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(,,゚Д゚)Robotsのようです- 1 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:33:42 ID:2v/Uc0G20
-
名前を呼ばれてもね、少女。
助けてと言われてもね、少年。
俺にゃ生憎と、救いを求める手を掴む術すら知らないのさ。
- 2 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:34:25 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚)Robotsのようです
act1:•It's daily life dyed into gray
- 3 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:35:41 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚) ハッ
いけない。また頭が真っ白になっていた。
最近、どうにも時間を持て余すと何も考えなくなる時が増えた。
平和ボケか。こんな自分でもそんな瞬間があるのか。
否、今でも永い白昼夢を見ているのでは。
裏路地を独り歩く度、発作的にそんな出鱈目な妄想に駆られて、切り取られた空を見る。
(,,゚Д゚)「………………」
見上げれば、いつものぶ厚い雲。
アクリル絵の具の灰色を何重にも塗りたくったような空が、視界一杯に広がる。
煙草の吸殻と空き缶が転がる表通りは忙しそうに人々が行き交い、野良猫が塀の上で喧嘩する。
それを烏が囃したて、掃除好きの老女が「喧しい」と石をぶつける。
- 4 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:36:31 ID:2v/Uc0G20
-
この世に生を受けて約ウン十年。
頭の上の八雲に切れ間は出来た試しなどなく、ついぞまともな日光は見る事も叶わない。
黒幕越しのぼんやりとした光が、ぬるく、この世界をぼんやり照らす。
何度も繰り返し見続けてきた、この平凡な日常を。
(,,゚Д゚)
10月半ばの冷え切った風が、もうすぐ酸の雨が訪れる事を教えてくれた。
ズボンのポケットから懐中時計を出す。16時30分と数分過ぎ。
もうすぐ、日が沈む。
(,,゚Д゚)(遅いな、ハインの奴。もう16分27秒の遅れだ)
冷たいコンクリートの壁に背を預け、男・ギコは何度も腕時計に目をやる。
「仕事」を終わらせて待ち人を迎えに来たはいいものの、一向にその姿が見えない。
ただでさえこの周辺は治安が悪い。
ちょっと歩けば脳味噌にヤクとお花畑を詰め込んだハッピーな連中ばかりぶつかるような場所だ。
肌寒い秋、冬にかけてその数は減るどころか、湯水のように沸いてくる。
('A`)「ちょっとそこのお兄さん。ちょーっとカオとカネ貸してくれません?」
ほぅら、こんな感じで。
- 5 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:37:41 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚)「……」
参ったな。ギコは時計をズボンの中で擦りながら男を見上げた。
見窄らしいスーツ姿だ。以前はサラリーマンか何かだったに違いない。
顔はまだ若い。彼もまた、この大不況の波に飲まれた一人か。
あまりにも哀れなのでコインの一つでも恵んでやりたいが、生憎と金は持ち合わせていない。
かといって、正面の男を無視する程のスル―スキルも無い。
('A`)「聞いてますか?何も有り金全部寄越せって言ってるんじゃないんです。
万札5枚あれば充分ですから。ねっ?僕ってば優しいでしょう?」
(,,゚Д゚)
さて、どうするか。
こういう類は夜道に絡んでくる酔っ払いよりもタチが悪い。
金は無いといっても聞かぬだろうし、聴覚と判断力がインプットされているとは思えない。
なにせ、へらへらと笑っちゃいるが、目が明らかに据わっている。
('A`)「アローアロー、もしもーし?お兄さんもしかして障害者?聾唖とか?」
(,,゚Д゚)
('A`)「ねえ、お兄さんってば」
(,,゚Д゚)
('A`)
('A`)「あ、そう」
- 6 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:38:38 ID:2v/Uc0G20
-
ジャキッ ('A`)うr=-(゚Д゚,,)|壁
('A`)「止めません?そういうの。無視されるのが一番辛いんだってば」
('A`)「俺一人でペラペラ喋っちゃってスッゲー恥ずいじゃん。傍から見たらアホじゃん」
('A`)「まるで俺が頭いかれちゃったキチガイさんみたいだろ。無視してるそっちが悪い癖に」
('A`)「ああでも仕方ないか。耳が使い物にならないんだもんね。じゃあ処理しなきゃ」
男はギコの額に銃口を突き付けながら、一人呟く。ボソボソと。
('A )「ここじゃどっかオカシイ人は生き残れないんだよ?知ってた?ロボットと一緒」
( A )「悪い所がちょっとでも見つかったらポイして処理しなきゃ。人間もロボットも。そうだろ?」
( A )「処理します、処理します、要らない奴は処理します。処理します処理します処理します」
( A )「マイケルは頭が悪いので処理しますハンクスは交通事故により処理しますトムは業務違反により処理します
ブレンダンは酒癖が酷いので処理しますコリーは口が悪いので処理しますダンは気が狂ったので処理します
リーは横領したので処理しますマシューは薬物依存症です処理しますロブは病気です処理します処理します」
(,,゚Д゚)
成程。この男はどうやら「処理する」担当だったらしい。
( A )「処理しなきゃ。使えない奴は皆処理しなきゃ。でなきゃ今度は、今度は、今度は…………」
- 7 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:40:32 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚)「お前も処理される側に回されちまったわけか」
( A )
(,,゚Д゚)「その年で人のクビを切るってのは辛いんだろうな。俺には分からんが」
( A )
( A )「違う」
( A )「捨てられてなんか、ない」
( A゚)うr=-「――その証拠に、お前も俺が≪処理≫してやる」
( A゚)うr=-「そして返り咲いてやる。その為に沢山≪処理≫してきたんだ」
(,,゚Д゚)
(,, Д )
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「そうか」
(,,゚Д゚)つ スッ「なら俺はお前を処理しよう。俺の平和の為にな」
- 8 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:41:18 ID:2v/Uc0G20
-
ギコはおもむろに、右手で男の銃を掴む。
(,,゚Д゚)つ ジジ…
( A゚)つ洲 ヒュンッ
(,,゚Д゚)つ洲 ヒュバッ
(,,゚Д゚)うr=-” パシッ
( A゚)つ
見間違いでなければ。
男の手から銃が消え、ギコの手に収まっていた。
その銃口は、今度は男の眉間に照準があてられていた。
(; A゚)つ「……………え?」
(,,゚Д゚)うr=-「じゃあな」
――銃声が一つ、轟いた。
- 9 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:42:09 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚)「…………」
火薬の臭いが鼻に纏わりついて気分が悪い。
ギコは銃を放り捨て、両手をポケットに突っ込む。
このまま留まっていたら、自分が何を仕出かすか予想がつかなかった。
痰のひとつでも吐き捨てたい衝動を飲み込み、その場から離れる。
(,,゚Д゚)「(何でこんな事をしたんだ、俺は)」
(,,゚Д゚)「(そうだ、左胸部分の温度が急低下して、呼吸器官が上手く働かなくなって――)」
(,,゚Д゚)「(……………これが不快って奴なのか。一つ学んだな)」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「(……………………あの男、何かに似てたんだ。何にだっけ)」
足早になりつつあった歩みを止め、心臓部分に圧しかかる重みをほぐすように胸を掴む。
分かる訳もないのに、無性に空を見上げた。
从 ゚∀从「ばあっ」
- 10 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:43:01 ID:2v/Uc0G20
-
(,,゚Д゚)
重みの答えの代わりに、空から少女が降って来た。
音もなく壁を蹴り、見事な宙返りで着地。後から降って来たスクール鞄を華麗にキャッチ。
しかしギコは狼狽えるどころか、眉一つピクリともさせない。
从 ゚∀从「…………ちょっとは驚けよ」
(,,゚Д゚)「登場がワンパターン、技も前回と同じ、驚かせ方に覇気を感じない、20点」
从 ゚3从「ちぇっ、ギコは相変わらず鉄面皮だなー」
少女は鉄塔を見上げた。男も釣られて見る。
彼女は恐らくあそこから飛び降りたのだろうと、男は推測する。
『重力操作靴(グラビティシューズ)』を履いていれば訳ない話だ。
現に少女の棒きれのような足は、男が貸しっぱなしにしたシューズを着用している。
从 ゚∀从「この分だと、あと2メートル上からは飛べるな」
(,,゚Д゚)「靴抜きにしてもまるで猿だな、お前は。サーカス団に入ったらどうだ、ハインよ」
从*゚∀从ゞ「照れちまうぜ」
(,,゚Д゚)「気分が高揚している所悪いが、誉めたつもりはないぞ」
- 11 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:44:13 ID:2v/Uc0G20
-
少女・ハインは、当たり前のように男、ギコの手を握る。
大きな掌は、まるで一晩野晒しにしておいた鉄パイプのように冷たい。
从*゚∀从「ギコの手、ひやーい。ずっと待ってたのか?俺の帰り」
(,,゚Д゚)「違う」
从 ゚∀从「そこは嘘でも「そうだ」って言う所じゃね?そんでもって」
↓
从;゚∀从「そんな、こんなに冷たくなっちゃって」
从 ,,゚Д゚从「お前を想うだけでヒートしてしまうから丁度良いくらいさ」
从///∀从「もっもう、ばかっ!」
↑
从*゚∀从「そして長い時間見つめ合って、そこから熱烈なチューこう、ぶちゅーっとだな」
(,,゚Д゚)「漫画の読み過ぎだ」
从 ゚∀从「いいじゃん!ロマンあって」
(,,゚Д゚)「素晴らしいジョークだ。メリケンジョーク集に載せられるぞ」
从#゚∀从
(,,゚Д゚)「足を踏むな。歩行の妨げになる」
- 12 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:44:41 ID:xJfM7lSw0
- 面白そうだ、支援
- 13 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:45:02 ID:2v/Uc0G20
-
从*゚∀从「まあそんなことより聞いて喜べ、今日はシチューだぜ!俺様が腕にヨリをかけて作ってやる!」
(,,゚Д゚)「そうか、じゃあ帰りに新しい固形食糧を買わなくちゃな」
从#゚∀从「どういう意味だ、こらっ!」
(,,゚Д゚)「そもそも、お前が料理を作らなくたってオートメイカーがあるだろう」
从#゚∀从「んもうっ、俺が作ってお前が食べるから意味があるんだよ!分かってないなあ!」
(,,゚Д゚)「すまないが本当に理解が追いつかない」
从#゚∀从「ギコのばかっ!ニブチン!トーヘンボク!いーから黙って走れ!」
二人は手を繋いだまま路地裏を小走りで駆け抜ける。
どこかの家の開け放された窓から、もうすぐ雨雲が来るとラジオの天気予報が告げていた。
風がたおやかに吹き、雲はゆるやかに、確実に流れていく。
目を細めて探せど、今日も雲に切れ間は一つも見つからなかった。
地球ではもう100年以上もの間、まともに日光が差したことはない。
- 14 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:45:55 ID:2v/Uc0G20
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
西暦2XXX年。
人類は更なる資源を求めて宇宙へ進出し、『楽園』を創った。
そこは病気も老いも、一切の苦しみのない場所となったと言われた。
VIPPERと呼ばれる富裕層の一部は、資源も吸いつくされ汚染された地球を捨て『楽園』へ移住した。
いつしか、人類の間では『楽園』に行くことこそが夢とされるようになった。
一方で、人類は衰退し、その数は最大70億から10億にまで激減する。
資源は搾取される一方で、数百年前まで騒がれていた環境保護は都市伝説と化し。
また、人件費や手間等の問題から、人間が雇用される数は格段に減った。
作業も環境汚染の抑制も犯罪の取り締まりも、何もかもロボットに任せ、人は仕事をしなくなった。
やがて人類に代わり、劣悪な環境でも対応できるロボット達が数を増やしていった。
人間に混じって、人間と同じように学び、遊び、家族を作り、社会を形成させた。
医療で人とロボットを融合させる技術も開発され、普及した。
更なる技術向上で、外見も段々と人間に近くなった。
感情が生まれ、知性を持ち、品格を得た。
ロボットはもう、人間に限りなく近くなった。
从 ゚∀从「明後日の日曜なんだけどさ、学校のプログラムで工場見学を観に行くんだ!ギコも見たい?」
(,,゚Д゚)「別に」
从 ゚∀从「ロボットが働いてるのはしょっちゅう見るけど、人間が働く工場ってどんなんなんだろ……」
- 15 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:48:03 ID:2v/Uc0G20
-
やがて人間に感化されたロボット達は、ネガティブな感情も抱くようになった。
アイツが憎い、コイツが邪魔だ。損得と暴力を覚えたロボット達は武器を取り、戦うようになった。
個が集まれば集団となり、軍隊となる。憎悪が更なる怨嗟を呼び、そして戦争が巻き起こる。
だが、感情あるロボット達は、同じオイルが流れる同胞たちを自分の手で壊すことを恐れた。
考えて考えて考えた末、人間達は恐ろしい提案を持ちかけた。
感情のない戦闘用ロボットを作ってはどうか?
保身に走りたいが故に、感情あるロボット達はその提案を受け入れ、感情回路の無いロボットを生産した。
世論を操作し、大衆の倫理や観念を捻じ曲げ、正当化していった。
改良に改良を加え、同じ姿のロボット達が、無感情にただただ殺し合った。
それから長い年月が経った。
長い戦争に疲れ果てた末、経済的、倫理的観念などの問題から、これ以上の戦争は無益と判断。
停戦条約を結んだ。
こうして世界に一応、平和が戻って来た。
停戦から6年が経つ。
各地で紛争や小競り合いは未だ続いているが、世界は概ね平和だ。
ギコ達の住むトウキョウも、治安は決して良いとはいえない。
が、暮らすには困らない場所である。
働く場所がある、学び舎がある、買い物が出来る場所がある、身を守る為の武器を手に入れるツテがある。
これだけあれば、至れり尽くせりと言っても過言でない。
毎日人は死ぬけれど。毎日誰かが泣くけれど。理不尽ばかりの世界だけど。
昔よりマシ。この一言で誰も何も言えなくなる。
それが現状だ。
- 16 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:49:03 ID:2v/Uc0G20
-
从*゚∀从「たっだいまー!」
(,,゚Д゚)「ただいま」
裏路地を抜け、築100年以上は経過していそうな灰色のビルに、二人は足を踏み入れる。
仕事帰りの主婦ロボット達とすれ違っては会釈する。なんてことない日常。
そう遠くない場所で銃声と怒号が聞こえた。またマフィア達のシマ争いのようだ。
後で念の為、シェルターを引っ張り出しておこう。
……ハインがキッチンを吹っ飛ばすことも懸念して。
(,,゚Д゚) ガチャッ
从*゚∀从「シチュー!シチュー!ほっこりサクサクホワイトシチュー!」
(,,゚Д゚)「サクサク要因に何を入れるつもりだ、お前という奴は」
从 ゚∀从「キャベツ」
(,,゚Д゚)「普通のシチューにキャベツは入らんぞ」
从 ゚∀从「…………落ち葉?」
(,,゚Д゚)「俺達は虫じゃないんだぞ」
从 ゚∀从「じゃあ砂」
(,,゚Д゚)「最早食い物ですらない」
从#゚∀从「じゃあ何入れたら満足なんだよ!」
(,,゚Д゚)「何も入れるな。寧ろ作るな」
- 17 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:50:20 ID:2v/Uc0G20
-
ギコとハインは親子ではない。兄弟でも、ましてや親戚ですらない。全くの赤の他人だ。
ハインに両親は居ない。ギコにも家族など存在しない。
孤独な者同士、いつの間にか寄り添い合って共に暮らしている。
そこに二人は何の疑問も持っていない。
この世界では、それが当たり前の光景だ。
停戦以降、血の繋がりの無い者同士がルームシェアすることは一般的なこと。
家賃さえ払えば、どんな輩が部屋で何していようが問題ない。
ヾ从*゚∀从ノ「ギコ、肩車!鍋取る、鍋!」
(,,゚Д゚)「すぐ出来るからTVでも見てろ」
从;゚皿从「俺がやるー!俺が料理するのー!」
(,,゚Д゚)「考えたんだが、やっぱりキッチンを戦場にされちゃかなわん」
_,
从 ゚3从「どんだけ俺に飯作らせたくないんだよ……」
(,,゚Д゚)「食費を無駄にしたくないんでな」
ハインをリビングに追い払い、ギコは材料を出して電子レンジ型の機械の前に立つ。
一家に一台、材料さえ入れればすぐに料理が出来る『オートメイカー』。
ホカホカの白米からフランス料理フルコースまでこれ一台。この国ではポピュラーな電気製品だ。
シチューならば30分もあれば完成するだろう。
从 ゚∀从ノ[ ゚]「どれもニュースばっかだなー」
ハインはもう料理のことを忘れて、ソファーの上でテレビに釘付けだ。
料理を作るなんて、只の気まぐれだったのだろう。ギコもハインの隣に座る。
- 18 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:51:07 ID:jOIJpGGs0
- キャベツ悪かないと思うがなぁ
サクサクはしないだろうが
- 19 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:51:30 ID:2v/Uc0G20
- 从 ゚∀从「へー、この辺りに出てるっつーサイコキラー、まだ捕まってないのか」
(,,゚Д゚)「何だそれ」
从 ゚∀从「ほら、障害者ばかり狙って銃で殺し回ってるっつー『処理屋』って奴」
(,,゚Д゚)「そんなのがいたんだな」
从;゚∀从「……ギコはもうちょい、危機感おぼえよーぜ。俺心配になってきた……」
興味ない。人殺しなんて皆等しく気が狂っている。
そうでなきゃ感情回路を引っこ抜かれたロボットだ。どちらにせよ同じだ。
少なくとも、ギコからすれば。
(,,゚Д゚)「安心しろ、俺は障害者じゃないし、死なない」
从;゚∀从「うん、まあ知ってるけどさ。ギコはどこもおかしくないよ」
(,,゚Д゚)「それに死なない」
从;゚∀从「分ーかってるって!分かってるけど気をつけろよって話!」
(,,゚Д゚)「そうか」
从;゚〜从「〜〜〜〜っ、本当に大丈夫かな……」
時々、ギコとの微妙に噛み合わない会話に、ハインはヤキモキしてしまう。
常に楽観視しているというか、他人事のように語る彼を見ていると不安になる。
- 20 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:52:43 ID:2v/Uc0G20
-
R R R R R.....
気まずくなったタイミングを見計らったように、電話が鳴る。
立ちあがりかけたハインを制して、ギコが受話器を取る。
【,,゚Д゚)「もしもし」
『ハロー、ミスター。ディナーの準備の邪魔しちゃったかしら?』
電話回線は、落ち着いた少女のハスキーボイスを流してきた。
ギコは表情を変える代わりに、拳を固く握る。
【,,゚Д゚)「……何の用だ」
『ハインが今頃シチューを炎上させたものだと思ってたけど、違うみたいね』
【,,゚Д゚)「良いから用件を言え。俺は今とても、とても忙しいんだ」
ギコがそう言った直後、背後でオートメイカーが調理完了を知らせるミュージックを流す。
よっぽど切ってやりたいが、ハインのスリッパを鳴らす音を聞いて会話に意識を戻した。
『そう怒らないでよ。この辺に出没する変態殺人鬼さんの話は知ってるでしょう?』
【,,゚Д゚)「『処理屋』、だったか。障害者ばかりを殺害対象にするとかいう」
『そうそう、耳が早いじゃない』
【,,゚Д゚)「そいつがどうした?俺には関係ないだろう」
電話の相手は一拍置いて、非常に身の毛のよだつような冷め切ったで声で、こう切り捨てた。
『貴方にとっては非常に残念なお知らせだけど、これから関係が出てきちゃうのよ』
- 21 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 01:57:09 ID:2v/Uc0G20
-
【,,゚Д゚)
【,,゚Д゚)「つまり、俺に『仕事』しろと?」
『明朝にVIP市の支社に来て頂戴。全ての説明は明日よ。マトモな服じゃなかったら尻叩くからね』
言うだけ言うと、電話相手はサッサと通話を終了させた。
ツー、ツー、と電子音が虚しく響き続けても、ギコは受話器を置こうとせず、立ち尽くしていた。
从 ゚∀从「どしたの?ギコ。清掃屋のオッちゃんにまた叱られたの?」
(,,゚Д゚)「……いや、新しい『お掃除』の場所が決まったんでな。明日会社に行かなきゃならん」
从 ゚∀从「フーン、そっか。説教じゃなくて良かったじゃん」
ハインは特に詮索することなく、「ご飯食べようよ」と促す。
そこでギコはようやく、受話器を元に戻したのだった。
(,,゚Д゚)「…………」
从 ゚∀从「それでモララーの先公の奴がさぁ、もっと女らしくしろ!とかうるせえ訳……聞いてる?」
(,,゚Д゚)「……………………ん?あぁ、聞いてなかった」
从 ゚∀从「なんだ、耳でも悪くなったかよ」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「……かもしれないな。今度病院に行こう」
- 22 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:00:41 ID:2v/Uc0G20
-
从 ゚∀从「えっ」
从 ゚∀从
从;゚∀从「そんな!早く病院いこうぜ!もし悪い病気だったらどうすんだよ!!」
(,,゚Д゚)「悪いが、うちに医者にかかるだけの金は無いぞ」
从;゚∀从「じゃあ、もし本当に病気だったら……」
(,,゚Д゚)「死ぬな。最悪の場合」
从 ゚∀从
从 ;Д从 ブワッ
从 ;Д从「嘘だよな!?冗談って言ってくれよ!お前が死んじまったら、俺、俺……!」
(,,゚Д゚)「ああ、冗談だ」
从 ゚∀从
从#゚∀从 ゲシッゲシッ!
(,,゚Д゚)「食事中に脛を蹴るな、女らしくしろ」
从#゚∀从「うっせえ!お前なんかさっさとくたばれ!」バカヤロー!
- 23 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:01:21 ID:2v/Uc0G20
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
民間護衛組織CIグループ。日本を代表する、いわゆる護衛派遣組織だ。
重要人物の身辺の警護から、事実上のマフィアとの交戦や市内の治安保全など、
おおよそ民間組織の範疇を超える実績と権威を持つ。
警察組織との繋がりもあってか、無能な警官に代わり仕事をこなしている。
(,,゚Д゚)「……来なけりゃ良かったかな…………」
明朝、VIP支社の高層ビルを見上げ、よれたスーツを着たギコは忌々しげに呟いた。
朝といえどスーツは暑い、それに堅苦しくて着れたものではない。
それにギコは「彼女」に会いたくなかった。出来れば顔を合わせないまま仕事がしたい。
「あら、来ないと思ってましたのに。意外と仕事熱心ですのね」
そういう時に限って、彼女は現れる。
涼やかで凛とした色を伴って、少女の声はギコの背中に話しかけてくる。
爪゚ー゚)「御機嫌よう、ミスター。今日も素敵な天気ですわ」
( ´∀`)「お早う御座いますモナ、ギコ」
(,,゚Д゚)「……よォ。相変わらずスカしてんな」
肩で切りそろえたブラウンの髪を艶やかに靡かせ、黒のリムジンから少女が降り立つ。
少女の姿を見るや、ギコを除く社員達は一斉に姿勢を正した。
- 24 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:03:06 ID:2v/Uc0G20
-
頭に乗せた真っ赤なベレー帽を直し、少女・ジーナは上品に一礼する。
その右後ろでは執事のモナーが倣って深々と頭を下げる。
爪゚ー゚)「ハインさんはお元気?昨晩のシチューは如何でしたの?」
(,,゚Д゚)「元気も何も、お前は毎日学校で会ってるだろが」
爪^ー^)「でも、ハインさんは隣のクラスですし、私とお話して下さいませんから」
(,,゚Д゚)「アイツはお前みたいなタイプが苦手だからな」
爪゚ー゚)「悲しい限りですわ。私はお友達になりたいだけなのに。日本の方々はシャイですのね」
(,,゚Д゚)「腹に一物抱えこんだ奴は関わらないに限るのさ。俺もお前が嫌いだ」
爪゚ー゚)「あら、私は好きですわよ?ミスター、貴方の事も」
涼やかなマリンブルーの瞳がギコを見据える。
社員達がハラハラと成り行きを見守る中、二人は和やかに(ギコは邪険に扱っているが)言葉を交わす。
誰がこのいたいけな少女を見て、VIP支社長だと思うだろうか。
しかし現実、彼女は曲りなりにも社員1000人強を抱える、弱冠14歳の最年少の女社長なのだ。
その、上司もいいとこの相手に不遜な態度を取るギコだが、ジーナはニコニコと笑顔のまま。
爪゚ー゚)「――さて、井戸端会議を長々続けるのもなんですし、本題に入りましょうか」
言うやジーナは自動ドアをくぐり、先導する。
ギコはそれに着いていくかどうか逡巡したが、舌打ちを一つ鳴らし、少女の後に続いた。
- 25 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:04:23 ID:2v/Uc0G20
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
爪゚ー゚)「仕事は単純明快でしてよ。今回の連続殺人鬼『処理屋』を、私達で『処理』してしまいましょう」
広い会議室に、充満する数十人の男達。
何十対の無機質な視線を浴びても平然とした表情で、ジーナは部屋中に響く声でそう切り出した。
傍らのモナーか素早くデジタルマップを表示させる。
マップには『処理屋』の行動パターンや被害者の実例、容疑者一覧等のデータがピックアップされた。
爪゚ー゚)「情報は既にこちらで収集済みです。後はあの冷酷無慈悲な変態野郎のケツをぶっ叩くだけですわ」
その情報は一体どこで、幾らで手に入れたのか気になる所である。
犯人の行動範囲には、ハイン達の通う学校の通学路も含まれていた。
もしこの情報をテレビで見ていなかったら、ギコはこの場に居なかっただろう。
ギコは渡された資料に目を滑らせ、ある一点で視線を留めた。
『('A`)』
鬱田ドクオ。VIP市在住28歳独身男性。
元××商社所属。アメリカ合衆国への3年間の赴任歴あり。
帰国後、精神異常により半年間入院。その後辞職。
職業・現在無職。
――見覚えがある。昨日、ギコに金をせびってきた青年だ。
( A゚)うr=-『――その証拠に、お前も俺が≪処理≫してやる』
( A゚)うr=-『そして返り咲いてやる。その為に沢山≪処理≫してきたんだ』
(,,゚Д゚)「…………まさか、な。」
ふと浮かんだ発想を振り払い、傍らのコーヒーを啜る。
写真の向こうの男は、ただひたすらに恨みがましい目でギコを睨みつけていた。
- 26 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:06:37 ID:2v/Uc0G20
- 回線の調子が悪いので今日はここまで。
早ければ次は今夜か明日の夜にでも。
- 27 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:10:42 ID:2v/Uc0G20
- 一つだけ訂正
>>10
(,,゚Д゚)
重みの答えの代わりに、空から少女が降って来た。
音もなく壁を蹴り、見事な宙返りで着地。後から降って来たスクール鞄を華麗にキャッチ。
しかしギコは狼狽えるどころか、眉一つピクリともさせない。
从 ゚∀从「…………ちょっとは驚けよ」
(,,゚Д゚)「登場がワンパターン、技も前回と同じ、驚かせ方に覇気を感じない、20点」
从 ゚3从「ちぇっ、ギコは相変わらず鉄面皮だなー」
少女は鉄塔を見上げた。男も釣られて見る。
彼女は恐らくあそこから飛び降りたのだろうと、男は推測する。
『重力操作靴(グラビティシューズ)』を履いていれば訳ない話だ。
現に少女の棒きれのような足は、ギコから貸りたシューズを着用している。
从 ゚∀从「この分だと、あと2メートル上からは飛べるな」
(,,゚Д゚)「靴抜きにしてもまるで猿だな、お前は。サーカス団に入ったらどうだ、ハインよ」
从*゚∀从ゞ「照れちまうぜ」
(,,゚Д゚)「気分が高揚している所悪いが、誉めたつもりはないぞ」
- 28 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 02:13:39 ID:jQIp/u9I0
- 乙乙
世界観いいな
- 29 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 06:26:47 ID:QmzDwsvwC
- 乙 これは期待
- 30 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 07:46:06 ID:UzogtgPU0
- 乙
良いね 良いね
- 31 :名も無きAAのようです:2012/10/23(火) 11:08:22 ID:5.ZVSRF20
- 乙、雰囲気が凄く好きだわ
次も楽しみ
- 32 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:07:53 ID:5fE1qm060
- 時間がないので、ちょろっとだけ投下します
- 33 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:08:43 ID:5fE1qm060
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
その頃、アパートにて。
从 ~д从 ~~ファア
ヾ从 >∀从/" ンン-ッ
从 ゚∀从「……ギコ、朝飯の食わずにもう行っちまったのか。早いなァ」
从 ゚∀从ノ(└)<チッチッ
从;゚∀从そ「嘘ォッもう午後三時!?そんなに寝てたのか!?」
从 ゚∀从「――って、音鳴ってるだけじゃねーか。針動いてねえし、壊れてんなコリャ」
<ガシャーン ヾ从 ゚∀从 ペイッ「テレビみよーっと」
(( 从 ゚∀从「それにしてもギコってば、起こしてくれりゃいいのによー」
TVを付ける。チャンネルは昨日見ていたニュースのままだ。
画面右上のデジタル時計は11時を指していた。
平日なら遅刻どころの騒ぎではないが、土曜日なので学校は休みだ。
『ニュースイレヴンの時間です。障害者ばかりを狙った連続殺人の事件について、CIグループが警察庁と連携を取り捜査を始めるとの発表が……』
从 ゚∀从「……ここの社長って確か俺と同い年らしいんだよな。どんな子なんだろ」
- 34 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:10:21 ID:5fE1qm060
-
从 ゚〜从 ムグムグ
トースターにパンを差し込み、残り少ない余ったスープを飲み干す。
『〜〜発表によりますと、VIP市周辺にお住まいの方は不審者に注意し、見つけ次第こちらの番号に連絡を……』
从; 〜从そ ングッ!?
从;゚∀从「VIP市!?学校のチョー近くじゃん!」
ハインはギョッとしてTVにかじりついた。何度見ても確かにVIP市だ。
余談だが、ハイン達の住むアパートはVIP市の隣、ニューソク市にある。
住宅街の多い、比較的治安が良い場所だ。しかし学校が近辺に無いため、ハインは無重力靴でいつも登校している。
えらいこっちゃ、とハインは頭を抱えた。
このままでは明日の工場見学が中止になる恐れがある。
それどころか学校にも行けない。学校の仲間や先生にも会えない。
ハインにとっては一大事だ。
从;゚∀从ハッ「ギコ、大丈夫かな。先生たちも……」
教師たちは学校寮で生活しているし、ギコは仕事に行く際、常にVIP市へ足を運んでいる。
もしかしたら新しい仕事を請け負う為にVIP市に足を運んでいる可能性もあるだろう。
- 35 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:11:13 ID:5fE1qm060
-
(,,゚Д゚)『悪いが、うちに医者にかかるだけの金は無いぞ』
从;゚∀从『じゃあ、もし本当に病気だったら……』
(,,゚Д゚)『死ぬな。最悪の場合』
なら、もし病気でなくとも、怪我をしたら?
从;゚∀从「……………」
昨日のやり取りを思い出した途端、不安がこみ上げて来た。
最近の彼は注意力散漫というか、いつもぼうっとしている事が多い。
常に警戒心を見せてくるより幾分マシだが、身を守るとなると話は別。
犯人にうっかり背後からパーン。……有り得そうなのが恐ろしい。
从;゚∀从「……あーーっそういえばスープ全部飲みほしちゃったぜェーッ!
これじゃあギコが帰ってきても飯が食えなくなっちまう!俺が作ってやらなきゃ!
でも材料が無いッ!これじゃスープが作れないぜェーッ困ったなァー何せストアは
VIP市にしか無いんだから仕方ないなよし口実出来た今すぐ行こうッ待ってろギコ!!」
誰に聞かせるまでもない言い訳を早口で捲し立てるや、ハインは財布とエコバックを掴む。
そして光の速さもかくやの身のこなしで無重力靴に足を突っ込み、アパートを飛び出した。
こうなった彼女は止められない。
ギコの現在地を知る術を持たないことにハインが気づくのは、この30分後の話。
- 36 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:12:00 ID:5fE1qm060
-
爪゚ー゚)「ミスター、今回は私も捜査に参加しますので、モナーと一緒に私の護衛に回って下さい」
( ´∀`)「よろしくモナ、ギコ」
会議終了後、ギコは一人残され、そう言い渡された。
ジーナ直々の命令だ、逆らう訳にもいくまい。ギコは黙って了承した。
それにモナーのことは良く知っているし、ハイン以外で気の置けない間柄だ。
下手に素情を知らない相手と組まされるより気が楽だ。
( ´∀`)「足引っ張っちゃうかもしれないけど、その時はフォロー頼むモナ」
(,,゚Д゚)「口癖漏れてんぞ。その調子だと問題なさそうだな」
( ´∀`)「おっと。危なくなったら僕に構わず、お嬢様を連れて逃げてくれよ」
(,,゚Д゚)「分かった、任せておけ」
(;´へ`)「・・・そこは『友達を放っておけるわけないだろ』とかさぁ、あるだろう?」
(,,゚Д゚)「そう言って欲しかったのか?」
( ´∀`)「……いや、他ならぬ君だもの。その時は頼むよ」
(,,゚Д゚)「お前の言う『その時』ってーのは、雄鶏が卵を産むくらい有得ない確率だろうがな」
仏頂面で無愛想なギコに対して、モナーは柔和で人当たりが良い。
にも関わらず、二人は不思議な程に気が合う。
対象的も、S極とN極ほど極端であれば引かれ合うということだろうか。
- 37 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:12:49 ID:5fE1qm060
-
(,,゚Д゚)「……でも良いのか?俺達は二人だけって」
、、、、、、、、、、、、、、、
爪゚ー゚)「それがベストと判断したからです」
振り返り、にべもなく彼女は言い切った。これだけ言えば満足だろうと言わんばかりだ。
その口振りは確信と受け取っても大差ないほどに揺るぎない。
爪゚ー゚)「それはお互い、一番よく分かっているでしょう」
ギコはモナーと顔を見合わせると、ただ肩を竦めた。モナーも笑みを零すのみ。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
「糞ッ、糞ッ、糞野郎……!」
低く唸る声が路地裏で燻る。酸で溶けた煉瓦の壁は、とっくに色を失っていた。
( A )
男…ドクオは、壁にもたれるようにして座り込んでいた。
傍らに転がる銃を拾う気にもなれず、膝を抱えこんで恨み節を呟いていた。
( A )「情けをかけたつもりか……あの野郎ッ……!ふざけやがって……糞ッ……」
地面には、真新しい、一発の銃弾を受けて凹み。
昨日ドクオが絡みにいった男が、残して行った殺意の傷痕。
怖ろしかった。
自分より背の低かった、あの男。
その濁った瞳に宿していた、氷山の一角のような冷たさが。
長年腰に仕舞っていた護身具に、もう指一本触れる気すら起きない。
全身から熱が奪われていくあの感覚を、二度と忘れられそうになかった。
- 38 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:13:37 ID:5fE1qm060
-
ドクオは以前、サラリーマンであった。
公務員はこの世界では富裕層が就く職業の一つ。安全圏でぬくぬくと育ってきた世代だ。
10年前に戦争が勃発した際も、本物の銃の重みを知ることなく、モデルガンの収集に熱中していた。
仕事でアメリカに赴任し、初めて銃の重さを知った。
初めて試し撃ちした時の反動は、今も両手にありありとその記憶が刻まれている。
ただひたすらに、重かった。人を殺す重みを思い知った気がした。
あれ以来、あんなに楽しんでいたモデルガンの収集を止め、コレクションは売りに出した。
それくらい衝撃だった。繊細なドクオには、刺激が強すぎたのだ。
( A )(その銃で、俺は一体、何を――――)
腕に力がこもる。もう前にも後ろにも、進めなくなった。
足が震えて、膝が笑って、もうこれ以上一歩も動けない、そんな絶望的な感覚――
ドクオの虚ろな目が、銃を捉えた。
何も考えなくなった頭に、声が囁きかける。
―――――――やっちゃいなよ。もうお前には、何も残っちゃいないだろう?
「駄目ェエーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
手を伸ばしかけた、その時。不意に空から、声が降ってきた。
( A )
空から声が聞こえるなんて、いよいよ自分も終わりか。
今の状況でまだ生きていたいなんて、我ながら勝手だと思う。
それでもドクオは救われたい気持ちで、幻聴に縋るように空を見上げる。
- 39 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:14:26 ID:5fE1qm060
-
|||||| ピューッ
从;。A从「わーーっそこのおじさん退いてーーーーッ!!」
(゚A゚)「どさんこ!!」
救いの代わりに、空から少女が落ちて来た。
……………………………。
Ω
从;゚∀从「ごめんなさい、足元が滑っちゃって……」
Ω
("A")「いやいや、怪我がなくて良かったよ。これからは足元に気をつけようね、雨上がりの日は特に」
十数分後、よれたリーマン男と銀髪少女が路上で互いに正座し合う奇妙な光景が広がっていた。
少女は申し訳なさそうに、全力の土下座を披露してくれている。
事情を聞くに、どうも無重力靴で乾ききっていない瓦を蹴っ飛ばし、足を滑らせて落ちてきたらしい。
落下事故でたんこぶ一つで済んだのだから、幸運もいい所である。
- 40 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:15:11 ID:5fE1qm060
-
从 ゚∀从「おじさん、偶然とはいえ助けてくれてありがとう」
(;'A`)「いやいや、俺はたまたまあの場にいただけだし……」
('A`)「……それに、礼を言いたいのは俺の方だよ」
从 ゚∀从 ?
少女は改めて深く頭を下げた。
ドクオからすれば、よく出来た偶然とはいえ、自殺を食い止めてくれた命の恩人だ。
怒るどころか、運命の神様の悪戯に感謝したいほどである。
('A`)「君、この辺じゃ見かけない子だよね」
从 ゚∀从「隣のニューソク市から来たんだ。買い物で」
成程、とドクオは合点がいった。
ここらで一番大きなマーケットはVIP市にしかない。
(;'A`)「でも、よく一人で来れたね。ここらは危ないって知ってるだろう?」
从 ゚∀从「おう。でも俺の学校も近いし、道はそれなりに知ってるからよ。いざとなったら逃げるし」
从;>∀从「――――痛っ!」
(;'A`)「だっ大丈夫かい!?」
从;゚∀从「足、くじいちゃったかも……でも大丈夫です。一人で歩けます」
しっかりした子だ。しかし迂闊で身の程知らずだ。
明確な殺意をもった相手を前にして逃げるなど、まず不可能だ。
それをドクオはつい先日、身をもって体験した。
- 41 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:15:57 ID:5fE1qm060
-
从 ゚∀从「それに……知り合いが近くで働いてるんだ。だから、心配で」
从 。 从「本当は来ちゃいけないって分かってんだけど、放っておけなくて……」
('A`)「…………」
('A`)「……そっか。君は良い子だね」
从;゚∀从「いっいえ!そんな事は!」
('∀`)「危険を承知でこんな所まで来るほど相手を思いやれる子は、今のご時世そうそう居ないよ。
その人の事、本当に好きなんだね」
从*゚∀从
从///从 っ
('A`)
自分もこんな風に誰かを思いやれることが出来たら、少しは変わっただろうか。
くすんで灰色に錆びついた自分の感情回路を彩れたんだろうか。
ただ淡々と『処理』してきた毎日を、ほんの少しでも変えることが適っただろうか。
('A`)
从 ゚∀从「おじさんも大丈夫か?顔色悪いぜ?」
('A`)「…大丈夫だ。それより、その人の所まで俺が一緒に着いていくよ」
从 ゚∀从「え?良いんですか?」
('A`)「どうせ暇だしね。大人が着いていた方が君も安心だろう?」
- 42 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:16:49 ID:5fE1qm060
-
从;゚∀从「でもオレ、そいつの場所知らなくて……」
('A`)「VIP市はそこまで広くないし、君に心当たりさえあれば、探すくらい訳ないさ」
从;゚∀从「でも、こんな足じゃ迷惑かけちゃう…」
('A`)+「子供一人背負うくらい、平気だって。ついでだから俺の家で手当てしてあげるよ」
从;-∀从 ウーン…
从 ゚∀从
从*゚∀从「…それじゃ、お言葉に甘えて。実はちょっと怖かったんだよな〜!」
(;'A`)(……良い子というか。ちょっと不用心すぎないか、この子)
人を信じれるのは長所かもしれないが、出会って十分そこらの他人を信用し過ぎではないだろうか。
ドクオが邪な考えを持つ人間だったなら、あっという間に犯罪に発展しただろう。
表情をころころと変える少女に、ドクオは一抹の不安を覚えた。
(;'A`)「あのね、余計なお世話かもしれないけど……」
从*^∀从「ありがとうっ、おじさん!」
('A`)
(*'A`)(……まあ、いっか)
- 43 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:17:38 ID:5fE1qm060
-
昼のVIP、某公園にて。園内は遊具も人気もなく、閑散としている。
ギコは『巡回』がてら、モナーを伴ったジーナ達と軽めの昼食を摂っていた。
(,,゚Д゚)「しかし、急な話だな。直々に殺人鬼を捕まえるなんざ、お前さんの性分じゃないだろ」
爪゚ー゚)「いけませんか?市民の皆様の不安の種を取り除きたいだけですのに」
テーブルを囲んで、ギコはジーナと向かい合う。
ジーナは澄ました顔で、即席テーブルに揃えられた色とりどりのサンドイッチに手を伸ばす。
(,,゚Д゚)「白々しい女だ」
爪゚ー゚)「と、申しますと?」
(,,゚Д゚)「俺は知ってるぞ。お前は、自分の利益の為にしか動かない女だ」
( ´∀`) ピクッ
(,,゚Д゚)「その舌先三寸で聖ペテロを騙されても、俺には通用しないぞ。
お前はその甘ったるい上目遣いと声で、何人もの脳無し男をたぶらかしてきたんだろうがな。
得の為なら何だって利用する、それがお前だ。コネも媚びも、人の生死も利用する。そうだろう?」
- 44 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:20:27 ID:5fE1qm060
- 「ギコ、」とモナーの厳しい声色が制した。
表情は依然穏やかだが、眼光は切れ味の良いナイフのように鋭い。
( ´∀`)「君は僕の唯一の友達モナ。それは君がよく知っている筈。だから僕は君と喧嘩なんかしたくないモナ」
、、
( ´∀∵∴)「でも、」ユラリ
ズズズ... ( ´∀゚.:∵∴「これ以上お嬢様を侮辱するつもりなら、僕は君にそれなりの制裁を加えなきゃならない……」
- 45 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:22:18 ID:5fE1qm060
- モナーを纏う穏和な空気が一瞬にして失せ、タールのようなどす黒く濃い気配が這い出す。
普段細められた垂れ目の隙間から、狂気を振り撒く月光のような黄色の瞳が覗きこむ。
ギコは双眸を細め、上着に手を差しこむ。
一触即発。張り詰めた糸が切れかけた、その一瞬。
爪゚ー゚)「良いのですよモナー。彼の言う事は事実です」
じぃの声が、糸を僅かに緩めた。
( ´∀゚.:∵∴「ですがお嬢様」
爪^ー^)「モ ナ ー 」
( ´∀゚.:∵) スゥ
( ´へ`) 、
(,,゚Д゚)「何か裏があるんだろう?でなきゃ、こんなボランティア精神めいた真似をお前がするもんかよ」
爪゚ー゚)「……お疑いのようですわね。ならヒントを差し上げますわ」
スッとジーナは指を滑らせ、ある一点を指差した。
ギコはその指先へと視線を移したが、その先にあるのは古い大きな工場があるだけだ。
再度ジーナへと視線を戻すが、彼女はにこやかに笑みを浮かべたまま。
度し難い、ギコの心情はそれ一つに尽きた。
- 46 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:26:17 ID:5fE1qm060
-
(,,゚Д゚)「あの工場に何かあるのか?」
爪゚ー゚)「さあ、何でしょうね。何物にも替え難い、とても大事なものであることは確かです」
( ´∀`)「……成程、そういうことでしたか。しかしお嬢様、ギコには少々理解が追いつかないのではないでしょうか」
爪゚ー゚)「私は充分に教えました。後はミスターが考える事ですわ」
モナーは彼女の言いたい事が分かったらしい。
二人してニコニコと笑いかけてくる。何とも腹立たしい。
(,,゚Д゚)「俺はお前のそういう所が嫌いだ。本ッ当に大嫌いだ」
爪^ー^)「誉め言葉ですわ、ミスター」
(,,゚Д゚)「だからお前には友達が出来ないんだ」
爪゚ー゚)「あら、それは困りましたね。この国では友達を100人作るんでしょう?」
(,,゚Д゚)「友達が100人も出来たら誰も苦労しないだろうな」
爪^ー^)「私なら作れますよ。ロボット工場で友達ロボットを100体作ればいいのですから」
(,,゚Д゚)「……良い性格してるよ、全く」
ギコの吐き捨てるような言葉にも、ジーナは決してその笑みを絶やす事はない。
まるでこの会話すること自体を、心の底から楽しんでいるようだった。
- 47 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:27:19 ID:5fE1qm060
-
『ランチ中の所失礼しますよっと、お嬢様と愉快な仲間達』
ギコが装着していた無線に、予告なく新たな男の声が乱入する。
ジーナは特別驚いた様子もなく、その声に反応する。
爪゚ー゚)「Dr.流石、犯人特定の解析は終わりましたか?」
『ああ、かなり骨が折れたがな。ご要望通り、殆ど絞り込んだぜ』
(,,゚Д゚)「兄者よ、頼むから出し抜けに勝手に人の無線を使って連絡寄越すのは止してくれ」
『機会があったら善処するよ。時に、良いニュースと悪いニュースとかなり悪いニュースがある。どっちから聞きたい?』
爪゚ー゚)「重要性の高い方からお願いします、Dr.流石」
『オーケイ、じゃあ良いニュースからだ。奴さんが早くも尻尾を出したようだ。まだVIP市に潜伏している』
(,,゚Д゚)「これ以上にバッドなニュースがどこにあるってんだ?」
『悪いニュースは、奴さんのテリトリーに居た張り込み班が全員ヤられた。片っ端から見境ないぞ。相当強いと見ていい』
( ´∀`)「やはり即席のチームでは無理がありましたかモナ」
(,,゚Д゚)「喧嘩売られたと思ってんじゃないのか?」
爪゚ー゚)「二人共お静かに」
『そして更にバッドなニュース。奴の行動パターンと範囲から次の目的地を割り出したはいいが、その、
どうにも……新しいターゲットを見つけたみたいだぜ。やられるとしたら次はこの子だな。画像を送ろう』
すぐさまモナーがパソコンを開く。送られたファイルを開いた瞬間、全員が我が目を疑う。
爪;゚ー゚)「……この展開は、予想外の神様も脱帽ですわ」
『( ゚ ゚) 从 ゚∀从('A`)』
(,,゚Д゚)「…………ハイン!」
- 48 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 01:28:12 ID:5fE1qm060
- 明日夜、第1話完結。
- 49 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 12:55:47 ID:gCgpy9SQ0
- 乙
- 50 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 20:25:12 ID:45FrKyYkO
- 乙乙
- 51 :名も無きAAのようです:2012/10/24(水) 20:39:13 ID:lwuptmeo0
- おつ
面白い!
- 52 :名無し:2012/10/24(水) 23:35:13 ID:Ph/SDA0.0
- 報告
今夜は時間が無いので明日に延期。
その分2話も投下する
- 53 :名も無きAAのようです:2012/10/25(木) 22:05:29 ID:cVrLCXMg0
- 決めた。
1話があまりにも長すぎるので、大幅に修正・分割して投下し直します。
- 54 :名も無きAAのようです:2012/10/25(木) 23:14:34 ID:D/EhU.BcO
- 把握
- 55 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:34:37 ID:cuiQVzT60
- 大変お待たせしました。
リメイク1、2話投下します
- 56 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:35:42 ID:cuiQVzT60
-
名前を呼ばれてもね、少女。
助けてと言われてもね、少年。
俺にゃ生憎と、救いを求める手を掴む術すら知らないのさ。
- 57 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:37:05 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)Robotsのようです
act1:Daily life into gray
- 58 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:38:29 ID:cuiQVzT60
-
『ギコ、貴方は青い空を見たことがあるかしら?』
(,,゚Д゚) ハッ
いけない。また頭が真っ白になっていた。
最近、どうにも時間を持て余すと何も考えなくなる時が増えた。
平和ボケか。こんな自分でもそんな瞬間があるのか。
否、今でも永い白昼夢を見ているのでは。
裏路地を独り歩く度、発作的にそんな出鱈目な妄想に駆られて、切り取られた空を見る。
(,,゚Д゚)「………………」
見上げれば、いつものぶ厚い雲。
アクリル絵の具の灰色を何重にも塗りたくったような空が、視界一杯に広がる。
煙草の吸殻と空き缶が転がる表通りは忙しそうに人々が行き交い、野良猫が塀の上で喧嘩する。
それを烏が囃したて、掃除好きの老女が「喧しい」と石をぶつける。
- 59 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:39:09 ID:cuiQVzT60
- この世に生を受けて約ウン十年。
頭の上の八雲に切れ間は出来た試しなどなく、ついぞまともな日光は見る事も叶わない。
黒幕越しのぼんやりとした光が、ぬるく、この世界をぼんやり照らす。
何度も繰り返し見続けてきた、この平凡な日常を。
(,,゚Д゚)
10月半ばの冷え切った風が、もうすぐ酸の雨が訪れる事を教えてくれた。
ズボンのポケットから懐中時計を出す。16時30分と数分過ぎ。
もうすぐ、日が沈む。
(,,゚Д゚)(遅いな、ハインの奴。もう16分27秒の遅れだ)
冷たいコンクリートの壁に背を預け、男・ギコは何度も腕時計に目をやる。
「仕事」を終わらせて待ち人を迎えに来たはいいものの、一向にその姿が見えない。
ただでさえこの周辺は治安が悪い。
ちょっと歩けば脳味噌にヤクとお花畑を詰め込んだハッピーな連中ばかりぶつかるような場所だ。
肌寒い秋、冬にかけてその数は減るどころか、湯水のように沸いてくる。
(,,゚Д゚)(なるべく出会う前に退散したいものだが)
('A`)「ちょっとそこのお兄さん。ちょーっとカオとカネ貸してくれません?」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)(ハインの馬鹿野郎)
来た。来てしまった。それも、大分頭がイカれてそうな奴が。
- 60 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:39:53 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)「……」
参ったな。ギコは時計をズボンの中で擦りながら男を見上げた。
見窄らしいスーツ姿だ。以前はサラリーマンか何かだったに違いない。
顔はまだ若い。彼もまた、この大不況の波に飲まれた一人か。
('A`)「実は僕、先月仕事辞めちゃいましてね。お金が無いんです、お金。Momey。分かります?」
言われなくても身なりで無職と分かる。
あまりにも哀れなのでコインの一つでも恵んでやりたいが、生憎と金は持ち合わせていない。
かといって、正面の男を無視する程のスル―スキルも無い。
('A`)「何も有り金全部寄越せって言ってるんじゃないんです。ちょっとだけ。
万札5枚あれば充分ですから。ねっ?僕ってば優しいでしょう?」
(,,゚Д゚)
さて、どうするか。
こういう類は夜道に絡んでくる酔っ払いよりもタチが悪い。
金は無いといっても聞かぬだろうし、聴覚と判断力がインプットされているとは思えない。
なにせ、へらへらと笑っちゃいるが、目が明らかに据わっている。
('A`)「人助けすると思って、ね?恵んで下さいよお兄さん」
- 61 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:40:44 ID:cuiQVzT60
- (,,゚Д゚)
('A`)「アローアロー、もしもーし?お兄さんもしかして障害者?聾唖とか?」
(,,゚Д゚)
('A`)「ねえ、お兄さんってば」
(,,゚Д゚)
('A`)
('A`)「あ、そう」
- 62 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:41:52 ID:cuiQVzT60
-
ジャキッ ('A`)うr=-(゚Д゚,,)|壁
('A`)「止めません?そういうの。無視されるのが一番辛いんだってば」
('A`)「俺一人でペラペラ喋っちゃってスッゲー恥ずいじゃん。傍から見たらアホじゃん」
('A`)「まるで俺が頭いかれちゃったキチガイさんみたいだろ。無視してるそっちが悪い癖に」
('A`)「ああでも仕方ないか。耳が使い物にならないんだもんね。じゃあ処理しなきゃ」
男はギコの額に銃口を突き付けながら、一人呟く。ボソボソと。
('A )「この世界は、どっかオカシイ人は生き残れないんだよ?知ってた?ロボットと一緒」
( A`)「分かる?それを決めるのは力を持つ奴らなんだ。自分よりヒエラルキーが上の存在。逆らっちゃ駄目だ」
( A )「悪い所がちょっとでも見つかったなら、ポイして処理しなきゃ。人間もロボットも。そうだろ?」
( A )「処理します、処理します、要らない奴は処理します。処理します処理します処理します」
( A )「言うとおりに処理します。だから俺は処分しないで」
( A )「マイケルは頭が悪いので処理しますハンクスは交通事故により処理しますトムは業務違反により処理します
ブレンダンは酒癖が酷いので処理しますコリーは口が悪いので処理しますダンは気が狂ったので処理します
リーは横領したので処理しますマシューは薬物依存症です処理しますロブは病気です処理します処理します」
(,,゚Д゚)
- 63 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:43:02 ID:cuiQVzT60
-
成程。この男はどうやら「処理する」担当だったらしい。
( A )「処理しなきゃ。使えない奴は皆処理しなきゃ。でなきゃ今度は、今度は、今度は…………」
(,,゚Д゚)「お前も処理される側に回されちまったわけか」
( A )
(,,゚Д゚)「その年で人のクビを切るってのは辛いんだろうな。俺には分からんが」
( A )
( A )「違う」
( A )「捨てられてなんか、ない」
( A゚)うr=-「――逆らうなら、お前も俺が≪処理≫してやる」
(,,゚Д゚)
(,, Д )
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「そうか」
(,,゚Д゚)つ スッ「なら俺はお前を処理しよう。俺の平和の為にな」
- 64 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:44:08 ID:cuiQVzT60
-
ギコはおもむろに、右手で男の銃を掴む。
銃口を握った指先から、ぼんやりと青白い光が漏れ出し、薄暗い路地を照らした。
『――comleated input』
機械音声が告げた、刹那。
(,,゚Д゚)つ ジジ…
( A゚)つ洲 ヒュンッ
(,,゚Д゚)つ洲 ヒュバッ
(,,゚Д゚)うr=-” パシッ
( A゚)つ
見間違いでなければ。
男の手から銃が消え、ギコの手に収まっていた。
その銃口は、今度は男の眉間に照準があてられていた。
(; A゚)つ「……………え?」
(,,゚Д゚)うr=-「じゃあな」
――銃声が一つ、轟いた。
- 65 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:45:19 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)「…………」
火薬の臭いが鼻に纏わりついて気分が悪い。
ギコは銃を放り捨て、両手をポケットに突っ込む。
このまま留まっていたら、自分が何を仕出かすか予想がつかなかった。
痰のひとつでも吐き捨てたい衝動を飲み込み、その場から離れる。
(,,゚Д゚)「(何でこんな事をしたんだ、俺は)」
(,,゚Д゚)「(そうだ、左胸部分の温度が急低下して、呼吸器官が上手く働かなくなって――)」
(,,゚Д゚)「(……………これが不快って奴なのか。一つ学んだな)」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「(……………………あの男、何かに似てたんだ。何にだっけ)」
足早になりつつあった歩みを止め、心臓部分に圧しかかる重みをほぐすように胸を掴む。
分かる訳もないのに、無性に濁りきった空を見上げた。
从 ゚∀从「ばあっ」
- 66 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:46:16 ID:cuiQVzT60
- (,,゚Д゚)
重みの答えの代わりに、空から少女が降って来た。
音もなく壁を蹴り、見事な宙返りで着地。そして後から降って来たスクール鞄を華麗にキャッチ。
しかしギコは狼狽えるどころか、眉一つピクリともさせない。
从 ゚∀从「…………ちょっとは驚けよ」
(,,゚Д゚)「登場がワンパターン、技も前回と同じ、驚かせ方に覇気を感じない、20点」
从 ゚3从「ちぇっ、ギコは相変わらず鉄面皮だなー」
少女は鉄塔を見上げた。ギコも釣られて見る。
彼女は恐らくあそこから飛び降りたのだろうと、男は推測する。
『重力操作靴(グラビティシューズ)』を履いていれば訳ない話だ。
現に少女の棒きれのような足は、ギコから貸りたシューズを着用している。
从 ゚∀从「この分だと、あと2メートル上からは飛べるな」
(,,゚Д゚)「靴抜きにしてもまるで猿だな、お前は。サーカス団に入ったらどうだ、ハインよ」
从*゚∀从ゞ「照れちまうぜ」
(,,゚Д゚)「感激している所悪いが、誉めたつもりはないぞ」
从*゚∀从「素直じゃないなァ、ギコは」
- 67 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:47:20 ID:cuiQVzT60
- 少女・ハインは、当たり前のように男、ギコの手を握る。
大きな掌は、まるで一晩野晒しにしておいた鉄パイプのように冷たい。
从*゚∀从「うわっ!ギコの手、ひやーい。ずっと待ってたのか?オレの帰り」
(,,゚Д゚)「違う」
从 ゚∀从「そこは嘘でも「そうだ」って言う所じゃね?そんでもって」
从;゚∀从「『そんな、こんなに冷たくなっちゃって』」
从 ,,゚Д゚从「『お前を想うだけでヒートしてしまうから丁度良いくらいさ』」
从///∀从「『もっもう、ばかっ!』」
从,,゚Д゚从「『お前も冷たいじゃないか。俺が最高に暖めてやるぜ』」
从*゚∀从「そして長い時間見つめ合って、そこから熱烈なチューこう、ぶちゅーっとだな」
(,,゚Д゚)「漫画の読み過ぎだ」
从 ゚∀从「いいじゃん!ロマンあって」
(,,゚Д゚)「素晴らしいジョークだ。メリケンジョークベスト48集に載せられるぞ」
从#゚∀从 ゲシッゲシッ
(,,゚Д゚)「足を踏むな。歩行の妨げになる」
- 68 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:48:48 ID:cuiQVzT60
-
从*゚∀从「まあそんなことより聞いて喜べ、今日はシチューだぜ!オレ様が腕にヨリをかけて作ってやる!」
(,,゚Д゚)「そうか、じゃあ帰りに新しい固形食糧を買わなくちゃな」
从#゚∀从「どういう意味だ、こらっ!」
(,,゚Д゚)「そもそも、お前が料理を作らなくたってオートメイカーがあるだろう」
从#゚∀从「んもうっ、オレが作ってお前が食べるから意味があるんだよ!分かってないなあ!」
(,,゚Д゚)「すまないが本当に理解が追いつかない」
从#゚∀从「ギコのばかっ!ニブチン!トーヘンボク!いーから黙って走れ!」
二人は手を繋いだまま路地裏を小走りで駆け抜ける。
どこかの家の開け放された窓から、もうすぐ雨雲が来るとラジオの天気予報が告げていた。
風がたおやかに吹き、雲はゆるやかに、確実に流れていく。
目を細めて探せど、今日も雲に切れ間は一つも見つからなかった。
『ギコ、空は本当に美しいのよ。とても青いのよ。貴方の色なの』
(,,゚Д゚)「……青い空か」
从 ゚∀从「ギコー、何してんのさー!はやくぅー!」
ハインに腕を引かれるまま、ギコはもう一度だけ空を見上げた。
彼の知る限り、空はもう何十年も前から、灰色のままだ。
- 69 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:52:02 ID:cuiQVzT60
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
西暦21XX年。
地球は最早、青い星ではなくなっていた。
資源は枯渇し、土壌や河川は汚染され、動物たちは姿を消した。
人類は住む場所を追われ、食糧不足や異常気象などの問題でその数は激減した。
一部の人間は、宇宙に新たな可能性を求めた。
新たな資源。無限に広がる空間。そして未知なる発見。
浪漫を求め、人類は持ちうる最先端の技術を駆使し、その過程でロボット工学が急速に発展した。
人類の限界を超えた万能グッズも次々と生まれた。
そして数十年前、ある学者は、一つの実験を試みた。
「ロボットは人間と友達になれるか?」
実験は成功した。機械の心に感情が生まれ、知性を持ち、品格を得た。
人間達の良き相棒として、心あるロボット達はその数を増やしていった。
从 ゚∀从「明後日の日曜なんだけどさ、学校のプログラムで工場見学を観に行くんだ!ギコも見たい?」
(,,゚Д゚)「別に」
从 ゚∀从「えー、絶対面白いのに」
(,,゚Д゚)「工場の中でウェスタン・ショーごっこするお前が目に見えるようだ」
从#゚∀从「俺そんな幼稚なことしねーし!やるならエクスペンダブルズごっこだろ!」
(,,゚Д゚)「お前の怒る基準がよく分からん」
- 70 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:53:11 ID:cuiQVzT60
- しかし、次第に人間に感化されたロボット達は、ネガティブな感情も抱くようになった。
アイツが憎い、コイツが邪魔だ。損得と暴力を覚えたロボット達は武器を取り、戦うようになった。
個が集まれば集団となり、軍隊となる。憎悪が更なる怨嗟を呼び、そして戦争が巻き起こる。
だが、感情あるロボット達は、同じオイルが流れる同胞たちを、自分の手で壊すことを恐れた。
考えあぐねるロボット達に、人間達は恐ろしい提案を持ちかけた。
感情のない戦闘用ロボットを作ってはどうか?
保身に走りたいが故に、感情あるロボット達はその提案を受け入れた。
人間達は次々に感情AIを引き抜いた戦闘ロボットを生産し、儲けを得た。
世論を操作し、大衆の倫理や観念を捻じ曲げ、正当化していった。
改良に改良を加え、同じ姿のロボット達が、無感情にただただ殺し合った。
それから長い年月が経った。
長い戦争に疲れ果てた末、経済的、倫理的観念などの問題から、これ以上の戦争は無益と判断。
停戦条約を結んだ。
こうして世界に一応、平和が戻って来た。
停戦から6年が経つ。
各地で紛争や小競り合いは未だ続いているが、世界は概ね平和だ。
ギコ達の住む国、日本・トウキョウも、治安は決して良いとはいえない。
が、暮らすには困らない場所である。
働く場所がある、学び舎がある、買い物が出来る場所がある、身を守る為の武器を手に入れるツテがある。
これだけあれば、至れり尽くせりと言っても過言でない。
毎日人は死ぬけれど。毎日誰かが泣くけれど。理不尽ばかりの世界だけど。
昔よりマシ。この一言で誰も何も言えなくなる。
それが現状だ。
- 71 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:54:31 ID:cuiQVzT60
-
从*゚∀从「たっだいまー!」
(,,゚Д゚)「ただいま」
裏路地を抜け、築100年以上は経過していそうな灰色のビルに、二人は足を踏み入れる。
仕事帰りの主婦ロボット達とすれ違っては会釈する。なんてことない日常。
そう遠くない場所で銃声と怒号が聞こえた。またマフィア達のシマ争いのようだ。
後で念の為、シェルターを引っ張り出しておこう。
……ハインがキッチンを吹っ飛ばすことも懸念して。
(,,゚Д゚) ガチャッ
从*゚∀从「シチュー!シチュー!ほっこりサクサクホワイトシチュー!」
(,,゚Д゚)「サクサク要因に何を入れるつもりだ、お前という奴は」
从 ゚∀从「フライドポテト」
(,,゚Д゚)「シチューに入れる要素皆無だろ」
从 ゚∀从「…………落ち葉?」
(,,゚Д゚)「俺達は虫じゃないんだぞ」
从 ゚∀从「じゃあ砂」
(,,゚Д゚)「最早食い物ですらない」
从#゚∀从「じゃあ何入れたら満足なんだよ!」
(,,゚Д゚)「何も入れるな。寧ろ作るな」
- 72 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:55:44 ID:cuiQVzT60
-
ギコとハインは親子ではない。兄弟でも、ましてや親戚ですらない。全くの赤の他人だ。
ハインに両親は居ない。ギコにも家族など存在しない。
孤独な者同士、いつの間にか寄り添い合って共に暮らしている。
そこに二人は何の疑問も持っていない。
この世界では、それが当たり前の光景だ。
停戦以降、血の繋がりの無い者同士がルームシェアすることは一般的なこと。
家賃さえ払えば、どんな輩が部屋で何していようが問題ない。
ヾ从*゚∀从ノ「ギコ、肩車!鍋取る、鍋!」
(,,゚Д゚)「すぐ出来るからTVでも見てろ」
从;゚皿从「オレがやるー!オレが料理するのー!」
(,,゚Д゚)「考えたんだが、やっぱりキッチンを戦場にされちゃかなわん」
_,
从 ゚3从「どんだけ飯作らせたくないんだよ……」
(,,゚Д゚)「食費を無駄にしたくないんでな」
ハインをリビングに追い払い、ギコは材料を出して電子レンジ型の機械の前に立つ。
一家に一台、材料さえ入れればすぐに料理が出来る『オートメイカー』。
ホカホカの白米からフランス料理フルコースまでこれ一台。この国ではポピュラーな電気製品だ。
シチューならば30分もあれば完成するだろう。
从 ゚∀从ノ[ ゚]「どれもニュースばっかだなー」
ハインはもう料理のことを忘れて、ソファーの上でテレビに釘付けだ。
料理を作るなんて、只の気まぐれだったのだろう。ギコもハインの隣に座る。
- 73 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:56:40 ID:cuiQVzT60
- 从 ゚∀从「へー、この辺りに出てるっつーサイコキラー、まだ捕まってないのか」
(,,゚Д゚)「何だそれ」
从 ゚∀从「ほら、障害者ばかり狙って銃で殺し回ってるっつー『処理屋』って奴」
(,,゚Д゚)「そんなのがいたんだな」
从;゚∀从「……ギコはもうちょい、危機感おぼえよーぜ。心配になってきた……」
興味ない。人殺しなんて皆等しく気が狂っている。
そうでなきゃ感情回路を引っこ抜かれたロボットだ。どちらにせよ同じだ。
少なくとも、ギコからすれば。
(,,゚Д゚)「安心しろ、俺は障害者じゃないし、死なない」
从;゚∀从「うん、まあ知ってるけどさ。ギコはどこもおかしくないよ」
(,,゚Д゚)「それに死なない」
从;゚∀从「分ーかってるって!分かってるけど気をつけろよって話!」
(,,゚Д゚)「そうか」
从;゚〜从「〜〜〜〜っ、本当に大丈夫かな……」
時々、ギコとの微妙に噛み合わない会話に、ハインはヤキモキしてしまう。
常に楽観視しているというか、他人事のように語る彼を見ていると不安になる。
- 74 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:57:03 ID:GF8zJ2NY0
- お、来てた、支援
- 75 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:57:38 ID:cuiQVzT60
-
R R R R R.....
気まずくなったタイミングを見計らったように、電話が鳴る。
立ちあがりかけたハインを制して、ギコが受話器を取る。
【,,゚Д゚)「もしもし」
『ハロー、ミスター。ディナーの準備の邪魔しちゃったかしら?』
電話回線は、落ち着いた少女のハスキーボイスを流してきた。
ギコは表情を変える代わりに、拳を固く握る。
【,,゚Д゚)「……何の用だ」
『ハインが今頃シチューを炎上させたものだと思ってたけど、違うみたいね』
【,,゚Д゚)「良いから用件を言え。俺は今とても、とても忙しいんだ」
ギコがそう言った直後、背後でオートメイカーが調理完了を知らせるミュージックを流す。
よっぽど切ってやりたいが、ハインのスリッパを鳴らす音を聞いて会話に意識を戻した。
『そう怒らないでよ。この辺に出没する変態殺人鬼さんの話は知ってるでしょう?』
【,,゚Д゚)「『処理屋』、だったか。障害者ばかりを殺害対象にするとかいう」
『そうそう、耳が早いじゃない』
【,,゚Д゚)「そいつがどうした?俺には関係ないだろう」
電話の相手は一拍置いて、非常に身の毛のよだつような冷め切ったで声で、こう切り捨てた。
『貴方にとっては非常に残念なお知らせだけど、これから関係が出てきちゃうのよ』
.
- 76 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 17:58:46 ID:cuiQVzT60
- 【,,゚Д゚)
【,,゚Д゚)「つまり、俺にまた『仕事』をしろと?」
『明朝にVIP市の支社に来て頂戴。全ての説明は明日よ。マトモな服じゃなかったら尻叩くからね』
返答の代わりにそう言い残し、電話相手はサッサと通話を終了させた。
ツー、ツー、と電子音が虚しく響き続けても、ギコは受話器を置こうとせず、立ち尽くしていた。
从 ゚∀从「どしたの?ギコ。清掃屋のオッちゃんにまた叱られたの?」
(,,゚Д゚)「……いや、新しい『お掃除』の場所が決まったんでな。明日会社に行かなきゃならん」
从 ゚∀从「フーン、そっか。説教じゃなくて良かったじゃん」
ハインは特に詮索することなく、「ご飯食べようよ」と促す。
そこでギコはようやく、受話器を元に戻したのだった。
(,,゚Д゚)「…………」
从 ゚∀从「それでブーンの奴がさぁ、もっと女らしくしろ!とかうるせえ訳」
(,,゚Д゚)(仕事のことを、いい加減ハインに言うべきか?)
从 ゚〜从「ジーナは相変わらずお高くとまっててムカつくし…」
(,,゚Д゚)(……いや、巻き込む訳にはいかん)
从 ゚∀从「……ねえ、聞いてる?」
(,,゚Д゚)「……………………ん?あぁ、聞いてなかった」
从 ゚∀从「なんだ、耳でも悪くなったかよ」
- 77 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:01:33 ID:cuiQVzT60
- (,,゚Д゚)「……かもしれないな。今度病院に行こう」
从 ゚∀从「えっ」
从 ゚∀从
从;゚∀从「そんな!早く病院いこうぜ!もし悪い病気だったらどうすんだよ!!」
(,,゚Д゚)「悪いが、うちに医者にかかるだけの金は無いぞ」
从;゚∀从「じゃあ、もし本当に病気だったら……」
(,,゚Д゚)「死ぬな。最悪の場合」
从 ゚∀从
从 ;Д从 ブワッ
从 ;Д从「嘘だよな!?冗談って言ってくれよ!お前が死んじまったら、オレ、オレ……!」
(,,゚Д゚)「ああ、冗談だ」
从 ゚∀从
从#゚∀从 ゲシッゲシッ!
(,,゚Д゚)「食事中に脛を蹴るな、女らしくしろ」
从#゚∀从「うっせえ!お前なんかさっさとくたばれ!」バカヤロー!
- 78 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:02:18 ID:cuiQVzT60
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
「糞ッ、糞ッ、糞野郎……!」
低く唸る声が路地裏で燻る。酸で溶けた煉瓦の壁は、とっくに色を失っていた。
( A )
男は、壁にもたれるようにして座り込んでいた。
傍らに転がる銃を拾う気にもなれず、膝を抱えこんで恨み節を呟いていた。
( A )「情けをかけたつもりか……あの野郎ッ……!ふざけやがって……糞ッ……」
地面には、真新しい、一発の銃弾を受けて凹み。
昨日出会ったあの男が、残して行った殺意の傷痕。
( A )「畜生、畜生」
( A )「…………畜、生」
銃を蹴飛ばし、男は立ち上がった。
そして、吸い込まれそうな宵闇の奥へと、その姿を消した――――
- 79 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:02:58 ID:cuiQVzT60
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
翌日。
从 ~д从 ~~ファア
ヾ从 >∀从/" ンン-ッ
从 ゚∀从「……ギコ、朝飯の食わずにもう行っちまったのか。早いなァ」
从 ゚∀从ノ(└)<チッチッ
从;゚∀从そ「嘘ォッもう午後三時!?そんなに寝てたのか!?」
从 ゚∀从「――って、音鳴ってるだけじゃねーか。針動いてねえし、壊れてんなコリャ」
<ガシャーン ヾ从 ゚∀从 ペイッ「テレビみよーっと」
(( 从 ゚∀从「それにしてもギコってば、起こしてくれりゃいいのによー」
TVを付ける。チャンネルは昨日見ていたニュースのままだ。
画面右上のデジタル時計は11時を指していた。
平日なら遅刻どころの騒ぎではないが、土曜日なので学校は休みだ。
- 80 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:03:48 ID:cuiQVzT60
-
『ニュースイレヴンの時間です。障害者ばかりを狙った連続殺人の事件について、GICグループが警察庁と連携を取り捜査を始めるとの発表が……』
从 ゚∀从「……ここの社長って確かオレと同い年らしいんだよな。どんな子なんだろ」
从 ゚〜从 ムグムグ
トースターにパンを差し込み、残り少ない余ったスープを飲み干す。
『〜〜発表によりますと、VIP市周辺にお住まいの方は不審者に注意し、見つけ次第こちらの番号に連絡を……』
从; 〜从そ ングッ!?
从;゚∀从「VIP市!?学校のチョー近くじゃん!」
ハインはギョッとしてTVにかじりついた。何度見ても確かにVIP市だ。
余談だが、ハイン達の住むアパートはVIP市の隣、ニューソク市にある。
住宅街の多い、比較的治安が良い場所だ。
しかし学校が近辺に無いため、ハインは無重力靴でいつも登校している。
えらいこっちゃ、とハインは頭を抱えた。
このままでは明日の工場見学が中止になる恐れがある。
それどころか学校にも行けない。学校の仲間や先生にも会えない。
ハインにとっては一大事だ。
从;゚∀从ハッ「ギコ、大丈夫かな。先生たちも……」
- 81 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:04:43 ID:cuiQVzT60
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
民間護衛組織GICグループ。日本を代表する大手民間組織だ。
重要人物の身辺の警護から、事実上のマフィアとの交戦や市内の治安保全など、
おおよそ民間組織の範疇を超える実績と権威を持つ。
警察組織との繋がりもあってか、無能な警官に代わり仕事もこなしている。
また、プロのガードマン養成やロボットの生産、万能製品会社のスポンサー等、
様々な分野に精通し、着実に脈を広げている。
(,,゚Д゚)「……来なけりゃ良かったかな…………」
明朝、VIP支社の高層ビルを見上げ、よれたスーツを着たギコは忌々しげに呟いた。
朝といえどスーツは暑い、それに堅苦しくて着れたものではない。
それにギコは「彼女」に会いたくなかった。
出来ることならば顔を合わせないまま仕事がしたい。
「あら、来ないと思ってましたのに。意外と仕事熱心ですのね」
そういう時に限って、彼女は現れる。
涼やかで凛とした色を伴って、少女の声はギコの背中に話しかけてくる。
爪゚ー゚)「御機嫌よう、ミスター。今日も素敵な天気ですわ」
( ´∀`)「お早う御座いますモナ、ギコ」
(,,゚Д゚)「……よォ。相変わらずスカしてんな」
- 82 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:05:52 ID:cuiQVzT60
-
肩で切りそろえたブラウンの髪を艶やかに靡かせ、黒のリムジンから少女が降り立つ。
少女の姿を見るや、ギコを除く社員達は一斉に姿勢を正した。
頭に乗せた真っ赤なベレー帽を直し、少女・ジーナは上品に一礼する。
その右後ろでは執事のモナーが倣って深々と頭を下げる。
爪゚ー゚)「ハインさんはお元気?昨晩のシチューは如何でしたの?」
(,,゚Д゚)「元気も何も、お前は毎日学校で会ってるだろが」
爪^ー^)「でも、ハインさんは私がお嫌いみたいで、お話して下さいませんから」
(,,゚Д゚)「アイツはお前みたいなタイプが苦手だからな」
爪゚ー゚)「悲しい限りですわ。私はお友達になりたいだけなのに。日本の方々はシャイですのね」
(,,゚Д゚)「腹に一物抱えこんだ奴は関わらないに限るのさ。俺もお前が嫌いだ」
爪゚ー゚)「あら、私は好きですわよ?ミスター、貴方の事も」
涼やかなマリンブルーの瞳がギコを見据える。
社員達がハラハラと成り行きを見守る中、二人は和やかに(ギコは邪険に扱っているが)言葉を交わす。
誰がこのいたいけな少女を見て、VIP支社長だと思うだろうか。
しかし現実、彼女は曲りなりにも社員1000人強を抱える、弱冠14歳の最年少の女社長なのだ。
その、上司もいいとこの相手に不遜な態度を取るギコだが、ジーナはニコニコと笑顔のまま。
爪゚ー゚)「――さて、井戸端会議を長々続けるのもなんですし、本題に入りましょうか」
言うやジーナは自動ドアをくぐり、先導する。
ギコはそれに着いていくかどうか逡巡したが、舌打ちを一つ鳴らし、少女の後に続いた。
………………………
…………
- 83 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:07:08 ID:cuiQVzT60
-
爪゚ー゚)「仕事は単純明快でしてよ。今回の連続殺人鬼『処理屋』を、私達で『処理』してしまいましょう」
広い会議室に、充満する数十人の男達。
何十対の無機質な視線を浴びても平然とした表情で、ジーナは部屋中に響く声でそう切り出した。
傍らのモナーか素早くデジタルマップを表示させる。
マップには『処理屋』の行動パターンや被害者の実例、容疑者一覧等のデータがピックアップされた。
爪゚ー゚)「情報は既にこちらで収集済みです。後はあの冷酷無慈悲な変態野郎のケツをぶっ叩くだけですわ」
その情報は一体どこで、幾らで手に入れたのか気になる所である。
犯人の行動範囲には、ハイン達の通う学校の通学路も含まれていた。
もしこの情報をテレビで見ていなかったら、ギコはこの場に居なかっただろう。
爪゚ー゚)「各自班を組んで、所定の位置で張り込みを始めて下さい。何かあれば――――……」
ジーナの説明を右から左へ流す。
どうせ彼女のことだ、自分を呼び寄せたということは後で何かしらの命令を個別に受けるだろう。
ギコは渡された資料に目を滑らせ、ある一点で視線を留めた。
『('A`)』
鬱田ドクオ。VIP市在住24歳独身男性。
元××商社所属。アメリカ合衆国への3年間の赴任歴あり。
帰国後、精神異常により半年間入院。その後辞職。
職業・現在無職。
――見覚えがある。昨日、ギコに金をせびってきた青年だ。
( A゚)うr=-
(,,゚Д゚)「…………まさか、な。」
ふと浮かんだ発想を振り払い、傍らのコーヒーを啜る。
写真の向こうの男は、ただひたすらに恨みがましい目でギコを睨みつけていた。
- 84 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:07:59 ID:cuiQVzT60
-
『お掛けになった電話は、電源が入っていないか、電波の届かない所に――』
从;゚∀从「……やっぱり出ない。仕事中かな」
連絡用のフォンパネルに何度も連絡してみたが、ギコは通話に応答しない。
从;゚∀从「やっぱVIP市かな。子供は基本的に外に出るなって先生たちは言ってたけど……」
教師たちは学校寮で生活しているし、ギコは仕事に行く際、常にVIP市へ足を運んでいる。
もしかしたら新しい仕事を請け負う為にVIP市に足を運んでいる可能性もあるだろう。
从;゚∀从「行こうっかなー、でも怒られるかなー……」
うろうろ、うろうろ、うろうろ、うろうろ。
行くか、否か。ハインは迷う。
(,,゚Д゚)『悪いが、うちに医者にかかるだけの金は無いぞ』
从;゚∀从『じゃあ、もし本当に病気だったら……』
(,,゚Д゚)『死ぬな。最悪の場合』
なら、もし病気でなくとも、取り返しがつかない程の怪我をしたら?
