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F・ロワイアル

1 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:37:17 CBZQpTog0
今、全てが『F』になる――

【参加者】
6/6【コジコジ】
○コジコジ/○次郎/○ゲラン/○/やかん君○カメ吉/○ブヒブヒ
6/6【ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期】
○赤松楓/○最原終一/○真宮寺是清/○王馬小吉/○キーボ/○星竜馬
5/5【ドラえもん】
○ドラえもん/○野比のび太/○源静香/○剛田武/○骨川スネ夫
3/3【アイドルマスター シンデレラガールズ】
○島村卯月/○渋谷凛/○本田未央
3/3【おジャ魔女どれみ】
○春風どれみ/○藤原はづき/○妹尾あいこ
3/3【ケロロ軍曹】
○ケロロ軍曹/○ギロロ伍長/○日向冬樹
3/3【サイボーグクロちゃん】
○クロ/○ミー/○マタタビ
3/3【スペース☆ダンディ】
○ダンディ/○QT/○ミャウ
3/3【よんでますよ、アザゼルさん。】
○アザゼル篤史/○ベルゼブブ優一
2/2【涼宮ハルヒの憂鬱】
○キョン/○涼宮ハルヒ
2/2【デジモンアドベンチャー】
○八神太一/○ヴァンデモン
2/2【ポケットモンスター】
○サトシ/○ニャース
2/2【めだかボックス】
○黒神めだか/○球磨川禊
以上、42名


【まとめwiki】
ttps://www65.atwiki.jp/froyale/


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2 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:38:04 CBZQpTog0
オープニング投下します


3 : はじまりの『F』〜Opening〜 ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:39:44 CBZQpTog0
――人生ってどう思う?

楽しいもの? 悲しいもの? 虚しいもの? 美しいもの? 儚いもの?
うん。たぶん、人それぞれ。なんだよね。
でもどう?
私が、君たちの人生をもっと面白くてスリリングなものにできるって言ったら……?





朝の日差しを体に浴び、多少のまどろみの中、新たな一日を布団の上で始まる。そうだったらどんなによかったのだろう。しかし、彼ら彼女らが目覚めたのはそんな平和で穏やかなまどろみとは全くもって違っていた。
柔らかなベッドではなく硬い床の上。暖かな日差しの中ではなく日は未だに昇ることのない丑三つ時。それが43人が目覚めた瞬間だった。
目覚めた理由は単純明快。人工的な日の光に当てられたためだ。
そこは広々とした部屋。しかし殺風景で普段なら人の気配なんてしないであろう。そんな殺伐とした空間。しかしそこには、今現在、所狭しと人が存在していた。否、宇宙人やロボット、その他人外まで津々浦々の生物がそこにはいた。その様子は、まるで虚構に塗り固められた絵図のようだった。絵図は絵図でも、ただの地獄絵図なのだが。

『はい、注目! みんな、こっちに注目してっ』

突然、声が流れた。それは少年のようでいてやはり違うそれ。変なふうに音声が加工されているのかそこに誰が喋っているのかはわからない。が、しかしそれは確実にスピーカーから流れていた。

『まずは、“常套句”……でいいんだっけ? これ一回言ってみたかったんだよね』

加工された不気味なその音声からでも伝わる感情。何というか――うきうき。とか、わくわく。とか、そんな抑えきれない喜びの感情。このような不気味で不相応なこの部屋に響き渡る声が、彼らの不安をより一層高めた。

『今からみなさんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます』

戦慄――
その虚無的な空間に走った一筋の見えざる“なにか”を表すに、はまさしくその言葉が一番ふさわしかった。中にはその言葉を歯牙にもかけず平然とした表情を浮かべている者もいたが。


4 : はじまりの『F』〜Opening〜 ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:41:47 CBZQpTog0
『うーん。やっぱり突然殺し合いって言われてもびっくりしちゃうよね。だからこれもまず説明しておこうかな』

周りの人間の慄きなどどうでもいい、といった様子で声の主は危機として話を進める。

『みんなって、『バトル・ロワイアル』って小説知ってる? といっても知ってる人の方が少ないかもね』

バトルロワイアル。
定義的には、「バトルロイヤル」の仏語読みであるその単語。その名をタイトルとした小説の話をその声の主は始めた。当然、この中にいる殆どの人間がそれを知らなかった。

『42人の生徒が無人島でひとつの席を巡って殺し合いをさせられる……って小説なんだけど、君たちにはそれを今からしてもらおうって思ったんだ! ここもその舞台に則って、この殺し合いの舞台も島にしたんだよ! ワクワクしてこないかな!?』

“それ”は一人で話を続ける。おそらく“こいつ”は自分の話を始めると止まらない人間だ。この中にいる誰かはそう思ったに違いない。

『あ、あとね。ここが無人島だからって、泳いで逃げようって考える人もいるかもしれないよね。でもダメだよ。
 もう気がついていると思うけど、君たちには首輪が着けられてるんだ。これが何でここから逃げたらダメなのかってことなんだけど……見てもらった方が早いかな』

プツン――音が途切れる音。それは、部屋のスピーカーから聞こえた。おそらく声の主が一時放送を切ったのだろう。何故そんなことをするのか――そんな疑問が周りからする中、唐突にふたたび音が流れ出した。
しかしそれは、不気味に加工された放送の声ではなかった。ピー。ピー。と、車のバック音、タイマーが零になった音。それに似てはいるが違う。それでもない。それよりもどこか無機質で不安を煽るような、そんな音だった。

「あっ……首……首輪、が……」

ひとりの少女がふと声をあげる。その横にいた一人の男がふと手を体の部位にやっている様子が見えた。そこからだ。

その音は、彼の首から聞こえていた。

名も知らぬこの男に装着されている首輪。そこから赤い光を発しながら聞こえている音。それがこの静寂なる空間を破り響き渡る異音の正体だった。

「ちょっと! これどういうこと! プロデューサーに何をしたの!」

ふと長髪の少女が立ち上がる。そのまま声のしないスピーカーに向かって吐き捨てる。しかし当然ながら通信が切れたスピーカーから返信が届くことはなく、その音が段々と早くなっていくだけだった。

「ちょっとプロデューサー……音が段々早く」
ボン。
短髪の少女の言葉を遮るように乾いた音が鳴り響く。そしてそれが耳をつんざく不快な音の終わりだった。
その高くか細い音は、ひとつの大きな爆発音によりその役目を終え同じく男の首に填められていた機械もその役目を終えていた。

生暖かいなにかが、長髪の少女の脚や短髪の少女の顔面に振りかかる。それらの少女達と同じくブラウンの学生服を“それ”で汚した少女が掠れた声を漏らしたのがわかった。

「プ、プロデューサー……さん……?」

その少女の次に聞こえたもの。それは悲鳴。もしくは、それにも似た何かだった。
まるで、阿鼻叫喚。地獄のひとつであるそれらが表す言葉。それらの言葉がよく似合う有様だ。一部を除いた参加者は叫び慌てふためきどこかへ逃げようと必死に出口を探すものもいた。そんな地獄絵図のような空間にふたたび声がする。あの今や忌まわしきあの放送が。

『見たでしょ? 逃げると私達『バトルロワイアル運営委員会』がそこから電波を送って首輪の中に搭載されてる爆薬を爆発させちゃうんだよ。勿論首が吹っ飛ばされるんだから生きられるわけないんだけどね。
 どう? デスゲーム作品の傑作であるバトルロワイアルの世界を体験できるなんて夢見たいでしょ!?』

嬉々として首輪の効果を語る謎の人物の声。そこにあったのは騒然となる殺し合いの参加者と、首から上を失い血まみれで横たわるスーツ姿の男。その近くには首が転がっている。その顔は、何も分かっていないという感じの、困惑の表情のまま固まっていた。


5 : はじまりの『F』〜Opening〜 ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:42:26 CBZQpTog0
『じゃあ、私ばかりが話してるのもなんだから、後のルールは説明ビデオを見てね。みんながこの世界を良いと思える日がくるまで待ってるからね! もしそれが嫌なら……どんな手を使ってでも、ここへ戻ってクーデターを仕掛けるしかないよ。……できれば。の話だけどね?』

そしてそのままスピーカーの声はふたたび途切れた。そしてその声は、その場ではもう二度とすることはなかった。
その後、巨大なモニターからは説明ビデオが流された。
説明ビデオとは名ばかりの悪趣味なアニメ作品だ。可愛らしいマスコットキャラクターが殺し合いプログラムのルールを嬉々として語る。そんな胸糞の悪いものだった。
そこでは、デイパックと支給品が支給されること。その中に武器が入っていること。
禁止エリアのこと。
首輪のこと。
そして能力の制限のことなどが説明された。
能力の制限とは何なのか。首をかしげる者もいたが、逆にそれを理解できる者もいたらしい。
はじめはパニック状態になっていたそこは、説明ビデオが流される間には何事もないかのように静かになっていた。それはおそらく、聞いていなければ生き残れない。殺されるかもしれないといった切迫感からくるものだったのだろうか。
説明ビデオが終わった瞬間から放送が流れ出した。それは今まで聞こえていたあの声とも違った声。無機質で無感情なまさしくただの放送といったようなものだった。

『アザゼル篤史』

スピーカーから名前が呼ばれた瞬間、その場に座り込んでいた犬顔の小さな男の姿が消えた。名前を呼ばれた者からひとりでにワープする仕様らしい。が、何故そのような事がふいに起こるのか、次々とワープする今の彼らには理解することは叶わなかった。

そして始まる。
虚構から始まった真実の殺し合いが。


【0時 ゲーム開始】
【プロデューサー@アイドルマスター シンデレラガールズ 死亡】
【残り42人】


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6 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:43:14 CBZQpTog0
以上、オープニングの投下を終了します


7 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:46:00 CBZQpTog0
【基本ルール】
・参加者は残りの一人になるまで殺し合いを続けなければならない。
・殺し合いの期限は1週間で、それ以上の時間が経過した時点で優勝者はなし。生存者全員の首輪が自動的に爆破され強制的に死亡とする。
・最後に残った一人は優勝となる。優勝者には、元の世界に帰る権利と、好きな願いをひとつだけ叶える権利を得る。ただし「多数の死者の復活」や「時間の巻き戻し」など不可能な願いも存在する。
・島からの脱出を図る。その他不穏な動きをした参加者の首輪は警告を省略して強制爆破される可能性があるので気をつけたし。

【首輪について】
参加者に装着されている首輪は、参加者の生死確認に使われるほか、条件を満たすと首輪が爆破される仕様になっている。
1.首輪を手や機械で強制的に外そうとする
2.首輪に大きなショックを与える
3.禁止エリアへの侵入(猶予あり)
4.エリア外への移動
1・3の場合は、数分の警告のあとそれでも条件を満たしていた場合、首輪が爆発する。
2・4の場合は、問答無用で即爆破される。
なお、首輪の爆発での死はどのようなことがあっても逃れられることはできない。

【定時放送】
ゲーム開始後、主催者から0:00、6:00、12:00、18:00の一日計4回の定時放送が流される。
各放送間での死亡者の発表と禁止エリアの発表がある。

【禁止エリア】
放送から2時間おきに設定される侵入することのできなくなるエリアを指す。
侵入後の数分間、首輪から警告音が発せられるのでその間に脱出すれば問題はない。
が、脱出できなければ首輪が爆発し死に至ることとなる。
なお、スタート地点のエリア「A-2」は開始から1時間で禁止エリアとなる。以降禁止エリアの解除などもない。

