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幼馴染「――嗚呼、運命の歯車は、落日は」
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幼馴染「“当てにならない事ばかり”って」
幼馴染「嘆いたこの舌の根でさえも」
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そういや幼馴染マイスターどこいったんだろ?
また来ないかな?
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>>2
そう遠くないうちにまた来るんじゃないかな
毒にも薬にもならない幼馴染SSを書いてさ
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そこが良いのさ
薬になるSSなんてないのさ
幼馴染SSは和みが一番大切なんだから
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幼「……はあ。憂鬱」
幼「若かりし日、統べてを握った左手も草臥れている」
男「東京事変の歌詞を暗誦したら、そりゃ気分が沈むだろうよ」
幼「何よ不法侵入者。出てって。スケベ」
男「ここ、俺の部屋な?」
幼「そんなの知らない」
男「人が部活してる間に不法占拠するな」
男「というか幼はなんでまだ制服なんだ? 着替えてこいよ」
幼「女の子はこれが勝負服なの」
男「意味わからん」
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男「ともかく着替えてから来いよ。幼がいたら着替えられないし」
幼「男のくせになんで恥ずかしがってるの? わたしがいても着替えればいいでしょ」
男「気にするなっつうなら気にしないがさ」
男「よいしょ」ヌギッ
幼「変態。信じられない。なんで本当に脱ぐの?」
男「そういう幼は顔をそむけるくらいの恥じらいは持とうな」
幼「何にも聞こえない」
幼「今宵の耳は優雅に踊っている孤独を探しているの」
男「さいで」
男(あれ、今のも東京事変だっけ……)
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幼「ねえ男」
男「ん?」
幼「金魚鉢に入れられた魚は、その狭い世界の中で何を見ながら死んでいくんだろうね」
男「んー」
男「自分を飼ってたのはこんな女の子なんだ、とかじゃないか」
幼「男って子供。純粋なんだね」
幼「誰もいない。何もない。ボクをここに閉じ込めたのは誰だろう」
幼「そうやって世界を呪いながら死んでいくの」
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男「なんでそう悲観するかね」
男「もっと楽天的になればいいだろ」
幼「そうかもね」
幼「何が悲しいと尋かれたって、何も哀しんでなどいないさって言われるもの」
幼「ちょうど太陽が去っただけ、なんてね」
男「太陽?」
幼「あなたのこと」
男「あー……ん? どういうこと?」
幼「わからないならいい」
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男「なあ」
幼「あによ」
男「俺がいなくなるの、そんなにイヤか」
幼「どうしてそんなこと言わなきゃいけないのよ」
男「憂鬱の原因くらい知りたいだろ」
幼「大人になった私達にはいつでも答えが要るんだね」
男「まあ答え合わせくらいしたいかな」
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幼「どうしても聞きたいの?」
男「ぜひとも」
幼「じゃあ教えてあげるけど」
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幼「どうしてわたしを一人にするのよこのニブチンっ!!」
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幼「朝は一緒に登校して! 授業中も隣同士なのにっ」
幼「お昼はわたしが作ったお弁当を一緒に食べて、放課後はどっちかの部屋でのんびりするものなのっ!」
幼「そんな時間が失われちゃうのに、どうしてわたしの気持ちがわからないかなあ!?」
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男「いや、あの……ごめんなさい」
幼「ふんだ。知らない」
幼「今日は一度きりなの。明日だって明後日だって一度きりなの」
幼「一緒に過ごす無駄な時間がなけりゃ意味がない。そうリンちゃんだって歌ってるもん!」
男「リンちゃん?」
幼「椎名林檎!」