- 85 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:09:20 ID:cuiQVzT60
-
从;゚∀从「……………」
昨日のやり取りを思い出した途端、不安がこみ上げて来た。
最近の彼は注意力散漫というか、いつもぼうっとしている事が多い。
常に警戒心を見せてくるより幾分マシだが、身を守るとなると話は別。
犯人にうっかり背後から……有り得そうなのが恐ろしい。
从;゚∀从
从;゚∀从「……あーーっそういえばスープ全部飲みほしちゃったぜェーッ!
これじゃあギコが帰ってきても飯が食えなくなっちまう!オレが作ってやらなきゃ!
でも材料が無いッ!これじゃスープが作れないぜェーッ困ったなァー何せストアは
VIP市にしか無いんだから仕方ないなよし口実出来た今すぐ行こうッ待ってろギコ!!」
誰に聞かせるまでもない言い訳を早口で捲し立てるや、ハインは財布とエコバックを掴む。
そして光の速さもかくやの身のこなしで無重力靴に足を突っ込み、アパートを飛び出した。
こうなった彼女は止められない。
ギコの現在地を知る術を持たないことにハインが気づくのは、この30分後の話。
- 86 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:10:13 ID:cuiQVzT60
-
爪゚ー゚)「ミスター、今回は私も捜査に参加しますので、モナーと一緒に私の護衛に回って下さい」
( ´∀`)「よろしくモナ、ギコ」
会議終了後、ギコは一人残され、そう言い渡された。
ジーナ直々の命令だ、逆らう訳にもいくまい。ギコは黙って了承した。
それにモナーのことは良く知っているし、ハイン以外で気の置けない間柄だ。
下手に素情を知らない相手と組まされるより気が楽だ。
( ´∀`)「足引っ張っちゃうかもしれないけど、その時はフォロー頼むモナ」
(,,゚Д゚)「口癖漏れてんぞ。その調子だと問題なさそうだな」
( ´∀`)「おっと。危なくなったら僕に構わず、お嬢様を連れて逃げてくれよ」
(,,゚Д゚)「分かった、任せておけ」
(;´へ`)「・・・そこは『友達を放っておけるわけないだろ』とかさぁ、あるだろう?」
(,,゚Д゚)「そう言って欲しかったのか?」
( ´∀`)「……いや、他ならぬ君だもの。その時は頼むよ」
(,,゚Д゚)「お前の言う『その時』ってーのは、雄鶏が卵を産むくらい有得ない確率だろうがな」
( ´∀`)ハハッ
仏頂面で無愛想なギコに対して、モナーは柔和で人当たりが良い。
にも関わらず、二人は不思議な程に気が合う。
対象的も、S極とN極ほど極端であれば引かれ合うということだろうか。
- 87 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:11:12 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)「……でも良いのか?俺達は二人だけって」
、、、、、、、、、、、、、、、
爪゚ー゚)「それがベストと判断したからです」
振り返り、にべもなく彼女は言い切った。これだけ言えば満足だろうと言わんばかりだ。
その口振りは確信と受け取っても大差ないほどに揺るぎない。
爪゚ー゚)「それはお互い、一番よく分かっているでしょう」
ギコはそれを聞くと、ただ肩を竦めた。モナーも笑みを零すのみ。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
('A`)
翌日。男は昨日の場所に戻って来た。
拳銃はまだ、その場に残っていた。誰も通った様子は皆無だ。
男は一人、座り込んだ。別にこの状況が動く訳でもない。
('A`)
怖ろしかった。思い出すは、自分より背の低かった、あの男。
その濁った瞳に宿していた、氷山の一角のような冷たさが。
長年腰に仕舞っていた護身具に、もう指一本触れる気すら起きない。
全身から熱が奪われていくあの感覚を、二度と忘れられそうになかった。
- 88 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:12:38 ID:cuiQVzT60
-
('A`)「俺、何やってたんだろ」
一人呟く。もしあの男が、地面でなく自分の眉間に向けて撃っていたとしたら――
寒気がする。そして同時に、悔しく思う。
なぜ殺してくれなかったのだろう。死んだほうがマシだったかもしれないのに。
( A )
男――ドクオは以前、サラリーマンであった。
公務員はこの世界では富裕層が就く職業の一つ。安全圏でぬくぬくと育ってきた世代だ。
10年前に戦争が勃発した際も、本物の銃の重みを知ることなく、モデルガンの収集に熱中していた。
仕事でアメリカに赴任し、初めて銃の重さを知った。
初めて試し撃ちした時の反動は、今も両手にありありとその記憶が刻まれている。
ただひたすらに、重かった。人を殺す重みを思い知った気がした。
あれ以来、あんなに楽しんでいたモデルガンの収集を止め、コレクションは売りに出した。
それくらい衝撃だった。繊細なドクオには、刺激が強すぎたのだ。
( A )(その銃で、俺は一体、何を――――)
腕に力がこもる。もう前にも後ろにも、進めなくなった。
足が震えて、膝が笑って、もうこれ以上一歩も動けない、そんな絶望的な感覚――
ドクオの虚ろな目が、銃を捉えた。
何も考えなくなった頭に、声が囁きかける。
―――――――やっちゃいなよ。もうお前には、何も残っちゃいないだろう?
「駄目ェエーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
手を伸ばしかけた、その時。不意に空から、声が降ってきた。
- 89 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:13:40 ID:cuiQVzT60
-
( A )
空から声が聞こえるなんて、いよいよ自分も終わりか。
今の状況でまだ生きていたいなんて、我ながら勝手だと思う。
それでもドクオは救われたい気持ちで、幻聴に縋るように空を見上げる――
|||||| ピューッ
从;。A从「わーーっそこのおじさん退いてーーーーッ!!」
そ(゚A゚)そ「ストライク!!」
救いの代わりに、空から少女が落ちて来た。
……………………………。
Ω
从;゚∀从「ごめんなさい、足元が滑っちゃって……」
Ω
("A")「いやいや、怪我がなくて良かったよ。これからは足元に気をつけようね、雨上がりの日は特に」
十数分後、よれたリーマン男と銀髪少女が路上で互いに正座し合う奇妙な光景が広がっていた。
少女は申し訳なさそうに、全力の土下座を披露してくれている。
事情を聞くに、どうも無重力靴で乾ききっていない瓦を蹴っ飛ばし、足を滑らせて落ちてきたらしい。
落下事故でたんこぶ一つで済んだのだから、幸運もいい所である。
- 90 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:14:45 ID:cuiQVzT60
-
从 ゚∀从「おじさん、偶然とはいえ助けてくれてありがとう」
(;'A`)「いやいや、俺はたまたまあの場にいただけだし……」
('A`)「……それに、礼を言いたいのは俺の方だよ」
从 ゚∀从 ?
少女は改めて深く頭を下げた。
ドクオからすれば、よく出来た偶然とはいえ、自殺を食い止めてくれた命の恩人だ。
怒るどころか、運命の神様の悪戯に感謝したいほどである。
('A`)「君、この辺じゃ見かけない子だよね」
从 ゚∀从「隣のニューソク市から来たんだ。買い物で」
成程、とドクオは少女の買い物袋を見て合点がいった。
ここらで一番大きなマーケットはVIP市にしかない。
(;'A`)「でも、よく一人で来れたね。ここらは危ないって知ってるだろう?」
从 ゚∀从「おう。でも俺の学校も近いし、道はそれなりに知ってるからよ。いざとなったら逃げるし」
从;>∀从「――――痛っ!」
(;'A`)「だっ大丈夫かい!?」
从;゚∀从「足、くじいちゃったかも……でも大丈夫です。一人で歩けます」
しっかりした子だ。しかし迂闊で身の程知らずだ。
明確な殺意をもった相手を前にして逃げるなど、まず不可能だ。
それをドクオはつい先日、身をもって体験した。
- 91 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:15:59 ID:cuiQVzT60
- 从 ゚∀从「それに……知り合いが近くで働いてるんだ。だから、心配で」
从 。 从「本当は来ちゃいけないって分かってんだけど、放っておけなくて……」
('A`)「…………」
('A`)「……そっか。君は良い子だね」
从;゚∀从「いっいえ!そんな事は!」
('∀`)「危険を承知でこんな所まで来るほど相手を思いやれる子は、今のご時世そうそう居ないよ。
その人の事、本当に好きなんだね」
从*゚∀从
从///从 っ
('A`)
自分もこんな風に誰かを思いやれることが出来たら、少しは変わっただろうか。
くすんで灰色に錆びついた自分の感情回路を彩れたんだろうか。
ただ淡々と『処理』してきた毎日を、ほんの少しでも変えることが適っただろうか。
('A`)
从 ゚∀从「おじさんも大丈夫か?顔色悪いぜ?」
('A`)「…大丈夫だ。それより、その人の所まで俺が一緒に着いていくよ」
从 ゚∀从「え?良いんですか?」
('A`)「どうせ暇だしね。大人が着いていた方が君も安心だろう?」
- 92 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:17:10 ID:cuiQVzT60
- 从;゚∀从「でもオレ、そいつの場所知らなくて……」
('A`)「VIP市はそこまで広くないし、君に心当たりさえあれば、探すくらい訳ないさ」
从;゚∀从「でも、こんな足じゃ迷惑かけちゃう…」
('A`)+「子供一人背負うくらい、平気だって。ついでだから俺の家で手当てしてあげるよ」
从;-∀从 ウーン…
从 ゚∀从
从*゚∀从「…それじゃ、お言葉に甘えて。実はちょっと怖かったんだよな〜!」
(;'A`)(……良い子というか。ちょっと不用心すぎないか、この子)
人を信じれるのは長所かもしれないが、出会って十分そこらの他人を信用し過ぎではないだろうか。
ドクオが邪な考えを持つ人間だったなら、あっという間に犯罪に発展しただろう。
表情をころころと変える少女に、ドクオは一抹の不安を覚えた。
(;'A`)「あのね、余計なお世話かもしれないけど……」
从*^∀从「ありがとうっ、おじさん!」
('A`)
(*'A`)(……まあ、いっか)
- 93 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:18:14 ID:cuiQVzT60
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
最初の事件が発覚したのは、3週間前のこと。
路地裏で血塗れになり倒れていた、男性の死体が発見された。
男性は事件前に足を骨折し、通院の帰りと思われる。
その3日後、近所を散歩して来ると行って出て行った老女は、骨壷に入って帰って来た。
老女は下半身不随で、長年車椅子を使用していた。
発見された時、電動車椅子は原型を残さず破壊されていた。
そのまた一週間後、ワークハウスから脱走した知的障害者の青年も殺害された。
その2日後には、初めてのロボットの犠牲者も出た。
老若男女問わず、共通点は一つ、「障害者・欠損者」であるという点のみ。
また、死因が全く同じであることから、単独犯による連続殺人と断定。
ここで警察はようやく重い腰を上げた。
だが犯人は一向に捕まることなく、警察を嘲笑うように殺人を繰り返す。
障害者ばかりを狙った犯行、容赦を知らぬその残虐な手口から、その殺人鬼は人知れずこう呼ばれた。
『無慈悲な処理屋(スクラッパー)』
- 94 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:19:26 ID:cuiQVzT60
- 「なあ吉田、今俺達が追ってる『処理屋』ってよ、どんな奴だと思う?」
「何を出し抜けに」
容疑者候補の一人を監視していた張り込み組の一人が、ぽそりとそんな事を切り出した。
相方は眉を吊り上げ、アンパンをかじる口を止めた。ふむ、と暫く考え込む。
「……何とも言えねえな。黒魔術でもやってるか、悪魔に取り憑かれたか、狂人のどれかだな」
「オカルティックだなー。今日びそんな推理する人いないぜ」
「うっせ、プロファイリングとか苦手なんだよ俺は」
無能な警察でさえ犯人が単独犯であることを特定出来たのには、たった1つだけ理由がある。
唯一犯人が残した痕跡――見逃しようもない証拠が、死体に残されていたからだ。
「んじゃ話題を変えよう。犯人は人だと思う?それともロボット?」
「ああ、それなら賭けてもいいぜ。多分、ロボットだろうな」
「自信満々だな。根拠は?」
「んなもん言われなくても分かるだろ。あんな真似出来るのはロボットだけだ」
現場に残された死体及びスクラップは。凡そ凶器を特定できない方法で殺害されていた。
「ロボットすら『圧死』させるなんざ、とても人間様に出来る業じゃねーって」
死体はどれも、まるで巨大な鉄板か何かに「押し潰された」かのように、ペッチャンコにされていた。
- 95 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:20:29 ID:cuiQVzT60
- 「ぞっとしないな」
「全くだ。それにしても田中の奴遅いな。買い出しにいつまでかかってるんだ」
吉田は腕時計に目をやった。パシリに出された仲間が未だ戻って来ないのだ。
コンビニまで5分もかからない筈なのに……どこかで油でも売っているのだろうか。
「ん?あれ……」
(:∵゚'∴゚:)
袖を引っ張られ、吉田は面を上げた。こちらに向かって歩いてくる人影がいる。
ふらふらと頼りない足取り。手に、滴を垂らすサッカーボールを提げて。
不審極まりなく、二人は無言で頷き合い、社員用カードを手に車を降りた。
「すみません、私達こういう者ですが……」
吉田達はその人影と対峙して、言葉を失った。
滴るものは、鉄の臭いを放つ真っ赤な血。サッカーボールだと思っていたのは。
(:∵゚'∴゚:)「処 理 シ ま ス 」
「う…………うわあぁぁぁあああああああああ!!」
買い出しにいかせた、田中の頭だった。
- 96 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:21:24 ID:cuiQVzT60
- act1終了。
次レスよりact2開始
- 97 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:22:05 ID:cuiQVzT60
-
お願い、まだ捨てないでくれ。
まだもっと、働いていたいんだ。
お願いだから、話を聞いてくれ。
act2:Rast holic worker
- 98 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:22:54 ID:cuiQVzT60
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
('A`)「どうぞ、汚い所だけど」
从 ゚∀从「おう、お邪魔しまーす」
ハインはドクオに背負われるまま、一軒のビルに通された。
ドアを開けると、だだっぴろいフロアをカーテンで幾つも区別している。
从 ゚∀从(これって……)
ピンときた。失業者用の格安共同マンションだ。
部屋とは名ばかりで、一人につき与えられる空間はたったの1畳。
壁は申し分程度のカーテン。布団すらなく、実質ホームレスもいい所。
それでも彼等にとっては、貴重なホームだ。
カーテンの隙間から、ごろ寝するロボット達の姿も見えた。
('A`)「はは……何も無いけど、湿布くらいなら出してあげるよ」
ドクオは座布団を引っ張り出してハインを座らせ、古びた小さな箪笥を開けた。
中には救急セットや最低限の生活用具しかない。
从;゚∀从「何か……ごめんなさい」
('A`)「気を遣わなくてもいいよ。皆来るべくしてここに来たようなもんだから」
- 99 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:23:51 ID:cuiQVzT60
- よっこいせ、とドクオも座った。
慣れた手つきで、投げ出された足に湿布を貼ってやる。
('A`)「添え木でも出来りゃもっとマシになるんだけど……」
从 ゚∀从「充分だよ。有難う」
('A`)「どいたまして。休憩したら、君の知り合いを探しに行こうか」
ハインは興味津々とした様子で、周囲を見回した。
向かいの部屋には、血色の悪い老夫婦。その隣は、俯いたまま独り言を呟き続ける小汚い男。
娼婦のような風体の女もいるし、まるきり機械丸出しのロボットまで様々。
ハインとそう年の変わらない子供もいる。
('A`)「あんまりキョロキョロしない方がいい。喧嘩を売られちゃうかもしれないからね」
ドクオに諭され、ハインは顔を真っ赤にして俯いた。
はしたない、そうたしなめられたような気がしたのだ。
皆、望んでこの場にいる筈がないのに、物珍しさ気分でいた自分が恥ずかしかった。
('A`)「……君みたいな子にはちょっと分からないかもしれないけどね。
こんな所に来るような奴は、等しくロクな奴じゃないことは確実なんだ」
('A`)「だから目を合わせちゃ駄目だ。絡まれてトラブルを起こしたらコトだしね。……かくいう俺もだけど」
そう言うと、ドクオは自嘲を含んだ笑みを浮かべた。
- 100 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:24:32 ID:cuiQVzT60
-
从 ゚-从「……おじさんは悪い人じゃないよ」
('A`)「少なくとも、善人でもないよ。恨まれるようなことも沢山したしね」
ドクオは箪笥からある物を出した。黒くて小さな、どこにでもある普通の判子だ。
从 ゚∀从「これで、何か悪いことしたの?」
('A`)「俺は以前、とある商社に勤めててな。3年位前に海外の支社に飛ばされて、延々と人のクビを切ってたんだ。コイツで」
ぽおん、と判子を放りあげる。
それを手で受け止め、また投げる、その繰り返し。
ドクオの目は遥か遠くを見つめていた。
('A`)「横領を摘発しようとして、お上にバレちまってさ。左遷食らって、リストラ作業の繰り返しやらされた」
从;゚∀从「そんな……何で辞めさせられなかったんだ?」
('A`)「俺はそれなりに実績もコネもあったから、上としても簡単に辞めさせる訳にはいかなかったんだ」
('A`)「だから、俺に人を切る作業をさせることで、俺を脅し続けてたのさ。『次はお前の番だぞ』って」
从;゚∀从「…………戦おうとは、しなかったのか?」
('A`)「勿論。意地でも辞めないことが、俺なりの闘い方だった。味方もいなかったし、勝算もなかった。嫌がらせも、沢山受けた」
- 101 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:25:25 ID:cuiQVzT60
- 感情を失くした声で、尚も語り続ける。
ドクオは無限に続く作業に、次第にノイローゼ気味になっていった。
社内で虐めにも遭い、かといって年老いた親に縋る事も出来なかった。
( A )「無理矢理でも捏造でも辞めさせる理由を作って、判子を押してハイお終い」
( A )「……気づいたら、いつの間にか俺の方が悪人になっちまってたんだ」
それでもドクオは心を殺し、上からの命令のまま切り続けた。
抗う為に。負けないために。しがみつき続けるために。
( A )「今でも、夢に見るんだ。俺の足元に縋って、切り捨てないで下さいって泣きついてくる元社員達をさ」
血も涙もない男。ロボット以上に冷酷な男。損得勘定人間。そんないわれも無い中傷も受けた。
恨まれて暴力事件に発展することも多々あった。
被害届けを出しても、警察が充分な措置を取ってくれることはなかった。
( A )「俺は抵抗しながら必死に言い続けた。血も涙もない奴はお前らの上に立ってるんだぞ、って」
でも、結局誰も耳を貸してくれることは無かった。
醜い物を見るような目で、ドクオもまた、周囲の人間から切り捨てられた。
そんな日々を続けて3年経ち、彼はある日悟った。
――もう自分に、勝つ為の術など残されていないのだと。
- 102 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:26:45 ID:cuiQVzT60
-
( A )「俺はもう、限界だった。こっちに帰国してすぐ、辞職届を出したよ」
从 ゚-从「…………」
( A )「酷い奴だろ、俺。下らないプライドと保身の為に、人を蹴り落としたんだ。なのに結局逃げた」
( A )「もう少しだけでも戦えた筈なのに。俺は結局、チャンスをドブに捨てたんだ」
:(∩A∩):「……卑怯な、奴なんだ。正義にも悪にも、なれやしなかった」
無職に堕ちてからは、生活の為に様々な物を売り払った。
疲れ果てたドクオに残されたのは、最低限の生活用品と、護身用のリボルバーのみだった。
「もっと、戦いたかった。そうすれば何か、変わったかもしれないのに」
从 ゚-从「…………」
:(∩A∩):
从 -へ从=3
(( 从 ゚-从
从 ゚-从γ( A )" グイッ
ポフッ 从 -(∩A∩)て
- 103 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:27:56 ID:cuiQVzT60
-
ハインは無言のまま、足を引き摺ってドクオの細い体を抱きしめる。
180cmもあるドクオを支えるような形で、ハインはそっと耳元で囁いた。
从 -从「おじさんは、悪人なんかじゃないよ。血も涙も、ちゃんとあるよ」
( A )「でも、俺は…………」
从 ゚-从「後悔してるんだろ?悪いことしたって、悔やんでるんだろ?」
( A )
( A )「……うん」
从 ゚∀从「やっぱり、おじさんは悪い人なんかじゃないよ。悪い人は、絶対に後悔なんかしたりしないよ」
(。A ) ポロッ 「…………うん」
从 -∀从「おじさん、思いっきり泣いていいんだよ。おじさんは頑張ったよ」
( A )
:(;A;):
ドクオは泣いた。
声こそ上げなかったが、少女の胸の中で思い切り涙を流した。
月並みな言葉だとしても、掛けられた優しさの温かみは確かに本物で。
時折背を叩く小さな手のテンポに、久しく安らぎを得た気がした。
- 104 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:28:44 ID:cuiQVzT60
- …………………………。
("A")「久々に大人げない泣き方しちまった……」
从 ゚∀从「うわぁ、鼻水でシャツべっちょべちょ」
(;'A`)「非常に申し訳ない。金が入ったら新しいのを弁償するんだけど……」
ハインのよれたTシャツは、ドクオの男泣きの跡で更によれてしまっていた。
土下座を交えて謝罪するドクオに、ハインは大丈夫だからと笑顔で返した。
从 ゚∀从「クリーニング代も弁償も要らないよ。その代わり、手伝ってくれるんだろ?」
('A`)「……ああ、そういえばそうだったね。よし、そろそろ行こうか」
話し合いの結果、市内の清掃会社を虱潰しに当たる事に決めた。
ドクオがVIP市内の地図を片手に立ちあがり、ハインがその後ろに続く。
('A`)「見つかるといいね、そのギコって人」
从 ゚∀从「うんっ」
ふとハインは、カーテンの開き切った一室に目をやる。
誰かが住んでいた形跡があるが、ここ数日帰ってきていないようだ。
ドクオもハインの視線の意図に気づいたらしい。
('A`)「ここ、作業用ロボットが住んでたんだ。クールさんって人」
(*'A`)「無表情だけど凄く優しくてね……よく俺の愚痴を聞いたりしてくれてたんだ。よく見るとスタイル良かったし」
从;゚∀从「へぇー…ん」
从 ゚∀从「?住んで『た』?もう居ないの?」
('A`)「うん、元々仕事帰りが遅い人だったけど、ここんとこ姿を見かけなくてね。俺もちょっと心配してるんだ」
- 105 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:30:09 ID:cuiQVzT60
- (;'A`)「自己主張とかしない人だったしなー。何かトラブルに巻き込まれてなきゃ良いんだけど……」
…………………………。
从 ゚∀从「うわ、車多いなー」
('A`)「土曜日だからね。殺人鬼がうろついてるし、皆あまり歩道にいたくないんじゃないかな」
怪我人とか障害者の人達は特に、と付け加える。
犠牲者たちは皆、歩道を歩いていた所を犯人に捕まり、人気のない所で殺害されたようだ。
現に、KEEPOUTの黄色いテープが路地裏へと続く道を封鎖している。
その向こうはさしずめ黄泉への路か。
ハインが落ちて来なければ、ドクオもこめかみに穴を開けてその路を通っていたかもしれない。
それでなくとも、ドクオは犯人と遭遇しやすい位置にいたのだが。
('A`)「防犯カメラにも映らないとか怖すぎだろjk……」
从 ゚∀从「死角なんてなさそうなのにな」
犯人の姿を捉えたカメラは、今のところ存在しない。
一つくらいあってもいいはずだが、それとも警察が非公開にしているのか。
いずれにせよ油断は禁物だ。
('A`)「ハインちゃん、離れるなよ」
从 ゚∀从「うん」
('A`)(……冷静に考えてみると、女の子と一緒に歩くなんて初めてだ……)
(*'A`)
(*'∀`)(……フヒッ)
从 ゚∀从(ギコ、大丈夫かなー)
(:∵゚'∴゚:)
- 106 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:31:05 ID:cuiQVzT60
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
昼のVIP、某公園にて。園内は遊具も人気もなく、閑散としている。
ギコは『巡回』がてら、モナーを伴ったジーナ達と軽めの昼食を摂っていた。
(,,゚Д゚)「しかし、急な話だな。直々に殺人鬼を捕まえるなんざ、お前さんの性分じゃないだろ」
爪゚ー゚)「いけませんか?市民の皆様の不安の種を取り除きたいだけですのに」
テーブルを囲んで、ギコはジーナと向かい合う。
ジーナは澄ました顔で、即席テーブルに揃えられた色とりどりのサンドイッチに手を伸ばす。
(,,゚Д゚)「白々しい女だ」
爪゚ー゚)「と、申しますと?」
(,,゚Д゚)「俺は知ってるぞ。お前は、自分の利益の為にしか動かない女だ」
( ´∀`) ピクッ
(,,゚Д゚)「その舌先三寸で聖ペテロを騙せたとしても、俺には通用しないぞ。
お前はその甘ったるい上目遣いと声で、何人もの脳無し男をたぶらかしてきたんだろうがな。
得の為なら何だって利用する、それがお前だ。コネも媚びも、人の生死も利用する。そうだろう?」
「ギコ、」とモナーの厳しい声色が制した。
表情は依然穏やかだが、眼光は切れ味の良いナイフのように鋭い。
( ´∀`)「君は僕の唯一の友達モナ。それは君がよく知っている筈。だから僕は君と喧嘩なんかしたくないモナ」
、、
( ´∀∵∴)「でも、」ユラリ
ズズズ... ( ´∀゚.:∵∴「これ以上お嬢様を侮辱するなら、僕は君にそれなりの制裁を加えなきゃならない……」
- 107 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:32:17 ID:cuiQVzT60
- モナーを纏う穏和な空気が一瞬にして失せ、タールのようなどす黒く濃い影が這い出す。
普段細められた垂れ目の隙間から、狂気を振り撒く月光のような黄色の瞳が覗きこむ。
ギコは双眸を細め、上着に手を差しこんだ。
一触即発。張り詰めた糸が切れかけた、その一瞬。
爪゚ー゚)「良いのですよモナー。彼の言う事は事実です」
じぃの声が、糸を僅かに緩めた。
( ´∀゚.:∵∴「ですがお嬢様」
爪^ー^)「モ ナ ー 」
( ´∀゚.:∵) スゥ
( ´へ`) 、
(,,゚Д゚)「何か裏があるんだろう?でなきゃ、こんなボランティア精神めいた真似をお前がするもんかよ」
爪゚ー゚)「……お疑いのようですわね。ならヒントを差し上げますわ」
スッとジーナは指を滑らせ、ある一点を指差した。
ギコはその指先へと視線を移したが、その先にあるのは古い大きな工場があるだけだ。
再度ジーナへと視線を戻すが、彼女はにこやかに笑みを浮かべたまま。
度し難い、ギコの心情はそれ一つに尽きた。
(,,゚Д゚)「あの工場に何かあるのか?」
爪゚ー゚)「さあ、何でしょうね。何物にも替え難い、とても大事なものであることは確かです」
( ´∀`)「……成程、そういうことでしたか。しかしお嬢様、ギコには少々理解が追いつかないのではないでしょうか」
爪゚ー゚)「私は充分に教えました。後はミスターが考える事ですわ」
- 108 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:33:25 ID:cuiQVzT60
- モナーは彼女の言いたい事が分かったらしい。
二人してニコニコと笑いかけてくる。何とも腹立たしい。
(,,゚Д゚)「俺はお前のそういう所が嫌いだ。本ッ当に大嫌いだ」
爪^ー^)「誉め言葉ですわ、ミスター」
(,,゚Д゚)「だからお前には友達が出来ないんだ」
爪゚ー゚)「あら、それは困りましたね。この国では友達を100人作るんでしょう?」
(,,゚Д゚)「友達が100人も出来たら誰も苦労しないだろうな」
爪^ー^)「私なら作れますよ。ロボット工場で友達ロボットを100体作ればいいのですから」
(,,゚Д゚)「……良い性格してるよ、全く」
ギコの吐き捨てるような言葉にも、ジーナは決してその笑みを絶やす事はない。
まるでこの会話すること自体を、心の底から楽しんでいるようだった。
『和やかなランチの所失礼しますよっと、お嬢様と愉快な仲間達』
ギコが装着していた小型無線に、予告なく新たな男の声が乱入する。
ジーナは特別驚いた様子もなく、その声に反応する。
爪゚ー゚)「Dr.流石、犯人特定の解析は終わりましたか?」
『ああ、かなり骨が折れたがな。ご要望通り、殆ど絞り込んだぜ』
(,,゚Д゚)「兄者よ、頼むから出し抜けに勝手に人の無線を使って連絡寄越すのは止してくれ」
『機会があったら善処するよ。時に、良いニュースと悪いニュースとかなり悪いニュースがある。どっちから聞きたい?』
モナーとギコは顔を見合わせた。
ジーナは普段通りの笑みのままティーカップを傾けた。
- 109 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:34:31 ID:cuiQVzT60
-
爪゚ー゚)「重要性の高い方からお願いします、Dr.流石」
『オーケイ、じゃあ良いニュースからだ。奴さんが早くも尻尾を出したようだ。まだVIP市に潜伏している』
(,,゚Д゚)「これ以上にバッドなニュースがどこにあるってんだ?」
( ´∀`)「ギコ、冗談いってる場合じゃないモナ」
『悪いニュースは、奴さんのテリトリーに居た張り込み班が全員ヤられた。片っ端から見境ないぞ。相当強いと見ていい』
(;´∀`)「やはり即席のチームでは無理がありましたか」
(,,゚Д゚)「喧嘩売られたと思ってんじゃないのか?」
爪;゚ -゚)「二人共お静かに」
『そして更にバッドなニュース。奴の行動パターンと範囲から次の目的地を割り出したはいいが、その、
どうにも……新しいターゲットを見つけたみたいだぜ。やられるとしたら次はこの子だな。画像を送ろう』
すぐさまモナーがパソコンを開く。送られたファイルを開いた瞬間、全員が我が目を疑う。
爪;゚ー゚)「……この展開は、予想外の神様も脱帽ですわ」
『( ゚ ゚) 从 ゚∀从('A`)』
(,,゚Д゚)「…………ハイン!」
- 110 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:35:41 ID:cuiQVzT60
- 緊急事態発生。事態は一刻を争う。
まさかこんなにも急に展開が加速するとは予想外であった。
暴走した犯人が次に定めた標的は――ハイン。
爪゚ー゚)「モナー、私達は一度本社に戻りましょう。警察にも支援要請を」
( ´∀`)「把握ですモナ、直ぐに手配を」
爪゚ー゚)「Dr流石はまだ被害の出てない班に伝達を。生存者の救出を優先して下さい」
『了解。忙しくなるな』
爪゚ー゚)「ミスターは現場に……」
ジーナは指示を出すべく、ギコへと振り返る。
しかし。ギコは上司の命令が下るより早く、既に行動に移していた。
『転送プログラム作動。システムオールグリーン。スタンバイ。3、2、1……』
ギコが右手をかざす。
刹那、瞬く間に何もない空間から、手品のように円盤が出現する。
直径80cmほど、人が1人乗れるほどの小型飛行ソーサーだ。
(,,゚Д゚)フィィン
バシュウウウッ! -=≡,,゚Д゚)
突出したハンドルを握るや否や、ギコは躊躇なくペダルを踏み込んだ。
ブースターを派手に鳴らし、乗り手を乗せてあっという間に小さくなっていく。
爪゚ー゚)「……命令(オーダー)の必要もありませんでしたわね」
( ´∀`)「どうします?私だけでも追いましょうか」
『その必要はないよ。ギコのサポートは俺に任してちょ』
爪゚ー゚)「……では、Dr.流石。ナビは任せました。行きましょう、モナー」
( ´∀`)「イエス、マム」
- 111 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:37:04 ID:cuiQVzT60
- スモッグを含んだ空を切り裂き、ギコを乗せたソーサーは加速する。
冷え切った風がギコの耳を冷やすが、貼りついた鉄面皮は1ミクロンたりとも歪むことはない。
ただ視線は前方一点のみに集中し、脇目もふらず突き進む。
( ´_ゝ`)『おいギコ、時に落ち着け。お前が暴走するなんて珍しいもん見れたのはいいけど、目的地も分かんねーのに突っ走んな』
(,,゚Д゚)「――兄者か」
ギコの眼前で電子パネルが開き、一人の男の顔が映し出される。
白衣を着た研究者らしき男・兄者は、周囲のモニターに視線を走らせ、目で追えない速さでキーボードを叩く。
( ´_ゝ`)『今からお前の現在地と処理屋の出現場所から、最短ルートを割り出す。何かBGMでもかけようか?』
(,,゚Д゚)「要らん、早くしてくれ」
『その演算なら俺がとっくに済ませたぞ、兄者よ』
新しい声が割り込んだ。兄者より幾分か落ち着いたトーンの機械音声。
表示されたナビ画像と共に、兄者によく似た顔つきの男がモニターに表示される。
(´<_` )『ナビは俺に任せろ。兄者は残った班の再編成と犯人確保のルートを算出してくれ』
( ´_ゝ`)『流っ石俺の弟ォ☆出来る男は違うぜぇ!よーしお兄ちゃん頑張っちゃうぞー』
(´<_` )『ギコ、300メートル先を左だ。その後信号2つを通り越して右に直進してくれ』
(,,゚Д゚)「了解」
( ´_ゝ`)『無視って心に響くんだぜ、知ってた?』
ペダルを更に強く踏み込み、スピードを上げる。現在、時速180km/h。
剥き出しの肉体が耐え切れる筈が無いのだが、ギコは意に介さずといった表情を貫く。
眼下は多くの車でごった返し、ちょっとした渋滞が起きていた。
- 112 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:37:54 ID:cuiQVzT60
-
(´<_` )『念の為装備を確認しておくぞ。足りないものがあれば転送装置にナンバーを登録しておく』
(,,゚Д゚)「なら強化捕縛ネットとハンドレッドグローブ、それにエアナイフを一丁頼む。市街地でドンパチやり合うつもりはない」
(;´_ゝ`)『おいおい、まさか犯人を素手ゴロで捕るつもりか?』
ギコが右手をモニターに翳すと、画面がスキャニングを開始。
『Waiting for loading and input』の文字が表示される。
その間も、ギコを乗せたソーサーは大通りへと飛び出した。
空を走るフライドカー達の群れに飛び込んでいき、すれ違う反重力車達の間をすり抜けていく!
上空用の道路を逆走している訳で、ドライバー達の怒号が飛び交うが、構っている暇はない。
(;´_ゝ`)『なんちゅー荒いドライビング……これは間違いなくポリが釣れる』
兄者の言葉が現実となった。
けたたましくパトランプを鳴らし、巡回車がギコの追跡を開始する。
止まれとロボコップが怒鳴り散らすが、勿論ギコが耳を貸す訳が無い。
「そこの暴走ソーサー、今すぐ止まりなさい!」
(´<_` )『……だそうだが、ギコ』
(,,゚Д゚)「オトジャ、交通システムにハッキングして信号を変えてくれ」
(´<_` )『了解っとな』
途端、ギコの通るべきルートに点在する全ての信号が切り替わった。
信号が突然変わるのだから、当然交通状態は混乱してしまう。
さながらそれは、ヌーの群れ。玉突き事故の濁流に飲まれ、追跡車は立ち往生してしまった。
- 113 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:38:53 ID:cuiQVzT60
- (´<_` )『そうそう、言い忘れてたがな。特定した犯人の正体のことなんだが』
( ´_ゝ`)『どうせ社長達にもすぐデータ届くだろうけど、ギコにも教えとくぜ』
すぐさま兄者がエンターキーを叩き、ソーサーにデータが転送される。
タッチパネル操作で開き、その内容にギコの目が僅かに細められた。
VIP市の外れにある、大工場に登録されたロボット従業員の一覧だ。
(´<_` )『社員数200の内、ロボット従業員の数は僅か15体。その中で一体、行方不明になったロボットがいる』
( ´_ゝ`)『居なくなった時期が処理屋の出現と被ってたもんだから、気になって調べてみたんだ』
『 川//‰ ゚) 』
(´<_` )『そいつ、どうやら不良品や廃棄品を処理するロボットだったらしい』
( ´_ゝ`)『大変だったんだぜ?この居なくなったロボットの目撃証言を探して纏めるの』
(,,゚Д゚)「型が古いな。もう40年以上も前のじゃないか?」
次いで送られてきた、『処理屋』のスペックに関するデータを見てギコは呟く。
圧縮式金属処理ロボット・横堀社発Cシリーズ001。
(´<_` )『愛称ゴミ処理クールさん。Cシリーズの数体しかないプロトタイプだな』
( ´_ゝ`)『どうやらガタがきてたみたいで、社長によるともうじき廃棄される予定だったらしい』
不良品。処理。捨てる。圧縮。廃棄。
瓜二つのオペレーター達から発せられた言葉が繋がり、一つの仮説を積み立てていく。
- 114 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:40:00 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)「つまり、このCシリーズ001がこの連続殺人の犯人だと?」
(´<_` )『可能性は充分にある、ということだ。用済み扱いされて捨て鉢になった、ロボットの暴走……ありそうな話じゃないか』
( ´_ゝ`)『俺としては、あの鬱田とかいう根暗そーな奴が怪しーと思ったんだけどな』
(,,゚Д゚)「……」
『 ( A ) 』
(,,゚Д゚)「……オトジャ、後どれくらいだ?」
(´<_` )『急かすな。目標は移動しているが、逃がしゃしないさ』
ギリ、とハンドルを持つ手に力が籠る。
風が不穏な空気を孕み始めた。眼下に別のロボコップ達が集まっている。
――おそらく、処理屋に殺された張り込み組の殺害現場だ。犯人は近い。
早くしなければ。手遅れになる前に。ハインに毒牙が掛けられる前に。
(,,゚Д゚)(間に合ってくれよ…………!)
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
('A`)「あれ?」
交差点を渡り切った時。ピタ、とドクオの足が止まった。
从 ゚∀从「どしたの?」
ハインも釣られて立ち止まり、ドクオを見上げた。
一点を凝視するドクオに倣って、視線の先を辿ってみる。
- 115 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:40:52 ID:cuiQVzT60
- (゚ //‰≡//‰ ゚)
ロボットだ。
包帯からはみ出した長い髪を揺らしながら、まるで誰かを探しているように辺りを見回している。
('A`)「いや、……あれ、クールさんかなって」
从 ゚∀从「隣の部屋の?」
('A`)「うん。かなり汚い格好だけど……」
川//‰ ゚)"
ロボットがこちらを振り返った。
肌の殆どを汚い包帯で隠している。
赤茶色のよれたツナギは、もう何か月も洗っていないようだ。
川//‰ ゚) !
('A`)「やっぱりクールさんだ……あっ!」
-=≡川//‰ ゚) タタッ
=≡(;'A`)「あ、待って!」
=≡从;゚∀从グイッ「ちょ、いきなり走ったら……きゃっ!」
突然、クールらしきロボットは駆けていく。
ドクオもその後を追い掛け、ハインは引き摺られるように並走する。
(;'A`)「なんで逃げるんだよクールさん!」
从;゚∀从「おじさんっも、もうちょいゆっくり!」
- 116 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:41:35 ID:cuiQVzT60
-
クールはドクオの呼びかけに答えない。
追いかけてくるなと背中が語っているようだった。
けれどもドクオは、追わない訳にはいかない理由があった。
(;'A`)「ぜぇ、はぁ、待ってよクールさーん!」
从;゚∀从(……あれ?)
ドクオは彼女を追う事に夢中で、周囲のことは見えていない。
だが比較的冷静なハインは、段々と変わりゆく景色に違和感を感じてきていた。
从;゚∀从(なんか、これ)タッタッタ
从;゚∀从(少しずつ、人気のない、所に、)タッタッタ
从;゚∀从(入り込んでいってる、っていうか)タッタッタ
从;゚∀从(誘いこまれてる、ような…………)タッタッタ……
川川川 ) ピタッ
(;'A`)「ゼェ…………ゼェ…………クールさん?どうしたんですか?」
クールの足が止まった。二人も追いつき、互いの距離は2メートルもない。
ドクオは荒い息を整えながら、目の前の人物に問いかけた。
川//‰ ゚) クルッ
『 処 理 し ま す 』
('A`)
- 117 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:42:39 ID:cuiQVzT60
-
('A`)
('A`)「………………………え?」
クールの両腕が変形する。
関節から先が引っ込み、代わりに露わになったのは、剥き出しの巨大な鉄板が一対。
人一人は余裕で潰せそうなそれらからは、ポタポタと何が滴っていた。
真新しい血液と、こびりついた、何かの肉片。
从;゚∀从「――――お じ さ ん ! !」
クールの鉄板付き両腕が飛び掛かる直前、ハインの無重力靴が輝く!
放心したドクオの腕を掴み、加速と反重力の効果を得た脚で地を蹴り抜く。
鉄板が両サイドから二人を挟み潰す直前、どうにか上空に逃げ出すことに成功した。
怪力によって、鉄と鉄が激しくぶつかり合う音が響き渡る。
从;゚∀从「まさか、アイツが――『処理屋』!?」
上空で無重力を維持したまま、ハインはクールを凝視する。
連続殺人鬼『処理屋』は、包帯の隙間から覗く一つ目で、逃した獲物を見上げている。
あのツナギの色の意味を理解し、ハインの背筋を戦慄が走った。
――逃げなきゃ。
川//‰ ゚)「標的、捕捉」
- 118 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:43:55 ID:cuiQVzT60
-
キン、とクールのモノアイが輝いた。
膝を曲げ、『処理屋』も力強く跳び上がる。伸縮アームが二人に襲い掛かる!
从;゚∀从「くっ!」
鉄板に捕まるまいと、ハインはビルの壁を蹴った。
一瞬遅れ、クールのアームが横薙ぎに振り抜かれる。
二人の代わりに、コンクリートが盛大に破壊されて崩れ落ちた。
('A`)「……な、なんで…………」
ドクオは混乱していた。
記憶にある物静かな優しい隣人と、目の前の連続殺人鬼『処理屋』。
両極端な姿に、余りにもギャップがありすぎた。
『処理します』
『処理し ま s』
『処理』
(; A )「う、……うわあああああああああああああああああ!!」
理解した瞬間、ドクオの脳裏にいたクールは瓦解した。
あるのは、血を滴らせ、自分達を肉片に変えんと迫る狂気の殺人者。
死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!!!
(;A;)「嫌だァアーーーー!し、死にたくないぃいいいいいい!!」
从;゚∀从「おじさん、落ち着いて!!人通りの多い所に出よう!」
- 119 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:45:11 ID:cuiQVzT60
-
運よく、雨霰の如く落ちたコンクリートが、クールの視界の邪魔をしている。
退散するなら今しかない。ドクオを宥めながら、ハインは腕を引いて走り出す。
捻った足を気にしている暇はない。一刻も早くクールを撒かなければ。
从;゚∀从 ダダダダダ
( A )「死にたくない、死にたくない、死にたくない……」ブツブツ
从;゚∀从(ヤバイ、おじさんの方が限界かもしれない……!)
精神的ショックが大きいからか、ドクオの足が覚束ない。
このままでは二人共捕まる。最悪の未来が容易にイメージされた。
危機的状況に被せてくるように、更なる罠が二人を待ち構えていた。
从;゚∀从「……あれ?」
从;゚∀从(オレ達、どっからきたんだっけ?)
やられた。クールから逃げることに夢中で、何処から来たのか分からなくなってしまった。
道は複雑に入りんでいて、迷路のようだ。相手はこれを計算していたに違いない。
腐っても相手はロボット。目的の為に手段は厭わない。迂闊だった。
从;゚∀从(どうしよう、このままじゃ二人共――!)
从;゚∀从 チラッ
( A )ブツブツ
――ドクオを置いていけば。
少なくともハインはその隙に時間を稼いでより遠くへ逃げられる。けど。
『もう少しだけでも戦えた筈なのに。俺は結局、チャンスをドブに捨てたんだ』
『もっと、戦いたかった。そうすれば何か、変わったかもしれないのに』
- 120 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:46:26 ID:cuiQVzT60
- 从;゚∀从
从 - 从
从 ゚ -从
「おじさん」
( A )「?」
从 ∀从ノ「――――――――」
パシン。
心地よい音が鳴った直後、ドクオの頬に衝撃と熱が押し寄せる。
脳味噌をダイレクトに揺らす振動で、ようやく平静が戻って来る。
'("A(#)
("A(#)「…………ハイン、ちゃん?」
- 121 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:47:36 ID:cuiQVzT60
-
从 ゚∀从「逃げて。オレが処理屋を引きつける内に」
クールは痺れを切らしたのか、片っ端から建物を破壊する事に決めたようだ。
罅の入った小さなビルが次々と破壊され、砂埃が濛々と上がる。
音が大きくなっていくのは、彼女が近づいてくる証拠だ。
(;'A(#)「む……無茶だ!武器もないのに、あんなのに立ち向かうなんて……!」
从 ゚∀从「おじさん、戦いたかったって、言ってたよね?」
ドクオの言葉を捩じ伏せ、ハインは言葉を被せた。
从 ゚∀从「確かに、一人じゃ弱いかもしれない。でも、オレは戦うよ」
从 ゚∀从「勝てないかもしれない。でも、勝てる可能性もあるよ。確証はないけど……」
(;'A(#)「そ、そんなの、どこから自信が――」
从 ゚∀从
从 ^日从イヒッ
从 ゚∀从「――――戦い続ける限り、勝負に0%なんて存在しないよ。おじさん」
ドゴォオオ、――――――ン!!
ハインの後方の壁が盛大にブチ抜かれ、轟音と地鳴りが周囲を包んだ。
川//‰ ) ユラリ
立ちこめる煙幕の向こう側で、幽鬼の如く人影が揺れる。
血のこびり付いた長靴が満身の力を込めて地を踏みしめ、砂霧を晴らす。
- 122 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:48:27 ID:cuiQVzT60
-
●=川//‰ ゚)=●『処理、処理、処理処理処理』
と(从从从つ「おじさん、早く!広いトコに出て!」
両腕を広げ、鉄板を打ち鳴らすクール。
ドクオを庇うように両手を広げ、対峙するハイン。
(;'A`)
じり、と靴底が砂塵を踏み鳴らした。
逃げたい。今すぐにでも、みっともない悲鳴を上げて、逃げ出してしまいたい。
あの鉄板に挟み潰されれば、想像を絶するような激痛が襲ってくるのだろう。
まるで鴉の糞のように、自分の死体は容赦なく打ち捨てられるだろう。
(;'A`)と从;>へ从つ ●=(゚ ‰//川=●
でもそれ以上に。
自分より二回り以上も小さな、小刻みに震える背中に、ドクオは釘付けになった。
怖いくせに、小さな胸に恐怖を隠して、立ち向かうその姿に。
(;'A`)
(; A )
(; ∀ )「…………君は、馬鹿だ。特大の、馬鹿だよ」
「そうとも」
- 123 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:50:02 ID:cuiQVzT60
-
●=川//‰ ゚)=●そ 「――――!」
頭上から落ちてきた、声。
クールがハッとして首を鳴らし、見上げる。
――巨大なコンクリートの塊が、クールを押し潰さんと降って来た。
ズ――――、ンンン!!
●●
:川//‰ ): グラグラ「―――――――――――――――――!!」
間一髪で、クールは鉄板を盾にし防御に成功するも、
しかし鉄板は乱暴な扱いに遂に耐え切れず、ピシリと音を立て、割れた。
川;//‰ ゚)「―――――!?」
「そいつは料理も碌に出来ないし、際限無しの大馬鹿野郎だ。同居人の俺が保証する」
(;'A`)「……お、お前……!」
「けどな、そこのスクラップ寸前のトンチキ作業ロボットに比べりゃ、千分も億分もマシだよ」
と从;>へ从つ
と从;>∀从つ「……?」
(;'A`)と从;゚∀从つパチッ ド (,,゚Д゚)「なあ、Cシリーズ001よ」ン ッ !! (゚ ‰//;川
- 124 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:50:56 ID:cuiQVzT60
-
从;゚∀从「ギコ!?どうしてここに!?」
(,,゚Д゚)「お前は既に包囲されている。大人しく投降した方が身のためだ」
(;'A`)(昨日の"奴"!?)
ソーサーから降り、ギコは処理屋を睨めつけた。
思わぬ闖入者の登場と言葉に、その場にいた誰もが目を見開く。
あれだけ暴れたのだから、逆に誰も気づかない方がおかしいのだ。
微かにだが、サイレンの音や人の話し声が風に乗ってこちらまで届いた。
(,,゚Д゚)「用件は二つだ。人工鼓膜を突き破るくらいかっぽじって、よぅく聞け」
(,,゚Д゚)「圧縮式金属処理ロボット・Cシリーズ001……いや、連続殺人犯『処理屋』。お前を処分しに来た」
川;//‰ ゚)「っ!」
伸縮アームが蛙を狙う蛇の如く空を裂き、ギコの首を締め上げんと迫る。
しかしその首に届く直前、ギコが腕を一振りするだけで、アームの先端部分が消失。
否、ギコの腕部分に装着した不可視の刃物――エアナイフによって切り落とされたのだ。
(,, Д )「それと、もう一つ。こっちの方がとても重要だ」
(,, Д )「――――俺の家族に手を出した罰。悔いても足らない程に後悔させてやる」
(,, Д゚)ギラッ「この俺、G-1K:0(ワンケー:プロト)が相手だ」
- 125 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:52:15 ID:cuiQVzT60
-
(;'A`)(G-1K:0?まさか――ロボットか?)
とてもそうは見えない。ギコはどこからどう見ても、普通の人間だ。
敵対するクールのような、機械らしさは微塵もない。
ただ唯一、何を見ているか分からないあの瞳を除けば、だが。
(;'A`)(アンドロイドでも、あんなに人間らしい奴いねーだろ!どんな変態技術使ってんだよ!)
仮にロボットだとして、聞いたことのない型番だ。
一般市販ロボットでない事だけは分かる。
ガガガ(川//‰ ゚))ガガ「目標変更、処理――――」
"◎"ギャリッ ギャリンッ"◎"
ξ" "ξ"
ガシャ "◎"川#//‰ ゚)"◎" ンッ!!「――続行ッ!!」
クールも鉄板を捨て、上腕部に仕舞っていた電動ノコギリとドリルに装備を切り替えた。
完全なる交戦の意。ギコを障害とみなし、先に『処理する』と決めたようだ。
あくまで彼女は『処理行為』を続ける気でいる。
从;゚∀从「キャーーーー!」
(;'A`)「ハインちゃん!?ってぇえええ!?」
隣からハインの悲鳴が聞こえた瞬間、ドクオは浮遊感を覚えた。
あっという間に視界が数メートル上空へ切り替わり、宙ぶらりん状態となる。
ギコが乗っていたソーサーからアームが飛び出し、二人をがっちり掴んで離さない。
- 126 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:53:12 ID:cuiQVzT60
- ( ´_ゝ`)『ハァイお空の観戦シートに二名様ご案内ー』
(´<_` )『安心してくれ、俺達は敵じゃない。君らを保護しにきた』
ハインを掴むアームから兄者の声が、ドクオを掴むアームからはオトジャの声が。
高すぎる視界にクラクラするが、戦闘地域から離脱出来たことはありがたい。
ドクオは階下のギコ達からそう遠く離れていない場所に包囲網を確認することが出来た。
(;'A`)「そ、それはそうと大丈夫なのか!?アイツ一人に戦わせて!相手は連続殺人鬼だぞ!?」
从;゚∀从「……ギコ……!」
ハインも固唾を飲んで、戦いを見守っている。
クールは自身の電動ノコギリをフリスビーの如く投擲し、斬りつける。
しかしギコは何時ものごとく、眉ひとつ動かさず紙一重でそれらを避ける。
電動ノコギリは地面を裂いて深く食い込み、火花を散らし切断音を立てるのみ。
川#//‰ ゚)「shit!」
指先を振る、すると、地面に食いこんだ電動ノコギリが抜け出た。
从;゚∀从「ギコ、後ろ!!」
死角をとった動くギロチンが、今度こそギコの首を獲らんと――――
(,,゚Д゚)y◎「無駄だ」
指二本で阻害された。後頭部に目がもう一つあるかのような自然な動き。
ノコギリを摘まむ指先が青白く光り、流れた機械音声は火花散る音でかき消された。
高速回転するノコギリの動きを、指の腹だけで止めてみせる。
-=≡ξ川#//‰ ゚)バビュッ「Curse you!」
ノコギリが駄目と見るや、ドリルアームに変えギコに猪突猛進する!
(,,゚Д゚)y◎「だから無駄だって――」
(,,゚Д゚)洲 ヒュバッ「――言ってんだろ?」
.
- 127 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:54:37 ID:cuiQVzT60
- ◎≡=- ξ/ スパッ /川//‰ ゚)
<ゴロン 川;//‰ ゚)「 ! ! ?」
(;'A`)(まただ!指が光ったら、アイツの掴んだ物が『消えたり現れたりする』――ッ!)
以前ドクオが経験した、物が一瞬で消えて現れるカラクリ。
今度はクールの放った電動ノコギリが、瞬く間にクールのドリルアームを切断した。
腕を失ったクールが狼狽するその瞬間にも、ギコは躊躇いなく地を蹴る。
川;//‰ )そ「ウグゥッ!」
と思った瞬間、クールが目にも留まらぬ速さで吹っ飛んだ。
クールの肢体は壁に叩きつけられ、コンクリートに放射状の傷を刻みながらめり込んでいる。
彼女が立ち構えていた場所には、代わりにギコが片足を上げたフォームのまま佇んでいた。
(;'A`)
(;゚A゚)そ「HAAAAAAAAAAAAAAA!?」
从;゚∀从「どしたのおじさん!?気功波でも出ちゃうの!?」
(;´゚A゚)「いやいやアイツ、クールさん蹴り飛ばすとかどんな脚力してんだよ!人型ロボットって最低体重120kgあるぞ!化物か!?」
( ´_ゝ`)『お兄さんや、ただでさえ面白い顔がもっと面白くなってるぞ』
(´<_` )『ギコのキック力は自己ベスト最大1.5t。軽トラ位なら余裕で蹴り飛ばすからな』
(;´゚A゚)「ロボットのキック力に自己べストかあんの!?毎回測ってんの!?記録つけてんの!?」
(´<_` )『ツッコミ所そこなんだな』
从;゚∀从「すげー……ギコってロボットだったんだ」
(゚A゚`;)「そして何故知らなかったんハインちゃん!?家族なんでしょ!!??」
从;゚∀从「常識ないし鉄面皮だしやけに強いと思ったら……言われてみれば納得かも」
(゚Д゚`;)「それで済ましちゃっていいのか!?もう色々とあかんこの子!!!!」
( ´_ゝ`)『君キミ、鏡みて同じ事言ってみな』
- 128 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:55:35 ID:cuiQVzT60
-
しかしドクオが驚くのも無理は無い。
脚部に掛かる負荷を考えれば、一般家庭用ロボットの平均的脚力はせいぜい200kgがいいところだ。
そう考えればギコはまさに、化物中の化物であろう。
オトジャは一人、意味ありげに呟いた。
、、、、、
(´<_` )『ま、一般家庭用ならの話だがな』
度重なる攻撃で回路に重度の負担が生じ、クールの動きは鈍っている。
その刹那的な隙を突き――互いの鼻が触れんばかりにまで接近。
(,,゚Д゚)「俺は男女平等主義だ。拳の重さも等しく与えてやる」
そうして拳を振り上げ――
(,,゚Д゚)「 フ ン ッ ! ! !」
≪ド ォ ォ オ オ オ ン!!≫
クールの鳩尾めがけ、渾身の一撃を見舞わせた――
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
从;゚∀从「ギコーー!!」
ソーサーのアームから解放され、ハインはギコに向かって一直線。
助走の勢いもつけて、その胸に思い切り飛び込んだ。
从;゚∀从「どこも怪我してないか!?」
(,,゚Д゚)「肉体損傷率5%未満。どこも問題無い」
从;゚∀从「ホント?病院行かなくても大丈夫?」
(,,゚Д゚)「必要が無いな。保険証もないことだし」
从;-∀从-3
从 -∀从「……良かった。ギコが病院行くくらい沢山傷ついたらどうしようって、すっごく怖かった」
- 129 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:56:42 ID:cuiQVzT60
-
やたらめったら肌をまさぐっていた手をギコの背に回し、ぎゅっと抱き寄せた。
心から安堵した、そう主張するように力を込める。
ギコは相変わらず眉一つ動かさないものの、ハインの砂だらけの頭をそっと撫でる。
(,,゚Д゚)「……済まなかった。救出が遅れてしまって」
_,
从 ゚∀从 ムッ
从 ゚∀从「……あのなー、こういう時は謝るんじゃなくて、こう、ギュってやるのがセオリーだと思うんだけど」
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「ふむ」
ギュッ (,,゚Д゚)人从∀゚ 从
パッ (,,゚Д゚)ノ ヽ从∀゚ 从
(,,゚Д゚)「こうか?」
从 ゚∀从
从*゚〜从゛
从*。 从「きゅっ……及第点、かなっ!」
ギコは矢張り表情を変えない。頬を紅潮させたりもしない。
ただ代わりに、一度離した手を握り直す。ハインも嬉しそうに笑った。
('A`)(俺テラ空気)
- 130 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:57:58 ID:cuiQVzT60
- ドクオは放心したまま、再会した二人を眺めていた。
不思議な少女に出会ったかと思えば、お隣さんは殺人鬼で、一度自分を殺しかけた奴と再び相見えた。
短くも濃すぎる時間を過ごした。全くもって白昼夢のような一日だった。
まるで三流ドラマのフィクションのような絡まり合った奇縁を、どこかむず痒く思いながらも、
从*^∀从(゚Д゚,,)
(*'A`)(ま、一件落着ってことで……良かったってことにしとくか)
一方で、兄者とオトジャは。
遠隔操作でソーサーを動かし、積み上がった瓦礫をどかせる。
そして、半分ほど撤去すると、機能停止したクールへ接近する。
( ´_ゝ`)『さて、こいつの処理に取り掛かりますか。Cシリーズ001の暴走の原因を解明なんて、社長も無理難題を仰る』
そんなの警察に任せとけばいいのに、と愚痴る兄者に対し、オトジャの声は至って平坦のまま。
(´<_` )『社長に何か考えがあってのことだろう。これ全部解体するとなると、今夜は徹夜かな』
( ´_ゝ`)『言うな、鬱になってくる……ん?』
異変に先に気づいたのは兄者の方であった。
確か、右腕のドリルアームはギコが電動ノコギリで斬り落とした。
しかし彼女の両腕は、両方とも肘から先がない。
残る左のドリルは、何処へ消えた?
(;´_ゝ`)『おい、まさかこいt』
流石達の通信は、そこで途切れた。
ぶ厚い金属を突貫する凄まじい破壊音によって。
- 131 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 18:59:07 ID:cuiQVzT60
-
(,,゚Д゚)「ッ!」
吹き飛ばされた瓦礫がギコの頬を掠めた。
巨大な石礫から防御しようと両腕をクロス状に構え、
(,, Д )「グッ!」
从;゚∀从「ギコ!?」
視界が塞がった一瞬を突かれ、横薙ぎに払われたドリルアームによって弾き飛ばされた。
伸縮するドリルアームは、大蛇の如くうねる。
川//‰ ゚)ギンッ
クールは完全に機能停止したわけではなかった。
瞳はまだ、『処理屋』の殺気と闘志に満ちている。
川//‰ ゚)「処理……します……!!」
人工声帯から掠れた声を絞り出す。
クールは、まるで処理することに妄執しているようだった。
復活した恐怖に、ドクオの足がまた竦む。今度は誰も助けてくれる人はいない。
(;'A`)「ク、クールさ……」
-=≡从;゚∀从「ギコォッ!」
ハインは、頭からモロに瓦礫へ突っ込んだギコの元へと駆ける。
それをクールがみすみす見逃すはずがない。
川//‰ ゚)ズ...
从;゚∀从「あ……」
- 132 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:00:37 ID:cuiQVzT60
-
ドリルの先端が、ハインへと狙いを定めた。
(;'A`)(足が、動かな)
从;゚∀从「ちっ、くしょ」ダッ
(; A )(駄目だ、今度こそ、終わった)
(; A )(甘い考えだったんだ、あんなキチガイじみた相手に勝てるなんて)
(; A )(今日は結局、死ぬ運命だったんだ)
(; A )(糞…………)
(; A )(…………………)
从;゚∀从
川//‰ ゚)
(; A )
本当に?
――――戦い続ける限り、勝負に0%なんて存在しないよ。おじさん。
- 133 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:01:52 ID:cuiQVzT60
-
(; A )「お、お、」
一歩、右足を踏み出すだけでいい。
動けと、走れと、たった一度だけ、銃声と共にクラウチングスタートを切るだけでいい。
(;'A`)「おっ、お」
ドリルが伸びる時、勢いをつけるためか、関節部分が一度縮むモーションを見せる。
人を切り続ける作業を続けるにあたり、ドクオの中で特化したある種の"勘"。
『相手の弱点を見抜く』力が、その瞬間に彼の尻を叩いてつき動かした。
-=≡(;'A`)つ「うおらああああああああああああああああああああああ!!!」
川//‰ ゚)「!?」
やけくそ気味に咆哮を上げ、アームに飛び掛かった。
タックル紛いの威力にドリルの軌道があらぬ方向に逸れ、地面を抉った。
(;'A`)「クールさん、もう止めてくれッ!俺はクールさんが人を殺すところなんてっ……」
川#//‰ ゚)「うあああーーーーっ!!」
クールは言葉にならない声を撒き散らし、アームを振る。しかしドクオは離れない。
ドクオが飛び掛かった瞬間、上着がアームの関節部分に巻き込まれていたからだ。
意図的にやったわけではない。タックルして偶々巻き込まれただけだ。
(;'A`)「クー、ルさっ、うわっ」
川#//‰ ゚)「処理!処理します!まだ処理出来ます!」
川#//‰ ;)「出来ます!出来ます!まだ処理出来ます!出来ます!!」
川#//‰Д;)「まだ出来ます!処理できます!処理しないで下さい!!」
ドリルが空を割るような大声が大気を震わせる。
それはまるで、飼い主に捨てられる事を怖れる子犬が出すような悲鳴だった。
- 134 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:02:42 ID:cuiQVzT60
- (;'A`)(クールさん……もしかして……)
箍が外れたクールの殺戮行為は、人が懇意する姿にとても似ていて、
錆びついた声帯から吐き出した言葉は、引き裂かれるような悲しみが滲んでいた。
ドクオの脳裏に浮かんだのは、今まで切り捨て来た人間達の縋る形相。
そして、
『( A )』
鏡に映った、追い詰められた自分を見た日を思い出した。
(;>A<)そ「ひぎゃんっ!?」
上着が破れ、振りほどかれて地面に叩きつけられた。
川#//‰皿;)ノシ ブンッブンッ
クールは巻き込まれた上着を引き抜こうとする。
だが、関節部分に入り込んだ繊維は、容易に抜くことはできない。
これでは関節を伸ばすことは出来ない。動けないクールは危害を加えることは出来ない。
川#//‰ ;)「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
(;'A`)
从;゚∀从「ギコ!しっかりしろっ!」
(,,メ゚Д゚)「俺は大丈夫だ。それより……」
瓦礫を押し退け、再びギコが戦闘に戻ろうとした時。
アームがズシン、と重々しい音を立てて沈んだ。
(,,゚Д゚)
从;゚∀从
(;'A`)
完全なる沈黙――――彼女は、戦う事を諦めたのだ。
.
- 135 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:03:41 ID:cuiQVzT60
- ('A`)スッ
从;゚∀从「ドクオさん?」
腰がズキズキと痛みを訴える。しかしドクオは堪え、クールへと近寄る。
川#//‰ ;)
彼女は自分に似ている。
何もかも諦めて、頑張る事に疲れて、心を病んだ自分と、重ねてしまう。
クールが殺人行為に走った理由など分からない。無口な隣人は愚痴一つこぼさない人だったから。
だが彼女の心の闇は、自分が抱えているものと同じものを感じた。
('A`)「……クールさん」
('A`)「誰も、貴方を捨てたりなどしません」
川#//‰ ;)「……?」
砂と血にまみれたクールの顔を覗きこんだ。
所々シリコンスキンが剥がれ、機構骨格が剥き出しになっているものの、整った顔つきをしている。
('A`)「貴方は人を殺した。裁かれるべきだ。でもどうしてか、俺は貴方を見捨てられない」
('A`)「もう処理するのは止めましょう。もう何も処理する必要はありません」
('∀`)「――捨てられても、俺が絶対、拾ってあげますから」
川//‰ ;)
川//‰ ;)「…………う、ん」
破損した人工血管から噴き出すオイルが、涙のようにクールの頬を伝った。
- 136 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:05:01 ID:cuiQVzT60
-
――――――この日、VIP市で震度1が観測された。
後で「地震ではなかった」と結論付けられるも、「ならあの揺れあ何だったのであろう」と、
観測者始め関係者、及び地震体験者一同が首を捻ったのだった。
そして、後日。
(,,゚Д゚)「あの日、ハインが世話になったと聞いてな」
(;'A`)「は、はァ」
(,,゚Д゚)「怪我の方はどうだ?」
(;'A`)「だ、打撲だけですし、大したことないです」
ドクオの部屋に、来訪者。ギコの姿があった。
(,,゚Д゚)「……」
(;'A`)「……あの……」
空気が重い。鉛が気体になってしまったかのようだ。
ファーストコンタクトが最悪だっただけに、ドクオは逃げ出したい気持ちに駆られた。
しかし目の前の男から発せられる重圧が、それすらも躊躇させる。
色々と尋ねたいことがあった。
ハインは元気でいるか。クールはどうなるのか。ギコは何者なのか。
(,,゚Д゚)「あの日の件だが」
(;'A`)そ「はひィッ!?」
(,,゚Д゚)「作業ロボットの管理不届きで、横堀社と工場は裁判にかけられる。お前も証人として出廷するだろうな」
- 137 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:05:57 ID:cuiQVzT60
- (;'A`)「……………………」
('A`)「……クールさんは、どうなるんですか?」
自然と、上擦った声でそう尋ねる。
(,,゚Д゚)「………………廃棄処分が決定した。分解して、AIは粉々に砕かれる」
('A`)「…………」
少なからず、ドクオは落胆した。
僅かな可能性でもクールの廃棄回避を願ったが、それは叶わぬ夢だった。
人に危害を加えるロボットは廃棄される。当然の決断だ。
(;'A`)「あの……ギコさん、クールさんなんですけど」
(,,゚Д゚)「だが、」
どうにかして、AIだけでも残すことはできませんか。
そう続けようとした矢先、強く言葉を被せられた上、
(,,゚Д゚)「ジーナがCシリーズ001機体を引き取ると明言した」
(;'A`)「……………………はい?」
思わぬ方向からの一言が返って来た。
ギコは何も言わず、ドクオに数枚の書類を見せた。
(;'A`)「GICグループVIP支部代表取締ジーナ・インテグラル……!?」
上質な紙に綴られていたのは、機構管理委員会に向けたCシリーズ001の譲渡と機体の活用についての報告書、
及びVIP市の工場の買収に関する表明などなど。
メリットの欠片もない上に、「何を考えてるんだお前は」と叫びたくなるような、非常識のオンパレードがそこにはあった。
(,,゚Д゚)「Cシリーズを修理して専属のボディーガードにするそうだ。
作業ロボットにあるまじき戦闘力はいっそ、護衛能力として認めて保護するべきだ云々言ってたな」
(;'A`)「……い、色々無茶苦茶すぎる。よく通ったな、こんなの……」
(,,゚Д゚)「コネクションと情報を使い、相手の弱い所に付け込んで、言いくるめるのが奴の特技だからな。こんなのは朝飯前だ」
- 138 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:08:01 ID:cuiQVzT60
-
('A`)「こんな、メリットも無いことにどうして……」
(,,゚Д゚)「さあな。ハインがどうの工場見学がどうのと言っていたが、奴(ジーナ)の考えることはよく分からん」
ギコは捨て鉢にそう言い捨てた。ドクオも意味を汲み取れず、首を傾げる。
しかし安堵して、頬の筋肉をゆるめた。
('A`)「……でも、良かった。クールさんが壊されないで済んで……」
(,,゚Д゚)「ああそうだ、Cシリーズ001についてなんだが」
Cシリーズ001の譲渡と機体の活用についての報告書のある一文を指す。
それを受け取ったドクオは、訝しむも頭からそれを読み始める。
('A`)「えーと、『……本社はG-1K:0の眼球記録メディアを元に検証した結果をここに報告する』」
('A`)「『Cシリーズ001はAIに著しいバグを起こし、非常に情緒不安定であると報告された』」
('A`)「『故に、本機体の保護観察保障人に鬱田ドクオ氏を指名するものとする』」
('A`)
('A`)「ん?」
(,,゚Д゚)「だそうだ。お前をVIP社に採用するそうだから、明日会社に来いと社長からお達しだ。俺からはそれだけだ」
事情が飲みこめ切れていないドクオの顔面に履歴書と会社の資料を押しつけ、ギコはお暇したと立ちあがった。
ドクオは就職先が降って湧いてきたという事実に、茫然とするしかなかった。
(,,゚Д゚)「ハインを助けてくれて感謝する。これから宜しくな、後輩。それと」
「昨日のお前は、とても輝いてたぞ」
マンションを後にし、ギコは空を仰いだ。
今日も空は、変わらない灰色だ。
- 139 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:12:03 ID:cuiQVzT60
-
これにてact2終了。だらだらしすぎて申し訳ない。
毎週日曜日には投下できるように頑張ります。
私的しおり
act1:Daily life into gray >>56->>95
act2:Rast holic worker >>97->>138
それでは、また来週お会いしましょう。
- 140 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 19:45:17 ID:C11JGMbo0
- 面白かった乙!
AAの表情がよく動いてていいな
- 141 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 21:38:05 ID:oCJTFGrQO
- 乙
comleatedってのはcompletedの間違い?
それともそういう英単語があるのか?
- 142 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 21:56:41 ID:cuiQVzT60
- >>141
うわ、ミスってた。
指摘ありがとうございます。こういうミスちょくちょくやると思うんで
温かい目で見てやってください
- 143 :名も無きAAのようです:2012/10/28(日) 22:01:21 ID:oCJTFGrQO
- >>142
おk どっかしらギコが壊れてる表現とかだったら重要だから一応聞いといた
>>86の対照的とかちょいちょいあるけど脳内補完できる程度だからそこらへんは問題ない
応援しとる
- 144 :名も無きAAのようです:2012/10/29(月) 00:30:12 ID:gqPneRSA0
- おつおつ
ドクオ男やで…!
- 145 :名も無きAAのようです:2012/10/30(火) 19:00:31 ID:RBoHTT.Q0
- http://i.imgur.com/wU51D.jpg
おつおつ面白かった!
ジーナさん
- 146 :名も無きAAのようです:2012/10/31(水) 21:45:46 ID:nRTvZcNI0
- 作者です。予定通り日曜の夜には投下出来そうです
>>145
うわあああ有難うございます!可愛い!励みになります!!
- 147 :名も無きAAのようです:2012/11/01(木) 12:05:57 ID:6oSLgZWI0
- >>146
喜んでもらえて嬉しいですww
続き楽しみにしてます
- 148 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:02:23 ID:O0qj9acg0
- PCを触る余裕がないので、今日は前半のみ投下。
後半は明日投下します
- 149 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:03:08 ID:O0qj9acg0
-
誰に何度言われても、諦めることは出来なかった。
踏ん切りがつく方法を探して数えきれないほど季節が廻った時、ようやく気づいた。
諦めることを諦めた時、人は初めて本当の覚悟の意味を知るのだと。
- 150 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:03:50 ID:O0qj9acg0
-
act3:•The reason why I asnwered "YES"
.
- 151 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:06:09 ID:O0qj9acg0
- 『処理屋』Cシリーズ001――もといクールの確保から2日後の朝。
从 ゚∀从「ギコ、俺は今すっごく怒ってます」
(,,゚Д゚(#)「そうか」
ギコは正座させられていた。
珍しくハインが早起きしていると思ったら、起き抜けに強烈なビンタを一発食らった。
そして現在、リビングの床に正座させられている。
大事な事なので二度言った。
从 ゚∀从「昨日は色々あって怒るに怒れなかったけど、あとあと思い出したらすごく腹が立ったので今怒ってます」
(,,゚Д゚(#)「はぁ」
从 ゚∀从「しゃくめ……しゃく……しゃくなんとかの余地は無いと思え」
(,,゚Д゚(#)「釈明の余地か」
从 ゚∀从「そうそれ。とにかく言い訳とか無しだからな」
再度、ギコは「はぁ」と溜息ともつかぬ相槌を打つ。
さっきから彼女は怒っていると言ったが、何のことだかさっぱりである。
だからといって心当たりが無いわけではない。
真っ先に思い浮かんだのは、2日前のあの出来事。
从 ゚∀从「…………なんで、ずっと黙ってたのさ」
彼の中で合点がいった。間違いなく「あのこと」だ。
色々あって有耶無耶になってしまったが、遂に言及される時がきたのだ。
ギコは覚悟を決めて、告白した。
(,,゚Д゚(#)「…………すまない。だが言うだけの勇気がなかったんだ。」
ギコは憂いを帯びた表情を見せ、目を伏せる。
滅多にない反省の態度を見せられたことで、ハインの瞳も動揺で揺らぐ。
- 152 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:07:16 ID:O0qj9acg0
-
(,,゚Д゚(#)「まさかこっそりお前のデザートを食べた事がそんなにショックだったなんて」
从#゚∀从ノ スパーンッ「そっちじゃねーーーー!!俺はそんなに食い意地張ってねーよ!」
もう一発叩かれた。とても小気味良い音がした。
ハインはプリプリと怒りながら「もういい!」と叫んでスクール鞄を掴み、無重力靴をつっかける。
从#゚皿从9mそ ビシッ「罰として、帰って来るまで俺が怒ってる理由を考える事!あとプリン買っといて!」
バタン。怒るだけ怒って、乱暴にドアは閉められた。
(,,゚Д゚⊂) ゴシゴシ
(,,゚Д゚)
ギコは正座したままそれを見送って、改めて顎に手をやって考える。
やはり、分からない。彼女は些細な事ですぐ感情を変化させる。
それこそ、ギコとは正反対の存在だ。同居して3年経つが、未だに彼女の行動パターンを把握できた試しがない。
無表情で何度も喉を唸らせ、思考すること小一時間。
(,,゚Д゚)「そうだ、プリン買いに行こう」
分からないので一先ず後回しにすることにした。要は一種の現実逃避だ。
折角貰った一日フリーだ。時間は幾らでもある。
ゆっくり一人で思考する余裕を作る為にも、用事は手早く済まさなければなるまい。
R R R R R.....
(,,゚Д゚)
R R R R R.....
(,,゚Д゚)「………………」
――そのプランが、電話一本で打ち砕かれるのもまた現実というものだ。
- 153 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:08:17 ID:O0qj9acg0
-
視点は変わる。
('A`)「うわぁ……でっかいナリィ……」
ドクオは面食らった顔で、白い建設物を見上げた。
民間護衛組織GICグループ日本・トウキョウシティVIP支社。
自分が「再び」この会社に足を運ぶ日が来ようとは。
失業した日の自分が聞いたら目玉を紛失しそうだ。
(;'A`)「なんか、入り辛い……」
GICグループの名前なら、誰もが一度は聞いた事がある。
4~50年前ほど前日本にて設立され、光陰矢のごとしを体現せんばかりのスピードで急成長を遂げた企業だ。
総合本社をスイスに置き、北米、中東・中南米、アジア、ヨーロッパと節操なく事業を開拓し、一大企業に名を連ねた。
注釈として、日本にはホッカイドウ、トウキョウ、オオサカ、フクオカの4都市に支社が存在する。
(;'A`)「帰りたいな……でも、クールさんのこともあるし……」
ブツクサと呟きながら、封筒から一枚の書類を抜き取った。
『本社はG-1K:0の眼球記録メディアを元に検証した結果をここに報告する』
『Cシリーズ001はAIに著しいバグを起こし、非常に情緒不安定であると報告された』
『故に本機体の保護観察保障人に鬱田ドクオ氏を指名するものとする』
『鬱田ドクオ氏を指名するものとする』
.
- 154 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:09:20 ID:O0qj9acg0
-
(;'A`)「故にって何だよ……ちょくちょく見ると手抜きすぎだろこの報告書……」
書面に何度も目を滑らせ、要所要所に突っ込みを入れる。
この書類を書いた人間は、どうにも日本語に不自由しているように見受けられる。
また、別の視点で見れば「手を抜いても差し支えない報告書」とも取れる適当さだった。
初めから「適当に書いても問題ない」かのような、そんな印象を受ける。
('A`)「……クールさんに、会えるかな?」
先日この書類を持ってきた男――ギコは言っていた。
ここに来い、と。クールはきっと、ここにいる。
もう一度、面と向かって彼女と話がしたい。その想い一つで、ここにきたんじゃないか。
('A`)「…………うっし!」
先刻からずっと見上げ続けているせいで首が痛くなりそうだ。
腹を括ってさっさと入ろう。社長とやらを待たせてしまうのも失礼だ。
ガッツポーズを決めたその時。
どんっ。
('A`)「あ、すいませ…………」
背後から人にぶつかられ、反射的に謝罪の言葉が飛び出した。
何の気なしに振り返った先にいたのは、
_,
(,,゚Д゚)
('A`)
('A`)oh...