【支給品】
開始時に参加者全員に支給品として以下の物資が与えられる。
「デイパック」「ルールブック」「参加者名簿」「食料」「飲料水」「筆記用具」「コンパス」「懐中電灯」「地図」「ランダム支給品1〜3個(説明書付与)」
支給品には武器や特殊なアイテムなどがアトランダムが支給される。中には殺し合いには意味のない物や能力が制限されているものも存在する。
地図の右上には滞在しているエリアが表示される。なお、その参加者がエリアを移動すれば自動的に切り替わる。地図が他の参加者に渡った場合、その地図が表す現在地は渡った持ち主のものに切り替わる。

【能力制限について】
プログラムの進行に影響が出るような能力は制限対象となる。
制限内容は、能力の低減、使用が不可能になる、など。なお、能力の制限は参加者本人に把握できるものとする。
不死能力を持つ者は無効。問答無用で死亡とする。


・状態表テンプレ
【現在位置/日数・時間帯/滞在場所】
【キャラ名@作品名】
[状態]:
[装備]:
[道具]:
[思考]
 基本:
 :
 :
 :
 :


8 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:47:28 CBZQpTog0
このロワは非リレーではありません。ご参加をお待ちしております
予約は一週間以内まで有効。それ以外は申請という形でお願いします


9 : ◆KGtmog17qI :2017/08/01(火) 05:48:26 CBZQpTog0
それでは、赤松楓、島村卯月を予約します


10 : ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 00:40:28 3RfLdLY20
投下します


11 : アッフリツィオーネ ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 00:40:52 3RfLdLY20
「私……なんで……?」

女子高校生、赤松楓は困惑していた。
彼女は、学生ながら数々のコンクールを受賞したピアニストだった。子供の頃からピアノが好きで、周りからは『ピアノバカ』などと呼ばれることもあったけれど、それでもピアノが好きな気持ちは変わらなかったしその生活に充実も感じていた。
そしていつしか“超高校級のピアニスト”と呼ばれるようになった彼女。でもそんな彼女は才囚学園という名の謎の学園に閉じ込められ――モノクマと名乗るマスコットに『コロシアイ学園生活』を命じられた。
だからこそ彼女は困惑していた。

何故、コロシアイに巻き込まれた自分が、さらに別の殺し合いに巻き込まれているのか。今は考えていても仕方がないと思った。だからこそ今はこの状況をどうするかを考えることにした。そしてそんな楓に別の感情が沸き出していく。

「殺し合いなんて……絶対に起こしちゃダメだよ」

それは、怒り、憤慨。殺し合いを起こさない、起こしてはいけないという思い。殺し合いを起こした主催者を許せないという思い。だからこそ、自分が、自分たちが率先してこの殺し合いに立ち向かわなければならない。主催者をやっつけて殺し合いを終わらせなくちゃ、と。赤松楓は決意に燃えていた。

「そうだ、荷物!」

ふと我に返る。背中に背負っていたはずのリュックは没収されもぬけの殻。ふと足元にあったデイパック。おそらく説明にあった「支給品」というものだろう。そのデイパックを開け中身を確認した。
そこには名前が連なる用紙、説明にあった参加者名簿らしき紙が入っていた。楓がまず目を通したものはそれだった。

「最原くんに、キーボくん……真宮寺くん、王馬くん、星くん……私以外にも、ここに来てる人がいるんだ……っていうか、女子は私だけみたい。何でこの6人なんだろう……」

“超高校級の探偵”最原終一。
“超高校級の民俗学者”真宮寺是清。
“超高校級のロボット”キーボ。
“超高校級の総統”王馬小吉。
“超高校級の”テニス選手”星竜馬。
そして、“超高校級のピアニスト”赤松楓。
才囚学園に幽閉されていた超高校級の生徒16人の中で、この島のどこかにいる生徒が自分を含む6人いることが確認できた。
楓は何故、この残酷な椅子取りゲームに6人が選ばれたのか。法則性もなく到底理解がつかない。この人選なのだろう?
確かに、ロボットに自称悪の総統にマフィアを全滅させた元テニスプレイヤーと、殺し合いに向いていそうな生徒が参加。キーボと星竜馬は殺し合いには乗り気ではなかったはずだ。
王馬小吉に関してはよく分からないが、きっと本気で殺し合いに加担する人間ではない――そう思いたい。
残りの、殺し合いとは無縁の世界にいるであろう自分と最原と真宮寺に関しては、主催者の気まぐれだと思うことにした。というか、今はそう思う他なかったと言った方がいいのだろう。


12 : アッフリツィオーネ ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 00:42:17 3RfLdLY20

「すーっ、はーっ……」

赤松楓は息を整える。
ここはこの理不尽な状況を一旦呑み込むしかない。自分が狼狽えていたら、きっと生き残ることなんかできないし、誰かを助けることもできないと。自分がなんとかしなければと。赤松楓は自分を追い込むことでそのモチベーションを高めていた。
ピアノだって、才能だけでその結果が出るわけではない。天才にだって努力は必要だし、いつだって精神を研ぎ澄ませなければいけない。何より、自分が楽しいと、その気持ちを伝えたいと思わなければ、ピアノがどんなに上手だろうと聞き手の心には響きはしない。
自分はそれを知っているから、自分は超高校級のピアニストなんだからと、己に言い聞かせ、歩みを進めた。




   ◆




「どうしたの! 何かあったの!? 大丈夫!?」

歩みを進めた赤松楓は、その途中に出くわした少女に向かって声掛けていた。
近くには看板。どうやら山の麓らしいそこのベンチに、血で濡れたその少女が茫然自失として座り込んでいたのが見えたからだった。

「まさかもう殺し合いが……ってもしかして、首輪が爆発した時……」

楓は思い出した。首輪のことを。
この、自分の首についている忌まわしきそれで、自分たちを監視していること。それには爆弾が搭載されておりいつでも爆発させられることも。
そして、3人の少女に囲まれた男性の首が、鮮血とともに失われたことを。

「ごめんなさい……私、どうすればいいのかわからなくて……」

血は乾きかけていた。恐らくだが爆死した男性の知り合いであろう3人の少女のうちの1人なのだろう。
真っ赤に染まったベージュの制服は、染み付いてしまった血の臭いが当分は消えないだろうと思えてしまう。その血液の主だった男性は、彼女にとってどれだけ大切な人だったかは、この少女の状態から痛いほどによく分かる。だからこそ楓は憤った。こんなバカみたいな殺し合いを目論んだ人間を。

(やっぱり私がなんとかしなくちゃ……この子みたいな子が増える前に、殺し合いを終わらせなくちゃ!)

そう思った瞬間、彼女は少女の手を無意識に取っていた。その手は震えていたし、とても冷え切っていた。この少女がどれだけ恐怖を感じているのかが、手の感触だけで見て取れた。
だからこそ楓はこう言った。

「大丈夫、安心して。私はこんな殺し合いなんかに乗ってないから。大丈夫だから! 私があなたを守ってあげる! だから、そんなに悲しい顔、しないでよ」

震える少女の手をしっかりと握って、目を逸らさず少女の目をまっすぐ見据えながら、強くそう誓った。
これは少女のためだけでない。自分のためでもある。そして、どこかできっと戦っているみんなのためにも。赤松楓はこんな殺し合いには屈しないと誓った。


13 : アッフリツィオーネ ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 00:42:42 3RfLdLY20




「……こんな私で、ごめんなさい……本当は私、あなたに殺されるかもしれないと、少しでも思ってしまったのが……怖くて……」
「こんな状況だもん。それは仕方ないと思うよ。それに……知り合いが……死んじゃっでるんだもんね……」

暫くして、少女は数分泣いた後、ようやく落ち着いてくれたようで、楓は少女の肩をしっかりとそれでも優しく握り少女を宥めていた。

「私は赤松楓。あなたは?」
「島村……島村、卯月。です……」

少女の名は、島村卯月といった。
アイドル事務所で活躍しているアイドルであり、殺されたのはその事務所のプロデューサーだったらしい。自分とは違うけれど、同じく音楽と向き合って生きている少女。少なからず卯月に親近感のようなものが沸いた。

「卯月ちゃんは、誰かプロデューサーさん以外に知り合いって、いる?」
「……ニュージェネレーション……私と同じユニットの凛ちゃんと、未央ちゃん……多分、それで全員だと、思います……」

『りん』と『みお』。それを聞いた楓は名簿に書かれていた『渋谷凛』『本田未央』の名前を即座に思い出すと、自分の記憶にインプットした。一刻も早く卯月に再会させてあげなければならないと思ったから。自分よりかは、同じユニットで切磋琢磨してきた仲間の方が、彼女を幾分かは安定させてやれると思ったから。

(デイパックの中の手榴弾は……卯月ちゃんの前では出したらダメだよね……卯月ちゃんを不安にさせたくないから……)

楓は、卯月の見ていない隙に、支給品の手榴弾をデイパックの奥底に押し込むと、再び卯月の手を握った。




『大丈夫』だよと言ってくれた楓さんという子。
その『大丈夫』の声は震えていた。
私の手はしっかり握ってくれてはいたけれど、声はごまかせなかった。きっと彼女は嘘を吐くのは得意ではないのだろうと思った。
きっと赤松さんも怖かったんだ。自分だって怖かったはずなのに、それを押し殺してこんな私に大丈夫と言ってくれたんだ。
それが私には嬉しく、辛かった。
こんな私のせいで、こんな見ず知らずの私のせいで、赤松さんにこんなことを言わせてしまったのが辛かった。
だから私も、いつまでも怖がってちゃいけないんだ。
死んでしまったプロデューサーさんのためにも、この島のどこかにいる凛ちゃんと未央ちゃんのためにも――

――私が頑張らなくちゃいけないんだ。




【D-3/一日目 深夜/山/休憩場】
【赤松楓@ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期】
[状態]:健康、覚悟
[装備]:制服
[道具]:デイパック、支給品一式、手榴弾×8、ランダム支給品0〜2
[思考]
 基本:殺し合いを止める
 1:仲間を集める
 2:卯月ちゃんを保護
 3:渋谷凛さんと本田未央さんを探す
 4:超高校級の生徒との再会
 5:手榴弾は隠しておく
※渋谷凛、本田未央の情報を知りました

【島村卯月@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:健康、不安定、血が付着
[装備]:制服
[道具]:デイパック、支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
 基本:頑張りたい
 1:凛ちゃん、未央ちゃんに会いたい
 2:殺し合いはしたくない
 3:プロデューサーさん……


14 : アッフリツィオーネ ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 00:43:00 3RfLdLY20
投下を終了します


15 : ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 01:20:51 3RfLdLY20
次郎を予約します


16 : 名無しさん :2017/08/03(木) 16:20:40 2BY77cf.0
投下乙です
しまむーが不吉だ


17 : ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 18:22:15 tU5Og86E0
投下します


18 : これもまたひとつの物語の始まり ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 18:23:01 tU5Og86E0
「……うっ」

そこは夜の森。今は精力的に活動を続けている月の光さえ当たらない、暗き森の中で、微かに聞こえる声。それは一人の参加者が意識を取り戻しその活動を再開した声だった。

「……うう……っ」

参加者とは、当然、見知らぬ悪趣味な誰かさんが開始した、殺し合いプログラムの参加者。という意味だ。
その“プログラム”に巻き込まれた哀れな参加者の一人。否、一羽、一匹、どれとも表現のし難いそれが、たった今強制的に失われた意識を取り戻していた。

「あ、頭痛えぇ……ここどこ……?」

朦朧とした意識の中、数分を要する“呻きの時間”を経て、彼は漸く目を覚ます。
彼の名は次郎。半分は鳥、半分は魚という奇妙な構造の生物。誰が呼んだか『半魚鳥の次郎』。
それ以外に説明をするならば彼は当然現実世界の住人ではない。それに関しては誰もが納得がいくであろう。そりゃそうだ。半魚鳥などという生物がこの世に存在するのならばおそらく珍獣としてメディアに取り上げられていただろう。
まあ、言ってしまえば、彼はメルヘンの国というこことは違う、はるか銀河に存在する場所に住んでいたメルヘンの住人なのだ。
そのメルヘンの国の住人が、何故このような舞台に放り込まれたのかは主催者にしか分からないが。とにかくその次郎は、その舞台である孤島のジャングルの中で失っていた意識を取り戻した、ということだ。

