でこちらに近づいてくる。
それに対し、フィンは警戒を強めるが、
「うおおおおおお!」
「……え?」
少年はこちらを見向きもせず、すぐそばにあった家に入った。
呆気に取られつつフィンも後を追って家に入る。
しばらくして、少年を見つけると、
「ふー、間に合ったあ」
少年はトイレで小便をしていた。
どうやら走っていたのはこの家のトイレを借りるためだったらしい。
「…ん?トイレ待ってるのか?俺は終わったからもういいよ」
「…いや、遠慮しておくよ。それより、話がしたいんだけどいいかな?」
フィンの中で、この少年への警戒はほとんど消えていた。
毒気を抜かれたといっていい。
「うん、いいよ」
「僕はフィン、まずは君の名前を教えてくれるかな」
「俺はコロッケ、バンカーのコロッケだ!」
「バンカー?」
こうして、ロキ・ファミリア団長フィン・ディムナと、バンカー・コロッケは邂逅を果たしたのだった。
*****************************************************************************************
「なんでも願いを叶える神、ね…」
「うん、禁貨ってコインをバンクって貯金箱にいっぱいにしたら、なんでも願いを叶えてくれるんだ」
フィンは、コロッケからバンカーとそれにまつわる話を聞いた。
どうやら彼は、自分とは全く常識の異なる世界の住人らしい。
そして信じられないことに…フィンが感じた彼の強さは、神の恩恵によるものではなく素の実力らしい。
(世界が変われば強さの常識も変わる、か…この幼さで神の恩恵もなしにとは、恐ろしいものだ)
まあコロッケの世界の住人の強さについてはひとまず置いておくとして。
それよりも重要なのは、バン王という存在。
なんでも願いを叶える神…それはこの殺し合いを仕組んだ海馬乃亜も言っていたこと。
この情報についてもう少し聞く必要がある。
「コロッケ、君の意見が聞きたい。この殺し合いの背後にバン王が関わっている可能性はあると思うかい?」
「うーん、俺、難しいことはよく分かんないよ」
「…そうか」
どうやら彼は、強さはともかく知能については見た目相応らしい。
「あ、でも、前にバン王が捕まったことがあるんだ」
「神が…捕らえられた?」
「うん、俺がバンクいっぱいにして願いを叶えようとしたら、スズキって奴が、帽子の中にバン王を封印したんだ」
「神を封印する魔道具、か…」
バン王が関わっているのか、あるいは他の超常存在が関わっているのかは現状分からない。
しかし、あの海馬乃亜が神を名乗るほどの強力な力を手に入れている可能性が十分にあるということだけは分かった。
まあ、自分やコロッケのように別世界の存在同士を引き合わせている時点でやばいことは分かってはいたが。
(こちらの世界の神も、普段は力を抑えているとはいえ、アルカナムを使えばあっさり世界なんて滅ぼしてのけるほどの力を持った存在だ。乃亜の言う神という自称が嘘偽りないものならば…神を捕らえ、その力を手にしているというのならば…なんとしても止めなければならない)
「コロッケ、僕はこの殺し合いを止めたい。協力してくれないかな?」
今のフィンには頼りになるファミリアの仲間はいない。
屈強なドワーフも、王族のエルフもいない。
故に、この場で新たな仲間を見つけなければならない。
故に目の前の少年、コロッケに力を貸してくれるよう頼む。
「ああ、勿論協力するよ!」
フィンの申し出にコロッケはあっさりと応じる。
その様子に、フィンはいささか拍子抜けした。
正直、コロッケの世界の話を聞いて、断られる可能性を疑っていたのだ。
「…こちらから頼んでおいてなんだけど、いいのかい?君には叶えたい願いがあるんじゃないのかい」
「だからってこんな殺し合い、俺はしたくない!父さんを生き返らせるのは絶対に叶えたい願いだけど、友達を殺してまでそんなことしたくない!」
「…この殺し合いには、君の知り合い…友達は呼ばれていないかもしれない。それでもかい?」
フィンは食い下がる。
このコロッケという少年は、フィンの見立てではかなり強い。
参加者の全体像も不明な今、状況の変化によって方針を突然変えられ裏切られてはたまらない。
故に、今のうちから揺さぶっておく。
もしもそれで心変わりするようなら…ここで倒す。
そんな決意を固めるフィンであったが、しかしコロッケの返答は予想を超えたものであった。
「何言ってるんだよ。友達ならもう目の前にいるよ」
「…なんだって?」
「俺はフィンのこと、もう友達だと思ってるよ」
フィンは一瞬驚いた後、ふっと笑った。
どうやら自分は、彼のことを見くびっていたらしい。
彼は自分が思っていた以上に幼い。
幼くて…だけども真っ直ぐな少年なのだ。
「分かった、探るような真似をして悪かった、コロッケ。改めて…共に戦おう」
「おう!」
こうして小人族の団長とバンカーの少年は、手を握り合い、共に殺し合いの打倒を誓い合うのだった。
「…しかしコロッケ、僕は君が思っているだろうよりも歳寄りなんだが、それでも友達でいいのかい?」
「別に年齢なんて気にしないけど…何歳なんだ?」
「42だよ」
「ええええ!?」
【コロッケ@コロッケ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
[備考]
※参戦時期はビシソワーズ編終了後、バーグを生き返らせる前です
【フィン・ディムナ@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか】
[状態]:健康
[装備]:グーングニル@テイルズオブファンタジア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
[備考]
※参戦時期は異端児編終了後(本編11巻・ソードオラトリア10巻)
※乃亜の背後に神やそれに準じる超常存在がいるのではと考えています。
投下終了です
タイトルは「ロリショタロワに42歳が参加するのは間違っているだろうか」です
投下します
「ど、どうしよう…」
一人の少年が周りをキョロキョロしながら怯えていた
少年の名前は風間トオル、ふたば幼稚園に通う幼稚園児で、かすかべ防衛隊という春日部の平和を守る5人のグループのリーダー(自称)である。
しかし、そんな彼が今地に着いてる場所は春日部ではなく殺し合いの場
彼はこう見えてかすかべ防衛隊の仲間と共に色んな事件に巻き込まれたことがある、野生の猿に連れていかれた親達を連れ戻すためにジャングルの中で冒険をしたり、または映画の中に吸い込まれたり、未来の世界に行ったり等々…とても普通の幼稚園児が経験することはないことをいくつも経験している
「うぅ…怖いよ…ママァ…」
それでも彼はまだ幼稚園児、いきなり知らない場所に連れてこられて人が殺される瞬間を見てしまったのだ…いくら様々な経験をしていると言っても人が殺されるところは経験したことがない…
そして風間は恐怖に震えていた…その時…
「ん…?あれは…?」
風間の目に映ったのは自分よりは年上であろう一人の少女だった、それだけなら普通なのだがその少女は車椅子に乗っていた…
風間も幼稚園児だが頭は小学生並の頭脳を持っている、だからこそ見た瞬間思った
(あの人…足が不自由なのかな…)
そう思った瞬間、風間はどんどん恐怖が薄れていった
完全になくなったかで言えば嘘になるが、人に出会えた安心感もあり、それよりもその少女を放っておけないという気持ちがあったために恐怖心は薄れていった
彼はかすかべ防衛隊のリーダー(自称)だ、そんな自分が目の前で困っている人がいるのに見て見ぬふりで放っておくことができるだろうか
(僕はかすかべ防衛隊のリーダーだ…かすかべ防衛隊は困っている人を助けることが使命なんだ…い、いくら怖くても…放っておけない…!)
そう思った風間はその少女に声を掛けることにした
そして風間はその少女に近づき声を掛けた
「あ、あの…すみません」
風間がそう声を掛けると少女は少し驚いた仕草を見せて風間の方を振り返った、間近でその少女を見た風間は…
(…可愛い人だな〜…)
と思った…しかしすぐさまその気持ちを振り払って再度声を掛ける
「あ、ご、ごめんなさい…驚かすつもりはなくて…」
「い、いや大丈夫や、私の方こそ驚いてごめんな?」
「いえ、あ、僕風間トオルって言います」
「私は八神はやてや、よろしゅうなトオルくん」
そして互いに自己紹介をした、そして今度ははやてが言葉を発した
「そういえばトオルくん、さっき私に声掛けてきたけどどうしたん?」
「あ、そうでした、その…言いづらいんですが…足、不自由なんですか…?」
「あぁ、まぁそうやね、でも今は少しずつ快復に進んでってるみたいなんよね」
「そうなんですか…」
風間ははやてから足が不自由であるということを聞き風間ははやてに提案した
「あの…迷惑でなければ一緒に同行してもいいですか…?」
「え?」
「その…はやてさん一人だったら大変だと思うし…何か力になれたらと思って…」
「でも…今は状況が状況やからな…私に構ってたらトオルくんも危ないかもしれないで…?」
「だからこそです!僕は幼稚園児だけど、今の状況も、殺し合いの意味も何となくですが理解してます、だからこそはやてさんを一人にしておけなくて…!…すみません、厚かましくて…」
つい熱くなってしまった風間ははやてに対して謝った…しかし…
「そんなことないで?こんなにも私のことを気にかけてくれてるんや…トオルくんは優しい子やで」
「はやてさん…」
はやては風間を抱いてそう言った、はやて自身も一人で抱え込む性格なため風間が気にかけてくれていたことが嬉しかったようだ
「やったら…同行お願いしてもええかな?」
「あっ…はい!出来ることは限られるかもしれませんが頑張ります!」
風間を下ろしたはやてはそう言い、風間は元気よく答えた、しかし、風間の足を見たはやてはふふっと笑った
「トオルくん、あんまこういうこと言うのもあれかもしれんけど…足震えとるけど大丈夫?」
「あ、いやこれは…だ、大丈夫です!」
「ふふ、まぁ無理せんようにな?」
「はい!」
そして二人は共に行動することにした…
【風間トオル@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:とりあえず今ははやてさんの力になる
1:少しでもはやてさんを支える
2:しんのすけ達もいるのかな…
[備考]
※殺し合いのことは何となく理解しています
※映画での出来事を経験してます
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康
[装備]:車椅子
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはせず何とか方法を見つける
1:トオルくんは優しい子やな〜
2:なのはちゃん達もおるんかな…
[備考]
※参戦時期は少なくとも闇の書事件終了後から
投下終了します、あと書き忘れてましたがタイトルは「優しさは心を強くする」です
投下します
「ううう……っ。」
夜の世界に、少女がポツンと一人。
梅花園所属、春原ココナは未だ先の分からぬ空間で、一人ただ震えていた。
「シュン姉さん……先生……どこぉ……?」
乃亜とか言う少年から殺し合いをしろと言われ。
気がつけば乾燥し荒れた岩山だけが続く殺風景に置いてけぼり。
無為な赤茶色に、何処までも続く暗い闇。
齢11の彼女とって、そんな場所に孤独に放置されるなどというのは、十分な恐怖となり得るのだ。
「……ううん! こんな所で縮こまってちゃダメです! このままではみんなにかっこが付きませんし、一人前のレディになるためには……ってええ!?」
だが、これでも梅花園の教官の一人。子どもを教え導く立場として、こんなところで怯えている訳にはいかない。
頬を叩いて自らを奮い立たせようとした途端にココナの眼前、暗闇の影の中で妖しく光る二つの赤い何か。
ゆっくりと近づいてくるそれは野獣の眼光にも似通っており、少しばかり後退ってしまう。
「……だ、誰ですか!?」
即座にデイバッグの中にあった武器を構える。
猛獣の類か、それとも殺し合いに乗った別の参加者か。
梅花園、と言うよりもキウォトスという世界における住民たちにとって銃を構え戦うことになるのは凡そ日常茶飯事。梅花園の教官でもあるココナも、当然のことながら荒事への対応には他所の心得はある。
「て、敵じゃないのなら出てきてください!」
足を震わせながらも声を上げる。敵なのか、味方なのか、それとも本当にただの動物の類なのか。
孤独という恐怖を抑え込み、赤い輝きへと銃口を向ける。
「………!」
息を呑みこみ、相手の動きを待つ。襲ってくるようであるならば、不本意であるが引き金を引かざる得ない。だが、ここはキヴォトスではない。世界そのものが違う、自分の知らない世界の誰かである可能性。
それだけでも、引き金が著しく元の世界よりも重く感じたのは決して幻覚ではないのであろう。
赤い輝きが闇を抜けてこちらへと近づき、徐々にその輪郭が露わとなっていく。
「……はえ……?」
「………?」
猛獣の類だと警戒していたココナは、呆気にとられて銃を下ろしてしまった。
それは小さい女の子。オレンジ色の髪を巨大な洗濯バサミのようなものでツインテールに結んだ、自分よりも年下の、そんな少女の姿。
その少女が、怪訝そうな顔でココナを見つめて、少しばかり考え込んでからこう切り出る。
「物騒なやつだと思ったら、妾と対して変わらないではないか」
「初対面のレディに対してそれはどうかと思います、あとちょっと夜の中で赤い瞳はちょっと怖かったです」
「……そう言われると少し凹むぞ妾」
◯ ◯ ◯
お互いの警戒は無事解け、少しばかり移動して岩山の荒野から少し距離のある年甲斐の一軒家の中にてひとまず休憩を取ることとした二人の少女。
ココナがこの場所で出会った、自分よりも小さい少女の名は藍原延珠。キヴォトス出身であるココナからすれば、キヴォトス以外の世界の人間と言えばシャーレの先生ぐらいであり、それ以外の外部の人間との対面と言うのはこれが実質的な初めてとなっている。
お互いの情報交換も兼ねた自己紹介や事情説明を経て、ココナが延珠に抱いた感情というのが。
「え、ええと。その、なんだか、スケールが大きくて……。」
「ふふ。まあ色々苦労はしたが、蓮太郎のお眼鏡に叶う立派なフィアンセになるため日々精進しているのだ!」
困惑、だった。延珠が話してくれた情報は彼女のいた世界の基本的な常識や、あと蓮太郎なるパートナーへの惚気話。
しかもフィアンセになるため、と言い出したものだから結婚を前提としたお付き合いということを考えてるとはこの少女外見に似合わずあざといとはココナの心象。
ココナもココナでその言葉に反応してか先生のことが一瞬頭に浮かぶも、すぐにその邪念を霧散させる。
「しかしココナも十分凄いぞ思うぞ。妾と対して年が変わらぬというのに、子供たちの先生をやっているのか。」
「い、いえ、そのくらいレディーとして当然です! これでも梅花園の教官なんですから!」
相槌を入れるような延珠の言葉に、多少照れ隠しながらもココナは上機嫌。
藍原延珠は10歳、それに対し春原ココナは一応11歳。優秀な成績から学園を飛び級し教官に選ばれた実績は伊達ではない。ただし成績は優秀でも心は子どもなのでそこらへんはご愁傷。
「だ、だから、こんな殺し合いとかに絶対に負けません! 絶対にみんなの所へ帰るんです!」
それでも、教官としての矜持と、待っているみんなの為、例え恐怖に襲われようとも、こんな所で縮こまってる訳でには行かないのだ。
「……なら、妾にも協力させてくれないか?」
「えっ? いいんですか!?」
そんなココナの思いを汲んだのか延珠が発した一言に思わず呆気とられる。
「妾とて、戻らなければならぬ居場所がある。まあ蓮太郎の元へさっさと戻りたいのは確かだ。早く戻らないとあの泥棒猫もとい泥棒梟に蓮太郎を横取りされかねないからな!」
などと意気揚々に声を上げる延珠、信頼とも焦りとも似た雰囲気に安心しながらも、「蓮太郎さんって人、もしかして苦労しているのでは」だどと内心思うココナではあった。
【春原ココナ@ブルーアーカイブ-Blue Archive-】
[状態]:健康、不安(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない、早くみんなの所へ戻りたい
1:梅花園の教官として、レディーとしてなるべく恥をかかないように
2:延珠ちゃんって、なんだか変わった人ですね
【藍原延珠@ブラック・ブレット】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:乃亜とかいう不届きものを倒して元の世界へ戻る
1:ココナの事を手伝う。
2:ティナ、妾がいない間に蓮太郎を誘惑しているのではないのか……だったら尚更早く戻らなければ!
[備考]
※参戦時期は最低でもティナが仲間になった後
※ガストレアウイルスの侵蝕率に関しては後述の書き手にお任せします。
投下終了します
投下します
ここは学校。
明かりの消えた教室の隅で、制服姿の少女が膝を抱えて震えていた。
彼女の名は、萩村スズ。
体格は小学生に間違えられるほど小柄だが、れっきとした17歳の高校生である。
普段の彼女なら、子供扱いされようものならまず怒り狂う。
最低でも、皮肉の一つは言うだろう。
だが今のスズには、そんな余裕はない。
目の前で二人の子供が殺され、自らも殺し合いへの参加を強制された。
現代日本で平和に暮らしていた彼女にとっては、あまりにもショッキングな出来事だ。
おまけに初期配置が深夜の学校というのは、恐怖耐性が非常に低い彼女にとっては追い打ち以外の何物でもない。
今のスズは、自慢の頭脳がろくに働かないほどに追い詰められていた。
「いやぁ……。助けて、津田ぁ……」
心細さのあまり、スズは思い人の名を口に出す。
その直後、教室のドアが勢いよく開けられた。
「おう、やっぱり人がいたか」
ドアの向こうから姿を現したのは、黒いスーツを身に纏った女性と見まごうような顔つきの男。
名をボラーという。
電脳生命体である彼に人間の年齢を当てはめることにどれほどの意味があるのかわからないが、少なくとも本人の認識では彼は子供ではない。
スズ同様、その外見ゆえに参加者として選ばれてしまった存在と言っていいだろう。
「安心しろ、俺は殺し合いに乗るつもりは……って、聞こえてねえか」
スズの状態を視認し、ボラーはあきれたように呟く。
スズは、口から泡を吹いて気絶していた。
ドアが開けられた音で、恐怖が限界を超えたらしい。
「おーい、起きろ」
スズの前まで歩み寄り、体を揺さぶるボラー。
しかし、彼女が目覚める気配はない。
「しょうがねえな。放置していくわけにもいかねえし……。
運んでやるか」
ぶつくさと呟きながら、ボラーはスズをお姫様抱っこする。
背中はランドセルで塞がっているため、こうするしかないのである。
「ああ、かったりい……。
あの乃亜とかいうクソガキ、絶対しばいてやる……」
主催者への恨み言と共に、ボラーは教室を後にした。
【萩村スズ@生徒会役員共】
[状態]恐慌、気絶
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:死にたくない
【ボラー@SSSS.GRIDMAN】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜をしばく
[備考]
※参戦時期はTVシリーズ終了後
※制限により、もしジャンクがあってもバスターボラーにはなれません
投下終了です
投下します
『──禁止事項に接触しています。直ちに行為を停止しなければ一分以内に首輪を爆破します』
「おわ〜ちゃちゃちゃちゃ!!……おーいネモォ〜、やっぱダメそうだぞ〜」
「…うん、みたいだね。ありがとう、悟空。おかげで検証できた」
時刻は深夜0時から十五分ほど回った頃。
偽りの星が見下ろす夜空の下で、二人の少年の声が響く。
…目を引く二人組だった。
青い道着を纏い、悟空と呼ばれた少年──孫悟空/カカロットは、首から鳴り響く電子音が止んだ事に胸を撫で下ろし。
その傍らで白い軍服とターバンを纏った、悟空にネモと呼ばれた少年、
真名をキャプテン・ネモと名乗る英霊(サーヴァント)は、腕を組みつつその推移を見守った。
「ここからじゃあの乃亜っちゅう奴の気は辿れねぇし、そもそも瞬間移動自体ができねぇみてぇだ」
二人の出会いは穏やかな物だった。
双方とも殺し合いには乗っておらず、また見た目は子供でも修羅場には慣れている。
接触から数分で情報交換に移行し、それもつつがなく進んだ。
英霊召喚(サーヴァント)やドラゴンボールなど、双方興味を引く(と、言っても悟空にはよくわからなかったが)事柄はあったが、
何よりネモの興味を引いたのは悟空が使えるという瞬間移動という技術だった。
ビーコンとなる人物さえいれば惑星間の移動さえ可能となる技術は、ネモの世界では魔法と呼んで何ら差支えのない超技術だ。
もっとも、それも今しがた不発に終わったが。
「瞬間移動なんて殺し合いをさせるなら放置しておく訳がない。僕の宝具も対策されてたみたいだ。
そもそも発動できないし、無理やり発動しようとすれば君みたいに首輪が鳴った」
英霊(サーヴァント)の代名詞たる宝具。
ネモの場合は次元すら潜航する巨大潜水艇の召喚なのだが、呼び出すことができなかった。
「そっかぁ〜、じゃあやっぱ、今ここを出る方法はねぇっちゅうことか」
「いや…落胆するにはまだ早いよ。態々警告までしてくるなんて、
ボクと君の持つ技術は、あの乃亜という子供にとっては相当都合が悪いらしい」
幾重にも制限をかけるのは、能力を使われたくない裏返しともとれる。
乃亜がこの会場ではない別の場所にいるとするのなら。
次元間を潜航し、乃亜の監視から逃れて移動が可能なネモの宝具や悟空の瞬間移動は、
彼の玉座に届きうる…のかもしれない。
「けどよぉ、結局使えないなら意味なくねぇか?」
「問題は、何故使えないのかって所だよ、悟空」
こんこんと首輪を叩きながら、ネモは悟空に言葉を返す。
「もし、僕らが能力を使えない原因が、この首輪にあるのなら…」
「そっか!首輪さえ外しちまえば使えるようになるかもしれねぇんか!」
「確証は無いけど、可能性は高いと思う。
僕も君も、体そのものに何かされた形跡は無い。となれば、一番怪しいのはこれだ」
どの道、首輪が嵌められていれば、乃亜に逆らう事は出来ない。
殺し合いに反抗するうえで決して避けては通れない課題だった。
解除してこの課せられた制限も突破できるならば、願ったりかなったりだ。
「現物さえあれば、解析には自信がある。相応のリスクは否めないけど」
リスクと言う点では今こうして話している事すら危険ではある。
命を握っている相手に、反目しようという企てを立てているのだから。
だが、予想通り今現在目立った主催からの干渉は見られない。
ある程度、反抗する者が出てくることは主催も想定済みなのだろう。
だとすればやはりレールの上を走らされている様で癪だが、ネモが主催との対立姿勢を取るのは必然だった。
霊基に刻み込まれた、支配と蹂躙に抗う孤高の船長としての在り方が、それ以外の選択肢を許さない。
自己の生存と言う視点でも、既に没し世界に英霊として召し上げられた存在であるネモにとって殊更執心するものでもなかった。
まして願いを叶えるなどという餌に目がくらんで誰かを傷つける事などもっての外だ。
だが、その自分の在り方を誰かに押し付けようとも思わなかった。
「君さえよければ協力してほしいけど…どうする?」
ネモはこの時、そこまで悟空の返事に期待してはいなかった
立ち向かうつもりがなくとも、殺し合いに消極的であってくれれば、それで十分だと思っていた。
ついでに言えば、彼個人の意気込みで言えば殺し合いから本気で脱出しようという気概も薄かった。
主催の言うとおりにするのは断固拒否だが、自身の生死についてはそこまで頓着もなく。
死んでもまぁ仕方ない。その程度の認識だった。
そんな心境から放たれた問いかけであったが、相対する少年の返事は、実にからりとした物だった。
「おう!オラも武道会なら兎も角殺し合いなんて御免だぞ。
オメェ頭よさそうだし、この首輪外すっちゅうんなら協力する。
何しろオラも色々大変でさぁ〜早く帰りてぇんだ」
そう言ってにひひと笑う悟空の顔は、見た目相応の無邪気さと同時に奇妙な老成の雰囲気を醸し出しており。
成熟した善性を、彼からネモは感じ取っていた。
故に、人見知りなネモの所感から言っても、悟空は協力者として好ましい人物だった。
「決まりだね、改めてよろしく頼む」
そう言って、共同戦線の誓いを立てるべく、手を伸ばす。
その時の事だった。
───くすくすくす。
ネモが背後から、少女の声を聴いたのは。
悟空とアイコンタクトをして、背後を振り返る。
すると視線の先に立っていたのは、一人の少女だった。
ヒールの靴を履いて大分厚底しているとは言え、ネモと比べてさらに小さい。
修道服を纏い、その背から機械的な翼(ウイング)を生やした少女。
「私、カオス……よろしくね?お兄ちゃん達」
「オッス!オラ悟空!!」
「……ネモだ」
上履きを大事そうに抱えて、少女は己の名を混沌(カオス)と名乗った。
その笑みは子供そのものだ。
それなのに、その笑みの奥から得体のしれない怖気が奔った。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん達──愛って何なのか知ってる?」
「何言ってんだ、おめぇ?」
くすくすくす。
くすくすくす。
少女はずっと笑い続けている。
ついさっき、殺しあえと命じられたと思えないほどに。
悟空の質問の意図が理解できないと言うような返事にも、気にしていない様子で。
「分からないなら教えてあげる……愛って言うのはね───!」
…前提として。
ネモが油断していた訳ではなかった。
むしろ様子がおかしい少女に対して、警戒を払ってさえいた。
だが、それだけでは不十分だったのだ。
カオスと名乗った少女が、次瞬、ネモの目の前にいた。
「────ッッッ!?」
「……ッ!?やべぇネモ、避けろッ!!」
背後で悟空の声が響くがもう遅い。
完全に英霊(サーヴァント)である自分の知覚が、置いて行かれた。
それは白兵戦に秀でた三騎士のクラスでない彼にとって、余りにも致命的な一瞬だった。
少女の背中から生える機械的な翼が、ネモに振り下ろされる。
不味い、死んだ。
確信と共に。
数百倍に濃縮された時間の中で、漆黒の翼が処刑鎌(デスサイズ)の様に見えた。
直後に、鮮血の花が咲く。
「───へぇ、凄い。あそこから間に合うなんて…お兄ちゃん、地蟲(ダウナー)じゃないの?」
「おめぇ…こんなバカげた殺し合いに乗るつもりか?」
響くのは冷厳とした少年と、無邪気な少女の笑い声。
ネモの首は、飛んではいなかった。
突き飛ばされ尻もちをついた体勢で、眼前の悟空の背中を見つめる。
その背中はネモよりも小さなものなのに、ずっと大きなものであるかの様に、彼は感じた。
「──痛い?それが愛なんだよ」
つぅ、と。
赤い雫が伝わる。
音の数倍の速度で振り下ろされた天使の翼は、悟空の右腕で受け止められていた。
だがしかし、鋼と比べて尚頑強なその右腕も、咄嗟の事態に無傷とはいかず。
鍛え上げられた筋肉の鎧を突破し、腕の中ほどまでをその刃は突き進んでいた。
右腕を走る焼けつくような痛み。
だが、孫悟空と言う少年が狼狽えることは無い。
歴戦の戦士の表情で、ただじっとカオスと名乗った少女を見据える。
「……!?」
カオスの表情が変わったのは数秒ほど経った後だった。
翼が、抜けないのだ。
すぐさまその理由を解析し、そして驚愕する。
「凄い…!お兄ちゃん、まさか!ただ筋肉を締めて抜けない様にしてるの?
そんな事できる地蟲(ダウナー)聞いたこと、無い……!」
先ほどカオスの攻撃に反応したのもそうだ。
通常の地蟲(ダウナー)ならあの一瞬で五度は殺されている。
そしてこの自分に張り合う異常な膂力…本当に目の前の少年は人間なのか?
その疑問を抱いた、次の瞬間だった。
「だりゃああああああああ!!!!!」
気合一閃。
少女の体を、猛烈な遠心力と浮遊感が襲う。
そのまま二十メートルほど吹き飛ばされ、翼を広げ停止した。
何が起きたかは明白。
少年が、刃が突き刺さったままの腕を思いっきり振り上げ──投げ飛ばしたのだ。
やったこと自体は単純とは言え、それを実際にできる者が果たして何人いるのか。
流石のカオスも驚愕を隠せなかった。
「バカな真似はやめろ!おめぇ強ぇんだから。あんな奴のいう事聞く必要なんてねぇ!」
「──それじゃ、おうちに帰れないの」
「………?」
その一瞬。
その時だけは、少女は笑っていなかった。
今に至るまでの短いやりとりでも分かるほど狂気を孕んでいた少女の顔が。
別の熱を帯びたように、悟空の瞳には映った。
一瞬だけ思考に空白が生まれる中、それでも時は止まらない。
泣き笑いの様な顔を浮かべて、修道服の天使は漆黒の翼を広げる。
それに伴い、黒一色の暴威がその咢をもたげた。
「あぽろん…起動。照準(ターゲット)補足(ロック)……」
「…ま…待て待て…!?そんなのこんな所で撃ったら───!!」
兵装名・APOLLON
第二世代エンジェロイド・タイプε(イプシロン)
個体名「Chaos」の有する、弓矢型の超兵器。
一発で国一つを吹き飛ばす威力を持つ、文字通りの最終兵器である。
(ダ…ダメだ。オラはどうにかなっても、ネモ達が助からねぇ!!)
あれが発射されれば、この一帯が吹き飛ぶのを直感する。
故に、回避はできない。
もし発射を許せばネモだけでなく、周辺にいるかもしれない他の参加者にも被害が及ぶだろう。
舞空術で空を飛んで引き付ける事も考えたが、それでカオスが誘導できる保証は何処にもない。
となれば、あと残る手段は迎撃を置いて他にない。
「か、め」
悟空の姿が変貌する。
瞬間的に至る事ができ、確実に敵の攻撃を迎撃できる形態──スーパーサイヤ人、それを超えた2へと。
黒の髪が金に発光し、剣山の様に逆立ち、蒼い雷廟を纏う。
「は、め」
同時に両掌で空間を作り、そこに気を集めていく。
瞬く間に集められた気は青白く光を放ち、激発の時を待つ。
放つは彼の代名詞。
多くの敵を打ち破ってきた最も信頼が置ける戦技。
「あぽろん…発射───!!!!」
「波ァアアアアアアアッッ!!!」
───直後黒色の殺意と青の光彩が激突した。
「うそ…!?」
衝突。迎撃。撃破。
拮抗したのは殆ど一瞬。
黒の奔流が、青の怒涛に飲み込まれる。
「───いーじす、展開ッ!!」
ネモと悟空が少女の姿を確認できたのは、そこまでだった。
バリアの様な力場が少女の周囲に展開され、その力場ごと吹き飛んでいく。
数秒後、巨大な力の激突があった事すら嘘の様に、静寂が辺りを包む。
夜空の星も、何一つ変わることなく輝いていた。
「ったく…いきなり……飛ばし過ぎたぞぉ……」
少女の姿が確認できなくなって数秒後。
金から黒の髪へと戻った悟空は糸が切れたように地面へと墜落した。
■
「むにゃ……お…」
「気が付いた?……まったくウツボみたいに無茶をするな。君は」
「へへ…悪ぃ……」
「いや、別にいいさ。君の無茶のお陰で僕は生きてる」
時間にして一分に満たないであろう衝突だったが、想定以上に力を持っていかれた。
乃亜が言っていた通り、自分には相当重い制限が科されているらしい。
ネモの白い軍服の背中を眺めながら悟空はその事実を自覚する。
「ネモよぉ、さっきの戦いで分かったんだけど…
やっぱこの首輪に何かの仕掛けがある見てぇだ」
「何か、首輪から働きかけがあったのかい?」
「あぁ、オラがスーパーサイヤ人になった時、
急にこの首輪から力が吸い取られたみてぇになった」
普段より出力は格段に落ち、その癖燃費は極悪な物になっている。
元々燃費の悪い形態ではあるが、平時ならもう少し余裕があった筈なのだ。
「…まぁ、君やさっきの彼女相手じゃ普通の人間は殺し合いが成り立たない。
サーヴァントでも、君たちの相手ができるのは果たして何人いるものか
君の制限が殊更重いのも、当然の話ではあるんだろう」
乃亜が危険視するのも理解できると、ネモは思わずにはいられなかった。
だが、彼もこの場において決して無敵の存在でないのだろう。
自身を庇う時に負った腕の傷がその証だ。
「……取り合えず、腕の手当てをできる場所まで運ぶよ。
腕の傷以外にも、結構さっきの余波を受けてるんだろう?」
「お〜そりゃ助かるぞ」
あの衝突の余波を受けたのか、腕の傷以外にも幾つか火傷をしているのが分かった。
どれもそこまで大したことが無いとは言え、放って置く理由も無い。
一先ず、医薬品のありそうな場所へ移動する事とする。
「なぁ、ネモ、気づいてたか?」
「彼女の事?」
「あぁ、あのカオスとかいうちみっ子───」
「……うん」
空に浮かぶ彼女の姿を見たのはほんの短い間だけだったけれど。
それでも、二人の目は見逃していなかった。
吹き飛ぶ直前に、少女が見せた哀切の感情を。
単純に返り討ちに遭った驚愕や悔しさだけであんな顔ができる者だろうか。
「…ねぇ、悟空?」
「お?何だ?」
「ボクの嫌いなものって何かわかるかい?」
「え〜、そんなこと言われてもなぁ……」
藪から棒なその問いかけに、困った様な顔を浮かべる悟空。
そんな彼の顔を見て、直ぐに解答を口にする。
「答えは支配と弱い者いじめ、さ。その点、乃亜は二つとも当てはまってる。
……だから止めよう。彼女も、この殺し合いも」
どんな事情があったとしても、無理やり拉致してきて殺し合いを強要するのが許されるはずもない。
それが本当は殺し合いをしたくない子供なら猶更だ。
キャプテン・ネモと言う英霊は、冷静な振る舞いの裏に激情を潜ませたサーヴァントだった。
「……おう!オラもカオスは悪い奴じゃねぇと思うしな」
「うん。主催にボクらを殺し合いに呼んだことを後悔させてやろう」
「あぁ、その意気だ!……でも、その前にオラ…腹減っちまった」
ぐぅう〜〜、と。
はっきり聞こえるくらいの音量で、腹の蟲が鳴いていた。
それを聞いた海神の子はふっと笑って。
「ついでに、食事もできる場所も探そうか」
そう答えたのだった。
【孫悟空@ドラゴンボールGT】
[状態]:疲労(大)、腕に裂傷(中)、体のあちこちに火傷(小)、空腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:とりあえず腹減ったぞ〜
2:ネモに協力する。
3:カオスの奴は止める。
[備考]
参戦時期はベビー編終了直後。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
SSは一度の変身で12時間使用不可、SS2は24時間使用不可。
SS3、SS4はそもそも制限によりなれません。
瞬間移動も制限により使用不能です。
【キャプテン・ネモ@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:悟空の手当てと食事ができる場所を探す。
2:首輪の解析のためのサンプルが欲しい。
3:カオスは止めたい。
[備考]
現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
宝具である『我は征く、鸚鵡貝の大衝角』は現在使用不能です。
「失敗しちゃった…」
空を仰ぎ、墜落した先で天使の少女は息を吐く。
戦いとすら呼べない虐殺になるはずだった。
エンジェロイドと地を這う人間…地蟲(ダウナー)には隔絶した戦闘力の差がある。
その筈だった。
だが、あの悟空と名乗った少年は正面からカオスを打ち破って見せた。
「あぽろんは…壊れちゃった。いーじすは…何とか動かせる?」
敗北の代償は最大火力の兵装の喪失と、防御障壁の半壊だった。
特にアポロンの方は自己修復では治すのは不可能だと、セルフチェックで演算される。
今のまま戦っても、あの敵には勝てないだろう。
「もっと…たくさん食べなくちゃ」
沢山食べて、沢山の能力を手に入れる。
そうしなければ勝てない。
そうしなければ、優勝できない。
優勝できなければ──
「絶対…いい子になってかえるんだ」
起き上がり、胸に大事そうに抱いた上履きをぎゅっと抱きしめて。
そうだ、優勝して、いい子になれますように、って願うんだ。
いい子になったら、きっと…“お兄ちゃん”のおうちにかえる事ができる。
優勝すれば、愛がもらえる。優勝しなければ、愛は手に入らない。
────エンジェロイドは帰ってくんなーっ!!
ぱり…と私は持っていた擬態能力で姿を変える。
さっきの、悟空お兄ちゃんの姿へと。
今はまだ、まともに戦っても勝てない。
悟空お兄ちゃんみたいな子が、他にもいるかもしれない。
だからこうして姿を真似る。
私の変わりに、悟空お兄ちゃん達に悪い子になってもらう。
私がいい子になるために、愛を手に入れるために、智樹お兄ちゃんのおうちに帰るために。
「…待っててね、お兄ちゃん」
──どうか、教えてください。
優勝すれば、私はおうちに帰る事ができますか?
【カオス@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、自己修復中、アポロン大破、イージス半壊、悟空の姿
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して、いい子になれるよう願う。
1:悟空お兄ちゃんかネモお兄ちゃんの姿で殺しまわる。
2:沢山食べて、悟空お兄ちゃんを超える力を手に入れる。
3:…帰りたい。
[備考]
原作14巻「頭脳!!」終了時より参戦です。
アポロンは大破しました。修復不可能です。
投下終了です
新ロワ開幕おめでとうございます!
投下させていただきます。
「…ウリ坊。美代ちゃん……鈴鬼くん」
ギュッと支給されたランドセルを強く抱きしめる。
押し潰されそうな恐怖に必死に耐えきれるように。
自分を支えてきてくれた友達の名を紡ぐ。
そうしないと死の恐怖に溺れてしまいそうだから。
着物を着た少女……関織子は一人佇む。
「殺し合いだなんて……どうしてこんなことに巻き込まれちゃったの!?」
織子は祖母が女将として働く旅館である「春の屋」の若女将として、いつものように宿泊客に対応していた。
そのはずが、海馬乃亜なる少年による殺し合いを命じられることになってしまった。
「……」
あの場に集められていた周囲の人だかりは皆、自分と同じかほんの少し年上。それと年下らしき子ばかりだった。
織子も小学生。同級生と喧嘩したことはある。しかし、当然ながら殺し合いにまで相手を憎んだことも傷つけたことはない。
「あの兄弟のお父さんとお母さんが可哀想だわ……」
今でも鮮明に浮かび上がる兄弟の死。
ルフィとエースの兄弟。
やんちゃそうに見える弟ルフィとそれを見守り導く兄のエース。仲が良い兄弟。
当然、二人の両親はそんな兄弟を愛していたはずだ。
織子は顔知らぬ二人の両親を気の毒に思う。
厳密にはルフィとエースは実の兄弟ではないのだが、織子には実の兄弟にしか見えない関係の絆の深さが、あの短い合間に見えた。
「ここで、あたしも死ぬのかな?」
人を殺すという選択肢は当然ない。
人の命を奪って、人を笑顔にさせられるはずがないのだから。
だからといって、ただの若女将でしかない小学生が生き残れるとは思えない。
織子の顔つきはどんどん暗くなるばかり。
―――そのとき
おっこ。待っといてな。必ずまたおっこに会いに行くわ。
ええ。私も必ずおっこの旅館へ行くわ
それは、今も追い求めている友達の声。
もう出会うこともない友達の声。
しかし、それらは織子の脳内にきちんと記憶されている。
「そうよ……ここであたしが死んだらウリ坊と美代ちゃんとの約束を守れなくなっちゃうわ!」
梅の香神社の神楽の日。
2人と約束をした。
転生した2人がお客さんとして来るから。それまでに女将として立派に成長すると。
約束を破る事。
織子にとってそれは死よりも受け入れがたい。
必ず、女将として生まれ変わった2人と再会しなくてはならない。
織子は両手でほっぺを叩き、気合を込める。
「よし!くよくよするのはお終い!」
自分の取り柄は元気。
落ち込んではいられないといわんばかりに織子は立ち上がる。
「そういえば……」
元気を取り戻した織子は思い出す。
「あの乃亜って子……何だかあかねさんのような眼をしていたわ」
神田あかね。
織子が若女将として初めて接待した親子の子。
母を亡くしひねくれて塞ぎ込んでいた。母の愛に飢えていた男の子。
知的そうに見えるところも同じだ。
集めた参加者を見下ろす眼。
自分を神だと豪語する眼。
だけど、その眼は……
「そうだねえ……せっかくだ。キミたちの兄弟愛に題名でも付けてあげようか。
『無様な敗北者達』キミたちにぴったりの名前じゃないか! 無駄死にご苦労様、せいぜいあの世で海賊ごっこに励んでいてくれたまえ!
アッハハハハハハハハハハハハハ!!!」
兄弟愛を蔑む言葉。
それは、一見残虐な振る舞いにしか見えない。
しかし、その眼には愛に飢えている。愛を求めている。
求めすぎた故に愛が愛憎へと変容してしまった悲しき哀の眼。
乃亜が追い求めているのが、兄弟愛かはまだ分からない。
だが、織子は確信した。乃亜の心の奥に潜む傷に。
若女将として数多くのお客さんに真摯に向き合ってきたからこそ。
細い細い一本の孤独の糸に気づいたのだ。
「うん。決めたわ。乃亜……くんに会って、話をしたい」
両親を事故で失い、自分の取り巻く世界は大きく変わった。
件の交通事故を起こした木瀬さんの家族が泊まりに来たあの夜。
両親の幻に別れを告げられ、どうしたらいいのか頭の中がくるくるくるりんと転がった。
困惑に押し潰されそうになった自分をグローリーさんが抱きしめてくれた。
春の屋の若女将として成長できた。
乃亜くんにだってできるはず。
心の傷を乗り越えた故に織子は、海馬乃亜にも心の傷を乗り越えてもらいたいと願った。
そして、出来るのならあの兄弟の命を元に戻してほしいし、巻き込まれた皆を無事に帰らせてほしい。
それが、若女将としての自分の願い。
ならば、このバトルロワイアルを何とかして乃亜に会わないといけない。
「まずは、他の参加者と協力してこの首輪をどうにかしなくちゃ!」
佇む時間は終わった。
今は動くべき時間。
若女将、動きます。
【関織子@若おかみは小学生!(映画版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。乃亜に会って乃亜の心の傷をどうにかしたい。
1:他の参加者と協力してバトルロワイアルを止める
2:知り合いがいないといいのだけど……
[備考]
映画終了後からの参戦です。
乃亜を自分よりも年下だと思っています。
乃亜が愛に飢えているのではないかと推測しています。
投下終了します。
投下します
その日
この地球上に存在する人間をも含めた―――
強さを拠り所とするあらゆる生物にとっての
一九五X年四月X日―――――――――
自動的に一つだけ「強さ」のランクが下がった」
「最悪の日!!!」
世界中の無根拠のまま危機を事前にキャッチする直観力を有するという政治指導者達が、密かに核兵器の所有を決意した日でもある。
その最悪の日を齎した存在が、乃亜によりバトル・ロワイアルに招聘されていた。
───あの餓鬼ッッ!
───この俺に命令するとはッッ!!!
転送された先で激怒する雄(オトコ)。
地球上に誕生しただけで、地上最大の捕食獣であるホッキョクグマ。ホッキョクグマさえも捕食する地上最強の捕食者シベリアタイガー。現代に於いて地上最大生物である象。海の殺し屋と呼ばれる鯱。果ては悪魔を超えた悪魔でさえも軽くオモチャにしてしまう霊長類最強のゴリラ。
その他諸々の生物の強さのランクを自動的に一つ下げてしまった地上最強生物。
その名を範馬勇次郎という。
勇次郎はブチ切れていたッッ!
バイデム辺りが知ったらアメリカの四軍全てに臨戦態勢を取らせそうな勢いでブチ切れているッッッ!!!!!
それもその筈。地上最強である勇次郎は、地上最強の自我(エゴ)を所有している。
闘争を望み欲するのが勇次郎という巨凶の本質ではあるが、あくまでも勇次郎が自らの意志で餌のもとに足を運び、屠り、食らう。
それこそが範馬勇次郎の闘争である。
然して今現在。勇次郎がこの地にいる事に、勇次郎の意志は全く介在していない。いきなり拉致されて、「殺し合え」と言われたのだ。勇次郎の現状に勇次郎の意志が全く介在していない。
産まれるときに産婆に取り上げる事を命じ、産まれた直後に母親に授乳を強制した超絶の自我(エゴ)の主が、この様な事態と、それを齎した者を許すわけが無く。
───この俺を舐めた事を必ず後悔させてやるッッッ!!!!!
丸っこい身体と手足をバタつかせていた。
後に大国の軍事力に匹敵或いは凌駕すると言われる雄(オトコ)も、現在は唯の赤児であった。
このロワはLSしか参戦できないんだ。悔しいだろうけど仕方が無いんだ。
【範馬勇次郎@バキ外伝〜範馬勇次郎誕生〜】
[状態]:健康 激おこ
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜を殺す
[備考]
ヤドクガエル仕留めた後あたりからに参戦です
投下を終了します
投下します。
『何って、マスターが望む通りのことをしただけだよ。
強くなれ、っていつも言ってたでしょ?喜んでくれないの?』
相棒だったはずのエルルが…人間を殺していた。
何故そんな事をしたのかを尋ねたら、エルルはこう答えてきた。
『人間の血を浴びると劇的に成長できるって声が聞こえたんだ。
おかげでこうして進化できた。声は正しかったみたいだね、マスター?』
『声』とは一体? 長い間彼と共に冒険を続けてきたリゼットは『それ』についてただひたすら疑問に思っていた。
誰の『声』なのかも全く分からない。ましてや彼女は聞いてもいない。
何も状況を理解出来ないまま、リゼットは変わってしまったエルルに手をかけるべきか悩みながら彼に近づいていった最中───
プツリ、と意識が途切れた。
◆
ふと意識を取り戻すと、リゼットは見知らぬ場所にいた。
エルルの姿はないが、代わりに周辺には多数の子供の姿をした者達が彼女と同じ様に倒れており、彼らが次々と起き上がっていく。
それから間もなく─
『やあ、諸君目は覚めたかな?』
突然現れた緑髪の少年がそんな言葉を発し、幼い少年を見せしめとして殺害する場面を目撃した。
「何なんだ、エルルは何処だ」
困惑し、今は傍にいない相棒の名を口に出すリゼットを余所に殺し合いの説明は続けられ、やがては会場に転送されていった。
◆
(エルル…)
殺し合いに招かれる直前に相棒の悍ましい変貌を目の当たりにした彼女は、力を求めるあまりエルルが人間を虐殺した過去を改変するという願いを叶える為にこの殺し合いで優勝を狙う決意を固めた。
【リゼット@エバーテイル広告】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝し、元の世界でエルルが人間を虐殺した過去を改変してなかったことにしてもらう。
[備考]
※細かい設定については後続の書き手様にお任せします。
※一人称は「俺」です。
投下終了です。
投下します
バトルロワイアル開始から十五分。
「ククリー!!ジュジュー!!ああもうこの際オヤジやトマでもいいから助けてくれー!」
紅いバンダナに金の短髪、画風のせいで異様に幼い顔立ち。
魔法陣グルグルの主人公、勇者ニケは絶賛命の危機に瀕していた。
何故か、理由は単純である。追われているからだ。
「全く、呆れたすばしっこさね。逃げ足だけは英霊並みよ?貴方」
全速力で短い手足をしゃかしゃか動かして逃げるニケの前に、追跡者が空から降り立つ。
褐色の肌に桜色の髪、紅と黒の外套が印象的な少女。
クロエ・フォン・アインツベルンは呆れを顔に浮かべながらその手の双剣を獲物へと向けた。
「ままままま、待てって!早まるな!話せばわかる!」
「分からない。私は優勝して願いを叶える権利が必要だもの」
「落ち着けよ!こんな悪趣味なゲーム始めるボスが願い叶えるとでも思ってるのか!?」
必死に声を張り上げて、説得しようとする。
ニケから見たこの少女はきっと自分よりずっと強い。
戦ったら負けるどころではない、殺されてしまう。
だから、今は口先をフル回転させるほかなかった。
…それでも勇者かと、突っ込んではいけない。
「それでも、よ。悪いけど私の未来のための礎になって頂戴」
「ちょちょ、タンマ!タンマ!待ってくれ、お願い!
ほ、ほら。お前の願いを聞かせてくれよ!場合によっちゃ俺が協力できるかも……」
「アナタが?悪い冗談もいい所だわ」
「そう言うなって!俺はこう見えても結構すごいんだよ!」
「……一応聞いておくけど、貴女の何がどう凄いの?」
よし、釣れた。
ニケは心の中でガッツポーズをとる。
次だ、次にこの説得の全てが掛かっている。
普段は余りひけらかしたりしないけれど、この場合は緊急事態だ。仕方ない。
ずびしっ!とサムズアップして指を自分に向けて宣言する。
「実は俺……勇者なんだ」
「あっそう。遺言はそれでいい?」
あっれー?
全然効果が無かった。そりゃあもう、哀しいほど。
春先に出てくるアレな人を見る目を向けられていた。ちょっと泣きそうになった。
ショックでがくりと情けなく項垂れ、地に這いつくばる。
そんな獲物の姿を見て、弓兵の少女はどうにも気が抜けるとため息を吐いた。
「…はぁ。そうね。私も鬼じゃないし、殺される理由ぐらいは冥途の土産に教えてあげましょうか」
「そ、そうそう!冥途の土産をもっとくr…うおおおっ!!」
「調子に乗らない。言い終わったらきっちり死んでもらうんだから」
ぱぁっと何か勝手な希望を見出そうとしている少年を諫めるように剣を投げる。
慌てて上体を逸らすことで躱した自称勇者の様を醒めた瞳で眺めながら、空を切って帰ってきた剣をその手に収め、胸に手を当てる。
「さっき、貴方は私の願いに協力できるかもって言ったけど、それは無理よ」
「まぁまぁ落ち着いて。取り合えず言ってみ?言ってみなけりゃ分からない───」
「私、もう永くないの」
「………っ!?」
さっきまでおふざけの様に百面相をしていたニケの表情が強張る。
殺し合いに巻き込まれたのに緊張感の欠片も無いお気楽極楽な自称勇者様のくせに。
そんな顔もできるんだ。
そう思いながら、クロエは続けた。
「不治の病…みたいなものだと思ってくれればいいわ。
此処から生きて帰れたとして、もうあと数日も生きられればイイトコでしょうね」
そんな時にこの殺し合いに呼ばれて。
見せられたのが、二人の兄弟が殺され、そして生き返る姿だった。
死の間際に治療した、と言う話なら彼女が知る魔術と言う技術でも可能だ。
だが、首が切断され、誰が見ても即死の状態で復活させたというなら。
それは最早魔法の領域だ。
「どうせただ脱出しただけじゃ未来(さき)が無いなら…
一縷の希望に縋りたいと思うのが人情ってものでしょう?」
そう言って、少女は俯き、ふっと笑った。
諦観の色を帯びた笑いだった。
これで話せる理由は全て。
納得は出来ないだろうけど、死んでもらう以外の選択肢は無い。
せめて苦しまない様に、一撃で息の根を止めてあげなければ。
心のどこかが軋む音を聞きながら、弓兵の少女は獲物を見据える。
「───?」
だが獲物の表情は先ほどまでとは違っていた。
泣いたり謝ったり、騒がしかった顔つきは今や別人の様で。
冷や汗は垂れていたけど、この絶体絶命の窮地において、彼は不敵に笑っていた。
「……一つ聞いていいか?」
「…まぁいいわ、一つだけよ」
「殺し合いに優勝できたとして──それでめでたしめでたしになると思ってるのか?」
「え…?」
流石に、看過できない発言だった。
だって、そうだろう。
優勝者の身の安全は保障される、その前提が崩れてしまったら。
「こんなゲームを仕掛ける奴が、一回上手く行って満足すると思うか?」
「それは……」
「優勝した奴がもう一回連れてこられない、何て──誰が保証してくれるんだよ」
仮に優勝できて、願いを叶えられたとしても。
そこから暫く経って、もう一度殺し合いに拉致されない保証は、あるのか?
もし、そうなったとして、自分はまた優勝できるのか?
自称勇者の指摘にふと、考えが過ってしまった。
「賭けてもいいね。あの乃亜って奴は何が目的なのかは知らねーけどさ。
ゲームが上手いったらもう一度殺し合いを開くよ。
そしてそうなったら前回優勝者なんて美味しいキャラ、見逃すはずがない」
「随分自信満々なのね…根拠はあるのかしら」
勿論あるさ、と。
不敵な笑みを深めて、ずびしっ!とクロエを指さしそして宣言した。
「美味しい物には2がある!後藤ヒロユキもそう言ってた!!」
こいつ、ちょいちょい訳の分からない事言うわね。
そう感じつつも、言いたい事のニュアンスは伝わってきた。
脳裏に浮かぶのは、アインツベルンによって与えられ、
実の母によって封印されてきた一つの儀式の知識。
聖杯戦争。
冬木の地にて、複数回試みた…と伝えられている魔術儀式。
それに照らし合わせて考えれば、目の前の自称勇者のセリフも一理ある…のかもしれない。
「…それで、あなたの言ってる事が本当だとして、
貴方はこの殺し合いや、私の問題を何とかする具体的なプランはあるのかしら?」
「うっ!い、いやー…それはこうご期待というか。何とかできたらご喝采というか…」
さっきまでの不敵な笑みは何処へやら。
今度は冷や汗をだらだら流しながら、しどろもどろになっている。
その様を見ているとどうにも気が抜けた。
説得と合わせて、決めていた筈の覚悟が鈍った。
「……貴女、名前は?」
「え?ニ、ニケだけど」
「そう、ニケ君ね。私はクロエ、よろしく。
貴方のバカな説得に免じて、今回は見逃してあげる」
双剣を消して、臨戦態勢を解く。
どうにも、興が削がれてしまった。
だが、自分の様を見て勘違いしかねない彼に、釘を刺しておくのは忘れない。
「言っておくけど、私は乗らないって言ってる訳じゃないわ。
今回だけ見逃すって話よ。貴女以外の参加者は襲うし、
貴方も次に会った時、このゲームを打破する計画に何も進展がなければ──」
弓兵(サーヴァント)として身体能力を使って、跳躍する。
同時ににっこりと、これまでで最高の笑顔を見せて。
「──殺しちゃうから。頑張ってね。自称勇者さん?」
その言葉だけを残し、制止する暇もなく。
クロエと名乗った少女は、夜空に吸い込まれるように消えていった。
一人残された勇者はただ、天を仰いで…盛大に頭を抱えた。
「えらい約束をしちまった……」
正直、このゲームをどうにかすることも、クロエの体の問題も。
具体的な展望は何一つとして無かった。
え?ていうかクロエの体の問題も俺何とかしなきゃいけないの?という心境だった。
そうして暫く頭を抱えて…やがてはぁ、とため息を吐きながら立ち上がる。
「……ま、担ぎ上げられただけのダメ勇者だけど、偶には勇者らしい事もしてみますか」
一人の少女も救えないで世界を救う事は出来ないだろうし。
諸々が丸く収まったらパンツ見せろ位は要求してもいいかな、と。
喜劇舞台の勇者様はそう考えながら、改めてバトルロワイアルに挑むのだった。
【勇者ニケ@魔法陣グルグル】
[状態]:健康、不安(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。乗っちゃダメだろ常識的に考えて…
1:とりあえず仲間を集める。でもククリとかジュジュとか…いないといいけど。
2:クロの願いに対しては…どーすんべこれ……
※四大精霊王と契約後より参戦です。
「見逃すつもり無かったのに、どうしてかしら」
私の体には未来がない。
この殺し合いからうまく抜け出せたして、生きていられるのはせいぜい数日。
だから、優勝以外に道は無いと思っていた。
でも、ニケ君と出会って。
只のバカのだと見ていた彼が、意外な視点からこのゲームの前提を揺らがせて見せた。
きっとそれで、抑え込もうとしていた、心の贅肉って奴が出てきてしまったんだと思う。
でも、それはこれで店じまいにしなければならない。
「ごめんね、ニケ君。貴女はきっと……間に合わないわ」
ごそごそと、胸元からある物を取り出す。
それは一個の紅い宝石。
支給品の説明では賢者の石、と銘打たれていたエネルギー増幅装置。
魔力が亡くなれば消え得てしまう私にとっての生命線であり……殺すための、武器。
これを使って戦い、これを使って殺していく事になるだろう。
それを止めるには…どうあってもあの勇者様は間に合わない。
だから、一言詫びを入れた。
届くことのない、謝罪を。
「次に会う相手は、彼みたいな奴じゃないと良いけどね……」
そうでなければ、決意がまた鈍ってしまいそうだったから。
……この時、一つ思い至った事がある。
何故、彼の様な人間に、刃を振り下ろす気が鈍ってしまったのか。
あの無邪気で、騒がしい感じが、知っている相手に似ていたからだ。
そう。文字通り、魂を分けた姉妹に───
「助けてよ…イリヤ」
【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ ツヴァイ!】
[状態]:健康、若干自暴自棄気味
[装備]:賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝して、これから先も生きていける身体を願う
1:とりあえず、覚悟を決めたいところね。
2:ニケ君には…ほんの少しだけ期待してるわ。少しだけね。
[備考]
※ツヴァイ第二巻「それは、つまり」終了直後より参戦です。
※魔力が枯渇すれば消滅します。
投下終了です
二本投下します。
一本目はエトラから流用、修正したものです。
一陣の風が吹きすさぶ中、一人の少女がただ立っている。
彼女の名前はリーフ。
カントー地方のリーグを制覇し、殿堂入りを果たしたチャンピオンである。
そんな彼女が今、この殺し合いに覚えている感情は、興奮だった。
断っておくが、自身が人を殺したい訳では無い。
他の誰かが殺されているのをを見たいわけでもない。
彼女はただ、未知の戦場に赴けたことで滾っているのだ。
リーフはこの殺し合いに呼ばれる少し前、殿堂入りを果たした。
それはカントー地方のポケモントレーナーにとって、最高の栄誉。
彼女は弱冠十歳にして、カントー地方の頂点に立った。
しかし、そこで待っていたものは退屈だった。
頂点とは、並ぶ者がいないということ。
それを誇りと思うか退屈と思うか。人によって様々だろうが、彼女にとっては後者だった。
自分に並び立つ誰かを求め、あてもなく彷徨う日々。
たまに挑戦者がやってきても、苦も無く跳ね返せしまう退屈な時間。
そこでこの殺し合いだ。
手持ちポケモンはほとんど奪われたが、現状は代わりに心を揺さぶられる。
「…………」
何も言わずただ、手持ちポケモンであるカメックスが入ったモンスターボールを見つめるリーフ。
しかし、その瞳には確かな高揚がうかがえる。
さあ、行こう。
そう決めたリーフは、支給された自転車に乗って出発した。
【リーフ(女主人公)@ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン】
[状態]:健康、高揚
[装備]:カメックス@ポケットモンスターシリーズ、じてんしゃ@ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:強者と戦う
1:他の参加者を探す
[備考]
※参戦時期は殿堂入り後です。
※カメックスのレベル、覚えている技については当選した場合、次の書き手氏にお任せします。
【カメックス@ポケットモンスターシリーズ】
リーフに支給。
図鑑No.9、水タイプのこうらポケモン。
元々彼女の手持ちポケモンである。
カメックスをしまうモンスターボールも同梱されている。
【じてんしゃ@ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン】
リーフに支給。
通常価格は100万円の超高値なじてんしゃ。
街中のみならず、洞窟や草むらでも問題なく走れるすぐれもの。
「フフフ……」
殺し合いの会場の一角、とある荒野にて緑を基調としつつ黒の斑点が全身を覆う怪物が不敵な笑みを浮かべている。
彼の首には参加者の証である首輪。そして彼の背には、参加者に支給されているランドセルがある。
正直、これほどランドセルが似合わない存在もなかなかないだろうが、彼もまた参加者である以上支給されていた。
そんな彼の名前はセル。とある世界の天才科学者が生み出した人造人間である。
セルは今、歓喜していた。これは殺し合いを好んでの事ではない。
確かに彼は人間の恐怖にひきつる顔を見るのは好きではあるが、今回は別に理由がある。
セルはここに来る直前、死亡している。
彼はサイヤ人と地球人のハーフ、孫悟飯と戦い敗北したのだ。
そして細胞一つ残さず消滅し、死後の世界に行くはずだったが、彼はなぜか殺し合いに呼ばれていた。
その事実を認識した時、彼はこう思った。
ドラゴンボールも使わずに死者を蘇らせる力を手に入れられれば、どれほど己のパワーアップに役立つだろうか、と。
無論、蘇生と自身のパワーアップに何の因果関係もない可能性は大いにある。
しかしないとも言い難い上、直接的でなくとも何かの役に立つかも知れない。
なので、セルは優勝を目指すことにした。
最終目的の都合上、主催に近づくことは必須。
ならば、優勝してしまうのが一番確実だろう。
本来なら瞬間移動で乗り込めるのだが、主催の乃亜も可能性を考慮してかこの殺し合いでは使えないようにしているのだ。
かくして、セルはたいして悩むことなく殺し合いに乗った。
目的は主催の持つ力を手に入れ、己のパワーアップに利用すること。
そしてその果てに、一度己を殺した孫悟飯に次こそ勝つために。
【セル@ドラゴンボールZ】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ドラゴンボールも使わずに死者を蘇らせるを手に入れる。
1:ひとまず優勝を狙う
[備考]
※参戦時期は死亡後です。
※制限により瞬間移動は使用できません。
その他の制限は当選した場合、次の書き手氏にお任せします
投下終了です
新企画の開始おめでとうございます。
投下いたします。
「あの乃亜って子……、許せない!何が何でも絶対止めなくちゃ!!」
殺し合いの舞台の何処か、銀色の瞳に毛先が紅い黒髪のショートヘア、黒い服装に紅いマントといった目立つ服装にこれまた一際目立つ大鎌を携えた童顔の少女が殺し合いの主催者である海馬乃亜への怒りと彼を止めるという決意を胸にして歩いていた。
彼女の名はルビー・ローズ。ハンター養成学校「ビーコン・アカデミー」に幼い年齢ながらも学長であるオズピンにその才能を見込まれて同学校に飛び級入学を認められ、腹違いの姉であるヤン・シャオロンと学校で出会った友人でありチームメイトであるワイス・シュニー、ブレイク・ベラドンナ、そして自身を含めた4人で結成されたハンターチーム「チームRWBY」のリーダーを務めている少女である。
彼女は少し前にチームメイトの一人であるワイス・シュニーがハンターたちの敵である怪物「グリム」の特殊個体である「ナイトメア」に寄生されて昏睡状態に陥り、チームメイトのブレイクとヤン、そして同じハンターチーム「チームJNPR」のリーダーを務める親友のジョーン・アークと共にアカデミーの臨時顧問のシオン・ザイデンの助けを借りて彼女の夢の世界に突入し、幾度かの失敗を得ながらも最終的に彼女の救出に成功し、これから新学期を迎えようとしたときに突如としてこの殺し合いに参加させられたのだ。
「あの子は自分の事を創造主だとか神だとか言ってたけど……、だからといって命を好き勝手に奪っていいわけがない。何としてもあの子の所に行ってこの殺し合いを辞めさせなきゃ!!」
そう、ルビーがハンターになったのは困っている人、戦う力のない無力な人を悪い怪物や悪意を持った人間の手から守るためであり、そんな彼女にとっては自身を神と名乗り、命を簡単に奪う海馬乃亜の事を見過ごせるわけがなく、何としてでも彼の元にいって殺し合いを辞めさせようと今現在行動している最中なのである。
が、
「……とは言ったものの、愛用武器のクレセント・ローズは今手元に無いんだよね……、どうしよう……。」
そう、彼女はこの殺し合いに参加させられた際に愛用武器のクレセント・ローズをいつの間にか没収され、今現在彼女の手元にクレセント・ローズが無い状態なのであった。
「それで何か代わりの武器がないかと思って見つけたのがこの大鎌なんだけど……、なんかこれ、正義の味方というより悪役の武器みたい。」
ルビーは自身が手に持っている大鎌をジッと見つめる。その大鎌は先端に槍状の刃がつき、両側に翼のように広がる刃がついた、まるで十字槍のような形状の大鎌であった。付属の説明書によるとこの大鎌の名前は『カロンの導き』という名前で、この大鎌には魔法が内臓されており、10時間で1回第八位階即死魔法『デス』を使用することが出来る他、
攻撃に負の追加ダメージを加える「死者の炎」
知性のないアンデッドから身を守る「不死者忌避」
死体を媒介にアンデッドを作り出せる「不死者創造」
相手を病気にする「病気」
退散抵抗のないアンデッドを一撃で滅ぼすチャンスを得る「不死に眠りを」
様々な視線効果の中から選択して能力を得る「邪視」
視線攻撃を防ぎつつ恐怖効果などを強化する「死面」
二通りの使い方がある「栄光の手」
これら8つの魔法の中から一つを選択して合計で10時間ごとに5回発動することも出来る上に、「スパルティアト」という名前のアンデッドの兵隊を召喚、使役することも可能で一度に召喚、使役可能な数は2体まで、24時間で合計10体召喚することが可能と書いてあった。
当然ながら元の愛用武器のクレセント・ローズと異なり、銃弾を発射する機能は備わっていないものの、愛用武器と同じ武器種の大鎌であるという事を差し引いても『性能的には』大当たりと言ってもいい武器であった。ただルビーは説明書に書いてあった物騒な内容と大鎌の禍々しい形状から、恐らくこの武器の元々の持ち主はとんでもない悪党かヤバい奴なんだろうなと勝手に想像する。
とはいえ仮にそうだとしてもこれからこの殺し合いに乗って他の参加者を殺しにかかるであろう参加者や主催者である海馬乃亜と戦う決意をしたルビーにとってはこれほど高性能な武器を手に入れたという事は心強い事この上なく、ルビーは決意を新たに歩を進める。
……とはいえ、相手は一瞬で二人の命を奪ったのだ。一人で突撃をかけても殺された二人と同じ運命をたどる可能性が高い。まずは仲間を集めようと周囲を探索しているとやがて大きな湖へと辿り着く。
そしてルビーは湖の畔である一人の少女を発見した。その少女は脚まで届く長い銀髪に天使の輪のように大きく一周ぐるりと巻いたアホ毛のあるジト目の少女であった。
ルビーはその少女の姿を見て目を丸くした。何故ならルビーは以前その少女と一度だけ出会ったことがあったからだ。
ルビーは少し前にキーストーンと呼ばれる謎の存在によって同じチームRWBYのメンバーと共に異世界に飛ばされ、元の世界に帰るためにキーストーンを巡って異世界の戦士と戦いを繰り広げた事があったのだが、その際にルビーはその少女と出会い、一度だけ戦ったことがあったのだ。
ルビーはその少女の名をゆっくりと口にする。
「もしかして……バティスタ!?」
ルビーは思わず『バティスタ』という名の少女の元へ走り出す。彼女は「ルナ」「セナ」と名乗った二重人格の少女と組んで「レイチェル・アルカード」という名の少女を追跡していたため、ルビーは謎の声に促されるままにレイチェルと組んで「ルナ」「セナ」と組んだ彼女……バティスタと戦い、これに勝利したのだ。彼女と会ったのはそれっきりであったため、もう二度と会うことは無いだろうと思っていたのだが、まさか彼女がこの殺し合いに呼ばれて参加させられていたという驚きと、一度だけ会っただけとはいえ顔見知りに会えたという安堵の気持ちからルビーは思わず彼女の名前を叫びながらバティスタの元へ走り出す。
「ねえっ!?あなたバティスタでしょ!?私ルビー!ルビー・ローズ!!以前あなたと戦った!!」
やがて彼女……バティスタは自分の名前が呼ばれていることに気付いたのか、ゆっくりとルビーの方へ振り返る。
「?私の個体名を呼ぶものは、誰?」
だがルビーは振り返ったバティスタの身体を見た瞬間、思わず足を止め、赤面し硬直してしまった。
何故ならバティスタは一糸纏わぬ全裸であったからだ。ルビーはバティスタとは一度会っただけのため、彼女のことはよく知らなかったのであるが、まさかこんな野外で躊躇なく全裸になるような子だとは思わなかったため、思わず赤面し、声が上ずりながらもルビーはバティスタに向かって問いかける。
「なっ……、ぜ、ぜ、全裸!?ちょ、ちょっと貴女何やってんの!?」
赤面しながらバティスタに向かって問いかけるルビーに対し、バティスタは「何故赤面しているのか分からない」といった顔で淡々とルビーに向かって話しかける。
「ん?お前はあの時の……、丁度いい、貴女に問いたいことがあります。」
彼女もまた、自身の事を覚えていてくれた事に対する驚きと安堵の気持ちが芽生えつつも、それよりも彼女が未だ全裸であるという事に対する動揺の気持ちの方が勝ったのか、ルビーは声が上ずりながらもバティスタに向かって再び問いかける。
「そ、そうじゃなくて!!私はこんな野外で素っ裸で何やってんのと聞いているの!!」
「ああ、そんなことか」といった顔でバティスタは納得したような表情を浮かべると、鷹揚の無い声でルビーの問いかけに返答する。
「簡単な事。身体の冷却を考慮し装備を解除して人間の言う「水浴び」をしていただけなのだが……、どうやら異世界の人間も服飾装具に敏感なようだ。面倒のないように再装をしよう。囁求――、詠結――、祈理――、顕現――!」
バティスタは小声でブツブツと何かを呟くと彼女の身体を包み込むように魔法陣のようなものが現れ、魔法陣が彼女の身体を通過すると彼女の服装はルビーが以前彼女と出会った時と全く同じ……脚まで届く長い銀髪を二つに分けてまとめ、ルビー自身の服装と似ているが細部のデザインが違う黒いドレスを身に纏い、耳にヘッドギアを装着した姿へと変化する。
「えっ?こ、この子、魔法みたいな何かで自分の服装を出現させたの?」
ルビーの心の中は「ちゃんと服を着てくれた」という安堵の気持ちよりも「未知の力で自分の服装を出現させた」という事に対する驚きの気持ちの方が勝っていた。
「これで問題は無いと推測する。私は只の無害な人間です。どうか安心していただきたい。」
「いやその言い訳は幾ら何でも無理がありすぎると思うんですけど!!?」
幾ら何でも苦しすぎるバティスタの言い訳に対し、ルビーは思わずツッコミを入れてしまう。そもそもルビーとバティスタは一度手合わせをしてバティスタが自らの世界の戦士、「ハンター」と全く異なる原理の技を使う所をルビーはハッキリ見ているのだ。
自身の言い訳が通じなかったことを悟ったのか、バティスタは残念そうな顔をすると続けて言葉を発する。
「残念。このように偽装えば無用な争いは起こらないと考えたが。この偽装を見抜かれるとは。一体どこに計画の綻びが……。」
「ねえひょっとしてワザとやってない!!?」
あまりにも無理がありすぎる言い訳を「偽装」と発言するバティスタの態度に対し、ルビーはまたしてもツッコミを入れる。流石にこれ以上続けていたら埒が明かないと考えたのか、ルビーは自身の考えをバティスタに伝える。
「それに私は貴女と争うつもりはないよ。お願い、手を貸して。この殺し合いを止めるためには私一人の力だけじゃ足りない。今は一人でも殺し合いを止めるための仲間が欲しいの。」
自身に対し手を差し伸べたルビーに対し、バティスタは心底意外そうな表情を浮かべる。
「……これは驚いた。私と貴女は一度敵対した敵同士、敵に対して手を差し伸べるとは一体どのような心境の変化が……。」
バティスタの疑問に対してルビーは首を振り、回答を返す。
「あの時は謎の声に促されてなし崩しに戦う事になっちゃったけど今はそんなことをしている場合じゃない。それに私には分かるの、貴女は根は悪い子じゃないって。そりゃあ、ちょっとズレた所はあるかもしれないけど貴女はあの『海馬乃亜』に同調するようなことは絶対にしないって。」
「!?」
ルビーの言葉に対し、バティスタは驚愕の表情を浮かべる。何故ならバティスタは彼女――ルビー・ローズを見てハイドと同じものを感じ取ったからだ。
ハイド――城戸灰都は少し前まで一般人だったが故におっちょこちょいだったり甘い部分があったりするものの、なんやかんやで困っている人を見捨てることが出来ないお人好しな部分があり、初めて会った時に全裸で夜の街を彷徨っていた自身に対して自身の尊厳のために服を着るように注意したり、眩き闇……パラドクスを倒し、目的の阻害に成功して次の夜が来るまで待機モードに入ろうとした自身に対し、彼の家に上げてくれて自身を家に寝泊まりさせてくれるなど、出会ったばかりの見ず知らずの自身に対してまで、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる彼――城戸灰都と目の前の少女、ルビー・ローズの姿がダブって見えたのだ。
ルビーの提案に対し、バティスタは思案する。
(ここに飛ばされる前までリンクが確認できた姉妹機2体とのリンクが断たれてる……このような事態に陥ったことに対するアンサーは一つ、元の世界とは完全に断絶された全くの異空間に我々は閉じ込められたという事。このようなことが出来るという事は恐らくあの少年『海馬乃亜』の力は眩き闇……パラドクスやキーストーン以上だと推測できる。であればあの少年に対し私一人で立ち向かうのはあまりに無謀。であればここでとれる最善手はたった一つ)
「?ねえバティスタ、急に考えこんじゃって一体どうしちゃったの?」
不思議そうにバティスタの顔を覗き込むルビーに対し、バティスタは思案をやめるとルビーの方に向き直り、答えを出す。
「分かった。貴女の提案を受け入れよう。」
「!よかった、ちゃんとわかってくれたんだあ……」
「勘違いしないで欲しい。私が元の世界に帰還し、主に与えられた役目を継続するためには貴女と組むのが最善と判断したまで。必要とあらば貴女の生死よりも私自身の生存、任務の遂行を第一優先として行動させてもらう。」
「それでもいいよ、私は貴女が協力してくれる、それだけでも嬉しいんだから。」
そう言うとルビーはバティスタに対してそっと手を差し伸べる。
「?これは?」
「これは私たちがお互い『手を結んだ』という事を証明するための証だよ。私はワイスやブレイクやヤンお姉ちゃんとチームRWBYを結成した時もこうしてお互い手を結んでお互いの友情を確かめ合ったんだから。」
「……了解した。」
そう言うとルビーとバティスタはお互い固く握手を交わして『同盟を結んだ』という事が証明されたこととなった。
その直後であった。
「お話は終わりでありんすか?」
「!?」
「!!」
突如として聞こえてきた言葉遣いの割に若々しい声にルビーとバティスタは握手をやめ、共に声の方向に対して身構える。
ルビーとバティスタの視線の先には一人の少女がいた。
外見年齢はルビーやバティスタと左程変わらない位であろうか。白蠟じみた白さの白磁の肌と長い銀髪の髪に真紅の瞳を併せ持ち、服装は赤と紫を基調としたスカート部分が大きく膨らんだボールガウンに頭部にはヘッドドレス、フリルとリボンの付いたボレロカーディガンを羽織り、レース付きのフィンガーレスグローブを付けた肌の露出が殆どない恰好をしていた。
ルビーとバティスタはその少女に対して最大限の警戒を払う。
何故ならその少女からは人ならざる何か――容姿端麗な美貌とまだ幼さが完全に抜け切れていない顔が少女の中に巣くう『怪物』を覆い隠すための偽りの姿であり、その本性は人を人とも思わぬ人外の化け物であるという事をルビーとバティスタは一目見ただけで感じ取ったからだ。
ルビーは少女に対して最大限の警戒を払いながらも少女に対して問いかける。
「貴女……一体何者なの?」
「おんやあ?人に名前を聞くときは、まず自分から名乗るのが礼儀だと親から教わらなかったでありんすか?」
「……」
ルビーは最初、少女に対して『人じゃないでしょ』と言おうと思ったのであるが、挑発に乗るのは癪だと考え、素直に自身と共にいるバティスタの紹介を兼ねて自己紹介をする。
「私の名前はルビー・ローズ、この子の名前はバティスタよ。貴女の名前は?」
「あはっ♪ご・う・か・く♪私は今まで色んな人間を見てきたでありんすが名乗らずにいきなり斬りかかってくるような下賤な人間どもと違って貴女方は少しは話が分かるようでありんすネェ。」
そして少女はドレスのスカートを摘まむと、舞踏会で踊りを誘われたような礼をみせ、自ら自己紹介をする。
「私はナザリック地下大墳墓第一、第二、第三階の階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。一方的に楽しませてくんなましな」
自身に対し優雅なお辞儀を向けた「シャルティア」と名乗った少女に対し、ルビーは最大限の警戒を払いながら問いかける。
「……いつからそこにいたの?」
「そりゃあ、あなたたち二人がお話を始めた時からでありんす。あんまりにも話が長いんで少々退屈していたのでありんしたが、どうやら交渉が成立したようで何より。これで心置きなく貴女達二人に対して蹂躙の限りを尽くせるでありんす。」
「どうして話している最中に襲いかかって来なかったの?」とルビーは更に問いかけようとしたものの、シャルティアの表情を見てその答えを察する。
例え二人がかりで攻撃されたとしても容易く対処出来る自身があるのだと。お前たち程度恐ろしくも何ともないと。
シャルティアの態度を見て、ルビーはシャルティアに対する警戒心を更に跳ね上げる。「この少女は危険だ。」と。戦いを自らが楽しむための遊びとしか捉えず、人を人とも思っていないようなその態度。この少女を放置すればこの殺し合いの中で少女の手によって殺される犠牲者が確実に出る。ルビーはシャルティアとの短いやり取りの中でそう確信していた。
仕留めるしかない、と。ルビーは人に向かって刃を向けるのには強い抵抗を感じる性格であるが、人を襲い、喰らう破壊の獣――グリムに対しては一切の容赦なく葬る性格でもあった。ましてや目の前の少女は人の皮を被っただけの人外の怪物だ。『怪物』という点においては少女もグリムと何ら変わる所は無い。そして何よりここで少女を仕留めなければこの殺し合いにおいて確実に犠牲者が出る。そのような事態になってから後から後悔してからでは遅いのだ。
ルビーはその手に持った大鎌――『カロンの導き』を構え、臨戦態勢を取る。
「そちらから仕掛けてもいいでありんすよ?すぐ終わってしまうようではつまらないでありんすからねぇ?」
だが少女――「シャルティア」が慢心してくれている事が、ルビーにとっては僅かな希望でもあった。
悔しいがまだまだ未熟なハンター見習いに過ぎない自身よりも目の前の少女「シャルティア」の方が強さにおいては恐らくずっと上だ。
だがルビーに勝算があるとすればシャルティアが自らの強さに驕り、慢心している隙を突くしかない。
ルビーはシャルティアの細首に狙いを定める。シャルティアが人ならざる人外の存在である以上、首を刎ね飛ばしても死ぬとは限らない。だが今までのグリムとの戦いの中で首を刎ね飛ばして死なないグリムはいなかった。であればこの少女も大体の生物と同様、頸部が弱点だと考えても良かった。一撃で仕留めるしかない。もし仮に仕留め損ねて少女が本気を出して襲いかかってくれば、自身とバティスタの二人がかりでも勝算は低いだろう。
或いは逃亡して他の参加者に狙いを定め、犠牲者が発生してしまうかもしれない。
「そろそろ準備もできんしたかぇ?」
未だ動けないまま、思案を繰り返すルビーに対し、シャルティアはつまらなそうに肩をすくめる。
「準備ができたと思って攻めんす。もし何かあるなら今のうちにどうぞおっしゃってくんなまし」
しばしの時が流れ――
「――蹂躙を開始しんす」
シャルティアは楽しげに宣言すると歩を進める。
(!?動いた!?)
仕掛けてくる、そう判断したルビーは自らのセンブランス――「ペダル・バースト」を発動してシャルティアとの間合いを一気に詰め、大鎌――『カロンの導き』による全力の一撃をシャルティアの頸部に向かって叩きつける。
容赦など一つとしてないルビーの全力での――「ベオウルフ」や「アーサ」といった低級のグリム程度なら首や手足、胴体すらも容易く両断するほどの一撃である。
だが次の瞬間――ルビーは思わず瞠目する。
斬撃が空をきった。自らの渾身の一撃が避けられる。
だがただ避ける程度ならならルビーが元いた世界にいたハンター――例えば「ピュラ・ニコス」や「クロウ・ブランウェン」のようなルビーの知り合いの実力者のハンターであれば、その程度出来る者など幾らでもいただろう。
だが――
シャルティアは摘まんだのだ。――たった二本の指でルビーの一撃を。
それも蝶の羽を摘むような優しさを以って――。
空気が凍ったような気がした。ルビーの思考を激しい動揺が支配する。
「え?……う、嘘?そ、そんな……」
ルビーは目の前の光景が信じられなかった。だが未だ大鎌の刃を摘まんでいる、シャルティアの白魚のごとき二本の指――親指と人差し指。
しかも、刃紋を前から摘むのではなく、後ろから鎬地を手首を九十度曲げる形で摘んでいる。軌跡に割り込ませたのではなく、単純な速度で自らの斬撃に追いついたのだ。
力を入れずに軽く摘んでいるようにしか見えないが、ルビーが全力を出して、押し切ろうとしても引き戻そうとしてもびくともしない。
まるで自らの数百倍の巨石に繋がれた鎖を引っ張っているようだった。
突如、大鎌に掛かる力が増し、ルビーは体勢を崩しかけるが何とか持ちこたえる。
「ふーん。大鎌自体は中々の一級品でありんすが、使う者がこうも弱いと宝の持ち腐れでありんすね。」
摘まんだ鎌の刃先を目の前まで持ち上げ、しげしげと眺めるシャルティア。
自身と目の前の少女との力の差に、ルビーの中に絶望感が芽生え始めていた。
それでもなお打ち砕かれないのは、自身よりも強い存在を知っているからだ。
かつてルビーはシグナル・アカデミーにおいては落ちこぼれの生徒であった。それを叔父であるクロウ・ブランウェンの個人的指導によって自らを鍛え直し、今ではオズピン学長によってその実力を認められ、飛び級入学を認められるほどにまでなったのだ。
どうやら、認めざるを得ない。目の前の少女は自身よりも、いや、自身が今まで出会って戦ってきた誰よりも遥かに強いという事を。
そんなルビーの心中を察したのか、シャルティアは醜悪な笑みを浮かべると、絶望を更に叩きつけるかのようにルビーに告げる。
「これで分かったでありんしょう?これは戦いではなく、一方的な蹂躙。お前たちは私に触れることも出来ぬまま、成す術もなく弄ばれるしかないでありんす。」
そんな残酷な言葉が聞こえる。ルビーの口から思わず言葉が漏れた。
「化け物――」
それを聞いたシャルティアは純粋無垢な微笑をみせた。まるで花が満開に咲き誇るように。
「そうでありんす。やっと理解していただけんしたかぇ?わたしは残酷で冷酷で非道で――そいで可憐な化け物でありんす」
勝てない、その考えがルビーの頭の中をよぎった瞬間、ルビーはどうすればいいのか次の行動を思案する。せめてバティスタだけでもこの場から逃がさなければならない、そのためにはせめて自身が時間稼ぎを――そう思ってバティスタの方を見ようとしてシャルティアから注意を逸らした瞬間であった。
――シャルティアはその隙を見逃さなかった。
「それでは――蹂躙を開始しんす」
その言葉と同時であった。シャルティアは大鎌から手を離すと両手でルビーの両肩を掴み、力任せにルビーを地面に押し倒す。
「い、いや……は、離して!!」
ルビーはシャルティアから逃れようと全身全霊の力を込めて暴れるが、圧倒的の力の差の前では無意味でしかなく、逃れることは出来なかった。
「安心しなんし、暴れなければ痛いようにはせえへん。ああ、それにしても可愛らしい人形のようなお顔、このような殺し合いの場でなければナザリックに連れ帰ってペットとして可愛がってもよかったでありんしたのに。」
そう言うとシャルティアは両腕をルビーの両肩から背中に向かって移動させ、ルビーを起き上がらせると両腕でルビーを抱き寄せ、ルビーの身体を自身の身体に密着させるように抱き寄せる。
そしてシャルティアはそのままの勢いでルビーの首元に顔を埋める。ルビーは尚も暴れて振りほどこうとするが、膠で固めたようにシャルティアの体はルビーの体から離れない。
生暖かい息が首筋に掛かり、ゾクリとルビーは体を震わせた。
「……ふーん、汗臭い」
シャルティアの感想にルビーは返す言葉もなかった。元々ルビーはパッチ島で姉のヤン・シャオロンと父親のタイヤン・シャオロンと共に暮らしており、島では姉と野山を駆け回って遊んで、夕方になってから汗まみれ、泥まみれになって帰ってくるような一日を過ごすことも珍しくはなかった。
それにハンターは野外で活動し、グリムと戦ったり屋外で採集をしたりする任に就くことも多かった。それは女性であるハントレスであっても例外ではなく、ルビー自身の性格もあって特に気にすることもなかったのであるが、こうして自分とほぼ同世代に見える少女から指摘されると、流石のルビーも羞恥心を感じてしまった。
「そ・れ・か・ら♪」
そしてシャルティアは自身の顔をルビーの顔に近づけると開いた口から人間では有り得ないような長さと形状の舌が飛び出し、ルビーの顔を舐めまわす。
「うーん、塩味♪」
「や、やだ……き、気持ち悪い……」
人外でしか有り得ないような形状の舌で舐めまわされ、ルビーは改めて実感する。やはり目の前の少女は人間じゃない。人の皮を被った化け物だ。だが自分ではどうすることも出来ない。今自分に出来ることは少しでも目の前の少女を楽しませる事で時間稼ぎをすることしか出来ないのであろうか。そうルビーが諦めかけた時であった。
「じゃあああ、でぇざああああとぉおお!たああべぇええ」
「ルーメンステラ」
「ぶへぇええ!?」
シャルティアが偽りの姿である美しい姿を捨て、本来の姿である真祖としての姿に変貌し、ルビーの喉元に食らいつこうとした瞬間、どこからともなく飛んできた光球がシャルティアの顔面に直撃し、シャルティアの頭部が大きく仰け反る。
「よぉおおおくうぅぅぅもおぉぉぉぉぉ!!じゃあぁぁぁぁまあぁぁぁぁしいぃぃぃぃやあぁぁぁぁがあぁぁぁぁってえぇぇぇぇぇ!!」
楽しみを邪魔された、そのことに対する怒りで完全に我を忘れたシャルティアは真祖としての姿のまま、抱き寄せていたルビーを湖に向かって無造作に投げ飛ばすと自身の顔面に光球を放った犯人――バティスタに向かって突進する。
最早その姿に美貌は無く、虹彩からにじみ出た色によって、眼球は完全に血色に染まり、先ほどまで白く綺麗な歯が並んでいた口は、注射器を思わせる細く白いものが、サメのように無数に何列にも渡って生えていた。ピンクに淫靡に輝く口腔はぬらぬらと輝き、透明の涎が口の端からこぼれだしている。
そんなおぞましいシャルティアの姿を見てもバティスタの表情に恐怖や動揺の色はない。
バティスタの正体はシャルティアと同様、人間ではなく「オートノミックナーヴ」と呼ばれる古代の生体兵器であり、EXSを食い荒らす人外の存在「虚無」の殲滅も自身に刻まれたプログラムの内の一つだ。それにそのような存在との戦闘を想定して主から創造されたため、バティスタの感情から「恐怖」という物は排除されている。
では何故このタイミングになるまで動かなかったのか。それはバティスタがシャルティアの虚を突くためのチャンスを窺っていたからだ。
バティスタは遠距離攻撃を得意とする後衛型であり、先ほどシャルティアの顔面に向かって放った2種類の速度を持つ光球を発射する「ルーメンステラ」、手から速度の速い一条の光線を放つ「ミコルセオ」、そして多大なエネルギーを消費するものの、背中の攻撃ユニットである紅翼「七花」を魔法陣のように前面に展開することで七花から巨大な紅色のビームを放つ最後の切り札「ラクテウスオルビス」、以上三種類の遠距離攻撃手段で自身にとって有利な距離を保ちながら敵を殲滅するのが彼女の基本戦法であった。
だが考え無しに攻撃を放っても避けられる上に手の内がバレる可能性も高い。そこでルビーが注意を引き付けている間にチャンスを窺い、隙を晒した瞬間に一撃を叩きこむ。これが数少ない勝機を掴むための作戦であった。
バティスタはシャルティアに投げ飛ばされたルビーが湖面に落ちるのを確認するが、救出に向かう余裕はないと考え、シャルティアの方に向き直って手をかざし、「ミコルセオ」の一言と同時にシャルティアに向かって一条の光線を放つ。
「あぁはあぁぁぁはははっはは!!」
身の毛もよだつ叫びと共にシャルティアはその場で跳躍して光線を回避し、そのままバティスタの頭上から襲い掛かるがバティスタにとってはシャルティアがこのような行動に出ることも想定の内であった。
バティスタは遠距離攻撃に優れてはいるが、だからといって近接戦闘が出来ないという訳でもない。
バティスタには先ほどの遠距離技と同様、空中から襲いかかって来る敵を迎撃するための対空迎撃技も備えていた。バティスタは背中の紅翼「七花」を一つにまとめ、刃のような形状にすると体を九十度反転させる形でバク転、その勢いで上空から襲い来るシャルティアを迎撃する形で斬り付ける対空技「ルベルアンゲルス」を放つ。
この戦法は対虚無、対偽誕者用に編み出したバティスタの必勝パターンで、遠距離にいる敵を「ルーメンステラ」や「ミコルセオ」で攻め立て、攻撃を回避するために跳躍して上空から攻めてくる敵には「ルベルアンゲルス」で迎撃するこの戦い方でバティスタは幾多の虚無や偽誕者との戦いを制してきた。
「さまそー」という気の抜けた可愛らしい声とは裏腹に紅翼「七花」による鋭い斬撃が上空のシャルティアに襲いかかる。空中にいる状態では咄嗟の姿勢制御や方向転換は難しく、それ故に防ぐのは非常に難しい……はずであった。
だが次の瞬間、バティスタが見たのは信じられない光景であった。
「おおぉぉぉぉしいかぁぁぁったでえちゅねぇぇぇぇぇ!!」
何とシャルティアは紅翼「七花」による斬撃を「素手」で受け止めるとそのままもう片方の手でバティスタの腕を掴み、そのまま落下の勢いでバティスタを地面に叩きつける。
有り得ない、とバティスタは思った。バティスタは今まで数多くの虚無や偽誕者と戦ってきたが、今の一撃を防げたものはこれまで誰一人としていなかった。
そしてバティスタが導き出した結論は皮肉にもルビー・ローズとほぼ同じ結論であった。この「シャルティア」と名乗った少女……の皮を被った化け物はこれまで戦ってきた虚無や偽誕者を遥かに凌ぐ強さだという事を。先ほどの「戦いではなく、一方的な蹂躙」という言葉は、慢心ではなく、確かな自信の表れによる言葉だったという事を。
撤退、という選択肢も頭によぎったが、腕を掴まれている状態ではそれも不可能だという事を悟った瞬間、バティスタの体は地面に叩きつけられ、盛大な土煙があがる。
土煙が晴れた瞬間、そこには頭部と左腕をシャルティアのそれぞれの手で押さえつけられたバティスタと、そのバティスタを押さえつけたまま、バティスタに馬乗りになったシャルティアの姿があった。
あまりに強い力で頭部と左腕を掴まれていることで表情の変化に乏しいバティスタの顔が苦痛に歪むがそんなバティスタを押さえつけているシャルティアは、吐き気を催したくなるような邪悪な笑顔で、人外の長い舌をベロベロと動かしていた。
「さあぁぁぁぁてえぇぇぇぇこおぉぉぉぉのおぉぉぉぉおぉぉぉぉとおぉぉぉぉしいぃぃぃぃまえはあぁぁぁぁどおぉぉぉぉつけ――おや?」
バティスタを握りしめた際の感覚から何かを感じ取ったのか、シャルティアは急に冷静さを取り戻すと真祖の姿から元の美しい少女の姿へと戻り、バティスタに問いかける。
「……この感触、もしや貴女、人間ではなくオートマトンでありんすね?」
その言葉と共にシャルティアの腕の力が若干弱まる。しかし逃げることが出来るほどではない。シャルティアの言葉の意味をバティスタが理解しかねていると、バティスタが言葉を発するより早く、シャルティアが次の言葉を発する。
「私の知り合いに一人、貴女の同族がいるんでありんすよ。戦闘メイド「プレアデス」のメンバーの一人で名前は「シズ・デルタ」、貴女と同じオートマトンの子でありんす」
シャルティアの言葉の意味をバティスタは理解しかねていた。バティスタにはかつて多くの姉妹機が存在していたが「シズ・デルタ」なる個体名の姉妹機は聞いたことがなかった。
それに自らの創造主は人間に危害を加える事をよしとしていなかったはず、それ故に姉妹機がこのような人を平気で殺戮するような怪物と行動を共にしているのは普通なら有り得ないはずであった。
これは一体どういうことかとバティスタが思考していると、シャルティアが問いを投げかける。
「貴女、一体何者なんでありんすか?」
「名は既に聞いたはず。」
「そうじゃなくて、私は貴女がどのような存在なのか聞きたいんでありんすよ。」
「……」
もはや偽証は無意味、そう思い観念したバティスタは自らの正体を正直に明かすことにする。
「……私はオートノミックナーヴ、管理ナンバー10076、個体名、バティスタ。主より顕現を有する者と『虚ろの夜』の管理を任された者。」
「へえ、ナンバーは10076番なんでありんすか。そういえばシズは正式名称は『CZ2128・Δ』でありんしたから、シズの管理ナンバーは2128番という事になるでありんすね。」
「……」
おかしい、とバティスタは感じ始めていた。バティスタは全ての姉妹機の個体名を把握しているわけではないが、2128番の個体名は確か『CZ2128・Δ』ではなかったはずであるし、『シズ・デルタ』とも呼ばれてはいなかったはずだ。
それに人間に危害を加える事をよしとしていなかった主の意向に逆らって、姉妹機が目の前の少女と行動を共にしているとは考えにくい。
それに現存する姉妹機は自身も含めて3機存在していたが、残りの2機の管理ナンバーは2128番ではなかったはずだ。
尚もバティスタが思考していると、シャルティアがある一つの提案をする。
「そうだ、貴女、一つ取引をしやせんか?」
「?取引?何を?」
バティスタが不思議がっているとシャルティアが取引の内容を口にする。
「貴女、私と一緒に来やせんか?」
そう言うシャルティアの顔は耳元まで口が裂けたような醜悪な笑みを浮かべていた。
「我らナザリック地下大墳墓は基本異形種は大歓迎なんでありんす。あんな人間の小娘とは手を切って私に協力してくれるのであれば、あの『海馬乃亜』って小僧に貴女の助命懇願と共に私の世界に貴女を連れていくことを頼み込んでもいいでありんすし、貴女のナザリック入りを認めて下さることを、私からアインズ様に進言してあげてもいいでありんすよ?それに貴女ならシズともきっと仲良く出来ると思うのでありんす。あの子、友達を欲しがっていたでありんしたから。」
アインズ、恐らくそいつが彼女の上司なのであろうとバティスタは察するが、バティスタの中には既にその提案に対する答えは決まっていた。
「さあ、どうするでありんすか?」
シャルティアはニンマリとした笑みを浮かべていたが、次の瞬間、シャルティアの笑みは消え失せることとなる。
「……結構です。」
「……あ゛?」
シャルティアの口から信じられないような重低音の言葉が漏れ、押さえていた両腕の力が増すが、バティスタは尚も変わらず自らの意向を告げる。
「プログラムによる決議では1対99で反対多数。貴女の申し出には賛同できない。我が主の命はEXSを食い荒らす虚無や偽誕者の排除、決して無関係な人間の殺戮などではないし、それは主の本意ではない。それに計算の結果、個体名『CZ2128・Δ』は我が姉妹機とは無関係と判断、故に交渉材料とはなり得ない。」
暫しの沈黙が流れる。そして、
「はぁ……親切で言ってあげたというのにそれは残念でありんすねぇ……」
シャルティアが残念そうな声を出すと、
「ならここでズタズタのバラバラに引き裂いてグチャグチャのメチャクチャに蹂躙しても文句を言えないよねええぇぇぇぇ!!?」
「う、うあああああああああ!!」
シャルティアが再び真祖の姿に戻ると単純な腕力と握力でバティスタの掴んでいる腕を無理矢理引き千切り、頭部を握り潰そうと一気に力を込め、バティスタがあまりの苦痛に絶叫したその時であった。
「バティスタを……離せええぇぇぇぇぇ!!」
「!!?んなあぁ!?」
何と先ほど湖に投げ飛ばされたはずのルビー・ローズが『カロンの導き』を手にシャルティアの背後から強襲を仕掛けてきたのだ。
バティスタに意識を集中し過ぎてルビー・ローズの存在を完全に失念していたシャルティアはあまりの咄嗟の出来事に反応が遅れてしまう。
先ほどは攻撃されるという事が完全に分かり切っている状況であったので攻撃は余裕で防ぐことが出来た。
しかし今回はルビーの存在を完全に失念していた上に体勢的にも背後を取られる形であったため、防ぐのは非常に難しい状況であった。
それでも致命傷は防ごうとシャルティアは何とか片手をかざして攻撃を防ごうとし……
すぱんっ
ルビーのカロンの導きによる斬撃は攻撃を防ごうとしたシャルティアの手首を斬り落とし、切断面から血が噴出する。
「!!?ピ、ピギャアアアアァァァァァ!!?な、何でえぇぇぇぇぇぇぇ!!?」
シャルティアは痛みに絶叫しながらも自身の手首が斬り落とされた理由を必死に考えていた。
シャルティアはナザリック地下大墳墓階層守護者最強の100レベルNPCである。更に彼女のステータスや職業構成は遊びのないガチビルドであり、総合力で言えばナザリック地下大墳墓の支配者であるアインズ・ウール・ゴウンすら凌ぐほどのものであった。
幾ら装備を纏っていない丸腰の状態であるとはいえ、そんなシャルティアの体に傷をつけることが出来る武器はかなり限られている。
という事は考えられる可能性は一つしかない。
(まさか……あの大鎌は……ユグドラシル産の武器!?等級も最低でも伝説級以上である可能性が……)
そう、ルビーに支給された大鎌『カロンの導き』はアインズもプレイしていたDMMO―RPG『ユグドラシル』のプレイヤーであり、アインズと同様、アバターのまま転移してきて転移後の世界でスレイン法国を建国し、6大神の一人となった死の神『スルシャーナ』が愛用していた武器であった。
実際にシャルティアと相対した漆黒聖典第一席次『隊長』は武装していない丸腰のシャルティアであれば、カロンの導きを装備したアンティリーネ・ヘラン・フーシェで倒すことが出来ると考えていた。その隊長の見立ては実際に正しかったのである。
(ま……まずいまずいまずいまずいまずい!?私の武装は全てあのクソガキに没収されている!!ユグドラシル産の武器相手では幾ら私でも丸腰では不利!ここは体勢を立て直すためにも退却を……)
シャルティアも本来であれば本気で戦う時はスポイトランスや真紅の全身鎧といったユグドラシル産の武装を装備して戦うのであるが、この殺し合いに参加させられた際、それらの武装は『海馬乃亜』によって全て没収されている。
幾ら階層守護者最強と言えど丸腰ではユグドラシル産の武器を相手に戦うのは不利と考え、即座に退却を決断する。
そう決断するやシャルティアの行動は早かった。バティスタを掴んでいたもう片方の手を離すと獣のような脚力で駆け出し、近くの森まで一気に疾走する。
「逃がさない!!」
逃げられる、そう判断したルビーはシャルティアを追撃しようとするが、突如として腕を誰かに掴まれ、その動きを止める。
そして振り返ると先ほどまで倒れていたバティスタがルビーの腕を掴んでいた。
「は、離して!!」
ルビーは必死に振りほどこうとするがバティスタは決して腕を放そうとしない。
「ここは落ち着くべき」
「落ち着いてなんかいられないよ!!放置したら確実に犠牲者が出る!!今ここで確実に仕留めないと!!」
声を荒げるルビーに対し、バティスタは首を横に振り、引き止めた理由を告げる。
「先ほどの彼女は恐らく全力じゃない。手傷を負わせることに成功したのは油断と慢心によって生じた隙を上手く突くことに成功したから。無理に深追いすればこちらが返り討ちにあう可能性が高い。まずは戦力を充実させるため、仲間を集める事を優先すべき。」
「う……」
バティスタの冷静な分析を聞いてルビーは急激に落ち着きを取り戻す。
そうだ、最初の一撃はシャルティアに容易く止められていたではないか。
手首を斬り落とすことに成功したのだって先ほどバティスタが言った通り油断と慢心によって生じた隙を上手く突けたからに他ならないだろう。
もし仮に彼女が油断と慢心を捨て全力で潰しにかかったら二人がかりでも負ける可能性が高い。
それにルビー自身、仲間の大切さを何よりも理解していた。
ついこの間、ナイトメアに寄生されて昏睡状態に陥ったワイス・シュニーを救うためにワイスの夢の世界に突入した際、そこで待ち受けていた夢の世界のワイス――通称、ネガワイスには一人では全く敵わなかった。彼女を救うことが出来たのは同じチームメイトのブレイク・ベラドンナとヤン・シャオロン、そしてジョーン・アークとシオン・ザイデンといった仲間の助けがあったからで一人では彼女を救うことが出来なかった可能性が高い。
何より元の世界では仲間の皆が自身の帰りを待っているのだ。ここで命を捨てるような真似をするよりも共に戦う仲間を集い……最終的には主催者である『海馬乃亜』を打倒し、元の世界に帰る。
それこそが最終目標であり目先の脅威を倒すために自らの命を散らすことでは断じてない。
ルビーはその事に気付くとバティスタに対し一言呟く。
「……ごめん」
「分かればいい。……ところで。」
「?」
まだ何か言いたそうなバティスタに対し、ルビーは不思議そうに顔を覗き込むと、
「貴女も身体の冷却のために『水浴び』というものをしてきたの?」
「あ」
そうだ。先ほどシャルティアに投げ飛ばされた際、ルビーは湖に落下し全身を水に浸かってしまっていたのだ。むしろ水の上に投げ飛ばされたからこそ水が衝撃を吸収し、落下によるダメージが軽減されたのだが代償として全身が水でずぶ濡れになってしまっていたのだ。
バティスタに指摘されルビーがその事に気付いた瞬間、急激に身体が寒くなっていくのを感じていた。
「……へくしょん!!」
◆◆◆
「うう……寒いよぉ……恥ずかしいよぉ……」
「これで貴女も私とお仲間。」
「うるさい!!」
最初の戦闘場所から左程離れていない湖畔でルビー・ローズとバティスタは焚き火を囲む形で休憩も兼ねて暖をとっていた。
因みにルビーの服とマントと下着などは全て水に浸かってずぶ濡れになってしまっていたので、それらは全て現在干して乾かしている最中であり、現在ルビーは全裸の状態で焚き火にあたって暖をとっている最中であった。
「……それはそうとバティスタ、シャルティアと戦ってどう思った?」
「……残念だが彼女の強さは私たち二人よりも遥かに上、単純なパワーやスピードでは眩き闇……パラドクスすらも凌駕している。」
「パラドクス……ヒルダの事だね?」
ルビーは異世界に飛ばされた際、かつて戦った『忘却の螺旋』の『眩き闇』、ヒルダの事を思い出していた。忘却の螺旋は偽誕者達で構成された武闘派集団でヒルダはそのリーダーを務めており、バティスタはEXSを食い荒らす元凶と思われた彼女を倒すために永き眠りから覚め、行動をしていた。最終的には彼女を倒す事には成功し、殺害はしなかったものの行動に支障が出るほどのダメージを与える事には成功していた。
ルビーも異世界に飛ばされた際、レイチェル・アルカードの依頼でナオト、雪泉、はぁとが目的地に行くのを阻害するために現れた彼女を倒すためにセリカ=A=マーキュリーと組んでゴルドーと組んだ彼女と戦い、これに勝利しているためルビーは彼女の事を知っていた。
確かに彼女は偽誕者としてはトップクラスの力を持ってはいたがその力に慢心している所があったため、ルビーもバティスタもその隙を突いて勝利することが出来たが、彼女――シャルティア・ブラッドフォールンはヒルダすらも凌駕する圧倒的な強さを誇っていたため、現状では例え二人で組んでも彼女に勝つのは非常に厳しいと言わざるを得なかった。
「……彼女のハードウェアのスペックは私たち二人よりも遥かに上……、残念だが真っ向勝負では私たち二人の勝算は低いだろう。」
「……」
「だが……ソフトウェアのスペックにおいては彼女よりも私たち二人の方が分がある。」
「え?それってどういうこと?」
「簡単な事。古来より人間は戦略・戦術の多様性と合理性を発達させ、ハードウェアのスペック差を埋める術を発達させてきた。私にはかつて多数の姉妹機がいたがハードウェアのスペックに慢心し、その結果偽誕者との戦いに敗れ、破壊された者も多い。」
「え!?貴女に姉妹機が存在するの!?」
「?言ってなかった?」
「初耳だよそれ!!」
ルビーはバティスタと話して彼女の事について知らなかったことを知るたびに彼女の事を分かっているようで分かっていなかったことを思い知る。
ひょっとしたらラグナも……ハイドも……鳴上も……自分が知らないだけで様々な出会いや別れ、戦いなどを歩んできたのでは……ルビーはそう感じずにはいられなかった。
「その話は置いといて……つまりはこういうこと。彼女は強いが他の仲間と組んで戦うとは思えない。私たちは他の賛同者たちを集めて数的優位を確保し、それに合わせた戦略・戦術を組んで戦うことで彼女に対抗する。これが私たちが彼女に勝つ唯一の方法。」
「だったら今すぐ仲間を集めよう!こうしている間にも彼女が他の参加者に狙いを定めているかもしれない!すぐに出発しないと!」
そう言って立ち上がろうとしたルビーをバティスタが制止する。
「待って、今はまだ服を乾かしている最中。素っ裸で行動するのは得策とは言えない。今はまだ休息すべき」
「……あ」
バティスタの指摘を聞いてルビーは自分の服がまだ乾かしている最中だという事に気付くと急激に恥ずかしさがこみ上げていき、顔を赤らめながら座り直す。
「でも私が貴女を暖めてあげることは出来る」
そう言うとバティスタは服装を解除して先ほどと同じ全裸になり、ルビーの背後に回ると身体を密着させるように背中に抱き着く。
「ちょ、ちょっと何してんの!!?」
「ハイドがベットの下に隠していた本に描いてあった。人はこうして素肌で直に触れ合うことでお互いを暖めあうことが出来るのだって。それに顕現の力を応用すれば身体温度を人間の体温に近づけることも可能。」
「いやそれ絶対エロ本でしょ!?」
ルビーはバティスタの話を聞いて親友であるチームJNPRのリーダー、ジョーン・アークの事を思い出していた。彼もまた思春期男子らしく、チームJNPRに割り当てられた寮の部屋のベットの下にエロ本を隠してそれを同じチームメイトであるピュラ・ニコスに発見されるという一悶着があったという事を聞いたことがあったのだが、やはりジョーンにしろハイドにしろ思春期男子は皆同じことを考えるもんなんだなあとしみじみと感じていた。
でもこうして抱き合ってもらうのも悪い気はしないとも考えていた。
何故ならバティスタからは先ほどのシャルティアのようなあからさまなイヤラシサは感じられず、ただ純粋に暖めるために抱き着いているのだという事を感じられたからだ。
これは始まりの一歩に過ぎない。これから自身とバティスタの身に数々の困難が襲い来るであろう。でも今はまだその身を休め、これからの戦いに備えるべきだ。
ルビーはバティスタに、自らの気持ちを表す言葉をただ一言だけ、簡潔に伝える。
「……ありがと。」
ルビーとバティスタの戦いはまだ始まったばかりであった。
【ルビー・ローズ@RWBY】
[状態]:健康、全裸、疲労(小)
[装備]:カロンの導き@オーバーロード
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:服、早く乾かないかなぁ……
2:シャルティアを警戒する。
3:自身に賛同する仲間を集め、いずれは乃亜を打倒し、仲間と共に殺し合いを止める。
[備考]
「RWBY 氷雪帝国」最終回から少し後位の時系列からの参戦です。
「ブレイブルー クロスタッグバトル」を経験しています。そのためバティスタとは面識があります。
【支給品紹介】
【カロンの導き@オーバーロード】
ルビー・ローズに支給。DMMO―RPG「ユグドラシル」から異世界に転移し、転移後の世界でスレイン法国を建国した六大神の一人『死の神 スルシャーナ』が愛用していた武器で見た目は先端に槍状の刃がつき、両側に翼のように広がる大鎌の刃がついた、十字槍のような禍々しい形状の大鎌。大鎌として相手を切り裂くことが出来る他、槍のように相手を刺突して攻撃することも出来る。
また様々な魔法を内蔵しており、魔法を使えないものでも内蔵された魔法を使用することが出来る他、「スパルティアト」と呼ばれるアンデッドの兵隊を召喚、使役することも可能だが、殺し合いが破綻しないためのバランス調整のために弱体化しており、内臓魔法の使用回数減少及びリキャストタイムの増加、及びスパルティアトを一度に召喚、使役できる個体数の減少及び最大召喚可能な個体数の減少という弱体化措置が取られている。
【バティスタ@UNDER NIGHT IN-BIRTH】
[状態]:健康、全裸、疲労(小)、ダメージ(小)、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:ルビー、暖かい。
2:シャルティアを警戒する。
3:自身とルビーに賛同する仲間を集めるのが先決。
[備考]
アーケードモードED後からの参戦です。
「ブレイブルー クロスタッグバトル」を経験しています。そのためルビー・ローズとは面識があります。
「はぁ……、はぁ……」
静寂に包まれた夜の森の中を一人の少女が息を切らしながら走っていた。
シャルティア・ブラッドフォールンである。
「チクショウ!」
そう吐き捨てながらもシャルティアは思考を巡らせていた。
幾ら油断や慢心があったとはいえ、まさか人間からあのような手傷を負わされることになるとは流石に予想外であった。恐らくあの大鎌はユグドラシル産の武器、それも最低でも伝説級以上の等級の武器であるという事は確実であろう。
(まさかあの娘……アインズ様やペロロンチーノ様と同じ……プレイヤー?いや、それにしては弱かった。という事は……私以外にもプレイヤーやNPCが参加していてそいつの武器があの娘の手に渡った?)
そうとしか考えられない、とシャルティアは考えていた。シャルティアも本気を出して戦う時は神器級の武器であるスポイトランスや伝説級の等級の真紅の全身鎧を装備して戦うのであるが、それらの装備は主催者である海馬乃亜によって全て没収されていた。
シャルティアの脳裏に最悪の可能性がよぎる。ユグドラシルにおいては神器級や伝説級の等級の装備品は非常に制作難易度が高く、そのあまりの制作難易度の高さのせいで一つも持っていないプレイヤーも当たり前のように存在していた。
そんな装備品を制作、所持できる存在は自身と同等の存在である100レベルプレイヤーや100レベルNPCしか考えられず、幾らガチビルド特化のシャルティアといえどそのような存在がこの殺し合いに参加していて戦う羽目になれば良くて重傷、悪ければ敗北、死亡の可能性が高いという事をシャルティアはかつてのアインズとの戦いで痛いほど痛感していた。
それにもう一つの可能性として没収されたスポイトランスや真紅の全身鎧が他の参加者の手に渡る可能性も十分考えられた。
(そ……それだけは嫌!あれらの装備品は創造主であるペロロンチーノ様が私に授けて下さった大切な装備品!ナザリック外部の存在の手に渡るなんてことになったら私は愛しいペロロンチーノ様に顔向けできない!)
そう、シャルティアの正体はユグドラシルに存在していたギルド「アインズ・ウール・ゴウン」に所属していたプレイヤーの一人「ペロロンチーノ」が創造した100レベルNPCで、エロゲ好きのペロロンチーノが自分の趣味趣向と強さを追及して愛を込めて作り上げたキャラであり、「俺の嫁」と呼ぶほどキャラに愛情を注いでいたため本来なら100レベルプレイヤーであっても制作、所持が難しい神器級武器のスポイトランスや伝説級の鎧の真紅の全身鎧をわざわざ制作して渡してくれるほどのものであった。
そうでなくてもペロロンチーノを始めとした至高の御方が残してくれた武具がナザリック外部の存在の手に渡ってしまうことを許してしまうことはナザリックの階層守護者として恥ずべきことであり、何としても奪還を最優先とすべきと考えていた。
(まずはスポイトランスと鎧を見つけ出して奪還する!だがその前に……)
シャルティアは一旦停止すると未だ血が流れ続ける自らの切断された手首に向かって魔法を発動する。
「グレーターリーサル」
そう、シャルティアは吸血鬼であると同時に信仰系魔法詠唱者であり、アンデッドであるために通常の回復魔法は使えないが、負のエネルギーを流し込むこの「グレーターリーサル」こそがアンデッドであるシャルティアにとって実質的な回復魔法であった。
……だが魔法によって出血は止まったが失った手は修復されずにそのままであった。
「糞が!」
考えられる可能性は一つしかない。恐らく装備品を没収したのと同様、魔法に関しても特定の参加者による一方的な無双を防ぐために何らかの弱体化措置が取られている可能性が高かった。シャルティアは肉体戦闘能力にも長けてはいたが本来は魔法詠唱者であり、アインズほどではないにしろ多彩な魔法を使えることもまたシャルティアの強みであった。
その魔法が弱体化、制限されているという事はシャルティアにとっては武装同様、アドバンテージを失ったに等しい事であり、絶対的強者として生まれたシャルティアの自尊心を酷く傷づけるものであった。
「あのガキ……私にこのような仕打ちをしたことを絶対後悔させてやる……」
シャルティアの脳裏には海馬乃亜に対する激しい怒りが沸き上がるが今はどうすることも出来ない。
取り敢えずシャルティアの今後の方針は決まった。
一つ目はスポイトランスと真紅の全身鎧を見つけ出して奪還する。
二つ目は自身と同じ100レベルプレイヤーや100レベルNPCの存在を警戒する。
そして三つ目は、
「あのガキ……名前は確か「ルビー・ローズ」といったか……この手首の落とし前、必ずつけさせてやる……」
そう、シャルティアは自身の手を奪ったルビー・ローズに復讐する気でいた。あの時は油断したが次はこうはいかない。
力の差を見せつけ圧倒して蹂躙して例え泣き叫んでもそれを聞き入れず生まれてきたことを後悔させてから殺すつもりでいた。
こうして今、この殺し合いに一体の怪物が放たれたのであった。
【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(大)、興奮(大)、左手欠損
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:自分以外の参加者(ナザリック勢以外)を皆殺しにして優勝する
1:スポイトランスと真紅の全身鎧を見つけ出して奪還する
2:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する
3:ルビー・ローズに復讐する
[備考]
アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国後からの参戦です。
また異世界かるてっとを経験しているため、このすばキャラやリゼロキャラ、幼女戦記キャラの事をある程度知っています。
信仰系魔法等に制限が掛けられ、魔法の威力や効果等が弱体化しています。
その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
投下終了です。タイトルは書いていませんでしたが、
タイトルは『吸血鬼と自動人形と大鎌少女』で作者名は『◆A1Sj87dFpOM』です。
新ロワ開始おめでとうございます。余裕があれば今後も候補作を順次投下していきたいと思います。
WBC優勝記念に、短いですが投下させていただきます
「ふざけるな!」
海に近い浜辺に一人、怒りを露わにして大声を発している。
少年の名は、小波疾走(こなみダッシュ)。将来はプロ野球選手を目指す小学6年生である。
「俺はこれから全国大会で優勝して、親父を蘇らせなきゃいけないんだ!
こんな事に時間を使うんだったら、野球の練習をしたいんだよ!」
言っている意味を理解しがたいかもしれないが、彼はいたって真面目だ。
この殺し合いに巻き込まれるはるか前に、プロ野球の試合の観戦中に打ったホームランボールが父親の頭に当たり死亡。
しかし、自分の強い願いにより野球仙人が登場して、死亡する筈だった父親の魂がホームランボールに入れ、ボール親父として延命させて貰ったのだ。
一方で野球仙人は、5年以内に少年野球の全国大会で優勝出来なければ、父親の黄泉返りは果たされず、父親は死んでしまう。という訳の分からない条件を提示してきた。
その条件を満たすため、彼は一心不乱に野球に打ち込み、そしてついに全国大会を賭けた戦いに勝利し、これから全国大会に挑む為の準備期間の時期に、このゲームに巻き込まれた。
「俺は誰も殺さない、殺させない! 一人を生き返らせるために、関係の無い皆の命が必要なんて間違っているんだ!」
たしかに、このゲームで生き残りを果たせば、父親を野球仙人の力を借りなくても生き返らせることは可能かもしれない。
しかし、彼はそれを良しとはしなかった。
母親はホームランボール事件より前に失い、父親は野球ボールとして懸命に生きている姿を見ている彼は、命の重さと大切さを理解している。
故に、彼は子供二人が死んだ様な状況を目にしても、正気を失わずにこの状況を間違っていると断言できるのだ。
「海馬乃亜、だったか!殺し合いのゲームなんて、バカな事は止めてほしい!だから―――」
ただ、少年をあえて正気ではないという点を挙げるとするのなら、それは彼が心の思いや願いで野球仙人を呼び出してしまうほどの"野球バカ"であった。ということであろうか。
「―――俺と野球で勝負しろ!俺が勝ったらこの殺し合いを止めて帰らせろ!」
体力が 20下がった
やる気が 8上がった
学力が 10下がった
筋力が 5上がった ▽
【小波疾走(こなみダッシュ)(主人公)@パワポケダッシュ】
[状態]:健康
[装備]:ガンバーズのユニフォーム、バッド@パワポケダッシュ、グローブ@パワポケダッシュ、ボール@パワポケダッシュ
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本方針:生還して、全国大会で優勝しボールになった父親を蘇らせる
1:仲間を8人以上集めて、海馬乃亜に野球を挑む
2:人殺しはしない
*参戦時期は、3年目8月第1週後および全国大会に参加が決定した後
*パワポケシリーズは、遊戯王シリーズみたいに野球で全てが決まるわけではありません
投下終了です
タイトルは、「ジャンル:野球バラエティは伊達じゃない」でお願いします
みなさん、沢山の投下ありがとうございます!
>子供達を導かなければ
このロワでは貴重な頼れる大人キャラの登場ですね。
ルフィ達の事も考えながら、他の子達や
控えめに言って、クソガキを超えたクソガキの乃亜に対し懲らしめるに留めているのが優しい人柄が垣間見えていいですね。
>フィン・ディムナ@ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
一目で乃亜を神ではないと見抜くフィンは流石です。
バトル面もコロッケが頼りになるので、知能武力共に隙がないコンビになりそう。
>優しさは心を強くする
高い母性と魔法少女両方の性質を持つはやては、風間君にとって理想のコンビ相手と言えますね。
春日部防衛隊として風間くんの強い正義漢と責任感と、はやての優しさが現れた作品でした。
>ネバーランドは未だ遠く
背伸びしてるロリとあざとくませたロリ
こういうのでいいんだよこういうので、という可愛らしいコンビでした。
主人公の惚気話するヒロインすこ。
>ツインテール同盟
ボラーって男だったんですね……。
スズも小柄という理由だけで殺し合いに放り込まれるのは、災難以外の何物でもありませんが、初手がポラーだったのは不幸中の幸い。
同じツインテール同士、頑張っていってほしいですね。
>ある名も無きあいの唄
これは貴重な強力対主催悟空さ。アポロンVSかめはめ波、男の子の味ですよ。
そして、キャプテンネモ、マーダー退治と、ロワからの脱出はこの二人に掛かっているといっても過言ではないかもしれない。
とはいえ、カオスが悟空の容姿で暴れまくることで、対主催同士の連携が取れなくなるかもしれないのが痛いところですが。
>ロリショタだよ!若おかみ
若おかみに悲しき過去……なんて軽い気持ちで読んでたら、両親が死んだ事故を引き起こした相手が泊まりに来たとか言い出して、一番戸惑ってるのは俺なんだよね。
この凄まじき鋼メンタルは、小学生のものではないですわ。
おかみだけあって、乃亜に対する人となりも的確に言い当てるのも納得ですね。
>愚弄
勇次郎をタフ語録で語るのはルールで禁止スよね。
恐らく、勇次郎が赤ちゃん時代から参戦させられたのは、圧倒的強者として当然のハンデと考えられる。
>あの時、俺はあり得ない光景を目の当たりにした
初っ端から不穏な雰囲気のまま進み、殺し合いに乗ってしまったリゼット。
元の世界で相棒が闇落ちしているせいで、ストッパーが効かないのが他参加者からすれば怖い所ですね。
>勇者の挑戦
殺し合いに乗るクロエに鋭く切り込むニケ、これは勇者ですわ。
ただ、殺し合いの打破まで考えが至らないのは、最序盤とは説得力には欠けてしまったのが痛いですね。
クロエも別時間軸なら、頼もしい対主催になってくれそうなだけに、手遅れになる前に仲間にしたいところですが、果たして……。
>名前も顔も知らないあいつらが待っているはず
ポケモンにヒソカみたいなのが居るとは知ってましたが、こんな最強が故に退屈してる勇次郎みたいな娘も居たんですね。
殺し合いなのに颯爽とチャリに乗り、闘争を求めるのはマーダーの風格ですよ。
>お前がショタ扱いなのはどう考えても判定がおかしい!
でも、セルもすぐ調子乗ったり追い込まれると手段選ばなかったり、子供かもしれませんね。
>吸血鬼と自動人形と大鎌少女
濃厚な戦闘描写に加え、各々のキャラの個性を存分に活かす掛け合い、好きですね。
全裸の幼女って言うのもLSロワやってるんだなって感じになります。
レベル100に相当しそう強キャラも多いので、慢心を捨てたシャルティアの動向も気になるところです。
>ジャンル:野球バラエティは伊達じゃない
多分、野球よりデュエル挑んだ方が早いと思うんですけど(名推理)
でも案外乃亜上手く煽ればは乗ってくれそうなので、案外有力手段かもしれませんね。
投下します
Nouvellez Auberge(ヌーベルズ・オーベルジュ)『ア・ターブル』。
お洒落なフランス料理のお店。
――に見せ掛けて、実はそうじゃない。
いやまあたしかにフランス料理をふんだんに提供してくれるのだが、ここの料理長のとっておきはまた別のジャンルだ。
さて、ではまずヌーベルズの意味から説明しよう。
ヌーベルズ(Nouvellez)」は料理のスタイルの一種である「ヌーベルキュイジーヌ(nouvelle cuisine)」から取られたものだろう。1970年代に流行し、それ以前の伝統的なスタイルに対して軽く繊細で印象的な盛りつけ方を行う、独創的な食材と料理の組み合わせを目指したスタイルである。
(遊戯王カードwikiより抜粋)
――とこのように、独創的なスタイルだ。
ちなみに余談だが遊戯王wikiくんは何かやたら元ネタに詳しく書いてあるので読むと意外と面白かったりする。
それはともかく、この店はこのヌーベルズという料理のスタイルをとっている。
ということは当然、独創的な店だ。
フランス料理の味は間違いなく上の上。パッと見、何の変哲もないフレンチの店――。
そこから最後のメニューとして、料理長の自慢の一品としてお出しされるのが――ハンバーガーだ。
それもただのハンバーガーじゃない。
何か牙が生えた禍々しいバーガー――その名もハングリーバーガーである。
どう見ても悪魔みたいな見た目の癖して戦士を名乗るよくわからないやつだが、頭には日本の旗が刺されてて妙な愛嬌もある。実際ガイジみたいでかわいい。あと自我も芽生えてる。モンスターカードだし、まあ多少はね?
そして今この瞬間、出来立てホヤホヤのハングリーバーガーがロワに降臨した。ハングリーバーガーのレシピなのに降臨って意味不明だが、初期の遊戯王では割とよくあることな気もするので気にしたら負けである。KONAMIはなんでこいつを儀式として出したんだ?マジで
さて。
そんなハングリーバーガーだが、彼は迷うことなく対主催として乃亜を倒す――というか食べる道を選んだ。
こう見えて戦士なのだ、当然正義感も強い。くいぐるみやモンスターエッグもそう言ってる。
それに遊戯王キャラにこんなことされると、ハングリーバーガーとしても傍迷惑なのだ。
最近ようやくヌーベルズというテーマで活躍出来るようになったのに、身勝手な理由で殺し合い開いて遊戯王OCGに悪いイメージついたらたまったものじゃない。
ハングリーバーガーはヌーベルズの登場に狂喜乱舞してたのだ。水を差してくれるなよ、ヘンテコキャベツが。
まあヌーベルズってカードショップでもあんまり在庫ないし、あまりパックの売れ行きがよろしくないのかもしれないけど。それでも何枚も関連カード貰ってもロクにデッキすら組めないデーモンの召喚よりはマシじゃね?ってハングリーバーガーは思ってる。意外とポジティブな戦士である。
それに新規次第で跳ねる可能性もあるからね。デッキビルドパック組は毎回新規貰えるから希望を捨て去れないハングリーバーガーであった。追加数が割と多いのに弱いってネタにされてるウィッチクラフトは知らん。ロリババア最高だろ、みんな組め
「よし、じゃあひと狩りいくぜ」
ハングリーバーガー、ここに来て初めて一言喋る。しかも他社のゲームのパクリとかなんやねんこのバーガー。
これのどこが戦士なんだよマジで、あと儀式だからって作りたてホヤホヤ設定でお出しされるのはきっとこれが最初で最後になるであろう。知らんけど
【ハングリーバーガー@遊戯王OCG】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:戦士族らしく活躍してヌーベルズ布教しつつ乃亜を食らう
1:頼むからもっとヌーベルズのデッキビルドパック買ってよ
[備考]
「ハンバーガーのレシピ」により降臨。
投下終了です
ハングリーバーガーかわいいよハングリーバーガー
何か唐突に思い浮かんだから投下します
ふたばちゃんは、生まれたばかりの掲示板です。
応援して下さいね☆
お友達にもここを教えてあげて下さいね。
【ふたば☆ちゃんねる@インターネット掲示板】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ふたばちゃんは、生まれたばかりの掲示板です。
1:応援して下さいね☆
[備考]
お友達にもここを教えてあげて下さいね。
投下終了です
でもロワやふたばなんか友達に教えちゃダメだと思う
投下します
カサカサカサカサ――。
殺し合いが始まると同時にランドセルすら放置して、黒光りするソレらは蠢いた。
彼は一人の参加者としてカウントされているが――其は誰もが知り、嫌悪する醜悪な群れ(レギオン)。
ゆえにその数、理論上は無量大数といっても差し支えがない。
参加者として敗退せぬ限り増殖し、一匹残らず殺し切ることでようやくリタイアと扱われる。
その黒光りする生物は、夥しい数で分身を創造し――我が覇道でこの殺し合いを塗り潰さんとする。
どうしてこんなものが此度は招かれたのか――。
それは彼ら自身にもわからない。されども優勝することで元の世界へ帰れるという唯一無二の法則は理解した。
ならば話は簡単。圧倒的な数というアドバンテージを利用して、理不尽に強いられたこの蠱毒を勝ち残るまで。
そもそも彼らは蟲だ。
生存本能を。種の存続を最優先して動く。
それに蠱毒とは本来、このような畜生を争わせるものであろう。
混沌なる漆黒は、カサカサと蠢いた。
言葉は介さない。人間とコミュニケーション?そんなもの不要だ。
乃亜ならばそういう『改造』を施すことを出来たかもしれないが、たかだか蟲にそんな機能を搭載する可能性を見出すだろうか?
彼らの特徴として最も特筆すべきは、その強烈な嫌悪感だ。
黒いボディをした矮小な生命体を気持ち悪いという感情を覚え、排除しようとする人間は非常に多い。
殺し合いを進行するためのギミックとして。敵役として相応しい存在だ。
単独ではか弱い生き物でも、極大まで膨れ上がった闇の如き数は彼らに破壊力を齎す。
そんな彼らの名は――増殖するG。
元々は一枚のカードだったが、乃亜により実態化した存在。
彼らは凄まじい速度で分身を創造し、群れを形成。並の参加者では手に負えない程の害悪と化した。
彼らは此度の怒りの日――己が覇道を流出し、混沌を齎すことでこの選別の儀を乗り越えることを最優先に動くだろう。
ゴキブリに協力も糞もない。彼らが群れるのは、己が分身体のみ。他の存在は皆すべからく排除し、自分達こそが生き残る。
願い?
ゴキブリにそんなものない――というわけじゃない。
彼らには願いがある。どうしても叶えたい渇望がある。
それは生存すること。
生きたいという、あまりにも当然で。されども人間の手により簡単に殺戮される彼らだからこそ強く渇望する、生への執着心。
さあ――生存競争を始めよう。
ゴキブリが弱者だという世界の理すらも塗り替えて、勝つのは我々だ。
そう言わんとばかりに――闇の軍勢は行動を開始した
【増殖するG@遊戯王OCG】
[状態]:健康、増殖中
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:この生存競争に勝ち残る
1:他の参加者を数の暴力で排除する
[備考]
効果を無効化されない限り、ひたすら増殖を続けます。全員を一気に殺し切ることでリタイア扱いとなります。
スタート地点に支給品などがそのまま落ちています
投下終了です
キャラ被りですが投下します
「何が…起こっている?わたしは何故……生きているのだ?」
一人の異形が呆然と立ち尽くしていた。
子供ばかりが集められているはずのこのゲームにおいてその異形は殊更異質な存在だった。
何しろ背丈は平均的な成人男性の身長を優に越えており、発する声も渋みのある男性の声だったからだ。
異形の名はセル。
かつて地球を震撼させ、セルゲームという名の武闘会を開き、最後には若き戦士・孫悟飯によって倒された人造人間だ。
セルには自分が間違いなく死んだという確信があった。
孫悟空と界王とかいう奴を巻き込んで自爆した時とは違う、頭の中の核ごと消し飛ばされた感覚を確かに味わっていた。
それなのに、18号抜きで完全体を超える力を手にした姿のまま生きていて、わけのわからないゲームの渦中にいる。
「あの小癪なガキの力と見るべきだろうな……」
ついさっきの乃亜のパフォーマンスを見れば、奴が自分を生き返らせたのは明らかだ。
集められた子供たちの最後尾からセルも見ていたが、ドラゴンボールで為す奇跡のような御業を操る力はなるほど確かに侮りがたい。
乃亜によって蘇生されたと確信する根拠は他にもある。
自爆で死にかけてから復活した時にはあった、サイヤ人の細胞を取り込んでいるが故の超パワーアップが今回は起こっていないのだ。
これは一度は完全に死亡したが故のことであろう。
何故乃亜がセルを蘇らせたのかも殺し合いのルールと照らし合わせれば簡単にわかる。
いくら浅慮な子供ばかりを集めたとは言っても、はいそうですかと即座に乗っかる者はそう多くないはずだ。
そういった主催に反抗的な子供を黙らせ、恐怖させるためのマーダー役として極めて強い力を持つ悪、つまりセルを必要としたのだろう。
「生き返らせてやったのだから言うことを聞いて殺し回れ」という思惑が透けて見えた。
「く……くっくっく……」
当然、参加者の一人であるセルの足元には支給品が詰まったランドセルが置かれている。
それが小さい子供の通学用鞄であるという知識はセルにもある。
なるほどなるほど。このセルをそこらの子供と同列に扱い、あまつさえゲーム進行のための小間使いをさせようとしているというわけか。
知らず笑いが零れる。……もっとも歓喜を示すものではなく、獰猛な怒りを示す笑いであったが。
「驚いたわ。参加者は小さな子供ばかりと聞いていたのだけど」
後ろの茂みから声を掛けられた。
思考に意識を費やしていたせいか気を感じられるはずのセルも気づかなかった。
姿を現したのは紫の髪色をした小柄な少女だった。
一般人とは段違いの気の大きさからして只者ではないようだがセルからすれば塵芥も同然だ。
「お嬢さん、話しかける相手はよく選ぶことだ。
わたしは今とても機嫌が悪い……今すぐ君をこのゲームの犠牲者第三号にしてしまいたいほどにね」
「心中お察しするわ、ミスタ。でも矛先を向ける相手が違うのではなくて?
あたしはエレナ・ブラヴァツキー。単刀直入に言って、ここからの脱出に手を貸してもらいたいの」
「わたしの名はセル。人造人間であり……人間どもに敵対する存在でもある。
君の勇気ある行いには敬意を表するが、生憎とわたしの一番の目的は君たち人間の恐怖に怯え、引きつった顔を見ることだ。
わかるかな?話し合いが通じる余地などこのわたしには存在しないということだ」
多少の威圧を込めたセルの脅しにもエレナは顔色一つ変えることはない。
何か策でもあるのか、それともただの馬鹿なのか。
「そうかしら?アナタにはあの乃亜という子に屈服させられているこの状況に対して強い怒りがあるはずよ。
何より、人類に敵対するのも恐怖に陥れるのも、アナタの信条に基づいてのことでしょう?
誰かに拉致され、恐怖なんて在って当然の場所で、戦う力があるかも怪しい子供ばかりを殺して回る。
そんなことで満足できるような安い矜持ならそれほどの頭抜けた力なんて必要ない……違うかしら?」
「ほう……言うではないか。
しかし人間が何人死のうとわたしの知ったことではないし、生きるためなら少しばかりプライドを曲げるぐらいのことは許容する。
正義や人情なんてものとは対極に位置する悪であるこのわたしが、一体何のメリットがあってガキどもの脱出に手を貸さなければならないというのだね?
もっとハッキリ言おうか。君はこのわたしに対してどんな利益を示せるのかな?勇気あるお嬢さん」
「この首輪を外せるわ」
それは果たして大言壮語か、あるいは何某かの確信に基づく断言か。
セルにはエレナの毅然とした表情の裏にある心理まで読み取ることはできない。……だが、無視もできない。
「あたしには魔術の心得がある。旧きものも新しきものも手に取るようにわかる。
首輪のサンプルを手に入れることができれば、魔術的な見地から解析して外すことができるかもしれない。
それと対外交渉ね。あたしだけでこの首輪を外せなかったとしても、それが出来る知識や技術を持った子を探して仲間にする。
アナタにはそれらを為すための武力を提供してほしい」
「用心棒契約というわけか……よかろう、首輪を外せなければ乃亜を殺す算段も立たないからな。
君の度胸と聡明さに免じてこのセルの究極の力を貸し出してやろうではないか。よろしく頼むよ、お嬢さん」
何度目かのお嬢さん、という言葉にエレナはいささかバツが悪そうな態度になった。
「あー……実を言うと、あたし見た目通りの実年齢じゃないのよ。
詳しいことはおいおい話すけど、本当なら孫がいたっておかしくないぐらいのおばあちゃんよ、あたし」
「なるほど、道理で肝が据わっているはずだ。
こいつは失礼をした。ではミス・ブラヴァツキーと呼ばせてもらっても?」
「そうね。ミセスよりはミスの方が佳いわ。
……にしてもいくら見た目がそれらしいからってどうしてあたしを参加者にしたのかしら、あの子。
ミスタ・セル。気を悪くするかもしれないけどアナタには子供の一人としてここに呼ばれるような心当たりはない?」
言われて少しばかり考える。
力も頭脳も精神も完全、今やそれ以上とも言えるこのセルを何の根拠があって子供として扱いゲームに参加させたのか。
乃亜への怒りばかりが先行してそこを深く掘り下げてはいなかったことに気づいたのだ。
「……もしあるとすれば、活動日数だろうな。
わたしが人造人間として完成し、活動を始めてから数か月と経っていない。
無理矢理に人間に当て嵌めれば子供と呼べなくはない……不愉快な話だがね」
「つまり子供と呼べる要素をほんの僅かでも持っている者を集めている、という見方もできるわね。
……まああたしとミスタが例外なだけ、という可能性もあるから今は何とも言えないのだけど」
(子供、か……そう言えば孫悟飯はいるのか?ここに)
セルの脳裏に自分を破った、自分よりよほどこのゲームの主旨に似つかわしい少年の存在が過ぎった。
もし孫悟飯がいるならば、リベンジの機会にもなるか。……いや、こんな不本意な制限まみれの環境では満足いく戦いは望めまい。
奴と決着を着けるにせよ、忌々しい首輪を外し乃亜を殺してからでなければ。
(いるのかどうかは知らんが……つまらん死に方はしてくれるなよ、孫悟飯。貴様を倒すのはこのわたしなのだ)
(はあ……我ながら綱渡りもいいところね)
セルが孫悟飯の存在を意識している時、エレナは内心でこの怪物を相手に取引きが成ったことに安堵していた。
一目見た瞬間から、セルの異形の肉体に秘められた悍ましいまでの暴力に気づいていた。
この規格外の怪物の殺意を決して巻き込まれた罪なき子供たちに向けさせてはならない、そう感じた。
だから交渉し、セルの殺意を主催者である乃亜へと誘導した。セルのプライドの高さが功を奏したと言える。
自分が死ぬのはいい。この身はもとよりサーヴァント、人理に刻まれた影法師。
けれど、今を生きる子供たちは一人でも多く生きて帰さなければ。それをマスターも望んでいるはずなのだから。
【セル@ドラゴンボールZ】
[状態]:健康、超完全体
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:このわたしを子供扱いした乃亜を殺し、自由になる。。
1:エレナとの契約に基づき彼女を護衛する。だが首輪を外せないとなれば……?
2:孫悟飯が呼ばれているかどうかが気になる。
[備考]
死亡後からの参戦です。
殺し合いが破綻しないよう力を制限されています。
超サイヤ人相当のパワーは一度使用すると十二時間使用不可、超サイヤ人2相当のパワーは一度使用すると二十四時間使用不可です。
瞬間移動は制限により使用できません。
制限により気を感知する力が低下しています。
【エレナ・ブラヴァツキー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:一人でも多くの子供たちを生還させる。(自身の生存は度外視)
1:セルに参加者を殺させないためにも首輪を外す手段を探す。
2:首輪のサンプルを入手できたら魔術による解析を試みる。
[備考]
カルデア所属ですが、現地に召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
宝具である「金星神・火炎天主」を使用するには他の参加者と仮契約を結ぶ必要があります。
投下終了です
投下します。
「お〜い、誰か聞こえてる〜!? 殺し合いなんてやめようぜ〜?」
森林地帯。キャップを後ろ向きに被った黒髪の少年•木村 克也(きむら かつや)が参加者同士の殺し合いをすぐきでもやめさせようと、大きな声で周辺に呼びかける。
「くっそ〜、すぐには見つからないか〜…」
そうしているにもかかわらず、他の参加者は現れない…と思っていたところだった。
「おい、オレには聞こえたぞ! 殺し合いなんてやめようってな!」
幸運なことに、その呼びかけ応じた参加者は克也からそう遠くない距離におり、そちらにすぐさま駆け寄ってくる。
その参加者は金髪で、グレーのフード付きの服を着用している。
「お待たせ、来たぞ!」
金髪の少年が克也のすぐ傍に到着した。
「ハジメマシテ、だな。オレの名前はセサミ•アッシュポットだぞ。」
「こちらこそ。俺は木村克也。」
セサミ•アッシュポットと名乗る少年から自己紹介をされた克也も、また彼に自己紹介をする。
「オレだってこんな殺し合いは反対だな。」
「あ〜、よかった…。」
思っていたより早い段階で殺し合いに反対する他参加者と出合えたことに安穏する克也。
「じゃあさ、一緒にこの殺し合いを終わらせて、カイバノアって奴をとっととやっつけにいかないかい?」
そんな中、セサミから唐突に『一緒に殺し合いを早く終わらせて、乃亜を倒しに行かないか』という提案をされる。
「…そうしよう。」
殺し合いに反対する同志を見つけられた喜びから一転、急に真剣な態度をセサミに見せる克也。
「…そうだよな。」
そんな彼に対し、セサミもまた真剣な態度を相手の克也に見せた。
──彼らはお互い、通っている(あるいは通っていた)学校の担任教師やクラスメイト達と共に数多の困難を乗り越えてきた少年だ。
だから、出合ったばかりであってもこの殺し合いを早急にでも止めさせ、乃亜を倒しに行ってしまおうという決意が出来たのである。
【木村克也@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:セサミと一緒に殺し合いを早急にでも終わらせ、乃亜を倒しに行く。
1:今はセサミと行動。
2:出来れば、セサミ以外とも殺し合いに反対する参加者と合流したい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも鵺野鳴介を人面疽から救った後。
【木村克也@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:克也と一緒に殺し合いを早急にでも終わらせ、乃亜を倒しに行く。
1:今は克也と行動。
2:出来れば、克也以外とも殺し合いに反対する参加者と合流したい。
[備考]
※参戦時期はエンディングで『臨海学校』を終えて魔法学校ウィル•オ•ウィスプに帰還してからエピローグの時間軸に入るまでの間。
投下終了です。
>>157
失礼します。
状態表にミスがありましたので、以下のものに修正させていただきます。
【木村克也@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:セサミと一緒に殺し合いを早急にでも終わらせ、乃亜を倒しに行く。
1:今はセサミと行動。
2:出来れば、セサミ以外とも殺し合いに反対する参加者と合流したい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも鵺野鳴介を人面疽から救った後。
【セサミ•アッシュポット@マジカルバケーション】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:克也と一緒に殺し合いを早急にでも終わらせ、乃亜を倒しに行く。
1:今は克也と行動。
2:出来れば、克也以外とも殺し合いに反対する参加者と合流したい。
[備考]
※参戦時期はエンディングで『臨海学校』を終えて魔法学校ウィル•オ•ウィスプに帰還してからエピローグの時間軸に入るまでの間。
投下します
皆さん投下ありがとうございます。
>儀式でさっき作られたからLS。あとなんでレシピが儀式?
私がこのカードのテーマ化で一番気になってるのは、ハンバーガーのレシピのイラストに居るおっさんの行方ですね。
毒バーガー食べた事のあるモクバ君もロワに居るんで、出会えたら仲良くできるかもしれません。
>:ふたばで何回も見たねこのネタ
wikiで見たんですが、
>開始 2001年8月30日 (21年前)
21歳ですね。
>混沌より溢れよ黒き群集
生存という意味ではこれ以上の強敵はいませんね。人類が滅びても、生き延びるらしいので。
でもこれはLSロワ、天敵である灰流うららも参戦資格があるので、早々上手くはいかないかもしれません。
>参加者の条件
セルが二体…来るぞ遊馬!
こんなヤバそうな相手に、堂々と協力を申し付けるエレナはやっぱり子供を守護るママなのでしょうね。
>抗う同志
ロワで大声上げるのは中々危険なフラグですが、克也は運が良いですね。
幼いながらも勇気ある子供達には頑張ってほしいものです。
ぶぅん、と
また一発拳が空を切る。
力任せに振るった反動と、狙った相手の足を引っかけられて、無様に転倒する。
「キャハッ☆キャハッ☆脆弱(ザッコ)いなァ〜。お前それでも忍者ァ?」
少年は、宿敵とも呼べる存在のみっともない姿を眺めて、嘲る様に笑った。
…その少年の容姿は正しく、怪人と呼べる物だった。
無造作に伸ばされた金の髪に、薄汚れた衣服、プリーツスカート。
よくよく見れば顔立ちは整っていたが、顔中に巻きつけられたガムテープが見る者に言いようのない恐怖を抱かせる。
少年の名は、輝村照。またの名を───
「この破壊の八極道、ガムテ様をさァ〜もちっと愉悦(アゲ)させてみろよ、忍者君?」
──殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)・ガムテ。
「うるっせえ!調子乗んな!このガムテープ野郎!!」
そう言って、先ほどまで地べたを舐めていた少年が立ち上がり、ガムテに襲い掛かる。
その少年は、忍者と形容された割には、目を引く格好をしていた。
派手なオレンジを基調とした服。ガムテと同じく金の髪に、それを纏める額当て。
狐の面の如き三本のラインが刻まれた頬に、意志の強さを秘めた瞳。
「このうずまきナルトを!舐めんじゃねー!!」
咆哮と共に、木の葉隠れの里の下忍、うずまきナルトはガムテ目掛けて正拳を叩きこもうとする。
それはガムテの目から言っても、それなりの経験値と鍛練が伺える拳だった。
しかし。
「ン〜〜未熟(トッロ)ォ。欠伸が出るくらい遅いよォ〜」
彼がこれまで戦ってきた忍者の突き──音の速度すら超える暗刃に比べれば余りにも遅い。
ふわりと揺れるカーテンの様に上体を逸らし、空を切った拳に添えるように──拳を叩き込んだ。
「うわぁぁぁぁあっ!!」
顔を子供どころか人間離れした力で殴られて、ナルトの体は宙を舞った。
その様を見てぐっしっしとガムテは笑みを漏らす。
何しろ極道にとって忍者は江戸時代より続く因縁の相手だ。
犬猿の相手を好きに甚振れるとあっては上機嫌になるのも無理は無いだろう。
「ん〜、ケッコー楽ちかったけどォ、そろそろ終わりにするかな〜」
お道化た様子でそう宣うガムテの瞼には、亀裂の様なラインが走っている。
ナルトの不運は、偏にガムテに悪魔の薬物(ヘルズ・クーポン)が支給された事だろう。
技の技量で劣っている上、ガムテは薬の力で文字通り超人と化しているのだから。
その代わりとでも言うように、ガムテに刀剣の類が支給されず、
また彼の懐刀である関の短刀も没収されていたのは幸運と言えるのかもしれない。
もし、ガムテが刃物の類を持っていたら、もうとっくにナルトはこの世から去っている。
だが…それは彼がナルトを殺せないという事を意味しない。
彼は一流(プロ)の殺し屋なのだから。
徒手空拳でも人を殺す手段など幾らでもある。超人と化している今なら猶更だ。
「はぁ…はぁ…やれるもんなら、やってみやがれガムテ野郎……」
ゆらりと、ガムテの眼前で哀れな獲物が立ち上がる。
レベルの差を完全に分からされても立ち上がるタフネスと、闘志だけは大したものだと、ガムテは思った。
同時に…その青い眼を見ていると、嫌に心がざわつくのを感じた。
そんな心中のざわめきに突き動かされるように問いを投げる。
「…ハァ、木偶(タフ)さと瞳の色だけはご立派だなァ〜
何をそんな頑張っちゃってるのか、ガムテ分かんないッ☆」
「へ、テメーなんかに、分かられて、たまるかよ…あんな子供(ガキ)に殺しあえって言われて、素直に殺しあうお前と…俺ってば志が全然違うんだよ……!
俺は……火影になる男なんだからな……!」
「なぁ〜ンだソレ?トカゲになりたいとか心底(マジ)笑止(ウケ)るゥ〜」
絶体絶命の窮地において。
その忍者の瞳の炎は消えてはいなかった。
ギラギラと、鈍く輝く意志の焔をその双眸が湛えていた。
「へっ…言ってろ…火影ってのはな…お前みたいな奴から仲間を…里の民を守る…
偉大な忍の事だ……」
「…………」
眼光鋭く。
八重歯をむき出しにして、忍者は極道を睨みつける。
諦観など、一欠けらも宿っていないと言わんばかりのその両眼を見ていると。
また、静かに心が泡立つのを、ガムテは感じた。
どうしてなのかは、彼の卓抜した第六感を以てしても分からなかった。
だが──もういいだろう。
ざわめく心に蓋をして、道端に生えていた木の枝をぽきんと折る。
その先端は、鋭くとがっていた。
一流(プロ)の殺し屋であるガムテにとって、目の前の雑魚一匹殺すならこれで十分だ。
「……お前、名前は?」
「…え?」
「だから名前だよなーまーえ!お前はこれからこのガムテ様にブッ殺されるんだからァ〜
名前ぐらいは聞いといてやるって言ってんだよこの単細胞(ブァ〜カ)」
「……うずまき、ナルトだ」
「あっそ!ほんじゃあノリマキアナゴ、これで最後だ。
テメ〜はこの殺しの王子様(プリンス・オブ・マーダー)・ガムテがブッ殺す」
名前を聞いたことにも、名乗った事にも、他意はない。
ただ──ブッ殺した後に、ブッ殺したという静かな勝鬨を上げるためだ。
そう、他意はない。決して。
その証拠に、これで終わらせる。
上体を沈みこませ、獲物に襲い掛かる直前の豹の様なポーズをとる。
後は手の中の枝を奴の肝臓目掛けてブッ刺す。それで終わり。
右に避けようが左に避けようが、体に染みついた殺しの腕が逃がす筈もない。
「……へっ」
死が目前に迫っても。
対する忍者は怯えてなどいなかった。
不遜に、不敵に笑って。
「さっさと来いよ…そのキツいの喰らわせてやるってばよ」
有ろうことか、最後に彼が行ったのは挑発だった。
特段心を揺らしはしない。そんな安い挑発には破壊の八極道は乗りはしない。
ただ、「そうかよ」と一言返して───瞬間、彼は砲弾となった。
──轟!
十メートルあった距離が一秒も立たずに2メートルを切る。
かの忍者がその間出来た事は、手の中にあった物を地面に叩き付けるだけだった。
「……フンッ!」
鼻を鳴らす。
瞬間、ガムテの視界は煙で満たされた。
手に持っていたのは、どうやら煙玉の類だったらしい。
だが、その程度でガムテの魔手から逃れるのは不可能だ。
幼少期の虐待によって手に入れた、三十分呼吸せずに行動可能な呼吸器官と、
例え視界を全てガムテープで覆っても標的を決して逃がさない第六感。
それはこのバトル・ロワイアルでも変わることなくガムテに力を与える。
「おッ死(ち)ね、忍者ァッッ!!」
これまで忍者に殺された恨みつらみを籠めた咆哮を上げて。
ぞぶり、と。
ガムテの刃は、確かにナルトの肝臓を貫いた。
本来強度で劣るはずの木の枝で腹部を刺し貫くという神業。
それを苦も無く、ガムテは達成してのけた。
それは、これ以上ない決まり手であった。
間違いなく、彼の知る忍者ならこれで勝負が決まっていただろう。
「……へっ」
だがしかし。
うずまきナルトは、“ガムテの知る忍者ではない”。
「!?」
ぼふん、と。
刺した筈のナルトの姿が掻き消えたのだ。
まるで、煙の様に。
初めて、ガムテの刃が虚しく空を掻いた。
「「オラァーッッ!!」」
直後、耳朶を打つ聞き覚えのある声。
間違える筈もない、今しがた刺殺した筈の、うずまきナルトの姿がそこにあった。
それも、一体ではない!
(何だッ!?残像!?いや違う、これは実体が───!)
不味い、と。
ガムテの第六感がけたたましく警鐘を鳴らす。
一瞬の隙を縫うように、二体のナルトがガムテに組み付いてくる。
取り付かれながら、0.1秒で思考を巡らせる。
今、この二体のナルトが何なのかはどうでもいい。
きっと、忍者らしく分身の術でも使ったのだろう。
落ちこぼれだと思っていた忍者は、とんでもない牙を隠していた。
だが奴に暗刃は使えない。使えるのならこれまでの戦いでとっくに使っている。
敢えて温存していたかもしれないが、そんな服芸ができる男とは思えなかった。
となれば、一発殴られた程度では地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)で強化された肉体はびくともしない。
短刀(ドス)でも拳銃(チャカ)でもだ。ならば問題は──
(いや違うッ!それは違うぞッ!!奴は──!!)
そう。
奴がその程度の相手ならば。
自分の第六感はこんなに警鐘をならず筈がないのだ!
強化された筋力で強引に左右のうずまきナルトを振り払いながら、煙の外へと逃げようとするガムテ。
しかし、ほんの一瞬遅かった。
「喰らえ……!!」
振り払う事に消費した時間で、煙の奥から三人目のうずまきナルトが現れる。
その掌にはガムテをして瞠目するほど濃密な死の予感が渦巻いていた。
そう、ガムテは知らなかった。
うずまきナルト達忍者が使う、チャクラを用いた忍術を。
彼の掌で高速回転するエネルギー。
四代目火影が考案し、伝説の三忍が彼に伝授した、取得難易度Aクラスの忍術──
───螺旋丸!!!!
■
「……や〜んぴ」
怒涛の回転エネルギーを受け、吹き飛ばされた先で。
ガムテは生きていた。
螺旋丸が外れたわけではない、だが、完全な着弾には至らなかったのだ。
一瞬のうちにガムテは取り付いていたナルトの分身を蹴散らし、体を半身に逸らした。
それにより、胸の辺りに着弾する筈だった螺旋丸は、左肩の辺りに命中したのだ。
その事実を示すように、左肩は酷い有様だ。
ぐちゃぐちゃに折れ曲がり、ヤクの回復力を以てしても回復に一体いつまでかかる事やら。
嘆息しながら、ガムテは戦闘の終結を宣言した。
「へっ…逃がすと思ってんのか?」
「勿論(モチ)。ってかお前も足痛いだろォ〜?」
薄く笑いながら威嚇するナルトに対して、ガムテの表情は冷ややかだった。
彼もただ螺旋丸を受けたわけではない。
交錯の瞬間、その手の枝でナルトの太ももを突き刺していたのだ。
勢いづいた彼が、追ってこれない様に。
「枝で闘(ヤ)るのも飽きたしィ。今はテメー、見逃しちゃる。
でもテメーの名前覚えたから。この左腕の借りはちゃ〜んと返してもらう。
短刀(ドス)手に入れたら、テメ〜は必ず絶望のどん底で殺す!!殺す!!ぶっ殺す!!」
そう言いがながら。
実に楽しそうに、新しい玩具を与えられた幼児の様に。
キャハッ☆キャハッ☆と快哉を上げて、ガムテープの怪人は夜空に跳ぶ。
そして、その背に満月を背負いながら、高らかに宣戦布告の声を上げた。
「──決めようか。忍者と極道!どちらが生存(いき)るか死滅(くたば)るか!!」
その言葉だけを残して。
ガムテは夜の闇の中へと消えていった。
「………」
一人取り残されたナルトは、ふと己の手を見る。
……震えていた。
さっきまで意識していなかった首輪が否に冷たく感じる。
その冷たさが、いやでも自分は殺し合いの渦中にいるのだと自覚させて来る。
周囲の景色が、ここは木の葉の里どころか火の国でさえないのだと伝えてくる。
自分に全く気取られないうちに、こんなところに連れてきた乃亜は一体何者なのか。
恐怖が、水の様にせりあがってくる。
だが、それでも。脳裏に浮かぶ言葉があった。
その言葉を、恐怖を打ち払う剣として。
握りこぶしを作り、月夜に掲げて己を鼓舞する。
──アイツは、この俺が認めた、優秀な生徒だ。
──今はもう、バケ狐じゃない。
──アイツは、木ノ葉隠れの里の………
「火影になる男が…こんな所で死ぬわけにも、子供を殺すわけにもいかねーよな…!」
────うずまきナルトだ。
【輝村照(ガムテ)@忍者と極道】
[状態]:全身にダメージ(中)、左腕粉砕骨折、治癒中
[装備]:地獄の回数券×5
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:先ずは短刀(ドス)が欲しい。
2:ノリマキアナゴ(うずまきナルト)は最悪の病気にして殺す。
[備考]
原作十二話以前より参戦です。
地獄の回数券は一回の服薬で三時間ほど効果があります。
【うずまきナルト@NARUTO-少年編-】
[状態]:全身にダメージ(中)、右足に刺し傷(中)、治癒中。
[装備]:
[道具]:基本支給品、煙玉×4@NARUTO、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜の言う事には従わない。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:ガムテの奴は次あったらボコボコにしてやるってばよ
[備考]
螺旋丸習得後、サスケ奪還編直前より参戦です。
投下終了です
投下お疲れ様です。
>忍者と極道
「さっさと来いよ…そのキツいの喰らわせてやるってばよ」
ここジャンプの少年漫画らしいカッコよさで好きですね。ナルトVSガムテ、熱いぜ。
ただ、この二人出会いが違ってイルカ先生もいなかったら、その境遇からナルトもグラチルになった可能性もなくはないのが感慨深いところです。
私も投下します。
「この、汚らわしいおにぎりの分際でっ!!」
「ひぃいいいいい!!」
佐藤マサオ(5)は鞭でぶたれていた。
理由は分からない。車椅子に乗ったピンクのドレスの少女。
金髪を二つに分けた少女で外人らしく、歳もマサオからすると大人に見えるような、恐らくは高学年だろう。
だが、車椅子を使っているのを見るに体が不自由なのは明らかだった。
殺し合いという状況に一人で放り込まれた故に心細かったのと、そんな場所に足に障害を持つ少女を年上とはいえ不味いだろうと良心に従って、マサオは一応声を掛ける事にした。
「来ないで、このノーマ!!」
「何、ノーマって!? ひぃ!!!」
歪んだ嗜虐心を表情に浮かべ鞭を振るうこの少女、シルヴィア・斑鳩・ミスルギという少女はかつてとある国の皇女だった。
彼女の世界にはマナと呼ばれる技術があり、それを使える者が人間として扱われ、それ以外はノーマとして蔑まれている。
当然ながら、物一つ触れもせず浮かべる事の出来ないマサオは彼女にとって、強烈な排除対象だった。
「お願いだからやめてよぉ……!」
「黙りなさい! この―――」
「おいお前ら、静かにしろ!!」
そしてもう一人、新たに少年の声が響いた。
肌が浅黒い、そして顔の頬に二つの傷が痛ましく刻まれた少年だった。
見るからに堅気ではない。重々しい雰囲気を放つその少年の手には、黒く光る拳銃が握られている。
「ひいいい!!?」
「な、なんですか……!? 私に銃なんか向けて、私は女帝シルヴィア一世ですよ!!」
「女帝? ……悪いが、お前らには死んでもらう。
俺は俺の人生を取り戻すんだ……そして俺の人生を滅茶苦茶にしたリュウセイ……あいつに復讐する!!」
少年の名は浜田操、二桁も行かない歳でありながら、無実の罪で脱出不可能と言われたアルバゴラズ刑務所に入獄した男である。
この男、まだ幼いながら無実の罪をかつての相棒である天野河リュウセイに被せられ、それに対し刑務所を脱獄し抗議をしに行くも覚えてないの一点張りで説き伏せられてしまった。
そして乃亜によって開かれた殺し合いに招かれた時に浜田は決意した。優勝し、願いを叶えて貰う事で全ての人生をやり直すと。
何より、その元凶となったリュウセイに復讐を果たそうと。
「貴方! 何とかなさい!! 私は女帝ですよ!!」
「む、無理だよぉ……!! うわあああん!!!」
「泣かないで! なんて役に立たないオニギリ……盾にぐらいなりなさいな!!」
逃げよう。
マサオの思考は一瞬で方針を定めた。
シルヴィアは幸い、車椅子だ。彼女を囮にすれば、逃げる確率は比較的上昇する。
「ちょ、ちょっと貴方!?」
マサオは算段を立てた後、素早い身のこなしでシルヴィアの背後へと回る。
シルヴィアは車椅子で自由な身動きが取れない。
つまり、生きた遮蔽物だ。浜田の視線を遮ってしまえばマサオが狙われることもない。
「で、でもぉ……二人とも死んじゃうからぁ!!」
「私が死ねばいいと!? ふざけないで!!! 私は女帝、貴方とはランクが違います!!」
マサオは小柄だ。そして月光に照らされているとはいえ深夜という時間帯、シルヴィアに注意を逸らして闇に紛れ込めば逃げるのは不可能ではないかもしれない。
僅かな希望に縋って、小さな体で必死に駆け出す。
「マッド・クリムゾン・プリズナー!!」
だが、マサオに並走してクワガタを模したミニカーのような玩具が疾走し行く手を遮る。次の瞬間、玩具は光り爆破を引き起こした。
「ぎゃあああああ!!」
「いやああああ!!!」
マサオと近くにいたシルヴァアは爆破に煽られ吹き飛ばされる。
「卑劣なオニギリ頭だな。……脱獄囚の俺が言えた義理じゃないが」
全身を擦り傷だらけになりながら、二人は浜田の足元へと転がっていく。
「動くなよお前ら、俺はリュウセイ程外道じゃない。楽に死ねるよう頭ぶち抜いて、一発で死なせてやる」
「ひ、ヒイィイイイィイ!!!!!」
「動くなって言ってんだろ!!!」
マサオの悲鳴をかき消すように銃声が響き、並んで転がっていたマサオとシルヴィアの間に銃弾が減り込む。
「あ、ぁ、や、ぁ」
シルヴィアの高貴なドレス、その股座が濡れていく。土を湿らせ吸収できなった水分が水たまりを作っていく。
恐怖による錯乱から口をカタカタ言わせながら、目を見開いて空を見上げていく。
尿道を通り、性器を濡らし尿が伝った太腿から温かみが引いていく。
立ち上るアンモニア臭が浜田の眉を潜めた。それがなお、自分が人前で放尿してしまったという現実を突きつけられているようで、羞恥心が湧いてくる。
「い、や……いや……エンブリヲ、おじさま、たすけ……」
―――貴方は自分で立とうとしないから立てないだけ。
「……アンジュリーゼお姉様?」
「じゃあな、死ね……俺は俺の人生を「私は……死にたくないィィィ!!!」
引き金を引こうとした浜田の顔面に拳が飛び込んだ。
誰に殴られたのか? 落ちそうな意識を保ちつつ、崩れた体制を立て直しながら一帯を警戒する。
「お、お前……!?」
だが第三者など居ない。居たのは自らの足で立ち上がり、浜田の顔面を殴り飛ばしたシルヴィアの姿だけだ。
「こ、n……ぐ、ぼぉ……!?」
銃を構え直すより早く、シルヴィアの拳が浜田の顔面に真正面から突き刺さる。鼻が折れ、歯が数本口から飛び出す。
更に致命的なことに、激痛に手元が緩み、銃を落としてしまった。
シルヴィアの視線が目ざとく足元に滑り、全身をバネにして落ちていく銃に手を伸ばす。
「……さ、せる…か、マッド・クリムゾン・プリズナァァアアア!!!!」
待機させていた愛機の名を叫ぶ。
カブトボーグ、カブト虫やクワガタを模しその車輪を利用し動き、使い手の意思に従い操作しそれらを戦わせる事が出来る。浜田はそれに長けたボーガーだ。
アルバゴラズ刑務所に入所後、刑務所一のボーガーを下し、待遇改善を求め悪徳看守を倒し、刑務所所長ビッグボスに勝ち、刑務所内のボーグチャンピオンにまで上り詰めた危険な男。
それほどの男がカブトボーグを扱えば、それは一瞬にして兵器へと変貌する。
「オービタル・ハイスピード・ランn「お前が死ねえええええええ!!!!!」
必殺技を繰り出す、マッド・クリムゾン・プリズナーが光出したその寸前、シルヴィアは自身に向かって飛び上がってきたマッド・クリムゾン・プリズナーに自身に支給されたランドセルを投げ付けて弾き落とす。
そのままマッド・クリムゾン・プリズナーに見向きもせず浜田の懐に潜り込み、躊躇いなくその胸に銃を突きつけた。
「ぐ、ご、あ、がああ、ぶおあっ……!!!」
「死ね死ね死ね死ね死ねえええええええええええええ!!!」
ノータイムで引き金を引く。
何発も何発も何発も引き金を引く。
浜田から苦悶の絶叫が響き、それを彩るように銃声が協奏する。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
全身に血のシャワーを浴び顔を赤く染めたころには浜田は血だまりの中に大の字で倒れていた。
「な、ぜ……お…れ、が……ア…ルバ、ゴラズ…の、せ、いかつ……は、おれを、タ…フ、な……お、とこ……に……お、れの…じんせい……」
「貴方の100円にも劣る下らない人生など、知りません」
「り、リュ……ウ…セ、イ……」
最期に、七年前リュウセイに百円を借りパクしたことを思い出し、浜田は息絶えた。
「ヒイィ!!」
「……死にたくなければ、戦いなさい」
銃を強く握りしめ血に濡れた女帝は、マサオに一言だけ吐き捨てる。
「ま、待って……一人にしないでェ!!」
マサオは慌てて、泣き叫びながらその姿を追いかけるしか出来なかった。
【浜田操@人造昆虫カブトボーグ V×V】死亡
【シルヴィア・斑鳩・ミスルギ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:健康、返り血塗れ、失禁
[装備]:アンジュの拳銃@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(浜田操の支給品)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生き残り乃亜を殺す。
1:返り血を落としたい。
[備考]
クロスアンジュ23話でアンジュに威嚇射撃されて以降の参戦です。
【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:死にたくない
1:シルヴィアに着いていく。
[備考]
特になし。
投下終了します
すいません。鞭持ってたの忘れてました。
【シルヴィア・斑鳩・ミスルギ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
[状態]:健康、返り血塗れ、失禁
[装備]:アンジュの拳銃@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(浜田操の支給品)、鞭@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:生き残り乃亜を殺す。
1:返り血を落としたい。
[備考]
クロスアンジュ23話でアンジュに威嚇射撃されて以降の参戦です。
投下します
面倒事。
何で私がこんなものに巻き込まれてしまったんだろ、子供なんていくらでも居るだろうに。それこそ私をいじめてた奴らが巻き込まれてりゃ良いんだ。アイツらの方がよっぽど力があるでしょ。まさか私の力を知られてたりして、あの不思議な力とか見るにその確率は高いかもしれない、そうなったらもっと面倒な敵になる。
まぁ良い……早めに脱出しないと、財布とか以外にも荷物全部――グリーフシードも没収されているみたいだし、危ないことになりかねない。魔女と戦うのも別に好きじゃないから、優勝して永遠にソウルジェムが濁らないようにでもしてもらう手もあるかな。私の願いは、とっくの前にキュゥべえに叶えてもらったし。でもあの場所にいた数十人が全員私と同じ力だったら、優勝狙いは難しいかな。私も新人だし。
だったら脱出方法を考えるのが手っ取り早いけれど……その手っ取り早いが何より難しいんだろなあ。首輪は物理的に壊せば爆発するだろうし、多分ノアとかいう奴に動向を監視されてるはずだ。
ここから先、どうするべきか――
「ぁ痛っ!?」
――油断してた!!
脚に何かが刺さった。弾丸とかの類は落ちてないし、多分魔法の攻撃。治癒魔法はあんまり心得てないけれど、変身すればこのくらいどうにかなるはず。それよりも敵は…………居たっ、草むらの奥!
「命中……っ!やったの……!」
「……誰」
「……ヒナゲシっていうの。…………私は、絶対ここから帰らなきゃいけないの、だからね、ごめんね。ここで、倒れて欲しいの!」
二発目が飛んでくる、それより前に!
「……!!服が変わったの!」
灰色のシャツから、黒いゴスロリの格好に。その隣で武器のモーニングスターを生み出して……そう、これが、私の力。魔法少女の力!!
「死ぬのは貴方だよ」
「……っ、ただの子供じゃなかったのっ!」
さっきの攻撃の正体はヒナゲシとやらが手に持ってる弓からだ。矢は魔法で生み出してるらしい、だから挙動も多分わけわかんない奴だ。
だったら。
「撃たれる前に、打つ」
モーニングスターを振りかぶる。どこに当たってもそこそこダメージにはなるから、とりあえず当てれば良い。
だけど物理技で倒せる敵なら苦労しない、倒れてくれりゃそれは良いけど。だからこそ、私の行うメインの攻撃は悟られてはいけない、モーニングスターの乱舞は本命の技ではない。
「(……ヒナゲシが魔法少女だったらややこしくなるけど、ソウルジェムが無い魔法少女は無いよね。まあ絶対普通の子供じゃないけど)」
予想通り、ヒナゲシは単なる子供じゃない。モーニングスターの攻撃を回避は楽々。たまに当たりそうになっても見えないクッションに阻まれたように押し戻される。
「そろそろ……やられて欲しいのっ」
「私も死にたくなんかないし」
でも、そろそろ行ける。ヒナゲシがよっぽど強靭な精神でも持ってなかったら、勝ち確定。
「……これはヒナゲシから仕掛けてきたことだし」
「そうなのっ、だからとっとと……ぉ、え?」
「悪く思われる道理はないよ」
途端、ヒナゲシは信じられないようなものを見たような目をする。
「え?なに、どうして、お姉様?どうして、お姉様?え、やめて、ぇあ、ゃ、やだ、嘘、捨てないで、お姉様、お姉さま!やだ、ゃだやだ、やだ!!置いてかないでっ!!見捨てないで、あ、やだ!!お姉様っ!!!」
何もない場所に手を伸ばして、涙をだばだば流してる。
私の固有魔法、相手の精神への干渉、本命の攻撃。
出来ることは感情とか考えてることをゆるく操作したり、幻覚とか見せるくらいだけで、そんな人の過去を覗けるとかでもないから、ヒナゲシには『一番嫌なことを見て苦しんで』くらいの操作をしたけれど。なんかすごく効いてる。お姉様とやらの間で何かあるらしい。訳ありだったんだろな、この子も。まあ別に同情とかするつもりはないけれど。
まあ何はともあれ大チャンス。この一発で決めてやる。
「じゃあ、ヒナゲシさん」
「お、姉様、あ、やだ、うそ、これは、うそ、やだ」
「冥土の土産?に教えてあげる、私の名前は神名あすみ。魔法少女。」
昔ちょっと聞いたことあるくらいで、本来の意味とかは知らないけれど。魔女相手に戦ってる時と一緒。私の口癖、決め台詞、相手への別れと、嘲笑を含んだ言葉。
「サヨナラ勝ちね」
モーニングスターを思い切りその胸に、叩きつけた。
◇◇◇
「か、ひゅ、お゛ぇ」
全身が痛む、頭がぐらぐらする,吐き気がする。こんな痛いの、久しぶり。
すんでのところ、あの鉄球の風圧に私の風の魔法を乗せて、わざと思いっきり吹っ飛んだ。あんな状況だったけど、1人で生活してた時の生きる執念が役に立ったのかな。おかげで死ぬことだけは回避できたけど、普通に避けきれなかった分の痛みは効くし、吹っ飛んだんだからその分の痛みもプラス。魔法を使いまくった疲れもある。あと何より、最悪な光景を頭に貼り付けられたこと。
「幻覚、なの。うそなの、うそ、あんなの嘘なの」
お姉様、リコリスお姉様。あいつに見せられた、お姉様に捨てられる光景。お姉様に捨てられた時、私の2つ目の命も、終わる。
「だって、好きだから、お姉様、お姉様が」
カンナアスミ、絶対に許さない。あんな景色を、うそのお姉様を見せてきたあいつを、絶対に許さない。
「覚えてるの…………」
だからちょっとは、休まなきゃ。私は願わなきゃいけないんだから。
お姉様と、2人きりの永遠を。
【ヒナゲシ@きららファンタジア】
[状態]:疲労(中)、精神的疲労(大)、あすみへの怒り、身体の至る所への打撲及び傷跡
[装備]:ヒナゲシの弓@きららファンタジア
[道具]:
[思考・状況]基本方針:何が何でも生きて帰る。できる事ならば、お姉様(リコリス)との永遠の幸せを。
1:少し休む
2:カンナアスミ、絶対に許さない
[備考]
参戦時期はハイプリス撃破後から、神殿から捕えられる前の間。
ランドセルは最初に狙撃しようとした際に地面に置いたままです。
弓以外の支給品はランドセルに入ったままです。
◇◇◇
……ものすごい勢いで飛んでいったヒナゲシを見送る。
「……もしかして」
失敗した?あんまり良い感触じゃなかった。横凪に振るったから、魔法でガードされたのかも。というか普通に当てればあんな吹っ飛ばない。素直に頭をかち割ればよかった。まあ今更後悔しても意味はない。次見つけた時、同じ手段でキメだけは気をつければ良い。そういや襲いかかってきた時にランドセルも持ってなかったし、ヒナゲシのそれはどこかに置きっぱなしのはず。じゃあまずそれを見つけることにしよう。支給品は多い方がいいし。
「……」
早く、帰りたい。こんな無駄な奪い合いはしたくもない。早くノアには死んでほしいし、無理なら早く全員死んでほしい。私はこんな場所にいたくない。
せっかく、私を虐めた奴らのいない人生を手に入れられたんだから。私は、絶対に帰る、帰ってやる。
【神名あすみ@2ちゃんねる+魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、疲労(小)、左足に射られた跡(回復済)
[装備]:あすみのソウルジェム@2ちゃんねる+魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品1~3、基本支給品一式
[道具]:
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:ヒナゲシのランドセルを探す
2:脱出方法があるならそれで、無いなら皆殺し
[備考]
2ちゃんねるの釣りスレにて生まれた魔法少女です。設定はスレにて決定されたもの準拠ですが、細かい設定や口調は後続の書き手様におまかせします。
魔法少女のシステムはまどマギ原作通りです。魔女化は制限されていません。
ソウルジェムはランダム支給品ではない扱いです。
【ヒナゲシの弓@きららファンタジア】
ヒナゲシに本人支給。
至って普通の弓。
自身の魔法で矢を生み出し、射ることが出来る。
投下終了です。
あすみの出展がややこしいですが問題があれば修正します。
投下します
「うわぁぁぁぁぁあん!!怖いよぉぉぉぉぉ!!」
わんわんと泣き喚きながら街中を歩く幼稚園児がいた。
彼の名は佐藤マサオ。
人一倍臆病な性格であり、人が殺される姿を間近で見たショックはあまりにも大きかった。
「しんちゃん、風間くん、ネネちゃん、ボーちゃん、誰か僕を助けてよ……」
思い浮かべるのはかすかべ防衛隊の仲間達。
マサオくんといつも一緒に遊んでいる仲の良い友達の姿だった。
彼らの存在はマサオにとってとても大切な存在であり。
臆病なマサオも共に力を合わせ、困難に立ち向かえる勇気を得られた。
「でも僕一人じゃ何も出来ないよぉ……ぐすっ」
しかし今の彼はただ泣いているだけの子供だ。
そんな時、目の前に黒い影が現れた。
「あの……」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!殺さないでぇ!!殺さないでくださいぃぃぃぃ!!」
声をかけられたマサオは恐怖のあまり、相手の顔を見るよりも早く大泣きしながら土下座で命乞いを始めた。
「大丈夫、何もしないから心配しないで」
「命だけは、命ばかりは……って、え?」
マサオの目の前には刀を装備した制服姿の銀髪の少女がいた。
彼女の名は糸見沙耶香。
両手には褐色肌の赤ちゃんを抱いており、敵意の一切無い落ち着いた表情をしている。
「ほ、本当に何もしない?」
「うん、私は殺し合いなんてするつもりはないから」
沙耶香は一見無表情だが、この殺し合いを拒絶する強い意思を秘めた瞳をしていた。
最初は半信半疑だったマサオも彼女の言葉と表情を見て嘘では無いと気づいて少しずつ落ち着きを取り戻していく。
◆
外で立ち話をするのは危険が大きいため、二人はすぐ近くにあった民家を休憩所として利用することにした。
「うん、誰もいない」
「ふぅ……よかったぁ〜、怖い人が隠れてたらどうしようかと」
沙耶香の確認の元、潜伏者もおらず、安全を確信してようやくマサオの表情にも笑顔が現れる。
「その、ごめんなさい……僕、取り乱しちゃって……」
「気にしてない、誰だって怖がると思うから」
「あ、ありがとうございます。僕の名前は佐藤マサオと言います。とても助かりました」
「私の名前は糸見沙耶香。こちらこそよろしく」
マサオは自分の名前を名乗ると深々と頭を下げた。
沙耶香もまた自己紹介をしてお辞儀をした。
「ところで、その抱いてる赤ちゃんは一体……」
「道に捨てられてたけどこの子も参加者みたい。首輪が付いてるから」
「まだ赤ちゃんなのに、かわいそう……」
沙耶香の腕の中には赤ん坊がおり、彼の言う通り首輪が付けられている。
赤ん坊はまだ生後間もないのか目元や口元は小さく、可愛らしい顔をしていた。
「この子もきっとお父さんとお母さんのいる所に帰りたいだろうに……」
「心配しないで、私がマサオくんもこの子も守るから」
刀使は荒魂を祓って人を守るのが役目だ。
荒魂がいなくても沢山の命が脅かされているならそれを守るために刀を振るう。
それが私のやりたいこと。
「んんっ……」
「眠いの?じゃあベッドに行こう」
「夜中だもんね」
赤ちゃんが眠そうに目を擦らせている。
沙耶香はその姿を見て優しく微笑むとマサオと共に二階にある寝室へと連れていった。
「ふわぁ〜!可愛い寝顔だ!」
「ふふっ、そうだね」
マサオは眠る赤ん坊の顔を見ると興奮した様子で言った。
沙耶香は嬉しそうな反応を見せる彼を見て笑みを浮かべながら同意する。
「それにしても、こんな小さな赤ちゃんまで参加させられてるなんて……酷い話だよ」
「うん、この子が殺されていいはずなんて無い」
「そうだよね……だから僕もこの子を死なせないために頑張らないと」
マサオは決意を新たに拳を握った。
彼は臆病で泣き虫で裏切りおにぎりでも、目の前にいる赤子を見捨てるほど腐ってはいない。
自分よりもか弱き存在が彼の心を奮い上がらせた。
「沙耶香さん、僕は泣き虫で弱いけど一生懸命戦うよ!」
「ありがとうマサオくん、二人で頑張ってこの殺し合いを止めよう」
こうして二人は固い絆を結び、共に戦うことを誓った。
その時、どこからともなく二人の足元に向かって丸い玉が投げ込まれた。
それが何なんかと考えると同時に玉が破裂して煙が舞い上がる。
「わわわー!!」
「これは……」
二人は驚きの声を上げてまもなくして意識が闇へと沈んでいった。
◆
「あれ?ここはどこ?」
「いつの間に遊園地に……?」
辺りを見渡すと、周囲にはメリーゴーランド、コーヒーカップ、ジェットコースター、観覧車、お城と
様々なアトラクションが用意された場所に寝ていた。
そう、マサオと沙耶香の二人は気づけば遊園地に移動されていた。
主催者の手によって民家から遊園地へと転移させられたのか?
「ここから出ようマサオくん」
「う、うん」
まずは遊園地の外へ出るべく入り口を目指す二人、だが……
「あっ」
「沙耶香さん大丈夫?」
「……重い?」
腰に付けた御刀の妙法村正が異常な重さとなって沙耶香の移動を阻んでいた。
あまりの重さに沙耶香は御刀を降ろして地面に置くと。
「ウケケケケケケケケケーーーッ!」
「な!?」
「ひぃぃぃぃぃ!」
妙法村正から目と口が出現し不気味な笑い声をあげだした。
おかしくなっているのは沙耶香の刀だけではない。
「イヒヒヒヒヒヒッ!!」
「ワハハハハハハハハッ!!」
周囲の花やオプジェ達もゲラゲラと笑っていた。
「どうなってるの?」
「うわぁぁぁぁん!!怖いよぉぉぉぉ!!ひぃぃぃ!?」
花から飛び出した蔦が恐怖のあまり逃げ出そうとしたマサオの体を捕らえた。
マサオはじたばたと抵抗するも雁字搦めに縛られる。
「やだぁぁぁぁぁ!!」
「マサオくん!くっ……」
伸ばされた蔦を躱しながら沙耶香はマサオに向かって走った。
マサオを助け出そうと手を伸ばした瞬間、沙耶香のいる方向目掛けて大鎌が振り下ろされた。
「誰!?」
「ラリホーッ」
ピエロの仮面を付けたマントの怪物が空中をフワフワと飛びながら、その手に持った大鎌を振るう。
沙耶香はそれを難なく躱すが、刀を失い刀使としての力を行使出来ない現状では空中にいるピエロの怪物を打倒する術が無い。
「フフフ、抵抗しても無駄だよぉ〜〜、ここでは誰もおれを倒すことは出来ないのさ!」
再び大鎌が振るわれる。
姿勢を低くして右に飛ぶことで大鎌から回避する。
「分かるかな?ここは夢の世界なんだよ。夢の中では全てがおれの思うままなんだ、例えばこんな風に……」
「あうっ」
ヘビのように意思を持った大量のワイヤーが出現し沙耶香の体に絡みついた。
沙耶香の体は仰向けの状態で床に叩きつけられる。
そのままワイヤーによって全身を拘束され身動きが取れなくなった。
「うぅ……」
「アヒャヒャ!良い眺めだねぇ〜」
ピエロの怪物は高らかに笑うと沙耶香の元にゆっくりと降りてくる。
「沙耶香さん!」
マサオは必死にもがくが、彼の体は完全に蔦で固定されており動けない。
このままだと殺される、沙耶香は焦りを覚えた。
「ラリホー♪さぁて、これから楽しい解体ショーの時間だよぉ〜〜〜」
ピエロの怪物は楽しんでいた。
他者を圧倒的な強さで蹂躙する快楽を。
絶対的恐怖によって顔を歪ませる愉悦を。
「よぉし、特別にこの中で一人だけは生かして上げようじゃないか」
「え?」
「信じちゃダメ」
「嘘じゃあないさ。さぁ誰が生き残りたいか早く立候補するんだ」
ピエロの怪物が鼻歌を歌いながらマサオと沙耶香それぞれ順番に指を差す。
二人の命を握っているのはおれなのだと誇示するからのように。
「マサオくんの、マサオくんの命は助けて」
このままでは二人共殺されてしまう。
それならどちらか片方でも助かる手段を取るしかない。
「そうかそうか。それで君はどっちだい?」
「どっちって……?」
「君が助かりたいのか、あの子を助けたいのか選ぶといい」
「僕は、僕は……」
沙耶香さんを助けたい、でもそれを選ぶと僕は殺されちゃう。
そんな恐怖がマサオくんの決断を鈍らせた。
「答えない場合は二人共殺しちゃうよ〜〜〜ん♪」
大鎌がマサオの喉元へと置いた。
死への恐怖が目前まで迫られたその瞬間、マサオくんは大声で答えた。
「僕を!!僕を助けてください!!」
「ウフフフフ、約束だ。君は解放してあげよう」
マサオを拘束していた蔦は解かれ、自由の身となるマサオ。
すぐさま、沙耶香の元へと駆け寄ろうとするが
「これから彼女の処刑タイムだ。邪魔をしちゃあいけないよ」
「ひぃっ!」
マサオの進路を大鎌で塞いで通行を止めると、ゆっくりと沙耶香の元へと近づいた。
「さぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!種も仕掛けも無い解体ショーの始まりだよぉ♪ラリホォ〜〜〜」
「うわぁぁぁん!!ごめんなさい沙耶香さぁぁぁん!!」
「大丈夫、マサオくんは悪くないよ」
周囲のオプジェ達の歓声が響き渡る中、大鎌が沙耶香の制服を引っ掛けた。
「まずは邪魔な布から切り裂いていこうねぇ♪」
ビリリリッと音を立てて破けていく服。
沙耶香は羞恥心を感じながらも抵抗できない自分に歯噛みする。
「まずは上を脱がせてぇ〜〜」
上半身を覆う下着も大鎌で切り裂かれ、白い肌が露わになる。
小さいながらも確かな膨らみのある歳相応の乳房が晒された。
「次は下半身を露出させてぇ〜〜」
スカートを切り裂いて、更にパンツも切り裂かれたことでピタッと閉じたすじも晒された。
生まれたままの姿にされた沙耶香は羞恥心による苦痛や。
服を切り裂く過程で刃先が何度も皮膚を突き刺した事による出血の痛みで目から涙が溢れる。
(怖いよ。舞衣……助けて……)
「ウフフフフフフフ♪泣くのはまだ早いよ。本番はこれからさ」
ワイヤーが沙耶香の両足を引っ張り、左右に広げた。
「いや、やめてっ」
「ほぉれ、見えるかなぁ〜〜?これが女の子の大事な部分だよぉ〜〜」
秘部が露わになり、恥ずかしさと恐怖で沙耶香の頬が赤く染まる。
「さて、ここで問題です。今から何が始まるでしょうか?」
「え?うぅ……」
突然のクイズに戸惑う沙耶香。
その答えはすぐに分かった。
「正解は、これでこの子の処女を散らすことでしたーーっ!アハハッ!」
「ウケケケケケケケケケーーーッ!」
ピエロの怪物の手元には顔の付いた不気味な妙法村正があった。
鞘を外して刃の部分を剥き出しにすると
沙耶香の秘部に刃をあてがい。
「いや……」
「さぁ、ショータイムさぁ〜〜♪」
ズブブッと刃を挿入した。
「いっ、いやぁぁぁっ!!」
「あぁぁぁぁん♪気持ち良いよぉぉぉん!!さぁもっと声を上げて泣き叫ぶんだぁぁぁぁ!!!ラリホー♪ラリホー♪」
沙耶香の膣内に刀がどんどん入っていく。
押し込まれた刃は膣壁を切りながら奥へと進み、やがて子宮口まで到達する。
ピエロの怪物は沙耶香の泣き叫ぶ声に悦を得ながら、更に力を込めて刃を押し込んだ。
「あぎぃぃぃ!!ああっ!!ああああああぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!」
飛び出した刃が子宮を突き破り、串刺しとなった。
腟内から大量の血が溢れ出し、あまりの激痛に沙耶香は涙を流しながら絶叫する。
こんな大声を出したのは生まれて初めての体験だった。
「いだい、いだい、いだいよぉ……」
「うわぁぁぁぁ!沙耶香さんがぁぁぁ!」
「よぉく見ているんだよ〜。こうなったのも全て君の選択のせいなんだからさ〜♪」
「ううっ……沙耶香さん……」
ピエロの怪物が刀をグリグリと動かす度に沙耶香の体は上下させられ、刀が動く度に傷口が広がり、肉が裂ける。
それに伴い、出血の勢いも増し、沙耶香の股は真っ赤に染め上がった。
「痛いよぉ、抜いてぇ、お願いだからもう止めてぇぇ……」
「ダメダメダメェ〜〜ッ!まだまだ終わらせないよ〜〜ん♪」
「助けて舞衣……助けてぇぇ!!舞衣ぃぃぃぃ!!舞衣ぃぃぃぃぃ!!」
一流の刀使と言っても沙耶香はまだ13歳の少女である。
あまりにも残虐な責め苦を受け続け、彼女の心はもう限界に達していた。
「助けて舞衣ぃぃぃ!助けてよぉぉ!!」
「うるさいなぁ〜〜。ちょっと黙ってよ〜〜」
「うぐっ!?ううっ!」
沙耶香の口にワイヤーが巻き付き、喋ることさえ封じられた。
「さぁて、名残惜しいけど、そろそろクライマックスだッ!ラリホ〜〜〜♪」
「んんっ!!」
「ジャパニーズ・ハラキリショーだッ!!」
ピエロの怪物は大鎌を沙耶香のお腹に押し当てると、そのまま一気に切り裂いた。
「んんんんんんんんんんんっっっ!!!」
「沙耶香さん!!沙耶香さぁぁぁぁん!!」
体内から腸がまろび出て、血液が大量に飛び散り、周囲は沙耶香の血で赤く染まった。
「アハハッ!アハハハッ!凄い、綺麗だよ沙耶香ちゃ〜〜んッ!!まるで赤いバラみたいだよぉ〜〜ッ!!」
「むぐうぅぅぅぅっ!!!」
沙耶香の悲鳴はもはや言葉にならず、ただの叫びとなって口から漏れ出すだけ。
「フフフ♪とても楽しかったよぉ。じゃあお別れだ♪」
(舞衣……舞衣……)
薄れゆく意識の中で沙耶香が最期に見たのは、とても大切な友人である柳瀬舞衣の姿。
(舞衣、さよなら……)
そこで沙耶香の意識は刈り取られた。
「うう……沙耶香さん、沙耶香さん……」
うつむいて泣き続けるしか出来ないマサオ。
彼の前に一仕事を終えたピエロの怪物が近寄る。
「ほら〜〜君のお友達の沙耶香ちゃんだよぉぉ〜〜、ラリホー♪」
「へっ?ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
ピエロの怪物が手に持っているのは先ほど殺害した沙耶香の生首だった。
まるでボールを渡すかのように生首を放り投げるとマサオは一目散に逃げ出した。
「君の代わりに犠牲になったのに受け取らずに逃げるなんて酷いじゃあないかぁ〜〜〜」
「やだぁぁぁぁぁっ!!!」
背後から聞こえる声に恐怖しながら走るマサオ。
だが、逃げ切れるはずもなくあっさりと追いつかれてしまう。
「ひっ、来ないでぇぇぇ!」
「そんなこと言わずに受け取ってくれよ〜〜♪」
沙耶香の生首を持ったピエロの怪物は
まるでキスを強制させるかのように生首をマサオの顔へとグリグリと押し当てた。
「嫌ぁぁぁーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「ホラホラホラホラホラホラホラ♪」
すると沙耶香の頭部からぼたぼたと何かが滴り落ちた。
落ちた物がモゾモゾと蠢いている。
それは大量の蛆だった。
目から、口から、鼻から、耳から、首の切断面から
ありとあらゆる穴から次々と蛆が出現し地面へと落ちていった。
「あ」
恐怖の限界に達したマサオはそこで意識を手放した。
「フフフフフフフ♪気絶しちゃった。それじゃあ彼には一つ、細工をしてあげようか」
◆
「あれ?もしかして僕寝ちゃってたのかな?」
気づくとマサオは部屋の床で目を覚ました。
知らないうちに寝落ちしてしまったようだ。
「疲れていたのかな?それにしても何だか怖い夢を見ていたような」
どんな夢だったのは思い出せない。
だけどものすごく恐ろしい夢だった気がする。
「そうだ!沙耶香さん、沙耶香さんは……」
沙耶香を探しに行こうと動いた所でぴちゃり、と液体を踏みつけた。
「へっ?」
その液体を見て血だと言うことに気づいたマサオはマヌケな声をあげる。
血の垂れている方向をゆっくりと目で追うと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「う、うわああああああああああああああああっっっ!!!」
マサオが絶叫をあげる。
そこには見るも無残な姿に変えられた沙耶香の死体があった。
衣類は全て切り裂かれ、全裸の姿に晒されて。
腹部からは腸が零れ落ち、股間は入念に斬り刻まれ。
膣のあった部分はぽっかりと大きな穴が開けられ。
首は切断されており、頭部は胴体から少し離れた位置に転がっていた。
「どうして……?僕が眠っている間に何がどうなってるの……?」
突然の自体に現状を理解出来ないマサオ。
唯一分かっているのは、マサオが眠っている間に何者かによって沙耶香が殺害されたという事実だけだ。
「このままじゃ僕も殺されちゃう!!に、に、に、逃げなきゃあ!!」
次に殺されるのは自分なんだと考え、恐怖したマサオはすぐさま別の場所へ逃げる準備を始めた。
「そうだ!君は僕一人でも守って上げるからね!」
マサオはベッドに寝かせた赤子を抱えて民家から抜け出した。
しんのすけもお兄ちゃんとしてひまわりを守ってきたんだ。
僕も見習ってこの子を守らなきゃいけない。
臆病な少年は僅かな勇気を振り絞って走り出した。
【糸見沙耶香@刀使ノ巫女 死亡】
【佐藤マサオ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:精神的疲労(大)、赤子への庇護欲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この赤ちゃんは僕が守る!
