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果南「海にひかれるんだよね」
-
そろそろ かえらなきゃ…
ぎぃ ぃい…
ばたんっ
………
千歌「果南ちゃんって、本当に海が好きだよね。」
果南「うん、好きだよ。ほとんど毎日泳いだり潜ったりしてるんじゃないかなぁ」
千歌「毎日!?…うへぇ、やっぱり果南ちゃんは体力お化けだよ。」
果南「こらこら、化け物みたいに言わないでよ」
鞠莉「だったら脳筋かしら?」
果南「…怒るよ?」
-
果南「なんなんだろうね…海に入ると落ち着くというか…自分の居場所の1つというのか…気づいたら足を運んじゃってるんだよね」
千歌「うん!分かるよ果南ちゃん!千歌も気づいたら、練習が無くてもついつい部室に寄っちゃってるんだ!」
鞠莉「その気持ちは分かるけど…マリーはそこまで海が得意じゃないのよね。」
千歌「えっ!?そうなの!?」
鞠莉「ビーチとか浅瀬なら全然問題ないんだけどね。海の深い方とか、暗くて何も見えない海とかって…何だか怖くない?」
千歌「あー…確かに…夜の海は怖いかも…」
千歌「だって、夜の海と言えば…お化けだよ!ひゅ〜どろどろなんだよ!?」
果南「…ぷっ、あはは。千歌、お化けなんか信じてるの?」
千歌「むっ、バカにしてるでしょ!」
果南「ごめんごめん。でも、大丈夫だよ。お化けなんか、いるわけないんだからさ。」
……………………
-
果南「ふぅ…じゃあ、ひとっ走り行こうかな」
ざっ ざっ ざざぁ ざざぁ…
私は、砂浜を踏みしめるこのザクザクした音や、ふかふかした感触が好き。
浜に押し寄せる、騒ぎ立つ波の音も
炎が溶け始めた、千歌みたいな海原も
潮風をたくさん浴びて年季の入った海の家も
私は好きだ。うん、私は内浦の海が好きなんだ。
3年生になって。もう一度スクールアイドルをやることになって。
この内浦が素敵なところだって、浦の星が素敵な学校だって伝えていきたいな。
果南「よし!そのためにも、まずは体力付けないとね!」ザッザッザッ
…………
-
ざざぁ ざざぁ…
果南「うわぁ…いつの間にか真っ暗になっちゃったよ。」
肌に当たる潮風は、もう随分とひんやりしている。
……それにしても、夜の海…さっきまで見てた雰囲気とはぜんぜん違うなぁ。
果南「綺麗なんだけどね……怖いっていう気持ちも、分からなくはないかな。」
水面に照らされた銀の輪は、漣によってその形を暈されて
歪んだ光の境界、その外は深い深い闇
いつもの、包み込むような広い海というよりも
ざざぁ と寄ってくる波が、まるで私を攫っていきそうで
そしてそのまま、どこまでも飲み込まれてしまいそうな、そんな雰囲気
きっとそんな漠然とした不安こそが、夜の海を恐怖足らしめるものなんだと思う。
-
果南「……さて、そろそろ帰らなきゃね。」
親に帰る旨を連絡しようと、ポケットから携帯を取り出す。
ばちゃっ ばちゃっ
波を、遮る音。
-
果南「……ん?」
あれは…50メートルくらい先? ちょっと見にくいけど……女の人、2人かな?いつの間にあんなところに…
ばちゃっ ばちゃっ
…こんな時間に水遊び?多分、あれスカートだよね。思いっきり濡れちゃってるけど…。
あれ、何か……おかしくない?
何で どんどん 海の 奥へ 向かって るの?