「うぅ、確かオレ……昨日ゲームしてて、そのまま寝ちゃったんだよな……それがなんでこんなコトになってるんだよ……」

まず次郎は、自分がこんな事になる前のことを思い出していた。昨日は確か、いつものように学校に行って、それから、寝る前にゲームをしていて「かあちゃん」に怒られた後、それでもあともう少しもう少しとゲームを続けていたらそのまま睡魔に負け意識を失った――ここまでは覚えている。と、いうか、ここまでしか自分が元いたメルヘンの国での出来事は覚えていなかった。
その後次郎は、次に目を覚ました時のことを思い出した。そこは人が大勢いる見知らぬ場所。しかもそこは絶海の孤島で、自分の首には爆発する首輪を装着されわけの分からぬまま殺し合いをする羽目になった。そこで首が吹っ飛ぶ人間の姿を目撃し呆然となったところまでは覚えている。後は頭が混乱していたのか“もや”がかかった程度にしか自分の記憶を反芻することは叶わなかった。


19 : これもまたひとつの物語の始まり ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 18:24:14 tU5Og86E0
「確か、殺し合いのルールとかなんとか言ってたな……まぁ、メルヘンの国のやつらに殺しなんてできるわけがねえよなァ……」

まず次郎の心に過ったのは安堵だった。まず平和なメルヘンの国で殺しなんて起きるわけがない。もしコレの参加者が自分と同じくメルヘンの国の住人達ならば殺し合いなどまず起こりうるわけがないからだ。

「でも……オレ以外には人間とか、メルヘン者じゃなさそうなやつらもいたっけ……もしそいつらが殺しを簡単にする野郎なら……やべェな……」

次に次郎の心に過ったものは不安。自分達とは違う異国の誰かが殺し合いに乗ってしまった場合。そんな嫌な考え。無意識に次郎の顔面は青ざめていた。鮮やかな鱗と真っ赤な鶏冠で彩られた頭頂部の血の気が引き真っ青になる。
いやいや、と、次郎は首を振る。太い首に巻かれた首輪がカチャカチャと音をたてるのが次郎の不安を誘ったが、不安になっててもしょうがないと、支給されたデイパックの口を開いた。

そこには、地図、懐中電灯、コンパスなどこれから山登りでもすると言わんばかりの道具が出てきた。どうやら本格的に自分たちに島を歩かせる気らしい。ぴらっと地図を開くと見た事もない島の地図がそこには描かれていた。

「ここどこだ……? 一体どんな島なんだ……? っていうか、オレはこの島のどこにいるんだ?」

次郎の頭の上には大量のクエスチョンマークが現れる(まあ、当然、比喩的な表現なのだけれど)。そもそも地図なんか見たところで自分の詳細な現在地がわかるはずもなく、次郎は、今自分がいるここが森であるということを前提にし大体の現在地の目安をつけていた。が、その苦労も徒労に終わることとなる。

「ん? そういや地図の右上……“E-6”?」

地図の右上のスペースに目がいった次郎は、謎のアルファベットと数字の組み合わせを発見する。そして地図には縦軸にはABCD……横軸には1234……と記号が割り振られている……ここから考え出される答えは、「もしかして、これって俺が今いるエリアってことか……?」ということだった。
次郎の推理は間違いではなかった。地図の右上に記してあるそれは、丁寧にも今参加者が滞在しているエリアを表したものだ。しかし次郎にとってはこれはただの推理であり確証には至らない。しかしそれもすぐ確証に至ることとなる。

「パンと水かァ……こんなんで今から生活しろっていうのか……」

次に次郎が取り出したのは食料。といっても袋に入った簡素なパンと、ペットボトルに入った水。せめてお菓子でもあれば……なんて思ったが、これは遠足ではなく殺し合いなんだと再確認するとすぐにその考えを改めた。

「43人か……コジコジやゲランもいるのかよ……やっぱりオレだけじゃなかったんだよな……まあ、オレなんかがさせられるんだから、当然いるよな、そうだよな……」

次に目をやるのは参加者名簿。知らない名前が連なる中、次郎は『コジコジ』、『次郎』、『ゲラン』、『やかん君』、『カメ吉』、『ブヒブヒ』の名前を発見する。それ以外の知り合いの名前はどこにも記載されていないので、この自分を含む6人がこの殺し合いに参加させられた哀れな身内、ということなのだろう。
基本的に敬称略で記入されている名簿に、何故やかん君だけは「君」付けなのかは気になったが、気にしていてもしょうがないので無視することにした。

それから、ルールブックを取り出し読んでみる。もう、何か見るだけで頭がクラクラしてきて気分が悪くなりそうだったので、流し読みをするまでに留めた。
その中に、地図についての追記がありそこには『地図の右上には滞在しているエリアが表示される』と記載されていた。やっぱりそうなのか。と、次郎は一人で自分を納得させていた。が――

「あーあ、これからオレどうすりゃいいんだろ……」

やはり途方に暮れるしかなかった。飛べない鳥、泳げない魚。鳥と魚の悪いところばかりを受け継いでこの世に生を受けた哀れな半魚鳥、次郎。それがどうしてこんな馬鹿げた殺し合いに参加する羽目になったのか。つくづく自分の不幸を呪った次郎であった。


【E-6/一日目 深夜/森】
【次郎@コジコジ】
[状態]:健康、微かな不安
[装備]:懐中電灯
[道具]:デイパック、ランダム支給品1〜3
[思考]
 基本:とにかく今は生き残りたい。
 1:どうすればいいのか分からない
 2:とにかく殺し合いに乗ってない参加者を探す
 3:できれば同じメルヘンの国の住人(コジコジ達)と会いたい


20 : これもまたひとつの物語の始まり ◆KGtmog17qI :2017/08/03(木) 18:24:44 tU5Og86E0
投下終了です


21 : 名無しさん :2017/08/03(木) 18:52:35 2BY77cf.0
投下乙です
気弱ながらの良識持ちな参加者か、どうロワで揉まれていくやら
あの容貌だとコジコジ以外の作品の参加者は怪物と警戒してもおかしくなさそう
だから、できれば同じメルヘンの国の住人と会いたいか


22 : ◆KGtmog17qI :2017/08/05(土) 04:05:02 cpxSifUs0
ミャウ、ギロロ伍長を予約します


23 : ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:24:44 DmJVm3jQ0
投下します


24 : 頭がパンクしちゃいそうよ ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:25:13 DmJVm3jQ0
海だ、ここは夜の海。
瑠璃色の海は月の光に照らされ宝石のように輝いているし、真っ白な砂浜は汚れひとつないまっさらなダイヤモンドビーチだ。職業柄色々な星を巡っているが、こんなに綺麗な海岸は貴重だろう。
こんな美しい海岸なんだ。朝になれば水着のピチピチギャルが賑わいへし合うのだろう。そんな事を想像すると非常に心踊る。

――ここが殺し合いの舞台じゃなければ。



「なーんて、こんなことやっててもしょうがないよなぁ……」

僕は独りそう呟く。
まったく、バカげた話である。何で僕達が急に殺し合いなんかに巻き込まれなきゃいけないのか。
男一人と、ロボット一体。そしてベテルギウス星人である僕。男しかいない女っ気皆無のむさ苦しいメンバーの中、僕、ミャウはなし崩し的に宇宙人ハンターを続けてきたけれど、何か、その人生も終わりになるかもしれない大ピンチに陥ってしまった。そう思うとなんかもうやってられねぇ。ってなカンジで、このまま砂浜にでも寝転がりたい気分だ。

「殺し合い、なう……ってスマホどこいった?」

とりあえず、SNSに拡散でもしようかと思い荷物を調べても、体じゅうを探しても、僕のスマホはなかった。僕らに殺し合いをさせた奴に取られたらしい。まあ、スマホなんて持たせたら、簡単に連絡が取れるだろうからしょうがないのかも知れない。

「ガラケーって……こんなのド田舎の星でも使われてないって……ないよな?」

その代わりなのかは知らないが、デイパックの中に入っていたのは緑色の小さなガラケー。ちょっと触ってみたけれど、主に通話とメールの機能ぐらいしかないという超ド級の旧式携帯だった。しかもそれ以外はルールで言われた通りの支給品ばかり……どうやら僕はハズレをつかまされたらしい。とことん運がない。


25 : 頭がパンクしちゃいそうよ ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:26:02 DmJVm3jQ0

「武器なんてないじゃん……」

身体中の力が抜けた。僕は砂浜にへたり込む。とことんイヤになる。なにがイヤかって、僕の運のなさだ。いつもロクな目に遭っていないけれど、今回は特にひどすぎる。何だよ殺し合いって。こんなセンスの欠片もない首輪つけられて、砂浜に放り出されて、何がしたいんだ?
こーんなケータイ電話持たせてどうやって殺し合わせる気なのか、僕にはさっぱり見当もつかない。まさかこの支給品とやらは他の参加者にも支給されているのか?
「僕と協力しませんか? 殺し合いの!」とでも言わせたいのか? ふざけんな。

「あーっ! ちくしょう! なんなんだよぉ!」

この行き場のない感情を抑えきれなくて、僕はつい砂浜にこのポンコツを叩きつけていた。同じ機械でもQTの方がまだハイテクだと思った。
とにかく、僕は殺し合いには乗らない。乗りたくない。というか、乗ってしまったら顔も名前も知らない“あいつ”の思う壺じゃないか。それだけはいくら人からボンクラとか呼ばれてる僕でも避けたいところ。
そそくさと砂浜に転がっている電話を拾い上げると、僕は出発の準備を始めた。旧式のコンパスと懐中電灯を取り出す。そして一口ペットボトルに入っていたただの水を胃に流し込む。味気もなにもないただの水だけど、今の僕にはとてつもない救いに感じた。なぜだろう。命の危険が迫っていることを本能的に悟っているから? 考えたくもなかった。
その時、北からやってくるのは強い風だ。その寒さについ僕は震える。

「それにしても冷えるなぁ……」

そういえば今は夜だった。そして放射熱のせいかなんかで結構寒い。こんなところで野ざらしになっているのはさすがに堪える。ちょっと催してきた。水を一気飲みしたからなのか?

「誰もいないんだから、ちょっとぐらいならいいよな……?」

僕は用を足すため木の根元に移動する。そしてそのままチョッキを下ろせば――
頬に熱さと鋭い痛みが通った。

「……へっ?」

頬に痛み?
おそるおそる頬に手をやる。すると――

「……血?」

――僕がその状況を理解するまでに数秒かかった。頬に紫色の一本線。そこから流れるのは血。頬に何かが掠った。ということ。


26 : 頭がパンクしちゃいそうよ ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:26:34 DmJVm3jQ0

「うわわわわわわっ! ちょっ、待っ……死ぬ、死ぬって!」

僕はそれを理解した瞬間、脱兎の如く駆け出していた。手に持っていたコンパスと明かりをついうっかり手放してしまった。けど、そんなもの命とどっちか大事なのだろうか。比べるまでもなかった。
僕の足元の砂が跳ねる。近くの木から焦げた臭いが漂ってくる。俺を狙って誰かが銃をぶっ放してる! ってことだ!

「クソォ! こんなとこで死にたくねぇー!」

狙撃されてんなら、当たらないよう逃げるしかないって!
今は逃げる事だけに集中するんだ!