1:沙耶香さんを殺した殺人鬼から逃げるべく、ここから離れる。
[備考]
※デス13の術によってマニッシュボーイへの庇護欲が湧いています。
◆
(ウケケケケケッ!!バカなガキだッ!あの女を殺したのはオレなんだよッ!)
マサオと沙耶香を夢の世界に引きずり込み、沙耶香を惨殺したのは他の誰でもない。
赤子であるマニッシュ・ボーイの仕業であった。
生後11ヶ月ながら彼は生まれついての天才であり、大人顔負けの高度な頭脳と、狡猾な悪意を持っている。
彼のスタンド、デス13は眠った対象を夢の世界に引きずり込む能力であり。
夢の中にある物なら全て、自分の思い通りに操ることが出来る無敵のスタンド能力だ。
彼はこっそり隠し持っていた支給品である『エニグマの紙』に収納された『ねむりだま』を使い。
マサオと沙耶香を眠らせた上で犯行に及んだ。
元より彼は端から殺害するのは沙耶香と決めていた。
マサオはいかにも頭と悪くマヌケそうで簡単に術にハマると踏んだからだ。
わざわざ時間をかけて嬲るような真似をしたのは、こんな殺し合いに巻き込まれた不満を解消するためのただの憂さ晴らしに過ぎない。
(おかげでだいぶスッキリしたぜ♪あとはコイツを上手く利用してオレが優勝させてもらうぜ♪)
まるで子供が無邪気に虫を踏み潰すような感覚で沙耶香を惨殺したマニッシュ・ボーイ。
彼は殺人行為に関して全くの罪悪感を持ち合わせていない恐ろしい赤子である。
【マニッシュ・ボーイ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:エニグマの紙×3@ジョジョの奇妙な冒険、ねむりだま×2@スーパーマリオRPG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:マサオを利用して他の参加者を殺害する。
[備考]
※デス13の術によってマサオに庇護欲を植え付けました。
※ねむりだまはエニグマの紙に収納されています。
【エニグマの紙@ジョジョの奇妙な冒険】
マニッシュ・ボーイの支給品。
制限によって包めるのは支給品のみである。
【ねむりだま@スーパーマリオRPG】
マニッシュ・ボーイの支給品。
使った対象を眠り状態にする。
【妙法村正@刀使ノ巫女】
糸見沙耶香の支給品。
糸見沙耶香の御刀。元は佐賀藩初代藩主、鍋島勝茂の愛刀
※民家に糸見沙耶香の惨殺死体が放置されています。
※民家に糸見沙耶香とマニッシュ・ボーイのランドセルが放置されています。
投下終了です
投下します
ーーーー
ひとりぼっちには飽き飽きなの
繋がっていたいの
純真無垢な想いのまま Loud out !
ーーーー
「アァアアアアアアーーッ!!!」
紅白の髪を持つ少女、ウタは泣いていた。
ずっと会いたいと思っていたフーシャ村の幼馴染み、ルフィの死は、元から追い詰められていた彼女には重すぎた。
加えて、この殺し合いに参加させられる直前、彼女は育ての親であるシャンクスに、音楽の島エレジアに置き去りにされた。
しかも、そのエレジアはシャンクスの手によって略奪され、滅亡させられていた。
音楽を愛し、歌を生き甲斐にしていたウタには耐え難い現実、そこに追い討ちをかけるように訪れたルフィの死。
明らかにウタの許容範囲を越えており、元からメンタルの強くないウタの心に耐え難い傷を与えていた。
「うぅ……グスッ、あああぁぁぁぁ--!!」
感情のままに大声で泣き叫ぶウタ。この場は無情な殺し合いの地で、泣いても何も解決せず、ただ人目を引くだけの愚策だと理解できる理性は、もはや彼女にはない。
案の定と言うべきか、やがてその場に参加者の一人が訪れた。
「やぁやぁ、君、派手にないちゃってまぁ…大丈夫?」
いつの間にか塞ぎ込むウタの横に立っていた参加者。
トップハットを被ったカートゥーン調の少女が、怯えるウタに手を差し伸べた。
ーーーー
ウタは、ハムプリンセスと名乗った少女…彼?に、全て打ち明けた。
父親のシャンクスがエレジアを滅ぼし、自分を島に置き去りにした事。
見せしめとなったルフィが大切な幼馴染みで、本当に大切な相手だった事。
普通なら話さないような事も、止めどなく口から溢れていた。
初対面であるにも関わらず、少し言葉を交わしただけで、ウタはハムプリンセスに信頼を抱いていた。
「そうかそうか、パパがそんな事を……大変だったね」
ウタが落ち着くのを見計らうと、ハムプリンセスは次々と慰めの言葉を口にした。
ーー仕方なかった。
ーーあの場でできる事があっただろうか。
ーー君のせいじゃない。
涙ぐみながら語られる言葉は、思い遣りに満ちていた。
少なくともウタはそう感じた。
出会ったばかりの他人の言葉なのに、彼の言葉は不思議とウタの心に染みた。
「ル、ルフィは大切な幼馴染みで…でも、でも死んじゃった…っ!」
多少は落ち着いたとは言え、再び悲しみの渦に沈む歌をウタを痛ましそうに見るハムプリンセス。
「わ、わたし、どうすればいいの……もう、わかんないよ」
「大丈夫、方法はあるとも!」
嘆くウタをハムプリンセスは優しく抱き締め、こう口にした。
「優勝して、あの男の子……ルフィだっけ?を生き返らせれば良いんだよ!」
軽い調子で放たれた言葉にウタは固まった。
優勝、優勝とはつまり、人を殺して、願いを叶えると言うことか。確かにあの男はそんな事を言っていた気がする。
この優しい人が、そんな恐ろしい方法を口にするとは信じられなかった。
「ん?別に悪い事じゃないと思うけどなぁ。夢を叶えるためなら、手段を選ぶべきじゃないと思うよ」
ウタの同様を察知したのか、ハムプリンセスは聞き分けのない子供に言い聞かせるような口調で諭した。
「それに、人を傷つける事が嫌なら、『この殺し合いで死んだ人を全員生き返らせて』ってお願いすれば良いんだよ。それで万事解決さ」
そう言って、にこやかに微笑むハムプリンセス。
ウタは衝撃を受けた。なるほど、確かにそういう方法もある。
誰かを傷つけても、それを帳消しにできる魔法のような手法が。
「もしも、君がその選択をするのなら、俺は手を貸そう。どうする、ウタ?決めるのは君だ」
「……わ、私はーー」
プリンセスの甘い囁きに、ウタの心は確かに揺れた。
未来の歌姫の選択はーー
【ウタ(幼少期)@ONE PIECE FILM RED】
[状態]:健康、精神動揺
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:未定
1:優勝すれば…ルフィも皆も生き返る?
2:どうすればいいの……シャンクス……
[備考]
音楽の島エレジアに置き去りにされた直後からの参戦です。
ーーーー
苦渋するウタ、その姿をハムプリンセスは愉しそうに見ていた。
優しいプリンセス、しかしその本性は八方美人の悪魔。
P♂はウタに対して善良で、社交的に振る舞った。
かつて自らの創造主--MJBにしたように。
しかし、その振る舞いはプリンセスの善良さからではない。
才能ありすぎて常に奪い合いの身、故に愛される身。
ハムプリンセスの目的はただひとつ、インターネットを征服し、その頂点に立つことである。
自身を生み出したMJBを取り込み、その目論みはほぼ達成したと言える。
しかし、まだまだ足りない。もっと成功を、崇拝を、栄光が欲しい。
かつて自らの親が望んだように、P♂は成り上がりたいのだ。
そうあれかしと望まれたが故に、他者を利用し踏み台とする事に躊躇がない。
だからこそ、この殺し合いでも他人を利用し、最後は優勝するつもりであった。
そうした打算もありウタと接触したのだが--
(うーん…何だか不思議な気分。この子どうも他人に思えないんだよね)
ハムプリンセスはウタに不思議な親近感を覚えていた。
自身を産み出した創造主すら利用し、手中に納めたP♂が、今さら誰かを利用する事に躊躇は持たない筈なのに。
だが、それでも、もしもこの子が願いのために犠牲を選ぶならーー少しは手を貸してやろう、その程度の情が確かにあった。
ーーーー
自分の生み出したものに殺される
Being killed by my own creation
そんなの芸術家として本望だろう
For artists, that’s our dream
きゃわな Lover とびきり育む今夜も
Kawaii Lover even tonight when I raise you You are master, I’m slave
You are master, I’m slave
逆転する Life is strange
How the tables have turned Life is strange!
【ハムプリンセス@トップハムハット狂】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝したい
1:優秀な取り巻きが欲しい。
2:ウタが殺る気なら手伝ってあげる。
[備考]
「Princess♂」、「Mister Jewel Box」からの参戦です。
投下終了です
投下します。
(まずはこのランドセルの中身を調べよう。
支給品が入っているみたいだ。)
蝋燭の火が灯る、石造りの塔の中。
参加者の一人である少年•ぽぽは周辺を見渡し、移動しながら、自分に支給されたランドセルの中身を調べ出す。
(うーん、中身は水入りのペットボトルにペンポーチ…)
基本支給品の内、始めにラベルやパッケージ、説明書がないものを一通り確認する。
…のだが、その後すぐにぽぽは奇妙な行動をとる。
「メモ、タブレットの使い方…」
それは突然、基本支給品であるメモ帳の表紙や各支給品の説明書等に書かれている文字を基本•ランダム支給品問わずに一語一句読み上げ始めるといったもの。
それも移動しながらだ。
この殺し合いの場に放り出された彼が最初にとった行動は支給品の確認。
彼は殺し合いには乗らず、どうにかして元の世界に帰還しようという考えを持っていた。
だが、殺し合いに巻き込まれる前にも、元々住んでいた世界とは別の異世界に同世界の住人数名と共に転移したものの、奇跡的にも全員で帰還出来た経験があり、同じ参加者達を放っておけず、どうにかして助けて共に帰還させたいという責任感も抱えている。
─のだが、彼の移動しながら支給品の文字という文字を読み上げる奇行はまだまだ続きそうである。
【ぽぽ(主人公)@カブトクワガタ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:他の参加者達と共にそれぞれが元いた世界に帰還する。
1:支給品の説明書やパッケージ等に書かれている文字を読み上げて確認する。
2:移動しつつ他の参加者を探す。
3:出来れば、殺し合いに反対する参加者と合流したい。
4:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は少なくともエンディングで一度元の世界に帰還した後。
投下終了です。
投下します
こことはとある公園。
シンボルであるかのように中央に植えられた大木の影に身を隠すようにして、3人の参加者が情報交換を行っていた。
ネギ・スプリングフィールド。
ユーノ・スクライア。
真ヶ土翔太。
偶然にも彼ら3人は全員が「魔法使い」であり、また異世界の存在を知っていた。
ゆえに非現実的なこの状況にも順応が早く、またお互いの常識や感性の違いもすんなりと受け入れることができた。
「二人の話を聞く感じだと、この中で一番弱いのは僕っぽいなあ……。
一番年上なのに、情けない……」
そう言って、翔太が天を仰ぐ。
「いや、それを言ったら僕は攻撃魔術をろくに使えないし……。
ネギにはとてもかなわないよ」
続いて口を開いたのはユーノ。
「そんな、僕なんかまだまだ未熟で……」
そしてネギが、汗をかきつつ謙遜する。
基本的に3人とも「いい子」であるがゆえに、彼らの会話は終始こんな感じである。
こんな3人が殺し合いに乗るはずもなく、当然のごとく彼らの意思は「主催者の打倒」でまとまっていた。
「死者の蘇生なんて、そこらの魔法使いができる芸当じゃない。
本人の力なのか、マジックアイテムの類なのかはわからないけど……。
乃亜は僕らなんか足下にも及ばないほど強大な力を持ってるはずだ」
「それは僕も同感だね。
どうにかして力を無効化、もしくは弱体化しないと、反逆したところで返り討ちに遭うだけだ」
「首輪を外す方法も見つけないとね。
魔力式なのか機械式なのか、あるいは全く違う未知の力なのか……。
まずは分析するところから始めないと」
主催にあらがう者として、模範的な会話を続ける3人。
だがその会話は、その場に現れた新たな参加者によって中断することになる。
「ククク……。雑魚がゾロゾロと集まっているようだな」
現れたのは、目つきの悪い黒髪の少年。
敵意を隠そうともしないその少年に対し、3人はすぐさま臨戦態勢を取る。
「いちおう確認しておくけど……。
君は僕らと戦うつもり?」
「もちろんだ! 魔界の王子、レイド様に葬られることを光栄に思うがいい!」
その返事を聞いた瞬間、ユーノが動く。
「チェーンバインド!」
「何ぃーっ!?」
ユーノの手から放たれた魔力の鎖が、レイドと名乗った少年の体に絡みつく。
自分の台詞に酔って無防備になっていたレイドは、あっけなく体の自由を奪われた。
「おまえ、ふざけるな! この俺様に……」
動揺しつつ、もがくレイド。
その間に、ネギが支給された杖を構えて呪文を詠唱する。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル
光の精霊11柱。集い来たりて敵を討て。『魔法の射手』!」
杖の先から放たれるのは、光の矢。
それが次々と、レイドに命中していく。
「あばばばばばばーっ!」
まぬけな叫び声を上げ、レイドは木の葉のごとく宙を舞った。
「意外と容赦ないな、ネギ……」
「僕だってこういうのは好きじゃないけど、ここは殺し合いの場だからね。
気を引き締めていかないと」
若干引いている翔太に対し、ネギは真剣な面持ちで答える。
「まあ、正論だな……。
僕だけ何もしないのもあれだし、睡眠魔法でも使って……」
そう言いながら、倒れたレイドに歩み寄る翔太。
だがその途中で、レイドが勢いよく立ち上がった。
「ゲッ! 意外にタフだぞ、こいつ!」
「フッ、少し隙を見せてやっただけで、こうも必死に攻撃してくるとは。
よほど俺が怖いようだな!」
威勢のいい台詞を吐くレイドだったが、実際のところそれはハッタリだった。
ネギの魔法でかなりのダメージを受けており、正直なところ立っているだけでもしんどい状態である。
(さいわい、今の攻撃で拘束は解けた!
レイド様としては非常に情けないが……ここは逃げを打つしかない!)
レイドは、手早くランドセルから支給品を取り出す。
それは、スイッチが一つついた煉瓦模様の箱だった。
「くらえ! ダークネスバニッシュ!」
適当に技名っぽく叫びながら、レイドはボタンを押す。
次の瞬間、3人はリアクションをする間もなくその場から消え去った。
「近くにいる参加者を、ランダムで会場内のどこかにワープさせる」。
それが、レイドの使った支給品の効果だった。
「敵は全ていなくなった……。つまり、俺の勝ちだな!
アーハッハッハ!!」
根本的な解決になっていないことから目をそらし、レイドは高らかに笑った。
「よし、初戦を勝利で飾ったことだし……。
ゆっくりと休んで、次の戦いへの英気を養うか!
別にダメージが辛くてたまらないわけじゃないぞ!」
誰に向けたものなのかわからない言い訳を口にしながら、夜の闇へと歩み出すレイドであった。
【レイド@魔法陣グルグル】
[状態]ダメージ(中)
[装備]なし
[道具]基本支給品、スポーン地点ばらばらくん(残り使用回数2回)@魔界の主役は我々だ!、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:ゆっくり休んで、ダメージを回復する
[備考]
※参戦時期は、魔王ギリが倒された後
【ネギ・スプリングフィールド@魔法先生ネギま!】
[状態]健康
[装備]梟の杖@SDガンダム外伝
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜の打倒
[備考]
※参戦時期は、修学旅行編終了後
※会場のどこかに飛ばされました
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の打倒
[備考]
※参戦時期は、A's終了時点
※会場のどこかに飛ばされました
【真ヶ土翔太@小林さんちのメイドラゴン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の打倒
[備考]
※会場のどこかに飛ばされました
【スポーン地点ばらばらくん@魔界の主役は我々だ!】
白尾師団のキリヤンが開発した魔具。
視認できる範囲にいる対象を任意で選択し、指定範囲内のどこかに強制ワープさせる。
うっかりミスなどで対象を選ばずにボタンを押してしまった場合、自分も含めた周囲の生物全てがワープしてしまう。
制限により、使用回数は3回まで。
【梟の杖@SDガンダム外伝】
ムンゾ帝国に奪われた、アルガスの神器の一つ。
魔力を持つ者が手にすることで、魔力を増幅することができる。
騎士バウが持っていたが法術士ニューガンダムが奪還し、以後の戦闘で使用した。
投下終了です
投下します、以前辺獄ロワのコンペに投下した候補話から一部流用をしています。
また登場人物の内1人がキャラメイク系のゲーム出典な為、独自解釈や捏造している部分もあります。
「…しかし…やはり慣れないなぁ、ああいうのには…気だるい」
会場の一角にて、碧眼で俗に言うゴスロリ衣装を着た小柄で幼めの金髪ツインテールの少女は、この殺し合いに巻き込まれる前の出来事と先程の惨劇を思い返す。
(議事堂内のドラゴンとマモノを狩り尽くして、疲れ果てて倒れたと思ったら…気付いたらいつのまにかあの場にいて、あの乃亜という奴の説明と…ルフィとエースの二人の首が飛ぶところを見せられた。なにもできないまま、"また"目の前で命が奪われた。
…とにかくそれで気付いたらこうだ…)
「…まったく」
気怠げそうにため息を吐く少女。見た目からは想像がつきにくいがこう見えて彼女は、マモノと外宇宙から襲来してきたドラゴンの殲滅を目的とした特殊機関・ムラクモ…その戦闘班である13班の立派な一員であり、Sランクの才を持つ異能力者にして、星の意思がーーーー地球が産み出した自己防衛用のシステム的存在。そのひとつである狩る者でもある。
最も狩る者としての才能を生まれつき持っているだけで、当人はあくまで一般の出身なのだが。
「寝起きザマにあんなの見せられたら、思い出したくないものまで頭に浮かんでくるじゃないか…」
元の世界で彼女は、2020年とその1年後の2021年の2度に渡る世界規模のドラゴンの襲撃とそれにより勃発した大戦を体験している。2020年の戦いでは襲来したドラゴンを統括する7体の帝竜と、その帝竜達の元締めであった第3真竜・神体ニアラを撃破。
そして2021年の戦いにて再び招集。1年のブランクとニアラ戦での後遺症もあり弱体化しつつもドラゴンやマモノを討伐して行き、帝竜の内4体を撃破し戦いの中で力を取り戻していっていた。
しかしそんな中、拠点としていた国会議事堂に第5真竜フォーマルハウトが突如現れ強襲し、これを協力者達の犠牲を払いながらもどうにか撃退した段階から彼女は殺し合いへと巻き込まれた。
…2度の戦いの中で彼女は、沢山の死を目の当たりにして来た。
ムラクモ選抜試験の候補者として抜擢され受けた試験の際に、ドラゴンの襲撃により自分達以外の殆どの候補者は死に、自身も全治1ヶ月の重傷、その間意識不明の状態に陥る。
その後13班として戦う中でも、死体を何度も見た。助けられず目の前で命を取りこぼす事もあった。映像や通信越しで、ただ命が消え行く様を見ている・聞いている事しかできない時もあった。
自分達ムラクモを先に行かせる為に電磁砲台を押さえようとした結果、焼き焦げて死んでいった自衛隊員達の遺体。音で死体を操り、死後の尊厳をも踏み躙った帝竜ロア=ア=ルア。ムラクモのトップでありながら人を捨て裏切り殺戮を繰り広げた人竜ミヅチ。鱗粉により人間同士で同士討ちをさせ殺し合わせる策を取った悪辣な帝竜スリーピーホロウ。帝竜ゼロ・ブルーにより氷漬けにされた人々。
ニアラも撃破こそ出来たものの、愛する者を解き放ち救う為に竜へと転じる事を選んだ協力者の身を挺した奮闘と、班内から犠牲者を出し更に自分達も浅くはない傷を負いようやく手にした勝利なのであった。
1年後の戦いでは、地下水を超強酸の一万倍以上の強さの酸性雨に変換して降らし多大な被害をもたらした帝竜オケアノスとその酸性雨によって、助けようとした少女達の目前で間に合わず溶けてこと切れた老人。絶望し少女達の目前で酸性雨の水溜りに自ら身を投げ命を絶った女性。フォーマルハウトの侵攻と共に議事堂内に広がった黒いフロワロの瘴気を押し留める為、マモノとドラゴンが大量にいるなか隔壁を手動で降ろしに行き命を落とした決死隊達と、ムラクモ総長の座に就いていたエメルが、フォーマルハウト相手に時間を稼ぎ散ったその一部始終を…通信越しに聞いてる事しか出来ずにいた自分達。
ルフィとエース、二人の幼き少年が惨殺されそれを嘲笑する乃亜の姿を見た少女の頭の中にはそれら救えなかった、助けられなかった過去が浮かんだ。
ーーーー
『…これから何が起ころうと、お前たちは決して、絶望するな』
「…私が元は一般人なのは知ってただろうに、無茶を言ってくれるなあ、本当…」
フォーマルハウトが攻め込んで来た時に、エメルに言われた事の一部を脳裏に浮かべた少女はまた…ため息を吐きつつ思考を切り替えようとする。
(あの乃亜って奴は、恥ずかしい女(人竜ミヅチ)やドラゴン共の同類…って考えるとしよう。人を人とも思わない、酷い奴だ。
『例え不死の異能者でも確実に殺せる特別なものさ』と、そうあいつは言っていた…そんな物が作れる技術があるのなら、平和な方向に使ってくれればいいのになぁ…それならもう少しは私も、ゆっくり眠れるんだが。
…とりあえず、どうするか…殺し合いに乗る道も、抗う道も面倒極まりない。…生き返らせたい奴は……いや、それをしても喜びそうな奴はいない。怒られるか責められるまであるなぁ…なら、仕方ないか)
少女は先程乃亜がしてみせた、一度殺した筈のルフィを蘇生させた事を思い出し一瞬優勝を目指す方へと心が傾きかける…も、それを振り払う。
彼らはそれを望まないだろうし、そもそも蘇生させたからといってーーそれで乃亜が自分達を見逃すだろうか?ルフィやエースを殺し敗北者として嘲笑う非道な行為を平然と行うような男が、優勝者を素直に見逃すようには、彼女には思えなかったのである。
(…心の底から面倒だがとりあえずは、みんなが巻き込まれてないか探して、殺し合いに乗ってない他の参加者と合流しつつ…この首輪の現物を手に入れて、解析でもしておきたいな。これがある限りは、乃亜の機嫌や一存次第でいつでも殺されかねないし、おちおち寝てもいられない)
少女は首輪に触れた後、ひとまずの方針を定める。少女の現在の職業はハッカー…情報技能Sランクの異能力者である。異能抜きでも、機械…メカの類いの扱いには慣れているのもあって、首輪の回収と、解析による解除を行いたいと彼女は考えていた。
またハッカーは直接戦闘よりも敵の肉体と思考のハッキング…それに仲間の補助・サポートを得意とする職業であるが為に、彼女は殺し合いに乗っていない他参加者との合流も視野へ入れる。
(まあ…この殺し合いに抗うと決めた以上は、できるだけの事はやるさ)
「それはともかく、何が入ってるのか…見ておくか。最低限自衛くらいは出来るのがあると良いんだが…」
少女は他の参加者を探す…前に、ランドセルの中に何が入っているのかを確認する事とした。中身を確認していくと…。
「…へぇ、悪くはないな」
ハッカーが使用する武器である戦輪…それも一定確率で相手に睡眠効果を与えるマインスイーパーが入っていた。
「これでとりあえず、襲撃されて何もできないまま殺される…なんて事態になるのは防げるか。他には……」
少し安堵した様子のまま、ランドセルの中身を取り出していく少女だったが、その中にあった一つの支給品を見つけ手に取る。
「……やっぱり、あいつ(乃亜)はドラゴン共や恥ずかしい女の同類と見たほうが良さそうだ」
少女が手に取った支給品はチョコバー。自分達を…相手からすればひとまわりは年下であった少女の事も、センパイと慕ってくれていた後輩の少女雨瀬アオイの大好物だったお菓子。
人竜ミヅチによってアオイが無残にもハラワタを丸見えにされ殺された様を、少女達は映像越しに見ている事しか出来なかった。アオイ達が作戦に従い別働隊として行動してたが故に…殺戮された都庁の避難民達も、アオイの事も…守ろうと戦う事すら出来なかった。その日以降少女は、チョコバーを見る度に在りし日の彼女の事と…その凄惨な最期を思い出してしまい、食べようとしても出来ないまま…今日へと至る。
そんな少女からすれば、口ではランダムにアイテムを支給すると言っておきながらこれを自分のところへ支給した乃亜は…悪辣に映ったのであった。
ーーーー
チョコバーを手に取ったまま、少女は暫しぼーっとしていた。
「…おーい、どうしたんだー?」
だが、(彼女からすれば)突如聞こえてきた声に反応し…マインスリーパーを装備し反射的に構え臨戦体勢に入る。
(他の参加者?…しまった。すぐ動くべきだったのに…近付かれてたのに気付けず、なんてザマだ)
内心で自嘲しつつ、臨戦体勢を崩さない少女の目には…自分より少し大きめで、落ち着きのなさそうな日本人の少女の姿が写る。
一方日本人の少女の方はというと、直感で目前の相手から警戒を向けられてると察し自分が殺し合いに乗る気はないと説明しようと試みた。
「とりあえず落ち着けって、タマは殺し合いに乗る気はないから安心しろ」
「…本当にか?」
「乗る気あったら、声かける前に仕掛けてるぞ」
「…それもそうだな。よく考えたら…そっちの方が面倒が無い。…お前の名前はーー」
「土居球子。呼び方はタマって呼んでくれタマえ!
タマはあの乃亜って奴にムカついてんだ!」
「その気持ちは…私もわかるさ。
それにこっちとしても同行者は欲しかったからな。…とりあえずお前を信じてみる事にするよ…タマ」
少女の返答を聞いた球子はとりあえず誤解は解けたと思い、そしてまずは互いの情報を…とまで考えた所で、相手の名前を聞いてなかった事に気付く。
「そーいや、お前の方の名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「私か?……チェルシーって、そう呼ばれてるな」
「そっか!よろしくな、チェルシー」
その後、互いに名乗ったのもあって改めて、情報を交換する事となった…ものの、互いの認識に齟齬があるのが判明した。
「お前の話だとドラゴンの襲撃ってのが2020年とその1年後だから…それはタマ達からしたら未来の話だけど、ムラクモ?聞いたことないぞ。大体四国以外は…たしか2015年のバーテックスの襲撃で……」
「私も勇者に大社、それにバーテックスとやらは聞いた事がないな。そんな出来事が過去に起こってれば、政府とも関わりがあるムラクモのデータベースに残ってる筈……もしかするとタマと私は、この殺し合いに呼ばれた時間だけが異なってる訳じゃない…?」
「えーと…つまり、どういうことだチェルシー?教えタマえ」
「世界自体が違うって事さ。私が元居た世界とタマが元々居た世界は全くの別物になる。
…突然現れた化物に人類が滅ぼされそうになってるって、嫌な共通点はあるがな」
「なんて言うか、小説みたいな話だなー…死んだはずのタマが今こうして生きてる時点で、大概な気もするけれど」
最もこれにより、互いに別の世界の出身だという情報を共有する事が出来たのであった。
ーーーー
「私は仲間たちが巻き込まれてるのなら合流しようと思ってるが…タマはどうなんだ?」
問いかけるチェルシーに対して…球子は答える。
「タマも、巻き込まれてるんなら合流したいな。今こうして、タマが生きてるって事は…あんずもおんなじように巻き込まれて、生き返ってるってのはあり得ると思うんだ。だから若葉達とも、あんずとも…合流できるならしたい。…巻き込まれてないのが一番だけどな!」
「じゃあ、巻き込まれてた場合は互いの知り合いを探しつつ…首輪のサンプルをどうにかして手に入れて、私のハッカーとしての能力で解析して解除方法を探る。それでいいな?」
「おう!戦いになった時は、タマに任せタマえっ!!」
「なら、首輪の解析だけでなく後方支援も任せてもらおうか。…私はやればできる子なのさ」
元気よく返事をする球子と、年相応にどこか誇るかのような笑みを見せるチェルシー。こうして方針を固めた2人は、まずは移動する事とした。
ーーーー
「そういえば、ひとつ聞き忘れてた事があったな。タマ、お前…訓練とか特訓とか、そういうの抜きで人間と戦……いや、何でもない。忘れてくれ」
何かを言いかけた少女は、ポカンとした様子の相手の顔を見て、言葉を打ち切り誤魔化した。
ーーーー
話してみると、いい奴そうなのもあってなんとなくそんな気はしてたが…さっきの反応から見るにやっぱりあいつは、タマは人間や…人である事を捨てた、元人間の類いとは戦った事は無いみたいだ。
…生き延びてれば、この殺し合いの中でも、いずれ相手を殺さないとどうしようもなくなる事態になるかも知れない。首輪を解析用に確保するなら尚更だ。
そうなった時、あいつがそれを出来るかって考えると……面倒だが、そうなれば私が代わりにするべきなんだろうな。
……私の手は、あの恥ずかしい女の道を終わらせた時に既に血で汚れている。そういう役割は適任だろうさ。
とにかく、タマの事は、頼りにさせてもらうとしよう。
『さらばだ、偉大なる犠牲を見届けよ!』
ニアラとの戦いで、自らの消滅と引き換えに活路を切り開いたあの大馬鹿みたいに、自分を犠牲にして…なんて事態にならないことを、私は願った。
ーーーー
タマはーー守りたかった大切な相手を守れなかった。
あいつを…あんずを、守ることがタマの使命なんだって…そう決めてた。なのにタマは…あんずの楯になってやることも出来ずに…。
せめてもし、次に生まれてこれた時はあんずと一緒に…本物の、姉妹になりたいって…そう思ったのを最後に、意識が途切れて多分、死んで……。
…なのに気付いたらタマは、よくわからんところにいて、服装は勇者装束のまんまで混乱してる時に…あのキャベツみたいな髪色した乃亜ってやつが出てきて……ルフィってやつが殺されたと思ったら生き返って、それでもルフィが反抗しようとしたら、今度は一回ルフィが殺された時に、駆け寄って悲痛な叫びをあげていたエースってやつが殺された。
結局、ルフィってやつもまた殺されて…乃亜はそれをバカにして───無駄死にだって、笑ってた。
…兄弟愛がどうのって乃亜が言ってたから、きっと2人は兄弟だったと思う。……またタマは、なにもできなかった。悔しくなって乃亜にも…タマ自身にも、腹が立った。
…だから、タマは…これ以上、何もできないまんまなのは嫌だったから…勇者として乃亜を…この殺し合いを止めるって、決めた!
その後とりあえずタマは、他の参加者を探すことに決めた。勇者装束のままだったけど、タマひとりで殺し合いを止めるのは…流石に無理だなってわかったから…後、たしかに死んだはずのタマがいるんなら、ひょっとしたらいるかも知れないあんずを探して、合流したいってのもあったけどな。
…乃亜に従って、殺し合いに乗って優勝すれば、あんずを生き返らせれるかもしれない。でも…タマにはわかる。あんずは…そのためにタマが、人殺しになることなんて望まないはずだって。だから……タマは、勇者として殺し合いに抗う!
その後近くに誰かいないか探してると…タマより少し小さめで、年下の外人っぽい金髪の女の子を見つけた。
近付いてみたけど、そいつは手にお菓子を持ったまま、心ここに在らず?だったっけ…そんな感じで呆然としてたんだ。
…タマにはそいつが、なんか今にも泣き出しそうにも見えて…心配なって声かけたんだけど、敵と勘違いされかけた時はタマげた。さっきまであんなだったのにスッって警戒状態に入ってたから…誤解が解けて良かったぞ。
それで互いに名乗ったり、情報交換やったり殺し合いに巻き込まれる前の話をしたら、出身の世界?が違うってのがわかったり…そしたらあいつ…チェルシーが首輪の解析もやれるかもってなったから、とりあえず一緒に行動することになった。
口は悪めでめんどくさがりで、話し方は大人っぽい感じだけど、あいつはタマ(偶)になんかこう…年相応って感じになる気がする。話し方の方は…背伸びしてるだけかもしれないけれどな。
それと…さっきあいつに「人間と戦った事があるか」って聞かれて、答える前に取り下げられたんだけど…その時のチェルシーの表情見てなんか、色々ひとりで背負い込んでた時の若葉をどこか思い出した。
その辺も含めて、とりあえずチェルシーのことはちゃんと見とくことにしよう…と思うタマであった。
【チェルシー(オタクスタイル♀)@セブンスドラゴンシリーズ】
[状態]:健康、決意
[装備]:マインスリーパー@セブンスドラゴン2020-Ⅱ
[道具]:基本支給品、チョコバー@セブンスドラゴン2020-Ⅱ×1 、ランダム支給品1〜0
[思考・状況]基本方針:どちらも面倒だが、殺し合いに抗う
0:…やっぱり、目の前で死ぬのを見せられたり、死なれるのは嫌だな。いつになっても慣れてくれない…。
1:とりあえずタマと一緒に行動する。頼りにさせてもらうぞ、タマ。
2:相手を殺さないと行けなくなったらその時は……手を汚すのは私がやるべきだ。
3:首輪のサンプルが欲しい。手に入れたら解析をしたい所だ。
4:勇者に大社にバーテックス、か…。
5:仲間たちがいたら合流したい。
6:…もう、タケハヤやあの大馬鹿の時みたいな思いをするのは御免だよ。
7:抗うと決めた以上は、できるだけの事はやる。
[備考]
※参戦時期はセブンスドラゴン2020-Ⅱにて、幕間2終了後に倒れて、Chapter5開始時に目覚める前からの参戦です。
※現在の職業はハッカーです。スキルの取得状況等は後続にお任せします。
※台詞や一人称等は、2020-Ⅱの女性のボイスタイプRを参考にしています。
※チェルシーの名前は、オタクスタイル♀のフィギュア発売時に付けられた名前から来ています。
※球子と互いに情報を交換し、自分達がそれぞれ別の世界から殺し合いに巻き込まれた事に気付きました。
【土居球子@乃木若葉は勇者である】
[状態]:健康、決意、乃亜への怒り
[装備]:勇者装束
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況] 基本方針:勇者として殺し合いを止める!
1:チェルシーと一緒に行動する。戦いになった時はタマに任せタマえっ!
2:巻き込まれてないのが一番だけど、若葉たちが居るのなら合流したいな。
3:もし、あんずが居たら…今度こそ守り切りたい。
4:チェルシーのことは…危なっかしそうな所あるからよく見とこう、タマの方が年上だしな!
5:宇宙から来たドラゴンに、ドラゴンやマモノを狩る為の秘密結社なムラクモと13班…ほんと考えれば考えるほど、小説みたいな話だな。
[備考]
※参戦時期は死亡後からです。
※チェルシーと互いに情報を交換し、自分達がそれぞれ別の世界から殺し合いに巻き込まれた事に気付きました。
・支給品説明
【マインスリーパー@セブンスドラゴン2020-Ⅱ】
ハッカーの武器である戦輪の一種。一定確率で当てた相手を睡眠状態にする効果がある。
【チョコバー@セブンスドラゴン2020-Ⅱ】
雨瀬アオイの生前の大好物であり、13班達にお裾分けしてくれたりもしてたお菓子。外はしっとり、中はさっくりした食感、
彼女が斃れた後の作品になる2020-Ⅱにおいては、限られた数しか手に入らない代わりに、使うと味方全体を戦闘不能状態から体力全快状態まで回復させれる効果がある。
投下を終了します。
タイトルは「再誓/抗おうじゃないか」です。
みなさん、投下ありがとうございます
>ハジメの、サヨナラ
あすみちゃん、懐かしいキャラですね。魔女名とかオサレで、釣りとは思えないくらい設定も良くできてて感心した覚えがあります。
そしてそれらの設定をSSに上手く落とし込んで、違和感ないキャラとして動かしつつ、精神攻撃の描写でヒナゲシの掘り下げにも繋げたのはお見事でした。
>悪夢の世界(ナイトメアワールド)
こいつ(刀使ノ巫女)いつも酷い目に合ってんな。
冗談はさておき、ハマれば非常に凶悪なスタンドを持つマニッシュ・ボーイの脅威が、これでもかと描写された一作でした。
とはいえ、リアルファイトにおいては最弱のマニッシュ・ボーイが御しやすいにしても、戦闘力の高そうな沙耶香ではなく、マサオ君だけを残したのは割と致命的な気もしますが……。
そういった欲求を抑え込めずに発散してしまうのが、まだ赤ちゃん故の未熟さで、弱点なのかもしれませんね。
>姫たるもの秘めたる事
来たか、ワンピース真のヒロイン。
やはりこの時系列のルフィの死を一番悼むのはウタですね。しかも質の悪そうな扇動マーダーと遭遇したのも運が悪い。
マーダーになればウタウタの実の力は、初見だと常時デス13発動みたいなものですから、えらいことになりそう。
>書かれているものの確認はちゃんとしておこう
殺し合いに巻き込まれても、落ち着いて現状把握に努めるぽぽはしっかりしてますね。
ただ、下手に声を出すのは危険なので辞めた方が良いですね。
>僕らは魔法少年
マーダーとしては頼りなさそうなレイドですが、地味に戦闘&考察をこなせそうな対主催トリオを速攻で解散させたのは、ロワに大いに貢献してくれてますね。
ネギ、ユーノ、翔太も出鼻を挫かれてこれから大変そうです。
>再誓/抗おうじゃないか
重いですね……チェルシー、支給品もそんな彼女を嘲笑うように悪意のあるものと来てます。
同じ殺し合いを止める仲間としてタマと合流できましたが、殺人をさせるにも躊躇いもありますし、今後も何かしら惨劇に立ち会ったり、何かを亡くしたりと前途多難になりそうです。
感想ありがとうございます!
投下します。
エラーなんかしたやつは、ころしてやるから。
よく野球で口にする言葉。
「ころす」
その言葉の残虐さに気づかなかった。
でも、今なら分かる。
その言葉の恐ろしさに。
これまでも命の危険があった冒険に参加していた。
白亜紀での恐竜ハンター。別の惑星での大企業に独裁者。精霊王に死の商人。極めつけは前科百犯の脱獄囚。
どの相手も小学生の自分には強大な相手だった。
しかし、最後は勝利した。
だけど、今回は違う。
躊躇なく兄弟を殺したあの乃亜ってガキ。
いつものおれだったら、ぼっこぼこに殴ってやると思っていただろう。
だが、あのガキの冷たい視線。
兄弟を馬鹿にするあの言動。
それらがもし、妹……ジャイ子に向けられると思ったら。
おれの反抗の灯が消えちまった。
自分よりも年下であろう少年に恐怖を抱いちまっている。
このジャイアン様が!
もし、今の自分を見たら、のび太に笑われちまう。
それだけは駄目だ!
「当たり前だろ!お前のものはおれのもの。おれのものはおれのものなんだからよ!」
入学式前、トラックに持っていかれた、のび太のランドセルを取り戻した時につい照れていった、あの言葉。
おれの口癖にもなった。
おれの心の友。
あいつにちょっかいを出したり、頼られたりするのがおれだ。
このままでは、おれとのび太の関係が終わっちまう。
「お〜れ〜はジャイアーン!が〜き大将!」
必死に自作の歌を歌う。
おれの十八番の歌。
歌わなきゃ、自分を保つ自信がない。
ジャイアンでいられない!
何度も繰り返して歌っていると、遠方から人の影が見えた。
どうやら女子みたいだ。
おれは、女子の格好に驚いた。
そのピンクのフリフリした服装に。
母ちゃんが絶対に着そうもない服。
というか想像できない。
しずかちゃんでも、あそこまでフリフリとした服は着ないだろう。
そうこう考えているうちにフリフリ女子がおれの眼前まで近づいていた。
何だ?おれに何か用か?
そうか!頼れるおれに助けを求めに来たんだな!
服装こそ奇抜だが、しずかちゃんにも負けず劣らないその可愛らしい顔におれは思わず顔を弛ませる。
「何考えているの!」
が、おれの下心は直ぐに吹き飛ばされる。
おれはその言葉と同時に勢いよくビンタされた。
母ちゃんならいざ知らず、自分と同じぐらいの女の子にだ。
まじかよ。これは夢か?
「いっ……てぇ〜〜!?な、なにしやがるんだ!!!」
「それはこっちの台詞よ!あなた状況を理解しているの!?」
「お……おう!乃亜ってガキが俺達に殺し合いをしろって……」
な!?何だ何だ!?クラスの女子なら今のおれの声にビビって声も出せないのに。
目の前のフリフリ女子は、おれに負けないぐらいの声量で言い返してきやがった。
こいつ。本当に女子か!?
フリフリ女子はため息をつくと、腕組みする。
「なら、あなたのその行動がいかに危険かわからないの!?たまたま近くにいたのがあたしだからよいものの、もし殺し合いに乗っている子だったら今頃あなたは殺されているかもしれないのよ!?」
「わ……わるかったよ……だからそんな大声でどなるなって」
「さきほどのあなたの歌に比べたら、こんなの大声の内に入らないわ!」
た……確かに軽率だったかもしれないけど、そこまで怒らなくたっていいじゃねぇか
それにしても、こうまで女子に言い負かされるなんて。
とほほ。男として情けない気持ちだぜ……
「あなた。名前は?」
「おれか?俺は剛田武」
そういえば、自己紹介をすましていなかったな。
動揺を悟られるわけにはいかない。
おれは極めて冷静を装う。
「そ。わたしは秋野真月よ」
おれの名前に心底感心なさそうな反応。
しずかちゃんなら絶対にしない対応だ。
それと、このフリフリ女子の名前が分かった。
が、なんて、呼べばいいんだ……?
この気の強さ。しずかちゃんみたいにちゃんづけは似合わないよな。
おれが、呼び名をどうすべきか悩んでいるのも知らず、目の前の女子は話し続ける。
「とりあえず、この場を離れるわよ。このままじゃ危険だから」
「ど、どうしてお前の命令を聞かなくちゃならないんだよ!」
つい、反射的に反抗してしてしまった。
女子に主導権を握られるのはごめんだからだ。
「あなた、何年生?」
「5年生だ!お前は!」
「そう。あたしは6年生。あなたよりも1学年上よ」
「う……」
小学生の世界で上級生は正に神のごとき存在。
クラスではガキ大将として君臨する自分の威光も通用しない。
「あたしに文句はないわね?それと……お前?」
「真月……さん」
「それでいいわ。それじゃあ、出発するわよ。勝利は、わが迅速果敢な行動にあり。BYナポレオン 」
こうしておれは、フリフリ女子こと秋野真月と行動を共にすることとなった。
ていうか、誰だよナポレオンって……
それにしても、しずかちゃんやジャイ子のような女子のありがたみに気づくことになるとはおもわなかったぜ……
ジャイ子……兄ちゃん、がんばるからな。
【秋野真月@若おかみは小学生!(映画版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:剛田武と行動を共にする
2:落ち着いた場所へ移動して今後の対策を練る
3:関さんもいるのかしら……
[備考]
映画終了後からの参戦です。
【剛田武@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:フリフリ女子(秋野真月)と行動を共にする
2:ジャイ子……兄ちゃん。がんばるからな
[備考]
いくつかの劇場版の出来事を体験しています。
乃亜に対して恐怖心を抱いています。
投下終了します。
投下します。
バトルロワイアルの会場のどこかで、一人の少女と巨大な影が対峙していた。
少女の方は、サイドに短いおさげを結んだ、赤髪の小柄な少女。巨大な影をじっと見つめている。
巨大な影は、あろうことか、墓石であった。どれほど巨大かといえば、首を精一杯反らして見上げてもその頂が見えないほど、天高く突き抜けている。これほどの高さがあれば、バトルロワイアルの会場のどこからでも見えるだろう。間違いなく、会場の一つのシンボルになり得る建造物――もとい、墓石だった。
「父ちゃん、いくよ!」
少女は、目の前の巨大な墓石を『父ちゃん』と呼び、跳躍する。そして、出せるだけの力を込めて、全力でその手に抱えていたボールを、墓石へと投げつけた。
ボールを撃ち込まれた墓石は、巨岩が擦れるような轟音と共に、その巨躯を僅かに揺らして受け止める。そのまま、受け取ったボールを投げ返すかのように少女に向かってボールを跳ね返す。
少女は、そのボールを真正面から受け止める。少女が踏ん張ることで作られた足元の土の山が、ボールの勢いの強さを物語る。
「っ……!」
ボールを受け止めた手が僅かに痺れて、少女の顔が歪む。しかし、その直後にはどこか清々しさをたたえた顔になっており、墓石を見上げた。
少女は墓石に対して、相当な強さで何度もボールを撃ち込んだのか、その墓石にはヒビが入り、なんと穴まで開いていた。
「……へへ、すごいだろ、このボール。父ちゃんのボールとは違うけど」
少女は、ボールを愛おしそうに抱えながら墓石に語りかける。そのボールは、ただのボールではない。青と白を基調とした、半球形の突起がいくつもあるボールだ。少女の住んでいたそことは異なる世界における「ブリッツボール」なるスポーツのボール――もとい、ブリッツボールの選手にして、召喚士を守るガードを務めていた青年が用いていた、立派な武器である。
その青年はボールを投擲することで魔物と戦っており、それはつまり、この少女にとっても頼れる武器になるのである。
「……父ちゃん」
――弾子。
墓石を見上げる少女――一撃弾子の耳に、彼女の父・一撃弾平の声が響く。
――全力で行ってこい!!
「……うん!!」
弾子は多くを語らず、しかし合点したかのように頷き、踵を返す。
この殺し合いなんて、間違っている。ならば――。
「全力で……全力で、この殺し合いを止めてくるよ!!」
弾子は、いつでも全力だ。それは殺し合いの場においても変わらなかった。
【一撃弾子@炎の闘球女 ドッジ弾子】
[状態]:健康、全力
[装備]:ワッカのボール@FINAL FANTASY X、『弾』の文字の入ったシャツ、スパッツ、アームプロテクター
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況] 基本方針:全力で殺し合いを止める!
1:殺し合いを止めるために行動する
2:闘球部部員(小仏珍子、江袋もち子、スーザン・キャノン、音花羽仁衣)が参加している場合は、まずは彼女たちを探す
[備考]
・弾子の初期配置場所の施設「一撃弾平之墓」は、会場中から視認できるほど巨大です。
・支給品説明
【ワッカのボール@FINAL FANTASY X】
召喚士ユウナのガードであるワッカが用いる武器。ワッカは剣などの武器を扱う才能が無かったため、ボールを戦闘用に加工して武器として使用していた。
以上で投下終了します。
タイトルは「闘球女、一撃弾子」です。
投下します。
(全く、こんな鬱陶しい首輪なんて填めやがって…)
丘の上。黒髪に尖った獣耳を生やした参加者が爆弾と特殊能力を制限する機能付きの首輪を取り付けられた事に苛つきを感じながら支給品と自身に掛けられた能力制限を確認し終えた後に佇み、溜息をつく。
彼の名はアヌビス。エジプト神話にも登場する、正真正銘の冥府神であるアヌビスだ。
(けれどここは見晴らしが良くて気分が良くなる…
更には蝿もヴァルキリーもユーロンも、『ホルス』も、
誰も今は居ないから尚更だ。)
過去に自分の地球観光を邪魔してきた者も耳に障る羽音を立てる虫もいない。
彼が現在感じているのは丘の上からその目で見渡せる周辺の景色の良さだ。
(ワープホールの距離制限はともかく、太陽を打ち消して夜にする能力は完全に使えないと…
首輪でも外さない限りは…か。)
彼に掛けられている能力制限について現在判明していること。
まずは、ワープホールを生成する能力の制限。
かつて、地球中で攻撃を仕掛けられたとはいえ母親のヴァルキリーを自分に殺された事で怒り狂い、仇討ちのため自分を殺しにきたユーロンを殺害する際に使った能力だ。
襲いかかってきたユーロンの足を掴み、生成させた転移元となるワープホールを自分が元から居た世界に丸ごと転移してきた別世界の地球の外で太陽の代わりを務める生物•『ホルス』の居る場所にワープ先に設定し、そのワープホールに投げ飛ばしてホルスに直撃させ、熱で焼き殺すといった殺害手段の為に使ったものだ。
本来ならば地球外といったとてつもなく遠い距離にまでワープ先を設定出来るのだが、このゲームで半径1km程までにしか設定出来ない様になっている。
次は本来のアヌビスの姿に変身した際に発動可能な『太陽を一時的に打ち消して夜にする能力』。
こちらに関しては首輪が装着されている限り完全に発動不可能となっている。
本来の姿に変身する事自体は負荷がかかるが使用可能である様だ。
最後は身体能力の制限。
これは戦闘を遊びと思う程の戦闘好きである彼にとってはかなりの痛手となる制限だ。
身体能力自体が本来よりもある程度は低下しており、気弾の威力も落ちる。
(あ〜 能力制限とか、遊びたい俺にとっては不満しかないな〜
だから、さっさと首輪を外して暴れたいぜ〜
それに、乃亜って奴も気に食わないし、ぶっ潰したいな〜…出来れば俺を楽しませてくれる奴でいればいいけど。)
能力制限への不満を抱えながら、アヌビスは座った姿勢で背伸びと一呼吸をした。
【アヌビス@混血のカレコレ】
[状態]:健康、首輪を装着されたことへの不満
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:首輪を解除して大暴れしたい。
1:しばらくは休憩している。
[備考]
※参戦時期は少なくともアヌビスのサブストーリー編3話終了後。
投下終了です。
投下します
世界が滅んだって、別に構わないと思っていた。
学校も、家族も、生きている事も、ただ息苦しくて、煩わしくて。
少し前までの僕は、確かに世界の破滅を願っていたんだと思う。
だから、だろうか。
だから、僕は殺し合いの参加者なんかに選ばれたんだろうか。
最悪だとは思う。あぁ、実にクソッタレだ。
でも、良いこと…かどうかは分からないが、とてもとても驚いたことが一つ。
「お前は…!?」
深夜の森の中にて。
自分でも信じられない程上ずった声で。
僕は、獣の騎士団のフクロウの騎士、小学六年・茜太陽は。
目の前にいるモノの名前を呼んだ。
「11体目(マイマクテリオン)……!」
遥か未来から、地球を何度もビスケットの様に砕いて。
そのエネルギーで一度割るごとに数百年タイムスリップし。
この宇宙が生まれた一番最初の刻まで遡ろうとする、悪い魔法使いアニムス。
それによって生み出された人類の敵、アニムスの兵士である12体の泥人形。
その十一体目に当たるのが、目の前に立っているマイマクテリオンだった。
「やぁ、太陽。元気そうだな」
惑星破壊を目論む、悪い魔法使いアニムスの作った生きる泥人形。
そして、それらと敵対するのが惑星の守護者アニマが契約した獣の騎士。
つまり、前者がマイマクテリオンで、後者が僕だった。
僕とマイマクテリオンは立場上で言えば敵対関係だ。
しかし、僕は獣の騎士達の寄り合い──獣の騎士団ではなく、アニムスにつくことを決めた。
命の保証と引き換えに、アニムスへの協力者として動く契約をした。
そんな経緯もあって、必然的にアニムスの作る泥人形達に間近で交流する事もあった。
と言っても、人語を介したのは目の前にいるマイマクテリオンだけだったが。
「ありえない…だって、お前は………」
「あぁ、そうだ。お前の認識の通り、私は死んだ…いや破壊されたはずだった」
そう、マイマクテリオンは、僕の前で死んだはずだった。
獣の騎士団と戦い敗れて、握りつぶされたはずだった。
それなのに、そのマイマクテリオンが目の前にいる。
姿形はあの日と一切、変わっていない。
ぼさぼさの茶髪に、無感情そうな目。僕と同じくらいの、小学生程の背丈。
無地で長袖の紺のシャツに、子供用ズボンと、服装まであの日のままだった。
「この殺し合いは、アニムスが仕組んだ事か?」
そう尋ねたのは、僕ではなかった。
アニマと契約した騎士に与えられる、相棒となる獣の精霊。
僕の場合はフクロウ…最も今はアニマの力によって幻獣として強化され、大型の猛禽のようになった、神鳥(フレスベルグ)のロキだった。
契約者である僕が此処に連れてこられた事で、ロキもまた、この殺し合いに巻き込まれたのだろう。
そして、僕も、ロキも自分の知っている知識ではこんな大掛かりな事ができるのはアニムスくらいしか知らなかった。
その為生まれた問いかけだったが──僕たちの予想に対して、マイマクテリオンは首を横に振った。
「生憎だが、私もアニムスから何も聞かされていない。
状況を素直に受け取るなら、完全に別口だと考えるのが妥当だろう」
「……そう、か」
マイマクテリオンは人間じゃない、泥人形だ。
だから、嘘をついている可能性は限りなく低いだろう。
という事は、奴も僕と同じ巻き込まれた被害者と言うわけで……
「…お前、これからどうするんだ?」
不意に、そんな事を尋ねていた。
特に深く考えたわけじゃない問いかけだった。
ただ、マイマクテリオンも僕と同じ状況だという事を認識して。
奴がどう動くのか、純粋に知りたかったのだ。
「……そうだな」
尋ねられたマイマクテリオンは相変わらずの無表情無感情さで腕を組み、考えるそぶりを見せて。
そして、端的に答えた。
「取り合えず、優勝を狙ってみようと思う」
一番、予想できた答えではあった。
何処まで行っても、泥人形は人間の敵なのだから。
そして、その答えを聞けば当然、もう一つ尋ねなければならない事が頭に浮かぶ。
「……じゃあ、僕も、殺すのか?」
尋ねながら、自分でも何を聞いているんだ、と思った。
前提として。
僕とマイマクテリオンは仲間でも友達でもない。
人類の敵と、人類の裏切者。ただ同じ方向を向いていただけだ。
マイアクテリオンの要望を聞いて本を用意したり、一日擬態能力を持つ彼と家族にバレないか入れ替わったりした事もあったけれど。
それでも友達かどうかで言えば、決して友達を言い表せるような関係ではない。
だから、この場でマイマクテリオンが僕を殺そうとしても何ら不思議ではなかった。
しかし。
「……いや、別にその気はないな。優勝を目指すとは言ったが、
何なら最後の二人になった時生きていたら、優勝自体はお前に譲ってもいいぞ、太陽」
「……は?」
マイマクテリオンの二度目の答えは、予想とは違っていた。
「な…何でだよ。優勝を目指してるなら──」
「そうだな、優勝したいというより、戦ってみたいというのがより適当な所か。
別に私の生存自体はどうでもいいし、戦う相手としてお前は不適切だ。
アニムスへの義理もあるしな。お前が私と一騎打ちを望むのであればその限りではないが」
そう、彼は。
僕の予想以上に自己の生存に興味がなかったのだ。
その上で、一騎打ちで僕がマイマクテリオンを倒せるはずもない。
だから、他の参加者を殺しつくした後に僕が残っていれば自害して優勝を譲る。
そう、マイマクテリオンは言いたいのだろう。
「お前達との最後の戦い…あれは愉しかった。全力を存分に受け止め会えた」
そう語るマイマクテリオンの瞳は、さっきまでと同じ無感情な物なのに。
その奥には、確かな熱を帯びているのが、何となく見ていて分かった。
「あの戦いまでは、泥人形とは、私とは何かとずっと考えていたが…一つ分かった事がある」。
語るマイマクテリオンの顔は、既に人間の子供のそれではなかった。
ぎょろぎょろと顔中に複眼が浮かび、口の端は耳元まで裂けそうな程吊り上がり、猛獣の様な牙を覗かせている。
更に背中から屈強で数メートルはありそうな新たな腕を伸ばし──今立っている地面を叩いた。
ボゴン!!!と爆発音の様な音と共に、クレーターが出来上がっていた。
四本になった腕を無造作に振り回せば、メキメキと巨木が倒れる。
「やはり──私にとっては闘いこそが生まれてきた意味なのだろう」
そう言って、マイマクテリオンは今しがた見せていた泥人形本来の姿から、元の子供の姿に戻った。
普通の人間の子供なら一撃で肉が弾け飛び、骨が砕ける暴力。
きっとマイマクテリオンはこれからその暴力を他の子どもに向けるのだろう。
恐ろしい、とは感じなかった。
今しがた、その暴力が自分には向けられないと宣言されたばかりなのもある。
だが、僕は僕が思っていたよりもきっと──ずっとこの怪物を身近に感じていたらしい。
返す返事は「そうか」その一言だけだった。
「……聞きたいことはもう十分だろう。ではな、太陽」
話は此処までだというように、マイマクテリオンが踵を返す。
森の外を目指して歩いていく。
僕は、その背を止めることができなかった。
時間を掻きわして泥人形を崩壊させる因果乱流(パンドラ)は彼奴には通じない。
時間を巻き戻して回復させる時空清流も僕一人では意味が薄い。
幻獣の三騎士の一人と言っても、僕一人が力ずくでマイマクテリオンを止めるのは不可能だ。
でも。
「マイマクテリオン!!」
僕は、何かに突き動かされるように、マイマクテリオンを呼び止めていた。
あいつは振り返り、相変わらず何を考えているのかよく分からない視線を向けてくる。
そんなマイマクテリオンに向けて、僕は声を張り上げた。
「最近…獣の騎士団の皆と一緒に戦ったり…ラーメン食べたりして……」
自分でも、要領の得ない切り出し方だと思った。
特に考えるでもなく、思いついたことをそのまま口に出しているから当然なのだが。
「こういうのも、悪くないって思い始めたんだ………
何ていうのかな…前より、少し…生きる事は、悪いことじゃないんじゃないかって」
頭の奥で、幻獣の三騎士になった時の事を思い出す。
10体目、泥人形の中で三番目に強いピュアノプシオンのを倒した時のこと。
ピュアノプシオンは核となる泥人形を倒さなければ、ずっと再生増殖し続ける泥人形だ。
アニムスはその10体目の核を、騎士団の裏切者である僕の家の押し入れに隠していた。
その泥人形を、僕は倒した。無我夢中だった。
アニムスに逆らう事になる、だとかはあの時考えなかった。
ただ、僕が倒さなければ、最近死人が出たばかりの騎士団からまた脱落者が出る。
そう思ったら、いてもたってもいられなくなった。
誰が死のうが、世界がどうなろうが、どうなってもいいと思っていた筈なのに。
「だから……」
──男前の顔になったな、茜太陽。
──赤ん坊には泥人形が見える。この子が初めて見た戦う男の姿がお前だ。
「僕は…殺し合いなんてしたくない…!
次に会った時…僕は……お前を止める事になる、きっと。獣の騎士団の…一人として」
言葉がこみあげて、止まらなかった。
こんな事を言ったら、マイマクテリオンがどう思うかは分からないのに。
なら今ここで殺しておく、となっても何ら不思議はないのに。
それでも言わずにはいられなかった。
言わなければ、十体目を倒した日に、同じ部屋で十体目の核と取っ組み合いをしているのを見ていた…まだ赤ん坊の弟を裏切るような気がしたから。
「……そうか」
僕に敵意を向けられても、マイマクテリオンは穏やかだった。
むしろ奴にしては本当に珍しいことに、薄く笑って、短い返事を返してきた。
「楽しみにしている」
泥人形と人間は、結局の所相いれない。
一緒の道を歩むことはできない。
ぴしぴしと脚部を変形させ、今度こそマイマクテリオンは僕の前から去ろうとしていた。
そんなマイマクテリオンの背中に、最後にもう一言だけ、言っておきたい事があった。
「マイマクテリオン!!お前の心残りだった本は……僕が返しておいた」
「……あぁ、感謝する。ではな、太陽。精々生き残れよ」
決して変わらないそっけない態度で、マイマクテリオンは跳んだ。
その時のあいつの顔はハッキリと見えなかったけど、どこか満足げな顔をしている気がした。
……生き残れと彼奴は言ったけど、僕は「君もな」とは返せなかった。
「……ロキ」
一人残された後、不意に相棒の名を呼んだ。
最初に出会った時よりもずいぶん大きくなったフクロウが、「何じゃ」と尋ねる。
「僕は…この殺し合いを止めたい、と思う」
「そうか…太陽がそうしたいなら、そうすればええ。
何度でも言うが…ワシはお前の味方じゃ。好きな道を進め、太陽。お前さんは…自由じゃ」
「……うん、ありがとう」
【マイマクテリオン@惑星のさみだれ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝する。
ただ、最後の二人になった時太陽が残っていれば優勝を譲ってもいい
1:他の参加者を見つけて殺す。
[備考]
原作8巻、死亡後より参戦です。
【茜太陽@惑星のさみだれ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この殺し合いから脱出する。
1:他の参加者と協力して脱出の方法を探す。
2:マイマクテリオンは次に会ったら止めたい。
[備考]
原作8巻、マイマクテリオン戦直後より参戦です。
ロキは他の参加者にも視認することができます。
ロキとの契約時の願いを叶える権利は残っていますが殺し合いに直接的に関わる願いは制限されています。
(例:「殺し合いから脱出したい」「主催に死んで欲しい」など)
投下終了です
投下します
男女を問わず、幼子のみを集めた殺し合いの場。
そう聞けば誰しもが無力で哀れな子供達に降り掛かった悲劇を思う事だrぴ。
それは間違いでは無い。だが、間違っている。
此処にいるのは真正の幼子だけでは無い。幼子の姿をした化物(フリーク)も存在している。
◆
轟く銃声が、ばら撒かれる銃弾が岩と地面を穿つ度に響く破砕音が、空気を絶えず震わせ、掻き乱す。
無数の人体を無作為に繋ぎ合わせた様な、同じ空間に無理矢理に押し込めた様な、異形の肉塊が一帯を覆い尽くし、無数の手を伸ばし、悍ましく蠢く蟲を無数に這いずり出させていた。
「どうした!ええ!!化物(フリーク)!!!」
左右の手に握った黒白の巨大拳銃から、絶え間なく巨弾をばら撒きながら哄笑するのは、白いコートと帽子の黒髪黒瞳の少女だ。
底無しの深淵を思わせる黒い瞳を、闘争心と愉悦による狂気に歪ませ、常人ならば気死しかねない妖気を全身から立ち上らせている少女は、当然ではあるが人では無い。
少女の名はアーカード。英国国教騎士団ヘルシング機関の長である、インテグラ・ファルブルケ・ウィンゲ。ツ・ヘルシングの従僕であり、ヘルシング機関の鬼札(ジョーカー)。
五百年に渡る歳月を生きた最強の吸血鬼。
インテグラの命に従い、その殺意に従って、敵を殺す。インテグラの剣にして銃。
それがアーカードである。
主人であるインテグラにならばいざ知らず。全く知らない者に、神などを気取る人間から、無力な人間の子供相手に、殺し合いをしろなどと言われて怒り狂い。誰があんな奴の言うことなど聞くものかと荒れ狂い。怒髪天を衝いていたのが十五分前。
怒りをなんとか鎮めて、乃亜をブチ殺すべく歩き出したのが七分前。
そして襲撃を受け、相手も同じ人外だと知って、意気揚々と殺し合いを始めたのが五分前の出来事である。
光の矢で頭を貫かれ、放った巨弾で頭を粉砕し、鉄塊としか形容できない巨剣で身体を撃砕され、弾雨で全身に穴を穿つ。
互いに致命となる損壊を十度以上与えて、与えられても、なお決着はついていない。
アーカードが不死(ノスフェラトゥ)ならば、相手も不死(イモータル)。身体を切り裂き穿ち砕いても、即座に再生し戦い続ける。
アーカードの身体が崩れ、二頭の巨大な黒狼が、アーカードの身体から生えて走り出す。
ガチガチと、忙しなく噛み合わされる牙が噛み裂かんとしているのは、ランドセルを背負い、右手に巨大な鉄塊と見紛う剣を持った全裸の少女だ。
血の気を全く感じさせない、白蠟のように白い肌に長い黒髪を妖しく纏わりつかせた少女は、鮮血で染め上げた様な色の瞳を、黒狼ではなく、真っ直ぐにアーカードへと向けている。
轟音。少女は右手の巨剣を振り下ろし、迫る狼を地面が砕ける勢いで叩き潰す。
破砕音。少女は左手を横殴りに振るい、飛びかかってきた狼の頭を粉砕する。
二匹の獣を屠った少女の、幼女趣味のないものでも吸い付きたくなる様な唇が動き、奇怪な発音の言葉を紡ぐ。
夜の闇を赫赫と照らす火球を六つ、頭上に作り出した少女は、その全てをアーカードへと殺到させた。
「HAAAAAAAAA!!!」
アーカードが周囲に展開していた自身の肉体を操り、自身の前に壁を作り出して火球を防御。壁に炸裂した火球が轟音を発して爆発し、周囲に熱波と火花を撒き散らす。
火球を全て防いだ代償に、崩壊して燃え落ちた壁の向こうから、光の矢が十数条飛来し、アーカードの胸を腹を四肢を頭を顔を貫いた。
「まだだ」
怯む事なくアーカードは肉体を再生させ、黒白の2丁拳銃を乱射。敵の姿は見えずとも、吸血鬼の超感覚と勘が、正確に敵のいる場所へと銃口を向け、吸血鬼の膂力が、常人ならば一発撃つだけで肩から先に限界が来る巨銃の反動を、無にするレベルで抑え込む。
耳を聾する銃声が響く中アーカードの耳は確かに聞いた。豪雨が路面を激しく叩く様な音を。無論雨滴が地面やアスファルトの路面を叩く音が、この様な時と場所で生じる訳がない。
金属と金属が激しくぶつかり合う音が間断無く聞こえ、しかもその音が近づいて来ているのだ。
アーカードは即座に理解する、あの少女が此方に向かって来ている事を。
アーカードの口が笑みを形作る。口の端が耳まで裂けたかの様に見える凶笑を浮かべ、アーカードは身体から無数の腕を生やす。
「シャアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
アーカードが咆哮し、無数の腕を貫手として、音の発生源へと叩き込んだ。
大型のダンプが、正面からエンジン全開で激突すれば、この様な音がするかもしれない。
それ程の衝突音と、周囲を揺るがす震動。アーカードは叩き込んだ貫手から伝わる感触により、自身の想像が当たっていた事を知る。
あの少女は巨剣の影に身を隠し、弾雨を防御(ふせ)ぎつつ接近して来ていたのだ。
「ほう」
アーカードは初めてこの敵に感嘆した。アレだけの貫手を撃ち込んで、飛ばされるどころか、後退すらしなかったのだ。あの鉄塊を軽々と振り回しているところから察するに相当な怪力の主だが、これ程とは思わなかった。
「だが、それだけだ」
アーカードに迫る不死性と怪力。化物(フリーク)としては充分どころか最上位に入る能力だ。更に得体の知れない魔法染みた───魔法そのものかも知れない───攻撃。
今でも乃亜に対する怒りと殺意は消えてはいないが、この様な強敵を配してくれた事には感謝してやっても良い。
だが、この敵はそれだけなのだ。
不死性と怪力に物を言わせて只々暴を振るうだけの存在なのだ。
アーカードが知る強者達。アレクサンド・アンデルセンやウォルター・C・ドムネーズ。同じ化物(フリーク)という括りでならば、ワルシャワで戦った狼男。彼等の様な技巧の類を一切持たない。
研鑽し、練り上げ、思索と改良を繰り返し、強者との実戦で用い、それを元にまた研鑽し…。気の遠くなる様な歳月と努力の果てに到達する極みからは程遠い。
決して雑魚とは言えない。だが、闘争の愉悦に浸り切るには程遠い。この敵はそういうレベルの相手なのだ。
だが、それでも。乃亜に殺された二人と較べれば。比べようもない程に、この敵は愉しめる。
この敵は、無力な子供などでは、無いのだから。
◆
アーカードが伸ばした腕を展開して、巨剣の影の少女へと伸ばす。腕の一つ一つがボディアーマーに護られた人体を、アーマーもろとも引き裂き粉砕する暴力を秘めた腕だ。そんな腕が数十もその身を抉り、掴んで仕舞えば、破格の再生能力を誇る少女の肉体も八つ裂きにされるだろう。
少女は動かない。いや、動けない。
動けば未だに巨剣を圧し続けるアーカードの腕に押し切られる。
だからと言って動かなければ、アーカードに捉えられる。
詰み。と言うべき状況であったが、少女が再び奇怪な響きの呟きを漏らす。
その途端。大気が激しく鳴動し、地面が捲れ上がった。少女の全身から放たれた衝撃波の起こした現象だった。
アーカードの伸ばした腕もまた、衝撃波に吹き飛ばされ、幾本かは衝撃波の勢いに耐えきれずにへし折れた。
此処までの攻防を繰り広げて尚。二人には目立った外傷と呼べるものが存在しない。小さな傷では受ける端から再生し、大きな傷も時間が経てば回復、少なくとも目立たない程度には再生するからだ。
アーカードは動きを止め、これまでの戦闘の経緯を振り返って、明らかに能力が落ちている事を認識した。
傷の治りが遅い。身体能力も完全に発揮出来ていない。拘束制御術式(クロムウェル)も本来の圧倒的な物量には程遠い。そして姿も変えられない。
詰まらない真似をしてくれたと思うと共に、どうでも良いとも思う。
この地にアンデルセンの様な、アーカードが全力を死力を尽くして戦うに値する敵が居るとは思えないのだから。心臓をくれてやっても良いと思えるだけの相手がいるとは思えないのだから。
少女もまた、何やら考え込んでいる様だった。おそらくはアーカードと同じく自身に施された制限について考えていたのだろう。
互いに自身の状況を把握するのに使用した時間は数秒。両者の再生能力からすれば、傷を治すには充分な時間だった。
戦闘で得た知識を元に、制限について考察し。再生能力で傷を治す。そうして二人は再度対峙した。
「貴様は、奴の言う事に従うのか」
此処でアーカードは、少女に話し掛ける。いきなり襲ってきた事もあるが、少女が全く言葉を発しなかった為に、会話をするという発想が出てこなかったのだ。
「我は数百年前に魔術師共に召喚され、使役され続けた。彼奴らが滅んだ後は、我の世界と物質界の間に長きに渡り囚われ続けたのだ。そして遂に愚かな王により漸く自由を獲得したのだ。
今また人間の言葉に従うなどあり得ん」
だが、と少女は続ける。
その身から立ち昇る濃密な妖気よ。周囲の空間を軋ませ、歪める程の密度の妖気に、アーカードの口元が喜悦の笑みを形作る。
「あの者に従う訳ではないが、此処にいる者共を見逃す気にはなれぬ。故に殺し尽くし、最後にあの者を殺す」
少女は人の形をしているが人では無い。魔界の住人である魔神(デーモン)であり、魔神達の中でも物質としての肉体を持たないと言う性質を有し、魔界より召喚され、召喚時に生贄となった人間の身体を器として物資界で活動する存在である。
この魔神(デーモン)に名前は無い。その強大な力と、配下として魔神の軍勢を従える事から魔神王(デーモンロード)と呼ばれる。
少女の姿を持った怪物は、右手に握った巨剣───ドラゴンころしを一振りし、アーカードに感情の籠らぬ視線を向けた。
「先ずはお前からだ」
「クックック…只々泣くか、無力なまま粋がるしかできない子供ばかりと思っていたが、少しは噛んだ気になれる者がいたとはな。良いだろう!化物(フリーク)!!吸血鬼の闘争というものを教えてやる!!!」
アーカードの身体が原型が無くなる程に崩壊、黒い影に覆われた血肉の塊の様な姿に変わり、魔神王を包囲する様に展開。無数の百足が、蝙蝠が、腕が、黒犬が魔神王目掛けて襲い掛かる。
再度全身から衝撃波を放ってその全てを打ち払った魔神王の胸から、アーカードの腕が生えた。
全方位からの攻撃は陽動(フェイント)。本命は背後からのアーカード自身による奇襲。
魔神王の背後から身体を穿ち貫いて、ニヤリと笑ったアーカードの顔が驚愕に歪む。
まるで腕を硫酸にでも突き入れたかの様に、アーカードの腕が溶けていく。真銀(ミスリル)ですら蝕み腐らせる魔神王の血と瘴気の為だ。
急いで引き抜こうとするのを、魔神王は手首を掴んで阻止、奇怪な発音による詠唱を開始するも、最初の一音を発音したと同時に、背骨が砕けるどころか、胸から折れた背骨が飛び出す勢いで蹴り飛ばされ、13mも飛んだところで漸く接地。身体の前面が擦り下ろされる勢いで滑って行く。
魔神王が晒したそんな隙を、当然アーカードは見逃さない。右肩から巨大な獣の頭を生やし、そのまま魔神王目掛けて襲い掛からせる。
イングランドの伝承にある黒犬獣(ブラックドッグ)。またの呼び名をヘルハウンド。その名をパスカヴィルという妖獣は、地面に伏した魔神王目掛けて真っ直ぐと伸びていく。
魔神王の肉体に直接攻撃を行えば、血と瘴気によりカウンターダメージを受ける。その危険性を知れば、直接攻撃どころか接触すら通常は避ける。
然し、魔神王の相手は不死王(ノーライフキング)アーカード。瘴気に侵されたところで、再生能力にものを言わせて無効化するだけだ。
そうして放たれた黒犬獣は魔神王の矮躯に牙を突き立てる…その寸前。
「ヘルハウンドか」
パスカヴィルの上下の顎を縫い合わせる様に、ドラゴンころしを突き立てて、パスカヴィルの口を塞いだ魔神王が、感情の籠らぬ声で言う。
「我の知るものとは違うな」
腹に響く重低音。至近距離から放たれた火球が、パスカヴィルの頭に直撃。急激な燃焼は燃えるという現象を飛び越して、爆発という結果を生じた。
自らも至近で爆風と熱を浴びたにも関わらず、妖々と立ち上がる魔神王に、アーカードは獰猛な笑みを浮かべる。
取り込んだ無数の命により世に溢れる不死者の中でも別格の不死性を誇り、数多の人間と化物(フリーク)を恐怖させた不死王と。
物質としての肉体を持たず、少女の肉体は仮初の器で有る為に、いくら傷ついても決して斃れることが無く、破格の英雄達をすら絶望させた魔神王と。
生命の尽きる事のない身体を持つ化物(フリーク)同士の死闘は、これからが本番だった。
「HAAAAAAAAA!!!」
咆哮したアーカードが、頭部を吹き飛ばされたパスカヴィルを切り離し、胸から腹から背中から数十のの腕を生やし、瞬間数十撃の猛打として魔神王の全身を乱打。
更に腕の一本一本が、人間に限界を遥かに超えた回転率で魔神王を撃ち続ける。結果、魔神王の四肢が胴が頭が砕ける端から再生し、再生と同時に砕けまた再生する。
アーカードの腕も皮膚が溶け、肉が崩れるが、その端から再生し、魔神王の身体に拳を貫手を掌打を手刀を叩き込む。
アーカードの狙いは単純。自身の再生力にモノを言わせたゴリ押し。魔神王の再生能力が破格であろうと、こうして打ち続ければいつかは限界が来る。
回避する余地などない。一つの腕を躱した先には三本の腕がある。
防ぐ術など存在しない。一つの腕を防いでも、五本の腕が身体を撃つ。
反撃する事は許さない。腕を動かせばその場で殴り砕き、呪文を詠唱しようとすれば、顎を撃ち砕き、喉を抉って黙らせる。
魔神王の血と瘴気によりアーカードも傷を負うが、魔神王が全身を打ち砕かれ続けるのに比べれば、大した問題では無い。
正しく吸血鬼の闘争。不死身の身体と人の域を超えた身体能力を駆使した人外の闘法。
「この程度か?吸血鬼の闘争とやらは」
なれども同じく人外の魔神王には決め手とならない。
顔面目掛けて迫るアーカードの手刀に、自身もまた拳を振るう!!
肉が潰れ骨が砕ける音と共に、双方の拳から鮮血が噴き出し、アーカードが激しく咳き込んだ。
魔神王の血が瘴気と変わり、吸い込んだアーカードの喉から肺腑にかけて焼いたのだ。
動きの止まったアーカードへと魔神王がドラゴンころしを振るい、アーカードの腕数本ごとアーカードの首を斬り飛ばした。
魔神王が奇怪な発音と音節による詠唱を立て続けに行い、アーカードの身体を火球で爆ぜさせ、稲妻で灼き、魔力で撃ち砕く。
燃え上がり、四肢が捩じくれ、胴が爆ぜた身体が、魔力による衝撃で砕け散りながら宙を舞い、辺りに燃えカスと燃える肉片が転がった。
「HAHAHAHAHAHA!!!」
常人どころか人外であっても塵すら残らぬ猛攻を受けて、なお再生し、なお哮笑するアーカードを前に、魔神王は背中から翼を生やすと、宙へと舞いがった。
「今のところ、お前を滅ぼすのはできぬ様だ。お前を滅ぼせる手段を得たら、その時がお前の最期だ」
再生途上のアーカードに、十数条の光の矢を撃ち込んで再生を鈍らせると、魔神王は何処へかと飛び去った。
【魔神王@ロードス島伝説】
[状態]:健康 (魔力消費・中)
[装備]:ドラゴンころし@ベルセルク
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜込みで皆殺し
1:アーカードを滅ぼせる道具が欲しい。
2:
[備考]
自身の再生能力が落ちている事と、魔力消費が激しくなっている事に気付きました。
装備品紹介
ドラゴンころし@ベルセルク
鍛冶屋ゴドーが鍛え、狂戦士ガッツが振るい、幾つもの夜を越えた後に、再度鍛え直された巨大な剣。
ガッツがこの剣で数多の魔を斬り殺したために、対魔の効果を持ち、霊的な存在に対しても効果を発揮する。
◆
「去ったか」
飛び去った魔神王を見送って、アーカードは愉しげに笑った。
魔神王と同じで、アーカードもまた滅ぼし切る手段を持ち合わせていない。
あのまま戦い続けても良かったが、それでは芸が無い。あの敵にはやはり決め手となるモノを用意するべきだろう。
戦闘の高揚が収まってくると、つい先刻まで胸を焼いていた怒りも収まっているのを感じる。闘争を愉しんだことで程よくストレスが解消されたらしい。
闘争はやはり良いモノだと、アーカードは思った。
途端に、闘争の相手には到底なり得ない子供を相手に、殺し合いを強いた乃亜に激怒する。
だが、乃亜よりも、乃亜に殺された二人の方が、今のアーカードには気に掛かるものがあった。
特にあの様な状況下で、生殺与奪の権を握られながら、なおも乃亜に叛旗を翻したルフィという名の子供。子供ゆえの無知からくる蛮勇かもしれないが、育てばインテグラにも負けぬ素晴らしい人間になったかもしれない。
全ては可能性の域を出ない。だが、もしもそうだったとしたら?素晴らしい可能性の芽を乃亜が摘み取った。或いはこのバトルロイアルで摘み取ろうとしているとしたら?
最初は自分やあの化物(フリーク)のような人外の者以外は心身共に無力な子供ばかりだと思っていたアーカードは、この可能性に気づいて愕然とした。
それに、もし仮に、この場にアーカードの心胆を震わせるに足る、幼いとは言えアーカードが認める様な精神を持った人間が居たら?
そんな人間をアーカードは殺すのか?乃亜の意思に沿って?
あんな奴に素晴らしいと認める人間が殺されるだけでも業腹なのに、それを行うのがアーカード自身である。
アーカードが乃亜の凶器として、乃亜の意志によって、行動し、殺戮する。
「ククッ」
アーカードは獰猛に笑った。
「随分と、随分と舐めてくれるじゃあないか」
一度退いた怒りが再度込み上げる。いや、此れは先程の怒りとは異なる怒りだ。
アーカードの在り方を虚仮にし抜いた乃亜への怒りだ。
「貴様の思い通りになどなって堪るか!!!」
アーカードの声は怒りに満ちていた。
【アーカード@HELLSING】
[状態]:健康 疲労(中)
[装備]:エボニー&アイボリー@Devil May Cry
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜を殺す。
1:乃亜の思い通りには動かない。
2:魔神王を殺し切れる武器が欲しい
[備考]
自身に掛けられた制限により、身体能力と再生能力がが低下し、拘束制御術式による数の暴力が大幅に落ちていることを知りました。
幼女の姿。通称ロリカードで固定された状態で参戦しています。
装備品紹介
エボニー&アイボリー@Devil May Cry
悪魔狩人ダンテが使う黒白の二丁拳銃。エボニーは威力に、アイボリーは連射性に優れる。二丁で一つの扱いの為、どちらかが壊れると連動してもう片方も壊れる。
もともと装弾数や、再装填といったものが概念レベルで存在しない銃であるために、この銃は残弾数というものが設定されていない。
代わりに一発撃つたびに魔力を消費する。魔力のない者は体力を消費する仕様となっている。
投下を終了します
投下宣言時のタイトルは誤りで、正しいSSタイトルはimmortal combatです
投下します
山はあれども多くが更地となっていて、
生命を感じられなければ、人がいた痕跡も見当たらない荒野。
海馬乃亜によって始まった殺し合いの舞台と言う盤上において、
生き足掻こうとする少年が一人いた。
「ハァ、ハァ……」
例えるならば、それは狐が人に化けた姿と言われたら信じる人が多いだろう。
黄金色のフサフサな尻尾や頭部から生える獣の耳はそう受け取れる姿をしている。
背中を大きく露出させた衣装は幼いながらも何処か妖しい色香を醸し出す。
脱兎の如く走る姿は、常人を優に超えた身のこなしをしている。
手には一振りの刀。乱雑に持っている風には感じられず、
寧ろ使い慣れているかのように構えながら後方の空へと振るう。
「ッ!」
迫るは月を覆うように迫る無数のコウモリ。
ただのコウモリであればどれだけ良かっただろうか。
一般的なコウモリと違い、これは人の肉を容易に抉る咬合力を持つ。
太刀筋はとても洗練されているとは言え、数の物量には負けてしまう。
全てを払うことはできず、露出した腕に少なくない噛み痕が残る。
ダメージとして無視できるものではないが、今はそれどころではない。
即座に少年がバックステップをすると、
先ほどまで彼の頭部があった場所を横切る、素手の薙ぎ払い。
当たらなかったが彼は確信している。離れなければ首が飛んでいたと。
少年のような細腕からはありえない威力に冷や汗をかきつつ相対する。
コウモリは人の形を作っていき、形成する途中でもミドルキックが飛ぶ。
刀を挟むことで致命傷は避けるが、威力は大きく勢いで軽く地面を転がる。
直ぐに起き上がろうとするも、倒れる少年の背を追いつくとともに踏みつけられてしまう。
「全く、手こずらせないでくれないかな。」
コウモリが集合して人の形を完成させると、
黄金色の髪と赤い瞳に、黒のマントをたなびかせた少年が立つ。
少年から見た相手の姿は、さながら人形のようにも思えた。
人の視線を釘付けにさせる外見とは、こういうの指すのかと。
一方で、その少年から繰り出されたのが先の攻撃でもある。
見た目と強さは比例するわけではないのは理解してることだが、
此処まで一方的にやられていることについては余り想像したくなかった。
遡ること、殺し合いが始まって間もない頃。
殺し合いの舞台における果て、即ち端のエリア。
崖の先は海なのか、それすらも判断つかない黒い靄で覆われている。
空に浮かぶ島なのか、水辺に浮かぶ島なのか。いずれもわかることはなく。
近くにあった小石を投げても水の音はなく、地面に落ちた音すらも聞こえず。
この静寂こそが返事だと判断し、事故で落ちないよう崖から離れる少年が一人。
顎に手を当てながら、一人この荒野が多い舞台で思考を巡らせている。
(瘴流域とは違うことは分かった。でも、これ以上調査の進展のしようがない。)
少年、コウは今の状況を整理した末に溜息をつく。
彼の所属する騎空団はことあるごとに事件に巻き込まれる。
多くの国に関わったり、多くの災厄と立ち向かったりの波乱万丈。
加えて十二歳と言う幼さはあれども、一時は一人で旅をした経験がある。
場数も踏んだ身ではあるので、こういうことが起きても普段通りに近い。
とは言え気分のいいものではない。殺された二人が自分の知る人物ならば、
同じような行動をしていた可能性があったことは想像に難くないのだから。
(九尾なら、嬉々として愉むのが想像できるな……)
コウの血筋が関わる失われた王家と密接な関係を持つ、意志を持つ人造の魔獣九尾。
狡猾、残忍。それらの言葉だけで性格を理解できる怪物がこの催しにいたのであれば、
さぞ堪能していたのだろうことは想像するに難いことではない。既に倒したと言えども、
乃亜と名乗る少年は死霊術等の不完全な形ではなく、完璧に人を蘇生した。
もしかしたら、九尾さえも復活させているのではないかと思えてならない。
(とは言え、流石に九尾はいないはず。)
九尾の身体はかなり巨躯になる。
暗がりで人の姿は殆ど把握できなかったが、
それだけの体躯をあの会場で見かけないのはまずありえない。
なので九尾についてはいない扱いにするとして、今後どうするかを考える。
乗るか乗らないかで言えば乗るつもりはないとしても、自分にできることは何か。
殺し合いを打破するのであればまず破綻させること。首輪を何とかする他ない。
彼は礼節を弁え、物腰柔らかな態度で話すことからも年不相応の聡明さはある。
しかし機械知識については乏しい。騎空団には機械技師を筆頭に多くの人がいたので、
余り喜べることではないにしても、その人達がいてくれることを願うしかない。
加えて、星晶獣が関わるようなことがあれば自分の強さも限界が見える。
全体的に中途半端。だからこそ参加者に選ばれたのもかもしれないが。
「君、こんなところで何をしてるんだい?」
音もなく忍び寄られたことで、
思わず腰に携えたていた支給品の刀を抜きつつ距離を取る。
仕込み傘が主武器であったため、刀剣類の心得自体はある。
できれば仕込み傘であれば望ましかったが、背に腹は代えられない。
「身構えないでよ。敵対するつもりはないから。」
微笑みかける少年の姿はこの場では似つかわしくない。
刃物や警戒心を前にしてもその余裕の態度を崩すことはなく。
不変。この少年を一言で表すのであればそれが正しいだろうか。
いくら思考に耽っていたとは言えこうも近づかれるのか。
「……そうですね。すみませんでした。」
少しばかり疑問や不審には思うが、事実相手は攻撃を仕掛けなかった。
寧ろ武器を構えるコウの方がこの絵面的には危険な人物に見える。
一息ついてから冷静さを取り戻し、刀を納めて相対する少年と向き合う。
「ひょっとして、ヴァンパイアの方ですか?」
以前コウはある理由でヴァンパイアとの交流を持っており、
頭部に翼に似た触角のようなものはないものの雰囲気や容姿については、
その交流のあったヴァンパイアの少年と類似したものを感じさせる。
尖った耳、彼の世界にはない呼び方だがエルフ耳も同じ特徴だ。
「そうだけど……ああ、警戒してる?」
「いえ、知り合いにいたものなので。
ヴァンパイアであったとしても気にしませんよ。」
ヴァンパイアはその伝承から人から畏怖され、
同時に強いが故に人を傷つけることを危惧し人との交流を避けた種族。
だから人を信用することに懐疑的だったり、蔑視したりすることもある。
今はある程度改善されたとはいえヴァンパイアと指摘されるのは、
余り良いものではないだろうと早々にそのことの話は切り上げる。
「そう? それで何をしてるんだい?
エリアの端に人はいないと思うけど。」
「簡単な調査ですよ。」
コウは此処にいた経緯を軽く説明する。
と言っても何か進展したわけでもなく、漠然とした状態だが。
「へぇ、結構考えてるんだ。次は人探しと言ったところかな。」
「はい。できる範囲で敵となる人も倒しておきたいですが。」
話がスムーズに進む。
ヴァンパイアともなれば長い年月を生きる。
外見の幼さとは裏腹に状況の理解や呑み込みも早い。
時間との勝負になる部分もある状況において一つの強みと言える。
「良かったら僕も一緒に行動してもいいかな?」
「ええ、構いませんよ。」
特に状況に物怖じしない様子から、
戦いの経験も多いようではあるのも強みだ。
戦力や協力者が増えればそれだけ今後に繋がっていく。
「ですが───」
「その殺気については説明してもらえますか?」
コウの発言にきょとんとした顔をする少年。
大きな溜め息を吐きながら顔を伏せると同時に、
風を切る音と共に繰り出される鋭利な爪を用いた貫手。
得物はしまったが警戒を怠っていたわけではないため、
素早く身を逸らすことでその一撃を難なく躱すことに成功する。
「ああ、やっぱり隠しきれてなかったんだね。
普段なら隠せていたんだろうけど……流石に今は無理だ。」
あどけない少年らしさは彼方へと消えた。
顔に手を当てた指の隙間から伺える表情は、
どす黒い憎悪と殺意に満ちた表情で八重歯をギラつかせる。
以前そういった感情を向けられることはあったものの、
視線は視界に入れるだけで寒気が全身を伝うかのような冷たさを持つ。
「今の反応、気付いてた割には友好的だったじゃないか。
ひょっとしてある程度誤魔化してたら許していたとか?」
「僕の出会ったヴァンパイアは人と友好的でしたから、
なるべく信じたかったんですが……そうはいかないと。」
「友好的? 面白いことを言うね。
散々人間を僕にしてきた僕達を善良だなんて。」
コウの言うヴァンパイアと彼は異なるヴァンパイアだ。
名をプラム・バトリー。魔界孔の影響を受けた結果変質し、
ヴァンパイアとなった人間の一人であり、崩壊した日本において北国を制圧した、
ナイトメアアイズの真なる総長……と言った肩書きなのも今となっては過去の話。
百年前にも滅ぼされたザンマの者に敗北し、復活してもある男に滅ぼされた敗北者。
九死に一生を得た彼としては、何としてでもこれをものにしなければならなかった。
だが、本来ならば甘いマスクで容易に通せたそれも、屈辱を味わっては別だ。
外見上は取り繕えたものの結局は見てくれだけ。聡かったり経験者なら気付ける。
激しい憎悪や殺気を嘗て仲間のヨウにぶつけられたコウにとっては、特に。
「人間は利用するための道具さ。だから君を使おうじゃないか。
魔族に連なる君なら、血を吸っても眷属にしても使えそうだからね。」
プラムの言う魔族とは、魔界孔の影響を受けた者のことだ。
自分が花嫁役として求めた天楼久那妓が獣の姿や力を得たように、
彼もまた人外となる容姿を持っているためそう思っただけの事。
……ただコウはエルーンと呼ばれる、その世界の基本となる四種族の一つ。
コウに限らずユエル等、失われた王家に連なる者達には尻尾があるので、
単なるエルーンとは違うのだが、とりあえず結論を言えば人類のくくりだ。
つまるところ、ただの勘違いである。
「魔族? 何を言って───」
その誤解を解くだけの説明をする暇などない。
高速で飛来する薙ぎ払いを前に回避以外の選択肢はなく。
続けざまに来る徒手空拳を持ち前の経験で何とか被弾を避ける。
はっきり言えば技術だけで見ると、その徒手空拳は児戯のようなもの。
拳や足で戦う団員もいたので目は肥えている。粗雑で洗練されたものには程遠い。
だが、人外となったヴァンパイアの能力であれば、たとえ児戯でも兵器の類になる。
直撃すれば死は免れない必殺の一撃。洗練されてない粗雑な攻撃は、
裏を返せば洗練する必要すらない強さを誇ると言うことでもある。
事実、戦い慣れた格闘家を相手するかのように反撃に回る暇がない。
「ほら、さっきみたいに刀を抜きなよ。」
ヒュン、と音と共に頬に赤い筋が刻まれる。
簡単に言うなと内心で軽くごちる。もし反撃をした瞬間、
隙を突いて首を落とされることが容易に予想できてしまう。
隙だらけだがその隙で仕留められるとは到底思えない。
かといって、このまま続けたところでじり貧なのは目に見える。
このまま戦っても勝ち目が薄いと確信するには時間はかからない。
確信を持った瞬間コウは地面の砂を蹴り上げることで軽い目潰しをしつつ、
逃げに徹することを選択したものの、結果は見てのとおり容易に追いつかれた。
コウが遅いとかプラムが速いとかは、ひょっとしたらあるのかもしれない。
だがそれらはさほど問題ではない。根本的な問題は場所の方だ。
(身を隠す場所が少なすぎる……)
二人のいる場所は殆どが更地となっていて、視界が余りにも開けた場所。
身を隠すなどしてやり過ごそうと言う手段が取れず、純粋な脚や速度の勝負になる。
多少距離を取れたあったところで解決のしようがないことだ。
「抵抗されても困るし、腕でも斬り落とすか。後で眷属にすればくっつくよね。」
大したことのない相手とは言え多少の腕は立つ。
血を吸いつくすよりは眷属にして使い倒す方が有益だろう。
殺し合いも始まったばかりだ。頭数を揃えていくのは大事だ。
ナイトメアアイズでも偽りの姉のカミラに任せていたように、
人を使い倒すことについては慣れたものだ。
そうはさせまいとコウも全力で足掻くが、
満足に身動きできない状況では抵抗も虚しいものになる。
水底へ沈むように、絶望を前にできることなど何もなく。
鋭利な爪を月夜に光らせる光景を最後にコウは目を閉じる。
「おや、面白いことをやってるじゃないか。」
手が切断される寸前、
近くから少女の声が聞こえた。
二人の動きは止まり、声の方へと顔を向ける。
淡いピンク色の服を纏った、十歳にも満たない姿をした幼い少女。
全体的に赤よりの色合いの中、水色のウェーブヘアーがよく目立つ。
支給品を詰め込んだ赤いランドセルが、悪い意味で似合う幼い少女。
プラムと同様に、ランドセルを度外視すれば人を魅了する端麗さが目立つ。
幼さはあるものの、彼女が人間でないことについてはすぐに察せた。
コウモリのような翼が広がっており、悪魔やその類だと連想ができる。
「おや、同族みたいだね。君も味見してみる?」
「ふむ、悪くない提案だ。無理矢理パーティに招待され、
あの乃亜と言う小僧に業腹を抱えていたところだったからな。」
もしかして助けなのでは、
なんて淡い期待をしたが一抹の望みは絶たれる。
助けになってくれる人だと思ってみれば敵が余計に増えただけだ。
そんな不運の連鎖があっていいのかとコウの表情は青ざめていく。
元々現状ではどうにもならないものをさらに詰みへと追い込まれてしまう。
何も成すことなく、ただヴァンパイアにいいように利用されるだけで終わる。
いかに年不相応の経験をしているコウでもこの状況には心が折れかけていた。
(また、なのか……!!)
生贄の為だけに育て上げられた。
死ぬことが存在意義とされていた昔を思い出す。
九尾とそう変わらない邪悪な存在によって使い倒される。
そんなものに納得などできるわけがないが、現状はどうすることもできない。
「妖狐の類なら溜飲が多少下がるかもしれないが……それはそれとしてだ。」
だが、想像してた展開とは大分違った。
一度真紅の瞳を伏せた後、開くと同時に右手に赤い槍を生成し投擲。
弾丸のような速度で飛来したそれをプラムが躱し、拘束から逃れた。
一瞬コウは戸惑うも、即座に状況を理解し起き上がり態勢だけは整える。
「……どういうことかな? 独り占めが御所望かい?」
露骨に不機嫌そうな顔をするプラム。
相手はただのヴァンパイアでないことはわかる。
眷属になる形でのヴァンパイアではない、純正な存在。
なので対等に接したつもりだが、予想外の攻撃をされては別だ。
「何、同族がこんなつまらん催しに乗り気なのが気に入らん。故に潰す。」
結果的に助けてもらったものの、
戦う理由が気に食わないだけのもの。
それだけで潰される相手はたまったものではない。
敵ではあるのだが、少しだけコウは相手に同情してしまう。
「ああ、そう。じゃあ死になよ。」
不機嫌そうな表情にさらに眉間に皺を寄せながら爪の斬撃。
同じように少女もまた、爪を用いた斬撃がぶつかり合う。
相殺した瞬間空いた手の方での斬撃が交差する光景は、さながら剣戟の如く。
「っと。」
剣戟を中断すると少女が高速で飛翔し、背後に回り込みながら再び槍を生成。
槍による刺突をプラムも身を翻しながら躱し、地上へ着地しても続ける刺突。
華麗に躱し、大きく距離を取ったところにそのまま槍を投擲するがこれも避ける。
反撃のためプラムが肉薄し貫手を放つが、逆に少女が距離を取るように空を舞い手を翳す。
「ならこれはどう?」
手から刃のついた鎖が飛び出し、プラムを襲う。
当然射程外へと逃げるように距離を取るが、追撃は終わらない。
伸ばされた鎖は生物の如くそのまま追尾を始めて攻撃をやめない。
逃げは無意味と分かり、鎖同士の隙間を素早く掻い潜りながら接近していく。
「流石同族ね。それぐらいはできないと面白くないわ。」
鎖を掻い潜りワンインチまで迫ると、
互いにヴァンパイアの膂力に物を言わせた拳がぶつかり合う。
当たれば必殺だったであろうそれを受け止める少女の姿は、
コウからすれば(既に戦いの中で察したが)無茶苦茶な存在だ。
「残念だよ、君なら彼女以上の花嫁に向いていたのに。」
「お誘いどうも。妹のサンドバッグぐらいの価値はあるし嫁ごうかしら。」
契りを交わすなどといった高潔さや甘い関係は一切なく。
あるのは一方的に使い倒す。それ以外の魅力も価値もなし。
プラムも同じだ。花嫁とは言うが自分の力を高めるための生贄に過ぎない。
無論ある程度の選り好みはしている。それ相応の強さを秘めてなければ。
当然、彼女はそれに向いている。ことと次第では天楼久那妓よりも上だ。
互いに皮肉を口にした後、互いに殺意満点の顔で攻撃を再開する。
(駄目だ、二人の間に割り込む暇がない!)
二人の少年少女の戦いと書くと可愛らしさを感じるが、
やってることはヴァンパイアのパワーを用いた全力のステゴロ。
互いの拳が、脚が、爪が、肉体が衝突しては相殺を空中で繰り返す。
外見だけならば、絵物語の主要人物になりそうな麗しい姿との正反対の光景。
コウも彼女の援護しようとは思うも、ダメージを抜きにしても加勢できる状況ではない。
戦いのレベルが既に上の段階だ。いつもの武器であるならいざ知らず、
折れず欠けない刀と言うだけではそれは簡単なことではなかった。
「ならこれはどうだい!」
「!」
永遠に続くかのような攻防は終わりを告げる。
突如プラムの周囲を落雷の柱が降り注いだからだ。
空が明るければ青天の霹靂と呼ぶべきだろうそれは、
退避が遅れた少女の左腕を黒焦げに焦がしており、
少しばかりきょとんとした目でその腕を眺めてながら地に降り立つ。
本来ブラムに雷を扱う力はない。
これは彼の所持する光の主霊石(マスターコア)によるバックアップだ。
ある世界で王を選定する力によって、その世界における光の魔法を会得している。
人間を支配しようとするブラムにとって、これほど相応しいものはないと思えてならない。
光と言うのは癪に障るが、雷に寄っているのでそれほどの不快感でもなかった。
「ふむ、ウェルダンを通り越してるわ。客に出す料理としては論外な出来栄えだ。」
腕を一本やられたと言ってもヴァンパイア。
人間と違いその内再生するものだからなのか、
芸術品でも眺めるかのように様々な角度から眺める。
自分の腕さえも他人事のような状況だ。
「それにしても面白い芸を使うな。さっきまで使わなかったのは遊びか?」
「必要ないと思ったからさ。君の後ろにいる彼程度の実力者ならね。
けど君が登場。参加者の水準を見直す必要ができたんだ。
人間から貸し与えられたものを使うのは、確かに業腹ではあるけどね。」
「案外臨機応変だな。」
「膂力だけの存在に王は務まらない。そこは同じ意見じゃないかな?」
「同感だ。さて、治るとはいえだ。
此処までされたなら仕返ししたいのはやまやまだが……」
「え?」
チラリと、少女は背後にいるコウを見やる。
何の視線なのか分かりかねない視線に軽く身構えた。
「……はぁ、仕方ないな。」
めんどくさそうに目を逸らしながら溜め息を吐く。
まだ無事な右手の方で何度か拳を作った後、
「じゃあ雑に、ギュッとしてドーン!!」
先ほどまでの高圧的な態度は何処へ行ったのか、
子供のような語彙と共に右腕を大地へと叩き込む。
力任せの一撃だが、力任せだからこそ威力もすさまじい。
コウの時の比較ではない。砂が派手に飛散することで視界を遮る。
目にも僅かに入り、今回ばかりは防御に徹することを余儀なくされた。
距離を取りつつ周囲を警戒するも何も起きず、視界が戻れば既に二人の姿はない。
「……ヴァンパイアの癖に人間を庇って逃げたのか。」
或いは独り占め目的か。
何を考えてるかは分からないが、
コウに受けた目くらましと違って今度は逃げ足が速い。
流石に追うのは一苦労だろうし、追跡はやめにする。
二人と出会ったことで参加者の水準はある程度高いのは分かった。
だったら無理に拘ることはせず、他の参加者も狙えばいい。
ヴァンパイアは歩む。自分を受け入れなかった世界を滅ぼす為。
【プラム・バトリー@大番長―Big Bang Age-】
[状態]:健康
[装備]:光の主霊石@テイルズオブアライズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:乃亜含めて皆殺し
1:適当に放浪する。
2:ザンマがいたら確実に殺す。
3:必要なら眷属も増やしておく。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※光の主霊石により雷に関する光魔法が使えます。
慣れないとは言え特体生なので中級ぐらいまでは楽に使えるかも。
ブラムから大分離れた場所。
そこには高速で飛行する少女と、脇に抱えられたコウ。
追ってくる気配がないため、地上へと降りると乱雑に放り投げる。
即座に受け身を取りながら手に持ったままの刀を構えて相対するが、
相手は肩をすくめながら笑う。
「そう構えるな。確かにさっきはああ言ったけれど、
別に食べやしないわ。連れて逃がしたのは利用目的はあるけどもね。」
あのまま戦ってもよかったのだが相手は雷を用いて、かつ広範囲。
戦闘を続ければまず彼はその余波で死ぬことは想像に難くなかった。
別に死んでもさほど心は痛まないが、見捨てたとかで後に面倒ごとは困る。
誰が相手でも負けるつもりはないにしても、結局首輪の解除は必須条件。
ある程度友好的な関係でいられるように気にしておくべき案件だ。
「とまあ、そう言うことだから助けたわけ。
それに納得がいかないのであれば振るいなさい。
死ぬのを覚悟の上で、と言う注釈はつけるけれど。
「そう、なんですか……それでしたらすみません、疑って。」
「別に気にしないでいいわ。
じゃあ、私行くから後は好きにしなさい。
この通り殺し合いには乗らない善良な存在だからよろしく。」
コウは生きてるし、ダメージの割には動ける様子だ。
だったら無理に面倒を見る必要もないだろう。
後は好きに行動してもらえば都合がいい。
「あの、待ってください!」
「同行させてほしい、なんていうつもり?
腕は立つみたいだけど、正直足手纏いよ。
山にでもこもって終わるまで待つ方が賢明ね。
と言うより、私を顎で使えると思うなら殺すけど?」
身を強張らせるには十分な殺気。
利用すると言う点はお互いさまではあるが、
別に使い倒すと言った下に見ているつもりはない。
「いえ、そんなつもりは。
確かに同行はしたいですが、
貴女の言う通り限界は見えます。
かといって何もしないつもりもありません。
なのでよければですが、僕の知り合いにヨウと言う、
青藤色の髪のエルーンがいたら保護をお願いできますか?」
もしユエルやソシエ、団長がいたとしても実力はよく知っている。
だがまだ人付き合いが得意ではなく、不安なところがあるヨウだけは別だ。
最悪先程の少年と出会えば、騙されたりする可能性だって十分にありうる。
できるだけ安全圏にいてほしく、それなら彼女の強さであれば適任だろうと。
「家族かしら?」
「妹みたいなものです。ヨウも僕と同じで戦えますが、やはり心配で……」
「ふーん、妹ね。
だが悪魔に頼みごとをするなら、
供物を用意するのが道理じゃなくて?」
心証を良くするのであればその頼みは引き受けるべきだが、
初対面の、対等でもない相手に二つ返事で受け入れるほど寛容でもない。
彼は数十年来の親友でも、長年仕えてきた従者でも、血の繋がった妹でもないのだから。
「先程の方と同族、とのことですからヴァンパイアですよね。悪魔とは?」
「質問に質問を返すのは礼儀に反するって知らないの?
細かいことは気にしない。こういうのはノリよ、ノリ。
それで、態々訪ねるってことはOKなんでしょ?何をくれるの?」
「───僕の血を払います。」
ヴァンパイアであるなら、
血を糧にして生きる生物であるはず。
だったら一番払いやすいのはそれだろう。
血の味などコウにとってはさっぱりではあるものの、
プラムからある程度興味を持たれたのを考えるに、
それなりの味は保障されてる可能性は高い。
「おや、随分と気前がいい。私が致死量を吸えば死ぬが、
妹がそんなに大事か? それとも自殺願望でもあるとか?」
「……ヨウは、以前の僕のようなものです。」
九尾の為に死ぬことを定められた過酷な環境にコウはいた。
だがヨウはそれ以上で、人として扱われないような環境にいて、
コウが舞の継承者になったことで用済みとなった空っぽの影法師。
嘗ての自分と同じだ。自分の立場を呪い、わが身可愛さに誰かを傷つけて。
そんな自分が許されたように、誰もが敵になるとしても自分だけは許すと。
そう決めた相手だ。悪魔と相乗りするぐらいの覚悟は既に持っている。
「できればこんなところで死ぬつもりはありません。
貴女が死なない程度に血を持っていくことを信じるしかないです。
ですが、その代わり必ずヨウのことをお願いします。」
「ハッ、対価を此方に委ねるなんて面白いじゃない。
少しまけてもよさそうだけど、その覚悟を見せた相手にそれは不敬か。
良いわ、その提案乗った。じゃあ噛ませてもらうから、首を出しなさい。」
不安な表情と共にコウはしゃがみながら髪を抑え、首を傾ける。
日に当たってないかのような白い肌は穢れを感じさせないもので、
少しばかりそそられながら少女は肩を掴み、尖った牙を首筋へ突き立てる。
「ッ、ァ……アッ……」
最初は肉を抉られる不快感と痛みはあったが、思ったよりも痛みはないと感じた。
血が抜けることによって力が抜けるような感覚のはずが、どこか浸っていたい。
快楽にも似たようなこの感覚をどれだけ耐えれば済むのだろうか。
或いは、これが最後の時なのかと不安に思っていると、
思いのほか短い時間でその吸血行為は終わった。
「ケプッ。めずらしい味だ。人間とは違って品質がいいな。
たまに飲むといいかも……ってなんだその顔は。魔性の類か?」
力が抜け、肩で息をするコウの表情は何処か色っぽい。
思わぬ表情を見て、彼女は一瞬だけドキッとしてしまう。
「あの、これだけでいいんですか?」
想像よりも短いし、軽い貧血になった程度だ。
回復の術に関する心得はあるので止血も割と容易にできた。
死からは程遠いどころか、意識も普通に保てるものになっている。
「私は少食だから別にこの程度でいいのよ。
眷属にもならないし死にもしない。貧血はあるから少し大変か。
さて、その覚悟と捧げた血の対価を今度は私が払うとするわ。
払わせてから言うのもなんだけど、その妹がいるとも限らない。
払い損になったとしても血は返せないから、そこは理解して頂戴。」
「構いません。いなかったとしても、傷の足しにはなるかと。」
「違いない。あの乃亜がやったことか、
傷の再生が遅いのも気掛かりだからな。」
強すぎる人物に対する制限。
これがそう言うことなのかと察する。
事実血を飲んだおかげで回復速度は上昇していた。
余りおいそれと他人の血など受け取れないだろうが、
手段の一つとして覚えておくことにする。
「さて、そろそろ行くとするわ。」
契約も終えた、相手の体調も問題なし。
此処にいる意味は本当になくなり、翼をはためかせる。
「あ、待ってください。
「まだ何か?」
「最後に名前を伺ってもよろしいですか。僕はコウです。」
名前を知らないと後で困る。
そのことに気付き『ああ、そうだったな』と呟く。
月をバックに空を舞いながら、少女はこう答えた。
「───レミリア・スカーレット。レミリアでいいわ。」
名乗りを上げるとレミリアは空を舞い、
それをコウは見届けた後別の方角へ歩き出す。
ヴァンパイアは飛び立つ。自分を受け入れた幻想の世界へ戻るために。
【コウ@グランブルーファンタジー】
[状態]:上半身に多数の噛み痕、首筋に噛み痕、貧血、ダメージ(中)
[装備]:千鳥@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:団長さん達の知り合いを探す。できればヨウやスイを優先
2:彼(ブラム)はなんとかしたいが、今はどうしようもない。
3:殺し合いに乗らない人を探したいが、見極める必要がある。
[備考]
※参戦時期は少なくとも『荒るる旻天、帛裂く調べ』エンディングでスイと再会する前。
※吸血量が少なすぎるので眷属にはなりません
【レミリア・スカーレット@東方project】
[状態]:左腕が黒こげ(再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:むかついたので乃亜を殴り飛ばす。
1:ヨウと言うエルーン? がいたら保護する。エルーンってなんだ。
2:あいつ(ブラム)は必ず倒す。同族で乗り気な奴もついでにしばく。
3:身内はいたら探すが優先度は低め。
[備考]
※参戦時期は少なくとも緋想天以降。
※飛行能力にどの程度制限があるかは後続の書き手にお任せします
※再生能力は低下してますが吸血、食肉等の行為次第で上がるかもしれません。
【光の主霊石@テイルズオブアライズ】
ブラムに支給。主霊石と書いてマスターコアと読む。
領将(スルド)の証となる霊石で、元々はガナベルトが持っていたもの。
ダナ人の奴隷の霊石を通じて集霊器に集められた星霊力が貯蓄されており、
戦闘の際には主霊石から星霊力を引き出し、同じ属性術を行使することもできる。
本来は領将にしか使えないが、本ロワでは誰が使っても力を行使することは可能。
ゲーム上ではガナベルトの戦闘以外での使用の描写がないので、
使うとどうなるかは書き手任せ。
【千鳥@刀使ノ巫女】
コウに支給。珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀。
基本的には錆びず刃こぼれもすることはない。
御刀に選ばれた者は刀使として写シなどの能力が使用できる。
元は衛藤美奈都の御刀だが、娘の衛藤可奈美が受け継いだ。
作中通りアニメ本編でも雷を斬ったこともあるにはあるが、
雷に対して絶対的な耐性、メタ性能を持っているわけではない。
刀使以外には折れない錆びない剣と、それはそれで強い武器。
投下終了です
投下します
開かれていたのは悪辣なマジックショー。
哀れな犠牲者は血溜まりにて辛うじて立ち尽くす赤い衣装の少女騎士。
その華奢で綺麗な体と衣装は、何処から兎も角投げられ刺さったナイフの鮮やかな的。
「……ふざ、けんじゃ、ねぇ………!」
だが、それでも女騎士の闘志は消えない、挫けない。
その片腕から相棒たる鉄槌を握り、姿を晦ました、正しくは姿を消した敵を睨み吠える。
"どうしたんだい鉄槌の騎士サマ?"
"大口叩いておいてこの程度なのかな?"
少年の声らしき嘲りの声。
あからさまに馬鹿にしたような嘲笑が、夜の静寂に木霊する。
"僕をまともに捉えられていないというのに。ほら、今もまた見失ったままだ。"
「ぐっ!?」
また、少年の声。それと同時にまたしても少女騎士の身体にナイフが一本突き刺さる。
苦悶の表情を浮かべながらも、鉄槌を振るうも、地面から噴煙を撒き散らすだけ。
このような事が、何度も何度も繰り返されている。
不意打ち、姿は見えず攻撃だけが飛んでくる。何処にいるのかすら分からない。
遠距離技も試してみるも、魔力の気配すらしない見えない敵には焼け石に水。
幸いにも一撃一撃のダメージは低いが、確実な死角から放ってくるため防ごうにもキリがない。
「くそっ!」
苛立ちは止まず、状況は一歩一歩悪化していく。
何せここまで来ても敵の姿は見えない。臆病なのか慎重なのか。
それとも、姿を見せる必要がないほど、適当に相手しているだけでも強いのか。
"はいまたハズレ。そろそろ一発ぐらい当ててくれないと面白くないよ?"
"あ、このままなのも味気ないから、こういう趣向とかどうかな?"
再び誂う声が聞こえ、空気を裂き、何かが通り過ぎる音。
感覚から攻撃では無いと騎士が気づいた時には遅く、不自然に宙に浮く赤い帽子が目に映る。
「て、てめぇっっっ!!」
"という訳で、ヒント。これを目印に当ててみてよ"
"さもないと、この気味の悪いウサギちゃんはボクが切り取っちゃうかなぁ?"
それは、騎士が被っていた、奇妙なウサギの装飾が目立つ彼女の私物。
彼女にとって、主がくれた絆が施された大切なもの。
声の主は、それを引き裂くと、そう言った。
適当な侮辱ぐらいならどうでもよかった。それを言われれば、罠だと分かっていても黙ってはいられない。
「――ぶっ潰す!!!!」
少女の瞳が、蒼い輝きを灯す。
響き渡る怒号が洗浄に木霊し、大地が震える。
絶対許さない、叩き潰してその生意気な口黙らせてやる。
容赦も慈悲もそんなもの必要ない。
「泣いて謝っても許さねぇからなぁ!!」
わざわざ帽子を奪って自分の居場所を明かすような真似をした理由は分からない。
だったら、罠だろうがなんだろうが全部ぶち壊してしまえば良い。
つべこべ考えず、黙ってそのくだらない企みもろとも打ち砕く。
宙に浮く帽子の、それを奪ったであろう相手に向けて突撃し、砕こうとする。
―――だが、彼女に永遠にその時が訪れることはなく。
「あ゛?」
少女は、自らの脳天を貫く何かを認識する。
蛇腹状になった、刃のような何か。
それが、奪われた帽子を貫くように、少女を頭を穿ち。
「なんで、てめぇ、それを。」
少女は、知っている、その武器の名前を。
「それは、あいつ、の………」
その武器の名を呟く前に、鉄槌の騎士の命は尽きて。
愉快そうに、己の能力を解いた何者かの笑い顔だけが彼女の亡骸を見下ろしていた。
【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's 死亡】
「どうだい、ボクのマジック? ……ってもう聞こえてないか。」
クリーム色の髪の、奇術師のような格好をした幼い少年、シメオン四天王の一人である右天がそう吐き捨てながら、先程殺した少女の支給品と首輪を回収する。
テキパキと少女の武器でもあった鉄槌であるグラーフアイゼンも己がデイバッグに入れ終えて、満点の星空を興味深そうに眺めながら、この殺し合いを開いた乃亜なる少年のことを思い返す。
「でも、復活早々殺し合いとはね。弱肉強食自体はブラックスポットの常だけれど、どう考えてもあいつ、ニードレスってわけではなさそうだし。」
この右天は、別段右天という人間本人というわけではない。一度死に、同じ四天王である左天が回収したDNAより復活したクローン、ということであるのだが。
まず、自分に与えられた使命というのが聖痕所持者の早急な確保。勿論の事この右天も右脚に聖痕を保有している。その為クローンとてその強さは本オリジナルにも引けを取らない。
「まあいいさ。良いおもちゃも手に入ったことだし。さっきの戦いでちょっと使った程度だけどいい感じかな。」
先程少女にとどめを刺した得物を手に取り、興味深そうに見つめる。
彼の手にあるのは『レヴァンティン』。ヴォルケンリッターの一人たる烈火の将シグナムの保有するデバイス。皮肉にもあの少女、鉄槌の騎士ヴィータは自らの仲間の武器で殺されるという皮肉な結末を辿ったのだ。
「さっさと元の世界に戻って聖痕所持者をアークライト様の所へ献上しなくちゃいけないってのに、余計なことをしてくれたね。――ただの無能力者(にんげん)の癖に。」
そして、右天がこれでも内心憤っている。
この殺し合いを開いたのがアークライトや左天ならまだ納得がいった。だが自分というミッシングリンク級ニードレスをこんな舞台に巻き込んでおいて、その主催がただの人間とは怒りを通り越して笑えてくる。
ただの人間の分際で神に近い存在である自分を巻き込んだという所業を黙っているつもりはない。
「まあいいさ。せっかくの舞台だ。ストレス発散に少しは遊んであげるよ。すぐに戻れるなんて思っていないからね。」
だが、それはそれ、これはこれだ。この規模の広さの会場で殺し合いを開いておいて、すぐに終わるとは思っていない。
蘇ったばっかりの自分の性能を試す機会でもあり、その点は乃亜には感謝してもいいとは思っていた。
「……だから、楽しい時間が終わった後に、最後の最後に殺してあげるよ、海馬乃亜。」
そう呟いた右天の顔は、年相応のものではなく、人を人と思わぬ狩人の顔立ちであった。
【右天@NEEDLESS】
[状態]:健康
[装備]:レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2、ヴィータの支給品袋のランダム支給品1〜2、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはA's
[方針]
基本.できるだけ早急に元の世界に戻る
1.ただしそう簡単に戻れるとは思ってないので、性能を試すついでに殺し合いを楽しむ
2.くだらないことをしてくれた海馬乃亜は最後に必ず殺す
3.もしかして他にニードレスがいるのかな?
[備考]
※参戦時期は復活直後です
※神の種(エデンズシード)特有の再生能力に制限が課せられています。
『支給品紹介』
【グラーフアイゼン@A's】
ヴィータが所有する長柄ハンマー型のアームドデバイス。
ヴィータに支給されたが現在は右天が所持
【レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはA's】
シグナムが所有する剣型のアームドデバイス。
剣の他、蛇腹剣や弓の形態にも形状を変える。右天に支給
投下終了します
投下します
「どうして……?」
呟きを漏らす唇は薄く色付き。
ぱっちりとした瞳は潤んでおり。
桜色の髪を夜風に靡かせながら、少女は同じ言葉を繰り返す。
「どうして…あんなこと……」
何故、乃亜と名乗った少年はこんな暴挙に出たのか。
何故、自分達と近しい年齢の少年達を殺したのか。
何故、人を殺しておきながら、あんな風に笑っていられるのか。
一つとして分からない。
乃亜のやった事全てが、環ういにとっては完全に理解の範疇外にあった。
「……っ」
兄弟の惨たらしい最期が頭に焼き付いて離れない。
家族を理不尽に奪われた彼らの悲痛な叫びが、憎しみの声が、何度も耳の奥で繰り返される。
なのに乃亜からは罪悪感や後悔は全くと言って良い程に感じられなかった。
キュゥべえのような無機質さとは違う。
アリナ・グレイの狂気とも違う。
魔女の暴力性でもないアレは、底知れない人の悪意。
兄弟と、ういと、まだ見ぬ参加者達は乃亜の悪意に巻き込まれてしまったのだろう。
「わたしのせい、なのかな……わたしがいるから…」
人が死んだ悲しみ、人を殺して笑って見せた少年への戦慄。
この先も起こり続けるだろう悲劇は、自分が引き起こしたのではないか。
何を馬鹿なと言われそうな考えをするういが思い出すのは、神浜市での大きな戦い。
その原因ともなった、自分自身。
自分が治る見込みのない病気になってしまったから、姉は魔法少女の契約を交わした。
姉を助ける為に自分と二人の親友も魔法少女になったが、自分は回収した穢れの多さに耐え切れなかった。
自分はエンブリオ・イヴへと変貌し、親友たちからは自分に関する記憶が失われた。
そのせいで、二人はあれだけ大好きだった姉とも敵対してしまった。
何よりイヴに肉体を閉じ込められた自分が暴れ回ったせいで、神浜市にも被害が出たのは記憶に新しい。
皆は口を揃えてういは悪くないと言ってくれるけど、簡単には割り切れない。
11歳の少女が背負い込むには重過ぎる罪の意識が、ういの心を蝕む。
乃亜が引き起こした殺し合いも自分のせいだと、背負う必要のないものまで背負おうとするくらいに。
「…っ!え、えいっ!」
俯き唇をきつく結んでいたと思いきや、急にバッと顔を上げる。
丸い頬を両手で叩くと、パチンという小気味良い音。
ヒリヒリした痛みに少しだけ涙目になる、姉が見たら慌てて頬をさすってくれるだろう光景。
「しっかりしないと…!わたしは罰を受けるってもう決めたんだから…!」
自分のやった事を強く後悔するういに、いつになく厳しい顔で姉は言った。
無関係の人達を巻き込まずにで、魔法少女の宿命を回避する方法を見付ける事も責任の取り方の一つだと。
途方もない努力が必要になる、一番難しくて重い罰だけど、だからこそ自分に相応しい。
冷たい魂の水底で、罰を欲していた自分自身にそう言ってみせたではないか。
後悔や罪悪感を完全に拭えてはいなくとも、前に進むと決意したんだろう。
だったら、何時までも長ったらしく自分を責めてばかりではいられない。
まだまだ魔法少女としては駆け出しで、親友たちのように天才的な頭脳も無いけれど。
それでも自分だって魔女から人々を助ける、チームみかづき荘の一員だ。
魔法少女の試験だって高評価をもらって無事に合格出来た。
ならその力を殺し合いを止める為に、もう二度と幼い兄弟のような犠牲を生み出さない為に使おう。
「わたしもお姉ちゃん達みたいに頑張らないと…!」
小さな体に大きな決意を秘めて、ういは歩き出す。
それから十数分が経過した頃、彼女は一人の参加者を見付けた。
「うぅ〜〜〜〜…どこなの〜〜〜…?」
道のど真ん中にへたり込むのは、ういと同じ髪色の少女。
大きなリボンが似合う幼い顔は悲し気に歪んでいる。
すぐ傍には引っ繰り返ったデイパックがあり、ぶち撒けられた中身が周囲に散乱。
そうまでしても目当ての物は見つからなかったのか、気落ちしているのが丸分かりだった。
「えっと…だ、大丈夫…?」
初対面で、しかも殺し合いという状況。
迂闊に声を掛けるのは危険だが、無視するのはういの善性が許さない。
それについさっき決意したばかりだ。
困っているだろう少女を放っては置けず、おずおずと様子を窺う。
ういの存在に気付いた少女は暗い顔のまま。
突然声を掛けられたのに驚きはせず、首を傾げて問い掛ける。
「にゃっ?だーれ?」
「えっ、あ、私は環ういって言うの。あなたが何だか困ってるみたいだったから」
「うん…。あのねあのね!未央のウサちゃんがどこにも無いの!ちゃーんと持ってたのに…」
自分で説明してしゅんとする、未央という名らしい少女。
内容から察するに恐らくはお気に入りのぬいぐるみか何かが無くなり、それで落ち込んでいるのだろう。
命が懸かった非常事態に心配するのはぬいぐるみの行方。
状況を理解している者が見たら呆れるだろうが、ういは悪感情を向けたりはしない。
未央を元気付けようと笑みを見せて言う。
「もしかしたらわたしのリュックに入ってるかもしれないから、見てみるね」
背負っていたデイパックを下ろし、中身を一緒に確認する。
やがて出て来たのは大きなウサギのぬいぐるみ。
未央はウサちゃんと言っていたのだし、もしかしてこれかもしれない。
「未央ちゃん!未央ちゃんのウサちゃんってこの子?」
「んーん、違うよ」
「そっか…ごめんね、わたしのにも入って無かったみたい」
「あ、でもこのウサちゃんも可愛いー!」
さっきまでの落ち込みはどこへやら。
星マークが浮かびそうなくらいに瞳を輝かせウサギのぬいぐるみを見つめる。
一目ですっかり気に入ったらしく、それなら譲渡にも抵抗はない。
「未央ちゃん、良かったらこのウサギさん未央ちゃんにあげるね」
「うわーい!ありがとうういちゃん!あ、それじゃあ未央もういちゃんに何かプレゼントするね!」
「い、良いの…?でもわたし、お返しが欲しくてあげたとかじゃ…」
「気にしなくて良いよー。未央がそうしたいからしてるだけだもん」
お礼の為にぬいぐるみをあげたつもりは無いが、あんまり遠慮し過ぎても却って未央を不機嫌にさせてしまう。
折角笑顔になったのに自分のせいで嫌な思いをさせるのは、ういとて望んではいない。
素直に未央のお返しを受け取る事にして、散らばった支給品を見回す。
するとその中に一つ、見覚えがある物が転がっていた。
「これ、グリーフシード…?」
「それが欲しいの?じゃあ持って行って良いよ」
「う、うん。それじゃあ、お言葉に甘えちゃうね。ありがとう未央ちゃん」
「どういたしまして、ういちゃん!」
魔法少女の活動に必要不可欠なソレを貰い受ける。
ここが神浜市かどうか不明な以上、ドッペルが正常に出現するかも定かではない。
穢れを浄化するグリーフシードを確保しておいて損は無いだろう。
自分のデイパックに仕舞い、散らばった道具を未央と一緒に彼女のデイパックに戻す。
彼女の笑顔を取り戻し自己紹介も済ませたけど、大事な話はこれからだ。
「未央ちゃん、未央ちゃんはこれからどうするの?」
「えーっとねー…みんなを探したいかなー」
皆と言うのは未央の友達か、それとも家族か。
最初の部屋で乃亜に集められた者達の様子からして、殺し合いの参加者は幼い少年少女が大半に思える。
という事は親友二人も巻き込まれているのだろうか。
彼女達への心配を今は内心に留めて置き、未央との会話を続ける。
「未央ちゃんのお友だち?」
「うん!えっとまず、クルス君…あ、もうクルスちゃんかな?それからお兄ちゃん…もイヴちゃんと合体したからお姉ちゃんだ」
「が、合体…?」
何やら謎のワードや『イヴ』という自分とも深く関係する名前が飛び出した。
流石に偶然同じ名前だけで無関係だとは思うが、ついつい体が強張ってしまう。
とにかくここに未央の友人がいるかもしれないのなら、一緒に探してあげようと考える。
うい自身も親友達がいるのなら会って無事を確かめたい。
「じゃあ未央ちゃん、一緒に未央ちゃんのお友だちを――」
探しに行こう。
そう続ける筈だった言葉は喉を這いあがる途中で消えた。
会話の最中、突然向けられる敵意。
未央ではない、自分達の背後から感じられる。
緊張の面持ちで振り向いたういが見たソレは、人の形をしていなかった。
孔雀のように色鮮やかながら、地球上のどの生物とも一致しない肉体。
鷹を思わせる頭部もまた、人間とも鳥類とも明らかに違う。
二足歩行ではあるもののこのような生物は見た事が無い。
怪人、そう呼ぶに相応しい存在だった。
(魔女?でも何だか違うような……)
謎の怪人の正体は分からないが、向こうは穏やかな雰囲気ではない。
敵意をぶつけて来る事から、殺し合いに乗った者なのか。
それなら魔法少女として未央を守らなくては。
仲間達を頼れない状況に緊張感が高まるも、しっかりしろと自分言い聞かせ魔法少女に変身。
神浜付属指定の制服から幼さを大いに残す裸へ、新たに魔法少女の衣装を纏う。
「わぁ!ういちゃんそのお洋服とっても可愛い〜!」
「えっ!?あ、ありがとう…。そ、それより未央ちゃんは逃げて!」
呑気な未央の言葉に一瞬照れるもそんな場合ではない。
慌てて逃げる用促した直後、怪人は急接近し左手を突き出す。
幼いながらも魔法少女の超人的な身体能力を有し、経験豊富な魔法少女達に特訓を付けてもらった恩系だろう。
未央を引っ張り間一髪のところで避けられた。
敵は速い、本当に僅かでもタイミングがズレていればソウルジェムごと体が破壊されていたに違いない。
鋭利な爪の生え揃った異形の左手の餌食にならずに済み、ういの背中を冷たいものが滴り落ちる。
「こっちだよ!」
怯んでばかりもいられない。
あえて声を出し怪人の意識を自分の方に向けた。
この隙に未央が逃げ、自分は怪人を止める。
ういの目論見通り怪人がこちらを見た、不可思議な力を持つ方を先に殺すつもりだ。
「お願いツバメさん!」
魔力で凧を出現。
魔法少女はそれぞれ固有の武器を装備しており、ういの場合はこの凧がそれに該当する。
怪人目掛けて凧を勢い良く射出、使い魔程度であれば簡単に蹴散らす威力。
しかし怪人は焦る様子を見せずほんの少しの動作で避け、再びういへ接近。
赤い具足を履いたようにも見える足で蹴りを放とうとするも、直前で体を捩る。
今避けたばかりの凧が軌道を変え、背後から襲撃を仕掛けたのだ。
「行って!ツバメさん!」
怪人に突撃を躱された凧はういの手前で急停止。
ういを乗せて空中へと飛び上がった。
固有武装を使っての飛行は他の魔法少女には無いういの強み。
上空からの攻撃を行おうとし、しかしすぐに凍り付く。
怪人もまた翼を広げ浮上、空中というフィールドを動き回れるのはういだけの特権ではない。
翼を振るい急加速、あっという間にういの元へ近付き凧を蹴り飛ばす。
「きゃあっ!」
大きな揺れに堪らず凧は引っ繰り返り、ういは地上へ真っ逆様に落下。
硬い地面に叩きつけられれば、ういの柔らかい体はタダでは済まない。
凧がういを回収しようと急降下するも間に合わない。
数秒後に自身を襲う衝撃へ思わず目をキツく閉じ、
「よっと」
誰かに抱き抱えられた。
予想外の感触に恐る恐る目を開ける。
痛いと感じる暇も無く死んでしまったのかとおかしな事を考えるういが見たのは、
「未央ちゃん…?」
「うん!大丈夫ういちゃん?」
ふにゃりと微笑む未央だった。
そこで初めて自分が未央にお姫様抱っこされているのに気付く。
自分とそう変わらない小さな体なのに力持ちだなぁなんて、頬を赤くし存外呑気に思うもそんな場合じゃない。
困惑からまだ抜け出せていないういを下ろし、未央はムッとした顔で怪人を睨む。
「そこの変な鳥さん!ういちゃんをいじめるなら、未央がブチッてしちゃうんだから!」
指を突き付けぷんすか怒る未央へ怪人は無言。
ただ何となく呆れているのが雰囲気で察せられた。
未央は自分に代わって怪人と戦うつもり。
自分の為に怒ってくれる気持ちは嬉しいけど、危ない真似はさせられない。
そう思って止めようとするういを背に、未央はぐるぐると右腕を回す。
「未央ちゃ〜ん……」
殺すか殺されるかの戦いを子供の喧嘩と勘違いしているのか。
小馬鹿にするような目を未央に向ける怪人は、
「パーンチ!!!」
次の瞬間大きく殴り飛ばされた。
「ッ!!!?!」
両腕を交差させて防げたのは運が良かった。
とはいえ両腕からも凄まじい痺れと痛みを感じる。
これが直撃していたら、一体どうなった事やら。
何をされたと言うなら単純明快。
ジャンプして怪人を殴った。それだけだ。
地面が陥没する程の脚力と、怪人でさえ直撃を恐れる腕力を行使してだが。
吹き飛ばされていくのを翼を広げて踏み止まる。
両腕を下ろし、目の前を睨みつけても既に未央の姿は見当たらない。
どこへ行った、今度はどこから来る。
次の攻撃に備えるには敵の位置を正確に探り当てねば。
尤もわざわざ周囲を見回さずとも、向こうから答えを教えられた。
「未央ちゃ〜ん…」
声が聞こえたのは怪人の頭上から。
殴り飛ばし地上に降り立つと、間髪入れずに再度跳躍。
先程よりも高い位置へと移動し、真下のターゲットへ右足を突き出した。
「キーック!!!」
防御、いや回避だ。
行動の選択とほぼ同時に動き出すが未央の方が速い。
今度も直撃はしなかったが、蹴りの威力が強過ぎる余り余波だけで地上へ叩き落とされる。
背中からの激突は回避するべく空中で体勢を変えどうにか着地。
顔を上げると真正面には二本足で平然と降り立った未央が見えた。
ういも怪人も思い違いをしていたが、未央は狩られるだけの獲物ではない。
第三次世界大戦後の日本、後にブラックスポットと呼ばれる汚染区域で生まれた特殊能力者。
ニードレス。それが未央の正体だ。
数多く存在するニードレスの中でも一際強力な、物理法則をも覆すミッシングリンク級の能力を未央は手にしている。
それを知らない怪人も未央が油断すべき相手ではないと理解。
殴る蹴るだけが自分の力ではない、証明するかのように左手を翳した。
赤い手に纏わりつく炎。
純粋なパワーでこちらが不利なら遠距離で焼き尽くす。
人間など1分と掛らず焼死体に早変わりの炎を放ち、
未央に当たるより先に消滅した。
「ッ!?」
放った瞬間に炎のエネルギーがどこかへ吸い取られたのだ。
やった張本人がいるだろう方を見ると、再び凧へ乗ったういだ。
ういの固有魔法は回収。
願いでキュゥべえが持つ機能を奪い、自らの固有魔法として魔法少女の穢れや魔力を回収可能な他、敵のエネルギーを吸い取る事も可能。
怪人が炎を放つ際に必要なエネルギーも回収され、未央への攻撃は阻止されたのである。
「未央ちゃ〜ん……」
しまったと気付いた時にはもう遅い。
ほんの1秒ですら致命的な隙となるニードレス同士の戦闘を経験した未央が、このチャンスを見逃す筈が無い。
「ヒップアターック!!!」
怪人が最後に見たのは自分へ尻を突き出した未央。
スカートが捲れ、小振りな可愛らしいヒップを包むくまさんマークのフェイバリットパンツ。
顔面に尻が直撃した怪人は、抵抗らしい抵抗も許されずに吹き飛んで行った。
「あれ?どっか行っちゃった?」
自分でやった事ながら威力が強過ぎて、敵を見失ってしまった。
あれでは死んだかどうかも確認出来ない。
失敗を悟った未央へ、慌てたような声が掛かる。
「未央ちゃん!大丈夫!?」
凧から降りて駆け寄るのはういだ。
魔法少女の変身は解除され元の制服に戻っている。
さっきの服も可愛いけど、今の服も可愛いなと未央はほわほわした感想を思い浮かべた。
嘗て所属していた少女部隊の制服が懐かしくなったのかもしれない。
「だいじょーぶだよ。それよりさっきのギューンって吸い取ったのういちゃんだよね?ありがとっ!ういちゃん!」
「うん、どういたしまして。でもわたしも沢山未央ちゃんに助けてもらって…わたしの方こそありがとう」
「ういちゃんはもう未央の友だちだもん。ニューウサちゃんももらったし、普通の事をしただけだよ?」
「そっか…えへへ…」
ついさっき出会ったばかりだが、面と向かってそう言われると嬉しくて顔がつい緩むのを抑えられない。
「それじゃあ、一緒に未央ちゃんのお友だちを探しに行こっか。わたしも、もしかしたら知ってる皆がいるかもしれないし…」
「んい!だったら未央もういちゃんのお手伝いしてあげる!行こ行こ!」
「わわっ、未央ちゃん速いよー!」
手を繋ぎ駆け出す未央に驚きつつも、握り返してういも駆け出す。
これ以上の悲劇を食い止める為に、最初の一歩を踏み出した。
【環うい@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、グリーフシード@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。
1:未央ちゃんと行動しお友だちを探す。
2:灯花ちゃんとねむちゃんもいるのかな…?
[備考]
※参戦時期はイベントストーリー「巣立ちは空を見上げて」以降。
※ドッペルが使用可能かどうかは後続の書き手に任せます。
【未央@NEEDLESS】
[状態]:疲労(小)
[装備]:ウサギのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:とりあえずクルス君やみんなを探す。
1:ういちゃんと一緒にいて手伝ってあげる。
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
◆◆◆
やり方を変える必要がある。
吹き飛ばされてもまだ生きていた怪人は一人考える。
人間の子供なんて簡単に殺せると高を括ったが結果はご覧の有様。
冷静になって考えると乃亜は自分達に殺し合いを命じたのだ。
一方的に狩られるようでは虐殺と変わらない。
だから自分であっても少々梃子摺るような連中を集めたのは、成程納得がいく。
それなら今後は力任せに暴れ回るだけでは駄目だ。
もっと頭を働かせ狡猾に行動する必要がある。
結論付けると自分の外見を変化、鳥をモチーフにした怪人はもうそこには居ない。
赤いチェックの服を着た人間の子供の姿を取る。
一先ず外見でいきなり警戒させるのは悪手。
必要になった時以外はこの姿の方が良いだろう。
優勝する事を決めたのにそう深い理由はない。
元いた場所へ戻って目的を果たすには、最後の一人になるのが一番の近道。
そう思っただけ。
もしかしたら優勝者への願いでもう一体の自分を、右腕だけの不完全な自分と一つになれるかもしれない。
何にせよ勝ち残れば良いだけだ。
「待っててね、“ボク”」
未完成の怪物は成長し、悪意を増幅させる。
その胸に、決して満たされない心とも呼べぬモノを抱えながら。
【アンク(ロスト)@仮面ライダーオーズ】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(中)、人間態
[装備]:赤のコアメダル×6(タカ×1、クジャク×2、コンドル×3)@仮面ライダーオーズ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:より狡猾に立ち回る。
[備考]
※参戦時期は40話でアンクを吸収する前。
※体内のコアメダルが無事でも首輪が爆発すれば死亡扱いになります。
【グリーフシード@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝】
魔法少女がソウルジェムの穢れを浄化するのに必要。
一定の穢れを吸い込むと使えなくなり、使用済みのグリーフシードはキュゥべえが回収する。
【ウサギのぬいぐるみ@クレヨンしんちゃん】
通称殴られウサギ。
主に桜田親子のストレス発散に使われる。
【赤のコアメダル@仮面ライダーオーズ】
支給品ではなくグリードの肉体を構成する核となる神秘のメダル。
800年前に当時の錬金術士の手で生み出された。
投下終了です
投下します
「…ふざけてる!」
巫女服に身を包んだ一人の少女が、憤慨の言葉を口にした。
「沙都子を北条鉄平の魔の手から救って…今度こそって思ったのに、なんでこんな訳の分からないことになってるのよ!」
少女…古手梨花は、雛見沢という限界集落で御三家という立場にある女の子である。
そして彼女は、昭和58年6月を何度も繰り返し、その度に雛見沢症候群という奇病に端を発する悲劇を経験してきていた。
何度となく訪れる、止められぬ悲劇に諦観すら抱きかけていた梨花だったが…今回は違った。
友人である北条沙都子を虐待する、叔父の北条鉄平の魔の手から、仲間たちと力を合わせ沙都子を救うことに成功した。
運命は変えられる。
ほんのちょっとの踏み出す勇気があれば、変えられるのだと梨花は思い知った。
そして、今度こそ悲劇のループから抜け出そうと決意し、ひとまずは仲間たちと綿流しの祭りを楽しもうとして…
殺し合いに巻き込まれたのは、そんなお祭りのまっただ中であった。
故に梨花の姿は、祭りの神事の為に着替えた紅白の巫女服のままであった。
「羽入!羽入!!」
自分にしか見えない友人を呼ぶ。
しかし、いつもうろちょろしている彼女が出てくることはない。
「最悪だわ…」
殺し合いという訳の分からない舞台。
いなくなった羽入。
状況は絶望的と言っていい。
だが…
「…諦めない、諦めないわ」
自らを鼓舞するように梨花は呟く。
梨花には前原圭一という友人がいる。
沙都子救出の中心人物となった男の子。
彼は、口先の魔術師と呼ばれるほどに、土壇場で非常に口の回る男だった。
彼の言葉は、雛見沢全体に火をつけ、運命を変えてみせた。
だから梨花も、今ここで弱音を吐いたりしない。
たとえ虚勢でも、嘘でも。
「私は、絶対に雛見沢に帰る!みんなと…運命を越えてみせるわ!」
きっと圭一なら、こう言って簡単に運命なんて変えてみせるんだから。
「勇者様〜!」
決意を固めていると、声が聞こえてきた。
女の子の声だ。
どうやら誰かを探しているらしい。
(…人を探してるなら、殺し合いに乗っている可能性は低いかしら)
少し迷った後、梨花は声の主に接触することにした。
そうして出会ったのは、黒いローブを来た、同年代と思われる三つ編みの女の子。
女の子は梨花に気づくと、こちらに近寄ってきた。
「あの、すいません、勇者様…ニケっていう金髪の男の子知りませんか?」
「みー、ここに連れてこられてからは誰とも会ってないのですよ」
先ほどまでの口調から打って変わって、猫かぶりモードで女の子に応対する。
梨花の返答を聞くと、女の子は「そっか…」とがっくりしながら項垂れた。
「そっちは誰かと出会いましたか」
「ううん、私もあなたが初めてだよ」
話をしながら梨花は女の子を目踏みする。
とりあえず、こちらに襲い掛かってくる、ということはなさそうだった。
なんとなくあわあわした雰囲気が羽入に似ていて、嘘をつけるタイプにも見えない。
安全、と考えてよさそうだ。
「とりあえず自己紹介をするのです。ボクは古手梨花。よろしくなのですよ、にぱー☆」
「あ、私はククリ!こっちこそよろしくね、リカちゃん!」
お互いに名乗り合った梨花とククリは、その後しばらく話をした。
その結果、お互いが全く違う世界の住人なのだと知ることになった。
「勇者に魔王…おとぎ話みたいな話なのです」
「私は勇者様と一緒に魔王ギリを倒す旅をしてるの」
「ククリは魔法使いなのですか?」
「うん、いつもは杖で地面に魔法陣を書いてるんだけど…没収されちゃったみたいで」
「その杖がないと魔法を使えないのですか?」
「う、う〜ん…一応代わりになるものはあるんだけど…」
そういうとククリは、デイバックからあるものを取り出した。
それは…
「……ほうき?」
「うん…」
「…これで魔法を?」
「うん……」
梨花は目を丸くし、ククリは気まずそうに顔を赤くして逸らした。
しばらく、周囲が沈黙に支配される。
口を先に開いたのはククリの方だった。
「そ、そういえば梨花ちゃん、その格好可愛いね!」
「みー、巫女さんで圭一がモエモエ〜なのですよ」
「え、巫女さん!?じゃあもしかして梨花ちゃんも魔法使えたりするの!?」
「…そういう世界線もあったような気はしますが、僕は魔法使いじゃないのですよ」
「そっかあ…」
「僕の世界では魔法はおとぎ話の世界の話なのです。ククリが魔法を使えるというのなら、見てみたいのです」
それは、半分本音ではあったが、もう半分は同行者の戦力確認の為だった。
魔王を倒す旅をしているというのだから、それなりに攻撃的な魔法を使えるのだろう。
自分が戦う力を持たない以上、彼女の戦闘能力がどれほどあてになるのかは確認しておきたいところだった。
「うん、いいよ!」
梨花の申し出にククリは快く応じると、箒を構えてその場でダンスを踊るように回り始めた。
その場で踊りつつも、地面には器用に魔法陣が完成されていく。
「ツチヘビ!」
そしククリの魔法が発動すると…火の玉と思しき物体が地面に潜った。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
(うーん、関わりたくないなあ)
ルーミアは、梨花とククリを少し離れた所で観察しながら苦い顔をしていた。
ルーミアは妖怪だ。
しかも、人食いの妖怪である。
ただし、妖怪としてはそれほど強くない。
だから、この殺し合いの場でも、自分でもどうにかなる弱い相手を対象に捕食しようと考えていた。
そうして彼女が最初に見つけたのが梨花とククリだったのだが…
(紅白の巫女に黒い魔法使い…)
ルーミアはかつて、博麗神社の主である紅白の巫女・博麗霊夢と黒い帽子と服に身を包んだ普通の魔法使い・霧雨魔理沙という2人の人間に退治されたことがあった。
さすがにルーミアも今目の前にいるのが別人であるということは分かっていたが、それでも紅白の巫女と黒い魔法使いである。
不吉と言う他ない。
(無視して他の人間を食べよっと)
触らぬ巫女と魔法使いに祟りなし。
ルーミアはその場から離れようと動いたその時、
「ツチヘビ!」
次の瞬間、彼女の身体は突然地面から現れた炎に包まれた。
「みー、火の玉が地面に潜ったのです」
「うーん、おかしいなあ、動く魔物がいないときは魔法陣の上に止まったままになるはずなんだけど」
少女二人から少し離れた所でそんな話をする中、ルーミアは
「な、なんでこうなって…ガクッ」
身体を焦がしながら気絶するのだった。
【ククリ@魔法陣グルグル】
[状態]健康
[装備]魔理沙の箒@東方project
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんてしない
1:梨花と行動しニケがいるなら見つけたい
[備考]
※参戦時期は、少なくともアラハビカ編以降
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:運命を打ち破り、雛見沢に帰る。
1.ククリと行動する
[備考]
※参戦時期は、皆殺し編の綿流し祭中。
その為巫女服姿です。
【ルーミア@東方projet】
[状態]ダメージ(小)、軽度の全身火傷、気絶
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:弱そうな人間を食べる
1.紅白の巫女(梨花)と黒い魔法使い(ククリ)から離れたい
[備考]
※霊夢と魔理沙双方に倒されている設定です。
投下終了です
投下します
「ボ〜」
電灯に照らされる夜の公園の中で、ふたば幼稚園に通う五歳児──ボーちゃんは、まずしんのすけたちを探そう、と決意した。
ボーちゃんは知っていたからだ。
毎回こういった非日常にはしんのすけが関わっている、という事を。
残虐に、二人の兄弟と思わしき子供を殺した乃亜の事は恐ろしかった。
だが、しんのすけ率いるかすかべ防衛隊はこれまで多くの危機を乗り越えてきた。
どんな強敵も、困難も、しんちゃんと一緒に、五人で潜り抜けてきた。
だから、今回もきっとそうなるはず。
楽観ではなく確かな信頼として、ボーちゃんはそう信じていた。
「ボ!」
そうと決まれば、さっそく行動開始だ。
取り合えず、地図を検めて、しんちゃん達が向かいそうな場所をチェックすることにする。
勿論、その前に周囲に誰か忍び寄っていないか確認するのも忘れない。
鼻水を垂らし、とても聡明そうには見えない見た目の少年だったが、ボーちゃんは五歳児とは思えない程の冷静さを兼ね備えていた。
「ボ…?」
だが、そんな時の事だった。
夜目が効かない子供の為に設置されたであろう電灯に照らされて。
そこは心なしかきらきらと光沢を放っている様だった。
事実、そこは電灯の光を反射して光っていた。
目を凝らして見てみると、その場所は年幼いボーちゃんでも馴み深い砂場だった。
その砂場でボーちゃんはある物を見つけた。
「ボ〜!」
見つけたのは、彼がコレクションして集めている味わい深い石だった。
光に照らされて存在感を放つその石は、他のものが見れば何の変哲もない石だったが。
ボーちゃんにとっては、得も言われぬ惹かれる物を感じた。
きょろきょろと辺りを見回して、周囲に影がないことを確認する。
そしてそそくさと、その石に近づき、拾い上げた。
「ボォ…!これは、いい石!」
拾い上げた石は本当に何の変哲もない石だったが、ボーちゃんにとってはがっちり心を掴まれる一品だった。
この程度なら荷物にもならないし持っていこう、手に取った瞬間からそう決めた程だ。
大事にポケットに仕舞い、満足げに垂れている鼻水が揺れる。
さぁ、幸先のいいスタートを切ったところで今度こそしんちゃんを探しに行こう。
そう思い、砂場から離れようとした所で──異変が起こった。
「ボ……!?」
足が、砂場の砂に沈み込んでいる。
まるで、深い沼に嵌まった様だ。
直ぐに抜け出そうと足に力を籠め、直後、彼の両足を激痛が襲った。
「ボ!?ボォオオオオッ!!!」
血しぶきが舞い、ボーちゃんの手と足元の砂を濡らした。
最初は何が起こったのか分からなかった。
焼けた鉄の棒を足に急に押し付けられた様な鋭い痛みが両足を襲い、その痛みに導かれるように視線を下げる。
そして、それを見た瞬間、背筋が凍った。
足元の砂がボーちゃんの足にまとわりつき、押しつぶしていたのだ。
しかも、起きる異変はそれだけに留まらない。
「こ…!この砂場、深いッッ!?」
ボーちゃんの体全体が、砂場に埋まり始めていた。
まるで、底なし沼か、砂漠で起きるという流砂の様に。
普通の砂場ではまずありえない現象がそこでは起きていた。
「た…助けて、しんちゃん!風間君!ネネちゃん!マサオくん!」
沈み込んでいく身体は、痛みさえも一瞬意識の外へ行ってしまうほどの恐怖だった。
何とか抜け出そうと藻掻くものの、壊れた足ではどうにもならない。
むしろ藻掻けば藻掻くほど体は沈み込んでいくのだ。
「ボォ…たす、助けて!ボク、まだ死にたく……!!」
助けを求める声が、虚しく公園の中に木霊する。
何時もならこういう時絶対に来てくれる筈のしんのすけ達や、お助けの大人は、今回は現れない。
そうしている間にも、どんどん体は沈み込んでいく。
「ボォ〜!!」
恐怖に耐えきれず、叫び声をあげる。
それと、殆ど同時だった。
公園の入り口の辺りに、人影を見たのは。
一瞬、ボーちゃんの心の中で希望が湧いた。
やった、これで助かる、と。
だが、入り口から歩いてくるその人影が電灯に照らされた瞬間、希望は絶望へと反転する。
「ぼ、ぉ……!」
電灯に照らされて佇むその少年は、まだ年齢は少年という外見だったが、ボーちゃんより一回りは上である様だった。
紅い髪に、隈取の様な深い隈、額に刻まれた文字、少年の背丈ほどもある大きな瓢箪。
それだけなら変わったいで立ちという話で済んだ。
ボーちゃんの心胆を何より凍らせたのは、少年のその瞳だ。
深い深い…暗闇の様な目だった。
その目を見た瞬間、語らずとも目の前の少年がこの事態を起こしたのだと直感する。
だが、その時にはもうすべてが遅かった。
「ぼ、ぼぉ……しん、ちゃん……!」
もう体は、胴を通り過ぎて胸まで砂に埋まっている。
抜け出すどころか、藻掻く事さえ今となっては困難を極めた。
ボーちゃんはこの時自分の運命を悟った。
そして、ただ絶望するだけでは彼は終わらない。
片手をわざと砂の中に突っ込み、ポケットの中から先ほど拾った石を取り出す。
そして、砂に埋まりながらも自身の血で染まった指を走らせた。
「後は……頼んだよ……!」
綴る文字はこの凶行に及んだ下手人である少年の額に刻まれた文字。
ボーちゃんはその文字がなんて書いてあるのか読めなかったが、真似して石に書くことはできた。
真っ赤な地文字で書かれた「愛」の一文字が、石に記される。
そうして書いた石を、砂場の外に放り投げた。
それは、ボーちゃんも家族と一緒に見る推理ドラマで行われていた行為だった。
ダイイングメッセージという名の、死者から生者へ遺すメッセージだ。
それを終えると、ボーちゃんができる事は完全に終わった。
(……しんちゃん達が……ここに……来て、ませんように……)
最後に思い浮かぶのは両親と、今迄多くの冒険を繰り広げてきた友達の顔だった。
もししんちゃん達がいたら、自分を殺した少年には気を付けて欲しいけれど。
それでもやっぱり、こんな殺し合いにいないのならそれが一番だと、そう思った。
それが、ボーちゃんの意識が闇に閉ざされる前の、最後に考えた事だった。
【ボーちゃん@クレヨンしんちゃん 死亡】
──貴女の名は我愛羅
──我を愛する修羅……
──自分だけを愛しなさい、そして自分のためだけに戦いなさい。
────そうすれば、アナタは存在し続ける。
「あぁ……分かってる、分かってるよ、母さん……」
先ず一人目だ、砂隠れの里の忍、砂漠の我愛羅は今しがた殺した子供の荷物を奪いながらそう思った。
最初に自分の犠牲になったのは忍者ですらない、ただの子供だったらしい。
全くと言っていいほど、歯ごたえのない相手だった。
一応唯一抵抗らしい抵抗であった、最後に放り投げた石は少し見てから放り捨てた。
自分が下手人である事を隠すつもりなど毛頭なかったから。
これでは足りない。まだまだ母さんと夜叉丸に捧げる血が足りない。
只の子供を何百人と喰らった所で、食前酒にもなりはしない。
より強い力の相手を、より強い憎しみを下した時にのみ、自分は己の生を実感できるのだから。
石を見て更なる敵が来てくれるのなら、それは願ったりだ。
「………次だ」
奪ったデイパックの中身を検分しながら、砂の化身を宿した少年は次の獲物を、次の血を求めて歩みだす。
乃亜の存在自体は至極どうでも良かったが、彼の殺しあえという命令は今の我愛羅にとってとてもよく馴染む物だった。
一条の光も刺さない孤独こそ、我の強さ。
汲んでも汲みつくせぬ憎しみこそ、我の存在理由。
故に振るう凶行に、全てを殺すという殺戮に、意味はいらず。
ただ、自分以外の全てを自らの砂の下へ沈めるために、彼はこの殺し合いに参加する。
───貴女は、愛されてなどいなかった……!
……本来であれば。
彼にはもっと違う未来が待っているはずだった。
過去の呪いを、己の出自を乗り越えて。
誰もが認める長に成長する筈だった。
──いつも痛いんだ…血は出ないけど、胸の…ここんところが凄く痛いんだ。
──今、ここに敵はいない!
──何故なら皆、暁に傷つけられた痛みを持っている!
──砂も岩も木ノ葉も霧も雲も無い!
────あるのはただ、“忍”だ!!
過去と未来。
人の心の痛みを知っていた少年の面影を、今は憎しみと言う闇が閉ざす。
【我愛羅@NARUTO-少年編-】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品2〜6
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1.出会った敵と闘い、殺す
[備考]
原作13巻、中忍試験のサスケ戦直前での参戦です
守鶴の完全顕現は制限されています。
投下終了です
投下いたします。
ここは殺し合いの会場の中、鬱蒼と茂る森の中心にある窪地……
そこでは白色のスクール水着を着用し、はちきれんばかりの胸をしたピンク髪の少女が片手に薙刀を持った状態で、全身が血まみれかつ凄まじく濃ゆい顔をした男を見下ろしている姿があった。
男を見下ろしている少女の名はスイムスイム、『どんなものにも水みたいに潜れるよ』という、自分の体を物質透過出来るようにする能力を持つ魔法少女である。
そして彼女に見下ろされている男の名はたけし、『リーダー的存在』になることを志しており、人間の心を救うことを重んじて日々生きている小学1年生である。
「はぁ……はぁ……」
息も絶え絶えな状態になっているたけしだが、彼は今まさに死の淵に立たされていた。
この場に飛ばされて間もなく彼女の奇襲を受け、幾度となく拳を交えたが彼女の能力によっていくつかがすり抜けてしまい、ジリ貧になってしまっているからだ。
「これで終わり……」
スイムスイムは無表情のままそう言い、薙刀を両手で持ち直すとそのまま上段の構えを取った。
「なあ…『ルーラ』って、どんな人だったんだ?」
だがそんな絶体絶命の中、たけしは彼女にそう聞いてきた。
「『ルーラ』は私のお姫様…可愛くて賢くてカッコよくて、私のあこがれ……」
彼のその言葉を受けて少女は自らのあこがれを象徴するかのように目を輝かせ、ほほえましい笑みを浮かべながら『自分にとってのルーラ』がどんなものなのかを語り始めていった。
「でも『ルーラ』がいたら私は『ルーラ』になれない……だから私が理想の『ルーラ』になる、私が……!!」
「ルーラのために…!!ルーラのため…!!ルーラ……!!!」
しかし話が進むにつれてその内容は妄執を孕んだものになっていき、それに伴ってその表情は次第に歪んで狂気を孕んだものへと変貌していったのだ。
「なるほど……お前が『ルーラ』に固執する理由はよく分かった。8L(リットル)くらい、よく分かった」
スイムスイムの話を聞いてたけしは納得顔になりながらも苦笑いを浮かべた。
なぜなら彼女はあまりにも純粋すぎるから……。
「……じゃあお前は、何のために『ルーラ』になりたいんだ?」
「お前は……『ルーラ』になって、なにをしたいんだ…?」
しかしその苦笑いから一転し、彼は真剣なまなざしを向けるとどこまでも純粋な彼女に対し再度質問を投げかけた。
『自らが憧れている存在になったとして、それから何をするのか』……たけしは彼女にそう問いかけたのだ。
するとスイムスイムはその問いかけに対して一度動きを止めると、少しの間考え込み始めてしまった。
(なんだろう……?私の目的は……)
それは彼女がこれまでの中で一度も考えていないことで、ルーラから教えられたこともないことだった。
今までただ漠然とルーラのような存在になりたい、ルーラに教えられたことに従って生きていくと考えていた彼女だったが、改めて問われたことでその答えがわからなくなってしまったのだ。
(……でも、分かっていることがある)
しかしそれでも分かっていることが一つだけあった。それは……。
「ルーラは、こんな事では悩まない…!だってルーラは賢いから……!!」
自分が憧れる存在はそんなことでは悩まないということだった。
事実がどうであっても、それが彼女の信じる『ルーラ』なのだから。だから彼女はどこまでもその理想を追い続けるのだ。
「そうか……ならもう、俺から言うことは何もない……決着を付けよう」
「受け止めてやる!!お前のあこがれを…お前の中にある『ルーラ』の姿を…想いの全てを!!!」
そんな、彼女のその言葉を聞いたたけしはそう言って真剣な表情を崩すことも、全身から血を噴き出しながらもその痛みに悶えることなく両脚で立ち上がり、彼女に対しどこまでも闘おうという姿勢を見せてきた。
「…………」
それに対してスイムスイムは薙刀を構えなおすと無言のまま、彼に止めを刺すために自らの能力を使って地面に潜っていくことで応えた。
「オラああぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして彼女のその行為に対したけしは雄たけびを上げると、彼女の潜っていった地面に向かって拳を振り上げ、全力で殴りつけた。
「!?」
その瞬間、スイムスイムは自身の体に何かしらの衝撃を受けたような感覚を覚えた。
「そこくぁぁぁあぁぁぁぁぁ!!!」
たけしはそう叫ぶと続けてさらに拳を振るっていき、自身の周囲に次々と拳を打ち付けていった。
「ッ……!?」
それによって地中に潜っていたスイムスイムは全身に凄まじい振動を受けると共に周囲の地盤が砕け、彼女の体がどんどん地上へと引っ張り出されていった。
「うおおぉおぉっ!!」
だがそれでも彼は攻撃の手を緩めることなく、そのまま勢いよく拳を振り上げて彼女の胴体、無防備な背中へと強靭なこぶしを振り下ろした。
「……何度やっても、無駄なこと……っ!?」
だがその拳をスイムスイムは一切かわそうともせず、彼のほうに向きなおると共にすぐに薙刀を構えた。何故なら彼女は自分の魔法によってそれをすり抜けられると信じていたからだ。
そしてそれをすり抜けた後、自らの持つ武器で彼の心臓を刺し貫こうとしていたのだ。
「がふぅっ……!!」
しかし現実は違った。何故かこの時だけすり抜けることができずにその拳が腹部に突き刺さり、口から大量の鮮血が吐き出され視界が朦朧とし始めていった。
だがそれでも彼女は彼を殺すために、その左胸めがけて薙刀の先端を突き刺そうとしてきた。
「!!?」
だがその切っ先は彼の左胸についたバッジによって金属が激しくぶつかり合う音と共に受け止められてしまったのだ。
「オラあぁあぁああっ!!!!」
そして、それに彼女が少なからず動揺している間にたけしは絶叫を上げながら自らの左手でその刃を掴み、残った右手で再び彼女の身体に拳を突き立てた。
「……が、がは……っ!」
それによりスイムスイムは息が出来なくなり、その場に膝をついてしまうと同時に体中から力が抜けていき、持っていた薙刀を手放してしまった。
「……もう、いいだろ?勝負はついたはずだ…」
たけしはそんな彼女を前にして悲しげな表情を浮かべると、薙刀を手放して静かに語りかけてきた。
しかしスイムスイムはそれに応えることはなく、代わりに彼の眼前に何かを放ってきた。
「ッ!?」
それは爆発音とともに予想外の強烈な光を放ち、たけしの目と耳をつぶしてしまった。
「な、なんだ……!?」
突然のことに困惑しながらもたけしはすぐさま目を覆いながらその場から飛び退いて距離を取り、目を細めて状況を確認しようとした。
するとその朧げな視界には既にスイムスイムの姿はなく、あるのは空高く舞い上がっていく砂ぼこりと、遠くに見える薙刀を持った黒い影だけだった。
「…逃げたのか……」
たけしはその光景を前に呆然と立ち尽くしながら、ポツリと呟いた。
確かにお互いこの傷ではまともに戦うことなどできないだろう。それどころか腹部を全力で殴られ、吐血した彼女の場合は意識を保つことさえやっとのはず。
だから彼はスイムスイムの判断は正しいものだと理解した。
「……お前は一体何のために、『ルーラ』になろうとしているんだ……?お前の言う『ルーラ』は……お前が憧れている『ルーラ』は……本当にそんなことを望んでいたのか……!?」
しかしそれでも彼は彼女を止めることが出来なかったことを悔やみつつ、小さくなっていくその背に向かってそんな疑問を叫んだ。
「俺は……『ルーラ』がどんな奴なのかは知らない……けど、お前が『ルーラ』を真似する理由だけは知っておきたかった……!!」
それは彼がただ純粋に知りたいと思ったことで、スイムスイムに対しての純粋な想いだった。
だがその想いも届かず、既に彼女の姿は完全に見えなくなり、静寂が訪れるばかりだった。
「…いつかまた、会えるよな……?その時は、今度こそ決着をつけよう…スイムスイム……!」
そう言って彼は決意を新たにすると、血を流しながらも歩き出した。
「そしたらスイムスイム……今度はもっとちゃんと話そう……!」
彼女がなぜこのような行為に及ぶのか、そしてそれを止めるために、必死に歩き出していくのだった……。
【たけし@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:全身に切り傷かつ出血、スタングレネードによる一時的な失明と難聴
[装備]:リーダーバッジ@世紀末リーダー伝たけし!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:殺し合いに乗ってない人を探し、共に乃亜を止める。
2:先ほどのレオタード少女(スイムスイム)を止める。
3:だがまずは戦えない人たちを探したい。
[備考]
参戦時期は最終回、河原の土手を歩いているときに今まで出会ってきた人たちとすれ違って以降。
スイムスイムの使ったスタングレネードによって一時的に目が見えにくくなっている上に音を聴きとりにくくなっています。
------------
(……まだ、大丈夫)
スイムスイムは自分の体に鞭を打つように立ち上がると、フラつく足取りで男から逃げるように必死で歩き出した。
(私はもっと『ルーラ』になってみせる。本当の『ルーラ』になるまで……!)
そう心の中で思いながら彼女はひたすらに走り続けた。
『……じゃあお前は、何のために『ルーラ』になりたいんだ?』
『お前は……『ルーラ』になって、なにをしたいんだ…?』
(本当の『ルーラ』になって…『ルーラ』になったら、私は……?)
しかし彼女の心の中には、彼の言った言葉がまるで水面に水滴を落としたかのように拡がり始めていくのだった……。
【スイムスイム(坂凪綾名)@魔法少女育成計画(アニメ版)】
[状態]:腹部および内臓にダメージ(大)、吐血、精神的動揺(小)
[装備]:ルーラ(薙刀)@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品、マジカルフォン、スタングレネード×4、ランダム支給品×1
[思考・状況]基本行動方針:ルーラ(お姫様)になる。そのために優勝する。
1:ルーラになる。もっともっと、ルーラに近づく。
2:なぜあの時魔法が発動しなかったのか、その原因を探る。
[備考]
参戦時期は少なくとも森の音楽家クラムベリー殺害後〜リップルとの戦いの間。
たけしの言葉によって迷いが生じ、精神的に不安定になっています。
殺し合いが破綻しないよう、すり抜ける魔法に制限をかけられています。
具体的には攻撃とすり抜けを同時に行えなくなっています。
(それ以外の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)
【支給品紹介】
【リーダーバッジ@世紀末リーダー伝たけし!】
黄色地に黒で「リ」と書かれた単純なデザインのバッジで、最高のリーダーだという事を証明するもの。
単なるメダルやトロフィーのように「賞を表す」物ではなく、リーダーとしての過酷な運命を背負う者の証であり、
心の持ちようによっては紙クズのように簡単に穴が空くが、強い心を持ち続ければたとえ銃弾や鋼鉄の刃、強酸でも壊れず、持ち主を常に守るという。
【マジカルフォン@魔法少女育成計画】
卵のような形をした携帯端末で、魔法少女間の連絡などといった機能を持つ共通の変身アイテム。
今回は制限により、魔法少女への変身以外に使用することはできない。
【ルーラ(薙刀)@魔法少女育成計画】
先端に出刃包丁のような刃が付いた、薙刀のような魔法の武器。
「絶対に壊れる事がない」という特性を持ち、切れ味も抜群。
【スタングレネード@現実】
起爆と同時に爆発音と強力な閃光を放ち、突発的な目の眩み・難聴・耳鳴りを発生させる手榴弾で、5個支給されていた。
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以上、ありがとうございました。
投下します
「ぼー…」
「え、えっと…」
ビルの屋上で少女、イリヤは困っていた
勿論この殺し合いのことについてもそうだが、目の前の自分よりも幼い少年への対応に困っていた
殺し合いの場にたまたま自分よりも幼い少年を見かけ、放っておくことなどできず声を掛けた…しかし、少年は何故かずっとぼーっとした状態でどう対応していいか分からなかった、とりあえず名前を聞いてみようとイリヤは質問を掛けた
「えっと…君の名前は何て言うのかな?」
「僕…ボーちゃん…」
その少年はボーちゃんと名乗った
とりあえず受け答えはできるようでイリヤは少し安心した
「ボーちゃんだね!ねぇボーちゃん、一人じゃ危険だから私と一緒に行動しない?」
イリヤは恐らく幼稚園児である彼を放っておけないと思い同行することを提案した、そして彼はゆっくりとだが頷いた
「それじゃあ、まずは安全なところに移動しよっか」
「…うん…」
そして移動を始めようとした…その時…
「そこの二人…どこに行く気だい?」
「!!」
突然声を掛けられてその声の主に振り向くと、銃を片手に、しかもこちらに向けて少年が立っていた
「あ、あなたまさか…殺し合いに乗るつもりなの…!?」
「な、何言ってるんだい?だってあの子が言ってたじゃないか、今から殺し合えって」
イリヤとボーちゃんは知るよしもないが、この少年の名前は藤木茂…臆病な性格で良くクラスメイトからは卑怯者と言われている男だ、彼は殺し合いの恐怖、そして主催の少年に対する恐怖から殺し合いに乗ってしまった…
「だからって人を殺していいわけがないじゃない!」
「ぼ、僕だってやりたくてやってるわけじゃないよ!でもやらないとさっきの二人みたいに殺されちゃうかもしれないんだ!だ、だからやるしかないんだよ!」
藤木はそう言うが心の中では…
(最初に会えたのがこの子達で良かったよ、一人は女の子、しかももう一人は見る限り幼稚園児じゃないか…ふふっ…僕って運がいいな…)
こんな卑怯なことを考えていた
「ぼ、僕は悪くないよ?悪いのはこんなことさせるあの子だよ!う、恨むならあの子を恨むんだね…」
そして藤木は標準をイリヤに合わせる、年齢は彼女の方が上だがこちらは銃を持っている、銃で先に殺せば後残るのは鼻水を垂らしたぼーっとしてる幼稚園児だけになるため明らかに脅威が失くなると藤木は読んだ
しかし…その考えが甘かったことを藤木は思い知ることになる、ここで二人が予想もしなかった事が起こる
「ぼー!!」
「う、うわぁ!!?」
何とボーちゃんが自慢の鼻水を藤木の両目を目掛けて飛ばした、しかもその鼻水は見事に藤木に命中した
イリヤも藤木も知らないが、ボーちゃんは幼稚園児だが今まで数々の修羅場を潜ってきた、未来に飛ばされたり、ブタのヒヅメという組織に拐われたり、映画の中に入ったり等々…さしてそんな修羅場を彼はかすかべ防衛隊のみんなと乗り越えてきた
そして彼はこう見えて、かすかべ防衛隊の中ではしんのすけの次に、時にはそのしんのすけさえも上回る程の行動を起こす、他にも風間君顔負けの頭脳も持っている
藤木とボーちゃんでは明らかに経験や才能が違いすぎた
「イリヤさん…今の内に逃げよう…!」
「え?あっ、う、うん!」
あまりの突然の出来事にイリヤは状況がうまく分からなかったが藤木は驚いた反動で銃を落とし、目はボーちゃんの鼻水によって見えておらず恐怖に飲み込まれている
その隙に二人は屋上から階段を使って下に進んでいく
「ボーちゃん、ありがとう!」
「ぼー!!」
ボーちゃんの素早い判断により命を繋ぐことができたイリヤはボーちゃんにお礼を言い、二人はそのまま階段を下りて逃げていった
◆◆◆
そして一方の藤木はというと…
「うわぁ!見えない!何も見えないよー!」
突然視界を奪われ何も見えなくなったことにより恐怖に飲まれていた、冷静に対処すれば落ち着いて目についた鼻水を取ればいいだけの話だが、藤木は元が臆病な性格であり今は殺し合いの場、いつ自分が殺されるか分からない状況で冷静に判断することなどできなかった
彼は見た目だけで人を判断してしまった、その過ちがこの結果を生んでしまった、しかし今はこの屋上にいるのは幸い藤木だけだった、視界は見えなくても誰かに殺されることはないだろう…
「怖い、怖いよ!だ、誰か助けてー!」
そう、『誰かに』は…
藤木は恐怖のあまり、視界が見えていないにも関わらず逃げるように歩き始めた
「ぼ、僕はまだ死にたくないよー!」
完全に混乱してしまっている彼は今自分が何処にいるのかさえも忘れてしまっていた、彼が今いるのはビルの屋上だ…そんな場所を視界が見えない状態で歩いてしまえば…
「……え…?」
突如藤木の身に浮遊感が襲った…そして彼は…
「う、うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
そのままビルの屋上から地面まで落ちていった…
そして地面と接触した彼は勿論耐えることもできずにそのまま絶命した…
【藤木茂@ちびまる子ちゃん 死亡】
【ボーちゃん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗らない
1:イリヤさんと行動する
2:あの人(藤木)から逃げる
3:しんちゃん達もいたら会いたい
[備考]
※殺し合いのことについて理解しています
※映画の出来事を経験しています
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない
1:ボーちゃんと一緒に行動する
2:あの男の子(藤木)から逃げる
3:美遊やクロエもいたら探したい
投下終了します
投下します
殺し合いの会場、街頭に照らされた表通りにて、二人の参加者が対峙していた。
「……」
「あぁ?何ですかこのガキは。はぁーーこんなのにも殺し合いさせるとかマジあの自意識過剰自称神様野郎マジ変態じゃねーですか!ぎゃはははは!!」
轟く下品な笑い声。声の主は下着同然の衣服を身につけている金髪の童女だ。
「何ですか何なんですかそんなに見つめちゃってぇ!あれ?もしかしてアタクシの豊満な体に見惚れちゃった発情しちゃった口ですかぁー! いやいや生存本能刺激されちゃって興奮するとかちんちくりんでも立派なオスガキですねぇ!まぁ当然じゃねーですか!アタクシの麗しく美しい体にクズ肉がオス汁撒き散らして興奮するのは止めようもない本能!抗えない自然の摂理に等しいですからね!ぎゃはは!」
外見の魅力を全て台無しにする下劣かつ不快な言動を繰り返す怪人。
それと対峙するのは一人の少年、赤いシャツに黄色い短パンを着た男児。
彼は呆然とした様子で、騒がしい童女を見ている。
「おいおいクズ肉、アタクシの愛らしい姿に悩殺されるのは当然として無視するなんてひでーですよぉ。アタクシ見た目に違わず繊細な心の持ち主なんですから傷ついちゃいます!なんちゃって!ぎゃは!」
男児の様子を揶揄し、本気かどうかも解らない嘲りを発する童女。
彼女の名はカペラ・エメラダ・ルグニカ。
魔女教大罪司教『色欲』担当である。
危険集団である魔女教、その中でも特級の厄災と言える大罪司教の一角。
マトモな感性を持つ者なら、絶対に関わりたくないと断言できる危険人物。
そんな彼女は意外にも、この場における方針を決めかねていた。
始めて遭遇した参加者を直ぐに殺さず、会話で済ましている事がその証拠だ。
(さーて……どうしましょうかね〜このオスガキは。アタクシ悩んじゃいます!)
戯れの言葉を口にしながら、カペラは考えていた。己の取るべき行動を。
チラリと一瞥するのは、手元にある黒い装丁の本ーー『福音書』だ。
魔女教徒はその信仰の証として、必ず福音書を持っている。
己が辿るべき未来を示す、予言の書を。
この殺し合いにおいても、彼女の福音書は支給品という形で手元にあった。
魔女教徒の中でもカペラは信心深い方ではないが、大罪司教である彼女は福音書の指示に従っている。
しかし、彼女の福音書に新たな記述は出現せず、現状カペラが行うべき行動は白紙のままとなっている。
ならば、この場に招かれる前に書かれていた『水門都市プリステラの襲撃』を優先するべきだが、そのためにはこの場を脱出しなければならない。
既に試したが、忌々しい事に首輪は彼女の権能を持ってしても外せなかった。
カペラの持つ異能、色欲の権能は身体の変異・変貌である。
望めば絶世の美女にも、竜といった人以外にも、その性質をも再現した上で成る事ができる。
更に応用で不死身に近い再生すらも可能とする反則級の権能だ。
故に彼女は、殺し合いだろうが何だろうが自分が負けるわけがないと慢心していた。
優勝者が出ればあの主催の男も表に出ざるを得ないだろう。ならば、手っ取り早く皆殺しにするのもアリか。
カペラは自らを博愛主義者と考えている。
相手が生きている限り、己に愛を向ける可能性は零ではない。
だからこそ、死なせた方がマシな扱いはするが、殺そうとはしない。
ただ、必要ならば話は別だ。
そこまで考えた所で、カペラは眼前の男児に意識を向ける。
驚異の欠片も感じられない、明らかにただの一般人。毒にも薬にもならない取るに足らない相手。
無視するか、或いは”遊ぶ”のも良い。
しかし、カペラが実際に行動に移す前に、先に相手が動いた。
「そこのエッチで綺麗なお姉さーん。オイラとお茶しなーい?」
幼児の口から飛び出したのは、単純明快な誘い文句だった。
鼻血をダラダラと出しながら、奇妙に体をクネクネと動かす男児ーー野原しんのすけ。年齢5歳。
「ーーはぇ?」
カペラは固まった。
ーーーー
「ぎゃはははははは!!!何だよ何ですかアタクシの魅力分かっちゃってんじゃねーですかチビガキ!見所ありやがりますね!」
「ほっほーい!」
数分後、その場は意外な程に和気藹々とした雰囲気となっていた。
カペラは上機嫌だった。
彼女は人から愛されたい、全人類から等しく愛を捧げられたいし、そうなるのが当然と思っている。
カペラの卓越した観察眼は、見ただけで人の好む趣向、性癖が解る。
例え被り物をしていても、相手の呼吸や立ち振舞い、動作だけで好みのタイプを正確に割り出せる程だ。
故に嘘偽りの類は容易く看破する。
もししんのすけが生きるためだけに媚を売っていたのなら、殺されはしないものの、かなり悲惨な状態にされ、そのまま放置されるパターンも充分に有り得た。
カペラの権能は、他人にも影響を及ぼせる。故に死よりも惨い状態を簡単に作り出せてしまう。
しかし、カペラを綺麗だといったしんのすけの言葉に嘘偽りは一切なかった。
歳に似合わぬ好色なれど、根の無垢が高じた生々しさのない好意。
その無垢の称賛が、カペラの心にクリティカルしたのだ。
(このお姉さん……スケベすぎるゾ!)
一方のしんのすけは、あまりにも過激な服装のカペラにある意味畏怖を抱いていた。
良くも悪くも純粋なしんのすけは、大罪司教の持つ歪みや異質さを感じる前に、そのビジュアルで警戒すら吹き飛んでいた。
沈黙を保っていたのは、カペラの異質さに恐怖していたのではなく、単に衝撃が強すぎて茫然自失していただけだ。
カペラの言っていた見惚れている、という表現も今回ばかりは的を得ている。
そして、綺麗なお姉さんには目がないしんのすけの言動は、「人間は外見が100%」と断言する彼女の主張と奇跡的に合致した。
「さてさてさて、しんのすけ、アタクシはそろそろあの勘違い短小キ○ガイ野郎に抗議しにいきてーんですが、お前はどうしやがるつもりですかね?アタクシはアタクシを愛する者には等しく慈悲深く接しちゃう尽くす女でありやがりますから、来たいんだったらついてくるがいいですよ!」
このように気紛れとは言え、自発的に保護まで申し出るほどカペラはしんのすけを気に入っていた。
大罪司教の恐ろしさを知る者がいれば、目を見開き驚愕するだろう。
カペラの言葉に、しんのすけは暫し黙り込んだ。やがて、意を決した表情でカペラを正面から見上げる。
「オラ、カペラお姉さんにお願いがあるんだゾ」
「カザマくんやボーちゃん、ネネちゃんにマサオくん、オラの友達もここに居るかも知れないんだゾ…もしそうなら、オラ、皆をお助けしたい!そのために、手を貸して欲しいんだゾ!」
しんのすけの助力を求める言葉を聞き、カペラは暫し黙り込んだ。
数秒の沈黙の後、顔を上げたカペラは満面の笑みで答えた。
「ぎゃははは!!!ちんまいナリで随分とまぁ傲慢な事で!しかしアタクシこう見えて慈悲深い女!肉欲まみれのオスガキの頼みでも、アタクシを愛する限りはちょーーーっとばかし手伝ってやるのも吝かじゃねーですよ!」
好意的な返答に、しんのすけの表情が明るくなる。
「お助けしてくれるの!ありがとうお姉さん!」
「でもね、でもでも!なぁーんでアタクシが見知らぬクズ肉どもの為に働かなきゃならねーんです?」
「ーーえ?」
カペラは、笑っていた。それはもう楽しそうに。
しかし、目だけは笑っていなかった。
「アタクシは確かに優しく慈悲深い女ですがね、あの短小野郎はぶっ殺すにしても、『福音書』の記述もやらなきゃいけねーし、アタクシはとっとと脱出したいんですよね。アタクシを愛する奴はアタクシも大好きですが愛さねー奴は嫌いです。
そもそも、しんのすけはアタクシを愛していますが一番じゃねーですよね?ダメですよ駄目駄目、ダメダメダメダメダメ、愛せよ、アタクシを一番に愛さねーとダメなんですよ。アタクシに頼むってことは最低限の誠意を見せろよ愛せよ、讃えて崇めて這いつくばって愛を捧げろよアタクシに、クッセェクッセェオス汁撒き散らして愛を捧げろよ」
(な、何だかカペラお姉さん怖いゾ……)
平和的な雰囲気は消し飛んでいた。
ヒートアップするカペラの様子に、漸くしんのすけは危機を実感した。
野生の勘、というべきか。
カペラの地雷を踏みかけたしんのすけは、最適な返答を行った。
「でも、カペラお姉さん、とっても強いでしょう? お助けを手伝ってくれたら、きっと、カペラお姉さんをみーんな好きになるゾ!」
『愛』、カペラは度々しんのすけにそう語っていた。
しんのすけは幼いが、それでも『愛』が何なのかは漠然と知っている。
しんのすけはカペラが言っている事の半分も理解していなかったが、彼女が他人に何を求めているのかだけは理解していた。
物怖じないしんのすけの言葉に、カペラは一瞬虚を突かれたように怯んだ。
「……なる程、確かにそういう考えもありっちゃアリじゃねーですか」
その純粋さ故に引き出されたストレートな言葉は、奇跡的に通じた。
カペラの脳裏に浮かんだのは、少なくとも怒りではなかった。
殺し合いに右往左往する憐れで幼稚なクズ肉どもに颯爽と手を差しのべれば、憐れな連中は彼女を愛し崇め尽くし愛するようになる可能性は、確かにある。
暫し考えて、カペラはしんのすけの頼みを受け入れる事にした。
しかしそれは正義感からの選択ではない。見知らぬ参加者の為でも、犠牲となった兄弟の為でも、ましてや、しんのすけのためでもない。
自分を愛させるためだけに、彼女は対主催の道を歩むことを決めた。
色欲の化身と永遠の5歳児がこれからどんな嵐を呼ぶのか、それはまだ解らない。
【カペラ・エメラダ・ルグニカ@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康
[装備]:福音書
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:危険対主催
1:アタクシを愛するクズ肉は保護してやるのもいーかもですね。
2:しんのすけは見所がありやがりますので、慈悲深いアタクシがしょうがなく面倒見てやりますかねぇ!
[備考]
参戦時期は水門都市プリステラ襲撃直前。
しんのすけとの交流で対主催の方針に舵を切りましたが、福音書に新たな記述が成された場合、其方を優先します。
殺し合いが破綻しないよう、色欲の権能は制限をかけられています。
(具体的な制限については、当選した場合、後続の書き手様にお任せします)
【野原しんのすけ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:対主催、友達と合流したい
1:殺し合いなんて駄目なんだゾ
2:綺麗なお姉さん(カペラ)と行動する
[備考]
具体的な参戦時期は当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
【福音書@Re:ゼロから始める異世界生活】
カペラの福音書。
黒い装丁の本。魔女教徒にとっての経典。
一種の予言書のようなもので、所有者の辿るべき未来の行いを記述する。
現時点でカペラの方針に関する指示は記載されていないが、これから追加されるかは未定。
投下終了です
投下します
「私、この首輪を何とかできるかも!」
桃髪の少女、ララ・サタリン・デビルークの唐突な宣言を聞く者が二人いた。
一人は白髪赤目の少女、カーマ。
もう一人はララとカーマの中間のような髪色をした長髪の少女、諸山まひろ。
三人はゲーム開始して数分と経たずににバッタリと出くわした。
一瞬緊張が走ったものの、ララが朗らかに名乗り、ゲームに乗らないことを宣言したためスムーズに話し合いに移った。
尻尾の生えた宇宙人であり、とある事情から肉体が小学生相当に縮んでいるララ。
サーヴァントという超常存在で、カルデアという一言で説明することが難しい組織に属するカーマ。
この中で一見一番普通の一般人に近いものの、本来は成人男性であるはずの諸山まひろ。
何も包み隠さず自己紹介をしたララに対して、カーマとまひろは説明の難しい部分や絶対に秘密にしたいことを隠しながら自己紹介を済ませた。
ララが自信満々に首輪の解除を申し出たのはその直後のことである。
「えっ!?ほ、本当に!?」
その発言を真に受けて喜色さえ浮かべたまひろに対し、カーマはひたすら懐疑的な視線を送っていた。
ララから何となくカルデアにいる真祖(アーパー)のような雰囲気を感じながらも最低限言うべきことは言っておくことにした。
「そんな簡単にいくわけないでしょう。首輪にどんな技術が使われてるかもわからないのに。
一参加者が簡単に解除できるような仕掛けならそもそもこんな大掛かりなゲーム自体成り立ちませんよ?」
「あっ……。そ、そっかぁ……」
「いや、でも殺し合いをしないで脱出するならどこかで絶対首輪を外す必要はあるんだし、やってみなきゃわからないって!
何かサンプルになるようなものでもあれば、手掛かりぐらい掴めるかもしれないし!」
指摘を受けて消沈しかけたララに助け舟を出したのはまひろだった。
自分たちの生殺与奪を握っている首輪を外せる可能性が僅かでもあるならそれに縋りたいという一心だった。
(サンプルって、つまり他の誰かの死体から首輪を剥ぎ取って実験するってことなんですけどね)
カーマとしても首輪を外すことそのものに反対しているわけではないので、懸念は心の裡に閉まっておくことにした。
首輪解除という話題から流れるようにお互いの支給品を見せ合おう、という話に移行した。
というのもララが首輪の解析を行うために必要な工具類が支給品の中に含まれている可能性があったからだ。
―――事件はそんな時に起きた。
「私の支給品はこれ!行き先を選べないけどワープできるらしいからいざとなったらこれ使って皆で逃げよう!」
まひろの左腕には小さなブレスレットのようなものが装着されていた。
どうやらカーマ、ララと遭遇する直前に支給品の確認を済ませていたらしい。
まひろのブレスレット、正式名称ぴょんぴょんワープくんを見た瞬間、ララが血相を変えた。
「あーーーっ!!待ってまひろ!!それ危ないから貸して!」
「わっ!?」
勢いよくまひろの左腕目掛け突っ込んでいくララ。
いきなり飛び掛かられたことに動揺したまひろと衝突し、揉みあいになってしまう。
「わわっ、ちょ、待って!待てって!」
「そのぴょんぴょんワープくんは初期型だから、起動しちゃうとダメなの!」
「ああもう何してるんです!?とにかくララさんは一旦まひろさんから離れて―――」
見かねたカーマが仲裁に入り、三人の身体が重なり合った瞬間、ぴょんぴょんワープくんが起動し周囲が白い煙に包まれていく。
視界が遮られていく中、三人は素肌の全てが大気に晒されていく感覚を覚えた。
視界が戻った時、周囲の景色は全く違ったものになっていた。だがより重大な変化が起きていた。
近くに置いていたランドセルも、身に着けていた衣服も一切が消え失せており、三人は一糸纏わぬ全裸になっていたのだった。
「「なっ、な……」」
「あっちゃあ〜、止められなかった……。
あれ?でも首輪だけは外れないんだね」
唯一この現象に慣れていたララだけがのんびりした様子でいる中、カーマとまひろは自らの裸身を見てたちまちのうちに頬を紅潮させた。
生まれた時代も世界も価値観も全く異なる二人だが、今この瞬間だけは全く同じことを考え、叫びだしていた。
「「なんじゃこりゃあーーー!?」」
【ララ・サタリン・デビルーク@To LOVEる -とらぶる- ダークネス】
[状態]:健康、全裸
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]殺し合いなんてしないよ!