待って、待ってよ。あはは…嫌だな、こんな時間にそんな格好で…へ、変なこと想像しちゃうからさ……やめてよ。
ざざぁ ざざぁ…
-
「………………」
ばちゃっ ばちゃんっ
目を合わせることもなく、お互い目線を真下に向けたまま
溟い世界へ 進む ただ進む
引 き 摺 り 込 ま れ る
果南「…ま、待って!!お姉さんたち!!こんな時間に海に入るのっ、危ないよ!?」
私、こんな大きな声出せたんだ ってくらい叫んでた。
背中を、ぞわぞわとした寒気が頭のてっぺんまで駆けぬける。
やばい、このままだと絶対やばい と頭がガンガン信号を鳴らす
「…………………………」
ばちゃんっ ばちゃっ
腰辺りまで海水に浸からせたところで、その歩みを停止した。
彼女たちの体で跳ねた波飛沫が、2人の顔をびしょびしょにする。
ぽたぽたと、滴り落ちる雫を拭う気配は感じられない。
-
果南「ほら!海に入るなら明るい時間からにしませんかー?折角の可愛い服も濡れてしまいますよー?」
ざざぁ ざざぁ
波に掻き消されないように、必死に声を張る。
「…………………………」
うぅ……こっち見てよ。何か言ってよぉ。怖いんだけど…。
誰かいないの?まだ、ギリギリ人が出歩いててもおかしくない時間だと思うけど…
協力して、2人を止めてくれる人がいないかキョロキョロと辺りを見渡す
…ざぱっ ばしゃばしゃっ!
その隙をついたとでもいうのか
突如として、波を激しく弾かせながら、前へ前へと駆け出して行った。
-
果南「い、いやっ…待って!!止まってぇ!」
ざぷっ… ざざぁ ざざぁ
だんだんと小さくなった2人をすっぽり呑み込んで。
黒く、そして穏やかな波は、いつも通りの内浦の海を映し出しているようだった。
-
あぁっ…あぁぁぁ!何とかしなきゃ、何とかしなきゃ!
ざっ ざっ ばしゃばしゃっ!どぷん!
気がつけば握りしめていたケータイと靴を浜に投げ捨て、急いで2人の後を追っていた。
果南(間に合って!お願い、間に合って!)
ごぽぽっ ごぼっ…
果南「ぷはっ…はぁ…」
果南(海水がいやに冷たい…服も体にへばり付いてきて、重い…)
-
不鮮明な水の中を流れに逆らって、必死に必死に掻き進む。
果南(お願い!どうか無事で………)
海水によって滲む視界の中に、僅かに飛び込んできたのは
______薄く拡がった 暗褐色
-
果南(え………ぁ……いや…………)
力なくくの字に曲がった2体は、じんわりと、その辺りを濁らせていた。
果南「い、いやぁぁあぁああ!?がぼっ…ごぼっ!?」
何でっ!?…血!?やだ、やだっ!
何が、何が起きてるの!?
鞠莉!ダイヤっ!千歌ぁ!誰かっ!…助けて!!
-
___このとき私は、必死だった。
ただ、その場から逃げ出したかったんだ。
僅か数分で2人の命を引き摺り込んだこの海に
今、私だけが漂っているのだと思うと、身体の底から震え上がった。
泳ぎは得意な方なのに、溺れた人みたいに必死にばしゃばしゃと踠いて
凍るように冷たい海水も
鼻に海水が入ってしまって、奥の方がツンと痛んだことも
耳に何かが詰まったような感覚も
あの2人を助けなきゃ って思ってた使命感も
そんな事は全部、頭の中から消えて無くなっていたんだ。
……………
-
期待
-
昼間でも深い所は怖い
-
こわい
-
お
-
エタ
-
>>18
判断早すぎだろ
-
そう思うなら保守しろろろォ!