見ただけで人を殺せそうな面構えをしたミニ・ターミネーターであった。
- 155 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:10:13 ID:O0qj9acg0
-
('A`)「って」
ズザーッ≡≡≡≡≡≡そ(゚A゚;)「あばばばばっばばばばーーーーーーーっ!?」
誰だって殺戮モード3秒前のロボットを前にすればそれなりにビビる。
ドクオも例外でなく、台所の悪魔も裸足で逃げ出す速度でオフィスの自動ドアまで後ずさった。
(,,゚Д゚)「喧しい」
(゚A゚)「申し訳ありませんございます今すぐ切腹すまっくす!」
(,,゚Д゚)「俺の言語機能はそこまで多彩じゃないんだ、せめて日本語を話してくれ」
「何ですか、人の会社の前で騒がしい」
(゚A゚)「エロイムエッサム!エロイムエッサム!」
どんっ。
ギコの威圧感によろけた拍子に、またも背後の人間にぶつかった。
ドクオは尻もちをつき、またも反射的に、振り返りざまに今度は華麗な土下座を披露してみせる。
バッ(゚A゚;)「ヒィイーーーーッすいません親方せめて命だけはァーーーーっ!」
(;´Д`)そ「へえっ!?べっ、別にぶつかった位で僕は怒りませんモナっ」
('A`;)「…………へ?」
- 156 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:11:34 ID:O0qj9acg0
-
恐る恐る顔を上げる。
ドクオを見下ろしているのは、ミニ・ターミネーターではなかった。
まだ20代も半ばだろうか。穏やかそうな雰囲気をもつ青年だ。
因みにミニ・ターミネーターは最初の位置から動いてなどいない。
表情は既に、ぬぼーっとした鉄面皮に戻っていた。
(,,゚Д゚)「よう、モナー」
(;´Д`)「ギコ!まさか一般人に喧嘩売ったんじゃあるまいね!?」
('A`;)「へ?ギコさん?」
(,,゚Д゚)「失礼だな、まるで人をカツアゲみたいに」
(;´∀`)「君ねェ…そのぶきっちょ面で、今までに何人の通りすがりに土下座させたか覚えてるかい?」
(,,゚Д゚)「あっちが勝手に頭下げてくるんだ、俺は何もしてないぞ」
('A`;≡;'A`)「うぇ?うぇい?」
モナーと呼ばれた青年は、顔見知りのようだ。
事情を飲み込めていないのか、ドクオとギコを忙しなく交互に見やる。
「あら、どうなさいましたの?」
やいのやいのと騒がしい三人の元に、自動ドアの奥から靴音が高らかに近づいてくる。
屈強な黒服とサングラスの男達が大股でドアをくぐり、二手に開ける。
その間から、レースのショールを纏い、真っ赤なベレー帽を頭に乗せ、大人びた服装の少女が颯爽と現れた。
ギコとドクオ以外の全員がその場で姿勢を正す中、足音は止まる。
爪゚ー゚)「ご機嫌よう、ミスター」
- 157 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:13:03 ID:O0qj9acg0
-
屈強な男達に囲まれても顔色一つ変えず、にっこりと少女は微笑んでみせる。
ギコはポケットに手を突っ込んだまま、首を少し傾げるのみ。
爪゚ー゚)「お早うございます。朝の挨拶は基本でしてよ、ミスター」
(,,゚Д゚)「………………おはっさん、『社長』」
(;'A`)「……! ジーナ・インテグラル……社長?」
ドクオは尻餅をついたまま、少女を見上げた。
サラサラの切り揃えられた髪。大きめの双眸に収まったマリンブルーの双眸。
弱冠14歳にして、1000人強の従業員達を纏める、GICグループ日本トウキョウVIP支社代表取締。
イギリス国籍を持つ若き社長、ジーナ・インテグラル。
工場ごとクールを引き取った、非常識オンパレードガール。
爪-ー-)"ペコリ 「ご明察ですわ、Mr.ドクオ・ウツタ。お初にお目にかかり光栄です」
( ´∀`)「嗚呼!成程、彼がですか。お嬢様」
(;'A`)"ペコリ「ど、ども」
大きすぎるベレー帽を右手に抱き、淑女然としてお辞儀する。
つられてドクオも頭を下げる。道を行く人からすれば、なんとも奇妙な光景だった。
爪゚ー゚)「お待ちしていましたわ。さあ、お入り下さい」
「――総員、社長とニューカマーに敬礼ッ!」
「「「「「敬礼ッ!」」」」」
(;'A`)「――……お、お邪魔しますです」
列を乱すことなく敬礼する黒服達の間を通るというものは、存外肩身が狭い気分であった。
- 158 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:14:35 ID:O0qj9acg0
-
エレベーターの中。
強化ガラス張りの密室の中に、ジーナ、ドクオ、モナー、ギコの四人が乗り込む。
モナーがB20のボタンを押し、エレベーターは下降を始めた。
(;'A`)(上にデカイだけじゃなくて地下もあるのかよ……どんな会社だっつの)
爪゚ー゚)「今から少し準備をしますから、お待ち頂けます?」
(;'A`)「え?はぁ、構いませんけど……」
_,
(,,゚Д゚)「………………」
('A`;)(で、なんでギコさんは滅茶苦茶不機嫌そうなんだろ……?)
( ´∀`)「着きました、地下20階です」
音も無くアンティーク調の扉が開く。
大理石の床、ひんやりとした空気が流れる通路が広がっている。
またも黒服が待ち構えているかと思ったが、予想に反して人気はない。
( ´_ゝ`)ノシ「どーもー、遠路はるばるお疲れさまっと」
(´<_` )「10:28:37か……予定より2分早かったな」
と、思ったら居た。黒服達の代わりに、二人の青年が4人を待っていた。
鏡映しもかくやの、瓜二つの男達。共に白衣を着ている。
身長、体型、顔つき全てが同じ。違いがあるとすれば、表情が柔らかいか否かだろう。
(;'A`)(一卵双生児ってやつか?少子高齢化の日本じゃ珍しい……)
二人をまじまじと見る。本当によく似ている。
やけにフレンドリーな方はスリッパをパタパタと鳴らし、4人へと近づく。
爪゚ー゚)「Dr.流石、オトジャ。Cシリーズ001の状態は如何です?」
('A`)「!」
- 159 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:16:15 ID:O0qj9acg0
-
(´<_` )「修復率は今の所48%って所だな。ナノマシン培養液に漬けてるけど、完全修復に後1〜2週間は掛かると思う」
表情筋の固そうな方が答える。会話の合間に、しきりに手首を触っている。
なんとなく神経質な性格、といった印象を受けた。
( ´_ゝ`)「どっかの誰かさんが容赦なくボコッてくれたからな〜。お陰で細部まで観察出来たからいいけど」
フレンドリーな方が茶化すような語調で目尻を下げ、ギコを見た。
全員の視線がギコへ向き、「どっかの誰かさん」は眉間に皺を作ったままバツの悪そうな表情を作った。
_,
(,,゚Д゚)「頭部を破壊しなかったんだから別に構わないだろう」
( ´_ゝ`)「違いない!気を抜くと、ギコは何でもかんでも紙屑みたいにぐしゃぐしゃにしてしまうからな!」
(´<_` )「ゴミ処理機要らずだな」
( ´∀`)「いっそCシリーズ001のように、肘に圧縮用の鉄板を装備するのはどうモナ?」
(*´_ゝ`)「いいねェーカッちょいーッ、それ賛成!なーギコ、今度のメンテの時に付けてやろうか?」
_,
(,,゚Д゚)「言っておくが断るぞ、マッディー共め」
(;'A`)(うわー……おっかねーェ)メガ スワッテルシ
がははは、とギコに軽い調子で絡む男達を見て、ドクオは少なからず戦慄した。
自分ならギコが怖ろしくて、とてもあんな冗談は言えない。
現に、ギコの機嫌は直角90度で急降下していっている(気がする)。
それでも周りの男達が気軽に軽口を叩くのだから、それほどの信頼関係があるのだろう。
( ´_ゝ`)「で、君が例の新人君か」
双子と思わしき片割れが、話題のネタをドクオに変えた。
- 160 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:17:51 ID:O0qj9acg0
-
(;'A`)「はぁ、鬱田ドクオです」
(*´_ゝ`)「俺は兄者、流石兄者!情報収集とか機械類のメンテナンスとか色々やってんだ!宜しくな!」
('A`)(流石……どっかで聞いたような……)
自然なモーションで握手を交わす。だけでなく力任せに振ってくる。
やけにテンションが高い男だ。そしてよく表情が変わる。
(*´_ゝ`)「新人の、しかも年が近い奴が入るのはもう2年振りなんだよな〜!もう嬉しくって!」
('A`)「そ、そっすか」
言われてみれば、上の階の男達に比べて、男はとても若く見える。
下手をすればドクオより年下かもしれない。
一歩後ろで控えていたもう片方が、表情固めに手を差し出す。
(´<_` )「オトジャだ。兄者の助手をやってる」
('A`)「どうも。お二人は兄弟ですか?」
(´<_` )「あ、俺は(*´_ゝ`)「そ〜なんだよ!よく似てるだろ!?」
(´<_`;)「兄者!」
( ´_ゝ`)「いーじゃん、別に嘘はついてないだろ?」
('A`)(仲良いんだな、羨ましい)
( ´∀`)「……………………」
('A` )(で、あの人は……自己紹介とかしないのかな)
先程、入口でぶつかった柔和そうな青年は、ジーナの背後に寄り添うように立っている。
こちらに干渉するつもりはない、という意思表示にも取れる。
- 161 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:19:17 ID:O0qj9acg0
-
爪゚ー゚)人"パンパン「――ジェントルメンズ。お喋りの時間は終了ですよ」
ジーナの乾いた拍手が、四人の私語を中断させた。
心なしか、彼女の眉間にも皺が寄っているような気がする。
爪゚ー゚)「早速ですがミスターウツダ。履歴書は?」
('A`)ノ□「あ、持ってきてます」
爪゚ー゚)「…………」
つ□と
サッと手際よく書類を取り出し、恭しくジーナに手渡す。
彼女は軽くその書面に目を通した後、
ビ|ξと爪゚ー゚)つξ|リィッ
容赦なく破いた。
(゚A゚)「っておいいいいいいいいいいいいいい!!」
爪゚ー゚)「こんな物、必要ありませんくてよ」
つ@とグシャグシャ
(;A;)「俺の履歴書ォオオーーーーーーーーーッ!」
丹精込めて書き上げた履歴書は、一瞬にして紙屑と化した。
後ろでギコがボソリと「俺よりゴミ処理機に向いてるよな」とぼやき、モナーから肘鉄を食らう。
- 162 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:22:10 ID:O0qj9acg0
- @⌒ヾ爪゚ー゚)ポイッ
( ´∀`)ノ パシッ
(;A;)「おおお……気合入れて書いたのに……証明写真700円もしたのに……あんまりだ……」
爪゚ー゚)「――――初めに申し上げておきますが、ミスターウツダ。これは採用試験や面接はありません」
泣き崩れるドクオを一瞥し、ジーナは不敵に微笑み眉尻を上げた。
(∩A∩)ゴシゴシ
('A`)「――採用試験が、ない?」
爪゚ー゚)「如何にも。私『達』は初めから貴方に試験をさせるつもりは皆無ですから」
('A`)「んん?ん?」
――どういうことだ。
採用するとは聞いていたが、試験も面接も無いとは流石に度し難い。
ましてや、クールの保護観察保障人(※)になるのだから、それなりのメンタル鑑定や筆記試験の類は受けても良い筈。
(※通常、稼働に支障をきたす不良ロボットは、規定通りに従って破棄される。
しかし然るべき処置を受け、保護観察保障人の管理の下でリハビリを続ければ破棄を免除されることが可能。
尚、保護観察保障人になるには指定された資格を持ち、幾つもの試験をパスしなければならない。)
爪゚ー゚)「ですから、必要ありません。面接ならば貴方は以前、もう受けていらしたでしょうに」
ドクン。心臓が嫌な跳ね方をした。
(;'A`)「………………な、なんの、事ですか」
声が震える。目の前の少女は、相も変わらず笑みを絶やさない。
たかが14かそこらのか弱い少女に、ドクオは恐怖を覚えた――
ギコとはまた違うベクトルの、「関わってはいけない」アラームが脳内に鳴り響く。
- 163 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:24:05 ID:O0qj9acg0
-
爪 ー )クスッ
(;'A`) ……
爪 o ) スゥ…
爪゚ー゚)「――――ですが、その件について『今は』言及しないでおきましょうか」
人 パンッ
また一つ乾いた音を鳴らし、場の空気を変えた。
それまで危うい薫りを孕んだジーナの笑みも、屈託ないものに戻った。
(;'A`)「……? ?」
途端に脳内の警告アラームも消え去った。今の一瞬の例えようもない緊張感は何だったのか。
ドクオは、それがとても不気味なものに思えて仕方が無かった。
先も底も見えない、暗闇の深淵に鎮座する底なし沼に、一歩足を踏み入れかけたような、そんな感覚だった。
(;'A`)(ま、何も言わないでくれたってのは有り難いけど……)
読めない相手だ。
挙動、言葉ひとつひとつで、こちらの心をかき乱しにかかってくる。
クールのためでなかったら、今すぐ引き返すところだ。
リリ从从)「とにかく、貴方は此処に足を踏み入れた。その時点でもう私達の同胞です、ミスターウツダ」
ジーナは背を向け、有無を言わさぬ威圧感を放ち、先頭を切る。
ぴったりとその背中を守るように、モナー達も歩き出す。
リリ从从)「現在、我がVIP社の社員数は『たった』1000人。その内約半数が事務員や非戦闘要員など、現場に出ることのない人間達です」
(;'A`)「せ、1000人って……充分多いじゃないですか」
時折、数人の従業員とすれ違う。皆人間であったり、ロボットであったり。
白衣であったり、スーツであったり、はたまた私服であったり。
社長に頭を下げつつ、誰もが興味深げにドクオを見ていた。
- 164 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:25:48 ID:O0qj9acg0
-
リリ从从)「いいえ、足りません。圧倒的に足りないのです」
(;'A`)
リリ从从)「"数"は"力"です。"成績"とは"数"です。よって"力"は"成績"という形で顕れます」
(,,゚Д゚)
「私達はのし上がらなければならないのです。力を得ねばならないのです」
( ´∀`)
「目的の為、手段を得るため、何が何でも上を、上を目指さねばならぬのです」
(´<_` )
「しからば力が必要。上とタメを張れるだけの実力がいるのです」
( ´_ゝ`)
「しかしまだ足りない。人も成績も金も、何もかも」
(;'A`)
くるりと、少女は振り返る。
爪゚ー゚)「――――ですから、形振り構ってなどいられないのです。私には駒が必要なのです」
爪^ー^)「例えば、貴方みたいな無鉄砲で情熱的な若者とか、……ね」
薄氷が光を照り返すような、明るくて、それでいて冷え切った頬笑。
まだ四分の一世紀も生きていない少女が見せていい笑顔ではなかった。
背中に氷塊を滑らせた時と同等の悪寒を、背筋に覚えた。
( ´∀`)「お嬢様、あまりプレッシャーを与えると逃げられてしまいますよ」
爪゚ー゚)「あらやだ、私ったら。ごめんあそばせ」
(;'A`)「………………」
彼の中で一つの答えが出た。
この少女、苦手だ。
- 165 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:26:58 ID:O0qj9acg0
-
爪゚ー゚)「しかし、面接や試験の代わりに幾つかテストを受けて貰います」
('A`)「テスト?」
( ´∀`)「こちらへどうぞ」
採用を前提で話が進む中、ドクオ達は広い部屋に通された。
むわっと蒸すような熱気が顔中を覆い、汗臭さにドクオは顔をしかめる。
室内には、レッグカール、ショルタープレス、アブドミナルクランチ、ルームランナー、ets...
ウェイトマシンを大量に設置したトレーニングルームであった。
('A`)
('A`)「えっ」
トレーニング中であろうジャージ姿の男達がこちらを向く。
テストと聞いて、てっきり試験室のようなものを想像していたのだ。
爪゚ー゚)「あら、ジャージをお持ちになっていらっしゃらないのね」
(,,゚Д゚)「事前に体力測定の話をしなかったのか?」
爪゚ー゚)「うちの会社に来るって時点で察して下さるかと思いまして……」
( ´_ゝ`)「相変わらず無茶ぶりですね」
(´<_` )「社長ってそういう所抜けてるよな」
(;´∀`)「すみません、私の伝達ミスです。書面でお伝えしておけばよかったのですが……」
(,,゚Д゚)「まあいいさ、コイツは無一文だから、聞いても聞かなくても同じだったろう」
('A`)「えっ」
そして、思い出す。この会社が元来、一体何を売りにしているのかを。
民間自衛組織GICグループとくれば、イコール自衛組織。
つまり、体を存分に、十二分に動かす仕事なのである。
(,,゚Д゚)「こっちだ、来い」
ズルズル(゚Д゚,,)つ('A`)))「えええええ〜〜〜〜」
茫然としている間に、当然のようにギコに襟首を掴まれ引き摺らていった。
- 166 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:28:30 ID:O0qj9acg0
- そしてあっという間に更衣室に放り込まれ、ジャージへと着換えさせられるや、
シュバババ(゚A゚≡(゚A゚)≡゚A゚)「ええええええええええええええええ」バババ
( ´∀`)「瞬発力は中々のものですね」
爪゚ー゚)「ただテンポがまばらね。安定感が欲しいわ」
反復横とびをさせられ、
ブンッ(;゚A゚)彡⌒゚「ええええええええええ!?」
( ´_ゝ`)in測定室「17mか」
(´<_` )「割と飛んだな、もやしのくせに」
ボール投げをさせられ、
(,,゚Д゚)「さあ、走れ」
ズダダダダダ(゚A゚;)≡「えええええええええ!!?」ダダダダダダ
ルームランナーで20km走らされ、
ヾ(゚A゚;)ノ「ひええええええええええええええ!!」
パンッパンッ(,,゚Д゚)▄︻┻┳═一「油断すると全身が緑になるぞ」
( A ;)ヘブチッ
爪゚ー゚)「あ、私学校に行ってきますので」
( ´∀`)「付き添います、お嬢様」
( ´_ゝ`)(´<_` )「「行ってらっしゃい」」
ジーナが学校へ行く間にペイント銃で追い回され、
<ヒギィッモウタテナイィ
<ゼハーッヒハーッ
<……ア、シンダカモ
地獄も真っ青な悪夢を見たという。
- 167 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:29:32 ID:O0qj9acg0
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
( ^ω^)「……ここでは、3で割り切れる数全体の集合をAとし、8で割り切れる数全体の集合を……」
从 ゚ -从ボーッ
国立VIP中学校。教員4名、在校生100人程度の小さな学び舎。
これでもトウキョウの中では大きな学校に入るのだが、如何せん入学する者が少ない。
ハインが所属する3年B組は、たった15人ほどしか生徒がいない。
その15人の中でも、人間は約半分。後は学習型ロボット位のものだ。
( ^ω^)ウンヌンカンヌン
从 ゚ -从ボーッ
『(,,゚Д゚)「圧縮式金属処理ロボット・Cシリーズ001……いや、連続殺人犯『処理屋』。お前を処分しに来た」』
『(,, Д゚)ギラッ「この俺、G-1K:0(ワンケー:プロト)が相手だ」』
从 ゚ -从(ギコが、ロボット……)
大好きな数学の授業にも集中せず、ハインは窓際の席で上の空。
暗雲渦巻く曇天を見上げ、先日の事件を思い出していた。
大好きな家族が、ロボット。歩き、思考し、戦う機械。未だに少し、実感が沸かない。
確かに彼は強かった。連続殺人鬼をあっさりノしてしまう位には強い。
人外じみている。しかも、人間には出来ない芸当をやってのけてみせた。
( ^ω^)「…………ハイーン?ここやって欲しいんだけどー、ハインちゃーん?おーい?」
⌒*リ;´・-・リ「ハインちゃん、呼ばれてるよ!ハインちゃん!」ヒソヒソ
从 ゚ -从ボーッ
しかし、外見はどの視点から見ても完全な人間。
モーター音だってしない、食事もきちんと摂るし好き嫌いもする、排泄だってする。
お恥ずかしながら、彼の寝室のベッドの下からとても『いやらしい本』を見つけたことだってあった(当然没収した)。
- 168 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:32:51 ID:O0qj9acg0
- _,
从 ゚ -从(……ギコの、馬鹿)
ハインは不満だった。
ギコは自身の重要な秘密を、ハインにすら教えてくれなかったのだから。
彼の秘密を第三者を介して知ったとき、とても悔しかった。
一番近いと感じていた男が、一気に遠くなったように感じた。
( ^ω^)「当てるよ?ハインちゃんの眉間にチョーク当てちゃうよ?ねえ良いの?」
⌒*リ;´・-・リ「ハイーン、先生怒ってるよ!無視は駄目だって!」ヒソヒソ
从 ゚ -从(……なんで、教えてくれなかったんだろ)
( ^ω^)「もう無理、当てちゃう。先生ハインちゃんの眉毛の間に綺麗にストライクしちゃう」
⌒*リ;´・-・リ「ハーイーン!ねーってばー!」ガタガタ
_,
从 ゚ -从(やっぱり、言いたくなかったのかな)
( ^ω^)「さあニューソク3番投手、ブーン・ホライゾン選手構えました!おおっと渾身のストレート狙いのようです!」
⌒*リ;´・-・リ「先生構えちゃったよ!今すぐ謝って!きっと許してもらえるよ!」
从 ゚ -从(でも、家族のオレが知ってたっていい筈だよな、なのに)
( ゚ω゚)「無視されるのが一番嫌いって先生いつも言ってるでしょおーーーー!!」
⌒*リ;´・-・リ「ハインーーーー!」
_,
从 -从(オレを、信用してなかったから?)
不満が高まっていき、胸の辺りがむかむかしてくる。ハインの表情は百面相する。
教師はメジャーリーガー顔負けのフォームでチョークを投げようとしている。
隣の席の女子はハインを諭そうと机を揺らす。
他のクラスメート達は、成り行きを見守っている。
- 169 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:34:29 ID:O0qj9acg0
- <ガラッ
その瞬間、扉を引く音がハイン以外の全員を我に返らせた。
(;^ω^)「おっ!?」
⌒*リ;´・-・リ「あ……」
从 ゚ -从ボーッ
爪゚ー゚)「――遅れてしまい、申し訳ありません」
教室の後方のドアから現れたジーナに、ハインを除く全員の視線が注がれる。
ジーナは全く気にすることなく、つかつかと自分の席へ向かう。
その背後にはやはり、ぴったりとモナーが着いている。
爪゚ー゚)ツカツカツカピタッ
从 ゚ -从ポケーッ
ジーナの席は、ハインの真後ろにある。
じっくりと上の空な不良生徒を、ジーナはまじまじと見つめていた。
爪゚ー゚)クスッ
(;^ω^)「お…………」
どうすべきかと投球のフォームのまま固まる教師に、ジーナは黙々と席に着く。
スクール鞄をモナーから受け取り、教師に微笑んだ。
爪゚ー゚)「先生、ベーブ・ルースの真似事は結構ですけども、授業は早い所再開しません?」
(;^ω^)「お、それもそうだおね」
忍び笑いとざわめきが教室を包む。
周りのクラスメート達の好奇を含んだ視線など一切意に介することなく、
从 ゚ -从フーッ
爪゚ー゚)「……ふふっ」
ジーナの興味は、ただハイン一点にのみ注がれていた。
- 170 :名も無きAAのようです:2012/11/04(日) 23:35:17 ID:O0qj9acg0
- 中途半端ですが今日はここまで。
また明日。
- 171 :名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 00:04:46 ID:opCm/lw.0
- 乙乙
色々気になることが多くて続きが楽しみ
個人的にAAがよく動くのすごく好き
- 172 :名も無きAAのようです:2012/11/05(月) 12:36:48 ID:9xPpZHOg0
- ハイン可愛いな
- 173 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:53:43 ID:A63nTAzo0
- 夜中になっちまった……投下します
- 174 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:54:28 ID:A63nTAzo0
-
…………………………………………………………
…………………………
……………
…………
( A )チーン
( ´_ゝ`)「へんじがない ただのしかばねのようだ」
(,,゚Д゚)「軟弱だな。俺だったら10倍のスコアは出せるぞ」
( ´_ゝ`)「ギコの基準で測ったら駄目だろ」
(´<_` )「なら俺はその2倍は出せるぜ」
( ´_ゝ`)「何故張り合いたがる」
( A )ミズ…ミズヲ……
体力測定(という名の拷問)が終わり、一人の男はトレーニングルームの隅で燃え尽きていた。
ギコ、兄者、オトジャの三人は測定で出た数値を元にあれこれ議論しあっている。
急激かつ異常な量の運動をさせられ、ドクオはまるで夏場のアスファルトに打ち上げられたミミズだ。
(;´∀`)「ただいま戻り……なんですか、このドクオさんだった物みたいな物体」
(´<_` )「『みたいな』じゃなくてドクオだぞ」
( A )ミズ…ミズヲ……
(,,゚Д゚)「昔話に出る、地蔵に縋る少女のようだ」
(;´∀`)「不謹慎だから止めるモナ!僕水取って来るモナ!」
- 175 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:55:09 ID:A63nTAzo0
-
( A )ウーン
――クオ。
( A )
――――ドクオ。
川//‰ ゚)
('A`)「え……?」
ふっと目を開けると、食い入るように見つめてくる女と目が合った。
クールだ。何故ここにいるのだろう。
彼女の頭越しには見慣れたシミだらけの薄汚い天井と、カーテンをつるす錆びたポール。
ドクオはふわふわとする頭で思い出そうとする。
自分は慣れない運動で体を酷使して、倒れたのでは――?
川//‰ ゚)" ?
見つめ返され、クールは首を傾げる。
機械肢体独特の冷えた掌が、額に心地よかった。
後頭部に太腿の感触。まるで本当の人間の持つ柔らかさ。
それが堪らなく、今のドクオには心地いい。
川//‰ ゚)「ド、ク、オ?」
抑揚のない無機質な女の声が、クールの喉から発せられる。
声は初めて聞いた筈なのに、まるで以前から聞き慣れていたかのように違和感を感じない。
この切り取られた景色に、ドクオは覚えがあった。
そう、思い出した。
ドクオが初めてクールと出会った日。丁度空は、雲が薄く光が多く差す日だった。
- 176 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:56:05 ID:A63nTAzo0
-
失業してから、まともに金も入って来なかった頃。
家を追い出され、天涯孤独となり、あてもなく河川敷を彷徨っていた。
その日、通りかかった電機販売店の店頭で、午後から雨が降ると聞いていた。
意気消沈し、茫然自失していた。だから、ドクオは忘れていたのだ。
安全圏から放り出された人間にとって、「外」が一体どういう世界なのかを。
「金くれよ、お兄さん」
「金持ちなんだろ?恵んでくれよ、俺達親から小遣い止められててさぁ」
貧民街上がりのチンピラ達から暴行を受け、なけなしの金も全て奪われた。
スッテンテンになり、路傍の空き缶のように転がされて。プライドもズタズタにされて。
医者にもかかれない、助けてくれる誰かもいない。
("A(#)
川//‰ ゚)
――気づいた時、ドクオは格安共同マンションの一室で寝かされていた。
泥に汚れ、解れた財布を握らされ、傷には申し訳程度の絆創膏と包帯が当てられていた。
そして、今のようにクールが膝を枕にして、ドクオを見下ろしていた。
("A(#)『…………俺を、助けてくれたんですか?』
川//‰ ゚)"
その時、一度きりだが、彼女は頷いた。
("A(#)『………………なん、で?』
川//‰ ゚) ?
あの日も、彼女は不思議そうに首を傾げていた。
一挙一動に、ぎこちない愛嬌を感じる人だった。
どうして今まで、忘れていたのだろう。それだけ、心の余裕がなかった証拠なのだろうか。
- 177 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:56:47 ID:A63nTAzo0
-
('A`)「クールさん……元気になったんですね……」
長く黒い、枝毛だらけの髪に手を伸ばす。
指の間をすり抜けていく人工頭髪は、オイルと鉄錆の匂いがした。
川//‰ ゚)"
('∀`)「――――良かった」
川//‰ ゚)
川//‰ )
川 ー )「はい」
('A`)
(,,゚Д゚)
('A`)
(,,゚Д゚)「起きたか」
('A`)
('A`)「」
12時43分58秒。
VIP支社地下20階仮眠室に、男の悲痛な絶叫が轟いた。
.
- 178 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 02:58:07 ID:A63nTAzo0
-
バン!(;´∀`)「どうしたモナ!?ついに阿部さん(VIP社所属掃除夫長27歳ホモ)が新人にセクシャルハラスメントを!?」
(,,゚Д゚)「落ち着け、阿部が地下に来るのはいつも夜9時を過ぎてからだろうが」
(;´∀`)「それもそっか、って新人君は?」
ドクオの悲鳴を聞きつけたモナーが、ドアを乱暴に開け周囲を見回す。
('A`)「俺は大丈夫ですよ執事さん、ご心配なく」
(´∀`;)「……えーと、そんな部屋の隅っこで何してるの?」
('A`)「自己防衛反応による反射行動なので気にしないで下さい」
悲鳴を上げた本人は、仮眠室の隅で、アルマジロも裸足で逃げ出す丸々しい体育座りを見せつけていた。
モナーはひとまず何事も無かったと判断し、「何かあったらすぐに呼べ」という旨を伝えて出て行った。
去り行く執事服の右手が、差し入れであろうミネラルウォーターを卓上に置いたのをドクオは見逃さなかった。
('A`)「とても申し訳ない気分だ」
(,,゚Д゚)「お前が悲鳴なんか上げるからだろうが」
('A`)「ミニ・ターミネーターに膝枕されていたら誰でも悲鳴を上げると思うのです」
(,,゚Д゚)「『病人にはこうしろ』とハインから以前教わったのでな」
('A`)「ハインちゃん、顔面凶器になんて怖ろしいスキル教えてるの……」
(,,゚Д゚)「ダメなのか?」
('A`)「次から女性限定で実行することをお薦めします、俺とじゃあらぬ噂立てられますよ」
.
- 179 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:00:09 ID:A63nTAzo0
-
( ´_ゝ`)「あ、新人君起きたー?」
やや小声気味に、兄者がドアからニュッと顔を出す。
どうやら弟はいないようだ。手にカルテらしき物を抱えている。
兄者の姿を視認するや、ギコは入れ替わりに仮眠室から退出した。
( ´_ゝ`)「気絶しちゃったから吃驚したぜ。立てる?」
('A`)「もう大丈夫です。迷惑かけてすみません」
( ´_ゝ`)「後でギコに礼言っておきなよ。君を仮眠室に運んでやったのはアイツだからさ」
('A`)「え……」
ギコが退室したドアを振り返る。
あれほど睨んだりボロクソに言ったりしていた癖に。
てっきり放っておくタチだと思っていただけに、意表をつかれた。
('A`)「全身が震えてる……」
( ´,_ゝ`)「あっはっは、まああんだけシゴかれりゃ気絶の一つもするわな」
ばっしばっしと背中を叩かれ、貧弱な体がまたよろめいた。
それでもドクオの頬は、朝に比べて大分筋肉が緩んだようで、少しだけ笑みが生まれた。
仏頂面や仮面顔ばかりの面々に比べて、兄者が話しやすい相手だからかもしれない。
( ´_ゝ`)「体力測定の結果を纏め終わったからさ、今後について話したいなーと思ったんだけど……」
('A`)フラフラ
( ´_ゝ`)「…………先にご飯でも食べるかい?詫びに奢るよ?」
('A`)「有り難いです」
空きっ腹で運動させられたこともあり、食事を提案され承諾した。
地下に比べて上階は人も多く、活気に満ち溢れている。
食事処は地上15階にあると促され、各フロアの説明を受けながら食堂へ向かう。
- 180 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:00:56 ID:A63nTAzo0
- ( ´_ゝ`)「えっと、こっちが大会議室でこっちが第一資料室、こっちが……」
('A`)フラフラ
(;´_ゝ`)「んで、突き当たりに事務室が――だいじょぶか?」
('A`)フラフラ「大丈夫です、空腹には慣れてるんで」
(;´_ゝ`)「そ、そうか。無理すんなよ?」
('∀`)フラフラ「10日位何も食べなくても生きていけるんで問題ないです」
( 。´_ゝ`)ホロリ(決めた、一番高いカツカレー定食奢ってやろう)
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
( ´_ゝ`)「――で、体力測定の結果から言わせてもらうんだけど……」
('A`)ガツガツガツ
( ´_ゝ`)「…………」
('A`)+キリッ「あ、きちんと聞いてますんでお構いなく」
( ´_ゝ`)「あ、うん良かった。無視されてたらちょっと泣く所だった」
ボリュームたっぷりのカツカレーを幸せそうに腹に収めるドクオを見て、どちらにせよ兄者は涙が出てくる。
軽く二人前はある食事を軽々と消費する姿に、別の意味で周囲の視線が集まる。
兄者はなるべく気にしないように努め、水を流し込むドクオに質疑応答を開始する。
( ´_ゝ`)「君、学生時代に運動は?」
('A`)「んーと、中高時代に陸上で短距離を」
( ´_ゝ`)「成程、道理で成人男性の平均より瞬発力と俊敏さが高い訳だ。でも他が、特に体力がちょっと……」
('A`)キッパリ「短く太く生きると決めたんで」
( ´_ゝ`)「ごめん意味がちょっとよく分からないや」
皿を押しのけ、体力測定の結果を見つめ直す。
見れば見るほど情けない結果となっている。握力や腕力、持久力なぞ目も当てられない。
反復横とびしか誇れるものがない。
('A`)「切ねぇ……俺、向いてないかも」
( ´_ゝ`)「弱気だなァ、頑張れよ君」
全くもって情けない。
- 181 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:02:51 ID:A63nTAzo0
- ('A`)「…そもそも結局このテスト、何が目的なんですか?」
( ´_ゝ`)「んん?深い意味はないよ。君の今の状態を把握しておきたくてね、君はもう『此処』の人間なんだし」
('A`)「でもこの会社は、フィジカルが高い人を要求するのでは?俺なんかよりよっぽど良い人材が要るでしょう?」
あー、と兄者は答えにならない声を上げた。
なんて言葉で表現すれば良いやら、トントン、と机を指で叩く。
( ´_ゝ`)「G-1K:0……ギコの眼球記憶メディアに録画されてた君達の会話を見ててね。社長が君をどうしても引き入れたいって」
('A`)ピクッ
ギコ。人間にしか見えない、謎のロボット男。
('A`)「…………そういえば、ギコさんってロボットなんですよね」
( ´_ゝ`)「んん?そうだね、それがどうかしたかい?」
話題を変えられ、兄者は訝りつつも同意する。
ドクオはクールとは別に、ギコに対して畏怖と同時に――興味を覚えていた。
知的好奇心とでもいおうか、ろくに顔も見れないくらい怖い癖して、潜在的に彼をもっと知りたいとも思っていた。
恩のあるハインの身内だから、という理由もある。
('A`)「俺の知る限り、あんなに人間に近いロボットは公式に存在しません。
それに、彼は触れた物質を瞬間移動させるなんて芸当もやってのけてました」
('A`)「彼は―― 一体何者なんですか?」
( ´_ゝ`)「…………」
兄者はドクオへの解答に黙した。
答えるべきか迷うように、困ったような薄い笑みを浮かべ、上方に視線を彷徨わせる。
( ´_ゝ`)「あー……それはだなー……」
('A`)「?」
( ´_ゝ`)チラッ「後ろに居る本人に尋ねるのが一番じゃないかな?」
(,,゚Д゚)「………………………………」
.
- 182 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:03:50 ID:A63nTAzo0
- そ('A`;)「うわあああああああああっ!?何時の間に!?」
(,,゚Д゚)「『そういえば、ギコさんってロボットなんですよね』の辺りからだ」
('A`;)「最初っからじゃないですか!録音した音声を再生しないで下さい!」
気配を微塵にも出すことなく、ドクオの背後に仏頂面のギコが突っ立っていた。
視線をずらせば、手に『わんわんお財布』を握っている。世界一似合わない組み合わせだ。
じろり、とギコのジト目がドクオを見下ろした。
(,,゚Д゚)「…………」
('A`;)「えと、あの……ごめんなさ……」
( ´_ゝ`)(この二人、例えるなら鬼教師と万引き初犯の気弱な生徒だよなー)パスタズルズル
(,,゚Д゚)「少し付き合え」
そ('A`;)「えっ」
(,,゚Д゚)「借りるぞ、兄者」
( ´_ゝ`)「お構いなく〜」
ズルズル(゚Д゚,,)つ('A`)))「なんかこのパターンさっきも見たような〜〜〜〜」
…………………………………………
( ^ω^)「どうしたんだお、ハイン?今日の君はすごく変だお?」
从 ゚ -从「…………ごめんなさい、先生」
昼の教務員室に、人気は皆無。
室内の隅に放っておかれたコピー機が、時折ガガガ、と音を立てる。
教師、ブーン・ホライゾンは教え子の顔色を伺い、ハインはかしこまる。
この若い教師は、間の抜けた面の割りに勘が鋭いのだ。嘘や隠し事を押し通せないタイプだ。
( ^ω^)「謝らなくてもいいお。先生はハインが心配なだけだお」
食べなさい、とハインの分の給食を差し出す。
数秒間をおいて、小さな「いただきます」が教員室に響く。
- 183 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:04:53 ID:A63nTAzo0
-
給食は基本的に人間向けに作られた内容だ。
汁物もパンも安っぽい味だが、ハインは大味なこの食事をとても気に入っていた。
それでも、ほとんど口につけようとはしない。
( ^ω^)「うん、やっぱりココア揚げパンは何時の時代でも変わらない美味さだお」
( ^ω^)「お、今日のデザートは冷凍みかんかお。シャーベットみたいな触感がたまらんおね」
从 ゚ -从「…………………………」
( ^ω^)「…………ハインちゃん」
カタン、と箸を置く音が静かに鳴った。
( ^ω^)「言いたくなかったら何も言わなくてもいいお。でも、悩みがあるなら存分に言って欲しいんだお」
从 。 从 ……
从 。 从「先生、好きな人はいますか?」
(;^ω^)「おっ!?」
床に視線を彷徨わせ、直後に突いて出て来た言葉にブーンはたじろぐ。
最近の子供はませていると聞くが、まさか恋愛の類の悩みだったとは。
こんな垢抜けない少女でもこんな事を言い出すのだから、独身の身にとって世の中は世知辛い。
(;^ω^)「ま、まあ先生だってそりゃ男だし、そういう人はいない事も無いって言ったら嘘になるけど……」
しどろもどろに答えた。
触れていけない琴線に触ったのでは、と気後れした、その時。
从 。 从「じゃあ先生、その人に隠し事をされたり、大事な事を教えてもらえなかったら悔しいですか?」
(;^ω^)「…………」
从 。 从「悪いことや危ないことしてるかもしれないのに、相談されなかったりしたら、寂しくないですか?」
問いかけるハインの声は、つつけば壊れてしまいそうなほどに震えていた。
- 184 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:07:52 ID:A63nTAzo0
-
从 。 从 シュン
( ^ω^)(………………ああ、成程)
( ^ω^)「ハインちゃん」
ブーンの回転イスが、重みと共に小さく軋む。
( ^ω^)「その人のこと、大好きなんだおね?」
从 ゚ -从「……うん。でも、喧嘩しちゃった」
从 ;−从「……どうすれば、いいかなあ?オレ、嫌われちゃったのかなぁ?」
从 ;д从「先生、どうしよう、せんせ、オレ」
ブーンは、ハインの小さな手を取った。
彼女は戦災孤児であることは、ブーンも知っている。
だから、彼女が人一倍、人との繋がりと孤独に敏感であることも知っている。
( ^ω^)「僕は、その人の事をよく知らないけれど……」
( ^ω^)「その人のことを想うなら、ガツンと言ってやることは大事だお」
ハインは顔を上げた。不安に満ちた表情を浮かべている。
子供だからこそ感じる痛みを、今、ハインは受けている。
そんな時、支えてあげるのが教師である自分の仕事だ。ブーンはそう思った。
( ^ω^)「けど、人は誰かを守る為に、付かなきゃいけない嘘もある。だから、むやみやたらに糾弾するのもいけないことだお」
( ^ω^)「まずは黙って信じてやるお、そして君が間違いだと思うならば、とことんぶつかるがいいお」
( ^ω^)「人はぶつかる事なしに先に進むことは出来ないんだお。それだけは絶対忘れちゃ駄目だお」
- 185 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:11:17 ID:A63nTAzo0
-
从 ;д从エグエグ
( ^ω^)つ□「ほら、泣かない泣かない」
从 ;□从ズビズビ
( ^ω^)「月並みな言葉ばかりだけど……君が望むなら、正面からぶつかってやれお。その時は先生、応援するお」
从 ∩∀从ゴシゴシ
从 ゚∀从「――うん、先生。ありがとう」
ようやく泣きやみ、ハインは鼻をすすった。
彼女の言葉が合図だったように、昼休みの終了を伝えるチャイムが鳴った。
ハインは頭を下げ、教務員室を出る。
从 ゚∀从 バッタリ (゚ー゚爪
从;゚∀从「あ…………」
爪゚ー゚)「お悩みは、もう解決なさいました?」
にこり、頬笑みかけるジーナ。何もかも見透かしたような笑顔。
从;゚∀从「うっうるせーな!お前には関係ねーよ!」
≡从///∀从「ばかっ!」
|;^ω^)「こらー!廊下走るなー!」
スイマセーン!>
(;^ω^)「全く……元気なのは良い事だけどお……」
爪゚ー゚)「……ふふっ。良かったですわ」
.
- 186 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:14:16 ID:A63nTAzo0
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
('A`)「……え?」
(,,゚Д゚)「俺の正体くらいなら教えてやってもいい。だが俺もお前に聞きたいことがある。これは取引だ」
拉致された先の無人の喫煙室で、ドクオはギコと対峙していた。
普段はあまり使用されていないらしく、煙草の匂いは殆どしない。
じわりと、掌に汗が滲む。
(,,゚Д゚)「煙草は吸うか?」
ギコが尋ねた次の瞬間には、右手にシガレットの箱が握られていた。
細い目を目いっぱい広げ、ドクオは穴が開くほどその右手を見る。
視線を察したギコは、ひらひらと掌を振ってみせる。しかし、目立った外見の差異は無い。
シガレットを受け取り、観察する。どこから見ても立派なシガレットである。
(,,゚Д゚)「話してやってもいいが……俺の話は退屈だぞ。それに、社長からきつく言われていてな、あまり話せることもない」
('A`)「構いません。話せる範囲で良いです。……野次馬根性みたいなものだから」
(,,゚Д゚)「そうか」
正直に答えると、ギコは矢張り無表情で頷いて、シガレットに火を付け、深く吸い込む。
漂ってくる匂いも煙草そのものだ。本物の煙草の匂い。久しく嗅いでいなかった。
無言で促され、ドクオもシガレットの先に点火した。
(,,゚Д゚)「……俺が造られたのは、もう大分昔の話だ」
('A`)y-・
(,,゚Д゚)「俺はある目的の為に造られた。単純で、誰にでも出来る事だ」
ぽつ、ぽつ、ギコは煙と共に言葉を吐き出す。その一つ一つが、たゆたい、沈む。
(,,゚Д゚)「俺は、戦闘ロボットだった。G-1K:0、それが俺達に与えられた番型だ」
.
- 187 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:15:20 ID:1XLvPEfo0
- うおおこんな時間に来てた支援
- 188 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:15:28 ID:A63nTAzo0
-
戦闘ロボット。主に戦時中、兵士として生産されたロボット達の総称である。
戦う為に生まれ、戦う為に死んでいく。ただそれだけのために生み出された存在。
ギコはとある内戦を制圧するために製造されたG-1シリーズの一体だった。
反政府側のテロリスト達を殲滅する、歩行型殺人兵器。
上司の命令は絶対。製造者達の指令は、ギコ達にとって神に等しい言葉。
(,,゚Д゚)「毎日が、血で血を洗う争いだった。ロボットだから血液の代わりにオイルが流れたがな」
反政府側と認定された人間達は容赦なく切り刻まれた。
その中には、テロリストと関係無い民間人も含まれていた。
一方テロリスト達も負けていなかった。独自のルートで殺人ロボットを手に入れ、抵抗し続けた。
(,,゚Д゚)「俺は最初、何も思わなかったさ。目の前にあるものを切り捨てるだけ。それだけの作業だと」
だが、血を浴び続け、命乞いする女子供の声を聞くうち、自分が殺した人間の断末魔を聞く度に。
ギコの中で、もやもやと蔓延る、原因不明のノイズが響き始める。
「何故?」
その二文字がギコのAIを占め、思うように仕事もこなせなくなっていった。
部隊の隊長にあたる人間は、仕事を完遂出来ないならスクラップ行きだと脅したてた。
(,,゚Д゚)
『お願いします、どうか見逃して下さい!どうか、娘だけでも……!』
ある日のこと、廃屋に隠れていた民間人を見つけた。
聞き飽きるほどに何度も聞いた命乞いの筈だったが、その日のギコは何かが違った。
『何をしている!早く殺せ!』
(,,゚Д゚)
『私の命はどうなっても構いません!だから……だから娘だけは…………!』
.
- 189 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:16:15 ID:A63nTAzo0
-
『また命令を放棄する気か!?スクラップにされたいのか貴様!』
(,, Д )
『兵隊さん!情けを!どうかパンの一欠片分のお慈悲を!!』
何時もなら、戸惑うことなく銃で撃ち殺していた。
けれども。銃口を上げられない。トリガーにかけた指が震える。
――――何故?
――――何故俺は、人を殺す?
『早くしろ、この愚図め!』
(,, Д )
『神様……!』
「Yes,sir」
(,,゚Д゚)「…………」
ギコの視線は、虚空を通して、遥か遠くを見つめていた。
灰色の空を駆け抜けた二つの銃声が、今も耳にこびりついて離れない。
ドクオの煙草はとっくに燃え尽きて、燃えカスが床に落ちた。
(;'A`)「………………ギコさんが戦争兵だってこと、ハインちゃんは?」
(,,゚Д゚)「知らない。教えてもいない」
教えるつもりもない、と締めくくる。
(,,゚Д゚)
ハインには、自分がロボットであることを隠し通していた。
隠していたというより、説明していなかったという方が正しい。
ハインは自分の正体を追求するようなことはしなかったし、ギコも説明する義務はないと考えていた。
何より、暴力的な自分を見られることに抵抗を感じていた。
暴力沙汰はいつも、彼女の視界に入らない場所で行われた。
- 190 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 03:17:16 ID:A63nTAzo0
- 从 ゚∀从
以前、何度かハインの前で自身の争闘を露呈したことがあった。
その時の彼女は幼く、そして知識や常識といった類がほとんどなかったので(現在も雀の涙ほどだが)
彼女の中でギコは「べらぼうに強い人」という立ち位置に収まっただけに終わった。
この間の事件まではそれが続いていた。ただそれだけの話だ。
(,,゚Д゚)「俺は逃げた。逃げた先で、安寧を見つけて、それを捨てて、また逃げての繰り返しだ。それはきっと、これからも変わらない」
('A`)「…………」
(,,゚Д゚)「瞬間移動能力は、名前は言えないが、ある人に付けて貰った。――俺が答えられるのは、これが全てだ」
ドクオは俯く。
軽い話で済ませるつもりだったのに、――踏み込むべきでない領域にまで足を入れてしまった。
重すぎる無言が、禁煙室を包む。
('A`)「…………いずれは、ハインちゃんも捨ててしまうんですか?」
心なしか、暗に責めるような口調で問いかける。
(,,゚Д゚)「……………………」
(,,゚Д゚)「いや、捨てない」
('A`)「!」
予想外の答えが返って来た。
硝子の瞳に、ほんの少しだけ光が差す。
(,,゚Д゚)「俺に安らぎは無い。人殺しにロクな末路はない。それは俺が一番よく知っている」
でも、と一拍置く。モノアイの瞳孔が絞られた。
『从*^∀从』
.
- 191 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 04:05:18 ID:v28pf0o60
- 一気読みした支援
- 192 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:34:59 ID:A63nTAzo0
- ――ねえ。おじさん。
幼いハインだけが、傷だらけのギコに話しかけてきた。
天涯孤独の戦災孤児は、自分と同じ匂いのする男を仲間と思いこんだ。
――おじさん、ひとりぼっち?さみしくない?
瓦礫の山にうずくまる機械の兵士に、少女は飽きもせず話しかけた。
――おじさん、いっしょにいようよ。ひとりより、ふたりのがいいよ。
毎日、毎日、物言わぬ殺人兵器に、少女は話しかけた。
――おじさん、約束。ゆびきりげんまん。
――ずっといっしょ。ずっと、かぞく。やくそくだよ
――ギコ。
(,,゚Д゚)「――約束を果たし終わるまで。ハインだけは、俺が守る」
('A`)「……………………そう、っすか」
揺るぎない眼差しを見て、ドクオは少なからず安堵した。
彼の過去に何があったかは、深く追求しないことに決めた。
(,,゚Д゚)「……で、お前、プッチンかデカか、どっちが良いと思う?」
('A`)「え?」
唐突な話題の切り替わりに着いていけず、素っ頓狂な声が出た。
(,,゚Д゚)「朝から、何故かハインの機嫌が悪くてな。プリンを買って来なきゃならんのだ」
(;'A`)「へ、へぇ」
(;'A`)(――ってか、取引これでいいのかよ!この人の基準がよく分からん!)
ドクオには何となく、その「何故か」が分かる気がする。
これは、ギコとハインの問題だ。第三者の自分がとやかく言うことではない。
('A`)(この人も、人らしい所があるんだな)
不機嫌になったり、人をなじったり、かと思えば気遣う風だったり。
本人もきっと気づいていないところで、妙に人間くさい。
だからドクオも、怖いと思いながら興味が沸いたのだろう。
だから周りも、ギコに親しく接するのだろう。
- 193 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:35:41 ID:A63nTAzo0
-
('A`)「……俺も、約束しました。クールさんと」
Cシリーズ001。VIP市を震わせた、無差別連続殺人鬼。
彼女は捨てられることを怖れた。まだ使われたくて、悲しい形で主張し続けた。
捨てられた者同士、ドクオはその想いを、出来るならば無碍にしたくなかった。
('A`)「俺はクールさんを助けたい。でも、俺にはまだ力が足りません」
体力測定を見て、自分の不甲斐なさを悔しく思った。
まだ全身を疲労感が襲うけども、もうそこに、弱音を吐いていた彼はいない。
覚悟を決めよう。
ギコが約束を果たすと決めたように。
自分も、強くなろう。
元気になったクールにもう一度、自分は強くなったと、胸を張れるように。
('A`)「教えて下さい、ギコさん。俺が、彼女をいつでも宥められるように」
('A`)「――今度は、俺が彼女を救えるように」
一際、雲が薄い今日。窓に差しこんだ淡い光が、ドクオの横顔を照らした。
ギコは僅かに目を細め、それから。
(,,゚Д゚)
(,,゚Д゚)「…………」
(,,゚Д゚)「善処しよう。俺の力が及ぶくらいには、な」
その時、ほんの少しだが、ドクオはギコが微笑んだように見えた。
.
- 194 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:36:42 ID:A63nTAzo0
-
(´<_` )「――――ん?」
( ´_ゝ`)「どうした、オトジャ?」
研究室の一角、人が一人入れる程の巨大な試験管のような装置が並べられている。
その一つの前で、オトジャは不意に立ち止まる。
別の試験管のモニターを見ていた兄者は、弟の異変に反応した。
川//‰ )ゴポッ
オトジャの視線の先には、治療ナノマシンを混ぜた人工培養液に漬けられたCシリーズ001。
横のパネルに、彼女の修復率と損傷個所などが事細やかに表示されている。
(´<_` )「いや……今、一瞬だけCシリーズ001の修復率が早まったような気がして……」
( ´_ゝ`)「機体の損傷が浅い所が立て続けに回復したのかもな」
(´<_` )「……まあ、そう考えるのが自然だよな」
( ´_ゝ`)「それより、今日からドクオのトレーニングメニューを考えなきゃな」
(´<_` )「トレーナーがギコだからなー。あの新入り、死ななきゃいいけど」
( ´_ゝ`)「大丈夫だろ、社長が見込んだ相手なんだし」
川//‰ )
川//‰ー )
――――――――待ってるよ、だから待っててね。ドクオ。
.
- 195 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:37:35 ID:A63nTAzo0
-
(,,゚Д゚)「…………」
夜。筋肉痛で動けなくなったドクオを送り、家路を急ぐ。
今日は迎えに行くことすら出来ず、結局彼女が怒っている理由も分からずじまいだった。
プリンは悩んだ末デカプリンを買った。
これで機嫌を治してくれないものか……。
从 ゚ -从「ギコ」
(,,゚Д゚)「!」
いつもの路地裏に差しかかると、予想に反してハインが待ち構えていた。
朝と比べて平静だが、いつビンタが飛んでくるか分かったものではない。
(,,゚Д゚)「ハイン…………」
从 ゚ -从「朝の、ことだけどさ」
(,,゚Д゚)「……済まなかった」
从 ゚ -从!
(,,゚Д゚)「その、デカプリンしかなくてな。一人分しかなくて……」
从 ゚ -从……
――まずは黙って信じてやるお、そして君が間違いだと思うならば、とことんぶつかるがいいお
从 ゚ -从
从 ゚∀从「…………帰ろ、ギコ」
(,,゚Д゚)「? ああ」
ビニールの袋をふんだくり、冷たくなった手を握る。
相変わらず冷たい手だけども。自分の手を握り返す大きな手の優しさも相変わらず。
それを再確認して、ハインは自分を納得させる。
――今はただ、信じよう。
いつか、彼が自分の問いに「yes」を答えてくれる日を信じて。
- 196 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 06:38:18 ID:A63nTAzo0
- 寝オチしてしまいましたが、3話終了。
大変申しわけありませんでした。皆様よい朝を。おやすみなさい
- 197 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 07:45:14 ID:cNF1BI3o0
- おつ
おもしろいよー
- 198 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 13:46:13 ID:7xgbsD6w0
- おつおつ
登場人物一人ひとりに魅力があって好きだ
- 199 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 18:29:12 ID:OU6Wjnv2O
- 乙乙
- 200 :名も無きAAのようです:2012/11/06(火) 22:19:30 ID:gyjRkbs20
- Kraftwerk - The Robots
http://www.youtube.com/watch?v=okhQtoQFG5s&feature=related
- 201 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:05:28 ID:PtX3Vh/.0
- 思わぬ時間ができたのでおまけっつかNG集みたいなのでものんびり投下する
- 202 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:10:23 ID:PtX3Vh/.0
- Take1
>>61-62より
('A`)「ねえ、お兄さんってば」
(,,゚Д゚)
('A`)
('A`)「あ、そう」
ジャキッ ('A`)う(∪^ω^)(゚Д゚,,)|壁
(;'A`)「あ”ーーっ間違えたァーーーー!」
(,,゚Д゚)「お前可愛い趣味してるんだな……」
(;'A`)つr=-「こっち!こっちだから!!えーと『止めません?そういうの』……」
(,,゚Д゚)「ついでに貰っていいか?こないだ財布が壊れたんでな」
つ(∪^ω^)
(;A;)「人の話聞いてェーーーーーーっ!!」
- 203 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:11:41 ID:AaWr.Zcw0
- わんわんお支援
- 204 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:16:46 ID:PtX3Vh/.0
- Take2
>>68より
(,,゚Д゚)「……青い空か」
从 ゚∀从「ギコー、何してんのさー!はやくぅー!」
<グイッ
从 ゚∀从「あっ」
(,, Д )「おべべぶっ!?」ズベシャッ
从 ゚∀从
(,, Д )
从*゚∀从「ぶっふぉwwwwwwおべべぶってwwwwwwしかも今時ドリフ滑りwwwwwwwwwww」
(,, Д )←顔が泥だらけ
从*゚∀从「ごめんwwwwwまさかwwwwwwwちょっと引っ張って転ぶなんてwwww予想外wwwwww」
从*゚∀从「いやまwwwwwwwwオレが悪いんだけどねwwwwwメンゴwwwwwメン…」
人←バナナの皮
(,, Д )
从*;∀从「ぶっひゃひゃひゃひゃひゃwwwwwwwwww頭にwwwwwwwww頭wwwwwwwwにwwwwwwwwwww」
人
(,,゚Д゚)「正座しろ」
Ω
从 ゚∀从「すみませんでした」
- 205 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:22:51 ID:PtX3Vh/.0
- 从;゚∀从そ「嘘ォッもう午後三時!?そんなに寝てたのか!?」
从 ゚∀从「――って、音鳴ってるだけじゃねーか。針動いてねえし、壊れてんなコリャ」
<ガシャーン ヾ从 ゚∀从 ペイッ「テレビみよーっと」
<ガタッパリーンッドゴッギャッ
从 ゚∀从
从∀゚ 从マドノソト チラッ
ξ←突き刺さった何かの破片
( ω )チーン
ξ←壊れた目覚まし時計の一部
从∀゚;从oh...
『――――本日午前11時頃、二十代後半と思われる男性の遺体が発見されました。遺体の頭部には激しく殴打された跡が……』
(;´_ゝ`)「糞ッまた処理屋の仕業か!色んな所に現れやがって……」
(´<_` )「情報収集に余念が無いな、流石兄者だ」
- 206 :ミスった訂正:2012/11/07(水) 23:24:58 ID:PtX3Vh/.0
- Take3
>>79より
从;゚∀从そ「嘘ォッもう午後三時!?そんなに寝てたのか!?」
从 ゚∀从「――って、音鳴ってるだけじゃねーか。針動いてねえし、壊れてんなコリャ」
<ガシャーン ヾ从 ゚∀从 ペイッ「テレビみよーっと」
<ガタッパリーンッドゴッギャッ
从 ゚∀从
从∀゚ 从マドノソト チラッ
ξ←突き刺さった何かの破片
( ω )チーン
ξ←壊れた目覚まし時計の一部
从∀゚;从oh...
『――――本日午前11時頃、二十代後半と思われる男性の遺体が発見されました。遺体の頭部には激しく殴打された跡が……』
(;´_ゝ`)「糞ッまた処理屋の仕業か!色んな所に現れやがって……」
(´<_` )「情報収集に余念が無いな、流石兄者だ」
- 207 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:28:27 ID:PtX3Vh/.0
- Take4
>>102-103より
从 ゚-从「…………」
:(∩A∩):
从 -へ从=3
(( 从 ゚-从
从 ゚-从γ( A )" グイッ
ポフッ 从 -(∩A∩)て
从 -从「おじさんは、悪人なんかじゃないよ。血も涙も、ちゃんとあるよ」
( A )
( A )「Aカップ……かぁ……」
从 ゚∀从
Ω
("A(#)「断じてあれは差別ではないんだ。おっぱいに貴賎無し。そうだろ?」
从#゚∀从「お邪魔しました永遠にさようならッ!!」
Robots完ッ!!
- 208 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:34:20 ID:PtX3Vh/.0
-
Take5
>>112より
「そこの暴走ソーサー、今すぐ止まりなさい!」
(´<_` )『……だそうだが、ギコ』
(,,゚Д゚)「オトジャ、交通システムにハッキングして信号を変えてくれ」
(´<_` )『了解っとな』
<ピコピコチーン!
<ドーンドシーンッギャアアッ
<ドコミテンダテメーッ ホンカンハ ショクムヲ マットウシテタダケデシテ
<ニゲンナポリコウーッ シャザイトバイショウヲセイキュウスルニダー!
(,,゚Д゚)「…………」
(´<_` )「…………」
(,,゚Д゚)「……誰が弁償するんだろうな、あれ」
(´<_` )「てへぺろ」
(;´_ゝ`)「お前らほどほどにしなさい!!オトジャは後で説教だ!」
(´<_` )「えー」
- 209 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:37:49 ID:PtX3Vh/.0
-
Take6
>>124より
从;゚∀从「ギコ!?どうしてここに!?」
(,,゚Д゚)「お前は既に包囲されていにゅっ。大人しく投こっした方が身のためだ」
(,,゚Д゚)「用件は二つだ。人工鼓膜を突き破るくらいかっぽじって、よぅく聞け」
(,,゚Д゚)「あっしゃく式金属しょにロボット・Cシリーズ001……いや、連続殺人犯『処理屋』。お前を処分しに来た」
川;//‰ ゚)「っ!」
(,, Д )「――――俺の家族に手を出した罰。悔いても足らない程に後悔させてやる」
(,, Д゚)ギラッ「この俺、じぇーわんけ……G-1K:0(ワンケー:プロト)が相手だ」
从;゚∀从「噛み過ぎだろギコ……」
('A`)「早口言葉苦手なのな」
- 210 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:44:32 ID:PtX3Vh/.0
- Take7
>>133より
(; A )「お、お、」
(;'A`)「おっ、お」
-=≡(;'A`)つ「うおらああああああああああああああああああああああ!!!」
川//‰ ゚)「!?」
川//‰ ゚)('A`;)ボフッ
川;//‰ ゚)「!!!????」
('A`;)「おっぱああああああああああいいいい」フニフニフニフニ
川;//‰ ゚)「きゃあああああああああああああああああ!?」
(゚A゚)「おっぱいやああああああああああ!!極上のGカップううううううう!!」モニュモニュモニュモニュ
川;//‰ ゚)「タスケテえええええええケダモノおおおおおおおおおお!!」
(゚A゚)「おっぱいを揉めずして死ねるかあああああああ!!ここが天国じゃああああああ!!」モニモニュモニモニュ
(,,゚Д゚)「しめた!奴がCシリーズ001の動きを制御している!今の内に制圧を…」
从;゚∀从「その前にクールさんを助けてあげよ!?」カワイソスギル!
- 211 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:50:34 ID:PtX3Vh/.0
- Take8
>>158より
( ´∀`)「着きました、地下20階です」
<チーン
(#´_ゝ`)「だから何時も言ってるじゃないか!人様に迷惑かけたらいけないってお兄ちゃんいつも…」
(´<_` )「はいはい、昨日から何度も聞いてるよ。謝罪ならしたじゃないか」
(#´_ゝ`)「警察庁にハッキングして謝罪用ホームページ作り置きする馬鹿がいるか!?」
(´<_` )「分かりやすい方が良いじゃん、お得感あるし」
(#´_ゝ`)「お前には誠意と道徳理念というものがだな!!」
爪゚ー゚)「…………」
(,,゚Д゚)「…………」
('A`)「…………」
( ´∀`)「…………」
爪゚ー゚)「後で詳しくお話をお聞かせ願えます?」
(,,゚Д゚)「チッ」メンドクセー
(;'A`)(この会社って……一体……)
(#´_ゝ`)ガミガミ(´<_` )
- 212 :名も無きAAのようです:2012/11/07(水) 23:55:10 ID:PtX3Vh/.0
- 今日のところはこれまで。また時間があったらやるかも。
おまけのおまけ。
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3595797.jpg
2話のシーン。
元は秋ラノベに提出しようとして諦めたものをセルフサルベージした作品でした。
今だから言えるけど、Robotsはなんちゃってロボ物の皮を被ったラブコメなんや……
某思いの向こう側さんみたいな上手な絵が描きたい。
それでは近いうちに4話でお会いしましょう。
- 213 :名も無きAAのようです:2012/11/08(木) 00:03:21 ID:GZtNQPCo0
- あなたも充分上手いじゃないの!
ハイン可愛いよハイン
- 214 :名も無きAAのようです:2012/11/08(木) 00:07:02 ID:KRSFVrKg0
- おつ!
- 215 :名も無きAAのようです:2012/11/08(木) 00:34:07 ID:TPMItcrA0
- あら素敵
- 216 :名も無きAAのようです:2012/11/08(木) 04:13:58 ID:7JueRr.QO
- クールさん、ほんとにGだな!
- 217 :名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 02:16:33 ID:.ZVdCF/I0
- マダカナー
- 218 :名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 20:28:25 ID:B5f4Kqh20
- 早ければ今夜、明日の夜にact4を投下予定
- 219 :名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 21:18:14 ID:n61bYHas0
- 楽しみにしてる
- 220 :名も無きAAのようです:2012/11/12(月) 21:34:55 ID:87w40cnU0
- ひゃっほう!
- 221 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:54:50 ID:ziTWCmRc0
- 例によって時間がない。
ちょっとずつ投下。
- 222 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:55:55 ID:ziTWCmRc0
-
俺が生まれた理由
俺が生きる理由
俺が戦い続ける理由
.
- 223 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:56:39 ID:acvhh7Ho0
- 来たー!支援
- 224 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:56:49 ID:ziTWCmRc0
-
act4:We are "the brothers"
.
- 225 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:57:06 ID:UnND7WXc0
- 来たー!!支援支援!!
- 226 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:58:02 ID:ziTWCmRc0
-
『从*゚∀从σ「すげー!見ろよ、ドロドロって出てくる!あ、掬った!どこ行くんだろ」』
『=≡从从*゚∀)「うひょー、あのドロドロが固まって玩具になるのか!すげー!」 ハインチャン ハシッタラメッダオ!>』
『从从*゚∀)「うおおお、玩具の形が全部違う!列によって作る型が変わるのかー」』
『从*>∀从「うきゃああああああ!何だあのスピード!人間ってあんな凄いスピードで包装出来んの!?」ウルセーゾ ジョシ!>』
『从;゚∀从"「って、何撮ってんだよジーナ!んな所突っ立ってねーでお前も見ろよ!」ダッテ キロクガカリ デスシ>』
――ピッ。ピッピッ。
爪゚ー゚)「ふふ……」
GICグループ日本トウキョウシティVIP支社オフィスビル最上階。
まだ朝日も昇らぬ時間、ジーナ・インテグラルは自室でモーニング・ティータイムを過ごしていた。
紅茶はハロッズのアッサムティーにスコーン(ブルーベリージャム添え)。
ジーナの機嫌がいい時の、定番メニューだ。
( ´∀`)「TVを見ながらなんてはしたないですよ、お嬢様」
爪゚ー゚)「あら良いじゃない。今日は珍しく目覚めの良い朝なんですもの、気分を盛り上げたいわ」
事も無げに言い、ティーカップをあおる。
ジーナの見ているTVは、この間録画した工場見学の様子を映している。
マリンブルーの瞳は、画面の端から端を駆け回るハインを追いかけていた。
リモコンで何度も早送りや巻き戻しを繰り返す。画面の中にはコロコロ表情を変えるハインがいる。
それが何とも可笑しいらしく、ジーナのたおやかな笑みは崩れることはない。
なんとも、平和な灰色の朝。
- 227 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 22:59:35 ID:ziTWCmRc0
-
( ´∀`)「ところでお嬢様、例の横堀会社の件についてですが、Dr.流石から報告があります」
モナーは慣れた手つきで紅茶を淹れなおし、柔らかい口調で切り出す。
Cシリーズと聞いてジーナの笑みが、冷笑的なものに切り替わった。
頬杖をつき、無言のまま続きを促す。
( ´∀`)「まずはこちらをご覧ください」
長方形のタブレットを取り出し、画面を表示させる。VIP市内の詳細な地図だ。
更に画面をタップすると、様々なアイコンが軽快な音と共に現れる。
中でも赤のアイコンが不自然なほどに集中している。
爪゚ー゚)「この赤の点……連続殺人の現場ね? ダウンタウンとスラムに集中してるわ」
( ´∀`)「お察しの通りでございます」
ダウンタウンや貧民街は労働者が多いことが特色として挙げられる。
被害者達はいずれもダウンタウンかスラムに住む者ばかりだった。
( ´∀`)「横堀会社は近々、新工場の建設計画を実行する予定だったらしいですモナ」
爪゚ー゚)「……読めてきたわ。工場を建てるには土地がいる。それもかなりの面積のね。けれど住民が邪魔だった……とか?」
( ´∀`)「その通り。新工場の建設には多くの住民が反対していたらしいですモナ」
記録によると、横堀工場は住宅地やマンションの多くを買収し、更地にする予定だった。
住民達には新住宅の建設を約束したものの、ぼったくりも良い所のテナント代の高さに満足しなかったという。
爪゚ー゚)「きっと土地代も値切りに値切られたのでしょうね」
( ´∀`)「しかも建設予定地には、私立の身体障害者用施設もあったらしいですモナ」
立ち退かない、或いは立ち退けない住民達を追い出す強硬手段。
それを、横堀社は最悪の形で出たのである。
- 228 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:01:30 ID:ziTWCmRc0
-
爪゚ー゚)「Cシリーズ001を使って住民の恐怖を煽り、土地から自主的に退去させる……脳なしにしちゃ考えたわね」
( ´∀`)「社内のロボットであれば秘密裏に処理出来ますしね」
爪゚ー゚)「ま、駒のロボットに暴走されて自分の首絞めるなんざ世話ないけどね」
くすくすと小馬鹿にするようにジーナは締めくくった。
裁判は後日に控えている。横堀社の敗訴は確実、多額の賠償金を支払わざるを得ないだろう。
つまりは、工場を買収したVIP社もかなりの被害を被る筈だが、そこは抜かりない。
爪゚ー゚)「それにしても、横掘社の社長も、あの工場の責任者も、話の通じる人で助かりましたわ」
なんのことはない、横掘社が賠償金を支払った翌日に工場を買い取る手はずになっているからだ。
勿論何のメリットもなしにそのような取引がある訳ではない。
ちょっとした"餌"を目の前に吊るしてやれば、飢えた馬のように勝手に走ってくれる。
それが"どのような"餌なのか……ここでは敢えて触れまい。
人には、絶対に触れられたくない部分というものが必ず一つはある。
ジーナはそういった「秘密」を己の手中に収め、転がす事に長けていた。
爪゚ー゚)「今頃、"ハカタ"の連中が歯軋りしてるわね。横堀社とあの工場にガードマンを送るべきかしら」
( ´∀`)「それには及びません。Dr流石にお任せしてみては?」
モナーに諭され、ジーナは一考した。
数秒ほどカップに口を付けたまま黙し、ゆっくりと唇を動かす。
爪゚ー゚)「…………そうね。たかだか小物にそこまでの人員を裂く必要もなし。
ここは一つ、久々にあの兄弟に任せてみようかしら」
( ´∀`)「期限は裁判の日まで、ですね。お嬢様のSPの数も増やしましょう」
爪゚ー゚)「いえ、私自身には貴方だけで充分なくらいよ。それより学校周辺の見回りの数を増やして頂戴」
( ´∀`)「承知しました」
爪゚ー゚)「――ふふ。"叔父様"、覚悟なさって頂戴ね」
.
- 229 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:03:27 ID:ziTWCmRc0
-
VIP社、地下20階第2トレーニングルームにて。
(,,゚Д゚)「――――今日はここまで!」
(;"A")「ゼヒーっ……つ、疲れた……」
ドタンッ、と派手に倒れこむドクオ。
顔といわず全身から大量の汗を滲ませ、すっかり目を回していた。
対して、ドクオのコーチを務めるギコは、同じ運動量でありながら汗一つかいていない。
(;'A`)(チクショー、ロボットってのは役得だよなァー)
(,,゚Д゚) ?
ギコ――もといG-1K:0。
とある抗争を鎮圧するべく生み出された、最強の心無き一兵卒。
しかしどういう訳か戦禍に巻き込まれるうち感情回路が生まれ、戦士であることをやめた。
その後の経緯――特に、戦うことを辞めた筈のギコがジーナの下で働いている理由等、詳しいことは分からない。
だが今はハインとの約束とやらを守るべく、この日本に落ち着いているらしい。
(;'A`)(俺、ここでやってけんのかなー)
トレーニングを始めて2週間は過ぎたか。
特別トレーニングとやらを受け続けて、毎日が疲労困憊だ。
強くなると意気込んだは
いいものの、改めて自身の体力の無さに辟易する。
陸上をやっていたので基礎は出来ているとはいえ、長年のデスクワーク生活であっさりと筋肉は落ちるもの。
部活でもあまり真面目に参加しないタイプだった事を今更思い出した。
(,,゚Д゚) シュッシュッ
ギコは涼しい顔で500kgのダンベルを上げ下げしている(片手でだ。化物すぎる)。
ロボットに運動は不要なのではとも思うが、ギコ曰く「運動しないと関節部分やチューブ筋肉が錆びる」のだそうだ。
(,,゚Д゚)「先週よりは持久力が上昇したな。この間よりも会話のテンポに余裕が見えるぞ」
(;*'A`)「そ、そっすか……?」
機体に内臓されたエネルギータンク量で稼働時間が決まるロボットに言われてもあまり実感が沸かない。
が、脆弱な体にも着実に力が付いていると知り、ドクオの表情が明るいものとなる。
- 230 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:06:42 ID:ziTWCmRc0
-
( ´_ゝ`)「ういうい、お疲れちゃーん」
能天気な声でドクオは我に返る。
上半身を起こすと、博士・流石兄者と弟のオトジャが近寄って来る。
兄者はギコと何やら会話する横で、オトジャがドクオの身体チェックを行う。
(;'A`)「いででででっででで、もうちょい優しく触ってくれさい!」
(´<_` )「ふむ」
全身をくまなく、そして容赦なくオトジャは触診する。
兄に比べて弟は情け容赦というものを知らないようだ。
(´<_` )「乳酸が多量に蓄積しているな。それにグリコーゲンもかなり減少している。
ドクオの現在の体重は71kgだから710gの糖質を摂取しなければならない計算だな。
30分以内に白米やバナナなどの炭水化物やタンパク質の多い食事を摂ることをお勧めする。その方が回復も早い」
(;'A`)「……う、運動の直後だ、と……飯食うってキツイんだけど、どうすれば……」
(´<_` )「経口摂取が体に負担をかけるようならチューブで直接流しこむ方法があるが、どうする?」
('A`)
('A`)「いえ止めときます」
少し魅力的にも聞こえたが、図的にちょっと情けないものがあるので却下した。
オトジャは別段何のリアクションを取るでもなく「そうか」の一言のみ。
チェック中の手際の良さといいアドバイスといい、白衣姿も相まって本物の医者のようだ。
('A`)(オトジャさんって、兄者さんと全然似てないよなー)
('A`)(……というより……)
アーデコーデ( ´_ゝ`)(゚Д゚,,)フムフム (´<_` )……
('A`)(どっちかってーと…………なぁ……)
('A`)(まさか…………ねぇ?)
.
- 231 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:10:01 ID:ziTWCmRc0
-
翌日。
('A`)「あのー、ギコさん」
(,,゚Д゚)「何だ」
('A`)「その、これは一体……?」
さながら体育館のようなだだっぴろいコートに立つ二人。
ドクオは、コーチのギコに向けおずおずと質問を申し立てる。
彼の両手両足には、やたらメカニックなグローブとブーツが装着されている。
腰部分には、万歩計のような小型の機械。
( ´_ゝ`)『それは俺が開発した"ポテンシャル・メーター"さ。対象の戦闘力を数値化する便利なアイテムなんだぜ』
('A`)「こ、これがですか?」
兄者の解説が別室から拡声器を通して伝えられ、ドクオはまじまじとそれを見た。
一見するとふざけた変身セットに見えなくもない。
(*´_ゝ`)『それを装着して5分間戦闘するだけでお手軽に自分のフィジカルが知れちゃうわけだ!すげーだろ!?』
(;'A`)「た、確かに凄いッスけど……」
(´<_` )『デザインが致命的だよな』
(#´_ゝ`)『にゃ、にゃにおうっ!?お前この旧世代変身ヒーローのロマンが分からんと申すか!!?』
(´<_` )『ごつ過ぎる。もっと身体のラインに沿ったデザインの方が良いだろう。このデザインが流行したのはもう50年以上前だろ』
(;'A`)(俺より若いだろうに……幾つなんだ兄者さん……)
マイク越しで繰り広げられる兄弟喧嘩。
些か古すぎる話題性にドクオはついていけない。
ジーナといいギコといい、この上司にしてこの部下ありというか。
- 232 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:13:00 ID:ziTWCmRc0
- それよりも気になる事がある。
言い換えれば、嫌な予感。それもとびっきりの。
(;'A`)「それより、5分戦闘って……まさか」
( ´_ゝ`)『ギコと模擬戦闘をやってもらうぜー』
(;>'A`)>「やっぱりぃぃいいいいい!!」
(,,゚Д゚)「何か問題でもあるか?」
(;'A`)「ありまくりですよ!!主に体力差とか技術差とか殺気とか色々!!」
トレーニングも無くいきなりこの大部屋に通されたので何事かと思ったが、何てことはない。
どうやらこのマッドサイエンティストは自分に死ねと仰っているらしい。
(,,゚Д゚)「言い訳は後で聞く。行くぞ」
(;゚A゚)「ひえええええええええ!!死ぬ死ぬ死ぬ!志半ばにしてミンチは嫌だーーーー!!」
( ´_ゝ`)『まーまー、そー固い事言わんとってちょ。ご褒美もあるからさー』
(;゚A゚)「それ何のやる気にもならnうわばばばばマシンガンは反則ーーーー!」
(,,゚Д゚)「狩り場の兎のように逃げろ」ドパパパパパ
-=≡(;゚A゚)「鬼やこの人ーーーー!!鬼以上の鬼畜やーーーー!!」
(´<_` )(アドレナリン分泌量増加、脚力20%上昇、銃弾の回避率78%……)カタカタカタ
( ´_ゝ`)『楽しそうだなー』
(゚A゚;)≡=-「どこがじゃーーーーーーーーーー!!助けてーーーーーーー!!」
.
