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願望成就バトルロワイアル

1 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/11(月) 20:28:39 RPX0c9IA0
【参加者名簿】

ラブライブ! 6/6
○高坂穂乃果/○園田海未/○南ことり/○西木野真姫/○小泉花陽/○星空凛

魔法少女まどか☆マギカ 5/5
○鹿目まどか/○暁美ほむら/○美樹さやか/○佐倉杏子/○巴マミ

トライガン・マキシマム 4/4
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/○ニコラス・D・ウルフウッド/○ミリオンズ・ナイブズ/○レガート・ブルーサマーズ

ONE PIECE 3/3
○モンキー・D・ルフィ/○ロロノア・ゾロ/○ドンキホーテ・ドフラミンゴ

アベンジャーズ 3/3
○スティーブ・ロジャース/○トニー・スターク/○バッキー・バーンズ

アイドルマスター 2/2
○天海春香/○如月千早


23/23


【MAP】

 12345
A森森病森森
B森森森森森
C警森ア森ス
D森森森森森
E森学森湯森


病=病院
警=警察
ア=アベンジャーズ基地
ス=スーパー
学=学校
湯=温泉



※当ロワは非リレーとなります。


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2 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/11(月) 20:30:05 RPX0c9IA0
さっそくOP投下します。


3 : Broken Silence ◆vzkSg/OL/U :2016/07/11(月) 20:31:14 RPX0c9IA0

気付いたその時には、彼等はそこにいた。
暗い空間。前後左右、自分がどこを向いているかも分からない程の暗闇。
困惑に満ちたざわめきが広がる。
ここはどこだ、何が起こったのだと、冷静に疑問を覚える者。
突然の事態に恐怖し、戸惑う者。ただ黙し、事態を静観するもの。どうにも呑気に、素っ頓狂な声をあげる者。
様々な反応が広がる中で、それは始まった。
空間に光が灯る。人々からみて正面、その壁一面が明るく光り輝き始めたのだ。
それはモニターだった。
これまでの暗闇と対照的な白一面の背景。
その中心に一人の人物がいた。
逆光となり、その姿はシルエットでしか伺えない。
ただ何となく相当な老人のように思えた。
車椅子のようなものに腰を落ち着けているし、シルエットも何となくみすぼらしいものだ。



『これからお前達には殺し合いをしてもらう』



声が、唐突に始まる。
しわがれた声。やはり老齢なものだ。


『ここに集められたものは23名。この中で生き伸びた最後の人物に、あらゆる願いを叶える権利を授ける』


その老人は言った。
願いを叶えると。


『どんな願いでも良い。
 海賊王になりたいというのなら、させてやる。全てを守る力をと願うのならば、授けてやる。
 アイドルの頂点に立ちたいというのなら、させてやる。永遠の命を望むのならば、授けてやる。
 魂の解放を願うのなら、叶えてやる。安定した平穏をと願うのならば、叶えてやる。
 他者の蘇生を願うのならば、叶えてやる』



あらゆる願いを、叶えてやると。



『ただ戦え。戦い、勝ち取れ』



生き残れば、叶えてやると。


確かに、告げた。




『手段は問わない。武器も用意する。欲するならばリタイアの権利も用意する』



気付けば人々は押し黙っていた。
老人が発するある種の【圧】に、場にいたあらゆる存在から言葉を奪った。




『ただ願いの成就を欲するならば、殺しあえ』



最後に言い残し、モニターが消える。
そうして数秒とせずに、世界が切り替わる。
暗闇の中から、殺し合いの会場へ。
それぞれの始まりの地へと人々は一切身体を動かすことなく到着していた。
まだ太陽は東の空に覗いたばかり。
陽光の中、願いを求める殺し合いが始まった。


4 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/11(月) 20:34:46 RPX0c9IA0
投下終了。
非リレーでどこまで続けられるか分かりませんが、細々とやっていきたいと思います。

ではトニー・スターク、西木野真姫で予約します。


5 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:27:46 Oh9Y2HPw0
投下します。


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6 : Can You Dig It ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:32:47 Oh9Y2HPw0

 私、西木野真姫は普通の女子高生である。
 医者の娘だとか、スクールアイドルをしている、などまぁ平凡ではないだろうが、普通の女子高生だと思っている。
 そして、そんな私が今何をしているのかというと……。

「……なにこれ、意味わかんない……」

 教室に、座っていた。
 学校の教室の一角で、いつもの制服を着て、ちょこんと座っている。
 疑問符が頭を駆け巡る。
 それもそうだろう。
 訳の分からない空間で、訳の分からない映像を見て、訳の分からないことを言われ、気付いたらこんな所にいる。

「さっきのは夢?だったのかしら……」

 気色の悪い夢ではあったが、それならば嬉しい限りだ。
 早く支度をして学校に向かわなければいけない。


「まぁ、夢ではないだろうな」
「そうよね……この教室も見覚えないし、覚えのないバックも持たされてるし」
「ほう、存外冷静だな。君はいくらか優秀なようだ」
「そうでもないわよ。混乱しすぎて頭が真っ白。だからかしら、かえって思考回転が速くなってるみたい」
「謙遜する事はないさ。君は高校生だろう? この状況でそれだけ考えられれば充分さ。
 ま、僕が君の年齢の時には既に飛び級して大学に……いや、卒業して世界を旅して回ってたかな? いや、別企業から新種のシステムを依頼されてたような……」
「へえ、すごいじゃない。あな、た………?」
「その言葉も聞き飽きたよ。まぁ、実際すごいのだから仕方がないか。
 ? どうした鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして? あぁ、生で会うのは初めてかな? アジアっぽい顔立ちだからそうなんだろうな。
 やぁ、僕はトニー・スターク。アジアに住む人なら、アイアンマンと言った方が通じるかな。さて、突然で悪いんだが、君に頼みがあってだな―――」
「い、」
「ん? い?」







「――――――いぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁあぁぁあああああああ!!!」





「!!??」



 甲高い音が炸裂する。
 それが自分の喉から発されてるとは思えないほどの音量だ。
 ボイストレーニングの成果がいかんなく発揮されているといっていいだろう。
 絶叫の原因は、私の横にいる男。
 いつから座っていたのかは分からない。
 誓っていうが、普段ならばこんな反応はしない
 ただ、今は事情が事情だ。
 殺し合いをしろと言われた直後で、そんな冷静にふるまえる訳がない。