-
したらばは保守しなくても落ちないっつーの
-
失礼
一覧違うとこ見てたわ
-
http://bit.ly/2q4mPE6
-
頼むからエタるならエタ宣言、続き書くなら生存報告だけでもしてくれ
待ち通しい
-
花丸「ねぇ、果南さん。ダイヤさん。お二人には怖いものって何かあるんですか?」
果南「怖いもの…?」
ダイヤ「饅頭怖い のような落語のお話ですか?」
花丸「いや、この前千歌さんが『果南ちゃんはお化けなんて怖くないって強がってたー!』って言ってたので、単純に聞いてみただけです。」
果南「…まったく、千歌は」ハァ
ダイヤ「怖いですか……そうですね。思いつくのは…地震や火事といった災害でしょうか。」
果南「ダイヤはいつも真面目な答えだなぁ」
ダイヤ「べ、別に良いではありませんか。」
果南「…私は怒ったダイヤかな」
ダイヤ「……………果南さん?」
果南「じょ、冗談だからそんな睨まないでよ…」
-
果南「ちゃんと答えるからさ…私が怖いものはね…」
怖いものかぁ
ダイヤの言うとおり、地震や火事は当然恐ろしいよね。
だけど、今の建築技術や、私たちが行動を誤らなければ、よっぽど命の心配はないと思いたいな。
お化けも、もしその実在を仮定するなら、やっぱり気味は悪いけど、一応、お札や塩あれば、何とかなりそう…というのは楽観的すぎるのかな?
まぁ、そもそも信じてないんだけどね。
後は、病気とかかな?
でも、医療の発展で、癌や結核…その他多くの病気を治療できるようになったし。未だ治療法が確立されてないものもあることは知ってるけど。
…あぁ、そっか。
多分、事後の策があるかどうか …なんじゃないかな?
怖いけれどもさ?消防士だったり、除霊師だったり、医師だったり…最低ラインでの心の拠り所にはなってくれると思うんだ
最高なのは、そんな事自体が起こらないことだからね。
だから、逃げる、退治する術があるものだったら、私はまだ 何とかなる って思う。
_________ 逆に言えば、私が怖いものは
果南「対処不可能な危険…とかかな?」
…………………………………
-
「果南っ!!」
両親の、心痛のこもった声を聞くと何故だか申し訳ない気持ちになる。あの後、浜に面した道路に立つ、薄暗い電灯の下で蹲っていた。
少しでも安心したくて、まるで夏に沸々と湧く羽じらみのように、ただただ光を求めた。
「果南…無事で本当によかった…」
海水に浸かった私を、母の優しい温かさが包む。
先ほどの悍ましい光景によるものか
自分の意志では止められなかった震えが、微かな弱まりをみせる。
果南「…ごめんなさい……ありがとう…」
「あぁ、謝らなくていい。もう大丈夫だからな」
怖かった… 本当に怖かった……
ただ、目から顎へと伝う涙も、口から切れ切れに漏れてくる情けない声も、 母が背を撫で摩っているうちは、治りそうもない。
-
あの後、私は砂浜に上がると、大きくぶれる人差し指に苦戦しながら、ようやく父親の携帯の連絡先をタップした。
『警察には私から連絡する。今から直ぐにそっちに向かう。もうちょっとの辛抱だ。』
いつもの調子とは違う、低く、努めて冷静で…でも 、その機械ごしに心配する父の表情が浮かぶ、そんな声色だった。
両親の到着する数分前から、耳の薄膜を劈くようなサイレンを響かせて、警察車両、水難救助車、救急車などが、この海岸に押し寄せていた。
名前は分からないが、夜間の野球場を照らすような大きなライトたちを積んだ車もあった。
ゴムボートや警備艇から、どぽんどぽん と救助隊が吸い込まれるように沈んでいく。
ところどころから絶え間無く生まれる指示や報告が今だけは、私を鬱屈とさせる そんな波の音を掻き消してくれている気がする。
-
「発見!!」「2名とも発見!!」
その報告で多くの人たち動きがいよいよ激しくなる。
水中から、両脇から抱え上げられながら、ドサリと救助艇に揚げられたソレらは、力なく吊られるマリオネットのようだ。