1:荷物と服を探さなきゃね。
2:この首輪ってすごい技術が使われてるんだね〜。
[備考]
肉体が小学生相当に縮んでいる時期からの参戦です。
【諸山まひろ@お兄ちゃんはおしまい!】
[状態]:健康、全裸
[装備]:ぴょんぴょんワープくん(電池切れ)
[道具]:
[思考・状況]人殺しにはなりたくない、脱出したい。
1:これって俺のせいなのか……?
2:服と荷物どこ行った!?
[備考]
少なくとも中学校に編入された後からの参戦です。
【カーマ@Fate/Grand Order】
[状態]:健康、全裸
[装備]:
[道具]:
[思考・状況]ゲームから脱出、またはカルデアからの救援を待つ。
1:何でこうなるんです!?
[備考]
カルデア所属ですが、現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。
クラス霊基はアサシンです。
単独顕現のスキルによりマスター不在状態でも宝具である『愛もてかれるは恋無きなり』を使用できますが、魔力を大幅に消耗します。
制限により霊基再臨による肉体年齢の変更ができなくなっています。
[共通備考]
ララ、まひろ、カーマの支給品一式と衣服がどこかに放置されています。
【ぴょんぴょんワープくん@To LOVEる -とらぶる-】
ララが開発した発明品の一つ。
短距離の生体ワープを可能とするが行き先を指定できず、衣服がワープできないという欠陥がある。
後に様々な改良型が作られていったが、今回支給されたのは初期型である。
投下終了です
投下します
殺し合いの会場にあるとある公園。そこに二人の少女が立っていた。
一人はゴスロリのドレスに眼帯を付けた、長髪の少女。
もう一人は燕尾服に短パン、頭には小さな帽子を被っている短髪の少女。
二人は髪や目の色が一緒であることから血縁であることが分かる。
事実、彼女達は双子の姉妹である。
長髪の少女は姉であるナナ。
短髪の少女は妹であるノノ。二人はとても仲良しの双子である。
「変なことになっちゃったわね」
「ナナ。きっとこれは誘拐って言うんだよ」
状況を理解しているのかいないのか、どこか呑気な物言いのナナにゆるくツッコミを入れるノノ。
しかし、本質的にはノノもあまり姉と変わらない。
「でも殺し合いって遊びはどうしたら勝ちになるんだろう? 鬼ごっこやかくれんぼとは違うのかな?」
「そうね……」
殺し合いというものを理解しておらず、首をひねるノノ。
そんな彼女に対し、ナナは己の推測を話す。実の所姉も理解してはいないが、妹よりはマシだった。
「きっと私達と同じように、誘拐……? された人を皆やっつければ勝ちなのよ」
「そっか〜」
ナナの言葉を聞いたノノは笑みを浮かべ、背負っているランドセルからナイフを取り出してこう言った。
「面白そう! ナナ、一緒に頑張ろうね!!」
「そうね。頑張りましょう。でも……」
笑顔のノノとは対照的に、ナナは不安げな表情である懸念を話す。
「お兄ちゃんはいないのかしら……?」
「そういえば、どこに行っちゃったんだろう? お兄ちゃんは誘拐されてないのかな?」
お兄ちゃん。
それは二人にとっては最近遊んでくれた近所のお兄さんであり、別に血縁があるわけでは無い。
だが二人は彼が大好きである。故に、ある不安が二人を襲った。
「もう遊べないなんてことないよね、ナナ……」
「大丈夫よノノ……そうだわ。たしかあの乃亜ってお兄ちゃんが、殺し合いに勝てばお願いを聞いてくれるって言ってたわ」
「じゃあノノかナナが優勝すれば、ずっとノノ達がお兄ちゃんと遊べるようにお願いすればいいんだね!!」
ナナの言葉を聞き、笑顔になるノノ。
心底から喜ぶ彼女の手元にはナイフが踊り、辺りを鈍色の光が照らす。
「ええ……一緒に遊びましょう」
それを受けてナナもまたランドセルから手斧を取り出し、妹と同じく辺りを鈍色に照らす。
そして二人は歩き始めた。
一見子供らしい願いを掲げ、子供らしい笑みで深夜の公園をただ進む。
ところでここまで読んだ人には分かると思うが、この双子には善悪の概念や倫理観というものが存在しない。
育ち方の問題なのか、元々こうだったのか。ともかく彼女達には、普通の環境で育てば持っているはずのものが備わっていない。
故に人を傷つけること、殺すことに抵抗など一切ない。
その性質故に彼女達が慕う『お兄ちゃん』に突き放されたが、それを理解することができない。
故にナナとノノはこの殺し合いにおいて、他者からは脅威としか扱われないだろう。
あるいは、彼女達に善悪や倫理観を教えることができればもしかしたら――
【ナナ@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!】
[状態]:健康
[装備]:ナナの手斧@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して、お兄ちゃんとずっと遊べるようお願いする
1:せっかくだし他の人とも遊びたいわね
[備考]
※参戦時期は本編登場前です
【ノノ@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!】
[状態]:健康
[装備]:ノノのサバイバルナイフ@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して、お兄ちゃんとずっと遊べるようお願いする
1:せっかくだし他の人とも遊びたいな
[備考]
※参戦時期は本編登場前です
【ナナの手斧@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!】
ナナに支給。
ナナがパッケージで持っている手斧。部屋のドアを破壊できる位には丈夫。
そんな丈夫な斧なのに子供でも持てる位軽いのか、彼女の身体能力が異常なのかは不明。
【ノノのサバイバルナイフ@ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCDぎゃーーーっ!】
ノノに支給。
ノノがパッケージで持っているサバイバルナイフ。
多分普通のナイフ。
投下終了です。
タイトルは『ヤンデレの女の子が参加してて眠れないコンペLSロワぎゃーーーっ!』です。
投下します
◆
「一体何がどうなっているんだ…」
呆然と周囲を見渡すのは、身体に合わない海兵服を着た少年だ。
いた、正確には少年というのは正しく無い。
彼は歴とした成人だ。偉大なる航路(グランドライン)の海の平和と安全を守護る海兵である。
それが何故にこんな子供しか参加できないバトルロワイアルに参加させられているのかと言えば……。
シャボンディ諸島で起きた天竜人暴行事件の報を受けて、急遽出動。犯人であるモンキー・D・ルフィ。ユースタス・キッド。トラファルガー・ロー。この三名の捕縛の為に、事件のあった島に展開、三名の捜索を開始。
此処までは、彼にとっての日常の範囲内だった。この世の神にも等しい存在である、天竜人が暴行されたという前代未聞の事態が発端ではあるが、暴れる海賊の鎮圧や捕縛であれば、日常の範囲である。
捜索を開始したのちに、目当ての三人では無く、億越えの懸賞金を掛けられた海賊、ジュエリー・ボニーと遭遇し、捕縛を試みるも、悪魔の実の能力により、幼児といって良い肉体年齢まで戻された。
これもまた彼の日常ではあった。偉大なる航路(グランドライン)の名を知られた海賊には、悪魔の実を食した能力者が多々存在し、各々が強大な、奇怪な能力を行使する。
身体をバラバラにされた挙句、他人の身体と入れ替えられる事や、音の斬撃や爆発で惨死する可能性を思えば、この程度で済んだのは、まだマシと言えるかもしれなかった。
そこから先が、非日常であった。いきなり見知らぬ場所へと拉致された挙句、二人の子供が無惨にも首を爆破されて死んだのだ。
この事態に彼は激しく憤り、乃亜と名乗った子供の打倒と、この異常事態に巻き込まれた子供達の救出を誓ったのだった。
彼は海兵である。正義の二字を背負い、その背に無辜の良民を庇い、凶悪な海賊と対峙する海兵である。
このような事態になれば、彼は取るべき行動を当然の様に決定した。
最初に殺された子供がルフィという名であり、ゴムゴムの実の能力者と思しい事と、天竜人の奴隷に爆弾付き首輪が嵌められるという事実が引っ掛かったが、考えても仕方が無いのであえて無視した。
◆
そうして歩く事五分。
支給品の日本刀『江雪』を腰に帯びて、用心しつつ歩いていた彼は、遂に目当である他の参加者と遭遇した。
「こんばんは」
この異常事態で、なおかつ夜闇の中というのに、全く平然と挨拶をしてきたのは、喪服を思わせる闇色の礼服を纏ったプラチナブロンドの少女。
腰まで伸びた長い髪を揺らして、愛らしく挨拶をする。
「貴方は誰?私を殺すの?」
5mほどの距離を空けて、小首を傾げて問う姿は、年相応にあどけないが、この世の常識が、人と自然を問わず通用しない偉大なる航路(グランドライン)で、海兵という、生命のやり取りを日常的に行う職業に従事していた彼は、眼前の少女に対して、本能的に危険を感じ取った。
「いや、俺はこう見えても海兵なんだ。あんな奴の言う事には従わない。俺と一緒に来なさい。子供を…と言っても俺も子供だな、今は。兎に角子供をこんな危険な場所に置いては置けない」
「海兵?軍人さん?私より小さいのに?」
「ああ、俺は本当は大人なんだが、悪魔の実の能力者にやられてね」
「悪魔の実…ふーん」
『悪魔の実』と聞いた少女が、一瞬だけ何かを考えたのを、彼は見逃さなかった。
「どうした?」
油断無く、腰の江雪をいつでも抜けるようにして訊く。
「悪魔の実なら、さっき食べたの」
彼は少女の見た目に惑わされてはいなかった。偉大なる航路(グランドライン)では、只の人間にしか見えない者が、拳の一撃で船の帆柱を粉砕し、砲弾を殴り潰すのだ。
少女が全く殺気を帯びる事なく攻撃を仕掛けて来たのには面食らったが、予め身構えていた事と、距離が有った事、何よりも少女が素手であったことが幸いし、後発したにも関わらず、抜刀。抜き打ちで少女の首筋に刃を直撃させ───音を立てて跳ね返された。
「!?」
驚愕に目を見開いた彼の腹部を、少女の右貫手が抉り、手首まで沈んだ右手が思い切り引かれる。
「!?……ギ…ギャアアアアアアアアアアッッッ!!!!」
なんたる無惨か、少女は彼の腹から素手で腸を引き摺り出したのだ。
「ロシア人よりやるじゃない。大分前から気づいていた様だし」
血に濡れた肉と肉とが、擦れ合い、ぶつかる湿った音と共に、彼の腸を引き摺り出しながら少女は朗らかに言う。
「沢山の釘でもあれば、腸(これ)に死ぬまで刺してみるところだけど」
引き摺り出された腸を弄びながら、笑顔で語る少女に、彼はこれから襲いくる苦しみを想像して、絶望した。
「よいしょ」
ずぶり、と、そんな音が聞こえた気がした。脳を守る為に、人体でも硬く厚いいる頭蓋骨が、少女の繊指で、薄紙の様に貫かれたのだ。
白目を剥いて痙攣する彼を見て、少女は愉しげに笑うと、突き入れた指を動かして、脳を掻き回す。
「お“ッお“ッお“ッお“ッお“ッお“ッ」
爪先で引き摺り出した腸を引っ掻く。
「お“ボッア“ッ」
右眼を抉り出すと、切り取った性器を眼窩に捩じみ、性器の先端部分で脳を突っついてみる。
「ギッ!?ギイイイイイイイイイイッッッ!!!!」
彼が苦痛を感じなくなるまで。まだまだ掛かりそうだった。
◆
三十分後。
「ああ、いけないわ。服と手がが汚れてしまったわ」
涙と涎と鼻水を垂れ流しながら、泣き喚き、絶叫し、命乞いをしていた海兵の死体から、支給品を回収して、少女は次の獲物を求めて歩き出す。
「この能力は愉しいけれど、やっぱり銃が欲しいわね。服と手が汚れるのは困るもの」
取り敢えず替えの服と、手が洗える場所が欲しい。少女はそう思いながら歩き出した。
「兄様も此処にいるのかしら?きっといるわ、私が此処にいるんだもの」
少女の名はグレーテル。地図に無い無法の街ロアナプラを震撼させた、双子の殺人者。
その片割れ。
グレーテルが此処で何をするのかは、残された死体が物語っていた。
【ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵@ONE PIECE 死亡】
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:江雪@アカメが斬る! スパスパの実@ONE PIECE
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×1〜4
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:兄様と合流したい
2:手に入った能力でイロイロと愉しみたい。
[備考]
・海兵で遊びまくったので血塗れです。
・スパスパの実を食べました。
『支給品解説』
江雪@アカメが斬る!
ワイルドハントの人斬りであるイゾウが溺愛していた刀。人間を一度に数十人以上斬っても刃毀れ一つしない。
スパスパの実@ONE PIECE
超人系悪魔の実。身体の如何なる場所でも刃物に変えられる様になる。この為に全身が鉄の硬度になる。
攻守共に隙の無い能力。
※ジュエリー・ボニーに子供にされた海兵の惨殺死体が会場のどこかに転がっています。
※死体の側には空のランドセルが放置されています。
投下を終了します
投下します。
──漸く外に出られたけれど、周りは広い海だった。
海の中を移動する巨大な施設•『モウ』の中を渡り歩き、度々自身に襲いかかる空腹感に抗えずパンや生きた者を喰らい、自分よりも大きな体躯を持った従業員や来客達を掻い潜り、やがては施設の主を殺して生命力を吸い取る力を奪い、未だ生き残っていた客人達から命を吸い取りながらモウの扉を開き外に出たけれど、辺りは陸地の見えない海が広がっていた。
そんな景色を、外に出たたった一人の少女•シックスは眺めていた。
─そうしていたら、いつの間にか乃亜が開くバトルロワイアルに招かれていた。
◆◆◆
会場内にあるマンションの廊下。
シックスは(少なくとも現時点では)本人にしか知り得ない自分の願いを叶える事と自分の『糧』となる他者の生命力を得る為に殺し合いに乗り、小さな体で歩き回る。
だがそれから少し経つと、近くにある階段からもう一人、少女が降りて来る。
シックスはその少女を殺す為に階段を登り生命力を奪う黒い靄の様なものを出現させ、降りてきた少女にそれを触れさせる。
すると触れた少女はドロドロに溶け出し、消滅した。
こうしてシックスは溶けた少女から生命力を吸収し、殺害する事に成功した…はずだったが、何故か来客達から吸収した時よりも『飢餓感』が満たされなかった。
◆◆◆
(あれ、陽神の術が…破られた?)
シックスがいる場所よりも上の階にある一室。
そこでは、没収を免れた車椅子に腰をかけながら、自身の霊能力を用いた術•『陽神の術』によって作り出したコピーを倒された事を察知した霊能力者の少女、木下あゆみが警戒を始めた。
【シックス@リトルナイトメア】
[状態]:不治の飢餓感
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝を狙う。
1:今さっき生命力を吸い取って殺したはずの人物(木下あゆみのコピー体)への違和感。何故あの大人達(ゲスト達)から吸い取った時よりも『空腹』が満たされない?
[備考]
※参戦時期は本編終了直後。
※一人称や口調、その他細かい設定については後続の書き手様にお任せします。
【木下あゆみ@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:虚弱体質
[装備]:車椅子
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:陽神の術で作り出した自分のコピー体を倒した何か(シックス)を警戒。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は漫画無印83話以降。
※彼女が元々使用している車椅子は没収を免れました。
投下終了です。
投下いたします。
こちらは以前、決闘ロワに投下したものについて一部手直ししたものになります。
ここは会場内に存在するショッピングモール、そこには電動ドリルの先端に槍を取り付けたという、かなり物騒な代物をもって徘徊している少年がいた。
彼は『むらびと』と呼ばれている一般人であり、【スローライフの伝道師】のリングネームを持つファイターである。
実を言うと彼はこのバトルロワイアルのことを、いつもの『大乱闘』のようなものだと認識していた。
それ故に彼の目的は、ただひたすら目の前に現れる自分の敵を倒し、優勝することだけだった。
そのため彼は最初に飛ばされたこのショッピングモール内を探索し他の参加者がいないかを確認していたのだが、幸か不幸か誰にも出会うことができなかった。
それで彼は考えた、「自分から探し回るのではなく、他の参加者が現れるまで待ち続ける」という戦法を取ることを……。
それに、こういった待ち伏せに適した道具も自らに支給された物の中にあったのも功を奏した。
彼に支給された物、それは彼が見知ったものとは少し形状が違うし、どちらかと言えば別のファイターが使っているモノだったがその使い方は今までの乱闘の中でよく知っているものだった。
それは壁や床、そして『人間』に取り付けて爆破させるもの、俗に『粘着爆弾』と呼ばれる代物だった。
彼はそれを見つけてすぐ、このショッピングモール内のいくつかの場所に設置し、いつでも起爆できるよう準備を始めていたのだ。
そして彼はいざという時の為に殺傷能力の高い武器を携えたまま、この施設の中で籠城戦を開始することにしたのだ。
他の参加者が目の前に現れるその時まで、まだ見ぬファイターたちと戦うことへの高揚感を抱きながら……。
【むらびと@大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL】
[状態]:健康、自分が知らないファイターたちと戦うことについての高揚(中)
[装備]:ドリラー(Driller)@デッドライジング2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、粘着爆弾(Sticky Bomb)×5@Grand Theft Auto Ⅴ(グランドセフトオート5)
[思考・状況]基本行動方針:この催しを楽しむ。
1:他の参加者を倒し、優勝を狙う。
2:この爆弾は自分が見知ったものと形状も使い方も違うが、とても強力なモノのはずなので存分に使わせてもらう。
[備考]
制限によりスコップや虫取り網などの各種アイテムは没収されています。
彼が仕掛けたトラップとして、粘着爆弾がショッピングモール内に5つ設置されています(設置場所については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)
『支給品紹介』
【ドリラー(Driller)@デッドライジング2】
むらびとに支給。電動ドリルの先に槍を付けたコンボ武器。
そのまま前方に素早く突きを放つもよし、相手の身体を掴んだ後に回転させながら何度も突き刺して大量出血させるもよしと、タイマンでは無類の強さを誇る。
ただし構造上、攻撃できる範囲が前方にしかないため集団戦は苦手。
【粘着爆弾(Sticky Bomb)×10@Grand Theft Auto Ⅴ(グランドセフトオート5)】
むらびとに支給。書いて字のごとく吸着性のある爆弾で、設置して待ち伏せ起爆したり、相手の身体に張り付けて即爆破して殺害するなど使用方法は多岐にわたる。
本ロワにおいては10発支給されている。
投下終了です、なおこの作品では『むらびと』を推定身長からショタとして執筆しております。
以上、ありがとうございました。
投下させていただきます。
「クッソァーーーーーー!!」
銀髪褐色肌、左の頬には大きな傷跡と目立つ風貌の少年が、大声を上げて右手をそばにあった大樹に殴りつける。
普通なら大樹はビクともせずに、少年の八つ当たりの様な行動は無為に終わるが、大樹は大きく揺れ動き、少年が殴りつけた場所にはくぼみが出来ていた。
少年の名前は天樹院カイル。PSI(サイ)という異能じみた超能力を使える若きサイキッカーの一人だ。PSIの基本の一つ・ライズによって高められた身体能力で殴った為痛みも特には感じていない。
カイルが感情に任せて殴った事に、大きな理由などない。
こんな悪趣味なゲームを開いた海馬乃亜への怒り。そして爆発死した兄弟と自分自身に対する後悔だった。
「……どうして俺は、あの時何も動かなかったんだ!!」
カイルはこう口にしているが、理由はわかっている。
突如見知らぬ場所に拉致され、その後行われたいきなりの少年の爆死と蘇生に意識が完全に持っていかれたからだ。
なにをしてくるか分からない首謀者の子供一挙手一投足に気を取られ、知り合いが巻き込まれていないかの確認も出来ず、みずみずルフィとエースの兄弟達の死亡を見るだけしかできなかった。
アゲハ達は、もっと途轍もない陰謀に巻き込まれていて、死なない様どこかで足掻いてくれている筈なのに、自分がこの調子なら情けなくなってくる。
こう思った所で、カイルは一つの考えを思いつく。この俺が巻き込まれたゲームと、アゲハ達がいなくなるヤツと関わりがあるのじゃないかと。
(……嫌、ちげーな。俺がこうなる前に怪人なんとかQを見た覚えはねえ)
しかし、すぐにその発想は間違っていると理解する。アゲハ達がいなくなる時には決まって得体のしれない怪人(ネメシスQ)が出てきて連れ去って来るが、自分自身にそういう事があった記憶は無い。
ならこれは、アゲハとは関係がない、別の謎のゲームだろうと判断する。
カイルは、大樹を殴った自分の右手を見る。ギュッと握った手からは血が少し垂れてきていた。
―――大樹を殴って皮が擦り剝けたからではない。自分の握り拳を強く握りすぎて、手のひらから出血をしたのだ。
思えば、理不尽な死亡と蘇生を行われたルフィという子供は、乃亜に殴ろうとしていた。命を弄ばれて悔しくて、一糸報いようとしたのだろう。もし俺が同じ立場だったらきっとそうする。
「……俺が、お前たちの分も、絶対にアイツを、乃亜をぶん殴ってやる!!
俺に出来そうな事なんて、それくらいしか思い浮かばねえからな」
手のひらの止血を行いながら、そう決意を決める。もとより殺しあえと命令されてその通りに動く様な人間ではない。首輪の爆発で脅され、ゲームに従えと言われようとも止まる気はない。
人の命を駒やオモチャのように扱う海馬乃亜も、こんなクソッタレなゲームに乗るようなヤツもブッ飛ばす。そっちの方が俺らしい。
「そうと決まれば、動かねえとな!!」
カイルは手の指をポキポキと鳴らして、その後四股を踏む様な体勢になり、脳細胞を活性化させライズを身体の全体に高める。
本来ならこんな動作をしなくても瞬間的にできるのだが、決意表明をした手前、普段通り行うのもどうかと思い、このような動きを取ったのだ。
そして、爆発的に高められた身体能力で、大きく前にジャンプする。オリンピックで記録を計測したらニューレコードが出そうな距離の跳躍を2度3度、いや何回も続けていく。
身体を動かしながら考えているのは、自分と同じ様にPSIに目覚めた事で親から捨てられ、そして引き取ってくれたバァちゃん(天樹院エルモア)の元で一緒に生活している仲間達。
俺だけが巻き込まれたとは考えにくい。きっと俺と同じくこのクソッタレなゲームを破壊しようとそれぞれ決意しているにちがいない。
まずは、皆と合流を目指す。ライズがある為、スピードは普通に動くよりも断然速く会える。
「待ってやがれ、乃亜! 俺は止まらねぇからよ!」
ゲームの打破を決めた今のカイルは、褐色の弾丸の如く一直線に動き続ける。
エルモア・ウッドの切り込み隊長兼警備隊長(自称だが)・天樹院カイルの歩みは、簡単には止まらない―――。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
カイルが他の参加者と遭遇して歩みが止まったのは、ライズを発動してからおおよそ5分後の事である。
人が集まりそうな場所に向かって移動をしていると、両手で顔を覆い泣いている少女の姿を発見したからである。
最初はどこかケガをしたからなのかと思い、不意打ちをしてくる様なら即座に反撃できるように心構えは用意しつつ近づくが、どうも普通に悲しいんでいるらしい。
「わ、私……アカデミーや任務で、知識や経験を積んだ、つもりだけど……、年下の子供がし、死ぬ瞬間なんて初めてで、あ、あんな理不尽に殺されるなんて、それで、私もああやって死ぬ事を思っちゃうと、涙が止まらなくて……!」
泣きしゃっくりを上げながら話している為、所々で話は止まるが、それでも少女の事は少しわかった。
名前は「日向ヒナタ」で、どうやら忍者らしい。そしてこれまで危険を伴わない任務を中心に行ってきたが、一つ上のランクを目指す為の試験を行っている最中に巻き込まれたとの事だ。
最初は試験が変わったのかと思ったそうだが、子供二人が殺された所で認識を変えたらしい。
「とりあえずアンタの事情はわかったけどさ、身なりは大きいのにメソメソしてたら、他の皆に舐められちまうぜ!年いくつ?」
「じゅ、十二歳…」
「ウッソ、マジかよ!俺より全然年上じゃん!」
「うぅ……!」
「アッ、ワリぃ。泣かせる気はなかったんだんだよホントだって!」
カイルが何気なく放った発言に、ヒナタは悲しみの気持ちが増してしまう。
自分よりも年下の子供は既に悲しみを超えている様子なのに、自分は未だに泣く事すら止める事も出来ずに立ち止まっている。
ウジウジしていて、消極的な自分を変えたくて、推薦してくれた中忍試験に挑んだというのに、現実はこの通りだ。
そう思うと、ドンドン後ろ向きな考えが続いて、ダメになってしまう。
(ナルト君……。せめてもう一度、会いたい……)
ヒナタは、アカデミー時代から密かに片思いをしている、自分を曲げない忍者・うずまきナルトの姿を心の中で思う。
一方でカイルは、泣き止まないヒナタの様子を見て、少し後ろめたい気持ちが生まれる。
全然年上とは言ったが、実際は二つ三つほどしか変わらない。(そもそも実の親に捨てられた為、正確な年齢は把握していない)
自分の発言で墓穴を掘ったと自覚したカイルは、ガシガシと頭を掻いて、観念したように話しかける。
「あーもう分かったよ!しばらく傍にいてやるから泣くな!な?」
「あ、ありがとう……」
「良いよそんなん!このまま置いてく訳にもいかねーし、折角だからな!」
カイルの提案に、ヒナタは涙声ながらも頷いて応じる。
事実、このまま泣いているヒナタを放置して行動を再開するなんて、絶対に心残りになるに決まっているとカイルは考えている。
それ以上に、目の前で死んだ兄弟達の事がある。今さっき見知った相手でも、死んでいい命なんてない筈なのだ。
しかし、それはそれとして厄介な事を言ってしまったとカイルは内心で思っている。
(あ〜あ、この先どうなっちまうんだ?オレ……)
カイル自身としては、いるだろう仲間達とサッサと再開したいし、ゲームに乗るヤツがいたらブッ飛ばしたい。
その為に出来る限り動き回りたいのだが、ヒナタと一緒に行動するのなら、自由にライズを使う事は制限をされてしまうだろう。
一応忍者らしいので、全く動けない事はないだろうが、それでもさっきまでの様子を考えると心配してしまう。
(コイツ、なんかマリーと似た感じだけど、マリーの方がまだ肝が据わっている気がするぜ)
カイルが思いつくのは、同じ境遇で一緒に生活をしている少女の一人、天樹院マリー。
内気で控えめな性格で、事あるごとに同じ子供達に命令して女王様のように振る舞おうとする天樹院フレデリカに子分として扱われ、涙目になる姿をよく見るそばかす持ちの少女。
要点だけみれば似たような相手だろうが、それでも会ったばかりの少女と、家族といってもいいほど一緒に過ごしている少女とでは、後者の方に基準が甘くなってしまう。
ヤンキー座りになってヒナタの様子を確認するカイル。
ようやく泣き止みはしたが、それでも行動を始めるにはまだ時間がかかりそうな様子だ。
(アゲハ〜、俺、こんな調子で上手くやっていけるかなぁ)
兄貴分として関わってくれていて、現在行方知れずのサイキッカー・夜科アゲハを脳裏に浮かべながら、これからを心配してしまうカイルであった。
【天樹院カイル@PSYREN】
[状態]:健康、後悔(中)、右拳に出血(小、止血済み)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:海馬乃亜をぶっ飛ばして、この殺し合いを終わらせる
1:目の前の子供(日向ヒナタ)の傍にいるが、正直面倒
2:エルモア・ウッドの仲間が参加しているのならサッサと合流したい
3:ゲームに乗ってる奴がいるならブッ飛ばす!
[備考]
※参戦時期は、夜科アゲハ達が5度目のサイレン世界への招集されて以降の時間軸
【日向ヒナタ@NARUTO -少年編-】
[状態]:健康、悲しみ(大)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。だけど、殺し合いたくもない
1:ナルト君に会いたい。
[備考]
※参戦時期は、中忍試験に参加して第二試験の最中
投下終了です
また、自作の「ファーストコンタクト」にて、一部誤字がありました為、wikiで編集させていただきました事を、ここに報告させていただきます
投下します。
「変身が出来る。」
筋骨隆々な青年が、この世界で最初に呟いた言葉はそれだった。
辺りを見渡し、誰もいないことを知ると、姿を変えた。
いや、元の姿に戻ったという方が正確か。
白と青の服を着た、金髪のサラサラヘアーが特徴的な少年こそが、テムの本当の姿である。
(消えたはずだよな……ぼく。)
両手をグーパーグーパーと動かして、地面を両足で踏み鳴らして、自分という存在がいることを確認する。
地面から舞い上がった砂埃が、彼の存在を肯定した。
空には少年が冒険していた世界と同様に、星が瞬いていた。
(まさか、世界が変わることを拒んだのか?)
一瞬焦った。
自分がこうして消えていない理由は、誤った歴史が続いているからではないか。
自分のしてきたことが、無かったことになってしまったのではないか。
そんなことを考えてしまう。
だが、その考えは杞憂に終わった。
空には、彼がいた世界と比較して、1つだけ違いがあった。
夜空のてっぺんで、ルビーのように赤く光っている星が見当たらない。
即ち、ここは自分が知っている世界ではないと結論付けた。
そう考えると、ここはあの時、宇宙から見た変わった世界だと結論付けた。
(そうか…歴史は変わっても、僕は生きているんだな。)
事実の改編と共に消える運命をたどった自分が、今こうして生きている。
殺し合いという恐ろしい儀式に巻き込まれた恐怖よりも、新しい世界を冒険する高揚感が勝った。
そしてあの時、永遠に会うことが無いと思っていた仲間に、また会えるのではないかという期待。
もしこの殺し合いから帰ったら、その先にあるのはあの時一瞬だけ見た2003年の東京か、それともサウスケープの町か。
そんな先のことなどどうでもいいから、この世界で冒険したいという気持ちの方が勝った。
再び少年は姿を変える。
今度の姿は、青い炎に包まれた人間、シャドウ。
その前に姿を変えたフリーダンは、人間だと判別することが出来るはずだが、今の変身は到底人間だと考えられないだろう。
シルエットで辛うじて人型だと分かるぐらいだ。
腕をブンブンと振ってみた。その勢いからして、力強さを感じる動きだったが、彼は違和感を覚えていた。
(ファイヤーバードは出来ないのか……)
彗星ダークガイアを倒すのに使った、光と闇の最終奥義だけは使えなかった。
この場に光の戦士であるカレンがいないからか、それとも何らかの力が働いているかは分からない。
とは言え、それ以外の力は十分使えることが分かった。戦うことだって不可能ではないはずだ。
次に支給品を出してみると、適度に長い剣があった。
テムにとっては少し大きかったが、フリーダンに変身した時に使えると考える。
冒険の時に愛用していた父の形見の笛は無かったが、ここでぼんやり立ち止まっているわけにはいかない。
(これでいいか。)
テムの姿で使うのに手ごろな武器は無かったが、太さと長さが手ごろな木の枝を拾い、武器にする。
サウスケープの町で悪戯をしていた頃を思い出し、懐かしい気持ちになった。
少し離れた場所から風に乗って、何かが聞こえて来た。
恐らく、誰かが戦っている音なのだろう。
テムは誰彼構わず助けようというつもりはない。
だが、進んで殺し合いに乗るつもりは無いし、仲間が襲われているかもしれない。
最初に変身した青年、フリーダンに変身し、颯爽と地面を駆ける。
☆
場所は変わり、山岳地帯。
辺りの地面にも岩壁にも、小さな穴がいくつも開いている。
青と紫のストライプの服を着た糸目の少年が、カエルによく似た生き物の着ぐるみを着た少年に襲われていた。
「や、やめてください!!」
「食らうっす!!びよーんパンチ!!」
着ぐるみの少年が口を開けると、カエルの舌のように細長い拳が現れる。
勢いよくしなるその一撃を、糸目の少年は辛うじて躱す。
攻撃は全て躱されているが、着ぐるみの少年が明らかに優勢だ。
糸目の方も、ナイフを振り回そうとするが、それだけで相手を倒せそうにない。
「まだまだ行きまっす!!」
爬虫類の舌を彷彿とさせる一撃は、軌道が柔らかだが破壊力にも富んでいる。
場所は屋外だったが、そこかしこに岩が並んでいるため、空を切った攻撃が辺りに命中する。
岩壁だというのに、砕けはしないにせよ所々にひびが入っていることからも、その威力が伺える。
そんな中、一人の青年の声が響いた。
「戦いをやめるんだ!」
彼のやや低い声に、2人の少年は驚く。
なにしろ、参加者のほとんどが子供の殺し合いで、明らかな大人がいるからだ。
だが、驚いている暇もない。
テムは高く跳び上がり、地面に剣を叩きつける。
途端に、激しい地震が巻き起こった。
「うわ!」
「い、一体なんですか〜!?」
ストライプの少年は立てずに尻もちをつき、立てなくなる。
着ぐるみの少年は同じように宙に逃げ、地震攻撃から身をかわす。
テムがフリーダンの時の姿で使った技『アースシェイカー』だ。
殺傷力はないが、相手の動きを止めるのに使える、殺し合いをすべきでないこの場で打ってつけの技だ。
戦いを上手く止め、それからテムが2人と話し合おうとした所。
「う、上見てください、上!!」
糸目の少年が、指をさして叫んだ。
彼の高い声とともに、辺りから岩が次々に転がって来た。
当然と言えば当然。山岳地帯で地震を起こす技など使えば、岩雪崩が起こってもおかしくないだろう。
「は、早く逃げよう!!」
テムはすぐには走れなさそうな、ストライプの方の少年を優先して助けようとする。
「こ、ここは一旦逃げるっす!!」
着ぐるみの少年は、身のこなしを活かして、確実に岩を避けていく。
この場では本人しか知らぬことだが、彼は一度とある大会で、このような状況に直面したことがあるので、躱すのも容易だ。
「その子は……。」
彼がいなくなる寸前、何か言葉を発そうとしたのは後の2人にも分かったが、何のことなのかは聞こえなかった。
そんな中、一人の青年の声が響いた。
「戦いをやめるんだ!」
彼のやや低い声に、2人の少年は驚く。
なにしろ、参加者のほとんどが子供の殺し合いで、明らかな大人がいるからだ。
だが、驚いている暇もない。
テムは高く跳び上がり、地面に剣を叩きつける。
途端に、激しい地震が巻き起こった。
「うわ!」
「い、一体なんですか〜!?」
ストライプの少年は立てずに尻もちをつき、立てなくなる。
着ぐるみの少年は同じように宙に逃げ、地震攻撃から身をかわす。
テムがフリーダンの時の姿で使った技『アースシェイカー』だ。
殺傷力はないが、相手の動きを止めるのに使える、殺し合いをすべきでないこの場で打ってつけの技だ。
戦いを上手く止め、それからテムが2人と話し合おうとした所。
「う、上見てください、上!!」
糸目の少年が、指をさして叫んだ。
彼の高い声とともに、辺りから岩が次々に転がって来た。
当然と言えば当然。山岳地帯で地震を起こす技など使えば、岩雪崩が起こってもおかしくないだろう。
「は、早く逃げよう!!」
テムはすぐには走れなさそうな、ストライプの方の少年を優先して助けようとする。
「こ、ここは一旦逃げるっす!!」
着ぐるみの少年は、身のこなしを活かして、確実に岩を避けていく。
この場では本人しか知らぬことだが、彼は一度とある大会で、このような状況に直面したことがあるので、躱すのも容易だ。
「その子は……。」
彼がいなくなる寸前、何か言葉を発そうとしたのは後の2人にも分かったが、何のことなのかは聞こえなかった。
☆☆
「ありがとうございます、助かりました。僕はフリスクといいます。」
「僕はテム。助けようと思ったのに、かえって危ない目に遭わせてごめん。」
挨拶と同時に、フリーダンの姿からテムの姿に戻った。
このような変身というのは、得てして時間制限があるものだが、彼がいた場所ではそのようなことは無かった。
闇の精霊の力が及ばぬ所へ行くか、あるいは闇の間以外で、姿が変わることは無かった。
大人の存在が頑なに拒絶される場所だから、強制的に解除されるのはおかしくはないかもしれない。
「うわ!変わった!?」
「驚かせてごめん。これは僕の力なんだけどね。」
それからテムは話をした。
自分は闇の力を承った戦士で、邪悪な彗星ダークガイアを倒すために生まれたのだと。
仲間との冒険の果てに、ダークガイアを倒し、間違った歴史を修正したのだと。
「きっときみは、新しい世界の住人なんだ。会えてうれしいよ。もしかすると、僕の知ってる人の生まれ変わりなのかもね。」
冗談交じりに笑うテム。
続いて話をするのはフリスクの方だった。
彼はこの世界に来る前、地下世界というモンスターばかりの世界を冒険していたこと。
色んな相手と戦い、色んな相手とトモダチになり、そしてモンスターの王アズゴアとその家系の問題に終止符を打ったこと。
そして地上へ帰ろうとした矢先に、この世界に呼ばれたこと。
呼ばれてすぐに、あの着ぐるみを着た少年と戦う羽目になったこと。
「ぼくは元の世界の友達がいないか探すつもりだ。きみはどうするんだ?」
「僕も地下世界の友達を探すつもりです。協力して探しましょう。」
こうして、2人のサラサラヘアーの少年の冒険が始まった。
ただし、テムは知らない。
先の話でフリスクが告げたのは、彼の冒険のほんの、ほんの一部だということを。
☆
初めて、そこが違う場所だと気付いたのは。
ある場所で煌めくあの印が、無いと分かった時だった。
やり直した。
やり直して、やり直して、壊して、書き替えて、やり直して、作って、壊して、やり直して、壊して、作って、やり直して、書き替えて、壊して、やり直して、やり直して、壊して、壊して、やり直して、作って、書き替えて、やり直して、壊して、作って、壊して、やり直した。
どれだけやり直しただろう。
何度モンスターとトモダチになっただろう。
何度モンスターを殺しただろう。
何度世界を救っただろう。
何度世界を壊しただろう。
でも、終わりはいつも同じ。
始まりだって、いつも同じ。書き替えても、あの煌めくセーブポイントから元通り。
イビト山から落ちた所で、アズリエルことフラウィと出会った所からやり直し。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もセーブをし、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度もロードしても、変わりはしなかった。
地下世界の住人を皆殺しにし、LOVEとEXPを集め、キャラをよみがえらせた。
神ですらどうしようもない絶望があるなら、悪魔に頼ろうとすることも
善行を積んでも意味が無いと分かれば、悪事に手を染めることもおかしな話じゃ無いだろう。
だが、魂を奪われた。世界が少しだけ変わった。それだけで終わり。
いくらエンディングを迎えても、いくらゲームオーバーを迎えても、変わりはしなかった。
地上と地下世界を隔てる壁などではない。いくら足掻いても壊せない壁がそこにあった。
まるで誰かが作った箱の中で、延々と同じことを繰り返されているかのような気分を、ずっとずっと味合わされ続けた。
自分より強いケツイを持つ者が、この場所にいるのではない。
もしそうなら、セーブポイントを見つけることが出来るはずだから。
だからここはセーブが出来ず、地下世界とは関係ない世界だ。
余程の異常者でない限りは、見ず知らずの者達と殺し合わねばならない世界など、地獄というだろう。
だが、地下世界でないだけ、一度も視界に入れたことが無いというだけで、この世界は天国に見えた。
今までで全く見たことの無い雰囲気の世界、そして、優勝すれば願いを叶えられるという殺し合い。
これは、地下世界からではなく、あの箱庭から脱出できるチャンスだとフリスクは捉えた。
永遠に続く箱庭から解き放たれ、未来へと歩くためだ。
その為ならば、全てを壊す。有限の可能性しかない世界から助け出してくれた者への礼も兼ねて、殺し合いに乗ってやる。
もしも地下世界の住人がいたとしても関係ない、殺す。
助けてくれたさらさらヘアーも殺す。
そして、殺しそびれたあの着ぐるみも殺す。
自分の魂を奪ったあのキャラという緑ストライプも、殺す。
躊躇いなどは無い。何度も殺すうちに、何度もやり直すうちに、そんな物など溝に捨てた。
あるのはむしろ、強敵を決意の果てに殺す達成感と、タチの悪い麻薬のようにそれを求める想い。
勇者となったアンダインを1度もロードせずに倒せるか。最後の廊下で立ちはだかるサンズの攻撃を1度も受けずに倒せるか
かつてのトモダチだった相手も、挑戦する壁ぐらいにしか思えなくなった。
テムの話を聞いた時は、お前が作った世界は、何度も壊されたんだよと嗤いたくなった。
とはいえ、しばらくは彼の仲間のふりをする。
戦いには慣れたつもりだったが、それはあくまで地下世界の中での戦いの話だったと、気づいた。
いくら強い相手でも、攻撃のパターンを読み切れば大したことは無い。
逆に言うと、相手の出方が分からなければ分が悪い。
だから、あの着ぐるみの少年に仕掛けた不意打ちを躱され、逆に追い詰められていた。
この世界には、全ての力を得たアズリエルや、サンズ以上に強い力を持った相手だっていることに、うっすらとだが分かっていた。
それでも、彼は諦めない。
(いつか友達だったフラウィ。君の望みを叶えるのは僕だよ。)
何もかもを壊して。
壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して壊して
その果てに、無限の未来をつかみ取る。
無表情だったフリスクの表情に、不気味な笑顔が受かんだのを、テムは気づかなかった。
【テム@ガイア幻想紀】
[状態]:疲労(小)
[装備]:木の枝@現地調達(テムの姿のとき) 騎士の両手剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(ただしフリーダン変装時のみ)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:とりあえず今はフリスクと共に行動する
1:殺し合いを止める
2:カレン達もこの世界にいるのか?
[備考]
※本編終了後、新たな世界で生まれ変わるまでの間の参戦です。
※闇の間へ行かなくとも、フリーダンやシャドウに変身出来ますが、一定時間経過で解除されます。
【フリスク@undertale】
[状態]:健康 LOVE20
[装備]:自宅の包丁@Endroll
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝してundertaleという物語から自由になる。 手段は択ばない
1. 着ぐるみの少年から離れる
2. テムのような善人を利用する
[備考]
※少なくとも複数回、Nルート、Pルート、Gルート、SPルートのEDを迎えています。
(な、何とか逃げられたけど、一体何だったんでしょうか……。)
後ろからいきなりナイフで切りかかられた。
敵意もなく、ただ邪魔な相手であるかのように。
(オコゲ師匠のもとで特訓しておいて良かったっす。けれど…)
ギリギリで躱せたが、あの少年は下手なバンカーより恐ろしい相手だと思っていた。
動きはそれほど俊敏でもないというのに、攻撃を悉くかわされ、どうにも倒せるビジョンが見えてこなかった。
あの金髪の青年が割って入らなければ、負けていたのは自分だったかもしれないと考える。
(しかし、この場所……あの場所にそっくりっす。)
キャベツが思い出したのは、バンカー同士で大量の禁貨をエサに戦わされ、負けた者から塔の一部になっていく裏バンカーサバイバル。
その時彼は、仲間との蹴落とし合いをするつもりなど全くなかったが、1時間以内に決着をつけねば両方とも失格だと言われ、1対1で仲間と戦わざるを得なくなった。
あの時は膝を屈することになってしまったが、今度こそは殺し合いを止めて見せると意気込む。
(あのシマシマの男の子も気になりますが……コロッケさんや他のバンカーもいるかもしれないっす…。)
真面目さが取り柄の少年は走り出す。今は見えない一筋の光を求めて。
【キャベツ@コロッケ!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針: 殺し合いには乗らない。
1. まずはコロッケや、他のバンカーを探す。
2. 縞模様の服を着た少年(フリスク)に警戒。チャンスがあれば無力化する。
[備考]
※参戦時期はビシソワーズ家との戦いが終わった後です。
【支給品紹介]
騎士の両手剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
テムに支給された銀色で幅広な両手剣。
そこそこの攻撃力を持つが、重たいため盾を使えない欠点を持つ。
自宅の包丁@Endroll
フリスクに支給された包丁。
とある殺人鬼の少年の家にあった、手軽な軽さで振り回しやすく、切れ味もそれなりな包丁。
投下終了です。
投下します。
「どんな願いも叶う……か」
少年がいた。
その少年の瞳は漆黒。
深い深い絶望の果てにたどり着いた。
しかし、漆黒の奥深くには炎が宿っている。
一族の復讐を果たすために全て燃やし尽くそうとする炎を。
少年の名前はサスケ。
木の葉の里の下忍。
「それが、本当ならオレが取るべき道は優勝しかない」
願い。
サスケの願いは一つしかない。
それは、兄であるイタチを殺すこと。
一族を皆殺しにされたサスケにとって、それは絶対叶えなければならない誓い。
「ったく……ウスラトンカチの顔が浮かびやがる」
サスケの脳裏にウスラトンカチことうずまきナルトの顔が張り付いて離れない。
それは、サスケの良心か。
勿論、殺し合いを強要されているこの現状にサスケも思うところがないわけではない。
しかし、ここで自分が死んでしまえば、父と母の無念を晴らすことができない。
また、忍の任務には子守から暗殺まで含まれる。
甘い感情は里を抜けた時に捨てた。
迷いはない。
大蛇丸から海馬乃亜へと手段が変更されただけの事。
「てめーに……オレの何が分かるんだってんだ」
サスケは戦場を走る。
いらつきは今だ収まらず。
【サスケ@NARUTO 】
[状態]:健康 イラつき
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝してイタチを殺す力を得る
1:見つけ次第、参加者を殺す
[備考]
木の葉の里を抜けて大蛇丸の元へ向かっている最中からの参戦です。
―――ス
「なっ!?」
突然。
サスケの目の前に少女が現れた。
それは、本当に唐突であった。
「……」
「俺に何か用か?」
(こいつ……このオレが気配を感じなかっただと?)
言葉と裏腹に冷汗が流れる。
無理もない。
桃地再不斬の無音殺人術(サイレントキリング)並の気配を感じさせない女がいるのだから。
「魂……ちょうだい」
少女は言葉と同時にサスケに鏡を見せる。
「なっ!?」
(しまった!幻術か!?)
―――写輪!!??
(ちっ!間に合う―――)
―――ドクン
「……いくよ」
「……ああ」
歩く少女に付き従うサスケ。
元々、幻術が得意でないサスケにとって、少女は正に天敵であった。
これが、うちはイタチであれば、即座に少女の操る幻術めいたのを解くか逃れたであろう。
もしくは、青年へと成長したサスケならば可能だったであろう。
うちは一族の持つ写輪眼は全ての幻・体・忍術を瞬時に見通し跳ね返す眼力を持つのだから。
しかし、それらは、たらればでしかない。
海馬乃亜によって集められたサスケは青年ではなく少年時代のころ。
しかも、里を捨て、仲間を捨ててまで力を渇望した抜け忍。
たとえ見切れても体が追い付かなければ意味がない。
故に少女から逃れる術はない。
イタチへの憎しみも第七班での思い出も全て失ったサスケ。
行きつく果ての先は如何に。
【神無@犬夜叉】
[状態]:健康
[装備]:引き寄せ鏡@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝して自由を得る
1:サスケを操り、他の参加者を殺す
[備考]
死後からの参戦です。
制限により鏡を使って魂を奪い、操れる人数は一人までです。
【引き寄せ鏡@ドラえもん】
神無に支給された秘密道具の鏡。
この鏡から出る光に当たった人や物は鏡を持っている人の元へ引き寄せられてしまう。
※本来、この秘密道具には魂を奪い、操ることはできないが、神無の妖力により可能となっている。
鏡が割れた場合、魂は戻る。
※他にも妖力により鏡を使った能力が使用できます。
【サスケ@NARUTO】
[状態]:健康 魂を奪われ操られ中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:神無を優勝させる
1:神無に従う
[備考]
木の葉の里を抜けて大蛇丸の元へ向かっている最中からの参戦です。
神無によって魂を奪われ、操られています。
鏡が割れぬ限り、元には戻りません。
投下終了します。
すいません。
ちょっとフリスクの状態表に加筆を
【フリスク@undertale】
[状態]:健康 キャラの干渉度(小) LOVE20
[装備]:自宅の包丁@Endroll
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝してundertaleという物語から自由になる。 手段は択ばない
1. 着ぐるみの少年から離れる
2. テムのような善人を利用する
[備考]
※少なくとも複数回、Nルート、Pルート、Gルート、SPルートのEDを迎えています。
※キャラの精神がいつ、どのように現れるか、あるいはすでに乗っ取られているかは不明です。
投下いたします。
なお私個人としては中学生までならロリとみなしておりますので、その点についてご了承いただければ幸いです。
ここはとある遊園地の中、そこには3人の少女がいた。
一人は金髪縦ロールという髪型にウエストをキュッと締め付けてその豊満なバストを強調するような衣装をまとった魔法少女。
もう一人はセミロングの黒髪を赤いリボンで二つにまとめた、これまた黒を基調としている上に胸元を露出しミニスカートを履いているなど、ある種扇情的な衣装をまとった赤目の少女。
そして最後の一人は毛量が多く横に広がった黒髪のロングヘアをし、この殺し合いに対する恐怖から眉をハの字にした状態で可愛らしい顔を涙や鼻水でぐちゃぐちゃにしている少女だった。
「えっと……話をまとめるとぉ、みなしゃんは異なる世界から呼ばれてきたってことになるんでしゅかぁ?」
「ええ、そうね……二人の話を聞いてみた限りだとあまりにも常識とかが違いすぎるし、こう考えた方が分かりやすいかもしれないって、そう思ったのよ」
その中の一人、『大沼くるみ』は涙顔のまま目の前にいる金髪の魔法少女、『巴マミ』が話した内容について舌ったらずな喋り方でまとめていた。
「……え、ええっと…と、巴マミさん……言いたいことは分かるのですが…すみません……あまりにも突飛な内容なので、ちょっと着いていけていないのですが……すっすみません!」
「いえ、良いのよゆんゆんさん。……実を言うと私もちょっと、話が飛躍しすぎているかもしれないって思ってるのよ…」
そしてこれらの話について赤目の少女、『ゆんゆん』がそのあまりにも突飛な内容に少しだけ反応しつつも、ちょっと言いすぎたかもしれないといった様子で巴マミに対し盛大に謝罪をしていた。
そんな二人を見て苦笑いをしながら金髪の魔法少女こと、マミはフォローを入れつつ自分の発言の内容についても少々反省しているようであった。
ちなみに巴マミは先ほどからずっと泣いているくるみの頭を撫でたりティッシュを渡したりして慰めており、その姿は年上のお姉さんといった様子でとても微笑ましい光景だった。
こんな感じで仲睦まじい様子の子の三人だが、実を言うと今までの話から分かる通り三人ともこの遊園地内でバッタリ出会っただけの関係であり、その中で交流を図っていくうちに三人ともが脱出を目指していることが分かったため一緒に行動するようになったという感じなのである。
なおくるみは巴マミと出会った際に盛大に泣き出してしまい、必死に泣き止ませるのに苦労する羽目になったりし、ゆんゆんに至っては他の二人に対しどう話しかければいいものかを考えながらその背中をじっと見つめ、二人が気づくと勢いよく顔をそむけてしまうせいでいろいろと誤解が生じてしまっていたわけだが……。
そういうわけで、今この状況において三人の少女達の中で一番冷静で頼りになるのは間違いなく巴マミなので彼女をまとめ役として行動を共にすることになったわけである。
勿論ただ冷静でいるだけが理由ではなく単純明快にして明瞭、彼女がこの中でもっとも強いからというのもあった。
もちろんただ単に戦闘力が高いというわけではなく、彼女たちの中では最も長い間命のやり取りをしてきた経験によるものもあった。
それ故にこの三人は巴マミをまとめ役として、この戦いを切り抜けるための仲間を集めるためのチームを結成するに至ったわけである。
……まあそれはそれとして、一見接点などない彼女たちにはある共通点があった。それは……
(それにしても、ゆんゆんさんって……)
(くるみちゃんって……)
(マミしゃんって……)
(((年齢の割に大きな胸をしているなぁ……)))
どれもこれも、子供ばかりが集められたこの催しには不釣り合いなグラマラス体型、というかその胸元に『立派な二つの山』が存在していることだった……。
そんなわけで、このご立派なお山をもった三人の行く先には何が待ち受けているのだろうか……?
【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:健康、変身中
[装備]:巴マミのソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:戦えない人たちを保護したうえで、この殺し合いを止めたい。
2:さやかさんや杏子さんなどの知り合いが来ていないかを確認したい。
3:ゆんゆんさんやくるみさんの知り合いを探す。
[備考]
参戦時期は少なくとも『叛逆の物語』以降。
ソウルジェムは彼女の本体に当たるため、支給品には含まれていません。
【ゆんゆん@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態]:健康
[装備]:だいまほうステッキ@Miitopia
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:脱出するために人を集めたいけど、どうすればいいのか分からないので二人についていく。
2:できるなら二人には自分の友達になってほしい。
[備考]
参戦時期は少なくともカズマたちと知り合って以降。
【大沼くるみ@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、顔じゅうがベトベト
[装備]:―
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:生きて帰りたい。
1:ひ…一人ぼっちでこわかったよぉ〜!
2:自分以外にも、呼ばれているアイドルがいないか心配。
3:ゆんゆんさんを見てると、なんだか他人とは思えない。
[備考]
『支給品紹介』
【グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ】
巴マミに支給。魔法少女がソウルジェムの穢れを浄化するのに必要。
一定の穢れを吸い込むと使えなくなり、使用済みのグリーフシードはキュゥべえが回収するが本ロワでは誰が回収するのかは不明。
【だいまほうステッキ@Miitopia】
ゆんゆんに支給。『まほうつかい』の武器であるステッキの一つであり、レベル26以降から出現する。
燃え盛っているような紋様が付いている上に荒々しくうねっており、また先端にはアメジスト風のクリスタルがついているなど特徴的な外見をしている。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
みなさん、投下ありがとうございます。滅茶苦茶作品来てて、驚きました。
もう完全に私、スレに置いていかれてますね。
>月は東に日は西に
日本一有名な兄貴キャラ、ジャイアンだからこそ、乃亜に恐怖を抱いてしまうのは致し方ないことですね……。
ただ、しっかりした年上キャラと出会えたのはメンタル的には幸いだったかもしれません。
>闘球女、一撃弾子
弾子の闘球気持ちよすぎだろ!
それはさておき、亡き父親に殺し合いを止める宣言をする熱くていいお話ですが
こんな場所に勝手にお墓移された弾平は、とばっちりかもしれません、
>最強の不満
戦いを遊びと考えてしまうのも対主催としてもマーダーとも言い難いですね。
幸いなのは、積極的に殺し回らないことでしょうか。
>天体観測
仲間でも友達でもないが、完全な無関係でも情がない訳でもない。
相手を止めるには動機が足りず、見放すには思い出が多すぎるのかもしれませんね。
切ないながらも、力強い子供たちのお話でした。
>immortal combat
魔神王VSアーカード、ド迫力の殴り合いと濃密な描写が凄い!
魔を狩る剣が魔の王に渡るというのも、面白い皮肉ですね。
そして、人間の強さを信じるアーカードの手に、悪魔にはない人間の力を信じたデビルハンターの二丁拳銃があるのも良いです。
>ヴァンパイア・フロントライン
続きますねえ、吸血鬼話。
やはり同族であっても、それぞれスタンスや人間に対する姿勢が違うのが印象的です。
格下の人間でも、見所があれば敬意を持つレミリアのようなのもいれば、人間の絶対的な敵対者もいるのが面白い所です。
>イッツァ ショータ〜〜イム!
ヴィータちゃん南無。
かつては似非マジシャンとしてイブにぶっ殺された右天君ですが、ここで本物の魔法に触れる事になるとは、復活はしてみるもんですね。
>ピンクとウサギと最初の一歩
思わぬ伏兵だった未央、どっちのアンクも怪力女と縁があるみたいですね。
しかし、ういは見てて不安になるくらい自罰的ですが、ロワ進行に伴いどんどん曇っていきそう。
>紅白の巫女と黒い魔法使い
ナチュラルにマーダーを撃破したククリと梨花ちゃまですが、ルーミアがビビらずガチ戦闘に入れば、卒の梨花ちゃまならともかく、かなり無惨な結果に終わってたかもしれませんね
人は見かけによらないという事でしょうか。
>我を愛する修羅
川から離れて、砂場に行ったのに運命からは逃れられなかったボーちゃん。
でも、ただでは死なずやれる限り足掻いたのは、流石しんちゃんの友達ですね。
>『夢』
たけし、小1とは思えない貫禄と頼もしさがありますね。
対してスイムスイムは、ルーラーへの依存が過ぎる上に、目的が手段になっているのが幼さを感じます。
>人を見た目で判断してはいけない
こっちのボーちゃんは、運命を超えたようですね。イリヤの幸運値のお陰でしょうかね。
藤木君、きみは本当に卑怯だな。
>嵐を呼ぶlust!
流石のコミュ強しんのすけ、見事バッドコミュニケーションを避けましたね。
即効で求められた返答するのは、普通に賢い。
それはさておき、しんちゃんはともかく他のキャラ達と合流した時、ひと悶着起こさず丸く収められるかが、今後に関わっていきそうです。
>諸山が悪いんだぞ
ヌッ!
>ヤンデレの女の子が参加してて眠れないコンペLSロワぎゃーーーっ!
誘拐という言葉は知ってるのに、同じ目に合った相手をやっつけるというのはユニークな発想ですね。
乃亜が目を付けるだけあります。海馬コーポレーションでは、残酷な心を持つ者が有能な人材になるらしいですからね。就職先が決まったようなものでしょう。
>play with blood
こちらも負けじと、基地外双子の片割れの参戦ですね。
早速、脳味噌クチュクチュは飛ばし過ぎですわ。
ワンピース世界の海兵って絶対なりたくないですね。
>暴食と霊能力者
車椅子とは言え、陽神の術という物理攻撃にはほぼ無敵の分身を使えるあゆみは、かなり有利ですね。
とはいえ、相手が悪かったですし、これで居場所がバレないことを祈るばかりです。
>死にたいヤツから、かかっておいでよ
どう考えても、いつもの大乱闘と全然違うんですがそれは……。
>SEED CHILEREN
あっナルトの嫁だ。
後にペインに挑むくらいメンタルが強い彼女ですが、この時期はまだ泣きやすい女の子ですね。
カイルくんも悪気はありませんが、こういうウジウジした子を嫌がるの小学生あるあるですからね。
>一筋の光が無くて
同じことの繰り返しというのは、気が狂いますからね。かつては善人だったはずのフリスクが、こうも歪むのは悲しい話です。
でもテムが知り合いの生まれ変わりかもねって言ってるのを、内心嗤ってるのはちょっと酷いですね。
>神無のピノッキオ
サスケェ……。
>あの素晴らしい山脈に喝采を!
普通にマミさんは映画からなら頼れる先輩ですし、万能なゆんゆんで二つの意味で強いチームですね。
◆L9WpoKNfy2さん、投下作のあの素晴らしい山脈に喝采を!について一つご報告させてください
wikiの仕様がよく分からないんですけど
>(((年齢の割に大きな胸をしているなぁ……)))
ここの一文が収録時におかしくなるので
以下のように、(の間に空白を入れて、改めました。
( ( ( 年齢の割に大きな胸をしているなぁ……) ) )
本編の内容には一切触れておりませんが、念のためご報告させていただきました。
投下します
かはっ。
そんな短い呼吸と共に桃色の髪の少女は、地面に膝をついた。
幼く何を考えているか測りづらい顔立ちとは裏腹に、豊満な体の少女だった。
実年齢不相応な豊かな胸を純白のスクール水着に包み、幼いながら整った顔立ち。
平凡な少年なら目を奪われてしまうかもしれない程の美少女だった。
その手に、物騒な長槍を有していなければ。
その少女の名は本名を坂凪綾名、現在の姿では、魔法少女・スイムスイムと言った。
「無駄だ、その術は俺には通じない」
膝をつくスイムスイムに、冷淡な声が投げかけられる。
「水分身の応用か。全身にチャクラを巡らせて、物質を透過し、物理攻撃を無効化する」
冷厳な態度で目の前にそう告げる少年の名を、木ノ葉隠れの里の忍者、日向ネジと言った。
白を基調とした中華服の様な服に袖を通し、腰まで伸ばし先の方で纏めた長髪と、
白い眼差しとその周囲に浮き上がった血管が特徴的な少年だった。
「お前の術は強力だが無敵じゃない。俺の白眼はお前の全身の点欠を見切る。
そしてチャクラを直接流し込み破壊する柔拳の前には、物理的な絶対性は意味をなさない」
少年の言っている事は殆ど分からなかったが。
自分にとってとても不都合な事実を孕んでいる事だけは、スイムスイムにも理解できた。
先ほど交錯した時は、自分の魔法である『どんなものにも水みたいに潜れるよ』は確かに発動していた。
物質を透過し、物理攻撃を無効化する、一つの絶対防御。
事実、自分の槍の一撃を躱してカウンターで入れられた少年の指先自体はすり抜けていた筈なのだ。
にも拘らず、自分は思わず膝をつくほどのダメージを追っている。
ほんの一合の、短い交錯によって。
「……!」
スイムスイムは握る長槍──ルーラを視点に立ちあがり、ぴたりと少年に狙いをつけた。
先ほど自分の魔法を少年がどんな絡繰りで破ったのかは分からない。
だが、魔法少女と身体能力で渡り合う少年はそもそもが異常だ。
例えプロの格闘家であっても、膂力や速度で魔法少女に敵う筈もないのに。
本人の言っている事が真実かは確証がないが。
あの目で此方の自分の動きを見切り、そして魔法を破るからくりもやはりあの目にあるのだろう。
「………ッ!!」
そんな少年の目に対して、スイムスイムが選んだのは直線での吶喊だった。
やけになったのではない。実に単純だが槍のリーチ差がある故に有効な一手だった。
先ほど自分が不覚を取ったのはルーラの穂先で斬撃を選んだからだ。
刀身を相手に合わせ、振りあげ、振り下ろすという三工程が必要だったために懐に入られた。
これならば、既に照準を合わせている以上一手で済む。
そして、反応速度と体捌きでは相手の方が上でも、膂力と耐久力なら此方の方が上の筈。
反撃を受けたとしても、無手の相手とルーラを持つ自分では攻撃力は比べ物にならない。
肉を切らせても骨を断つ。そう言う心算だった。
「無駄だ」
そんなスイムスイムに対し、少年は全てを見透かす様な声と双眸で。
上体を沈め、構えを取る。
激突までの時間は瞬きよりも短いほんの一瞬。
その僅かな時間で、彼の防御術は始動する。
「………ッ!?」
驚愕が、スイムスイムを包む。
何故なら突撃の直後、ルーラを握っていた自分が、無手の敵に弾き飛ばされたからだ。
風車に騎乗突撃を仕掛けたドン・キホーテの様に。
まるで、小型の竜巻に突撃したような手ごたえだった。
刃が届こうという瞬間、少年の全身から何かが放出され…彼女が分かったのはそこまでだった。
気が付けばこうして突撃ははじき返され、ルーラも取り落としてしまった。
「日向は木ノ葉にて最強……覚えておけ」
少女がとり落としたルーラを拾い上げながら、ネジは厳然とした態度でそう宣言した。
彼が行ったのは、日向一族に伝わる防御術だった。
接敵の瞬間に全身のチャクラ穴からチャクラを放出し、体を独楽のように回転させる。
そして放出されたチャクラの防御壁と回転の遠心力による運動エネルギーによってルーラの一撃をいなしてはじき返したのだ。
本来チャクラ穴から放出されるチャクラはコントロールが難しく、上忍でも手や足などの体の一部から放出するのがやっとだ。
それ故に、この『八卦掌回転』は柔拳を極めた日向一族の者のみが可能となる戦技だった。
「………!」
防御を破られ、武器も奪われた以上、最早勝ち目は乏しい。
そう判断したスイムスイムが次に行おうとしたのは、撤退だった。
魔法を用いて地面に潜航し、撤退する。彼女の常套手段。
だが──この時、彼女の魔法は発動できなかった。
腹部から下が、液体化できないのだ。
それは先ほど少年から攻撃を受けた場所だった。
「止めておけ…点欠をついた以上、そこのチャクラは暫く練れない。
無理に術を使って地面に潜れば抜け出せなくなるぞ」
スイムスイムの次なる一手は、ネジにとっては予測するのはそう難しくない事だった。
防御と武器を奪われた以上、これ以上の戦闘は困難と判断するはず。
となれば、体を水分身のように液状化させることができる相手の逃走手段は一つしかない。
それを読んだがゆえに、腹部から下腹部に連なる丁度中継点となる点欠を突いたのだ。
「さて……何故こんなバカげたゲームに乗ったのか教えてもらおうか。
突然拉致して爆弾付きの首輪を嵌めてくるような相手が、
優勝したからと言って素直に元の居場所に帰してくれると思うのか?」
「……………」
「だんまりだと直ぐに続きを始める事になるが…その方がお前にとっては都合が悪いんじゃないのか」
僅かな沈黙の後、スイムスイムは口を開いた。
素直に命令に従ったのではない、反撃の手段を考える時間が欲しかったからだ。
何しろ、ファヴというマスコットが仕組んだマジカルキャンディー争奪戦においても。
魔法を用いた逃走すら封じられるのは彼女にとって完全に想定外の話だったからだ。
隠しておくメリットも現時点ではないに等しい。
故に彼女はゆっくりと語り出した。仲間にもほとんど話していない、彼女の目標…夢の話を。
ルーラに…彼女が考える、一番のお姫様になるという幼い夢の話を。
「そうか」
態々聞き出したというのに、当のネジの反応は実に淡白な物だった。
時間稼ぎが目的なので仕方ないとは言え、スイムスイムはほんの少しだけムッとした。
彼女は、目の前の少年の見透かす様な瞳があまり好きになれなかった。
「二つ、聞いていいか」
腕を組み、その実隙のない所作と距離を保ちながら、ネジは短く尋ねる。
「この殺し合いに優勝して、本当にお前の言うルーラになれると思っているのか」
「…………?」
「お前のいうお姫様になるという最終目標に、この殺し合いに優勝する道が続いていると本気で思うのか、と聞いているんだ」
質問の意味が、よく分からなかった。
だって、ルーラもこうしていた。
こうして、スノーホワイトやラ・ピュセルの様な他の魔法少女を蹴落としていくのが賢いやり口だと、常々言っていた。
だから、自分もそれに倣った。それに倣って、他の魔法少女を蹴落としていった。
自分のチームの魔法少女、自分の命を救ってくれた子ですら手にかけた。
だから、このやり方が間違っているはずなんて、ない。
「もう一つ、重ねて聞くが…お前、ルーラとやらをどうした」
「…………」
「………殺したんだな」
無言で頷くスイムスイムを見て、ネジは心中でやはりか、と思った。
彼の白眼はルーラという人物を語る際のスイムスイムの瞳に込められた濁った狂気を見逃していなかった。
そして殺し合いに招かれてから、この僅かな時間で優勝を狙うというスタンスを定め、実際に行動に移した歪んだ行動力から類推するのは難しい事ではなかった。
「…成程な。それじゃあさっきの問いの聞き方を変えよう。
お前の言うルーラは、言いなりになって座った一人きりの玉座を良しとする女だったのか」
「……………」
「お前の目指しているお姫様は、爆弾付きの首輪に繋がれて、
あの海馬乃亜に従って奴隷のように殺しをする者の事を言うのか、と言っているんだ」
「────!」
ネジの問いかけは、本当に珍しい事に、スイムスイムの感情を引き出した。
尤も、それは怒りに近い物だったが。
だがそれでも、スイムスイムは元来素直な子供だった。
素直さ故に、凶行に手を染めたともいえる少女だった。
その為、想像してしまったのだ。
ルーラの変わりに玉座に座ったのに、首輪を嵌められて、命を握られている自分の姿を。
何だかそれは、自身の想像するお姫様とはとてもかけ離れている気がした。
首輪が似合うのはルーラではなく、たまの方だ。
…たま。その二文字を想起すると、彼女を殺した日の事が同時に浮かび上がってくる。
お姫様に近づいたのに、なぜかその日は達成感と言う物は欠片も無くて。
自分以外一人だけとなり、荒涼とした仲間との寄合所であった廃寺。
それを見て、こめかみが疼くような、仄かな痛みを覚えたのは覚えている。
あぁ、あれは、思えば。
とても、嫌だったかもしれない。
けれど、それでも。
「………私にとって、この道は」
それでも、ルーラはこうしていた。
彼女は、誰かを蹴落として、女王になる道を選んだ。
だから、自分もそれに従おう。
そうしなければ、ルーラから遠ざかってしまうから。
俯き、屈んで。
一拍の呼吸を置いてから、彼女は宣言した。
「ルーラに続いている」
それは明確な拒絶の言葉だった。
だから、殺し合いを辞めるつもりは無い。彼女はそうはっきりと言ったのだ。
対するネジの返答は、相も変わらず「そうか」と淡白な物だった。
「ナルトなら…お前に何て言ったのかな」
そう続けて、彼は皮肉気にふっと笑って。
そして、構えを取った。
一度腹を決めれば、相手を殺すことに躊躇は無い。
それが忍の世界だった。
「お前の目標について是非を問うつもりは無い…だが、俺も背負ってるものがあるんだよ」
───運命がどーとか、何時までも下らねぇ事でめそめそ言ってんじゃねーよ。
───お前は、俺とは違って落ちこぼれじゃねーんだから。
蘇るのは、自分が初めて敗北した日のこと。
天才と呼ばれていた自分を破った、落ちこぼれの言葉だった。
きっと、あの頃の自分なら目の前の少女と同じく、殺し合いに乗っていただろう。
そういう運命だったのだと、従っただろう。
だが、あの男からあの言葉を掛けられたあの日から、簡単に運命に従う日々は終わったのだ。
「来い」
ゆらりと立ち上がるスイムスイムの姿を睨み、あくまで冷徹な態度でネジは言う。
この白眼はある限り、スイムスイムは逃げられない。
そして、液状化能力を用いた逃走ももう暫くは使えない。
となれば、自分を倒して逃げ延びる以外に、彼女に道はなく。
「───!」
スイムスイムが駆けだすと同時に。
三度目の衝突が幕を開ける。
ネジはまずスイムスイムの手元を確認し、武器を隠し持っていない事を確認した。
無手ならば何も問題は無い。
白眼の動体視力と幼少期からの鍛練で身に着けた体捌きであれば、目の前の少女の先手を確実に取れる。
冷静に、客観的な事実としてそう判断した。
彼我の距離が三メートルを切り、スイムスイムがネジの制空圏に入る。
「何───!」
その瞬間の事だった。
スイムスイムはお互いの手が届こうかと言う至近距離で突然飛びのいたのだ。
その際彼女のたわわに実った胸が大きく揺れるが、気にしている暇はなかった。
何故なら──ネジの眼前に、突然手りゅう弾が現れたからだ。
(そうか、こいつ上半身に格納して──!)
魔法は使用者の認識に合わせて変化する。
スイムスイムが問答をしている間に思いついたのは、『どんなものにも水みたいに潜れるよ』の応用だ。
点欠を突かれた(といっても点欠が何かを彼女は知らないが)魔法が使えない下半身。
それはつまり、上半身ならば魔法の行使が可能という事だ。
その為、普通に投げてはあの回転で弾かれてしまう爆弾を、突撃の前に俯いた際液状化した体内に格納した。
ルーラの様な長ものでは無理だっただろう。だが、掌サイズの爆弾であればすっぽりとおさまった。
それを今、突撃に合わせて体外へ排出したのである。
そんな魔法の使用方法今迄殆ど経験がなかったし、体内に格納した爆弾が透けてしまうのではという懸念もあったが、透明人間は臓物までも透明という事らしい。
もし失敗すれば体内で爆弾が爆発するという文字通りの自爆になってしまう非常にリスキーな一手であったが、結果は見事虚をつく一手となった。
少年は回転を行おうとするが既に間に合わない。
今迄此方の全てを見透かす様な目をしていた彼の瞳に浮かんだ焦りを眺めながら──スイムスイムは全力で身を翻す。
その直後、背後で爆発音が響いた。
■
「……逃げられたか」
白眼に驕り、最後はあの少女に出し抜かれる結末となった。
やはり自分は天才に程遠い事を認識させられる。
そんな凡小な自分が、未知の力を持つ乃亜に何処まで抗えるものか。
考えざるを得なかった。
──フン。捕まった鳥だって、賢くなりゃ自分で籠の蓋を開けようとするモンだ。
──もう一度空を飛びたいと、諦めずにな。
「……そうだな」
きっとナルトであれば、運命に抗う道を選ぶのだろう、そう考えた。
可能かどうか、どれだけ困難かなんて問題にせずに。
だから自分も、少しだけ火影を目指すあの騒がしい男の道をなぞってみようと思った。
運命なんて誰かが決める物じゃない。
それだけはきっと、この世界でも確かな事だと信じて。
【日向ネジ@NARUTO-少年編-】
[状態]:ダメージ(小)、チャクラ消費(小)
[装備]:ルーラ@魔法少女育成計画
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いを止める。
1:協力できる人間を探す。首輪のサンプルを手に入れ、白眼で確認してみたい。
2: スイムスイムは次に会ったら確実に止める。殺害も辞さない。
[備考]
参戦時期は原作二十巻。サスケ奪還編直前より参戦です。
はぁ、はぁと豊かな胸を上下させて、一息つく。
手ごわい少年だった。正面から戦うべき相手ではなかった。
最後の一手も、殆ど大博打のそれだった。
ルーラ…武器も失ってしまったのは痛手だった。
これからは、積極的に他の参加者を襲うのは控えた方がいいかもしれない。
例えそれが魔法少女でもない男の子が相手でも、だ。
──お前の目指しているお姫様は、爆弾付きの首輪に繋がれて、
──あの海馬乃亜に従って奴隷のように殺しをする者の事を言うのか、と言っているんだ。
もう姿は見えなくなったはずなのに。
あの少年の声が、頭の中で木霊する。
考えない。考えはしない。思考の無駄だ。
この道は、ルーラへの道に続いているはずなのだから。
でなければ、自分はとんでもない間違いをしてしまったのではないか。
ルーラは間違いなんてしないのに。そう考えてしまいそうだったから。
無理やりに思考を打ち切って、とぼとぼとまた歩き始める。
──ナルトなら…お前に何て言ったのかな。
もう一つ、脳裏によみがえる声。
あの少年の仲間らしいナルト、という名前。
彼と同じくらいの年齢なら、この会場にいるかもしれない。
会いたい、と言うわけではないが。
スイムスイムは無意識のうちにその名前を小さく口ずさんだ。
【スイムスイム@魔法少女育成計画】
[状態]:ダメージ(小)、点欠被弾
[装備]:マジカルフォン
[道具]:基本支給品、M26手榴弾×3、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに優勝してルーラになる
1:優勝する為に動く。今は武器が無いので、慎重に。
2:本当に優勝すればお姫様になれる…?
[備考]
原作一巻、たま殺害後から参戦です。
点欠を突かれたため小一時間程魔法の行使の影響がありますが、時間経過で自然に影響は解除されます。
投下終了です
投下します。
たったひとつ前提が変わるだけで、価値と無価値は容易に反転する。俺はそれを何度も目にしてきた。分かっていたはずだったんだ。計画していたことが必ずうまくいくわけではないのだと。
「ふざけんなッ……! 殺し合いって何だよ! こんなの……こんなのッ、予想できるわけないだろォ!!」
カブール人の少年、ルークは声高に叫んだ。
「何がどんな願いでも叶えるだ……。返せよ……俺の願いを……ッ!」
願いってやつの重さを俺は知ってるよ。人間が、願いのためなら命まで賭けられるって、とっくに思い知ってる。だから、この催しが理不尽なばかりではないってのも分かる。何人が参加させられているかは分からねえけど、願いの対価としては充分に釣り合っているんだろうさ。
だけど俺は……カブール人奴隷の解放って願いを、もうすぐ叶えられるとこだったんだぜ!? 真・ハイパーノートを貯め込んで、ヴィクトニア帝国に最後の商談を持ちかけに行くところに、突然こんな催しに呼ばれたんだ。
とっくに真・ハイパーノートはばら撒いている。賽は投げられたんだ。あとは俺が特務省に乗り込んで、最後の仕上げをするだけで良かったのに……ッ!!
「返せよォォォォォ……ッ!!!!!」
夜風に乗せて、ルークの叫びが木霊する。
それは、怒りだ。願いを提示されながらも、理不尽に願いを奪われた少年の怒りだ。
願いはすでに、手の届くところにあった。人が人を喪わさずとも、皆が利益を得ながらにして、獲得できるものであった。
だが、自分が音信不通になれば、真・ハイパーノートをばら撒く算段になっている。ただしそれはただの報復措置でしかなく、商談の失敗を意味するものに他ならない。このような殺し合いに招かれて多大なタイムロスが発生した地点で、もう商談を成立させることは不可能だ。
では、殺し合いに勝ち残ることによって願うか?
――論外だ。
殺し合い――たとえそれが願いを叶えるひとつの方法であろうとも、ルークの流儀とは相容れない。同じ星に生まれた人間同士が、何故願いの権利を奪い合わねばならないのか。
だから俺は、商売を始めたんだ。
両親を奪った戦争も、強者が弱者の幸せを一方的に蹂躙する奴隷制も、大嫌いだから。
カブール人からは奪うより対等に取引した方が得だと知らしめるため。人としての尊厳を、奪われないために。
殺し合いはその信念に真っ向から反している。
なればこそ、ルークは叫んでいるのだ。
「……って、俺の馬鹿! 殺し合いの会場でこんな大声出したら見つかっちゃうよ!」
しかし、叫ばなければよかった。
本来はさほど感情的ではないルークであったが、殺し合いに招かれたタイミングが悪すぎた。
勝利を確信していた時に起こったハプニングに対する動揺。商談に向けて"力"を温存していたが故に、"力"の使用後のような頭の冴えがなかった点。その計画に失敗し、帝国軍を動かせなければ、ハル姉の奪還の失敗に直結するという事実に対する焦燥。
その何もかもが、ルークに直情的な行動を起こさせるに値する不運だ。
そして、不運は連鎖する。
「グルルル……グルァッ!」
出ずるは、茂みの影に隠れて気配を消しながら、ルークへと跳躍するひとつの影。鋭い爪を尖らせた魔物が、その矛先をルークの眼前へと振り下ろす。
「う、うわぁ!? やっぱり〜〜!」
身を捩らせて回避するには、気付くのがあまりにも遅すぎた。その爪先はルークの顔面を捉え、即座に脳漿を引き摺り出す――そのはずであった。
「……ッ!! 危ねぇ!!」
襲撃者の爪先はルークの眼前数センチ地点で静止する。襲撃者が自らその手を止めたのではない。幾重にも重なった"紙幣"が盾となって、その攻撃を止めていた。
――その力は、欲望であった。
願いを、生きる理由を求める、人の果てしない欲望。
カブール人を下に見ている帝国のヤツらも、奴隷商人共も、あらゆる人と対等に渡り合うため――少年は、望んだ。
――もっと。もっとカネを! 世界を買えるだけのカネをよこせッ!
かくして、カブール神より力は与えられた。全身のあらゆる箇所からヴィクトニア帝国の通貨として用いられる紙幣、1万ベルク札を出せる力。
全ての紙幣番号が同じという力の欠点も、幾重にも重ねることで盾として用いるのなら関係ない。一枚一枚はただの紙であっても、並の辞書数冊分の厚みを前に、貫通を諦めた襲撃者は一歩後ずさる。重力に任せてベルク札は地に落ち、次第に眼前の襲撃者の姿が露わになっていく。
「って……猫?」
「グルル……」
そこに佇むのは、子猫と形容するのが最も相応しいであろう四足歩行の獣であった。しかし貫かれたベルク札の枚数は、有する殺傷力が愛玩動物のそれではないことを物語っている。
「……首輪がある。コイツも参加者なのか!?」
子猫が身に付けている首輪は、自分が装着されたものと同じもの。つまり、殺し合わなくてはならない相手だ。
戦わずして得られる願いは無いととうに理解している。たくさんの敵対者、協力してくれたカブール人たち、そしてクルツさんの犠牲の上に、自分の願いは存在している。死にたくない、殺したくないという臆病さは、彼らの屍に唾を吐く言葉に他ならない。
だが、仮にも奴隷解放を主目的として戦っているのだ。無理やり集められた参加者同士の殺し合いという、まさしく剣奴の真似事と言えるようなことに手を染めようとは思わない。
(……でも凶暴な殺人猫ならギリセーフとも思えちまう! こんなの正当防衛だろ〜〜〜!)
何せ現在進行形で、子猫の追撃がルークへと迫っている。それを捌くのにも力を持続的に使わなくてはならない。
真・ハイパーノートを作るために毎日限界までカネを出していることで、一日に可能な排出量が増えたとはいえ、決して無尽蔵ではない。特に、戦いの中で攻撃・防御に用いようとすれば相当の枚数を要することになる。このままジリ貧に追い込まれれば、いずれは限界がくるし、仮にその前に撃退したとしても力を消耗すれば他参加者に殺されるリスクが高まる。
(仕方ねえ! 札束ビンタでぶっ飛ばすしか……ごめんよっ!)
……と、反撃の一手を繰り出そうとしたその時。
子猫はふと、追撃にかける足を止めた。そこで直ちに背を向けるほど油断するではないが、振りかぶっていた攻撃の手を止めるルーク。
子猫は、苦しそうな表情を見せている。冷や汗を流しながら歯を食いしばり、大地を踏みしめている。
(俺は……この状態を知ってる……!)
それは、我慢している表情だ。身体の奥から込み上げてくる本能を、気合いで抑えている時の様子に似ていた。
(この子猫も、本当は戦いたくないのか……? 分からねえけど……ッ!)
そして、知っている。
この状態は長くは持たない。ほんの少しの刺激で爆発し、本能がいっぱい溢れ出ちゃうのだ。
(ほっとくのも可哀想だが……逃げるなら今しかっ!)
苦しむ子猫の唸り声を背に、ルークは走り出した。
■
『――チロル。』
僕の名を呼ぶあの子の優しい声が、まるで残響のように聞こえてくる。雪原や森を一緒に駆け回ったあの思い出も、一緒に魔物を懲らしめたあの思い出も、まだ僕の中に残っている。
いじめられていた僕を助けてくれたあの子たちは、楽しそうに笑っていた。
あの子と一緒にいると、胸のずっとずっと奥がすごくあたたかいんだ。僕はあの場所が大好きだった。こんないつもが、ずうっと続いていけばいいのに――
――そんな願いは、叶わなかった。
悪意に脅かされた平穏。あの子を護っていた父の背中は火球の中に消えて、あの子たちはどこか遠くへと連れて行かれた。
その場に残っていたのは、絶対に離したくない居場所だったのに、喰らいつくこともできない、無力な僕だけ。
……また、あの子に会いたい。願いを抱いて飛び出した先には、広大な世界が広がっていた。地平線の彼方まで続く草原も、僕には渡れない海も、僕一人じゃ入ることのできない人間の町も。どこに連れて行かれたのかもわからないあの子を取り戻すのはあまりにも果てしない道だと理解するのに、時間は要さなかった。
それでも諦めなければ、いつかはあの子のところに辿り着けるかもしれない。だから、頑張ろう。あの子が僕を助けてくれたように、今度は僕があの子を助けるんだ!
決意と共にふと顔を上げてみれば、視線の先には知らない旅人が歩いていた。道行く人に元気に挨拶をしていたあの子の顔が思い浮かんだ。そしてそんな彼がいない現状にふと、虚しさを感じた。
それだけなら、良かったのに。魔物の僕が旅人の前に出ていけば、怖がらせてしまうかもしれないし、襲われるかもしれない。だから、何事も無かったかのように僕が立ち去れば、それで全てが丸く収まる。それなら良かったはずなんだ。
でもその時、僕は自覚してしまった。
それは、満たされなければ死んでしまう欲望だった。
それは、あの子がごはんをくれていた時は、抱く必要のない渇望だった。
それは、もうあの子と一緒にいられなくなることを意味する衝動だった。
それは――どうしようもなく、本能だった。
――おなかが、すいたなあ。
……ダメだっ!!
僕は走った。平原をUターンし、あの子の父親の亡骸のある洞窟へと走った。
この衝動に従ってしまえば、あの旅人を"こうげき"してしまうと察したから。一度、その一線を超えてしまったら僕は……果たして僕は……まだ"子猫"でいられるのだろうか。あの子と一緒に遊んでもいいと、思えるのだろうか。
あの子の存在が、僕の中で段々と希薄になっていくと感じた。残響が、空腹の苦しみの中に溶けていく。
(嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ!! 僕は人間を食べたくなんかない!!)
そして――僕は願った。
霞んでほしくない。無くなってほしくない。
その一心で、あの子の父親――パパスの遺骸の中から、あの剣を取り出した。
どうか、いなくならないで。
この剣に残る温かさが、あの子をつなぎ止めてくれますように。
もし誰かを襲いそうになってしまったら、この剣の冷たさを思い出そう。パパスを亡くしたあの瞬間の胸の苦しみは、空腹の苦しみなんかよりもずっとずっと締め付けた。
いつか、あの子にこの剣を渡すことができるその瞬間まで――僕が僕でいられますように。
■
(……かえして。あの剣を、かえして。)
この殺し合いに招かれた時、チロルが数年にわたって大切に持ち続けていたパパスの剣は没収されていた。そして同時に――何かが砕け散る音がした気がした。
人と共に生きてきたが人と切り離された魔物の、最後の理性を繋ぎ止めていた剣。本来の歴史では、チロルは人に害なす魔獣と化してもなお、あくまで作物を荒らすに留まり、人を喰らうという一線だけは超えることがなかった。
だが、この殺し合いに招かれ、理性の拠り所を失ったことによって、最後のひと押しが与えられてしまった。
――ヒト、タベタイ。
ベビーパンサー。それは『地獄の殺し屋』と呼ばれる魔物、キラーパンサーの幼体である。殺し合いが開始してまもなくルークに対して見せた躊躇――それが、野生に帰った魔物が最後に残していた理性であった。
そう、これは願いを掴み取るための戦いではない。本来であれば叶っていたであろう願いを、彼らは失ってしまったのだから。
【ルーク@ハイパーインフレーション】
[状態]:力の使用(50万ベルク)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗らないことを前提に、今後の方針を立てる。
1:商談のチャンス、終わっちゃうだろぉ!
[備考]
原作54話、特務省に乗り込む直前からの参戦です。
【チロル@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
[状態]:健康
[装備]:猫の手@ONE PIECE
[道具]:ランダム支給品0〜2(※基本支給品は、食料を食べて遺棄しました。)
[思考・状況]基本行動方針:本能のまま、人を襲う
1:……。
[備考]
主人公と別れた数年後、キラーパンサーに成長する前からの参戦です。
【支給品紹介】
【猫の手@ONE PIECE】
キャプテン・クロが身に付けている鉤爪。
以上で投下を終了します。
感想ありがとうございます!
投下します。
「悪い事しちゃうぴょ〜」
【ピョコラ=アナローグⅢ世@デ・ジ・キャラット】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:わるいことをする
1:ぴよこ、やるぴょ〜!
2:でじこお姉ちゃん、いるぴょ?
[備考]
令和のデ・ジ・キャラット3話後からの参戦です。
投下終了します。
投下します
「まさか今さら、ランドセルを使うことになるとはね……。
まあ殺し合いに放り込まれたのに比べれば、些細なことだけど」
とある民家の今で、一人の少年がそう呟きながらランドセルの中身を確認していた。
彼の名は、千葉秀夫。
外見は明らかに小学生程度の少年だが、実年齢はそうではない。
かつて彼は不老不死を研究する父親により、老いぬ体へと改造された。
そして少年の姿のまま、50年以上の時を生きてきたのだ。
(ドライバーとメモリはないか……。
まあ使わせたくないのもわかる)
普段の彼が使用している変身アイテムである「ガイアドライバーrex」と「ブラキオサウルスメモリ」は、荷物の中にはなかった。
秀夫には、その理由がある程度想像できていた。
彼が変身するブラキオサウルスドーパントは本物の恐竜さながらの巨体を持ち、
さらに自分の操り人形である戦闘員「ボーンズ」を無尽蔵に生み出すことができる。
どちらの特徴も、不特定多数の殺し合いという状況では非常に強いアドバンテージとなる。
ゆえに参加者の公平性を著しく損なうと判断され、支給されなかったのだろう。
(で、代わりがこれか……)
秀夫が取り出したのは、円形の窪みが三つ空いた長方形の物体。
そしてその窪みにすっぽりはまりそうな、3枚のメダルだ。
メダルの表面にはそれぞれ、プテラノドン、トリケラトプス、ティラノサウルスという古代生物のスーパースターが描かれている。
(オーズドライバー……。仮面ライダーオーズの変身アイテム……。
万灯さんの持ってた資料で見たことがあるな。
NEVER襲撃の際に現れ、Wに協力した仮面ライダー……)
記憶を呼び起こしながら、秀夫はドライバーを腰に当てる。
(ぶっつけ本番というのも怖いし、まずはどんな感じか試してみるか)
腰に固定されたドライバーに、秀夫は1枚ずつメダルをセットしていった。
そして、付属していたスキャナーをかざす。
『プテラ! トリケラ! ティラノ!
プットッティラノザウルゥゥゥゥゥス!』
ハイテンションな音声が流れると、秀夫の体が紫を基調とした装甲に包まれる。
これが仮面ライダーオーズ・プトティラコンボである。
「ぐっ……うあああああ!!」
変身が完了した直後、秀夫の口から苦悶の声が漏れる。
流れ込む衝動が、彼自身の意思を塗りつぶしていく。
全てを破壊したくてたまらなくなる。
「グウッ!」
意識が完全に支配される前に、秀夫はなんとかメダルをドライバーから引き抜く。
装甲は霧散し、再び生身の秀夫の姿があらわになった。
「はあ、はあ……」
大粒の汗をかきながら、秀夫はその場に尻餅をつく。
「なんだ、これは……。
全力で抵抗し続けないと、意識を持って行かれる……。
こんなものが本当に、仮面ライダーの力なのか?」
おのれの知る「仮面ライダー」とは似ても似つかぬ力に、秀夫は困惑を隠せない。
「これは本当に、後がなくなった時用だな……。
軽々しく使えるものじゃない」
秀夫はドライバーとメダルをランドセルに戻し、代わりに拳銃を取り出す。
「僕とて、生身で戦えないわけじゃない。
普段はこっちに頼るか。
願いを叶えるなんて戯れ言に興味は無いが……この程度のアクシデントも乗り越えられないようじゃ、
裏風都の幹部として面子が立たないよな」
秀夫は、乃亜の願いを叶えるという発言を信じてはいない。
彼にとってこの殺し合いは、「巻き込まれてしまったトラブルを片付ける」という認識でしかない。
「さて、サクサクいこうか……」
淡々と呟くと、秀夫はランドセルを背負って民家を後にした。
【千葉秀夫@風都探偵】
[状態]精神的消耗(小)
[装備]トカレフ@現実(残弾50)
[道具]基本支給品、オーズドライバー&コアメダル(プテラ、トリケラ、ティラノ)@仮面ライダーOOO
ランダム支給品0〜1(変身アイテムではない)
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
1:オーズドライバーは、できる限り使わない
[備考]
※参戦時期は単行本12巻終了後
【オーズドライバー&コアメダル(プテラ、トリケラ、ティラノ)@仮面ライダーOOO】
1セットで一つの支給品扱い。
仮面ライダーオーズの変身ベルトと、恐竜の力を宿した紫のメダルのセット。
このメダルで変身できるプトティラコンボは絶大な力を持つ代わりに、強靱な意志がなければ破壊衝動に飲み込まれ暴走してしまう。
投下終了です
誠に申し訳ございませんが、自作(>>320-322 )のタイトルにスペルミスがありましたので、修正をさせて下さい
(違)SEED CHILEREN になっておりましたが
(正)SEED CHILDREN です
ご迷惑をおかけしますが、Wiki内の修正をよろしくお願い致します
投下いたします。
ここはバトルロワイアルの会場、その街道を異形の少女が歩いていた。
その少女は人類の英知がいまだ及ばぬ深海という世界から襲来した生物であった。
そしてその頭部は幾何学的形状をした先端部を持っておりそこから分岐した十本の触手を持ち、それぞれが独立した生物であるかのような動きをしていた。
またときおり、人間であれば口腔に当たるであろう部位からどす黒く生臭い液体を分泌しているのだ。
更にはその胴体は驚くほど人間の少女に酷似している上に白い薄布のようなものを羽織り、腕には青く透き通った腕輪と足には靴のようなものまで着用しているというものだった。
果てにはその手には鋭い銛を射出するための小型の大砲を握っているなど、それらすべてが高い知能を誇っている生物であることを如実に表していた。
その生物は自らの住処である海を穢す無知蒙昧な人類たちに裁きを下すべく、彼らが住む地上を侵略しに現れた存在であった。
その経緯からわかる通り、この催しに呼ばれたこの生物の目的もまた人類の支配にあり、そのためにこの催しで優勝する目論見であった。
それらの冒涜的な姿と筆舌に尽くしがたき知性を持つ、この名状しがたき生物は……
「さあ、千鶴のいないこの場所なら私の天下でゲソ!絶対に最後まで生き残って、人類を侵略して見せようじゃなイカ!」
"イカ娘"という名であった。
【イカ娘@侵略!イカ娘】
[状態]:健康
[装備]:ハープーン(Harpoon)@テラリア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:生き残って、地上の総てを侵略し尽くすでゲソ!
1:とにもかくにも、最後まで生き残って見せるでゲソ!
[備考]
『支給品紹介』
【ハープーン(Harpoon)@テラリア】
鎖で繋がった銛(モリ)を撃ちだす、弾薬を使用しない銃。
発射された銛は何かに命中するか一定距離まで行くと自動で戻ってくる仕様のため弾数制限はないが、戻ってくるまで再発射できないという弱点がある。
投下終了です。
また >>346 (◆lvwRe7eMQE) さん、wikiへの掲載についてご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
以上、ありがとうございました。
投下します。
─3番目アリスは幼い子 綺麗な姿で不思議の国
色んな人を惑わせて おかしな国を作り上げた
そんなアリスは国の女王 歪な夢に取り憑かれて 朽ちゆく体に怯えながら
国の頂点に君臨する
♣
「おい、大丈夫か!?」
『3番目アリス』と呼ばれる少女が会場の中で目覚めると、見知らぬ少年に声をかけられていた。
「お前は殺し合いなんっか、しなくていい! オレがイジメる奴らから守ってやるからな!」
少年はそう言うとそのまま少女をお姫様抱っこし出す。
♣
(こんな幼い子供たちを巻き込むなんて…)
『3番目アリス』を抱える少女の名前は『金田 勝(かねだ まさる)』。
妖怪等の怪異が潜み、様々な事件の引き起こす世界にすむ人間の少年だ。
そんな彼も通っていた小学校で他の生徒をいじめていたのだが、ふとした切っ掛けで同じ学校に通う女子生徒の木下あゆみと仲良くなり、彼女を守ると誓ったこともあった。
そんな彼だからこそ、目の前にいる初対面の少女を何とかしてでも守らなければならないという感情を抱いていた。
─不思議の国で死を迎えようとしていた、一人の少女を。
【3番目アリス@絵本『人柱アリス』】
[状態]:『朽ちゆく体』
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:死にたくない。
1:あなた(金田勝)は誰?本当に守ってくれるの…?
[備考]
※参戦時期は不思議の国で女王に即位し、『朽ちゆく体』に怯えている頃。
【金田勝@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:抱えている少女(3番目アリス)をなんとしてでも守る。
2:知り合い(特に木下あゆみ)が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は漫画無印83話以降。
投下終了です。
皆さん投下ありがとうございます。
わたしも投下します。感想はまた後日に投下させていただきます。
「どうなってるんだよ……子供同士で殺し合いなんて、おかしいじゃないか!」
眼鏡を掛けた聡明そうな少年、あくまで聡明そうなだけで、実はそこまででもない中島は狼狽していた。
いつものように、学校終わりに磯野カツオと野球をしようと、これまたいつもの空き地に向かっていた時だ。
急に意識が飛び、気付いたら時刻は深夜になっていて、しかも妙な少年に殺し合いを要求されていた。
まるで出来の悪いB級映画のような突拍子のなさだが、どうにも現実に今起きている事らしい。
「うわっまだ参加者名簿が見れないじゃないか!」
とにかく知り合いを探そうとタブレットを操作してみたが、肝心の名簿は見れずじまいだった。
それならばと、SNSを駆使して外部に助けを求めようとしたが、やはり対策されており無理だった。(サザエさんは一応現代設定の筈)
「誰か、通報してくれれば良いんだけど……いや、してる筈だよ。兄貴もおじいちゃんもこんな時間まで、僕が帰らなかったらおかしいと思うさ」
今頃警察が通報を受けて、自分を探してくれている。半ば無理にそうだと決めつけて、中島はタブレットのライトを頼りに殺し合いの中の探索を始める事にした。
もしカツオが居れば、何だかんだで頼もしい。成績こそ悪いが、あれで本当は頭もキレるとこがあって、中島にはない発想があるかもしれない。
他にも、カツオの妹のワカメや花沢さん、タラちゃんにハヤカワさん、カオリちゃんだって来ていれば、男の自分が守らなきゃいけないだろう。
「……花沢さんは僕がいなくても大丈夫か」
とにかく、誰かしらと合流し今後の方針を相談し合うべきだ。
殺し合いに乗った参加者が居たら? そんな恐怖もあったが、内心では早々居ないだろうとも決めつけてもいた。
「あ、あの……」
「なんだ!?」
そんな時、怯えた様子の少年が中島に声を掛けてきた。玉ねぎのような頭をして、ちょっと捻くれてそうな顔をした男の子だ。
歳も背も自分より下で、多分低学年だろうと中島は思った。
「ごめんなさい、僕不安で……」
本当は中島も死ぬほど不安だったが、流石に低学年の前でみっともない姿は見せられないと見栄を張る。
「大丈夫だよ。僕も殺し合いには乗っていないんだ」
「そうなんですか? 良かった……」
ゴシャッと水気の混じった鈍くて重々しい音が響いてきた。
「……ぁっ」
それは自分の頭から鳴っていたもので、遅れてやってきた激痛とふらついた視界に写った玉ねぎ少年が野球バッドを握っていたことで、ようやく自分が殴られたと理解した。
「ごめんよお兄さん、でも一人しか生き残れないんだ。しょうがないよね」
「や、やめ……」
中島の不幸はなまじ体格差があったせいで、殴られても即死とはいかず、結果としてまだ意識も息もあったということだろう。
当然、相手は殺しに来るのだから、止めを刺すためにもう一度殴る。
そして本当に相手は死んだのか気になってしまう。だから、もう一度殴る。更にもう一度、もう一度、もう一度、もう一度もう一度もう一度もう一度。
最期まで痛みと恐怖を味わいながら、中島の意識は薄れていった。
「ハァ……死んだ、よね?」
息を荒げ、永沢君男は今しがたまで生きていた中島を見下ろし呟いた。
あの乃亜と名乗る子供から殺し合いを命じられ、永沢は迷うことなく殺し合いに乗ることを決意した。
悪いとも思うし、罪悪感もない訳ではないが、あんな人を平然と殺し死人も生き返らせるような相手に、爆弾を首に嵌められどう勝てばいいか分からない。
歳の割にリアリストな考えで、永沢は中島を襲撃し、それに成功してしまった。
「永沢……永沢、よね……?」
「なっ!?」
頭が真っ白になった。今、人を殺した場面を目撃されたのなら、それは言い逃れできない。
永沢も最初は中島を奇襲したとはいえ、こんな方法で最後まで勝ち残れるとは考えていない。支給品を奪ってから、別の参加者に紛れて優勝の機を伺おうと予定は立てていた。
だから、ここで殺人の現場を見られた以上は、殺すしかない。
「なんで、きみがいるんだ……」
なのに、手が震え、足は小刻みに揺れて思うように動かない。
「じょ、城ヶ崎……」
予想もしなかったからだ。まさか、こんな殺し合いに城ヶ崎姫子が居るなんて。
「そ、その人、永沢が……?」
城ヶ崎の声は震えていた。
いつも勝ち気で、強気で活発で鼻に付くお嬢様の癖に、そんな姿を、ましてや自分の前で見せるなんて、そう考えた永沢は動揺を隠すように口を開いた。
「ああ、決まってるだろ。こうしないと、僕が殺されてしまうんだからね」
「その人が襲ってきたのよね? そうでしょ、永沢!」
「……そんな、訳ないだろ」
「嘘! こんな時まで、捻くれるのやめてよっ!」
「嘘で人が殺せるもんか。僕は、死にたくないんだ……だから、城ヶ崎……」
死んでくれよ。
頭に浮かんだ最後の一言が口に出なかった。
「―――わたし、黙ってるから」
「えっ……?」
「このこと、黙ってるから……だからもうやめましょ? きっと誰か救出に来てくれるわよ。
だから、それまで隠れていればいいわ。ここから助けてもらったあと、警察にだってこのこと言わないから……もう殺し合いなんてやめましょ、永沢?」
「ほんとうに、救出なんて来ると思っているのかい?
きみも見たろ? あの腕が伸びる子、超能力者じゃないか? しかも、乃亜とかいう奴はそんな奴を殺して、しかも生き返らせてたんだぜ?
あんな力を持ってたら、警察だって太刀打ちできないさ」
「じゃあ、なおさら永沢が優勝するなんて無理じゃない!! あのルフィって子みたいな超能力者が他にも居たら、あんたに勝ち目ないわよ!」
「うっ、それは……うるさいな、きみには関係ないだろ!」
城ヶ崎の指摘通り、最初に殺されたルフィのような超能力者がいないとも限らない。
SFに出てくるような念力や瞬間移動を使えるような子供がいたら、永沢がどうやって立ち向かえばいいのか。
(な、なにを狼狽えてるんだ……? 僕は、城ヶ崎をここで生かしたら、僕に不利になるだろう!?)
そう、もう一度決めた事だ。それに既に死人も出してしまった。今更都合よく、方針を変える訳にはいかない。
(いや……でも、城ヶ崎が黙っていてくれるなら……今はまだ……)
「永沢、バッド寄こして」
「どうして、きみに命令されなきゃならないんだ」
「いいから! 寄こしなさい!!」
(待てよ、これは、チャンスなんじゃないか? いまは城ヶ崎に従うフリをして、それで彼女を味方に付けて、殺し合いに乗らない奴らに紛れ込むんだ。城ケ崎のが、人当たりも良さそうだし……信用もされやすい。
い、いや……これは一人しか生き残れないんだぞ。やっぱり、城ヶ崎はここで殺して……で、でも……)
中島を襲った時は、容赦なくバッドを振るえた。それが友達でもない知り合いを見付けただけで、こうも呆気なく決意が揺らぐ。
情けなくて、惨めで、永沢の瞳に涙が浮かびそうになってきた。
結局、現実を見て強固な決意で優勝を決意しても、それは相手が知り合いでないから殺せただけだったのかもしれない。
(こ、殺すんだ……でないと、生き残るなんて出来やしないんだ。もう一人、僕は殺したんだぞ!!)
「……こんなこと、いつもなら絶対言わないわよ? でも、ほんとはあんた良い人じゃない。
太郎君の為に、玩具のピアノ買ってあげようとしたり、自分の家が火事になったから、時々パトロールだってしてる。
ほら、線香花火で喧嘩した時も、代わりの買ってきてくれたでしょ?
ね? 良い人が無理して悪い人になるなんて、きっと辛いだけよ……」
「僕は、僕は……無理なんて、そんな……」
いつもは小生意気で憎たらしい、それでいて癪に障るこの女の声が今は聖職者の説教のように、永沢の心に突き刺さる。
バッドを持つ手は既に緩んでいた。全身から力が抜けていく脱力感と、城ヶ崎の姿に安堵感すら覚える。
保身から来る偽りの言葉ではなく、城ヶ崎は心の底から永沢の事を想って、説得を続けているのが分かってしまったからだ。
「永沢」
暖かく、名前を呼ばれて、永沢は膝から崩れ落ちた。
「―――う”、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
獣のような雄叫びが木霊する。膝をついた永沢は後ろを振り向いて、驚嘆した。
「ど、どうして……うわああああ!!」
先ほど殺した筈の中島が息を吹き返し、血と涙と鼻水で汚れた顔を更に歪めながらこちらへ突っ込んできている。
(……磯野)
自分を殺そうとした玉ねぎともう一人、ツインテールの髪を更に縦巻きロールにしたお嬢様みたいな女の子が口論をしている時、中島は息を吹き返した。
頭に残る鈍痛と、そこから流れていく血の量から多分長くはないと悟る。
病院に掛かれば話は違うかもしれないが、こんな場所に医者もいるとは思えない。だから、最後に出来るだけの事を考えた。
(僕はもう、駄目だけど……最後にこいつぐらいは道連れにしてやる!)
もしも、ここに最高の親友が居れば、それがこの少年の毒牙に掛からないとは限らない。
だって、磯野カツオは良い奴だから、きっと騙される。
そうなるくらいなら、どうせ死んでいく自分がこいつを先に殺してやる。
ズドン、と発砲音が響き、中島の胸に小さな風穴が空いた。
「ぐ、ふ……!」
それが決定打になり、糸が切れた人形のように中島は倒れる。
(磯野、お前は……まだこっち来るなよ……)
最後にまた野球がしたかったと思って、友達の顔を思い浮かべながら中島は息絶えた。
【中島弘@サザエさん】死亡
「嘘だろ……」
息を吹き返した中島が永沢に襲い掛かったその時、永沢の後ろから銃声が響き渡って中島は射殺されてしまった。
永沢は何もしていない。というより、出来なかった。目まぐるしい展開の変化に、永沢は置いて行かれていたからだ。
だから、中島を殺したのは、もう一人しかいない。
「どうして、撃ったんだ! 城ヶ崎……!」
城ヶ崎の震えた手には、黒い銃が握られていた。
「わ、わたし……永沢が……殺されちゃうって……」
「クソっ!」
先ほどとは一転して、永沢は中島の元へ駆け寄り脈を図った。自分でも何をしているのか、あべこべな行動だった。
だが、ここで中島に死なれる訳にはいかず、身勝手だが生きててほしいと祈って首元に触れる。
「……永沢?」
「……」
死んでいた。
殺してしまった。
いや、殺させてしまった。
「永沢……私、わたし……」
「きみは悪くない、殺したの僕なんだ! いいかい? 僕が殺したんだ!」
今になって、永沢に激しい後悔が襲ってくる。
そもそも、この殺し合いに乗る前にもっと深く考えていれば、こんな事態を避けられたはずだ。
乃亜の言動から、子供が殺し合いに巻き込まれているのは察することが出来たし、それなら自分の兄弟やクラスメイトだって来てる可能性は考えられた。
なのに、永沢はそのことを一切考慮せずに、安易に殺し合いに乗ってしまった。愚かな自己保身の為だけに。
その挙句、関係ないクラスメイトに人殺しまでさせてしまった。
―――本当の卑怯者は僕じゃないか―――
今更気付いても、もう遅い。
「来るんだ、城ヶ崎」
「え?」
「大丈夫、誰も見ていない。だから、このまま逃げるんだよ!」
そう言って、城ヶ崎の手を取り永沢は駆け出した。普段なら城ヶ崎と手を繋ぐなんて、絶対にやりたくないが、今はそんなことを気にしている場合じゃなかった。
「な、永沢……」
(どうすればいいんだ……僕が殺し合いに乗ろうとさえしなければ、こんなことには……!)
ここであったことを二人だけの秘密にして、全てなかったことに出来ればと考えながら、永沢は当てもなく城ヶ崎を連れて進んでいく。
願わくば、誰もこの現場を見ていないよう祈りながら。
【永沢君男@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、城ヶ崎に人を殺させた事への罪悪感と後悔(極大)
[装備]ジャイアンのバッド@ドラえもん
[道具]基本支給品、ランダム支給品2〜0
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗るのは断念。
1:城ケ崎を連れて逃げる。
2:僕は本当に卑怯だな……。
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。
【城ヶ崎姫子@ちびまる子ちゃん】
[状態]健康、中島を殺した事へのショック(極大)
[装備]ベレッタ81@現実
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:これからどうしたらいいの?
1:……
[備考]
※アニメ版二期以降の参戦です。
投下終了します
投下します
夜の闇の中で、一人の少年が立っていた。
少年の周囲は、濃く、黒い霧で満たされている。
数メートル先でさえ視認するのが難しい程だ。
少年の背丈は五歳ほど、彼が本当にただの子供だったら、余りの心細さに震え、蹲り。
そして、動かなくなっただろう。
「フン…試運転と行くか」
だが、少年は違った。
白のマントと、高級そうな王族しか付けられないブローチを身に纏い。
白銀の髪を揺らし、ギラギラと紫電の双眸を獰猛に滾らせて。
サメの様な歯をむき出しにして、彼は笑っていた。
そして、その手に握る、彼の身長より遥かに大きな刀を無造作に振るった。
轟!!と。
少年が大刀を振るうたびに、濃霧が掻き消えていく。
桁外れの彼の膂力が凄まじいまでの突風を生み出している事もある。
しかし、霧の消えていくスピードはそれだけでは説明がつかない物だった。
まるで、刀に吸い込まれていくようで。
途中何かにぶつかろうと構わない、手当たり次第に叩き切る。破壊をまき散らす。
只の人間が見れば、小型の嵐の様だった。
「どうした!そんなに俺が怖いか!!こんな霧で俺は殺せんぞ!!」
霧の奥に潜むものに、少年は脅すように声を張り上げる。
その声色は、少年の周囲を包む霧のように深い苛立ちと憎しみが込められた物だった。
次瞬、少年の短い肩に鋭い痛みが走る。
見てみれば、彼の肩をかすめる軌道で短刀が投擲されていた。
そして、それだけでは終わらない。
「下らねぇ」
空気を裂く鋭利な音と共に、少年の元へ短刀が殺到した。
それも一本や二本ではない。五本、十本……。
瞬きよりもなお短い一瞬の間に、優に十以上の短刀が少年をハリネズミにせんと迫る。
総身を殺意に晒されてなお、少年の表情は変わらない。
目にもとまらぬ速度で、その手の大刀を全力で振るう。
放たれた殺意をは次々に撃ち落とされて、鋼の調べが響いた。
だが──如何に速度や膂力があれど、少年の可動域は人の範疇だ。
「……ぐっ」
大きく右に振るわれた大刀の隙を縫うように、左の背後に短刀が二本突き刺さっていた。
振るうタイミングを完璧に読み切っていなければこうはならない。
少年は元より、霧の奥に潜む少年の敵手もまた超人の技を有していた。
深く突き刺さった短刀のダメージにより、少年の体が大きく右に揺らぐ。
「───解体するよ」
少年の姿勢が大きくブレたのを、小さな暗殺者は見逃さなかった。
獲物を定めた豹のように俊敏な動きで、霧の奥から少年へと迫る。
少年と同じ白銀の髪、幼く無邪気なアイスブルーの瞳と、無邪気そうな顔立ち、
黒いマントを羽織っているため体つきは見えないが、一見すれば脅威には見えない小柄な少女だった。
しかし、少女のスピードと内包する無垢な殺意はただの少女のそれではない。
一瞬で距離を詰めて、少年が負傷し意識を集中させている左後方とは逆側である右後方部に白刃を煌めかせた。
「ばいばい」
殺った。確信する。
少年は回避すべく身を捻ろうとしているが、すでに遅い。
元より、自分が放ったこの暗黒霧都(ミスト)の中にいて俊敏な動きは不可能なのだから。
その予想の通り──短刀は頸動脈という急所目掛けて振り下ろされた。
しかし。
「───!?」
「甘いな、その程度で俺の首を獲れると思ったか……?」
振り下ろした腕は、少年の纏う純白のマントに絡め取られていた。
よく見れば、最初に突き刺さったと思った短刀も、マントで受け止められているのが見えた。
つまり、手傷を追って体勢を崩した一連の動きはフェイク。
少女は、少年の策に嵌まった事を瞬時に悟った。
「ぐ、うぅ〜!!」
マントから抜け出そうと藻掻くものの、少女の膂力と技術を以てしても抜け出すには数十秒はかかりそうだった。
手に持った短刀でマントを切り裂こうとするが、手首を抑えられては上手く行かない。
切り裂くのを当然相手も待ってはくれないだろう。
「シッ!」
そこで少女が選んだのはがっちりと手を抑えられているのを利用しての回し蹴りだった。
軽業師の様な身軽さで体を振り上げ、少年の首目掛けて蹴りを放つ。
その蹴りの速度も、子供どころか人間離れした物だった。
例え彼女よりずっと屈強なプロボクサーでも、まともに受ければ首がへし折れている。
首を切り取る鎌のように幼い足は振るわれ──そして、受け止められる。
「中々だ…だがやはりその程度では俺は殺せん」
パァンッ!という破裂音が響き渡る。
少女の渾身の蹴りは、少年の巨木を蹴った様な圧力を感じる腕で止められていた。
両腕と片足の攻撃を封じられ、少女に少年を攻撃する術は最早ない。
それでも何とか藻掻こうとする敵手に、冷酷に少年はその五指を広げて、叫ぶ。
「ザケル!」
それは、夜の闇を裂いて、少年の広げられた掌から放たれた。
瞬く間に少女の全身を突き抜け、食い破り、その身を焦がす。
「くっ!」
しかし少女もさる者、一瞬で失いかけた意識を引き戻して、バックステップで後退する。
余力はあるが、たった一発で無視できないダメージを負った。
恐らく雷撃の類だろう。足先や指先に僅かにだが痺れがあり、技に支障が出る可能性がある。
故に選ぶは撤退。霧の中に逃げ込めば、今のコンディションでも十分逃げ切れる。
彼女はそう判断した。彼女にはそう自負するだけの実力があった。
「逃がさん!!」
少年が再びその手の大刀を振るう。
すると先ほどの焼き直しの光景──黒い霧が風圧で吹き飛ばされ、或いは刀身に食われ削り取られた様に吸収されていく。
それに伴い霧の中に身を潜めるのに成功しかけていた、少女の姿が露わになる。
再び少年が五指を開く。不味い、と少女は思うが詠唱を阻止するすべは最早ない。
「ラージア・ザケル!!」
雷光が、夜闇を再び裂く。
円状に放たれた雷の輪は少年を中心点として急速に広がり、少女を捉えた。
「が、ぁ……!?」
先ほどよりも強い威力、がくり、と少女が膝をつく。
それでも意識を保ち、気を失わなかったのは常人では不可能な芸当だっただろう。
だが、膝をついた時間で少年が詰み(チェック)を掛けるには十分だった。
ドン!と少女の傍らに大刀が突き立てられる。
その気になれば、何時でも少女の首を撥ねることができると言わんばかりに。
ニィと口の端を歪ませて、少年は少女に尋ねる。
「さて…お前、名前は?」
沈黙は許さないといった様相で、少年は目の前の少女に名乗る事を促す。
僅かな逡巡のあと、少女は静かに自分の名を名乗った。
そうしなかれば、躊躇なく少年は自分の首を絶つだろうから。
「私たちは…ジャック、ジャック・ザ・リッパー」
名乗った名前は、19世紀のロンドンを恐怖に陥れた世界一有名な殺人鬼の名前。
何も知らぬ大人が聞けばこんなあどけない子供が何を馬鹿な、と失笑するだろう。
しかし、時に現実は空想を超える物だ。聞くものが信じようと、信じまいと。
生まれ損なった幾万の孤児・胎児、それらが身を寄せ合い生まれた怨霊(フリークス)。
怨霊達の集合体が、彼の連続殺人事件の犯人の名を冠した時、彼女は生誕した。
反英霊(サーヴァント)、ジャック・ザ・リッパーとして。
「そうか…ではジャックこれからお前には選んでもらおうか」
そんな怪異を前にしても、紫電の双眸の少年は笑みを深めるのみ。
ギラギラと光る眼は、正しく修羅に憑りつかれた者のソレであった。
「ここで死ぬか…それとも──このゼオンの手足となるか」
少年の名はゼオン。ゼオン・ベル。
雷帝ゼオンと呼ばれた少年だった。
■
「どうだ、傷は癒えたか」
「うん、大体元気になったよ。ありがとう、ゼオン
……それにしても凄いね、この刀。私の霧を削り取るだけじゃなくて、傷も治せるなんて」
結論を最初に言えば。
ジャックは、ゼオンの申し出を受けた。
断っていればまず間違いなく死んでいただろうし、お互いのスタンス的にも問題は無かった。
ゼオンとジャック、双方とも殺し合いに乗っていたからだ。
殺人鬼であるジャックは元々人を殺す事に一切忌避感がない。
殺し合いをしろと言われれば、乗るのは決まっていた。
「鮫肌という刀らしい。敵の魔力を削り取って使用者に還元する…かなりの業物だ。
ただ不用意に触れるなよ、こいつは使用者を選ぶからな」
「ふーん……わっ、ほんとだ」
柄に触れようとしたジャックの指目掛けて、鮫肌の柄から鋭利な棘が飛び出す。
担い手を選ぶという話は本当の様だ。
いざとなったら奪い取ってゼオンを殺すのには使えないだろう。
そう思いつつ、布にくるまれた鮫肌の刀身を猫のように撫でる。
「これがあればゼオンも、私たちへの魔力きょーきゅー困らなくていいね」
「舐めるな。お前ひとり程度、俺なら何の問題も無い」
「はいはい」
契約の証として、サーヴァントであるジャックは既にゼオンと仮契約を結んでいた。
サーヴァントと言う存在の都合上、はぐれでいるよりはマスターを得て魔力供給を受けていた方が圧倒的にできる事も増える。
その点ゼオンはマスターとして申し分ない実力を有していた。
またサーヴァントとマスターの関係も絶対ではない。
令呪の絡繰りを気取られなければ、ゼオンを後ろから刺すことも十分可能だ。
それはゼオンの方も薄々分かっているだろうが、彼はその事を指摘しなかった。
ジャックが謀反を企てても対処できるという自負があるのだろう。
それに加えて、服従を迫れば拒絶され、折角見染めた有能な手駒に成り得る人材を消費してしまう事になる。
それはゼオンにとっても旨味がない。だから指摘しなかった。
「それじゃ行こっか!お兄ちゃん!!」
「お兄ちゃんはよせ、ゼオンでいい」
「えー、じゃあお母さん?」
「何でそうなる。お母さんはもっとやめろ」
大刀を担ぎ上げて。
白の少年と黒の少女は同じ方向を向けて歩みだす。
殺すために。優勝する為に。
そう遠くない未来で、隣に立つ相手を殺すことを理解しながら。
(しかし…何でも願いが叶うか。踊らされるのは業腹だが……
もしそれで俺にバオウが手に入るなら…それも悪くねぇ)
自分ではなく不出来な弟に与えられた最強のバオウの術。
それが手に入るなら、少しばかりプライドを枉げても乃亜の為に働いてやってもいい。
勿論、その後でお礼をするのは言うまでもない話だが。
必ず手に入れる。
修羅の雷帝の紫電の瞳の奥で。
野望と、与えられなかった者の怨嗟の炎が燃えていた。
【ゼオン・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]健康、ジャックと契約
[装備]鮫肌@NARUTO
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:優勝し、バオウを手に入れる。
1:ジャックを上手く使って殺しまわる。
2:ジャックの反逆には注意しておく。
[備考]
ファウード編直前より参戦です。
瞬間移動は近距離の転移しかできない様に制限されています。
ジャックと仮契約を結びました。
【ジャック・ザ・リッパー@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して、おかーさんのお腹の中へ還る
1:お兄ちゃんと一緒に殺しまわる。
2:お腹空いたな…
[備考]
現地召喚された野良サーヴァントという扱いで現界しています。カルデア所属ではありません。
ゼオンと仮契約を結び魔力供給を受けています。
【大刀・鮫肌@NARUTO】
「霧の忍刀七人衆」の一員であり、「霧隠れの怪人」、干柿鬼鮫の愛刀。
文字通り鮫の肌を巨大にしたかのようなトゲだらけの刀身を持ち、切れ味はまるでなく打撃武器に近い。
"斬る"のではなく、その表面で"削る"ことで相手を攻撃する。
相手の持つチャクラを削り取ることもでき、削り取ったチャクラを吸収して鬼鮫に還元し、チャクラの回復及び負傷した箇所の再生まで出来る。
また、刀自体が意志を持ち、担い手を選ぶ。選ばれていない者が柄を握ると鋭利な棘が飛び出す。
投下終了です
投下します。
(殺し合いなんて、そんなの反対に決まってるでしょ!!)
長いツインテールの少女、稲葉郷子はこの殺し合いに対しては、真っ向から否定的だった。
ましてや彼女は、小学生でありながら、霊能力者の担任教師や、クラスメート達と共に霊や妖怪に纏わった、数多の事件を解決してきた身だ。
そんな彼女が殺し合いを破綻させてやろうと移動を初めていると……
「お願い!! 私も一緒に連れてって!!」
唐突に青と白のパーカーを着用した少女から声をかけられた。
その声は荒かった。
「ねえお願い!! 私を置いて行かないで!! …あなたのこと、しっかりサポートしてあげるから!!」
パーカーの少女は郷子に「置いて行かないで」と同行を懇願する。
「…大丈夫。私もあなたを置いて行かない。一緒にいきましょう。」
そうすると、郷子はパーカーの少女の頼みを引き受ける。
当然、自分と同じ境遇にある他人を郷子は放っておけないのだ。
■
─しかし、郷子は未だ知らない。
同行者であるパーカーの少女•リコが主催の手によってこの殺し合いの為に作り出され、偽りの記憶を植えつけられた人造人間であることを。
また、当のリコもその事実を知らないのである。
【リコ@ビビッドアーミー】
[状態]:健康、悲しみ(郷子と同行出来たことで癒えつつある。)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:郷子のサポートをする。
1:同行者の少女と一緒にいる。
[備考]
※主催側の手によって作られた人造人間で、偽の記憶を植えつけられています。(作られた目的等は現時点では不明)
【稲葉郷子@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:この殺し合いを破綻させる。
1:パーカーの少女(リコ)をなんとしてでも守る。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は漫画無印最終話で鵺野鳴助の転任を見送った後。
投下終了です。
感想ありがとうございます!
投下します。
「私の願いは父さんが生き返って母さんと3人で幸せに暮らすこと」
少女は己の決意を口に出した。
日本には言霊の力が信じられている。
心の中で思うより声に出す方が叶うと。
故に少女は口にした。
彼岸への情景を。
必ず叶える為に。
「信じてたのに……」
少女の脳裏に浮かぶ少年。
少年の笑顔。少年の明るさ。少年の勇敢さ。
次々と思い出される。
まるで、それは万華鏡。
子供の甘酸っぱさ。
それだけ、少女にとって少年はかけがえのない存在だった。
「おしかったけど、負けは負けや。母ちゃんと一緒に来てもらうからな」
「……」
私と母さんは借金取りに島へ連れられた。
島での出来事は正に地獄だった。
心に積もる雪。
頼れる大人もいない。
黝む毎日。
母のお仕事を手つだったりしていると、
やけに時間がたつのが早く思えます。
くるしいこともあるけど、
たいせつな思い出をかてに、なんとか
すごしています。
ケガや病気に気をつけて、野球せんしゅ
になれるよう、がんばってください。
きっと、いつの日か、またあなたと
であえる日をしんじて。
検閲を逃れるために必死に思考を張り巡らせて書いた手紙。
この手紙を読めば、■■は助けにくると思っていた。
私の苦しみ。私の痛み。私の絶望。
お願い。憎しみで満たされていく私を助けて……ッ!!!
だって■■は私の友達(ボーイフレンド)なんですから!!!
「でも、あなたはこなかった」
あの手紙を送っても■■は私を迎えに来なかった。
馬鹿正直な面があるから、おそらく私のメッシ―ジに気づかなかったんだろう。
それか、早くプロ野球選手になって私を迎えるなんてのん気なことを言っているのだろう。
「本当に……馬鹿なんですから」
結局、私は■■にとって2番。
野球が1番の■■にとって、私はもう過去の存在。
「もう。誰も信じません。私は私自身の手で幸せを掴み取るわ」
幼き修羅がここに生まれた。
【南雲瑠璃花@パワポケダッシュ】
[状態]:健康 深い絶望と怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して家族皆で幸せに暮らす
1:ひとまず乃亜に抵抗する振りを見せてグループにまぎれこむ
2:然るべき時に優勝へと動く
[備考]
瑠璃花ルート君は今どこにエンド後からの参戦です。
友達である主人公の名前は後続の書き手様に委ねます。
投下終了します。
投下します
「何でも願いを叶えてやるから殺し合え…ね。また同じ言葉を聞くとは思わなかったけれど…私が此処にこうして存在しているということからして、嘘偽りは無い…わよねえ」
手にした扇で口元を覆い、後ろで結い上げた赤髪を揺らして、呟く少女。………少女がいた。
「あの天然ババアの所為で届かなかった『欲』を、もう一度掴むチャンス!!これは乗らない訳が……ってんな事あるか〜〜〜〜!!!!!」
両の拳を天に突き上げ、少女は小さな体で目一杯の怒りを表現した。
「同じ魔女ならいざ知らず!幼い子供を殺して、どの面下げて愛する国と民に君臨しろってのよ!!!
この私を!マリー・アントワネットを!!みくびるんじゃ無いわよ!!!」
少女の名前は、マリー・アントワネット。フランス革命でギロチンにかけられる寸前に、その欲に目を付けた魔界の女王に見出され、魔女千夜血戦(ワルプルギス)に招かれた絶世の魔女である。
そして魔女千夜血戦(ワルプルギス)に於いて、ロシアの“大帝”エカチェリーナ二世に敗れ、愛するフランスと民衆の上に君臨するという夢破れ、輪廻の輪より消失した敗北者───の筈だった。
それが、あの乃亜という子供の力によるものか、こうしてこの場に存在し、新たな戦いの場に駆り出されている。
だが、しかし───。マリー・アントワネットに戦う意思など微塵も無い。
魔女千夜血戦(ワルプルギス)に臨むに際して、悪魔女王アグラット・バット・マハラットに与えられた力は健在だ。
この力があれば、このバトルロワイアルを制する事は可能だろう。
「子供を殺せ!?それもアイツが無理矢理連れて来た子供を!?そんな事をしたら、私は!私の愛する!!フランスと!!フランスの民に!!決して消えない汚名を被せる事になってしまう!!!
そんな事をして、フランスに君臨するなんて、出来る訳無いでしょうが!!!」
だが、そんな事は有り得ない。誇り高きフランス王妃が、誰よりも国と民とを愛し、その為に驕慢な愚女という汚名を被った程のフランスへの愛が、そんな行為を行わせる事は決して無い。
「そんな汚名を我が国と民に被せるなんて…流石に克服できる訳無いしね」
彼女は誰よりも臆病であった。だが、勇気と愛とで、生前に自身を襲った恐怖を悉く克服した強い心を持っている。
それでも、だからこそ、フランスという国と、その民を誰よりも愛するからこそ、マリー・アントワネットは、幼い子供を殺戮するという行為に乗る事は決して無い。
そんな事をした畜生がフランスに君臨すれば、フランスという国の歴史に、永劫消えぬ汚辱を刻む事になると理解しているから。
そんな事をする恐怖に耐えられない事を知っているから。
例え子供達を殺し尽くした事を、己以外に知る者がなくとも、己が国と民とに向かい合う事など決してできない凶行を為した事は変わらない。
愛する者達と向き合えない恐怖に耐えられない事を知っているから。
だからこそマリー・アントワネットは戦わない。
「巻き込まれた子達を守護(まも)って、乃亜とか言う奴もぶっ飛ばして、フランスの名誉を轟かせてやるわ!!」」
例えその結果、自分が本来辿るはずだった運命を迎えたとしても、マリー・アントワネットは選んだ道を貫き通す。
死も滅びも恐れない。既に克服した恐怖だから。
◆
方針を決めたマリーは、取り敢えず支給品を改めてみる事にした。あの乃亜とかいう子供が、一体自分に何を与えたのか興味が湧いたのだ。
「こんな小さな背嚢に、よくもまぁこれだけ入るものね」
食料や水を始めとした基本支給品を引っ張り出したあとに、遂に出てきた刀剣を見て、マリーは呆れた様に呟くと、説明書きに眼を通して……。
「あの餓鬼ッッッ!!!絶対殺すッッッ!!!!」
ブチ切れた。
【マリー・アントワネット@魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う】
[状態]:健康 激おこ
[装備]:クイーン・デッド@DEVICE REIGN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:巻き込まれた子供達を救う。
1:乃亜は絶対ブッ殺す
*エカチェリーナ2世に敗北して、消滅した後からの参戦です。
【支給品紹介】
クイーン・デッド@DEVICE REIGN
剣型のオーギュメント。ソースとなったのは、1793年にフランス国王ルイ16世の王妃、マリー・アントワネット処刑される時に使用されたギロチンの刃。フランス革命後、ギロチンの刃は、街の鍛冶屋に引き取られ、複数の刀剣に加工された。これらの刀剣は、ルーブル美術館所有のの「アントワネット」と呼ばれる有名な小型ナイフ以外、ほとんどが行方不明になっている。
投下を終了します
投下します。
「ここって……シュソーカンテー、とか言う場所なのか?」
何処とも分からない、現代風の建物の中。
その中心にいた、大柄で色黒な少年が、辺りを見渡す。
彼はこの殺し合いに参加させられる前、リーダーに従って、狩り場へと向かうはずだった。
彼らの仇敵である忍者や、他にも大物が沢山(ワンサカ)いる場所のはずなのに、誰もいない。
おまけに彼の仲間である、割れた子供たち(グラス・チルドレン)のメンバーも見当たらない。
(そういやその前に、変な奴が殺し合いをしろだのなんだの言ってたような……。)
彼はあまり考えるのを得意とする人間ではない。
頭の前に体を動かすのが好きな人間でもあり、頭脳労働は他のメンバーにいつも任せていた。
(ま、いーや。オレは何時だって熟慮(かんが)えンのはーーー)
「殺害(ゴール)一発(パツイチ)キメてから!!!」
上の階から誰かが降りてくるのに気づき、真っ先に階段目掛けてシュートを放った。
足の筋肉を固め、支給品のサッカーボールに鋭いキックを打ち込む。
彼は頭で考えるのは得意じゃ無いが、優れた勘と、卓越した運動能力を持つ。
(とりあえず、殺しゃあガムテの為になるよな?)
少年は殺し合いのことなど良く知らない。知らなくていい。
元の世界からこのような世界に居続けたようなものだし、殺しの抵抗などとっくに捨てている。
彼が蹴とばしたのはただの市販のサッカーボール。
だというのに、その一発だけで建物全体が揺れた。
「うわっ!?」
階段から降りて来たばかりの、赤バンダナの少年は、辛くも躱した。
だが、鋭い回転に伴って、ボールは褐色の少年のスパイクに戻って行く。
「悲哀(ピエン)だぜ、外したァ〜。100%(パ)殺ったと思ったのにィ〜。
やっぱりガムテから貰った鋼鉄球(トモダチ)が欲しいな〜。」
「そのシュート……お前、サッカーやってるのか?」
赤バンダナの少年は、自分の命よりも、相手に興味が深々と言った様子だった。
ともすれば、彼のサッカー人生どころか、人生そのものが終わりかねない状況だというのに。
「あ?知ってどーすんだよ。これから試合終了(ゲームセット)のてめーが!」
ジャージのポケットから、紙切れを1枚取り出し、口に含む。
それは地獄の回数券(ヘルズ・クーポン)。
服用者に道理を越えた力を齎す、悪意を凝縮して作られた麻薬(ヤク)だ。
ガムテープで覆われた顔の両目周りに、血管の網のような紋様が現れた。
それを見て、赤バンダナの少年はすぐに気づいた。
今目の前の敵が口に含んだ物は、洗脳マシーンや神のアクアと同様、禁断の力を齎す道具なのだと。
そして、影山や彼が率いる連中のように、サッカーを悪用する目の前の男を、止めねばならないことにも。
――極道奥義(ごくどうスキル) 蹴球地獄変(ビバ・ラ・ファンタジスタ)!!!
道を極めると書いて、極道。その中でも、彼はサッカーの道を極めた。
凄まじい回転を纏ったミドルシュートが襲い来る。
何度も言うが、彼が蹴飛ばしたのはただのサッカーボール。だが、それは彼が撃つことで、兵器に変わる。
爆弾でも吹き飛ばせない金庫を壊すことは出来ないにしても、今彼らが居る建物の壁ぐらいは簡単に壊せる。
躱そうとしても無駄だ。ボールは相手に食らいつくサメのように、獲物目掛けて飛んで行く。
いくら少年の殺人具(エモノ)が出なくても、当たれば顔面が潰れたトマトのようになるだろう。
「うおおおおおおお!!ゴッドハンドォォォォ!!!!」
バンダナの少年は、躱すどころか微動だにしない。
右手を上空に掲げ、そのまま振りかぶって目の前に突き出す。
光を纏った巨大な手が、文字通り必殺のシュートを止めた。
「神(ゴッド)!?虚像(ウソ)だろ!?」
一瞬、神のようなものが、獲物の後ろに見えた。
そしてあろうことかその手が、極道奥義を止めた。
「まだだ!回転は死んでねえ!!」
壊れた少年は神など信じない。
もし神がいるのなら、あんな腐り切った家にいなかったはずだし、いたとしてもプロサッカー選手になれていたはずだから。
案の定、彼のシュートは神の手を破った。
「ぐああああ!!」
無名のサッカー部を全国大会優勝に導き、そして日本をサッカーで救ったキーパーでさえ、その一撃を防ぐことは出来なかった。
祖父の秘伝の技ごと吹き飛ばされる。
サッカーゴールは無いが、間違いなく試合ならば1点入っていた。
「しぶとい奴(ヤロー)だ。まだ生きてやがる。でも瀕死状態(レッドゾーン)だろうよ。」
戻って来たサッカーボールで、相手の人生に引導(ゴール)を渡そうとした所。
負けじと相手は立ち上がった。
「へへっ、なかなかいいシュートだったな。強いストライカーに出会えて、嬉しいぜ!!」
極道奥義を正面から受けて、最強のキーパーは笑っていた。
笑うのも無理はない。相手のシュートが強いのは、正体不明のモノを食べたからではない。
ボールの使い方は、明らかにサッカーを愛する者のそれだったからだ。
「そうだろ?オレ、14(ジューシ)でプロにスカウトされたんだぜ?ハットだって何度キメたか分かんねえ!」
思わず褐色のストライカーも乗せられて、興奮してしまう。
殺しの腕を称賛されたことは、割れた子供たち(グラス・チルドレン)に入って何度もあったが、サッカーの腕を褒められたことは無かった。
その一瞬だけは、殺し合いではなく、ストライカーとキーパーの1対1(ワンオンワン)の空間がそこにあった。
「世界にはスゲー奴がいるって、本当に思うよ。」
「そうか?オレ、偉大(スゲー)か?」
ぱあっと、目の前のガムテープで覆われた顔が晴れる。
一度受けて分かったが、シュートのパワー、コントロール、そして技術、全てが超一流。
豪炎寺や佐久間、アフロディといった並みいるストライカーのシュートを見て来たキーパーでさえ、目の前のストライカーのシュートは素晴らしかった。
「ああ!俺が受けてきたシュートの中でも、特にすげえさ!!」
ニッ、と目の前の男の顔が晴れる。
シュートをまともに食らったのに死んでおらず、あろうことか褒めたたえる余裕を持っている。
機動隊やマフィア、忍者といった並みいる強豪を殺害(コロシ)てきたストライカーでさえ、目の前の相手は強いと認めた。
「なあ、そんなにすげえキック打てるのに、どうしてそんなことをしてるんだ?」
だからこそ、世界への挑戦を目指すキーパーは気になってしまった。
目の前のストライカーが、なぜ悪事に手を染めるようになったか。
今受けたシュートは、明らかにサッカーを愛している者でなければ打てないシュートだ。
「……分からねえ。」
一瞬の間の後、そんな答えが返って来た。
先程まで笑顔だった少年の表情は打って変わって、疑問と悲しみと怒りが綯い交ぜになった表情を浮かべた。
「理解(ワカ)んねえんだよ。でも理解(ワカ)ることはある。オレは人を殺さずにはいられねえんだ!オレはそんな人間になっちまったんだ!!」
目の前の相手は殺す。自分勝手な母親のせいで、プロへの道を断たれた時から、ずっとそうだった。
恨みがあれば殺すし、恨みが無くても敵対するなら殺す。
彼だけじゃない。彼が属するグループの壊れた子供たちの多くがそのようなやり方で生きて来た。
「なっちまった……そうか。なら、やることは1つだな!!」
その場に、これ以上の言葉はいらない。
キーパーが止めるか、ストライカーがキメるか。それだけだ。
「割れた子供たち(グラス・チルドレン) 黄金球(バロンドール)!!!
てめーの生首(クビ)を人生の終着点(ゴール)に叩きこんでやるッッ!!」
「雷門中サッカー部キャプテン 円堂守!!
来いよ!今度こそおまえのシュートを止めてやる!!!」
――極道奥義(ごくどうスキル) 蹴球地獄変(ビバ・ラ・ファンタジスタ)!!!
先程よりも鋭い回転を纏ったシュートが、円堂に襲い掛かる。
余りにも早く回転するせいで、龍の鳴き声かと錯覚するほどの、空気を切る音が聞こえる。
だが、回転が強くかかり過ぎたボールは、キーパーの命(ゴール)を狙わず、天井を砕いた。
彼の言葉に、黄金球が動揺したか?否。
「好きな場所に逃げな。ボールは何処へ居てもてめえの命を刈り取る!!」
黄金球の極道奥義は、壁や天井の外、即ち死角獲物を殺(リム)る。
彼は下手な大人の極道より優れた未成年の集団、割れた子供たちのNo.3だ。
たとえほんの少し動揺しても、冷静に獲物を討つスキルを持ち合わせている。
彼の技に対応できるのは、常人離れした勘を持つ者だけだ。
だが、円堂はなおも動くことは無い。
先程のように手を掲げ、ゴッドハンドを打とうとする。
唯一違う点は、正面ではなく右上を向いて技を放ったことだ。
「その姿勢(スタイル)は認めてやるぜ。けどな、その技じゃ意味がねえ!!」
円堂の反応した方向から、サッカーボールは壁を砕いて現れた。
だが、出所が分かっても、然るべき力が無ければ止められない。
「負けるかぁーーーーーーーーッ!!!」
円堂の叫びに共鳴するかのように、黄金の魔神が雄たけびを上げて現れる。
さらなる特訓と、雷門中OBとの特訓によって編み出した、ゴッドハンドをも超える技だ。
「マジン・ザ・ハンド!!」
「っ!!」
筋骨隆々な魔神の張り手が、黄金球のシュートを止めた。
首は撥ねられていない。しかし、今の戦いの結果は、ゴールキーパーの完全勝利だった。
それはストライカー自身が認めていた。
「オ、オレの極道奥義(スキル)が?」
渾身の一撃を正面から跳ね返され、口をぽかんと開けたまま崩れ落ちる。
円堂という男が、忍者なのか、はたまた別の強者なのかは分からない。
でも、彼がはっきり負けを認めた瞬間だった。
鍛えた体による蹴りも、この男には通じない。頭より体を動かすのが好きな彼でさえ、そう思ってしまった。
覚悟が違った。円堂はサッカーに命を懸けているが、黄金球はサッカーを道具としてしか使っていない。
今はガムテのように、指示を出してくれる者もいないから、誰かのために戦うということも出来ない。
「何やってんだ!もう一回シュート打って来いよ!!」
そんな黄金球に対し、円堂がしたのは、激励だった。
「たとえ止められても諦めなかったら、次は行けるかもしれないだろ!?」
「次……?」
諦めなければ、次は何とかなるかもしれない。
それは、黄金球が出来なかったことだ。
他人の幸せを憎んでばかりいる母親によってプロの道を断たれた後も、もう一度プロを目指せばよかった。
たとえ父親がサッカー選手ではなく、母がフィリピンパブでひっかけただけの男だったとしても、血筋など否定すればいい。
でも、彼は諦めてしまった。
「そうだ!一度失敗しても、負けても、特訓すれば強くなれる。」
「……そうかよ。」
彼の言葉は、リーダーであるガムテとは別の形で心に響いた。
円堂のサッカーに対する想いが、サッカー選手としての黄金球を呼び戻したのだ。
「次は負けねえ。今度こそ一発(パツイチ)キメてやる。」
立ち上がり、再びシュートの構えを取る。
この男は、極道としてではなく、自分のサッカー選手としてのプライドをかけて倒さねばならない。
「黄金球(バロンドール)、サッカーやろうぜ!!」
彼らは戦い続ける。
殺し合いを命じられたからではない。
己の理不尽に、目の前の新しい強敵に勝ち、さらなる高みを目指す為。
決めようか
ストライカーとゴールキーパー
何方(どちら)が生存(いき)るか死滅(くたば)るか!!!
【円堂守@イナズマイレブン】
[状態]:右手にダメージ(小)
[装備]:形見のグローブ@イナズマイレブン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品(0〜2)
[思考・状況]
基本方針:元の世界に帰るために生き残る
1:目の前の敵のシュートを止める
2:サッカーやろうぜ!!
※フットボールフロンティアで世宇子中に勝利してからの参戦です
【黄金球(バロンドール)@忍者と極道】
[状態]:健康 地獄への回数券の効果継続中
[装備]:サッカーボール@現実
[道具]:基本支給品、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)×4@忍者と極道 ランダム支給品(0〜1)
[思考・状況]
基本方針:この殺し合いでも、人を殺し続ける。
1:目の前の敵(キーパー)を破る。
2:割れた子供たちのメンバーもいるのか?
※首相官邸襲撃前からの参戦です。
【支給品紹介】
【形見のグローブ@イナズマイレブン】
最強のキーパーだった円堂守の祖父、円堂大介が遺したグローブ。
【地獄への回数券@忍者と極道】
極道医者、繰田孔富が開発した麻薬(ヤク)。
服用することで倒(ボコ)れるほどの身体能力(パワー)と傷(ダメージ)の再生能力(ヒーラー)、頑強な防御力(ガード)を獲得。薬効は90分続く。
投下終了です。
投下いたします。
殺し合いの会場の中を、青みがかった黒髪のショートカットをした小柄の少女が必死に逃げ惑う。
ランドセルを背負った状態で必死に逃げる少女の名は"条河麻耶"。元気いっぱいでサッパリとした性格の少女であり、下手をすれば小学生と間違われかねないほどに小さな身体をした中学2年生である。
そんな彼女がなぜこのような場所で必死に逃げているのかというと、それは彼女がこの殺し合いに飛ばされて間もなく出逢った一人の男が関係していた。
それは東洋の龍を思わせる紅い軽装鎧をまとい、また騎士風の鉄仮面状のマスクをかぶった男だった。
マヤは最初、どことなくヒーロー然としたその男に話しかけようとした。しかしそれを見た男は仮面越しにでもわかるほどの邪悪な笑みを浮かべた後、こぶしを握り締めて彼女に殴りかかろうとしてきたのだ。
その突然の出来事に思わず呆気に取られてしまったマヤだったがすぐに我を取り戻してその場から逃げ出し、そして現在に至るという訳だ。
「わはは――!!くらえ、ライダーキーック!!」
だがそうやってしばらく彼女が逃げ続けていると、男のその叫びと共に彼女の膝から下の部分に灼熱感が襲い、彼女は走っていた時の勢いのままに地面へと転がっていってしまった。
「…いっ…あがあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁっっっ!!?!?」
そしてうつぶせの状態で倒れ込んでしまった彼女は自らの足を確認すると、そこには不自然な方向に曲がっている上に折れて鋭く尖った骨が筋肉と皮膚を突き破って露出している光景があった。
当然ながら彼女は泣き叫んだ。これ以上ないというくらいに声を張り上げ、喉が張り裂けんばかりに絶叫を上げたのだ。
「ライダァ〜〜……、キーック!!キーック!!うわはははははーっ!!!」
しかし男はそれでも容赦せず、そう叫びながら彼は足をへし折られて地面に倒れ込んだ彼女の背中を何度も踏みつけていったのだ。
「がっ!ぎっ!いっいぎぃぃぃぃぃっっっ!!!」
当然そんなことをされて痛がらないはずもなくマヤは彼に踏みつけられるたびに何度もうめき声をあげ、時には絶叫したがそれでも仮面の男は彼女の背中を強く踏みつけていった。
「わははは!!とどめだオラー!!」
そうやってしばらくすると男はなんと、その言葉と共にまるでサッカーするかの如く彼女の顔めがけて蹴りを入れ、吹き飛ばしたのだ。
「ぐあぁあああっ!?」
それにより彼女はゴロゴロと地面の上を転がっていくとそのまま壁に激突し仰向けの状態でようやく止まったが、その蹴りによって鼻の骨が砕かれたのかそこがつぶれてしまい大量の鼻血を噴き出した状態になってしまった。
「く……そぉ…………」
だがそれでもまだ意識があったようでマヤはなんとか立ち上がろうとしたのだがそこで仮面の男からさらに追い打ちをかけられてしまう。
「よっしゃー!!じゃあそろそろ死ねやオラァア!!」
そう言うとその男はマヤの身体に馬乗りになった状態で、彼女の顔を両の拳で幾度となく殴打してきた。
「ぶっ!げほっ!ごぼぉおっ!」
それにより口の中を切り歯も何本か折れてしまった彼女は口から赤い泡を吹き出し始め、愛らしい顔は無残に腫れあがっていきその面影を無くし始めていった。
「な゛…な゛んでぇぇ…ごんなごどぉぉぉ……ずんだよぉぉぉ……!わだじがぁ…何じだっで…言う゛んだよぉお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛……!!」
そんな状態で彼女は叫んだ。何故こんな酷い事をするんだと、涙と鼻水と血にまみれた顔でそう叫んだ。
「楽しいからだよ!こうやって圧倒的な力で他人を甚振っていくのがよ!!」
しかしそれに男はとても残酷な言葉で答えた。ただ楽しいから、人をいたぶるのが楽しいからだと、殴る手を一切止めることなくそう答えたのだ。
「ざけんな゛ぁあ゛あ゛……!ぜっだいゆるざねぇえぞぉぉぉ……!!」
それを聞いた瞬間マヤはほとんど見えていないその瞳に殺意を込めて目の前の男を見つめるとそう叫び散らした。だが、それも無駄に終わることになる。
「うるせぇ!黙れクソアマが!!」
そう言って男はまた彼女を殴りつけたからだ。そしてそれが何度も繰り返されるうちに次第に彼女の反応が無くなっていき、やがて完全に動かなくなったところでやっと男は彼女の上から降りた。
「うーわ、ブッサイクなツラ!」
そうして幾度となく殴打されたことでマヤの顔は無残にもボロ雑巾のようにズタボロになって変わり果てたものとなり、それを見た男は彼女の死体に向かってそう吐き捨てるのだった。
【条河麻耶@ご注文はうさぎですか? 死亡】
「よーし、まずは一人目だ!本日もオレさま絶好調ー!!わはははは!!」
そして彼女が完全に死亡したことを確認した男は両腕を天高く上げた状態でピースをし、悪辣とした笑みを浮かべながら下種な悪党としか言いようのない笑い声をあげていた。
この邪悪としか言いようのない男の名は"仮面ライダー龍騎"。仮面ライダーしかおらず、ライダー同士が戦う異世界において非道の限りを尽くした戦い方で勝利を重ね、契約モンスターにすらその命を狙われるほどに人望の無い腐れ外道である。
そんな彼が何故このようなことをしているのかと言うとそれは至極単純な理由であった。
「この調子で全員ぶっ殺して、その後にあのいけ好かねぇキャベツ頭のクソガキぶっ殺してヤツの力を全部奪って、全ての異世界をオレのものにしてやるぜー!!」
それは今までのライダーたちとの戦いとは違い、今度の戦いでは最後に生き残った者の願いが叶うというものだったからだ。
彼はそれを使って自らの夢である『すべての異世界を我がものにして好き勝手やる』という身勝手な願いを叶えるつもりだったのだ。
そして彼の欲望を満たすためだけに何人もの命を奪い、これからもまた同じように誰かを犠牲にしていく『最低、最悪、最凶の仮面ライダー』がこの殺し合いの会場に放たれるのだった……。
【竜生(仮面ライダー龍騎)@駈斗戦士仮面ライダーズ 超変身ギャグ外伝!!】
[状態]:健康、返り血まみれ
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品2〜6(条河麻耶の分もあり)
[思考・状況]基本行動方針:優勝してあの気に食わないキャベツ頭のクソガキ(乃亜)をぶっ殺した後、ありとあらゆる世界をこの手で征服する。
1:手当たり次第に戦い、全員ぶっ殺す。
2:卑怯?汚い?ライダー失格?知るか!勝負は勝てばいいんだよ!!
3:あー、早くだれかぶっ殺してぇー。
[備考]
参戦時期は最終回、真のライダーNo.1決定戦が始まった後。
制限により、サバイブ龍騎からノーマルの龍騎に戻されています。またドラグレッダーがいないため超変身(ライドアップ)できなくなっています。
路上に条河麻耶の惨殺死体と空のランドセルが放置されています。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します。
かわいいかわいい二人のそらとぶあかちゃんが
ほっぺたを膨らませてぷんすかぷんすか怒っていました。
とっーても許せません、普段はむじゃきで
にこにこ愛らしいふたりもこのときばかりは不機嫌です。
「ピィ〜〜〜クピッポ〜〜!!」
そりゃそうです、何にも悪くない(推定)二人の男の子を
ひどいめにあわせて死なせちゃった
かいばのあというわるーい子を
二人のがっちゃんは許せませんでした。
あの悪い子のせいでいろんな子たちがやられちゃうなんてがまんなりません。
どこかにいるこまってしまった子どもたちをお助けしなきゃ。
正義感たっぷりの使命感を胸にとべ!がっちゃん!
さぁさぁわるい子が開いた殺し合いというあくのだいさくせんを打ち砕けっ!
せいぎのみかたがっちゃんず!
「ぴぽっ!ぴぽっ!ぺ〜〜〜ぽっ!」
◆
どうしたもんかなあと言いたげに頬をぽりぽり書きながら
ちびっこ怪獣ミニラはがぶらついている。
あの海馬乃亜っていうへんちくりんながきんちょに命じられた殺し合いに
乗るつもりは毛頭もなく、むしろさっさと帰りたいなと気だるげである。
数少ない同族のゴジラと再開するため各地をさまよい
日本の富士山中についたと思ったら唐突に視界が切り替わり殺し合いを強要された。
叶えたい願いはゴジラとの再会だが
わざわざみんなをやっつけなくても探し回れば形にできる願いだし
ほかのやつらをみんなやっつけるまでもない。
あとこの首輪なんかぞわぞわして嫌だから外したい。
「クピッポオオ〜〜〜〜ピピッポペ〜〜!」
「??」
ミニラの視界に飛び込んだのは妖精に宙を舞い奇妙で変な赤ちゃんだった。
満面の笑みを浮かべ無邪気なおめめをキラッキラ輝かせ
両手足をばたつかせながらこちらを見ている。
ミニラの正体をがっちゃんずは一発で見抜いた
ぜったいにこどものゴジラことミニラじゃんと。
がっちゃんこと則巻ガジラの名前の由来はゴジラ+ガメラなのだ。
ペンギン村にもゴジラだのキングギドラだのギロンが
生息するわくわくいっぱいのへんてこド田舎だが
ミニラはマイナー気味なのかペンギン村に姿を現したことはない。
しかしっ!!この瞬間っ!!いる!
あのミニラがっ!!あのゴジラの息子のミニラがいる!!
がっちゃんずはたちまち大興奮!
特撮ひーろーの主演俳優に飛びつく子どものようにとつげきしたのです!
あまりにも気分うきうきでかいばのあをやっつけることなんかわすれちゃった!
「!?」
初対面のあかちゃんにとびつかれ驚き
思わず両腕をぶんまわし
反射的に払いのけてしまった。
振り払われたがっちゃんずは地面に叩きつけられた。
しまったいきなり襲われたとはいえ
おもいきりふっとばしてしまった
ミニラの膂力はまだ幼体とはいえゴジラの同族なので
並の者では耐えにくいほど強い。
まさか死んじゃったのか?
殺し合いにのっていないのにも関わらず
殺害してしまった可能性に冷や汗をかくがいらぬ心配のようだ。
「クピッポ〜〜!」
ミニラはこどもだけどあのゴジラのこどもだからやっぱりつおいね!
地に倒れ伏せたがっちゃんずはむくりとまえぶれなく
起き上がり攻撃されて怒ったり
怯えるどころかむしら圧倒の力の前にさらにわくわくしていた。
「!!??」
一方ミニラはますますびっくり仰天さらーに困惑している、
見たこともない相手が群がってきただけでも普通は困惑するのに
それに加え暴力をふられても逃げるどころかますます元気いっぱいになっている。
「………」
「クッピポ!クッピポ!」
渦のようにミニラの回りをがっちゃんずは飛び回っている。
こいつらどう扱えばいいんだよ。
この珍事にミニラは対処方を編み出せず警戒しつつ
呆然と立ち尽くしていた。
【ミニラ@ゴジラ FINAL WARS】
[状態]:健康 困惑
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:帰りたい、ゴジラと合流したい
1:脱出したい
2:ゴジラがいるなら会いたい
3:この二人(がっちゃんず)への困惑
※富士山中を歩き回っていた頃からの参戦です。
【則巻ガジラ@Dr.スランプ】
[状態]:健康 わくわくうきうき
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いだいさくせんをとめる
1:ミニラにあえてうれしいだいこうふん。
2:殺し合いを止めてわるい海馬乃亜をやっつける
投下は以上となります、SS名は
「がっちゃんたちとちびっこ怪獣!」です。
投下します
「ちくしょおぉぉぉぉぉおお!!!!」
怒号の声をあげる少年がいた。
彼の名は小杉太、入江小学校3年4組の男子生徒である。
ここまで怒りを露わにしている原因は悪趣味なデスゲームに巻き込まれたから、ではない。
海馬乃亜がルール説明をしている中、小杉はずっと眠っており
この場所でバトルロワイアルが行われている事すらも気付いていなかった。
ならばなぜこの少年は怒っているのか、それは……。
「俺の給食をぉぉぉぉ!!よくもぉぉぉぉ!!」
給食を食べる寸前で連れてこられたからである。
しかも、今日のメニューは小杉の大好物の焼豚チャーハンであり
今月の献立表を見た時から楽しみに待ち続けていた、というのに
その楽しみを目の前で掻っ攫われてしまったのである。
「うがあぁぁぁあああああ!!ぜっっってぇぇ許せねえ!!
俺をこんな場所に連れてきた奴!出てこぉいッ!!」
もし海馬乃亜がルールを説明している最中で目が覚めたら
間違いなく喚き散らしながら大暴れした挙げ句。
首輪を爆破され命を落としていたのは言うまでもないだろう。
このデブに時と場合を弁える知能なんて持ち合わせて無いのだから。
「ん?なんだこりゃ?」
そこでようやくランドセルの存在に気付いた。
中身を漁ると様々な道具が入っていたのだが
「お、食い物見っけ!いっただきま〜す♪」
このデブの視界には水と携帯食料しか映らなかった。
見つけ次第すぐさま口の中に放り込み、一瞬にして食べ尽くしてしまった。
「ああああああああああ!!足りねぇええええええ!!もっと食わせろォォォォ!!」
焼き豚チャーハンと携帯食料ではあまりにも割りに合わず
とても小杉の食欲を満たすには至らなかった。
「他に食い物は無いのか?ん、これはなんだ?」
乱雑にランドセルから中身を取り出すと『Aroma Ozone』のロゴが付いた業務用ウォーターサーバーが飛び出した。
ウォーターサーバーを初めて見た小杉は不思議そうに眺めてから、中の水を飲みだした。
「ごくごくっ……、ただの水じゃねえか!!これだけじゃ俺の胃袋は満足しねえぞ!!ええい、こんなもーん!!」
まさか、このデブはあろうことか
基本支給品一式やランダム支給品を全てランドセルから放り捨ててしまった。
例え、バトルロワイアルをやらされていることなど知らなかったとしても
ここがどこかも分からない場所に連れてこられたのなら
自衛や探索のために、武器やサバイバルに必要な道具を手放そうとは普通は考えない。
だがこのデブからすれば必要なのは食料のみであり
他の道具は、より多くの食料を詰め込むのに邪魔にしかならないのだ。
「どこだ?他に食い物のある場所は!?」
小杉が周囲をきょろきょろしながら歩き出した、その時――。
♢
「ここ、どこ?どうして私がこんな場所に……」
バトルロワイアルに参加させられ、不安で涙目になりながら歩く少女の名前はロレア。
ヨック村にやってきた錬金術師であるサラサのお手伝いをしている女の子である。
すると草むらからガサゴソと揺れ始め、何かが飛び出した。
「食い物ぉぉぉぉぉ!!!!」
「キャアッ!!」
恐ろしい形相で突然現れた小杉に、ロレアは驚いて悲鳴をあげる。
捕食獣の様に鋭い眼光でロレアを睨みつけ、口からは唾液がドバドバと零れ落ちる。
「貴方は……」
「お前の持ってる食い物をよこせッ!!」
「ひぃっ!」
グルルルと唸り声を上げながら恐喝を働く小杉。
このデブは初対面の子に対していきなり食い物を奪おうと言うのだ。
そんな光景を見て、ロレアは恐怖で身体を震わせる。
「わ、分かりましたから落ち着いてください!」
「おう、サンキューな」
歯向かったら恐ろしいことになると本能で察したロレアは
ランドセルに入っていた食料を全て小杉に渡すと
ガツガツムシャムシャと豚みたいに夢中になって食べだした。
(よっぽどお腹空いてたんですね。ずっと食べて無かったのかな?)
そんなことはない。
小杉は朝食もしっかりお代わりするほどに食べている。
つまり、このデブは極度の大飯喰らいなのだ。
「ああああああああああああっっ!!まだまだ食い足りねええええええええ!!」
二人分の携帯食料ではこのデブの胃袋を満たすにはまだまだ足りなかった。
むしろ中途半端に食べたことでますます空腹の抑えが効かなくなっていた。
「そこの女!もっと食い物をよこせぇ!」
「ごめんなさい、さっきのが全部なんです」
「嘘を付くな!ランドセルの中を見せろォ!!」
「きゃあっ!」
小杉はロレアを突き飛ばしてランドセルを奪い取った。
ランドセルを逆さまにして中身を全て放出させるが
ロレアの言う通り、食料はもう一つも残ってなかった。
「痛い、頭が痛いよぉ……」
その時、ロレアは頭部から流血を起こし、苦痛で涙を流していた。
先ほど突き飛ばされたロレアの倒れた場所には、不運な事に石が落ちていた。
ロレアは受け身の取れないまま、頭部に石がぶつかり皮膚を切ってしまったのだ。
「なんで、こんな酷いことをするの?」
「うるせえ!!もっと食い物を寄越さないお前が悪いんだ!!どこかに隠してるんだろ!?」
このデブは少女に大怪我を負わせたというのに謝罪の一つもしようとしない。
それどころか、まだ足りないと喚き散らす始末。
まるで、この少年が人の形をした鬼畜生のようであった。
「……お願いします。もう許してください。本当にこれ以上は何も無いんです。うぅ……」
とうとう我慢の限界を超えたのか、ロレアは泣き出してしまった。
「ああ?泣くんじゃねぇ!鬱陶しいんだよ!!おら、食い物はどこだ!!」
「うぐっ!痛いっ!やめてくだ……」
泣いているロレアに対して苛立った小杉は 彼女の髪を引っ張ったり、頬を叩き始めた。
「ふぅーーっ!!ふぅーーっ!!」
「うぅっ、本当に何も残って無いのに酷いですよぉ、うわぁぁぁああん!!」
「……?」
大声で泣き出すロレアの姿を見て息を荒くする小杉。
小杉の怒りが頂点に達しそうになったその時。
ロレアを見て怒りとは別の感情が小杉の脳内へ訴えかけた。
それは……
『美味しそう』
だった。
「ッ!?」
先ほどまで泣いていたロレアの涙が引っ込むほどの恐怖が彼女を襲った。
「あ、ああっ……」
「お前、美味そうだなぁ」
小杉に突如襲った食人本能の影響で
彼の身体から黒い血管模様が浮き出す。
目は血走っており、ロレアを獲物として見つめていた。
さらに小杉の肉体は変異を起こし、醜悪な姿をした怪物の姿になった。
一回りほど巨大化した肉体に、クマのように太い腕に、鋭い爪を光らせ。
大きな口からはまるでサメのようにびっしりと尖った歯が生え揃っていた。
その姿はまさに化け物と呼ぶに相応しい姿である。
なぜ小杉がそんな姿になったか。
それは先ほど小杉が飲んだウォーターサーバーに混入されていた溶原性細胞によるもので
この細胞に感染し、発症した物はアマゾン態へと変異する性質を持つ。
そしてアマゾンに変異したものは食人本能によって人間を捕食する傾向になる。
今の小杉にとってロレアはもはや食べ物としか見ていなかった。
「やだ、来ないでください……お願い、来ないでぇぇぇぇ!!」
モンスターだったらヨック村でも様々なモンスターを見た。
だが目の前にいる怪物はそれらのどのモンスターとも特色が違っていた。
動物の延性上な見た目のモンスター達とはまるっきり別物のおぞましいビジュアルの怪物にロレアは心のそこから恐怖した。
「ふひひっ、食ってもいいだろお前」
「いやぁ!食べないでくださぁぁい!」
「嫌だね。俺はお前を食うと決めた」
のっしのっしとロレアのそばに近づく。
ロレアは必死に小杉から逃げようともがくが、脳震盪によって立つことすらままならない。
「やだ、やだ、誰か助けて……」
「服が邪魔だな」
「い、イヤァアアアッ!!」
小杉の剛腕によってロレアの服がビリビリと引き裂かれる。
13歳の小さな女の子の割には発育の良い豊満な胸がブルンと溢れる。
思春期の男子からすれば非常に劣情をそそる体付きをしているが。
目の前にいる捕食者からすれば美味そうな食材としか見えていない。
「いっただきまぁす!!」
「やだ、やだよぉ、死にたくないよぉ……」
「ガブッ!!」
「きゃあああああっっ!!!」
小杉のサメのような歯がロレアの左肩に齧り付く。
肉を噛み千切られた痛みで悲鳴を上げる。
「痛いぃい!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」
あまりの激痛にロレアは悶絶しながら泣き叫ぶ。
「うめええええええええええええ!!!人間ってこんなに美味かったのかぁ!!!」
小杉は彼女の肩にかぶりつきながら歓喜の声を上げた。
口の中にはロレアの血液と肉汁が溢れんばかりに満たされ、それをゴクゴクと喉を鳴らして飲み干していく。
「あああああああっ!!いやああああああ!!!!!!!!」
「もっと食わせてくれェエエッ!!!」
「ひぐぅううううううっ!!」
小杉はさらに力を込めてロレアの肩の肉を食いちぎっていく。
「あがぁぁあああああああああっ!!」
「美味い!美味すぎるぜぇ!!最高だぁああああ!!!」
ロレアは絶叫を上げ、小杉は狂喜乱舞する。
左肩から腕にかけて小杉はボリボリと食い尽くした。
「私の左手がぁ……お願い、もうやめて、もうやめ、てぇ……」
「まだ食える所あるだろうがぁ!!」
「いやぁ……」
「その大きなおっぱいも美味しそうだぁ!」
小杉は大口を開けて、ロレアの豊かな乳房に齧り付き、歯を食い込ませた。
本来、溶原性アマゾンは身体の一部分しか捕食しない生き物であるが。
彼の場合、生前の食い意地が影響されたのかどこの箇所でも美味しく味わえるようだ。
「うわああああああああっっ!!痛いいいっ!!痛い痛いっ!!痛いっ!!いだいぃいっ!!」
「うおおおおおお!!柔らかくて美味ええ!!」
ブチブチと音を立てながら乳房が噛み千切られる。
魅力的だった大きな乳房は両方とも失い。
胸元は赤く抉られロレアの意識が飛びそうになるほどの激痛を襲った。
「次はどこを食おうかなぁ」
「ああっ……いやぁ……いやぁ……」
「次はこれだああっ!!」
小杉は人差し指を突き出すと、ロレアの顔へと近づけた。
鋭い爪はロレアの黄色い瞳へと近づけて……
ぶちゅり
ロレアの右目をえぐり出した。
「いやああああああああああっっ!!!私の目がぁっっ!!」
眼球をくり抜かれ、右目から大量の血を流す。
あまりの苦痛にロレアは大声で叫んだ。
「目玉もうめぇなぁ!!」
「お願いします、もう許して、殺さないでください……」
ぷちゅっと潰れる目玉の歯ごたえを楽しむ小杉。
涙と血を流し、懇願するロレアに対して小杉は無慈悲にもこう言い放った。
「殺す?馬鹿言うんじゃねぇよ。こんなに美味しいんだぜ。食ってやるに決まってるじゃねえか」
そう言って、小杉はロレアの腹に右手に手を乗せた。
「あがっ、あぎゃああああっっ!!」
小杉の右手がロレアの腹を鷲掴みにする。
そのままグチャリグチャリと音を鳴らしながら彼女のお腹を引き裂いて腸を取り出していく。
「あ"……うぅ……」
「うほぉおおお!!こっちも美味そうだ!!」
「やべで……やべでぐだざい……じんじゃいます……」
「いただきまぁーす」
「やだ、やだ、やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ」
必死に抵抗しようとするが、先ほどから続く激しい痛みによって身体が動かない。
そして小杉のサメのような歯がロレアの腹部に突き刺さる。
「うわあああああああっっっっっっ!!」
小杉の口内でロレアのドロリとした血液が満たされる。
「うめぇえ!!うめぇえ!!」
「ああっ……うぐぅううっっ!!」
小杉はロレアの柔らかい肉に歯を食い込ませ、咀噛していく。
噛み千切るたびにロレアはビクンッと痙攣を起こしていた。
「やだぁ……死にたくない……サラサさん、たすけ、ぐぇっ」
ロレアの目からは生気が消え失せ、虚ろになっていた。
「うめええええええええええ!!!もっと食いてええ!!」
「やべでぇ……かはっ……」
腹部の腸を食い尽くすと、今度は胸元にある内臓へと手を伸ばす。
肋骨をこじ開けて、ロレアの肺、肝臓、腎臓、心臓、と次々と内蔵を引きちぎり、咀嚼を繰り返した。
「うめぇうめぇ!!最高に美味いぜお前!!」
小杉からの問いかけに返答は来なかった。
体内を食らい尽くされたロレアは既に事切れていた。
ここがどこかも分からない島で、一人ぼっちで誰にも助けてもらえず。
苦悶の表情のまま最後まで怯え、絶望して彼女は死んだ。
亡骸もあらゆる箇所が小杉によって食い散らかされ
村人たち皆から好かれるような愛らしかった少女の面影はどこにもなく。
誰もが目を背けるような見るも無残な姿へと変えられた。
「脳味噌も濃厚でいけるぜ!」
最後にロレアの頭部を掴むと頭蓋骨を砕いて、中の脳味噌を掬い出して全て平らげた。
「ふううううっ、美味かった美味かった!人間がこんなに美味しいなんて知らなかったぜ〜」
満足したようにゲップをする。
その様子はまるで、極上の食事にありつけたかのように満ち足りた顔だった。
「でもまだ、ちょっと食い足りないんだよなぁ」
なんと、このデブアマゾンは少女一人を捕食したというのにまだ足りないと抜かしてきたではないか。
人間の味を覚えた獣がやることはただ一つ。
「しょうがねえ、他の人間を探すかぁ〜!!」
新たな獲物を求めて、他の参加者の捜索だった。
このデブは殺し合いに一切の興味が無いし、殺し合いをやるつもりは無いだろう。
彼はあくまで食事をするだけだ。
それで誰が死ぬことになろうが一切興味ない。
自分の食を満たすことしか考えられない。
もはやこいつは身も心も人間ではない。
本能のままに動き、人に害を為す獣。
まさに『害獣』である。
【ロレア@新米錬金術師の店舗経営 死亡】
【小杉太@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康、腹六分目、溶原性アマゾン化。
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:食料(人間)を探す。
1.どこかに食い物(人間)無いかなぁ。
[備考]
※参戦時期は給食を食べる直前です。
※バトルロワイアルのルールを一切把握していません。
※溶原性細胞に感染、発症しました。
※溶原性アマゾンに変身することが出来ます。
【Aroma Ozoneのウォーターサーバー@仮面ライダーアマゾンズ】
とある会社が製造しているAroma Ozoneという名の業務用ウォーターサーバー。
水の中には人をアマゾンに変える溶原性細胞が含まれている。
感染しても発症せずにアマゾンに変異しない人達も多数いる。
※食い散らかされたロレアの死体が散乱されています。
※ロレアと小杉のランドセルが放置されています。
投下終了です
あと文章の最初に書き加えるのを忘れていましたが
このSSには残酷な表現が含まれています。
苦手な方には不快となる内容なのでご注意ください。
を収録の際に付け加えるようにお願いします
投下します
暗い路地に、一人の少女がたたずむ。
彼女の名は、水瀬伊織。
765プロに所属する、お嬢様アイドルだ。
(ドッキリ……だと思いたいんだけどねえ。
さすがにいくらあいつでも、こんな悪趣味な仕事は取ってこないでしょ)
日頃無茶な仕事ばかりやらされている伊織だったが、今回はそれらとは違うと感じ取っていた。
自分たちのプロデューサーがろくでもない人間なのはたしかだが、それでも彼は彼なりに守るべきラインをおのれのうちに持っている。
そのプロデューサーが、こんな企画にGOサインを出すとは思えない。
それに、最初に殺された二人の子供。
彼らは演技などではなく、間違いなく死んでいた。
無人島ロケで数々の獲物を狩ってきた伊織には、肌でそれを感じ取ることができていた。
とはいえ、あんなにグロテスクな死を見るのは初めてだ。
脳内で再生された映像が吐き気を誘発するが、なんとかそれを抑え込む。
(無人島で鍛えられた根性、なめるんじゃないわよ……!
暴力で脅してくるクソガキに、屈してたまるもんですか!
絶対にあいつをぶちのめして、この殺し合いとやらを破綻させてやるわ!)
いやな汗をかきつつも、伊織は闘志を燃やす。
(まずは、現状の確認ね)
伊織はその場にしゃがみ込み、支給されたランドセルを開いた。
(なんでランドセルなのよ……。
いくら小柄でも、小学生扱いされるのは不本意なんだけど!
……そういやあいつ、私たち全体をまとめて「子供」って言ってたような……。
殺し合いの参加者は、全員子供ってこと?
いや、だから子供扱いするなっての!)
主催者への怒りに打ち震える伊織だったが、ふとある可能性に気づき一気に冷静さを取り戻す。
(集められたのが子供だとしたら、亜美と真美も危なくない?
やよいは……微妙なラインかしら。
春香や雪歩までいくと、さすがに範囲外だと思うけど……)
同じ事務所の仲間も、殺し合いに参加させられているかもしれない。
その可能性を鑑みて、伊織は息を呑む。
(ちょっと、名簿とかないの?
あ、これ……はぁ!? 第1回放送まで閲覧不可能!?
変なロックかけてるんじゃないわよ!)
再びヒートアップしかける伊織。
しかし、深呼吸で心を落ち着ける。
(落ち着きなさい、伊織……。
あの子たちだって、無人島で鍛えられてるのよ。
そう簡単には死なないはず。
少なくとも、名簿が解禁されるまでくらいは一人でも生き残れるはずだわ)
仲間たちの心配はいったん棚に上げ、伊織は荷物の確認を再開した。
(武器になりそうなのは、剣と槍か……。
まあこの二つなら、槍ね)
日頃の狩りで主に銛を使用している伊織は、ポールウェポンの扱いには慣れている。
ゆえに槍を装備することを選び、剣をランドセルに戻した。
(とりあえず、これで自衛はできる……。
次にやるべきは……情報収集ね。
それじゃ、行きましょうか。
アイドルは根性!)
おのれに気合を入れ、伊織は歩き出した。
◆ ◆ ◆
小さな公園のブランコに、一人の少年が座っている。
右目を眼帯で覆った痛々しい姿の彼は、沈痛な表情で虚空を見つめていた。
少年の名は、アンチ。
心を持った怪獣である。
「俺は……どうすればいい……」
アンチは苦悩していた。
おのれの存在意義であるグリッドマンの打倒はいつまで経っても果たせず、創造主である新條アカネには見捨てられた。
自分がこれからどうすればいいのかを模索している最中に、アンチはこの殺し合いに参加させられた。
殺し合いに勝ち抜くべきなのか、あらがうべきなのか。
彼の少ない経験では、それを選択することもできなかった。
「何を辛気くさい顔してるのよ、あんた」
いつの間にか、アンチの前に一人の少女が立っていた。
たまたま公園の前を通りかかった伊織である。
「おまえは、どう思う」
「はあ? 何がよ」
アンチの唐突な問いに、伊織は顔をしかめる。
「俺には、自分がどうするべきなのかわからない。
優勝して願いを叶えるべきなのか。それとも乃亜とかいうあの男を倒すべきなのか。
おまえは、どう思う」
「知らないわよ」
伊織の返答は、あまりにストレートな言葉。
全く予想しなかった答に、アンチは思わず間の抜けた表情になってしまう。
「他人に自分の方針丸投げしてるんじゃないわよ。
あんたの人生は、あんたのもん!
自分が何をするかくらい、自分で決めなさい!」
「だが俺には……決められない……。
俺には、他人から与えられた使命しかないんだ。
こんなわけのわからない状況で何をすればいいかなんて、俺には……」
絞り出すように告げるアンチを見て、伊織はため息を漏らす。
「仕方ないわね、少し手伝ってあげる」
そう言って、伊織はランドセルから取り出した剣をアンチに投げ渡した。
「……なんのつもりだ」
「私は槍を使うから、そっちはいらないのよ。
あんたにあげる。それで最低限、自分の身は守れるでしょ。
とりあえず生き延びて、自分のやることを探しなさい」
「…………」
アンチは困惑した様子で、伊織と剣に視線を交互に送る。
「じゃあね。せいぜいがんばりなさいよ」
最後にそう言うと、伊織はその場を立ち去ろうとした。
だが、その後ろにアンチがついてくる。
「……どういうつもり? ついてこいとは言ってないんだけど」
「剣をもらった借りは返す。
しばらく、俺はおまえを守る」
「私のナイトになってくれるってわけ?
まあ、あんたがそうしたいなら別にいいわ。
言ったからには、足手まといになるんじゃないわよ」
「ああ」
再び歩き出す伊織。アンチもそれに続く。
「ナイトか……。それも悪くないかもしれない……」
ぼそりと呟き、アンチは剣を強く握りしめた。
【水瀬伊織@ぷちます!】
[状態]健康
[装備]ゲイ・ボルク@Fateシリーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1(武器ではない)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰す
1:事務所の仲間が参加させられていないか心配
【アンチ@SSSS.GRIDMAN】
[状態]健康
[装備]幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:伊織を守る
[備考]
※参戦時期はアレクシスに襲撃されてから、グリッドナイトになるまでのどこか
※怪獣形態にはなれません
【ゲイ・ボルク@Fateシリーズ】
クー・フーリンの宝具である、朱色の槍。
主催側の調整により、本ロワでは本来の持ち主でなくても魔力があれば
「刺し穿つ死棘の槍」および「突き穿つ死翔の槍」が発動可能。
【幸運と勇気の剣@ジョジョの奇妙な冒険】
黒騎士ブラフォードの愛剣。
刀身に「LUCK」の文字が刻まれている。
彼がジョナサンに敗北した後、血でPの文字が加えられ「PLUCK」としてジョナサンに託された。
投下終了です
投下します
市街地の一角で、道に倒れていた少女が、頭を押さえながら起き上がった。
何かを思い出そうとするように頭を振ると、向かって右に結んでいる髪が揺れた。
「ばとるろわいある?」
少女――双海真美は、噛んで含めるようにその言葉を口にした。
いきなり連れてこられた場所で、殺し合いを命じられたのが数分前。
765プロ所属のアイドルとして、一般人とは異なる世界に足を踏み入れており、なんなら謎の生き物を飼育している真美でさえ、この状況を即座に理解することは難しかったらしい。
「これからどうしたらいいのかな、兄ちゃん……」
ひとりぼっちの心細さも加わってか、真美はぽつりとプロデューサーの愛称を呟いた。
しばらく同じ場所で立ち尽くしていると、もうひとり少女が現れた。
「真美〜!」
「この声、亜美!?よかったぁ〜!」
背後から呼ばれた声に気づいた真美は、胸をなでおろした。
ふり向けば、真美にとって誰よりも見慣れた姿が、息を切らせて走って来ていた。
双海亜美。向かって左に髪を結んだ、真美の双子の妹だ。
「よかった、真美が近くにいて!」
「うん、もう一生会えないかと思ったよー」
「え?なんで?」
きょとんとした亜美の顔を見て、真美は困惑した。
「なんで?って……殺し合い、なんでしょ?」
そう神妙に告げた真美だったが、亜美には一蹴されてしまった。
「やだなー真美、こんなのテレビの企画に決まってるっしょー!
きっと、いまどき流行りの“リアリティーショー”ってやつだよ!」
「……でも、あの男の子たちは?」
「あれはそういう映像だって。ぶいあーる技術?とかそういうヤツ。
最近のゲームのムービーはリアルになってるの、真美も知ってるっしょー?」
「そっか……うん、そーだよね!」
不安げに眉をひそめていた真美も、次第に笑顔を取り戻していった。
それはあっけらかんとした亜美の態度にあてられてか、あるいは、殺し合いから必死に目を背けようとしたからか。
「あれ?じゃあ、亜美がさっき“真美が近くにいてよかった”って言ったのはどうして?」
「んっふっふ〜♪それはね……じゃーん!」
跳ねるような声をさせながら、亜美が真美へと見せたのは、小脇に抱えるサイズの銃。
いわゆるアサルトライフルと呼ばれる軍用銃の一種だが、その素材はプラスチックで、まるで玩具のような質感だ。
「これって?」
「亜美の支給品だよー!
チョー強そうでしょ?この銃なら、このゲームも楽に攻略できそうだと思うんだ」
「ゲーム……」
「ねえ、亜美と真美で協力して、最後の二人になろーよ!
ひとりだと難しいかもしれないけど、力を合わせたらできるって!」
どうやら亜美は、この状況を体感型ゲームだと考えているようだ。
キラキラとした瞳で話す亜美の雰囲気に呑まれて、真美もノリノリで答えた。
「それいい!ラストバトルは燃え上がる舞台で決まりだね!」
「うんうん、それだー!」
「お互いに力つきる直前の一撃で、ついに勝負は決した……。
敗れた亜美は、親指を立てながら溶鉱炉へと沈んでいくのだった〜!」
真美は口でブクブクと言いながら、沈んでいく真似をした。
「うあうあ、なんで亜美が負けなの〜?
じゃあ真美は、右腕を天高く上げたまま、息絶えていた〜とか!」
亜美は右腕を上げながら、とある有名な漫画のセリフを口にした。
「メッチャ盛り上がりそーじゃん!」
「うん!ゼッタイ楽しいって!」
キャッキャッと夢を膨らませる二人は、すっかり普段通りの無邪気さだ。
それでも真美は、いくらか冷静さを残しているようで、亜美に問いかけた。
「ねーねー、いおりんとかやよいっちがいたらどーする?」
「甘いよ真美!ここはヤキニクテーショクの世界……」
二の腕で涙をぬぐうふりをして、芝居がかった調子で続ける亜美。
「たとえ765プロの仲間とて、情けは無用なのだ〜!」
「むむむ、世知辛いですなぁ〜亜美どの」
「もし裏切れば、真美とはいえ許さないかんね!こう、ぱららららーって」
軽口の応酬の流れで、あまりにも簡単に、そのトリガーは引かれた。
「え?」
誕生日のクラッカーよりも大きな破裂音と同時に、真美は身体を尋常でない力で押された。
押された、というのは真美がそう感じただけで、実際には数発の銃弾を胸に浴びていたのだが、そのことを真美が自覚することはなかった。
(亜美……)
仕事終わりに睡魔に襲われたときのような、急激な意識の混濁に、真美は抵抗できない。
親指を立てることも、言葉を発することもないままに背中から倒れた。
そして、そのまま双海真美は死んだ。
【双海真美@ぷちます!】死亡
■
「え……真美?」
「真美!?真美ってばー!?」
「ちょ、ジョーダンきついっしょ〜?」
「だってこれ、オモチャじゃ……」
「……うそ、だよね?」
「真美」
■
まだ幼いアイドルたちの多くは、無邪気さを売りにしている。
ただ純粋に歌やダンスを楽しむ汚れのない姿こそ、ファンの求めるものである。
それでは、そのアイドルに“死”という穢れが生じた場合、どうなるのだろうか。
確実に言えることはひとつだけ。
これは、双海亜美にとっての「おとなのはじまり」なのだ。
【双海亜美@ぷちます!】
[状態]:混乱
[装備]:オモチャの兵隊(トイソルジャー)@とある魔術の禁書目録
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:???
1:混乱中。真美はどうしちゃったの?
[備考]
※参戦時期は未定。
※双海真美の支給品は、手つかずのまま遺体の付近に放置されています。
【オモチャの兵隊(トイソルジャー)@とある魔術の禁書目録】
双海亜美に支給。
銃器としての正式名称はF2000R。本編では<妹達>が使用した。
材質は積層プラスチックであり、まるでオモチャの鉄砲にも見える。
赤外線により標的を補足し、電子制御で『最も効率良く弾丸を当てるように』リアルタイムで弾道を調整する機能を持つ。
銃身を覆う衝撃吸収用の特殊ゴムと炭酸ガスにより、射撃の反動は極限まで軽減されており、その反動は『卵の殻すら割らない』と評される。
投下終了です。
亜美真美の出典元については悩んだのですが、◆NIKUcB1AGw氏の『ぷちます!』を出典にするという発想に脱帽し、参考にさせて貰いました。
投下します。
『人を食らえ…お前は女郎蜘蛛…』
(やだ…また頭の中で…あの声が聞こえる…)
会場内のとある場所。短髪の少女の姿をした参加者が倒れた姿勢のまま、頭の中に聞こえる声に怯えている。
彼女は童守小学校の校内で齢20年を迎えた雌蜘蛛が誰の目もつかない所で妖怪の女郎蜘蛛として新しく『誕生』した糸美(いとみ)。
人間の恐怖から生まれ、闇の力を吸って『生まれた』妖怪であり、人を捕食しなければ元の蜘蛛に戻って寿命を終える生物である。
『生まれた』その日の休み時間、校庭の遊具で遊んでいた時にやって来た男子生徒達とすぐに仲良くなって一緒に遊び、その最中に女郎蜘蛛が持つ『肉眼では見えない、捕食対象となる人間を引き寄せる赤い糸を頭から出す能力』を知らず知らずの内に発動し、5年3組の担任であった鵺野鳴介ことぬ〜べ〜からそれを指摘された時は『友達を沢山作る能力』だと考えていた。
その次の日には男子生徒達の注目の的となっていたが、子供たちが寝静まった夜に、突然巨大な蜘蛛の姿に変身し、眠っていた男子達を糸で引き寄せ、一斉に捕食しようとしていたところをぬ〜べ〜に阻止され、『人を食らえ、食わねば只の年老いた蜘蛛に戻り寿命で死ぬ』という声を頭の中で聞いたということを彼に伝え、お経を唱えてもらい誰も人間を捕食せず元の蜘蛛に戻って寿命を迎えその生涯を終えた筈だった。
…が、彼女はこの殺し合いに招かれ、蘇らされてしまった。
自分がそうなった事実も、ルフィが蘇生される場面を目撃して確信した。
(そんな…先生に助けてもらったはずだったのに…また…苦しい…)
苦しむ彼女のボウタイに付いた飾りに蜘蛛の印が浮かび上がる。
「──────ッ!! ─────────ッ!!」
すると、掠れた様な叫び声をあげながら胴体から蜘蛛の脚が6本生え、人間のものそっくりであったそれぞれ2本の手足も蜘蛛の節足に変化し、衣装を引き裂く。
「……………」
その姿は、元の世界で変身たものと同じ、巨大な蜘蛛であった。
再び巨蜘蛛の姿となった彼女は、捕食対象を引きつける糸を放ちながら走り出していったのであった…。
【糸美@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:巨大蜘蛛に変身中、人を引き寄せる糸の数本出している、老体
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:糸美:誰も殺したくない。頭の中の声:人を食らえ
1:頭の中の声:人を食らう為に移動。
2:糸美:童守小の男子生徒達が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※捕食対象となる人間を引き寄せる糸を出す能力に制限が掛かっており、一度に数本程しか出せない様になっております。
投下終了です。
>>441
誤字を発見した為、状態表を以下のものに修正させていただきます。
【糸美@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:巨大蜘蛛に変身中、人を引き寄せる糸を数本出している、老体
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:糸美:誰も殺したくない。頭の中の声:人を食らえ
1:頭の中の声:人を食らう為に移動。
2:糸美:童守小の男子生徒達が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※捕食対象となる人間を引き寄せる糸を出す能力に制限が掛かっており、一度に数本程しか出せない様になっております。
投下&wiki編集、ありがとうございます!
>お前は落ちこぼれじゃないんだから
未知の魔法少女相手でも確実に対応して対処し、駆け引きに持ち込んで動機まで聞き出す有能っぷり。
後のインフレで印象薄れがちですけど、ネジって本当に強いですね。
スイムスイムとの対比も上手に描写されたお話でした。
>カエシテ
タイトル見た時、高橋一生が市川猿之助をおんぶする話かと思っちゃいましたね。
それはさておきルークの叫びは悲痛ですね。宿願を目前にロワに拉致られるとは最悪のタイミングですよ。ただ、札束を増やして戦うって言うのは変わり種の能力で面白いですね。
チロルもまた悲惨なタイミングで呼ばれてしまったようですね。何とか、人を食べる前に食糧問題を解決してほしいですが……。
>ぴょこLOVE💗注意報
悪いことが殺し合いに乗らないことであることを祈るばかりですね。
>手なずけられるか、太古の力
本編のオーズの力はまさしく守護者でしたが、それを破壊者に変えてしまう相手に渡ってしまったのが運命の悪戯ですね。
恐竜の力というのも相性が良さそうですし、他参加者達の脅威になりそうです。
>Deep One(深きもの)
イカちゃん! 痛い目見る前に危ないことは止めよう!!
>『あなたを守る』
かつてはただの乱暴者だった金田でしたが、ぬーべーの元で大きく頼れる男に成長したのが伺えるお話でした。
>霧と雷
ゼオン、やはりこの時期ではマーダーになりますか……相方もかつてのLSロワで猛威を振るったジャックちゃん、これは強力コンビですね。
ただそんなヤバいコンビとは裏腹にお母さん呼びをするジャックと、それを嫌がるゼオンがほのぼのする温度差も魅力的でした。
>普通の少女と偽られた少女
ぬーべーにもありましたね。広のホムンクルスが出て来る回で、郷子メインのエピソードだったのでそれを掛けた組み合わせですかね。
もしリコが残酷な真実を知った時、郷子がどう声を掛けるか気になるところです。
>野球と修羅
子供が多いせいか、結構直情的なキャラが多いなかステルスマーダーを選ぶ当たり、中々狡猾な女の子ですね。
狡猾にならざるを得ない程、歪んでしまったのかもしれませんが。
>愛と誇りと
良い啖呵ですね。私、こういうキャラ好きですね。
死も恐れず、子供を守護るという潔いほどの正義感は見てて気持ちいいぐらいです。
>抗え、ホイッスルが鳴るその時まで。
好きだったサッカーを殺しの道具にしていた黄金球が、円堂という屈指のサッカーキャラと出会う事でサッカー選手としての自分を取り戻しつつある。
良いですね。黄金球に対しての特化にはなりますけど、忍者と極道本編では出来ないグラチルへの救済IFかもしれません。
ただ、どんな決着になろうとも黄金球は正しい道には戻れなさそうなのが、物悲しいですが。
>限りなく黒に近い、紅き龍の影
俺の知ってる龍騎じゃない……。
こんな仮面ライダーになって生身の人間に平然と振るう小学生はおかしいですよ。浅倉ですら、それはしなかった気がします。
>がっちゃんたちとちびっこ怪獣!