「出てって、出てって、出ていきなさいよぉぉぉぉおお!!」
「ま、待て。落ち着くんだ、僕が殺し合いに乗る訳ないだろう!」
「知らないわよ、そんなの! いきなり近付いてきて! どうせ油断させて殺す気だったんでしょう!」
「僕を知らないのか!? アベンジャーズのメンバーで――――」
「そんなの聞いた事もないわよ! とにかく、離れなさいよ!!」
「馬鹿な、そんな筈は―――とと、わ、分かった! 離れる! 離れるから落ち着いて会話をしてくれ!!」



 気付けば手当たり次第にものを投げ付けていた。
 男が離れたのは、デイバックから出てきた懐中電灯がその顔面を掠めた直後だった。
 両手をホールドアップし、教室の端まで足早に離れていく。


7 : Can You Dig It ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:33:28 Oh9Y2HPw0


「……落ち着いたか?」
「まだよ! あなたが殺し合いに乗ってないって証明しなさい!」
「おいおい、そんなのどうやって……」
「証明! するの!!」
「わ、分かった、分かった。そうだな……これを君にあげよう」


 そう言って男が投げて寄越したのは、男のデイバックだった。
 外見は私が持っているものと変わらない。
 食糧や水、地図にコンパスに時計に懐中電灯。
 アウトドアで必要なもの、といった感じだ。
 粗方ものを出し尽し、私は掌にずしりと重さを感じた。


「これは……」
「僕からのプレゼントだ。まぁ、君に扱えるとは思わないが」
「拳、銃……」


 出てきたのは大型のリボルバーだった。
 ゾワリと肌が総毛立つのを感じた。
 人殺しの道具が、まるで手鏡を取り出すかのように出てきた。
 殺し合い。
 これではまるで先の出来事も冗談ではないように思えた。


「さっきのは……本当の事、なの?」
「さあね。あいにく人様の思考を読み取るなんて僕には出来なくてね。だが、まぁ本気なんだろう。
 たまにああいう輩は出てくるのさ。頭のネジが数本まとめて弾け飛んだような奴がね」
「殺し、合い……」


 その巨大なリボルバーを握って、理解する。
 殺し合いは本当に行われているのだと。
 私は、何故だかそれに巻き込まれてしまったのだと。
 どこか鈍い思考で理解する。


「バックの中に一枚の紙が入っている。そこに参加者の名前が書いてあるようだ。僕の名前や、僕の……知人の名もある。確認しておくといい」


 バックの底に張り付いていた紙を見る。
 無機質に書かれた数十人分の名前。そこには確かに私の名前があった。


「嘘……何で皆も……」


 そして、大切な『μ’s』の仲間たちの名前も。
 そこに、あった。
 目の前が暗くなっていくのを感じた。
 私だけじゃなくて花陽や凛も、穂乃果や海未やことりまで……そこには記されている。


「その様子だと知り合いもいたようだな。何人だ」
「……5人よ」
「……そうか」


 ぺらぺらと良く回った男の口も、さすがに閉じざるを得なかったようだ。
 痛いほどの静寂が場を包む。
 男が再び話し出したのは、数分の時間が経ってからだ。


8 : Can You Dig It ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:34:28 Oh9Y2HPw0


「僕はトニー・スターク。君は知らないようだが、アメリカでヒーローのようなものをやっている。あぁ、冗談じゃないぞ。比喩ではあるが」
「………」
「僕は素直じゃなくてね。何かを強要されるという事が好きじゃない。自分の意にそぐわないことは、特にね。今回のはその最たるものだ」
「………」
「今までの人生でもワーストといっていいくらいのものだろう。それで、僕はそういった強要をされると反抗したくなるんだ。高みから踏ん反り返ってるんじゃないぞってね」
「………」
「奴は望んでる。【願い】という餌につられて僕達が殺しあうのを。君の知り合いや、まぁ有り得ないが僕の知り合いが殺しあうのを。
 糞くらえさ。おっとレディの前では汚い言葉だったかな。だけど、僕は本気だ。他の参加者たちを、君や君の友人を助けて見せる。
 お嬢さん、君の名前は?」
「……西木野真姫」
「マキか、良い名だ。マキ、約束しよう。僕がこの殺し合いをぶっ潰す、完膚なきまでにね。だから―――協力してほしい。君に」



 トニーと名乗った男が語りかけてくる。
 どうにも軽薄な雰囲気であるが、なぜだろうかその言葉には芯が通っているように感じた。
 殺し合いの打開。その言葉が強く私の胸に響く。

「……協力、するわ」


 だからだろうか、気づけば私はトニーの問いに答えていた。
 トニーが、ぱちんと指を鳴らして、歓喜を口に浮かべる。
 願いを叶えるための殺し合い。
 そんな中で私とトニー・スタークは手を取り合った。









「それで、何よこれは」
「面白いだろう。さっきぶらついていて見つけたんだ」


 邂逅から数分後、私はトニーに連れられてある物体の前に立っていた。
 学校の図書室の出入り口に鎮座していたそれは、何とも場に似つかわしくない雰囲気をもっている。


「これは……ガチャガチャ?」
「そうらしいな。懐かしくないか。子どもの時はよくやったものだ」


 カプセルトイ。通称ガチャガチャ。
 秋葉原などでは至る所に点在するそれが、そこに合った。
 ガチャガチャには大きく『こう』書かれていた。


『情報を願うもの。所持する命の数だけ、願望成就の権利を授ける』


 一言、短くそう書いてあった。
 情報を願うもの、という言葉の意味は分かる。
 だが、所持する命の数だけ、というのは一体どういう意味なのだろうか。
 言葉通りに捉えるならば、一人の人間に対して命は一つしかない。
 ならば、一回だけしか回せないという事になるだろうが……。


「ねぇ、あなたまさか……」
「もちろん回したよ。この世で一番重要なものは情報だからね」


 一度しかない権利をこう易々と使えるのだから、気前の良い男だ。
 深い考えがあってか、何も考えてないのか……。


「それでどんな『情報』を入手したの?」
「ふむ……まぁ、協力を願い出た身だ。教えないというのはフェアじゃないな。これだよ」


 と言って取り出したのは、いくらかの厚さを持つ紙束だった。
 1、2、3、4……計5枚の用紙だ。
 紙にはそれぞれ顔写真と簡単な経歴が記載されていた。
 それはまるで『履歴書』のようであった。


「『鹿目まどか』、『暁美ほむら』、『美樹さやか』、『佐倉杏子』、『巴マミ』……確かこの名前って」
「そう、この殺し合いに参加させられている者達だ。さっきの名簿に書いてあった。中々かわいらしい少女達だな。あと数年もすれば美人になるだろう」
「へぇ、そう」


 トニーの言葉を聞き流して『履歴書』を眺める。
 名前、性別、年齢、所属する学校などがつらつらと書かれている。
 みな中学生らしい。確かに整った顔立ちで可愛らしい。
 スクールアイドルをしても十分に通じる気がする。
 そうして『履歴書』を読んでいくと、ある項目が目にとまった。


