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アマテラスさんちに纏わる兄弟喧嘩エピソードはもはや伝統芸能レベル
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-アマテラスとスサノオ編-
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むかしむかしのことです。
黄泉の国から帰ってきたイザナギが、三柱の神様を生みました。
その三柱の神様は、それぞれアマテラス、ツクヨミ、スサノオと呼ばれ、三貴神として後世まで語り継がれています。
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イザナギ「はーい、じゃあ今からお前たちに統治してもらいたい場所を発表しまーす!イェーイ!!」
アマテラス「私に世の統治などできるでしょうか……」
スサノオ「父ちゃん俺通勤が楽なとこがいい! できれば実家(高天原)の近くで!!」
ツクヨミ「私は別にどこでも構わないが」
アマテラス「まぁまぁ2人とも、まずはお父様の話を聞きましょう……」
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イザナギ「じゃあまずはねー、一番しっかりもののアマテラスに高天原任せちゃう!」
アマテラス「わ、分かりました」
スサノオ「えー! いいなー姉ちゃん、在宅勤務みたいなもんじゃん!」
ツクヨミ「ま、姉上なら安心だな」
スサノオ「父ちゃんは姉ちゃんを猫かわいがりしすぎだよ!!」
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イザナギ「だって一番しっかりしてるんだもん。それに兄弟の中じゃ一番無害そうだし」
スサノオ「ぶーぶー!!」
ツクヨミ「スサノオと一緒にしないでください、父上」
スサノオ「それどういう意味だよ!」
イザナギ「はい、じゃあ次はツクヨミね。ツクヨミには滄海原の統治を任せます!!」
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ツクヨミ「滄海原か……ククク、夜を統べるとはまさにこの私にふさわしい……」
スサノオ「父ちゃん大丈夫かよ。ツクヨミって基本こんな感じだぜ?」
イザナギ「うん、だから目の届く範囲でちょっと距離を置いてみようかなって」
スサノオ「なるほど」
ツクヨミ「ククク……」
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スサノオ「で、俺は!?」
イザナギ「あーお前はねー……えー、海」
スサノオ「海!?」
イザナギ「海」
スサノオ「太陽→月ときて、海!?」
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イザナギ「不満か?」
スサノオ「だって海とか超遠いじゃん!! もう内陸県とかそういうレベルを超えて遠いじゃん!! 帰省するのも大変だし!!」
イザナギ「いやー、もうお前もそろそろ神としての自覚持った方がいいよ。独り立ちしよう独り立ち」
スサノオ「何それ!? あっ、これひょっとして遠回しに絶縁されようとしている!?」
イザナギ「ハハハ」
スサノオ「や、やめろよその乾いた笑い声! 目が笑ってねーよ!!」
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アマテラス「まぁまぁ……もう高天原に帰ってこれなくなるわけではないのですから、ね?」
スサノオ「姉ちゃんは高天原勤務だからそんなこと言えるんだー! ……あっ、そうだ!」
イザナギ「ん?」
スサノオ「どうせなら俺、母ちゃん(イザナミ)のいる根の国がいい!!」
イザナギ「やめとけ……それだけはやめとけ」
スサノオ「なんでよ」
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イザナギ「実はお前らが生まれるちょっと前にな。父さん、母さんに会いに黄泉の国まで行ったんだよ」
スサノオ「マジかよ」
ツクヨミ「父上は見かけによらずアクティブだな」
イザナギ「そりゃお前、昔は全国飛び回って国やら神やら息をするように産んでたんだからな!」
アマテラス「それで、お母様には会えたのですか?」
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イザナギ「いや……それが、腐り果てた死体を見られた母さんがブチ切れて、すっごい勢いで追いかけてきた」
アマテラス「えぇ……」(困惑)
スサノオ「女心ってよく分かんねーな」
ツクヨミ「スサノオには一生分からないと思うよ」
スサノオ「うっせーお前なんて性別すら不明じゃねえか」
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イザナギ「いやほんと怖かったマジ怖かった……あんなに怖い思いしたの父さん初めて。もうありとあらゆるもの母さんに投げつけながら逃げてきたもん」ガクガク
スサノオ「子供か」
イザナギ「最終的には黄泉比良坂に岩置いてなんとか逃げきったんだけどさ」
ツクヨミ「それ本気のやつではないですか」
イザナギ「したら母さん、岩の向こうからな。『お前の国の子を毎日1000人殺してやる!!』って叫ぶわけ。もう超怖ぇーの」
アマテラス「そ、それほど怖いお方なのですね、お母様は……」
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イザナギ「で、父さんも売り言葉に買い言葉でな。『じゃこっちは毎日1500人産んでやるー!バーカバーカ!!』って煽ったら母さんすごく怒ってさ。岩ちょっと動いてたから全力でダッシュして逃げてきた」
スサノオ「どこのイタズラ小僧だよ」
イザナギ「だからほんとよした方がいいよマジで。ていうか、アマテラスならまだしもスサノオとか会わせたら本当高天原が滅びそうだからやめて」
スサノオ「どういう意味だよ」
イザナギ「そのままの意味だよ!」
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スサノオ「よし決めた! 俺は根の国に行く! 海の神様なんてやってられるか!バーカバーカ!!」
イザナギ「なっ、バカやめろ!!」
スサノオ「父ちゃんが止めても俺は行くぜ! どうしてもダメっていうなら泣いちゃうぞほらほら! うえーん!!」
アマテラス「よしよし、スサノオ泣かないで……」ナデナデ
イザナギ「そんなウソ泣きが通用するか! もしお前が母さんの前で粗相でもしたらとばっちり食うのは父さんなんだぞ!! だから本当やめろバカ! 本当やめろバカ!! 大事なことなので2回言いました!!」
ツクヨミ「父上必死だな」
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イザナギ「もしどうしても行くっていうなら、お前は高天原から追放だー!!」
アマテラス「お、お父様……それはさすがにスサノオが可哀そうです……」
イザナギ「神様でも怖いものは怖いんだよ! ……神様でもカミさんには勝てねーんだよ!!」
ツクヨミ「神とカミをかけたわけか……急に思いついて言いたくなったんだな、父上」
スサノオ「でも滑ってるぜ。父ちゃん」
イザナギ「やめろよ恥ずかしいだろ! 冷静に指摘するなって!!」
アマテラス「……」←笑いをこらえてる
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こうして、スサノオは高天原を追放されることとなりました。
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スサノオ「ていっ! どりゃあっ!!」ブンブン
ツクヨミ「何をしている?」
スサノオ「ん? 根の国に行くんだからさ、やっぱちょっとぐらいは! 身体を鍛えとかねーと! でやぁっ!!」ブォン
ツクヨミ「それで矛を振り回しているのか。相変わらず脳筋だな」
スサノオ「うっせー!」
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ツクヨミ「というかそれ、父上と母上が国産みの折に使っていた矛だろう」
スサノオ「かっちょいーだろ?」ヘヘン
ツクヨミ「勝手に持ち出してきたのか」
スサノオ「いや、手ぶらで母ちゃんのとこ行くのもなんだなーって。護身用兼手土産みたいな?」
ツクヨミ「手土産に離縁した夫と使ってたもの持って来られて嬉しいのだろうか……むしろ気まずい思いをすると思うのだが……」
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スサノオ「よし……じゃあ、ボチボチ行くわ!」
ツクヨミ「ああ。気を付けてな」
スサノオ「ツクヨミも、滄海原行っても頑張れよ!」
ツクヨミ「フッ、言われるまでもない」
スサノオ「あっ、そうだ。出る前に姉ちゃんとこにも顔出しとくか」
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……
アマテラス(スサノオ、大丈夫かしら……心配だわ)ポケー
アマテラス(ツクヨミはともかく、あの子は私がいないと何もできないから……)ポケー
侍女A『アマテラス様、大丈夫かしら』ヒソヒソ
侍女B『きっと弟君のことでも考えているのでしょう』ヒソヒソ
侍女A『アマテラス様って基本ブラコンよね』ヒソヒソ
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侍者「アマテラス様ァ!!」ドタドタ
侍女B「どうしたのです、騒々しい」
侍者「ス、スサノオ様が……!!」
アマテラス「えっ、スサノオ!? スサノオがどうかしましたか?」
侍者「ぶ、武器をもって高天原に攻め込んでまいりました!!」
アマテラス「ええっ!?」
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スサノオ「これで高天原も見納めかー……お、あれが姉ちゃんのいる御殿だな」
……
侍者「……ご覧ください。あのように、矛を持たれて」
アマテラス「そ、そんな……あれはお父様が国産みの折にお使いになっていた矛……!」
アマテラス「ほ、本気なのですねスサノオ……うっ、うっ、うっ……」シクシク
侍者「ア、アマテラス様……お気持ちはお察しいたしますが、まずはスサノオ様を迎え撃つ準備をなさらねば!」
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アマテラス「まさか日の神になって早々、最愛の弟に矛を向けることになるなんて……」
侍女A『いましれっと最愛の、って言ったわよね?』ヒソヒソ
侍女B『ブラコンの為せる業ね』ヒソヒソ
アマテラス「す、すぐにスサノオを迎え撃つ準備をしなさい……! ううっ」シクシク
侍者「はっ!」
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……
スサノオ「おーい。姉ちゃんいるかー?」
侍者「止まられよ!!」
スサノオ「うぉ、な、なんだよ!?」
アマテラス「それより先に進んではなりません!!」
スサノオ「ね、姉ちゃん?」
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アマテラス「スサノオよ……なぜ高天原に攻め込もうなどというのです!」
スサノオ「えっ」
アマテラス「お願いだから昔の可愛いくて優しかった頃のスサノオに戻って!!」
スサノオ「な、何が?」
侍女A『可愛い頃なんてあったのかしら?』ヒソヒソ
侍女B『鬼も十八番茶も出花よ』ヒソヒソ
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スサノオ「いや……俺はただ、根の国行く前に姉ちゃんに挨拶しとこうと思っただけなんだけど……」
アマテラス「へっ?」
侍者「アマテラス様、騙されてはなりません。大体、挨拶をするだけだというのに何故武器を携えてくる必要があるのです?」
アマテラス「あ、いや……でもあの子、基本的にそういうところありますから……」
侍者「なんでそこまで全面的に信用してるんですか!!」
侍女A「ブラコンだからでしょ」
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アマテラス「スサノオ、その矛は?」
スサノオ「あ、これ?かっこいいだろー。父ちゃんの部屋からかっぱらってきた!!」
侍者「そ、その矛を使って高天原に攻め入るつもりなのでは!?」
スサノオ「なーに言ってんだよ。こちとらこれから天外魔境ともいえる根の国に赴くんだぜ? 生身じゃ危険が危ないだろーが」
侍者「くっ……そのようなことを言って我々を油断させようと……」
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アマテラス「そうですね……スサノオはこれからそんな危険な場所に行かなければならないのですね……! ああ、なんて可哀そうに! 可哀そうなスサノオ!!」ホロリ
侍者「あっさり信じてるゥー!!!!」
侍女B「ブラコンって怖いわ」
スサノオ「なんだよ……じゃあこの矛を置いてからそっち行けばいいのか?」
アマテラス「ええ! さあこちらへいらっしゃい!」