- 233 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:17:50 ID:ziTWCmRc0
-
数時間後。
たった五分の間で(精神的に)生死の境を彷徨ったドクオがようやく回復し、
会話出来る状態になった所を見計らい、兄者が結果を報告しにきた。
( ´_ゝ`)「だいじょぶ?話せる?」
(ヽ'A`)ゲッソリ「天国行くかと思いました」
( ´_ゝ`)「悪いな、でもデータ取る為だから仕方ないんだよ」
どっこいせ、とドクオの隣に座る兄者。
ギコはこちらに背を向けたまま、次々と銃を転送しては手入れを済ませ、マガジンを装填している。
('A`)「それって、相手がギコさん以外じゃ駄目ってことですか?」
( ´_ゝ`)「そ。何せギコの戦闘力はVIP社内でトップだからな。メーターはギコの数値を元に計算してるんだ」
('A`)「……まあ、そんな予感はしてましたけど」
VIP社に通い続けて幾度となくギコの模擬戦闘を見て来たが、彼が負けた所などついぞお目にかかった事が無い。
彼はロボットとしてのスペックに際限が無い。戦闘型だからか、はたまた別の要因か。
いずれにせよギコが負けるヴィジョンなど想像出来ない。
( ´_ゝ`)「さて、肝心のキミのスペックだけどね……こうなってる」
タブレットを渡され、ドクオは興味津々と覗きこんだ。
『('A`)』 鬱田ドクオ(Dokuo Utuda) 240/500
Age/24 Sex/male Height/187 Weight/71
Level:2
ST(Strength/体力): ●●○○○ 40/100
PO(Power/攻撃力): ●●○○○ 40/100
D(Defense/耐久) :●●○○○ 40/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●○○ 60/100
('A`)「……あの、これって……」
( ´_ゝ`)「レベル2か。上々って所かな」
- 234 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:20:25 ID:ziTWCmRc0
-
▼ここから説明タイム▼
一覧の目安
ST(Strength/体力): 人間の場合は体力、ロボットの場合は最大稼働時間数
PO(Power/攻撃力): 人間の場合はパンチ力やキック力の総合、ロボットの場合は最大出力
D(Defense/耐久) :人間の場合は防御・危機回避能力、ロボットの場合は機体の耐久度も含む
SP(Speed/俊敏性):単純にスピード、俊敏性、柔軟さも含める
T(Technique/技術):重火器や武器を如何に使いこなせるか、知力も含まれる
( ´_ゝ`)「ポテンシャル・メーターの凄い所は、データに驚くほど忠実って所なんだ
対象の年齢に合わせた全国の平均男子のデータと、メーターの数値を元に戦闘力を算出する」
( ´_ゝ`)「因みにドクオの場合は、全国の20代男性の体力検査を元に、ギコとの対戦におけるドクオの戦闘パターンを解析して数値化してる」
( ´_ゝ`)「●1つにつき20点、各項目で100点満点として、総合点を導いてそいつの戦闘力をレベルに分類するんだぜ!」
('A`)「あの、総合点とかレベルの基準っていうのは?」
( ´_ゝ`)ρ「んん、それはこっちの分類表を見てくれ」
Level1:総合点〜150。10代女子になら勝てるレベル
Level2:総合点〜250。街中のチンピラくらいならノせるレベル
Level3:総合点〜350。銃器持っ素人相手に対処出来るレベル。
Level4:総合点〜450。テロリスト集団を制圧できるレベル。
Level5:総合点〜500。特殊装甲戦車、戦闘型ロボット(ギコ)とサシで渡り合えるレベル。
('A`)
( ´_ゝ`)「どうだ?分かりやすいだろう?」
('A`)「いや、分かりやすいですけど……」
('A`)「プロのテロリストより上位にランクインされて、尚且つ特殊装甲戦車と並んでるギコさんの立ち位置って一体……」
( ´_ゝ`)「アイツ以前一人で銀行強盗集団をノしちゃったからなー」
('A`)「それ軽く言っちゃっていいんですか」
( ´_ゝ`)「あ、このデータはギコを基準にしてるからギコより強い奴は測定不能ってことになるかな」
('A`)「そんな奴が出ないことを願ってます、割と心の奥底から」
- 235 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:24:16 ID:ziTWCmRc0
-
(´<_` )『兄者、ちょっといいか』
トレーニングルームからオトジャの声が届いてくる。
兄者はタブレットから視線を上げ、マイクに向かって話しかける。
( ´_ゝ`)「? オトジャか、何か不備でもあったか?」
(´<_` )『いや、俺も昨日アップデートを済ませたし、性能テストをしたいんでな』
(;´_ゝ`)「え”っ」
ガラス越しに兄者がトレーニングルームへ視線を向ける。
ドクオも続いてガラスにへばりついて、様子を伺う。
そこには戦闘用スーツを着てウォーミングアップを済ませるオトジャと、対峙するギコの姿が。
('A`)「アップデートって……」
(;´_ゝ`)「いかんオトジャ、止せ! アップデートから24時間も経ってないし、試運転もまだしてないってのに!」
(´<_` )『この模擬戦闘を試運転ってことにすれば良いだろう?』
兄者の制止をにべもなく切り捨て、既に戦闘準備に入るオトジャ。
慌てふためいて「ギコ!」と呼びかけるも、当の相手は
(,,゚Д゚)『俺は別に構わんぞ、ドクオだけじゃ少し物足りなかった所だ』
などと心なしか、オトジャの挑戦を楽しんでいる様子だ。
二人の様子に兄者は諦めたのか、見てられないとばかりに掌で顔をバシッと乱暴に覆った。
ギコと、オトジャ。お互いに睨み合う。
(´<_` )「用意は良いか、G-1K:0」
(,,゚Д゚)「本気で来い、"お子ちゃま"君」
.
- 236 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:25:09 ID:ziTWCmRc0
- ,_
(´<_` )
ギコの煽り口調に、僅かながら、オトジャの眉間に皺が寄る。
痛いほどの静寂、張り詰めた緊張感がトレーニングルームに広がる。
強化ガラスを挟んだ視聴覚室の二人にも、殺気が肌に突き刺さる。
(´<_` )「――旧式が、いつまでも粋がるなよ」
先に行動を起こしたのは、オトジャの方。
床を軽やかに蹴り、ギコに視線を外さぬまま左右へステップ。
(,,゚Д゚)(以前よりスピードが上がったな)
右か、左か。相手が防御に備えるより早く、オトジャが突貫する!
ジャブと見せかけ、右足を大きく振りかぶる。狙う先はギコの側頭部。
(,,゚Д゚)「ッ」バシッ
すかさずギコが腕で受け止める。更にがら空きになった胴体に、ギコの拳が入る!
(´<_` )「『モード:Protect』作動!」
(,,゚Д゚)「!」
刹那、ギコの拳が不可視の壁に勢いよく弾かれ、パチッと青い光が四散した。
隙が出来た一瞬を狙い、オトジャは蹴りの勢いを殺さず、軸となる左足に更に力を込め――振り切る!
(´<_` )「ラァッ!!」
力任せに足を薙ぐ。あわやギコは頭から地面に突っ込むかと思われた。
だがギコは咄嗟に受け身の体勢を取ることで威力を半減。ローリングし、起き上がる。
様子からみて、大したダメージにならなかった事を悟り、知らず内にオトジャの口から舌打ちが漏れた。
(,,゚Д゚)「脚力が以前より1.25%強化されているな」
(´<_` )「前回足をやられた屈辱、今こそ晴らしてやると誓ったんでな」
('A`)(――!)
オトジャはすかさずバックステップを取る。
彼が先程まで立っていた場所には、地面に数ミリほどの陥没が出来ていた。
- 237 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:32:38 ID:ziTWCmRc0
- ちょいと休憩。
時間が限りなく少ないので、こまめに顔を出して更新はするけどぶつ切りになりそうな予感。
- 238 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:42:21 ID:EmYrtg/c0
- 支援
待ってるよ
- 239 :名も無きAAのようです:2012/11/13(火) 23:44:50 ID:UnND7WXc0
- ギコVS弟者とは…なんという胸熱…!!
続き超待ってる!
- 240 :ながらで頑張る:2012/11/14(水) 00:07:10 ID:XYOw/L.20
-
(´<_` )「一撃入れられた感想はどうだ、旧式」
(,,゚Д゚)「中々どうして良いキックじゃないか、キッズ」
今度はギコが先制する。
ロボットらしからぬ身軽なフットワークでオトジャに正面から肉薄。
かと思えばすぐさま姿を消す。否、しゃがみこんでいた。
(´<_`;)「!」
(,,゚Д゚)「フ ン ッ !!」
姿が消えた事で一瞬の判断が遅れ、左足を両腕でホールドされた。
ブォン、と空気が一際大きく唸り、力任せに放り投げられる。
(´<_`;)「このっ馬鹿力!」
空中では隙だらけ。完全に防御が取れなくなる。
ギコが両脚をバネにして跳び上がった。間違いなく空中で勝負を仕掛ける気だ。
オトジャは小さく毒づき、全身を丸める。
狙いを定め、両足を伸ばす。
(,,゚Д゚)「!」
(´<_` )「野郎とハグなんざお断りだ―― ね ッ !!」
_,
(,,-Д゚)「ッグ!」
ギコの伸びた手の中から寸での所ですり抜ける。
そしてありったけの力をこめてギコの肩を蹴り、猫のように着地。
ギコも受け身を取り着地、地面を滑り、床が摩擦音を立てる。
(´<_` )「地球投げでもかます気だったんだろうが……俺には通用しないぞ」
ジロリ、とオトジャの細められた双眸が開かれた。
好戦的な態度――敵対心を含んだ目だ。
- 241 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:14:07 ID:XYOw/L.20
- (,,゚Д゚)「…………ふむ、フィジカル、主に下半身を最大限にまで上げてきたようだな」
ギコはおもむろに両手を突きだす。
青白い光が右手に収束し、形を為していく。
(,,゚Д゚)「――だが無意味だ」
重機関銃ゼネラル・エレクトリック M134。通称"ミニガン" 。
連射速度は6000発/分。元はヘリコプターや固定翼機に搭載するシロモノだ。
しかしロボットのギコにかかれば、総重量50kgを超えるガトリング砲も両手で抱えるマシンガンと化す!
(´<_`;)「糞ッ!」
慈悲無き一斉掃射。
やむなくオトジャは退避、防御に回る。
銃弾がオトジャの足先を掠め、地面を抉る。オトジャを近寄らせようともしない。
(;'A`)「……大丈夫なんですか?アレ」
(;´_ゝ`)「モナーがキレそうだなー。修繕費がどうのって」
銃弾の一つがオトジャの頬スレスレを横切った。
とめどなく襲い来る弾丸をオトジャは適確に一つ一つ避けていく。
しかし捌く量が普通のマシンガンに比べれば段違いだ。
壁際に追い詰められたオトジャに、大量の弾丸が飛来する!
(´<_` )「『Protect』!」
瞬間、またも強烈な青い光と、静電気が爆ぜるような音。
それと共に弾丸が停止。スローモーションのように弾丸が回転し、威力が殺されていく。
数瞬後、カランカランと乾いた音を上げ、薬莢が転がった。
まるで見えない壁にぶつかったかのよう。明らかに人間が為せる業ではない。
刹那的ではあるが、六角形の連なるバリアーのような物が見えた。
('A`)(やっぱり、あの人も……)
無感動な抑揚のない口調、ほとんど動かない表情筋、そして二人の会話。
ようやくドクオの中で合点がいった。
- 242 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:17:46 ID:XYOw/L.20
- ('A`)「あの、兄者さん。つかぬことをお聞きしますが……」
(;´_ゝ`)「ん?どした?」
ハラハラと成り行きを見守る兄者。オトジャが余程心配なようだ。
口に出すか否か、ドクオは躊躇った。もし彼等にとって触れられたくない話題だとしたら――?
(;'A`)(もし、二人にとって地雷だったとしたら……俺、受け止めきれるかな?)
(;'A`)(そもそも仮説なわけだし。言うだけ野暮って奴かも……)
(,,゚Д゚)「……」カチッカチッ
(´<_` )「もう弾切れか?計画性もなく使うからだ、馬鹿め」
そうこうしている内に、ギコのミニガンが沈黙する。
オトジャの不可視の壁により、弾は全て威力を相殺され、虚しく床に転がっていた。
せせら笑うオトジャ。ギコはミニガンを両手に抱えたまま肩を竦める。
(´<_` )「今度はこっちの番――」
クラウチングスタートの体勢で、体全体をバネにし、特攻。
随所に青いバリアを巡らせ、僅か5歩でギコに肉薄。
あと一歩で鼻と鼻が衝突するかと思われた時、今度はオトジャが視界から消える。
大股で構えていたギコの足の間をすり抜け、瞬時に背後に立ちまわって見せる。
(´<_`#)「喰らえ、ポンコツ――――!」
バリアを張った拳が、死角となったギコの後頭部へと突かれる――!
パシッ。
(´<_`;)「―――― !?」
(,,゚Д゚)「ふむ」
- 243 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:19:56 ID:Mg3IPApk0
- 熱いバトルだ支援
- 244 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:33:01 ID:XYOw/L.20
-
阻まれた。死角となった角度から打ち込まれた拳を、こうも易々と。
バリアがミニガンの銃身と接触し、弾かれたことで、拳の軌道が逸れた。
故に、オトジャの体もバランスを失う。
(´<_`;)「しまっ……!」
(,,゚Д゚)「教えてやろう、キッズ。銃は撃つためだけにあるんじゃないのさ」
言うや、ギコはミニガンを振りかざし――
オトジャの鳩尾へと、銃身を横薙ぎに叩 き こ む ! !
( <_ ;)「ガッァ――――!」
(,,゚Д゚)「それに分かったことがもう1つ」
吹っ飛ばされるオトジャの体。その終着点を見定め、ギコはミニガンを放り捨て、先回りする。
壁に追突する直前に壁とオトジャの間に滑りこみ、羽交い締めの姿勢キャッチ。
オトジャの体を部分的に覆うバリアには、少しだが亀裂が入っていた。
(,,゚Д゚)「ステルスの展開式電磁パネルバリアか。考えたな」
( <_ ;)「は、離せッ……!糞オヤジッ……!」
オトジャは抵抗するものの、ギコが接触している部分にバリアが発生することはない。
つまり、第三者と接触し続けている場所にバリアを張ることが出来ないのだ。
(,,゚Д゚)「離せ、と言ったな」
( <_ ;)「何度も言わせんなモーロクッ!ロリコン!リョナぺド野郎!ミニ・ターミネーター!」
('A`)(酷い言われようだ)
(,,゚Д゚)「そうか、そこまで言うなら離してやろう」
(,,゚Д゚)「ただし、頭から突っ込んでやる」
( <_ ;)「だっ―――――!」
その直後、見事な締めのスープレックスが決められた。
.
- 245 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:46:11 ID:VVDNpn2w0
- オトジャひでぇww
支援
- 246 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 00:47:16 ID:XYOw/L.20
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
Ω
(´<_` )「畜生、悔しい」
(,,゚Д゚)「俺に勝つなど5年早い」
(;'A`)「よくタンコブ一つで終わりましたね……」
(;´_ゝ`)「だーから試運転済ませるまで止せ、って言ったのに……」
模擬戦闘終了後、オトジャは速やかにホスピタルルームに担ぎ込まれた。
幸い本人はタンコブと痣を作った程度でピンピンしている。
寧ろ何故あんな攻撃を受けてピンピンしていられるのかと突っ込みたい。
('A`)(考えられるとすれば、やっぱり……)
自問自答はとっくに済ませても、答え合わせをすることに躊躇を覚える。
ギコのように、そっとしておくべき過去もある。
第三者である自分ごときがほじくり返してよいものか……ただ、判断に迷った。
( ´_ゝ`)「ま、結果は出たけどね。見る?」
タブレットを渡され、オトジャは無表情でそれを確認する。
野次馬根性で、ついついドクオも覗き見た。
『(´<_` )』 流石オトジャ(Otoja Sasuga) 380/500
Age/18 Sex/male Height/179 Weight/130
Level:4
ST(Strength/体力): ●●●●○ 80/100
PO(Power/攻撃力): ●●●○○ 60/100
D(Defense/耐久) :●●●●● 100/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●●○ 80/100
('A`)
('A`)「うん、予想はしてたけど、とりあえず5・6箇所ツッコませて」
(,,゚Д゚)「どうした急に」
- 247 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 01:02:35 ID:XYOw/L.20
- かくかくしかじかシカクイムーブというわけで。
ドクオの切れ味鋭いツッコミを交えた推論を受け、兄者はあれま、と目を丸くした。
( ´_ゝ`)「あー、そういやドクオには説明してなかったね」
あはは、と兄者は悪びれることなく頭を掻いた。
オトジャはタンコブを擦ったまま無表情を貫き通している。
二人はとてもよく似ていた。――まるで鏡に映したように。
なのに二人は全く似ていない――まるで造られた様に。
( ´_ゝ`)「オトジャは確かに人間じゃないね、約6割は。そこんとこ言わなかったのは反省してる」
(´<_` )「どうせ後で分かるのに、どうして兄者はああもしょうもない嘘を吐くんだ」
( ´_ゝ`)「だって説明面倒くさくて……」
('A`)「何でアンタ科学者やってんですか」
兄者はきちんとした血の通った人間である。
しかし、双子の兄弟である筈のオトジャは違う。兄曰く、「約6割は人間ではない」。
その意味が示す事実とは、
( ´_ゝ`)「……そういえばドクオ、ご褒美がまだだったな。付いてきな」
('A`)「え、でも」
( ´_ゝ`)「キミに見せたいものがある、オトジャについてもそっちで教えよう」
ほらこっち、と促され、有無をいわさず兄者は歩き出す。
ドクオは付いていくかどうか迷い、ギコとオトジャへと振り向いた。
(´<_` )「付いていけば良いんじゃないか?何を迷ってるんだ」
(;'A`)「……オトジャの事なんだろ?何の関係もない俺が、聞いていいのかなって」
(´<_` )「俺は一向に構わない。兄者が良いというならな」
嫌味でも遠回しな言葉選びでもなく、子供が発するような実直な台詞を言い放つ。
彼は彼自身について全くといっていいほど頓着が無い。
ドクオは惑う足を無理に動かし、兄者の後を追った。
- 248 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 01:03:31 ID:XYOw/L.20
- 今晩はここまで。
お付き合い有難うございました。
- 249 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 01:16:11 ID:rvZsC1fk0
- 乙乙
気になるところで……!
兄弟18なのか若いなと思ったがジーナの例もあるし才能ある人が早くに職に就くのは普通なんかな
- 250 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 02:51:04 ID:itn3GjpY0
- 乙
母者だったら生身でギコを超えられるはず
- 251 :名も無きAAのようです:2012/11/14(水) 12:26:21 ID:aGIgiRu.0
- おつん
ギコさんつえー
- 252 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:27:15 ID:xAisExpc0
- またもちょびっとずつ投下
- 253 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:29:02 ID:xAisExpc0
- ……………………
…………
……
…
( ´_ゝ`)「えーと、30487602054……」
長く続く、冷たい廊下を歩く。
人気はほぼ皆無で、道の端に造られた溝の上を、パネルと銃を搭載した台が脇をすり抜ける。
兄者は幾つかの台を捕まえて何やら暗証番号を打ちこみ、前へ。
ドクオは奇妙なものを見る面もちでそれを見送った。
('A`)「今のって……」
( ´_ゝ`)「俺特製の特殊セキュリティー。関係者の許可なく誰かが立ち入ろうとすればレーザー銃で瞬殺されるぞー」
('A`)(二重の意味でおっかねえ)
( ´_ゝ`)「ここら辺の通路、綺麗だろ?先週、道に迷ったギコに全部破壊されて修復したばっかりなんだよねー」アッハッハ
('A`)(訂正、五重くらいの意味でおっかねえ)
聞く所によると、VIP社のオフィスを含めたラボの規模はトウキョウドーム3つ分ほどらしい。
自分の住むVIP市の地下にこんな施設があったとは驚きである。
反重力運動ブロックに乗って、ようやくラボの目の前に辿り着く。
( ´_ゝ`)「俺だ、開けてくれ」
兄者のたった一言で、重々しい鋼鉄製の自動ドアが開かれる。
レーザー銃を搭載した監視カメラがドクオを睨んだが、「客人だ」の一言で元の責務に戻った。
( ´_ゝ`)「俺達のラボだ。ゆっくりしていってくれ」
(;*'A`)「お、おおおーーーー……」
.
- 254 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:31:06 ID:xAisExpc0
-
ラボ内に一歩入り込めば、目の前に広がるは最新テクノロジーの極楽。
巨大なカプセルに試験管の列、そこら中を試作の道具が動いたり走ったり飛んだりと作動している。
白衣を着こなした何人もの学者たちが慌ただしく作業しているではないか。
「こっちの書類早くスキャンして!」
「××製品の治験データファイル転送を確認!」
「はい、VIP研究チームです……はい、誤作動ですね、承りました。そちらに研究チームを派遣します」
「チーフ!こちらに了承確認の判子お願いします!」
(;'A`)「ひえ〜〜〜〜……皆忙しそうッスね」
「兄者さん、こちらを。社長がバリアネット範囲を横堀社まで広げて欲しいそうです」
( ´_ゝ`)「ほいほい、って対侵入者用自動トラップまで付けるつもりかよ。お嬢様は戦争でもおっ始める気か?」
「さあ、何分早急にとのことでして」
( ´_ゝ`)「オーライ、この件はオトジャに回してくれ。ホスピタルルームに居る筈だ」
「了解です。それと別件で依頼された薬品の調査ですけど、毒物反応が……」
( ´_ゝ`)「あーこれね、最近アシが付きにくいってんで裏で出回ってるらしいんだけど、
どうにもこないだ発表されたニシキヘビの突然変異種から抽出される成分が一部混入されてる可能性が……」
あっという間に同僚の白衣に囲まれるや、兄者の表情が仕事スイッチの入ったそれになる。
いつもなら緩みきったへらへら笑いが消え、真剣に満ちた横顔が伺える。
('A`)(天職って奴かな)
お手透きである。戻って来るまで退屈だ。
その間、ドクオはお上りさんよろしく周囲を忙しなく見回した。
('A`)(ん?あれって……)
その時、視界の隅にちらっと見慣れた物が見えた気がした。
しかしそれが何かを凝視する間もなく、兄者が戻って来る。
( ´_ゝ`)「お待たせ、……どうかしたかい?」
('A`)「あ、いえ……」
- 255 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:35:07 ID:9dI6cZaY0
- うわーい!!支援!!
- 256 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:35:50 ID:xAisExpc0
-
( ´_ゝ`)「それで、何の話だったかな・・・そうそう、VIP社のもう一つの売りは製品会社とかの『バックアップ』とか『スポンサー』だからな。
多分、非戦闘要員の7割はここで働いてる」
('A`)「な、7割……」
( ´_ゝ`)「少数だけど戦闘要員もいるぜ。さ、キミはこっちだ」
兄者に襟首を掴まれ(よっぽど掴みやすいらしい)、目的地へと引きずられる。
そこは白衣の数も少なく、ずらりとひしめき合う、人一人は丸々と入れそうな巨大な試験管の群れ。
透明な培養液が注がれ、横のメーターがひっきりなしに数値を挙げて行く。
('A`)
('A`)「……あ」
その、試験管の一つに。
川 - ) ゴボッ……
羊水の中で眠る胎児のように丸まって。
傷を癒しながら、彼女は、静かに眠っていた。
('A`)「クール、さん……」
フラ、とドクオは試験管に近寄る。
絡みあうケーブルの隙間を踏み超えて、ガラスにそっと触れた。
冷たいはずなのに、じわりと浸み込む温もりを掌に感じた。
クールの体温かもしれない、と錯覚させた。
川 - ) コポッ……
.
- 257 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:37:50 ID:xAisExpc0
-
( ´_ゝ`)「本当は全快するまで会わせるな、って社長に言われてたんだけどネ」
ドクオの隣に兄者が並び、試験管を見上げた。
優しい色を放つ培養液の中で、クールの黒い髪がたゆたう。
( ´,_ゝ`)「キミは俺の目から見てよく頑張ってたし、俺からのサービスってやつさ」
('A`)「兄者さん……有難うございます」
兄者はニヤッと悪戯少年のように笑う。
ピースサインをぶいぶい言わせ、それに、とクールへ目を向けた。
( ´_ゝ`)「この子も、キミがお見舞いに来てくれて嬉しいんじゃないかな」
川 - ) コポコポ……
(*'A`)ゞテレテレ「そ、そうっすかね?」
川 ー ) コポッ……
( ´_ゝ`)「……さて、うちの弟のことだったな」
回転椅子が滑るように現れ、兄者の尻を掻っ攫う。
ドクオの背後からももう1脚接近し、座るかどうか逡巡したドクオに膝カックンを食らわせ、無理矢理座らせた。
兄者は手を組み、どこから話そうかと口ごもる。
( ´_ゝ`)「ドクオ、キミの見解はこうだったね。『もしやオトジャはロボットではないか』?」
問いに対しドクオは頷く。
彼が初めに疑問を抱いたのは、初対面の時のこと。
オトジャは地下の通路で、置時計もなく、腕時計も装着せず、しかし正確に時間を言い当ててみせた。
(※>>158を参照)
当時はVIP社のスケールにビビりすぎて聞き流していた。
ドクオがその事実を思い出し、確信を得たのは模擬戦闘の時だ。
常人離れした動き、蹴り一つで床を陥没するなど人間の体重では不可能だ。
更にほぼノーモーションでバリアを展開してみせたこと、なによりもギコの攻撃を受けてタンコブ一つで済む等、人間業ではない。
- 258 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:39:30 ID:xAisExpc0
-
('A`)「決定的だったのは、オトジャさんのプロフィールでしたけどね」
( ´_ゝ`)「確かに、あれを見りゃ普通の人は目を疑うだろうよ」
兄者が指を鳴らすと、コーヒーが運ばれてきた。
肘をつつかれ、視線をやると、ドクオの元にもマグカップが一つ。
遠慮なく飲め、ということらしい。
( ´_ゝ`)「ま、隠すことでもなし、俺もキミの事は気に入ってるんだ。ちょいと昔話でもしてやろうか」
体重を前方に傾けたことで、ぎ、と椅子が唸った。
昔を懐かしむような、遠い目だ。
ギコの物悲しげな瞳とは違う、過去を慈しむ人間の色だ。
( ´_ゝ`)「俺とオトジャは確かに双子だ。俺とアイツは同じ母親の胎内にいた。双子として、生まれる筈だったんだ」
('A`)「――筈、だった?」
……………………
………………
…………
……
28年前、流石研究グループ代表取締、流石父者は二人の子の出産を知った。
まだまだ若い研究者は喜んだ。自分と同じDNAを持つ初子が、二人も。
父親になった男は研究もそっちのけで車を走らせ、病院に向かった。
妻の待つ病院へ辿り着き、医者の制止も聞かず分娩室の扉を開けた瞬間。
彼を待ち受けたのは歓声でなく、ナースの絹を裂くような悲鳴だった。
何人もの女の黄色い声を押し退け、父親は妻と子供たちの元へ近づいた。
愛しい妻は健在だった。その傍らには子供もちゃんと、いた。
可愛らしい寝顔を見せる長子と、カプセルの中で培養液に浸かった、パーツだけの次男が。
.
- 259 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:42:13 ID:xAisExpc0
-
妻は泣きこそしなかったが、夫に対して何度も謝り続けた。
夫は妻を責めることなく、長子には兄者、と名付けた。
生まれる筈だった次男を土に埋める行為は忍びなく、培養液に漬けられたまま、研究グループに引き取られた。
長子はすくすくと育った。
早い段階で言語を覚え、小学生の時点で大学を卒業するレベルの教養を培っていた。
知能指数は父親譲り、しかし幸か不幸か母の丈夫さを受け継ぐことは無かった。
そんな彼には、幼い頃にのみ発揮した、特殊な能力があった。
『――――者、兄者』
(;´_ゝ`)『しーっ、誰かに聞こえたらどうすんのさ!』
『だいじょうぶ、ダレにも俺達の話なんか聞けやしないさ』
兄者が物心ついた時から、彼は不思議な声と対話する事が出来た。
父の仕事を手伝う傍ら、カプセルを内緒で持ち出し、内臓のパーツと会話していた。
頭に直接語りかけてくる声に、兄者が恐怖を抱くことはなかった。
俗世と隔離されて生きてきた兄者にとって、内臓が喋って来る事が異常だなどと思わなかったのだ。
(*´_ゝ`)『そうだ、ビッグニュース!俺、ついにロボット工学の博士号を取ったんだよ!』
『すごいじゃないか!兄者はまだ10歳になったばかりだろう!?』
(*´_ゝ`)『へへーん、もっと誉めてくれたっていいんだぜ?』
小学校には通わず、友達もいなかった兄者にとって、研究道具と声だけが孤独を癒してくれた。
親譲りの頭の回転、恵まれた環境、生まれ持った才能、溢れ出る節操無き知識欲と創作意欲。
それら全てが揃って、兄者は異例の最年少博士号をモノにしたのだ。
『これで兄者も「しゃかいじん」の仲間入りだな!色んな研究所から引っ張りだこだろう!?』
(*´_ゝ`)『うん、けど俺、そんなのどうだっていいんだ!お誘いも全部断って来たの!』
『ええ!?そんな、じゃあ何のために……』
(*´_ゝ`)『真っ先にやろうって決めたことがあるんだ!その為に博士号も資格も沢山とったんだよ!』
パーツに向かって、幼い兄者はニッコリと笑いかけた。
芝居かかった口調で、彼は自信満々に宣言した。
(*´_ゝ`)『「弟」よ、お前を、人間にしてやろう!』
.
- 260 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:44:46 ID:w21PbVck0
- しえ
- 261 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:46:01 ID:xAisExpc0
-
…………………………
( ´_ゝ`)「最初は父者も母者も猛反対したよ。当時サイボーグは倫理的な観点とリスクの高さで法律的にも禁止されてたからね」
だが兄者も負けじと反発した。
我が道理を貫き通す子供に、倫理も法律も関係無かった。
同年代の友達がいない寂しさと、家族の温もりを求めた幼い天才科学者は、
弟の成り損ないを人間にしてやることで、埋めようとしたのだ。
( ;_ゝ;)『ちちじゃとははじゃの分からず屋!もういい、おれ一人でやる!!』
少年はカプセルに入った弟と、自分で稼いだなけなしの資金だけ詰めて家出した。
難しい手術には莫大な金と環境の整った施設を要する。
サイボーグなどもっての他。大人たちは誰もまともに取り合おうとしなかった。
あれほど勧誘してきた研究施設のチームも、少年の夢物語についていけやしないと匙を投げた。
( ;_ゝ;)『ごめんね、ごめんね。お前を絶対人間にしてやるって決めたのに……』
『兄者、もう良いんだよ。俺、すごく嬉しいよ。だから泣かないで』
公園で夜を明かし、遊具代わりの土管の中で兄者はカプセルを抱きしめた。
両親たちに捕まってしまえば、手術は出来ない。もう二度と弟に会えないかもしれない。
幾ら天才といえど、世間を知らない子供にとっては厳しすぎる現実があった。
( ;_ゝ;)『俺がもっと大きかったら、もっとお金があれば、手術出来るのに……なのに……』
『………………兄者……』
( ;_ゝ;)『理論上は完璧なんだ!成功した前例だってある!後は手術だけなんだ!なのに、なのに!何で誰も聞いてくれないんだ!』
『おにいさん、なにしてるの?』
けれども、この時ばかりは、天は兄弟に味方した。
土管の入り口を、ひょっこりと覗いた小さな頭が、鈴のような声を出した。
爪゚ー゚)『ジーナがおはなし、きいてあげようか?』
.
- 262 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:48:46 ID:9dI6cZaY0
- 兄者…
- 263 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:49:57 ID:xAisExpc0
-
当時4歳のジーナの援助を得て、名も無い次男は手術を受ける事ができた。
脳味噌、右目、鼻、舌、左耳、脊髄、骨盤、主要の内臓だけだった弟は、
特殊合金の金属骨格と人工筋肉、インプラントで出来た肉体を得た。
『目を開けられるか?』
『目を開ける?どう操作すればいいんだ?』
『簡単よ、瞼を開ければいいの』
『本当に簡単に言ってくれるな……こうか?』
『やった!成功だ!』(*´_ゝ`)(゚ー゚爪『鏡、貸そうか?』
◎(´<_` )『これが……俺……?』
( ´∀`)『突っ込むのは野暮だと思うけど、何故同じ顔にしたんだモナ?』
(*´_ゝ`)『あったりまえだろ!俺達は双子だぜ!?』
爪゚ー゚)『でも、こっちのが「おとこまえ」ね』
(*´_ゝ`)『これからよろしくな、オトジャ!』
(´<_` )『? オト……それは何の名称だ?』
(*´_ゝ`)『お前の名前だよ、な・ま・え!今日からお前は俺の弟、オトジャだ!』
その頃になると、オトジャはもうテレパシー能力を消失していた。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
(;'A`)「サイボーグ……機械らしさなんて全くないのに……」
( ´_ゝ`)「な?嘘は言ってなかったろ?俺達は双子の兄弟で、れっきとした血の繋がりもある。アイツには少量だけど、本物の血も通ってる」
体の殆どは人工物だけど、と兄者は再び笑ってみせた。
兄者の暴露に、ドクオは開いた口が塞がらない。
- 264 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 00:56:36 ID:xAisExpc0
- 普段おチャラけた目の前の男が、天才ロボット工学の最年少博士号取得者。
流石研究グループといえば、カリスマ開発者ばかりを輩出してきた生体研究チームだ。
十年ほど前にある事件があり表舞台から姿を消したが、その創立者の息子だったとは。
('A`)「あれ?じゃあもしかしてここで働いてるのって……」
( ´_ゝ`)「早い話が恩返しだね。利害一致とはいえ、とてつもなくデカい借りを作っちゃったわけだし」
あのジーナという少女、これを見越しての青田買いだったとしたら、当時4歳にして既に侮れない。
寧ろ、何かの考えなしに他人に近づくような彼女ではないだろう。
その旨を漏らすと、兄者も「違いない」と笑って同意した。
( ´_ゝ`)「でも、社長には感謝してるよ。社長からの援助がなけりゃ、俺はオトジャを人間に出来ないままだったから」
('A`)「……それは、俺もです。ジーナさんがクールさんを引き取ってくれたから、俺もここに居られる。彼女を守れる」
水中で眠るクールを見る。
安らかな寝顔に、ドクオは活力を与えられたような気がした。
('A`)「それに、ギコさんや兄者さんやオトジャさんとも知り合えたし」
(*´_ゝ`)c∪「あっはっは、そうだね。我々の数奇で素敵な出会いに乾杯!」
<プシュ
兄者が豪快に笑い、ドクオもつられて笑んだ。
その時、自動ドアが開く。振り返ると、ギコとオトジャがいた。
(,,゚Д゚)
(´<_` )
(*´_ゝ`)ノ「おーい、こっちこ、っち…………」
上機嫌に兄者は手を振ろうとし、不意に表情を消した。
なにやら乾いた空気を察し、ドクオの咥内がざらつく。
( ´_ゝ`)「……何かあったか?」
「緊急事態でしてよ、Dr流石」
ラボ内に放送が掛かる。少女に似つかわしくない大人びて冷めきった声。
(;'A`)「ジーナさ……社長!?」
.
- 265 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:00:36 ID:yGHbstQg0
- 支援
- 266 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:01:39 ID:xAisExpc0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
事件発生から約20分前のこと。
黒いリムジンがVIP市のコンクリートジャングルを我が物顔で突っ切っていく。
車内では少女――ジーナが涼やかな表情で、すらりと伸びた足を組んでいた。
爪゚ー゚)「それで……"通達"が届いたのは何時ごろですの?」
(;//‰ ゚)「さ、昨夜のことです。始末が出来ないのであればお前達の首を覚悟して貰う、と……」
(;∵)「お、俺はコイツ等の命令に従ったまでだ!頼む、どうにかしてくれ!」
(#//‰ ゚)「貴様、計画犯の癖して私達に罪を擦りつけるか!汚い奴め!」
(#∵)「それはアンタも同じだろう!実行せねば私をリストラすると強請ったのはどこの誰だ!」
向かい側で必死に我が身の安全を懇意する二人の中年。
それぞれが横堀会社の責任者と、工場の社長だ。
今回、ジーナとの取引のため、特別に同乗させたのだ。
無論いつものように、彼女の傍にはモナーが控えている。
爪゚ー゚)「貴方達の安全は、社の信用にかけて必ず保証いたします。つきまして、今回の謝礼ですが……」
(#//‰ ゚)「まだボろうってのか、ええ!?」
(;∵)「頼む、これ以上はもう払えない!裁判が控えてるっていうのに……」
爪゚ー゚)「ご安心くださいませ。私達が求めるのは金では御座いませんわ」
くすくすとジーナは抑えた笑いを漏らす。
醜いやり取りすら、彼女は笑顔で受け流してしまう。
ならば何なのだと構える小汚い中年二人に、ジーナは眼光を鋭くした。
爪゚ー゚)「私は情報が欲しいのですよ。貴方達の親玉――GICグループ日本・ハカタSoGo支社についてのね」
トントン、と指で膝を叩く。
率直に言ってしまえば、ジーナの狙いは最初からハカタSoGoであった。
事件の裏には黒幕がいる。黒幕を更に操るのは強大な権力だ。
今回は偶然、『処理屋』のバックに横堀社があり、横堀社のボスが同じGICグループの支社であったこと。
ジーナにとってはそれだけで充分だ。尻尾を掴んでしまえば、後は喉元にかじりつくのみ。
- 267 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:10:30 ID:xAisExpc0
- だが、喉笛に噛みつけばお終いだが、それにもちゃんとした準備がいる。
計画性の無い狩りは自分の生命さえ危険に晒しかねない。
博打的な行為はジーナの信条に反する。
綿密に計画を立て、根回しをし、トラップを仕掛け、獲物が罠にかかるのを待つ。
今は罠に掛けるための餌を用意する段階だ。
人には必ず弱みがある。組織も然り。それが大きければ大きいほど、その裏には蠢く闇がある。
爪゚ー゚)(用意周到な点からして、相手は常習犯ね)
今回の事件が露呈したことで、ハカタの連中も焦っていることだろう。
勢力ではハカタの方が上だ。今に事実を揉み消しにかかるだろう。
だからこそ、今が相手の弁慶の泣き所を蹴り飛ばすチャンスだ。
ライバルを蹴落とし、会社を吸収。シェアの独占の拡大。VIP社がのし上がる好機。
逃してたまるものか。
爪゚ー゚)「どんな些細な事でもよろしくてよ、マユツバ程度の噂だとか、ハカタ内での派閥抗争だとか……」
(;//‰ ゚)
(;∵)
中年二人は顔を見合わせた。少女の真意を汲み取れぬが故に。
元々見放されたも同然だが、踏み込みも度が過ぎれば我が身に何が起こるか馬鹿でも分かる。
爪゚ー゚)「お願いします。――正義の代表として、善良な貴方がたを罠にはめたハカタを、許せないのです」
心にもない事をジーナは平然と言ってのける。
モナーは噴き出したいのを堪え、目尻を拭った。
中年達はまたも顔を見合わせ、まるで人の目を気にするように周囲を見回し、低い声を出した。
(;//‰ ゚)「ここだけの話ですが……ハカタではマフィアとSoGoが結託し始めたとの噂を耳にしました」
爪゚ー゚)「ほう!続けて下さいませ」
(;//‰ ゚)「表向きではSoGoは貿易や金属加工の事業に着手していますが……裏では新たに麻薬の斡旋を敷くとかどうとか……」
(;∵)「そ、それなら俺も聞いたことがある。マフィア達が抗争に使う銃器もこっそり製造してるとか……」
.
- 268 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:23:34 ID:xAisExpc0
-
爪゚ー゚)「ふむ……」
ジーナは二人から引き出した情報を整理し、顎に手をやりつつ、思惟に浸る。
ハカタは元々マフィア勢力の強い地方で知られている。
街中にロケットランチャーが放置されているような修羅の国だ。
二人の話も、あながち与太話とは言いきれない。
爪゚ー゚)「フォックス叔父様ならやりそうね……」
なにより、ハカタSoGo社の社長は、ジーナの叔父・フォックスだ。
ジーナは彼の性格をよく知っている。合理的で利己的、陰でブラック企業の父とも揶揄されている。
銃器を取り扱っていた時期もあり、一時は傭兵業も開拓しようと目論んでいた男だ。
有り体に言えば、戦争大好きなイカレ野郎。
爪゚ー゚)「思ったよりこれは根が深いことになりそう」
喧嘩っ早く粘着質で腹黒いあの男のことだ、自分によく似た気質のジーナの存在には気づいているだろう。
最悪の場合、全面戦争もやむなし。
早ければ今日にでも、刺客を送って来るやもしれぬ。
いや、今まで来なかったのが奇妙なくらいだ。
爪゚ー゚)「……今日はこれまでにしておきましょう。念の為、会社までお送りしますわ」
(;∵)「あ、は、はい」
三人の対談の内容をメモし、モナーは何気なく外の景色を見やる。その時だ。
(;´∀`)!
ギラリ、一つのビルの屋上で輝く妖しい光。
咄嗟にモナーは声を鋭くさせた。
(;´∀`)「伏せてッ!!」
(;∵)爪゚ー゚)(;//‰ ゚) !
.
- 269 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:30:28 ID:xAisExpc0
- 眠気に負けた。いったん休憩。
- 270 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 01:39:45 ID:AuZb6r4M0
- 一旦乙
ジーナ社長やり手すぎる…素敵
- 271 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 02:53:18 ID:w21PbVck0
- まってるぜい
- 272 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 13:16:31 ID:qR7aRjx6O
- まだかな
- 273 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 17:09:32 ID:gzPph4kI0
- 【予告】夜10時頃再開。
- 274 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 17:20:48 ID:eX8RQUew0
- よしきた
楽しみにしてる
- 275 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 19:57:38 ID:yD8hL5/A0
- 一気読み
おもしろいな
- 276 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:03:11 ID:xAisExpc0
- ながらで頑張る。
いよいよ戦闘パート突入。
- 277 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:08:02 ID:xAisExpc0
-
モナーがジーナの華奢な体を突き飛ばす。
シートに二人の体が折り重なって沈んだ直後、魔弾が窓ガラスを突き破った。
硝子が弾け飛び、モナーの背中に降り注ぐ。
中年二人は情けない声を漏らし頭を庇う。
(;>.<)(;//‰ <)「ひぃいい〜〜〜〜!」
爪;゚д゚)「運転手、出して!」
前方の運転手へ振り返り、あらん限りの声を張り上げる。
しかし反応はない。この距離で聞こえない訳がないのに、返事ひとつしない。
「ちょっと、」と身を乗り出しかけ、ハッとして体を強張らせる。
(゚ )「……」
爪;゚―゚)「ッ、貴方まさか……!」
(;´∀`)「お嬢様ッ!!」
運転手はハンドルの代わりに拳銃を握っていた。
照準がジーナの額に当てられた直後、モナーの手がジーナの肩を引く。
1テンポ遅れて銃声が響き、後部座席のリアウィンドウを砕いた。
爪;゚ー<)「既に"送り込まれていた"って事ね……ッ!全く脱帽だわ、叔父様!」
ジーナの体を片腕で抱きとめ、すかさず執事の手がドアノブに伸びる。
外へ逃げるかと思われたが、ドアは運転手によって既にロック済み。
ならばと、相手が再び引鉄を引く直前、座席の下へと手を突っ込む。
( ゚ ゚)つr=-「!」
(;´Д`)つr=-「喰らえッ!」
発砲音が同時に車内に響く。
モナーのリボルバーは適確に運転手の眉間を貫き、相手は軽くのけ反った直後、沈黙した。
- 278 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:16:24 ID:JALvKnO.0
- 支援するぞ
- 279 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:26:36 ID:xAisExpc0
-
(;´∀`)「ぐっ……!」
爪;>ー<)「きゃっ……」
しかし。
一瞬遅れて、モナーのワイシャツが裂け、右腕にバッと紅い大輪の華が咲く。
鮮烈な赤の飛沫がジーナの頬にもかかった。
モナーは堪らず銃を取り落とす。
咄嗟に傷口へと一瞬伸ばしかけ、しかしその手でジーナの顔に掛かった血を拭う。
(;´∀`)「申し訳ありません……私の不注意で、お嬢様の顔を汚してしまって……」
爪;゚д゚)ノそ「馬鹿な事を言ってる場合!?手当てするわよ!」
モナーの手を弾き、ジーナは何の迷いもなくオーダーメイドのショールで止血する。
中年二人はといえば、完全に縮こまり、理性が働く状態ではない。
ジーナは車内を這って進み、運転席へ乗り出す。
( )
運転手に変装したロボットは頭部を撃ち抜かれ、完全停止していた。
機体から何本ものコードが伸びており、リムジンのブレインに繋がれている。
恐らくシステムに直接介入して車のロックを強制的に入れたのだ。
これで脱出は不可能というわけである。
爪;゚ー゚)「チッ、やってくれるじゃないの」
さりとて彼女に案がないわけでもない。
車のロックを掛けられただけで狼狽える程度では、1000人を束ねる社長など務まらない。
ジーナは後方で震えている中年二人へと振り返る。
爪゚ー゚)「お二人さん、こちらへ来て下さらないかしら。至急お願いしたいことがあるの」
(;∵)「じょじょじょ、冗談じゃない!また撃たれたらどうするんだ!」
(;//‰ ゚)「早く下ろしてくれ!お前みたいな不幸を呼ぶ奴と一緒にいたくない!」
二人はシートを盾にし、震える声で拒否を示した。
ジーナは少しだけ眉を下げ、「そうですか」、と俯く。
- 280 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:43:42 ID:xAisExpc0
- ダァン!
銃声が一発新たに轟き、中年二人の間を鉛弾が駆けた。
寸分違わぬ軌道で、リアウィンドウの穴から弾が飛び出す。
男達は後方を見、再び少女へ視点を戻す。
彼女の手には、先程運転手が使った拳銃が握られていた。
爪゚ー゚)「生き残りたければ尚のこと早くこちらに来て下さいまし。妙案がありましてよ」
(;∵)
(;//‰ ゚)
爪゚ー゚)「最も、お二方が天国への片道切符を御所望でしたら、今すぐ手配しますが?」
(;//‰ ゚)「こ、この小娘……ッ!」
(;∵)「…………何をするつもりだ?」
工場長の方が身を乗り出した。
少女を信用したわけではない。ただ、突破口があるならそれに縋りたい、その一心だ。
横堀社長を一瞥し、ジーナは工場長にニヤリ、と笑いかけた。
爪゚ー゚)「解体は得意ですか?」
(;∵)「え、へえ、一応は」
では、とジーナはある物を指差した。
そこには動かなくなった運転手、そして座席の下をこじ開ける。
アタッシュケースが飛び出し、ロックを解除すると、工具一式がズラリと並ぶ。
爪゚ー゚)「ゲームですわ。今から1分以内にこのロボットを解体して下さいませ」
(;∵)「い、1分!?」
爪゚ー゚)「このロボット、時限式爆弾を兼ねてますわ。あと1分30秒で跡形もなく吹き飛ばされます」
ほら、とロボットをひっくり返す。
首筋にタイマーが仕掛けられ、単調な音がタイムリミットを告げる。
(;∵)「……!」
爪゚ー゚)「解除出来れば生き残れますわ。さあ、どうします?」
(;∵)「…………チッ!やるしかなさそうだな」
- 281 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 22:47:31 ID:JALvKnO.0
- 銃も扱えるのか…全く恐ろしい12歳だぜ
- 282 :>>281 爪゚ー゚)「私、華の14歳でしてよ」:2012/11/15(木) 22:59:00 ID:xAisExpc0
- 工場長は袖を捲くり、工具に手を伸ばす。
くたびれた外見によらず慣れた手つきでロボットをバラバラにしていく。
こうやって、クールにも改造を加えていたのだろうか。
長年愛用されてきた只のゴミ処理機を、殺人兵器に変える為に。
そんな想像を巡らせるジーナの視線は、軽蔑よりも純粋な興味を含んでいた。
(;∵)「そんなにジロジロ見られると、気が散るんだが」
爪゚ー゚)「あら、すみません。ウチにも技工師がいますが、ここまでの腕の方は中々いらっしゃらないと思いまして」
(;∵)「へっ、テメエの命(タマ)が危ねえってのに舌のよく回るお嬢様だ」
爪゚ー゚)「社に戻った暁には、再雇用先を検討しませんこと?残業代はきっちり出しますわ」
(;∵)「これが解除出来たら、なっと!」
ガパッ、とロボットの腹部を開帳した。配線が海藻のように絡み合っている。
この中のどれかが爆弾を止め、或いは起爆を早める一本だ。
工場長はペンチを握る力を強め、躊躇うことなく切っていく。
爪;゚ー゚)「こういうのって、お約束だと二本必ず残るんですよね」
(;∵)「全く、日本人ってのはそういうお約束事が大好きなんだよな」
残り二本、赤と青の配線が残る。
工場長の手が躊躇いをみせ、どうする、とジーナに目配せする。
息を飲み、ジーナは迷いを捨てるように叫んだ。
爪;゚ー゚)「…………赤よ!」
(;∵)「これで、どうだっ!」
赤の配線をバチン、と引き千切る。
爪;>ー<)
(;∵)「…………お、お嬢ちゃん」
工場長の声は震えていた。ジーナは恐る恐る、固く瞑った瞼を開く。
- 283 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:03:50 ID:JALvKnO.0
- おお年齢間違えてたごめんなさい
- 284 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:16:11 ID:xAisExpc0
- 爪;>ー<)
爪;>ー゚)チラッ
00:00:12
果たして、タイマーは12秒を残して停止していた。
「っしゃ!」と短く歓声をあげ、少女と無言のハイタッチを打ち合う。
(;∵)「寿命が5年くらい縮んだぜ……次はどうする?」
爪゚ー゚)「でしたら、次は……」
轟音が天井をノックする。
二人がハッと見上げた直後、にわか雨の如く散弾銃の弾幕がリムジンを襲う!
爪;゚ー゚)「『S・プロテクトコール』展開!!」
助手席に取りつけられたマイクに向けて叫ぶ。
スピーカーから無機質な「了解・システム起動」の音声が流れる。
窓という窓が黒のシャッターによって覆われ、視界が奪われる代わりに銃弾の嵐は収まった。
数秒経ち、車内のライトが付く。
安全は確保できたが、脱出は不可能となった。
爪;゚ー゚)「モナー!?生きてる!?」
(;´∀`)「ガラスをしこたま浴びましたモナ」
爪゚ー゚)「そう、なら大丈夫ね」
倒したシートを持ち上げ、モナーが顔を出す。
弾に当たっていなかったのは幸いだ。
(;∵)「……どうすんだ、対策はあるのか?」
爪;゚ー゚)「予想以上の攻めでしたので……プランAは没ですわ」
ゴトリ、と何かが転がる音がする。
振り返ると、血溜まりが広がっていた。横堀社長の手が力無く横たわっていた。
焦りが全身を駆け、次の手を考えるジーナ。その耳に、再び無機質な音声が届く。
- 285 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:28:16 ID:ToettTDg0
- しえーん!!どうなるかな…
- 286 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:36:25 ID:w21PbVck0
- 横堀逝ったか…
- 287 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:37:39 ID:xAisExpc0
-
「ナビゲーション再起動、自動運転プログラム強制終了、手動に切り替えます」
爪゚ー゚)「……しめたわ!」
ハンドルに飛び付き、試しに少しだけ動かす。何の制約もなく動いた。
タイヤがギヤを回す気配を察した。
時限爆弾を解除した際に、同時に運転のロックも解除されたのだ。
ドアは開かずとも光明が見えて来た。
爪゚ー゚)「ラボへの通信は……どうかしら!?」
ボタンを手当たり次第に押していく。
ジーナのリムジンは専用のチャンネルを通してラボと直接連絡が取れるようになっている。
果たして、機械音声は「ラボに接続します」と応えた。
爪゚ー゚)「SOS緊急チャンネル……!!」
ジーナの指は狂ったダンサーの如くボタンの上を踊る。
今頃はこの通信を受け取ったオトジャが、ギコ達を連れて集合しているだろう。
「ラボへの接続が完了しました」
『……何かあったか?』
爪゚ー゚)「オーライ! 緊急事態でしてよ、Dr流石」
『ジーナさ……社長!?』
ドクオの声が割って入る。ラボにいたとは想定外だ。
恐怖で声が震えそうになるのを必死で抑えた。――落ち着くんだ、ジーナ。社長だろう?
こんな危機、今更じゃないか。
爪゚ー゚)「現在、襲撃を受けているわ。敵勢力の数は不明、生存者数は3名、うち負傷者1名、死者2名よ」
(,,゚Д゚)『現在地は?周囲に何が見える?』
爪゚ー゚)「VIP市よ。半径500メートル内にバスターミナルが見えるわ」
(´<_` )『重畳、今から交通機関にアクセスして一区間に規制をかける』
オトジャのハッキング能力なら5分とかかるまい。
少なくともこれで民間人が銃撃戦に巻き込まれる確率は減る。
- 288 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:51:37 ID:xAisExpc0
- VIP市内に留まっていたことが幸いだった。
支社から半径20km圏内であれば現在地特定にさほど時間はかからない。
だが外には已然として敵勢力の息遣いを第六感が感じ取っていた。
(´<_` )『社長、リムジンの状態を教えてくれ』
爪゚ー゚)「自動運転プログラムは死んでるわ。手動で何とか……」
( ´_ゝ`)『ナビゲーション自体が死んでるのか!?弱ったな……
遠隔操作でこっちまで持ってこれるかと思ったのに』
爪゚ー゚)「…………」
(;∵)「おい!また始まったぞ!?」
くぐもった銃声が外から響き、シャッターが面白いように凹んでいく。
このまま鴨撃ち状態が続けば、バリアーもいずれ破られる。
無意識に下唇を噛む。そして何を思ったか、ロボットを押し退けて運転席に腰を落ちつけた。
(;∵)「お、お嬢ちゃんや?何してんだ?」
爪゚ー゚)「オトジャ、私のタブレットにVIP市の交通地図を送って頂戴」
(´<_` )『? それは良いが……何を?』
ポンッ、と軽快な音が鳴り、ジーナはタブレットを引っ張り出す。
VIP市を網羅する道路が詳細に表示され、ご丁寧にストアのアイコンまで浮かんでいる。
タブレットを凝視すると、工場長に押し付けた。
爪゚ー゚)「交通法に従って、助手席に座りシートベルトを締めて下さい。モナー、貴方もよ」
(;∵)「え、おい待て!お嬢ちゃん幾つだ!?」
「お嬢様!?何をなさるおつもりですかモナ!?」
爪゚ー゚)「問題ありませんくてよ、アメリカでは16の子がブイブイオープンカーを鳴らすのが常識ですわ」
(;∵)「どう見ても中学生だろ!?それにここは日本だ!!」
爪゚ー゚)
(;∵)
爪^ー^)「ナビゲート、よろしくお願いしますわ」
(;>∵)>「嫌ぁあああああああーーーーーー!!!」
- 289 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:53:36 ID:xm2wrGiM0
- ビコがいいキャラwwww
- 290 :名も無きAAのようです:2012/11/15(木) 23:56:06 ID:JALvKnO.0
- ビコーズノリ良いなww
- 291 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:07:51 ID:TXOfot0.0
- 兄者が10歳の時にジーナが4歳
現在兄者が(オトジャと同年齢だとして)18歳だとしたらジーナ12歳じゃないか?
野暮ごめんよ、支援
- 292 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:11:15 ID:UlxX.Uag0
-
『ナビゲート、よろしくお願いしますわ』
『嫌ぁあああああああーーーーーー!!!』
中年男の悲鳴がスピーカーを通してラボに反響する。
ハッキングされた監視カメラの一つが、暴走するリムジンの姿を捉えた。
様々な角度から、ハンドルを力任せに振り切るジーナと、半ベソかいた工場長をズームアップする。
(,,゚Д゚)「ワイハでオヤジから習ったクチか」
(;'A`)「どこの小学生探偵ですか、ネタが古いですよ……じゃなくて!助けなくて良いんスか!?」
( ´_ゝ`)「捕捉したぞ、ズームアップしろ!」
兄者が示す一つのカメラ。
爆走するリムジン。その後方を尾ける一台の車両。
一般自動車を装っているが、スモークガラスの隙間から銃口が覗いている。
ジーナはあの様子だと見えていないだろう。
それでいい。彼女には前方だけ見てもらうのが一番だ。
(,,゚Д゚)「俺が行く。オトジャ、付いてこい」
(´<_` )「俺の台詞を奪うな、あと、指図するんじゃない」
ギコとオトジャが踵を返し、ウェアルームへ消えていく。
その間に兄者は画面に釘付けとなり、ジーナ達の明細な現在地を特定しようと躍起になっている。
( ´_ゝ`)「えっと、カメラの二点の位置から……」
(;'A`)「お、俺、何か手伝えることがあれば……」
取り残された気分が、自分の役立たなさが申し訳なくて、ついそんな言葉が口をついて出た。
兄者がきょとん、とした表情でドクオを見、フ、と笑みを浮かべた。
( ´,_ゝ`)「気張るな、新人君。こういうのはプロに任せなって」
(;'A`)「で、でも……俺、ここにきてからまだ何も出来てないし……」
( ´,_ゝ`)「安心しなって。社長は殺されたって死にやしないよ」
ニヤリ、と兄者がニヒルに笑う。ドクオは彼の笑顔で肩の荷がすっと落ちて行く感覚を得た。
- 293 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:17:05 ID:UlxX.Uag0
- 小休憩。
>>291
作中では触れていませんが、兄者が博士号を取り、家出するまでに何年か時間が経過、
更に4歳ジーナと出会うまでに数年ほど研究所を渡り歩いてた時期があります。
手術当時の流石兄弟の年齢は18歳。
オトジャの年齢表示が18歳なのは、オトジャの精神年齢です(サイボーグはあくまでロボットの一分類であり、年を取らないと定義されるため)。
因みに兄者はそのまま年齢を重ねたので28歳。立派なオッサンです。
- 294 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:25:05 ID:tPXeZIOQO
- ドクオより歳下だと思ってたのに・・・
すげー若く見えるオッサンてことか
- 295 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:29:14 ID:4fk3F65A0
- 細かいところ聞いてすまんが>>231の俺より若いだろうにってのは
ドクオには兄者が若く見えたってことか?
- 296 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:33:21 ID:UlxX.Uag0
- >>295
そういう事ですね。
VIP社が基本的に体育会系マッチョのすくつ(なぜか変換出来ない)なので、
ヒョロガリが若く見えるの法則です。
- 297 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:37:57 ID:4fk3F65A0
- なるほど、答えてくれてありがとう
- 298 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:40:21 ID:TXOfot0.0
- >>293
なるほど。
それでも兄者と弟者が瓜二つな外見をしてるっていうのは
歳を重ねるごとに弟者も年齢相応の外見になるよう人工筋肉に手を加えてる・・・とか?
それとも精神年齢が18なだけでサイボーグも外見的に歳をとるんだろうか
す、すまん気になることがあると聞かずにおれないタチで……!!
- 299 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 00:55:54 ID:zwurf9fY0
- >>296
志村ー!!そうくつ!!そうくつ!!!<巣窟
- 300 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 09:27:41 ID:Xt7wv1EE0
- >>299
すくつは2chのネタだぞ
- 301 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 10:14:26 ID:/eLspc8M0
- >>300までてんぷら
- 302 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 17:20:32 ID:UlxX.Uag0
- 作者です。寝オチこわい。
>>298
そちらは後々、作中で語られることになりましょう。その時をお楽しみに。
夜8時頃再開しますたんぐ
- 303 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 19:07:11 ID:6P.AiV1MO
- ギコは食事とれるのか?ロボットなのに
- 304 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 20:13:35 ID:UlxX.Uag0
- 天ぷらはレンコンが一番。異論は認める。
>>303
食事からエネルギーを摂るロボットのタイプもいます。ギコもその一人。
延長して9時からスタート。ごめんねーその分頑張るからねー
- 305 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 20:27:17 ID:MlD23uw60
- 待ってるよー
- 306 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 20:42:18 ID:tmWchprE0
- わくわく
- 307 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:00:30 ID:UlxX.Uag0
- さあ、始めようか。
例によってゆっくり投下。
- 308 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:03:27 ID:UlxX.Uag0
- (,,゚Д゚)「準備出来たぞ」
(´<_` )「外の"お仕事"は久しぶりだな」
振り返ると、黒の戦闘用スーツに身を包んだ二人が仁王立ちしていた。
ギコはショルダーホルスターにオートマ自動小銃を二丁、
マシンガン一丁、ショットガン等の重火器を(片手で)担いでいるのに対し、
オトジャはやや小さめのアタッシュケース一つと、背に小型飛行ジェットを一機のみ。
申し訳程度にリボルバーを腰に納めただけだ。
( ´_ゝ`)「ミッションナンバー508、遂行レベル3、G-1K:0、オトジャ。スタンバイオーケイ?」
(,,゚Д゚)「何時でも良いぞ」
(´<_` )「さっさと済ませよう。何なら俺一人でも問題ない」
( ´_ゝ`)「こりゃこりゃ、さっきまでタンコブ作ってた奴が何を言うか。そんじゃ、起動するぞー」
こんな状況でも三人は軽口を忘れない。
兄者が手元にあったレバーを下げると、床が沈み、円柱がせり上がって来る。
円柱の床には何やらファンタジーでありがちな円陣の模様が浮かび上がっていた。
ファンタジーの魔法陣との相違点をあげるなら、陣の中身は、びっしりと書き込まれた計算式だということ。
ギコとオトジャは荷物を担ぎ、陣に足を踏み入れる。
(;'A`)「な、なんだこりゃ!?」
(´<_` )「ギコの瞬間移動能力を応用した転送システム。限られたポイントに転送する事が可能だ」
(,,゚Д゚)「このシステムを使うには、俺の瞬間移動システムと同調する必要があるがな」
つまり、ギコがいて初めて作動するシステムということだ。便利なような不便なような。
ドクオが陣を凝視している間に、兄者がパネルに番号を打ち込み、エンターキーを叩く。
( ´_ゝ`)「ポイント、VIP市バスターミナルエリア47・28!転送開始!」
二人が青白い光に包まれ、足先から凄まじいスピードで消失していく。
ドクオは二人に呼びかける。
('A`)「ふっ二人共!」
絶対に全員で帰ってきて下さい。そう続けようとした時だった。
兄者も二人を見送ろうと振り返り、とんでもない光景を目の当たりにして叫んだ。
- 309 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:08:44 ID:UlxX.Uag0
-
(;´_ゝ`)「ドクオ、足を退けるんだ!!」
('A`)「えっ?」
足元を見る。ドクオの足が、陣の中にちゃっかりと入っていた。
兄者がドクオを引き戻そうと腕を掴もうとしたが、その手は虚しくも空を掴む。
次の瞬間、全員の目の前で、三人ともその場から姿を消した。
(;´_ゝ`)「しまった……!とんでもない事になっちまったぞ……!!」
川 - ) ゴポッ……
バスターミナル前、VIP社所有の使われていない倉庫。
静かだった室内が突如、木箱が軋み崩れる騒音に包まれた。
数秒後、シン、と静まり返る。木箱の雪崩の中から、ギコの頭がにょっきりと生える。
(,,゚Д゚)「着地成功。ミッションに入る」
(´<_` )「着地成功……といいたい所だが糞オヤジ、退け。重い。内臓潰れる」
(,,゚Д゚)「む、気づかなかった。謝罪しよう」
ギコの足元で下敷きになったオトジャを確認し、ギコが素早く退く。
全身についた埃を叩き落としながら、オトジャも立ち上がる。
そのまた一拍置いて、崩れた木箱の隙間から、申し訳なさそうにそろりそろりと生える頭が一つ。
(;'A`)ゞ「痛てて……」
(´<_` )「あっ」
(,,゚Д゚)「あっ」
('A`)「えっ」
- 310 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:12:39 ID:GID3FK9E0
- 支援支援
ドクオー!!wwwww
- 311 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:15:20 ID:UlxX.Uag0
-
しばし沈黙。
先に転送された二人は、ドクオも誤って転送された事に気づいていなかったのだ。
秒刻みに重くなる空気を初めに振り払ったのは、オトジャだった。
(´<_` )「社長からSOSコールを受けて10分。もう時間が無い」
(,,゚Д゚)「こんなパニックの中でお嬢様はくたびれたミドルとドライブか、暢気なものだ。
願わくば俺も仕事なんざほっぽり出して、タンゴと洒落こみたいよ」
(´<_` )「お前はその前にエクササイズでウェイトを落とすんだな、ポンコツ」
(;'A`)「ジョーク言ってる場合ですか!?」
と(´<_` )グニー「なんだ、まだいたのか。てっきり幻覚かと思ったんだが」
(;'A`>「いひゃいひゃいいひゃい!引っ張らないで!千切れる!!」
(,,゚Д゚)「おおかた、"陣"を踏んで誤って転送されてしまったんだな。
一緒に来てしまったものは仕方ない。同行してもらうぞ、ドクオ」
ムッ(´<_` )「だから、お前が仕切るんじゃねーよ」
ぼやくギコの尻を蹴飛ばし、オトジャは倉庫のシャッターを開ける。
静かだ。が、耳をすませば遠くから自動車の音と運転手たちのブーイング、警官の怒声が聞こえてくる。
兄者達ハッキングチームのお陰か、上手く住民達は規制区域の範囲外に誘導されたようだ。
人っ子ひとり見当たらず、外側の人間達は見えない壁に戸惑っている様子だ。
左目をサーチアイに切り替えると、ステルスのバリアウォールがドーム状に一区間を覆っている。
瞬きで元の視界に戻すと、無線機に通信が入った。
『着いたか?』
(´<_` )「兄者か。ひとまず着地は成功したぞ。……余計な荷物が増えたがな」
(;'A`)「申し訳ありましぇん」
『むむ……誤送信してしまったものは仕方ないな。ドクオ、ひとまずギコの指揮下に入ってくれ』
(;'A`)「え……帰らなくていいんですか?あの転送装置で」
『あの装置はエネルギーの再チャージに長時間かかるんだ。一緒に任務を遂行してくれた方が早くて済む』
<('A`)> Oh My God
- 312 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:19:20 ID:lEuh57ps0
- 支援! 支援!
- 313 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:20:44 ID:UlxX.Uag0
- 戦闘スーツどころかワイシャツとスラックスのみで、どう武装集団に立ち向かえというのか。
しかし泣こうが喚こうが自業自得なので何も言えず、泣く泣く「yes,sir」と返答した。
ギコがオトジャの手から無線機をふんだくる。
(,,゚Д゚)「悪いが、俺のナンバーにドクオ用にスーツ一式を登録してくれ」
『オーライ、30秒ほど待ってくれ』
(´<_` )「早く出発しないと、社長達がエメンタールチーズになっちまうぜ」
(,,゚Д゚)「それは困るな。酒のツマミを食う度に血の味を思い出すのはごめんだ」
キュイン、と掌が機械音を立てる。
ギコが手をかざすと、手品より鮮やかな手捌きで戦闘スーツを出現させる。
いつもの事ながら、見ていていっそ気持ちが良い光景だ。
注釈。
ギコの物質瞬間移動能力は、ギコの両手、両目、そして頬のバーコード→(,,゚Д゚)によって成立している。
例えばある物質Aを手元に転送する場合、
①あらかじめ物質Aに接触、指先から物質Aに転送用バーコードナンバーを刷り込む
②頬のバーコードに受信用バーコードナンバーが登録されているため、
③ギコの任意で幾つでも、何度でも物質を受信する事が可能
となるわけだ。
反対に、物質AをX地点に転送したい場合、
①X地点を眼球カメラでロックオンし、赤外線でバーコードナンバーを照射
②物質Aにバーコードナンバーを上書き
③ギコの任意で転送
という流れとなる。ギコは常にこのプロセスを0.05秒で済ませる事が可能である。
ドクオも以前この説明を受けたばかりだが、理解不能だったので「要はギコさんってすごいんですね」と思うことにしている。
「分かるかクソボケ物理なめんな」と思ったそこの読者諸賢も「ギコさんすっげーVIP社バンザイ」と叫ぶことをお薦めする。
以上、閑話休題終了。
(,,゚Д゚)「よし、行くぞ」
(´<_` )「足引っ張るなよ」
(;'A`)「は、はい!」
.
- 314 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:24:59 ID:lEuh57ps0
- ギコさんすっげーVIP社バンザイ!
- 315 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:29:31 ID:UlxX.Uag0
- 戦闘服に身を包んだドクオも加わり、三人は外へ飛び出す。
オトジャは背負った小型飛行ジェットを起動させる。
半透明の六枚の無機質な羽が生え、オトジャの体が数十センチ程浮いた。
(´<_` )「動作精度、異常なし、ブースター異常なし、システムオールグリーン」
(,,゚Д゚)つ フォンッ「コードナンバー02243231、ウィンドバイク・スタンバイ」
『ウィンドバイク転送開始、システムオールグリーン、スタンバイ、3、2、1……』
(;'A`)「わっ……!」
ギコの右手を光源に、眩しく青白い光が周囲に散らばる。
光の形は横長に広がり、間もなくバイクの輪郭を象る。
風の抵抗を受けない流動型の赤いボディ、タイヤは存在せず、反重力で浮くタイプの飛行バイクだ。
(;'A`)(すっげ、HONDA-CBR954RRのウィンド仕様だ。傷つけたら怒られそう…)
(,,゚Д゚)「何してる、早く乗れ。あとこれ持て」
(;"A")そ「はぶっ!?」
サイドカーに容赦なく頭から放り込まれた。
その上にライフルやらマシンガンの入った袋を押し付けられる。
ギコはバイクに乗りこみ、エンジンを確認している。
(,,゚Д゚)「乗るのは久し振りだが、素粒子エネルギーは腐ってないようで助かった」
('A`)「え、久し振りって……どれくらい乗ってないんですか?」
シートベルトを締める。
ギコがウィンドバイクのに乗っている姿は見たことがないが、さほど大した期間ではないのだろう。
アクセルギアを回しつつ、ギコはドクオの質問に事も無げに応えた。
(,,゚Д゚)「ざっと5年くらいだな」
('A`)
('A`)スゥーッ
('A`)「すいません可及的速やかな下車を希望します」
(,,゚Д゚)「却下」
('A`)「ですよねー」
.
- 316 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:36:58 ID:UlxX.Uag0
- 『発車します。シートベルトをお締め下さい』
マフラーがブォン、と喧しく一声鳴る。
ブースターから勢いよく光の熱が噴射し、ウィンドレースが浮上した。
高度200メートル程上昇した所で、二人を乗せバイクは時速100kmから加速する。
(;A;)「ひえええええええええ降ろしてえええええええええええ!!!」
(,,゚Д゚)「ウィンドバイクは初めてか?これ位慣れて貰わんと、任務を遂行する時不便だぞ」
(;A;)「慣れとかそういう問題じゃないいいいいいいいいい!!降りりゅうううううう僕おりるのおおおおおお!!」
ギコのバイクという時点で嫌な予感しかしなかった。
今度こそ本当に死ぬかもしれない、ドクオは涙を振り撒き、胸に十字を切る。
冷え切った風が遠慮なくドクオの両頬をぶつ。涙で濡れて尚冷たい。
バイクは時速130kmを超えていた。背から羽を生やしたオトジャが並ぶ。
(´<_` )「今、兄者が解析している。目標は現在VIP市バスターミナルを始点に南東1.2km先を爆走中」
(,,゚Д゚)「了解、敵勢力は装甲車1体で確定か?」
(´<_` )「いや、カメラの映像から、リムジンの銃痕を確認したらしいが、
どうにも装甲車から撃てない角度から撃たれたらしい」
(,,゚Д゚)「装甲車の他に『狙撃手』がいるとみていいな。
近接で装甲車、遠距離でスナイパー。奴こさんはよっぽど社長が憎いんだな」
(´<_` )「或いは、社長のデートの相手か、両方か」
(,,゚Д゚)「痴情の縺れか。俺にも遂に『いつかやると思ってました』とカメラ屋に言える日が来るとはな」
(´<_` )「社長なら恋沙汰すらビジネスに利用しそうだがな」
(,,゚Д゚)「さもありなん」
(;A;)「降ろしてええええええええええ!事故死は嫌あああああああ!!」
ドクオはライフルの入った袋を力いっぱい抱き締めた。
生きて帰れるのなら誰彼かまわず足にキスしたっていいと願った。
- 317 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:50:06 ID:UlxX.Uag0
-
(◎<_◎ )キィン
オトジャは首に提げておいたサーモグラフィティー用のゴーグルを掛ける。
現在、バスターミナルを中心にして、ジーナ達と敵勢力以外に人は存在しない。
ということは、地上のジーナ達を除いて、一定の位置にかたまっている熱源があれば、そいつがスナイパーだ。
(,,゚Д゚)「居たぞ!」
('A;)「!」
ギコの並外れた視力もまた、道路を爆走するリムジンと装甲車を発見した。
しかし様子がおかしい。何か違和感を感じる。
後を追いながら、ギコは違和感の正体を探ろうとした。
そして気づく。爆走するリムジンの方向が、運転手席と後部座席の位置とが逆転していることに。
(,,゚Д゚)「まさか……」
そう、そのまさかである。
視点はリムジン内のジーナと工場長に戻る。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
爪゚ー゚)「思ったより運転が難しいですわね、リムジンって」
( ;.;)「降ろせえええええええええ!!事故死は嫌ああああああああああ!!」
レバーを無造作に動かしつつ、ジーナはリムジンを「バック走行」で爆走させていた。
隣の工場長はタブレットに罅を入れかねない程の握力で握りしめ、泣き叫ぶ。
当然のことながら、我等が社長は運転技術など皆無なわけで。
素人がリムジンなど動かせばどうなるか、という典型的な例である。
爪゚ー゚)「途中までは普通に運転できてましたのにね」
( ;.;)「あちこち建物にぶつけまくってた奴が何を言う!?」
(; ∀ )「お、お嬢様……不躾ですが私、吐き気が……」
爪゚ー゚)ノ▽「エチケット袋ありますから、今の内に存分に吐いてなさい」
(; Д )「有難うございmおろっろろろろrrr」
( ;.;)「お、俺も一枚おっろろろrrrっろおろ」
- 318 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 21:59:51 ID:.mPfR/bs0
- これはひどいwwww
- 319 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 22:09:31 ID:UlxX.Uag0
- 爪゚ー゚)「だらしないですわね、二人共」
(;∵)「ふぅ……誰のせいだと思ってんだ!」
リアウィンドウはシャッターが閉じられたままなので、後方を確認することは不可能。
それでは何故ジーナが運転可能かというと、ビコーズの必死なナビゲートの賜物だ。
(;∵)「500m行ったら、次の交差点を左に曲がれ」
爪゚ー゚)「了解です」
天井を、シャッターを、ひっきりなしに銃弾が襲い来る。
自分達を追う存在に、三人ともとっくに気づいてはいる。
安全地域であるVIP社まで行こうとすれば誘導されてしまい、辿り着くことができない。
同じ場所をぐるぐる回ることで時間稼ぎをしているが、それもいつまで持つか。
いずれ燃料が尽きればリムジンは止まってしまい、蜂の巣は確実。
止まっても走り続けても地獄。神様に唾を吐きたい気持ちだ。
(; . )「クソッ……!」
バチだろうか。
自分のロボットを殺人兵器に仕立て上げ、罪も無い人間を殺させたツケが回って来たのか。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
――なんだこの成績は!我々はママゴト遊びをしてるのではないのだぞ!?
不況の波は、児玉ビコーズが監督する工場にも被さってきた。
度重なる経営不振の連続で、工場の未来は暗雲の中。
そんな時だったからこそ、新しい工場建設はどうしても叶えねばならぬ悲願だった。
――C-001。新しい工場が出来れば、お前もそこに移動だ。こんな油臭くて汚い工場ともお別れだぞ
独身のまま四十路を迎えた、気難しい工場長がもっぱら気に掛けたのは、人型ゴミ処理機の存在だった。
人付き合いもあまりせず、暇があればゴミ処理機のメンテナンスをしてやった。
物静かで口答えもせず、相槌代わりに頷くだけのクールは、工場長のよき理解者だったといえよう。
- 320 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 22:26:51 ID:UlxX.Uag0
- だからこそ。
新工場建設計画の成就のためとはいえ、犯罪に手を染めるとしても。
クビを飛ばされたくない一心で、ビコーズは『あの計画』に承諾したのだ。
計画には、実行犯が必要だった。
殺人に抵抗感がなく、疲れをしらず、命令に従順で、いざとなれば闇に葬っても問題の無い者。
作業ロボットのゴミ処理クールさんが候補に挙げられるのに、時間は掛からなかった。
( ∵)『……なあ、C-001。これはな、俺にとってもお前にとっても大事な問題なんだ』
川//‰ ゚)
( ∵)『…………本音を言うとな。俺はよ、お前を娘みてぇに思ってんだ。お前が殺人鬼になる所なんざ見たかねェ』
川//‰ ゚)
( ∵)『でもなァ、この縦社会ってのは残酷なんだ。俺は、上に逆らう勇気なんざ無え』
川//‰ ゚)
( ∵)『幸いまだ時間はある。今夜の内に荷物を纏めな。上には使えないから捨てたって言っておいてやるからよ』
当時の工場長にとって、それが、クールに対して出来る最大級の庇護だった。
けれども、彼女は黙って、身じろぎひとつすらしなかった。
背を向けた工場長の手を、ぎこちなく取って、首を静かに、横に振った。
( .)『……聞こえなかったか?出ていけ、Cシリーズ001』
川//‰ ゚)
『やります』
秋を知らせる夕暮れ、工場に差した影の中で、クールの目が暗く輝いていた。
( .)『…………莫迦野郎』
川//‰ ゚)『出来ます。処理します』
( .)『お前はなァ、馬鹿だなぁ、本当によォ……』
.