9 : Can You Dig It ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:35:29 Oh9Y2HPw0
「! これって……」

 それは【能力】という項目だった。
 暁美ほむら、美樹さやか、佐倉杏子、巴マミの四人には共通したワードが記載されていた。
 【魔法少女】。
 そして、そのワードの次に【時を操る】、【治癒能力】、【幻覚】、【リボン操作】といったように一言だけ能力の説明が入っている。


「どうだ。その【能力】とやら、気になるだろう?」


 トニーは指を鳴らして言った。


「最初の鹿目まどかは省こう、【能力】は【なし】になっている。
 だが、残りの4人はどうだろう。【魔法少女】と書いてある。残念ながら僕には聞き覚えのない単語だ。そのような異能とやらも見た事はない。
 この4人は日本人のようだが、日本では【魔法少女】とかいう異能が流行っているのかい?」


 私は首を横に振る。
 アニメのキャラクターなどで秋葉原を賑わせることはあっても、実在なんてする訳がない。


「ふむ、日本特有の……とは思ったが、違うらしい。それともスパイダーボーイのように公には知られていない力なのか?
 そう考えるのが妥当だが、4人揃って同じ異能に目覚めるものか? 佐倉杏子を除く4人は所属する学校が同じだが、それが関係している?
 能力が多様なのも気になるな。【治癒】、【幻覚】、【リボン操作】と来て【時を操る】、か。見てくれ、【時を操る】だとさ。
 そんな事が可能なのか? 例え、ぼくの頭脳にインフィニティストーンの力があったとしても、そんな事はできるとは思えないね。
 時間という概念を打ち破るなど、神への冒涜に等しい所業だ。あぁ、神といってもソーのことじゃあないぞ。ソーなら多少冒涜しても良いがな。
 おっと話がそれたな。だが、そのような事が可能だからこそ【魔法】なのか? ……何とも言えないな。判断材料が少なすぎる。しかし、本当にそんな力があるのなら殺し合いが始まる前に時間を巻き戻してほしいところだね」


 饒舌に話ながらトニーは考え込んでいく。
 私も考える、が余りに内容が現実離れしすぎている。
 そんなものは有り得ない、で思考は止まってしまう。
 結局、私はトニーの意味があるんだがないんだか分からない話をただ黙って聞いているだけであった。



「まぁ、これが僕の命を代償にした【権利】を使用して入手した【情報】だ。疑問は増えるばかりだけどね。まぁ、疑問を知れただけでも良しとしよう。
 知っての通り、謎を解明するのは得意でね。存分に使わせてもらうさ」


 ここで一旦言葉を切り、トニーは私を見据えた。
 軽薄そうな微笑みと共に、少し時間を空けて、その口を開く。



「さて、本題に入るかな。マキ、ここで君に協力を仰ぎたい。このガチャガチャを回して貰えないか?」



 それがトニーの【願い】だった。
 【情報】の入手。それをトニーは求めた。



「これは一人一回しか回せないの?」
「所持する命の数だけ、と書いてあるからな。君は命を2つ持ってたりするのかな? ならどうぞ2回、回してくれ」


 所持する命の数……これがどういう意味なのかは分からない。
 確かに今の状況において情報を入手する事はとても重要なことだと思う。
 トニーの【情報】だって、5人もの人物の人となりや能力を入手できたのだ。
 今後に大きく役立つだろう。



「分かったわ。協力するといった以上、私も手を貸すわ―――」



 と、ガチャガチャに手を伸ばそうとしたその時だった。



「だが、一つ言っておこう。どうやらガチャガチャはこれ一つではないらしい」
 


 トニーが思いの外重要な事を、存外適当に言い放った。
 ガチャガチャに伸ばした手がびたりと止まる。


10 : Can You Dig It ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:36:25 Oh9Y2HPw0


「は、はぁ!? なんでそんな大事なことを言わないのよ!」
「言ったじゃないか。今まさに」
「タイミングが遅いでしょ! あと少しで回しちゃうとこだったじゃない!」
「まぁ、僕としては回して貰った方が嬉しいからね。他のガチャも気にはなるが、やはり【情報】が少しでも欲しいところだし」
「あ、あなたねえ!」


 やいやい言うも、トニーはさらりと聞き流して一枚の紙を取り出す。
 デイバックにも入っていたこの殺し合いの会場の地図だ。


「こことここ、あとここにガチャガチャがあると書いてあるだろう。中身までは分からないけどね」


 地図上【病院】、【警察署】、【スーパー】、【学校】、【温泉】、【アベンジャーズ基地】の地に※印が付いている。
 注意書きには※にガチャガチャありとの一言が添えられている。
 つまり計6種類のガチャガチャがこの会場にはあるのだ。
 【学校のガチャガチャ】は【情報のガチャガチャ】であった。ならば他の5つのガチャガチャは何を示すのであろうか。興味が引かれた。


「どうする? 他のガチャを巡ってみるか?」
「そうね。一度しか回せない権利なら、慎重に考えたいわ。……って、あなたこれを知ってて【情報のガチャ】を回したの?」
「まぁね」
「……他の【ガチャ】のことは気にならなかったの?」
「気にはなったさ。だが、【情報】に勝るものなしと考えたまでだ。自衛の手段としては拳銃もあったことだしね。
 それにちょっとした護身武器もある」
「はあ、あなたって……」
「まあ強要するつもりはないさ。どのガチャガチャを回すかは大切な君の権利だ」

 トニーは腕時計を抑えながら、いたずらっ子のように笑った。
 思慮深いのか浅いのか、大胆不敵というかなんというか……。
 ともかく、私には判断しきれない男だと思った。



「では、まず【温泉】か【警察署】に向かうとしよう。道中に君の友人たちのことでも教えて貰えると嬉しいな」



 何とも不思議な男が笑う。
 ただ一つ、この異常な状況においてここまでの唯我独尊を貫ける男が頼もしいと思ってしまった事は、確かな事実であった。







【E2・学校】
【西木野真姫@ラブライブ!】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式×2、不明支給品×2〜5、ヴァッシュの拳銃@トライガン
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。『μ’s』の皆と合流したい。
1:トニーと行動する
2:【温泉】か【警察署】に向かいガチャガチャを調べる。

【トニー・スターク@アベンジャーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]まどか達の情報書
[思考・行動]
基本方針:殺し合いの打破。
1:西木野真姫と行動。協力者を見つけたい
2:【温泉】か【警察署】に向かいガチャガチャを調べる。
3:【情報】の収集。