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侍者「ア、アマテラス様! 身内とはいえ油断しすぎです!! もし懐刀でも忍ばせていたらどうするのですか!?」
アマテラス「え、えぇ……? でも相手はスサノオですよ……」
侍者「だからこそです! スサノオ様はイザナギ様の命に背いて高天原に留まりたいという意思を示していた! そこで、貴方を倒して高天原の統治権を奪い取るおつもりなのです!!」
アマテラス「で、でもスサノオですし……」
侍者「えーいラチがあかねぇ」
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スサノオ「おーい、もうそっち行っていいかー?」
侍者「スサノオ様!貴方には本当に高天原に攻め込むつもりはないのですか?」
スサノオ「さっきから攻め込むとかなんとか……お前ら一体何言ってんだ?」
アマテラス「スサノオ……彼らは貴方が私を倒して高天原を乗っ取ることを画策しているのではないかと疑っているのです」
スサノオ「はぁ? じゃ、どーすればその疑いが晴れるんだよ?」
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アマテラス「スサノオ。その疑いを晴らす為、貴方にはこれから私と宇気比(誓約)を行ってもらいます」
スサノオ「はぁ」
アマテラス「さあ、その十拳剣を私の元へ」
スサノオ「は? 何言ってんだ姉ちゃん。俺が持ってるのは剣じゃなくて矛……」
アマテラス「持っているじゃありませんか立派な剣が……ほら、ここに……ほら、ね? ほら」ハァハァ
スサノオ「えっ、ちょ、待っ」
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こうしてスサノオはアマテラスの疑いを解くために、宇気比(誓約)を行いました。
ここでは互いのモノを交換し、それによって生まれた子の性別で事の真偽を判断したと言われています。
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アマテラス「ふぅ……スサノオ。お父様には内緒で、私が貴方を高天原に居続けられるように計らいましょう。ですから、しばらくこの御殿に留まりなさい」ツヤツヤ
スサノオ「」グッタリ
侍者「怖ぇ……神様って怖ぇ……」ガクガク
侍女A「よくもまあ姉弟同士で……」
侍女B「ずっとこの時を狙ってた感あったわね」
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それからしばらくの間、スサノオは高天原に住み続けることになります。
アマテラス「いいですか? お父様に見つからないように、この御殿から離れてはいけませんよ? もし逃げ出そうとしても、八百万の神々が私の元に貴方を連れてくるでしょう」
スサノオ「うぐぐ……」
侍女A『これもう軟禁よね』ヒソヒソ
侍女B『ヤンデレのブラコンとか手の打ちようがないわ』ヒソヒソ
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スサノオ「こ、こんなつもりじゃなかったのに……こんな狭いところに閉じ込められてたら窮屈でしょうがねえ!!」
スサノオ「しかも姉ちゃんは父ちゃんの目が届かないことをいいことに毎晩俺に迫ってくるし……」ゲッソリ
スサノオ「どうしよう……」
スサノオ「……」
スサノオ「そうだ!!」ピコーン
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……
侍者「ふぅー、やっと田んぼの畔切りが終わったー。さーて一息入れるとするか……」
スサノオ「畦道ドーン!!」バキバキィ
侍者「ななな! なんてことを!!」
スサノオ「ワハハ!!」
侍者「ぐぬぬ、アマテラス様の弟であるのをいいことに好き勝手しよってからに……! アマテラス様にチクってやる!!」
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アマテラス「スサノオが田の畔を壊した?」
侍者「そうなんです。それはもう豪快に」
アマテラス「きっとスサノオには何か考えがあるのでしょう」
侍者「えぇ……」
スサノオ(チッ……これぐらいじゃまだ足りないか)
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スサノオ「う〜ん……」ムリムリムリ
侍女A「」
侍女B「」
スサノオ「もう一巻で……記録更新だ……」ミチミチミチ
侍女A『ちょ、ちょっと! なんでこんな厠でもないところでウ○コしてんのよ!!』ヒッソォー!
侍女B『この姉弟ほんと狂気孕んでる……』ヒッソォー
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アマテラス「……えっ、スサノオが御殿の中で粗相を?」
侍女A「はい」
侍女B「それはもう立派な三段重を……」
アマテラス「き、きっとスサノオには何か考えがあるのでしょう!」
侍女A「えぇ……」
侍女B(どんな考えだよ)
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アマテラス「と、ところで現場はどこです?モノはもう片付けてしまったのですか!?」ソワソワ
侍女A「なんでちょっとうれしそうなんですか……」
侍女B「引くわー……」
スサノオ(こ、これでもダメなのか……)ガックシ
いい加減スサノオは御殿での軟禁生活に嫌気がさしていました。そこで、悪戯をしてここから追い出されようと目論んでいたのです。
しかし、事あるごとに姉のアマテラスはスサノオの行いをかばうのでした。
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そんなある日、ついにスサノオは皮を剥いだ馬をアマテラスが機織りをしていた機屋の屋根に放り込むという暴挙に出ます。
馬の死体<ビタァァァァァァン!!
侍女A「ヒィアアアアァァァァァ!?」ヌプッ
侍女B「ひぅん!?」ビクビクッ
侍女A「あ……ご、ごめん……///」ドキドキ
侍女B「ちょ、ちょっと……! ぬ、抜いて……早く抜いて……んっ!」ピクピク
アマテラス「こ、これは一体!?」
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スサノオ「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
アマテラス「スサノオ!? スサノオ、気を確かに!!」
侍女A「ま、まさか驚いた拍子に梭がこんなところに挿入るなんて……///」ヌプヌプ ※梭=機織りに使う木製の道具
侍女B「あ、あんた絶対わざとでしょ……なんで驚いた拍子に梭が私の股間に飛んでくるのよ……ちょ、入れたり出したりすんな! あっ! はぅ!」ビクンビクン
馬の死体「」ブーン
侍者「何事かと思って駆けつけてみればまるで地獄絵図だ」
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アマテラス「スサノオ……」
侍者「アマテラス様。お分かりになったでしょう。このままスサノオ様を御殿にとどめておけば、もっとひどいことが起きないとも限りませんぞ」
アマテラス「ねぇスサノオ?なぜこんなことをするのですか?姉さんの事が嫌いになったのですか?いっしょに高天原にいるって約束したよね?だから私と宇気比をしたんだよね?なんで?なんでこんなことするの?こんなのってないよ?お姉ちゃんスサノオの事ずっと見てたけど最近スサノオのこと分からなくなってきちゃった……昔のスサノオに戻って?スサノオすき。だいすき。スサノオ、スサノオ、スサノオ、スサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオ……」ブツブツ
侍者「」ゾクゾク
こうしてアマテラスは、ショックのあまり天岩戸に引きこもってしまいました。
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アマテラスが岩戸で引きこもり生活を始めてからしばらくすると、高天原は闇に包まれ数々の禍が発生するようになりました。
ツクヨミ「お前……姉上に何したんだよ」
スサノオ「だって姉ちゃんが俺のこと閉じ込めて外に出してくれねーんだもん」
ツクヨミ「姉上はお前に対して過保護なとこあるからな」
侍者「いや過保護っていうレベルじゃねーぞ」
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侍女A「アマテラス様ー! 出てきてくださいアマテラス様ー!!」
<スサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオスサノオ……
侍女B「重症ね」
侍女A「わ、私たちもどこか一緒の洞窟に引きこもっちゃう?」モジモジ
侍女B「黙れよクレイジーサイコレズ」
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ツクヨミ「ふむ……出てこないか」
思金神「引いてダメなら押してみろという言葉がある。ここはひとつ、岩戸の前で祭を行ってはどうじゃろう」
侍者「祭……ですか?」
思金神「辺りが賑やかになれば、アマテラスも外の様子が気になって出てくるじゃろうて」
スサノオ「あーそうかもな。姉ちゃん縁日のわたあめとか好きだし」
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思金神「よし! そうと決まれば早速祭の準備じゃ!!」
伊斯許理度売命「じゃあ俺鏡作る!!」※八咫鏡
玉祖命「じゃ俺勾玉作る!!」※八尺瓊勾玉
太玉命「よっしゃ!! じゃあ俺占いの準備するわ!!」
侍者「この人たち、祭にかこつけてただ大騒ぎしたいだけじゃないのか……」
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こうして、天岩戸前で八百万の神たちによるドンチャン騒ぎが始まりました。
天宇受賣命「恋はスリル、ショック、サスペンス!!」
\ドッ!/
侍者「これ……大丈夫なんですかね? いろんな意味で」
ツクヨミ「ここまでやっといて大丈夫もクソもないでしょう」
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天宇受賣命「出てきませんねぇ」り
ツクヨミ「ダメか……」
天手力雄神「こうなったら力ずくでこじ開けますか?」
天宇受賣命「まぁ待ってください。私にいいアイディアがあります……えー、アマテラス様ー、聞こえてますかー」
<……
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天宇受賣命「アマテラス様ー、皆が外で騒いでるのが気になりません?」
<……
天宇受賣命「今ね、すっごいことになってますよー!スサノオ様がお召し物を全部脱いであられもない格好を……」
スサノオ「お、おいお前、なに勝手なことを……」
アマテラス「なんですって!!」ガラガラー
スサノオ「ゲッ! 出た!!」ビクッ
天手力雄神「こ、この岩戸を片手で!? マジかよ!!」ガーン
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アマテラス「どこ!?全裸のスサノオはどこなのですか!?」キョロキョロ
天宇受賣命「はいスサノオ様!脱いで!!」
スサノオ「な、何言ってんだお前!?」
アマテラス「服着てるじゃないですかあああああああああ!! うわあああああああああああ!!!」ユッサユッサ
スサノオ「ね、姉ちゃんやめ……そんな、揺らすな……ウプッ」ユッサユッサ
ツクヨミ「姉上、その辺にしとかないとスサノオ吐くぞ」
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天児屋命「まぁまぁアマテラス様。この鏡をごらんください」※八咫鏡
太玉命「この鏡を通してスサノオ様の姿を見れば、なんと裸になって見えるという優れものなのです」
天児屋命「さらに今ならこちら、相手に好きなポーズをとらせることのできる勾玉もついてお値段据え置きの19,800円!」※八尺瓊勾玉
スサノオ「お前らなんてもん作ってんだよ!!」
アマテラス「こ、これは神器として後世まで伝えるわ……」ツツー
ツクヨミ「姉上、鼻血出てるぜ」
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思金神「これで一件落着というわけじゃの」
ツクヨミ「これ以上ないってくらいハードランディングだけどな……」
スサノオ「いや全然落着してねぇよ!!」
思金神「それはそうと……ほい、これを」
スサノオ「ん? なんだこれ……って請求書!?」
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思金神「この祭の準備にかかった費用じゃ」
スサノオ「これ全部俺が払うのかよ!?」
ツクヨミ「まぁ事の発端はお前だしな」
スサノオ「俺悪くなくねぇ!?」
侍女A「この鏡と勾玉すっごい……私も欲しい……」ハァハァ
侍女B「私の身体で遊ぶな!!」グググ
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後世ではスサノオは数々の粗暴を働き、姉弟喧嘩の末アマテラスを天岩屋へ引きこもらせてしまった咎を受け、高天原を追放されたことになっています。