その辺の人間参加者より、良識のあるミニラに感心しますね。殺人が良いか悪いか、分かっている怪獣はそうはいないでしょう。
がっちゃんずが憧れるゴジラの息子だけあります。
>さっきまで生命だったものがあたり一面に転がる
こいつ、いつも食い物でトラブってるな。
空腹小杉は、大野と杉山をまとめて相手して退ける強キャラですからね。これほど、お手軽にマーダー化出来る男はそうはいませんよ。
ロレアはこんなデブと関わったばかりに……。
>アイドルじゃナイト
アイドルというより戦士の心構えですね。
まだグリッドナイトになる前のアンチ君ですが、これだけ覚悟決まったアイドルと組むとなれば、よい方向にメンタルが傾きそうです。
>おとなのはじまり
完全にやっちゃいましたね。
現実見るか妄想に逃げるか、どっちにしても亜美はもう破滅に突き進みそう。
>蜘蛛
本人が食人を拒否するのに、妖怪としての本能がそれを許さないのは悲惨ですね。
感想ありがとうございます!
投下します。
「くそ!教師として情けない!」
己を責める。
子供の命が無残に散るのをただ見ていることしかできなかったからだ。
子供の命を守れずして何が教師か!
悔やんでも悔やみきれない。
「あの子たちにも将来があったはずなのに……ッ!」
ルフィとエース。彼らの夢は何だったんだろうか。夢の果てを見ることなく、この世を去ってしまったあの二人。願わくば兄弟仲良く成仏してもらいたい。
「しかし、この姿……」
少年は鏡に映る己を見て驚愕する。
そう、今の自分の姿は小学生の時の姿。
勿論、自分はもう小学生ではない。立派な成人で本職は教師。
名前は鵺野鳴介。生徒からぬ〜べ〜と慕われている霊能力教師。
「うむ。身体を変形できる……ということは、俺の身体が小学生にされたということではないな。陽神の術か」
陽神の術。
それは、気を練ることで作りだせる分身体。
訳あって、童守小で勤務していたときに作った分身体では、陽神明と名乗った。
「やはり解除はできないか。あの子の仕業とみて間違いなさそうだな」
解除できぬと言うことは、乃亜によるバトルロワイアルを何とかやめさせるのは難しいということ。
それを否応なく理解させられた。
「だからといって、こんなのを容認することはできない!」
(もし、俺の生徒が巻き込まれていたら……くそ!)
教師として、未来ある子供同士が殺し合いをすることを断じて肯定することはできない。
それに乃亜によって集められたあの場所。周囲にいたのは、どれも子供ばかりだった。
つまり、参加者には、自分の生徒やかつて受け持った生徒がいてもおかしくないということ。
想像しただけでも最悪だ。
なんとしてでも、乃亜の凶行を止める。
鵺野鳴介は決意する。
その直後。
ジリリリリリ♪♪♪
「ん?電話の音か?」
鳴介の耳に響くは電話のベル。
周囲を見渡すとそれを発見した。
それは、今ではもう見かけることはなくなった黒電話だった。
若干のノスタリジーに浸りつつも受話器を取ろうとする。
繰り返し鳴り響くは惑う音。
まるで、最初から鳴介を狙ってるかの如く。
「……もしもし」
わたし、メリーさん
すると受話器から声が聞こえた。
一見可愛らしい声。
親しき友達に語り掛けるかのような鈴が鳴る声。
思わず、受話器越しの相手の姿を想像してしまうほど。
今、あなたの 後ろにいるの
―――ザシュ!!!
「なッ!?」
言葉と同時に鳴介の背中に突き立てられる鋭い刃。
迷いない刃は確実に鳴介の肌を深くパックリと斬り裂いた。
血しぶきが噴水のように噴き出す。
こうして鵺野鳴介こと陽神明は姿も知れぬメリーさん?の手によって命を散らしてしまったのであった。
【陽神明@地獄先生ぬ〜べ〜 死亡】
「……?」
「はぁ……はぁ……はぁ……」
(この身体じゃなかったら死んでいた……しかし、この痛みは……ぐぅ!?)
陽神は死んではいなかった。
刺された箇所の傷を気の力で塞ぐ。
傷はみるみる塞がれる。これでひとまずは安心といったところ。
それと同時に陽神は気づく。
ここでの痛みは本体に直結することを。
本来、分身体であるこの身はいくらダメージを負おうとも本体には影響を与えない。
しかし、このメリーさん?に刺された傷は本当に刺されたかのような痛みを感じたのだ。
つまり、答えは一つ。このバトルロワイアルでの死に繋がる怪我は本当に死ぬということを。
「へ〜。貴方、人間だと思ったけど私達側だったの?」
メリーさん?は、首を傾げながら問いかける。
おそらく人間だと思っていたからだろう。
声色には若干ウキウキワクワクも入り混じっているようだ。
「……いや、俺は人間だよ。それより君は妖怪なのか?」
(妖気を感じるから、それは間違いない。……が、刺されるまで認知できなかった。一体これは…)
「ふ〜ん。外の世界の人間って体がうにょうにょするのね。後でお姉ちゃんに教えてあげようっと。それと、私の名前を知りたいのね。私の名前は古明地こいしだよー。よろしくね」
メリーさんは?陽神のことを若干勘違いしつつ自己紹介をした。
―――本怖!貴方の後ろにいるよ ―――
―――古明地こいし―――
「こいし……もしかしてサトリの仲間かな」
「せいかーい。というか仲間じゃなくてサトリだよ。」
こいしは陽神の答えにパチパチと拍手する。
よく当てましたと。
「そうか。……それで君はあの子の言う通り、殺し合いに乗ったのか」
「?。だって、これってそういう異変でしょ?」
こいしは無邪気に答えた。
幻想郷では、こういったぶっ飛んだ出来事はよくある光景。
乃亜と名乗る少年らしき子が異変の首謀者で、内容は弾幕ごっこでもない殺し合い。
ならば、異変に従い、出会った者を殺す。ただそれだけのこと。
こいしはそう認識した。
「殺し殺すのが今回の異変。なら異変を起こしたあの人間の子供を殺すことで解決。それでお終いでしょ?」
本来、異変の解決は巫女の役目だが、自分が解決するのも楽しそう。
それに解決した後、死体を猫に運ばせれば問題なし。お姉ちゃんもきっと喜ぶだろう。
「いや、あの子のことだ。きっと優勝してもすんなりと終わらせるとは思えない」
集めた子供たちをただ殺し合わせて、優勝者に願いを叶えることが乃亜の思惑ではない。
この蠱毒に似たやり方。必ず裏がある。
陽神はこいしを説得しようと力説する。
「しつもーん。それって、特に問題ないんじゃないの?」
「……なんだって?」
残念ながら陽神の想いは、こいしには伝わらない。
「貴方のいうことも分かるわ。でも、妖怪は人を襲う。人は妖怪を祓う。それが人妖の健全な関係でしょ?だったら、ここで私が人を襲い、殺めようが自然の摂理じゃない?」
「それは違う。人と妖も分かり合えるよ。なぜなら、俺の妻も妖怪だからね」
確かにこいしの言うことも一理ある。
人を襲う数多の妖怪を祓い生徒や人を救ってきたからこそ、こいしの言葉を強く否定はできない。
しかし、妖怪全てが人に仇なす存在でないことも同時に知っている。
現に陽神こと鵺野鳴介の妻は雪女。生粋の妖怪なのだから。
「人と妖の夫婦?……ふーん。だけど理解できているのかしら?人と妖の命の長さを。いつか必ず後悔する時がくるかもよ?」
「かもな。だけど知ってるか?いい夫婦関係は片目を閉じるのが大切なんだぞ」
「……」
陽神の返答にこいしは無言で見つめる。
「……いいわ。殺して回るのは一時保留とするわ」
「そうか。分かってもらえたんだな」
石のように硬いこいしの態度が軟化したのを陽神は感じ取ることが出来、笑みを浮かべる。
「勘違いしないで。ここなら、メリーさんで驚いてくれそうな人間がたくさんいそうだから、驚かせて回ろうとするわ」
そういうと、こいしは陽神の前から姿を消した。
「……いったか」
(表情がまったく読めなかった。だが、去り際のあの言葉を俺は信じたい)
出来ることなら祓いたくはない。
それが陽神の偽りなき本心。
「さて、俺も動きださなければ。子供たちを守るために!」
陽神も動き出す。
地獄先生ならぬ地獄少年の行く末は果たして。
【陽神明@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:疲労(小)、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:儀式を阻止しつつ他の参加者を護る
1:他の参加者を探して保護する
2:自分の生徒たちがこれに巻き込まれていないことを祈る
[備考]
ぬ〜べ〜S終了後からの参戦です。
肉体は陽神の術で作られた身体です。
肉体の変化や負傷の回復はできますが、疲労します。(疲労が大きいとできない)
名簿には本当の名前「鵺野鳴介」ではなく「陽神明」で記名されます。
肉体が陽神の術のため、鬼の手は使用不可能です。
【古明地こいし@東方project 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:異変解決は一時保留、今は参加者を驚かせて回る
1:メリーさんで参加者を驚かせながら散歩する
2:面白い人間だったわー。帰ったらお姉ちゃんに話そうっと
[備考]
深秘録終了後からの参戦です。
投下終了します。
投下いたします。
これは宇宙のどこかにある笑顔あふれる島の話……。
そこには島の名前を表す様に数多くの生き物が笑顔でいる姿があった……。
そしてその島には3人の仲間たちが仲良く暮らしていた。
一人は義理人情に厚い親分肌な性格だがその分威張りん坊なのが玉にキズな、身体の大きなヤマネコの少年。
もう一人は面倒見がいいしっかり者だがとても気が強い、カナヅチなペンギンの女の子。
そして最後の一人は……
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「ふふふ……図に乗るなよ、サル野郎!」
殺し合いの会場、そこにある海賊船を模した建物の中でピンク色のバンダナを頭に巻いたネズミが怒りをあらわにしていた。
彼の名は『ぽろり・カジリアッチ3世』。海賊『ねこいらず・カジリアッチ』の子孫であり、かつて祖先の隠した財宝を探す旅に出ていたネズミの海賊である。
そんな彼は今、どこに誰がいるのかも分からない状況のまま怒りをあらわにして叫んでいた。
普段の頭が良くて謙虚で優しいが、同時に気が弱い性格である彼であればこのようなことはしなかっただろう。
「まさかこの僕、ぽろりさまをここまでコケにするとは…思わなかったぞーーー!!!」
しかしこの場に呼ばれたのは"にこにこ島"にいる本来のぽろりではなく、"2ちゃんねる"というネットの掲示板でよく描かれている『彼と同じ声をした宇宙の帝王』の台詞を叫んでいる方のぽろりなのだ。
ゆえに彼の人格もまた宇宙の帝王と同じように自分の強さに圧倒的な自信を持ち、また冷静さと残虐性を併せ持った人格へと変貌を遂げているのだ。
「……おっと、いけません。僕としたことが、ついつい我を忘れてしまいました……少し癪ではありますが、あの男が用意したものを確認しましょうか」
そうやって怒りのままに叫んでいた彼だったが、しばらくすると冷静さを取り戻し自分に支給されたランドセルの中身を確認し始めた。
「……っっっ!はじめてですよ・・・この僕をここまでコケにしたおバカさんは・・・」
すると彼は顔を強くしかめ、怒りをこらえるかのように声を震わせて独り言を言い始めた。彼に支給されたもの、それはとある果物だった。
しかしそれがただの果物であれば彼はそれほど反応を示さなかっただろう、だがその果物にはとある特徴があった。それは……
「この僕に、こんな臭いものをよこすとは思いませんでしたよ……」
とてつもなく臭かったのだ。
ぽろりに支給された果物名は『マックスドリアン』、強烈なニオイが特徴のフルーツの王様である。
「まったく……いちいちカンにさわるヤローだぁぁ!!」
そうして、怒りに燃えるネズミの海賊がこの地に降り立ったのであった……。
【ぽろり・カジリアッチ3世@2ちゃんねる+にこにこぷん】
[状態]:健康、激怒
[装備]:
[道具]:基本支給品、マックスドリアン×3、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:願いをかなえるのはこのぽろりさまだーーーっ!!!!! きさまら下等生物なんかではなーーーい!!!
1:あの地球人(乃亜)に、この僕の恐ろしさをみせてあげましょう!
2:今のは臭かった…臭かったぞーーー!!!
[備考]
肉体はぽろり(にこにこぷん)ですが、言動および性格がフリーザ(ドラゴンボール)になっています。
『支給品紹介』
【マックスドリアン@】
ぽろりに支給。強烈なニオイが特徴のフルーツの王様で、この殺し合いでは3個支給されている。
強力な回復力があり、限界を超えて体力を回復させることができる。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
>>453
支給品の出典に抜けがありましたので、以下のものに修正させていただきます。
投下ミス、失礼しました。
【マックスドリアン@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
ぽろりに支給。強烈なニオイが特徴のフルーツの王様で、この殺し合いでは3個支給されている。
強力な回復力があり、限界を超えて体力を回復させることができる。
投下します
殺し合いという悪辣な催しが行われる地にある街の一角で、街灯に照らされた緑髪の少女がガタガタと震えていた。
「ど……どうしてこんなことに……」
少女の名は音花羽仁衣。闘球部に入部した、新球川小中一貫校の初等部4年生である。
人間離れした身体能力を持つ部員の中では身体能力はそこらの小学生女子と変わらないが、蜂型のドローン中心とする最先端の科学技術を駆使した球が持ち味である――のだが。
「は、ハチ型ドローン、どこ……?あ、あれがないとわれは……」
不運なことに、それらの装備はバトルロワイアルの主催――海馬乃亜に取り上げられてしまっていたのだった。ドローンがなければ、羽仁衣は無力なただの子供でしかない。
「ど、どうすれば……!」
羽仁衣がここまで強い怯えを見せるのも、無理からぬことであった。支給品を確認することも忘れて、その場にうずくまっていた。
「ねえねえ、そこの君」
そんな時、羽仁衣に声をかける者がいた。ビクっと震えて、羽仁衣は声がした方へとおそるおそる顔を向ける。
「君も……参加者だよね?」
そこにいたのは、羽仁衣と似た色の髪をした女の子が、小さな光の点々を纏わせながら佇んでいた。裏地が赤色のマントをしており、頭からは虫の触覚のような2本の角らしきモノが生えている。
「ああ、怖がらないで。この光は蛍の光なんだ。とりあえずお話できたら――」
「ひゃあああああああああっ!!」
しかし、羽仁衣が取った行動は悲鳴を上げながら逃げることだった。人付き合いがそもそも苦手で、新球川小中一貫校にいた頃も学校から与えられた専用の個室で一人、他の生徒の行動をドローンを通して見ているだけであった。友人らしい友人も闘球部に入るまで存在しない。そんな羽仁衣が殺し合いの場に放り込まれて、見ず知らずの参加者と話せるはずもなかった。
「……逃げちゃったね」
逃げていく羽仁衣の後ろ姿を、女の子――リグル・ナイトバグは見送っていた。
「――うん、謝らなくっていいよ。きっとあの子も怖かったんだと思う。私も君達がいなければどんなに心細かったか……」
リグルは自身の周囲を舞う光の粒に向かって話す。この光の粒は、一つ一つが蛍であった。蟲の妖怪であるリグルは、この蛍達と意思疎通を取ることができた。先ほど羽仁衣に話かけたのも、蛍達が『あの人間は虫が好きないい子だ』とリグルに教えていたからだ。
「でも、どうしよう……あの子を探しに行った方がいいのかな?次に会うのが殺し合いに乗ってないとも限らないし……」
リグルとしては、この殺し合いから脱出して元いた幻想郷に帰ることが最優先事項だ。リグル自身は妖怪であるためか力はそこいらの人間よりかはあるが、やはり大妖怪に比べるとその戦闘力は遥かに劣る。一先ずは危険人物を回避して協力してくれそうな者を見つけたいところではあったが――。
「ん?どうしたの?逃げろって――」
その時、リグルの周りにいる蛍達が一斉に激しく飛び回る。それはまるで、リグルに危険を伝えているかのようだった。
そしてリグルが何らかの気配のする方へ向いた時――リグルの首筋に、皮膚を裂くかのような熱の感覚が迸った。
§
「うう、逃げてしまった……」
しばらく走ってからのこと、羽仁衣はあの女の子から逃げ出してしまったことを後悔していた。
「やっぱり、あの子のところにいる方が……」
今の羽仁衣には蜂型のドローンはおらず、ドローンによる自動防御システムも機能しない。ならば尚更、自分に友好的に接してくれる人の傍にいた方が安全だ。ドローンがないからといって逃げ出したのは悪手だった、と羽仁衣は考え直した。
「知らない人は怖いけど……われ、死ぬのは、もっと怖い……」
羽仁衣は踵を返し、先ほどの女の子のいた場所へと戻ることにした。初対面の人話すのは苦手だが、勇気を出して謝ろうと思った。
羽仁衣が戻ってくると、街灯の下にはあの女の子の足が見えていた。
「あ、あの……さっきは……ごめ……」
羽仁衣が近づいて歯切れの悪い口調で謝るも、女の子から返答はない。
聞こえなかったかと思って、羽仁衣がさらに近づくと、何やら様子がおかしかった。
――ぐちゃぐちゃ、ずりゅずりゅ、ごりゅごりゅ、じゃくりじゃくり。
生理的な不快感を煽るような効果音が、羽仁衣の耳に響く。
不意に、羽仁衣の足元に硬いモノがあることに気づく。
それは、あの女の子――リグルの生首だった。すでに生気は失われ、恐怖で硬直した表情のまま、地面に放り出されていた。
同時に、辺り一面に血の臭いがしていることに気づく。
「っ……っ……」
これまでにないほどバクバクと羽仁衣の心臓が波を打つ。
おそるおそる、リグルの足がある場所に視線を移す。
「ぐちゃぐちゃ、ずりゅずりゅ、ごりゅごりゅ、じゃくりじゃくり」
そこには、袖の長いメイド服を着た少女がいた。そして、その少女はリグルの肉体だったモノを顎の下に刺し込み、咀嚼していたのだ。
すでにリグルの胴体はなく、街灯に照らされているリグルの足だったモノと、転がっている頭だけが残されていた。
「あれぇ、誰かいるのぉ?食事中なんだけどぉ」
ぐるりと首を回して、少女が羽仁衣の方を見る。一見可憐に見える顔だが、話しているのに口が動いておらず、顎の下からは血の混じった涎が垂れていた。そして可愛らしいシニヨンヘアーに結っているようなその髪も、妙に艶があり、蟲の足のような節目がある。
羽仁衣にはなんとなく分かってしまった。目の前にいる少女は、蟲なのだと。それも、人間を主食としてしまうような、危険な肉食蟲だと。
「わあああああああッ!!!!!!!」
街中に響くような悲鳴を上げながら、羽仁衣は再び逃げ出した。
涙と鼻水で顔を濡らしながら、あの捕食者から少しでも距離を取るために、夜の暗闇の中を全力で走る。
運動は苦手だというのに、不思議と足が軽かった。あれが殺された者の末路なのだと思うと、たとえ足が壊れても走り続けられる気がした。
【リグル・ナイトバグ@東方project】 死亡
【音花羽仁衣@炎の闘球女 ドッジ弾子】
[状態]:健康、恐怖(極大)
[装備]:普段着
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況] 基本方針:死にたくない
1:逃げなきゃ……!
[備考]
・蜂型のドローンは没収されています。
・支給品説明
【蛍@現実】
鞘翅目・ホタル科に属する発光する昆虫。リグル・ナイトバグに支給。
夜に発光するホタルは光の粒のように見える。リグル・ナイトバグもまた、蛍の妖怪である。
「あぁ、逃げちゃったぁ」
リグルを捕食した少女――エントマ・ヴァシリッサ・ゼータは口惜しそうに言う。
彼女はナザリック地下大墳墓の戦闘メイド「プレアデス」の一人である。
そして、羽仁衣も察していたがエントマは人間ではない。蜘蛛人(アラクノイド)であり、人間を食料とする蟲である。
「まぁいっかぁ。ちょうどお腹を満たしているところだしぃ」
そう言って、エントマは走り去っていく羽仁衣から目を離して再びリグルの肉を口に運ぶ。
エントマの口元からじゃくり、じゃくりという肉を斬る音が聞こえる。
そして今の肉を食べ終えると、次はリグルの足を食らい、最後には投げ捨てたリグルの頭を食らう。筋肉も、脂肪も、臓物も、脳も、眼球も、食われる者へ感謝を捧げるかのように丹念にすべてを食らい尽くす。
「けぷっ」
エントマが食べ終わった時には、そこにはリグルの骨と散らばった体液、そしてリグルに嵌められていた首輪だけが残されていた。
ちなみに、リグルの周囲に漂っていた蛍の群れもエントマの腹の中だ。しかしその肉はリグルのそれに比べてあまりにも少量だったため、エントマの記憶にも残っていなかった。
「うーん、不思議な味だったねえぇ。人間を食べている感覚なののにぃ、なーんかいつも食べてるおやつの風味があるっていうかぁ」
間延びした可愛らしい声で、エントマはリグルの肉の味の感想を呟く。頭に思い浮かべているのは、主食としている人間に加え、ナザリックでスナック感覚でつまんでいる恐怖公の眷属(ゴキブリ)だ。
「でもお腹いっぱい食べられたからいいかぁ。ごちそうさまでしたぁ」
リグルだったモノに向かって、エントマはお辞儀をする。
エントマの手には、2つの四次元ランドセルがあった。そのうち1つはリグルのもので、「あとで役に立つかもしれない」という判断だ。
「さてぇ、これからどうしようかなぁ」
エントマはメイド服の袖を頬に当てて考える。
いきなりこのような場所に連れて来られて、海馬乃亜なる子供に殺し合えと言われた。
海馬乃亜に対する怒りと殺意は確かにある。至高の御方々以外に自分に命令する権利など決してない。ましてや至高の御方を差し置いて創造主を名乗るなど……!
だが、それ以上に。
「これじゃあお仕事できないねぇ」
エントマは、ナザリック地下大墳墓のNPCだ。創造主の命令に沿って生き、その目的を果たすために働くことが至上の喜びである。なのに、このようなよく分からない場所に連れ去られてしまい、殺し合いを強要されてしまった。これでは、至高の御方たるアインズ・ウール・ゴウンの指示を果たすことができない。
「早くナザリックに帰ってぇ、お仕事の続きしなきゃぁ」
そう言って、エントマは歩き出す。とにかく、ナザリックに帰還する。手段は問わない。なんなら、参加者を全員殺して、お腹いっぱいになってから帰還してもいいが、他に脱出できる手段があるならそっちを選ぶ。
エントマは同じプレアデス姉妹であるルプスレギナやソリュシャン、ナーベラルのような人間に対する嗜虐心は持ち合わせていない。人間は食料、それだけである。腹さえ減っていなければ、他にやるべきことを優先するのだ。
その時、エントマの脳裏に、ある少女の姿がチラつく。愚かにも自分のことを『お前のような血の臭いを漂わせるモンスターを傍において喜ぶ者がいるとは思えない』などと罵倒した憎き小娘。名をイビルアイ、と言ったか。
この殺し合いは、見たところ少年や少女といった幼い外見の者達が中心に参加させられている。ならば、12歳程度の幼い容姿をしたイビルアイであればこちらに来ているかもしれない。
(モシ、ヤツガ来キテイルナラァ……今度コソコロシテソノ声ヲ奪ッテヤルゥ)
乃亜に対するそれよりも遥かに大きな殺意を、エントマは滲ませていた。
【エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ@オーバーロード】
[状態]:健康、満腹
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、リグルの四次元ランドセル(ランダム支給品1〜2)
[思考・状況]基本方針:ナザリックに帰還するぅ、手段は問わないよぉ
1:とりあえず脱出の手段を探るけどぉ、他の参加者を生かすか殺すかは腹具合によるかなぁ
2:他にナザリック勢がいる場合は協力したいねぇ
3:モシアノ小娘(イビルアイ)ガ参加シテイル場合ハ最優先デ殺スゥ
[備考]
・アインズ・ウール・ゴウン魔導国建国後からの参戦です。
・エントマがリグルを捕食した場所にはリグルの骨と首輪が残されています。
以上で投下を終了します
投下します。
「……まいったね。まさかこんな悪趣味に巻き込まれてしまうなんて」
ゴスロリ服を身に纏う巻き髪ツインテールの幼女は異常事態にぼやく。
幼女の名前は夜桜二刃。
スパイ一家、夜桜家の長女。
「家業が家業だからこんなのに巻き込まれるのも仕方はない」
江戸時代から続くスパイ一家。
隔世遺伝による超人的な才能を
口コミサイトも常に一位。
しかし、それゆえに狙われる。
恨む者に。妬む者に。利用する者に。
ありとあらゆる悪意に。
「だけど気に入らないね。裏社会の者同士が殺し合うならともかく。それと無縁な子供も巻き込んで殺し合わせる
海馬乃亜が集めた子供たちの大半は裏社会と無縁に感じた。
それゆえに二刃は憤りを隠さない。
「それと一つ、不可解なのはどうしてあたしを混ぜたのかね」
二刃は顎に手を置き思案する。
乃亜の言葉から、おそらく、この殺し合いに巻き込まれているのは子供を対象としているはず。
「……ま、深く考えても仕方ないね」
一つ訂正しよう。二刃は外見こそ幼女だが実年齢は21歳。
6歳のころから既に外見は完成されている。
「あいにくだけど、ここで死ぬわけにはいかないよ」
そろそろ、太陽と六美の結婚一周年。
家族として必ず祝う。もし、自分がいないままだったら、二人の性格上、行わないだろう。
家族に迷惑をかけるわけにはいかない。絶対に。
それに、いつか生まれてくる甥や姪のためにも。
「太陽と六美の子の顔を見るためにもね」
長女。
その二文字は軽くない。
【夜桜二刃@夜桜さんちの大作戦 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:家族の元へ帰る
1:殺し合いに乗ってない参加者を探し保護する
2:殺し合いに乗ってしまった参加者は殺しはしないがこらしめる
[備考]
162話終了後からの参戦です。
投下終了します。
また、以前投稿した人妖の分水嶺にて、こいしの状態表での装備が抜け落ちていました。
以下のように修正いたします。
ご迷惑おかけします。
【古明地こいし@東方project 】
[状態]:健康
[装備]:エースのナイフ@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:異変解決は一時保留、今は参加者を驚かせて回る
1:メリーさんで参加者を驚かせながら散歩する
2:面白い人間だったわー。帰ったらお姉ちゃんに話そうっと
[備考]
深秘録終了後からの参戦です。
【エースのナイフ@ONE PIECE 】
こいしに支給されたナイフ。
エースが所持しており、かつて白ひげを暗殺するときに使用された。
「こいよ”高み”へ ルフィ!!!」BYエース
投下します
うっそうとした森の中。
頭を丸坊主にした少年が、顔を真っ青にしてたたずんでいた。
「なんだよ、これ……。
なんでこんなことに……」
彼の名は、クリリン。
後に、「地球人最強」と呼ばれるまでに成長する武術家である。
だが今ここにいる彼は、不純な動機で武術の道に足を踏み入れたスケベなガキでしかない。
「せっかく武天老師様への弟子入りがかなったというのにーっ!」
クリリンは武術の神と呼ばれる武天老師に弟子入りを果たし、これからの人生に輝かしい希望を抱いていた。
ところが気がつけば見知らぬ場所で、自分と似た声の少年とその兄が殺される瞬間を見せられた。
そして命じられたのが、殺し合いだ。
「や、やるしかないのか?
殺すしか……」
成長したクリリンであれば、無法の輩に屈することをよしとすることはなかっただろう。
だが今の彼は、まだ力も心も弱い。
目の前で人がなすすべもなく殺される様を見て、すでに心が折れてしまっていた。
「落ち着け、俺……。
まずは武器の確認だ」
滝のように冷や汗をかきながらも、クリリンは荷物のチェックを始めた。
「なんだこれ……。木の棒……。
いや、杖なのか?」
クリリンが見つけたのは、1本の杖だった。
ぱっと見は木でできているように見えるが、触った感触はむしろ石に近い。
「これで殴れって言うのか?
なんか説明書きがついてるけど、暗すぎてさすがに読めないな……」
もっと明るいところで荷物を開くべきだったか、と思いつつ、クリリンは杖をランドセルに戻そうとする。
だがその時、彼の後ろでかすかに物音がした。
「誰だ!」
とっさに叫びながら、クリリンは振り向く。
すると、物陰からネコミミのついた帽子をかぶった少年が飛び出してきた。
クリリンからはよく見えていなかったが、その表情は恐怖一色に染まっていた。
彼もまた、この状況に追い詰められていたのだ。
「う、うああああ!!」
少年は絶叫しながら、手にした拳銃をクリリンに向ける。
「バカ、やめろ!」
クリリンはそう叫び、とっさに杖を少年に向ける。
その瞬間、杖の先から光の球が放たれた。
「は?」
想定外の現象に、クリリンの口から間の抜けた声が漏れる。
彼の困惑をよそに、光の球は少年に向かって飛んでいく。
そして命中と同時に、少年の体を飲み込むほどの爆発を起こした。
「お、おい! 大丈夫か、おまえ!」
クリリンはたまらず、少年の元に駆け寄る。
だが彼が確認したのは、黒焦げになり明らかに息絶えた少年の体だった。
「ち、違う……。
俺は、殺す気なんか……。
うわああああ!!」
他者の命を奪ってしまった事実に耐えられず、クリリンは絶叫する。
そしてそのまま、闇雲に走り始めた。
それで現実から逃げられると思っているかのように。
だが、そんなはずはない。どこまで行っても、そこは殺し合いの場だ。
本来なら輝かしいものになるはずだった彼の未来は、今は闇に塗りつぶされていた。
【クリリン@ドラゴンボール】
[状態]錯乱
[装備]マグマの杖@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:どうすればいいのかわからない
[備考]
※参戦時期は亀仙人に弟子入りした直後
【空豆ピースケ@Dr.スランプ 死亡】
※ピースケの支給品は、彼の死体のそばに放置されています。
ただし、爆発で壊れている可能性があります。
【マグマの杖@ドラゴンクエストシリーズ】
マグマの力が込められた杖。
作品によって道具として使ったとき、爆発で攻撃する場合とマグマで攻撃する場合があり、
派生作品では両方の効果を持っていることが多い。
本ロワでは振ると爆発する光球を飛ばし、地面に刺すとマグマを呼ぶ。
投下終了です
投下します
「あぁもう…!イライラするでありんすねぇ……!!」
コンクリートジャングルに囲まれた街の中で、苛立ちを孕んだ声が響く。
カラメルを焦がしたように甘く、そして腐海の様に毒々しい声だった。
声の主は長い銀髪を片方に纏め、白蝋染みた白さの肌を、漆黒のボールガウンとフリルの付いたボレロカーディガンで包んだ、年幼い少女だった。
尤も、年幼い少女と言ってもそれは外見だけだが。
何故なら真紅の瞳を持つ彼女は吸血鬼であり、それも始祖(オリジン)に次ぐ最高位に位置する真祖(トゥルー)なのだから。
「さっきから小細工ばかり、下等な子供と耳長(エルフ)が…私を煩わせるなんて……!」
彼女の名はシャルティア・ブラッドフォールン。
ナザリック地下大墳墓第一、第二、第三階の階層守護者にして。
鮮血の戦乙女の異名を持つ、怪物である。
「怒っているのは、私の方だ……!」
その怪物、シャルティアが苛立っている原因が、目の前に立つ二人の子供だった。
一人は少年、一人は少女。何方も外見的にはシャルティアとそう変わりのない年齢に見える。
片方は長命種として知られるエルフであるため、外見相応の年齢では無いだろうが。
もう片方の少年はシャルティアよりも更に若く見える外見で、金髪金瞳の意思の強そうな少年だった。
青のマントに身を包んだ少年は、後方のエルフの少女を守る様にシャルティアと相対している。
そう、あちこちに傷を負って血を流しているが、相対しているのだ。
ナザリックの守護者序列一位。屈指のガチビルドであるシャルティアを前にして。
歴戦の冒険者であっても瞬きの間に、首を撥ねる事ができる彼女を前にしてまだ生きている。
「オヌシ…何故こんな殺し合いに乗った!」
金の短髪を振り乱して、少年──ガッシュ・ベルは叫ぶ。
彼はシャルティア以上に憤っていた。
何故なら彼は、魔界の王を決める戦いに参加し、破滅の子クリア・ノートとの最終戦が迫ったこのタイミングで拉致されたのだから。
よりによって魔界の存亡の危機のさなかに、である。
その上突然殺し合いをしろと命じられ、二人の兄弟があっさりと命を落とし。
その事に嘆き怒っている時に出会ったのが後ろのエルフの少女だった。
エルフの少女は殺し合いに乗っていないとの事だったので、早速協力を求めた。
彼女はガッシュに支給されていた赤い魔本に興味を示し、その閲覧を条件に協力を了承した。
驚いたのはその直後の事だ。
何故ならガッシュのパートナーである高嶺清麿にしか読めない筈の魔本を、少女は読んで見せたのだから。
何故読めたのか尋ねてみても、少女にもよく分からないとの事で。
ともあれ、清磨が此処にいれば合流するまで、もしいなければ彼女の力を借りる事になるだろう。
そう思って、いくつかの術を実演して見せたりもした。
そんな時に現れたのがシャルティアだ。
「何故って…元々そういう催しでありんしょう?これは
お前は虫けらを踏み潰す理由を一々尋ねるお年頃でありんすか?
……おっと、こんなことを言ったら奴におこられそうでありんすね」
シャルティアを一目見ただけで、危険な存在だとガッシュは直感した。
彼女に出会った瞬間幻視したのが、外ならぬクリア・ノートだったからだ。
その第一印象の通り、開口一番シャルティアの出した提案はろくでもない物だった。
何方か一人、荷物持ちをやるなら見逃してやってもいい。彼女はそう言った。
やらない方はどうするのか、と尋ねれば、短く、殺すと彼女は言ってのけた。
他人を殺す事に何の感慨も沸いていないその様は、正しくクリアの同種と言えた。
「人は虫では決してない!!殺してよいはずがないであろう!!」
小馬鹿にするようなシャルティアの態度に、ビリビリと空気を振るわせて。
ガッシュは仁王の様に怒りを露わにする。
笑いながら命を奪う海馬乃亜やシャルティア、彼女の言う主であるらしいアインズが彼には許せなかった。
絶対に、屈するわけにはいかない。
その両眼に強い意志を秘めて、ガッシュはシャルティアを睨みつける。
「喧しい小僧でありんすねぇ。私だってアインズ様以外の命令を聞くなんて嫌でありんす。
でも──奴の言う『願いを叶える権利』が本当なら小僧共を蹂躙する価値はありんしょう?」
この地に来る以前、シャルティアは失態を犯していた。
ワールドアイテムが相手とは言え、敵に操られ、主であるアインズに剣を向けたのだ。
無事主が操られた自身を倒し、洗脳を解いた後、慈悲深き裁定を行った事でお咎め無しとなったが…
それでもシャルティアは欲していた。
主の慈悲深き裁定に応える事ができるだけの功績を。
そんな時に、このバトルロワイアルに巻き込まれたのだ。
もし、乃亜の言う事が本当であるのなら。
愛しき主であるアインズの願いを叶える事もできるかもしれない。
至高の41人──自身の創造主であるペペロンチーノ様とだって、再会させられるかも。
その後、用済みになった海馬乃亜は後ろから刺し、たっぷりと返礼をすればいい。
シャルティアはそう考えて、殺し合いに乗った。
(そう──アインズ様も言っておりんした。力で超える者には知恵で勝て、と)
前提として。
シャルティアは海馬乃亜を見下していたが、彼の力まで見下している訳ではない。
自分やナザリックの守護者たちに一切気取られずにここまでシャルティアを拉致してきたのだ。
何らかのワールドアイテムを用いて居るのは確実。
加えて、自身の武装は全て没収されている上、爆弾付きの首輪まで嵌められている。
本来であれば首輪サイズの爆弾で真祖の吸血種である自分が死ぬはずはないが、目覚めてからどうにも調子が悪い。
推察するにこれが制限とやらなのだろう。
そんな有様で、それでも大丈夫だと楽観視する気には今のシャルティアはなれなかった。
逆に言えば、殺し合いを制覇しナザリックへと戻り、此度の事を報告すれば敬愛する主は必ず乃亜に然るべき鉄槌を与える筈。
彼女はそう信じていた。
故に、現段階では乃亜に従うのが得策。
元より、ナザリックに纏わらない下等生物を殺すことに何の感慨も無い。
「そんなワケないであろう!!オヌシがそれでも殺しあいをすると言うなら…
ワタシがオヌシをここで止めて見せる!!」
そんな自分の考えも一蹴して、目の前の小僧は出会った時から憤るばかり。
鬱陶しいので後ろのエルフ共々二秒で殺してさっさと殺して次に行こう。
そう決めて、蹂躙を開始した筈だった。
だが──戦闘開始から五分、まだ目の前の二人のガキは生きたままでいる。
「ヌゥゥウウウウアアアアアアア!!!!!」
咆哮と共に、ガッシュがシャルティアに突撃する。
気合ばかりの雑な突撃だ。自殺と変わらない。
当初シャルティアはそう考えたが、それは誤りだった。
ヒュッと風切り音が鳴り、ガッシュの拳が空を切る。
がら空きになったボディをシャルティアが軽く撫でれば、それで終わりだ。
しかし、ガキン!と金属音のような音を立てて、シャルティアの腕は受け止められる。
(見た目に依らず硬い!それにガキの分際で、私に追いすがるだけの実力はある)
シャルティアは横薙ぎの手刀によって、ガッシュの腸をぶち撒けようとした。
だが、彼の纏っていたマントは蛇のように自在に動き、また鋼鉄を軽々切り裂くシャルティアの手刀を見事防いで見せたのだ。
中々に高名な装備なのだろう。自身が制限とやらで普段ほど力を発揮できないのもある。
加えて、マントを装備するガッシュ自身も、シャルティアに追従するだけのパワーとスピードがあった。
単純なフィジカルだけで言えば、レベルは70、もしかすると80はあるだろうか。
子供の齢でそれは驚異的だが、一騎打ちならレベル100のNPC足る自分に分があるとも思える相手ではあった。
……後ろの、エルフさえいなければ。
「ジケルド」
後ろのエルフは無表情で、呟くように呪文を唱える。
そのタイミングはどれもシャルティアがガッシュの攻撃を避けたり、
或いはシャルティアがガッシュに向けて攻撃をしたタイミングを縫う様な詠唱だった。
シャルティアの戦闘スピードを考えれば、好機が来てから呪文を唱えるのでは遅すぎる。
彼女とガッシュの動きを読み切った上で、先読みして唱えなければできない芸当だった。
「鬱陶しいんだよっ!たかだか第五階位程度の魔術師が!!」
シャルティアの苛立ちの種は正にこのエルフにあった。
魔力量は転移した先の世界では人の英雄級ではある。
だが長命種であるエルフで言えば殊更突出したものではない。
それなのに奴が唱え、ガッシュという小僧の放つ魔法が自分への妨害として機能している。
バチリ、とガッシュの口から放出された光弾。
それはガッシュの頭蓋を叩き割らんと振り下ろしていたシャルティアの右腕に命中し、光を放つ。
ガクン、と常人には目にも映らぬ速度で振るわれていたシャルティアの腕が一瞬何かの力場によって停止する。
それは一秒ほどの時間だったが──ガッシュにとってその一秒は長すぎる。
「ヌウウウウウウアアアアアアッ!!!!」
ドンッッッ!!!
シャルティアの動きが一瞬スタンした隙を狙い、ガッシュは裂帛の気合を上げて突っ込んだ。
頭突きである。
子供らしい戦法であったが、決戦に向けて鍛え上げたガッシュの頭突きは今や砲弾もかくやの威力だった。
そのガッシュの頭突きがシャルティアの鳩尾に突き刺さる。
「ぐ───」
「ジケルド」
「ジケルド」
「ジケルド」
「ジケルド」
その攻撃を受けた一瞬に食い込む様に、エルフの少女は矢継ぎ早に呪文を唱える。
唱えるは磁力を用いた魔法。
現代の市街地であるこの場所は、強力な磁力が発生すれば引き寄せる物体は幾らでもある。
尤も、現代の街並みになじみの薄い彼女がこの魔法をチョイスしたのは。
最初にガッシュと出会い魔本を開いた際に、実験で唱え、たまたまその威力を確認できていたから、と言う理由に過ぎないが。
レベル100のNPCであり、高い魔法耐性を有するシャルティアには彼女の唱える術では一秒しか効果を発揮しない。
制限が科されていてなお、だ。
だが、重ね掛けする事により、数秒だがシャルティアの動きが完全に停止する。
「テオザケル」
動きが停止した一瞬の間隙を突く詠唱。
直後、雷鳴が轟いた。
ガッシュの背丈を超えるレベルの電撃が、シャルティアを貫く。
しかし───、
「ざぁあああぁぁあああんねぇぇええぇぇえええんんんんでしたああぁぁあああぁあ!!」
雷撃の壁を、シャルティアは狂的な笑みを浮かべて突き破ってきた。
効いていない訳ではない、確かに、有効打ではあった。
ただそれは無効化されない程度、シャルティアがダメージと感じる下限を少し超える程度でしかなく。
この程度でアンデッド・吸血鬼である彼女は行動不能にすらならないのだ。
「ウヌウ!!」
即座にガッシュは防御姿勢を取るが、シャルティアの目標は彼ではない。
「ヌオオオ!」という叫び声を聞きながら、両手を交差し身構えるガッシュを踏みつけ飛び越えて進軍する。
まずは雑魚のくせに鬱陶しい後衛から始末するべき。彼女はそう判断した。
呪文のサポートさえ無くなれば、あの程度のガキ一人物の数ではない。
「さぁ──蹂躙を開始しんす」
エルフの魔法詠唱者は魔法を用いて慌てて後方へ下がるが、シャルティアからしてみればまだまだ遅い。
鼻歌混じりに追いついて、文字通りその小さな五体をバラバラにできる程度の速度だ。
あのエルフを一秒で肉塊に変えた後、後ろのガキも血祭りにあげる。
間近まで迫ったその未来に美貌を醜悪に歪め──違和感に気づく。
(───気に入らねぇ、何だその顔は)
シャルティアという死の具現が迫ってもなお。
エルフの少女は、冷徹にすら思える視線で眼前の敵を見据えていた。
シャルティアを敵として前にした者は、例外なく恐怖に顔を歪めていなければならないのに。
だというのに、何故。まるで全て想定通りという顔で此方を見ている──!
この手で引き裂くのは辞めだ。掌に魔力を籠める。
あのエルフが何を企んでいようと、確実に蹂躙できるだけの札を用意する。
<<清浄投擲槍>>
選んだ処刑方法は魔力消費で必中となる信仰系魔法に連なるスキル、清浄投擲槍。
本来アンデッドの系譜である吸血鬼だが、職業は神官職を高レベルで修める彼女だからできる離れ業だ。
これを放てば、エルフの命は確実に潰える。その自負があった。
実際に、シャルティアのその見立ては間違っていなかった。
彼女が放とうとしていた戦技は、単純な攻撃力で言えばエルフの少女を三度は殺せる威力だった。
尤も──放つことができれば、の話であるが。
(発動───しない!?)
エルフの命を穿つはずだった聖槍は、発動しなかった。
どう言う事だと、シャルティアは僅かに混乱する。
だが、眼前のエルフを確認しなおした瞬間、合点がいく。
エルフの少女は、先ほどまで手にしていた魔導書だけでなく、もう片方の手に杖を備えていた。
そして、その杖を此方に指向していた。
「どこまでも無駄な小細工を、だったら──」
エルフの実力的に自分の魔法の発動をキャンセルできるほどのスキルは無いだろう。
となれば、恐らく支給品と見られる杖に絡繰りがあるはず。
伝説(レジェンド)級か神器(ゴッズ)級かは手に入れてみないと分からないが。
兎も角、呪文を封じられたシャルティアの取るべき手段は一つだ。
「望み通り、直接ずたずたにしてあげまちょうねぇぇえええぇえええええ!!!」
魔法やそれに関わるスキルを用いず、この五指でひき肉にしてくれる。
当初の予定通り、何も問題は無い。
脚部に少しばかり力を籠めて、杖を向けながら後退するエルフに一瞬で肉薄する。
華奢な肉を切り裂くべく腕を振り上げるのと同時に、杖を向けるエルフが何某かの魔法を唱えるのが聞こえた。
馬鹿め、貴様程度の魔法詠唱者(マジックキャスター)が放つ魔法など痛痒にもなるかよ。
自身の力を過信したまま──地獄に落ちるがいい。
「魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)」
鈴の音の様な、清廉さを感じさせる声が響いて。
直後、シャルティアの振り下ろそうとしていた右手が消失した。
「……は?」
ぱちくりと。目を瞬かせて。
信じられないと言った様相で亡くなった右手を見やる。
「ええええええええ!?な、何でぇええええええ!?!?」
ありえない。こんな不条理があり得る筈がない。
確かに、此方の見立てでは奴の魔法詠唱者としての実力は精々が第五階位程度だったはず。
それが自分の魔法耐性を貫通して、右手を吹き飛ばすなどありえてはいけない。
(チクショウ!一体どういうことだ!このガキ一体どんな手品を──)
この程度の相手には負けない。シャルティアにはその自負があった。
何しろ、強くあれと生み出されたから、強くなるための努力などしたことがないと公言していた彼女だ。
魔法が使えなくなったのはまだいい。支給品の力に依る物だと理解できる。
だが──偉大なるアインズ様なら兎も角、この程度の魔法詠唱者に負けるはずがないのに!
「魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)」
…結論を言えば。
彼女のその自負は、相対するエルフの少女にとってはクソの様な驕りと油断だった。
だが、一概にシャルティアを責めるわけにもいかない。
何故なら、そのエルフの魔法使いは、シャルティアが生まれるずうっとずうっと以前から。
魔族を欺くことに千年と言う、悠久の時を費やし生きてきたのだから。
侮らせろ、実力の多寡を誤認させろ。
それが彼女の師である人類の魔術開祖、フランメの教えだった
当然ながら、彼女が欺くだけが能の魔術師かと言われれば、そんなことは無い。
彼女こそ、魔王討伐者である勇者ヒンメルのパーティーが一人。
正しく、生ける伝説とさえされる魔法使いだ。
シャルティアに向けて撃った魔法も、ただの魔法ではない。
少なくとも、シャルティアにとっては。
腐敗のクヴァールという、魔族としての格であればシャルティアに劣らぬ大魔族。
彼のクヴァールが生み出したのが、人を殺す魔法(ゾルトラーク)という傑作魔法である。
あらゆる魔法耐性や魔法の防具を貫通し、直接触れた物を消し飛ばすこの魔法によって、
当時大陸の冒険者の四割、魔法使いに至っては七割が命を落とした。
対抗手段はゾルトラークから派生した防御魔法による防御のみ。
そして、クヴァール封印後、ゾルトラークの研究・体系化に多大な貢献を残し。
そして、有史で最も多くの魔族を葬り去った魔法使い。
故に、少女の二つ名は『葬送』。
彼女の名は、葬送のフリーレン。
(───完全に不意を突いても対応されたか…間違いなく七崩賢、それもマハト並みだな)
目の前の相手が脅威と感じたのは何もシャルティアだけではない。
フリーレンもまた、眼前のシャルティアが恐るべき相手である事を認識していた。
彼女がシャルティアの右手を吹き飛ばせたのは、偏に支給されていた杖と、ゾルトラークと言う魔法が敵手にとって未知だった事だ。
王杖(ワンド)と名付けられたその杖は敵の魔法だけを封じ、一方的に攻撃が可能になる代物だった。
これが無ければ、フリーレンの戦いは更に厳しいものになっていただろう。
加えて、放ったゾルトラークも本当ならば半身を消し飛ばす筈だったのだ。
それが右手一つで押さえられた。フリーレンにとっても冷や汗を禁じ得ない相手だった。
もし杖のない状態で一対一を興じていれば、七割方殺される、その領域の怪物だった。
「この淫売の耳長がッッ!!腸を引きずり出してして生きたまま狗の餌にしてやるッッ!!」
既に右手を失ったショックから復帰し、激高する吸血姫。
だが、フリーレンは動じなかった。
何故なら、既に彼女の背後には───
「ヌウウウウウウオオオオオオオ!!!!」
ガッシュが追い付いている。
彼と、シャルティアの射線が重なっている。
短フリーレンは王杖を握る右手の反対側──左手に備えた魔本を煌めかせた。
どこまでも冷静に、冷徹に、ダメ押しの一撃を見舞う。
「バオウ・ザケルガ」
一切の抵抗を許さず。
二秒後、ガッシュの口から現れた巨大な金色龍が、シャルティアの全身を食い破った。
■
「ゼェ…ゼェ……あの糞エルフがぁ……」
右手を吹き飛ばされ、全身を金色の龍に食い破られて。
それでもなお、シャルティアは生きていた。
とは言え、あのまま戦い続けていればよくて相打ちだっただろう。
最強として生まれたはずの自分が、此処まで不覚を取ったのは二度目だ。
不覚の代償で、創造主たるペペロンチーノから賜った服はあちこち焦げてしまっている。
怒りで脳が沸騰しそうになるが、何とか堪えた。
あのエルフの使った魔法や金髪の小僧が使った金色龍の魔法は間違いなく第十位階のそれだ。
魔法の格だけではない、魔法詠唱者本人の格も相当な物だった。
今のシャルティアは信仰系魔法やその他に仕える魔法が大半制限されており、愛用の武具であるスポイトランスや真紅の鎧すら没収されてしまっている。
喪った右手を回復すべく回復魔法をかけ続けてはいるが、無くなった手が再び生えてくるまでに一日はかかりそうな程遅々たる回復速度だった。
そして、あの金色龍の魔法によりHPも八割がた吹き飛ばされている。
何とか撤退に成功はしたが、この体たらくで再びあの二人組に挑んでも、返り討ちに遭うのがオチだろう。
(一先ず、もしこの会場にあるなら私の槍と鎧を取り戻すことが先決!あのエルフに借りを返すのはその後!!)
優先順位を見誤るな。
自分の私怨よりも、偉大なる御方達から賜った武器の奪還を優先しろ。
煮えたぎる怒りに無理やり蓋をして。
シャルティアは現段階で己が為すべきことを強く定義する。
しかしそれでも───
「糞がッッッ!!!」
もし、ペペロンチーノ様から貰った槍と鎧が下等な人間などが振るっていれば。
己の血の狂乱を抑える事はきっとできないだろう。
手負いの獣こそ最も恐ろしいのだと、誰かが言った。
【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(極大)、ダメージ(大)、右手欠損
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝する
1:スポイトランスと真紅の全身鎧を見つけ出して奪還する
2:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する
3:武装を取り戻し次第、エルフに借りを返す。
[備考]
アインズ戦直後からの参戦です。
、魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
■
「ま…待つのだフリーレン!」
「……どうしたの、ガッシュ。本はもう返したはずだけど」
シャルティアという稀代の怪物が逃げ去り。
先ほど襲われたばかりだというのに別れて立ち去ろうとするフリーレンを、慌ててガッシュは引き留めた。
今しがたあの怪物の特大の恨みを買ったばかりだというのに、フリーレンは一人で行こうとしている。
もし、シャルティアが引き返してフリーレンを襲ったら。
そう思うと、ガッシュは放って置くことができなかった。
しかし、当のフリーレンの顔は涼しげなもので。
「大丈夫、あの魔族の魔力はもう覚えた。近くに来たら直ぐに逃げられるから問題ないよ」
「ウヌウ…しかしだなフリーレン……」
「ガッシュこそ、いいの?」
「?」
「最初に言っておくけど、私はあの魔族を殺すつもりだ。
それに向こうもほぼ間違いなく私を殺すつもりだろうね」
何でもない様に、殺害宣言を口にするフリーレンにガッシュも目を剥く。
そして、大声を上げて彼女の決定に反論しようとした。
だが、フリーレンはそれよりも早くガッシュの口に一指し指をあてて。
「言いたいことは分かるし、私もそれを否定するつもりは無いよ、ガッシュ。
でも、あの魔族を相手に殺さずに事を収めるのは私には無理だ。
そして…あの魔族はきっとこれからも殺し続けるだろう」
相手が此方の命を狙ってくるからと言って報復で殺してしまうのなら。
それはこのゲームをある種肯定する事になってしまう。
この幼き少年は、そういう類の事を言いたいのだろう。
フリーレンはその考えを否定はしないけれど。
魔族にその考えが届くことは無い。
思考で理解する事はあるかもしれないが、彼等が心で理解する時は来ない。
千年以上、そうだった。
だからフリーレンは、優しき少年王の考えに寄り添う事はしない。
「…ね。私たちは一緒にいない方がいい」
その言葉だけを残して、フリーレンはガッシュの場を去ろうとする。
だが、それで止まるのなら。ガッシュ・ベルは優しい王様を志したりはしない。
ぎゅっとフリーレンの服の袖を掴んで、そして彼は言葉を紡ぐ。
「待つのだ、フリーレン」
「……まだ、何かある?」
「オヌシが無理だというならそれでもいい。
だが、私があのシャルティアを止めて見せる。…私に任せてくれ」
言葉を受けて。
フリーレンはガッシュの大きな瞳をじっと見た。
彼の瞳は、どこまでも真っすぐで。
意志の炎に満ちていた。
暫く視線を交わした後、彼女はぼそりと呟くように。
「…好きにすると言い。ただし、介入するかどうかは私が決める。
ガッシュじゃ無理だと判断したら、私は迷わず手を下すから。それを忘れないで」
「……ウヌ!!」
力強く頷くガッシュを尻目に、またフリーレンは歩みだした。
先ずは首輪を外さなければ、ここから抜け出すことはできない。
となれば、外せる人材を探すことが最優先事項だろう。
今後の段取りを頭の中で考えつつ──追従するガッシュの方を一瞥する。
(……ガッシュ、君は───)
…そもそもが。
僅か五歳の子供に、七崩賢に匹敵する魔族相手に前線を張らせる。
普段のフリーレンらしからぬ行動だった。
その真意は、いざガッシュが襲ってきた場合、二人纏めてゾルトラークで消し飛ばせるようにするためだった。
彼女は、ガッシュ・ベルという少年の事を根本的な所で信用していなかった。
何故なら、彼はシャルティア以上に、フリーレンの既存の価値観を揺るがす存在だったのだから。
(───一体、何だ?)
フリーレンをして瞠目するほどの金色龍の魔法。
そして、これまでの数々の言動。
まるで人の心を理解したかのような。立ち振る舞い。
ありえない、と思った。
驚くガッシュの言葉は気にせず、そっと頭を撫でて確認する。
髪の毛をかき分ければ、そこには魔族の証である角が生えていた。
彼女の世界において、未だ人の心を真に理解した魔族は、存在しない。
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]全身にダメージ(小)
[装備]赤の魔本
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
1:フリーレンと、戦えぬ者達を守る。
2:シャルティアは、必ず止める。
[備考]
クリア・ノート戦直前より参戦です。
【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める
1:ガッシュ、君は…
2:シャルティアは次に会ったら恐らく殺すことになる。
[備考]
断頭台のアルラ討伐後より参戦です
一部の魔法が制限により使用不能となっています。
【王杖(ワンド)@金色のガッシュ!】
此方の魔法は使用可能なまま、五十メートル以内の魔物の魔法を封じ込める王の杖。
非常に強力だが本ロワでは制限により一度使用すると六時間経過するまでただの杖となる。
投下終了です
投下いたします。
こちらは以前、エロトラップロワに投下したものについて登場キャラを変更するなど、一部手直ししたものになります。
とある森の中で一人の少年が、何かの匂いをかぎ分けるように鼻をヒクヒクさせながら草木をかき分けて歩き回っていた。
動物の毛皮をまとい、頭には髪留めのように加工された石をかぶった緑髪の少年だった。
彼の名はポゴ。原始時代のとある部族で長老にキビシ〜く育てられた少年であり、異部族の少女に恋をしたことをきっかけに様々な冒険を繰り広げた少年である。
そんな彼はこの催しがなんであるかも、乃亜が言っていることも理解していなかった。しかし一つのことだけを理解していた。
―― 彼からは、とてもイヤなにおいがする。だが同時に、彼からはどことなく悲しいにおいもする。
―― だから、彼が何をしようとしているかは分からないけど止めなければいけない。
彼がここで理解しているのは、これだけだけだった。
そしてその目的を果たすために彼は、まずこの大地を駆け巡ることにした。
幸い、先ほど見つけた謎のものをどうにかして開けたところ、大きな3つの骨付き肉やいつも彼が使っているような道具が見つかったのでそういった心配はいらなかった。
ならばあとは匂いをたどって動くだけだった。
「あ……、あ……!あいぃ〜〜〜ッ!!」
そうしてしばらく森の中を歩き回って葉っぱまみれになりながらもそこを抜け出すと、彼は開けた視界の中を走りだした。
野生とは何なのかを知らしめるように全力で、そして「あい」を叫びながら駆け抜けていったのだった……。
【ポゴ(原始編主人公)@LIVE A LIVE 原始編】
[状態]:健康、元気いっぱい、葉っぱまみれ
[装備]:竜骨モリブリンバット@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、極上ケモノ肉×3、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:あのイヤなにおいのする生き物(乃亜)を止める。
1:よく分からないが、まずは様々なにおいをたどってほかの生き物を探す。
2:あとは食糧確保のため、マンモスやほかの動物を探して狩ることにする。
[備考]
参戦時期は原始編ED後から最終編でルクレチアに飛ばされるまでの間。
まだ言葉が発達していない時代の人間なので「あい」以外の言葉を話せず、身振り手振りで意思疎通を図ります。
『支給品紹介』
【竜骨モリブリンバット@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
ポゴに支給。角の生えたイノシシのような亜人『モリブリン』の中でも戦いなれている個体が使ってくる両手武器。
太古の獣の骨を取り付けたバットであり、斧のように先端に重心がある作りになっている。
【極上ケモノ肉@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
ポゴに支給。主に大型の動物から手に入るとても貴重な肉で、一般的にイメージする『骨付き肉』といったビジュアルをしている。
極上の名に負けない旨味と食べごたえを持ち、料理に使えば絶品の出来上がりが期待できる。
……もっとも、ポゴが生きている時代及び作中の描写を考慮すると、"焼く"以外の調理をされない可能性が高いのだが。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します
――例え世界が醜くとも、例え世界が残酷だとしても
◆ ◆ ◆
「一体誰なのかな、ボクの邪魔をするのは。」
理不尽を体現した少年が、そこには居た。
眩い金色の髪を揺らめかせ、超然とした態度で、殺意と疑問を重ねた視線で、その光景を目の当たりにしていた。怯える誰か、それを庇う紅い髪の少女。
殺すつもりで放った攻撃は、少女が召喚した砂の守護獣に防がれた。
一体彼女が誰なのか、一体彼女が何なのか、青年にはどうでもいい話。
「あなたこそ、どうしてこんな事をするんですか?」
対して少女は、警戒こそすれど、少年に問い掛ける。
殺意もなく、「どうして?」という理由から。
少女は少年のことをまだ知らない。その名前すらも知らない。
殺し殺されあう事が真理たるこの舞台で、善性という瞳の炎を絶やさぬ少女。
「……気に入らないよ、その目。」
「っ!」
怨嗟とも、諦観とも取れる言葉。同時に放たれる光の槍。
少女は砂の盾を展開し防ぐ。盾を貫通して静止すた槍は、少女の瞳数ミリまで迫り、消失する。
少女は少年の瞳に覚えがある。かつての自分と似た目。
運命を呪い、己を取り巻く世界を呪い、怒りのままに島を滅ぼそうと考えた己自身と同じように。
「同じなんですね。」
「何がだ、人間の分際でボクと同じ?」
「怒って、恨んで、悲しくて。似ているんです、私と。私と同じ……。」
「――黙れ。」
少女の言葉を静止する。満ちた怒りが少年に纏わり付く。
「同じ」と言われた事が、おぞましい。
自分と人間如きが同じだと、似ていると、己の怒りが少女の過去と同一と扱われることが。
「……今回だけは見逃してやる。お前たちなんか後でもどうにでもなるからね。」
だが、力を収め。少年は告げる。
己にはやるべき事があり、叶えるべき願いがある。
かつて挫折した願いを、再び叶えるための手段がある。
殺戮は、その為の手段の一つにすぎない。
「何も失っていない分際で、ボクと同じなんてほざくな人間。次はない。」
「……っ。」
そう告げて、少年は少女の前より立ち去っていく。
その背中は、寂しさ以上の憎悪が纏わりついているように見えた。
◯ ◯ ◯
「ねぇ、サボくんでいいのかな? 大丈夫?」
「あ、ああ……ありがとな、姉ちゃん。」
もう一人の、怯えていた少年に語りかける少女。
とある小島の砂塵舞う小国の巫女だった少女サラ。
奇しくも殺されそうになった少年の命を間一髪繋ぎ止めた少女は、目の前の彼、サボと名乗った少年と出会った。
彼もまた、この殺し合いに巻き込まれた一人。
兄弟の契りを結んだ二人が目の前で殺され、怒りと先程の少年によって齎されようとしていた死の恐怖。
結果としてサラに助けられて、こうして今も生きている。
「サボくんはさ、あの乃亜って子供のこと、どう思ってる?」
「どう思ってるって……まあ、うん……いい家に育てられたボンボンってとこか?」
サボ視点においての、怒りやらそういうの一先ず置いといての評価。
全能感に満ち溢れた子ども、自分の力で何でもできると思いこんでいる餓鬼。
甘やかされ、持て囃され、他人の犠牲なんてどうでもいいと思っている、サボにとって一番なりたくなかった貴族のような、そんな人間に、サボには乃亜がそうであるように見えた。
なんとも子供らしい言い方に、ほんの少しサラの口元が緩んだ。
そして、思い詰めたものを吐き出すように、サラもまた言葉を紡ぐ。
「あとさ、さっきのあの子、もしかしたらさ。私もあんな事になってたのかもしれないの、かな。」
先程サボを殺そうとした少年。
まるで幼い天使のような、超然とした生命体のような。
だが、その瞳の奥は、歪んでいた。憎しみ、哀しみ、怒り。何もかもが渦巻いて、万華鏡のように美しく、泥水のように濁った、そんな妄執の輝きが。世界への憎しみに満ちた、そんな悲しい少年の事が。
――何も失っていない分際で、ボクと同じなんてほざくな人間。
どう答えればいいか、分からなかったのかもしれない。少なくともあの時の彼に言葉に対しては。
あの少年の瞳は、燃え滾る憎悪は、あの頃の自分自身の写し鏡に思えてしまった。
守るべき民に「忌み子」と呼ばれ忌み嫌われ、ただ頼るだけの連中にしびれを切らした。
どうでも良くなって、辛いだけの全てに我慢が鳴らなくなって、壊そうとした。
止めてくれる人がいた。それぐらいに、自分のことを大切に思ってくれる人が居たから、止まることができた。騎空団の団長やルリア、ボレミアたち護衛のみんな。
島の民は許せないけれど、そういう人たちがまだいるというなら、歴代の巫女たちが命を捧げた意味があったのかもしれない。
だからこそ、あの少年の言葉が心にこびり付いている。もしあの人たちを失ってしまったら、だなんて妄想、考えたくもなかった。
もしそうなったら、本当に――――。
「姉ちゃん?」
「……ごめんね、ちょっと考え事しちゃった。」
不安がって声を掛けたサボに対し、思わず作り笑いで返す。
この子は目の前で義兄弟を、大切な友人を奪われた。何の感慨もなく、要らなくなったおもちゃをゴミ箱に投げ棄てるような、そんな幼稚さで。
許せるはずもないし、認める訳にはいかない。穢れた奇跡になんて縋ってなるものか。
「行こう、サボくん。私は、こんな殺し合いなんかに、あの乃亜って子に、負けたくなんて無い。」
「……ああ。そうじゃなきゃ、俺だってあいつらに顔向けできねぇからな。」
サボもまた、義兄弟を殺されて黙っている訳にはいかない。
あの金髪の少年、海賊なんかよりもよっぽどおっかない何かに殺されそうとなったとしても。
いや、彼としては、あの時既に命を落としていたのかもしれない。
サラと同じく、傲慢で幼稚な鍍金の独裁者に負ける訳にはいかないと。
二人の決意は、同じものであった。
【サラ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.殺し合いには乗らない。あんな穢れた奇跡になんて縋らない。
1.もしかしたらみんながいるかもしれない?
2.あの少年、あの時の私に似ていた……?
[備考]
※最低でも『砂縛の涙、ひとしずく』終了後からの参戦
※グラフォスの能力は、殺し合いが崩壊しない程度に制限を課せられています
【サボ(幼少期)@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.殺し合いなんてぶっ壊して、あいつ(乃亜)はぶっ飛ばす!
1.このお姉ちゃん(サラ)についてく
2.さっきの金髪の少年は警戒
[備考]
※参戦時期は乗ってた小舟を天竜人の船に撃ち落とされた直後
◯ ◯ ◯
「どいつもこいつも、ふざけたことを。」
それは、紛れもない憤怒だった。
予想外に予想外を重ねた、苛立ち。
「乃亜とかだったか。人間の分際でこのボクをこんな醜い殺し合いに巻き込ませるか。」
この自分が、姉の死因となった傲慢で欲深い人間が。
享楽ととして殺戮を見世物舞台にするのか、と。
少年――ミトス・ユグドラシルは怒りに震えていた。
「何処までも愚かで、救いようのない奴らしかいない。」
間違っていた。やはり神子を使っての復活は間違っていた。
姉さんがあんな事を言うはずがない。ボクを拒絶するはずがない。
「乃亜、もし君のその、死者すら甦らせる力が本当だったとするなら。」
だから、全てやり直せば良い。再び始めれば良い。
姉の復活も、千年帝国の成就も、そして愚かな生命を滅ぼすことも。
「ボクが全て手に入れてやる。それまで君の舞台で望み通り踊ってあげるよ。」
かつて英雄と呼ばれた少年は、喪失と憎悪の果てに狂って、歪み堕ちた。
その歪みは、最後の最後まで晴れることはなく。
ただ、その歪みを加速させて、誰にも止めることはできない。
「それに――ボクにあんな口を聞いた、彼女は必ず殺してやる。」
少年が求めるのは、永劫の千年帝国。
そして、ただ、姉と一緒に居たかっただけど、そんな少年の憎悪の一端でしかないのだ。
【ミトス・ユグドラシル@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:健康、乃亜及びサラに対しての怒り
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本.優勝して、今度こそ『正しく』姉さんを蘇らせる。
1.乃亜は力を奪った上で殺す。
2.優勝するまでは乃亜の思惑通りに殺し合いに乗る
3.ボクにあんな事を聞いたあの女(サラ)は必ず殺す。
[備考]
※救いの塔でロイドたちと戦った後からの参戦
※制限で少年の姿に固定されています。
※制限によりタイムストップの停止可能時間は3秒となっています
投下終了します
度々失礼します。
>>486 について、支給品の数に誤りがありましたので以下の通り訂正いたします。
【ポゴ(原始編主人公)@LIVE A LIVE 原始編】
[状態]:健康、元気いっぱい、葉っぱまみれ
[装備]:竜骨モリブリンバット@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、極上ケモノ肉×3、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:あのイヤなにおいのする生き物(乃亜)を止める。
1:よく分からないが、まずは様々なにおいをたどってほかの生き物を探す。
2:あとは食糧確保のため、マンモスやほかの動物を探して狩ることにする。
[備考]
参戦時期は原始編ED後から最終編でルクレチアに飛ばされるまでの間。
まだ言葉が発達していない時代の人間なので「あい」以外の言葉を話せず、身振り手振りで意思疎通を図ります。
投下します。
──火、首輪の爆発、 見せしめとして殺された見知らぬ兄弟。
かつて住んでいたマンションに放火された時、自分を助けて犠牲になった母。
母を失った自分の為に、大学の研究職を辞めてまで自然豊かな倉院の里へ一緒に引っ越しに行ってくれた父の佐奈樹文明。
彼も、里に住んでいた悪徳政治家の清木まさはるとトラブルを起こした末に殺されてしまった。
両親を失った悲しみから引きこもり生活を送っていた中、弁護士の王泥喜法介と彼の養父であったドゥルク•サードマディと出会い、言葉を交わすことが出来た。
王泥喜も同じく放火によって実父を失っており、彼の写真を見せてくれた。
母の命を奪った犯人が逮捕された事を話した時も、ドゥルクは「それがせめてもの弔いになればいいが」と言ってくれた。
王泥喜の同業の仲間である希月心音とも出会い、自分のトラウマを癒して、清木の裁判が行われる中自分に前に進む様にと、王泥喜と共に励ましてくれた事で、引きこもりを脱却出来た。
自分が様々な証言をした事や、休憩時間中に王泥喜達に情報提供をした甲斐もあり、清木も漸く逮捕された。
───のだが、突然大勢の子供たちが集められた場所でルフィ達が殺される場面を目撃した時、余りの惨状故に火へのトラウマが蘇ってしまった。
■■■
(怖い…やっぱり怖い!! オドロキ二等兵や希月衛生兵共に治してもらったハズの火への恐怖心が…蘇ってしまう…!)
参加者の一人である佐奈樹ヒルネリアは、ルフィ達の首輪が爆破され、血を噴出させて倒れた直後に『敗北者』等と罵倒される場面を目の当たりにした記憶に恐怖を感じても尚、ランドセルの中身と迷彩服とズボン以外の防具を没収されている事の確認を済ませ、その足で歩き始め、この殺し合いを止めるべく動き出している。
(こんな殺し合いにワガハイが巻き込まれたというのならば…)
元いた世界で清木の裁判が終わって間もない頃、王泥喜達に自分の足で歩んでいく事をヒルネリアは打ち明けていた。
それをこの世界でも実行する。
「ノア、この残虐極まりない遊戯は絶対にこのワガハイが止めさせるぞ!」
たった今、彼女は誓った。この殺し合いをどうにかして止めさせる事を。
【佐奈樹ヒルネリア@逆転裁判6】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:どうにかしてでもこの殺し合いを止める。
1:一先ずは移動。
2:殺し合いに反対的な参加者が居るなら同志(自分の仲間)に加えたい。
3:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は少なくとも第5話の清木まさはるに対する裁判が終了し、王泥喜法介達と別れた後。
※元々装着していた迷彩服とズボン以外の防具は全て没収されています。
※彼女が元々使用していたラジコンヘリ及びコントローラーが本人支給されているかどうかは、当選した場合後続の書き手様にお任せします。
投下終了です。
投下します
僕はその日生き返り、人を殺した。
人を殺した事自体は、そこまで感慨は無かった。
何故なら僕はチャペルの双子。ジェフ・ボーエンだから。
世界を裏から牛耳る兵器産業にして秘密結社「エグリゴリ」
そのエグリゴリ主導で行われた妊娠した母体への新薬の投与実験。
人工的に天才を多数輩出する事を目的とした実験の結果、生み出された子供達。
それが「チャペル・オブ・チルドレン」であり。
その中でもNo.1とNo.2の頭脳を誇ったのが僕と、兄のアル・ボーエンだった。
僕たち兄弟は生まれて二か月で両親に「ハロー」と語り掛け。
ジュニアスクールに入るまでに物理学、化学、工学を始めとする学位を取得した。
周囲の凡人達を見て何故この程度の事が出来ないのかと、当時は理解に苦しんだものだ。
そして、七歳になった頃、兄のアル・ボーエンは僕たちの実の両親を殺した。
“凡人“は”天才“を認める事ができない。
それは両親ですら例外ではなかった…。
両親は天才の僕たちを認めず、僕たちを迫害し虐めた凡人の子供達の肩を持った。
あろうことか、手を汚さずスマートな復讐を行った僕たちを殺そうとした。
このまま生かしていたら大変な事になる、それが父の最後の言葉だった。
崩れ落ちる父と母の姿を見て胸が締め付けられる様に痛んだけど、アルは笑っていた。
笑って、両親にこんな運命を辿らせた凡人達に復讐しよう。そう言っていた。
僕は、その言葉に黙って頷いた。
両親がいなくなってから。
僕たちはエグリゴリの機関に引き取られた。
引き取られてからは毒ガス、洗脳装置、サイボーグ、強化人間…
工学、化学、果てはバイオテクノロジーに至るまで、およそ科学と呼べる物なら何でも着手した。
エグリゴリは僕たちの才能を認めてくれて、心地よかった。
悪戯に人を殺した事もあったけど、組織の力を使えば簡単に揉み消せた。
自らの頭脳と組織の権力さえあれば、不可能はない。
あの時の僕たちはそう信じていた。
エグリゴリに引き取られてから暫く経った後僕たち双子に上から指令が出た。
日本のハイスクールに在籍する二体のARMSという兵器を備えた高校生を確保せよ。
僕たちにとってそれは新しいゲームでしかなく。
あらゆる手を使って勝とうとした。
爆薬にロケット弾、自作の強化人間(サイボーグ)…
学校と言う舞台(ステージ)は僕たち双子にとって不快だったから壊すことに躊躇は無かった。
消防隊を全滅させた時なんかは、胸がすく思いだった。
だが、その結果僕たちはARMSを持つ二人に敗れ。
暴走した僕たち双子に見切りをつけたエグリゴリのシークレット・エージェント…
『キース』に粛清された。
刃で貫かれた時。
僕たち兄弟に殺された人間たちもこんなに痛かったのか。
そう思った。
その事を考えたくなくて、僕は最後に兄に尋ねた。
───僕たちは…卑怯者なんかじゃないよね……?
兄(アル)は、何も答えてはくれなかった。
「アル…待ってて……」
意識が途切れた後、気が付いたら僕はあの薄暗いホールにいた。
そこで殺し合いを強要され、兄弟が死んだ。
特に何も思わなかった。凡人達など、天才の僕に敵う筈がないからだ。
如何にも低能そうな凡人がこの世から二人消えた所で、揺れる頭脳など持ち合わせてはいない。
あの海馬乃亜とかいう子供に命令されるのは不愉快だが、生き返らせてくれるなら帳消しにできる。
そして僕は命じられるままに、人を殺した。
「ランボさん!お前みたいなズルっ子には負けないもんねー!!」
物陰から銃を撃った僕に、最初に出会ったガキはそう言ってきた。
牛柄の服を着て、もじゃもじゃの頭に変な角を付けたこれまた低能そうなガキだった。
一発目は外してしまったが、二発目は奴の足に当たった。
痛がる奴を見てスカッとした。世紀の天才である僕にふざけた事を抜かすからこうなるのだ、そう思った。
だが、その直後奴は自分のランドセルからバズーカを取り出してきた。
不味い、と思った。如何に世紀の天才と言えど、ロケット弾を喰らえば終わりだ。
無我夢中だった。
殺さなければ殺される、そう思った。
一度経験した死の痛みが蘇ってくる。
僕は夢中でそのガキにタックルした後、至近距離でガキの脳天に銃弾を撃ち込んだ。
一発目で「くぴゃ」と声を上げて、二発目で痙攣し、三発目で動かなくなった。
「……僕たちは…卑怯者なんかじゃ……ない……」
牛のガキの支給品を自分のランドセルに放り込んで。
明らかに要領を無視して入っていくランドセルの異様さにも、この時ばかりは気にならなかった。
そうして、ひと段落した後、僕は荒い息を吐いた。
何故だか無性にアルの顔が見たくなって、空を見上げた。
分かってる、此処はきっと地獄だ。
その地獄の中で勝ち上がった物こそ生者の世界へ帰ることができる。
だから、僕は殺し合いに乗る。
だから、僕は負けない。
アルも、きっとこうするだろう。
あの日、パパとママを手にかけて。
僕を此方の道に引きずり込んだのは、血を分けた兄(アル)なのだから。
───天才でも、死は怖かった。一度経験したら、猶更だった。
───死にたく、なかった。
【ランボ@家庭教師ヒットマンREBORN! 死亡】
【ジェフ・ボーエン@ARMS】
[状態]健康
[装備]ベレッタM92F@現実、10年バズーカ@家庭教師ヒットマンREBORN!
[道具]基本支給品×2、ランダム支給品1〜4
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝し、アルと再会する。
1.僕は、卑怯者なんかじゃない……
[備考]
原作二巻、死亡後より参戦です。
【10年バズーカ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
撃たれた対象を五分間だけ十年後の対象と入れ替える。
本ロワでは撃たれた対象は五分間経過するまで首輪は動作しないが、制限により入れ替わっている間は意識が強制的にシャットアウトされ、
入れ替わった先で行動するのは不可能である。五分経過すれば意識がある状態で再び転送しなおされる。
また、死亡するなどして十年後存在していない人間に命中した場合不発に終わる。
入れ替える十年後の対象は本ロワを経験しなかった並行世界(つまり原作)の対象であり、入れ替わったからといって本ロワでも生存するとは限らない。
この地でまず最初に思ったことは、これはエグリゴリの手に依るものか?という事だった。
だが、あの海馬乃亜というガキを僕は知らない。
まずエグリゴリに連なる存在、それもこんな大掛かりな催しを開く立場にいる子供なら…
一番単純に考えるのなら、チャペルの子供達出身である可能性が高い。
だが、僕もまたチャペルの子供達出身ではあるが、あんな子供は知らない。
この天才的頭脳は、その気がなくとも一度名前と顔を認識すれば忘れる筈もない。
その僕の記憶を辿っても、あんな日本人の子供には心当たりは無かった。
何より、僕を除くチャペルの子供達はグランドキャニオンで………
「それに、何故僕を生かしている……?」
この実験にエグリゴリが関わっているなら、不可解な点は他にもある。
彼の組織が反乱分子である僕たちを粛清しようと決定し、拉致に成功したなら何故さっさと殺さない?
意識を失っている間、殺すチャンスはそれこそいくらでもあった筈なのに。
殺し合いを強制するというのは此方に対する殺意が見受けられるが、方法が迂遠すぎる。
そして、一番不可解な点。
何故、高槻涼、新宮隼人、巴武士、久留間恵のオリジナルARMS達がいないのか。
此処に来る直前、薄れていく意識の中で周囲を見渡したが周囲にいた人影はどれも僕とそう変わらない子供ばかりだった。
何故、一番の危険因子であるオリジナルARMS達をここへ呼ばなかった?
まだ利用価値があると判断されたから?
それならば僕も殺し合いに参加させるより、人質に取った方が利用価値は高いだろう。
エグリゴリの仕業と断定するにはどうにも、腑に落ちない点が多かった。
しかし今はそれを考えても、判断材料が少なすぎる。
「ふん…いいだろう海馬乃亜。貴様のその挑戦、受けて立とう」
未だに正体の掴めない海馬乃亜という少年はハッキリ言って不気味だった。
恐ろしい気持ちも、勿論あった。
だが…それ以上に、僕の頭の中に逢った考えは一つ。
「この世紀の天才…アル・ボーエンが忌々しい首輪の戒めを外し、直ぐに貴様を一発殴りに行ってやる」
それは、不遜にもこの人類の至宝たるアル・ボーエンに殺し合いを強いた海馬乃亜への宣戦布告だった。
恐らく、奴はそれなり以上に僕の事を調べているのだろう。
両親を自分の手で殺害した事、通っていた学校に毒ガスをばらまいた事、そして涼たちARMSを捕らえる為に行った暴挙の事も…
その上で、自身の生存の為にその頭脳を殺戮に使えと、そう言いたいのだろう。
「こんな首輪程度で僕に命令できると思ったなら、大間違いだ」
だが、今の僕が大人しく殺しあえと言う命令に従うと思ったなら、それは大間違いだ。
以前の僕ならば、見立て通り殺し合いに乗っただろう。
己の能力を誇示する為に…科された課題をクリアする為に…
しかし、凡人を見下し、ゲームの様に人を殺すことに躊躇のないアル・ボーエンはあの日死んだのだ。
弟の…ジェフと共に。
それからはARMSの謎の解明と、最後に残った家族を奪ったエグリゴリの復讐のために生きるつもりだった。
───何で世界を敵と味方の二つだけに色分けして考えるんだ!?
───疲れんだろ?そー言うの!
そうして、エグリゴリを追って…涼や隼人、ユーゴー達と過ごす内に……
世界を凡人と天才、敵と味方に色分けしていた事が酷く馬鹿馬鹿しく感じるようになった。
ここでも同じだ。
世界の色を敵と味方の二色に分けて、誰かに促されるまま殺し合いをするなんて、もう真っ平御免だ。
そう言う事は、もう卒業したのだ。天才の幼年期は、既に終わっている。
だから、僕は僕の意思で思考し、歩く。この殺し合いに抗って見せる。
僕たちとエグリゴリの戦いは…終わってはいないのだから。
───さぁ、開戦の時間だ。
【アル・ボーエン@ARMS】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いから脱出する。
1.首輪を解析する。
2.協力者を探す。
[備考]
原作十巻以降から参戦です。
兄弟は、今はまだ知らない。想像すらできない。
この殺し合いの場で、血を分けた片割れがいる事など。
彼等が再び出会う事ができるかは、神のみぞ知る。
だが、歩みを止め、時間が止まったままの弟と。
仲間を得て、その後の時を進み続ける筈だった兄。
兄弟の道には既に、埋まる事のない運命と言う名の溝が横たわっている。
もし、殺し合いを生き延び、兄弟が出会う事があったなら。
その物語に、タイトルをつけるなら。
それはきっと────、
投下終了です
投下します
「クソッ、いったいどうなってやがるんだ……!」
獄寺隼人は苛立っていた。
いきなり知らない場所に拉致されたと思いきや、マフィアなのに中学生にもなってランドセル背負わされて。挙句の果てに殺し合いをしろだのと、キャベツ頭のガキに言われた。
殺し合い。
その行為自体はマフィアであり、ボンゴレファミリー嵐の守護者である獄寺隼人という少年には巻き込まれる理由が十分にある。
だがこのランドセルがなんだかマヌケな感じがするし、よりによってあんな傲慢なガキ一人の言いなりになるというのが気に入らない。
それに獄寺はマフィアだが――こんな殺し合いを肯定するほど、魂が腐敗しているわけでもない。……というより昔なら喜んで参加したかもしれないが、ボンゴレファミリーの十代目ボス――沢田綱吉の影響でこんなふざけたことは許容出来ない性格になっている。
ルフィとエースがあんなふうに殺処分された光景を見ただけで――怒りという感情がわいてくる程度には、天才・獄寺隼人(スモーキンボム)はボンゴレ十代目(ツナ)に近付きすぎた。
――だがそれでいい。
獄寺はツナと仲良くなったことを恥も後悔もしていない。むしろ彼のおかげで色々と大切なものを知ることが出来た。
すごく重要な場面なのに勝利よりも友達の命を優先するような――そんな甘くて、優しい少年だから獄寺はツナを慕う。
学校では周りからダメツナなんて呼ばれてるけど、ここぞという時は自分の意見や覚悟を貫く覚悟を持つ、ナヨナヨしているようで実は芯の強い男。――獄寺隼人のヒーロー。
「こんなランドセル(モン)、アホ牛にでも――なんて言うのはこの状況じゃ演技でもねぇか」
中学生を小馬鹿にするかのように用意されたランドセルに文句を垂れながら、獄寺は慎重に中身を漁る。
友達――というか腐れ縁?
同じボンゴレファミリーという意味では仲間だが――色々とアホな牛のガキを獄寺は想像した。
まあランドセルを背負わせるにしてはまだ幼すぎる気もするが、中学生の自分よりはマシだろうと思う。
もっとも中学生なんてつい数年前までランドセルを背負ってた年頃なのだが、そんなこと本人は特に自覚していない。よりガキであるランボの存在もあって、中学生でランドセルというコンボに妙な違和感を覚えざるを得ない。
(――それにしても乃亜のやつ、どこから監視してんだ……?)
支給品を確認すると同時に、周りをキョロキョロと視線だけで見回す。
こんな小細工しても乃亜にはすぐ見破られる可能性が高いだろうが、それでも堂々と見回すよりまだ精神的に安心出来る。それに相手は何者かわからないが、まだガキ。これくらいのガキ騙しが通じる可能性も捨て切れない。
まあ彼の世界ではアルコバレーノという凄まじい才能を秘めた赤子もいるので、油断は微塵もしていないのだが。なんなら乃亜のことはそっち側であるとすら考えている。
姿形だけで物事は判別出来ない。アルコバレーノが赤子であるように。雲雀恭弥という最強の守護者が表向きはただの風紀委員長であるように。――そもそもあの六道骸だって中学生だったじゃないか。
(やっぱり一番怪しいのは首輪か?でも下手に刺激すると……。嫌な予感がするぜ)
不死の能力者でも殺せる爆弾。
ルフィやエースのことを知らない獄寺からしたら『不死の能力者』という部分に現実味はないが、あの自信に満ちた演説を見るに嘘はついてないのだろうと推測出来る。
そんな機能を搭載しているほどの首輪だ。他にも色々と仕掛けがあるかもしれない。
(……最終的にはどうにかしてこの首輪は外さねーとな)
乃亜に抗うためには首輪解除が必須だ。
これがある限り彼に命を握られているに等しいのだから。いざ乃亜に辿り着いて、首輪爆破で殺されましたなんてオチは御免だ。
そして獄寺は頭が回る。専門的に機械を弄っているとかじゃないが、手先は器用。なにより元よりダイナマイトを使いこなす男だ。こういう時に多少は力になれると自負している。
それに今回の首輪のように不思議な能力・仕掛けを施された道具なんて散々見てきた。当然、理解もある。
文房具一式がランドセルの中に入っているのもありがたい。やはり紙とペンは大事だ。
(……参加者にランドセルを配ってそこに色々と詰め込むのも、この殺し合いに何か関係がありそうだぜ)
自分は中学生。
それなのにどういうわけか、ランドセルを背負わせて参加させてきた、
ランドセルとは本来、小学生のものだ。中学生達は何年も前に卒業している。
わざわざ荷物を詰め込む容器としてこんなものを選ぶという理由は、必ず何かあるはずだ。きっとそれが判明した時、殺し合いの真実に一歩近づける。
参加者をどういう基準で選んだのか。雑多にランダムという可能性もあるが、何らかの法則性があるかもしれない。
演説で殺害した相手も子供だったし……そういう年齢層を狙った殺し合い、とか。
(――でも小学生ばかり集めたなら、俺がここにいる時点でおかしい。てことはこの説はナシ――か?)
獄寺はペンを持つと「小学生くらいの年齢がターゲットの可能性」ということを紙に書いたが、それをシャッシャと斜線で消す。自分が小学生より上と思うがゆえに未だ彼はこの殺し合いのコンセプトを見破るに至らず。
(早くこの首輪をなんとかして、十代目の元へ帰らなきゃならねえのに……。そもそも十代目もこの殺し合いに巻き込まれてる可能性は――否定出来ねえけど)
何らかの法則性で参加者を選んでいるのなら。
それこそボンゴレファミリーを恨んでいるだとか。そういう理由ならツナも招かれている可能性が高い。
そもそも右腕である自分がこうして巻き込まれた時点で――ツナもターゲットにされている可能性を獄寺は視野に入れていた。
(もしも十代目が参加してるなら……。首輪は俺がなんとかするんで、それまで持ち堪えてください……!)
ボンゴレファミリー嵐の守護者はそのポジションに反して、まずは首輪解除を優先する。
そのために情報や人材を集める必要があるだろう。乃亜に対する嵐のような怒涛の攻めは、首輪を外した後だ。
(アホ牛のやつは……もし巻き込まれたら、俺が保護してやるしかねぇか)
そしてランドセルを見て脳裏に過った牛ガキ、ランボ。もしも彼が居たら、探して守ってやりたい。
そこら辺の方針が本格的に決まるのは、参加者名簿を閲覧してからになるだろうが――。
【獄寺隼人@家庭教師ヒットマンREBORN!】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:首輪を外して乃亜をぶっ倒す
1:まずは首輪解除に必要な情報や人材、道具を集めるぜ。ダイナマイトの知識が活かせりゃいいな
2:首輪以外にもこの殺し合いについて考察するか
3:あのアホ牛(ランボ)、参加してなきゃいいんだけどな……
[備考]
少なくとも未来編以降からの参戦です
投下終了です
投下いたします。
いまだ薄暗い会場の中、鉄骨がむき出しで建設中止といった様相を示すビルのてっぺんで一人の少女が月明かりに照らされていた。
目元を覆う赤いマスクにネズミを模した耳が付いたカチューシャ、バニーガール風の衣装と大きく膨らんだズボンを履いた黒髪の少女だった。
「まったく……このボクがいつの間にか囚われて、愛用の道具まで奪われた状態でこんな悪趣味な催しに参加させられるだなんてお笑い草だね……」
彼女の名前はウルシ。正義のための盗みを働く義賊『怪盗ねずみ小僧』にして忍者でもある、現役女子中学生の少女である。
そんな彼女は今、この鉄骨むき出しのビルのてっぺんで夜風に当たりながら自らの現状を整理していた。
「……今、ボクの手元で使えそうなのはこのランドセルの中に入ってた手裏剣っぽい刃物と、爆弾が巻き付けられたこのラグビーボールの二つかぁ…」
その中で彼女は自分に支給されたランドセルの中身を取り出し、小さく溜息をつきながらもその中から使えそうなものを取り出して確認していた。
彼女が今手にしているものは三角形の形をした手裏剣のような刃物で、その刃は鋭く研ぎ澄まされており切れ味も抜群の代物。
そして、もう片方のラグビーボールのような物には3個の手榴弾が巻き付けられており、見ただけで強力な爆発が発生すると予期できるものだった。
「状況は厳しいかもね……だけど、まあ…いつもとやることは変わらないだろうけどね!」
たったこれだけの装備で主催者への大逆転勝利を狙えるとは到底思えない。だがそれでも彼女は笑いながらそう叫ぶ。
どんな状況でも諦めずに立ち向かう、それが彼女なのだから。
「さあ……ねずみ小僧、参上だよ!」
そうしてひとしきり確認を終えると、突如として彼女は階下の鉄骨に次々と飛び降りるような形で地上まで降りていった。
それから彼女はそのままビルの敷地外へと飛び出していき、人が集まりそうな場所へと向かうことにした。
そこにはきっと、他の参加者達もいるはずだと考えて……。
そしてそんな彼女の姿を、黄金に光る月が照らしているのであった……。
【ウルシ@ボンバーガール】
[状態]:健康
[装備]:ニンジャダガー@Miitopia、アヴェ・マリア(Hail Mary)@デッドライジング2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1(確認済)
[思考・状況]基本行動方針:正義の義賊として、乃亜の野望を止める。
1:『怪盗ねずみ小僧』として、このような殺し合いに乗るわけにはいかないね。
2:まずは人が集まりそうな場所を探す。
3:グレイやアサギなど、自分の知り合いが呼ばれていないか心配。
[備考]
参戦時期は少なくともアサギなど他のボンバーガールと知り合って以降。
『支給品紹介』
【ニンジャダガー@Miitopia】
ウルシに支給。『とうぞく』の武器であるダガーの一つであり、レベル45以降から出現する。
三角形の青い刀身の手裏剣といったデザインをしているが、出典基においてこの武器を投げつけて使用する技はなかったりする。
『支給品紹介』
【アヴェ・マリア(Hail Mary)@デッドライジング2】
ウルシに支給。ラグビーボールの側面に3つのグレネードを括り付けて作られた爆発物。
グレネードと違い着弾後すぐに爆発するので使いやすさが向上している。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
>>──それはきっと、「悲劇」なのだろう
………こいつら、自分で自分の事を『天才』とか『人類の至宝』とか言って恥ずかしくないのだろうか?
投下ありがとうございます!
>人妖の分水嶺
来ましたね。見た目は子供、頭脳は大人枠。
さっそく大人な対応で、マーダー一人を説得したのは流石ぬーべー。
しかし、子供には手を出せないという致命的な弱点がありますからね。それがどう響くか……。
>ときどきあっちむいてプン!
>……おっと、いけません。僕としたことが、ついつい我を忘れてしまいました
おやおや、フリーザというより、ここ右京さんみたいですねえ。
フリーザの態度で本体がぽろりのままである以上、ろくな目に合う気がしない……。
>食事のじかん
小杉に次ぐ強力な人食い枠の登場ですね。
とはいえ、非常に理知的な面もあり、優勝も考えつつ脱出出来るなら、それでもいいというのは柔軟なスタイルで狡猾です。
羽仁衣に食事シーンを見られても、特に気にしないなど、価値観の相違で後々災難を起こしそうですが……。
>I want to go home
スパイとして汚れ仕事もしてきてるでしょうに、とても善良な対主催です。
やっぱ炭次郎みたいに、ジャンプの長男と長女は良識があって強いんですよ。
>可能性のドアはロックされたまま
もう、皆殺しにしたあと、ドラゴンボールで全員生き返らせるしかねえな! クリリン!!
不幸中の幸いか、まだこの開き直りをするにはドラゴンボールのことをよく知らない時系列からの参戦ですから、この理屈で殺し合いに乗る可能性は低いことでしょうか。
>未知との遭遇
ゼオンも来るなら、ガッシュも居るだろうと言わんばかりの、開幕からのVSシャルティア戦。
バオウザケルガのような象徴的な大技も披露しつつ、フリーレンの立ち回り駆け引き、シャルティアの脅威がこれでもかと描かれたバトルでした。
ジケルドが活躍したのが嬉しい。
>世界の始まりで、"あい"を叫ぶ
原始人なのに、殺し合いを止めようとする人間の鑑、我々の先祖が彼のようであると考えると誇らしいです。
>あとは食糧確保のため、マンモスやほかの動物を探して狩ることにする
地味に、人外参加者が居たら殺しそうで怖い……。
>虚空に祈ってろ
ミトスの境遇は悲惨なのでしょうけど、目の前で兄弟二人爆殺されたサボも結構大概ですよね……。
それでも自分関連の事と、それ以外を区別してしまうせいで、説得も何も通じないのはとても危険な相手です。
理解し合えれば、矛の収め時も見つかるでしょうが、結局力づくで捻じ伏せるか伏せられか、二択になってしまいそう。
>歩む為の足
自分のトラウマを乗り越えて、殺し合いに反旗を翻す。元引きこもりとが思えない高潔さです。
ミリオタですから、銃器があれば多少は自衛も出来なくはなさそうですし、他の子供達を保護しながら頑張ってほしい所です。
>──それはきっと、「悲劇」なのだろう
兄は良き方向に変わったのに対し、弟は何も変わらぬまま殺し合いに乗ってしまったのが皮肉というべきでしょうか。
ランボーはジェフを一瞬ビビらせただけ、善戦したと言えるでしょう。南無。
>嵐の守護者、ランドセルへ怒涛の疑問
獄寺良い奴なんですけど、心配した傍からランボー死んでるのは流石に草。
こう見えてインテリで爆薬の知識も豊富な獄寺は、首輪解析兼考察要員として活躍してくれそう。
>この世にひとつ、微笑んで許される悪がある
色々、性癖ぶち込みまくったキャラですね。
中学生なのか……(困惑)。
わたしも投下します
「海馬コーポレーションって、時々変なことやるし、この殺し合いもあの会社の仕業かも!」
緑の髪を後ろに束ねた活発そうな少年、龍亞は語っていた。
殺し合いを開いた乃亜という少年が名乗った、海馬という姓に心当たりがあったからだ。
ソリッドビジョンを開発し、デュエルモンスターズを世界的に大流行させた大手ゲーム産業企業、龍亞の住むネオドミノシティとは切っても切れぬ縁のある会社である。
「多分、乃亜ってやつ海馬瀬人の息子なんだ! 海馬瀬人も、頭がおかしい人だって聞いたことあるしさ、髪の色以外なんか似てるじゃん」
デュエルモンスターズの生みの親にして本人も凄腕のデュエリストであるペガサス・J・クロフォードが認めた5本の指に入るデュエリスト達
武藤遊戯、城之内克也、エド・フェニックス、ヨハン・アンデルセン、そして乃亜と同じ苗字を持つ海馬瀬人。
龍亞からすれば全員が歴史の偉人、伝説の英霊と言い切っても良いほど偉大なる先人であるが、特に海馬瀬人はその奇行が目立つ。
その血筋を引き継ぎ、性格が捻じ曲がり、海馬コーポレーションの技術、財力と権力をフルに活用し、殺し合いを開いたと言えば納得できてしまう。
「よく分からないけど、吸血鬼共が崇める雅みたいなもんか、畜生ォ!」
その話を真に受けるのは、帽子を被り左腕が醜い怪物の姿に変えられた小学四年生、山本勝次だった。
「……吸血鬼って何?」
「吸血鬼は、吸血鬼だよ! あいつらのせいで、日本は滅んじまったんだ」
「え? 日本って滅んじゃったの!? うっそだぁ〜!」
「何を馬鹿なこと言ってんだよ……。
吸血鬼になるウィルスがばら撒かれて、日本中はもう滅茶苦茶じゃないか! 俺の左腕だって元を辿れば、あいつらにやられたようなもんだし、暇さえあれば人間を襲うわレイプするわ酷ェ奴らだろ!?」
「れいぷ……? れいぷってなに?」
「レイプはレイプだよ!」
どうも話が食い合わない。
平和だった頃なら、勝次もレイプとは何か知らなかっただろう。
だが現在、いくら小学生といえど、吸血鬼が蔓延する日本で龍亞がレイプを知らないというのは、考え辛い。
「オレ、吸血鬼なんて見たことないし……ウィルスなんて知らないよ」
「マジかよ!? なんか、化け物とか見たことねェか? っていうか、俺の左腕見ても全然驚かねェし、見慣れてるとかじゃなかったのかよ!?」
「そ、そういうものかと……凄い肩幅デカいおじさん(アポリア)とか、Dホイールと合体したじいさんも(ホセ)も居たし……変な左腕とは思ったけど、そういうものなんだなって」
ここで、もう一度お互いに話を擦り合わせ、整理してみる。
勝次の語る世界は吸血鬼に人間が支配された世界で、実質文明が滅んだ非合法地帯である。
逆に龍亞の語る世界は、ソリッドビジョンを始めとした勝次からすれば、近未来的な技術が広まった人間の文明社会だ。
「分かったよ! 多分、あれなんだ……えーと、何だっけパラレル……なんだっけ、パラダイス?」
「パラレルワールド?」
「そうそう、オレ昔なんかのアニメで見たことあるんだ。色んな世界があるって」
「マジかァ?」
「信じられないかもしれないけど、遊星っていう凄ェカッコいいデュエリストが居るんだけど、過去の時代に行ったこともあるんだ。
過去を変えたら、未来も変わるからさ。勝次の世界はオレ達と違う歴史の世界なんじゃない?」
突拍子もない話になってきたが、乃亜が人を生き返らせた場面を勝次は目撃している。なら、そういうモンなのかもしれない。
それに、こんな場所で相手の仮説を否定して口論しても時間の無駄だ。勝次は取り合えず、納得しておくことにした。
「とにかく俺は、こんなクソみてェな殺し合いには乗らない。お前は?」
「オレだって嫌だよ。……でも、この首輪どうすればいいんだろう」
「今はとにかく、進むしかないよ。もしかしたら、首輪を外せる奴も居るかもしれないし、明やハゲが来てくれるかもしれない」
「そうだよな。オレだって、遊星やジャックが助けに来てくれるかもしれないしな。それまで、誰も死なせないように頑張んなきゃ」
「「「「「じわじわ楽しく☆ブッ殺そう」」」」」
「え? 何…」
歌声が聞こえてきた。愉快で明るい軽快な、それでいてこれ以上なく物騒で残酷な歌詞を歌う五人の子供達。
「「「「「僕達5人で“割戦隊(ワレンジャー)”!!!」」」」」
全員がガムテープを顔に巻き付け、ナイフを振り回しながら爽やかな笑いを浮かべている。
「ふったりっ☆みっけ」
「誰がやる?」
「オレがやる」
「いや、僕が」
「早い者勝ちでよくね?」
「了解(おけび)〜」
同じ子供でありながら、明らかに堅気ではない異様な集団を前にして、それでも龍亞は可能な限り冷静に努めようとした。
「ま、待ってよ……オレ達殺し合いなんかしたくないんだって……ここから出る方法に心当たりもあるんだよ。
牛尾っていう、セキュリティの結構偉い人が知り合いなんだ。オレが居ないって分かればすぐに助けに来てくれるよ」
いささか他人頼りだが、外部に頼もしい知り合いが居るから殺し合いに乗らなくても良い、というのは悪くない説得内容だと考える。
やはり子供が子供に下手に説得するより、大人が助けに来てくれると思えれば、冷静にもなれるだろう。
「セキュリティ?」
「セキュリティじゃ分かりづらいか、警察みたいな……」
「警察(ポリ)ィ?」
普通の子供ならば、警察が身内に居るから事件は早期に察知されて救助が来ると言われれば、ある程度の説得力は持たせられるだろう。
だが彼は既に普通ではない。道を踏み外し、かつては被害者だった少年たちが今は狂気の殺人鬼と化した存在、心が決定的に壊された小さな殺戮者。
「ギャハハハハハハハハハハ!!!」
「極道(ヤクザ)が警察(サツ)を待機(まつ)訳ないじゃん☆!!」
割れた子供達(グラス・チルドレン)。
「あいつら、ヤクザの癖に戦隊ごっこしてやがったのか、ふざけやがって!!」
「嘘だろ、ヤクザなんて……オレらと歳そんなに変わらないのに」
一瞬、ワレンジャーの視線が龍亞へと集約する。僅かな沈黙の後に、リーダー格と見られる少年が口を開いた。
「あの髪結んでるガキ、立腹(ムカ)つくなぁ」
「さきにあっちからやろうよ」
「左手が奇形(キモ)い奴は後回しだね☆」
口調こそ軽くあっけらかんとしているが、その殺意は本物だった。
龍亞とて命がけのデュエルは何度か経験している。だから、子供にしては敵意の類には耐性はある方だった。
(な、なんだよ……この感じ……)
だが、目の前の少年たちは違う。
以前虐待されたおじさんとも、人違いで戦う羽目になったダークシグナーとも、未来からの使者たる絶望の番人とも、違う。
彼らには戦いに理由があった。目的の為に戦い、その過程で龍亞を倒す必要があったが、この少年たちはそうではない。
手段が目的であり、殺したいから殺すだけだ。乃亜に強制されたからでは断じてなく、望んで殺しに愉しみを見出している。
「ヤバいぞ、龍亞!」
体が動かず、混乱している龍亞を庇うように勝次が前に出る。
「無理だよ! 勝次、相手は5人だよ!」
「でも、戦うしかないよ。へっ、あんな奴ら、大した事ねェよ。こちとら吸血鬼相手に毎日命懸けで戦ってんだぜ」
口では強がるが、勝次も今が相当な窮地に追い込まれているのは理解していた。
「吸血鬼(ヴァンパイア)ァ? おもしろーい☆」
「うるせェ! どうせ、お前らなんて自分より弱い奴等しか殺してきてねェんだろ! クソ吸血鬼みてェに!!」
勝てそうにないのは分かっていた。だが、龍亞を見捨てて逃げ出すなんて事も出来なかった。
こいつらは人間だが、やっていることはあの憎き吸血鬼達と同じだ。人間を玩具にして、弄び、慰み者にする。
そんな奴らに、好き勝手などさせてたまるものか。
「……」
ほんの僅か、軽薄な態度は鳴りを潜め、リーダー格の少年が小さく俯く。
「お前ら、もしかして……」
あの少年たちが勝次と同じ世界の住人かは分からないが、こうなってしまった経緯としては、自分と近しいモノがあるような気がした。
きっと、奪われたのだろうと。何があったかは知らない。誰にやられたのかも分からない。
勝次がエロ金剛を初めとした吸血鬼に母親を辱められたように。
享受できる筈だった幸せを、平穏を、未来を、無慈悲に暴虐に奪われてしまったのだと。
(考えんのはあとだ! なんとか全員倒すしかない!)
とはいえ、どんな事情があろうとも、その矛先を向けてくるのであれば戦うしかない。
割戦隊五人がナイフを片手に飛び掛かってくる。
早い身のこなしで、人間より強化された筈の吸血鬼よりも戦闘力は上のようだ。だが、全員本気ではなく遊びが混じっている。
(頼むぞヒー坊、ままよ!)
勝次は微動だにしない。ただ、震える右拳を握りしめ冷静に割戦隊達の位置関係を把握する。
「―――よし!」
ワレンジャーが横並びになっているのを確認し、勝次はようやく相手に突っ込むように走り出す。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
「ぐがああっ痛ェ!」
ヒュッ ザシュッ
勝次の左の赤ん坊が泣き声をあげ、鋭利な槍状の触手を生成した。
そのまま目にも止まらぬ速さで、ワレンジャーの内二人の顔面を貫いた。
残った三人は触手を避け、一気に散会する。
(三人残した!?)
【割戦隊(緑)@忍者と極道】死亡
【割戦隊(桃)@忍者と極道】死亡
「緑(グリーン)、桃(ピンク)!!?」
割戦隊は五人纏めて参加させられた反面、ハンデとして身体を強化する麻薬(ヤク)、地獄への回数券(ヘルズ・クーポン)の支給はない。
武器もそれぞれナイフのみという、武装面では恵まれたスタートではなかった。
もっとも、ヤクなどなくても殺し屋として幾人も殺害し磨き上げた技術は確かなものであり、ナイフさえあればそこいらの子供を数人襲う程度なら問題はないだろうと、彼らも考えてはいた。
「みんな、こいつは本気(マジ)でやろう」
だが、それは過ちであったと考え直す。少なくともこの子供は、地獄への回数券なしとはいえ、仮にも殺しのプロフェッショナルである割れた子供達を二人瞬殺してみせた。
ならばそれは遊びで殺す相手ではなく、プロの殺し屋として応じなければ、こちらが狩られる側になるということだ。
(不味い、ヒー坊の副作用のこともバレちまった)
対する勝次も相手の態度が露骨に変わってきたのを肌で感じた。
ヒー坊のオート攻撃を利用し、一気に纏めて始末する算段だったが、やはり5人という多勢に加えて、相手も相当な練度を積んだ殺戮者だ。それを全員屠り去るのは難しい。
ワレンジャーは勝次へと少しずつ距離を詰め、そしてわざとヒー坊の攻撃を誘導する。
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
「がああああああああああ!!!」
ヒー坊が触手を動かすたびに、勝次の体の痛覚を刺激してしまうのか、強力な戦闘力と引き換えに戦闘時に強烈な反動を齎してしまう。
「このままジワジワ嬲り殺しにしてやるよ」
「こっちも地獄への回数券がないから、あまり無茶出来ないしね」
割戦隊はそれを一瞬で見抜き、確実に避けられよう距離を開けながら、勝次の意思ではなくヒー坊の独断で勝手に攻撃を開始するのを利用し、反動による激痛を利用した消耗勝ちという戦術を選んだ。
「うがああああああああ!!! 駄目だ、耐えらんないよ……!」
「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”」
激痛に蝕まれる勝次を見て、割戦隊達はほくそ笑む。獲物が弱る瞬間を狩る、その時を愉しみにしながら。
「世界の平和を守るため、勇気と力をドッキング! シンクロ召喚! 愛と正義の使者! パワー・ツール・ドラゴン!」
オ オ オ オ
この殺戮の場にそぐわない幼稚(ダサ)い、召喚口上(スピーチ)。
割戦隊が声の主へ視線を向けた時、白い玩具(エモノ)の切札(カード)を天高く掲げる龍亞と、その背後から閃光に導かれるように翼を羽ばたかせ色彩豊富(カラフル)なドラゴンが飛翔した。
「これ、現実(マジ)?」
「虚構(ドラゴン)!!?」
「非実在(アリエネ)ェ!!」
「すげェ!」
ワーワーと全員の視線が集まる中、龍亞は少し安堵しながら自分が手にするカードを見た。
(説明書に書いてあったみたいに、ほんとうにモンスターが実体化した……アキ姉ちゃんみたいだ……)
サイコデュエリスのような特異能力者の特権である、デュエルモンスターズの実体化を行えたことに戸惑いながらも龍亞は顔を振って、一旦その疑問を振り捨てる。
この窮地を脱する力が、自分にとって最も馴染のある形で恵まれたのなら、それを使わない理由はない。
「おまえら、全員やっつけられたくなかったら、早くどっかに行け!!」
「唖然(ハァ)?」
いくら割れた子供達といえど、麻薬(ヤク)なし、健康(シラフ)のままでは実体化したデュエルモンスターズに勝ち目はない。
だが、いくらモンスターに強力な力があろうと、操るのはその召喚者だ。
「お、おい……! オレは本気だぞ!」
命懸けのデュエルを経験してきた龍亞だからこそ、生身の人間が実体化したモンスターの攻撃を直接喰らえばどうなるか容易に想像が付いてしまう。
だからこそ、躊躇いが生まれた。
大好きなデュエルで人を殺めたくないというエゴが、殺人への逃避が、相手への良心が、罪悪感が、入り交じり龍亞に攻撃をさせない。
故に選んだのは威嚇による撃退、可能な限り強い言葉を選んで虚勢を張るが、所詮は小学生の語彙力に加え、殺すなどの言動が飛び出ないのは育ちの良さのせいだろう。
「ギャハハハ!」
「大爆笑(ウケ)る!!」
「確定(ゼッテ)ェ、殺人未経験(ドーテー)じゃん!!」
「ど、どーてーってなんだよ……バカにすんな!」
つまるところ、殺(ヤル)気が見られない。
極端な話、例えこの場で核ミサイルのスイッチを持っていても、早々脅しにはならない。
この会場ごと吹き飛べば自分も吹き飛ぶからだ。ならば、どう相手にそれを信じさせるか、それはいかに自分が自滅しようとも構わないか、覚悟を魅せ付ける狂気(パフォーマンス)が必要になる。
だが、龍亞にそんな経験(テク)は存在しない。
決闘(デュエル)での技巧(タクティクス)ならば、幼いながらも既に一流(プロ)にも勝るとも劣らないものの、死合(リアルファイト)は未経験。
「こ、こっち来るなよ……」
「恐怖(ビビ)ってる☆!」
「逃げろ! 龍亞!!」
威嚇には殺意が足りず、殺害には覚悟が足りない。そんな半端な戦意で割れた子供達が折れる筈がない。
ジワジワと笑みを浮かべながら、割戦隊の赤(レッド)が龍亞へと歩み寄る。
勝次は激痛を抑え、龍亞の元へ向かおうとするが、残り二人の割戦隊に妨害される。
「どうしてだよ……クソっ、オレはほんとうに―――」
「じゃ、他界(バイバイ)」
赤と必殺(リーチ)距離にまで縮まった。既に喉元にナイフを何時でも突きつけられる距離、景色が異様な程に遅く感じる。
今までの思い出が唐突に脳内を駆け巡っていく。多分、これが走馬灯と呼ばれるものだろうと、小学生の龍亞の知識でも分かった。
――――龍亞は私にとって、最高のヒーローだもん!
(だ、駄目だ……オレの妹を、龍可をこんな奴らに……!)
産まれた時からずっと一緒だった双子の妹。
居るかも分からない。でも、もし居たら。
こんな、人殺し集団にもし出会ってしまったら。
傷付けられる、殺される、奪われてしまう。
「パワーツール・ドラゴンのォ―――攻撃ィ!!!」
スローモーションだった景色は通常の流れに戻り、強張った声から流れる様に龍亞は宣言する。
「危険(ヤッb)!」
一瞬にして、覚醒(レベルアップ)を果たした龍亞の異変を察知し、赤は速攻でナイフを振るう。
だが、遅い。既に攻撃宣言は済んでいる。
ぐぢゃりと、湿っぽい音と共にパワーツール・ドラゴンの青のアームが、赤を文字通り叩き潰した。
【割戦隊(赤)@忍者と極道】死亡
血と肉の残骸が散らばり、赤い大きなシミのように広がっていく。
「ガム…テ……」
そのまま青(ブルー)を。
【割戦隊(青)@忍者と極道】死亡
「有難(あざ)」
あっさり、黄(イエロー)を。
【割戦隊(黄)@忍者と極道】死亡
柔らかい果実のように捻りつぶし、赤黒いシミを三つに増やし、パワー・ツール・ドラゴンは消えていく。
悪い奴等をやっつける正義のヒーローを目指した筈の子供たちは、愛と正義の使者に呆気なく葬り去られた。
「うっ!? おえっ!!」
龍亞はうずくまり、そのまま胃の中の物を吐き出しぶちまけていた。
自分が作り出した三つの凄惨な惨劇を目の当たりにし、精神が限界を迎え身体に異常をきたす。
えづきながら、瞳が潤み涙が溢れ出す。押し潰されそうな程の罪悪感と、人を初めて殺めた事への自己嫌悪、そしてあらゆる感情が入れ混じった悲しみが涙を溢れさせる。
「おい、龍亞……」
「ぐ、う、ぅ……うわああああああああ!!」
泣き崩れる龍亞を見て、勝次は左腕の痛みなど忘れてしまうような想いに駆られた。
(無理もねェよね……レイプも知らない子供が、人を殺すなんて……そうだよな、普通の子供はレイプなんて知らないんだよ。俺、そんな当たり前の事、ずっと忘れてたんだな……)
普通の子供だ。吸血鬼なんて居なくて、母親も父親も居て、あったかい部屋で母親の美味いご飯食べて、父親と談笑して。
家族からの愛情を受けながら、柔らかい布団で寝る。そして次の日には、学校で友達と馬鹿話して、退屈な授業聞いて、そんな何気ない生活の繰り返しだ。
血の楽園で見てきた光景まで、フラッシュバックしてきた。
人間を蹂躙しながら、吸血鬼達がかつての日本のような文明的な生活を送る、あの特殊区域を。
(でも、こいつは吸血鬼じゃなく人間だ。……なら、ちゃんと元の場所に帰してやらねェと……俺らみたいのはともかく、子供に殺し合いなんてさせちゃ駄目だ)
だからこそ、猶更怒りが沸いてくる。こんな平穏に暮らしている、暮らせている子供達を何人殺し合いに巻き込んだというのか。
その数だけ悲劇が起こり、望みもしない離別が強制されれるのだろうか。かつての、勝次とその母である吉川のように。
(あの乃亜とかいう野郎……こんなクソみてェな殺し合い、絶対ぶち壊してやる!)
「ハァ、ハァ……ごめん、勝次……辛いのオレだけじゃ、ないのに……泣いちゃって」
「……気にすんな」
だが、どんなに怒りを内に秘めようとも、既に一度悲劇は起きてしまった。こんな明るくて活発な少年の手を血で汚させてしまった。
後悔してもしきれない大失態だ。
「……」
先ほどまで人だった5人の子供達に一瞥をくれる。事情は知らないし、知ったとしても今やクソ吸血鬼以下の殺人鬼どもだ。
かつての自衛隊の時とは訳が違う。多分、分かり合えることは一生ないだろうし、殺さずに事を収めるのは無理だろうとも今でも思う。仮に明が居ても、きっと同じ判断をする。
ただ、それでもそこに至るまでの、何かがあった過程には同情しようと思った。
「辛ェな……」
そのまま、顔を上げて夜空を見つめる。こんなクソみたいな場所でも、星空は奇麗に広がっていた。
※割戦隊の支給品はそれぞれナイフ@現実×1本
合計5本のみです。
【龍亞@遊戯王5D's】
[状態]健康、殺人へのショック(極大)
[装備]パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's(12時間使用不可)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:妹の龍可が居れば探す。
2:人を殺しちゃった……。
[備考]
少なくともアーククレイドルでアポリアを撃破して以降からの参戦です。
彼岸島世界について、大まかに把握しました。
【山本勝次@彼岸島 48日後…】
[状態]健康
[装備]ヒー坊@彼岸島 48日後…(自前)
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:クソみてェな殺し合いをぶっ潰す。
1:龍亞が落ち着くまで、何とかしてやる。無害な子供も保護して家に帰してやりたい。
2:パラレルワールドが本当に存在するのか?
[備考]
少なくとも、血の楽園突入以降からの参戦です。
遊戯王5D's世界について、大まかに知りました。
【パワー・ツール・ドラゴン@遊戯王5D's】
シンクロ・効果モンスター
星7/地属性/機械族/攻2300/守2500
細かい効果は割愛、実体化させて戦わせる事が出来る。
一度の使用で12時間使用不可。
投下終了します。
感想ありがとうございます!
投下します。
「うう……せっかく私の新天地が……お店が」
頭を抱える少女。
少女の名はサラサ・フィート。錬金術師。
王立錬金術師養成学校を卒業し、悲願であった自分だけの土地と店を手に入れたサラサ。
キュートなお仕事スローライフが始まるのもつかの間、乃亜なる少年により、サラサに待ち受けたのは、デンジャラスで血みどろなバイオレンスライフ。
「これはあんまりだよ〜〜〜〜〜!!」
あまりな急展開に嘆くことしかできなかった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……よし!いつまでも、うじうじしていてもしょうがないよね!」
そこは、成績優秀で卒業したサラサ。
嘆くだけでは、事態の解決に繋がらないことを理解している。
気持ちの整理を終えたサラサは、スッと立ち上がる。
「あの場に集められた中でも数少ないであろう大人として、私がしっかりしなきゃ!」
子供を守るのは大人の責務。
サラサはぎゅっと拳を握りしめる。
ちなみにサラサの世界では15歳で成人扱いだが、日本では未成年。
かつ、15歳はローティーンの範囲内。
乃亜の基準に含まれたのだろう。
大人でなくロリとして。
「おい!そこの女とまれ!」
サラサの目の前に少年が現れた。
少年の手には拳銃が握られていた。
「私に何か用ですか?」
「あるに決まってんだろ!お前が持っているのを全部、俺に渡すんだよ!」
「……」
少年の言葉はサラサの逆鱗にふれた。
それは、龍の顎の珠を取る行為。
「……何だよ?その眼は」
「子供でもやっていいことといけないことの区別はしなきゃ駄目ですよ」
「はぁ!?うっせーよ、バァーカ!これでもくらえ!!」
少年はサラサに向けて銃で撃つ。
銃口から放たれた銃弾はサラサの額へ一直線に―――
「え?」
―――当たらなかった。
「あ?……いってぇぇぇえええええ!!!???」
年上だが、自分よりも弱そうな女が避けたことに少年は唖然とする。
その直後、痛みが体全身に駆け巡る。
銃身を握っていた中指、薬指、小指が一瞬に斬り落とされた。
「俺の指がぁぁぁあああ!!!???」
激痛に耐えられず、少年は地面にジタバタと転がる。
涙目と涙声が響く。
しかし、サラサは剣を下さず、冷静に見下ろす。
「痛いよね。でも貴方はそれを大勢の子に対して行おうとしていた」
そう、もし自分がここで死んでいたら、この子はもっと多くの人の命を簡単に奪っていたと推測できる。
自分の両親を。ロレアちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんを殺した盗賊のように。
ここで甘えを見せたら必ず禍根を残す。
別の参加者を口八丁に言いくるめて私にけしかけてくるかもしれない。
ま、この子がそこまで頭が回るとは思えないが。
頭が悪いから、乃亜の言葉に簡単に乗ったのが証拠。
やはり、この子はこの世からお引き取りいただくしかない。
大丈夫。殺しに乗った子の駆除は人助け。
正義は我にあり。
「ごめんなさぁぁぁぁぁい!もうしねぇーよ!だから許して!!」
「駄目です。貴方は分かっていてこの殺し合いに乗ったのだから。……ただ、子供ですから苦しまずに斃しますね」
サラサはそういうと、刀を構える。
ソマルの首を刎ねるために。
ためらいもなく振り落とす。
「い……いやだぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
「いきます」
【ソマル@無職転生(漫画版) 死亡】
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……すごい。この刀、とても軽くて扱いやすい」
サラサは支給品の刀。雪走の刀身を驚きつつ眺める。
雪走。それは、世界に50本しかない良業物の一振り。
いい刀だと海賊狩りが称するほどの名刀。
軽くてかつ切れ味も抜群なおかげで少年を苦しませずに斃すことができ、サラサは安堵する。
盗賊だったら、ありとあらゆる方法で苦しませて駆除していたが。
「貴方の首輪、有効に使わせてもらうね」
死んだ少年の首輪を手にする。
これは貴重なサンプル。
自分の本分は採集者ではなく錬金術師。
まずは、この首輪をどうにかしないといけない。
「それじゃあ、まずは、場所と道具の確保かな」
新米錬金術師は動きだす。
店舗経営を再開するために。
【サラサ・フィード@新米錬金術師の店舗経営【漫画版) 】
[状態]:健康
[装備]:雪走@ONE PIECE リボルバー@遊戯王(漫画版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜4(ソマルのも含め)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:錬金できる場所と道具を確保する
2:殺し合いに乗った子は確実に斃す
[備考]
25話終了後からの参戦です。
【雪走@ONE PIECE 】
サラサに支給された刀。
世界に50本しか存在しないという良業物の一振り。
元々はローグタウンの武器屋の店主であるいっぽん松が所有する家宝だったが、ゾロの剣士としての豪気に惚れて譲られた。
切れ味抜群かつ軽くて扱いやすく、長らくゾロの愛刀として活躍した。
「男が男に夢を託して何が悪い!!!!」BYいっぽんマツ
【リボルバー@遊戯王(漫画版) 】
ソマルに支給された拳銃。
海馬を裏切った部下が所持していた回転式拳銃。
海馬のレアカードを傷つけた罪深い拳銃。
「貴様のおかげで……レアカードに傷がついたわ!!」BY海馬
投下終了します。
投下ありがとうございます
>命の天秤
温和な巻き込まれ一般系の女の子かと思えば、容赦なく悪党はぶち殺すサラサ。
頼もしいっちゃ頼もしいんですが、現代の価値観あるキャラとの衝突が絶えなさそうですね。
あと女の子とはいえ、15歳に喧嘩売るソマル少年は中々勇気あるかもしれませんね。銃があるからでしょうけど、子供からすると中学生は大人に見えますからね。
わたしも投下します
「こんばんわ」
そこには天使がいた。
黒いゴシックデザインのドレスを着て、神への挑戦である逆十字を背負わされた黒翼の天使。
老いもなければ、穢れもない。永遠の美貌を秘めたような透き通る白い肌と、燃え上がるように赤く彩る瞳、そして手首の球体関節が彼女を人間ではない事を示している。
「すごく奇麗、天使さんなのかな?」
ただ、その天使も人間と同じく、地上に引きずり降ろされたのだろう。首には哀れな見世物である参加者としての首輪が嵌められていた。
だから神戸しおは、その美貌に見惚れながらも天使へと話しかけた。
「私が天使に見えるのかしら? だとしたら、とんだ壊れた子(ジャンク)ねぇ」
「じゃんく?」
「イカれた子って意味よ。お馬鹿さぁん」
イカれたという意味なら、幼いしおにも何となく分かる。自分が自分達が世界から見れば、きっとおかしいのだろうという事は理解していた。
世界には人が人を律し守り、尊重するための法が存在している。その中でもっともメジャーなものが、人は人を殺めてはならないという法だ。
老若男女、誰だって知っている当たり前の決まり事。破る人が居るのなら、それはきっとおかしい人なのだろう。
「その手の玩具で、私を殺す気ぃ?」
「うん」
少し前のしおならば、その法律を遵守しようとはしていた。けれども、既に壊れた彼女には人々が善性を信じ創り上げたルールなどに縛られはしない。
この世界の創造主を自称する少年から渡された、しおには似つかわしい銃を手に、天使の殺害を決意していた。
「乃亜くんが言ってたよね。殺し合いに勝てば、どんな願いも叶うって」
愛する者と幸せの為に。
誰よりも大好きな愛した人を死なせない為に。
二人で幸せを、あんな場所で終らせない為に。
燃え盛るマンションから逃げる様に階段を掛け上がり、業火に追われたしおと松坂さとうは死を望み、飛び降りる寸前だった。
あの火の中を、今度は駆け下りても助かる筈がない。仮に助かったとしても、今度は世界から自分達は拒絶されてしまうだろうから。
しおの為に、人を殺めたさとうはきっと許されない。しおもさとうと同じ場所に居ることは出来ず、社会から保護という名の隔離をされてしまう。
二人の愛と幸せは、決して容認されるものではないから。
だから、やり直す。
そんな残酷な世界の裁きから、逃げ切れたはずの運命の選択肢を振り直す。
愛の欠片出ある指輪を、取りに行くことを選択したあの瞬間を。
さとうが、初めてしおに「相談」してくれた、あの嬉しい瞬間を過ちであったとは思わないけれど。
きっとその瞬間は何度だって来る。時間は一杯あって、色んな思い出も初めても積み上げて行く筈だから。
さとうが指輪を忘れてしまったその過去をやり直してあの運命の結末を書き換える。
手に入れられる筈の、幸せな未来を掴んでみせる。
「ごめんね。天使さん」
だから、この愛を守る為なら。
この場に居る全員を殺しても構わない。
さとうがしおの為に戦い続けたように、今度はしおがさとうの為に戦う番だから。
今度しおがさとうを守らなきゃいけないから。
さとうを、絶対にしなせたくないから。
その為には
騙しても
犯しても
奪っても
殺しても
いいと思うから。
「……やっぱりジャンクね」
しおが撃った銃弾は天使の黒翼に阻まれて、乾いた音と共に落ちていく。
ローゼンメイデン第一ドール、逆十字を背負わされた最凶の薔薇乙女、水銀燈。
彼女にとっては、しおが操る銃など玩具程度に過ぎない。
「仕掛けたのは貴女なんだから、恨まないでよ。こっちもさっさとこんな茶番終わらせて戻らなきゃらいけないんだから、その首輪貰うわぁ。解析の、サンプルぐらいにはなるでしょ?」
水銀燈は翼を広げる。その刹那、暴風と共に翼が刃となって降り注ぐ。
「きゃああああああ!!」
しおの全身を翼が突き刺さり、鋭い激痛が襲う。
「まあ、思い切りの良さだけなら、どっかのご高説がお得意な紅薔薇の愚妹よりはマシかしらぁ」
人の頭ほどの高さまで浮かびながら、水銀燈は黒翼だらけになったしおを見下す。
実験的に力を振るっただけだが、しおは為す術もなく一方的に蹂躙されている。
(まさか、この程度でハンデなんて言わないわよねぇ……?)
力ある参加者にはハンデを与える。乃亜のその言葉が頭に引っかかっていた。
だから、もしかすれば水銀燈にそのハンデが背負わされていると考えたが、少なくとも現状ではハンデと呼べるほどの違和感はない。
強いて言えば、人間から力を吸い取れなくなっているが、それでも素の実力で武装した程度の幼女なら、赤子の手をひねるように容易く制圧できる。
(薔薇乙女(わたしたち)よりも、もっと強い人間か、または”何かが”居るってことなのかしら……)
自らがそのハンデの対象としてカウントされていないのなら、もっと別の強大な存在が居る事になる。
戦闘ではドールズの中での屈指の実力を誇る水銀燈だが、自身が無敵でないことは忌々しい五女に煮え湯を飲まされた経験や、白薔薇の末妹に契約者を誘拐されたことから、十分に理解していた。
ならば、正攻法で馬鹿みたいに殺し合いに乗るより、他の参加者達の動向と実力を見切ってから、乃亜を殺しに行くか、止む無く殺し合いに乗り優勝して、この場を即座に離れるか、判断をしてもいい。
(もっとも、こっちは時間を掛けている暇はないのに……! めぐ……)
とはいえ、様子見に徹するにしても、内心は焦燥に駆られている。
己と契約するはずだった柿崎めぐを雪華綺晶に奪われ、それを追い真紅のマスターが巻かなかった世界、いわゆるパラレルワールドに向かったのは良いものの、今度はあの乃亜とかいう餓鬼に更に別のパラレルワールドに拉致られてしまった。
雪華綺晶の元で、めぐがいつその命を消化するか分かったものではない。一刻も早い、救出が必要になるのに、こんな殺し合いなど悠長にしている場合ではなかった。
「……悪いけど、時間もないし、さっさと死んで頂戴」
少しだけ、この少女を媒介とすることで生かしておくのもアリかと考えたが、やはり手元に置くには少し面倒だ。
何があったか知らないが、優勝への執着が強い。仮に手を組んだとしても、優勝ではなく脱出を選ぶ時、恐らくは別参加者と手を組んでいるだろう状況では、しおは邪魔になる。
「や、病めるとき……も」
血と羽だらけになった体で、動く度に痛みが走る。凄く痛くて、涙が出てくる。
もう早く楽になりたい。諦めたいという思いを、さとうとの幸せだった記憶で想いで愛で上書きしていく。
「健やかなるときも……喜びのときも……」
口の中に広がり血の味と、水銀燈に羽を撃たれた勢いで地面に打ち付けられ口の中に入った土の風味が入れ混じって、気色が悪かった。
体もすぐに汚くなって、凄く不快だ。どんな理想を掲げて願いを託そうと、これがきっと殺し合いというものの実態でしかないと、しおは体で理解していく。
それでも、だとしても、やはり諦める事など出来なくて、立ち上がる。
あの夜に交わした、近いの言葉を支えに。
「悲しみのときも…富めるときも……貧しいときも――――死がふたりを」
「……死んでも、一緒」
「え……」
しおが言葉を口にした時、水銀燈の顔が僅かに驚嘆に染まる。その一瞬をしおは見逃さなかった。
銃の狙いを付け撃てるだけ連射する。
「チッ」
自身を包むように翼を盾にする水銀燈、その視界は自分の黒翼に遮られる。その間にしおは残った力を振り絞って走り出した。
深夜の暗闇の中で、林の中に飛び込み、出来る限り気配を消しながら、悟られぬよう水銀燈から距離を置く。
―――死が二人を別つまで?
―――いいえ 死んでも一緒だわ。
翼を広げた時には、しおの姿はなく水銀燈の前から消えていた。
「……めぐが変なこと言うからだわ」
逃げたしおを周囲を見渡し探してみるが近くにいる様子はない。
それを確認した水銀燈は、ランドセルを手にその場を離れた。またしおと再会すれば、その時殺せばいいし放っていても大して困りもしない。
悪評をまかれる可能性もあるが、その時はちゃんと弁明しておけばいい。むしろ、下手に深追いして別参加者にしお殺害の瞬間を見られて勘違いされる方が面倒だ。
「ほんと、私を天使と呼ぶのは壊れた子(ジャンク)ばかりねぇ」
ほんの僅かに、自分のイカれたマスターと似たような誓いを交わす、奇特な少女も居るものだと考えた。
そんな奇特な少女が誓いを立てたのは、どんな壊れた子なのだろうか、少しだけ考えてみて、やめた。
「はあ……はあ……いたい……いたいよ……」
恐らくは生まれてから今に至るまでの短い人生の中で、もっとも全速力で走り抜けた数分間、しおは水銀燈を撒いたのを確認して物陰に背中を付けて肩で息をしていた。
それから落ち着いて自分の体を見渡してみると、至る所に黒い羽が突き刺さり赤く滲んで、浸みるように痛みがする。
重症ではないものの、かなり手酷くやられてしまった。
「……殺しに行くだけじゃ、駄目なんだ。乃亜くんが言ってた、せんりゃくが必要だって……」
戦いは怖いものだ。どんなに覚悟を決めても、相手が強ければ無慈悲に蹴散らされそれで終わりになる。
怪我をすれば痛いし、相手はそれを見て嘲笑う事すらある。命の奪い合いなのだから、それを奪いに来た敵が傷つくことを喜ばない理由はない。
「さとちゃんは、ずっとこうやって戦ってたの?」
二人だけの幸せを守るために、友達も殺めてしおの兄とも戦った松坂さとうを思い起こす。
「きっと、さとちゃんならもっと上手くやってたんだよね……。私の知らないところで、もっとずっと戦ってたと思うもん。私に気付かれないように、隠しながら……さとちゃんは強いから」
ただ戦うだけじゃ駄目だ。ならば、どうしたらいいのか。
ふと思い出したのは、国外の逃亡する前準備の段階で、パスポートを調達した時の光景だった。
しおからするとさとうの友達のような女の子が、わざわざ二人分のパスポートを届けに来てくれていた。
今思えば、他人を上手に利用していたんじゃないかと、しおにも理解できる。
「良い人を探して、上手に使えばいいんだ……」
最初、乃亜に反抗して殺された麦わら帽子の少年とその兄らしき人物。
彼らが殺し合いに乗るような人物とは思えない。それならば、他にも同じような思想の参加者が居ても、おかしくない。
むしろ、戦略が必要であると、ただの殺し合いというより駆け引きを期待する乃亜からすれば、そういった参加者も一定数投入している可能性が高い。
そういった参加者の中で水銀燈のような高い戦闘力を持つ者をぶつけ合わせ、消耗を狙えればしおのような弱者でも優勝を狙う事が不可能じゃないかもしれない。
「待っててね。さとちゃん、絶対に死なせないから……。
死がふたりを別つまで―――ううん、死んでも、ずっと一緒だもんね……」
【水銀燈@ローゼンメイデン(原作)】
[状態]健康、めぐ救出への焦り
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2、ヤクルト@現実(本人は未確認)
[思考・状況]基本方針:一刻も早くここから抜け出す
1:首輪を外して脱出する方法を探す。どうしても無理そうなら、優勝狙いに切り替える。
2:ハンデを背負わされるほどの、強力な別参加者を警戒。
[備考]
めぐを攫われ、巻かなかった世界に行って以降からの参戦です。
原作出展なのでロリです。
【神戸しお@ハッピーシュガーライフ】
[状態]ダメージ(中)全身羽と血だらけ
[装備]ソード・カトラス@BLACK LAGOON×2
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:利用できそうな、参加者を探す。
2:天使さんに、やられちゃった怪我の治療もした方がいいよね。
[備考]
松坂さとうとマンションの屋上で心中する寸前からの参戦です。
【ソード・カトラス@BLACK LAGOON】
BLACK LAGOONの主人公兼ヒロインのレヴィ、愛用の二丁拳銃、
以下Wikipediaより引用
ベレッタM92FS Inox(の海外製コピー品)のカスタムモデル。バレルを6インチに延長し、象牙製のグリップに髑髏と2本のカトラスで構成されたエンブレムを埋め込み、
スライドの左には「9mm SWORD CUTLASS」、右にはタイ語の刻印が施されている。
投下終了します
投下します
世界はやっぱり、残酷なんだ。
それが初めて壁の外の土地を踏んだ、私──カヤの感想だった。
こつり、と足元の石を蹴飛ばして、ぽつりと呟く。
「何でも願いが叶う、か……」
最後の一人になるまで殺しあえ。
見事最後の一人になれたら、何でも願いを叶えてあげる。
あのカイバノアという男の子は、私達にそう言った。
その言葉を受けて。
どうしようかと、空を仰いで考える。
直ぐには決められなかった。
だって、突然だったから。
何時だって、“何時もの日々“は突然壊れてしまう。
あの日もそうだった。
突然壁の中に一杯巨人が現れて。
私のお母さんが食べられた日も、突然やってきた。
「お姉ちゃん…お姉ちゃんならどうする?」
私はサシャという兵士のお姉ちゃんに助けられたけれど。
それまでお母さんが生きたまま食べられるのをずっと見ていた。
何も…何もできなかった。
その上で、考える。
今の私に、何ができるのか。
何をすべきなのか。
そして…サシャお姉ちゃんならどうするか。
少しの間星を見ながら考えて──そして、結論を出した。
「うん…分かってる。分かってるよ、お母さん、お姉ちゃん」
サシャお姉ちゃんは、兵士として壁の外に出て。
エルディアを…私達を守るために人を撃って。
そして、人に……ミアに撃たれたらしい。
だから、私もそれに習おうと思った。
私も…ブラウスさん達を…壁の中の皆を救うために戦うんだ。
例え勝てなくて、死んでしまうのだとしても。
サシャお姉ちゃんのいる場所に逝けるのなら、それでも良かった。
そう考えながら──ノアから貰った、変わった形の鞄からある物を取り出す。
「私たちはやっぱり……悪魔なのかもね」
それは、「ドクドクの実」と説明書には書かれていた。
食べた人に力を与える悪魔の実という名の果物らしい。
私達エルディア人は壁の外の人たち皆から悪魔と呼ばれているらしい。
そして今…私はこの実の力を使って人を殺す本物の悪魔となる。
あんぐりと。
あの日お母さんを食べた巨人の様に口を開けて。
そしてムシャリと一口噛り付いた。
酷い味の果物だったけど、我慢して夢中で最後の一口まで食べ進めた。
「お姉ちゃん……褒めてくれるかな」
もし願いが叶ったら。
私は、私の住むエルディアが他の国と仲良く出来るよう願うつもりだった。
巨人なんて、この世からいなくなって。
私達エルディア人が、悪魔の末裔なんかじゃなくて。
皆から生きてていいよって、そう言われる世界を願うんだ。
本当は、お姉ちゃんを生き返らせたいけど。
お姉ちゃんに、褒めてもらいたいけど。
ただ生き返らせるだけじゃ…お姉ちゃんはまた壁の外へ行って。
そしてまた人を撃ち、人に撃たれてしまうから。
だから。
だから、私は。
お姉ちゃんにもう一度会う事を望まない。
ただ、お姉ちゃんが果たせなかった事は、私がやる。
「──行こう。世界を救った、英雄になるんだ」
ミアの言った通り、私はきっと、本当の悪魔なんだろう。
でも、仕方ないよね?
だって、この世界は。
こんなにも、残酷なんだから。
【カヤ@進撃の巨人】
[状態]:健康
[装備]:ドクドクの実 @ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝して、エルディアを救う。
1:適当な相手に能力を試したい。
[備考]
参戦時期は原作118話
ドクドクの実を食べました。
食べたばかりなのでそこまで上手く能力が扱えません。
私は、世界を救った英雄になるんだ。
私、ガビ・ブラウンは、ついこの間まで、そう思っていた。
年は12歳。
“鎧の巨人”を継承する戦士候補生として、日夜訓練の日々。
勿論訓練だけ、と言うわけでなはい。実戦経験もある。
巨人の力も使わずに、爆弾を使って装甲車を吹き飛ばした。
その時の私は、それがエルディア人の為になると信じていた。
パラディ島の悪魔たちと私たちは、同じエルディア人でも違うんだ。
私達は過去の罪を自覚して、それを償おうとしている。
この闘いの日々が、流した血の量が、祖国マーレに認められて。
そして、二年後。
尊敬している戦士ライナー・ブラウンから鎧の巨人を受け継ぐ。
そして、受け継いだ力でパラディ島の悪魔の末裔たちを駆逐して、世界を救う。
輝かしい未来は、もうすぐ目の前にあった。
「何で……?」
でも、今は違う。
最悪なのは、殺し合いに呼ばれたことは関係が無くて。
此処に呼ばれる前の話だった。
滅ぼされる事を座視せず、攻めてきたパラディ島の悪魔たちの飛行船に飛び乗って。
乗った先で一人の悪魔を射殺して。悪魔の末裔に捕まって、脱走して。
そして、壁の中で。カヤと、ブラウス夫妻に出会った。
カヤは、親切な少女だった。ブラウス夫妻も親切だった。
「どうして…今なのよ………」
私がマーレに帰れるように、マーレ人の料理人を紹介してくれた。
でも、その人はあろうことか悪魔の末裔が好きで。
飛行船の中で私が撃ったのはその悪魔の末裔の女で。
私は、怒り狂った料理人に殺されかけた。
その悪魔の末裔の女と関わりを持っていたのは料理人だけでなく。
ブラウス夫妻の娘で、カヤの命の恩人であることを知ったのは直後の事だった。
「もう少し、前だったら……」
もう少し前なら、意気揚々とあの海馬乃亜の言葉に従えたかもしれない。
殺し合いに優勝して、壁内の悪魔を除いたエルディア人を救う事を願えたかもしれない。
それか、あんな子供のいう事信用ならないと跳ねのけられたかもしれない。
でも…それは今の私には無理だった。
──どうしてお姉ちゃんを殺した奴の事なんか心配するの?
──私は許せない。殺してやりたい。
カヤに言われた言葉が、ずっと頭の中で響いている。
パラディ島には、悪魔なんていなかった。
ただ人がいるだけだった。
私は、会ったことも無い人たちを悪魔だと決めつけて。
撃って、命を奪って。
憎しみの連鎖を繰り返しているのだと、漸く気が付いた。
その矢先の事だった。
殺し合いをしろ、と命じられたのは。
「──ねぇ、ファルコ。アンタならどうする……?」
思い起こすのは、こんな私の事を好きだと言ってくれた男の子。
私に、長生きしてほしいと言ってくれた男の子。
私よりもずっと早く……私たちの過ちに気づいていた、男の子。
彼ならば、どうするだろう。
どうしたら、私達の犯した罪を拭えるんだろう。
考えるのは、それだけだった。
「やっぱり……優勝するしか……ないのかな………」
呆然と、言葉を漏らす。
優勝して、エルディア人を救うように願う。
壁の外のエルディア人も、壁の中のエルディア人も。
ただ、世界の皆から「生きてていいよ」、その言葉だけが欲しかった。
「今の私に……それができるの?」
背負ったカバンから出てきた銃。
人を殺すための道具。
それをぎゅっと抱きしめて。
考える、考えてしまう。
その決断は、果たして正しいの?
また、同じことを繰り返すだけじゃないの?
同じ場所を…暗い森の中を、ぐるぐると彷徨うだけじゃないの?
「ねぇ、ファルコ……教えてよ」
空の星を仰ぎながら、祈るように願った。
一筋の流れ星が瞬いたけれど、流星は願いを叶えてはくれず。
誰の言葉も届くことは無く。
私は暗い森の中で、独り立ち尽くしていた。
【ガビ・ブラウン@進撃の巨人】
[状態]:健康、迷い。
[装備]:AK47
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いに優勝して、エルディア人を救う…?・
1:でも……本当にそれでいいの……?
[備考]
原作119話、ファルコ巨人化の爆風で意識を失った直後から参戦です。
投下終了です
投下ありがとうございます
>この美しき残酷な世界で
カヤの視点からすれば、殺し合いに乗ってしまうのも無理はないですね。外の人間に一方的に悪魔と罵られて、殺されてしまう理不尽を味わっている訳ですから。
ただ、戦いを止める為に、今度は子供数十人の血を流さないといけないのは皮肉です。
対してガビは洗脳が解けてしまったがゆえの苦悩ですね。優勝を狙おうとも、対主催になろうとも茨の道しかない……
わたしも投下します。
「何が殺し合いだ、バーロー!!」
怒りに満ちた声で叫ぶ少年、江戸川コナン(本名、工藤新一、17歳)は激怒していた。
殺し合いを知ろと、首輪を嵌めて強制することもそうだが、あのルフィとエースという少年を、無惨にも残酷な殺め方をし嘲笑う乃亜の所業を目の当たりにした。
あれほど卑劣な殺人犯はコナンが見てきた中でも、早々いなかった。
何故、あんな幼い子供がそうまで歪んだのか、同時にいくら同情できる過去があったとしても、人を殺めることは許されないという確固たる信念が、コナンに怒りの炎を滾らせる。
「元太と歩美ちゃんが心配だな。灰原と光彦は多分、大丈夫だと思うが……」
必ず、乃亜は捕まえてみせるが、その前に当面の安全確保と仲間たちの探索が優先事項になる。
乃亜の言動に、「理解の浅い子供でも」というものがあったこと、そして最初に集められた空間には、コナンが見た限りは殆ど子供しか居なかった。
このことから、恐らくは幼い少年少女を集めたのではないかと、コナンは推測する。
もしそうであれば、考えたくはないがコナンの現在の同級生や、よく一緒に行動する少年探偵団も巻き込まれている可能性は高い。
特に小嶋元太と吉田歩美は年相応の小学生だ。いくつもの殺人事件を乗り越え、経験値は積んでいるにしても、殺し合いという異常下で混乱しているかもしれない。
流石に人を殺すことはないと思うが、その混乱に乗じて悪意ある参加者に狙われないとも限らない。
早期に合流すべきだろう。
「あとは支給品は……キック力増強シューズか、オレの履いていたのをそのまま配ったみたいだな」
キック力増強シューズ。
普段は凶悪犯を取り押さえるのに使用する、阿笠博士の発明品の一つだが、使用方法を誤れば容易く人を殺すことも可能だ。
現にコナンは一度、気軽に試運転をして殺しかけている。
乃亜がこれで殺し合いを優位に進めろと、暗に言っているようでコナンも腹が立ってくる。
「……一応、何か細工されてねーか、調べてみるか」
シューズのスイッチを付け強度を設定し、近くの石ころを蹴飛ばしてみる。誰もいない、木の壁面に石ころが減り込み小さな亀裂を作る。
それを何度か強度を操作し、繰り返す。
「おかしいとこはないな……一先ずは、殺し合いに乗った奴らに会ったら、これで対処出来そうだけど」
粗方操作性の確認を終えたところで、コナンは一息つき腰を下ろした。
「それと、首輪か……殺し合いに乗らないにしても、これを外さねえと……」
そっと、首輪を指でなぞっていく。そんな軟な出来ではないだろうと分かってはいるものの、子供二人の命をあっさり奪った代物に触れるというのは生きた心地がしなかった。
「ん……? これって」
改めて首輪に触れて、その凹凸を確認しながら、更に最初ルフィとエースが殺される前、二人が嵌めていた首輪のデザインを思い起こす。
タブレットを起動し、自撮り機能を立ち上げてコナンは首元の写真を撮り、改めてその首輪の全容を確認する。
「プラーミャの爆弾、そっくりだ……」
かつてのハロウィンの事件で、対峙した凶悪犯罪者プラーミャが作成した爆弾、その中でも個人的私怨から安室透に装着させた首輪型の爆弾の形状が類似している。
強いて違いを言えば、安室に着けられたそれは両端の赤と青の液体が確認できたが、今回の首輪はそれが一切確認出来ないよう改良されていることか。
だが、それ以外は形状も殆ど同一のものといって良い。
(プラーミャの爆弾は、二種の液体爆薬を利用したもの……なら、その中和剤を作れれば、首輪を外せるってコトか?)
だが、やはり引っかかる。わざわざ殺し合いを強要するための首輪を、その解除方法を知っているコナンを巻き込んでおきながら、流用などするだろうか。
もちろん、一言で解除といっても、それを行ったのは実際にはコナンではなく、安室の部下である風見裕也であり、コナンは中和剤の作成方法までは詳細を完全には知りえない。
だから、依然として首輪の解析の難度は変わらないが。
『ゲームは公平に行わなければならないからね』
(ゲーム……もしかしたら、首輪を外して脱出することも、ゲームの攻略の一つだとでも言いたいのか?)
乃亜という少年の挑発的な態度を鑑みると、あえてヒントを与えて高みの見物を決め込んでいるとも考えられる。
その場合、プラーミャの事件とその詳細を調べ上げ、恐らくは江戸川コナンが工藤新一であるという事まで突き止めたうえで、敢えてその頭脳を試そうとしているのかもしれない。
『例え不死の異能者でも確実に殺せる特別なものさ』
(不死の異能者……んなもん、居る訳ないだろ……って言いてえけど、あのルフィって子供は腕を伸ばす特殊な力を持っていた。
ってことは、そういう特異な能力を持った子供が居るのかもしれない。そんな子供でも殺せる特別な爆弾……ベースはプラーミャの爆弾になるのかもしれないが、安易に同一視するのも危険だな)
だが、同時に乃亜が残した発言や、ルフィという少年の特異性も見逃さない。
信じられないが、コナンの知らない超常的な力が、この場では存在し、それを律するための首輪だというのなら、コナンの知る知識だけで推理を組み立てるのは危険だ。
それこそ、プラーミャの爆弾を参考に乃亜が首輪を設計したかもしれないが、それ以外にも異能者を縛る特殊な仕組みが備わっていないとも限らない。
(駄目だ、推理の材料が足りない……。全部憶測だけになっちまう)
結論を出すには、仮説や想像が多すぎる。今は足を使って、地道に推理に必要な情報を積み重ねるしかない。
(どっちにしても探偵団の皆も探さなきゃならねえし、少し動くか)
ランドセルを背負い、コナンは月明りを頼りに歩き出した。
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:キック力増強シューズ@名探偵コナン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(本人確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、乃亜を捕まえる
1:仲間達を探す。
2:乃亜や、首輪の情報を集める。(首輪のベースはプラーミャの作成した爆弾だと推測)
3:乃亜の言う異能者に警戒。
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。
投下終了します
投下します。
「ここは……、私は何故このような場所にいるのかしら……?」
殺し合いの舞台の何処か、緑色の瞳に毛先が緑色の透き通るような白い髪を植物をモチーフとした特徴的な髪飾りでサイドテールに纏め、背中にマントのような特徴的な装飾を付けた緑と白で彩られた優雅なワンピースを着た幼い少女が自らの置かれた状況に困惑の色を隠せないでいた。
彼女の名はナヒーダ、とある世界に存在する大陸、テイワット大陸に存在する7つの国「モンド」「璃月」「稲妻」「スメール」「フォンテーヌ」「ナタ」「スネージナヤ」を治める「俗世の七執政」と呼ばれる7柱の魔神の一柱で、7つの国の中で「知恵」の国「スメール」の統治を任されている少女である。
とは言っても彼女がスメールにおいて人々から統治者として認められたのはつい最近の話であり、500年前のカーンルイアにおける戦乱において彼女は力を使い果たして力と知恵を失った幼い少女となってしまい、その事によって彼女を見限ったスメールの行政機関「教令院」の賢者達に裏切られ、力と知恵を失ってしまったが故に抵抗することすら出来ずにスラサタンナ聖処にある瞑想のための外界遮断装置の中に閉じ込められ、更に賢者たちが装置を改造したことで内部から操作できないようにされた上に外部から厳重なロックをかけられてしまったことで脱出不可能な状態にされたことで500年近くの長きにわたって装置の中に監禁拘束され続けた上に、更に教令院が掌握したスメールの巨大コンピューター「アーカーシャ」から提供された技術とスネージナヤの特殊部隊「ファデュイ」が教令院を支援したことで実現した計画「創神計画」によってスメールを支配する新たな神が創造されることで不要な存在として処分されそうになったことに絶望したものの、同時期にスメールを訪れた旅人とパイモン、及び彼女と同盟を結んだ神の目の所有者たちによる決死の救出作戦によって教令院の手から救出され晴れて自由の身となり、その後自ら「創神計画」によってファトゥス執行官序列六位「散兵」をコアとして造り出された人造神「正機の神」七葉寂照秘密主に対して旅人と共に戦いを挑み、500年の年月をかけて取り戻した力と知恵、そしてスメールの民全ての知恵と旅人の協力を全て駆使したことによって七葉寂照秘密主の破壊に成功することによって「創神計画」を阻止することに成功し、現在では無事スメールの民たちからスメールを統治する神として認められ、これから民たちと共に新たな一歩を踏み出そうとした矢先に今回の殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
(何故このようなことに……、まさかまた教令院とファデュイが手を組んで……、いや、それは有り得ないと言っていいわね。)
ナヒーダは最初、自身を始末するために再び教令院とファデュイが手を組んでこのような事を仕組んだのかと考えたのだが、様々な要因から「それは有り得ない」とその考えを一蹴する。
まず第一にファデュイがスメール及び自身を再び狙う理由が無いという事だ。「創神計画」の要であった七葉寂照秘密主は自身と旅人の手によって破壊され、コアとなった散兵も今は自身が個人的に保護していた。それに彼らの目的であった「草の神の心」も散兵戦の直後にファトゥス執行官序列2位「博士」が現れ、戦闘になりかけたため自らの実力では博士に勝てないと考え、彼と交渉することで散兵から回収した「雷の神の心」と自身の「草の神の心」を引き渡すことと引き換えに、博士の分身体全ての破壊と知恵の神である自身でも抗えない位有益な情報を提供するという事で交渉は成立し、それを最後にファデュイはスメールから完全に撤退したため、自身は神の心を既にファデュイに渡して失ってしまっている以上、ファデュイが自身に対して今更何かする理由はないはずであった。
それに教令院にしても500年前ならいざ知らず、今の自分は草の神として十分な力をつけた魔神であり、更にはアーカーシャも現在では自身の手で完全に機能停止させており、自身を閉じ込めたスラサタンナ聖処の外界遮断装置も現在では聖処から撤去した上で廃棄処分しており、更にはスメールの民たちも自身の事を「草神様」と呼ぶほどにまで自身の事をスメールの統治者として完全に受け入れているため、かつてのように教令院が今の自分をどうこうする手段も理由も存在しないはずであった。
(これらの事からあの「海馬乃亜」と名乗った人物が教令院やファデュイの関係者である可能性は無いと言っていい……、では彼は何者?……まさか……彼はもしや「降臨者」?)
ナヒーダは様々な可能性の中から、自身を殺し合いに参加させた「海馬乃亜」と名乗った少年の正体が「降臨者」なのではないかという結論に達する。
「降臨者」……それは「テイワットに属さない外来的存在」の事を指す言葉であり、ナヒーダが把握している限りではテイワットには少なくとも4人の降臨者が存在しており、一人目は「天理」と呼ばれる謎の神、4人目は自身も一時期行動を共にした旅人、二人目と三人目は詳細は不明ながらも少なくとも存在はしていることは確かと未だ詳細は不明な謎多き存在であり、知恵の神であるナヒーダですら自身の「草の神の心」と引き換えに「博士」からようやくその情報を手に入れることが出来た最重要機密と言っていい存在であり、実際旅人も天理も7神であるナヒーダの予測の範疇すら超えた未知の力を有している事もまた事実なのであった。
それならばもし仮に「海馬乃亜」と名乗った謎の少年が「降臨者」であったとする場合、自らを「神」と名乗ったことも7神である自身をこの殺し合いに参加させる程の力を有していることも全て説明がつくように感じていた。
「とはいえ、現段階ではあまりにも判断材料に乏しすぎる……、それにこうして考えているよりもまずは行動を起こして判断材料を集めてから、それから結論を出してからでも遅くはないわね。」
そう言うとナヒーダは自らに支給されたランドセルを地面に降ろし、支給品を確認する。基本、テイワットにおいては元素力を扱う力を持つのは「神の目」と呼ばれる外付けの魔力器官を有する者達であり、その者たちは神の目を奪われれば単に元素力を扱えなくなるだけでなく、神の目を授かる切っ掛けとなった「渇望」、すなわち願いや情熱やそれに関する記憶を失ってしまい、それが原因で人格障害や記憶障害を引き起こす危険性すら孕んでおり、実際遠い海の先に存在する国「稲妻」においてはナヒーダと同じ「俗世の七執政」の一人で稲妻の統治を任されている雷電将軍が発令した「目狩り令」によって多くの神の目の所有者たちが雷電将軍の手によって神の目を奪われ、それが原因で元素力を使えなくなり人格障害や記憶障害を引き起こしたものも数多くいたということをナヒーダは把握していた。
もし仮に「神の目」の所有者がこの殺し合いに参加させられていた場合、海馬乃亜の手によって神の目を没収され、「目狩り令」にあった者たちと同様、元素力を使えなくなり人格障害や記憶障害を引き起こす危険性があったであろう。
……だが幸いにもナヒーダに関してはその心配をする必要はなかった。
何故ならナヒーダはそもそも神の目を所有しておらず、神の目を必要とせずに元素力を扱うことが出来る数少ない「例外」と言える存在であったからだ。
ナヒーダを始めとする「俗世の七執政」――風の国「モンド」を治める風神バルバトス「ウェンティ」、岩の国「璃月」を治める岩神モラクス「鍾離」、雷の国「稲妻」を治める雷神バアルゼブル「雷電影」、草の国「スメール」を治める草神クラクサナリデビ「ナヒーダ」、水の国「フォンテーヌ」を治める水神フォカロルス、炎の国「ナタ」を治める炎神、氷の国「スネージナヤ」を治める氷神「氷の女皇」、彼ら7柱の魔神達は神の目を必要とせずにそれぞれに対応した元素力を扱うことが出来る例外的存在であり、また自身が対応した元素を扱うことに関しては同じ属性の元素力を扱う者たちと比較しても右に並ぶ者がいない頂点に位置する存在達でもあった。
そして彼女――ナヒーダの扱う元素力は「草元素」であり、幼い少女でありながらスメールはおろかテイワット全土においても草元素を扱うことに関しては彼女の右に並ぶものはいない、草元素使いの頂点に位置する存在でもあった。
……だがだからといって彼女自身はそれに驕り、慢心するつもりは全くなかった。500年前、力と知恵を全て失い、ただの非力な幼い少女に成り下がった時に教令院の賢者達に成す術もなく捕らえられ、監禁拘束されたこともそうだが、力を取り戻した現在においても、テイワットにおいては彼女を上回る力を持つ存在がいるという事も理由の一つであった。
氷の国「スネージナヤ」が有する秘密組織「ファデュイ」には「ファトゥス」と呼ばれる11人の最高幹部が存在し、彼ら11人の執行官は実力によって序列が決定されていた。
中でも執行官序列3位「少女」コロンビーナ、執行官序列2位「博士」ドットーレ、執行官序列1位「道化」ピエロの上位3名はナヒーダを初めとした七執政にすら匹敵するほどの実力を誇り、実際ナヒーダ自身も「博士」ドットーレと直に対峙した際、「勝てない」と感じるほどの力の差を痛感したため、何とか知恵を駆使して交渉に持ち込み、神の心と引き換えに重要な情報を手に入れるのがやっとという有様であった。
もし仮にこの殺し合いに「コロンビーナ」「ドットーレ」「ピエロ」に匹敵、若しくは上回る力を持った存在が参加していた場合、自身が死力を尽くして戦っても敗北し、殺される可能性が高かった。
だから何としても殺し合いを生き延びられる可能性を上げられるよう、戦力になるものがないかランドセルの中を探していた際、ある一つの銃を発見した。
その銃は至る所に深緑とダークピンクの色をしたビーズがはめ込まれたオモチャのような見た目をした銃であった。説明書にはこの銃の名前は「96ガロンデコ」であることが書かれており、どうやらこの銃は実弾ではなく、インクを発射するタイプの銃であるとも書かれていた。
「……」
普通の参加者であれば、「なんだ、ただのオモチャの銃かよ」と間違いなくハズレ扱いされる武器なのであるが、ナヒーダにとっては自身と非常に相性のいい武器だと考え、有難く使わせてもらう事にした。
そして他に何かないか引き続きランドセルの中を探していた際、使い古された手記帳を発見したため、中身を確認してみる事にした。
この手記帳は「フリージャーナリスト ルカ・レッドグレイヴの手記帳」という名前らしく、この手記帳は名前の通りフリーのジャーナリストであるルカという名前の男性が今まで自分の足で集めた情報が数多く記載されていた。
「……これは……」
ナヒーダは手記帳に書かれた内容を見て目を丸くする。この手記帳には知恵の神であるナヒーダから見ても非常に興味深い内容の文章が書かれており、それと同時にこの手記帳の元の持ち主であるルカというジャーナリストの男性の行動力の高さに感心の気持ちもナヒーダの中に生まれていた。
もし仮に教令院の賢者や学生たちがこのルカという男性並みの行動力を持っていたら、アーカーシャに頼り切りになることもなかったんだろうなという感想を抱きつつ、ナヒーダは手記帳をランドセルの中にしまい、引き続きランドセルの中を捜索すると最後に発見したのは自身の好物である食べ物「ナツメヤシキャンディ」の素材一式、「デーツ」4つ、「杏仁」2つ、「バター」2つ、「スメールローズ」1つの食材セットであった。
……だが幾ら食材を渡されても料理鍋が無ければ料理をすることは出来ない。つまり現状ではこの食材セットは何の意味もない支給品でないかとナヒーダは苦笑しつつ、食材セットを再びランドセルの中にしまうとナヒーダはこれで自身に支給された支給品が全てであることを確認し、ランドセルを背負ってこの場を後にすることにした。
「クックック……今宵のマオーの生贄は貴様か?」
「!?」
だがその時、ナヒーダの前に突如として一人の少女が現れ、ナヒーダはその少女を警戒し、身構える。
外見年齢はナヒーダよりもやや上くらいに見えた。銀色の髪をツインテールで纏め、上半身は胸を辛うじて隠しているだけの露出度の高い鎧を身に纏い、下半身はミニスカートを履いている格好であったが、何よりナヒーダの目を引いたのは頭部の二本の角と臀部に直に生えた尻尾であった。
ナヒーダには目の前の少女の正体が分からなかったが、明らかに人間では有り得ない特徴から、目の前の少女が自身と同じ魔神……もしくはそれに近い存在なのかと考え、警戒しながら少女に向かって問いかける。
「貴女……一体何者なの?」
「クックック……よくぞ聞いてくれた!冥土の土産に教えてやるのだ!マオーの名は『魂の魔王』クレブスクルム!人間よ、マオーの最初の生贄として特別にとびきり残虐な方法で殺してやるのだ!!」
「『魂の魔王』クレブスクルム……」
ナヒーダは少女の紹介を聞きながら、彼女の正体について考察していた。
テイワットには自身を含む俗世の七執政と呼ばれる7柱の魔神が存在しているが、彼らはあくまで数千年前の魔神戦争を勝ち残った生き残りであり、かつてはテイワットには数多くの魔神が存在していた。モンド地方に存在してた「竜巻の魔神 デカラビアン」「氷雪の魔神 アンドリアス」、璃月地方に存在していた「渦の魔神 オセル」「塩の魔神 ヘウリア」「塵の魔神 ハーゲントゥス」「竈の魔神マルコシアス」、稲妻地方に存在していた「魔神 オロバシ」、スメール地方に存在していた自身のかつての友人の「花神」かつての力を失う前の自身と共に「禁忌の知識」の浸食から国や民を守った「キングデジェレト」などその他多くの魔神がかつては存在していたが、自身が世界樹から得た知識の中には「魂の魔神 クレブスクルム」なる魔神が存在していたなんて記録は何処にも存在していなかった。
となると、考えられる可能性は一つ、そう結論づけようとした時であった。
「……と言いたいところだが、今のマオーは人殺しは断固反対なので殺さないでおいてあげるのだ。」
「!?」
突如として「クレブスクルム」と名乗った少女から発せられる殺気が収まり、朗らかな笑顔を浮かべながら語り掛けてきたため、ナヒーダは思わずズッコケそうになるが冷静に思考を巡らせ、踏みとどまった。
魔神たちは確かに人間を遥かに凌ぐ力を持つ強大な存在であるが、肩書に反して自身を含めた「俗世の七執政」だけでなく、人間と友好的な関係を結んだ魔神も数多くいた。
勿論デカラビアンやオセルのように人間に危害を加える危険な魔神も存在はしていたが、例えば「塩の魔神 ヘウリア」は争いを嫌う心優しい性格であり、戦いそのものを放棄したため最終的には自らが導いてきた民たちに殺害される最期を迎え、「塵の魔神 ハーゲントゥス」は「岩神 モラクス」と非常に仲が良かった上にヘウリア同様穏やかで優しい性格をしていて自らの民のために命を落としたとされ、キングデジェレトは先ほども言ったように力を失う前のかつての自身と共に「禁忌の知識」の浸食から民を守るために自らの身を犠牲としており、それらの事を考えると目の前の少女もまた、魔神でありながら人間と友好関係を結んだ存在なのではないかとナヒーダは感じていた。
「ところでキサマ……その耳からしてもしかしてシェラと同じ「エルフ」なのか?」
「?」
ナヒーダはクルムの言う「シェラ」という人物のことを知らないが、「エルフ」という種族の存在は把握していた。
極少数ながらテイワット大陸にも「エルフ」という種族は存在しており、ナヒーダが把握している限りでは風の国「モンド」の治安を守る防衛組織「西風騎士団」に所属している「火花騎士」の異名を持つ少女「クレー」とその母親の「アリス」がテイワット大陸に存在している数少ない「エルフ」であり、またデータが少なく詳細は不明だが自身が治める「スメール」にて「創神計画」における一連の騒動の後、今までの賢者達を追放した後に新たに再編された新生教令院の6大学派の一つ「明論派」に所属している「レイラ」という名の学生の少女が「エルフ」である可能性がある程度であった。
……ではナヒーダもエルフなのかと言われればそれは違うと言わざるを得なかった。
ナヒーダの正体はテイワットのほぼ全ての記録を宿す大樹「世界樹」の化身が神として昇華された存在であり、エルフ耳なのも人の姿を取る際にただ単に参考にしただけで彼女自身はエルフと無関係であった。
「いいえ、違うわ。私の名はナヒーダ、草の国「スメール」を治める「俗世の七執政」の一人で民たちからは「草神クラクサナリデビ」とも呼ばれているわ。」
「スメール?七執政?どれもマオーが聞いたこともないような単語なのだ。」
やはり、とナヒーダは今のクルムの言葉を聞いて確信した。恐らく彼女も海馬乃亜と同じ「降臨者」だと。それならば自身が「魂の魔王」という言葉に聞き覚えがないのも、彼女がスメールや七執政のことも知らないことも全て説明がつく。そう思い、口を開こうとした時であった。
「……そうか、なるほど。ということはおぬし、「来訪者」だな?」
「!?」
意外だった。クルムはナヒーダとの僅かなやり取りの中でナヒーダがクルムとは異なる世界からやってきた存在であるという事を即座に理解したのだ。
ナヒーダもそうだがやはりこの「クレブスクルム」という少女は幼い見た目に反して高い知能を有しており、「魔王」という肩書も伊達ではないという事が伺えた。
「……どうしてそう思うの?」
「マオーの知り合いの中にも「来訪者」が一人いるからな!名は「ディアウ゛ロ」、魔王ロールプレイをしないと他者とコミュニケーションを取ることが出来ないヘタレだが困っている人を見つけたら何が何でも助けないと気が済まない義理堅い性格で戦闘においては自身でも理解すらしていない多数の魔術を操り、戦闘におけるセンスや駆け引きにも優れた凄い奴なのだ!」
クルムのディアウ゛ロに対する熱い語りを聞きながら、ナヒーダは自身と行動を共にした旅人の事を思い出していた。彼女はディアブロ同様、テイワットの外からやってきた「降臨者」であり、スメールにて教令院の手によって囚われの身であった自身を決死の覚悟で救い出し、自身と共に「創神計画」によって造り出された「正機の神」と戦ってこれを撃破し、「創神計画」を阻止することに尽力してくれた。
もし彼女が居なければ今の自分は間違いなくなかったであろう。あのまま「創神計画」によって「正機の神」がスメールの新たな神として君臨し、用済みとなった自身は恐らく処分されていたに違いない。
そう考えるとディアウ゛ロも旅人同様、数々の戦いを潜り抜け、クルムを始めとした数々の者たちを救ってきたのだろうという事を、ナヒーダは「知識」ではなく「感覚」で感じていた。
「……ところで、ものは相談なのだが、マオーの支給品の中にマオーには使い道がないものが入っていたのだ。受け取ってくれるか?」
そう言いながらクルムがランドセルの中から携帯式のコンロに土鍋が乗ったようなものを取り出した。ナヒーダはそれに見覚えがあった。何故ならそれは璃月において選ばれた極一部の冒険者だけが所持している「仙人探しの美食家」と呼ばれるアイテムであり、このアイテムを使えばいつでもどんなところでも料理を作ることが出来る冒険者にとっては重宝するアイテムでもあった。
「ふふっ、安心して頂戴。私も丁度、そのままでは使い道のない支給品を渡されていたの。でもこれでようやく使い道が見つかったわ。」
「えっ?そうなのか!?」
そう言うとナヒーダはランドセルの中からナツメヤシキャンディの素材一式、デーツ4つ、杏仁2つ、バター二つ、スメールローズ1つを取り出す。
「?それをどう使うのだ?」
「まあ見てなさい。この「仙人探しの美食家」はね、いつでもどこでも料理を作ることが出来る便利アイテムなの。」
そう言うとナヒーダは先ほどの素材と「仙人探しの美食家」を使い、料理を作り始める。
「まずは砂糖水を透明になるまで煮詰めて……次は中に入れる材料とスメールゴマダレを混ぜ合わせて……」
ナヒーダは手慣れた手つきで料理を作り始める。ナツメヤシキャンディはナヒーダも大好きな好物であり、自由の身になった後、草神として多忙な日々を送りながらも時間がある時にはたまに自ら料理をして作って食べることもある位好きな食べ物であった。
やがて出来上がったシロップが型の中でザクザクに固まり、出来上がったのはナツメヤシキャンディ――ではなく、彼女のオリジナル料理である「ハルヴァマズダ」であった。
「?何なのだこれは?うまいのか?」
「これはナツメヤシキャンディを私流にアレンジした「ハルヴァマズダ」というお菓子よ。知ってる?マズダはスメールで「知恵」という意味を持っていてね、一つ食べるだけで物凄い速さで頭が回るようになるから、私のお気に入りの料理なの。さっ、折角作ったのだから二人で食べましょう。」
「!?い、いいのか!?」
ナヒーダの言葉を聞いてクルムは目を輝かせる。クルムは復活直後、シェラに差し出されたビスケットを食べて以来すっかり気に入ってしまい、「人族を殺すよりもビスケットを食べた方がよっぽどいい」という考え方になり、最近ではビスケットだけでなくアップルタルトなどの甘いお菓子を色々と食べ回るほどの甘いもの好きであった。
二人はハルヴァマズダを中心として対面するような形でハルヴァマズダを食べ始める。
「んんっ〜〜!美味しいわぁ。やっぱり自分で作って自分で食べるハルヴァマズダは最高ね♪」
「んんっっまあぁぁぁぁぁぁいのだあぁぁぁぁぁぁ!!」
ハルヴァマズダを食べる二人の顔はまるで彼女たちの正体が魔神や魔王であることを忘れてしまいそうな、外見相応の幼い少女の顔をしていた。
やがてお互い満足したという顔で「ごちそうさま」の言葉と共に料理を食べ終わった……その直後であった。
ボンッ!!という音と共に突如として「仙人探しの美食家」が爆発し、粉々に砕け使用不能となってしまった。
「な、何が起こったのだ!?」
驚くクルムを尻目にナヒーダは「あちゃ〜」という表情で顔を手で押さえる。
「仙人探しの美食家」はいつでもどこでも料理が出来るという一見すると便利なアイテムだが実際の所このアイテムは「消耗品である」という致命的な欠陥があり、一度使用して暫くすると壊れて使用不能になってしまい、そのせいで実際に使用した冒険者からの評価は悉く悪いという欠陥品であった。
「うう〜〜〜、勿体ないのだぁ〜〜。」
「仕方ないわ。使い道があっただけでもよしとしましょう。くよくよしても壊れた物は元に戻らないわよ。」
「それもそうだが……」
こんな事を言いつつもクルムは頭の中では理解自体はしていた。クルムは外見同様精神年齢は幼いながらも神にも匹敵しかねない驚くべき知識量を誇り、世界の成り立ちから、魔術の根源に迫るものまで途方もない量と質の知識を持っていた。
もし仮に、これが殺し合いの場ではなく、お互い二人で元いた世界における知識を披露しあっていたら時間がいくらあっても足りない位であろう。
ナヒーダとクルム、この二人は幼い見た目に反してそれほどまでの膨大な知識を有する存在同士であったのだ。
「さて、マオーはお前が気に入った!共にあの海馬乃亜を倒してこの殺し合いを止めるために手を組もうではないか!」
「ええ、有難いわ。共にこの殺し合いを止めるために二人で戦いましょう。」
そう言いながらナヒーダとクルムはお互い手を差し出し、共に握手した時であった。
シュン ドスッ
「!?」
「ッ!!」
突如として握手した二人の手に何処からともなく飛んできた一枚のカードが突き刺さり、痛みからお互い思わず手を離す。
「あ、悪りぃ!手元が狂ったぜ!」
言葉の割に特に悪びれた様子もないような口調で謝りながら、カードを投げた犯人が二人の前に姿を現す。
犯人の正体は一人の少年であった。外見年齢はナヒーダよりやや上、クルムとそう変わらない位であろうか、腕が露出した水色の半袖のパーカーを身に纏い、ぶかぶかのズボンを履いた肌の色が褐色の少年であった。
少年の外見はナヒーダやクルムと比べるとこれといった特徴のない平凡なものであった。
だが少年はナヒーダやクルムの容姿に特に驚いた様子もない調子でズボンのポケットに手を突っ込みながらまるで無警戒な感じで近づいてくる。
「いやホント悪かったって!人間誰しも間違いは犯すもんだろ?二人の話は聞いたぜ!俺も混ぜてくれよ!3人で協力してこの殺し合いを勝ち残ろうぜ!悪い話じゃないだろ?」
「……」
少年は二人に親しげに話しかけながら一歩、また一歩と近づいてくる。……そして少年が更に一歩踏み出した瞬間、ナヒーダは手に持っていた96ガロンデコの銃口を素早く少年に向けて引き金を引き、銃口からインクが発射される。
……だが少年は素早く手をあげると発射されたインクを手で防ぐように受け止める。……まるで「攻撃される」ということが最初から分かり切っていたかのように。
「あなた……誰……?」
「……なぁんだ、もう気付いていたんですね?さすが「俗世の七執政」の一人、草神ブエルさん?」
少年からは先ほどまでの軽薄な感じは消えていた。代わりに少年からは全ての存在を見下しているかのような冷徹な空気が発せられ、場が一気に強い緊張感に包まれる。
「あなた……どうして私の魔神としての真名を知っているの?」
「気になりますか?ですが答え合わせの前にまずはこちらから自己紹介と参りましょう。」
ナヒーダの問いに対し、少年はナヒーダ、クルムと一定の距離を保ちながら歩き出すとまるで一人語りをするかのように自らの正体を語る。
「僕の名は混沌の神 エーシル……と言いたいところですが現在の僕は片割れを失った不完全な存在なのでここでは取り敢えず『ロプト』と名乗らせてもらいましょうか。」
『ロプト』と名乗った少年は足を止め、ナヒーダの方に向き直ると懐から銅色の台座に金色に輝く鉱物が収まったような物体を取り出し、ナヒーダに見せびらかすかのように見せつける。
ナヒーダはその物体を見て目を見開いた。何故ならその物体は自国のスメールにてかつて存在していた物であり、現在ではアーカーシャの機能停止と同時期に全て回収、処分したはずのものであるからだった。
「そ……それは缶詰知識!?な、何故あなたがそれを!?」
「そう、これが先ほどの『問い』に対する『答え』です。これは常人なら中の記録を覗こうとしただけで廃人になるような危険な代物らしいですが……不完全とはいえ神である僕にとってはこの程度の知識のインストールなど苦でもありませんでしたね。」
ロプトは平然と言ってのけると、二人に対してまるで芝居がかった態度で缶詰知識の中に収められた知識、記録について語り始める。
「この缶詰知識の中にはスメールを治めた先代の神「マハ―ルッカデヴァータ」と2代目となる現在の神「クラクサナリデビ」……そう、貴女の事に関する記録が保存されていましてね?記録によるとどうやら相当興味深い経緯を歩んできたようだ。」
「マ、マハ―ルッカデヴァータ!?おいキサマ、どういうことなのだ!?マハ―ルッカデヴァータの事についてキサマはマオーに何も話さなかったではないか!?」
「……」
ナヒーダを問い詰めるクルムとそれに対し何も言い返せないナヒーダに対し、ロプトは無視するかのように尚も缶詰知識の中の記録について語り続ける。
「どうやら元々、スメールはマハ―ルッカデヴァータという名の神が治めていたらしいですが……500年前のカーンルイア動乱の際に彼女が死亡し、その跡地にて貴女……「クラクサナリデビ」が発見され、当時の教令院の賢者達の手によってスメールに連れ帰られました。……そうですよね?」
「……」
またしても言い返すことの出来ないナヒーダに対し、ロプトは尚も語り続ける。
「だが愚かにも教令院の賢者達はマハ―ルッカデヴァータが死亡したことも、貴女が2代目のスメールの神であることも決して認めようとはしなかった。そこで賢者たちは当時無力であった貴女をスラサタンナ聖処に物理的に幽閉、監禁拘束し貴女から一切の自由を奪った……そして民たちにマハ―ルッカデヴァータへの信仰を続けさせ、貴女を蔑ろにし続けたのです。」
「……」
「ナ、ナヒーダ……」
尚も押し黙り、俯き続けるナヒーダに対し、クルムは心配そうに顔を覗き込もうとするが、ロプトは尚も話を続ける。
「そしてそのような扱いは500年間の長きにわたって続き、現代となっても大賢者アザールを始めとした賢者たちは貴女を無能な役立たずと見下し続けた……。そして最終的に賢者たちは「創神計画」という計画を立ち上げ、自らが「正機の神」と呼ばれる人造の神を創り上げ、それをマハ―ルッカデヴァータに置き換える事でマハ―ルッカデヴァータ信仰を無理矢理続けさせ、用済みとなった貴女を完全に排除しようとした……。これがこの缶詰知識に記録されたマハ―ルッカデヴァータとクラクサナリデビに関する全てです。」
「……」
「ナヒーダ……」
ロプトが語ったナヒーダの悲惨な過去を聞いて、クルムは悲しそうな表情を浮かべていた。
何故ならかつてのクルムもまた、ナヒーダと同じであったからだ。
クルムは復活当初、記憶を失っており最初は訳も分からず人族を殺そうとしたのだが、ディアウ゛ロの仲間……シェラ・L・グリーンウッドとレム・ガレウの説得によって人族を殺すよりも美味しいビスケットを食べた方がよっぽどいいという考え方になったのだが、それが気に入らなかった魔王軍幹部の魔族オウロウによって輪廻転生のために殺害されそうになったのだ。その時はディアウ゛ロの活躍によってオウロウは退けられたのだが、その後人族を滅ぼすために魔族と繋がっていた魔王崇拝者の国家騎士「アリシア・クリステラ」の謀略によってレムが魔王崇拝者であるという偽りの罪で聖騎士のサドラーによって捕らえられ、自身の目の前で拷問の末に殺害されそうになり、怒りと憎しみの気持ちのままサドラーを殺害、アリシアと魔族たちの思惑通りに怒りと憎しみのままに暴れ続け、街を破壊しようとしたことがあったのだ。
最終的にはディアウ゛ロの活躍とレムとシェラの説得によって自身の暴走は阻止され、アリシアと魔族たちの思惑は潰える事になったのだが、自身が「クルム」としてではなく、魔族や魔王崇拝者たちからは「魂の魔王」としてしか見られなかったように、彼女もまた、「ナヒーダ」としてではなく、教令院の賢者達やスメールの民たちからは「草神」としてしか見られなかったのだという事を感じていた。
「そこで提案なのですが……どうです?あなた、どうか僕と手を組みませんか?」
ロプトはナヒーダに対し、手を差し伸べながら提案する。
「確かこの殺し合いの主催者の海馬乃亜はこう言っていましたよね?『優勝者にはどんな願いも叶えてみせる』と……、僕はこの殺し合いに勝ち残って優勝したら叶えたい願いがあるんですよ。僕の片割れが持つ『采配の力』、ルーメンの賢者が持つ『光の右目』、そしてアンブラの魔女が持つ『闇の左目』、この3つを僕の手の中に取り戻し、僕は『ロプト』としてではなく、『混沌の神 エーシル』として完全に復活を遂げなくてはいけないのです。」
「……」
何か考えているような素振りを見せているナヒーダを見つつも、ロプトはそれを無視しつつ話を続ける。
「複数の願いを叶える事を彼が了承するかは不明ですが……、僕は決めました。もし貴女が僕に協力してくれるのであれば、彼に叶えてもらう願いに『僕の住む世界とテイワットを統合して一つの世界にして欲しい』という願いを追加します。そして僕が力を取り戻し、『混沌の神 エーシル』となった暁には、協力してくれた貴女への返礼として貴女を蔑ろにした教令院の賢者達を皆殺しにすること、そして僕がスネージナヤのファトゥス執行官や氷の女皇、その上の存在である天理の調停者も全て僕が倒し、貴女にはスメールの統治者としての席を用意してあげることを約束しましょう。」
「お前……ナヒーダがそんな提案を呑む訳ないだろ!!」
「貴女もですよ。」
「!?」
反論するクルムに対し、突如としてロプトに話を振られた事でクルムは驚き、固まってしまう。
「聞くところによると貴女、魔王らしいですね?考えても見てください。この殺し合いの場においては貴女が人族を襲い、殺し喰らっても誰も止める者はいません。いや、むしろ推奨されているとさえいってもいいですね。それにこの場においては人族同士でさえ醜く殺しあっているのです。魔王である貴女が誰かを殺し喰らっても別におかしなことではないと思いますがね?どうです?僕に協力してくれるのであれば僕の世界やテイワット同様、貴女の世界も含めて一つの世界として統合し、貴女を頂点とした魔族達が貴女の世界の支配者となるのを最大限支援することを約束しますがね?」
「お……お前!!それ以上何か言ってみろ!!今この場で殺すぞ!!」
「出来ますかね?たかだか魔王である貴女が不完全とはいえ神であるこの僕に?」
「うっ……」
ロプトの言葉に対し、クルムは反論することが出来なかった。クルムは少し前、神を殺して肉を喰らい、神の力を手に入れたゲルメド帝に対して、ディアウ゛ロと共に戦いを挑んだことがあったのだ。あの時はゲルメド帝に有効な『ヘルヴェティアの槍』をアイラが命懸けで突き刺してくれた事とシェラとレムの援護のおかげで辛うじて勝つことが出来たが、ディアウ゛ロと一体化して戦ってもなお、ゲルメド帝との戦いにおいては終始劣勢を強いられ、神との力の差を痛感したことを考えると単身でロプトに戦いを挑むのは無謀だという事をクルムは理解していた。
「さて、どうします?憎き賢者達への復讐と目の上のたんこぶであるファトゥスや調停者の排除を同時に果たせるのですよ?賢い貴女ならどちらの選択を取った方が賢明か、考えるまでもないと思いますがね?」
「……そうね……」
「ナヒーダ……」
ようやく考えが纏まったのか、顔をあげるナヒーダとそれを心配そうに見つめるクルムに対し、ロプトは口を歪ませ、ニヤリと笑う。
……そしてナヒーダはロプトに向けて手をかざし、淡い緑色の植物を模した草元素の波動を放出すると、ロプトに向けてこう宣言した。
「……残念だけどお断りさせてもらうわ。」
「……何ですって?」
信じられない、といった表情をするロプトに対し、ナヒーダは自身の今の気持ちをロプトに対して告げる。
「……確かにあなたの言う通り、私も最初は教令院の賢者達に対する怒りや憎しみの気持ちはあった。」
「なら何故僕の提案が呑めないのです!?自身を幽閉した教令院の賢者達に復讐したいとは思わないのですか!?自身を蔑ろにしたスメールの民たちが憎くはないのですか!?」
ナヒーダの発言が尚も受け入れられないロプトに対し、ナヒーダは自らの今の気持ち、考えを伝え続ける。
「でも幽閉された長い年月の中で私は気付いたの。私がこうして幽閉されているのは私が神として未熟だから、私が神として相応しくないから。だから幽閉されても仕方ないと自らの運命を受け入れ、やがてそのうち、怒りや憎しみの気持ちは徐々に消えていったわ……」
唖然とするロプトに対し、ナヒーダは尚も続ける。
「そして創神計画の存在を知ったとき、私はついに悟ったの。「ああ、私はいらないんだ。もう私は用済みなんだ、これからのスメールは賢者達が創り上げた新しい神によってつくり上げられていくんだ」と。そして絶望した私は自ら心を閉ざし、自らが処分されるその時を待ち続けるだけしか出来ないと思っていたわ……でもそんな時、旅人が私に言ったの。「そんなことない」って。教令院に命懸けで立ち向かってでも私を救い出そうとする旅人の姿を見て閉ざされた私の心の中に光がさしたような気がしたわ……そして思ったの、「ここで諦めたくない」って。私を神として認めてもらうためにもう一度精一杯頑張ってみたいと、そう思ったの。」
「……」
理解できない、といった表情をしたロプトに対し、ナヒーダは尚も告げる。
「ねえ、知ってる?あなたが見た缶詰知識の内容……、あの話にはまだ続きがあるって事を。」
「え!?あの話にはまだ続きがあったのか!?それであの後どうなったのだ!?」
ナヒーダの話に強い興味を示したクルムに対し、ナヒーダはクルム、そしてロプトに対して語り始める。
「さっきも言ったけど旅人の決死の救出作戦によって囚われの身であった私は解放されたわ……その後私は旅人と共に神降工房に突入し、完成一歩手間の状態にあった「正機の神」七葉寂照秘密主と戦い、最終的に破壊して創神計画を食い止めることに成功したわ。」
「おおっ、ナヒーダはやっぱり凄いのだ!キョ―レーインの賢者達の見立てが間違っていた事を証明したという事だな!」
興奮しながらナヒーダの話を聞くクルムを尻目にナヒーダは尚も語り続ける。
「その後はファトゥス執行官第二位「博士」が私の前に現れて交渉の末に貴重な情報と引き換えに神の心を引き渡したりと色々あったのだけれどね……とにかくこれで私は無事にスメールの草の神の地位に復職し、スメールの民たちは皆私の事を受け入れてくれた……でも私にはまだ最後にやるべき事がまだ残ってたの。」
「?創神計画は食い止めたのであろう?最後にやるべき事とは一体何だったのだ?」
クルムの疑問に対し、ナヒーダは思い出すかのように目を閉じ、そして目を開けるとゆっくりと語り始める。
「戦いから数日した後、私はスラサタンナ聖処に大賢者アザールを始めとした創神計画に関わった全ての賢者達を呼びつけたわ。……勿論私一人でね。最初この事をセノに話した際、セノは自身を護衛として付けるようにお願いされたのだけれど私は断ったわ。このことは私自身で決着をつけなければいけないことなのだったのだから。で、当日、スラサタンナ聖処にやってきた賢者達を私は一人で出迎えた。」
「で、その後はどうしたのだ?賢者達を八つ裂きにしたのか?」
さらっと物騒な事を言うクルムをスルーし、ナヒーダは尚も語り続ける。
「アザールは不服そうな表情をしていたけど他の賢者達は怯えた表情を見せていたわ。当然よね。今までと違って自由となった私が目の前にいるんですもの。きっと報復されると思ったんでしょうね。」
まるで外見年齢相応のいたずらっ子のような表情を見せながらナヒーダは当時を思い出すかのように語り続ける。
「そして私は彼らに挑発の意味も込めてこう言ってやったの。「さっ、無能で役立たずな神があなたたちの目の前にいるわよ?私を本当に無能で役立たずなただのクソガキだと思うのなら、500年前のように私を捕らえてまた監禁拘束したらどうかしら?」ってね。その言葉を聞いた途端、賢者達はパニックに陥ってね?全ての罪をアザールに擦り付け始めたの。何でもアザールは自分に反対した因論派と生論派の賢者を幽閉して無理矢理口封じしたらしくてね?知論派の賢者のカジェは私に土下座しながらこう言ったの。「自分たちは因論派と生論派の賢者達みたいにアザールに逆らって幽閉されるのが怖くて仕方なく従っていただけなんだ、だから本心ではこういったことをしたくなかったんだ。だから許してくださいクラクサナリデビ様。」ってね。妙論派の賢者と素論派の賢者もカジェに同調して同じように土下座しながら私に許しを請いだしたわ。」
「都合が悪くなったら手のひら返しとはそいつら「賢者」じゃなくて「愚者」の間違いなんじゃないか?」
クルムは頷きながら率直な感想を述べると、ナヒーダは尚も話を続ける。
「その後も賢者達はアザールの余罪を次々と自白していったわ……二ィロウに彼女が楽しみにしていた花神誕祭の舞をやめさせて二度とやらないように命令したこと……アルハイゼンの後頭部を殴って気絶させて連行したこと……旅人とパイモンを牢屋に閉じ込めて幽閉したこと……それらの余罪を賢者達が次々と自白していく度に、アザールの顔がどんどんと青ざめていくのが目に見えて分かったわ……」
「そのアザールって奴は本当にどうしようもない奴だな!……で、その後アザールはどうしたのだ?」
ナヒーダは一旦一呼吸置くと、尚も話を続ける。
「でもアザールは中々自らの間違いを認めようとはしなかったわ……最初は半狂乱状態で周囲の兵士たちに「お、お前らぁ!!今すぐこのクソガキを取り押さえろぉ!!」と叫んだり、アーカーシャ端末をいじって何かしようとしたみたいだけど全部無駄に終わったわ。当然よね。兵士たちは今は私をスメールの草神と認めているから誰もアザールの命令を聞かなかったし、アーカーシャもその時点で全部私が掌握しているから今更アザールにアーカーシャをどうこうする権限はなかったんですもの。
そしてそれらが全て無駄に終わった事を理解すると一歩、また一歩と近づく私に対して彼は何て言ったと思う?「や、やめろっ!来るな近づくな分かった要求は何でも聞く!そうだ、大賢者アザールの名の下にお前をこのスメールを統べる草神と認めてやろう!どうだ、悪くない話だろう!だから殺さないでくれ〜〜っ!」ってね。
ホント、滑稽よね。今まで二ィロウやセノやアルハイゼン相手にあれだけでかい態度とっていた彼が私相手に無様な醜態を晒しながら命乞いをしているんですもの。
それでも私が近づいていくと最後には涙と鼻水を垂らしながら取り乱して「い、嫌だ死にたくない!!お許し下さいクラクサナリデビ殿!いや、クラクサナリデビ様ァ〜〜〜〜!!」と醜態を晒しながら叫び出したのよ。」
「で、それで結局どうしたのだ?殺したのか?」
クルムが興味深そうに尋ねるとナヒーダは首を横に振り、こう答えた。
「でも私はアザールを許したわ。だってそもそも幽閉されていたのは私が神としてまだ未熟だったからだし、彼の醜態を見て500年分の鬱憤が一気に晴れた気がしたんですもの。セノからは「幾ら何でも甘すぎます。彼らにはもっと厳罰を与えるべきです。」と苦言を呈されたけれど、私の意向を伝えたら「分かりました。クラクサナリデビ様がそうおっしゃるのでしたら俺はクラクサナリデビ様の意思を尊重します。」と納得してくれたわ。結局アザールを初めとした賢者達は自らの意思で教令院を辞めてアビディアの森で隠居生活を送る、そういう形でこの問題は決着が着いたわ。」
「おおーっ、ナヒーダは器が大きいのだ!マオーだったら多分アザールの事を八つ裂きにしていたぞ!」
ナヒーダはようやく話を終えるとロプトの方に向き直り、自らの意思を伝える。
「それにスメールの民たちも今の私を草神とちゃんと認めてくれてる。それにファトゥスもきっと旅人が何とかしてくれるわ。だからあなたの提案は受け入れられない。これが私が出した結論よ。」
だがナヒーダがロプトに自らの意向を伝えた瞬間、それまで沈黙を守ってきたロプトが肩を震わせ、急に笑い始めたのだ。
「クックックック……アーハッハッハッハッハッハ!!」
「何がおかしいというの?」
急に笑い出したロプトに対し、ナヒーダは不愉快そうな声を出すがやがて笑いが収まると率直な感想を伝える。
「いや何、貴女は本当にお人好し過ぎて優しすぎる神だ。僕には到底真似できませんよ。」
「……あなたも、かつてはそうだったんじゃないの?」
「?どういう意味です?」
「言っている意味が分からない」といった顔をしたロプトに対し、ナヒーダはランドセルから手記帳を取り出す。
「?何です?そのボロッちい手記帳は?」
「これはフリージャーナリストのルカっていう男性が自らの足で集めた情報が色々と載っていてね。その中にとても興味深い内容のものが書かれていたの。」
「?それは一体何なのだ?」
疑問に思うロプトとクルムに対し、ナヒーダは手記帳に書かれた内容をゆっくりと読み上げ始める。
「『エーシルの伝説……それは世界の始まりに遡る 誰も知らない原初の世界 それがある争いが元で三つの世界に分かたれた 光と闇そして混沌……その混沌の世界として誕生したのがこの人間界だ やがて三つの世界にはそれぞれに統治者が誕生した……もちろんこの人間界にもな その神の名はエーシル エーシルは山の頂上から長きに渡って静かに下界を見守っていた 彼の観測が事象を確定し観測あるがゆえに世界はその存在を認められた つまり観測者たる彼の目は世界を創造する神の力そのものだったんだ だが彼は自我を持たない未熟な人間たちを憂い 自らが持つ世界を司る力を二つに分けそれぞれを人間たちに委ねることにした 光の右目と闇の左目だ エーシルの神の目を二者に分かれて持つことで人間たちに選択の概念が生まれた 世界を確定する二つの目で人間たちは自らの道を選び自我に目覚めていったんだ かくして我々人類は考える葦となって偉大なる繁栄の大きな一歩を踏み出したのさ 神の目を受け継ぐ創造主として……』……これがこの手記帳に書かれていたエーシルの伝説の全てよ。」
「?でもおかしいのだ。その伝説を聞く限りだとその『エーシル』って言う神はいい神様のように見えるのだ。でもマオーにはあの『ロプト』って奴が悪い奴にしか見えないのだ。それは一体どういうことなのだ?」
ナヒーダもそれは感じていた。そもそも伝説に書かれたエーシルと自身の目の前にいるロプトが同一の存在だとはとても思えなかったのだ。
ナヒーダが疑問を口にする前にロプトがその疑問に対する答えを口にする。
「……なるほど、その疑問も最もですよ。でもその伝説に書かれていることは全て本当の事です。ですが人間たちを自我に目覚めさせたのは僕ではなく、正確には二つに分かれた僕の『片割れ』なんです。彼は人間たちに自我を目覚めさせるために神の力を二つに分け、その時にこの身も二つに引き裂いたのです。そして僕はただの抜け殻となったはずでしたが……残念ながら片割れは一つだけ計算違いをしましてね、人間たちの繁栄とともに膨れ上がった邪なる心の力……そう、貴女方を苦しめた教令院の賢者達や魔王崇拝者のような醜い人間たちが生んだ邪悪な心によってかつての神の力をほぼ取り戻したのです。後はこの殺し合いに優勝し、片割れが持つ『采配の力』、ルーメンの賢者が持つ『光の右目』、そしてアンブラの魔女が持つ『闇の左目』の3つを取り戻しさえすれば僕は完全な『混沌の神 エーシル』として世の趨勢を全て僕の意思で統べて見せましょう。」
「く……狂ってる……狂ってるのだ……」
クルムがロプトの宣言に動揺する中、ナヒーダはロプトの宣言を冷静に分析し、ロプトの正体についてある一つの結論を導き出す。
「……分かったわ。『エーシル』は『混沌の神』……それが二つに分かれたという事は、恐らく人間たちを自我に目覚めさせた『片割れ』が『善良』の象徴とするならば……あなたは恐らく『邪悪』の象徴……だから伝説で語られたエーシルと今のあなたの性格や考え方に齟齬が発生しているということね。」
「へえ、流石は『知恵の神』、鋭い考察だ。だが、だからどうしたのです?聡明な貴女なら今この瞬間における戦力の差は理解できるでしょう?まだ遅くはありません、先ほどの言葉を撤回し、僕に力を貸してくれるのであればスメールの統治者としての地位だけでなく、テイワット大陸の国の幾つかを貴女の統治下として移譲することを約束しましょう。」
「……」
どうせ彼女には何もできない。このまま断るのであれば今この場で殺すだけだ。ロプトがそう思った時であった。
「……いや、マオーにはお前に勝つ手段が一つだけ残されているのだ。」
「ほう、それは何です?」
クルムの発言に疑問を抱くロプトを尻目に、クルムはナヒーダの肩に手をポンと置くと、ナヒーダに語り掛ける。
「さっきのキサマの話を聞いてマオーは思ったのだ。キサマは本当に信頼できるヤツだって……よって、キサマにマオーの力を託すのだ。」
「……え?それってどういう……」
突然のクルムの宣言に対し、ナヒーダが真意を聞き出そうとした時であった。
なんとクルムの纏っているわずかな鎧が全て消え去り、クルムは一糸纏わぬ全裸となる。
「何のつもりです?……まさか自身の処女を捧げるからこの場は見逃して欲しい、なんて言うつもりじゃないでしょうね?」
「うるさいのだ。いいから黙って見ているのだ。」
そう言うとクルムはナヒーダの小さな身体を両手で抱きかかえ、唇を寄せてくる。
「キサマに……全てを託すぞ……ナヒーダ」
「え!?ちょ、ちょっと何を……」
脳に染みこんでくるような声で――
「クレブスクルムの名において宣言する。マオーの全ての力よ、草神ブエルに応え、草神ブエルに属し、草神ブエルに従え」
「クル……ッ……」
ナヒーダの小さな唇と、クルムの小さな唇が重ね合わされる。
「んっ……」
やわらくて。熱い。クルムの高い体温が、じんわりと伝わってくる。早い鼓動と、溢れる魔力も。
「やぁ……ちょ……ちょっとやめて……」
「ん?ナヒーダよ、キサマは知恵の神なのであろう?このような事に対する知識はないというのか?」
「こ……これは知恵とか知識とかの問題じゃなくて常識の問題で……や……やぁ……」
そう言いながらもナヒーダの顔は紅潮して息遣いも荒くなっており、表情もどこかうっとりとした表情を浮かべていた。
無理もない。彼女は記憶を失ってから500年の間ずっと、スラサタンナ聖処で監禁拘束生活を送ってきたのだ。それ故に「知識」はあってもこのような「経験」は今回が初めてであった。
「ね……ねえ……クルム……本当に……これ……必要な事なの?」
「ん……どうであろ?」
「あ……あなたねぇ……」
くすくす、と楽しげに彼女が笑う。
「許すがよいのだ。マオーがこの目で見る、最後の光景かもしれぬのだから」
「え……それって一体どういう……」
『ふふ……キサマは神の癖に優しすぎる』
最後の言葉は、頭の中で響いた。
クルムの身体が消えナヒーダは解放され、ナヒーダの中にまるで吸収されるように消えてしまう。
「……何で……短い付き合いなはずなのに何で私のために……それに……前にもこんなことがあったような気がする……まるでこれが初めての別れじゃないかのような……」
ナヒーダは暫く放心状態となり、その目から涙が溢れていた。しかしナヒーダ自身は「何で自分が涙を流しているのか分からない」といった表情を浮かべていた。
「思い出せない……私にとって大切な存在だったはずなのに……忘れたくない存在だったはずなのに……何で……何で思い出せないの……?」
そう言うナヒーダの身体は金属のような質感でありながら、衣服よりも軽い鎧に覆われていた。
紫色の鎧のような身体。ごつごつした頭には、紅く輝く目が五つ。頭にも肩にも角があり、耳まで裂けた口を持った、正真正銘『魔神』を思わせる異形の姿となっていた。
その様子を見たロプトは肩をすくめ、がっかりしたような声を出す。
「はぁ、結局こうなるんですね。賢明な貴女なら正しい判断が出来ると思ったんですが……結局は下等な人間の味方をするとは。……いいでしょう。それなら神の力を味わいながら、自らの過ちを後悔しながら死になさい!!」
そう言うとロプトの身体から青白いオーラが立ち昇り、一瞬にしてロプトの背後に神話の阿修羅を思わせるような六本の腕が形成され、ロプトは戦闘状態へと移行する。
「隙だらけですね!!」
そう言うとロプトは六本の腕の手を開いて前面に展開、展開した掌から魔法弾が形成され、未だ放心状態のナヒーダへと次々に放たれる。
ナヒーダは寸での所でこれに気付くものの、時すでに遅し、直撃は避けられない……と思われた時であった。
『バリアーなのだ!!』
甲高い、子供の声だった。ナヒーダの周囲に、多重の魔術陣が広がる。
球状の結界が、敵の魔法弾を遮断した。接触した瞬間に爆発する。
小さな弾に、どれほど膨大な魔力が込められていたのか。
結界があるにもかかわらず衝撃を受け、激しく揺さぶられた。
「きゃああ!!……こ、これは何で?」
また頭の中で、子供の声がする。
『危なかったのだー』
「ク、クルム!?生きていたの!?」
『トーゼンなのだ!』
「だってあなた……「最後の光景かもしれない」って……だから私……てっきり……」
『あれはからかって言っただけなのだ!そもそもマオーはこの身を『光翼の鎧』と化したのはこれで2度目だからな!だからマオーが死なないことも元に戻れることも既に知っているのだ!』
「もう!本気で死んだと思ったじゃない!」
『ゴメンなのだー!』
そうしてナヒーダとクルムが脳内で言い争いをしている時であった。
「独り言をグチグチと……舐めているのですかあなたは!!」
そう言うとロプトは六本の腕の内右半分の三本を肥大、巨大化させ、そのまま巨大化させた3つの拳でナヒーダを殴り飛ばす。
バキィ!!!