- 321 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 22:43:24 ID:UlxX.Uag0
- クールは、殺人鬼に名乗りを上げた。
彼女が如何なる想いで人を殺し続けたか、定かではない。
ゴミ処理機は淡々と、指定された場所と時間で人を殺し、ロボットを破壊する。
工場長は、『処理』を済ませたクールのメンテナンスを担当した。
川//‰ ゚)
( . )
『処理屋』の名がマスメディアに載る頃、『上』は危機感を感じ始めていた。
GICグループのVIP支社が警察に介入を決定。
クールの確保を宣言するとの情報を秘密裏に得ていた。
クール自身の『処理』が決定した。
一介の工場長にそれを止める権利はなく、数日後にクールは分解されることが決定した。
『なあ、クール。……これで本当に、良かったのか?』
たった一言、そう問いかけた翌日、彼女は姿を消した。
我が身を案ずる反面、工場長は心のどこかで安心していた。
もう彼女は人を殺さずに済むのだ。
そう思っていた矢先に、『処理屋』は活動を再開した。
前よりも過激に、無差別に、容赦なく。工場のロボットも壊された。
そして彼女は捕まった。VIP社の人間に。
横でリムジンを暴れさせる少女の部下達に。
少女は煙のように現れるや、クールを引き取るといってのけ、実現してみせた。
工場の買収も宣言した上で、唖然とする工場長に少女はさらりと言った。
爪゚ー゚)『私、欲しいものは計画的に、何でも手に入れる主義でしてよ。地位も、名誉も、力も、人もね』
爪゚ー゚)「? 顔色が悪いですわよ」
(;∵)「…………」
銃声はまだまだ止まない。それなのに少女はハンドルを動かす手を止めない。
- 322 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 23:05:15 ID:UlxX.Uag0
- (;∵)「なあ、お嬢ちゃん。何で諦めない?ここまで追い詰められて、絶望したりしないのか?」
うだるように問う工場長を横目で一瞥し、ジーナは前方に視線を戻した。
その横顔に、いつもの不敵な笑みを浮かべて。
爪゚ー゚)「いいえ。だってそんなの、時間の無駄ですもの」
(;∵)
爪゚ー゚)「悲劇の主人公ぶってる暇があるなら、相手の裏を掻くプランを練りますわ。その方がよっぽど効率的よ」
(;∵)「…………フ、そうかい。それがお前さんの強さか」
爪゚ー゚)「打たれ強さと諦めの悪さにはめっぽう自信がありますの、"私達"」
ニヤッ、と白い歯を見せると、バックミラーの向こうでモナーも思わずニヤリ、と笑った。
リムジンは徐々に動力エネルギーを失い、速度を落としつつあった。
装甲車との距離も縮まりつつある。並ばれたら終わりだ。まさに、絶体絶命。
それでもジーナはひたすら余裕を見せ続ける。上に立ち続ける者の余裕を保つために。
爪゚ー゚)「それにね、工場長さん。私が諦めようとしても、周りが諦めてくれませんくてよ」
直後、一際、大きな爆発音が空に轟いた。
音の正体に勘づいたのか、疲れ切ったジーナの目に輝きが灯る。
爪゚ー゚)「もうひと踏ん張りですわ、工場長さん。――――反撃、開始の時間です」
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
(,,゚Д゚)「――チッ。掠っただけか」
(;'A`)「あばばばばっばばばば」
爆音の正体は、ギコが抱える対戦車擲弾発射器・パンツァーファウストIII。
装弾数は一つしかないが、その威力は絶大である。
しかしハンドルを手放して不安定な足場で発射したため、狙いが逸れて道路に特大の穴を作っただけに終わった。
(´<_`;)「馬鹿かお前は!!社長に当たったらどうする気だ!!」
(;'A`)「そうですよギコさん、危ないですって!反動で俺達が落っこちたらどうするんですか!」
(´<_`;)「お前はお前で注意点がずれてるぞ!」
- 323 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 23:20:06 ID:UlxX.Uag0
- 10分休憩。
- 324 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 23:22:34 ID:9LayyKdg0
- 支援
- 325 :名も無きAAのようです:2012/11/16(金) 23:23:32 ID:lEuh57ps0
- 待ってる
- 326 :再開:2012/11/16(金) 23:43:07 ID:UlxX.Uag0
- リムジンは爆風に押されるように前進し(正確にはバック走だが)、
装甲車はハンドルが暴走し、フラフラと右往左往する。
ポイ、と空き缶を捨てる要領でギコはパンツァーファウストを捨てた。
膝関節を折り曲げ、千鳥足で走る装甲車を睨みつける。
(;'A`)「ちょ、ギコさん何してるんスか!」
(,,゚Д゚)「ちょっくら飛び降りて襲撃してくる」
(;'A`)「スーパーで白菜を買うノリは止めて下さい!死んじゃいますよ!?」
わあわあ車上で言い争う二人。呆れた視線を送るオトジャ。
その時、視界の端で不意に何かが光るのを捉えた。
反射的にオトジャがウィンドバイクを蹴飛ばした瞬間、バイクとオトジャの間を何かが突き抜け、爆散する!
(;'A`)「ひゃばああああ!落ちる、落ちるううう!」
(,,゚Д゚)「今のは……!」
(´<_` )「間違いない、スナイパーだ!野郎共、反撃してきやがったぞ!」
バイクとオトジャが二手に分かれる。
次々と投擲される手榴弾を掻い潜り、オトジャがバイクの上方に舞い上がる。
(´<_`#)「お前達に使うのは癪だが――『Protect』作動ッ!!」
青白い光が球形に広がり、即席のバリアを展開させる。
投擲された弾はバリアに弾かれ、三人の目と鼻の先で幾つも花火を散らす。
オトジャは周囲に視界を巡らせ、再びゴーグルを掛けた。
(´<_` )「分かったぞ。相手は恐らくIABを使っている!」
IAB/赤外線作動型自動追尾式弾幕。
(Infrared operation type Automatic tracking type Barrage)
どのような代物かは読んで字の如くだ。恐らくVIP市内の至る所に張り巡らされているのだろう。
現在は手動に切り替え、目標を変更したのだろう。
本丸を叩く前に邪魔な小蝿を追い払う寸法とオトジャは受け取った。
(´<_` )「……IABは俺と兄者で叩く。ポンコツ共、あのデコレーションカーの相手は任せた」
(,,゚Д゚)「良いのか。相手はどこに潜んでるとも分からん卑怯者共だぞ」
クッ、とオトジャは喉の奥で笑った。自嘲の笑みだ。
暗に目の前の男は、自分の身を案じているのだ。
旧式の癖に、自分より性能の高いこの男に、まだ未熟なサイボーグは嫉妬を隠さずにはいられない。
- 327 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 18:56:46 ID:uIdC7RZs0
- ねおち?
- 328 :再開〜4話ラストスパート〜:2012/11/17(土) 22:52:17 ID:E9yCDWZ.0
- しかしオトジャはこの場で、ギコに対する嫌味を喉の奥に引っ込めた。
片腕を振り、バリアを展開させて投擲された手榴弾の一つを乱暴に跳ね返し、細い目で精一杯睨みつけた。
(´<_` )「俺の仕事はお前達のサポート。見えない相手こそ俺達が相手すべき敵だ。そうだろ?」
半ば自棄に言い捨て、腕を組む。
本当は、余計なお世話だと切り捨ててやりたい。鬱陶しいと反発してやりたい。
昔のオトジャならば、そうした。だが今は違う。
口でこそ言わないが、自分の立場も、今やるべきことも理解している。
(,,゚Д゚)「……意外だ。てっきり装甲車に突撃すると思ったんだが、お子ちゃま君も一丁前に分担作業というものを覚えたらしい」
(´<_`#)「て、てめっ……地面とキスしてえか、コラ!」
(,,゚Д゚)「――冗談だ。IABの方は頼んだぞ、オトジャ」
顔を真っ赤にし、声を張り上げ怒り狂うオトジャ。
ドクオを引っ張り上げ、オトジャから視線を外さぬまま、ギコは託す。
アタッシュケースを握り直し、オトジャはここにきて初めて、唇の端を歪めた。
(´<_,` )「――そっちもな。しくじったら俺が直々にスクラップにしてやるぜ、旧式」
オトジャは弾が飛んできた方へ、ギコ達は装甲車へと、互いに背を向けた。
バリアが消失する瞬間、それが二手に分かれる合図だ。
失敗へのプレッシャーや不安はない。
ただ一つ、相手より先に仕事を終わらせる、その使命感だけがある。
「「Good Luck!」」
また一つ弾が投擲された瞬間――三人は飛び出す!
.
- 329 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 22:53:28 ID:E9yCDWZ.0
- (,,゚Д゚)「制圧、開始……!」
(;A;)「うぎゃああーーーーーーーーーー!!」
バイクは装甲車めがけ真っ逆さまに急降下していった。
オトジャは振り返らず、進路をリムジンとは反対の方向へ定め、飛翔する!
(´<_` )「バリアの損傷個所をデバッグ、弾の発射ルートを逆算出開始!」
これ以上の防御はバリアへの負担になると判断、一度解除し、オトジャは戦法を変えた。
先ほどから執拗に追い回してくる追尾式爆弾へと振り返り、滞空。ぎりぎりまで引きつける。
人工網膜から伝えられる映像をインプットし、弾の角度、速度、発射地点の想定、矢継ぎ早に情報化されていく。
(´<_` )「爆弾にAIがなくて助かったよ」
ぼやいた瞬間、小型飛行ジェットを噴射させ、空高く飛翔する。
追尾式爆弾は標的の変則的な行動に付いていけず、ブレーキ制御が効かぬまま互いに衝突、轟音とともに砕け散った。
(´<_` )「へっ、汚ぇ花火だ」
『まるでお祭り気分だな、なんつって』
空中で踵を返し、飛行を再開すると、兄者の合いの手が入る。
ミサイルの射程距離を運算しつつ行動していると、バリアウォールぎりぎりの位置まで辿り着いた。
(´<_` )「この辺りだな」
注意深く意識を全方位へ向ける。
IABを手動に切り替えているということは、この近くに装置を操作している人間がいる。
相手方はとにかくオトジャを撃ち落とすことに熱中し、惜しみなくミサイルを飛ばしてくる。
防ぎ漏らしたミサイルは、弾道を計算すればギコ達の元に飛んでいくだろうが――
(´<_` )(ま、何とかなるだろ)
「あわよくばギコだけ壊れろ」、と願う辺り、かなり陰湿だ。
- 330 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 22:54:35 ID:E9yCDWZ.0
- 使えるだけバリアを小出しにしつつ、目標地点に着地。
『油断するなよ。オトジャ、「トラバサミ」を作動させてくれ』
了解、の一言だけ返し、手早くアタッシュケースを置いて蹴り開けた。
中には、刃の無いトラバサミのような装置と、ボタン一つが入っているだけ。
装置はそのままに、ボタンを取り上げた。
(´<_` )「成功するのか?」
『はっはっは、おにーちゃんを信用しなさいって』
不安げな問いに自信満々と返され、オトジャはボタンを押す。
直後、トラバサミがパカッと口を開け、中心に突起物が現れるや、
天上に向け白い光が稲妻もかくやのスピードで駆ける!
――瞬間、光がバリアウォールにトプン、と音もなく吸い込まれる。一瞬の沈黙。
(´<_` )「…………」
『………………』
(´<_` )「えー、と…………これだけか?」
『これだけだよ?』
落下したミサイルがオトジャを掠め、炸裂。
地響きを伴う砲声と共に、地面をごろごろとローリング。
そのまま体勢を持ち直すや、オトジャは衝撃で壊れた小型ジェットを放り捨て、走り出す!
- 331 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 22:55:48 ID:E9yCDWZ.0
-
└(´<_`;)┐≡=−「おい兄者ァアーーーーッ!!狙撃手をあぶり出す仕掛けじゃなかったのかァーーーーっ!?」
『あっれーおっかしーなー、……!オトジャ、大変だ!今すぐ走るスピードを上げろ!』
└(´<_`;)┐≡=−「何だ!?まだ何かあるのか!?」
兄者は『トラバサミ』のシステムを再確認する。
本来ならば、あのトラバサミから発射された光は、障壁の範囲内で撃ち出されたミサイルに
「ある指令」を上書きする、特殊な電波を含んだ可視光線だったのだ。
光を吸収したバリア内では特殊電波が発信され、ミサイルの主導権を強奪。誘導先を特定地へと逸らす役割をしていた。
この説明で「理解出来るかボケカス死に晒せ」という読者諸賢は「兄者すっげーVIP社バンザイ」と復唱することをお薦めする。
『あれ、本来は迎撃してきたミサイルが強制的に撃ち手の元に戻るっつー仕掛けだったんだけど……』
『設計ミスって、トラバサミを仕掛けた奴に集中攻撃してくるプログラムになっちゃってたっぽい!頑張って走れ!!』
└(´<_`;)┐≡=−「兄者の馬鹿ァアアーーーーーーーッ!!」
ジャマイカの陸上競技短距離選手も真っ青なスピードで逃走を続けるオトジャ。
勿論、バリアで我が身を守ることも忘れない。
兄者のこんなミスは一度や二度でないとはいえ、これは流石に恨まずにはいられない。
昔からそうだ。兄者は失敗を省みるが、活かし方を常に明後日の方向に持っていく。
それでも天才と謳われたのは、必ず結果を残し、役に立つ物を造り続けて来たからに他ならない。
何を隠そう、彼の局地的な天才性を最大限に発揮した成果が、オトジャという存在だ。
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
オトジャはサイボーグ手術の際、150回以上の手術を受けた。
その結果、脳への負担を減らす為にインプラントを埋め込み、スーパーコンピューター並みの演算能力を手に入れた。
他にも、元からある脳等の臓器の補助、成長過程においての金属骨格やインプラントの強化。
完全な人間を目指した結果、オトジャは、いつしか人間以上の存在になってしまっていた。
『俺は、もう人間にはなれないんだ』
培養液に浸かっていた頃の知性と感情は、テレパシー能力と共に根こそぎ消えた。
出来たばかりの体と、生まれたばかりの未熟な心で、オトジャは無意識にそう悟った。
- 332 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 22:57:57 ID:E9yCDWZ.0
-
しかし、こうも思った。
『まともな人間になれないなら、いっそ突き抜けた存在になればいい』
ナンバーワンでオンリーワン。
オトジャは「最高傑作」になろうと誓った。
戦うと決めてからは、兄者に黙って腕に小型ミサイルを仕込んだりして叱られたものだ。
(;´_ゝ`)『お前は人間なんだ、オトジャ!兵器の真似ごとなんか辞めろ!』
(´<_` )『何を言ってる。俺は分類上サイボーグだ、ロボットだ。体の殆どが無機物で出来た人間なんかいるものか』
(;´_ゝ`)『オトジャ、そうじゃない!俺が言いたいのは……!』
(´<_` )『ロボットは完璧なんだ。俺は完璧な存在になりたい』
普通の人間として生きろと説得されたものの、オトジャは耳を貸さなかった。
そうして、兄者がようやく自分の過ちに気づき、悔やんでも後の祭りだった。
しばらくは口論が続いた。兄弟揃って、筋金入りの頑固だったのだ。
時には殴り合いの兄弟喧嘩にも発展し、ジーナやモナーから折檻を受けたりもした。
『強くなることの何がいけない?戦うことの何が悪い?』
いつしか、人を見下し、常に頂点であり続けることを目標とするようになっていた。
一時は、自分に命令し続ける兄の上司、ジーナを疎ましく思い、牙を剥いた事もあった。
現在の状況から察する通り、オトジャの蛮行は兄者たち周囲によって止められた。
(´<_`#)『離せ!俺は最強だぞ!あんな幼女が俺より上だと?ふざけるな!』
(#´_ゝ`)『いい加減にしろ、オトジャ!これだけ暴れればお前も充分だろう?何がお前をそうさせたんだ!?』
(´<_`#)『それは俺の台詞だ!戦う目的でなければ、何故俺を創った?俺の存在意義は何なんだ!?』
その後も、何度も兄弟は衝突した。
任務を放棄したり、自分より強そうな相手に喧嘩をけしかけたり、勝手に自分を改造したり。
終いにはオトジャの殺傷処分も辞さない事態にまで発展したが、
爪゚ー゚)『結果を見て、むしろ安心したわ。投資した甲斐があるというものよ』
等とあっけらかんと笑って、オトジャの愚行をまるっと許した。
- 333 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 22:59:35 ID:E9yCDWZ.0
-
(´<_`メ)『解せん。どうしてあの女は俺を許したんだ。何故壊そうと思わない?』
兄弟揃って謹慎処分を受け、独房の中で、オトジャはジーナの真意を図ろうとした。
弟の素朴な疑問を聞いて、兄者は苦笑を洩らしていた。
(´<_`メ)『何が可笑しい。失敗作の俺を蔑んでいるのか?』
(メ´_ゝ`)『違う違う。寧ろ、大成功さ。今回の件は冷や冷やしたけどね』
(´<_`メ)『……?』
(メ´_ゝ`)『俺さ、お前が自分の事をロボットだって言って、凄くショックだったんだ』
だが、己の心の内を語る兄者は、どこか晴れ晴れとしていた。
その日は珍しく雲が薄い日で、格子戸の隙間から月を見る事が叶った。
(メ´_ゝ`)『でも、お前とぶつかり合って、お前の心を知ることが出来て、俺は凄く嬉しいんだ』
(´<_`メ)『兄者は馬鹿だな。ロボットに心なんて、ある訳がないだろう』
(メ´_ゝ`)『あるんだよ。悩んだり、怒ったり、考えたりするのは、お前に"心"がある証拠だ』
つん、と兄者はオトジャの胸の部分をつついて、そう言った。
その時のオトジャには、理解出来なかった。
左胸を開けても、心臓と、運動に耐えるための補助ポンプがあるだけなのに。
( ´_ゝ`)『自分の存在意義を探すのは、人間だけさ。誇っていい、お前はオトジャという一人の"人間"だよ』
(´<_` )『俺が、人間?』
( ´,_ゝ`)『ああ。高慢ちきで、意地っ張りで、喧嘩好きで、嫉妬深くて、気難しがり屋で、
俺にとっちゃ、まさに最高に出来の良い"流石な弟"さ』
(´<_`;)「うおおおおおおおお!!こんな時に昔を思い出すとは!これが走馬灯って奴かァアーーーーっ!?」
爆発音が絶えず響き渡る。
外の連中が、この情景を「特撮映画の一環」として片づけているのが幸いだ。
- 334 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:01:20 ID:E9yCDWZ.0
-
『耐えろオトジャ!今プログラムを書き直している!あと3分ほど頑張ってくれたら死んでもいいぞ!』
(゚<_゚ ;)「死んでたまるかクソがァーーッ!意地でも生き残ったらァーーーー!!」
『その調子だオトジャ!RunRunMoreRun!!』
叫びながら腕を振るう。爆弾が空中で一瞬停止し、段違いに小規模な爆発を起こす。
走りながらバリアでミサイルを包囲して封殺、という荒技は、何度やっても神経を使うものだ。
今回の任務は、VIP社の信用を落とさぬためにも、街を壊すわけにはいかないのだから、オトジャにとっては世知辛い。
それに、オトジャはただ無闇やたらに走っているわけでもない。
゚ ゚ ギラッ!
【 】と(゚<_゚;#)「そこかァーーッ!!」
( ;゚ ゚ )そ「!」
オトジャの眼光が鋭くなるや、瓦礫をひとつ掴み、投擲する。
時速100kmを超える速度で投げられた煉瓦が、ある一点の空中で不自然にぶつかり、砕けた。
ステルス機能を失ったロボットが、IABと、それを支える脚立と共に出現する。
( ;゚ ゚ )「目標接近、迎撃シマス――」
(゚<_゚ #)「遅ェ、よッ!!」
相手ロボットが、足元のロケットランチャーを掴むものの。
撃たせるより早く、オトジャの怒りのドロップキックが炸裂。
得物を掴んだまま無様に地面を転がるロボットに、オトジャは容赦なく進撃する!
(´<_`#)「これは俺の分、これも俺の分、これも俺の分、そしてこれは俺の分だァーーッ!!」
殴る蹴るだけに飽き足らず、相手がロボットというだけあり痛恨のコンボ技を次々決めていく。
相手に立ち上がらせる暇も作らず、急所を狙い技を叩きこむ!
( ;゚ ゚ )「ゲ、迎撃、ゲイ…………」
(´<_`#;)「随分と固いボディだ、なッ!!」
( ;゚ ゚ )「ガッ!!」
オトジャの満身の力を籠めた蹴りが、ロボットを吹き飛ばす。
ギコより性能が劣るとはいえ、オトジャも戦闘に特化した足腰を持っている。
それでも敵ロボットは相当固い体をお持ちのようで、攻撃に耐え続け、反撃に出る。
- 335 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:03:44 ID:E9yCDWZ.0
- ( ;゚ ゚ )「!」
(´<_`;)「げっ」
蹴り飛ばした先が悪かった。
ロボットは砕かれた機体を無理に動かし、這ってIABの元に転がる。
そして、残った腕でオトジャに残りの弾を全て集中掃射しようとし――
『再プログラミング完了!!』
(><_<;)「わ――――――!!」
閃光、爆風、轟音――。
IABはバリア内で発信された特殊電波をモロに受け、発射される前に自爆したのだ。
あちらこちらで、IABを搭載した兵器が連鎖的に爆焼する。
やがて、――静寂。
『オトジャ、オトジャ!?大丈夫か!?』
周辺はまさに、戦場跡地と化していた。
爆発の余波で千切れ、転がった無線機から兄者の声が虚しく響く。
耳鳴りが兄者を襲い、唇が震えた。嫌な予感が背筋を覆う。
「――――――――」
『オトジャ!? まさか、死――――』
(´<_`;)「殺すな! 大丈夫なわけあるか、馬鹿!」
瓦礫を蹴飛ばし、砂だらけのオトジャがにょっきり頭を生やす。
弟の無事を確認するや否や、兄者の声がいつもの調子に戻った。
『あ、良かった。巻き込まれてたらどうしようかと……』
(´<_`;)「モロに巻き込まれたってーの!俺でなきゃ死んでたぞ!」
- 336 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:12:51 ID:E9yCDWZ.0
- ぶちぶち文句を言いながら、無線機を拾い上げる。
バリアが間に合って助かった。発射停止と自爆するタイムラグが、オトジャの命運を分けたのだ。
(´<_` )「全く――色ん意味で、兄者は流石だな」
『んんー?そりゃーオトジャ、俺達は世界で一番、流石な兄弟だからな!』
わっはっは、と調子よく笑う兄者。
よく通る声に、オトジャの頬も自然と緩まざるを得ない。
彼はこういう時こそ、常に思う。
こんなに不出来で完璧な兄がいるから、自分はもっと、強くありたいと願うのだ。
天才の兄の隣に、最上の自分が立つこと。
それが今の、自分の存在意義なのだから。
(´<_` )「……さて、こっちは済ませたし、ジョギングがてら加勢にでも行くか」
『そいつは良いな。時にオトジャ、小型ジェットはどうした?』
(´<_` )「ああ、ペッシャンコになっちまったんでな、燃えないゴミに捨てて……」
「『うわああああああああああああーーーーーっ!!』」
意表を突くように突然、空にあらん限りの男の声が轟いた。
『お、おい何が起きて……≪ガシャーン!!≫おい、これは……』
(´<_`;)「兄者!?何が起きた、応答してくれ!兄者ーーーーっ!!」
何事かと察知する前に、無線向こうがにわかに騒がしくなり、兄者からの通信も途絶える。
急展開についていけず、茫然と立ち尽くすオトジャ。
直後、地響き。振り返り、堪らず舌打ちが漏れる。ひとまず、分かった事が一つ。
(´<_`;)「チッ。マジに脳天ぶち抜かれたいのか、あのポンコツめ……!」
まだ戦いは、終わっていない。
.
- 337 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:14:17 ID:MYlaB4GI0
- おお来てた
とりあえず兄者すっげーVIP社バンザイ
- 338 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:15:06 ID:Dw5VOvkE0
- 流石だよな お前ら
- 339 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:15:19 ID:E9yCDWZ.0
- 4話終わり。5話は早ければ夜中にでも。
本当にぶっつんぶっつんで申し訳ない。読者皆様にはご迷惑おかけしました。
あと、だいぶ遅れたけど、思いの向こう側の作者さんがRobots4話の絵を描いてくださってました!いやっほォーーーー!!しかも漫画!
目茶目茶カッコ良い!この場を借りて感謝を述べさせていただきます!
応援して下さった読者様にも、感謝のキワミ!!
- 340 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:19:13 ID:HYixQEY20
- 乙乙!
- 341 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:19:52 ID:E9yCDWZ.0
- おまけ。登場+戦闘していたキャラクターの戦闘力数値化+三行説明。
『(,,゚Д゚)』 ギコ/G-1K:0 500/500
Mental age/25〜30 Sex/male Height/170 Weight/150
Level:5
ST(Strength/体力):●●●●● 100/100
PO(Power/攻撃力):●●●●● 100/100
D(Defense/耐久) :●●●●● 100/100
SP(Speed/俊敏性):●●●●● 100/100
T(Technique/技術):●●●●● 100/100
GICグループトウキョウVIP支社の非常勤務員。
本編でも負け知らずの「最強」の戦闘ロボット。瞬間移動能力を持つ。
好きなダンスはアルゼンチンタンゴ。
『('A`)』 鬱田ドクオ(Dokuo Utuda) 240/500
Age/24 Sex/male Height/187 Weight/71
Level:2
ST(Strength/体力):●●○○○ 40/100
PO(Power/攻撃力):●●○○○ 40/100
D(Defense/耐久) :●●○○○ 40/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●○○ 60/100
やる時はやるキングオブヘタレ。俊敏さが取り柄。
クールに密かな恋心を抱いている。トラブルに巻き込まれやすい体質。
好きな体の部位はおっぱい。
- 342 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:20:45 ID:E9yCDWZ.0
- 『( ´_ゝ`)』 流石兄者(Anija Sasuga) 220/500
Age/28 Sex/male Height/179 Weight/70
Level:2
ST(Strength/体力):●○○○○ 20/100
PO(Power/攻撃力):●○○○○ 40/100
D(Defense/耐久) :●○○○○ 20/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●●● 100/100
様々な分野に精通する生き字引、人呼んで天才博士。
主に情報収集やギコ達ロボットのメンテナンス等、サポートに徹している。
好きな偉人はキュリー夫人。
『(´<_` )』 流石オトジャ(Otoja Sasuga) 380/500
Mental age/18 Sex/male Height/179 Weight/130
Level:4
ST(Strength/体力):●●●●○ 80/100
PO(Power/攻撃力):●●●○○ 60/100
D(Defense/耐久) :●●●●● 100/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●●○ 80/100
兄者の実弟でありサイボーグ。スパコン並みの演算能力と電磁バリアを搭載している。
曰く性格は、高慢で、意地っ張り、かつ喧嘩好きで、嫉妬深く気難しい性格。
好きな著作は「アルジャーノンに花束を」。
- 343 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:22:25 ID:E9yCDWZ.0
- 『从 ゚∀从』 高岡ハイン(Haine Takaoka) 140/500
Age/14 Sex/famale Height/153 Weight/48
Level:1
ST(Strength/体力):●○○○○ 20/100
PO(Power/攻撃力):●○○○○ 20/100
D(Defense/耐久) :●○○○○ 20/100
SP(Speed/俊敏性):●●○○○ 40/100
T(Technique/技術):●●○○○ 40/100
ギコを慕う現役中学生。Aカップ。
性格に合わず体育と数学と科学が得意。無重力靴を意のままに操る。
好きなおやつはコーヒーゼリー。
『爪゚ー゚)』 ジーナ・C・インテグラル(Jena・C・Integralth) 180/500
Age/14 Sex/famale Height/158 Weight/50
Level:2
ST(Strength/体力):●●○○○ 40/100
PO(Power/攻撃力):●○○○○ 20/100
D(Defense/耐久) :●○○○○ 20/100
SP(Speed/俊敏性):●●○○○ 40/100
T(Technique/技術):●●●○○ 60/100
GICグループトウキョウVIP支社の若き社長。
年齢に反して商才を発揮するエリートガール。
好きな男性のタイプはガタイの良い年上(本人談)。
- 344 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:25:08 ID:E9yCDWZ.0
- 今回はこの6人のみ。キャラクターが増えるたび表も増えるよ!やったね!
从 ゚∀从<オレ今回活躍してない……
( ´∀`)<大丈夫ですモナ、次回(多分)出れますモナ
川//‰ ゚)<…………
それでは皆様、次は5話で逢いましょう!
ラノベ祭りに参加する方々は頑張ってください!
- 345 :名も無きAAのようです:2012/11/17(土) 23:31:56 ID:2d9XBJGs0
- 乙
いずれはモナーやクールさんのプロフィールも出るのかな
- 346 :名も無きAAのようです:2012/11/18(日) 12:16:19 ID:onTHooG.0
- おつおつ
- 347 :名も無きAAのようです:2012/11/18(日) 13:56:40 ID:lTi9GWMM0
- 乙ー!
- 348 :名も無きAAのようです:2012/11/20(火) 19:12:14 ID:YAm7jUJQ0
- 作者です。
ラノベ祭り参加してたのでこちらがおろそかになってました。すみません。
早ければ今日の夜中にでも投下出来るよう努力します
- 349 :名も無きAAのようです:2012/11/21(水) 12:18:26 ID:TcsVdYeY0
- 待ってるー!
- 350 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:12:36 ID:.SXFL1qo0
- 超短いけど5話ちょろっとだけ投下
- 351 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:14:09 ID:.SXFL1qo0
-
人が命輝き、己が心躍る。
心臓が躍動し、血流が熱を持つ。
ああ愛しき、私の戦場。
.
- 352 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:15:04 ID:.SXFL1qo0
-
act5:A couple of face
.
- 353 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:15:48 ID:.SXFL1qo0
-
オトジャの戦いから時を巻き戻し、国立VIP中学校。
ハインが所属する3年B組は、現在シラヒーゲによる世界史の授業中。
老人の授業とはどうしてこうも眠気を誘われるのか。
从 -∀从~゚ ウツラウツラ
( ´W`)「……ここが重要じゃ。15年前に米露中ヒューマノイド戦争が勃発したわけじゃ。君らが生まれた年じゃのう」
从 -д从~゚ ファァー
( ´W`)「……そして、6年前に戦争が終結したわけじゃな。皆も記憶に新しいじゃろう」
从 ゚∀从 ……
退屈も極まれり。ハインは外に視線を移す。
今日の雲は割と薄めだ。雨はこの一週間は降らないと予報で言っていた。
窓に映った、後ろの空白の席が目に入った。
⌒*リ´・-・リ「今日はジーナちゃん、お休みみたいだね」
从 ゚∀从「ん? おう」
同じく空いた席を見やり、ヒソ、と隣の席の友人が囁きかける。
ハインは気の抜けた返事を返すだけで、ぼぅっとしている。
⌒*リ´・-・リ「いつも休んでるけど、体悪いのかなあ?」
从 ゚∀从「さあな。でも、体育のある日は決まって来るじゃないか」
⌒*リ´・-・リ「うーん、そうだよねえ。学校、嫌いなのかなあ?」
从 ゚∀从(ギコにメールしよっかなー。あ、でも怒るかな)
友人と駄弁りつつ、とっくに手はノートの板唱を諦めていた。
タブレットを机の中で弄りながら、残りの時間をどう過ごそうかと思案していた時のこと。
- 354 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:17:24 ID:.SXFL1qo0
-
ズ、ン――――――――!!
:从;゚∀从:「!?」
:⌒*リ;´・-・リ:「きゃああああっ!?」
教室を、いや、校舎全体を襲う振動。
まどろみに包まれ、平穏だった教室を恐怖とパニック、女子生徒の悲鳴が混じり合う。
しかし教員のシラヒーゲは子供たちと違い、伊達に年は食っていない。
:(;´W`):「皆、すぐに机の下に隠れるのじゃ!」
⌒*リ´;-;リ「うええん、怖いよぉーー!」
:从;゚∀从:「……」
地震かと思われたが、揺れは意外にも早く収まった。
しかし安心した所で新たに1、2、3……断続的に揺れが襲ってくる。
それだけでなく、普段聞くことのない、爆発音も伴うのだ。
子供たちは更に混乱する。空気を伝って窓ガラスが震え、卓上の物が次々と落ちる。
(;゚д゚ )「な、何が起きてるの、一体!?」
从;゚∀从(この揺れ方……近い!?)
ハインは恐怖も忘れ、机から飛び出し窓のへりを掴んで外を覗き見た。
胸騒ぎがした。これは地震ではなく、天災がもたらす異変でないことに、直感で察していた。
爆音に時折肩を竦ませながらも、ハインは飛びこんできた光景に息を飲み込んだ。
女生徒たちも、クラスメートの様子を訝り、倣って外の景色を伺った。
(;゚д゚ )「な……なに、あれ……」
生徒の一人が、震えた声で誰にともなく問いかけた。
通学路であるバスターミナルを中心にして、半透明の青白い、電磁波を撒き散らすドームが完成されていた。
ドームの内部では、特撮映画でしか耳にすることのないような、激しい戦闘音がこちらまで届いてくる。
ハインが外を眺めていた時にはなかった光景だ。
これには一同、茫然とするしかない。
目にしたことのない「非日常」を、一同は食い入るように見つめていた。
- 355 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:18:43 ID:.SXFL1qo0
- (;^ω^)「皆、無事かお!?」
(;´W`)「おお、ブーン先生!生徒はみな無事ですじゃ」
(;^ω^)「良かったですお……ほら皆、危ないから避難するお!」
揺れが徐々に小さいものになってきた頃、太めの数学教師・ブーンが飛びこんできた。
ぞろぞろと他のクラスの生徒たちが廊下を歩く。
シラヒーゲ達に促されるまま、3-Bの子供たちも廊下に出る。
(∀゚;从从 チラッ
⌒*リ;´・-・リ「ハインちゃん、早く外に出よう?」
从 ゚∀从「お、おう」
友人に手を引かれるままに、ハインも教室を退出する。
しかし、落ち着かない様子で、何度も外に気をかけるように意識をやった。
( ^ω^)「余所見しちゃ駄目だお、ハインちゃん。早くシェルターまで行くお!」
从;゚∀从「はあい」
そうは言われても、ハインの歩みは止まる。
从;゚∀从(……なんで今、ギコの顔が頭に浮かんだんだろ)
教室を出る直前の、ほんの一瞬だけ。なぜか脳裏に同居人の横顔が過ぎった。
暗い色を瞳に湛えた、喜怒哀楽を一切出さない戦士の表情が、シェルターに飛び込んでも、こびりついて離れなかった。
(;A;)「うぎゃああああああーーーーーーー!!」
(,,゚Д゚)「――――――ッ!!」
オトジャと散開した直後、装甲車へ特攻した二人はどうなったのか。
時系列を追って見て行くとしよう。
赤いボディーは昼の流星となり、直角90゚で地面に接近する。
舗装された道路にダイヴする直前、ギコはペダルを勢いよく踏みこみ、ハンドルを力任せに引いた。
一気に減速したウィンドバイクは軌道修正し、また勢いを取り戻す。
ドクオが我に返ると、バイクはギコ達を乗せ装甲車と並走する体になっていた。
- 356 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:19:39 ID:.SXFL1qo0
-
(,,゚Д゚)「"ストライカー"か……国道でカーレースする為のモンじゃないんだがな」
アメリカ陸軍の装輪装甲車、M1126ストライカーICV。
整地においては精々、時速100kmほどしかスピードの出ないシロモノだ。
だが魔改造されているのか、時速130kmを出さないと、とても追い付けない速さを出している。
(;'A`)「ギッギコさん!前、まえ!!」
(,,゚Д゚)「む!」
前方へと注意を向けた直後、道路標識がギコに迫る!
咄嗟にドクオがハンドルを奪い、力任せにハンドルを倒し左に逸らした。
道路からはみ出し、装甲車から距離を置くことになったが、直撃は免れた。
(,,゚Д゚)「お前、初心者の癖に操縦が上手いな」
(;*'A`)ゞ「え、いや〜……見よう見まねで出来たっていうか……」
(,,゚Д゚)「じゃあ、操縦は任せたぞ」
(;*'A`)ヽ「えっ」
直後、ギコは何の前触れもなくハンドルを手放した。
ドクオは声にならない悲鳴を上げながら操縦桿に掴まり、体勢を立て直す。
ストライカーに搭載された、12.7mm重機関銃M2の銃口が向けられようと、ギコは眉一つ動かさない。
(,,゚Д゚)「そんな小っさいタマで俺達を殺ろうってか……面白い」
ミサイルが僅かに逸れ、爆散。ドクオは相変わらず悲鳴を上げる。
ギコは動ずることなく、薄汚れた袋から、ギコも自身の次なる武器を抜き出した。
腕に抱えたのは、40mm擲弾発射器Mk19――とても人間が扱える類ではない。
だが、ギコなら出来る。人と、ロボットの限界を超えたギコならではの荒技だ。
(,,゚Д゚)「食らいな、特製だぜ」
躊躇いもなく、引鉄を引く。
弾は装甲車に向かって直線状に突貫、主武装を易々と吹き飛ばす。
そもそも向こうも予期していなかっただろう。ストライカーの強度は、40mmに耐えられないのだから。
だが相手とて負けない。すぐさまウィンドバイクに照準を定め、弾幕を展開する。
.
- 357 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:20:22 ID:.SXFL1qo0
-
(;'A`)「嫌ァーーーー!!ミサイルの雨霰第二弾ーーーー!」
(,,゚Д゚)「避け続けろ、ドクオ。障害物を利用するんだ」
(;'A`)「んなこと言われたってええええ!!」
サイドカーから少しずつ体の位置をずらしながら、弾を避け続ける。
インポッシブルな課題を、それでもドクオはこなそうとする。
ギコの厳しい訓練と模擬戦闘の過酷さに比べれば、どうという事ではない。
――と言い聞かせでもしなければ、この場で失神の一つでもしていただろう。
その間にギコと装甲車は弾幕の応戦を続ける。
通常、Mk19は射程距離75m未満だと射手にも被害が及ぶことがあるが、ギコからすれば無問題だ。
もっとも、隣で死に物狂いでハンドルを操作するドクオは堪ったものではない。
(,,゚Д゚)「ドクオ、もう少し距離を縮めるぞ」
(;'A`)「無理ですって!これ以上はギコさんもリムジンにも被弾しちゃいますよ!?」
(,,゚Д゚)「ふむ」
ウィンドバイクと装甲車の幅はどんどん広がっていく。
装甲車の前方10mには、相変わらずバック走で爆走するリムジン。
少しでも気を緩めれば、追突も辞さない状況。
(;'A`)「どうするんですか、ギコさ……」
ドクオの質問を遮り、銃声。ガラスの割れる音。
リムジンの運転手席から銃弾が飛び出し、装甲車に当たって跳ね返った。
転瞬の間に、事態は急速に予期せぬ方向へ展開する。
リムジンの長い車体が道路上で華麗な弧を描き、正しくはドリフトし、
装甲車がリムジンを追い抜くという珍事態へと発展した。
(;'A`)「えっ………………」
(; A ) ≡' ` ポーン「ええええええええええええええ!?」
なす術もなく、流星の如き速度でリムジンは流されていく。
さながら勢いを付けすぎた水流に押し流される流し素麺のよう。
- 358 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:21:03 ID:.SXFL1qo0
- しかし幸か不幸か、装甲車は最早リムジンを追いかける事を止め、
攻撃対象をギコ一人に絞り、尚も弾幕を止めようとしない。
相手は余程の馬鹿か、ギコの脅威を感じ取ったか、どちらか定かではない。
(,,゚Д゚)「何にせよ、状況は好転したな」
(;゚A゚)「ギコさん"好転"の意味分かって言ってます!?」
(,,゚Д゚)「言語解析プログラムは概ね正常だ、問題ない」
再び、弾の嵐。無数の銃弾がしゃにむに飛来する。
バイクと装甲車の距離は益々広がる。ギコは目を細め、リムジンへ視線を送った。
それからドクオとを交互に見ると、唐突にこう切り出した。
(,,゚Д゚)「ドクオ、装甲車の後ろにひっつけろ。スピードを落とすんだ」
(;'A`)「うえいっ!?で、でもそんな事したら……」
(,,゚Д゚)「早く」
刺し殺しかねない鋭さの眼光で睨まれ、ドクオはスピードを緩めた。
すかさず、装甲車から突き出た主砲がこちらへと照準を定める。
(;'A`)「ひいいいいっ、やっぱり狙ってきたああ!!」
パニックに陥り、逃走を図るべくハンドルを握り直す。
だがギコの右足が素早くハンドルを踏み固め、それを制した。
見上げてくる恨みがましい視線もいとわず、足だけでハンドルを切る。
(,,゚Д゚)「……ちょいと乱暴だが、こっちのが良いのかも分からん」
(;'A`)「そ、それってどういう……わあっ!?」
バイクがあらぬ勢いで装甲車の真後ろへとスライドし、死角が出来る一瞬。
ドクオの細い首根っこを捕まえ、持ち上げる。
脇の小袋から小さな装置を出し、ドクオの背中に貼り付けた所で、
(,,゚Д゚)「対象をレベル5と認定、これより作戦パート-Wを決行。今より分担作業に入る」
(;'A`)「あ、あのギコさん?」
- 359 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:21:49 ID:.SXFL1qo0
-
(,,゚Д゚)「俺があの装甲車を相手する、目標達成時間は5分だ」
(;'A`)「ちょっとギコさん、さっきのどういう」
(,,゚Д゚)「お前の方は社長を頼むぞ。あっちにはモナーがいるからサポートだけで充分だ」
(;'A`)「ま、待って下さいよ!それじゃまるd」
(,,゚Д゚)「お前は基本的な受け身や避けなら既に会得済みだ、自分を信じろ」
(;'A`)「だから!それどういう意味ですか!?さっきから物言いに嫌な予感しk」
(,,゚Д゚)「マットを出す時は左のレバーだぞ、次から覚えておけ」
('A`)「あ、はい」
この間、僅か十秒。
ブゥンッ「あそぉれっ」(,,゚Д゚)ノリ -=≡'A`)
と_,彡'
-=≡゚A゚;)「ぎゃああーーーーーーーーーーーーっ!?」ピューーッ
(,,゚Д゚)bそ「Good Luck!」
放物線を描いて華麗に舞う、ドクオの体。
耐え難い情けない悲鳴を上げながら、リムジンのリアウィンドウへ頭から突っ込んでいく。
万が一に備えて既にレバーを引いておいたので、マットはきちんと発動しただろう。
(,,゚Д゚)「さて、パーティーの始まりだな。景気良く踊るぜ」
振り返りもせず、ギコは残りの銃器を全て担ぎ上げた。
足でバイクを操作し、自動操縦モードに切り替える。
ウィンドバイクはルートを確保すべく、装甲車の真上へと上昇する。
その瞬間を狙い、ギコは飛び降りた。
ズン、と天井に重みを持たせる着地。
車内の人間がギコの存在に気づいたか、愚かにもハッチを開けた。
- 360 :しまったsageるの素で忘れてた:2012/11/24(土) 02:22:53 ID:.SXFL1qo0
-
( ゚ ゚)「FREEEEZE!」
(,,゚Д゚)「そっちから開けてくれるとは親切だな。今日のパーティーの出し物は何だ?」
(# ゚ ゚)「Hold up!」
(,,゚Д゚)「成程、ポリ公ごっこか。俺はルールを知らないんで、良ければハウトゥーを教わりたいんだが」
( ゚ ゚)「SHUT UP! One more say,hold up!」
相手はマシンガンを片手にギコを睨めつける。
銃口をギコの額に向けたまま、降伏を要求する言葉を吐き捨てる。
ギコは肩を竦め、両手をあげた。
∩(,,゚Д゚)∩「ほらよ、――これでいいか?」
ただし――――上げた両手には、しっかとそれらを握っていた。
コルト-CM901。銃に詳しくない読者諸賢向けに分かりやすく言えば、突撃銃を二丁。
(; ゚ ゚)「What's!?」
面食らったエセテロリストに、引鉄を引かせる間もなく、ギコは安全装置を外し、
二つの銃口から飛び出した鉛弾が、情け容赦なく人間を肉袋に変えた。
「……!? …………!」
「…………! …!………?」
銃声に色めき立ったのか、車内が俄然、喧しくなる。
早口すぎて聞き取れないが、話題の中心が目の前の肉袋と自分であることは理解できた。
ギコは無表情で死体を見下ろし、邪魔とばかりに蹴飛ばした。
ズル、と肉袋は這うような音を最後に、夥しい血を撒き散らして車内に落下する。
無数の目がギコを見上げた。
その瞳に浮かぶ感情を、読み取ろうとも思わない。
何故なら数秒後には、彼等は「文字通り」消えて無くなるのだから。
(,,゚Д゚)「あばよ、チビ共」
ハットにコインを投げ入れる気軽さで、ピンを抜いた手榴弾を放り込む。
驚愕に染まった人間達の表情をよそにハッチを乱暴に閉め、ギコは道路へ飛び降りた。
- 361 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:23:33 ID:.SXFL1qo0
-
凹凸の激しいアスファルトの床を転げ、受け身を取り回転を止める。
そして装甲車へと振り返った瞬間、くぐもった爆発音。
連動するように、何度か爆発音。やがて――沈黙。
(,,゚Д゚)「ふぅっ」
立ち上がる。焦げた匂いが鼻を突いた。
ガードレールはあちらこちら凹み、周囲は薬莢がぶちまけられたよう。
吹き飛んだ装甲車のハッチが、時間を置いてガランッ!と金属音を鳴らし、転がり落ちた。
(,,゚Д゚)「タップしすぎたか。こりゃ社長に怒られるかも分からんな」
もうもうと立ち昇る黒煙が、人の焼ける臭みを乗せて漂う。
乗組員は全員死亡したと思われた。
――――が。
ギコが装甲車に接近しようと一歩足を動かした時。
突如、車体が場違いすぎる軽快なミュージックを流し始めた。
洋楽のリズミカルな音に合わせて、破壊された筈の車体が、おもむろに立ち上がる。
『戦闘・ヒューマノイド型に変更。トランスフォーム・プログラム起動』
装甲車が破損部分を自己補修しながら、その姿をみるみる変えていく。
主砲は分断され両肩部分に、タイヤは引っ込められて両腕に、車体から足のような物が突出し。
その形は最終的に、人に近いそれとなる。
|::━◎┥『トランスフォーム完了。第二次戦闘に移行します』
(,,゚Д゚)「……ヒュー。とっても、とっても『イカしてる』ぜ、本当に」
迷彩柄の約2mの巨体を見上げ、ギコは眉間に皺を寄せ口笛を吹いた。
トランスフォーム型ロボット・番型「歯車王」。
ハカタSoGoが支援する車メーカーが3年前リリースした最新作の戦闘プログラムナビだ。
学習能力はないが、自己修復機能を持ち、戦闘車を人型戦闘ロボットに変える「技術」を知識に蓄えている。
有り体に言えば、自らの体を「改造する」ロボット。
(,,゚Д゚)(まるでどっかの誰かさんだな)
.
- 362 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:24:20 ID:.SXFL1qo0
-
|::━◎┥ガションッ ダパパパパパッ!
(,,゚Д゚)「!」
両肩部分にあたる主砲の照準がギコに合わせられ、連射される。
ギコはそれらを避けながら、突撃銃で応戦する。
しかし弾は装甲によって弾かれた。
威力が足りないと判断し、ギコは再び重機関銃を装備した。
(:::゚Д゚)「成程、成程、大いに結構だ!読めたぞ、社長はよっぽど逢瀬のお相手の趣味が『良い』ようだ」
|::━◎┥『弾道修正、再計算、次弾装填します』
(::::Д゚)「なればこそ、お前みたいなのが相手で大満足だ。暴れるならばそれくらいの木偶が相手でなきゃあな」
|::━◎┥ガション
再び掃射。しかしギコは逃げることをせず、それどころか突撃する。
鉛の雨を掻い潜り、アスファルトの地面を蹴る。
宙に舞い、防御の一切が効かなくなる一瞬を、ギコは自ら作った。
銃口が自分に定められても、矢張りギコは目尻を動かすこともしない。
(::::Д゚)「Fire」
刹那、歯車王の眼球カメラを狙い、ギコの重機関銃が火を噴いた。
同時に装甲車の主砲から鉛弾が撃ち出され、人工スキンと戦闘服の一切を破いた。
ドウッと落ちるギコの体。歯車王もメインカメラをやられ、対象を映すことは不可能だ。
(#‰Д゚)「酷いことをしてくれたもんだ。『悪い子』だな」
|::━ ┥『メインカメラ破損。赤外線にて目標検索』
ノソリとギコは立ち上がる。スキンが破け、メタルの骨格が浮き彫りとなる。
あらぬ方向へ頭部を回す歯車王に大股で接近し、跳躍。
その角張った顎を、何の躊躇いもなく蹴り上げた。
頭部は嫌な音を立て、頭部とボディーの接続音がミシリと唸った。
|::━ ┥ガガッピー
(#‰Д゚)「悪い子にはお仕置きだ、そうだろ?」
- 363 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 02:25:49 ID:.SXFL1qo0
- 残りはラノベ祭り終わってから。
投下するっていったり投下しなかったりで本当ごめんなさい。
祭りが終わったら通常運転に戻ります。
みんながんばれ〜
- 364 :名も無きAAのようです:2012/11/24(土) 10:00:44 ID:4scHyIT.0
- 乙
続き楽しみにしてる
- 365 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 00:52:53 ID:KF7QyIb.0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
目の前で繰り広げられる接戦。
これがもし映画で、観客席が寂れたマンションの自室のソファであったなら、
3Dを使用したダイナミックなアクションムービーとして、バケットドーナツを手に楽しめたことだろう。
しかしこれは現実で、自分は逆走するリムジンの助手席に座って歯を食い縛り、
割れたフロントガラス越しに熱と飛び散る破片を受けながらその光景を見ている。
勿論、バケットドーナツなんて気の利いたものはない。
ついでに加えるなら、自分の命は風前の灯だ。全く、笑えないったらない。
爪゚ー゚)「あらあら、ミスターったらハッスルしちゃって」
(;∵)「この状況でよく笑っていられるな、お嬢ちゃん」
爪゚ー゚)「これよりもっとスリルあるアトラクションは幾らでも御座いますから」
(;∵)「ああそうか、いっ!?」
爆発。逸れたミサイル弾の一つが道路に墜落し、アスファルトの道を陥没させる。
そこらの頭の悪いマフィアでも、こんなに派手に暴れ回ったりしない。
まるで小規模な戦争。戦争ではリムジンでカーレースなどしないだろうが。
横の少女は危機感なんて欠片もない笑顔で、男を見ている。
(,,゚Д゚)i!i A )
特殊装甲車に対し、果敢にも、或いは無謀にも立ち回る二人の男。
一人は涼しい顔でロケットランチャーをぶっ放し続ける。
もう一人に至っては表情が死にかけていていっそ憐れだ。
爪^ー^)「皆頼もしい、選りすぐりの騎士でしてよ」
(;∵)「こりゃまた随分と顔色の優れねーナイト様なこって」
爆発から逃げるように、速度が上がる。
涼しい笑顔を浮かべていても、ジーナの焦りが伺えるようだ。
顔に打ちつける熱風から逃れるように顔を伏せ、タブレットに視線を落とした。
(;..)「! こいつァ……おい嬢ちゃん!」
- 366 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 01:30:49 ID:jkFWU0R60
- ん?きてるのか?
- 367 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 02:00:29 ID:WUSd6kJg0
- おお?
- 368 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 08:57:20 ID:EoVq67CI0
- 寝たのかな
- 369 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:42:46 ID:KF7QyIb.0
-
装甲車からのマークが外れ、遠隔からの射撃も途絶えている。
今なら敵を振り切り、VIP社へ逃げ込むことも可能、その事実を何よりタブレットのマップが教えてくれていた。
それをジーナに伝えようとし、ばっと顔を上げる。
( ∵)"
ひび割れたバックミラー。
運転手席のすぐ後ろに、ジーナの背中を護るようにモナーが座席にへばりつく。
何列もの座席の後方には、脳天を撃ち抜かれた横堀会社の社長の死体が横たわっている。
[(//‰'゚(;´∀`)]
筈だった。
(;∵)「な"っ……!」
恐怖を煽られるなんてものではない。背筋が凍るなんて表現こそ陳腐。
ゾンビパニックに遭遇したホラー映画の主人公は、このような心情なのだろう。
次にホラー映画を観賞する時は、主人公にさぞや共感が持てることだろう。
(//‰'゚)『ガ、ギ、ガガ』
その機会は、目の前の動く屍をどうにかしない限り、永遠に来ることはないだろうが。
(´∀`;)「!」
ビコーズの異常に感づいたのか、モナーもバックミラーの中の動く死体の存在を認めた。
顔を強張らせ、振り返る。ジーナは運転に集中しており後方には全く気づいていない。
機械的な動きで、非常に動きはゆっくりだが、確実に視線は三人を捉えていた。
(//‰'゚)つr=- チャキッ
(;´∀`)そ
ぎこちない動きで、落ちていたリボルバーを掴み、引鉄に指を添える。
銃口は真っ直ぐ、ジーナの頭部を撃ち抜かんと向けられていた。
焦燥にかられたモナーは咄嗟に、散らばった硝子の破片――特に尖って大きい一つ――を手にした。
- 370 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:43:38 ID:KF7QyIb.0
-
バッ(;´皿`)つ◇+「野郎ッ!」
(//‰'゚)つr=- <>≡=- "(´∀`;)「喰らえッ!」
"⊃
鋭利な先端を相手に向け、手裏剣のように音も無く投擲する。
空を裂き、剛速急で投げられた破片は、屍が引鉄を引く直前に銃口を掠め、照準をずらした。
直後、銃声。咄嗟に座席に隠れたモナーには直撃せず、
まだ頑張っていたフロントガラスを滅茶苦茶に叩き割った。
爪; ー )「きゃああああああーーーーーっ!?」
(; . )「わっ……うわあああああああああああああああ!!?」
いくらジーナが気丈といえど、燦然と降り注ぐ硝子の雨の前にどう対処出来ようか。
視界を奪われた矢先にハンドルを狂わせ、リムジンは道路上をダンスする。
車内はシェイクされ、目が回る。
怒声、続けざまに爆発、衝撃。
(;メ´∀`)「くっ……お、お嬢様!」
爪; ー )「う……」
(;∵)「痛でで……揺らさない方が良いぞ。俺もデコ切っちまった。糞ッ」
焦げ臭い匂いが鼻を突く。モナーは咄嗟に運転席を覗きこんだ。
頭を強く打ったらしい。声を掛けても呻き声を上げるだけだ。
一方でビコーズは硝子で額やら腕を浅く切っているが、大事には至っていないようだ。
動く屍へ振り返ると、先のドリフト事故に動じることなく起き上がろうとする。
((.゚μ//)フラフラ
(∵;)「うげっ!奴は不死身か!?」
(;´∀`)「いえ……奴は恐らく人造人間(サイボーグ)!
死ぬと強制的に私達を排除するようプログラムされていたに違いありません……」
(;∵)「さしずめ、ゾンビロボットか。全くゾッとしねえなあ、オイ」
ありえない角度で首がねじ曲がっても、立ち上がってくるゾンビロボット。
それが今まで自分を叱りつけていたあの上司だったのかと思うと、背筋が凍る。
- 371 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:44:50 ID:KF7QyIb.0
- モナーは座席越しに敵を睨む。
この狭い車内では到底戦える状況ではない。
せめてこの状況を覆らせる何かが欲しい。そう、「きっかけ」が。
<……ァァァァァ
そして、その「きっかけ」は。
(;∵)(何か、聞こえてくるような)
<アアアアアアア
(;´∀`)「……」
<ァァァァアアアアア
(.゚μ//)「?」
<ガシャァアアン ドォオーー――「ァぁあああああああわう」-=≡;A;)(. μ//)そ―――――ン!!
( ´∀`)
( ∵)
ドォオーンズシャアアアアッ>
(;´Д`);∵)そそ(思ったより芳しくない形で来たァァアーーーーーーー!!)
流星の如き速度で、頭からリアウィンドウに突っ込んできた。
.
- 372 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:45:32 ID:KF7QyIb.0
- 切っ掛けとなった未確認人型物体は、目にも留まらぬ速さでロボットゾンビに直撃。
とどのつまり、謎の方法で飛来してきたドクオが見事な捨て身タックルをかました、ただそれだけにすぎない。
しかし行動を起こすには、充分な間が出来た。
(;´∀`)「工場長!お嬢様をお願いします」
(;∵)「えええ!?一介のオッサンに何しろってんだ!」
(;´∀`)「私達で時間稼ぎをします。どうかお嬢様を、安全な所まで!」
言うや否や、フロント――ガラスが粉々に砕けて人が通れる程の穴が出来ている――を指差した。
ここから脱出しろということか。ビコーズは不安げな目線を送る。
モナーは上着を脱ぎ、硝子を払う。そして意識の戻らないジーナに被せ、早く行けと急かす。
(;∵)「うう……」
責任重大。その四文字が、工場長の四十路肩に重く圧しかかる。
元より命を狙われる原因は腕の中の少女なのだが、仮にも相手は大手会社の社長だ。
<あばばばばば!助けてェエーーーー!
ドクオがいる方向から風船が膨張するような音がする。
背負っていたマットが膨らみ始め、最初はドクオの頭部と背中を守っていただけが、
どんどん肥大化し過ぎて車内の後部座席を埋め始めている。
(´∀` )フイッ「……それでは」
(∀` )「任せましたよ」
(;∵)「あ……」
さほど大きくない背中からは、物腰柔らかな態度からは想像もつかない威圧感が漂っていた。
彼の言う任せたは、邪推すれば「早く出ていけ」とも含んでいるようだった。
勝算はあるのか。否、寧ろ命を捨てる覚悟か?
爪; ー )……
こんな子供一人のために?
(;∵)「ッ……!」
「くそったれの早死に愛好家共め」。
ジーナを抱える力を強め、ビコーズはフロントのヘリに足を掛け、外へ飛び出した。
小さく毒づいた一言が、モナーの耳に届いたどうかは、今日分からないままだ。
- 373 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:46:14 ID:KF7QyIb.0
-
(; A )「ふぎゅうううう!内臓出りゅううううう!!」
(//‰'゚)「ッ……!」
マットは際限なく肥大化していく。
このままではゾンビロボット諸共、ドクオを潰してしまいかねない。
モナーはこれまた一つガラスの破片を拾い上げ、滑るように接近する。
( ´∀`)
( ‐∀‐)スッ
――お待ちかねモナ。キミの出番だモナよ
――おォ?レディース、「お嬢ちゃん」がこの俺を指名たぁ、いよいよ切羽詰まってるって事カ?
ゾゾゾ。
白い肌が、文字通り赤く染まる。
体中を巡る血の色が滲み出すように。燃え上がる殺意が色づくように。
頭の天辺から、指先まで、至るまでに鮮烈な、赤に変色する。
――……後輩君だけは手を出したら駄目モナよ。あくまでも敵は一人(オンリーワン)モナ
――オーケイ!ハードルが高い程喜ばしいことはないってことヨ!……そんじゃあ、
( ∀ )
( ∀゚ )ギラッ
ぽったりとした瞼が開かれて。殺気に満ちた、黄色い瞳が乱暴に光る。
- 374 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:47:13 ID:KF7QyIb.0
-
( ゚∀゚ )「派手に、暴れようかネ」
.
- 375 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:48:14 ID:KF7QyIb.0
-
硝子の破片を持つ手が、ペン回しの要領でくるりと回すと、黄色の双眸が膨れ上がるマットを見定める。
( ゚∀゚ )「荒巻流参の陣‐刹那‐」
人差し指と中指の間に挟んだ硝子の切っ先が、滑らかにマットの上を走る。
その間は、名の通り刹那的な程に、一瞬の出来事。
一拍遅れて、燐光輝き、切っ先が描いた通りに光が走る。途端、マットが裂けた。
アドバルーン級の風船が破裂したら、このような音が出るのだろう。
(×A×)クラクラ
( ゚∀゚ )「邪魔」
(×A×( ゚∀゚ )ヒョイッ
破裂音で混乱しているドクオを、軽々と樽担ぎで背負う。
身長差や体格を考えると難儀なことなのだが、確かにドクオを片手で担いでいる。
(//‰'゚)ギ、ギギ
( ゚∀゚ )「オウラッ!」
立ち上がろうとしたタイミングで、容赦なく横堀の頭部を蹴る。
まるでチンピラの戦法のようだ。普段のモナーからは想像もつかない、サディズムに満ちた笑みを浮かべる。
が、ゾンビロボットは反撃するようにモナーの足首を捉えた。
( ゚∀゚ )「いやん、エッチ」
しかしその手首ごと、もう片方の足の底で、素面の彼が言わないようなおチャラけた言葉と一緒に踏み潰した。
砕かれた手首の先は歯車や内部筋肉を露出させ、握力を消失し、ゴトリと転がる。
( ゚ '゚)ギラッ
(×A×( ゚∀゚ )「おろ?こっちもかヨ」
直後、今度は完全に沈黙していた筈のロボットが動き出す。
ぎこちない動きは、自律型のそれではない。明らかに遠隔操作で誰かが動かしている。
もしくは、元々プログラミングされていたシステムにより時間差を置いて再起動したか。
どちらの解釈を取っても答えは一つ、「とてもしぶといロボット」だと評価せざるをえない。
- 376 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 17:59:13 ID:KF7QyIb.0
-
(×A×( ゚∀゚ )「おうおう、くたばったと思ったのによゥ、ガッツあるなお前」
密室状態、加えて二対一の挟み打ち。
絶対不利な状況において、だが、彼はとても上機嫌で、悦に浸っているような蕩ける表情だった。
快楽、悦楽、どの言葉を当てはめるのが一番妥当であろうか。
最もシンプルに表現するならば、彼はこの状況を「楽しんでいる」。
( ゚ '゚)ギギ
(×A×( ゚∀゚ )「おっと、これには触るなよォ。傷ひとつ作ろうもんなら、オカマちゃんに怒られちまう」
後方から運転手ロボットが腕を突きだしてくる。
すかさずうねる様に躱し、反対に腕を捕まえてやる。
そうしておいて、彼はドアノブを捻るように軽く、運転手ロボットの腕を引き千切った。
( ゚ '゚)ギ、ガガ
(;×A×( ゚∀゚ )つ∩「ああ悪い、取れちったい」
けらけらと、いっそ無邪気に笑う。
剥き出しになったコードが切断口からぬるりと伸びている様は、
猟奇映画でありがちな筋肉の筋のようだ。
(×A`)「ん、うぐぐ……?」
( ゚∀゚ )「あらら、起きちゃった。寝てた方が良いゼ、ミサイルボーイ」
(i!i'A`)「……も、モナーさ……?」
意識を取り戻したドクオは、自分を抱えている男に目を向けた。
服装は見覚えのある執事服だし、顔つきも面影はある。
しかし、発せられる殺気や歪んだ唇、肌の色は明らかに異様だった。
( ゚∀゚ )「ヒャヒャヒャ、お前からすれば俺は確かにモナーだろうけど、あのオカマちゃんとは一緒にして欲しくねえなァ〜?」
(;'A`)「? モナーさんだけどモナーさんじゃない?どういう……ヒッ!?」
(//‰'゚)ギギ、ガガ
( ゚∀゚ )「お喋りは後だぜボーイ。動けるカ?」
暢気に会話などしている暇はなく、男の背、ドクオの目の前にもう1体のロボット。
挟み打ちに掛かってくるる2体の人型が何者なのか、大体察しはついている。
が、この状態では(色々と)動けない。未だ膝が笑っている。
- 377 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 18:07:02 ID:T6OZgkTM0
- 来てたー支援
- 378 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 18:16:44 ID:yZlZ/1rc0
- 追い付いた支援
- 379 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 18:23:20 ID:KF7QyIb.0
-
(;'A`)「ご、ごめんなさい。腰抜けちゃって……」
( ゚∀゚ )「何だなんだァ、もう誰かと散々ファックしちまった後ってかい?」
(;'A`)「ちちち違いますよ腰が抜けてるんです!何言ってるんですか貴方!?」
( ゚∀゚ )「かァーーッ、情けねえ!」
硝子の破片はもう、マットを切り刻んだ時の衝撃に耐えきれず砕け散った。
それを好機と見たか、横堀の死体が二人めがけ突進する。
立ち直った運転手の顔も、観音開き式で開き、内蔵された機関銃が「顔」を出す。
(*゚∀゚ )「俺なんざ、この状況で思わず勃起しちまってんのによォーーっ!!」
(#;A;)「ぎゃあああーーーーーっ!?」
高笑いし、運転手が機関銃を撃つより早く、ドクオを木材の如く直線状に投げつける。
ドクオらがもんどり打って倒れた隙に、横堀が背後から残った拳を上段から振り下ろさんとする。
だが、躊躇なく撃たれた右腕がそれを防御し、跳ね返す。
(//‰'゚)「!」
( ゚∀゚ )「あーらよっと!」
がら空きの胴体に、手刀が捻じ込まれた。
腕が肌を裂き、骨を折り、肉を突く。
ズボ、と腕を引きずり出すと、手には埋め込まれていたピースメーカーと一緒に心臓もひり出される。
(*゚∀゚ )「ヒャッヒャ、良い締まりだったぜレディ〜?ヴァージンだったかい?」
(//‰' )ガガガ、ガガ
心臓部を奪われ、機動力を失った肢体が膝を折る。
男の足は軽く蹴り上げ、倒れた所を、何の躊躇いもなく頭を踏み潰した。
(*゚∀゚ )「Have a good sleep forever!」
――かつて戦争がまだ盛んだった頃、人類は「最強」を定義すべく、様々な遺伝子の配合に挑んだ。
ロボットの供給を考えるより以前、余り余ったヒトの数をもっと有意義に使おうと、研究に研究を重ねた。
その名は「ベスト・ヒューマン・プロジェクト」。
その失敗作であり、副産物が、彼――二重人格者=阿比谷モナーなのだ。
- 380 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 18:42:45 ID:KF7QyIb.0
-
( ゚∀゚ )「思ったよりヤワかったなァ、オイ?カーセックスは初めてだったか?」
ゴロリと物言わぬ死体を転がす。
こうなったモナーに、人らしい人格はほぼ皆無だ。
短絡的で、暴力的で、元の柔和で物腰柔らかいあの態度は消失してしまっている。
精神が成熟し、争いを好まず、穏和な性格のモナー。
反し、子供っぽく、闘争を生き甲斐とするもう一つの人格を、ジーナは「アヒャ」と呼んだ。
( ゚∀゚ )「うおおっ!?」
バチュン、と銃弾が一つ跳んでくる。
避けた先から見境なく銃弾が引っ切り無しに飛び交う。
(;'A`)「たっ助けて下さいいい!俺一人じゃどうにも出来ません!!」
バチュンバチュンバチュンッ!
( ゚∀゚ )「わっととと!ロボット一体位相手に出来ねえのかよ!さては童貞だなオメー!?」
(####゚A゚)「どっどどどどど童貞ちゃうわあああああああ!!」
(;゚∀゚ )「え、なんかゴメン」
ドクオは運転手に押し潰された状態で、羽交締めで拘束しているために、
天井にしか方向を定められない運転手が機関銃を発射を続けている。そのせいで跳弾しているのだ。
そうと分かれば、とアヒャは手に持った運転手の腕を、元の持ち主の顔めがけ投げた。
( [゚゚゚])そ ガコッ!
( ゚∀゚ )「ナイッシュー!今だ逃げろォ!」
(;'A`)「はっはいい!」
腕の切断口が機関銃の銃口をうまい具合に塞いだ。
ドクオは運転手を押し退け、リアウィンドウへ体を捻じ込んで脱出。
アヒャも前方のフロントから颯爽と体を滑り込ませ、リムジンから転げ落ちた。
二人とも走る。20メートル程離れた所で、リムジンは爆発した。
- 381 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 18:44:52 ID:KF7QyIb.0
- パソコンさんの調子が悪いので一旦休憩。
ようやく復帰です。9時か10時に再開。今日で5話終わらせられるといいなー……
- 382 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 19:56:42 ID:WUSd6kJg0
- お帰り乙
アヒャさんかっけー!
パソコンお大事に
- 383 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 20:47:23 ID:lPUJjTxA0
- おもすれー
- 384 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 22:04:49 ID:KF7QyIb.0
- 予定を押して30分からリスタート。
- 385 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 22:12:05 ID:Kc7DPDgY0
- 待ってるよー
- 386 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 22:39:27 ID:KF7QyIb.0
- 炎上するリムジン。
ガソリンの燃える臭いが、道路周辺に充満する。
偶に、リムジンだった物の一部(ハンドルやボディの欠片)が降り注ぐ。
( ゚∀゚ )「たーまやー」
(; A )ゼェゼェ
灰色の空へ吸い込まれていく黒い煙を見送りながら、アヒャは場違いな台詞を吐く。
ドクオは肩で息をしながら、十年寿命が縮まった思いだった。
間違いで送り込まれたとはいえども、我が身を呪う。
この会社に関わってからというもの、ロクな事が起きていない。
最も、首を突っ込んだ節も多々ある為、閉口せざるを得ないのだけども。
(;'A`)(で、でもこれで流石に、相手は……)
( ゚∀゚ )「――んー、弱ったゼ」
(;'A`)「は?」
( ゚∀゚ )σ「アレ」
人差し指が差す方向。燃え盛るリムジンを包む炎の、奥から。
陽炎の如く、揺らめく影。
(:::[゚::。])ブスブス、 ギギギ
(;'A`)「いいいっ…!?」
( ゚∀゚ )「人造人間でもロボットでも、フツーあそこまでヤラれて動けるかねェ?それとも絶倫?」
(;'A`)「ふざけてる場合ですか!?こっち来ますよ!?」
(:::[゚::。])ガション、ガション
敵はびっこを引き、体中の至る所に火を付けたまま、這い寄る。
全身のありとあらゆる箇所から内臓銃を展開させ、その照準を二人に合わせる。
(;'A`)「あわばばばば」
( ゚∀゚ )「弱ったなー、俺弱い物イジメ嫌いなんだけど……お?」
フと、アヒャが上空を見上げた。
隣のドクオもつられて、見上げる。瞬間。
- 387 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 22:53:01 ID:KF7QyIb.0
-
「作戦コード555、起動。多数の銃器確認、マスターの声認証受理完了」
―――(:::[゚::。])-=≡◎ バシュッ!
どこからともなく、飛来する電動ノコギリ。
運転手の全身から生えた銃口を、悉く切り刻んでいく。
( ゚∀゚ )ヒューッ
(;'A`)
運転手は突如起こった出来事に処理が追いつかず、周辺を見回す。
だが、無意味だ。
処理される物の前に、彼女を止めることは出来やしない。
|||ノ从 - )从ト|||
ヒュバッ
(:::[゚::。])
現れる、一つの影。
宙で弄ばれる艶やかな黒い髪、白い戦闘服に包まれた女性特有の曲線を描くボディ。
プログラムされた機械音声と一緒に空から落ちてきて、細い足が見事、運転手の頭を叩き潰した。
(:::[ ::。]) ガガガガガ、ガ…
「『処理』、完了です」
ズン、と地面に倒れる運転手の残骸。
一拍後に、着地する女性の影。
彼女は、本来この場にいるべき筈のない、完全なるイレギュラー。
川 ゚ -゚)
(;'A`)
(;'∀`)「く、クールさん……!?」
- 388 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 23:16:27 ID:KF7QyIb.0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
兄者からオトジャへの通信が途切れた時間帯に遡る。
丁度、タイミングからすると、ジーナが運転を誤り、ビコーズが悲鳴を上げた直後だ。
ミサイルの着弾の中、リムジン内のスピーカーが拾った彼の悲鳴は、ラボにも響いていた。
(;´_ゝ`)「お、おい何が起きて……」
何かの拍子に車内のカメラが壊れたのか、リムジン内で何が起きているのか把握がつかない。
ジーナ達の様子を確認すべく監視班に指示を出そうとする。その時。
背後から、甲高い砕け散る音、女性研究員の悲鳴が響き渡る。
振り返ると、巨大な試験管の一つが破裂していた。
(;´_ゝ`)「おい、これはどういう……」
背後に意識を持って行かれた拍子に、兄者の手がオトジャとの通信を切ってしまった。
しかし、彼がそのようなミスをしても、仕方の無いことだった。
川 -゚)ギラッ
(;´_ゝ`)
目の前で試験管を破壊した張本人は、兄者をこれでもかと睨めつける。
VIP市を騒がさせた連続殺人鬼・『処理屋』Cシリーズ001。
兄者の見込みでは、後2、3日は目覚めない筈だった。
(;´_ゝ`)(迂闊だった!旧機体とはいえ回復力を侮ってた――!)
VIP社の研究チームが開発した治療用ナノマシン入り培養液は、期待以上の効能を発揮してくれた。
効能の良さは喜ぶべきところだが、下手をすると、今は別の意味でバンザイしなくてはならない。
水を滴らせ、一歩、クールが足を踏み出した。
その瞬間、緊張を孕んだ空気が張り詰める。
指一本動こうものなら、戦場になりかねない気配だ。
川 ゚ -゚)「……マスター」
(;´_ゝ`)「え?」
川 ゚ -゚)「マスターの声、聞こえた。行かなきゃ」
虚ろな目で、浮ついた声で、彼女は言った。行かなければ、と。
兄者の視線が、咄嗟にスピーカーへと向いた。
彼女の言葉の真意が、今の悲鳴にあるのではないかという、人間的直感だった。
- 389 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 23:39:42 ID:KF7QyIb.0
-
N| "゚'` {"゚`lリ「おっと、おイタはそこまでだレディ」
一人が人垣を押し分け、クールに銃を突きつけた。
掃除夫長の阿部だ。数少ない戦闘要員の一人でもある。
先程まで男性研究員にセクハラしていた飄々とした態度は消え去り、冷たい視線を投げつける。
N| "゚'` {"゚`lリ「女とはヤり合わん主義だが、ここじゃ好き勝手させないぜ?」
(;´_ゝ`)「阿部さん……」
掃除夫長の癖にさっきまで好き勝手セクハラしてたアンタが言える台詞じゃないぞ、という言葉を飲み込む。
彼女は、ついこの間まで気狂いじみた殺人者だったのだ。
阿部を始め、全員が警戒するのも無理はない。
川 ゚ -゚)
だが、クールは阿部を一瞥すらせず、虚空を見つめていた。
見えない、細く頼りない何かを探すような、不安に満ちた目だった。
(;´_ゝ`)「マスター……君をメンテナンスしてた児玉ビコーズのことか」
川 ゚ -゚)!
(;´_ゝ`)「彼は君を殺人者に仕立て上げた男だぞ?それでも行くのか?」
彼女を治療し、経緯を調べる過程で、記憶メディアを覗いた。ドクオには言わなかった事だ。
謝罪と言い訳の言葉を口にしながら、我が子同然に可愛がっていたロボットを改造した男。
口にこそしなかったが、兄者は児玉に少なからず怒りを覚えていた。
(#;´_ゝ`)「君を、リストラ逃れの道具にしか思ってなかったんだぞ?」
川 ゚ -゚)「…………」
語気に力が籠る。
自分がもしビコーズと同じ立場になったとして、実の弟を殺人者に仕立て上げたいとは絶対に思わない。
膨大な彼女の記憶から、ビコーズが彼女にかけて来た愛情の深さを測ることが知れた。
だからこそ、ビコーズが許せない。掌を返すように、人同然に扱ってきたクールを、道具として利用したことが。
(#´_ゝ`)「彼を助けたとして、また利用されるかもしれないんだぞ!?
また、使われるだけ使われて、捨てられるかもしれないんだぞ!?」
川 ゚ -゚)
クールは何も語らない。ただ、虚ろな瞳に、顔を強張らせた兄者を映す。
- 390 :名も無きAAのようです:2012/11/30(金) 23:54:58 ID:KF7QyIb.0
- 抵抗を見せないことを悟り、阿部は銃を降ろした。
クールを暫し見据え、兄者の肩を叩く。
N| "゚'` {"゚`lリ「抑えろ、兄者。らしくない」
(;#´_ゝ`)「……」
腹の底から湧き出る怒りを、何と呼ぼう。
彼女を行かせたくない。あの男を救うために、また利用される姿を見たくない。
同情してしまったのかもしれない。
記憶メディアを毎日のように覗き、記録を付ける内に、重ねてしまったのかもしれない。
昔の弟に。或いは、「彼女」に。
川 ゚ -゚)
川 ゚ ー゚)ニコッ
(;#´_ゝ`)そ
クールが、不意に微笑んだ。
長年、只の機械だった筈の彼女が、確かに優しく、唇の端を釣り上げた。
川 ゚ -゚)「――私の仕事です。ドクター」
(;#´_ゝ`)
(;# _ゝ )「ッ……!」
言葉にならない感情を、溜息と一緒に吐き出した。
深く、深く。がっくりと肩を落とし、――俯かせていた顔を上げる。
ぱんっ、と頬を両手で挟み、呆れかえったような笑顔をクールに送った。
( ´_ゝ`)「――――参ったよ。ワーカーホリックちゃん。それはそうと全裸で行く気か?」
川 ゚ -゚)「?」
( ´_ゝ`)「転送装置に緊急チャージ!ラボの電気ありったけ使え!3分後にCシリーズ001を増援として現地に転送するぞ!
サポート班、新しい戦闘服を!リムジンの場所を再算出して!あと阿部さん掃除頼む!」
沈黙の中に兄者のよく通る声が沁み渡り、にわかに慌ただしい空気が戻る。
ぼうっとしたまま戦闘服を手渡されたクールに、兄者はインカムを付けてやった。
- 391 :名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 00:08:07 ID:C3LsHgx60
-
( ´_ゝ`)「Cシリーズ001。俺は君のマスターを許せない。同じ技術者として、同じ身内を愛する人として」
川 ゚ -゚)「……」
( ´_ゝ`)「でもね、君もまた、身内を愛する人の一人だ。だから俺は君を応援する。それだけの話だ」
クールは首を傾げるだけだ。
とぼけた仕草に、兄者は薄く笑みを送ってやるばかりで、同じく研究員達の一人の中に紛れた。
その背中をじ、と見つめていたクールも、研究員に促され準備を進める。
やがて再び転送装置が姿を現し、それに軽やかに乗る。
( ´_ゝ`)「この任務では直接俺の指揮か、現場のギコの命に従ってもらう」
川 ゚ -゚)「了解」
( ´_ゝ`)「時間がないから、ギコの転送システムに直接アクセスするぞ。間違ってもギコを攻撃しないように」
川 ゚ -゚)「了解」
( ´_ゝ`)「それと、君は病み上がりだ。無理はしてくれるなよ001」
コクリとクールは頷く。
えらいぞ、と兄者はクールの髪を乱暴にわしわしと撫でた。
転送準備完了の声を掛けられ、兄者は転送装置から一歩離れる。
「転送システム、スタンバイ!」
( ´_ゝ`)「上手くやれよ、Cシリーズ001」
川 ゚ -゚)「了解」
システムが作動し、クールの体が素粒子レベルに分解され消失していく。
やがて反対側が透けて見えるほど全身が薄く淡く消えていく直前、クールはまたも微笑んだ。
「有難う」
声こそなかったが、唇はそう紡いでいた。
( ´_ゝ`)「……礼を言われるのは、まだ早いよ」
眉を顰めたまま、再補足したリムジンの様子と、特殊装甲車と争うギコの姿を見つめ、兄者はぼやいた。
- 392 :名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 00:09:08 ID:C3LsHgx60
- パソさんが限界を主張してるのでここまで。
また夕方頃に残りを一気に投下します。ぶつ切りで本当申し訳ないの限り
- 393 :名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 00:21:39 ID:sJ9E2.JA0
- 乙乙
パソさんお大事に
- 394 :名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 01:34:20 ID:OZRaameA0
- 乙乙!
