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勇者「あらしの」魔王「よるに」

1 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 01:55:06 pEL.GaIs
嵐の夜、丘向こうのあばら屋

魔王「酷い嵐だ。付き人もなく一人出歩いたのは間違いであったな」

魔王「・・・・・・それにしても、ここは暗いな」

ザァァァァ

ドンドン!

魔王「・・・・・・」ビク

「すいません!」

魔王「・・・・・・何用かな?」

「嵐が酷くて! 少し雨宿りさせて貰えませんか?」

魔王「ああ、入りたまえ」

ガラガラ、ピシャ


"
"
2 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 01:56:04 pEL.GaIs
勇者「ふう、濡れた濡れた。すいません、突然お邪魔しちゃって」

魔王(・・・・・・人型魔族か、僻地にしては珍しいな)

魔王「構わんよ。私も同じ口さ」

勇者「ああ、そうだったんですね」

魔王「うむ。この荒れ具合をみるに、大方空き家だろう」

勇者「はは、確かに少し埃っぽいですね」ニコ

魔王「うむ」

ザァァァァ

魔王「・・・・・・」

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・身体、濡れているのか」


3 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 01:57:06 pEL.GaIs
勇者「え? ああ。服はまだ良いんですけど、頭が」ニコ

魔王「このタオルを使うといい、私が使った後で申し訳ないが」スッ

勇者「良いんですか? ありがとうございます」ゴシゴシ

魔王「うむ」

勇者(・・・・・・良い匂いのするタオルだ)

魔王「ところで、いつまで立っているのだ?」

勇者「ああ、こう暗いと周りがよく見えなくて」

魔王「こっちに来ると良い。あと一人なら座れる」

勇者「じゃあ、遠慮なく」


4 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 01:58:35 pEL.GaIs

ザァァァァ

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・」

勇者「すいません、なにからなにまで」

魔王「なに、近頃は物騒だからね。困った時はというやつさ」

魔王(この一帯は最近勇者に侵略されたばかりだからな。危険な人間が増えた)

勇者(ああ、ここは最近魔王から取り戻した土地だもんな。まだ凶暴な魔物が多い)

勇者「ところで、どうして女性が一人で此処に?」

魔王(はは。女性、ね)

魔王「なに、ふらりと散歩に出たらこの嵐だ。困ったものだよ」

勇者「それは災難でしたね。どうでした? ここら辺は」


5 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 01:59:58 pEL.GaIs
魔王「他所の戦線と変わらないさ。暴力、病に飢え・・・・・・皆暗い顔をして生きている」

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・どうしたのだ?」

勇者「俺、もっと頑張ります」

魔王「ほう、流しの傭兵かな?」

勇者「まあ、そんなところです。ここら辺は仕事が多いし・・・・・・なにより、ここの方々を見捨てられないです」

魔王(この土地に残り、まだ戦う魔族が居たとは。・・・・・・頭が上がらない)

魔王「ありがとう」ニコ

勇者「・・・・・・い、いや。俺なんかに出来ることは少ないですけど」ドキドキ

魔王「そんなことはないさ。一人が立ち上がらなければ何もはじまらない」


"
"
6 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:00:46 pEL.GaIs
勇者「・・・・・・その通りですね、希望は捨てちゃいけない」

魔王「うむ」

勇者「・・・・・・」ニコ

魔王「でも少し」

勇者「・・・・・・?」

魔王「・・・・・・少し、疲れた」

ザァァァァ

勇者「・・・・・・この近くに、果樹園があるんですよ。そこのリンゴすごく美味いんです」

魔王「ん?」

勇者「美味いものを食べれば、元気が出るんですよ」ニコ

魔王「・・・・・・そうだな、うむ」

勇者「俺、ここら辺詳しいんです。だから、良かったら今度」


7 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:01:48 pEL.GaIs
魔王「・・・・・・ああ、是非」

ザァァ、ァァ

勇者「あ、雨上がりましたね」

魔王「ああ、風も収まったようだ」

勇者「じゃあ、俺行きます。この嵐で困っている方が居るかもしれない」スタ

魔王「待て」

勇者「え?」

魔王(しまった、つい)

魔王「い、いつ行くのだ?」

勇者「え?」

魔王「その・・・・・・果樹園の話だ」

勇者「この様子だと、明日は快晴です」ニコ


8 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:03:26 pEL.GaIs
魔王「あ、ああ。じゃあ明日の昼でどうだろう」