私は、その光景を_____ただ、見ていた。
目の前で繰り広げられる非日常が、果南の角膜をすり抜けて、水晶体に捻じ曲げられ、ただ網膜に映り続ける だ け。
脳が更新をかけ続けるその映像に対して、一切の関心や感情が沸くことはなかった。
ただ、今すぐ父さんと母さんの車に乗り込んで、帰りたいと…。
じっとりとした暑夜に蒸されて、この身体から漂う海藻類のツンとする匂いや、肌のざらつくような塩分の結晶…
…得体の知れない焦燥感を、自宅のシャワーで頭から根こそぎ、濯ぎ落としたかった。
-
「……それで、あなたは2人を助けようと追いかけて海に飛び込んだ。」
果南「…はい」
「しかし、その光景を見てしまい、怖くなって浜辺に戻ってきて、ご両親に連絡を入れた…ということですね?」
果南「…はい」
この件の第一発見者として、女性警官から事情聴取を受けている。
正直、警察の人の質問も頭の中にまるで入ってこない。耳の中にすぅっと入っても、口から溜息とともに溢れていくような。
Yes と答えるだけの、抜け殻のような存在に成り果てている気がした。
どの辺りで2人が沈んでいたのか…放心の私に、警官が一番最初に何度も聞き出すことで、なんとかボソリボソリと答えることができた。
きっと、呆れていただろう。もしかして、怪しいと思われたのかもしれない。
それでも、そのおかげで比較的早期の発見に繋がったのであれば、きっと私が取った行動は無駄では無かったのだと、そう思いたかった。
-
これは、解放の合図? 良かった、ようやく…ようやく帰れる。
「申し訳ないのだけど、まだ聞きたいことがいくつかあって…また日を改めてお話を聞かせてもらってもいいかしら?」
はい、今直ぐ帰れるのであれば。
最早、後日の片手間が増えることなど、些事に等しいと。
何なら、この件は事故ではなく事件としての疑いがかけられ、実は容疑者として扱われるような事情聴取が行われる可能性など、頭の片隅もよぎらない程の不自由な麻痺に思考が犯されていた。
ああ、やった。帰れる。帰 れ るんだ。
早く 家に帰って、 お風呂に入って そ れか ら
ばちゃっ ばちゃっ
蘇る、音。
-
果南「………ぁ……ぇ…?」
漏れたのは、濁った汚水を絞りきった後の雑巾のような 嗄れた感嘆詞。
未だ 人々やサイレンによる喧騒が跡絶えぬ中、蝸牛神経で電気信号に変換された小さな侵略者を大脳が認識した。
次いで、右目の端に飛び込んできたのは
捜索場所から随分と外れた波打ち際、1人項垂れる救助隊員。
海へ向かって 進 ん で い る 。
それは非日常の光景の中でも、明 ら か に浮いた存在になっていた。
-
痛 い 心臓が 痛 い
心臓に麻縄をぐるぐると巻き付けられて、思いきり きゅぅっ と引き締められたような痛みが走る。
果南「いやっ…いやああああああああ!!?」
数十分前に、心を壊しかけられたヘドロのように不快な光景の発端を、ありありと蒸し返された。
突然の発狂に、両親や目の前の女性警官、その他多くの救助隊員たちが驚きと戸惑いを見せる。
果南「あの人っ!あの人も…飲み込まれちゃう!!」
涙目になりながら、強く 強く 訴える。
「おい!!何をやってる!!」
気づいた上官の怒号を無視するように、隊員はゆらりゆらりと前方に導かれてゆく。既に海面より上にあるのは頭ぐらいだった。
-
「見るなっ!!」
父さんが私を抱き竦め、その体で視界を遮ってくれた。その顔は普段はなかなか見ることができない、不自然極まる強張り方を呈していた。
母さんも、金縛りにでもあったかのように、そこから目を反らせずに、血の気の失せた顔に変わっていた。
話を聞いてくれた警官の方でさえ、その表情から困惑を隠すことができていなかった。
「何をやってるんだ!!」「ふざけるな!!」
暫くの間の後、再び責めるような大声が聞こえてきた。
あぁ、あの隊員さんは助かったのかな。
助かったとして…安心して、良いの?