次回はギコとクーか、楽しみだ!
兄者ほんといい奴だなあ
PCお大事に、次も待ってる
- 395 :名も無きAAのようです:2012/12/01(土) 11:45:17 ID:TKg6vy820
- マスターってそうかビコーズか
一瞬ドクオかと思っちまったぜ
- 396 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:30:50 ID:DgKHNQKI0
-
(´<_`;≡=-「……んにゃろー!ほっぽかれてる俺の身にもなれってーの!」
さて、こちらは一人取り残されたオトジャ。
兄からの連絡は一切断たれ、為す術なく道路を走り抜ける。
ひとまず、ギコ達と合流することを当面の目標と決めた。
サイボーグ故に体力はほぼ無尽蔵だ。
この調子で走れば、あと10分足らずで算出した目標予定地に到着出来る。
見回せば、道路やビルは酷い状態になっていた。
ミサイルをあれだけ撃ちこまれたのだから、余波の一つを受けても当たり前だ。
しかし、走り続けて風景を見ている内に、オトジャはそこに違和感を抱いた。
(´<_`;)「……変だな。多少の民間人の犠牲は仕方ないとは思ってたが……」
見当たらないのだ。
いくら誘導して隔離したとはいえ、民間人の影が一つも捉えられない。
車は幾つか大破しているが、怪我人すら見つけることが出来ない。
まるでゴーストタウンか、さもなくば本当に特撮の為にセットされたかのような光景だ。
いっそ、寒気すら覚える現象だ。こんなことがあり得るのだろうか。
(´<_`;)「住民達が銃撃戦なんか予想してる筈もねーし……」
でなければ、初めから住民達が引き払っていたか。
集団がそのような行動に出る事があるのだろうか。
(´<_`;)「! 待てよ、この辺りって確か、ハカタが抱えてる子会社の工場や寮ばかりだな……まさか!?」
一番近い工場の寮へ跳び、窓を叩き割って忍び込む。
人はいない。内側からドアを開けて片っ端からサーモグラフィティで検索した。
しかし、誰もいない。文字通り「誰一人としていない」。
(´<_`;)「おいおい、こんな馬鹿な事って……?……いや…………だとすれば…………?」
奇妙な事象に頭を捻るオトジャ。その高性能な人工鼓膜が、僅かなモーター音を捉えた。
オトジャはハッとし、そうっとカーテンで身を隠し、窓の外を伺う。
(゚<_゚;)「……じ、冗談だろ…………!?」
我が目を疑い、オトジャは「見つからぬよう」外へ飛び出した。
分からない事だらけだが、唯一はっきりした事実がある。
この事件、思った以上に根の深い物になりそうである。
- 397 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:31:48 ID:DgKHNQKI0
-
……………………………………………………
…………………………………………
……………………
|::━×┥ ガションッ
(#‰Д゚)「……期待以上に、中々丈夫だな。敬意を表するぞ、木偶の坊」
トランスフォームロボット・歯車王との拮抗は未だ解けず。
ひっきりなしに降り注ぐ銃弾を避け、ちまちまと攻撃を加えているものの、
歯車王の装甲は特別ダメージを受けた様子が見受けられない。
(#‰Д゚)(スピードを捨てて、ボディの耐久力を極限まで上げているようだな)
地を蹴り、連射から避けるべく、抉れたコンクリートの影に隠れる。
歯車王の上腕部から突出したM240機関銃が、ギコを穴だらけにせんと付け狙う。
メインカメラを破壊されて尚、ギコの正確な位置を把握し、照準を合わせてくる。
|::━×┥ドパパパパパパ
(#‰Д゚)「赤外線探知か……全く厄介な連中だ、なッ!」
連射が止んだ瞬間を狙い、抉れたアスファルトの道路の一部に両手をかける。
てこの原理を使い、一気に引き剥がした。良い子は真似してはいけない。
そのままハンマー投げの要領で、歯車王に向けて投げ飛ばす。悪い子も真似してはいけない。
眼前に迫るアスファルトの塊。しかし歯車王は左腕でそれを打ち砕く。
お子さんをお持ちの紳士淑女の方、ここまでの一連は人間であれば誰も真似できないので安心してほしい。
『ギコ、戦況はどうだ?』
(#‰Д゚)「兄者、目の前のデカブツが思った以上に石地蔵並みの木偶の坊だ。ちょいと持て余してる」
無線から飛び出す兄者の声に、ギコはあくまでも冷静に答える。
使い物にならない機関銃をぶつけてやり、物影に隠れた。
そう遠くない所から爆発が聞こえる。大方、アヒャが暴れたのだろう。
- 398 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:32:33 ID:DgKHNQKI0
-
『そりゃあ良かった!俺からとっておきプレゼントがあるんだ、サイコーなニュースだろ!?』
(#‰Д゚)「全くもって期待出来んが、有り難く受け取ろう。それはそうと何かあったか?」
『べっつにィ!!』
声の起伏の変化で異変を感じ取ったギコだが、乱暴な口調で返され閉口する。
両手が青白く光り始め、物質転送のサインが流れる。
同タイミングで銃声が鳴り響き、壁となるアスファルトが悲鳴を上げ、背中に衝撃が伝わる。
⊂(#‰Д゚)⊃バッ
『このプレゼントはタイミングが重要だ!用意は良いか!?』
⊂(#‰Д゚)⊃「いつでも」
|::━×┥『次弾装填、発射用意』
『3、2、1――――――今だ、バンザーイ!!』
∩ キィイン ∩
し(#‰Д゚)J バッ!!
今までより激しく鳴り響く銃声の大音響、コーラス。
ギコがいた地帯の地面という地面が罅割れ、抉れ、ビキビキと音を立てる。
だが歯車王のAIは手応えを感じ取れずにいた。
この銃弾の嵐では、間違いなく生きて残れる確率は万に一つもないのに。
やがて弾を撃ち尽くし、耳鳴りがする程の沈黙が訪れる。
「――――――成程な。だからお前を寄越してきたという訳か」
|::━×┥『!』
砂煙の中から、小さな黒いドーム状の守り手が現れる。
ぶ厚い鉄板を何枚も組み合わせて作られた防壁。それが瞬時に解かれ、人影が現れる。
「……」(゚- ゚ 川(#‰Д゚)「Cシリーズ001――!」
背中合わせのまま、増援者はギコを見ず遥か先を見ていた。
ギコに一切興味を示さず、彼女の意識は別のものに囚われているようだ。
黒い煙が立ち昇る方へ。
- 399 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:33:13 ID:DgKHNQKI0
-
『転送成功だ!Cシリーズ001、ギコを援護し……』
‐=≡ノ从 ゚ -゚) ヒュバッ
『っておい!そっち違う方こ…Cシリーズゥウ!?』
|::━×┥ガションッ
兄者の指示など聞こえないようで、クールは直情のままに動く。
新たな敵と認識した歯車王が、その先を阻む。
察したギコもクールを追い、歯車王の背後に回る。
川 ゚ -゚)「障害物を認識、回避します」
(#‰Д゚)「無駄だ、奴は赤外線で俺達をサーチしている。…!」
川 ゚ -゚)「!」ピタッ
|::━×┥『軌道修正、着弾率89%』
クールの進行方向へ、歯車王が完全に立ち塞がった。
すかさず、クールは跳躍し歯車王のボディを台にして蹴り上げ、跳び上がる。
|||ノ从;゚ -゚)リト|||「ッ!」
|::━::::┥『Fire』
正面の顔部分が展開し、多数の機関銃が顔を出す。
このままでは被弾は免れられない――――!
|||ノ从;゚ -(#‰Д゚)||| バッ
瞬間。歯車王とクールの間に、ギコの体が割り込んだ。
至近距離、歯車王のフェイスを力任せに殴り抜く!
通常の人間ならば首がもげる程のパンチ力。だが頑丈なボディに通用するとはハナから考えていない。
その隙をついてギコはクールの腕を掴み、歯車王の巨大な肩の向こうへ投げ飛ばした。
歯車王は僅かに軌道を逸らしたのみで、すぐさま修正し、弾を発射させる。
(#‰Д゚)「行け、早く!」
川;゚ -゚)「……!」
歯車王の巨体を挟んで、ギコはクールへ叫ぶ。
ロボットにあるまじきことだが、ギコは直感的な物を感じていた。今は向かわせるべきだ。
クールは逡巡する素振りを見せると、姿を消した。
- 400 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:34:04 ID:DgKHNQKI0
-
『何故行かせた?お前一人じゃカツカツだろ?』
(#‰Д゚)「…………さあな、何でだろうな」
先程殴り抜いた際に、右腕がイカれたようだ。
ぶらり、動かない片腕を下げ、フンと鼻を鳴らした。
(#‰Д゚)「ただ。今ここで彼女を引き留めるのは、無粋だ。そう思っただけさ」
そして、先程の場面に戻る。
踏み潰した運転手など初めから居なかったように、クールは気にも留めず視線を向けてくる。
ドクオは出すべき言葉が見つからず、こんな時どういうリアクションを取ればいいのか
分からず仕舞いでいた。
(;'A`)「クールさん……」
何故ここに?怪我はもういいのか?助けに来てくれたのか?
様々な言葉が脳を巡っては、言葉にならず消えていく。
隣でクールを視認したアヒャが、牽制するように一歩前に出た。
( ゚∀゚ )「戦闘服を着てるって事ァ……増援か?よく兄者が許したな。どうやってここまで来た?」
川 ゚ -゚)「……」
(;'A`)「?」
( ゚∀゚ )「答えないなら、ファックしてでも吐かせてやって……」
『俺から説明するよ、アヒャ』
無線から兄者の声が入り、アヒャを制する。
『彼女は増援がてら、マスターを探しにきた。児玉ビコーズはどうした?』
( ゚∀゚ )「ビコーズってぇと、あの横堀会社ん所の下っ端工場長か。アイツならとっくにVIP社(そっち)に向かって……」
「クール!?」
- 401 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:34:59 ID:DgKHNQKI0
- 驚愕の色に染まった鋭い声に、全員が振り返る。
VIP社の保護を受けに向かっていた筈の男が、こちらに向かって走って来る。
(;∵)「お前、……クールか!」
‐=≡川;゚ -゚)「マスター!」ダッ
ドガァッ(; .)そ「えぼしっ!?」
ビコーズの姿を認めた途端、クールも走り出す。
工場長はロボットによる抱擁(という名のタックル)を受け、激しく転倒した。
(;゚∀゚ )「おいコルァ!逃げたんじゃなかったのかよ!?」
「私が言ったのよ。引き返しなさいって」
(;'A`)「社長!?」
爪゚ー゚)ニコッ
隣には、額から血を流したジーナも姿を現す。
意識を取り戻したジーナは、工場長に現場に戻ると強く説得し、
ゴリ押しに折れたビコーズが同伴するという約束で踵を返してきたのだ。
(;'A`)「このオジサンが、クールさんのマスターって……」
爪゚ー゚)「正確には彼女の雇い主で、彼女を改造していた人よ。いわば親に近いわ」
(;'A`)「……!」
ドクオはノビきっているビコーズと、それをきつく抱擁(プレス)するクールを見やる。
彼が、クールを『処理屋』に変えた人間。彼女を殺人鬼に変貌させた人間。
どうしようもなく胸がざわつく。戦場にいる時とはまた別の意味を孕んだ汗が伝う。
ジーナはそれぞれを一瞥し、成り行きを見守っているようだった。アヒャは耳糞をほじっていた。
(;'A`)
フイッ('A`;)彡「……ジーn、社長。戻って来たって事は、何か非常事態でも起きてるんですか?」
爪゚ー゚)「(……。)ええ。ちょっと予期せぬアクシデント。っていうよりも、見た方が早いかしら」
す、と彼女は空のある一点を指差す。
指先をなぞるように見上げると、マスメディアのヘリコプターが数台、上空を漂っているではないか!
- 402 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:35:44 ID:DgKHNQKI0
-
ヘリからカメラマンや記者らしき人間が顔を出し、生中継を撮り始めている。
ドクオ達は顔を見合わせて、同時に最悪の展開を予想した。
胸の境地を代弁するかのように、アヒャが「ヤバいな、」と呟いた。
( ゚∀゚ )「おいおい、アイツ等俺達の事テロリストって勘違いしてやがるぜ。情報が一部漏れてら」
『そんな筈はない!警察まで使って一般人を隔離した上で、情報操作や規制までしたってのに!この惨事が漏れる確率は低かった、それは保障する!』
(;'A`)「つまり……誰かタレコミしたって事ッスかね?乱闘が起きてるって」
爪゚ー゚)「ええ、十二分に考えられるわ。それに、私達は誘導された。あまりに戦いすぎたわ」
苦々しくジーナは言い捨てる。初めから疑ってかかるべきだったのだ。
リムジンが狙われる以前から、走行する車の数があまりに少なかった点。
一般人を誘導するにしても、被害者の数があまり見当たらない点。
敵は初めからジーナ達を罠に誘い込むつもりだったのだ。
その事をジーナが手早く説明すると、それに疑問の声を上げる者が出た。
(;∵)「け、けど!だとしてハカタの狙いは何だ?」
爪゚ー゚)「決まってるわ。VIP社の評判を貶める気よ」
(;'A`)「ええ?でも、どうせ評判を貶めるんだったら、一般人を巻き込む方がもっと確実でやりやすいと思うんですけど……
そっちの方が被害とかも大きいし、わざわざ手間の掛かる事しなくたって済むし、俺ならそうしますけど……」
爪゚ー゚)( ゚∀゚ )(∵ )(゚- ゚ 川
(;'A`)「な、何ですかその目は!?」
( ゚∀゚ )「いや、貧相なツラして考えることえげつねーなって」
(;∵)「初対面の相手にこんな事言うのも何だが……引いた」
『すまんドクオ、流石の俺もフォローきついわ』
川 ゚ -゚)「…………」
(;>;A;)>「お、俺は可能性の話をしただけです!だからその犯罪者を見るような目は止めて!あ、犯罪者予備軍だった!何も言えない!」
- 403 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:37:06 ID:DgKHNQKI0
-
爪゚ー゚)「まあ、一理ありますわMrウツダ。向こうもそれくらいは考えるわ。でも、狡猾な叔父様はもっと慎重に考えるわ。
向こうも勢力を放り込む訳だけど、犯罪者にとって一番危険だと感じることは何だと思います?」
(うA`)「グスッ……えぇーっと、顔を見られること…ですかね?」
爪゚ー゚)「そう、相手方は一般人に自分等の特徴を押さえられる事を怖れた訳。
私達のこともあります。口封じと邪魔物の排除を行わせるにしても、一般人は邪魔なの。障害物よ」
( ゚∀゚ )「なァるホド。『キレ者ほど被害を少数に抑える』というしな」
俺ああいう手合い嫌いだわ、とアヒャは呑気に笑い飛ばす。笑えない状況だというのに。
ジーナはビコーズを引き起こし、全員に振り向く。
爪゚ー゚)「こうなったら、作戦を大幅に変更です。
Dr.流石、聞こえてるかしら?全ての放送局に現場を中継させ、私達の無線を繋げるようにして!」
『……成程、アンタも充分えげつないぜ社長。了解した!情報部門、気張れよ!』
、、、
爪゚ー゚)「ドクオ、貴方は私から離れないで下さい。やってもらう事があります」
(;'A`)「へっ!? あ、ハイ!」
爪゚ー゚)「アヒャ、Cシリーズ001!今からミスターの援護に向かい、敵を完膚なきまでに撃沈なさい!」
( ゚∀゚ )「Yes Master!」
川 ゚ -゚)「了解しかねます。貴方は私のマスターではありません」
(;∵)「お、……おい!クール!?」
爪゚ー゚)フッ
ニタリと笑うアヒャに反し、クールは不服そうな感情を無表情な顔から滲ませて言う。
ビコーズはすかさずたしなめるが、クールはあくまで従うつもりはないらしい。
ジーナは肩を竦め、罅の入ったタブレットを取り出し、ハイスピードで何かを入力し始める。
入力は僅か20秒ほどで終わり、画面をビコーズ達に突きつけた。
(;∵)「ん?なんだこ……れ……」
[私、児玉ビコーズはGICグループ日本ハカタSOUSAKU子会社横堀会社を移籍し、
GICグループ日本トウキョウVIP支社の技術部門に配属されることを承諾します。
(YES) NO]
(; ) ≡∵
- 404 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:37:55 ID:DgKHNQKI0
-
爪゚ー゚)「はい。今日付けで児玉ビコーズをGICグループ日本トウキョウVIP支社の技術部門所属に採用します。
たった今から私が貴方達の雇い主(マスター)よ。これで文句ないでしょう。Cシリーズ001、……いえ。クール?」
タブレットを突きつけドヤ顔のジーナ。
幾ら緊急事態とはいえ、ビコーズもこれには黙っていられない。
(;∵)「おっ…………おいいいいいいい!!そんな無茶な人事が通用するかァ!?」
('A`)「俺、1ヶ月前までニートでしたけど、こんな感じで採用されましたよ」
そ(∵;)「!!??!?!?」
川 ゚ -゚)「了解しました、マスター」
(;∵)つそ「おおーーい!それでいいのかクゥウーーーール!?」
( ゚∀゚ )「機械の悲しい性だな」
('A`)「俺もう社長関係では色々と考えない方が賢明だと思ってます」
爪゚ー゚)「工場長改め児玉さん、貴方も私の傍から離れないで下さい。貴方にはドクオと一緒にやってもらう事があります」
(;∵)ヾ「チッ、やれやれ……オーライ!乗りかかった船だ、やってやろうじゃねーか!」
爪゚ー゚)「さあ、お喋りは終了よ。総員、目標『任務完遂』!」
( ゚∀゚ )川 ゚ -゚)(;'A`)(;∵)「Over、My Master!!」
ジーナが二人に何か耳打ちすると、アヒャとクールは頷いて飛び出し、戦闘音が鳴り響く方向へ瞬く間に姿を消す。
人でありながら、アヒャ地を這い豹の如き速さで道路を駆けていき、
クールは瓦礫の上を跳んで舞うように跳躍する。
ヘリコプターの何台かは二人を視認したのか、追いかけて行く。
(;'A`)「それで、俺達の役目ってのは……?」
(;∵)「お嬢ちゃんの事だから、ロクなことは考えちゃいねーんだろ?」
ジーナはしたり顔で微笑んだ。明らかに何かを企んでいることは明白だ。
爪゚ー゚)「そうね。貴方達には――広告塔になってもらいましょうか」
(;'A`)「…………………へ?」(∵;)
- 405 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 19:38:42 ID:DgKHNQKI0
- またまた休憩。夜10時頃、再開
- 406 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 21:35:27 ID:DgKHNQKI0
- >>403の訂正
爪゚ー゚)「まあ、一理ありますわMrウツダ。向こうもそれくらいは考えるわ。でも、狡猾な叔父様はもっと慎重に考えるわ。
向こうも勢力を放り込む訳だけど、犯罪者にとって一番危険だと感じることは何だと思います?」
(うA`)「グスッ……えぇーっと、顔を見られること…ですかね?」
爪゚ー゚)「そう、相手方は一般人に自分等の特徴を押さえられる事を怖れた訳。
私達のこともあります。口封じと邪魔物の排除を行わせるにしても、一般人は邪魔なの。障害物よ」
( ゚∀゚ )「なァるホド。『キレ者ほど被害を少数に抑える』というしな」
俺ああいう手合い嫌いだわ、とアヒャは呑気に笑い飛ばす。笑えない状況だというのに。
ジーナはビコーズを引き起こし、全員に振り向く。
爪゚ー゚)「こうなったら、作戦を大幅に変更です。
Dr.流石、聞こえてるかしら?全ての放送局に現場を中継させ、私達の無線を繋げるようにして!」
『……成程、アンタも充分えげつないぜ社長。了解した!情報部門、気張れよ!』
、、、
爪゚ー゚)「ドクオ、貴方は私から離れないで下さい。やってもらう事があります」
(;'A`)「へっ!? あ、ハイ!」
爪゚ー゚)「アヒャ、Cシリーズ001!今からミスターの援護に向かい、敵を完膚なきまでに撃沈なさい!」
( ゚∀゚ )「Yes Master!」
川 ゚ -゚)「了解しかねます。貴方は私のマスターではありません」
(;∵)「お、……おい!クール!?」
爪゚ー゚)フッ
ニタリと笑うアヒャに反し、クールは不服そうな感情を無表情な顔から滲ませて言う。
ビコーズはすかさずたしなめるが、クールはあくまで従うつもりはないらしい。
ジーナは肩を竦め、罅の入ったタブレットを取り出し、ハイスピードで何かを入力し始める。
入力は僅か20秒ほどで終わり、画面をビコーズ達に突きつけた。
(;∵)「ん?なんだこ……れ……」
[私、児玉ビコーズはGICグループ日本ハカタSoGo子会社横堀会社を移籍し、
GICグループ日本トウキョウVIP支社の技術部門に配属されることを承諾します。
(YES) NO]
(; ) ≡∵
- 407 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 23:05:38 ID:DgKHNQKI0
-
――――地鳴り。
地を揺るがし、ゴロリと丸太のような腕が落下する。
(#‰Д゚)「これだけ攻撃して腕一本か。頑丈にも程度があるぞ」
|::━×┥『右上腕部損傷。リカバリーに入ります』
(#‰Д゚)「させるか!」
破壊部分からコードが鎌首をもたげ、地面に転がる腕に伸びる。
地を蹴り、それを阻止せんと試みると、別箇所から生えた銃口の群れがギコを狙う。
ギコは歯を食い縛り、駆ける足に力をこめる。
(#‰Д゚)「ッ――!」
背中に幾つか被弾した。構うものか。
足の裏全体で地を蹴り抜き、食らいつく勢いで、歯車王の腕に手を伸ばす。
一瞬か、永遠か。時間が一瞬狂う。
(#‰Д゚)(届い――――)
指先が、太い腕の表面に触れた。
(#‰Д )「がっ……!」
気管が強く締め付けられ、浮遊感が全身を襲う。
四肢にも同様に強く締め付けられ、
通常の人間であれば、血管が圧迫されて血が通わないどころの話では済まされない。
|::━×┥『リカバリー一時中断。目標を排除します』
(#‰Д )(コイツ、俺を引きちぎる気で……!)
ギコはロボットだ。窒息死することはまずない。
しかし気管を圧迫されるということは、呼吸式エネルギー運動を遮断されるということ。
簡単にいえば動きが鈍るのだ。抵抗しようにも四肢に絡みついたコードがそれを許さない。
切断口から伸びるコードが、ギコを引きちぎり八つ裂きにせんとする――!
|::━×┥『目標の内部損傷率上昇。完全破壊まで後20秒――』
(#‰Д )(く、何とか……脱出をッ……!)
手足がそれぞれ逆方向に力を加えられ、悲鳴を上げる――
- 408 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 23:30:04 ID:DgKHNQKI0
-
「荒巻流捌(はち)の陣‐虚空‐」
(#‰Д )バラッ「!」
閃光煌き、直線を描く。直後、コードが音もなく綺麗に捌かれた。
落下する体、空中で体勢を立て直すという思考を取り戻すより早く、誰かの腕に抱かれた。
「『処理』、開始します」
|::━×┥『! 複数の不確定要素を確認、補足しま――』
―=≡◎ |::━×┥ ◎彡
金属音がぶつかり合う音が何度も響き、歯車王を攻撃する。
ボディに浅くだが傷を彫りこみ、空中で電動ノコギリが高く唸る。
歯車王の左腕が薙ぎ払おうと試みるが、鋸達は空中で器用に避け、巨大なボディを翻弄する。
「ダーリィン、起きないと俺の尻にキスさせちゃうぜェ?」
「G‐1K:0の機体損傷率およそ64%、戦闘可能ですか?応答願います」
(#‰Д )
(#‰Д゚)「――ハッ。お前らが来る前に終わらせるつもりだったんだがな」
( ゚∀゚ )「ヒャヒャ、言ってくれるね」
川 ゚ -゚)「目標淘汰のために指揮を願います、G-1K:0」
エアナイフを手で遊ばせる『人類最強』、阿日谷モナー。
ギコを腕に抱くは、冷血なる『処理屋』、Cシリーズ001。
|||(゚<_|::━×┥『新たな抹殺対象補足、排除に移行しま…』
(゚<_゚#)「憤怒と憎悪入り混じる流石オトジャライジングキーーーーーーック!!!」
ゴガァア――――――――――――ンッ!!
歯車王の不意を突き、上空斜め45度から後頭部に入れられる強烈な衝撃。
巨体を台にし、三人の前に着地する。
- 409 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 23:48:53 ID:DgKHNQKI0
-
「やいこら旧式!!俺が居ねーからってサボってんじゃねーぞ!」
(#‰Д゚)「ハッ、来るのが遅いぞ。オトジャ」
(´<_`#)「うるっせえ!リサイクルショップに売られたくなきゃ立ちやがれってんだ!」
クールの腕に支えられるように、ギコは立ち上がる。
四人。おそらくVIP社内で最も強い四人が、一斉に揃ってしまった。
浮遊する電気ノコギリを全て撃墜させた歯車王が、四人を赤外線でサーチした。
(´<_`#)「ケッ、あんな古くせー野郎にボコられるたァ、恥ずかしくないのかね」
(#‰Д゚)「奴は対戦用AIを搭載して、こちらの攻撃に耐えうる耐久力を極端に強化している。簡単には破れん」
(´<_`#)「ああそうかい。なら――」
オトジャは高く跳び上がる。狙うは頭部。
歯車王がすかさず迎撃せんと搭載した銃を展開させるが、
ミ◎川 ゚ -゚)◎彡ギャルンッ「援護します!」
クールが別方向から歯車王の気を逸らし、オトジャに攻撃をさせまいとする。
歯車王がクールの攻撃に対応する時を狙い、オトジャは歯車王の頭部にしがみつく。
(´<_`#)「いい子ちゃんってことなら、バカにしちまえばイイのさッ――!」
オトジャの体から何本ものコードが伸びる。
職人技とも呼べる鮮やかな手さばきで頭部にコードを接続し、破滅を開始させる!
(´<_`#)「ブッ飛んじまいなッ!!」
|::━×┥『不確定要素AIによる侵入、バリアウォールを展か……』
バチバチバチバチバチバチそ|::━×┥そバチバチバチバチバチッ
オトジャが自身で精製した電子ウィルスが、歯車王のプログラムをことごとく破壊する!
目を回した歯車王は、次の瞬間には思考回路を破壊し尽くされていた。
(´<_`#)「これで奴は考えるノーミソを消失したッ!!殺るなら今だ!!」
- 410 :名も無きAAのようです:2012/12/02(日) 23:55:46 ID:8Lkzve0.0
- あっついなあ!
- 411 :名も無きAAのようです:2012/12/03(月) 00:05:45 ID:RXO9qUHI0
-
オトジャはおまけと言わんばかりに歯車王の頭を蹴飛ばし、その場から一旦退く。
そこで待ち構えていたように見上げる二人。
川 ゚ -゚)「『処理』、決行!パターンDフォーメーションッ!!」
クールの両腕から部品が次々飛び出し、形成し始める。
それは人の半分もある巨大なドリルとなり、ギラリと殺人的な輝きを見せる。
川♯゚ -゚)「でやああああああーーーーーーーーッ!!」
駆け上がり、高く跳躍!!
両腕でできたドリルが唸りを上げ、歯車王に迫る!!
ズ |::━@┥ ≡川#゚ -゚) パッ!!「たぁあああーーーーーーーーーーーーッ!!」
|::━@┥『ガ、ガギ……』
巨大なドリルは歯車王の胴体に巨大な穴を開けた!
歯車王の内部が丸見えとなり、部品がボロボロとこぼれ落ちる。向こう側が見えるほどだ。
それでも歯車王は無い頭で自身の危機を感じたのか、デタラメに銃を撃ちまくる。
「新巻流壱の式-一(はじめ)-!!」
|::━@┥『……!?』
( ゚∀゚ )「ヒャヒャヒャ。機関銃の輪切り一丁!」
ガランガラン、ガラン。
展開させた全ての銃が、エアナイフ一本で全て細切れにされる。
ナイフを手で遊ばせ、アヒャは不屈の笑みを浮かべる。
|::━@┥『排除しま、対象を、えg子59lspw^v』
「――――お前の敗因は、ただ一つだ。歯車王」
上から投げかけられる声。それを捉える脳みそすら、今の歯車王には無い。
いつの間にか消失した右腕。巨体に落ちる陰。
(#‰Д゚)「俺たちを敵に回した――運がなかったな」
歯車王の頭部、頂点。ギコは鋼鉄の体を踏みにじり、跳躍する。
ギコが瞬時に転送し、手にした歯車王の右上腕部が、持ち主の頭を叩き潰した―――――――
.
- 412 :名も無きAAのようです:2012/12/03(月) 00:23:13 ID:RXO9qUHI0
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
- 413 :名も無きAAのようです:2012/12/03(月) 22:32:24 ID:qXBmWeeg0
- 何か途中っぽい?PC大丈夫かね
- 414 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 00:57:03 ID:bVtynL920
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
『――――さんありがとうございました。ここで、先日のVIP市自爆テロ事件について、目撃者のインタビューに入りたいと思います』
( ■.■)『いやー死ぬかと思いましたよ。VI社の方々に保護して貰わなければ、どうなっていたことか……』
【プライバシー保護のため音声を変えております】
(■A■)『物騒な世の中になりましたね。早く日本も元の平和な世の中に戻ってほしいものです』
【プライバシー保護のため音声を変えております】
――ピッ。
TV画面が消え、真っ黒な画面にギコの仏頂面が映り込む。
近頃は便利になった。指一本の操作で、画面の付け消しもチャンネル替えも思うままだ。
小さく溜息を吐く横で、兄者はカルテの打ち込みを終了させた。
( ´_ゝ`)「……よし。術後の経過は順調だな。明日になれば退院出来るぜ」
从*゚∀从「ホントですか、先生!?」
(*´_ゝ`)「ああ。ハインちゃんの献身的なお見舞いのお陰で、ギコさんみるみる元気だよ〜」
从*゚∀从パァアッ
(,,//Д゚)「兄者、身内に変なことを吹き込むんじゃねえ」
花瓶の水を替えたハインが兄者の言葉で舞い上がり、ギコは不服そうにたしなめた。
――対歯車王戦、通称VIP市自爆テロ事件は、一旦VIP社側の勝利として幕を閉じた。
あの戦闘の直後、ギコは急いでロボット専門の総合病院(VIP社の息のかかった施設だ)
へ担ぎ込まれ、修理を受けた。
唯一の身内であるハインには「仕事中に階段から滑って転げ落ちた」と説明した。
(ハインは訝っていたものの、兄者に言いくるめられて素直に信じた。単純だ。)
从*゚∀从 ルンルン
(,,//Д゚)「中々サマになってるな、ヤブ医者」
( ´_ゝ`)□”ヒラヒラ「失敬な。これでも医師免許持ってますよーんだ」
『――さて、先日のVIP市爆撃テロ事件ですが、GICグループと警察の連携により被害者の数は
かなり最低限にまで抑えられ、「無血のテロリズム」として収まった訳ですが……』
(,,//Д゚)「おい、このTV壊れてるぞ。どうにかならんか」
( ´_ゝ`)「俺がどうこう出来るのはお前自身のことであって、備品はちょっと……」
- 415 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 00:58:00 ID:bVtynL920
-
('A`)「ギコさーん。見舞いに来たッスよー」
从*゚∀从「あ、おじさん!久しぶりー」
病室の扉が開き、ドクオが顔を出した。
新しいスーツを着込んで、清潔感に溢れている。
ハインは久方にみる知り合いの姿をみて顔を綻ばせる。が……
(´<_`*)「プッ、良いザマだな旧式。ちょっと待ってろケータイで撮ってやる」ドヤドヤ
ヤイヤイ(#゚∀゚ )「糞ッタレェエエェ、ファッキンナース共!ちょっとアナ貸せっつっただけでホワイトコール鳴らしやがってェエエ」
N| "゚'` {"゚`lリ「見舞い品にフルーツ盛りを持ってきたんだが、俺のデカイバナナも付け足そうか?」ワイワイ
ギャアギャア(;∵)「やいこら、院内で汚ェモン出そうとすんじゃねえ!」
(;'A`)「ちょ、皆さん病院では静かに……」
从;゚∀从「……ギコ、知り合い?」
(,,//Д゚)「…………………………」
煩い。喧しい。怒鳴る気すら起きず、溜息と共に肩を落とす。
あっという間に室内はぎゅうぎゅう詰めとなり、むさ苦しい空間と化した。
みな見舞いに来たというよりは、ギコの周りで好き勝手して暇を潰しているだけにも見える。
ごみごみとした様相を見て、通りすがりのナースが眉を顰めていた。
('A`)「そうだ。クールさん、入ってきてもいいんですよ?」
从 ゚∀从「?」
扉|-゚)チラッ
見れば、扉を死角にしてこちらを覗き込む女性が一名。
どこかで会ったような、デジャヴに襲われるハインに、ドクオがこっそり囁く。
('A`)「クールさんだよ。覚えてるかい?一ヶ月前の……」
从;゚∀从「え……あの、ドリルとか鉄板とか出してた……?」
- 416 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 00:58:44 ID:bVtynL920
- 事件を思い出したのか、たじろぐハイン。
無理もないことだ。ドクオは苦笑し、大丈夫だよとハインに言った。
('A`)「クールさんはね、悪い人に洗脳されていたんだ。もう二度と、あんな事はしないよ」
( ∵)「…………………」
从;゚∀从「洗脳……それ、本当?」
恐る恐る尋ねるハイン。彼女は自分の命を刈り取ろうとしたのだから、当然の態度だ。
ドクオはクールに視線をやって、笑って頷いてみせた。
('∀`)「――――ああ。その為に俺がいるんだからさ」
从 ゚∀从「……?」
ハインは言葉の意味を汲み取れず、首を傾げた。それでいい。
彼女が言葉の真意を知る必要はない。今は、まだ。
ドクオはクールに手招きした。おっかなびっくりといった感じで、クールは病室に足を踏み入れる。
川;*゚ -゚)ソワソワ
('A`)「えっと、クールさんはね、ハインちゃんに言いたいことがあるんだって」
从;゚∀从「オレに……?」
ハインはクールへと視線を向けた。
クールは現在、脳内で言葉を必死に選んでいるようで、口をしきりにモゴモゴさせた。
数秒の沈黙が二人を包んだ直後、クールは弾かれたようにバッと頭を下げた。
川;* - )「ご、ごめんなひゃいっ!?」
('A`)
从 ゚∀从
噛んだ。(この瞬間にオトジャとアヒャが噴出し、脇にいた兄者と阿部がそれぞれ二人をどついた)。
その直後も噛み噛みで聞き取り辛かったが、要約すると、
クールは先日、ハインに危害を加えようとした事を謝りたいと必死に語っていた。
ハインは懸命にクールの言葉に耳を傾け、言葉ひとつひとつを理解し、消化させる。
- 417 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 00:59:25 ID:bVtynL920
-
川;*゚ -゚)「ドクオと、約束した。二度と、しない」
从 ゚∀从「…………………」
川;*゚ -゚)「も、もう、無闇に人を殺さない。クー、いい子」
从 ゚∀从「――うん、分かったよ。もうクールさん、悪い人じゃなくなったんだね?」
川;*゚ -゚)「う、うんっ!」
クールは何度も頷く。その表情はどこか嬉しそうだ。
幾ばか柔らかい顔つきになったクールを見て、ハインは手を差し出した。
从 ゚∀从つ「ん」
川;*゚ -゚)「?」ドキドキ
从 ゚∀从つ「仲直りの握手」
川;*゚ -゚)「仲、直り?」
从 ゚∀从つ「うん。それで、今日からオレとクールさんは、友達」
川;*゚ -゚)
川*゚ ヮ゚)パァアッ
川*゚ ヮ゚)「クー、ハインと、友達!」
从*゚∀从「そっ!友達、ともだちー!」
从*゚∀从∞(゚ヮ ゚*川 ブンブン
一転して、とても和やかな空気に包まれる病室内。
ドクオも、ギコ達、自然と頬を緩ませてそれを見守っていた。
戦いの後の、ほんの僅かな平和な時。それが長く続けばいいのにと、このあいだだけは誰もが想う。
( ∵)「…………………………」
( '∀`)从*゚∀从(゚ヮ ゚*川キャッキャッ
( ∵)(……………………………クール………………)
- 418 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:00:41 ID:bVtynL920
-
不意に、小さくバイブレーションする音が鳴る。兄者の白衣からだ。
小型タブレットを取り出す。何かメールを読んでいるらしい。
兄者の眉が曇り、オトジャが視線で何事か尋ねる。
( ´_ゝ`)「……そうだクール、アレ。持ってきてくれないか?」
川 ゚ -゚)?
タブレットを胸ポケットに仕舞い、何事も無かったように笑顔で問いかける。
クールは彼の言葉に心当たりがないのか、小首を傾げる。
何か察したのか、立ち上がったのはビコーズだった。
( ∵)「……ああ、あれな。ほらクール、行くぞ」
川 ゚ -゚)? ?
( ´_ゝ`)「アレは特別なものだから、ハインちゃんも一緒に行ってくれるかい?」
从 ゚∀从「え、オレっすか?」
( ´_ゝ`)「そう、頼まれてくれるかい?」
从 ゚∀从「はぁ……?」
N| "゚'` {"゚`lリ「俺も行こうか」
兄者がギコの主治医(表向きは、だ)ということもあり、ハインは首を傾げながらも了承した。
もう打ち解けたのか、クールと仲良く手を繋ぎ、病室から出ていく。
付き添うようにビコーズ、阿部がその後ろにつき、全員を一瞥して退室した。
途端、沈黙が訪れる。
( ´_ゝ`)「………………………………………」
(´<_` )「社長からか?」
( ´_ゝ`)「ん?ああ」
知らずのうちにビコーズの背中を睨んでいた兄者に、オトジャは尋ねる。
我に返った兄者は、絞り出すような声で返事をした。声が少し裏返ったが、誰も指摘しなかった。
ギコは連射し続けるオトジャのケータイを握り潰し、ついでにオトジャも窓から放り捨てる。
- 419 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:01:54 ID:bVtynL920
- (,,//Д゚)「それにしても、よく考えたもんだ。野次馬丸出しのマスメディアを利用するとはな」
('A`)「TV出演させられた時はチビるかと思いましたよ」
<VIP社ノ方々ニ感謝デス!
( ゚∀゚ )「ヒャヒャ、カッチカチになってやんの」
TVはどのチャンネルを回しても、テロのニュースばかりだ。
アナウンサーやゲストの芸能人たち、無能な犯罪心理家の老人たちが
やれカルト宗教の仕業だのマフィアの一派の仕業だのと好き勝手に騒いでいる。
――ジーナは、マスメディアをここぞとばかりに利用したのだ。
彼女はその舌先三寸で、架空のテロリストの存在を作り上げたのである。
VIP社の技術部門達が総力をあげて、ギコ達の戦闘を記録した全ての監視カメラを編集、改竄。
警察もちゃっかり買収し、被害を最小限に抑えた功績をでっち上げて花を持たせた。
マスコミは与えられた情報を鵜呑みにし(あるいは、敢えて毒もろとも飲み込み)、
連日、居もしないテロリストの話題ばかりを取り上げている。
( ´_ゝ`)「真の敵は身内にあり……ってのも、皮肉な話だな」
(,,//Д゚)「ハカタSoGo、か。嫌な相手だ」
( ゚∀゚ )「俺アイツ等嫌ーい。錆臭えもんよ。早く殺(バラ)してやりてーなー」
アヒャが物騒なことを呟く。
――十中八九、刺客を差し向けてきた相手は、ハカタSoGoに違いなかった。
しかし、証拠がない。刺客たちは物言わぬ肉袋に変えられてしまったし、歯車王は没収されてしまい行方知れず。
Ω
(´<_`メ(#)ニョキッ「相手はフォックスだ。迂闊に刺激するわけにはいかねえってことさ」
(;'A`)「その……フォックスって……?」
( ´_ゝ`)「ハカタSoGoの総合責任者フォックス・Iだ。社長の父親、テナー・インテグラルの腹違いの兄弟……だったかな」
( ゚∀゚ )「イケ好かねえ奴だよ。ついでに、かなりイっちゃってる変態野郎だ」
(,,//Д゚)「今回の件、フォックス達が絡んでいるとなると……自爆テロだけで話が終わるとは思えんな」
話を聞いていたドクオの表情が、元々の乏しい顔つきが増々固いものとなる。
兄者は再び眉を曇らせ、言いにくそうに言葉を発した。
- 420 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:02:54 ID:bVtynL920
-
( ´_ゝ`)「最悪の事態は回避したけど、用心が必要だな。例のホラ、クールの事もあるし。それにそろそろ『あの』季節だろ」
(´<_` )「……あー、あれかー」
(#゚∀゚ )「やーめろやめろ!考えるだけで気が滅入る!」
(;'A`)「え、何かあるんですか?」
アヒャが頭を抱えて喚き始めた。周囲の人間の表情も渋い。
ぬあーと獣のようなうめき声をあげるアヒャの代わりに、ギコが淡々と問いに答える。
(,,//Д゚)「GICグループは、12月に定例会議って奴があるらしい。世界中の子会社の責任者が集まって、報告とやらをするんだとよ」
('A`)「え?でもGICグループは日本の企業でしょう?」
( ´_ゝ`)「総本山はスイスにあるのさ。大ボスがスイスにデーンと構えてて、
それぞれ北米、アジア、欧州、中南米、アフリカの5大幹部サマが控えてて、こいつらが世界中に散らばる
子会社の管理とか、会社の今後の方針とか決めるわけだ。その更に下っ端が、社長やフォックスみたいな連中ってわけ」
(´<_` )「今回のは日本の子会社のみの会議らしいな。ホッカイドーSHIBERIA、オオサカSO→SAK、トウキョウVIP、ハカタSoGoの4社か」
(,,//Д゚)「荒れるだろうなあ」
(;'A`)「う、うわぁ……結構シビアな世界ですね……」
( ゚∀゚ )「お嬢はデッカク、総本山を乗っ取る気でいるらしい。だからよ、フォックスどころか世界中の子会社がお嬢の敵ってわけ」
(;'A`)「………………」
ドクオはこの時、初めて会った時のジーナの言葉を思い出した。
"数"は"力"。"成績"とは"数"。"力"は"成績"。
この会社をもっともっと大きくする。上を目指すために。
( ゚∀゚ )「皆同じさ。天辺だけを狙ってる。お嬢にも、フォックスにも、時間がない。
互いが互いを蹴落としあって、どうあっても総本山にたどり着く必要があるのさ。身内と殺し合ってでも」
('A`)「……何の、ために?」
衝動だけの、疑問の言葉が飛び出した。口の中が乾く。
思えば、彼女が力を欲しがる理由を聞いたことなどなかった。
否、考える時間も余裕もなかった。「クールを守りたい」という目先の考えに釣られただけだ。
アヒャは深く、深く笑った。ドクオの心を見透かすかのような笑みだった。
( ゚∀゚ )「――――おっしえなーーーーい」
('A`)ズコー
- 421 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:04:10 ID:bVtynL920
-
( ^∀^ )9m「お前が知る必要はないもんねー」ゲラゲラ
(´<_` )「そもそもお前は知らないだろが」オレモシラナイケド
がっくりとドクオは肩を落とした。肩透かしを食らった気分だ。
アヒャは馬鹿笑いを止めると、笑みはそのまま、ぐずる子供をたしなめるような口調で言った。
( ゚∀゚ )「何も知らないほうが楽さ。弱えー奴は余計なこと考えずに強くなることだけ考えてろ」
('A`)グッサー
(,,//Д゚)「アヒャの言う通りだ。社長の目的なんぞ、どうせロクなもんではあるまい」
ごもっともだ。
彼女の目指す先がどんなものであれ、ドクオには何の関係もないのだろう。
( ´_ゝ`)「――で、だ。話を戻そう。その定例会議だが、社長から護衛の指名があった」
小型タブレットを、備品のパソコンに接続する。
そこには定例会議招集の知らせ、ジーナからの業務連絡が残されていた。
下部分にはアヒャ(つまりはモナーだ)の名前を筆頭に、彼女の出張に同行するメンバーの名前が記されていた。
(;'A`)「………あ、あれ?これ、何かの間違いですよね?」
( ´_ゝ`)「うーん、俺も最初そう思ったんだけどねー」
同行者一覧の一番下にはきっちりと、欝田ドクオの名前まで記されていた。
(; A )「…………………………」
(´<_` )「うわ、今回の会議ハカタでやるのかよ。こりゃ死人出るな」
( ゚∀゚ )「俺は暴れられるならなんだっていいぜー」
(,,//Д゚)「俺はこんな体だからな。土産は明太子で頼むぞ」
(´<_` )「あ、俺サブレで」
(;'A`)「い、今の内に、遺書書いておこう……」
- 422 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:04:59 ID:bVtynL920
-
从 ゚∀从「うーん、どのケーキがいいかな?」
川 ゚ -゚)「ハインの、好きなので、良いと思う」
从*゚∀从「じゃあ、こっちのチョコケーキ!」
商店街の一角に位置するケーキ屋で、並べられたホールケーキをわいわいと眺める二人。
少し離れたところで、阿部とビコーズは、荷物を置いて見守っている。
荷物の中身は、兄者がメールで指定した、予約されていた備品が山ほど入っている。
( ∵)「……お前さんが付いてきたってことは、やっぱりあのヤマは終わっちゃいねえってことか」
N| "゚'` {"゚`lリ「まあ、そう考えるのが順当だろうよ。お前さんも、しばらくはこうして表出て歩けねえな」
阿部の言葉に、ビコーズは押し黙る。
正式にVIP社に転属されたとはいえ、事実の一片でも知るビコーズの存在を、ハカタが許すとは思えない。
腕を組む阿部に隙はなく、優秀なボディーガードとしての責務を果たしている。
( ∵)「……あの場で肉袋にされるのと、殺人者として警察に突き出されるのと、どれがマシだったんだろうな」
N| "゚'` {"゚`lリ「人殺しの未来にマシなんてないさ、お兄さんよ」
ぴしゃりと、阿部は切り捨てた。
棘のある言い口は、どこか死を望んだようなビコーズの言葉に怒りを孕んだに違いなかった。
( ∵)「………………愚問だった、忘れてくれ」
N| "゚'` {"゚`lリ「ああ、そうするよ」
和やかに会話を交わす二人を眺めるビコーズの瞳は、陰りを映したまま。
唇を真一文字に結び、双眸を細め、暗闇の先にある未来の橋を見定めようと必死になっているようだ。
クールに対する罪の意識がそうさせるのか。
また難儀な男を仲間に引き入れたものだと、阿部は鼻を鳴らした。
N| "゚'` {"゚`lリ(どこかしら危うい奴ばかりが揃うのは、上があの社長だからかねえ)
まあ自分もその一人なのだけれど、と自嘲する。
あまり和やかでない二人の空気を中和するように、明るい笑顔の少女たちが戻ってきた。
- 423 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:05:56 ID:bVtynL920
-
从*゚∀从「待たせちゃってすいません、えっと……ギコの先輩の……」
N| "゚'` {"゚`lリ「阿部だよ。気軽に阿部さんと呼んでくれ」
从*゚∀从「はい、阿部さんっ!」
川*゚ -゚)「いっぱい土産、買った!みんなで食べる!」
( ∵)「……そうか」
N| "゚'` {"゚`lリ「……!」
きゃあきゃあと笑い合う少女たち。
クールの、穏やかな日だまりのように柔らかな笑顔を横目に、ビコーズもひとしれず口元を緩めた。
横目で阿部はそれを見、ふ、と唇を歪めた。
N| "ー'` {"ー`lリ(杞憂だったかな)
四人は、一見すれば家路を急ぐ家族のように仲良く並んで、昼の商店街を駆けていく。
その四人分の背中を見つめる、一人の影があった。
リl从ノ!リ人リ*⌒「………………」
リリリリン。軽やかな電子音が鳴り響く。
少女は電子機器のボタンを押して、耳元に当てた。
白リl从ノ!リ人リ*⌒「………………うん。そっちにはまだ戻らないけど、定例会議には間に合わせるよ」
『早く戻っておいでね。君のダァリンは君のことが心配で心配で堪らないんだ。トウキョウはテロリストがいるって噂だからねェ』
白リl从ノ!リ人リ*⌒「どうせダーリンが仕向けたんでしょ?わかってるよ、それくらい」
『本当に今回のは僕じゃないってえ!信用してよぉ〜』
白リl从ノ!リ人リ*⌒「嘘つき!猫撫で声出さないで、気持ち悪い!もう切るからねっ!」
ピッ。少女は乱暴に通話を切り、眩しそうに目を細めた。
瞳の奥に暗い炎を灯して、その視線の先に4人を、特にその中の一人をじっと見逃すまいとするように。
⌒*リ´・-・リ「……………………次は絶対に、逃さないんだから!」
- 424 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:07:01 ID:bVtynL920
- 5話、終わり!!!
投下詐欺一番多い回でした!
ほんとうすみませんでした!時間がありながらこの体たらく!!!
6話は近いうち投下します!!今度こそ真面目に投下します!!
ありあとっしたァ!!!
- 425 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:15:56 ID:VoH5qA5c0
- 乙乙
クーかわええ
- 426 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:20:15 ID:bVtynL920
- おまけ・今日のメンバー
『( ´∀`)』 阿日谷モナー(Mona Ahiya) 260/500
Age/30 Sex/male Height/175 Weight/75
Level:3
ST(Strength/体力):●●○○○ 40/100
PO(Power/攻撃力):●●○○○ 40/100
D(Defense/耐久) :●●●○○ 60/100
SP(Speed/俊敏性):●●●○○ 60/100
T(Technique/技術):●●●○○ 60/100
ジーナに付き従う執事。物腰柔らかで争いを好まない性格。
基本的な戦闘能力は備わっているが、本腰を入れた戦闘は二重人格のアヒャに任せきり。
好きなコーヒーはキリマンジャロ。
『( ゚∀゚ )』 アヒャ(AHYA) ???/500
Age/― Sex/male Height/― Weight/―
Level:―
ST(Strength/体力):
PO(Power/攻撃力):
D(Defense/耐久) : Unknown
SP(Speed/俊敏性):
T(Technique/技術):
モナーのもう一つの人格。人類最強を創ろうとした成れの果て。
刃物一つで全てを切り裂く。その力、未だ未知数。
好きなゲームはアクション全般。
『川 ゚ -゚)』 Cシリーズ001 ???/500
Age/40over Sex/famale Height/165 Weight/210
Level:
ST(Strength/体力):●●●○○
PO(Power/攻撃力):●●●○○
D(Defense/耐久) :●●●○○
SP(Speed/俊敏性):●●●○○
T(Technique/技術):●●●○○
横堀会社に長年勤めていた処理ロボット。元連続殺人鬼。
ビコーズやドクオなど、何かしら問題のある男にばかりかまける傾向がある。
好きな油はレギュラー。
- 427 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:28:00 ID:bVtynL920
-
おまけ2
爪゚ー゚)「たらったったたー!今回から新設コーナーを作ることに決めたわ!」
从 ゚∀从「題して!ミ☆ハインとジーナと時々ゲスト!ドッキドキ質問コーナー☆彡」
(,,゚Д゚)「このコーナーでは、投稿された質問に」
从 ゚∀从「ハインと!」
爪゚ー゚)「ジーナと!」
( ´_ゝ`)「毎話ごとに登場済みの中から一人ずつ違うゲストが登場して」
(´<_` )「質問に答えちゃうぞ!(棒)」
( ´∀`)「『○○はどうして××なの?』『ここってこういうことなの?あれ?違うの?』といった」
( ゚∀゚ )「読者の質問に丁寧に答えてやるぜヒャッハアアア!!」
川 ゚ -゚)「ネタバレの可能性がある質問はスルーすることがございます。ご了承くださいませ」
⌒*リ´・-・リ(言えない、作者がアホだから補足説明分としてこのコーナー設けたなんていえない)
从 ゚∀从「おーい丸見え、丸見え!」
(,,゚Д゚)「他にも投下詐欺しまくったお詫びとして、特別短編なんかも上げるが、まあ期待しないでくれ」
爪゚ー゚)「それじゃ!」
⌒*リ´・-・リ ´_ゝ`),,゚Д゚) ゚∀从「まったねーーーー!!」(゚ー゚爪(´∀`( ゚∀゚ (´<_` )
- 428 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:34:32 ID:WVMR6MmY0
- 乙
- 429 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:38:53 ID:bVtynL920
- 以下チラ裏
キャラクター達にはそれぞれ元ネタがございます。参考までに
(,,゚Д゚):ドラえもん+ターミネーター
从 ゚∀从:絶対可憐チルドレンの薫
('A`):GS美神の横島+キム・ポッシブルのロン
川 ゚ -゚):DEAD SPACEのアイザック
爪゚ー゚):HELLSINGのインテグラ。名前も彼女から借りました
( ´∀`):同様、HELLSINGのウォルター、由美江
( ゚∀゚ ):BLOOD+のサヤ、
( ´_ゝ`):BLACK JACKのブラックジャック、MGSのオタコン
(´<_` ):BLACK JACKのピノコ、MGSのスネーク(ソリッド)
思ったより節操なかった。おやすみなさい
- 430 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:42:46 ID:VoH5qA5c0
- 横堀いつの間にか消えてたんだが、死んだのか?
- 431 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:49:07 ID:.a1Ug5osO
- >>430 死んでロボットになって復活してアヒャと戦ってたな
- 432 :名も無きAAのようです:2012/12/04(火) 01:51:59 ID:VoH5qA5c0
- >>431サンクス
- 433 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 434 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/11(火) 20:19:20 ID:GwCrPGXY0
- 死んでると思ったかい?どっこい生きてる
今回から酉付けることに決めました。
明後日に6話投下予定!
- 435 :名も無きAAのようです:2012/12/11(火) 22:42:25 ID:TgKaY0wc0
- おーたのしみ
- 436 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/13(木) 22:50:40 ID:WvPwu/gY0
- 【ごめん】多忙につき明日の夜に延期【12月のクソッタレ】
- 437 :名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 00:28:25 ID:xreZeidQ0
- 無理すんなよ
待ってる
- 438 :名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 08:44:09 ID:c2R2g9uc0
- 待ってるよん
- 439 :名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 11:15:31 ID:Hf4H8fHc0
- 来るのか!wktk
- 440 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 12:37:06 ID:rHtiImBg0
- お、おやつ時に投下するし(震え声)
- 441 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:07:00 ID:rHtiImBg0
- ちょっとだけ投下
- 442 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:08:53 ID:rHtiImBg0
-
可愛い小さな白鼠
巣穴の奥から顔出して
小さな瞳は何を想う?
.
- 443 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:10:41 ID:rHtiImBg0
-
act6:Mouses
.
- 444 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:12:28 ID:rHtiImBg0
-
夜の病院は不気味と人は言うが、ギコにはその恐怖が理解出来ない。
寧ろ人気が無い分、静けさが心地いい。
枕元で、深夜ラジオが、囁くような調子で来週1週間の天気予報を読み上げる。
今年は例年より早く、雪が降るらしい。
(,,//Д゚)「ん」
从 -∀从クゥ、クゥ
柔らかいものが右手にぶつかる。
小突かれた本人は、まったく起きる気配を見せない。
ワガママばかり言ってばかりの、マシュマロのような頬をそっと何度かつまむと、
これまた柔らかい唇がむにゃむにゃと何事かを呟いて、それでも起きる気配はない。
从;*゚∀从『ね、ね、今日お泊りしていいよね!?よっ夜の病院とか楽しそうだし!』
从;*゚∀从『別に家で留守番するのが淋しいとかさ、そんなんじゃないよ?でもギコだって一緒のが寂しくないだろ?』
といっておきながら、この安眠ぶりだ。
从*-∀从oギュッ
(,,//Д゚)「……」
彷徨っていたハインのもみじ手が、ギコの硬質な機械の指に触れる。
当然だが、ギコの手に人間と同じような感覚器官は存在しない。
彼女の手の暖かさは只の温度としてしか捉えられないし、その柔らかさと心地よさを知ることは出来ない。
その事実を思い知らされる時が一番、「もどかしい」。ギコは心で確かに、そう感じていた。
(,,//Д゚)「……ハイン」
从*-ー从ニヘラ
ハインの手を握るたび、ハインの笑顔を見るたびに。
ギコのAIは一段と「彼女を守らなければ」と自発的に命令する。
その瞬間がたまらなくて、彼にとって何物にも代え難くて、数少ない「感情」を感じ取れる、「愛しいもの」。
- 445 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:14:15 ID:rHtiImBg0
-
('A`)+『社長みたくまた変なのに襲われたらいけませんからね!俺が見張ってますから安心してください!』
(´A`)スピー
見張り役を買って出たドクオはといえば、ベッドによりかかり、床に座り込む形で眠りこけていた。
使えもしない拳銃を右手に握ったまま、船を漕いでいる。安全装置は外れていない。
抵抗しない手の内からするり、と拳銃を取り上げておいた。
片意地張っている今はまだ、彼にこのような物を持たせるべきではない。
(,,//Д゚)(ハカタでの定例会議まで後1ヶ月か……)
彼は1ヶ月後、モナーと共にジーナの護衛としてハカタへ赴く。
戦闘に関してはど素人もいい所の彼をなぜ連れて行くのかはさておきとして、
ギコに出来ることは、1日でも早く彼に技術を身につけさせることだ。
(,,//Д゚)(まだまだ叩き込むことは山ほどあるな)
少なくとも、居眠りしたまま銃を握るなんて悪癖は早いところ辞めさせなければ。
ドクオは恐らく、焦っている。予期しなかったクールの早い復活や、自身の弱さを痛感して、
何か先走っているようだ。
(;-A-)ウーンウーン
(,,//Д゚)フッ
銃は机の上に置いて遠ざけ、枕に後頭部を預ける。
枕といえば、昔どこかで聞いたが、
入院患者の中には病院枕の感触が忘れられず、退院時にこっそり持ち逃げするなんて噂を聞いたことがあるが、果たして。
(,,//Д-)ピクッ
スリープモードに入りかけた時、ギコの耳が音を捉えた。
小鳥が飛び跳ねるような、軽やかな足取り。
ギコのよく知る人物特有の歩き方。
(,,//Д゚)「……入れよ。鍵は掛かってない」
「それではお言葉に甘えて……お邪魔しますわ」
- 446 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:15:51 ID:rHtiImBg0
-
爪゚ー゚)「お怪我の方は、もう大丈夫ですの?」
扉の向こうに、影一つ。風に揺れるカーテンのように、扉の隙間からするりと入り込む。
いつもの大きなベレー帽を頭に乗せて、小首を傾げるジーナ。
帽子の隙間から額にかけて包帯が見え隠れしている以外は、いつもの彼女だ。
(,,//Д゚)「朝3時半から左腕部の各関節の修復と人工スキンの癒着。
それが終わったら今日の午後にでも、退院だそうだ」
天井に視線を投げたまま、フン、と鼻を鳴らす。表情から実に至極不服であると窺える。
窓の外からぼうっと、眼下で煌く繁華街のネオンが、ギコの顔を仄暗く照らしてくれる。
ジーナはベッドの端に座り、じっ、とギコを見た。
青い瞳のなかで、色とりどりの光が弾ける。
爪゚ー゚)「……もうすぐ、3年ですね」
フ、と笑んだ。
卓上に置かれたバレッタの銃身を、細い指先が弄ぶ。
(,,//Д゚)「もう、か」
爪゚ー゚)「正確には来年の3月で3年になりますわ。早いものですね」
ギコの手がシーツを握った。皺が刻まれてしまいそうな程に、強く。
表情はいつもの能面だが、纏う空気は猫に追い詰められた鼠のような、焦燥感に苛まれたような気配を感じる。
ジーナはそっとギコに振り返って、ベッドに自身の膝を乗せ、ギコに乗りかかる。
ギシ、とベッドが揺れ、ハインの頭も一緒に揺れた。
爪゚ー゚)「お忘れではないですよね?ミスター」
(,,//Д゚)「…………」ギリッ
爪^ー^)「3年経って『借り』を返せなかった場合」
从*-∀从ムニャ…ギコ…
「……ハインさんを保護してVIP社に正式雇用する、というお話」
爪^ヮ:::(゚Д‖,,)
音の存在を忘れてしまいそうなほどに痛いほどの沈黙が、病室を支配する。
ベッドシーツを引き裂きかけるほどに、ギコの指が固くシーツを握っていた。
- 447 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:16:31 ID:rHtiImBg0
-
(,,//Д゚)「……まだ3月まで時間はある。直ぐにお前の鼻を明かしてやるさ、悪女」
爪^ー^)「それはそれは。楽しみです」
ギコは嫌悪感を剥き出しにして、憎々しげに吐き捨てる。
相反するジーナの笑顔が更に嫌味ったらしく見え、ギコの鋭い視線は眼光を増すばかり。
軋む音と共に、少女の体が離れた。
(,,//Д゚)「ハインだけは、俺が守る」
ギコの手は確かにしっかりと、ハインの手を握る。
大丈夫だ、彼女はこの場にいる。
(,,//Д゚)「コイツを、俺の、お前たちの『世界』に巻き込ませる訳にはいかない」
一字一句、噛み締めるように、自分に再確認するように、言葉をぶつける。
(,,//Д゚)「ハインの世界に、嘘も、戦いも、血も、殺しも要らない」
爪゚ー゚)「……」
(,,//Д゚)「コイツに、俺と同じ道は辿らせない」
ジーナはスゥっと、深い蒼をたたえた双眸を細めた。
ただ何を言うでもなく、瞳から彼女の感情を読み取ることは出来ない。
ハインと、ギコを、交互に見やり、笑顔で――しかし深く溜息を零した。
爪゚ー゚)「3年前と何も変わりませんのね。ナンセンス、全く甘ったれた考えですわ」
ハン、と今度は鼻であしらう。明らかに侮蔑を含んだ笑顔。
ぐにゃりと歪めた唇が、見下す瞳が、紡がれた言葉が、ギコの決意を全否定する。
幼い少女にあるまじき影を帯びた一面。ギコが最も毛嫌いする、彼女を嫌う一因だ。
爪゚ー゚)「この世界で、この国で、私たちの領域で」
爪 ヮ )「そんな子供じみたワガママが、通用するとお思いで?」
クスクス、クスクスクス。
嘲笑うような忍び寄る笑い声が、病室の床を這いずり回る。
肩を震わせて、少女はニタニタと笑んだ。目尻に皺を寄せるような笑顔だった。
- 448 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:18:49 ID:rHtiImBg0
-
(,,//Д゚)「俺は」
息を吸う。ハインの手を握る手が強くなる。
(,,//Д゚)「俺達だけは、お前の掌で転がったりしない。いずれお前も、転がされた誰かに噛み付かれるぞ」
爪゚ー゚)「ッ……」
一瞬だけ、ジーナの笑顔がほんの僅かだけ揺らいだ。
しばし二人は睨み合う。数分か、永遠か、先に顔を背けたのはジーナの方であった。
爪゚‐゚)「……余計なお世話よ。私は誰にも、何物にも、私の行く道を邪魔させたりしない」
握りこぶしを震わせ、捨て鉢気味にジーナは吐き捨てた。
冷ややかな空気を纏わせたまま、少女は踵を返す。
ギコの視線を背中に受けて、無言のまま病室を出た。
「お邪魔しましたわ」
11月に入り、一段と増した身を貫く寒さが、少女の白い肌をチクチクと刺す。
室内でも白い息は出る。喉はカラカラになるほど乾ききって、生唾を飲み込んだ。
::::::::゚)スゥ
( ゚∀)「……お嬢。待ちくたびれたぜ」
爪゚‐゚)「ごめんなさい。…………帰るわよ」
廊下の奥、宵闇に紛れてアヒャの姿がぬるりと現れる。
赤い肌は非常口の電光に淡く照らされ、黄色い瞳がぬらぬらと妖しく光る。
真夜中の見舞いが、彼は退屈だったのか、地面に転がる物言わぬ男たちの体を足で転がす。
( ゚∀゚ )「どいつもこいつも早漏が多くていけねえや。そうは思わねえか?」
爪゚‐゚)「…ハカタの手がここまで伸びてるのね。おじ様、露骨に態度に出すぎだわ」
男たちを避け、ジーナはアヒャの手を取った。
赤い腕はたやすく少女を抱きかかえ、ひょいひょいと踊るように廊下を歩く。
突き当たりには、人一人分の大きさの窓があるだけだ。アヒャは構わず進む。
- 449 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:20:04 ID:rHtiImBg0
-
( ゚∀゚ )「あの狐野郎、いよいよ本気でお嬢の首を取る気になったってことだ」
アヒャの足取りは軽やかだ。
戦場を好む性分が、闘いの気配を感じ取り上機嫌にさせるのだろう。
『コイツを、俺の、お前たちの『世界』に巻き込ませる訳にはいかない』
爪゚‐゚)「……」
( ゚∀゚ )「よっ」
窓の鍵をバチンと解いて、大きな窓を押し倒す。
ガラス窓を下敷きにして立つと、びょおびょおと冬の強風が頬を打った。
『ハインの世界に、嘘も、戦いも、血も、殺しも要らない』
( ゚∀゚ )「さ、掴まってろよ」
爪゚‐゚)「ん」
首をごきりと回し、黄色い双眸は遥か一点を見据えた。
両脚の筋肉がスーツ越しに肥大する。
アヒャは極限にまで鍛えられた五感と、筋肉を自在に操作する能力、そして膨大な戦闘経験を持つ。
その全ての力をもってして、彼は――夜空を跳躍する。
『コイツに、俺と同じ道は辿らせない』
爪゚、゚)「……」
アヒャの足は軽やかに、重力操作靴もなしに、建物を蹴り夜を駆ける。
しっかと掴むその力強い腕に抱かれて、ジーナは静かに瞼を閉じる。
ジーナの頭の中で、ギコの言葉がぐるぐる、巡る。
どこまでも相いれることのない平行線の言葉が、ジーナの心を捉えて離さない。
彼の言葉は虚言だ。子供ですら口にしない絵空事だ。
戦争ばかりのこの世界で、暴力と金だけが道理を語るこの国で、嘘と憂鬱ばかりが支配するこの街で。
全て切り離して生きることなんて、出来ない。
頂点を求めて争い、血の滴る法を無理やり通し、黄昏の蔓延る界隈で、姑息に生きるしかないのだ。
餌を求める、鼠のように。
貪欲に。狡猾に。それが自分たちの定めだ。
- 450 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:21:20 ID:rHtiImBg0
- アヒャの胸元に顔を埋めると、鉄錆と汗ばんだ臭いが鼻をついた。
お世辞にも決して上品とはいえない臭いなのに、一番心が落ち着く。
油汚れのようにこびりつきかけたギコの言葉も、次第に薄れていく。
そうすると、彼の言葉が薄っぺらいシールのように剥がれ、ジーナは再び平常心を取り戻した。
爪゚ー゚)「アヒャ、近いうちに私たちも仕掛けるわよ」
( ゚∀゚ )「へえ?つまりそれは、戦争かい?」
爪゚ー゚)「いつまでも迎え撃つだけなんて、貴方もつまらないでしょう」
何も語らずして、アヒャの笑みが深く刻まれる。
弧を描いた唇から、鋭い八重歯がチラチラと覗く。
ジーナは頭を大きな左胸に預けた。
爪゚ー゚)「まずは敵の大きさを知るのよ。おじ様が直接手を下しにくるとは思えないわ」
( ゚∀゚ )「随分な自信だな」
爪゚ー゚)「……仮にも血縁者ですし」
そういうものか、とアヒャは言葉を切る。
眼下の街並みは相も変わらず、飽きもせず、下品な色で建物の群れを着飾る。
不変の街。何一つ変わることを知らない、原色だらけの世界。
『俺だけは、お前の掌で転がったりしない』
爪゚‐゚)
『いずれお前も、転がされた誰かに噛み付かれるぞ』
心が一瞬だけ、小さな痛みを訴えた。無条件に、ジーナは瞼をひくつかせ、唇を噛む。
爪 ‐ )「……ねえ、 」
( ゚∀゚ )
爪 ‐ )「貴方だけは、…………私を…………」
その先から言葉を聞くことはなかった。
少女は微睡みの世界へ誘われ、言葉の続きは静かな寝息にすり替えられた。
主人の眠りを確認し、アヒャはぽっかりと大口を広げた闇の中へ、その身を投じた。
- 451 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/15(土) 15:38:56 ID:rHtiImBg0
- 休憩。土日またいでゆっくり投下します
- 452 :名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 17:30:56 ID:qdvfOgNE0
- おぉ、来てたか
ひとまず乙
- 453 :名も無きAAのようです:2012/12/15(土) 17:55:42 ID:Hf4H8fHc0
- 来てた乙! 三年前なにがあったんだ…
- 454 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 13:13:01 ID:sXWsvZJY0
- 2時半に続き投下予定
- 455 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 14:30:13 ID:sXWsvZJY0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
( ´_ゝ`)「術後の経過は良好だな。あと半日ほどでナノマシンが効いてくる筈だ」
(,,゚Д゚)「手を煩わせたな」
( ´_ゝ`)「ま、ま。これが仕事だからね」
病院のロビーで立ち話をする二人。
ギコの左腕はギプスをはめたままだが、ほぼ全快と見て取れる。
昼間は流石に人が溢れかえっている。病院はアンドロイドの修理も兼ねているため、ロボットの数も多い。
( ´_ゝ`)「ハインちゃんは学校?」
(,,゚Д゚)「流石に、俺の看病で休ませるわけにはいかないからな」
( ´_ゝ`)「傍から見ればすっかりお父さんだな、ギコは」
む、とギコが唇を真一文字に結んだ。馬鹿にされたと思ったようだ。
兄者は白衣の中から一枚の手紙を出した。
薄いピンク色の紙に、丸まったハインの字で一言、「先生ありがとう」と書かれていた。
( ´_ゝ`)「そっかー。学校かあ。俺は一度しか行かなかったっけか」
(,,゚Д゚)「学校に行ってた時期があるのか、お前」
( ´_ゝ`)「小学校の時だけ、だけどさ。友達も一人しか出来なかったけど、楽しかったなー」
(,,゚Д゚)「お前にも友達はいたんだな」
( ´_ゝ`)「喧嘩売ってんの?エネルギータンクにバニラエッセンスぶちこむよ?」
軽口を叩き合いながら、思い出を語る兄者。
遠いあの日を懐かしむ表情は、少しばかり寂しげだ。
目の下に皺を溜めて、悩ましげに息をつく。
( ´_ゝ`)「……俺としては、社長には普通の学校生活だけでも過ごして欲しいんだけど」
(´<_` )「本人が聞いたら憤死モノだな」
ニヤッと一笑し、兄者の背後から医者に扮したオトジャが顔を出す。
彼自身は兄と違い医者の免許など持ち合わせていないが、技術だけなら普通の技師たちに引けをとらない。
こうして医者面して堂々と闊歩しても、誰も気に留めない。
- 456 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 14:31:15 ID:sXWsvZJY0
-
(´<_` )「無駄話はそこらで終わりだ。兄者、ちょっと話がある」
オトジャは手に持った書類をちらつかせた。
兄者が受け取り、ギコも覗き込む(身長差の関係で、書類がちょうどギコの目の位置に当たるのだ)。
VIP市自爆テロ事件において使用されたロボットに関する報告書だ。
(:::[゚::。])
米国産・重火器収納型自律移動式戦闘ロボットHeavy WSAM-BRのものとみられる。
自己修復プログラム並びに自動式自爆装置を搭載されたと思われる。
米式独自のヒューマノイド技術を施され、外見だけならば一見すれば一般人と大差無し。
運転手になりすましVIP社に潜入、ジーナ・インテグラル及び児玉ビコーズの抹殺に及ぶも失敗。
Cシリーズ001により処理完了。機体の回収は未完遂。
(//‰'゚)
横堀工場総合責任者・横堀只男社長。
致命傷を負い即死と思われたが復活、攻撃を仕掛けてきたことから
人類の禁忌と思われる【改造人間手術】を受けた疑い有り。
リムジンの爆発事故の際巻き込まれたと思われ、機体の回収は未完遂。
――GICグループ日本・トウキョウシティVIP支社技術班の記録より
(´<_` )「一部でも部品が残ってりゃ解析してやるのになー。見事に証拠を滅されちまったよ」
(,,゚Д゚)「ガレキの撤去作業では見つからなかったのか」
( ´_ゝ`)「馬鹿言うない。作業用とはいえ、うちのロボットがそんな繊細な技術持ってると思うか?」
(´<_` )「持ってるんだなこれが。……でも見つからなかった。警察の介入が思ったより早かったな」
唇をへの字に曲げ、ムスっとしてオトジャは愚痴をこぼす。
兄者は指で顎をさすり、喉の奥で唸り声を上げる。
( ´_ゝ`)「改造人間手術……。有り得ない話じゃないが……実現させるにせよ、並みの技術者の技じゃとても無理だな」
(´<_` )「それだけの人材をゲットするほどに、奴さん側のパイプラインも広がってるってことだろ」
GICグループ日本・ハカタシティSogo支社。
社員数は5万人以上を誇り、主に鉄鋼業や重工業で生産ラインのほとんどを占めている。
総合責任者のフォックス・インテグラルはジーナの父親の弟、叔父にあたる存在だ。
ジーナには敵が多くいるが、ことにフォックスとの折り合いの悪さは尋常なものではない。
- 457 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 14:55:00 ID:sXWsvZJY0
- (´<_` )「あの児玉ビコーズを尋問するのはどうだ?それなりに奴だって情報を持ってないわけじゃないだろ」
( ´_ゝ`)「いや、これ以上問い詰めたところで不毛なだけだ。彼はあくまでVIP市新工場計画の一端を背負わされていたにすぎない」
当のビコーズもロボット達の強襲に遭った一人だ。
改造人間手術はおろか、後からギコの正体を聞いて目玉をひっくり返したくらいなので、ロクな情報は期待できないだろう。
Cシリーズ001――クールのマスター・児玉ビコーズ。
彼は現在、非戦闘要員の技術班の一員となりその技術を多大に貢献してくれている。
気難しい性格と元敵方の職員ということもあり、仕事だけはこなしてくれているが、打ち解けた訳ではない。
(,,゚Д゚)「とにかく、今はハカタの繋がりを探すことが第一だな」
( ´_ゝ`)「任せとけ、情報班の情報収集力なめんなよ?」
(´<_` )「まだ1ヶ月猶予があるからな。楽勝だ」
(,,゚Д゚)「頼りにしてるぞ」
双子は見合ってニヤリと笑い合う。悪戯少年のようだ。
それを見ていつもの憎まれ口を呟きながら、ギコは肩を竦めた。
(うA`)ゴシゴシ「おふぁふぉーございます……」
,_
(´<_` )「ようやく起きたか給料泥棒。テメエの見張りってのは銃も持たずに床で寝ることかよ?」
(;'A`)「す、すいません……」
(,,゚Д゚)「オトジャ、俺たちはともかくドクオは人間だ。激しい戦闘で疲労したら睡眠をとるのは道理だろう」
(´<_` )「ケッ」
ジロリとオトジャはドクオを睨みつけた。
VIP市内での乱闘以降、オトジャはドクオに対しても冷たい態度を取ることが多くなった。
ギコを敵対視している分、ギコがドクオの肩を持つことも気に入らない。
どうにもその要因があってか、彼の気に入らないカテゴリに入ってしまったようである。
(,,゚Д゚)「放っておけドクオ。俺は一度家に戻る。午後には会社に向かうからな、トレーニングは怠るなよ」
('A`)「は、はい」
(´<_,` )「なんなら、俺様が直々に指導してやったってイイぜ?」
(;'A`)「ひぃいっ!?」
( ´_ゝ`)「こらこらそこ、弱いもの虐めしない」
- 458 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 14:58:13 ID:sXWsvZJY0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
病院からVIP中学校まで、そう距離は離れていない。
ハインはスクール鞄を放り投げながら、意気揚々と曇空の下を跳ねる。
从*゚∀从「えへへ、お泊り楽しかったなー。先生、手紙読んでくれたかな」
从 ゚∀从(ホントはドクオさんにもお別れ言いたかったけど、寝ちゃってたしなぁ…)
从 ゚∀从(まあいっか!また会えるだろうし)
給水塔をジャンプ台に、塀を飛び越え、道行く人々の頭の上を軽やかに飛ぶ。
カラスたちの脇をすり抜け、エアカーの間をぬって避ける時などは爽快な気分だ。
たまに睨み合う猫たちの尻尾を踏むのはご愛嬌。
風が体を受け止め、髪が頬をくすぐるこの瞬間が、ハインは好きだった。
从 ゚∀从「あれ?」
キュッ、と靴の底を鳴らし、壁にへばりつく(重力操作靴ならば、これくらいどうということはない)。
通学路のひとつ、大通りの一角をしばらく見つめる。
その視線の先には、一人の少女。
((爪゚‐゚)
从 ゚∀从!
爪゚、゚)ブッスー
( ´∀`)『それでは、これから「仕込み」に行きますので、気をつけていらっしゃいませ』
爪゚、゚)(……だからってさ、いつもの朝の見送りくらいしてくれたって良いじゃないの)
爪゚、゚)(ワガママだってこと位は分かってるけど……)
从*゚∀从「ジーナーー!」
爪゚、゚)そ
- 459 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 15:01:13 ID:sXWsvZJY0
-
从 ゚∀从「とうっ」
爪;゚д゚)そ「はわっ!?」
ハインはいてもたってもいられず飛び出す。
ぽうん、とゴムボールのように跳ね、ジーナの前に着地した。
ボーッとしながら歩いていたのか、突然空から姿を見せたハインを見て目を丸くするジーナ。
爪;゚o゚)「は、ハインさん…どこから?」
从*゚∀从「どこって、上からだよ」
愉快そうに空を指差すハイン。つられてジーナも見上げた。
从 ゚∀从「珍しいじゃねーか、朝から学校くるなんて。それにお付きの人?もいないし」
爪;゚‐゚)「ええ、まあ……」
ジーナは歯切れ悪く返答する。彼女はハインの言う通り、珍しく1人だった。
定例会議の件もあり、モナーを会社に残して、一人で通学せざるを得なかったのだ。
無論、SPは付いてきているが、学校で迂闊に彼らの姿を晒すわけにもいかず。
一人になったタイミングで、ハインに遭遇したという次第だ。
<コノクソガキー! ドコミテンダバカヤロー!
