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幼女「笛ぇ・・・」
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男「幼女、ついにそれを手にしてしまったか」
幼女「これ何?」
男「見ての通り"篳篥"だ」
幼女「ひらがなで書けばいいのに」
男「その篳篥はだな」
幼女「うん」
男「・・・知りたいか?」
幼女「そこまで言ったのなら言ってよ!」
"
"
-
男「では幼女だけに教えてやろう」
幼女「うん」
男「それは死んだ親父が愛用していたものだ」
幼女「汚っ!」ポイ
男「いやいやちゃんと除菌してあるから」
幼女「ほんとに?」
男「さすがに不潔だろ、俺が吹いた後ならまだしも」
幼女「男のキスはもっといらない」
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男「そして親父は死ぬまでこれを持ち歩いていた」
幼女「死ぬまで歩いてるって・・・」
男「正確に言うと"肌身離さず持っていた"かな」
幼女「肌身離さずってことは、死ぬまで吹いてたの?」
男「ああ、厳密にはそうだな。最期の息を吐ききるまで演奏していた」
幼女「あのさあ・・・」
男「ん?」
幼女「包み隠さずにハッキリ話してくれる?詐欺師さんよ」
-
男「というわけで、うちの倉庫には色々な物が眠っているのでした」
幼女「ガラクタばっかりだったね」
男「幼女にはそう見えるのかもしれないな、飯にするか」
幼女「飯食おうか」
男「米だけなら山ほどあるぞ」
幼女「えっおかずは?」
男「それは俺の・・・」
パキポキ
男「なーんちゃってウソウソー!」
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男「幼女、人参を切ってくれ」
幼女「うんいいよ」
男「と、その前に皮をむけよ」
幼女「わかってるよ、ちょっと隣行ってくるね」
男「・・・隣の家?」
ズリュリュ
幼女「男ー!隣人の」
男「ふぅ・・・またか」
"
"
-
隣人「また皮膚がなくなってしまいました」
男「お、おう」
隣人「ところで」
男「あの篳篥か?」
隣人「はい、それに付いてのことなのですが」
隣人「篳篥を返してもらえますかね」
男「何かあったのか?」
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隣人「実はあれは、吹いた者は悪霊に取り付かれる"死の笛"なのです」
男「おい初めて聞いたぞその話」
隣人「ほら、後ろを見て」
男「後ろ?」
幼女「家が…」
男「燃えてる!?」
隣人「火はちゃんと消してから外出しましょう」
男「大変だ!冷蔵庫のガリガリ君が溶けてしまう!」
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男「うおおお!待ってろ俺のガリガリ君!」
幼女「炎に飛び込んだ!」
隣人「あなたも後を追いなさい」
幼女「えっでも死ぬでしょやだよ」
隣人「大丈夫ですよ」
男「煙と煤で台所がどこか分からねえ・・・」
幼女「男・・・無傷・・・」
隣人「守りの笛ですからね」
-
男「守りの笛?」
隣人「もともとは2丁目の廟堂に奉られていたものですね」
隣人「しかし今から約30年前、あなたの父がそれを盗み出しました」
隣人「その直後に彼は地震・雷・火事・鼻血という四重苦に襲われ瀕死状態になるのですが」
幼女「守りの篳篥のおかげで一命を取り留めたと?」
男「運がいいんだか悪いんだか分からん」
隣人「彼はその後も何度か死にかけましたがすぐに息を吹き返しました」
隣人「そしてある時、篳篥に惚れ込んだ彼はそれを吹いてしまいました」
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男「愛しのキス?笛に?」
幼女「キモイ・・・」
隣人「ですから、その笛は決して吹いてはならないのです」
男「うん、まあ俺はカビとか生えてたら最悪だから吹かなかった」
幼女「生理的に口が受け付けないし」
隣人「でしたら今は問題ありませんが・・・いつか」
隣人「いつか衝動的にそれを吹いてしまう時が来ます」
隣人「危ないのでそれを私に返してください」
"
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