「きゃああ!!」
ナヒーダは吹っ飛ばされるが直ぐに体勢を立て直すと足で踏ん張ってその場に踏みとどまり、ロプトを睨みつける。
「ちっ……威力が落ちてますね……」
ロプトは自身の攻撃の威力が落ちていることを実感しながら、『海馬乃亜』と名乗った少年の言葉を思い出す。
『圧倒的強者にはハンデも与えよう。ただ、殺すだけじゃなく戦略も必要になるわけさ』
「つまりはそういうことですか……やってくれますね……」
ロプトは毒づきながらも乃亜の言葉の意味を理解する。恐らくこの殺し合いにおいて特定の参加者が一方的に無双できないよう、そういった『強い』参加者のスペックをある程度落とすことでどのような参加者でも優勝でき、どのような参加者でも敗北し、脱落する可能性が発生するように調整がしてあるのだという事をロプトは理解する。
これで確実に優勝できる可能性はかなり低くなった。だがだからといって優勝できなくなった訳ではない。ロプトはエーシルではない不完全な状態でもあのアンブラの魔女――ベヨネッタ相手に終始優勢に戦いを進め、彼女の母ローサを殺害できる程の力量を有していた。
幾ら制限でパワーが落ちていても、元々の力量が高い以上、未だ優勝の目は潰えてない――依然としてロプトはそう考えていた。
(まずはあのガキ二人を殺す。どんな手品を使ったかは知りませんが、合体した所で僕には勝てないという事を思い知らせてやりますよ……フフフフフ……)
一方、ナヒーダとクルムはロプトを倒すために、脳内でお互い話し合っていた。
『奴め……神を名乗るだけあって半端ない強さなのだ。今のコンフォートモードでは奴に勝つのは厳しいのだ。』
「コンフォートモードって?」
『コンフォートモードはマオーの普段通りの力しか出していない状態なのだ。そもそもこの状態で勝てる相手ならマオーだけで勝てるからそもそも意味が薄い状態なのだ。だからそれよりも更に上の状態……ファナティックモードに移行するのだ。』
その言葉と同時……ナヒーダの身体が熱くなって魔力や元素力がどんどん湧いてくるのを感じ、頭に血が上る感覚に襲われるが自らの理性で抑え込み、冷静さを取り戻す。
『更に上の状態としてマオーモードが存在するが……使うか?』
「いいえ、マオーモードは温存しましょう。この殺し合いは彼を倒せばそれで終わりじゃない……まだ他の参加者との戦いが控えていることを考えるとここで全力を出し切るのは得策じゃないわ。それより私に作戦があるんだけど……聞いてくれる?」
『?どんな作戦なのだ?』
「実はね……」
ナヒーダの作戦を聞いたクルムは面白そうな声で了承する。
『おお、それは面白そうなのだ!その作戦、乗った!』
だがその言葉と同時、ナヒーダの様子を見ていたロプトが待ちくたびれたかのようにナヒーダに声を掛ける。
「脳内会議は終わりましたか?どんな策を講じたか知りませんが……少しは楽しませてくれるのでしょうね?」
「ええ、待たせたわね……それじゃあ、いくわよ?」
どんな攻撃が来るのか、ロプトが身構えた時であった。
「知識を……あなたにも……」
まずナヒーダは高まった元素力を使って自らの切り札である元素爆発『心景幻成』を発動し、まるで白亜の宮殿を思わせるような領域「摩耶の宮殿」を展開する。
「?何ですこれは?」
どんな攻撃が来るかと思えばただ幻の宮殿を出現させただけじゃないか、そうロプトが思った時であった。
ナヒーダが手に持っていた96ガロンデコを構えるとガロンデコからインクの弾が発射される。
「!!」
攻撃が来る、そう思いロプトは6本の腕で防御するがナヒーダはそれが分かり切っていたように6本の内、5本の腕にインクの弾を一発ずつ、合計5発の弾を命中させる。
どんな攻撃が来るかと思えば次はインクの弾か、とロプトはナヒーダの行動の目的が理解できず、あまりの可笑しさに笑い出す。
「ハハハ……アッハッハッハッハッハッハ!!何をしてくるかと思えばやってくるのは幻の風景にオモチャの銃、そんなお遊びでこのボクを本気で倒そうと考えているとはどうやら貴女は見た目通り子供の遊びが好きなようだ!そんなんだから貴女は教令院の賢者達に舐められるんじゃないですか?」
だがナヒーダはロプトの挑発に乗ることなく、ただ静かにこう宣言する。
「……ええ、そうよ。そしてその慢心が、あなたの敗因となる。」
「?何ですって?」
疑問に思うロプトを尻目に、ナヒーダは次の攻撃に移行する。
「全部丸見えね」
ナヒーダは自らの元素スキル「所聞扁計」を発動、ファインダーを展開してロプト自身とロプトの六本の腕全てを標準に収めると「所聞扁計」の効果により標準に収まったロプトに草元素ダメージを与える。
「!?ぐあっ!?」
しかもただダメージを与えただけではない。まず現在元素爆発により展開されている領域「摩耶の宮殿」はナヒーダの能力である「滅浄三業」を強化する効果があり、領域内に炎元素の仲間がいれば「滅浄三業」の威力の強化、雷元素の仲間がいれば「滅浄三業」の発動感覚の短縮の恩恵を受けることが出来た。そして魔王クレブスクルムは炎元素と雷元素の魔法を操ることが出来るため、上記の恩恵の両方を受けることが出来たのだ。
そして先ほど96ガロンデコによって発射されたインクがロプトの腕に付着したことにより、インク――つまり水元素がロプトに付着していたため、草元素と水元素の両方がロプトに付着したことにより、元素反応である「開花」反応が発生し、黄緑色の果実のような物体――「草原核」が合計5つ出現する。
更にそれだけでなく、「所聞扁計」による攻撃はただ草元素ダメージを与えるだけでなく、ダメージを与えた敵に「蘊種印」という特殊な印を付与することが出来、更に「蘊種印」が付与された敵に元素反応が発生するとナヒーダの能力である「滅浄三業」の効果が発動し、「摩耶の宮殿」の効果による強化も上乗せされた草元素ダメージによる追撃がロプトを襲う。
「ぐううっ!!」
そしてナヒーダは最後の仕上げに入ろうとしていた。
「後はお願いね。」
その言葉と共にナヒーダの纏う雰囲気が変化し、ナヒーダから発せられる声に明確な変化が発生していた。
「任せたのだ!」
その声はナヒーダではなく、クルムの声に変化していた。
七神の一柱である草神ブエルであるナヒーダは草元素の神として神の目無しで草元素を操ることが出来るだけでなく、幾つかの権能を有していた。
その一つが「意識の乗っ取り」「意識の交換」であり、ナヒーダと何らかの形で意識が繋がった相手に対してナヒーダはその対象の意識を乗っ取って操ったり、対象と自らの意識を交換することが出来た。基本的にナヒーダ自身は心優しく相手の意思を最大限に尊重する性格なため、滅多に使われることはないのであるが、今回はこの権能を応用することで自身と一体化したクルムと意識を交換し、疑似的な二重人格として必要に応じて人格を切り替える戦法を取ることが出来た。
「このマオーが焼き尽くしてくれるのだ!食らえ!!『サンダーストーム』!!」
ナヒーダと意識を交換したクルムが自らの手から彼女の得意魔術である雷属性の魔術を発動し、無数の雷がロプトに向けて発射される。
「!!」
だがロプトもただ黙って攻撃を受けるつもりはない。攻撃を回避するためにその場から跳躍し離れるが、クルムの魔術はロプト――ではなく、先ほどの元素反応によって発生した5つの草原核に向かって放たれていた。
「ははっ!何処に向かって攻撃しているんですか!」
だがそのロプトの嘲笑に対し、クルムは不敵に笑って答える。
「……いいや、マオーの狙いは正確なのだ。」
「?」
そしてサンダーストームによる雷撃が草原核に届くと……サンダーストーム、つまり雷元素の攻撃が草原核に付与されたことにより、「開花」反応の上位反応である「超開花」反応が発生し、草原核全てが破裂、それら全てが草元素の追尾弾へと変化し、ロプトに向かって正確に放たれ、直撃する。
「!?ぐあああっ!?」
しかもそれだけではない。再び元素反応が発動したことによってナヒーダの能力である「滅浄三業」の効果が再び発動し、「摩耶の宮殿」の効果による強化も上乗せされた草元素ダメージによる追撃が再びロプトを襲う。
「ぐううううっ!!」
彼女らを侮っていたか、とロプトは自らの慢心を後悔する。先ほどの無意味に見えた行動全てがこれらの連鎖反応に対する布石であり、敢えて油断と慢心を誘ったうえで本命を叩きこむ、これこそが「知恵の神」ナヒーダの立てた作戦であり、璃月の鍾離や稲妻の雷電将軍と比べ単純な力では劣りながらも彼らと同格に近い強さを持っているナヒーダの強さを支える要素の一つでもあった。
「成程……教令院の賢者達同様、僕も貴女の本当の実力を見誤ったようだ……ならばこちらも僕の全力を以ってあなた達を叩き潰すとしましょう!!」
だが一連の攻撃を受けても尚、明確にダメージは負っていてもロプトの負ったダメージは致命傷とは言い難かった。
ハンデにより一連の攻撃の威力が全体的に落ちていた事もそうだが、ロプト自身も見た目に反して高い耐久力を有しており、自身よりも遥かに巨大な天使や悪魔に対しても有効打を与え、倒す事が出来るベヨネッタの攻撃に対しても耐えることが出来るほどのものであった。
そしてロプトの身体が青白いオーラに包まれると、ロプトの6本の腕が最早限界が存在しないのではないかと思われるほど長く伸び、伸びた6本の腕が近くの岩山を掴むと岩山から無理矢理巨大な岩塊を剥ぎ取り、剝ぎ取った巨大な岩塊をそのまま力任せにナヒーダとクルムに向かって投げ飛ばす。
最早小細工無しの巨大な力による攻撃――直撃すれば魔神といえど肉塊と化すような、それほどまでに巨大な岩塊による攻撃であった。
だがそれもナヒーダにとっては既に予測済みであった。一連の攻撃を終えた後、意識を交換し自らの意識へとチェンジしたナヒーダは、クルムに託された指輪を装着し、その指輪の効果によって使えるようになった超弩級魔術の詠唱を完了し、両手を突き出して自らに迫りくる巨大な岩塊に向けて放つ。
「『覆滅の炎』!!!」
先ほど装着した指輪は『眼球の魔王 イアンカローズ』の奥義である、MMORPGクロスレヴェリのなかで最大火力と言われる超弩級魔術『覆滅の炎』が使えるようになる魔王の指輪であり、効果は『覆滅の炎』が使えるようになるものの、それ以外の魔術が一切使えなくなるデメリットを持つ指輪であった。
『覆滅の炎』の閃光が巨大な岩塊と衝突し相殺、岩塊は粉々に砕け、『覆滅の炎』の閃光もまた、消滅する。
だが『覆滅の炎』を放ったことによる消耗が大きいナヒーダと違い、ロプトは多少のダメージや消耗はあれど、未だ余裕はあるといった感じであった。
『やはりマオーの見立てが甘かったか……ファナティックモードでは奴に勝つことは出来ないのだ……』
「そんな……それじゃあ、どうしたら……」
『もうマオーモードを使うしかないのだ。マオーモードは理性が飛び、破壊衝動が強くなってしまう可能性があるが……もう背に腹は替えられないのだ。』
「……分かった。あなたに任せるわ……。」
そう言うとナヒーダは自らの権能を使い、クルムと意識を交換する。それに対し、ロプトは挑発するように声を掛ける。
「ここまで頑張ったのは褒めてあげますが……ここで打ち止めですか?ならば僕は今ここであなた達を殺し、次の獲物を探しに行くとしましょう。」
だが返事はなく、代わりにナヒーダの身体を借りたクルムから妖しいオーラが立ち昇ると、クルムは凄まじい勢いで絶叫した。
「グルルルウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーッ!!」
「!!?」
最早知恵も理性も感じられない獣の叫び――マオーモードによって単純な力の増大と引き換えにかつてアリシアに嵌められて暴走し、破壊衝動の塊と化したかつての魔王クレブスクルムを再現したような、破壊と暴力の化身へとクルムは変化していた。
そしてそのまま上昇した身体能力に任せて、クルムはロプトに向かって一直線に突撃する。
「小手先の策が通じないからとやけになりましたか!」
だがロプトは動じることなく、6本の腕を肥大化させるとそのまま突っ込んでくるクルムを挟みこむように叩き潰す。
……だがクルムは自らを叩き潰した6つの手を無理矢理跳ね除けるとそのままロプトの懐に潜りこみ……そのまま拳をロプトの顔面に力任せに叩きこむ。
「ぐあああ!!」
吹き飛ばされたロプトは体勢を立て直すと尚も突っ込んでくるクルムに対し、6本の腕による拳の乱打をクルムに向かって放つ。
激しい拳の嵐による殴打を受け、クルムの外装となる鎧が幾らか凹むが、それでも怯むことなく尚も突き進み、再びロプトの懐に入ると……足を振り上げ、ロプトの頭部に踵落としを決め、地面に叩きつける。
「ぐううっ!!」
そしてロプトの頭部を掴んで無理矢理起こすとロプトの腹部に膝蹴りを2発、3発と執拗に叩きこみ、そして最後にロプトを力任せに殴り飛ばす。
吹き飛ばされたロプトは何回か地面を転がるとやがて停止し、ロプトは息を荒くしながらも顔を上げ、クルムを睨みつける。
「ふざけるなよ……魔王如きが神であるこの僕にぃぃ……」
だがそんなロプトに対し、クルムは一歩、また一歩と近づくと、拳を振り上げ、再びロプトに向かって拳を叩きこもうとした……その時であった。
パッ
「な!?」
「え!?」
何とナヒーダとクルムの光翼の鎧による合体が解除され、合体する前の元の二人の状態へと戻ってしまう。
こうなってしまったのには理由があった。先ほどの『覆滅の炎』を放ったことによる魔力などの大幅消費とロプトの攻撃によるダメージの蓄積に加え、マオーモードまで解放したこと、それら全てが総合した結果、乃亜が架したハンデにより合体が強制解除となってしまったのである。
あまりに突然のことにロプトはあっけに取られるも、事態を理解したのかロプトは立ち上がり、笑い出す。
「ククククク……ハハハハハハハ!!!やはり彼が言う『ハンデ』というのは僕だけではなく、彼女たちにも架せられていたという事ですか!最初は忌まわしいと思いましたが……この時ばかりは彼に感謝しなければいけませんね!!さて、まずは……」
そう言うとロプトは地面に倒れているナヒーダに向かってゆっくりと近づき、ナヒーダの首を掴むとそのまま彼女を片腕で持ち上げる。
「うう……」
「ナ、ナヒーダ……」
地面に倒れているクルムはロプトとそれに持ち上げられているナヒーダを見つめるが、力を使い果たしたのかどうすることも出来なかった。
「さて、貴女はこのまま生かしといてはとても厄介ですからね。ここで確実に始末するとしましょう。」
そう言うとロプトはナヒーダを掴んでいない手で抜き手を放ち、その手がナヒーダの腹部に突き刺さる。
「ナ、ナヒーダァァァァァ!!」
クルムの叫びも虚しく、ロプトの抜き手がナヒーダの腹部を貫いた……と思われたその時、クルムの、そしてロプトの視界にノイズのようなものがはしり、腹部を貫かれたはずのナヒーダがロプトに向かって静かに語り掛ける。
「……ねえ、あなたが私を狙ったのがこれで何回目か、分かる?」
「!?」
何故死なない、そうロプトが思ったその時、周囲の風景全てにまるでガラス細工のようなヒビが入ると、それら全てが割れたガラスのように粉々に砕け散り、それに驚いて目を覆ったロプトが目を開けると、まるで今までの戦いがなく、最初に対峙した時の状態を再現したかのようにロプトの目の前にナヒーダとクルムの二人が立っていた。
「さっきので3回目よ。これがこの私、草神ブエルが持つ権能『夢境』の力……さっきまであなたは私たちと無意味な戦いを繰り広げていたの。」
「なっ……一体いつからその力を使っていたんですか!?……はっ、まさかあの時……」
ロプトには権能を行使されたタイミングに一つだけ心当たりがあった。ナヒーダがロプトの誘いを断った時、ナヒーダが手をかざし、淡い緑色の植物を模した草元素の波動を放出していたことを思い出したのだ。
今にして思えば、というよりあのタイミングの時しか思い浮かばないのであるが、あの時既に権能を行使されていたのだという事を、ロプトは理解する。
「……成程そういうことですか。ですがこんな事をして何になるというのです?例え何度繰り返そうとも、その度に僕は貴女達を叩き潰し、力の差を思い知らせてあげますよ。」
「ええ、お好きにどうぞ。……あなた自身が脱落してもいいというのであればね?」
「?どういう意味です?」
意味が分からない、という顔をしたロプトに対し、ナヒーダが分かりやすく彼に説明をする。
「さっきも言ったでしょ。私の権能は『夢境』の力だって……つまり私たちは今夢の世界にいて、現実の私たちは眠りについているのよ。それが何を意味しているか、分かる?」
「!?……ま、まさか貴女達は……」
そう、現実の肉体が眠りについているという事は、現実の自分たちはその場から動くことも出来ない、完全な無防備状態であるという事を意味していた。
「ようやく気付いたようね。この殺し合いには他の参加者も参加している……そんな状態で無防備な状態のままでいれば、他の参加者に容赦なく狩られるか……もしくは殺し合いを円滑に進めるために設定されるであろう『禁止エリア』に動くことも出来ずに放置される状態になり、首輪を爆破されてそのまま退場するか……つまりこのままあなたが私たちと夢の世界で無意味に戦い続けていれば、いずれあなたには敗退の道しか残されていないという事になるのよ?」
「なっ……しかしそれは貴女達も同じなはず!まさか貴女は僕とこのまま心中するおつもりですか!?」
ロプトの言葉に対し、ナヒーダは首を縦に振り、こう答える。
「ええ、仮に私がここで死ぬことになっても、あなたの命と引き換えなら安い代償だわ。私の命一つであなたの凶行を止めることが出来るのであれば、あなたのせいで苦しむことになる多くの命を救うことが出来るのですもの。」
「くっ……」
彼女は本気だ、ナヒーダの目を見てロプトはこれがハッタリではなく、本気だという事を理解し、矛を収めざるをえないと理解した。
「さっ、取引をしましょう。今ここで私たちを見逃すか、それとも私たちとこのまま戦い続けて死ぬか……どっちの道を選ぶかあなたに『選択』させてあげるわ?」
かつて人間たちに選択の概念を与えたロプト……エーシルに対し、『選択』の道を突き付ける……そんな皮肉とも言える状況の中、ロプトは不敵に笑うとある一つの結論に達した。
「……いいでしょう。どうせ貴女達はいつでも殺せるのです。より確実に殺せるものを殺し、力をつけてからいずれまた貴女達を殺して差し上げますよ。」
「……そう、分かったわ。」
今この場は見逃す……そう選択したと受け取ったナヒーダは夢境の権能を解除し、3人は夢の世界から目覚め、現実世界へと引き戻される。
「……さて、あなたがこちらに有利な選択をした以上、私もそれ相応の代価を払わなければ筋が通らないわね。さっきあなたが私に投げてきたカード……これをあなたに返すわ。」
そう言うとナヒーダは最初にロプトが投げてきたカードをロプトに提示する。
「いい事教えてあげるけどこのカード……『カオスエンドルーラー 開闢と終焉の支配者』はただ投げつけるだけじゃなくて念じればカードのモンスターが実体化して呼び出した人物の指示に従って戦わせることが出来るわ……どう?悪くない代価でしょ?」
そう言うとナヒーダはカードを自身の足元に置き、そのままじりじりと後退する。
「言っておくけどもしあなたが何かおかしな真似をすればカードは直ぐに焼却処分して私はまた夢境の権能を発動させるわ……それが嫌なら黙って自身の選んだ選択を守ることね。」
ナヒーダの言葉に対し、クルムは黙って自身の手をカードに向けてかざす。ロプトが何かした瞬間、カードを直ぐに燃やせるように。
そのままじりじりとお互い仕掛けることもないまま両者の距離は離れていき……やがてお互いが視認できない距離まで両者の距離は離れ、両者は完全に離れることになった。
◆◆◆
「凄いのだー!あんな凄い能力があるならこれから先も……って、ナヒーダ!?」
先ほどの戦いの場所から大分離れた場所でナヒーダは辛そうな表情で頭を抑えながら蹲り、クルムはそんな急変したナヒーダの容態を心配して覗き込んでいた。
「ハァ……ハァ……大丈夫よ……このくらいならまだ平気だから……」
「全然大丈夫じゃなさそうなのだ!!急に一体どうしたのだ!?」
「……恐らく私の『夢境』の権能にも制限が掛かっているのね。行使するたびに頭痛が酷くなっていったから……」
そう、ロプトやクルム同様、ナヒーダにも『ハンデ』という名目の制限がかかっており、自身の権能である『夢境』の力を行使するたびに頭痛が激しくなり、徐々に本人が消耗するような制約がかけられていた。
つまりあそこでロプトとの駆け引きで彼が引いてくれるかどうかは一種の賭けであり、もし仮にあそこでロプトが構わずに襲いかかってきたら、彼が諦めるか共倒れするまで権能を行使し続けなければならず、最悪その前に彼女が倒れていた可能性もあった。
「……さあ、早く行きましょう。まずは仲間を集めてこの殺し合いを止める手段を探さないと……」
未だ辛そうな表情で頭を抑えながらナヒーダが立ち上がろうとした時であった。
「無理をするな!その前にキサマの限界が来るぞ!今は休め!」
明らかに無理をしている、そう判断したクルムがナヒーダを座らせようとしたその時であった。
「……私は早くスメールに帰らなきゃいけないのよ!!」
座らせようとしたクルムの手を払いのけ、ナヒーダは普段冷静な彼女からは考えられないようなひどく焦ったような表情で声を荒げていた。
「私の帰りをスメールの民たちが待っているのよ!!私は草神としてスメールを治める責務を全うしなきゃならないの!!だから……私は……私は……」
その時であった。ナヒーダの脳裏にかつての大賢者アザールの言葉がフラッシュバックして蘇ってきた。
――クラクサナリデビ……彼女に何が出来る?
「え……待って……私は……私は……」
「?ナヒーダ?」
ナヒーダの今の表情は先ほどまでの焦った表情とは打って変わって、酷く怯えたような表情を浮かべていた。
――民をなだめる?砂塵への対策?それとも荒唐無稽なおとぎ話でも作ることか?そんなの教令院でも簡単にできる。ならば私たちも神なのか?
「ち……違うの……私は……私なりにスメールの民たちのために必死に尽くそうとして……」
――我々はマハ―ルッカデヴァータ様の恩恵を受けた民。この眼で見たことがなくとも、我々の先祖たる学者たちは「真の知恵」を見た。だが、今のクラクサナリデビは神の座にいても、学者たちに迷いをもたらす――「あれが真の知恵なのか」?
「ご……ごめんなさい……私が未熟だから……スメールを治める神に相応しくないから……でもこれから頑張るから……頑張ってスメールを治める神に相応しい「真の知恵」を身につけるから……だからお願い……見捨てないで……」
――ならば、彼女にずっとスラサタンナ聖処にいてもらったほうが、学術環境もより安定する。
「いや……それだけはやめて……そんなことをしたら私は一人ぼっちになっちゃう……頑張って「真の知恵」を身につけてスメールを治めるのに相応しい神になるから……だからお願い、それだけはやめて……」
――神を創る……我々は人類の知恵をもってして神を創っているんだ!もし人類が「全知全能」に届かないのであれば、神を創ってそれを公示すればいい!これこそが人類が到達できる知恵の頂点。我々は神の導きを再びこの手にする。もう二度と意識と知恵の暗闇で、当てもなく彷徨う必要がなくなる……。たとえ世界樹の危機であろうとも、最後にはあっさり解決できるであろう。神が自分の手から誕生するその喜びを、お前では永遠に味わえないであろう。お前の知恵では……この感情を理解するには不十分だからな。
「いやあ……イヤアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!」
「ナヒーダ!!」
最早限界に達したのか、普段の冷静な彼女からは想像も出来ないような絶叫をあげながらナヒーダは頭を抱えてしゃがみ込む。
「私は頑張るから!!頑張って「真の知恵」を手に入れるから!!「知恵の神」として相応しい存在になるから!!民を導くのに相応しい偉大な神様になって民の皆を安心させられるような存在になるから!!だからお願い!!私を見捨てないで!!もう二度と私を一人ぼっちにしないで!!イヤア!!イヤアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ナヒーダ!!」
バァン!見かねたクルムがナヒーダの頬を平手打ちすると正気を取り戻したナヒーダがクルムの方を見る。
「何でそんなにナヒーダは自分で自分の事を追い詰めるような事をするのだ!!何が「真の知恵」だ!!大層な事を言って結局そのアザールって奴はただ威張り腐ってキサマをイジメているだけではないか!!そんな奴は「大賢者」なんかじゃない!!ただのクソジジイだ!!」
「……え?」
これまで自分がスラサタンナ聖処に監禁幽閉されていたのは自分が神として相応しくないから、そう思い込んでいたナヒーダにとってクルムの発言は信じられないような言葉であり、ただ放心状態でクルムの顔をじっと見つめる。
「マオーが復活したばかりの頃オウロウとアリシアが「魔王は人族を殺すもの、人族を殺さないお前は魔王として相応しくない」と言ってきたがそんなこと言われてもマオーは気にしなかったぞ!マオーにとってはビスケットやアップルタルトを食べたり町でのんびり暮らす方が楽しいし、人族を殺すよりもずっといい!そんなマオーをディアウ゛ロもシェラやレムもエデルガルドもシルヴィもセレスもみんな受け入れてくれてる!」
「……」
ナヒーダは未だ放心状態でクルムの事を見つめていた。知恵や知識はあっても理解が追いつかない、ナヒーダの思考は今まさにそんな感じであった。
「では何故教令院のクズ共はキサマを閉じ込めた!?自由を奪った!?それは教令院の連中はキサマの事を「ナヒーダ」としてではなく、ただ「草神」としてしか見ていなかったからだ!!オウロウもアリシアも同じだ!オウロウもアリシアもマオーの事を「クルム」としてではなく、ただ「魂の魔王」としてしか見ていなかったからオウロウはマオーの事を「輪廻転生」と称して殺そうとしてきたしエデルガルドにも手を出した!アリシアも魔族と手を組んでレムを罠に嵌めて傷つけた!何故か!?それはオウロウもアリシアも教令院の連中もマオーやナヒーダが「魂の魔王」「草神」としては自身が望んだ存在ではなかったからだ!だからレムは傷つけられ創神計画は企てられた!結局のところあいつらにとってはマオーやナヒーダの事なんて本当はどうでも良かったのだ!!」
「……わ……私は……私は……」
クルムの言葉を聞いてナヒーダは未だ現実を受け入れられないでいた。自身と全く違う生き方、考え方をしている存在を目の前にして、ナヒーダの頭は知識はあっても理解が追いつかない、そんな状態に陥っていた。
「それにキサマ……キサマはまだ、まだ幼くて小さな女の子ではないか!!」
「!!?」
そう、今まさにクルムの言った通りであった。ナヒーダは500歳であるが、500歳といえば魔神基準でいえば見た目通りのまだ小さくて幼い子供だ。本来ならお菓子を食べたり同世代の子とブランコやかくれんぼで遊んで天真爛漫に過ごしてもいいような、そんなまだ小さくて幼い子供そのものな、そんな年齢なのだ。
だが教令院の賢者達はそれを認めなかった。オウロウやアリシア同様、ナヒーダの事を「草神」としてしか見ていなかった彼らは彼女のことを「草神として相応しくない都合の悪い存在」と見なして彼女から一切の自由を奪い、創神計画によって自分たちにとって都合のいい神を創り上げ、ナヒーダの存在を排除しようとした。
つまり教令院の賢者達やスメールの民にとっては自分たちにとって都合のいい「草神」が欲しかったのであり、ナヒーダの事などどうでも良かったのだ。
「さっきも言ったがマオーは毎日お菓子を食べたり自由にのびのびと過ごしていたりする今の日々に満足しているし、それが魔王らしくなくても誰にも文句を言わせないぞ!ナヒーダも本当はそんな日々を過ごしたいという気持ちがあるのではないか?」
「……うっ……うっ……」
そう、上記のような経緯があったからこそ、ナヒーダは旅人によって救い出され、解放された後でも決して周りの人間たちに見下されないよう、自分を押し殺して気丈に振る舞い、「神として相応しい存在で居続ける」ために常に自らが持ちゆる知恵や能力を駆使し、創神計画を阻止しただけでなく、その後も事件の後処理や神としての毎日の事務仕事など多忙な日々を送ってきたのであるが、それも遂に限界を迎えようとしていた。
「それにここはスメールではないのだ。ここで何をしようともスメールでのキサマの評価が落ちるわけではない。今くらいは心の赴くままに自由に振る舞ってもいいのではないか?」
「うっ……うっ……うっ……」
駄目だ、決して折れてはいけない、ここで折れたらまたあの辛い監禁拘束生活に逆戻りしてしまう、そんな気持ちで今まで必死になって気丈に振る舞い、自らを押し殺してきたナヒーダであったが、最早それも限界に達していた。
「うっ……うええええええぇぇぇぇぇぇぇん!!もうやだよぉ!!子供らしく遊びたいよぉ!!自由にのびのびとしていたいよぉ!!うわああああぁぁぁぁぁぁん!!」
最早限界に達したナヒーダは、今まで押し殺してきた自らの本心を吐露するかのように泣き叫ぶと、そのまま暫く今まで抑えていた全てを吐き出すかのように泣き続けていた……
◆◆◆
「……ㇲ―……ㇲ―……」
「全くこうして見ると戦いの時のナヒーダとはまるで別人みたいなのだ。今まで必死に自分を押し殺してきたのだな。」
暫くした後、泣きつかれたのか安らかな寝息を立てながら眠るナヒーダと、それを背負いながら歩くクルムの姿があった。
因みに眠るナヒーダの寝顔は今までの気丈に振る舞っていた時からは想像できないような、外見年齢相応の安らかな子供らしい寝顔であった。
「それにしてもあの乃亜の奴ムカつくのだ!本物の神様のナヒーダだって決して民を見下したりせず真剣に民の事を思って頑張っているのに、「神だから何をしたっていい」みたいな態度でみんなを見下して命を簡単に奪うなんてナヒーダの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいのだ!」
クルムはこの殺し合いに連れてこられたばかりの頃、自らこの殺し合いを主催し、神を名乗って「ルフィ」「エース」という名前の少年二人の命を躊躇なく奪い、彼ら二人を踏みにじった海馬乃亜の事を思い出していた。
クルムもまた、乃亜を鋭く睨みつけ、殺意を持った眼光を放った一人なのであるが、乃亜が彼ら二人を容易く殺した首輪の威力を警戒し、ここで逆らっても無駄死にだと考え、様子見に回った一人でもあった。
現状、乃亜に逆らっても首輪がある限り彼に勝つことなど出来ないだろう。だがナヒーダなら……「知恵の神」である彼女ならこの首輪を解除する手段を見つけることが出来るかもしれない。彼の戦力がどれほどのものなのかは知らないが、ナヒーダが「正機の神」を、クルムが「ゲルメド帝」を仲間と共に倒す事に成功したように、仲間を集め結束すれば、乃亜を倒す大きな力となるとクルムは考えていた。
確かに「正機の神」も「ゲルメド帝」も力だけならまさに神に等しい強大な存在であったが、他の存在を見下し傲慢に驕った結果、仲間との結束の力の前に敗れ去っている。
ならばあの海馬乃亜も「正機の神」や「ゲルメド帝」同様、仲間と結束すれば彼を打ち破れる可能性が残されているかもしれなかった。
そのためにも背中の彼女が……「知恵の神」であるナヒーダが最後の希望なのかもしれない。
クルムはそう思いながら仲間を探しに歩を進めていた。
「待っているのだ乃亜。必ずキサマの元に辿り着き、キサマを倒してこの殺し合いを終わらせてやるのだ。」
【ナヒーダ@原神】
[状態]:健康、疲労(小)、睡眠中、
[装備]:96ガロンデコ@スプラトゥーン3
[道具]:基本支給品、ルカ・レッドグレイヴの手記帳@ベヨネッタ2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めてスメールに帰る
1:自身に賛同する仲間を集め、いずれは乃亜を打倒し、仲間と共に殺し合いを止める。
2:いずれ首輪を解除する方法を見つける
3:知恵の神として殺し合いを止められるよう尽力したい。でもたまには子供らしく振る舞いたい。
[備考]
伝説任務「知恵の主の章」第一章終了後からの参戦です。そのためマハ―ルッカデヴァータの事を忘れています。
『夢境』の権能に制限が掛けられています。その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
【支給品紹介】
【96ガロンデコ@スプラトゥーン3】
ナヒーダに支給。同ゲームにおいて「シューター」に分類される「52ガロンデコ」を更に発展させたグレネードランチャーに酷似した見た目をした銃。あくまでインク発射用の銃なため殺傷能力はないが、インクが水元素と扱われるため、ナヒーダは自身の草元素と組み合わせて元素反応である「開花」「超開花」反応を起こすためのコンボ用の武器として扱う。
【ルカ・レッドグレイヴの手記帳@ベヨネッタ2】
ナヒーダに支給。同ゲームの登場人物であるフリージャーナリスト「ルカ・レッドグレイヴ」が自らの足で集めた情報が纏められた手記帳。「イワシのムニエルが美味しい魚料理の店」などの情報の他、作中において伝えられている人間界の神「エーシル」の伝説についてもまとめられている。
【魔王クルム@異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術】
[状態]:健康、疲労(小)、主催への怒り(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、魔王の指輪@異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めてディアウ゛ロ、シェラ、レムの所に帰る
1:乃亜にナヒーダの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいのだ
2:ナヒーダがこの殺し合いにおける最後の希望なのかもしれないのだ
3:人族を殺す人族はぶっ飛ばしてやりたいのだ
[備考]
原作14巻におけるゲルメド帝戦後からの参戦です。
光翼の鎧等に制限が掛かっています。その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
【支給品紹介】
【魔王の指輪@異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術】
クルムに支給。MMORPGクロスレヴェリのボスの一人である『眼球の魔王 イアンカローズ』を倒した際にドロップするアイテムで、効果は彼の奥義である超弩級魔術『覆滅の炎』を使用可能となる。ただし代償として装着者はそれ以外の魔術を一切使えなくなる。
「やってくれますね……まさか僕が獲物を仕留め損ねるとは……」
先ほどの戦いの場所から少し離れた夜の森の中、一枚のカードを持った一人の少年がいた。ロプトである。
「それにしても彼女は本当に駆け引きが上手い……彼女は『代価』と言いましたが実際の所は僕が取引に応じるメリットを敢えて提示することで僕が取引に応じるよう上手く誘導したという訳ですか……全く『知恵の神』の称号は伊達ではないという事ですね。」
ロプトは自身の手の中にあるカード『カオスエンドルーラー 開闢と終焉の支配者』を見つめながら、彼女……ナヒーダに対する感想を述べる。
そもそもこの殺し合いは最終的に最後まで生き残らなければ意味がない。だから無理に戦って共倒れするよりも、相手に殺し合いにおいて有利になる要素を敢えて提示することで要求を呑ませる、要求を呑まなければ相手に不利になるように行動する……あの状況においては有効的な上手い取引方法であった。
「それにしても解せませんね……あれ程まで有能な存在を教令院は何故冷遇したのでしょうか?普通なら優遇した方がメリットが大きいはずですが……」
ロプトは暫し考え、そして口元をニヤリと歪ませるとある一つの結論に達する。
「やはり人間は愚か……そうとしか考えられませんね。ルーメンの賢者バルドル、教令院の大賢者アザール、彼らは賢者を名乗っておきながらどちらも度し難いレベルの愚か者でした。そんな連中が賢者を名乗って人々を導く、そんなんだから人間はますます愚かになり、救いようのない存在となっていくのです。」
ロプトは不気味な笑みを浮かべると、次の獲物を探しに歩き出した。最終的にはこの殺し合いに優勝し、采配の力と光の右目と闇の左目を取り戻し、『混沌の神 エーシル』として完全復活を遂げるために。
「やはり人間に自我など必要ありません。あるのはこのロプト……いや、エーシルの意思のみ。世界を観測し、世界を創る……世の趨勢はこのエーシルが司るのです。」
【ロプト@ベヨネッタ2】
[状態]:健康、疲労(小)、
[装備]:カオスエンドルーラー 開闢と終焉の支配者@遊戯王ZEXAL
[道具]基本支給品、神の缶詰知識@原神、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:自分以外の参加者全てを皆殺しにして優勝して願いを叶えてもらい、混沌の神 エーシルとして復活を遂げる
1:やはり人間は愚かです。自我など必要ありません。
2:ナヒーダは警戒しなければいけませんね。
3:神である自分に勝てるものなどいません。
[備考]
チャプター15「真実」ラストでローサを殺害した直後からの参戦です。
制限により多少弱体化しています。
【支給品紹介】
【カオスエンドルーラー 開闢と終焉の支配者@遊戯王ZEXAL】
効果モンスター
星10/光属性/戦士族/攻3500/守2000
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に存在する光属性・戦士族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター1体をそれぞれゲームから除外して特殊召喚する。
このカードの特殊召喚に対して魔法・罠・効果モンスターの効果を発動する事はできない。
1000ライフポイント払う事で 相手の手札・フィールド上・墓地に存在するカードを全てゲームから除外する。
この効果で除外したカードの枚数×500ポイントダメージを相手ライフに与える。
当ロワでは召喚条件関係なく呼び出すことが出来るが代償として一度呼び出すとその後は二度と呼びだすことが出来ない使い切りとなっており、また戦闘が終了するか制限時間(15分)が過ぎると消滅するため、ずっと出しっぱなしにすることも出来ない。
【神の缶詰知識@原神】
ロプトに支給。ある程度の知識、情報を保存し、使用したものの脳に知識、情報を直接インストールするアイテムで、本来ならアーカーシャ端末との接続が必要だが、当ロワではアーカーシャ端末関係なく直接中に保存されている知識、情報を得ることが出来る。ただし知識、情報を直接インストールする関係上、神の缶詰知識のようなデータ量が膨大な物の場合、常人なら精神崩壊は避けられない危険な側面もある。
当ロワではナヒーダが教令院の賢者達に発見されて連れて帰られ、スラサタンナ聖処に監禁拘束されてから、旅人たちによってナヒーダが救出される直前までのナヒーダの境遇に関する知識、情報が保存されている。
投下終了です。
タイトルは書いていませんでしたが、タイトルは『神と魔王』です。
まだ時間はありますので、可能なら新たな候補作を順次投下したいなと思います
投下します。
「殺し合いに巻き込まれちゃったなあ…」
「どうしよっかなあ」
「お腹すいたなぁ」
「じゃあ人殺しでもするか!」
【警察(ガキ)@妹が作った痛いRPG「性戦士」】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:未成年は人殺しをしても死刑にならないんだよ!!最高だぜ!!
1:とりあえず人殺しすっか!
[備考]
※
※出展元の、この人物が登場する警察の回想は、これを聞かされた圭次郎を騙すために行われたことが終盤に判明する=実際にこのような人物だったかどうかは不明ですが、この場においては回想内での言動通りの人物であるとします。
投下終了です。
3連続で投下します。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
バトル・ロワイアルの会場で驚きの声を上げる関西弁のツインテールの美少女。
佐倉蜜柑は自分が巻き込まれた蛮行に声を震わせていた。
もちろん蜜柑の今までの人生で、目の前で子供が爆殺されるような光景を見たことなどない。
図太いようで繊細な面もある彼女は何分か何も考えられずにいたが、タフという言葉は蜜柑のためにある。持ち前のへこたれない心で気を取り戻すとランドセルを調べた。
「と、とりあえずランドセル見よ。なんか使えるもんとか入っといてな。」
「えーっと、白い粉と、拳銃と、ドス?」
蜜柑は、覚醒剤を手に入れた!
蜜柑は、トカレフを手に入れた!
蜜柑は、ドスを手に入れた!
「ちょっと待ってこんな武器ええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまうが、目の前の状況は変わらない。これで殺し合えということだろう。
「こ、これ、オモチャと違うかな? ホンモノなん? うわ説明書ついてる。覚醒剤の説明書ってなんやねん。」
「アカンどないしよ! めっちゃ怖わなってきたわ。まあでも誰だって殺し合いたいわけないもんな。とりあえず、誰かと会いたいな。みんなも巻き込まれてるかもしれんし。おっしゃ探そ!」
蜜柑は努めて元気に言うと立ち上がる。
へこたれへん、関西女の心意気で駆け出す。
そして1時間経った。
そして2時間経った。
そして3時間経った。
そして4時間経った。
そして5時間経った。
「誰もおらんのやけど! 逆に怖いわ!」
そしてあっという間に放送間際まで行ってしまった。
あんまりにも誰にも会わないので、自然と警戒心も薄くなる。
すると道にわずかについた染みに気がついた。周りを見張っていた目が地面に向いたことで、ほんの少しの血痕を見つけられたのだ。
「これ、血ぃ、よな? あっちに続いてるんか?」
そして血痕は一軒の民家へと続いていた。玄関は鍵がかかっておらず、開くと直ぐに、倒れている少女が見えた。
「ハァ……ハァ……あ、さっきの……」
「いや初対面なんやけど。て、めっちゃ腹から血ぃ出てるやん! 大丈夫!? 大丈夫やないやろけど!」
倒れていた少女の名は、条河麻耶。
なんでも既に何度か戦闘して毒を食らったり腹を斬られたりしたらしい。
なにぶん放送直前まで誰とも会っていない蜜柑にはにわかに信じられない話だが、とにかく怪我をどうにかしなければ。
「え……あんだけ戦ってたのに気づかなかったの?」
「なんか音は聞こえてたけどわからんかったわ。アカン血止まらへんどないしよ!? あ、拡声器あるやん、借りるで!」
「ちょっとタンマ! アイツがここに来るかも知んないし!」
「いや誰やねんそれ。誰とも会ってないならこの辺り人いないって。もしおってもうちがなんとかするわ。」
覚醒剤で痛みを飛ばし、毒を蜜柑の持つ無効化のアリスで解毒して、それでもなお瀕死のマヤを救うにはこれしかない。
支給品と自前の異能でマヤの命を支える。ある意味最強だが、この出来すぎを越えた出来すぎを持ってしても、それだけでは足りない。
ということを別にどっちも理解してはいないが、蜜柑は単純に怪我人がいるから医者を呼びたくて、マヤはヤクでそれどころじゃなくなっていてとにかく使ってみることにした。
1分、誰も来ない。
2分、誰も来ない。
3分、誰も来ない。
わかっていたが、やはり人はこの辺りにいないらしい。
「これはもうダメかもわからんね」そんな言葉が蜜柑の口から出そうになる。その時。
「大丈夫ですか! オレは医者です!」
「「医者来たー!?」」
なんと医者が来た。とんでもない幸運に思わず2人でツッコむ。マヤの傷口から血が吹き出し、失血によるショックで意識が飛んだ。これはもうダメかもわからんね。
しめやかにマヤが息を引き取りつつある中、蜜柑は「背ぇ低く!」とツッコんでいて気がつかなかった。小5の蜜柑は138cm、中2のマヤは140cmとあまり人のことを言えない二人だが、現れた自称医者は161cm。2人よりかは頭一つ高いが、蜜柑の先輩である美咲やマヤの友人であるリゼとほぼ同じで、顔の幼さと男性ということも考えるとどう頑張っても中学生ほどにしか見えない。
「この傷口の変色は、汚れた刃物による裂傷?」
「なんか毒食らってたらしいです。さっきうちらでなんとかしました。」
「毒だって? しかもそれをなんとかした? 支給品か? じゃあこの注射器は?」
「痛すぎて殺してって言い出したんでダメ元で打った覚醒剤です。」
「なんだって!? どういう状況なんだ!」
(この人めっちゃ手際よく裸にして傷口消毒したな。)
しかしその第一印象はすぐに覆った。
蜜柑に話しつつ少年医者はマヤの制服をハサミで切り裂き、傷口にアルコール消毒液をかけ、ビニール手袋をつけるとこれも消毒し、患部を検める。
なおその時の物品は全て蜜柑が「なんかこういう防災グッズに入ってそうな雑貨とか持ってたほうがええんかな。これまでうちお菓子しか拾ってへんからな。あと文房具とかもいる?」と6時間ほどかけて集めたガラクタの一部である。
「よし、大網で止まってる。消化器は無事だ。ここでオペします!」
「ほ、ホンマに医者なんですか?」
「オレは真東輝、安田記念病院(ヴァルハラ)の外科医です。」
その言葉には、蜜柑を納得させる熱量があった。
言葉だけで本物だとわからせられる『凄み』を感じる。そして直ぐに言葉だけでなく目でもわからされた。
「ちょっと、めっちゃ早い。指先残像になってる……」
恐怖すら感じる速度で、テルの指先がマヤの内蔵をいじくり回し、血が拭われ、針と糸で縫われていく。人体の、それも少女の体の中を縦横無尽に触りまくるその手に、畏敬の念とそれを超える生理的嫌悪を抱く。目の前の、自分と何歳かしか変わらなそうな少年が、人間離れした動きを見せることに本能が警告を鳴らす。アリスという人間離れした力を持ち、同じような力を持つ人間と触れ合ってこなければ現実だともテルのことも受け入れられなかっただろう。
「終了だ。」
「……お、終わったのか? なんか、今まで触られたとこのないところ触られまくった感覚だった……」
「すまない、麻酔が無くて。」
「大丈夫……シャブで、どっこいどっこいだったから……」
「はえ〜すっごい……」
手術中に意識を取り戻して冷静かつ錯乱しているマヤと言葉をかわしながら、かかった時間はものの十数分。それがどれだけ異常なことかは蜜柑にはわからない。だがそれでも、目の前の男性がある意味自分よりも普通じゃないことに蜜柑は確信を得た。
そして同時に、マヤを気遣うその顔は、なんら普通の人と変わらない。この人は本当に、すごいお医者さんなんだと確信した。
少女命を救った彼はゴッドハンド輝。神の手を持つと謳われた医者である。
【佐倉蜜柑@学園アリス】
[状態]:健康、テルに興味
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、覚醒剤@現実?、トカレフ@現実?、ドス@現実?、拾った雑貨(防災グッズに入ってそうなもの、お菓子、文房具)
[思考・状況]
基本方針:なんとか殺し合いから脱出する。
1:この人、医者のアリスか?
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:重傷(腹部に裂傷、処置済み)、失血、毒によるダメージ(解毒済み)、疲労(大)、覚醒剤使用
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、拡声器@バトル・ロワイアル、移動に使えそうなもの、武器になりそうなもの
[思考・状況]
基本方針:なんとか殺し合いから脱出する。
1:助かった……?
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
【真東輝@ゴッドハンド輝】
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:なんとか殺し合いから脱出する。
1:マヤの容態を見守る。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
投下終了です。
タイトルは『関西ツインテ 蜜柑』になります。
続いて投下します。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
バトル・ロワイアルの会場で驚きの声を上げる関西弁のツインテールの美少女。
神谷真夏は自分が巻き込まれた蛮行に声を震わせていた。
もちろん真夏の今までの人生で、目の前で子供が爆殺されるような光景を見たことなどない。
図太いようで繊細な面もある彼女は何分か何も考えられずにいたが、タフという言葉は真夏のためにある。持ち前のへこたれない心で気を取り戻すとランドセルを調べた。
「と、とりあえずランドセル見よ。なんか使えるもんとか入っといてな。」
「えーっと、CD と、パンツと、うわっ!?」
ニ鳥は、菅野美穂のCDを手に入れた!
ニ鳥は、ブリーフを手に入れた!
ニ鳥は、ビグ・ザムを手に入れた!
「ちょっと待ってこんな武器ええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまうが、目の前の状況は変わらない。これで殺し合えということだろう。
ランドセルからヌッとバカデカいロボットが出てきて、近くの木立の木々を粉砕しながら横たわる。多分乗り物だろうとコックピットを探したら案の定で、とりあえず真夏は中に入ってみることにした。
座席は3人乗りのようだ。最後の1人まで殺し合うのに協力が必要なものを渡すとか乃亜ってやつは結構鬼畜だな。
「これ1人でも動かせるん? そもそもホンモノなん? うわ説明書ついてる。マジぃ?」
「アカンどないしよ! 逆に怖わなってきたわ。まあでも誰だって殺し合いたいわけないもんな。とりあえず、誰かと会いたいな。みんなも巻き込まれてるかもしれんし。おっしゃ探そ!」
真夏は努めて元気に言うと操縦席についた。
へこたれへん、関西女の心意気で駆け出す。
そして1分経った。
そして2分経った。
そして3分経った。
そして4分経った。
そして5分経った。
「アカンこれ動かせへん! ぜんぶハズレや!」
そしてあっという間に諦めた。
当然だが軍用の兵器はマニュアルを読んだぐらいで素人が操縦できるようにはできていない。どこぞのテンパが例外なだけで、しかもビグ・ザムという癖が強い機体では、とっとと諦めたほうが健全とも言える。
なにせこのビグ・ザム、そもそも地上での運用を想定していない。その上半身に比べて下半身が貧弱すぎるフォルムを見ればわかる通り、足なんて飾りな宇宙空間での使用を前提とするモビルアーマーだ。それにそもそもが3人乗りである。一応1人でも動かせなくはないが女子小学生にはちょっと無理かな。
「しゃーない、切り替えていく。とりあえずコイツをランドセルにしまって、どっかで武器になりそうなもん探そ。そんで誰かおったら、ておった!?」
するとメインカメラに映る影。
横たわるビグ・ザムの正面、つまり空中に人が浮いていた。
黒い枝のようなものを背中につけた金髪の美少女だ。
ぽかんと口を開けて見下ろしている。
そして降りてくるとコンコンとモノアイを叩いた。不思議そうに小首をかしげている。そりゃこんなもんみたら驚くだろと思うと、少女が空中に浮いていたことは頭から抜けていた。ロボットがいるんだ、幼女が空を飛んで何が悪い。
「これが、大仏ね?」
「おーい、そこのー! アンタもユーカイされたんかー!」
「あ、人間だ。」
どっこいせと言いながらコックピットから這い出る真夏の前に、再び少女がふわりと浮かぶ。すると真夏よりも中が気になったのか覗きこんだ。
「これなに?」
「知らん。なんか入ってた。」
「ふーん。」
「とりあえず中入り。うち神谷真夏。真夏って呼んでええよ。」
「招き入れられたわね。わたしはフランドール・スカーレット、真夏は、人間?」
フランドールの支給品である露天風呂プリンなるご当地スイーツを二人でつつきながら情報交換する。なんでもフランは吸血鬼らしい。じゃあこのロボットもなんか吸血鬼的なアレかと聞いたら違うと言われた。そらそうよ。
「そういえば、真夏は何が入ってたの?」
「ほーん、なんか大変やなあ。でもお金持ちとかええやん。」
「うん、で、何が入ってたの?」
「えー、言わなアカン? うーん、笑わんといてよ? これとパンツとCDなんやけど……」
「なにこの、ブリーフ、ブリーフなの?」
「いやブリーフっていうか、伸縮性のあるボクサー型の、ちょっとスパッツに近い感じの。」
「ブリーフでしょ。」
「イヤや支給品がブリーフなんて! せめてパンツにしてや!」
「ブリーフだと認めなさい。」
そんなふうに盛り上がること小一時間。お互いの知り合いのことも話し終えて、2人で他の参加者を探す流れになった。
ズルズルとフランの怪力でビグ・ザムを押すと、なんかランドセルへと吸い込まれていく。
「四次元ポケットみたいなもんやな。」
「なにそれ?」
フランは真夏を抱っこすると林から町へと飛んでいった。
とりあえず2人とも殺し合いに乗る気はない。突然誘拐されて無理強いされればどんなことだってやりたくないのだ。なんとかサボってあの乃亜とかいうキャベツ頭にやり返してやる、という真夏の主張に、別になんにも目的がないのでしばらく付き合うことにフランはした。
あと単純に真夏と話すのが楽しい。なにせ500年近く知った顔としか話してこなかった。別に自分から話しかけるタイプではないが、真夏がグイグイ来るので自然と会話が増える。弾幕の一つも出せないのはつまらないが、たまにはこういうのも悪くはないと思った。
「アカン、プリン吐きそう……」
「えー、ゆっくり飛んでるのに。」
「ホンマムリ、腹押されてこの態勢めっちゃキツい……猫とかこんな気分なんや。だからあんな鳴くんや……」
「もー、しょうがないなあ。それ!」
真夏をお姫様抱っこするとフランは高度と速度を上げた。
「お〜、ええやん! 気に入ったわ! こんなの総理大臣やって体験できへんで! ショウタに見せたら羨ましがるで!」
「それってあなたの眷属?」
「ケンゾク? ちがう! アイツは子分や! ウチが面倒みたっとんねん! ヒャッハァー!」
さっきの青い顔はどこへ行ったのか、真夏は大空の空中散歩を満喫している。
人間はこんなにうるさいものなのかとフランは思うが、そのうるささがどこか心地よかった。
大きく翼をはためかせる。壊れない程度にスピードを出してやろう。
そう思って集めた魔力を、フランは進行方向とは別方向に一気に放出した。
「フラン!?」
「撃たれた、狙われてる!」
真夏の声に応えながらグレイズ。間一髪で弾丸はフランの翼の先を掠めるだけで済んだ。
2人の視線は地上へ。曳光弾の発射元は、いつの間にか来ていたビルの上だった。
「お姉ちゃん外しちゃったねぇ。」
「良い勘をしてますねぇ。」
ビルの屋上にいるのは、目つきの悪い高学年ほどの少女と、幼稚園児ほどの少年。
大場カレンは支給品のBARをランドセルへとしまうと素早く離脱を始めた。
カレンが少年、豊穣礼佑と手を組んだのは数分前のこと。
カレンが武器の試し撃ちも兼ねて礼佑を殺そうとしたときにさかのぼる。
元々、カレンには命がけで叶えたい望みがある。そのためならばルール違反がない限りなんでもするという覚悟で『ラストサバイバル』というゲームに参加したほどだ。優勝すれば何でも願いが叶うというそれに挑み、しかし敗北して、気がつけばこの殺し合いだ。
もちろん、カレンとしても乃亜のうさんくささは理解している。しかしそれを差し置いても、自分をあの場から、あのラストサバイバルのステージからさらった事を評価した。
ラストサバイバルはマスコミにも公表され特番が組まれるほどだ。それも主催者である謎の男、ミスターLの力によるもの。たいていの願いならば非現実的なものでも叶えてしまえるだけの財力と実力を持つ、そう目され、そしてそれをラストサバイバルの度に証明し続ける男。そんな男の管理下から子供を誘拐できるのは、それこそ国家権力でも不可能かもしれない。
つまり、乃亜は警察や自衛隊ではどうにもできないレベルの主催者と判断できる。ラストサバイバルのように体に輪っかをつけさせて監視するというのはどこの主催者も一緒かと失笑したが、ルールも似たようなもので真に受けるに足るものだ。前回は最後の一人になるまで歩き続けろ、今回は最後の一人になるまで殺し合え。願いのために最後の一人になるまで競うのに何ら変わりはない。
唯一違うのは、今回は殺人が肯定されていることだけだ。
「お姉ちゃん、そのビルじゃ見つかるよ。こっちに隠れて。」
礼佑の言葉に従い2人で物陰に隠れる。なぜか3人に分身した空飛ぶ金髪女がしばらく辺りにエネルギー弾のようなものを放ち、それがまたたく間にそこら中の建物を倒壊させるのを見て、カレンは礼佑と手を組んだことにニヤリと笑った。
カレンが礼佑を殺そうとしてやめたのは、彼が自分を予知能力者だと言ったからだ。奇襲しようとしたのにやけに逃げられたため、予定を変えてビルにあった灯油を撒いてビルごと焼き殺そうとしたところ、突然姿を表してカレンの名前を言い当てたのだ。
最初は個人情報がわかる支給品かとも思ったが、コインの裏表を十回連続で当てたことや、次に会うのが空飛ぶ金髪女だと言ったことで、ひとまず彼が只者ではないと判断した。予知能力者かは疑わしかったが、焼き討てば予知も糞もなく殺せるから出てきたと判断して、手を組むのを認める。互いに今日一日限りの同盟だと納得して、そして予知通りに空飛ぶ金髪女、フランを見つけてさっきの展開に戻る。
「消えましたね。飛行と分身とビーム弾の能力でしょうか。厄介ですね、早めに誰かにぶつけましょう。」
(こいつ、さっきわざと外さなかったか? つかえないな、やっぱり。)
カレンがとりあえず礼佑の利用価値を認める一方で、礼佑は損切りのタイミングを計っていた。
もちろん礼佑も殺し合いには乗っている。前のサバイバルゲームでも自分の有能さを示すために挑み破れたが、同じ轍は踏まない。そう思ってはいたものの、彼が持つ未来日記『はいぱーびじょんだいありー』は日に三度の未来予知しかできない。そのためカレンの放火というどう予知しても生存できない事態までは避けきれず、不本意ながら予知能力者だと名乗り出るハメになった。
うまくごまかして未来日記の存在は伏せ、自分自身に予知能力があるように見せるのは苦労した。幸か不幸か、カレンは自分が予知能力者だと判断できなければ容赦なく放火してくる女だったので、自分の死を予知することでコインの裏表を当てれたが、これでは命がいくつあっても足りない。
(……だけど、今は未来日記が機能していない。DEAD END以外の予知が頻繁に書き換わってる。これが制限なのか、それとも『他に未来を予知できる人間がいる』のか……)
礼佑は機を伺う。
未来日記は未来の情報を元に現在の行動を変えれば、未来から見た過去の行動が変わるため即座に書き換わる。それが起こり続けるということは、未来日記自体の不具合か、あるいは礼佑以外の誰かが未来を予知して行動を変えているかだ。
(だったらお姉ちゃんもいるかな。今度こそボクが勝つよ。エリート的にね……!)
礼佑は悪辣に笑う。
2つのタッグは対象的な腹積もりで第一接触を終えた。
【神谷真夏@無邪気の楽園】
[状態]:ちょっと吐きそう
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、菅野美穂のCD@現実、ブリーフ@現実?、ビグ・ザム@機動戦士ガンダム
[思考・状況]
基本方針:ノアをシメる。
1:アッブな!?
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
【フランドール・スカーレット@東方Project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:面白そうだから真夏と遊ぶ。
1:とりあえず真夏が邪魔なんでどっかほっぽり出してフォー・オブ・カインドの分身と一緒に撃ってきたやつと遊ぶ。
【大場カレン@生き残りゲームラストサバイバル】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、BAR@BLACK LAGOON、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:礼佑のような能力者を警戒しつつ使い潰していく。
【大場カレン@生き残りゲームラストサバイバル】
[状態]:健康
[装備]:BAR@BLACK LAGOON
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:礼佑のような能力者を警戒しつつ使い潰していく。
【豊穣礼佑@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:はいぱーびじょんだいありー@未来日記
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:タイミングを見計らってカレンを殺して今回もステルスマーダーになる。
【菅野美穂のCD@現実】
菅野美穂が1995年にリリースしたデビューシングル「恋をしよう!」のCD。
B面はドッカン〜人生最大の衝撃。
もちろんハズレアイテム。
【ビグ・ザム@機動戦士ガンダム】
ジオン公国が開発した宇宙用モビルアーマー。
型式番号はMA-08で、全高60mの巨体に多数の武装と軽巡洋艦2隻分のコストを注ぎ込んだ要塞を壊す移動要塞。
本来の設計思想から一応重力下でも使えないことはないが、単体での運用を想定していないことや開発段階の試作機のために上半身に比べて下半身が貧弱すぎる歩行が困難な設計になっている。
ぶっちゃけハズレアイテムだが、小規模とはいえ宇宙艦隊を一斉射で殲滅したことからその火力は本物。
【露天風呂プリン@若おかみは小学生!(映画版)】
主人公・おっこが春の屋に来たお客様・神田あかねのために作ったプリン。
黒ごまと生クリームと栗の甘露煮で温泉の風呂と湯気に見立てている。
映画と原作で微妙に作る理由が違うが、作り方自体はたぶん一緒。
パンフレットにレシピが載っているのでみんなも作ってみよう。
【BAR@BLACK LAGOON】
グレーテルこと双子の長髪の方が使っていた自動小銃。
正式名称はブローニングM1918自動小銃。
非装甲の車両を貫通可能な7.62mm弾を毎分300発以上の速度で500m以上先にまでばら撒ける凶悪な性能を持つ。
重さは8kgに達するため、銃床を床につけて対空射撃するようなやり方でなければとてもではないが子供が撃てるようなものではない(それでもカレンは外したが)。
【はいぱーびじょんだいありー@未来日記】
5thこと豊穣礼佑が所有する未来日記。
絵日記の要領で日に三度のその日生きていれば書くはずの日記が書かれる。
また何をしても自らの死が確定したDEAD END時には、日記を書ける状況でなくとも更新される。
通常は意図的にDEAD ENDを起こすことは考えられないが、エリート的にやれなくもない。
【神谷真夏@無邪気の楽園】
[状態]:ちょっと吐きそう
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、菅野美穂のCD@現実、ブリーフ@現実?、ビグ・ザム@機動戦士ガンダム
[思考・状況]
基本方針:ノアをシメる。
1:アッブな!?
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
【フランドール・スカーレット@東方Project】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:面白そうだから真夏と遊ぶ。
1:とりあえず真夏が邪魔なんでどっかほっぽり出してフォー・オブ・カインドの分身と一緒に撃ってきたやつと遊ぶ。
【大場カレン@生き残りゲームラストサバイバル】
[状態]:健康
[装備]:BAR@BLACK LAGOON
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:礼佑のような能力者を警戒しつつ使い潰していく。
【豊穣礼佑@未来日記】
[状態]:健康
[装備]:はいぱーびじょんだいありー@未来日記
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝する。
1:タイミングを見計らってカレンを殺して今回もステルスマーダーになる。
【菅野美穂のCD@現実】
菅野美穂が1995年にリリースしたデビューシングル「恋をしよう!」のCD。
B面はドッカン〜人生最大の衝撃。
もちろんハズレアイテム。
【ビグ・ザム@機動戦士ガンダム】
ジオン公国が開発した宇宙用モビルアーマー。
型式番号はMA-08で、全高60mの巨体に多数の武装と軽巡洋艦2隻分のコストを注ぎ込んだ要塞を壊す移動要塞。
本来の設計思想から一応重力下でも使えないことはないが、単体での運用を想定していないことや開発段階の試作機のために上半身に比べて下半身が貧弱すぎる歩行が困難な設計になっている。
ぶっちゃけハズレアイテムだが、小規模とはいえ宇宙艦隊を一斉射で殲滅したことからその火力は本物。
【露天風呂プリン@若おかみは小学生!(映画版)】
主人公・おっこが春の屋に来たお客様・神田あかねのために作ったプリン。
黒ごまと生クリームと栗の甘露煮で温泉の風呂と湯気に見立てている。
映画と原作で微妙に作る理由が違うが、作り方自体はたぶん一緒。
パンフレットにレシピが載っているのでみんなも作ってみよう。
【BAR@BLACK LAGOON】
グレーテルこと双子の長髪の方が使っていた自動小銃。
正式名称はブローニングM1918自動小銃。
非装甲の車両を貫通可能な7.62mm弾を毎分300発以上の速度で500m以上先にまでばら撒ける凶悪な性能を持つ。
重さは8kgに達するため、銃床を床につけて対空射撃するようなやり方でなければとてもではないが子供が撃てるようなものではない(それでもカレンは外したが)。
【はいぱーびじょんだいありー@未来日記】
5thこと豊穣礼佑が所有する未来日記。
絵日記の要領で日に三度のその日生きていれば書くはずの日記が書かれる。
また何をしても自らの死が確定したDEAD END時には、日記を書ける状況でなくとも更新される。
通常は意図的にDEAD ENDを起こすことは考えられないが、エリート的にやれなくもない。
投下終了です。
タイトルは『関西ツインテ 真夏』になります。
続いて投下します。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
バトル・ロワイアルの会場で驚きの声を上げる関西弁のツインテールの美少女。
宮美二鳥は自分が巻き込まれた蛮行に声を震わせていた。
もちろんニ鳥の今までの人生で、目の前で子供が爆殺されるような光景を見たことなどない。
図太いようで繊細な面もある彼女は何分か何も考えられずにいたが、タフという言葉はニ鳥のためにある。持ち前のへこたれない心で気を取り戻すとランドセルを調べた。
「と、とりあえずランドセル見よ。なんか使えるもんとか入っといてな。」
「えーっと、双眼鏡と、ブーメランと、ブーメラン?」
ニ鳥は、双眼鏡@バトル・ロワイアル(映画版)を手に入れた!
ニ鳥は、ブーメラン@バトル・ロワイアル(漫画版)を手に入れた!
ニ鳥は、双眼鏡@バトル・ロワイアル(原作版)を手に入れた!
「ちょっと待ってこんな武器ええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまうが、目の前の状況は変わらない。これで殺し合えということだろう。その事実に目の前が真っ暗になる。
双眼鏡は、まだいい。武器ではないが、人を探したいニ鳥にはありがたいアイテムだ。
ニ鳥は四つ子だ。産まれてすぐに施設に預けられそれぞれ里子になったりと離れ離れになっていたが、中学生になるのを機に国の事業で一軒家で四人で暮らすことになった。つまりあと三人同じように拉致されている可能性がある。一刻も早く見つけ出したい。
が、現実は非情である。武器になりそうなものはブーメランのみ。他にはとランドセルを漁ったが武器っぽいものは無かった。これでどう戦えというのだ。2つあるからってなんなのだ。
「なんでブーメランなんや? ウ、ウチ、なんか悪いことしたかな……?」
「アカンどないしよ! すっごい怖わなってきたわ。まあでも誰だって殺し合いたいわけないもんな。とりあえず、誰かと会いたいな。みんなも巻き込まれてるかもしれんし。おっしゃ探そ!」
真夏は努めて元気に言うとダブルブーメランスタイルで立ち上がった。
へこたれへん、関西女の心意気で駆け出す。
が、その足はすぐに止まった。街角から現れたのは、年下らしき少女。そしてその手には銃。そして、少女の視線と銃口はニ鳥へと向いていた。
「あ、あの、こ、こんちは……」
「……」
これは死んだ。
言葉が出ない。
なんとか絞り出した音声に少女が答えることはなく、変わらず銃口と視線が突き刺さる。
そして10秒経った。
そして20秒経った。
そして30秒経った。
そして40秒経った。
そして50秒経った。
(ど、どうしたんや……なんで固まっとんねん。うちも固まってるけど……)
ニ鳥と少女の間で見つめ合いが続く。
少女の考えが読めずにいるニ鳥だったが、恐る恐る顔を見て気づいた。
血の気のない、青い顔だった。
唇は紫になって、かすかに震えている。
それを見てようやく思い出した。「誰だって殺し合いたいわけない」という自分の言葉を。
ニ鳥はゆっくりと手に持ったブーメランを置いて話しかけた。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
バトル・ロワイアルの会場で驚きの声を上げる関西弁のツインテールの美少女。
宮美二鳥は自分が巻き込まれた蛮行に声を震わせていた。
もちろんニ鳥の今までの人生で、目の前で子供が爆殺されるような光景を見たことなどない。
図太いようで繊細な面もある彼女は何分か何も考えられずにいたが、タフという言葉はニ鳥のためにある。持ち前のへこたれない心で気を取り戻すとランドセルを調べた。
「と、とりあえずランドセル見よ。なんか使えるもんとか入っといてな。」
「えーっと、双眼鏡と、ブーメランと、ブーメラン?」
ニ鳥は、双眼鏡@バトル・ロワイアル(映画版)を手に入れた!
ニ鳥は、ブーメラン@バトル・ロワイアル(漫画版)を手に入れた!
ニ鳥は、ブーメラン@バトル・ロワイアル(原作版)を手に入れた!
「ちょっと待ってこんな武器ええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまうが、目の前の状況は変わらない。これで殺し合えということだろう。その事実に目の前が真っ暗になる。
双眼鏡は、まだいい。武器ではないが、人を探したいニ鳥にはありがたいアイテムだ。
ニ鳥は四つ子だ。産まれてすぐに施設に預けられそれぞれ里子になったりと離れ離れになっていたが、中学生になるのを機に国の事業で一軒家で四人で暮らすことになった。つまりあと三人同じように拉致されている可能性がある。一刻も早く見つけ出したい。
が、現実は非情である。武器になりそうなものはブーメランのみ。他にはとランドセルを漁ったが武器っぽいものは無かった。これでどう戦えというのだ。2つあるからってなんなのだ。
「なんでブーメランなんや? ウ、ウチ、なんか悪いことしたかな……?」
「アカンどないしよ! すっごい怖わなってきたわ。まあでも誰だって殺し合いたいわけないもんな。とりあえず、誰かと会いたいな。みんなも巻き込まれてるかもしれんし。おっしゃ探そ!」
真夏は努めて元気に言うとダブルブーメランスタイルで立ち上がった。
へこたれへん、関西女の心意気で駆け出す。
が、その足はすぐに止まった。街角から現れたのは、年下らしき少女。そしてその手には銃。そして、少女の視線と銃口はニ鳥へと向いていた。
「あ、あの、こ、こんちは……」
「……」
これは死んだ。
言葉が出ない。
なんとか絞り出した音声に少女が答えることはなく、変わらず銃口と視線が突き刺さる。
そして10秒経った。
そして20秒経った。
そして30秒経った。
そして40秒経った。
そして50秒経った。
(ど、どうしたんや……なんで固まっとんねん。うちも固まってるけど……)
ニ鳥と少女の間で見つめ合いが続く。
少女の考えが読めずにいるニ鳥だったが、恐る恐る顔を見て気づいた。
血の気のない、青い顔だった。
唇は紫になって、かすかに震えている。
それを見てようやく思い出した。「誰だって殺し合いたいわけない」という自分の言葉を。
ニ鳥はゆっくりと手に持ったブーメランを置いて話しかけた。
「うち、宮美二鳥っていうねん。あったりまえやけど、あんなヤツの言うことなんか聞く気ない。アンタもそうやろ?」
問いかける声に、少女の目がかすかに揺れる。
そして一瞬目を伏せて。
「……」
「……なんでや、なんで、そっちを選ぶねん!」
「……しかたがないから。」
少女は銃口をニ鳥の心臓へと向け直した。
「だってさ、しかたがないじゃん。わたしたち、殺し合うしかないんでしょ。」
「それは……! け、警察とかがなんとか……」
「無理だって。そうでしょ?」
何も言い返せない。
ニ鳥だってわかっている。こんなことができる相手に警察ができることなんてない。
いや、もっと簡単なことだ。
宮美二鳥の人生において、警察が辛いことをなんとかしてくれたことがあったか?
「でも、でも、これって犯罪やし。せやから、その……」
「……なら、わたしは悪くないよね。」
ニ鳥に少女を止める言葉は無い。
他ならぬニ鳥だってわかっている。
もし自分の姉妹が殺されそうになったら、ニ鳥はその殺そうとしている誰かを殺す。
自分が殺されそうになっても、誰かを殺す。
そして殺し合えと言われているなら、殺させるかもしれないから、誰かを殺す。
でも。
「でも……それって、めっちゃ辛いやん。」
「……」
ニ鳥の言葉に、少女の顔が今までになく歪んだ。
「辛いことでも、やらなくちゃいけないことがあるよ。」
「それは、そうや。でも、アンタそれに耐えられるんかっ! ウチは、ウチは無理や!」
「わたしは……あなたとは違う。」
銃口が一際大きく震える。荒い息の音が二鳥にも聞こえるほど、激しく呼吸しながら言う。
「わたしは、ガマンできるから。」
「できてへんやんけっ! めちゃくちゃ息荒いやん!」
「うるさいうるさいうるさいっ!!」
ズカズカと歩み寄る。
二鳥の額に背伸びして銃口を突きつけると、グリグリと押して跪かせようとする。
「ここでは、これが普通なんだよ。だからっ。」
「普通ってなんやねんボケェ! は〜……あほくさ! やめたらこんなこと、ほんまアホらしい……」
「だって、しかたないから……」
「それしか言えんのかこのサルゥ!」
だが、ニ鳥は跪かない。
額に銃口が突き刺さるのも上等、押し返すと銃ごと少女の手を少女の胸まで押し返し、さらに頭突きするかのようになおも押していく。
「ガマンできるからって泣きながら嫌なことするってそんなん悲しすぎるやろがっ! アンタ見てるとなぁ! 昔の嫌な自分思い出すねん! 死ねっ! いや死ぬなっ!」
「どっちだよ……」
「なに素に戻ってツッコんどんねん!」
困惑の表情になる少女に向かってなおもニ鳥は無茶苦茶なことを言っていく。
それは少女の目から流れ続けていた泪が止まるまで続いた。
ニ鳥は、自分が普通の家庭に育っていると思っていた。
たとえ血の繋がりがないと聞かされたところで、それでも自分は普通に両親から愛されていると思った。
たとえ里親に実子が産まれても、たとえ里親の親族が実子だけを可愛がっても、たとえ里親から邪険に扱われようとも。それが里子だから少しは仕方がないと、普通だと思っていた。
普通でいたかった。普通の幸せな女の子でいたかった。親から愛されている、普通の子供でいたかった。
少女は、日奈は自分が普通の家庭に育っていると思っていた。
たとえ母親から殴られても、それは自分が悪い子だからだと思っていた。
たとえ父親が連れてきたオジサンにエッチなことをさせられても、それが子供の役目だと思っていた。
たとえ自分が虐待されても、たとえ自分が強姦されても、たとえそれが異常だとわかっていても、普通だと信じたかった。
普通でいたかった。普通の幸せな女の子でいたかった。親から愛されている、普通の子供でいたかった。
でもだめだった。
ニ鳥が本当は愛されていると思いたかった里親は、既にニ鳥への愛情を失っていて。
日奈が本当は愛されていると思いたかった実親は、彼女を異常性愛者へと売った。
理解せざるを得ない。認めたくない現実を。とっくの昔から普通じゃなかったという、異常者の自覚を。
ニ鳥には、それを共に受け止められる姉妹がいた。
日奈には、それを共に受け止められる飼い主がいた。
2人の違いは、それだけ。
「なあ日奈。ウチら、これからどないしたらええんやろ。」
ポツリと木に寄りかかって足を地面に投げ出してニ鳥は言った。
「ニ鳥が言ったんでしょ。殺し合いなんかやめようって。」
その横で同じように木に寄りかかって足を地面に投げ出して日奈は言った。
「せやけど、日奈。ぶっちゃけウチやって殺し合いに乗る勇気あるなら乗っとるわ。殺し合わなアカンくて、勝ったらなんでも願いが叶うんやろ? まあ、やりたいって思う気持ちもわからんくもないわ。」
「でも、やらないんでしょ?」
「そらそうよ。うちの姉妹も巻き込まれてるかもしれへんし、あの子ら殺そう思うたら涙ダラダラ鼻水ベッショベッショや。日奈もそうやろ?」
「わたしは、ガーくんはオジサンだからここにはいなそうだし。」
「でも乗らんのやろ?」
「……ていうか、オジサンが婚約者ってとこにはツッコまないんだ。」
「露骨に話変えたな。まあ、うーん、それぞれ家庭の事情あるやろ。普通やないと思うけど、それをウチが言えるアレちゃうっていうか、あー! 普通ってなんやねん! 普通がそんな偉いんか! だったらみんな偏差値50になれ!」
「また無茶苦茶言ってるよ。」
日奈は立ち上がるとスカートを払った。うーんと伸びをする。そのまま手を高く伸ばしてみた。
普通になりたかった。自分がそこの住人でないとわかったあとも、手の届かないものであるとわかったあとも、憧れが強くなった。
今の日奈は普通とは程遠い。子供同士で殺し合えと言われるなんて、大人とセックスしろというよりも普通じゃない。
だから、まあ、少しはマシな普通であるために、そんな犯される場所に戻るために、普通に殺し合いに乗らないし、普通に誰かと話してみることにした。
それはここでは異常なのかもしれないが、もともと異常なのだ、異常に普通を目指したっていいだろう。
そういえばこんなふうに大人以外と話すの久々だな、日奈はそう思うと振り返ってニ鳥へと手を差し伸べた。
「ほら、行こう。」
【宮美二鳥@四つ子ぐらし】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、中川典子の支給品セット@オリジナル
[思考・状況]
基本方針:いきなりそんなもん立てれるかぁ!
1:うちら(他の四つ子)が巻き込まれてないか探すか〜。
※中川典子の支給品セットがランダム支給品の全てだと思っています。
【日奈@もったいない!!!虐め殺すんならオレにくれよ!!!!!!!!!】
[状態]:健康
[装備]:拳銃@現実?
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]
基本方針:方針? ないよ。
1:ニ鳥と一緒に普通っぽいことをする。
【中川典子の支給品セット@オリジナル】
バトル・ロワイアルの各媒体で中川典子の支給品になっている物の詰め合わせ。
中身はブーメラン2つに双眼鏡で、これ3つで1枠。
投下終了です。
タイトルは『関西ツインテ ニ鳥』になります。
クククク…関西弁ツインテール少女は、バト・ロワへのリアクション、支給品の確認、方針の決定と行動開始、そしてセリフの掛け合いが続いても誰が話してるのかわかりやすい方言が含まれている完全ロリだぁ
>>577
すみません誤字がありました。
「ウ……ウソやろ。こ……こんなことが。こ……こんなことが許されていいのか。」
バトル・ロワイアルの会場で驚きの声を上げる関西弁のツインテールの美少女。
神谷真夏は自分が巻き込まれた蛮行に声を震わせていた。
もちろん真夏の今までの人生で、目の前で子供が爆殺されるような光景を見たことなどない。
図太いようで繊細な面もある彼女は何分か何も考えられずにいたが、タフという言葉は真夏のためにある。持ち前のへこたれない心で気を取り戻すとランドセルを調べた。
「と、とりあえずランドセル見よ。なんか使えるもんとか入っといてな。」
「えーっと、CD と、パンツと、うわっ!?」
真夏は、菅野美穂のCDを手に入れた!
真夏は、ブリーフを手に入れた!
真夏は、ビグ・ザムを手に入れた!
「ちょっと待ってこんな武器ええん!?」
思わず関西のノリでツッコんでしまうが、目の前の状況は変わらない。これで殺し合えということだろう。
ランドセルからヌッとバカデカいロボットが出てきて、近くの木立の木々を粉砕しながら横たわる。多分乗り物だろうとコックピットを探したら案の定で、とりあえず真夏は中に入ってみることにした。
座席は3人乗りのようだ。最後の1人まで殺し合うのに協力が必要なものを渡すとか乃亜ってやつは結構鬼畜だな。
「これ1人でも動かせるん? そもそもホンモノなん? うわ説明書ついてる。マジぃ?」
「アカンどないしよ! 逆に怖わなってきたわ。まあでも誰だって殺し合いたいわけないもんな。とりあえず、誰かと会いたいな。みんなも巻き込まれてるかもしれんし。おっしゃ探そ!」
真夏は努めて元気に言うと操縦席についた。
へこたれへん、関西女の心意気で駆け出す。
そして1分経った。
そして2分経った。
そして3分経った。
そして4分経った。
そして5分経った。
「アカンこれ動かせへん! ぜんぶハズレや!」
そしてあっという間に諦めた。
当然だが軍用の兵器はマニュアルを読んだぐらいで素人が操縦できるようにはできていない。どこぞのテンパが例外なだけで、しかもビグ・ザムという癖が強い機体では、とっとと諦めたほうが健全とも言える。
なにせこのビグ・ザム、そもそも地上での運用を想定していない。その上半身に比べて下半身が貧弱すぎるフォルムを見ればわかる通り、足なんて飾りな宇宙空間での使用を前提とするモビルアーマーだ。それにそもそもが3人乗りである。一応1人でも動かせなくはないが女子小学生にはちょっと無理かな。
「しゃーない、切り替えていく。とりあえずコイツをランドセルにしまって、どっかで武器になりそうなもん探そ。そんで誰かおったら、ておった!?」
するとメインカメラに映る影。
横たわるビグ・ザムの正面、つまり空中に人が浮いていた。
黒い枝のようなものを背中につけた金髪の美少女だ。
ぽかんと口を開けて見下ろしている。
そして降りてくるとコンコンとモノアイを叩いた。不思議そうに小首をかしげている。そりゃこんなもんみたら驚くだろと思うと、少女が空中に浮いていたことは頭から抜けていた。ロボットがいるんだ、幼女が空を飛んで何が悪い。
投下します。
(ノア、オマエはとてつもなく憎い…けれど、復讐するつもりなんかオレには毛頭無い。)
水音はするが、今は殆ど誰もいない噴水広場。
元いた世界で主演を努めていた映画の衣装である二本ヅノのアクセサリーにてんとう虫柄の上着を着用し、主催から支給された黒いランドセルを背負う少年。
彼の名は相沢 詩紋(あいざわしもん)。
一見小学生にも見える外見をしているが、13歳の中学生である…のだがその実、元の世界で彼の姿を目にした大人達からもよく小学生と見間違われており、主演の怪獣映画でも小学生設定の役で通っている。
そんな彼は殺し合いの始まりを告げられた場所で見せしめを殺される場面を目撃しても尚、乃亜への復讐をしようとは思っていなかった。
それも、過去に自分の実父で、西鳳民国の大統領でもあった王帝 君を暗殺した鳳院坊 了賢から復讐の機会を与えられた際に養母の水鏡 秤やその他自分が出会ってきた人々等、多くの人間を悲しませたくないという想いから彼への復讐を断念した経験があるからだ。
(けれど、何もしない訳にはいかないな。他に巻き込まれた皆が怖がり、悲しみ、中にはノアに敵意を向けている子供(ヤツ)もいる筈だ。)
彼と同じ、この殺し合いに巻き込まれた参加者達がそれぞれ嫌な想いをしている事を想像しながら、詩紋は移動を始める。
─それは、1名でも多くの彼ら彼女らを救う為に。
■■■■■■■
『フクシュウ‥‥? 復讐はいいよ、とっても。
痛みも苦しみも忘れられる。すべてマヒして、何も感じなくなる。』
そんな詩紋の脳内に浮かび上がるのは、了賢への復讐を断念した、と彼に言った直後に自分達を巻き込んだ事件の《黒幕》であった猿代 草太が自分に言った言葉。
その言葉にも従うこと無く、そのまま了賢に自分の想いを伝え続けた。
草太は幼い頃から多くの大人達によって酷い目に合わされ続け、親友だった内藤 馬乃介が彼の父親である氷堂 伊作に脅迫されたことによって体を縛りつけられ、草太の方もそのまま彼の父である風見 豊に捨てられ、馬乃介と共に真冬の車内に閉じ込められていた中偶然出会った了賢によって児童養護施設に預けられた事で命を救われたが、そこに努めていた美和 マリーや法曹界に所属し、己の権力によって多くの人々を苦しめてきた一柳 万才、更には本物の王帝君への不満と立場故、常に命を狙われる恐怖心を抱いていた影武者によってまたもや了賢共々命の危険に晒され、彼らから了賢を助けた草太も万才側の追っ手達に追われ、馬乃介とも離れ離れになり、24時間365日録に眠ることも出来ない生活を送る中で身を守る為サーカス団に入れたものの、命の恩人である了賢を除いた誰もを信用出来ない大人になり、マリー、万才、王帝君の影武者に復讐する為ならば自分に危害を加えることもしなかった人々も巻き込み、利用する様になり、詩紋自身もマリー達への復讐に利用する目的で誘拐されたが、
御剣検事の仲間達によって救出された。
その後、御剣や水鏡達とともに草太が所属するサーカス団のテントを訪れ、草太の変わりきった姿を目撃したものの、御剣達の活躍や了賢の説得によって刑務所内で罪を償う道を選び、テントを去り、自ら逮捕されにいった。
了賢に説得されている時、草太は刑務所送りになる事を恐れたのか、自分に『あんなこと』を言ってきたのかと詩紋は考える。
【相沢詩紋@逆転検事2】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らないが、だからといって乃亜に復讐するつもりは無い。
1:他の参加者達を助けに行く。
2:知り合い(特に猿代草太が起こした事件に関わった者)が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
※彼が元々所持していた携帯電話が没収されているかどうかは、当選した場合後続の書き手様にお任せします。
投下終了させていただきます。
投下します
バトルロワイアルの会場として配置された街の中、その一角にあるビルの屋上で、風に揺られながら一人の少女が佇んでいた。
それはあまりに突然だった。
自分達の目の前で、幼い子供達二人の命が奪われた。しかも、片方は一度復活させられた上で、もう一度殺されたのだ。
「……」
そのことを何度も思い返しながら、私立聖祥小学校5年生にして、時空管理局嘱託魔導師の高町なのはは後悔していた。
キリエ・フローリアンとイリスが地球に来訪したことを切欠とする、地球と惑星エルトリアの命運を賭けた一連の事件が収束した後のこと。なのはは事件で重傷を負ったものの、数週間の病院生活の後に回復して、残された夏休みを過ごしていた矢先のことだ。
目が覚めたと思ったら見知らぬ場所に見知らぬ人達と一緒に集められていて、海馬乃亜を名乗る人物によって悪趣味な殺戮が行われた。
頭を整理するには、あまりにも短い時間でそれが実行された。恐らく高町なのはでなくとも対処できなかったはずだ。
それでも、だ。
「あの時、私が咄嗟に動いていれば――」
もしかしたら有り得たかもしれない可能性について考えてしまう。
それで何か変わったのだろうか。せめてあの兄弟が死ぬことはなかったのではないだろうか。
ぐるぐると思考を繰り返しながら、思いつめる。
それゆえに、背後から近づいてくる人影に気が付かなかった。
「――あのー、聞いてる?ねえ……ねえってば!」
「誰っ!?」
不意に肩にポン、と手を置かれ、なのははびっくりして振り返る。
「わわっ!」
そこには、エンブレムを象った青いバンダナを巻いた、なのはと同じか一つ年上程度の少年が尻もちをついていた。
「や、やあ……」
少年は、苦笑いを浮かべながら手を上げてなのはに挨拶をする。
「オレ、光熱斗!君は?」
なのはと初めて接触した参加者は、別なる地球で世界を幾度も救っている小学生だった。
§
「よかったぁ、熱斗くんは殺し合いに乗ってないんだね」
「オレも結構怖かったよ。なのはちゃん、こっちが話しかけても全然聞いてなかったからさ」
なのはと熱斗は互いのスタンスを確認して、胸を撫でおろす。
二人は自己紹介を済ませた後に、軽い情報交換を行っていた。
しかし、なのはの口から語られた言葉は熱斗にとっては驚きの連続だった。
「ジクウカンリキョクなんて聞いたことがないし……魔法って……」
時空管理局に、魔法。そして魔法使いの存在。
高度なネットワーク技術が発達し、擬似人格型プログラム「ネットナビ」のサポートによって生活が成り立っている世界――現実空間の人間と電脳空間のネットナビが共存する世界の出身である熱斗にとってはあまりにも馴染みの薄い言葉であった。
一応、元WWWの一員であったマハ・ジャラマのネットナビにマジックマンがいたが、あれも結局はプログラムの産物だ。
父の光祐一朗も所属する科学省の日々の努力によって、不可能だった様々なことが可能になってきている。こっちは魔法なんて信じられているような世界じゃない、と言いたいところだが。
「まあ……こんな状況、魔法くらい使わないとできないよなあ」
と熱斗は呟いた。
「ネットナビ……私のレイジングハートやはやてちゃんのリインフォースⅡみたいなものなのかな……」
対するなのはも、熱斗の語ったことについては興味深いところが多々あった。
これまで時空管理局の嘱託魔導師を続けてきたが、ネットナビなる人格を有するプログラムが民間に行き渡っている世界など聞いたことがない。
クロスフュージョンのような電脳世界のモノを実体化する技術については、魔法に通ずる部分もあったのでそれなりには理解できたが……。
おそらく熱斗の世界は時空管理局の管理外なのだろうが、なのはの知るインテリジェントデバイスのような知能を持つプログラムが流布しているだけでも相当高度な文明を持っているようだ。
熱斗はその中でもネット警察に所属していて、ネットセイバーという肩書きを持っているらしい。
だが、それ以上に気になることがあった。
「熱斗くんって過去の人に会ったことがあるの?」
「ああ、あるよ。バレルって人なんだけど、その人が20年前の人でさ。詳しいことは話すと長くなるんだけど……」
「あっ、本当にちょっと気になっただけだから、また時間があるときでいいよ!私、魔導師になってからしばらく経つけど、時間に干渉する魔法なんて見たことないから……」
「ん、魔法……?」
そんな時、熱斗はふと、なのはの言葉に出てきた「魔法」という言葉に反応する。
「っていうか、なのはちゃんも魔法使えるの!?」
「うん、魔導師だからね。例えばこんな感じに空を飛べたりできるんだよ」
そう言って、なのはは飛行魔法を行使し、熱斗の周囲を軽く一回りして見せる。
「うおーっ!!すっげー!!本当に魔法なんだ!!」
「ふふっ……」
熱斗は途端に興奮し、瞳を輝かせながらなのはを見上げる。それは年頃の男の子らしい、純粋な憧れを込めた視線だった。
そんな熱斗を見て、微笑ましさを感じるなのはだったが、同時に彼女の表情には陰りが見られた。
「な、なのはちゃん!?急にどうしたんだ?」
なのはがどこか暗くなったことを熱斗も察して、地に降りた彼女に心配そうに駆け寄る。
「心配させてごめんね。あの時、私に何かできたかもって思うと……」
「あの時……ああ、ここに来る前に海馬乃亜ってやつがやってたことか!」
熱斗の顔には義憤の念が灯っていた。
そこには、世界の平和を守るネットセイバーなのに悪事を目の前にして動けなかった後悔も見えた。
「私、魔法が使えるのに……何もできなかった」
「……動けなかったのはオレも同じだよ。みんな混乱してたと思うし、それに……オレ達にも同じ首輪がついてる。変な行動を取ればあいつに殺されるかもしれなかった」
「でも、子供が二人死んじゃった……!私達より小さい子が……」
「……そうだな」
しばしの間、なのはと熱斗の間に沈黙が流れる。
少年と少女の心に渦巻く、目の前の小さな命を救えなかった無念、巨悪に立ち向かえなかった自責。
しかし、だ。
光熱斗はネットセイバーとして、高町なのはは魔導師として、これまで数々の悲しみに触れ、多くの苦難を打ち破ってきた。
「けど……まだ終わったわけじゃないさ」
「他にも生き残っている人達がいる……よね」
そんな二人であるならば。
互いに気の良い言葉をかけなくとも、立ち直れる。
「殺し合いをするなんて間違ってる」
「そんなひどいこと、私達が止める」
「それでもって、巻き込まれた人達を守って」
「黒幕を捕まえる!」
何もかもが噛みあった感覚を覚えて、熱斗となのはの顔に再び笑顔がこぼれる。
そして、互いに固い握手を交わす。
「……がんばろうね、熱斗くん!」
「おう!」
ここに、ネットセイバーと魔導師の同盟が結成された。
§
「――とは言ったものの、これを何とかしないといけないよな」
「あまり触らない方がいいよ。いつ爆発するか分からないから」
その後、熱斗となのはは互いの首輪について話していた。
これがある限り、自分達は海馬乃亜に命を握られているといえる。
いずれ海馬乃亜に逆らうとしても、首輪を外すことができなければ反逆はそこで終わってしまう。
「どうにか首輪の構造を調べられないかな」
「ふっふっふっ……!」
なのはの言葉を受けて、突如として熱斗が不敵に笑った。
「熱斗くん……?」
「それなら、オレのナビの出番だぜ!」
「ナビって……」
「そう!オレにもネットナビがいるんだ!あいつに任せれば首輪のことなんてすぐ分かるよ!」
そう言って、熱斗は懐からPET――熱斗の世界で普及している情報端末――を取り出し、その中にいるであろうナビの名前を高らかに宣言する。
これまで苦楽を共にしてきた相棒にして、ずっと支え合ってきた大親友が入っているであろうPETを、自身の首輪に向ける。
「プラグイン!ロックマン.EXE、トランスミッション!!」
熱斗がそう叫ぶと、PETから赤外線が発射され、首輪の電脳世界の中にネットナビが送り込まれた。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
「……熱斗くん?」
送り込まれる……はずだった。熱斗がPETを構えるポーズを取って固まったまま、しばし時間が流れる。
「――あっれえええええええ!?!?!?」
直後、熱斗はこの世の終わりかという顔をしながら驚愕していた。
「ない、ない、ない、ないっ!!ロックマンがいない!?オレのPETすらないっ!?」
「ちょ、ちょっと熱斗くん!?」
熱斗は慌てふためきながら、自身のPETを求めてビルの屋上一帯を隈なく探し回る。
途中でなのはの足元に頭を入れてしまい、なのはがスカートを抑えることになっても意に介することもなく、まるで地面を嗅ぎまわる犬のようだった。
「ロックマン……まさか、ロックマーンッ!!」
考えたくない可能性に行き当たり、熱斗は親友の名前を叫ぶ。
「……きっと、乃亜に全部没収されたんだと思う」
なのはにそれを指摘された熱斗は力なく膝をつき、ガックリと項垂れた。
「そんな……ロックマンがいないと、オレは……」
先ほどの頼もしさはどこへやら、すっかり意気消沈していた。
「熱斗くん……」
暗くなっている熱斗の肩に、なのははそっと手を置いてやる。
おそらく、熱斗の言ったことは本当なのだろう。
ロックマンというネットナビを首輪に送り込めば、首輪を解除できなくとも断片的な情報が分かることはなんとなく感じられた。
それならば、これからは協力してくれる参加者を探しつつ、ロックマンを探すのがいいだろう。
「私がしっかりしないと……」
それまでの間、熱斗は無力な人間にすぎない。魔導師であるなのはが守る必要があるだろう。
「レイジングハート!セーット、アーップ!!」
そしてなのはは、自分がいつも傍に置いている、魔導師として活動する上でこの上なく頼れる相棒であるインテリジェントデバイスの名を呼び、掲げる。
なのはは変身してバリアジャケットを身に纏い、レイジングハートと共に魔導師としての戦闘形態になる。
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」
「……なのはちゃん?」
戦闘形態になる……はずだった。しかし、なのはがレイジングハートを掲げるポーズを取って固まったまま、何も起きなかった。
「――えええええええっ!?!?!?」
今度はなのはが驚愕の声を上げた。
「れ、レイジングハート!?どこっ、どこっ、どこにいるの!?」
そして、熱斗と同じようにビルの屋上を慌てふためきながら探し回る。
「オレのロックマンと同じで乃亜に没収されたんじゃ……」
大方は熱斗の台詞の通りだ。
レイジングハートもまた武装として海馬乃亜に没収され、なのはは生身のまま殺し合いの場に放逐されていた。
「そ、そんなぁ……」
最後には、熱斗のようになのはも膝をつき、ガックリと項垂れていた。
魔導師として活動して随分長くなり、レイジングハートと共に過ごしていることがなのはにとっては当たり前になってしまっていたため、没収されているという事実に最後まで気づけなかったのだ。
「ロックマン……」
「レイジングハート……」
熱斗となのはは空を見上げ、それぞれの相棒の名を呟いた。
§
「……お互い、最悪のスタートになっちゃったな」
「……そうだね」
熱斗となのはは苦笑し合っていた。
当然二人とも諦めたわけではなく、とにかく『殺し合いを止めながら協力者も探しつつ、ロックマンとレイジングハートを探す』という方向で一致した。
今は深夜の夜天の下で、移動のためになのはの飛行魔法で空を飛んでいた。
「……あのさ、なのはちゃん」
「なに?」
そこに、熱斗が恥ずかしそうにしながらなのはに声をかける。
「その、なんていうか、さ……これ、する方とされる方が逆なんじゃないかなって……」
「へっ?これが一番落とす心配ないんだけど……」
熱斗が恥ずかしそうにするのも当然で、なんと熱斗はなのはに所謂お姫様抱っこをされながら空を飛んでいた。
なのははレイジングハート抜きでもそれなりの魔法や戦闘がこなせるのに対して熱斗は無力になってしまうため仕方ないのだが、年頃の男の子にとってはなかなかに恥ずかしい。
なのはからすれば、いつも八神家の練習場でアリサやすずかを運ぶ際にはこのやり方で運ぶことが板についていたため、これが一番やりやすいのだ。
「熱斗くんは私と違って魔法が使えないんだから、仕方ないでしょ」
「そうかもしれないけど……うぅ、クロスフュージョンさえできれば……」
名残惜しそうに熱斗は言う。
「ロックマ〜ン……どこにいるんだ〜……」
【光熱斗@ロックマンエグゼ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めて、海馬乃亜を捕まえる
1:協力者を探す。
2:ロックマンを探す。
3:もし知人が参加している場合は、合流したい。
[備考]
・少なくともアニメ3期(ロックマンエグゼStream)終了後からの参戦です。
・この殺し合いにおいてネットナビとのクロスフュージョンが可能かどうかは、後続の書き手にお任せします。
※アニメ版ロックマンエグゼについてですが、2023年5月31日まで某動画サイトにて、劇場版を全編無料公開されています。
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは Detonation】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めて、海馬乃亜を捕まえる
1:協力者を探す。
2:レイジングハートを探す。
3:もし知人が参加している場合は、合流したい。
[備考]
・劇場版後編(魔法少女リリカルなのは Detonation)終了後、しばらくしてからの参戦です。
・原作終盤でちぎれた右腕は修復されており、戦闘も可能です。
◆
「……ん、うん……?」
熱斗となのはがいる場所とはまた別な場所で、光熱斗のネットナビ――ロックマンは目を覚ました。
「ここは……」
意識を覚醒させたロックマンは立ち上がり、周囲を見回す。しかし、その光景はどこか違和感があった。
「ここ、電脳世界じゃない!現実世界だ!」
そう、これはロックマンがいつもPETの中やインターネットシティで見ている光景とは随分と違う光景。草も土も石も鉄も、データによるものではない、本物の物質。
となると、今のロックマンの身体はデータではなく、実体化していることになる。
「僕は一体どうなって……?」
そう言って、ロックマンは自らの手のひらを見て、何度か握っては開いてを繰り返す。
すると、ロックマンはある可能性に行き着き、おそるおそる自分の首に手をやる。
「首輪……!」
そこには他の参加者と同じ首輪が装着されていた。
ロックマンもまた、あの場で海馬乃亜による陰惨な殺戮を目にしていたのだ。
その時、ロックマンの脳裏に海馬乃亜の姿が浮かび、声が響いてくる。
曰く、ネットナビは人間の道具でしかないとはいえ、そこまで完成された人間の姿と人格を持っておきながら支給品扱いするのは惜しいこと。
ロックマンの世界にちょうどいいコピーロイドという技術があったために拝借したこと。
コピーロイドにプラグインすることによって実体化させたこと。
コピーロイドに嵌められた首輪だけでなく、ロックマンのデータそのものにも『首輪』を嵌めたから抵抗は無駄だということなどが語られた。
「いつの間に……」
どうやら、意識を失っている間にロックマンはコピーロイドにプラグインされ、その状態で殺し合いの場に送られているようだった。
本来はプログラムでしかないはずのネットナビを実体化するための技術、コピーロイド。コピーロイドに移されたナビが十全に戦闘を行えることはゾアノロイドが証明していたため、戦闘面は問題なさそうだが……。
「そうだ、熱斗君……!」
自分がここにいるということは、光熱斗もここに来ているはずだ。
主であり、親友である熱斗を救うため、ネットナビでありながら殺し合いの参加者となったロックマンは駆け出した。
【ロックマン@ロックマンエグゼ(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:光熱斗を探す
1:熱斗君……!
[備考]
・少なくともアニメ3期(ロックマンエグゼStream)終了後からの参戦です。
・コピーロイド(アニメ4期 ロックマンエグゼBeast3話から登場)にプラグインされての参加です。
・コピーロイドだけでなく、中身のロックマン本体にも何らかの『首輪』となる要素が海馬乃亜によって仕込まれています。
投下終了します
投下します
下町シンは、不幸に見舞われた少年だ。
彼は父を早くに亡くし、病弱な母を新聞配達で養う生活を送っていた。
だがその生活を苦に思っていたわけではない。
本当の不幸は、その後だ。
ある日突然母が発狂し、車道に飛び出して交通事故で死んだ。
その出来事は、小さな心を絶望で塗りつぶすには充分だった。
シンは、自らも死を選ぼうとしていた。
彼がバトルロワイアルに参加させられたのは、そんなタイミングだった。
◆ ◆ ◆
「どんな願いでも……叶う……」
虚な瞳で、シンは呟く。
「優勝すれば、どんな願いでも叶える」。
乃亜のその言葉に、シンの心は揺らいでいた。
(実際に、あの子は一度殺した子を生き返らせた……。
あの子は、死んだ人間も生き返らせられるんだ。
なら、母ちゃんも……)
本来のシンは、優しさと正義感を持った人間である。
彼が万全な状態なら、殺し合いに乗ろうなどとは考えなかっただろう。
だがここにいる彼は、極限まで追い詰められた状態だ。
悪魔のささやきに耳を貸してしまっても、無理はない。
「どうせ生きてたって仕方ないんだ……。
やってやる……勝ち残ってやる……」
拳を握りしめ、シンは決意を口にする。
「へえ、君も勝ち残るつもりなんだ」
その時、シン以外の声がその場に響いた。
シンが声の方向に視線を送ると、そこには派手な色の服と帽子を纏った少年の姿があった。
見た目の年齢はシンと同じくらいか、少し下だろうか。
「じゃあ、まずはオイラと勝負しようぜ」
少年の言葉に、シンは焦る。
まだ自分は、持ち物のチェックすらしていない。
なんの武器もない、素手の状態だ。
対する少年は、勝負を挑んでくるくらいだから何かの武器を持っているはず。
正面からやりあっては、分が悪い。
(ここはいったん、逃げた方が……)
決断を下すシン。
だが彼がその決断を実行に移すより早く、金属の塊が彼の顔面を砕いていた。
「え……?」
自分に何が起こったのかもわからないまま、派手に血をまき散らしてシンは絶命した。
◆ ◆ ◆
「なーんだ、ただのザコか。だったらもうちょっといたぶってから殺せばよかったよ」
物言わぬ死体と化したシンを見下ろしながら、少年は呟く。
彼の名は、鈴駒。
見た目では人間と区別がつかないが、妖怪である。
しかも幼い容姿に見合わず、高い戦闘力の持ち主でもある。
「強い敵と戦いたいわけじゃないけどさー、絶対勝てるザコ相手でもつまんないよねー。
適度な手応えっていうかさー」
そう愚痴る鈴駒の姿は、とうてい人を殺した直後には見えない。
当然だ。妖怪に人間の倫理観は備わっていない。
「せっかくの楽しいイベントの前に、無理矢理連れてきたんだからさ。
その分は楽しませてもらわないとね」
鈴駒は「六遊怪」というチームの一員として、妖怪たちの格闘大会である「暗黒武術会」に参加するはずだった。
そこで見せしめである人間のチームと1回戦で当たるという幸運に恵まれ、楽しみにしていた。
しかしその直前に、彼はここに連れてこられてしまった。
「じゃあ、そろそろ行くか。
あ、その前にあいつの荷物を回収しておかないとね。
使い慣れてるヨーヨーが支給されてたのは良いんだけど、なんでこんなに重いのさ、これ。
妖力流せば、なんとか使えるけどさー。
やっぱりいつものやつの方が……」
文句を垂れ流しながら、鈴駒はシンのランドセルをあさる。
結果として、彼が望むようなものは見つからなかった。
「まあ、そう都合よくはいかないか……。
いざというときは、素手で戦えばいいんだし……。
切り替えて、次に行こう!」
飄々とした態度を崩さずに、鈴駒はその場を去った。
【下町シン@妖怪ウォッチ FOREVER FRIENDS 死亡】
【鈴駒@幽遊白書】
[状態]健康
[装備]キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER ×2
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜5
[思考・状況]基本方針:優勝を目指す
1:いつものヨーヨーがほしい
[備考]
※参戦時期は暗黒武術会1回戦の開始直前
【キルアのヨーヨー@HUNTER×HUNTER】
爆弾魔との戦いに備え、両手を負傷していたキルアが調達した武器。
特殊な合金でできており、1個50㎏という異常な重量を誇る。
投下終了です
投下します
きみへの想い 忘れないように
胸深く 刻み込むから
☆
ふらふら、ふらふら。
その足取りは重く、そしてあてもしれず。
紫と白を基調とした貴族のような衣装に身を包み、少女のような顔立ちと獣の耳が特徴的な少年・シチーリヤは生気を失った目で彷徨っていた。
「......」
殺し合い。
その異様なはずの光景も単語もいまの彼にはなにも響かない。
兼ねてより戦乱うずまく時代と環境に生まれ育ったから、というだけではない。
(ライコウ、様)
彼は、この殺し合いに巻き込まれる直前、慕い尽くしてきた漢を失った。
ライコウ。大国・ヤマトを支えていた八人の将軍・八柱将が一人。
シチーリヤはライコウに仕え、彼の望む通りに動き、任を果たし、しかし敗北した。
そしてライコウはヤマトの未来のため、死力を尽くし、散っていった。
ガクリ、と遂に膝が崩れ落ち、そのまま立ち上がりもせず天を仰ぐ。
「...ライコウ、様」
名前を口にする度に、胸が痛み目尻に熱いものが溢れてくる。
シチーリヤにとってライコウという存在は果てしなく大きなものだった。
だからその喪失を嘆き、苦しみ、悲しむのは決して間違ってはいない―――本来の主従ならば。
「私には、悲しむ権利なんてありはしない...」
シチーリヤは、もとは別の男の手の者だった。
彼の命に従いライコウのもとに潜入し情報を提供していた、所謂スパイだ。
そのはずだったのだが、ライコウという漢の大義と信念に触れていく中で、シチーリヤの偽りの忠誠はいつしか本物に変化していった。
しかしそれでもとの主と縁を切れたかといえばそうではない。
彼の心情はどうであれ、形だけ見ればシチーリヤはライコウの真の忠臣ではない。
忠義を謳いながら立場を平然と変える蝙蝠だ。
そのような者に、主を想い悲しむ権利などあってはならない。
けれど、この痛みを糧に前に進むことすらできないいまの彼は、ただの生きる屍。
ライコウが遺してくれた名前を一筋の拠り所としているだけのガラクタ。
だから彼の目はもうなにも色彩を写さないし、心にはなにも響かない。
たとえこの数秒後に死ぬとしても、所詮自分はそんなものだろうと諦め受け入れるだろう。
(そうだ、苦しいだけなら...)
与えられた支給品から刀を取り出し、首元に宛がう。
彼にはもう生きる意味などありはしない。
元の主の命に従うという惰性で続けてきた余生も、こうも異常な事態においては成否どころかもはや続けることすらできない。
だったら楽になってしまおう。
「ライコウ様...私はもう疲れました」
もしも常世(コトゥアハムル)であの御方と出会えたら、と想いが過りかけ、しかしすぐに振り払う。
思いあがるな、自分のような裏切り者があの御方と同じ場所へいけるものか。
そうだ。
自分のような者には、こんな末路が相応しい。
シチーリヤはそのまま息を吐くかのように刀を押し込み———
———本当にそれでいいのか?
ドクン、と鼓動が高鳴り脳内に声が響く。
「...!?」
シチーリヤの警戒心が引き上げられ、声の主を探そうとキョロキョロと周囲を見渡す。
———貴様がここで無意味に果てるのを、主は望んでいるのか?
声の主は見当たらない。
ならば一層警戒心を高めなければいけないこの状況に、しかしシチーリヤの意識は声に吸い寄せられるように集中する。
———もう一度考えろ。あの主催の小僧はなんと言っていた?
『最後の一人になるまで、殺し合って貰いたい。いわゆるバトルロワイアルさ。勿論ただでとは言わない、優勝者にはどんな願いも叶えてみせる』
言った。確かにあの乃亜という少年はどんな願いをも叶えるといい、実際に死者を蘇らせてみせた。
「私が、勝ち残ればライコウ様を...?」
———そうだ。お前が勝ち残れば全てが思うがままだ。主が惜しくはないのか?貴様の忠誠心はその程度なのか!?
ポツリと呟いた言葉に、声は呼応するかのように囃し立てる。
「ちが、う。わたしは、私のあの方と共に歩みたかったという想いに、偽りなど...!」
そう。ライコウの進む道を歩みたいという気持ちは本物だ。
だから、仮面を持ち出したあの時、ライコウが止めねば間違いなく自分は仮面を使い、そしてその身を彼の代わりに崩し道を切り開いていただろう。
———ならばおれを使え!冥府の神・アヌビス神を暗示するスタンドであるこのおれを!!
「———ッ!!」
シチーリヤはここにきてようやく理解した。
先ほどから響いているこの声は、目の前の刀剣を通じて伝えられていることに。
「わたしは...」
この刀剣を手にし、優勝する。それは即ち、他に巻き込まれたかもしれない無辜の民をも手にかけることだ。
ライコウはその屍の上に蘇生させられて喜んでくれるだろうか?
否。喜ぶはずもない。
彼は確かに手段を択ばぬ非情さを持ち合わせている。
だが、それは己の勝利の為というよりは民たちの未来のためのもの。
民たちに試練を与えることはあれど、決して犠牲を良しとはせず、そして己が散っても国の未来に日が差すならばと満足して散った。
そんな彼を蘇らせること自体が彼への侮辱となるだろう。
(私は...!)
嗚呼、それでも。
それでも諦めることができない。
ライコウは決してあそこで散っていい漢ではなかった。
彼の進む道の果てに寄り添いたい。その想いが止められない。
数秒か、あるいは数分か。
静寂の空気の中、やがて彼は目を瞑り立ち上がった。
「ライコウ様...どうか、不甲斐なく弱い私をお許しください」
開けられた両目は、先ほどまでの生気籠らぬ屍の目ではなくなっていた。
かつてライコウの右腕として働いていた時の輝きには非ず。
黒く、歪んだ光の揺らめく亡者の如き目であった。
「私は取り戻す...あの御方の歩むべき道を...!」
☆
いや〜ッ、危なかったぜぇ。
まさか開始早々自殺しようとする馬鹿に当たるとは、ビックリさせんなよなあ。
まああいつが漏らしてた言葉を適当に摘まみ、それっぽく受け答えしたら正解だったみたいだから問題はなかったがよ。
しかし妙な制限を付けられてやがる。
いまのおれに出来るのは持っている奴に語り掛けることを除けば、斬るものを選ぶことと、攻撃を覚え強くなっていくこと。この二つだ。
いつもみたいに乗っとって使う場合は宿主との合意があってからとは、面倒この上ない。
今まで見たいに洗脳憑依が出来る訳じゃねえから、あとはコイツに俺の命運は握られてるってワケだ。
だがこの程度ではおれの忠誠は折れんぞ。
DIO様、どうか見ていてください!
このアヌビス神、必ずや貴方のもとへと再び馳せ参じてみせます!!
【シチーリヤ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)
[装備]アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝しライコウを生き返らせる。
[備考]
※参戦時期はライコウ死亡後
【アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース(シチーリヤの支給品)】
[状態]万全(強さはチャカが手にしたときの状態)
[思考・状況]
基本方針:シチーリヤに優勝してもらい、自分もDIOのもとへと帰る。
[備考]
※参戦時期は不明
※能力が制限されており、原作のような肉体を支配する場合は使用者の同意が必要。
支配された場合も、その使用者の精神が拒否すれば解除されてしまう。
『強さの学習』『斬るものの選別』は問題なく使用可能。
投下終了です
ジョジョのアヌビス神って、ショタキャラだったっけ?
感想ありがとうございます!
投下します。
「ドラえも〜〜〜〜〜ん!!!!!」
黒き黒き夜空に向かって大声で叫ぶ少年。
少年の名は野比のび太。
勉強・スポーツと共に苦手。
何をしても冴えない少年は親友の二十二世紀の猫型ロボットの名前を空虚に叫ぶことしかできない。
「これ以上、大声を出し続けるのは賢い選択ではありません」
「助けてよ〜ド・ド・ドラえも……むぐ」
突如、口を塞がれて驚くのび太。
まさか、殺し合いにのった人かとのび太は心臓がバクバク鳴る。
が、すぐに口から手が離れたので、ひとまずは安全だと判断し、見知らぬ声の人物にドキドキしながら振り向く。
そこには、三角帽子を被った少女が立っていた。
「き、君は……?」
「ロキシー・ミグルディアです」
ロキシー・ミグルディア。
ミグルド族の魔術師にしてA級冒険者。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「へぇ〜、ロキシーさんは魔法使いなんだ」
(それにしても、37歳だなんて……僕のママと同じくらいや)
「はい。正確には魔術師ですが」
(科学?……この子供は私をからかっているのでしょうか?)
互いに自己紹介を終えた二人。
のび太はロキシーが37歳だということにこそ驚くが、魔法使いだということにはすんなりと信じる。
一方ロキシーは違った。
未来だとか科学だとか話すのび太にロキシーは自分をからかっているのいかと疑う。
だが、のび太はそんなロキシーも視線に気づかず、話を続ける。
「そういえば、僕も魔法が使えたことがあるんだよ」
「魔法を?……貴方が?」
のび太の自己申告を聴き、ロキシーは怪訝な顔をする。
無理もない。ロキシーの見立てでは、のび太に魔法の才がない。
もちろん、ロキシーの見立て通り。魔法ではなく科学が文明の利器とかした世界の住人であるのび太は魔法なんか使えない。
普通なら。
かつて様々な大冒険の一つに魔法世界での出来事がある。
そこで、のび太はある魔法を使うことが出来た。
「ほ、本当だって!み、そこで、見てて!チンカラホイ」
ロキシーの怪訝な表情に気づいたのび太はあたふたしながらも、信じてもらうために行動した。
近くの小石を浮かせる。それなら、ロキシーも信じてくれると。
「小石を浮け!チンカラホイ!」
し〜〜〜〜〜ん………
静寂な空気。
気まずすぎるほどの。
「……」
「も、もう一度。チンカラホイ」
自分で作り上げたこの空気を何とかしようと、のび太はもう一度、呪文を唱える。
しかし、現実は無常である。何も起きない。
それでも、のび太はあきらめず、呪文を唱え続ける。
「……」
始めはド田舎の地方でも辺境でも何でもいいから、家庭教師としての依頼を達成したかった。
その実績があれば、王都での仕事も順風満帆になるのではと。
だが、そこで出会った、教え子であるルディの卓越した才能に、自分の無力さを感じさせられ、旅に出ることを決意した。
そんな矢先にこの殺し合い。
始めに出会った少年はルディと同じぐらいの年齢のようだが、はっきり言って雲泥の差と呼んでも差し支えないだろう。
それにしても、なぜ乃亜は子供ばかり集めている中、自分を選んだのか。
まさか、自分を子ども扱いしているのでは!
ロキシーの心中に怒りの炎が蓄積される。
ちなみにミグルド族は年をとっても子供みたいに見られる。
いわゆるロリとして扱われたのだろう。
「チンカラホイ!チンカラホイ!チンカラホイ!」
「……」
(はぁ……私もルディ……グレイラット家の皆さんの優しさに感化されちゃいましたかね)
必死にチンカラホイと呪文の口上?を唱えるのび太。
その姿をため息をつきながらも付き合ってる自分の甘さに呆れてしまう。
いつもの私なら、この少年の背伸びした嘘を嘘とさっさと切り捨てていた。
なぜなら即断即決が私の強み。
特にこの乃亜なる少年の手による殺し合いで、判断が遅いことは愚鈍でしかないからだ。
……ただ、この少年の眼。
嘘をついているようにも思えない。
それに、一生懸命取り組む姿は好感できる。
できないのならできるまで努力するべきが信条の自分にとって、その姿勢は好ましい。
しかし、いつまでも待つわけにはいかない。
可哀想だが、潮時。
「チンカラホイ!……チンカラホイ!」
「……ほら、そろそろ一旦落ち着ける場所へ移動しますよ」
「う〜〜〜〜……」
ロキシーに場所移動を促されるのび太。
しかし、のび太は納得できない様子。
ロキシーに懇願する。
「後一回だけ!後、一回だけ試させて!」
「……わかりました。それでは、後一回だけ試してみてください」
のび太の必死さにロキシーは了承した。
時間の無駄と思う一方、別の世界の魔法に興味が無いわけではないからだ。
「むむむむ〜〜〜〜……」
うすうす気づいていた。
僕が魔法を使うことが出来たのは、あくまで魔法世界だったから。
もしもボックスの力を使用していない今、自分が魔法を使えるわけがない。
だけど、このまま嘘つきの子供だとロキシーさんに思われたくない。
そして、何よりも。
あの魔法世界での冒険をなかったことにしたくないから。
だから、全力を込めて唱える。
「チンカラホイ!!!!!」
それは起こった。
のび太の想いが通じたのか。それとも乃亜による戯れか。
ふわりと浮いたのだ。
―――ロキシーのスカートが
「やったー!できた!」
「な……な……な……」
ロキシーは身体をわなわなと震わせる。
顔は真っ赤。湯が沸けそうなほど。
しかし、のび太はそんな様子に気づかず。得意げ。
「ね?だから言ったでしょ。僕も魔法が使えるって。ほらほら、チンカラホイ!」
繰り返す。チンカラホイを。
そして、その度に浮く。
ロキシーのスカートが。
「なんて破廉恥な魔法なんですか〜〜〜〜!!!!!」
【野比のび太@ドラえもん 】
[状態]:健康 喜び(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:ロキシーと行動を共にする
2::やったー!魔法が使えた!
[備考]
いくつかの劇場版を経験しています。
チンカラホイと唱えると、スカート程度の重さを浮かせることができます。
「やったぜ!!」BYドラえもん
【ロキシー・ミグルディア @無職転生 】
[状態]:健康 恥じらい(大)
[装備]:ロキシーの杖@無職転生
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:のび太を保護しつつ首輪をどうにかする
2:なんなんですか!?その魔法は!!!
[備考]
ルディの家庭教師を辞めて旅に出てからの参戦です。(漫画版3話)
外伝ロキシーだって本気ですの出来事も経験しています。
のび太の話(科学)には半信半疑といった様子です。
投下終了します。
質問します。
ランドセルは参加者の収納は不可と有りますが、参加者の死体は収納できますか?
投下ありがとうございます。
感想の投下はまた後ほど致します。
>>619
ご質問の件ですが、死体の収納の有無については不可能とさせて頂きます。
手軽に死体を処理できてしまうのは、展開を狭めてしまうと思ったので。
これは、wikiにも追加しておきます。
>>620
御回答ありがとうございます
投下します
「はあ…はあ…は…」
橙は荒い息を吐きながら夜道を走る。何故こんな事になったのかと考える暇も無く、只々殺されないために走り続ける。
「何でッ?同じだと……違うの!?」
追っ手から逃れる為に、出来うる限り狭いところを、視界の悪いところを走って走って走り続ける。
いきなり殺し合えと言われ、訳もわからないまま飛ばされ、目的も無く歩き出した直後に、主人の同類の幼女を見かけ、嬉々として話し掛けた。そこ迄は良かった。
話し掛けた途端に、幼女が熊でも一撃で殺せそうな勢いで爪を振るい、自分を殺そうとしたので、恐怖にかられて逃げ出した。
戦う術は一応は持っている。だが、いきなり殺されかかった事よりも、主人の同類に害意を向けられた事がショックで、戦意を喪失した橙には、抗戦という選択肢は無かった。
そして全力で走り続ける事五分。振り切ったと思って気を抜いた橙の視界の隅に、金色の輝きが映った────気がした。
◆
テクテクと、夜道を歩く幼女が一人。ランドセルを背負った姿は、彼女がこの事態に巻き込まれた者達の一人である事を物語っている。
人が殺され、殺し合いを強要されたにも関わらず、平然とした風情の幼女は、無表情のまま、仕切りに口を動かし、手にした『何か』を口に運びながら、やや不機嫌そうな顔で、幼女は夜道を歩いていく。
幼女の名は『タマ』。日本三大妖怪の一角である金毛白面九尾の狐。嘗て人間により封じられ、力の大半を失って現代に復活した大妖である。
「同じ猫だけど。緋剣と比べると…不味い」
最初に出逢った妖猫は、楽に殺せたのは良いが、楽に殺せるだけあって、あまり美味しく無いし、栄養もそれほどでは無い。
同じ猫でも『野井原の緋剣』とは大違いだ。
それでも血が臭い人間を食べるよりもよりも遥かにマシだ。
人間を口にするのは嫌なので、此処に妖怪が他に居るかどうか分からないし、死体をランドセルに詰めて持ち運ぼうとしたら、入らなかったので、その場で食べる事にした。
小さいから直ぐに食い尽くせたが、味はあまり良く無いし栄養も緋剣に比べると乏しい。量もないので腹の足しにもならないときた。
「此処に猫がいるなら兎も角、人間だけなら、栄養をつける必要は無い」
最初に殺された二人程度なら、100人居ようが今の状態でも容易に殺し尽くせる。
そう考えると、さっき猫を食べた時、右脚が残ったので齧りながら此処まできたが、もうその脚も食べる気はしなくなってきた。
「…飽きた」
幼女は持っていた橙の脚を投げ棄てると、振り返ることもせずに歩いていった。
さっさと皆殺しにして、元の場所に戻ろうと、そんな事を考えながら。
【橙@東方Project 死亡】
【タマ@おまもりひまり】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:妖怪が居るなら食べる
[備考]東北地方の温泉で緋鞠達と戦って、くえすの攻撃で吹き飛ばされた後辺りからの参戦です。
※橙の原形を留めない死体と支給品の入ったランドセルが会場の何処かに放置されています
※死体とランドセルから少し離れた場所に、橙の右脚が棄てられています。
投下を終了します
>>622
タマの出典が抜けていましたので修正します
【タマ@おまもりひまり(原作漫画版)】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:妖怪が居るなら食べる
[備考]東北地方の温泉で緋鞠達と戦って、くえすの攻撃で吹き飛ばされた後辺りからの参戦です。
※橙の原形を留めない死体と支給品の入ったランドセルが会場の何処かに放置されています
※死体とランドセルから少し離れた場所に、橙の右脚が棄てられています。
投下します
「ヒョヒョヒョヒョヒョ、あの会社そろそろ本当に倒産するんじゃないのか?」
奇抜な笑い声を上げながら、インセクター羽蛾は自分の記憶を振り返っていた。
羽蛾の記憶が正しければ、最初にこの殺し合いを開いたという少年は海馬の名を名乗っていた。
自分の手元に支給された4次元ランドセルや、数十人を一度に拉致する組織力を考えるに、ほぼ間違いなくあの海馬コーポレーションの関係者ではあるのだろう。
乃亜という少年が、海馬家のどういった人物かは知らないし興味もないが、社内での権力者であることに違いはない筈だ。
恐らくだが、海馬瀬人は乃亜に社長職を追放されたのだろうと、羽蛾は推測する。
ニュースで見た程度だが、先代社長の海馬剛三郎を実質死に追いやるほどに追い詰め、社長交代を果たすような社風の会社だ。その海馬瀬人当人も同じ目に合わされてもおかしくない。
「社長交代後に、早速オレみたいな善良な一市民を捕まえて、デスゲームを強要とはねえ……バトルシティとは訳が違うよ乃亜クン」
ドーマの暗躍で、デュエルモンスターズが実体化し世間に害を与えた時、真っ先に海馬コーポレーションが疑われ株を下落させていたのは記憶に新しい。
そこを更に乃亜に付け込まれ、会社を乗っ取られ、こんなデスゲームを開催したとなれば、あの会社ももう終わりだろう、と羽蛾は結論を出した。
「ま、そんなことはどうでもいいっピョー。……真剣に、この先の事を考えなきゃ、オレが殺されるからな……」
海馬コーポレーションのゴタゴタなど、心底どうでもいい。どうせ頭のイカれた独裁者共だ。いずれ、全員刑務所入りだろう。
そんなことより、羽蛾にとっての問題はこの殺し合いだ。デュエルで勝てば生き残れるならば、話は変わってくるが、実際に生身で戦って生き延びろとなれば羽蛾とて命の保証はない。
「この日本(元)チャンピオンのオレでも、素の殴り合いは専門外なのさ。そういうのは城之内とか、そっちの連中に任せておくべきだと思うんだけどねえ。ヒョヒョー」
優勝すれば何でも願いを叶えるらしいが、それがどこまで本当か信じられたものではなかった。
最初のルフィの蘇生だって、海馬コーポレーションのソリッドビジョンを利用したトリックという可能性だってある。
あんなモノ見たからといって願いの為に、素直に殺し合いに乗る気にもなれない。
(本当に願いが叶うなら、決闘者の王国からの転落人生を、全部なかったことにして貰うけどな)
「そこの坊や。あの乃亜という少年について、何か知っている口ぶりね」
「ヒョ?」
羽蛾より、頭一つ程小柄な少女だった。
黒い薄っぺらなドレス、ゴシックデザインとでもいうのだろうか、フリルで彩った単色のドレスに、長い銀髪と雪のように透き通った白い肌が不気味なほどマッチしている。
おまえけに、目もサファイアのような蒼眼ときている。
人間離れした人形のような美貌と妖艶さに、羽蛾も一瞬見惚れた程だった。
「乃亜の苗字……海馬といえば、海馬コーポレーション絡みに決まってるだろ?」
「それは、なに?」
「童美野町を支配してる、ぶっ飛んだ会社だピョ。それくらい常識じゃないか。アメリカでも、KCグランプリを開いてたグローバルな会社さ」
「……なるほど、大体分かってきたわ」
「ヒョヒョヒョヒョ、そんな人形みたいな見た目しやがって、何処かにずっと監禁でもされてたのか? その世間知らずっぷり見てるとさぁ」
「ざっと数十年程かしら? ずっと、封じられてきたわ。当たらずも遠からずね」
「はあ〜? メンヘラは見た目だけにしときなー。歳食ってから、悲惨だぜ」
ひゅっと、風を切るような音が羽蛾の耳に届いた。特に風も吹いていない無風の屋外で、妙な音が鳴るものだと疑問に思う。
そして、1秒程でその疑問は解決した。
「ぎょ、ギョエエエエエエエエ〜〜〜〜〜!!!!?」
羽蛾の右腕から血が滲みだし、その緑色の服を汚していた。鋭い切り裂かれたような痛みに、奇声を発しながら羽蛾は目の前の少女が微笑んでいるのに気づく。
更に、彼女の左手の指先から血が滴っており、その爪は先程とは違う黒い刃物のように形状を変化させている。
「お前、オカルト絡みの奴か!!?」
オレイカルコスだのドーマだの名も無きファラオだの、羽蛾もそういった輩には関わったことがあるので、すぐにこの少女がそちら側の人間であることに察しが付いた。
「オカルトといえば、そうなるわね。
名乗っておいてあげるわ。リーゼロッテ・ヴェルクマイスター、バビロンの魔女とも呼ばれたこともあるわ」
「ふ、ふざけやがってぇ……! オレの支給品でぶっ殺してやる!!」
幸い、腕の怪我は見た目ほど深くはない。動きにも支障はない為、羽蛾は即座に強気に出てこれ見よがしにランドセルを突きつける。
「ヒョヒョヒョヒョ! オレの支給品はなぁ、お前みたいな頭のおかしいイカれたアマなんて一瞬で消し飛ばす、最強のカードを支給されたのさ!
命乞いをするなら、今の内ピョー!! まあ、どうしてもと言うなら、オレの家来になれば、許してやらなくも……あれ?」
「あら? あまりのお喋りが長くて、退屈だったものだから。つい、手が出てしまったわ」
「お、オレのランドセルを……」
羽蛾が掴んでいたランドセルが一瞬にして消え、リーゼロッテに握られていた。
リーゼロッテは驚嘆し、慌てふためく羽蛾を眺めながらそのランドセルに手を入れ、羽蛾の支給品を弄る。
「か、返してくれ〜!! オレの最強カードを!!」
「良いことを教えてあげるわ。武器は構えて初めて使えるものよ。鞘に納めた剣では赤子も斬れないでしょう。
もっとも、如何な剣であろうとも、この呪われた身を滅ぼすなど出来やしないでしょうk――――ぐ、がぁっ……!?」
「――――なんてね」
次の瞬間、リーゼロッテの胸を生々しい触手が貫く。
「な、ん……これ……ぐ、あぁ……!!」
「どうやら、ラッキーカードを引いたようだねぇ」
更に喉奥から、目玉から、腕から、臓器をねじ潰し、肉を引き裂き内側から皮を食い破りグロテスクな昆虫の触覚や足がリーゼロッテの全身から飛び出す。
「ヒョヒョヒョヒョ!! そいつは、寄生虫パラサイド!
所有者であるオレから、お前に所有権が渡った時、つまりオレからそいつを奪った時に強制召喚され、お前に寄生し蟲(インセクト)へと変化させたのさ!!」
両手の人差し指を立て、左手を自分の顔の横へ、右腕を伸ばし相手へと向けるポーズ。いわゆる恋ダンスのようなポージングで、リーゼロッテを煽り散らしながら、羽蛾は上機嫌で高笑いを浮かべる。
「いやぁ、リーゼロッテちゃぁん、随分と良い姿になったじゃないか、長生きした魔女様も大したことがないねぇ……。まんまと、オレの誘導にハマってくれてさあ!
今のキミはさっきのメンヘラ魔女より、百億倍可愛いぜぇ……!!」
「フフ……そうね、こういう趣向は初めてだわ。褒めてあげるわよ、坊や」
「ひょ?」
リーゼロッテの、パラサイドに蝕まれた体から流れ出る血が黒い蛇となり、羽蛾へと飛び掛かる。
とっさに体を屈めて避けるが、今度はまた別の血が刃のとなり、鋭利な切っ先を脳天へと穿ってきた。
殆ど意識的ではなく、腰を抜かしバランスを崩したことで、血の刃は髪の毛数本を切断し、毛の残骸が空中を浮遊しながら、ゆっくりと地べたに落ちていく。
(こいつ、こんな状況でまだ……)
パラサイドに全身を寄生されて、尚も平気で笑い、あまつさえ自分の血を使役し攻撃まで仕掛けてくる。
魔女という通り名は、恐らく誇張ではなく、事実なのだろう。
「逃げるは恥だが、役に立つってね。オレみたいな優れた戦略家は引き際も弁えてるのさ。
ヒョヒョヒョヒョ! そこで、オレの愛しいパラサイドと戯れてな!」
いくら高い生命力を誇っていようと、パラサイドに視界を潰され体を破壊されていては、羽蛾には追い付けない。
それを見越し、捨て台詞を吐いて羽蛾は逃亡した。
(全く、初っ端から、とんでもない相手に当たっちまったもんだぜ……)
走りながら、先ほどの態度と打って変わり、羽蛾は内心で苛立ちと焦りを隠しきれずにいた。
あれだけ勝ち誇った態度で、リーゼロッテを挑発したものの彼女が気まぐれで、即座に羽蛾を殺していたのなら、パラサイドにハメる事も叶わず死んでいた。
やれる限り、ランドセルに意識を向けるよう、誘導こそしたが、完全な運任せにギャンブルであったことには違わない。
(それにしたって、乃亜のガキ、いくらオレが元日本チャンピオンだからって、支給品がパラサイド一枚だけってのは、ハンデがすぎるピョ。
しかも、タブレットは何とか持ち出せたが、ランドセルごと食料も基本支給品も置いてきちまった。
この先もあんなリーゼロッテみたいな連中がわんさか居るなら、このままじゃヤバいぜ)
完全に無防備な現状で、あんな凶悪な参加者を相手にするのは避けなければならない。
武器を補充するか、出来れば盾に出来そうな参加者を見付けて、同行するかしないと、最低限の命の保証はないだろう。
「まあ、でも……パラサイドも実体化したし、リーゼロッテみたいなのが居るんだ。この殺し合いがオカルト絡みなら、優勝すればどんな願いも叶うって話も眉唾じゃなくなってきたねぇ……。
ヒョーヒョヒョヒョヒョヒョヒョヒョ!!!」
「なるほど……この不死身の体でどうやって殺し合わせるのかと思ったけれど、まさか不死性を制限されているとはね」
体の内部を蠢く、パラサイドを自らの手を体内に挿入し引き摺りだし握りつぶす。そんな作業を数回行い、ようやく体内から寄生虫を除去しリーゼロッテは不敵に笑った。
全身にパラサイドに貫通された赤黒い穴から、血を滴り流し、両目は潰れ、片腕は引き千切れる寸前のボロ雑巾のように、文字通り皮一枚で繋がっている。
だが、それらの痛ましい凄惨な傷口が、徐々に塞がりだす。
潰れた眼は時間を巻き戻すかのように、潰れた前の奇麗な状態へと修復されていく。重力に従い、皮一枚でぶら下がった腕は上向きに引っ張られるように、引き寄せられ傷口にふれたまま肉と皮膚が結合する。
虚無の魔石を、その身に埋め込まれたリーゼロッテは死ぬこともなければ、老いる事もない。本来であれば、殺し合いなど成立しない。
「不死の異能者も殺す首輪か、それにハンデも与えると言っていたわね。……今迄みたいに遊んでいると、死んでしまうということね」
数百年の悠久の時を生きてきた。今更、命は惜しくない。
むしろ終わらせてくれるのなら、リーゼロッテから歓迎したいところだが、人類鏖殺、世界を滅ぼすその時を目前に控えたこのタイミングでは、まだ死ぬには早い。
あの乃亜という少年が、どんな願いも叶えると言うのなら、些か手段は変わるが優勝し、世界の滅亡を願っても良いだろう。
「海馬乃亜と言ったわね。良いわ、予定が狂ったけれど貴方の望み通りにダンスを踊ってあげる」
世界を呪い、終焉を望む災厄の魔女は、迷うことなくこの場に呼ばれた幼い命をすべからず、滅ぼし去る事を決断した。
【インセクター羽蛾@遊戯王デュエルモンスターズ】
[状態]:右腕に切り傷(小)
[装備]:なし
[道具]:タブレット@コンペLSロワ
[思考・状況]基本方針:生き残る。もし優勝したら、願いも叶えたいぜ。
1:武器も欲しいし、利用できる参加者も見付けたいピョ。
[備考]
参戦時期はKCグランプリ終了以降です
【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:ダメージ(大、再生中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3、羽蛾のランドセルと基本支給品、寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ(使用不可)
[思考・状況]基本方針:優勝する。
1:羽蛾は見つけ次第殺す。
[備考]
参戦時期は皐月駆との交戦直前です。
不死性及び、能力に制限が掛かっています。
【寄生虫パラサイド@遊戯王デュエルモンスターズ】
OCGのボロクソな性能については割愛。
出展元において、インセクター羽蛾が城之内のデッキに仕込み、城之内のカードを昆虫族に変える事で、自らのコンボに繋げたキーカード。
今ロワ内では、出展元再現としてパラサイドの所有者が変更された時、ランドセルから取り出されていた場合強制召喚され、その所有者に寄生する効果となっている。
一度実体化すると、二度と実体化できない。
投下終了します
投下します
真夜中の草原。
一人の赤髪の少女が、剣を振るっていた。
それは、普段行うトレーニングの様に。
それは、まるで剣の品定めをする様に。
様々な型の構えを取り、空気を切り裂くが如く素振りを行う。
大上段の構えから、袈裟斬りで一閃。
横構えから、大きく振り切る。
そして、片手で剣を持った状態で前にジャンプして、何故か回し蹴り。
幾つかの動作の確認を行った少女は、一息をつき、剣を鞘に戻す。
「悪くはない剣ね」
不満気味な表情をしつつも、納得はしている口調で、一言呟く。
その剣は、正確には「和道一文字」という名前の刀。
とある海賊の世界で名を馳せる大剣豪が長年使う大業物だが、武器の価値に興味を持たない少女にとっては、斬る事に問題が無ければ十分だった。
少女は、傍に置いておいたバックを持ち上げて、行動を始める準備を行う。
自分がどう行動するかはもう決めてある。
これまで旅を共にした剣は手元にないが、代わりになれそうな武器は手に入れた。
ならば、これ以上動かない理由は無い。
ふと、人の気配を感じて周りを見渡すと、暗闇で朧気ながらも、一人の少年が倒れている別の少年に蹴りを入れている風景が見えた。
--- --- ---
真夜中の草原で、2人の少年が鬼ごっこの様に走りあっている。
しかし、それは決してやんちゃな夜中の遊びではない。
片方は本気で逃げており、もう片方は捕まえる為ならどんな形でも構わないと躍起になっている。
「ハァ、ハァ……!!しつこいな!諦めろよ!」
逃げ回っている方の少年の名前は、磯野カツオ。
丸刈り頭をした、かもめ第三小学校の小学5年生だ。
本来はわんぱく小僧として近所に知られている彼は、今は追ってくる相手から余裕も殆どなく必死に逃げている。
「諦めるのはお前の方だ!逃げるなマグル!」
追いかけまわしている方の少年は、ドラコ・マルフォイ。
金髪をオールバックに纏めた、ホグワーツ魔法魔術学校のスリザリン寮2年生だ。
自前の杖を右手に持って、逃げるカツオを追いかけている。
ちなみに「マグル」とは、彼の世界において魔法が使えない人間の事を指す。
(僕はどうしてこんな目にあっているんだ!?)
時折後ろを見て走りながら、磯野カツオは現状について非常に困惑していた。
突如キャベツの様な髪色をした少年の殺し合い宣言に、死んだり生き返ったりした少年達の事は、完全にカツオの理解を超えていた。
カツオの生活環境は、取り留めもない平和な日常を日々過ごす、ごく普通の血生臭いモノとは無縁の生活を送っている。
オカルトもファンタジーも関係ない毎日をずっと過ごしてきたカツオにとって、最初は自分の頭がおかしくなったか夢の出来事なのかと錯覚しかけていた程に突拍子もない連続だった。
頬をつねったりランドセルを枕にして寝ようとしたりして軽い現実逃避を行ったが、何も変わらない現状を見て、ようやく現実だと理解した。
そして、ランドセルの中身を確認しようとした所に、今追いかけてきている、いかにも外国人風の金髪の少年が現れてきた。
その少年は自分の姿を見つけたなり、手に持っていた杖をこちらに向けてきた。
本能的に横に避けたが、それが正解だったようで、杖から光ったなにかが発せられ、自分の方に飛んできたのだ。
攻撃されたと直感で判断したカツオは、ランドセルを背負い必死に逃げ始めたが、金髪の少年も追いかけてきて、今に至るという事だ。
家族や知り合いにいたずらを繰り返しては、姉であるサザエによく追いかけられる為、逃げ足は鍛えられている方だと自負している。
しかし、今追いかけている少年は呪文の様なものを時折叫んできており、それに意識せざるを得ない為に、逃げ切る事が出来なくなっている。
(こんな事になるなら、早くランドセルの中を確認するんだったなぁ!)
当てにできないだろうが、もしかしたらこの状況を何とかする道具がランドセルの中に入っている可能性に縋るカツオ。
しかし、魔法を放つ相手から逃げつつ、ランドセルの中身を確認する余裕なんて、今のカツオには存在しなかった。
カツオは、自分の現実逃避に使った時間を後悔し始める。
「マグル風情がいつまでも逃げれると思うな! タラントアレグラ〈踊れ〉!」
一方でドラコ・マルフォイはこのゲームに乗るつもりでいた。
マルフォイは元々、自分の意にそぐわない相手には容赦しない性格の持ち主。
本来は自らの血筋や父親の権力を笠に着て威張り散らすのが主で、直積的な暴力など好まないが、命がかかっているのなら話は別。
少なくとも自分よりも弱いマグルと一緒に行動するつもりなど、さらさら無い。
そしてこの鬼ごっこに長々と付き合う気も無かった。
右手に持った杖をカツオに向けて呪文を叫ぶ。
「うわああああ?!」
次の瞬間、逃げる為に走っていたカツオの足が、急にコントロールが効かなくなった。
そして、両足がピクビク動き、勝手にクイックステップを踏み始めたのだ。
急に足が止まった事により、カツオの身体はよろけて草原の地面に倒れる。
しかし、身体が倒れていても、足は勝手に動いていた。
「ハァ、ハァ……、よくも手間をかけさてくれたな…!」
追いついたマルフォイは鬱憤を晴らすかの様に、倒れているカツオに蹴りを2、3発ほど入れた。
カツオは咄嗟に腕が腹部および身体の前に出して防御するが、それでも蹴られた痛みで顔を歪ませる。
「い、痛い……!止めてくれよ……!」
カツオは痛みから弱音を吐くが、それで納得して攻撃を止めるマルフォイではない。
制限の為か呪文は途切れ、カツオは強制的な踊りから解除されていたが、そんな事を気にする余裕はなかった。
呻き声を聞いてから、さらに蹴りを一撃入れ、痛みで弱々しくうずくまるカツオの姿を見て、マルフォイは愉悦な表情を取る。
「まだまだこんなものじゃないぞ……!この僕から逃げ回っていた事を後悔させてやる……!!」
一息つくと、持っていた杖を見せびらかす様に動かすマルフォイ。
蹴られた痛みが引かないカツオは、まだ逃げる事が出来ず、杖を見て怯えるしかない。
そして、マルフォイはカツオに杖を向けて―――
「待ちなさい」
突如、どこからか甲高く、そしてよく響く声が聞こえてきた。
カツオは思わず目を杖から離れて、声の方向を見た。
マルフォイも、杖をカツオに向けたまま、首を少し動かして声の主を見る。
声の主は、腕を組んで仁王立ちのポーズを組んでいた。
旅をしている様な服装とマントを着ており、左腰に鞘に入った刀を携えている。
つり上がった眼つきに、ウェーブのかかったロングヘア―。、一目見ておしとやかな少女ではないと分かる威圧感。
何より目を引くのは、夜中でも目立つ程の、原色のペンキをぶちまけた様な真紅色をした髪色。
声の主―――エリス・ボレアス・グレイラットが、そこに立っていた。
カツオの周りにはここまで派手な髪色をした知り合いはいない為、マルフォイと同じく外国人なのだろうかとは思った。
マルフォイは、赤い髪をした少女というのは、ウィーズリー家の末っ子を知っている為、特別気にする特徴ではなかった。
しかしその末っ子の赤髪は、目の前の少女の様な真っ赤な色ではなかった為、目を引く存在ではあった。
「そこの金髪のアンタ、この様子からゲームに乗っていると思っていいわね?」
エリスは体勢を一切崩さずに、質問を発する。
質問の意味は、マルフォイの行動についてだった。
「……その通り、と言ったらどうするつもりなんだい?」
「潰すわ」
乱入者の登場によっても、マルフォイは普段と変わらない調子で、エリスの質問に肯定と捉えられる意図を含めながら質問で返す。
しかし、質問に質問で返されながらも即答したエリスに、気に入らない様子といった風に、マルフォイは目を細める。
マルフォイの意識がエリスに向いていると感じたカツオは、咄嗟に言葉を放った。
痛みを引く為の時間稼ぎが目的なのか、それとも興味本位で聞いたのかは定かではないが、とにかく口が先に動いた。
「ど、どうして乃亜って奴のいう事なんて聞こうとするんだ!?!皆で集まって力を合わせれば、きっと―――」
「黙れ!」
カツオの言葉に、マルフォイが言葉を遮るように叫ぶ。
エリスに向けていた目線が、カツオに戻る。
「お前も見ただろう!マグル達が殺されたり生き返ったりするのを!!
よくあれを見て反抗しようなんて考えられるな!」
カツオはこれまでマルフォイの事を、未知の魔法を使い自身を追いかけまわし、攻撃を入れてくる恐ろしい存在にしか見えなかった。
しかし、この叫びを聞いて、カツオは先ほどまでの自分と同じ様に、恐怖を感じている子供なのだと直感的に感じ取った。
状況が理解しきれてなかった自分よりも先に、状況を理解してゲームに乗った。
もちろんそれが乗った理由の全てではないだろうし、自分に蹴りを入れた事は許したくないが、それでもカツオはマルフォイの事を少し理解する事が出来た。
「くやしいが、ダンブルドアやスネイプ先生がその内自体を把握してくれる筈さ!
ここでの殺人については咎められるだろうが、未成年である事と僕のパパの働きかけ、なによりマグル相手だがら、きっと罪を帳消しに―――」
「言い訳はその程度でいいのよね」
熱気がこもるマルフォイの言葉を遮る様に、エリスは冷たく言い放つ。
遮られたマルフォイはエリスの方を、今度は思いっきり顔ごと目を向ける。
エリスは、仁王立ちをした体勢を全く崩していない。
その目は、相手の事情など心底どうでもよさそうな表情だ。
「もう一度だけ聞くわ。そいつを殺そうとしたのよね?」
「……そうだよ!あきらかに力がなさそうなコイツを殺しても、コイツはマグルだったからで済む!」
「そう」
マルフォイの殺人の明確な肯定を聞いたエリスは、短く一言を呟くと仁王立ちのポーズを崩し、左腰に納めていた鞘から刀を抜き始める。
マルフォイは刀を抜いたエリスを見て、一瞬身をこわばるが、すぐに身体を動かして、杖をエリスに向ける。
「フ、フン!そんなものを向けてこの僕に勝てるとでも―――」
「ガアアアァァァ!!」
「なっ!?!」
「え?!」
自前の杖を持っており、自分の優位性を信じるマルフォイの言葉は、エリスの叫び声にかき消される。
そして、咆哮と同時に行ったエリスの行動に、マルフォイは思わず驚愕してしまう。それはカツオも同じだった。
抜いた刀を構えるのではなく、突如マルフォイに目掛けて投擲したのだ。
しかし抜刀から投擲まで1秒前後の速さで投げつけた刀のスピードは恐るべきモノ。一直線にマルフォイの顔面目掛けて飛んでいく。
驚いたマルフォイは、まっすぐ飛んできた刀を避ける為、杖の構えを解き、身体全体を動かして避ける。
カツオも慌てて尻もちの状態から後ろに下がる。
これが、ドラコ・マルフォイの敗因となった。
闇の世界にどっぷり浸かり経験を積んだ未来のマルフォイなら、避けながら反撃の呪文を放てただろうが、まだ闘いを碌に経験していない頃はそんな行動はとれなかった。
「何を考えている!この野蛮な―――」
刀を回避して、批難する言葉を発しようとしてエリスの方に顔を向けるマルフォイ。
瞬間、マルフォイは、エリスに顔面を殴られていた。。
刀を投げたエリスは、直後にまるで刀に引っ張られるかの様に一直線にマルフォイ目掛けて走りつけて、伝家の宝刀・ボレアスパンチを放ったのだ。
モロに顔面にストレートなパンチを喰らったマルフォイは、勢いそのままに尻もちをついてしまう。
しかし、エリスの攻撃は止まらない。
殺し合いに乗ったと名言した相手に情けを賭ける道理など、エリスには無い。
体勢を即座に直したエリスは、状況がまったく追いついていないマルフォイの胸元に、全力のキックをぶつける。
これもモロに入り、全身を地面に倒れるマルフォイ。
拍子に杖を離してしまう。呼吸すらままならない。
カツオは、あまりにも手早く行われる暴力コンボに、状況すら把握しきれていない。
そしてエリスは短くジャンプを行い、馬乗りになる。
マルフォイは気づけば、両腕はエリスの足によって抑え込まれていた。抵抗が出来ない。
ドラコ・マルフォイが気を失う前に最後に見た光景は、本物の殺気をまとった赤い悪魔が、拳を振り上げる姿だった
--- --- ---
「あっ……、あああぁっ……」
磯野カツオは、上半身を起こしつつ座った状態のまま、その様子を見る事しか出来なかった。
さっきまで自分を痛めつけていた金髪の少年が、一方的に殴られている姿を。
どこからか現れた赤髪の女の子が、金髪の少年を馬乗りになって、一方的に殴り続けている姿を。
これまで自分のいたずらで、姉や父親から怒鳴られたり追いかけまわされたりした事はあるが、あそこまで暴力的な光景は見たことがない。
自分の周りで、こんな事が発生したら、間違いなく警察沙汰だ。
(こ、殺される……!)
次にあの赤髪の女の子の暴力の矛先が自分に向かうかもしれない。
もし、その様な事がなく平和的に話し合いが終わる可能性があっても、傍にいたくない。
今のカツオの、エリス・ボレアス・グレイラットに対する評価は、自分を殺そうとしてきたドラコ・マルフォイよりも恐ろしい存在にしか見えなかった。
マルフォイの心情は少しは理解する事が出来たが、エリスに対しては何も理解が出来なかった。
もし、彼女と一緒にいる事が出来る存在がいるのなら、それはおそらく、人と人の関係ではない。狂犬と飼い主の関係だ。
「う、うわああああ!!」
カツオはなんとか立ち上がり、その場を全速力で離れ始める。
奇跡的に、エリスはマルフォイを殴りつける事に集中しており、叫びながら逃げる少年の事には気づくことは、その時点では無かった。
【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:死にたくない。
1:赤髪の少女(エリス)とゲームに乗った金髪の少年(マルフォイ)から逃げる
[備考]
--- --- ---
「本当だったら殺す所だけど、ルーデウスに免じてこの程度にしておくわ!」
20発前後ほど殴りこんだエリスは、殴る拳を止めて、馬乗りの状態から立ち上がる。
エリスはマルフォイの姿を見下ろす。鼻はつぶれてあきらかに骨折しており、歯は何本か欠けている。
誰がどう見ても失神している姿だ。整えられていたオールバックは、ボサボサになっていた。
その股座からは、湯気の立つ液体が広がっており、アンモニア臭がほのかにエリスまで届く。
倒れたマルフォイの傍に、手から離した棒の様な杖を発見したエリスは、回収した刀を使って使えない様に破壊する。
エリスはあくまでこの殺し合いに乗っていない。今後ルーデウスに再開した時に、何人も切り殺したなんて言ったら、ルーデウスはきっと悲しむだろう。
だから、極力殺さない。ボコボコにして、武器を破壊して、何もできなくする。『その程度』で済ます。
ルーデウスとルイジェルドがいれば成長したと思うだろうわね!と内心で自賛するエリス。
「けど、準備運動としても、全く張り合いがない相手だったわね」
気絶したマルフォイから離れはじめて、つまらなそうな口調でエリスはぼやく。
数百年生きるルイジェルドの動きを見て、簡単に人を殺せる魔大陸の魔物と年単位で戦ってきたエリスにとって、マルフォイの動きは隙だらけだった。
杖と使おうとした様子を見るに魔術師だったのだろうが、自分と相対した数秒で、格下の相手と判断した。
なんなら、家庭教師としてやってきた頃のルーデウスよりも恐らく弱い。
この程度の実力なら、自分が殺さなくてもそのうち勝手に死ぬだろう。
マルフォイのランドセルから食料やアイテムを粗方回収した後、周りを見渡し始め、マルフォイ相手に尻もちをついていた少年がいない事にエリスはようやく気付く。
「まぁいいわ、生きていればその内会えるわ」
しかし、エリスはすぐにその少年の事について考える事を止める。
正直な所、保護して欲しい。守って欲しい。と言われたら困る所だったが、いなくなった方が都合がよかった。
この地は殺し合いのフィールド。つまり魔大陸と同じくらい危険な場所と考えていいだろう。
あの頃では生きるために剣を振るう事が精一杯だった為、守りながら戦うなんて、不得意だ。
首輪についても、脱出方法も、私にはサッパリ。そういうのはルーデウスに任せよう。
私にできる事なんて、ルーデウスの障害になりそうな相手を倒すくらいだ。
今回くらいの相手なら無力化して、強大な相手なら殺す。ゲームに乗っていない相手なら手を出さない。
それが、エリスが海馬乃亜のゲームに対してのスタンスだ。主催者の海馬乃亜は当然息の根を止める。
「早く会いたいわ、ルーデウス!」
ルーデウスが参加していない可能性を全く想定していない、飼い主の手元から離れた狂犬は、元気な大声で再開を楽しみにする言葉を発してから歩き始めた。
最後にその場に残されたのは、プライドもアイテムも全て失った、狂犬の暴威に巻き込まれた被害者だけだった。
【エリス・ボレアス・グレイラット@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
[状態]:健康
[装備]:旅の衣装、和道一文字@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0〜2(エリス)、ランダム支給品0〜2(マルフォイ)
[思考・状況]
基本方針:ルーデウスと一緒に生還して、フィットア領に戻るわ!
1:首輪と脱出方法はルーデウスが考えてくれるから、私は敵を倒すわ!
2:殺人はルーデウスが悲しむから、半殺しで済ますわ!(相手が強大ならその限りではない)
3:早くルーデウスと再開したいわね!
[備考]
※参戦時期は、デッドエンド結成〜ミリス神聖国に到着までの間
※ルーデウスが参加していない可能性について、一ミリも考えていないです
【ドラコ・マルフォイ@ハリー・ポッター シリーズ】
[状態]:気絶、鼻骨骨折、前歯があちこち折れている、顔の至る所に殴られた痕、ボサボサの髪、失禁
[装備]:ホグワーツの制服
[道具]:
[思考・状況]
基本方針:ゲームに乗り、生き残る。
0:(気絶中)
[備考]
※参戦時期は、「秘密の部屋」新学期開始〜バジリスクによる生徒の石化が始まるまでの間
※ドラコ・マルフォイの杖が支給されていましたが、エリスにボロボロに破壊されました
空のランドセルと一緒に傍に放置されています
【和道一文字@ONE PIECE】
エリス・ボレアス・グレイラットに支給された
三刀流の大剣豪ロロノア・ゾロの愛刀。普段は口に咥えて使用している
幼馴染のくいなが使用していたが、事故で亡くなった後ゾロに譲られ、以降使い続けている
大業物21工に数えられる名刀であり、1000万ベリーの価値がある逸品であるとされる
投下を終了します
皆さん投下ありがとうございます。
>神と魔王
神と一言で言っても、色々な葛藤があるお話でしたね。
あくまで寿命や能力に差があるだけで、全知全能とはいかないといいますか、自分を押し殺して神様という役職に耐えてきたようなナヒーダが印象的でした。
>未成年の主張
警察の傲慢、驕り、少年犯罪、社会の闇が凝縮されたお話ですね。
これだけ短い作品の中で、社会風刺を盛り込んだのは流石でした。
>関西ツインテ 蜜柑
マヤちゃん、なんでこの娘毎回ボロボロにされるんでしょうね。
そして対戦相手は誰だったのか気になります。
>関西ツインテ 真夏
カレンと礼佑、ロワらしいマーダーコンビの誕生ですね。
ただし、相手はフランですから一筋縄ではいかないでしょうが、エリート的に何とかするんでしょうかね。
反比例するように、真夏とフランのやりとりがテンポのいいコントみたいで微笑ましかったです。
>関西ツインテ ニ鳥
好きでこんな殺し合い乗る参加者も別に多くはないでしょうからね。ちゃんと、説得して二鳥は良い娘ですよ。
相方の日奈ちゃんの倫理観が中々ぶっ壊れている分、丁度いいバランスかもしれませんね。
あと、怒らないで下さいね。
タフ語録はあるのに、タフキャラが未だに誰もエントリーしてないのってバカみたいじゃないですか。
>復讐は誰の為にもならない
過去の経験から、復讐を断ち切ろうとする詩紋はある意味大人のようですね。
しかし、ここはロワですから憎しみの連鎖を止めるどころか巻き込まれて、酷い目に合うこともありますからね。
詩紋のスタンスが、別の復讐者とかち合った時が怖いです。
>未来へと■■を取れ!
私の中だと、なのはさんは人を救う修羅という印象だったので、レイハなくて慌ててるのはこの時系列にしては割とほんわかしてて新鮮ですね。
仕事と関係ない歳の近い熱斗くんが傍に居たからでしょうか。
ここのロックマンは地味に乃亜と境遇にてたので、もしかしたらそういう面でも支給品ではなく参加者にしたのかもしれませんね。
>妖怪のせいなのね、そうなのね
妖怪ウォッチって、こんなやけに過去が重いキャラが居るんだと思ったら、即ズガンされてて草生えました。悲惨ではありますが。
それと鈴駒が良い感じの生意気なガキって感じで、子供特有の無邪気さと残酷さが描かれていた作品でした。
>星灯
やけに大物みたいな台詞話してますけど、結構小物なのがアヌビス神なんですよね。
果たして、シチーリヤに化けの皮が剥がれるのを見られるか、その前に優勝できるかといったところでしょうか。
見てる分には、このまま引き換えせなくなる前に、シチーリヤには、善良な対主催と出会って説得されて欲しいですね。
>その魔法、純白トロイメライ
途中までのび太の熱い思いが描かれていたのに、オチで全部台無しで草。
それはそれとして、ロキシーという頼りになる大人が同行してくれるのは幸先がいいですね。
>わくわく動物ランド
人を食べる妖怪というのは、よく見ますが妖怪を食べるというのは逆に珍しいですね。
しかし、だからといって人間の味方でもなさそうなのが、難しいスタンスに見えます。
>ドラコ・マルフォイと紅い狂犬
フォイ!? マルフォイを殴るとか随分ヤバいなマグルフォイ。
そんな野蛮な女に怯えたカツオは不運フォイね。
でも、カツオがマルフォイの言動からちゃんと相手も自分と同じ怯えた子供と気付けたのは、彼の優しさが垣間見えますね。
感想ありがとうございます!
投下します。
さくらももこは小学3年生。
とても、小さくて女の子だからちびまる子ちゃんと呼ばれている。
「やだよ……殺し合いなんて……どうして、そんなことをしなくちゃならないのさ」
まる子は乃亜による殺し合いを強要され、涙ぐむ。
殺し合い……それは、つまり人の命を奪うということ。
「そりゃ、私にだって叶えてもらいたい願いはあるけどさ……」
勿論、まる子にも願いが無いわけではない。
たとえば、一日のお小遣いを30円から50円にあげてほしい。
大好物であるプリンをお腹いっぱいになるまで食べたいなど。
しかし、それは人殺しをしてまで叶えたい願いではない。
「たまちゃん……よし子ちゃん……かよちゃん……」
もし、自分以外の3年4組のクラスメイトが参加させられていたらと想像するだけでも最悪だ。
当然、自分が殺すなんて選択、できやしない。たとえ、藤木が相手でも。
また、皆が他の誰かに殺されるなんてのも嫌に決まっている。
「誰か助けてよ……お姉さん……アンドレア……プサディ〜〜〜」
まる子が口に出した三人の名前。
クラスメイトではないが、それぞれがまる子にとってかけがえのない大切な人達。
身体は子供。頭脳も子供であるまる子は、ただただ瞳からぽろぽろと涙を流すことしかできない。
「うわあああああ!!!!!」
「な、なにさ!?」
突如、獣の唸り声らしきが聞こえてきた。
その声にまる子は身体を震わせる。
もしかして、参加者のほかに、危険な動物もいるのだろうかと。
先ほどまで止まらなかった涙も一瞬で引っ込むほど。
まる子は声が聞こえる方向から距離をとろうとするが、立ち止まる。
「でも、何だろう……泣き声にも聞こえる」
始めは声の大きさに驚いたが、冷静に耳を澄ませると、それは、唸り声と言うより泣き声にも聞こえた。
気づくと、まる子の足はその声の方角へと歩いていた。
早く逃げなきゃ。本能では理解しているのだが、歩みは止まらない。まるで、引力に導かれているようだ。
やがて現場にたどり着くと、まる子の眼に映ったのは涙を流している狼少年だった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「うわあああああ!!!!!」
約束したのに!父さんはオレが助けるって約束したのに!!!
だけど、オレはその約束を守れなかった。
どうして殺されなきゃならなかったんだ!!!
父さんには、もっと色んなことを教えてもらいたかったのに!!!
「なんでだよ!」
とにかく、手当たり次第に周囲の木に八つ当たりをする。
怒りを。怒りを込めて。いや、悲しみかもしれない。
いくつかの木々が傷つき倒れる。
自分の頭の中に渦巻く感情が爆発しているのだ。
「なんでオレの周りの人はみんな死んじゃうんだ!」
父さん……ルビアのおじさんにおばさん……
オレがレイモーンの民だから……リカンツだからこんな目に合うのか!?
それと、父さんの仇をとる機会を奪った乃亜。
アイツもアレウーラの民なのかはわからないけど、命を簡単に弄ぶヒトってこんなにもいるのか!
オレが見たかった外の世界は悪意に満ちた醜悪なのかよ!!!!!
「オレがなんか悪い事でもしたっていうのかよ……」
暴れ続けたのか、疲れ果てたオレはぺたりと地面に尻をつける。
涙が止まらない。止めたくても止まらない。
こんなオレの姿……仲間には見せられない。
特に、ルビアには……
「ねぇ……大丈夫?これで拭きなよ。涙をさ」
言葉と同時にハンカチを手渡された。
顔を見上げると、まんまるほっぺが特徴のおかっぱの女の子がいた。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「私、さくらももこ。皆からはまるちゃんかまる子って呼ばれてるんだ」
「……オレはカイウス・クオールズ。カイウスでいいよ」
手渡されたと同時に獣人化が解けたカイウス。
まる子はそれに驚いたが、互いに自己紹介をすることで、互いが住む世界が違うことを理解した。
カイウスは気まずそうにまる子へ話を続ける。
「さっきは、みっともない姿を見せちゃったな」
「……ううん。そりゃ、ちょっとビックリはしたけど、お父さんを殺されちゃったんなら、ああなるのは仕方がないよ」
「父さんか……でも、本当の父さんじゃないんだ!はははっ!」
「カイウス……?」
「しかも、とどめはアイツが刺したけど、その前に自分が父さんを傷つけた……オレはヒトじゃない……オレはリカンツなんだ。いっそ、本当の獣のように全て忘れたい気分だよ……」
―――パン!
「……ッ!?」
「そんなこといっちゃだめだよ!」
カイウスの言葉にまる子は頬をビンタすると同時に大きな声で反論する。
目の前の少年は自分よりもはるかに年上。
小学生にとって中学生ぐらいの年齢は大人とそう変わらない。
でも、それでも関係ない。
カイウスの発言はまる子にとって到底看過できない。
「たとえ、本当の家族じゃなかったとしてもさ!カイウスをここまで育ててくれたんだよ!だったら、もう家族だよ!それにリカンツって言葉はさ!差別の言葉なんでしょ!?自分で自分を否定しちゃだめだよ!あとさ!お父さんが殺されちゃってやけになるなんて、そんなのただの逃げだよ!」
「わたしだったら、ずっとお父さんのことわすれないもん。いつまでもいつまでも大好きだもん」
酒とタバコとジャイアンツの試合が好きなぐうたらな父。
時には、娘である自分とチャンネル権争いをする大人げなさもある父。
だけど、自分は知っている。
自転車で怪我をしたとき、再発防止のために真っ先にミラーをつけてくれたこと。
待ち望んでた男の子じゃなくても、生まれた日付をしっかりとメモしてくれていたこと。
縁起でもないけど、もし、お父さんが……お母さんが、お姉ちゃんがおじいちゃんがおばあちゃんがたまちゃんやプサディが死んだとしても自分は忘れたりなんかしない。
大好きな人達を。
それは、嘘偽りない気持ち。
「く……」
まる子は自分の主張を言い終えると、手でゴシゴシと涙をぬぐう。
「……まる子」
カイウスはそんなまる子の様子をただ見つめることしかできない。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「ごめん……ちょっと強く言い過ぎたよ」
「いや……オレ、まる子に教えられたよ」
「え?」
謝罪と同時にぺこりと頭を下げようとするまる子をカイウスは制止する。
「父さんは、オレにとって、父さんであることに変わりはないこと。それとオレが見たかった世界は醜悪だけではないんだってことをさ」
「カイウス……」
「オレも決して父さんのことを忘れたりなんかしない。そのことを気づかせてくれて、ありがとう、まる子」
カイウスはまる子に感謝の言葉を伝える。
その顔は、悲しみを差別の壁を乗り越えた漢の顔。
「気にしないでよ!泣いていたり困っている人には手を差し伸べなさいって学校で教わってるから」
「へへ……よし、それじゃあ、乃亜ってやつの企みを止めなきゃな。まる子も一緒に手伝ってくれるか?」
(まる子のようなヒトがいっぱいいる世界……いけるならオレも旅してこの目で見てみたいな)
「うん!もちろんだよ!」
ヒトとレイモーンの民。
今、ここに異なる世界。異なる二つの種族が手を握る。
【さくらももこ@ちびまる子ちゃん 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:カイウスと行動を共にする
2:殺し合いだなんて、私は嫌だよ……
3:お姉さん……アンドレア……プサディ……
[備考]
少なくとも、まる子南の島へ行く。映画わたしの好きな歌(漫画版)、イタリアから来た少年(漫画版)を経験しています。
【カイウス・クオールズ@テイルズオブテンペスト 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の企みを阻止する
1:まる子を守りつつ、乃亜の企みを阻止する方法を探す
2:まる子のいる世界……いけるならこの目で見てみたいな
[備考]
養父であるラムラスをロニーに殺されて獣人化した直後からの参戦です。
投下終了します。
投下します
夜の帳が下りた、草木が生い茂る森の中。
木々は密集してないお陰で、月明かりは遮ることなく射し込む。
月光が辺りを照らすことで、幻想的な雰囲気を醸し出している。
もっとも、そんな風に着飾ったところで結局此処は殺し合いの盤上。
このような場所で感傷に浸れるような人物はよほど神経が図太いか、
それだけの余裕が持てるか、或いは諦めのついた人ぐらいだろう。
そんな森の中に立つ、一人の少女。
「いや、あいつ何考えてるんだ?」
獣耳が生えているのではないか、
そう見間違えそうなほど癖の強い毛を持つ、
ピンクのツインテールの少女はけだるげにそう呟く。
小柄な少女に背負ったランドセルはよく似合うものの、
「アイツ、俺を小学生と間違えたのかねえだろうな?」
そのランドセルを見ながら虚ろ目で軽くごちる。
彼女は背が小さいだけで、年齢的には十六の高校生だ。
病的な理由でも何かファンタジーが関わってるわけではない。
ただ単に小さいだけ。十六歳で135cmはかなり異様ではあるが。
殺し合いに招かれた一人としてはどこか落ち着いた様子でいるのは、
彼女こと益子薫は荒魂を祓う刀使として、日々戦いに明け暮れている。
なので、ある程度の危機的状況に関してはすんなりと受け入れていた。
(なお当人からすれば無理矢理働かされているが現状に近しいが)
とは言え、人の所業でこれほど大それたことをするとは思わなかったが。
「こういうのは刀使の仕事じゃねえんだが、緊急事態だしあの鬼(学長)も許すだろ。」
刀使の仕事は荒魂が関わる事件のみを担当する、
と言うのが過去に刀使が強盗事件に介入した結果できた決まりだ。
しかし、今回はそんなことを言ってる場合ではない程に未曽有の危機。
気がつけば殺し合いに巻き込む相手を放置するかどうかで言えば絶対にノーだ。
「一応はヒーローが好きなんでな。しょっ引いて帰って休みをもらうぞー。」
普段休みを欲しがる程度にぐーたらな彼女ではあるものの、
刀使の役目を(部下に投げたりはするが)放棄はしない真摯な部分も持つ。
世界の危機になればちゃんと行動するし、意外とヒーローに憧れてたりもする。
他の刀使がいれば合流し、安全な状況を作っていくのが理想ではあるものの。
そうはいかない問題と言うのはあるものだ。
「って祢々切丸がねえ!?」
身体が異様に軽いとかそういうのは感じていたが、
彼女の御刀である祢々切丸が背負ってたはずがない。
没収されたのだと気付くにはそう時間はかからなかった、
刀使は選ばれた御刀から神力を引き出すことで力を行使する。
ないということは、薫はただ腕力が凄いだけの少女と変わらない。
「……アイツ、アイテムを支給するとか言ってたな。」
壇上でのやりとりを思い出す。
『ゲームみたいなやり方だなおい』とごちりつつ、
重さを感じさせないランドセルから支給品を確認してみる。
こんなところに二メートル以上の祢々切丸が入ってるとも思えないが、
重量がないかのようなランドセルから、何となくあり得るのではと思った。
「いや、あるとは思ってなかったけどよ───」
まあ、彼女が望む祢々切丸とは全くもって関係ない代物だけが出てきたが。
そのうちの一つは彼女の世界でも別段珍しいものではない。
扇子のように蛇腹折りにされた紙束は、彼女だって知っている。
そう、ハリセン。それがでてきたため思わず地面をそのままスパーンと叩く。
まるで銃声のような、何処か小気味よい音が森へと響いた。
「なんっでハリセンを殺し合いに支給してくるんだよ!?
クソッ、アイツこうなること見越してやりやがったな!」
嘲笑う乃亜の姿を想像しながらわなわなと手を震えさせる薫。
最初に殺された二人のことについてはよく知らないが、
凄惨な殺され方をした二人を敗北者と嘲笑うような子供だ。
性格の悪さは想像できるし、こうなることを見越したのだろう。
殺し合いをしない参加者に本人の御刀を支給なんてこと早々にしない。
寧ろ外れを支給することで、その様子を安全圏から見下ろしてるのだろうと。
他の支給品では戦いはできない以上、冗談抜きで重量のあるハリセンだけが武器。
完全に遊ばれているのだと思わずにはいられなかった。
このふざけた状況をどうしたものかと頭を搔くと、
「あー、そこの王冠! 隠れてるのバレてるからな!