彼は知らない。
この殺し合いの意味を。
開始前に言っていた通り、この殺し合いは模倣。とある小説の模倣なのだ。その殺し合いでは、フォークや双眼鏡などの殺し合いには向かない道具も支給されている。その主催者である人物も、それに倣い則っただけなのだ。
だからこそ、ミャウのように意味のない支給品を面白半分で支給する場合もある。必ず武器を寄越してくれるわけではない。
彼は支給品に当たり外れがあることは把握した。が、それの単純で悪意的な真意までには気づけなかった。
それに、この支給品は“ハズレ”ではない。一見、ただの携帯電話のように見えるそれは、恐怖の大王『アンゴル=モア』が使用する武器、ルシファー・スピアというものだ。当たり外れでいうならば、“アタリ”にあたる部類の支給品である。
その威力は惑星をも壊す――といってもこの殺し合いでは人ひとりに多大なダメージを与える程度――しかも、呪文を唱えねばその力を発揮しないようになっている。そのため、アンゴル=モアの存在しないこの殺し合いでは、地球を破壊できるほどの代物も、ただの無用の長物に成り下がるであろう。
しかしこの殺し合いには、この力を解放させる方法があるらしい。その方法をミャウが知るのかどうかは分からないが。
とにかく、彼はこの後見舞われる運命には気づいてはいなかった。とだけは言えるのだろう――


【I-5/一日目 深夜/海岸】
【ミャウ@スペース☆ダンディ】
[状態]:逃走中、頬に傷、尿意
[装備]:帽子、チョッキ
[道具]:デイパック、支給品一式、食料(ペットボトル1本消費)、アンゴル=モアの携帯電話(ルシファー・スピア)@ケロロ軍曹
[思考]
 1:急いでここから逃げる
 2:用を足したい
※ランダム支給品の説明書を読んでいません
※懐中電灯とコンパスはI-5の砂浜に放置されています。


27 : 頭がパンクしちゃいそうよ ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:26:57 DmJVm3jQ0




「殺し合い……か」

俺は支給された銃を握りながらそう呟く。
俺は、目覚めた場所からそのまま放り出され気がつけば森の中で眠っていた。そこからスタートし暫く走り続けた。
そのまま森を抜け、いつしか海岸へと辿り着いた。
支給されたデイパックの中には、開始前に説明があった物以外に拳銃が一丁、射出式のナイフが一本。それと殺し合いに参加している奴らの名前が書かれた用紙がそれぞれ入っていた。
その用紙によると、ケロロと冬樹もここにいるらしかった。しかしそんなものは関係ない。
俺は生き延びるだけだ。俺は軍人として、こんなところで死ぬわけにはいかない。俺たちの祈願、ポコペン侵略を達成するためにも。
ここから生還できる条件はただひとつ。この場にいる全員に引鉄を引けばいいだけだ。たとえそれが隊長であるケロロといえど、俺の前に立ちふさがるのならば……

「俺は……軍人だ。ずっと日向家にいたせいか、忘れかけていたが、俺と奴らは敵同士……いつかは袂を分かつ時が来る。ならば今が好機だということなのだろう。俺が軍人として生まれ変わる時なんだ……!」

そうだ。俺はもともとポコペンを侵略しにきた侵略者だ。俺がはじめてそこへ来た時、俺はポコペン人の殲滅を開始しようとした。だがそれが何だこの体たらくは。いつまでたっても侵略など達成できてはいないではないか。
いつも仕事のしない隊長を責めていたが、俺もいつしか侵略者としての牙をもがれつつあったのは自覚している。だからこそもうその事実から目を背けられんのだ。
今の状況では、この状況を打開できる策は殺し合いに乗る事しかない。綺麗事や偽善などでは無駄な命を使うだけ。ならば、俺は鬼になる。侵略者として、貴様らに立ちはだかってやる。いくらそれが幼馴染や勇気ある少年といえど。



「……まずは、一人」

俺は海岸で一人目のターゲットを発見した。呑気なことに、そいつは用を足そうとしていたようだ。俺はそいつの頭目掛けて……拳銃の引鉄を起こした。

「うわわわわわわっ! ちょっ、待っ……死ぬ、死ぬって!」

「チッ、逃がすか!」

俺は予備の弾を込めると逃げ出したそいつを追う。その猫のような姿をした生物は、おそらく俺と同じ宇宙人なのだろう。
そいつはなかなかに逃げ足が早い。しかし、戦いを目の前にして背を向けるような奴などに負けるほど弱くもない。必ず追いつき殺す。
そいつだけでなく見つけた参加者を殺す。残さず全員殺す。俺の心が揺らいでしまう前に。

俺はすぐさま見知らぬそいつを殺すため走り出した。



【I-5/一日目 深夜/海岸】
【ギロロ伍長@ケロロ軍曹】
[状態]:若干の疲労
[装備]:ベレッタM92(8/8発)、帽子、ベルト
[道具]:デイパック、支給品一式、予備弾残り2セット(8発×2)、スペツナズナイフ
[思考]
 基本:生き延びるためにこのプログラムを勝ち残る
 1:逃げた宇宙人を追う。そして殺す
 2:参加者を発見次第殺害する
 3:物資、食糧の確保
 4:ケロロと出くわした時は……
※スタート地点はG-6です


28 : 頭がパンクしちゃいそうよ ◆KGtmog17qI :2017/08/07(月) 18:27:19 DmJVm3jQ0
投下を終了します


29 : 名無しさん :2017/08/07(月) 21:05:36 k2Y0AMjQ0
投下乙
このロワの参加者は全体的にギャグとシリアスが混ざり合うカオス作品が多いからとても期待してる
話題的にも銀魂キャラがいてもおかしくないな…


30 : ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 04:55:06 aMVRUlE60
剛田武、妹尾あいこ、キーボを予約します


31 : ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:55:17 fKi9D59I0
投下します


32 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:56:04 fKi9D59I0
「ふざけんじゃねえ!!」

誰もいない広々とした草原に怒号が響く。その凄まじい音の圧だけで、その声の主の感情がどれだけ昂ぶっているかが手に取るように分かるようだ。
その声の主は一人の大柄な少年。名を剛田武といった。

「こんなふざけたことしやがって! 誰が殺し合いなんてするかよ!」

「ジャイアン」の愛称で親しまれている(?)彼は、地元では有名なガキ大将だった。
多少、傲慢で横暴な所はあるが、ドラえもんやのび太達と冒険をした時には、男気や正義感を見せることもあった。今はその“男気”や“正義感”が発揮されている時なのだろう。

「誰がこんなことをしたのかはわかんねーが、そいつはこのジャイアン様の手でギッタンギッタンにしてやらねーと気が済まねえ!」

次に響くのは、まるで大地を揺るがしているかのような轟音。武が全力で足を踏み鳴らす音らしい。
人一倍大きな声も合間って、絶海の孤島にとてもやかましく響く。
どれだけ憤って叫んで暴れてみても、その殺し合いを目論んだ輩は一向に現れることはない。
どれだけ喉を使って抗ってみても、誰もいなければそれはただの独り言だ。
だが武は必死に憤って叫んで怒ることしかできなかった。
そして、この殺し合いの主催者に抗う事を決意した。
目的はただひとつ。主催者の顔面にこの大きな拳を叩き込んでやること。
武はそれのみを心にしまい込み、怒りに燃えながらこのプログラムを開始した。

「とりあえず、ドラえもんを探すんだ。ドラえもんならなにか知ってるかもしんねえ。
 それに、スネ夫も、しずちゃんも、それからのび太もこのおれさまが助けてやる!
 おれがこんな“ころしあい”なんてぶっこわしてやるぜ!」

矢継ぎ早に決意の言葉を並べるガキ大将。しかしその言葉に秘められた感情は闘志ではない。
不安。殺人者への不安。
恐怖。死への恐怖。
普段、ごうつくばって大きい顔をしている彼も所詮はただの小学生男子。当然、死への恐怖を完全に捨て切ることはできない。
だからこそ、やるぞ、戦うぞ。そう自分に言い聞かせることで、心の平静を保っているに過ぎない。
ただ、それだけでもないことは確かだ。
死への恐怖は、自分だけじゃない。
特に、臆病な骨川スネ夫や野比のび太は自分以上の恐怖に怯えているのかもしれない。
だからこそ、自分はその恐怖を押し潰なきゃいけない。そんな重圧のようなものも彼の中には存在しているのだろう。
叫ぶ声が矢鱈と大きいのも、それらの感情が混雑し合った結果のためのものなのだろうか。
それは剛田武本人にもわからなかった。


33 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:56:48 fKi9D59I0

「おうい! ドラえもーん! のび太ぁー!」

叫ぶジャイアンの右手には木製のバットがあった。武のディパックに入れられていた支給武器だった。
いつもは得意の野球で使っていた(たまにのび太らをこれで殴っていたこともあったが)バット。これを殺し合いのために使うなんて、武でもきっと夢にも思っていなかっただろう。
バットを持つ右手は震えている。自衛のために持っているはずなのに、これを手放したくて仕方ない。
恐れているのだろう。
これで人を殺めてしまうかもしれないという可能性に。

「ちくしょー! しっかりしろおれ!」

黒き虚空に向かって声を吐く。しかしその声はこだまにすらならない。そのむなしささえ武の心には大きな負担だった。
孤独。ひとり。最悪のケース。誰も助けには来ず、ただひとりで死に逝く可能性。
図体は大きくとも、腕っ節は強くとも、いくら根性があろうと、そんな大人でも堪えられるかどうか分からない、そんな恐怖に、今の彼は囚われかけている。
もういやだ。そんな諦めにも似た感情を持ってしまいそうになる。それでもやはり首を振りそれを消そうとする。
逃げ場のない舞台。行き場のない感情。それらのせいで破裂しかけている彼の精神。
しかし、その彼にひとすじの救いのような――光明のようなものがあらわれる。

「うるさいねん! ここがどこかわかっとんのか!?」

声が聞こえた。
女。しかも自分と同じ小学生くらいの。口調からして関西のものだ。

「なにぃ! このおれさまに向かって!」
「あんたが俺様かお天道様かは知らんけどな、こっちからしたらいい迷惑やねんて! あんたに言うとんねん、そこのオレンジの服着たあんたや!」

すぐ近くに声がしたのを確認すると、武は辺りを見回した。すると、自分の後ろにオーバーオール姿の少女が立っているのが確認できた。この少女が先程の声の主なのだろう。

「てめえか!」
「てめえやない。あたしには妹尾あいこっちゅう立派な名前があんねんで!」

妹尾あいこと名乗った青髪の少女は、武に食ってかかる。
どうも、彼女も近くに飛ばされていたようで、できるだけ危険な思想を持った参加者と出くわさないよう行動していた模様だった。
しかし、武の出す大声は人を引きつける絶好の道具。当然、危険な人物でさえ。
だからこそあいこは武を静止させるため動いたというわけだ。
あの耳に障る大声は、遠くからもよく聞こえた。そのため、あいこはこの大柄な子供が殺し合いには乗っていないことがわかった。
それなら話は早い。こっちから話しかければいい話だ。まとめてお陀仏になるよかマシ。そんなふうに思っていたら、つい足が出てしまっていた。


34 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:57:22 fKi9D59I0

「で? その妹尾がなんのようだ! 邪魔すんならぶんなぐるぞ!」
「あんた、女に手ぇ上げんのか? そんなにあたしに言われたのが気に食わんっちゅうことか? 男のくせにキモのちっちゃいやっちゃなー」
「だ・ま・れ!! これ以上言うと、本当にぶんなぐるぞ!」

ついカッとなったあいこは武を挑発する。武もそれに簡単に乗る。
二人の間には火花のようなものが散っているように見えた。

「殴るんなら殴り! そんならあたしもどつき返してやるさかい、殴れるもんなら気が済むまで殴りや!」
「言ったな? それならお望み通りっ、
 ボッコボコにしてやるー!」