※魔法少女まどか☆マギカの人物達の【情報】を入手しました。
※学校・図書室前に【情報のガチャガチャ】が設置されています。


11 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/15(金) 20:43:16 Oh9Y2HPw0
投下終了です。
続いて園田海未で予約します。


12 : 名無しさん :2016/07/16(土) 00:12:14 fhb22/gE0
投下乙です

社長は飄々として安定してるな。でも早くスーツ見つけんとヤバいぞ


13 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/16(土) 01:16:56 /sQENNd.0
投下します。


14 : soldier game ◆vzkSg/OL/U :2016/07/16(土) 01:19:34 /sQENNd.0
 園田海未はポカンと口を開けてそこに立ち尽くしていた。
 まるで夢のような出来事。
 いつの間にか立っていた謎の場所で、突然殺し合いをしろと言われ、また気付いたら見知らぬ室内に立っていて……。


「な、何なんですか、これは」


 言い様の無い怖気が込み上げてくる。
 恐怖。
 これまでの人生で感じた事のないほどに大きなそれが身体を包み込んでいく。
 慌てて周囲を見回す海未。幸いな事に誰もいない。
 誰かいたとすれば海未は恐怖で恐慌状態に陥ってしまっていたかもしれない。
 ぶるりと身体を震わせ、とにかく謎の建物内を進んでいく。
 建物は広く、開放的である。
 まだ建てられて新しいのか、整備が行き届いているのか、床や壁も染みの一つもなく綺麗であった。
 扉も全て自動ドア。要所にキーカードが設置されいるが今は全てロックも解除されていた。
 無人ということもあってか痛いほどの静寂が建物を包んでいる。
 居ても立っても居られなくなった海未は殆ど駆け足で建物を進んでいく。
 そうして適当な部屋に飛び込む。
 そこは居住区なのだろう。ベッドやテレビ、小物やギターなども置いてある、生活感に溢れる部屋であった。
 海未はベッドの上へ乗り、両膝を抱えて座り込んだ。


(何がどうなって……)


 混乱しかなかった。理解が追い付かない。
 何でこんな理不尽な状況にいるのか、まるで分からなかった。
 殺し合い、ころしあい、コロシアイ?
 何で、どうして、そんな事をしなければいけないのか。
 自分に【願い】なんてない。ただあの平穏な日々が続けば良かった。
 二人の幼馴染がいて、志を共にする仲間がいて……ある別れは来てしまったけど、また一つの出会いが始まる筈で。
 そんな中で、そんな中で、どうしてこんな事になってしまったのか。


「うう、穂乃果ぁ」


 涙を浮かべ、幼馴染の名を呼ぶ。
 いつも自分を引っ張ってくれた、かけがえのない存在。
 気付けば、縋るようにその名を零していた。
 それから啜り泣く音が部屋の中に響き渡った。
 音はずっとずっと続いていた。







 泣いて泣いて、どれだけの時間が経っただろうか。
 感情を吐露したのが幸いしてか、園田海未は僅かに落ち着きを取り戻していた。
 

「何でしょう、これ」


 己の肩に掛けられていたデイバックに気付く。
 見覚えのない荷物であった。慎重にデイバックを漁り、中の物品を取り出していく。
 出てきたのは2枚の紙と数日分の食糧と水、腕時計や懐中電灯やコンパス。
 そして、お面が一つだ。
 何かのキャラクターだろうか、緑色の顔をしたいかついモンスターのお面であった。
 お面はともかく置いておき、食糧や水などをデイバックに入れ直す。今は必要なさそうであった。
 次いで2枚の紙へと目を向ける。
 1枚目は地図だった。今いる場所の地図なのだろうか。縦マスがA〜E、横マスが1〜5で区分されている。
 施設は6つ。他は森林で埋め尽くされている。


15 : soldier game ◆vzkSg/OL/U :2016/07/16(土) 01:20:26 /sQENNd.0

(どこかの施設にいるということでしょうか)

 病院、警察署、アベンジャーズ基地、スーパー、学校、温泉施設。
 スーパー、学校、温泉施設は確実に除外できる。
 残るは3つだが、病院もまたどうも違う気がする。
 清潔感のある施設だが、外来のような場所はなかったし、今いる部屋も入院部屋にしては生活感がありすぎる。
 警察署も除外できると思う。
 海未に警察署内を歩き回った記憶はないが、こんなにもこざっぱりした印象は受けない。

「アベンジャーズ基地、ですか」

 基地、という言葉の意味は理解できる。
 だが、『アベンジャーズ』というのは何なのだろう。
 全く聞き覚えの無い単語であった。
 基地という事は何らかの軍隊的な施設なのか。ということはアベンジャーズとは軍隊の名称か何かか。
 首を捻るが、分からない。
 ともかく、自分が今いる地点が分かっただけでも良しとしよう。


「あとは、ガチャガチャが置いてある、と。いったい何のことでしょうか?」


 6つの施設にはそれぞれガチャガチャが置いてあるとのことだった。
 こんな状況で玩具を手にして、何をするつもりなのか。
 どうにも理解しがたかった。
 地図を折りたたんで、ポケットへ入れる。
 最後にもう一枚の紙へ目を通し、
 


「次の紙は……っ!」


 その瞬間であった。
 海未の両目が見開かれる。
 驚愕。その表情が顔に張り付いている。


「真姫、凛、花陽……」


 そう、彼女は気が付いた。
 この殺し合いに参加させられている仲間たちの存在に。


「―――穂乃果っ、ことりっ!」


 親友の存在に、気付いてしまった。
 言うが早く、海未はデイバックを掴んで、走り出していた。
 息が切れる。感情が溢れだす。
 どこに向かっているか、など分かる筈がなかった。
 ただ何とかしなければと思い、足を動かす。
 立ち止っていることなどできる訳がない。
 仲間が、親友が、自分と同じ境遇に立たされているのだ。
 何かしていなければ気が狂ってしまいそうであった。


(今、今助けに行きますっ)


 高坂穂乃果。
 天真爛漫を絵に描いたような少女で、いつも自分を引っ張ってくれた。
 南ことり。
 時にぶつかり合う自分と穂乃果を優しく見守り、優しく諭してくれた。
 かけがえのない存在。
 彼女達が、このような殺し合いに巻き込まれている。
 許されざることだった。
 認められない。そんなことが決して。


 走り続けて、迷路のような施設をぐるぐると回って、遂には足をもつれさせ転んでしまう海未。
 だが、海未は何でもなかったかのように立ち上がり、再び走り出す。
 彼女の視界には何も映ってはいなかった。
 ただ仲間を親友と合流する、それだけしか考えていなかった。
 それでも、彼女が【それ】に気が付いたのは、そこに書いてある一文が目の端に止まったからだろう。