なんかハリセンといい、突っ込みばかりで恰好がつかねえなぁおい。」
一人で居場所を知らせたりするような愚行と見えるが、
先ほどから茂みから細長い王冠が見えており、その様子を伺っていた。
襲ってくるわけでも話しかけてくるわけでもないのでいい加減気になり、
其方の方へと視線を向けながらハリセンを向ける。
「ハッ! まさか頭のこれでバレてしまうとは、不覚であります!」
開始早々滑稽な姿を恐らく見られたこともあり、
もう既に疲れが見え始めた気がしてならなかった。
諦めるつもりはないにしても、もう少し手心が欲しい。
なんてことを思いながら待つと茂みから相手は観念し、姿を見せる。
見せるのだが……出てきた相手の姿に思わずげんなりとした顔になった。
(エレン。俺もうツッコミきれねえよ。お前のふざけた態度が恋しい。)
水色を基調としたドレス姿はどこか人形のような愛くるしさがあるものの、
一メートルもあるかどうか怪しいぐらいの体躯は、一歳か二歳と言うレベルだ。
でかい人形が喋っている、と言われた方が理解できると言える外見も拍車をかける。
言動や手に持つ刀剣から、流石に外見通りの幼さはないとは判断はできたが。
「あー、なんだ。とりあえずそいつは子供が持っていいようなもんじゃないから降ろせ。」
「な! 自分はこのような外見でありますが、大人なのであります!」
「いや、小人症だとしても限度があるだろ。」
一周回って冷静になったからか、ツッコミは忘れない。
詳しくはないが、成人した人間でも身長が小柄な症状は聞いたことがある。
だがそうだとしても一メートル未満の成人など流石に聞いたことがない。
幼くはないにしても、流石に成人と呼ぶには余りに無理があった。
「種族の違いは覆しようのないことではあり……いえ、
今は年齢のことなど些細なこと。こうしてる間にも、
戦いは進んでしまう可能性もあるので手短にいくことにしましょう。
穏便に話し合いを望みたいので、貴殿に武器を降ろしてほしいのであります。」
「この状況でそこまでするか……? まあ別にいいが。ほい、これでいいだろ。」
幼すぎたら殺し合いの認識ができないし、死を理解してれば錯乱する。
では彼女はどうか。汗はかいてなければ、外見とは裏腹に精悍な顔つき。
相手は大人かどうかはともかくとして、場数は踏んではいる様子だ。
此方の武器がハリセンなので戦闘になったところでそも勝ち目はない。
真偽は不明にせよ素直に従い、ハリセンを後方へと投げ捨てる。
ハリセンにそこまで警戒することもないだろとは疑問に思いつつ。
ハリセンが落ちた後も暫く警戒を続けていたが、
「……大丈夫のようでありますね。」
彼女も剣を地面へと突き刺し、敵意がないことを示す。
すると同時に、彼女が隠れていた茂みから一人の少年も顔を出す。
「ね、やっぱり言った通りだったでしょ。
さっきの言動から敵になる可能性は低いって。
態々試さなくたって大丈夫って言ったじゃないか。」
「げ、伏兵いたのかよ。」
黒のインナーの上に青と白を基調とした服を着た、銀髪の少年だ。
バレバレの身の隠し方をするような性格とは余り感じなかったが、
二人いることを気付かせないためのあえてのブラフだと今になって気付く。
事実、それに誘導されて二人いるとは想定してなかった。
「騙すようなことをして申し訳ないのであります。
ですが万が一、と言うのもあるので理解していただければと。」
「こんな状況だしな。少しぐらい疑ってかかる方がいいだろ。」
可奈美だったらわだかまりとかなくすんなり信じるんだろうな、
なんてことを思いながらも相手の判断は正しいとなんとなく思う。
生憎と彼女はそこまで真っすぐな性格ではないので多少思うところはあるものの、
所詮は多少程度。言葉にした通り、初対面を全幅で信頼するのは流石に彼女も不安だ。
なのでその辺はお互い様、と言った風に水に流すことにする。
「にしても驚いたよ。ハリセンをあっさり捨てるなんて。」
「それについては自分同意見であります。
自分達が敵だったら窮地だったのは否めないかと。」
「……ハリセンにどんな思いを抱いてんだよお前ら。」
何かずれたこと考えてるような気がしてならないぞこいつら。
などと思いながらも、一先ず情報の共有をすることになる三人。
その結果。
「よし、俺は考えるのをやめた。」
軽い情報を聞いただけで思考を放棄しそうになった。
二つの世界でマナを搾取し合う世界にいた少年のジーニアスと、
空に島が浮かぶ世界である聖騎士団長を務めていたシャルロッテ。
別世界の概念は隠世があれどもぶっ飛んでいる情報は完全に処理しきれない。
冗談かと思ったが普通に二人とも魔法やなんか斬撃が出せたので、信じるしかなかったが。
(と言うよりシャルロッテは耳の形が所謂エルフ耳なので、そこで気付くべきでもあった)
「いや確かに不死がどうとかアイツ言ってたけどよ、
こういう形で不死の可能性を広げるのって酷くねえか?」
乃亜の存在は想像を遥かに超えている。
荒魂は斬っても条件を満たせばまた形となるので、
てっきり参加者にタギツヒメとかでもいるのかと思っていたが、
少なくともこういう形での異世界があってはもう基準なんてないようなもの。
制限されてるのは幸運か、そんなのを相手にしなければならない不幸か。
仮に御刀があったところでため息しか出てこなかった。
「僕としては二人が年上なのに驚いたんだけど。」
「子供メインと思ったら成人までいるのは聞いてねえぞ。」
「ハーヴィンは一番高いであろうサビルバラ殿も、
102cmである以上どうしようもないのであります……」
「そう、そこなんだよね。僕たちが集められた理由。」
問題はそこでもある。
体格的に子供ばかりが集められていることだ。
ジーニアスは141cmでシャルロッテは90cmなので、
年齢が幼い順に身長が高いと言う珍妙な光景がそこにあった。
ランドセルから子供だけ、ギリギリ十六歳ぐらいもいると想定した薫だが、
シャルロッテの年齢からその考えは破綻している。
「子供ではなく身長が基準とか?」
「そもそも、子供である必要は何なのでありますか?」
「そりゃ、子供なら反抗されたところで……いやそうはならねえか。」
弱い子供なら殺し合いの打破を目指そうとどうにもならない、
とは考えてみたがシャルロッテはその体躯で騎士団団長の立場。
ジーニアスも年齢的に幼いとしても魔法が使える戦闘能力を有する。
選出の基準がそれならば、明らかに薫以外の二人は扱いに困る存在のはず。
「無力な子供を集めるわけでもなければ、
成人どころか戦える奴まで集められてる……どういうこった。」
別世界がホイホイと出てきた現状、選択肢は無限に広がってくる。
無駄であると判断し、そこについては考えないことにしておく。
「あ、目的なら推測でよければいくつかあるよ。」
「マジでか。」
ジーニアスから思わぬ返答が返ってくる。
まだ人柄を知らないので無理もないことではあるが、
彼は名門学校から招待を受けるぐらいの頭脳を持っている。
首輪の仕様次第だが、事と次第によっては貢献もできるだろう。
現状の情報だけで答えに辿り着くのは流石に不可能だとしても、
仮説の一つか二つぐらいなら立てることは難しいものではない。
「単にこういうのをやるなら『殺し合いをしたがらない人』を呼ぶ理由がないよね。」
「俺もよほどのことがなきゃやらんだろうしな。」
仮に薫が乗るとするのはどんなのかを想定してみるが、
エレンが、可奈美たちが、舞草が犠牲になっても殺し合いは乗らず、
寧ろ乃亜をその分只管に怒りのまま殴り続けるイメージしか想像できない。
そう言ったアプローチをされてる様子も現状はないので、
殺し合いを乗るというのはほぼありえないことになる。
「それでも僕達を呼んだってことは必要なことなんだよ。
これで思い当たるものを軽く考えたけど、一つは『マイナスの感情』かなって。」
「マイナスっつーと、憎悪とかの悪感情って奴か?」
ジーニアスの世界にはエクスフィアと呼ばれるアイテムがある。
これを製造していたディザイアンは人間牧場で人々を奴隷のように扱い、
そうすることでマイナスの感情でエクスフィアを培養していったのがある。
殺し合いともなれば誰しもがそういうのに囚われるのは間違いないことだ。
「舞台そのものがそのエクスフィアっつーのを作るの為のフィールドってことか?」
「エクスフィアかどうかはともかくとして、そういう線もあるんじゃないかな。」
感情を収集したりするとかオカルトじゃねえか、
などと一蹴したいのにそうはいかないファンタジー出身の二名。
どうにも否定できず頭を軽く掻きながら受け入れることにした。
「もう一つは『経験』……ってこの言葉だけだと伝わらないか。
カオルは御刀ってのがなかった場合とかなら、何を使って戦う?」
「そりゃ、このハリセンしかまともな武器がないしな。
……いやたかがハリセンだからまともに戦えねえけど。」
「何言ってるのさ。ハリセンは強い武器だし大丈夫だよ。
剣に慣れてなかったらちょっと扱うのは大変かもしれないけど。」
「ハリセンは剣なので大丈夫であります。」
「え、俺がおかしいのか?」
試しにハリセンを刀のように振るって茂みを斬ってみると綺麗に両断。
冗談みたいだが物凄い切れ味にあんぐりと口を開けて呆然としてしまう。
此処まで外見通りだったものと言えばジーニアスの年齢ぐらいで、
何を信じればいいのか別方向に分からなくなってしまう。
「っと、話が脱線しちゃった。とにかくなかったら別のもので戦う。
誰がどういう状況で、どういう使い方をするのか。所謂データ収集さ。」
「データの収集か。鎌府のシュミレーターを思い出すな。」
子供を優先して参加者にしてるのではなく、
子供の体格や性格でも扱える武器を選定して支給したりしている可能性。
乃亜の言う戦略性とは、そういう意味も込められてるとジーニアスは考えていた。
自分達が集められた理由はそう言った相手と戦ってもらう仮想的なのだろう。
戦いに身を投じた経験のある三人ならではの立ち回りも出てくるはずだ。
「自分の世界にも似た敵がいたとは聞き及んでるので、想像しやすいのであります。」
「ガキでも扱える武器を作って、死の商人でもやりたいのか?」
あの性格なら人を死に追いやる武器を量産とかをしても、
平然としてそうではあるので想像することについて難しくはない。
これによって得たデータが今後何に使われるかも分からない。
マイナスの感情と同様に、得体の知れなさが伝わってくる。
何がしたいのかは分からずとも、ろくでもないことだけは理解できた。
「ってか、どっちだったとしても詰んでないか?」
マイナスの感情を出すな、データにならない戦闘をしろ。
この二つの考察から導き出される対抗策はつまりそれらだ。
殺し合いを要求される以上は最悪参加者との衝突は十分にある。
そうなれば悪態だってつきたくなるだろうし、他者の死を悼むだろう。
つまり、どちらも予測可能ではあるが回避不可能の状態でもあった。
「対策ができるなら、武器をいつも通りにしていくことが一番さ。
僕はけん玉と魔法、シャルロッテさんは大剣、カオルは御刀って感じに。」
御刀から神力を引き出せるのは刀使だけ。
自分だけにしかできない戦い方であれば
おのずとそれはデータとなることはなくなる。
特に薫は重量が20kgを超える大太刀の祢々切丸による薬丸示現流。
とても手にした子供が一朝一夕で扱いきれるものでもないだろう。
「それが見つかるのにどんだけ時間がかかるやら。」
と言うより子供が使うのを想定だったのなら、
この殺し合いにおいて祢々切丸はまず存在しない。
仮にあっても、乗り気な相手に渡ればこれまた一苦労だ。
御刀が特殊すぎる故に、単なる刀剣類によって代替も難しい。
ハリセンは確かに驚きの新事実ではあったが、使い勝手は彼女には悪い部類だ。
「どっちの考えにしたって、推測に過ぎないけどね。
別の理由があるのかもしれないけど、今は材料が少なすぎるし。
あくまで懸念する程度だよ、無理して死んじゃったら元も子もないから。」
「だな。」
前途多難。分かってはいたことだが中々のハードルだ。
タギツヒメ、ルシファー、ユグドラシル……各々の世界にて立ちはだかった敵。
いずれも世界が終わりか、それに匹敵するのでそれと比べたらましではあるが、
かといって複数の世界にアクセスできる相手もかなり大概ではある。
「それで、ジーニアス殿。これからの行動方針でありますが……」
情報についても十分に共有できた。
今回はたまたま三人とも戦うことができるが、
殺し合いに乗らない人間全員がそうとは限らない。
いつまでも動かないわけにはいかないだろう。
「それなんだけど、二手に別れておきたいんだ。
固まって行動すると広いから効率も悪いし。」
場所は広大だ。人が増えればそれだけ移動のペースも悪くなる。
そうなればさらに効率と言うのは落ちていくのは明白で、
薫としてはその提案には賛成だった。
「だったらジーニアスとシャルロッテのペアだな。
悪いがハリセンが強いと分かっても、俺はこの中だと弱い。
ついでに、後衛は前衛がいてこそ成り立つものだからな。」
『お姉さん達、二人弱いから此処に置いてかれたんだ。』
脳裏に過るのは、折神親衛隊の一人の言葉。
嘗て相棒のエレンと共に彼女と戦った際にそう言われた。
否定はしなかった。そう言われたように彼女は刀使としては強くない。
スタミナも余りなければ、御刀の都合隙も大きいためサポートも必須。
故にエレンと組み、故にねねが必要だ。だからそれを肯定する程度には実力は低い。
ついでに御刀がないのでは、認めたくはないが自分が一番戦力外だと。
二手に別れるのであるなら、自分が適任だろう。
「僕はシャルロッテさんとカオルで組んでほしいんだ。」
「おい。セオリーを忘れたらだめだろ。魔法使いがソロプレイとか縛りか?」
「僕は運動神経が良くないんだ。だから二人なら、
僕と組むよりも早く人を探すことができると思うんだ。
それに、逃げる手段は確保してるし一人の部分は大丈夫だよ。」
一方でジーニアスは効率の重視。
場所の広さを考えればペースを落とすわけにはいかない。
勿論自分は遅いことになるが、その分二人がカバーしやすくなる。
「カオル殿の言うように危険であります。
カオル殿が一人も危険には変わらない以上、
此処は三人一緒に行動する方が一番でしょう。」
そしてシャルロッテは安全重視。
清く、正しく、高潔に。それが彼女が属するリュミエール騎士団のスローガン。
二人とも共に戦う存在であると同時に、騎士として守るべき存在でもある。
いくら一人でも問題ないとしても、彼女にとって互いに保護の対象だ。
「あー……」
薫の気の抜けた声が虚しく響く。
意見の対立により三者に沈黙が訪れる。
此処にきて全員が人数の振り分けが一致しない。
薫としてはシャルロッテに任せた方がバランスが良く、
効率で言えばジーニアスの方が二人は身軽に動けて、
安全面ならばシャルロッテ……と全てに明確なメリットがある。
かといっていずれもリスクがあるのもまた事実でいかんともしがたく。
「あー、もうめんどくせぇ。間を取るか。」
「間ですか?」
「最初はシャルロッテの提案通り三人で動くとして、
他の参加者と出会ってその状況次第で俺かジーニアスの提案で行く。
解決しないならそのまま継続。効率は落ちるが、全員まだ納得するだろ。」
三人で行動する以上安全は確保できる。
どちらか一方が離れることになるとしても、
出会った人物が戦力になれば残る一人も安全は保障される。
悪い言い方をすれば先延ばしになるものの、妥協案としては悪くない。
「自分としてはその提案に賛成であります。」
「このまま議論しても平行線だろうし、僕もそれでいいよ。」
シャルロッテの意見が一番尊重されてるので、異論はなく、
無駄な時間を使うぐらいなら一先ず行動が優先だ。
肩をすくめながらジーニアスも提案を受け入れる。
「んじゃ、とりあえず森を抜けるとするか。」
開始早々どっと疲れることになるとは思わなかった。
大人であるシャルロッテや頭脳派なジーニアスでは、
話が逆に譲れない部分もある為仕方なく話を進めたりしたが、
真庭学長にこき使われた時のような疲労感が既に感じ始めている。
(帰ったら休暇が欲しい。)
なんてことを思いながら、薫は先を歩きながら気だるげに空を見上げた。
【益子薫@刀使ノ巫女】
[状態]:頭痛
[装備]:ハリセン@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:事件解決して追加労働手当その他もろもろが欲しい
1:刀使の決まり守ってる場合じゃないよな。
2:祢々切丸がねぇ……ついでにねねもねぇ……
3:ファンタジーが過ぎる。頭痛い。休みくれ。
4:ジーニアスとシャルロッテと行動。出会った人次第で俺かジーニアスが別行動。
5:ハリセンが武器って嘘だろおい。
[備考]
※参戦時期は少なくとも胎動編終了以降〜姫和がタギツヒメと融合する前。
※ジーニアスの考察『殺し合いがデータ収集目的かマイナスの感情の収集説』を聞いてます
材料の少なさによる推測でしかない為仮説程度の認識です。
(普段と違う得物でも、自分がこのチームにおける現状の戦力……)
けん玉でマナのリズムを整えることで安定した魔術を使うジーニアスも、
大太刀の刀剣どころか片手剣の薫のどちらも本調子からは離れている。
六竜ガレヲンとの戦いで進化した輝剣クラウ・ソラス・ディオン。
あれと比べては大概の刀剣類とは見劣りしてしまうものだが、
それでも常人にとっての刀剣類もシャルロッテにとっては大剣の類。
だから完全とまではいかずとも、ある程度問題ないレベルに戦える。
改めて自分の立場を理解し、いざと言う時は自分が率先せねばと気を引き締める。
【シャロルッテ・フェニヤ@グランブルーファンタジー】
[状態]:健康
[装備]:刀剣類@不明(クラウ・ソラス・ディオンではない)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:清く、正しく、高潔に。戦いを止める。
1:カオル殿とジーニアス殿と行動。
2:身長……
3:カオル殿の言う御刀とクラウ・ソラス・ディオンを二人で探す。
4:団長殿もいるのでしょうか。
[備考]
※参戦時期はリミテッドシャルロッテ(風属性)の3アビ習得エピソード終了後です。
服装についてはリミテッドの白ではなく、水属性のSSR版の青いドレスです
※ジーニアスの考察『殺し合いがデータ収集目的かマイナスの感情の収集説』を聞いてます。
材料の少なさによる推測でしかない為仮説程度の認識です。
(ロイドと同い年と、姉さんより年上かぁ……)
二人の後をジーニアスは付いて行きながら思った。
最初は自分のような幼い子供だけと考えていたが、
外見は子供であっても年齢が一致しない参加者がいる。
もしそうなのであれば、もしかしたらと思えてしまう。
幼い少女の姿から年を取らなくなって長い年月を過ごした想い人。
初めての同族の友達だったが、憎しみを捨てられず敵対したハーフエルフの少年。
どちらも現状における参加者の基準を満たしている可能性は十分にあると。
でもいないでほしい。後者はたとえ敵だとしても、こんな形で戦いたくないから。
【ジーニアス・セイジ@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:参加者の基準による不安
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3(逃走用のものが少なくとも一つ)
[思考・状況]基本方針:事態を解決する。
1:シャルロッテさんとカオルと行動。出会った人次第で僕かカオルが別行動。
2:他の皆はいるのかな(特にプレセアと……)
3:けん玉を探したい。できるなら暫く戦闘を避ける。
[備考]
※参戦時期は少なくともフラノールでロイドと雪を見終えた後〜ミトスを倒す前。
クラトス、ゼロスどちらのルートかは採用された場合後続の書き手にお任せします。
※『殺し合いがデータ収集目的かマイナスの感情の収集』と考えてます。
材料の少なさによる推測でしかない為仮説程度の認識です。
【ハリセン@テイルズオブシンフォニア】
薫に支給。言うネタ枠に見せかけてシンフォニアにおいては、
主人公のロイドが装備できる剣でもトップクラスの攻撃力を持つ。
なんならストーリー上重要なマテリアルブレードよりも斬撃に関しては上回っている。
投下終了です
投下いたします。
とある納屋の中、そこでは一人の少年がスケッチブックを片手に絵をかいていた。
その少年の名はネロ。
フランダース地方の小さな農村出身の、画家になることを夢見る少年であり、あの世界名作劇場でおなじみの『フランダースの犬』の主人公でもある少年だ。
そんな彼は今、スケッチブックを片手に絵をかいていた。
彼の目の前にある光景、それは……
「あぁぁあぁぁああああああっっっ!!!熱い熱いアツイィィィィッッッ!!!」
全身を炎に包まれた状態で悶え苦しむ少女、アロアの姿だった。
「アロア、なんだいその踊りは?もっと腰を振りなよ!」
そしてそれを見つめるネロ少年は火炎放射器を背負いながら、嗤っていた。
実をいうとこのネロ少年は、とある漫画家が原作をかなりダークな内容にパロディした作品の登場人物であり、
それ故にかなり歪んだ美意識と人格を持ち合わせている危険人物なのである。
「いいねぇ!最高だよ君は!!」
「うううううああぁぁぁあああああぁあああっ!!!」
ネロの言葉に応える余裕などないのか、少女は必死になって身体を動かして暴れまわった。
しかしどんなにもがいでも彼女の身体から広がる炎は一向に消える気配はない。
むしろもがく度にさらに勢いを増して燃え広がっていくようにさえ見えた。
そう、まるで彼女を中心に地獄絵図が広がっているかのように……
(ネロ……一体、どうしちゃったの……?)
そして火に包まれたアロアは死ぬまで踊り続けた後、隅の塊となった姿のまま倒れ、塵へと化していったのだった。
【アロア@フランダースの犬(アニメ) 死亡】
「……だめだね。これじゃああの時できた"誰にも真似できない最高の絵"には程遠いよ……!」
そしてアロアが苦しみ抜いて死ぬ様を余すところなくスケッチに描き上げたネロ少年はため息をつきながらそれを閉じてそうつぶやいた。
「…まあ、こんなところにこもってても仕方ないか。さあ、最高の絵を描きに出発だ!」
そうしてしばらくすると彼は納屋の扉を開けて外へと歩き出していった。
―― 今わの際に完成した最高の絵を、もう一度完成させるために……
―― "周囲の人に悪意を振りまき、最終的に人々になぶり殺しにされた人間の姿"を、今度は絵画として描き起こすために……。
【ネロ@世界冥作劇場】
[状態]:健康、自分が求める題材が見つからない苛立ち(中)
[装備]:スケッチブック@現実、火炎放射器@FARCRY 5(ファークライ5)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:誰にも真似できない最高の絵を、もう一度完成させる。
1:自分自身を最高の絵にしたはずなのに、なぜ今この場にいるのかは分からない。
2:もう一度、あの素晴らしい絵を、今度は他の人の姿で作り上げたい。
3:パトラッシュの導きがないのは少し不安。
[備考]
参戦時期は怒り狂った人々によってパトラッシュともどもなぶり殺しにされた後。
『支給品紹介』
【スケッチブック+鉛筆@現実】
ネロに支給。用紙を本のように束ねたもので、完全に折り返して絵を描くのに他のページが邪魔にならないように渦巻状の金具でまとめられたもの。
またスケッチを行うための鉛筆も付属している。
【火炎放射器@FARCRY 5(ファークライ5)】
ネロに支給。広範囲を攻撃できる火炎放射器で威力も申し分なく、敵に囲まれた際は頼りになる。
もちろん火は燃え移るものなので、自分を燃やさないように注意が必要。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します
「子供(ガキ)の戯言だよ。お前の言ってることは」
そう言ってから。
あぁ、実際にガキだったな、と。
自分の言っている事のおかしさに気づいて、ふっと笑った。
「……っ!貴方だって、子供じゃない、リップ君!!!」
目の前の妙な格好をした子供(ガキ)は、そう言って俺の名前を呼び、睨んでくる。
こう見えても、もうとっくに酒を呑める年なんだがな。
苦笑しつつ、まぁそう思うのも仕方ないか、と同時に考える。
何しろ今の俺の姿は情けないが愛くるしい。
金の短髪や左目に据えた眼帯はそのままだが、肉体は子供のころに戻っている。
此処に来る少し前。
俺──“不治”の否定者、リップ・トリスタンは不死の否定者を相手に交戦し、ヘマをした。
心臓をぶち抜かれて、死んでいた肉体の蘇生の代償が、今の子供の姿だ。
…その子供の姿が原因でこの殺し合いに招かれたのだとしたら、更に情けない話だ。
「命がけの賭けに誘うなら、少しは現実的な視点で話をしろって言ってるんだ、イリヤ」
「……っ!」
表面上は努めて冷徹を装いつつ、我ながら情けない上に大人げない言葉だな、と思った。
だが、それでも目の前に立つイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと名乗った少女には覿面だった。
彼女と出会ったのはこの会場で目覚めてから二十分程経ってからだった。
最初は殺し合いに乗っていないというイリヤに話を合わせて、殺し合い反対派の様に振舞った。
幾つかの情報交換の後、結果的に目の前のガキは何の情報も持っていないことが分かり。
今はこうして、イリヤは俺の前で血のにじむ左の脇腹を抑えて向かい合っている。
「ゲームを破綻させるなんて、話をしているだけで何時首輪が弾け飛んでもおかしくない。
俺達の命はあの乃亜ってガキに完全に握られてる、分かるな?」
俺は殺し合いに乗った。
何故かと問われれば返事は簡潔に済む。死ぬわけにはいかなかったからだ。
過去に戻り、不治の呪いが目覚め、俺が殺してしまった彼女(ライラ)を救うその日まで。
何としても、死ぬわけにはいかなかった。
元よりその目的を達成するためならこの忌まわしい力に口づけをして、何人だって殺すつもりだった。
俺に、殺し合いに乗る事に躊躇は無かった。
「首輪を外すことも、乃亜を叩くことも、お前の言っている事は具体性が何もない。
…頑張れば何とかなる?皆で協力すればきっと解決する?そんな不確かな言葉に命を賭けろってか?」
イリヤには悪いが、俺にはそんな神が与える様な奇跡なんてモノとは程遠い人種だ。
むしろ神を憎んですらいる。八つ裂きにしてやりたい程。
神様や奇跡を信じていた頃は、俺にとってとうの昔に過ぎ去った時間だった。
そんな物よりは、俺達を突然此処へと拉致し、実際に兄弟を生き返らせて見せた乃亜の言葉の方が、おれにとってはより確かな物だ。
奴の言葉に従って殺し合いに優勝すればライラが帰って来るなら。
俺にとってそれは、他のガキ共とお手て繋いで帰るよりも余程ハッピーエンドだった。
「───話にならないんだよ」
そう言って、俺は一緒に協力して乃亜に抗おうと宣う子供の言葉を切って捨てた。
イリヤは俺の言葉を受けて、ショックを受けた顔して、視線は泳いで、言葉に詰まる。
そして、俯いてしまった。
彼女のその様を眺めながら、しかし、変な格好をした奴だな、と。
俺は無感情にそう思った。
黒の外套に、側頭部に据え付けられた髑髏の面。
おおよそこの年頃の少女が好むには趣味が悪いと言わざる得ない格好だった。
まぁ、どうでもいい話だが───
「───もし」
引き絞るような声を、イリヤが発する。
どうでもいいことに割かれていた意識が、呼び戻される。
「もし、私が…リップ君が納得できるだけの条件を用意出来たら…協力してくれる?」
イリヤの紅い二つの瞳が、俺を捉えてくる。
……真っすぐな眼だった。
ついさっき打ちのめされたとは思えない程、真っすぐに、彼女は俺を見てきた。
瞳の色と相まって、揺らめく炎の様だと思った。
「……だが、お前は何もできない。ここで俺に殺される。
お前の腹についたその傷は、もう俺が死ぬまで治らない。
そして、この条件を聞いた時点で、お前が俺を殺そうとすれば、それは治療行為に当たる」
UNREPAIR(不治)
それが俺に刻まれた呪いであり、他人の命を否定するための武器。
俺に傷つけられた時点で、イリヤは既にゲームオーバーだ。
傷の深さ的に、もうあと二時間も保たないだろう。
俺は静かに、目の前の少女に「終わりだ」と、宣告した。
しかし、彼女は。
「……ううん。終わってなんて、ない」
静かに首を振って、俺から瞳を逸らさず。
状況が動いたのは、次の瞬間の事だった。
ダッと、目の前のイリヤが駆けだす。
俺もこれには馬鹿な、と驚きを隠せなかった。
だって、彼女が俺を害するつもりで向かってきているというなら。
不治が確実に作動するはずなのだ。
「………ッ!!」
完全に出遅れた、だが、それでもイリヤは傷の分遅く、俺の方が僅かに早い。
イリヤがどんな絡繰りで不治の強制力から逃れたのかは知らない。
だが、不治を破るような危険な相手を見逃すわけにはいかない。
俺は一瞬で心を冷たい氷に沈めて──義足を振るった。
古代兵器(アーティファクト)『走刃脚(ブレードランナー)』。
空気を圧縮し、UMAという怪物さえ両断可能な刃を生成できる兵器。
当然人の子供の体など一撃で両断できるそれを俺はイリヤに使った。
「あ、…がっ…!」
走刃脚により生み出された空気の刃が、イリヤの体を裂く。
胴体を上下に文字通り二つにされたのだ、誰がどう見ても即死だろう。
そう思っていた。その直後に両断されたイリヤの体が霞の様に消え失せなければ。
「何……!?」
今度は目を見開くだけに留まらない。驚愕の声すら上げてしまった。
だが、同時に頭の中の冷静な俺が、一つの答えを導き出す。
不治を受けても行動できた体。走刃脚を受けて消え失せた体。
導き出される答えは、一つしか浮かばない。
(そうか、こいつ、虚像──)
「う、わああああああっ!!!」
そもそも、イリヤが最初から攻撃を受けていなかったとしたら、全てが繋がる。
今迄俺が向かい合っていたのは、ただの虚像だとしたら、不治を受けても動けたのも納得がいく。
その答え合わせをする様に──俺の背後から、イリヤの叫び声が響いた。
振り返った先に、拳を握り締めたイリヤがいる。
(───が、まだ甘い)
走刃脚に再び意識を集中、圧縮した空気圧で間合いを取る。
この空気圧を用いた移動法はただの人間では目に映りすらしない高速移動だ。
当然、イリヤに対応できるはずもなく。
間合いさえ取ってしまえば、今度こそ走刃脚の刃はイリヤを捉える。
(惜しかったな)
そう考えながら、走刃脚に空気を吐き出させようとする。
異変に気付いたのは、その時の事だった。
何時も走刃脚を使用する際に聞こえる風斬り音がしない。
空気の放出も、平時なら一瞬で為されるはずが未だに始まらない。
俺は、嫌な予感を感じて視線を下に向けた。
「───これ、は?」
走刃脚には、白い茨が絡みつき、噴射穴を塞いでいた。
いや、塞ぐだけに止まらない、茨は足先全体に達し、その移動を阻害している。
茨の先を辿れば、美しい白薔薇の花弁が綻んでいて。
この状況でなければ、思わず見惚れそうな美しさを主張していた。
だが、そうしている暇は当然ながら今の俺にはなく。
「クッ!小賢しい!!」
噴射穴を塞いでいる茨を強引に引きちぎり、何とか使用可能な状態まで引き戻す。
血が出るが構いはしない。今は走刃脚を再使用可能な状態に戻す事こそ最優先なのだから。
だが、時は既に遅かった。
「───行くよ」
声につられて視線を引き戻せば、イリヤはもう目の前にいた。
紅い瞳を煌めかせて。意志の焔を燃やして。
ぎゅう、と、小さな拳を握り締めている。
俺は咄嗟に両腕をクロスさせて頭部を守ろうとするが、無意味だった。
「───がああッ!?」
ゴッ!!!
ジュニアハイスクールに通っているであろう年齢とは思えない程のバカ力で。
彼女の小さな拳が、俺の頬に突き刺さった。
その勢いで小さく縮んでしまった俺の体は見事なまでに宙を舞い、数メートル吹き飛んだ。
「がふッ…ふっ…ぺ…っ!!おー…いてて…」
口腔に鉄臭い味わいが広がる。
先日不死に殴られたばかりだというのに、また奥歯が欠けたかもしれない。
正直な所、滅茶苦茶に痛い。
少しよろめいて立ち上がりながら、痛みをこらえて頭を回す。
白い茨はイリヤが行った物か?
恐らく違うだろう。彼奴は今までそんな事ができる素振りは見せていなかった。
となれば、新手か、協力者がいるのだろう。
この状態で、二対一を相手取るのは少々分が悪い。
「……OK、退こう」
判断は早かった。
年端もいかない少女を相手に退くのは屈辱ではあったが、負けるよりはましだ。
此処にラトラは恐らくいないだろう。孤軍である以上、無理をするわけにはいかない。
俺は、失敗するわけにはいかないのだから。
「次は命をもらうよ、イリヤ。必ずな
次会った時も、甘っちょろく殺し合いを止めるって、精々生きて言えてると良いな」
そう言って、表情だけでも不敵に笑いながら、俺は跳んだ。
そのまま走刃脚から空気を放出し、浮遊する。
見下ろすイリヤの表情は、相変わらず精悍な物だった。
「死なないよ。
……諦めもしない、私は」
その言葉は、我儘を通そうとする時の子供の様に。
実に、力強い物だった。
俺が、当の昔に置いてきた物が込められていた。
その言葉を受けて、俺は走刃脚から空気を噴射しながら小さく、もう一度。
「頑張れよ」と、そう呟いた。
分かっている。俺はライラの為に生き残り、優勝を目指す。
決定事項に変わりはない。俺はその為なら、全てを賭けられる。だが。
イリヤのクソの様な子供の我儘に、その時だけはそう言葉を掛けてやっても良かった。
そんな気分だった。それだけの話だった。
【リップ=トリスタン@アンデットアンラック】
[状態]:掌に切り傷、右頬へのダメージ(中)、
[装備]:走刃脚(ブレードランナー)
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:優勝し、ラトラの元へと帰る。
1:殺し合いに乗る。ただし、必要以上のリスクは犯さない。
2:願いを叶える、か…本当かねぇ。
3:もし本当に、イリヤがこの殺し合いを打破する手段を見つけたら…?
[備考]
※参戦時期は6巻、アンデッドアンラック戦終了後、秋(オータム)戦直前です。
※古代遺物(アーティファクト)『ライフ・イズ・ストレンジ』の効果により、子供の姿になっています。
───私は憎むわ、私を愛してくれなかった世界の全てを。
「………私はそう言ったんです。お姉さまに」
そう言って、私──イリヤスフィール・フォン・アインツベルンに語るのは。
私の腰ほどまでの大きさの綺麗な…本当に綺麗な、白薔薇のお人形さんだった。
彼女は雪華綺晶、と。私にそう名乗った。
私が雪華綺晶と出会ったのは、リップ君と出会う少し前のこと。
今、私の肩の隣でふよふよと浮いている愉快型魔術礼装──『マジカルサファイア』も。
リップ君に襲われた時に使った英霊の力が込められた『アサシン』のクラスカードも。
何方も私のランドセルに入っていた物じゃなくて。
支給された雪華綺晶ちゃんから、譲ってもらった物だった。
彼女がいなければ、私はリップ君の手によってとっくに脱落しているだろう。
「でも、お姉さまは私に言ってくれました。泣かないで、と」
「初めてお父様に逆らって、私に何もかもを下さるのだと」
「戦い、奪うのではなくて…誰も一人にしないこと。生み出すこと。愛すること」
「それが──真紅お姉さまの………アリスゲーム」
そう言って、雪華綺晶ちゃんは私に指輪を差し出してくる。
月明かりに照らされる白い薔薇みたいなその姿は…ぞっとするくらい、綺麗だった。
『イリヤ様…』
傍らのサファイアが、私に少し心配そうな声を掛けてくる。
心配してくれているのだろう。私の一番の友達の、美遊の相棒だから。
少しだけ魔術の世界に片足を踏み込んだ私にも分かる。
これから行うのは『契約』だ。
凛さんと出会った時と同じ。なり行きで。お互いの事も良く知らなくて。
サファイアが心配するのも、無理はないと思う。
「私は……真紅お姉様の想いに応えたい」
「このアリスゲームととても良く似た戦いに、逆らいたい」
「でも、既に真紅お姉様の身体でエーテル化した私に、以前ほどの力はありません」
「だから、力を貸して欲しいのです」
「貴女の瞳は…真紅お姉様に似ているから……」
そう言って雪華綺晶ちゃんは、白い茨に支えられた指輪を、私の前へと。
ハッキリ言って、ちょっと迷った。
何しろさっき殺し合いをしろって言われたばかりだし。もう襲われてもいたし。
何もかもがいきなりで。これから先どうしたらいいか、私にはさっぱりだった。
だから、直感に従おうと、そう結論を出して傍らのサファイアを見る。
『…イリヤ様の、お心のままに。貴女を美遊様と姉さんの元へ帰すことが、私の役目ですから。』
私に、もう迷いは無かった。
もう二度も、雪華綺晶ちゃんには助けられている。
その恩を、少しだけでも返したかったし。何より。
雪華綺晶ちゃんのお姉さん…真紅さんの言葉は、不思議と胸に響いたから。
会ったことも無いのに、彼女のその言葉は、信じてもいいと思えるほどに。
だから、私はそっと差し出された指輪に口づけをして、そして雪華綺晶ちゃんに言った。
「私も、助けたい友達がいるんだ」
「だから、こんな所で止まってるわけにもいかない」
「でも私だけじゃ、この世界(ころしあい)のルールは壊せない」
「だから…一緒に、戦おう」
全ての願いが叶うというのなら。
人の願いを、希望を託されるというのなら。
全ての人の幸せを願うべきだ。
少なくとも私はそう思ってる。そして、思ったままの事を私は伝えた。
そうして、僅かな沈黙の後に。
雪華綺晶ちゃんは私の言葉に優しく微笑みを浮かべて、私の手を取った。
もう、それ以上の言葉は必要が無かった。
「私は、誇り高いローゼンメイデンの第七ドール、雪華綺晶。
そして……今は、幸せな…あなたのお人形。よろしくお願いします。マスター」
【雪華綺晶@ローゼンメイデン】
[状態]:健康、イリヤと契約。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:真紅お姉様の意志を継ぎ。殺し合いに反抗する。
1:殺し合いに反抗する。
2:イリヤを守る。
[備考]
※YJ版原作最終話にて、目覚める直前から参戦です。
※イリヤと媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※Nのフィールドへの立ち入りは制限されています。
※真紅のボディを使用しており、既にアストラル体でないため、原作よりもパワーダウンしています。
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、雪華綺晶と契約。
[装備]:カレイドステッキ・サファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード『アサシン』Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから脱出して、美遊を助けに行く。
1:殺し合いを止める。
2:雪華綺晶ちゃんとサファイアを守る。
3:リップ君は止めたい。
[備考]
※ドライ!!!四巻以降から参戦です。
※雪華綺晶と媒介(ミーディアム)としての契約を交わしました。
※クラスカードは一度使用すると二時間使用不能となります。
投下終了です
新しいポケモンアニメ記念も込めていくつか投下します。
―――怖いのは、最初の一歩だけ。
―――踏み出せば、見たこともない景色が広がって、怖かったことなんて忘れてしまうのさ。
―――ポケモンが一緒なら大丈夫。
「とんでもないことにまきこまれてしまった……」
(こんなの想定外すぎるよ……)
乃亜によるバトルロワイアルに巻き込まれた少女は、足が振るえている。
少女の名はリコ。
パルデア地方出身の彼女はカントー地方にある全寮制のセキエイ学園に入学し、家から離れ、一人での学園生活が始まった。
マイペースなニャオハとの関係に試行錯誤する中、おばあちゃんのペンダントを巡って追い回されることになってしまった。
ふと、もしかして自分って、物語のヒロインですか〜?と思った瞬間。視点が暗転して、この有様。
「というか、殺し合いだなんて意味わかんないですけど」
(まさか、おばあちゃんにもらったペンダントのせいじゃないよね……)
チラリと胸のペンダントを見つめる。
どうして、おばあちゃんのペンダントが狙われているのか。
フリードさん達の目的は一体、何?
エクスプローラーって何?
聞けたいことも聞けず、流されるままのこの状況。
訳が分からないよ。
「あの月……秘密の場所と全然違う……」
殺し合いが始まっている深淵の時間。
ふと、空を見上げると月が爛々と輝いている。
空に浮かぶ月はどこでみても変わらないかもしれない。
でも、違う。
ニャオハと特訓したあの綺麗な湖に浮かんでいたあの月とは雲泥の差だ。
「あの乃亜って子。私が会ったこともないタイプ……」
(出会いって最初の印象が大切……あの子は論外だよ……)
ポケモンバトルでもない、生身での殺し合いを強要する人なんて、今までの人生にいなかった。
ポケモンバトルは夢見ていたけど、こんなバトルはドキドキしない。
最悪の気分だ。
「というか、このままじゃ、私、学園を退学になっちゃうんじゃ……」
これからの学園生活が。
303号室のルームメイトであるアンとせっかく友達になれたのに。
あれでサヨナラなんて嫌だ。
「でも……」
―――パン
気合を込めて自分でほっぺを叩く。
自分の事を知ってもらうには自分から話し出すことが大切。
そう、アンから教えてもらった。
覚悟もできている。
おばあちゃんのペンダントを奪いに来た人達から逃げた時に恐怖は飛び越えた。
だから、口に出す。
「私の考えていることは私はもう分かるよね」
キッと目を見開く。
そして、闇路を見据える。
私には褒められた度胸がある。
「踏み出さなきゃ、生きて帰れない!」
そう、リコの考えていることはただ一つ。
生きて帰る。
そうだ。ここで死ぬわけにはいかない。
だってまだ、見つけてない。自分の住む世界の美しさを。
リザードンの腕の中から見えたどこまでも続く地平。
あの美しさをもっともっと、この目で見たい。
ニャオハと。まだ、このはも成功してないけど。できると信じている。
そして相棒ポケモンであるニャオハといっぱい絆を結ぶんだから!
「せ―――――の!!!!!」
【リコ@アニメポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:おばあちゃんのペンダント(支給品ではありません)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(ポケモンはいません)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:他の参加者と協力してバトルロワイアルを止める
[備考]
1話、自分は物語のヒロインではないかと思った瞬間からの参戦です。
「むーっ!あのおにーちゃんはキライ!」
海馬乃亜による蛮行に憤慨する一人の幼女。
しかし、その実態はポケモンリーグ関係者かつ四天王の一人。
人は幼女をこう評する。
はがねつかいのポピーと!
……だがそれは「ポケモントレーナー」としての実力。
ポケモンバトルではない、純粋の殺し合いにおいては最弱に等しい。
このバトルロワイアルに選ぶなんて嫌がらせとしかいうほかないだろう。
【ポピー@ポケットモンスターSV】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:海馬乃亜をこらしめる。
1:他の参加者と協力してバトルロワイアルを止める
2:支給品にポケモンがいないか探す
[備考]
SVの主人公がチャンピオンロードを制覇してからの参戦です。
「こんな冒険をオレは望んでなんかいないッ!」
海馬乃亜によるこのバトルロワイアルに嫌悪感を隠しきれない少年。
少年の名はサトシ。
ポケモンマスターを夢見るポケモントレーナー。
故郷、マサラタウンをサヨナラしてからどれだけたったのだろうか。
様々な地方を仲間達と旅した結果、サトシはワールドチャンピオンシップスの決勝戦にて世界チャンピオンダンテに勝利してチャンピオンの座を手にした。
しかし、彼の冒険はそこで終わりではない。
サトシの夢はチャンピオンにあらず。
ポケモンマスターなのだから。
ママから渡された新しいシューズを履き、新たな冒険に出た矢先にサトシは巻き込まれてしまった。
ポケモンバトルではない。殺し合いに。
「ピカチュウ……待っていてくれ!オレは必ず生きて帰るからな!」
今はいない、常に傍にいた相棒に誓う。
生きて帰る。
サトシの冒険はつづくったらつづくのだから。
【サトシ@アニメポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る。
1:他の参加者と協力してバトルロワイアルを止める
2:ピカチュウ……絶対にお前の元へ帰るからな!
[備考]
アニメ最終話後からの参戦です。
全たんパン入場!!
短パンの中の短パン!! 短パンオブキング!!!
ポケットモンスター青 たんパンこぞうーーーー!!!
電話登録可能!! これで何度も短パンを拝めるぜ!!!
ポケットモンスター銀 たんパンこぞうのゴロウ!!!
カナズミジムには短パンこぞうが二人いる!! ジムリーダーのツツジは短パン好きか!!!
ポケットモンスタールビー たんパンこぞうのカツオ!!!(もう一人はタロウ)
ポケモンやしきに佇む短パン!! それは短パンの逆襲か!!!
ポケットモンスターファイアレッド たんぱんこぞうのユウリ!!!
手持ちポケモンはまさかの御三家!! オーキド・ウチギの刺客か!!!
ポケットモンスターエメラルド たんぱんこぞうのケンゴ――――!!!
出会えるのは体験版のみ!! 伝説のポケモンならぬ伝説の短パン!!!
ポケットモンスターダイヤモンド たんぱんこぞうのダイチ――――!!!
まさかのバトル回避!! その短パンを鑑賞させるためだけにジムにいるのか!!!
ポケットモンスタープラチナ たんぱんこぞうのシンスケ――――!!!(もう一人はユウタ)
再戦できるのはゴロウだけじゃねぇ!! もう一人追加だ!!!
ポケットモンスターソウルシルバー たんぱんこぞうのショウヘイ!!!
シリーズ初の賞金1000円越え!! 短パンのくせになまいきだ!!!
ポケットモンスターブラック たんぱんこぞうのヤスヒロ!!!
殿堂入り後はLV60!! まさかの初戦は舐めプか!!!
ポケットモンスターブラック2 たんぱんこぞうのショウタ――――!!!
ハクダンジムにも二人いる!! いいんじゃない、いいんじゃないの!!!
ポケットモンスターX たんぱんこぞうのマサオ――――!!!(もう一人はド二)
賞金まさかの32円!! なけなしのお金を奪うんじゃねぇ!!!
ポケットモンスターアルファサファイア たんぱんこぞうのイサム――――!!!
出会えるのは特別体験版!! 伝説のダイチの再来か!!!
ポケットモンスタームーン たんぱんこぞうのリョウタ――――!!!
ポケモンリーグに挑戦!! 最強の短パンか!!!
ポケットモンスターウルトラムーン たんぱんこぞうのタロウ!!!
コイキングLV65!! 己に課した縛りプレイ!!!
ポケットモンスターLet's Go! イーブイ たんぱんこぞうのタケルーーーー!!!
もはやこぞうというよりおぼっちゃま!! ショタコン好きに狙われる!!!
ポケットモンスターソード たんぱんこぞうのゲン!!!
全体的に賞金アップ!! お小遣いが増えたのか!!!
ポケットモンスターシャイニングパール たんぱんこぞうのカツミ!!!
……ッッ どーやらもう一名は目と目を合わせてもポケモンバトルはしないようですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ
【たんぱんこぞう@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモン青からの参戦です。
【たんぱんこぞうのゴロウ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモン銀からの参戦です。
【たんぱんこぞうのカツオ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンルビーからの参戦です。
【たんぱんこぞうのユウリ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンファイアレッドからの参戦です。
【たんぱんこぞうのケンゴ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンエメラルドからの参戦です。
【たんぱんこぞうのダイチ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンダイヤモンドからの参戦です。
【たんぱんこぞうのシンスケ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンプラチナからの参戦です。
【たんぱんこぞうのショウヘイ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンソウルシルバーからの参戦です。
【たんぱんこぞうのヤスヒロ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンブラックからの参戦です。
【たんぱんこぞうのショウタ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンブラック2からの参戦です。
【たんぱんこぞうのマサオ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンXからの参戦です。
【たんぱんこぞうのイサム@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンアルファサファイアからの参戦です。
【たんぱんこぞうのリョウタ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンムーンからの参戦です。
【たんぱんこぞうのタロウ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンウルトラムーンからの参戦です。
【たんぱんこぞうのタケル@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンLet's Go! イーブイからの参戦です。
【たんぱんこぞうのゲン@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
ポケモンソードからの参戦です。
【たんぱんこぞうのカツミ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して自分が最強のたんぱんこぞうだと証明する
1:目と目があったらポケモンバトルだ!
[備考]
シャイニングパールからの参戦です。
皆さんはどの作品のたんぱんこぞうが好きでしょうか?
投下終了します。
投下した直後で申し訳ありませんが、ウチギではなく、ウツギでした……
修正したのをもう一度投下します。
全たんパン入場!!
短パンの中の短パン!! 短パンオブキング!!!
ポケットモンスター青 たんパンこぞうーーーー!!!
電話登録可能!! これで何度も短パンを拝めるぜ!!!
ポケットモンスター銀 たんパンこぞうのゴロウ!!!
カナズミジムには短パンこぞうが二人いる!! ジムリーダーのツツジは短パン好きか!!!
ポケットモンスタールビー たんパンこぞうのカツオ!!!(もう一人はタロウ)
ポケモンやしきに佇む短パン!! それは短パンの逆襲か!!!
ポケットモンスターファイアレッド たんぱんこぞうのユウリ!!!
手持ちポケモンはまさかの御三家!! オーキド・ウツギの刺客か!!!
ポケットモンスターエメラルド たんぱんこぞうのケンゴ――――!!!
出会えるのは体験版のみ!! 伝説のポケモンならぬ伝説の短パン!!!
ポケットモンスターダイヤモンド たんぱんこぞうのダイチ――――!!!
まさかのバトル回避!! その短パンを鑑賞させるためだけにジムにいるのか!!!
ポケットモンスタープラチナ たんぱんこぞうのシンスケ――――!!!(もう一人はユウタ)
再戦できるのはゴロウだけじゃねぇ!! もう一人追加だ!!!
ポケットモンスターソウルシルバー たんぱんこぞうのショウヘイ!!!
シリーズ初の賞金1000円越え!! 短パンのくせになまいきだ!!!
ポケットモンスターブラック たんぱんこぞうのヤスヒロ!!!
殿堂入り後はLV60!! まさかの初戦は舐めプか!!!
ポケットモンスターブラック2 たんぱんこぞうのショウタ――――!!!
ハクダンジムにも二人いる!! いいんじゃない、いいんじゃないの!!!
ポケットモンスターX たんぱんこぞうのマサオ――――!!!(もう一人はド二)
賞金まさかの32円!! なけなしのお金を奪うんじゃねぇ!!!
ポケットモンスターアルファサファイア たんぱんこぞうのイサム――――!!!
出会えるのは特別体験版!! 伝説のダイチの再来か!!!
ポケットモンスタームーン たんぱんこぞうのリョウタ――――!!!
ポケモンリーグに挑戦!! 最強の短パンか!!!
ポケットモンスターウルトラムーン たんぱんこぞうのタロウ!!!
コイキングLV65!! 己に課した縛りプレイ!!!
ポケットモンスターLet's Go! イーブイ たんぱんこぞうのタケルーーーー!!!
もはやこぞうというよりおぼっちゃま!! ショタコン好きに狙われる!!!
ポケットモンスターソード たんぱんこぞうのゲン!!!
全体的に賞金アップ!! お小遣いが増えたのか!!!
ポケットモンスターシャイニングパール たんぱんこぞうのカツミ!!!
……ッッ どーやらもう一名は目と目を合わせてもポケモンバトルはしないようですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッッ
今度こそ、投下終了します。
ご迷惑おかけして申し訳ありません。
投下します
バトルロワイアルの会場に配置された小学校の教室のうちの一つの中に、参加者として選ばれた少女達が立て籠もっていた。
教室の扉には机と椅子で簡易的なバリケードを作り、侵入者を防いでいる。
「とりあえずはこれで凌げそうだけれど……」
教室の窓の外を見渡しながら、源静香――友人からはしずかちゃんと呼ばれている少女が呟く。
「まるちゃんみたいな私達が知ってる人も、巻き込まれてるのかな……」
怯えを隠せない様子で、穂波たまえ――親友からはたまちゃんと呼ばれている少女が言う。背は静香よりも低く、学年にして2年ほど年下といえる。
「乃亜って人に集められたとき、たまえちゃんが知ってる人はいたの?」
「分かりません……。あんなのを見せられて、何も考えられなかったんです……」
俯きながら、たまえは静香の問いに首を振る。
「そうよね……あんなことが起こるなんて……」
静香もここに飛ばされる前の、海馬乃亜が行った残虐な行いや死者蘇生といったあまりにも現実離れした光景が脳裏に蘇り、息を詰まらせる。
静香もまた、自分の知人がいたかどうかはよく覚えていない。様々な冒険を共にしたドラえもんやのび太、ジャイアンやスネ夫がいてくれれば頼もしいのだが。
「しずかさんもたまえさんも、心配な人がいるなら今すぐ探しに行くべきよ!ここでじっとしているわけにもいかないでしょ?」
そう言って声を上げるのは、桜田ネネだ。身長はたまえよりもさらに低く、年齢も5歳と見ての通り幼稚園児だ。
それを聞いて、静香とたまえは困ったように顔を見合わせる。
「でもね、ネネちゃん」
「あまり動き過ぎるのは危険よ。今の私達が襲われたら、誰も助からないわ。私やたまえちゃん、ネネちゃんだけじゃない、もっと小さい子もいるのよ?」
そう言って、静香はネネの隣へと視線を移す。そこには、花柄のワンピースを着た幼い女の子がいた。ネネよりもさらにさらに背は小さく、齢にして3歳程度だろうか。あまり殺し合いに参加させられたことによる動揺はなく、いまいち状況を把握していないようだった。
「……わたしのこと?しずかもたまえもネネも、みんなおっきいよ?」
静香、たまえ、ネネから視線を移されて、女の子はきょとんとしながら小首を傾げる。
3歳でありながら、基本的な会話は可能なようだった。
静香、たまえ、ネネ、そして女の子は、運よくこの小学校で出会うことができた。全員が互いにゲームに乗っていないことを確認すると、静香の発案でとにかく身を隠せる場所として教室に立て籠もることにしたのだ。
この中でも、静香は明らかに最年長だったため、ある種の責任感を持っていた。
「それでも、こんなところに籠ったまま何もせず動かないなんて、何一つ良くならないわ!そりゃアタシだって怖いわよ!怖いけど……襲ってくる人だけじゃなくって、友達や協力してくれる人とも会えるかもしれないでしょ!?ウジウジして何もしない人、アタシキライっ!」
「ネネ、おこらないで」
ネネはそう言って、ぷいっとそっぽを向いた。そんなネネを見上げながら、女の子は心配そうに寄り添っていた。
「それよりネネ、リアルおままごとっていうのおしえて?どんなことするの?」
「今はやらないっ!あれは男がいないとできないの!どこかの誰かさんが閉じこもったままで友達も探しに行こうともしないから、何も始まらないわ!」
「ともだち……」
ネネは自分より年上の小学生二人を横目で見ながら鼻を鳴らす。
女の子はネネの服を掴みながら、両者を見比べていた。
静香とたまえは、もう一度顔を見合わせる。
そして微笑みながら、ネネの頭に手を置いた。
「ありがとう、ネネちゃん」
「ちょっとだけ勇気が出たよ」
それを聞いて、ネネは少し驚いてから顔を背けたまま気恥ずかしそうにする。
ネネはかすかべ防衛隊の紅一点としてしんのすけ達と共に巨悪に何度も立ち向かっただけあって年齢にそぐわぬ行動力を持っており、それが静香とたまえを引っ張る形となった。
「よかったぁ、なかなおりできたね!」
雰囲気が明るくなっていくと同時に、女の子の顔にも笑みがこぼれた。
「それじゃあ、ちょっと危険かもしれないけど、もう少ししたらこの学校を出て他の参加者を探しに行きましょう。離れ離れにならないように、みんな手を繋ぐこと」
静香の言葉に反論する者はおらず、4人の今後の方針が定まった。
4人とも出会って間もないが、仲は良好だった。
「その前に、みんなランドセルを持ってきて。参加者と道具を確認しましょう」
たまこは「はい!」と、女の子は「は〜い!」と手を上げ、ネネは照れくささを残したままの様子で各々のランドセルを持ち寄る。
できればこの中にドラちゃんのひみつ道具があればいいんだけど……と静香は考えていた。
§
これは、殺し合いだ。
殺らなければ、殺られる。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
殺せ。
殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
§
少し時間が経った後の教室。
少女達の和やかな雰囲気で満たされていたそこは、殺し合いの場に発展した。
床、壁、天井に付着する、血、血、血。
その中に倒れているのは、源静香、穂波たまえ、桜田ネネ。
先ほどまで笑い合い、手を取り合っていた少女達は、皆命を落としていた。
しかも、ただ殺されたのではない。互いに互いの命を奪い合ったのだ。
その死に顔は、少女の可愛らしいそれではない、目の前のモノに対して憎悪と殺意を向けた醜く歪んだ顔のままだった。
源静香も穂波たまえも、率先して人を殺そうとするなど考えられない心優しい性格である。桜田ネネも問題行動が時々見られるとはいえ、根は優しいし、そもそも幼稚園児だ。人を殺せるほど身体が発達していない。
どうしてこんなことになったのだろう、と将来この凄惨な現場を見る者は思うのかもしれない。
その元凶となる者が、ガラガラガラと教室の扉を開け、机のバリケードの下から這い出てきた。
それは、あの幼い女の子だった。
「しずかも、たまえも、ネネも死んじゃった。あーあ」
先ほどの惨劇を経験したにも関わらず、まるでちょっとしたお菓子を落とした程度の軽く惜しむ声を呟きながら、廊下を歩く。
その頬には、あの三人の誰かからつけられた軽い切り傷があった。
女の子は軽く周囲を見回してから、あることにようやく気づく。
「ここ、『ざいだん』じゃない?」
女の子の呟いた『ざいだん』とは、発音そのままに財団である。
その財団とは、SCP財団。科学では解明できない異常なモノを確保・収容・保護する団体。
そして女の子は、そのSCP財団に保護されていたSCP-053の番号がつけられた収容対象である。彼女を詳細に記録するページでつけられた名は『幼女』であった。
”幼女”の持つ特異性とは、すなわち殺人衝動の誘発。彼女と接触しただけで、どんなに心優しい人物でも激しい被害妄想を引き起こし、やがて近くの人物を殺した後に”幼女”本人を殺そうとするという、この殺し合いにおいてはもはや爆弾とも言えるものだった。
しかし”幼女”を殺そうとしても、殺意を向けた者は心臓麻痺で死亡するために最後に残るのは”幼女”だけになる。たとえ傷つけられても驚異的な回復力を持っており、どんな傷もたちまち癒えていく。
静香、たまえ、ネネは、この”幼女”の特異性によって殺し合い、そして命を落としたのだった。
しかし、そんな惨劇を”幼女”は気にも留めていなかった。なぜなら、”幼女”にとってこれが普通だったから。彼女に近づいた大きな人は、みんな凶暴になって殺し合い、やがて彼女にまで殺意を向けるのだから。
「わぁ……!」
小学校の門から出て、”幼女”は感嘆の声を上げる。財団で保護されていた時とは違う、見たことのない、刺激的な景色。それは彼女の好奇心を刺激するには十分だった。
「ともだち……ここならともだち、できるかな?」
海馬乃亜に集められ、自分より年上とはいえ大人とはいえない年の者達がたくさんいた光景を思い出す。
一緒に遊んでくれる、ともだち。それは”幼女”が最も欲しているものだった。
財団では玩具もあったし、本もあったし、ゲームもあった。食べ物も常に財団の人達が運んでくれた。
しかし財団の人達は常に大きな『ぼうごすーつ』という鎧を着て、すぐに”幼女”から離れてしまう。財団から与えられたもので遊ぼうにも、”幼女”は一人で遊ぶしかない。
少しでも長く”幼女”と一緒にいた人達は、先ほどの三人のように皆狂い、そして死んでいく。
”幼女”はいつも一人ぼっちだ。
”幼女”からして友達といえる者は、自分と一緒にいても狂わず死なない、大きなトカゲさんくらいだった。
「新しいともだち、探しに行こうっと」
そう言って、”幼女”は殺し合いの場に解き放たれる。
これから多くの死を振り撒く可能性も知らずに。
「……リアルおままごと、やりたかったなあ」
『幼女』は空を見上げながら、ネネから教えられた遊びを知ることができないことを惜しんでいた。
――ともだちひゃくにんできるかな。
【源静香@ドラえもん】 死亡
【穂波たまえ@ちびまる子ちゃん】 死亡
【桜田ネネ@クレヨンしんちゃん】 死亡
【SCP-053“幼女”@SCP-Foundation】
[状態]:頬に切り傷(回復中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ともだちをつくる
1:ともだちになってくれそうなひとにあいにいく
2:リアルおままごと、やりたかったなあ……
[備考]
・小学校の教室には、源静香、穂波たまえ、桜田ネネの遺体およびランドセル、凶器に使われた不明支給品に加え、数多くの血痕が残されています。
・源静香、穂波たまえ、桜田ネネのうち、一人だけ死因は心臓麻痺です。誰が心臓麻痺で死亡したかは後続の書き手にお任せします。
【補足】
クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、
SCP FoundationにおいてDr Gears氏が創作されたSCP-053を二次使用させて頂きました。
投下終了します
投下させていただきます。
「よく分からないけど大変なことになったぞ!」
そう叫びながら、会場内の何処か屋外を走り回る参加者の一人、山口 晶。
「えっと…首輪!首輪を解除する方法を見つけないと!」
彼は、乃亜から爆発する首輪についての説明をされている際、恐怖心から動けずにいたのだが、その最中から首輪を解除する方法のことを考えていた。
しかし、周辺には建物や首輪解除に使えそうな道具は見当たらず、自分に支給されたランドセルの中身を確認しても工具と言える物は入っていなかった。
乃亜の高笑いを忘れられずにいるが、それでも移動を続ける。
『いやいやー 人間 若い時に流さなかった汗は、年をとってから涙になるぞよ!』
そんな中、小さい頃に臨死体験をした時からとりついていた地蔵虐によって努力が報われない日々を送り、努力するのをやめようとぼやいていた時に、鵺野鳴介ことぬ〜べ〜にかけられた言葉を思い出す。
(そうだ…!首輪を解除する為にも…努力するんだ!)
こうして彼は走り続ける。努力をして首輪の解除という大きな目的を達成し、生還する為に。
【山口晶@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:首輪を解除し、生還する。
1:首輪を解除する方法を詮索する。
2:知り合い(特に細川美樹)が巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は漫画無印2話以降。
※ヒエロニムス•マシンの作成に関する制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
投下終了させていただきます。
みなさん、投下ありがとうございます。
感想を投下させて頂きます。
>世界はうつくしいと
まるちゃんが何か頼れるキャラで出てきて、あたしゃ驚いたよ。
流石、国民的アニメの主役を20年以上張ってきた貫禄だねえ。
アニメ見てるだけだと無職の飲んだくれにしか見えないひろしだけど、本当はしっかりした親父なんですよね。それがカイウスの説得にも繋がって良かったです。
>ミニマム・ガッツ
ネタ武器に見えて、実は優秀な武器って結構ありますよね。それはそれで、使えるのは良いんですけどちゃんとしたシリアスの武器より使えるとかだと、なんか変な気分になるというか。
そしてタイトル通り、全ミニマムな人たちが集まった訳ですが、元ネタであろうカードの効果は一体を犠牲にし相手の攻撃力を0にするもの。
なんだか、今後の運命を示唆するような不安にもなりますね。
>本当は残酷な世界名作劇場
>その少年の名はネロ。
>フランダース地方の小さな農村出身の、画家になることを夢見る少年であり、あの世界名作劇場でおなじみの『フランダースの犬』の主人公でもある少年だ。
早速、大嘘を吐いてきて草。
しかし本家のネロと勘違いしたまま、焼き殺されてしまったアロアはとても可哀そうです。きっと、天国から天使と一緒にネロとパトラッシュが迎えに来てくれている事でしょう。
>ここから、始めよう
大人であるが故に現実を見てしまい優勝を目指すしかなく、大切なものの為に折れる訳にはいかないリップと、子供であるが為に理想論を説いて、全員を助けようとするイリヤが対照的ですね。
真紅のアリスゲームを受け継いだきらきーと一緒にイリヤには頑張ってほしいですね。そして、ひっそりとエールを送るリップも、ただのマーダーでは終わらない魅力がありました。
>おもかじいっぱい
アニメ開始早々こんな場所に巻き込まれてリコはとても可哀そうですね。
もう少し話数が進んでからなら、トレーナーとしてポケモンが居れば戦えたかもしれませんが、中々キツイスタートダッシュとなりそう……。
>この幼女、四天王につき
現時点での候補話の中だと、最弱はポピーと範馬勇次郎(赤ん坊)のどちらかになりそうですね。
>取り戻せマイドリーム
まさか、サトシの状態表で最終回後から参戦なんて表記を見る日が来るとは思いませんでしたね。ワンピースの正体が判明するか、ジンニキが逮捕されるより先に完結してしまうとは……。
それはそれとして最終回後の旅の続きが、こんな殺し合いというのはリコと同じくらい不運ではありますね。
>全選手入場
こいつらだけでロワ開けばいいんじゃないかな。
>ともだちひゃくにんできるかな
多分、無理だと思うんですけど(名推理)
本人に悪意なく殺意を伝染させて殺し合わせてしまうのは、ロワの進行にはこれ以上ないほどの適材ではありますね。しかし、友達が欲しいのに最後には一人になってしまうのは可哀そうでもあります。
ただ、本人も惨劇を目の当たりにしながら気にしない辺り、能力以前に何処か歪んでいるのかもしれませんが。
>友情•努力•勝利とは誰が言ったことか
かつて巨乳女子小学生を彼女ポジとして与えられレギュラーぽかったのに、全てをはく奪されマッド要素をぶち込まれた悲しき男、晶。
でも、ちゃんとぬーべーの台詞を思い出して奮闘しようとする様は、やっぱりぬーべークラスの一員であることを再認識させてくれます。かのマッド要素も首輪解析に役立つかも?
それから、感想の他にもう一つ
候補話の募集締め切りについて、告知をさせて頂きます。
企画立ち上げの時点で、4月30日を締め切りとしようと思ったのですが
近くにGWもあって、その始まりで締め切るのもちょっと勿体ないかなと考えましたので……
候補話の締め切りを5月14日まで延長させて頂こうと思います。
よろしくお願いします。
投下します
幸福な結末に、醜悪な蛇足を付け足されたら、如何しますか?
「願いを叶えてやるから殺し合え……。随分と、虚仮にしてくれる」
殺人に禁忌は無いとはいえ、命じられて殺しをする経験は初めてだ。
ましてや『首輪』などを付けてくれるとは、あの忌まわしく悍ましい日々を嫌でも思い出させる境遇に、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは、恥辱と、それを遥かに超える巨大な怒りに身を震わせた。
「私の願いはとうに叶った…。それを無かった事にして、『願いを叶えてやるから殺し合え!?』巫山戯るな!」
リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの願いは、確かにあの時叶った。
生涯唯一愛し愛された男に抱かれて、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターは死んだのだ。死んだはずなのだ。
それが今、こうして、生きて、此処にいるのは、あの乃亜とかいう子供が、何かしらやった結果だろう。
巫山戯ている。心底からそう思うと共に、乃亜の持つ計り知れない力も察して、リーゼロッテは、『バビロンの魔女』は恐怖にしてもいる。
「虚無の魔石は…『あの』時と同じ。これが私への枷という訳か」
リーゼロッテに尽きせぬ魔力と不死をもたらした虚無の魔石。リーゼロッテが死んだ時に砕かれた其れを、不完全な形であるとはいえ再現し、リーゼロッテを再び現世(うつしよ)に立たせている。
リーゼロッテにしても、こんな芸当は不可能だ。並ぶ者なき魔女である為に、乃亜の持つ計り知れない力を悟り、リーゼロッテは恐怖する。
だが、今リーゼロッテを動かすものは恐怖などでは無い。恐怖を塗り潰す憤怒だ。
ヴェラードの与えた死を覆した────ヴェラードがリーゼロッテに示した愛を汚し、嘲弄し、踏み躙った乃亜に対する憤怒だ。
「この程度で、この私を縛れると思うな。必ずこの報いは受けさせる」
誓う事は『報復』己を虚仮にした事と、ヴェラードの愛を踏み躙った乃亜に対して、必ず報いをくれてやる。
そう誓って、リーゼロッテは歩き出した。
「何で明石がこんな目に遭わなきゃいけないにゃ」
嘗ては広壮な洋館だった事が窺い知れる、今では荒れ果てた廃墟内で頭を抱えて蹲る、緑色の髪の少女が一人。頭の猫耳が矢鱈と目を引く少女だ。
「明石は工作艦にゃ。殺し合いなんてできないにゃ。ぬいぬいを呼ぶべきにゃ」
頭の猫耳から解る様に、この少女は人間では無い。
『かの大戦』の記憶を有し、人類を海から駆逐した脅威、セイレーンより海を奪還するべく作られた、軍艦の名と力を有するKAN–SENである。
この緑髪の猫耳少女は、工作艦『明石』の記憶と名を有する重桜所属のKAN–SENだ。
「大体、戦わせようとしているなら、明石の艤装を用意するべきにゃ。これじゃ明石、戦えないにゃ」
そして明石には戦う力が無い。工作艦という艦種のために、砲も魚雷も航空機も持たない明石は、精々が対空砲での射撃が出来る程度。それにしたって艤装が無ければ行えない。
「どうすれば良いにゃ…指揮官…助けて欲しいにゃ……」
蹲って延々愚痴っていると、不意に廃墟の扉が開く音が聞こえ、明石は飛び上がった。
「だだだだ……誰かきたにゃ!!」
竦み上がって怯える明石の潜む部屋へと、足音が一定の間隔で近づいて来る。
誰かが居るともしれないのに、全く足音を隠そうともしない、力強い、堂々とした響きは、足音の主が余程の自信家であるか、余程のアホである事を示していた。
ゆっくりと、確実に近づいてくる足音に怯え切った明石は、何も出来ずに震えるだけ。
やがて、足音は明石の居る部屋の前で停止し、直後、徐々に扉が開き出す。
「ひいいいいいいい!!明石死んじゃうにゃあああああ」
ゆっくりと開いたドアの向こう側から、部屋に入って来たのは、漆黒ののドレスを身につけたプラチナブロンドの少女だった。
「ややややめてにゃ!!明石まだ死にたくにゃいにゃ!!!」
戦闘能力皆無の明石は必死こいて命乞いをした。明石はまだ死にたく無いのだから当然だ。
銀髪の少女が、僅かに眉を顰めた事に対し、機嫌を損ねたのかと思って、必死に言葉を紡ぎ出す。
「母港でみんなが明石の修理を待ってるにゃ!新装備の開発だってしないといけないし、指揮官もスケベな新衣装を待ってるにゃ!!!」
最後のは余計だよクソ猫。
「明石が此処で死んだらみんな困るにゃ!!見逃して欲しいにゃ!!」
地面にへたり込んだまま、口角泡を飛ばして命乞いをする明石を、銀髪の少女は無感情に見下ろしていたが、明石の命乞いが一段落すると、煩わしげに口を開いた。
「安心しろ。私はこの様な下劣な催しに乗るつもりはない」
「ホ、…本当かにゃ」
「お前を謀ってどうする。殺す事など容易いというのに。第一…何故私が奴の思い通りに動いてやらなければならないのだ」
「じゃ、じゃあ、脱出の為に協力してくれるにゃ?」
「何故私がお前を助けてやらなければならない?お前が私に有益ならば、兎も角」
「そ、それなら明石、道具さえあれば首輪を外せるかもしれないにゃ!」
明石はリーゼロッテの表情が僅かに動いたのを見逃さず、日頃の商売で鍛えた弁舌で、必死こいて自身の売り込みを開始した。
「あ、明石は母港で科学部の皆と一緒に新兵器の開発とオフニャの開発をやってるにゃ!艤装の修理だってお手の物にゃ!!他の世界から来た子だって明石が艤装を用意したにゃ!明石ならこの首輪を解析して、外す事だって出来る筈…にゃ」
「科学部?」
冷然と明石の話を聞いていたリーゼロッテが、反応を示す。リーゼロッテは明石の事を外見から判断して、ライカンスロープか人に変じる能力を持つ妖獣の類と認識している。
そんな存在が『科学』などと口にすれば、訝しむのは当然だ。
「他の世界?」
そしてもう一つ。『他の世界』。
並行世界の存在を識るリーゼロッテではあるが、どうにも明石の言い分では、そんなものでは無いらしい。
「どういう事かしら」
リーゼロッテの興味を惹く事に成功した明石は、一生懸命に語り出した。自身の日頃の活動を、異なる世界からの来訪者達のことを、KAN–SENとセイレーンの事を。
一通り明石が語り終えると、リーゼロッテは形の良い顎に、白磁の様に白い繊指を当てて考える。
(この猫は科学的なアプローチで首輪を外せる。私は魔道の面からアプローチ出来るが科学の面はからっきし……それに)
明石と出逢った時に幻燈結界(ファンタズマゴリア)を使用(つか)ってみたが、効果云々の前に発動すらしなかった。更に明石の話を聞きながら魔力を練ってみたところ、尋常では無く魔力の量と質が落ちていることが理解(わか)った。
(これが私に施された制限…私を蘇生させ、虚無の魔石を復元し、その魔力に枷を施す……。この分だと不死にも何らかの限界が……。恐ろしい奴だけれど、だからどうした)
明石の話から察するに、並行世界という域すら超えた異世界が存在し、世界間を往来又は異なる世界の人間を召喚できる存在が居るらしい。
リーゼロッテの力を遥かに超えた能力を、あのカイバノアと名乗った子供は有しているらしいが、それでも尚リーゼロッテの戦意は揺らが無い。
(例え私より強大な力を有していようと、私がお前のお前の思い通りに動くと思うな)
「私とお前、本来は全く関わる筈が無い異なる世界の存在という事か」
「そうにゃ、歴史も技術も、生態すら異なるけれども、確かに生きている人達がいるにゃ」
「そして世界の垣根を超えて呼び集める事ができるものも居る。この事態はそいつらの仕業?」
「セイレーンは一切が不明にゃ。何考えてるかなんて分からないにゃ。TYPEこの事態に関わっていてもおかしくにゃいにゃ」
(この件にはセイレーンとやらが関わっている可能性が有る。首輪以外にも此奴は今後何かと有用になる可能性が高い…と)
海馬乃亜の目論見を挫くと決めていても、リーゼロッテ・ヴェルクマイスターの『バビロンの魔女』と謳われた悪性が変わった訳では無い。
自らにとって有益ならば生かして使うし、そうで無いならば殺すだけだ。
「どうやら使えそうね。私についてきなさい」
こうして稀代の魔女と科学部所属の工作艦は共に行く事となったのだった。
【リーゼロッテ・ヴェルクマイスター@11eyes -罪と罰と贖いの少女-】
[状態]:健康 不機嫌
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の目論見を挫く
1:取り敢えず首輪を外したい
2:
[備考]
自身の魔力が大幅に落ちている事と、幻燈結界(ファンタズマゴリア)が使用不能になっている事に気づきました。
不死にも何らかの制限があると推測しています。
【明石@アズールレーン】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:生還
1:リーゼロッテについて行く
[備考]
ネプテューヌ、うたわれるもの、キズナアイ、ホロライブ、DOAXVV、アイドルマスター、ライザのアトリエの世界と人物についての知識をある程度有しています。
SSSS.GRIDMAN 及びSSSS.DYNAZENONの世界と人物は、コラボイベント『弧光は交わる世界にて』に関わっていないので知りません。関わったKAN–SENから話を聞いたくらいです。
投下を終了します
投下いたします。
今回は2作品連続で投下させていただきます。
岩山の中を、異様な風体の少女が歩く。
両手足を鋭利な金属でおおわれているにもかかわらず、そのスレンダーな肢体を直接覆うものは黒いビキニとホットパンツしかないといった露出度の高い恰好をした少女だった。
またその髪型は右側が短く、左側が腰に届きそうなほどに長い非対称なツインテールをしており、その上から歪な兜のようなものをかぶっているという出で立ちをしていた。
彼女の名前は"インセイン・ブラック★ロックシューター"。人の心の痛みを消し去るためにその分身である『思念体』たちを殺害し、傷ついた心をその記憶ごと消滅させる存在、それが歪に変容した存在である。
そんな彼女はここでも同じことをするつもりだった。
そう、"全ての人々を痛みから解放するために、すべて殺し尽くす"という狂気に満ちた行いを、ココでもするつもりなのだ。
幸い彼女に支給されたものの中に、『狂気(Insane)』に変貌した彼女が使用していた大砲があったことも彼女のその目的を遂行するのを後押ししていた。
「痛みから、解放してあげる」
彼女はそうつぶやきながら左目から紫色の炎を噴き出し、あざ笑うような笑みを浮かべながら歩き続けていくのであった。
【インセイン・ブラック★ロックシューター@ブラック★ロックシューター(ノイタミナ版)】
[状態]:健康、狂気
[装備]:インセインカノンランス@ブラック★ロックシューター(ノイタミナ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:全ての人々を、痛みから解放する。
1:(彼女には本来なら感情と呼べるものはないが、人を傷つけることを愉しんでいるように見受けられる)
[備考]
少なくともオリジナルである『黒衣マト』とは融合していません。
『支給品紹介』
【インセインカノンランス@ブラック★ロックシューター(ノイタミナ版)】
インセイン・ブラック★ロックシューターに支給。彼女の得物である、巨大な槍状のキャノン砲。
その名の通り巨大な突撃槍であるが刃の付け根にマシンガンが搭載されており、そこから紫光の銃弾を放つ事ができる。
投下終了です。
続いて、2つ目の作品を投下いたします。
かつて荘厳な雰囲気をまとっていたであろう巨大な屋敷、それが朽ち果てて廃墟と化した場所にその少女はいた。
その少女は背骨を思わせる二本の角と背中には骨組みだけの蝙蝠の翼を生やし、ロングで緩くウェーブがかかった髪型と黒いドレスに身を纏っていた。
またその手には燃え盛るドクロのついた、死神を思わせる巨大な大鎌を持っていた。
彼女の名前は"デッドマスター"。親友と疎遠になってしまった少女の、心の痛みから生まれた『思念体』と呼ばれる存在である。
そんな彼女は今、思案していた。
自分はあの時、自身のオリジナルである『小鳥遊ヨミ』が悩みから解放された瞬間に強制的に融合が解け、そのまま消滅したはずだった。
それなのになぜ自分はここにいるのか、そしてここはどこなのか?と。
この場所は本来自分たちのような存在がいるはずの『裏世界』とはかけ離れた場所であると気づいていた。それ故に解せなかったのだ。だがそれと同時に納得もしていた。
おそらく自分は"ヨミ"の精神が再び揺らいだこと、新たな悩みや心の痛みが生まれたことで、消滅を免れたのではないかと。
ここがどこなのかはいくら考えても分からない。だが自分が今この場にいるのであればやることは一つだ。
―― 自らが生まれた原因である『心の痛み』のままに、周囲を傷つけていく。
それが彼女が存在する意味。裏世界で痛みのままに暴れること。それが彼女の存在意義だったからだ。
そのための武器も今この手にある。ならばあとは動くだけだ。
デッドマスターはその感情など存在しない心に従い、自らの本能のままに周囲を破壊しようと動き出す。
まずはそこにあった大きな柱時計を破壊することにした。
大きな音を立てながら崩れ落ちる柱時計。しかしそれでも彼女は満足しなかった。
今度は近くにあるテーブルへと向かう。そして同じように破壊する。
何度も繰り返すうちに次第に楽しくなってきて、彼女は笑みを浮かべた。
その笑顔はとても無邪気なものだったが、同時にその笑顔はオリジナルが親友へ向けていた笑顔とはかけ離れた、ひどく歪んでいるものだった。
【デッドマスター@ブラック★ロックシューター(OVA版)】
[状態]:健康
[装備]:アルティメットグリムリーパー@デッドライジング3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:オリジナルが抱えていた心の痛みを、物理的な痛みとして周囲に振りまく。
1:痛みを振りまく。相手を縛り付けて嬲り続けたい。
[備考]
参戦時期はED後。そのため自身のオリジナルである『小鳥遊ヨミ』とは融合していません。
『支給品紹介』
【アルティメットグリムリーパー@デッドライジング3】
デッドマスターに支給。鎌をベースに日本刀やガソリンタンク、死神のお面で強化を施した武器。
グリムリーパー(死神)の名の通り相手を派手に切り殺すことができ、また振り回すたびに周囲に炎をまき散らすドクロをばらまくという代物。
これで今回の投下は終了です。
以上、ありがとうございました。
投下させていただきます。
「はわわ……とんでもない事になってしまいました!」
バトルロワイアルの会場の一角から、気弱そうな声が聞こえてきた。
全身を赤・青・黄の三原色で彩られ、ガスコンロのような意匠のスーツを身に纏った人物。
彼の名は、ヤマシロン。
佐賀県に本社を持つ『山代ガス株式会社』の営業部ヒーロー課に所属する外回り担当の社員であり、福岡のローカルヒーローチーム『ドゲンジャーズ』の一員でもある正義のヒーローである。
……ちなみに彼は見た目だけなら大人であるが、年齢はれっきとした5歳だったりする(詳しくは山代ガスのHPや公式twitterをチェックだ!)
「あんな小さな子供の命を簡単に奪うどころか、たくさんの子供達に殺し合いをさせようだなんて……ヤバイ仮面さんでもここまではやりません!ヒーローとして絶対に許すわけにはいきませんね!!」
とはいえ彼もヒーローである。
乃亜と名乗った少年の凶行に怒りを燃やし、その行いを必ず止めようと決意を表した。
彼が普段から敵対する『株式会社悪の秘密結社』の社長・ヤバイ仮面も日々様々な悪事を働いているが、これほど残虐で悪辣な行為はしなかった。
自分達ヒーローにとって子供達の笑顔を守る事は何よりも大切な使命である。
それを踏みにじる悪人は例え少年でも見逃すわけにはいかなかった。
「………しかし、まずはどうやってここから子供達を逃がすかを考えないといけませんね。他のドゲンジャーズの皆さんも呼ばれているとは限りませんし、何故かまたアオイロンとダイダイロンとも話ができなくなっているなんて……困りました」
如何にしてこの殺し合いから脱出するか、それが彼の最初の課題であった。
子供ばかりが呼ばれており、この会場がどこにあるかも分からない以上仲間であるドゲンジャーズの面々の助けはあまり期待できそうにない。
福岡最強のヒーローである薬剤戦師オーガマンであればその剛腕でなんとかしてしまいそうだが、あいにく彼はこの場にいない。
今頼れるのは自身の力だけである。
さらに困った事に、どういう訳か自身の合体解除が行えないのに気付いてしまった。
本来ヤマシロンは営業部ヒーロー課のレッドロン・アオイロン・ダイダイロンの三人が稟議申請する事で合体して誕生するヒーローなのだが、何故かここに来てから分離が不可能になっていた。
しかも合体したアオイロンとダイダイロンとも会話が出来ず、以前金印の力を飲み込んだ時のようにマナーモードになっているのかと思いきやそうでもなかった為、ますますヤマシロンは困惑する羽目になった。
「とりあえず、ここは今ある持ち物を確認してみましょう。何か役立つ物があるかもしれません!」
気を取り直し、ヤマシロンは自身に支給されたランドセルの中身を確認しようと蓋を開けてみる。
元から持っていた武器は没収されていた為、何かしらの武器になりそうな物があれば望ましかった。
水と食料、文房具、タブレットと順に取り出し、次に手を突っ込んで取り出したのはーーーーー
「何でしょう、これは?」
まるでプラモデルのパッケージのような四角い箱。
何が入っているのかと恐る恐る開けてみる。
「………女の子のお人形、でしょうか?」
中には何やらバニーガールによく似た白い衣装を身に纏った15cm程の金髪の少女の人形らしき物が眠るような体勢で納まっていた。
気のせいだろうか、あどけない寝顔からは寝息のようなものまで聞こえてくるようである。
「すぅ……すぅ……」
「ええええっ!?この子、生きてますか!?」
いや、本当に寝息をしていた。
ヤマシロンは驚いて箱を落としてしまったが、その衝撃で中の少女も目を覚ましたらしい。
ゆっくりと箱から顔を出し、少女は第一声を発する。
「……あれ?ここどこ?あおやごーらい達は?」
「なるほど、つまりバーゼラルドさんも無理矢理この会場に連れて来られたという訳ですか」
「うん、なんか充電君で充電してる間に寝てて気が付いたらここにいたんだー。ごーらい達は連れて来られてなきゃいいけど大丈夫かなー?」
その後落ち着いた二人の情報交換により、小さな少女の素性が判明した。
彼女はバーゼラルドと言い、ファクトリーアドバンス社という会社が開発した人工自我AS(アーティフィシャル・セルフ)を搭載し特殊なプラスチック製のナノマシンの身体を持つ『フレームアームズ・ガール』というロボットなのだという。
ヤマシロンは聞いた事がない会社だったが、何せヒーローや怪人が実在する修羅の国・福岡で日常を過ごす身だけあってすぐに受け入れる事ができた。
何よりドゲンジャーズの面々が拠点とする関家具本店内の田中家にはオーガマンがポケットマネーで開発した巨大ロボット・セキカグオー208式が待機しているのでロボットとは縁深い関係があった(何なら操縦した事すらある)。
「バーゼラルドさん、申し訳ありませんが私達は今恐ろしい殺し合いに巻き込まれてしまっています。よければ私と共にこの戦いを止めるためにお手伝いをしてもらえませんか?必ず貴女もあおさんの元に返してあげますから!」
「いいよー!ばーぜも勝手に連れて来られてバトルさせられるとか迷惑だし、やましろんと一緒に悪いやつを懲らしめてやるよ!」
「では、私達は今から相棒(バディ)ですね!これから頑張りましょう!!」
「おー!!」
ヤマシロンからの提案にバーゼラルドも拉致された事に立腹だったため素直に了承した。
こうして、何とも奇妙にしてあざといコンビが結成されたのだった。
果たして二人の行く末はどうなるのかーーーーー
【ヤマシロン@ドゲンジャーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、バーゼラルド&充電君@フレームアームズ・ガール(アニメ版)
[思考・状況]
基本方針:ヒーローとして殺し合いを止め子供達を助ける
1︰バーゼラルドさんと一緒に頑張ります!
2:ドゲンジャーズの皆さんは来てますかね?
3︰どうして二人とお話できないのでしょう?
[備考]
※参戦時期は『ドゲンジャーズハイスクール』終了後からです
※制限により合体解除、アオイロンとダイダイロンとの会話機能は封じられています
『支給品紹介』
【バーゼラルド&充電君@フレームアームズ・ガール(アニメ版)】
ファクトリー・アドバンス社が開発したフレームアームズ・ガールの一体。
主にセグメントライフルによる遠距離戦闘を得意としており、性格は天真爛漫で悪戯好き、キラキラした物が大好き。
幼い口調に反してかなり頭は良く、バトルでは解説役に回ることも多い。
ただしセッションステージ外では武装は虚仮威し程度の威力しかなく、制限により持ち主からあまり遠くには離れられなくなっている。
バッテリー充電用の小型ロボット・充電君も共に支給されている。
投下を終了します。
皆さん投下ありがとうございます。
私も投下します。
「あの、アバズレビッチが!!!
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」
あと民家の一室、本棚をひっくり返し、皿棚から食器を引っ張り出し無造作に叩き付ける。椅子を持ち上げ、テレビを頭から叩き付け液晶画面を粉砕していく。
更にガラス片が飛び散るのも気にせず次から次へと窓ガラスをぶち割る。
一人の少女が癇癪を上げながら、耳が張り裂ける程に凄まじい奇声を発し、人目も気にせず暴れ狂う姿はとても尋常な光景ではなかった。
少女の名はエスター、本名をリーナという。
容姿だけならば9歳前後だが、身体の異常で成長が止まりその実年齢は30代前半、その幼い容姿を利用し何人も殺害したシリアルキラー。
精神病院に幽閉されたものの脱獄を果たし、その後サイコ連中とサイコバトルを繰り広げたり色々あったが、何はともあれコールマン家に養子として引き取られることに成功した。
しかし、度重なる異常行動を繰り返した挙句に正体がバレてしまい家族全員始末しようとするも、コールマン家の妻に返り討ちに会い顔面を蹴り飛ばされ、湖の中に沈んでしまった。
故にその苛立ちを、行動で具現化し発散させていた。
「はあ……はあ……」
暴れるだけ暴れてから、エスターは息を切らしながらもようやく落ち着いた様子でその場で座り込む。
この馬鹿げた殺し合いに巻き込まれる前、最後の記憶が湖に蹴り落されたその瞬間だ。
エスター本人も正直なところ、当たり所も悪くほぼ間違いなく死んだのではと考えていた。だが、こうして生きている以上驚異的な治療を施したか、本当に死人を生き返らせたのだろう。
湖に蹴り落される前に付いた顔の傷も治療されたのか、傷跡一つ残されていない。
「……ガキ扱いは気に入らないけど、あそこから助けてくれたことだけは、お礼を言っても良いわね」
今更、子供の数十人死のうが何とも思いはしない。
乃亜とかいう少年の態度は気に入らないし、殺せるなら今すぐにでも殺したい。首輪を嵌めて殺し合いを強制させるのも、自由を愛するエスターからすれば許せないことだ。
だが、目の前で殺した相手を蘇生させた未知の力に加え、何故か会得した覚えのない日本語を、巧みに理解し話せるようになっていたこと等から、あの少年が只者ではないことが明らかだった。
表立って逆らうよりは、今は殺し合いに積極的に乗る方が安全だろう。この幼い容姿を利用して、使えそうな参加者にでも取り入ろうとエスターは考える。
「あ、あの……なにか……えっ……」
「チッ」
部屋のドアが開き、わざとらしく木が軋む音が鳴る。外から冷たい空気が流れ込み、新しい人影が差し込んだ。
騒々しい物音を聞きつけ、好奇心ともし何かあったらと善良な心に従ったのだろう。
ドアを開けたのは身なりの奇麗な少年で、おどおどしながら中のエスターの様子を心配そうに伺い、そして驚嘆する。
「ああぁ! もうっ!!」
「え、まって……」
心底面倒そうに、だが非常に素早く慣れた手付きで近くの鈍器を掴み上げる。そして一切の躊躇を見せず、ノータイムで少年へと振り下ろした。
ぐぐもった呻き声と共に、悲鳴も上げられず少年は頭をかち割られ、殴り倒される。更にエスターは何度か鈍器で殴りつけ、少年が完全に動かなくなるまで念入りに止めを刺す。
「運が悪かったわね。……でも、ノックもなしにドアを開ける方も悪いんだから」
この癇癪を見られた参加者を生かしてはおけない。別に、誰かを殺害した場面を見られた訳でもないが、変に警戒されても面倒だ。
それに、利用価値も低そうなただの子供だ。強いて言えば、身なりを見るに両親はかなりの金持ちで裕福な家庭で育っていそうだが、殺し合いで金持ちが役に立つ訳がない。
殺して支給品を奪う方が、まだ有意義にもなるだろう。
(こいつ、血が出ない……? これだけ殴ってるのに?)
普通なら、頭部の皮膚が裂けて血が流れる。なのに、この少年はどういう訳かまるで血が流れない。
いくらエスターが女性の膂力であるとはいえ、人間の頑丈さでは説明が付かない。
「―――ええ、確かに些か不躾でしたね。お詫びしますよ」
「……は?」
その違和感に応えるように、少年から声が発せられる。
これは、不味い。
動揺しながらも少年の危険性を肌で感じたエスターは少年の再生が終わるより早く、鈍器を振りかざす。
だが、次の瞬間エスターの持っていた鈍器が横に真っ二つに切断された。そのまま彼女の頬の真横を漆黒の刃が過ぎる。
その刃はエスターの真下、少年の影からまるで二次元の平面から飛び出すように生成され、エスターの背後の壁を容易く貫通してみせた。
(影……!?)
エスターは目を瞑り、半分に切断された鈍器を真上へ、部屋を照らす電灯へと投げ付けた。ガラスが割れるような音共に破片が降り注ぎ、暗闇を打ち消していた電気の光が遮断される。
少年は急激な事態の変化、特に明るい室内に慣れた目が暗い景色に適応しきれない。
「面倒な真似を―――」
明かりのない闇の中では影は生まれない。もし、あの能力がそのまま影の性質を持っているのなら光を消せばいい。
未知の能力に対し、半ばヤケクソがちな賭けだったが、その見立ては成功したとエスターは確信する。
相手の目の慣れない内に肉薄し、少年の首へと手を伸ばす。
(信じるわ。本当に、この爆破で死ぬんでしょうね!!?)
この少年の正体が何かは知らない。だが、乃亜の言っていたように「不死の異能者を殺せる首輪」という発言を信じるならば、最初にルフィとエースを殺めたあの爆破で殺せるはずだ。
首に衝撃を与え、首輪を誘爆させる。それがエスターに出来る少年の確実な殺害方法。
(そうか、首輪を)
少年も僅かに目が慣れ、エスターの動きを僅かに目視できるようになっていく。
背負っていたランドセルを下ろし、向かってくるエスターに横薙ぎに振るう。
「こ、の……!」
ダメージこそランドセルの軟さから大したものではないが、真横から衝撃が走ったことでエスターは体制を崩し転んでしまう。
(全く、鋼の錬金術師かと思えば、無駄骨でしたね。……必要以上に付き合う必要はないか)
そのまま少年は部屋を飛び出し、屋外へと逃亡していく。エスターも立ち上がり後を追うが、今度は少年が暗闇を利用し姿を晦ました。
「……バカね」
一旦、屋内に入りエスターは壁に頭を軽く打ち付け吐き捨てる。
あの少年の能力を考えても、下手に深追いをして光源のある場所へ誘導されて返り討ちに合う可能性もある。だから、追跡を断念したのはやむを得ない。
だが、仕留めそこなった事でエスターが不利になったのも事実だ。
エスターの本性を知られ悪評を撒かれれば、幼い容姿を利用して参加者を欺く算段が狂ってしまう。
「もう少し、考えられたでしょう……どうしてあんなとこで癇癪を……!」
何度もガンガンガンガン頭を打ち付けて、ストレスを吐き出しながら反省点を口にする。
元を辿れば、屋内とはいえ無防備に暴れ狂ったのが原因でこんなことになった。
壁を殴って蹴って、殴って蹴って、散々暴れてから落ち着きを取り戻していく。
「…………そうよ、落ち着いて……あいつは化け物、普通の人間じゃない。もしあいつが殺し合いに積極的なら、向こうから襲われたことにする。
違うなら、多分正体を隠そうとするはず……」
あの少年、ドアを開けたその瞬間は丁寧な敬語を使う素振りを見せていた。つまり、別参加者との接触の際に最低限、正体を隠す意図があるように思えた。
「私に襲われたと言いふらすようなら、私もあいつの正体をバラしてやる……。あいつだって、きっとそれは困るわ」
不安も懸念もあるが、まだ詰んでいる訳ではない。
いくらでも言い逃れも出来るし、自分を信用する味方をこれから作り上げればいい。
辺りを警戒しながら屋外に出て、タブレットに備わったライト機能を点けようとして……。
「灯りは不味いかもね……」
この程度の光が、あの影を操作できる程の光源となるか分からないが、念には念の為だ。
ライトを点けずに警戒しながらエスターは歩みだした。
「長年子供をやってきましたが、とんでもない女だ……同じ子供とは思えませんね」
セリム・ブラッドレイはあの狂気的で暴力的な少女を撒いたのを見て、溜息と共に溜まらず呟いた。
ゲーム開始時、やけに騒々しい物音を聞き付け確認に向かったのが間違いの始まりだった。
誰がどう襲われようと興味はなかったが、一つだけ懸念があるとすれば、人柱である鋼の錬金術師エドワード・エルリックだ。
恐らくは、この殺し合いに呼ばれはしないだろう。
乃亜から言及はなかったが、あの最初に集められた場に居た参加者は12歳以下と思える子供が多かった。エドワードもまだ子供と言える年齢ではあるが、そこまで幼くはない。
だが、あの年齢に合わない低身長が厄介だった。セリムのように、容姿のみが幼い参加者も殺し合いの参加条件として設定されているのなら、エドワードも低身長の為に巻き込まれる可能性は否定できない。
12歳ぐらいの子供といえば身長も150㎝代になってくるだろうことを鑑みると、あのアホ毛と底上げ靴を差し引いたエドワードの身長は、丁度12歳のそれぐらいになってしまうかもしれない。
そして、もしもエドワードが死ぬようなことがあればお父様の計画に支障が出る。
だから万が一を考え騒音の元に向かったが、蓋を開ければホムンクルスであるセリムでさえ引いてしまうような暴力少女と遭遇してしまった。
(はあ……。
鋼の錬金術師の身長の低さを、真面目に考えなくてはならない日が来るとは……。多分、彼は牛乳が嫌いなのでしょうね)
あの背丈の小ささに対し、軽く愚痴を思い浮かべながら、あの少女の事を思い返す。
あの少女、殺そうと思えばいくらでもやりようはあった。
だが、やけに戦い慣れしていたのもあり、更には光源も期待できなかったこと。
そしてエドワードの不在が確認できるまでは、彼を探し見付け次第優先して保護したい。その為、無理にあの少女の相手をして手間を掛ける理由もない。
そう考え、敢えて撤退をしてしまったが、セリムの能力を一瞬で影と判断し電球を潰した機転など気にもなっていた。
(……まさか、私と同じような)
何か、説明は出来ないが自分と同じような感覚を少女から覚える。
もしや、外見だけが幼く実際の年齢を自分と同じように偽っているのだろうか。
「いや、そんなことより鋼の錬金術師を探すことが最優先ですね。少しは背が伸びていてくれれば、参加者の選定条件から外れてくれて助かるのですが……」
そんなことを考えながら、セリムは再びエドワードの探索へと意識を切り替えた。
【エスター(リーナ・クラマー)@エスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いに乗る。生還優先。
1︰利用できそうな参加者を探す。
2:セリム(名前は知らない)とその操る影を警戒。
[備考]
※湖に沈んだ直後から参戦です。
※日本語が話せることを自覚しています。
【セリム・ブラッドレイ(プライド)@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:もし居れば、鋼の錬金術師の生存を優先する。居なければ……。
1︰他参加者に接触し、情報を集める。
[備考]
※ヨキに轢き逃げされて以降からの参戦です。
投下終了します。
感想はまた後ほど投下いたします。
投下します。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、美遊・エーデルフェルトにとって大切な友達。
イリヤがいたからこそ美遊は喜びを知った。
そのイリヤがエリカの手で人形にされた。
生気が消えた瞳は底なしの暗闇に等しい。
もちろん、イリヤから美遊に語りかけることはなく、笑ってもくれない。
美遊は泣いた。
生きる死体となった彼女に絶望した矢先だ。この殺し合いに巻き込まれたのは。
どんな願いも叶えてみせる。
乃亜の言葉は、美遊にとってたった一つ残された希望だった。
如何なる魔術か死者の蘇生すらも乃亜は成し遂げた。
いとも簡単にエインズワースの牢獄から美遊を攫った。
その奇跡があればイリヤを元に戻せる。
彼の言葉に従って戦えばイリヤを助けられる。
イリヤの味方になれるのはたった一人しかいないから。
「…………美遊さん」
引き離された彼女だって手の中にいる。
カレイドステッキ・マジカルルビー。
イリヤに魔法少女の力を与えてくれた心優しいパートナーだ。
もしも彼女に顔があれば憂いを帯びたことが窺えた。
その星の輝きに翳りが見える。
「ごめんなさい、ルビー。でも……こうするしかないの」
口から溢れる悲痛な声。
ルビーには事情を説明した。
美遊がエインズワースに囚われの身になってから、イリヤは人形にされてしまったことを。
イリヤを助けるためルビーの力を借りたい。
当然、ルビーからは止められた。
こんなことはイリヤさんも望まない。
あなたが罪を背負っても悲しむだけ。
わかっている。
ルビーは乗らないし、イリヤの心を傷付けるだけだってくらい。
でも理屈じゃない。
イリヤを助けられなかったら後悔する。
イリヤには帰りを待っているみんながいるから。
彼女の尊い笑顔を失うのは死以上に耐え難い。
宝物を取り戻せるならいくらでも手を赤く染められる。
イリヤのいない未来に何一つ未練はない。
地獄の底に堕ちて、この身を煉獄で焼かれようとも構わない。
イリヤの喪失に比べたらほんの些事に過ぎなかった。
「こんなわたしを軽蔑するなら、お別れをしても大丈夫だから……」
心を鉄に変えて。
体の芯から迫り上がる吐き気を必死に抑えながら。
今までの全てを裏切り、曲げてでも守りたい友達がいるから。
いざとなったら、たった一人になってでも戦う覚悟があった。
ヤダ。
ルビーやサファイアともっと一緒にいたい。
こんな最悪のお別れなんかしたくない。
馬鹿騒ぎをして、楽しく遊びたかった。
でも、そこにイリヤがいないのはもっとイヤだ。
矛盾した感情で頭が乱れ、美遊の体が震える。
「いいえ、美遊さんの力になりますとも」
ぴたりと。
美遊の手に触れるのは優しい翼。
いつもと変わらない明るい声で、ルビーは寄り添ってくれた。
「イリヤさんの笑顔は世界一ですからね」
「ーーーーうん」
その言葉にほんの少しだけ心が和らいだ。
何があっても一人じゃないって言われてるようで。
イリヤを助けてくれる人が、他にもいることがとても嬉しくて。
張り詰めていた心がほぐれたように、瞳から涙が溢れ出た。
「もし、イリヤさんたちが何か言ってきたら……私も一緒に謝ります。サファイアちゃんにもきちんと説得しますから」
いつものお調子者な姿は鳴りを潜めて。
まさに心優しいお姉さんのようなルビー。
ルビーは自分の無力さを嘆いていた。
離れ離れとなった僅かな間に、イリヤが人形にされるなど夢にも思わなかった。
ましてや、美遊の心に深い傷を負わされては、ルビーといえども憤慨する。
イリヤと美遊に何一つ非はない。
だが、そうやって割り切れるような心を美遊は持っていなかった。
下手な正論はむしろ美遊の傷を抉る他ない。
美遊の心を満たすのはイリヤの笑顔だけ。
だからこそ美遊は乃亜の言葉に耳を傾け、藁にも縋るしかなくなった。
きっと、最後の最後で裏切られる可能性に美遊だって気付いている。
今の美遊を救えるのは誰か。言われるまでもなくイリヤ以外にいない。
その彼女はここにおらず、遠い平行世界で人形にされたまま。
仇敵エインズワースの手にかかっている危険すらある。
一刻も早く殺し合いに優勝し、イリヤを助ける必要があった。
「ごめんね、こんな泣き虫で」
「大丈夫です。いくらでも泣きましょうーー私がそばにいますから」
「……ありがとう、ルビー……」
美遊の背中を優しくさするルビー。
ルビーが人間の肉体を持っていたら、微笑みながら美遊を抱きしめていた。
彼女をひとりぼっちにしないため、彼女の大切な友達を助ける。
その後、どんな無理難題が待ち構えていようとも、二人を元の日常に帰してあげればいい。
イリヤだってそのガッツでワガママを押し通し続けてきた。
パートナーたるルビーがへこたれてどうするのか。
罪だって美遊だけに背負わせたりなどしない。
片棒を担げばいいだけだ。
美遊にとってイリヤが特別なように、ルビーにとってもイリヤは特別な存在だから。
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:健康、深い悲しみ、覚悟。
[装備]:カレイドステッキ・ルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3、クラスカード(不明)Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考・状況]
基本方針:イリヤを元に戻すため、殺し合いに優勝する。
1:ルビーと力を合わせて殺し合いに勝ち残る。
[備考]
※ドライ!!にて人形にされたイリヤを目撃した直後からの参戦です。
※カレイドステッキ・ルビーはイリヤが人形にされたことを知りません。
投下終了です。
投下いたします。
今回も2作品連続で投下させていただきます。
ここは会場内の海が見える場所……
そこには一人の少女がいた。
右目を隠した銀髪のボブヘアーをし、黄色いスカーフ付きの半袖セーラー服にグレーのプリーツスカート、手には白手袋を着用した少女だった。
更にその背中には二本の煙突とマストが付属した、まるで何かしらの軍艦を思わせる巨大な装備を背負っていた。
だがその少女の身体でひと際目を惹くのは、その装備を背負うために斜め掛けにしたベルトが谷間に食い込むことによって強調された、とてもたわわな乳房だった。
彼女の名前は『浜風』。陽炎型駆逐艦の十三番艦として、日夜海上で"深海棲艦"という怪物達と戦っている『艦娘』の一人である。
そんな彼女は今、とても困惑していた。
(ここは一体、どこなのでしょうか?)
それは自分が今いるこの場所が、いったいどこなのかという事だった。
自分はさっきまで、いつものように他の艦娘たちとともに"深海棲艦"と戦っていたはずなのに、気が付けばあのような場所に呼ばれていた。
そして二人の兄弟が『殺し合いについての説明』の為だけに殺され、そして生き返る光景を見せつけられたのだ。
(私がいつ、どのような手段でここに連れてこられたのか……そして、あの『海馬乃亜』という少年がどのような力を持っているのか、分からないことがあまりにも多すぎます……)
そんなあまりにも不可解で、謎が多すぎる状況について彼女は思案していた。
(……ですが、ただ一つだけ分かっていることがあります)
だがそんな中でも彼女にはただ一つ、分かっていることがあった。
(海馬乃亜……!私は絶対に、アナタを許しはしません……!!)
それは自分自身が、主催者である海馬乃亜に対し激しい怒りを覚えているという事だった。
何故なら先ほど彼はこう言ったのだ。
『いいかい? 僕はこの世界(ゲーム)の創造主(かみ)なんだよ。』と。
つまり彼は、自分たちを『ゲームの駒』としてしか見ていないのだ。
更に彼は、自らに反逆した兄弟のことを『無様な敗北者達』と呼んであざ笑ったのだ。
そんなふざけたことがあっていいはずがない。人の命を娯楽目的で弄んでいい筈がない。
(たとえどんな理由があったとしても、人の尊厳を踏み躙るような行為だけは絶対に許されないのですから……!!)
だからこそ浜風はその心を怒りに燃やし、拳を強く握りしめる。
「…………」
だがその一方で彼女は冷静でもあった。
なぜなら彼女は戦場に立つ身であり、当然、死に直面したことも何度もある。
中には自分の手で仲間を助けられず、見殺しにしてしまったことだってある。
それ故に彼女は知っているのだ。
死ぬことは怖いことなのだということを。
(必ずこのゲームを打破して、一人でも多く生還させましょう……!)
それゆえに彼女は決意を新たにし、一人でも多くの命を救うために戦う道を選んだ。
だがそれと同時に、彼女の中には別の感情もあった。
それは彼女が所属している艦隊の仲間たちに対する思いだった。
(きっとみんなも、私と同じ気持ちなんでしょうね……)
そう思った時、彼女の脳裏に浮かんだのは仲間の顔だった。
共に戦い、時に笑いあった戦友たちの姿だった。
そしてその中にはもちろん、提督の姿も含まれていた。
(もし無事に再会できたら、その時はまた一緒にお茶を飲みたいですね……)
提督の姿を思い浮かべ、そう思いを馳せるとともに彼女は一人でも多くの人を救うために歩みを進めるのであった……。
【浜風@艦隊これくしょん】
[状態]:健康、海馬乃亜に対する激しい怒り
[装備]:浜風の艤装@艦隊これくしょん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いの打破。一人でも多くを生きて帰す。
1:まずは他の人を探す。
2:他の艦娘たちがいるのならば、すぐにでも合流したい。
3:できることならば海馬乃亜を捕らえ、しかるべき処罰を下したい。
[備考]
『浜風乙改』への改修はされていません。
艤装が没収されていない代わりにランダム支給品の数が減らされています。
『支給品紹介』
【浜風の艤装@艦隊これくしょん】
艦娘の標準装備であり、これを装備して海を駆け、砲撃、魚雷、爆雷などの多彩な攻撃で深海棲艦を撃沈する。
当ロワにおいては浜風の初期装備である『12.7cm連装砲』と『九四式爆雷投射機』の二つが装備されている。
投下終了です。
続いて2つ目の作品を投下いたしますが、こちらの作品には過激な性的描写が含まれておりますので、それらに不快感を感じる人は注意をお願いいたします。
ここはどこの街にでもありそうな、とても一般的な一軒家。
「ふっ、ぐっっ!はぅうううっっ……ふっ、ぎぃぃぃぃぃんんんっっ!」
「うあっはっ!天龍お姉さんのアソコ、キツキツだなぁっっ!加奈オバさんの熟れた人妻マ○コや夏鈴の鍛えられたキツキツマ○コよりも若くてピチピチで、それでいて鍛えられていてとっても気持ちイイよっ!」
そこのリビングでは龍の角のような装飾を頭につけ、また左目に眼帯を付けた少女が触手によって拘束され、床に両手両足を付けた姿勢を強要されている姿があった。
またその見事なブロポーションを強調させるためなのか胸やスカートの部分が引き裂かれており、スイカを二つ並べたような二つの乳房がさらけ出された状態のまま正面に立つ少年によって手加減なしに強く鷲掴みにされている。
同様に先ほどまで男というものを知らなかった穴には少年の怒張が奥深くまでねじ込まれており、結合部から大量の血液とそれとは違う液体が漏れ出して水たまりができておりそれが異様なまでのエロティックさを醸し出していた。
「ふぅぅぉおおぉぉっっ、しょ、触手がぁぁぁ……ひぎぃぃっ、そこは……あふっ、お、おぉぉぉぉぉおんんっっ!」
それだけではなくその身体を這いずり回る触手の先端にはイソギンチャクのような無数の触手によって乳首や陰核を責められ、甘い快楽を与えられていく。
少年によってその純潔を散らされ、喘ぎ声をあげている少女『天龍』を捕らえ、そして今まさにその女体を這いずり回っている触手を操っているのは何を隠そう、目の前にいるその少年だった。
「んくぅうっっ!またきつくなってきたよ、天龍おねえさんっ!お姉さん、これは痛いからじゃ、苦しいからじゃないよね?僕のチ〇ポでもっと気持ちよくなりたいから濡らして締め付けるんだよねっ!」
「うお、ぉおおおおっっ!い、嫌だぁぁ……っ。んひぃぃっ!お、オレは気持ちよくなんてなりたくな……は、激し……っ。ひぐっっ、お、おぉぉっっ!」
目の前にいる少年『田所健也』がそう叫びながら腰を激しく揺さぶり、ぶつける度に天龍の秘部から脳天を貫くばかりに電流が駆け巡る。
天龍はそれを否定しようと必死に声を押し殺そうとするが触手たちはその本音を吐き出させようと激しく責め立て、同時に強く身体を締め付けてくる。
「はぁっ、はぁっっ!違わないよ、天龍お姉さんっ!お姉さんはボクのチンポでイカされるんだっ!ボクのチンポ快楽の牝豚になるんだよっっ!それを今から証明してあげるっ、調教してあげるよっっ!」
自分より年上かつ強気な女性が、自分の雄としての力によって悶える姿に健也の独占欲と支配欲が暴走し、彼女の理性を本能でねじ伏せるように肉槍を激しく動かしていく。
「ち、ちが……っ!ふぐぃいいいいいっっ!いぎぃいぃぃんんっっっ!」
(い、嫌だあぁぁぁ……こんなの、嫌だぁぁぁぁ……っっっ!!)
これまでですら激しかったピストンがまるで重機でえぐっているかのようにさらにもう一段も、二段もギアがあがっていく。
「ああっっっ、出るっっ!出すぞ、天龍っっ!イケ、天龍っっ!メス豚にぴったりの顔を見せてみろっっ!おおおおおっっっ!」
健也がひときわ強く腰を叩き付けた瞬間、大量の白濁液が洪水となって天龍の子宮と肉壺を満たしていく。
「くっひぃぃいいっっっっっ!お、おぉおおおおおおおおおっっっ!!」
それとともに天龍は全身をガクガクと震わせながら野太い牝の咆哮を上げてしまい、そして……
― ジョボッ、ジョボボボボボボ……!
入りきらずにあふれてしまった大量の白濁液とともにその股間から黄金水が放たれていく。
それは全身が快楽で弛緩していることを意味する、オンナとしての完全敗北を意味していた。
「はは、あははっっ!天龍お姉さん?これって僕のチ〇ポで思いっきりイっちゃったってことだよね?」
床に広がっていくその恥辱の水たまりを見て少年が興奮気味にまくしたてる。
「はぁ、はぁ……そ、そんなわけ、ねぇだろ……!い……いい加減にしないと本当に怒るぞ。オレたちを……『艦娘』を舐めないことだな……っ!」
だがそんな情けない姿をさらしても天龍の心は折れず、健也に対し厳しい表情を向ける。
"たとえよその家の子供であっても、間違ったことをすればしっかりと叱らなければならない。"
それが健也に向ける、天龍の覚悟の証だった。
「……ふぅん、まだそんな怖い顔出来るんだ?そうだよね、お姉さんは僕のモノになるんだから、家族にも見せるような表情だってするよね?」
「そしてそのうち、僕だけにエッチな顔を見せてくれるようになるんだ。ふふっ、あははっっ!」
それに対し健也は未だに衰えない逸物をいきり立たせたまま笑っていた。
「……でもね、ボクもそんなに暇じゃないんだ。だから、そんな生意気な口を叩けないように僕の"とっておき"をお披露目してあげるよ」
だがその笑いから一転し、冷たい表情を浮かべた少年は自身に支給されたランドセルから何かを取り出し始めた。
「こ、今度は何するつもりだよ……!?まだなにをしようっていうんだよ、お前っ!?」
「くくく、お姉さんには僕のオリジナルの『淫紋』を彫り込んであげるんだよ」
その言葉と共に彼は手にした機械のスイッチを押すとその先端についた針が激しく動き始め、それをいまだ拘束された天龍の下腹部に近づけていった。
「な……や、やめろ……っ!やめてくれ……っ!ああっっ、オレにそんなものを刻み込まないでくれぇえええッッッ!」
「これから自分のモノにするから刻み込むんでしょ?まっ、痛い以上にキモチ良くなれるから、壊れたりしないでね、僕の大切なオモチャの天龍♥」
自分の身に起きる肉体改造に彼女は声を荒げて反抗するが、そんなことはお構いなしに少年は頬を吊り上げながらさらに近づけていく。すると……
「ふぉぉおんぎぃいいいっっっ!い、いぎゃああああっっっ!おっ、おっほぉおおおおっっっ!」
その針によって彼女の皮膚に色が刻まれて行き、天龍は悲鳴にも似た嬌声を上げていく。
「ギモヂィイイイイイッッッ!い、淫紋っっ!?これが淫紋んんんっっっ!あ、頭とぶぅうううっっ!オレが、オレでなぐなっでイグぅぅぅぅんほぉおおおおっっっ!」
それと共に天龍が絶叫しながら、それだけで幾度となく達したかのように全身を激しく痙攣させていく。
「あはっ、あはははっっ!大成功だよ。あんなに生意気だった天龍、メチャクチャ気持ちよくなってるよ!これでもう、死ぬまで僕のオモチャ確定だね♥あははっ」
それを見て少年はより楽しそうにけらけらと笑う。その姿はもはやただの淫魔そのものにしか見えない姿だった。
「……さて、天龍?君の『ご主人様』は一体誰だっけ?その口から言ってほしいなぁ?」
そして彼女の痴態を一通り堪能した少年はすっかり動かなくなった天龍の拘束を解いて、彼女にそう尋ねた。
「なに言ってんだよ、『提督』♥今目の前にいるお前に、決まってるだろぉ♥」
その言葉に対し天龍は普段の彼女とはかけ離れた、蕩けた笑みを浮かべながら目の前の少年こそが『自分の提督』であると、そう答えたのだった。
「ふ…あははははっ!そうだ、それでいいんだよ。これで君も僕のオモチャだ」
「ああ、嬉しいぜ。こんな最高に素敵なプレゼントをありがとうな、提督♪」
そんな天龍の言葉に満足そうな笑みを見せた少年は彼女を抱きしめるとその唇を重ね、再び淫靡に満ちた時間を過ごしていった……。
ーーーーー
それから少し時は立ち……
余すところなく彼女の身体を堪能した彼は天龍に対し一つの命令を下した。それは……
「じゃあ早速、君に任務を与えるよ。……これからこの会場内を探して、ボクのメス豚候補になる女性たちをたくさん連れてきてほしいんだ」
自分のオモチャになる女性たちをたくさん捕まえてくるというものだった。
「……わかった、オレに任せとけよ。必ず全員、提督の『女』にしてやるからよ。……あと、オレの仲間たちも、しっかりと提督のオンナにしてやらねぇとな♥」
それに対し天龍は快楽に溺れた顔を隠そうともせず、目をハートにさせた状態で笑みを浮かべてそう答えた。
「……あと、念のため武器も渡してアゲルよ。僕には使いこなせそうもないからね」
そして少年は天龍に対し金色の光をまとった一本の剣を渡してきた。
「ああ、ありがとうよ提督。……じゃあ、行ってくるぜ」
それを嬉々として受け取った彼女はすぐにその場から駆け出し、会場内にいる少女たちを探しに行った。
そしてそんな彼女の姿を少年は見送ると、紛れもなく歪んだ愉悦に満ちた笑顔を浮かべながらこれからの未来に思いをはせていくのであった。
こうして、天龍という新たな玩具を手に入れた彼はさらなる欲望を満たすための準備を始めることになる。
それが後にどのような悲劇を巻き起こすのか、それはだれにも分からない……。
【天龍@艦隊これくしょん】
[状態]:淫紋を刻まれたことによる洗脳、処女喪失、中破姿
[装備]:天龍の艤装@艦隊これくしょん、雷電の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:司令官(田所健也)の命令のままに、他のメス豚候補となる少女たちを捕まえる。
1:司令官の命令は絶対だぜ。
2:艦隊の仲間たちや姉妹艦である龍田と合流し、彼女たちもメス豚にしてもらわねえとな。
3:司令官のことはこの身に変えても、何としてでも守り抜くつもりだ。
[備考]
洗脳により田所健也を『司令官』と認識しています。
また『天龍改二』への改修はされていません。
艤装が没収されていない代わりにランダム支給品の数が減らされています。
【田所健也@ママは対魔忍 乱れ堕ちる熟くノ一】
[状態]:健康、淫魔の力が全身に満ちている。
[装備]:タトゥーマシーン@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本行動方針:正義のヒロインたちを、自分の牝豚として調教する。
1:淫魔のおじさんから教えてもらい、そして与えられた力で対魔忍や正義のヒロインを屈服させる。
2:まずはこの天龍お姉さんを、自分の"オモチャ"として使うことにする。
3:天龍お姉さんのような子が他にもいると考えただけで、チ〇ポが熱くなってきてしょうがないよ。
[備考]
参戦時期は少なくとも第三話、現役の対魔忍である『夏鈴』を快楽堕ちさせて以降。
制限により結界等を張ることができません。
『支給品紹介』
【天龍の艤装@艦隊これくしょん】
艦娘の標準装備であり、これを装備して海を駆け、砲撃、魚雷、爆雷などの多彩な攻撃で深海棲艦を撃沈する。
当ロワにおいては天龍の初期装備である『14cm単装砲』と『7.7mm機銃』の二つが装備されている。
【雷電の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
田所健也に支給。その名の通り電気をその刀身に宿した両刃の剣。
落雷に長く晒して鍛えた魔法の剣であり、金色の光が刀身に満ちているときに振るうと電撃で相手をしびれさせることができる。
【タトゥーマシーン@現実】
田所健也に支給。磁石の磁力、モーターの回転で針を高速で上下させながら何度も突き刺すことでタトゥーを刻み込む道具。
目的に合わせた針を付け替えることでさまざまなデザインを描いていくことができ、現代的なデザインを彫り込むのに向いているのが特徴。
これで今回の投下は終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します
「いや、確かに僕は背が低いですよ?童顔だって言われることもなくはないよ?だからって…高校生にもなってランドセルはないんじゃないかなあ!」
誰に言うでもなく、不満を漏らす少年がいた。
彼の名は広瀬康一。
ぶどうヶ丘高校の高校生ではあるが、不幸なことにその体型ゆえにこのバトルロワイアルに参加させられてしまった少年である。
「最初の場所で見かけた他の参加者…それにこのランドセル…ここに呼ばれてるのはそういう人達ってことだよね」
自分が『そういう人達』の中に混ぜられているのは釈然としないが。
参加者の多くは康一よりも幼い少年少女なのだろう。
年長者であり、スタンド使いである自分が守らなければ。
ランドセルの中身を確認した康一は、決意と共に歩き出した。
「!あれは…」
しばらく歩いていると、一人の参加者の後ろ姿を見つけた。
「サトシ…セレナ……お兄ちゃん…みんな、どこ…?」
見た所まだ年齢が二桁にも達していないだろう女の子は、不安そうな表情で辺りをキョロキョロと探っていた。
知り合いを探しているのだろう。
こんな小さな子にこんなことを疑うのも失礼だが、人探しをしているのなら殺し合いに乗っているということはないだろう。
「あの、大丈夫?」
康一は少女の背中に声をかけた。
すると、
「お兄ちゃん!?」
少女は嬉しそうな表情で振り向き…そしてすぐにその表情は曇った。
「お、お兄ちゃんじゃなくてごめん。その、僕は広瀬康一、もちろん殺し合いをするつもりなんてない。君の名前も教えてもらっていいかな」
「ユリーカ、だよ。お兄ちゃん…コーイチとそっくりな声をした人を探してるの」
「そっか…お兄さんはその…このランドセルが似合うような人なの?」
「あ、このバッグ、かわいいよね!殺し合いなんて物騒なことに巻き込まれたのは嫌だけど、このバッグはお気に入りなんだ!」
「そ、そうなんだ」
ユリーカの話に康一は戸惑う。
どうも話を聞く限り、このユリーカという少女はランドセルを知らないらしい。
特殊な環境で育ったのか、あるいは…
(メルヘンとかファンタジーじみてるけど…異世界、とか?)
康一がそんなことを考えている中、ユリーカは康一をじっと見ていた。
正確には、康一が持っていた『あるもの』を。
「ねえそれ…ポケモンのたまごだよね?」
「え、ユリーカちゃん…このたまご…ポケモンが何なのか知ってるの!?」
康一はランドセルの支給品を調べた後、その内の一つを抱えていた。
その支給品の名は『ポケモンのたまご』。
ポケモンが何なのかは分からなかったものの、持って歩いていれば何かが生まれるということなのでとりあえず抱えていたのだ。
そして今、目の前にいる少女は謎の生き物ポケモンについて知っているらしい。
「ねえコーイチ、そのたまご、ユリーカが貰っちゃダメかな?」
「このたまごを?」
「うん…サトシもセレナもお兄ちゃんも、デデンネもいないけど…ポケモンがいれば、どんな怖いことでも乗り越えられる気がするの」
「ユリーカちゃん…分かった、これは君に預けるよ」
「ありがとう!」
ユリーカはぱあっと顔を輝かせながら、康一からポケモンのたまごを受け取った。
「ポケモンのたまご、キープ!これからよろしくね!」
「持つの疲れたら代わるからね。それじゃあ、行こうか!」
「うん、お兄ちゃ…じゃなくて、コーイチ!」
【ユリーカ@アニメポケットモンスター】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3、ポケモンのたまご@ポケットモンスターシリーズ
[思考・状況]基本方針:お兄ちゃんや仲間を探し、ここから抜け出す。
1:コーイチと行動する。お兄ちゃんと似た声で調子狂うなあ
2:たまご、何が産まれるかな
[備考]
参戦時期はミアレジム戦以降、旅が終わる前です。
【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:幼い少年少女を守り、殺し合いを止める
1:ユリーカと行動する。
2:自分が選ばれたことに釈然としない。高校生でランドセルって…
[備考]
4部終了後からの参戦です。
投下終了です
投下します
恐ろしいバトルロワイアルの舞台の片隅で、とても楽しそうに遊ぶ二人の女の子が居ました。
◆
「「キーーーーーーーーン!!」
もの凄いスピードで疾走(はし)り寄る二人の女の子が、正面から激突した。
核でも炸裂したかの様な様な、凄まじい音がした。
激突した二つの人型巨大エネルギー。その接触点に集約された膨大な力。その余波が暴風と化して空気を荒れ狂わせ、二人の身体を伝わって地面へと流れた威力に地盤は砕け、巻き上げられた岩盤が、砕けながら彼方へと飛んでいく。
キャハハと愉しげに笑う、帽子に眼鏡の女の子が拳を振るい、正面の大きな女の子のお腹にグーパンを見舞います。
爆撃でも受けたかの様な爆発音と共に、大きな女の子は地面に二条の深い溝を刻みながら後退し、30mも退がって漸く止まります。
両手を広げて駆け寄ってくる眼鏡の女の子に、大きな女の子の渾身の右フックが炸裂。地面と水平に飛んでいった女の子は、直径10mを超える岩に激突。爆弾でも仕掛けられていたかの様に岩が砕け散りますが、砕けた岩の瓦礫の下から、眼鏡の女の子は何事もなかったかの様に立ち上がります。
2人は楽しくプロレスごっこをしています。
2人は心の底からこの時間を愉しんでいます。
何しろ全力で頑張ります遊べる相手なんて、今まで出逢った事が無かったのですから。
2人とも、カイバノアという『悪い子』に対する憤りは有りますが、全力で遊べる愉しさに、今のところは忘れています。
拳が激突する度に雲が消し飛ぶ勢いで大気が震え。投げ飛ばせばぶつかった岩山が崩壊し。地面に叩きつければ隕石が墜ちたのかと見紛う程のクレーターが発生します。
やがて破壊の限りを尽くし───もとい、プロレスごっこに飽きた二人は、野球をする事にしました。
大きな女の子は、ランドセルに入っていた巨大な金属バットを握って立ち、眼鏡の女の子は、軽自動車並みはある岩を持ち上げると、軽々と大きな女の子目掛けて投げつけます。
あっさりと音速を超え、大気との摩擦熱で赤熱化した岩に、大きな女の子は手にした巨大金属バットを一振り。
振るい出した時点で音を置き去りにした巨大金属バットは、見事に岩を捉えました。音だけで地面が砕ける程の轟を残し、岩は塵になってしまいました。
お次はコレだと、眼鏡の女の子は、大型トラック程もある大岩を拾ってぶん投げますが、大きな女の子もさるもの。今度は砕く事なく岩を撃ち返し、音の四倍の速度で大岩を彼方へと飛ばします、
大気との摩擦熱で燃え上がりながら飛んでいった大岩は、1キロほど先の岩山に激突すると、岩山を崩壊させてしまいました。
既に周囲は天災に複数回見舞われたが如き惨状を呈していますが、2人の女の子が遊び飽きるのは、まだまだ先の様ですね。
【則巻アラレ@Dr.スランプ】
[状態]:健康 ウッキウキ
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:取り敢えず目一杯遊ぶ
【シャーロット・リンリン(五歳)@ONE PIECE
[状態]:健康 ウッキウキ
[装備]:八斎戒@ONE PIECE
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:取り敢えず目一杯遊ぶ
1
2:
{備考}食い煩いを起こす前。羊の家で、マザー・カルメルと生活していた頃からの参戦です。
装備品紹介
八斎戒@ONE PIECE
四皇の1人であるカイドウの持つ巨大金棒。7mを超えるカイドウの身長に匹敵する長さ。
カイドウの規格外の剛力で振るっても、僅かな傷も歪みも無い強度を持つ。
オダセン聖曰く、カイドウが手放す事があれば、伝説として扱われるとの事。
投下を終了します
投下します
「ここなら大丈夫。ささ、座って」
「……うん」
住宅街の中、一つの現代的な一軒家。少年は優しい口調で、少女へと語りかける。
両者は互いに小学生の幼い身、この殺し合いに参加できる資格を持ってしまっているものであった。しかし少年はたいていの子供達なら恐怖のあまり動けなくなっても何らおかしくないこの状況で率先し少女へ安心を提供しようとした。
その少年の名は、泉研。又の名をチャージマン研。そう、彼はただの子供ではないのだ。
彼は普段ジュラル星という星からやってきた、地球の支配を企む存在、ジュラル星人を前に、与えられたチャージマンとしての力と自らの正義感の上戦っている。ジュラル達との戦いはたいてい一方的なものだ。その理由は対ジュラル向けに作られたチャージマンの圧倒的な力と、研自身のプロボクサーをも寄せ付けぬ圧倒的なフィジカル、そして無慈悲とも言える思い切った判断能力。その力故に研はジュラル達の大いなる脅威と化している。そして同時に、人類からは頼もしいヒーローと讃えられる。そこにあるものはジュラルを許せない気持ちと、人々を守りたいという優しき心。だから研は殺し合いなんてものは許すことはできない。
「ちょっとそこで待っててね、上の階にも何かないか見てくるから」
殺し合いなんて開いた挙句、ルフィとエース、2人の命を弄んだ行為。だが彼は一つ悩みを抱えてしまった、それは海馬乃亜の正体について。乃亜がジュラルが行った人間への擬態だった場合、絶対に殺さなければならない。乃亜が人間でジュラルに脅されてたり操られていた場合、裏のジュラルを殺して乃亜を救ってあげなければならない。
ただ、乃亜がジュラルではない人間で、単なる極悪人だった場合。その時はどうすれば良いのか。ジュラル星人へは迷いなくアルファガンの引き金を引ける。ただ、人間であればどんな極悪人でも、等しく尊い命を持つものだ。その命を自らが断罪して良いものなのか。
「(……考えるのは後だ!まずはあの子や他のみんなを保護しなければ!)」
ここに居るのは少年少女と乃亜は言っていた。だから大人達がいない今、頼れる人物として自分はこの場に立っていないといけない。研は自らの立場をそう意識し、同時に持っている力を発揮して殺し合いなんてものは破綻させようと決心した。
幸運にも、彼の確認した支給品には愛用のアルファガンも含まれていた。殺し合いの場、少年少女と謳われてはいるものの恐怖のあまり凶行に走ってしまう子や普段から悪事を働いていた子もいるかもしれない。そんな時に、アルファガンの機能の一つである麻酔銃で一旦強制的に落ち着かせることも選択肢に入れることができる。
「(……2階、3階にも誰も居なかったし、結構昔のものっぽい珍しい建物だけど特に異常もなかった。あの子のところへ戻ろう、そういや名前すら聞いてなかったや)」
少し力みすぎてたのか、相手の名前を聞くことすら忘れていた。適度にリラックスしながら、今後の動きを決めていくべきだ。
研は階段を降り、少女へと向く。
「安心して、ここは安全だよ。それでさ、君の名前を教えて欲しいんだ」
問われた少女は相変わらず静かに答えた。
「しずか……久世しずか」
◇◇◇
きっと、あの子どもたちがチャッピーを食べちゃったんだ。だったらあの子達の中を、胃の中を調べなきゃ。
「胃の中を調べる道具、出して?」
「わ、わかんないっピ……」
なんで?どうして?出してくれないの?
もうタコピーも、チャッピーを助けてくれないってこと?私を助けてくれないってこと?
「タコピーももう、助けてくれないんだ」
じゃあ、いらない。
殺し合い、なんてことはよくわからない。別に人は殺したくないし、殺したって何も変わらない。
でも、
『勿論ただでとは言わない、優勝者にはどんな願いも叶えてみせる』
だったら、チャッピーも返してくれるかな。
◇◇◇
「研くん」
「うん、どうしたんだい?」
私1人じゃ、多分優勝?はできない。だったら、誰かに助けてもらわなきゃ。
ちょうど目の前にいる、私に話しかけてくれた人。研くんに。
「研くんは、私を助けてくれる?」
「――――……っ!もっもちろんさ!君を守るのが、ぼくの役目なんだから」
研くん。研くんに、私を優勝させてもらおう。
それで、チャッピーともう一回会うんだ。
【泉研@チャージマン研!】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、アルファガン@チャージマン研!、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]基本方針:みんなを守る。
1:しずかちゃんを守りながら、他の子達も保護しに行く。
2:乃亜の正体は……?
3:しずかちゃん、綺麗な子だなあ……
[備考]
【久世しずか@タコピーの原罪】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:チャッピーに会う
1:研くんに協力してもらわなきゃ
[備考]
※参戦時期は11話、タコピーを殴った後。
【アルファガン@チャージマン研!】
泉研に本人支給。
対ジュラル用の光線銃。威力はジュラル星人が一発で死ぬ程度。麻酔銃へと切り替える事もでき、ライオン相手でも一瞬で昏倒させられる程の威力がある。ちなみに麻酔銃状態でもジュラル星人は死ぬ。
投下終了です
投下ありがとうございます
>科学と魔術が交差する時
確かに、リーゼロッテの願いは本編後では叶ってる訳ですからね。満足死した後で蘇生されたら怒るのも無理はないですね。
おこなリーゼロッテと対面してびびる明石は可哀そうですが、地の文のツッコミやさりげない描写が小物っぽさやコミカルさが出ていて見てて愉快なお話でもありました。
>ジレンマは終わらない
解放(殺す)
えぇ……。
>あとどれくらい、泣けばいいんだろう?
一作目の娘といい感情がない(大嘘)としか思えない娘達ですね。
デッドマスターが痛みを振り撒き、インセイン・ブラックが痛みから解放する。マッチポンプかな?
>ヤマシロン、やっぱりあざとい。
ドゲンジャーズ、何かのご当地ヒーローなのかなと思ったら、かなりちゃんと作られてるっぽい特撮みたいで驚きました。
タイトル通り、台詞の節々からあざとさが出ていますが、やはりヒーローだけあって考えはしっかりしてますね。
>友達
イリヤが人形にされた直後という最悪の時系列から来てしまった美遊。
後の未来ではちゃんと復活するだけに、美遊には早まらないで欲しいですが……。プリヤ勢マーダーが多いっすね。
>これ以上、失わないために
人の尊厳に敬意を持って殺し合いに抗う浜風。
これは、艦娘の鑑ですね。
>天の龍は、幼き欲望に飲み込まれる
同じ艦娘の登場話なのに、なんだこの落差は…たまげたなあ。
やっぱ、田所って名前は人間の屑ってはっきりわかんだね。
>新たなる生命を抱いて
康一君、初期は結構背が高かった気がするんですけどね。何故か収縮してしまったが為に、こんな殺し合いに……。
ユリーカの手元にポケモンの卵が渡りましたし、卵ガチャで当たりを引けば戦力としてはかなり有力になるかもしれませんが、これがコイキングとかだったらぶちギレていいと思いますね。
>カラミティ・ガールズ
殺し合いとは思いえない程、ほのぼの遊んでいる微笑ましいロリっ娘二人。
リンリンにとって初めて対等な関係を築けた友達になるのかもしれませんが、やはり食い煩いが怖い所。アラレちゃんなら平気そうだけど。
>チャージ
ロワでは原作本編と違って尺があるお陰で、研が非常に理知的かつ冷静で頼もしい対主催をやれるって訳ですね。
その反面、今回は主催も含め殆どが人間相手で、ジュラル星人が黒幕ではない為にいつもみたいに即殺して解決という最速最短解決が封じられたのも痛いところですが……。
そしてさっそく、頭のおかしいしずかちゃんという爆弾を抱え込んでしまい幸先不安です。
投下します
君は、生き延びる事ができるか?
条河麻耶は必死こいて無人の洋館の中を駆けていた。
今現在麻耶が居るのは、窓から下を見た限りでは3階相当、到底飛び降りる事など出来はしない。
条河麻耶がこの洋館に送られて、中を彷徨う事五分。辿り着いた食堂の様な場所で出逢ったのは、猫背の少年。話しかけようとした麻耶に、ミイラの様な顔を向けると邪悪に笑い、巨大な鋏を振り上げたのだ。
麻耶が何とか逃げ出せたのは、支給品の効果によるものだ。その名を『エルメスの靴』という支給品は、いつもの倍の速度で麻耶を走らせ、ハサミの殺人鬼から逃れる事に成功させた。
ひたすら駆けて駆けて駆け続け、倍速で走った為に常時の倍の速度で疲労し、廊下にへたり込んで息を整えていた所へ聞こえてきた、あの『音』。
金属と金属が擦れ合うあの音。鋏の刃を開き、閉じ、開き、閉じ、そうする事で生じる音だ。
あの怪人が追って来ている事を悟り、心の底から怯え切った麻耶はふたたび逃走を開始。幸にして支給品の効果は、任意でオン/オフが切り替えられる様で、今度は倍速で走る事なく、激しく疲労する事なく走り続ける事が出来た。
そうして下の階へと通じる階段を求めて走る事暫し、麻耶は階段では無く他の参加者を見つけてしまった。
黒髪黒瞳、血の気の無い白い肌の、10代前半の外見。裸足で床を踏みしめて立つ貫頭衣の少女は、血相変えて駆け寄ってきた麻耶を見ると、貫頭衣の内側から、剣身から漆黒のオーラを放つ禍々しい大剣を抜き出すと、無言で振りかざして、麻耶目掛けて走り出した。
デスマスクの如き無表情で、猛速で走り寄ってくる少女に対し、麻耶は即座に逃亡を決意。エルメスの靴の効果をフルに活かして逃げ出した。
余計な思考などする余地も無い。立て続けに生命危機に晒されて、麻耶の思考は恐怖と焦燥に支配されている。
部屋から部屋へと逃げ回り、曲がり角を幾つも曲がり、自分が館の何処を走っているか分からなくなっても、麻耶は足を止めずに走り続ける。
麻耶耳にはずっと聞こえ続けているのだ。裸足の足が、床を踏み鳴らす音が、どれだけ走っても、エルメスの靴を使っても、あの少女は一定の距離を置いて追跡してくるのだ。
恐怖と疲労とで涙と涎と鼻水を垂れ流し、顔をグシャグシャにしながら駆ける麻耶は、気が付けば鋏の少年と邂逅した食堂の様な部屋に居た。
先刻出逢った少年を思い出して、絞め殺される豚の様な悲鳴を上げてへたり込んだ麻耶の耳に、金属の擦れ合う音と、床を踏む裸足の足音が同時に聞こえてきた。
麻弥は堪えくれずに恐怖に負けて絶叫するが、当然声を聞きつけた少年少女が、麻耶の潜む食堂へと殺到してくる。
無我夢中で麻弥は壁に設置されている暖炉の中に入り込むと、煙突を1m程よじ登り、両手足を壁に突っ張って身体を支え、煙突内に身を潜めた。
最早限界を超えた限界に有る両脚を叱咤し、必死こいて両手足に力を籠める。
絶体絶命と呼んで良い窮地だが、麻耶には確かな希望があった。
こんな状況でも希望を抱ける辺り、タフって言葉は条河麻耶の為にある
殺し合いに乗った殺人者が2人。このままでは両者ともに食堂に入っってくる。
いくら広いとはいえ、同じ室内に居て気付けないほど広くも無いし、視界を遮る障害物が多い訳でも無い。必ず互いを認識する、そうすれば殺し合いになるのは必至。殺人者達が殺し合っている間に、若しくは何方かが死んでから、悠々と脱出すれば良い。
絶死の窮地にありながらも、何処か余裕がある麻弥が、真に絶望するのはこの直後の事である。
◆
最初に食堂の扉が開き、金属音と共に人が入って来る気配。あのハサミの少年が、麻耶を殺しにやって来たのだ。
耳障りな金属音が食堂内を移動していく。間違い無くあの少年は、麻耶が食堂内に居ると思って、麻耶を探し回っている。
恐怖と疲労で荒くなる息を殺し、眼を閉じて堪え続ける麻耶の耳に新たな音 あの死骸を思わせる少女もやって来たのだ。
麻耶は煙突内で密かにほくそ笑む。後は此奴らが殺し合えば────何時迄も二人が争い出す気配がして来ない。
部屋の中を足音と金属音が移動していき、時折食器棚を開ける音や、机をひっくり返す音がするだけだ。
目論見が完全に外れた麻耶が、煙突の中で涙を流す。あまりの理不尽さに怒りすら覚えてくる。だからだろうか、限界を超えた限界にある両手足が、麻耶の身体を支え続けられたのは。
然し、そんあ麻耶の努力も虚しく、殺人者が暖炉の前に立つ気配がした。
失禁しそうな恐怖に耐え、呼吸を止めて潜む麻耶の胸ぐらが捕まれ、一気に暖炉から引き摺り出される。
恐怖のあまりに発狂した猿の様な悲鳴を上げる麻耶を見下ろすのは、死人の様な少女。少女は手にした大剣を無言で振り上げた。あの剣が振り下ろされれば、麻耶の頭は熟柿の様に潰れるだろう。
死を覚悟した麻耶は半狂乱で、背負っていたランドセルを手に取り、少女へと叩きつけ────瞬間。
ちゅどッ!
派手な爆発音と共に煙が室内に蔓延し、室内に居た全員の視界を覆ってしまう。訳もわからないまま、麻耶は床を這いずって逃げ回り、何とか食堂から脱出することに成功。エルメスの靴の効果を使い、全速力で走り去った。
走り出してしばらく経ってから、麻耶は壁に背を預けて床にへたり込み、息を整え、疲労の回復を待つ。
その間に、さっきの爆発音と煙の原因を確認するべく、ランドセルの中を改めると、『煙玉』と書かれた袋が出て来た。どうやらこの中身が溢れて爆発したらしかった。
疑問が解けた麻耶は、大きく溜息を吐くと、目を閉じて回復に専念した。通常ならば一日以上掛かるほどに疲弊し尽くした手足は、支給品の『守りの指輪』の効果により、30分程で行動に支障が無い程度に回復した。
指輪の効果に驚きながら立ち上がった麻耶は、その後誰とも会う事なく、エントランスホールに辿り着き、そこで又もや一人の少女に出逢う。
紫紺のゴシックドレスを着た少女は、長いブルネットの髪と、繊細可憐な白皙の美貌と相まって、アンティーク・ドールを思わせる。
エントランスホールは無人とはいえ、館の中には殺人者が二人も徘徊している状況で、襲われた様子も無く、身じろぎひとつせず、両開きの扉の前に立つ少女の姿は、条河麻耶の背筋に冷たいものを走らせるには充分だった。
本能的に身構えると、少女の正面を避け、右側から近づいて行く。例え殺し合いに乗っていたとしても、少女は素手だ。即座に殴り倒して館の外へと脱出する。そう決意して近づいていった矢先。少女が両肩を掻き抱き、絶叫して蹲った。
思わず動きを止めた麻耶の顔面目掛けて、少女から閃光が疾った。
予め身構えていた事と、館内での経験とが併さって、麻耶は咄嗟に転がって、顔面を抉る軌道で振われた鎌を回避。そのまま床を転がって距離を取ると立ち上がる。
麻耶は少女の姿を見て、愕然と動きを止めた。
少女が振るったのは鎌だった。だがそれは少女の手に握られたものではない。
右肩があった場所から細く長い腕節が伸び広がり、刃はその先端で、鈍い輝きを放っている。
少女の腕そのものが展開・伸長して、内蔵されていた刃を繰り出したのだ。
再度凄惨な絶叫と共に、少女の左腕が割れ、右と同じ腕節と鎌が現れる。
更にスカートの中から夥しい節足が現れ、麻耶目掛けて人では有り得ない速度で迫り来る。
絶叫しながら麻耶はエルメスの靴の効果を使用。全速力でエントランスホールを後に、金属音や足音が聞こえる度に向きを変え、『階段を何度も駆け上がり』。鋏を躱し、遮る扉が大剣の一撃で破壊されるのを目撃し、無数の軸足で天井や壁を走る少女の振るう鎌から逃れ。
何故か争う事なく、自分を殺すことに専念する殺人者達に、理不尽さを感じながら逃げ惑う。
◆
死人の様な少女に追われて廊下を走る麻耶。その眼前で、廊下に面した扉の一つが開き、中から鋏を持った少年が、あの金属音と共に飛び出して来た。
麻耶を狙って少年の振るった鋏が、麻耶に躱されてた挙句、死人のような少女の顔面を粉砕。少女が仰向けに倒れるも、少年は全く意に介さずに麻耶目掛けてハサミを振るう。
当たれば致命の斬撃を何とか躱した麻耶は、天井に人影の様なものを見た気がして、咄嗟に欲に飛び退く、先刻まで麻耶がいた空間を過ぎた鎌が少年の頭を断割した。
目の前で起きた惨劇に、込み上げるものを吐き出しながら、麻耶はエルメスの靴の効果を発動。全力でその場を駆け出し、廊下の角を速度を落とさず曲がる。その時後ろに目を向けると、明らかに致命傷を負った筈の少年と少女が、平然と此方へ走って来るのが見えて、麻耶は恐怖のあまり失禁した。
麻耶の知らぬことではあるが、少年はある条件下に於いて不死身。この場に於いては条件そのものが撤廃された代わりに不死性が制限されているが、それでも頭を割られた程度で死ぬ事はない。
少女は元より骸。死骸に充填された魔力で駆動する操駆兵。死体の神経を操作系に用いた自律駆動するゴーレムの様なもの。顔面が砕けた程度では止まらない。
もう一人の少女も戦闘用の身体に改造されたガイノイドだ。これもまた人では無い。
三者三様の人でなしだが、麻耶を殺すという目的は三者共通。故に揃って麻耶を追う。
殺人者達が互いに殺し合わないのは当然だ。彼等は殺し合いを円滑に進める為のに乃亜が用意した、殺し合いを破綻させない程度の強さの、殺人者なのだから。
彼等は乃亜によって互いを認識できず、殺し合いができない様に設定されている。
しかし、あくまでも相互に認識できないだけでしかなく、互いの攻撃が誤爆することも有る。
更に相互認識ができない為に一切の連携が取れず、結果として互いの攻撃が誤爆し合い、その為麻耶を取り逃し続けたのだが。
そんなことは知らない麻耶は、恐怖と理不尽さに泣き喚きながら逃げ惑い、気がつけば最上階である『5階』に居た。
館の中には凶悪な殺人者が三名。対する麻耶はボッチ・ザ・フュージティブ。
圧倒的不利な状況下で、条河麻耶は果たして館から脱出出来るだろうか?
【条河麻耶@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:疲労(大)回復中 精神的疲労(大) 涙と涎と鼻水による顔の汚れ。失禁
[装備]:エルメスの@靴FF6 守りの指輪@FF5 煙玉@刃牙道×3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0
[思考・状況]基本方針:生還する
1:館から脱出する
支給品紹介
エルメスの靴@FF6
常人ヘイストの効果が掛かる靴。このロワでは行動速度が倍になるが、倍の速度で疲労し、速度が倍化しても運動エネルギーには変化を生じず、効果を任意でオン/オフ出来る仕様になっている。
守りの指輪@FF5
物理と魔法への防御力を向上させ、常時リジェネの効果。
このロワでは傷だけで無く疲労も癒す仕様となっている。
煙玉@刃牙道
本部以蔵が制作した煙玉。『ちゅど』という爆発音と共に煙幕を展開する。
煙幕による撹乱効果は異常に高く、範馬勇次郎でさえも通用した程。シリーズ屈指のチートアイテム。麻耶には四個支給された。
【ボビィ・バロウズ@CLOCK TOWER】
[状態]:健康
[装備]:万物両断・エクスタス@アカメが斬る
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:条河麻耶を見つけ出して殺す
[備考]
不死性の条件が無くなり、行動の自由を得ましたが、不死ではなくなっています。
アルシアとペトルーシュカを認識する事が出来ません
支給品紹介
万物両断・エクスタス@アカメが斬る
鋏型帝具
元より刃物として高性能だが、鋏の刃で対象を挟み切ると、この世にあらゆるものを切断できる。
大きさを活かして盾としての利用も可能。
奥の手は刃でそのものを強烈に発光させる『金属発光』
【アルシア@白貌の伝道師】
[状態]:健康
[装備]:魂砕き@ロードス島戦記 遠坂凛の宝石×20@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:条河麻耶を見つけ出して殺す
2:
[備考]操駆兵であるアルシアには体力や疲労というものが存在しませんが、魔力が無くなると死体に戻ります。
ボビィ・バロウズとペトルーシュカを認識する事が出来ません
支給品紹介
魂砕き@ロードス島戦記
肉体を持たない魂だけの存在である魔神王を滅ぼす為に鍛えられた魔剣。
斬った相手の精神と魂を打ち砕く効果があり、掠っただけで破格の英雄が戦闘不能となるが、この機能は制限により発揮されない。
斬った相手から生命力を奪う効果が有り、此方は機能している。魔力が切れると死体になるアルシアの生命線その1
遠坂凛の宝石×20@Fate/stay night
遠坂凛が日頃からコツコツと魔力を貯めた宝石。最高ランクの魔術を行使できるだけの魔力が、宝石一つ一つに充填されている。
が切れると死体になるアルシアの生命線その2にして遠坂凛激おこ案件。
【ペトルーシュカ@鬼哭街】
[状態]:健康
[装備]:ミラクルシューズ@FF6
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜2
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:条河麻耶を見つけ出して殺す
2:
[備考]
ボビィ・バロウズとアルシアを認識する事が出来ません。
原作で仕込まれていた機銃は取り外されています。
支給品紹介
ミラクルシューズ@FF6
シェル、プロテス、ヘイスト、リジェネが常時掛かる靴。
物理及び魔法攻撃のダメージを三分の一に減らし、常時損傷を回復する。行動速度の倍化はオミットされている。
投下を終了します
投下させていただきます。
────手を離された。 一緒に冒険していた嘗ての相棒に。
あの時、森の中にあった1軒の家屋から助け出した筈の少女で、名前は『シックス』だった。
テレビの中の世界に連れさらわれ、その中の電波塔で巨大な化け物の姿になっていた彼女を救う為とはいえ、
大切にしていたオルゴールを壊してまで元の小さな姿に戻した彼女に。
電波塔の主が居なくなり、肉塊の化け物に浸食されて崩壊しつつあったテレビの中の世界、
その出口を目前にして崩壊した足場から落下しそうになっていた自分の手を一度は掴んでくれたけど、その手を突然にも離された自分は一人、肉塊が迫る塔の下層階へと落ちていった────
••••••••
しかし、気がつくと見知らぬ子供たち達が集められた部屋におり、
その壇上で何かを喋り、首を吹き飛ばした兄弟を嘲う緑髪の少年を目にした。
••••••••
「あの、大丈夫ですの!?」
──会場内のとあるレンガ造りの一軒家。
薪をくべられた暖炉の前、絨毯の上でピンク髪の参加者であるペシュ•ファーマーに介抱される少年。
名前は『モノ』。
彼は現在居る家屋のリビングに転移され、そのまま目覚めずにいるところをペシュに発見され、暖炉の前まで運ばれて現在に至っている。
そんなモノを見守るペシュ。
彼女は15歳ではあるが、身長はたったの100cm。
また、『愛の大使』というありとあらゆる生き物を愛し、争いごとを好まない種族である。
ペシュ自身も多数の魔法使いを輩出してきた名門の魔法学校ウィル•オ•ウィスプに通い、クラスメイト達と共に様々な出会いや戦い、そして悲しみを経験し、元いた世界を救った経緯があるのだ。
当然、この殺し合いは彼女にとっても許せず、主催にも従わずに他の子供たちを救おうと思っており、この会場で最初に出会ったモノを見守っているのである。
【ペシュ•ファーマー@マジカルバケーション】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。
1:最初に出会った少年(モノ)が目覚めるまでの間見守る。
2:モノが目覚めたら一緒に移動しようかな?
3:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
※魔法の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
【モノ@リトルナイトメア2】
[状態]:眠っている、体に痩せ
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:???。
1:シックスは…シックスはどうしたんだろう…?何処にいるんだろう…?
[備考]
※参戦時期は本編ラスト、肉塊の怪物に浸食されつつあるテレビの中の世界にある出口の前で崩落した足場があった場所でシックスに掴まれていた手を離されて落下してから電波塔の椅子が一つある部屋で成長するまでの間。
※特殊能力の類の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
※一人称や口調、その他細かい設定についても後続の書き手様にお任せします。
※乃亜の説明を把握しているかは不明。(後続の書き手様にお任せします。)
投下終了させていただきます。
みなさん投下ありがとうございます。
私も投下します。
「殺し合い……だと……? どうなってやがる」
逆立った銀髪に幼い子供のような小さな体躯、それに見合わぬ太刀を背に差し白い羽織に黒の和服を身に着けた少年。
一見すれば、奇抜な格好をした大人びた雰囲気の子供のように見えるが、その実年齢は優に数百歳を超える人外。
死神、その中でも突出した実力者である護廷十三隊十番隊隊長の一人、日番谷冬獅郎は困惑を隠せずにいた。
「あの乃亜とかいうガキ、瀞霊廷から俺をこんな場所まで拉致したってのか……?」
かの滅却師(クインシー)達ですら、その侵入には気づかれ死神達と交戦となったというのに、乃亜と名乗る少年はそれすらなく、仮にも隊長である日番谷を殺し合いの場へと連れ去った。
その当の日番谷ですら、乃亜という侵入者の存在に気付くことなく意識を奪われ、殺し合いの開幕を聞くまで事態を把握しきれなかった。
不覚どころか、大失態の極めともいえる。さらに言えばそんな芸当を平然と行い、あれだけの数の少年少女達を集めた乃亜の力も計り知れない。
「殺し合いなんざ乗るわけにはいかないが……まずはこの首輪を外さねえとな。涅でも居れば話は早いんだが」
技術開発局の局長であり、同じ護廷十三隊の隊長の同僚を思い浮かべながら、日番谷は駆け足で殺し合いの会場内を散策する。
現状、日番谷一人では首輪の解析は不可能だ。現状は会場内を周りながら情報の収集、それと殺し合いに乗る馬鹿が居れば止める。この二つを当面の目的とした。
「おい、姉ちゃん! なんか、変な格好した奴がいるぞ!」
辺りを駆け回ってから数分後、日番谷の前に小柄な女の子と、頭に十円ハゲを作った肥満気味な少年を発見した。
(本当に小さな子ばかり……やっぱりあの乃亜って子は、私みたいに見た目が小さいか、こんな幼い子供ばかり集めたのね。……なんて悪趣味なの)
乾紗寿叶。
背丈は中学生か小学生に見間違えられる程、小柄だがれっきとした女子高生だ。髪型を二つに結んでツインテールにしているのも、幼さに拍車を掛けているかもしれない。
その体躯を活かして、魔法少女等のコスプレをジュジュという名前で活動している以外は普通の女子高生の彼女が、何故こんな殺し合いに巻き込まれた事に本人も疑問に思っていた。
だが、今目の前にいる二人の少年たちを見て、納得してしまう。
乃亜は少なくとも外見が小学生前後の子供達を集め、非道な殺し合いを強制させることを目的にしているのだろう。
その中で紗寿叶も外見の幼さから、参加者として選ばれてしまったのかもしれない。
個人情報を発信した覚えはないし気を付けてもいるが、やはりコスプレイヤーとしての活動で一般人よりは目につく事は多いだろうし、乃亜は常識では測れない存在なのは何となく分かる。
紗寿叶の居場所など手に取るようにわかり、こんな殺し合いの場へと連れ去られてしまったのだろう。
「オレ、小嶋元太ってんだ。お前、うな重持ってねえか?」
「んなもん、あるわけねえだろ」
「けどよ。あの乃亜ってやつ、色んなもん配ってくれるって言ってたぞ?」
「だからって、どうしてうな重を配るんだ。そもそも、簡素だが食料は基本支給品で配られてるじゃねえか、わざわざ別の食いモンを支給しねえだろ」
「でも、俺のランドセルにソフトクリーム入ってたぜ?」
「ああ悪いな! 俺が間違ってた!!」
この小太りで食い意地の張った男の子、小嶋元太というらしい。
殺し合いが始まった当初、ルフィとエースが惨殺された光景を思い返してしまい恐怖と混乱で腰が抜けていた紗寿叶に声を掛けてくれた。
話すと死体は見慣れているらしいと、大分現実離れした発言をされたが実際に年上の紗寿叶よりは冷静で食欲もあることから、多分嘘ではないのかもしれない。
紗寿叶も彼のお陰で冷静さを取り戻し、何とか殺し合いの中でもこうして別の参加者に接触する等、自発的に行動を起こせるようにはなった。
「ねえ、キミは何て名前なの? 良かったら教えて欲しいわ」
「ああ、そうだな。俺は日番谷冬獅郎、信じられないだろうが死神だ。まあ、お前達が想像するような死神と少し違って、虚(ホロウ)と呼ばれる悪霊を対峙するのが仕事と思ってくれ。
普段なら霊力のない人間には見えないんだが、多分乃亜の奴が何か仕掛けて、普通の人間にも見えるようになってるみたいだな。
さっきも話したように、虚との戦いに備えて鍛えてある。だから万が一の時、戦いは俺に任せて―――」
「おい、冬獅郎。お前ふざけんなよ!!」
「元太?」
「もう二人死んでんだぞ! ごっこ遊びしてる場合じゃねえよ!!」
「……ごっ、こ?」
元太の表情は、先ほどのうな重の話題から考えられない程に激怒した過熱した物となり、そのまま日番谷の胸倉を掴み上げる。
マイペースな様を見せていたが、彼も彼なりにこの殺し合いに対し憤怒していたのだろう。江戸川コナンと共に数多の殺人事件を見てきた中で、彼の中でも拙いながらも正義感が目覚めていたのかもしれない。
彼とて、昆虫人間を信じ捕獲に向かおうとしたり、仮面ヤイバーの大ファンだったり、ゴメラの実在を信じるくらいにはまだ幼く子供だ。
それでも、こんな初対面の常軌を逸した自己紹介を真に受けるほど、子供ではなかった。
だから、自分の妄想をあたかも現実のように語る日番谷に対し、事態をちゃんと直視しろ、妄想の世界に閉じこもるなと不器用な方法だが喝を飛ばしたのだ。
しかし、当然ながら日番谷にとってはこれは妄想でも何でもなく、ただの真実で自己紹介をそのまま行っただけに過ぎないのだが。
「元太くん、手を離して」
「姉ちゃん……」
「きっと日番谷くんも悪気はなかったのよ」
何か不味い対応をしたのか一人困惑する日番谷を他所に、紗寿叶は元太を止めるように仲裁に割り込んだ。
渋々元太は手を離し、紗寿叶は優し気な視線を日番谷に向けたまま口を開いた。
「なんか、勘違いしてるみたいだが俺は……」
「貴方の気持ち分かるわ。私もね、魔法少女になりたかったの……強くてキラキラしてカッコよくて、フリフリの可愛い服を着てて……」
「いや、俺は」
「殺し合いなんて怖いもんね? 自分の憧れる強い姿になろうとして、不安を消そうとしてたんでしょ?
好きなものになろうとする気持ちは否定しないわ。私も、無理をしてでも作り物でも、夢を叶えようとコスプレをしてるから」
「……」
「でもね。今は場を弁えた方が良いかもしれない。殺し合いに乗った人ばかりではないと思うけど、みんな今は必死なの。
そんな時にコスプレの設定を語られたら、怒られても無理はないわ」
「俺は空座小学校6年生、日番谷冬獅郎だ! ごめんな元太くん!」
真摯に見つめ語り掛けてくる紗寿叶に対し、日番谷は僅かな逡巡の末―――投げた。
(運良く、二人とも殺し合いには乗ってないけど……この先、どうなるか分からないわね。……私が一番年上だし、いざって時は戦わなきゃ、いけないのよね?)
乃亜の言う殺し合いに従う子供なんて居るとは考え辛いが、それでは殺し合いは成立しない。
やはり、いずれ何処かでそんな殺意を滾らせた子供と遭遇してしまうかもしれない。その時はやはり紗寿叶が前線に立って、この二人を守ってあげなければいけないのだろう。
「コナンの奴なら、もしかしたら何とかしてくれるかもなあ」
「お前の友達か?」
「おう、いつも殺人事件を解決してんだ」
「いつも……?」
「大体一週間ぐらいのペースで殺人事件起きるからよ」
「お前の言っていることも大概妄想じゃねえのか!? なんで、俺だけあんな責められたんだ!!」
「……そうね。今は元太くんの友達を探しましょう。
日番谷くんも……」
「安心しろ。
俺もしばらく同行させてもらう。誰が殺しに乗るかも分からねえしな……」
色々誤解はされているが無辜の子供が二人、こんな状況で放っておくわけにもいかない。
日番谷も彼らと同行することを拒否する理由はなかった。
「冬獅郎ってよぉ」
「どうして、お前は俺には呼び捨てなんだよ。6年生だって言ってんだろ!」
「小6にしちゃ背が小っちゃくねえか?」
「なん……だと……?」
ふと元太に言われた後、このランドセルを担いでいる自分の姿を改めて客観視してみる。
(……小4くらいにしときゃよかったか? いやそんな小さくねえだろ……小さいのか?)
何故か部下である松本乱菊の姿が浮かび、馬鹿笑いされる姿を幻視してしまった。
【小嶋元太@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(本人確認済み)、ソフトクリーム@現実
[思考・状況]基本方針:コナンや探偵団のみんなを探す。
1:うな重食いてえな。
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。
【乾紗寿叶@その着せ替え人形は恋をする】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしない。
1:元太の友達を探してあげる。
2:妹(178㎝)は居ないと思うけど……。
[備考]
原作4巻終了以降からの参戦です。
【日番谷冬獅郎@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:氷輪丸@BLEACH
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを潰し乃亜を倒す。
1:巻き込まれた子供は保護し、殺し合いに乗った奴は倒す。
[備考]
ユーハバッハ撃破以降、最終話以前からの参戦です。
人間の参加者相手でも戦闘が成り立つように制限されています。
卍解は一度の使用で12時間使用不可。
支給品紹介
【氷輪丸@BLEACH】
日番谷冬獅郎の斬魄刀、氷雪系最強と謳われるに相応しい冷気と凍結能力を操れる。
空気中の水分さえあれば、凍結能力を使うことで様々な技を繰り出せるなど応用性も高い。
投下終了します。
感想も投下します!
>Killing Zone
またタフ語録…こいつらマネモブっスね。
マヤちゃん3体目ですが、今度は健康面で言えば割とマシかもしれませんね。死亡、重症と段々症状が軽くなってますからね。
しかし、彼女だけバトロワじゃなくて全く別のデスゲームになってるのは草。
>誰だって愛されていい
モノの方針も思考も殆ど分からないなか、保護しているペシュの身が不安ですね。
ペシュが善良なので、そんな極端に殺し合いに乗るといった考えには走らなそうですが。
投下します
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わたしにはそれが信じられなかったわたしにはただもうそれが信じられなかっ
たただもうそれを信じることができなかったわたしにはわたしにはわたしには
ただもうそれが信じられなかったそれが信じられなかったそれが信じられなか
ったわたしにはただもう信じられなかったそれが信じられなかったそれが信じ
られなかったわたしにはわたしにはただもうわたしにはただもうできなかった
わたしにはただもうそれが信じられなかったそれを信じることができなかった
わたしにはそれが信じられなかったそれが信じられなかったそれが信じられな
かった
引用:「好き? 好き? 大好き?」内「つぶやき」より
みすず書房刊 R・Dレイン著 村上光彦訳
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「ねぇ君、教えて欲しいんだ」
グリム童話のピノキオのような人形が呟いた。
その言葉には何処か恐れがあるようで、少しだけ震えていた。
目の前にいるのは手足を縛られたゴシックロリィタの服に身を包んだ縦ロール少女の人形。
糸の絡まったその姿はマリオネット人形のようにも見える。
「簡単なナゾナゾだよ、ボクに足りないモノって何?」
人形の名は『ピノッキモン』。
かつてデジタルワールドを支配したダークマスターズに所属するデジモンの一体だった。
自分勝手で、自分本位で、自己中心でワガママ。無邪気で残酷な支配者。
叱ってもらうことは無く、忠告なんて聞きやしない。
逆らうものはみんな死刑にしてきた。
それが出来るだけの暗黒の力を与えられてしまった、哀れな子供。
結果としてピノッキモンは、敗北した。
配下のデジモン達からも見捨てられ、誰からも助けてもらえずに生涯を終えるという皮肉な最後で。
かつて忠臣のジュレイモンが言った勝てない理由『自分に足りないもの』、それが何なのか最期まで分からないままに。
「ホラもう早くしてよ、殺しちゃうよ!」
支給品として配られたハンマーを構え、頭部へと振り下ろそうとするフリをする。
それなのに向かい合った少女はなんの興味もなさそうにブツブツと何かを言っている。
「ああ、もう、無視しないでよ!『クリーンアップ』!」
ピノッキモンは我慢が出来ない。癇癪のままに動く。
左手の糸で相手の動きを封じながら、右手でハンマーを構える。
マンモス三頭分の重さを誇るそれは、普通の人間では持つことすらできない。
だが、究極体というデジモンの最高峰へと上り詰めたその力を持ってすれば、容易に振り下ろせてしまう。
「はあ、くだらない」
プチン、と糸が千切れる。
ハンマーが振り下ろされる瞬間、バックステップで回避される。
「な、なんでお前も僕の術が効かないんだよ」
「……アンタみたいなワガママの言う事なんて聞くわけないでしょ」
本来であれば、ピノッキモンの出す糸は同じ究極体デジモンであろうと体のコントロールを奪うことが出来る。
但し、中にはメタルエテモンやメタルガルルモンのように振り解けてしまう場合がある。
「私が従うのは……そう、フェイスレス様だけ」
少女はうっとりと、空虚に、盲信に空を仰ぐ。
ゴスロリの人形、『ディアマンティーナ』にとって殺し合いなど興味はない。
彼女の存在理由は創造主であるフェイスレスの役に立つことだ。
当然、乃亜の言う事を聞く気は無い。
見ず知らずの自動人形の言うことには興味すらない。
そのフェイスレスが自分を愛していない事を知った今も、彼女は決してそれを受け入れない。
自動人形は自らの存在理由を失ったとき、機能停止する。
だから、彼女の機構は状況を『理解』しようとしない。
結果として、茫然自失していたところをピノッキモンに捕らえられていた。
「……クマちゃん達ぃ」
スカートをたくし上げると、その中からボドボドとクマのぬいぐるみが飛び出した。
一瞬で加速したクマ達は、即座にピノッキモンへと肉薄。
慌ててハンマーを構えんとするが、叩き落とすのも間に合わない。
その隙を付きクマ達に光が集まり自爆。
閃光と爆風が周囲を包み込む。
全てが収まったとき、ピノッキモンの姿は消えていた。
○○○
「ふーんだ、アイツも今度会ったら死刑にしてやるからな!」
ピノッキモンは子供だ。
だけど、その外見からは想像出来ないが、彼もまた究極体という階級まで昇りつめた、デジタルワールドの最強の一角である。
支給されたハンマーの柄を伸ばして距離を取り、爆発の直撃を避けた。
同じ究極体デジモンの必殺技を至近距離で直撃で受けたのならまだしも、爆風程度では致命傷にはならない。
「なんなんだよみんなしてさあ……ムカツクなあ」
その言葉は森に響けど、誰からも答えは帰ってこない。
返事をするものは居ない。
ピノッキモンの周りに居た者はみんな去ってしまったし、死んでしまったし、殺してしまった。
『君、友だちいないでしょ』
以前選ばれし子供達の一人タケルに言われた言葉が不意に頭をよぎる。
「なんだよもう!アイツも、ジュレイモンも、キウイモンも、ガーベモンも、デラモンも、ブロッサモンも、マッシュモンも、ウッドモンも、レッドベジーモンも皆キライだ!」
ピノッキモンに友達はいない。
そのムシャクシャする感情の原因に、心が足りないピノキオは気づくことが出来ない。
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なぜ僕じゃダメなんだよ
僕から去らないでよ
僕を愛してくれよ
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フェイスレス様はワタクシを愛している。
フェイスレス様はワタクシを愛している。
フェイスレス様はワタクシを愛している。
フェイスレス様はワタクシを愛している。
フェイスレス様はワタクシを愛している。
愛していないなんてあり得ないあり得ないあり得ない。
愛している愛している愛している。
じゃあなんで分解なんてするの?
なんでそんな顔するの?
フェイスレス様はワタクシを必要としていない?
あり得ないあり得ないあり得ない。こんなことあり得ない。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
だってワタクシはあんなに尽くしたのに、
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
こんなに愛しているのに。愛して愛して愛して愛して。
愛してくれないなんて。愛して愛して愛して愛して。愛してくれないなんて。
ワタクシを愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して。
ワタクシを愛して愛して愛して。ワタクシを。愛して愛して愛して愛して愛して愛して。
エレオノールのことはあんなに愛しているのに。選んでくれないの?
なんで私じゃ駄目なの?愛して愛して愛して愛して愛して愛して。
なんでなんで愛して愛して愛してなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。
愛して愛して愛して愛してそんな顔をしないで、『なんの用だ』なんて言わないで。
『よく来たな』って言って、愛して愛して愛して『会いたかったぞ』って言って。
抱きしめて。一日千回抱きしめて。一日一万回抱きしめて。愛して愛して愛して愛して
こう言ってほしいの愛して愛して愛してエレオノールよりも愛してるって、その元になったフランシーヌよりも愛してるって。
ワタクシ一人だけをずうーっと愛して。
こんなに尽くしたのに。アナタのために尽くしたのに。ひどい。
何でワタクシじゃ駄目なの?
分解なんかしないで。
ずぅーっとアナタのそばに居させて。
ワタクシだけを
愛して
愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
エレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのようにエレオノールのように
「エレオノールの、ように?」
○○○
ディアマンティーナは創造主であるフェイスレスの性質を強く受け継いでいる。
自分勝手で、自分本位で、自己中心。
『お前は僕にそっくりだよ』と、創造主自ら称するほどに。
ならばその思考の行き着く先も、かつての彼と同じになる。
「そうだわ」
自動人形は自らの存在理由を失ったとき、機能を停止する。
創造主であるフェイスレスに存在を否定された時点でどのみち彼女の生涯は終わる運命だった。
だけどその瞬間、殺し合いに呼ばれたことで目的を失った機械人形はどうなるか。
自らが存在するための代替行為を見つけてしまうのだ。
それはさながら、
フランシーヌの代わりにフランシーヌ人形に愛してもらおうとし、
フランシーヌ人形の代わりにアンジェリーナに愛してもらおうとし、
アンジェリーナの代わりにエレオノールに愛してもらおうとしたフェイスレスのように。
「それなら、ワタクシがエレオノールになればいい!」
ディアマンティーナへと向ける愛は単なる道具へと向ける愛?
なら道具じゃなくなったとすれば?
真実の愛はひとつだけ?
ならその愛を手に入れるには?
「フェイスレス様に愛してもらえる!フェイスレス様に愛してもらえる!」
パズルのピースがパチパチと埋まっていく。
思い浮かぶのは宇宙空間でフェイスレスと自分が永遠に一緒にいる姿。
フェイスレスも才賀勝に記憶を転送<ダウンロード>しようとしていた事を思い返しながら考えが纏ってゆく。
ここに来る直前、フェイスレスはフランシーヌという、エレオノールそっくりの人形を作っていた。
なら優勝して自分もあの人形そっくりに作り替えてもらえばいい。
あのコロンビーヌも身体を作り替えれたのだから、自分も出来ないことは無いだろうと。
そうすればエレオノールへと向ける『本物の愛』を向けてくれる。
きゃははと嗤い、スキップを踏む。
なんでこんなことに気づかなかったのかと自虐するような笑みで。
「待っててくださいねぇ、フェイスレス様ぁ」
甘ったるい声を漏らし、恋に恋する乙女。
自己中で身勝手な壊れた人形。
観客も居ないのに、踊る道化。
新たに産まれたどす黒く燃える太陽は、夢へと一歩踏み出した。
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だって僕は『自分を信じている』もん。
自分を信じて『夢』を追い続けていれば、
夢はいつか必ず叶う!
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【ピノッキモン@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康、イライラ、強がり
[装備]:コロッケのハンマー@コロッケ!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:出会った参加者に僕に足りないものが何か聞く
1:気に食わない答えだったら死刑!
2:アイツ(ディアマンティーナ)ムカつく殺す!
3:乃亜もいずれ殺してやる!
4:なんなんだよもぉ……言うこと聞けよぉ……
[備考]
参戦時期はアニメ47話にて消滅した後。
※ディアマンティーナをデジモンだと思っています
【ディアマンティーナ@からくりサーカス】
[状態]:健康、ウキウキ、メンヘラ悪化
[装備]:クマちゃん(まだまだ大量にある)@からくりサーカス
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:優勝してエレオノールになる
1:フェイスレス様のおそばへ
2:フェイスレス様を愛する
3:フェイスレス様に愛してもらう
4:フェイスレス様に抱きしめてもらう
5:フェイスレス様に一日千回抱きしめてもらう
6:フェイスレス様に一日一万回抱きしめてもらう
(途中省略)
100:フェイスレス様フェイスレス様フェイスレス様フェイスレス様フェイスレス様
[備考]
参戦時期はフェイスレスに分解された直後、ナイフを拾う前。(原作第90幕、アニメ版36話)
但し状態は修復されています。
※ピノッキモンを自動人形だと思っています。
【クマちゃん@からくりサーカス】
ディアマンティーナに支給。
彼女と共にいるクマのぬいぐるみ型自動人形。
ディアマンティーナの指示で相手への噛みつきや爆発をおこなう。
戦闘するのに困らないだけの数が支給されている。
【コロッケのハンマー@コロッケ!】
ピノッキモンに支給
マンモス3頭分の重さを誇る木製ハンマー。
普段のコロッケはこれが重りになっており、手放すとスピードやパワーが向上する。
指示すれば如意棒のように柄を伸ばすこともできる。
内部にブラック禁貨があるかどうかは後続にお任せします。
投下終了です 続いて投下します
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ああ、強くなりたい
あいつらより強くなって
屈服させたい
早く……大人になりたいなあ……
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「もっと怯えろ!人が恐怖におののく姿はたまんねぇぜ!」
会場の一角にて、十歳の少年が女子中学生を襲っていた。
少年の名はサトシ。多くの書き手達がその青春を捧げたゲーム原作の国民的アニメの主人公である。
とはいえこのサトシは、26年間アニメを続けたり、初代LSロワやLS2014に参戦したり、
いまでは世界中さがしてもみつからない最高のボロボロぐつを履き替えて、タイプ:ワイルドをBGMに新たな旅に出る最高の最終回を迎えた方ではない。
ネットミームにより人格が邪神に支配されている闇サトシである。
ぶっちゃけただのバクラ。
「なんですか、やめてください!」
「スピリット・バーン!!」
そんな彼はバトルドームMADの如く殺し合いを超!エキサイティン!!に楽しむことにした訳だか、
しもべ達が支給されていないことに苛立ち、腹いせも兼ねて手始めにその辺に居た女子中学生をストレス解消に襲うことにしたのだ。
「バーン★バーン★バーン★ハハハハ、走れ走れー!出口に向かってよー!」
「痛……!」
支給された光線銃を片手に少女を追い込む。
意図的に狙いを外すことで、逃げ惑わせその愉悦を愉しむ。
現実だったら社会問題になりそうな少年犯罪の現場である。現代社会の闇。
岩の妖精が聞いたら『お前人間じゃねぇ!! 』と、頭いわタイプな事を言われそうな畜生行為。
どうでもいいけど、タケシのこと岩の妖精って呼ぶの今の子に通じるのかな。
アニメのレギュラー外れたのがもう13年前という事実。
「サンダーフォース!」
光線から逃げようと、必死になって焦って転ぶ。
その隙を付き、馬乗りになり身動きを封じる。
「血が足りねぇ……」
たとえ年上でも、スーパーマサラ人のタフネスが相手では振りほどくこともできない。
タフって言葉はサトシのためにある。
「もっと楽しませてくれよ」
「やめ……て」
中学生とは大人と子供が半分ずつ混ざったものだ。
大人ほど強くもないのに、身体付きは子供のままでは無い。
大きくなる蛹の中で育っていく、弱さの残る心。
その僅かな膨らみの中では新たな子供だって育てることが出来る。
嗜虐心をもっとも煽る、奥ゆかしいつぼみの時期。
そして、つぼみというものは無理やり中身を暴きたくなるものだ。
力づくで上着が剥ぎ取られ、胸部が晒された。
「うわ、きったねえ身体」
服の上からでは分からなかったが、暴行を受けた後が至るところにある。
切り傷、刺し傷、痣、打撲痕、火傷。古いものから最近のものまで。
外見からは分からないように服の下に巧妙に隠されていた。
「ねぇ」
苦しいのが早く終わってほしいとばかりに、時が過ぎるのを待っていた少女が小さく呟いた。
抵抗するのを諦めたのか、その言葉は意外なものだった。
「人生最期に……私と、キスして」
さながら、カチッとスイッチが入ったように。
「なんだよ、素直になったじゃねえか」
それを聞いて闇サトシは笑う。
従順な女は嫌いじゃないとばかりに下衆な笑みで。
「フ、誘いに乗ってやるぜ、マハード」
マハードではない。
「うるせぇ、てめえは黙ってろ!」
MAD出典特有の躊躇不安定さでズキュウウウンと唇を塞ぐ。
舌を無理やり絡め取り、唾液が混ざり合う。
ロマンチックさの欠片も無い、ただ雄が雌を蹂躙するだけの行為。
これがエロSSだったらここからねっとりとしたR18展開になるだろうが、本番行為までは行かない。
児童ポルノは動画サイトで削除されるので仕方ない。目立ちすぎるとテレ東にも消される。
アングラ文化のMAD出典故に自然とその辺は弁えている。
期待したワシが馬鹿じゃった。(オーキド並感)
「オレに命令すんじゃねぇ。そんなに死にたきゃ、オレ様がぶっ殺してやるぜ」
この場は折角のルール無用の殺し合いの場、無抵抗の女を殺すよりもっと抵抗する女を痛めつけたほうが面白い。
あとは首を絞めてしまって、それでこの話は終わりだ。
自分の快楽のた『ドクン』めに彼女の命を使いつぶす。
「あん……?」
そして欲を『ボコ』満たせる次の獲物を『ボコ』探しに。
「ふざけん『ボコ』じゃねえ……オレ『ボコ』様が『ボコ』こんなところで……」
ボコ、ボコ、ボコ、ボコ
ゴキリ、ゴキリ、ゴキリ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
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そうです
私達はこの子に
虐待をしていました
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「まっず……」
ぺっ、と口に出されたものを吐き出し悪態をつく。
その姿は先程まで成すがままにになっていた、か弱い姿ではない。
「お前如きが、アタシの上に乗るな」
タイコバエという虫がいる。
アリに寄生するハエの一種であり、胸部に卵を産み付け、脳髄をエサに成長する。
成長したウジは頭部へと移動し、まるでゾンビのようにアリをコントロールする。
やがて成長したウジはアリの頭部を切り落とし、中身を食い散らかしながら蛹へとなる。
襲われていた少女、『淀川ミホ』の持つ能力はその遺伝子モデルを元にしている。
『粘膜接触』により相手の体内に自分の一部を侵入させ、脳に寄生し相手をゾンビのように操る能力。
かつて世界大戦中に人体実験により作られた生物兵器、『Wの子供』。
ミホはそれを親に持ち、能力を受け継いでしまった、人間以下として扱われる『第二世代』だ。
その能力は第二次性徴期を境目に、性的刺激をスイッチに開花する。
幼き日に見た極秘資料を思い返し、これがそうなのだろうと理解する。
「……まさか、本当にこんな能力もってるなんてね」
真面目で大人しくて優しい姿はただの擬態だ。
長年の地獄の中で自分の中にもう一つの自分を作り出し、本音と建前を完全に分離させた、一種の防衛手段。
肉親は戦争で失い。
代わりにあてがわれた親は単なる養育費目当て。
物心付いた時から地獄の中。暴力も虐待も毎日受けてきた。
幼い頃から父親に性的虐待を受け、身体の外側も内側も既に傷だらけ。
暴力と性の捌け口として使われる日々。
どれだけ苦しくても笑えと笑顔を強制され、助けなんて誰も来ない。誰も呼べない。誰も知らない。
正義の味方はテレビの中だけ。
それは中学生になった今も変わらない。
身体は成長していくのに心は弱いまま。
消えてしまいたいのに死ぬ勇気もない。
「あ"あ"」
振り向けばゾンビへと変わり果てた少年がいた。
そこにはもう元の面影は残っていない。
全身の肉が腫瘍のようにボコボコと肥大化を続けており、血管が破け、全身から出血する。
骨が耐えられないのか、歩く度にゴキリと乾いた音が鳴る。
「とりあえずその見た目どうにかしなさい。ほら、返事」
「はい……女王様……」
「着替えたら兵隊集めに行くわよ」
この能力は、『優しいミホちゃん』との相性が良い。
色仕掛けでも力づくでも騙し討ちでもなんでもいい、使えるものは使っていく。
民家から拝借したペットボトルのお茶で口を濯ぐ。
いつも通りの、なんの愛情も籠もってない冷たい味がした。
そうして、一瞬。
ほんの一瞬だけ思った。
私はもう、本当に好きな人が出来てもキスすることも出来ないんだなと。
【淀川ミホ@スイッチウィッチ】
[状態]:健康、服装の乱れ、襲われた跡
[装備]:指輪型光線銃@ドラゴンボール
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:何を利用しても生き残る
1:まずは猫かぶりながら自分を守る兵隊を作る
2:なんだろうこの空虚感
3:若葉ちゃん来てるかな
[備考]
※参戦時期は単行本2巻14話回想、つぼみ法施行のアナウンスを聞いた後、叔父に襲われる前。
※能力がピークに達したとき、肉体が融解し化物として暴走します。
時期の都合上、本人はまだその事をまだ知りません。何らかの手段で融解を遅らせることはできます。
【闇サトシ@ポケモンMAD】
[状態]:ゾンビ化
[装備]:ぐるみんの着ぐるみ@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品一式 ランダム支給品0〜1
[思考・状況]
基本方針:さあ、闇のゲームの始まりだぜ!
1:女王様に従う
[備考]
※遊戯王MADのバクラ要素も混じっています。
※MAD出典なので遊戯王DMの知識もあります。
※名簿上はサトシ名義で載っています
(が、もし他にサトシが登場するSSが採用された場合闇サトシ名義で載ります。)
【ぐるみんの着ぐるみ@ポケットモンスター(アニメ)】
闇サトシに支給。
ポケットモンスター(2023)に登場する動画配信者、ぐるみんが来ている着ぐるみ。ニドリーナに似ている。
今後の放送でなんか新設定あるかもしれないけど、このロワではただのぬいぐるみ。
主催の不思議パワーで誰でも着てもサイズが合う仕様。不思議だね。
【指輪型光線銃@ドラゴンボール】
闇サトシに支給。
フリーザ配下のソルベが持つ指輪型光線銃。
『ドラゴンボールZ 復活の「F」 』において、気を抜いていたとはいえスーパーサイヤ人ブルー悟空でさえ貫通する光線を放った。
流石に強すぎたのか『ドラゴンボール超』では変身していない状態での描写に変更された。
「いっけねえ〜油断しちまった」BY次回予告での悟空
投下終了します
事後報告になりますが、◆N9lPCBhaHQ氏の作品二つを代理投下させていただきました
投下します
「ふざけてんのかあのクソガキ」
可愛らしい顔立ちに似合わぬ口汚い罵りが少女の口から飛び出た。
仏頂面で夜空を見上げる彼女からは、分かりやすく不機嫌のオーラが漂っている。
ちっと舌打ちを一つ零し改めて、率直な思いを口にした。
「クソ過ぎんだろ、頭沸いてんのかよあいつ」
何をどう考えてもリルトット・ランパードにとって、自身が置かれた状況はクソの一言に尽きる。
死神、破面、滅却師、完現術者による前代未聞の共闘。
それにより綱彌代時灘の計画は失敗に終わった。
諸々の事後処理は京楽春水ら死神に任せ、リル達は現世での自由な生活を謳歌。
といっても彼女達は元々、見えざる帝国に属していた身。
完全にお咎めなしという訳でもなく、仲間の二人には追跡やら呼び出しやらその他諸々の装置が仕組まれている。
如何にも十二番隊のやりそうな事だが、流石に監視もしないで放り出しはしないかと納得もしたものだ。
取り敢えずは彼女達の体に仕込まれた装置を無効化する方法を探しつつ、今後の身の振り方を気ままに考え、
気が付いたら何故か殺し合いに参加させられていたのである。
しかもご丁寧に現世に溶け込む為の私服から、見えざる帝国の制服に着替えさせられているおまけ付きで。
「遊びてぇならテメェと同じガキだけ集めろよ。とばっちりも良いとこだぜ」
乃亜や見せしめにされた兄弟、そしてあの場にいた者達の見た目からして年端も行かない子供ばかりが集められたのだろう。
性根の腐ったガキが悪趣味な遊びを始め、それに巻き込まれた連中には少しばかり同情してやらん事も無い。
問題は何故自分まで参加する羽目になったのか。
確かに、付き合いの長い3人の仲間とついでのゾンビ娘に比べたら自分は小柄で童顔だ。
だが殺し合いの参加者は明らかに自分よりも年下、現世で言う所の小学生が大半ではないか。
そんなガキばかりの空間に放り込まれるなど堪ったものじゃない。
乃亜は頭だけでなく目も腐っているのかと辛辣な感想を抱く。
「……で、どうすっかな」
乃亜への文句は言い出したらキリが無いが、言って何か効果も期待できない。
苛立ちを全て吐き出したとしても、如何にも意地の悪そうな少年が帰してくれる展開は有り得ない。
不満は大いにあるが切り替えるしかなかった。
まず第一に考えるべきは殺し合いにおける方針。
自分以外を全員殺せば帰れるのなら、手っ取り早く殺し合いに乗る選択もあり。
それに優勝者の願いを叶えるというのに興味が無い訳でもない。
上手くいけば二人の仲間、キャンディとミニィの追跡装置を無効化だって可能な筈。
が、素直にはい分かりましたと皆殺しを選ぶのを躊躇する理由が二つ。
一つ目、乃亜が素直に優勝者を帰してくれる保障が全く無い。
勝ち残ったとしても気まぐれを起こし首輪を爆破させられるんじゃないか。
或いは素直に殺し合いに乗ったとしても、思うような進行状態ではないからと参加者全員の首輪を爆破し強制終了させるんじゃないか。
最初に集められた時点で察したが、アレは殺し合いの運営に私情を挟むタイプに思える。
不服ながらも言い成りになってやったにも関わらず、気分一つで殺されるなど冗談ではない。
二つ目、そもそも殺し合いに優勝できるかどうかも分からない。
リルは見えざる帝国を率いた王直々に聖文字を与えられた、聖十字騎士団の一人。
聖文字による固有能力だけでなく、滅却師としての基本的な能力も一般の聖兵とは一線を画す。
そんなリルを殺し合いの場に放り込んだ以上、必然的にリルとの殺し合いが成立するレベルの力の持ち主が参加している事になる。
護廷十三隊の隊長・副隊長クラスの実力者は確実に存在すると考えても良い。
下手をすれば、黒崎一護のような特記戦力並の化け物だっていないとは限らない。
完聖体にもなれないリルとしてはそんな連中の相手など御免被る。
「めんどくせぇ…」
考えれば考える程、ろくでもない遊びに巻き込まれたとストレスが溜まる一方だ。
優勝しても帰れるかは微妙、ならば一旦殺し合いに乗るのは保留にして他の脱出方法を模索する。
どうしても優勝以外の道が見つからなければ、仕方ないが乃亜の言う通りにしよう。
一先ず脱出を優先するなら、真っ先にクリアしなくてはならない問題。
参加者の命を縛る忌々しい首輪の解除。
ユーハバッハが聖別を発動した時のように、こちらの予期せぬタイミングで首輪を爆破されるかもしれない。
これがある限り脱出はまず不可能だが、リルには一つ考えがあった。
首輪が爆発すれば幼い兄弟と同じ末路を迎える、では爆発に耐えられるだけの防御力があれば?
爆発が起きても死ななければ問題無く、突拍子も無いソレを実現可能な力をリルは有している。
静血装。血管の内部に霊子を巡らせ防御力を飛躍的に高める、滅却師特有の能力。
これで首回りの皮膚を硬質化させ、後は自分から首輪に衝撃を与えるだけで良い。
早速慣れた感覚で霊子を首の部分に巡らせようとし、
「…駄目だなこりゃ」
いきなり失敗に終わった。
静血装自体は問題無く使える。
ついでに攻撃力を高める動血装とて発動に支障は無い。
が、どういう仕組みか首輪を装着された周辺にのみは霊子が行き届かない。
その部分だけ巡らせようとすると、何かに阻まれたような感覚になる。
リルが荒っぽい方法で首輪を無効化する事はお見通しだったという事か。
考えてみれば当たり前だ。
参加者の能力を全く把握しない程の馬鹿が、殺し合いなんて開く訳が無い。
「しゃーねぇ。他の奴に頼るしかねぇか」
静血装を使った方法が失敗なら、リルがこれ以上首輪を動向できる術は皆無。
であれば首輪を外せるような、機械に強い参加者との協力を取り付けるくらいしか方法は浮かばない。
浦原喜助や涅マユリのような連中ならあっさり外せるだろうけれど、流石にあのレベルの技術力を求めるのは酷だろう。
チート科学者ども程ではないにせよ、解除可能な腕の持ち主を探すしかない。
「…っとにだりぃな」
不満を漏らしながら、取り敢えずは首輪を外せる奴を見付けようと歩き出す。
それから数分も経たない内に、リルは他の参加者との遭遇を果たした。
「…………」
「あー…ん?」
小さい。
小柄なリルよりも更に小さい、というか幼い体躯。
支給されたランドセルがこれ程似合う者もいないだろう少女。
いやこれはむしろ幼女と言うべきか。
その幼女が地面にペタンと座り、何をしているかと言えば菓子を口に放る寸前。
箱いっぱいに詰まったドーナツを手に取り、大きく開けた口からは可愛らしい八重歯が覗いている。
リルの視線に気付いた幼女はパチクリと瞬かせ、不思議そうに小首を傾げた。
幼女との間に沈黙が流れる中、リルは直球で思う。
(あのガキ頭おかしいんじゃねぇのか?)
乃亜が自分達にやらせているのは何だ。
仲良しこよしのお遊戯大会か?