その後出雲に降り立ったスサノオは、当地を荒らしていた巨大な怪物ヤマタノオロチを倒し、生贄にされそうになっていたクシナダヒメを妻に迎えます。
また、このときヤマタノオロチの尾から出てきた草那芸之大刀(草薙剣)は、現在も三種の神器として現在に受け継がれています。
記録ではこの剣は一度高天原のアマテラスの手に渡った後、天孫降臨の際にニニギに授けられたと言われていますが……。
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……
スサノオ「残りの支払いだけど、こないだヤマタノオロチって怪物倒したときにドロップした剣じゃダメ?」
思金神「草薙剣か……ま、仕方がないのう」
スサノオ「よっしゃ! やっとローン完済したぜ! じゃ、俺はこれで……」
思金神「姉上には会っていかんのか?」
スサノオ「いや……俺が結婚したなんて姉ちゃんに知れたら、クシナダヒメの危険が危ない気がするからやめとくわ……」ゲンナリ
思金神「難儀な姉を持ったのう」
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-アマテラスとスサノオ編 おわり-
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非常にハイスピードで非常にコミカルで面白い
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三貴子は全員男性説があるけどそれはそれでホモホモしくなるからなんかヤダ
でも天岩戸でのアメノウズメストリップダンスの説得力は出るんだよなぁ
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パラパラを踊るウズメ
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要点しっかり押さえつつ笑わせに来てるのがすげえ
そういやスサノオってヤマタノオロチ倒すときに女装してたよな
ヤンデレブラコンに見つからなくてよかったな
-
乙
やっぱり噛み砕かれた神話って面白い
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-コノハナサクヤヒメとイワナガヒメ編-
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アマテラスらの騒動から数百年が経過した頃。
ニニギノミコトという神が葦原中国、つまり現在の日本を統治するために高天原から地上へ降臨することになります。
ニニギはアマテラスの子である天忍穂耳尊と栲幡千千姫命の間に生まれた子であり、アマテラスの孫にあたります。
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栲幡千千姫「大丈夫? ハンカチもった? ティッシュは? お金は落とさないとこに入れた?」
ニニギ「あーもう、子供じゃないんだから!」
天忍穂耳尊「母さんは心配性だなぁ」
栲幡千千姫「だって……ニニギがたった一人で葦原中国に行くのよ? トイレは済ませた? 向こうに着いたら生水には気を付けるのよ」
ニニギ「分かった分かった」
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天忍穂耳尊「じゃ、気を付けて行くんだぞ」
ニニギ「うん」
栲幡千千姫「ちゃんと高天原を出る前にお婆ちゃんの所へ顔出すのよ!」
ニニギ「分かってるって! じゃ、行ってきます!!」
栲幡千千姫「辛くなったらいつでも戻ってきていいのよ!!」
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……
ニニギ「ばあちゃん、きたよ」
アマテラス「よく来ましたね。さあこちらへ」
ニニギ「おじゃましまーす」
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アマテラス「さて……貴方にはこれから葦原中国を統治してもらうために、地上へ降りてもらいます」
ニニギ「高天原を出るのが初めてだからってさ。もう母さん心配しきりで」
アマテラス「栲幡千千姫には悪いことをしました……しかし、地上を治めることができるのはニニギ、貴方しかいないのです」
ニニギ「任せてよ!」
アマテラス「では、あなたにはこれを授けましょう」
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ニニギ「これは?」
アマテラス「これは八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣……三種の神器として、私が古くから守ってきたものです」
ニニギ「この鏡、なんか不思議な感じだ……向こう側が透けて見えるような……?」
アマテラス「神器ですから、迂闊に覗いてはなりませんよ」
ニニギ「は、はぁ」
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アマテラス「貴方が地上に降り立ちその地を統治し始めたら、この神器を以後の後継者に継承していくのです。そうすれば、国の安泰が守られることでしょう」
ニニギ「分かりました」
アマテラス「では、気を付けて行くのですよ」
ニニギ「うん。じゃ、行ってきます!!」
こうしてニニギは、葦原中国へ向け高天原を旅立つのでした。
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……
ニニギ「それにしても……この鏡は神器だから迂闊に覗くなってばあちゃん言ってたけど……やっぱり普通の鏡と何か違う気がするんだよなぁ」ウーム
栲幡千千姫「ニニギー!」
ニニギ「あ、母さん」
栲幡千千姫「おばあちゃんのとこ寄ってきた? せっかくだから、高天原の出口まで送ってくわよ」
ニニギ「別にいいって言ってるのに……ゲッ!!」
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栲幡千千姫「どうしたの?」
ニニギ(う、うわぁ……母さんが裸で写ってる)オエ
栲幡千千姫「ひょっとして……どこか具合でも悪いんじゃ!?」
ニニギ「い、いいから母さんはもう帰ってくれ! ここにいられるとトラウマになる!!」
栲幡千千姫「な、何よ……そんな言い方されると、母さんちょっと悲しい」ホロリ
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その後、地上に降り立ったニニギは、順調に葦原中国を統治し始めます。
そんなある日、笠沙の岬に赴いたニニギはそこで一人の美しい女性と出会います。
彼女の名は、コノハナサクヤヒメと言いました。
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ニニギ「僕と結婚してください!!」
サクヤヒメ「うれしい……」ポッ
大山祇神「うちの娘が天孫に見初められるとは!」
天孫という皇太子をはるかに上回るチート級の超VIPステータスをもつニニギに娘が見初められたことを、彼女の父である大山祇神もまた大層喜びました。
そして、大山祇神はニニギの元にサクヤヒメとその姉であるイワナガヒメの二人の娘を嫁がせることにしたのです。
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サクヤヒメ「ふつつか者ですが……」
イワナガヒメ「どうぞよろしく……」
ニニギ「へぇ、あなたがお姉さんのイワナガヒ……メ……」
イワナガヒメ「どうなさいました? ニニギ様」
ニニギ「……」ダラダラ
イワナガヒメ「ニニギ様?」
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その後、とある理由でイワナガヒメだけ親元の大山祇神の元へ送り返されてしまいます。
後世ではイワナガヒメの風貌が余りにも醜かったことがその原因と言われていますが……。
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イワナガヒメ「……」
大山祇神「なんたることを!!」
ニニギ「あの、本当にすみませんお義父さん……ですが、か、彼女の幸せのためにもですね……」
大山祇神「イワナガヒメを差し上げたのは天孫が岩のように永遠のものとなるように! サクヤヒメを差し上げたのは天孫が花のように繁栄するようにと誓約を立てていたからなのですぞ!!」
ニニギ「いや、あ、あの……」
大山祇神「イワナガヒメを送り返した今、貴方の寿命は相当に短くなるだろう!!」
因みに、一説ではこの呪いにより人間の寿命が短くなったとも言われています。
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時が流れて、現代。
イワナガヒメは山の神として各地で崇められ、特に山猟を生業とする猟師たちの間では篤く信仰されています。
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オコゼ「」
イワナガヒメ「……またオコゼが備えられてる」プルプル
イワナガヒメ「なによ! これって私に対する当てつけな訳!? 何が『山の神は醜いからより醜いものを捧げると喜ぶ』よ!」プンスカピー
イワナガヒメ「なんでそんな後ろ向きな理由で私が喜ぶと思うのよ!? ニートがホームレスみて安心してるのと同じ理屈じゃない!!」
イワナガヒメ「ムカツク!! ……でもオコゼは普通に美味しいから実は結構うれしいのよね」ヒョイ
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若者「うーん、この辺でいいか」
イワナガヒメ(ん? 人間の若者……って全裸!! この真冬の山で全裸!? 頭おかしいんじゃないの!?)
若者「……山の神様! お願いします!!」
イワナガヒメ(えっ、何が!?)
若者「俺を一人前の猟師にしてください!!」
イワナガヒメ「えぇ……」(困惑)
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若者「うわああああああ!! 神様! 神様!! 神様ァァァ!!!」カクカク
イワナガヒメ「あの、ちょっと」
若者「」ビクッ
イワナガヒメ「な、何やってんの?」
若者「なっ……こっ、この時期の山は女人禁制だぞ!! どこから入った!?」
イワナガヒメ「いや、どこから入ったっていうか……私がさっきからアンタが連呼してる山の神様なんだけど。ていうかアンタ全裸って……警察呼ぶわよ」
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若者「え? ……う、嘘だっ! 山の神様は醜女だって話じゃないか!! ちくしょう、こんな美人にチ○コ見られてたまるか!!」ササッ
イワナガヒメ「どういう精神状態よ」
若者「あ……でもひょっとして昔の基準だとこれで不細工なのかも……?」
イワナガヒメ「おい」
若者「というか、なんで神様が俺の前に? あっ、ひょっとして俺いま死にかけて夢見てる!? おぉ! なんというスノーマジックファンタジー!!」
イワナガヒメ「なんかめんどくさそうねコイツ」
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若者「本当に神様なのか……? あっ、恥ずかしい! オポンティーヌ見ないで!」キャー
イワナガヒメ「別にそんな寒さで縮こまったもの見ても何も思わないわ」
若者「……」ションボリ
イワナガヒメ「とりあえず、服着たら? 本当に死ぬわよ」
若者「服は麓の小屋に全部置いてきまんた」
イワナガヒメ「ははーんなるほど。取り返しがつかない系の変態か」
-
若者「じゃなくて! このへんの猟師衆の間じゃ、一人前になるためにはこの時期に素っ裸で山に入らないといけないんです!」
イワナガヒメ「なにその奇習」
若者「山の神に男根を捧げて山と一体化するっていう、まぁ簡単に言うと山とセックスして初めて一人前ってことですね」
イワナガヒメ「頭おかしい」
若者「でもあの、神話とか見てると神様サイドも相当なもんですよね」
イワナガヒメ「返す言葉もないわ」
-
若者「あの、本当に山の神様なんですか?」
イワナガヒメ「一応ね」
若者「なんか……伝承だとえらい不細工だって話なのに」
イワナガヒメ「それはアンタたち人間が勝手にそう思ってるだけだっつの」ビキビキ
若者「実際問題、独身ですか?」
イワナガヒメ「こいつ、グイグイくるわね」
-
若者「ちなみにこれ流れ的に、僕は貴方とセックスさせてもらえるんですよね?」
イワナガヒメ「なんでよ」
若者「山とセックスさせてくれるって! 約束だったじゃないですかァァァァァァァ!!」
イワナガヒメ「私はそんなことひとっつも言った覚えないんだけど」
若者「ちくしょおおおおおおおお!!!!!!!!」(血涙)
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サクヤヒメ「お、お姉さま……! ここにいらっしゃったのですね。ご無沙汰しております」
イワナガヒメ「サクヤ……? 何よ、今日は珍しい客が多いわね」
若者「え、アレも神様ですか?」
イワナガヒメ「あんまりアレとかぞんざいな扱いしてると罰当てるわよ」
サクヤヒメ「お姉さま……そ、そちらの方は?」
イワナガヒメ「麓に住んでる人間の猟師らしいわ」
サクヤヒメ(なんで全裸……?)
