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勇者「俺は生命に呪われし勇者だ」
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〜〜始まりの街 城内〜〜
王「勇者よ、そなたは今この時より成人の儀を終え、勇ましき者としその身を捧げ魔王討伐に出で発つ事を命ず」
王「宜しいか?」
勇者「あぁ、問題ない。」
王「では、無事に帰って来ることを願っておるぞ」
勇者「あぁ、出来たらな」
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〜〜始まりの街 城下街〜〜
勇者「…やっと始まるのか、この日をどれだけ待ったか」
勇者「それにしてもこの街も貧乏なんだな…人も居なけりゃ店もやってねぇ」
勇者(儀式を済ませた後、王から貰ったのは円にもならない様なジャリ銭だけ。これでどうしろってんだ)
ー俺はふと憔悴し、金を道に撒いた
勇者「元々人から貰ったモノは好かねぇんだよ、いらね」
ーその時、男が撒いた金に飛び付いてきた
男「お前、この金いらねぇのか?」
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勇者(なんだよこいつ、汚ぇ格好しやがって…)
男「なんだ、そのゴミを見る目はよぉ俺は元々城で兵士をやってたんだぜ?」
勇者(んなもんしらねぇよ)「あ?他人が捨てたもん血眼で掻き集めてる奴ァ、ゴミじゃねぇのかよ」
男「テメェ、喧嘩売ってんのか?あ?」
勇者「そんなもん、お前に売るくらいなら商人にでも売るぜ、ゴミ」
男「このガキ…!ぶっ殺す!」
勇者「おーおー、血の気が凄いねぇ…やれるもんなら殺ってみろよ」
男「泣いて詫びても、遅いぞ!」
ー男はどこかに隠し持っていた短剣をいきり立ち、突き付けてきた
勇者「チッ、そんなもん持ってたのかよ…」
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ー油断していた、腹部の激しい傷み…
勇者「刺されたか…」
男「ギャハハ!俺が何も持っていないと思ってたのかよ!ゴミはテメェだゴミ!」
勇者(ガキかよ…)「よく見ろよ…俺はまだ生きてるぜ…笑いたきゃ…殺してから笑え」
男「あぁ?テメェみたいなガキ殺してなんになるんだよ?…いや、テメェの身ぐるみ剥いで売っぱらうか!」
ー男が襲いかかってきた
勇者(こいつが馬鹿で良かった…)「フッ…」
男「何笑ってんだよ!覚悟は出来たか!」
ー男が身体の上に乗って来る
勇者「あぁ」
男「死ねぇ!」
ー男は首に手をかけ締め上げて来た
勇者「死ぬのは、お前だよッ!」
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ー俺は短剣を逆手に持ち、男に突き刺した
男「て、めぇ…それ…」
勇者「あぁ?これか?気が付いたら俺に刺さってたからな」
ー俺は男に刺さっている短剣を引き抜き、蹴り飛ばした
男「がっ、ぐぁっ…」
勇者「お前ホントに街の兵士だったのかよ、雑魚すぎて敵の数にも入らんわ」
男「ぐっ、くっ、クソがっ!」
ー男が傷みにのたうち回る
勇者「短剣は刺したら抜く、敵に致命傷を与える戦場の基本だろ?」
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男「テメェ、何者だ…っ」
勇者「そうだなぁ…何者かって言われると勇ましき者、勇者ってところかな」
男「!!」
ー男が驚いた様な顔で、俺を見てくる
男「こんな…ガキが…か」
勇者「あぁ、こんなガキがだよ」
男「…」
男「」
ー男は絶望した顔で、息絶えた。
勇者「はぁ…30分は無駄にしたな、しかもこんな事があって、ましてや死人が出たのに誰も居ないとはな」
勇者(つまんねぇな)
勇者「一旦帰るか…」
ー俺は短剣をその場に捨て、誰も居ない城下街を去った
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乙
魔王以前の問題だな人類
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〜〜始まりの街 外れの洞穴〜〜
勇者「はぁ…街であれじゃ世も末ってやつだな」
勇者(後でまた、街に戻って酒場でも行くか)
勇者「くっそ…もう治ってやがる…気色悪ぃ…」
ー俺は短剣を刺された筈ねその場所に手を触れる。
しかし、そこには傷は無くただ衣服に穴が開いてるだけだった…
勇者「生命の女神の祝福ね…」
ーこの世には様々な女神が存在する。
闘いの女神は、力の象徴。
博愛の女神は、守りの象徴。
勤勉の女神は、知恵の象徴。
そして、生命の女神は…
本来なら存在しない。
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ー他にも女神達は存在している、日常に関わる女神達だ。
豊穣の女神達。太陽の女神、変風の女神、四季の女神、雨雲の女神。
こちらにも、生命の女神は存在しない。
生命の女神とは一体…
勇者「ま、難しい事はわかんねぇや」(祝福とは言われてもな)
勇者「俺にとっちゃ何をしても死ねない地獄の呪いだ…くそっ」