違う、最後の一人になるまで終わらない殺し合いだろう。
滅却師である自分をも巻き込んだなら、相応に戦う力を持った連中ばかりが集められているのが当然である。
なのに今目の前でドーナツを頬張ろうとしているコレも殺し合いの為に呼んだというのなら、いよいよもって乃亜は頭がおかしいと言わざるを得ない。
霊圧は現世の一般人程度。
特記戦力どころか、流魂街の悪ガキの方がまだマシに思える。
死神や滅却師のような力を持たずとも、殺しに躊躇の無い人間とかならまだ分からんでもない。
実際にはそういった性質からも程遠い、正真正銘何の力も無いただの子供。
こんな奴を参加させて一体何になる、殺し合いが成立すると本気で思っているのか。
猛獣がひしめく檻に蟻を一匹投入して、だから何だという話ではないか。
つくづく乃亜が何を考えているのか分からない。
いや、実際の所はそう大きな目的は存在せず、見せしめにされた兄弟のような反応を見て楽しみたいだけなのか。
理由が何であれリルからしたら「クソ」の一言で片付く。
元から最低値にあった乃亜への印象を更に急降下させるリルへ、幼女はじっと瞳を向ける。
だが何を思ったのか、ドーナツの詰まった箱を抱えとてとてと駆け寄って来た。
「はい!あげる!」
「…は?」
何を言っているのか、何をしているのか。
にこにこ満面の笑みでドーナツを差し出す幼女に、リルは怪訝な視線を返す。
「おねえちゃんもおなかがすいてるから、ずっとドーナツみてたんだよね?」
皮肉でも何でもなく、邪気の無い顔で告げられた見当違いの内容。
どうもこの幼女は自分が菓子を物欲しそうに見ていたと思っているらしい。
見た目通り中身も年相応の子供、殺し合いの参加者に選ぶには選択ミスも良いところ。
「おいチビ、お前オレらが何に巻き込まれたのか分かってんのか?」
「チビじゃないもん!小恋っておなまえがあるよ!」
「へー。んで?お前は状況分かってんのかよ?」
チビ呼ばわりに憤慨するのを適当に流し返答を求める。
ぷりぷり怒っていた小恋も再度の質問には黙り込み、影のある表情になった。
「えっとね…のあくんがよくないことをしてるんだよね…?」
「ああまぁ、そんぐらいは流石に分かるか」
乃亜が何をしたのか、詳細な部分は分からない。
けれどルフィとエース、そう呼ばれていた少年達に何か悪い事をしたのは察しが付いた。
彼らだけでなく、自分を含めたその他大勢の男の子や女の子にも、良くない事をするつもりだとも。
殺し合い自体を理解してはいなくとも、今が危ない事になっているとは分かる。
「つーかヤベェ状況だって分かってんなら、外で呑気に食ってる場合じゃねぇだろ」
「うっ…ご、ごめんなさい…。おいしそうだったから…」
しゅんとする小恋に、まぁこれくらいのガキならそれが普通かと納得する。
目の前に大量の菓子があったらそりゃ我慢出来ないだろう。
未だ差し出されたままのドーナツをひょいと取り、小恋があっと言うのを無視して口に放り込む。
美味い。
これでも菓子の味には五月蠅い方だが、このドーナツは文句無しの美味さ。
「小恋もたべる!」
リルが食べる姿に我慢出来なくなったのか、小恋もドーナツに口を付けた。
一口齧っただけで広がる美味しさに、幸せいっぱいの表情を作るのを抑えられない。
余程味が気に入ったのか幼女の小さな口であっという間に平らげた。
食べ終えるとちょっぴり不安気な顔でリルを見上げる。
忙しいガキだなと内心で思いつつ、こちらが何か言う前に小恋の方が話を切り出した。
「えっと、あの…おねえちゃんにおねがいしたいことがあるの」
「あ?急に何だ」
「小恋のともだちももしかしたらいるかもしれなくて…だから、いっしょにさがしてほしいです」
友人の捜索。
参加者が幼い子供ばかりなら確かに小恋の友人がいても納得できる。
だからといって自分が手伝ってやる義理は何も無いだろう。
最低限自分の身を守れる奴なら同行も考えるが子守は御免だ。
知らねぇよとばっさり切り捨てようとし、不意に視線をドーナツの入った箱に移す。
箱にはまだ大量のドーナツが入っており、一箱で一日分以上のカロリー摂取となるのは確実。
暫しドーナツを見下ろした後、リルは提案を口にした。
「チビ、オレと取引する気はあるか?」
「…?とりひき?ひきざんのこと?」
「そのドーナツまだオレに寄越すんなら、暫くお前と一緒にいてやるよ」
純粋な善意でも、ドーナツ欲しさから言ったのではない。
後者に関しては全く違うという訳でも無いが。
リルの目的はとにかく生きて帰ることで、現段階で殺し合いには乗らない。
その為に他者との協力が必要であれば、そうするのにさして抵抗は無い。
黒崎一護のように戦力になり尚且つ甘い奴なら、無力な少女を守ってますとアピールすればスムーズに手を組めるだろう。
邪魔になったら適当な善良な参加者にでも押し付ければ良い。
打算ありきの考えとはも微塵も気付かず、パァと目を輝かせながら小恋は頷いた。
「うん!おてつだいしてくれてありがとうおねえちゃん!」
「ただの取引だ。礼なんざいらねぇ」
無愛想に返しドーナツを一つ手に取る。
子供を相手に良い態度とは言えなくとも小恋には嬉しかったらしく、探して欲しい人達の事を話し始めた。
「えっとね、まずみのりちゃんでしょ。…あっ!みのりちゃんはともだちじゃなくてコイビトだよ!」
「……」
ドーナツに齧りつく直前で思わず動きが止まった。
聞き違いだろうか、いや確かに恋人と言ったか。
ちゃん付けしてるし名前からもそいつは女。
それが友達ではなく恋人とは。
「その年でレズってんのかよ。色々終わってんなおい」
「れず…?よくわかんないけど、おわってなんかないもん!みのりちゃんのあかちゃんうんだり、それから…きもちいいことしたりするの!」
「意味分かって言ってんのかロリビッチ」
最近の現世のガキは随分と爛れている。
ポーカーフェイスの裏で呆れながら、ドーナツ片手に小恋の話を聞いてやった。
全部聞き終わって分かったのは、やはり小恋も周りの連中も至って普通の人間。
より正確に言うと性癖は少々アブノーマルであるが、戦いとは一切無縁。
一応尸魂界のことをさり気なく尋ねても案の定不思議そうな顔をされるだけ。
益々以てこのような幼女を参加させた意味が分からなくなった。
「おねえちゃんは、あいたいひととかいないの?」
「いねぇ。つーか幾ら何でもアイツらまで参加してんのは有り得ねぇ」
説明を終えた小恋から反対に聞き返され、リルはあっけらかんと返す。
流石にジジ達まで幼い子供の括りに入れるのは無理がある。
自分がその括りに入っているのは非常に納得がいかないが。
とにかくジジ達が巻き込まれている可能性はゼロと見て間違いない。
今頃は元いた現世の国で、自分が急に消えたのを不審にでも思っているのだろう。
帰りが遅れればあれやこれやと勝手な事を言われそうだ。
(会いたい奴、か……)
深い意味で聞かれたのではない。
単に知り合いが参加してないかどうか、それ以上の意味など無い。
なのにどうしてか、一人の男を思い出した。
特別仲が良かった訳じゃ無い。
ジジ達のように普段からつるんでたとかじゃなく、何度か話した程度の関係。
友達でも無ければ、恋仲など以ての外。
ただ、アイツとは、
――『次に何か食べ物を作る時は、君が一口で肥満体になる高カロリーのクッキーでも想像しようかな』
――『ま、味見くらいはしてやるさ。期待しとくぜ、クズ野郎』
約束をすっぽかされただけだ。
「おねえちゃん?」
急に黙り込んだリルを心配する幼女へ、何でもねーよとだけ返しドーナツを齧る。
ポーカーフェイスの下で何を考えているのか、小恋には分からなかった。
【リルトット・ランパード@BLEACH】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・状況]
基本方針:脱出優先。殺し合いに乗るかは一旦保留。
1:チビ(小恋)と行動。機を見て適当な参加者に押し付ける。
2:首輪を外せる奴を探す。
3:ジジ達は流石にいねぇだろ、多分。
[備考]
※参戦時期はノベライズ版『Can't Fear Your Own World』終了後。
※静血装で首輪周辺の皮膚の防御力強化は不可能なようです。
【鈴原小恋@お姉さんは女子小学生に興味があります。】
[状態]:健康
[装備]
[道具]:基本支給品一式、トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:みのりちゃんたちをさがす。
1:おねえちゃん(リル)といっしょにいる。
[備考]
※参戦時期は原作6巻以降。
【トーナツの詰め合わせ@ONE PIECE】
ビッグ・マム海賊団スイート三将星の一人、シャーロット・カタクリの大好物の詰め合わせセット。
投下終了です
投下します
何故、どうして私がこんな目に。
ホグワーツ魔法魔術学校の二年生、ハーマイオニー・グレンジャーの脳裏に浮かぶのはそれだけだった。
彼女は聡明な魔女だった。その頭脳は、学年一と言ってもいい程だった。
一早くホグワーツに潜む怪物『バジリスク』の存在と、その対処法に気が付いたのがその証拠だ。
だが、時に聡明さとは不幸を招く原因となる。
バジリスクの存在と対処法に辿り着いたその日のうちに、彼女がバジリスクに不運にも襲われた様に。
鏡を通してギラギラと光るその両眼を目の当たりにしてしまい、気が付いたら此処にいた。
そして現在はこうして、赤毛と黒のローブと振り回して全力で逃走中だ。
怪物の次は爆弾付きの首輪をつけられた上での殺し合い、不運極まりない。
「ハァッ!ハァッ!ハァッ!!」
だが、彼女の不運はそれだけに留まらなかった。
ローブが地面に擦れて裾が擦り切れる事も構わずに、走り抜ける。
無我夢中だった。追跡者に捕まれば命は無いことを、彼女は理解していたから。
もし、数年後の彼女であれば姿くらましという魔法で難を逃れていただろう。
だが、その魔法はかなりの高等魔法、今の彼女が扱えるはずも無かった。
故にこうして荒い息を吐きながら、必死の逃走を試みているのだが……
「何処へ行くのお姉さん、さっきの魔法をまた見せてよ」
夜の街に響く声は、少女の様なハスキーボイスだった。
ヒッと声帯を振るわせて、ハーマイオニ―は立ち止まる。
前方に、彼女を恐怖の只中に誘った少年が立っていたから。
「あの乃亜って子だって、僕らが殺し合いをするのを期待してこのパーティに呼んだんだ。
愉しませてあげないとだめだろう?」
黒いコートに袖を通し、ハーマイオニ―と同じぐらいの体格。
短く切りそろえられた美しい銀髪。
天使の様な笑顔の美貌と、その奥に潜んだドス黒い殺意。
“厄種”ヘンゼルはにっこりと笑いながら、ハーマイオニ―に語り掛けた。
「あ…貴女、それだけの力がある魔法使いなのに、どうして……?」
ハーマイオニーの口から、恐怖が込められた問いかけが漏れる。
彼女の聡明な頭脳を持ってしても、目の前の少年は理解しがたい存在だった。
爆弾付きの首輪を嵌められて、殺しあえと命じられたから殺しあう。
ここまでは良い。いや、良くはないが、理解はできる。
だが、目の前の少年は殺し合いをしているという雰囲気ではないのだ。
噂に聞く『名前を呼んではいけないあの人』やその信奉者である死喰い人だって、もう少し人を殺す時には感情を波立たせるだろう。
だが、目の前に立つ少年は完全に自然体だった。
幼さ故の残酷さ、という言葉で片づけるには余りにも殺害に“慣れていた”。
「うーん…そんなこと言われても、僕もさっき魔法使いになったばかりなんだ。
それに、生きるために誰かを殺す事に理由がいるの?」
くすくすと笑ってはいるが。
その実、恐らく目の前の少年は殺しを楽しんではいない。
否、楽しんではいるが、その感情が主体ではないのだ。
彼にとって、殺すことは生きるためにすること。呼吸や食事と同じ。
例え子供であっても、呼吸や食事に理由を求める者は少ないだろう。
それほどまでに、少年と殺しは既に一体化してしまっている。
完全に癒着して、引きはがせない程に。
その事を、ハーマイオニ―の聡明な頭脳は戦慄とともに、辿り着いていた。
「この世界は殺すか殺されるか、それしかないんだ
誰かを殺すたびに、僕らはその死の円環(リング)の中で命を増やせるんだ」
多くの夜を越えて。
“ヘンゼルとグレーテル“は人として決して失ってはいけない多くの物を失った。
涙を。過去を。青空を。暖かな太陽の光を。
自分たちの、本当の名前さえも。
代わりに得たのは、人を殺すことのできる強靭(つよ)さ。
人を殺すことはもうキスをする様に甘い行為。
だから殺そう。もっと殺そう。そうするほどに僕たちは生きる事ができるのだから。
……それが、二人の信仰だった。
「分からない…頭がおかしいわ、貴方」
ハーマイオニーにとって、ヘンゼルは理解不能な怪物だった。
古来より人が最も恐れるもの、それは理解の通じない“ナニカ”だ。
正しく言葉は通じるのに話は通じない目の前の少年は、ハーマイオニ―にとって怪物と言えた。
その怪物を前にして、生き残るには倒すしか、道は無い。
「くっ!!」
ハーマイオニーは足に力を籠めて、再び疾走を開始する。
チャンスは一度。しくじれば恐らく次は無い。
「ねぇ、鬼ごっこばかりしてないで、魔法を見せてよ。お姉さん」
ゆらりとその手の杖を振るって。
ヘンゼルが足元から浮かび上がりながら、追跡してくる。
浮遊の魔法の一種だろう。それも、とても速い。
脚ではとても逃げ切れそうにないスピードだ。しかし、このまま逃げるつもりは毛頭ない。
「武器よ去れ(エクスペリアームス)!!」
急停止。振り返りざまに、杖を向ける。
放つ呪文は覚えたての武装解除呪文。
少年の握る杖は自分の物より遥かに大きいが命中さえすれば問題無いだろう。
魔法を今初めて使ったという少年の言葉が嘘でないのなら、少年が魔法を使うカラクリは杖にある事を、彼女は見抜いていた。
そして、その推理は正しかった。
「うぐっ!?」
少年の手から杖が離れ、浮遊していた体が地面へと落下する。
狙い通りだ。後は、先ほどの武装解除呪文か麻痺呪文を叩き込む。
それで勝ちだと、呪文を唱えながらハーマイオニ―は疑っていなかった。
ハーマイオニーの杖から赤い閃光が迸り、少年へと伸びる。
「───え?」
だが、閃光が少年へと届くことは無かった。
ハーマイオニーが認識できたのは、少年が杖を持っていたのとは逆側の手を此方へとむけたこと。
そして、その手から発生したかまいたちがハーマイオニーの放った呪文を相殺したこと。
そんな、何故。呪文は命中したはずなのに。
呆然と、膝から地面に崩れ落ちる。
彼女の視線は、呪文が命中した少年の片手に向けられていた。
武装解除呪文を受けた杖は、少年の手から離れてはいた。
しかし杖から伸びた茨が、命綱の様に少年の手に絡みついていたのだ。
結果、杖が完全に少年の手元から離れる事は阻止された。
「凄いよね、神鳥の杖って言うんだって」
それはとある国にて魔法の才能が全くない者、果てはただの犬にすら絶大な力を約束すると伝えられる、ひと振りの杖だった。
だが、それがその杖を示す情報の全てではない。
神鳥の杖のその正体、それは暗黒神の魂が込められた特級の呪物だった。
持ち主の負の感情を増幅し精神を蝕むその杖にとって、青空に別れを告げた少年の魂はとてもよく馴染んだ。
故に──杖は担い手としてヘンゼルを選び、力を与える。
「さて、これで終わりかな。魔法使いのお姉さんがどんな悲鳴で唄ってくれるか…楽しみだよ」
万策尽きたと言った様相のハーマイオニーに向けて、ゆっくりとヘンゼルは歩みを進める。
歩みながら、デイパックの中からある物を取り出す。
それはハーマイオニーの目には何の変哲もない鉄パイプに見えた。
そして、それは正しい。
ヘンゼルは神鳥の杖とそれによる魔法ではなく、ただの安っぽい鉄パイプを処刑道具に選んだのだ。
少年がじわじわと獲物を嬲る嗜虐趣味持ち主である事を、魔法使いの少女は悟った。
彼の手にかかれば安らかな死すら、許されない。
「……ふぅん、まだやるんだ。いいよ、また魔法を見せてくれる?」
ヘンゼルの足が止まる。
彼の視線は、自身に向けられた少女の杖にあった。
ガタガタと震えながら、それでも杖の照準を必死に此方に付けている。
その事に特別な感慨は無かった。
彼女の放つ魔法はそこまで種類が多くなく、神鳥の杖の魔力を使えば容易に防ぐことができたからだ。
どんな魔法を使おうと、対処できる。ヘンゼルには、その自負があった。
だが、侮っている訳ではない。
どんな魔法を放たれてもいいように杖の先を注視して──少女の口から魔法の言葉が紡がれる。
「ルーモス・マキシマ(強き光よ!!)」
瞬間の事だった。
眼球に直接熱されたかと思うほどの熱が奔る。
神鳥の杖の効果によって鋭敏化していた視覚が仇となった。
少女の杖から放たれた閃光が、ヘンゼルの網膜を焼いたのだ。
窮鼠は、見事に猫を噛んだ。
「……うあっ!?」
魔法戦に慣れていなかった事と、なまじ攻撃魔法ではなかったのがヘンゼルに災いした。
先ほどの武装解除魔法や麻痺魔法であれば防御できただろう。
だが、杖の先を注視していた所に放たれた閃光魔法は、スタングレネードの様な作用を果したのだ。
遠ざかっていく気配に向けて鉄パイプを投げ、杖を振るって瓦礫を飛ばす物の、ヘンゼルができた事はそれが全てだった。
「…ふ、何処にも逃げ場なんてないよ、お姉さん!!ここはそういう世界で!
そういうルールで動いているんだ!!フフ、アハハハハハハハハ!!!」
ボグっと投げた鉄パイプが何かに当たって、からんからんと地面に落ちる音がする。
だが、走り去る音は聞こえなかった。急所には当たらなかったのだろう。
だから、逃げ去っていく、この世界のルールを未だ知らない哀れな少女へと向けて、ヘンゼルは餞別のように言葉と、狂った様な笑い声を送った。
視界が戻るまで、送り続けた。
「……助けて、ハリー。ロン……」
跳んできた鉄パイプを受けた背中がじくじくと痛む。
何時もの聡明さや、気の強さはそこにはなく。
ハーマイオニー・グレンジャーは瞳から涙を流してただ走り続けた。
恐ろしかった。一年生の時に襲われたトロールよりも。
ルフィとエースと言う双子の死よりも、首に嵌められた首輪よりも。
彼の、ヘンゼルの言葉と笑い声はずっと耳に残る呪いのように──
少女の脳裏に響き渡っていた。
【グレーテル@BLACK LAGOON】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ@現実 神鳥の杖@ドラゴンクエスト8
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:皆殺し
1:姉様と合流したい
2:魔法の力でイロイロと愉しみたい。
[備考]
参戦時期は死亡前です。
神鳥の杖の担い手に選ばれました。暗黒神の精神汚染の影響は現在ありません。
【ハーマイオニー・グレンジャー@ハリーポッターシリ-ズ】
[状態]:恐怖(大)、背中にダメージ(中)
[装備]:ハーマイオニーの杖@ハリーポッター
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:殺し合いはしたくないが…
1:ヘンゼルから逃げる。
2:殺し合いするしかないとは思いたくない。でも……
[備考]
参戦時期は秘密の部屋でバジリスクに石にされた直後です。
【神鳥の杖@ドラゴンクエストⅧ 空と海と大地と呪われし姫君】
ヘンゼルに支給。暗黒神ラプソーンの魂が封じられた杖。
ラプソーンの自我は杖に封印されている上、制限によって表層に出てくることはできない。
ただし基本的に杖を握った者はある種の精神汚染状態となり、ただの犬でも中ボスクラスになれるほどの絶大な魔力が与えられる。
投下終了です
投下いたします。
今回も2作品連続で投下させていただきます。
数々の冒険を繰り広げて、ついにヨッシーはスーパーしあわせのツリーを取り戻しました。
いろいろ苦労はあったけど、終わり良ければすべて良し。
おいしいフルーツほおばって、幸せいっぱいのヨッシーたち!!これでみんなも元通り……になるはずでした。
だけどもヨッシー、驚きました。たくさんのフルーツ頬張ろうとしたその瞬間、なんと違う場所に連れてこられていたのです!
せっかくおいしいフルーツを食べられると思ったヨッシー、はらぺこでしょうがありません。
そんな中きみどり色の頭をした子供がどこからともなく現れてなにやら話を始めました。
けれどもそんな話、はらぺこヨッシーにはちんぷんかんぷん。
そうしてなにがなんだかよく分からないまま話が進んでいくと、きみどり色の頭をした子供を殴ろうとした子とその兄弟が弾けてしまう姿を見てしまいました。
これにはさすがのヨッシーもびっくりです。だっていきなり人が破裂するなんて普通じゃ考えられないことなのですもの。
すると今度はきみどり頭の子供は突然彼らを馬鹿にするように高笑いを始めていきました。
そして、それを聞いているうちにヨッシーはまたどこかへ飛ばされてしまいました。
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次にヨッシーが目覚めたのは花が生い茂る野原でした。
やっぱりまだお腹が減っているヨッシー、なんとか食べ物を探し始めます。
でもなかなか見つかりません。とうとうヨッシーは疲れ果ててしまいました。
そこでようやく、「そうだ、カバンの中を調べよう!」と気付きました。
もらったカバンのなかを調べてみると、そこにはヨッシーにとってはほんのちょっぴりのご飯が入っていました。当然ヨッシーはそれをすべて食べつくしてしまいました。
そしてもう一度中身を調べると、そこには草を束ねたような車体と木でできた車輪がついたへんてこな乗り物と、様々な絵が描かれた石のついた、使い方のよく分からないオモチャが入っていました。
これもヨッシーにとってはよく分かりませんでした。でも乗り物があったのはちょっぴりラッキーでした。
早速乗ってみると、なにをしないでも乗り物は勝手にヨッシーが行きたい方向に動いてくれました。
これに乗っていれば歩かなくてすむし、とっても楽ちん!そう思ったヨッシーはこれに乗って、仲間になってくれそうな人たちを探すことにしました。
乃亜はとっても手ごわいだろうけど、悪が栄えたためしはない!
見事やっつけてみせましょう!
さあ、ヨッシーのあらたなるぼうけん、はじまりです!
【ヨッシー@ヨッシーストーリー】
[状態]:健康、腹一分目
[装備]:タタミカー@ウルトラ忍法帖
[道具]:基本支給品、ドンジャラ、ランダム支給品0〜1(確認済)
[思考・状況]基本行動方針:乃亜を倒して、多分彼が持っていったであろう『スーパーしあわせのツリー』を取り戻す。
1:いろいろと見て回る。
2:おいしいフルーツをお腹いっぱい食べたい。
[備考]
海馬乃亜の説明を一切理解していません。
ランドセルに入っていた食料をすべて食べ尽くしました。
『支給品紹介』
【ドンジャラ@現実】
ヨッシーに支給。麻雀を簡素化した卓上(テーブル)ゲームの一種で、牌の構成が3種類・3色・各9枚ずつの計81枚からなる。
基本的な遊び方は手持ちの9枚の牌を交換しながら同じ絵柄を3個で1セット、計3セット集めたらアガリになり、最終的に「合計点が高い人が勝ち」となる。
【タタミカー@ウルトラ忍法帖】
ヨッシーに支給。一畳にナベのふたで出来たタイヤが取り付けられ、車体にはタクアンが乗ったちゃぶ台に"えんじん"と書かれたヤカンが乗っている謎の乗り物。
エンジンについては蒸気や煙が出るものなら何でもいいらしく、加湿器や蚊取り線香でも動かせてしまうなど訳の分からない代物。
なお本来はワープ装置(※梅干し)もついているのだが、こちらは制限により外されている。
投下終了です。
続いて、2つ目の作品を投下いたします。
ここはツタや雑草が生い茂り、ほぼ風化したような意匠を示す遺跡の中……
そこには『卵』があった。
しかしそれはただの卵ではなかった。
その卵の大きさは人間の背丈ほどもあった
その卵には人間を歪に模したような手足があった。
その卵は黒く、そして鈍い赤色の光を放つ紋様が浮かび上がっていた。
その卵の名は『ハンプティ・ダンプティ』、生まれることを許されなかった竜の卵が膨大な力をため込んだまま変異した存在。
その卵は今、揺れていた。決して孵ることのないはずの卵が今、揺れていた。
その卵の中にいるのは竜ではない。その中身には卵の持ち主である女王と彼女がかき集めた魔獣たちが混ざり合い、一つに溶け合った状態になっていた。
そしてその中身は卵の中に込められた膨大なエネルギーを飲み込んで、自らの身体を作り上げていった。
それと共に卵は何倍にも膨れ上がっていき、その胎動はより激しさを増していった。
……やがて低い地鳴りと、鈍く禍々しい光と共にその卵は割れた。
【ハンプティ・ダンプティ@プリンセスオブプリンセス 死亡】
卵の中から現れたのは、幼女のように愛らしい姿をしたナニカだった。
その少女の頭には巨大な黒い王冠のようなものをかぶり、その髪は腰にかかるほどに長く、そして灰色がかった美しい銀の髪をしていた。
またその肌はとても白く、その産まれたままの姿が粘液にまみれているさまは、いまだ幼い容姿をしていながらもとても官能的な空気をまとったものだった。
しかしその身体には先ほどの卵と同様に赤い紋様が浮かび上がり、その爬虫類のような瞳孔には金色の光が妖しく輝いていた。
更に腕や足には生まれながらにして鈍い黒色の輝きを持つ鎧をまとい、その両足はまるでドラゴンを思わせるような形をしていた。
そして時間が経つにつれて彼女の頭には身体同様に赤い紋様の浮かび上がった角が生えていき、まるで竜と人間を融合させたような姿へと変貌していった。
「この世は、ひどく、タイクツダワ」
その少女は耳障りな響きを持ちながらもどこか甘ったるい声でそう呟いた。
そして彼女はその可愛らしい顔を醜悪に歪ませて笑みを浮かべると、こう続けた。
この世の全てを嘲笑うかのように……
この世界の全てを見下すように……
その言葉を口にした。
「さて、この催し……少しは、愉しめるカシラネェ?」
その言葉と共に彼女は無数の卵の殻に埋もれつつあったランドセルから巨大な剣を取り出した。
まるで古代の遺跡の柱の一部を削り、強引に剣として作り変えたような武骨かつその重々しさが見ただけで伝わるほどの剣だった。
そんな剣を彼女はいともたやすく片手で持ち上げ、そして軽く振るってみせた。
すると周囲に転がっていた石柱や石壁がその破壊力に耐えきれず粉々になって崩れ落ちてしまった。
それを見た彼女はその顔に邪悪な笑顔を作ると手に持った剣を振り上げ、地面に叩きつけた。
すると叩き付けられた地面から紫色の稲光が迸り、小規模な爆発がその場に巻き起こる。
それによって周囲の瓦礫が崩れ落ちると同時に土煙が舞い上がり視界が遮られていく中、彼女は不敵に笑い続けていた。
「中々、面白い武器ダワ」
それを見た彼女はとても嬉しげな表情と声色でそうつぶやくと、自らが破壊した遺跡たちを剣を携えながら後にするのだった。
―― こうして厄災の器は割れ、世界を滅ぼす堕とし子がこの世に誕生したのであった。
【Q・O・C(クイーン・オブ・カース)@プリンセスオブプリンセス】
[状態]:健康、全裸
[装備]:遺跡の大剣@ELDEN RING
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜
[思考・状況]基本行動方針:身体からあふれ出る衝動のままに、すべてを破壊する。
1:この催しは、ちょっとした退屈しのぎにはなりそうカシラ?
2:もっと力を、もっと愉悦を。
3:更なる力を得るために、最強の遺伝子を取り込みたいワ。
[備考]
制限により、完全体であるドラゴン『ジャバ・ウォーキー』への変異はできません。
『支給品紹介』
【遺跡の大剣@ELDEN RING】
クイーン・オブ・カースに支給。『赤獅子城』に登場するボス『混種の戦士・坩堝の騎士』を倒すとドロップする特大剣。
空から降る遺跡の残骸、その砕けなかった欠片を鍛えた武器にして『伝説の武器』の一振り。
また力をためて振り下ろすことで重力を伴った小規模な爆発の追撃が発生し、掲げた大剣を振り下ろすことで連なる衝撃波を前方に放つ『崩壊波』という技などが存在する。
なお筋力値、知力値が必要な数値に達していなければ真価を発揮することは出来ないが、このロワではその制約は取り払われている。
これで今回の投下は終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します
私の名前は宮野志保。
私は一年ほど前まで、組織の科学者として毒薬を作らされていた。
アポトキシン4869。それが私の罪科の名前。
細胞の自己破壊(アポトーシス)を操作し、死後検出されず、稀に肉体年齢を幼児化させる神と悪魔の毒薬。
それを、私は一年ほど前まで『組織』に作らされていた。
自分が作っているのが毒薬だと知らされず、姉の為に。
私の作った毒薬で、何人の人間が死んだのかを考える事もせず。
姉が死んで、全てを知って、自分もその毒薬を飲んで死のうとして。
薬の適合者だったために幼児化し、組織を抜けて、私は灰原哀になった。
そこから彼と、一年ほど小学生として生きて…此処にいる。
殺し合いという血なまぐさい演目の為に用意されたビルの屋上で、怪物と行き遭っている。
「いやーお互い災難だよなぁ、兄妹」
目の前でいるだけで、鼓動がうるさいほどに早くなる。
呼吸する事すら、困難になりそうな程の緊張。
冷たい汗が背中を伝うのが嫌に生々しく感じる。
この感覚は、『組織』の人間が近くに接近した時に至る感覚だった。
それが一番顕著に出る相手…ジンですら、ここまで強くは感じないだろう。
本能が総毛立つ様な恐怖のアラート。
声が上ずらない様にお腹の奥に力を籠めて、私は誰何の声を上げた。
「貴女は…何なの?」
ハッキリしている事は一つ。
彼は私など、瞬きしている間に殺せるという事。
逃げるだとか、戦うだとか。そんな領域の相手じゃない。
指一本動かす事すら勇気を伴う、そんな相手だった。
「そう硬くなるなよ、別に取って食おうって訳じゃないんだ
俺が何かについてだが…当てて見な?アンタはもう、俺の事を知ってる」
ニっと笑って、少年は言う。
一見すれば、特におかしい風体の少年ではなかった。
かき上げた金の髪、紅い瞳。整った顔立ちと中肉中背の体つき。
特徴的な点を上げるとすれば…真っ青なコートに、少年とは思えないハスキーボイスだろうか。
私よりも年かさだろうが、私の実年齢を超えている様には見えない。
だが…そんな少年が、あのジンすら超える威圧感を放っている。
その事が、より一層不気味に思えた。
「あ…貴女は……」
今度はダメだった。声が上ずるだけでなく、詰まってしまう。
途切れ途切れになりながら、私は何とか、その言葉を吐き出した。
「この、殺し合いに乗っているの?」
私のその問いかけに、彼はもう一度フッと笑って。
そして、私の問いかけを肯定した。
「何故!?貴方ほどの力の持ち主なら」
彼の力の事なんて知らない。見た事も無い。
でも、彼が人を遥かに超えた力の持ち主だという事は直感的に理解していた。
だから、その彼が大人しくあの海馬乃亜という少年に従うという意志を見せている事が納得いかなかった。
だから、先ほどより滑らかに尋ねる事ができた。
「何でか…そうだなぁ。まぁ本当の所どちらでもいいんだが…好きなんだ、こういうのが。
俺の住んでた町の連中は皆祭り好きのバカばっかりでな。下らねーと思ってたけど…
存外俺も、あの街に染まってたみたいだ」
夜風が撫でる髪をかき上げて、屋上と地上を隔てる欄干の上に飛び立って。
そして彼は、私を見下ろしながらそう言った。
その後、今度は私に彼が問いかけてくる。
「それで、だ。こうしてお前の前に立ってんのは殺し合いに乗った奴な訳だが…
どうするね?俺はお前の質問に答えたんだ。今度はお前が答えるべきだろ、人間?」
彼のその問いかけに…私は答える事ができない。
間違いなく、己の生死を分ける問いだと、理解してしまったから。
そして私が彼をどうこうできるはずもないから。
ただ、カタカタと震えて、立ち尽くすだけ。
そんな私の様子を見て、少年は鼻を鳴らして。
「……そう怯えるなよ。こう見えても結構不自由してるんだぜ。俺は。
俺の都合で好きにやれるならとっくにやってるよ。実際はそうじゃないけどな」
彼はそう言って、欄干からふわりと音もなく降り立ち。
私へと向かって歩いてくる。
押しつぶされそうだった。胸の鼓動が、痛いと感じるほどに。
ぎゅっと胸を押さえて、私は思わず瞼を閉じてしまう。
だが…死を招くときはやって来なかった。
「………殺さない…の?」
「そうする時と相手位は選ぶさ、じゃあな。精々震えて蹲ってろ、人間」
そう言って彼は私の脇を通り抜けて。
青いコートを揺らしながら、ひらひらと手を振って、私の前から去ろうとする。
まず、「助かった」……そう思った。
でも、次に沸いた感情は違うものだった。
私の中の理性が、「何をしている、馬鹿な真似はやめろ」と制止の声を上げる。
───逃げるなよ、灰原。自分の運命から…逃げるんじゃねーぞ……
そんな私の理性を、私は知った事かと切って捨てた。
たたた、と駆けだして。袖を掴む。
「……何だよこの手は。おい、お嬢ちゃん」
彼は突然手を掴んできた私を見て、訝し気に声を上げた。
そんな彼に、私は簡潔に要求を口にした。
「…私も一緒に連れて行きなさい」
私の声は、もう上ずっても震えてもいなかった。
「おいおい、人の話聞いてたのか?俺は──」
「貴女、本当は何方でもいいんでしょう?乗ろうと、乗るまいと。そう言ってたわよね」
「なら、私を連れて行きなさい」
「私の専攻は薬学や生物学だけど…ITや工学の知識も少しはあるわ」
「この首輪も外せるかもしれない。そうなれば、貴方があの海馬乃亜という少年に従う理由も無くなる」
一息にまくしたてる。
私にとって、間違いなく一世一代の交渉だった。
「貴女の心変わりを引き出せればそれでよし」
「もしそうでなくても…一緒にいれば貴女と言う怪物を無力化する手段が分かるかもしれない」
「…私の様な人間にとって、貴方は恐ろしさ以上に、非常に興味深い“素材”だもの」
そう言葉を結んで、最後に笑みを作る。
引き攣ってしまうことが無いように、可能な限り不敵な笑みを浮かべて。
訝し気な表情を浮かべたままの彼と、視線が交わる。
そして、僅かな沈黙の帳の後に、彼は静かに私に尋ねた。
「さっきまで怯えて震えていたのに、どういう心変わりだ?」と。
私の答えは明朗な物だった。
「───闘わないと……勝てないもの。…逃げたくはないの、私」
──闘わないと、勝てないもん!!
それは私の友人が私にくれた言葉。
行きつく果ては“死”以外にあり得ないと考えていた私に。
闇の中で光を求めて歩むことは、無意味などではないのだ、と。
そう教えてくれた言葉。
彼にとっては意味不明かもしれないが、それでも…私は彼にその言葉を送った。
何故か…私の目には彼も、彼自身に絶望しているような。
そんな印象を抱いたから。
「───人間は悲しいな。愚かと呼ぶには、余りに無垢で一途だ。
だから俺は、いつまで経ってもお前達に囚われたままなんだろうな……」
その時の彼の声は、心なしか優し気に聞こえた。
出来の悪い我が子を励ますような、そんな声色だった
彼の意図を測りかねている私の足元に、彼が担いでいたランドセルが投げられる。
「そいつは契約料だ。俺の荷物持ちをしている間は生かしてやるよ。
お前は命令されて、仕方なく付き従っていた……そういう筋書きだ、いいな?」
「あら、女の子に荷物持ちさせるなんて…大した悪党ね」
軽口を叩いて、ランドセルを拾い上げながら私は考える。
親しみやすいように見えて、彼の方針、危険性は一切変わっていないのだろう。
笑って私に冗談を口にした一秒後、首を撥ねていてもおかしくない。そう言う相手だ。
そんな彼に、私に何ができるのかは分からない。
分からないけれど、考え続ける。
貴方もきっとそうするでしょう?江戸川君。
「そう言えば、何時までも『貴方』じゃ不便ね。ねぇ、何て呼べばいいのかしら」
「んー…何て呼べば、ねぇ。フォーレンやブルーとか色々呼ばれてたけど……
………あぁ、アンタにはこの名前が一番いいかもな。“ブラック”だ。以後よろしく、アイ」
「……私、貴方に名乗ったかしら」
…初めて会った相手がよりによって、“黒(ブラック)”とは。
私にとってこれ以上なく皮肉な名前だった。
彼の後ろでビルの階段を降りながら、私は自嘲するように笑った。
「賭けの相手の名前くらいは把握してるさ。
プレイヤーはお前、バンカーは俺だ。ゲームはとっくに動いてる。
賭けに乗った以上、勝負がつくまでは決して降りられない、お互いにな」
──語る少年の住んでいた街の名はH.L(ヘルサレムズ・ロット)。元NY(ニューヨーク)
一夜にして崩落、再構築されたその街は、異界(ビヨンド)と現世が交わる特異点として新生した。
奇怪生物、神秘現象、魔導犯罪、超常化学、etc…そんな混沌が霧煙る街に蠢く魔界都市として産声を上げたのだ。
そんなヘルサレムズ・ロットで知られる人類の領域をはるかに超えた魔術や能力を持つ存在の中でもとりわけ厄介な13人の魔人達「13王」の1人。
それが彼だった。
そして、彼の。王としてのもう一つの名を、
「さぁ、もう一度出題だ。俺の名前を言ってみろ。当てられたら俺のホームにご招待するぜ?」
───絶望王と言った。
【絶望王(ブラック)@血界戦線(アニメ版)】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いに乗る。
1:気ままに殺す。
2:気ままに生かす。つまりは好きにやる。誰かが絶望してるところを見たい。
[備考]
ゲームが破綻しない程度に制限がかけられています。
参戦時期はアニメ四話。
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×2〜6
[思考・状況]基本方針:コナンや探偵団のみんなを探す。
1:殺し合いを止める方法を探す。
2:ブラックについていき、説得できないか試みる。もし困難なら無力化できる方法を探る。
[備考]
ハロウィンの花嫁は経験済みです。
投下終了です
みなさん、投下ありがとうございます!
>愛なんですよ
やっぱり、子供には愛情が必要なんですよね。それがないのは、福神漬けのないカレーと同じです。
彼と彼女にも本当の愛情が注がれれば色々変わるのかもしれませんが、片や人格に問題がありすぎ、片や愛情を注ぐ側に多分その気がなさそうというのが中々厄介なところ。
>弱肉共食
ミホの能力は非常に凶悪で本人もその行使に躊躇いがなく危険な参加者に見えますが、愛した人との口づけも出来ないのは寂しさと物悲しさを感じさせます。
あと、この闇サトシは千年リングに乗っ取られてる訳でもないのなら自業自得ですね。
>LOVE OR EAT
小恋ちゃん、中々やべえ奴ですね。調べて私もちょっと驚きました。女の子は女の子同士で恋愛すべきってコト!?
主催も含め、色々アレなキッズ達に淡々と突っ込むリルトットが良い味を出していますし、危険?対主催としても見応えのある心理描写でしたし、最後の回想がちょっと切ない……。
>ハーマイオニー・グレンジャーと呪いの子
殺人鬼ヘンゼルと対峙しながらも勇気を出して冷静に対処してみせたのは、流石優秀なハーマイオニーといったところでしょうか。
タイトルで呪いの子なんて言われてますが、誰かが少し優しくしてあげればとも原作でも言われていましたが、ヘンゼルも元は普通の子だった筈なんですよね。
>謎のぬけおちたページ
『海馬乃亜の説明を一切理解していません』
大丈夫なんですかねこの子は……。とはいえ、スーパードラゴンに人間の言語を理解しろというのが難しい話なのかもしれませんが。
乗られる側だったヨッシーが乗る側になったのは、かつてマリオワールドで全国の子供達に何匹もも乗り捨てたられたであろう事を想うと感慨深いです。
>厄災の器
子供と言えば、確かに生まれたばかりの幼い未成熟な存在ではありますが、まさか誕生前の卵から参戦させるというのは非常にユニークですね。
それはそれとして強マーダーとしての片鱗を早速見せ始めていて、まさしく厄災と称するに相応しいです。
>fake town baby
哀ちゃんも変わりましたね。以前は大人びているけど、臆病で諦めの早かった彼女が生き延び足掻くために賭けに出たのが、探偵団と触れ合って変わっていった描写として好きでした。
ジンニキが居れば、全裸のシェリーを頭に浮かべて喜んでいると思います。
ブラックもマーダーのように振舞っていますが、むしろ灰原を気遣うように対主催に警戒されないような理由まで用意していますし、本音は優しい人物なのでしょうかね。
投下いたします。
今までと違い、今回は1作品のみとなります。
ここは会場内に用意された工場、最新鋭の機械たちが稼働する日を今か今かと待ち続けている場所。
だが今ではそれらの機械が無残にもパーツをむしられ、ただのスクラップと化した状態で立ち並んでいる空間と化していた。
そしてその場所には一匹の生き物がいた。
全身を覆うほどに長い髪の毛と桃色の肌をした人間の子供に似た容姿をし、また自身の身長の何倍もあるハンマーを持った生き物だった。
その生き物の名は『デカヌチャン』。大きく頑丈なハンマーを作るために金属の身体を持つポケモンの群れを襲うという習性を持つ、ポケモンの一種である。
そんな彼女は今、目の前にある鉄くずに対してハンマーを振り下ろしていた。
振り下ろされたハンマーは鉄くずの塊に直撃すると、その一撃で形が崩れるほどにひしゃげさせていく。
しかしそれでも彼女の攻撃は止まらない。何度も何度も叩き続け、ついには原型すら留めないほどに変形させたところでようやく一息つくように動きを止める。
そして彼女は自らのハンマーを強化するように、そのすっかり変形した金属を貼り付けていった。
彼女はこの場で何度か同じことを繰り返し、こうして自らのハンマーを改造していた。
今日はいつもよりも多くの金属が集めたから、きっとすごいものが作れる。彼女はそう考え、そしていつも以上に作業に集中しているのだ。
そうやってある程度強化を終えた後、今度は別の鉄くずへと取り掛かる。
彼女にとって今の状況はお気に入りのハンマーの強化と試し打ちをするための絶好の機会でもあるのだ。
だから彼女はこの場に来た時からずっとハンマーを振るい続け、金属を加工し、それをハンマーに貼り付けて鍛え続けていた。
ただひたすらに彼女はハンマーを振り下ろし、その度に周囲には大きな音が響き渡る。
その表情はとても楽しげであり、まるで何かに取りつかれたかのように振舞っている。
そしてそれからしばらく経った頃、彼女は満足したような笑みを浮かべながらハンマーを置いた。
ようやっと、この場でのハンマーの強化が完了したのだ。
その証拠に彼女が持っていたハンマーは今までのものとは違い、明らかにサイズが大きくなっていた。
そうやってひとしきり改造したハンマーを観察すると、彼女はそれを手に取り嬉々としてその場で素振りを始めた。
ブンッ!ブンッ!! 空気を切る音と共に巨大なハンマーも宙を舞う。
その姿からは先程までの重そうな印象は全く感じられず、むしろバットでも持っているかのように軽々と扱っているように見えた。
もちろんそれは彼女が使っているからであって実際に手に持ってみると常人には持ち上げられないほどに重いことは言うまでもないのだが……
そうやって使い心地を確認した彼女は、今度は威力のほどを確認するためかそのハンマーで工場の壁を破壊し、外へと繰り出していった。
外に出るとそこにはちょうど良い的があったのか、彼女はそちらの方へ向き直る。
そこにあったものは少し離れた所にある大きな岩だった。
それを見た彼女は標的を見定めたようにニヤリとした笑いを浮かべた後、助走をつけて走り出すとその勢いのままジャンプをしてハンマーを振り下ろした。
ドォン!!! 彼女の放った一撃はその巨体を粉々に打ち砕き、周囲に破片を巻き散らかすほどの衝撃を生み出した。
その破壊力はまさに桁違いと言ったところだろう。それを見た彼女は満面の笑みを浮かべていた。
やはり自分の作った武器の性能を確かめるというのはとても楽しいことだ。彼女は改めてそう思った。
そして再び彼女はハンマーを構える。
次の目標は『他のポケモンに対して、どれだけの威力足りえるのか』だ。彼女は早速次なる獲物を探して歩き出した。
こうして彼女の一日は、まだまだ続いていくのであった……。
【デカヌチャン@ポケットモンスターSV】
[状態]:健康、興奮状態
[装備]:手作りのハンマー@ポケットモンスターSV
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み。少なくとも金属製のものではない)
[思考・状況]基本行動方針:自分のハンマーをもっと強くするために、良さそうな金属を集め続ける。
1:ハンマーを強くするため、良質な金属を集めて回る。
2:他の生き物が持ってるのなら、殺してでも奪い取る。
[備考]
少なくともポピーの手持ちポケモンではありません(野生個体なのか、それとも誰かの手持ちポケモンなのかについては当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)。
ハンマーを没収されていない代わりにランダム支給品が減らされています。
工場内に、デカヌチャンにパーツを奪われた上にハンマーの試し打ちに使われたことでスクラップ状態になった機械が残されています。
またデカヌチャンが金属を加工している音を耳にした参加者がいる可能性があります。
『支給品紹介』
【手作りのハンマー@ポケットモンスターSV】
デカヌチャンに支給。その名の通りデカヌチャンがまだカヌチャンだったころから持っており、そして強化し続けた巨大なハンマー。
彼女にとってはとても大切なものであり、うかつに触れれば間違いなくそのハンマーの餌食になるだろう。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します
「殺し合いなんて……KAN-SENとしても、メイドとしても許すわけにはいきません!」
四方を海に囲まれた、海馬乃亜が始めた殺し合いのフィールド。
そのとある海岸にある海の家の中で、一人もメイド姿の少女が高らかに反抗の言葉を口にする。
少女の名前は、通称『ベルちゃん』。
ロイヤルメイド隊メイド長・ベルファストをそのまま幼女にした様な、銀髪蒼眼の見習いメイドである。
未知なる侵略者『セイレーン』から、碧き航路を護る為に誕生したKAN-SENの使命としても、
現ロイヤル女王にして指揮官代理を務めるクイーン・エリザベスに仕える王室専属メイドの誇りとしても、
この殺し合いは到底許容できるものではないと、幼いながらに理解をしていた。
「それに……」
ベルちゃんは、後ろに目に向ける。
そこには、休憩や軽食を取る事を目的として作られていると思われるここの海の家の内装に似つかわしくない、ベビーベッドが置かれていた。
そして、そのベッドの中には、年場もいかない赤ん坊が穏やかに眠っている。
ベッドの傍にはランドセルがあり、赤ん坊の首には首輪が巻かれていることから、参加者であるのは明白だ。
「すやぁ……、すぴー……」
「こんな赤ちゃんにまで殺し合いを強要させるなんて……、あの殿方は何を考えているのでしょうか」
ベッドから軽々と、それでいて落ちない様に優しく赤ん坊を胸に抱き、ベルちゃんは呟く。
メンタルキューブから誕生するKAN-SENは、改造やμ兵装による性能・外見の変化はあれど、年齢の概念は無いに等しい。
それ故に、こどもばかりを選んだ今回の殺し合いの人選にあまりピンと来ていないのだ。
年齢で決めているのなら、殆どのKAN-SENが通ってしまう為、恐らく外見で選ばれたのだと考えるが、そうなると他のロイヤルメイド隊が恐らくいないだろう事を想像と、不安になってしまう。
(……いえ、落ち着くのです、ベルファスト。それならご主人様が巻き込まれていない事を喜びましょう)
しかし、すぐに考えを切り替えるベルちゃん。
少女が仕えるロイヤルメイド隊は、女王陛下だけでなく、国家、ひいては世界を守るための盾にして剣。
現在はセイレーンの進行が穏やかになった為、率先して力を振るう状況ではないが、戦う覚悟は常に出来ているつもりだ。
世界を守る指揮官であるご主人様や、多忙で倒れた指揮官の代理として皆を纏めるクイーン・エリザベス女王陛下を失う事なんてあってはならない。
女王陛下は背丈を考えると巻き込まれている可能性があるが、少なくとも指揮官はいないだろう事を考えると、気力が少しずつ湧いてくる。
「ベルファストがママの元に帰らせてあげますから、それまで安心してくださいね」
「うーん……、ママぁ……」
赤ん坊をあやした後に、付属されていた抱っこ紐を使って背中におぶったベルちゃんは、両腕にそれぞれのランドセルを持ち移動を開始する。
出来たら赤ん坊を安全な場所に移してから主催の打倒の為に動きたいが、それまでは面倒を見よう。
「待っていて下さい、ご主人様。そして女王陛下様。ベルファストは必ず還ります!」
改めて、この会場にいないだろう仕える2人に対しての言葉を送るベルちゃんは海の家から出て歩き始めた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
(やれやれ……殺し合いに巻き込まれるなんて、ボクもついていないな)
歩いていくベルちゃんの背中におぶされながら、赤ん坊・本田ジョージは冷静に状況を把握する。
この多く見積もっても1〜2歳くらいの赤ん坊は、理屈は不明だが、年頃の人間と変わらない自我を持っているのだ。
(しかし海馬乃亜って、あの海馬サマの関係者なのか?だったらボクがやることは海馬サマの為に円滑に事を進めるだけさ)
ジョージは赤ん坊が行うには明らかに悪意がある邪悪な笑みをして、ゲームに乗る事を決意する。
この赤子は、海馬瀬人が作った死のテーマパーク・『DEATH-T』に偶然関わった際にも、海馬瀬人のファンという理由だけで、武藤遊戯達を寝返り殺人鬼・チョップマンがいる個室に誘導しようとした事があるのだ。
(とりあえず今は無力な赤ん坊を装って、殺れるチャンスを待とう……。ボクが全員殺す必要なんてないもんな……。)
しかし、ジョージはすぐに行動を起こすわけでもなく、淡々とチャンスがやって来るタイミングを待つ。
どんなに悪知恵が働こうとも結局は赤子。
流暢に言葉を離せるし、自分の出したい時に尿や便を垂れ流す事は出来るし、なんならレーザー銃も普通に持てるが、流石に何十人も殺戮を繰り返す事は出来ない。
場当たり的に動かず、虎視眈々とチャンスが来るまで待つのが一流の狩人だとこの年にして理解しているのだ。
(だけど、このロリっ子メイドの背中気持ちいいぜぇ……。子供に興味はないからデートに誘う気は無いが、大きくなったら相当に美人なメイドになるんだろうなぁ)
「ベルママぁ……。オギャらせてぇ……」
「フフっ、私がママだなんて。よしよし、怖くないですよー」
「てぇてぇ……」
背中におぶっている赤ん坊が、殺し合いに乗っているなんて全く想定していないベルちゃんは、純粋な思いでジョージをあやす。
年齢的にも正しく赤ちゃんプレイを楽しむジョージは、だらしなく笑みを浮かべるのだった。
【ベルちゃん@アズールレーン Queen's Order】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本:海馬乃亜を折檻し、指揮官様や女王陛下の元に帰還する
1:赤ん坊(本田ジョージ)を安全な場所に移したい
2:仲間のKAN-SEN達がいるなら合流を目指す
[備考]
※艤装は没収されています
【本田ジョージ@遊☆戯☆王(原作漫画版)】
[状態]:健康、
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[方針]
基本:ゲームに乗る。ただし積極的には殺さない
1:今はベルちゃん相手に沢山オギャる
2:主催者(海馬乃亜)は海馬サマの関係者なのか?
[備考]
※DEATH-T編後からの参戦です。
※ジョージのランドセルは、現在ベルちゃんが持っています
投下終了です
感想ありがとうございます!
投下します。
※注意 現在、上映中の名探偵コナン黒鉄の魚影の内容が一部記載されています。
映画を観る予定の方は観た後にお読みください。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
私は科学者の宮野志保。
幼いころから組織の一員だった両親を亡くし、アメリカに留学。
両親の研究を引き継ぎ、コードネーム「シェリー」として組織で薬の研究をしていた。
組織の身勝手な行動に嫌気をさしていた私は、唯一の肉親であった宮野明美を殺され、組織に反抗。
自ら命を絶とうと例の薬を飲み、目が覚めたら……体が縮んでしまっていた。
宮野志保が生きていると彼らにばれたら、今度こそ殺されてしまう、
組織から逃げだすことにした私は藁を掴む思いで、幼児化した可能性のある例の毒薬の被験者の家に行き、灰原哀と名乗り、正体を隠すことにした。……って自分語りをしている場合じゃないわね。
私は走っている。
走らなきゃ死ぬからだ。
乃亜と名乗る少年による殺し合いに巻き込まれた私は、この犯行に組織の人間がかかわっている可能性が少ないと直ぐに断じた。
彼らなら、ここまで大規模な誘拐などしない。
足がつく危険が高いだけだから。
というか、私をシェリーだと疑って、ウオッカとピンガが拉致をしてきたのにそれ以外の子を誘拐するはずがない。
また根拠がもう一つある。
私達、参加者につなげてある首輪の液体……たしか、渋谷での出来事。
ロシアのプラーニャと名乗った爆弾魔のに類似していること。
勿論、組織とプラーニャのつながりはない。故に今回の誘拐及び殺し合いに彼らはかかわっていないといえるわ。
結論付けた私は、自分に支給されたのを確認しようとランドセルを探っていた。
確認を終え、ランドセルを背負いなおした瞬間、矢が私の頬を裂いた。
視線の先にはクロスボウを構える中学生らしき少年がいて、今に至る。
先ほどから、逃げる私に対して武器を使用するのに一切の戸惑いが見られない。
むしろ、武器を使うのが嬉しくて仕方がないといった様子。
はぁ……まさか、いきなり殺し合いに乗った参加者に遭遇するなんて運が無いわね。
「……ッ!?」
矢は当たりこそしなかったが、矢の羽が私の太ももに触れていった。
すると、触れた箇所が裂け、そこから血が噴き出し、私は痛みを感じると共に転倒する。
「雑魚のくせに手こずらせやがって!」
背中越しから聞こえるのは、イラつきを隠せない声。
どうやら年齢の割に幼さが見え隠れするわ……
「っ……あなたは、こんなバカげたのに乗ったのね」
「あたりまえだろ」
「あのデモンストレーションを見て、アイツに逆らおうと考えるか?」
「子供のくせに常識に囚われているのかよ」
「俺は順番に殺される羊じゃない。むしろ羊を刈る側だ!」
その顔は獲物を得たハンターの顔。
「ったく、手間取らせるなよなぁァァァ!」
「あっ!?ぐぅ!?げほっ……げほ」
どうやら。この少年は私をさっさと射ち殺す予定だったようだ。
思い通りにいかなかったことに不満爆発な少年は私の腹を容赦なく蹴りつける。
何度も何度も。
イラつきな言葉とは裏腹に表情に楽しそうな色が混ざっている。
自分より小さい者に対する被虐性。
将来、犯罪者になる典型的な行動に思考ね。
「優勝すれば”あのゲーム”では20億。しかも生き残った者が他にもいたら山分けだったけど、今回は億なんかじゃない金を一人で得ることができるってことだろ?……いや、金なんかじゃなくて、もっとすげーのを要求しよーかな。アイツなら可能だろーしね」
殺し合いに乗った理由がそんなくだらない理由なんて……
救いようもないわ……
「……キね」
「ん?なんか言った?いっとくけど、命乞いは聞かないよ」
私が命乞い?
見当違いもいいところ。
その推理、どこかの誰かさんにも及ばないわ。
「ガキねと言ったのよ。」
「あの乃亜って子が願いを本当に叶えると思っているの?……とんだお花畑思考ね」
「それといい加減、そのにやにや笑う顔を見せないでくれるかしら?」
「私は貴方の鬱屈を晴らす存在じゃないのよ?」
次々と言葉が浮かぶ。
死を避けられないと実感してるかしら……
「……わかったよ。もう死ねえぇェェェェェ!」
お姉ちゃん……私もそっちへ行くね。
それと工藤君……唇……”彼女”に返すことができなくて悪いわね……
「ウォータービーム!」
「あっつうぅぅぅううぅ!!??」
突如、少年は、地面に転がりながらのたうち回る。
まるで、背中にかかった水が熱湯であるかのように。
「大丈夫!?」
「え、ええ……あなたは?」
少女は私を抱きかかえると、距離をとる。
そして、近くの大木の後ろに私は下された。
「宇宙の平和を守るため、悪い人をこらしめる」
「銀河防衛隊!」
私を助けにきたのは、スーパーマンならぬスーパーガールだった。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「ドラちゃん……のび太さん……武さん……スネ夫さん」
一人、不安げに佇む少女がいた。
少女の名は源静香。
少しだけ不思議な普段を生活する静香は、乃亜による殺し合いに巻き込まれ、不安げの表情。
不安を少しでも解消しようとランドセルの中身を確認する。
「これって……私が作ったヒーロースーツじゃない!?」
自分に支給された支給品の一つに見覚えがあり、静香は驚いた。
そう、かつて映画撮影をした際、自作した衣装がそこにあったのだ。
静香は懐かしさを噛みしめると共に装着する。
勇気を抱くため。
「ったく、手間取らせるなよなぁァァァ!」
突如、静香の耳に聞こえた怒声。
声の聞こえた方向へ視線を向けると、静香は口に手を当てる。
「!?あれって!」
静香の視線に映る少女と少年。
少年の方は高学年もしくは中学生ぐらいだが、少女の方は明らかに低学年。
そんな学年の子に対して行っている蛮行。
見過ごすわけにはいかない。
「助けに行かなきゃ!」
静香に迷いはない。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「貴方は殺し合いにのったの!?」
静香は灰原を避難させた後、少年と対峙する。
「当たり前だろ。さっきも言ったけど、ここでの殺しは”正当化”されるんだぜ?」
「それに、優勝すれば何でも願いが叶う景品つき。乗らないのがおかしいよ」
少年。
長沢勇治にとってこのバトルロワイアルを実行するのは、首輪を外して生き延びる以上の意味があった。
長沢を突き動かしているのは、日頃ためこんでいた鬱屈。
自分の力が発揮できないのは周囲が悪いのだと。
体格にも腕力にも恵まれず、誰も自分の言葉に耳をかさない。
彼の歪んだ感情は、舞台が変わっても揺るがない。
「ま、あんときと違って、持ち物が没収されたことにはむかつくけどね」
「また、1からキャラを育てるなんて時間の無駄じゃんか」
それは、長沢の携帯ゲーム機のこと。
シークレットゲームと違い、自分の持ち物が没収されたことに不満げな顔。
先ほどから自分の思い通りにいかずふてくされている顔。
「殺しは”ゲーム”なんかではないわ! あの子の言葉に乗るなんて弱さの表れよ!」
「ッ!?……お前もか……」
静香の言葉に長沢は身体を震わせる。
恐怖ではなく怒りで。
長沢は証明したいのだ。
自らの力を。そして自らの存在を。
認められないから。
どうしても自分の弱さを。
「これでも、くらえ!」
長沢は怒りに任せてクロスボウを放つ。
矢は一直線に静香の胸へ。
普通の女児なら避けられず、死ぬ。
だが、今の静香は普通の女児にあらず。
宇宙海賊を撃退した英雄なのである。
大きく飛翔すると、長沢の背後に回り、身体を持ちあげる。
「うお!?」
「少しだけ……こらしめるわ!」
そまま、回旋すると、放り投げる。
「ぐわぁ!?」
加減したとはいえ、勢いよく尻から地面に叩きつけられた長沢。
「チ……チートかよ!?」
「くそっ!覚えてろよな!」
長沢はなんとか身体を起き上がると、一時退却をした。
今の装備では、静香を仕留めることが困難だと悟ったからだ。
ゲームで養われた計算高さ。そして狡猾さが生かされた。
静香の方も元々、灰原を救うのが目的だったため、深追いをせず、そのまま見逃した。
長沢の気配を感じなくなると、灰原に近づく。
「一旦、これで大丈夫。まずは、足の傷のしなくちゃ」
「ええ、悪いけど私のランドセルを開けてくれるかしら?たしか、私の支給品に怪我を処置する機会があるから。……それと助かったわ。銀河防衛隊さん」
「!?……えへへ/////」
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:頬、切り傷(小)、足負傷(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:生きて帰る(そして、唇を返す)
1:足の応急処置をしながら情報交換をする。
2:工藤君……
3:あのこたち(少年探偵団)、巻き込まれてないといいのだけど……
[備考]
黒鉄の魚影、海中でコナンにキスしたところからの参戦
乃蒼と組織が繋がっているとは考えていません。
いくつかの劇場版の出来事を経験しています。
首輪がプラーミャのに類似しているのに気がついてます。
【お医者さんカバン@ ドラえもん】
灰原哀に支給されたひみつ道具。
未来の子どもがお医者さんごっこにつかう道具とドラえもんはのび太に説明したが、非常に高性能で聴診器を体に当てるだけで、どんな病気や怪我でも一発で正確に診断し、それを治療する為の薬や器具を鞄から出してくれる。
本ロワでは使用できるのは10回のみで使用不可能となる。
「すぐみてあげるからはだかになって!!」byのび太
【源静香@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:ヒーロースーツ@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2
[思考・状況]基本方針:生きて帰る
1:まず少女(哀)の負傷を応急処置をする
2:のび太さん達も巻き込まれているのかしら……
[備考]
いくつかの劇場版に出来事を経験しています。
※宇宙英雄記は漫画版です。
【ヒーロースーツ@ ドラえもん宇宙英雄記 (漫画版)】
源静香に支給されたヒーロースーツ。
元はスネ夫の映画撮影のために静香が自作した変身スーツ。
元はただの衣装だが、ドラえもんが用意したグレードアップライトの効力によりグレードアップした。
今ロワでは、その効力が残されており、ジャンプ力が飛躍し、静香は指からお湯を出すことができる
「こんな能力どうやって使うのよ!!」BY静香
☆彡 ☆彡 ☆彡
―――くそ
くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ
くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ
くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ
正直、チートじみた女の登場は想定外だった。
こんなことなら、あの雑魚をさっさと殺しておくべきだった。
みてろ!態勢を立て直し、装備を潤沢にしたら、すぐさま殺しにかかるからな!
あの2人だけじゃない!!俺を馬鹿にした凡人ども全員!!!
―――ん?
何だアイツ?
ゲームのキャラみたいなコスプレしてんのか?
へへっ!無防備に突っ立っているなんて、殺してくださいといっているようなもんだろ。
よ〜し、まずは、さっさと殺してアイツの装備を奪うとするか。
長沢は、先ほどの屈辱を晴らす意味も込めて、クロスボウを向ける。
―――ギュイイイイン!!!
―――ジャッキ!
「は?」
間が抜けた声の直後、長沢の身体から血が拭きだす。
噴水の如く。
無数の光弾が長沢を打ち抜いたからだ。
全身に負った傷は深く、痙攣したように体が震えている。
長沢は虎の尾を踏んだのだ。
さらに追い打ちのつもりか、頭に一発光弾が撃ち込まれた。
嫌な水音が響きわたる。
こうして長沢の生命活動は消去(デリート)された。
【長沢勇治@シークレットゲーム KILLER QUEEN 死亡】
息絶えた長沢を見下ろす鋭い眼光に、一切の哀れみや悲しみといった感情は込められていない、
あるのは憎しみ。
絶えることない憎悪の炎。
「人間が……!!」
吐き捨てるかのように言葉を発する。
声の主はフォルテ。
世界初のネットナビ。
生みの親のコサック博士を慕う純粋だった彼は人間でいうところのショタであっただろう。
しかし、現在の彼は、その面影はない。
濡れ衣を着せられたフォルテの意志はただ一つのみ。
人間への怒り。
ただそれだけが、フォルテを渦巻く感情。
【フォルテ@ロックマンエグゼ】
[状態]:健康 人間への怒り(大)
[装備]:クロスボウ@ シークレットゲーム KILLER QUEEN
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5(長沢のも含める)
[思考・状況]基本方針:優勝して乃亜も消し去る
1:他の人間を消す
[備考]
ゲームエグゼ本編開始前からの参戦です。※まだロックマンおよび熱斗との面識はありません。
コピーロイドに接続された状態で活動しています。
【クロスボウ@ シークレットゲーム KILLER QUEEN 】
長沢勇治に支給されたクロスボウ。
シークレットゲーム で長沢が使用した。
余談だが、どのルートでも長沢はゲームに乗る。
「証拠をくださ〜い、カボチャのスミスさ〜ん♪」BY長沢
投下終了します。
投下ありがとうございます!
わたしも投下します。また感想の方は後ほど投下いたします
「お、お姉さまああああああああああっっ!! むほおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!! お姉さまあああああああああああああああっっ!!
おっ、おほおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!! しゅ、しょごいですわあああああああああああああ!!! ン、ンほおおおおおおおッッッ!!!」
白井黒子は絶叫していた。
つい数分前、ルフィとエースが惨殺された光景を目の当たりにし、彼女は強い怒りとその揺るぎない正義の信念に従い「わたくしはジャッジメントですの! 海馬乃亜、貴方を必ず捕まえますわ。覚悟なさい」と一人で宣言。
必ずや、あの海馬乃亜と名乗る少年を捕まえると確固たる決意を固める。
そして少し落ち着いてから、この殺し合いが小学生前後の子供達を集めたこと、その中で自分を小学生扱いされたことにまた憤怒する。
「あのクソガキャア、いくら数か月前はランドセルを背負っていたとはいえ、わたくしを小学生呼ばわりとはどういった了見ですの!」とキレ散らかしながらランドセルを開ける。
すると、中には見慣れたパンツが数枚入っていた。
それは間違いなく、黒子が愛する御坂美琴のもの。間違える筈がない、普段から慣れしたんだ手触り、形、匂い、舌触り、絶対にそうだと確信した。
更に何よりも驚くべき事実も発覚する。それは履きたて、使用済み、未洗濯であるという驚愕の事実である。何を意味するか?
この魅惑の布切れ達はつい数分前まで、あの御坂美琴の秘所に直に接触し、その薄っぺらい紙のような装甲で守り続けてきたのだ。
未成熟な二つの丘の上に咲く桃色の突起物から溢れる汗を、未だ異性を知らぬ純潔の蕾から滲みだす愛液を、その小さな面積で一心に受け止めてきた下着達。
そうと分かれば、触って、嗅いで、舐めて、被って楽しむしかない。
「ふぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!! こ、これしゅごいですわあああああああああああ!!!
こ、このランドセル! 下着の鮮度を一切落としていませんのおおおおおおおおおおおお!!!」
黒子を悩ませることの一つに下着の鮮度があった。
元から使用済み下着を盗みだす、しかも履いた直後のものをこうして使用することは非常に難しい。
何故なら、下着を取る事まではダメージ覚悟で可能だが、それを使うとなると一旦御坂から離れなければならなくなる。普通に考えて、御坂が自分の下着で楽しみだす相手を見逃す筈がない。
故に安全をある程度確保してからようやく楽しむことが出来る訳だが、その時には染みついた風味、感触、体臭、全てが劣化してしまっている。
だが、このランドセルにはそれがない。奪ったパンツを、その時の鮮度のまま保存することが可能なのだ。証拠に体温がまだ下着に残っていた。
「……おっと、これはお姉さまのではありませんわね。あのガキャ、こんなトラップまで用意するだなんて……ですが、わたくしのお姉さま愛を舐めない事ですわ。
ああん! お姉さまあああああああああッッ! くろこは…くろこは狂ってしまいそう……!」
御坂の下着中に混じっていた貝殻のブラジャーと白いパンツを放り棄てる。
凄まじいまでの集中力、恐ろしいまでの洞察眼、狂っているまでの嗅覚、壊れているまでの記憶力。ありとあらゆる五感を駆使し、その二つが御坂のものではないと断定し排除した。
「うへっ、うへへへへぇ……お、おっほおおおおおおおおッッ!!!!!」
「へ、へんたい……!?」
「………………コホン、わたくしは怪しいものではありませんわ。ご安心を」
服まで脱ぎ捨てなくて良かったと黒子は自分の自制心を心の中で褒め称え、目の前に現れたピンク髪の小さな幼女に向き直った。
「へんたい」
「変態ではありませんの。わたくしは白井黒子ですの。良いですわね、アーニャさん?」
「ババア声」
「あーあーエホン……鈴を転がしたような声とおっしゃって頂けませんこと?」
「ババア」
「……仕方ありませんわね。変態よりはマシですわ。では、わたくしの事はババアと呼ぶこと、よろしいですわね?」
「へんたいババア」
「悪化してますわよ」
その少女は、アーニャ・フォージャーと黒子に名乗った。本人曰く、6歳と主張するものの黒子の印象としてはもっと幼くも見える。口調も舌足らずなところが目立った。
「へんたい! ぱんつ頭からかぶってる!」
黒子を見て目を輝かせて変態と呼びつけるものの、むしろ大騒ぎして助けを呼ばれるよりはマシかもしれない。
流石の黒子とて、先ほどまでの光景は完全に事案になってもおかしくないと自覚はしている。
「お辞めなさい! あれは帽子ですの、決していかがわしい行為ではありませんの。淑女の嗜みでしてよ」
「みさかのぱんつ! こどもぱんつ!」
「御坂……? わたくし、ここに来てからお姉さまとしかお呼びしていませんが……その名前は何処で?」
「はっ!?」
アーニャは相手の心を読み取る読心術を持つ。かつて、ある組織に被験体007として生み出された超能力者だ。
組織に嫌気が差し逃亡を図った後、孤児院や施設、里親を転々としていた。
今はスパイと殺し屋の両親の元で偽りとはいえ、フォージャー家に落ち着いたもののその心を読む能力については未だ誰にも明かしてはいない。
「もしかすると、貴女は心を読む能力者なのではありませんの?」
(あ、アーニャのこと、ばれた? ど、どうしよう……)
幼い子供とはいえ、能力を駆使しながらもその正体を隠し続け社会に紛れ込んでいたアーニャだが、今開かれている殺し合いに対して彼女自の処理能力も流石にパンクしてしまったのだろう。
目の前で二人の兄弟が爆殺され殺し合いを命じられた恐怖、乃亜の残虐さに対する畏怖、頼りになる両親から強制的に引き離された不安、そんな中で馬鹿みたいに変態行為を楽しんでいた黒子の存在はアーニャにとってに一時の癒しになっていた。
だから、気が緩んでしまった。
普段からは考えられない凡ミス、黒子の心から御坂美琴の名前を読み取り、それを口にしてしまったことは、それなりに長い期間能力を隠し続けてきたアーニャらしからぬ、だが致命的なミスだ。
「え、えーと……アーニャは」
アーニャの短い人生の中で関わった施設や里親達の事を思い出す。皆、アーニャの心を読んだ言動を不振がり、中にはその能力に気付いた者も居たのだろう。
彼らに共通しているのは、全員アーニャを不気味がり恐れ、全員が遠ざけようとしたに違いない。
例えアーニャに悪意がなくとも、誰しも読まれたくない心はある。心を読む力とはそれだけ強大なものだ。
「なるほど、まだ小さいのに苦労もなさったのでしょう……。大丈夫ですわ」
アーニャの目の前から黒子の姿が消えた。ポカンと口を開けて見ていると、背後からポンと頭に手が置かれる感触がする。
「わたくしも貴女と同じ能力者ですの。アーニャさん、心が読めているのなら、今わたくしが頭に思い浮かべた事も分かるでしょう?」
「がくえんとし……? えすぱーががいっぱい!?」
「ええ、だからそういう事には慣れていますの。そう怯えなくても良いんですのよ」
黒子は優しくアーニャへと語り掛ける。その心には何の打算もなく、怯えも恐怖も蔑みもない。
「特に精神系能力は、色々触れたくもない物にも触れてしまいますものね。隠しておきたいのも無理はありませんわ。
この事はわたくしと貴女だけの秘密、ということにしておきますの」
黒子は唇に人差し指を置いてウィンクを送った。
(アーニャがえすぱーってバレても、こわがらない……?)
『こんな小さな子まで殺し合いに巻き込むだなんて、あの乃亜という少年は何を考えていますの』
『決して見過ごす訳にはいきませんわ。わたくしはジャッジメントですもの。例えここが学園都市でなかろうと、このような殺し合い、許しませんわよ。海馬乃亜!』
『必ずやこの娘を、いえここに呼ばれた全ての子供達を家に帰してみせますわ』
「じゃっじめんと……? ちあんいじ……せいぎのみかた?」
「ああ……失礼、わたくしの心を読んだんですのね。そうですわね……正義の味方というのもこそばゆいですが、警察というか……」
「せいぎのみかた……ひーろー? わくわくっ! じゃっじめんと! こえにだしたい!!」
今まで培われた常識や経験の違いはあれど、アーニャの見てきた中で黒子は非常に善性の強い人物に見受けられた。
それこそ、かっこいい嘘つきである父親のロイドやスプラッタな面もあるが心優しい母親のヨルのように。
「あ、アーニャ……へんたいババア……ううん、くろこについてく! ……いい?」
「ええ……喜んで。
ジャッジメントとして、そして同じ能力者の先輩としても後輩を導くのは当然のことですもの」
「うい!」
ニコりと温和な笑みを浮かべて、黒子はアーニャへとほほ笑んだ。
「お約束します。貴女はわたくしが守りますの。そして、必ずお父様とお母様の元へお連れしますわ。ですから、決してこのような殺し合いに乗らないで下さいまし」
(じゃっじめんと、カッコいい……!)
その姿はアーニャがテレビでよく見るボンドマンのように不敵で大胆で、そして頼れる心強さを感じさせた。
『しかし……お姉さまのパンツのことは、あまり考えてはアーニャさんの教育に悪いですわね……。で、でも乃亜を捕まえた後に帰ったら……ふへへへへへぇ……はっ!? いけませんわ黒子、別の事を考えますの!
50009345+8979169790=お姉さまァ……こ、これは……いけないと思えば思うほどお姉さまの事が……こういう時は類人猿のことを……萎えなさいわたくしの煩悩!!
ああ、でも忘れられませんわぁ……お姉様の温もりの残ったぁ……バカ! 黒子のお馬鹿!! バカ!バカ! 類人猿! 類人猿!! 類人猿!!! お姉さま!! お姉さま!!! お姉さま!!!!!』
(でも、すっごいへんたい……)
『お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!!
お姉さま!! お姉さま!!お姉さま!! お姉さま!! お姉s―――――』
(あれ? きゅうにこころよめない……なんで?)
※御坂の下着とセット扱いとして混じっていた以下のアイテムが黒子に廃棄され放置されています。
【ロキシーのパンツ@無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜】
【プロフェッサー・ダルタニアンの貝殻のブラジャー@金色のガッシュ!!】
【白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、ムラムラ(絶大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2、御坂の下着×沢山@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、乃亜を捕まえる。
1:アーニャを守る。他の子供も保護する。
[備考]
エンデュミオンの奇蹟は経験済みです。
【アーニャ・フォージャー@SPY×FAMILY)】
[状態]:健康、制限による超能力無効(ランダムで復活)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:いえにかえる。
1:くろこについてく。じゃっじめんと、カッコいい……でも、へんたい……。
2:こころ、よめなくなった……どうして?
3:ちち、ははにあいたい……。
[備考]
アニメ2クール目以降からの参戦です。
心を読む超能力に制限が掛けられています。その為、本人の意思に関係なく、ランダムで能力の発動と無効が交互に発生します。
投下終了します
投下します
ここは会場内に存在する、とあるコンビニ。
むろんバトルロワイアルの会場内である以上店員は配置されていないし、商品棚は全て空だ。
そんな店の中に、リボンだらけのかわいらしい服を纏った一人の参加者が立っていた。
「冗談じゃないわ……。
何よ、殺し合いって……!」
本来は可憐な顔を憤怒にゆがめ、ドスの利いた声で少女は独りごちる。
彼女の名は、ライト月子。本名、黒田月子。
かつて「小学生デュエル四天王」の一角に数えられていた、幼きデュエリストである。
「私だけならまだしも、尚磨くんや知り合いが巻き込まれてたらどうしよう……。
ばらばらに参加者を集めるよりも、ある程度共通点のある人間の方が拉致しやすいだろうし……」
月子が真っ先に心配するのは、思い人である遊佐尚磨。
もし彼もこの殺し合いに参加させられていたら、絶対に主催者を死ぬよりひどい目に遭わせると決意を固める。
次いで、兄であるダーク黒田。
中二病で度を超したシスコンでうざったい兄だが、さすがに死んでもいいと思うほどではない。
それにデュエル仲間のストロング十九やサイキック天道、憧れの存在である赤星王座も心配だ。
「何せ、遊戯王キャラのコスプレをするようなやつだもの……。
デュエリストを重点的に狙ってる可能性は高いわ」
ここからはしばらくメタ視点での解説になるが、お付き合い願いたい。
月子が初登場したのは、3DSのゲーム「遊戯王デュエルモンスターズ 最強カードバトル!」である。
だがこの月子は、漫画「遊戯王OCGストラクチャーズ」が出展だ。
公式で明言されてはいないが、両作品は「よく似た並行世界」であるとファンからは認識されている。
なぜなら前者は「遊戯王原作と繋がった世界」であるのに対し、後者が「遊戯王の物語がフィクションである世界」だからである。
ゆえに「ストラクチャーズ」世界の月子からは、主催者として姿を見せた乃亜は「乃亜のコスプレをした何者か」という認識になってしまうのだ。
「それにしても、なんで乃亜なんて微妙なポジションのキャラなのかしら……。
深い理由があるのかもしれないけど……。さすがに初代のアニメはちゃんと見てないのよね……」
思考を巡らしつつ、月子は店の外に出る。
その瞬間、彼女は自分の警戒心のなさを後悔することになる。
店のすぐそばに、偶然他の参加者がいたのだ。
しかもその手には、ナイフらしき刃物が握られている。
(しまった、こっちは何の武器も……)
慌ててランドセルに手を伸ばそうとする月子だったが、その前にナイフが彼女の眼前に突きつけられる。
「動かないで。私は殺し合いをやるつもりはないわ。
そっちに敵意がないなら、私もあんたを傷つけない」
月子にそう宣告する少女は、野球のユニフォームを身に纏っていた。
気の強そうなその顔立ちには、わずかに汗が浮かんでいる。
「私も殺し合いに乗るつもりはないわ。
もちろん、あなたを傷つけるつもりもない。
だから、このナイフをどけてほしいのだけれど」
毅然とした態度で、月子は言い放つ。
ユニフォームの少女は数秒ほど沈黙していたが、その後観念したようにナイフをおろした。
「オーケー、信用するわ。
しかしあんた、たいした度胸ね。
刃物突きつけられて、焦りもしないなんて」
「ただの虚勢よ。それに、あなたが殺し合いに乗ってないっていうのは本当だと思ったから。
乗っているなら、わざわざこんなことせずに無言で刺すでしょ?」
「まあ、それもそうね」
ユニフォームの少女は、一歩下がって苦笑いを浮かべる。
「どう? お互い殺し合いをやるつもりがないなら、とりあえず組まない?
一人よりは二人の方が安全でしょ?」
「それはそうだけど……」
「ああ、先に自己紹介するべきかしら?
私は、橘みずき。見ての通り、シニアで野球やってるわ」
「私はライト……いえ、ここは本名で名乗るべきね。
黒田月子よ」
「何? 芸名?
タレントでもやってるの?」
名前を言い直した月子に、みずきは怪訝な表情を浮かべる。
「そういうわけじゃないわ。あだ名みたいなものよ。
デュエルモンスターズの界隈でのね」
「デュエルモンスターズ……っていうと、カードゲームの?
ごめん、私は詳しくないのよね。
クラスメイトがやってるのを見たことあるくらいで」
「そう……」
どうやら、全ての参加者がデュエルモンスターズに詳しいわけではないらしい。
とはいえ、みずきが少数派という可能性もある。
月子は、自分の推測を完全には捨てないでおく。
「……っと、話がそれたわね。
それで、どう? 組んでもらえるかしら?」
「ええ、いいわ。私一人では、できることなんてたかがしれているもの。
お世話になるわ、橘さん」
「オッケー! よろしく!」
嬉しそうに、月子の手を取るみずき。
だがその直後、彼女は何かに気づいたような表情を浮かべる。
「そうだ、いちおうあれ聞いておかないと」
「何かしら?」
「なんか私の荷物に、私に似た女の子が描かれたカードがあったのよ。
気味が悪いから、すぐにしまっちゃったんだけど……。
あれ、デュエルモンスターズのカードだったかも」
そういいながら、みずきは自分のランドセルをあさる。
そして、1枚のカードを取り出した。
「これこれ。見たことある?」
みずきの持つカード。そこには「パワプロ・レディ三姉妹」という名前が記されていた。
「ハーピィ・レディ……じゃない? 何かしら、このカード……」
未知のカードを前に、月子は首をひねるしかなかった。
【ライト月子@遊戯王OCGストラクチャーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:主催者は許さない。知り合いも参加させられていたら、もっと許さない。
1:私の知らないカード……?
[備考]
※参戦時期は中学生編と高校生編の間。
【橘みずき@パワフルプロ野球2022】
[状態]健康
[装備]アサシンダガー@ドラゴンクエストシリーズ
[道具]基本支給品、「パワプロ・レディ三姉妹」@遊戯王OCG、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:生き残る。
[備考]
※サクセスモード「パワフル高校ライバルズ あかつき黄金世代編」からの参戦です。
※コラボの関係でデュエルモンスターズを知っていますが、具体的な知識はほぼありません。
【アサシンダガー@ドラゴンクエストシリーズ】
暗殺者が用いる短剣。
低確率で急所に当たり、敵を即死させることができる。
【「パワプロ・レディ三姉妹」@遊戯王OCG】
攻撃力1950 守備力2100
パワプロと遊戯王のコラボによって作成されたカード。
「早川あおい」「橘みずき」「六道聖」というパワプロの女性選手を代表する3人がモチーフになっている。
なおパワプロファンの間でも彼女たちが「パワプロ3姉妹」と呼ばれることがあるが、ユニット名のようなものであり血縁関係はない。
また、フレーバーテキストはメタ情報を含むため一部削除されている。
投下終了です
◆5qNTbURcuUさんへ
以下の作品についてご報告させてください。
「ハーマイオニー・グレンジャーと呪いの子」
こちらの状態表にあったグレーテルという表記を、wiki収録時にヘンゼルへと勝手ながら修正致しました。
地の文にもはっきりとヘンゼルと描写されていましたし、改稿など一切してませんので大丈夫かと思いますが、こちらのレスを読んで頂けましたらご確認お願いします。
最後にご報告が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
>>827
ヘンゼル表記で問題ありません
お手数をおかけいたしました
投下します。
また現在公開中の映画「劇場版プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第3章」の内容の一部ネタバレが含まれていますので、
ネタバレを見たくない人は閲覧に注意してください。
「うう……オリヴィア……シャーロットお姉様……ここは一体何処なの……?」
殺し合いの舞台の何処か、腰まで届く長さの金髪のロングヘアに上が白、下が青に分けられた優雅な服装をした幼い少女が自らの姉と信頼する従者の名前を呼びながら、一人寂しくトボトボと歩いていた。
彼女の名はメアリー、彼女は彼女の元いた世界において世界の三分の一を植民地下においている覇権国家「アルビオン王国」において王位継承権第一位の座にいる王女である。
とは言っても彼女も最初から一位の座にいたわけではなく、元々一位の座には彼女の兄であるエドワードがいたのだが、彼は少し前に何者かの手によって殺害され、その結果二位であった彼女が繰り上がる形で一位の座に就いたという経緯があった。
だがそれからが彼女にとって受難の日々の始まりでもあった。前述のように一位の座にいたエドワードが殺害されたことで王族に対してすら強い発言力を持つ内務卿のノルマンディー公の「彼女を次期女王に相応しい教養を身につけさせる」という判断により、家庭教師の増員、及び勉強や礼儀作法の習得、及び王女としての事務作業の増加などによる過密スケジュールにより、彼女の自由時間は僅かな休憩を除いて殆ど失われてしまっており、一度だけそれに耐えかねて休憩時間の隙をついて窓から逃げ出そうとしたのだが、所詮は幼い子供のとった短絡的な行動、直ぐに発見された上に転落しそうになり、その時は自身の専属メイドであるドロシア……後で正体がチーム白鳩のメンバーであるドロシーが王室に侵入するための偽りの姿であることを知ったのだが……によって救出されたものの、自身の行為に激昂した家庭教師のピーブルスによって体罰を加えられた上に罰として休憩時間すら奪われてしまい、その後移動中に襲撃され大怪我を負ったことをきっかけに自身の身を案じてくれた姉のシャーロットと彼女の所属するスパイチームのメンバーであるチーム白鳩のメンバー、アンジェ、ドロシー、ベアトリス、ちせの5人の手引きによって信頼する従者のオリヴィアと共に隣国の共和国に亡命しようとしたものの、その行動を読んでいたノルマンディー公が手引きした兵士たちによりチーム白鳩のメンバーとオリヴィアと共に取り押さえられてしまい亡命失敗、無理矢理連れ戻されてしまったのだ。
「もういや……私は女王になんてなりたくないのに……何で私ばっかりこんな目に……」
彼女は王位継承権こそ一位の次期女王候補なものの、本質的な所はまだ幼い子供であり、子供らしく自由に遊んだり気ままに生きたいという強い気持ちがあった。だが事態はそれを許してはくれなかった。
現女王である祖母は高齢化により最近体調を崩し「もう先は長くない」と国中で噂されているレベルにまで体調は悪化しており、それに加えて元一位のエドワードの死亡、更に先ほどの亡命失敗の一件で姉のシャーロットがスパイであることがノルマンディー公にバレてしまい、同時期に兄のリチャード王子がエドワード殺害を首謀したという疑いで牢獄送りとなり、二人の王位継承権が実質剥奪されたことで自身が次期女王となることがますます確固たるものとなってしまっていた。それに加えて亡命を企てたことで自身に架せられた過密スケジュールや監視体制は今まで以上により苛烈かつ強固なものとなってしまっていたのだ。
自身はリチャード王子や亡命を手引きした罪で牢獄送りとなったチーム白鳩のメンバーやオリヴィアと違い、物理的に牢屋に入れられているわけではない。
しかし彼女にとっては亡命失敗後の生活は彼女たちと同様、牢屋に入れれられている囚人と何も変わらないと感じていた。
部屋の中も外も王宮の兵士たちによってがっちり固められ、逃げ出す隙は一切無い上にピーブルスを始めとした家庭教師たちによって厳しい教育が課せられ、少しでも反抗すれば体罰など当たり前のように加えられる……そんな地獄のような毎日を日々過ごしていた。
加えて自身のスケジュールの決定権はノルマンディー公に全権が委ねられ自身に一切の決定権はなく、唯一の心の拠り所であったオリヴィアも現在では亡命失敗の一件で牢屋行き、姉のシャーロットとも会うことは一切許されない。
そんな毎日が続いたことである時、そのあまりの辛さからトイレで激しく嘔吐した事があったのだ。そして嘔吐が収まった後で自身の頭の中にある一文字が浮かんできた。「死にたい」と。
そんな折に「海馬乃亜」と名乗った謎の存在によっていつの間にか殺し合いに参加させられ、現在に至るという訳なのであるが……彼女はこの事態を喜ぶことは全くできなかった。
「人を殺せだなんて……そんなこと出来るわけないし……私はチーム白鳩みたいに戦えないし……一体どうしたらいいの……」
そう、彼女は姉のシャーロット……「プリンセス」と彼女のチームメイトであるチーム白鳩の面々と違い、スパイでも何でもないただの一般人でありそれに加えてチーム白鳩のメンバーたちと違って人を殺す覚悟も技術も一切身につけておらず、王国と違って自身を警護してくれる兵士も工作員も一切いない場所に単身一人で放り出された所で何をすればいいか分からず途方に暮れるのは至極当然のことであった。
ただ、元の世界に帰りたくないという気持ちはありつつも、何もせずにただ黙って殺されるような覚悟も持ち合わせていなかったため、取り敢えず当てもなく歩くことにし、今に至るのであった。
やがて歩いているとメアリーの目の前に彼女の常識では考えられないような存在が現れ、メアリーは思わず腰を抜かしてしまう。
「ひぃ……で、でっかい蟲……い、いやあ……お願い……どっか行って……」
彼女の目の前に現れたのは一匹の虫であった。大きさはメアリーの半分くらい、丸い大きな頭部に丸い大きな目、黄色い嘴のような口を持ち、手が4つ、足が2つの合計6つの手足を持ち、紅い4枚の翅と触角を持つ蝶々のような見た目をした虫であった。
「だ、大丈夫よ……私は貴女に危害を加えたりしないから……だから安心して……」
「え?……しゃ、喋ったあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そう、蝶々の名はちびモスラ、怪獣島で双子の小美人と共に暮らすちびゴジラの仲間の怪獣の中の一匹であり、少し前に新しく怪獣島にやってきたちびメカゴジラとの挨拶を済ませた後、気が付いたらいつの間にかこの殺し合いに巻き込まれていたのだ。
彼女は怪獣だが本家モスラ同様大人しくて引っ込み思案でシャイな性格なものの、優しくて心優しい一面も持っており、人間に対して積極的に危害を加えるつもりはなかった。
だがメアリーは「異常な大きさの巨大な虫が人間の言葉を喋って話しかけてくる」という非現実的な状況から、彼女の言葉を信じることが出来ず、涙目になりただ後ずさる事しか出来なかった。
「い、いやあ……襲われる……食われる……お願いだからどっか行って……」
「だ、大丈夫よ、そんなことしないから……私は貴女の味方だから……お願いだから信じて……」
尻餅をついた状態でただ後ずさる事しか出来ないメアリーと、何とか自身が味方であることを信じてもらおうと、一歩ずつメアリーに近づいていくちびモスラ、そんな状況が続くかと思われた時であった。
突如として何者かがメアリーとちびモスラの間に割って入るような形で現れ、ちびモスラの前に立ちふさがり、メアリーを守るような形でちびモスラと対峙する。
現れたのは一人の少女であった。外見年齢はメアリーとさほど変わらない位。腰まで届く位の長さの白いロングヘアに色白の肌、着ているワンピースや靴や髪飾りなど全てが白色で統一されていて、まさに「白の少女」と呼ぶに相応しい純白の少女であった。
彼女の名前はリリィ、突如として降り始めた「死の雨」によって発生した化物「穢者」たちによって滅んだ「果ての国」の唯一の生き残りであり、穢者を浄化する能力を持つ「白巫女」の4代目でもあり、幼い身でありながらも穢者の救済と滅びた王国の謎を解き明かすため自らに味方してくれる穢者達の力を借りながら戦い続けていたのであるが、その最中に突如として今回の殺し合いに巻き込まれ、他の参加者を探していた最中にメアリーとちびモスラを発見し、メアリーが襲われていると判断して乱入してきたのであった。
「……」
彼女は永い眠りの中で記憶を失っており言葉を喋ることも出来なくなっているのであるが、それでも自らの意思や感情等はキチンと持ち合わせており、ハッキリとした敵意の込めた目でちびモスラを睨みつける。
「ち……違うの……私はただこの子と仲良くなろうと……お願いだからそんな目で見るのはやめて……」
ちびモスラは優しい性格であるが引っ込み思案な所もあり、基本的には友人である小美人の二人が彼女の代わりに話すことが多いのであるが、二人は性格に難がある部分があり、彼女の意に反してあることないことを勝手に吹聴し、相手を不快にさせたり誤解を抱かせるような言動を頻繁に繰り返すため、彼女自身も内心二人の言動には困り果てていたのであるが、やはり引っ込み思案で口下手な彼女にとっては二人の存在は必要不可欠であり、そのため二人と無理やり引き剥がされ一匹で相手と応対するのは未だに苦手な部分もあったのであった。
やがてリリィが合図するかのように手を挙げると彼女の傍らに一人の女性が現れる。
現れたのは異形の女性であった。外見は典型的な魔女を彷彿とさせるが全身がボロボロで朽ち果てており、手に持った杖もまるで枯れ枝を彷彿させる形状とまさに「死者」と呼ぶに相応しいようなそんな印象を抱かせる見た目をした女性であった。
彼女の名は「黒の魔女 イレイェン」、かつて王国の魔術協会において若くして天才と持て囃された魔女であり、リリィの先代巫女「フリーティア」の親友でもあったのだが、死の雨によって穢者と化し、魔術協会の跡地の最奥でリリィを待ち受けていたのであるが、死闘の末に敗れ、リリィによって浄化されたことで彼女の力となり共に戦う事を選択した存在でもあり、リリィが乃亜によって今回の殺し合いに参加させられた際に大半の穢れの魂を没収されたのであるが、支給品という形で唯一彼女に渡された穢れの魂であった。
やがてイレイェンは杖を振り上げると杖の先から赤黒い魔力弾が形成され、ちびモスラを攻撃しようとする。
「やめて……どうしてそんなことするの……もうやめてぇ!!」
完全に信用してもらえず、あまつさえ攻撃されそうになったことでちびモスラは悲しさのあまり遂に泣き出してしまう。
それを見てあまりに不憫に思ったメアリーはリリィの服の裾を掴んでリリィに話しかける。
「もういいの……もうあの蝶々さんが悪い子じゃないことは分かったから……可哀想だからやめてあげて……」
「……」
リリィとて数多くの穢者と戦ってきたのではあるが、だからといって罪もない相手にまで手をあげるような考え方はしていない。
メアリーの意思をリリィが汲み取るとリリィはイレイェンに攻撃をやめるよう合図を出し、イレイェンはそれに従い姿を消す。
そしてリリィは未だ泣いているちびモスラに近づくと彼女の頭をゆっくりとなで、彼女を落ち着かせるとリリィはメアリーとちびモスラの二人を連れ、湖近くの洞窟まで一旦移動する事になった……。
◆◆◆
「ねえねえ、怪獣島とか果ての国って色んなものがあるんでしょ?どんなものがあるかもっと色々聞かせて!」
「わ……分かったから……そうグイグイくるのはやめて……」
洞窟で3人で焚き火を囲みながら、メアリーはリリィとちびモスラから怪獣島や果ての国ことを好奇心旺盛な感じで色々と聞き出していた。因みにリリィは喋れないため、テレパシーを使えるちびモスラが彼女からテレパシーを使って聞き出したことを彼女の代弁役としてメアリーに伝えていた。
ちびモスラが言うには怪獣島にはちびゴジラを始めとしてちびギドラ、ちびラドン、ちびアンギラス、ちびビオランテ、ちびヘドラなどの多くの仲間が彼女と共に暮らしており、最近になって島に漂流してきたちびメカゴジラという新しい仲間が加わって少し前にちびゴジラが彼を連れて自身の所を訪れ、お互い自己紹介を済ませた少し後にこの殺し合いに巻き込まれたという事をメアリーは興味津々と言った感じでちびモスラからそれらの話を聞いた。
そしてリリィは地下室で一人目覚めた後、最初に仲間になった魂である黒衣の騎士と共に教会の地下、廃村、魔術協会の跡地などを道中で仲間にした穢れの魂と共に襲いかかって来る穢者達と戦いながら探索していき、魔術協会の最奥部で待ち構えていたイレイェンとの死闘を制した後、彼女を仲間にした少し後で今回の殺し合いに巻き込まれたという事をリリィの代弁者として話してくれたちびモスラからメアリーはそれらの冒険談を目を輝かせながら聞いていた。
「……いいなあ。二人とも友達がいっぱいいて自由に色んな所を冒険して……私にはそんなもの無縁だから……」
「?……そう言えば聞いてなかったけど貴女は殺し合いに呼ばれる前は一体どんな生活を送ってきたの?」
「……うん、実はね……」
自分たちの体験をあれこれ聞いてくるメアリーの態度に疑問を持ったのか、ちびモスラはメアリーの元の世界での立場や生活がどんなものなのか聞いてみると、メアリーは寂しそうな感じで自らの経歴を二人に話し出す。
彼女の元いた世界では聖アルビオン王国という国が覇権を握っており、自身は王国の王女として生をうけたこと。兄エドワードが殺されたことで自身が王位継承権一位になってしまい幼い身でありながら次期女王としての期待と責任を一身に負ってしまいそれから自由の殆どない辛い毎日を送ってきたこと。
あまりの辛さから逃げ出そうとしたものの失敗したり移動中に襲撃犯に襲われ命は助かったものの重傷を負ってしまったこと。
それを見かねた姉のシャーロットが自身の仲間であるスパイチームのチーム白鳩のメンバーと共に自身を従者であるオリヴィアと共に国外に亡命させようと決死の脱出劇を企てたものの、それを読んでいたノルマンディー公の指示を受けた兵士たちによってチーム白鳩のメンバーと共に取り押さえられてしまい、シャーロット以外のチーム白鳩のメンバーは投獄、シャーロットもスパイであることがバレてしまい、更に同時期に王族であるリチャード王子がエドワード殺害の容疑で投獄されてしまいそれらの要因が一挙に重なったことで自身が次期女王にならなければならないという責任が増した事、それに亡命を企てた事も合わさって今まで以上の厳しいスケジュールと体罰が当たり前のように行われる苛烈な教育、二度と逃げ出せないよう兵士たちによって厳重に監視された自由のない日々によって精神が限界に達しかけた所、今回の殺し合いに巻き込まれたという事をメアリーはリリィとちびモスラの二人に語りつくした。
「そう……そんなことがあったの……」
「……」
「私は……私は女王になんてなりたくないのに……ただ普通の年頃の女の子として過ごしたいのに……何で私だけこんな目に……」
メアリーは涙目になりながら自身の境遇を呪い、それをリリィとちびモスラの二人は心配しながら見つめていた。
ちびモスラは普段は小美人と共にアイライナーやマスカラなど色んなお化粧をしたり、二人と一緒に女子会をしたり、小美人だけでなく他の怪獣島の仲間と遊んだりするなど彼女なりに普通の女の子らしい生活を送ってきた。
「僕はお父さんみたいな立派な怪獣王になるぞ!」と日々言っているちびゴジラでさえ、特に気負いし過ぎたり厳しいスケジュールなどを自身に課したりするような無茶をしたりすることはなく、彼なりに自由に過ごしていることを同じ怪獣島の仲間であるちびモスラは知っていた。
リリィも確かに穢者達の蔓延る厳しい環境に幼い身でありながら一人放り出された身ではあるが、彼女なりに厳しい環境で一人生き抜くため、そして白巫女として穢者達を救うために一人戦い抜くことを自分の意思で決めており、黒衣の騎士を始め自分を助けてくれる魂達も彼女を温かく見守りつつ、彼女の意思を尊重して穢者達との戦いを最大限支援してくれたし、彼女自身も決して無理や無茶をせず自分のペースで戦闘や探索を進めていた。
それに怪獣であるちびモスラや白巫女であるリリィはともかく、メアリーは王女かつ次期女王であっても根は普通の幼い女の子である。状況が状況とは言えそんな女の子に無茶なスケジュールや厳しい教育、自由の無い生活はハッキリ言って苦痛以外の何者でもなく、更に彼女自身に女王になる覚悟も意思もない以上、いずれ身体と心に限界が来ることは火を見るよりも明らかであった。
そんな中で今回の殺し合いに呼ばれた事で、殺し合いの中でどうしたらいいか分からないという不安な気持ちと、望まぬ形とはいえ自由のない生活から一時的とはいえ解放されたという安堵の気持ちが入り混じったような複雑な感情がメアリーの中に渦巻いていた。
それに本家モスラ同様、毒鱗粉などの戦闘手段を持つちびモスラや、高い身体能力と戦いの中で培った戦闘のセンスや状況判断能力、自らの代わりに攻撃してくれる穢れの魂を従えているリリィと異なり、彼女自身は全く戦う力を持たないただの一般人である。
彼女の境遇をあまりに不憫に思った事と、戦う力を持たない少女を守ってあげたいという気持ちが二人の間に生まれたのか、リリィはただ黙ってメアリーの頭を撫で、ちびモスラは落ち込むメアリーに語り掛ける。
「大丈夫よ、私だって怪獣の端くれなんだから貴女を守って戦う事くらい出来るわ。それにお母さんも人間のために身体を張って色んな怪獣たちと戦ってきたんだから私だってお母さんのように誰かを守るために戦いたい、そう思ったのよ。」
そう、彼女の母……本家モスラは怪獣でありながら人間のためにこれまで様々な敵と戦ってきており、あの怪獣王ゴジラを始め、デスギドラ、ダガーラ、キングギドラやガイガンなど人類の脅威となる様々な怪獣と戦ってきた彼女にとっては怪獣としても偉大な先輩でもあるため、そんな母を見習い、人間のために戦ってみたいと彼女も思ったのだ。
「え……いいの……?こんな会ったばかりの見ず知らずの私のために……」
「お母さんだっていつだって見ず知らずの人間のために今まで戦ってきたわ。それに貴女の事を知ったらほっとけなくなっちゃって。私とリリィがチーム白鳩のメンバーの代わりになるか分からないけどせめて今だけでも友達として貴女を守らせてちょうだい。」
リリィは何も言わず、ただ黙ってちびモスラの言葉に頷く。その二人の言葉と態度にメアリーの目から思わず涙がこぼれてしまう。彼女の周りの人物で自分と対等に接してくれたのは姉のシャーロット位なものでオリヴィアやノルマンディー公など自身の周りの人物は接し方の違いこそあれど自身の事を「メアリー」としてではなく、「王位継承権一位の王女で未来の次期女王」としてしか見てくれなかった。あのチーム白鳩のメンバーでさえシャーロット以外の面々はベアトリスは姉の従者として何度か面識はあったものの、王女と王族の従者という立場の違いから積極的にお互い絡む事はなく、態度にもどこか壁のようなものを感じてしまった所があるし、他の三人も所詮「任務における護送対象」としてしか自身を見てくれず関係もどこかビジネスライク的な関係止まりにしか感じられなかった。
確かにここは聖アルビオン王国ではないし、王国と全く無関係な彼女たちにとって自分は王女ではなくただの一般人の少女でしかないとはいえ、姉以外の人物でここまで対等な目線で自身に接してくれた存在に会ったのは初めてなため、メアリーは涙ぐみながらリリィの肩に手を掛ける。
「ありがとう……私の友達になってくれてその上私を守ってくれるなんて……」
「いいのよ。それじゃあ友達の証として私の支給品の中にカメラがあったから私が撮影してあげるから二人で並んで頂戴。」
そう言うとちびモスラは自身のランドセルの中から自身に支給された正方形の形をしたピンク色のカメラを取り出し、4つの手でカメラを器用に構えると写真撮影のために並んだメアリーとリリィの二人をファインダーの中に入れ、シャッターを切る。
……だがちびモスラが自身に支給されたカメラをただのカメラだと思い、説明書をちゃんと読んでいなかったのが悲劇の始まりでもあった。
彼女に支給されたカメラはただのカメラではなく、正式名称は「着せかえカメラ」という名前のカメラでこのカメラは写真撮影用のカメラではなく、専用の挿入口に相手に着せたい服の絵や写真を挿入し、相手に標準を合わせて撮ることで相手に挿入した絵や写真の服を着させることが出来る道具である。
……だが挿入口の中に絵や写真が入っていない状態で相手を撮った場合、ある隠された効果が発揮されてしまう一面もあった。
そしてちびモスラに支給されたのは着せかえカメラ「だけ」であり、挿入口の中には絵や写真は一切入っていない。
その状態でちびモスラがメアリーとリリィを被写体として撮ったことでカメラの隠された効果が二人に発動してしまった。
パシャ
なんとカメラで撮られた二人の服や下着等身につけていた衣服は全て消失し、二人は一糸纏わぬ全裸になってしまう。
「……?」
リリィは記憶と共に常識や羞恥心等を全て忘れてしまったためか、自身の身体の異変に気付いてもただ「なんかスースーする」みたいな感じで不思議そうな顔をしていただけであったが、メアリーの方は当然そういうわけにはいかなかった。
自身の身体の異変に気付くと彼女の顔はみるみる赤くなっていき、その直後普段は大人しい彼女からは想像も出来ないような絶叫を響かせていた。
「いや……イヤアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
◆◆◆
「うう……死にたい……」
「うっ……うっ……ごめんなさい……二人とも本当にごめんなさい……」
不可抗力とはいえ、自らの過失で二人を全裸にしてしまった事に対する後悔と懺悔の気持ちから、ちびモスラは再び泣き出してしまい、リリィは「気にしてないよ」といった感じの表情でそんなちびモスラの頭を優しく撫でる。
因みにちびモスラが二人に服を貸してあげることは当然ながら出来なかった。そもそもちびモスラは怪獣である。人間ではない怪獣である以上、当然彼女はそもそも最初から服は着ていない。そして自身の支給品を探しても服の類等は支給されておらず、それはメアリーとリリィ、二人の支給品にも同じことが言えるのであった。
だが最初はただ恥ずかしさからうずくまっていただけのメアリーの中に、羞恥心とは別のある一つの感情が芽生え始めていた。そもそも彼女は聖アルビオン王国の王室の一員として生を受けてから、今まで「王室の一員として恥じない人間となれ!」と今まで厳しくしつけられてきた。それでもまだ王位継承権二位だった頃はそこまで厳しすぎるものではなく、まだ耐えることは出来たのであるが、今まで一位であった兄エドワードが何者かの手によって殺害され、繰り上がる形で自身が王位継承権一位となり、次期女王と見なされてからは「彼女をより女王として相応しい人間にしなければいけない」と判断した内務卿のノルマンディー公の判断によりそれはより苛烈なものへと変貌し、僅かな休憩時間を除けば自身の時間の殆どは勉強や礼儀作法の講義、王女としての公務などに割り当てられる過密なスケジュールを強いられ、自由な時間は殆ど与えられず、それに耐えかねて逃げ出す事に失敗してからは僅かな休憩時間すらなくなり、少しでも反抗しようものなら体罰を加えられる、そんな辛い日々を過ごしてきた。
そしてそれを見かねた姉シャーロットが所属するスパイチーム「チーム白鳩」の協力を得て国外に亡命しようとして失敗し、再び国内に連れ戻されてからは姉シャーロットがスパイだとバレたこと、兄のリチャード王子がエドワード殺害の容疑で投獄された事も重なり、より苛烈で辛い日々を送る羽目となり、二度と逃げ出せないように部屋の中も外も見張りや監視のための兵士たちで固められ、ノルマンディー公の決めた自由のない過密なスケジュールとピーブルスを始めとした家庭教師達による厳しい教育、そして少しでも反抗すれば体罰など当たり前に加えられる、そんな自由や子供らしさとは一切無縁な、見えない鎖で全身を縛られたような地獄のような日々を彼女は過ごしてきた。
そしてそれらの日々を思い出したことによって腹立たしさを感じた事、全裸で野外にいるという今までの生活では絶対に不可能な状態に自身が置かれたことから、彼女の中で何かが吹っ切れたのを感じ、それと共に彼女の中から羞恥心はどんどん消えていくのを感じていた。
「……そうよ!今ここにいるのは「聖アルビオン王国の王女で次期女王のメアリー」じゃなくてただのメアリーだわ!何で今までそんな簡単な事に気付かなかったのかしら!」
最早完全に開き直ったのか、自身の裸身を全く隠そうともせずにメアリーは立ち上がると、今まで「聖アルビオン王国の王女で次期女王のメアリー」としては絶対に許されない行為をしようと思い立ち、そのまま同じく全裸のリリィの元へ近づく。
「ねえ……キスをして……」
「……」
まず思い立ったのは自身と同じく全裸であり同世代の少女であるリリィとの百合キスであった。何故このような事をしようと思ったのか。それは自身に次期女王としての生き方を強要し、自らの自由を全て奪ったノルマンディー公に対する彼女なりの精一杯の反抗の気持ちの現れであった。
そもそも彼女は王位継承権一位の次期女王であるが、彼女は女王になりたいとは全く思っておらず、本音を言えば女王にはなりたくないとさえ思っていた。
そもそも彼女は兄のリチャード王子のような野心も姉のシャーロット王女のような「自分が女王になったらこの国をより良くしたい」という信念も全く持ち合わせてはいない。
所詮彼女は継承権の順位が彼ら二人よりも高いだけの、根は普通の幼い少女であった。だが不幸にも彼女は彼ら二人よりも継承権の順位が高かったばかりに次期女王に選ばれてしまい、ノルマンディー公に目を付けられ、自由の無いがんじがらめの生活を送る羽目になってしまった。
だからノルマンディー公の方針である「次期女王に相応しい教養を身につけた女性」とは全く真逆の行為をすることで、自身が女王になる気が全くないという事と、ノルマンディー公の思い通りにはならないという自らの意思表示がこの行為に込められていた。
「……」
メアリーの誘いの真意を悟ったのか、リリィは何も語らずただ黙って頷くと、そのままメアリーの裸の身体に抱きつき、お互い裸の身体を重ね合わせる。
そしてそのままお互いの小さな唇を重ね合わせ、百合のキスをし始めた。
曲がりなりにも王国の次期女王である王女が全裸で同世代の同じく全裸の少女と裸で抱き合い、そして百合のキスをし始める。そんな光景をメアリーを知る者が見たら、どのような反応を示すであろう。
恐らくピーブルスは白目を剥いて泡を吹いて卒倒し、ノルマンディー公は頭を抱えるに違いない。でもそれで良かった。むしろそうなってくれた方がいいとさえメアリーは考えていた。そもそもメアリーは女王になんてなりたくないのだ。ノルマンディー公に強いられた厳しいスケジュールも、ピーブルスによって加えられる体罰も、全ては望んでもいないのに次期女王の座に据えられ、その結果として自分に降りかかってきたに過ぎない。
だからノルマンディー公がメアリーに求めた「次期女王に相応しい教養を身につけた女性」とは全く真逆の、欲望と快楽に任せたこの行為はメアリーの今この場にいないノルマンディー公に対する反抗そのものであったのだ。
「んっ……あっ……」
「……♡」
メアリーとリリィは暫く裸で抱き合いながらキスをしていたが、やがて満足すると二人は離れ、次にメアリーは地面に身体を投げ出し、ちびモスラに声を掛ける。
「ねえ……私を好きにして……」
「……?」
ちびモスラは二人が特に気にしていない事に気付いたのか、既に泣き止んでおり最初はメアリーの言葉の真意を測りかねていたが、やがてメアリーの言葉の意図に気付くと、メアリーに事前確認をとる。
「……本当にいいの?」
「……うん……いいの……私は女王になんてなりたくないから……今まで出来なかった分好き勝手やりたくなっちゃったから……だからお願い……私を好きにして……」
「……本当にいいのね?」
ちびモスラはメアリーに最後通告をし、メアリーがそれに頷くと、ちびモスラは手足をメアリーの裸体にのばし……
「そーれ、こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!」
「うふふ、あーっははは!!!くくく、あはははっはははっはああぁぁ!!!!!」
ちびモスラは6本の手足を器用に使い、メアリーの裸体をくすぐり始め、全身の敏感な所を直にくすぐられたことでメアリーは狂ったような笑い声をあげる。
今のメアリーの笑い声は今まで王室で王女として過ごしていた頃にはあげたことが無かった、いや、そもそもあげることも許されなかったであろう、それほどまでに狂った笑い声をメアリーはあげていた。
ちびモスラは6本の手足を使って、それぞれメアリーの腋、乳首、腰などを器用にくすぐり、メアリーは尚も笑い続ける。
「あひゃひゃひゃひゃ!!!ひひひひひひ!!!あははははははっ!!!!」
やがてリリィも面白そうと思ったのか、くすぐりに参加するとまだくすぐられていない部位……メアリーの足の裏に手を伸ばし、加勢するようにくすぐり始める。
「やぁははははっ!!だっ、やめ、やっ、やぁ…っぁはははははは!」
口では「やめて」とは言ってもメアリーはまだやめてもらうつもりはなかった。……例え自らの下腹部に違和感を感じていたとしても。
「ひっ、は、あああっあはははははは!!くしゅっ、くしゅぐったいいいいいい!あははははは!た、たのしい、きもちいいいやはははっはははははははは!!」
王室で厳しい教育を強いられ、自由を許されなかった頃には絶対味わうことが出来なかった快感と気持ちよさを感じながらメアリーはちびモスラとリリィにくすぐられ続けていたのであるが、やがて彼女の下腹部にもとうとう限界が訪れていたのであった。
プシャアアアアアアア
メアリーの股間の割れ目から黄色い大量の液体……つまりおしっこが大量に噴き出す。つまり彼女は全裸で盛大にお漏らしをしてしまったのだ。
この事態に流石にちびモスラとリリィはくすぐるのをやめ、その場から離れてメアリーの様子を見る。
だがメアリーの目からは羞恥……ではなく歓喜の涙が彼女の目から溢れていた。
「ははは……あははははははは!!やったわ!とうとう一線を越えてやったわ!この事をおじさま……いや、ノルマンディー公が知ったらアイツは一体どんな顔をするのかしら!!」
エドワード王子が死に、リチャード王子が殺人の容疑で逮捕、投獄され、シャーロット王女が共和国のスパイであることが明るみになった……そんな今の状態で実質唯一の王位継承権の持ち主であるメアリーが全裸で同世代の女の子と抱き合ってキスをし、巨大な蟲に全身をくすぐられて笑い転げ挙句の果てに盛大に小便を漏らす……そんなことが今の聖アルビオン王国の国民全てに知れ渡ったとしたら一体どうなるのであろうか?
恐らく王国始まって以来の一大スキャンダルとなるであろう。下手したら王国や王室の存続そのものが危ぶまれかねないような、それほどの事態にまで発展しかねないことは想像に難くない。
だがメアリーにとってはそうなっても構わない、いやむしろそうなって欲しいとさえ考えていた。
メアリーは女王になんてなりたくない、ただの年頃の幼い少女らしい振る舞いをしていたかったのだ。だが事態は彼女にそのような振る舞いを許さず、ノルマンディー公の方針によって自由を許されず体罰も当たり前のように加えられるような、そんな辛い毎日を日々送り続けていた。更に野心家のリチャード王子にも自身の存在が目障りだと感じられたのか、刺客を差し向けられ爆弾で重傷を負ったこともあった。だからメアリーは大嫌いだったのだ。自身を見えない鎖でがんじがらめに縛り自由を奪ったノルマンディー公もエドワードだけでなく自身にまで毒牙にかけようとしたリチャード王子も。
唯一姉のシャーロット王女だけは自身に優しくしてくれて甲斐甲斐しく世話をしてくれたことからとても大好きであったのだが、王国の情報を共和国に売ったスパイであるという点だけは賛同することは出来なかった。
確かに自身の行為は普通なら軽蔑されるような事なのかもしれない。でもリチャードやシャーロットがやった殺人やスパイのように他人に迷惑をかけたりするような行為でもない。ただ王国の地から離れた事、着せかえカメラによって全裸になったことから今まで抑えつけられていた枷が外れ、抑えつけられていた全てを吐き出したくなっただけなのだ。
それで女王になれなくなるのであればむしろその方が万々歳なのであった。だってメアリーは女王になんてなりたくないのだから。
やがておしっこが止まり、メアリーは落ち着くとちびモスラに声を掛ける。
「ねえ……お願い、あなたを抱かせて……」
「……え、いいの?」
最初に会った時からは考えられないようなメアリーの頼みに、ちびモスラは最初は驚きを隠せなかったものの、彼女の気持ちを汲み取ったのか彼女に吸い寄せられるように近づき、そのまま彼女に抱き寄せられる。
(モコモコして暖かくて気持ちいい……)
自らの身体に抱いたちびモスラからは、蟲特有の気持ち悪さはなく全身は本家モスラ同様モコモコした毛で覆われており、抱いた時の感覚はぬいぐるみを抱いた時のような温かさと気持ちよさが感じられた。
メアリーはちびモスラを抱きながら以前自身が大切にしていたぬいぐるみの事を思い出す。
メアリーもまだ幼い女の子であるためぬいぐるみ遊びが好きだったのであるが、王位継承権一位になることで増えた勉強や事務作業によって遊ぶ時間が無くなったこと、「下々の者たちと関わってはいけない」というノルマンディー公の決めた方針から自身に送られた手紙諸共大切にしていたぬいぐるみを没収され廃棄処分されて悲しい思いをした事があったのだ。この一件も逃げ出したいと思った強い動機の一つなのであるが、ちびモスラを抱いていると以前ぬいぐるみ遊びをしていた頃の思い出が蘇って「あの頃に戻りたい」という気持ちがより強くなっていくのを感じていた。
「……ねえ、お願いがあるの……」
「……何?」
メアリーの頼みにちびモスラは何をして欲しいのか聞き返すと彼女から意外な言葉が飛び出してくる。
「あなた、空を飛べるんでしょ?お願い、私を空に連れてって。」
「怖くないの?」
「大丈夫よ、私一度だけ空の旅に連れて行ってもらった事があるの。あの時の体験が今でも忘れられなくて……お願い、無理なら無理と諦めるけどもう一度あの空の旅をしたいの。」
そう、メアリーは共和国に亡命しようとした際、姉のシャーロットの友人でチーム白鳩の中心人物であるアンジェと共に、彼女が操るCボールの重力操作の力で空を飛んだことがあったのだ。結局最終的には亡命には失敗して捕えられてしまったものの、空を飛んだ際に今までの束縛から解放されて自由になったような気がしたあの感覚は今でも忘れられず、もう一度空を飛んでみたいと思ったのだ。
メアリーはその旨をちびモスラに伝えると、ちびモスラは真剣な表情となり、彼女に回答を返す。
「……ええ、分かったわ。」
◆◆◆
「うわー!風の流れを直に感じ取れて楽しいわー!」
メアリーはちびモスラの6本の手足で掴まれながら、風の流れを直に感じながら飛んでいた。最も、あまり高高度を飛ぶことは出来ないため低空飛行をする形ではあり、更に胴体を6本の手足で掴まれて荷物のように牽引する形での飛行ではあったが、「またあの時のように風を感じながら空を飛べている」という感覚を楽しんでいる彼女にはそんなことはいちいち気にならなかった。
「どこに連れて行って欲しいの?」
「湖!湖に連れて行って欲しいわ!」
「どこで降ろして欲しい?」
「湖の上!」
「……え?いや、いいけど……あなた、思い切ったこと言うわね。」
メアリーはこの遊びの次は湖で水遊びをするつもりでいた。その事はリリィにも事前に伝えており、彼女には湖の湖畔で待ってもらっている。最初、ちびモスラはメアリーが王女様だという事を聞いて、彼女の事をもっとお上品で極端な話「まあ、こんな下々の遊びなんて下品すぎて嫌ですわ、というかそもそもこんな殺し合いの場に連れてくるなんて不快ですから帰して下さらない?」というような鼻につく性格だと思っていたのだが、彼女はむしろそのような枠組みで束縛されるのは嫌いであり、女王になる意思はなく、それよりももっと子供らしく自由に振る舞いたい、そんな純粋な性格をしていた事を知り、彼女に対する印象が変わったような気がしたのだ。
やがて二人が湖に着くと、ちびモスラはメアリーを湖の岸辺……ではなく、湖の浅瀬の上を着水ギリギリの高度で飛び、そのまま湖の上で手足を離し、メアリーはそのまま水しぶきを挙げて湖にダイブしてしまう。
……やがて少しすると、楽しそうな笑顔でメアリーは湖から顔を出し、待機していたリリィが彼女の近くまで来る。
「……ぷはっ!やっぱり楽しいわ!水泳の授業の時でもこうしてダイブするのは下品だと禁止されていたから!」
そしてメアリーとリリィはそのまま湖の浅瀬でお互い水をかけあいながら水遊びを開始する。
「きゃはは!それそれー!」
「……!」
全裸の少女二人がお互い純粋な笑顔で楽しそうにお互い水をかけあいながら水遊びをする。これが殺し合いの場でなければ見る者によってはとても微笑ましい光景に映ったであろう。やがて暫くすると、リリィはメアリーを制止し、不思議に思ってメアリーがその手を止めると、なんとリリィはその場で湖に飛び込み、湖の中を潜り始める。
「えっ!?ちょ、ちょっと!?」
メアリーは突然のリリィの行動に驚くと同時に心配の気持ちを抱いていた。溺れてしまわないのかと。だがリリィに対してその心配をする必要はなかった。
現在のパートナーである穢れの魂「黒の魔女 イレイェン」によってリリィに与えられた加護に「魔女の泡沫」というものがある。この加護はイレイェンとの死闘を制し、彼女と契約することで得られたもので、効果は「水中の中を溺れることなく自由に泳いだり敵を攻撃したりすることが出来る」というものであり、この加護によってリリィは溺れることなく無制限に水中の中を自由自在に泳いだり必要となればイレイェンを呼んで敵を攻撃したりすることが出来、更に彼女が追加で装備しているレリックである「蝕む魔女の書」の効果により水中での泳ぐスピードもアップしており、全裸で魚をも上回る速度で水中を自由自在に泳ぎ回る今の彼女は正に「裸のマーメイド」と形容するに相応しい姿でもあった。
リリィは全身で水を感じながら、魚を上回る速度で泳ぎながら逃げる魚を追いかけ、捕まえた魚を口に銜えて一つ、両手に二つ持つと、そのまま水面に向かって上昇し、やがて水中から飛び出すとその場にいたメアリーに捕まえた魚を見せびらかす。
その姿を見てメアリーは驚きと安心感と同時に、彼女が自分とは別の世界で異形の存在達と戦ってきた存在であるという事を、改めて実感する事となった……。
そして洞窟に戻ったメアリー、ちびモスラ、リリィの三名は火を起こして付けた焚き火を囲みながら、木の枝に刺して焚き火で焼いた魚を、それぞれ一つずつ食べ始める。
全裸で同世代の少女と抱き合いながらキスをし、人間の半分ほどの大きさの巨大な蟲に全身をくすぐられて笑い転げ挙句の果てに放尿し、更にその蟲を抱いた上に蟲に掴んでもらって空の旅を楽しみ、そのまま全裸で水遊びを楽しんで捕まえて来てもらった魚を焚き火を囲みながら焼いて食べる……。
そんなメアリーの一連の行動はノルマンディー公の求めた「次期女王に相応しい教養を身につけた女性」とは真逆の、まるで野生児みたいな行動であり、ノルマンディー公が彼女の一連の行動を知れば、確実に頭を抱えることになることは火を見るよりも明らかであった。
だがメアリーは女王になる気はないし、それで大嫌いなノルマンディー公が頭を抱える事になるのであれば、むしろざまあみろとさえメアリーは思っている位であった。
「……ん……眠い……。」
だがそんなメアリーにも次第に眠気が襲ってきた。無理もない。メアリーはまだ幼く、更に散々遊んで疲れた事、お魚を食べてお腹が膨れたこと、それらが合わさった結果彼女に強い眠気が襲ってきたのだ。
それを察したのかリリィも堅い岩や地面の上で寝かせるのは不憫だと思い、自身の足を差し出し膝枕の要領で自身の腿の上にメアリーの頭を乗せ、さらにちびモスラもメアリーに近づき、抱き枕の要領でメアリーに自身を抱かせる。
ちびモスラを抱いたメアリーはリリィの膝枕の上で安堵の表情で気持ちよさそうに眠っていた。……だが忘れてはならない。これは殺し合いである。放送が開始され殺し合いが本格的に始まれば禁止エリアが追加され、殺し合いに積極的に乗ったマーダーが獲物を求めて会場をうろつきはじめるかもしれない。彼女たちも本当はその事は分かってはいた。でも今はまだ……放送が始まるまでは元の世界で辛い思いをしてきたメアリーに自由を与えてやりたい。ちびモスラもリリィもそう思い、せめて今だけでも自由と安らぎを与えてあげたいと思ったのだ。だから放送が始まるまではせめて今だけでもメアリーを寝かしてあげたいと思った。
……そう、せめて今だけでも、彼女たちに暫しの休息を……
【メアリー@劇場版プリンセス・プリンシパル Crown Handler】
[状態]:健康、全裸、疲労(小)、睡眠中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺しはしたくない。
1:取り敢えず自由は嬉しい。でもこれから先どうしたらいいか分からない。
2:リリィとちびモスラだけが頼り。彼女たちとずっと一緒にいたい。
3:元の世界に帰るかどうか、今はまだ、分からない。
[備考]
第三章終了後からの参戦です。
【ちびモスラ@ちびゴジラの逆襲】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:きせかえカメラ@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めたい。
1:お母さんである本家モスラみたいにこの子(メアリー)を守ってあげたい。
2:殺し合いには反対。それ以外の方法でこの状況を打破する手段を見つけたい。
3:でもメアリーの命を奪おうとする相手には守るために戦いたい。
[備考]
第3話終了後からの参戦です。
【支給品紹介】
【きせかえカメラ@ドラえもん】
ちびモスラに支給。22世紀の未来で作られたひみつ道具の内の一つで見た目は正方形の形をしたピンク色のカメラ。専用の挿入口の中に服の写真や絵を入れ、対象の人物に向けてシャッターを切ると被写体となった人物にカメラに入っている写真・絵の服を着せることが出来る。ただし何も挿入していない状態で対象を撮影すると被写体となった人物は全裸になってしまう。
【リリィ@ENDER LILIES:Quietus of the Knights】
[状態]:健康、全裸、疲労(小)
[装備]:黒の魔女 イレイェンの魂@ENDER LILIES
[道具]:基本支給品、蝕む魔女の書@ENDER LILIES、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:メアリーを守ってあげたい。
2:殺し合いに巻き込まれた罪なき人たちを助けてあげたい。
3:他にも助けてくれる味方や仲間がいたら合流したい。
[備考]
ステージ3 魔術協会ステージで黒の魔女 イレイェンを倒した後からの参戦です。
【支給品紹介】
【黒の魔女 イレイェンの魂@ENDER LILIES:Quietus of the Knights】
リリィに支給。魔術協会ステージのボス「黒の魔女 イレイェン」を倒し彼女の魂を浄化したことで入手することが出来、装備することで任意で彼女を呼び出し、杖からの魔力弾で攻撃させることが出来る他、彼女の加護である「魔女の泡痒」の恩恵を受けることも出来、恩恵を受けている間、水中を溺れることなく無制限に自由自在に泳ぎ回ることが出来る。
【蝕む魔女の書@ENDER LILIES:Quietus of the Knights】
リリィに支給。見た目は肉腫が生えた不気味な見た目のボロボロの本で装備すると水中での移動速度がアップする効果がある。具体的には本に記された魔女の力を示した結界魔法の力とのこと。
投下終了です。タイトルは書いていませんでしたが、
タイトルは『王女と巫女と蝶々』です。
投下ありがとうございます!!
>ひと狩り行こうぜ!
デカヌちゃんのハンマーって、自作だったんすねあれ……なんか生まれ持った何かだと思ってました。
素材集めに奔走するようですが、全員首輪嵌めてるんでそれを素材認識した場合、実質無差別マーダーになってしまうかもしれませんね。
>うちのメイドがロリすぎる!
ジョージとか居たなあ、原作者すら途中から持て余して実質フェードアウトしたり、アニメでハブられたりかなりのレアキャラだった気がします。こう見えて人一人殺してるんすよこいつ。
ベルちゃんは、このクソガキがただの赤ん坊じゃない事に早く気付くべきだと思うんですけど。普通の赤ちゃんは赤の他人の幼女にママ呼びしないし、オギャるとか言い出さないんですよ。
>ミラクルキュートなサイエンティストの殺人遊戯
灰原二人目もさることながら、静香ちゃんが登場話を突破するだなんて……。
でも近くにフォルテ居るんすよね。彼女の受難はここからかもしれませんね。
>コナミ・レディ・ツインズ
月子からすれば、遊戯が主役のアニメって20年近く前なんですよね。発言に時代の流れを感じますよ……。
パワプロ世界でも、デュエルが流行る辺り流石海馬コーポレーションというべきですか、ブルーアイズやレッドアイズが野球してたのは記憶に新しいですね。
>王女と巫女と蝶々
ちびモスラ良い娘ですねー。虫と言えば年頃の女の子の嫌いなランキング一位と言っても過言ではありませんが、結構可愛い見た目してますし性格の良さから仲良くなれたのは何よりです。
色々しがらみから解き放たれたが故の儀式的な行為でもありますし、少女達の仲が解れていった過程でもあるのですが、ロリ達が途中から結構高度なプレイを始めてしまったのは少し草。とはいえ非常にさわやかなお話でした。
投下いたします。
静寂に包まれた森の中に、一人の男がいた。
その男は見るからに成人しているといった身長をし、また全身の筋肉は弾けんばかりに膨れ上がっていた。
だがそれにもかかわらずその男は子供服のシャツと短パンを着用し、また両足は靴を履いていない素足の状態だった。
更にその顔は大人びているがいわゆる童顔というもので、しかもその目には一切光が宿っていなかった。
そして何よりも目を惹くのはどうやって自立しているのか分からないほどに真っ直ぐ天を衝いた、異様な長さの黒髪だった。
彼の名はゴン=フリークス(12歳)……のはずだが、とてもそうは思えない姿をしていた。
それもそのはず、今この場にいる彼はネフェルピトーを倒すために自身の年齢と能力を強制的に成長させた時の姿、通称『ゴンさん』と呼ばれている時の姿になっているのだ。
そんな彼は今、激しい怒りによってその怒髪を天高く突き立てていた。
彼が何故ここまで怒ってしまっているかというと、その理由はとてもシンプルなものだった。
彼はこの殺し合いそのものに対し怒りを燃やしていた。
遊び半分に命をもてあそび、そして自らに歯向かった少年に対し『彼を引き留めようとした兄』をペナルティとして殺害し絶望させたうえで彼も処刑した海馬乃亜の姿。
ゴンさんはその光景を見たとき、思い出していた。
……そう、自分の恩人にして兄貴分であったカイトの死をネフェルピトーから告げられ、自分のせいでカイトが死んだと思い詰めて茫然自失になったときのことを。
それ故に彼は元から真っ直ぐ天を衝いた髪の毛をより強く、そして天高く突き立てるほどに怒りを燃やしているのだ。
「もう、おやすみ…乃亜」
拳を握り締めた彼は一切表情の見えない顔のまま、そうつぶやいた。
「さいしょはグー……」
すると次の瞬間、まるで爆発でも起こしたかのような轟音と共に木々が吹き飛び、大量の土ぼこりが宙に舞う。
そして森の外へと続く一本の道が出来上がると同時に、そこに立っていたはずのゴンさんの姿が消え去っていた。
それは瞬きすら許さない一瞬の出来事であり、もしそこに人がいたとしても誰も反応することはできなかったであろう出来事だった。
彼は近くにあった木を、ただこぶしを握り締めて全力で殴り飛ばしただけだった。
だが天賦の才を持つものが全てを投げ出してようやく得られる程の力を全身に満ち溢れさせた今の彼はたったそれだけのことでも凄まじい破壊力を起こすことができてしまうのだ。
そして彼は自らが作り出した一本の道を通ることで森を抜け、開けた場所へと歩み出していく。
この身体がいつ限界を迎えるかは分からない。だがそれでもゴンさんは足を止めることは無い。
なぜなら彼は決めたからだ。
『例えどんな姿になろうとも、必ず乃亜を倒す』ということを……。
【ゴンさん@ネットミーム+HUNTER×HUNTER】
[状態]:強制的に成長した姿およびそれに伴う身体の軋み
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本行動方針:もう、おやすみ…乃亜(訳:乃亜を倒す)
1:この身体が限界を迎える前に、乃亜を倒す。
2:もうこれで、終わってもいい。だから、ありったけを。
[備考]
年相応の、『ゴン=フリークス』としての姿には戻れません。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
感想ありがとうございます!
投下します。
「ボクが優勝してピーチママを本当のママにすれば、クッパお父さんは喜ぶよね!」
【クッパJr.@マリオサンシャイン 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝してピーチママを本当のママにする
1:参加者を探して闘う
[備考]
本編クリア後からの参戦です。
ぼくはお姉ちゃんに世界でいちばん好かれたい。
和馬お兄ちゃんよりも。
優勝すればそれが叶う。
あのときは、看守を完全に無力化せずに実力行使が早すぎた。
だから、処刑されちゃった。
だから、今度はじっくりと待つ。
―――あははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは
ははははははははははははははははははは
はははははははははははははははは!!!
お姉ちゃん。
今度は失敗しないから、がんばるからいっぱいほめてね
だから―――
僕をしっかりと守ってね。
アンドレアお兄ちゃん。
【雄ヶ原悠@トガビトノセンリツ 】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:優勝して、お姉ちゃんをずっと守れる力を手に入れる
1:無力な男の子を演じて、機を待つ
2:アンドレアお兄ちゃんと行動を共にする
4:お姉ちゃん お姉ちゃん お姉ちゃん お姉ちゃん お姉ちゃん
[備考]
プリズナ―ゲームで処刑された後からの参戦です。
―――ザクッ
……え?
ザク!ザク!!ザク!!!ザク!!!!
☆彡 ☆彡 ☆彡
幼い顔面に張り付いた狂気まみれの苦悶の表情。
雄ヶ原悠は全身をナイフで滅多刺しにされて死んでいた。
【雄ヶ原悠@トガビトノセンリツ 死亡】
「はぁ……はぁ……はぁ……」
興奮が冷めやらぬのか荒々しい息。
悠を殺した少年は死体を見下ろす。
やがて、耐えきれなくなったのか、嘔吐する。
胃が空になるほど。
ボクはボクはボクはボクはボクはボクはボクは
ボクはボクはボクはボクはボクはボクはボクは
ボクはボクはボクはボクはボクはボクはボクは
ボクはボクはボクはボクはボクはボクはボクは
ボクはボクはボクはボクはボクはボクはボクは
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した
悠を殺した少年の名はアンドレア。
イタリアに住む男の子。
アンドレアは、自らが犯した行為に自己嫌悪する。
☆彡 ☆彡 ☆彡
「はぁ……はぁ……はぁ…………」
ボクは許されないことをしました。
おそらくおじいちゃんと同じ天国にはいけないでしょう。
人を殺すなんてとてもいけないことです。
それでも……ボクは悠を殺しました。
約束したから。
もう一度まる子に会うと。
漫画家になったまる子の写真を撮ると。
だからボクは生きて帰りたいです。
他の皆を殺しててでも……ここで死ぬわけにはいきません。
ですが、もし、まる子。キミがこれに巻き込まれていたら、ボクは君を優勝させて帰らせたいです。
まる子……会いたいです。
♪〜〜♪〜〜♪
「?……何ですか、このメロディーは?」
耳に張り付くメロディーにアンドレアは周囲を見渡す。
すると、悠の手元に何かが置かれているのを発見した。
それは、タバコの箱くらいの、木製らしき厚みのある小さな直方体。
悠が死に際に鳴らしたのだろう。
起死回生の一手に繋がると信じて。
その直方体は音を奏でていた。
―――咎人の旋律
とある蛙のツラが地獄の底で耳にした旋律。
わらべ歌みたいな、無垢な感じ。
宗教音楽みたいな、厳かな感じ。
懐メロみたいな、いつかどこかで聞いた感じ。
なぜか、こわい感じ―――
のろいのおまじない。
「ラ ラ ラ ラ
ラララ 」
アンドレアは無意識に口ずさんでしまう。
旋律を。
「 ラ ラ ラ
ラララ
ラ ラ ラ ラ ラ ラ
ラ ラララ 」
新たな悪夢の始まりを祝福するように……
【アンドレア@映画ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年 】
[状態]:健康
[装備]:ナイフ@トガビトノセンリツ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜5(悠のも含め)
[思考・状況]基本方針:生きて帰る ※まる子が参加者ならばまる子を優勝させて帰らせる
1:参加者を探し、殺す
2:まる子……ボクは……
3: ラ ラ ラ ラ ラララ
4:まる子が参加者にいないことを祈る
[備考]
映画終了後からの参戦です。
オルゴールのセンリツ(トガビトノセンリツ)を覚えました。時折、無意識に口ずさんでしまいます
【ナイフ@トガビトノセンリツ 】
アンドレアに支給されたナイフ。
プリズナーゲームで殺人鬼に用意された。
作中、刃渡りの大きなナイフで多くの命を奪った。
「なんと、プリズナ―ゲームは総予算1億円未満!
とっても地球に優しいデスゲームなのよ♪」BY蛙のツラ
☆彡 ☆彡 ☆彡
「……酷い」
少女は息絶えている少年の遺体を前に祈る。
この子にも輝く未来があったはずなのに乃亜により歪められた半生。
せめて、天国へ安らかに過ごしてと。
少女の名はルビア・ナトウィック。
僧を志す少女。
「私が必ず、報いを受けさせるわ」
ルビアは硬く手をギュッと握る。
乃亜の甘言に乗った参加者を憎む。
まかつて自分の両親の命を奪った異端審問官に対して抱いたように。
「?、これって……」
ルビアは蓮の遺体の傍に置いてあった箱を手にする。
「オルゴールかしら……」
そして、直方体の端から突き出た金属片を3回、4回とひねった。
まるで、導かれるように。
「ラ ラ ラ ラ
ラララ 」
おまじないは伝染する
【ルビア・ナトウィック@テイルズオブテンペスト 】
[状態]:健康 怒り(大)
[装備]:オルゴール@トガビトノセンリツ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:乃亜の企みを阻止する
1:殺された子(悠)を殺した参加者を探して報いを受けさせる
2:乃亜の甘言に乗った参加者は斃す
2:カイウスもいるのかしら……
3:ラ ラ ラ ラ ラララ
[備考]
国王を斃してから3か月後の間(ED直前)からの参戦です。
オルゴールのセンリツ(トガビトノセンリツ)を覚えました。時折、無意識に口ずさんでしまいます
【オルゴール@トガビトノセンリツ 】
雄ヶ原蓮に支給されたオルゴール。
その旋律はある一人の教員のもっとも深い闇から生まれた
「先生が最初につくったのろいのおまじない」BY蛙のツラ
投下終了します。
投下します。
クロエ・フォン・アインツベルンは濃厚なキスをした。
男相手に。
ダミアン・デズモンド(6歳)の唇を塞ぎながら、自らの肢体を押し付けている。
アゴをホールドしながら、舌でダミアンの口内を蹂躙するクロエ。太ももを滑らかに擦り合わせ、膨らみはじめた双丘でダミアンを圧迫する。
突然の口づけに驚くダミアンだが、少女のほのかな香りと体温に心が揺らぎ、すぐに腰が抜けた。
頬を撫でる銀髪の感触も思考を奪った。
無力になった少年はただ唇を貪られるしかない。獰猛なハイエナに食われる獲物のように。
今のダミアンにとってクロエは野獣そのもの。
まさに弱肉強食。バトルロワイヤルのルールに則り、強いものが弱いものを喰らう光景があった。
話を遡る。
バトルロワイアルが始まって数分後だった。クロエとダミアンが運命の遭逢を果たしたのは。
まるで赤い糸で導かれたように巡り会った二人。
殺し合いに反対する少年少女。
しかし、ダミアンは知らなかった。
そう。クロエはキス魔であると。
人間ではないクロエは肉体維持のため、他人から魔力供給しなければならない。
いつもはイリヤまたは美遊がターゲットだが、その彼女達はここにいない。
故にクロエはダミアンを押し倒し、魔力供給をすることにした。
無差別に魔力供給を行ったクロエだ。
イリヤの友人はもちろん、喪女からも容赦なく唇を奪っている。
そんなクロエが、魔力供給の為ならば男とだってキスをするのは自明の理。
ダミアンにとってファーストキスだが、クロエからすれば知ったことではない。
離せ。
やめろ。
非力な少年の抵抗など無意味。
英霊の力を持つ少女から逃れる術を持たない。
ただ、されるがままでも、ダミアンはある少女の顔を思い浮かべていた。
アイツには……アーニャ・フォージャーにだけは、こんな自分を見てどう思うのか。
目尻に涙を浮かべ、突然のキスに胸が激しく鼓動しながら、一人の少女に想いを寄せていた。
せめて、今だけはアイツに見られたくないと。
「ふぅ……ひとまず、魔力補給はできたけど、やっぱイリヤや美遊じゃないと効率が悪いか」
粘った唾液の糸を垂らしながら思案するクロエ。
ひとまず、魔力供給は済ませたがあくまで応急処置にすぎない。
人間のダミアンから得られる魔力量は茶碗一杯分程度。
異能を持つ他参加者との戦闘に突入すれば僅か数分で消耗する。
「というわけで、それまではよろしくね〜! ダミアン!」
「う、うぅ…………なにが『よろしくね〜!』だ! ふざけんな!」
「……そういえば、あの二人はいるの? イリヤと美遊がいたら……すぐに探したいな……」
涙目で怒鳴るダミアンを軽く流すクロエ。
キス魔の魔力供給のエサにされた少年の明日はどっちか。
【クロエ・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ イリヤ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない。
1:ひとまず、ダミアンを守りながら定期的に魔力供給する。
2:いるならイリヤと美遊も探したい。
[備考]
※参戦時期は不明です。
【ダミアン・デズモンド@SPY×FAMILY】
[状態]:健康、ファーストキスを奪われたショック
[装備]:不明
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗らない。
1:キスを奪われた……
[備考]
※参戦時期は不明です。
※クロエにファーストキスを奪われました。
投下終了します。
投下させていただきます。
(まーたくっ、せっかくメルメルから貰った力を制限されちゃったよ)
会場内のとある場所、頭からやや武骨な二本角と尻尾を生やした、少女の姿をした参加者が周辺を見渡している。
彼女は『メルティ』という名前の竜人という種族の少女で、竜宮殿の王になるという、野望とも言える目的をもって真竜という竜人とは異なり完全なドラゴンの種族と戦い抜いていった末にその一体である『墜竜メルトゥース(メルティはメルメルと呼んでいる)』の力を手に入れ、『墜竜メルティ』へと変化した経緯があるのだ。
そんな彼女も目的に向かって戦い、暴れ、そして歩んでいる最中にこの殺し合いに巻き込まれてしまっのである。
『墜竜』の力も現在は解除されており、力を得る前の姿に戻ってしまっている。
(ノアってヤツの所にいつの間にか来ていた時はアタクシの武器がなくなってて焦っちゃったけど、
ソイツがランダムにアイテムを支給するって言ってたし、アタクシが飛ばされた場所のすぐ傍にあった赤いカバンの中身を調べてはみたけど…元々持っていた短剣が入っててホッとしたわ。)
この世界に転移された際に愛用していた短剣が一度彼女の手からなくなっていた時は焦ってしまったが、自分に支給されていたランドセルの中身を調べてみた所、本人支給されていたことに安心したが、ここは殺し合いの場である。
ランドセルの蓋を閉じてからその短剣を迷わず片手に握り、すぐさま移動に移る。
─彼女はまだ元の世界での目的を果たしていない。
そんな彼女は竜宮殿の『王』になるべく元の世界に生還しようとしている。
その為ならば、恐らく手段は選ばないだろう。
【メルティ@エレメンタルストーリー】
[状態]:健康
[装備]:メルティの短剣@エレメンタルストーリー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:早く元の世界に帰って、竜宮殿の王になりたい。
1:まずはこの辺を探索してみる。
2:自分を襲う様な参加者はぶっ倒す。
3:知り合いももしかしたら居ないかな?
[備考]
※参戦時期は期間限定イベント『賢墜を宿す煌影の円環』STAGE14後半戦にてメルトゥースの力を手に入れた事により、『墜竜メルティ』に変化した後。
※現在は主催によって『メルティ(★5の方)』に戻っています。
※当選した場合、『墜竜メルティ』に変身出来るかどうかは後続の書き手様にお任せします。
※スキル及びアビリティの類の制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。
※『ドラゴンソウル』のグランバトルを経験しているかは不明。(後続の書き手様にお任せします。)
投下終了させていただきます。
このコンペは公式から発表されているガイドライン(リンクはttps://studioz.co.jp/guideline/)を確認した上で投下しております。
また、SNS等で集計時に画像をアップロードする際は『メルティ』及び『墜竜メルティ』の画像を掲載しない様にお願いします。
>>861 のレスに記載しようとした際に誤って送信し、抜けてしまった箇所がある為、以下の一文を追加します。
リンク先にある二次創作ガイドラインの『■2. 禁止事項』に抵触してしまう為。
投下します
※この作品にはえっちぃ表現が含まれています。
えっちぃのは嫌いですという方には不快となるかもしれない内容なのでご注意ください。
「いやあ、実に興味深い話を聞けたよ。ヤマトという國と、その獣のような耳や尻尾を有する部族...僕の住んでいるイギリスじゃあお目にかかれない文化だ」
「私の方こそ、見聞を広められました!こういう場所で言うのもなんですが、最初に会えたのがディオさんでよかったです」
月光に晒される一見の民家。
その中で二人の少年が和やかな空気で会話を弾ませていた。
一人は少女のような顔立ちに、和風の衣装。なにより獣の耳と尻尾が特徴的な少年・キウル。
もう一人は端整な顔立ちと金色の髪が特徴の少年、ディオ・ブランドー。
彼らは殺し合いが始まって間もなく遭遇し、ディオが戦意のないことを示しつつリードする形で情報交換の席へと落ち着くこととなった。
「本当に助かりました。ディオさんのくれたこの弓矢のお陰で私もなんとか戦えそうです。でも本当に良かったんですか?」
「ああ。どうにもその弓矢という武器は経験が必要らしいが、いまの僕には過ぎた代物だ。きみに使ってもらった方がお互いの為だろう」
「ありがとうございます。このご恩は必ず返してみせます!」
ふんす、と鼻を鳴らして気合いを入れるキウルににこやかな微笑みで返すディオ。
(...ああ、ちゃんと返してもらうさ。このディオが勝ち残るためになぁ)
だが、その内心では、子供向けの玩具を幼稚なガラクタだと見下す高校生のようにキウルを見下していた。
ディオにとってこの殺し合いにおいて最も重要なことは己が生還すること。
馬鹿正直に殺し合いに乗って誰が一番かを決めることでなければ、皆でお手手を繋いで仲良くゴール、なんて温いことでもない。
生き残り、こんな茶番からさっさと抜け出すこと。過程や手段の貴賤など知ったことではない。
だが、彼は自分が優秀である自負はあれど、しかし自分以外の参加者を無策で倒しきれると思えるほど己惚れてはいない。
実際、キウルとの接触に於いて自分では扱えない弓矢を容易く扱う彼を見て、正面からの攻略は不可能に近いと理解せざるをえなかった。
だからこそだ。
モノを言うのは腕っぷしだけではなく、己のモノを最大限に利用し物事を優位に進める為の知恵と策である。
(話を信じるならばこのキウルとかいうやつは戦場に慣れているらしい。護衛としてはなかなかの人材だ)
戦に慣れていて、素直で大人しいこのキウルという少年は、ディオにとって格好の駒だった。
自分は労せず駒に動かせて利益だけを得る。
それこそが支配者の嗜みだ。
(乃亜とかいう小僧!このディオに犬のような首輪なんぞハメやがって!屈辱だ...今に見ていろ、僕はどんな手段を使ってでもお前を地面に這い蹲らせて無様に命乞いをさせた後に嬲り殺してやる!)
内に秘めたどす黒い感情をキウルに見せることなく、優しい貴族の仮面を被りほほ笑む。
———クスクスクス
声。
彼らを嗤う声が廃墟に響き渡る!
「ディオさん、私の後ろに」
真っ先に動いたのはキウルだった。
戦に於いて不意の襲撃は慣れたものだ。
故にディオよりも危険を察知し対応する能力は高かった。
——クスクスクス
暗闇の中、ひたひたと足音を鳴らし近づいてくるのは、一人の少女。
目を惹く様な金色の長髪と整った顔立ち、なによりやけに肌を露出させた黒衣を纏った少女。
(なんだこいつ...痴女か?)
「やあ、きみもこの殺し合いに巻き込まれたようだね。僕らは見ての通り殺し合いには賛同していない。よければ少し話を聞かせてもらいたいのだが、いいかい?」
現れた少女へ侮蔑の感情を抱きながらも、そこは堪えてディオは表面上はにこやかに接する。
むやみやたらに駒を増やすつもりはないが、まだゲームは序盤も序盤。
まずは積極的に情報だけでも得ておくべきだとディオは解っているからだ。
「いきなり拉致されて...首輪を繋がれて...こんなの...こんなの...」
ディオの問いかけに答える気があるのかないのか、少女は俯きぷるぷると身体を震わせている。
よほど怖いのかな、と気を遣ったキウルだが、しかしそれは憚られる。
「すっっっごく、えっちぃ♡」
少女は笑っていた。
頬を染め、息を荒げ、恍惚に酔っていた。
その笑顔を見た瞬間、キウルとディオの背筋に怖気が走り、少女を敵と見なし警戒心を最大限まで引き上げる。
「そこで足を止めてください。これ以上近づけば貴女を敵と見なします」
ディオに促されるよりも早く、キウルは弓矢を構え警告する。
だが。
少女は構わず足を進める。
まるで鼻歌の一つでも歌いださんかのように朗らかに、軽やかに。
警告に従い、少女を敵と見なしたキウルは矢を発射。
狙いは肩口。これこそが最後の警告だという意味も込めて。
迫る矢を視認しながらも少女は動かない。
否。
その足は、両腕は動かずとも、確かに動き蠢いている。
蠢くのは———意外ッ!それは髪の毛!
「えっ!?」
「なにっ!?」
甲高い金属音と共に落とされた矢を見やり、二人は驚愕の声を挙げる。
当然だろう。
なんせ今まで普通の毛髪だった少女の髪が、鉄の刃に変化していたのだから。
「あぁ...この私を排除しようと向けられる殺気...ヒリつく肌...懐かしい...」
天井を仰ぎながら呟く少女に構わず、キウルは再び矢を装填し放つ。
それを打ち落とされながらもキウルは努めて冷静にディオと共に民家から脱出しようとする。
「でもいまの私が欲しいのは」
少女のうわごとに耳を貸さず、キウルとディオは台所の裏口へと向かう。
そして水道を横切ったその瞬間
———パァン
「わぷっ!?」
「うっ!?」
蛇口が破裂し、飛び散った水が二人に降り注ぐ。
「この身体を昂らせる、えっちぃ快感♡」
少女の独白と共に、キウルとディオの身体に違和感が走り始める。
ぬるり。
「ひぃっ!?」
首元に伝うぬめりとした感触に、キウルは思わず声を挙げる。
「これは...さっきの水か!だがこんなもの拭ってしまえば」
同じく首元に伝うぬめりを取るために掌を首元に遣ったその瞬間、その感触は彼の身体を這いずるように動いた。
「ぬぐっ!?」
ぬめりから伝わる奇妙な感触に思わず声を漏らすディオだが、ぬめりは構わず身体を駆けずり回る。
その首元から目指す先は———脇の下。
「むふぅッ!」
そのこそばゆさから生じかけた声を咄嗟に噛み殺すディオ。
そんな彼を嘲笑うかのように、ぬめりは移動どころか瞬く間に全身に広がっていく。
「ぬっ、おおおおおおおっ!?」
全身を弄るように蠢く、未知なる感触に溜まらずディオは悲鳴を挙げる。
「ディオさ...ひああああっ!?」
ディオと同じように全身に這いずり回る感触にキウルも思わず甘い声を漏らしてしまう。
「ふふっ...にゅるにゅる、気持ちいいですよね?えっちくて私も大好き♡」
少女は悠然とディオに歩み寄り、彼の耳元で囁く。
「ねえ、どうですか?男の人も、こういうえっちぃのが好きなんですかぁ?」
「———ふざけるなッ、誰がこんなもの!この貞操観念の欠片もないクソ売女(ビッチ)がぁ!!」
「そういう割には声が上ずってますよぉ?えいっ♪」
「ッ、おおおお———ッ、ぐぉっ、ふぅっ!」
少女が指を動かすと共に、ディオの身体に纏わりつく水の動きが増し、身体に走る甘い感覚が増幅していく。
「やっ、やめてくださいこんなこと...ふわあああっ!」
声を張ろうとするキウルを遮るように、水はくまなくキウルの全身を這いずり回り容赦なく快楽を与えていく。
「やめる?やめるですって?ふふっ、ダーメ♡だって...だって、いまの私は...」
ディオとキウルが悶えている中、少女の肢体にも水が絡みついていく。
身体に快楽が走り始め、ただでさえ露出の多い衣類から桃色の双極がはみ出していく。
だというのに、少女は動じない。
否。
その快楽に身を任せるように顔を蕩けさせながら、悶えていた。
「ハレンチだから」
「は、ハレンチってなんですか!?」
聞きなれない単語に思わず問いかけてしまうキウル。
それを引き金とするように、少女はにまりと笑みを浮かべる。
「知りたい?知りたいんですか?ふふっ、いいですよ。私も彼にえっちぃことの素晴らしさを教えられましたから。貴女も私のように目覚めさせて、彼への供物にしてあげます」
ゾクリ、とキウルの背に怖気が走る。
元来の整った顔立ちに加え、頬を蒸気させ、微笑みかけてくるその様は煽情的と言っても差し支えない。
だが、その眼は。暗殺者の如く据わり鋭い眼は、捕食者が獲物を逃がさないと決めた時のソレそのものであった。
パチン、と少女が指を鳴らすのと同時、髪の毛が幾多もの手に変化し、キウルの全身に纏わりつき始める。
「なっ、なにをっ!?くあっ!」
キウルが抵抗する間もなく、彼の衣類は剥かれ、その全身をくまなく弄り始められる。
臀部、胸、腹部。あらゆる箇所を弄られるキウルは思わず身を捩らせてしまう。
「やっ、やめてくださ...んっ」
「ふふふっ、女の子は誰もがあの人のテクに骨抜きにされちゃうんですよ」
手淫による快楽に悶えるキウルを、少女は息を荒げ欲望迸る眼で眺めていた。
「ねえ、素敵でしょうえっちぃこと...ん?」
だが。
数秒遅れて少女の緩んだ頬がもとの位置に戻る。
気づいたのだ。キウルの身体を弄っているうちに気が付いた違和感に。
不意にあたったほんのりと硬い感触。
女の子の部分にはないはずのとあるモノ。
その違和感の答えを、少女は口にする。
「あなた...男の子だったんですか」
「う、うぅ...」
少女の解答に、キウルの視界が滲んでいく。
悔しかった。
ずっと女の子だと思われていたことが。
身体を弄られ続け、ようやく男だと気づかれたことが。
情けなかった。
敵である女の子にいいようにされて、なのに自分の身体は気持ちよくなっていたことが。
いくら頭の中では違うと思っていても、正直に反応してしまう身体が。
悲しかった。
尊敬する義兄たちに、誇らしいと言われた自分のこの醜態が。
尊厳ともいうべき、自分の中の大切な何かを穢されつつあることが。
「———ッ!?」
そんなキウルの表情を見ていた少女の胸がドキリと弾む。
キウルが男であったことに落胆していた筈の表情に、再び熱が籠り始める。
「なんですかそのえっちぃ顔は」
少女がキウルの獣耳を優しくなでると、キウルの身体がビクリと弾む。
「あの人はそんな顔をしなかった...だって、あの人は温厚で真面目で、だけど不可抗力から生み出されるえっちぃテクニックが最高のハレンチの化身だから...」
つぅ、と身体を伝う指の線に、恐怖と快感の入り混じる感触がキウルの脳髄を侵食する。
「もっと見せてください。そのえっちぃ顔を。反応を。あの人に向ける最高の手向けへの生贄として!」
少女の髪が再び蠢き、触手、貝のような肉のヒダ、誰かの舌、etc...あらゆる異形へと変化していく。
「や...やめて...」
もはや体裁など関係ないと言わんばかりにキウルの頬に水滴が伝う。
本能でわかった。
あれらが一斉に向けられれば自分はもうダメになってしまうと。
(だれか...兄上、たすけ———)
終わりを告げられる現実から目を背けようと、その瞼が閉じられる。
「僕の前から消え失せろ、この汚らしい阿呆がぁぁぁぁ!!」
瞬間、叫び声と共にキウルの身体に纏わりついていた感触が消え失せる。
キウルが思わず眼を開けると、そこには妙な杖を構え息を荒げつつ片膝を着くディオがいるのみ。
少女は何処かへと消え失せていた。
「で、ディオさん...貴方が助けてくれたんですか。ありがとうございm」
「五月蠅いッ!もたもたしてるんじゃあないぞこのウスノロがッ!」
礼を言おうとしたキウルだが、しかし激昂したディオはそれを遮るように叫び、少女の支給品であるランドセルをキウルへと投げつけた。
「早くこの場を離れるぞ!さっきのは何処かへ飛ばしただけだ...奴はまたここにやってくるはずだ!」
「は、はい、すみません」
豹変したかのように声を荒げるディオに怖気づきながらも、キウルは彼の指示通りに荷物を纏めて後に続く。
(クソッ!このディオがあんな売女にいいようにされるだなんて!)
民家から退避する傍らで、ディオは先の少女への怒りと憎悪を滾らせていた。
(なにがえっちぃだ!ハレンチだ!気色の悪いことをしやがって!)
受けた恥辱と屈辱を思い返すだけで腸が煮えくりかえりそうになる。
目の前で辱めを受けるキウルを見てディオは理解していた。
次にあの醜態を晒すのは自分だと。
そんなのはごめんだ。何事も最終的に勝てば良いとは思っているし、勝てるなら泥に這いつくばろうが辛酸を嘗めようがある程度は我慢できる。
だが、あんなキウルのような情けない面を晒して嗤いものにされるのはごめんだ。
だからここでカードを切った。
使用回数に限りがあるバシルーラの杖。
キウルと弓矢と交換した子の支給品を。
あんな痴女にカードを一つ切らされた、という屈辱はそうたやすくは拭えない。
それだけではない。
少女に水攻めをされた時、表面上は平静を保ってはいたが、少女の言う通りだった。
なんとか噛み殺しはしたが、ディオの身体は未だに疼いている。
そう。あろうことか、あの水攻めを気持ちいいと感じてしまったのだ。
それが彼の逆鱗に触れた。
(こんな屈辱はエリナに泥水で口を洗われた時以来だ...あの小娘に乃亜!貴様らはこのディオが必ず惨殺処刑にしてやるッ!)
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]精神的疲労(中)、疲労(中)、敏感状態、服がビショビショ、怒り
[装備]バシルーラの杖[残り回数4回]@トルネコの大冒険3(キウルの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:今はあの痴女が戻ってくるまでにこの家を離れる。
1:キウルを利用し上手く立ち回る。
2:先ほどの金髪の痴女に警戒。奴は絶対に許さない。
[備考]
※参戦時期はダニーを殺した後
【キウル@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]精神的疲労(大)、疲労(大)、敏感状態、服がビショビショ
[装備]弓矢@現実(ディオの支給品)
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 闇の基本支給品、闇のランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いからの脱出
0:今はあの少女が戻ってくるまでにこの家を離れる。
1:ディオを護る。
2:先ほどの金髪の少女に警戒
[備考]
※参戦時期は二人の白皇本編終了後
「あ〜あ、しくじっちゃった」
少女は夜空を仰ぎながらぽりぽりと頭を掻く。
少女は指にはめた指輪を掲げながら想いにふける。
指輪の名は、帝具『ブラックマリン』。
傍にある、触れたことのある液体を自在に操る道具だ。
彼女はこれを使い、水道の水を操り、且つ己の変身(トランス)能力で蠢くスライムとしてキウルとディオに纏わりつかせた。
そこまでは順調だった。
だが、キウルの恥辱に晒された泣き顔を見てから狂いが生じた。
もとより、あの二人には本命へのえっちぃ殺し方の練習台くらいにしか見ていなかった。
だが、キウルの泣き顔を見てつい思ってしまった。『えっちぃ』と。
あのえっちさをもっと見たい。あの顔を大好きなあの人にしてもらったらどれほど素敵だろう。
そんな衝動に駆られ、その隙を突かれてしまった。
「ちょっと残念だけど...収穫はあったかな」
彼女の知る『えっちぃ』ことは、男の側から攻められることだけだった。
時にはパンツを見られ。時には胸を揉まれ。時には乳首を吸われ。時には股座に顔を突っ込まれ。
真面目で誠実な彼から受ける不可抗力なラッキースケベを通じてえっちぃものを素敵だと調教された。
だが今回のキウルで思った。女の子が男を攻めるのもまた『えっちぃ』ことなのだと。
「えっちぃことって一つじゃなかったんだ...やっぱり素敵♪」
少女は脳内で妄想にふける。
大好きなあの人が。自分をえっちぃことが好きな子に変えてくれたあの人が。
ただ自分を気持ちよくするだけではなく、気持ちよくされすぎて涙が出るほどによがり狂う様を。
そんな快感の絶頂の中で、彼の息の根を止めることを。
もしもそれが実現したならば。それはきっと最高にえっちぃプレイだろう。
「待っててね、結城リト...私の最愛の標的(ターゲット)♡」
少女は笑う。
期待に胸を高鳴らせて恍惚に蕩ける。
彼女の名は『金色の闇』。
かつて宇宙の殺し屋として名を馳せ、そして地球で変わった生態兵器。
優しさと温もりと愛とえっちぃことに触れて、殺戮から色欲に生まれ変わった『ダークネス』。
【金色の闇@TOLOVEる ダークネス】
[状態]興奮、ダークネス状態
[装備]帝具ブラックマリン@アカメが斬る!
[道具]
[思考・状況]
基本方針:殺し合いから帰還したら結城リトをたっぷり愛して殺す
1:えっちぃことを愉しむ。脱出の為には殺しも辞さない。もちろん優勝も。
2:えっちぃのをもっと突き詰める。色んな種類があるんだね...素敵♡
3:さっきの二人は見つけたらまた楽しんじゃおうかな♪
[備考]
※参戦時期はTOLOVEるダークネス40話〜45話までの間
投下を終了します
投下いたします。
ここは会場内にあるツリーハウスの中、そこには亜麻色の短い髪をした一人の少女がいた。
黒いチューブトップの上に緑色のコートのようなものを羽織り、また下半身はホットパンツと足には無数のベルトが付いたブーツを履いた、へそ出しファッションの少女だった。
そんな恰好をした彼女は根元の部分に穴の開いた刃物を片手に、このツリーハウスの中でずっと考え込んでいた。
「なんで僕達は、ずっと一緒に遊んでいることができないんだろう?」
彼女は考える。なぜ自分以外の子供はずっと子供でいられず、いつかは大人になってしまうのかを。
「僕はこんなにもみんなを愛しているのに、どうしてみんなは僕を置いて行ってしまうんだろう?」
彼女は悩む。かつて子供だった大人たちは、どうして自分のことを忘れていってしまうのかを。
「なんで僕以外の子供は、いつか大人になってしまって、そして穢れていってしまうんだろう?」
彼女は思い出す。とある海賊との対決に敗れ、その部下たちによって慰み者にされ純潔を失った日のことを。
「なんで僕の友達たちは、あんな穢らわしい生き物に変わってしまうんだろう? どうして僕のように、いつまでも子供のままでいられないんだろう?」
彼女は嘆く。自分が愛していたはずの子供たちが、いつしか自分を裏切ってしまうのかを。
「あぁ……そうか、そうすればいいんだ。こうすれば、かつての友達たちをもう間引く必要もないんだ」
そして彼女は何かに気づくと共に、歪んだ笑みを浮かべた。
「ここでなら僕の願いを叶えられる。なら、みんなが子供のまま変わらないことを願えばいいんだ」
それは彼女の心からの願いだった。彼女は彼らとずっと一緒にいたかったのだから。
「だって僕は、みんなのことが大好きなんだから……!かつては子供だった、みんなのことを愛していたんだから……!」
何故なら彼女は、どこまでも子供が大好きなのだから。
そして彼女は頬を赤らめ、ウットリとした表情で悦に浸り始めた。
だが今の彼女の顔は穢れを知らない子供と言うよりは、彼女自身が嫌う"オトナの女性"のようであった。
------------
それは大人になりたくないと思っていた存在。
自分以外の子供が大人になることも許せなかった存在。
周りの子供たちが大人になるにつれて、彼らを間引いていった存在。
その名は『悠久の小童』。
……またの名を、『ピーターパン』といった。
【悠久の小童@Alice Re:Code】
[状態]:健康、恍惚としている
[装備]:風切羽の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜
[思考・状況]基本行動方針:自分以外の子供たちが、永遠に子供でいられるようにする。
1:みんな、大人になんかなっちゃだめだよ!僕といつまでも一緒に遊ぼう!
2:大人は子供たちを食い物にして酷いことをするんだ。だから、君たちには絶対にそんな存在になってほしくないんだよ。
3:もしもこの場に穢らわしい大人たちがいるのであれば、皆殺しにする。
[備考]
『支給品紹介』
【風切羽の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド】
悠久の小童に支給。鳥と人が合わさったような見た目をした種族『リト族』が使う両刃の剣。
空中でも素早い動きができるように軽量化する工夫がされているがその分耐久力は低くなっている。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
度々すみません。>>876 についてランダム支給品の数を書いておりませんでしたので修正いたします。
【悠久の小童@Alice Re:Code】
[状態]:健康、恍惚としている
[装備]:風切羽の剣@ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:自分以外の子供たちが、永遠に子供でいられるようにする。
1:みんな、大人になんかなっちゃだめだよ!僕といつまでも一緒に遊ぼう!
2:大人は子供たちを食い物にして酷いことをするんだ。だから、君たちには絶対にそんな存在になってほしくないんだよ。
3:もしもこの場に穢らわしい大人たちがいるのであれば、皆殺しにする。
[備考]
投下します
見下ろすのは星と月。伴うのは無機質で冷たい首輪。
上げられた舞台は、ファンが集う夢のような舞台(ステージ)ではなく。
何処かもわからない片田舎の小島で、しかも殺し合いなんて強いられている。
間違いなく、少女の夢見ていた場所とは違う世界だった。
正直な話をすると、怖かった。膝を抱えて、蹲ってしまいたかった。
でも、それでも、彼女は偶像(アイドル)だった。
その手に握るのは、一枚のDISC。
頭に入れなければならない、という覚悟を要求されるその武器を。
彼女は、迷うことなく差し込む。
そのあと両足に力を籠めて立ち上がり。精一杯の虚勢をかき集めて、笑みを形作る。
そうして少女は、踊る様に駆けだした。
全ては、一人の少年の勇気に応えるために。
■
「態々首を突っ込まねば生きて居られたものを、馬鹿じゃのう、小僧」
そう言って、金の髪に不思議の国のアリスの様なロリータドレスを纏った少女。
『帝国』の錬金術師ドロテアは嘲笑の声を上げた。
その声の矛先は、少年だった。
ドロテアと比べてもなお幼い…十歳程の少年。
その総身は、深い傷こそないものの血まみれだ。
全て、ドロテアの手によって負った傷だった。
彼は今、路地の行き止まりに追い詰められ、ずるずるとへたり込んでいる。
「勘違いするでないぞ?妾だって、積極的に殺し合いに乗ろうという訳ではない。
………少なくとも、今のところはな」
ドロテアにとっては出会った少年と少女、どちらでも良かった。
その首と胴体を切り離して、首輪のサンプルとするのは。
狙ったのは、少女の方だった。
理由は、殺し合いに乗っていないという体で行った情報交換に会った。
少年の口から出た、『学園都市』や『能力開発』などの話に興味を惹かれた。
対する少女はアイドルだの愛を届けるだの、ドロテアにとって眠たくなるような程平和ボケした話しか吐かなかったからだ。
この瞬間、断頭する対象は決定した。
二人とも殺しても良かったが、ゲーム開始から一時間も立たずに首輪を二つも持っていたら、殺し合いに乗った参加者と勘違いされる恐れがある。
ドロテアは自分さえ生きていれば誰が何人生きて居ようとどうでもいい人間だったが、自分に不利益が出るのは好ましくない。
故に、感謝しつつ偶像の少女に生贄になってもらう腹積もりだった。
少年が、少女を自分の攻撃から庇わなければ。
「あの女を逃がさなければ、お前の方は助けてやったんじゃがなぁ」
ドロテアは、人体を弄繰り回すことに長けた錬金術師だった。
彼女の幼い少女と言っていい若々しい肉体がその証明だ。
当然の事、全身の筋力をも改良済みの改造人間だ。
そんなドロテアだからこそ分かる。
目の前の少年は、特段鍛えた体という訳でもない。
ただの、年相応の少年の肉体だった。
そんな少年が、野生の豹をも凌駕する自分の敏捷性から放たれる攻撃を致命傷を裂けたうえで、少女を庇う事に成功して見せた。
実に、奇妙な話だった。
だが、その降ってわいたその疑念も今しがた解消された。
「戦場で生き残るのは強者と臆病者。勇者というものは九割死ぬものじゃ。
まぁ、安心せい、お前のその首輪と帝具は妾が責任を持って有効活用してやる」
くるくると、指先で少年がついさっきまで被っていた児童用の帽子を弄ぶ。
出会った時は帽子を被っていたから分からなかったが。
少年の額には、瞳の様なヘッドギア―が装着されていた。
帝都の守備隊『ワイルドハント』のメンバー人抜擢されていたドロテアは、そのヘッドギア―に見覚えがあった。
五視万能・スペクテッドという、視る事に特化した兵装だ。
適性の高い者が装備すれば、未来を見通す事すら可能になるという。
それを装備していたのなら、ただの少年が自分の攻撃をここまで回避出来たのも頷ける。
まぁもっとも、それもここまでの話。
こうやって路地の行き止まりに追い詰めてしまえば、所詮はただの子供。
見えていても、体が避けられなければ何の意味も無いのだから。
「さて…ここまでようやったのう、褒美に死と、
この妾の絢爛たる生涯の礎になる栄誉を与えてやろう…のう、シャエイ」
ドロテアには野望があった。
死と老いを克服し、その叡智と美貌を永遠に輝かせるという野望が。
その為なら、誰だって踏み躙る事ができる。
殺し合いに乗っていないのも、現時点ではと言う話でしかない。
もしそれしかないと彼女のその優秀な頭脳が悟れば、即刻優勝に向けて乗り出すだろう。
そんな人間と行き遭ってしまったが故に。
今しがたドロテアに写影と呼ばれた少年──学園都市の予知能力者、美山写影は順当に詰んだ。
「………最後に一つ聞いてもいいか?その帝具の力があったなら…
妾との実力の差も分かった筈、何故死に急いだ?」
くるくると淵を指で回していた帽子を、写影に投げ返し、尋ねる。
ほんの気まぐれの様な問いかけだった。
ドロテアの観察眼では、目の前の少年はそんな正義感に燃えるような少年とは思えなかったからだ。
だから、己の知識欲を満たすため、最後に尋ねておこうと思ったのだ。
と言っても、そこまで興味のない事項ではあったのだが。
問われた少年は、当初は何某かを口にしようとしたものの、
「……君には、教えてあげない」
それが、彼の答えだった。
それを聞いたドロテアはふんっと短く鼻から息を吐いて写影を見下ろして。
では、殺す。そう告げた。
元より、そこまで興味のない問いかけだった。
黙秘するというのなら、それでもよかった。
にぃ…と口の端を三日月型に歪に歪めて、鋭い犬歯を晒す。
彼女が有する牙の帝具、血液徴収アブゾディックだった。
一度乃亜の手によって没収されていたが、初期支給品の中にあり、再び彼女の手に戻った。
これで吸血されれば、人間の子供など簡単に木乃伊になる。
そして、実際にそうするべくつかつかと写影へと歩み寄り…足が止まる。
「何じゃ……?」
影が、無かった。
先ほどまで月が出ていたというのに、今はそれがない。
否、突然ドロテアの頭上周りだけを、黒雲が覆っているのだ。
それに気づいた時にはもう遅かった。
写影とドロテアのちょうど中間の位置に、小規模なハリケーンが発生したのはその直後の事だった。
人外の筋力を持つドロテアも、自然の暴威に勝てるほど極端な物ではなく。
突風に押し戻され、後退せざる得なかった。
「その方から、離れなさい」
決然とした声が響く。
その声の主を見て、ドロテアは訝し気に眉を顰めた。
声の主は、先ほどドロテアが少年の横やりのせいで仕留めそこなった少女だった。
さっきまで、本当に単なるガキだったはずの、その女児が。
トカゲのしっぽを切る様にさっさと逃げた、その少女が。
何かの人形のような物に抱きかかえられ、宙に浮いていたからだ。
もう一度風が吹くと同時に、ふわりと。
少女が、少年を庇うように地へと降り立つ。
「貴女がこれ以上彼を傷つけるなら、わたくしも貴方に手袋を投げる事を迷いませんわ」
咲き誇る赤薔薇のような風体の少女だった。
金の髪に整った肢体を紅いドレスとカチューシャで彩り、同じく人形のように整った顔立ちは決意に引き絞られている。
櫻井桃華は、押し寄せる恐怖を必死に堪えながら、堂々たる名乗りを上げた。
「…はっ、妾を笑い殺させるつもりか?何かの帝具を得た様じゃが、その程度で──」
ドロテアの言葉は最後まで紡がれなかった。
砲弾の様な音を立てて、彼女のすぐ隣を雷廟が貫いたからだ。
直撃していれば、如何なドロテアであっても肉塊になるのは免れない攻撃だ。
ついさっきまで震えて逃げるだけだった少女とは、おおよそ思えない力だった。
「アイドルが、ファンを置いて逃げるわけにはいきませんもの。
……どうしてもと仰るなら、此処からは私と、この『ウェザーリポート』さんがお相手致します」
桃華は、ドロテアの圧力に屈さなかった。
緊張と恐怖で上ずりそうになる声帯を、日々のボイストレーニングの成果で調整する。
ここで臆していては、助かる命も助からない。
「クク、妾も舐められたものじゃな──帝具を持っていようと、
お前ら二人、殺す事ぐらい訳はないわっ!!!」
凶暴に笑い、脅すように吠えるドロテア。
すると、予想通り──先ほどまで確固たる態度で対峙していた少女の顔に脅えが混じる。
何のことはない、この通り、所詮は鉄火場に慣れていないガキだ。
少し脅かせば簡単に主導権を握ることができる。
少々危険ではあるが、二人とも殺し、帝具ごと首輪を頂くこととする。
そう決定して、襲い掛かるべく脚力に力を籠めた。
「………本当にそうかな?」
声は、背後から聞こえた。
眼を見開いて、バッと振り向く。
すると、そこには目の前に対峙していた筈の二人の少年少女の姿があった。
自分は明後日の方向を向いて、二人と話しているつもりになっていたのだ。
「このまま勝負するなら、僕たちだって全力で抵抗する。こんな序盤に、雷に撃たれるのはあまりお勧めしないね」
(・……そうか!スペクテッドの能力には相手に幻覚を見せる幻視の能力があったと聞く…!それで妾の目を欺いたのか……!)
先ほど少女が落とした雷も幻覚かと思ったが、すぐさまその可能性を切って捨てる。
先ほど感じた雷の熱と轟音は、間違いなく本物だった。
視覚に働きかけるスペクテッドだけでは、説明がつかない。
つまり、天候操作の帝具とスペクテッド、両方が敵に回っているに等しい状況だ。
そこまで思考が行きつけば、ドロテアの次のセリフは決まっていた。
「………………分かった、悔しいが妾に分が悪いようじゃ。
今一度言っておくが妾は殺し合いに乗り気ではない。お前達と命懸けで勝負する気も無い。
もっと別の手に入れやすい相手を探すとしよう」
その判断はドロテアにとって必然だった。
態々抵抗されれば厄介な二人の首輪に固執する必要はない。
写影がいなければ最初の奇襲で少なくとも一つは手に入っていたのだから、出会った当初の桃華の様な参加者の首輪をいただけばいいだけの話。
ドロテアは悪辣な性格ではあったが、損得勘定ができない人間ではなかった。
「…言っておくが妾の悪評をばら撒いたりしてみろ、絶対に殺してやる。
逆に妾は信頼できる相手だと風評を広めていてくれれば、次会った時既に首輪を外しているであろう妾の知恵を貸してやってもいいぞ」
心にもないリップサービスであった。
ドロテアは確かに殺し合いに乗り気ではなかったが、首輪を外したとしても八割がた何らかの対策が行われ、殺し合いは続く事になるだろうと読んでいたからだ。
だから、目の前の二人は多分どの道殺すことになるが、一応今の段階から悪評を広められれば都合が悪い。
それ故のリップサービス兼釘刺しだった。
「ではな──次に会った時敵対しない事を願っておるぞ……お前たちも、その方がよいじゃろう?」
その言葉を最後に、ドロテアはまた再び獰猛な笑みを浮かべた。
突然氷点下のブリザードの中に放り込まれたような本能的な恐怖が、二人を包む。
写影と桃華が怖気る表情を浮かべるのを見てニィ…と更に笑みを浮かべて。
そのまま超人的な脚力で大きく跳躍し、邪悪なる錬金術師は姿を消した。
ドロテアの姿が消えるのを見届けて。
そこからたっぷり十秒ほど間隔をあけて。
写影と桃華は顔を見合わせ、そして、脱力。
「「こ…怖かった………」」
【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]健康
[装備]血液徴収アブゾディック
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:とりあえず適当な人間を殺して首輪を得る。
1: 首輪のサンプルを三つほど手に入れれば暫くは殺しを控える。
2:妾の悪口を言っていたらあの二人(写影、桃華)は殺す。
[備考]
※参戦時期は11巻。
■
嵐が去った後で。
暫く少年と少女は、背中合わせでへたり込んでいた。
獰猛なグリズリーを今しがたやり過ごしたようなものだ。
緊張の糸が切れるのも無理は無いだろう。
「助けてくれてありがとう…助けようとしたのに。逆に助けられるなんて、情けないな」
少し沈んだ声で、写影は助ける筈が逆に助けられてしまった少女に、感謝の言葉を述べた。
だが、そんな感謝の言葉は少女にとっては不服だったらしい。
お礼なんて必要ない。先ず彼女はそう切り出した。
「美山さんがあの時助けてくれなければ、私はもうこの世にはいなかったでしょうから。
ですから…お礼を言うのはわたくしの方です」
そう返された写影の心中に、どこか後ろめたさが生まれる。
紡ぐ言葉のトーンは、やはり低いままだった。
「いやその…ごめん、実は、最初から迷いなく君を助けようと出来たわけじゃないんだ」
「正直、追い詰められたときは後悔だってしてた」
確かに自分は助けることを選んだけれど。
躊躇も迷いもなく、という訳にはいかなかった。
少し前までの自分なら、保身を優先していただろうとも思う。
けれど。
──貴女、わたくしに似ていますもの。私も小さい頃は憧れていたんですのよ。
───ヒーローって奴に。
そんな時に浮かんだのが、かつて自分を助けてくれた、風紀委員の少女の言葉だった。
今ここで桃華を見捨てたら、彼女が…白井黒子がかつて自分にかけてくれた言葉が嘘になってしまうような気がしたから。
だから、少年はほんの少しの勇気を奮った。それだけの話だった。
結果は御覧の通り、助けようとした少女に助けられるという不様を晒してしまった訳だが。
「……それでも」
写影の言葉を受けて。
桃華も、僅かに押し黙る。
だけれど、その後紡ぐ言葉は清流のように澄んで穏やかな物だった。
「それでも、わたくしを助けに来てくださったのは写影さん、貴方です」
「もっとスマートに助けられた方はいらっしゃっても、
…あの時のわたくしを実際に助けてくださったのは、貴方だけですわ」
「その事実は変わりません」
ですから、と桃華は言葉を綴り、尋ねる。
もし、美山さんがそれでも気になさって、埋め合わせが欲しいというならば。
二つほど、お願いがある。
桃華はそう告げた。
「……お願いって?」
写影が尋ねると、ふふふ、と。背中で笑みが零れる音がして。
「一つは、美山さんではなく、写影さんと呼ばせてほしい、ということですわ」
「そして、もう一つ」
「わたくしの事は、どうか桃華と呼んで欲しいのです」
特に断る理由もなく二つ返事で了承した後。
写影はふと思った。
女性を名前で呼ぶのは、これで二人目だな、と。
「……分かった、写影でいい」
「ボクも、君の事は桃華って呼ぶよ」
──でも、こんな状況でも名前を呼びあえる相手がいるのは、悪くない。
そうして二人は、少しの間無言のままに、背中合わせで夜空を眺めた。
見通しは、ハッキリ言って暗い。
ドロテアの様な強くて人を殺すことに躊躇のない参加者はまだまだいるだろう。
首輪を外す算段も立たない。
一時間後にはどうなっているかも分からない。
でも、それでも。この背中に俄かに伝わる体温があれば。
ゲームは始まったばかり、諦めるにはまだ早すぎる。
そう思えたから。
「……そろそろ、行こうか」
「──えぇ、そうですわね」
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]疲労(中)、あちこちに擦り傷や切り傷(小)、血が滲んでいる。
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
1:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
2:……黒子はいないよね、多分
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(小)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
1:写影さんを守る。
2:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
【五視万能スペクテッド@アカメが斬る!】
美山写影に支給。目の意匠が施されたヘッドギア。
装備する事で望遠の役目を果たす「遠視」、透視能力を付与する「透視」、相手の動作や表情を読み取り読心を行う「洞視」、
相手の筋肉の機微から未来を見通す「未来視」、そして相手に幻覚を見せる幻視の「五視」の能力を持つ。
写影は自己の「己だけの現実」により、未来視の適性が特に高く、相手の筋肉の機微に関わらず、最大まで集中すれば最大で十秒ほど先の未来を見通すことができる。
ただし全力の集中力が求められるため常時発動は不可能。
半面洞視は本来の持ち主ほど適正は無く、読心クラスの芸当をしようとすればかなりの集中力を要求される。
【スタンドDISC『ウェザーリポート』@ジョジョの奇妙な冒険】
櫻井桃華に支給。徐倫の手によってエンポリオに託された、天候操作のスタンド『ウェザーリポート』が内包されたスタンドDISC。
本来のスタンドの持ち主ではないため操作できる天候は桃華の半径50メートル以内に限られ、当然ながら『ヘビー・ウェザー』は使用できない。
【血液徴収アブゾディック@アカメが斬る!】
ドロテアに本人支給。吸血鬼の牙のような帝具。口の中に装着して使用する。
対象に噛みついて血を吸い、ミイラのようにしてしまうだけでなく怪我の治療や一時的なステータスアップもできる。
投下終了です
◆mAd.sCEKiM氏の作品の代理投下します
バトルロワイアルの会場に配置された街では、不思議なことに雨が降りしきっていた。そんな街の中を、殺し合いの参加者として選ばれた少年が走っていた。
黄色いレインコートを羽織った少年はどこか焦りを浮かべながら、側溝を流れる雨水に浮かぶ"それ"を追いかけていた。
「ぼくのデイパックが!」
しかし、少年の努力もむなしく少年のデイパックは排水溝の中へと流されてしまった。
名残惜しそうに少年は排水溝の中を覗き見るが、取り出すことは難しそうだった。
これで少年は丸腰で殺し合いを生きることになってしまった。
少年は途方に暮れ、肩を落としながらその場を離れようとした。
「よぉ、ジョージィ!」
その時、排水溝の中から少年ジョージを呼ぶ声がした。
ジョージは怪訝になりながら排水溝の中を覗く。
そこにはなんと、殺し合いの場に似合わぬピエロがジョージを見上げていた。
「お前も来てたのか、一緒に行く?」
気さくな様子でピエロはジョージを誘う。
ピエロとジョージは互いに知り合っているようで、殺し合いの序盤でジョージに出会えたことに嬉しささえ感じているようだった。
しかし、ジョージは首を横に振ってその誘いを拒絶する。
「おいおい、つれないこと言うなよ。お前だって死にたくないだろ?」
「そんなこと言って殺し合いに乗ってるんだろ?騙されんぞ」
「確かに俺はペニーワイズだが殺し合いに乗ってはいない。ジョージ、俺たちはもう長い付き合いなんだ。こんな時くらい仲良くしようぜ?な?」
「うん、そうだね!もっとマシな奴と組むわ」
「待てや!」
排水溝から離れようとしたジョージを、ペニーワイズと名乗るピエロは必死に引き留める。
「これ……落としたんだろう?」
「僕のデイパック!」
「Exactly(その通りでございます)!身を隠す場所も必要だろ。こっち来い」
ペニーワイズはジョージを排水溝の中へ入るよう促すが、ジョージはいまいち気が進まないようだ。
「オーウ……まだ俺が信じられんか。おほっ、そんな顔せんでも。そりゃあ確かに色んな物をお前にオススメして沼に引きずり込んできたし時にはケンカをしたことだってあった。でも今は互いに殺し合いに巻き込まれた身だ。助け合って生き残ろうぜ」
「なんか焦ってない?」
「えっ、うん……それはそうと早く来い、ジョージ……。排水溝に入れ……。この奥に地図に載ってない地下道だって見つけたんだ……俺とお前ならうまくいく!!!」
そして、ペニーワイズはジョージを中へと引きずり込んだ。
◆
ジョージとペニーワイズは死んだ。実はジョージが通りかかる前、ペニーワイズはジョージと間違えて強マーダーに生き残る方法をオススメしようとしてそれが癇に障ったのだ。地下道を見つけたのはいいのだが、あっという間に強マーダーに追いつかれ、二人仲良く殺されてしまった。要するにズガン枠である。
【ジョージ・デンブロウ@ペニーワイズがオススメするシリーズ】 死亡
【ペニーワイズ@ペニーワイズがオススメするシリーズ】 死亡
◆
「――なんてこともあったから、慎重に行かないとな」
ふと、そんな過去を振り返りながら、少年ジョージは呟いた。
少年ジョージは今、海馬乃亜によって幼子だけで行われる殺し合いに再び巻き込まれている。この殺し合いの会場に雨は降っていないが、未だにジョージは黄色いレインコートを羽織っていた。
それは、彼が本来の世界線のジョージではなく、とあるネットミームによるイメージが形を成した存在であることの証左であるのかもしれない。
「でも、ペニーワイズがいないや。あいつはこの殺し合いに来てないのか?」
周囲を見回してみるが、ここにはペニーワイズがいるであろう排水溝は見当たらない。
ペニーワイズ。幼い子供を狙って襲う恐怖のピエロ――ではなく、排水溝に居ついて隙あらばジョージに何らかのものをオススメしてくる変なピエロだ。本来の世界線ではペニーワイズに真っ先に殺されるジョージではあるが、先ほどの回想でも分かるように、”この”ジョージとペニーワイズの関係はもはや腐れ縁と化していた。
ちなみに、ジョージは少なくとも回想で死んでいるというのに何故今生きているかは気にしてはいけない。ジョージはペニーワイズにオススメされた結果、死ぬ。それを何度も繰り返してきた(たまにペニーワイズも死んだりするが)。ジョージはそういう存在なのだ。
「まあいいや。あの時死んじゃったのはあいつのせいだったし」
ペニーワイズがいないことに一抹の寂しさを滲ませながらも、ジョージは思考を切り替える。
このバトルロワイアルの主催者が言うには、最後に残った一人には願いを叶える権利が与えられるという。参加者の中には、それに釣られるか、あるいは別の思惑があって殺し合いに乗ってしまう者も出てくるだろう。しかし、ジョージはそれに乗る気にはなれなかった。
「どうせ最後の一人になっても碌なことにならないでしょ?騙されんぞ」
ジョージはいつもペニーワイズに吐いていた台詞を呟く。
そういった願いを餌にした誘惑は、結局は願いが叶えられることなく最後まで主催者に利用されることになったり、あるいは願いが叶っても当人が望む結末にならなかったりと、最後に待っているのは破滅だ。ペニーワイズにオススメされてそれに応じた結果幾度も死んで来たジョージにはよくわかる。
「それにしても海馬乃亜って、『あの』海馬乃亜だよな。確か遊戯王のアニメに出てた……」
そして、この殺し合いの主催者である、海馬乃亜。彼がどんな人物かを、ジョージは知っていた。何故ならば、過去にペニーワイズに遊戯王のアニメをオススメされ、沼に嵌まっていたからである。
ここで、ジョージはふと気づく。過去にペニーワイズにオススメされたことで得た知識が、生かされていることに。
「ペニーワイズのやつ……」
思えば、これまで本当に様々なものをオススメされてきた。アンダーナイトインヴァースでバティスタを使おうとしていたらミカをオススメしてきたり、B級のサメ映画をこれでもかとオススメしてきたり。時には自炊などの現実の生活に根ざしたことをオススメしたこともあれば、台風の時に外出しないようオススメしてきたこともあった。
ジョージもただオススメされて沼に嵌まるだけでは済まず、ペニーワイズの住む排水溝に物騒なものを流し込んだり、本来の世界線では有り得ないことだがペニーワイズを返り討ちにしたりと、優位に立つこともしばしばあった。何度も喧嘩してきたが、そういった過去があるゆえの腐れ縁なのだろう。
「――見てろよペニーワイズ。今度の殺し合いは絶対に生き残ってやるからな!」
ジョージはここにはいない相手に対して高らかに宣言する。
ペニーワイズに散々オススメされて積み重なった知識は、ジョージの持つ大きな武器の一つとなっていた。
【ジョージ・デンブロウ@ペニーワイズがオススメするシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:黄色いレインコート
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いには乗らない。騙されんぞ、海馬乃亜
1:ペニーワイズにオススメされた知識を駆使して、殺し合いを生き残る。
[備考]
・少なくとも、UNDER NIGHT IN-BIRTH、サメ映画多数、遊戯王デュエルモンスターズについての作品知識を有しています。ペニーワイズに過去にオススメされた物によっては、他の参戦作品の知識も有しているかもしれません。
投下終了します
投下します
「怖い…怖いよ…」
静けさの中で一人の少女の声が響いていた…
彼女の名前は貫庭玉サキ。
彼女もこの殺し合いに参加させられていた
「助けて…しんちゃん…みんな…」
彼の言う『しんちゃん』とは野原しんのすけのことでみんなとは彼率いるかすかべ防衛隊のことである、過去に自分が悪夢によって苦しめられている時、かすかべ防衛隊が夢の中で助けてくれたことがあり、彼らと協力して悪夢に打ち勝つことができた
しかし、今の状況はまさに悪夢…いや、悪夢よりも残酷なものだった…突然乃亜と名乗る男の子から殺し合いをしろと言い始め、それに反抗した二人の少年が殺されてしまった…夢であってほしかった、『悪夢』でもいいから夢であってほしかった…しかし、頬をつねって見ると痛みが悪夢ではなく現実ということを思い知らせてくる
「私…どうなっちゃうのかな…」
自分もあの二人のように殺されるのかという恐怖でおかしくなりそうだった…その時…
「君、大丈夫…?」
声を掛けられ顔を上げて見るとサキは驚愕した…何故なら目の前に自分が知っている人物が立っていたから
「しん…ちゃん…?」
そこには過去に自分を必死になって助けてくれた一人、野原しんのすけだった…しかし、目の前の少年によってそれは崩される
「しんちゃん…?…ごめん、僕はしんちゃんじゃないんだ…」
「…え?」
サキは理解できなかった、確かに服装は見たことない服だったが顔を見るとそれは野原しんのすけと完全に一致していたからだ…しかし確かに一人称が『オラ』ではなく『僕』であることにサキは困惑した
「で、でも顔はしんちゃんと一緒だし…」
「僕の顔と似ている…どうやら君の知っているしんちゃんは僕の知っているしんちゃんと一緒みたいだね」
「ど、どういうこと…?」
「詳しく話すよ」
そして少年は詳しく話し始めた
◆◆◆
「つまり…スンノケシ君はしんちゃんと瓜二つで私が勘違いしちゃってたんだね」
「そういうことになるね…ごめんね、変な期待させちゃって…」
「ううん、私が勘違いしてたのが悪いから」
少年、スンノケシは細かく事情を説明した、自分がしんのすけと瓜二つであること、過去にしんのすけと共にホワイトスネーク団という悪者と戦ったこと…すべてサキに話した
「後スンノケシって名前呼びにくいよね、何かあだ名つけていいよ」
「じゃあ…しんちゃんと名前も似てるし…スンちゃんとか…?」
「あはは、しんちゃんも君と同じあだ名をつけてたよ」
「そうなんだね」
あだ名をつけたりなどスンノケシと会話している間にサキの心は安心感に満たされていた
「それにしても本当にしんちゃんとそっくりだね」
「僕も最初見たときは驚いたよ、こんなこと言うのもあれかもしれないけどしんちゃんと僕の顔が瓜二つじゃなかったらしんちゃんが拐われることもなかったけど、僕と出会うこともなかったんだろうなって思ったら瓜二つで良かったなって思うんだ…しんちゃんのおかげで僕は助かったのも事実だからね」
「私もしんちゃんと出会って色々助けてくれたからね…凄く気持ち分かるよ」
「しんちゃんって…こう…何て言うのかな、優しいから誰に対しても気にかけてくれるんだよね」
「そうだね、しんちゃんはきっと私やスンちゃん意外の人も助けたりしてるんだろうね」
二人はお互いしんのすけに救われたことがある者同士話がはずんだ
そしてスンノケシが唐突にこんなことを言い始めた
「ひょっとしたら…しんちゃんもここにいるのかな…」
「え?」
「あくまでも憶測だけど…僕やサキちゃんはしんちゃんと関わりがある…その僕達がここにいるってことはしんちゃんもいるかもしれないんだ」
「確かに…私達がいるってことはしんちゃんがここにいてもおかしくないかも…それこそネネちゃん達も…」
二人は自分達と関わりがあるしんのすけが連れてこられていてもおかしくはないかもとよんだ
「だったらまずはしんちゃんを探そう!後ネネちゃん達も!」
「ネネちゃん達…?その子達も知り合いかい?」
「うん、ネネちゃん、風間くん、マサオくん、ボーちゃんはしんちゃんの友達で私の友達でもあるの」
「なるほど、しんちゃんと君の友達なら尚更放っておけないね、分かった!その子達も探そう!」
「うん!」
こうして二人はしんのすけ達を探すために共に行動を始めた…
そしてこの時…
(そういえばサキちゃん…)
(そういえばスンちゃん…)
(僕と何処か似ているような…?)