怒りに狂う武の左手が宙を舞う。
そのままそれはあいこの顔面に――

「……」

直撃、はしなかった。
あいこの顔面直前でそれは止まった。というより、当てられなかった。これ以上、できなかった。
これが剛田武の精一杯の虚勢だった。
何より、抵抗も何もせずただこちらを強い視線で見据えている女に向かって、拳を叩き込めば、自分が一体どうなるかは目に見えていた。

「くそっ……」
「あんたがこのプログラムっちゅー悪シュミな大会に乗ってないのはわかっとんねん。だからあたしらはこんなことをしとるヒマはあらへんねや。
 それに、ドラえもん、のび太。あんたの友達に会いたないんか? だから必死に叫んでたんやろ。
 あたしも言い過ぎたフシがあんのはわかっとる。だからここは言いっこなしにしよ!」

武は後悔した。つい暴力に訴えようとした自分に。
言葉が強かったとはいえ、暴力を振るわずに自分に立ち向かってみせたあの女に、負けたような気もした。
剛田武の頭は少しずつながら冷え落ち着きを取り戻していった。
なにより、殺し合いに乗っていない人間に出会えたことが、安心感となって武の心を襲った。

「すまねえ、おれもついカッとなっちまってた。おれさまとあろうものが、女にも手を上げようとするなんて、どうかしてたぜ」
「……悪かったな。キモが小さいなんて言うて」
「へ?」
「あたし、前もこの性格のせいで友達とケンカしたことあってん。
 あたしもなんかこんな目に会うたのが相当きいてたんやな。
 いちど、冷静になって話ししよ! そしたらなにか見つかるかも知れへんし!」

武とあいこの二人は、一旦植え込みの影に隠れることにした。
近くの小さな植え込みでも、子供ふたりは隠せるくらいのものはあった。
そこでお互いの情報を交換することとした。

「こんなだだっ広い草原じゃ誰かに見つかるかもしれん。一旦あそこに隠れよ」
「そうだな」

二人は植え込みの近くに向かって走り出した。するとまた声が響く。
それは武でもあいこでもない。
第三者の声だった。

「すみません。私もその話に参加させてくれませんか」

「誰や!」

近くにいたのは大人。しかもその姿は異質だった。
銀色の髪に銀色の肌。明らかにこの世のものではないような服を着た、明らかに異質な男。
その男はおもむろに、頭を下げた。


35 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:58:01 fKi9D59I0

「すみません。怪しいものではありません。ボクも殺し合いには乗っていませんから」

その男の実直なお辞儀に、つい武とあいこの張った肩が緩む。
安心した。この男は、今はおそらく殺し合いには乗っていないと。

「なんや、やぶからぼうに。ちゅーか、あんた人間なん?」
「人間ではありません、ロボットです! というかそれは差別ではないのですか!? 人間でないとダメなんですか!」
「いや、そういうわけじゃあらへんて。人間みたいなロボットなんてテレビでしか見たことのうて、ちょっとびっくりしたんよ」
「そうですか、安心しました。ボクの名前はキーボ。超高校級のロボットなんですよ!」

キーボ。と名乗った青年は、自信げに二人に宣言した。
彼は、話によれば、飯田橋という名の博士に作られた自律型のロボットらしい。
進化するAIを搭載され人間のように成長していくロボット。それが彼なのだそうだ。

「正直言うと、ボクも心細かったんです。ずっと一人だったので、やはり不安で。
 妹尾さんと剛田さんがいてくれて、これほど感謝したことはありません」
「ロボでも心細くなることあるんだな!」
「ありますよ! ロボットだからって、心がないなんて先入観はやめてください! 場合によれば、しかるべき機関に訴えますからね!」
「わかったわかった! だから落ち着こ!」




二人から三人にメンバーが増え、とうとう植え込みの中で話し合いを始める武とあいことキーボ。
まずは、参加者名簿を広げる。
そこにはつらつらと42人の名前が書かれていた。そして、彼らの知る名もそこにはあった。

「ドラえもん、のび太、スネ夫、しずか……おれの友達はこんだけだ」
「ボクは、ボクのクラスメイトが5人書かれていますね。だからこの5人の保護は優先的でお願いします。
 幸いなのは、飯田橋博士の名前がこの名簿になかったことでしょうか」
「あたしも、あたしの友達が2人書かれてたわ。どれみちゃんもはづきちゃんもあたしの大事な友達やねん。何かある前に探さんと」

まずはお互いの知り合いの名前を確認し合う。発見した際即座に保護できるよう、それが万が一の事があっても、それが行えるから。できればそんな事態にはなってほしくないものだが。

「右上に何か書いてある」
「E-2?」
「南方部に市街地がありますね。ということは位置的に考えると、おそらく現在のボク達の現在地を表すものか何かではないかと推測できます」

次に確認するのは地図。
そこでキーボの推理により所在エリアの確認も終える。
そして、次に向かう場所は市街地になった。北は山、東は森で、命に関わるリスクが増えるからという理由だ。
西部であるE-1は地図の表記が海面になっており、実際遠くに海が見えた。おそらくあそこへは移動できないのだろう。
できたとしても、一日中泳ぐなんてとてもじゃないができない。


36 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:58:24 fKi9D59I0

「……」

次に確認したもの。それは、支給された武器であった。
武に支給された武器は先程持っていた木のバット。それから、花火だった。
花火といっても、夏に遊ぶものではなく、着火し破裂される花火玉だった。ご丁寧に導火線も着けられている。
威力は不明だが、おそらくは人一人を傷つけるぐらいのものはあるのだろう。そう武は心の中で思った。
キーボに支給されたのはスタンガン。それと、日本刀1本と拳銃――ではなく、それを模したただのモデルガンだった。

「これは銃ではなくモデルガンのようですね。安心しました。あまり危険物は携帯したくありませんし。子供もいるので」
「次はあたしやな。えーと……」

お次、とばかりにあいこはデイパックから支給品を取り出していく。
まず、ひとつめ……

「包丁……ですか」
「……これは武器として使わなければええねん。ほら、包丁ってもともと料理に使うもんやろ?
 だから料理することがあるなら使わせてもらうことにしよか!」

そう言うとあいこはそそくさと包丁を仕舞ってしまう。こうは言っているが、あいこも少なからずの動揺はあるのだろうか。

「まだあるみたいやな。こーんな子供に、大したモンは配られてないやろけど……な……」

それは黒の塊。
小学生の体にはあまりに重すぎる鉄の塊。
あいこの両手にはそれがずしりと乗しかかっていた。

「こんなんで、戦え言うとんのか……アホかちゅーねん……」
「せ、妹尾……」

妹尾あいこに支給されたもうひとつの武器。
それは凶悪なる鉄の塊。
小学生の女子に扱わせるにはあまりにも酷なそれ。

短機関銃――H&K MP5。





【E-2/一日目 深夜/草原】
【剛田武@ドラえもん】
[状態]:健康
[装備]:普段着
[道具]:デイパック、支給品一式、バット、花火玉
[思考]
 基本:殺し合いを企んだやつをぶん殴る
 1:ドラえもんを探す
 2:のび太、スネ夫、しずかを助ける
 3:妹尾とキーボの知り合いも助ける

【妹尾あいこ@おジャ魔女どれみ】
[状態]:健康
[装備]:普段着
[道具]:デイパック、支給品一式、H&K M5、予備弾倉(1セット)、包丁
[思考]
 基本:必ず生きて帰る
 1:協力し合える人を探す
 2:どれみちゃんとはづきちゃんに会う
 3:殺し合いは絶対にする気はない

【キーボ@ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期】
[状態]:正常
[装備]:無し
[道具]:デイパック、支給品一式、モデルガン、スタンガン、日本刀
[思考]
 基本:殺し合いに乗っていない仲間を集める
 1:一刻も早く才囚学園の生徒と合流
 2:年長者として剛田武、妹尾あいこを保護する
 3:市街地へ向かう


37 : 孤独。そして、出会い ◆KGtmog17qI :2017/08/08(火) 17:58:46 fKi9D59I0
投下を終了します


38 : ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 03:15:39 JqfWp2hM0
ケロロ軍曹、ヴァンデモンを予約します


39 : ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:26:10 HdyluDGo0
投下します


40 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:26:42 HdyluDGo0
「あ……ありのまま起こった事を話すぜ!
 『おれは日向家地下のマイルームで眠ったと思ったらいつのまにか殺し合いをさせられていた』
 な……何を言っているのかわからねーと思うが
 おれも何をされたのかわからなかった……
 頭がどうにかなりそうだった……」


『どうにかなってるのは隊長の顔だけだぜェ』――

いつもなら、そんな黄色色した部下のツッコミが聞こえてくるところだが、生憎そんなものはこの場にいなかった。
民家に潜んでいる緑色の影。彼こそはケロン星という星からやってきた侵略者、ケロロ軍曹である。
見た目は大きなカエルに見えるが、ケロロは正真正銘本物の宇宙人なのだ。
彼は侵略者であり、軍人。ケロン星のケロン軍、特殊先行工作部隊の隊長を任されている男でもある。
彼もまた、残酷な殺し合いプログラムの参加者の一人。勿論、デイパックも支給されている。
が、彼は早速致命的なミスを犯していた。
緊張、切迫からの大量の発汗。それに伴う水分不足(カエル型なので水や湿気には敏感なのだ)。それに対する対策が水の一気飲み。
まあ当然ながら、支給されたほとんどの水を飲み干してしまい(当然ながら、民家や施設の水は原則ライフラインが停止しており使用不可能である)、途方に暮れていた。
フカフカのベッドに寝転がってみるものの、恐怖心から眠ることなど無理。
ボケてみるも、ツッコミの相手すらいない有様である。

「ゲロ……それにしても厄介な出来事に巻き込まれたでありますなー……」

ケロロは、デイパックの中に入っていた鞭を握りしめた。
侵略者である自分がこんなことに巻き込まれるなんて。と、少し自嘲ぎみにため息をついた。
参加者名簿なるものを確認すると、どうやら同じくケロロ小隊の隊員であるギロロ伍長。地球人の少年である日向冬樹までこの殺し合いに参加しているというのだ。
何故この三人なのかは今考えても仕方ないと思ったので、今はこれからのことについて考えることにした。

「殺し合いなんて物騒な真似、宇宙ではとっくの昔にオワコンでありますよまったく……確か我輩は自分の部屋で寝てて……」

ケロロは昨日の記憶を反芻してみる。
部下がうるさいのでいつものように仕方なく侵略会議。
特に思いつかないので終了。
日向家の長女、夏美の命令で家事手伝い。
それから冬樹と軽い談義。
暖かい食事。
ガンプラ作り。
ゲーム。ネット。漫画。
そして時計の針が1時を過ぎた頃、ベッドに入り就寝。
とても侵略部隊の隊長とは思えないほどの自堕落ぶりであるが、それ以外には特にこんなことに巻き込まれる覚えはなかった。
じゃあ、何故?
そもそも、ほとんどの地球の人間には認知されていないであろう宇宙人が何故拉致されたのか。
それを前提とすると、あるひとつの仮定が想像できる。

「じゃあ、これをやらかしたのは、どこかの敵性宇宙人の仕業ってことでありますか……?」

ヴァイパー等、ケロン人と敵対関係にある宇宙人。奴らがその犯人の可能性が高いのではないのか。
ケロロはそう考えた。
実際、部下であるドロロ兵長を人質にしたこともあった。

だが、宇宙で破壊行為や大規模な殺し合いゲームなどの野蛮な真似をすることは少ないため、本当にそうなのか疑問にも思った。
しかしそんなことは関係ない。
こんなことは早めに片をつけておくに限る。これ以上面倒ごとに巻き込まれるのは御免だから。ケロロはそう思った。
一刻も早く、部下であるギロロ伍長及び、友達の日向冬樹と合流し主催者を打倒しなくては。
そう思い立ったケロロ軍曹は民家を後にしようとしたのだが――

「一刻を争う事態であります! 速やかにこの民家を出なければ……え?」

ドアを開けて、街の外に飛び出した瞬間、現れた影を確認と共に、ケロロ軍曹の意識は暗転した。
頭に大きな痛みを伴いながら。

(ウソっ……我輩、強襲を……? あ、ヤベ……意識が……)

そんなことを思いながらカエルの姿をした宇宙人は、舗装されたコンクリートの上に、まるでヒキガエルのように横たわった。


41 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:27:59 HdyluDGo0







(どういうことでありますか……我輩、誰かに殴られて……
 まだ頭が痛い……あ、やっと意識が戻ってきた……かも。
 ここ、どこでありますか……? どっかの民家?)

