"
女騎士「おい、助けてくれないか？」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「おい、助けてくれないか？」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「……何故、沼にハマってる私を助けん？」
ゴブリン「人間だからです」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「なるほど……」
ゴブリン「はい」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「困っている人間がいたら普通助けるだろ！」
ゴブリン「僕、人間で無いので」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「なるほど……そうか……」
ゴブリン「はい」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「ふむ……」
ゴブリン「………」
女騎士「どうしても助けんという事か」
ゴブリン「そんな事は無いです」
女騎士「なに？」
ゴブリン「………」
女騎士「……どうすれば助けてくれる？」
ゴブリン「それは自分で考えてください」
女騎士「……そうか」
ゴブリン「はい」
"
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「自分なりに考えてみたわけだが」
ゴブリン「はい」
女騎士「助けるには対価が必要……と、私は考えた」
ゴブリン「そうですか」
女騎士「金をやる。助けてくれないか？」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「何故だ！」
ゴブリン「ゴブリンがそんな物を貰っても使い道がありません」
女騎士「た、確かに……なるほど……」
ゴブリン「はい」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「……ならば、貴様の望んだ物をやる。だからな助けてくれないか？」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「望んだ物をだぞ？それでも助けてくれないと言うのか」
ゴブリン「貴女では僕が望んだ物を用意出来ないからです」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「一体、何が欲しいんだ……？」
ゴブリン「………」
女騎士「………」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「なるほどな……」
ゴブリン「……はい？」
女騎士「貴様の考えが透けて見えてしまったよ……ふん……」
ゴブリン「………」
女騎士「あ、あれだな！あれ！」
ゴブリン「………」
女騎士「そのあれだ……貴様と言う奴は……あれだ」
ゴブリン「………」
女騎士「わわわ私が欲しいのだろ！そうだろ！」
ゴブリン「違います」
女騎士「そうだろうそうだろう！……？」
ゴブリン「嫌です。それと所々で意味がわからないって表情しないでください」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「ハッキリ言うぞ。貴様は私の体が欲しいのだろッ！？」
ゴブリン「いいえ」
女騎士「………」
ゴブリン「それと、牙の無い雌はちょっと無理ですから」
女騎士「あああん！ふざけるな！貴様は私をあられもない姿にしてヤンヤヤンヤと祭り囃子に合わせて……」
ゴブリン「………」
女騎士「……おい、その目はやめろ」
ゴブリン「………」
ゴブリン「………」
女騎士「その人を軽蔑した後にする優しい眼差しはやめろ……」
ゴブリン「………」
女騎士「その目はやめろと言っているんだぁぁぁぁッ！」
ゴブリン「生きてれば良い事もありますよ……」
女騎士「慰めるな！」
ゴブリン「ふふ……」
女騎士「優しく笑うな！」
ゴブリン「まあまあ」
女騎士「うぐ……ぅぅ……」
ゴブリン「………」
ゴブリン「泣いても嫌です」
女騎士「貴様が泣かせたのだろ！死ね！」
ゴブリン「………」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「……死ねは言い過ぎた。すまん」