勇者「いいですね、待ち合わせはここでいいですか?」

魔王「うむ。・・・・・・しかし、お互いの顔が分かるだろうか」

勇者「・・・・・・あー・・・・・・」

魔王「こういうのはどうだろう。 相手を見つけたら、あらしのよるに出会った者です、と言うのは」

勇者「はは、いいですね。あらしのよるに、で大丈夫ですよ」

魔王「うむ。ではそうしよう」

勇者「じゃあ、また明日」スタ、スタ

魔王「また明日」

魔王(・・・・・・つい約束をしてしまった。この私が、軍事でも、社交でもない予定を)

魔王「・・・・・・社交辞令だったら、どうしようか」


9 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:04:05 pEL.GaIs
丘のはずれ、境界線にある村

戦士「あ!! おーい、勇者!」ブンブン

勇者「ん? おお、みんな!」

魔法使い「何処に行っていたんですか!? 心配したんですからね?」

僧侶「土砂崩れ、勇者、どかーん」

魔法使い「ちょ、ちょっとやめて下さいよ僧侶さん!」

戦士「みんな心配してたんだぞ?」

勇者「ごめんごめん、雨宿りしててさ」


10 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:04:43 pEL.GaIs
士「お前は人間界の英雄なんだから、勝手に死なれたら困るぞ」

勇者「このくらいの嵐じゃ土砂崩れは起きないって」

魔法使い「・・・・・・む、勇者さんなんだか嬉しそうじゃないですか?」

戦士「そういえば。なんか良いことでもあったのか?」

勇者「え? ああ、いや。別に?」ニコ

僧侶「あやしい」

勇者「はは、怪しくないって」


11 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:05:45 pEL.GaIs
魔王城、ホール

魔王「・・・・・・」スタ、スタ

側近「魔王様!」タッタッタ

魔王「今帰った」

側近「そんなことは分かっております! 今度は何処に行っていたのですか?」

魔王「・・・・・・東の戦線の辺りだ」

側近「あの辺りは人間に侵攻されて治安も悪いのですよ!?」

魔王「だって、見ておきたかったのだ」ボソ

側近「な、ん、で、す、か!?」


12 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:07:58 pEL.GaIs
魔王「・・・・・・すまぬ」

側近「あなたは魔王です! 魔界の英雄なのですよ!? その辺りをもう少しお考え下さい!」

魔王「うむ」

側近「・・・・・・はあ。夕げの準備が出来ております」スタ、スタ

魔王「お腹が空いた」スタ、スタ

側近「まずはお着替えを」スタ、スタ

魔王(・・・・・・明日、彼は来るのだろうか)


13 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 02:09:12 pEL.GaIs
※続きはまた更新します。


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/05(水) 02:33:22 ISWJvoqc
乙、原作のようになるか違うのか楽しみ


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/05(水) 11:11:46 3MLFhqrg
すごいマッチしてるな


16 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 21:21:53 pEL.GaIs
翌日、正午、あばら屋の前

魔王「・・・・・・」

魔王(なんだか、妙に緊張するな)

魔王「・・・・・・うむ」

魔王(・・・・・・出会い頭に声が上擦るのも情けない話だ。練習しておこう)

魔王「・・・・・・あらしのよるに」ボソ

スタ、スタ

魔王「・・・・・・あらしのよるに、あらしの、よるに」ボソ

勇者「あらしのよるに!」

魔王「きゃッ!」ビク

勇者「ははは。すいません、驚かせちゃいましたか?」

魔王「・・・・・・いや、驚いていない」ドキドキ

魔王(・・・・・・なんというか、人間のような格好をしているな。カモフラージュだろうか)

勇者「それにしても、良い天気ですね」

魔王「ああ、昨日の嵐が嘘のようだ」


17 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/05(水) 21:22:47 pEL.GaIs
勇者「じゃあ早速行きましょうか、果樹園」

魔王「うむ」スッ

勇者「え?」

魔王「なんだ?」

勇者「い、いや。その手はなにかなと」

魔王「・・・・・・あ、いや。すまぬ」

魔王(しまった。こういう状況では手を引かれないのか)

勇者「・・・・・・あ、なるほど」ガシ

魔王「なッ!?」

勇者「すいません。俺、そういうマナーが分からなくて。・・・・・・一瞬気づきませんでした」ドキドキ

魔王(いやいや、私が間違えたのだ!)