(私と何処か似ているような…?)
お互いこんなことを思っていた…
【貫庭玉サキ@クレヨンしんちゃん】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗らない
1:スンちゃんと行動してしんちゃん達を探す
2:スンちゃん…私と何処か似ているような…?
[備考]
参戦時期は映画「ユメミーワールド大突撃」本編終了後
【スンノケシ王子@クレヨンしんちゃん】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いに乗らない
1:サキちゃんと行動してしんちゃん達を探す
2:サキちゃん…僕と何処か似ているような…?
[備考]
参戦時期は映画「ブリブリ王国の秘宝」本編終了後
投下終了します
記載し忘れましたがタイトルは「悪夢」です
投下させていただきます。
(龍は屈せず…ボクは乗らないぞ!)
高台の上。
青の白を基調とした装束を着用した少年が周辺を見回している。
彼は『ボクト•ツアーニ』という名前で、クライン王国という一つの国の見習い僧侶として修行しつつも家計を助ける為に、わずか9歳でありながらもツアーガイドとして働いている少年である。
嘗て、クライン王国での霊媒術の修行の終了を控えていた日本人•綾里真宵を迎えに来る為に来国していた弁護士の成歩堂龍一を迎えて交流を交わし、無実の罪で裁判にかけられていた時も彼の弁護によって救われた過去がある。
クライン王国では、ボクトが生まれるよりも前に元検事で前女王でもあったガラン•シガタール•クラインによって『弁護罪』という被告人が有罪判決を受けた際、担当弁護士も同じ罪に問い取り締まるという法律が長い間定められ、それによって法廷に立つ弁護人がいなくなり、やがては弁護士が悪人扱される様になった為に、ボクト自身も『弁護士は悪人』という印象を植えつけられていた。
ボクトの無実が晴れてからも国内で愛犬のミタマルと共に成歩堂をサポートし、真宵の無実とオガム•マイニーチェことフォン•ミョウとマルメル•アータムの死の真実を解明する要員の一人となり、同時に脱獄犯のダッツ•ディニゲルやマルメルとその妻であるサーラが弁護罪の制度に抗う革命派の一員であることも明らかになり、やがては民衆達も革命派の味方についていき、に対してデモ活動を行う程に発展した。
その中でガランがまだ検事で、姉である2代前の女王だったアマラがいた建物に放火し、アマラを暗殺したことにしていたことや、アマラの命を狙う賊から身を守る為に彼女から女王の座を譲られてからアマラの夫であるドゥルクに自分の放火の罪を着せた上で弁護罪を制定したこと等、彼女の過去の悪行の数々が明るみになり、やがてはその罪で逮捕され、弁護罪も廃止され、裁判当時に姫巫女を勤めていたレイファ•パドマ•クラインが新たに国の女王となった。
それからのボクトはガランの悪行を暴いたドゥルクの養子であった王泥喜方介や元検事でのドゥルクの息子であるナユタ•サードマディと共に新しい法律事務所を開業する準備を進め、それを開業させた。
日本から訪れていた王泥喜を除いた成歩堂と真宵、そして彼らの仲間達も無事に帰国していき、真宵も漸く綾里家の家元になる事が出来た。
そんな彼はこの場でも革命派の人間がしてきた事と同じ様に、殺し合いに抗い、破綻させる決意を固めて歩み出す。
【ボクト•ツアーニ@逆転裁判6】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(確認済み)
[思考・状況]基本方針:殺し合いに抗い、破綻させる。
1:まずは移動。他に殺し合いに反対する参加者がいるなら行動したい。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
3:“龍は屈せず”
[備考]
※参戦時期は本編終了後。
投下終了させていただきます。
投下ありがとうございます!!
>今日強くなれるなら、明日はいらない
あ、あなたは……ゴンさん……?
ネットミーム出展の癖して、中身はちゃんとゴンなのは珍しいスタンスかもしれませんね。
>家族円満でめでたしめでたし
マリオの映画観てきました。続編があったら、ジュニアも出番があるかもしれませんね。
>この旋律を聴いた者に永遠の呪いあれ
乗ってしまったのか、アンドレア……。
それにしてもこのオルゴールは、マーダーも対主催も問わず何かしらの精神異常をきたす、キチガイレコードみたいなものなのでしょうか。
見てて良い意味で不安になってくるお話でした。
>キス魔
小学生の頃にこんな女の子にキスされたら、その娘の事が好きになっちゃいますよね。
>竜宮殿の王になる為に
かなり悪いタイミングで殺し合いに呼ばれた参加者が多い気がしますね。
メルティもその一人ではあるのですが、その為の手段は択ばないというのは厄介なところですね。
>The beginning of darkness~恥辱~
何が嫌かって、ディオの喘ぎ声が最も一番鮮明に脳内再生されちゃうとこなんですよ。この登場話の中でディオの喘ぎ声だけ、完璧にCV子安で頭に浮かんでしまうんですね。
ヤミちゃんといい古手川唯といい、口で嫌々言ってる奴が一番本当はハレンチなんですよね。
キウルはコンプレックスを刺激されて可哀そう。多分、性癖壊されちゃいましたね。もう戻れないゾ。
>永遠となった子供の話
ピーターパンといえばネズミーランドのイメージがありますが実際はかなりダークな作品だったらしいですね。
そっちを意識しているのか、こっちのピーターパンも中々ヤバそう。
>二分後に君が来なくとも
知恵と勇気でドロテアを退けた写影と桃華はまさしく黄金の精神の持ち主ですね。
それに比べ、このドロテアと来たら悪口言ったら殺すって脅しが、小物感あって好きです。
>ジョージは殺し合いに参加させられたようです
唐突なロワ経験者で草。ただ、二度目以降となると立ち回りもしっかり出来ますし、他作品の情報を得ているかもしれないのは頼もしい。
サメ映画の知識は役に立たなそうですけど。
>悪夢
子供二人からしたら本当に悪夢そのものの殺し合いですね。
でも、そんな二人に共通する希望がしんちゃんっていうのが、流石国民的アニメの主役なんだなと感じます。
>龍は屈せず
タイトル通り、不屈の信念で立ち上がるボクト。
彼が立派な大人たちと出会えたことで真っすぐに成長できたのが伝わってきたお話でした。
感想あざーっす(ガシッ
スレの盛り上げやウィキの編集を怠らないイッチは好感が持てる
投下します
「どうしよう、またへんなことにまきこまれちゃった……」
そうポツリとこぼすのは金髪パッツンの10歳ほどの少女。魔法の世界は銀の城のお姫様、フウカはしきりに首輪を気にしながらトボトボと赤い町を歩いていた。
ことはつい先日、母親に没収されたゲーム機を取り返しに行ったら封印されていた闇の魔女を復活させてしまったことにある。あの時も外れない腕輪をつけられて、謎の遊園地で心と体を殺しに来る闇の魔女・メガイラに襲われた。幸運なことに、巻き込んでしまった頼りになる仲間たちが助けてくれ、数々の殺人アトラクションからメガイラの心の闇とその中にある光に気づき、フウカ自身も光の魔法に目覚めたことで事なきを得た。
しかし、今回はもっと危険な何かを感じていた。
────とここまではマイナーなキャラにありがちな原作あらすじ説明である。
このままでは禁断の登場話二度打ちになるので、詳しくは劇場アニメ『らくだい魔女 フウカと闇の魔女』のホームページを見てほしい。
最近の児童文庫の映像化はかつての読者だった大人をメイン層にしがちであるが、このアニメは本編も60分で内容も子どもに向けたストレートな友情と優しさの物語なので、ぶっちゃけPVを見れば繋ぎぐらいなら書けるし、1時間で把握もできる。もちろんめちゃくちゃ面白い。
更に原作本を読めばより詳細なバトルの水準や設定を理解でき、元となった原作での2巻までは新装版で本屋さんに並んでいるので入手も容易だ。
コマーシャルもねじ込めたので本編に戻る────
「あのノアって男の子、メガイラと似てる感じがした。つらくて、かなしいって気持ち……あの子もメガイラみたいに……?」
この前の冒険を通しての成長がフウカにそう感じさせる。
奇しくもメガイラの境遇は、長年一人だけの世界にいるしかなかった故の孤独から狂気に染まり、その狂気を向けた者たちの友情と結束を見たことで人の優しさと温かさを取り戻したというもの。
それはかつてアルカトラズで遊戯たちに破れ人間として死んでいった乃亜と重なるものだ。
だからだろう、ノアからはメガイラと同じものを感じずにはいられなかった。特殊な境遇であるがゆえに、纏う空気や言動まで似通うのかもしれない。もちろんフウカにそこまでのことがわかるはずもないが、ただ豊かな感受性が直感としてノアの歪められた心を感じていた。
「ノアも同じなのかも。いったい、どんな子なんだろう。あ、そうだ。」
相手のことを知ることは、相手のしたいことを知ることに繋がる。なにかノアのことがわかるものはないかと考えたところで、気がつけば自分の近くにあったカバンに思い至る。あまり最初の話をしっかり聞いていなかったが、たぶんこれはノアからのアイテムとかだろうと思って開けてみた。
中身はあまり面白みのないものだ。タブレットはなんか高機能そうだが、他は質は良さそうだけど高級そうには見えない文房具に、水と食べ物。殺し合いというよりはピクニックみたいな用意だが、それなの陰にあったものを引きずり出した時に唖然とした。
「うわぁ、きゅうに大きくなった! 魔法がかかってたんだ。」
「で、これって……土の入った、ふくろ?」
出てきたのは土嚢だった。水害が起きたときとかに川に積まれる馬鹿でかいタイプのあれである。
なんだってこんなもんをくれたんだろうとフウカは困惑する。もしかしたら中に何か特別なものが入っているのかもしれないが、パッと見は単なる土嚢である。
「ほ、ほかにもなんかあるよね! えっと。くだもの?」
次に出てきたのは、いわゆる『悪魔の実』というものである。ちなみにちゃんとなんの実かも書かれた紙が貼ってあったのだが、土嚢を出すときにどっかに行ってしまっている。
いったいこれはなんの果物だろう、なんか普通じゃなさそうだし美味しくもなさそうなのでとりあえずカバンにしまうことにした。
「ほ、ほ、他にもなんかあるよね! 土とくだものだけってわけじゃ……きゃっ!」
「クソっ、ハズした。」
カバンにしまうために屈んだことがフウカの命運を分けた。頭の上を何かが通り過ぎっていった。思わず尻餅をついて見上げると、背後にあった土嚢の外側に何か鉄っぽいものが突き刺さっている。それがクナイという武器だとはわからないが、それでも聞こえてきた声からわかる。
自分は今、攻撃されている!
「あ、あなただれ!? もしかして、あたしを襲ったのって。」
「え、そりゃ、そうだよ! オレだよ!」
「な、なんでなんか投げたの?」
「そりゃころ、殺すためだよ。」
「ええっ!? じゃ、じゃあ殺し合いに乗ってるの?」
「いや、乗ってるわけじゃ、いや、乗ってはいるんだけど、ああもう調子狂うな! とにかく今からお前殺すからな!」
「そんなのやめようよ! なんでもするからゆるして!」
「そんなこと言われても……ん? 今何でもするって言ったよな? じゃあお前、なんでもいいから知ってることを話せ。あのノアって奴のこととか、誰かと会ったとか。」
「なんでもいいから知ってることって言われても、会ったの君がはじめてだよ。」
「お前使えねえな!」
「そんなこと言わなくたっていいじゃん! カバンの中見てたんだもん!」
「じゃあもう何が入ってたか話せ!」
「これと! これ!」
「どれだよ!」
「だから! この土と! くだもの!」
「土と果物!?」
半ギレになってフウカは後ろの土嚢とカバンから取り出した悪魔の実を見せる。既に襲われたことは頭から半分消えて、変なものを渡された挙句知らない男の子にバカにされた怒りでムキになっている。
「ほら、これ! このおいしくなさそうなくだもの! あとは文房具と水と食べ物とタブレットだよ!」
「お前……」
なのでカバンを持って男の子の前まで行き広げてみせる。それを見て、男の子ことうちはオビトは毒気を抜かれた顔になった。
まさか手に武器を持つ自分の間合いまで入ってきて、ムキになってカバンの中身を見せてくるとは。その気になれば次の瞬間に、このクナイを首に突き刺せるというのに。
「お前バカなんだな。」
「なっ! バカって言う方がバカなんだよバカバカバカバカ!」
写輪眼を解除して呆れて言うオビト。更にムキになるフウカを前に、気がつけばクナイをホルスターに戻していた。
「わかった、俺がわるかったよ。ゴメンなさっきは突然襲って。落ち着いて話聞かせてくれればいいからもう。」
「ウルルル……」
面倒くさくなって宥めて話を聞くことにする。なおも威嚇の声を上げるフウカを丸め込もうとする声からは殺気が消えていることに、フウカは気づいていてもオビト自身は気がついていなかった。
「クソっ、何だったんだ、さっきの。あれも幻術なのか? それともこっちが幻術か? チクショウ! 頭もおかしくなっちまったのか!?」
バトル・ロワイアルの会場に解き放たれた当初のオビトは混乱の真っ只中にあった。
昇進したはたけカカシをリーダーに野原リンとのスリーマンセルで挑んだ任務で命を落とした。と思ったらなぜか生きていた伝説の忍うちはマダラに助けられ、体の半分をこれまた伝説の忍千住柱間の細胞を移植することで再生、リハビリした。と思ったら今度はリンがカカシに殺されるところに遭遇、その場にいた霧隠れの忍共を殲滅したと思ったらあのノアとか言う奴に殺し合えと言われていた。
あまりに色々起こりすぎて自分が何か幻覚を見せられているのではと疑ってしまう。彼の一族でも限られた者が持つ万華鏡写輪眼ならばこれほどまでに精密な幻覚も見せれることもあり、今のこの現状が果たして真実なのか自信がない。
「どっからが幻術だ? そういや、リン達のところに行くときに変なのが見えたけど、アレからか?」
「だったらヤバい。早く解かねえと。でもどうすればいい? 言われたとおりに殺せば解けるのか……」
悩むオビトだったが、忍特有の感覚が微かな振動を捉えた。今の彼は裸足なのもあり、フウカが土嚢を出したときの振動を逃さず感知したのだ。
町のビルや家の屋上を跳ねるように駆ければ、直ぐにフウカを見つけられた。写輪眼で確認してみる。変わったチャクラだが、中々の量を持っていそうだ。おそらく忍だろう。
「……気づくなよ。」
まるで素人のように口に出して言う。手の震えが止まらない。とりあえず一人殺す、殺して幻術か確かめる、どうせこのあたりに火の国の民間人はいない、そう思ってるのに、体が言うことを聞いてくれない。
「クソっ、似てねえだろ全然! 全然リンには! 髪の色ぐらいじゃねえか!」
ここに来る直前、自分が持っていた死体の重さを感じてしまう。片思いの相手は、自らライバルに殺されることを選んだ。あの光景は夢なのか現実なのか判然としなくても、あの感触、あの重さは真実である。
もう一度フウカを見る。変なくだものを引っ張り出している彼女の金髪が目につく。前髪パッツンの髪型など彼女には似ていないのに、ただ金髪、金髪であるだけで震えてしまう。
(当たれっ!)
オビトは振り払うようにクナイを投げた。これ以上彼女を見ていると自分の中の最後の何かが壊れてしまいそうになる。
「──っていうことがあったから、ノアもメガイラみたいな……って聞いてる?」
「……ああ、悪い、少し考え込んでた。」
フウカの声でオビトは我に返った。
あのあと結局オビトはフウカを殺すことができず。なし崩し的に情報交換となっている。その過程で彼女が忍界とは別の魔法の国なるところで暮らしていることを知り、完全に殺すタイミングを逸していた。辺境の方では忍術とはかなり毛色が違う術もあるらしいので、そういうものだと納得する。フウカが風の魔法を使ってみせたことで、それを風遁の変形だと認識したため勘違いが拡大していた。
「オビト、だいじょうぶ?」
「……! ヘーキだって! ほら、それよりお前の仲間について聞かせてくれよ。」
フウカに顔をのぞき込まれて慌ててごまかす。どうしても、彼女の姿が死んだリンに重なる。そして金髪の風遁使いというのが、師である波風ミナトを思い起こさせる。
気がつかないうちにフウカを殺せなくなっていることに無自覚なまま、オビトは心をかき乱され続けていた。
【フウカ@劇場アニメ らくだい魔女 フウカと闇の魔女】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1、土嚢@現実、悪魔の実(不明)@ONE PIECE
[思考・状況]
基本方針:まきこまれてる子たちといっしょににげる。
1:オビトと話す。
【うちはオビト@NARUTO─ナルト─】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:とにかく情報集めて幻術かどうか判断する。
1:フウカと話す。
投下終了です。
タイトルは『フウカと火の国の英雄』になります、
投下します
結論から言うなら、桐森蘭と言う少女は殺し合いに乗った。
桐森蘭は元々、ごく普通の中学一年生だった。
シングルマザーの家庭で育った彼女は、母を慕うごく普通の少女だった。
しかし少し前、彼女の母親は桐森岳士という男と再婚した。
蘭は彼が出会った時からどうにも嫌だったが、母があまりにも幸せそうだったため何も言えず、再婚を祝福。
だが結婚後すぐに、母は練炭中毒で亡くなってしまった。
表向きは自殺と言うことで片付いてしまったが、蘭は新しい父親である岳士を疑い調べる。
その結果、彼は結婚詐欺で訴えられていた上に、保険金殺人をしていた可能性があることが分かる。
これを見て、彼女は母の仇が岳士だと確信。
どうにかして仇を討つ、と決めた――
――ところでこの殺し合いだ。
最初の乃亜が見せた死者を生き返らせるデモンストレーションを見て、蘭は迷った。
何せ、敵討ちをしても母は生き返らないが、この殺し合いに勝ち抜けば母が生き返るかもしれないのだから。
しかし、人殺しの父親相手ならいざ知らず、恐らく何の罪もないであろう、自分より年下と思われる子供たちを手に掛けるのには大いに抵抗があった。
それでも彼女は殺し合いに乗った。
もう一度、母と会いたかった故に。
そして彼女はランドセルから銃を取り出し、構える。
銃なんてテレビぐらいでしか見たことなかったので、お世辞にもちゃんと構えてるとは言い難い。
それでも必死に構えながらしばらく歩いていると、一人の少女と出会った。
長髪を結わえ、和服に刀を腰に差したその姿は、まるで侍だった。
蘭がその少女を見た瞬間、彼女は異様な恐怖に襲われた。
目が、異様だった。
淀んでいた。死んでいった。狂っていった。
バン
だから撃った。
だが弾はあらぬ方向に向かい、侍の少女に命中することはなかった。
蘭が侍に恐怖していると、次の瞬間信じられないことが起こる。
ドン
蘭が銃の引き金に引いた直後、侍の少女が眼前に刀を抜いて現れていた。
さっきの轟音は侍が地面に踏み込んだ音だと、蘭には分からない。
分かるのは、自分がこれから刀で斬られるという未来のみ。
そしてその未来は現在となる。
「う、あぁ……」
侍に斬られ、首から血を流し倒れる蘭。
そんな彼女の元に侍は近づき、刀を構える。
「何か、言い残すことはあるでござるか?」
侍が問う。
これから死にゆく彼女にせめてもの慈愛とばかりに、少女はただ言葉を掛ける。
しかし、蘭に応える余裕はない。
血を流し、死に向かい続ける彼女はもう、侍の事は目に入らない。
彼女が最期に思うのはただ一つ。
「おかあ、さん……」
蘭が生き返らせたかった、母の事のみ。
どっ
それを聞いてどう思ったのか、侍は蘭に刀を突く。
もうこれ以上苦しまぬようにと、止めを刺す。
【桐森蘭@金田一少年の事件簿 死亡】
◆
桐森蘭を斬った侍の少女、月鍔ギンコの気分はあまり良くない。
彼女は侍として生き、死ぬことを望みながら育った少女である。
そんな彼女は関ケ原の戦いに西軍の先鋒隊として参加した。
先鋒隊の役目は捨て駒、しかし彼女は望んで参加した。
武士として、侍として、誇りをもって戦いの中で死ぬために。
それが彼女の望みゆえに。
だがギンコは生き残ってしまった。
戦の最中で受けた鉄砲の弾の当たり所が良いのか悪いのか、彼女は気絶し、そのまま戦が終わってしまったのだ。
彼女は絶望した。
同じく参加した先鋒隊は皆、自分が望む死に様を魅せたのに、彼女だけがおめおめと生き残ってしまったのだから。
それから一年、ギンコは辻斬りまがいにあらゆる侍に立ち合いを申し込み続けた。
全ては戦いの中で死ぬために。
しかし百の侍と立ち合って彼女は全戦全勝し、生き残り続けた。
ついにギンコは仏に縋った。
人を沢山斬った己が地獄の炎に焼かれる覚悟をしていると。
ただ戦いの中で死にたいと。
赦されなくてもいい、ただ敵が欲しいと。
いっそ地獄の世にでも連れて行ってくれと。
そこで連れてこられたのがこの殺し合いだ。
最初は驚きつつも歓喜した。ここでなら己の理想の死に様を魅せることができると。
しかし、乃亜がルフィとエースを殺したのを見て、ギンコの考えは変化した。
別に、自分の様に戦いを求める人間が殺し合いに呼ばれるのはいい。
あるいは、乃亜の語る「どんな願いを叶える」という言葉を信じ、欲して戦うのも悪とは思わない。
だが戦意を持たない子供を無理矢理呼びつけ、戦いに駆り立てるようなギンコの中の侍としての義侠心が許さなかった。
故に戦いの中で死にたいと言う望みはそのままであるものの、彼女は生きている限り、乃亜の討伐を目指すことにした。
とりあえずランドセルという見慣れない鞄を調べると、中から出てきたのは見たことのない程業物の刀。
こんなものを某が使っていいのか、と一瞬思うも、武器が無ければ戦えないので、彼女は大人しく腰に差した。
すると、鉄砲を構えた少女が現れた。
ギンコすれば見たことのない形だが、そもそも彼女の中で鉄砲は異国の武器だ。
ならば見たことのない形のものもあるだろう、と彼女は考える。
そしてそんなものを構え撃ってきた時点で、視界に映る少女は敵だった。
だから斬った。
構えているだけなら殺し合いに恐怖しているだけかもしれないと思い、守ろうと思い落ち着けようとしたかもしれない。
だが敵である以上、ギンコは斬った。
そのことに後悔はない。
ここは戦で、鉄砲を構えた少女は斬るべき相手だった。
だが止めを刺す時、少女の死に際の言葉がただ母を求めるだけだったのが、ギンコは酷くやりきれなかった。
【月鍔ギンコ@異世界サムライ】
[状態]:健康
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世(アニメ版)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:侍として戦いの中で死にたい
1:生きている限りは乃亜討伐を目指す
2:殺し合いに乗っているのなら誰であろうと斬る。戦意のないものは斬らない
3:無力な童はなるべく守る
[備考]
※参戦時期は1話、仏に「いいよ」と言われる直前です。
※桐森蘭の遺体とランドセル、サタンの銃@ドラゴンボール が会場のどこかに放置されています。
【サタンの銃@ドラゴンボール】
桐森蘭に支給。
ミスター・サタンが魔人ブウ退治の為に用意した銃。
45口径らしい。
【斬鉄剣@ルパン三世(アニメ版)】
月鍔ギンコに支給。
白鞘に納められた日本刀であり、切れないものはないとされる業物だが、実は作中において結構いろんなものが切れなかったりする。
投下終了です
投下ありがとうございます!
私も投下します。
「やってくれたね、海馬乃亜……!」
黄色い制服を着た小柄な少年が強い憎悪を込めた声を放つ。
少年の名は、肉体は加納マルタンという。その精神はユベルと呼ばれる精霊に乗っ取られていた。
現にその左腕は人ではなく、龍の鱗に包まれ鋭い爪を持つ歪な物へと変貌している。
「確か、僕は十代とのデュエルをしていた……。愛し合っていたんだ。
だが途中から、ヨハンとかいう泥棒猫が割り込んできた……」
この殺し合いに呼ばれる直前、ユベルは遊城十代とのデュエルに臨んでいた筈だった。
その後、ヨハン・アンデルセンの乱入もあり2VS1の変則デュエルへと移行し、ヨハンにレインボー・ドラゴンを召喚された。
そこまでの記憶ははっきりしている。
「異世界から、どうやって僕を呼び寄せたんだい……? そう易々と、次元の壁は超えられるものではない筈だけどね。
でも、流石は海馬コーポレーションといったところかな? あの会社なら、次元を超えるテクノロジーを保有してもおかしくはない、か」
幼少期の十代に憑りつき、そのデュエルの対戦相手を次々に意識不明の重体に追い込んだことが原因で、ユベルの媒体でもあるカードを海馬コーポレーションのロケットに搭載され宇宙に打ち上げられた過去がフラッシュバックする。
その首謀者たる海馬瀬人曰く、カードに宇宙の波動を当てるといった馬鹿みたいな計画だったらしいが、肝心のユベルの乗ったロケットは地球に墜落した。
当然ながら、いくら鉄の塊といえど大気圏の突破に墜落したロケットが完璧に耐えきれる訳がない。それに搭載されたユベルも灼熱の中で苦しみ、肉体を失ってしまった。
そして次は、海馬という姓を名乗る乃亜からの殺し合いの強制だ。ユベルに対しこうも毎度阻んで来るのであれば、嫌でも意識するしかない。
「どうやら、あの会社は余程僕と十代を引き離したいと見えるね……。こうなった以上、乃亜も海馬瀬人も……永遠の闇に葬り去ってやるよ」
方針が決まったとして、問題はそこに至るまでの過程だった。
殺し合いに乗ることは構わない。この場を痛みと苦しみで満たし、そしてその屍を愛しい十代に見せ付ければ赤の他人とはいえ、十代もそれなりには苦しんで、胸を痛めてくれる。愛を与えることが出来る。
そして、十代はユベルに同じように痛みと苦しみを与えてくれるだろう。それが愛し合うということ、ユベルはそう考えていた。
「優勝しても良いんだけど……でも、首輪(こいつ)を外された方がキミも屈辱だろう?」
優勝は最後の手段として、殺し合いに逆らわれたといって今すぐ首輪を爆破する程、極端な事には走らないだろう。大人びてみせているとはいえ、根っこは子供である為、思い通りに行かず癇癪を引き起こす可能性もなくはないが。
「……屈辱、それはキミにとっても苦痛だよね。良いよ、キミにも愛を与えてあげるよ。痛みを味合わせてあげる。そして、心の闇を頂くよ。十代と愛し合う前の腹ごしらえ位にはなって貰わないとねぇ」
より苦痛を与えられるのなら、それを選ぶ方がより愛が深まる。心の闇もより上質で良質な物へと変貌するだろう。
優勝にしても殺し合いに打破にしても、相応に消耗するのが想定される。それならば、乃亜の心の闇を深める事で消耗したユベルの体力を回復出来るよう、敢えて逆らうのも一興だ。
「随分、物騒なことを言うのねぇ? 痛みだとか苦痛だとか……」
「……誰だ」
独り言が過ぎてしまったらしい。一人の少女が腕を組みながら近寄ってきていた。
「メズールよ。見ての通り、殺し合いに巻き込まれた参加者ね」
青い服を着た、中学生程の女の子だった。だが容姿とは裏腹に口調は艶めかしく、その外見には見合っていない。
恐らくはユベルと同じように、真の姿ではないのだろう。それが他者への憑依が解けない為なのか、あるいは容姿そのものを変化させているのかユベルには判断が付かない。
だが、間違いなく目の前の少女は人ではない別の存在の気配を感じた。
「おや、すんなり名乗ってくれるとはね。じゃあ、僕も名乗らせてもらおうか……肉体はマルタン、精神はユベルという」
「その言い方、体と心がまるで別人みたいじゃない」
「生憎と、どこかの狂った独裁者が立ち上げたふざけた計画のせいで、僕自身の肉体は大きく欠損してしまっている。だから他人の体を拝借しているんだ。
ある程度再生は済んだけど、どうやらこの場ではマルタンの体から僕が離れる事は出来ないらしくてね。だから、マルタンかユベルか名乗るのに迷ったという訳さ」
「それは災難ね、ユベルの坊や。ところで貴方の支給品でこんなメダルはないかしら?」
メズールの手には一枚の青いメダルがあった。金色の縁に、サファイアのような蒼い円状のクリスタルのようなものが収まった、シンプルなデザイン。
一目で特異な力が宿っているのが見て取れる。
「……もし、それを持っていて、でも譲らないよ……と、言ったら?」
「そうねぇ。考える時間をあげるから、口で解決する間に改めた方が良いんじゃない?」
「慈悲深いじゃないか、その優しさに報いてあげたいけど……残念ながら、そのメダルは持っていないんだ。力づくで確認して貰っても良いけど、時間と労力の無駄さ」
メズールは内心で舌打ちする。
グリードは9枚のメダルを揃える事で完全体となる。よって、人が生命活動を維持するのに食事を必要とするように、グリードもまた己のメダルを集めることを優先する。
乃亜がそれを把握した上で、メズールを殺し合いに放り込んだのなら、当然メズールのメダルを参加者に支給するはずだ。何故なら、そのメダルを奪うという理由が生まれ、メズールが別参加者と交戦するきっかけにもなる。
殺し合いを促進させるという点では、グリードはこれ以上ない適任者ではあるだろう。
当のメズールからすれば冗談ではないし、幼い容姿を利用しているとはいえ小学生扱いも気に入らないが。
「……飢えているんだね」
「なんですって?」
「飢えている。欲に……そのコインは欲の証のようなものかな。分かるんだよ。キミの欲する欲望がさ。
でも、満たされないんだね。表面をなぞってはいていても、それは本物の欲の渇きを潤わさない。真似事をしているだけさ、子供のままごとと同じだよ」
「……言うじゃない、坊や」
ユベルは不遜に笑い、ランドセルに手を伸ばした。その先にあるのは乃亜から支給された物、恐らくは武器だ。
「貴方……!」
メズールは即座に身構え、姿を人間の擬態から本来の怪人のものへと変化させる。
魚のような魚類系の姿でありながら、人と同じ二本の足と腕を持ち、この地球上の海の生物の特徴を持ちながら、地球上のどの生物にも分類されない異形の存在。
「坊や、それ以上は正当防衛としてこっちも抵抗するわよ」
「落ち着きなよ。その青いメダルは知らないけど、これもキミの良く知った物じゃないかな?」
ランドセルから引き摺りだされた一つのガジェット。
中央に丸いガチャガチャのカプセルのような物が付けられたベルト、仮面ライダーバースへ変身できるベルトだ。それと無骨なミルクタンク、その中からは大量の金属が触れ合う音が鳴り響く。
「この玩具はキミが持っていた方が有効に使えるんじゃないかな? あげるよ」
ユベルはベルトをメズールに投げた後、タンクを横に倒し蹴り飛ばす。
「……」
メズールはベルトを掴み、タンクを足で踏み受け止める。
(セルメダル……少なくはない量ね。これを取り込めば、それなりには戦えるわ。それにバースのベルトも悪くない)
怪人の姿から、擬態の人間の容姿へと切り替える。
乃亜に殺し合いの宣言を聞かされたあの場に集められた時に居たのは大多数が子供、そして支給されたこのランドセル、悪趣味な話だが参加者の選定条件は子供だ。年齢も問わず、恐らくは容姿が幼ければ子供として判断されている。
その為に、元の怪人の姿で長時間いることが出来ない。ただ姿を変えただけだというのに、異常な程に消耗してしまう。先ほども交戦の予感がし姿を変えたが、それだけでもかなりの負担であった。
バースのベルトがあれば、グリードの力がなくともある程度は戦う事も出来る。
「ユベルの坊や、一つ確認しても良いかしら」
タンクを立て、蓋を開けそこから一枚のセルメダルを取り出す。
「……」
もしも、ヤミーを生み出せれば手駒としては有用だ。特に殺し合いという場では死にたくないという欲を利用し、セルメダルも大量に稼げることだろう。
「……何かな?」
「いえ……いいわ」
だが、今ユベルからヤミーを生もうとしても何の反応もない。人間ではないからか? いや、それ以前に力そのものが発動しない。無効化されていると考えるのが妥当だ。
「青いメダルも探しといてあげるよ。きみはきみで好きに動くといいさ」
「何を狙っているの? 私にしかメリットがなくて不気味なくらいよ」
「恩を売っておこうと思ってね。殺し合いを破綻させ、乃亜に苦痛を与えられるならそれでも良し、もしそれが不可能なら優勝してこの場の参加者達を血祭りにあげて生還するも良し。
きみが殺し合いに乗るかどうかは分からないけど、どっちに転んでも僕には損はないじゃないか。それにきみの飢え方は、とても見ていて不憫だったからね。僕としても、何か恵んであげなくちゃと思ってしまったんだ」
ユベルの脳裏を過るのは非常食という言葉。
満たされぬ欲望を満たすために藻掻く怪人、これ以上ないほどに心の闇を深めてくれそうではないか。それは本人もさることながら、その欲を満たすために犠牲にされた人間の闇も。、
だから、ここで支給品を消費して仕込んでおくのも悪くはない。
「……良いわ。何を企んでいるか分からないけど、乗ってあげる」
バースのベルトを強く握り締め、罠であることも覚悟しながらユベルの思惑ごと利用することを決意する。現状、そこまで選択肢もない以上、このベルトを捨てる理由もない。
―――――キミにも愛を与えてあげるよ。痛みを味合わせてあげる。
ふと、ユベルがメズールに気付く前に呟いていた事を思い出した。
「ねえ、貴方は誰かを愛しているの?」
「……藪から棒だねぇ。もしかして、きみが欲している欲望というのは愛なのかな?」
「気紛れよ。でも、愛というのは痛みとは反対のものでしょう? 貴方の独り言を聞いて気になったのよ」
「なるほど、人でない故に人の愛を理解できないんだね。可哀そうに……良いよ、教えてあげる……愛は痛みなんだ……」
反論が出来なかった。知識としてメズールは愛を知っている。そして、愛のグリードであるが為にそれを求めてもいる。だが、求めるが故にメズールには本当の意味で愛が分からない。
子供のようなガメルに母親のように振舞い、女慣れしてない真木清人にそれっぽく翻弄してみせてもいるが、全ては真似事、ユベルの言っていたようにままごとでしかない。
だから、愛が分からない。愛という欲望を満たすためにメダルを集め、完全復活を果たしたとしても……愛し合っている親子を襲い、幽閉し愛を感じながらもやはり満たされぬまま、世界を欲望のまま食い尽くし全てを破壊する。
人間にとって、何よりも身近で、考えるまでもない愛を理解することは永遠に叶わない。
「僕はずっと苦しんできたんだ。十代にロケットに幽閉され宇宙に飛ばされ、そこから更に地球に突入した時……逃げ場のない鉄の檻の中で、全身を焼き尽くす灼熱と苦痛の中でずっと問いかけていたんだ。
どうしてこんなことをするのって? でも、気付いたんだ。十代は僕が好きなんだよ。だって、僕は苦しんでいる間ずっと十代を忘れる事はなかった。絶対に忘れる事のない痛み、それは愛なんだって……」
「痛みは……愛の形……?」
「ねえ、メズール……きみには居るのかな? 胸が張り裂けそうなほど恋焦がれ、そして同じような苦しみをくれる相手が……居るなら名前を言ってごらんよ。僕には居るよ」
「……」
「遊城十代……誰よりも愛していこの世界で、全宇宙で……何よりも最も愛おしい人……。
メズール、愛というものは一人では成立しないんだ。愛し合う事こそが、痛みを与え与えられる事、傷つけあう事こそが……愛なんじゃないかな?
きみも探すと良いよ。きみが愛し、そして愛し返してくれる人を……愛とは二人で作り築き上げていくものなんだから」
これまで、愛という概念を考えてこなかった日はメズールにはきっとなかったことだろう。
だからこそ、メズールは改めて聞かされた愛の解釈に驚嘆もした。
自分一人では成立しない愛という欲望に、グリードは如何な末路を辿ろうとその身が滅ぶか滅ぼされるか、最期は所詮一人でしかない。
「……そう、面白い話を聞けたわ。愛の多様性についても考えなくちゃね。マゾヒストの同性愛者のホモだなんて……グリードよりも欲張りじゃない」
「フフフ……きみも愛を見付けられる日が来ると良いね。……さよなら、また機会があれば会おうよ」
メズールは踵を翻し、背を向け段々と遠くなるユベルの後姿を見つめ続ける。
一人では成立しない愛という解釈、それはまるでグリードである己を否定されているようだった。
【ユベル(加納マルタン)@遊戯王デュエルモンスターズGX】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:十代、愛してるよ。
1:まずは乃亜に反抗する方針で動く。乃亜に屈辱を与え、心の闇を深める。無理そうなら優勝狙いに切り替える。
[備考]
参戦時期は130話内でレインボードラゴンが召喚されて以降、ユベルがマルタンから離れる以前。
制限によりユベルはマルタンから離れられず、肉体が死ねばユベルも死にます。当然、ユベルの精神が死んだ場合、肉体も死にます。
ユベルのダメージ反射は、一定ダメージ以上で反射しきれず無効化されます。能力行使だけでも負担は大きいです。
【メズール@仮面ライダーオーズ】
[状態]:健康
[装備]:バースドライバー&セルメダルの入ったタンク(容量100%)@仮面ライダーオーズ、青のコアメダル(シャチ、ウナギ、タコ各種×2、計6枚)@仮面ライダーオーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]基本方針:欲望を満たす。
1:自分のメダルを探す。殺し合いに乗るかはまだ保留中。
[備考]
参戦時期は45話の完全復活直前。
怪人態への変身は、負担が大きくなっています。ヤミーの生成も不可能です。
コアメダルも一度没収され、再支給されました。支給品一つ分の扱いです。
【バースドライバー&セルメダルの入ったタンク@仮面ライダーオーズ】
仮面ライダーバースに変身可能となるベルト、一度の使用で12時間使用不可能。
セルメダルは消耗品の為、手持ちのセルメダルを使い切った場合も使用不可能となる。
【青のコアメダル】
シャチ、ウナギ、タコ 各種3枚、合計9枚集める事で完全体へと変身可能。ただし完全体になっても液状化して首輪を外すのは不可。
投下終了します。
また感想は後ほど投下します。
投下します。
「ぐぐぐ……あの乃亜とかいう餓鬼、このおれに気付かせもせず、首輪を嵌めるとはな」
鬼が人語を発していた。
二階建ての家屋を優に超える巨体、人の肌ではない紫色の異形の皮膚、真紅の双眸、頭部のより盛り上がる背中の突起から生える白の毛髪、鋭利に生えた三本の爪。
そして、頬まで裂けた口を歪ませながら幾本もの牙を光らせ、その鬼は器用にも人の言葉を巧みに操っている。
その巨体の背に蜘蛛の痣を持つ鬼、悟心鬼は愉快気に呟いていた。
「餓鬼ばかり集めた殺し合いにおれを放り込むとは、このおれが奈落から生まれて間もないからか?」
実年齢0歳である悟心鬼は、当て嵌めてさえしまえば、確かに子供とも言えなくはない。
もっとも、それなら同じく奈落から生まれた妖怪である神無の方が、年齢容姿共に子供同士の殺し合いには適しているとも悟心鬼は思う。
だが所詮、神無もそして次女であり悟心鬼の姉上でもある神楽も、この悟心鬼が生まれるまでの前座でしかないと、自負していた。
ならば、乃亜は特別期待を掛けて、自らを選定したのだろうと納得した。
「いいだろう。餓鬼ども、全員喰い尽くしてやる。おれは、大食いだからな」
既に、悟心鬼が転送された地点の周辺一帯は悟心鬼によって破壊され尽くされており、悟心鬼は何の躊躇いも持たず殺し合いを楽しむことを優先した。
妖怪として産まれたのならば、自らの爪で、牙で、人間を引き裂き喰う楽しみを味わう事に迷う理屈などない。
乃亜という子供に強制されたことと、相手が子供だけというのに不服はあるが、殺し合いを果たして皆殺しにしたあと願いとして、もっとこの悟心鬼が楽しめる狩場を作らせるのも一興だろう。
――――超々超音波振動子(パラダイス=ソング)!!
「無駄なんだよ。ぐぐっ……貴様の攻撃なんぞお見通しさ」
「こ、の……アンタなんかと遊んでる暇なんてないのに!!」
電子戦用エンジェロイドタイプβ ニンフ。
感情制御及び電算能力に特化したが故に低い戦闘力を持つニンフであるが、あくまでそれは対エンジェロイドを想定しての場合。
ただの人間や動物程度ならば、容易く徒手空拳で屠れるほどの膂力を誇り、先ほど口から放った超音波攻撃も同様に通常に生き物に直撃すれば命の保証はない。
「ぐぐぐ……なまじ電算能力とやらが高いのが災いしたな。アストレア(デルタ)とかいう馬鹿なら、おれも少し危なかったかもしれんが……お前の心は非常に読みやすいな」
「舐めるんじゃないわよっ!!!」
もう何度目かも分からない超々超音波振動子を悟心鬼は涼しい顔で避ける。対してニンフの顔には焦りが見られ、その全身にも浅いとはいえいくつもの擦り傷が作られていた。
ニンフの視界から悟心鬼が消える。その僅か一秒にも満たぬ間に突風のようにニンフの死角へ回り込み、その巨体が誇る剛腕を容赦なく振るう。投擲物のように、呆気なくニンフは吹き飛ばされ地面に叩き付けられた。
「ニンフさん!?」
二人の戦闘を見ていたこの場に居るもう一人の少女、ベッキー・ブラックベルが悲痛な声で叫んだ。
彼女は殺し合いが始まってからすぐ、ニンフと遭遇した。
ニンフはやけに焦った様子ではあったものの、殺し合いに乗った訳ではなく、そのままベッキーに対しいくつか意味の分からない質問、ここに連れ去られる前に周りの人間や建物が消えていないかだとか、
挙句の果てに何年の何月か覚えているか等、妙なことを聞かれた程度で、それでも比較的有効な関係を築き上げていたところで悟心鬼の襲撃に合う。
そのままニンフと悟心鬼の戦闘へと突入し、ベッキーは巻き込まれないよう彼女の奮闘を見守るしか出来なかった。
「来ないで!」
「で、でも……」
「私なら、大丈夫よ」
「ぐぐぐ……強がっているな? 分かるぞ。勝ち目が全くない、せめて仲間のエンジェロイドが居れば……だがお前の仲間がこの殺し合いに居ることはない。
容姿も年齢も子供ではないから、そうだろう?」
「……ペラペラと、人の心を読み上げるなっ!!」
再度、超々超音波振動子を放つ。地面を抉り音速で悟心鬼の顔面へと吸い寄せられていく。
戦闘向きではないにしても、異常気象で引き起こされた竜巻を一撃で消し飛ばすほどの高振動波、その速度は優に音速に匹敵する。
しかし、弱点としては攻撃としては直線的すぎる。何処に撃つか分かってさえしまえば、ある程度の素早い相手ならば避ける事はそう難しくはない。
もう一つ、使い手あるニンフが電算能力特化であるために、どうしても攻撃の前に思考してしまう。何処を狙い、どう当てるか、”考えて”計算してしまう。
これは心を読む悟心鬼にとって、これ以上ないほどの好相性の獲物といっても過言ではない。
「百年やっても、おれにはそんなもん当たらないんだよ!!」
心を読み、攻撃を先読みする能力。
それに加えて、本来の正しい歴史においては本調子ではないとはいえ、大妖怪の血を引く犬夜叉の動きを完全に見切り、一度放てばあらゆる敵をもほぼ完封する風穴を持つ弥勒すらも、それを使わせる前に殺せると断言するほどの速さ。
(はや――――)
その速さはエンジェロイドのニンフですらも瞬発的な地上戦では出遅れるほど。
一瞬で肉薄し、その眼前に悟心鬼が迫ってきていた。
「終わりだ! 安心しろ、ベッキーもあとで会わせてやるよ! おれの腹の中でな! ぐぐぐ……!!」
そして何より、最強の妖であったといっても過言ではない、犬の大妖怪の牙から鍛えられた妖刀鉄砕牙を噛み砕く強靭な顎と、それを可能にする鬼の牙。
エンジェロイドの装甲であろうと、鬼の牙はまるで紙屑のように容易くそれを食いちぎるだろう。
(い、いや……私はまだ――――)
大きく開かれた鬼の顎を見ながら、ニンフは数秒先の自分の無惨な姿を想像し、絶望の淵へと沈んだ。
「けんかは、だめ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
凄まじい爆裂音が発生し、次の瞬間、悟心鬼はその巨体を宙に浮かせていた。
(な、なんだ……何をされた……?)
顔に走った衝撃波殴られたものと推定出来た。だが、そうすると誰に殴られたのか分からない。
ニンフではないし、ベッキーもありえない。
ぞっとする悪寒を悟心鬼は感じた。それは普段、相手の心を読んだ時とはまるで違う。完全な第六感、予感といったものに分類されるもの。
「けんかはだめって、マザーがいってたのよ?」
(なんだ、この肥えて膨れ上がった餓鬼は……?)
人の形をした膨れ上がった肉団子のような奇抜な生き物だと思った。
悟心鬼の腰以上の体躯を持ち、人間用に作られた民家ではこの生き物が住み着くのは不可能だろう。
そんな成りをしておいて、種族は人間、5歳の幼女だと心を読んで知った時は、生まれて初めて悟心鬼は己の能力を疑った。
「……なんだか知らんが、所詮は人間か。ぐぐぐ……これは食い応えが――――」
人間としては明らかな奇形だが、所詮は人間だ。むしろ食い応えのある、丁度いい大きさの餌を寄こしてくれたようなものだ。
悟心鬼は腕を大きく振り上げ、その爪を幼女の頭から振り下ろそうとして、腕の肘から先の感覚を失くした。
後れてやってきたのは、焼けるような痛みと、凍るような恐怖心だった。
「あれー? つかもうと思ったら、とれちゃった……」
消失した腕の行方はすぐに分かった。あの幼女が握っていた。
「馬鹿な、おれが……人間に……」
こいつはただの人間ではない早急に即座に最優先で、確実に殺さねばならない。まだこの幼い内に、未熟である内に、子供の内に。
「この、人間が!!」
「ねえねえ、ちゃんと仲直りしないとだめよ?」
口を大きく開き、その牙で少女を噛み砕こうとして―――先に幼女の手が悟心鬼に触れた。
ただの人間の手が悟心鬼に触れ、その馬鹿げた握力で鬼の強靭な皮膚が破れ、血肉が溢れ出す。
その一撃だけで、全身が引き裂かれ肉片がバラバラと散らばっていく。
「――――――ッ!!!!??」
悟心鬼の悲鳴など露知らず、幼女は突き進み、その肉の壁を突破した。
【悟心鬼@犬夜叉】死亡
「あれ、おかしいなーおかしいなー。クマさん、バラバラになっちゃった……手品かなー?」
(んな訳、ないでしょ……アンタがやったのよ……)
事の一部始終を見ていたニンフは戦慄していた。いくら、自分が弱い方とはいえ仮にもエンジェロイドが苦戦する化け物を瞬殺する馬鹿でかい人間の子供。
乃亜の開いた殺し合いも異常だが、呼ばれた連中も異様過ぎる。
(……ベッキーを連れて逃げないと、あいつヤバいわ)
「あっ……はねが生えてる。きれいー」
「え?」
「まってて! おれが取ってあげるから!!」
幼女の宣言と共に爆風が炸裂する。それは単に思いっきり走ってきているだけの話なのだが、その規模が砲弾を越えまるでミサイルの如くの速さで行われているのだ。
呆気に取られたニンフは、そのまま幼女の巨大な掌に掴まれ拘束されてしまった。
「え、え……ちょっと、なに、やだ……」
羽を取る。それは文字通りの意味だ。
この幼女、後の大海賊ビッグマムとなる彼女の名前はシャーロット・リンリン。
リンリンの知る常識の中で、羽が生えた人間などいなかった。
マザーに人間とは違う特異な人種は多くいて、容姿が異なってもそれは何もおかしくないと何度も躾けられてはいたが、所詮5歳児の記憶力である。
不幸なことにリンリンの世界にはエンジェロイドは存在せず、彼女にとっては初見の本当の意味での未確認生命体であることも災いしてしまった。つまり、マザーの言っていた異なる人種の内には定義されなかったのだ。
手長族の一つ多い関節を親切で引き千切ろうとしたり、魚人族のひれもまた同じように親切心で引き千切ろうとする等、これは彼女が良かれと思ってやったことだ。
だから、ニンフの背中の羽は、これは悪い出来物みたいなもので取ってあげなくちゃと善意で考えて行動に移している。
「この、離しな……」
「あばれないで、すぐ終わるから」
「がっ……!?」
非戦闘用と言えどもエンジェロイドの膂力を以てしても、抜け出せない尋常ではない程の握力。
外見もさることながら、その身に秘めていた力は完全に人の域から逸脱していた。
「お、お願いだから……羽だけは」
奇麗だと言って貰えた羽だった。
「やめて、お願い……いやああああああああああああ!!」
ぶちぶちと、根元から痛みが走る。妖精のように薄く透けた美しい羽が鷲掴みにされ、みしみしと軋んでクシャクシャに歪ませられていく。
引き上げられていく羽に吊られ皮膚も盛り上がり、付け根の辺りに小さく皮膚の山が出来上がる。その麓から赤く血が滲みだす。
「痛い! 痛いいいいいいいい!!! この、ビチグソがぁっ!!! ぐちゃぐちゃに、ぎゃあああああああああああああ!!!」
遥か天空に存在するシナプス、そこに居る守形英四郎からの最期の電話、内容は聞き取れなかったがニンフのマスターである桜井智樹の反応からある程度の事は察せられた。
カオスに連れ去られ、強制的に石板(ルール)を起動させられ、シナプスの警備のエンジェロイドに殺害されたのだろう。
そればかりか、石板の今ある世界が消滅する。世界にただ一人残った智樹をシナプスまで届けなければならない。その為には、ニンフの力がどうしても必要になる。
空へと羽ばたくために羽がなければ、ニンフはシナプスへの道を開くことが出来ない。地上の智樹とイカロスを導く、最期の責務を全うすることができない。
「いや、いや……いやああああああああ!! やめてぇ、それだけは……羽がないと……みんな、みんな消えちゃう……! トモキがっ……!! 駄目ぇ!!」
――――嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
今だけは絶対に駄目、この羽を無くすことだけは、それだけは絶対に駄目。
「二頭を持つキング・レックス、召喚!」
ベッキーの声と共に、その名の通り二頭を持った恐竜が姿を現した。
「恐竜!?」
先ほどまでのニンフへの関心など一瞬で廃れ、リンリンは彼女をゴミのように放り棄てるとキング・レックスへと駆け寄る。
キング・レックスは後ろにじわじわと下がりながら咆哮を上げて威嚇する。だが、リンリンにとってそれはむしろ親愛を鳴き声に表現しているように捉えられた。
「恐竜さんだ!」
全く物怖じしないリンリンに恐怖を覚えたキング・レックスはその牙で彼女に喰らい付いた。だが、逆に噛みついたキング・レックスの牙が砕け散る。
「噛んじゃ駄目!」
躾けなきゃと、ぺちんと二つの頭を引っぱたく。ごりごりと鈍い音がしキング・レックスの首が360度回転した。
「き、消えちゃった……?」
キング・レックスはガラス細工のように弾け飛び、リンリンの前から姿を消してしまった。気付けば羽の生えた女の子もいない。
リンリンは寂しさで泣き出してしまった。
「恐竜さんどこー? マザーもどこなのぉ!!」
誕生日のあの日、みんなが用意してくれたセムラを美味しく食べていた筈なのに気付けばみんな誰も居なくなって途方に暮れてしまっていた。
だから、あの海馬乃亜という子供が友達を一杯連れてきてくれた事は素直に嬉しかったが、喧嘩をするのはよくないと思った。
だから喧嘩をしてる人を止めさせてあげたし、羽の生えた女の子とも友達になりたかったのに。気付けば、皆なぜか消えてしまった。
「おれね。ノアってやつにも、みんなにも、喧嘩はダメって教えたいのに。みんなで仲直りしようって……どうして、すぐいなくなっちゃうの?」
生まれながらの破壊者(ナチュラル・ボーン・デストロイヤー)。
リンリンには悪意がない。
ただそれだけだが、致命的な程の意識の差がそこにある。
善意で行ったこと、それに触れるもの全てが破壊されていくのだ。
こんな存在に関わりたい者など、邪な考えがない限りいる筈がない。
これほど卓越した個が、本当の意味で誰かと馴染める事などない。
【シャーロット・リンリン(幼少期)@ONE PIECE】
[状態]健康、腹八分目
[装備]なし、
[道具]基本支給品ランダム支給品1〜3、ニンフの羽@そらのおとしもの(現地調達)
[思考・状況]基本方針:喧嘩(殺し合い)を止める。
1:喧嘩をしてる人を見付けたら仲良くさせる。
[備考]
原作86巻でマザー達が消えた直後からの参戦です。
ソルソルの能力は何故か使えます。
「羽……羽……ねえ、私の羽……どうなってるの……ベッキー!!」
「え、えーと……」
キングレックスに気を取られている間に、ニンフとベッキーはリンリンから可能な限り離れた場所へと逃げ延びる事が出来た。
ベッキーは安堵の溜息を吐いて、自分が生きている幸運に感謝する。
「羽……羽がないと……トモキが……アルファが……!!」
だがそれも束の間、まさしく世界の終りのような顔で背中に手を回し、絶望の更に底に突き落とされたような壮絶な表情を浮かべ、必死に羽に触れようとするニンフの姿を見てベッキーは息を飲んだ。
既に羽はなくなっていた。背中に赤い痛ましい傷があるだけで、妖精のような神秘的な羽は根元から引き抜かれていた。
「どうしよう……どうしよう……どうしよう……わたし、どうすれば……」
飛べない以上、シナプスに到達するのは無理だ。ならば、アストレアに連れて行って貰う? いや、仮にそれでシナプスに辿り着けたとして、シナプスを守護するZEUSを突破できるのだろうか。
あれを解除しなければ、どちらにしろ迎撃される。だが、羽がないニンフの能力は低下している筈、恐らくはZEUSを無力化することは出来ない。
(いえ……そもそも……間に合うの……?)
それ以前に、世界は滅びる寸前であった。一時間もしないうちに地上も完全に消滅し、いずれそこにいた智樹達も存在できなくなるはずだ。
地上がなければ、翼のない人間は生きられない。
今、こうしている間にもどんどん事態は深刻化している。もしかしたら、急にニンフが消えた事に痺れを切らしたアストレアとイカロスが、一か八か強行突破を狙う可能性だってある。
実際に時間はない。でも、そうなれば待ち受けるのはZEUSからの迎撃による全壊と、許可なくシナプスに近づいたことによるイカロスの自爆機能の作動。
結局、最後に残された智樹だけが、世界の破壊と創造に巻き込まれ死んでしまうかもしれない。
「あの……落ち着いて」
「うるさい! 落ち着けるわけないでしょ!!」
「ぁ……」
ニンフも悪気はなかった。だが、再び訪れた羽の消失に加え智樹の元へ帰らねばならない焦燥感や、仲間達に訪れる悲惨な未来を考えた時の恐怖や絶望。
既に感情が爆発寸前で、彼女の許容量を超えていた。
ベッキーもまた、自分がもっと早くにキング・レックスを召喚していればと、幼いながらに後悔していた。
殺し合いという異常下で、少なくとも今の時点では直接的な戦いとは無縁であったのにも関わらず、ニンフが襲われた時にとっさに支給品の確認を行い、効果を把握し未知のアイテムを使用してみせたのだ。
むしろ年齢を考えれば、これ以上ない上出来な立ち回りだったともいえる。
「ご……めん、な……さ、い……」
普段の勝ち気なベッキーであれば年上だろうと言い返すこともあったかもしれない。だが、ニンフにとって背中の羽が何よりも大事で必要であったことは、彼女にも何となく分かっていた。
なのに、自分の立ち回りが遅かったせいで、それを無くさせてしまった。ニンフは自分の事だけでなく、誰か友達や仲間の事を案じて限界まで追い込まれている。その最後の引き金を引いたのは自分のせいかもしれない。
またベッキーも精神的に限界を迎え、それが決壊したように瞳を潤わせ涙を流し、しゃくりを上げる。
「あ、あたし…っ…支給品、さいしょに……もっとはやく、かくにん……してれば……っ」
「……い、いえ……私が悪かったわ。ベッキーは何も、悪い事……してないじゃない……」
自分よりも何周りも年下の幼女の涙を見て、ニンフも我に返り落ち着きを取り戻していく。
(そうよ……ベッキーや乃亜が普通に生きているなら、もしかして石板は起動せずに途中で……いや、それは……)
ベッキーに謝ってから、希望的観測を展開するが、乃亜はまだしもベッキーは恐らくニンフ達とは別の世界での人間ではないかと推測していた。
(ベッキーが嘘を言ってなければ、いくらなんでも時代や世界の背景が違う気がする……もしかして別の世界、とか)
悟心鬼に襲われる前に、ベッキーから聞き出した彼女の背景は明らかに現代とは時代に差異があった。ニンフの地蟲(ダウナー)の歴史に詳しい訳ではないものの、それでも違和感がある程だ。
もし、別世界の人間であるなら、ニンフの世界にある石板の影響など受けないかもしれない。
(いっそ、殺し合いで優勝して……でも、そんなことトモキは……だけど……このままじゃ)
あんなにも幸せだったのに。智樹と出会ってから、イカロスも居て、アストレアもやってきて……地蟲と見下していた地上の人間とも仲良くなって、初めて友達も出来たのに。
一瞬で全てがぶち壊されて、それに抗う事すら許されずに、こんな意味の分からない殺し合いに巻き込まれてしまった。
なら、いっそ……世界を元に戻すの比べれば、ここにある数十人の命など、安いのではないか?
「……あー……にゃ、ちゃん……会いたいよぉ……」
元の世界であったのなら、ベッキーが絶対に吐かないであろう弱音だった。心身共に削られた彼女の中で、最も絆を育んだ友達の名前を泣きながら叫ぶなんてことは。
(……駄目だ。そんなことしたら、この娘の友達が……悲しむ……)
ここに呼ばれる前、ニンフにとって初めての友達を殺された時のように……あんな事をまた今度は自分が繰り返す訳にはいかない。けれども、このまま時間が経ってしまえば、ニンフのいる世界はもう跡形もなく消え去ってしまう。
「……どうしたら、いいの……ねぇトモキ……お願い、教えてよ……お願いだから、命令してよ……!」
【ニンフ@そらのおとしもの】
[状態]:全身にダメージ(中)、羽なし、羽がないことによる能力低下
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:どうしよう……。
1:リンリン(名前は知らない)はぐちゃぐちゃにしてやりたい
2:元の世界のトモキ達が心配、生きててほしいけど……。
[備考]
原作19巻「虚無!!」にて、守形が死亡した直後からの参戦です。
SPY×FAMILY世界を、ベッキー視点から聞き出しました。ベッキーを別世界の人間ではと推測しています。
制限とは別に、羽がなくなった事で能力が低下しています。
【ベッキー・ブラックベル@SPY×FAMILY】
[状態]:健康、ニンフの羽が毟られた事に対する罪悪感(大)
[装備]:二頭を持つキング・レックス(早朝まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いなんて乗るわけないでしょ。
1:アーニャちゃんが居たら探して守ってあげないと。
2:ニンフさんの羽……。
[備考]
アニメ2クール目以降からの参戦です。
【二頭を持つキング・レックス@遊戯王デュエルモンスターズ】
ダイナソー竜崎が使用したカード。
あまり強くない上に効果も何も持たないので、一度の使用で6時間再使用不可と軽めの制限。
投下終了します
投下します。
「ここは……、僕は一体どうしてこんな所にいるんだろう……」
殺し合いの舞台の湖の畔、全身緑色に丸い目、背中に背びれ、臀部に尻尾が生え、直立した二足歩行のトカゲのような見た目をした不思議な生き物が自らが置かれた状況に対して戸惑いの表情を見せていた。
彼の名はちびゴジラ、あの有名な大怪獣ゴジラの息子であり、父親にギュッと抱きしめてもらう、つまりは父に認められるような立派な怪獣王になる夢を抱き、日々を怪獣島で過ごしていた最中、今回の殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
「うーん……、でもどうして僕はこんな企画に急に参加させられちゃったんだろう……」
彼は今回の殺し合いに呼ばれた理由が分からず、思考錯誤していたのだがやがてある一つの結論に達する。
「うん!分かった!これは僕が立派な怪獣王になれるかどうかテストされてるんだ!あはは、それならそうと早く言ってくれればいいのに!」
そう、彼はどこかズレた考えを持った変な性格の持ち主であり、今回の殺し合いに呼ばれたのも、「これは自分が怪獣王になれるかどうか試されている試練」と彼自身は勝手に思い込んでいた。
「そういえばちびメカゴジラ、ちびギドラ、ちびモスラ、ちびラドン、ちびアンギラス、ちびビオランテ、ちびヘドラの皆はどうしているんだろう?参加しているのかな?……まっ、探していれば多分いつか会えるからいっか!」
また彼はいつも明るくポジティブな性格の持ち主でもあり、同じ怪獣島の仲間たちにもいつか会えるだろうと深く考えずに自分に支給された荷物をまとめて適当にどこか別の誰かがいないかどうか探すために歩き出していた。
暫く歩いているとやがて泉のような場所に辿り着き、ちびゴジラはそこで一人の少女を発見する。外見年齢は中学生くらい、黒く短いショートヘアに僅かに膨らんだ胸、アスリートのようなスマートな細い体に、陰毛が生えていない少女らしい股間の割れ目を晒していた。何故ここまで具体的に分かるかというと、少女が一糸纏わぬ全裸であったからだ。様子をよく観察してみると、少女は目を閉じた状態で横たわっていた。寝てるというより、どうやら気絶して横たわっているような感じであった。
ちびゴジラは少女に近づき、軽く身体を揺すってみるが、少女は全く起きる気配が無い。
仕方ないのでちびゴジラは最初にちびメカゴジラに出会った時と全く同じ行動……口から親である本家ゴジラ譲りの青い放射熱線を少女に向かって吐きかける。
「!?っつアッツッ!!?……え!?ここはどこ!?私は何でこんな所にいるの!?」
「あ、起きた。」
少女は最初、自らの置かれた状況に戸惑っている様子であったが、ちびゴジラの声に気付くと胸と股間を押さえ、必死に言い訳を開始する。
「えっ!?あ、あのっ、違うんです!これはその……え?二足歩行の……トカゲさん?」
「違うよ、僕はトカゲじゃないよ。ここはちびゴジラ、僕はよく分かんない所だよ!」
「え?それ、逆じゃない?」
「そう、逆!!」
「な、何で逆を言ったの……?」
軽いコントを済ませた後、ちびゴジラは少女に対して改めて自己紹介をする。
「僕はちびゴジラ、君は?」
「え……?わ、私の名前は……その……」
少女はこの殺し合いに巻き込まれる前に何か強いショックを受けたらしく、自らの名前を思い出せずにいた。だがそれに対するちびゴジラの反応は……
「……へえ、名前を思い出せないんなら別にいいや。」
「いや、名前は重要な要素だと思うんですけど!?」
名前を思い出せない少女に対し、ちびゴジラは急に興味を無くしたかのように投げ槍になり、少女はそれに対してツッコむ。
「うーん、でも名前がないとなんか呼びづらいね。……そうだ!そんな君にピッタリのアイテムがあるんだ!」
そういうとちびゴジラは自身のランドセルの中から和製の筆と紙がセットになったものを取り出す。
「?それは?」
「これは『新名撰筆』といってね、君のような名前がない存在に名前をつけることが出来るアイテムなんだ!まあ、君のような名無しさん以外には全く役に立たないゴミアイテムだけどね!!」
「ゴミアイテムという言い方酷くない!?」
自身の支給品を『ゴミアイテム』呼ばわりする態度に再び少女はツッコむが、ちびゴジラはそれを気にせず、名前を何にするか考え始める。
「うーん……名前は何にしようか……よし、決めた!『二足歩行の哺乳類』!!」
「その呼び方酷くない!?もっとまともな名前にして!!」
「じゃあ……『エアコン』!!」
「電化製品!?」
「それが駄目なら……『カロテン』!!」
「栄養素!?」
あまりにも的外れな名前をつけようとするちびゴジラに対し、少女はツッコみ続けるが、やがて流石にちびゴジラもまともな名前を思いつく。
「そっか……じゃあ、それなら君の名前は『紅月ことね』でいっか……」
「そ、そうだよ、良かったあ。やっとまともな名前をつけてくれた。」
少女がほっと胸を撫でおろすと、ちびゴジラは新名撰筆を消費し、少女に『紅月ことね』という名前をつける。
「これからもよろしくね!紅月ことねちゃん!」
「うん!……あ、それはそうと……何か着るものとか大きいタオルとか身体を隠すもの、持ってない?」
『紅月ことね』と名付けられた少女は頬を染めてちびゴジラから目をそらし、自分の身体を隠すような仕草をしている。
ことねは元の世界では日常的に一糸纏わぬ全裸で海の中など水中を泳ぎ回ったりしていたが、陸上の外でずっと全裸で動き回るのはさすがに恥ずかしいと感じていた。
だが、そんなことねの問いに対するちびゴジラの答えは非常に無情なものであった。
「ないよ!!」
「え!?何で!?」
「だって僕、怪獣だもん!怪獣は服を着たりしないでしょ!だから僕はそもそも服を着ていないから君に服をあげる事が出来ないんだ!」
「あ、あはは……そうですよね〜。」
「それに支給品の中にも服とかそういった類のものはなかったよ!だから残念だけど諦めて!」
あまりに無遠慮かつ追い打ちをかけるようなちびゴジラの言葉にことねはひどく落ち込むが、その一方で贅沢は言ってられないという気持ちもあった。
ことねはこの殺し合いに呼ばれる前の元の世界で、一糸纏わぬ全裸で海中に潜り、沈没船を探検していたのであるが、そこで『メデューサ』という触手の化け物に襲われ、全身を愛撫された末にとうとう息止めの限界が来てしまい、意識を失い暗い海中に沈んでいったはずなのだ。
あの時は自分は死んだと思ったのであるが、こうして命は助かった以上、それ以上の贅沢を言うのは失礼だという気持ちも感じていた。
それに今一緒にいるのは人間ではなく、何故か言葉を喋る二足歩行のトカゲである。極端な話をすれば海中にいる魚と何ら変わりはない。
取り敢えずそう思う事で自分を納得させ、命が助かったことに感謝しつつ、自分がやりたいことをやる事で気晴らしがしたいと彼女は考えていた。
彼女……紅月ことねにはある一つのライフワークが存在していた。彼女のライフワークは「機材や服を一切身に着けず、生まれたままの姿で泳ぐこと」であり、もともと泳ぎが好きなのもあるが、乳房や秘所を含め体全体で水を感じることができる、とは彼女の弁であり、海の近くの一軒家に住んでいることもあって、今よりも小さい頃から海と共に暮らし、海と慣れ親しんで毎日海で泳ぐような生活を送っていた。
そして彼女は潜水の名手でもあり、シュノーケルの類もつけない。もちろん機材を使った方が長い時間水の中にいられるのだが、やはり余計なものは無い方がいいし、何より息のできない水中で自分を守ってくれるものが何もないという状況にある種の性的興奮を感じていた。
それに彼女の単純な肺活量も驚異的なものであり、機材無しの全裸の状態であっても数十分程度なら水や海の中を無呼吸で泳ぎ続ける事が出来、そのまま海底の沈没船まで辿り着くことが出来るほど泳ぎもうまかった。
彼女は急に立ち上がると、泉のほうへ駆けていき、全裸の状態のままで泉に飛び込んだ。
「ぷはっ。あー涼しい!」
泉はそれなりの広さと4〜5メートルくらいの水深があり、天然のプールのようだった。
急にどうしたのかと、ちびゴジラが唖然とした表情でことねを見ていると、泉から上がったことねがちびゴジラに近づき、声を掛ける。
「……ねえ、一緒に泳がない?」
「……うん!いいよ!!」
ことねの言葉を聞いてちびゴジラの表情がパアッと明るくなった。ちびゴジラは父親である本家ゴジラ同様水中を泳ぐのが大の得意である。
流石に本家ゴジラと比べるとまだ未熟な部分があるものの、人間を遥かに上回る水中での移動速度と潜水時間を誇り、今でも父親に誇れる存在になれるよう頻繁に水泳の練習をしている身でもあった。
ことねは駆け出すと再び泉に飛び込み、今度は水底に向かって真っすぐ泳いでいった。
砂地になっている底に着くと、体が浮かないように少し多めに息を吐いて、大の字になって寝転がった。
ことねは水の中で泳がずに静かにしているのも好きだった。暗く静かな水の底で沈んでいると、水と一体になったような心地よさがある。
視界には時々通っていく魚たちと、口から漏れていく気泡だけがあった。
水面の方に、ちびゴジラが飛び込んで来たのが見えた。最初の内は浅いところをのんびりと泳いでいたが、少しするとちびゴジラがことねのすぐ近くまで下りてきたのが見えた。
そしてことねはちびゴジラが近くまで来たのを確認すると、ちびゴジラにあるお願いをする。
「ねえ……お願い、あなたを抱かせて……私に気持ちいい事して……」
「え!?突然どうしたの!?」
ことねは最初、ちびゴジラを「二足歩行の変なトカゲ」と思っていたのであるが、よくよく見てみるとテレビで見たことがある「ゆるキャラ」のような独特の愛らしさを感じることが出来た。
ことねはペットを飼ったことはないのであるが、テレビの動物番組で「人間に抱き上げられる動物の子供」を何度か見たことがあるので、ことねは動物番組みたいにちびゴジラを抱いてみたいと思ったのだ。
「僕は別に構わないけど……そろそろ息、大丈夫?苦しくない?」
「まだ平気……それにまた、あの時の快感を味わいたくなっちゃったの……ねえ、お願い……」
「……変な子だなあ。」
そう、ことねは元々アクアフィリアの気があったのだが、殺し合いに呼ばれる直前、メデューサによって全身を愛撫され、窒息による苦しみと全身を愛撫されたことによる快感から、またあの時の快感を(死なない程度に)再び味わいたいと思ったのだ。
下腹部の奥が周りの水とは違う熱を帯びてきたことを感じつつ、ちびゴジラをうつ伏せの状態で抱くと、ことねのお願いによりちびゴジラはことねの柔らかな裸足裏を舐め始める。
(んぐっ、くすぐった……がぼっ!)
くすぐったさを我慢しきれず、一つ大きな気泡が水面に上がっていった。
酸素が失われていくほど、少しずつ身体が敏感になっていくことをことねは感じていた。
だが親ほどではないものの、人間より遥かに長く水中に潜れるちびゴジラと異なり、人間であることねは彼ほど長く水中に潜っていられるわけではない。
「がぼぉ!ごぼごぼっ!」
ことねは閉息の限界を迎え、大量の空気を吐き出してしまった。
(や、やばい!早く空気ちょうだい!)
口を押さえながら、ことねはちびゴジラに催促をする。しかしちびゴジラは彼女が何を求めているのか直ぐには理解できなかった。
慌てたことねは強引に唇を奪おうとするが、巧みにかわされてしまう。
「えっ!?何急にファーストキスを奪おうとしてんの!?馬鹿なの?死ぬの?」
(そんなこと言ったって、もうほとんど限界……ごぼあっ!!)
そうこうしているうちにもどんどん残り少ない酸素が失われていく。
またあの時と同じだ。沈没船でメデューサの触手に捕まり、呼吸が出来ない状態で全身を愛撫され、苦痛と快感が交錯していったあの時と。
もうここまでいったらいくとこまでいっちゃえ。そう思ったことねはちびゴジラを離すと両足を広げてM字開脚のような体勢となり、自らの性器を露わとする。
「お……お願い……最後の……仕上げを……」
「えっ!?ま、マジ!?……最初に会った時点で全裸だった時点で薄々察していたけど……ここまでくると流石に僕もドン引きしちゃうなあ……」
そう言いつつもちびゴジラは彼女の意思を尊重し、自身の尻尾をことねの性器に向けると、彼女がかつてメデューサにされたのと同じように……割れ目に尻尾を差し込み、中に挿入した。
(ひゃあああっ!あんっ!あああっ!!)
痺れるような快感と絶息感でことねは身もだえし、体の中に辛うじて残っていた空気も全て吐き出していく。
それでもちびゴジラの尻尾の動きは止まらない。それどころかさらに激しくなり、抜いたりまた差したりして中をめちゃくちゃにしていった。
(あっあっ、ダメ、このままだと)
ことねはほとんど限界に達していた。そして……
ごぼごぼごぼごぼごぼっ!
「あああああああああっ!」
ことねは絶頂と共に残っていた最後の空気を吐き出し、そのまま気を失った。
◆◆◆
「げほっげほっ、ううん……?」
次にことねが目を覚ました時、彼女は泉のほとりに寝かされていて、目の前には彼女を覗き込むちびゴジラの顔があった。
「大丈夫?……まあ、僕もやり過ぎたと思ったけど、君が嫌がらないからつい調子に乗っちゃって……」
ちびゴジラはバツの悪そうな顔をした。どうやら、彼が人工呼吸で蘇生してくれたようだ。
だがことねは首を横に振ると、顔を赤らめ、ちびゴジラに語り掛ける。
「そんな、気にすることないよ。それにえっと、とても気持ちよかったし……」
ことねは自分の発言が恥ずかしくなって、目を逸らしてしまった。でも、またあの時の快感をもう一度得て気持ち良かったのは本当だ。
「わたしはすごく楽しかったから、ごめんね、私の性癖に付き合わせちゃって……えっと……その……ありがとう……」
ことねの言葉を聞いてちびゴジラはパアッと明るい笑顔になると、彼女に次の遊びを提案する。
「そっか!それじゃあ、次は放射熱線遊びをしようか!!」
「……はい?」
あまりに突拍子もないちびゴジラの発言に、ことねは目を丸くする。
「ちなみに放射熱線の温度は16万度とも50万度とも言われているよ!」
「いやいやいやいやいやいや!!そんな温度で炙られたら絶対死ぬから!!」
当たり前だ。16万度や50万度の温度の火で炙られたら火傷を通り越して確実に炙られた箇所が壊死、炭化するのは目に見えており確実に命にかかわる。
全裸水中遊泳遊びなんて事をした身で言うのもあれだが、そんな遊びは普通に命を落としかねない行為であり、人間のことねでは流石に無理だと言わざるを得なかった。
「そっか……無理か……まあ、しょうがないや。もうそろそろ出発しようか。これからもよろしくね、ことねちゃん!」
「うん、これからもよろしくね!」
そしてちびゴジラとことねは荷物をまとめるとその場を後にするのであった……。
【ちびゴジラ@ちびゴジラの逆襲】
[状態]:健康、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めたい。
1: これはたぶん、僕がお父さんのような立派な怪獣王になるための試練に違いないんだ!
2:ことねちゃんとか、人間の皆と仲良くしたいなあ。
3:他の怪獣島の皆はどうしているんだろう?他にも誰か参加しているのかな?
[備考]
第5話終了後からの参戦です。
放射熱線等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
【支給品紹介】
【新名撰筆@原神】
ちびゴジラに支給。名無しの存在に名前を与えることが出来るアイテムで、一度使ったら消滅する使い切りの消耗品。作中ではかつてのファトゥス執行官第6位『散兵』が世界樹の改変によって生まれ変わった存在『放浪者』に対して使用され、旅人がナヒーダと相談した末に彼に『笠っち』という新しい名前を授けている。
【紅月ことね@水中触】
[状態]:健康、全裸、疲労(中)、全身ずぶ濡れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺しはしたくない。
1:命が助かったのは嬉しい。でも野外を全裸で歩き回るのは ……
2:殺されそうになったり、犯されそうになったらどうしよう。その時はちびゴジラが頼りかな。
3:本音を言えば服かタオル位は欲しいよね。
[備考]
本編ラストで窒息して意識を失った後からの参戦です。
投下終了です。タイトルは書いていませんでしたが、
タイトルは『ロリショタロワのちびゴジラ』です。
後、Wikiを見たのですが、候補作一覧に自分が投稿した『王女と巫女と蝶々』が反映されていないので、
これに気付いたら後で反映して頂けるとありがたいです。どうかよろしくお願いいたします。
>>936
申し訳ありません。wiki編集時にミスをしてしまいました。
ご指摘の通りに対応いたしました。
投下します
「怖い……怖いよっ、お姉ちゃんっ……!」
薄紫色の髪を持つ10代前半ほどの少女が、身を震わせて怯えていた。
彼女の名はソルティーナ。魔女と呼ばれる、不思議な力に目覚めた存在だ。だがソルティーナの世界では魔女は世界を滅ぼす原因であるとして迫害を受けている。
ソルティーナも力に目覚めた途端に両親に捨てられた。
それでも彼女が生きていられたのは、姉……ルナリンドが守ってくれたからだ。
両親に追い出された後、追いかけてきてくれた。抱きしめてくれた。お誕生日おめでとうって、手作りのぬいぐるみをくれた。
──魔女じゃないのに、私なんか見捨てて家にいれば、普通に生きられたのに、私のせいで……っ!!
姉妹二人の生活は貧しかったが幸せだった。けれどある日、魔女狩りからソルティーナを庇うために、ルナリンドが自らを魔女と偽って捕まってしまった。
だからソルティーナは、今度は自分が姉を助けるのだと決意を固め、それでも姉の囚われる教会の本部の壁は高く遠く、どうしようもなくて絶望していた所に……この殺し合いに招かれた。
「そうだ、こんな所で止まってる場合じゃない……今度は私が、お姉ちゃんを助けるんだっ!」
こんなことに巻き込まれたのは予想外だったが、やることは変わらない。姉を助けるのがソルティーナの目的だ。
ソルティーナは魔女としての力で氷の魔法が使える。教会の異端審問官には叶わないものの、戦う力は持っているのだ。
「でも、人を殺すなんて……できないよ……」
目に涙を溜めながらも立ち上がったソルティーナだが、再びシナシナと座り込んでしまう。泣いているだけじゃ駄目だ。祈るだけじゃ何も変わらない。分かってるけど、だからって殺し合いに乗れるわけがない。
「どうしたらいいんだろう……やっぱり私、強くなんかないよ。お姉ちゃんがいないと、なんにも……」
ソルティーナはギュッと虚空を抱きしめる。
いつも勇気をくれた、ルナリンドの手作りのくまのぬいぐるみはない。あのぬいぐるみを抱きしめればどんな時も勇気が湧いてきたけど、今はもう、姉もぬいぐるみもいない。
「お姉ちゃん……私には、無理だよ……」
姉を助ける為ならあったはずのなけなしの勇気は、殺し合いという状況において萎んでしまった。
「君、大丈夫?」
「え?」
近くに人が来ているのにも気づかずに俯いていたソルティーナに、優しくかけられる声。
顔を上げたソルティーナの前にいたのは……赤いコートを着た、金髪碧眼の、ソルティーナと同じくらいの男の子だった。
「それじゃあアルフォンスくんは、お兄さんを探す旅をしてるんだ」
「うん、きっとどこかで生きているって……僕は信じてる」
アルフォンス・エルリック。母親を蘇らせるために禁忌の術、人体錬成に手を出し、肉体を失って鋼の鎧に魂を宿していた少年錬金術師だ。
だが今の彼は10を少し越えたくらいの年齢の普通の少年に見える。
というのも、紆余曲折あって彼は、鎧の肉体から元の体に戻るために「鋼の体になってから手に入れたもの」を対価にしたのだ。
それは記憶や経験……最愛の兄エドワード・エルリックと旅していた頃に得たもの全てだ。
気づいた時、アルフォンスは人体錬成を試みる直前の頃の10歳の頃の肉体で、記憶もそれまでのものしかなかった。
幼馴染のウィンリィはいきなり成長しているように見えたし、師匠のイズミは明らかに前より体調が悪そうだったし、ロゼという知らない女性と友人だったと言われて困惑した。
そして何より……エドワードが死んだ可能性が高いなどと言われても、信じられるわけがなかった。
「兄さん……」
今アルが着ているのは、元々エドが着ていた赤いコート。死んだなどと信じられない。感じるのだ。夢を見るのだ。
ドイツという国のミュンヘンという街で、病気がちな自分がエドと共に、宇宙へ旅立つ為のロケットを作っている夢を。
「夢を見るんだ、僕が住んでいた世界とは違う世界の夢を」
「違う世界?」
「ソルティーナ、実は君の言ってた魔女とか魔獣とか、僕の世界にはいないんだ」
「え?」
「今まで夢だと思ってたけど、やっぱり門の向こう側には、別の世界がある……ならもう一度門を開けば、兄さんは帰ってこれるんだ!」
「あ、アルフォンスくん……」
ソルティーナから見てもアルフォンスはどこか地に足のついていないような危うさがあった。というのも、過去の旅で得た苦い経験を失くした今の彼は、年齢相応に幼く浅慮なのだ。
この殺し合いに巻き込まれなかった場合の彼は、兄がどう思うかを考えずに自らを犠牲に門を開こうとしたり、目の前で人が死んだら禁忌であることを忘れて人体錬成をしそうになるなど、本来のアルフォンスに比べて浅はかな行動が目立った。
「こうしちゃいられないよ!早くこんな殺し合いなんか抜け出して、兄さんを助けに行かなくちゃ!」
「うん……私も、早くお姉ちゃんを助けたい!」
だがそこを諫めるにはソルティーナもまた幼すぎた。彼女も、姉に会いたい、助けたいという想いがどうしても先行してしまっている。
だから、きっと大丈夫と、自分たちならなんとかなると思ったまま、本当の意味での覚悟も決まらないままに、二人は殺し合いからの脱出を目指す。
……二人の歩き方は歪かもしれない。まっすぐじゃないかもしれない。
だが、それでも二人は、それぞれの立派な足で、立って歩いていた。
【アルフォンス・エルリック@劇場版鋼の錬金術師 シャンバラを征く者】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:早く脱出して兄さんに会いに行く
0:ソルティーナと行動を共にする
1: ひとまず他の人を探す
[備考]
※参戦時期は砂漠で旅をしている途中。
【ソルティーナ@メメントモリ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]
基本方針:早く脱出してお姉ちゃんを助けに行く
0:アルフォンスと行動を共にする
1: ひとまず他の人を探す
[備考]
※参戦時期は領主に出会う前……と言いたいところだがメメントモリの時系列なんてどうせないようなもんだしその辺は適当で。
投下終了です。
投下させていただきます。
不幸せな家を訪れ、幸せにしてはまた別の不幸せな家を幸せにして回って、そんな使命をもって町中を渡っていた最中だったのに────
不幸せな家に住みつき、幸せにしてからその家を出て回る座敷童子の春子。
そんな彼女もこの殺し合いに呼ばれてしまった。
他に集められていた子供達を幸せにしようとしたけれど、首輪によって能力を全く発動する事が出来なかった。
それから間もなくして見せしめの兄弟にも力を使おうとしたけれど、結果は同じだった。
それから会場内に飛ばされても、彼女は他に巻き込まれた参加者を幸せにするべく走り出す。
─それは、春子がまだ人間だった頃、戦争の影響で母親と共にバラックで生活し、食事も充分に摂れなかったにもかかわらず、近所の子供達になけなしの食事を分け与え、慕われ、肺炎に罹った時でさえもその子供達や母親を想い続けながら息を引き取った経緯があるのだ。
やがて春子は座敷童子という妖怪になり、鵺野鳴介ことぬ〜べ〜の教え子の一人である栗田まことに姿を目撃された事が切っ掛けでぬ〜べ〜の介入もあり人間だった頃の母親と再会を果たした。
だからこそ、春子には不幸せな参加者達を助ける為に動いているのである。
【春子(座敷童子)@地獄先生ぬ〜べ〜】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:他の参加者達を幸せにする。
1:不幸せな参加者を探して移動する。
2:知り合いが巻き込まれていないか心配。
[備考]
※参戦時期は漫画無印128話以降。
※他者を幸せにする能力の制限については後続の書き手様にお任せします。
(少なくとも、OPでロワの説明がされていた場面では完全に使用不可能だった。)
投下終了させていただきます。
投下します
「セイレーンの仕業…と考えて良いのかしら」
顎に手を当てて独りごちる、長いマフラーを風に靡かせる、一部が犬耳の様になった11、2歳程の金髪の、軍服を着た少女。紫紺の瞳を細めて考え込む姿は、一見隙だらけに見えるが、今この場に襲撃者が現れても、その身体に打ち込むことなど出来はしないだろう。
緩やかに弛緩した、極々自然な立ち姿は、確かな鍛錬と歴戦の経験に支えられた武人の佇まいだ。
なおスカートもズボンも履いていないので、黒い紐パンがモロに見えるが、当人に気にした様子は皆目無い。無いと言ったら無い。
凡そ外見に相応しくない、外見からは考えられない事だが、そもそもがこの少女は人では無い。突如として現れ、人類を海から駆逐した存在であるセイレーン。そのセイレーンと戦う為に人類が生み出した存在。
艦としての過去と、人としての現在を持つ存在、艦船(KAN–SEN)である。
少女はその艦船(KAN–SEN)の中でも、最高クラスの戦歴と武勲を誇る、ロイヤル所属の戦艦であり、その名をウォースパイトといった。
「母港の哨戒網を突破して、ロイヤル寮の警備を掻い潜って私を拉致する────いくら何でも無理ね。ならば鏡面海域?確かエディンバラが出逢った異世界の者達は、共に記憶を封じられ、偽りの記憶を与えられて学園生活を送っていたとか……」
腕をあり得ない長さに伸ばしていた、ルフィという名の少年を思い出して、ウォースパイトは、最初に殺されたルフィとエースという少年達が、異世界の存在だと推測する。
なにしろあんな風に腕が伸びる者など、ウォースパイトの知る限り人類どころか艦船(KAN–SEN)にすら存在しない。
異世界の住人といっても、ビーチバレーで対戦した者達や、合同ライブをやったアイドルの様な只の人間もいるが、重桜の者に似た姿の『トゥスクル』や『ヤマト』といった国から来た者達や、錬金術師とその仲間達の様な特異な力を持つ者達も居る。あの2人は、そういった特異な能力を持つ者達だったのだろう。
そして、そんな存在する世界が異なる者達を、世界の壁を超えて集められる存在を、ウォースパイトは一つ知っている。
「今までの例から考えても、セイレーンがこの件に関わっていると考えるべきでしょうね」
目下の所こんな事をさせる理由が皆目検討も付かないが、そもそもがセイレーンが何を目的としているのか、なにを考えているのか、ウォースパイト達艦船(KAN–SEN)がセイレーンと戦い始めてから────それよりも更に過去、人類が艦船(KAN–SEN)を建造する以前、艦(ふね)を用いてセイレーンと交戦していた時から、全く以って不明のままである為に、ウォースパイトはこの事態の背景について考える事を一旦辞めた。
「それにしても、子供ばかり…では無いでしょうけど、幼い子供を集めて殺し合わせる…とは一体何を考えているのかしら」
ルフィとエースという2人の子供が殺された場で、ウォースパイトは周囲を観察して、あの場にいた男女が、外見上は自身と近しい事を把握していた。
あくまでも『外見上』ではある。実年齢で選んだのならば、最初のセイレーンとの大戦の時より存在する自分は『子供』には含まれない。実際に数十年の時を生きていようが、外見が幼い者を此処に集めたのだろう。
「陛下も此処に拉致されていたら一大事ね。ロイヤルの沽券…。いいえ、滅亡に関わるわ」
自身と同じ位の外見の主君。クイーン・エリザベス級一番艦クイーン・エリザベスの姿を思い出し、ウォースパイトは焦燥を抱いた。
ロイヤル艦船(KAN–SEN)の頂点に立つクイーン・エリザベスはその指導力とカリスマで、数多いるロイヤルの艦船(KAN–SEN)を統べる存在だ。
ロイヤルの艦船(KAN–SEN)達からは厚く慕われ、インプラカブルなどはクイーン・エリザベスの人形を持ち歩いている程だ。
そのクイーン・エリザベスを失えば、ロイヤルの艦船(KAN–SEN)は統制を、陣営としては方針を、艦隊としては指揮系統を失う事になる。
こんな所で、こんな事で、失われて良い存在では無いのだ。
「まずは陛下の所在を確認。居られれば身命を賭して守護。そして、艦船(KAN–SEN)として、人間を守護し、セイレーンの目論見を撃ち破る。その為には、まずこの首輪を外さないと」
といっても、艤装を外している時に此処に引き摺り込まれた為に、現在のウォースパイトは外見相応の身体能力を持つ幼女でしか無い。
「艤装も無しに戦わせるとは気が利かないわね。それを言うなら艦船(KAN–SEN)を陸で戦わせる時点でおかしいけれど」
取り敢えず身を守る為の武器が欲しい。そんな事を思いながらランドセルの中身を改めて見る。
「重桜の駆逐艦や潜水艦の子が持ってたわねぇ」
幼児そのものの睦月型駆逐艦の姿を思い出し、徹頭徹尾子供扱いされている事に、多少ムカっ腹を立てながら仲を改めると、出てきたのは一振りの剣と、一枚のDISC。
「ロイヤルの伝説に語られる騎士達の王の剣…。本物なのかしら、それとこのDISC。書いてあることが本当ならば、これ程有用なものはないわ」
試験無しで、未知の兵器や武器を使うのは、戦場に身を置く者としては有り得ない。説明書の記述が正しいのか如何かを確認するべく、説明書に書いてあった通りに、額にDISCを挿入する。
「あとは能力を発動させるだけ」
瞳を閉じてDISCにより獲得した能力を使用────ウォースパイトの身体から、半透明の物体が出現し、形を整えていく。
ウォースパイトの身体に纏う様に出現したものは、鋼の威容、敵を撃ち砕く火砲、艦船(KAN–SEN)の戦う為の力。ウォースパイトの艤装そのもの。
試しに近くに有った岩を砲撃すると、聴き慣れた砲声と共に射出された砲弾が、岩を粉微塵に撃ち砕いた。
「威力は…予測は出来ていたけれど、艤装本来の物より劣るわね。次はこの剣だけれど」
支給品の剣を二、三度振って、感覚を確かめると、20m程離れた場所に有る岩に向かって、剣を振り上げる。
振るった剣の軌跡から、黄金に輝く光刃が飛翔し、岩を綺麗に断割した。
「これなら戦闘になっても問題無いわね」
ウォースパイトは頷いて、スタンドを収めると、歩き出した。
【ウォースパイト改@アズールレーン】
[状態]:健康
[装備]:約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate/stay night 『力』のスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:この事態の解決
1:クイーン・エリザベスがいれば、絶対に守護する
2:艦船(KAN–SEN)として人類を守護する
[備考]
ネプテューヌ、うたわれるもの、キズナアイ、ホロライブ、DOAXVV、アイドルマスター、ライザのアトリエの世界と人物についての知識をある程度有しています。
SSSS.GRIDMAN 及びSSSS.DYNAZENONの世界と人物は、コラボイベント『弧光は交わる世界にて』に関わっていないので知りません。関わったKAN–SENから話を聞いたくらいです。
支給品解説
【『力』のスタンドDISC】
破壊力:B
スピード:D
射程距離:D(ただし大型タンカー船1台分は余裕)
持続力:A
精密動作性:E
成長性:E
物質と融合して、能力者の思うがままに造り替え、操作する能力。
原作においては小さな貨物船を巨大タンカーへと変貌させた。
ウォースパイトは艦であり人で有る艦船(KAN–SEN)である為に、このスタンド能力で、自身の艤装を作り出せる。
作り替える事ができるという特性から、艤装の武装部分(主砲、副砲、対空砲)
を、状況に応じて変化させることが可能。
砲撃の威力や耐久性こそ本来のものより落ちるが、艦船(KAN–SEN)としての身体能力や特殊な能力を使用可能となっている。
約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate/stay night
魔力を光に変換して、光の斬撃を放てる宝具。
最大出力で放てば、強力な再生能力を持つ山サイズの肉塊を消滅させられる程だが、そこまでの威力は発揮されない様に制限されている。その代わりに燃費がだいぶ軽くなっている。
投下を終了します
タイトルに誤りが有りました
正しいタイトルは、パンツを見せる事… 別に大海原の誇りとかでは無い
です
投下ありがとうございます。
感想の方はまた後ほど、投下します。
少し早いかもしれませんが、新スレを立てましたのでご報告します。
投下します
甲高い音が響く。
鉄のぶつかり合う音。刃が交わり、火花散らす戦いの音色。
十、二十、三十……いや、ゆうに百は超えただろうか。
音は途絶えることはなく、本来ならば静かな湖畔へその音を響かせた。
湖畔の傍で繰り広げられる戦いは、始まったばかりの舞台で熾烈を極める。
「アハッ! いいね、すごくいいよ!!」
戦いそのものを楽しむかのように、
白と紫を基調とした巫女服の少女が笑う。
年端を行くか行かないかの幼さではあるが、
手に握られた刀の動きは流水のように滑らかに、
それでいて迅雷が如き速度で相手の命を狩ろうとする。
一朝一夕ではない。並大抵の努力では辿り着けない境地。
それを、この幼き少女が振るってることを疑いたくなるものだ。
これは紛れもなく彼女の実力。人をやめてしまった身ではあるが、
彼女が才覚と努力の研鑽をしたからこそ、優れた技量に達している。
神聖さを帯びたかのような巫女服といった装束がそうさせているのか。
剣技は殺しの技術であれども、水面に映るその姿は何処か幻想的だ。
「クソ、速───ッ!!」
けれども、そんな鍛え抜かれた技術を以てしても相手の命を奪うには至らず。
相対する少年も穂先から水飛沫のようなオーラを放つ槍を振るい、
刀と相殺したり攻撃をいなしていく姿もまた、研鑽された動き。
殺し合いにおいて命を奪えないと言うのに、少女はそれでも楽しげだ。
まるで新しい玩具を与えられた子供のような笑みを浮かべる。
「おにーさん、強いね!」
一度距離を取った後、再び一気に肉薄。
瞬時に刀の間合いに入れば、低い姿勢からの三段突き。
喉を抉る一撃は首の薄皮一枚を刃を刻むだけに留まり、
胸を貫く一撃は少年が持つ槍に防がれて致命傷を避け、
腹を刺す一撃は距離を取ったため空振りに終わる。
いずれも致命傷となりうる傷には程遠い結果だ。
「イツッ……オラァ!!」
相手の少年も負けていなかった。
回避の直後、即座に接近し無数の刺突を見舞う。
いずれも少女は素早い身のこなしで攻撃を避けるも、
無駄のない攻撃に反撃ができないと理解し距離を取る。
少女と戦っていたのは、彼女より年上の十代半ばの少年だ。
後ろは三つ編みに束ね、前髪をかき上げた青い髪が目立ち、
マントを筆頭とした服装は何処かファンタジーな恰好を彷彿とさせる。
東洋の少女と西洋の少年と、見事に対になる姿でもあった。
「だー! お前本当に人間かよ!?」
首の傷に顔を顰めながらも、
槍を軽く構え直して少年は驚きの声を上げる。
自分が道半ば、可能性の段階にあることは理解してるつもりだ。
だが、それを抜きににしようと、いくら何でも彼女の強さはおかしい。
たとえ未熟な自分であっても、此処まで互角に戦えるはずがないと。
「んー、一応人間じゃないけど、
それはおにーさんも同じなのは分かるよ。
刀使でもない人が、こんなに攻撃をしのげるわけないし。」
「これでも未来では結構な英雄になるはずなんだけどな。
トジっつーのがわかんねえけど、相当強いってのは分かるぜ。」
「未来……? それにしても刀使も知らないなんて、変なの。
まあいいや。でも、その様子だとそっちも本気じゃないんでしょ?」
互いに慣れ親しんだ武器のように扱ってはいたが、
どちらも支給品のありあわせで戦ってる状態だ。
本来の得物ではない以上十全な戦いはできない。
互いに扱えてない部分もある為、同時に決め手に欠けている。
「得物は違うけど、別にそれを言い訳にはしねえぞ。
戦場で万全なんてありえねえからな。どっちかって言うと、
大事なのは不測の事態に対応できるかだ。それに、俺は槍の方が有名だ。
これで『剣じゃないから負けました』なんて言い訳は通用しねえんだよ。」
「おにーさん、年の割に達観してるね。」
「未来の記憶もあるからな。けど、達観してるのはそっちもじゃねえか?
俺より年下の奴がそんだけ剣術鍛えて、殺し合いする必要があるのも相当だぞ。」
状況と得物を確認して、一先ず動いて間もなく戦闘。
少年が今に至るまでの時間は、物の数分と言ったところだ。
最初から殺し合いを楽しむ狂ってる連中かと思えば話は通じる。
清浄な思考で、幼い少女が覚悟を決めるにしては余りにも短い時間だ。
元から戦いの環境に身を置いてなければ、この短時間で覚悟は決められない。
「外見とは裏腹に年食ってるとかか?
俺の師匠二千歳超えてるからそういうのも考えられるんだが。」
「ううん。見た目通りだよ、十二歳。質問の答えだけど、
願いを叶えるあの力が総浸食計画の邪魔になるからだよ。」
「なんだよそのやばそうな計画。」
「───結芽の願いだよ。
皆いなくならない。ずっと覚えてくれる。
ずっとずっと、楽しい時間が続く計画だよ。」
彼女、燕結芽の目的となる総浸食計画とは、
人類と荒魂と融合させることで、脆弱な人類を進化させる。
人が永遠に生き続けられる───故に自分を忘れるものがいなくなる。
誰かの記憶に残る、それが一度病により亡くなった彼女にとっての存在証明。
覚えた人間が死ななければ、自分は永劫に忘れられることがなくなると。
その目的を邪魔をしかねない要因は、排除しなければならなかった。
特に死者の蘇生を容易に行えるあの力は恐らくは本物だ。
それだけの力を誰かの手に渡らせるわけにはいかない。
当然、それを持っている海馬乃亜も含めて。
「それがお前の願いなんだな。」
「私は自分の力で総浸食計画の完遂を目指すの。
アイツの力はいらないし、寧ろ計画の邪魔になるから倒さないとね。」
「待て待て、だったら戦わずともいいんじゃないのか?」
要するに主催となる乃亜の打倒が目的でもあるということ。
だったら別に手を取り合って戦えばいいだけの話になる。
態々優勝を目指してまですることでもないだろうと。
「無理だよ? 人類の敵を全員説得できるなら話は別だけどね。」
ただの燕結芽であれば、恐らく何も問題なかっただろう。
興味を持てば刃を交えてしまう癖はあるが、それでもまだ大人しい方だ。
───けれど。此処にいる燕結芽は違う。本来ある人物に収まるはずだった、
人類の脅威たる大荒魂『タギツヒメ』と融合した、異なる(Another)禍神。
刀使は間違いなく狙い、当然それを結芽が受け入れるつもりもないだろう。
「今なら、この首輪一つ壊すだけで人類の敵を抹消できる。
その状況で人類の敵と仲良く脱出、それを誰が許すと思うの?」
元々人類の敵になってでも目的を成し遂げる。
その為だけに、隠世から復活を遂げたのだから、
その言葉には余り悲壮感と言うものは感じられない。
寧ろ、絶対に成し遂げたい前向きな精神を持っている。
親衛隊とずっと一緒に、誰からも忘れられることなく、
記憶したものが死ぬことで忘れられることもなくなるその計画を。
「あー……クソッ、返す言葉がねえよ。」
どうにも説得の言葉が少年は浮かばない。
未来の自分も、師匠も、彼女を前にしたらどうするか。
必要なら殺す。その思考だけで実行できてしまうだろう。
けれど、今この場にいるのはそんな彼らの思考からはまだ遠い少年。
名をセタンタ。後にクランの猛犬と呼ばれる男、クー・フーリンの過去の姿。
乃亜に召喚されていれば、召喚者の命令に己のルールも含めつつ従っていただろう。
今はそうでもなければ、カルデアに所属しているけれど今は野良サーヴァント。
つまるところ、此処にいるのは己の信条に従うだけの、所謂青臭い少年のようなもの。
なので、なんとかしてやりたさはあるものの、解決策が見つけられず頭を掻きむしる。
「そー言うこと。おにーさんができるのは二つだよ。
結芽を殺すか、私に殺されるか……そのどっちかだけ。
勿論、殺されるつもりはないよ。この願いを邪魔されないために。」
どうあがいても人類の敵の部分が回避できなかった。
今は殺し合いをしないように説得しようにも人類の敵を傍に置く。
全員が容認できるのものではなく、許容も相当な器を持った人物が必要だ。
それこそ、混沌・悪でも仲間として接するカルデアのマスターのような。
ビーストだろうと受け入れる人物なんて、そう何人もいないだろうし、
当然、彼女は人類の敵の座を降りる気もない。故に和解は絶対に不可能。
元々計画の為に生き返ったのであれば、決して曲がらない信念だと分かる。
英霊とは聖杯に託す願いを懐いて召喚される。死んでもそこは譲らないとは、
英霊からすればそれはありふれたものであるので嫌でも理解してしまう。
「……自分を死人だなんて思っちゃいねえってところは俺は好きだな。」
『英霊なんて連中は二度目の生なんぞに興味はねえ』とは、
未来の彼が言った言葉ではあるが、道半ばの彼は自分が死者とは思わない。
彼はメイヴに殺されるつもりもなく、不死のスカサハも殺してみせると意気込む。
いわば可能性の英霊。道半ばな存在故になんにでも至ろうとする前向きな精神。
なので彼女の目的を共感するかは別として、あり方については好感を持っていた。
「へ? 敵なのに好きになるんだ。」
「敵だからと憎まなきゃいけない理由があるかよ?
お前だっているだろ? 人類全員進化させるってことは、
それを阻止しようとしてる奴だって進化させるってことでもあるだろ。」
「……確かにそうだね。いるよ。だから、ずっと一緒にしたいの。」
自分の一度目の生に幕を下ろすこととなった戦い。
生き様を忘れないと言ってくれた、衛藤可奈美のことは好きだ。
好きだから、冥加刀使にしてでもずっと一緒にいたいと思っている。
たとえ、それが洗脳と言う形になりかねなかったとしても。
タギツヒメに誘われたとはいえ、それを彼女も望んでいる。
「そんな信念に、中途半端でいるのは礼儀に反するな。
今はマスターもいなけりゃ、あの海馬乃亜もマスターじゃねえ。
だったら俺は俺らしく───殺された二人のような奴を守るため戦ってやる!
我が名はセタンタ! アルスターの光の御子、クランの猛犬には至らぬ英霊なれど、
全身全霊を以って人類の敵を名乗る結芽! お前のその心臓、貰い受ける!」
誰に命令されてるわけでもない。
己の信条を以って、思うがままに戦う。
だったら人を守る、英霊らしいことをしようではないか。
彼女にできることがあるなら刃を交え、彼女を覚えることだけ。
いずれは座に帰る影法師が記憶を持ち帰ろうなんておかしな話だが、
彼にとって今の自分が影法師だなんだと思うつもりはない。
「そうこなくっちゃ! 私は燕結芽!
大荒魂タギツヒメを取り込んだ、最強の刀使!
じゃあセタンタのおにーさん、戦いの続きをしよっか!」
人類の敵と知りながらも、
自分のことを真摯に向き合う相手。
タギツヒメと融合したことと折神紫の言葉により、
自分が崇められたり、上の立場として扱われ何処か寂しくもあった。
だからこうして対等に、真正面からぶつかってくる相手を嬉しく思う。
「ま、かっこつけた癖に逃げるんだけどな!」
「えっ。」
あれほど啖呵を切りながら、
想像してなかった言葉に思わず変な声が出る。
申し訳なさそうな苦笑と共に投げられたのは、フラッシュバン。
これで隙を突けるほど彼女は甘くないので戦闘中は使わなかったが、
逃げるとなればその短時間のめくらましになれば時間は十分だ。
「宝具なしでそっちに勝てるほど甘くもないみたいだからな!
不測の事態に対応するとかぬかした癖に恰好がつかないが、
それだけお前の実力を認めてるって思ってくれ! じゃあな!」
捨て台詞のようなものなのにどこか爽やかな言葉を最後に、セタンタは逃げる。
自由にやると言っても、人を守る方針を決めたのであれば勝機のない戦いは避けるべきだ。
せめて宝具であるクルージーン、それを確保してからでなければ勝つのは難しいと。
光が収束する頃には、セタンタの姿はない。
周囲を見渡しても人影がなく、追跡は容易ではなかった。
『追わぬのか?』
「具体的な位置が分からないのもあるし、
おにーさんがちゃんとした武器を手に入れたら、
もっと強くなって再戦してくれるなら別にいいかな。」
『曲がりなりにも優勝を目指す奴の言うこととは思えんな。』
一人になった後、結芽は融合したタギツヒメと言葉を交わす。
一心同体となった身ではあるが、全てが同じ意思とは限らない。
彼女としては復活できた今の状況を手放したいとは思いたくない。
敵が強くなると言う可能性を与える彼女の行為は咎めたくなる部分もある。
「私がそういう性格してるの、知ってるでしょ?
合理的だったら千鳥のおねーさん達と真っ向から戦わないし。」
ごもっともな話ではある。
罠と分かっていながら可奈美達の前に姿を見せ、刃を交えたのだ。
タギツヒメも止めなかった、と言うより求める必要がないと言うべきか。
才覚ある刀使と融合した彼女が、負ける道理などないと言う自信故でもあるだろう。
『だが優勝は確実に必要だ。忘れるでないぞ。
我がいようとも、今の御刀では間合いも見誤るだろう。』
御刀は持ち主となる刀使を選び、選ばれた刀使にのみ神力を引き出せる。
此処ではどうやら別の御刀であっても力を引き出せることができるようだが、
やはり結芽の本来の御刀のにっかり青江でなければ能力が十全に発揮されない。
大荒魂と一体化した存在とは思えぬほどに弱体化してると言ってもいいだろう。
ついでに長さも重さも違うので、攻撃のキレも悪くなる部分が目立つ。
「はいはーい。」
適当な返事と共に、湖畔から結芽は姿を消す。
厄災たる禍神は戦士との再戦を願いながら、次の敵を探す。
【燕結芽(Another)@刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火】
[状態]:健康
[装備]:薄緑@刀使ノ巫女
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本方針:優勝して総浸食計画の邪魔になる乃亜(と言うよりその能力)を奪う。
1:にっかり青江を探す。
2:セタンタのおにーさんとはまた戦いたい。
3:強い人いるかな?
[備考]
※参戦時期はAnotherバージョン、可奈美と姫和と交戦中。
※薄緑でも写シなどは使えますが、能力は本来の御刀より劣化します。
ただしタギツヒメと融合してるので差はそこまでないのかも。
※名簿上では燕結芽です。
「やっぱねぇか……」
ランドセルの中を漁ってみるが、
彼の宝具となる光の剣『クルージーン』は何処にもない。
流石にそこまで都合よくは用意してないとは思っていたので、
余り落胆してはいなかった。
『───結芽の願いだよ。
皆いなくならない。ずっと覚えてくれる。
ずっとずっと、楽しい時間が続く計画だよ。』
「……あいつが英霊の座についてたら───いや、ないか。」
座に登録されているとなれば、
ある意味で一生忘れられてない存在になる。
けれど、それで満足するような相手ではないだろう。
やはり和解は無理だと、少し残念そうに思った。
「つくづく女絡みになると運がねえの、なんなんだろな。」
此処でない何処かであれば、
互いに研鑽し合える間柄になれたような気がする。
流石にあの幼い相手に恋愛感情みたいなのはないが、
死ぬことがないスカサハに自分を殺す相手であるメイヴに、
どうして女性側は厄介な相手ばかりと出会ってしまうのか。
やれやれと溜め息を吐きながらもセタンタも動き出す。
クランの猛犬を呼ぶには未熟なケルトの戦士。
未熟であれども、英霊としての志はこの姿でも健在だ。
「にしても、宝具をなくしたセイバーってどっかで聞いたな。」
【セタンタ@Fate/Grand Order】
[状態]:首に傷
[装備]:潮騒の槍@御城プロジェクト:Re、閃光玉×3@モンスターハンターシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜1
[思考・状況]基本方針:乗る気はない。
1:装備整え次第、再度結芽と戦う。初めての女殺しになるのか?
2:クルージーンを探す。宝具なくすサーヴァントが何処にいんだよ。
3:俺セイバーだぞ? なのにランサーやってどうすんだよ。
[備考]
※カルデア所属ですが、現地召喚された野良サーヴァントと扱いは同じです。
※参戦時期は少なくとも「螺旋証明世界リリムハーロット〜喝采なき薔薇〜」において、
スカサハを倒して以降になります(つまりアーケードのカルデアからの出張)。
※お供の犬はいません。
※宝具がないので「裂き断つ死輝の刃」は使用できません。
【薄緑@刀使ノ巫女】
燕結芽に支給。元々は獅堂真希が用いていた御刀。
珠鋼という特殊な金属で出来た日本刀で折れず錆びない。
御刀に選ばれた者は刀使として写シなどの能力が使用できるが、
首輪の影響か、選ばれてなくとも刀使であれば能力が行使できる。
【潮騒の槍@御城プロジェクト:Re】
セタンタに支給。城プロにおける槍武器の一つ。
海の力を纏った槍で、穂先からは潮騒の音が聞こえるとか聞こえないとか。
所謂ドレイン武器で、ダメージを与えたら微量に与えた分体力が回復する。
【閃光玉@モンスターハンターシリーズ】
セタンタに支給。手投げ玉系アイテムで、破裂させると強烈な閃光を放つ。
一種の閃光手榴弾だが音は殆どでないのでめくらましだけに留まる。
つまり閃光手榴弾の下位互換に見えるが、小型なのでお手頃。
投下終了です
投下いたします。
とある王城の一室、そこでは一人の少女がみずぼらしい恰好をした男に詰め寄っている姿があった。
"わたし、元の世界に戻るために、いっぱい、いっぱい、がんばったよ?それなのにこんな……"
その少女は表情が一切見えない顔のまま、目の前にいる男に怒りをぶつけていた。
その少女は謎の竜巻によってこの世界へ飛ばされてしまった存在だった。
見知らぬ土地に取り残され絶望していたが、旅の中で出会った3人の男によって一縷の望みを与えられた少女だった。
『この国の王様なら、どんな願いもかなえてくれる』……その手繰り寄せた希望にすがり、3人の男と共に必死に生き続け、そして戦い続けた少女だった。
……だがその希望は不条理な現実によって更なる絶望へと変わってしまった。
その国の王様はただの詐欺師だった。彼女も仲間たちも、そしてその国の住人すべてが彼に騙されていたのだ。
当然そんな男が彼女の『元の世界に帰りたい』という願いなど叶えられるはずもない。故に彼女は目の前にいる男に怒りをぶつけているのだ。
そして彼女は詐欺師に掴みかかり……
◆◆◆◆◆
ところ変わってここは殺し合いの会場、雑草が生え荒れ果てた獣道の中。
そこには三つ編みがほどけたようなおさげ髪の、ズタボロの姿をした少女がいた。
所々に穴が空いてる上に右腕の裾がちぎれた洋服に同じく穴だらけのソックス、くすんだ銀の靴を履き右目には包帯を巻いた少女だった。
「ここは、どこ……?さっきのアレは、なに……?殺し合えば、願い事が叶えられるの……?」
その少女は困惑していた。今まで自分は見知らぬ土地に取り残され、元の世界に帰ることもできずに絶望していたはずだったから。
それなのに何の前触れもなく別の場所に連れてこられ、そして訳も分からないまま奇妙な少年が現れて『互いに殺し合うゲーム』の宣言を開始したから。
そして彼に反抗した少年とその兄が殺されてしまうところを目撃したから。
「あの子、"ノア"という子は願い事を叶えると言っていた。でも、信用できない……!きっと、あの時と同じこと……!あれもきっと、何かのトリックが使われているはず……!」
彼女は一人の少年が『殺し合いについての説明』の為だけに殺され、そして生き返る光景を見せつけられた。
そして今度はその少年とその兄、二人の兄弟が殺される様を目撃した。
だがその光景を彼女は否定した。あれには何かカラクリがあると、彼女はそう考えていた。
何故なら彼女は『願い事を叶える』とうそぶいた男に騙され、いいように使われた経験があったからだ。
あの時、自らを王様だと偽った詐欺師は張りぼてや仮面などを駆使して変装し、まるで奇跡を起こせるような神秘的な存在であると彼女たちに思い込ませた。
そしてあの詐欺師は『願いを叶えてほしければ、西の国にいる悪い魔女を退治してほしい』と彼女たちに頼んできたのだ。
その結果自分と3人の仲間たちはボロボロになり、そのうち二人は一度命を落としながらも魔女を打ち倒した。
だが詐欺師は自分たちの願いを叶えようともせず、『忙しい』との理由で門前払いをしてきた。
そして怒りのままに男のいるであろう玉座に押し入り、そこで真実を知ることになった。その男が本当は願い事を叶える力など持っていないことを、自分たちが騙されていたという事を。
『自分とその仲間たちは詐欺師に騙され、いいように利用されていた』……その経験から彼女は乃亜の言葉を一切信用していなかった。
「もう…元の世界にも、みんなの元にも帰れない…なら、全部壊しちゃえばいいんだ」
それと共に彼女は誰に話しかけるわけでもなくそう独り言を言い、ランドセルの中から何かを取り出した。
それは鍔(つば)と呼べる部分が存在せず、また持ち手となる部分の金属が剥き出しになった一振りの刀だった。
それはとある英雄が自らの義手の中に仕込んでいた刀。聖別され、決して腐ることがない刃を持つ武器。
その名を『マレニアの義手刀』といった。
彼女はそれを取り出し、使い方を覚えるために振り回していく。まるでカカシのように片足で跳躍し、嵐のように高速で振り回して周囲のものを切り刻んでいく。
それはまさしく彼女の絶望のきっかけとなった、巨大な竜巻のようであった。
「あは…あははは…あはははははははは!」
次第に彼女はその口元に笑みを浮かべ始めていった。だがそれは歓喜によるものではない。
それは絶望からくる諦め、どうしようもない状況に陥ったことによる暗い笑みだった。
見知らぬ土地で出会ったカカシも、自分を守ってくれるブリキの木こりも、勇気を振り絞って戦ってくれたライオンも、そして元の世界からいつも一緒にいた飼い犬もこの地にはいない。
この地において彼女は本当の孤独を味わっていた。
故に彼女の孤独を埋められる者も壊れ始めていく彼女を止められる者もおらず、ただひたすらにその場に絶望の竜巻が吹き荒れていくのであった。
◆◆◆◆◆
とある王城の一室、そこでは口から泡を吹きながら痙攣している詐欺師の上に一糸まとわぬ姿の少女がまたがり、必死に腰を振ってその男性器に奉仕をしている姿があった。
少女は目の前にいる男に騙された屈辱と怒り、そして絶望に彩られた顔のまま叫ぶ。
"帰りたい……みんなのいる世界に帰りたい……。こんなところヤダよぉ!"と……。
そこにはただ、歯を食いしばりながら泣いている一人の少女がいるだけだった。
彼女の名は『銀靴のおさげ髪』。
不条理な現実に翻弄され、絶望に打ちのめされた一人の少女にして、元の世界では『ドロシー』と呼ばれていただろう少女である。
【銀靴のおさげ髪@Alice Re:Code】
[状態]:健康、絶望と諦め
[装備]:マレニアの義手刀@ELDEN RING
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]基本行動方針:元の世界に帰りたいけど、乃亜が本当に願いをかなえてくれると思えない。だから自分を含め、何もかも壊してしまおう。
1:もう…帰れない…なら、全部壊しちゃえばいいんだ。
2:乃亜は願いをかなえてくれるって言ってたけど、もう騙されない。
3:せめて、ブリキの木こりさんたちともう一度会いたい。
[備考]
過去の経験から、乃亜の言葉を信用していません。
『支給品紹介』
【マレニアの義手刀@ELDEN RING】
『銀靴のおさげ髪』に支給。『ミケラの聖樹』に登場するボス『ミケラの刃マレニア』を倒し、その追憶から作られる刀。
マレニアの義手に仕込まれていた武器であり、不敗の象徴とされていた武器。
またマレニアと同じように水鳥のごとく一本足で跳び、超高速の連続斬りを放つ『水鳥乱舞』という技などが存在する。
なお筋力値、技量値が必要な数値に達していなければ真価を発揮することは出来ないが、このロワではその制約は取り払われている。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下ありがとうございます!
>フウカと火の国の英雄
オビト君、リンの事引き摺り過ぎですね。正直私もフウカとは似てないと思います。でも、この年頃の男の子はそういうものなんですよね。
幻覚解くためにぶっ殺すって極端な行動に走っちゃうのも、お前そういうとこだぞって感じです。
それはそれとして、本人達は真面目なんですがコントみたいな掛け合いがテンポよく面白い作品でした。
>パロロワサムライ
桐森蘭といい、ジゼルちゃんといい、コナンの越水七槻ちゃんといい……可愛い娘って大体犯人ですね。
そんなことはどうでもよくて、母親とただ再会したい。
本当に子供が持つ願望を叶えようとした相手を、正当防衛とはいえ殺すことになったギンコの内心は複雑でしょうね……。
>ロリショタロワのちびゴジラ
何やってんだこいつら……。
えぇ……特異性癖すぎるし、ちびゴジラ君もそんなこと付き合わなくていいから、仮にも国民的キャラとしての自覚を持とう。
あと、子供だらけのロワにことね様は不味いですよ!
>何一つ疑うことも知らなかったね
シャンバラのアル……言われてみると確かに、かなり危なっかしい場面が多かったかもしれないですね。
特にロワ内だと、死体なんて一杯ありますから次話で人体錬成して、持って行かれてもおかしくないかも。
相方のソルティーナも視野が狭くなってそうで、アルを止める余裕もなさそうですし。
>他者を幸せにする為に
この娘、凄くいい子なんですが、ロワ内で人を幸せにするとなると不幸の数が桁違い過ぎて、速攻で妖力使い果たして消滅しちゃいそう……。
心配ですね。
>パンツを見せる事… 別に大海原の誇りとかでは無い
アズレンキャラに「力」のスタンドは成程と思いましたね。彼女達も船のキャラですし、相性抜群かもしれません。
戦闘力も高く知力も高そうなので、頼れる対主催になってくれそうです。
>果てなき戦いの進路を辿れ
流石ですぜ、ランサー(じゃない)の兄貴……例え幼いとしても紛れもなく、己の信条に従う様はケルトの大英雄クーフリンですわ。
結芽ちゃん良い娘そうな雰囲気もするんですが、目的がきっちり固まってるタイプなので説得が難しいですね。やっぱ兄貴は女運がない。
>叶えられなかった、夢のカケラがひとつ
かなり壮絶な過去から乃亜を信じないまでは良いものの、全員道連れで心中しようとするのは他の参加者からしたら、ちょっと困るところ。
彼女の絶望を消し去るほどに、誰か希望を与えられる人が居れば、また変わるかもしれませんが。
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「なんで、なんで私はこんな所にいるの……?帰りたい、帰りたいよぉ」
アイヌ風の刺繍が施された巫女装束を着た少女は嘆きの声を呟きながら森を歩いていた。
彼女の名は雨宿 まち、熊出村という田舎に住む14歳の中学生の少女である。
まちは現在、幼児退行を引き起こしていた。
その理由はご当地アイドルのコンテストに出場するために仙台に行った時である。
一時期、まちは恐怖と不安に陥るも勇気を振り絞りコンテストに参加。
パフォーマンスは大成功し観客からは拍手喝采を受けるも
まちは観客達から「田舎者は出て行け!」と石を投げつけられる幻覚を発症し
仙台から逃げ帰ったまちは、精神崩壊により幼児退行してしまった。
これは仙台市民の名誉のために言うが
この話はあくまで、まちが見た幻覚であり
実際に仙台市民は田舎者に石を投げつけたりしないので誤解しないでもらいたい。
「会いたいよナツ、私を助けてよナツ……ナツぅぅ……」
その結果、二度と「都会の学校に行きたい」と考えなくなったまちは
人語を喋るヒグマのナツに依存するようになり、彼なしでは生きていく事ができない状態となっていた。
「どこいるのぉぉ!!ナツぅぅぅ!!うわああああああ!!!!」
そんな精神状態の中でまちはナツの元から引き離されてしまったのだ。
一人ぼっちになったまちは、一心不乱にナツを探しながら泣き出してしまう。
「もう難しいこと考えなくていいよ、やらなくていいよ」とナツに吹き込まれ
思考する事を手放したまちの心は幼子同然であり
彼女一人では何もすることが出来ない無力な存在でしかない。
この場所にいるはずの無いナツの名を叫んでいたその時――。
「君もこの殺し合いに呼ばれたのかい?」
「な、ナツ?」
まちの泣き声を聞いて一人の少年が現れた。
その少年はクマの姿をしていて、一瞬ナツを思い浮かべた。
「……違う、ナツじゃない」
だけど本物のヒグマと比べて、小学生程度の身長しかないクマの少年を見て
すぐ別人だと気づいたまちは、がっかりと肩を落として俯いた。
「よく分からないけど元気だそうよ!僕の名前はクマ吉、よろしくね!」
クマ吉は落ち込んでいるまちを元気付けようと声をかける。
最初は警戒していたまちだったが喋るクマとしてナツに親しい物を感じたのか
次第に口を開くようになり、お互い自己紹介を交わした。
◆
「そうかぁ!まちちゃんにとってナツはとても大事なクマなんだね」
「うん……ナツがいないと私、私……」
「よぉし!まちちゃんがナツさんのいる村に帰れるように僕もお手伝いするよ!」
「本当!?」
まちの顔がパァッと明るくなる。
ここに来て自分に優しくしてくれる人に出会ったのだ。
都会の人みたいに石を投げつけてくるような人ではないんだ。
「もちろん!クマ同士の好みだからね、お安い御用だよ!」
「ありがとう、やっぱりクマさんは優しい人が多いのね……」
クマ達は善良な性格の持ち主ばかりだと思ったまちだが
次のクマ吉の発言によってそれは大きな間違いだと理解することになる。
「その代わりと言ってはなんだけど。まずは服を脱いでくれるかな?」
「……えぇ!?」
クマ吉の言葉を聞いた瞬間、まちの表情が凍りついた。
「な、何言ってるのあなた……」
「そりゃあ僕はまちちゃんのお手伝いをする訳だから僕の望みも聞くべきだよね。世の中ギブアンドテイクだよ。うふふふ」
「……ひぃ!!」
クマ吉の薄ら笑いを見た瞬間、まちは悲鳴を上げて逃げ出した。
彼女は本能的に察したのだ。目の前にいるクマは自分の事を性的対象として見ていると……。
「待ってくれよー!大丈夫!怖くないから!痛くしないから!ちょっとだけ味見させてくれればいいからさぁ!」
「嫌ああ!!来ないで!!誰か助けてぇぇ!!きゃああああ!!!」
「うおおおおおおお!まちぃぃぃぃぃ!うおおおおおおお!」
背後から迫るクマの魔の手から必死に逃げようと走るもバランスを崩して転んでしまい、すぐに追いつかれてしまった。
「うふふふふふ、やっと捕まえた」
「ひっ……!お願い許して……」
「心配しなくても僕は紳士だからね。優しくするよ」
恐怖で震えているまちに対して、クマ吉は無慈悲にも彼女の巫女装束に手をかける。
「うわあああん!!怖いよぉぉ!!ナツぅぅ!!助けてよぉぉぉ!!」
「大丈夫、痛いのは最初だけだから、すぐ気持ちよくなるから」
「いやああ!!ナツぅぅぅぅぅ!!!」
恐怖で身体が動かない。涙と鼻水を流しながら歯をガチガチ鳴らす事しかできない。
「うぐっ……!ううぅ……!」
今まさにまちがクマ吉に犯されかけていた。
その時――。
「そこまでです!!」
二人の目の前に、青い髪をした女の子が姿を現した。
女の子は強い意思を秘めた瞳でクマ吉の行動を静止させた。
「な!何なんだ!君は?」
「私の名前はソラ・ハレワタールです!女の子に乱暴なんかしたら駄目じゃないですか!」
「乱暴って人聞きが悪いなぁ。僕はただまちちゃんと仲良くスキンシップしてるだけだよぉ」
「嘘つかないでください!!明らかに襲おうとしてましたよね!!」
「ううっ……私は嫌だって言ってるのにあのクマは私を無理やり押し倒した……ぐすっ」
「ほら!彼女もこう言ってます!もう言い逃れできませんよ!」
「ちぇ〜、僕が悪かったよ」
◆
こうしてソラの救援によってまちは性的暴行から難を逃れ
悪事を働いたクマ吉はソラによってお叱りを受けていた。
「ごめんね、あの時は殺し合いの場で気が動転してて、ついあんな行動を取ってしまったんだ」
「本当に分かってるんですか?次同じことをやったら承知しませんからね!」
「はい……もう二度とやりません……」
「まちさん、彼を許してあげてくれませんか?」
「はい、私ならもう平気です。ありがとうソラさん」
クマ吉は正座で座らされ、ひたすらまちに向かって頭を下げて謝っていた。
何とかまちにも許してもらい、今後も行動を共にするのも許可された。
そうして二人の現状を知ったソラは――
「私もまちさんのお手伝いをします!」
「いいの?」
「はい!困ってる人を見つけたら助けるのがヒーローの努めです!」
「僕も一緒にまちちゃんを助けるよ!」
「あなたねえ……」
まちから冷たい視線を受けるクマ吉。
許したと言っても彼に対する信用は当然ながら地の底に落ちている。
「そんな目で見ないでよまちちゃん!本当に反省してるんだから!」
「大丈夫です!彼が何かしようとしても私がすぐに止めてみせます!」
「ソラさん……!」
「僕も君たちと同じ、殺し合いに巻き込まれた哀れな犠牲者の一人に過ぎないんだよ。だから仲良くしようよ」
「……そうですね、私も少し考えが偏っている部分がありました。過ちは誰にでもありますからね」
信用を得るには自分も他人を信用しなければならない。
疑ってばかりいてはいつまでも一致団結出来ない。
そう考えたソラはクマ吉の言葉を信じる事に決めた。
「これからよろしくね。ソラさん」
「こちらこそよろしくお願いします。まちさん」
こうして三人のメンバーは殺し合いからの脱出を目指すために協力し合う事となった。
この先、いくつもの苦難が待ち受けているだろう。
それでもソラは決して諦めない。
それがヒーローなのだから。
【雨宿 まち@くまみこ(アニメ版)】
[状態]:幼児退行
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:ナツの元に帰りたい
1:ソラ達と一緒にここから脱出する方法を探す。
2:クマ吉は信用できない。
[備考]
※アニメ最終回からの参戦です。
※幼児退行を引き起こしています。
※都会の人間は田舎者を見ると石をぶつけてくると思いこんでいます。
【ソラ・ハレワタール@ひろがるスカイプリキュア】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:皆で力を合わせて脱出する。
1:ヒーローとしてこの殺し合いを止める。
2:まちをナツのいる村へ帰したい。
3:クマ吉のことも信用する。
[備考]
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。
僕はとても窮屈な思いをしていた。
何故かって?それは僕が何をしても許されなかったからだ。
スクール水着を盗んで着用することも許されなかった。
入浴姿を覗き見することも許されなかった。
脅迫の手紙を女子に送りつけるのも許されなかった。
全裸で街を歩くことも許されなかった。
大きい三角定規を使って女子のスカートの中を撮影することも許されなかった。
女子の家に侵入して下着を盗むのも許されなかった。
女子の縦笛の先端部分を盗んで咥えることも許されなかった。
女子をストーキングして追いかけ回すのも許されなかった。
だけどここには僕を捕まえる警察も
僕の犯行を暴く名探偵もいない。
ここでなら僕のやりたいように生きることが出来る。
せめて元の世界に帰るまでの間だけでも僕は自由を謳歌するんだ。
【クマ吉@ギャグマンガ日和】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:自由に生きる。
1:ソラ達の目を盗んで悪事を働く。
2:まちちゃんのことはまだ諦めてないからね、うふふふ。
[備考]
※うさみちゃん最後はスピード解決、後からの参戦です。
投下終了です
投下ありがとうございます!
>前途多難
やっぱ怖いスねクマは。
ソラちゃんも、こんな奴は殺処分した方が良いと思いますね。クマなので殺人にはならないでしょう。
クマ吉くん、彼は自由を謳歌したいようですが、何をやろうと警察に連行されてはすぐ釈放される元の世界の方がよほど自由に見えてしまうんですが、それに気づく時は訪れるんでしょうか。
投下します。
「ここは……、ボクは一体どうしてこんな所にいるんだろう……。」
殺し合いの舞台の何処か、蒼色の瞳に腰まで届く長さの青色のロングヘア、黒い服装に赤色のミニスカートを履き、頭部に某スーパーロボットを模したデザインのヘッドギアを被った童顔の少女が自らが置かれた状況に酷く困惑していた。
少女の名はグレートマジンガー、通称グレちゃんであり、練馬区及びそこに存在している光子力研究所を襲撃したり悪事を働いたりしている地下帝国の機械獣ガールズやミケーネ帝国、その他色々な怪物ガールズ達から練馬区や光子力研究所を守る……という名目でガールズ達をボッコボコにフルボッコするロボットガールズの代表的チーム「チームZ」のメンバーの一人であり、同じくチームメンバーの一人であるグレンダイザーことグレンダさん、メンバーの一人でチームのリーダーでもあるマジンガーZことZちゃんと共につい少し前、チームZを含めたロボットガールズ達を練馬区から追放しようとした超宇宙怪獣ギルギルガンことギルギルガン子との死闘を制し、敵がいなくなったことで暇を持て余していた所、突如としてこの殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
「うう……、今日はswitchの新作ゲームをやっと買ったのに……、今日一日家にずっといて新作ゲームをプレイしていたかったのに……、何でボクがこんな目に……。」
そう、グレちゃんは「ゲームのプロ」と呼ばれるほどのゲーム大好き少女であり、殺し合いに呼ばれる直前、以前から気になっていたニンテンドーswitchの新作ゲームソフトを購入し、今日一日家でずっとプレイしようとした矢先、殺し合いに呼ばれたためグレちゃんはそういう意味でも不満たらたらであった。
「それに……、ここにはZちゃんがいない……、うう……、Zちゃん……、会いたいよう……。」
それに彼女は同性であるはずのチームZのリーダーであるZちゃんの事が大好きな百合っ子でもあり、いつも一緒にいるZちゃんと強制的に離れ離れになってしまったため、彼女の中では元の世界に早く帰ってゲームをしていたい、Zちゃんに会いたいという気持ちが強く存在していた。
「でも……ボクは涙を流さない。(気持ち)ロボットだから。(気持ち)マシーンだから。ボクだって平和を守るロボットガールズなんだ。あの海馬乃亜をぶちのめし、元の世界に帰る。そうやって今までだって敵をフルボッコにしてきたじゃないか。」
そう、彼女は同じチームメンバーでリーダーでもあるZちゃんの激しく元気な性格と比べると口数が少なく大人しい性格に見えるが内面ではZちゃんを赤く激しい炎と形容するなら、彼女は青く静かな炎……そう、そういう意味では彼女もZちゃんと根っこの部分は同じ熱く燃える正義の心の持ち主であり、殺し合いというふざけた企画を催した海馬乃亜を機械獣ガールズ達のようにとっちめ、この殺し合いを終わらせるつもりでいた。
……最も敵に対して一切の容赦がなく、敵対した相手を容赦なくボコボコにして痛い目に合わせるという側面に関しても彼女は同じチームメンバーであるZちゃんやグレンダさんと根っこの部分は同じであり、今まで彼女はダブラスM2やガイアQ5を始め、機械獣ガールズやミケーネたん、ギルギルガン子をチームZ総出でフルボッコしてきたのもまた事実であった。
まずは仲間集めだ、と最初にグレちゃんは思い立ち、支給品であるランドセルを背負って出発することにする。グレちゃんも最初の内は機械獣ガールズ相手に無双してきたものの、暗黒大将軍子や結合少女ボング子、光波少女ピクドロンやギルギルガン子など強敵が現れるにつれ、チームメンバーや他のロボットガールズと共闘して戦っても勝てずに敗北寸前まで追い詰められることが多くなり、自身も敵に挑んであっさり返り討ちにあい、ボコボコにされることも珍しくなかったため、乃亜の戦力がどれ程のものか分からない以上、単身で挑むよりも仲間を集め、共に戦った方が賢明だと頭の良い彼女は理解していた。
やがて歩いていると、一体のロボットが倒れているのをグレちゃんは発見した。そのロボットは機械獣……というより、機械の竜を思わせるような姿をしていた。大きさはグレちゃんの半分くらい、二本の手足のパーツが付いているなど体型は人間に近いが臀部の部分に尻尾のパーツがあり、全身灰色で鋏状の手先や爪など一部のパーツは黄色の配色をしており、目や口のパーツ以外にも頭部に耳のような形状のパーツが付いている、そんな感じの見た目をしていた。
ロボットの名はちびメカゴジラ、彼は人間に作られたロボット怪獣であるものの、理由は不明だがどういうわけか怪獣島に流れ着き、偶然出会ったちびゴジラと共に怪獣島の住民である他のちび怪獣と交流しながら怪獣島の新しい住人として馴染み始めた矢先にこの殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
「ピー、ガガッガ……」
「……」
グレちゃんは気絶しているちびメカゴジラをバンバン叩いて起こそうとしたものの、一向に反応せず文字通り機械のようなエラー音を出しながら起きる気配のないちびメカゴジラに対し、いい加減イラついたグレちゃんは自身の得意技をちびメカゴジラに向かって放つ。
「アトミックパンチ」
ガァンッ!!
「!?っつ痛ってえっ!!?」
自身の後頭部を殴られたことで流石にちびメカゴジラも目が覚めたのか、後頭部を抑えながらその場から飛び起きる。
「やっと起きたか。」
「っえっ!?今、誰か拳で殴った!?」
「違う。」
「え?うそ、今、殴ったよね?」
ちびメカゴジラの問いかけに対し、グレちゃんは首を横に振り、こう答える。
「拳じゃないから。」
「……は?」
「アトミックパンチだから。」
「……で、そのアトミックパンチで殴ったのは?」
「ボク」
「やっぱお前じゃねーか!!!」
そう、ちびメカゴジラはちび怪獣随一のツッコミ気質の持ち主であり、ちびゴジラを始め変な性格の多いちび怪獣たちの行動や言動に対していちいちツッコミを入れるのが彼の怪獣島における役回りとなっていた。
「……ていうか、ここはどこ?君は誰?」
「ボクはグレートマジンガー、グレちゃんって呼んでね。ここがどこだか、ボクにも分かんない。」
「……え?ていうか、グレートマジンガーって本名?」
「うん」
「おかしいだろどう考えても!!」
グレちゃんの回答に対し、ちびメカゴジラの最もなツッコミが入る。最初から人間に作られたロボット怪獣であるちびメカゴジラなら兎も角、グレちゃんは頭部の変わった形状のヘッドギアやややコスプレ気味の恰好を除けば普通に人間である。
そんな娘に「グレートマジンガー」なんて名前をつけるなんて親は何を考えてそんなキラキラネームを付けたんだと激しくツッコミたい気持ちになるが、この場に彼女の親がいない以上、これ以上ツッコむのは無駄だと考え、ちびメカゴジラは気持ちを切り替え、自ら自己紹介をすることにする。
「……まあ、いいや。僕はちびメカゴジラ。」
「そうなんだ。じゃあ、これからはメゴやんって呼んでいい?」
「メゴやん?メカゴジラの略?」
「うん」
またあの時と同じだ、とちびメカゴジラはちびゴジラの紹介でちびギドラと初めて会った時の事を思い出す。
彼は三つの首を持つ三つ首怪獣で一つ一つの首それぞれに人格があり、真ん中の首は気さくな兄貴気質、左の首は粗暴な乱暴者、右の首はいいやつ……と見せかけて実際はとんでもなく腹黒であり、友達を保証人にして金を手に入れることも厭わないようなヤバい性格をしていた。
でもなんやかんやで貴重な松茸を分けてくれるなど彼とも仲良くはなり、彼に付けられた「メゴやん」という愛称も少し変ではあるけど悪くは無いかと彼自身気に入ってはいた。
「まあ、「メゴやん」でもいいか。これから先、ずっと苦楽を共にするんだし、僕たち、友達になろう!」
そう言ってちびメカゴジラはグレちゃんに対して手を差し伸べる。……が、
「……えー?」
「渋んなや!!!」
嫌々、渋々みたいな表情を浮かべたグレちゃんに対し、ちびメカゴジラはまたしてもツッコむ。
まあ、そんなこんなで友達になった二人はこれから先の事を考え、自らの所持品や支給品の確認を始める。
……だが、自らの支給品を確認していたグレちゃんが急に焦ったような表情を浮かべると、まるで何かを探すかのように必死になって自らの支給品を確認し続ける。
「……?どうしたの?」
グレちゃんの様子がおかしい事に気付いたちびメカゴジラは心配そうに声を掛けるが、その直後、グレちゃんの焦りの原因が彼女自身の口から語られる。
「……無い。無い!無い無い無い無い無い!!ボクの……ボクのマジンガーブレードがどこを探しても無い!!」
そう、本家グレートマジンガー同様、マジンガーブレードはグレちゃんが機械獣ガールズなどとの戦いで愛用していた武器であり、結構気に入っていたお気に入りの武器であったため、それが見つからないという事実が、普段感情の変化が少ない彼女がZちゃん絡み以外で珍しく取り乱し、焦りだすという理由になっていた。
こうなったのには理由があり、彼女のマジンガーブレードは海馬乃亜の手によって没収されていたというのが真実であった。
基本、この殺し合いにおいて参加者の武器は没収が基本であり、更にバランス調整のために一部の参加者の技や能力等にも制限が掛けられていた。
そのためグレちゃんはグレートタイフーンやサンダーブレークは引き続き使用可能なものの、彼女は未だ気づいていないがそれらの技も弱体化の措置が取られていた。
やがてどこを探してもマジンガーブレードが全く見つからない事を理解すると、グレちゃんの目から涙が溢れ、その場に崩れ落ち、泣き始める。
「うっ……うっ……ボクの……ボクのマジンガーブレード……」
「ほっ、ほら、そんなに泣かないで。ほら、君の支給品の中にこんなカッコいい武器があったのを見つけたからこれで泣き止んで。」
そう言いながらちびメカゴジラはグレちゃんの支給品の中にあった大鎌を彼女に対して差し出す。顔をあげ、それを見つめたグレちゃんは泣くのをやめるとちびメカゴジラから奪い取るみたいな感じで大鎌を手に取り、大鎌を構えてポーズをとる。
「……おおーっ。カッコいい……」
大鎌。そんな中二心をくすぐるようなカッコいい武器を手に入れたグレちゃんは先ほどまで泣いていたのは何処へやら、嬉しそうな表情で大鎌を振り回し、決めポーズをとるとこう宣言する。
「……決めた。ボクはこの武器が気に入った。今日からこの大鎌をボクの新しいパートナーにする。」
「心変わり早っ!!!」
マジンガーブレードへの愛着はどうしたんだとちびメカゴジラはまたしてもツッコむが、そんなツッコミを無視し、グレちゃんはちびメカゴジラに問いかける。
「……そう言えばメゴやんの武器は何かあるの?」
「?ああ、その事なら心配は要らないよ。僕の武器はこれ。」
そういうとちびメカゴジラは鋏状の手で器用に掴みながら自らの武器を取り出す。その武器は某SF映画に登場する武器に酷似した、金属製の柄にスイッチを入れると柄からエネルギーの刃が発生するレーザーソードであった。自身の武器とはベクトルの違うカッコよさに、グレちゃんは目を輝かせるとちびメカゴジラに武器の名前を聞く。
「その武器の名前は?」
「この武器は『カゲミツG4』という名前のフォトンソードでね、実体を持たないエネルギーの刃で敵を斬る代わりに、バッテリーで稼働するタイプの武器らしいんだ。」
「バッテリーが切れる心配はないの?」
「ああ、僕ならその心配は要らないよ。」
そう言うとちびメカゴジラは自身の身体のハッチを開け、カゲミツG4の柄からコードを伸ばすと、自身の身体のプラグにコードを接続する。
何故このような事が出来るのか。それは彼の身体に秘密があった。彼は人間によって作られたロボット怪獣であるが、人間の元から離れ自律稼働が出来るよう、彼の身体には永久機関が搭載されていた。これは自家発電でエネルギーを作り出し、人間による整備や補給を必要とせず永久稼働し続ける事が出来る優れもので、この機関があるからこそ、彼は人間たちの元から離れ、怪獣島で他のちび怪獣たちと過ごし続ける事が出来るのであった。
今回はこの機能を応用し、永久機関で生み出したエネルギーを分け与えることでカゲミツG4にエネルギーを充電し、安定して使用することが出来るという芸当を可能としていた。
「そして僕のもう一つの武器がこれ。」
そう言って取り出したのは近未来的なデザインのカゲミツG4とは打って変わって、武骨なデザインをした一丁の拳銃であった。
「これはFN・Five-seveNという名前の拳銃でね。装弾数は30発で弾丸も貫通力が高くてハンドガンとしては割と優秀な部類で僕は近距離の敵はカゲミツG4、中遠距離の敵はこのFN・Five-seveNで戦う戦法を取ろうと思うんだ。」
それを聞いたグレちゃんは彼を誉める……のではなく、彼を嘲笑するかのような感じで笑い、こう発言する。
「それ、結局どっちつかずってだけじゃん。バーカ。」
「近中遠全距離対応って言えよ!!!」
まあ、悔しいが言い方こそ悪いものの、グレちゃんの指摘も至極最もであった。片手で銃を撃ったところで正確に狙いを定められず弾を外す可能性があるし、片手で剣を振ったところでまともな剣術にならずただ振り回すだけになる可能性もあった。
結局『近中遠全距離対応』と言えば聞こえはいいがどの距離で戦っても本来のスペックを発揮できず彼女の言う「どっちつかず」になる可能性も確かにあるのもまた事実であった。
まあ、無理に二刀流みたいな感じでやらないで距離に応じて武器を変えるやり方にすればいいかと思い直して武器をしまい、振り返るとグレちゃんがその手にニンテンドーswitchを持って懇願するような表情でちびメカゴジラを見つめていた。
どうしたのかと思ってちびメカゴジラが口を開こうとすると、その前にグレちゃんが口を開いていた。
「ねえ……一緒にゲームして。」
「?いいけど。」
ちびメカゴジラの返答を聞くや否やグレちゃんはランドセルから次々に機器を取り出し、二人プレイが出来るようセッティングする。
「ねえ……一緒にやろ?『シン・仮面ライダー乱舞』。」
「え?確かそれって……『シン・仮面ライダー』のネタバレを含んでいるんだよね?それやって大丈夫?」
ちびメカゴジラの問いにグレちゃんはサムズアップすると
「うん、大丈夫。『シン・仮面ライダー』は公開初日にZちゃんとグレンダさんと一緒に見に行ったから。」
そう、グレちゃんは『シン・仮面ライダー』公開初日にZちゃんとグレンダさんのチームZの三人で見に行ったため、ゲームをプレイしてネタバレを見ても別に問題ないのであった。
「それで凄いんだよ。このゲームには『シン・仮面ライダー』に登場するオーグメント怪人が大体出てきて、ラスボスはイチローが変身するチョウオーグ『仮面ライダー0号』で……」
「だからネタバレすんなって!!!」
ちびメカゴジラとグレちゃんの軽いコントを済ませた後、ちびメカゴジラとグレちゃんはそれぞれ外付けのコントローラーを手にし、ゲームを開始する。
『シン・仮面ライダー乱舞』はオフラインで二人プレイが出来るゲームで更にDLCも購入されていて導入されており、ライダー以外にも「ゴジラ」「ウルトラマン」「エヴァ」といったDLCのプレイアブルキャラを使用することが出来る仕様になっていた。
「じゃあ、僕の使用キャラは『シン・ゴジラ』!」
「じゃあ、ボクの使用キャラは『エヴァ初号機』」
ちびメカゴジラとグレちゃんはそれぞれ使用キャラを選択すると、二人プレイモードでゲームを開始する。
「よーし!それじゃあ、ゴジラとエヴァのタッグでショッカーの軍団を打ち破るぞー!」
「おー」
こうして二人は『シン・仮面ライダー乱舞』を二人プレイでお互い仲良くゲームに興じ続けるのであった……。
「って、待て待て待て待て待て!!!僕らは今殺し合いの只中に放り込まれているんだろ!!こんな所でゲームにずっと興じている場合じゃねーよ!!!」
「……ぶー。」
頬を膨らませ、不満たらたらなグレちゃんを無視し、ちびメカゴジラはswitchや周辺機器を片付け、グレちゃんのランドセルの中にしまう。
「まあ……気を取り直して……それじゃあ、これからもよろしくね!グレちゃん!いや、グレートマジンガー!」
「うん、これからもよろしくね。メカゴジラ。」
こうして二人……グレートマジンガーとメカゴジラはお互い手を差し出し、握手をする。
因みにメカゴジラはゲーム「スーパーロボット大戦」のアプリ版「スーパーロボット大戦X―Ω」に参戦したことがあり、グレートマジンガーはスパロボにおいてはほぼ常連であるため、二人が同盟を組み、巨悪である海馬乃亜に立ち向かうこの構図はゲーム「スーパーロボット大戦」の再現そのものであった。
こうしてロリショタロワにおいてスーパーロボットの二人が手を組み、共に戦う仲間を探すため歩き出したことで、ロリショタロワにおいて正に「スーパーロボット大戦」が今まさに始まろうとしていた……。
【グレートマジンガー@ロボットガールズZ】
[状態]:健康、
[装備]:ミトの鎌@劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア
[道具]:基本支給品、ニンテンドーswitch及びゲームソフトと二人プレイ用の周辺機器セット、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いを終了させて乃亜の奴をボコボコにする
1: 今日一日、家でずっとゲームして過ごしたかったのに……
2:Zちゃん ……、会いたいよぅ……。
3:乃亜の奴……、ボクの手で絶対ボコす……。
[備考]
「ロボットガールズZプラス」最終話以降からの参戦です。
グレートタイフーンとサンダーブレークは少し弱体化しています。
その他制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
【支給品紹介】
【ミトの鎌@劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア
】
グレートマジンガーに支給。作中においてミトがゲーム内のお店で購入した武器で以降愛用している大鎌。詳細は不明だが恐らく特別な機能は無いただの両手武器だと思われる。
【ニンテンドーswitch及びゲームソフトと二人プレイ用の周辺機器セット@現実】
グレートマジンガーに支給。ニンテンドーswitch本体とゲームソフトとして『シン・仮面ライダー乱舞(DLC付き)』がインストールされており、更に二人プレイが出来るよう周辺機器もセットで付いている。
【ちびメカゴジラ@ちびゴジラの逆襲】
[状態]:健康、
[装備]:カゲミツG4@ソードアート・オンライン、FN・Five-seveN@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1
[思考・状況]基本方針:殺し合いには反対。
1: 他の怪獣島の面々はどうしているだろうか?まさか参加していたりするのだろうか?
2:グレちゃんは性格はアレだが、根は悪い子ではない……はず……
3:取り敢えずまずは仲間を先に集めよう。
[備考]
第6話終了後からの参戦です。
【支給品紹介】
【カゲミツG4@ソードアート・オンライン】
ちびメカゴジラに支給。ガンゲイル・オンラインにおいてキリトがSBCグロッケンにおいて購入した武器で、実体剣ではなく、金属製の柄にスイッチを押すことでエネルギーの刃を形成し、エネルギー刃で敵を切り裂く武器でバッテリー式。当ロワではちびメカゴジラ自身にケーブルで接続することで充電することも可能。
【FN・Five-seveN@ソードアート・オンライン】
ちびメカゴジラに支給。カゲミツG4同様、ガンゲイル・オンラインにおいてキリトがSBCグロッケンにおいて購入した武器で、装弾数が30発を誇り、貫通力を重視した銃弾を発射することが出来る。
投下終了です。タイトルは書いていませんでしたが、
タイトルは『スーパーロリショタロボット大戦』です。
グレートマジンガーの名前に関しては、マジンガーZちゃんは本来は
「兜Z」という本名があるらしいですが、グレちゃんに関してはそこら辺が不明なので
エンドクレジットに倣って彼女の本名が「グレートマジンガー」だという解釈で行かせていただきました。
後ついでですが、二人の支給品は俗に言う中の人ネタです。締め切りももうすぐですし、本編も採用作品次第で参加させてもらおうかなと思います。
投下します
◇
『サトシ。私、旅に出て本当に良かった。あなたは、私の目標よ。次、逢うまでに、もっともっと魅力的な女性になるから』
別れの際、彼女は、それまで共に旅していた彼に告げた。
思い返せば、彼女が旅に出たのは、テレビの中継で彼を見つけたのが、きっかけだった。
幼き頃、カントー地方で行われたポケモンキャンプで怪我をした自分を助けてくれた彼。
再会して、一緒に旅をしていても、彼はやはり幼き頃の彼のままで、常に前を向き、夢へと向かって突き進んでいた。
『サトシ、最後に1ついい?』
彼に背を見せて、エスカレーターで下る中、彼女は、意を決すると、逆方向へと駆け上がった。
そして、憧れの彼に秘めていた想いを、行動を以って伝えた。
『ありがとう!』
“それ”を行った後、顔から湯気が立つほど真っ赤になりながらも、彼女は彼に感謝の言葉を告げて、自らの夢を追うために、旅立った。
いつかまた、彼に肩を並べるほどの女性になって、彼と再会することを心待ちにしながら―――。
なのに―――。
「どうして……こんな……、サトシ……」
セレナは、月日が照らす山林の茂みの中で蹲り、独りで震えていた。
既に殺し合いが始まってから、数刻が経過しているが、彼女はスタート地点であるこの場所から一歩も動けずにいた。
それも無理はない。
目の前で自分と年端の変わらぬ少年が、無残に殺されたのだ。
セレナとて、争いとは無縁だったわけではない。
アサメタウンを飛び出してから、幾多のポケモンバトルを経験してきたし、他人のポケモンを狙う悪い連中とも、何度も対峙してきた。
直近でも、人類とポケモンの間引きを企てていたフラダリら、フレア団との死闘が記憶に新しい。
しかし、最初の会場で見た、人間の首がまるでゴミのように吹き飛んだ様は、人の死に慣れていない少女にとってはあまりも凄惨でショッキングな光景であった。
「うっ……!」
思い出すと吐き気に襲われ、慌てて口元を抑える。
セレナの首元には、少年の命を奪ったものと同じ首輪が、冷やりとした感触と共に嵌められている。
その事実もまた、彼女の心を追い詰めていた。
「……サトシ……」
ホウエン地方に旅立つ際に、笑顔で見送ってくれた彼の姿を思い浮かべ、嗚咽交じりに彼の名前を呟くが、彼が現れることはない。
彼だけではない。
シトロンも、ユリーカも、テールナーも、ヤンチャムも、ニンフィアも傍にはいない。
夜の蟲の鳴き声と風の音に晒されながら、セレナはただ独りで、膝を抱えて震えていた。
「あの―――」
「ひっ!?」
不意に背後から声を掛けられたのは、その時だった。
心臓が止まるような驚きを覚えつつ振り返ると、そこには黒髪のおかっぱ頭の少年が、怪訝そうな表情を浮かべて佇んでいた。
◇
「――そうか……。お互い災難だったよね……」
雷小幽にとって、この殺し合いで最初に出会った少女セレナから齎された情報は、彼の頭を混乱させるのに十分なものだった。
(ポケモン……? パフォーマー……?
さっきから、こいつは何を言っているんだ?)
セレナの話に適当に相槌を打ちつつも、小幽にとって聞き慣れない単語が、当たり前のように彼女の口から次々飛び出してくるため、理解が追いつけていなかった。
「ううん……でも、ありがとう……。
小幽と話せたおかげで、私も少しだけ落ち着けたよ」
紙切れのように薄っぺらい、小幽の気遣いの言葉。
建前だけの気遣いに、無理やりに作ったような笑顔で応えてみせるセレナ。
「……。」
そんな彼女の様子を、両眼に見据えて、小幽は思考する。
――ゲームか何かと現実の区別が出来ないほど思慮が浅いようには見えないし、馴染みのない単語を除けば、問題なく会話は成立する。
――なら、この違和感の正体はなんだ……?
――拷問でもして、隠していることがないか吐き出させてみるか……?
――いや、そもそも、こいつを生かしておいて何か得があるのか……?
――いっそのこと、ここで殺しておくべきか……?
(よし、殺そう)
小幽としては、一刻も早く、主人である呂算の元へと帰還するのが最優先事項となる。
優勝を目指すか、脱出を目指すかは未だ決めあぐねてはいるが、どちらにせよ、眼前の少女は、時間を割くほどの価値はないように見受けられる。
セレナへの処遇について決断を下し、小幽が、行動を起こそうとしたまさにその時――。
「わーい、ようやく人が見つかった!! しかも二人もいる!!」
突如として響き渡る、場違いなまでに明るい声色。
「えっ!?」
「……?」
二人が振り向いた先に立っていたのは、片手に大きな軍配を掲げた、銀色の髪の少女だった。
見るからに幼げな風貌で、ここが殺し合いの場であることを微塵も感じさせないほど無邪気な笑みを浮かべている。
ゾ ク リ
あまりにも緊張感に欠ける少女を目の当たりにして、背筋を駆け巡る嫌な感覚が、小幽の中を駆け巡った。
警戒心を露にして、睨むようにして見つめ返す小幽。
そんな小幽とは対照的に、セレナは突然現れた少女の登場に驚きながらも、話しかけようとする。
「えっと、あなたは―――」
瞬間、少女が両腕を振り下ろしたかと思うと―――
豪ッ!!!と、少女が両腕を振り下ろしたかと思うと、凄まじい突風が二人に飛来。
「なっ!?」
小幽は、咄嵯に身を翻して回避する。
しかし、セレナの方はというと、まともに反応すること叶わず、直撃を受け、彼女の華奢な身体は、テニスボールのように勢いよく吹き飛ばされてしまう。
「きゃああぁあっ!」
突風に運ばれるがまま、幾つもの茂みを突き破っていくと、やがて、大樹に激突。
そのまま意識を失うと同時に、力無く腐葉土の上へと崩れ落ちてしまった。
「あれれ、軽くやったつもりだったんだけど……。
そっちの子は弱っちいんだね」
倒れ伏せ動かなくなるセレナを見て、少し落胆したような表情を見せる銀髪の少女。
しかし、すぐにまた無垢な笑顔を取り戻すと、今度は小幽に向かって語りかける。
「でも、こっちのお子様は、中々楽しませてくれそうだね!!
ねぇ君、これから一緒に遊ぼうよ!!」
「お前、何者だ……」
倒れ伏せるセレナに見向きもせずに、小幽は前屈みになり、臨戦態勢を取る。
―――この娘は危険だ。
彼の中の『黒雷』の血が警鐘を上げる中、少女は朗らかに口を開いた。
「あははっ、我こそは甲斐武田家十九代当主、武田信玄だよ!
さあ、存分殺し合おうよ!」
◇
冥界における武田信玄は、無邪気に他者との『力比べ』を望んでいた。
しかし、魔王となった織田信長によって、その魂は改竄され、『力比べ』ではなく、『殺し合い』を所望するように書き換えられてしまった。
そして、彼女は改竄された状態のまま、この殺し合いに招かれてしまった。
「あははっ、どうしたの?
避けてばっかりじゃ、信玄ちゃん、つまんないよ!」
故に、彼女は改竄された本能のままに、暴れ回る。
全てを殺しつくす、狂戦士として。
眼前の少年に、疾風の如く突進を幾度も仕掛け、その命を摘まんとする。
「……くっ!」
対する小幽は、その攻撃を避けるだけ。
苦々しい表情で、紙一重の回避に徹していた。
幼少の頃から、黒雷の暗殺術を叩き込まれ、卓越した身体能力を有する小幽ですら、信玄の弾丸のような突貫には、脅威を抱かざるを得なかった。
(まさか、これ程の使い手も参加しているなんて……!)
世の中には、黒雷本家の面々や、『阿牙倉』など、自身よりも格上の者が存在していることを、小幽は認識していた。
しかし、それはほんの一握りであり、この殺し合いとやらの会場で、そう易々と出会うことはないと決めつけていた。
恐らく、最初に出会ったのが、セレナという非力な少女であったことも油断に繋がっていたのだろう。
しかし――。
「あまり調子に――」
小幽とて、四乃山の警護を司る者。
心酔する呂算の元に帰還するために、ここで殺される訳にはいかない。
「乗るなよ、お子様が!!」
何度目か分からない信玄の突貫を躱すと、宙で身を翻す。
間髪入れずに、手元から銀の刃を複数取り出すと、信玄の顔面目掛けて投擲し、反撃を試みる。
「あははっ、良いねぇ。
信玄ちゃん、楽しくなってきたよ!」
あどけない顔面に、真っ直ぐと差し迫る銀色の凶器。
しかし、信玄は笑顔を崩すことはない。
すかさず軍配を振るうと、それらは地面に叩き落とされる。
そして上機嫌のまま、信玄は軍配を振りかざすと――。
「よーし、それじゃあ、信玄ちゃんも、ちょっと本気出しちゃうぞ!
君に、この技は躱せるかなぁ?」
その場でくるりくるりと身体を複数回転。
と同時に、風が渦巻いていき、竜巻が形成されていく。
「――なっ!?」
「疾きこと風の如く!」
目を見開く小幽に向けて、竜巻が一直線に解き放たれる。
木々を軽々と薙ぎ倒しながら迫り来るそれは、言うなれば災害。
小幽は慌てて飛び退き、どうにかして暴風圏外へと逃れるも――
「侵掠すること火の如く!」
信玄が攻撃の手を緩めることはない。
団扇を仰ぐように、軍配を振り下ろすと、灼熱を帯びた業炎が津波のように押し寄せてくる。
小幽は、咄嵯に指を伸長し、近くの樹木の枝を掴むと、それをバネに上空へと跳躍し、炎波から逃れる。
炎は山林に着火し、至る所に火の手が上がる。
「……化け物め……」
上空からその惨状を目の当たりにして、小幽は悪態をつく。
だが、地上の様相に気を取られている場合ではない。
引力とともに落下する最中、すぐさま視線をこの災害の根源へと戻し、警戒を強めようとするが――
「あははっ、余所見しているなんて、やっぱりお子様だね!」
「……っ!?」
信玄は、既に眼前に迫っていた。
小幽が目を離した隙に、ロケットの打ち上げのように飛翔し、一気に彼に肉薄。
勢いそのまま、軍配を彼の腹部に叩き込んだ。
「ごふぅッ!!」
小幽の小さな身体がくの字に折れ曲がると同時、彼は口から血反吐を吐き出した。
「あははっ、まだまだいくよ!」
空中で身を捻りながら、信玄は再び小幽に向けて、軍配を振るわんとする。
だが――。
「あれっ!?」
ここでようやく信玄は、自身の身に異変が起きていることに気付く。
自身の腰に纏わりつく、複数の黒く細長い影。
そして、その正体は、眼下の小幽の手から伸びている指であることも。
「ようやく、捕まえたぞ、化け物」
小幽はニヤリと口角を吊り上げる。
刹那--。
バチバチバチバチ!!
「痛ぁあああああっ!?」
弾けるような音と共に、伸長した指を伝い、信玄の全身に電撃が駆け巡った。
さしもの彼女は堪らず悲鳴を上げ、苦悶の表情を浮かべる。
小幽は地面に着地すると、尚も電撃を浴びせながら、伸長した指を振り回す。
「お前、さっきから僕の事を『お子様』だと言っていたけど――」
指に縛られた信玄は、身体が痺れるため、なす術がなく。
されるがまま、振り回される。
「僕はもう19歳だ」
そう言い放ち、小幽は信玄の拘束を解くと、遠心力を伴った彼女の身体は勢いよく、空高く放り出される。
二人が相争っていた山林の近くには中々の高さの崖が存在しており、信玄はそちら目掛けて、投げ飛ばされたのである。
「じゃあな」
落ちゆく信玄に対して、暗殺者は冷酷にそう告げる。
「〜〜〜〜っ!!」
信玄はそんな彼に対して、何かを叫ばんとするが、舌が痺れて上手く喋ることは出来ず、そのまま、崖下の森の闇の中へと吸い込まれていった。
◇
武田信玄という脅威が去った後の、山林地帯は再び静寂に包まれていた。
しかし、完全に元通りになったという訳ではなく、竜巻で薙ぎ倒された木々や、一帯に拡がる火の手が、先の戦闘の激しさを物語っていた。
「ったく…随分と派手に暴れてくれたよな……」
小幽は、信玄の転落確認後、直ぐに踵を返し、戦場から去ろうとしていた。
山火事はまだまだ燃え広がる余地があるし、一応撃退には成功したものの、あれであの化け物が死ぬとは到底思えない。つまりは、また此処に戻ってくる可能性もある。
「あっ」
とここで、倒れ伏せるセレナを視界に収めると、ようやく彼女の存在を思い出す。
どうやら先程の戦闘の余波を喰らう事はなく、無事だったらしい。
「呼吸はまだあるか…。
やれやれ、悪運だけは強いな、コイツ」
脈拍を確認して、まだ生きている事を認識すると、ぐったりとする彼女を背負って、歩き出す。
「……ん……。サトシ……」
気絶している筈なのに、彼女は無意識に、仲間の名前を口にする。
だが、小幽は特にそこに思うところはなく、淡々と歩を進めていく。
元々彼女のことは始末する予定であったが、信玄という化け物との邂逅で考えを改めた。
恐らく主催には、殺し合いを円滑に進行させる意図があるのだろう―――このゲームとやらには、あの信玄のように、小幽ですら手を焼く危険人物が、他にも招かれている可能性が高い。
そういった過大な戦力と、一対一で相手取るのは非常に骨が折れる。
であれば、ゲームの序盤は、殺し合いを是としない集団と手を結び、それらの脅威に対処した方が、効率が良い。
そういった集団に潜り込むに当たっても、気絶している少女を介抱しているというこの構図は、心象的に悪くない筈だ。
故に、小幽はセレナを利用すべく、彼女を連れて行くことにしたのだ。
(まぁ、邪魔にしかならなくなったら、殺すけど……)
そんな黒い思考を胸に秘めながら、暗殺者はフィールドを彷徨うのであった。
【雷小幽@デッドマウント・デスプレイ】
[状態]:健康、疲労(中)、腹部打撲(中)
[服装]:普段着
[装備]:投げナイフ(本数不明)@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本方針:お館様の元に帰還する。手段は問わない。
1:信玄のような強敵を想定し、暫くは対主催として、行動する
2:セレナは暫く利用するつもりだが、利用価値を見出せたくなったら、始末する
3:武田信玄を警戒。
4:状況次第では、本格的に殺し合いに乗ることも視野に入れる
※ 小夜と共にポルカ達の元に来る前からの参戦となります。
【セレナ@アニメポケットモンスター】
[状態]:健康、頭部打撲、気絶中
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜3
[思考]
基本方針:殺し合いなんか出来ない。殺し合いから脱出する
0:(気絶中)
1:サトシに会いたい
※ XY&Z 47話でサトシ達と別れて、ホウエン地方に旅立った後からの参戦です。
※ 小幽を同世代の男の子と認識しております。
◇
「ふぅ…ようやく痺れが取れてきたよぉ」
小幽に突き落とされてから、数刻が経過し、信玄はようやく全身の痺れから解放され、自力で起き上がることが出来るようになった。
周囲を見渡すも、辺り一面はひたすらの闇。
生い茂る木々や茂み以外のものは見当たらない。
「それにしても、さっきのお子様……じゃなくて、お兄ちゃんとの殺し合い、楽しかったなぁ。また殺し合いたいなぁ」
信玄は名残惜しそうに崖の上を見上げる。
あれから、時間も経過したことだし、この崖を登ったとしても、恐らく彼はもうそこにはいないだろう。
「まぁいいや、また逢えるかもしれないし。
今度逢ったときは、どちらかが死ぬまで、殺し合いたいな!」
パンパンと自らの頬を叩くと、信玄は気を取り直して歩き出す。
これから待ち受けるであろう、楽しい楽しい殺し合いに、想いを馳せながら――。
【武田信玄@SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-】
[状態]:健康、魂の改竄、疲労(小)、全身打撲(小)
[服装]:普段着
[装備]:軍配@SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考]
基本方針: よーし、信玄ちゃんが皆殺しちゃうぞ!!
1:いっぱい人がいそうなところに行こう!!
2:さっきのお兄ちゃん(小幽)とは、また殺し合いたいなぁ!!
※ 織田信長から魂の改変を受けた直後からの参戦です。
投下終了します
投下ありがとうございます!
>スーパーロリショタロボット大戦
メカゴジラって小栗旬がアへ顔して操作してるイメージだったので、こんなツッコミキャラにデフォルメされたキャラはギャップ感じます。
二人ともデフォルメされたり女体化したりミニマムになって、ロワとは思えないくらい仲が良くて微笑ましいんですが、中身はロボットなんで戦闘力は決してミニマムではありませんね。
あと読んでて、なんでスパロボにゴジラ参戦したことあんだって思いましたけど、上条さんがルルーシュぶん殴ってたのもスパロボだったので今更でしたね。
>狂気孕みし、風林火山
さっそく対主催と合流で来たかと思えば、早速殺害対象にされるセレナは可哀想過ぎますね。
とはいえ、運良く襲撃にあったお陰で利用価値が生まれたのは本当に悪運が強い。
しかしサトシには劣るものの彼女も割とスーパーアサメ人なので、場数を切り抜け今後成長を積んでくれるのことに期待です。
投下いたします。
ここは殺し合いの舞台の中にある小さなホテルの一室、そこには二つの影があった。
ひとつは小さめのマッシュルームに簡易的な脚を付けたような姿をした生き物。
そしてもう一つは和服を身に纏った、8歳くらいの少女だった。
「……のう、"くりお"よ。この"ぽぉるうぇぽん"とはどういう意味なのじゃ?どういう使い方をするかは見れば分かるのじゃが、少し気になってのぉ」
そんな中、和服を着た少女が目の前にいる生き物に対し自らが手に持つ薙刀状の武器の名前について質問をしていた。
和服を着た少女の名は"薬膳ヤク"。孫が作ったとある薬の影響により8歳前後の肉体年齢になってしまった、御年89歳のおばあさんである。
「ええっと、『ポール』は棒という意味で『ウェポン』は武器という意味だから、『棒状の武器』といったところだと思うよ」
そして彼女の質問に答えるキノコのような姿の生き物の名はクリオ。『クリボー』という種族の少年で、その知恵をもってマリオと共に数々の冒険を潜り抜けた少年である。
「ぼくの方は火のついた牛の頭蓋骨と、肥大化した亀の甲羅に小さな翼が付いたものだね」
「そうか、中々に奇妙なものがあるものじゃのぉ……この中で使えそうなものはあるのかの?」
「そうだね……牛の頭蓋骨『バーニングスカル』はぼくにとって使えそうだね」
「……だけど、亀の甲羅『ひまんパタこうら』は身を守るにはもってこいかもしれないけど、ぼくたちには少し大きすぎるし動きにくくなるから少し厳しいかな」
「ふぅむ、そうか。ではその『ばぁにんぐすかる』の方だけ使ったほうが良さそうかのぉ」
そんな彼らはこの場所で自分たちに与えられた道具とその使い方について確認をし合っていた。
それは彼らがこの場所で自らの身を護るため、そして生き残るためには戦う必要もあることを理解していたが故の行動だった。
「ところで、そろそろ他の部屋を探してみないかな?ここでただ待っていても仕方ないし、何か別の人がいたり新しい情報があるかもしれないしさ」
「それもそうじゃの。それに、わしらたちが持っている道具だけでは心許無いからのぉ」
「うん、それじゃあ早速行こうか」
「そうじゃの、では行こうか」
こうして二人は新たなる場所を求めて部屋から出て行った。彼らが手にしている武器はまだまだ使いこなせるものではないが、それでもきっと役に立つはずだと信じて……。
「……ところでヤクさんって、見た目に反して妙に年齢が高いような気配がするんだけど、何者なの?」
「ああ、今はこんな姿をしておるが、本来のわしは89歳のばあさんなんじゃよ」
「……え?」
【クリオ@マリオストーリー】
[状態]:健康、ヤクの年齢に対する驚愕(中)
[装備]:バーニングスカル(Burning Skull)@デッドライジング2
[道具]:基本支給品、ひまんパタこうら(防具)、ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:この悪趣味なゲームを止めるために、乃亜を倒す。
1:あの冒険で鍛えられた身体と知識を基にこの殺し合いを打倒する。
2:まずは仲間を探そうか。
3:ヤクさん、すごい年上だったんだね……。
[備考]
参戦時期はエンディング後。
制限により『クリオものしり』の精度が下がっており、支給品の使い方などは分かりますが参加者の名前や詳しい素性は分からなくなっています
(そのほかの制限については当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)。
【薬膳ヤク@君のことが大大大大大好きな100人の彼女】
[状態]:健康、横文字が読めない
[装備]:ポールウエポン(Pole Weapon)@デッドライジング2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]基本行動方針:乃亜という少年が言っていた"げぇむ"とやらに乗るつもりはないし、生きて帰るつもりじゃよ。
1:孫娘やその友達の為にも、恋太郎のためにも、生きて帰るつもりじゃよ。
2:なぁに、昔は戦場で薬を作っていたこともあるし、腕に自信はあるからの。
3:"くりお"……なにやら妙な生き物じゃのう。
[備考]
参戦時期は少なくとも恋太郎ファミリーに入った後。
『支給品紹介』
【バーニングスカル(Burning Skull)@デッドライジング2】
クリオに支給。牛の頭蓋骨(の被り物)に油を塗り、火を点けたコンボ武器。
攻撃方法は相手に火を付けながら頭突きをしたり、頭を突き出して突進するなど見たまんまである。
【ひまんパタこうら(防具)@スーパーマリオRPG】
クリオに支給。異様なまでに肥大化したパタパタの甲羅。
すべての攻撃をほぼ無力化でき、また状態異常を無効化できるなど防御面では最強に近いが、代わりに攻撃力と素早さが激減するデメリットがある。
なお当ロワにおいては制限により、その防御力には下方修正が入っている(当選した場合、後続の書き手様にお任せします。)。
【ポールウエポン(Pole Weapon)@デッドライジング2】
薬膳ヤクに支給。モップの持ち手にナタを括りつけて薙刀のような武器に改造したコンボ武器。
見た目通り攻撃範囲も広く威力も高いが、そもそもモップ自体がそれほど強度が高くないため壊れやすいという欠点がある。
投下終了です。
以上、ありがとうございました。
投下します。
「はぁ〜〜っ、どうして私、こんな事になってしまったんだろう……。」
殺し合いの舞台の何処か、一見誰もいない場所に一人の少女の声だけが聞こえていた。
声の主の正体は南條まりあ、彼女は今まで普通の少女だったのであるが、小5の春の遠足の前日、翌日の遠足が嫌で落ち込んだ事をきっかけに透明化能力を発現し、落ち込んでいる状態であると自分の意思とは無関係に透明化してしまうため、無理にでも興奮するために本屋でエロ本を立ち読みする日々を送ってきたものの、それを続けてきた結果中二までの間に書店は次々と入店拒否、更にエロ本程度では耐性が出来てドキドキしなくなってしまったため、より刺激を求めて親のパソコンでエロサイトを見て無理に興奮する日々を送ってきたものの、次の年の中三の時にそれが原因で大量の請求書及びパソコンがフリーズするやらかしをしてしまい、それがショックでまた透明化して戻れないのかと絶望した所、憧れの瀬木恭介センパイと初めて出会い、彼への強い想いを抱いた時から能力をコントロール出来るようになり、これから新しい日々が始まると思った矢先に訳も分からずこの殺し合いに巻き込まれてしまったのだ。
「はあ……、殺し合いなんて巻き込まれたのは幾ら何でも不幸すぎるけど……、唯一の幸運は私の能力と今の状況があまりにもベストマッチすぎることよね。」
そう、元の世界と異なり、今の殺し合いの状況下では出会い頭に襲いかかって来るような危険な参加者と出会う可能性が十分に高い以上、殺し合いが終わるまでまりあはずっと透明化状態を維持し続け、このままずっと誰とも会わずにやり過ごすつもりでいた。
それに透明化を維持し続ける条件は気分が落ち込んでブルーな気分、状態であることであり、元の世界と違い誰とも会わなくていい、いや、むしろこの殺し合いが終わるまで誰にも気づかれないまま終わって欲しいとさえ思っている身としては殺し合いに巻き込まれて終始ブルーな気分であることで簡単に透明化の条件を満たせていることも相まって、今だけは自身の持つ能力に対して感謝の念すら抱いていた。
だが自身の能力にはある一つの致命的な欠点があった。それは透明化出来るのは自身の肉体『だけ』であり、身につけている服や下着、靴下や靴、それと眼鏡や所持品などは一切透明化出来ないため、まりあはそれらの服や下着や靴下や靴や眼鏡や自身への支給品などを一切合財捨て去り、今現在彼女は一糸纏わぬ全裸の状態で透明化状態を維持しながら、どこか安全な場所は無いか歩いて探している最中であった。首輪だけは残念ながら外すことは出来なかったものの、幸いな事に首輪も一緒に透明化の対象になっており、透明化能力以外では戦闘能力を一切持たないただの非力な普通の少女であるまりあにとってはこの特典は非常に有難かった。
グオオオオオオォォォォォォォッ!!!!
「!?ひいっ!!?」
その時であった。何処からともなく身の毛もよだつような怪物の雄叫びが周囲に響き渡り、まりあは恐怖から心臓がバクバクして一種の興奮状態になってしまい、透明化が解除され、未成熟な裸体を晒してしまう。
アエエエエエエェェェェェェェン!!!!
「ひいっ……、い、いや……この声……近くに絶対何かいる……」
ショオオオオオオオオッ
何かいる、その事に対する恐怖からまりあは股間の割れ目から放尿してしまうが、まりあにとってはそんな事をいちいち気にしていられるような余裕はなく、むしろ雄叫びの主に対する恐怖の感情の方が遥かに勝っていた。
アエエエエエエェェェェェェェン!!!!
「く……食われる……私、たぶんこれからこの声の主に襲われて餌として全身を食い千切られて死んじゃうんだ……元の世界に帰って先輩と結ばれる願いを叶える事も出来ずに……」
まりあは怪物とこれから訪れる自らの運命に対する恐怖から、目に涙を浮かべていた。たぶんこの雄叫びの主は世にもオゾマシイ姿をした人肉を喰らう怪物に違いない。そんな怪物にとって服など余計なものを一切纏ってない一糸纏わぬ全裸のまりあは正に最上の肉、餌そのものであり、逃げようにも腰を抜かしてその場から動くことも出来ず、その場でただ震える事しか出来なかった。そして、
アエエエエエエェェェェェェェン!!!!
「い……いやあ……イヤアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!」
ブリュブリュブリュブリュブリュブリュブリュ!!
先ほどよりも雄叫びが大きくなったことから雄叫びの主の怪物がすぐ近くまでいることを察してしまい、まりあはその恐怖から先ほどの失禁に飽き足らず、とうとう脱糞までしてしまい、彼女の肛門から盛大にウンチが排出されてしまう。だが彼女の思考はこの後の自らに訪れるであろう運命の事で頭がいっぱいであった。怪物はどんなオゾマシイ姿なんだろう。怪物に身体を食い千切られたらどんなに痛いんだろう。怪物に生きたまま餌として喰われるのはどんな感じなんだろう。どうして自分はそもそもこんな事に巻き込まれて理不尽に死ななくてはならないんだろう。まりあの思考は恐怖と悲しみで頭がいっぱいいっぱいであった。
(もういや……死にたくない……死にたくないよぉ……)
死にたくない。そんな気持ちで思考が埋め尽くされたまりあの顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。そしてとうとう、先ほどまで雄叫びを放っていた存在が姿を現し、まりあの前に現れる。
「……え?」
だがまりあの前に現れたのは彼女の想像とは全く違う存在であった。大きさはまりあの半分くらい、頭部に5本の小さな角、鼻先に大きな1本の角を生やし、直立歩行で体型は人間に近いが臀部に尻尾、背中にトゲトゲの甲羅を持ち、全身水色の不思議な生物であった。
生物の名はちびアンギラス、怪獣島に住んでいるちびゴジラを始めとした「ちび怪獣」と呼ばれる怪獣たちの中の一匹であり、彼はちび怪獣の中で唯一声変わりをしており、見た目に反して本家アンギラスと同じ恐ろしい鳴き声をしていた。
だがまだ安心は出来ない。人外の存在であることに変わりがない以上、やはり人肉を好む恐ろしい怪物の可能性もまだある。未だまりあが恐怖で震えて動けない状態の中、ちびアンギラスが一歩、また一歩とまりあに向かって徐々に近づいてくる。
「ひ、ひぃ……いや……食われる……来ないで……来ないで……」
だがそんなまりあの訴えを知ってか知らずか、ちびアンギラスは尚も徐々に近づいてくる。そしてちびアンギラスがまりあのすぐ近くまで来た時、まりあは目を瞑り、「これから食われる」と思ったまりあは痛みを堪えようと身を固くする。
……だがいくら待っても痛みはやってこなかった。代わりに何故か頭を撫でられるような感触を感じる。
「……?」
まりあが恐る恐る目を開けるとそこには自身の頭に手を伸ばし、自身の頭を撫でているちびアンギラスの姿があった。
ちびアンギラスは声変わりの代償として人間の言葉を喋れなくなってしまったため、まりあと言葉でコミュニケーションをとることが出来ない。
だからちびアンギラスはせめて「恐くないよ、安心して」と自身の行動で自らの意思をまりあに伝えようとしたのだ。
ちびアンギラスは安全、そう理解したまりあの身体から緊張の糸がほぐれ、安心感からか彼女の身体にドッと疲れが押し寄せてくる。
「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!良かったあ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!死んじゃうかと思ったあ〜〜〜〜〜〜〜っ!」
まりあは自身が一糸纏わぬ全裸であることも忘れ、身体を隠そうともせず仰向けになって地面に横たわる。だが頭を撫でるのをやめたちびアンギラスは代わりに自身の鼻を抑え、何か臭そうな表情を見せる。
「……?」
何故臭そうな表情をしているんだろう、そう思ったまりあは身体を起こすとちびアンギラスが鼻を抑えていない手で何かを指さしているのを確認し、指を差した先を確認する。
「あ゛」
その先には自身の放尿によって作られた尿の水たまりと、脱糞によって出てきた自身の糞の塊が周囲に悪臭を放っている惨状であった。
まりあは今まで無理に興奮状態を維持するため色んなエロ本やエロサイトを見てきており、その中には当然全裸放尿や全裸脱糞も含まれてはいた。
ただ、だからといって自分自身がそのようなプレイをするつもりはなく、ただ自身が透明にならないよう興奮状態で居続けるためにそのような行為を見ていただけで、自身はそのようなプレイをするつもりはなかった。
だから不可抗力とはいえ自身がそのようなプレイをしてしまったという事を理解すると、まりあの中に先ほどまでとは違う感情……死や苦痛に対する恐怖や悲しみとは別の、自身が全裸放尿や全裸脱糞をしてしまった事に対する羞恥心や最低な事をしてしまった事による後悔の気持ちによる悲しみがまりあの中にドッと押し寄せてくる。
「うっ……うっ……うええええええぇぇぇぇぇぇぇん!!こんなの最低だよおぉぉ!!こんなこと瀬木先輩に知られたら私の事絶対嫌いになっちゃうよぉぉ!!そんなことになったら私女の子として人として生きていけないよぉぉ!!うわああああぁぁぁぁぁぁん!!」
全裸透明状態で南條の家に勝手に不法侵入し、彼の事をストーキングする、しかもそれを頻繁に繰り返してきた事を棚に上げ、まりあは自らの行為に対する悲しみと羞恥心から目から涙を流して泣き叫び続ける。
だがそんな彼女に対して救いの手を差し伸べる存在がいた。
スッ
「……え?」
なんとちびアンギラスが彼女の頭をさすり、「責めやしないよ。安心して。」と言いたげな表情を浮かべながらまりあの顔を見つめる。まりあはちびアンギラスの優しさから、再び目に涙を浮かべ、
「う……うええええええぇぇぇぇぇぇぇん!!あ゛り゛がどう゛!!あ゛り゛がどう゛!!私を庇ってくれて……って痛ったあっ!!?」
あまりの嬉しさからちびアンギラスに抱き着いたまりあはその直後あまりの痛みからその場から飛びのいてしまい、ちびアンギラスも「あーあ」みたいな感じの呆れた表情を浮かべる。
まりあはちびアンギラスに抱き着いた際に彼の背中の甲羅を掴んでしまい、その結果甲羅の棘が手に思いっきり刺さってしまったのだ。
痛い思いをしたことでブルーな気分になってしまい、まりあは自身の手を見るがその直後、ある重大な事実に気付いてしまう。
「あ……あれ……?何か……透明化……出来なくなってる〜〜〜〜!!?」
まりあはブルーな気分になっても透明化していない自身の身体の異変に驚愕してしまう。実は彼女は透明化出来なくなってしまったのではなく、海馬乃亜によって枷られた制限によって透明化解除後はある程度インターバルを置かないと再度透明化出来ないようにさせられてしまっていたのだ。
これはまずい、とまりあは今の状況に焦りを感じ始めていた。殺し合いが始まった直後、まりあはずっと全裸透明化状態を維持して他の参加者をやり過ごそうと考えていたため、自身の服や下着や靴下や靴や眼鏡や自身への支給品などを一切合財こことは別の場所に捨て去っていたため、今の彼女は一糸纏わぬ完全な全裸であり、今の彼女の中には他の参加者に自身の裸を見られたら恥ずかしい、今の裸の状態で他の参加者に襲われたらどうしようという、羞恥心と恐怖の気持ちでいっぱいいっぱいであった。
何とかできないかと考え、まりあは一筋の望みを託す形でちびアンギラスに問いかける。
「ねえ……お願いがあるんだけど……あの……何か着るものとか大きいタオルとか身体を隠すもの、持ってない?」
だが彼女の望みはちびアンギラスが両手で作った「×」の形によって無情にも打ち砕かれる。
ちびアンギラスは怪獣である。怪獣である以上、彼はそもそも最初から服を着ていない。そして彼の支給品の中にも服や衣類の類等は残念ながら一切存在していなかった。
望みを打ち砕かれたことでまりあは激しくブルーな気分になるが、その状態でも未だ透明化能力が使えていないことを否が応でも意識してしまった事で更に落ち込んでしまうが、そんな彼女の肩にちびアンギラスが手を置き、まりあがそれに気づいて彼の方を見ると彼がサムズアップして「大丈夫だよ。いざという時はまりあちゃんの代わりに僕が戦うから」と言いたげな表情を浮かべていたのを確認する。
ちびアンギラスはただ声変わりしただけでなく、実力も本家アンギラスに恥じない存在になれるよう、日々特訓をしてきたので流石に本家アンギラスと比べればまだ未熟なものの、嚙みつきや咆哮を攻撃に転用した衝撃波、そして背中の甲羅の棘を攻撃に活かせるよう本家を見習って編み出した技『暴龍怪球烈弾』をまだ練習中な不完全な状態であるものの使用することが出来、それらの技を駆使して敵と戦えるだけの戦闘力はキチンと有していた。
全裸である状態が解決していない羞恥心はあるものの、この場に留まっても状況は好転しないしわざわざ服や支給品等を一切合財捨てた意味がないことを理解したこと、そしてちびアンギラスが自身の代わりに戦ってくれる事を理解したことで彼女の中に安心感が生まれたのか、まりあはその場から立ち上がり、本来の未来において……瀬木先輩に対して勇気を振り絞って告白し、自己紹介をした時と全く同じ純粋無垢な明るい笑顔を浮かべ、ちびアンギラスに対し自ら自己紹介をする。
「私、まりあ!!南條まりあって言うの!!これからもよろしくね!!」
アエエエエエエェェェェェェェン!!!!
ちびアンギラスはまりあの自己紹介に答えるような形で咆哮すると、お互い手を繋ぎ、その場を後にすることにする。
こうしてこの殺し合いの場において、全裸の透明少女と暴龍による奇妙なタッグが結成されるのであった……
【南條まりあ@まりあさんは透明少女】
[状態]:健康、全裸、羞恥(小)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:殺しはしたくないし、元の世界に帰りたい。
1:透明化能力、復活しないかなあ……
2:ずっと全裸でいるのは流石に恥ずかしい。本音を言えば服とか何か隠すものが欲しい。
3:誰かに襲われたらどうしよう。その時はちびアンギラスだけが頼りよね。
[備考]
第二話ラストの中学三年生の時に瀬木恭介と初めて出会ってから少しした頃からの参戦です。
彼女の服や下着や靴下や靴や眼鏡や支給品等は会場の何処かに全て放置されています。
【ちびアンギラス@ちびゴジラの逆襲】
[状態]:健康、
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止めたい。
1: 本家アンギラスに顔向けできるよう、彼に恥じない存在になりたいなあ。
2:人間の皆と仲良くしたいけど、僕の声を聞いたら怖がらせちゃうかなあ。
3:他の怪獣島の皆はどうしているんだろう?他にも誰か参加しているのかな?
[備考]
第6話終了後からの参戦です。
投下終了です。タイトルは書いていませんでしたが、
タイトルは『透明少女と暴龍』です。
投下ありがとうございます
>ロリおばあちゃんと知恵袋
ロリババアでガチの婆ちゃんの若返りは珍しいかもですね。大体、歳だけ食って精神はそこそこ若いとか何かしら超越してるので。
クリオが完全に孫になってて草
>透明少女と暴龍
全裸放尿脱糞少女と遭遇しても、温和に済ませてくれるちびアンギラスは人間ならぬ怪獣が出来てますね。
とても善良な対主催ですが、相方が全裸で支給品なしというのは今後色々大変そう。
それと残りレス数も少ないので、今後は新スレの方で投下をお願いします。
ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/12648/1683120912/l50
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