-
若者「お姉さまってことは、二人は姉妹なんですか?」
サクヤヒメ「え、ええ……」
若者「おー、系統は違うけど二人とも美人ですね!」
サクヤヒメ「そ、そんな……」テレテレ
イワナガヒメ「アンタ、人妻口説いてんじゃないわよ」
若者「あっ、妹さんの方はもう結婚なさってる……てことは、えっと、あの、なんていうかその、元気出してくださいお姉様! ファイトだよ!」
イワナガヒメ「オコゼのトゲ刺すわよ」ビキビキ
サクヤヒメ「な、なんだか面白そうな人間ですね……」
-
……
若者「ははぁ、なるほど。つまりお二人は一緒にニニギって神様のとこに嫁がれた、と」
サクヤヒメ「え、ええ……」
イワナガヒメ「で、私だけ追い返されてきたってわけよ」
若者「なんてもったいない! だったらイワナガヒメ様俺と結婚してくださいよ!!」
イワナガヒメ「嫌よ。ただの人間なんて私たち基準で言ったら実家暮らしのニート以下のド底辺だもの」
若者「キッツ! 山の神様めっちゃ辛辣! 泣きそう! ていうか泣いた!!」ポロリ
-
サクヤヒメ「……」ソワソワ
イワナガヒメ「ところでアンタ、さっきから何ソワソワしてんのよ?」
サクヤヒメ「いっ、いえ!あの……な、なんでも……」モジモジ
若者「分かった! トイレだ!!」
サクヤヒメ「ち、違いますっ!」
イワナガヒメ「アンタよくデリカシーがないって言われるでしょ」
-
サクヤヒメ「えっと……その……」モジモジ
イワナガヒメ「何よ。何か用があって来たんでしょ?」
サクヤヒメ「う……」
若者「ちなみに僕は一人前の猟師になりにきました」
イワナガヒメ「アンタには聞いてないわ」
-
サクヤヒメ「……」
イワナガヒメ「……」
サクヤヒメ「……」
イワナガヒメ「……はぁー」
サクヤヒメ「……っ!」ビクッ
-
イワナガヒメ「アンタね……アンタがいつまでたってもそんな態度だと、こっちまで辛気臭い気分になるじゃない」
サクヤヒメ「ご、ごめんなさい……」シュン
若者「えっ、今までの会話のどこにこんな気まずくなる要素があった!?」
イワナガヒメ「アンタはちょっとうるさい」
若者「ひょっとして二人は喧嘩してるんですか?」
-
イワナガヒメ「別に私は喧嘩してるつもりはないんだけど、その子がねぇ……今でも自分だけニニギ様に選ばれたことを気にして、私を腫れ物扱いするような態度ばかりとるのよね」
若者「へー」
サクヤヒメ「う、うぅ……」ビクビク
イワナガヒメ「こっちはもう気にしてないってのに……むしろそうやっていつまでも申し訳なさそうにウジウジされるのが一番腹立つわ」
サクヤヒメ「す、すみません……」グスッ
-
イワナガヒメ「ほら、そうやってすぐ泣くところとか」
サクヤヒメ「う、ううぅ……」シクシク
イワナガヒメ「アンタ昔からそうなのよね。そっちは気を使ってるつもりなのかもしれないけど、傍から見ると結局は自分かわいさにやってるようにしか見えないのよね。あざといっていうか。そういうの見てて分かるから」
サクヤヒメ「そ、そんなつもりは……」メソメソ
若者「女の喧嘩ってサバサバしてて怖ぇ」
-
イワナガヒメ「で? これ以上言う事がないなら私もう行くわよ?」
サクヤヒメ「ま、待ってください!! 実はその、私……」
若者「お姉さまのことが好きだったんです!」
サクヤヒメ「私と付き合ってください! ……って違いますっ!!」
若者「神様がノリツッコミした!!」
イワナガヒメ「めんどくせぇコイツ心からめんどくせぇ」
サクヤヒメ「実は私……っ、ニニギ様と喧嘩してしまったんです!!」
-
イワナガヒメ「……は?」
若者「へ?」
サクヤヒメ「さ、些細なことだったのですがその……趣味の事で口論になって、高天原を飛び出してきてしまって……」
若者「あ、そういや麓の小屋戻ったら酒あるけどもってきましょうか?」
イワナガヒメ「そうね。あとアンタついでに服着てきなさい。風邪ひくわよ」
サクヤヒメ「二人ともスルーですか!?」
-
イワナガヒメ「なーんで私が人んちの夫婦喧嘩に巻き込まれなきゃなんないのよ。アホくさ」
若者「夫婦喧嘩は犬も食わ……なんとやらって言いますよ」
イワナガヒメ「そこまで言ったのなら最後まで言いなさいよ」
サクヤヒメ「お願いします! お姉さましか頼れる人がいないんです!!」
イワナガヒメ「嫌よ」
-
サクヤヒメ「お願いします! お願いします!! お願いします!!!」ドゲザー
若者「神様が土下座してる……」
イワナガヒメ「全く……300年ぶりに私の所に顔を出したと思ったら、夫婦喧嘩で家を飛び出してきたなんて呆れてものも言えないわ」ハァ
サクヤヒメ「わ、私だって200年かけてニニギ様に分かってもらおうとしたんです!!」
若者「さすが神様。センチュリーな単位バンバン飛び出してくるな」
-
イワナガヒメ「そもそもなんで喧嘩なんてしてんのよ」
サクヤヒメ「そ、それが……これを」
イワナガヒメ「何よこれ」
サクヤヒメ「このところニニギ様が下界に降りて、度々入手されている書物です……」
若者「これ薄い本やんけ!!」
-
サクヤヒメ「ま、毎年お盆の終わりと大晦日時期になると、下界の見回りと称してこのような本を大量に……」
若者「神様コミケきてんかよ! しかも夏冬両方!?」
イワナガヒメ「くっだらない……あーもう、余りにくだらなすぎて腹立ってきた」ムカムカ
サクヤヒメ「お、お姉さま! 落ち着いてくださいお姉さま!!」
若者「いやでもこれ人間目線から見てもかなりくだらない話っすよ……」
サクヤヒメ「今回だけは……今回だけはお姉さまに言ってもらわないと……!」
-
イワナガヒメ「つうかアンタねぇ……確か前に来た時も同じようなこと言ってたでしょうが」
若者「えっ!? 旦那さん初犯じゃないの!?」
サクヤヒメ「そ、その……ニニギ様は昔から春画などの類を集めるのが好きで……」
若者「分かる」
サクヤヒメ「ニニギ様のお母様の栲幡千千姫様は躾に厳しい方でしたので、どうやらその反動らしいのですが……」
若者「へー」
-
イワナガヒメ「で、300年前にも同じようなことを相談されて、私がブチ切れ金剛ってわけよ」
若者「神様がブチ切れるとかものすごいことになりそうですね……」
サクヤヒメ「お姉さまがお怒りになられると、富士山が噴火してしまうのです……」
若者「ゲッ、ひょっとして300年前の宝永大噴火って……」
サクヤヒメ「す、すみません……その時ですね」
若者「春画が起因で富士山大噴火しちゃうのかよ! ちくしょう、なんて世の中だ!!」
-
イワナガヒメ「大体、ニニギ様だって男なんだからそういう趣味の1つや2つあるに決まってるでしょ。大目に見てあげなさいよ」
若者「そうっすよ。妻に隠れてエロ本集めなんて可愛いもんじゃないですか」
サクヤヒメ「だ、ダメです!! ただ読むだけならまだしも、最近はうつろな目で『あー、神の力使っても二次元の世界には行けないのかー。こんな世界なくなっちゃえばいいのにねフヒッヒヒヒ』とか呟いてるんですよ!?」
若者「うわぁ」
イワナガヒメ「うわぁ」
-
サクヤヒメ「し、しかもこの間なんて、火須勢理ちゃんがニニギ様の寝台の下に隠してあった本をこっそり読んでいたんです!!」
若者「火須勢理?」
イワナガヒメ「サクヤんとこの真ん中の子よ。要するに私の甥っ子ね。ていうか火須勢理もいい歳なんだからちゃん付けはやめなさいよ」
サクヤヒメ「こ、このような有害図書が家にあっては、いつまでたっても火須勢理ちゃんがひとり立ちできません!!」
若者「火須勢理ちゃんなにニートなの?」
イワナガヒメ「兄(火照命)と弟(火遠理命)は自立して暮らしてるんだけどねぇ……」
-
サクヤヒメ「おねがいします!お姉さまからニニギ様にひとこと言ってください!!」
イワナガヒメ『め ん ど く せ ぇ』
若者「脳内に直接!?」
サクヤヒメ「もはや口を動かさずに神通力を使ってしまうくらい面倒くさいのですねお姉さま!?」
イワナガヒメ「早く帰ってオコゼ唐揚げにしよ」スタスタ
-
サクヤヒメ「待ってください! お願いしますお姉さま!! オコゼでしたら今度火照ちゃんに死ぬほど送ってもらいますから!!」
若者「神様に死ぬほど送られたらオコゼ絶滅しそう」
イワナガヒメ「別にエロ本くらいいいじゃない」
若者「神様がエロ本って言った!!」
イワナガヒメ「お前はもうお黙り」
-
サクヤヒメ「ううう……こうなったら仕方ありません……どうしてもご協力いただけないというのなら私、火須勢理ちゃんを連れて阿多(実家)に帰ります!!」
イワナガヒメ「ア、アンタ……そんな理由でニートの孫連れて帰ってこられた日にはお父様いよいよ泣くわよ……しかたないわね、今回だけよ」
サクヤヒメ「あ、ありがとうございます! お姉さまぁぁぁぁあ!!」
若者「イワナガヒメ様がデレた!!」
イワナガヒメ「不出来な妹を持つと苦労するわ……」ハァ
若者「今度はツンだ!!」
イワナガヒメ「うるせぇ」
-
サクヤヒメ「で、ではっ! 先に高天原でお待ちしておりますので……」フワー
イワナガヒメ「はいはい……ったく」
若者「やっぱりなんだかんだ言っても、最後は妹のお願いを聞いてあげる気のいいお姉ちゃんなんすね〜」
イワナガヒメ「アンタねぇ……サクヤが私に頼むのは、色々と腹が立つ理由があんのよ」ビキビキ
若者「あっやめて富士山噴火しちゃう」
-
イワナガヒメ「さっき、ニニギ様の元へ嫁いだ時に私だけ親元へ送り返されたって言ったでしょ」
若者「はぁ」
イワナガヒメ「あれ、原因は私の顔にあったんだけど」
若者「不細工で追い返されたっていう?」
イワナガヒメ「ほんと後世にそうやって伝承されてんのムカつくわー……じゃなくてね……」
-
〜回想中〜
サクヤヒメ「ふつつか者ですが……」
イワナガヒメ「どうぞよろしく……」
ニニギ「へぇ、あなたがお姉さんのイワナガヒ……メ……」
イワナガヒメ「どうなさいました? ニニギ様」
ニニギ(マジかよ……このイワナガヒメってひと、母さん(栲幡千千姫命)に瓜二つなんだけど!!)ガクガク
イワナガヒメ「?」
-
ニニギ「あ、あはは……よ、よろしく、ね。二人とも……」ダラダラ
イワナガヒメ「ニニギ様、私の顔に何か……?」
ニニギ「い、いやぁ!! イワナガヒメさん、俺のよく知ってる人にそっくりだなーって!!」
イワナガヒメ「は、はぁ……?」
ニニギ(む、無理だよぉ!! 母さん相手に夜の営みなんてできないって!!)