勇者「行きましょうか」

魔王「・・・・・・うむ」


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/09(日) 11:41:22 mNPTnUSg
期待


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/11(火) 01:53:08 8wq/vMks
まだっすかー


20 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/12(水) 20:19:49 0XKW0KJQ
昼、果樹園

魔王「・・・・・・美味い」シャク

勇者「良かったです」ニコ

魔王「静かなところだな、ここは」

勇者「ああ、今日はお休みですからね」

魔王「入って良かったのかい?」

勇者「ええ、俺が居ますから」

魔王「君はここで働いているのかい?」

勇者「働いているというか、作ったんですよ」


21 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/12(水) 20:20:28 0XKW0KJQ

魔王「君が?」

勇者「ええ」

魔王「傭兵だけでは食べれないものなのか?」

勇者「はは、そういう訳じゃないんですけどね。ここは早く復興しないと行けないですから」

魔王「・・・・・・やはり、頭が上がらないよ。君には」

勇者「え?」

魔王「いや、いいんだ。・・・・・・うむ、美味い」シャクシャク

勇者「・・・・・・」ニコ


22 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/12(水) 20:32:09 0XKW0KJQ
炎トカゲ「キャア」テクテク

勇者「あ、こら! あ、いや! これは」

魔王「おお、炎トカゲじゃないか」

勇者「・・・・・・驚かないんですか?」

魔王「ん? なにか驚くことがあるのだろうか」

勇者「はは、なんでもないです」

魔王「しかし、幼体の魔物が一匹で居るのは珍しいな。君、親は何処に居るのだ?」

炎トカゲ「キャア!」

魔王「おお、そうか。この方が親なのだな」ニコ

勇者「まるで話しているみたいですね」

魔王「ん? 話しているのだ」

勇者「ははは、俺もよく悩みを聞いて貰うことがありますよ」


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/12(水) 21:54:07 0l0J4jSU
待ってた


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/04/13(木) 05:41:04 UwV6bL26
https://www.girlsheaven-job.net/10/yubou_kuraya/blog/


25 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/13(木) 08:47:50 IvfvG6n2
魔王「それは良い。これは聞き上手だろうね」ナデ

炎トカゲ「キャア」

魔王「ほう、そうか」ニコ

勇者「本当によく慣れているんですね」

魔王「なに、赤子相手に得て不得手もないだろう」

勇者「・・・・・・こいつは、目の前で親を殺されたんですよ」

魔王「・・・・・・人間に」

勇者「・・・・・・ええ、そう。人間に」

魔王「そうか」

勇者「ここには、そういう魔物の子が他にも居ます」

魔王「全て、君が拾って育てているのか?」

勇者「一緒に居るだけですよ。育てるなんて、そんな」チラ

炎トカゲ「キャア?」

勇者(お前は、俺を恨んでいるのだろうな)ナデナデ


26 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/04/13(木) 08:48:20 IvfvG6n2
魔王「それにしては、とても君に懐いているようだ」

勇者「そうでしょうか」

魔王「そうだとも。なあ?」

炎トカゲ「キャア!」

魔王「ほら」

勇者「ははは、そうだと良いですね」

魔王「む、笑うでない。これもそう言っているではないか」

勇者「ええ」ニコ

魔王「うむ」

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・」

勇者「リンゴ、もう一つどうですか?」

魔王「うむ、頂こう」


27 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/02(火) 21:08:27 xG3Ovu9U
炎トカゲかわいい。続きはよ!


28 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/07(日) 11:28:47 iAyPL6OU
はよはよ


29 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/13(土) 07:58:52 HgEkJo0o
まだか


30 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/13(土) 18:14:54 /yNUr4qk
魔王「・・・・・・」シャクシャク

勇者「疲れ、少しは取れました?」

魔王「ん?」

勇者「ほら、昨日言ってたじゃないですか」

魔王(・・・・・・だからここに連れてきてくれたのか)

魔王「ああ、こんな穏やかに過ごすのは久しぶりだよ」

勇者(身なりも良いし・・・・・・貴族の方なんだろうか)

魔王「そうだ、リンゴのお代を支払わねば」ゴソゴソ

勇者「いいですよそんな。一杯ありますし」

魔王「そういう訳にはいかないよ」

勇者「うーん。なら、園内の草刈を手伝って貰うってことでどうでしょう」

魔王「そんなことでいいのか?」


31 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/13(土) 18:15:31 /yNUr4qk
勇者「ええ、もちろん」ニコ