从*゚∀从「ほら、早く学校行こうぜ!遅刻しちゃう!」
爪;゚、゚)「え、ええ」
爪゚、゚)∞从゚∀从从ガシッ
爪;゚o゚)「えっ」
‐=≡爪;゚д゚)∞≡ルリ*゚∀从「きゃっほーーーーー!!」
≡爪;゚д゚)「ち、ちょっとハインさっ…」
≡从 ゚∀从「手繋いで走ったほうが早いだろー?」
爪;゚д゚)「そっそういう話じゃ…」
エアカーの運転手たちが口々にハインを罵るので、
笑いながらハインはジーナの手をとって走り出す。
学校に近づくにつれ、同学年の生徒もちらほらと自然に目に付く。
- 460 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 15:01:56 ID:sXWsvZJY0
-
ダダダ ≡tルリ ゚∀从「はよーっ」
( うд‐ )「おう、おはよー」
=≡爪;゚д゚)∞从 ゚∀从タタタッ
( うд゚ )
(;゚д゚ )そ「よーー……よぉおっ!?」
爪;゚д゚)(は、早い…!)ゼェゼェ
マジデ?(;゚⊿゚)(゚д゚;)ヒソヒソ
生徒たちの好奇の視線が二人に集まる。
滅多に学校に来ることのないお嬢様が、
朝から、しかも徒歩で、他の生徒と手を繋いで現れたのだから。
爪;゚д゚)「は、ハインさん、早…!」
从*゚∀从「早く早くー!」
爪;゚д゚)ゼェゼェ
教室に到着する頃には、ジーナは汗だくだった。
勿論、クラスメートたちの奇異の視線が集中するのは必須。
運動慣れしていないジーナはぐったりと机に突っ伏し、額を伝う汗を拭った。
从 ゚∀从「ひゃー。あれっHRまで15分もあったのか。走って損したなー」
⌒*リ´・-・リ「おはようハインちゃん」
⌒*リ;´・-・リ チラッ
爪;゚、゚)フゥフゥ
从;゚∀从「……大丈夫か?」
爪;゚д゚)クワッ「これが大丈夫に見えりゅッ!?」
从 ゚∀从
爪;゚ー゚)「……あっ」
- 461 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 15:05:20 ID:sXWsvZJY0
-
从 ゚∀从(噛んだ)
⌒*リ;´・-・リ(噛んだ…)
爪;*゚д゚)アワアワ「いえ、その…今にょは決して噛んだわけでは……」
从 ゚∀从
从*゚ー从プッ
爪;*゚д゚)そ
爪;*゚д゚)「わっわりゃわないでよ!」
从*゚∀从「だっだって!今だって噛んだじゃん!」
爪;*゚д゚)「噛んでない!かにでないっ!」
从*;∀从「うひゃひゃひゃひゃ!噛んだ噛んだ!かにでないwwwwwww」
爪#゚д゚)「噛んでないったら!しつこい!」
⌒*リ´・-・リ(ジーナちゃんて、こんなにしゃべる子だったんだ…)
( ^ω^)「おらーホームルーム始めるおー」
从*゚∀从「噛み噛みージーナはすぐに噛んじゃうドジっ子ー」
爪#゚д゚)「違うったら!待ちなさいー!」
(#^ω^)「こらっそこ座りなさい!」
从 ゚∀从「そんなムキにならなくたってwwwwwwwwかにでないwwwwwwww」
爪#゚д゚)ウガーッ「待ちなさいって言ってるでしょーー!」
⌒*リ´・-・リ(そんなに恥ずかしかったのかな……噛んだの……)
(#^ω^)「罰として二人共立ってなさい!」
Ω
从;゚∀从「は〜い」
Ω
爪#゚д゚)(な、何で私まで……!!)
,
- 462 :名も無きAAのようです:2012/12/16(日) 15:29:14 ID:fchy9qQc0
- なにこのジーナ超可愛い
あとバニラ突っ込むのはやめてやってwww
- 463 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/16(日) 16:10:16 ID:sXWsvZJY0
- 【PCが蜂起】【ちょっと待ってて】
- 464 :名も無きAAのようです:2012/12/17(月) 04:18:25 ID:UIjbV/Qo0
- 噛み噛みジーナかわいいww
ギコも噛み噛みだったことあったな
Robotsの噛み萌え良いなぁ
- 465 :名も無きAAのようです:2012/12/17(月) 13:54:57 ID:hpqefCFQ0
- 待ってるよん
- 466 :名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 19:14:58 ID:pkcMo5zw0
- ジーナもハインもかわいすぎんだろー!
全裸で待ってる
- 467 :sage:2012/12/18(火) 19:16:31 ID:pkcMo5zw0
- sage忘れたごめん!
- 468 :名も無きAAのようです:2012/12/18(火) 19:26:12 ID:pkcMo5zw0
- sageられてなかった……ごめん
100年ROMるお
- 469 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/19(水) 23:06:51 ID:erFyWSmY0
- レスは飛ぶわミニラノベには間に合わないわで踏んだり蹴ったりな作者です
続きゆっくり投下。
パソコンが相変わらず調子悪いのでぶっつんぶっつんです、ご了承ください
- 470 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/19(水) 23:10:22 ID:erFyWSmY0
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
昼のトレーニングルームでは、二人の男が熾烈を極めていた。
朝の10時からぶっ通しで、ドクオとオトジャによる模擬戦闘が繰り広げられている。
本物の銃器無し、オトジャは戦闘用ギミック一切搭載無しというハンデ付きとはいえ、
あまりに二人のその実力差は広すぎた。
(; A )ゼェ、ゼェ
(´<_` )「おら、来いよ。こちとら装備全換えしてレベル2まで下げてるんだぜ?」
(;'A`)「っはい!」
戦闘服すら着ず、オトジャはジャージの格好で、ドクオを挑発する。
余裕すらみせるニヒルな笑みに突貫せんと、ドクオはゴムナイフを握り直す。
踏み込んで接近。ナイフを突き出す。オトジャは難なく避ける。
標的を失って直進する腕を、掴んだ。
(´<_` )「脇を開きすぎだ。隙だらけだぞ」
(;'A`)「いっ……」
「わぁあああああっーーーー」(゚A゚;≡ \(´<_` )\「どっこいしょー」
軽く捻っただけで、ドクオはナイフを取り落とした。
ぽうん、とゴムナイフが地面を跳ねて離れる。
刹那、オトジャはドクオの体を勢いよく放り投げた。
(×A×)キュウ
(´<_` )「ちゃんとメシ食ってんのか?幾らなんでも吹っ飛ばされすぎだろ」
( ´_ゝ`)「オトジャと人間の腕力を一緒にしちゃいかんでしょ」
兄者が呆れ顔でドクオを引っ張り上げた。
かれこれもう3時間も通しで戦っているにも関わらず、オトジャは涼しい顔だ。
(´<_` )「つまんねーなー。俺が稽古つけてやるって言ったは良いけど、ドクオ弱すぎ」
(×A×)グサァァアッ
( ´_ゝ`)「何言ってんだ。人間にしては飲み込みも早いし、出会った頃に比べりゃ充分強くなったよ、ドクオは」
フォローを入れるも、その優しさがドクオにとっては逆に辛い。
自身の弱さはとっくに痛感済みだ。まともに戦えるわけでもなし、サポートが出来るでもなし。
並みの人より少しだけ、素早さと反射神経がよく、物覚えがいいだけのこと。
- 471 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/19(水) 23:13:52 ID:erFyWSmY0
- そ(∩A∩)そ バチンッ
(;'A`)「…も一回お願いしますッ!!」
( ´_ゝ`)「……!」
(´<_` )
ククッ(´<_,` )「良いぜ。ご要望通り、足腰立たなくなるまでサンドバックにしてやるよ」
(´<_` )「ただし、闇雲に動いたところで無意味だ。俺の指示通り体を動かしてもらう」
(;'A`)「ハイッ!オナシャス!」
無意味に雄叫びを上げ、突撃する。
駄目出しを喰らいながら、ドクオはやはり何度も放り投げられる。
だが、その瞳は輝かしいほどのやる気に満ちていた。
最初は止めるべきかと兄者は思案したが、ドクオの様子を眺めるだけに留め、トレーニングルームを出た。
川 ゚ -゚)「……」
( ´_ゝ`)「心配かい?」
微動だにせず、トレーニングルームを覗き込むクールに呼びかける。
兄者の質問には答えず、クールの視線はひたすらにドクオに注がれていた。
表情こそ動く気配はないが、モノアイの瞳がある感情に彩っているのを、兄者は見逃さない。
よく知った男も、時折同じ瞳の色をさせることを、よく知っているから。
(´<_` )「そうじゃない、もっと敵の動きとタイミングを合わせろ!」
(;'A`)「ハッハイ!」ゼヒィゼヒィ
川 ゚ -゚)「…………」ジーッ
( ´_ゝ`)「……」
(´<_`#)「避けに徹する時はもっと視界全体に気を配れ!相手の目を見ろ!」
(;'A`)「サー!イエッサー!」
川;゚ -゚)ハラハラ
( ´_ゝ`)(今更だけど、クールって表情操作可能なのか。あのオッサン→( ∵)も何げにいい仕事するなァ)タカガ セイビシ ノ クセニ
- 472 :名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 23:18:42 ID:VJfAlJa60
- きてたか 作者のPC頑張れ支援
- 473 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/19(水) 23:21:32 ID:erFyWSmY0
- そんなこんなで30分ほど経過した頃、ようやくオトジャによる地獄の猛特訓が終了した。
大の字になって寝転ぶドクオの横で、オトジャも座り込む。
疲れを感じていることはないだろうが、些か眉間に皺を寄せていた。
川 ゚ -゚)ソワソワ「……」
クールは遠巻きにドクオ達の様子を伺う。接近してよいものか迷っているらしい。
そわそわウロウロと、その場で小さく地団駄を踏む姿は、飼い主を待つリードに繋がれた子犬を彷彿とさせる。
兄者はその場を離れ、自動販売機に小銭を押し込んだ。
そして、ペットボトルを手に戻ると、クールにそれを押し付ける。
川 ゚ -゚)「ドクター流石、本体に水分は不要です」
( ´_ゝ`)「うん知ってる。これ、ドクオに届けてきて」
川 ゚ -゚)!
川 ゚ -゚)「了解しました」
クールは意図を理解してかせずか、ペットボトルを受け取り足取り軽やかに向かう。
直後、何もない所でつまづいて転び、ドクオに勢いよくのしかかったシーンは目を逸らして見ない振り。
水をぶちまけた罪として、二人揃ってオトジャに正座させられ説教された。ドクオが哀れだ。
(;´‐`)「兄者」
( ´_ゝ`)「ん?どうしたモナー、顔色が悪いぞ」
三人が手分けして床掃除をしている姿を見て呆れている所に、モナーが歩み寄ってきた。
いつもの柔和な笑みが消え失せ、顔色が優れない。
(;´‐`)「その、ギコから連絡がきたかモナ?」
( ´_ゝ`)「いや、何も。朝に別れたきりだな」
('A`)「そういえば、一度自宅に戻ってから出社するって言ってたのに……来てませんね」
モナーの言葉に、朝の会話を思い出したドクオは訝った。
病院からギコの住むマンションがあるニューソク市までそう時間はかからない。
床掃除を終えたクールは男たちの話など興味なさげに、ペットボトルをじぃっと見つめていた。
(;´∀`)「……ちょっと、ギコの所まで行ってくるモナ」
(´<_` )「たかだか遅刻だろーが。考えすぎだろ」
( ´_ゝ`)「……分かった。モナーの仕事は俺たちで分担するよ」
(´<_`;)「ちょ、”たち”ってまさか俺もか!?」
- 474 :名も無きAAのようです:2012/12/19(水) 23:25:28 ID:45fLJkOI0
- しえ
- 475 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/19(水) 23:38:13 ID:erFyWSmY0
-
オトジャの反論など今のモナーには聞こえていないらしく、懐中時計を見やる。
杞憂だと説得されても、曇り顔が晴れない。
(;´∀`)(まさかとは思うけど……最悪のケースを考えたほうがいいかもしれないモナ……)
廊下を早足で渡りながらジャケットを羽織り、会社を飛び出す。
懐からキーを取り出し、ボタン操作で駐車場からリニアを呼び出す。
走り去るリニアを見送りながら、オトジャは舌打ちした。
(´<_` )「チェッ、面倒臭ェこと押し付けやがって……」
('A`)「……今まで突っ込めなかったんですけど、モナーさんって何者なんですか?」
同じく窓ガラスにへばりついてモナーを見送り、ドクオはおずおずと尋ねた。
VIP社に勤めて早1ヶ月弱になるが、モナーについては謎だらけだ。
モナモナ( ´∀`)爪゚ー゚)
VIP社の最上階に自室をかまえ、朝はジーナの見送り。
リムジンが最近トラウマになったらしく、リニアに切り替えたようだ。
( ´∀`)セイッハッ (;'A`)ホッホッ
午前はあまり姿を見せず、午後の2時間はトレーニング。
戦闘要員たちに比べれば筋肉も少ないが、運動量はひと一倍だ。
関係ないが、モナーのジャージの色彩センスは最悪だともっぱらの評判である。
モナモナ( ´∀`)爪゚ー゚)
夕方。フラッと消えてジーナと共に帰ってくる。
5日に1回の割合でスーパーの袋を提げているときもある。
それから。
(´∀` ):::∀゚ )
(::::::∀゚ )アヒャヒャ
彼の内に潜む、もう一人の男――凶暴性と野生の塊、アヒャの存在。
- 476 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 00:02:19 ID:j4qDdTzQ0
-
('A`)「あまり俺と接点ないですし……この間のこともあるから、気になるなーって」
何気なく放った言葉だが、兄者とオトジャはそれを聞き顔を見合わせた。
次に兄弟が浮かべた表情は、困り顔と、苦虫を噛み潰した時の顔芸を足して
2で割ったような、形容し難いものだった。
( ´_ゝ`)「モナーは……社長の後見人みたいなもんだ」
おおよそ兄者が語った、モナーの身の上。
少なくともモナーは、ジーナが4つの時から傍にいたこと。
彼女がVIP社の社長に就任した時から、マネージメントや補佐、社長代理までも勤めていたこと。
身分上は後見人であるが、ジーナの兄代わりのような存在であること。
肝心のアヒャについては何も語られず、かなりぼかされた形で教えられた。
裏を返せば、それ以上何も語れないということだろう。
('A`)「へぇー。実はモナーさんって凄い人なんですね」
(´<_` )「あのじゃじゃ馬に10年は付き合ってるんだから、スゲーっちゃスゲーな」
( ´_ゝ`)「俺たちは社長に世話にはなったけど、本格的に付き合いを始めたのは6年前のことだしな」
('A`)「というと、丁度”終戦”した頃ですね」
”終戦”の単語が飛び出した時、またもや二人の表情に影が差す。
咄嗟に何か触れてはいけないものに触れたのではと悟ったドクオは、すぐさま話題を変えた。
(;'A`)「とっところで!この会社って住み込みで働けるんですか?」
(´<_` )「ん……ああ。住居ない奴とかが賃貸で住んでるってのが殆どだがな」
( ´_ゝ`)「給料からちょっとさっぴかれるけどね。俺たちも住んでるぜ」
川 ゚ -゚)「私も個室を宛てがわれています」
下を指差し、ニヤリと笑う兄者。おおかた、地下のラボの事だろう。
クールは保護観察対象のため、特別に物置だった小部屋を改造して個室にしている。
因みにギコやビコーズなど、個別に住宅を持ち出勤するタイプも多い。
('A`)「俺も住み込み申請しようかな……」
(´<_` )「悪くない選択肢ではあるな」
- 477 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 00:15:11 ID:j4qDdTzQ0
-
( ´,_ゝ`)「いっそ、クールの部屋をもう一段階改装して一緒に住むか?」
(;*'A`)そ「えっえええ!?」
兄者がわざとらしく笑みを寄越す。
意図を理解したオトジャも意地悪く笑う。本当によく似た兄弟だ。
ドクオは冷や汗をかき、慌てふためき、チラ、とクールをみやった。
川 ゚ -゚)?
当人は彼らの真意が汲めないようで、小首を傾げている。
(;*'A`)ヾ「いや、流石にクールさんが迷惑かと……」
(´<_` )「ああ?カーテン一枚壁代わりにして生活してた癖に何を今更。童貞かっつの」
ドウテイカッツノ←( A ― グサアアアッ
:( A ):ワナワナ「……幾らオトジャさんでも、怒りますよ?」
(´<_`;)ゾクッ(な、何だこの殺気は?)
川 ゚ -゚)「部屋を折半する事に何か問題でもあるのですか?」
彼女からすれば実に素朴な疑問を投げかけられ、言葉に詰まる。
まさか下心だとか邪な欲望が疼くからです、などとは尻が裂けても口に出来ない。
ドクオは言葉を濁して、一応その場をごまかした。
『マスター』であるビコーズが耳にしようものなら、血を見るかもしれない。
('A`)「ビコーズさん、すごい溺愛ぶりだもんなァ」
('A` )∵ )「呼 ん だ か ?」
≡;'A`)そ「うわあああああっ!?び、ビコーズさんっ!?」
忍者よろしく、噂のビコーズがつっ立っていた。
汚れたクリーム色のツナギを着て、顔が煤けている。
(;'A`)「ななななななんでもないです!なんでも!!」
( ∵)ジロッ「ふぅん……まあ良い。俺は流石の方に用がある」
- 478 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 08:45:44 ID:j4qDdTzQ0
-
( ´_ゝ`)「何かありましたか?」
( ∵)「何と言っていいやら……工場とかじゃよくあるハプニングだよ」
ビコーズは言い淀み、そう言って肩を竦める。
兄者は自身のラボは元より、自身の発明品に絶対的な自信がある。
同じ職人肌として、それなりに言葉を選んだような言い回しであった。
( ∵)「口で言うより見てもらった方が早い。来てくれないか」
付いてこい、とジェスチャーすると、ビコーズが先立って歩き出す。
兄者は上唇を舐めると、オトジャに目配せし、後に続いた。オトジャも当然のように兄を追う。
川 ゚ -゚)「マスター、同行します」
('A`)「あ、俺も」
「うわっ」〜(;'A`)リ ゚ -゚)て ドンッ
行きます、と言いかけ、よろけた。
爪先が何もない所でつまづき、クールに寄りかかる形でぶつかってしまう。
ドクオは弾かれたように姿勢をただし、クールに謝った。
(;'A`)「ご、ごめんなさいクールさん!」
川 ゚ -゚)
(;'A`)「クールさん?」
川 ゚ -゚)「……問題ありません」
やや畏まった調子の声で返し、クールは歩き出す。
少し呆け、ドクオは我に返り追いかけた。
よもや、今ので嫌われてしまったのではないか、と少々の自己嫌悪に陥りながら。
(;'A`)アワワワ
(゚ リ川ル「…………」
(゚ リ川ル(心臓部拍数上昇。原因、理解不能)
(゚ リ川ル(……………………私は、不良品なのでしょうか、マスター)
( ∵)「………………………」ツカツカ
- 479 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 09:10:04 ID:j4qDdTzQ0
- △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
リニアが地を滑り、道路を走る。
近頃のリニアは一昔前に流行したエコとやらを目指して製造され、僅かな電気で動く。
反重力で浮き、道路を傷つけることなく、最大時速250kmで静かに走行する優れもの。
(;´∀`)「もー……どうしてこういう時に限って渋滞モナか……」
苛立たしくトントンとハンドルを指で叩く。目の前には車の行列。
VIP市は別名「ワーキングシティ」と呼ばれるほどに会社や個人商店などが集中しており、
その影響で通勤ラッシュは勿論のこと、昼の渋滞なんて当たり前。
VIP市に色んな要素が集中しているせいもある。
(;´∀`)「やっぱりエアカーで行けばよかったモナか?でもこの前免停食らったし……」
トウキョウシティは北部に行くほど治安がよく富裕層が多い。
対し、南へ行けば行くほど治安は悪くなる。
ニューソク市はVIPほど治安が決して良いわけではないが、貧困層の救いの場といっても過言ではない。
(;´∀`)「ん?」
助手席に置いたタブレットから音楽が鳴る。
画面をスライドして通話に出ると、聞きなれた声が飛び込んでくる。
『モナーか、緊急事態だ』
(;´∀`)「あ、ギコ!どうしたモナか!?」
『状況は一刻を争う。すぐ来てくれ、武装があると有難い。糞、卑怯者共め……』
(;´∀`)「了解だモナ!」
悪い予感が当たった。モナーはハンドルを握り直した。
武装ということは敵はこの間のような武装集団か。
リニアには幸い、万が一に備えて重火器と自社製品が幾つかある。
(;´∀`)「時間が無いモナ!任せるモナよ!」
(::::::∀`)ズズズ……
( ゚∀゚ )ギンッ
ハンドルを握る手が真っ赤に染まり、狂気の黄色が見開かれる。
( ゚∀゚ )「任せとけ!フルスピードで抜かしてやるぜ、あーひゃひゃひゃひゃ!!」
- 480 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 09:33:28 ID:j4qDdTzQ0
- アヒャは何を思ったか、渋滞の列からはみ出した。
ニューソク市行きの道路から飛び出し、アクセルを踏みこむ。
そして、関係ないはずの、比較的空いた対向車線へと飛び込んでいく。
( ゚∀゚ )「オラァーー!!退け退け退けーーーーーー!!」
宣言通りフルスピードで、明らかに逆走していくリニア。
向かい来る車を次々に避け、アヒャアヒャと笑いながら爆走する。
((;´Д`)そ うわ、うわあああああああ!!何やってるモナァアアあああああ!?)
(*゚∀゚ )「こっちのが手っ取り早ェだろーがよ、アッーヒャヒャヒャヒャヒャハハ!!」
本来なら事故を起こしてもおかしくないが、アヒャは寧ろそのギリギリの状況を楽しんでいる。
対向車たちが慌ててハンドルを切る前にこちらから切り、スレスレを通り抜く。
アヒャの動体視力を以てすれば、こんなものは只のゲームに過ぎない。
「こらー!!そこの暴走リニア、止まりなさーーい!!」
( ゚∀゚ )「あん?」
ヒャッヒャと笑い転げている所に、リニアに吠え立てる女の声。
瞬く間に、白と黒のデザインの最新リニアパトカーが横に並んだ。
パトカーに載せられた拡声器が女の声を発する。
『テメーどこ見て走ってんのよゴルァア!!道交法でしょっ引くぞテメエェ!!』
(#゚∀゚ )「るせーぞポリ公!こちとら急いでんだ、お前らの点数稼ぎに付き合ってられっか糞が!」
叫び返すと、パトカーの助手席の窓が開かれた。
ξ゚⊿゚)ξファサッ
助手席に座っている婦警は、金髪のツインテールをなびかせ、アヒャを睨む。
綺麗なラインを描く顎、キリッとした眉、婦警にするには勿体無い美貌だ。
そしてメガホンを手に取り、スゥッと息を吸い込んで――――
ξ#゚Д゚)ξ『誰が巻糞ヘアーじゃああああああ!!警棒ケツにぶっこむぞド腐れめえええええええ!!』ツンサンアブナイデス、アタマヒッコメテ!>
(#゚∀゚ )「前見て走れやクソアマあああああああ!!俺の警棒でぶち犯すぞクルァアアアアアアア!!!」
ξ#゚Д゚)ξ「やってみろ短小ォォォオオ!!正々堂々と道交法破ってる奴が言うんじゃねーよ!!!!」ツンサン ゲヒンデス ヤメテクダサイ!!>
とても下品すぎるやり取りが、アヒャが警察を振り切るまで行われた。
- 481 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 10:56:57 ID:j4qDdTzQ0
-
从 ゚∀从「ん?なんか外うるさくね?」
⌒*リ´・-・リ「そう?何時ものことじゃない?」
从;゚∀从「う〜ん、あのテロ以来からか音に敏感になっちゃってさあ」
爪;゚ー゚)ギクッ
その頃、中学校では昼食の時間を迎えていた。
ハイン、リリは外を見やりながら会話し、サラダを口に運ぶ。
よもや目の前の少女のお付きが、身内の元へ向かうべく道路を逆走しているなどと考えもしない。
⌒*リ´・-・リ「テロの時は大変だったよねぇ。皆シェルターに逃げ込んでさ」
从 ゚∀从「そうそう、ジーナは居なかったから知らないだろうけど、すっげー騒ぎだったんだぜ」
爪;゚ー゚)「そ、そうなんですの」
ジーナは相槌し、無意識に震える手でパンを千切った。
まさかあの戦火のど真ん中でリムジンを逆走してましたなんて言う訳にはいかない。
周りの人はテロと認識しているが、間違いなくあの事件の中心は自分なのだから。
⌒*リ;´・-・リ「最近、本当に物騒だよね……連続殺人鬼といい、テロといい……」
爪;゚ー゚)←その事件にだいたい関わってる人
从 ゚〜从ムグムグ「誘拐も流行ってるんだってな。なんだっけ、子攫いのナンチャラってやつ」
⌒*リ;´・-・リ「ジーナちゃんも気をつけてね。お金持ちの子ばっかり誘拐されるらしいから」
爪゚ー゚)「肝に銘じておきますわ」
从*゚∀从「まっダイジョーブだろ!俺なんか攫われたところでビタ一文も出せねーしな!」ケラケラ
⌒*リ´・-・リ「うちだったら、お兄ちゃんが黙っちゃいないかも」
从 ゚∀从「そーいえばリリの兄さんって、警察官なんだっけ?」
⌒*リ´・-・リ「うん。そういえば二人共、家族はどんな人なの?」
無邪気にリリは尋ねる。他意はないだろうが、ジーナは言葉を詰まらせた。
- 482 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 11:28:45 ID:j4qDdTzQ0
- 爪゚ー゚)「母は……母国で暮らしてます。兄弟はいませんわ」
⌒*リ´・ヮ・リ「あ、ジーナちゃんのお母さんってイギリス人なんだっけ?お父さんは?」
リリは普段会話することのない相手だけに、興味津々だ。
すると、ジーナの食事の手が止まった。
目を伏せ、やや俯き加減に、ゆっくりと言葉を吐き出す。
爪。。)「父は…………亡くなりましたわ。3年前に」
⌒*リ;´・-・リ「あっ……ご、ごめん」
爪゚ー゚)「いえ…気にしてませんわ。家族代わりの人はいますし」
从;゚∀从「…………」
途端、空気が重苦しいものとなる。
リリはこの場でこれ以上、ジーナに家族関係を詮索するのは野暮だと思い至ったのか、
ハインに話題を振った。
⌒*リ;´・-・リ「ハインちゃんは?」
从 ゚∀从「俺はー……」
从 ゚∀从(まさか俺まで戦災孤児だ、なんて言ったら空気悪くなるよな)
从;゚∀从ウーン
从 ゚∀从! ピコーン
从 ゚∀从ヾ「コレだよ、こ、れ」
得意げな表情で、ピッピ、と小指を振る。
その動作が意味することを察したのか、リリは目を見開いた。
⌒*リ;´・-・リ「えええええっ、それ本当!?」
从*゚∀从「マジのマジ。料理もオレが作ってんだぜ(オートメーカでだけど)」
⌒*リ`・ヮ・リ「ちょっとハインちゃん!その話kwsk!!」
俄然食いつくリリ。どうやらこの手の話には積極的になるようだ。
普段目立たず、友達が少ないせいもあるかもしれない。
- 483 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/20(木) 15:56:56 ID:j4qDdTzQ0
- 从*゚∀从「えー、一緒にベッドで寝るしぃー、ご飯はオレが作るしぃー、デートもするしぃー」
⌒*リ`>ヮ<リ「キャー!なにそれ羨ましいー!」
爪;゚ー゚)∂「……あの、この小指ってどういう意味があるんですか?」
意味がよく分かっていないらしいジーナは、小指をピコッピコッと揺らす。
リリは信じられないといった表情を作り、鼻息荒くジーナに迫った。
⌒*リ`・ヮ・リ「決まってるじゃな〜い、男よ!オ、ト、コ!」
爪;゚ー゚)「お、男?ハインさんの?」
ジーナの知る範囲で、ハインの指す男が該当するのは一人しかいない。
強面で無愛想で屈強な命知らずのあの男。
爪゚ー゚)。o((,,゚Д゚)<アルゼンチンタンゴ)
爪゚ー゚)「……私も気になりますわ。……どんな方なんですの?」
ずずい、とジーナも満面の笑みで身を乗り出した。
話の全てが真実とは思わないが、ギコを弄るネタにはもってこいだろうと踏んだのだ。
ハインは嬉しいのか、調子に乗って、食事もそっちのけで会話は盛り上がる。
从*゚∀从「えっとなー、カッコよくてー、ちょっと寝ぼすけでー」
爪゚ー゚)。o((,,゚Д゚)「ハインが寝坊して、起こすのに手間取ってな」)
从*゚∀从「オレの作った弁当とか毎日ちゃんと食ってくれるしー」
爪゚ー゚)。o(トナリカラ イシュウガ…(;'A`),,゚Д゚)モグモグ ズゾゾ)
从*゚∀从「学校終わったら手を繋いで帰るんだぜー!」
爪゚ー゚)。o(('A`)「もう帰るんですか?」(((,,゚Д゚)「用事があるんでな」)
プルプル:爪 ー ):プルプル
⌒*リ´・-・リ「いーなー、憧れるよ、そういうのー」
从*゚∀从「だろー?」
爪#゚д゚)「〜〜〜〜ッハインさん!貴方の事は私が守りますからね!」
从;゚∀从そ「ええっ!?何で!?」
爪#゚д゚)(まさかロリコンの方だったなんて……ロボットの癖に許せませんわ!!)
あらぬ勘違いをするジーナであった。
- 484 :<^ω^;削除>:<^ω^;削除>
- <^ω^;削除>
- 485 :名も無きAAのようです:2012/12/20(木) 23:16:34 ID:J84FsuuY0
- おもすれー
- 486 :名も無きAAのようです:2012/12/22(土) 03:47:39 ID:w076xxjQ0
- 婦警ツンとは分かってるらっしゃる
モナーはもちろん、アヒャも良いキャラしてるな
- 487 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 08:59:50 ID:7MW45MaE0
- どうも作者です。欝祭り参加してこちらを放っぽり出してましたごめんなさい。
今日にでも6話を終わらせる所存です
- 488 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 18:42:06 ID:55PaQZOA0
- おー楽しみ
- 489 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 20:27:03 ID:7MW45MaE0
- 从;゚∀从「でもなあ、ちょっと最近そいつに困ってんだよねえ」
⌒*リ´・-・リ「喧嘩でもしたの?」
从 ゚∀从「そういう訳じゃないんだけど……」
そう言うと、ハインは言い淀んだ。
態度から察するに、どうにも口にし辛い話らしい。
眉間にいっぱいに皺を寄せて、二人の耳元に顔を近づけた。
从;゚∀从「恥ずかしいんだけど、うちの家ボロボロでさ。『アレ』が出るんだよね」
⌒*リ;´・-・リ「『アレ』?…………まさか、真っ黒い『アレ』のこと?」
从;゚∀从「うん、あれあれ。最近、排水口とか壁の割れ目から入ってきてるみたいでさ」
⌒*リ´・-・リ「人間の家は住みやすいもんね。うちもよく冷蔵庫の裏とかからカササッ…って感じで出てくるもん」
从;゚∀从「アイツ、その『アレ』が苦手でさ。見ると悲鳴あげちゃうんだ」
⌒*リ;´・-・リ「ええっ?確かに私も苦手だけど、男の人でしょ?悲鳴あげるものかなあ?」
从 ゚∀从「昔、酷い目にあったらしいんだよね。死にかけたらしいよ」
⌒*リ;´・-・リ「ええええっ!?」
爪゚ー゚)「アレとは………なんですの?」
アレの意味を理解したらしいリリとは反対に、ジーナは興味深そうに尋ねる。
二人は目をキョドキョドさせ、ハインは知らないの?と聞き返した。
从 ゚∀从「ほらアレだよ、黒くて、長くて、めっちゃ動き早いアイツ」
爪゚ー゚)「……………………?」
⌒*リ´・-・リ「ジーナちゃんも知ってると思うよ、多分見たことないかもしれないけど」
そう言って『アレ』の正体を教えると、ジーナは目を丸くした。
ギコが「それぽっち」の相手を恐るとは、イメージからかけ離れていたからだ。
爪;゚ー゚)(人は見かけによらないものですわね。まさか…………………………アレが苦手、とは)
.
- 490 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 20:31:43 ID:7MW45MaE0
- 一方、ニューソク市内に突入したアヒャはといえば。
喚く婦警率いるパトロール隊を振り切り、リニアを走らせる。
( ゚∀゚ )「ったく、撒くためにとんだ時間を食っちまったぜ」
(当たり前だ!きみも30なんだからいい加減節度ってものを覚えるモナ!)
( ゚∀゚ )「うっせえなあああ道交法違反なんざ免停食らわなきゃ良い話だろがぁあああ」
(良い訳ないモナ!それよりギコが心配だもな)
アヒャは古いビルを睨むように見上げた。
連絡を受けて、到着まで15分の間があった。辺りは静けさに包まれている。
助手席のボックスに仕舞っていたナイフと、それらを提げるためのベルトを装着する。
( ゚∀゚ )(嵐の前の静けさってやつか?それともまだ拮抗状態か?敵の気配を感じねーってことは相当の手練か……)
周辺に怪しい影は見られない。
階段飛ばしでビルまで駆け上がり(エレベーターもロクにない設備とはどういうことだ)、
ギコの部屋の前までたどり着く。
( ゚∀゚ )「おいギコ、死んでなけりゃ返事しな」
――1、2、3秒。音沙汰なし。
その瞬間、アヒャはナイフをひとつ抜き、扉を文字通り「断ち切った」。
( ゚∀゚ )「ッ!」
中に突入した右足が、何かの気配を捉え躊躇した。
下からアッパーを食らって倒れるかのように仰け反った直後、
眉間のあった位置に何かが空を裂き、消えた。
( ゚∀゚ )(トラップか!)
否。顔を横に背けた瞬間、銃声。体の横を熱がすり抜ける。
ナイフをかまえ、一瞬のうちに投げ飛ばす。
リビングの方向へ投げられた得物が、何かに当たる音がした。
(,, [::::])つγ=-
( ゚∀゚ )つニ|ニニフ「手を挙げな、ドサンピン。悪趣味なマスクしやがって」
体勢を立て直しリビングに突入した瞬間、銃口を突きつけられた。
同時に、アヒャのナイフも相手の喉元に食い込んでいた。
- 491 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 20:47:04 ID:7MW45MaE0
- ( ゚∀゚ )「銃を捨てて両手を地につけな。そのチキン面、とくと拝ませて……」
やる、と続ける前に、銃口がアヒャの眉間から外れ、放たれる。
目を見開いたアヒャが反射的に首に刃先を捩じ込むより早く、
銃を持つ右手とは反対の手がアヒャのナイフを掴み、軌道を逸らす。
( ゚∀゚ )「野郎ッ」
(,, [::::])つγ=-「動くな!!」
(;゚∀゚ )そ「あだっ!?」
マスクの男によって地面と強制的にマウス・トゥ・マウス。
文句を言おうと口を開きかけ、アヒャも何かの気配を察し、黙る。
隣で匍匐前進のポーズを取る男も、その気配に警戒しているようだ。
(,, [::::])「良いか、これは隊長命令である。特務番号666、敵は隙間にあり!本官はこれを撲滅する!」
( ゚∀゚ )(なんだこいつ)
しかしこの男、異様のその気配に怯えている。
自律小型兵器の類かと意識を集中する。
アヒャは研ぎ澄まされた五感を集中させ、経験則から相手の正体を割り出そうとした。
しかし思い当たる「敵」の正体に眉をひそめ、隣の男を見た。
( ゚∀゚ )「おい、お前のいう敵ってよお」
(,, [::::])「黙れ!目標に気取られたらどうする!?」
( ゚∀゚ )イラァッ
男の必死な声に、アヒャは途端に馬鹿馬鹿しくなった。
何故テーブルの下で野郎と二人、ひっつきもっつきしなけりゃならんのか、と。
その時、例の「目標」が動く気配がした。
(,, [::::])「しまった、目標が……」
( ゚∀゚ )「るせーなドンタコスが」
男の後頭部を殴りつけ、アヒャは体を起こすとナイフを放った。
シンクへと投げられたナイフは蛇口を勢いよく弾き、
その背後を通ろうとした「目標」の腹を勢いよく叩きつけた。
アヒャはフン、と鼻を鳴らし、それの元へと向かう。
- 492 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 21:00:56 ID:7MW45MaE0
- アヒャはやれやれ、という風に溜息をつくと、それをつまみ上げた。
( ゚∀゚ )「ったく、こんなチビ相手にギャーギャー喚きやがって」
男があれほど警戒した、その「目標」とは。
〜( C゛> キュウ
どこにでもいる、普通の真っ黒いドブネズミであった。
蛇口に腹を殴られてノックアウトされ、アヒャにつままれるがままだ。
( ゚∀゚ )「鼠くらいで騒いで、恥ずかしくねーのかよ」
(,, [::::])「貴様、今すぐそれをゆっくりと下ろ……いや下ろすな。窓から投げ捨てろ」
( ゚∀゚ )「言われずともだよ、間抜け」
アヒャは本当に呆れ返ったように「やれやれ」と首を振り、窓から鼠を放り捨てた。
ようやく男は安堵したように肩を下げる。
手をぽんぽん叩きながらアヒャは男を睨むものの、すぐに意地の悪い笑みを浮かべた。
( ゚∀゚ )「おら、もう居なくなったんだから武装解除しな、ギコ。そのマスク、ダサすぎ」
(∩ [::::])′)ゴソゴソ
(,,゚Д゚)「ふうっ」
つ(,, [::::])
マスクの下から現れたのは、ギコの顔であった。
アヒャはナイフを壁から抜きつつ、ニヤニヤと笑いながらギコを見やる。
( ゚∀゚ )「しかしよお、VIP社最強の男とあろうもんが、鼠駆除如きで『緊急事態』、ねえ」
(,,゚Д゚)「俺からすれば、間違いなく『第一級警戒体勢』を敷くに値する」
(∀゚; )「でもよお、………………普通ここまでトラップだらけにするかァ?」
ぐるり、と部屋を一回り見るだけで、かなりの量の罠だ。
どれもこれも、鼠一匹対峙するために使われるには大掛かりすぎるものだ。
そして部屋は、まるで激戦区の中心がごとき荒れっぷりであったという。
- 493 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 21:19:44 ID:7MW45MaE0
- (;<_;* )「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!ね、鼠相手に……ぶあーッハハハハハハ!!」
::(;* _ゝ )::プルプル「ブブフッ……笑ったらいかんぞオトジャ、得手不得手は誰にでもあるも…ブフォッ」
ギコを連れ、VIP社オフィスビルに戻り、主要メンバーに事の顛末を説明した。
その時のオトジャの笑いようといったら、腹がねじ切れるのではないかと思わんばかりだった。
社の全員がこの事実を知らなかっただけに、衝撃やらギャップやらが大きかったのだろう。
(;'A`)「た、……………大変だったんすね」
(,,゚Д゚)「ああ。まあな」
( ´∀`)「ギコったら15くらい罠張ってたモナ。やりすぎモナ」
(;<_;* )「ぶふぉーーーーーーーー!!!無理!無理無理無理!!死ぬ!!笑いすぎて死ぬ!」
オトジャはゴロゴロ地面を転がり、腹を抱えて酸欠状態だ。
兄者も必死に笑わないようにしているが、顔は真っ赤だ。
普段のギコを知るだけに、よっぽどおかしいのだろう。
ドクオは少なくとも、(ギコに睨まれるのではと恐ろしくて)笑えなかったが。
川 ゚ -゚)「ドクター流石。例の配線ですが」
( ´_ゝ`)「ん?……ああ、そうだったな、今行くよ」
(,,゚Д゚)「何かあったのか?」
(;'A`)「あの、実は――」
全員がクールに付いていこうとする中、一人事情を知らぬギコだけは
現状を把握しようと尋ねる。
すると誰よりも早く、クールがその問いに答えた。
川 ゚ -゚)「先ほど、ドクター流石のラボで幾つかの無線傍受用の配線が被害を受けました。
数匹の実験用ラットの脱走したと見られ、研究員を総動員して捜索中です」
(,,゚Д゚)
::( <_ *;):: プルプル
川 ゚ -゚)「よろしければ、G‐1K:0も捜索に加わり……」
(,,゚Д゚)「済まんが用があるので帰らせてもらう」
(;<_;*)「ぶはーーーーーあはははあははははーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
- 494 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 21:35:11 ID:7MW45MaE0
-
( ´_ゝ`)「ほら、これがヤラれた配線」
地下のラボに足を踏み入れると、兄者は引きちぎられたという配線の残骸を見せた。
見事にズタズタに引きちぎられている。
明らかに生物の類が噛み千切った跡だと分かった。
( ´_ゝ`)「他のメンバーはとっくに探してる」
(´<_` )「それにしたって、どこの実験用ラットだろうな。研究室からここまで潜り込んでくるとは考えにくいし」
注釈。
オトジャの指す研究室は、地下ではなく地上40階に位置する動物実験室のことだ。
地下のラボにも同等の研究室は存在するが、こちらからラットが逃げた報告はない。
川 ゚ -゚)「私たちは配線を修復します。他の方々はラットの捜索にご協力ください」
( ´_ゝ`)「……ってこと。かなりの数がやられてるから、早いとこ見つけておくれよ」
鼠捕獲用のトリモチとカゴを渡され、渋々ギコも参加することになった。
社長であるジーナがこの事態を耳にしたらカンカンになるだろう。
事が知られる前に社員たちで揉み消し、もとい解決せねばならぬ。
(,,゚Д゚)「何故俺が鼠探しなど……………………」
(;'A`)「い、いざとなったら俺一人でも充分ですよ」
ドクオと二人一組になり、社内を巡回する。
ラボには危険な薬品も多く、見つけ次第捕獲しなければならない。
(;'A`)「あ、あの。伺ってもいっすか?」
(,,゚Д゚)「何がだ」
ギコと顔を合わせるうちにわかってきた。
彼は無表情ありきかと思ったが、それなりに感情を表に出すこともある。
例えば今のように、不機嫌が最大限になると眉間に皺を寄せるのだ。
('A`)「な、なんで鼠苦手なのかなー、って。虫とかゴキブリとかなら分かるんですけど……」
(,,゚Д゚)ギランッ!!
(;'A`)「ひぃいっ!?」
ドクオが尋ねた途端、ギコの目が鋭く光った。ドクオは全身を震わせ、後ずさる。
- 495 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 22:11:49 ID:7MW45MaE0
-
(:::::Д゚)ゴゴゴゴゴ「聞きたいか…………………?」
(;'A`)「え、えーと……………ギ、ギコさんが、嫌だと仰るならば、別に……」
威圧感に震えるドクオ。
蛇に睨まれた蛙、或いは猫によって壁に追い詰められた鼠が如し。
すると、ギコは威圧を収め、語り始めた。
(,,゚Д゚)「あれは、俺がまだ戦場で戦っていた頃だ………………」
(;'A`)
――――当時、元いた部隊を抜け、フリーの傭兵として働いていたギコ。
その時、人間のフリをし、他の傭兵たちと共に、某国から任務を受けている最中であった。
任務の内容は、ある要人――否、戦士の抹殺。
(;'A`)「戦士の抹殺……ですか?」
(,,゚Д゚)「ああ、とんでもない奴だった。たった一人で師団一隊を壊滅させたんだからな」
(;'A`)「そ、そんな、フィクションの世界じゃあるまいし……あっ」
思わず喉から出た言葉を引っ込める。
フィクションの塊のような連中なら目の前にたんといるではないか。
ツッコミは野暮と判断し、引き続き耳を傾ける。
(,,゚Д゚)「……俺たちはそいつを追って中南米のレバノンまで向かった」
思い出す限り、その任務は泥沼のような戦いであった。
たった一人の傭兵相手に、何ヶ月も逃げられ、或いは反撃され続け、こちらの戦力も消耗していた。
(,,゚Д゚)「ある晩のことだ……。俺たちはテントを張って、そいつを夜通し見張ることにした」
体力に限りのある人間たちは、泥のように眠りについた。
ギコはロボットであるため眠気などというものは存在しない。
しかし旧式の機械であるが故に、機体を休息させる時間を作らなければならなかった。
特に激しい運動行為をした日は尚更だ。オーバーヒートを起こしかねない。
(,,゚Д゚)「俺は1時間。1時間の休息を取るつもりだった。その日は雨も降らず、静かな夜だった」
夜番以外が寝静まった夜。
ギコも見張りが起きていることを確認し、瞼を閉じた。
もし相手方に動きがあれば、すぐに動けるように準備も忘れず。
- 496 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 22:14:35 ID:aAcc2b020
- ネズミが苦手な猫型Robot
そうか...ドラえmうわなにするやめ
- 497 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 22:35:21 ID:7MW45MaE0
-
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::カリ、カリカリ:::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::カリ…:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::カリカリ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::カリカリカリ…::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::カリカリ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
――――カリカリ。カリカリカリカリ。
その音は忍び寄るように、夜の帳に静かに木霊していた。
不気味な音に訝り、休息の時間を終え、ギコは瞼を開いた。
(,,゚Д゚)「恐怖ってのは――――まさにあの光景のことだったんだろうな」
ギコの視界に飛び込んできたのは、無惨な姿に変わり果てた仲間たちであった。
テントは黒々とした血の海に浸され、鉄の臭いが充満していた。
(,, Д )「―――――――!!」
仲間たちは原型を留めておらず、テントも穴だらけであった。
――――食い荒らされていたのだ。言葉の通り、チーズのように。
ギコは戦慄した。そして耳元で鳴り響く音の正体に気づいたのだ。
――ギコもまた、耳を食いちぎられていた。中の骨格が露になるほどにまで。
(,,゚Д゚)「相手は、極限に飢えたネズミたちを送り込んだのさ。スパイを使ってな」
(;'A`)「………………」
ドクオは生唾を飲み込んだ。
その光景を想像すると、えもしれぬ寒気に襲われる。
自分がもしその場に居合わせていたら――トラウマどころではすまないだろう。
(,,゚Д゚)「以来、ネズミを見る度に戦場を思い出してな……」
(;'A`)「……………心中、お察しします」
別の意味で笑えないドクオであった。
- 498 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 22:45:55 ID:5FJKAMgE0
- 怖すぎワロエナイ
- 499 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 22:52:34 ID:plCIxjY.O
- >>495
レバノンは中南米じゃなくて中近東じゃ…
- 500 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 23:01:35 ID:7MW45MaE0
- >>499
すいませんこちらのミスです
訂正版
(:::::Д゚)ゴゴゴゴゴ「聞きたいか…………………?」
(;'A`)「え、えーと……………ギ、ギコさんが、嫌だと仰るならば、別に……」
威圧感に震えるドクオ。
蛇に睨まれた蛙、或いは猫によって壁に追い詰められた鼠が如し。
すると、ギコは威圧を収め、語り始めた。
(,,゚Д゚)「あれは、俺がまだ戦場で戦っていた頃だ………………」
(;'A`)
――――当時、元いた部隊を抜け、フリーの傭兵として働いていたギコ。
その時、人間のフリをし、他の傭兵たちと共に、某国から任務を受けている最中であった。
任務の内容は、ある要人――否、戦士の抹殺。
(;'A`)「戦士の抹殺……ですか?」
(,,゚Д゚)「ああ、とんでもない奴だった。たった一人で師団一隊を壊滅させたんだからな」
(;'A`)「そ、そんな、フィクションの世界じゃあるまいし……あっ」
思わず喉から出た言葉を引っ込める。
フィクションの塊のような連中なら目の前にたんといるではないか。
ツッコミは野暮と判断し、引き続き耳を傾ける。
(,,゚Д゚)「……俺たちはそいつを追って中南米、そしてレバノンまで向かった」
思い出す限り、その任務は泥沼のような戦いであった。
たった一人の傭兵相手に、何ヶ月も逃げられ、或いは反撃され続け、こちらの戦力も消耗していた。
(,,゚Д゚)「ある晩のことだ……。俺たちはテントを張って、そいつを夜通し見張ることにした」
体力に限りのある人間たちは、泥のように眠りについた。
ギコはロボットであるため眠気などというものは存在しない。
しかし旧式の機械であるが故に、機体を休息させる時間を作らなければならなかった。
特に激しい運動行為をした日は尚更だ。オーバーヒートを起こしかねない。
(,,゚Д゚)「俺は1時間。1時間の休息を取るつもりだった。その日は雨も降らず、静かな夜だった」
夜番以外が寝静まった夜。
ギコも見張りが起きていることを確認し、瞼を閉じた。
もし相手方に動きがあれば、すぐに動けるように準備も忘れず。
- 501 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 23:05:05 ID:7MW45MaE0
-
ちっげーーーーーーーーー!!
中南米じゃない『中東』だバカタレ!!!コピペみたいなミスしやがって!
すみません『中南米』→『中東』に脳内変換お願いします
- 502 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 23:18:31 ID:7MW45MaE0
- 一時間ほど巡回したが、鼠を見つけることは叶わず。
ギコは胸を撫で下ろしつつ、一度被害のあった場所に集合した。
( ´_ゝ`)「それにしても、どっから沸いたんだろうな。奴さん」
(´<_` )「うちに侵入経路はない筈だからな。外部からっていうのは無いだろう」
双子は揃って首を傾げる。
ラットの出処に心当たりがない様子だ。
他の研究員たちも念のため、実験用ラットの数を洗い直している。
('A`)「地下、地上両方とも逃げてきた痕跡はなしってことですか……」
( ´_ゝ`)「地下フロアの研究は危険なものばかりだからな。物を際限なく肥大化させるとか、分裂増加の研究とか……」
(´<_` )「兄者の趣味も混じってるよな」
( ´∀`)「……フロアの隅の方にあるガトリング付きの義手については何もツッコまないモナよ」
('A`)「とにかく、もう一度探索し直すしか……あれ?」
二度目の探索を提案したドクオが、ある場所に目を留めた。
地下フロア、モニタールームの隅に、ドアがちらりと見えた。
半開きになったドアの向こうに、見慣れぬ一室がある。
('A`)「あの部屋、見たことないですけど……何の部屋っすか?」
(,,゚Д゚)「む?」
(´<_`;)「げ!」
ドクオが指摘したドアを確認し、オトジャの顔色がサッと青ざめる。
全員がオトジャのだみ声を聞き注視した。
兄者の鋭い視線がオトジャに突き刺さる。
( ´_ゝ`)「……オトジャ。お前確か、自室で実験用ラットを飼ってたよな?」
(´<_`; )「ま、まさか!マーサとマリアとマキノは俺の家族だぞ?逃げ出すものか!」
('A`)(なんで全部マから始まるんだろう)
オトジャはずんずんと自室に向かっていく。
ドアを開けると、ゴミ屋敷と呼ぶべき汚らしい光景が広がっていた。
足の踏み場もない。
- 503 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/28(金) 23:32:03 ID:7MW45MaE0
- (;'A`)「うっわ汚っ」
( ;´∀`)「酷いモナ、異臭がするモナ」
川 ゚ -゚)「『不純物処理します』」
(´<_`; )「やめろ、勝手に掃除すんな!ああ俺の秘蔵DVD!」
( ´_ゝ`)「オトジャ、当面はこれ没収な。で、お前の愛しのラットたちはどこだ?」
兄者が周辺を見回す。
部屋は汚いがそれなりに広く、収納スペースも多いようだ。
双子の兄である兄者が実態を掴んでいないということは、二人の個室は別々のようである。
オトジャは障害物を跨ぎながら、ラットのゲージがある場所へ向かった。
<`* )「ほ〜らマーサ、マリア、マキノ〜、お客様でチュよ〜」
(;'A`)「ぅゎぁ………………………」
(,,゚Д゚)「見苦しいことこの上ないな」
( ´_ゝ`)「我が弟ながら将来が心配だよ、本当」
<`* )「ほらほら、どちたのかな〜?皆恥ずかしいのかな〜、んもう照れ屋さんめっ」
(,,゚Д゚)イラッ
( ;´∀`)「ギコ、気持ちは分かるけど落ち着くモナ」
「うわあああああああああああああああっ!?」
突如、ゲージに顔を突っ込んでいたオトジャが悲鳴をあげた。
(ギコを除く)全員がオトジャの元へ向かう。
途中ドクオがオトジャの秘蔵DVDを踏みつけたが、誰も気づかなかった。
(;<_; )「うわあああああ!マーサ、マーサがああああ!!」
( ;´_ゝ`)「時に落ち着けオトジャ!気持ち悪いぞ!」
(;<_; )「マーサが……俺の愛しのマーサが消えちまったぁあああああああああ!!」
鼻水を垂らしながら、おんおんと男泣きするオトジャ。
全員はオトジャを見ると顔を見合わせ、しかめた。これで正体ははっきりした。
(;<_; )「マーサを、誰でもいいからマーサを見つけてくれえええええ!!」
<゚つ <゚*つと
(,,゚Д゚)「分かった。分かったからそのクソッタレな白い毛玉を近づけるんじゃない!」
- 504 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 23:42:56 ID:1BCCwn/.0
- これはひどいwww
- 505 :名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 23:45:10 ID:bXV21rXYO
- 白でも黒でもダメなんですね 支援
- 506 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/29(土) 00:00:58 ID:5ZrkdGLA0
-
(,,゚Д゚)「配線の犯人はハッキリしたが、標的の現在地が不明な以上は何も出来んな」
(;<_; )「おいポンコツ!俺のマーサにちょっとでも手を出したら承知しないからな!」
(,,゚Д゚)「頼まれたって出すものか、原罪め」ハナミズヲ コスリツケルナ
( ´∀`)「でも、早いところ捕まえないと、もし変な薬品でも飲んだら大変なことに……」
( ´_ゝ`)「そういえば、ここは劇薬とかも扱ってるからな。一歩間違えたら大事だ」
(;<_; )「うおおおおおおおーーーーーーーっ!マーーーーーサーーーーーーー!!」
(,,゚Д゚)「煩いちょっと黙れ」
(;<_; )「マァアアーーーーーーーーーサァアアアーーーーーーーーーーー!!!」
あまりの五月蝿さに、ギコが頭部を殴りつけた。
すかさずオトジャの拳がギコの顎をえぐる。
いよいよもってギコとオトジャの殴り合いが始まる。
ドクオは止めようかと迷ったが、モナーがその肩を叩き首を横に振った。
( ´∀`)「とりあえず、研究員たちに劇薬保管室などの危険地域の封鎖をお願いしなくては」
( ´_ゝ`)「だそうだオトジャ、行ってこい」
(メ<_゛(# )「あ?」
_,
( ´_ゝ`)「あ゛?」
(メ<_゛(# )「行ってきます」
喧嘩を中断し、オトジャはすごすご引き下がる。
入れ替わりに、研究員の一人が兄者へと駆け寄り耳打ちした。
皆の視線を察したのか、眉を潜めたまま親指で指す。
( ´_ゝ`)「……また別のフロアの配線がやられたらしい。児玉氏は忙しいらしいから、俺が行こう」
('A`)「それじゃ、俺、引き続きラットを探しますね」
ドクオはギコへと振り返ると、笑顔で言った。
('∀`)「ギコさん、休んでていいですよ」
(,,゚Д゚)「いや、だが………………」
('∀`)「顔色悪い人に任せられませんって。ほらほら、こういうのは俺たちに任せて」
(,,゚Д゚)「…………なら、お言葉に甘えるとしよう」
- 507 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/29(土) 00:20:12 ID:YCXOuPsQ0
- 誤字脱字ひどいのでまた夜に続き投下
- 508 :名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 00:33:32 ID:GmYF12ZoO
- おつおつ また夜に待ってるよー
- 509 :名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 01:25:51 ID:TvX/knxE0
- おお来てた!
- 510 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/29(土) 23:25:41 ID:5ZrkdGLA0
- (,,゚Д゚)「ふう……」
どっかりと椅子に腰を下ろす。疲れきったかのように、目が虚ろだ。
目の前では忙しなく研究員たちが、行ったり来たりを繰り返している。
( ´∀`)「お疲れって顔モナね」
(,,゚Д゚)「ロボットに疲労感はない筈なんだがな」
背中を丸めたギコの隣に、モナーが苦笑しつつ座る。
ぽん、と軽く背を叩く。二人揃って、どこか哀愁漂う光景だ。
視界の隅で、ドクオたちがちらほらと鼠探しに奔走している。
( ´∀`)「君にも苦手な物ってあるんだモナね。なんだか安心したモナ」
(,,゚Д゚)「安心?何がだ」
呆れた風にギコはモナーに目配せした。
モナーの言葉に、或いは馬鹿にされたとでも思ったのかもしれない。
ギコの三白眼にジロリと睨まれ、モナーは慌てて両手を振った。
( ;´∀`)「わ、悪い意味じゃないモナよ!ただ、完璧超人に見えるギコでも苦手なものはあるんだなー、って」
(,,゚Д゚)「フン、俺からすれば、お前の方が完璧超人に見えるよ」
目を細め、ギコはそう言い捨てた。
何でもそつなくこなすモナーを、皮肉ったようにも聞こえる。
( ´∀`)、
( ´∀`)「……完璧になれたら、どんなに良いモナかね」
モナーは何時ものたおやかな、ともすれば弱気な笑みを浮かべた。
ギコは隣の男の言葉の節に、「完璧」への羨望と、諦めを見た。
そのまま互いに、無言になる。
気まずいから沈黙するのではない。それ以上語る必要性を感じないからだ。
(´<_` )「ジジ臭せー光景だなー」
(,,゚Д゚)「どうとでも言え。お前はとっとと鼠を探すんだな」
(´<_`;)「言われずともだ、マーサァ!!」
途中、通りかかったオトジャを追い払い、再び沈黙が訪れる。
ギコは煙草に火を点け、深く吸った。
- 511 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/29(土) 23:51:32 ID:5ZrkdGLA0
-
紫煙が静かに揺蕩い、霞む。
モナーは嫌煙家であるため、眉を僅かに顰めた。
(,,゚Д゚)「鼠といえば」
紫煙の幕の向こうにモナーのしかめ面を認め、携帯灰皿に煙草を押し付ける。
マルボロの臭いが鼻腔をつき、モナーのしかめ面はますます深いものとなる。
(,,゚Д゚)「ハカタの連中、仕掛けてこないな。誘拐や潜入のひとつでもあるかと思ったが」
( ´∀`)「今動くのは得策ではないと考えてるんじゃないかな。こちらが警戒するのは当たり前だし」
(,,゚Д゚)「俺なら、この国の言葉を借りるなら『鉄は熱いうちに打つ』がな」
ギコは暗に、先日の襲撃事件のことを指した。
フォックスならば、あの出来事をVIP社の怠慢として擦り付け、マッチポンプを起こしていただろう。
おそらくは、警察やマフィアすら巻き込んで、イメージダウンを図ったに違いない。
ギコの言葉を聞き、モナーが唇の端を釣り上げた。
僅かな表情の変化に、ギコは不審げに片眉を釣り上げる。
(,,゚Д゚)「……お前まさか、『また』社長と悪巧みしてるんじゃなかろうな」
( ´∀`)「さてねえ、どうだろうね」
(,,゚Д゚)「あ、あ、さては企んでいるな。読めたぞ、喧嘩を売るつもりだ、そうだろ」
( ´∀`)「ここから先は企業秘密ですゆえに」
(,,゚Д゚)「誤魔化そうたってそうはいかんざき、吐け、吐け腹黒」
( ´∀`)「そうは言われても何のことやら」
(,,゚Д゚)「お前らの悪巧みに付き合う俺たちの身にもなれってんだ、こういう時だけ強気面しやがって」
へらへら笑うモナーの胸ぐらを掴み、がっくんがっくんと揺さぶる。
まるで世の政治家の如くのらりくらり避けようとするモナー。
男二人が見苦しくじゃれる中、モナーの懐から軽快な音が鳴り響く。
( ´∀`)「ん?社長かモナ?」
- 512 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/30(日) 00:06:32 ID:c/yqPCX20
- ( ´∀`)つ白<~♪ カーサン オカタガーコーッテルノ
(,,゚Д゚)「まだ帰宅時間じゃないだろう。何かあったか?」
モナーはギコの胸ぐらを掴む手はそのままに、懐に手を突っ込む。
小型電話が軽快なミュージックを鳴らしている。
表示されているのは、非通知。
二人揃って、顔を見合わせる。
モナーの指が恐る恐る画面をスライドし、電話に出る。
(白´∀`)「……………もしもし。どちら様でしょうか」
『………………………………久しいね。阿日谷モナー』
モナーの耳に届く、刺のない優男の声。
だが、声の主の言葉は、ギコとモナーを凍りつかせるには充分であった。
(白;´∀`)「……どうやって、この番号を……………………?」
『今から条件を挙げる。全て飲めないのならば君の上司の命は無いよ』
(,,゚Д゚)「……!」
優しい口調が紡ぐ言葉は、明らかに脅迫。会話する気すら見受けられない。
数瞬の沈黙を肯定と見なしたか、男は言葉を続けた。
『ひとつ。必ず独りで行動すること。この通話の内容を誰にも告げてはならない。
ふたつ。こちらの命令には従わず、質疑応答も許さない。
みっつ。社長を返して欲しければ指定の金額を用意しろ。ビタ一文負けはしない。
この三つを飲むならば、今日の夕方五時までにラウンジ市の廃工場へ来い。いいな』
(白;´∀`)「……………………」
男の声に聞き覚えはなく、男の目的すら見いだせない。
この電話の男に、いっそ薄気味悪ささえ覚える。
『この通話を切った後、写真を添付する。後は君の行動しだいだ』
そう締めくくると、電話が切られた。
そして間もなく、メールが送られてくる。こちらも知らないアドレスからだ。
- 513 :名も無きAAのようです:2012/12/30(日) 00:14:25 ID:9NorhNFk0
- 来たー!支援
しかしモナーの着メロは何でそれなんだww
- 514 :名も無きAAのようです:2012/12/30(日) 00:22:09 ID:c/yqPCX20
-
( ;´∀`)白ピッ「……」
モナーはメールを開き、確認する。
犯人が寄越してきた内容は、画像一つだけ。
それも、どこかの廃工場の内部ということだけしか分からない。
『爪 д )』
写真の中央で、ジーナが椅子に縛られていた。
意識があるのかどうかは分からない。ぐったりと俯いている。
地図すら送らず、具体的な身代金や場所も指定してこない。
愉快犯にも似た行為だ。
モナーをからかっているのと同じだ。
(,,゚Д゚)「お前が護衛から外れていたのが命取りだったな」
( ;´へ`)「……」
( ;´∀`)「いや。仕掛けられることは重々承知だったさ。ちょっと遅かったくらいだ」
(,,゚Д゚)「というと?」
( ´∀`)「朝の段階で、狂言誘拐を考えてたんだモナ。犯人を適当にでっち上げて、社員で一斉に見事逮捕。
『VIP社は使える』っていう信用度を上げようっていう宣伝と、誘拐なんて手は通じないぞっていう相手方への挑戦状を兼ねてね」
(,,゚Д゚)「相変わらず下らないこと考えるんだな」
(;´∀`)「……まさか、相手に先手を打たれるとは思わなかったけど」
苦々しくモナーは言う。
ジーナを一人で行動させたことが仇となったか。
( ´∀`)「まあ、これくらいなら問題ないモナ。相手は一人みたいだし」
モナーも、仮にも「完璧」でないとはいえ、超人だ。
電話の向こうから、足音や息遣いから、人数を割り出すことくらい出来る。
(,,゚Д゚)「俺も行くか?」
( ´∀`)「いや、構わないモナ。……事の次第によってはこの誘拐、使えるかもしれないモナ」
モナーは小型電話を仕舞い、微笑んだ。
この時のモナーの笑みは、ジーナと同様、腹に一物抱えた人間の笑みだ。
- 515 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/30(日) 00:35:27 ID:c/yqPCX20
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
「ああもう!まただ!またアイツの悪い『発作』が出ましたよ!」
「ベル、落ち着きなさい。彼の身勝手は今に始まったことじゃないでしょう」
――ラウンジ市内のどこかにある、とある一室。
黒々としたスーツにぴかぴかの黒い革靴を履いた足が、うろうろと歩き回る。
燕尾服が苛立たしげに足を踏みしめる、その後ろを。
「ジーナ・インテグラル!阿日谷モナー!よりによって今敵に回したくない相手を!彼は馬鹿ですか!?」
「落ち着けって、現社長代理の貴方が狼狽していては話になりません。お嬢様に示しが付きませんよ」
「これが落ち着いていられますか!私らはまだ弱小組織です!GICを敵に回している場合じゃないってのに!」
男が踵を返し、燕尾服に詰め寄った。
「良いですかベル、冷静に考えてください。これは好機と考えるのです」
「好機、どこが……」
男の顔に影が差し、口元を歪ませる。
「良いかい、僕ら如き平民がGICグループのトップ候補と接触できるなんて夢のまた夢。この機会に恩を着せてやるのさ」
「恩?」
「そう。若き女社長を偶然助けた善人としてね。相手もガキさ、まさか助けた人を犯人とは思うまい」
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
爪;‐ー‐)「ん……」
ジーナは身じろぎする。柔らかい何かの上に寝かされているようだ。
うつ伏せると、仄かな汗臭さとシーツの感触に眉を顰め、起きる。
なんだかとても眠く、体がだるい。
爪゚ー゚)「……あら?」
起き上がり、辺りを見回す。ここはどこだろうか。
先程まで、自分は学校にいた筈。ジーナの頭が一瞬にして覚め、警戒体勢に入った。
- 516 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/30(日) 00:49:31 ID:c/yqPCX20
-
爪;゚ー゚)(まだ夕方って所かしら。静かね……)
ぐるりと部屋を見渡す。12畳くらいだろうか。とても狭い部屋だ。
傷んだフローリング、質素な部屋に、手の届かない場所に鉄格子のはまった窓が一つだけ。
クローゼットと姿見とコート掛け以外何もない、生活感を感じさせない個室だ。
爪゚ー゚)「あ、私のバッグ……」
その時、手にシーツ以外の柔らかいものが触れた。
まるで人間の手のような、温かみのある――
( ><)从 ‐∀从⌒*リ´‐ ‐リ スピー
爪゚ー゚)
爪;゚ー゚)そ「! ! ?」
大きなベッドに、ジーナの他に三人の少女が眠りに落ちていた。
うち、見知った顔――ハインとリリ、それに知らない少女。
少女はジーナより2つか3つほど上だろうか。
爪;゚ー゚)「お、起こした方がいいのかしら……」
その時。階段を上がってくる音が聞こえてくる。
咄嗟にジーナは身を固め、スカートの下に隠し持っている護身用の銃に手をかけようとした。
――が、ない。
(悪いけど、拳銃は没収させてもらったよ。危ないからね)
爪;゚ー゚)(――――!)
蚊の鳴くような小さく、なのにはっきりと耳に入ってくる中性的な声。
声の主は開け放しのドアから堂々と入り、ジーナを見据えた。
( ・−・ )(ようこそ、GICグループVIP支社長、ジーナ・インテグラル。僕らの城へ)
爪;゚ー゚)「……………………誰?返答次第ではタダじゃおかないわ」
( ・−・ )(威勢の良い子だ。僕、君みたいな子が好きだよ)
男は笑いもせず、言った。
( ・−・ )(僕は、シーン。巷じゃあ、『子攫いアルセーヌ・ルパン』なんてセンスない名前で呼ばれてる。……まあ、よろしく。)
- 517 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/30(日) 00:52:04 ID:JEAyLhd60
- 6話ここまで!月曜日より7話開始!
長かった…ブツンブツンで本当に申し訳ない。祭りに無闇やたら参加しないよ…
- 518 :名も無きAAのようです:2012/12/30(日) 01:25:38 ID:EeFCrir6O
- おつ
ギコの弱点いいなw
作者のペースで投下してくれ
- 519 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/31(月) 18:54:06 ID:IrMMA/6o0
-
糞みたいな過去にケジメをつけて
お先真っ暗な未来に中指を突き立てて
どうしようもない今を生きると決めた
.
- 520 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/31(月) 18:55:16 ID:IrMMA/6o0
-
act7:Kidnap・Arsene Lupin
.
- 521 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/31(月) 18:57:04 ID:IrMMA/6o0
- ( ;´_ゝ`)「えええ、社長がっ!?」
( ;´∀`)「しっ!事は荒立てたくないモナ、静かにモナ!」
( ´_ゝ`)「す、すまない。しかし誘拐?また突然な……」
他の研究員たちがチラリと兄者とモナーを見たが、散れと言われ鼠の捜索に戻る。
ジーナの誘拐を耳にした兄者は、頭を手で叩いた。
( ´_ゝ`)「社長も随分な巻き込まれ体質だよな。仕事増やしてくれちゃって……」
( ´∀`)「とにかく、すぐ社長の居場所を割り出して欲しいモナ、なるべく他の皆には黙ってて欲しいモナ」
( ´_ゝ`)「おk、任せろ」
モナーから携帯電話を受け取り、兄者は逆探知機に接続する。
非通知の番号から電話の個人情報にアクセス、盗み出し、現在地の情報をハッキングためだ。
( ´_ゝ`)「――――逆探知完了!座標を入力して、マッピング……よし!」
兄者が着実に現在地への演算を済ませる間、モナーは執事服の下に戦闘服を着込む。
相手が誘拐犯、こちらに敵意がある以上、戦闘は避けられないだろう。
( ´∀`)「夕飯時には戻ってくるモナ、何かあった時はギコと兄者が指揮してくれモナ」
(,,゚Д゚)「分かった」
( ´_ゝ`)「非通知は公衆電話から掛けたものだな。ラウンジ市メイフラワー通りの…」
( ´∀`)「ありがとうモナ。この公衆電話から一番近い工場とかはあるモナか?」
( ´_ゝ`)「それなら、今はもう使われていない廃工場がある筈だ。マップに入れておくよ」
準備が完了し、騒がしい研究所内を目立たず歩く。
モナーの足音を立てぬ歩きに、目の前にいながらギコすらモナーの存在を見失いかける。
(::::∀`)「それじゃあ、行ってくるよ」
( ゚∀:::)「身の程知らずに、お勉強を教えてやらなきゃな」
そうして彼は一人、ラウンジ市へと向かった。
狂気の輝きと、歪んだ笑顔を携えて。
- 522 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/31(月) 18:58:02 ID:IrMMA/6o0
-
----------------
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/ヽ'\
( ・−) .( ̄ ̄)
/ [:]つ (、゚;爪
|| | c[ ] .[ ] と ).||
||(_⌒ヽ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|(^ ノ ||
|| ̄ ̄|| |______| || ̄ ̄||
|| ||し||. || .|| ||
子供らの安らかな寝息をBGMに、ひと組の男女がテーブルを挟んで向かい合う。
男は優雅にボロのマグで茶をしばき、ジーナに目配せした。
飲まないのか、と目で訴え掛ける。ジーナは平静を装い、首を横に振った。
爪゚ー゚)「貴方が、子攫いアルセーヌ・ルパン……まさか本当にいるなんてね」
( ・−・ )(冷静だね、誘拐されたってのに)
爪゚ー゚)「誘拐以上に色々経験したお陰で、これくらいじゃ驚かないわ」
( ・−・ )(そうかい)
ジーナは、呑気に茶をあおる誘拐犯を観察した。
服は質素なシャツとガウン、そして擦り切れたズボン。
貧民層の人間が着用するものだ。
こんなどこにでもいるような男が、あっという間に複数の少女を誘拐した。
何せ、攫われる直前の記憶がない。学校が終わり、校門を出て、それからの記憶が一切なくなっている。
のほほんとした顔をしているが、それほどの技術を持った輩なのだ。
油断はならない。
( ・−・ )ボケーッ
子攫いアルセーヌ・ルパン。
第S級犯罪者、世界中で指名手配されている誘拐常習犯だ。
影のように現れては、対象――主に未成年・子供を誘拐し、身代金を要求する。
人質には傷ひとつつけず、誘拐された一切の記憶を消す鮮やかな手並み。
- 523 : ◆k8vxyHhiI6:2012/12/31(月) 18:59:57 ID:IrMMA/6o0
-
(*・−・ )(あ、見て、茶柱立った)
爪;゚ー゚)
痕跡を一切残さず、素性も性別も不明とされてきた大犯罪者。
それが一般市民となんら変わらない地味な姿で、茶柱ひとつに興奮している。
――イメージと、全然違う!食い違うどころの話ではない。
爪゚ー゚)「…………それで?私を誘拐したのは何が目的?あなたを雇ったのは何者?」
気を取り直し、ジーナはシーンへと質問した。
子攫いアルセーヌ・ルパンの噂はジーナも知っていた。
スタンダードな誘拐から、或いは狂言、人だけでなく物まで、依頼があればなんだって誘拐する。
今回のこの誘拐も、おおかた依頼されたものだろうとジーナは踏んでいた。
だが。
( ・−・ )(目的なんてないよ)
爪;゚д゚)「へっ」
素っ頓狂な声が出た。
ジーナはこの男の真意が掴めずに、目を白黒させた。
( ・−・ )(僕は誰からも命令されてないし、金銭目的で誘拐したわけでもないさ)
爪;゚o゚)「ち、ちょっと待って!じゃあどうして私たちを誘拐したんですか?」
ジーナは乱暴に立ち上がり、シーンを問い詰めた。
マグを傾け、シーンはしばし顎をさすって考え込み、答えた。
( ・−・ )b(なんとなく)
爪;゚д゚)「な……なんとな、く……?」
脱力するほどに呆れかえるような答え。
がっくり肩を落とすジーナなど気にも留めず、シーンは茶を飲み干した。
- 524 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 20:22:20 ID:IH3tIB7s0
- 書き溜め消えて今再筆中、少しだけ待っててね
- 525 :名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 20:48:35 ID:Y27Ouq1A0
- 待ってる
- 526 :名も無きAAのようです:2013/01/06(日) 05:50:45 ID:QWM6Cuk.0
- 待ってる
シーン好きだから嬉しいな
今更だけどギコの苦手なものがかわいいww理由はえげつないけどww
- 527 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 22:53:19 ID:7tCLeTwI0
- 遅すぎた。あまりにも、遅すぎた。
投下します
- 528 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 22:54:36 ID:7tCLeTwI0
-
( ・−・ )フー…
ジーナはわなわなと肩を震わせる。
この男は私をおちょっくているのか、時間稼ぎでもしているのではないか。
でなければ自分たちを誘拐する理由など――
爪;゚д゚)ハッ
爪;゚д゚)「ま、まさかロリコ…………」
( ・−・ )(ちょっとちょっと、変な勘違いしないでくれるかい)
爪;゚д゚)「だ、だって子供ばかり攫うって…」
爪;"д")クラッ「はうっ!?」
大声を出した拍子に、目眩が襲う。
視界が大きく揺らぎ、大きなものが小さくなったり、逆もしかり。
かと思えば、目の前のシーンが3人になったり、1人に戻る。
( ・−・ )(大丈夫かい?まだ動かない方がいいと思うよ)
爪;゚、")「……お気遣いは結構です」
椅子に深く座り込み、シーンを睨みつけた。
落ち着くのだ、ジーナ・インテグラル。状況を整理しなければ。
まず、午後で授業が終わり、校門を出た。
ハインが一緒に帰ろうとしつこく迫り、リリは弱々しく笑っていた。
しかしハインが途中で携帯電話を忘れて、取りに戻る間リリと二人で待っていた。
ここまでは覚えている。しかしその直後からもやがかかったように思い出せない。
かろうじて、リリと何かしらの会話を交わしたくらいか……。
その時点から、誘拐されてこの部屋で目覚める間の記憶がない。まさかこの目眩と関係しているのか。
それからしばらく、沈黙が流れる。
不意に、シーンが口を開いた。
- 529 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 22:55:52 ID:7tCLeTwI0
- ( ・−・ )(例えばの話だ。君の目の前に1本の木がある。それは誰にも見向きもされない、果実を実らせる木だ)
爪;゚ー゚)「……?」
( ・−・ )(そして君は、とてもお腹が空いていて、飢えて死んでしまいそうだ。さあ、どうする?)
爪゚ー゚)「……その果実をもいで食べちゃう、かしら」
( ・−・ )(うん、捻りがなく、実にシンプルな答えだ)
ベッドの上でハインが唸った。寝言を言っているらしい。
どこからか鼠の鳴き声が聞こえ、足元を小虫が横切る。
分厚い雲が、雨を降らせる素振りを見せていた。
( ・−・ )(犯罪は、たった一つの欲求が満たされないだけで、いとも容易く生まれる)
( ・−・ )(食欲、性欲、物欲、金欲、……満たされないことが、人間を犯罪へと走らせる)
( ・−・ )(勿論、自制心はある。だども生活に必要な要素が極限に不足すると、そんなもの一瞬で崩壊するね)
( ・−・ )(キリスト教でも、人間の祖であるアダムとイヴは、禁断の果実を食べて原罪を犯したとある)
( ・−・ )(禁断の果実の正体は知恵や神への疑心だと提唱する人はいるけれども)
( ・−・ )(僕は『欲求不満』説を推すね。『飽くなき欲求』と『尽きることのない不満』こそ、人の原罪だと思うよ)
爪;゚ー゚)
なんなのだ、この男は。いきなりマイワールドへ突き進みすぎている。
ゴーイングマイウェイな男のペースに、すっかり押し黙ったジーナ。
異変をようやく察したのか、シーンは語ることをやめ、マグを指差した。
( ・−・ )(お茶、苦手だった?ジュースが良かったかい?)
