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男「フィクションの喫茶店のマスターって絶対只者じゃないよな」

1 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:21:24 vFIv6iik
とある小さな喫茶店の、とある昼下がり──



ワイワイ…… ガヤガヤ……

マスター「……」キュッキュッ…

女店員「このコーヒーカップは……」バタバタ…

客A「HAHAHA……」

客B「ほう……」

客C「……でさぁ」

客D「そりゃ面白い!」



カランカラン……

二人の来客があった。


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2 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:23:16 vFIv6iik
男「ちわっす!」

友「こんにちは」

女店員「あら、いらっしゃい!」

マスター「やぁ」

男「二人とも、元気そうでなにより!」


3 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:27:11 vFIv6iik
女店員「ご注文は?」

男「ブレンド」

友「ボクはカフェオレで」

女店員「は〜い」

男「お前ってホント好きな、コーヒー牛乳」

友「コーヒー牛乳じゃないよ。カ、フェ、オ、レ」

男「似たようなもんじゃねぇか」

友「全然ちがう」


4 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:29:07 vFIv6iik
女店員「お待ちどおさま!」コトッ

男「ども」

友「ありがとうございます」

男「……」グビッ

友「……」チビッ

男「いやぁ〜、やっぱマスターの入れるコーヒーは絶品だわ!」

友「ホントだね!」

マスター「お世辞いったって、ツケにはしないよ」

男「うぐっ……!」


5 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:32:00 vFIv6iik
男「……まぁ、あれだ」

男「喫茶店を経営するってのも結構大変なんでしょ? マスター」

マスター「まぁね。商売敵も多いしね」

マスター「だけど好きで始めた商売だし、つらいと思ったことはないかな」

男「ふうん……」

女店員「マスターったら、今でもコーヒー豆の研究に余念がないのよ。スゴイでしょ」

友「熟練しても、決して仕事をおろそかにしないってのは立派だなぁ」

男「……」

男「ところでさ──」


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6 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:34:30 vFIv6iik
男「ドラマだとか、映画だとか、小説だとか、漫画やアニメだとか……」

友「フィクション?」

男「そうそれ! フィクション!」

男「フィクションに登場する喫茶店のマスターって絶対只者じゃないよな」

友「そういわれてみれば、そうかもね」

友「実はものすごく強かったり、なにかワケありだったりするよね」

男「そうそう」

男「喫茶店のマスターは世を忍ぶ仮の姿……みたいなパターンが多いよな」

男「もしかして、マスターもそうなんじゃないの?」


7 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:36:43 vFIv6iik
マスター「そんなことはないよ」

マスター「オレはしがない、小喫茶店の店主さ」

男「ホントかな〜?」

男「とかなんとかいって、実は凄腕のエージェントだったりして!」

マスター「コーヒーを入れる腕はともかく、そういう腕っぷしはからっきしだね」

マスター「人を殴るどころか、ケンカだってしたことないよ」


8 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:38:53 vFIv6iik
友「だったら……知らないことはない情報屋、だったりするんじゃないですか?」

友「札束を払うとどんなことでも教えてくれる、みたいな」

マスター「情報……?」

男「!」ビクッ

友「!」ドキッ

マスター「フフフ、情報か……そんなに知りたいかい?」


9 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:41:13 vFIv6iik
マスター「なら札束どころか、タダで教えてあげよう」

マスター「オレのコーヒー情報、コーヒー豆だけに豆知識をね!」

マスター「まず、オレが愛用してるコーヒー豆は南米の──」

男「わぁ〜、ストップ! ストップ!」

友「ごめんなさい、ごめんなさい!」

マスター「なんだ……聞きたくないのかい」

女店員「危ないところだったわ……」

女店員「マスターのコーヒー談義が始まると、止まらなくなっちゃうもの」

マスター「これは失敬」


10 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:43:37 vFIv6iik
男「しっかし、なんで喫茶店のマスターってそういう役割にされがちなんだろうな」

友「さぁ……」

女店員「なんででしょうね?」

マスター「……」

マスター「う〜ん……多分こういうことじゃないかな?」

マスター「喫茶店っていうのは、静かで落ち着ける場所ってイメージがあるから」

マスター「フィクションにおける、主人公たちの拠点にしやすい」

男「ふむふむ」

友「うんうん」


11 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:46:06 vFIv6iik
マスター「そうなると、なにしろ主人公の拠点を預かってる人物なんだから」