〜回想おわり〜
-
若者「……つまり、イワナガヒメ様はニニギのお母さんに激似という理由で追い返されたと?」
イワナガヒメ「実際、栲幡千千姫様に会ってみたら自分でも引くくらい似てたわ」
若者「うける」
イワナガヒメ「……」ギチギチ ←ヘッドロック
若者「あっごめんなさいやめて富士山じゃなくて俺の頭噴火しちゃう脳出ちゃう」メキメキ
-
イワナガヒメ「で、そんなこともあって、前回は私が栲幡千千姫様に成りかわってニニギ様の春画好きを注意したのよ。それはもう、あんな落ち込んでる人見たことないってくらい凹んでたわ」
若者「そりゃそうっすよ……母親にエロ本のこと注意されるとか最低最悪じゃないっすか……」
イワナガヒメ「それでしばらくは懲りてたみたいなんだけどねー……やっぱり喉元すぎれば、熱さを忘れるってやつかしらね」
若者「……イワナガヒメ様、なんかちょっと嬉しそうっすね?」
イワナガヒメ「そう? ま、あの時嫁に迎え入れてくれなかった腹いせに、色々憂さ晴らしできるいい機会でもあるしね」
若者「うわぁ」
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イワナガヒメ「というわけで、そうと決まればアンタもぼちぼち里へ降りなさい。それと、今日あったことは他言するんじゃないわよ」
若者「いやぁそれが……なんだか眠くなってきちゃって……身体動かないっぽいんですよね」
イワナガヒメ「そりゃもう何時間もその恰好(全裸)だしねぇ」
若者「あれ? これひょっとして俺死ぬ感じですか?」
イワナガヒメ「まぁ常識的に考えればそうでしょうね」
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若者「そっか……ふもとの人たちに迷惑かけちゃうなぁ」
イワナガヒメ「……一緒に来る?」
若者「へっ?」
イワナガヒメ「ま……久々にこんなくだらない愚痴聞く相手になってくれたし……じ、従者くらいになら、考えてやらないこともないわ」
若者「やべぇ神隠しされる!!」
イワナガヒメ「来ないの? ここで一人寂しく凍死しとく?」
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若者「なんか、冬山で出会って恋に落ちるって広瀬香美の歌みたいでトレンディー(死語)っすね!」
イワナガヒメ「別にここゲレンデとかじゃじゃないし。私恋に落ちてないし」
若者「いや、俺が!!」
イワナガヒメ「アンタが? 私に?」
若者「そう!」
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イワナガヒメ「ふ、ふーん……」
若者「イワナガヒメ様、顔がニヤけてますよ」
イワナガヒメ「ニヤけてないし! ああもうこっちみんな!」
若者「イワナガヒメ様かわいい!!」ヒューゥ
イワナガヒメ「うるさい!!」
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こうしてイワナガヒメは妹であるサクヤヒメの願いを聞き入れ、久方ぶりの高天原へと向かうのでした。
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-コノハナサクヤヒメとイワナガヒメ編 おわり-
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-海幸彦と山幸彦編-
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さて、ニニギの天孫降臨イベントから時を置かずして、彼の元に嫁いだコノハナサクヤヒメは3人の子をもうけます。
サクヤヒメ「こ、子供ができました///」
ニニギ「えっ」
従者A「た、たった一晩でですか!?」
従者B「ちょっと二人とも絶倫すぎんよ〜」
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ニニギ「それ……本当に俺の子?」
従者A「ニニギ様まさか!! 認知しない気っすか!?」
ニニギ「ち、違わい!! ただ、もし俺の子じゃなくて国津神の子だったりすると、あとで高天原でゴタゴタ揉めそうだし……」
従者B「ニニギ様最低ー! 出会ったその日にやることやったくせに!!」
ニニギ「う、うるさい! やることやったとか大きな声で言うな!!」
サクヤヒメ「そ、そんな……心外です……ううう」シクシク
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従者A「泣ーかせたー泣ーかせたー!ニニギ様がサクヤヒメ様を泣かせたー!!」
従者B「ドメスティックバイオレンス!!」
ニニギ「サクヤ、違うんだ!! そんなつもりは……」
従者A「ていうかニニギ様……新妻相手にさすがにあれはまずいですって」
従者B「そうですよ。あれじゃああまるで、ご自身の保身しか考えていないようにしか聞こえませんって」
ニニギ「お前ら急にマジレスモードになるのやめてよ」
-
サクヤヒメ「ううう……」
ニニギ「サクヤ、疑ってすまない……そうだな、その子が私とサクヤの子であることは疑いなk」
サクヤヒメ「分かりました……それでは、宇気比を行いましょう……」
ニニギ「えっ」
サクヤヒメ「私が産気づいたら産屋に火を放ち、もし無事に生まれたのならそれはニニギ様の子でございます!」
ニニギ「いや、あの、ちょっと待ってそんな、別にそこまでしなくても……」アタフタ
従者A「神様の発想ってぶっ飛んでんな」
従者B「エクストリーム出産」
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こうしてサクヤヒメは宣言通り産屋に火を放ち、火中で3人の子を産み落します。
火が辺りを照らしはじめた頃に生まれた子を「火照命」。
火の勢いが強まった頃に生まれた子を「火須勢理命」。
火が弱まり始めた頃に生まれた子を「火遠理命」。
3人にはそれぞれこのような名前がつけられたのでした。
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火照命「オギャー!」
火須勢理命「Zzz...」
火遠理命「バブー」
サクヤヒメ「ニニギ様……貴方の御子でございます……」
ニニギ「おっ、おう……よ、よく頑張ったな、サクヤ……」
産婆「死ぬかと思った……」
-
こうして3人の子はすくすくと育ち、やがてそのうちの2人が親元から離れることとなりました。
火照命「父ちゃん、母ちゃん。俺、ここを出て一人で暮らしてみようと思うんだ!」
サクヤヒメ「ええっ!?」
火遠理命「兄上が行くというのなら当然私もついて行きます」
サクヤヒメ「火遠理ちゃんまで……火須勢理ちゃんは!?」
-
火須勢理命「はぁー? 家から出てくとか何のギャグ? 二人ともマゾなの?」ゴロゴロ
サクヤヒメ「火須勢理ちゃん! そうよね!! みんなずっとここにいてもいいのよ!!」ギュー
火照命「母ちゃんはそれでいいのか……」
火遠理命「この社会不適合神め」
ニニギ「サクヤ、よいではないか」
サクヤヒメ「ニニギ様!!」
-
ニニギ「せっかく子供らが自らの力で生きてゆきたいと言っているのだ。ここは親として、認めてやるべきではなかろうか」
サクヤヒメ「そんな……まだ子供だというのに……」
火照命「いやもう結構いい大人だよ俺ら」
火遠理命「甘えているのは火須勢理だけだ」
火須勢理命「お前ら黙ってても掃除洗濯してくれてメシまで出てくる生活のどこが不満なんだ?」ダラダラ
火遠理命「このクズが」
-
こうして、長兄と末弟である火照命と火遠理命だけが親元を離れることとなりました。
-
サクヤヒメ「大丈夫? ハンカチもった? ティッシュは? お金は落とさないとこに入れた?」
火照命「はいはい、持った持った」
サクヤヒメ「トイレは済ませた? 向こうに着いたら生水には気を付けてね」
ニニギ(うーん、このやり取りどこかで見たことがあるぞ)
火遠理命「心配には及びません、母上。兄上は私が身を挺してでもお守りします」
-
ニニギ「む、そうだ。火照、火遠理。こちらへ」
火照命「なんだ父ちゃん?」
ニニギ「お前たちに、これを渡しておこう」
火遠理命「これは……弓矢と釣り針ですか」
ニニギ「そうだ。それぞれこの猟具をもって、片方は山へ、片方は海へ住むといい」
-
火遠理命「そんな……私に兄上と離れて暮らせというのですか!?」
火照命「じゃー俺この釣り針もらうわ。海好きだし」
火遠理命「父上! 私にも釣り針を! 私も海に住みます!!」
ニニギ「いやでもあの、バランスってものがね……?」
火遠理命「お願いします! 父上!!」
-
火須勢理命「火遠理はほんとブラコンだな」グデーン
火遠理命「は? ニートのお前にだけは言われたくないわ」
サクヤヒメ「火須勢理ちゃん、火遠理ちゃん、喧嘩しないで……」オロオロ
ニニギ「で、では、気を付けてゆくのだぞ」
こうして、兄の火照命は海で漁をする『海幸彦』として、弟の火遠理命は山で猟をする『山幸彦』として、下界で暮らすこととなりました。
-
海幸彦(火照命)「いやぁー、海はいいな。今日もイサキが大ry……」
山幸彦(火遠理命)「今日も大漁ですね……兄上」ボソッ
海幸彦「うおっ!? 火遠理、じゃなかった山幸彦いたのかよ!!」ビクッ
山幸彦「フフフ……この山幸彦、兄上とは常に共にいる所存でございます……」
海幸彦「お、おう……」
-
山幸彦「手土産に、山で仕留めた雉と兎をお持ちしました」
海幸彦「おぉ、いつも悪いな!」
山幸彦「よいのです……私は兄上の嬉しそうな顔さえ眺めていられれば、もうそれだけで……おっ、おふぅ……」ハァハァ
海幸彦「じゃ、さっそく鍋にでもしy」
山幸彦「私にお任せください兄上!!」
海幸彦「お、おう……」
-
……
山幸彦「お待たせしました、兄上」グツグツ
海幸彦「おー美味そう。いただきます」モグモグ
山幸彦「お味はいかがですか?」