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これは期待
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勇者「少し休んでから街に戻るか…」
ー俺は椅子に腰掛け、一息ついた。
勇者(街に行って、酒場で旅を同行してくれる仲間を見つけないとな…)
ー魔王討伐の旅。決して楽ではない…
街はほぼ閉鎖状態で外部との接点が無い
勇者「飢えや欲ってのは、人間を人間じゃなくするのかもしれないな…」
ー街で襲いかかってきた男、あいつは金に飢えてた。
恐らく、食い物か酒を買う為だろう。
勇者(もうこの街も終わりだろうな)
ーそんな事を考えながら俺は、眠りについてしまった。
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教会での復活の儀式を省略してノンタイム回復復活か…
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ー物音がする…近いな。
5メートル、3メートル…いや、もっとか。
勇者「誰だ、人の家に無断で上がり込みやがって」
男2「いやぁ、家ってかどう見ても洞穴でしょ」
勇者(左右の腰に剣、街の者か?…)「お前、何しに来た」
男2「俺の名前は盗賊、別にお前を殺しに来たり金品かっぱらおうって訳じゃねぇよ」
勇者(盗賊…か武器を構える様子もないし、事実の様だな)
盗賊「雨降って来ちゃってさぁ、雨宿りさせてくんね?」
ーそういうと、盗賊は外を指差した。
雨が轟々と降っている。
盗賊「ありゃりゃ、こりゃ豪雨だねぇ…女神様が泣いてるのかなぁ?」
ー盗賊が俺を見ながら、少しニヤついた。
盗賊「まるで誰かが死んだ事に嘆き、血を洗い流してるみたいだなぁ」
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ー冷たい眼差しを送られる。
まるで腹の底を握られた感覚になる。
勇者「お前…何が言いたい」
盗賊「そうだなぁ…言ったら仕事の代行ありがとさん、晴れて殺し屋おめでとう。ってか?」
勇者(代行?殺し屋?何言ってるんだこいつは)
盗賊「あいつは、俺が狙ってた奴でねぇ探してたんだよ」
勇者「そして、俺が殺したのをどこかで見た…って事か?」
盗賊「正確には違うが…ま、そういうこったな」
ー盗賊はケタケタと掠れた声で笑った。
勇者「で、お前は俺に何がしたい」
盗賊「お、そうだったなぁ」
ー盗賊が、腰に下げている両方の剣を抜いた。
勇者(何を要求してくる…?)
盗賊「お前の旅の仲間に入れてくれ!」
ー盗賊はそういうと、両方の剣を俺に差し出してきた。
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あ
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勇者「…は?」
ー俺は、目の前の奴が何を言ったのか理解が出来なかった。
勇者「今なんて言った?」
盗賊「だから、仲間に入れてくれって!お前、勇者として魔王討伐の旅に出るんだろ?」
勇者(こいつ…どこまで知ってるんだ…)「あぁ、そうだな」
盗賊「なら、旅の仲間に入れてくれ!ちょうど良い機会だろ?」
勇者「何が目的だ?名声や富はさっきの事を王に言えば手に入るぞ」
盗賊「それじゃあつまんねぇよ!で、どうすんだ」
勇者(変な奴だな…ま、手間が省けるか…)
ー俺は、差し出された剣を受け取った。
勇者「わかった、今日からお前は俺の旅の仲間だ。」
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あくしろよ
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盗賊「おお!入れてくれるのか!」
勇者「いや、お前の場合は俺が根気負けするまで粘るだろ…」
盗賊「えっ…い、いやそんなこと無い」
勇者「そうか」
盗賊「お、おう」
ー盗賊は気が動転しているのか、逆さに剣を腰に差した。
勇者「ま、とりあえず雨が上がるまで待機だな」
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盗賊「向こう側の空は白んでるから、もうすぐ晴れるな…」
ー盗賊は外をずっと眺めている。
勇者「なぁお前に聞きたい事があるんだが」
盗賊「ん?なんだ?」
勇者「俺があの男を殺したとき、お前はどこに居たんだ?」
盗賊「あぁ、その事か」
ー盗賊は外を眺めたまま、不意に姿と気配を消した。
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勇者「消えた⁉︎」
ー俺がたじろいでいると、盗賊が姿を現した。
盗賊「これは恐らくだけど、俺にしか使えないハイド呪文だ」
勇者(ハイド…?)
盗賊「一時的に存在を消す呪文だ。」
勇者「聞いた事無いな…」
盗賊「そりゃそうだな、俺が作ったんだから」
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