「っ、これは……!?」


 ちょうど施設から外へ出て、少し歩いた所だった。
 そこに一枚の看板が設置されていた。隣にはガチャガチャも一つあった。
 看板とガチャガチャの後ろ側には、幾何学的な模様が刻まれた草原がある。
 看板の一文はこうであった。


『殺し合いからの離脱を願うものよ。2つの命を奪い、模様に祈れ』


 殺し合いからの離脱。
 その一言に海未は足を止めた。
 同時に思い出す。
 先の場で、謎の老人は告げていた。
 欲するならばリタイアの権利も用意する、と。
 これがそれなのだ!
 海未は闇の中に光明が差し込む感覚を覚えた。
 だが、直後の文章に息を止めた。


16 : soldier game ◆vzkSg/OL/U :2016/07/16(土) 01:20:53 /sQENNd.0


「2つの命を奪い……」


 リタイアには条件があるのだ。
 2つの命を奪うこと、即ち参加者を2人殺害せねばならないのだ。
 つまり仲間全員を救うならば10人の命を奪わねばならない。
 悪寒が身体を包んだ。
 10人もの人を殺す。そんなことをできる訳がない。
 だが、皆を救うにはそれしか……。

「! 私は、何を……」

 首を左右に振り、刹那に浮かんだおぞましい考えを振り払う。
 そんな恐ろしいことが出来る訳がない。
 それに女子高生の自分に、素手で人を殺すなんて出来る筈がない。

「何か他の方法を考えましょう」

 看板から目を離し、隣のガチャガチャへ目を移す。
 そこにはまた文章が書かれている。


『英雄の力を願うもの。所持する命の数に応じて、より良い形で願いを叶えよう』


 所持する命の数。
 どういう意味かは分からない。
 だが、ある一文が海未を引き付けた。
 英雄の力を願うもの。
 そう、今園田海未は求めていた。
 英雄のものでなくともいい、ただ力を。
 海未は求める。
 まるで引き寄せられるかのように海未はガチャガチャに手を伸ばし、ハンドルを回していた。
 カプセルが現れる。開けると閃光が発生した。


「これは……」


 閃光が晴れた後にあったのは、弓と矢であった。
 到底カプセルに入る筈がないサイズのそれらであったが、確かに海未の手中にそれはあった。
 丁寧なことに解説書まで付いてきている。
 よくよく読むと矢には様々な種類があり、リモコン操作をすることで矢筒の中で鏃の入れ替えをするらしい。
 爆薬つきのものから、電撃を放つもまで、多種多様だ。
 ホークアイというヒーロー(?)の武器らしい。


「弓矢、ですか」


 普段弓道で使用している弓矢とは何もかもが違う。
 引き手も異なれば、持った感覚も違う。
 何よりこれは競技用のそれではない。
 戦うための……人を殺すための道具であった。
 再びの悪寒が身体を包む。
 今すぐにでもそれを置いていきたい気持ちとなった。
 だが、置いてはいけない。
 脳裏をよぎる仲間と親友の姿がそれを許さなかった。
 この異常な状況下で彼女達を守らなければならない、そう考えたら到底弓を置いていくことはできなかった。
 ギュッと弓矢を握り締める海未。
 そして、決意を固めたように顔をあげると、矢筒を背負い、弓を手に持った。


「本当に、本当に必要になった時だけです……」


 言い聞かせるように呟き、森林の中へ踏み出していく。
 さて、彼女は気付いているだろうか。
 殺し合いの開始時と今とで、彼女自身が決定的に変わってしまっていることを。
 仲間と親友を救いたいという【願い】が、彼女の内に芽生え始めているということを。
 今彼女を突き動かしているものは、その【願い】だということを。
 気付いているのだろうか。


 自覚がないのならば気を付けなければならない。
 【願い】は時として容易に人を変えてしまうのだから―――。



【C-3・アベンジャーズ基地周辺】
【園田海未@ラブライブ!】
[状態]健康
[装備]ホークアイの矢(30/30)@アベンジャーズ
[所持品]基本支給品一式、ハルクのお面@アベンジャーズ
[思考・行動]
基本方針:穂乃果達と合流する。
1:穂乃果たちを探す
2:弓矢は基本的に使わない。だが、いざという時は―――、


17 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/16(土) 01:34:19 /sQENNd.0
投下終了です。
>>12
感想ありがとうございます。社長はまだ油断してる段階ですね。自信過剰なところもありますから。

続いて小泉花陽、美樹さやか、ミリオンズ・ナイブズで予約します。


18 : 名無しさん :2016/07/18(月) 10:52:13 v9iz23uw0
>>1
クロスワロワの続き待ってます


19 : 名無しさん :2016/07/18(月) 17:34:29 QP8v6zzk0
さやかちゃん死んだな(確信)


20 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/18(月) 23:12:19 EoLHPRsY0
申し訳ありません。予約内容変更します。
美樹さやか、小泉花陽、レガート・ブルーサマーズで予約します。


21 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/19(火) 00:46:35 LOx4Dcoo0
美樹さやか、小泉花陽、レガート・ブルーサマーズ投下します。


22 : マリオネットの心 ◆vzkSg/OL/U :2016/07/19(火) 00:47:31 LOx4Dcoo0

 【願い】を叶える。
 そう言われた時、心の奥底で光るものがあった。
 魂の宿らぬ身体。ただ戦う事だけを使命とした身体。
 普通とは掛け離れた、まるで化け物のような身体。
 私はかつて【願い】を叶えた。
 誰かのための【願い】。誰かを幸せにするための【願い】。誰かを救うための【願い】。
 結末は知っている。
 言い様の無い喪失の先にあった絶望。
 ココロガ、クロク、クロク、ソマッテイク。

 最期の最期、目の敵としてした―――最後まで私を構い続けてくれた―――少女を前に零した一言。
 それが私の全てを物語っていたと思う。
 そして、その果てに、私はあの場所に立っていた。
 暗い暗い空間。
 誰かはいった。
 【願い】を叶える、と。
 あの時の、あの存在のように、悪魔の言葉を。
 奇しくも私はまた遭遇したのだ。
 【願い】を叶える権利の前に。
 私の【願い】。誰かのためではなく、私だけの【願い】。
 それって、一体―――?