爪;゚ー゚)
違った。要らぬ気を遣わせただけだった。
- 530 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 22:56:59 ID:7tCLeTwI0
- ( ・−・ )(ああ……主題が逸れちゃったね。話に戻ろうか。つまりね、僕もまた、満たされていない一人なんだよ)
爪;゚ー゚)「み、満たされて、いない?でも貴方は、身代金や強奪した金があるはずでしょう?」
( ・−・ )(そうじゃない、そうじゃないんだ)
シーンは首を横に振り、続ける。
( ・−・ )(金でも、パンでも、性交でも満たされない『欲求不満』が、僕にはあるんだ)
昔からだ、ともっと小さく掠れるような声で零した。
残った茶に、シーンの黒い瞳が映り込む。
水面が吐息で揺れ、シーンの瞳も同じく揺れる。
( ・−・ )(咲かない花と同じさ。どれだけ水をやっても、肥料を混ぜても、蕾が花開くことはないんだ)
( ・−・ )(だから、咲かない花に見切りをつけて、別の咲いた花が欲しくなる。それが僕を誘拐へと駆り立てるのかもしれない)
強いていうなら、それが目的かな。そう言い締めると、茶を飲み干した。
ジーナは黙考し、先ほどまで体を横たえていたベッドへと目配せした。
三人の少女たちはまだまだ夢のなかだ。
爪゚ー゚)「――それが動機ってわけ。なら、私でなくても、誰でも良かったと?」
( ・−・ )(いいや、勘違いしてもらったら困る。何故なら、僕は君が欲しかったからね)
ずい、とシーンは顔を近づけ、ジーナの瞳を覗き込んだ。
黒曜石さながらの輝きに、蒼い瞳が吸い込まれるような錯覚を覚えた。
( ・−・ )(僕にだってポリシーってもんがあるんだ。ただ適当に攫うわけじゃないよ、条件ってものがある)
爪゚ー゚)「……なら、こんなに攫う必要がありまして?」
些か咎めるような声色で諭すと、シーンは首を振った。
- 531 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 23:01:05 ID:7tCLeTwI0
- ( ・−・ )(いや、本当は君だけでも良かったんだけど、周りにいたからね。彼女らはついでだよ)
爪゚ー゚)「なら、彼女たちは開放してくださるかしら。何の関係もありませんもの」
ジーナにとって、少なくともハインに手を出されることは我慢ならないことだった。
自身の目的のため、ギコへの牽制のため、彼女は保護する必要があった。
シーンは考え込む素振りをみせると、不意に立ち上がり、サッシ越しに窓の外を見た。
( ・−・ )(……分かった。君の友達は解放しよう。その代わり……)
窓から離れ、懐から銃を取り出し一発放つ。
銃声が轟き(この状況で何故誰も起きないのか)、窓が割れサッシが吹っ飛んだ。
爪;゚o゚)「なっ……」
驚いたジーナが行動するより早く、シーンはジーナを抱える。
細くて頼りない割に、軽々とジーナを持ち上げる。
( ・−・ )(尾けられてたか。殺意丸出しだっての)
爪;゚д゚)「ちょっと、皆は!?」
( ・−・ )(僕の仲間に回収させる。大丈夫、向こうの興味は僕たちだけだ)
爪;゚д゚)「なんでそんな事が分かるのよ!大体、そういう問題じゃ……」
腕から逃げようともがくが、構わずシーンはドアを蹴破った。
長い廊下が続き、その先に階段が見える。
下の階からドアを乱暴に開ける音が聞こえ、足早に何者かが駆け上がる音が聞こえてくる。
( ゚ ゚)ダンッ
( ・−・ )(おやおや、もうお出ましか)
目出し帽をかぶった複数の男たちが、一斉に銃を向けてくる。
黒光りした銃身が、頼りない電球の光を反射させる。
爪;゚ー゚)「貴方の知り合い?」
( ・−・ )(そう尋ねるって事は、キミの友達でもないようだ)
脇を銃弾が掠めた。それが合図のように、シーンは無謀にも飛び出す。
瞬間、シーンの黒い瞳が一瞬だけ、紅に染まるのをジーナは見た。
- 532 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 23:12:15 ID:7tCLeTwI0
- ,:;;;:;ヾ ゞゞ'ヾ ゞ:;ヾ ゞゞ';':,;j:;, ;,i;:,i!:;,'ミ:.ミ,",:'';゙`;;:y;';;;:ゞミ;''ソ:;ゞ;';:;;:゙、`、;';:;";;;:;ヾ ゞゞ' ヾ ゞゞ'ヾ ゞ:;ヾ:;ゞ;;';:":;ヾ ゞ;
"'`',:'':;;:,'ミヾ:,;:ゞ'ゞ.;;:';;ゞ;:!; l .;,;::. :l.:;r"ソ;;:';;ゞミ:;.;;ゞ;:;ゞ,:;i''`ヾ;ミ:;;:,ゞ:;ゞミ,:;:'':;:;:;ゞ;ゞゞ;ゞ;:'':;;:,'ミヾ:,;:ゞ'ゞ';;ゞ;;'ゞ;;:'ゞ';;:.:;
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,;";:ヾゞ ゞ';:;:;ヾ:'':;:;,'ヾゞ|;;:.;;;:.,;;l:;;l.:;|;:;ゞ;;,':;.ミ,,:;:;'' :;|: l: ;|:. :. :. l .:i|;`::;,'ミ;r''ソ:;;゙、\ヘ;;:ミ:';'i:l;j;:l;,i:;;'ゞ;:ヾ;;:':;ゞ;ゞ';:ゞ;ヽ
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;";;;:;ヾ ゞゞ'::、:;;:ゞミ;'';;.,;ミ|;;:j ;;,;,: :;;.,;;:|゙、`:;,:;:'':;:;ゞ';:;"|:;.;. .:!: .: l ;l.;:i:|,:;:'';;:;";;:ヾ:.ゞゞ';;:`;ゞl;i;:l;j:j:;,j;|;;:;:ヾ:;ゞゞ':;ヾ;゙、`、;
ヾ;ゞ:;,;;ヾノソ;;ヾ;:;ヾ;:,ミゞ;|,;,:|.:;;;.::;;;:l:;;:|;;:'':;:;ゞ;ゞ';:;:ゞ;;|;: l .;|: ;| ;| ;|゙;;`、,.;::;,'ミ:.ミ,"::'';,::ミ,`l;;j:;i:;j:,j,l;;:;ヾ ゞ'::、:;;:ゞミ;';:,;.
`';:;ヾ;ゞゞゞ;':j.ij;j,!;,:, |;;::|:;,;,::.,;;:|:;;;|;:;ゞ;,:;:'':;:;'";ヾ;;|; . ;rj: i :, :| ,|;:;":;ヾ;;ヾ;ゞ:;;'':;ミ,",;.:;|:,j:i:;j:;,l:,l;ヾ;ゞ:;,;ヾノソ;:;ヾ;:ゞ
. ,.;;:゙:、,;"'`!;j;l;j,j|;:;ゞ,|;: ;;:.,;:.::;;;.|:;;゙|`;ヾ:;;ゞ;:ヾゞ:;ミ| i; {リ l :| :| :|::;;ヾ;;゙;:;";;:;ヾ ゞゞ' :,:;|;:;j;;l;,:ij;:|`':;;:ゞ;ゞ';;:ゞゞi;:.'i:;
.;,;ノ,;:;ヾ ゞゞ'|j.i:,j:,j|ミヾj:l:;;:|.,;;;:..:,;;.,;;:|ゞ;';i;r`、;:;ゞ;:';:;| l; ;: .;|: : .;|:; ;ゞヘ;'i: ;l.:i;;:ミ;:;ゞ;:";|;:ij;:l;,i.;j;|:'`'::;,l:';i:|:. :|::';l:,
ソゝゞ,:;゙;''`|,:j;;l;,:i|"゙`| l:; | ::;;;, ::. :;;| |i;li|;':;ヾゞ;ヾ;|;: :l: .:| :r :|;;:ミ:;ミ;| '; i; ト、;:ヾ:;゙';;:'|;l:j:;|;,:ij;:| 〈;:;..|;';:;| |;;':;.
;ヾ゙;:ゞ;;:ミヾ:;|.:ij;:l;,i|. |;. .;;':;;, ::;;:|.:;;;| |lij;|,;';,:'ゞ;, :ミ|;.|: :;|:. .: .:;|; ;|.,.;;'ゞ'|:|; |:.;|"'`' ;:; .;, |;j:,i,l:;ij;j;| ゞ;.|;';i:| |:i;:l;
ノj;i:;i:l;i⌒ゞ|:l:j;,l;:i;|. |;; ,;| ;; ::;;;:| :; | |li|l|"゙'^!;li゙'`|;:|: :,| ;i. :| .:l; .;|:'゙ ';:|,l :i|:.|!,:;:':゙;;ミ ゞ|;j;,i,.;j;j:;:|. .|;゙;l;| |:';:;i
.:|:;i:;,l;|:. |;j;.i,;j.l;|:. |;,: ,;i ;; :;;;,:l ;;',|; .|li;l|;:;;、;|vl. |;.|:. :;|: :| .;i :| :| . |;| .:| リ;;゙;:;";;ゞ;;.|;.j:|;;j,;j,:;|:, |;';i;:| |;'l;:;
:|;i;l;:l;|;. |,.j;l:j,;j,|;, |;, y' : ,-、:; ;; ;|ヾ|l;il|:;:;ミ;!;li} |;:|:. ;;|:. .:}:..;|: .;|:.;| ;;;:| |: i :;|:;;゙ヾ:.ゞゞ|;:j;i:j:,;ij,;|;: |;';i;:| |:;'i;;
|;lj:;i;i|:. |;.j;i:j,;j,|ヾ;;|, ;' ;;;: !r:}.;;;:.; | |lil;i|;r゙"| ;i} |:;,: .;;N:. : ,j;. .; l :.| `:;;|.; :;| ;i|'`':;;li;!;:゙`|j.;,j:i::j:,i;|: .|;'l;;i| |;:'l;:
;i;l.;;l;|;. |.j:;j,;j.j;|;;ゞ| ;;!:;;, ';`イ:;;;: :;| lli;l!| | il}. |:|: ;. .;| .:i,: :|;: .;|.:.;| ゙|:i :;l |:| |li |:i,;j:;j;,lj;:i| ノ:|;'i;l:| |;i:;;.
;:l:;j;;|゙ |:lj.;j:,j.i;| | ;:|:,;;:,..:;;i.:;;;.:;;:| |i州 | li}.|;|: ,;};. .: :;|;,. .:|; :| : | .|:| : | l| |l| |i;,j:;;j:;,j;i;| i;,::|;';l;i:|、. .:|;':i;:
;i;:ij;tーz_,|,i;,j:j:;k,|弋|;; ;l ;;j; j゙ ;;' ,;k;| ,jl从| | k} |:j. ;;j:: .: :;|;;:. :;!: .;t .:;|. |,|:i:;|;.i|. |i| |,i;,j;j:;i,:;lj;i、,k;:|;';j;l:|:;;, . ::j:;'l;.
それを見た全員の双眸に次に飛び込んできたのは、
まるでアトラクションのような樹海の中。
明らかに狭苦しい廊下が、奥行が広がり、目まぐるしく木と草と植物の匂いに満たされていく。
( ;゚ ゚)「なっ何だ!?」
爪;゚ー゚)「これって…!?」
- 533 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 23:18:20 ID:7tCLeTwI0
- ( ・−・ )(おっじゃまー)
全員が呆然とする隙に、シーンは駆ける。
駆けていく場所から、草が萌え花が咲き梢がざわめく。
枝が伸びて音を立て襲撃者たちの視界を覆う。
( ;゚ ゚)「ど、どうなってんだ!?ドクソッタレめ!」
襲撃者の一人は舌打ちし、銃を構え照準を合わせる。が、しかし。
( ・−・ )(それでどうやって僕を撃つのさ?)
( ;゚ ゚)「う…………うわあああああっ!?」
銃身からみるみる毛が生え、大きな溝鼠となる。
それはひとつだけでなく、その場にいる全員の銃が鼠へと変身していく。
階段へとたどり着くや、シーンの手が手すりを掴むと、それはそれは長い滑り台へと変化する!
( ・−・ )(あそーれ)
爪;゚д゚)「きゃあああああああっ!!?」
滑り台を滑り降り、一階まで到着する。
ダイニングらしき場所も森へと変貌を遂げていき、一階で待ち伏せしていた襲撃者たちも唖然とする。
上は騒がしく、我を取り戻した襲撃者たちが追いかけようと滑り台に手をかける。
- 534 :名も無きAAのようです:2013/01/09(水) 23:21:09 ID:7tCLeTwI0
- ( ・−・ )(凄いねえ、蛇から滑り降りようだなんて)
シーンがそう言葉にした直後、瞳がまた紅に輝く。
刹那、滑り台が艶かしい光を帯び、鱗のそれとなる。
/ ̄ ̄\
│ (┃) \
│ / ̄ シャーッ
\ _二フ
│ │
\ \
( )
(  ̄ ̄ ̄ )
(  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ )
(  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ )
( ;゚ ゚);゚ ゚)「ぎええええええ〜〜〜〜〜〜ッ!!??」
爪;゚д゚)「…………………あなた、魔法でも使えるの?」
( ・−・ )(なに、マジックにはまってた時期があってね)
ただただ驚くばかりのジーナに、シーンは茶目っ気たっぷりにウインクしてみせた。
大蛇はとぐろを巻き、襲撃者たちを蛇睨みする。
その間にシーンは、草むらに隠れた木の根を引っ張った。
途端、そこだけ扉となり、ぽっかりと口を開ける。
( ・−・ )(さ、皆ショーに夢中になってるうちに、ここから逃げるよ)
爪;゚ー゚)「ちょ、ちょっと、押さないで!」
ジーナはハシゴに手をかけ、ゆっくりと降りはじめる。
シーンも後から続き、誰も自分たちの脱出に気づいていないことを確かめて、蓋を閉めた。
- 535 :名も無きAAのようです:2013/01/10(木) 00:03:31 ID:HVZWdME20
- 地面を確認し、ジーナの爪先がそろそろとコンクリートの地を踏む。
生ぬるい風が吹き抜け、頬を撫で、髪を弄ぶ。
通路は長く黒く、どこまでも続いている。
黄色い電光が淡く、ジーナの顔を照らす。
爪゚ー゚)「ここって……使われなくなったトンネル?」
( ・−・ )(よく分かったね。旧ラウンジトンネルさ。もう20年以上前から封鎖されてる)
シーンが降り立ち、懐から懐中電灯を取り出して照らす。
どこまでも暗く、先が見えない。湿った風だけがある。
( ・−・ )(ここは昔、諸島領土開放運動の攻防戦でも使われたんだ。武器をここでこっそり流してたのさ)
爪゚ー゚)「私も知ってるわ。15年前にあった事件よね」
( ・−・ )(そうさ。国防軍も駆り出されて、一般市民も銃を取らざるを得ない状況だったんだ)
ほら、と指差す先に、トラックが見える。
トラックの荷台に積まれた木箱から、火薬の臭いが漂ってくる。
地面を照らすと、何度も車が通った跡が見て取れた。
( ・−・ )(思えば、あの事件を機に日本も銃社会に発展したと言ってもいい。とんだ国際化だよ)
爪゚ー゚)「………………」
( ・−・ )(そういえば、GICグループもあの解放運動に一枚噛んでるって噂があったっけ)
感情のない瞳がジーナを見下ろす。
先ほど、一瞬だけ見せた紅の輝きを思いだし、咄嗟に目を逸らした。
爪;゚ー゚)「ところで、これからどうするの?」
( ・−・ )(……ん。ひとまずここから離れないと。それから仲間に連絡を取って――)
( ・−・ )(あの集団の正体を突き止めて、とっちめてやらないとね)
( ・ー::::)(僕の城を目茶目茶にしたお礼は、高くつくよ)
- 536 :名も無きAAのようです:2013/01/10(木) 00:04:30 ID:HVZWdME20
- おちんちん言ってたら疲れたのでまた金曜日。
- 537 :名も無きAAのようです:2013/01/10(木) 08:11:12 ID:CJFk9POo0
- アレ書いたのお前だったのかよwww
- 538 :名も無きAAのようです:2013/01/10(木) 17:46:27 ID:aON6iUN.0
- お ま え か
いいぞもっとやれww
- 539 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/11(金) 22:08:08 ID:4FAkgw3A0
- 作者、体調不良により死亡。日曜日に延期。
- 540 :名も無きAAのようです:2013/01/11(金) 22:25:53 ID:vwf3dZ/Q0
- ドンマイwww
待ってるわー
- 541 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/13(日) 21:04:13 ID:CHy5ZCm60
- 【悲報】月曜に延期
- 542 :名も無きAAのようです:2013/01/14(月) 10:14:43 ID:qknkV.mw0
- 今日こそ来るのか
- 543 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/14(月) 16:30:21 ID:Gl5Px3YQ0
-
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
ラウンジ市。治安の悪さならトップレベルのSランク級危険地帯。
約十数年前まで激戦区となり、民間人が銃を手に日常を生きた場所。
( ´∀`)「………………………」
車の数は少なく、やたらと目つきの悪い輩がうろついている。
マフィアの根城があるのだから当たり前ではあるか。
建物はどれも老朽化が進んでおり、いつ崩壊してもおかしくはない。
( ´∀`)(ここに来るのも久しぶりだな。いつ以来だっけか)
( ´∀`)(……考えるのはよそう。そろそろだな)
物思いに耽るのもそこそこに、タブレットを操作する。
兄者の叩き出した計算式が合っていれば、この周辺の筈である。
無計画に組み込まれたかのような複雑な道。
むせ返るような腐臭と下水の悪臭。錆びた壁の連なる廃工場。
そこかしこに残る、今は昔の戦いの跡。
それら全てが、嫌でも目に入る。
(( ゚∀::: 辛いなら、変わってやろうか?)
( ´∀`)
( ´∀`)「……ふふ、大丈夫。アヒャには体力を温存してもらわないと」
タブレットの地図によると、ここから先は徒歩となる。
ホルスターにナイフを装着し、上着を羽織ってリニアから降りる。
早くもいかにもガラの悪そうな男たちがこちらを見るが、無視して歩き始める。
歩み続けるにつれ、視線が集まってくる。
身なりの良い男がたったひとりで、人通りの少ない道を彷徨いているのだ。
鴨がネギと鍋を背負って食べてくださいのプラカードを提げているようなもの。
- 544 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/14(月) 16:34:37 ID:Gl5Px3YQ0
-
(( ゚∀::: 蟻みてえにゾロゾロと……)
ジワリと肌が赤に侵食される。
腰のナイフに添えた右手を制したのは、モナーの意思。
( ´∀`)(ここでやり合う必要はないモナ。そもそも僕らの目的はチンピラ退治じゃないモナよ)
キュッ、と爪先が地を擦る。
歩く速度を徐々に上げ、モナーはどんどん道へ入り込む。
フェイントを入れ、ここぞというタイミングで距離を引き離す。
気配を消す歩法はチンピラ達の追跡から逃れるにはうってつけ。
(( ゚∀::: 尾けられてるな)
――しかし。未だ着いてくる気配がある。
( ´∀`)(誘拐犯モナかね)
(( ゚∀::: さあな。どちらにせよ……)
(:::::∀`)
( ゚∀::::)(鬱陶しい蝿は叩くに限る)
「アヒャ」にすり替わった瞬間、その足が地を蹴る。
追跡者達から一気に間を開け、細い路地を豹の如く奔る。
追跡者達は気配を隠すことを止め、バラバラとアヒャを追い始める。
((;´∀`)一体何人いるモナ!?10人くらい?)
( ゚∀゚ )「俺らに気づかれるようじゃ雑魚だ。いつも通りノシちまえばいい」
言うやアヒャは、目に入った倉庫に飛び込んだ。
追いついた追跡者達に乱入されるより早く、扉を乱暴に閉める。
( ゚∀゚ )「さあ、鬼ごっこの時間だ。遊ぼうぜガキ共」
- 545 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/14(月) 16:45:46 ID:Gl5Px3YQ0
-
倉庫の中はがらんどうだ。鉄錆の臭いと廃棄物が転がっている。
天井や壁には穴があき放題だ。
銃が幾つか転がっているが、もう使い物にならないだろう。
( ゚∀゚ )(解放運動の跡ってとこか。ここも戦場だったらしい)
銃はもう何年も前に製造を廃止された外国製のもの。
刃物を主な武器として使うアヒャとしては縁のない物なので興味はない。
「捜しなさい。この近くにいる筈です」
「ハッ!」
外で声がする。追跡者達はどうやら一組織のようだ。
頭領と思わしき中性的な声が男たちに指示し、気配が散開する。
ここが見つかるのも時間の問題。寧ろ見つけて欲しいのだが。
( ゚∀゚ )(西に3人、南に4人、東に3人か……)
バラバラの足取りで大まかな人数を予測する。
相手はそれなりに訓練を積んでいるだろうが、足運びは未熟な方だ。
――コツ、コツ。
( ゚∀゚ )!
否。ひとり、こちらに近づいてきている。
革靴を鳴らし、確実にアヒャのいる倉庫へ近づいてきている。
ギィ。
( )「…………」
背はアヒャとさほど変わらない。
濡れた烏の羽の色の髪を揺らし、アヒャを探しているようだ。
( ゚∀゚ )+
まさか、標的が真上、ドアの上にへばりついているとも気づかずに。
- 546 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/14(月) 16:59:38 ID:Gl5Px3YQ0
- コツ、コツ。人影が一歩一歩、奥に入っていく。
アヒャは息を殺し隙を伺う。飛び降りてねじ伏せるチャンスを。
( )コツ…
きた――――
( ゚∀゚ )(まずは一匹――!)
飛び降り、ナイフを振りかぶる――瞬間!
=三<●><●>)グワァッ!
(;゚∀゚ )そ「いィッ!?」
標的が振り返った。
一瞬怯んだものの、勢いを殺しきれず、ナイフを振り下ろす。
金属がぶつかり合うような高い音が響き、場の空気が一瞬止まった。
( <●><●>)ノ彡 ブゥンッ!! ー=三三゚∀゚;)
⊂ノ彳
( ゚∀゚ )「っとぉ!」
躊躇した一瞬で弾き飛ばされ、崩れた体勢を立て直す。
薄暗がりの中で、二つの眼光が鈍く輝く。
( ゚∀゚ )「ッヒャヒャ、俺に気づくどころか防ぐなんざ並みの技じゃねえな。何モンだ」
( <●><●>)……
( ゚∀゚ )「ダンマリかよ――子猫ちゃんっ!」
両手で四本のナイフを投擲する。
眼光が揺れ、影がアクションを起こした。
グルリと自らの体をねじ伏せ、見事ナイフを全て避けた。
- 547 : ◆k8vxyHhiI6:2013/01/14(月) 21:29:31 ID:Gl5Px3YQ0
-
が。
刹那、ギョロ目の視界が漆黒に覆われる。
アヒャの上着が、目くらましの役目を果たす。
=三 ゚∀゚ )「ウシャァアッ!」
(;< >< >)そ
そのまま鋭い蹴りが、顎に放たれる。
骨にダイレクトに染み渡る振動。グラ、とギョロ目の体が傾く。
だが右手が素早く伸び、アヒャの足首を掴む。
( ;゚∀゚ )「ファッ!?」
|||i(。A。;i||「どわあああああっ!?」
∩
|||(#<●><●>)
なんと、天井まで投げられた。
細い片腕で、成人男性ひとりを野球ボールでも投げるかのように。
すかさずトカゲの如く天井にへばりつくアヒャも大概人外だが。
( ゚∀゚ )「にゃろう、中々隙がねえ」
=三 <●><●>)
着地すると、ギョロ目が狙ったように突進。
ギリギリまで引きつけ、引きつけ、引きつけ――
( ゚∀゚ ) ヒョイッ
ミ ー=三<●><●>)
( ゚∀) ガシャーン>
( ゚∀゚ )「っし!ストライク!」
( (;´∀`)な、なんて緊迫感のない戦い……)
- 548 :名も無きAAのようです:2013/01/15(火) 01:12:55 ID:Fn02L6f20
- 乙、体とパソコンの調子は良くなったかい?
ワカッテマスもただの人間じゃなさそうだな
- 549 :作者:2013/01/20(日) 18:51:41 ID:.OU1Yaw.0
- 火・水のどっちかには投下する(震え声)
- 550 :名も無きAAのようです:2013/01/20(日) 19:48:10 ID:5HAM6.fIO
- よし、全力で待機してる
- 551 :名も無きAAのようです:2013/01/20(日) 20:46:41 ID:Nkt0g6jI0
- いけるかな
- 552 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:03:14 ID:tkHTcwlo0
-
\ ⊂[J( 'ー`)し
\/ (⌒マ´
(⌒ヽrヘJつ
> _)、
し' \_) ヽヾ\
丶_n.__
糞スレ書いてたら時間消えたから日にちまたぐぞ
 ̄ (⌒
⌒Y⌒
ゆっくり投下
- 553 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:04:37 ID:tkHTcwlo0
-
扉に突撃し外に飛び出したギョロ目の後を追う。
騒ぎを聞きつけ、ギョロ目の仲間と思わしき男たちに囲まれた。
( ゚∀゚ )「おーおー、出るわ出るわ。輪姦ショーでも始まるのか?」
ili( <●><●>)iliガタッ
蹴り飛ばした扉の残骸から、ギョロ目が顔を出す。
顔に作った影が表情を隠し、のっぺりとした黒い瞳がアヒャを見据えた。
部下らしき追跡者達は互いに目配せし、ギョロ目を注視する。
( ゚∀゚ )「来いよ」
( <●><●>)グッ…
敵に囲まれ、なお相手を挑発するアヒャの余裕。
ギョロ目とアヒャの黄色い瞳が交錯し――
「止しなさい、ベル」
( <●><●>)ピタァッ
( ゚∀゚ )!
途端、目の前のギョロ目の動きが止まった。
釣られてアヒャも、警戒体勢のまま同タイミングで静止する。
.
- 554 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:09:28 ID:tkHTcwlo0
-
「君の悪い癖だ。熱中するとすぐ我を忘れる」
二人を囲む人垣が割れ、男が一人歩み寄る。
ブラックスーツに身を包み、全身を黒で統一した、まだ若い男だ。
爽やかな笑顔から、覗いた白い歯がよく輝く。
¥・∀・¥「初めまして、阿日谷モナー。突然の無礼を詫びるよ」
( <●><●>)スッ
ギョロ目が、男の一歩後ろの位置まで退いた。
どうやら、男の仲間のようである。アヒャはそのように認識した。
( ゚∀゚ )「……チッ。次から次へと面倒臭ェ……」
∩¥・∀・¥∩「おっと!頼むからその物騒なモノは仕舞ってくれないか」
ナイフの鋭い切っ先を向けると、男は余裕の笑みのまま両手を上げた。
子供をおちょくるような言い草に、アヒャのコメカミがひくつく。
- 555 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:12:18 ID:tkHTcwlo0
-
¥・∀・¥「僕は血生臭いのは趣味じゃなくてね。それに、君の敵ではないよ」
( ゚∀゚ )「どうだかな。゛敵゛の゛敵゛は同じく゛敵゛だってよく言うじゃねえか」
¥・∀・¥「はは、そうかな。そうかもしれないね」
朗らかに笑う男も、その後ろに控えるギョロ目も、そしてアヒャも等しく殺気を放つ。
それこそ、周りを取り巻く集団の男たちが、揃って怖気ついて一歩引き下がるほど。
禍々しく、寒々と、心臓を締め付けるような重圧感。
¥・∀・¥「だが、今は交戦する気はない。君に害を加える気も――更々ない。今は武器を下ろしてくれ」
マニーが腕を降って合図すると、全員が得物を持つ手を下ろした。
四方を囲む男たちをそれぞれ睨みながら、アヒャもナイフをゆっくりと仕舞う。
¥・∀・¥「君の目的は分かっている。ジーナ・インテグラル氏の保護だろう?」
( ゚∀゚ )「ほう、とすると喧嘩売ってきたのはやっぱりお前らか?」
¥・∀・¥「滅相もない!私たちは寧ろ味方ですよ!!」
突然気が触れたかと錯覚しかけるほどに、オーバーリアクションを取る男。
一挙一動がいちいち大げさで扇動的だ。見ていて少々イラつくほどに。
- 556 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:19:55 ID:tkHTcwlo0
-
男はピタリと踵を揃えると、それはそれは仰々しくお辞儀した。
¥・∀・¥「――お初にお目にかかります。私はマニー・シンドラー。しがないいち会社の経理をしています」
( ゚∀゚ )「会社ァ?」
眉間に皺を寄せ、思わず語尾が上がる。
男、もといマニーはそつなき動きで名刺を恭しく差し出す。
それを乱暴にもぎ取り、穴があくほど見つめる。
( ゚∀゚ )「派遣会社ロード・カンパニー……?」
¥・∀・¥「24時間366日、あらゆる面においての『プロフェッショナル』を派遣いたします。
――――どうぞ、よしなに」
片眉を上げ数秒ほどマニーを睨むと、興味なさげにポケットに押し込んだ。
マニーはニコニコと笑いながら一挙一動を見届け、両手を叩いて鳴らす。
¥・∀・¥「問題に戻りましょう。インテグラル氏ですが――既にうちの有能な部下が保護済みです」
( ゚∀゚ )「保護だァ?」
¥・∀・¥「連絡がありましてね。誘拐された少女「ら」を保護した所、その内の一人がジーナ・インテグラル氏であったと……」
実際の所は、シーンを監視していた別の部下から受け取った情報をそのまま言っているに過ぎない。
アヒャは数秒、真顔をキープした後、笑みを浮かべた。
具体的に表現するなら、「間抜けを拝む面構え」だ。
- 557 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:25:55 ID:tkHTcwlo0
-
(´゚∀゚ )「彼女「ら」、ねえ」
¥・∀・¥「ええ!現在は保護した部下が付き添っております故……」
(´゚∀゚ )白゛「じゃあ、『これ』に見覚えはない訳だ?」
懐から取り出したのは、モナーのタブレット。
そこに表示される、先ほど受け取った画像。
どこかの廃工場の中で、椅子に縛り付けられ、項垂れたジーナを撮ったものだ。
¥´・ヮ・`¥
(´゚∀゚ )「なんだその間抜け面はよォ?」
ヒソヒソ ¥・∀・`¥「……どうしようベル、写真は計算外です。聞いてないんですけど」
゛ヘ( <●><●>)ヘ゛
ヒソヒソ声で話しているが丸聞こえだ。
ギョロ目――ベルという名前らしい――も他人事のように肩を竦める。
二人が滑稽にヒソヒソ話をしている最中、アヒャの目玉の隅でギラリと光が反射する。
- 558 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:31:52 ID:tkHTcwlo0
- ¥・∀・¥「……どうやらリサーチ不足だったようで」
( ゚∀゚ )ノ⌒白 ポイッ 「そうみてーだな」
-=三三 ゚∀゚ )ダッ
”白 パシッ
γ ∩¥・∀・;¥「うおっと!?」
(<●><●>#)ギンッ!
タブレットを放った瞬間、アヒャは駆ける。
ほぼ同タイミングでベルが構え、迎撃せんと脚部に力を込める。
1拍置き、マニーが放られたタブレットを掴んだ瞬間。
ダァン!
¥;・∀・¥「ホワッチョ!?」
-=三 ゚∀゚ )つ「オラァア!!」
銃声。つい一瞬前までアヒャがいた場所に銃弾がめり込む。
そしてまるでパラパラ漫画のごとく、次々とアヒャを追うように鉛弾が狙う。
¥; ∀ ¥そ「はぎゃもんっ!?」
(;<●><●>)「チィッ!」
あっという間に間合いを詰め、ラリアットの要領でマニーに飛びかかる。
アヒャの腕に絡み取られるマニーの首。ほぼ同時にマニーの背後へ回るベル。
三人は絡まり、もんどりうって転がる。その瞬間にも鉛弾は打ち込まれて、
巻き添えを食らったマニーらの部下と思わしき男たちが悲鳴を上げる。
- 559 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:35:16 ID:tkHTcwlo0
- アヒャは二人を巻き込んだまま、咄嗟に傍のコンテナの影に転がり込む。
数十秒の時間を作れればそれで十分だ。
¥;・∀・¥「ギブギブギブギブ!私は体育会系じゃないんですってば!」
(;<●><●>)ノシそ バンバン
上からアヒャ、マニー、ベルの順に折り重なっている状況。
アヒャの内股が下敷きになった男を挟み込む。
そして素早くナイフを抜き、マニーの首筋へと突きつけた。
( ゚∀゚ )「お嬢の居場所はどこだ。吐け」
¥;・∀・¥「だから!私らは敵じゃないですって!その居場所を教える為にノコノコ出てきたんじゃないですか!」
( ゚∀゚ )「お前みたいな間抜けが信用できるか、アホめ。タンドリーチキンにされてえか」
∩¥;・∀・¥∩ホールドアップ!「保護してるのは事実なんですからァ!!信じてくださいってぇん!」
( ゚∀゚ )キメェ「ヤだね。情報だけもらってお前らは豆鉄砲の的にしてや……」
(#<●><●>)ヒュバッ
(;゚∀゚ )「うおっ!?!」ヂィンッ!
死角から放たれる一撃。咄嗟にナイフで受け止める。
それはベルの長い足の先にある仕込み刃。この無理な体勢でよく放ったものだ。
- 560 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:47:38 ID:tkHTcwlo0
- ( ゚∀゚ )「チッ」
(#<●><●>)「重い、退け」
( ゚∀゚ )「退いても構わんがテメーの態度が気に食わねえ」
(#<●><●>)「下半身デブ!デカケツ!」
(#゚∀゚ )「んだと糞デカ目!人が気にしてることを!!」
¥;・∀・¥「わーわー二人とも!喧嘩禁止!」
マニーを挟んで行われる口論with刃物。
流石に挟まれた男は危機感を感じたのか必死だ。
¥;・∀・¥「とっとにかく!インテグラル氏の所に案内すればいいんですよねっ?ねっ!?」
( ゚∀゚ )「そうだよ。そんでお前らは的当ての的だ。仲良く散りな」
¥;・∀・¥「だから!私らは貴男がたを敵に回すつもりは」
コンテナに連続的な衝撃。標的がこちらに移ったようだ。
マニーが先ほどからコメディ映画のような悲鳴を上げる。
舌打ちを零し、マニーの胸ぐらを乱暴に掴んだ。
( ゚∀゚ )「「あちらさん」はお仲間じゃねーのか?」
¥;・∀・¥「知りませんよ!うちの武闘派はベル一人ですし」
(´゚∀゚ )「……お前らプロフェッショナルの看板下ろしたらどうだ?」
銃声は止まない。断続的に、探るように弾が放たれる。
やがて音が止まる。こちらが痺れを切らして出てくるのを待っているようだ。
周囲を見回す。アヒャが留めたリニアの場所まで20mちょい。
- 561 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 19:52:45 ID:tkHTcwlo0
- >>560
訂正
>周囲を見回す。アヒャが留めたリニアの場所まで20mちょい。
○→周囲を見回す。アヒャが留めたリニアの場所まで200mちょい。
- 562 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 20:02:41 ID:tkHTcwlo0
-
撃ち込まれた角度と時間差から、相手は10時の方角と推測。
そこから銃弾の当たらないギリギリのラインで、
狙撃の目から逃げ切り、リニアにたどり着かなければならない。
( ゚∀゚ )「おいコラ糞なんちゃってリッチとギョロ目」
¥;・∀・¥そ「糞なんちゃってリッチ!?」
( ゚∀゚ )「お前ら、100m走何秒よ?」
¥;・∀・¥「は、走りに自信はないですね……7秒くらい?」
(#<●><●>)「……4秒後半」
( ゚∀゚ )「オーケイ、のろま。お嬢の所まで案内してもらうぜ、気張りな」
¥;・∀・¥!
再びコンテナに衝撃。
相手はサイレンサーを装着したらしいが、かなり今更だ。
恐らく向こうもよっぽどの素人でアホだ。恐るるに足らず。
( ゚∀゚ )「合図したら走れ。ギョロ目、お前はそっちだ」
( <●><●>)d そ ビッ
中指を突き出すベルだが、言われた通り配置につく。
コンテナが衝撃で、徐々に壁としての役割を放棄し始めた瞬間――
( ゚∀゚ )「RunRunRun!!!」
三人は、駆け出した!
- 563 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 20:04:12 ID:tkHTcwlo0
- 一旦休憩。40分頃再開
- 564 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 20:13:24 ID:HWlWk7Uo0
- 来てたー、一旦乙
なんちゃって糞リッチてwww
あとやっぱり表情良いな
- 565 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 20:48:24 ID:tkHTcwlo0
- 戻った。ゆっくり再開
- 566 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 20:55:59 ID:tkHTcwlo0
-
-=三¥;・∀・¥
真っ先に駆け出すは、マニー。
凡人に毛が生えたような速度で、まっすぐ突っ切る。
マニーの身長自体がそこまで高くなく、向かう先は障害物だらけ。
狙撃手の位置からは狙われにくい。
(<●><●>三三=-
逆に、開けた場所へ飛び出すベル。
こんな愚行を侵す意味、流石にどんな間抜けでも分かる。ベルは囮だ。
ギラリと反射する光を睨み返し、すぐまた別のコンテナの影へと。
¥;・∀・¥(ターッチィ!!)
一足先に、マニーはリニアに辿り着き、その場に隠れた。
マニーの方向へ銃口が向けられることはなかった。その事実に胸を撫で下ろす。
( ゚∀゚ )『奴の狙いは俺だ。テメエらは巻き添え食らったに過ぎねえ』
¥;・∀・¥(本当だったみたいだね……。
噂通り、とてもスリリングな生活を送ってるようだな)
狙撃手の狙いはアヒャのみ。彼の読みは当たっていたらしい。
証拠に、ベルに威嚇程度の発砲はするものの、当てるつもりはないようだ。
あれでは場所を教えているようなものだ。本当に向こうは間抜けらしい。
- 567 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:07:44 ID:tkHTcwlo0
- ( <●><●>)(……!)
何度目かの追撃を逃れ、再び障害物の影に隠れたとき。
ベルは影から様子を伺い、眉を顰めた。
銃弾の位置、角度、放たれた距離から、おおよそのスナイパーの場所が分かる。
( <●><●>)(彼の言ったとおり、複数いますね)
( ゚∀゚ )『相手は多分――1人じゃねえだろうな。3人以上はいる』
¥;・∀・¥『私怨かい?』
( ゚∀゚ )『多分同業者だ。現在進行形で「喧嘩相手」がいるもんでね』
( <●><●>)(これは確かに、大変な時期に大変な相手と絡んでしまったようですね、シーン)
そして、アヒャといえば。
狙撃手がいるであろう、廃工場のひとつを目視し、目を細めた。
( <●><●>)『私から一つ、言わせてもらえば』
( <●><●>)『先ほどの銃擊、狙撃元はあの方角です』
狙撃元は、ベルが指摘した場所だ。
敵ということもあり半信半疑だが、彼(彼女?)の動体視力を鑑みるに、
あながち間違いでないのかもしれない。
- 568 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:16:24 ID:tkHTcwlo0
-
( ゚∀゚ )『その話、俺に信じろと?』
( <●><●>)『共同戦線。あれは貴方の「恋人」、そうでしょう?』
_,
( ゚∀゚ )『ありゃストーカーだよ。タチの悪い変質者さ』
( <●><●>)『同じこと。あのストーカーを始末するのは貴方の仕事』
( <●><●>)『代わりに、貴方の上司の居場所を教える。これでイーヴン』
( ゚∀゚ )「ケッ、そっちが撒いた種だろうが……」
独りごち、ナイフを構える。
どちらにせよ、ジーナの居場所を彼らが知っているのは確からしい。
罠かもしれないが、あの間抜け面は別の意味で信用に足りると、
アヒャは判断した。
酔狂と思われることだろう。自身でも自覚していることだ。
だが――ほぼ勘に近いその判断力が、アヒャを何度も逆境から救ってきた。
( ゚∀゚ )『だとして、ソイツ等の目をどう欺く?上から狙撃されてんだぜ?』
¥・∀・¥『……………………ちょっと待てよ。一つ考えがある』
( ゚∀゚ )『なんだ?マシな手じゃなけりゃ捻り潰すぜ』
¥・∀・¥『コワイナーモー、要は相手の目から見えなけりゃばいいんだろう?』
そう言うと、マニーは案を出した。
彼の一考を聞くや、アヒャは一瞬目を見開いたあと、ニンマリと笑った。
- 569 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:21:22 ID:P/2m8Zks0
- 100mが4秒と7秒とかどっちも化けモンじゃねーかwwww
- 570 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:23:02 ID:tkHTcwlo0
-
狙撃手は、ベルの予想通り、三階建ての廃工場から狙撃していた。
昔ながらの錆び付いたベルトコンベアーが並ぶ作業室、その真上にある事務室から。
埃だらけの床に寝そべり、獲物が頭をだす機会を狙っていた。
「……………………」
だが、本命が現れない。
「上」からの命令で言い渡された標的の男を、ある時間帯を境に見失ってしまった。
あちらは生身の人間だ。この広いフィールドで、狙撃手の目から逃れるのは
そう簡単なことではない。
(チッ、あっちの成金男は逃げたみたいだな)
障害物の影で撃つことは適わなかったが、マニーの姿は確認できた。
先ほどから、挑発するように開けた空間を行き来するベルの姿も、問題なく見える。
全方位を見渡せるこの空間、狙撃手の目から逃れることは不可能――
「ようネズ公」
( ゚∀゚ )「俺に喧嘩売るとは、いい度胸だ」
「な……………………!!」
の、筈だった。
- 571 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:28:47 ID:tkHTcwlo0
-
その男は、いつの間にか背後に立っていた。
狙撃手は驚愕に目を見開く。
馬鹿な。ありえない。
狙撃手の目を掻い潜って、どのような方法でここまでたどり着いたのか――
答えをはじき出すより一瞬早く、アヒャの蹴りが飛んだ。
( ゚∀゚ )「手間かけさせやがって。俺ァホモじゃねーんだぞ」
ゴキリ、派手に首を鳴らす。
狙撃手は腹にモロな一撃を食らって床でのたうちまわる。
( ゚∀゚ )「『どうやって見つからずここまで来たか』、って顔してるな。知りたいか?」
狙撃手を見下ろす。
聞こえていないようで、目は虚ろだ。反撃する気配もない。
「うぐ……………………あ……………………」
( ゚∀゚ )「答えは―――」
(:::::∀゚ )「おっしーえなーい」
右手で光るナイフが、躊躇なく男へと振り下ろされた――――
.
- 572 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:38:05 ID:tkHTcwlo0
- ¥;・∀・¥ ハラハラ
( ゚∀゚ )ノ「よう、おまたー」
( <●><●>)「マニー、終わりました」
¥;・∀・¥「ああ、二人とも!無事仕留めたみたいですね」
リニアの影でうずくまっていたマニー。
二人の姿を認めるや、震える足で立ち上がる。
アヒャは呆れ顔でそれを見て、溜息を一つ吐く。
(´゚∀゚ )「お前、100m7秒とかあの場で嘘吐けた癖に、なんだそのへっぴり腰は」
¥;・∀・¥「え?50m走って言いませんでしたか?」
( ゚∀゚ )「……………………」
どうやらビビって聞き間違えたようだ。呆れて何も言えない。
片眉を釣り上げてベルへと振り返ると、ベルはムッとした表情で、
( <●><●>)「私は実際に100m走は4秒半ですよ」
( ゚∀゚ )「……………………あっそ」
何も言う気になれず、脱力した面持ちでアヒャはリニアの鍵を開けた。
三人とも沈黙したまま乗り込み、アヒャはリニアを走らせる。
( ゚∀゚ )「それにしても、あの廃工場から直接通じる地下水道の道なんてよく知ってたな」
¥・∀・¥「部下が、あの周辺の出身でしてね。その話をよく耳にしたものですから」
あっそ、とだけアヒャは返し、運転に集中することにする。
( ゚∀゚ )「さて、約束通り案内してもらうぜ。もし嘘だったら……」
¥・∀・¥「分かってますって。分かったからその物騒なものはしまってください」
△ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼ △ ▼
- 573 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 21:47:28 ID:tkHTcwlo0
-
時間は少々遡り、視点はジーナへと。
( ・−・ )(ここが出口だ。先に上がるよ)
延々と続くかに思われた地下道を歩き続けて20分ほど。
シーンが突然立ち止まり、上を見上げた。
釣られて見ると、そこには闇に同化するようにかけられたハシゴが。
爪゚ー゚)「ここから外に出られるの?」
少女の声が反響する。
それに答えるかのように、オオ……と生ぬるい風が吹き抜けた。
シーンは錆びたハシゴに手をかけ、慣れた動きでよじ登る。
( ・−・ )(この上にマンホールがあってね、それを取ると……)
強引に蓋のようなものを押しのけ、僅かに光が差し込む。
その光は、天井を見上げるジーナの目にも届き、咄嗟に目を細めた。
何度か周りを見回したシーンは、安全と判断したのか、地上に身を乗り出す。
( ・−・ )(さ、早く。見つからない内に)
爪゚ー゚)「ええ」
シーンに手を差し出されるままに、その手を掴む。
無表情でロボットのような無機質さを醸し出す気配とはうらはらに、
その手は子供のように暖かかった。
( ・−・ )(錆びてるからね、壊れるかもしれないから気をつけて……)
爪;゚ー゚)「い、言われなくても分かってるわ、よっと!」
足に力をこめ、力任せに地上に飛び出す。
周りはどこかの工場地帯らしい。ドブの臭いが鼻を突く。
辺りは、妙な静けさに満ちており、少々不気味だ。
- 574 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 22:00:10 ID:tkHTcwlo0
-
爪゚ー゚)「……静かね」
( ・−・ )(ここは何時だって静かさ。ちょっと待ってて)
爪;゚ー゚)「ちょっと!……もう」
シーンはそう言うと、まっすぐ歩き始める。
置いていかれるのが癪なので、ジーナも後に続く。
周りは産業廃棄物の山だ。平然と使い捨てられたマガジンが転がっている。
( ・−・ )(ここも紛争地帯でね。銃声が聞こえない日なんてなかったなァ)
しみじみと昔を懐かしむ声色で、シーンは昔話を語る。
どこか望郷の色を交えて、やれあの壁で人が死んだとか、
こっちの方向で爆弾が放り込まれただとか、子供に聞かせるにはショッキングな内容を淡々と語る。
( ・−・ )(でね、ここで僕も銃を持って戦ってたんだ。6つの時だったかなー)
爪゚、゚)「……貴方って、子供に嫌われるタイプね」
(;・−・ )そ(ええ、そうかな?子供を扱うのは自信ある方なんだけど……)
それはひょっとしてギャグで言ってるのか。
呆れ返って、この男に対し閉口せざるを得ない。
爪゚ー゚)「時に、どこに向かってるのかしら?話してもらってもいいと思うのだけど」
( ・−・ )σ(ん?僕のガレージだよ。ほらアソコ)
シーンが指差した先は、一件のあばら家であった。
銃痕や爆撃の跡で、人が住んでいた形跡さえ見つからない。
( ・−・ )(僕、昔ここに住んでてね。何か困ったことがあったら、ここに来るようにしてるんだ)
ここは何でも揃ってるからね。
シーンは得意げにいうと、あばら家の奥から何か大きな物を引っ張り出してきた。
( ・−・ )(例えば、十何年も前のふるーいリニアとか、ね)
.
- 575 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 22:02:23 ID:P/2m8Zks0
- さりげないフォローwwwww
- 576 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 22:03:49 ID:tkHTcwlo0
- また休憩。うんこ行ってくる
- 577 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 22:26:04 ID:tkHTcwlo0
- シーンとジーナを乗せ、おんぼろリニアは走り出す。
エンジンから不穏な音が聞こえるが、シーンは顔色一つ変えず運転する。
爪;゚ー゚)「ねえ……大丈夫なの?このリニア」
( ・−・ )(大丈夫大丈夫、運転免許はとっくに切れてるけどね)
しれっとトンでもないことをのたまったが、ジーナは何も言わなかった。
何か音楽をかけるかい、と問いかけられ、首を横に振った。
どこまでもゴーイングマイウェイな男だ。
( ・−・ )~♪
爪;゚、゚)-3
ttp://www.youtube.com/watch?v=LfHWlDg_MlU
ヘトヘトになったジーナの隣で、陽気に歌を口ずさんでいる。
陰気な街並みに似合わぬ明るい曲を引きずってリニアは走る、走る。
( ・−・ )(おっと、僕のタブレット取ってくれるかい?ポッケの中だ)
爪;゚、゚)「ポッケ?」
シーンに言われるがままに、ポケットをまさぐる。
その時だ。疲弊した彼女の目に、あるものが留まった。
爪;゚、゚)「……………………」
腰のホルスターにある、もの。
ズボンのポケットと一緒に、ジーナは「それ」を引き抜く。
- 578 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 22:37:39 ID:tkHTcwlo0
- ( ・−・ )(お、ありがとう。これで仲間に連絡が取れる……)
爪゚ー゚)つr=-
( ・−・ )
爪゚ー゚)つr=-「良い?今から私の言う事に一言でも逆らったら、撃つわ」
( ・−・ )(………油断しちゃった)
シーンに奪われたはずの、護身用のジーナの拳銃。
その銃口を寸分違わず、シーンのこめかみ斜め45゚に定める。
爪゚ー゚)つr=-「元はといえば誘拐した貴方が悪いのよ?お兄さん」
銃を両手でしっかりと持ち、助手席からこれ以上ない笑みをたたえる。
シーンはジーナを見据えていたが、前方に視線を落とし――笑った。
( ・ー・ )(……………………やれやれ。予想以上のお転婆さんだ)
その瞬間、シーンはあろうことか――ハンドルから手を離した。
爪;゚д゚)「ちょッ……!!」
当然、手動で動いている内にハンドルを手放せばどうなるか。
ガクン、と大きく車体が揺れ、ジーナは大勢を崩す。
少女の座る助手席、車体の左側へとバランスが傾く。
爪;>д<)「きゃっ!」
( ・−・ )(ッ!)
次の瞬間に、シーンは小さな体に覆い被さり、安全装置をかけた。
そして少女の手から拳銃を取り上げ、何食わぬ顔でハンドルを握っていた。
- 579 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:06:29 ID:iaquIuF.0
- しえ
- 580 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:14:20 ID:tkHTcwlo0
- ( ・−・ )(危ないなあ、怪我したらどうするの)
爪;゚、゚)
何事もなかったかのように、拳銃を仕舞いながら朗らかな声でシーンは言う。
ジーナは完全にへたり込み、シーンの顔を食い入るように見た。
( ・−・ )(さ、仲間に連絡取らなきゃ。怒られるだろーなー)
爪;。_。)
無理だ。
今の段階で、この男から逃走することも、屈服させることも、不可能。
現段階で、シーンという男を自分の有利な流れに組み込むことは出来ない。
目の前の男が、あまりにも「読めない」。
( ・−・ )(やれやれ、すっかりしおらしくなっちゃって)
下を向いて大人しくなったジーナを横目に、リニアの操縦を自動に切り替える。
タブレットを拾い上げ、電源を点ける。
気が向かないが、協力を煽がねばならぬ。それがてっとり早い。
しばし、沈黙。
『やあシーン。僕らに黙って極上のカノジョとデートとは実に許しがたいね、腹が立つよ』
( ・−・ )(やあマニー。緊急事態なんだ、助けて欲しい)
『おや、女性エスコート出来ないなんて困った相棒だ。何がお望みだい?』
明らかに相手を見下したような口振り。
嫌味ったらしい性格が手に取るように分かる。
( ・−・ )(僕らの隠れ家が襲撃されたんだ。相手が何者かも分からない)
『おっと、奇遇だね。僕らも先ほど喧嘩に巻き込まれちゃってさ』
声は幾らか疲れているように取れた。
- 581 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:22:03 ID:P/2m8Zks0
- 支援
- 582 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:35:44 ID:tkHTcwlo0
- 爪;゚、゚)(デート?私がいる事を知ってる?)
<オイコラ、ホントウニコノミチデアッテンノカ?
タブレットから聞こえてきた新たな男の声に、ジーナが集中するのも自然なこと。
男の声の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
しかしジーナが確認する暇もなく、男が二の句を挟む。
『シーン、君のカノジョはとんでもないコブ付きだったようだよ。お陰で酷い目に遭った』
( ・−・ )(コブ付き?)
『僕らの手に負えない、こわーいボーイフレンドさ。僕としては、お家に帰すのが得策だと思うけどね』
( ・−・ )(……………………)
『ワガママは許さないよ?君の身勝手のせいで手下を10も失くした。また補充しなきゃ』
( ・−・ )(………………待ち合わせ場所は?)
『「天使の波止場」で落ち合おう。カノジョのお友達は僕らがどうにかする』
( ・−・ )(了解……)
そこで会話は途絶えた。心なしか、シーンの表情に陰りが生まれる。
唇を尖らせて、玩具を買ってもらえなかった子供のような、そんな顔だ。
ジーナの訝る表情を察してか、口をへの字にしたまま、シーンは言った。
( ・へ・ )(良かったね。君のおともだちが迎えに来てくれるってさ)
爪;゚、゚)「お友達?(アヒャかしら?)」
( ・へ・ )(ちぇっ、ちぇっ。面白くない、本当に面白くないよ)
シーンは乱暴に操縦画面を操作し、スピードを上げる。
二人を乗せたリニアは、「天使の波止場」に向かって一直線。
- 583 :名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:43:21 ID:tkHTcwlo0
- ラウンジ市内、南東へ向かった先にある「波止場」。
そこには、トウキョウ湾の遥か彼方を見据える天使の彫刻がそびえ立っている。
( ・−・ )(着いたよ。ここだ)
爪゚、゚)バタン
冬の冷たすぎる潮風が、ジーナの髪をさらう。
カモメの鳴き声が遠く響き、小波がぶつかり合う音がする。
リニアを降り、ジーナは辺りを見回した。
爪゚ー゚)「あそこにあるのは……植物園ね?」
( ・−・ )(ああ。トウキョウ唯一のラウンジ・グリーンパークさ)
( ・−・ )(地元じゃ、エデンってあだ名で親しまれてたね)
タブレットの通話相手が到着した気配はない。
周りに人の気配はなく、波止場に波が打ち寄せる音だけが静かに響く。
二人は並んで、天使像によりかかる。先ほどの喧騒を忘れるほど、ここは穏やかだ。
爪゚ー゚)「……貴方の、さっきのマジック」
( ・−・ )(ん?ああ、隠れ家の時のかい?)
爪゚ー゚)「さっきから考えてたの。ひとつの仮説。当たってるか聞いてもいい?」
シーンは首を傾げた。
- 584 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:01:22 ID:UhDGcmIo0
- 爪゚ー゚)「まず、始めに貴方と一緒に部屋を出たときね」
シーンがジーナを連れて部屋を飛び出した際、ジーナは見ていた。
彼の真っ黒な瞳が一瞬、血のような赤い輝きを放った瞬間。
爪゚ー゚)「それで貴方は、瞬時に家を森に変えて見せた――」
壁は森に、天井は仰ぐほどの空に。
カビ臭さは草木の匂いとなり、梢のざわめきも聞かせ、
手すりは滑り台となり、かと思えば大蛇に変身し。
銃を溝鼠にも変えてみせた、その芸当。
爪゚ー゚)「いえ――『そう錯覚させた』」
( ・−・ )(……………………)
爪゚ー゚)「貴方は――催眠術師。それも、目を合わせた相手全員に強力な催眠をかける。違うかしら?」
そうすれば、誘拐された際の記憶がないことも頷ける。
目を合わせた瞬間に強烈な催眠を施し、誘拐。
その間の記憶を消すことも彼にはたやすいことだろう。
なにせ、あれだけの催眠を演出してのけたのだから。
( ・−・ )(……どの辺で気づいた?)
爪゚ー゚)「確かな確証があった訳じゃないの。ただ、地面が仕掛け扉に戻ったときに、もしかして、と思って」
( ・−・ )(……君、自分でかなり突拍子もないこと言ってるって、気づいてる?)
すると、先ほどまでのしおらしい空気を取っぱらったかのように、
爪゚ー゚)「あら、そんな事言ったら、私の周りはビックリ人間だらけよ」
と、そう言って勝気な笑みを浮かべた。
- 585 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:19:41 ID:UhDGcmIo0
- ( ・−・ )(……君も大概、変なコだね。銃を突きつけたり、しおらしくなったり、元気になったり、忙しい子だ)
爪゚ー゚)「あら、しおらしく見えたかしら?だとしたら見当違いもいいところね」
クスクス笑うジーナに、シーンも呆れ顔でフフ、と笑う。
誘拐犯と被害者が、夕暮れの波止場で微笑み合う。断じてストックホルム症候群ではない。
爪゚ー゚)「後、あの黒服集団……」
( ・−・ )(ああ、僕の家を荒らして回った不届き者か。実に許し難いね)
爪゚ー゚)「多分、おじ様だわ」
( ・−・ )(おじ様?)
脳裏に浮かぶは、狡猾なハカタの叔父の顔。
今、ビジネスの生存競争が激しい現在、互いに蹴り落としたい相手といえる。
ジーナの行動パターンを把握し、襲ってくるのも想定内だ。
爪゚ー゚)「貴方には悪いけど、巻き込んでしまったかもね……私たちの戦いに」
( ・−・ )(戦い……随分と物騒な表現だね)
爪゚ー゚)「当たらずとも遠からずよ。私たちは戦争をしているの」
遠い目で、ジーナは語る。
爪゚ー゚)「私たちには願望がある。途方もない、叶えたい願いがある」
青い瞳が暗く、輝いた。野望の炎が内にチラつく、静かな煌き。
シーンの黒い目はその光に心奪われるように、じっと見ていた。
- 586 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:32:54 ID:UhDGcmIo0
-
爪゚ー゚)「願望の為に必要なのは、力よ。そして金。地位」
小説でありがちな台詞に、地位も名誉も金も要らないとのたまう者がいる。
だが彼女の今の立場は、そんな甘ったるい言葉すら許されない。
彼女自身、「甘ったるい」と切り捨てるだろう。
「All For the Eden」
ジーナの口が小さく、そう呟いた。
爪:::ー゚)「私には必要なの……欲するものの為に…………」
爪 ー )「何より、父様の為に……」
( ・−・ )(……………………)
シーンは黙したまま耳を傾けていた。
ただ、表情の変わらない夕暮れの中で、少女の横顔を見つめていた。
( ・−・ )(だとすると、これは偶然ではないのかも)
爪゚ー゚)「……?」
( ・−・ )(僕らは、ただの誘拐犯と被害者では終わらない。そんな気がする)
爪゚ー゚)「根拠は?」
( ・−・ )(ない)
自信満々に、シーンはバッサリと切り捨てた。
あまりの自信家っぷりがおかしかったのか、ジーナはまたクスクスと笑った。
- 587 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:41:55 ID:DiqdGawo0
- 畜生PCが恒例のイかれ
夜に7話エピローグ投下クソッタレ
- 588 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:51:07 ID:9/zSpcxo0
- 乙
続き待ってる。
- 589 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:53:16 ID:GsoDKGOM0
- おつでした
- 590 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 06:52:58 ID:e5HCgy.k0
- おつ
シーンも仲間になるのかな
- 591 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 22:42:00 ID:UhDGcmIo0
- …………………………………………
¥・∀・¥「ふぅ」
タブレットの通信を切り、脱力したように背もたれに体を預けるマニー。
助手席のベルが視線を寄越すと、肩を竦めて見せた。
( ゚∀゚ )「で、社長は返してくれるんだろうな?」
¥・∀・¥「本当に疑り深いね、君は。そんなに信用ならないかなあ」
( ゚∀゚ )「その良く回る舌を引っこ抜いてやりたい位にはな」
ジロリと助手席から射殺すような視線がきてもお構いなし。
寧ろ足で運転しながら睨み返し、「やるか?」などと喧嘩を売る始末。
マニーは止めるべきか逡巡したが、命が惜しいので諦める。
¥・∀・¥「怖いオジさんたちは、もう着いてきてないようですね」
( ゚∀゚ )「人の車でくつろいでんじゃねーよ。後ろに括りつけて走らせるぞ」
¥・∀・¥「発言まで物騒ですねえ貴方は。あ、そこ左に曲がって」
ハンドルを勢いよく切り、リニアはドリフトでカーブを通過。
ラウンジ市の数少ない「良い所」は、人口が少ないことと、
車が少ないお陰でアヒャが多少の無茶な運転をしても事故を起こさないことだ。
¥・∀・¥「時にアヒャ君、あの写真は誰からのプレゼントでしょうか」
( ゚∀゚ )「ああ?知るかよ、こっちが聞きたい位だ」
¥・∀・¥「その画像、少々拝見させてもらっても?」
露骨に嫌そうな顔を見せたものの、アヒャは渋々ポケットを探る。
が、無い。ポケットを全部漁る。やはり無い。
¥・∀・¥ノ白「なーんちゃってじゃじゃーん。私が持ってました」
( ゚∀゚ )イラァッ
- 592 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 22:55:23 ID:UhDGcmIo0
- マニーは画面をスライドさせ、例の画像を出し、熟考する。
画像の中のジーナは俯き加減で表情は分からず、まるで生気を感じない。
薄暗い工場の中はがらんどうで、ジーナを座らせた椅子ひとつのみ。
¥・∀・¥「……、他に何か情報は?」
( ゚∀゚ )「電話一本だけだよ。ラウンジの廃工場に一人で来いってな。命令通りにしなきゃ、お嬢の命はないってよ」
¥・∀・¥「ふむ」
マニーはマジマジと画像に目を凝らした。間違い探しを懸命に探すように。
身を乗り出して一緒に画像に注視していたベルが、不意に声をあげた。
( <●><●>)「マニー、これ。このマーク」
¥・∀・¥「あっ……」
( ゚∀゚ )「おいおい何だ、何二人で盛り上がってんだ」
¥・∀・¥「アヒャ君やい、この工場、ラウンジ市には無いものだよ」
キキィイーーーーーーーーーッ!!!
リニアがかつてあげたことのない悲鳴を上げ、急停止する。
急ブレーキに体がついて行けず、ベルはまともにフロントに額をぶつけた。
( ゚∀゚ )「どういうことだコラ説明しろ糞スーツ」
¥;・∀・¥「僕の印象スーツのみッ!?とにかくこれを見たまえよ」
( <@><@>)グワングワン
マニーが指差した先は、画像の右端にチラリと映る黒い何か。
それは何かしらの絵――否、マークのようなものに見えた。
- 593 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 23:09:12 ID:UhDGcmIo0
-
( ゚∀゚ )「んんーーーー…………?」
¥・∀・¥「ちょっと待ってくれ、ネットからアプリを拾ってこれを解析しよう」
細い指が素早く画面をタッチし、アプリをダウンロードする。
表示されたアプリケーションに画像を組み込み、解析完了の文字が出る。
するとマニーの指が右端のマークを拡大させた。
( ゚∀゚ )!
黒い狐の横顔と銃のマーク。それは、よく見知ったある会社のロゴだ。
¥・∀・¥「GICグループハカタ支社の物だ……この工場はVIP市で撮影されたもので間違いありません」
¥・∀・¥(シーンが彼女を誘拐したのもVIP市でしたね。何か関係があるのでしょうか、
……しかし何故ラウンジに呼び寄せるような真似を?)
マニーが一人思考する中、アヒャの目はマークに釘付けだった。
黒で塗りつぶされ、はげかかった狐の横顔が、厭らしい笑みを刻んでいるように見えた。
( ゚∀゚ )「……………………」
( (;´∀`)……喧嘩を売られていたって訳モナね。一杯食わされたモナ)
アヒャの左手が、ハンドルを力任せに叩いていた。
ビクリと他の二人の肩が跳ねる。
彼の脳裏には、掌で踊らされた彼らを見て嘲笑う男がいとも容易く浮かぶ。
(:::::∀゚ )「――上等だ、狐親父。いつか泡吹かせてやるぜ……」
喉の奥から、獣のような哂い声を絞り出し。
アヒャは再び、力強くアクセルを踏み、リニアを急がせた。
……………………
- 594 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 23:21:39 ID:UhDGcmIo0
- ( ・−・ )(ねえ、僕らの仲間になる気はない?)
爪゚ー゚)「え?」
穏やかな沈黙がかれこれ十数分続いた後。
それを静かに破いたのは、シーンの突拍子もない申し出だった。
防波堤に座って足をぶらつかせていたジーナは、シーンへと振り返る。
( ・−・ )(僕もね、ある会社に雇われてるんだ。色んな人が、自分の特技を活かして働いてる)
爪゚ー゚)「へぇ……貴方の誘拐技術も?」
( ・−・ )(こう見えて成績はいい方なんだ。誘拐もそれなりに需要ってものがあるみたいでね、使えるんだよ)
シーンは得意げに胸を反らしてみせる。
その横で、ジーナは自分の会社の社員たちを思い出した。
彼らもまた、各々の技術を活かし(ギコなどの一部を除いて)会社に貢献してくれている。
爪゚ー゚)「なら、寧ろ入るべきは貴方たちの方じゃない?うちの方が、会社の規模は大きいはずよ」
( ・−・ )(え、それは嫌だ。僕らは僕らなりのやり方で、業界のトップに立つって決めてるもの)
やや声色を低くして、きっぱりとジーナの申し出を断った。
すると、少女はふふ、と目を細めて、こう切り返した。
爪゚ー゚)「私もよ。私が集めた仲間で、私が作り上げた業績で、トップに立つの」
だから、とジーナは防波堤から飛び降りて、グリコのポーズをとってみせた。
ふわりとスカートをはためかせ、お行儀よく一礼。
爪 _ _)「だから、貴方の言葉は嬉しいけど――」
爪゚ー゚)「貴方の仲間入りはしない」
( ・−・ )-3
( ・ー・ )(残念。振られちゃった)
シーンは深々と、息を吐き出して――少しだけ寂しそうな笑顔を見せた。
- 595 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 23:29:32 ID:UhDGcmIo0
-
爪゚ー゚)「悪いけど、まだまだ貴方の物になる気はないわ。上に行く道も、譲らない」
( ・−・ )(――じゃあ僕ら、ライバルだね。どっちが先に『上』に行けるか、賭ける?)
爪゚ー゚)「あら、賭けにならないわよ。私に決まってるわ」
<シャチョォォーーーー!
爪゚ー゚)゛?
そうこうしている内に、遠くから野太い男の声が聞こえてくる。
それはどんどん近づいてきて、点が徐々に大きくなり、
リニアが急接近しているのだと分かる。
(;゚∀゚ )ノシ「社長おおおおおおおおーーーー!!!」
窓から顔を出す男には見覚えがある。
たった数時間離れただけなのに、とても久しぶりのような感覚だ。
爪゚ヮ゚)「アヒャ!?」
_,
( ・−・ )ムッ
笑顔になるジーナとは反面、誘拐犯の表情は強ばる。
これだけならばドラマにありがちな、感動の再会となるだろう。
ξ#゚⊿゚)ξ「待てっつってんだろ短小ォオオーーーー!道交法違反で逮捕じゃボケェエエエ!!!」
¥;・∀・¥「うわわわわわーー!!アヒャ君お巡りさんはマズイってェーーーー!!」
(;<●><●>)「ちょ、運転変わって!スリップしてるスリップしてる!!」
――大量に着いてくるパトカーさえなければ。
爪;゚ー゚)「……………………」
( ・−・ )(どうする?迎えが来たみたいだけど)
爪;-、-)-3「ミスター・シーン。悪いけどリニアを出してくれるかしら?感動の再会が残念だわ」
(´・ー・ )(御意に、お嬢様?)
- 596 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 23:42:27 ID:UhDGcmIo0
-
――とまあ、色々あり。
主に暴言のオンパレードを捲し立てる婦警からようやく逃げ切る頃には、とうに夜。
かなり遠回りの帰宅となってしまった。
( ・−・ )(指示通り、君の友達は家に送り届けておいた。安心していいよ)
爪;゚ー゚)「……この場合、あなたには感謝を言うべきなのかしら?」
腕を組みシーンを見上げると、無表情で困ったように頭を掻く。
アヒャはモナーに戻り、これ以上ないまでにジーナに付き添っている。
¥・∀・¥「それでは私たちはこれにて失礼。今度は『ビジネス』として貴女方と出会う日を心待ちにしておりますよ」
マニーたちはそう言うと、颯爽と(逃げ)帰っていった。
ベルは最後までモナー(否、アヒャ)と決着を付けられなかったことが不満だったようだ。
うしろ髪を引きずられる思いでベルも夜の闇へと姿を消し、最後にはシーンが取り残された。
( ・−・ )(えっと……元凶の僕が言うものなんだけど、お達者で?)
爪゚ー゚)「ええ。私たちに関わったこともあるし、これからは夜道にはお気をつけなさいな」
( ・−・ )(善処するよ)
彼もまた夜へと消え去ろうというとき、そうだ、とジーナへ振り返る。
( ・−・ )(また今度、一緒にお茶しようね)
相変わらず掴みどころのない声色と表情と、その一言を残し。
彼は、子攫いアルセーヌ・ルパンは、跡形もなく消えていった。
爪゚ー゚)「……………………」
( ´∀`)「さ、帰りましょうか。きっと皆心配してますモナ」
爪゚ー゚)「そうね……」
促されるままに、ジーナはリニアに乗り込む。
エンジン音を鳴らし、会社に向かうリニアの後部座席で、彼女は一度も後ろを振り返らなかった。
- 597 :名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 23:51:24 ID:UhDGcmIo0
- そして真の問題は、会社に戻った直後に待ち受けていた。
(;'A`)「クールさん!そっち行きました!!」
川*゚ -゚)「了解!ラット用トラップを展開、追跡します!」
-=三;∵)「誰だ、実験室のマウス全部放った奴はぁあ!!!」
(,,@Д@)バタンキュー
(;´_ゝ`)「ギコ!しっかりしろギコー!」
(;<_; )「うおおおおおおおおお!どこだ、マーサァァァ!!マーサーぁぁあああ!」
爪゚ー゚)「…………………………」
(;´∀`)「…………………………」
会社の中は騒然としていた。
阿鼻叫喚、死屍累々、まさに混沌。
怒声と無着地茶な指示とが飛び交い、道具やら網やらが雑多に散乱する。
まさに混沌。
爪゚ー゚)「なにこれ?」
(;´∀`)「…………………………(マーサのこと、忘れてたモナ)」
C゛゚> チュチュッ
- 598 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 00:02:31 ID:onvYEbAw0
-
――――
鼠を残らず回収し、部下を全員叱りつけ、ラボの片付けに追われ。
一通りの仕事が終わる頃には、既に夜中の11時。
(;´∀`)(だいぶ予定を押しちゃったモナ……今日だけでどれだけ仕事が溜まったことか……)
会社の最上階、ジーナのプライベートルームへ続く通路を一人歩くモナー。
ジーナを連れ戻すだけでもかなりの時間を浪費した。
どう足掻こうが時間は戻らないと分かっているが、愚痴のひとつでも言いたくなるもの。
自然と歩く力が強まり、半ばやけっぱち気味に扉をノック。
「入って」
|´∀`)゛「失礼します」
一礼し、入室。
ジーナは既に寝巻きに着替え、ベッドに座り込んでいた。
( ´∀`)「あの、お嬢様。二人だけの話とは?」
爪゚ー゚)「ん?そうね、とりあえずいらっしゃい」
ついつい、と手招きされるままに、モナーはジーナに歩み寄る。
ジーナの手の動きが、屈め、と指図していた。
モナーは何の疑問も感じることなく、腰を屈めた。
(;´∀`)「モナァッ!?」
瞬間、ネクタイを力任せに引かれ、器官が詰まった一瞬を狙い、腕を引かれる。
視界が反転。ベッドに上半身を叩きつけられ、上からのしかかられた。
- 599 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 00:13:33 ID:onvYEbAw0
- (;´∀`)「ゲフ、ちょ、お嬢様!?」
想定外の動きにモナーは驚きを隠せない。
いきなり呼び出され、何事かと思いきやこの仕打ちだ。
(;´Д`)「おふざけは止してください。いい加減にしないと怒りますよ、お嬢さ……」
爪::::ー゚)「…………」
(;´Д`)「……………………ま?」
ずい、とジーナの顔が近づけられる。
風呂上がりの、湿った、甘い香りが鼻をくすぐる。
あと少し動いてしまえば、唇と唇が触れ合うほどに、近い。
爪::::ー゚)「ねえ、モナー」
(;´Д`)「は、はい?」
爪::::ー゚)「もし私が、いきなり他の誰かのものになってしまったら、どうする?」
唐突で脈絡のない問いかけ。
常日頃から予想の斜め上を飛び越える少女だが、今夜は格別におかしい。
けれどブルーの瞳は真剣に、モナーに問いかけているようだった。
爪::::ー゚)「答 え て ?」
(;´Д`)「え、ええと………………………」
しどろもどろ、モナーは答えを探す。
(;´Д`)「そ、それはー……どう言って良いやら、想像し辛いというか、何と申し上げていいか、有り得ないと思います」
爪゚、゚)「……」
少女は途端、つまらなそうな表情に切り替わった。
当たり障りのない答えを選んだつもりだったが、欲しかった答えはどうやら、違うものだったようだ。
- 600 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 00:24:31 ID:onvYEbAw0
-
(;´Д`)、゚リト爪 ズイッ
爪゚、゚)「貴方がいなかったせいで、今日は散々だったのよ?」
(;´Д`)「あ、はい?」
耳元で囁きかける。
生暖かい息が耳の中に入り込んで、モナーの体が震える。
爪゚、゚)「見送りもなくて走る羽目になったし、誘拐はされるし、パトカーには追いかけられるし」
(;´Д`)←自分のせいじゃないのに、と思うものの怖くて言えない人
爪゚、゚)「うん、これはお仕置きが必要ね」
(;´Д`)そ
(;´∀`)「あの、お嬢様?まだ仕事が残ってまして!ちょっと!?」
ズズイ、とモナーに密着するジーナの体。
本気でかかれば押しのけられるだろうが、出来ない。
彼女は知っている、モナーが上司である自分に乱暴が出来ないことを。
爪::::ー゚)「ねえ、モナー?」
体重をのせるがままに、両腕をモナーの首に絡め、足は体を挟み込む。
少しずつ力をこめながら、大の男をベッドに沈める優越感に、彼女は浸る。
多忙で汗ばんだ男の匂いに、彼女は少なからず胸を高鳴らせていた。
爪* ヮ )「 ?」
.
- 601 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 00:54:49 ID:/vdm6PaM0
-
爪;>д<)三「きゃんっ!」
次の瞬間、形成逆転。ジーナがベッドに沈められていた。
そしてジーナに体勢を立て直す暇も与えず、容赦なく頭から重い掛け布団がかけられる。
爪;゚、゚)「ち、ちょっとぉ!目隠しは卑怯よ!!」
「ウルセー!ガキはとっとと寝ちまえ!!」
声の主に怒声を浴びせられるや、足音が遠ざかっていく。
乱暴な足音がドアの方へ向かっていき、ドアを蹴り開けた。そして、部屋中に響かんばかりの大音をあげ閉める。
しかし一度だけ開けると、
「ばか!バーカ!バカヤロー!」
とだけ言い残し、今度こそ扉は閉められた。
ドスドスと足音は遠ざかり、シン、と部屋が静まり返る頃。
ジーナはおそるおそる、布団から這い出て、ベッドの上で胡座をかく。
爪;゚、゚)ムゥー
「なによ、頑固者!ケチッ!分からずやっ!」
部屋には枕を殴る音だけが木霊した。
悔し紛れの罵倒が響く夜、彼女らの目まぐるしい一日は、幕を下ろしたのだった。
- 602 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 00:57:31 ID:/vdm6PaM0
- act7終。投下中にメガネがうんこに沈んだり色々あったけど作者は元気ですちんこ。
ここに至るまでにPCが何度ツンデレたことか。
次の更新はもっと早くする。多分、おそらく、絶対。
それでは皆様読んでくださりありがとうございました。
おやすみちんちん
- 603 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 01:12:42 ID:F5D/Cu620
- あらジーナさんお転婆
- 604 :名も無きAAのようです:2013/01/25(金) 02:12:23 ID:39ADsfNw0
- 乙
- 605 :名も無きAAのようです:2013/01/31(木) 15:49:56 ID:eprXzCXM0
- 一気読みしました、乙
- 606 :名も無きAAのようです:2013/01/31(木) 23:32:26 ID:Gdn.ctVo0
- 一気読みしてやっと追い付いた
モナーとジーナのラブコメいいな
- 607 :名も無きAAのようです:2013/02/02(土) 17:37:43 ID:5cNm7D0.0
- 続き楽しみにしているw
でも( ´曲`)が爪゚ー゚)の父親って、母親の遺伝子が濃いのか、本当に父親なのか悩むww
社長が父親似じゃなくてよかったと心底思っている
- 608 :名も無きAAのようです:2013/03/19(火) 01:29:26 ID:M9AVWmSI0
- いつでも待ってるよ
- 609 :名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 00:39:02 ID:rYNBMSY20
- 【お知らせ】
どうも作者です。突然ですが、打ち切らせて戴きます。
理由としましては簡単です。リメイクです。
設定はそこまで変えず、きちんとプランを立てて書き直したいと思います。
今まで応援してくださった方、有難うございます。
これ以上に面白い作品を提供したいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
5月にはリメイクうpれたらいいなぁ……
- 610 :名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 00:40:25 ID:7MuP7jJY0
- なんだと・・・・・・
- 611 :名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 01:00:27 ID:vIO65bMkO
- いま打ち切ったらやっぱりって言われるぞ
続きはよ!
- 612 :作者:2013/03/29(金) 01:04:04 ID:rYNBMSY20
- なお、このスレッドは倉庫に送ります。
タイトル名はおそらくそのままなので見かけたら支援してやってくださいませ!
それではSEE YOU NEXT TIME!ドヒューン
- 613 :名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 01:14:22 ID:7MuP7jJY0
- 考え直せ
ネット小説で書き直しは完結しないパターンだぞ
- 614 :名も無きAAのようです:2013/03/29(金) 02:31:19 ID:Mlqp1sOA0
- 作者がそうするってんだからええやん
楽しみにしてるぜー
- 615 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 00:41:08 ID:5hx1DCQQ0
- せめて理由をかけ
- 616 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 01:01:26 ID:xm6IPO8IO
- リメイクっつっとるやん
- 617 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 03:08:22 ID:LunI6FMwO
- 逃亡の前例が大杉る作者だしなあ…
あんまり期待はせずに待ってるよ
- 618 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 05:36:07 ID:EIsZzw5M0
- つまんねえ上に読みにくいこの話が劇的に進化してくれるというのであれば大歓迎かな。頑張ってね
- 619 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 19:18:51 ID:OA8b1e9Y0
- まじかぁ…
続き読めないのが残念だけど待ってる。頑張れよ
- 620 :名も無きAAのようです:2013/03/30(土) 19:49:11 ID:kr/8SXto0
- 打ち切りは残念だけどリメイク待ってます、乙!
- 621 :名も無きAAのようです:2013/03/31(日) 11:43:22 ID:bTGyyv7IO
- なんでこんなに上から目線が多いんだよ
- 622 :名も無きAAのようです:2013/04/03(水) 13:48:24 ID:ATdv/wqs0
- まじかよ…まじかよ…
リメイクでもなんでも楽しみにしてるからな!!乙!!!
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