男「そんな呼び方したことないだろ……それを察しろってのは無理がある」
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幼「つーん、だ。もういい。男なんて知らない」
幼「明日から会えないのに、男はちっとも寂しがってくれない!」
男「いや、つーかさ……」
幼「ふんだっ、男のバカっ。見送りなんてしてやらないんだから!」
幼「いってらっしゃいなんて、ぜったいぜったい言わないんだから!!」
バタンッ
男「あー……言いたいことだけ言って出てったよ」
男「これ、俺が悪いのかなあ?」
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――――三日後
男「よーす、ただいまー」
幼「おとこぉーっ!」ジャンプッ
男「のわ!?」
幼「うぅ……男、本当に男だよね?」
男「そりゃあな……」
幼「ありがとね……わたしに会うために、帰ってきてくれたんだよね?」
幼「貴方に逢って孤独を知ったの」
幼「だから失って今更ながらまた貴方を識ったの」
幼「でもね、もうわたしを一人にしないで」
男「いや、だからな」
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男「ちょっと帰省してきただけなのに、どうしてそう大げさなんだよ」
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幼「だって……」
男「とりあえず機嫌は直してくれよ。な?」
幼「そんなのとっくのとうよ」
幼「だって男が帰ってきてくれたもん」
男「そう言ってくれるのは嬉しいがさ」
男「幼はもう少し独り立ちしような」
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◇男の帰省中
幼「ふんふふ〜ん♪」
幼母「あんたずいぶん機嫌いいわね」
幼「あ、わかる? わかっちゃう?」
幼母「我が娘ながらどうしてこんなメンドクサイ感じなんだか……」
幼母「で、なんでよ?」
幼「んふふ。男が帰省に行くのにね、わたしはいってらっしゃいとも気を付けてねとも言ってあげなかったの」
幼母「ふーん」
幼「となれば当然、男はおじいちゃんおばあちゃんと話している間、わたしのことが頭から離れないでしょ?」
幼「最期までわたしにはあなたしかいない」
幼「最初からあなたにはわたししかいない、そう気づくでしょ?」
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幼母「あーそうね。きっとそうねー」
幼「はあ。早く男が帰ってこないかなあ」
幼母「そうねー。間違いなくそうねー」
幼母「……あ。今日のお昼はそうめんでいいわよね?」
幼「ちょっとお母さんっ。わたしの話ちゃんと聞いてたの!?」
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◆もしも君が彼らの言葉に嘆いたとして
幼「さよなら。あなた不在のかつての素晴らしき世界」
幼「どれほど強く悔やもうとも、どれほど深く嘆こうとも、帰れやしない」
男「なんでメランコリーな時は俺の部屋にいるんだ?」
幼「別にそんなんじゃない」
男「何か聞いてほしいことがあるとか?」
幼「別に。ただね、あなたの相槌だけ望んでいるあたしは病気なのでしょう」
男(んー。今回はなんでめんどくさくなったんだろ)
幼「はあ。世界には不純物が多すぎるのよ」
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男「何かイヤなことでもあったか」
幼「……ううん。ない。そんなことは一つもないの」
幼「ただ、そう。怖くて仕方が無いだけなのに……」
男「怖い、ねえ」
男「部屋にカサカサさんでも出たか?」
幼「わたしの部屋は綺麗だからカサカサさんなんて出ない」
男「やつらは髪の毛一本さえエサとして食いつくしなあ」
幼「それにわたし、そんな臆病じゃない。カサカサさんが出たら踏み潰す。スリッパで」
男「でもそのスリッパ、捨てるんだろ?」
幼「うん」
男「強がりがにじみでてるよな」
幼「いいの。わたし、強い女として振舞うから」
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幼「――――だから、はいこれ」
男「何それ。手紙か」
幼「読んで」
男「あいよ」
男「…………ラブレターでテンション上がったけど、これ書いたの幼じゃないじゃん」
幼「どうしてわたしが男にラブレター書くのよ」
男「書いたのは……先輩か」
幼「すごく綺麗な字だよね。うらやましい」
男「まあ丸文字よりは好印象だな」
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幼「わたし、もう男の部屋に来ないから。安心して」