マスター「当人にもなにかしらドラマを持たせた方が、物語は面白くなる」

マスター「それに、自分でいうのもなんだけど」

マスター「喫茶店のマスターってのはどことなくミステリアスな雰囲気があるから」

マスター「そういったところも、『喫茶店のマスター=只者じゃない』ってイメージに」

マスター「つながってるんじゃないかな?」

男「なるほどねぇ〜」

友「いわれてみれば、そうかもしれませんね」


12 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:48:47 vFIv6iik
男「俺の疑問にこんなに明快に答えてくれるなんて……」

男「やっぱり……マスターって只者じゃないんじゃないの?」

男「たとえば今話題になってるベストセラー小説……書いたのは実はマスターとか!」

マスター「残念だけど、小説なんか書いてるヒマはオレにはないよ」

男「う〜ん、だけどマスターは絶対只者じゃないと思うんだけどなぁ……」

友「ボクもそう思う」

マスター「買いかぶりすぎだよ、ハハハ」

女店員「マスターは正真正銘、ただのコーヒー好きのおじさんよ」


13 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:51:00 vFIv6iik
男「おっと、時間だ」

男「そろそろ出ようぜ。マスターの正体を暴くのはまた今度だ」スクッ

友「オッケー」スクッ

女店員「ありがとうございました〜!」

マスター「また来てくれよ」

男「もちろん!」

友「ごちそうさまでした!」

バタン……



マスター「……」


14 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:53:06 vFIv6iik
マスター(女店員ちゃんがいったとおり、オレには正体なんかなにもない)

マスター(只者じゃない、なんてことはまったくない)

マスター(コーヒー好きが高じて35歳で脱サラしただけの)

マスター(しがない喫茶店の店主にすぎない……)



マスター(だけど──)


15 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:56:00 vFIv6iik
外──

友「ええ〜っと、今度の依頼はなんだっけ?」

男「おいおい、しっかりしてくれよ」

男「中高生をターゲットに荒稼ぎしてる、ドラッグ密売グループの撲滅だよ」

友「ごめんごめん。やりがいのない依頼のことは、つい忘れちゃうんだよね」

友「ボクもマスターの仕事ぶりを見習わないと」

友「さてと、武器はどうする?」

男「相手はせいぜいナイフや銃で武装してる50人かそこらだろ? いらねえだろ」

友「それもそうだね」


16 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 08:59:00 vFIv6iik
喫茶店──

客A「ワオ! そろそろホワイトハウスに戻らないと〜!」

客B「自分も特殊部隊の任務に戻らねば……!」

客C「む……帰還命令か。火星に戻るとしよう」ピピピ…

客D「では大魔術師である我が、みなを目的地まで空間転移させてやろう!」バサァ…

客A「いつもいつも助かりマ〜ス」

客A「マスター、ここに四人分のマネー置いておきマ〜ス」スッ…

マスター「毎度!」

シュンッ!

四人の客はまとめてどこかに消えてしまった。


17 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 09:02:07 vFIv6iik
女店員「マスター、私も今日は地下格闘技の試合があるので、早退します!」

マスター「ああ、王座防衛、がんばってくれよ」

女店員「はい!」



マスター(──オレの店にやってくる人は、なぜかみんな只者じゃないんだよなぁ……)







END


18 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 09:49:33 e2DsTc0.
面白かった!


19 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 09:50:22 EyV0ec7k
乙乙乙


20 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 11:01:15 YE8j64ZI
最後の一行が読めないのだが


21 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/11(土) 12:14:57 Wqo0Zay6

いいオチ


22 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/12(日) 07:04:04 lGfUJ9hs
只者じゃない客を引き寄せるという只者じゃない才能が……

乙!


23 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/12(日) 08:50:52 WJBOV7HM

いいオチだった


24 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/12(日) 12:19:49 lnDZfWlI
うむ


25 : 以下、名無しが深夜にお送りします :2015/04/14(火) 22:36:41 vNZ5q/N6
この設定は、なんかどっかでまた使えそうな気がする。
他メンツの話の時に、立ち寄る喫茶店として
おいしい!


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