私は、よく分からなくなってきたよ。
「………………」
随分とどよめきは収まることはなかったけど、彼が、何を呟いたのか 最後まで聞こえることはなかった。
-
3人とも同 じ よ う な様子で入水を行った。
救 助 し に き た 人 間 までも、海に 飲み込まれそうになった。
ねぇ、一体何 が 起きてるのさ?
異 様 としか言えないよ。
これって偶然の事故 なの?
それとも__________
ざざぁ ざざぁ…
夜の海の妖しさにあてられながら 私は、父さんの腕の中で 過呼吸気味に喘いでいた。
………………
-
乙
面白いけど1ヶ月以上空くと内容忘れそうになる
-
「……辛い中、話してくれてありがとうね。」
これは、解放の合図? 良かった、ようやく…ようやく帰れる。
「申し訳ないのだけど、まだ聞きたいことがいくつかあって…また日を改めてお話を聞かせてもらってもいいかしら?」
はい、今直ぐ帰れるのであれば。
最早、後日の片手間が増えることなど、些事に等しいと。
何なら、この件は事故ではなく事件としての疑いがかけられ、容疑者として扱われるような事情聴取が行われる可能性など、頭の片隅もよぎらない程不自由な麻痺に思考が犯されていた。
ああ、やった。帰れる。帰 れ るんだ。
早く 家に帰って、 お風呂に入って そ れか ら
ばちゃっ ばちゃっ
蘇る、音。
-
確実にエタだと思ってたからビックリだ
-
善子「ふっ…リトルデーモンたちよ。ヨハネの美貌に堕天なさい。」ギランッ
ルビィ「はわぁ…!」キラキラ
果南「あはは…今日も善子は元気だなぁ」
善子「善子じゃなくって、ヨハネ!!」
善子「いずれは世界中の全ての人たちをリトルデーモンに堕とすんだから!」
果南「そこまでいったら、洗脳みたいなものだよね」
善子「そこは堕天って言ってよ!」
-
ルビィ「あはは…洗脳って言葉だと、確かに怖いイメージです。」
果南「怖いねぇ…まぁ、確かに良いイメージの言葉じゃなかったね」
善子「そうよ。洗脳って、なんか相手に全てを支配されて、その人の操り人形みたいに動かされる…みたいなイメージじゃない?」
果南「本当の意味はさておき、別に善子の言ってることがおかしいようには思わないかな?」
善子「それじゃ、嫌よ。ヨハネに付いていきたい!って自分から思ってくれたリトルデーモン達の軍団を目指しているの!そうでなくっちゃ、堕天使ヨハネは務まらないわ」フッ
ルビィ「…善子ちゃん、凄い!かっこいい!」キラキラッ
善子「惜しいわね、リトルデーモン4号。私の真の名は…?」
ルビィ「ヨハネちゃん!」
果南「なるほど。善子も善子で、考えてるんだね。」ウンウン
-
確かに、善子の言うとおり。
例え、無理やり作ったたくさんのファンに応援されても…寂しいというか哀しいというのか…
私たちがスクールアイドルをしっかり頑張って…それを見て、応援したい!って思ってくれたファンがたった1人でも出来るのなら、私はそっちの方が嬉しいな。
そんな事を考えながら、興味本位で私はスマホを取り出し、Safariの検索で「洗脳」の検索をかけてみる。
トップに出てきたWikipediaの少し下、小さな文字による説明で
洗脳(せんのう、英: brainwashing)は、強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本 的に変えさせること。
と、直ぐに目に入った。
改めて、洗脳という言葉の意味を理解し直すとともに、この単語の強烈さを覚える。
そっか…考え方や価値観までを、まるっと塗り替えられることを指すんだ。
-
ふと、これはまるで遅効性の毒のようだと思った。
気づいたときには時既に遅し。…いや、最早その自覚も無いままなのかも。