海幸彦「え? 美味いよ。こっちにくるまで知らなかったけど、お前結構料理上手かったんだな」モグモグ
山幸彦「兄上のために家を出る前に練習したのですよ……もしよければ、毎日でも私が兄上に食事を作って差し上g……///」
海幸彦「あ、そういや全然話かわるけどさー」
-
山幸彦「チッ!」
海幸彦「えっ……なんで舌打ち……?」
山幸彦「いえ、何でもありません」
海幸彦「そ、そうか……で、話は変わるけど、山での猟ってどんな感じなんだ?」
山幸彦「山での猟ですか? ……そうですね、取り立てて話すようなこともないのですが……」
-
海幸彦「俺は今海で釣りばっかりしてるからさ。なんかこう、猟のコツとかあるなら教えてほしいと思ったんだけどよ」
山幸彦「コツですか……そうですね、まずは獲物に気付かれないよう、気配を殺すことですね」
海幸彦「なるほど。たしかにお前気配消すの上手いからな。さっきもいつの間に俺の後ろに立ってたのか全然気がつかなかったしよ」
山幸彦「ええ、兄上は私の一番大きな獲物ですからね……」ボソッ
海幸彦「なんか言ったか?」
-
山幸彦「……もしよろしければ、兄上も山で猟をなさってみては?」
海幸彦「いいのか?」
山幸彦「ええ。そこにある私の弓矢を使っていただいて構いません」
海幸彦「え、アレ? いいのかよ、いつも使ってる大事なモンじゃねーか? 悪いよ」
山幸彦「構いません」
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海幸彦「そうはいっても、無くしたりしたら取り返しがつかないからな……やっぱりいいって」
山幸彦「いいのです」
海幸彦「替えも効かないだろうし……」
山幸彦「いいのです!! 兄上は是非私の道具を使って山へ狩りに!!!!!」
海幸彦「わ、わかったよ……そこまで言うなら、明日はちょっとお前の弓矢借りて山へ行ってみようかな……?」
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山幸彦「ええ、是非! その際は私が手取り足取りご指導ご鞭撻にあたらs……」
海幸彦「そうだ!! じゃあその間さ、お前は俺の釣り針を持って海に出てみるといいよ!!」
山幸彦「えっ」
海幸彦「どっちが獲物をたくさんとれるか競争しようぜ!!」
山幸彦「チッ!!!!」
海幸彦「えっ……また舌打ち……?」
-
こうして二人は道具を交換し、それぞれ海と山へ向かったのでした。
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〜とある山の中〜
海幸彦「ていッ!」シュッ
雉「当たるものかよ!」ヒョイ
海幸彦「てやッ!」シュッ
兎「当たらなければどうということはない」スカッ
海幸彦「くっそー、全然当たらねぇ……さすが名前に海を冠してるだけあるな俺。山での狩りは向いてねぇや……この弓矢は山幸彦に返そう」
-
〜とある海の上〜
山幸彦「兄上の釣り針、か……」
山幸彦「……ひょっとして、この針が失くなれば、兄上は私と一緒に山で暮らす道を選ぶのでは?」
山幸彦「もしそうなれば、毎日兄上と二人きり……」
山幸彦「……」
山幸彦「兄上、申し訳ありません」ポチャン
-
その夜。
海幸彦「いやァ〜、全然獲れなかったわ!」
山幸彦「それは残念です」
海幸彦「やっぱ海幸山幸言うだけあって、それぞれ自分の道具を使わないとダメってこったな! で、そっちはどうだったよ?」
山幸彦「実はその、兄上……実に申し上げにくいのですが……」
海幸彦「ん?」
-
……
海幸彦「はぁ!? 針を失くした!?」
山幸彦「申し訳ありません……」
海幸彦「マ、マジかよ……」
山幸彦「かくなるうえは私t……」
海幸彦「ああ、いいよいいよ。使えって言ったのは俺だし、気にするな……」
山幸彦「えっ」
-
海幸彦「でも困ったな……明日からどうしよう」
山幸彦(嗚呼……兄上はなんて優しいんだ! 釣り針を失くした私を責めることなく、自分を責めるだなんて!!)
山幸彦(そんな兄上を私は身勝手な考えで欺こうとした! 私はなんと愚かなんだ! バカめ! 死んで詫びろ火遠理!! お前には兄上と共に暮らす資格などない!!)
山幸彦「分かりました……兄上……」ユラリ
海幸彦「ん?」
-
山幸彦「今すぐ私のこの十拳剣を潰し、1000の針を作って兄上に差し上げましょう……」
海幸彦「えっ……いいよ、それだってお前が昔から使ってる大事な……」
山幸彦「しばしお待ちください! 兄上!!」ピャー
海幸彦「あ、おい待てって! 山幸彦!!」
……
-
そして数日後。
山幸彦「兄上、針を千本作ってまいりました……!」
海幸彦「お、おう……」
山幸彦「元の針には及びませんが、どうぞお納めください……」
海幸彦「そ、それよりお前ちゃんと寝たのかよ? 目の上下左右にクマができてるぞ?」
山幸彦「そうですよね……やはり私の作った針など、受け取ってはもらえませんよね……」
海幸彦「いや、あの……」
-
山幸彦「分かりました! それではこの山幸彦、これより海へ赴き兄上の針を見つけ出してまいります!!」
海幸彦「いやお前、無茶言うなって!! 寝不足で変なテンションになってるぞ!!」
山幸彦「兄上! 私を信じてください!!」
海幸彦「待て! 寝不足で海に行くのは危険が危ないからやめろ!!」
山幸彦「うわああああああああああああああああああああ!!!!」
-
こうして、海幸彦の釣り針を探しに海に向かった山幸彦でしたが、広大な海の中からたった一つの釣り針を見つけることなど当然できるはずがありません。
-
山幸彦(兄上……ああ、私は一時の気の迷いでなんと愚かなことをしてしまったのだ!!)シクシク
山幸彦(これでは兄上に向ける顔がない!! 兄上! ああ兄上!! 兄上、お慕い申し上げておりました!! 兄上ぇぇぇええ!!)オロローン
塩椎神「おや……? 誰ぞあそこで泣いておるのう」
山幸彦「ウフフ……兄上……こんなダメな私をどうか存分にけなしてください……」ブツブツ
塩椎神「えぇ……」(困惑)
-
山幸彦「ああ……兄上……」ブツブツ
塩椎神「あの、ちょっと……」
山幸彦「ああ、すみません……今死にますから……」ヨッコイショ
塩椎神「ちょちょちょ! ちょっと待て! 早まるな!!」
山幸彦「私はこのまま魚の餌となり、兄の血肉となって共に生きることを決めたのです……」
塩椎神「ちょっとなにコイツ!? こんなの海に解き放たれたら困るんだけど!! いいから何があったのか話してみ!?」
-
……
塩椎神「ははぁ、それで兄上の大事な釣り針を失くしてしまったと」
山幸彦「ええ……」
塩椎神「しかし、その償いに1000本の針を納めてもなお許しを与えぬとは、心の狭い兄じゃのう」
山幸彦「いま兄上の事を心が狭いっていったか!? 兄上のことを愚弄したな!! 貴様ァ!!」ガクンガクン
塩椎神「や、やめろそんなに揺らすなやめ、オエエエエェェェェッ!!!」ユッサユッサ
-
山幸彦「はぁ……はぁ……」
塩椎神「ゲホゲホ……そ、そんなにその針を見つけ出したいのなら、そこの小舟にのって海神の元へ向かうとよかろう……」ゲッソリ
山幸彦「海神……?」
塩椎神「この海を司る神じゃ。海神に聞けば、この海のどこに釣り針が落ちたか分かるじゃろうて……」
山幸彦「それは本当ですか?」
-
塩椎神「うむ。ただし海神は海の中に居られる。その小舟に乗っていけば、無事に海神の宮殿まで行けr」
山幸彦「よし、これくらいのサイズでいいか」←石拾ってる
塩椎神「えっ、ちょ」
山幸彦「兄上!!」ドボーン!!
塩椎神「うわ石抱いて身投げしおった!! 小舟使えと言うたじゃろうに!!」
-
……
侍女「さーて水を汲んで来なくちゃ」
山幸彦「」ゴボゴボ
侍女「」
侍女「……えっ」
豊玉姫「どうしたのです?」
-
侍女「お、親方! 海の上から男の子が!!」
豊玉姫「だれが親方ですか」
山幸彦「」
侍女「すでに死にかけてますね」
豊玉姫「チアノーゼ出てますね」
-
山幸彦「ゲボォ」コロン
侍女「あ、口からなんか出てきた」
豊玉姫「勾玉のようですね。身分の高いお方なのでしょうか……」
侍女「自殺ですかね?」
豊玉姫「まだお若いというのに勿体ない……」
侍女「しかもわりとイケメンですよね」
-
豊玉姫「……ま、まだ使えるかしら」ゴクリ
侍女「どこを何に使うおつもりですか……」
豊玉姫「とにかく、その器に遺品(勾玉)を入れ持ち帰りましょう」
侍女「はい……あ、あれ? 勾玉が器にくっついて取れなくなった!?」
豊玉姫「なんと……このお方は一体……?」
侍女「有名なマジシャンとかですかね?」
-
海神「どうしたのだ?」
豊玉姫「父上、これを……」
海神「んん?」
侍女「この方の吐き出した勾玉が、器について離れなくなったのです」
海神「この方……? あっ」
-
豊玉姫「どうされました、父上」
海神「このお方は天孫ニニギ様のご子息、虚空津日高様じゃァァァァァ!!」ガクガク
豊玉姫「ええっ!?」
侍女「マジなのですか」
海神「ヤバイ死にかけとるやんけ! すぐに蘇生措置を!!」
-
こうして、山幸彦は豊玉毘売命らにより命を救われます。
ちなみに虚空津日高は火遠理命、つまり山幸彦の尊称とされています。
-
山幸彦「う、うーん……ここは……?」
豊玉姫「お気づきになられましたか、虚空津日高様!!」
山幸彦「虚空津日高……? 私は、一体……?」
海神「もしや、記憶を失っておいでか?」
山幸彦「わ、私は何故ここに……?」
-
豊玉姫「数日前、私が侍女と水を汲みに行った折、海の上より舞い降りてこられたのです」
山幸彦「海の上……? するとここは」
豊玉姫「ここは、海を統べる私の父、海神の宮殿です」
山幸彦「海神……」
海神「虚空津日高様。もしよろしければ、その豊玉毘売を嫁にもらってはいただけまいか?」
-
こうして、記憶を失った山幸彦は豊玉毘売命を妻に迎え、海神の宮殿で過ごし始めます。
この間実に三年。一説ではこの逸話が後の浦島太郎伝説の元になったと言われています。
-
山幸彦「何を眺めているんだい、豊玉姫?」