魔王「・・・・・・うーん・・・・・・」

勇者「?」

魔王「……実は、私は草刈をしたことがないのだ」

勇者「ははは、大丈夫ですよ。そんなに難しくないですから」

魔王「わ、笑うことはないではないか!」

勇者「あ、すいません」

魔王「い、いや、頭を上げてくれ。すまない、私が悪いのだ」

勇者「それで、どうですか?」

魔王「・・・・・・うむ。それでは、草刈を手伝わせて貰おう」

勇者「よし、なら行きましょうか!」ニコ


32 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/13(土) 18:16:16 /yNUr4qk
午後、果樹園

勇者「よし、じゃあはじめましょうか」

魔王「うむ。とりあえず近場にあった鎌を持ってきたぞ」ドキドキ

勇者「あー、とりあえず鎌は使わないんですよ」

魔王「そ、そうか」

魔王(少し使ってみたかったな)

勇者「なんか、すいません」

魔王「それで、どうすればいいのだ?」

勇者「えっと、少し下がってください」

魔王「? うむ」スタ、スタ

勇者「ごほん。・・・・・・中級広域風魔法!」ブン

ズバババババ!


33 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/13(土) 18:17:14 /yNUr4qk
魔王「おお、全て刈ったのか! 凄いではないか」ニコ

勇者「そ、そうですか? はは」

魔王「流石は一線で戦う傭兵だな」

勇者「いやぁ。でも細かい調整は出来ないので、刈った草は手で集め――」

魔王「中級広域風魔法!」ブン

フワー

勇者「なッ!?」

魔王「あの小屋の隣にまとめて置いても良いだろうか」フワフワ

勇者「え、ええ。・・・・・・あのー、魔法使えたんですね」

勇者(切らないで浮かばせるって、うちの魔法使い並のコントロールだぞ)

魔王「え・・・・・・? あ! いや、このくらい女の嗜みだよ」


34 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/13(土) 18:18:38 /yNUr4qk
勇者「な、なるほど」

勇者(世界は広いんだなぁ)

魔王「む、木の周りの草は刈ってないのか?」

勇者「ええ、間違って切ったら大変ですからね」

魔王「で、では今度こそ鎌の出番か?」ドキドキ

勇者「普段は下級魔法を使うんですけど・・・・・・ええ、今日は鎌を使いましょう」ニコ

魔王「おお! よし、私が刈るぞ!」

勇者「僕は袋に入れていきますね」

炎トカゲ「キャア!」ボオォ

魔王「ほう、最後は君が燃やすのか」ニコ

勇者「よく分かりましたね」

魔王「? だから、これがそう言っているではないか」

勇者「ははは、そうでしたね」


35 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/13(土) 19:06:06 dv6Cp.b6
まってた乙。


36 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/13(土) 19:43:35 /sBB92XI
トカゲさん可愛い


37 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/14(日) 11:40:38 bonpGNj6
うひょー



38 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 19:32:46 offrTdjA
夕方、果樹園

パチパチ、パチ

魔王「・・・・・・」

勇者「珈琲どうですか?」

魔王「え? ああ、すまない」スッ

勇者「よく燃えてますね」ズズズ

炎トカゲ「キャア!」ボォォ

魔王「そうか、君も楽しいか」ニコ

勇者「・・・・・・疲れました?」

魔王「うむ。良い具合の疲労で、こう、まったりとだな」

勇者「分かりますよ」ニコ

魔王「・・・・・・良い日だ」

勇者「お客さんが居るから、いつもより張り切って燃やしてるみたいですよ」

魔王「いや、それもそうだが・・・・・・今日は良い一日だった」

勇者「ああ、なるほど」ニコ


39 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 19:33:19 offrTdjA
パチパチ、パチ

魔王「なんといえばいいのだろうな。・・・・・・これは・・・・・・そう、楽しい」ボソ

勇者「ええ、僕もです」

魔王「・・・・・・楽しいぞ、今日は」

勇者「僕も楽しいですよ」

魔王「うむ、私は楽しいのだ」

勇者「ははは、聞こえてますよ」

魔王「そうか」ニコ

魔王「君、あそこに燃え残りがあるぞ」

炎トカゲ「キャア!」ボォォ

魔王「うむ。そう、そこだ」

勇者「・・・・・・本当に不思議な方ですね」

魔王「ん?」


40 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 19:34:17 offrTdjA
勇者「どうして怖くないのですか?」