ゆるりと体を蝕んでいって、いつの間にか、その人の個が絶命する。
染 め 上 げ ら れ て ゆ く。
傀儡師に、糸で器用にその体を操られるなんて、そんなもんじゃない。
元の体を奪われて、そこに別の何かが皮を被って生きていくことなのだ。
そこまでの想像を働かせたとき、その気味の悪さにぞわぞわと腕の産毛が逆立った。
…目には見えない、けれども確かに実在する強毒
もしも、私がそんな毒に冒されたとしたら…
…うん、これ以上の妄想はやめよう。流石にこれ以上、ケータイとにらめっこしてるのは2人に失礼だからね。
鞄の中に、ケータイを滑り込ませる。
ルビィ「…果南ちゃん、もしかして何か用事があったんですか?」
果南「いや、急に『善子 お団子 本体』って調べたくなってさ。」ニコリ
善子「どういうことよっ!?」
………………
-
本日はここまで
-
いい……
-
『続いてのニュースです。昨夜未明、静岡県駿河湾で水死体が発見され〜〜』
…あれから一週間、私の心は穏やかではなかった。
あの翌日、事情聴取の最中に、例の救急隊員が再び自殺をしてしまったそうだ。
それからも、全く同様の事件が続いて…新聞を見る限りでは静岡だけで9人、隣県も合わせて13人にのぼっていた。
流石に、これだけ私の知らないところで同じ事件が連続すれば、きっと私への少なからずの疑念も晴れたと思いたい。事実、あれ以降の警察からの事情聴取は、ない。
そして、これだけの怪死が続けば、新聞の一部を超えて、ニュースとしても取り上げられてくる。
このことをインターネットで調べてみると、いわゆる掲示板などでは「呪いの海」だの、陰謀だの、まるで面白いネタのように取り上げ盛り上がっていた。
おそらくメディアの関係者だろう人たちや、興味本位でこの駿河湾に訪れた人が撮影などをすることが増えてきた。
…すごく腹立たしい。不愉快、極まりない。
-
私が生まれ育ったうえで、親しんできた海
私にとっても、Aqoursのみんなにとっても、静岡のみんなにとっても、大切で魅力のある場所。
そこを呪いだのなんだのと騒ぎ立て、腫れ物のように扱われる。この海を汚されていく…そんな気がしてならなかった。
私の心は、まるで我が家を土足で踏み躙られるような…そんな憤りに達していた。
でも、最も怒りを感じているのは、自分に対して、だ。
それだけ、こき下ろされたように取り扱われているのに…何も言い返せない。
何なら、やっぱり「この海は、どこかおかしいかもしれない」と思ってしまう気持ちが、少なからずあるんだ。
実際あれ以降、この私が、1週間もダイビングもやってないし。
でも、でも!やっぱり私はここの海が好きなんだ!なのに…
情け無いというか、不甲斐ないというか…そんな自分のモヤモヤとした心の動きに、悩まされる日々を過ごしてる。
-
けど、こればかりを気にしているわけにもいかない。
私は今、スクールアイドルAqoursとして頑張っているのだ。
地元のため、浦女のため、メンバーのため、私のため、輝きたいため…
鞠莉とのことも、随分長い間引きずっちゃったんだ。だからこれ以上の迷惑かけないためにも、そろそろ気持ちを切り替えなきゃ、ね。
そんな決意を胸にしながら、今朝父さんが仕入れてきてくれた魚の刺身を口に運ぶ。
…うん!やっぱり、取れたては美味しいなぁ!
-
あの事件の帰宅後、既に用意をしていてくれた夕食の刺身は、両親が慌てて家を飛び出したこともあり、ダイニングにかかるエアコンの風を受けてすっかりパサついたものに仕上がっていた。
まず、食感から全然違う!あの時のは、グニグニってした感じ。今食べてるのは、プリップリといった感じ!弾けるような舌触りや噛みごこちがするんだ!