豊玉姫「虚空津日高様……これは、私たちが出会った日の記念です」
山幸彦「記念? ……ほう、これは綺麗な勾玉だね」
豊玉姫「やはり、覚えておいでではないのですね……これは、あの日貴方様の口から出てきたものなのですよ」
山幸彦「私の? そうだったのか……ちょっと見せてもらってもいいかな?」
そういって山幸彦はその勾玉を手に取ります。
-
豊玉姫「なんと……! これまで器から離れることのなかった勾玉がいとも簡単に……」
山幸彦「ふむ、これは……?」
…………
……
…
-
〜〜〜
火照命『おい火遠理! これみろよ!!』
火遠理命『これは……なんと美しい勾玉なのでしょう、兄上』
火照命『なんかさっきクシャミしたら出てきた!!』
火遠理命『是非私に下さい!!』
火照命『えっ、べ、別に良いけど』
火遠理命『いただきます!!』ゴクリ
火照命『え、えぇ……』
〜〜〜
-
山幸彦「・・・ぇ」
豊玉姫「いかがなさいました? 虚空津日高様」
山幸彦「兄上ぇぇええええ!! うわああああああああああああああ!!!!」
豊玉姫「虚空津日高様!?」
山幸彦「兄上の針ィィィィィィィィイイイ!!!」
豊玉姫「虚空津日高様がご乱心に!!」
-
海神「おや、これは虚空津日高さm」
山幸彦「兄上ぇ!! 針ィィィ!! 失くしたァァァァァ!!」ガクンガクン
海神「ちょ、そんな揺ら……ウオエエエエ!!」ゲロロロロ
豊玉姫「お父様!!」
山幸彦「あああああああああああああ!!!」
侍女「どういうことなの……」
-
……
海神「な、なるほど……つまり虚空津日高様は、兄上の釣り針を探しにここにおいでになられたと……」ゲホゲホ
山幸彦「ここに来ればすぐに見つかるだろうと塩椎神に聞いたのです!! さぁ早く針を!!」
海神「お、落ち着かれよ……今、海の魚達を集め、誰ぞ行方を知っているものがおらぬか聞いてみることにしよう」
山幸彦「早くせねば! 私のいない間に兄上の身にもし何かあったら私は……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
豊玉姫「そ、虚空津日高様……」
-
その後、一匹の鯛の喉元に海幸彦の針が引っかかっていることが判明。
無事に釣り針を手にした山幸彦は、それを手に地上へ戻ることになりました。
-
豊玉姫「行ってしまわれるのですね、虚空津日高様……」
山幸彦「ああ。世話になった」
豊玉姫「さ、寂しゅうございます……」グスン
山幸彦「私たち(兄上と私)の愛は永遠なのだ。どうか分かってほしい」
豊玉姫「私たち(虚空津日高様と私)の愛……! そうですね、分かりました! それでは、せめてこれをお持ちください!」
-
山幸彦「これは?」
豊玉姫「これは鹽盈珠、鹽乾珠といって、お父様の水を司る力が込められたものです」
山幸彦「なんと……」
豊玉姫「それと、もし虚空津日高様のお兄様が低いところに田を作ったら、虚空津日高様は高いところに田を作ると良いでしょう」
山幸彦「何故?」
豊玉姫「じきに分かります故……」
-
こうして、山幸彦は釣り針と豊玉毘売命からもらった二つの珠を持って3年ぶりに海幸彦の元へ向かいます。
-
山幸彦「兄上ェェェェェェェェェェェェェエ!!」ドドド
海幸彦「うぉ!? びっくりした!!」ビクッ
山幸彦「兄上ェ! あ、ああああ兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、兄上、ああああ兄上ェェェェェエ!! ウオオォォォォォォォ!!!」
海幸彦「や、山幸彦!? おまえ今まで一体どこに……」
山幸彦「兄上! これを!」
-
海幸彦「こ、これは!!」
山幸彦「3年前、私が失くしてしまった針です。この山幸彦、単身海神の元へ向かいこれを探し出してまいりました!」
海幸彦「わ、わざわざ海神のところまで!?」
山幸彦「時間がかかってしまい申し訳ございませんでした」
海幸彦「い、いやいいよ……ていうか、そんな必死に探してもらわなくてもよかったのに……3年も顔を出さないから、随分心配したんだぞ」
山幸彦「あぁ……兄上が私を心配してくださる……これだよ、これを求めてたんだ私は……これぞ真実の愛……」ウットリ
海幸彦「え、えぇ……」
-
山幸彦「さぁ、受け取ってください兄上」
海幸彦「あ、あぁ……ありがとな」
山幸彦「海神の宮殿からここに戻る途中、この針を見るたびに兄上のことを思い出してとても辛かった……この針を見ると、3年もの間会うことができなかった兄上のことを想い憂鬱になり、心が落ち着かなくなりました。それはまるで貧者のようにみじめで、愚かな気持ちでした……全部、この針のせいで……」
海幸彦「お、おう」
山幸彦「ああ、兄上……私は兄上の元に戻ってまいりました!!」
-
海幸彦「と、ところでお前、どうやって海神のところからここへ戻ってきたんだ?」
山幸彦「ああ、彼に乗って来たのです」
海幸彦「彼?」
サメ「はぁー……はぁー……ぐふっ」コヒューッコヒューッ
山幸彦「海神の使い、佐比持神です」
海幸彦「死にかけてるよ!! なんで家の前まで引っ張ってきた!? 魚類に無茶させんな!!」
-
山幸彦が地上に戻ってしばらくすると、海幸彦は自宅の近くに田を設けました。
-
山幸彦「おや、田を起こしたのですね。兄上」
海幸彦「ああ。やっぱりたまには米食いたいしな」
山幸彦「なるほど……」
海幸彦「お前も、田起こししたらどうだ? 肉ばっか食ってるとプリン体で痛風がやばいぞ」
山幸彦「ふむ……」
-
山幸彦(そういえば、豊玉姫が兄上が低いところに田を作ったら私は高いところに作るように言っていたが……)
海幸彦「どうした?」
山幸彦(……なるほど、そういうことか!! 確かに高いところに田をつくれば、兄上が農作業している姿をつぶさに観察できると!! 豊玉姫はそれを伝えたかったのだな!!) ※違います
山幸彦「そうと決まれば私はあの山の上に田を作ります!!」
海幸彦「えっ? お、おう……」
-
しかし、二人が田を起こしてしばらく経つと、海幸彦の田は日照りが続き稲は枯れ行く一方でした
-
海幸彦「はぁー……今年は全然雨が降らねぇな。お前んとこどう?」
山幸彦「私の所は特に問題ないのですが……」
海幸彦「そっかー。まぁお天道様だけはどうしようもないよな。いやまぁお天道様って言ってもひいばあちゃん(アマテラス)だけどさ」
山幸彦「……」
海幸彦「ん? どうした?」
-
山幸彦「兄上、しばしお待ちを」
海幸彦「えっ?」
山幸彦「私が兄上の田に水を取り戻して見せます!!」
海幸彦「えっ、お前そんなことできんの!?」
山幸彦「お任せあれ!!」
-
家に戻った山幸彦は、豊玉毘売命にもらった鹽盈珠を取り出します。
豊玉毘売命『これは鹽盈珠、鹽乾珠といって、お父様の水を司る力が込められたものです』
山幸彦「きっと、これを使えば兄上の田に水をもたらすことができるはず……」
山幸彦「海神よ! 今こそ我に力を貸したまえ!!」
山幸彦「あめあめ ふれふれ にいさんが! じゃのめで おむかえ うれしいな!! ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン!!!」ピョンピョン
-
<ピカッ……ゴロゴロゴロ……
<ポツッ……ポツッポツッ……
<ザァァァーーーーーー
<ドシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
海幸彦「うわあああああああ!近年稀にみるゲリラ豪雨!!」ザパーン
-
山幸彦「兄上!!」
海幸彦「おぼれる! おぼれる!!」ゴボゴボ
あわてて山幸彦は鹽乾珠を使い、雨を降りやませます。
海幸彦「し、死ぬかと思った……」ゼェハァ
山幸彦「す、すみません兄上……まさかこんなに加減が効かないものとは……ん?」
-
豊玉姫「虚空津日高様……」
海幸彦「ん? 誰だこのねーちゃん」
豊玉姫「私は豊玉姫。海神の娘であり、そこにおわす虚空津日高様の妻でございます」
海幸彦「山幸彦の妻!?」
山幸彦「私の妻!?」
海幸彦「えっなんでお前まで驚いてんの!?」
-
山幸彦「いえ、あの……ええと、海神の所にいた時は私その記憶喪失でして……違うんです、兄上、これは決して現地妻とかそういうアレではなくてですね……」アタフタ
海幸彦「お、おい……本人を前にしてそんな……」
豊玉姫「虚空津日高様ご覧ください……貴方様の御子を身ごもりました///」ポッコリ
山幸彦「」
海幸彦「えっ、山幸彦の子供!?」
-
豊玉姫「天神の御子を海の中で産むわけにはいかないので、陸へ上がってきたのです」
海幸彦「そうだったのか……いやー、まさかコイツが結婚してたとは! やるなお前! 甥っ子かな? 姪っ子かな?」ワクワク
山幸彦「」
豊玉姫「虚空津日高様?」
山幸彦「嘘だ……私が兄上以外と身を重ねたと? おかしい。そんなことあるわけがない。私の子だって? ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえない……」ブツブツ
海幸彦「おいおい、なに狼狽えてんだよー。しっかりしろよなー、親父」ニヤニヤ
-
豊玉姫「ちなみにもう、臨月入ってます」
海幸彦「マジで!? ならこうしちゃいられねぇ、早く産屋を建てないと!!」アタフタ
山幸彦「……シィ、ク、……ナイ……ヒヒ……」ブツブツ
海幸彦「おらシャキッとしろ山幸彦!! とりあえず、屋根葺きに使う鵜の羽集めてきてくれ!!」
山幸彦「アヒヒ……」フラフラ
-
しかし、二人が産屋を建て終わる前に豊玉毘売命は産気づいてしまいます。
-
豊玉姫「そ、虚空津日高様……お話があります……」フゥフゥ
山幸彦「アイ」
豊玉姫「他国の者は子を産む時には本来の姿になります。私も本来の姿で産もうと思うので、絶対に産屋の中を見ないようにしていただけませんか?」
山幸彦「アイ」
海幸彦「お、おおう……ゆ、湯とか沸かしておいたほうがいいのかな?」アタフタ
豊玉姫「それでは……必ず元気な子を産んでみせますので!!」
-
こうして、豊玉毘売命のお産が始まります。
-
<ヒッヒッフゥー!!