ゴブリン「いえ、いいですよ」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
ゴブリン「あらら」
女騎士「んがぐぐ……」
ゴブリン「………」
女騎士「………」ブクブク……
ゴブリン「……んんしょ」
ズルズルル
女騎士「ぶはぁッ！ししし死ぬかと思た……」
ゴブリン「………」
女騎士「た、助かった……え？」
ゴブリン「………」
女騎士「おい……何故途中で助けるのを止めるんだ……？」
ゴブリン「内緒です」
女騎士「き、貴様……」
ゴブリン「………」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「やはりな……」
ゴブリン「何がです？」
女騎士「やはり私をあられもない姿にしてヤンヤヤンヤとするつもりだろ！」
ゴブリン「しませんよ」
女騎士「なら最後まで助けろ！これでは元通りではないか！」
ゴブリン「………」
女騎士「くっ……沼にハマってなければ貴様など……」
ゴブリン「くっ沼ですね」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
オーク「嫌でデフ」
女騎士「ちちち近寄るな！あっちへ行け！」
オーク「いきなり酷いでデフ」
女騎士「貴様は確実にヤンヤヤンヤするだろ！」
オーク「しないでデフ」
女騎士「う、嘘をつけぇ！？」
オーク「嘘なんて……デフ……」
女騎士「いいいいつものゴブリンはどえした！ええ！」
オーク「ゴブリン君はゴブ生で三度来るチャンスの二回目が来そうだからって来ないでデフ」
女騎士「なんだそれは……」
オーク「なので、人間が沈まない様に見張っててくれって頼まれたでデフ」
女騎士「え……ゴブリン……」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「ふん……助けてあげられても良いぞ？」
ゴブリン「………」
女騎士「ふははは！私を助けられるのだ！光栄に思え！」
ゴブリン「………」イラッ……
女騎士「どうした？ほら！ほら！私を助けてられるぞ！」
ゴブリン「……オーク君」
女騎士「……！」ビクッ！
ゴブリン「オーク君達にここを囲ませます」
女騎士「や、やめて……」
ゴブリン「ふふふ」
女騎士「そそそそれだけは本当やめてください……」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」キョロキョロ……
ゴブリン「オーク君はいないですよ」
女騎士「そ、そうか！」
ゴブリン「はい」
女騎士「ふふん。なら遠慮はいるまい！」
ゴブリン「あ、オーク君」
女騎士「ッ！？」ビクッ！
ゴブリン「嘘です」
女騎士「貴様ッ！」
ゴブリン「あ、オーク君」
女騎士「ひぅッ！」ビクッ！
ゴブリン「嘘です」
女騎士「………」
ゴブリン「嫌です」
女騎士「………」
ゴブリン「そんなにオーク君が嫌なんですか」
女騎士「あ、当たり前だ！オークにまつわる伝説の数々……ああ……思い出しただけでも恐ろしい……」
ゴブリン「そんな事は無いと思いますけど。ね？」
女騎士「ああ？何がね？だ？」
オーク「そんな事は無いデフ」
女騎士「………」
ゴブリン、オーク「………」
女騎士「………」ブクブク……
ゴブリン「見た瞬間気絶するとは。オーク君は激しく嫌われてるね」
オーク「壮絶にショックでデフ……」
ゴブリン「嫌です」
オーク「デフフフ！愚かなゴブリンよデフ！私を誰だと思っているデフ！」
ゴブリン「！？」
オーク「沼にハマりし女騎士であるデフ！」
ゴブリン「それがどうした！」
オーク「え……確かに……」
ゴブリン「オーク君さ……もうちょっと会話が続くようにしよ？」
オーク「すまんデフ」
ゴブリン、オーク「あははは！」
女騎士「………」
ゴブリン、オーク「ゴメンなさい」
女騎士「なんだ貴様……私とオークは同列とでも言いたいのか！？ああん！」
ゴブリン「いや……人間とオークで上も下も無いか
女騎士「ああ！？なんだ！」
ゴブリン「いえ……何でもないです」
女騎士「貴様……私が沼にハマり命拾いしたな。それでなければ今頃は真っ二つにしているところだぞ！」
ゴブリン「さいですか……」
女騎士「ふん！」
オーク「あの……」
女騎士「………」プイッ
オーク「うわ……超無視でデフ……」
ゴブリン「良いですよ」