まぁ、あの時は食欲もほとんど無かったし、あまり噛みきれなかったし…お茶漬けみたいにして流し込んでたけどさ。
…ぐにっ…
…あれ?筋かな?何か変な感触…
でも、家族の前で口からものを出すって、なんか汚いというか、恥ずかしいし…いつもは魚の骨だって噛み砕いてるし…
私は、お茶を少し口に含んで、そのまま喉の奥へと流し込んでいった。
-
果南「ごちそうさまでした!」
食器を台所へと運んでいき、スポンジを泡立て、食器に付着する脂を溶かしていく。
さて、じゃあクーラーボックスにお魚に海胆、海老、たくさん詰め込んで…っと。
果南「行ってきまーす!!」
いつもより30分早く家を出て、みんなの元へと向かう。
さぁ、これだけのものを父さんが仕入れてくれたんだから、良い報告はしないとね。
何たって、今日は…
…………
-
果南「さぁ、今朝獲れたばかりの魚だよ!みんな食べてね!」
ラブライブの予備予選…Aqoursは無事に合格していた。
ようやく、私たちが目指したラブライブに、近づくことが出来たんだ!そんな実感が込み上げてくる。
もちろん、これはあくまで予備予選…次は地区予選へと続いていく。油断はしちゃいけないけど、景気付けも大事だよね?
というわけで、召し上がれ!
…………
千歌「おいしいー!!」
花丸「千歌ちゃん、よく味わって食べないと。」ガツガツ
善子「ズラ丸の方こそ、ちゃんと噛んで食べなさいよ!」
千歌や花丸は、夏蜜柑やパンが良いとか言っていたけど、みんなが美味しそうに食べてる姿を見ると、なんだか自分も嬉しくなる。
曜「………」
あっ、しまった…
-
果南「ごめん、曜。刺身ダメだったもんね。」コソコソッ
曜「いやいや、私こそ!折角作ってくたのに食べれなくてごめんね。」アセアセッ
曜が生魚を苦手としているのを、すっかり忘れちゃってたよ…。折角の景気付けなのに、これは申し訳ないことしちゃったな…
果南「じゃあ、また今度家で特製ハンバーグ作ってあげるね。」コソコソッ
曜「えっ!?それこそ果南ちゃんに申し訳ないよ!」
果南「いいのいいの!曜にもご馳走を振る舞ってあげたいんだ!」
果南「それに、東京から帰ってきた梨子にもご馳走してあげる予定があるからさ。」
曜「…分かった。ありがとうね、果南ちゃん!」
果南「いいよ!じゃ、また後で予定合わせよっか」
千歌「あー!曜ちゃんたち何話してるの?」
果南「…ふふっ、内緒だよ〜」
千歌「うわっ!気になるー!曜ちゃん教えてよ〜」
曜「…千歌ちゃん、これは秘密なんだー♪」ニコリ
千歌「えぇぇぇ!?な、なんかモヤモヤするー!」
そんな和気藹々とした雰囲気の中で、小さな祝勝会は無事に終わった。
その後、鞠莉のスマホから確認された入学説明会の参加希望者は0
…厳しい結果だけど、これを受け入れて私たちは頑張らなくちゃいけないんだ。
もう2度と、あんな悔しい思いをしたくないから。鞠莉とダイヤにも、あんな想いをさせたくないから!
……………
-
ザザザザザザザザッ!!
小さな船体が、波を左右に弾いて進んでいく。
予備予選の発表から2週間経ち、今日は久しぶりに練習が休みとなった。地区予選前では最後のオフだ。
鞠莉「それにしても、休みの日まで海に潜りたいなんて果南もモノ好きね。」
私が操舵する隣で、鞠莉が呆れて笑う。
果南「ははっ、だってさ?1ヶ月近くも海に入れて無かったんだもん。そろそろ潜りたくなってきてさ。」
あれ以降、なんとなくダイビングは避けていたけど、時間が空いてくるとだんだんとやりたい気持ちが強くなってきた。
鞠莉「えぇ!?あの果南が!?大丈夫、体調悪いの!?」
鞠莉が目を真ん丸にさせて心配してきた。そんなに驚くことかな?
果南「さて、そろそろいいかな?」ゴオオォォォ...