山幸彦「」
海幸彦「こんなとき、男は何にもできないってのがもどかしいな……おい山幸彦、しっかりしろよ!」
山幸彦(おかしい……これは現実なのか? なぜ私の子をあの者が産むのだ? 私が兄上の子を身籠るのが筋というものではないのか?)ブツブツ
海幸彦「心配だなぁー。豊玉姫ちゃんは中を見るなっていってたけど……産婆もいないのに大丈夫かな」
-
山幸彦「中を見るな……? そ、そうか! それです兄上!!」
海幸彦「ん?」
山幸彦「豊玉毘売は妊娠などしていないのです!! きっとどこからか拾ってきた子を、私の子として育てさせるつもりなのです!!」
海幸彦「そんなバナナ」
山幸彦「いま証拠を掴んできます!!」
海幸彦「あっ、おい待て!!」
-
山幸彦「そこまでだ!!」バッ
でかいサメ(八尋和邇)「うーんうーん……」ビターンビターン
山幸彦「フフフ……それがお前の正体か、豊玉姫よ」
でかいサメ「そ、虚空津日高様!?」
山幸彦「ただのでかいサメではないか!! よくも私を誑かしてくれたな!!」
でかいサメ「う、ううう……」
-
山幸彦「いますぐすり身にして蒸してカマボコにしてやる! そんでもって兄上に献上してやる!!」
でかいサメ「うっ……うわーん!! 虚空津日高様にこんな姿見られたらもう生きていけない!!」ビチビチ
赤ん坊「オギャー」
山幸彦「この化け物め!! 私を誑かすに飽き足らず、人間の赤子まで攫ってきたのか!!」
でかいサメ「ち、違います!! その子は間違いなく私たちの子ですっ!! ……虚空津日高様の馬鹿ーっ!!! もう好かーん!!!!」ザブーン
-
こうして、山幸彦に出産の様子を覗かれたことを恥じた豊玉毘売命は、生まれた赤ん坊を置いて海へと帰ってしまいます。
-
山幸彦「フ……兄上と私の仲を裂こうとする悪は去ったか」
海幸彦「う、生まれたのか!?」
山幸彦「兄上」
赤ん坊「オギャー」
海幸彦「おお! 甥っ子だったか!! よしよし……あれ? 豊玉姫ちゃんは?」キョロキョロ
-
山幸彦「ご安心ください、兄上。あの者なら海へ戻りましたよ」
海幸彦「ええっ!? 子供を置いてかよ……やっぱ海神の娘だから、地上に長くいるのはしんどかったのかな……」
山幸彦「いや、兄上。あのですね……」
赤ん坊「オギャーオギャー!」
海幸彦「よしよし、心配するな。母ちゃんがいなくてもしばらくは俺たちが面倒を見てやるからな。なーに、母ちゃんならすぐ戻ってくるさ」ベロベロバー
-
山幸彦「そ、その子を育てるおつもりですか兄上!?」
海幸彦「あ? 何言ってんだ当たり前だろ。お前の子だぞ」
山幸彦「あ、兄上、その子はですね……」
海幸彦「よーしよし、さっそく産湯につかろうなー。おい山幸彦、お前この子に飲ます重湯をつくっておいてくれ」
山幸彦(そんな兄上……いやでも待てよ? この子を私と兄上の養子にすればそれはもう事実上の夫婦、つまり私は内縁の妻ということなのではないか? なんてこった! ならいっそそれもありか!!)
-
山幸彦「わ、分かりました兄上! 今お乳の準備をします!!」
海幸彦「は? いや乳じゃなくて重湯をだな……」
山幸彦「私の兄上を想う気持ちをもってすれば母乳ぐらい容易く分泌できるはず!! うおおおおおおおおおおっ!!!」ギュー ←乳首つねってる
海幸彦「こ、これがマタニティハイってやつか……」 ※違います
赤ん坊「バブー」
-
こうして生まれた赤ん坊は天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命(ヒコナギサタケウガヤフキアエズ)と命名されます。
ウガヤフキアエズを出産後、山幸彦の元を離れ海へと戻った豊玉毘売命でしたが、子を養育するために妹の玉依毘賣を山幸彦たちの元へ遣わします。
-
玉依姫「姉上に言われてきました。お久しゅうございます、虚空津日高様」
山幸彦「た、玉依姫!?」
海幸彦「おー、豊玉姫ちゃんの妹か。 お前の叔母ちゃんだぞ、ウガヤフキアエズ」
赤ん坊「バブバブ」
玉依姫「その子を引き取りに来ました」
海幸彦「へ?」
-
玉依姫「虚空津日高様がどうしてもその子を認知されないおつもりのようだったので」
海幸彦「えっ、そうなの?」
山幸彦「な、何を馬鹿な! 誰がそんなこと……」
玉依姫「お姉さまは失意のあまりもう3か月近く部屋に引きこもりっぱなしです」
海幸彦「マタニティブルーってやつだな……」 ※違います
赤ん坊「バブー」
-
玉依姫「あなたのせいですよ、虚空津日高様」
山幸彦「ち、違くて……私はただ兄上と一緒にいたいだけで……認知はするっていうか、これはどこから攫ってきた子で、今は私たちの非嫡出子にあたるっていうか……」シドロモドロ
海幸彦「なに慌てふためいてんだお前」
赤ん坊「キャッキャッ」
玉依姫「姉上より、虚空津日高様にこれを」
-
海幸彦「なにそれ?」
玉依姫「その子のDNA鑑定の結果です」
山幸彦「」
玉依姫「間違いなくあなたの子です。虚空津日高様」
山幸彦「」
-
海幸彦「そっかー……まぁウガヤフキアエズも、こんなむさ苦しいところにいるより母ちゃんのとこ行った方がいいかもな」
玉依姫「あ、いえ。その子は私が育てます」
海幸彦「えっ?」
玉依姫「その子を見ると、姉上は虚空津日高様のことを思い出して辛いのだそうです」
海幸彦「じ、重症だな……」
山幸彦「」
-
玉依姫「さあウガヤフキアエズ、こっちへ」
赤ん坊「Zzz...」
海幸彦「あ、寝てるわ」
玉依姫「うふふ、かわいい寝顔……食べちゃいたい」ボソッ
海幸彦「別れる前に顔見とかなくていいのか? 山幸彦」
山幸彦「」
-
こうして、ウガヤフキアエズは叔母である玉依毘売命の元に引き取られます。
やがて二人は甥と叔母、しかも育ての親子という壁をあっさり乗り越え結婚し、日本の初代天皇となる神倭伊波礼琵古命(神武天皇)をもうけることになりますが、それはまた別のお話……。
-
-海幸彦と山幸彦編 おわり-
-
なんだこれめっちゃ面白い
支援
-
-エピローグ-
-
従者「ここが高天原かぁ……」キョロキョロ
イワナガヒメ「そんなにキョロキョロしてると、おのぼりさん丸出しよ」
従者「そりゃもう、おのぼりさんもいいとこっすよ。実際おのぼり(死亡)してるわけだし」
イワナガヒメ「それもそうね」
従者「あれがニニギ様の家ですか?」
イワナガヒメ「ええ……それにしてもなんだか騒々しいわね?」
-
……
栲幡千千姫「まったくあなたって子は……サクヤちゃんに迷惑ばかりかけて」プンスカ
ニニギ「許して……許してください母上……」ゲッソリ
栲幡千千姫「おまけになんですかこの本は!? 妻子までいてこんな本を溜め込むなんて一体何を考えているのですか」
ニニギ「もうやだ……もういっそ下唇噛み切って死にたい」(涙目)
火須勢理命「俺は別に構わないんだけどなぁ」
-
従者「……薄い本のことで母親に怒られる神様とかなんか悲しいっすね」
イワナガヒメ「そうね」
従者「それにしても本当に激似ですね、ニニギ様のお母さんとイワナガヒメ」
イワナガヒメ「まさか本物の栲幡千千姫様がいらしてるとはね……」
従者「というか神様って基本歳とらないんですね。みんな20代くらいに見えますけど」
イワナガヒメ「まぁ基本的に人間とは違うからね。なんなら見た目変えることだってできるし」
-
従者「あ、あれがニートの火須勢理ちゃんですね」
イワナガヒメ「相変わらずだらしないわね……大体サクヤが甘やかしすぎなのよ」
従者「上と下の兄弟はもう独立してるっていってましたよね?」
イワナガヒメ「ええ。アンタ、海幸彦と山幸彦って知らない?」
従者「聞いたことはありますけど……」
イワナガヒメ「一応、血統上はアンタたちの天皇のご先祖様よ」
従者「マジっすか!?」
-
イワナガヒメ「元をたどれば、皆ニニギ様の曽祖父にあたるイザナギ様の血筋ね」
従者「えーと、イザナギ……」
イワナガヒメ「イザナギ様がアマテラス様とスサノオ様を生んで、アマテラス様の子孫があのニニギ様よ」
従者「スサノオって確かあれですよね、ヤマタノオロチ倒した」
イワナガヒメ「そうそう。話によると、お姉さん(アマテラス)が極度のブラコンで、高天原を逃げ出して下界に降りたそうよ」
従者「知られざる神々の性事情……」
-
イワナガヒメ「どうもサクヤんとこの末っ子の火遠理も、その血が濃く出たみたいなのよねぇ」
従者「ブラコンってことですか?」
イワナガヒメ「有り体に言えばね」
従者「あれ? でも海幸彦と山幸彦って確か喧嘩してたんじゃなかったですっけ? しかも男同士……」
イワナガヒメ「逆よ逆。むしろ火遠理が火照のこと大好きすぎて追っかけで家を出たくらいなんだから。もう病気よ病気」
従者「ヤンデレでホモで近親相姦とかちょっと闇深すぎるトリプルスリーじゃないっすか……?まさに東洋の神秘」
-
イワナガヒメ「まぁその辺の在り方も人間とは違うからね。イザナギ様なんて男手ひとつで子供を産んだんだから」
従者「男手ひとつで子供を産むとか、人間には馴染みのないフレーズすぎて若干恐怖を感じます」
イワナガヒメ「神なんてそんなもんよ」
従者「うーん狂気じみてる」
イワナガヒメ「あんたも私の従者になったんだから、こっちの事情も少しは勉強しておきなさい」
-
従者「分かりました……俺はずっと貴方にお仕えしますよ、イワナガヒメ!」
イワナガヒメ「……」
従者「あれ? ひょっとして照れてます?」
イワナガヒメ「て、照れてないし!!」
従者「またまた〜」
-
イワナガヒメ「ほら! 用事もなくなったし、もう行くわよ!!」
従者「え〜、もうちょっと高天原見物しましょうよ!!」
イワナガヒメ「ここは人(神)が多くて嫌なの!」
従者「なるほど……つまり早く俺と二人きりになりたいと!!」
イワナガヒメ「そ、そんなこと言ってない!!」
-
従者「あ〜素直になれないイワナガヒメ様かわいい!」
イワナガヒメ「うるさいうるさい! もう、従者のくせに……! ほら、行くわよ!!」
従者「あ、待ってくださいよイワナガヒメ〜!!」スタコラサッサー
栲幡千千姫「えっ……ど、どなたですか?」
イワナガヒメ「そっちじゃねぇ!!」
-
-おわり-
-
※この物語はフィクションであり、実在の神仏・団体とは一切関係ありません。
-
>>217
支援してくれたのに速攻で終わってゴミンネ
-
乙 今回も笑えてすごい面白かったぞ
-
すごく面白かった。海幸彦さんめっちゃいい人だなww
乙でした
-
乙乙
ハイスピードで笑いこらえるのに必死
-
ヤンデレブラコンホモとかwww
神様、業が深すぎんよー
今回も面白かった乙!
-
流石始祖からして兄妹婚なだけにアマテラスさんちは身内が大好き(性的な意味で)すぎる
-
同時に生まれてるから一卵性ホモという可能性も微レ存
-
ああ日本の神々だなーってお思います(小波)
-
あなたのお話し大好きすぎる
おつ!また描いてくれ!続きでもいいのよ!?
"
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