 気付けば私はそこに立っていた。
 朝焼けが零れる森林の中、ただ立ち尽くす。
 右手を見て、左手を見る。
 傷一つない身体。だが、その手に光る指輪は今まで通りのものであった。
 それは証であった。
 私が人間ではなく化け物であることの、証。
 私は立ち尽くす。
 どうすれば良いのか、何をすれば良いのかも分からず、思い浮かばず、立ち尽くす。
 刺すように強烈に輝く陽光が、周囲を照らしていた。
 ゆっくりと息を吐き、吸い込む。
 記憶を辿る。
 魔法少女となった事、【願い】により治る見込みのなかった幼馴染の手が治った事、
 友人が幼馴染に告白すると告げた事、魔法少女の秘密を知った事、
 迷走、混迷、そして訪れたあの瞬間―――――、


「私は、一体」


 あの老人(?)は【願い】を叶えるといった。
 他を殺し、最後まで生き抜けば、どんな【願い】でも叶える、と。


「願い、か」


 頭をよぎるものはある。
 この化け物のような身体。ちっぽけな宝石と化した魂。
 これらを元に戻せるならと、どす黒い感情が浮かんでいく。
 だが、【願い】を叶えるには条件を突破しなければならない。
 自分以外の全てを殺し、最後の一人になるという条件を。

「そんなの、無理だよ」

 魔女を殺すのとは、訳が違う。
 人を守るための力を、魔法少女の力を振るって、人を殺す。
 他人のために【願い】……それを後悔をしてしまった自分であっても、
 自暴自棄になり一番の友達すら傷付けた自分であっても、
 それだけはできない。
 

「そんなの、できる訳ないよ」


 【願い】は、叶わない。
 なら、どうすれば良いのだ。
 何もない。
 何もない私は、生きた死体のような私は、一体何を―――、


「っ、」


 その時だった。
 がさりという音が、直ぐ近くから聞こえた。
 視線をあげ、音のした方を見ると、そこには制服を着た少女が立っていた。


23 : マリオネットの心 ◆vzkSg/OL/U :2016/07/19(火) 00:49:40 LOx4Dcoo0


「あ」


 少女は愕然とした表情を浮かべていた。
 身体を縮こまらせ、びくびくとした様子で自分を見詰めてくる。
 あの、と声を掛けながら、手を伸ばす。
 何か話さなくてはと思っての行動だったが、それが不味かったようだ。


「ぴゃあああああああああああああああああああ!!!!」


 少女は甲高い悲鳴と共に一目散に逃げだしてしまった。
 それはもうもの凄い速さであった。
 あっという間に木々に隠れて姿は見えなくなる。
 少し、考える。
 殺し合いという現状。
 どうにも気弱そうなさっきの少女。
 あの調子でもし殺し合いに乗った者と遭遇してしまったら。
 あまり良い結末は想像できない。
 気付けば、足が動いていた。
 戦う意味を見失い、絶望に呑まれ、何故それでも私は彼女の後を追うのか。
 分からない。
 分からないが、放って置く事はできなかった。
 魔法少女となった恩恵か、数分ほど走ると何とか少女の背中が見えてきた。

「待って!」

 声を投げかけるが、振り返る事はなかった。
 むしろ一段と逃げるスピードが上がっているように見えた。
 それでも追いかけるしかない。
 その時だった。
 視界の端。前を走る少女の、更に先に男が立っている事に気付いた。
 男はぼんやりと空を見上げている。
 何をするでもなく、燦々と輝く太陽を眺めている。
 男はこちらの様子に気付いていない。
 前を走る少女もまた、私ばかりを気にかけて、前方の男には気付いていなかった。
 一直線に走り続ける少女。
 そして、ドンという音が響いた。
 少女と男が激突したのだ。


「きゃあっ」


 尻餅をつく少女。男の方は微動だにしていない。
 ただ視線を落す。
 地面に座り込む少女の方へ。
 その瞳は驚くほどに―――冷たい。
 ゾクリと、寒気を感じた。
 男の瞳。光を宿さぬその瞳。
 まるで蟲を見るかのように少女を見下ろしている。
 少女もその視線に息を呑む。
 蛇に睨まれた蛙とでもいうのだろうか。
 危険だと分かっていながらも少女は動く事ができないでいた。


「………」


 男は何も語ろうともせずに、右手を振り下ろした。
 考える暇はなかった。
 私は全力で地面を蹴り抜いていた。
 魔法少女の姿を取り、少女の前に躍り出る。
 同時に発現させた剣と、男の右手が激突する。


24 : マリオネットの心 ◆vzkSg/OL/U :2016/07/19(火) 00:50:12 LOx4Dcoo0


「ぐっ」
 

 両腕が、いや全身が軋んだ。
 まるで魔女の一撃を喰らったかのようであった。
 それほどまでに重い拳。
 魔力で形成された屈強な剣に、ヒビが入る。
 男は相も変わらず、死んだような瞳をしていた。
 驚くことも、警戒することもない。
 虚無がその目に広がっている。
 衝撃。
 次いでの蹴撃が鳩尾に突き刺さる。
 視界がホワイトアウトし、身体が浮遊感と嘔吐感に支配される。


「ご、ハ―――」


 私は後ろに座っていた少女を巻き込んで吹き飛ばされていた。
 だが、それはチャンスでもあった。
 吹き飛ばされた事で、男との距離が開く。
 痛覚を遮断。
 それでも尚動こうとしない身体に鞭をうち、少女を抱えて全速力で走る。
 少女は吹き飛んだ時に気を失ったようで抵抗されるという事はなかった。
 幸いな事に、男が追いかけてくる事はなかった。
 分かっても、足は止まらなかった。
 少しでも、ほんの少しでもあの男から遠くに身を置きたい。
 そう、本能が叫んでいるかのようだった。


【A-2・森林】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]腹部にダメージ(中)
[装備]さやかの剣@魔法少女まどか☆マギカ
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:私はどうすれば良いんだろう
1:男から離れる


【小泉花陽@ラブライブ!】
[状態]健康、気絶中
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:気絶中
1:???











