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杉本「貴金属カムイ」
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2001年・小樽
杉本「あのー、杉本佐一と申します。貴金属の買取に来たのですが」ピーンポーン
お婆さん「いや、うちはそういうのはないです」ガチャ
杉本「ハァ、さっぱりだな。もうこの辺りの貴金属は東京の業者が買い尽くしたか……」
アシリパ「……」テクテク
杉本(ん……このうちの子供か?)
アシリパ「……」ピーンポーン
お婆さん「はいはい」
アシリパ「中古の着物を売っている者だ!」
お婆さん「すいません、間に合ってますので」
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アシリパ「そんなに沢山あるのか?」
お婆さん「ええ、もう沢山ありますから」
アシリパ「じゃあ買取の見積もりをしてあげよう。もちろん無料でだ」
お婆さん「え、あ、でも今そんなに困っている訳でもないし」
アシリパ「いつか処分に困るくらいなら売った方が良いだろう。そういう時に値段を知っていると判断し易い」
お婆さん「はあ……」
アシリパ「なにも今売る必要はない。近所の奥さん方にも好評だからどうだ?」
お婆さん「あら皆さんも見てもらったの? じゃあ見て貰うだけ見て貰おうかしら。今開けます」
杉本(上手い……間と良い落とし方と良い、ぶっきらぼうな態度以外は完璧な営業じゃないか)
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アシリパ「丁度良い、暇なら着いてきてくれないか?」
杉本「え?」
アシリパ「さっき見ていた。お前貴金属買取業者だろう? 頼む、分け前はやるから」
杉本「あ、ああ」
ガチャ
お婆さん「どうもー……あら、今話していた女性は?」
アシリパ「私だ、兄と二人でこの地区を回っている」
杉本「あ、はじめまして」
お婆さん「あら、そんな歳で偉いのねぇ」
アシリパ「父が病気で倒れたんだ。目利きは小樽でも一番の自信があるから安心してくれ」
お婆さん「まあそうなの、うちの主人も去年脳溢血で入院してねぇ」
アシリパ「それはお気の毒に。まだ入院中なのか?」ズカズカ
杉本(世間話をしながらさり気なく家の中へ……なんてスムーズなんだ)
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お婆さん「こういうのはどうかしら。ちょっと適当に仕舞っておいたから、駄目だとは思うんだけど」
アシリパ「そんなことはない。樟脳でしっかりと防虫もしていたようだ。奥さんは着物をとても大切に扱っている」
お婆さん「まあ、そうかしら」テレ
アシリパ「花の絞り汁……吉乃一廉か。奥さん、この着物は25000円で買取可能だ」
お婆さん「そんなに高いの? じゃ、じゃああれはどうかしら」ゴソゴソ
杉本(子供なのに凄い着物の知識、流石は着物屋さんだな。しかし少し触っただけでこうも分かるものなのか?)
アシリパ「これは8000円。これは12000円だ」
お婆さん「なるほどぉ。大事に仕舞っておいてよかったわ」
アシリパ「うちは古物全般を扱っているから、良かったら他の物も見よう」
お婆さん「あら本当? 買ったきり使ってない健康器具を――」
杉本(え、着物専門の業者じゃないっていうのか?)
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アシリパ「古い型のマッサージチェアか、これは500円で買い取ることが出来る」
お婆さん「まあそんなものよねぇ。大きいから処分にも困っていてねぇ」
アシリパ「良い値段をつけて上げたいところだがなかなか……。そうだ、ブランド物やネックレスはないか?」
お婆さん「ネックレス?」
アシリパ「ずっと使っていないまま忘れられているアクセサリー類とかだ。最近売るのが流行っている」
お婆さん「あ、そういえば戸棚にあったような……」
アシリパ「じゃあ早速見に行こう」
杉本(えぇ!? お婆さん貴金属あったの!?)