幼「ああ、あなたがいない人生は」
幼「わたしの人生なんかじゃない」
幼「……そんなウソついて苦しめたりしないから、安心して」
男「んー。手紙で告白されたし手紙で断っていいものかな」
男「やっぱダメだよな」
幼「なんで断るのよ」
男「理由はあるけど教えない」
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幼「先輩さん、美人だよ」
男「そうだな」
幼「お淑やかだし、男性を立てる人だよ」
男「みたいだな」
幼「……胸だって大きいし」
男「ああ、うん」
幼「付き合ってみればいいのに」
男「理由があるから付き合わない」
幼「……変なの。かっこつけちゃってさ」
男「見栄と虚勢だって必要な時があるんだよ」
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男「でもどうして幼が手紙を預かったんだ?」
男「俺に直接渡せばいいのに」
幼「部活に行った後だったから。それで、渡してほしいって頼まれたの」
男「そっか。手間かけさせたな」
幼「別にいいよ。男の部屋に来るついでだったし」
幼「……あ〜あ。もったいないんだー。先輩さんとあんなことやこんなことができたかもしれないのに」
男「あんなことやこんなことって?」
幼「だからー……あんなことやこんなこと」
男「俺の着替えをまじまじ見るくせに、そこは恥じらうのか」
幼「いいでしょ。ほっといて」
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男「それで?」
幼「……? それでって、何がよ」
男「幼はどうして憂鬱になってたんだよ」
幼「それは、」
男「それは?」
幼「――――さてどうしてでしょう」
幼「ねぇ、じっくり考えてみて」
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◆翌日
先輩「幼さん。ちょっと」
幼「はい?」
先輩「この前はありがとう。男くんに渡してくれたのよね」
幼「それはまあ。預かりましたし」
先輩「もしかしたら捨てられちゃうかもなって思ったけど」
幼「……しませんよ。そんなこと」
先輩「そう? 私はそれでもよかったのに」
幼「どうしてですか?」
先輩「だって返事はわかってるもの。言葉にされたらやっぱり傷ついちゃうでしょ?」
幼「でも男があんぽんたんなだけで、先輩さんに告白されたら喜ぶ人のが多そうですよ」
先輩「そうかしらね。それなら嬉しいけれど」
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先輩「でもそれじゃ駄目なのよね。本当に好きな人は喜ばせられないんだもの」
幼「……ですよね」
先輩「ところで幼さん。男くんがどんな理由で断ったか、知りたい?」
幼「なんて言ったんですか?」
先輩「――――ふふ。教えてあーげない」
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◆(幸せはいつも片目を瞑って)
男「気分の浮き沈みが激しすぎないか?」
幼「そう?」
男「感情の振れ幅が大きすぎて疲れそう」
幼「これくらい普通じゃない?」
幼「悲しいときは悲しむし、笑いたい時は笑うの」
幼「つまらない時に笑って、楽しい時に知らん顔してたら、その方が疲れちゃうもの」
男「そういうものかね」
男「少なくとも幼のかんしゃくに付き合うのは結構疲れるけどな」
幼「……ぶー、だ。なによいけず」
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幼「でも変だと思わない?」
幼「大人になってくると、みんな心を偽ってしまうの」
幼「意地を張って、無理をして、悲しみなんてへっちゃらみたいな顔してる」
男「あまり弱音を見せるものでもないしな」
幼「いいじゃない、見せたって」
幼「強さだって弱さだって、ぜんぶ自分だもの」
男「されど男児たるもの、背中には家の名を負っておりますゆえ」
幼「変なの。そんなこと知らない」
幼「自分を見せないでいるとね、きっと幸せはわたしたちを見過ごしちゃうの」
男「あー……幸せはいつも片目を瞑っているんだよな」
幼「それ、わたしが言いたかったんだけど」
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男「でも俺、幸せに見過ごされたところで困らないし」
幼「どうしてよ」
男「幼は俺のこと見逃さないだろ?」
幼「……知らない。わたし、男の全部なんてわからないもの」
男「幼に知られたくないこともあるし、そりゃな」
幼「男だってわたしの全部は知らないでしょ?」
男「たぶんな。わかってみたい気はするけど」