 レガート・ブルーサマーズはただ立ち尽くしていた。
 二人の少女との出会い、魔法少女を目の当たりにし、それでも感情は揺れ動かない。
 彼は全てをやり通したからだ。
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードを苦しめ、汚し、死んでいった。
 死した筈の自分が何故ここにいるかは分からない。
 全てがどうでも良いことだった。


「願いか」


 謎の老人が告げた一言。
 願い。
 そんなものはもはや存在しない。
 全てを成し遂げた自分に、もはや価値など感じてはいなかった。
 ただ、自分は殺されなければならなかった。
 彼に、ヴァッシュ・ザ・スタンピードに殺されなければ、いけなかった。


「ああ、そうだ。そうじゃないか」


 思い出したようにレガートは動き出す。
 夢遊病者のようなおぼつかない足取りで、青色の死神だった男が、歩いていく。



【A-2・森林】
【レガート・ブルーサマーズ@トライガン・マキシマム】
[状態]健康
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:ヴァッシュ・ザ・スタンピードに殺される
1:ヴァッシュを探す


25 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/19(火) 00:58:01 LOx4Dcoo0
投下終了です。
次のキャラはプロット練った後で予約します。


26 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/20(水) 20:16:56 CUtgLRXE0
モンキー・D・ルフィ、巴真美で予約します


27 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/21(木) 22:45:55 WuFWV9zM0
巴マミ、モンキー・D・ルフィ投下します。


28 : ◆vzkSg/OL/U :2016/07/21(木) 22:52:08 WuFWV9zM0





 巴マミは知っている。

 魔法少女の正体を、その結末に待つ絶望を、知っている。












 最初に拘束したのは、一番厄介な能力を持つ後輩だった。
 時間を止めるという能力は発動すれば最後、自分に反撃をする術はなくなる。
 だから、最初に無力化し、反撃の機会を奪った。
 次いで、不意打ちで最も戦闘力の高い佐倉さんを、殺した。
 その呪いの宝玉を破壊する。あっ、と間の抜けたような遺言を残して彼女は死んでいった。
 かつての一番弟子だった少女。彼女は苦しまずに死ねたのだろうか、それだけが気掛かりだった。
 次に狙ったのは、拘束中の後輩魔法少女。
 キュゥべえの危険性を訴え続け、それが不和の原因となり、だが全てが真実であった。
 それでも今更どうすることも出来る訳がない。
 もう皆魔法少女になってしまったのだ。
 だから、今の私にできる事はただ一つだけであった。
 魔女と、絶望を振りまく存在となる前に、せめて。
 せめて―――――、



「ソウルジェムが魔女を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない……あなたも、私も!」



 激情のままに叫び、引き金を引こうと瞬間だった。
 意識がブツリと途切れる。


 そして、私はあの場所にいた。
 謎の老人が語った殺し合いの場に、私は、いた。
 老人は、言っていた。
 殺し合いに勝利さえすれば、 どんな【願い】でも叶えると。
 まるであの時と同様だった。
 絶望が決定付けられた状況で、願いを叶えると迫る存在。
 何故だかは分からないが、言葉には重みがあった。必ず願いを叶えてくれるんだと思わせる何かが、そこにあるように感じた。
 キュゥべえのような存在がいるのだ。もしかしたら同じような万能の存在がこの宇宙にはいるのかもしれない。
 ……ただ願いを欲する自分の心が、そう思わせただけかもしれないが。
 【願い】は、あった。
 救われぬものに救いを差し伸べる、そんな願いを。
 絶望を待つだけの少女達に希望を差し伸べる、そんな願いを。
 魔法少女が魔女にならないようにして―――そんな願いを。
 ただ願いを叶えるには殺さなければならない。
 名前も知らぬ赤の他人を。人を守るための力でもって。
 悪寒が、身体を通り抜ける。
 それはまさに悪魔の如く所業。だが、でも、それでもやらなければならない。
 世界各地にいる魔法少女を救えるのは、自分しかいないのだから。
 苦しむのは自分だけで良い。
 全ての業は私が背負おう。
 だから、どうか、彼女達に、奇跡を―――、



 決意と共に歩き始めて十数分。
 私以外の参加者を初めて発見する。
 場所は林道を行った先にあるスーパーの近くだった。
 物音がしたので気配を消して見てみると、そこでは一人の男が一心不乱に何かを食べていた。
 火をたき、木の棒に肉をさし、焼けた傍からそれらを口へ放り投げていく。


「うんめぇ〜〜〜〜〜〜!!」


 満面の笑顔で叫ぶ男。
 今がどういう状況か理解していないのだろうか?
 何とも平和ボケした様子であるが、だからこそ手も止まる。
 あんな無害そうに肉を喰らい続ける男を、殺すのか。
 不意をうち、その人生を終わらせてしまうのか。


(ううん、もう……)


 早々に折れかけた決意を固め直す。
 それを覚悟して、私は行動を始めたのだ。
 魔法少女を救うために私はどんなことだってする。
 そう決めた。
 だから、もう迷わない。


29 : Shocking Party ◆DBM2OcNNl6 :2016/07/21(木) 22:54:38 WuFWV9zM0
 無言で魔法を発動する。
 男の頭上周囲に複数のマスケット銃を発現。


(今っ)


 同時に全ての弾丸を発射させる。
 激しい銃声と共に複数の弾丸が直上から男に降り注ぐ。
 男は声を出すことも、できなかった。
 弾丸が男を貫く、ことはなかった


(貫、かない?)


 目の前に信じられない光景が広がっていた。
 弾丸は確かに直撃し、だがその肉体を貫くには至らない。
 理由は明確だ。
 男の身体がゴムのように伸びているからだ。


「ん〜〜〜〜〜〜〜、きっか〜〜〜〜〜〜〜ん!!」


 ヒュン、と風きり音が響き渡る。
 伸縮する身体に弾丸が跳ね返されたのだ。


(何よ、これ)


 何なのだ、この男は。
 身体をゴムのように伸縮さえた男。
 それなりの数の魔法少女を見てきたが、こんなふざけた能力を持つ者はいなかった。
 それに相手は男だ。女性でない者が魔法少女となれる訳がない。
 つまり、魔法少女で無いにも関わらずこんな不思議な力を有しているというのか。
 この男は、一体―――?



「あー、びっくりした。何すんだよ、お前」
「っ!」



 思考の暇は与えられなかった。
 男の視線がこちらを捉える。
 姿は見せていなかったはずなのに、さも当然のようにこちらを察知した。


「あなたは、一体……」
「おれはルフィ。海賊で、悪魔の実の能力者で、ゴム人間だ!」



 思わずでた疑問に男は笑顔で答える。
 海賊? 悪魔の実の能力者? ゴム人間?
 返事の殆どが困惑しか産み出さない。
 分かったのは、せいぜい男の名前だけであった。


「どうする、続きやんのか? あ、もしかして肉が欲しいのか? これはダメだぞ、やらん!」


 ルフィと名乗った男はのんびりとした様子で語り掛けてくる。
 まるで警戒していない。おおよそ自分のことなど敵として見ていないのだろう。
 そのふざけた態度に、脳に血が集まるのを感じた。
 こちらの気も知らずに、こちらが抱える願いの重大性も知らずに、のうのうと笑顔を浮かべる。
 堪え切れぬ苛立ちが募っていく。


30 : Shocking Party ◆DBM2OcNNl6 :2016/07/21(木) 22:55:12 WuFWV9zM0


「なめないでっ、私は勝たなくちゃ、願いを叶えなくちゃいけないのよっ!」


 魔法少女の姿を取り、中くらいの大きさの砲塔を三つ発現する。
 明らかな敵意を向け、叫び、それでもルフィは笑った。


「そっか。じゃあ手加減しねえぞ」


 先程とは少し違う、不敵な笑みを、浮かべる。
 笑みに肌が粟立った。
 この男は、ルフィという男は、強い―――まるで魔女を前にしたかのような威圧を、男から感じ取る。
 怒りが冷や水を掛けられたかのように収まっていく。
 代わりに思考が鋭敏化し、警戒を限界まで引き上げる。
 砲門を即発射。
 砲弾が男へと直進する。


「大砲か、それも効かねえ! ゴムゴムの風船!」


 息を吸い、コメディか何かのように身体を大きく膨らませる男。
 衝撃が殺され、砲弾が弾き返さんとする。
 だが、それは爆破を目的としたものではない。


(本命は、目くらまし!)