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アシリパ「純金の指輪、銀細工のコンパクト等々、合わせて23万円だ」
お婆さん「えぇ、そんなに頂いても良いものなの?」
アシリパ「もちろんだ。わざわざ探して貰ったし、こちらもサービスは惜しまない」
お婆さん「へぇーそうなの。そんなに高かったのねぇ」
アシリパ「今日買取しても良いならあのマッサージチェアも引き取ろう。もちろん無料でだ」
お婆さん「あら、そんなこともしてくれるの?」
アシリパ「うん。旦那さんも大変な時だろうし、ああいうものは処分出来る時に処分しておいた方が良い」
お婆さん「そうねぇ。……じゃあ買取お願いしようかしら」
アシリパ「ありがとう、今現金で支払う。身分証と判子はあるだろうか?」
お婆さん「ちょっと待っててね」スタスタ
アシリパ「杉本、帰りにチェアの運搬を手伝って貰えるか?」
杉本「あ、ああ」
杉本(凄い……着物の査定から気づけば貴金属買取の成約まで結びつけたぞ)
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アシリパ「じゃあこれで帰る。なにかあれば渡したチラシの番号にいつでも電話をしてくれ」
お婆さん「本当にありがとうねぇ、それじゃあ」
バタン
アシリパ「ふう」
杉本「凄かったなぁ。良いものを見させて貰ったよ」
アシリパ「感謝を言うなら私の方だ。子供だけでもいけると思っては居たんだが、やはり大人が居てくれて助かった」
杉本「君一人で買取をしようとしていたのか?」
アシリパ「父は今本当に病気なんだ。医療費を稼がないといけない」
杉本「強い子だなぁ。このチェアはどうする?」
アシリパ「直ぐ近くに馴染みの廃品回収業者がある。そこに行こう」
杉本「分かったよ。よっこらせ」ズシ
アシリパ「杉本は力持ちだな。分け前のこともある、これを処分したらなにか食べに行こう!」
杉本「ああ! 俺、昼まだなんだ」
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小樽市新光
杉本「なると、屋?」
アシリパ「なんだ杉本、小樽ははじめてか?」
杉本「うん。最近北海道に貴金属買取に行く業者が多いから、俺も一攫千金を狙って来たんだ」
アシリパ「北海道はまだ買取業者が回っていない土地が多いからな。おじちゃん半身揚げ二つ。で、良いか?」
杉本「ああ、任せるよ」
アシリパ「なると屋は創業60年の老舗で、今はチェーン店も多いが元は小樽発祥なんだ」
杉本「へえ、随分歴史があるんだな」
アシリパ「ああ! ザンギにメンチカツ・カキフライも美味いが、中でも若鶏の半身揚げは絶品だ」ジュルリ
杉本「それは楽しみだ」
アシリパ「おじちゃん、やっぱりザンギも追加してくれ!」
杉本「よく食うなぁ」
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アシリパ「頂きます」モグモグ
杉本「――うおっ! なんだこれ、カリカリの皮の中で肉汁が蕩けてる! 癖になる味付けだなぁ」
アシリパ「この秘伝の味付は誰にも真似出来ない。同じ味を提供するチェーン店が出来たのは凄いことだ」モグモグ
杉本「俺の地元にも出来ないかなぁ」モグモグ
アシリパ「美味しい美味しい! ほら、杉本も美味しいって言え!」
杉本「あ、はい。美味しい美味しい……?」
アシリパ「うんうん。いいか杉本、小樽では美味しい物を食べた時に美味しいって言うんだ」ニコ
杉本「う、うん……俺も言うよ……?」
アシリパ「美味しい美味しい!」ニコ
杉本「……ははは、美味しい美味しい!」ニコ
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杉本「ご馳走様」スタスタ
アシリパ「おじちゃんご馳走様ー。ふう、良い具合に満腹だ!」
杉本(結局半身揚げ六個も食べてたもんな……)
アシリパ「さて、じゃあ分け前だな。折半でどうだ?」
杉本「折半!? いや、そんなに貰えないよ」
アシリパ「そう言わないでくれ。小樽人は儲けを独り占めしない!」
杉本「お、小樽人は優しいんだなぁ」
アシリパ「さあ遠慮せず受け取ってくれ」ズイ
杉本「いや、やっぱり良いよ。営業したのはアシリパさん一人なんだし、お父さんのこともあるだろ?」
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アシリパ「ま、まあ確かに父のことは……」
杉本「それより、良かったら俺と組まないか?」
アシリパ「組む……?」
杉本「ああ。アシリパさんは大人と一緒の方がやり易いだろうし、俺もアシリパさんに色々教わりたい」
アシリパ「なるほど、それは助かる!」
杉本「こちらこそだ。実を言うと俺、営業が苦手なんだ」
アシリパ「そうだろうな。さっき見ていたがあれは酷い。くく、まるで怪しい宗教の勧誘だった」
杉本「アシリパさん俺そういうの言われると泣くタイプだからね?」
アシリパ「じゃあ今日からよろしくな。改めて、私はアシリパ! 小樽人だ」
杉本「杉本佐一、よろしく」
杉本(さっきから小樽人ってなに?)
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※とりあえずここまで。
ゴールデンカムイの現代板で、小樽のグルメ貴金属買取バトルSSです。
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期待したいけど杉元の字が違う時点でにわかっぽいかなぁ
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現代だからね
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杉元ってよく名字間違えられてるよな
パラッと読む程度の人ならあるかも知れんが、漫画板住民とかSS書く人が間違えてるとモヤモヤする
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弱虫ペダルの杉元も一緒だな
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