「って、痛ってえええええぇ!?」

乾いた音とともに、ケロロの絶叫が響き渡った。ケロロの頬は傷つき、そこから血が零れていた。

「へっ、我輩、動けないであります! 前にもこんなことあった気が……
 そう、あれはまさしく日向家の捕虜と成り下がった時……って、まさかの二重捕虜!?」

ケロロは捕縛されていた。縄のようなもので身体中を縛られ身動きが取れずにいた。
体を揺すっても手を動かしても一向に解けることはない。
これはまさしく自分がピンチに陥っているのだと、ケロロはすぐに理解する。

「目覚めたか」
「貴様は何者でありますか! まさか敵性宇宙人!?」

目の前には、自分を攻撃し拉致したであろう人物が立っていた。
しかしその姿は、とても普通とは言えない出で立ち。地球人に似た姿ではあるが、明らかに普通の人間ではない。
だからといって宇宙人らしくもない。
その異質な姿にケロロは疑問を覚えた。

「何でありますかその格好は。ポコペン人のコスプレってやつでありますか?」
「黙れ。主導権を握っているのは私だ」
「ひぎィッ!?」

再び乾いた音が民家内に響き渡る。その音は、鞭がケロロの腹部に直撃した音だった。

「うげぇえっ……」

ケロロは腹からの衝撃に耐えきれず嘔吐し、床には吐瀉物が撒き散らされた。
ケロロは、何がどうなっているのか分からなかった。何故こんなことになっているのか。
ここが殺し合いだからなのか。自分を殺そうとしているのだろうか。だから攻撃しているのだろうか。
しかしそれはそれで理解が追いつかない。自分を殺すならすぐに殺してしまえばいいはず。何故このように回りくどい手口を使うのだろう。
腹部の痛みをこらえながらケロロは思案していた。


42 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:28:44 HdyluDGo0

「ぐっ……我輩になんの用で、ありますか……」
「知っていることを吐くのだ。特に選ばれし子供たちに関することなら何でもいい」

その言葉でケロロは理解した。
拷問。それを介しての尋問。
それが奴の目的なのだと。
それならば、沈黙していればいい。
少なくとも、相手が情報を欲しがっているのなら与えなければ相手は拷問を続けるだけ。殺すまでには至らない。
それに、この程度の拷問ならば、過去の軍事訓練や日向夏美への暴力に比べれば屁でもない。そうも思っていたから。
敵も、長い間行動を続ければ少なくとも隙はできる。その一瞬の油断を狙えばきっと脱出もできるだろう。ケロロはそう高を括っていた。
それよりも、ひとつ引っかかるワードが奴の言葉にあったことが気がかりだった。
“選ばれし子供たち”とは、一体なんなのだろう?

「言わんか。ならば、何回でも痛めつけてやるだけだ」
「ぐっ!」

鞭の打撃音が部屋に響く。
たしかあれは、自分に支給された武器のはず――奪われたのか――
ケロロは一瞬そう思考するが、すぐにその意識を自分を攻撃する敵に戻した。

(何故でありましょう……いつもなら泣いて許しを請う場面でありますのに……
 今、この場が極限状態だからでありますか……?)

そう考えているケロロを尻目に、鞭の音は非情に鳴り続ける。
ケロロの肉体が何度も何度も傷つけられ床には血が滴った。
しかし、ケロロは一向に口を割ることはなかった。

特に、部下と友達に関することは絶対に話してはいけない。特に冬樹を危険な目に合わせたくない。
その一心なのかは知らないが、いつものケロロとは違う様子を見せていた。

「……」
「……その目、気に食わんな」

奴は、ケロロの顔面に強く鞭を叩きつけた。
ケロロの、自分を見据えていた目が、抵抗の意思を見せる目が、奴にとっては気に食わなかった。だからケロロを攻撃した。
かつても似たような目を向けられたことがあったが、それに似ている。それが奴にはとても腹立たしかった。

「どうやらお前はデジモンではないようだな。では、お前は誰だ?」
「我輩は……侵略者であります。それ以上、お前に言う言葉はない!」

その言葉を発したすぐ、絶叫が、束縛されたカエルの断末魔が、夜の街に響き渡った。
突如現れた蝙蝠の大群が、ケロロを襲っていたのだ。身体中を齧り付着した血液を奪い取っている。
ケロロは苦悶のあまり大声をあげた。が、それでもそれ以上は何も言葉にはしなかった。

それからも攻撃は執拗に続いた。
鞭が何度も何度もケロロの肉体を痛め続ける。
いくら血潮を巻き散らそうが、傷だらけ、痣だらけになろうが、ケロロは全く口を開く事はなかった。
そして奴の方から口が開かれる。
それは最後通告だった。


43 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:31:14 HdyluDGo0

「最後の警告だ。お前の知る情報を私のために提供しろ。侵略者」
「ゲ……ロ……」

なんてこった。蝙蝠さえ召喚しちまうなんて。ちくしょう――
ケロロに諦念の感情が沸き出した。その能力から、奴が明らかに地球の者ではないことが理解できる。
宇宙人にそういった種族が確認できたこともない。ならば、地球にも宇宙にも存在しない謎の生命体しかありえない。
そんな奴に。敵うのかどうかわからない奴に、反撃するのは到底無理なのだろう。ケロロはそう感じていた。

(もう、喋っちゃおうかな……)
そうケロロは思ってしまった。瞬間、固く閉ざしていたケロロの口が緩んだ。

「我輩は……」

(もういいじゃん。
 喋っちゃえば。
 言えば、少なくとも我輩は助かるのでありますよ?
 それに、これは一人しか生き残れないゲームであります。
 どうせ冬樹殿もギロロも、どこかで勝手に殺されてるって。
 それに奴がどっか行けば、誰かがどこかで殺してくれるかもしれないし。
 奴に取り入って、隙を見せたところで倒すってセンもあるでありますし。
 言っちゃえばいいであります。
 ほら、言えば、楽になる。
 わかったであります。降参であります。我輩の負け負け!
 死ぬより、折れたほうが、マシだっての――)

「我輩は、軍人であります」
「何?」

「我輩の名は、ケロロ軍曹。ガマ星雲第58番惑星宇宙侵攻軍特殊先行工作部隊隊長、ケロロ軍曹であります!
 拷問でも殺人でも、いくらでもするがいい。しかし我輩は屈しぬ。
 こちとらいつでも玉砕覚悟なんだよアホンダラ……
 軍も、大切な友達も、我輩のせいでどうにかなるようなら、我輩の命ひとつテメェにくれてやるっつてんだよ!」

その時、ケロロ軍曹に走ったのは電撃。
思ったこと以外を口走っていたことによる驚嘆だった。

(ゲローッ!
 我輩なにガラにもないこと言っちゃってんのさ!
 こんなとこでカッコつけてなんになるってのよ! 死にかけてる場面なのに!)

でも――
それも、いいのかも知れない。

一瞬だけれど、ケロロはそう思った。
そして――


44 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:33:39 HdyluDGo0


「ならば、もうお前には用はない」

「ブラッディストリーム」

突如現れた赤い鞭のような帯が、ケロロ軍曹の肉体に直撃した。
その赤い帯は、血の色をしていた。
物質ではない、気のような何かで造られたその武器は、直接奴の手から精製されていた。

「……がっ……!」

口から大量の血が零れてくる。
いつもより、夏美に手痛い罰を与えられた時以上のダメージによって、口からとめどなく血液が溢れていく。

「終わりだ」

そのまま、ケロロは腹部を貫かれた。朦朧となる視界に見えたものは、奴がレイピアで自分を刺している場面だった。
そこから、血がとめどなく溢れていく。命の炎が体から抜けていくのを感じる。
隊長の証であるケロンスターは、そこから流れる自分自身の血で真っ赤に汚れていく。
ケロロの体からレイピアが引き抜かれる。血の海と化した床に倒れ、ぴしゃりと水音をたてた。

「つまらん時間を使ってしまった。夜が明ける前に情報を手にいれなくてはならないからな……」

奴は、ケロロがもう起き上がれないことを確認すると、はじめから何もなかったかのように民家を後にした。
その後には、血で真っ赤に染まった緑色の宇宙人が横たわっているだけだった――


45 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:34:22 HdyluDGo0




――痛い。
マジでもう嫌でありますよ。
なーんであんなミエ張っちゃったかなー。
血がいっぱい出てるや。
そうだ、我輩、本当に死ぬのでありますな。
なんだか実感わかねーや。
冬樹殿、夏美殿、すまぬであります。
あ、そういえば、我輩明日掃除当番だっけ……
夏美殿、我輩もう死ぬから、掃除当番代わりにやっといてくれであります。
あ。上官殿や司令官殿にも謝罪しなくければならぬでありますな。
あと、我が親愛なる部下にも……

タママ二等。あまりお菓子食べ過ぎるなであります。

クルル曹長。ポコペン侵略には、お前の頭脳がかかっているであります。あんまり期待したくはないでありますが。

ギロロ伍長。我輩が死んだ今、隊長は任せたであります。お前ならきっとやってくれるでありましょう。

ゼロロ――いや、ドロロ兵長。あんまり気づいたりできなくてすまなかったであります。それから、昔はごめんな。

それと、プルルちゃんも、ガルル中尉も、ママ殿も、モア殿も、桃華殿も、623殿も、小雪殿も、556も、ラビー殿も、ポール殿も、提督殿も、それからそれから……

それに、父上殿、母上殿、ポコペンを侵略するところ、元気な姿で見せてあげたかったでありますよ。

それから、冬樹殿。我輩達は、我輩がいなくなったとしても、住む星が違ったとしても、友達でいてほしいであります。
我輩はダメだったけれど、きっとここから生きて帰ってくるであります。そして家族に元気な顔を見せてほしいであります。きっと待ってるでありますよ。
あぁ――光が広がっていく……
そろそろ――お迎えのようで……あり……ますな…………
済まぬ、済まぬであります。

このような地で、使命を全うできず死に逝く事を、許して欲しいであります――――


46 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:34:51 HdyluDGo0









「成る程、ナイトレイド、ブラッディストリーム。共に威力が弱い。それに、エネルギーの消費も激しいようだ。いつものように戦えるわけではないようだな。
 支給品とやらに頼るのも癪だが、仕方あるまい」

ケロロ軍曹を殺害し、今も目的のために参加者を探し続けている者。その者の名前を、ヴァンデモンといった。
ヴァンデモンは、デジタルワールドという世界に存在する、デジモンという名のデータで作られた生物である。
デジタルワールドを支配するため、選ばれし子供たちの抹殺を企んでいた闇の王。それがこのヴァンデモンであった。

「それにしても、私をこのような地へ呼ぶとは、現実世界の人間も舐めた事をしてくれる。8人目の選ばれし子供がここにいるのかは知らぬが……」

選ばれし子供。
デジタルワールドの安定を望む者によって現実世界から呼び出されたその人間の子供たちは、聖なる力でデジモンを進化させ、数々のデジモンを倒してきた。
かつてデビモンやエテモンも、その選ばれし子供たちの手によって倒されてきた。
さらに現実世界には、唯一デジタルワールドには来なかった子供がいる。
その子供をパートナーデジモンに出会う前に抹殺する。そのために自ら現実世界に出向いた矢先だった。この殺し合いのために呼び出されたのは。