女騎士「いい加減だな沼から引き抜いてくれ」
ゴブリン「………」
女騎士「貴様の力なら容易いだろうが」
ゴブリン「………」
女騎士「それをいつまでも拒否して……一体何が目的なんだ」
ゴブリン「………」
女騎士「あああ、下半身が気持ち悪い！」
ゴブリン「………」
女騎士「ふああああ」
ゴブリン「………」
女騎士「寝る！」
ゴブリン「はい」
ゴブリン「良いですよ」
女騎士「こんなやり取りを何時までやるつもりだ！……？」
ゴブリン「………」
女騎士「え？あれ？良いの？」
ゴブリン「ええ」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
女騎士「……何を企んでいる！」
ゴブリン「何も。目的は果たしましたので」
女騎士「いつ……？」
ゴブリン「内緒です」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
ゴブリン「………」
女騎士「……世話になった」
ゴブリン「………」
女騎士「何だろうな……」
ゴブリン「………」
女騎士「沼から出て自由を得たと言うのに……うら淋しく思う気持ちは……」
ゴブリン「………」
女騎士「こんな事は人間が思ってはいけないのかもしれんが……ゴブリンよ、一緒に来ないか？」
ゴブリン「………」
女騎士「……いや、今のは忘れてくれ。人は人と、魔物は魔物で暮らした方が幸せだろうからな……」
ゴブリン「………」
ゴブリン「………」
女騎士「ではな。……貴様との会話、楽しかったぞ」
ゴブリン「………」
女騎士「……むう？」
ゴブリン「………」
女騎士「別れ際ぐらい何か言ったらどうだ」
ゴブリン「ギャギャギャ」
女騎士「……は？」
ゴブリン「グギャギャ」
女騎士「何の冗談だ？たま私をからかっているのか！」
ゴブリン「ギャギャ」
女騎士「………」
ゴブリン「ギャオス」
女騎士「……私はアイツと喋っていたよな」
女騎士「幻聴……ふざけるな！そんな物では決して無い……はずだ……」
女騎士「………」
女騎士「別れに対してこれはあんまりではないか……」
女騎士「言葉がわからないだけで……何か言ってくれ……からかっても馬鹿にしてもいい……」
女騎士「頼む……」
ゴブリン「ギャギャ」
女騎士「………」
ゴブリン「………」
オーク「ふがぐぐ」
女騎士「貴様もか……」
オーク「ふごうふ！」
女騎士「……何だ？」
ゴブリン「ギャ！」
女騎士「………」
タタタ……
女騎士「……いってしまった」
女騎士「………」
女騎士「……しかし何故、奴と喋れた？……まさか沼か……？」
女騎士「………」
女騎士「奴の願い……聞いていなかったな……」
女騎士「………」
女騎士「おい、助けてくれないか？」
ゴブリン「……何やってるんですか？」
女騎士「ふん！見ればわかるだろ！」
ゴブリン「また沼にはまってますね……」
女騎士「そうだぞ！ふふふ！」
ゴブリン「………」
女騎士「さあ！思う存分思いを語れ！」
ゴブリン「………」
女騎士「言葉が通じない時の貴様の顔は見物だったな！」
ゴブリン (それはあんたでしょうに……)
ゴブリン「はあ……」
女騎士「何だため息などついて！」
ゴブリン「いいえ……何でも……」
女騎士「そうか？」
ゴブリン (何で沼にはまって強気でいられるのか……まあ、この人のおかげで僕の願いは叶ったのだけど……)
女騎士「それでだな！貴様の願いは一体何だったのだ！」
ゴブリン「………」
女騎士「ほほう！黙りか。私と貴様の仲ではないか！遠慮はいらんぞ！」
ゴブリン (僕の願いは……)
女騎士「一人でヤンヤヤンヤするなら私は見て見ぬふりくらいは出来るぞ！ハハハハッ！」
ゴブリン (人と話す事だよ。人の考えてる事や人がする様々な表情なんか知りたかったんだ……)
ゴブリン (僕達、魔物には無い……決して手に入れる事の出来ない物を目に……心に焼き付けておきたいからね)
女騎士「オークのアホも誘ってやれ！」
ゴブリン「ありがとう」
女騎士「なッ……遂に本性を表しおったか！」
ゴブリン「え……？」
女騎士「礼を言ったと言う事はやはり私とヤンヤヤンヤとしたかったのだろ！貴様ッ！」
ゴブリン「違いますが……」
女騎士「ふん！」
ゴブリン (この人はちょっとおかしい人間だけど……願いを叶えてくれてありがとう……)
オーク「ゴブリン、メシでデフ」
女騎士「遠慮無しか！遠慮はしないで良いとは言ったが！」
オーク「デフ？」