 ボフンと、砲弾が破裂する。
 中から飛び出した煙幕が、男の視界を奪う。



「うわ、何も見えねえ!」



 男の慌てたような声が響く。
 隙はできた。一気に攻めたてる。



「ティロ――――」



 男は砲弾を跳ね返そうとした。
 つまり、砲弾が炸裂してしまえばさすがにダメージを負うということ。
 ならば、煙幕で視界を奪っている今を逃す手はない。



「――――フィナーレ!!」



 発現するは最強の魔法。
 巨大な砲塔から、巨大な砲弾が発射される。
 着弾までは一秒とかからなかった。
 爆炎と爆風が煙幕を呑み込んで、森林を染め上げる。


31 : Shocking Party ◆DBM2OcNNl6 :2016/07/21(木) 22:56:09 WuFWV9zM0


「これなら……!」
「いや〜、今のはヤバかったあ。それにしてもお前すげえな。手品師か?」



 勝利を確信すると同時に、その声は聞こえた。
 真横。
 声の方向を向くと、そこに立っていた。
 麦わら帽子を被った男が、傷一つない姿で、そこにいた。


「ニシシ、こんどはこっちの番だな」


 視界の中、ぐるぐると右腕を回す。
 思わず防御姿勢を取る。
 マスケット銃を交差させ、次いでくるであろう攻撃に備える。



「ゴムゴムの銃(ピストル)!!」


 それは単純な右拳。
 ただやはりゴムのように伸びて直進してくる。
 衝撃。
 まるで魔女の一撃を喰らったかのような衝撃が身体を震撼させた。
 防御のマスケット銃は容易く破壊され、胸部に拳が突き刺さる。
 勢いは、止まらない。
 両脚が地面から離れ、宙に浮き、それでも尚男の右腕はぐんぐんと伸び続ける。
 時間の感覚が消え、視界が黒く染まる。
 どれだけ宙を舞ったのだろうか、気付けば私は森林の真ん中で横になっていた。
 背中を支える木は衝撃に傾いでいた。
 追撃は、ない。
 あれば私に対応をすることは不可能だった。
 動かぬ身体、歪む視界、凄まじい眠気を感じる。
 そうして、私の意識は再び暗闇の中に落ちていった―――。



【C-4・森林】
【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]胸部にダメージ(大)、魔法消費(小)
[装備]なし
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに優勝し、願いを叶え、魔法少女たちを救済する
0:気絶中
1:参加者を殺害していく









「うっし、終わり!」
 

 一人の魔法少女を文字通りぶっ飛ばした後に、モンキー・D・ルフィはガッツポーズを取っていた。


「すげぇ奴だったな。弱かったけど」


 念のために補足しておくが、決して巴マミが弱かった訳ではない。
 巴マミは歴戦の魔法少女であるし、技術も経験も能力も充分に兼ね備えている。
 ただ惜しむらくは、その経験が魔女と魔法少女に対するものと偏っていること。
 魔女は当然として、魔法少女とも縄張り争いやらのいざこざで戦うことは稀に良くある。
 だからこそ、異能を有する者は、異形か思春期の少女と言う印象が強くあり、ただの青年である男が異能を有しているという考えには至れなかった。
 ここに敗因があると云えよう。
 もし、男が異能者だということを事前に知っていれば、まだ対応は変化していたであろう。
 とはいえ、事前に知っていれば、マミが男を殺害できていたかと言われれば、また何ともいえないところだ。
 モンキー・D・ルフィという男は単純に強い。
 海の荒れくれものが群雄割拠する世界に於いて、海の王を目指して、仲間と共に航海を続ける日々。
 その中でモンキー・D・ルフィは着実に力を付け、そして今や五億という懸賞金をその首に賭けられるまでとなった。
 今や世界で名を知らぬもののいない超新鋭の海賊。それがモンキー・D・ルフィという男である。




32 : Shocking Party ◆DBM2OcNNl6 :2016/07/21(木) 22:56:44 WuFWV9zM0


「よし、肉は喰ったし、行くかぁ!」



 ただ、ルフィには欠点がある。
 というか、欠点だらけといっても良い。



「……って、なんでおれこんな所にいんだ? サニー号は、皆は?」



 一つに、人の話を聞かない。
 一つに、どうでも良いことは直ぐに忘れる。
 一つに、肉に目がない。
 ルフィは今いる状況を全くと言って良い程に理解していなかった。
 理解しないままに、ただ肉の匂いにつられスーパーに立ち寄り、商品の肉を片っ端から焼いて食っていたのだ。
 そこを巴マミに発見され、状況を理解せぬままにぶっ飛ばした。


「ま、いっか。何とかなるだろ!」


 楽天的に言って、ルフィは森林へと足を踏み入れた。
 海賊王を目指す青年は、何も考えずに殺し合いの会場を進んでいく。

 
【C-5・森林】
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]健康
[装備]ルフィの麦わら帽子@ONE PIECE
[所持品]基本支給品一式、ランダム支給品×1〜3
[思考・行動]
基本方針:サニー号と仲間を探す
1:行くぞぉ!


33 : ◆DBM2OcNNl6 :2016/07/21(木) 23:29:00 WuFWV9zM0
投下終了です。
ミリオンズ・ナイブズ、スティーブ・ロジャースで予約します。


34 : 名無しさん :2016/07/22(金) 01:18:53 rTMsttoc0
投下乙です

マミさんは一番面倒くさい時期からの参戦かぁ。傍迷惑な人だ…
そしてルフィはこのマイペースぶりがどう転ぶか


35 : 管理人★ :2017/07/01(土) 21:58:10 ???0
本スレッドは作品投下が長期間途絶えているため、一時削除対象とさせていただきます。
尚、この措置は企画再開に伴う新スレッドの設立を妨げるものではありません。


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