「まあいい。ここにいる全員を殺せばいいのだろう? だが、事が済んだ時は覚悟するがいい」

しかしもしその参加者の中に8人目の子供がいるのならば好都合――と、ヴァンデモンはほくそ笑む。
場を見渡す限り、デジモンと思われる者もそこには居ないように思えた。参加者名簿を覗けば、そこにはやはり、デジモンの名前は自分しかいなかった。
それとは別に、参加者の写真と詳細が載せられた冊子もデイパックに入っていたのが確認できた。
その中に、選ばれし子供達の一人、「八神太一」がいた。そいつのパートナーである「アグモン」はここにはいない。それならば八神太一はただの無力な子供に過ぎない。
デジヴァイスと紋章があったとしても、デジモンがいなければ簡単に始末することができるだろう。
これも自らに与えられた好機なのだとヴァンデモンは考えてた。
だからこそ――

闇の王ヴァンデモンは、この殺し合いプログラムにおいても、王として支配する側に渡ることを決意した。


【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹 死亡】
【残り41人】



【G-3/一日目 深夜/市街地】
【ヴァンデモン@デジモンアドベンチャー】
[状態]:健康、エネルギー消費
[装備]:レイピア
[道具]:デイパック×2、支給品一式×2、鞭、ロープ、参加者のプロフィールノート、ランダム支給品0〜2
[思考]
 基本:この場を支配する
 1:他の参加者から情報を集める
 2:8人目の子供探し
 3:八神太一を殺す

※ケロロ軍曹の支給品は、ペットボトルのみ全て消費されています


47 : 侵略者 ケロロ軍曹 ◆KGtmog17qI :2017/08/11(金) 10:35:10 HdyluDGo0
投下を終了します


48 : 名無しさん :2017/08/16(水) 19:09:43 4lGEhEe60
投下乙
ジャイアン生きてケロロ死亡かあ
一気にロワらしくきな臭くなってきた


49 : ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 10:09:21 COUoywss0
お久しぶりです
ゲラン、源静香で予約します


50 : ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 20:22:23 HUU5KNVM0
投下します


51 : ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 20:23:30 HUU5KNVM0
ここは無人島。いや、元はそこには人はいた。ただし、今はここには人はいない。
何故ならば、そこは今や“43名”のみの舞台。彼らしか立ち入ることを許されぬ惨劇の舞台と化していたからだ。
“43名”……いやそれも違う。“42名”だ。惨劇の序幕として、1名の首が血に塗れてしまったのだから。
その惨劇――42名の生ける者を贄とした殺し合いプログラム。通称『バトル・ロワイアル』。彼ら彼女らはそのためにこの島へと呼ばれ、そして殺し合おうとしている。
そんなこの島には学校があった。
学校。未熟な若者達が勉学に励む施設。島であるとはいえ、そのような建設物にはどこでもあるであろう。
が、しかし、その学校はその場には相応しくない代物であることは、この中にいる男が知っていた。

「ここって、メルヘンの国じゃないんだよな? なんでわしらが通っているはずの学校があるんだ?」

その男ゲランは、この学校に通っている生徒の一人なのだ。
このゲームのため拉致されてきた者の一人であるゲラン。彼はメルヘンの国では王様である。
太陽の城でほのぼのと暮らしたまに仕事をする。そんな呑気な生活を送っていた自分が、なぜこんなことになっているのか。
いろいろな疑問はあったが、とにもかくにも何故かここにはないはずの施設が何故ここにあるのか。それが気になりこの学校へとやってきていたゲランだったのだが……

「殺し合いとはなんてひどいことをするんだ、こんなことをするやつがいるなんて信じられないぞっ」

ゲランは片手にデイパック。片手に支給品であるクロスボウを持ちながら校内を探索する。

「こっ、こんなことは許せないっ、このわしがこの殺し合いを止めなくては!」

こんな事を口走っているが、内心では不安と恐怖でいっぱい。体は小刻みに震え、服の中に汗がたまっている。
快晴の後の雲ひとつない星空もこの地獄のような状況下ではロマンシティズムに浸る余裕など微塵もありはしなかった。

「もし、わしと同じメルヘンの国の住人が連れてこられているなら、わし以外にも学校を見つけている人がいるはず、そこで仲間を集めてここを脱出しなくちゃ。これ以上こんなことに付き合うのはごめんだっ」

ゲランがまず立ち寄ったのは、自らが所属しているクラス、3年(セキセイ)インコ組の教室だった。
しかし、やはりと言うべきかそこはもぬけの殻。いつもの和気藹々とした喧騒はそこにはなかった。


52 : 王様のミステイク ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 20:24:31 HUU5KNVM0



    ◆



先生達を探しに職員室にも寄ってみた。が、やはり一縷の望みすら呆気なく打ち砕かれる。
そこには学校のみがそっくりそのまま移されているだけ。それ以上のものもそれ以下のものもない。ゲランはその形だけの学校の廊下で、立膝を突いた。

「わっ、わしはこれからどうなるんだ?
 ま、まさか、しっ、死ぬっ? このわしが? 死ぬっ!? そんなのいやだ……死んでたまるかっ。
 ……そうだ、きっとこれは夢なんだっ、わしがまた寝て起きたらそこはわしの城のベッドで……
 きっと、また、何でもない日が……始まるんだっ……そうだと言ってくれよォ」

とうとうその瞳に涙が滲んでくる。
本人はそう思っていないであろうこの世の終わりのような表情になりながら、ゲランは一人震えていた。
力の抜けた手から武器が落ちる。からんと、この切迫した状況にそぐわぬ愉快な音が響き渡った。

「うっ!」

ゲランはその音に呼応して身体を大きく仰け反らせた。
そのすぐ後に慌てて、まるで赤子のような動きで床に落ちたクロスボウを拾った。

「あぁ、ああぁ……」

声を震わせながら身体を引きずるゲラン。
そんな哀れな王様に声をかける者が一人いた。
そう、それはゲランと同じくこの学校にやって来ていた参加者の一人であった。

「あっ、あの」

その参加者は、ゲランと同じく、殺し合いに何もわからないまま参加させられ、孤独の中救いを求めていた者である。

「うわっ!」

その瞬間、合計いつつの音が響いた。
ひとつめはゲランの素っ頓狂な叫び声。かけられた声に反応した際のもの。今の状態ではとても正常な反応を取ることは不可能だった。これがひとつめの起因。
ふたつめは風を切る気持ちのいい音。ただしそれが気持ちのいい結果を招くとは限らない。それは怯えながらもゲランがそれを緩めようとしなかったために起きたふたつめの起因でもあった。
みっつめは鈍く鋭い音。矛盾した表現にも思えるそれは実際に起きていた。それは凶器がまだ発達途上の柔肌を傷つけた音で、最悪の状況を招くであろうみっつめの起因。
よっつめはいたいけな少女の息を殺したような声。急な痛みに襲われた彼女は、声にならない小さな叫びをあげて冷たい学校の廊下に膝をついた。
その少女は、細く小さな太腿から鮮血を垂れ流す。一人の王様の手によって。
そしていつつめの音。それはまたしてもゲランの声であった。しかしそれは悲鳴だったのだが。

「うあ、ああああぁああぁ!?」

悲鳴をあげたゲランの前にいたのは、黒髪の少女だった。見た感じでは小学生くらいだろう。その小学生の少女に、あろうことかゲランは武器であるクロスボウの矢を命中させてしまった。
右の太腿に深々と刺さったそれは、いまだに元気に立ち上がり、少女の出血を促進していた。

「うああぁ、ごっ、ごめんよォ、そんなつもりじゃなかったんだっ、わしは、わしはっ、とんでもないことをっ」

後悔先に立たず。覆水盆に返らず。ゲランは今そんな感情を頭に浮かべていた。
不可抗力とはいえ、最もゲランが否定したことを自ら行ってしまったことが彼にとっては最悪のミステイクだった。
ゲランは、泣きながらそのまま少女の太腿に刺さった矢を引き抜いた。

「あっ!」

少女がふたたび悲痛な声を上げる。栓が外れた脚の傷から血がさらに溢れていた。

「たっ、大変だ、血が、血がいっぱい出てるぞっ、どうしよう、このままじゃ死んじゃう! 薬だっ包帯だっ、とにかくわしがなんとかしないとー!」


53 : 王様のミステイク ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 20:25:16 HUU5KNVM0




    ◆




「ごめんよ、ごめんよォ、わしがバカだからこんなことにっ」
「……」

ゲランは、慌てて保健室から救急箱を取りに行き、見よう見まねで応急処置を行った。
脚を白い包帯でグルグルに巻いた少女は、未だ泣いているゲランを尻目に、ただ俯いていた。

「ただこれだけは信じてくれっ、わしは殺し合いなんかする気はないんだっ!」

ゲランが言い訳をまくし立てる中、片や少女は昨日までのことを思い返していた。
少女の名前は源静香。彼女自体はごく普通の小学生の女子である。彼女を取り巻く環境を除いては。
突然親しい人間の下へ現れたロボット、ドラえもん。彼がやってきてからは彼女たちの生活は稀有なものへと一変した。
彼と関わってからというもの静香は不思議な体験をしてきた。時に大変な冒険をしたりもした。しかし、こんな凄惨な異常事態に遭遇したことは一度だってない。
しかも、学校の友達も、不思議な道具を持つロボットもいないままただ一人こんな場所へ放り出された。それだけでひとりの少女の感情を恐怖で染め上げるのは容易だった。
さらに、何もわからないまま救いを求め、不可抗力であるもののこんな仕打ちを受けたのだ。彼女自体も相当に参っているだろう。
しかし眼前の彼が本当に殺す気がないのはその異常な取り乱し方からも判断できる。だからこそ、この感情の行きどころが見つからない。ただその不透明な感情を肉体の奥底に溜め込むだけ。

泣き叫ぶ王様と俯く少女。
その二人がこれからどうなるのかは、どうかなってみない限り、分かることはなかった。



【B-7/一日目 深夜/草原/学校@コジコジ】
【ゲラン@コジコジ】
[状態]:号泣、錯乱状態、精神的に不安定
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、クロスボウ(矢残り9/10本)、ランダム支給品0〜2
[思考]
 基本:仲間を集めて脱出する
 1:どうしようどうしようどうしよう
 2:謝る、謝らなくちゃ

【源静香@ドラえもん】
[状態]:出血、右太腿に刺し傷
[装備]:包帯
[道具]:デイパック、支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
 基本:友達を探す
 1:…………


54 : ◆KGtmog17qI :2018/06/06(水) 20:25:57 HUU5KNVM0
投下を終了します


55 : ◆KGtmog17qI :2018/06/25(月) 11:05:54 GXKmDQVY0
サトシ、クロで予約します


56 : ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:29:54 qYAQlxOc0
投下します


57 : WEAPON ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:31:53 qYAQlxOc0
 少年は森の中を駆けていた。
 この少年にとってそんなことは慣れっこだった。齢10にしながら旅をし、様々な自然に触れて成長してきた。
 しかし、そんな大冒険を繰り返してもその少年にとってそれははじめての出来事だった。