幼「ならわかって」
幼「……”どんな時もあたしの思想を見抜いてよ”」
男「ここで歌詞に逃げるあたりは幼だなって思う」
男「それくらいなら見抜けるな」
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幼「別に無理して聞かなくてもいいのに」
幼「わたし、椎名林檎は好きだけど、好きなものを押し付けたりしない」
男「俺が勝手に聞いてるだけだよ」
男「どういうところが好きなのかがわかれば、幼の気持ちも少しはわかるかもしれないし」
幼「好きな理由、知りたい?」
男「んー……」
男「まだやめとく」
幼「そう」
幼(初めて聴いたのが『青春の瞬き』じゃなきゃ、きっとここまでのめりこまなかった)
幼(大人になったら互いの重さが疎ましくなるだろう)
幼(そんな歌詞じゃなきゃ、ただ普通に好きなだけでいられたのに)
幼「知りたいって言われても、教える気はなかったけどね」
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※青春の瞬きは作詞作曲:椎名林檎になります
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男「なんかそういうこと言われると、無理やりにでも聞き出したくなるよな」
幼「そんなことする勇気ないくせに」
男「それ、誘い受けか?」
幼「誘ってない。そのまま攻められるつもりもないし」
男「さいで」
幼「自分の勇気がないことは否定しないんだね」
男「勇気を振りかざせばいいってものでもないだろ」
幼「でもね、そうして我慢していたらきっと思うの」
幼「体と心とが離れてしまった、って」
男「俺はどれだけ意気地なしなんだよ」
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幼「そりゃあ……あっ」
幼「男、待って。シュークリーム買いたい」
男「それはいいけどもさ」
幼「何なの、その歯にもの挟まった言い方」
男「渋いお茶が飲みたいから茶葉を買いに来たんだよな?」
幼「そう」
男「シュークリームってお茶請けに合うのか?」
幼「……渋くならないように淹れる」
男「目的が瓦解した気がするけど、まあいいか」
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……
男「で、ティーバッグの紅茶になるのか」
幼「だってシュークリーム買ったから」
幼「渋いお茶はまた今度にする」
男「この前からずっと同じこと言ってるよな」
幼「何よ、文句あるの?」
男「からかってるだけだよ」
男「こうして買い物してるの、楽しいしな」
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◇翌日
女「で、男とのデートは楽しかったの?」
幼「そんなんじゃない。買い物に行っただけだもの」
女「世間じゃそれをデートって言うでしょうよ」
幼「一緒に買い物くらい子供でもできるよ」
幼「デートってもっと特別なものじゃないの?」
女「あんたって身近に男がいたから、デートへのハードル高すぎるでしょ」
女「そんな言い分じゃデートしてる高校生が絶滅するから」
幼「別にわたしがおかしいんじゃないと思う」
幼「デートってもっと特別なものじゃないの?」
女「少女漫画のデートとか思い出してみなよ」
女「デートってあきりたりなものだから」
幼「……でもああいうのって、だいたい最後に告白とかいろいろあるし」
女「すればいいでしょ。告白」
幼「…………しないし」
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>>37修正
10行目の幼「デートってもっと特別なものじゃないの」→削除
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女「自分の中にいろいろ溜め込んじゃうくらいなら、言っちゃえばいいのに」
幼「――――」
女「どうしたの、黙り込んじゃって」
幼「昨日、男にそんな話をしたなって」
幼「自分を隠してるとろくなことがないって」
女「ふうん? その通りなんじゃない?」
幼「……放っといてよもう」
女「はいはい、すねないの」
幼「雑に言わないで」
女「ならさっさとおめでとうって言わせなさいよ」
幼「…………ちょっとだけ待ってて」
女「それ、この前も聞いたからね?」
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上げ
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上げ
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