いつの日か千歌と曜と梨子が潜ったポイントに、船舶をゆっくりと停止させる。
果南「折角なら鞠莉も一緒に潜れば良かったのに」
鞠莉「まぁまぁ、地区予選も近いし、今日は体を休めたいのよ。果南のダイビングを眺めてるとするわ。ごめんね?」
果南「いやいや、私こそ休みなのに引っ張ってきちゃってごめん。」
鞠莉「良いの。今は少しでも果南と一緒に居たいから。」ニコリ
果南「なぁっ!?//」
今のはちょっと反則だと思った。
………
-
ざぶんっ ぼごぼごぼごっ…
私の体が内浦の海に沈んでいく。
レギュレータによってタンクから空気が取り込まれ、シュノーケルから私の呼気が勢いよく発射される。
水上で熱気を帯びていた私の体温は、周りの海水に吸収され、だんだんとその冷たさに馴染んでくる。
ぼごっ ごぽぽぽ…
上を見上げれば、水面へと昇っていく気泡の群れ、マーブル状にぐにゃあと歪んだ雲、海底まで真っ直ぐ射し込む光のカーテン
…あぁ、綺麗だなぁ
本当に、そう思った。
余計な力を入れず、この海の中でクラゲのようにぷかぷかと、この身を漂わせてみた。
ごぼっ ぼごごっ
…やっぱり私は、海に入ると気持ちが落ち着くなぁ。
まるで、体がゆっくり溶け出して、海と一体化していくような…そこまで心を許せている自分があった。
-
最近は、海に対して不安になったこともあったけど、改めて、この綺麗で神秘的な景色に触れて
今なら自信を持って言える。
…内浦の海はね、とっても素敵なんだ!
どんな事を言われたって!私はこの海が大好きだよ!
だからっ、私は!
この海で死ななければいけないんだ
-
…?
えっ、何今の考え?
死 な な け れ ば い け な い ?
ち、違う。私、そんなことっ、考えない!?
何、何で!?…いや、いやぁぁ!?
どくんっ どくんっ
漏れる空気以外は、基本的に無音の世界。
そこに、果南の心臓が力強く警鐘を鳴らす。
ダイバーとしてのキャリアをかなぐり捨てるかのように、必死に上へ上へと踠いていく。
ごぽぽっ ごぼっ…
肺と心臓が、その中から殴るかのように鋭い痛みを生み出していく。
このままの勢いで浮上してしまえば、確実に肺の空気が膨れて、破裂してしまう。
すんでのところで、ダイバーとしての意識を取り戻し、逸る気持ちを抑えながらゆっくりと昇る。
ごぼぼっ ごぼっ…
-
やっぱり、最初のあの時に、私も引き摺り込まれてしまっていたのかな?
それとも世間が言うように、この海は呪われているの?
私の体に何かの悪意が蠢いているのかな?
分からないよ
分からないけど…今は、大好きなはずの海から、ただただ早く船へと上がりたかった
……………
-
果南「はっ…!」バシャッ
鞠莉「果南…?早かったわね?」
果南「はぁ…はぁ…!」バシャバシャッ ドサッ
鞠莉「果南、そんな慌てて船によじ登って…どうしたのよ?」
果南「うっ…うぁ……げほっ…」ボロボロッ
鞠莉「!?か、果南!大丈夫!?何があったの!?」ガシッ
果南「ま、鞠莉ぃ…助けて……」ボロボロ
鞠莉「大丈夫!!私がいるからっ!ゆっくり息を吸って!」ダキッ
海の底で、頭によぎった死への渇望…
…いや、正しくは。死への使命。
しかし、その違いに果南が気づくことは無かった。
あまりに唐突に現れた 死という思考に怯え、涙する少女。
親友の様子に驚きながらも、その傷を癒そうとする少女。
海上に、少女たちの嗚咽と悲痛な声が響いていた。
…………………
-
本日はここまで
-
おつ
続き気になる
-
果南ちゃん…
-
まだか…
-
これで終わりですか??
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