「おーい! 誰かいないのかー!」

 青い服を着た帽子の少年、サトシはデイパックを携えながら森の中を走る。
 サトシは、ポケットモンスター。縮めてポケモンという不思議な生物が存在する世界で、ポケモンマスターになるために旅を続けていた。
 相棒のポケモン、ピカチュウとポケモントレーナーとして様々な経験をしてきたサトシだったが、突然知らない場所に連れてこられ、殺し合いを強要されるなどはじめてのことだった。
 説明の後、森に投げ出されたサトシは、いてもたってもいられない。そんな感情を抱いていた。
 その感情のままに大地を蹴り森の中を疾走する。今のサトシはそんなふうに
 こんな残酷で荒唐無稽な状況に陥っているにも関わらず、なぜか彼は不気味なくらいに冷静だった。
 ただ殺し合いに対する名状しがたき恐怖があるのも確かだった。
 しかし、だからこそ、彼は探していた。同じくこの殺し合いを強いられているであろう参加者たちを。
 きっとみんなこんな馬鹿げたことには賛同しない。仲間を集めきっとみんなで協力すれば、きっといつものようにどんなピンチでも乗り越えられる。そんな青い希望を抱きながらサトシは走っていた。
 そんなサトシは、いつも隣にいた黄色い相棒がいないことに気づく。いや、再確認した。
「ピカチュウ……どこ行ったんだよ……」
 サトシはぼそりとそう呟いた。


58 : ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:32:37 qYAQlxOc0




  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「誰だか知らねーがナメたことしてくれたじゃねーか」
 鬱蒼と生い茂る森の中に一つの影があった。
 その影の正体は一匹の黒猫。しかし、その黒猫はその島に生息する生物などではなかった。
 その猫も、参加者の一人――いや、一匹だった。
「ま、こちとら暴れられりゃなんでもいいけどよー。ただ勝手にこんなコトしやがったヤツにゃオトシマエつけるってのも悪くねぇ。さて、どうしよっかな〜」
 猫の名前はクロといった。その名の通り黒い猫。だからクロ。今はそれで通っている。
 このネコにとって、バトルロワイアルなどどうでもよかった。ただ存分に暴れる。それだけでよかった。
 クロはこの実験をどうでもいいことだと切り捨てた。ネコである自分にはそうとしか思わなかった。強制的にコレに参加させられたこと自体は気に食わなかったが。
 だから余程のことが起こらない限り殺しには参加することはないだろうな、そんなことを思う。
 彼にとって物事を強制されることが一番嫌いだからだ。そんな単純な理由だが彼にとってはそれでよかった。

「それにしても不便だぜ。ガトリングも剣もミサイルもない体なんてよ。あのハゲに改造される前はそんなこと思わなかったのにな」
 しかし彼は十分に暴れられるための道具がなかった。
 実はクロはただのネコではない。彼は世界征服を企む科学者に改造されたサイボーグキャットだったのだ!
 メタリックなボディ、腹の中にはなんでも切れる剣、尻尾にはミサイルが搭載されているスーパーサイボーグ。二足歩行で走れるし人間の言葉も話せる。力も普通のネコの数倍だ。
 最初は改造されたことで悩みがつきなかったが、いつしか改造された体を受け入れ、その肉体を存分に活用していた。
 しかしその肉体は力を発揮できない状況にあった。武器は全て没収されており、さらにサイボーグ特有のパワーもダウンしていたからだ。
 先程デモンストレーションに大岩を持ち上げたが思うように動かせなかったのがその証拠だった。
「もしかしてゴーのヤツの仕業か……? もしそうなら一発殴るか。場合によっちゃ一発じゃ済まねーかもなー」
 自分にこんなことができる者は自分を改造した人間のみ。クロは、つまり自分を改造した科学者、剛万太郎がこの殺し合い実験に関わっているのではないかと憶測した。
「いや、あのウスラハゲがそんなことするタマがあるとは思えねー。何より……」
 しかし、クロはデイパックの中に入っていた紙を見て、その可能性もないだろうと踏んだのだった。
 何故なら、参加者名簿の中にその科学者と共に暮らしているサイボーグのネコの名前があったからだった。
「いくらアイツでもミー君を参加させるとは思えねー。たとえミー君がグルだったとしてもだ。少なくとも今のアイツラにゃムリだろ」
 クロはそう呟いた。ミー以外にも、自分を付け狙うネコ、マタタビの名前もあったがそれはまあどうでもいいかとスルーした。
 それは、マタタビも自分同様こんなところではくたばらないだろう。そんな奇妙な信頼感があったからに他ならないが。
 そんなことよりもクロは武器が欲しかった。存分に自己欲求を満たしてくれるような強力な武器が。
 しかしデイパックから出てきたのは赤いボールと丸い形をした変なオモチャだけだった。クロの要求が満たされるのはまだ先のようだ。
「このままじゃ何もできねーか。ただ何もせずにヤツの手の上じゃ納得いかねぇ!
 ……あ?」
 憤りを見せるクロは、その時何やら一つの影が走ってくるのを確認した。
 そしてこれはチャンスだ。と、そうも思った。

「よーし、ちょっと痛いがガマンしろよー。ウラァ!」
 思い立ったが吉日。クロの体はそんな感じに動いていた。
 サイボーグキャットのアッパーが森を駆ける影に炸裂した。


59 : WEAPON ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:33:45 qYAQlxOc0




  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆




「うーん……」
「起きろ、起きろって!」
 サトシはダミの入った声に反応して失った意識を取り戻していた。
 森を走っていたサトシは、突如顎に強い衝撃を受け、そしてそのまま事切れてしまっていたのだった。
 声に導かれるように目を覚ますと、そこには一匹の黒猫が立っていた。

「キミは、誰なんだ?」
「ワリーワリー、勢いつけすぎちった。オメー結構な時間気絶してたんだぜ?」
(……ポケモン?)
 自分を殴っておいてあっけらかんと笑いこけるクロを、サトシはニャースやニャルマーのような、猫型のポケモンとして認識していた。
 しかし今まで見てきたポケモンにこんな見た目のポケモンは存在してはいなかった。

「キミも、ポケモン?」
「ぽけ……? んなモン知らねえよ。なんだそりゃ?」
 どうやらその猫はポケモンのことを知らないようだった。
 ということは少なくともこの生物はポケモンではないということだ。
 それならこの生物はなんなのか? ポケモンという生き物が当たり前のように生息している世界で生きてきた少年は、未知の領域に足を踏みいれる感覚を味わう。
 ただ、それでもサトシは――

「そっか。ならいいんだ。ヘンなこと言ってごめんな」
 そう言って流すだけだった。サトシは今までも知らないことや新しいことを見て知ってきた。だから、きっとこのクロという存在も、新しい発見というものなのだろう。
「オレ、マサラタウンのサトシ。キミは?」
「クロだ。別にオメーに名乗ることもねーんだがよー」
「よろしくな、クロ!」
「ああ」
 クロはそう言いながらデイパックを漁っていた。サトシの言葉は半分流れてしまっているようだった。
 サトシはそのクロの姿を見てはっとなる。クロが漁っていたそれはサトシのデイパックだったからだ。
「あ、オレのバッグ! 何するんだ!」
「カタいこと言うなって。ちょっと確認するだけだ」
 クロが確認していたのはサトシの荷物――というよりもサトシに支給された武器だった。
 あわよくば、この中に使える武器があるのではないか。そうクロは考えたからだ。サトシを止めたのもそれが理由であった。

「あっ、モンスターボールじゃないか!」
「ん? ってオメーも漁ってんじゃねーか!」
 一方サトシもクロの支給品を確認していた。デイパックを漁るクロのデイパックからちらりと見慣れているものが見えていたからだ。
「もしかしたらここにポケモンが入ってるかも……出てこい!」
 サトシはクロに支給されていたぽけを捕獲するための道具――モンスターボールを地面に向かって投げた。
 しかし、物語はそう上手くはいかない。


60 : WEAPON ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:34:28 qYAQlxOc0
「何も起こんねーな」
「おっかしいな……ああ、これ空だ。何も入ってないや」
 サトシは地面に転げただけのモンスターボールを拾うと、ボタンを押して蓋を開く。ポケモンが捕獲されていればそのポケモンが出てきていたのだが、これは使用前の空のモンスターボールだった。
 つまりは、一匹しかポケモンが参加していないこの殺し合いには何の意味も持たないアイテムに成り下がってしまったのだった。
「何か知らねーがハズレみてーだな」
「……それはそれで良かったぜ。ポケモンは殺し合いの道具なんかじゃないからな」
「ケッ、とんだ甘ちゃんだな。ポケモンがなんなのかは知らんが、使えるモンは使っとくべきだぜ」
「物ならね。でもポケモンはちゃんと生きてるんだ。オレにとってのポケモンは、道具じゃなくて大切な友達だからな」
「……」
 これは矛盾だ。クロはそう思った。
 本当に大切な友達なら、こんな狭苦しいカプセルに入れないだろう、もっと自由にさせてやるべきじゃないのか、と。
 ただ野暮な考えであるうえ説教じみたことは柄ではなかったのでこれ以上何も口にはしなかったが。
 無言でデイパックを漁り続けるクロは、その自らをカモフラージュするぬいぐるみの肉球越しに、触り慣れた感触があるのに気がついた。
「へえ……なかなかいいモン渡されたなオメー」
「それ……銃じゃないか」
「ああ、そうだな」

 シグ・ザウエル。
 シグ社が開発したダブルアクションオートマチックの拳銃である。
 これはその中でも小型改良された物であるP229という型だった。
 クロはその銃を手にすると言った。
「オメー、コレ使うか?」
「悪い、遠慮しとくよ。オレには使えそうにないからな」
「そうか。ならオイラが使ってても問題ねーってことだ?」
 クロはシグ・ザウエルP229を自分のデイパックの中にしまうと
 念願の武器を手に入れたクロだったが、これで満足、慢心する気はなかった。
 存分に暴れるにはこの銃だけでは到底足りない。もっと豊富で、もっと強力な武器を集めたほうが暴れやすいし暴れ甲斐もある。もうひとつ、銃では到底太刀打ちできない相手と遭遇するかもしれない。そう思ったからだった。

「オレ、仲間を探してるんだ。仲間を集めてこの殺し合いから脱出できないかって、そう考えてるんだけど……」
「そうか。悪いがオイラはそういうタマじゃねー。自由にやらせてもらうぜ。ま、コイツの礼はいつかしてやるさ」
 クロはサトシから貰った支給品の銃をちらつかせそう言う。背面を向くと同時に、なにかをサトシに向かって放り投げた。
「わっ!」
 慌てながらもサトシの手に収まったそれはサトシがいつも使っている馴染みの深いそれだった。これが銃の礼代わりなのだろうか。
「じゃあ、オレもう行くよ。また会えたらよろしくな」
 サトシは少し残念そうな顔をしていたもののそれを受け入れるとクロに別れを告げる。

 一人の少年と一匹のサイボーグの猫。
 彼らの殺し合いはまだ序章に過ぎなかった。


【E-4/一日目 黎明/森】
【サトシ@ポケットモンスター】
[状態]:健康、顎にダメージ(軽微)
[装備]:普段着
[道具]:デイパック、基本支給品一式、モンスターボール(未使用)@ポケットモンスター
[思考]
 基本:仲間を集めて脱出する
 1:とりあえず森を抜けて参加者を探す
 2:できればピカチュウに会うことを優先したい
※まだ参加者名簿を読んでいません

【クロ@サイボーグクロちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ネコの着ぐるみ
[道具]:デイパック、基本支給品一式、見習いタップ@おジャ魔女どれみ、シグ・ザウエルP229
[思考]
 基本:殺し合いに便乗して暴れる。殺し合い自体に乗る気はない
 1:できるだけ強力な武器を探す
 2:ミーくんと合流する
 3:サトシにまた会った時は借りを返す
 4:相手が本気なら容赦しない

※サトシのシグ・ザウエルP229とクロのモンスターボール(未使用)@ポケットモンスターを交換しました


61 : WEAPON ◆KGtmog17qI :2018/06/30(土) 19:35:31 qYAQlxOc0
投下を終了します


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