魔王「なにをだ?」

勇者「魔物です」

魔王「馬鹿なことを。恐れる必要などないではないか」

勇者「どうして?」

魔王「同胞だからだ」

勇者「? 同じ大地に生きる、という意味ですか?」

魔王「? まあ、そうだ」

勇者「・・・・・・みんながそうだったら、戦争なんてしなくて済むんですけどね」

魔王「戦争はなくならんさ。人間が魔物を殺す限りは」

勇者「魔族が人間を殺すからでしょう?」

魔王「どちらが悪でどちらが正義だろうとなにも変わらんよ。戦争は終わらない」


41 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 19:34:54 offrTdjA
勇者「その通りですね。だからこそ、魔王を殺さないと」

魔王「勇者さえ死ねば、この戦争は」

勇者「え?」

魔王「え?」

勇者「勇者、ですか?」

魔王「魔王を殺す・・・・・・?」

勇者「・・・・・・あ」

魔王「・・・・・・」

勇者「あの・・・・・・もしかして僕たち、大きな思い違いをしていませんか?」

魔王「あ、ああ」

勇者「・・・・・・あなた・・・・・・魔族、なんですか?」


42 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 19:36:24 offrTdjA
魔王「そうだ」

勇者「あ、あ・・・・・・そうか、だから」

魔王「・・・・・・君は、人間なのか?」

勇者「・・・・・・はい」

魔王「・・・・・・そうか」

パチパチ、パチ

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・」

勇者「・・・・・・酒、酒持ってきます」

魔王「うむ。・・・・・・キツイやつを頼む」

勇者「ええ」スタ、スタ

魔王「・・・・・・ふう」

魔王(なんだ、これは)


43 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/14(日) 19:42:44 Evx42T5Y
気づきおった


44 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/14(日) 20:03:30 7MwIqjhI
ここからがおたのしみゾーン!!

乙。


45 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/14(日) 21:01:03 K09KQmy6
まぁバレる時はバレるよね


46 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/14(日) 22:31:15 3LXRBKMk

凄く続きが気になります


47 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 23:02:37 offrTdjA

勇者「ど、どうぞ」

魔王「あ、ああ」スッ

勇者「・・・・・・」ゴクゴク

魔王「・・・・・・」ゴクゴク

勇者「ふう・・・・・・もう一杯ですか?」

魔王「いや、大丈夫だ」

勇者「はい」

魔王「・・・・・・何度も聞いてすまない。君は、本当に人間なのか?」

勇者「はい、人間です」

魔王「・・・・・・そうか」

勇者「・・・・・・」

魔王「もう一杯頂いても良いだろうか」

勇者「ええ」


48 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 23:03:10 offrTdjA
魔王「んく、んく・・・・・・ふう」カラン

勇者「・・・・・・あの」

魔王「なんだ」

勇者「これは、つまり・・・・・・敵に遭遇したってことで良いんでしょうか」

魔王「あ、ああ、そうだろうな。お互いに」

勇者「・・・・・・じゃあ、戦闘ですか?」

魔王「・・・・・・うむ」

勇者「・・・・・・あの」

魔王「な、なんだ」

勇者「先、どうぞ」

魔王「いや、君が先に攻撃をしてくれ」

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・」


49 : ◆rPuHN1dQX2 :2017/05/14(日) 23:04:16 offrTdjA
勇者(まずい・・・・・・)

魔王(切り替えが追いつかない・・・・・・)

勇者「すいません、僕から手を出すのはちょっと」

魔王「そう言わないでくれ。私も困っているのだ」

勇者「・・・・・・」

魔王「・・・・・・」

炎トカゲ「キャア!」ボォォ

魔王「おお! やれ、炎トカゲ」

勇者「あ、それはズルいですよ!」

炎トカゲ「キャア?」

魔王「なにを言う! 親でも相手は人間なのだぞ!?」

勇者「よし、やるんだ炎トカゲ!」

魔王「馬鹿め、同胞に火を吹く魔物など居ない!」

勇者「・・・・・・ちょっと休戦しませんか」

魔王「・・・・・・ああ」


50 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/15(月) 01:29:48 g7bpaboc
や、やりづれぇーw


51 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/05/15(月) 02:27:59 ZrFPMDYc
どっちかが動けばいいんだけど、ここまで親しくなっちゃったからな...無理だよな


52 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2017/07/18(火) 21:14:58 vWl4M1Po
まだか


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